終わらない明日へ


1

「この一撃で全てが終わるのだ・・・そう、全てが・・・」
 パトリック・ザラは、まるでにらみつけるような表情で、ジェネシスのミラー交換をモニタしていた。
 第一撃、第二撃と、確実に地球連合の戦意、そして戦力を削った。おそらくもう、ジェネシスを用いなくても戦局はザフトへと傾くだろう。
 望んでいたコーディネーターの勝利。
「ナチュラルどもが・・長引かせおって」
 先ほど入った情報によると、地球連合の足付きが一隻、撃ち合いによって轟沈したとのことだ。地球連合の旗艦として、そしてあの三機のモビルスーツの母艦として、大きな役割を占めていたあの艦がいなくなったという効果は大きい。
 もはや、時間の問題となった「勝利」という二文字に影を落とすのは、唯一、クライン派の連中だけとなったのだ。
「アスランめ・・・」
 苦虫を噛み潰すように吐き捨てたパトリックは、ミラーの交換を早くしろ、と促して、再びモニタを睨み付けた。


「艦長、ドミニオンからの脱出艇より着艦要請がでています・・・」
 重苦しいアークエンジェル・ブリッジの中で、サイが呟くようにいった。
 先ほどから、嗚咽を漏らすマリュー・ラミアス艦長の返答はない。
 ミリィと視線を合わせたサイは、通信を繋いだ。
「・・・・こちらブリッジのサイ・アーガイル二等兵です。カタパルト・デッキ開放、整備班、救護班待機してください。ドミニオンからの脱出艇を収容します。繰り返します・・」
「・・艦長・・」
 ミリィは、なんとか声を出さないようにして肩を震わせるマリューに、有益な言葉をかけることが出来ずにいた。トールを失った時の自分と同じだ。あの悲しみは、簡単に消えるようなものではない。
 目の前で、自分たちを守って消えていったムウのストライク。あの光景は、自分の目にも強く焼きついて離れない。戦争は、こうも簡単に知人の存在を削っていく。
 悲壮感あふれるブリッジを沈黙が流れた。
 数分がたって、ようやく落ち着いたのか、マリューは、なんとか顔を上げた。涙をぐっと拭うと、大きく深呼吸をして、口を開いた。
「ドミニオンからの脱出艇を収容。同時に、当艦の負傷者の救護にもあたって。・・もう、これ以上この艦は戦えないわ・・・」
 ドミニオンとの壮絶な撃ち合いの末、アークエンジェルは大きく損傷していた。なんとか自律航行をしており、兵装も殆どない、という状態では、戦場で足手まといになるだけだ。
「エターナル、クサナギとの通信は?」
「・・つながりました」
 ブン、と言う音の後に、正面ディスプレイにラクス、バルドフェルト、キサカの顔が映し出された。三人とも表情は硬い。当然といえば当然だが・・
「アークエンジェル級、ドミニオンを撃墜しました・・・・」
「そうか。・・こっちもなんとかやっているという状況だが・・・」
 そこまでいって、バルドフェルトはマリューの表情から何かを察したように、口を閉じた。同じように何かを感じたのか、キサカも、「こちらも同じくだ」と、短く告げた。
 ラクスが、決意を秘めた表情で口を開く。
「・・もう・・これ以上、犠牲を増やしてはなりません。その為に今、私たちが出来ることは・・・彼らのことを信じ、祈ることだけなのかもしれません」
 ぎゅっと、手の中にしまった指輪を、強く握り締めた。
 必ず帰って来ると、彼は言った。だから、信じなくてはいけない・・・
「アークエンジェルは状況から退避し、一度体勢を立て直してくれ。損傷度も酷かろう」
 キサカの言葉に、マリューは頷いて、敬礼をした。
「ご武運を」
「お互いにな」


2

 フリーダム、ジャスティス、ストライクルージュの三機は、ただひたすらにジェネシスへと向かっていた。ミーティアに比べ加速力のないルージュは、ジャスティスのミーティアに掴まっている。
 戦局を切り開きながら移動を続けていると、キラのフリーダムが動きを止めた。
「・・・・!」
「どうした、キラ」
「・・いや・・・今・・・なにか・・聞こえたような・・・」
 ザラザラとした感触。今までにはなかった感触だ。不快・・というわけではないが、頭が重いような印象を受ける。
 いぶかしむキラの頭の中に、直接声が響いた。
(キラ、あとは頼んだぜ)
「・・・ムウ・・さん?」
「キラ?」
「いや・・・まさかそんな・・」
 パッパッと、断片的な光景が頭に飛び込んでくる。ストライクだ。
 なにかの攻撃を神懸り的な動きで避けるストライク。そして、アークエンジェルの前で光に飲み込まれるストライク・・・
 なかば放心状態のキラを、カガリの叫びが呼び戻した。
「こっからは簡単に先に進めなさそうだぞ!」
 徐々にジェネシスに近づくにつれ、プラントから出撃したモビルスーツが数を増してきたのだ。キラは、はっとなったように頭を軽く振ると、二人を促した。
「アスランたちは先に!!」
「キラ・・頼んだぞ!」
「死ぬなよ・・キラっ」
「わかってるさ!」
 アスランとカガリに応えて、ミーティアの全砲門を開き、フル・ロックオンする。
 ドゥッ!
 フリーダムを中心にして、円状に光線が広がっていく。
 光が収束すると、そこにはMSの残骸が並ぶ。これだけの破壊装備を持ちながら、自由だの正義だのと、よくいったものだ、とキラは思う。
「はぁっ・・・はぁっ・・・結局は、力だっていうのか・・・」
 荒く息をつきながら、キラは次の照準を合わせていった。


 一方イザークとディアッカは、宙域を少しずつ移動しながら、専用回線を開いていた。
「イザーク、聞こえるか」
「当たり前だ」
 その応えに、「相変わらずだな」と、苦笑をかみ殺して、ディアッカは続けた。
「俺はできることならお前とやりあいたくはない。お前だって、そうだろ?」
「・・・・フン・・・・」
 イザークが言葉を濁すのを感じて、ディアッカは少し安心していた。立場は変われど、長い間仲間同士として戦ってきた2人だ。血で血を洗うような戦闘はできれば避けたい。
「ジェネシス、お前は知っていたか?」
「・・・知っていたら、俺だって好きにはさせてはいない・・」
 呟くような言葉に、ディアッカはイザークの変化を感じていた。この数日の戦闘で、思うところがあったのかもしれない。
「お前にだって分かるだろ。あれじゃ、ユニウス7となんら変わりがないってことがさ。コーディネーターはナチュラルを超越する新たなる種・・そんなこといったって、やってることは一緒じゃないか」
「ディアッカ」
 言葉を遮るような形で、イザークが口を開いた。その表情は、まっすぐに自分を見据えており、少し気後れするほどだった。
「なんだよ?」
「お前はなんの為に戦っているんだ。それだけを聞かせろ。ゴタクはお前には似合わん」
「そうかもな」
 ディアッカは苦笑して、ミリィの顔を思い浮かべていた。
 あの優しい笑顔はどこからでてくるのだろうかと、時折不思議に思う。
 彼女の恋人は戦死したと聞いている。それでもなお、自分に優しくしてくれるあの優しさは、どこからくるのだろうか。
 ナチュラルっていうのは、そういうおかしな人種なのか?
 最初はそんなことも考えていたが、徐々にそれはミリィの個性だということに気付いていった。その頃には、気付けば視線で彼女を追っている自分に気付かされた。
「死なせたくないヤツがいる。そいつを守りたいだけだ。あとはまぁ・・成り行きもあるしな」
 ディアッカの返答に、イザークは少し笑って見せた。
 あまりみたことのない、すがすがしい笑顔に、ディアッカは苦笑をかみ殺すのに精一杯だった。
「フン・・・そんなことだろうと思ったが・・・ディアッカ。手伝え。プラントにこれ以上悪者のレッテルを貼られるわけにはいかん」
 クイ、と向きを変えたデュエルに、バスターもあわてて向きを変えた。
「どこへ行くんだよ?」
「・・・ジェネシスを落とす」
「ひゅうっ・・ジュール隊長、いいのかよ?」
「俺はパトリック・ザラの為に戦っているわけじゃない。俺は俺の為に、プラントの為に戦っているんだ。お前みたいなコシヌケとは違ってな」
「いってくれるね、隊長」
 そういいながら、ディアッカは笑みが零れるのを感じていた。
「ジュール隊全機に告ぐ。俺に続け! なにも迷うな。俺が、お前達を導く!」



