|**** ｾﾝｾｲ、 ・創作、予想等多種多様なジャンルをカバー。
|台＠） ｼﾒｷﾘｶﾞ･･･ ・本スレでは長すぎるSSもここではOK。
| 編 ） ヘﾍ ・エロ、グロ、801等の「他人を不快にするSS」は発禁処分。
|_）__） /〃⌒⌒ヽｵﾘｬｰ ライトＨ位なら許してあげる。
| .〈〈.ノﾉ^ ﾘ)) ・フレイ先生に信（中国では手紙をこう書く）を書こう。
|ヽ|| ｀∀´||. ・ここで950を踏んだ人は次スレ立てお願いね。
＿φ＿__⊂)__
／旦／三／ ／| 前スレ
|￣￣￣￣￣|. | http://jbbs.shitaraba.com/anime/bbs/read.cgi?BBS=154&KEY=1057571214
|ｵｰﾌﾞみかん|／
既刊作品は書庫にあるわ。
○フレイスレSS保存庫 ttp://oita.cool.ne.jp/fllay/ss.html
足りない部分があれば、フォローお願いしまつ＿|￣|○
フレイ先生の後ろの編集部員（？）がダコｓ（ｒｙに見えてきますたｗ
同意でつｗ
そんなわけで、苦労人１殿、乙〜！
乙〜
しかし↑見てるとこのスレは本当に い つ で も 人がいるんだなぁとか思ったり…
SSスレまでこんなんで埋めていいかはわからんが、乙でつ。
ラクス「キラ様、いまお茶が入・・・」（ドゲシっ！）
フレイ様「何してんのよアンタ！ こ こ は 私 の ス レ よ ？ ！」
ていん、ていん、と転がるピンクハロ。気づかぬキラ。
とまぁ。SSスレっぽく文章でラ>>9ス阻止、とw
＞ていん、ていん、と転がるピンクハロ。
「ていん」が「てやんでぃ」に見えてしまった俺は眼科に行くべきでしょうか
エドロポリスにいい眼科があるみたいですよ
私の家族は私とお父様・お母様、そして私の一番大事な双子の妹のフレイの４人
家族です。
現在はヘリオポリスに住居を構えておりますが、お母様は仕事の関係上ほとんど
家には居りません。
その代わりだからなのでしょうか？お父様は仕事のほとんどを家で済ませられる
様な物を選んでいるようです――直接聞いた訳ではないですよ？
お父様には本当に良くしてもらっていていますが、少し子煩悩すぎる所があるかも
しれません。
でも、妹はそれを遥かに上回る極度のファザコンなのです。
いつも暇になればお父様に付きっきりで甘えてばかり――
もう１５なのだからせめてもう少し大人になってもらいたいものです。
妹と私は双子と言っても二卵性ですから余りそっくりではありません。
私の髪はごらんの通りお母様譲りのピンク色なのですが、妹は赤い髪をしていますし、
目元なども妹のほうが少しキツイ感じでしょうか？
なぜこうも違うのか二人でお母様に尋ねたことがあったのですが、「フレイはお父様の
好みに合わせた」とか言っておりました。
あの時は流石にお母様の言葉を一瞬疑いましたが。
そういえばあの時、姉が「じゃあパパはママより私の方が好みなのね！」と嬉しがって
おりましたが、そこはさすがお母様、「でもパパはわたくしと結婚しているのだから
わたくしの勝ちですわね。」とか色々言い負かして、姉をからかっておりました。
あの後妹は、中々機嫌を直さなくて大変で―――あら、少し脱線してしまいましたわね。
妹は大変顔立ちも整っていまして、この学園でも大変な人気ぶりです。
何故かココには影で美少女ランキングなどというものがあるそうで、妹はそれで二位な
のだそうです。
私なんかもその人気にあやかっているらしく「学園の双華」などと呼ばれてしまって――
お恥ずかしいかぎりです。
あ、ちなみに一位は私みたいですけど。
――ちょっと！！ なんで私がアンタにそんな事言われなきゃいけない訳！？――
あら？いけないわ――
妹は少し短気で直情的な性格なのが玉に瑕でして。
誰かとまたトラブルでも起こしたのかしら？
今日はこのくらいで構いませんか？ 妹を止めないと。
どうもすみません、ではまた――
相変わらずの意味不明でつたない文章で申し訳ありません。
これはフレイ様ではないフレイ様を語る姉の物語です。
のんびりとぼつぼつやっていこうと思います。
大目に見てやってくださいな。
新シリーズ乙！
・・・登場するフレイ様は戦後のキララクの娘？ｗ
続き楽しみに待ってます。
ターノシイ〜ｗ
まともな感想書けなくてスマソ○|￣|＿
軍事法廷が開かれた。
キラの正面に裁判官役のマリューが陣取り、左右で検察役のナタルと
キラの弁護役を務めるフラガが舌戦を交わしている。
「民間人を人質に取るのは、コルシカ条約四条に…」
「同条約特例項目Ｃ戦時下における、特殊措置に該当……」
先ほどから、キラの頭上を難しい法用語が飛び交っていたが、
技術屋のキラには理解できなかった。
早く終わって欲しい。キラは欠伸を噛み殺す。
「よって、被告人を銃殺刑に処します」
学校の校長の長挨拶に耐える学生のように緊張感を失っていたキラは、
マリューの結審に一瞬にして眠気を吹き飛ばした。
う…嘘でしょ？
キラが縋るような表情で弁護役のフラガを見上げる。
そのキラの表情があまりに真剣だったので、フラガは可笑しくなって
「すまないな、キラ。これが軍隊という奴なんだよ。心配するな。
せめて苦しまないですむよう、脳髄を打ち抜いて一瞬で楽にしてやるから」
悪乗りしたフラガは、憐れむ様な目でキラを見下ろしながらポンポンと
キラの頭を撫でた。
そ…そんな………私、ここで死ぬの？
そう思い込んだキラの瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。
「あ〜あ、悪いんだ、悪いんだ。女の子を泣かせちゃった」
「お…俺一人、悪者かよ！？銃殺とか先に言い出したのは、艦長だろ？」
学童を泣かせた苛めっ子を非難するようにフラガを指差すマリューに、
泣きじゃくるキラの様子に焦り捲くるフラガと、このノリについていけないナタル。
それぞれ思考も主義も異なる三人だが、キラの最大のスキルは、ＯＳ書き換えでも
ＭＳの操縦でもなく、この泣き芸当ではないかと、一瞬だが見解が一致した。
「キラさん、あなたは民間人だから軍の規則には当てはまらないのよ。よって無罪」
呆然とするキラにマリューは優しい笑顔で微笑みながら、結審を言い直した。
三人とも一応女の子なので、力仕事をさせるよりは適材適所だと思われた。
「やれやれ、助かったよ。ここも人手不足でね」
現在、ＡＡの調理主任を担当しているマインホフ伍長が、即戦力との期待の篭った
瞳で三人を見つめ、三人娘はお互いに引き攣った笑みを交し合う。
「悪いけど隣の倉庫にいって、食材を運んできてくれないか」
今まではほとんど軍用のレトルトパックを暖めるだけで済んだが、
多くの難民を抱えた結果、パックの在庫はあっと言う間に底をつき、
既存の材料を一から調理する必要に迫られていた。
所詮は軍の素人コックでしかないマインホフにとって、それなりに花嫁修業を
積んできたはずのキラ達の援軍は、本来心強いものになるはずだったのだが…。
「まったく、なんで私たちがこんな事をしなくちゃならないのよ？」
「そうよね、これじゃ力仕事となんら変わりないじゃない」
衛生管理の問題で、医療室と厨房には重力調整が行われていて、低重力の
恩恵が受けられない。
ミリアリアとサイは、二人掛かりで３０ｋｇの米袋を運ぼうと、ヒイコラ言いながら
必死になっている。
「先、行くね」
キラは、そんな二人の様子を尻目に、ミリィ達と同じぐらいの重さの袋を二つ
両脇に抱えると、スキップするような勢いで倉庫から飛び出していく。
唖然とする二人は、改めてキラが遺伝子操作されたコーディネイターである事を
思い出し、ほんの少しだが、フレイがキラに感じていた嫌悪の源が何なのかを
理解できたような気がした。
フレイでなくても、自分より物理的に強い女性を彼女にしたいと思う男性は
あまり多くないであろう。
食材の揃った厨房で、マインホフの指揮の下、早速調理を開始したが、
三人娘のあまりの手際の悪さにマインホフは頭を抱える。
元々技術系を地でいっている三人は、その手の修行を疎かにしてきたようで、
皿を割り捲くったり、砂糖と塩を間違えたりなどの漫画のような失敗こそ
犯さなかったが、単にそれだけの話しであり、定刻から三時間も待たされた
挙句、食堂に並べられた料理は散々な出来栄えだった。
「で、君達がこれを作ったのかい？」
フラガは引き攣った笑顔で、恐縮して縮こまる三人娘を見下ろしながら、
三人に課した罰則を間違えたことを後悔する。
サイの作った料理は、形が崩れているものが多く、見た目は悪かったが、
味そのものは何とか食べられる範囲だったので、かろうじて才媛の面目だけは保った。
ミリアリアは料理を二つほど駄目にした後、方針を変更して挟むものに限定し、
「そういえば、ミリィとデートした時って、弁当は何時もサンドイッチだったな」
とトールを嘆かせたが、己を知るという意味では上出来かも知れない。
問題なのはキラである。
キラの作ったスープからは明らかな異臭が漂っており、マインホフは、自分と同じ
食材を使って、どうすればここまで味を壊せるのか不思議に思い、コーディネイター
は多大な能力の代償として、味覚のバランスを失ったのかとさえ疑った。
このマインホフの疑惑をプラント側が知れば、激しい抗議が寄せられた事だろう。
以前、捕虜としてこの艦にいたラクスを厨房に立たせる機会があれば、その疑惑
も解消されたのだが…。
三人娘が調理を手伝うと聞き、豪奢なディナーを期待していたＡＡクルーは
夢敗れた表情で、かろうじて食べられそうな部分だけを選んで食事を開始したが、
流石に誰もキラの料理には手をつけようともしなかった。
自分の料理を無視されキラは悲しそうな表情をしていたが、今回ばかりは
キラの泣きスキルもなんら意味を持たなかったらしい。
真面目な話、ＡＡのクルーは何時起きるか分からない戦闘に備えて体調を
整える義務があり、騎士道精神と自分の健康とを秤にかけた結果、
散文的にも彼らは後者を選択したという次第である。
なるように、フレイが食堂に顔を出した。
キラの顔が強張る。アレ以来、キラとフレイが顔を合わせるのは、これがはじめてだ。
「フレイ、もう少し休んでいたほうが……」
未然にトラブルの目を摘もうと、サイが食堂からフレイを押し出そうとしたが、
フレイはサイを軽く跳ね除けると、真っ直ぐキラの方に歩み始める。
や…やだ。今度は何をするつもりなの？
トールとミリアリアが、キラを守る騎士のように、キラの両隣に立ち塞がる。
「キラ……」
目前に辿り着いたフレイが二人を無視し、無表情のままキラに声をかける。
「キラ、逃げて！」
サイの叫びは、キラとフレイのどちらの心配をしたものか。
「フレイはラクス（キラ）に何をするか分からない」
ま…まさか、衆人環視の前で、おか…さ………
キラの膝がガクガク震える。トールがイライラした口調で吐き捨てる。
「フレイ！お前、逆恨みもいい加減に……」
「キラ、今まで済まなかった！」
フレイは両手を地面につけてキラに頭を下げた。
「へっ？」
三人は、狐につままれたような表情を見合わせる。
「本当に済まない。母が亡くなって、どうかしてたんだ。
僕達を守るために命懸けで戦ってくれた君に、あんな酷い真似をしてしまった」
キラを見上げるフレイの黒い瞳には、母親が死んだ時にも流れなかった涙が溜まっている。
「亡き母が、こんな僕の姿を見たら、情けない息子を持ったと嘆き悲しむだろう。
僕は……僕は、自分が恥ずかしい」
あまりの予想外の出来事に呆然としていたキラだが、気づくと周りが皆、自分と
土下座したフレイを見つめている。冗談じゃない、恥ずかしいのはこっちの方だ。
「ちょ…ちょっと、フレイ。お願いだから、頭を上げて」
羞恥で顔を真っ赤に染めたキラの哀願に、フレイはあっさりと立ち上がると、
自嘲するように呟いた。
「ごめんね、キラ。こんなみっともない真似をしても、かえってキラに恥ずかしい
思いをさせるだけなのにね」
キラは目の前にいるのが、あのフレイだとは信じられなかった。
今までの傍若無人さが嘘のように鳴りを潜め、細やかな気配りでキラの想いを先取りする。
けど、これこそがヘリオポリスへ来てからの三年間、キラが憧れ続けた
フレイ・アルスターの本当の姿ではなかったのか。
「キラ、僕はどうすればいい？何をすれば、君への非礼の数々を償える？」
戸惑い揺れ動くキラの心に、フレイの贖罪の言葉が心地よく響き渡る。
「その悲しみを知るヒトだからこそ、ヒトは他人に優しくなれるのです」
そう、そうなのね。ラクス…。
かつてのラクスの言葉に答えを見出したキラは、はじめて目の前の現実を受け入れた。
「いいの、フレイ」
キラがフレイを見上げる。泣き虫のキラらしく、その瞳は涙で濡れ細っている。
「何もしなくてもいいの。判ってくれれば、それで……」
「キラ…、ありがとう」
キラがフレイに向かって手を差し出し、フレイはそっとキラの手を握り返す。
仲直りの握手。暖かい掌の感触に、久しく忘れていたときめきが戻ってきた。
二人はお互いを見詰め合っていたが、ふと、フレイが横に目を反らした。
テーブルの上に手付かずのスープが大量に並べられている。
フレイの視線に気づいたキラは、まるで仕舞い忘れた下着を見られたかの
ような、バツの悪い表情で顔を背けた。
「キラ、君が作ったの？」
キラは恥ずかしそうにコクリと肯く。
フレイは冷め切ったスープの皿の一つを持ち上げると、キラが止める間
もなく口をつけてみる。一瞬、軽く眉を顰めた後、ゴクゴクと一気に
スープを飲み干した。
「確かにあまり美味しくはないね」
唖然とする一同の前で、フレイは正直すぎる感想を述べてキラを恐縮させる。
「でも、安心したよ。キラにも苦手なものがあるなんて、やっぱりキラも普通の
女の子なんだね」
「フレイっ…」
キラの顔が感涙に震える。
フレイの言行は、キラの乙女心をピンポイントに直撃した。
キラのスープと睨めっこしていたカズィが、恐る恐るスプーンで一匙すくい、口に運ぶ。
飲み込む前にゲホゲホと咳き込んだカズィは、フレイを怪物でも見るような目で睨んだ。
「こんなタイミングで敵襲かよ。もうすぐ第八艦隊と合流できるって時に、
敵さんもマメなことで…」
先程までキラとフレイの遣り取りを擽ったそうに見守っていたフラガが、
精神のチャンネルを切り替え、キラにも出陣を促す。
キラはチラリとフレイを見る。フレイは全てを心得たように、温かい笑顔で微笑んで
キラを見守っている。
「行って来るね」
そう宣言し、駆け抜けるキラの横顔は、今まで見たことがないほど活き活きと輝いていた。
キラの姿が視界から消えると同時に、フレイの顔から笑みが消えた。
「さてと…」
フレイもまた食堂を出ると、何故かサイ達の後を追った。
艦橋は、急襲したザフト軍を迎撃すべく皆忙しく動き回っている。
サイは機械的に自分の職務を果たしながらも、内心密かに食堂での出来事が
気になっていた。
サイのコンソールに人影が浮かんだ。不審に思って、振り返ったサイは驚愕する。
「フ…フレイ！？」
何時の間に侵入したのやら、フレイはサイのリアクションを無視して、
じっと無表情にメインスクリーンを眺めている。
「フレイ君。あなた、いい加減にしなさい！」
再び乱入した非戦闘員の存在に、流石に温厚なマリューも切れる。
前回の戦闘ではまだ情状酌量の余地があったが、今回は確信犯としか思えない。
「敵ＭＳ確認。デュエル、バスター、ブリッツの三体です」
サイの隣の席に座るミリアリアが、敵戦力を読み上げる。
「何だ、今回はアスラン君は来てないのか」
ミリィの報告からイージスの不在を確認したフレイは、目の前の戦闘に
急に興味を失ったかのように、大人しく艦橋から出て行った。
騒然とした艦橋で、そのフレイの呟きを聞き取る事が出来たのはサイだけだった。
乙フレ様です。
フレイきゅん女心を掴みまくりで(*´Д`)ﾊｧﾊｧ
キラの料理を食べた後なんて男前すぎる。
キラたんは恋する乙女でかわ（・∀・）ｲｲ!!
というか料理の出来ない３人娘に萌え。
今回はひたすら萌えさせて頂きました。
男フレイ様黒いな〜ｗ
でも面白くなってｷﾀーーー
「どっちに逃げたらいいんだ！」
流石のキラも土地勘の無い街ではどうすれば良いのか分からなくなっていた。避難民の流れも一定していないので参考にはならない。
「連合は何をしてるんだ。避難の誘導もしてないのか？」
ぶつけようの無い怒りを味方の不甲斐なさや手際の悪さに向けるしか無いキラ。だが、いきなりフレイが自分の手を振り解いて走り出したのには驚いてしまった。
「フレイ、何処に行くんだ！？」
「あそこに子供がいるのよ！」
フレイが駆け寄った先には親らしき中年の女性に縋りついている男の子と女の子がいた。フレイが２人に声をかける。
「何をしてるの、早く逃げないと！」
「でも、お母さんが！」
フレイから見ても、すでにこの母親は死んでいる。だが子供には受け入れ難い現実なのだ。フレイは意を決すると２人の手を掴んだ。この２人をここに放っては行けない。
「お母さんはもう死んだの、死んだのよ！」
「嘘だよ、だって･･････」
「あなた達まで死んだら、お母さんが悲しむでしょう！」
フレイはキラを振り返ると、強い口調で言った。
「キラ、男の子をお願い。私は女の子を連れて行くから！」
「わ、分かった！」
キラは男の子の体を持ち上げると、そのまま抱え込む様にして走り始めた。フレイも女の子の体を抱き抱えて走り出す。２人は最初こそ「離せよお！」と叫んで暴れていたが、やがて大人しくなったかと思うと泣きじゃくり始めた。無理も無い、まだ１０歳にもなっていないだろう。そんな子供が目の前で母親を殺されたのだから。
だが、こんな光景は珍しくも無いのだ。これが戦争であり、命とはこうも簡単に失われてしまうものなのだ。フレイは戦争という行為がどれほど理不尽で、残酷なものなのかをようやく理解しようとしていた。父を殺された自分と、母親を殺されたこの子達は同じだ。自分の目の前で自分を守ってくれる存在を奪われ、身１つで世間に放り出してしまう。その人にとってどれほど大切なものであっても、全てを理不尽に奪ってしまうのだ。
フレイは腕の中で泣いている子供をあやしながら、必死に走っていた。今は自分が生きなくてはならないのだから。生きて、この子を安全な場所に逃がしてやる事が、あの母親への最大の供養になると信じていた。
「キラ、こうなったら、味方の陣地にまで行きましょう！」
「だけど、あっちはザフトの攻撃を受けるよ！」
キラは反対した。自分から危険地帯に行くようなものだからだ。だが、フレイはそんなキラに強い口調で問い掛けた。
「じゃあ、他に何処に行くって言うのよ。もうどっちに行ってもザフトがいるわよ！？」
「そ、それは･･･････」
キラは返答に詰まった。確かに、街の三方はもうジンが暴れまわり、辛うじて東だけが開いているだけだ。連合の部隊がまだ頑張っているのだろう。望む望まぬに関わらず、そちらに行くしかないのだ。
フレイは腕の中で震えている女の子を見た。女の子は今にも泣き出しそうな、怯えきった目で自分を見上げている。
「大丈夫だから、絶対に安全な所に連れて行ってあげるから」
フレイは安心させようと、自分自身が怖いのを懸命に押さえ込んで笑顔を浮かべて見せる。女の子は震えながらも頷いた。フレイは頷き返すとキラを見て、そしてまた走り出した。
「ジン８機に、ザウート２機。それに戦車と装甲車か。歩兵部隊を展開させているという事は、目的は破壊では無く制圧だな。こちらの戦力は？」
「街の守備隊はほぼ壊滅。こちらから送りこんだ戦車大隊がどれだけ頑張ってくれるかですな。戦闘機隊も準備できしだい発進させます」
「アークエンジェルの部隊は？」
「ＭＳはパイロットが不在。スカイグラスパーは分解整備中でして、とても出撃させられません。アークエンジェルも同様です」
「そうか･･････」
「ただ、フラガ少佐とバゥアー大尉が戦闘機を貸して欲しいと言ってきています。スカイグラスパーが無くても、サンダーセプターで戦うと」
「･･････許可する、急ぎ予備機を準備しろ。間に合わないなら他のパイロットを降ろしてその機体を使わせろ」
「了解しました」
部下が敬礼して部屋から去って行く。クライスラーはそれを見送った後、燃えあがる東方の街を窓から見やった。空が赤々と染まり、時折爆発の音が聞えてくる。クライスラーは僅かな焦りを浮かべて呟いた。
「ブカレストが落ちれば、カスタフ作戦の発動さえ覚束なくなる。その時は、ヨーロッパが敵の手に落ちる･･････」
フラガとキースはパイロットスーツに着替えて滑走路に飛び出して行こうとしたが、その背後からトールが２人を呼びとめた。
「フラガ少佐、キースさん！」
すでに艦内のクルの多くからは大尉とは呼んでもらえないキース。まあ、本人がそれで良いと言ってるのだから構わない訳だが。２人は足を止めるとトールを見た。
「なんだ、急いでるんだ。話なら後にしろ！」
フラガが苛立った声でトールに答えるが、トールの目に宿る決意の光を見て、無視しようとはしなかった。
「俺も、行かせてください！」
「行くって、どうやって？」
「デュエルに乗ります！」
トールの答えにフラガとキースは愕然とした。何を言われたのか咄嗟には理解できず、暫く頭の中で反芻する。
「･･････本気、なのか？」
「はい、キラとフレイが、あの街にいるんです！」
フラガの問いに、トールは力強く答えた。フラガはどうしたものかと頭を掻き、キースを見た。
「キース、どう思う？」
「･･････シミュレーターでの訓練の成果はそこそこ出ていますが、実戦は早いと思いますね。まあ、そう言ってられる状況でもないですが」
「それじゃあ？」
フラガの意外そうな問いに、キースは頷いた。そしてキースはトールを見た。
「パイロットスーツを来てこい。俺達は先に出撃している。トールはデュエルに乗って街まで来るんだ。ＭＳなら直ぐにつくだろう。分かってると思うが、新米が無理するんじゃないぞ」
「はいっ！」
トールは嬉しそうに敬礼すると、パイロットルームへと駆けて行った。それを見送った２人は複雑そうな顔を向け合わせる。
「良いのかね、彼？」
「誰だって初陣はありますよ。遅いか早いかだけです。幸い、敵はジンとザウートです。デュエルなら死ぬ事も無いでしょう」
「･･････そうだな」
キースの答えにフラガは頷いた。敵に奪われたＧを相手にすると思えば、今のうちに初陣を飾る方が良いのかもしれない。そして２人は滑走路に駆けて行った。トールの事も気になるが、今は街の敵を叩く方が先なのだ。
フラガとキースが出撃した後、トールは何とかデュエルを起動していた。艦長やナタルは２人が了承したと聞いて渋々頷いている。
危なっかしげに起動しているトールに向けて、下からマードックが苦笑混じりの注意を飛ばしている。
「おおい、あんまり無理すんなよ。せっかくの新型機なんだからな！」
「わ、分かってますよ！」
トールは言い返しながらも必死に機体を操っている。キラが多少手を加えたＯＳのおかげでどうにか動いているが、まだトールでは訓練が足りないのだろう。それでもなんとか歩かせている。日頃の訓練の賜物とでも言うところか。カタパルトは動かないが、艦首ハッチを開放してデュエルが出れるようにする。
トールのデュエルにミリアリアが戦闘管制席から声をかける。
「トール、気をつけてね。無茶しちゃ駄目よ」
「大丈夫だよミリィ、デュエルの性能なら生きて帰ってこれるさ」
ミリアリアを安心させる様に優しい声で言うと、トールはビームライフルとシールドを装備して出撃した。走らせるのはオートでやってくれるのでトールの仕事は目的地を入力するだけで良い。ＭＳが上下する振動に揺られながら、トールは祈るような思いで目の前の街を見ていた。
「キラ、フレイ、無事でいてくれよ･･････」
退避して来たキラとフレイはジンが虐殺をしている光景を目の当たりにして足を止めてしまった。
「そんな、こんな事って･･･････」
「あいつら、見境無しなのか！？」
キラは目の前のジンのパイロットに同胞という感情を抱けなかった。まるで面白がっているように７６ｍｍ弾を叩き込んでいる。直撃を受けて血と肉片を撒き散らして粉々になる人々。爆発する車両。キラとフレイは途方にくれた顔を見合わせた。だが、ジンの銃口がいよいよ自分たちの方を向いた時、２人とも流石に血の気が引いてしまった。７６ｍｍ弾を受ければナチュラルだろうがコーディネイターだろうが運命に変わりは無いのだ。
だが、そのジンが引き金を引くよりも早く、そのジンは背後からの砲撃を受けて破壊されてしまった。
何が起きたのかと思っていると、破壊された街並みの中に沢山の戦車がいたのである。連合軍の戦車部隊だ。指揮官らしい人物が上半身を乗り出してこちらを見ている。
「よう、怪我は無いか？」
「は、はい」
「そうか、見た所少年兵のようだが、何処の部隊だ？」
指揮官に問われたキラ達はアークエンジェル所属だと名乗った。それを聞いて指揮官が不憫そうな表情になる。
「そうか、それは大変だったな。せっかく街に来てもこんな事に巻き込まれるとは」
「･････････････････」
「とりあえず、ここから撤退する。増援が無いとどうにもできん。君達も早く戦車に乗れ。後方まで送ろう」
指揮官に言われて、２人は子供達と共に急いで戦車の上部に攀じ登った。それを確認した指揮官は部下に後退命令を出す。戦車の最悪の乗りごごちに揺られながら、キラは指揮官に礼を言った。
「あ、ありがとうございます。おかげで助かりました」
「いや、駆けつけるのが遅れたのだ。礼を言われるようなことじゃないな」
「そ、そうですか･･････あの、あなたは？」
「私か。私はウォロシーロフ少佐だ。第２６戦車大隊の指揮をしている」
颯爽とした士官という言葉が良く似合う少壮の士官に、キラはフラガやキースとは違う強さを見た。それは、揺るがぬ信念と鋼鉄の意志を持つ強さだったのである。
だめだ、女キラのキラ泣きスキルが強烈過ぎ。これ本編で屋られたらダントツヒロイン間違い無しだったかもｗ
フレイ様はある意味男ですね。これで下心が無ければいい男なんだが。何気にフラガさん虐めっ子
まずい料理も使いようとは、やるなフレイきゅんｗ
ラクスたんのセリフが伏線になるもヨカターヨ！
>流離う
さすがフレイ様、お優しいようで(´Д⊂ヽ
ギレンの野望ワールドやジオニックフロントみたいに戦車で伏兵やるのもグッドです。
トールもカッコいいぞ！ まだ生き延びられそうなので一安心。
それこそＧが伏せてない限り大丈夫ですよね？
有言実行ということで本編再構成にレッツゴーしてみました。
一部設定が変更されておりますが、そこはよしなに。
タイトルは１ｓｔの安彦先生に敬意を表して―――。
群像もの仕様の上に初期なのでフレイたまの出番が少ないの
はご容赦をm(__)m
正しいことは忘れ去られる。
間違ったことは繰り返される。
人類の偶像としては、旧世紀のあらゆる先人に勝るとも劣らぬこの男こそ、全
ての始まりであり、諸々の問題は全てその一点に通じている。
だが、それをして全ての責任がこの男に帰結するかというなら否であり、結局
は程度の問題でしかないのだろう。
人類は遅かれ早かれ「そこ」に到達したに違いない。
グレンはただ、足踏みしていた人類の背中を、ほんの少し後押しただけだ。
ジョージ・グレンは英雄であり、偉人であり、純粋であり、同時に愚か者だっ
た。ジョージは理想に満ち、理性を信じ、悟性に頼り、結果、人類史に未曾有の
福音と災厄をもたらすことになった。
ジョージの与えた奇跡は二つ。
一つはEvidence01（エピテンス０１）。
一つはコーディネーターの遺伝子マニュアル。
それらは等しく、幼い人類に希望を、絶望を、対立を、乖離を、混乱を、争乱
を振りまいた。
時にC.E.年代。
西暦を過去のものとした人類が、自らの未来を宇宙に求めて、すでに半世紀以
上が経過していた。
地球の周りには人工の大地、いくつもの巨大なスペースコロニーが浮かび、人
々の新たな希望、宇宙への足がかりとなった。
C.E.70年。
グレン・マニュアルによる遺伝子操作で誕生した優れた能力を持つ人類「コー
ディネーター」と、旧来のままの「ナチュラル」、両者の確執と憎悪は、もはや
頂点に達していた。
地球連合の経済的搾取と支配に対し、コーディネーターの本拠地Ｌ５に位置す
るコロニー群「P.L.A.N.T.」（プラント）は独立と自治権獲得を掲げ、連合との
間に深刻な対立を繰り返した。
両者の対立は「血のバレンタインの惨劇」を契機として、全面的な武力衝突へ
と突入する。
誰もが疑わなかった、数で勝る地球軍の勝利。
だが、当初の予想は大きく裏切られ、戦局は膠着したまま、すでに十一ヶ月が
過ぎようとしていた。
◎
本当に、死に絶えたように静かな宇宙で、エンデバー級輸送船ノースカロライ
ナの白い船体は予定通りの減速を行い、ヘリオポリス・コロニーへの軌道変更に
成功した。
「これだけ静かだと戦争中なのが嘘みたいですね」
「オーブの領空に入るまでは気を抜くんじゃない」
ダドリー・ストナード艦長は渋面を作って、パーカー・オブライエン艘舵手の
ゆるみをたしなめる。もっとも若い連中の気持ちもわからないではない。ダドリ
ーもつい、たくわえた口ひげをいじってしまう。暇を持てあましている時の癖だ。
ここまで気を張り続けてきただけに一息ついて弛緩してしまうのも人情だろう。
すでに中立国オーブの領空付近。
宇宙はどこまでも凪いでいる。
戦争などまるで知らぬげに、星の一粒まで平和だった。
「ヘリオについたら上陸許可、出ますよね」
パーカーのはしゃぎ顔に、ダドリーは苦笑する。
「話を聞け、まったく。あちらではせいぜい羽を伸ばすんだな」
「艦長はどうされるんですか」
「……娘に手紙でも書くとしよう」
最近たるんできた腹をさすりながら、ダドリーはＬ２に疎開した娘の顔を思い
描いた。半年近く顔を見ていない。もの寂しさを憶え、そんな自分に歳をとった
なと自嘲じみた笑いをもらす。
「艦長のお嬢さんですか。今度の休暇にぜひ……」
「もう嫁にいっとる」
「それは失礼しました」
「そろそろ前を向け。荷をつけるまでが任務だぞ」
「そりゃそうですが、こちとら『民間船』ですよ」
「一応、だ。何にでも例外は、」
ダドリーは笑った。笑おうとした。
その顔が強ばった。レーダーをにらんでいた管制官が金切り声をあげた。
「後方に感あり！ 熱源３……熱紋照合―――」
例外、だった。
「ナスカ級……ザフトです！！」
艦橋の全員が顔色を変えた。
一瞬遅れてあらゆる警報がうるさくがなりはじめた。ステルス・エフェクトを
解除したナスカ級高速巡洋艦は腰を抜かすほど近くに現れる。間違いなくノース
カロライナを捕捉している。測敵照準、通信帯域へのＥＣＭ、こちらからの緊急
通話の受信は拒絶。撃墜の意図は明らかだった。
「ばれているのか、くそっ！ 尾行されて気がつかんとは、とんだ失態をっ」
ダドリーは毒気づいた。ナスカ級はまともに交戦できる相手ではない。絶望が
物理的な圧力となって感じられる。それでも最善を尽くした。ダドリーは軍人で
あり、職務に忠実だった。
矢継ぎ早な指示に応じて、地球軍エイノー級偽装艦ノースカロライナは擬態を
解く。羊の皮の下には狼の牙が隠れている。各バルジが武装を展開した。だが、
戦うためではない、逃げるためだ。
「時間を稼げ！ せめてキンケイド大佐に通信を―――」
ダドリー・ストナード中佐の最後の言葉だった。
パーカーが絶叫した。
キャノピーの向こうから単眼が睨んでいた。
ＭＳ（モビルスーツ）。
地球軍の全てが恐怖する、ザフトの人型機動兵器。
二本の腕と足を持ち、装甲と武器に包まれたそれは、見ようによっては鎧を纏
った旧世紀の騎士を連想させる。ただ一点、全高20メートルにも達する巨人であ
ることを除いては。
ZGMF-1017〈ジン〉。
肩に抜き文字で「07」のマーキングがある。
単眼とトサカを思わせる頭部をもつザフトの主力ＭＳは、ＭＡ（モビル・アー
マー）には到底不可能な機動を見せつけながら、艦橋正面に滑りこんでくる。羽
の如きスラスターユニットを背負ったジン07は、パーカーにとって文字通り翼を
広げた悪魔だった。ジン07が、ＭＳのサイズからすれば小銃と大差ない、76ミリ
大口径ライフルをパーカーに向けて冷酷に照準する。
一秒後。
ノースカロライナの艦橋はブリッジクルーもろとも四散した。
◎
クルーゼの表情は、ヒル・アデスの胸にいつも棘のように刺さって残る。やは
り俺はこの男が好きになれないのだろうと、いつもたどり着くのは同じ解答だ。
「どうやら悪い予感が当たりそうだな、アデス艦長。間違いない。あの艦が積ん
でいたのは例のものの機材だよ」
「では、残念ながら情報は正しかったということですか」
「やはり正しかった、というべきだな、この場合には」
「『Ｇ』……本当に情報通りの代物であるなら、まったく、中立国が聞いて呆れ
ます」
クルーゼは低い声で、アデスの見解を冷笑した。
「誰しも、本音と建前は使い分けるものだ」
その笑みが金属音のように神経にさわる。
アデスが艦長を務めるヴェサリウスはナスカ級の七番艦であり、ザフトの新鋭
艦でもある。新鋭の名に相応しく、機能的にまとめられたメインブリッジはシン
プルな美しさをたたえている。
クルーゼはただ一人、異彩を漂わせている。
ヴェサリウスを含むクルーゼ隊の隊長であり、アデスの上司にあたる人物。ザ
フト屈指の指揮官であり、開戦より幾多の戦功を上げた勇士。自らＭＳを駆るパ
イロットとしても、ザフトきってのエースとして名高い。
まさに英雄だ。
それなのに、席を同じくしても高揚は皆無だ。英雄の顔は隠されている。まる
で拒絶のような、銀色の奇妙な仮面によって。
仮面の英雄。
敵味方の双方から畏敬と疑惑で呼ばれる男。英雄の素顔を目にした者は隊にも
いない。酷い傷があるともいう。真実は百の噂の向こうに隠れている。だが、能
力は本物だ。次期プラント評議会議長とも噂される、パトリック・ザラ国防委員
長の懐刀にまで成りおおせた男でもある。
「隊長。いかがされますか」
「捨ておくわけにもいくまいよ。出る杭は打てるときに打たねばな」
アデスは言葉の意味するところを咀嚼し、息を呑む。
「偽りの平和……虚飾の代価は高くつくことを思い知ってもらうとしよう」
◎
【 PHASE-01 ： 砲声が聞こえたら…… 】
◎
雲の上、見上げればそこには街がある。
雲間からのぞめる街と、街のブロックを区切るように流れる目映く光る川。
開放型コロニーが持つ、太陽光を取り入れるための〈窓〉は、内側から眺めれ
ばなるほど川に見えないこともない。重力を発生させるために回転し続ける外殻
を、巨大な円筒構造の中心を貫くセンターシャフトが支えている。
ヘリオポリス。
Ｌ３に浮かぶ、中立国家オーブのスペースコロニーだ。
C.E.世紀の今日、とりたてて珍しい光景ではなくなったものの、それは人類が
造り出した景観の中でもひときわ見事なものの一つに数えられる。
月と地球が手を結んだ重力均衡の一点、ラグランジュポイントに漂う人工建造
物。全長三十二キロ、直径三キロに及ぶ。ふところに数多の生命を抱き、真空の
宇宙すら人の手が触れうる場所であることを立証した人類の叡智の結晶だ。
その内部にはあらゆるものが存在する。
雲は流れる。風はゆるやかに頬をなでる。時には雨も降る。木々の緑がおい繁
り、楽しげに人が行き交う。穏やかな日々の暮らしがそこにはある。人の手に造
り出され、管理されているという点を除けば、コロニーと地球とを区別すること
は難しい。
「そろそろかな」
キラ・ヤマトは、いじっていたラップトップから顔をあげる。天の〈川〉から
降る光へ眩しげに手をかざした。
集光ミラーからの陽光は、本物の、地表の太陽ほど表情豊かではないものの、
おなじ目映さでキラに降りそそぐ。目を細める。心地よい草の匂いが鼻をつく。
ヘリオポリス工業カレッジのキャンパスにある東屋は、キラのお気に入りの場所
の一つだ。時計で時間を確かめた。たしかに、そろそろだった。
耳慣れた音が聞こえてきた。
低い羽音を響かせて、カレッジ上空を一周してきたトリィは、時間通りにキラ
の肩へと舞い降りる。
トリィは鳥型の、ハンドメイドの愛玩ロボットだ。小首を傾げながら「トリィ」
と啼く。設計者はよほど洒落っけがあるのか、筋金入りの朴念仁かのどちらかだ
ろう。簡易ＡＩに制御され、本当に生き物のように振る舞う。
「お帰り、トリィ。こっちはまだだよ、カトー教授も毎回毎回変なデーターよこ
してくれるよね」
トリィはロボットだ。心もなければ感情もない。
それでも、キラにとってトリィは大切なものだ。
トリィを相手に愚痴をこぼすのは、半分癖にもなっている。
「おいっ！ て、なんだ、また教授に仕事押しつけられたわけ？」
トールに後ろから肩をはたかれ、キラはそちらを振り向いた。
「トール……」
トール・ケーニヒはカレッジで同じゼミにいる。何かと気の合う相手でもある。
隣にはいつものようにミリアリア・ハゥが並んでいた。トールとミリアリアがつ
き合いだしたのは去年のことで、聞かされるまでキラはそれに気がつかなかった。
『あいかわらず、こっちの方は鈍いねキラ君は』
『で、でもお似合いだよね、ミリアリアとなら』
『まあねえ、へへ』
『ほら……トールってさ、意外と抜けてるから。ミリィみたいにしっかりした子
の方がさ』
『……あいからわず、一言多いねキラ君は』
腕を組みながら、しみじみトールは言ったものだ。
トールが肩越しにぬっと顔を出して、ラップトップのモニターをのぞき込んだ。
ウィンドウの一つにニュースが表示されている。
〈では次に、激戦の伝えられる華南戦線、その後の情報を……〉
地球のニュースだ。戦争の放送だ。地球に降下したザフト軍と連合との戦いは
今も続いている。画面はめまぐるしく切り替わっていく。崩れるビル。黒煙。Ｍ
Ｓ。兵士たちへのインタビュー。逃げまどう人々。砂埃にまみれながら進む装甲
車。キャンプの難民達。もう見慣れてしまった光景だった。開戦当初こそ緊張に
耳をそばだてていたものの、一年も続けば何もかも日常になる。
「うわ、先週でこれじゃ、今頃もう陥ちちゃってるんじゃねぇの」
「華南って結構近いじゃない。大丈夫かな、本土……」
「おいおいオーブは中立だぜ。まず大丈夫だよ」
ミリアリアの不安を、トールは屈託なく笑いとばした。
「……でも、ヘリオにも最近、連合の船、入ってきてるみたいだけど」
「なんだよ、そりゃ？」
キラの呟きにトールが眉をひそめる。
「あー……キラ、また不法アクセスかよ。まったく、ばれたらただじゃすまない
んだぞ」
「そんな……そこまで危ないところには入らないから」
「どーだか。キラのことだから大丈夫だとは思うけど、ここぞってところであぶ
なっかしいからなぁ。ある日突然警察が来て、キラ・ヤマト君のご友人ですね彼
の普段の素行について色々と聞きたいことがあります隠しだてすると後ほど困っ
たことになるかも―――なんてさ」
「その時は上手くごまかしといてよ」
「はいはい男ども、早く食事に行きましょ。午後からラボでしょ。遅れるとまた
教授がうるさいわよ」
世話女房よろしく手を叩くミリアリアに急きたてられて、キラは散らかしたレ
ポートとラップトップを手早く片づけ始めた。
画面では戦争が続いてる。
〈……いつになればこの戦争は終わるのでしょうか〉
キャスターの台詞に、キラの表情が一瞬だけ曇る。
しこりを振りはらってウインドゥを閉じる。
キラの戦争は終った。
◎
「終わらせてもらわねば、戦争が終わらんぞ」
エドウィン・キンケイド大佐の言葉には断固とした意志がこめられている。意
志と現実が必ずしも比例しないことなど承知の上で、エドウィンは無理も無茶も
言う。アフリカ系移民の、黒人の自分をここまで引き立ててくれたハルバートン
少将への恩もあった。管制センターの座席に預けた背中には、連日の疲労が垢の
ようにこびりついていた。
「……フラガ、お前でもかんばしくいかんのか」
「自分もナチュラルです。コーディネターのようには」
ムウ・ラ・フラガ大尉は片目をつぶり、肩をすくめる真似をする。上官相手に
随分とぞんざいな態度だが、それを許してしまいそうな空気を纏ってもいた。
「グルマルディ戦線では５機のジンを落とした『エンディミオンの鷹』が泣き言
とは、先が思いやられるな」
「メビウスには手も足もついてませんが、今躾てるのはＧなんていう化物ですよ」
「で、お前以外のテストパイロットは？」
「どれもこれも。体調不良、平衡感覚失調は日常茶飯事で、ひどいときには軽度
の神経障害……」
エドウィンは低く唸るように息を吐く。
ムウは『Ｇ計画』テスト・パイロット・チームのリーダーだ。
テスト・チームの役割は、Ｇユニットの制御システム完成にある。無事完成す
れば、Ｇユニットは、ザフトのＭＳと同系列のインターフェースを搭載した、連
合の初の兵器となるはずだ。
ＭＳは、ある種の神経接続を介するマン・マシーン・インターフェースによっ
て操縦される。基幹技術は古くから存在したものの、それを軍事利用が可能なレ
ベルまで進化発展させたのはプラントとコーディネーターの技術力だった。史上
最初のＭＳにもその名を冠される「Ｆasta」Ｏ．Ｓ．（オペレーション・システ
ム）は、全ての現用ＭＳに搭載されている。
ＦＯ．Ｓ．の実用化こそ、ＭＳがそれまでの兵器を時代遅れの代物に追いやっ
た最大の理由だ。人間同様の手足と高度な知覚機器の数々を、文字通り自らの一
部のように操ることを可能としたシステムは、高度で、多彩で、繊細でありなが
ら、利便性と、桁の違う反応性を兼ね備えた機動兵器を誕生させた。
利点には欠点がつきものだ。
インターフェースへの接続時の相性と、副作用として生じる様々なキックバッ
クは、ナチュラルには無視できない負担となった。ＭＳを駆使できるのはコーデ
ィネーターのみ。それが、ＭＳを地球軍が投入できない原因であり、コーディネ
ーターの、プラントの象徴としてＭＳが戦場を謳歌する最大の理由でもある。
「……急がねばならん」
「何かありましたか？」
「ノースカロライナが消息を絶った。１０時間前のことだ。攻撃を受けた可能性
もある」
言下の気配に、ムウは表情を強ばらせた。
「ここも目をつけられていると」
「仮にも中立コロニーだ、よもやとは思う。だが……」
「中立を隠れ蓑に新兵器の開発……どうも、自分としては、あまり」
忌憚のない本音に、エドウィンは分厚い唇を苦笑に歪める。
「場所は選べよ、相手によっては上官侮辱で営巣だぞ。思うところは私にもある
が、おかげで心置きなく進められるのも事実だ」
「―――は」
管制センターの窓からは工区が見下ろせる。呆れるほど大きく、外部から閉鎖
された区画だ。
そこには、白い獣が居座っていた。
アークエンジェル級と命名されている。従来の連合艦艇のどれよりも大きい。
全長３５０メートルにも達する巨体は、『Ｇ』との連携運用を前提にされた設計
の結果だ。地表運用のための巨大な翼と『Ｇ』の発着カタパルトを兼ねた、前足
を思わせるユニット部が、全体をしてうずくまった獣の印象を与える。強襲機動
特装艦の分類は、この艦のために急遽でっちあげられたカテゴリーなのだ。
エドウィンの眼下に広がるのは、その一番艦、アークエンジェル級ネームシッ
プ〈アークエンジェル〉の威容だった。
「『Ｇ』とこれが量産されるようになれば戦争も終わる。オーブとて連合の一国。
戦争が終わって欲しいとは思っておるのさ」
「そうあって欲しいものです」
ムウの表情は晴れなかった。
腹の中に重いものがたまっていた。理性ではなく、確証もない、それは予感に
近い。悪い予感だ。足下から何かが這いまわるような、そんな不気味さが背筋を
のぼってくる。
エースの勘はよく当たる。
そんなジンクスなどクソくらえだと、ムウは思った。
◎
静寂。
大気の存在しない宇宙には一切の音が絶えている。
無音の空間を黒い内火挺が慣性飛行する。
熱を出さず、レーダー波も反射しない仕様の内火艇は、ヘリオポリスの警戒網
を手品のようにすり抜けていった。
静かに。秘かに。確実に。
やがて、内火艇の吐き出した人影の一団が、コロニー基底部のメンテナンスハ
ッチへと消えていく。
最後の影は、ハッチに飛び込む前に時間を確認した。
C.E.70年１月25日十一時二十七分五十秒。
ヘリオポリス事件の発生まで、あと八十二分―――。
◎
たしかに、そのトレーラーのデッキには、大きさに相応しい物体が横たわって
いた。二十メートルはある物体が、丹念にシートをかけられ隠蔽されている。
「これが『Ｇ』か。仕様書通りなら大したものだがな」
