男たちの挽歌



その夜、2人の男が肩を並べて屋台で安酒を酌み交わしていた。
一人はオーブのキサカ一佐。
もう一人はダコスタ君である。
何故彼らはこんな所で酒なんか飲んでいるのだろうか。

「ふうぅぅぅぅ、ダコスタ君、私はねえ、毎日毎日胃が痛いよ」
「キサカ一佐・・・・・・」
「ウズミ様にカガリ様を任されて以来、気の休まる時が無いからなあ。いつも無茶してくれるし」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「まあ、信頼されてるのは嬉しいんだがね。こう苦労ばかりだと体がもたんよ」

溜息をつくキサカの姿に、ダコスタは目尻に涙さえ溜めて頷いていた。

「分かりますよ。私だってバルトフェルド隊長の趣味のせいで毎日振りまわされて、やっと解放されたと思ったら今度は更にとんでもない人の部下になって・・・・・・」
「ダ、ダコスタ君」
「ラクス様って、笑顔で平然とキツイ台詞言ったり、さらりと無茶苦茶な命令出すんですよ。そりゃあんたは命令出すだけだから良いでしょうけどね。実行するのはこっちなんですよ」

ダコスタは空になったコップを置くと、はんぺんを口に運んだ。
キサカはそんなダコスタをじっと見ていたが、フッと笑顔を作ると、ダコスタのコップに酒を注いだ。

「お互い、苦労が多いな」
「キサカ一佐」
「良い胃薬を知ってるんだが、どうだね?」
「・・・・・・・貰いますよ」

ダコスタとキサカの間に友情が芽生えていた。それを見ていた屋台の親父こと、サイが帯状の涙を流している。

「うう、ええ話や」
「サイ君、キャラが違うぞ」
「今日くらい良いじゃないですか。俺だってAAじゃ苦労苦労で」
「君もか、サイ君」
「ええ、キラは面倒ごとを全部俺に押し付けてくるし、ミリィはトール忘れて男に転ぶし、カズィは艦を降りるし、もう話相手さえいないんですよ」
「そ、それはそれで辛いな」
「全く、主役どもは我々をなんだと思ってるのか。我々脇を固めるキャラがいてこそ主役も引き立つというのに」
「目の前でラブラブやって、こっちは平然と無視ですからね」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

男たちは据わった目を向け合った。そして同時に立ちあがる。

「殺るか」
「ええ、殺りましょう」
「正義は我にあり、です」

こうして男たちは夜の街に消えていった。その後、何があったのかは定かではない。
ただ、翌朝に口から泡吹いてゴミ袋から頭だけ出してるキラと、何故か真っ白に燃え尽きているアスランが発見されたということだけ書いておこう。



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