3

 脱出艇のアークエンジェルへの搬入は、予想した以上に困難を極めていた。
 破損した多数の箇所。各所であがる炎。負傷した艦員。自分たちのことで手一杯な状況で、他者のことまでやっていられるか、というのが正直なところだっただろう。
 おまけに、さっきまで戦闘をしていた艦からの脱出艇など、バカげている・・・
「ク、ブリッジは簡単にいってくれるけどなぁ!」
 コジロー・マードック曹長は、そう声を荒げると、負傷者の搬送や艦の損傷の対応に追われていた。
 もともと少数の人数でなんとか艦を動かしてきたアークエンジェルだけに、これだけの損傷をうけてしまうと、一気に行動は狭められる。ましてやそれで、他艦からの脱出艇の世話までしろというのが、無理な話である。
「こちらコジロー・マードック曹長だ! ドミニオンの脱出艇のほうは待たせてくれ! こっちだって、忙しいんだ!」
『・・す、すみません・・了解しました』
 マードックの怒鳴るような口調に気圧されたように、サイは反射的に応えていた。
「・・とにかく・・ナタルに聞きたいことは山ほどあるわ。アークエンジェルはこのまま動きが取れないんだもの。私たちでなんとか脱出艇を収容しましょう」
 マリューの言葉に、サイとミリィは頷いた。
「ノイマン少尉、あなたはここに残っていて。戦線からの離脱、頼むわよ」
「了解です! 艦長」
 ノイマンは、ビッと敬礼をして見せた。その姿に苦笑して、
「もう、敬礼はいいのよ」
「艦長。私も少尉ではありません」
 そういって笑って見せたノイマンに、マリューは少し癒されたような気がしていた。
(私がこうやって生きているのも・・あなたや、こういう、良いクルーに恵まれたからよね・・)
「そうか・・そうね、ノイマン君。頼んだわ。それじゃ、行きましょう」
 サイやミリィに視線を配って、マリューはブリッジを後にした。
「・・艦長・・・」
「・・・・・・」
 ノイマン、トノムラ、チャンドラ、バルの4名は、気丈な姿を見せるマリューの背中に、もう一度、敬礼をしてみせた。


「はぁっ・・はぁっ・・」
 キラは、流れる隕石に身を隠しながら、パイロットスーツのヘルメットを一度脱ぎ、水分を補給していた。続けざまに戦闘を繰り返すことは、極度の集中状態を作り出すことも可能だが、同時にそれは張り詰めた糸のような物で、いつ音を立てて切れていくかわかったものではない。
「・・アスランたちは、ジェネシスまでたどり着いたのかな・・」
 一息ついて、モニタで戦闘状況を確認する。
 死屍累々のその状況は嫌気がさすものだった。しかも、その多くは自分たちが作ったものだ。降りかかる火の粉を払うようにして戦ってきた自分たちだが、果たして、それは本当に平和の為になるんだろうか・・そんな考えが頭をよぎる。
「戦闘中にこんなこと考えてちゃ、死ぬぞ、ってムウさんに怒られちゃうな・・」
 呟いた瞬間、なにかが直接頭の中に響いてきた。また、さっきと同じザラザラした感覚・・・
「な・・なんだ!?」
(キラ! アークエンジェルへ戻れ!)
「・・・ム・・ウ・・さん?」
(早くしろ! ヤツが・・・ヤツが来ている!)
 その直後、爆発するストライクと、見たことのないモビルスーツの姿が頭に飛び込んできた。そして・・フレイ。さっきよりも鮮明なイメージに、キラは自分の鼓動が早くなるのを感じた。
「フレイ・・!? フレイになにか・・!? ・・・なんなんだ・・・この・・胸騒ぎはっ!」
 キラは、ミーティアをアークエンジェルの方へと向けながら、アスランとカガリの無事を祈った。
「ゴメン・・アスラン・・僕は・・いかなくちゃいけない!」
 加速しながら、群がる敵を撃ち落すフリーダムのミーティアが、戦場を上下に分かつ光を作り出していた。



4

 アスランとカガリは、なんとか、という状態で、ジェネシスを、そしてヤキン・ドゥーエを目の前にすることが出来ていた。だが、お互いの機体も損傷し、励ましあってここまできた、というのが現状である。クサナギやエターナルの援護も大きい。
「アスラン! もうちょっとだ! こんなところでメゲるんじゃないぞ!」
「誰がいつ、メゲたんだ! 勝手なことをいうなよ!」
 お互いを鼓舞しながら、敵機、戦艦を駆逐して行く様は、プラントからすれば圧巻だったろう。僅か2機と2隻に駆逐されていく味方機。変えられていく戦局。
 ヤキン・ドゥーエに配属された多くのものが実戦経験が少ないということをひいても、有り得てはいけない状況であった。ここはプラントの最終要塞なのだ。これが落とされるということは、プラントの、コーディネーターの敗北を意味する・・・
 ヤキン・ドゥーエでは、アスランの父、パトリックが反故を噛んでいた。
 見せられる映像が味方機が落とされていく映像ばかりでは、指揮官としてはいらだつのも仕方がない。
「・・・アスランめ・・クルーゼはなにをしているんだ! プロヴィデンスはどうした!!!」
「プロヴィデンス、確認できません! 撃墜されたという報告は入っておりませんが・・・」
「彼奴め・・・ミラー交換! 急がせろ!! 何度いったら分かるのだ!」
「ハッ!」
 パトリックの苛立ちを感じて、兵士たちは先ほどよりもさらに機敏に動き始める。
 自分の息子まで撃った男だ。このような状況では、なにがあるかわかったものではない。
「忌々しい・・・忌々しいぞ・・・・」