聞き慣れない声にマリュー・ラミアスは作業の手を止めた。のぞき込んでも声
の主は見つからない。死角にいるのだろう。意外に軽い身のこなしでトレーラー
から飛び降りる。ここはモルゲンレーテ社所有の閉鎖地区で『Ｇ』のテストも行
われている。もとより関係者以外は立ち入ることができない。
モルゲンレーテ社はオーブ籍の民間企業である。
オーブの、というところがミソで、連合の今後を左右する機密兵器『Ｇ』の開
発を主導するのが、つまりは中立国の企業であるモルゲンレーテであるという現
実は、この戦争を取り巻く複雑な状況を象徴しているようだとマリューは思う。
「あなた達―――」
相手は二人だった。
男と女だが、カップルには見えない。民間人のはずもない。
女の方が向き直った。モルゲンレーテの作業服を着こんだマリューに、女は連
合式の敬礼を返す。
「はじめてお目にかかります、マリュー・ラミアス『大尉』。ナタル・バジルー
ル中尉であります。彼は―――」
「アーノルド・ノイマン少尉であります」
「バジルール……ああ、聞いているわ」
飾り気のないコート姿が、ナタルにかかると二種礼装のように堅苦しい。ノイ
マンは上官から一歩下がって付き従っている。いい部下ぶりだ。ただ、ノイマン
はともかく、ナタルに至っては擬装している意味のないほど軍人だった。
「マリュー・ラミアスよ、よろしくね。あなた、たしか元は第六艦隊にいたんだ
ったかしら」
なるほど見た目よりは切れそうだ。
ノイマンは向き合った二人を冷静に見比べて評価する。
目の保養にはちょうどいい。連合軍に女性兵は少なくないが、若くて士官にな
るエリート組となると限られる。まして上に「美人」がついて、それが二人そろ
うとなれば、故障しない戦闘機と同じくらいに希少価値だ。
希少価値だがタイプは違う。むしろ対照的だった。
マリューは柔らかくて暖かい。母というのがぴったりだと本音をもらせば、そ
れほど歳は食ってないとどやされるだろう。思わず目がいく胸のボリュームは、
男の一人や二人どころか、一ダースぐらいそれ二つで手玉に取れるに違いない。
ナタルは鋭く堅い。女というより軍人で、ここしばらくのつき合いを経て、こ
の上官には冗談が通じないことをつくづく思い知らされた。手玉に取られるより
先に敬遠する男の方が多いだろうが、ナタルはその気になれば、大の男を文字通
り叩きのめすくらいのことはする。
きました」
「そう、あなたも大変なところね」
「いえ、連合の命運を左右する計画と理解しております」
社交辞令と探り合いと困ったものねという苦々しさの、複雑に絡み合った複雑
な成分の会話だった。
Ｇ計画の発案者であり責任者であるハルバートンにとって、フィッツジェラル
ドは政敵だ。ナタルとノイマンが計画に加わるのは軍内の複雑な政治力学の結果
であり、フィッツジェラルドが二人に期待しているものもまた複雑だ。
上官同士の思惑は思惑として、現場には現場の力学があり仁義がある。一つ艦
に乗り合わせて前線で命を賭ける軍艦乗りにとって、不協和音は何より自分の生
命を危うくする。
マリューとナタルの間は、それだけにどこまでも複雑だった。
「ここはまだ平和ですね。ここにいると、前線のことがまるで悪い夢ようです」
「夢なら早く醒めて欲しいわ」
「『Ｇ』が完成すれば戦局も変わるのでしょう」
「……バジルール中尉。これがどうして『Ｇ』と呼ばれるのか、知っている？」
ナタルはシートに隠された『Ｇ』ユニットに目をやる。
「ＯＳの頭文字だと、うかがっておりますが」
「語呂合わせよ。『Ｇ』は〈Genesys〉から名付けたの」
マリューの口調に感慨がこもる。
計画初期より携わり、ようやく完成も間近となった。これまでの苦労と苦心、
これからへの期待。我が子のように『Ｇ』ユニットへ思い入れるのは、ある意味
当然の結果でもある。
「新時代を切り開く剣、というところですか」
「そうなってくれるといいわね。子供も前線に出るようになったと聞いてるけれ
ど……」
「事実です、残念ながら」
ナタルが僅かに目を伏せ、マリューは暗澹とため息をつく。
「子供が銃を持つような時代は、早く終らせたいものね」
ちょうど工区にサイレンが鳴った。
正午、十二時を知らせるサイレンだ。
◎
警告を知らせる赤いランプが脳裏でちかちか点滅している。
カレッジのレンタルカースペース。自動のエレカがコロニー中を周回する、学
生にとっては足がわりの場所だ。昼食を終えたキラたちが来たときには先客がい
た。華やいだ嬌声が聞こえた瞬間、昼下がりの倦怠など一発で吹き飛んだ。
なんて判りやすいやつ、とトールは思った。
こいつ奥手のくせに面食いだな、とミリアリアは思った。
先客はフレイ・アルスターだった。
何もしなくても場を華やかに見せる人間というものがいる。キラの贔屓を差し
引いても、フレイはひときわ目をひいた。仕草の一つ一つが花のように愛らしい。
無邪気に微笑む。小鳥のように首を傾げる。ステップを踏むように身をひるがえ
す。見事な赤い髪とサクラ色のスカートが、ふわりと揺れて風に踊る。連れの女
友達もいたが、そんなもの最初からキラの視界に入ってこない。
「だからぁ、そういうんじゃないってばぁーっ」
「あっ、ミリアリア！ ねえっ、あんたなら知ってるんじゃない？」
フレイとじゃれていたジェシカが、これ幸いと嬉しそうにミリアリアへ方向転
換した。フレイは真っ赤になって、ジェシカの暴挙を声高に非難する。だが、い
つの世も、話し合いでは解決しない物事というのは少なくない。
「もうっ、やめてってばぁ！」
「この子ね、サイ・アーガイルから手紙もらったの！ なのに『なんでもない』
って話してくんないんだよーっ」
「ええ――――――っ」
ミリアリアは間の抜けた顔で声をあげた。トールは一気に複雑さを増した戦況
に飲みかけの缶コーヒーを吹きだしかける。隣のキラは突然拳銃を突きつけられ
た平和主義者のような顔をしていた。
「ねーっ、ひどいでしょう！」
何がひどいのかよくわからないが、とりあえず三人はジェシカに同意して機械
仕掛けみたいに頷いた。
「……へー、あのサイがねえ」
「そういうのじゃないっていってるのにぃっ」
棒読みのトールに噛みつきながら、フレイは行動に出た。言葉が通じなければ
実力行使しかありえない。「もう知らない！」とばかりに踵を返し、一人さっさ
とエレカへ向かって歩き、へそを曲げられたジェシカとミーシャが慌てて「まっ
てったら、フレイ」と後を追、
「トリィ」と啼き声がした。
低い羽音に気がついて、もう一度振り返ったフレイの肩にトリィが羽ばたきな
がら舞い降りる。「あ、トリィ……」と手を伸ばしたキラと肩に止まったトリィ
を、きょとんとした顔で見比べた。
興味深そうにフレイはキラの方を見る。
ナイスだトリィ、とトールは声に出さず喝采した。
キラって意外にあざといじゃない、とミリアリアは見直した。
「あ……うん、トリィっていうんだ」
「ふうん、おもしろい名前。ふふ、この子じゃれてくるわ」
フレイが指しだした指先と肩をトリィはまるで小鳥のように飛び移る。
トリィはロボットだ。心もなければ感情もない。
だが、まるで生きているように振る舞う。
トリィはちょろちょろと一時も止まっていない。ときおり甘えた仕草で首をす
りつける。ロボットの愛らしい仕草にフレイは嬉しそうに声をあげる。キラはす
っかり見ほれていて、まともに口を利きもしなかった。せっかくの機会になにや
ってんだかと、後ろで見ているトールの方が歯がゆくなる。
「うふふ、かわいい。あっ……そういえば、あなた」
フレイは、少し記憶を探る顔をした。
「あなた、たしかサイの友達の―――」
フレイの口から出たサイの名に、キラの表情が堅くなった。
フレイはキラの変化に気付きもせずに、屈託のない表情でトリィをあやす。
「キラ……キラ・ヤマト」
「フレイよ、フレイ・アルスター」
キラが何か答えようとする。思わず口ごもった隙に、
「フレイ――っ、来たわよぉ」
ミーシャがエレカの到着を告げた。返事をしたフレイの動きに反応して、トリ
ィはキラの肩へ飛び移った。
「じゃあキラ、またね」
フレイは軽く手を振って、キラの返事も待たず去っていく。
かしましく三人が乗り込んでエレカが出ると、途端にあたりは静かになった。
フレイがいなくなって、ようやくキラの脳裏に点滅していた赤い警報ランプは
消えてくれた。そのかわり別の色のランプがついている。どういう色なのか、キ
ラ自身にもよくわからない。
「あのサイが手紙だって、意外だねえ。でも、まんざらでもなさそうだったんじ
ゃないか、フレイもさ」
からかうような笑みを向けたトールに、キラの表情が少し沈んだ。予想外の深
刻さにトールの方が慌ててしまう。
「おいおい、そんな顔するなって」
「……サイはさ、いいやつだから」
「何だよ、最初から敗戦ムードなわけ？」
「別に、敗戦とか……はじめから……そういうんじゃないよ」
「じゃあどういうんだよ」
食い下がってくるトールから目を逸らして、キラは誤魔化すように次のエレカ
をつかまえる。本当に、一体どうしたいのか自分自身でもよくわからないのだ。
告白するような勇気もなければ、面と向かっても気のきいた台詞の一つも出てこ
ない。サイの手紙、という言葉だけが、頭の中でぐるぐると、意味もなくいつま
でたっても回っている。
気を紛らわそうと、腕時計で時間を確かめる。
十二時三十一分二十六秒。
つづく・・・・・
どのキャラも書き込みがしっかりしているので、これからが楽しみです。
ナタルが中尉、ノイマンが少尉、ハルバートン提督が少将とちょっと
階級が上がっていたり、フラガの兄貴が最初からＭＳのテストパイロット
だったりするのはこれからの展開を考えると整合性も取れてていいかも。
・・・それにしてもフレイ様の魅力を引き出すトリィはナイスだ。
トールとは別の意味で喝采しとくw
↑の人同様乙です！
ナタルとノイマンがアンチハルバートンの駒として送られてたり…
まあ言いたいことは大体言われてしまいましたなｗ
民間人を誘導している兵士が大声で叫んで走りまわり、絶望に支配され、項垂れる人々がその誘導に従って歩いていく。キラとフレイは抱いていた子供達をトラックに誘導している兵士に任せる事にした。
「すいません、この子達も頼みます」
「この子は？」
「街で、母親を無くしていて･･････」
言い難そうに答えるフレイ。兵士は小さく頷くと、子供達をトラックに載せた。２人がが荷台からこちらを見て、小さく手を振っている。女の子が大きな声で礼を言ってきた。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、ありがと−っ」
礼を言われた２人は気恥ずかしそうにしながらも手を振り返した。
「これからも、頑張ってね。兄妹２人で！」
「なるべく東へ行くんだよ。敵が来ない所までね！」
２人の言葉に兄妹は何度も頷きながらトラックの奥へと入って行った。２人が見えなくなった所でキラとフレイは市街の方を見る。
「･･････こんな、壊された街を見ると、ヘリオポリスを思い出すわね」
「うん」
クルーゼ隊の攻撃を受けて破壊されたヘリオポリス。あの時もこうだった。破壊される市街。逃げ惑う人々。響き渡る悲鳴と銃声。あの時もこうだったのだ。キラはストライクに乗ってジンと戦い、フレイは非難シェルターに逃げ込んだのだ。まだそんなに経っていないのに、思えば随分昔の様な気がする。
フレイは硝煙の臭いが混じる風に赤い髪をなびかせながら、キラに話し掛けた。
「不思議よね。あの頃は戦争が終わるまでずっとあそこにいると思ってたのに、今は地球の、それもこんな所にいるんだから」
「･･････そうだね」
カレッジにいた頃は平和だった。誰も未来を信じて疑わず、戦争など縁遠いものだと考えていたのだ。キラもトール達とからかい合い、フレイの姿に胸をときめかせ、両親と暮らすだけの生活がこの上なく恋しくなる。もし、あの頃に戻れるならどんな手段でも使うだろう。
だが、現実はこうなのだ。すぐそこで戦争をしており、人の命が次々に失われていく。これが今の２人の現実なのだ。
「フレイ、僕たちも行かないと。ここに居ても邪魔になるだけだよ」
「････うん、そうね」
「君達は早く逃げろ。ここは我々で食いとめる！」
「そんな、戦車なんかでＭＳに勝てる訳無いでしょう！」
キラはウォロシーロフのやろうとしている事が単なる自殺だとしか思えなかった。絶対に勝てないと分かってるのに戦うのは自殺でしかない。だが、ウォロシーロフは首を横に振った。
「勝てないからと言って、逃げる訳にもいかん。我々の背後には避難民がいるのだからな。我々が逃げたりしたら、彼らはどうなる？」
ウォロシーロフの言葉にキラは返す言葉を持たなかった。守る者の無い難民の運命は悲惨だ。ここまで逃げてくる間にその現実を嫌というほど思い知らされている。ウォロシーロフは難民が逃げる為の時間を己の命で稼ごうと言うのだ。
キラは何も言えなくなり、俯いて悔しそうに拳を握り締めた。ここにストライクがあれば、彼らを死地に追いやることも無かったと言うのに。フレイは悔しそうなキラに何か言おうとしたが、それは言葉にならなかった。
「さあ、君達も早く行け。彼らを頼む」
「少佐、すいません」
「気にするな。君は君の任務を全うしろ。それと、彼女は大切にしろよ」
ウォロシーロフの言葉に顔を赤くする２人。なんとも初々しい反応をする２人に口元を綻ばせ、ウォロシーロフは敬礼した。
「いいな、君達は生き残れ、青き清浄なる世界の為に！」
そう言い残して、ウォロシーロフは戦車の中に体を沈めた。ハッチが閉じられ、戦車隊が戦場へと向って行く。それを見送りながら、キラはウォロシーロフの最後の言葉に衝撃を受けていた。
「青き清浄なる世界の為に」
これは、ブルーコスモスの有名な台詞だ。これを口にするという事はウォロシーロフもブルーコスモスだという事になる。彼は何も知らないままにキラを、コーディネイターを助けたのだ。コーディネイターを助ける為にブルーコスモスが命を賭けてコーディネイターと戦う。これほどに馬鹿げた話があるだろうか。
キラが動かないので、フレイがその腕を取った。
「キラ、早く行かないと」
「･･･････････」
それでも動かないキラにフレイはため息をつくと、無理にその腕を引っ張って歩き出した。手を引かれれば歩くキラだったが、その目はここを見ていないようだ。
輸送車やトラックが発進していく。フレイとキラもその脇を歩いて行くが、その時上空から航空機の爆音が聞えてきた。空を見上げた２人の目に連合軍の戦闘機隊とザフトの戦闘機とディンが戦闘を開始する瞬間が見て取れた。
「戦ってるわね」
「･･････うん。でも、ディンがいるから、連合は不利だよ」
キラは常識的な判断をしたが、この中にフラガやキースがいると知ったらまた違う判断をしたかもしれない。この時も２人のサンダーセプターだけは異常な強さを発揮していたのだから。
乙です。兄貴がＭＳのテストパイロットとして出てきましたか。ひょっとして最初からＭＳを動かすのかな
ナタルさんとノイマンは階級が高くて政治的な理由での合流。ザフトはすでに奇襲の要素を失いましたか
そしてフレイ様とキラの１次接触がヘリオで起きましたか。トリィナイスだｗ
とりあえず、兄貴の動向が気になりますねえ。彼はどう動くのか、楽しみです
文章の構築力が素晴らしい、某Ｇより…ま、これはともかく。
楽しみに読ませて頂きます。作家さんがんがってください。
すごい！またもや大作登場ですね。乙です！
再構築の言葉に相応しく、話の整合性とキャラの書き込みが素晴らしい（･∀･）ﾖｶｰﾝ！！
読みつづけますからね！ご自分のペースでがんがって下さい！！
>>流離う翼たち
フレイ様の芯の強さが発揮されつつありますね。
また、一人一人のサブキャラが秀逸だ…
そして、トール初陣！がんばってくれ！デュエルの装甲なら安全と信じたいが…
むしろサンダーセプターの士官組が心配か？
>>女キラ・男フレイ
なるほど、こう来ますか！
泣き落としキラにちょっと萌え。サンドイッチ専門のミリィにかなり萌え。
＆キラ製スープ飲み干したオトコマエフレイ様に萌えｗ
アスラン君との遠距離バトル（？）に期待ですな。
ああ、骨太な作品多くて嬉しいなあ。（もちろん単発モノも好きだけど）
最近毎日が楽しみです。職人さんたち、本当に乙です！
(´Д⊂ヽ
キラ・・・ばれてたらどうなったやら。
あんないい人でも組織に毒されてたというオチは悲しいものが。
否！ ちょっとカッコいいキメ台詞がほしくて付き合ってるだけで、コーディネイター抹殺なんて興味がないかもしれん！(笑)
>48さん同様サンダーセプターが心配でつ。
大作目白押しだし、もうpart4行くのは確定かｗ
よし、Part４のスレッドタイトルは「光臨」でいこう
皆凄すぎです！！
いつも興奮気味で楽しませてもらってます。
それに比べて私はトホホ・・・・・
>>51
あ〜そういや勝手にスレッドタイトルつけちゃったの悪かったかも・・・・
いいの思いつかなくて。
スイマセン＿|￣|○
先の大戦から五年が過ぎ、《血のバレンタイン》と同じ日がやってきても、それを思い出す者も少なくなりつつあった。
たが、このコロニーは別だ。大戦で生まれた無数の難民を収容する為にプラントと連合が共同で建造した、謂わば収容所といえる急造コロニーには、多かれ少なかれ何かしらの傷みを背負った者が寄り集まっている印象があった。
しかし、最大百万人が居住可能なこのコロニーも、建造と移住が同時進行で行われている状態で、現在の人口はようやく十万人に達したというところである。
その中には、何処にも行き場が無くなった人々…キラ・ヤマトを始めとする人々の姿があった。
アーク・エンジェル、エターナルのクルー達は戻る所を失った。実質的な戦勝国であるプラントにとっても、連合の占領から解放されたオーブにとっても、彼らの存在は手に余った。
クライン家の大衆や高級将校の一部への影響力を考えれば、命を奪ったり刑罰を与えるわけにはいかず、かと言って重要機密を持ち出し、半ば離反した彼らをプラントへ迎え入れる事も出来ない。
その他の、連合を脱走した事になる軍人達も同様だった。
そんな爆弾のような存在は、なるべく遠くに置いておくに限るというわけで、名ばかりのコロニー警備隊という事で駐留しているが、地球を巡る他のコロニーからも、プラントからも最も遠く離れたコロニーでは、外敵などは想定しにくい。
体のいい監禁、であり、身辺には常に監視が付きまとう。
だが、そんな所でも五年近くも住んでいれば、人として新たな生活を送るようにもなる。
「カリガリア管制区、ポイント１、異常なし…ポイント２、異常なし……キラ・ヤマト、帰投する。」
決まりきったコースをMSやMAを駆って巡回し、決まりきった報告を行う。それが終われば翌日のミーティングをして…という単調なサイクルの繰り返し。
それは限りなく神経を苛立たせるが、だからと言ってキラにはそれをはねのけようという気力は無かった。
疲れていたのだ。
港ブロックの軍駐留所から独りで住んでいるアパートメントへ車を走らせながら、キラはラジオから流れる《血のバレンタイン》五周年のニュースを何の表情も浮かべずに聞いていた。
もう五年になるのか、という思いと、まだ、たったの五年…という思いが交錯する。
何故あの後も軍に残って、こうしているのか、自分でも良く分からなかった。ただ、もう自分は元には戻れない、戻ってはいけないという気がした。
そして、周りの状況もそれを許してはくれなかった。が、そんな事はどうでも良かった。
あの後…軽い抑鬱状態に陥ったキラを看護したのはラクスやカガリ、アスラン達だったが、再びMSのコクピットに乗れるようになるまでには一年以上かかった。
最近になって、ようやく自分のイメージ通りに操縦出来るようになってきたが、時に過去に向かって飛翔しているような暗い感覚に襲われる。
もう、あの光に包まれた、確かに声を聞いたと思ったフレイを思い出す事は稀になっていたが、それでも不意に「フレイ！」と絶叫したい衝動に駆られる。
だが、それで何が変わる訳でもない…。
流されるように過ごしてきた戦後の生活に果たして意味があったのかと問われれば、首を縦に振る事は出来ないだろう。しかし、仮初めにも争いの無い時代が訪れた今、前を見据えて生きていく力が残っているとも思えなかった。
守りたいと思ったものは手の間からこぼれるようにして消えていき、僅かに残った安息の中に身を埋めている。が、それも居心地の良さではなくどうにもならない空しさになる。
僅かばかりに形成された市街区に入っていく。アパートメントに帰るにはここを突っ切っていかねばならない。ネオンが眩しい。
不意に、車を急停車させた。
「バカヤロー！何やってんだ！」
すぐさま、後続の車から罵声が飛ぶ。しかし、キラの耳には届いていなかった。
『フレイ…!?』
まただ、また…もう何度、この幻を見ただろう。何度目の幻でも、もしかしたら…という淡い予感に捕われる。が、頭を振って見据えると、それはやはり幻でしかなかった。
しかし、今、身を乗り出して振り返ってみても、あの後姿は、そのままだった。見間違えようも無い、今度は、幻じゃない…
『まさか、本当に…？』
キラが車から降りた時には、その後姿はもういなくなっていて、蒼白な顔をしたキラを訝しげに見ながら人々が通り過ぎていく。
警笛の音でキラは我に返った。にらみつけている後続車の男の形相には奇妙に現実感があり、やはりあれは一瞬の幻だったのかと思い直した。
再び運転席に戻りながら、キラは何か、言いようの無い憤怒と情けなさが同居したような感情に襲われていた。
気にする必要無いでしょう。
タイトル付けるのはスレ立てる人の特権ですから、気にしない！
うむ、哀愁のキラですか、よく伝わってきますな。
続きはまだあるようなので、今後に期待。
>>流離
相変わらず（本編では名無しの一人程度の）軍人一人一人の書き方がうまいですね。
こういう一人一人の心情みたいなものがあると戦争ってのがよくわかると思います。
本編では主人公サイドの話しかなかっただけに・・・。今後に期待。
>>オリジン
作りこまれてて凄いですね。いい長編が続いてるので楽しみです。
>>キラ♀
すっごく萌えるんですがｗ
いやすみません、ほんとネタだったんです
気にしないで下さいな
>>幻
現実味のある文章がいいですね〜
疲れても流されるようにMSに乗りつづけるキラ… （´Д⊂ヽ･ﾟ･ｷﾉﾄﾞｸﾆ
フレイ様、彼を守ってあげてください…
だが、２人の少し先にいきなり１機の連合軍戦闘機が墜落した。空戦で撃ち落とされたのだろう。その戦闘機は避難民の乗ったトラックや輸送車数台を巻き込んで地面に激突し、爆発した。その中には、先ほど子供達を乗せてもらったトラックも含まれていたのである。
燃えあがる戦闘機とトラックの残骸を前に、フレイは放心してその場に膝をついてしまった。
「････嘘、なんでよ？」
助けて安全な場所に届けたと思っていたのに、目の前で２人は炎に包まれてしまった。自分たちが一緒に連れて行けば２人は死なずにすんだのに。トラックに預けたばかりに２人は死んでしまった。
礼を言って手を振る２人の姿が思い出されて、フレイは内から込上げてくる激情を堪え切れなくなった。大きな声を上げて泣きだし、自分の無力さを声に出して激しく罵倒する。
「なんでよ！ 何であの子達が死ななくちゃいけないのよ。あの子達が何をしたって言うのよっ！？」
こんな所で泣いている時間は無いのに、フレイは泣き続けた。キラも足を止めて空を見上げている。そこでは下の惨劇など目に入らないのだろう。まだ空戦を続けている。
「僕達は、何を守ろうとしてたんだ。どうして武器を取るんだろう？」
キラは、仲間を、友人を守りたくてＭＳに乗っている。ウォロシーロフは地球に住む人々を、ナチュラルを守りたくて戦車に乗っているのだろう。だが、こうして犠牲になる人々は後を絶たない。守りたくても守り切れない。これが戦争に負けるという事なのだ。
「･･････だったら、負けなければいいんだ。勝っていれば守りたい人達を守れるんだから」
キラの呟きに、フレイが立ちあがった。目に涙を溜め、俯いてはいたが。
「キラ･･････力があれば、守り切れるの？」
「守れるさ。力が無いからこんな事になるんだ！」
それがキラの結論だった。迷ってはいけない。弱さは罪でしかない。守りたいものがあれば強くなければいけない。それだけの覚悟と決意が無ければ、何もなし得ないのだ。フレイはキラの言葉を頭の中で反芻し、そして考えている。力があれば全てを守れる。力があれば父を救う事が出来たのだろう。
だけど、本当にそうなのだろうか。フレイには分からなくなっていた。全てを力で守れると考えるのは、力を持つ者の傲慢でしかない様な気がする。この目の前で圧倒的な力に踏み躙られる事しかできない人々を見て、フレイにはただ力を求めるキラが正しいとは思えなかった。復讐の道具として使うなら力だけがあれば良い。なのに、今のフレイにはキラがその様に考えるのが悲しく思えた。自分はキラの弱さを知ってしまったから。
守りたいものがあるから戦う。戦わなければ守れないから、殺されるから戦う。今はそれしかないのだろう。だけど、それが正しいとは、どうしても思えないのだった。
だけど、戦わなければ守れないのも確かなのだ。
「･･････守るために、戦う、か」
フラガは２機のラプターに追尾されてるのを確認して僅かに口元を緩めた。
「確かに加速性能はそっちのが上だけどな！」
フラガは敵機をある程度引き付けた所でいきなり全てのフラップを動かしてエアブレーキをかけた。急激なＧとともにスピードが激減し、ザフトのラプターが自分の前に飛び出してくる。それを確認するとフラップを戻して追撃に入った。２機のラプターは立場が入れ替わったことで慌てて逃げに入るが、スピードが出る前に１機がミサイルで撃墜された。そしてもう１機の方も射程外に出られる前に照準サイとに捉え、バルカンで始末した。
一瞬で２機を始末したフラガは周囲を素早く確認し、新たな目標を見定めるとそれに機体を向けていく。その目には猛禽の如き光が宿っていた。
そして、戦場を弾丸のような勢いで駆け抜けていくキースのサンダーセプターがある。こちらはフラガのような小細工はしない。目標を見つけると高高度から一直線に落ちてきてバルカンを叩きこんでくるだけだ。自由落下速度まで加えた加速はラプターさえも軽く凌ぎ、一瞬でも気付くのが遅れた敵機は回避する暇さえ与えられずに堕とされてしまう。そして低空まで降りて一気に引き戻し、また急上昇して行く。ナチュラルどころかコーディネイターでも失神しかねない無茶苦茶な機動だが、キースはこの機動に耐えきっていた。どういう体をしているのだろうか。
だが、今回は上昇した先が悪かった。いや、動きを読まれていたと言うべきか。キース機を狙っていたらしいディンが７６ｍｍ重突撃機銃を撃って来たのだ。慌てふためいて機体を捻ってそれを躱したキースはそのディンに怒りの篭った目を向けた。
「ちぃ、よくも邪魔してくれたな！」
キースはそのディンに狙いを定めると、また上昇して一気に急降下に入った。そのディンもキース機に重突撃機銃を撃ちまくってきたが、投影面積を最少に押さえているキース機にはなかなか命中しない。キースは持ってきたミサイルを一斉に撃ち放った。何発かが撃ち落とされたが、それでも２発がディンの機体を捕らえてこれを撃墜した。だが、キースのサンダーセプターも弾を食らっており、キースは舌打ちして脱出装置を作動させた。座席が射出され、離れた所でパラシュートが開く。乗っていた機体は錐揉みしながら地面に叩き付けられた。
それを見ていたキースはなんだか寂しそうな顔でボソリと呟いた。
「なんか俺、しょっちゅう被弾してないかあ？ これじゃ撃墜王じゃなくて墜落王だよ」
ゆらゆらと揺られながら地上へと降りて行くその姿が、なんだか妙に悲しく見えた。
フラガたちに随分遅れてようやくトールのデュエルがやってきた。オートプログラムで走らせていたのだが、まだまだ改善の余地があるためか、動きがかなり悪い。
「もう少しか。かなり派手にやりあってるなあ」
望遠映像で確認した空戦の様子と地上戦の様子を確認したトールは、撃ち落とされていく連合軍戦闘機や破壊される連合軍戦車を見て不味いかなあと思っていた。直に目の当たりにしてきたキラやフレイとは余りにもかけ離れた感想。だが、これが戦争を知らないという事なのだ。ＭＳで戦う限り血を見ることも、悲惨な死を見る事はほとんど無い。
「いた、キラ、フレイ！」
映像を拡大して２人を確認したトールは安堵した。どうやら無事だったらしい。トールのデュエルを見て驚いている。トールは苦笑すると機体を止め、ハッチを開けて身を乗り出した。
「２人とも、大丈夫か！？」
「「ト、トール！？」」
更に驚く２人。なんでトールがデュエルに乗ってるんだろうという驚きがあるのだ。
「トール、どうして君がデュエルに！？」
「キラ、俺だって戦わないといけないと思ったんだ。お前だけに戦わせるのは気が引けるしな」
「そんな、そんな事、気にしなくても良いんだよ。戦うのは僕に任せてくれれば！」
キラは絶叫した。仲間に死んで欲しく無いから戦うのに、なんで自分から危険な場所に来るんだ。そう思ったのだ。だが、トールはキラの思いなど知らないのだろう。甘い友情、判断で戦場に出てきているのだ。だが、デュエルでトールが出てきているのだから、これは当然フラガやキース、マリュ−達も了承している事なのだろう。彼らはトールを殺すつもりなのだろうか。
トールはキラの内心など気にする事も無く、にこやかに手を振っていた。
フレイはトールを心配そうに見上げ、声をかけた。
「トール、本当に大丈夫。幾らなんでも危険じゃないの？」
「大丈夫だよ。デュエルならジンに破壊されたりしないって」
「でも、戦場じゃ何かあるか分からないわよ」
フレイはトールの余裕が心配だった。戦場では何が起きるか分からない。先の子供たちだって、もう大丈夫と思った途端に死んでしまった。デュエルがフェイズシフト装甲を持っていると言っても、無敵のＭＳではないのだから。まして、トールも自分も新米パイロットだ。
「じゃあな、２人とも、無事にアークエンジェルまで帰れよ！」
「トールこそ、気をつけてね！」
「ありがとう、フレイ！」
トールはコクピットに戻ると再び走らせ始めた。戦闘に巻き込まれる事を考えてプログラムを戦闘モードに変更する。自動的にシールドが持ち上げられ、ビームライフルを正面に構える。
連合のＭＳに気付いたのか、ジンが３機こちらに向かってきた。自分に向けられる殺意にトールは恐怖を覚えた。
「な、なんだよ、こっちに来るなっ！」
トールはビームライフルを放ったが、それはまともな照準がされておらず、明後日の方向を貫いていく。ジンのパイロットはデュエルの技量が低いのを一目で見破ると、無造作に距離を詰めてくる。
トールはデュエルのフェイズシフト装甲を信じてはいたが、直撃弾の衝撃は緩和されないので、まともに振動を受ける事になった。
「う、うわあぁあぁああああっ！！」
死の恐怖に震えあがるトール。フェイズシフト装甲は確かに敵弾を弾き返していたが、着弾の音と衝撃がトールの平常心を容易に奪ってしまう。やたらとビームライフルを使ってはバッテリーを無駄に消費していく。
「馬鹿野郎、何を無駄撃ちしてやがる！」
「フ、フラガ少佐！？」
「デュエルの装甲ならジンの攻撃で死ぬ事は無い。落ちついて狙え。無駄撃ちするとバッテリーを消費してフェイズシフトが落ちるぞ！」
確かに、デュエルのバッテリーはすでにかなり消費されている。トールはキースの言葉で頭を冷やすと、冷静にジンに狙いを定める。オートプログラムが盾を構え、直撃弾を少しでも減らしてくれる。後は、ロックオンしてトリガーを引くだけだ。
「当たれえ！」
トリガーを引き絞り、ビームが放たれる。それはまだ完全じゃないＯＳの為か、狙いが逸れて左腕を直撃する事になった。だが、それでもジンの戦闘力を奪うのには十分過ぎるものとなった。腕の爆発に巻き込まれて倒れたジンは、そのまま動かなくなったからだ。
どれだけ弾を食らってもへいぜんとしている装甲と、圧倒的な火力にジンのパイロットたちはさすがに驚愕を隠せなかった。
「な、なんなんだ、こいつは。こいつの装甲はどうなってる！？」
「重突撃機銃じゃ効かないのかよっ。誰か、バズーカを持ってる奴はいないか！？」
動揺し、慌て出すジンのパイロット達。トールにもう少し経験があればその隙を突く事が出来ただろうが、今のトールにはまだ無理だった。ただ荒い息をついて必死に目の前に対処するだけしか出来ない。
その時、上空から戦闘ヘリ部隊が降下して来た。コクピットに警告が鳴り響き、トールの注意がそちらに向く。
「ヘリだって、くそっ！」
頭部イーゲルシュテルンが自動追尾でそれを狙う。高速で叩き出される７５ｍｍ砲弾は容易にヘリを撃ち砕き、残骸へと変えた。
３機を落したところでようやく残りのヘリが退いて行った。トールはホッとしたが、まだ気を抜くのは早過ぎる。機体に新たなロックオンの警告が鳴り響いたのだ。視線を転じればバズーカを構えたジンの姿がある。しまったと思うよりも早く、ジンのバズーカから弾が撃ち出され、デュエルを直撃した。機銃弾とは比較にならない衝撃がトールを遅い、次の瞬間にはトールの意識は薄れていってしまった。
ううむ、戦後になったら厄介もののラクス軍の処遇は島流しですか。現実味のある未来ですな
そこで傷付いた心を抱えてただ惰性のままに日々を生きるキラ･･････ＳＥＥＤがリアルを貫くならこの路線が正しいのかもしれないですね
ここ３年気分が晴れた日などないのだがココまでなのは久々な気がしたが、
その疑問は、何気なしに聞いていたラジオが解決してくれた。
「あなたには忘れられない思い出ってありますか？」
あぁ、もうすぐ彼女の命日だからか･････
そしてそんな自分を鼻で笑った。
そんなことも忘れていた自分を――
いまだ彼女が死んだショックから立ち直れていない自分を――
涙が溢れ出し、止まらなくなった。
いくら体を重ねても、心が重なり合うことはなかった。
彼女の差し伸べてくれた手にすがりつき、彼女が傷ついていくのに気が付か
ないふりをした。
そうしないと離れていってしまいそうだったから。
彼女のことを大切に思いながらも、結局は自分のことしか考えていなかった
のかもしれない。
だからボクは彼女を守れなかったのだろうか？
こんな日は答えの出るはずのない答えを延々と捜し求めてしまう。
そして、自分の心を傷つけ続ける――
分かっているさ、そんなことをしてもどうにもならない。
むしろ本当に彼女の想いに答えるならば、彼女の分も生き、幸せにならなく
てはいけないって。
ただもう少しだけ、彼女のことを感じていたいんだ。
たとえそれが痛みや苦しみしかなかったとしても――
少しずつ色あせていく思い出と、そして伝えることの出来なかった、この想いと共に――
トール････（(；ﾟДﾟ)ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ
一体どうなってしまうのか････
とにかく乙です、今後の展開楽しみです
プラント打撃戦編：前スレ>788-791、>847-851、>920-923、>958-962
キラが居た。
ストライクとは違うＭＳのコクピットで、俯いて、哭いているキラが居た。
「どうしたの、……キラ？」
「フレイ。僕は、ぼくはッ、フレイ……ッ！」
「キラ……」
そっと手を伸ばす。どうしてだか、彼の涙は胸が締め付けられるように切ない。
可哀相なキラ、一人ぼっちのキラ、戦って辛くて、守れなくて辛くて、すぐ泣いて。
だから。
「だいじょうぶ。あなたはもう、なかないで」
「フレイ……っ？」
「守るから。ほんとうの……私の想いが、あなたを守るから。だから私、キラ……っ」
視界が滲む。キラの姿が見えなくなっていく。
やっと逢えた。そう思ったのに。
まだ足りない。想いを伝え切れてない。返事を貰ってない。もっと傍に居たいのに――！
「…………」
少しだけ見慣れたドミニオンの医務室、その天井を見ているのだと知ったとき。
フレイは自分がまだ生きていて、ゆめをみていたのだと感じ取った。
泣いていたのだと、分かった。
「……キラ」
切ない吐息の中に、どうしても彼の名前が混ざってしまう。
やりきれない想いを拭うように、フレイは細く白い指を瞼から目元に這わせた。
微かに濡れる指先。身体を丸めて横向きになって、じっとそれを見つめる。
「…………？」
そこで、初めてフレイは違和感に気づいた。
視線の先に、スツールに座っている見慣れた青い軍服。地球連合軍の少年兵の姿が見える。
キラ？ それともサイ、カズイ？ いや違う。彼らはこの艦と同じかたちの艦に乗ってはいるけれど。この艦はアークエンジェルでは無いし、彼らは軍服を袖無しに改造したり襟ぐりを大きく開けて着崩したりはしない。
「サブナック少尉……？ も、もしかして、ずっと、そこに？」
手元の文庫本から、僅かに頭が上がってこちらを見るオルガ・サブナック少尉。
３機の“Ｇ”兵器の１つ、Ｘ１３１カラミティのパイロット。
再び視線を落として、ページをめくる。彼は特に答えなかったが、その行動がフレイの問いを無言で肯定していた。
「…………！！」
恥ずかしさのあまり、フレイは反射的に寝返りを打ってオルガの姿を視界から外した。もちろんそんなことをしても何の意味も無いと頭では分かっているのだが、たぶん真っ赤になっている顔だけは見られたくない。そう思ったのだ。
「１つ、聞かせろ」
「なっ、何でアンタがこんなところにいるのよ……」
溜息をつくと、オルガは持っていた文庫本を床に投げ出した。居住区にかけられている人工重力に引かれ、ばさりと紙の落ち広がる音が聞こえる。
「覚えてないのか？ お前、核ミサイルを誤射した後で気絶しただろうが」
「…………」
「弱っち過ぎンだよ、お前。だいたい、ドミニオンまで引っ張ってくるのだって骨折れだったんだぜ？ 何度放り出そうと思ったか分かるか？」
「……う、あ」
気まずさにますます身体を縮めながら、フレイはちらりとオルガの方を見た。
だるそうに本と両足を投げ出し、腕を頭の後ろに組み、面白くもなさそうに自分を見ている少年の姿。何か言わなきゃ。そう思った時に口を突いて出たのは、お礼の言葉だった。
「その、あ、ありがと……」
「……っ、命令じゃなきゃ、ンなことやってない。勘違いするな！」
ガラにも無く照れてそっぽを向きながら、表向きだけ否定の言葉を並べるオルガ。
そんな彼の姿に、不覚にもフレイは思わずクスクスと笑いをこぼしてしまう。
「何がおかしい、お前ッ？！」
「ご、ごめんなさい。……その、何だか意外だったから」
ずっと、戦うばかりで怖い姿しか知らなかったから。
そう続けようとして、フレイは言葉を飲み込んだ。何だかこれは、言ってはいけないことのような気がしたのだ。言えばきっと、彼はキラのように傷ついてしまうだろう。コーディネイターだからって、本気で戦ってないと彼をなじって傷つけてしまった時のように。
「ええっと、それで……」
「？」
「あの、聞きたいことって」
「ん、ああ」
上体を起こして、聞き返すフレイ。思い直したように、いつもの仏頂面に戻るオルガ。
ただ、何故か彼が垣間見せた感情の揺れは消えていない。不思議と、フレイはそんな風に感じていた。
「！」
「お前、時々言ってるだろう。……ＭＳに乗ってる時とか、今も寝言で言ってたぜ」
「！！」
やはり“Ｇ”のパイロットは一筋縄ではいかないのか。
あまりと言えばあまりなオルガの不意打ちに、顔と思考が茹で上がっていく。
どう答えよう？ いや、そもそも地球軍の“Ｇ”兵器乗りでコーディネイター絶滅を掲げるブルーコスモスの盟主アズラエルの子飼いで、それでも命令だからと自分を守ってくれた少年に、どんな言葉でキラと自分のことを説明すればいいのか。
「〜〜〜〜っ！」
「…………」
困惑、焦り、怒り、戸惑い、羞恥、迷い。様々な感情が表れては乱れ混じり、塗り替えられていくフレイの様子を、オルガは興味深げに黙って眺めていた。そしてふと、自分でも意外なことに口の端を歪め、笑っていたのである。
「ハハハ、面白いなァ、お前」
「ううう、うるさいわよッ！」
「いいぜ」
「？」
不意に立ち上がり、医務室を出て行こうとする“Ｇ”パイロットの広い背中を、きょとんした顔でフレイは見ていた。薬物とインプラントで強化され、並みのコーディネイター相手なら軽く捻り殺せるはずの後ろ姿に、本人は弱くて優しいキラの姿がどこか重なってしまうのは何故だろうか。
「無理に喋らなくてもいいぜ。まァ大方の見当はついたし、それにどの道、あと数時間もすりゃ出撃だろうしな」
「まだ、戦わなくちゃいけないの……どうして」
「止めてもいいぜ、お前。そうすりゃ気兼ねなく、あのフリーダムとキラってヤツを殺せるからな」
「な、っッ！！」
怒鳴り返そうとした瞬間、フレイの全身を激痛が走った。精神的、肉体的な疲労は栄養剤や鎮静剤の力を借りて取れたとしても、ＭＳに乗り続けることで身体のあちこちには見えないダメージが蓄積する。ただのナチュラルである自分の場合、強化されているサブナック少尉たちとは違って簡単に治るはずもないのだ。
両肩を抱いたまま、オルガの出て行った医務室の扉をじっと凝視するフレイ。
ふと気がついて、床に目を転じた。彼が放り出したままの文庫本が、無言で何かを訴えているような感じがする。
ゆっくりとベッドサイドから足を下ろし、立ち上がった。まだ身体のあちこちに鈍痛が残っているが、しばらく経てば大丈夫だろう。
「これ、返してあげた方がいいのかしら」
身を屈め、少し顔をしかめて文庫本を拾い上げる。
ふと悪戯心が沸いたフレイは、ぱらぱらとページをめくって斜め読みを始めた。
「……な、何、これ？ あの人、こんな本が好きなの？」
ちょっとした驚きに、目を丸くする。
それは古いジュブナイル小説だった。何の変哲も無い一人の少年が、ある日魔法の学校に入学し、自分のルーツと向き合い闘い、成長していく物語。２人の親友に助けられながら、自分が何者かを確かめていくストーリー。過去の名作ということで、フレイも名前だけは知っている有名な作品だった。
何度も読み返しているのだろう。その本には新品には出せない柔らかな手触りがあった。
「……っ」
何かに弾かれるように、もう一度オルガの出て行った扉を振り返るフレイ。
彼女も、ナタルから３人の“Ｇ”パイロットたちについては聞かされたことがあった。過去を消され、薬物とインプラントで強化され、ＭＳの生体ＣＰＵとしてだけ生かされている存在。戦うことしか知らないはずのブーステッドマン。
だが、やはり彼らも人間なのだ。
自分が何者かを確かめたい。戦うこと以外の何かを掴みたい。そんな声にならない叫びが、ページの間から聞こえるような感覚。それはちょうど、自分の幼い奸計で戦わされて、殺し合いをせざるを得なくて、酷く傷ついていたキラの姿にも重なる。
「何よ……馬鹿、みたい。コーディネイターも、ナチュラルも……戦うこと、ばっかり考えてて、こんな、こんなの……っ」
フレイは泣いた。泣くことしかできなかった。
そして理解したのだ。オルガ・サブナック少尉がおそらく拠り所にしていた文庫本を投げ捨てて。少しだけ自惚れても良いのなら……その本を自分に託した、その意味を。
何とか100前に間に合ったw 今回からちょっとだけ、最後の戦い前のシーンです。
原作だと４８話Ｂパートの部分ですね。フレイ様と地球軍の、決戦前の決意と空気を書ければと思います。遅筆なのは申し訳ないのですが。
それにしても、最近、何だかこのスレ活気が出てきました。
私も微力ながら貢献していきたいと思います。というわけでエールパック続々投入w
＞翼〜
ブカレスト編、面白いです。ちくしょうキラめ、フレイ様とデートかよ！
でも、２人の間に漂う微妙な空気が何とも言えず良い。
こちらのフレイ様とキラは、まぁ何かラブラブですが、２クールの微妙に切ない頃の２人も好きです。
そしてトール出撃。初陣にしてはなかなかやりますな。フレイ様も乗る予定の機体なのだから、壊すなよ〜。
＞苦労人〜
スレ立て＆完結乙フレでした！
選択肢Ｂの、デキるダコ（ｒｙも、選択肢Ａのフリーダムに灼かれるマーチ（ｒｙも、どちらもステキ過ぎw
私も「Ｋ」はキラだと推測してましたが、カズイ様とも取れる決着の付け方はお見事でした！
＞キラ♀×フレ♂
フレイきゅん逆襲ｷﾀ━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━!!!!!