 デュエルとバスターの前を遮ったのは、連合の黒い機体、レイダーだった。
 ジュール隊の機体が、一機、また一機と撃墜されていく。
「貴様ぁっっ!!!」
 短い間とはいえ、自分の隊の隊員として預かった命を、こうも安々と手放してしまった自分に腹が立った。同時に、ニコルを失った時のアスランの決意が、いま身にしみて分かるような気がする。
「ったく・・目的は同じだっていうのに、なんでこう、突っかかってくるかねぇっ」
 ディアッカは、対装甲散弾砲を組み合わせると、レイダーの付近に散布した。
「あたるかよぉぉぉぉぉ!!!!」
 クロトは、激しい動悸に襲われながら、朦朧とする意識の中でレイダーを操縦していた。
(俺・・・なにやってんだっけ? わっけわかんねぇ)
 無意識状態でバスターの対装甲散弾砲を潜り抜け、ミョルニルで攻める。
「抹殺ッッ!!!」
「つぅっ」
 間一髪避けたものの、さすがに手強い。MA形態とMS形態を上手く使い分け、戦闘宙域をうまく支配している。
「これ以上、やらせるかよ!!」
 ガキン、とガンランチャーとライフルの組み合わせを変え、超高インパルス長射程ライフルでレイダーを狙う。
「イザーク!」
「わかっている! 騒ぐなッ!」
 お互い共闘は慣れている。バスターが狙い、デュエルが誘い込む。アサルトシュラウドもない今、逆にデュエルの動きは軽快なそれだった。
 レイダーをビームサーベルで切りつけながら、射線上に追い込む。
「甘いんだよぉぉぉ!!!」
 機関砲をばらまきながら移動した瞬間、バスターの射線上にレイダーが乗った。
「くらえっ!!」
 超高インパルス長射程ライフルが火を噴き、レイダーに向かう。
「もらったぜ!」
「おりゃああああああ!!!!!」
 レイダーの顔がこちらをむいた、と思った瞬間、MSを人体にたとえるならば口の位置から、エネルギー砲ツォーンが火を吹いた。ライフルのエネルギーとぴったりと射線をあわせたそれは、閃光を迸らせ、その威力を相殺する。
「ツッ・・ま、まじかよ・・・」
「滅殺ッ!!!」
 ディアッカが閃光に目を焼かれていると、衝撃が体をシートに押し付けた。ミョルニルがバスターを直撃したのだ。はじけとぶバスターのコクピットで、ディアッカの叫びが木霊する。
「ぐぁぁっ!!!」
 その叫びに、イザークはデュエルで駆け寄りながら、バルカンでレイダーを牽制する。
「ディアッカ! なにをやっているっ!!!」
「ったく、ちっとは・・心配してくれっての・・・」
 衝撃で口の中を怪我したらしく、血の味が滲む。だがそれは、自分を生きている、と思わせるに十分の感覚だった。
「はぁーーーっ・・はぁーーーーっ・・」
 一方、レイダーのクロトは、激しい吐き気と頭痛に苛まれていた。
(なんだっていうんだよぉ・・・クソ・・・・頭イテェ・・・気持ちワリィ・・・目の前が歪んで・・・)
 殺気、というものを感じて、でたらめにレイダーを回避させる。でたらめなつもりだったが、それは確実な回避運動になったらしく、デュエルの一撃を避けきっていた。
(わっけわかんねえ・・・わっけわかんねえぞ・・・息苦しいんだよっ・・クソ・・・)



5

 明らかに、レイダーの動きが鈍くなるのが、2人には見て取れた。
 好機!
 イザークのデュエルが、両手にビームサーベルを携え突撃する。
「落ちろっ!!!」
「落ちないよーっだっ!」
 切り掛かるデュエルに、強引にツォーンを放つレイダー。
「ぐッ!」
 近距離からのエネルギー砲は、ギリギリでかわしたデュエルの左足を、虚空へと流していく。バランスを崩したデュエルに、ミョルニルが迫る。
「死ぬかよぉぉぉ!! こんなところで死ぬかよぉぉぉ!!!!」


 アークエンジェルへの脱出艇の搬入は、カタパルトへ直接ランチするような形で行われることになった。すでに戦闘能力の大半を失い、パイロットもいない状況では不必要、ということで、スカイグラスパー二機をランチャー、ソード、各々のストライカーパックを接続し、放出することになった。大気圏内用の機体だから、ということも多分にあるだろうが。
 二機のスカイグラスパーが陣取るカタパルトの端末から、ミリィが注意を呼びかける。
「スカイグラスパー、射出します!」
 リニア・カタパルトを用い、ほぼ放り投げる状態で外に出されるスカイグラスパーは痛々しく、マリュー、ミリィともに、心に影を投げかけるものであった。
 一瞬、彼らの顔が頭をよぎる。それを振り切って、ミリィは唇を開いた。
「スカイグラスパー二機、射出完了しました」
「ご苦労様。サイくん、君は確か、工業カレッジの学生だったわよね?」
 マリューの言葉に、サイが軽く頷いた。
「はい。随分前の話ですけど」
「なら、作業用モビルスーツの免許は持ってる?」
「ええ、もってますよ。みんな忙しいみたいですし、俺が出て脱出艇を誘導しましょうか?」
「そうね、お願いするわ。・・デブリが多いから・・気をつけて」
「了解です」
 そういいながら、サイは地面を蹴って、作業用パイロット・スーツのあるロッカーまで流れていった。
 一方、ミリィは脱出艇との通信を図っていた。
 ローエングリンなど過干渉砲を多く使用したため、短距離通信にノイズが乗りやすくなっており、未だに「救難信号」は受け取っているものの、通信はできていない、というのが現状だった。
「どう・・?」
「少しずつ、ノイズが減ってきているようですが・・あ、つながりました!」
「ありがとう、回して」
「はい」
 ミリィは、マリューの回線に、脱出艇との通信を回す。