料理下手なキラと、その料理すら怜悧に食うことでキラの心の首根っこを捻じ伏せるフレイきゅんにﾊｧﾊｧです。
あー。このまんまキラはフレイきゅんに騙されて……されてしまうのかッ？
その時、サイはどう出るんだッ。気になる気になるー！
＞家庭の事情〜
子ラクスと妹フレイ……可愛いw
でも、そーですよね。あの２人からだとコーディネイトしないとフレイ様は再現できねー。
平井絵が幸いしてるのか、フレイ様とラクスは似てるから顔立ちは大丈夫だったんだろうけどw
＞ORIGIN
ほんとうに描写がしっかりしていると思います。高クオリティ。
維持し続けるのは大変だと思いますが、期待して続き、待ってます。
フレイ様他、原作関係はだいたい言われてしまったので、それ以外で。
ノースカロライナ級のブリッジクルーのやりとり、そしてアデスとクルーゼの会話。重要です。
連合側はザフトの接近は察知しましたが、既にアスランたちは進入済……。
個人的に、ナタルかノイマンにラスティを倒してもらえないかと期待してみたりw
＞幻
Ｚ・ＳＥＥＤの出だしって感じで好きですｗ
この後、どんな敵とキラたちは向き合うのでしょうか。それ以前にここはフレイ板なので、どういう形でフレイ様を出すつもりなのか気になって仕方ないんですが。
“想い”という形だけでも美しいんですが、想いだけでも力だけでもと申しますしw
＞想い〜
ここから、キラのフレイ様回想録に？ まだ続きが読めないです。投下ｷﾎﾞﾝﾇ。
にしても出だしから切ないし・・・(´Д⊂ヽ
乙です！
本編も本当はこんな風にオルガ達にも話もっていってやらないとなぁと
思いながらもオルガに悶えてしまったｗ
続き楽しみにしてます！
職人さん加速しすぎｗ
大作投下されすぎｗ
何事ですか(･∀･)ﾉｼ
それもこれもフレイ様のご加護でつ・・・・・・( ´Д⊂ヽ
助けて、フレイ様・・・・・・＿|￣|○
イ��
…ところで、今日は投下は無いんでつか？
何気にトドメ刺してるしｗ
そう言われて、キラは我に返る。同僚の冷たい視線が突き刺さる。
「いえ、何でもありません。失礼しました」
ふん、と鼻を鳴らした士官は説明を続ける。
「今回入港するのはプラント国防隊の巡洋艦です。軍事教練と若干のテストを兼ねていますから、コロニー警備隊は教練中の周辺管制区警備と定期便の誘導が任務になります…」
共同で建造されたとは言え、実質的にこのコロニーを掌握しているのはプラントであり、キラ達以外の駐留している軍人はプラント出身者が大半を占める。
それに加え周りに人工物が少ないと言う事もあり、この空域ではプラント国防隊（旧ザフト）の軍事教練が行われることも多い。
人目を避ける必要がある兵器の使用や訓練が行われている噂もあったが、警備隊でしかないアーク･エンジェルやエターナルの軍人達には訓練の内容など知る由も無かった。
戦後、正規の軍事組織と言えるプラント国防隊へ移行したザフトは、確実に軍事力を増強しつつある。
それは、時代に逆行するような動きに見えるかも知れないが、それを平和を維持するためのパワーバランス、必要悪として許容してしまっているのが世界の現実であった。
「…入港は明日15時。14時にデッキに集合すること。以上！」
キラがブリーフィングルームから廊下に出たところで、
「ヤマト少尉…」
呼びかけたのはマリュー・ラミアス少佐だった。警備隊の副司令ともいうべき地位ではあるが、肩身の狭い思いを味わっているのは同じである。
「あ…はい、何でしょう、少佐」
「少し、司令室へ来てもらえるかしら？」
そう言うと、マリューは先に立って歩き出した。キラはそれに付き従う形になる。
「何か、あったんですか？少佐」
個室に入るなり、マリューは厚手の書類の束をキラの目の前のデスクの上に置いた。
「明日入港する巡洋艦で、新任の警備隊司令と隊員が着任します」
「はい…それが、何か？」
「一昨日入港した地球からの定期便に、密輸品があった事、聞いてるわよね？」
「管理局から報告があったことはミーティングでもありましたけど･･･」
「…穏やかじゃないわよね…」
マリューはため息をついた。確かに、こんな辺境のコロニーには似つかわしくない事件だった。
「何かの部品と端末らしいんだけど、何重にもロックが掛かっていて未だに解読できないらしいの。そこで…」
「管理局に行って解読してこい、ですか？」
「ここで一番その方面に強いのは貴方だわ」
マリューはそこで言葉を切って微苦笑を見せた。キラもつられて笑う。思えば、ここで笑顔を見せられるのはマリューを含めほんの数人だった。
ふと、キラは昨日街で見た後姿の事を話そうかと思ったが、止めて話題を変えた。
「お子さんは元気ですか？」
「おかげさまで。保育園でもガキ大将で、女の子を泣かせちゃって…困ったものよ」
「どっちに似たんでしょうね？フラガさんか、それとも…」
「決まってるわ、あの人似よ。目元なんか、そっくり。…今度遊びに来たらいいわ」
「了解！お邪魔させてもらいます」
笑うマリューに軽く敬礼を返して、キラは部屋を後にした。
母一人子一人で、天涯孤独になった身には何か手に職を付けないといけないという意識もあった。
《へリオポリス�供嫺發料躪臧賊，悗僚⊃Δ魎�められた時も、別に特別な感慨があったわけではなく、仕事があるならという程度でしかない。
仕事は、予想以上に厳しかった。方々から寄り集まった人々が暮らす急造コロニーにはここ以外ろくな施設も無いのが現状だったからだが、朗らかな性格は誰からも好かれた。
そして、もうすぐ、生涯の伴侶を得て式を挙げる。幸せでないといえば嘘になる。
だが、彼女の心に一つ棘のように残るものがあった。
彼女は、父の姿を知らない。写真一つ残っていなかった。
引越しの為に荷物を整理していた時、初めてその事実に気が付いた。
母が全て処分していたに決まっていたが、何故なのか、という疑問は消えるものではない。
戸籍などは信用出来なかった。コーディネーターが迫害を避ける為などの理由から、捏造は日常茶飯事になっているのが現実だったからだ。しかも、戦後の混乱がそれに拍車をかけていた。
顔を知らぬ父と、母の間に何があったのだろうか。幼い頃死んだと母は言っていたが、それは恐らく嘘であろう。しかし、それを確かめる術はない。
普段は忘れているが、時折、私は一体誰なんだろうという不安に襲われる事がある。が、それも次第に薄らいでいた。
母譲りの燃えるように明るい紅い髪は自分でも嫌いではないが、例えば薄いブルーの瞳は、父に似ているのだろうかと想像する。
昨日の夜、エリナが街を歩いている時、街灯の電光掲示板には《血のバレンタイン》から五年が経過したニュースが流れていたが、彼女は無関心だった。
戦争が始まった時は地球のユーラシア連邦の一画で母と二人ひっそりと暮らしていたし、遂に戦火を見る事は無かった。
その日もいつものように買い物を終えて、帰宅する途中だったに過ぎない。
だから、自分の後姿を見て驚愕した男がいたことにも、気づかなかった。
フレイ様妹（姉？）ｷﾀ―――――(ﾟ∀ﾟ)―――――!!!!!
おぉ〜〜〜！
フレイ様の義姉妹！？
どうなるんだぁ〜〜〜〜！！
ちっあてにならねえOSだなあ(´Д⊂ヽ
トールが血なまぐさい現状に気づかなかったのは正しい描写だと思います。
MSに窓はありませんし、モニターもあえてリアルさを抑えて表示するようになってますから。
(処理速度を無駄に使って恐怖を煽るのはナンセンス)
>>ルージュ
オルガいいでつねｗ やっぱ三兄弟の長男(おい)だけあって一番まともな面を残してますな。
>>幻
・・・ゴクリ。
ザフト軍を撃退したアークエンジルは、無事に第八艦隊との合流を果たした。
「それにしても、笑っちゃたわよね、アレ…」
「確か『痛い、痛い、痛い〜！』だろ。
泣き虫のキラだって、戦闘中にあんな泣き言は言わねえっての」
トールが派手なゼスチャー付きでイザークの醜態を再現し、ミリアリア
とカズィが腹を抱えて笑い転げる。
激しい戦闘による敵味方の通信網の混乱が、一時的にＡＡとデェエルの通信
を接続し、キラがデュエルのコックピットを切り裂いた時のイザークの泣き声
が艦橋に届いたのだ。
「でも声色からすると、デェエルのパイロットもアスランさんと同世代みたいね。
もしかして、バスターやブリッツもそうなのかしら」
「ザフト軍もＡＡみたいに人手不足で少年兵を多数採用してるってか。
まあ、どちらにしても関係ないだろ。俺たちはこれで艦を降りるわけだし」
トールの言葉に、食堂に集結したヘリオポリス組はお互いに安堵した表情を
見合わせる。
そう、死の恐怖に怯える戦いの日々は終わりを告げ、平和な日常へと帰れるのだ。
マリュー達とアークエンジェルの戦いは、これからも続くのだろうが、それは
トール達にとっては別世界の出来事になるはずだった。
「そうそう。私、フレイのこと少し見直しちゃったかな。
いくら自分に非があっても、女の子に本気で頭を下げるのってなかなか出来ないよね」
ミリィの視線の先には、隅の席でフレイがキラと楽しそうに談笑している姿が見える。
少し前からは考えられないくらい良い雰囲気だ。
「雨降って地固まるってか？
けど、何か納得いかねえよなあ。あれだけキラに酷い事しておいてさ」
元々フレイと相性が良かったわけじゃないトールは、今ひとつ釈然としない
表情をしていたが、ミリィは悪戯っぽく微笑むと
「フレイはそれだけのことをやってのけたじゃない。何ならトールも私への
愛情の強さを証明するために、キラの特製スープを一気飲みしてみる？」
「そ…それは、ちょっと……」
トールは引き攣った顔で、心底嫌そうに首を振った。
「愛が足りないわよ、トール。ちっとは、フレイを見習いなさい。ねぇ、サイ？」
「ミリィ。あなた、イージスのパイロットがアスランさんだってこと、
フレイに話さなかった？」
先ほどから一人会話に乗ってこないサイに、ミリアリアが話しを振ったが、逆に
質問を受けてしまう。
「話すわけないじゃない」
「何を言っているの？」という表情のミリアリアの返事に、サイは再び思案顔に戻る。
「そんなことよりも、気をつけた方がいいじゃないのか、サイ？
うかうかしていると、キラにフレイを取られちゃうかもよ。
キラはどうやら、ずっとフレイに憧れていたみたいだからな」
「トール！」
トールは冗談半分の口調だったが、ミリアリアには、ちゃかして良い話題とは
思えなかった。本当に私の彼氏はデリカシーというものが足りない。
暗い表情で黙り込んだサイの様子を見て、トールも失言だったかと内心で反省した。
だが、この時サイの頭の中にあったのは、全く別な心配事だった。
「ストライクぅう……！！！ぶっ殺してやるうぅ……！！！」
ローラシア級ＭＳ搭載戦艦ガモフの中では、先ほどミリアリア達の酒の肴に
されていた人物が荒れに荒れていた。
「僕は止めたんだけどね。イザークはアスランを上回る実績が欲しくて、
焦っていたんだろうね」
ニコルの中性的な表情には、自慢の顔に傷をつけられたイザークに対する哀れみと、
何時も自分を臆病者と罵る彼の醜態を嘲る感情とが、微妙にカクテルしていた。
アスランは無言のまま頭を振った。
どうやらキラは、既にイザーク一人の手におえないレベルにまで成長したらしい。
イザークに同情する気はないが、ストライクのパイロットが、ついこの間まで
素人同然の女の子だと知ったら、プライドの高いイザークはどうなるのか。
決して人は悪くないはずのアスランだが、多少興味が沸かないでもなかった。
「これから、第八艦隊に総攻撃をかけるみたいだよ。
本当に蛇みたいに執念深いよね、僕達の隊長は…」
自分の思案に耽っていたアスランの意識が、ニコルの言葉によって現実に戻される。
「ニコル、お前は女の子なんだから、自分のことを僕って言うのはどうかと思うがな」
アスランの言葉に、ニコルは拗ねたように不機嫌になる。
「口癖だからしょうがないじゃない。それに戦場では男も女も関係ないでしょ？」
確かに戦闘には年齢も性別も関係なく、相対的な能力差のみが雌雄を決する。
修復されたデュエルに、アサルトシュラウドという新装甲が付け加えられる事になり、
イザークはストライク打倒に意欲満々らしいが、キラに対する贔屓目なしで見ても、
加速度的な成長を続けるキラが、弱齢の割には既に限界の見え始めたイザークに
遅れを取るとはアスランには思えなかった。
皮肉なものだ。虫一匹殺せなかった臆病なキラの中に並外れた戦闘能力が現存し、
それ故、その白く細い手を同胞の血で染めることになろうとは。
アスランの思考は、どうしてもキラ一人に収束してしまう。
これから第八艦隊とクルーゼ隊との総力戦が始まる。
キラは守りたい友達とやらと一緒に、既に艦を降りたのか。
それとも軍に留まり、再びアスランに銃口を向けるのか。
キラを想う私人として情と、彼女の才幹を高く評価する軍人としての理の、
情理両方の理由から、アスランは前者を願わずにはいられなかった。
マリュ―とキラの関係はCCAのアムロとブライトの関係みたい
でイイ。
>>キラ♀×フレ♂
イザ―ク恥ずかしい。トールの派手なジェスチャーが見たい。
キラの話を聞くと、微かに眉をひそめた。
「密輸品ね…管理局はなんて言ってるんだ？」
「少なくとも、爆発物や危険物じゃなさそうだって…それくらいしか分からないみたい」
こうして一緒に仕事をするようになるまでには紆余曲折があった。
終戦後、アスランは逮捕され、半年ほど拘禁された。
戦争犯罪人として裁かれる可能性もあったが、彼が父パトリックと対立していたのは明白だったし、プラントとしてはNJC搭載MSを開発した事実は隠蔽したかったから、それを持ち出した罪状を問うわけにはいかなかった。
結局、犯罪者として裁かれることなく解放されたわけだが、今の体制下では日陰者扱いされるのは仕方がない。
こうして曲がりなりにも復帰しているのは寛大な処置と言える。
「管理局も横柄だな…こっちを便利屋扱いにしている」
そう言ってアスランは苦笑したが、それ以上何も言わなかった。
「マードック曹長を連れていきたいな。機械の事は彼の方がプロだから」
「時間はあるから、構わないんじゃないか？曹長に連絡してみる」
そして、キラとマードックは管理局に向かっていた。
戦後数年も経つと、アーク・エンジェルやエターナルの元乗組員にも除隊する者が出たし、プラントや連合も一部については認めた。
中心人物以外は危険性は無いと判断されたからだし、それだけ戦争の緊張感が和らいできた証とも言えた。
キラやアスランはここに押し込められているようなものだが、マードックのように自ら居残っているのは珍しい。
「わけのわからない代物だって？珍しいねこんな所で…」
オイルと汗が入り交じった匂いを染みつかせたつなぎの前をはだけさせて、マードックは興味津々という風に言った。
「しかし、季節はずれの陽気だねぇ…きちんと天候のコントロールはしてるのか？」
「マードック曹長…」
キラはマリューから貰った資料を手渡しながら、前から思っていた疑問を口にしていた。あの後姿の幻が言わせたのかも知れなかった。
「曹長は、何でここに居残ったんですか？帰ろうと思えば、帰れたはず…」
マードックは資料の束を手にすると、それでキラの頭をポン、と叩いた。階級を気にしない態度は相変わらずだ。
「まぁ何だ。…整備士ってのは、艦内にいてあっちからこっちへ、移動しっぱなしだ。今までろくにかみさんの顔も見てやれなかった。戦争が終われば新しい場所に落ち着いて、かみさんを呼んで暮らすってのも悪くはないってことさ」
そういうものか、と思い、少し羨ましくもある。彼は彼なりに新しい生活を、前を向いて始めている。それにひきかえ…
「おい、着いたぜ。さーて問題のブツを拝見しましょうか」
管理局の職員に案内された先は、艦艇のモビルスーツ・デッキに匹敵するような大きさの倉庫の中だった。コンテナが山と積み上げられた片隅に、問題のものがシーツをかけられて、そっと置かれていた。
「工作機械の部品に紛れ込ませて持ち込んでたんです。恥ずかしながら発見したのは半ば偶然、と言ったところでして…」
一見謙遜しているが、職員は手柄を立てたことで明らかに得意げだった。キラとマードックは顔を見合わせて苦笑しながら、縦横50�兒擁�の物体とそれに繋がれた端末の前に立った。
「何処の誰から送られてきたか、分かるかい？」
「調査したのですが…地球に本社のある会社になってますが、ペーパーカンパニーですね。ダミーですよ」
職員の目が鋭くなった。
「受取人も…押収されたのを知って姿をくらましたのか、今のところ判らないんです」
「きな臭いねぇ…」
マードックは唸り、キラは持ってきていたハンディターミナルをその物体の端子に接続すると、キーボートの上に指を滑らせ始めていた。
「凄いですね…彼、何者なんです？」
キラのパフォーマンスに驚いた職員が、そっとマードックに聞いた。
「何、どうってこともないさ。普通の隊員だよ」
「トール、気がついた？」
「･･････ミリィ、ここは？」
「医療テントよ。あなたは助かったの」
「そうか、助かったんだ」
あのバズーカの衝撃を受けた時はもう駄目だと思ったのだが、自分は運が良かったらしい。ミリアリアの話によると、自分のデュエルが倒れた頃には連合軍の大部隊がすぐそこまでやってきており、ザフト軍はトールに止めを刺すことも無く逃げて行ったらしい。おかげでトールは命を拾ったことになるが、それでも負傷は免れなかった。重症ではないが、暫くＭＳには乗れないだろう。装甲は耐えられても、中の人間が衝撃に耐えられなかったのだ。
しかし、トールがボロボロになりながらも稼いだ時間は、多くの避難民の命を救っていた。追い掛けようとしたジンを拘束し、その間に避難民は進出してきた連合軍に保護されたのだから。
だが、そんな事情もミリアリアには関係無かった。トールが目をさました事でようやく落ちつきを取り戻したのか、キッと睨むといきなりトールの頬を張ったのだ。医療テントに鋭い音が響き、中にいた人達が驚いている。
「馬鹿、トールの馬鹿っ！」
「ミ、ミリィ･･････」
「あれほど言ったじゃない。無茶しちゃ駄目って。私がどれだけ心配したと思ってるのよ！」
「･･････ごめん、ミリィ」
これには一言も反論できない。自分が死にそうな目にあってミリアリアを心配させたのは事実だから。ミリアリアはトールの体に縋りついてとうとう泣き出してしまった。よほど心配していたのだろう。これだけ自分の身を案じてくれる彼女に、トールは嬉しさと同時に罪悪感を感じていた。
ミリアリアの声を聞いたのか、ヘリオポリスの友人達もテントに入って来た。
「トール、よかった、目を覚ましてる」
「ミリィに感謝しとけよ。ずっと付いててくれたんだから」
カズィとサイに言われてトールは神妙に頷いた。そしてキラとフレイを見る。
「２人とも、怪我は無い？」
「大丈夫だよ、掠り傷くらいだ」
「私も。キラがいなかったら死んでたけどね」
キラとフレイが感謝の眼差しでトールを見ている。トールが頑張ってくれなければ自分たちもジンに殺されていたかもしれないからだ。トールは２人が無事だったことを喜び、何度も頷いた。
そして、キースとナタルがやってきた。
「よう、生きてるな、トール？」
「キースさん、バジルール中尉？」
「ケーニッヒ二等兵。良くやってくれた」
ナタルが１枚の書類をトールに渡す。それを見たトールは驚いた。
「これは？」
「昇進辞令だ。君はＭＳで実戦を経験したからな。戦時特例を使って曹長に昇進してもらう。正式にパイロットになれば准尉になれるだろう」
「だが、その傷じゃ暫くは大人しくしていてもらわんとな。訓練は暫くの間はフレイに集中だ。場合によっちゃデュエルに乗ってもらわないといかん」
キースはどうしたものかとフレイを見る。だが、キースはフレイの様子が何時もと違うことに気付いた。どういうわけかは知らないが、フレイは真面目に考え込んでいるのだ。彼女になにか心変わりを誘うきっかけでもあったのだろうか。
「キースさん、なんでトールの出撃を許可したんです？」
「敵が来たからだ。彼もそれを望んだ」
「トールが前線に出れるほど訓練を積んでいたんですか。おかげで死にかけたんですよ！」
キラはキースに詰め寄った。身長差があるから自然と見上げる形になるが、キラの眼光は鋭かった。このままだと殴り掛かりそうな雰囲気を漂わせるキラに誰もが息を飲んだが、そのキラをトールが止めた。
「よせ、キラ」
「ト、トール」
「俺がキースさんやフラガ少佐に無理を言って出撃させてもらったんだ。戦闘中もフラガ少佐は俺を助けてくれた。感謝してるくらいだよ」
トールにはキースやフラガを恨むような気持ちは欠片も無かった。あそこで自分を落ちつかせてくれなければ確実に死んでいただろうから。戦場に出した上官の務めとして、フラガは自分を守ってくれたのだ。
トールにそう言われてはキラもどうすることも出来ない。勢いを失ったキラは力を感じさせない目でトールを見て、そして項垂れてしまった。
重症ではないトールはすぐにベッドから追い出されることになった。歩けない怪我ではないので仲間達と共に歩いてアークエンジェルに帰っている。そのすぐ傍に付いているミリアミアが健気で見ていて楽しい。
そんな不届きなことを考えているキースに、ナタルが話し掛けてきた。
「キース大尉、カスタフ作戦は、１週間後に開始されるそうです。艦長は参加を決意しました」
「そうか。思ったより時間が無いな。それだけ味方が追いこまれてるって事か」
１週間でアークエンジェルとスカイグラスパー、デュエルの修理を終えなくてはならない。なんという無茶なスケジュールだろうか。だが、やらなくてはならない。幸いデュエルの修理はすぐに終わるだろうから、いささか早いがフレイに実機訓練をさせることになるだろう。
「できれば、出撃させたくはないのだがな」
「フレイ・アルスターですか？」
「ああ、あの娘は、アネットに似てるからな」
何気ない口調で語ったキースだったが、自分の発言に気付いて思わず顔を顰めた。言うべきでない事を言ってしまった。とでも言いたげな顔だ。ナタルもそれに気付いたのか、こちらを見ている。
「キース大尉、アネットとは？」
「いや、気にしないでくれ。たいしたことじゃない」
やんわりと、だがハッキリとした拒絶の意思を示すキースに、ナタルはしぶしぶ自分を押さえた。変わりに別のことを聞く。
「キース大尉は、この作戦、勝てると思うのですか？」
「負ける戦はしたくないなあ」
「それは私も同じです。ですがこの作戦、無謀ではないでしょうか。ヨーロッパ方面軍だけでザフトの大軍を包囲殲滅しようなどと」
「その為のデュエルだろ。聞いた話じゃ、うち以外にもＭＳがあるってことだし」
「デュエルが２機と、バスターが１機です。確かにＸシリーズを量産したこれらの機体は強力ですが、敵の数に較べたら」
「まあ、心配するのは分かるけどね。まずは勝つ方法を考えようよ。負けた後のことはその時にまた考えれば良い」
「結局、俺の一年は血文字で描かれてるのさ。今更拭いようも無いよな」
ボソリと呟いた言葉。特に誰にも聞かれるような大きさではなかったが、辛うじて声を聞き取ったナタルが不思議そうにこっちを見た。
「何か仰いましたか？」
「いや、何でも無い」
キースは慌ててナタルの問い掛けを誤魔化すと、ふと悪戯を思いついたような顔でナタルを見た。
「どうだ中尉、良い酒があるんだけど、付き合わない？」
「わ、私は酒には弱いんです」
「心配要らないって。潰れたらちゃんと部屋まで送ってあげるから」
「･･････余計心配なんですが？」
疑惑の眼差しで自分を見てくるナタルに、キースは大袈裟にため息をついて見せた。
「そりゃないよ〜。俺はこう見えても紳士で通ってるんだぜ」
「日頃の行動が裏切ってますね」
しれっと言い返してくるナタルに、キースは自らの敗北を認めた。
「はい、すいませんでした」
肩を落とすキースの様子にナタルはちょっとした満足感を覚えていた。口でこの男を言い負かすのは悪い気がしない。そう思うと、自然と笑みが零れてしまった。
「ふふふ、分かりました。潰れるまでは呑みませんけど、付き合います」
「え、良いの？」
「上官の誘いを無下に断るのもどうかと思いますし」
キースの誘いに応じたナタル。だが、その深夜、完全に酔って寝てしまったナタルを困った顔でお姫様抱っこ状態で抱えてナタルの部屋に運んで行くキースの姿が数人のクルーに目撃され、艦内で話題となったりした。
遺作・・・限界が見え始めたってなんだよ(´Д⊂ヽ
この作品でも最後は薬中の首を取れるといいのですがｗ
それにしても、ニコルまで女だったはなあ。
>幻
マードックなかなかいいなｗ
>流離
トール生存はおろか、デュエルも無事とはめでたしめでたし。
やっぱ怪我が治るまでの間に今度はフレイたまの初陣もやってくるのか？
３年たっても心の傷は癒えませんか。キラが泣くことはフレイ様も望んでないだろうに････
>>ルージュルート
やっぱり正気を見せるなら１番汚染率の低いオルガ君でしたか。しかし、まさかあの物語とはｗ
果たしてフレイ様はあの本になにを見たのか。殺すことが救いになる、とは思いたくありませんが･････
>>キラ♀
哀れだイザーク、あの声を聞かれていたのか。一気に株が急降下か？
しかし、ミリィがフレイ様を見直している。確かに表面だけ見ればカッコよかったからなあ
>>幻
ううむ、お互いに存在を知らなかった姉妹。でもエリナ嬢は幸せを掴もうとしてるのね
キラはそんなエリナ嬢を探して何をするのだろうか。そしてラクスはどこに？ 幽閉でもされてるか
出会うと不幸になるかもしれないけど、探してしまうんだろうなあ、キラは
ナタル結局運ばれちゃうのね。
>>幻
山崎まさよしの「One more time One more Chance」という唄を思い出しました
♪いつでも探しているよ どっかに君の姿を
哀しいなキラ…そしてエリナ嬢とはどう絡むのか？楽しみなような怖いような
>>キラ♀
ﾄﾞｷｭｿフレイ様が♀キラたんをどう篭絡していくか、そしてミイラ取りがミイラに
なるのか？楽しみにしていますｗ
>>流離
凄い文章量にまず圧倒。現在コピペ祭り実施中ｗ
オリジナル部分の中でも、連合側のまともなｗ軍人が多数出て来るのが良いです
原作は小悪党とか狂信者しか居なかったような気がするので。
キラ、胸にポッカリ穴が空いちゃってますな・・・・・まぁ、無理もあるまい。
・・・光になった時、再会できるといいがな。
光になるってのはそんな便利なことじゃないｗ
フレイたまも会いに行かずに我慢してるんだけど、あまりにキラの鬱状態がひどいと迷うんだろうなあ(´Д⊂ヽ
ま、お盆には(ry
「あ、あれ、私、確か死んでキラと１つになった筈じゃ･･････」
身体を見回せば懐かしい赤い連合制服。手にはよく分からない紙切れが。そして、目の前には同じように唖然としているフラガとナタルが。
「･･････フラガ少佐、ナタルさん？」
「フレイ、それにフラガ少佐？」
「お嬢ちゃんに、バジルール中尉？」
３人とも間抜けな顔を見合わせて呆然としている。そして、いきなり足元が大きく揺れた。その衝撃に３人は我にかえる。
「こいつは、攻撃か。だけどここは？」
「ここは、たしかアラスカの地下にある潜水艦基地ですね」
「いえ、それよりも、なんで私達生きてるんです。たしかフラガ少佐もナタルさんもローエングリンで吹っ飛んで、私は救命艇で死んだ筈なのに？」
そう、ここにいる３人はたしかに死んだ筈なのだ。なのになんでか生きて３人で顔を付き合わせている。そう、この３人が揃っている場所と言えば･･････
「どうやら、アラスカが攻撃された日みたいだな。もうすぐここはサイクロプスで吹っ飛ぶぞ」
「不味いですね。ですが、どうすれば･･････」
「私達、過去に戻ってきたって言うんですか。でもなんでそんな事に？」
「さあな、そんな事分からんよ。だが、１つだけ言える事があるな」
フラガは面白くて堪らないという顔でフレイとナタルを見た。
「俺達、もう一度やり直せるって事だろ。あの悲惨過ぎる歴史をさ」
「「あっ」」
２人はようやくその事に思いあたった。そうなのだ。自分たちはあの悲劇が始まる前に戻ってきたのだ。ならば、これから起きる悲劇を回避する手段もあるかもしれない。
「それなら、早くアークエンジェルに戻らないと」
「そうだな、バジルール中尉はどうする？」
「わ、私は･･･････」
躊躇いを見せるナタル。だが、ナタルの服の袖をフレイがぎゅっと掴んできた。その目はまるで姉を見るかのような親愛の色が見て取れる。
「行きましょう、ナタルさん。もう仲間同士で殺し合うなんて嫌ですよ」
「フレイ、だが、私は軍人･･････」
「あの時だって、最後には逆らってくれたじゃないですか。ナタルさんだって艦長やキラと戦いたくはなかった筈です！」
フレイの言葉に押し黙るナタル。あの時の事を思いだし、自分の内面に１番近くまで踏み込んできた少女を見やる。自分は、この娘にだけは生き残って欲しかったのだ。
「フレイ、キラ・ヤマトには会えたのか？」
ナタルの問い掛けに、フレイは少し考えた後、泣き笑いのような笑顔を浮かべて頷いた。
「生きては会えませんでしたけど、キラ、私を守ってくれたんです。結局私は死んじゃいましたけどね。でもキラ、私なんかの為に泣いてくれたんです。なんでか分かりませんけど、死んだ後にもう一度キラの所に行けて、謝れて。それが、凄く嬉しかった」
「･･････そう、か」
ナタルはどう答えて良い物か分からなかった。結局死んでしまったのでは意味がないのではと思うのだが、本人が満足できたのならばそれで良いという気もする。そして、自分は･･････
「後悔しないように生きるのも良いか」
「ナタルさん！」
フレイが嬉そうな顔でナタルに抱きついた。フラガが柔らかい微笑を浮かべる。すでに一度死んだ身なのだ。もう過去のしがらみや因縁などに囚われるべきではないだろう。それに、ナタルのドミニオンは強すぎた。できれば敵には回したくない。というか、ナタルがＣＩＣに居ると居ないではアークエンジェルの戦闘力がまるで変わってしまう。
「じゃあ、行こうか。３座の戦闘機を探して乗りこむんだ。俺が操縦して無事にアークエンジェルにまで届けてやる」
「はい！」
「分かりました」
２人は頷いた。そして、３人の挑戦が今始まる。あの人に会いたいから、あの未来を変えたいから、あの艦に戻りたいから、彼らは戻る。あの白い、自分たちの家へ。
「おい、何をしている。早く降りろ。素人が動かせる機体じゃない！」
「素人だあ。ふざけるな。俺を誰だと思ってやがる！」
素人呼ばわりされてフラガのプロ意識が爆発した。その後をナタルが受けもつ。
「この人はエンディミオンの鷹、ムウ・ラ・フラガ少佐だ！」
「エ、エンディミオンの鷹って、あの･･････」
「敵が居るんだ。この機体を借りるぞ！」
「で、ですが、後ろの２人は？」
「アークエンジェルのクルーだよ。これからアークエンジェルに届けた後、スカイグラスパーに乗り換えて迎撃に出る。ごちゃごちゃ言ってないで誘導しろ！」
「は、はい！」
慌てふためいて管制に駆けて行く。それを見送ったフラガは２人にヘルメットを被るように言うと、機体を起動していった。程無くして発進ＯＫの指示が出る。フラガはそれに頷くと、管制に通信を繋いだ。
「おい、俺達が出撃したら、基地内に撤退命令を出せ。少なくとも１０キロは離れるように言うんだ！」
「何故でありますか？」
「上層部はこの基地を見捨ててる。基地の地下には巨大なサイクロプスが設置されていて、ザフトが中に入ってきたら点火するつもりだ！」
「まさか、そんな馬鹿な事が･･････」
「俺はこの目で見たんだよ。司令部はもう、もぬけの殻だ。俺達は捨て駒なんだよ！」
「････････････････････」
管制からの答えがない。戸惑っているのだろうか。フラガはこれ以上の会話を打ち切ると、機体を発進させた。
「ムウ・ラ・フラガ、出る！」
短い滑走路から器用に飛び出すと、そのまま急いでアークエンジェルの方に向う。どこに居るのかはわかっている。問題は無事に辿り着けるかだ。何しろ回りは敵だらけだから。
「少佐、上から来ますよ！」
「何処からだ、俺には見えんぞ！？」
「私には分かります･･･････右に避けて下さい！」
フレイの叫びに反応して機体を右にずらす。すると、その直後に上空から無数の火線が降り注いできた。助かったと安心しながらもフラガは後部座席に座るフレイに問い掛ける。
「なんで分かったんだ？」
「何となくですけれど、感じるんです。周りにことが立体的に捉えられると言うか、とにかく周りの動きが把握できるんです」
「･･････俺にも同じような事がときたまあるが、なるほどな。一度死んで変な能力に目覚めたのかもな」
「･･････何時もなら非科学的とか言ってしまうんですが、死人がこうして過去をやり直してるんですから科学も常識も無いですね」
「違いない。俺達が非常識の筆頭だからな！」
何となく頭が痛そうなナタルの言葉に、フラガが大声で同意し、フレイはクスクス笑い出した。まったく、何でこんな事になったんだか。
ほどなくしてアークエンジェルの姿が見えてきた。対空砲火を吹き上げて敵と戦っている。だが、その戦いぶりにナタルが舌打ちした。
「何をしてるんだ。アレではただ撃ちまくっているだけではないか！」
「まあ、その文句は帰ってから幾らでも言ってやってくれ。これから着艦するぞ！」
「アークエンジェルに通信を繋ぎます！」
フレイが通信機を操作してアークエンジェルに繋ごうとする。暫してこずったが、なんとか戦闘管制のミリアリアと繋げる事ができた。
「はい、こちらアークエンジェル」
「ミリィ、ミリィね！」
「その声、フレイ？」
「これからアークエンジェルに着艦するわ。中の人を退避させて！」
「な、どういう事よ？」
「説明してる暇はないの。早く！」
もうすでにフラガは着艦コースに入っている。もう引き返すこともできないのだ。通信機の向こうではなにやら言い争ってる声が聞こえる。フレイは苦笑するとフラガにＯＫをだした。
「やれやれ、まさかまたこれをやるハメになるとはな。２人とも、大丈夫か？」
「わ、私は大丈夫ですが、フレイが」
ナタルの声に後部座席を見てみれば、フレイが衝撃ですっかり目を回していた。
「きゅ―――･･･････・」
「ああ、またお約束なくらい可愛く目を回してるな」
「時間がありません。少佐、頼みます！」
「お、俺があ！？」
フラガは悲鳴を上げたが、ナタルは聞く様子もない。前世で何があったのかは知らないが、ナタルはすっかりフレイのお姉さんと化しているようだ。仕方なくフラガはフレイを背負ってコクピットを降りる。周りの整備兵たちが驚いているが今は構っている暇はなかった。とにかく今は艦橋に行かなくては。
艦橋ではマリュ−が指揮をとっていた。そこに３人が駆け込んでくる。フレイも目を覚ましていた。マリュ−は駆け込んで来た３人に目を丸くして驚く。
「しょ、少佐、それにナタルにアルスター？」
「よ、よお、随分久しぶり」
フレイを背負って走ったせいか、すっかり息が上がっているフラガ。それに付いてきたナタルはまだ息が整っていない。変わりにフラガの背中からフレイが叫んだ。
「艦長、すぐにここから離れてください。アラスカはもうすぐサイクロプスで自爆します！」
「な、なにを言って」
「本当の事だ。アラスカの地下には半径１０キロは吹き飛ぶサイズのサイクロプスが仕掛けられてる。俺達はザフトを引きずり込む為の生餌なんだよ！」
フラガの言葉に艦橋にいる全員が驚く。まさか、そんな事があるわけがないと誰もが思いたかったが、３人の表情がそれを否定している。マリュ−は悔しさと怒りで顔を赤くし、他の者も怯えと怒りを見せている。
「俺はスカイグラスパーで出る。バジルール中尉、ＣＩＣに付け。お嬢ちゃんは･･･････」
フレイはなにも出来ないことを思い出したフラガはどうしたものかと思ったが、ナタルがその後を引き継いだ。
「フレイ、副操舵席に座れ、出来るな」
「はい、１通りは習いましたから」
フレイとナタルは頷き会うとそれぞれの席に付いた。他の全員が驚いている。何時からナタルはフレイの事をファーストネームで呼ぶようになったのだろうか。
ナタルが帰ってきたアークエンジェルの戦闘力は一気に跳ね上がった。群がるザフトＭＳは急に命中率が跳ね上がった対空砲火にたじろぎ、慌てて距離をとっていく。これまでも凄い戦艦だったのだが、アークエンジェルの不沈艦伝説はナタルの指揮があってこそなのだ。まして今のナタルはドミニオンを指揮した経験で更に磨きがかかっている。
とんでもない強さを発揮するアークエンジェルに続くように水上艦艇が離脱を計る。すでに地上部隊や航空部隊も撤退を始めているらしい。ザフトも力の限りこれを食い止めようとするが、アークエンジェルはふざけた強さを発揮してこれを食い破って行く。おまけに回避運動が凄く上手い。何故なら･･･････
「艦長、右に避けてください！」
「え、アルスター二等兵？」
「艦長、今はフレイの言う通りにしてください！」
こんな感じでフレイが回避行動を行なわせ、アークエンジェルは何故か敵弾を面白いように躱していたのだ。更にフラガのスカイグラスパーが飛びまわって敵機を落としている。３人が考えている事は、さっさとキラが来てくれないかな−という、まさにその一点であった。
そして戦う事十数分。ようやく空の彼方から１機のＭＳが降ってきた。ストライクに良く似た白いＭＳ。それを見た途端、フレイは叫んだ。
「キラッ！」
それを聞いた全員が驚き、目の前の機体を見る。そして向こうから送られた通信にはたしかにキラが映っていた。
こうして、フリーダムの援護を受けてアークエンジェルを含む多数の艦がアラスカを脱出できたのである。そして、３人の挑戦もここから始まったのだ。
何気にフレイがＮＴ覚醒し終えてますが、まあ気にしないで下さいｗ
・・・3人の侍？ イカしてますなｗ
お も し ろ い 。
…ところでナタルのいなくなったドミニオンのその後が非常にヤヴァイような。
最後の務めを果たしたキラは、ホッと安堵の溜息を漏らした。
これでやっと船を降りられる。もう戦わないで済むんだ。
途中、マリューから改めて礼を言われたり、ハルバートン提督とかいう
雲の上のお偉いさんに声を掛けられたりもしたが、キラが一番印象に残って
いたのは、自分を実験動物のように見つめるナタルの冷たい目線だった。
キラは、彼女がキラの両親を拘束するという人質紛いの提案をしていたこと
は知らなかったが、ナタルが自分に何を望んでいるのかは分かっていた。
アークエンジェルの今後の命運を思えば、非情に徹しようとするナタルの
気持ちも分かるし、そこから逃げようとするキラの胸も痛む。
ただ、それでもキラは、もうこれ以上戦いたくなかった。
死の恐怖に怯えるのも、人を殺すのも嫌だが、それ以上にキラが一番怖かったのは、
徐々にではあるが、自分の中から人を殺しているという感覚が薄れつつあることだ。
このまま戦い続ければ、次第に現実感覚が麻痺し泣き虫で臆病なキラは消失し、
人を殺すことなど何とも思わない冷酷な殺戮兵器とキラは化してしまうのではないか。
自分の中から、長年キラを構成し続けてきた大切な想いが失われる。
そのキラの精神的な死は、単純な肉体的な死よりも、はるかに恐ろしいことだった。
でも…、
キラはフレイの端整な笑顔を思い出す。
これでフレイともお別れすることになるのかしら。
せっかく分かり合えてきたのに…。
喜んだり落ち込んだりと浮き沈みの激しいキラの横顔に、複数の小さな影がさした。
「お姉ちゃん」
「えっ？」
何時の間にか目の前に四人の子供が現れ、子供特有の無邪気な瞳でキラを
見つめている。年齢は１２歳から６歳ぐらいまでと区々だ。
「お姉ちゃん、あのカッコイイロボットのパイロットなんでしょ？」
「えっ…ええ……」
「いままで守ってくれて、ありがとう」
戸惑うキラに、エルと呼ばれていた女の子はペコリと頭を下げ、二人の男の子も倣う。
一人ボーとキラを見つめる幼少の女の子に気づいた坊主頭の男の子が、
「ほら、お前も…」と頭を下げさせた。どうやら兄妹らしい。
「ママは、お姉ちゃんはコーヒーメイカーだから近づくなって言ってたけど、
おれたちは気にしない。お姉ちゃん、いつもかなしそうに泣いてたの知ってるから」
「コーディネイターでしょ、カッツ」
「どっちだって良いだろ、そんなの。お姉ちゃんはお姉ちゃんだし」
「あなたたち………」
未だ偏見や差別とは無縁な子供たちの暖かさに、元々涙腺の弱いキラの視界が滲んで来た。
「僕ね。大きくなったら、しょうらい軍人になるんだ。それで強くなって、
お姉ちゃんが泣かないですむように、こんどは僕がお姉ちゃんを守ってあげるね」
オカッパ頭の男の子が瞳を輝かせながら宣言する。未だ現実の厳しさを知らないが
故の決意表明だが、その情熱そのものには嘘はなかった。
キラはあまりに愛しくて、子供達を強く抱き締めた。
「いいのよ、無理して軍人になんかならなくても。
貴方達が大きくなる頃には、きっと戦争は終わっているわ」
キラの瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。
自分の正義を疑い何度も苦悩したキラだったが、目の前の子供たちの存在
そのものが、今までキラのやってきた事を肯定してくれたような気がして、
キラはたまらなく救われた気分だった。
「ねえ、一緒に写真取ってくれる？」
キラはコクリと肯くと、近くにいたマードックに頼んでシャッターを押してもらう。
にこやかに手を振り親元へと帰っていく子供たちの姿を、キラも手を振りながら
笑顔で見送り、その姿が視界から消えると急に思案顔で俯いた。
本当に終わるのかしら、この戦争……。
誰かが責任を以って終わらせなければ、あの子たちが再び戦火に巻き込まれるのでは。
ハルバートン提督は、私一人の力でどうなるものでもないと言っていたけど…。
私は本当にこのまま艦を降りていいの？
キラは、子供たちからもらったフィルムを左手で弄びながら、これからの自身の居場所
に疑問を持ち始めていた。
98氏に言われてしまったが お も し ろ い
純粋にわくわくしますた！
つーか、皆…ナタルのファーストネーム呼びより
フレイ様が当たり前のように 副 操 舵 席 につく事の方におどろけｗ
そして、「さっさとキラ来てくれないかなー」にワロタｗ
ナタルとフレイ様がなぜ知ってる？と思ったが…面白いのですべてヨシ！（･∀･）！
「除隊許可証ですか？」
「例え非常事態でも、民間人が戦闘行為を行えば犯罪になる。それを回避するためだ」
ナタルとハルバートン提督の副官のホフマン大佐が、ヘリオポリス四人組に、除隊
についての手続きについて説明し、トール達は思い思いの顔つきで除隊許可証と
睨めっこしている。
「あの、すいません…」
さらに説明を続けようとする二人に、フレイが遠慮がちに声をかける。
「君は彼らと同じ措置は必要ないぞ。もっとも戦意だけは盛んみたいだがな」
ナタルが二度も艦橋に侵入したフレイの行為を皮肉ったが、フレイは動じずに
軍への志願を宣言し、一同を驚かせる。
そこから先はフレイの独壇場だった。
フレイは手振り身振りに、時には涙を交えて熱演し、皆に自分の想いを訴えた。
「僕は早く母の仕事を手伝いたくて、帝王学を学んできました。でも、安全な学舎
で得た知識なんか、現実の修羅場じゃ何の役にも立たない事に気づいたんです。
本当の平和が戦わないと得られないのなら、今自分に出来る精一杯の事をして、
僕も戦いたいんです。それこそ、ずっと戦争を終わらせようと必死に奔走してきた、
亡き母が僕に望んでいた事だと思うので…」
フレイが、戦死したアルスター外務次官の息子だと知ったホフマンは、フレイの
志願を好意的に受け止めてくれたみたいだった。
そこから先の展開は、ほぼフレイの予測通りに推移した。
フレイ一人を置いておけないと、まずサイが除隊許可証を破り捨て、トールと
ミリアリアもそれに続き、カズィは最後まで迷っていたが、結局、場の雰囲気に
押し流されるようにしぶしぶと破り捨てた。
「キラは降りるよな」
「そうね、これ以上キラの辛そうな泣き顔は見たくないしね」
「時間もないことだし、キラに届けてやろうぜ」
なんとまあ、御目出度い奴らだ。
キラに除隊許可証を届けようと部屋を出て行く四人の後姿を見つめながら、
表情を隠すように左手で自分の顔を抑えたフレイは、笑いの衝動を噛み殺した。
無知なる優しさは、打算的な悪意よりも、はるかにえげつなく他人の運命を狂わせる。
キラを思いやったその自分達の行動こそが、結果的にキラをこの艦に縛り付けること
になるのに何故気づかない。
結局、知らないという事は罪なのだ。気づかなかったでは済まされない。
いずれ彼らは自ら選択した愚かな行為の代償を、己の命で支払う事になるのだろうか。
まぁ、その時には、まず間違いなく自分も一蓮托生だろうが。
「逃がさないよ、キラ」
クルーゼの率いる大戦力が接近している事は、フレイの耳にも入っている。
恐らく今度はアスラン君も出陣してくるだろう。
ロミオとジュリエット、はたまたウエストサイド物語か。
この壮大なスペースオペラに主演女優が欠席するとあっては、精彩に欠けること
甚だしいではないか。
後はただ待つだけだ。
サイ達が自ら意図せずに、キラをフレイの目の前へ送り届けてくれるのを。
今のフレイにとっては、全ては駒でしかなかった。
自分を心配して艦に残った婚約者の想いも、そしてフレイ自身の生命さえも…。
また面白い作品がきたよ。イイヨ。
フレイ様の「きゅ―――･･･････・」イイヨイイヨ。
>流離
デュエル2機にバスター１機！！！すごい事になりそふ。
フレイ様いよいよデュエルデビュー？
すみません、入れ違いました
＞キラ女フレイ男
今回も乙です〜！
をを…泣かせるじゃねえか、ガキ共 ･ﾟ･（´Д⊂ヽ･ﾟ･
キラはどうするのかな…？
いやもちろん、揺らぎだしたキラにここで運命の悪魔（笑）が一押しを…
逆に突き放したりしたら…「キラは戻れよ。あれには俺が乗る」…キラたん逃げられないでしょうねえ〜
次が気になりまつ！
また重なった＿｜￣｜○ マジすんません
しかし、男フレイ様、イイ狂いっぷりですな。かっこいい。
スペースオペラ…駒…
その表現の芝居度はもはや仮面すら凌ぐんじゃないかｗ
この時間に投下。乙です。
フレイ様コワッ。エル兄妹がけなげで
けなげで。イイヨ。
見苦しい点もありますが、お許しを
ちょっと季節はずれですが、ご勘弁を(;´д｀)
「キラ、ちょっと散歩しない？食後の運動っていうわけ
じゃないけど、どう？」
フレイが散歩したいなんて、どうしたんだろう？
きょうは仕事が早く終わり、一緒に家で夕食をたべようと
声をかけたらめずらしくフレイも承諾して夕食を一緒に
とることにした。いつもはぼくが食事全般担当だけど、
フレイが手伝ってくれておいしいカレーライスができた
味もまぁまぁだったし、フレイも満足してくれたようだ。
そんな食後の後に散歩しようなんて、どうしたのかな？
「いいけど、どこまでいくの？遠くはやだよ。」
「すぐそこよ、そこの川沿いをちょっと歩くのよ、
いいでしょ？」
「いいよ、いこう」
ぼくたちが住んでいるところは都会から離れてて、
静寂なところだ。そんなに人はいないし、車もそんなに
通らない。少し歩けば山々がみえる。
フレイは最初いやがったけど、今ではこの土地を
気に入ってくれてるようだ。
川の上流にいくと魚も釣れるし、キャンプだってできる。
川をのぼり方面に歩き出した。夜ということもあり、
電灯が足元を照らしてるが、視界が良好ということでも
ない。いっしょに手を握り、懐中電灯を持ちながら
歩いていった。
しばらくいろんなことをしゃべりながら、歩いてたら
「見て、キラお星様がキレイ〜」
「そうだね、もうすぐ夏だし、夏の夜空もいいよね」
「ね〜キラ、明日は何の日か知ってる？」
「明日は7月え〜と・・・・・たしか7日だよね、
七夕だ！」
「そうよ、七夕よ。とてもロマンチックな日よ、
ね〜知ってる？七夕の物語って？」
「七夕の物語って・・・まいったな〜 ぼくそういうの
うとい っていうか、興味がないって言うか・・・
ごめん、よく知らないんだ。」
「だめよね〜キラは、いい 七夕物語くらい知ってないと 笑われるわよ」
となかばあきれながらもフレイは語り始めた。
とんからり とんとんからり
天の川の 西の方から はたを折る軽やかな音が聞こえてきます。おりひめは 天の神様の娘ではたをおるのが
仕事でした。
おりひめの織るはたはとても
美しいもので神様たちの間でも評判でした。
おりひめが 毎日一生懸命 はたを織ってるのをみていた父は、 ある日 おりひめにいいました
「おりひめ、たまには手を休め、化粧でもしたり
どこか外に行きたいのではないのか」
するとおりひめは にっこり笑いながら
「いいえ父上 わたしはこうして はたを織っているだけでとても楽しいのです」
父は おりひめが本当に幸せなのかとすこし考えるようになりました。
「そうだ おりひめに むこをさがしてやろう
そうすれば娘もよろこぶだろう」
そうかんがえた父は どこかによい若者がいないかと
探しにでかけました。
天の川の東に 牛の世話をしている ひこぼしという
若者を見つけました。
おりひめの父は ひこぼしがまじめで 牛の世話をして
いるすがたをみて ひこぼしのことを 気に入りました。
そして二人を結婚させると決めたのです。
二人は結婚し とても仲の良い夫婦となりました。
父は おりひめが幸せになってよかったとだれよりも
よろこんだのでした。
ふたりは毎日 遊んでばかりいるようになりました
天の川できれいな星をひろったり 空をかけまわったり
してとても幸せそうでした。
しかし・・・
あまのがわで きれいなほしをひろったり そらをかけまわったりして ふたりはとても しあわせそうでした
ところが・・・
おりひめとひこぼしは 仕事のことをすっかりわすれて
いるようでした
そんな様子を見ていたた父は ふたりに呼びいいました
「おまえたち そろそろしごとをしたらどうだ」
するとふたりは「はい わかりました」
と返事をして また あそびはじめるのでした
父はとうとう ふたりを呼んでいいました
「おい おまえたち！ 仕事をしないで 遊んでばかり
いるとはどういうことだ！
もう ふたりでいっしょにくらすことなど ゆるさん！
もとどおり 天の川の東と西にわかれなさい」
別れろだなんて それだけは お許しを」
ふたりは泣いて懇願しました。
しかし父は聞き入れてくれませんでした
二人のあいだには 水がわき、あっというまに 川に
なってしまいました。
川は みるみるうちに 大きくなり 二人は 遠く離れ
離れになってしまいました。
二人は別れを悲しみました。
川は大きくなり 手をふっても みえなくなりました
こうしてふたりは 天の川の東と西に別れてくらすことになりました。
それから毎日 おりひめはひこぼしのことを思い出しは
泣いてばかりいるようになってしまいました。
父は いいました
「そんなに ひこぼしにあいたいのならば
おまえたちが元のように仕事に専念するのなら
一年に一度７月７日の晩だけ会うことを許す」
それからというもの ふたりは７月７日になるのを
楽しみに、おりひめは はたを織るようになり
ひこぼしも 牛の世話 するようになったのです。
おりひめの織るはたは 評判になり ひこぼしも
よく働く若者と噂になりました
二人の働く姿は 前よりも真剣になり 父も母も
ほっとしました。
そして ７月７日になると二人は天の川を渡り
一年に一度、会ったのでした
でも 雨がふると 天の川の水が増し、川を渡ることが
出来ないのでした。
そんなときは かささぎという鳥が飛んできて
二人をはこんでくれるのでした。
に
「なんかとても悲しい話だね。一年に一回だけなんて」
「キラ、もし私がおりひめならキラはひこぼしになって くれる？」
「もちろん（フレイを抱き寄せる）ずっといたいんだ
フレイと・・・守るから・・・フレイを」
「ありがとうキラ、もし私が死んでもあの輝く星のように
キラを照らし続けたい、わたしの想いが光となって」
「フレイ、ぼくもだよ。フレイの想いはかわらない、
星の光がいつまでも輝くように・・・」
「キラ（涙）！キラはたんざくにどんな願い事を書くの」
「それは内緒 明日の朝、ベランダのささの葉をみて」
「ちょっと教えてよ〜キラ。」
「ひょっとしてわたしの願い事見たの？」
「知らないよ、そんなの 帰ろ フレイ」
フレイが帰り道に足を痛めてしまったので代わりに
おんぶして帰る事にした。
「あれキラは？」
フレイはちょっと遅めに起きたようだ。
フレイは昨日のことをおもいだしベランダの笹の葉を
見た。満面の笑顔にかわった。
その二つには
「いつまでもキラと一緒にいられますように」
「いつまでもフレイといられますよう」
すんません やっぱりへただな〜 アイデアはうかぶんですが文章にするのは
まだまだだな〜
最後によんでくださった方 ヴェリサンクスです。
またチャレンジします。
ゴク・・・フレイきゅん、なんか智謀がパワーアップしてますな。
(･∀･)カコイイ！(笑)
>ラブラブ
なんか既視感が…と思ったらあそこからきた方ですなｗ
「あそこは酷い所だった。ビームは直進しないし、まともに歩くのも大変ときてる」
「たしか、砂漠の虎、バルトフェルド隊長が足付きに倒されたと聞きましたけど？」
ニコルの問いに、イザークは小さく頷いた。
「ああ、あのストライクのパイロット、実戦慣れしてきている。それに足付きもな」
「それで、足付きは今どこに居るんだ？」
ディアッカは１番の重要事項を問い質した。彼らは足付きを沈める為にここに来たのだ。だが、イザークは彼らしくも無く重くるしい声でそれに答えた。
「奴は、ギリシアを突破して連合の勢力圏に入ったようだ。ギリシアに展開してた友軍がかなりの被害を出したらしい」
「かなりって言うと？」
「ＭＳだけで３０機以上を喪失、地上車両や戦闘機はその数倍だ」
イザークの答えにニコルとディアッカは驚愕した。たった１隻の戦艦にそれほどの戦闘力があるなどと誰が思うだろう。だが、イザークの話はまだ終わっていなかった。
「それだけじゃない。ナチュラルどもはいよいよＭＳの実戦配備を進めてるらしい。ついこの間攻撃に向った部隊がデュエルの迎撃を受けたそうだ」
「デュエルですって。敵はついに量産を始めたんですか！」
ニコルは厄介な事になったと思い、顔を顰めた。自分たちが連合から奪った４機のＧ。その性能は他ならぬ自分たちが１番良く知っている。もしあれが１０機も出てきたら大変な事になるだろう。ジンやザウートでは対処できないのだから。
「だがまあ、そのデュエルはパイロットが新米だったのかＯＳがゴミなのか、とにかく動きが悪かったらしい。攻撃隊の損害の大半は後から来た地上部隊の反撃によるらしいからな」
「敵はまだＭＳに慣れていないという事ですか」
「そうらしい。まあ、所詮はナチュラルが使う機体だ。俺達ほどの強さは出せないだろうがな」
イザークはナチュラルへの侮蔑を隠そうともしないこれがイザークのイザークたる所だ。ディアッカが面白そうに笑っている。ニコルは同意しかねるのか、複雑そうだ。
３人からすこし離れた所でアスランはミゲルと今後の事を話していた。
「隊長も間もなく宇宙から降りてくるらしい。そうすればクルーゼ隊も本格的に動き出せる訳だな」
「ああ。だが、どうして俺達が地上に降ろされたのか」
「宇宙にはもう月にしか敵が居ないからな。有効な戦力を遊ばせておく余裕は無いって事じゃないのか？」
ミゲルの答えにアスランは頷きつつも、何処か釈然としないものを感じていた。なんでこの時期に自分たちが地球になど。ここで何か起きるのだろうか。
アスラン達はまだ知らされていなかったが、ザフトはヨーロッパの連合勢力を駆逐するべく、総攻撃に出ようとしていたのである。いうなれば、アスラン達はその応援なのだ。赤服４人と、これにほぼ匹敵するパイロット１人の増援は確かに意味があるだろう。だが、彼らは地上戦の経験が無い。どれだけ役に立つか。
それから暫くして、次の便が降下してきた。そのシャトルから降りてきたクルーゼに一斉に敬礼する。クルーゼは片手を上げて彼らに答えると、付いて来る様に言って自ら歩き出した。その後に付いて行く。そのなんだか異様な一団はクルーゼにあてがわれている部屋に入ると、それぞれに好きな席に付いた。クルーゼも荷物を置くと肩をほぐしている。
「やれやれ、地球の重力には体が馴染まないな」
「まったくです。ナチュラルどもはどうしてこんな所に住みたがるんだか？」
ディアッカが茶化して言う。イザークとミゲルが同意だと言いたげにクスクス笑い出した。
「隊長、これは！？」
「見ての通りだ。君達はヨーロッパ方面軍に一時的に編入される。ヨーロッパ方面での攻勢を支援する為だ」
「ですが、我々は足付きを追うのではないのですか！？」
イザークが椅子を蹴って立ちあがり、クルーゼに食って掛かる。クルーゼはイザークの怒りなど何処吹く風とばかりに平然としていた。それどころか、イザークを激怒させかねない話を始めたのだから。
「ああそうだ。１つ言い忘れていた。私はこれから地上軍で正式に一軍を任されることになった。そこで、君達は私直属の独立小隊として動いてもらう事になる。アスラン・ザラ。君が小隊長を勤めるんだ」
「わ、私がですか？」
アスランが驚いて聞き返す。イザークがもの凄い目でアスランを睨んでいるが気付かないほどだ。クルーゼはアスランの問いに、まるでわざとイザークを煽っているとしか思えないような言い方で答えた。
「君以外にいないと思うがね。この中で１番優れているのは君だと私は考えている」
余りと言えば余りの言葉にディアッカとニコルとミゲルはどうしたものかという顔でイザークを見た。案の定イザークは激怒に顔を赤くしている。
なにかを言おうと口を開いたイザークだったが、クルーゼがいきなり自分のほうを見たので文句を言うタイミングを失ってしまい、変な恰好で固まってしまった。
「そうそう、イザークにも１個小隊を纏めてもらうぞ。アスランの指揮下には入るがな。アスランにはニコルとミゲル。イザークにはディアッカが付けられる。それぞれの隊には後で新人が配属されるから、頼むぞ」
クルーゼの付け足したような言葉にイザークは渋々納得した。アスランの下という立場には変わり無いが、正式に部隊１つを任されることになったのだから。
「とにかく、君達の最初の任務はヨーロッパ方面軍の支援だ。遊撃の位置に置かれるから、司令部の指示で動いてくれ」
これでクルーゼの話は終わった。クルーゼが退室した後、残された５人はそれぞれにクルーゼの命令を考えている。戸惑うアスランの肩をミゲルが叩いた。
「よう、やったな。大出世じゃないか」
「ミゲル･･････俺なんかで良いのかな。まだお前の方が」
「なに言ってんだよ。自身持てって」
ミゲルに励まされたアスランだが、その顔色は冴えなかった。だが、そんなアスランが強烈な視線を感じて顔を上げる。そこには、嫉妬と憎悪に顔を歪めるイザークの姿があった。
「イ、 イザーク」
「よかったな、ザラ隊長」
強烈な皮肉を残してイザークは部屋を後にした。それを追ってディアッカが出て行く。ニコルはアスランにすまなそうに頭を下げて２人を追っていった。イザークが自分にライバル意識をもっている事は知って居たが、まさか憎悪の視線まで向けられるとは思っていなかったアスランは流石に落ちこんでしまった。ミゲルも励ます言葉を見つけられず、傍らに立っているだけだ。
翌日、アスランとニコル、ミゲルは２人の新人パイロットを出迎えた。緑色の制服を着た、自分たちと同い年くらいの少年と少女である。２人は３人の姿を見ると新兵らしいかたくるしい敬礼をし
「ザラ隊に配属されました、ジャック・ライアンであります」
「同じく、エルフィ・バートンです」
２人の敬礼に、アスランも敬礼を返して自己紹介した。
「アスラン・ザラだ・着任を歓迎するよ。後ろの２人がニコル・アルマフィとミゲル・アイマンだ。２人とも腕は確かだから、分からない事は教えてもらうと良い」
「「はいっ」」
良い返事を返してくる２人に、ニコルとミゲルは楽しそうに笑いながら２人の前に出てきた。
「固くならなくても良いですよ。うちの隊長は良い人ですから」
「たんなるお人好しとも言うけどな」
ミゲルの突っ込みにニコルが苦笑し、アスランがむっとした顔になった。そんなアスランを見てニコルとミゲルが笑い出してしまい、新兵２人は困った顔でオロオロと隊長と先輩２人を見ているしかなかったのである。
３人が笑い終わるのを待って、ジャックがアスランに問い掛けた。
「隊長、我々はヨーロッパの攻勢に投入されるという噂は、本当なのでしょうか？」
「本当だ。君達の実力もそこで見させてもらう事になるだろう」
「大丈夫ですよ、ジュール隊の連中なんかに負けたりしません」
「おいおい、これから一緒にやっていく仲間にもうライバル意識か？」
ミゲルが呆れ顔でジャックを窘める。新人が来た事で彼の兄貴分としての役割はますます重要性を増したかもしれない。ニコルとエルフィは困った顔をしているアスランを見てまた面白そうに笑っている。
これが、ザラ隊の出発であった。
次回からはフレイがやっと自分で答えを探し出しますよ。
あと、「帰って来てしまった人たち」は思い付きで書いただけなんで、続きは何にも考えてなかったりしますｗ 人気あってら書くかも
>>キラ♀
エルタンに兄弟姉妹が。カツ、レツ、キッカかなｗ
でも、まさか、まさか４人仲良く･････キラ壊れないかね？
フレイ様がごっつ腹黒くなっているのが良しｗ
>>ラブラブ
七夕なんか、もう何年も祝ってませんねえ。久しぶりに七夕伝説を思い出しましたよ
ミ、ミゲルｲｷﾃﾀ───( ゜∀ ゜)───!?
復習してきまつ＿|￣|○
新人二人もイイ!
フレイ様MS搭乗ｸﾙｰ───( ゜∀ ゜)───!?
個人的には翼に集中してもらいたいですなぁ。
これからも楽しみにしてるのでがんばってください。
他にやってる人いないよね？
前スレでまとめてくれた方がいたんで
作ろうと思ったんだけど、いらない？
希望希望。激しく希望！
我らがジョージパパに大期待！w
パパ作って〜〜ｗ
>>流離う
私もミゲル生きてたの忘れてた････＿|￣|○
復習してきまつ
新たなザラ隊のメンバーが加わり、一体どういう風になるのか楽しみです！
お願いします。楽しみです。嬉しいです。
>>流離う
オリジナルキャラの配置が本当にうまいですね。
本編の登場人物を押しのけることなく、抑制が
効いているというか。とにかく楽しみです。
ﾊﾟﾊﾟﾝ、お願いよ〜
>>116
嬉しいです！楽しみにしています！
期待していまつ。
全軍突撃！戦ってフレイ様の様に壮烈な戦死をとげるのだ！！
下で見ているキースがフラガに話し掛ける。
「やはり、まだまだですねえ。次の作戦で使えるかどうか」
「だが、デュエルが戦力になるかどうかは大きいぞ。あれが直援に付けば随分安心できる」
「でも、あれじゃ的になるだけですよ。トールの時よりはマシなんでしょうがね」
キースは苦々しそうに答える。デュエルほどの機体がありながら有効に使えないというのはかなり腹立たしいものがある。もちろんトールやフレイが悪いのではない。２人はキースやフラガから見ても良くやっている。ただ、訓練期間が短すぎたのだ。それでも走るなどの基本動作は出来ているのだからたいしたものとは言える。
「お嬢ちゃん、次の戦いじゃ出るつもりかな？」
「かも知れませんね。出来れば出撃して欲しくはないですが、そうも言ってられないかもしれません」
次の戦いは間違い無くアークエンジェルにとっても最大の戦いとなるだろう。それを考えれば訓練が不足しているから出撃させないというのは難しいだろう。戦車隊はフレイよりも悪い条件で戦場に向うのだから。
「アークエンジェルから離れないようにするしかないですね。攻撃はキラと俺、少佐で頑張るしかないでしょう」
「結局何時もこうなんだよな。頑張るしかない」
やれやれと肩を竦める２人。だが、デュエルに乗って頑張っているフレイは肩を竦めるどころではない。シミュレーターよりも遥かに多い情報と体を襲うアクションフィードバック。キラが改良したＯＳの助けがあってやっとこれなのだから、
「ああもう、もう少し素直になりなさいって！」
フレイは懸命にコントロールスティックを操作し、フットペダルを踏み込む。デュエルはフレイの操作によく答えていたが、フレイの実力では移動と攻撃を同時に行うのは難しいのだ。照準サイトに捕らえられた目標は簡単に消え去り、それをまたサイト内に捕らえる為に大きな機動を行う。その無駄の多い動きにキースとフラガは揃ってため息を付いていた。
だが、彼らは知らない。作戦に参加する連合軍のデュエル２機とバスター１機も似たようなものであるという事を。
２人の所にキラがやってきた。なにやら複雑そうな顔をしている。
「フラガ少佐、キースさん」
「お、来たのかキラ」
フラガとキースがキラを見る。
「本気でフレイを戦場に立たせるつもりですか。死にますよ！？」
「･･････あの娘が決める事だ。出撃するかどうかはな」
フラガは突き放したように言う。キラはフラガに反感を覚え、くってかかった。
「僕はフレイを、友達を守りたくて戦ってるんです。そのフレイが戦場に出るんじゃ、僕のしてる事ってなんなんですか！？」
「なら、お前の力だけでアークエンジェルを守り切れるって言うのか。次の戦いはこれまでとは違う。大軍同士の総力戦なんだぞ」
フラガはキラの鋭い視線を真っ向から受け止めて見せた。キラは怯んだように一瞬身を引いたが、すぐにまた勢いを取り戻す。
「守り切って見せますよ。今度こそ、守らないといけないんだから！」
「･････なら、お前が彼女を止めて見せろ」
「えっ？」
「あの娘、フレイの目は、何かを見つけたんだろうな。何かやりたい事が出来たのかもしれん。少なくとも、今のフレイは戦うつもりらしい」
フラガは胸の前で腕を組み、デュエルを見上げる。彼女は実戦までに何処まで腕を上げるだろうか。
「･･････訓練の成績だが、フレイの成長は妙に早かった。それなりの才能があるんだろう。お前が鍛えてやれば更に伸びるかもしれないぞ」
「フレイがですか？」
「ああ、コツを掴むのが上手いんだろうな。天賦の才という奴かもしれん。もっとも、それが伸びるかどうかは次の戦いを生き残ってからのことだろうが」
キラはゆっくりとデュエルを見た。彼女がどうして戦うつもりになったのか、何となく分かる。あの２人の子供が死んでしまった事に責任を感じているのだろう。自分があのシャトルを、幼女を守れなかった事に負い目を感じてしまっているように、フレイも負い目となっているのだろう。
彼女も自分と同じ十字架を背負ってしまったのかもしれない。自分よりも遥かに弱い存在を、自分の選択の間違いで死なせてしまったという十字架を。
疲れを感じて背筋を伸ばしたキラに、背中から声がかけられた。
「キラ、大丈夫なの？」
「え？」
振り返ると、簡単な夜食の載せられたトレイを手にするミリアリアがいた。キラのコンソールにそれを置く。
「余り根を詰めると身体に毒よ」
「分かってるけど、後で後悔したく無いからね」
トレイからコーヒーの入ったカップを取り、口に運ぶ。ミリアリアは少し不思議そうに聞いて見た。
「ねえキラ。あなた、フレイの事となると無茶しすぎるわね。あなたがあの娘の事好きなのは知ってたけど」
「･･････僕が傷付けたからね。だから、僕が守ってあげないといけないんだ」
キラは両手でカップを握り締めながら、辛そうに答える。あの時の、フレイの父を守り切れなかった事が今もキラの心を蝕んでいるのだろう。だからせめてフレイだけは守り切ろうとしているのだ。だが、それはキラにとって良いことなのだろうか。
「キラ、フレイなんだけど、正直どうなの？」
「正直言って、かなりの成長を見せてるよ。僕も驚いてる」
「そうなの、意外ね」
ミリアリアは驚いた。フレイは運動神経は悪くなかったが、あんなＭＳの操縦に適正があるとは思わなかったからだ。キラも微笑している。
「意外だよ。とにかく飲み込みが早いんだ。反応速度もかなり速いしね」
「じゃあ、フレイは出撃出来るの？」
ミリアリアの問いに、キラは沈痛な顔で頭を左右に振った。
「あの程度じゃ自殺行為だよ。確かに上手くはなってるけど、実戦にでたら良い的になるに決まってる」
「でも、フレイは出る気なのよね？」
「うん、何度も止めたんだけど、戦うつもりみたいなんだ」
キラはその事が辛くて仕方なかった。守りたくて戦ってるのに、何で分かってくれないんだろう。フレイはアークエンジェルという安全な場所にいてくれれば良いのに。
ミリアリアはフレイを心配するキラを見て、フレイはキラをどう思っているのかが気になって仕方なかった。キラはこんなに苦しんでるのに、彼女は何を考えてＭＳに乗ろうとしているのだろう。
「フレイは、キラの事をどう思ってるのかな？」
ミリアリアの言葉に、キラは夜食のサンドイッチを口に運ぶ手を止めた。僅かに体が震えているように見える。そんなキラに、ミリアリアがすまなそうに言う。
「･･････トールから聞いたわ。あなた、フレイが同情で付き合ってくれてると思ってるんでしょ？」
「･･････うん」
キラは悲しそうな顔で頷いた。同情が欲しかった訳じゃない。ただ、普通の恋人という関係になりたかっただけなのに、どうしてこんな事になってしまたのだろう。
だが、ミリアリアは少し違う気がしていた。上手く言えないが、キラに近づいたフレイには、何か邪なものを感じるのだ。好きだとか、同情だとか、そういう理由では無い気がする。
ミリアリアがじっと考えこんでしまったので、キラはもくもくと夜食を平らげた。空になったトレーを脇に置くと、ミリアリアを見る。
「ありがとう、美味しかったよ」
「え、あ、そう。良かった」
「少し気も楽になったしね」
キラはまたコンソールに向うと、キーボードを叩き出した。ミリアリアはトレーを下げると、そっとキラから離れていく。そして、格納庫の入口でそっとキラを振り返った。キラは相変わらずコンソールに向っている。このぶんだと今日も遅くまでやっているのだろう。
このまま融けて消えてしまえたら、フレイと一つになれるのだろうかという想いに囚われながら、夢の記憶を手繰ろうとしてもぼんやりとした脳裏から鮮明なイメージは浮かんでこない。
物憂い身体を無理矢理に起こすと、熱いシャワーを浴びる為にバスルームに向かった。
為すがままに日々を過ごしているのは裏切り行為なのではないか、望んだのはこんな未来だったのか…わからない。何も考えたくなかった。
ディスプレイに向かい、朝の習慣であるニュースメールのチェックをしていると、夜の間に私信があったようだった。
ラクスからのメールだった。
「ここに来る…！？」
穏健派がプラントの政権を握っている現在、本国にいられるだけでアスランと比べればはるかに温情的な措置だった。
父の名前がものを言ったのである。今は、プラント本国で一市民の立場に戻り、戦争で親を失った子供達を預かる施設で働いていると聞いている。
もっとも、油断は禁物であり、このメールも監視されている可能性は否定できない。
「よく許可が下りたな…」
メールを消去しながら、キラは小さな声でつぶやいた。
そして、警備隊の司令部へ向かう。
「昨日の密輸品の件ですが…何かの記憶装置という事は分かったのですが、ロックを完全に解除するには大型のコンピュータシステムが必要でしょう」
キラの報告にマリューは首を傾げた。そんなものがこんな所に運び込まれる理由の見当がつかなかったからだ。
「わかりました。このまま管理局に置いておいても埒があかないのなら、こちらで押収した方が良いでしょう。…今日は国防隊の艦隊が入港しますから、その対応が最優先です。ザラ中尉からスケジュールは聞くように」
現在、国防隊や警備隊に配備されている機体は、大戦時に開発されたMS、MAの改修型が基本になっている。
キラやアスランが普段搭乗しているのは、かつて“ストライク”と呼ばれた機体を再設計し、簡易化した機体である。
赤を基調に塗装されていたことから”プロックス”のあだ名がついているが、バッテリー式の上、バックパックの換装機能も省略されていた。
コスト面での優位性や安定した性能から戦後量産されたが、かつてのフリーダムやジャスティスといったMSに比べればかなり見劣りする、現在ではジンやシグーといった旧式の仲間入り寸前の機体と表現するのが正しい。
「巡洋艦五隻、確認しました。警備隊は散開して誘導の準備。定期便が来る時間ではないが、近くにジャンク屋の船等がないかチェックすること」
そんな指示が出される間にも、竿になって進入してくる艦隊をモニターで確認しながら、キラは計器類に目を走らせる。
「五隻か…今回は大規模なんだな…」
そんな感想が口をついて出て、不意に、何故そんな事を考えたのか疑問に思った。いつもなら、何も考えずに淡々と仕事をしているだけなのに。
その瞬間、コクピット内にアラームが鳴り響き、キラは光を見たと思った。
「ビーム…だって？」
同じ瞬間、アスランは突然の事態に動揺しながらも、キラより正確に状況を把握して叫んでいた。
すばやく視線をモニターに走らせたが、機影を示すマークは表示されず、何も無い空間を表示しているだけだった。
もう一回、光が走り、艦隊の最前列の艦の船首部に直撃して小さな爆発の閃光が起こった。
「一体…何が起こったんだ…」
キラは呆然としてうめいていた。目の前の現実が、歪んだ鏡に映った像のようにねじれていた。
ラクスだけはプラントに戻れたんですか。特権階級許すまじｗ
しかし、これはテロか、はたまたクーデターか。見えないのはミラコロかな
何となくヘリオポリスの二の舞になるような悪寒がする
正面から激突した。
双方共に相手を殲滅するのが戦略目標ではない。
第八艦隊の目的は、アークエンジェルの大気圏降下を支援することで、
クルーゼの狙いは、その足付き（ＡＡ）を破壊することである。
数では圧倒的に連合軍の方が勝っていたが、ＭＳとＭＡの能力格差が
そのまま戦場に反映され、戦局は次第にザフト軍有利に推移してきた。
今回の戦争では両陣営の特色である、質のコーディネイターと量のナチュラルの、
質量戦争の構図を端的に現している。
中でも、連合から奪取した四機のガンダムの活躍は目覚しく、連合軍は自らが
開発した兵器で自分達の首を締めるという、最悪の悪夢に脅かされていた。
「ストライクぅぅ…！！！どこだぁ！？、早く出て来い！！」
ヘルメットの下に痛々しく包帯を巻いたイザークは、アサルトシュラウド装備で
新たに付け加えた遠距離砲撃で、瞬く間に二隻の戦艦を沈めると、ストライクを
探し求めて血走った目で戦場を徘徊する。
こと戦場に限り、イザークがストライク（キラ）を求める情熱は、アスランのそれを
はるかに上回った。
他の三機のガンダムもイザークの活躍に負けていない。
リニアレールガンと高エネルギーライフルによる想定射程外からの強力な遠距離放射で、
複数の戦艦を串刺しにするバスターの乗るディアッカ。
ミラージュ・コロイドの能力を駆使して、予期せぬ方向からの奇襲で、確実に艦を
戦闘不能へと追い込んでいくニコルのブリッツ。
そして、アスランのイージスは、特徴であるＭＡへの変形能力を使って、
戦艦のブリッジをカニのように変形した爪足で挟み込む。
傾向としては、イザークとディアッカの二人が破壊と殺戮を楽しんでいるのに対して、
ニコルとアスランは可能な限り戦闘不能に留めようと努力しているように見えた。
ニコルが苦心して戦闘不能へと追い込んだ戦艦が、バスターからの砲撃を受けて
一瞬で消滅する。
「ディアッカ！？」
「ふんっ。甘いんだよ、ニコル。殺し合いをしているんだぜ、俺たちは」
戦闘不能の相手に敢えて追い討ちをかけるディアッカの残忍さに、ニコルは
味方ながら嫌悪感を隠せない表情で俯いた。
これら四機のガンダムには遠く及ばないまでも、十数機用意されたザフトのＭＳジンは、
ＭＡ相手には高いアドバンテージを発揮し、戦闘開始時には百を超えていた
連合軍のＭＡの数は、今では半数近くにまで減少している。
「まずいわね、このままだと…」
ザフト軍の猛攻に次第に薄くなっていくアークエンジェルへの防御ラインに、
マリューは軽く爪を噛んだ。
このままでは防御ラインを突破されるのは時間の問題であり、降下どころか
第八艦隊が全滅する憂き目にもなりかねない。
「キラがいてくれたらな…」
カズィが、恐らく艦橋の誰もが内心で思っていたこと口にしたが、マリューは
無言のまま首を振った。下級兵士ならともかく、一艦を預かる艦長が無いものねだり
に縋るわけにはいかないのである。
このまま時間まで第八艦隊を支援するか、それともアラスカへの降下タイミング
にはまだ早すぎるが、強引に降下して敵を引き付けるべきなのか。
マリューは選択を迫られていた。
激しい戦闘で揺れ続けるアークエンジェルの緊迫した空気にまるで無感動に、
フレイはゆっくりと彼に支給された軍服へと袖を通す。
ロッカーの内扉についた鏡に、軍服に着替え終えたフレイの姿が映っている。
戦場の勇者ではないはずのフレイだが、華麗な軍服姿はナチュラルとは思えない
彼の美貌を一際際立たせた。
鏡には内面は映らないからな。
自嘲するようにそう考えたフレイが再び鏡を見た時には、自分の他にもう一人、
焦茶色の短髪の女の子が映っていた。
「キラ…、もう降りたかと思ってたよ」
静かに後ろを振り向き、キラの姿を直接視界に捉えたフレイは、
どうやら自分が賭けに勝ったらしいことを知った。
「フレイ、どうしてなの？」
私服のままパイロットスーツにも着替えず、瞳に戸惑いを浮かべて問いかけるキラが、
何を求めてわざわざフレイを訪ねてきたのか彼には分っていた。
再び戦うことに踏ん切りのつかないキラは、恐らくフレイに自分の
背中を押して貰いたがっているのだろう。
頼まれなくてもフレイはキラの背中を押してやるつもりだった。
キラを奈落の底に突き落とすために…。
フレイの看破した通り、キラは迷っていた。
トール達から除隊許可証を渡され、同時に彼らがアークエンジェルに残ると聞かされた。
仲間が戦場に留まった中で、自分だけが逃げることへの負い目。
再び戦場に出て、お互いの生死を賭けて戦うことへの恐怖。
無垢な子供たちから得た束の間の安らぎと、彼らの未来への不安。
それらの想いが螺旋状に絡まり、どうして良いか分からなくなったキラは、
再燃しはじめたフレイへの想いを思い出してここに来たのだ。
ここに来れば、きっとフレイが答えをくれると信じて…。
フレイは穏やかな表情でキラを見つめるだけで、キラの質問には答えなかった。
キラが再度声を掛けようとした時、フレイが小道具として用意したフラガの予備の
パイロットスーツが、彼のロッカーに転がっているのが目に入った。
キラの視線に気づいたフレイは、やや後ろめたそうに顔を背ける。
「あなた、まさか……」
フレイは何も応えなかったが、キラはフレイのやろうとしていることを確信した。
「無茶よ、フレイ。アレは普通の人間に扱えるものじゃないの。死ぬわよ！」
「かまわないよ」
脅しのつもりで厳しい口調で警告したキラは、予期せぬフレイの乾いた返事に
ビクッと身体を振るわせる。
「トール達には色々と偉そうな事を言ったけど、結局、僕はただ死にたかった
だけかも知れない。母さんが死んで、僕は一人ぼっちになってしまったから……」
「フレイ……」
「キラ、君にも色々迷惑をかけたね。けど、最期に少しだけ分り合えて良かったよ。
母が待っていると思えば、死ぬのも怖くない。
幸い僕が死んでも悲しむ人間もいないことだしね」
儚げに微笑みながら淡々と述懐するフレイの脆さに耐え切れずに、キラは激しく
泣きじゃくりながら、フレイの胸元に飛び込んだ。
「フレイ、お願いだから、そんな悲しいこと言わないで。
あなたが死んだら、天国のお母さんは悲しむわ。恋人のサイだって。それに私も……」
「キラも…？」
意外そうな顔をしたフレイに、キラは顔を真っ赤に染めたままコクンと肯いた。
「私もう迷わないから…。私にしか守れないものがあるのなら、そこから絶対に逃げない。
それを奪おうとする敵がいるなら、私は戦う。たとえ相手が誰であっても…」
「アスラン君でも？」
アスランの名を聞いたキラは一瞬瞳を震わせたが、すぐに瞳に決意を漲らせて
無言のまま首肯する。キラの覚悟に内心満足したフレイは、キラをきつく抱き締めた。
「フ…フレイ！？」
「ありがとう、キラ。こんな僕のことを想ってくれて…」
フレイの腕の中で戸惑っていたキラは、そのフレイの言葉に再び頬を染める。
「僕は君に何もしてあげられないけど……」
う…嘘？
「僕の想いが君を守るよ」
フレイは強引にキラの唇を奪った。それがキラのファーストキスだった。
既にキラの去った更衣室に、フレイのくぐもった笑い声が響いた。
ハンカチで軽く口元を拭ったフレイは、二年前の学園の演劇祭を思い出した。
白雪姫の王子様役を務めたフレイは、衆人環視の前で白雪姫役の女の子にアドリブ
で本当にキスしてしまい、その女の子を喜ばせ、サイを泣かせてしまったんだっけ。
あの時、自分に主役を請うた演技部の部長は、あなたには演技の才能があるから
演劇部に入らないかと薦めてくれたが、まんざら社交辞令でもなかったらしい。
「逝っておいで、僕の可愛いキラ。
君の大好きなアスラン君と、派手に死のダンスを踊ってきてくれたら最高だな」
あぁ、フレイ様（♂）の悪人っぷりが最高にステキだぁ〜〜！
幸せになってくれ…
フ、フレイきゅん・・・やっぱり本編の1.3倍知将になってるｗ
上層部すら操るダークフレイきゅんを妄想しました。(((((((ﾟДﾟ；))))))ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ
ダークフレイきゅん素でｶｺｲｲYO!