6

「・・こちら、アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスです。聞こえますか?」
『艦長っ!!』
 はじけ飛ぶような声に、マリューとミリィは顔を見合わせた。レンジを合わせていたサイも、パイロットスーツを片手に二人のところへ流れてくる。ミリィは、そんなサイの手をとってあげながら、マリューを見て口を開いた。
「艦長、この声・・!?」
『マリュー艦長!! 私です! フレイ・アルスターです!』
「フレイ!」
 サイとミリィが、同時に声をあげた。ドミニオン撃沈の際、まさか・・と、思っていたのだが、彼女は無事だったようだ。
 安堵の声を上げる2人をみて、マリューも顔を緩める。
 だが、次の言葉を発する瞬間には、厳しい表情に戻っていた。
「ナタルはそこにいるの?」
『・・・それが・・・』
「どうしたの? フレイ」
 ミリィの声に、ぐっと喉を詰まらせたフレイだったが、ぽつりぽつりと話し始めた。
 ブルーコスモスの盟主、アズラエルのこと。ナタルの苦悩。そして、自分たちを逃がしてくれたこと・・・
「・・・ナタル・・・私・・・ナタルを・・・・」
 マリューの目に、もう一度涙が浮かぶ。憎しみの感情から放ったローエングリンは、自分に反発しながらも、自分を助けてくれた有能な女性を、塵にしてしまったのだ。ないまぜになる感情は、マリューに再び嗚咽を繰り返させるには、十分だった。
 沈黙が、あたりを支配した。サイもミリィも、もう口を開くことが出来なかった。
「・・なんなんだよ・・もう・・・なんなんだよ・・・」
 サイは項垂れ、フワ・・と、地面から離れていく。そのサイの手をとって、ミリィが涙を拭いた。
「フレイ・・・あなたは、無事なのね? 元気なんでしょ?」
『そうだけど・・でも・・』
「フレイ、とにかく、アークエンジェルに来て。ここもまだ、戦場だから・・」
『うん・・わかった・・』
 呟くようなフレイの言葉に、サイはパン、と自分の顔を軽く叩いて、気合を入れるようにした。
「フレイ、俺が作業用MSで誘導するから、アークエンジェルのカタパルトに着艦してくれ」
『やってみる・・』
 悲痛な声は、サイに重くのしかかってきた。こういうとき、キラならなんていうんだろうか・・そんなことを考えてしまう自分が、嫌になる。
(多分きっと、キラもなにも・・いえないよな・・)
 パイロットスーツを着込み、作業用MSに乗り込んだサイは、一つ一つ思い出しながらエンジンに火を入れた。
 カタパルトデッキから外に流れていく作業用MSを見ながら、マリューは自分の弱さを呪った。
(なんで・・・なんで、こんなことになるの!? もう・・何も分からない・・・考えたくない・・・)
 こんな自分を、ナタルなら、軍人なら他者の死で悲しんでいる場合ではないでしょう、と、諌めるのかもしれない。そう考えると余計に、涙は流れ出すのだった。



7

 着々とミラー交換を続けるジェネシスに、アスランは焦りを感じていた。
(クッ・・・父は・・何を考えているんだっ!!!)
 カガリのルージュとともに、敵をかいくぐりながら、ヤキン・ドゥーエに迫るミーティア。その圧倒的な戦闘力に、ザフトは後退を余儀なくされていた。だが、こちらとて無傷ではない。殿を務めるキラも、まだ姿を見せていない。まさかとは思うが・・・
「・・・・直接・・話をつけるしかない! カガリ、援護を頼む!」
「任せとけ! ・・無茶は、すんなよ」
「わかっているさ!」
 アスランは、ヤキン・ドゥーエ近辺まで一気に機体を近づけると、ザフトの回線コードを開き、ヤキン・ドゥーエの参謀部に繋いだ。
「こちら、ジャスティスのアスラン・ザラ! 父上! 聞こえますか!!!」
 その声に、ヤキン・ドゥーエの中枢部がざわついた。パトリックの苦々しげな表情が、ジャスティスのモニタに映し出された。
「アスラン・・・この期に及んで、降伏でもするつもりか!?」
「父上! ご自分がなさっていることがどんなことだか、わかっているのですか!!」
 カガリのルージュの援護もあり、回避運動を取りながらパトリックとの会話を続ける。
「わかっているとも。当然だ。このジェネシスの一撃で、我々コーディネーターの勝利がきまるのだ!」
「地球には、プラントを支持するアフリカ共同体や、大洋州連邦があるのを、お忘れですか!?」
「忘れるわけがあるまい。だが、所詮はナチュラル。どうせ、我々の技術が目当てで近づいた奴等だ。惜しくはあるまい」
「本気で言っておられるのですか、父上!!! それに・・月は・・コペルニクスは、家族で暮らしたところではないですか!! 母上との思い出すら、その兵器でけしとばそうというのですか!!!」
 アスランの言葉に、パトリックは返答できずにいた。血のヴァレンタインで失った愛妻。彼女の復讐が、自分を駆り立てていたのは間違いのない事実だ。
「父上!」
「アスラン。お前なら、どうするというんだ。言ってみろ」
「・・もうここまでやれば十分でしょう。じきに地球連合から停戦の旨を伝えてくるでしょう・・それに従うまでです。これ以上、人が死ぬ必要があるのですか、父上」
「なら問うが、今まで戦い、死んできたもの達に遺された人々はどうなる? ここまで来て、父や、息子や、恋人を殺した相手と和解しろといわれて、お前がその立場ならそれができるのか?」
「つらい決断ですが、しなければならないでしょう。これ以上人が悲しむのを・・俺はみたくない・・・」
「アスラン、もう遅いのだよ。血が流れすぎた・・そしてこれからも流れるだろう。これは私の信念だ。コーディネーターとしてのな」
「父上ッ!!」
 アスランの叫びと、銃声が木霊するのが、ほぼ同時だった。
 ざわついていた中枢部も、あまりの出来事に静まり返っていた。
「・・ッ・・・」
 崩れ落ちて行くパトリック。アスランは言葉を失い、ミーティアは動きを止めた。
「もう・・あんたの時代じゃないんだっっ!! はは・・・ハハハハハハ!!!!」
 狂気的な叫びのあと、再び銃声が響き渡った。そして、ドサッ、という鈍い音・・
「ち・・・父上? ・・父さんッ!!!」
「アスランっ!? なにやってんだよ、死ぬ気か!?」
 カガリの声も、遠く聞こえる。アスランは、魂の抜け殻のような顔をして、モニタの一点を見つめていた。
「・・父さん・・・!? どうなったんだ!! 状況を報告しろッ!!」
 アスランの叫びに、止まっていた時間が動き出したかのように喧騒が再び木霊した。
「・・ザラ議長閣下が・・う、撃たれました・・・本人は・・・自殺・・です・・・」
 オペレーターも、動揺をありありと口調に出し、アスランに伝えた。
 アスランは、ぎゅっと唇をかむと、ミーティアをヤキン・ドゥーエへと向けた。
「ヤキン・ドゥーエの入り口を開けろ!! アスラン・ザラ、帰投する!! 父と狙撃者の治療を急げっ!!」
「アスラン!! どうしたんだ!? なにがあったんだ!?」
 追い縋るカガリに、アスランは呻くような声で答えた。
「・・父が・・撃たれた・・・」
「な!? どういうことなんだよ!?」
「わかるかよ!!!」
 激昂するアスランの声に、カガリは思わず息を飲んでしまった。
「すまない・・カガリ・・・俺はヤキンへと向かう。お前はクサナギに戻ってくれ」
「アスラン・・いいか、無茶するなよ。・・必ず・・・私のところに、戻ってくるんだぞ!」
 アスランは、しっかりと頷くと、笑って見せた。
「行ってくる」
 動きを止めたザフトのMSをかいくぐって、ミーティアはヤキン・ドゥーエの中へと吸い込まれて行った。