続きも激しく楽しみです。ガンフレ！！
乙フレです
悪い男のふれいたまに激しく萌えまくりです(*´д｀*)ﾊｧﾊｧ
キラ、かわゆすぎ・・・
まとめサイト作りに入ったパパですｗ
来週中くらいには形になる予定です。
神！すげえ面白かったです！
ぜひとも「帰って来てしまった人たち」の続投をｷﾎﾞﾝﾇ･･･！
どうしてだー！どうして男フレイたまに本編よりも萌えてしまうんだー！
うおおおおお！もう止まらない……ﾊｧﾊｧﾊｧﾊｧ…ｳｯ
>>135
パパ、ありが�邸�！
増えるかも？キラはかわいいですね。
もう我慢できなくなったミリアリアは、その足でフレイに会いに行くことにした。居る場所は分かっている。キラの部屋だ。
キラの部屋の前まで来たミリアリアは、ノックも無くいきなり部屋を空けて中に押し入った。中の明かりは落とされ、窓からさしこむ月明かりだけが部屋の中を照らし出している。その中に、ベッドに腰掛けているフレイがいた。
ミリアリアは手探りで明りのスイッチを探すと、押した。天井の照明が点灯し、室内が明るくなる。ミリアリアはフレイに声をかけようとして、思わず息を飲んだ。そこにいたフレイは、まるで生気が無かったからだ。その目には何も映してはおらず、自分が入って来た事にも気付いている様子が無い。
「フ、フレイ？」
ミリアリアは心配になって声をかける。だが、フレイはこちらを見ない。仕方なくミリアリアは肩を掴んで無理にこちらを見させ、頬を張った。
「フレイ、しっかりしなさいよ！」
そこまでやってようやくフレイはミリアリアを見た。目の焦点が合ってくる。
「ミリィ、どうしてここに？」
「あなたこそ、何をぼうっとしてんのよ。訓練で疲れてるんじゃないの？」
「･･････そんな事無いわ。大丈夫よ」
フレイはそう言うが、まったく説得力が無かった。だが、今はそれよりも別の用事がある。ミリアリアはフレイに問い掛けた。
「フレイ、あなた、キラをどう思ってるわけ？」
「･･････キラを？」
「ええそうよ。サイをフってキラに乗り換えたのかと思ったけど、そうじゃないみたいだし。本当に同情でキラと付き合ってるの！？」
ミリアリアの問い掛けに、フレイは俯いたまま答えない。ミリアリアは無理にフレイの肩を掴んで顔を上げさせた。
「フレイ、あんた一体何を考えてるのよ。キラをどう考えてるの？」
ミリアリアの勢いに、ようやくフレイは口を開いた。
「･･････分からないのよ。私にも」
「分からないって、自分のことでしょ？」
「そうよ、自分の事なのよ。なのに、分からないのよ、私にもっ!」
フレイが自分の顔を見上げてきた。その顔を見てミリアリアは言葉に詰まってしまう。その顔は、迷子の子供の様に弱々しく、今にも崩れてしまいそうなほどに危うかった。何があったのかは自分には分からない。ただ、フレイが酷く傷付いている事は分かった。もしかしたらキラやサイ以上に。
ミリアリアは悲しくなってきた。何でこんな事になったんだろう。キラも、サイも、フレイも友達なのに、気が付いたらバラバラになってしまってる。しかもキラとフレイは酷く傷付いて、互いに慰める人さえいない状態だ。
これ以上フレイを追い詰めてはいけないと考えたミリアリアは、仕方なく部屋を後にした。残されているフレイはまた俯いてしまっている。その姿を見て、ミリアリアは堪らなくなって逃げる様に駆け出していった。
ミリアリアが入って来たのに気付いたトールは、解説書から顔を上げて恋人を見た。
「どうしたのミリィ、そんなに焦った顔して？」
「ト、トール･･････わたし、どうしたら良いの？」
「ミリィ？」
トールは恋人の様子がおかしい事に気付いた。なんでかは分からないが、追い詰められている様だ。不安に顔を曇らせている。トールは解説書を置くと立ち上がってミリィの肩に手を置いた。
「どうしたのミリィ、何かあったの？」
「トール、フレイが、フレイがおかしいの」
「フレイが、おかしい？」
トールは聞き返した。確かにフレイの事はキラとの関係で気にはしていたが、フレイ本人がおかしいとまでは感じていなかったからだ。なにか企んでるのでは、と疑ってはいたが。
ミリアミアはキラの部屋で見たフレイの様子を語った。あの生気の感じられない、酷く傷付いたフレイを。あんなにも崩れてしまいそうなほどに弱々しく、悲しそうなフレイを見たのは同じ倶楽部にいた自分でさえ見た事が無いからだ。
トールはミリアミアの見たというフレイを考えてみた。これまでの考えを総合すると、フレイの変化はあの宇宙で、父親を失った頃から始まっているとトールは結論付けていた。そこからキラに近づきだしたのだ。たぶんキラを使って父親の敵を討とうとでもしているのだろうと考えていたのだが。
「傷付いている、か」
なにかを企んでいたのではないのだろうか。それとも、利用しようとして近づいたが、良心の呵責に苛まれているとでもいうのだろうか。もしかしたら、フレイは･･････
「もう少し、様子を見た方が良いのかもな」
「トール？」
ボソリと呟いた恋人の顔を、ミリアリアは不思議そうに見た。トールはミリアミアを見ると、頼むように言う。
「ミリィ、暫くの間は２人に手を出さないでおいてくれないか。黙って見守るだけにして欲しいんだ」
「何でよ。あれじゃ２人とも壊れちゃうわよ？」
「多分だけど、キラかフレイか、どっちかが行動を起すと思うんだ。フレイがＭＳに乗る気になったのも、なにか考えが変わったからだと思うしね」
理由は分からないが、フレイに何かがあったのだ。自分の考えに迷いを生むような何かが。それが何なのかは今は分からないが、いつか分かるという気がする。その結果が破局へと向うのか、それともより良い方向へと向うのかは分からないが、あの２人の決着は近いうちに付く気がするのだ。
早ければ、これからの戦いが終わった後にでも。
いやあ、フレイ様には舞台俳優の才能がおありでしたか。サイが可哀想です･････
しかし、キラちゃん、もう単独ヒロインでやっていけますな。目指せ戦うお嬢様ｗ
プラント打撃戦編：前スレ>788-791、>847-851、>920-923、>958-962
艦隊再編中：>>65-68
ザフトの最終兵器“ジェネシス”により、戦力の半数を瞬時にして失ったプラント打撃艦隊。
ボアズ戦からの損害も含めれば、まともに戦力として数えられるのは当初の４割弱ほどだろうか。旗艦ワシントンを始め多くの艦とＭＳを失った第７機動艦隊はもはや艦隊としては解体状態にあり、後詰めで比較的傷の浅かった第３機動艦隊にしても、指揮系統の再編は容易でなかった。
「何とかここ、ボアズ宙域まで後退できたのです。ここは一度月基地まで戻り、第４、第６機動艦隊と合流。戦力の立て直しを計るべきだと愚考いたしますが」
「うむ、確かに貴官の意見は正しいが、バジルール少佐……」
「あー、そうだねそうだね。ほんっとーに愚考だね。馬鹿じゃないの、艦長さんはァ？」
旗艦ワシントンが撃沈された今、プラント打撃艦隊の実質上の司令官は第３機動艦隊を率いるウィリアム・サザーランド准将となっていた。一方、中核部隊を失った第７機動艦隊の実質的な最高責任者は、ドミニオンと前衛部隊を率いて最後まで戦線を支えたナタル・バジルール少佐となっている。
だが、この２人の軍人とは全く別の最高命令権者もまた、黒い主天使の艦橋にあって健在なのだ。
「しかしアズラエル様、現有戦力ではプラントどころか、ヤキン・ドゥーエ要塞を墜とすことも困難……」
「あー、もう黙れ黙れ黙れッ！ 黙ってろサザーランド！ ったく、冗談じゃない。これは今までノタクタやってたお前達、軍の怠慢のせいじゃないか！」
ぐッ、と押し黙るサザーランド。ナタルの鋭い視線もまるで意に介さず、興奮した口調でブルーコスモスの盟主は口角泡を飛ばし続ける。発射の記録からドミニオンに乗っている科学スタッフに検証でもさせたのだろう。アズラエルはジェネシスについて、最大出力では撃たれなかったこと、月も地球も射程に収まること、地球に撃たれれば一撃で致命的なダメージになりうることなど、様々な推測を並べてわめき散らした。
「あんなもの、残して行ける訳ないだろう？ 何が“ナチュラルの野蛮な核”だ！ あそこからでも地球を撃てる、ヤツらのトンデモ兵器の方が遥かにヤバいじゃないか！ ……あんなもの造らせるほどグダグダしてたんだ。何としても、どんな手段を使っても、あれは絶対に破壊してもらう！ 地球に撃たれる前に！ もちろん、クソ忌々しい砂時計もまとめてだ！」
「……できると思われますか、准将」
「無茶な命令でも従うのが軍人だ。士官学校で習わなかったかね、少佐」
「…………」
興奮し、わめき続けるアズラエルは意図的に意識から外す。
スクリーン越しに、ナタルはサザーランド准将の表情を睨むように観察した。軍内部におけるブルーコスモスの幹部クラスの１人とは言え、ヨーロッパ方面軍を駆使し、ビクトリア基地のマスドライバーを無傷で奪還した程の名将である。その彼が、こんな無茶な作戦を何の勝算も無しに呑むとは思えなかったのだ。
「……どういう、意味でしょうか」
「これを予想していたわけではないが。既に第６機動艦隊はこちらに向かっている」
「第６機動艦隊……フィッツジェラルド准将が？」
「そうだ。本来であればプラントを潰した後、ヤキン・ドゥーエを攻め切れなかった場合の保険として用意したのだがね」
驚きに目を見開いたナタルの横顔を、軽蔑に歪んだ笑顔で眺めるアズラエル。
さんざんわめいて落ち着いたのか、一つ肩を竦めると。ま、後は軍人さん同士ってことで、よろしく頼みますよ。などと言い捨てて艦橋を出て行く。ちょうどシャワーの時間なのだろう。
「しかし、あの……ジェネシスとかいう兵器、起爆信管のようなものでしょうか。交換と本体の冷却に要する時間は」
「僅かな情報だけでは何とも言い難いが、見たところあと半日というところだな」
「では、第６機動艦隊の合流をギリギリまで待って……」
「それも無理だ。再編成が終了し次第、我々は先に攻撃を開始する。なぜか分かるかね、少佐？」
反駁しようとしたところ、機先を制されたナタルは言葉に詰まった。
確かに、あの鉄骨タワーのような起爆信管を交換するのは、あれだけの巨大建造物だ、そうそう簡単には行かないはずだが……。
ふと、彼女の脳裏を何かがよぎる。あれは……そう、サハラ砂漠で“砂漠の虎”バルトフェルド隊と初めて戦った時のこと。キラ・ヤマトの駆るＸ１０５ストライクは当初、地上の覇者とまで言われたＭＳバクゥを相手に苦戦していた。ストライクを沙漠戦に対応させないまま戦っていたからだ。しかし、しばらく戦い続けた後、彼は突然……。
「まさか！ ２射目にかかる時間は半日でも、３射目はもっと縮めてくると？！」
「さすがだな。だが、それがコーディネイターと云うものだ。敵を甘く見るなよバジルール少佐。おそらく３射目は純粋な冷却時間……数時間もあれば撃ってくるだろう。ちょうど第６艦隊と合流し、身動きの取れぬ我々なり地球なりをな。それではもう、全てが手遅れだ」
「！！」
改めてナタルは戦慄した。あのジェネシスという最終兵器の性能と脅威、それを瞬時に見抜いたサザーランド准将の慧眼とに、である。……思えばアラスカ、ジョシュアでのサイクロプス作戦を成功させてミリタリーバランスを地球軍側に揺り戻させたのも、量産型ＭＳであるストライク・ダガーの生産体制を確立したのも、ビクトリア基地のマスドライバーを奪還してここまで反攻体勢を作り上げたのも、全てこの男の立案と実行によるところが大きい。
「…………」
それほど有能な指揮官が、よりにもよってブルーコスモスの幹部で、アズラエルのような戦略戦術など何も分かっていない軍需産業の若社長に唯々諾々と従っている。こんな理不尽な話があるか！ とナタルは思った。そして思い出すのは、袂を別ったアークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスの言葉。
「私たちは、今の地球軍の在り方そのものに疑問を持っているのよ、ナタル」
制帽を直しながら、サザーランド准将は普段の慇懃な表情をやや崩した。
「バジルール少佐、既に我々は手持ちの補給物資、核ミサイルはむろん９mmパラペラムの最後の１発まで使い潰した。この作戦に、もはや後は無い。理解しているとは思うが」
「……もちろんであります、准将」
「よろしい。では、我々は２射目が撃たれるであろうタイミングと同時に、ヤキン・ドゥーエ要塞へ総攻撃を仕掛ける。君のドミニオンと“Ｇ”兵器は我々の決戦兵力だ。ピースメーカー隊と共に先鋒を務めて貰いたい。目標は、ジェネシスだ」
「はッ！」
気を取り直し、敬礼するナタル。
確かに、今サザーランド准将が提示した作戦は、撤退しないことを前提にすればナタルの戦術観と一致していた。２射目の発射タイミングを見計らえば、射撃方向が読める分、プラント打撃艦隊への射撃であっても被害は最小限に食い止められる。そこから第６機動艦隊が追いつくまでの数時間が、勝負の分かれ目になるだろう。
「それから。これは小細工の部類に入るが、兵士たちの士気を上げるクスリを使うことにした」
「？！！」
突然のことに、息を呑むナタル。まさかＭＳパイロットたち全員にγ−グリフェプタンを投与するとでも言うのか？ どこからそれだけの量を確保するのか、あるいは戦闘が終わった後のことをどう考えるのか。そこまで想像して背筋が冷える感覚をナタルは味わった。
地球軍は、プラント打撃艦隊はそこまで追い詰められているのかも知れない。
他ならぬサザーランドが言ったではないか。この作戦には、もう後が無いと。
「准将、しかしそれは……！」
「君の艦には必要の無いものだと思うが、ドミニオンのデータリンクには送ろう。確認しておけ。そちらに回すダガー隊のパイロットたちには見せておいて貰いたいからな」
「は……？」
見せる、というサザーランド准将の言葉を完全には理解しきれぬものの、どうやらクスリとは非人道的な薬物劇物の類ではなさそうと見て取り、ナタルはいちおう、承諾した。
第３機動艦隊との通信が切れてしばらく後、オペレーターからその“クスリ”とやらが届いた旨の報告が入る。
「これが、クスリだと……？」
それは５分ほどに編集された映像データだった。
内容を確認した時、ナタルの肩は僅かに怒りで震え、だが表情には自嘲の笑みが、瞳にはやるせない涙まで浮かんでいる。
「お笑い種、だな。……我が軍は、地球連合軍はこんなモノまで作って、戦争をしたがっているということか」
壊れたように、クックックと哂い続けるナタル。
その様子に、ブリッジクルーたちはどうしたものかと顔を見合わせるばかりであった。
５分ほどに編集されたその映像データは、こんな台詞で始まる。
映っているのは１６歳になったばかりの、真紅の髪の少女。テロップによれば、彼女は地球連合軍第７機動艦隊、機動特装艦アークエンジェル級２番艦“ドミニオン”に所属するＭＳ、Ｘ１１５ストライク・ルージュのパイロットであり。
名を、フレイ・アルスターという。
今年の２月に戦死した、前大西洋連邦外務次官ジョージ・アルスターの一人娘との紹介が入る。
「私には、守りたいものはもうありません。でも、まだやりたいことはあります。こんな戦争は、もう一刻も早く終わらせたいって……ほんとうに思うんです。だから、私」
即席栽培のＭＳパイロット養成校を卒業後、フレイ・アルスターは５番目の“Ｇ”兵器と共にドミニオンへと配属された。同艦に所属するダガー隊との飛行訓練。対ザフトを想定した“Ｇ”兵器同士の模擬戦。そして初の実戦は、ザフト軍の宇宙要塞ボアズの攻略。
「了解。フレイ・アルスター、ストライク・ルージュ、行きます！」
初めて戦場に出た彼女は、そこで初めての実戦を経験する。
ザフト軍のＭＳジン２機を撃退し、ドミニオンに接近してきた敵の新型ＭＳゲイツを、一騎打ちの末仕留める勇姿。
ちょうど彼女の髪を思わせる真紅の機体が、華麗な動きで漆黒の宇宙を舞う。
「くっ、このッ！ こんなものッ！」
次の戦場は、ヤキン・ドゥーエ要塞、そしてプラントに至る宙域。
味方のダガーを瞬く間に２機墜としたエース級の機体を相手に、フレイ・アルスターの駆るストライク・ルージュは一歩も引かずに死闘を繰り広げる。ビームライフルを撃ち合い、回避し、シールドで捌き、至近距離で絡み合い、イーゲルシュテルンを叩き込み、互いのシールドで互いのビームサーベルを払い合う。
間合いを離したストライク・ルージュが撃ち放つビームライフル。カットが切り替わり、グリーンの火線に貫かれたゲイツが手も足も出ず、爆散する。その戦いぶりは、僅か１ヶ月でＭＳパイロットになった少女のものとは、とても思えなかった。
しかも彼女は、アラスカの惨劇を生き延び、どういう手段を使ってかザフト軍に潜り込み、ＮＪＣ技術のデータが詰まった光ディスクと共にドミニオンに帰還した奇跡のヒロインなのだ。
「蒼き清浄なる世界のために！ 彼女こそ、我らナチュラルに遣わされた希望の乙女(ジャンヌ・ダルク)なのだ！」
だから戦えと。
守るべき者が有る者は、彼ら彼女らが住まう地球を守るために。
守るべき者が無い者は、それでもなお健気に戦う、真紅の髪の少女を守るために。
撃ち放たれるジェネシスの禍々しい光。
次々と爆沈していく地球連合軍プラント打撃艦隊。
悪しきコーディネイターどもの思い上がった新兵器の前に、我々は手痛い敗北を喫し、一時退かざるを得なくなった。だが案ずるな。我々には黒い主天使と、３機の“Ｇ”兵器と、真紅のＭＳを駆る希望の乙女が居る。我々は負けられない戦いに挑み、そして勝利する。彼女の導きのもとに！
そんな言葉が流れる中、滑らかな機動でドミニオンの方へ戻っていくストライク・ルージュの機影。
５分ほどに編集された映像データはここで終わり、最後にもう一度、言葉が現れる。
「蒼き清浄なる世界のために！ 我々は最後まで戦い抜くのだ。彼女とともに！」
今回はナタルとサザーランドがメインです。彼が准将なのはビクトリア基地奪回の功績で出世したから。
第６機動艦隊の提督の名前は、このスレに投下された「SEED the ORIGIN」からお借りしました。
無断借用してすみません＿|￣|○ ぅう、こちらでは名前しか出さないので許してくださいw
この次は、もう一度フレイ様の予定。お相手は３人組の残り２人のどちらかです。
それでは、恒例？ のエールパック投下を。
＞幻〜
いよいよＺ・ＳＥＥＤが展開かッ？ マリューさん、あんな目にあっても軍人なのですね。
でもキラとの会話、おかーさんしてて良いなぁ・・・。マードックやアスランもいいかんじ。
彼らが居たからこそ、キラもやっと立ち直ってきたのかな？
そしてエリナ。彼女はこれから本編にどう絡むのか？
どうでもいいですが、エリナの婚約者はサイじゃないでしょうね！w
＞キラ♀×フレ♂
ダークフレイきゅん最高です。
この路線で突っ走って欲しくもあり、立ち直って欲しくもあり。
原作ではフレイ様がキラの孤独を理解して、お互い傷を舐めあいながら寄り添う形になってましたが、こっちではキラがフレイきゅんに尽くして尽くして……って雰囲気？ そしてフレイきゅんはどうなるか。ドミニオンの艦長に異例の出世とかされたらどうしたものかw
＞翼〜
トール、生還おめー。
そしてフレイ様。壊れかけてるのが心配だけど、パイロット挑戦がんがれ！
こっちのフレイ様は１ヶ月の即席栽培なのでいろいろ裏技や豪華ＭＳで生き残らせてますが、そっちのフレイ様は実力で生き延びられる、かも？ あと、ここまでアレであるからには、フレイ様にはデュエルバズーカを携行して頂かなくてはw
ザフト組も面白くなってきました。ジャックは最初から…な分、エルフィに期待。まさかこのまま出世して“赤”を着てイザークの部下に？ その折はフレイ様と対戦させ（ｒｙ
＞ラブラブ〜
最後の一文が切なすぎます(´Д⊂ヽ
ええい！ もっと２人のラブラブを補給するんだ！w
なんか辛い展開になってきたよ(´Д⊂ヽ
トールが重要キャラになってますな。こういう調整はサイが適任なんだけど、
さしものサイもフレイたん相手じゃ冷静になれませんからね。
ますますトールが死んだら心配だ・・・ガンパレー
>ルージュ
サザランｶｺ(･∀･)ｲｲ! これじゃあ遺作にぬっ殺されるヘタレ役は務まりませんなｗ
パイロットと広告塔と薬物、32話の頃の予測がふんだんですね。
でもヤクだけはやめてよ・・・｡･ﾟ･(つД`)･ﾟ･｡
キラのことがすきでも、あれを飲むと変わっちゃうんだから・・・
というわけでバジルール少佐、薬研をゴリゴリしてプラシーボうｐキボンヌｗ
サザランの言う「クスリ」って文字通りのヤクじゃないから安心しる
つうか、も一度読み返せｗ
ブルコスのプロパガンダに利用されるフレイたんには気の毒だけど、ヤク中よりは
マシだよね(つД`)
ちゃうちゃう、フレイ様が戦意高揚の為の、戦う広告塔になっちゃったことよ。
ある意味クスリよりヤバイかもしれないけど。
「キラ……」
今ラクスは、祈るような気持ちでガラスの向こうに広がる虚空を見つめていた。
そこには、戦場の後が広がっている。
破壊された戦艦、ＭＳの残骸が星空を背景に広がっている。
その中にはきっと、人であった物の残骸もあるだろう。
キラがそうなり、虚空に浮かんでいる様がラクスの頭をよぎり、一瞬ラクスは肩を震わせてから、その影像を追い出そうと必死に頭を振った。
（いいえ……キラは生きている。きっと）
不安に思う自分をきっと、彼は裏切ってくれる。いつもと同じように。
そう言い聞かせても、ラクスの不安は止まらない。
聞こえてくるエザリアの停戦を求める声も聞こえず、ラクスは不安に瞳を潤ませながら、それでも虚空を見つめ続けていた。
どの位そうしていたのか、ラクスには分からない。
それでも多分、そう長い時間ではなかっただろう。
阻み、揺らすものがない筈なのに、星が瞬く視界の中、ラクスはこちらに向かってくる星を見つけた。
「え……？」
違う、星ではない。
ＭＳがこちらへと向かって来る光だ。
ラクスが眼を見開くと同時、そのＭＳからの通信が、エターナルの艦橋に流れた。
モニターに移った姿はアスラン、そしてカガリだ。
『こちらストライクルージュ。ただ今より帰艦する』
こちらに向かっているＭＳは、ストライクルージュだった。
カガリとアスランが生きていた。嬉しい事だ。
けれど、それでは足りない。ラクスの求める人が足りない。
「アスラン……」
ラクスの声にアスランは少しだけ驚いた表情を作り、それから小さく笑って見せた。
「大丈夫。気を失っているけどキラも一緒にここに居る」
「……！！」
その言葉に、ラクスは驚いていた。
悲しくない。嬉しい驚きだ。
「了解しました。ストライクルージュ、エターナルへ帰艦してください。帰艦次第、医療斑をそちらに派遣します」
そう言ってから、ラクスはバルトフェルドの方を向いた。
悪戯を咎められた子供のような、おずおずとした視線にバルとフェルドは片頬だけ上げる、特有の笑みを持って頷いてみせる。
ラクスは急いだ仕草で一礼、そのまま脇目もふらずに艦橋を後にしていった。
生きていてくれた。やっぱり彼は不安を裏切って自分の元へと帰ってきてくれた！
ラクスは急ぐ。格納庫へと。
言葉は交わせないだろう。だが、一目でも早く見て、確かめたかった。彼が生きているということを。
手摺に摑まり、慣性に任せていくいつもの移動方法。だが、これでは遅いと、ラクスは少し苛立つ。
いつもより強く、いつもより多めに足を着け、床を蹴る。涙は流さないようにしながら。
艦橋を出る前に目元は一応拭ったが、しかしまた視界はぼやけかかっている。
でも堪えた。嬉しい涙は、本当に嬉しい時に流すものだから。今はまだその時ではない。
（キラ……！）
ラクスは急ぐ。格納庫へと。
歌姫や平和を唱える凛々しい女神ではなく、どこにでもある少女の姿をして。
格納庫から医務室まで、ずっとラクスはキラの側を離れなかった。
診断結果は、極度の精神的疲労による気絶。
体については目立った外傷はなく、ほぼ無傷との事。むしろアスラン達の方がひどかった。
（といっても、二人の場合も数箇所に擦過傷と火傷を負ったくらいだったが）
医者に診てもらうほどではないと、二人は自分で処置を施した後、医務室を出て行った。
医者も、他の艦の者達の救護の為に医務室を後にした。
今、キラとラクスは二人きりになっていた。改めてそれを感じるほどの余裕は、ラクスにはなかったが。
「キラ……」
握った手から伝わる鼓動と温もりに、キラがここに居るのだという事を改めて実感する。
二人の手の中にあるのは、戦いに赴くキラにラクスが送った指輪。
宇宙服を脱がせた際に、キラのヘルメットから転がり落ちたのだ。
「貴女の思いが、この子を守ったのかもねえ」
医者は微笑んでそう言った。
そうであったらいいと、ラクスは思う。
汗で張り付いたキラの前髪をかきあげてやりながらラクスは考える。
キラが目覚めた時にかける第一声は、何にしようかと。
キラの睫毛が細かく震え、瞼は今にも開きそうだ。
キラが目覚めようとしている。
そう認識した時、ラクスの眼からとうとう涙が零れ落ちていた。
でもラクスはそれを拭おうとも、止めようともしなかった。
それは本当に嬉しい時に流れた、嬉しい涙だったから。
ぽたりと涙の滴がキラの頬にかかり、キラがはっきりと目を開く。
キラの目と、ラクスの目があった。
「おかえりなさい。キラ」
涙を流し、それでも微笑んでラクスはそう言った。
その瞬間は、ラクスにとってとても嬉しい時だった。
だが
だがキラはそんなラクスを不思議そうな顔で見上げていた。
そしてしばらく視線をさまよわせていたが、やおら上半身を起こすと、首を右に、左に。
何かを探し始めた。
予想外のキラの行動にラクスはすこし呆然となっていた。
こちらを見ず、ラクスの分からないものを求めるキラの姿に、彼女の心にふわりと不安を内包した泡が浮かぶ。
「キ……」
名前を呼ぼうとした時、突然キラがラクスと視線を合わせてきた。
不思議そうな、途方にくれたようなキラの瞳に、ラクスは自分の中の違和感による不安がどんどん大きくなっていくのを感じる。
もう一度、名前を呼ぼうと唇を開く前に、キラが言葉を発した。
「ねえラクス。フレイは、フレイはどこに居るの？」
――その言葉が、「ただいま」だったら良かったのに。
ラクスの心の中で、泡の柔らかな境界が、ぱちんと潰れた。
暖かいはずの涙が、冷たく頬の上を滑る。
それはもう、嬉しい涙ではなかった。
そんなラクスの様子にも構わず、キラは不思議そうに頭をめぐらせ、「フレイ？」と、ラクスではない誰かを探している。
その目はラクスと同じ空間を見ているはずだが、どこか違う所を見ているように、ラクスは感じた。
――キラは、本当に私の元へと帰ってきたのでしょうか？
５０話後のキラが変になっちゃった話です。
救いのない話にはならないとは思うのですが……
ガンダムのＳＳ書くのは初めてなので用語を間違って使っているかもしれません。
目に余る間違いがありましたらご指摘をお願いします。
本編２クールの時点ではフレイ様は生の戦場をあんまり見て
いないんだよなあ。だから、このSSでこの段階で戦闘に巻き
込まれて、フレイ様の戦争観が見え始めたのはすごく新鮮です。
>幻
このSS、オレの中ではモノトーンとかセピア色の映像イメージ
でキラやアスランが動いています。簡易型ストライク(ジェガン？）
でコロニーを警備しているキラを想像すると泣けてきます。
>キラ（♀）×フレイ（♂）
男フレイ様はカッコよすぎ、本編では腐女子受けが悪かった
みたいですがこのフレイ様だったら、アスランやイザ―クを
抜くと思います。フレイ様と演劇のイメージってミョ―に合
いますね。
>ルージュ
ジュール隊の萌え萌え要員とフレイ様とのバトルから、楽しみ
にしております。今回のVTRでのバトルはあの時の映像か？
前回のオルガといい、ボアズ編でフレイ様を救ったクロトやシャニ
といい、連合パイロットの描き方が面白いです。
>ラブラブ
単発ものが新鮮でした。長編大漁で嬉しいかぎりでしたが、短編も
良いですね。リリカルフレイ様楽しみです。
深夜投下乙です。
鬱展開は結構好きです。光フレイ様に魂
持ってかれましたか…。
乙フレ〜。フレイ様を求めるキラに感動した。鬱展開好きです。
ラクスがちと勘違いﾁｬｿ入ってて哀れな感じだけど、
最終回後のキラは誰にも「ただいま」とは言えないんだろうな…。
実際、ここまで変にならないくても大変だろうな。キラは。
そんな時に、アークエンジェルクルーに作戦説明の為の呼び出しがかけられた。ＡＡの士官と、ＭＳパイロットにである。ブカレスト基地の会議室にやってきたマリュ−達は、クライスラー少将と数人の士官の出迎えを受けた。
クライスラーは入って来たマリュ―達を見て頷いた。
「来たか、ラミアス少佐」
「少将、この時期に我々に説明したいこととは、一体？」
「それを今から説明する。まあ、腰掛けてくれ」
クライスラーに椅子を進められた一同は各々が好きな椅子に腰掛けていく。全員座ったのを見てクライスラーが作戦図を軽く叩いた。
「アークエンジェルには先鋒を務めてもらう。とは、前にも言ったな」
「はい、それは伺ってますが」
「それでだ、君達が目指す目標は、ここだ」
それは、イタリア半島の付け根近くにあるザグレブ基地だった。ヨーロッパのザフト軍の拠点としてはジブラルタル基地に次ぐ規模を持つ一大軍事基地である。当然駐留している部隊も多い。ここに戦艦１隻で突っ込めというのは流石に自殺行為でしかない。
「閣下、本気で言っておられるのですか！？」
マリュ―が顔色を変えてクライスラーに問い掛けた。だが、クライスラーは右手でマリュ―を制した。
「もちろん何も無しで突っ込ませる訳ではない。それなりの部隊は付けるし、君には最強の部隊を率いてもらうことになる」
「最強の部隊？」
「そう、アークエンジェルには一時的にデュエル２機、バスター１機が追加配備されることになる」
抑揚の無い口調だったので、マリュ―には最初、その言葉の意味が分からなかった。変わりにナタルが驚いて立ち上がっている。
「Ｇ３機を更に追加配備ですか！？」
「そうだ、手持ちのＭＳ全てを君達に預ける。作戦終了までだが、これだけの戦力があればザフトの大軍を蹴散らすことも不可能ではないだろう。パイロットもこちらで用意してある」
クライスラーは視線を転じた。それを受けて先に室内にいた士官達が立ちあがる。
「スコット准尉であります。ディエルに搭乗します」
「同じく、レナンディー中尉であります」
「ハウプトマン准尉であります。バスターに搭乗しています」
いずれもまだ若い士官だ。貴重なＭＳを任されるのだからそれなりの実力なのだろうが、マリュ―にはいささか不安が残る。隣にいるフラガも心配そうだった。
「君達、実戦の経験はどれくらいあるの？」
フラガの問いに返ってきた答えは絶望的なものだった。レナンディー准尉だけがそこそこの経験を持っているだけで、後の２人は数回しか実戦を経験していないと言う。機体は凄くても頼りにはならないと言うことか。
「･･････アークエンジェルの砲火の傘の下にいさせるしかないか」
ナタルはキースに頼まれたことを考えていた。酒を飲んだ夜、キースは自分にフレイを頼むと言ったのだ。ブランデーを傾けつつ、キースは自分にこう言ったのだ。
「俺はスカイグラスパーで制空権確保に全力をあげなくちゃいけない。流石にＭＳの支援にまでは手が回らないだろう。頼む、アークエンジェルでフレイを守ってやってくれ」
キースは何故かフレイの事を気にしている事が多い。訓練にもそれが見て取れる。死なせたく無いという上官としての思い遣りを超えて、何か必死さを感じさせるほどだ。彼にとってフレイとはそうまでして守りたい存在なのだろうか。だが、それならＭＳになど乗せず、艦の中に閉じこめておけば良いのにと思う。だが、その質問の答えはナタルには理解し難いものであった。
「あの娘が望んだ事だ。その決断を軽んじてはいけない」
「ですが、それでは無駄死にをさせる事になりますが？」
「そうさせない為に頼んでいるんだ。あの娘は、答えを探し求めている。その答えを戦場に立つことで見出せるかもと考えたんだろう」
「答えを、探し求めている？」
ナタルは不思議そうに問い掛けた。それはどういう意味なのだろうかと。だが、キースはそれには直接答えはしなかった。
「フレイに直接聞いて見るんだね。俺が言う事じゃないだろうし」
そう言って、キースはブランデーの満たされたコップを一気に煽った。琥珀色の液体が喉を流れていき、熱く焼く。その飲み方に、ナタルは感嘆と同時に不思議な感じがした。今のキースは、何か苦痛を飲み下そうとしているように見えたからだ。
キースに頼まれなくとも、最初からナタルはフレイを守るつもりでいた。戦友といえど必要とあれば切り捨てるのがナタルという軍人の筈だったが、ここにきてすっかり戦友愛というものに目覚めてきたらしい。自分でも自嘲してしまうが、戦場に少女を送り込む者の責任として、その力の及ぶ限りにおいてフレイを守って見せるとナタルは誓っていた。
参加兵力は兵員１００万人。２５個師団、航空機１５００機、陸上戦艦、駆逐艦６０隻が投入される事になっている。ユーラシア連邦の総力を上げた作戦といえるが、実際にはこれでも一気にジブラルタルを落すとまではいけないのが現実だ。ＭＳとはそれほどまでに恐ろしい兵器である。
作戦説明を聞き終えたマリュ−は不安そうな顔で隣に座るフラガを見た。無理も無い。艦長になって１月と少ししか経たないのにいきなりこんな大作戦に参加しろと言われるのだから。フラガは人好きのする笑みを浮かべてマリュ−を見た。
「心配するなって。俺達がついてる限り、アークエンジェルは沈まないよ」
「･･････そうでしょうか？」
「俺とキースとキラが信じられないか。多分今のアークエンジェルの戦闘チームは連合最強だぜ」
「それは、分かりますが」
マリュ−の不安は晴れない様だ。フラガは苦笑するしかない。このままだと、マリュ−は遠からず胃痛で倒れるんじゃないかと心配してしまいそうになる。
作戦会議が終わった所でキラはフレイを捕まえた。フレイは立ち止まったが、キラと視線をあわせようとはしない。何時からだろうか、顔を合わせるだけでこんなに辛くなってしまう様になったのは。
「フレイ、もう一度聞くけど、どうしてもデュエルに乗るの？」
「･･････ええ、乗るわ」
「僕は、君に乗って欲しくないよ。フレイ、僕じゃ君を守り切れないと思ってるの？」
そうかも知れないとキラは思う。自分はすでにあの幼女を守り切れず、父親も守れなかったのだから。だが、フレイは首を左右に振った。
「違うわ。キラは凄いわよ。私もＭＳの訓練を受けてみて、その事が良く分かったわ」
「じゃあどうして？」
キラの疑問に、フレイはようやくキラの目を見た。その目には、何かの決意があった。
「あなたが悪い訳じゃないわ。ただ、私は私の為にＭＳに乗るのよ」
「自分の、為？」
「そうよ。私は、私なりの答えが欲しいの」
それだけ言って、フレイは歩いて行ってしまった。残されたキラは呆然とその背中を見送っている。フレイの求める答えとは一体なんなのだろうか。
去って行くフレイを見送っていたキラは、背後から強烈な嫌悪の視線を感じて思わず振りかえった。すると、レナンディー中尉とハウプトマン准尉がまるで汚いものでも見るような目で自分を見ているのに気づいた。
「･･････ふん、コーディネイターの分際で味方気取りとはな」
「堪らねえんだよ。いつ背中から撃たれるか分かったもんじゃねえ」
「なっ？」
キラは驚いた。まさか、こんなに明確な敵意を味方から向けられるとは思ってもみなかったのだ。余りの衝撃と込上げてくる怒りと悔しさに二の句が次げないでいるキラを無視して２人は部屋から出ていった。残されたキラは、なんでコーディネイターというだけでここまで差別されなくてはいけないのだと悲しい思いを抱えながら俯いた。これからも自分はこんな思いをしなくてはいけないのだろうか。
乙です。サザーランドがまともで有能な軍人さんしてますね。おかげでアズラエルが更に小物になって見えるｗ
しかし、フレイ様を使った戦意高揚ムービーですか。確かに効果はあるでしょうけど、利用されたフレイ様はこれから大変だろうなあ
あと、本編よりも動きの速い月艦隊が何時ごろ殺到して来るかも楽しみです
デュエルバズーカというと、アストレイで出てきたあのビームバズーカですか？ あれは･･･装備させても良いんですが、どうするかなあ。どういうものか良く知らないんですよね。
>>ながれぼし
Ｚのカミーユになっちゃってるよ、キラ君。ラクスはファですか。これはかなり激しい鬱ＥＮＤだなあ
何となくラクスに同情です
(´Д⊂ヽ
ええと、これで完結？ それとも続きますか？
>流離
ええい連合のＭＳ乗りども、キラのこと蔑視する暇があったら操縦技術を学び取らんかｗ
しっかし、本編以上に良作化してきましたな。個人的には、ハウプトマン准尉が｢ここから先へは通さないぜ！｣
とか言って通しちゃう展開キボンヌｗ
追伸：デュエルのバズーカは実弾ですよ。
自分は今、羽くじらが刻を漂う者で、炎に焼かれたフレイ様の意識を連れて刻を越えてさかのぼった。
という、かなり無茶な設定にしようと思っています。
エヴァＳＳお得意の逆行物です。
みなさんどうでしょう？
別に良いと思うけど。逆行物もすでに前に出てたし
楽しみに待ってるよщ(ﾟДﾟщ)ｶﾓｫｫｫﾝ
ぜひ書いてｸﾚー!!ｗ
楽しみにしてるよ。
全然ＯＫっすよ！
楽しみに待ってます！
幾ら捜索しても、ビームを放ったものを見つける事は出来なかった。二回ビームを放っただけで、後は煙のように消えうせてしまった。
幸い、艦の被害は航行に支障を及ぼす程のものではなかった。それを聞いたマリューは安堵の息をついたが、艦の近くで誘導していた警備隊に怪我人が出ていたし、二十四時間体制の警備網を敷くには警備隊では人数が足りない。
もし、将来ナチュラルとコーディネーターとの間で何らかの軍事衝突が起こったとしても、このコロニーで戦闘が起こるなど考えにくい。
いわば最果ての地、の扱いをされているのである。そんなコロニーに潤沢な軍備がされているはずも無かった。
「着任早々、こんな事になるとは…引継ぎも済んでいないというのに」
ジョナサン・アダムスキー中佐。アスランはその顔を知っていた。アスランがザフトに志願した頃、訓練施設（と言っても出来合いのものでしかなかったが）で教官をしていた一人だったからだ。
当時の張り詰めた空気には似つかわしくない、柔和な印象の教官だった。
だが、前線で戦果を挙げたという記録は知らない。現在四十代半ばのはずだが、それよりも老けて見える。
口髭を蓄えた細面の顔は、お世辞にも威厳があるようには見えなかった。
「周辺空域には艦影、機影とも確認できません。何処から来たのか、何処へ行ったのかも…」
マリューは唇を噛みしめる。副司令としての責務を果たしていない、と感じる。
「比較的デプリの多い、身を隠すのに都合がよいと思われる空域はしらみつぶしに捜索しましたが、何の手がかりもありませんでした」
「もう付近にはいないのではないか？たったビーム二発の攻撃といい、それほどの戦力とも思えんが」
「そうかも知れませんが、それも確認できていない以上、油断は禁物だと考えます」
中佐の指摘はもっともだが、マリューも幾多の実戦をくぐり抜けてきた経験がある。だから、マリューは敢えて逆らってみせた。
「…という事は、これからその、敵、を発見するまでは警戒体制を取らねばならないが…」
「如何せん手が足りません」
中佐の声を遮ってアスランが喋り始めた。
「現在の我々の戦力は、小型巡洋艦一隻、掃海艇三隻に、MS六機とMA十機…パイロットも不足しています。これ以上手を広げるとなると、とてもこのコロニーの周り全てはカバー出来ません」
マリューの目が、喋りすぎだ、と言っていたが、アスランは無視した。
「こうなっては国防隊の艦隊も演習どころではないでしょう。是非力を貸してもらえるよう…」
「当然だな。しかし、これが司令としての私の初仕事とは、皮肉なものだ」
手を上げてアスランを制しながら、アダムスキーは苦笑いしてつぶやいた。
同じザフトを母体としているが、警備隊は国防隊からは見下されていた。所詮は庭先の番人、というわけだ。
しかもこんな辺境へ配置されるとなると、あぶれ者扱いされているという意識が先に立ってしまう。アスランにはそんな態度に見えた。
アスランは厳しい表情で敬礼をすると、司令室から廊下に出た。そのままパイロットの控え室に向かう。
キラを含めた、部下のパイロット達の前でこんな表情をしてはならない。表情を消して中に入ると、おもむろに口を開いた。
「『敵』は、まだ発見されていない。先ほど攻撃を受け入港した国防隊第十一艦隊に協力を要請する。…この際、国防隊への感情的なしこりは捨てて欲しい。同じ仲間だ。協力して、このコロニーを守るために全力を尽くしてもらいたい」
解散を命じた後、アスランはアダムスキー、マリューの後に付いて第十一艦隊の旗艦“クラコフ”へ向かった。
艦隊司令、カール・キッドマン大佐の鼻息は荒い。
「プラント本国への報告はすぐに行う！だがね、中佐…彼奴らを捕らえんことには腹の虫が納まらん。協力、大いに結構だ。それにはお互い腹を割って話をしないとな？」
「その通りです。足並みが乱れては敵の思う壺と言うものです」
相変わらず、アダムスキーの物腰は柔らかい。
「これからは何が起こるか予測がつかない。…我々にも貴官らと共に、コロニー内の警備を担当させてもらえるかな？」
「コロニー内で戦闘が起こる、と？」
「念には念を、だよ。国防隊は外、警備隊は内、という暗黙の了解があったが、この非常時にそんな事は言っていられまい？」
「しかし、コロニー内での戦闘は危険すぎます。少ないとは言え一般人が居住している…」
「君の意見は聞いていない！」
アスランの言葉を、キッドマン大佐はピシリとはねつけた。マリューが外に出ていろと目で合図をする。
「…申し訳ありません。部下の見舞いをせねばなりませんので…これで失礼します」
アダムスキーはうなずき、アスランは外に出た。重く澱んだ、得体の知れない不安が胸の底へ溜まっていくような不快な感覚に反吐が出そうになった。
「見舞いだと？…中佐、この非常時に随分と甘い認識だな君の部下は」
「甘い、そうかも知れません。しかし、部下を思いやり、安心させる事が出来ない上官は部下を無駄死にさせます。これも任務であります。ご容赦頂きたい」
マリューはアダムスキーの言葉に驚いたが、顔に出してはまずいと姿勢を正した。
「いや、何でもない…」
珍しくアスランはキラに説明しなかった。漠然とした不安などを口にして心配させたくなかった。
「車を出そう。中佐の許可が出た。…もっとも、顔を見たらすぐに戻ってこないといけないが…」
数分後、アスランを助手席に乗せて、キラは車を総合病院へと向けていた。
「『敵』の姿、見えたか？」
「いや…見えなかった」
アスランの問いに対するキラの答えは予想通りだったが、それは深刻な状況を確認するものでしかない。
ミラージュコロイドという単語が同時に二人の脳裏に浮かび、重苦しい沈黙が漂った。
どこの誰かはわからないが、これは明らかに宣戦布告だった。プラントへの…だけではなく、平和を取り戻した世界全体への。
総合病院は、港からは車で数分という所にあった。
コロニー内の一般人には、艦隊への襲撃という事件は当然伏せられている。
総合病院へ搬入された隊員も、訓練中の事故、と言う事になっていた。
「救急病棟から303号室に移送しています」という言葉に従い、二人は病室に向かっていた。
何も知らない人々の中、自分達が醸し出す殺伐とした空気はさぞ違和感を感じさせるのだろうと思いつつ歩いていたキラの足が、止まった。
目の前に、フレイが、いた。
『フレイ…！？そんな…本当に…フレイ…』
そんな言葉だけが、キラの全てを覆い尽くしていった。
その叫びが向けられた先、エリナ・アレントも驚いた表情を見せたが、唇を結ぶと、キラとアスランの方へ歩み寄った。
ごく薄いブルーの看護服を着ているエリナの姿、そのあまりにリアルな姿に、キラは今朝、夢から覚める直前のような感覚に陥っていた。
フレイが生きていた？そんな…確かに、あの時、フレイの姿を見、声を聞いた…だから、フレイはいなくなったんだと、逆に実感してしまっていた。
だが目の前には、あの頃の、いや更に美しくなったフレイがこちらに向かって歩いてくる。夢？幻？それとも…
薄いブルーの瞳が、キッとキラとアスランを見据えた。強い瞳だった。唇の形も同じ…その唇が動いた。
「軍人さんですね？…その格好…院内では静かにお願いします。他の患者さんの迷惑になりますから」
キラは自分が発狂したのではないかと疑った。声も、フレイそのもの…
しかし、エリナの瞳は揺らぎも見せず、キラを知っているという風ではなかった。
キラは一言も発せない。呆然と立ちすくんでいるだけだった。何が起こっているのかわからない。息ができない…
エリナはキラの様子に困惑した表情を浮かべ、アスランの方を見やった。目が合って、アスランも我に返った。
「失礼した…303号室は、この先で良いのかな？」
「あ、はい。ここの突き当たりを右に…」
「ありがとう。キラ…」
アスランはキラを引きずるようにして、エリナの前を離れた。エリナはそれを不思議そうな顔で見送り、つぶやいた。
「フレイ…？一体、誰なの…？」
思い出していた。カガリと一緒に、ルージュのコクピットに収容した時も、キラはこんな表情をしていた。あの頃に戻ってしまったのではないかと思うと、ゾッとした。
「キラ！大丈夫か、キラ！」
肩を掴むと、キラはゆっくりと振り返った。
「フレイ…フレイは…アスラン…」
「しっかりしろ！」
と言ったところで、それ以上何が出来るわけでもなく、アスランは絶句するしかなかった。アスランは、フレイを直接には知らない。
キラは、はっきりとフレイがいなくなった、と言っていた。MSやMAで戦うと、直接人間が四散するところを見ることは少ないから、仲間の機体が目の前で爆発しても心の何処かで、生きているのではないかという気持ちが働く。
しかし、戦闘が終わった後で、自分の隣にいつもそいつがいた空間がぽっかりと空いていたり、ロッカーがいつの間にか空になっているのを発見したりして、死んだ、いなくなったという実感が押し寄せてくるのである。
それに耐えなければ生きていけないし、忘れる、ではなく、いなくなったことに耐えられるようになっていくのが人の強さというものだと、アスランは骨身に染みて知っていた。
しかし、キラ・ヤマトは…
『優しすぎるんだよ、キラ…』
乱暴にハンドルを切りながら、アスランは叫びたい心境だった。しかし、キラの前でそれは出来ない。そんな自分が腹立たしかった。
右に、左に、車がカーブを曲がる度、踏ん張ることもなく揺れているキラは、力無く倒れた人形のようだった。
アダムスキーとマリューが帰った後、“クラコフ”内の艦隊司令室で、キッドマン大佐は数人の参謀と机を囲んでいた。
机上の図面には、≪へリオポリス�侠籠發慮�取り図と、国防隊各艦隊の現在の配置図が広げられている。
「縄張り意識が抜けない役立たずに過ぎん。その内向こうから泣きついてくる…まだ時間はある。焦ることはない…プラント本国は何と言っている？」
「照会中との事で…あまり事を荒立てたくないようですな」
「ふん…カナーバめ、拳を振り上げることも出来ぬ腰抜けめ！」
苦々しくキッドマン大佐は吐き捨てた。目には憎しみの色だけが宿っていた。
「まずはコロニー周辺を巡回しながら…予定通り進める。…もう少し、今度は彼らにも痛い目を見てもらわないといけないな？」
「はっ…艦の補修は三日ほどで終了するとの事です」
「早いな…ビームの出力を抑えすぎたか？…ふん、まぁ良い。本国の奴らが何というか、しばらく高見の見物をするのも一興と言うものだ」
薄く笑ったキッドマン大佐が手元のディスプレイを操作すると、“クラコフ”のモビルスーツ・デッキに居並ぶ一群のMSが映し出された。
「我々が起てば、プラント内部でも呼応する…そうすれば、世界も変わろう…」
その呟きは、不気味に静かな、確信に満ちたものであった。
マリューは上官に対して無礼ではあるとわかっていたが、敢えて聞いた。アダムスキーが、第十一艦隊がコロニー内部に入る事に対してはっきりとした返事をしなかったからだ。
「襲撃の事実が伏せられている現在、MSを中に入れるのは住民の不安を煽る事になる。キッドマン大佐は強引すぎる…治安に関しての責任は我々警備隊の方にある」
アダムスキーは穏やかだが、はっきりとした口調で言った。
「では引き続き、比較的デプリの多いカリシウス管制区、メソティキオン管制区を中心に捜索を続行します」
「そうしてくれ…キッドマン大佐にも協力してもらえるよう要請する。それと、警備隊のMAにはミサイルランチャーではなくビームバズーカを装備させるように。MS戦になるかも知れないからな」
「わかりました。…戦争に、なるのでしょうか…」
マリューの声は、微かに震えていた。
「それは分からない…君も色々辛い立場だろうが、戦争になれば、また若い命が無数に犠牲になる。そうならないことを、祈るしかない」
アダムスキーは、ため息をついて報告書に目を落とした。
「少なくともここでは十万の市民が暮らして、それなりに上手くやっている。私はコーディネーターだが、少佐、君はナチュラルだ…だが協力してコロニーを守ろうとしている…」
マリューに言って聞かせたのではなく、独り言だったのかも知れない。
「はい…息子も、ここで生まれました。あの子にとっては、ここは故郷です。故郷は、守らなくてはなりません…」
「ほぅ…ご子息がいるのか？」
「はい。まだ小さいのですが…」
「ハハ、結婚していたとは知らなかった」
「いえ、そうではないのですが…」
マリューの表情で、アダムスキーは勘付いたようだった。
「これは、すまない事を聞いたか…忘れてくれ」
「いえ、もう大丈夫ですから…」
マリューは微かに笑ってみせた。
「ふむ…今度の事件が片付いたら、顔が見たいものだな。子供は良い。希望そのものだ」
「ありがとうございます。必ず…」
マリューが敬礼を返した時、卓上の電話が鳴った。
「…少佐、ザラ中尉が帰ってきている。先ほどのビームバズーカの件を伝えて、整備を急がせてくれ」
「了解しました。では…」
警備隊司令室を退室し、自分の部屋に戻ると、そこには不安げな顔をしたアスランが待っていた。
｡･ﾟ･(つД`)･ﾟ･｡・・・
>MSやMAで戦うと、直接人間が四散するところを見ることは少ないから、
仲間の機体が目の前で爆発しても心の何処かで、生きているのではないかという気持ちが働く。
ここがリアルですた。MSのモニターって(少なくとも宇宙世紀は)あえてリアルな画質にせず表示してるらしいし。
でもフレイたんは霊になったから生存は絶望的だなあ(´Д⊂ヽ
エリナ嬢とキラがもう邂逅しちまった。キラが精神崩壊寸前にまで逆戻りしてるじゃないか。こりゃＭＳには乗れそうも無いな
はたしてエリナ嬢はキラと話す時は来るのか。やって来るというラクスとエリナ嬢の出会いは？
そして、キラはどういう道を選ぶのだろうか
ついにマリューは大気圏への緊急降下を決意する。
「敵の狙いは本艦です。アラスカは無理ですが、この位置なら友軍の勢力圏
には十分降下できます」
「了解した、後は任せろ。送り狼は一機たりとも通さぬぞ！」
アークエンジェルの盾となり、死を覚悟したハルバートンは、
旗艦メネラオスから民間シャトルの切り離しを部下に指示した。
だが、このタイミングでついに四機のガンダムが第八艦隊の防御ライン
を突破し、アークエンジェルの眼前にその姿を現した。
「ムウ・ラ・フラガ、出るぞ！」
最後の切り札として温存していたフラガの乗るメビウス・ゼロが発進したが、
どうしても駒不足は否めない。
一旦、大気圏への降下体勢に入ってしまえば敵も深追いはしてこないだろうが、
それまで艦は持つのか。
ＡＡの行き先を不安に感じたＭＳ管制官のミリアリアに、ストライクからの通信が入る。
「ストライク、行けます」
「キラっ！？」
パイロットスーツ姿のキラが、何時の間にやらストライクのコックピットに鎮座し、
発進準備を整えている。
「かまわん、許可する」
キラは既に艦を降りたのでは…と困惑する艦橋の空気を無視して、ナタルが強引に
キラの発進を支持する。
「キラ、大丈夫？」
キラの様子を心配して、ミリアリアがスクリーン越しに声をかける。
ミリィの目からは、何となくキラは浮ついているように見えた。
この土壇場の緊迫した場面で、あまり緊張感を感じさせずにポーとしている。
「平気よ、ミリィ。私、守られてるから…」
「はぁ！？」
守られてるって、何によ？ フェイズ・シフト装甲？
このまま発進させたら即座に撃墜されてしまうのでは…と不安になるミリアリアに、
キラはウインクしながら親指をビッと掲げてみせ、ストライクを発進させた。
「ストライクぅう…！！！ 見ぃいつけたぁああ……！！！」
一日千秋の想いでストライクを探し続けたイザークは、ようやく姿を現した
待ち人の姿に歓喜し、真っ先にストライクに襲い掛かる。
イザーク一人に任せるのに不安を感じたディアッカが援護しようと飛び出したが、
その前にフラガのメビウスが立ち塞がる。
「ちぃ、小五月蝿いハエめ！」
キラを援護しようとするフラガの挑発にあっさりと引っ掛ったディアッカは、
メビウスを仕留めようとストライクを無視して放火を放つ。
アークエンジェルは、上手くメネラオスと連携しながら、イージスとブリッツ
を足止めするのに成功し、フレイの用意したキラとのバトルステージに昇ったのは、
主演男優のアスランではなく、役者不足を弁えない端役のイザークだった。
命懸けでこの舞台を演出した脚本家のフレイとしては、さぞかし不本意なことだったろう。
ビームを打ち合う。一進一退の攻防が続いたが次第にキラはディエルに押され始めた。
「キラの奴、何あんな雑魚に手間取ってるんだ？」
そろそろ地球の重力圏に近づいてきたのでトールが焦った声を出す。
本来、赤服を着るエリートのはずのイザークだが、前回のマイナスイメージが強すぎて、
憐れにもトール達から雑魚認識されてしまったみたいだ。
トールよりも公平にイザークとキラを見ていたナタルも、目の前の戦闘に
違和感を抑えられなかった。デュエルがアサルトシュラウド装備でパワーアップ
しているのは分かるが、それにも増してキラの動きが鈍重すぎるのだ。
突然、ストライクの電子モニターを担当していたサイが、悲鳴のような声を上げる。
「ス…ストライクのＯＳが、ナチュラル用にデカスタマイズされたままです」
「何だと！？キラはＯＳをコーディ用に元に戻さなかったのか！？」
コクリと肯くサイに、ナタルは驚愕する。
「馬鹿な！ 何だって、そんなミスを！？」
「そ…それじゃ、キラは？」
「身体中に重りを巻きつけて、戦っているようなものだ」
キラの浮ついた表情を思い出し、不安そうに尋ねるミリアリアに、ナタルは
苦虫を噛み潰した表情で呻いた。
その時、艦橋に別の衝撃が走る。
アークエンジェルに捨て身の特攻を仕掛けてきたザフト艦ガモフに対して、
身を呈して盾となったメネラオスが、相打ちで爆発四散し、ハルバートン提督
が戦死したのだ。
反射的に敬礼するマリューとナタル。だが、この戦闘は未だ終わりを告げない。
キラ自身も、デュエルと戦っている最中に真っ先に機体の異変に気づいた。
反応速度が遅い。キラの要求にストライクはついてこれずに、どうしても
ワンテンポ行動がずれるのだ。戦場ではこの僅かなタイムラグが命取りになる。
デュエルの放ったビームをビームコーディングされた盾で弾いて、何とか距離を
稼いだキラは、ようやくパワーダウンの原因に思い当たった。
なんてこと…。私、フレイにキスされたのに浮かれていて、ＯＳを戻すの忘れていた。
あまりにも馬鹿馬鹿しいが、即生死に直結する深刻なミステイクに、キラは愕然とする。
デュエルが再び接近してくる。この場でＯＳを書き換える余裕などあるはずがない。
キラは不利を承知でこの状態で戦い続け、本来なら生命を代価として支払わなければ
ならないこの致命的な失策を、従来のポテンシャルの差でかろうじて凌ぎ続けた。
メネラオスからの牽制がなくなり、ある程度の自由を確保したブリッツとイージスだが、
目前のデュエルとストライクの戦闘には参加しなかった。
両機の戦闘座標は既に大気圏の限界高度に達している。
慎重（イザーク曰く臆病）なニコルは自身も重力に捕まるのを恐れてのことだが、
アスランは少し事情が違った。
ストライクの動きの鈍さに気づいたアスランは、今自分まで加勢したら
本当にキラを倒せてしまいそうな気がして、躊躇っているのだ。
フレイが、コーディネイター同士で馴れ合っていると思い込むのも無理はない。
キラ・アスラン両者共に、お互いに本気で刃を交えながらも、いざ相手の咽喉元を
切り裂けるチャンスを得られると、故意にその機会を見逃してきたのだから…。
今の状態では中距離戦は不利と見て、デュエルに組み付いて超接近戦を挑んだ
ストライクを、イザークは蹴り剥がした。
「はーっはっはっは！思い知ったか、ストライク！
本気を出せば、お前なんか俺の敵じゃねえんだよ！」
ストライクのパワーダウンに気づかず勝ち誇ったイザークは、止めとばかりに
ビームライフルの照準をストライクにロックする。
引き金を引こうとした瞬間、爆発前にメネラオスから脱出したヘリオポリスの
避難民を乗せたシャトルが、デュエルとストライクの間に割り込むように横切った。
「ちぃっ！」
そのタイムロスの間に、何とかストライクの態勢を立て直し、キラがホッと一息
ついたのも束の間、ストライクを葬る千載一隅の好機を邪魔され切れたイザークが、
ライフルの照準をシャトルに合わせるのが目に入った。
「や…やめてぇ！！！そのシャトルの中には……」
キラは絶叫しながら、バーニアを吹かして、必死にストライクをシャトルへと向けるが、
パワーダウンした機体は思うように前へ進めない。
「この逃げ出した腰抜け兵がぁ！！！」
デュエルから放たれたビームが、必死にガードしようとするストライクの手を
すり抜けるように、シャトルを貫いた。
守れるはずだったのに……。
脳裏に子供達の笑顔を思い浮かべたキラの目前でシャトルが爆発し、
その爆風がストライクをキラの想いごと吹き飛ばした。
非常に遅レスだが、お願いします。
フレイきゅんファーストキスじゃなかったことで黒さ上昇ｗ
ところで一ついいですか？ この作品、
遺 作 が 哀 れ す ぎ る ｗ
とっても、癒される・・・。
「よう、君がストライクのパイロット？」
「え、ええ」
振り向けば、先ほど紹介されたデュエルのパイロット、スコット准尉がいた。年は２０歳を越えたあたりだろう。。
「聞いたよ、君もコーディネイターなんだってな」
「君もって、じゃああなたも？」
「ああ、コーディネイターだよ。両親がナチュラルでね、両親を守りたくて軍に入ったんだ」
赤毛を短く刈った青年は、にこやかに笑いながらキラに右手を差し出してきた。キラは嬉しそうにそれを握り返す。
「正直、連合ではコーディネイターは肩身が狭いからな。同胞に会えたのは嬉しいよ」
「僕もですよ」
「君も苦労してる口かい。まあ、気持ちは分かるよ」
そこまで言って、スコットはフレイが出ていった扉を見た。
「さっきの娘は、君の彼女かい？」
「･･････だと、嬉しいんですけどね」
キラは辛そうな顔になった。スコットはそれを見てすまなそうな顔になる。
「悪い、聞いちゃまずかった様だな」
「いえ、構いません」
そうは言うものの、キラの表情は冴えない。スコットは頭を右手で掻くと、キラの肩を叩いて作戦室を後にした。残されたキラは誰も居なくなった部屋に１人で佇み、じっと何かに堪え続けている。その内心を知る者は誰もいない。
アークエンジェルに搬入されてくる２機のデュエルと１機のバスターを見て、格納庫にやってきたサイ達は目を丸くしていた。自分たちをあれだけ苦しめたＧが３機も新たに配備されたのだから当然だが、これで数的にはアークエンジェルに配備される予定だった機数が揃った事になる。
格納庫に来たサイ達がベッドに固定されていく機体を珍しげに見ていた。
「へえ、デュエルにバスターだぜ」
「連合って、ＭＳの量産はじめてたのね」
サイの感嘆の言葉に、ミリィが自分なりの感想を続ける。２人の声を聞きつけたマードックがサイ達のほうを見た。
「おーい、お前等。見てるのは良いが、邪魔すんじゃねえぞ！」
「分かってますよ、マードック曹長！」
トールが元気に答えを返した。４人はマードックの邪魔をするまいと少し離れた所に移る。すると、そこにカガリがやってきた。
「おお、また沢山ＭＳがあるじゃないか」
「なんだ、カガリか」
サイがカガリを見て顔を顰める。どうもサイはカガリが気に入らない様だ。出会いが悪かったのだろうか。カガリはそんなサイにむっとした顔をするが、口に出して文句を言うのはどうにか堪えた。たんにキサカがジロリと見ているので怖かったのかもしれないが。
「しかし、ＭＳが５機か。これから大きな戦いにでも行くのか？」
「お前なあ、一応そういうのは軍規とか言うのになるんだから、言える訳無いだろ」
サイが呆れ口調で言う。カガリは今度は文句を言ってきた。
「なんだよ、良いじゃんか、教えろよ」
「そんなに知りたいならバジルール中尉とか、キースさんに聞けよ。あの人達の方が詳しいからさ」
「じょ、冗談じゃない。キースなんかに聞いたら何されるか分かったもんじゃない！」
カガリは目に見えて慌てふためいて見せた。どうやらカガリはキースがすっかり苦手になっているらしい。これまでにもキースには散々説教されており、便所掃除までさせられているのだから。
余りに未熟な集団に、ナタルは額を押さえた。
「艦長、これじゃ足手纏いもいい所です。まだアルスター准尉の方がマシですよ」
「そうね。ＯＳが悪いのもあるでしょうけど、訓練が不足してるわ」
「ですが、彼らはアルスターよりも長い訓練を受けています。それであの動きですか？」
ナタルの不満は大きい。決定的な戦力を得たと思っていたら、まさかこんなに中途半端な代物だったとは。だが、艦橋にいたフラガがＭＳ隊を弁護した。
「まあそう言うなって。フレイは俺やキースがみっちり鍛えた上にキラが教えてる。加えてあのＯＳはキラの手が入った改良型だ。成長が早くても当然なのさ」
「それは分かりますが･･････」
「それに、役に立たないって事は無いでしょ。一応ＭＳなんだし」
そう、幾ら動きが悪いと言っても、あのＸナンバーの量産機なのだ。その性能差でジンぐらいなら圧倒出来る筈なのだ。だが、それでもナタルには安心材料とはならない。性能を過信する事がいかに危険な事か、彼女はよく理解していた。なにより性能で著しく劣るメビウスでジンを平然と堕としていたフラガやキースが言っても説得力が無い。この２人は腕で性能差を覆して来たのだから。
フレイはキラの訓練を受けることでどうにか機体をまともに動かす事は出来るようになっていた。射撃もなんとか様になって来てはいる。その向上ぶりには教師達も驚いているほどだ。才能があったのだと認めるしかないのだろう。今回アークエンジェルに集結した５機のＧの中ではキラ、スコットに続く戦力となることはほぼ確実である。
ただ、１つだけ問題があった。それは、フレイはこれが初陣だということである。初陣の兵士はその実力を発揮できない。訓練で良い結果を出せても実戦で竦んでしまえばそれまでなのだ。
デュエルのコクピットを降りて訓練での疲れを見せるフレイに誰かが話し掛けてきた。顔を上げれば、それはスコット准尉だった。
「よう、大丈夫かお嬢さん？」
「だ、大丈夫、まだやれます」
「元気だねえ。でも、無理しない方が良いぜ。俺やキラみたいにコーディネイターって訳じゃないんだろ？」
スコットの言葉にフレイは驚愕してスコットを見た。この男もコーディネイターだというのか。父を殺した憎いコーディネイターだと。
「あなた、コーディネイターだと言うの？」
「珍しいだろ。連合兵士のコーディネイターなんてさ」
珍しいどころではない。フレイは連合にコーディネイターが居るということを初めて知ったくらいだ。表情に恐れさえ見えるフレイに、スコットは寂しさを感じてしまう。
「怖いか、俺が？」
「･･････当たり前でしょう。私はナチュラルよ、コーディネイターに襲われたら抵抗も出来ないわ」
「･･････そうだな、確かにその通りだ」
ナチュラルとコーディネイターの間には決定的な差があるのだ。その差がナチュラルに無意識の恐れを抱かせる。スコットはその現実をこれまでに嫌というほど思い知らされているから今更ショックは受けない。
だが、フレイの顔に浮かぶ表情は少しおかしかった。嫌悪だけではない、迷いと戸惑いもそこには浮かんでいたのだ。何かを悩んでいるのだろうか。
「何か、悩みでもあるの？」
「な、なに言ってるのよ。そんな訳無いわ。コーディネイターのくせに、馴れ馴れしくしないでよ」
「俺は駄目でも、キラなら良いのか？」
スコットの問い掛けに、フレイは今度こそ意外な表情を作った。その顔に走ったのは、怯えと悔恨。そして寂しさ。それらが混ざり合ったとでも言うべき、複雑な表情を浮かべたのだから。
スコットはそんなフレイを見て、気さくな笑顔を浮かべた。
「満更でもないってか、その顔だと？」
「･･････ゎょ」
「ん、何だって？」
「違うわよっ！」
激情のままにそう怒鳴りつけると、フレイは立ち上がってアークエンジェルの中に駆けて行ってしまった。
「やれやれ、初々しいねえ。認められない恋心ってか」
「そう思うかい？」
後ろから話し掛けられてスコットは軽い驚きとともに振り返った。そこには黒い髪の青年士官がいる。年は自分と同じくらいか。最初は誰かと思っていたが、すぐにその顔をブリーフィングルームで見たことを思い出し、慌てて敬礼した。
「こ、これは、キーエンス・バゥアー大尉でしたか」
「そんなに固くならなくても良い。この艦はフレンドリーな気風でね。おかげで俺は気楽でいさせてもらってる」
キースはスコットの傍にくると、フレイが駆けて行った通路を見た。
「君は、コーディネイターだという事だな」
「はい」
スコットは少し身構えた。一体何を言って来るつもりなのだろか。
「どう思うね、彼女と、キラを？」
「どうと、言われましても、見ていて飽きない２人だとは思いますが」
「なるほど、確かにそうだな」
スコットの答えにキースは小さな声で笑い出す。スコットはそんなキースを不思議そうに見ていた。
「大尉、２人のことが、何か？」
「だって、気になるでしょ。ナチュラルとコーディネイターのカップルなんて、前代未聞だぜ。俺としては生暖かく見守ってやってる訳よ」
「な、生暖かくですか」
中々に良い性格をしているらしいこの上官に、スコットはいささか表情を引き攣らせた。エメラルドの死神と謳われるパイロットのことは聞いていたが、ここまで軽い男だったとは。
だが、何か言おうとしたスコットより先にキースは口を開いた。
「まあ、俺としてはだ。可愛い教え子がどういう道を選ぶのか、とても興味がある訳だ」
「･･････上手くいくと、考えているのですか？」
「それは俺にも分からない。ただ、もし上手くいくなら、という期待はあるね」
キースは遠い未来に思いを馳せるような表情になった後、急に真面目な顔になってスコットを見た。その顔は先ほどまでの緩さが消え、軍人のそれになっている。
「准尉、死ぬなよ。君のデュエルはキラのストライクに次ぐ戦力だ。君が欠ければ、作戦の成功が覚束なくなる･･････仲間が死ぬのは良い気分じゃないしな」
「･･････はい」
スコットは姿勢を正すとキースに見事な敬礼を施した。キースは苦笑してそれに敬礼を返した。この時、スコットはこの男を信頼できる上官と認めたのだ。軍人にはさまざまなタイプがいるが、部下の命をどれだけ重んじてくれるかは重要なファクターである。なにより、コーディネイターの自分を仲間と言ってくれた。部下の命を大事にしてくれる指揮官には兵士は自然と付いていくものなのだ。
スコットとキースが話している所に、キラがやってきた。
「キースさん、スコットさん、何をしてるんですか？」
「いんや、大した事じゃないよ」
ふざけた調子で返すキースに、スコットがジト目で突っ込んだ。
「当人を前に大した事じゃないで済ますつもりですか？」
「はっはっは、この事は秘密なんだよ、准尉」
何気に階級を出して牽制するキース。キースがこういう誤魔化しかたをする時は大抵碌な事を考えていないので、自然とキラの視線が冷たくなる。
「今度は何企んでるんですか、キースさん？」
「ああ、酷いぞキラ。お前は俺をそんな目で見てたのか？」
「みんな僕と同意見だと思いますけど」
嘆くキースに、キラは同情の欠片もない答えをする。それを聞いたキースは悲しそうな顔でしゃがみ込み、床にのの字を書き出した。
「いいんだ、俺なんてどうせ何時も撃ち落とされてばかりだし、ボケキャラだし、そのうちみんなに役立たずとか言われて捨てられるんだ」
見ていて鬱陶しい事この上ないので、キラとスコットはキースをあっさりと無視してどこかに行ってしまった。そのせいでキースは何時までもその場でのの字を書きつづけ、余りの鬱陶しさに我慢できなくなったマードックに文句を言われるまでしゃがんでいたのである。
ぶつかられた方も態勢を崩したが、転倒するのは避けていた。
「いたたた、もう、艦内で走りまわるなんて、何考えて･･････」
ぶつかられたのはマリュ−だった。相手に文句を言おうとして、起き上がらないフレイにいささか心配そうな視線を向けている。だが、助け起そうとし近づいた時、その耳に嗚咽が聞えてきて眉を顰めた。
「アルスター准尉、大丈夫？」
１０以上も年下の少女が目の前で泣いているのだ。マリュ−の性格上無視することもできなかった。だが、最初は怪我でもしたのかと思ったのだが、どうやら違うらしい。なにか別の理由があるようだ。
「どうしたの、なにかあったの？」
マリュ−はフレイを抱き起こと、顔を覗き込んで問い掛けた。だが、フレイは返事をしない。ただ泣いているだけだ。どうにも様子がおかしいというか、平静を失っているように見える。マリュ−は辺りを見まわして誰もいないのを確かめると、フレイを立ちあがらせた。
「何かあったみたいね。私の部屋に来なさい。話くらい聞くわ」
女の勘とでも言うか、マリュ−はフレイを放っておけなかった。ＭＳパイロットがこの状態では使い物にならないという判断も僅かにあったが、泣いている女の子を放っておけないという気持ちが強い。
フレイを部屋に入れたマリュ−はフレイを椅子に座らせると、コーヒーを入れたカップをフレイに渡した。フレイは泣き止んではいたが、まだ落ちこんでいるようだ。マリュ−はフレイと向かい合う様にベッドに腰掛けると、フレイの顔を見る。
「何があったの、ヤマト少尉と喧嘩でもしたの？」
その問い掛けに、フレイは力なく首を横に振っている。マリュ−は首を傾げながらもじっとフレイが口を開くのを待った。そして、フレイがようやく口を開く。
「･･････キラは、優しいんです」
「････････････････････････････・」
「私なんかに、凄く････優しくしてくれるんです。自分の方が辛いのに、苦しいのに、他人の事なんか気にして･･････」
この状況でなければただの惚気話に聞えるだろうが、声と表情、そして纏っている雰囲気がそれを裏切っている。どういうわけかは分からないが、フレイにはそれが苦しむ原因になっているらしい。
「優しいのに、なにか不満なの？」
また首を左右に振る。不満ではないのに泣いてしまう。マリュ−にはフレイが何を言いたいのか分からなかった。
だが、フレイが漏らした一言には流石に眉を顰めざるを得なかった。
「私には、優しくしてもらう資格なんか無いのに。むしろ、憎まれて当然なのに」
「憎まれて当然って･･････」
マリュ−は絶句した。何があったか知らないが、自分を憎まれて当然などと言い出すとは、余程の理由があるのだろう。マリュ−はベッドから立ちあがるとフレイの肩を抱いた。
「･･････余程の事情がある見たいね。今は詳しくは聞かないことにするわ。でも、誰かに聞いてもらった方が楽になることもあるわよ。私なら何時でも相談に乗ってあげるから、気持ちの整理がついたらまたいらっしゃい」
「か、艦長･･････」
泣きそうなフレイに、マリュ−は頼もしげな笑顔で頷いた。それでフレイの感情は堰を切ったように流れ出した。涙を流し、声を上げて泣きながらマリュ−に抱きついてしまう。マリュ−は大声で泣くフレイの頭を優しく撫でてやりながらも、何も問い掛けることはなかった。何時か自分から話してくれるまで、聞こうというつもりは無いのだろう。そして、聞かない優しさがフレイにはこの上なく嬉しかった。
気を落ちつかせたフレイは涙を拭うと立ち上がった。マリュ−も立ち上がり、部屋から出ていくフレイを見送る。
「艦長、すいませんでした、見苦しい所を見せてしまって」
「子供がそんなこと気にするものじゃないわね。でも、何があったかは聞かないけど、頑張りなさいよ」
「･･･････はい、そうします」
フレイはマリュ−に頭を下げると自室の方に歩いていった。といってもキラの部屋なのだが。カスタフ作戦参加に伴って正式にＭＳパイロットとなったフレイは一応准士官となっており、個室が与えられているのだが、彼女はまだキラの部屋にいる。今の所それを誰も咎めてはいないのだが、もしかしたら自分から出ていく事になるのかもしれないとマリュ−は思った。
「ナタル、どうかしたの？」
「いえ、通りかかっただけです。それより艦長、アルスター准尉がどうかしましたか？」
「･･････ええ、ちょっとね。あの娘、なにか複雑な事情を抱えてるみたいよ。かなり悩んでるわ」
「悩む、ですか。キ･･･バゥアー大尉も同じ事を言ってましたが」
「バゥアー大尉が？」
「はい、アルスター准尉はなにか、答えを求めていると。それを得る為に戦場に立とうとしていると」
ナタルの言葉にマリュ−は考えてしまった。戦場に彼女の求める何があると言うのだろうか。それがどういう答えかは分からないが、キラとフレイ、２人の間にあるギャップを埋めるなにかだという事は想像がつく。
しかし、キースがそこまで子供たちのことを考えてくれていたとはマリュ−は思わなかった。自分が巻き込んでしまったという罪悪感が常に根底にあっただけに、手が回らないでいた子供たちを見ていてくれたキースにマリュ−は内心で感謝した。
そして、遂に連合軍のヨーロッパ反攻作戦が開始される。クライスラー少将の直接指揮する第４８装甲師団が先頭に立ち、アークエンジェル隊もその中に含まれている。戦争がはじまって以来、幾度も繰り返されてきたおろかな行為がまた繰り返されようとしている。ただ、１つだけ違うのは、攻める側と攻められる側が逆だという事だろう。
今回、攻め込もうとしているのはナチュラルの側であった。ザフトはこれまでの常勝に、ナチュラルが反攻に出てくるとは夢にも思っていない。その勝者の傲慢につけこむのも今回の狙いであった。
>>幻
キラとエリナが遂に会いましたか。エリナにフレイ様を重ねて過去に戻るキラと、フレイという人物に興味を持つエリナ。これからどうなるのかな
そして、なんだか強硬派らしい方々が戦争の火種に火をつけようとしてますねえ。サングラスのクルーゼが裏にいるのかｗ
>>キラ♀
ＯＳ直し忘れてるとは、キラちゃんおっちょこちょいですなｗ ですが、あの子供達の乗ったシャトルが無残に･････キラちゃん可哀想に
何気にイザークが哀れだ。トールにまで雑魚呼ばわりされてるｗ
大人組はみんな心配の種増えまくりですね。
自立フレイ様は連合のパイロットに足引っ張られそうで心配です。
クライスラーはただのイイ人ではないですね。AAをうまく操って
…。大人の生臭さというか保身がにじみ出ててよいです。
>幻
ついにエリナと遭遇しましたね。結構真面目な娘みたいですね。
初登場の時から諦観モード漂っていて堅実な性格は予想してい
ましたが。これからどう変化するか楽しみです。
>キラ（♀）×フレイ（♂）
シャトル事件がついに…ここのイザ―クはただでさえ雑魚扱いされて
しまっているのにさらに｡･ﾟ･(つД`)･ﾟ･｡・・・
>キラはウインクしながら親指をビッと掲げてみせ
ヤバイなキラ･･萌え要素噴出しまくりだな。
最後まで読んでいただければとおもいます。
「キラ・ヤマト、なんだこのデザインは！これでは今度の春コレで
厳しい評価が下るぞ、やり直せ！」
デザインフロア全体に怒声が響いた。怒声の主は
ナタル・バジルール 春コレ担当総合責任部長だ。
キラの勤め先はアークエンジェルいうアパレルメーカーだ。
創設したばかりこそ無名だったが、ここ数年、積極的に
人材育成に力を入れ優秀なデザイナーやマネージメントを
育成することに成功、セレブや一般の人々にも
好感で最先端、時代にシンクロしてるといわれており
ファッション業界でも注目を浴びてるアパレルメーカーだ。
キラは主に十代、二十代の少年少女向けの担当だ。
いくら若いとはいえ、この歳でチーフデザイナーに
なるとは夢にも思わなかった。
しかもティーンエイジャーの春コレクションのチーフだなんて・・・
ナタルさんもきついよな〜もうちょっと考える時間がほしいのに・・・
でもせっかくチャンスをもらったのだから、ものにしないと・・・
このポジションを狙ってる人もいるみたいだし、
でもいきなり春物のティーンエイジャーコレクションの
うちのメインデザインチーフだなんて・・・
やっぱり難しいよ・・・
でもだめだ、逃げちゃダメだ、やらなくちゃ・・・
最後まで読んでいただければとおもいます。
「キラ・ヤマト、なんだこのデザインは！これでは今度の春コレで
厳しい評価が下るぞ、やり直せ！」
デザインフロア全体に怒声が響いた。怒声の主は
ナタル・バジルール 春コレ担当総合責任部長だ。
キラの勤め先はアークエンジェルいうアパレルメーカーだ。
創設したばかりこそ無名だったが、ここ数年、積極的に
人材育成に力を入れ優秀なデザイナーやマネージメントを
育成することに成功、セレブや一般の人々にも
好感で最先端、時代にシンクロしてるといわれており
ファッション業界でも注目を浴びてるアパレルメーカーだ。
キラは主に十代、二十代の少年少女向けの担当だ。
いくら若いとはいえ、この歳でチーフデザイナーに
なるとは夢にも思わなかった。
しかもティーンエイジャーの春コレクションのチーフだなんて・・・
ナタルさんもきついよな〜もうちょっと考える時間がほしいのに・・・
でもせっかくチャンスをもらったのだから、ものにしないと・・・
このポジションを狙ってる人もいるみたいだし、
でもいきなり春物のティーンエイジャーコレクションの
うちのメインデザインチーフだなんて・・・
やっぱり難しいよ・・・
でもだめだ、逃げちゃダメだ、やらなくちゃ・・・
今まで以上に斬新なデザインで勝負しに来ると思う。
ぼくたちもうかうかしてられない。
それにうちも今度の春コレで認知度をもっと高めたいらしい。
マーケティングでも重要だと思う。頑張ろう。」
最初のミーティング冒頭でキラは挨拶をした。
デザインメンバーはサイ・アーガイル、トール・ケーニヒ
カズィ・バスカーク、ミリアリア・ハウ
そして僕を含めこの５名が中心になり全員で７人のデザインチームだ。
みんな個性があり、イマジネーションが豊富だが、
あまりに過激すぎて却下が多いのが悩みの種だ。
「キラ、やろうぜ キラが基本コンセプト考えて それをもとにデザインをねるから」
「おれたちもやらなきゃな、頼むぜ」
「すべてキラにかかってるんだぜ」
「キラ、やりましょう 楽しみ〜」
メンバーの励ましもあり、ほっとした自分がそこにいた。
メンバーはさっそく作業に取り掛かった・・・
たどり着く〜場所さえもわからない〜孤独を信じて〜今〜想いをはしらせるよ〜♪
キラの携帯の着メロが鳴った。だれだろう？ メールだ。フレイ？！
「ＢＡＲ＆レストラン 宇宙くじらで待ってるわ 超マッハで大至急来て
遅れたら しょうちしないわよ（怒）」 フレイ
今日は帰って仕事しようとおもったのに・・・
でもフレイを怒らすとあとで大変だからな〜 まったく・・・
キラはいそいで待ち合わせ場所に向かった。
タクシーで１５分くらいだ。
その店のオーナーはフラガさんとマリューさん夫婦がやってて
実はマリューさんは２年前まで一緒に働いてて、かつてぼくの上司だった人だ。
フラガさんはマーケティング部の営業部長をやっていた。
でも、フラガさんは店をやりたくて会社を辞め、店を開いた。
マリューさんも今の仕事を好きで本当は寿退職なんて望んでなかった
みたいだけど、フラガさんの真剣なプロポーズで変わっちゃったみたいだった。
それにぼくの上司に当たるナタルさんとは元同僚で
かなり衝突があって、うんざりしてたみたいだった。
本当は仲がとてもよかったんだけど、ビジネスの話なると話は違った。
人間関係ってむずかしい・・・やっぱり水と油の関係になっちゃうのか・・・
でもこの二人からはいろんなことを教えてもらった。
本当に感謝している、この二人にめぐり合えたことを・・・
人の出会いほど自分を変えるものはないというけど、その通りだと思う。
だからこうしてアークエンジェルのチーフデザイナーとしての自分があると思う。
そんなことをかんがえてるうちに宇宙くじらに着いた。
「あれ、けっこう混んでそうだな おそくなっちゃった。
フレイ怒ってないかな、」
章にできなくて
カウンターでフレイが手を振ってる。あれ、アスランとカガリ
それにラクスがいる。どうして・・・
アスラン「キラ、おそいぞ」
カガリ 「いつまで待たせるんだよ」
ラクス 「キラ、おひさしぶりですわ」
カウンターに向かうと席を開けてくれた、向かって左からフレイ、キラ、ラクス、アスラン、カガリ
という具合だ。
アスランは プラントという出版社に勤めていて、そこのザフトという
アパレルファッション誌の編集長をやってる。
でも本人はファッションよりメカ関係の方に興味をもってるようだ。
カガリはオーブという化粧品メーカーの広報関係の仕事をしている。
実は春コレの取材責任者でもあって、ぼくに質問攻めしてくるので
ちょっとうんざりしてる。でもお得意さまだし、怒らせたりしたら大変だし
半分 お手上げ状態だ。でもいろいろサンプルとか、新商品とかくれるし
そのおかげでけっこう助かってるのも事実だ。
でもその見返りがけっこう大変だ（苦笑）
フレイは・・・プラントの受付嬢をやっているｗ
ちなみにラクスも同じ受付嬢なのだｗ
でも二人とも仕事より、遊ぶことしか考えてないみたいで、
いつもいろんな雑誌を読みあさって、今度、ここ食べにいこう
とか これ超カワイイ〜 今度ここのエステいこう
とかそんなことばっかり考えてるらしい。
仕事があるから今日ははやく帰らせてもらうよ」
フレイ「なによ 来た早々開口一番がそれ？あきれるわ
いいじゃない、たまにはババンと」
カガリ「キラ、おまえチーフデザイナーだって？しかも少年少女担当だなんて プッｗ
ほんと似合わないよな〜、しかも少年少女担当なんてｗ
おまえさー今度オレのもなんかデザイン頼むよ な いいだろ？
そうだな〜ボーイッシュなのがいいな、
おれだけのカガリスペシャルデザイン コンセプト ｂｙ カガリ
で頼むよ〜キラ〜」
アスラン「よせよ カガリ、キラ、今度うちの雑誌の特集も春コレの特集なんだ
おまえんところ、けっこう評判高いみたいだから期待大だな
うちもアークエンジェルの特集 バッチリ入れるから楽しみにな
うちの編集部もおまえんとこのファンが多いんだぜ」
ラクス 「キラも大変ですわね、でも大丈夫よ、
キラはセンス抜群ですし、きっとうまくいくわ
何か困ったことがあったらいって」
キラ 「ありがとう、みんな」
フラガさんとその奥さんマリューさんが
あいさつしにきた。
フラガ「おーおまえら、元気にやってるか？しかしこの前まで
ガキンチョだったのにしばらくみないうち に大人っぽくなりやがって
元気にやってるか？」
マリュー「あなたたちがそろうなんて、ひさしぶりね〜 ゆっくりしてってね」
キラ 「マリューさん、そのお腹・・・ひょっとして」
マリュー「もう６ヵ月なのよ、最初は驚いたけど でも
うれしかったわ、検査で知ったとき
信じられないって思ったわ。でも楽しみだわ」
ラクス 「まぁ、それはおめでたい話ですわ、お祝いをしなきゃいけませんわね」
カガリ 「よし、きょうは祭りだｗガンガンいこうぜ〜
キラおまえも今日はかえさないからな
覚悟しろよ〜」
キラ 「そ、そんなぁ〜 いくらなんでも
それにぼくが酒弱いの知ってるだろう？」
フレイ 「いいじゃない たまにはガス抜きしても、心配しないで
どうせ帰り一緒でしょ？」
アスラン「それじゃ これからうまれてくる子供に、そして３人の幸せが
続きますように」
全員 「乾杯〜」
＿|￣|○ ＿|￣|○ ＿|￣|○ ＿|￣|○ ＿|￣|○
う〜ん、やぱ〜りむずかしいね 続編はまっててください。
流離う> やっぱキースいい味出してますよね〜こういうキャラが本編に
出てたら雰囲気がかわっておもしろかったと思う。
でもフレイには涙が出ちゃいます（号泣）
幻> ドキドキですね、フレイのお姉さんということは双子ですか？
ますます目が離せなくなりそう・・・
キラ×アスラン コンビもベリーグーです。
キラ♀×フレ♂> イザーク ワロタｗ
でもフレイは大変ですなｗ
流れ星> なんか読んでてつらかった。フレイの死はキラに最大の
トラウマを与えてしまい、身も心も・・・
フレイルージュ> アズラエルゴルァですな。
でもほんとにやりそうだな、実際いたら
フレイかわいそう・・・
フレイたまが4クールの用でもあり、2クールの用でもあり・・・
作者さん大変ですな。MSの訓練と戦場となった町の一軒で変わったのは事実だけど
時間的には2クールぐらいですもんね。これからスコットが第2のキースとなりそうです。
あと艦長、本編ではナタルに仕事取られてたんで実にgood job(笑)
これぞマリューの真骨頂よう。
>>春コレ
忠実に｢アークエンジェル｣｢プラント｣などの用語を使っててウケますたｗ
下手ですので平にご容赦を。ｍ（＿ ＿）ｍ
そのまま消えるはずであった存在。
しかしフレイ、フレイ・アルスターであった意識は星の大海が流れ行く夢を見ていた。
それは、穏やかであり少女が求め続けかなわなかった時間であった。
フレイは泣いている。
意識だけなので、涙はない魂の慟哭。
ポツリと漏らす言葉。
「逢いたい・・・」
その言葉に呼応するかのように、星の大海が揺れた。
それはまるで生命の鳴声のようである。
星の大海が崩れていく。
いや、崩れるではない個々の塊に分かれていくのだ。
その証拠にフレイの横には星のきらめきが見える。
そしてフレイの横にしか星がなくなり、それ以外の方向は漆黒に包まれた。
どれくらい刻が流れたであろうか、小さな小さな光が見えてきた。
光は次第に大きくなり、強く輝いていた。
光が彼女の目の前にさしかかってくる。
フレイの横にいた星はいつのまにか離れていた。
その星の輪郭はまるで羽のようなものがある巨大な生き物のように見えた。
フレイは強い光に包まれる。
そこで、フレイの意識は途絶えた。
フレイにとっては見覚えのある部屋である。
フレイは上体を起こし、辺りを見回す。
次に自分の手を見て、握ったり開いたりを繰り返す。
「わたし、あの時、死んだはずじゃあ・・・」
思い浮かべる記憶。
キラが戦って、キラが守ってくれて、キラとようやく逢えたと思った時、炎に巻きもまれて、それから・・・
フレイは頭に手を置いて必死に記憶を手繰り寄せようとするが、その先はもやがかかっており思いだすことができない。
「どうして・・・」
今の状況がわからず、ポツリと漏らすがその問いに応えをくれるものは誰もいない。
その時、フレイは自分の格好に気付く。
「この服・・・」
フレイの着ている服は連合の制服ではない。
自分がまだ何も知らずに、平和の籠の中を生きていた時、籠が壊れた時にきていたピンク色の洋服である。
フレイが軍隊に入隊した時以来、着ていない服である。
「まさか、アークエンジェル？」
そう、この服はアークエンジェルに置いていったのだ。
フレイはベットから立ち上がる。
自分の疑念を確信へと変えるため、フレイは部屋から出て行った。
フレイの中の疑念が徐々に確信へと変わろうとする時、確信を決定する声が聞こえた。
「あのイージスに乗ってるの、友達なんだってな。」
サイの声、聞き覚えのある言葉
あの時と同じく、フレイは身を隠す。
「じゃ、俺交代だから。」
サイとミリアリアがその場から離れる。
この先にキラがいる。
そう思った時、フレイの瞳より涙がこぼれ落ちそうになる。
やはりここはアークエンジェル、そして、自分が道を違えるきっかけとなった時。
フレイの父親が死んですぐのアークエンジェルである。
抱きつきたかった。
そう思った時、自分にその資格があるのかと問う声を聞いた。
その声はフレイ・アルスター、自分自身声である。
知らなかったとはいえ、あの殲滅戦の火蓋を切ったのは間違いなくフレイ自身である。
何千人、何万人の人が死んだ戦闘。
・・・私には資格がない。
でも、それでももう一度みんなと、キラと逢えたからよかった。
心のそこからフレイは思った。
イザーク、ディアッカ、二コル、ゼルマンが話し合っている。
「たしかに合流する前に追いつきますが、こちらが月艦隊の射程に入るまで１０分くらいしかありませんよ。」
慎重論を唱える二コルに対して、ディアッカ、イザークが反論を唱える。
「１０分あるってことだろ。」
「臆病者は黙っているんだな。」
イザークの言葉を聞き、二コルが睨むがイザークは動じることなく話しを続ける。
「１０分しかないのか、１０分はあるのか、それは考え方ってことさ。・・・」
その後も話は続き、イザークはその１０分間で沈めるとディアッカ、二コルに決意を促した。
奇襲とはいえ、ヴェサリウスとガモフの２艦、奪ったＧ４機を持ってしても沈められなかったアークエンジェルをその短時間で落とすのは至難の技である。
イザークの言葉にディアッカは軽く「ＯＫ！」と言う。
こうなってしまっては二コルとて合意せずにいられない。
「わかりました。」
二コルは固い口調で合意する。
こうして奇襲作戦が決定された。
「ああ。」
アークエンジェルの食堂でサイとカズイは休憩中に食事を取っていた。
今の食堂にはサイとカズイ、小さな女の子しかいない。
「僕たちも降ろしてもらえるんだよね地球に。」
マリューの言葉を思い浮かべる。
『事情はどう軍の重要機密を見てしまったあなた方は、しかるべき所と連絡が取れ処置が決定するまで我々と行動を共にしていただかざるをおえません。』
「だから艦隊がそのしかるべき所って奴じゃないの？」
サイがカズイに応える。
「だよね。でも・・・」
カズイのもったいぶった言い方にサイが聞く。
「でも？」
「キラは降りれるのかな？あれだけいろんなことやっちゃってさ。」
カズイの言葉はもっともである。
キラは軍の重要機密であるストライクのＯＳを改良し、パイロットになってアークエンジェルを守ってきたのだ。
カズイの言葉にサイは黙り込む。
その時、キラが食堂に来た。
なんともばつの悪いサイとカズイ。
その雰囲気がわかったのかキラは声をかけずに離れるように中に入る。
そして、キラが入ってきてからほんの少し経った後、フレイが衝動に入ってきた。
「フレイ。」
サイが驚いたように立ち上がる。
その声に気付き、キラがフレイの方を見た。
サイは心配してフレイに歩み寄る。