8

 デュエルとレイダーのミョルニルの間に滑り込み、それを受け止めたのは、最後のジュール隊の機体だった。直撃をうけ、吹き飛ぶ機体を、デュエルが必死で追う。
「・・早くッ!! 脱出しろッ!!!」
 イザークの叫びもむなしく、機体は傾いていく。
「た・・隊長・・プラントのこと・・・頼み・・」
 ゴンッ、という重い音とともに、目の前で機体は閃光と化した。
 ディアッカは、レイダーに対装甲散弾砲を撃ちこみ、距離をとる。
「イザーク!」
「・・いくぞ、ディアッカ」
「・・・あ、ああ」
 イザークは、冷静だった。自分の部下を全て失うという状況に陥りながら、その視線には力が宿り、ただひたすらに前を見つめていた。
 敵も、明らかに動きが鈍くなっている。こちらも残りエネルギーが少ない。次どう動くかで、この戦闘の勝敗が大きく傾くことを、イザークは感じていた。
「はぁーーーっ、はぁーーーっ、はぁーーーっ・・」
 レイダーのクロトは、荒く息をついたまま、気だるさの中に身をゆだねていた。末端から痺れが来ている。指の一本一本を動かすことすら、ままならない。
(一体なんなんだよ、俺って)
 今まで考えたこともなかったが、自分は一体何ものなのだろう。どこからきて、そしてこれから、どこへ行こうとしているのだろう。
(んなムツカシーこと、考えるだけムダだな)
 視界も徐々に狭まってきた。もっとしなくちゃいけないことがあるのに。倒さなくては。だがもう、それも潮時なのか。
(死ぬのか・・・? 俺、死ぬのかな?)
 そんなことを考えていると、危険を告げる発信音が、ピピピピ、と耳に届いた。どうやらまだ、耳は聞こえているらしい。
「・・・がぁっ!」
 今までMSを操っていた時のような高揚感は薄れ、徐々に恐怖が体を蝕むのを感じた。怖い・・よく今まで、こんな状態を幸福だ、と感じていたものだ。
 殆ど勘だけでデュエルの攻撃をかわしながら、レイダーは徐々に後退していく。
「これでっ!!!」
 デュエルが追い込む中、再びインパルスライフルを構えるバスター。照準を合わせ、引き金を弾く。
 長く延びて行く金色の弾道。
「ハッ!」
 クロト・ブエルが最期に見た光景は、一杯に広がる金色の光だった。
「・・・急ぐぞ、ディアッカ」
「・・ああ・・」
 閃光に消えて行くレイダーを横目に、デュエルとバスターはジェネシスへと進路を向けた。



9

 サイは、作業用MSでカタパルト前のデブリを排除しながら、フレイと通信を開いていた。
「・・久しぶり、フレイ」
「うん・・サイ・・」
 どこか弱々しげな声に、サイは胸が熱くなるのを感じていた。そんな自分を諌めるように頭を軽く振り、デブリをどかし続ける。
 しばらくの沈黙のあと、フレイの声がパイロットスーツの通信機から聞こえた。
「・・サイ・・わたし、サイに謝らないといけない・・・」
「なんで・・」
 そう返す自分は嫌なやつだ、と思いながらも、フレイの返答を待つ。
「わたし・・サイのこと・・傷つけたよね・・・いっぱい・・いっぱい・・ごめんね・・・」
 泣き出しそうなフレイの声に、サイは自分の視界が歪むのを感じていた。
「あ、謝らなくたって・・いいよ・・もう・・・俺・・気にしてないからさ・・」
 そんなの嘘だ、と心が叫ぶ。だが、ここでフレイを罵倒しても、なににもならない。
「ありがとう・・サイ・・・やっぱり、優しいね・・」
「や、やめてくれよ・・照れるだろ・・もうすぐで、終わるから。もうちょっと待ってて」
「・・うん」
 随分としおらしいフレイに、サイは自分が知らないところで傷つき、そして成長していることを感じていた。ヘリオポリスから脱出した直後と比べれば、かなりの変化だろう。
「キラは・・・」
 それ以上、キラのことについて話して欲しくないという感情がさせたのか、サイはフレイの言葉を遮って応えた。
「あいつは今も、MSに乗って戦ってるよ。・・まったく、凄いヤツだよ」
「キラ・・・・」
 フレイがその名を呟いたのと、2人の通信機がけたたましく鳴り響くのがほぼ同時だった。
「艦長!!! ザフトのものと思われるMSが一機、当艦に接近しています!!! 至急ブリッジに戻ってください!!」
 ノイマンの声に、フレイとサイはハッとなる。
「なんだってんだよ! もう!」
 サイは、デブリの撤去を急ぐ。が、いかんせん数が多すぎる。作業用の小型MSでは、作業の効率が悪すぎるのだ。
「サイくん、あなたは作業を続けて!! 危なくなったら、なんとかして脱出艇と一緒にアークエンジェルから離れるのよ!! わかった!?」
 マリューの声に、「了解!」と応えて、サイは作業用MSのスティックを倒す。
 焦りからか、上手くデブリの処理が出来ない。
(なんなんだよもう! 落ち着け・・落ち着けよ、サイ・アーガイル!)
 目を閉じ、大きく深呼吸をする。多少マシになったような気もするが、全然変わらないような気もする。
 だがとにかく、やるしかない・・・
「フレイ、大丈夫だからな。俺が、すぐ、助けてやるから」
 フレイは恐怖に震えているのか、返事はなかった。これ以上、フレイを泣かせるわけにはいかない・・・・



10

 マリューがブリッジにたどり着くと、謎のザフト軍籍MSは、肉眼で確認できるほどに近づいていた。
「ローエングリンは使えないわ! 艦内状況からいって回避もできない・・応戦します!! アンチビーム爆雷散布!!! 牽制! バリアント、てーーーっ!!!」
 マリューの言葉に、クルーは素早く応えてくれた。アンチビーム爆雷がアークエンジェルを覆い、バリアントがMSに向かう。
「敵機データ照合できません!! ザフトの新型モビルスーツと思われます!」
 ミリィの言葉に、マリューは軽く舌を打った。
(なんでこんなときに来るのよ・・・っ!)
 確かに、ドミニオンとの戦闘を追え疲弊している、という情報を受ければ、アークエンジェルを討つには絶好の機会だろう。しかも、見た目以上に自分を始めクルーの心身のダメージが大きい。
「敵機、なおも接近!!!」
「クッ!!!」
 誰もが、何かを覚悟した瞬間、ピピピ、と通信を伝える電子音が鳴った。
「・・て、敵機から通信が入っています!」
「ひらいて・・・」
 ゴクリ、と喉を鳴らして、マリューはディスプレイを睨んだ。
「・・・了解」
 映し出されたのは、パイロットスーツに体を包んだ仮面の男、ラウ・ル・クルーゼだった。ムウの言葉を思い出し、マリューはその男を睨み付けた。
「・・クルーゼ・・!」
 呟くようなマリューの一言に、「ほう?」と、クルーゼが反応した。
『私をご存知とは、光栄だな。アークエンジェル艦長』
「・・何のようなの」
『ムウを出したまえ。そろそろ頃合だ』
 クク、と笑うクルーゼに、マリューはギュッと唇をかんで応えた。
 瞼に、ムウの顔が浮かんだ。
「・・ムウは・・・・ムウ・ラ・フラガは死んだわ」
『・・なんだと? ・・・ふ、ふははははは!!! 情けない男だな、ムウ・ラ・フラガ! 私と決着をつけるというのは、たわごとだったか!』
 続くクルーゼの嘲笑に、クルーは緊張感と怒りが入り混じった、複雑な汗をかいていた。
 悔しい・・・そんな感情が、徐々にマリューの体を支配しつつあった時、少女の声が響いた。
『クルーゼ隊長・・・』
『・・ほう? フレイ・アルスターか』
『どうして・・・どうして、あんなものをわたしに!!』
 フレイの叫びに、クルーゼは間をおいて応えた。
『君を利用しただけのことだ。それとも、あのままヴェサリウスで死にたかったかね?』
『たくさんの人が殺されたわ!! あの光で・・・どうして、そんな酷いことをして笑っていられるの!?』
『酷い? 酷いとはまた、心外だな。撃ったのは君達地球連合だろう。私はあくまで情報を渡したに過ぎないよ』
『情報を渡したら、撃つに決まっているわ!! 戦争・・ちっとも終わらないじゃない!! 悲しむ人が、増えるだけじゃないっっ!!!』
『私の言葉を信じたのは、君の間違いだった、ということだよ。フレイ・アルスター。・・残念ながら私は、こうるさいのが嫌いでね・・・これ以上騒ぎ立てるのなら・・』
『撃ってみなさいよ!! あなた、本当は弱い人間なんだわ! だから、そうやって他人を利用したりして、自分が弱いことを隠すしかないんだわ!! そんな人間なんかに、殺されるもんですか!!』
『フレイ、よせ!!』
 サイの静止も、フレイには届かなかった。涙を流しながら、感情のままに続ける。
『撃ってみなさいよ!! 私は脱出艇にいるわ!! 逃げも隠れもしないんだから! さあ!』
『・・ふむ・・どうやら君を過小評価していたようだ。そこまで潔いとは思わなかった』
『フレイッ!!!!』
『・・消えてなくなれ、フレイ・アルスター』
 パシュゥ、という音で、クルーゼの機体・・プロヴィデンスから小型のファンネルが飛び出し、フレイの脱出艇に近づく。
『やめてくれ!! 逃げるんだ!!! フレイ!!!』
 サイの叫びの直後、閃光が走った。
『キャァァァァァッッ!!!!』