「ありがとう、サイ。大丈夫だから。」
そう言って、フレイはキラの方に歩いていく。
それを見守るサイとカズイ。
サイのほうは純粋に心配しているのだろうが、カズイの場合はどちらかと言うと好奇心であろう。
フレイはキラの前に行くと開口一番に言った。
「キラ、ごめんなさい。あの時はわたしなにもわかっていなかった。キラだっていやなはずなのに一生懸命戦ってくれて、私たちを守ってくれてる。なのにわたし、あんな酷いこと言って・・・本当にごめんなさい。わたし、キラばっかりに押し付けて、したくもない戦争させて、なのにわたし・・・」
その先は言葉にならない。
俯いているフレイの瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちている。
そのフレイの態度を見聞きしてキラとサイは驚き、カズイは何事かを考えている。
「そ、そんなフレイ、いいんだよ。あの時は「でも、でもわたし、キラをいっぱいいっぱい傷つけて、自分だけ安全な場所にいて、キラががんばったのにキラのせいにして、わたし何もやってないのに・・・」」
キラの言葉を遮り、フレイは泣きながら謝り続ける。
そんなフレイを見て、やわらかく微笑みをみせる。
「ありがとう、フレイ。」
そして、沈んだ表情で言う。
「僕の方こそお父さんを守れなくて・・・」
「・・・それはキラのせいじゃなくて戦争のせいだから。戦争はあったらいけないものなのに。」
フレイの言葉にキラは救われる気がした。
今までキラは自分がやらなければ、自分のせいだからと全て自分に背負わせてきた。
その思いをフレイは否定してくれたのだ。
「そうだね。」
キラは微笑ながら言った。
それを見ていたサイは、違和感を感じていた。
明らかに今までのフレイとは違う。
しかし、なぜ違うようになったのかがわからない。
それがサイにとって歯がゆかった。
その時、艦全体に警報が鳴り響いた。
「総員第一戦闘配備、総員第壱戦闘配備・・・」
繰り返し流れる放送。
すぐさまクルーであるサイ、カズイ、パイロットのキラは食堂から出て行く。
その時、キラは小さな民間人の少女とぶつかった。
すぐさま、キラとフレイが駆け寄る。
「大丈夫かい？」
「うん。」
小さな女の子を立ち上がらせ、フレイは抱きしめながら言う。。
「また戦争だけど大丈夫。アークエンジェルは大丈夫。アークエンジェルは大丈夫。」
「ほんと？」
「ええ、ほんとうよ。」
フレイは少女に微笑みながら言う。
それを見ていたキラは悲しくなる。
哀しみを持っているフレイが少女のために微笑んでいる。
それが、キラにはわかったのだ。
「キラ。」
サイがキラを呼ぶ。
急げといっているのだろうと、キラは理解した。
振り向き、サイ達の方に行こうとした時、声が聞こえた。
「ごめんなさい、キラ。」
一瞬振り向く、キラ。
その目に飛び込んできたの
まずはフラガのメビウス・ゼロ。
ハンモックに寝そべって、グラビア雑誌を見ていた時とはまったく違う真剣な表情である。
こんなところを見ていない限りとてもフラガがエースパイロットとは思えない。
「ムウ・ラ・フラガ出る。」
そして、キラのストライク。
ミリアリアからザフト軍の戦力が伝えられる。
ローラシア級１機、デュエル、バスター、ブリッツの３機。
アルテミスで襲ってきたザフト軍である。
「キラ・ヤマト、行きます。」
エール装備のストライクがカタパルトより発進した。
そこにローラシア級ガモフとデュエル、バスター、ブリッツのＭＳ３機が攻め込んできた。
ガモフの相手はアークエンジェルに任せてフラガはＭＳ３機を相手に突っ込んで行く。
相手がジン程度のＭＳならば落とすことが出来るが、フェイズシスト装甲のＧが相手ならばビーム平気を持たないメビウス・ゼロは通常、落とすことは不可能である。
その証拠に、メビウス・ゼロの攻撃が当たってもバスターは無傷で逆に攻撃を仕掛けてくる。
「フラガ大尉。」
遅れてキラのストライクが牽制をしながら駆けつけるが、それもデュエルの攻撃により分断させられる。
「モビルスーツを引き離す。二コル、足つきは任したぞ。」
上昇するストライクを追いながらイザークは二コルに指示をだす。
「了解。」
ブリッツはデュエルと別れアークエンジェルに向かった。
「くそ。」
キラのストライクはデュエルと一騎打ちの状態となり動けないでいた。
互いにビームライフルで攻撃するが、当たることがない。
デュエルはビームサーベルを抜き、一気に間合いを詰めてきた。
「ストライクって言ったなー。」
イザークは叫びながら斬りつける。
キラはシールドで受け流し、ライフルで攻撃するが難なくかわされる。
後方からくるブリッツに攻撃をするが避けられる。
二コルはミラージュコロイドを展開させ機体を隠す。
「ブリッツをロスト。」
マリューは報告を受け、すぐさま敵が何をしたのか考え付いた。
「アンチビーム爆雷、対空粒散弾頭を。」
ナタルはマリューからの指示を的確に理解しアンチビーム爆雷を発射。
ブリッツのビームは爆雷に弾かれる。
「ビーム角よりブリッツの位置を予測。」
すぐさま計算がされ、ブリッツの位置が予想される。
「粒散弾頭、撃てぇー。」
発射された弾頭は的確にブリッツを捉えていた。
二コルはすぐさまミラージュコロイドを解き、衝撃に備えて防御する。
「もともとそちらの物でしたっけね、弱点もよくご存知だ。」
再び、ミラージュコロイドを展開するもアークエンジェルの弾幕により近づけない。
シールドを前面に出して突っ込んでくるデュエルに対して、キラはライフルによる攻撃をあきらめビームサーベルを抜く。
キラは「ここで死ぬわけにはいかない。」
イザークは「今日こそ逃がさない。」
対峙する二人の思いはさらに戦闘を激化させる。
その影響のためと思われるほど全体の戦闘も過酷さを極めていく。
そんな中、フレイは自分の部屋の窓の前で両手を組んでキラの無事を祈っている。
そうしていると、不思議とキラが何処にいるかを感じられるそんな感覚があった。
この先の未来を知っているフレイならばそんなことをしなくてもキラは無事に戻ってくるということがわかっているが、わかっていても無事を祈らずにはいられなかった。
「ストライクとゼロは何をしている。」
ナタルがわかりきったことを聞いてくる。
「デュエル、バスターと交戦中。」
ガモフとブリッツの攻撃しか来ないのだ、ストライクとゼロはデュエル、バスターと交戦しているのは明らかである。
互いに互角の戦闘を繰り返している最中、ブリッツが遂にアークエンジェルに取り付き、攻撃をし始めた。
「キラ、キラ。」
ミリアリアがキラを呼ぶ。
「ブリッツに取り付かれたわ。アークエンジェルに戻って。」
ミリアリアの報告を聴き、アークエンジェルが攻撃をされていることを確認するキラ。
先の戦闘の嫌な光景を思い浮かべる。
フレイの父親がのる戦艦の爆破、フレイの慟哭、涙ながら謝罪するフレイ、今回の戦闘前に見せた悲しく申し訳なさそうな顔。
キラはこれ以上フレイの悲しい表情が見たくなかった。
守りたい。
心を通わせたい。
その想いがキラの中の何かを弾けさせた。
極限の集中力。
戦闘の気配をキラは身体全体で感じ、後方から迫ってくるデゥエルの攻撃をかわす。
こうもあっさりとかわされるとは思っていなかったイザークは虚をつかれる。
キラは後方に回り、デュエルの胴部にサーベルを叩き込み、その場を離脱しアークエンジェルに戻る。
その後方をイザークが攻撃するが今のキラには通用しない。
そして、アークエンジェルに取り付き攻撃しているブリッツを斬りつける。
その攻撃を何とか避けた二コルであったが、追撃の蹴りはかわせなかった。
ストライクの後方より、デュエルが飛びかかってくる。
「もらったぁぁぁぁ。」
完全な隙を突いたと思われるイザークの攻撃ですら、キラには無意味であった。
アーマーシュナイダーを引き抜き、先ほどの叩きつけた場所に突き刺した。
キラはストライクを甲板上に立たせ、肩で息をする。
「やつら、引き上げていったぜ。よくやったな坊主。」
「・・・大尉。」
「んん、お前。」
フラガはキラの様子がおかしいことに気付く。
しかし、そのことを指摘せずに言葉をかける。
「すごいやつだよお前は。」
「いえ。」
上方より幾つもの光が見える。
第八艦隊だ。
アークエンジェルはようやく目的を達成したかに見えた。
フレイ以外は。
「みんなにはキラには戦争から離れてほしい。幸せになってほしい。どうやったらそれが・・・」
フレイの言葉は何処にいきつくのだろうか・・・。
乙です。ジョージパパ死亡直後に戻って来ましたか。ここに返って来たという事は、最初のターニングポイントは志願するかどうかと、シャトルですな。志願しないとシャトルで全滅。志願してもシャトルは落ちてしまう
果たしてフレイ様はどういう選択をするのでしょう。志願するのか、シャトルに移るのか。仲間達はどうするのか。キラは？
あと、もう１つ気になってるんですが、志願するなら今のフレイ様ってドミオペレーターとしての正規訓練受けてるんですよね。お仕事どうするんです？
乙です！
まさかそこまで時間が引き戻されるとは思ってませんでした。
次回は改めて「フレイの選択」となるのでしょうか？
先が楽しみ！
>>215
それではK様の職が失われてしまいますｗ
見張りの兵は早く交代の時間が来る事を願いながら欠伸を噛み殺し、正面を見据えている。起きだしてきた兵士はまだ若い少女兵が準備してくれた朝食に群がって「不味い」と文句を言いながら平らげている。彼らの頭の中には今日１日をどうやって過ごすか、それしかないのだろう。
彼らは、油断のツケをその命で支払わされる事になった。
早朝の空に響き渡った連続する雷のような轟音。それがなんなのかと気付くよりも早く、彼らのいた陣地は爆発に飲み込まれてしまった。いや、彼らの陣地だけではない。前線を形成する陣地群の頭上に次々と大口径の砲弾が降り注いでいく。
「畜生、こいつは重砲か！？」
「塹壕に飛び込め、どうしようもない！」
古参の兵士達は状況を察して周囲に指示を出すが、それに従う事が出来た兵士は少なかった。元々兵役人口の少ないプラントでは兵士の補充が消耗に追いつかず、長い戦争で歴戦の兵士は少なくなり、今では少数のベテランが多数の新兵を纏めているのだ。
指示を出した３０歳ぐらいの兵士は動転して動けなくなっている少女兵の体を掴むと塹壕の中に飛び込んだ。それに僅かに遅れて砲弾が着弾し、衝撃波が頭上を通過していく。そしてそれに遅れて資材と人体の破片が降り注いできた。
「い、いやあああああっ！！」
実戦の経験が無かった少女は悲鳴を上げて塹壕から出ようとするが、引き擦り込んだ古参兵がそれを押さえこんだ。
「出るな、ここが１番安全なんだ！」
ガタガタ震える少女を抱えこんで古参兵はとにかく姿勢を低くする。こうなっては兵士にはどうする事も出来ないのだ。ただ直撃を受けないように祈るしかない。その近くでやはり動転したらしい新兵が塹壕を飛び出したのか、「戻れ！」という声が聞こえてくる。すぐにまた着弾の衝撃が襲ってきた。これで塹壕から出た兵士の運命は決まってしまう。
砲撃が去った後には、先ほどまで朝食を食べていた兵士達の姿はほとんど無く、ただのすり鉢上の穴が開いているだけである。所々に僅かに生き残ったらしき幾人かが苦痛にうめいているくらいだ。そして辛うじて無事に生き残った少数の兵士が塹壕から這い出してきて、絶望に顔を染め上げる。ここにはすでに仲間も、戦うべき兵器もなかった。
「参ったな、こいつは」
古参兵が途方に暮れて辺りを見渡す。その隣では少女兵が悲鳴を漏らす事も出来ずにただ震えている。もはや、彼らにはここから撤退する道しか残されていない。だが、彼らが味方の陣地に戻れる可能性は限りなく低いだろう。砲撃で耕された大地を埋め尽くすように連合の戦車と装甲車が押し寄せていたからだ。
ユーラシア連邦の反攻作戦、カスタフ作戦の開始であった。
攻撃を加えているのは連合軍の地上艦隊と野戦重砲部隊であった。事前の地ならし、とは呼べない程の徹底した砲撃が地面を耕し、人間と兵器を問わず引き裂き、粉々に打ち砕いてしまう。そしてその砲撃の下を戦車隊が突入していった。
アークエンジェルもその猛烈な砲撃を後方からじっと見ていた。誰もが初めて体験する大規模な地上戦に息を飲んでいる。艦橋にいる７人のパイロット達も同様だった。流石にフラガやキース、レナンディーといった経験豊富な士官はそれなりに落ちついているが、キラやフレイ、スコットといった若い兵は言葉を無くしている。
「やる気だねえ。お偉いさんたちは」
「あれだけの砲弾を惜しみなく使ってますからね。勝ちに行くつもりですよ」
フラガとキースは宇宙では大艦隊戦を経験した事もあり、地球で戦った事もある。この規模の地上戦は流石に初めてだが、負けるつもりはない。
マリュ−はいささか青褪めた顔で目の前の光景を見つめ、震える声を漏らした。
「あんな所に、突っ込めというの。司令部は？」
マリュ−の呟きは怯みとしか取れないものだ。艦長の弱気はそのまま艦の弱気となる。ナタルがいささかキツイ視線でマリュ−を見た。
「艦長、作戦中です。弱気な発言は禁物ですよ」
「わ、分かってるわよ、ナタル」
さらりと内心を突かれ、マリュ−はいささか慌てた。だが、そんな艦長を笑うものはいない。誰もがこんな大規模戦闘は初めてなのだから。
その中でも、これがパイロットとしての初陣となるフレイは完全に顔色を失っていた。そんなフレイにナタルは流石に不憫に思ってしまう。パイロットである以上、誰にでも初陣はあるが、これは最悪の部類に入る。せめて初陣を飾るに相応しい、もっと小規模な戦闘を経験してからであればまだマシになるのだろうが。
「艦長、クライスラー少将から通信です。全軍前進。目標はザフト軍ザグレブ基地です」
「そう、いよいよね」
マリュ−は頷くと、パイロット達を見た。
「フラガ少佐とバゥアー大尉は制空権確保を最優先に考えてください。ＭＳ隊はヤマト少尉のストライクを先頭に、スコット准尉とレナンディー少尉のデュエルが正面に展開。ハウプトマン少尉のバスターとアルスター准尉のデュエルは本艦の直援と、ＭＳ隊の支援をしてください」
「･･････分かった。帰る場所を無くさないでくれよ」
何時になく真剣なフラガに、マリュ−は頷く。この艦を無くせばフラガ達に帰る所はないのだ。そう思うとずしりと胃が重くなってくる。また余計な重荷を課してしまったかもしれないと、フラガは少し後悔した。
そして、アークエンジェルのパイロット達を振りかえる。
「ようし、それじゃ行くか！」
フラガの懸け声に全員が唱和し、格納庫へと向っていく。その中の１人の背中を見送ったサイは辛そうな顔でコンソールに視線を落とした。そんなサイにミリアリアが気遣わしげな声をかける。
「心配、フレイが？」
「･･････ああ、心配だよ」
一瞬の躊躇の後、答えたサイにミリアリアはまだサイがフレイを好きなのだと察した。これほど想ってくれる人を捨ててまでキラに何故走ったのだろう。トールは暫くは様子を見ていてほしいと言うから今の所は黙っているが、ただ黙っているというのも歯痒くていけない。
ふと、視線を予備操舵席に座るカガリに視線を転じた。キースがここに座ってろと言って無理やり座らせたのだが、何を考えているのか。本当ならあそこにはトールが座ってる筈なのに。
座らされているカガリはかなりご立腹だった。自分も戦いたいのに、こんな所で黙って観戦してろなどと言われたのだから。だが、文句を言うことも出来ない。どうしてか分からないが、キースは自分の正体を知っている様だからだ。もしばらされたらと思うと迂闊な事も出来ない。
結局、カガリはここから全体の戦いを見ている事になったのである。
格納庫でそれぞれの機体に散って行くパイロット達。キラは出撃前にフレイを捕まえていた。
「フレイ、本当に大丈夫？」
「今更何を言ってるのよ。もう作戦は始まってるのよ」
「だけど･･･････」
キラは何か言おうとしたが言葉にならず、俯き加減になりながら心配そうに言いたい事だけを口にした。
「フレイ、死なないでね」
「･･･････当たり前でしょう。私はまだ、なにも分かってないんだから」
キラの言葉に答えて、フレイは自分のデュエルを見た。ジンぐらいなら圧倒できる性能を持つこのＭＳなら生きて帰って来れる、という気がする。そうだ。私は現実を、戦場を、知らなくてはいけないのだ。そして、自分にも戦えるのかを確かめたい。あの守れなかった子供たちのような人を増やさない為にも。
フレイに声をかけられないでいたキラに、レナンディー中尉とハウプトマン准尉が声をかけてきた。
「おい、何をしてるんだ。出撃だぞ！」
「さっさとストライクに乗りな、コーディネイター君」
小馬鹿にした様にせせら笑うハウプトマンにキラは腹が立ったが、どうにかそれを押さえこんだ。２人に背を向けるとストライクの方に歩いて行ってしまう。それを見送ったハウプトマンは苛立たしげに口汚く罵った。
「ちっ、なんでコーディネイターなんかと一緒に戦わなくちゃいけねえんだよ。あんな宇宙から降りてきた化け物なんかとよ」
「放っておけ。所詮は消耗品だ。化け物どうし、殺し合ってくれればいい」
「なるほど、物は使いようって訳ですか」
レナンディーの言葉にハウプトマンが楽しげに頷く。それを聞いていたフレイの気分は複雑だった。キラはコーディネイターと戦って死ねば良いと自分も考えていたのだ。だが、今は･･･････・
辛そうに顔を顰めているフレイに、ハウプトマンが声をかけてきた。
「おいお嬢ちゃん、フレイ、とか言ったか。今日は一緒にこの艦を守るんだ。しっかり頼むぜ。敵の始末はあのコーディネイターに任せときゃ良い」
フレイはハウプトマンの顔を一瞥すると、小さく頷いて自分のデュエルの方に行ってしまった。どうしてかは分かっている。ハウプトマンと一緒の場所にいるのが堪えられないのだ。自分の醜い部分を突きつけられているような気がして、自分もキラをああいう目で、いや、もっと酷い目で見ていたのだから。
デザイナーなキラ君ですか。キャリアウーマンのナタルさんがカッコイイｗ
しかし、ラクスとフレイ様は仕事中に遊ぶことばかり考えてるんですかい。働けあんたら
>>刻還り
フレイ様、あの運命の日に帰ってきましたか。第八艦隊でフレイ様はどういう選択をするのかな。シャトルを救うならキラに何らかのアドバイスを出すしかないけど
素直にシャトルにいくと纏めて死んじゃうけど････さて、未来の知識を同生かしていくのか、楽しみです
さてここで大事なのはフレイたまが志願するか否かです。志願しなければ、今後のみんなに関われないし、
仲良く降りても遺作に撃たれ・・・ん？ ストライク抜きなら大丈夫か？
でもそれじゃAAごと落ちちゃいますよね。戦争が始まる前に戻りたい、それだけなら大人組みは無視してイイのですが、
んなこたあできません。特に未来の恩人ナタルとか。
志願すればエルたんたちは助からないし・・・あ、エルたんも志願兵になればいいんだ！？ アルみたいにｗ
ってほかにも人は乗ってますよね○|￣|＿
>流離う
フレイたま・・・(´Д⊂ヽ
初陣が地形変えるほどの大砲撃戦で、しかもキラをボロクソに言ってる友軍兵士がいて
自分に重なって・・・ついてないなあ。
＞「フレイ、死なないでね」
布陣が遠いと直接守れないからキラもこんな他人事みたいな言い方しかできなくて・・・辛そうですなあ。
マリューは耳を疑った。アスランの口から、今になってその単語を聞くとは考えていなかった。
キラの尋常でない様子を見れば、上官としてのマリューに報告しなければならないのがアスランの立場だったし、何よりフレイに関してはアスランは話で聞いた事しか知らない。
自分よりフレイを良く知るマリューに相談しようと考えるのが自然だったし、また他にそうする相手もいなかった。
「自分も、彼女と直接会った事はありませんし、はっきりとは言えないのですが…キラが、心配で…」
軍人としてではなく、友人としての口調になってしまっていたが、マリューはそれを咎めようとはしなかった。
「病院に勤務していると思われますが…詳しい事は判りません。キラも、動転してしまって…」
「今はそれどころじゃないわね」
マリューはアスランを遮るようにはっきりと言った。
「仮に…彼女がフレイ・アルスターと何か関係があるとしても、時間を割いて調べている訳にはいきません。かわいそうだけど、襲撃事件が解決するまでは、後回しにせざるを得ないわ」
アスランは、逆らわなかった。警備隊副指令としては当然過ぎる反応である。自分がマリューの立場でもそう言うだろう。なら自分とキラで何とかするだけだ。
「了解…しました」
「中尉はメビウス小隊と共にメソティキオン管制区を捜索して下さい。第十一艦隊はカリガリア管制区を担当してもらっています。もし敵を発見したら、深追いせずに連絡する事。国防隊と連携する事を忘れないで」
そして、アスランはMA“メビウス”三機と共にコロニーの外郭域を飛行していた。
「各々散開して索敵。深追いはするな。発見したら信号弾を上げろ…」
そうは言っても、自分の推測通り、ミラージュコロイドを装備しているのなら、こんな指示は無駄だろう。だが、MSがいるのなら、その母艦がいるはずだ。それを捜す。
アスランはそれしか考えていなかった。“プロックス”のカメラを最大望遠にセットする。ところどころにデブリが漂っているだけの、絶対的な静寂の世界だった。
ふと、プラントは今、どうなっているのだろうかという考えが頭をよぎった。この事件は伝わっているのだろうか。撃ったのが誰かは判然としていないが、コーディネーターとナチュラルの間で保たれている危うい平和の均衡がまた崩れ去ってしまうのだろうか…
光の点を見たと思った瞬間、何も考えずにアスランは機体を旋回させていた。ビームが掠める。やはり、ビームの光跡の先には何も見えなかった。
まだ潜んでいたのだ。国防隊を襲った、正体不明―MSかMAかも判らないが―の機体が。
アスラン機の動きに気づいた“メビウス”が集まってくる。
「近づくな！密集したら狙い撃ちにされるぞ！」
最後まで言う前に再びビームが発射され、一機の“メビウス”を行動不能にしていた。
今度は、ビームが発射される寸前の一瞬、何か影のようなものが見えた気がしたが、かつてのミラージュコロイド搭載機と比べてもほんの一瞬でしかなかった。
「性能が上がっているのか？これではこちらから狙撃なんて出来ない…信号弾、撃て！救援を呼ぶんだ！」
止まったら撃たれる。機体を限界までいじめて動き回り、攻撃を避けながら相手のエネルギー切れを待つしかない。が、“プロックス”でどこまでやれるか…
不規則な軌道を取って狙撃を避けながら、アスランは
「これで万が一、ニュートロン・ジャマー・キャンセラーまで装備していたら、勝ち目は無いぞ…」
とうめいていた。
「十一艦隊の捜索チームに知らせて急行させるんだ！どの位かかるか？」
「現在の位置からだと…司令、ヤマト少尉が出撃許可を求めています！」
「すぐ出させるんだ！ザラ中尉の位置を教えてやれ…」
アダムスキーの大きくはないが落ち着きがある声が響く。
マリューは一瞬、止めようかと思ったが、言葉を飲み込んだ。そんな事を言い出せる状況ではないし、出撃を求めるほどなのだから大丈夫なのだろうと楽観したかった。
「他のチームはコロニー周辺に散開！何処から敵が来るかわからんぞ！他にもいるかも知れんのだからな」
そんな喧騒に満ちた作戦室のモニターの一つに、キラ・ヤマト機が長い光の尾を引いて出撃するのが映し出された。
だが、そのコクピットに座っているキラの目に映っているのは、『あの時』の光景だった。
「守らなくちゃ…いけないんだ！」
その言葉を呪文のように繰り返すキラは、傍目から見ればどう映ったのだろうか？
が、今は近くには誰もいない…
「少尉！待って下さい！一機では…」
後に続こうとした同僚の声を無視して、キラの機体はあっという間に最大戦速に達すると、後続を置き去りにしていた。
キラの眼に、チラチラと光が走る空域が確認される。ビームの光。フレイを打ち抜いた光―
「うあぁぁ！」
当たるはずも無い距離から、キラはビームライフルを連射した。そのまま見えない敵とアスランが絡み合う中へ突っ込んでいく。
「誰だ！…キラ…か？」
アスランは驚愕した。キラが出てきたことにも、まるで『狙い撃ちして下さい』と言わんばかりの戦い方にも。
「キラ、撃つな！当たるわけが無い…もっと動くんだ！狙われるぞ！」
だがそんな声を無視するように、キラはライフルを連射する。それに呼応するように、見えない敵もキラ機に狙いを定めたように火線を開いた。
至近距離をビームが掠め、キラ機が大きくよろめく。が、それにひるんだ様子も無い。それがアスランには刺し違い覚悟の特攻のように見えた。
「くそっ、これじゃあ…」
そこまで言って、アスランはふと、我に返ったようにライフルを構えた。敵は、自分を無視してキラだけを狙っている。
キラのあまりにも直線的な動きに合わせるように、敵のビームが発射される位置も直線的になっていることに気づいたのだ。
つまり、姿は見えなくても、ビームが発射される元に敵はいる。それが規則的に、直線的になれば、位置を予測して撃てば良い。
「性能に奢ったな…姿が見えなくても、それだけ単調に動けば、当たる！」
アスランがビームを撃ったのと、敵のビームがキラ機の左足の付根を直撃したのは同時だった。
「キラ！」
小さな爆発が二つ、キラ機とそれから少し離れたところで起こり、アスランはキラ機へ殺到していた。
「大丈夫か、キラ、キラ！」
敵は後退したのか、もう攻撃が来る気配は無かった。それを確認しながらアスランがキラ機のコクピットを開けたが、キラは動かなかった。
恐ろしい想像をしながらキラのパイロットスーツを確認すると、左腕が血で濡れていた。
「うっ…」
傷口に触るとキラは微かに声を上げ、アスランは安心したが、急いで帰投しなければならない。スーツの中がどうなっているのかはわからないからだ。
その時、十一艦隊の発光信号が見えた。ようやく到着したのだ。
「遅い…警備隊は帰投する！…後は十一艦隊に任せよう」
キラ機を曳航して、アスランは帰投した。
みなさんが気になるのはやはり、志願とシャトルですね。
まあ、これについても非常に強引で無茶な方法で・・・
楽しみにしていてください。
後、とりあえずＫ様の場所は奪わない予定になっておりますのであしからず。
＞流離う
フレイ様、悲しいです。
自分を責めすぎてぼろぼろになってしまいます。
＞幻
アスラン、キラをおとりに使うなんて・・・
キラの目には未だにあの光景が（ＴoＴ）
>超マッハで大至急来て
萌えました。ホンと言いそう。
フレイ様と歌姫さんクラスの受付のいる会社かあ。
そんな会社あれば…。ヒロインズが本編では没交
渉気味だったので、三人が仲良くてうれしいです。
>刻還り
シャトルと志願の描写楽しみにしてます。
何気にガモフ組の出番があって気に入ってます。
全ての結末を教えたくても、上手く伝えられない
フレイ様の力戦奮闘に期待してます。
>流離う
ハウプトマンはいいですね。無神経というか、あま
り悪いと思っていなささそうで。結構多数意見
みたいだし。フレイ様ハウプトコンビ心配です。
まあデュエルに乗ってりゃ…大丈夫ですよね…
>幻
>「守らなくちゃ…いけないんだ！」
キラの悪い病気がでてしまったみたいで…
見るのが忍びないですね。ちょっと心配性な
副官のポジションのマリュ―、生意気な感じ
の若手士官のアスラン。結構イイかも。
/〃⌒⌒ヽ ｶﾞﾝﾊﾞｯﾃﾙﾐﾝﾅﾆ 200ｷﾈﾝﾉ ﾊｰﾄ ｦｱｹﾞﾙﾜ
ﾉ〈〈 ノﾉ^ ﾘ）)
.( ヽ||´ ∀｀||
. ）ﾉ (つ（⌒⌒）
´ く/_|＼.／
.. し'ﾉ
結局、ぼくたちはそれから、大いに盛り上がり、
ボトル３０本もあけてしまった。
みんなでワリカン（笑）したけど、もうすぐ給料日なのに
おかけで財布の中身は冷凍庫なみに寒くなってしまった。
でもカガリはいつからあんな酒豪になったのか
疑問に思うばかりだ。
フレイもジンをあんなに飲むなんて・・・
やっぱり ほどほどがいちばんかな
「ね〜キラ君 おんぶちて〜 わたちあるけにゃ〜〜い」
ベロンベロンに泥酔いたフレイが路上で寝込んでしまった
「フレイ、先にいっちゃうよ、タクシーひろわなきゃ」
「キラ〜待っちぇ〜」
「もう、しっかりしてよ フレイ、」
「ほら着いたよ、しっかりしてよフレイ、」
「やっぱり我が家が一番ね〜キラく〜ん〜」
「明日 明後日が休みでよかったよ 全く・・・」
１０年・・・長いと見るべきか、短いと見るべきか・・・
同棲して５年になる。最初はお互い些細なことでケンカもしたけど、最近は落ち着いてきた。
最初 僕は同棲には否定的だった。お互いプライバシーとかの問題もあるし・・・
かならず障害がでてくると思ってた。
それらを覚悟してでの同棲だった。フレイもそこのところは理解してくれた。
けんかもけっこうした。ほんとに別れるっていう寸前まで
何回あったかキリがない。
さすがに暴力はふるったことはない。
でも不思議なくらいに最後はお互い謝って丸くおわる。
けんかするほど仲がいいっていうけど案外そうかもしれない。
やっぱりお互い 本心は好きなのかもしれない・・・心から
まずい・・・まぶたが重く・・・明日シャワー浴びよっと
もうだめだ・・・眠くなってきた・・・意識が・・・
「おはようキラ おそいよ 朝食作ったからいそいで食べて
後片付けしたいし、は〜や〜く〜」
「どうしたのエプロンなんかして フレイ、
あんなに飲んだのになんともないの？」
「全然 わたしこう見えても強いのよ 」
「あんなに飲んで、次の日なんともないなんて どういう体の構造してるんだろう
それにうちの食事全般はぼくなのに めずらしくフレイが作るなんて
なにかあったのかな〜」
「前からちょっと友達に料理を教わってたの、味は自信ないけど、
そこそこだと思うわ、食べてみて」
「なんか不安だな・・・
え！？この味・・・おいしい・・・フレイ、おいしいよ この味噌汁、あじの塩焼き・・・」
「ホント？ うれしいわ〜キラ ありがとう」
「ね〜キラ 聞いて〜 わたしプラントで 受付嬢やってるでしょ〜
けっこういろんな男が声かけてくるのよ。
なかでもイザークって人はしつこいくらい誘ってくるし
ディアッカっていう人もうるさいわ。
いつも「グレェェェイト」とかいって叫んでるし、
訳分かんないのよね〜
でもニコルっていうひとはなんかとてもかわいいのよ
あの童顔がたまらないのよ〜 たべちゃいたいな〜（笑）
今度ピアノの演奏会に出るんだって、私誘われちゃった 〜どうしようかな〜・・・」
「フレイ、まさか本気で・・・？！」
「冗談よ、冗談。なに本気にしてんのよ キラッたら（笑）」
でもね、うちの会社でラウル・クルーゼっていう
人がいるんだけど、この人が超素敵な人なの〜
社内で もうひっぱりだこなのよ〜
なんていうか、あの声で口説かれたらメロメロね〜
どんな女でもイチコロ、落ちちゃうの〜
もし口説かれたら、わたしも本気で悩んじゃうかも〜
すっごい わたしにやさしくしてくれるのよ〜
この前もプレゼントもらっちゃったのよ〜私に
ああいう やさしさって男には絶対に必要ね〜
でも いつも変な薬ばっか飲んでるのよ、
具合でも 悪いのかしら？
今度お見舞いに行こうかしら？」
スタイルも抜群だし あの燃え上がような色の髪をポニーテール姿でまとめ、
フレームレスのめがねをかけ、黒のスーツに超ミニスカ、
ハイヒールの靴をはいて歩く姿はだれもが振り返るはずだ。
男なら誰でも魅力的に思うはずだ。
しかもあの男心をゆさぶりそうな目で、いつもつけてるフローレンス系の
香水の匂い、あの口紅の色、カモシカのような足は
すべての男をとりこにしてしまいそうだ。
それに比べぼくは・・・
「どうしたの そんなブルーで ださい顔して・・・
あ〜 ひょっとしてキラ妬いてるんでしょ かわいい（笑）」
「別に 僕はそ、そんな・・・でもフレイの本心は？
そりゃーぼくみたいにすぐ泣いて、いじけて
かっこわるくて、泣き虫で・・・いったらキリがない けど、
その・・・ラウルって人 好きなの？」
「バカね〜そんなわけないでしょ。キラだけは特別よ。
キラは本命中の本命に決まってるじゃない。
心配しないでキラ どんなにこの世に男がいようと
わたしが心から愛するひとはキラ、あなただけよ。
うんうん キラ以外考えられないわ。
わたしが彼氏がいるのを知ってみんなくやしがってたわ〜（笑）
イザークなんてホントくやしそうだったし（笑）
ディアッカなんて「君の彼氏はグレェェェイトだね」とか泣いてたし
ラウル・クルーゼなんて「君の彼氏がうらやましいな」 なんて笑ってたけど
目は笑ってなかったわ（笑）」
「フレイ・・・」
あの時大好きなパパがなくなって どうしようもなかったのわ。
いっそ わたしもパパの後を追いたいって・・・そうおもったわ
でも キラはわたしをなぐさめてくれたし、一緒にずっといてくれたでしょ？
わたし あの時うれしかった・・・ホントに
あの時キラがいなかったら わたしどうなっていたか・・
キラ、私はたしかに気が強いっていわれるし、傲慢で
わがままで、ずるくてしたたかで怖いっていわれるけどそれは違うわ・・・
本当はすごく寂しがりやなの 仕事中でもキラがそばにいてくれたらどんなにうれしいか・・・
うさぎってさびしくなると死んじゃうって 知ってるでしょ？
わたしもキラがいなかったらだめだったかも・・・
キラはわたしの心の支えなの、本当よ・・・」
「フレイ、ごめんね 変な疑い持っちゃって。
ぼくもやっぱりフレイと一緒にいたい。
フレイがいないとぼくもだめかもしれない
こんなぼくだけど、フレイを想う気持ちは変わらない、 絶対に・・・ ずっと好きでいたい」
「キラ、うれしい（涙）
なら、 わたしの想いはあなたを守るわ」
そのときのフレイの表情は今まで見たことのないくらいにかわいかった。
ぼくは幸せ者かもしれない・・・
今、目の前にいるフレイはほんとうに・・・・・
かわいい・・・
キラ、デザインの総責任者なんだって？
見せて見せて〜 キラのデザイン 見たいな〜」
「だめだめだめ はずかしいよ・・・フレイには・・・」
「いいじゃない、このわたしがみてあげるのよ
感謝しなさい。 ほら、はやく」
しぶしぶながらフレイにみせることにした。最初は興味津々に見始めていたが
だんだん眉間にしわがでてくるようになり、ぼくは不安でいっぱいになってしまった。
「キラ！！！」
「なんだよ フレイ 怒ってるの？」
「違うわよ、いいじゃない あなたらしくて
いくつかはダメかな〜と思うのも
あるけど、全体的に春という季節感を意識して、
統一感もでていて、
すごくいいと思うわ。でもまだなにか足りないのよね〜
これじゃ〜すぐ飽きちゃうわ〜。
ね〜？これまだ完成版じゃないでしょ？
わたしにも ちょっとデザインさせてよ
前からやってみたかったことだし、いいでしょ？
ちょこっとくらい
メインはもちろんキラのデザインで、補足はわたしが
やるの どう？」
「いいけど・・・大丈夫なの？
メインはティーンエイジャーだよ
フレイって 結構過激すぎて・・・」
「大丈夫よ、一応これでも出版社に勤めてて、
１日中ファッション雑誌を読みあさっててるのよ
まさせなさ〜い」
その日から最終仕上げ日まで フレイと一緒にデザインのやり直しと補足をはじめた。
「このシャツの首周り,もうちょっと丸くこういう感じに 変えたら？」
「このパンツ すこし足首あたりにむかってラインを 広げる感じでどう？」
「ベルトはこういうかんじで、色も変えましょう」
「このジャケットはやり直し！だめよこんなんじゃ、」
「帽子はボーイッシュなのがいいのよ、こんな感じで」
「こんなデザインのワンピースもいいじゃない？」
「スカートもこんなミニスカでもいいと思うわ」
「すこし単色が多いわ、もっと組み合わせが必要よ」
以外にもフレイが指摘するポイントは落とし穴だった。
でもフレイってけっこういいセンスしてるな〜。
フレイと一緒に練り直した物を トールたちとなんども検討しながら
デザインの最終決定版ができあがった。
すごく満足な仕上がりで楽しみだ。
いよいよ発表会まで一週間をきった
そうしていると、不思議とキラが何処にいるかを感じられるそんな感覚があった。
この先の未来を知っているフレイならばそんなことをしなくても
キラは無事に戻ってくるということがわかっているが、わかっていても無事を祈らずにはいられなかった。
･ﾟ･(⊃Д`)･ﾟ･ ･ﾟ･(⊃Д`)･ﾟ･ ･ﾟ･(⊃Д`)･ﾟ･ ･ﾟ･(⊃Д`)･ﾟ･
流離>>自分の醜い部分を突きつけられているような気がして、自分もキラをああいう目で、
いや、もっと酷い目で見ていたのだから。
フレイはつらいだろうな・・・こんな気持ち引きずったままで
でもフレイを見守りたいっす
幻>>そのコクピットに座っているキラの目に映っているのは、『あの時』の光景だった。
キラには胸がはりさけそうなシーンでジワっときた。
あの光景を永遠に思い出しながら戦うなんて・・・
戦争は・・・
「ようキラ、いよいよだな」
「スコットさん、そうですね」
「お互い頑張って生き残ろうな。帰ったら大尉達やフレイと一緒に一杯飲もうぜ」
「飲もうって、僕はまだ未成年ですよ」
アルコールなど口にした事がないキラは目を丸くしている。スコットは可笑しそうに身をよじって笑いだした。
「ははははははは、素直だな、お前は」
「も、もう、からかわないで下さいよ」
「からかってないさ。お前は一人前の仕事をしてるんだ。一人前の男として扱ってやらないとな。帰ってきたら酒保で一杯奢るよ」
スコットは親指を立ててみせると通信を切った。キラは年長のコーディネイターの言葉に呆れていたが、すぐに可笑しさがこみ上げてきた。何と言うか、自分と同じ境遇の相手が身近にいるというのは気が楽になるものだ。キラは今までになく気分を落ちつかせると、静かに発進命令を待った。
そして、遂にＭＳ隊の発進命令が出た。キラのストライクがエール装備で出撃したのを皮切りにスコットとレナンディーのデュエルが出撃し、ハウプトマンのバスターが飛び出して行く。反対側の発進口からは２機のスカイグラスパーが飛び出していた。
そして最後にフレイの順番が来る。シールドとビームライフルを装備し、機体をリニアカタパルトへともって行く。戦闘管制のミリアリアが出撃準備ＯＫをだした。
「フレイ、デュエル発進できるわ」
「分かったわ、ミリィ」
「･･････フレイ、あなたには言いたい事が沢山あるわ。でも、無事に帰ってきてね。死んだら文句も言えないんだから」
「･･････ミリィ、ありがとう」
フレイは自分を心配してくれるミリィに礼を言うと、機体を発進させた。強烈なＧが体を襲うが、これまでの訓練のおかげで耐える事が出来る。そして、飛び出した先はまさに地獄だった。四方八方に火線が走り、爆発と黒煙が見える。大地に降り立ったフレイのデュエルはシールドを構えながらアークエンジェルの少し前に位置する。すでに上空は両軍の航空機が飛び交い、制空権を握ろうと激しくぶつかりあっている。ＭＳを飛ばしているザフトの方が有利に見えるが、アークエンジェル隊の存在がこの空域では物を言っていた。２機のスカイグラスパーはグゥルに乗るジンやシグゥを確実に圧倒している。ランチャーパックの火力もさることながら、２人の技量が超人的なのだ。さらに空中要塞とも言うべきアークエンジェルの砲火は群がってくる敵機を次々に叩き落している。
地上戦も思っていたよりは優勢に進められていた。やはりＧ兵器の存在は大きい。キラのストライクと２機のデュエルはジンやシグー、ザウートといったザフトＭＳを寄せつけない強さを見せつけていた。その強さに後押しされるように戦車隊もザフトを押している。
「今日は手加減してられないんだ。死にたくなかったら出てくるなよっ！」
キラは続けてビームを放った。正面にいる３機のジンが直撃を受けて残骸へと変わってしまう。その左側にいるザウートをスコットのデュエルが仕留めるのが見えた。ザフトのＭＳはＧ兵器の圧倒的な戦闘力に怯みを見せているのがはっきりと分かる。何しろフェイズシフト装甲という無敵の装甲にビーム兵器という最強の矛を持っているのだ。ザフトＭＳには対処のしようがない。
素早く戦場を走りまわるストライクのコクピットにミリアリアからの通信が響いた。
「キラ、正面をアークエンジェルの全力射撃で薙ぎ払うわ。こちらの指定する辺りまで下がって！」
「分かった。ミリィ、フレイは大丈夫？」
「大丈夫よ、アークエンジェルの砲火があるし、思ったより頑張ってるわ。ＭＳ撃墜１、撃破３を出してるわよ」
ミリアリアの声には驚きの色が混じっている。まさか、フレイが立派に戦ってみせるとは思ってもいなかったのだ。せいぜい弾除けの的が関の山だと考えていたくらいだ。
ミリアリアの指示によってストライク、デュエルが後退を始める。３機が十分安全圏まで下がったのを確認したナタルが命令を下した。
「対地弾頭ミサイル全門装填、ゴッドフリート、バリアント用意、全兵装を１時から１１時の方向に向けて連続で扇状発射。進路上の敵を一掃する！」
「了解、諸元入力します！」
ロメロが各兵装にデータを入力していく。ナタルの戦術コンピュータに射撃目標が表示され、小さく頷く。
「良し、撃てぇっ！」
ナタルの命令で全砲門が開かれ、ビームとミサイル、レールキャノンが狙った地域に降り注ぐ。対地ミサイルが爆風と破片で歩兵や車両を吹き飛ばし、バリアントの衝撃波が周囲の全てを粉砕してしまう。ゴッドフリートの直撃を受けた地点は溶け去り、何も残ってはいない。この攻撃が正面３０度に渡って続けて行なわれたのだ。
ここまでの戦いで、フレイはただひたすら恐怖と戦っていた。迫り来るＭＳや戦車、戦闘ヘリが容赦無く攻撃を加えてくる。その剥き出しの殺意にさらされたフレイは恐怖に駆られ、ただビームライフルを撃ちまくったのだ。そうする事でしか恐怖を打ち消す事は出来ないと肌で感じられたから。
殺さなければ殺される。今ならそれがはっきりと理解できる、これが戦場なのだと。
『キラは、こんな恐怖をずっと感じて戦ってたの。こんな怖い思いをして、サイ達を守ってたの！？』
銃口がこちらを向くのが分かる度、血が凍り付くような感覚を覚える。見た目はただの機械だが、あの中には生きたコーディネイターがいて、自分を殺そうと必死になっているのだ。
直撃弾が機体を揺さぶる。その都度フェイズシフトが落ちるのではないかという不安にかられ、バッテリー残量を調べては安堵する。もうそれを何回繰り返しただろう。そして、恐怖に打ち勝つ、というより忘れる為にロックオンし、ビームライフルを放つのだ。そして、その内の１つがジンを直撃して爆発させる。この時、フレイは自分の手でコーディネイターを殺したと初めて実感してしまった。
「殺した、私が、コーディネイターを･･････」
父を殺したコーディネイターを殺した。それは復讐心という感情を満足させるかと思ったが、即座に浮かんできたのはキラの悲しそうな顔であった。それはまるで、自分でキラを撃ってしまったかのような罪悪感を呼び起こしてしまう。
そんな事はないと慌てて浮かんできた感情を否定したが、今度は別の感情が湧き上ってきた。コーディネイターという存在とキラが重なった時、心を占めたのは、人を殺したという恐怖であった。
だが、その恐怖も一瞬の事だ。すぐにまた敵が現れて攻撃を加えてくる。それに対応する為に機体を動かし、ビームライフルを放つ。今は生き残る事だ。生き残ったらまた考えれば良い。
フレイが頑張っていられるのはフレイの予想外の強さもあったが、ナタルのさりげない支援があった。常に戦術コンピュータでフレイのデュエルの動きを監視し、適切な支援を送り続けている。最初は誰も気付かなかったが、今では艦橋にいる誰もがナタルがフレイを守ろうと気を配っている事に気付いていた。その事に誰もが違和感を感じている。必要があれば味方ごと撃つ、それがナタルという女性だった筈だからだ。
「２時方向のザウート３機を仕留める。１３番から１８番まで対地弾頭装填、１９番から２４番までウォンバット装填、１時方向のディンを牽制しろ。攻撃パターンは任せる！」
ミサイルが放たれ、３機のザウートが爆煙にに包まれる。その中から１機のザウートがよろよろと出てきた。２機は破壊されたらしい。そのザウートにハウプトマンが収束砲を叩き込んで破壊した。
やはりキラは過去に囚われてしまいましたか。しかしアスランもえげつない事を
これで負傷したから、次は病院でエリナ嬢とまた会う訳ですか。今度は看護婦と患者という関係で
さあ、次はフレイを語るキラ君が見れるかな
>>春コレクション
フレイ様、そんな悪酔いするまで飲んじゃ駄目ですｗ
酒は飲んでも飲まれるﾅでしょうに。しかし、５人でボトル３０本って･････
犠牲の下、何とか地球への降下を成功させたアークエンジェルだが、大気圏
突入時に艦から離れたストライクとキラを救うため、目的地であるアラスカ
から軌道を大きく逸らし、ザフト勢力圏であるアフリカに降下してしまう。
ストライクの格納ドックでは、キラを救おうとマードックら整備班が
天手古舞している。
大気圏の摩擦熱を浴びて沸騰状態のストライクのボディに、科学冷却剤を
ばら撒き冷やした後、外から強引にコックピットを開くと、蒸し風呂状態と化した
コックピットから、もうもうとした蒸気と共に、気絶したキラが転がり落ちてきた。
「身体中すごい熱だ。でも、まだ生きてる。早く医務室へ運べ！」
タンカで運ばれるキラを尻目に、コックピットの状態を調べていた整備兵の
一人がぽつりと呟いた。
「生きていたんですね、あの娘……」
メーターで計測したコックピットの内部温度は、軽く三百度を振り切っている。
もう一度メーターの針を見なおし、機械の故障でないのを確認した整備兵の