11

 ヤキン・ドゥーエ内に入ったアスランは、兵士達に促され、医務室へと向かった。
 軍医の話では、パトリック・ザラはかなり危険な状態であるという。ほぼ、絶望的だそうだ・・また、撃った犯人は即死だそうだ。
「・・父さん・・・」
 治療を受ける父の姿を遠目に、「お願いします」とだけ告げ、アスランは中枢部へと向かった。
 中枢部に入ったアスランを待っていたのは、沈痛な面持ちのザフト兵士達だった。
「・・・皆・・もう、やめよう。これ以上続けても、なんの意味もないことぐらい、皆にだってわかるだろう!!」
 アスランの叫びが中枢部に届くと、ディスプレイにエザリア・ジュールの顔が映った。
「ここで引けと言うのですか」
「そうです。一刻も早くジェネシスを停止し、停戦協定を結ぶべきです」
「アスラン様、それが・・・」
 アスランに耳打ちした兵士の言葉に、アスランは言葉を失った。
「なんだって・・? ジェネシスはもう止められない・・・?」
「現フェイズは最終区分です。現状での停止は不可能です・・・」
「なにか、緊急の停止装置はないのか!?」
「残念ながら・・・」
 アスランは、ぎゅっと唇をかむと、通信士のマイクをもぎ取り、チャンネルコードを合わせた。
「こちらヤキン・ドゥーエのアスランだ。エターナル、クサナギ、聞こえるか!」
『こちらクサナギだ。どうした』
『アスラン、なにかあったのですか?』
 キサカとラクスの声に、アスランは叫ぶように伝えた。
「ジェネシスはもう最終フェイズに到達している! 破壊するしか手立てはない!」
 二人の声がぐっと詰まるのが分かった。あれだけの巨大建造物を破壊するのは、並大抵のことではない。もちろん、全てを破壊するのではなく、なにか中枢となる部分を破壊すればよいのだろうが・・・それにしても、内部から破壊すれば、自分もどれほど危険な状態になるか予想がつかない。
「アスラン。今停戦協定を結んだとして、ジェネシスはどうするつもりだ。停戦協定を結んでおきながら、地球に向けて閃光を放つというのか?」
 エザリアの言葉に、アスランは強く首を振った。
「止めてみせる・・俺が! 俺達が!」
「もう時間もないだろう。無理というものだ・・・」
 深く息をついたエザリアに、凛とした声が届いた。
『母上! やる前から諦めていては、なにも変わりません!!』
「イザーク・・?」
 アスランとエザリアの声が重なる。ヤキン・ドゥーエのモニターには、片足を失ったデュエルと、それを支えるような姿で飛行するバスターの姿があった。もう残りエネルギーが少ないのか、その姿は痛々しくある。
『母上の望みは、ナチュラルの抹殺などという野蛮なものではないでしょう! 他者を淘汰して生きていける生物など、未だかつていません!! 他者と協力することが、我々人間の美しさであり、強さでしょう!』
 イザークの言葉に、エザリア、アスランを始め、ザフトの全兵士が言葉を失った。あのイザークが発する言葉だから、重みがあったのだろう。
 減っていくエリート軍団「赤」。その最後の一人イザーク。彼は続けた。
『アスラン、ジェネシスの破壊、俺も手伝わせてもらう。プラントへの核攻撃を何度となく防いでくれた礼だ。お前の借りを作っておくのは、居心地が悪い』
「頼む、イザーク。俺も出る!」
『俺に賛同するものは、皆続け!!! ジェネシスの中枢部を破壊する!!』
 イザークのデュエルとそれを支えるバスターを筆頭に、多くの大隊がそれに続いた。
「・・・イザーク・・・」
 呟くエザリアは、息子の成長を見守っているようだった。
 アスランは、もう一度通信機を持つと、口を開いた。
「・・アスランだ。エターナル、クサナギ、地球連合軍を頼む」
『わかりましたわ・・』
『任せておけ。ジェネシス、頼んだぞ』
「ああ!」
 アスランは、「父のことを頼む」と言いおいて、ヤキン・ドゥーエ中枢部から駆け出していった。



12

 閃光が、あたりを支配した。フレイの乗った脱出艇に打ち込まれた一撃は、脱出艇を粉々に打ち砕くことは出来ず、むしろ、砕け散ったのはファンネルのほうだった。
「クルーゼッ!!!」
「・・キラ・ヤマトか!」
 フレイの脱出艇を庇う様に姿を現したのは、白い機体、フリーダムだった。
「フレイ!? 大丈夫!?」
 ギリギリで間に合ったフリーダムに、そしてキラの声に、フレイは涙が溢れるのをとめることなどできなかった。
「キラ・・・キラぁ・・・っ・・・」
 間一髪だった。脱出艇目掛けてファンネルの一撃が着弾する瞬間、フリーダムのビームライフルの一射が軌道を変え、もう一射がファンネルを打ち砕いたのだ。
「・・んっ・・」
 痛みを訴えるフレイの声に、キラは愕然として声を上げた。
「フレイ!?」
「だ・・大丈夫・・ちょっと・・火傷とか・・傷とか・・そういうの・・だけだから・・・」
 直撃は免れたものの、ビームで焼かれた脱出艇の中で、フレイは何度か壁に叩きつけられ、機器の破損により怪我を負っていた。
 キラは、自分の不甲斐無さに唇をかむと、叫ぶように伝える。
「サイ! フレイを頼むっ!」
「あ、ああ!」
 涙を拭って、サイはボロボロの脱出艇をアークエンジェルへと搬入する。ビームによってデブリが溶けていることが、搬入には幸いした。
「キラ・・・」
 涙まじりのフレイの顔に、キラは笑いかけた。
「フレイ、待ってて。すぐに、行くから」
「うん・・待ってる。いつまででも、待ってるから・・」
 搬入されていく脱出艇を後ろに、フリーダムのライフルがプロヴィデンスに向けられた。
「クルーゼ・・」
「ククク・・・そうか、キラ・ヤマト。お前が私を満たしてくれるというのだな!?」
 プロヴィデンスの背部から、数機のファンネルが飛び出す。その予期できぬ動きに、キラはとにかく、アークエンジェルと距離を離すことだけを考えて移動した。
(ここでやりあっちゃだめだ!)
「逃げるのかね、キラ・ヤマト!」
「くうっ!!」
 プロヴィデンスの用いるファンネルがフリーダムを囲む。
「なんだ・・・!?」
 閃光。
「うぁぁぁっっ!!!」
 他方からの攻撃に、ミーティアを装備したフリーダムは避けきれず、損傷を受ける。中破までいかない程度だが、偶々直撃しなかったにすぎない。
「こんなの・・どうしろっていうんですか、ムウさん!!!」
 レール砲とビーム砲を構え、打ち込むフリーダム。だが、プロヴィデンスの機動性は見た目以上に高く、いとも簡単に回避されてしまった。
「ミーティアじゃダメだっ!」
 加速性と攻撃力はあるが小回りが利かないミーティアをパージし、フリーダム単体になったのをみて、クルーゼはくく、と笑った。
「なるほど、そのままでは勝ち目がないと感じたかね」
(見て避けようと思うな。感じろ・・感じるんだ、キラ)
「感じるったって!」
 今度は、プロヴィデンスの大口径ビームライフルが火を噴く。アンチビームコーティングシールドでうけたにも関わらず、大きく吹き飛ばされるフリーダム。
「くそっ!」
「どうしたキラ・ヤマト! 最高のコーディネーターだというのなら、その証拠を見せてみろ!!!」
(感じるんだ! キラ! お前になら、できるはずだ!)
 再び、ファンネルが展開を始める。キラは、呼吸を整え、フラガの声に従う。
「感じる・・・感じる・・・」
 クン、とファンネルの一機が動き出した瞬間を、なんとか感知したキラは、ファンネルのビームを避けようと動く・・が。
「ぐぁぁっ!」
 初弾、二弾目とかわしたが、それ以後で被弾を受ける。集中できていない・・自分でもそう感じる。フレイのこともあったからだろう。頭に血が上っているのかもしれない。
 これではいけない・・・
(お前に教えてやるのは、これが最初で最後だからな)
「えっ?」
 フラガの声が聞こえた、とおもった次の瞬間、身体の自由が利かなくなるのを感じた。
 さらに次の瞬間、手が、足が、まるで勝手に動くものであるかのように、なめらかに動き始める。
(身体で覚えろ! 感じろ! 俺に出来て、お前に出来ないってことはないだろ?)



13

「・・・ムウ・・!?」
 クルーゼは、フリーダムの影にムウのイメージを感じていた。直感が、ムウがくる、と伝える。確かめるように、フリーダムにファンネルを向ける。
「ムウ・ラ・フラガの亡霊だというのなら、避けてみせろ!!! 私の期待を裏切るなよ!!」
(いくぞ、キラ!)
「・・・!」
 キュン、と脳裏に映像が映る。平面的ではなく、立体的な知覚。まるで、周りのもの全ての位置が把握できるような瞬間。
「感じるって・・こういうこと!?」
 フリーダムは、軽やかに舞うような動きで、ファンネルの全砲撃を避けきって見せた。そして、そのまま流れるような動きで、漂っていたスカイグラスパーのソードストライカーを手に取った。
(くらえっ!)
 シュベルトゲーベルの刃がプロヴィデンスを襲う。堪らず後退するプロヴィデンス。
「くうっ! やるな・・やるな、ムウ!」
 その光景をただ汗を握って見つめていたマリューの頭の中に、ムウの声が響いてきた。
(撃て!)
「えっ・・?」
(お嬢ちゃんはもう搬入されたんだ。ローエングリン、だろ?)
 ムウの声にハッとなり、マリューは叫んだ。
「ローエングリン一番! 目標敵モビルスーツ!! てーーーっ!!!!」
 撃ちだされたローエングリンは、一直線にプロヴィデンスへと向かう。
「くううっ!!!」
 直撃、とまではいかないものの、左半身にダメージを受けたプロヴィデンスは、ビームライフルとファンネルで撹乱しながら後退していった。
「・・やるな・・・だが・・・・このままでは、終わらん!」
「はぁっ・・はぁっ・・・はぁっ・・・」
 荒く息をつくキラは、ムウのイメージが、もう近くに存在しないのを感じた。
「ムウさん・・ムウさん!!!」
 同様にブリッジでは、マリューが、亡き恋人の声に涙していた。
「確かに聞こえた・・貴方の声・・聞こえたわ・・・・」



14

 キラは、フリーダムをアークエンジェルに着艦させると、医務室へと向かった。
 だが、そこではフレイの姿を見つけることは出来なかった。
「赤い髪の女の子? ああ、彼女なら治療がすんだから、部屋のほうへと搬送されたよ」
「ありがとうございます」
 キラは会釈も早々に、自分の部屋へと地面を蹴った。恐らく、そちらにいるはずだ。
 アークエンジェルを漂いながら、キラはフラガのことを思い出していた。
 先ほど聞いた話によると、ついさっき、ドミニオンのローエングリンからアークエンジェルを守り、なくなったそうだ・・・
 なんとなく感じていた予感が現実のものになって、キラは唇をかんだ。
「キラ」
 そんなキラを現実に引き戻したのは、サイの声だった。いつのまにか、キラの部屋の前に着いていたらしい。扉にもたれかかるようにして、サイがいた。
「サイ・・フレイは?」
「命には別状がないってさ・・」
 複雑な表情でそう言いながら、サイは扉を離れた。
「キラ・・フレイのこと、頼むぜ」
「・・うん・・」
 サイの言葉にゆっくりと頷いて、キラは部屋のドアを開けた。
 中に入ると、懐かしい香りが広がった。長い間自分が使用した部屋。最近はエターナルのほうで寝泊りしていたので、まるで家に帰ってきたような懐かしさがある。
 フレイは、ベッドで眠っていた。すぅすぅと、おとなしく寝息を立てている。
 ゆっくりと近づき、穏やかな寝息のその顔を見つめる。
「・・キラ・・・?」
 近づいた物音で気付いたのか、ゆっくりと瞳を開けるフレイに、キラは微笑んで見せた。
「フレイ・・・ごめん。僕がもうちょっと早く・・」
「ううん。いいの。助けてくれてありがとう・・」
 フレイのキラを見つめる瞳は潤んでいる。すぅっと、涙が眠ったままのフレイの目じりからこぼれおちた。
「・・ごめんね・・キラ・・・わたし・・・キラのこと・・」
「・・・・」
 キラは、黙って聞いていた。そうすることが大切だとおもった。
「最初は・・利用・・してたの・・・キラを・・戦争に狩り出して・・もっと・・もっとコーディネーターを・・・」
 そこまで言って、フレイはううっ、と嗚咽を漏らし始めた。キラも、必死で涙をこらえている。今はまだ、僕は泣いちゃいけない。
「わたし・・間違ってた・・・ごめんねキラ・・ごめんなさい・・・」
「いいんだ・・フレイ・・・僕も・・僕も一緒なんだ・・僕こそ・・謝らなくちゃいけないんだ・・」
 一回目じりにたまった涙を宙に流すと、キラは口を開く。
「気付いてたんだ・・なんとなく・・だけど・・だけど、僕はフレイと一緒に居たくて・・でも・・怖くなって・・・だから・・僕は・・・」
 そんなこともういい、というようにフレイはかぶりを振ると、キラの目をじっと見つめた。
 そして、なんとか起き上がろうとする。キラは、それを助けるように、フレイの背中に手を添えた。
「ありがとう・・あのね、キラ・・聞いて欲しいの」
「・・なに・・?」
 フレイと同じ高さに視線を合わせ、じっと見詰め合う。懐かしい瞳の色だ、とお互いが感じていた。少しの沈黙。手のひらに汗がじっと滲むのを感じる。
 間近に見たフレイは、やはり気高さを感じる美しさがあった。
 そんな唇が、ゆっくりと旋律をつむぐ。
「わたし、今、わたし、本当にあなたのことが好き。すきなの・・・」
「・・フレイ・・・」
「今頃気付いたの・・本当に好きになってるって・・もう、遅いのに・・気付いたの・・」
 そんなフレイに、キラは何も言えずにいた。涙をこらえるようにして、唇をかんでいるフレイに、キラは言った。
「泣いていいんだよ、フレイ。僕がずっと傍にいる。ずっと、傍にいるから」
 その言葉に、フレイはキラに抱きつくと、たまっていたものを全て吐き出すように泣いた。キラの胸で、ずっと。
「キラぁぁぁぁ!!!」
「フレイ・・・」
 自分の胸で泣く弱々しい少女を優しく抱きしめ、キラは誓った。この戦争を一刻も早く終わらせなくてはならない。もう、フレイを泣かせてはいけない・・・もう二度と、大切なものから手を離さない。失わない。
 数分がたった頃、涙が枯れて来たフレイは、「ありがとう」と言って、身体を離した。さっと、体温が下がるような気がした。



15

「・・キラ、また、戦いに行くんだよね」
「うん。・・皆まだ戦ってる。僕も、いかなくちゃ」
「・・わたし・・戦ってるキラにできること、祈ってあげるぐらいしか出来ない・・」
 そうやって俯く彼女を、キラはいとおしいと感じた。
「それだけで、十分だよ、フレイ。・・フレイが祈ってくれれば・・僕は、それでいいから」
「・・わたしの想い・・守れるかな? キラを・・」
「いつも、守ってもらってるよ・・」
「・・本当に・・本当の、わたしの想いで・・あなたを守りたい。必ず・・帰ってきて、キラ」
「うん。約束するよ」
 キラは、フレイの手をとると、小指を絡めた。
「キラ・・」
 小指で指切りをしたあと、そのままお互いの手を絡めあう。絡み合う視線。キラは、フレイの身体を引き寄せると、優しく口付けした。
 短い口付けを終えると、ゆっくりと、彼女の身体をベッドに眠らせる。もう一度微笑むと、キラは絡めた手をベッドの中に戻した。
「・・キラ、気をつけて・・いってらっしゃい」
 いかないで、と言う言葉を飲み込んだフレイに、キラはしっかりと頷いて見せた。
「いってくるよ、フレイ」


 キラの部屋を出ると、サイが壁に背を預けて、天井を眺めていた。キラに気付くと、顔をこちらに向ける。
「・・キラ」
 サイの目が、一直線にキラを見据えた。キラは、それをまっすぐに見返す。
「サイ。・・ごめん。もう、同じ過ちはしないよ。誓う」
「・・そうか。フレイのこと、頼む」
「うん。・・任せて。・・・ありがとう・・」
 俯いたキラに、サイは笑って見せた。
「そんな、暗い顔すんな! ま、あんま明るい顔で戦場行かれても、困るけどさ」
「それもそうだね」
 2人の笑いが、通路に木霊した。わだかまりを洗い流してくれるような笑い声が止むと、キラの目がすっと鋭くなった。
「終わるまで・・フレイのこと、よろしく」
「ああ。任せとけ。・・頑張ってな」
「うん」
 キラとサイは、軽く手の甲を合わせると、お互いに頷いた。
 カタパルトへ向かうキラの背中を見ながら、サイは軽く、涙を拭った。
 きっと、こんな風に泣くのは、これで最後だろうな、と感じていた。


 カタパルトに戻ると、フリーダムの前で、コジローが待ち構えていた。
「遅かったな、ボウズ」
「すみません、マードックさん」
 軽く会釈をすると、コジローは嬉しそうに笑った。
「おいおい、なにしてきたんだ? 口に口紅がついてるぞ」
「えっ!?」
 驚いて自分の唇をなぞるキラに、コジローは意地悪く笑ってみせた。
「ははははは! 冗談だよ、冗談」
「や、やめてくださいよ、もう・・」
 顔を真っ赤にして照れるキラの肩を、コジローは優しく叩く。
「いってこい。・・そして、帰ってこいよ」
「はい。・・ありがとうございます」
「良い目になったな、ボウズ・・・いや、キラ」
 満足そうに頷いたコジローに笑って、キラはフリーダムのコクピットへと流れていった。
 シートに腰掛け、ハッチを閉める。
 エンジンに灯を入れると、一瞬だけ、低いヒュゥゥゥゥ、という音が聞こえた。
 軽く深呼吸をすると、頭の中が冷静になっていくのを感じた。
『キラ・・』
 モニタに、心配そうなミリィの顔が浮かんだ。
(なんだか僕は、皆に心配されてばっかりいるな・・・)
 思わず苦笑したキラに、ミリィが訝しげに聞いた。
『どうしたの?』
「ううん、なんでもないんだ」
『キラくん・・』
 マリューの声に、キラは視線を移した。
『・・これで、終わるわよね・・きっと』
「ええ。・・終わらせなきゃ、いけないと思います」
『キラくんに・・アスランくん、カガリさん、ラクスさん・・・矢面にたって戦っているのがあなたたちのような子供達で・・大人の私たちが助けてあげられなくて・・ごめんなさい』
「・・・・」
『だけど・・あなたたちなら、新しい時代を切り開いてくれると信じてるわ。・・頑張って、キラくん』
「はい!」
 キラは、しっかりと頷くと、パイロットメットのバイザーを下げた。
 リニアカタパルトがオープンされ、動線がクリアになる。回転を上げて行くフリーダム。
『フリーダム、キラ・ヤマト、発進どうぞ!』
「キラ・ヤマト、フリーダムいきますっ!!!」
 キラのフリーダムは、アークエンジェルを飛び出すと、先ほどパージしたミーティアと接続し、高速で戦場へと、駆け抜けていった。



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