キラを見つめる瞳には、軽い戸惑いと強い恐れが混在していた。
医務室のベッドで、白雪姫のようにひたすら眠り続けるキラ。
フレイが着きっきりで看病しているが、熱は一向に下がらなかった。
ミリアリアがキラのお見舞いに訪ねた時、フレイが冷水に浸したタオルを
絞って、キラの額に乗せている姿が見えた。
４０度を超える高熱を出して寝込んでいると軍医から聞かされたキラの身体は、
瞬く間にタヲルの冷気を吸収し、フレイは数秒もしないうちに、再び同じ
動作を繰り返す。一体これまで何百回となくタオルを取り替えてきたのだろう。
何度も氷水に腕を突っ込み、タオルを絞り続けてきたため、本来女の子と見間違わん
ばかりのフレイの陶磁のような白い手が、赤く腫れ上がり罅割れを起こしている。
「ねぇ、フレイ。少し休んできたら…。今度は私がキラを見ていてあげるから」
「気にしないで良いよ、ミリアリア。
僕は君たちと違って、他にやることがあるわけじゃないしね」
ほぼ徹夜で根詰めているフレイの様子を心配してミリアリアが声をかけるが、
フレイはやんわりとミリィの申し出を断った。
「そ…そう」
再びタヲルを取り替えようとしたフレイは、キラの状態を観察し、
医務室から出て行こうとしたミリアリアに声をかける。
「ミリアリア。済まないけど、やっぱり少し代わってもらえるかな。
キラが汗をかき始めたみたいなんで、着替えさせて身体の汗を拭いて欲しいんだ。
いくらキラが寝ているからって、こればっかりは僕が勝手にやるわけにはいかないよね」
「当たり前じゃない。けど、キラは案外喜んだかもね」
クスリと微笑むミリアリアに着替えの寝巻きを渡すと、フレイは医務室から出て行った。
「キラ、大丈夫かな…」
地球圏での日時計に生活サイクルを合わせるために、食堂で時間外れの
夕食を取るヘリオポリス組。トールがオムライスを口に運びながら、
高熱を発したキラを心配するが、サイは無言のまま自分の思考に耽っている。
「なあ、トール。コーディネイターって本当に人間なのかな…？」
戸惑いながらも疑問を提唱するカズィに、トールの眉が釣り上る。
「今更、何言ってるんだよ！？ キラはキラだろ？」
「だって、どう考えたっておかしいじゃないかよ。何で大気圏の摩擦熱で
燃やされても、火傷一つ負わずに熱を出すだけで済むんだよ？それじゃまるで…」
「それ以上言うな！」
軽く拳を振り上げたトールの迫力に、カズィはビクッとして口を閉ざしたが、
トールの怒りは半ば自分自身に向けられたものだった。いや、トールだけではなく
ＡＡクルー全体のキラを見る目が、徐々に変わりつつあった。
「なに考えてるんだ、俺は…。
あのフレイでさえ、コーディネイターに対する考えを改めはじめたっていうのによ」
軽く頭を振って自分を戒めるトール。
思わず出た彼のフレイに対する評価に、サイは半信半疑だった。
ミリアリアあたりは、最近のフレイに好感を抱いているみたいだが、古くから
フレイを知るサイには、今のフレイのキラに対する態度は違和感だらけだ。
確かにフレイの母親の死に対して、キラには何の責任もない。
もし、責任を負う者が存在するとすれば、つまらない道徳観に縛られ、
実際に実効性の証明されたフレイの人質案を即座に実行しなかった、
自分とマリュー艦長にこそ課せられるべきだろう。
フレイの母の死はキラには責任はないが、それはあくまで理屈としてである。
大よそ理知的に物事を判断し、あらゆる人生の局面で、理性を感情より優先させてきた
フレイだが、たった一つだけその強固な理性の勝者となりうる感情が彼にはある。
それがフレイの母親、ジョアン・アルスター女史の存在であり、あの若くて美しかった
未亡人こそが、世界で唯一人フレイにとって代替の効かない貴重な人間だったのだ。
それに比べれば、悲しいことだが婚約者である自分も、フレイから見れば十分代替の効く
ありふれた代物にすぎないことをサイは知っていた。
その代わる者のない大切な母親を、フレイは目の前で失ったのだ。
本来、許されないことではあるが、そんなフレイがキラに不条理に当り散らす姿は、
サイの目からは極めて自然なことに思えた。
本当にフレイは母親の死を割り切れたの？本当にキラを許せたの？
サイは、「悲しみを知る人間こそ、他人に優しくできる」というラクスの言葉は
知らなかったが、従来悲しみを癒すのに最も必要なものは「時間」であり、その
時間が今のフレイには決定的に不足していたことは知っていた。
もし、短期療法で悲しみを無理に癒そうとするなら、劇薬の存在に頼るしかない。
宗教に救いを求めるか…、それとも悲しみを憎悪に転換させ復讐を図るか…。
自分の思考に戦慄したサイは思わず首を振った。いくらなんでも先走りすぎている。
そんなサイの疑惑が具現化されたかのように、食堂にフレイが姿を現した。
「フレイ……」
思考を打ち切りサイがフレイに声をかけたが、フレイは婚約者の声を無視して、
軽く食事を取った後、温くなったバケツの水を取替え、新しい氷を詰め込むと
そのまま食堂を出て行こうとする。
バケツを持つフレイの掌の状態に気づいたサイが、フレイの腕を掴んだ。
「サイ…」
フレイは面倒臭そうな目でサイを見る。
「フレイ、キラの面倒なら私が……」
「ミリアリアにも言ったけど、今、ＡＡ内で特定の職務を持っていないのは僕だけだ。
気持ちは有り難いが、あまり僕の居場所を狭めないでくれないかな」
穏やかな口調の中に鉄壁な拒絶の意志を感じて、一瞬サイは怯んだ。
「でも、フレイ。その手は……」
「この手がどうかしたのかい？」
フレイはバケツを置くと、つまらなそうに皸した手をプラプラと振ってみせる。
「こんなもの、今までキラが戦場で味わってきた苦痛に比べたら、些細なものだろう。
そう思わないかい？」
何よりも、これからキラが味わうことになる、最愛のヒト殺し…という苦痛に比べればね。
内心の悪意を巧みに隠して、一見キラを思いやったフレイの行言に、トールとカズィは
お互いに自己嫌悪の表情を見合わせ、サイは疑惑を確信に変えた。
おかしい。絶対におかしすぎる。
大よそ真っ当な形で、今のキラがフレイの母親の代わりになれるはずがない。
「ねぇ、フレイ。イージスのパイロットがアスランさんだって、誰から聞いたの？
今では皆知っているけど、あの時には私とミリィしか知らなかったはずなのよ」
「展望室での君達の会話を聞いていたんだよ。あの時、母のことで頭が一杯で
声をかけられなかったけど、そんなに不自然なことかい？」
それとなくカマをかけてみたが、フレイはサイの探りを軽くいなした。
サイは無言のまま俯く。フレイの堂々とした態度からは何のやましさも感じられず、
これでは追求のしようがない。
フレイはフレイで疎ましげにサイを睨んだ。
先ほどから何を言っているのだ、この女は。邪魔もウザイがどうも何か感づいた
節がある。この先も纏わりつかれたら面倒なことになるかもしれない。
フレイはあっさりと彼の婚約者を切り捨てる決断をした。
数分後、まるで何もなかったかのように食堂から出て行ったフレイと、母の死を理由に
一方的に婚約の解消を突きつけられて、ガックリと膝を落としたサイの姿があった。
これで良い。
サイがどこまで感づいたのかは分からないが、しばらく落ち込んでいてくれれば、
余計なことにも頭はまわらないだろう。
フレイは、彼の母親がサイとの婚約を決める以前に、何人か後輩の女の子と関係を
持ったことがあるが、幸か不幸か許婚のサイとは未だにキス止まりの間柄だった。
それはフレイにとって、婚約を解消する上で十分な免罪符となりえるはずだったが、
仮にフレイがサイと関係を持っていたとしても、サイを捨てるのに何の躊躇いも
見せなかっただろう。
サイは、項垂れた自分を振り返ろうともしないフレイを恨めしい目で睨んだ。
自分が、フレイにとって代替の効く存在であることを改めて思い知らされ、
どんな形であれ、キラが今のフレイにとって代替の効かない存在に成り遂せた
ことに、強烈な嫉妬と僅かながらの憎悪を隠せなかった。
外見上、食堂での修羅場など微塵も引き摺らずフレイが医務室に戻った時、
キラは既に着替えを済ませていたが、ミリアリアがキラの頭を持ち上げて、
何やら四苦八苦している。
「ミリアリア、何をしているんだい？」
「軍医さんから熱冷ましのお薬をもらったんだけど、キラがなかなか飲んで
くれないのよ…」
「貸してくれるかい？」
フレイはミリアリアから薬を受け取ると、コップの水と一緒に自分の口に含んだ。
「ちょ…ちょっと、フレイ？」
ミリィがまさか…と思う間もなく、フレイは軽くキラの上半身を抱き上げると、
キラに口移しで薬を飲ませる。キラの咽喉がゴクゴクと嚥下し、薬を飲み干した。
「どうかした、ミリアリア？」
唖然とするミリアリアにフレイが不思議そうに声をかける。
「う…ううん、何でもない」
何か言いかけたが、それ以上言葉が出てこない。
フレイの態度があまりに自然体だったので、もしかしておかしいのは
自分ではないかとミリアリアは錯覚しはじめた。
フレイは直ぐにミリアリアから興味を外して、キラの看病を再開する。
船酔いしたような表情で、部屋から出て行こうとしたミリアリアの耳に、
フレイの呟きが聞こえてきた。
「やっぱり、白雪姫のようには目覚めてくれないか…」
ミリアリアの頬が林檎のように赤く染まった。
「おい、何だよ。ミリィ？ヒトの顔をジロジロ見つめてさ…」
食堂に戻ったミリアリアは、真っ先に自分の恋人の顔を吟味するように見つめる。
二枚目と三枚目の微妙な境界線に位置するトールの姿に、何となくアンニュイな
気分に陥ったミリィは内心で軽く溜息を吐いた。
別にフレイに惚れたわけでも、トールに失望したわけでもないが、人間には
持って生まれた格差があることを何となく実感した気分だ。
ふと気づくと、隅の席でサイが軽く嗚咽を漏らし、そのサイをカズィが必死で
慰めている姿が目に入った。
「ねぇ、トール。サイはどうしたの？」
「フレイに捨てられたらしい…」
この手の揉め事にあまり免疫がないトールが、言い辛そうに応える。
医務室でのフレイとキラの姿を思い出したミリアリアは、なんとなくその事態を
予期していて、あまり驚いていない自分自身に気づいた。
丸々４８時間眠り続けた白雪姫がようやく目を覚ますと、虚ろな視界に
彼女にキスした王子様の顔が飛び込んできた。
「良かった、やっと気づいてくれたんだね、キラ。もう目を覚まさないのかと心配したよ」
フレイは瞳に涙を浮かべながら、軽く上半身を起こしたキラの身体を抱き締めた。
頭がぼやけていたキラの思考が徐々に鮮明になっていく。
「フレイ、ずっとついていてくれたの？」
自分の肩にまわされたフレイの痛んだ掌を、潤んだ瞳でキラは見つめる。
フレイは優しい笑顔で微笑むだけで何も言わなかったが、フレイの暖かい想いに
いやが上でもキラの胸の鼓動が高まった。
突然、フレイは自分の額をキラのおでこにキスさせた。
「フ…フレイっ！？」
息が吹きかかるほど間近に接近したフレイの顔に、熱のせいではなくキラの顔が赤くなる。
「まだ、少し熱があるみたいだね。もう少し寝ていたほうがいいよ、
僕がずっと見守っていてあげるから…」
フレイは軽くキラのおでこにキスすると、キラをベッドに寝かせ、そっとシーツ
の中のキラの手を握った。
暖かい……。
皸したフレイの掌はゴワゴワとしていたが、普段のフレイの奇麗なすべすべとした
手の感触よりも、何故かキラは気持ちよく感じた。
キラは何かを忘れているような気がしたが、暖かいまどろみに再び頭がぼやけはじめる。
思い出すな…と悲鳴のように警告する自分の本能に従い、キラは今は目の前の幸福に
溺れることにした。
フレイ様は本編でも制服のお色直しばかりだった
せいか、会社勤めがイメージしやすいですね。
>フレームレスのめがね
このアイテムをチョイスしましたか。意外と盲点でした。
>流離
嗚呼、フレイ様、人を殺めてしまいましたねえ。でも、
とにかく生き残らねば…。PSダウンを恐れてバッテリー
残量気にしている記述の部分がムチャクチャ怖いです。
>キラ（♀）×フレイ（♂）
ついにこの展開が来てしまいましたか。しかもフレイやキラ
の心情描写が細かいせいか、本編より過激ですね。サイも
簡単に捨てられてしまって…。
PHASE-01（前編） 1-12 >>30-41
カズィ・バスカークはモニターを睨んだまま固まっている。データの試算に手
こずっていた。もうしばらくはかかりそうだった。
昼下がりのカトー・ゼミにはまだ人気がない。
見た目より無精で闊達な教授の人柄と同じで、室内には研究用の機材と大小の
システムが所狭しと散らかっている。学生はサイとカズィだけだ。教授やキラた
ちが出てくるにはもうしばらくかかる。
「カズィ、こっちの試算は終わったけど半分手伝おうか？」
何気ない言葉は、ときおりカズィに小さな苦味を与える。
気を使ってくれているのは承知していた。サイはいいやつだ。人当たりもいい
し、大人だし、およその事はそつ無くこなす。いわゆる出来のいいヤツ――よす
ぎるほどだった。それだけに、サイを身近にすると、自分がひどく不出来に思え
る瞬間がある。
「いいよ、サイはなんでも出来るんだろうけど、俺はさ――」
と、思わずもらしそうになった皮肉の代わりに、
「大丈夫だよ、もうすぐだし。そういえばキラたち遅いよね」
カズィは当たり障りのない言葉を選ぶ。
「もうすぐ来るだろ。ミリィが一緒だから遅れたりしないさ」
カトー教授のラボには三種類の時計がある。実験用の原子時計とリチウム時計、
最後の一つが壁に掛けてあるデジタル時計だ。
十二時四十六分四十秒。
色気のない壁のデジタル表示が時刻を告げていた。
◎
「トール、速度出てないからって立ちあがったら危ないよ」
「そうじゃなくて、どうなんだよキラ」
カトー・ラボへと向かうエレカの後部座席に陣取ったトールは、一向に追求の
手を緩めず身を乗り出してくる。隣でミリアリアがにが笑いをこらえていた。よ
けいなお世話だよとは口にできず、キラは話題を変えようと頭をひねった。
カトー・ラボはモルゲンレーテが占有する区画にある。
厳重なゲートを、カトー・ゼミの生徒は特別に発行されたＩＤカードで出入り
する。一般区画との物々しい断絶を意識するのは一瞬だ。ゲートを越えるとエレ
カは快適な走行を再開する。レンタルエレカは基本的に全自動だから、運転席の
キラは特に何もすることがない。
「どうって……」
「ねえねえ、トリィってさ、キラが作ったの？」
見かねたミリアリアが助け舟をだした。
「僕じゃないよ、友達から貰ったんだ……昔、月にいた頃……」
三年前のことだ。
別れの場面は目を閉じれば浮かぶ。
月面都市コペルニクス。人工の光に照らされる閉ざされたドームのセカイ。四
季のない造り出された春の園。訪れた別れの朝。桜並木。一面を染めるように花
びらが舞う。二人の別れを花の色が惜しんでいる。
『―――父はたぶん深刻に考えすぎなんだと思う』
親友だった。
月に来てからの九年間を一緒に過ごした。
『プラントと地球で、戦争になんてならないよ』
自分よりずっと大人だった。本当の兄弟みたいなものだった。
伏せた目がもの寂しげに揺れていた。
少し悲しくて、アスランと名前を呼んだ。
『でも、避難しろといわれたら、行かないわけにはいかないし』
『キラもそのうちプラントに来るんだろう』
たった三年前だ。けれど、時は流れる。
戦争の足音。父と母の手にひかれて月を後にする。オーブへの疎開。アスラン
のお母さんがとても優しかったのを今でも憶えている。ヘリオポリスで過ぎてい
く季節。開戦。どこかで砲声が響いている。ニュースが絶え間なく流れる。それ
もすぐ日常になる。
もう三年前だ。今はどうしているのか知る術もない。
地球とプラントの戦争が二人の距離を触れがたく引き離した。
時が流れて、思い出だけが色あせない。
二人の頭上にあったのは、それは見事な青い地球。
「え、あっ……ごめん、ぼうっとしてて。トール、何の話だっけ」
「いいよ、もう」
トールがため息をつく。あきれた顔で座席にどんと座り込む。ミリアリアがお
かしそうに笑っていた。
キラには本当に何のことかわからない。
コロニーの景色が風と混じって流れていく。不安一つない平和な風景。
「…………ねえ、トール」
「んー、なんだよ」
「戦争…………早く終わるといいよね」
そうだなあ、と生返事が返ってくる。
胸ポケットから顔を出したトリィが思い出したように「トリィ」と啼いた。
◎
「今、エレカが一台ゲートをくぐった。民間だろう。問題はないようだ」
『イザークだ。こっちは配置についた』
「了解。あと１分待て」
岩場の高台に身を潜めるようにして、ノーマルスーツの一団が眼下を一望する。
ヘリオポリスは元来鉱山開発を目的に建設されたコロニーだ。コロニーの円筒
の一方には小惑星が接続されている。鉱山区の構造は複雑で、一端入り込むこと
に成功すれば隠れる場所には事欠かない。
スコープを切り替える。
モルゲンレーテの工区に、巨大な物体を積んだトレーラーが見え隠れした。
「目標を確認した。なるほど、たしかに正確な情報だな」
『筒抜けなのは、ナチュラルどもの間が抜けてるだけだろう』
「イザーク、油断すると足下をすくわれるぞ」
『―――俺を誰だと思ってるんだ？』
「……幸運を、ザフトのために」
『ザフトのために』
通信が切れる。時間を確かめる。あと４０秒ほどある。
「大丈夫か、ニコル」
隣にうずくまっていたニコル・アマルフィの肩を軽く叩いてやる。ハッとニコ
ルが顔をあげた。ヘルメットのバイザー越しの表情が堅い。
ニコルは緊張していた。軽く震えていた。
まだ十五歳だ。緊張は無理もないが、プラントでは十三歳をすでに成人と見な
す。コーディネイターは幼年期から能力知性の発達が早いこと、プラントの人口
が限られていること―――宇宙という新天地で生きていくためには不要なものは
限りなくない。戦時中ということもあり、プラントはあらゆる層に子供をも労働
力として必要とした。
ニコルはクルーゼ隊では最年少だ。だが、赤のスーツを着ている。
ニコル・アマルフィはＭＳのパイロットだった。
それも限られた者しか身につけられない、赤のスーツを許されたパイロット。
「だらしないですね、我ながら。突入作戦がはじめてだからって……」
「誰だって最初は怖いさ。いけそうか」
「はい。大丈夫です、アスラン・ザラ」
一つ下の少年の気負いに、アスランはバイザー越しに微笑んだ。
もう一度時間を確認する。
ちょうどデジタル表示が変わった。十二時四十九分十六秒。
カウント・ゼロ。
ムウ・ラ・フラガはエレベーターに乗り損ねていた。お気に入りのブルネット
の女性兵が消えた自動ドアに目の前で閉まられ、舌を打ったところだった。
ナタル・バジルールとアーノルド・ノイマンは、アークエンジェルを間近から
見あげていた。勇壮な白い船体は連合の守護神にすら見えた。
マリュー・ラミアスは胸を眺めている部下に軽く肘をくらわせていた。
フレイ・アルスターはエレカで友人たちと談笑していた。話題がちょうどジェ
シカの新しい彼氏の追求に差しかかったところだった。
サイ・アーガイルは二杯目のコーヒーを手に取った。
カズィ・バスカークはあたりに散らかったレポートを引っかき回していた。
そして、
最初は爆発音だった。
キラは、それが爆発だと認識できなかった。遠雷のように響き渡る轟音。密閉
されたコロニーの大気が怯えたように震える。物思いを破られて、キラは腹に響
く音がした方を、正面の鉱山、小惑星ヘリオ０１の一部を仰ぎ見た。
「今のな、」
言い終える前に頭上を突風が横切った。
スラスターの爆風が車を持って行きそうな風を巻く。ミラーの陽光を巨大な機
影が一瞬遮る。頭のすぐ上を、本当に触れることさえできそうな距離を、信じら
れないほど巨大な何が通過した。
モビルスーツだった。
ジン。肩には「０３」のマーキング。
飛行していたジンが降下する。制動スラスターの爆風と全備重量８０トンが落
下した衝撃で、エレカが木の葉のようにはね飛ばされる。全長２０メートルの巨
体はアスファルトを紙細工のように踏み抜いていた。
エレカは２メートルもバウンドした。
世界が回っていた。キラは悲鳴をあげた。トールもミリアリアも叫んでいた。
自分の声も他人の声も間近の轟音にかき消されて耳まで届いてこない。エレカが
タイヤから着地できたのはきっと奇跡が大安売りだったからだ。シートベルトを
していなかった後ろの二人が車から飛び出さなかったのを考えれば、安売りどこ
ろかバーゲンセール中だったのかもしれない。
もっとも、そこで幸運の貯金はお終いだった。
真上から、二機目のジンが落雷のように落ちてきた。
「……も、もびるすーつっ？！」
トールの顔は驚きでも怒りでもなくただ呆気にとられている。
そういえばトールの奴、ミリタリーマニアだっけ。
こんな時なのに、馬鹿馬鹿しい思考がキラの頭に閃いた。
こんな時だから、正常な思考なんて一から十まで麻痺していた。
巨大な脚部が進路を塞いだ。
頭よりも身体が動いた。キラは、エレカの操縦をマニュアルに切り替えるのと、
踏み抜くように急ブレーキをかけてハンドルを左に切るのをほとんど同時にこな
していた。サスペンションが悲鳴をあげる。グリップを失ってスピン寸前の車体
の脇を景色が飛ぶように流れていく。鼻先をジン04 の脚部が擦った。一瞬でも
遅れていれば間違いなく踏みつぶされていた。
そして。
二度目の、二機目のジンの着陸する衝撃が、今度こそエレカを吹き飛ばしてし
まうより先に、キラ・ヤマトはそれを聞き届けた。
すぐ間近で、ヘリオポリスの誰よりも至近距離で。
腹の底まで響き渡る、脳髄を掻き出すようなその音を。
鬨の声を。
ジン０４の７６ミリ砲が咆えた。
それは、平和な世界を破滅させる、最初の砲声だった。
◎
――俗にいう「ヘリオポリス事件」はC.E.７０年１月２５日に生じた。
始まりは十二時三十五分二十七秒という説と、十二時四十九分十六秒とする説
がある。前者はヘリオポリス領空内に潜伏していた二隻のザフト所属艦が発見さ
れ、守備隊の警告にも関わらずＭＳを発艦させた時刻。後者はコロニー内で最初
の爆発が起きた時刻であり、普通はこちらが用いられる。
ステルスモードのザフト艦が守備隊の哨戒機に発見された時点で、すでにザフ
トは工作部隊をコロニー内に侵入させることに成功していた。
ザフト艦発見の第一報は、駐留部隊の哨戒機からオーブ自衛軍ヘリオポリス指
揮所を介して地球軍駐留部隊発令所に届いた。
もちろん公式には駐留部隊などいないことになっている。
ザフトの領空侵犯自体は日常茶飯事で、とりたてて目新しいものではない。
ＭＳの発進も、示威行動としてはよくある類のものだ。
オーブ軍はそう判断したが、エドウィン・キンケイド大佐は違った。
エドウィンは執務室で報告を受けた。領空侵犯だけならよくある話だが、十時
間前に偽装艦が消息を絶った事実が意識を刺激した。各部署に警戒を命じる。椅
子を蹴るように立ち上がると発令所へ急いだ。
それがエドウィンの命運を分けた。
十二時四十九分十六秒である。
最初に爆発が起きたのはモルゲンレーテの工区内だった。
一カ所ではなく複数で、わずかにタイミングをずらしながら連鎖的に爆発し、
直接間接の被害を幾何級数的に増大させた。
コロニーは、その構造上の制約からテロには脆弱だ。十分な知識と技術と装備
がありさえすれば、比較的少数でコロニーを半身不随にすることは、必ずしも不
可能ではない。
ザフト工作部隊は当然のことながらコーディネイターであり、優秀で、かつ、
よく訓練されていた。
爆発は各所の通信と電源を寸断した。地球軍の駐留施設は複系統のシステムを
有していたものの、元来がモルゲンレーテの民間施設を流用したもので耐久性に
は欠けており、一部を除いてその機能を喪失した。工区全体で可燃物による誘爆
の二次被害と衝撃による鉱山の落盤が発生し、さらに被害を拡大した。
最初の一分間で二百人近い死者が出たとされる。
この死者の中にエドウィン・キンケイド大佐以下多くの連合士官の名がある。
運が悪かった。ちょうど発令所に向かっていたキンケイド大佐は、二次被害の爆
発にまともに巻き込まれたのだ。
それが、直後の地球軍の抵抗の、致命的な混乱に繋がる。
建前上ヘリオポリスは中立コロニーであり、オーブ軍との指揮系統の統一すら
なされていない。中立コロニーでの戦闘の可否という重大な問題の最終決定すら
下されないまま、地球軍は各所で独自の反撃を開始しなければならなかった。
続く十二時五十分四十五秒。
オーブ軍哨戒機を撃墜し、港を突破したモビルスーツ・ジンが五機、ヘリオポ
リス内に突入。
戦闘行動を開始した。
◎
はっきりしない視界のまま、横転したエレカから這い出して、キラは頭を振っ
た。すっかり悪酔いしてしまったような思考が少しずつ正常に戻っていく。
鼻をつく異臭。
コロニーの清潔な空気に焼けた匂いが混じっている。火薬の匂い。瓦礫の匂い。
爆発音と破壊音がする。どこかで誰かが叫んでいる。何かが崩れていく。崩れて
いくのは世界なのかも知れない。そんなことを薄ぼんやりとキラは考える。
砲声が途切れない。砲声。爆発。砲声。爆発。砲声砲声砲声砲声。
何かが起こっている。
何が起こっているのか、キラには想像もつかなかった。
だが、それは、戦争の音だ。
ここにはやってこないはずの戦争の音だった。
「トール……ミリアリア……っ」
我に返って、折り重なるようにして倒れている二人に駆けよった。
どこか痛いのか判らないくらい身体が痛いが、思ったほどにはひどくない。骨
折もしていないようだ。
「……き……ら……」
先にトールが起きあがった。まだ意識ははっきりしていない。
「……生きて……おれたち……ぶつかったんじゃ……」
「あぶなかったよ、本当に」
「そっか、キラが……さすがコーディネイターだ……助かったよ」
トールがのろのろとミリアリアを抱き起こす。呼吸と脈拍を確かめる。正常な
ことに心底ほっとする。どうやら外から見る限り大きな怪我はしていない。
「トール、大丈夫？」
「俺は……たぶん……俺よりミリィが。脳しんとうかも」
「あまり動かさない方がいいよ。でも……」
キラは立ち上がって、あたりを見回した。
どの方向にも黒煙と炎が立ち上っていた。砲声と爆発とが絶え間なく耳に届く。
モルゲンレーテ周辺は特にひどい。工区も鉱山区も至る所が炎を噴いている。二
次爆発が連続して起きる。
「一体何が」
「ザフトのＭＳだ、ちくしょう……ここは中立コロニーなのに……」
ビルとビルの隙間にジンが見え隠れする。それが決定打だった。
ジンから、地表に向かって光が尾を引いていた。
７６ミリ砲の曳光弾だ。ジンが地表にいる何かを攻撃してる。
何かではない。
ザフトのＭＳが、コロニー守備隊を攻撃しているのだ。
戦争の光景だった。
キラは愕然とした。現実に理性が追いつかない。それでも何かを、少しでも状
況を確かめようと闇雲に目を転じて、ほんの偶然から、それを見つけた。
見間違いかと思った。そうではなかった。
後ろ姿だ、自分と同じくらいの。おそらくは学生だった。
流れる煙に紛れている。遠ざかっていく。周りが見えてないのか、それともパ
ニックでも起こしているのか、後姿は工区の方へ闇雲に突っ走っていた。
炎と砲声と爆発と混乱のただ中へ。
「ちくしょう……父さん、母さん……そうだ、サイたちはっ？！」
「―――トール、ミリアリアを連れて避難して」
迷ったのは、ほんの一瞬だった。
「おい、キラっ？！」
飛び出そうとしたキラの腕を、トールが掴んで止めた。
「おまえ、どこ行くんだよ！」
「あっちに誰かが……止めなきゃ」
「お前までやられちまうだろっ！！」
「ほっとくわけにはいかないよ。僕は大丈夫だから、トールたちは早く避難を」
「バカっ！！」
トールは本気で噛みついた。これまでで、たぶん、一番本気だった。
「お前だけそんなヤバイとこ行かせられるかっ、俺も、」
「ミリアリアを―――」
キラが無理矢理に笑顔を作る。
「置いてくわけにいかないじゃないか。だから、」
トールが虚をつかれた顔をする。ミリアリアはまだ目を覚まさない。キラが二
三歩後ろに下がる。袖を掴んでいたトールの手は自然に抜けた。
「……キラ」
キラは背を向けた。トールの小さな呟き。足は少しも緩めなかった。
軽く、背後へ手を振った。
全力で走り出したキラの頭上を、ジンの機影が飛び越していった。
◎
直径３キロの円筒の内側にぐるりと張り巡らされた大地の風景。ラスティは心
底それを美しいと思いながら、やり場のない怒りにもかられる。ナチュラル。コ
ーディネイターを憎み、嫉み、幾度となく同朋を踏みにじってきた古きものたち
が、人類の叡智の結晶であるべきこの場所に、我が物顔でのさばっていることへ
の義憤だった。
「……ナチュラルどもめ」
ジンの鋭敏なセンサー系は、人間では感知できない知覚をもデータにかえて、
ラスティの神経に送りこんでくる。重力も気圧も赤外線も電磁波も、肌で感じる
風のように今のラスティは理解できる。
「！ ―――目標を発見しました。守備隊を掃討します」
ラスティがジン０２を急降下させた。
とろとろと逃げ支度を整えているトレーラーの頭上から、ジン０２は猛禽のよ
うに襲いかかる。守備隊の有線ミサイルを鋭い機動でかいくぐる。コロニーを破
壊してしまう恐れから、守備隊の装備は火力や弾速の低いものに限定されていた。
ジンからすれば射的の的以外のものではない。
ジン０２はビルも装甲車も同じように掃射する。爆発。豆粒のような地球軍の
兵士たちが、本当に煎られた豆のように吹き飛ばされていく。
『アスランだ。足を止められた。こっちの位置がわかるか、支援を頼む』
「ラスティです、了解しました。三分、いえ二分待ってください」
『重火器の発砲はなるべく控えろ。無駄な破壊するなよ』
『……ナチュラル相手にお優しいことだな、アスラン・ザラ』
割り込んできたイザークの通信に、またかとラスティは苦笑した。
アスラン・ザラとイザーク・ジュール。クルーゼ隊のエースを争う二人は、何
かにつけて折り合いが悪い。寄ると触ると角突き合わせる。というよりも、イザ
ークが一方的に絡んでいく。
『ここは中立国のコロニーだ。やり過ぎると後々厄介な問題になる』
『クルーゼ隊長は構わないということだったがな。だいたい連合の新兵器を開発
しておいて、いまさら中立とは片腹痛い。まあ、さすがに国防委員長閣下のご子
息は仰ることが違うな』
「……ラスティです。アスラン、そちらの位置を確認しました。三十秒後に支援
砲撃を行います。よろしく」
イザークの皮肉を諦め顔で遮って、ラスティは機体を反転させた。
スラスターを全開、ジン０２が放物線の軌道を描いて跳躍する。
◎
途中で目に入る限りが混乱していた。どこもかしこも通信が途絶し、電源が落
ちて、火の手が広がっている。大勢が走っていた。行くあてなどない。ただ逃げ
出そうと走っていた。シェルターの表示にひとが群がる。崩れたビルが砂埃を巻
き上げる。煙が目に染みる。誰かが懸命に誘導している。こっちへ慌てないで落
ちついて。耳を貸す者なんて誰もいない。子供の泣き声、母親の悲鳴、男の怒声。
ありとあらゆる声が意味もなくお互いを罵りあっていた。
背中の少年とキラだけが、ひとの流れに逆らっている。
少年は戦いの中心へ近づいていく。ひたすらに。入り組んだ通路と階段を恐れ
げもなくかけていく。三つ目の回廊を通りぬけた辺りで人気が無くなった。その
代わり、銃声がすぐ近くまで迫っていた。ＭＳの砲撃とは明らかに異なる、ひと
続きのような絶え間ない銃声が目と鼻の先から聞こえてくる。
逃げろ、という自分の囁きをキラはたしかに聞いたように思う。
もういい。ここまで追いかけてやっただけでも十分だ。あいつは勝手に走って
きたんだから死んだって自業自得だ。このままだと自分まで逃げ遅れる。落ちつ
いて状況を考えろ。一人で何か出来るような場面と思うのか。だいたいアイツ一
人助けたところで何も変わらない。今すぐ引き返して近くのシェルターまで走っ
て行くんだ。早くしないと本当に取り返しがつかなくなるぞ―――、
おそらく、キラは、冷静ではなかった。
一歩進むごとに危険が掛け算で増えていく。そんな事はわかっている。
彼が危ない。
見捨てておけない。
よく考えれば名前も知らない相手だ。勢いにまかせて追いかけて来た。
「―――きみッ！」
ようやく追いついた。
足早に駆けよって腕を掴んで引きとめる。少年が弾かれた様に振り向いた。引
き結んだ唇と火のような眼差しと、まるで怒ったような顔でキラを射抜く。
「なんだっ、お前？！」
キラはとまどった。掴んだ腕の感触が予想外に華奢だった。
疑問を言葉にする前に、すぐ近くで爆発が起きた。爆風が瓦礫の雨を降らせて
くる。頭からまともにくらって口の中が砂利だらけになる。少年の帽子があおら
れて吹き飛んだ。隠されていた金髪が砂埃の中に広がった。
疑問は、ようやく確信に変わった。
「お……おんな……の子？」
「なんだと思ったんだ、お前は！」
少年だと思いこんでいた少女は、キラの言葉尻をとらえて噛みつく。
「……そうだ！ ここにいたら危ないっ、早くシェルターへ！」
「なっ……離せバカ！」
少女がキラの腕を乱暴に振りほどく。振りほどいて睨みつける。
「お前こそさっさと行け、私に構うな。私には確かめなければならないことが！」
「…………確かめる？」
もう一度爆発が起きた。疑念は熱を持った突風にかき消される。キラが体勢を
崩したわずかの隙に、少女は野の獣みたいな敏捷さで走り出していた。
キラは追いかける。今さら一人では引き返せない。
狭い階段を上り入り組んだ通路を抜けた。そこは唐突に空間が広がっていた。
ちょっとしたビルが入りそうなほどの広さがある。
巨大な倉庫か、あるいは格納庫。
その壁を走るキャットウォークの上で、キラは少女をつかまえた。
少女は、動かなかった。
眼下で凄惨な銃撃戦が繰り広げられていた。
物陰から飛び出したザフトのノーマルスーツが狙撃される。くるくる回って糸
が切れたようにその場へ倒れる。榴弾が爆発する。破片と死が撒き散らされる。
腕を飛ばされた兵士が転げまわっている。悲鳴なんてあがらない。あげている暇
も無い。銃声と銃声と銃声と爆発音、それから低くこもる断末魔だけだ。
あまりに現実感のない光景だった。
ドラマか映画の中にでも迷いこんでしまった気がした。
「これ……は……っ、」
だが、少女をとらえて離さないのは流血の惨状ではない。
巨大なものが横たわっていた。
格納庫の底、トレーラーのデッキの上、かけられたシートが半ばずれて、物体
の姿を明らかにしている。二本の腕と足を有している。人型を模した二十メート
ルもの巨体。金属の地金むき出しの身体。四本の角。それはザフトのものとは異
なり、単眼ではなく人間を思わせる二つの目を持っていた。
「……も、モビルスーツ……？」
「地球連合軍の新型機動兵器……やはり……」
愕然とするキラの隣で、少女は力なく膝をつく。すがるように手すりを掴んだ
手が白い。指が掌に食い込むほど強く握り締めている。唇を噛んだまま、怒りと
も慟哭ともつかぬ複雑な感情を溢れさせている。
「お父様の……うらぎりものっ……」
少女が吐き捨てた。すぐ近くで銃弾の跳ねる音がした。
「ここにいちゃダメだ、早くっ！」
うずくまった少女を半ば無理矢理立ちあがらせる。手を引くというより引きず
りながら、キラは通路へ駆けこんだ。暗い通路を非常灯だけ頼りに走っていく。
おいとか、やめろとか、少女は意味のないことを口走り続ける。暴れる腕をキラ
はそれでも離さない。
「―――あった」
退避シェルターの入り口が見えた。「３５」の番号がうたれている。
インターフォンを押す。ほんの僅かな空白が何時間にも感じられる。
『―――まだ誰かいるのか？』
「はい、ぼくと友達もお願いします、空けてください！」
『二人……』
スピーカーごしに息を呑む気配が伝わった。
『……ここはもう、あと一人で一杯だ。左ブロックに３７シェルターがあるが…
…そこまではいけんか？』
退避シェルターはコロニーの各所に設置されており、緊急時にコロニーから射
出される救命ポットを兼ねている。生命維持との兼ね合いもあって、シェルター
の収容可能人員は厳密に定められていた。
キラは少女と顔を見合わせた。
左ブロックからは銃声がひっきりなしに聞こえてくる。爆発の音。ビルの崩れ
る破砕音。３７シェルターへは、さっきの格納庫をつっきって行く必要がある。
キラは目を伏せる。
汗ばんだ額をぬぐう。袖に薄く血がついた。きっと破片で傷つけたんだろう。
実感のない戦争が、自分の血の色に少しずつ質量を増していく。
じわりと、にじむような恐怖が、腹の底から湧きあがってきた。
結局、迷ったのは、ほんの一瞬だった。
「なら一人だけでも。お願いします、女の子なんです」
『……わかった、すまん』
空気の抜けるような音がして、シェルターの入り口が開いた。
「なに……おまえは？！」
少女が、また噛みつきそうな顔になる。構わず押しこんだ。
「いいから、ぼくはあっちのシェルターに行く、大丈夫だから早く、」
気休めの言葉をかける。少女が叫ぶ。聞こえる前にシェルターが閉じる。
最後の声は届かなかった。なんて言おうとしてたんだろう。
変な子だった。
怒ってばかりいたような、そんな印象だけが残っている。
（そういえば……）
とうとう名前も聞かなかった。
間近で、また爆発。現実が追いついてきた。
戦争の音は少しも収まる気配が無い。
シェルターのステータス表示が『開放』から『作動』に切り替わるのを確かめ
てから、キラは覚悟を決めて、来た道を戻り始めた。
◎
キャットウォークに飛び出したキラの足下、銃弾が飛び交っている。モルゲン
レーテの作業服とノーマルスーツ。二手に分かれて撃ち合っていた。双方の死体
が幾つも幾つも転がっている。
「―――三〇三と一〇五を起動させなさい！」
誰かの叫びが天井に反響する。爆発音が声をかき消す。
恐怖を感じる余裕すらなかった。人並みの感情など麻痺している。
素人目にもノーマルスーツが優勢に見える。この騒ぎが本当にザフトの襲撃な
ら無理も無い。ザフトの兵士は当然ながらコーディネイターだ。コーディネイタ
ーは知力、体力ともナチュラルに優越している。同じような数で撃ち合えば、優
れた方が勝つのは道理というものだ。
「後ろっ！」
とっさに叫んだのは何かを意識したわけではなかった。
狙っていると思った瞬間には声が出た。作業服の女がバネ仕掛けのように反応
し、ライフルを応射する。呆気なくノーマルスーツが倒れた。
（…………あ、）
死なせてしまった。
漠然と、キラは思った。ノーマルスーツの倒れる瞬間がスローモーションのよ
うに感じられる。声をかけなければたぶん女の方が死んでいた。ほんの些細なこ
となのに、些細なことで、名前も知らぬ誰かの生死を分けてしまった。
「―――誰……子供？！」
作業服の女はマリュー・ラミアスだ。
マリューは予想外の闖入者に、目を見開いて驚きを顔に出す。
「民間人か、どうしてここに！」
「左ブロックのシェルターへ行きます！」
横たわる巨人の腹あたりに身を潜め、マリューは敵に撃ち返しながら、
「―――来なさい！ あそこはもうドアだけよ！」
キラはためらった。来なさいといわれても銃撃のただ中だ。通路から熱が吹き
つけてきた。火の手だ。ためらう時間すらない。決断は早かった。キラは一挙動
でキャットウォークから身を躍らせる。五メートル近い落差から、本物の猫のよ
うに身軽な着地を決める。
「あなた？！」
一瞬、マリューは目を見張った。その瞬間、軽い銃声。マリューが肩を撃たれ
た。悲鳴をあげてのけぞる。キラは反射的に駆けよった。マリューを撃ったザフ
ト兵は、弾丸が尽きたのかナイフを抜き放って迫ってきた。
ザフトの兵士が近づいてくる。
何もかもがスローモーションのようだった。
連合の新型機動兵器Ｇユニット〈Ｘ１０５〉の腹部のあたりだ。
格納庫の空洞を満たす死の色。通路から流れ込んでくる熱風が髪をかきまわし
ていく。弾丸が飛び交っている。血と屍があたりまえのようにある。残骸と硝煙
が一面を曇らせていた。想像したこともない地獄が実在するのなら、こんな光景
なのかも知れない。
巨人の金属色の機体が、炎の照り返しでオレンジ色に染まっている。
ザフトの兵士のナイフもオレンジ色に染まっていた。
振りかざされる刃物の軌跡がキラの目に焼きついた。
そこで、
時間が止まった。
ザフトの兵士が彫像のように凍りついた。
キラはマリューに駆け寄ったまま身動きできなかった。
悲鳴も銃声も爆発音も何一つとして耳に入ってこない。
「―――キラ？」
その言葉だけが、届いた。
三年を経てなお記憶に残る声だった。
目が自然に吸い寄せられる。
目の前にいるのはザフトの兵士だけだ。赤いノーマルスーツに炎の色が揺らめ
いている。掲げられたナイフがぞっとするほど冷たい光を反射している。ヘルメ
ットにもスーツにも無数の返り血を浴びている。
「……アスラン？」
キラは無意識にそう呟いていた。
とまどいと疑いと驚愕が頭の中をかき回す。
二人の目が、合った。
どこかで爆発の音がした。破片が雨のように二人の頭上に降りそそぐ。
再会の雨だった。
キラは、ヘルメットのバイザーを隔てた向こう側に、別れてからの時間を加え
た、思い出と同じ顔を見いだしていた。
二人は表情を失ったまま立ち尽くす。
複雑すぎる感情の複雑すぎる化学変化が生じさせた、複雑な無表情だ。
ゆっくりと時間が溶けはじめる。
最初に出会ってから、現実にはほんの数秒の出来事のはずだ。
銃声。
その音が静止した世界を動かした。
マリューが拳銃を発砲した。肩をかばいながらの弾丸は逸れ、アスランのヘル
メットを浅くかすめて抉っただけだ。キラが反射的に振り返る。アスランが次の
行動をとるより先に、マリューはキラを抱えるようにして〈Ｘ１０５〉の腹部ハ
ッチへ転がり込んでいた。
ハッチを閉じる。そこはコクピットだ。
「私にだって……動かすくらいなら……」
マリューは管理者用マスターコードを打ち込み、起動手順をスタートする。そ
れは仮初めの眠りについていた巨人を目覚めさせる魔法の儀式だ。息苦しい空間
にモニターの光が灯る。計器が息を吹き返す。駆動音がコクピットを反響する。
正面のモニターに外部の状況が映し出される。
モニターの風景を赤いスーツが横切った。アスランだ。隣にあるトレーラーの
デッキに横たわる、もう一機の巨人へと向かっていた。〈Ｘ３０３〉とモニター
に識別が表示されている。
（アス……ラン……）
何もかもが判らない。
どうしてアスランがザフトの兵士なのか。
どうして中立コロニーを襲撃したのか。
混乱するキラの目に、サブモニターを流れる文字列が飛び込んできた。
―――Ｇｅｎｅｒａｌ
Ｕｎｉｌａｔｅｒａｌ
Ｎｅｕｒｏ−Ｌｉｎｋ
Ｄｉｓｐｅｒｓｉｖｅ
Ａｕｔｏｎａｍｉｃ
Ｍａｎｅｕｖｅｒ
「……ガ……ン・ダ・ム……？」
システム起動。ニューロリンクＳＴＡＲＴ。流体バランサーＯＮ。バッテリー
ＮＯＲＭ。起動シーケンス・フェーズ１をクリア、続いてフェーズ２へ。
ジンとは異なる、人間の顔に似た双眸を持つ巨人が立ち上がる。
シーツとワイヤーが引きちぎられる。
固定用のボルトが音を立てて吹き飛んでいく。
アスランは〈Ｘ３０３〉のコクピットに取り付くことに成功した。
ハッチを開いたところで、一度だけ振り返る。キラ・ヤマトを、居るはずのな
い親友を呑み込んでしまった〈Ｘ１０５〉を見返した。
止めのような爆発が来た。
爆炎が格納庫全体を舐めていく。
重々しい駆動音をたてて、神像にも似た〈Ｘ１０５〉は業火の中に屹立する。
立ち上がったばかりの赤子のように、ぎこちない動作で。
それでもなお爆風に小揺るぎもせず。
アスランは、炎を浴びてそびえる威容を、ただ、見あげていた。
Ｇユニット〈Ｘ１０５〉ストライク。
それは、まるで名だたる悪魔の姿を思わせた。
［Phase-01 complete］
神…！乙です…！息つくヒマもなく読み終えました。
テンポの良い、鮮やかな表現の嵐。鉄の臭いのする文体。すごいです。
特にエレカの操縦を切り替えるあたりは圧巻ですね！
面白かったです。
おこがましいとは思いますが… 、 Phase02も、お待ちしてます！
ところでふと思ったんですが、魔術師オーフェン読んだ事あったりしませんか…？
乙フレ！素晴らしい描写力ですね。キャラがそれぞれ活きていてイイ。
これだけの文章だと投下に時間がかかるかと思いますががんがって下さい。
本当に楽しみにしています。
「思ったより敵の抵抗は弱いわね。味方部隊も付いて来てるし、これなら突破出来るわ」
「･･････確かに、敵の数が少ないですね。他の戦線の部隊もどうにか勝っているようですし。ただ、もしかしたら戦力を集めて反撃の準備をしているのかもしれません」
ナタルの答えにマリュ−は表情を曇らせた。
「確かに、その可能性はあるかもね。砂漠にデュエルがいたのも気になるし。ナタル、ＭＳの補給は早めに済ませておいて頂戴」
「了解です、艦長」
ナタルは意外そうにマリュ−を見た後、まず前衛として戦っているキラのストライクを呼び戻した。補給を受けさせるなら余裕のある今の内に最強戦力であるキラを引き上げさせるのがベストだからだ。
キラを呼び戻す指示を出した後、ナタルはもう一度マリュ−を見た。何時の間にかこの人も戦術的な判断が出来るようになっていたらしいと分かり、少しだけ嬉しく思う。キースではないが、このまま成長してくれれば良い艦長になってくれるかもしれない。
上空では制空圏争いが続いていた。連合とザフトの戦闘機が飛び交う中をディンやグゥルに乗ったジンが飛びまわり、次々と連合戦闘機を叩き落していく。稀に反撃にあって撃墜される機体もあるが、キルレシオの差は歴然だった。そんな中でフラガとキースのスカイグラスパーは気を吐いており、圧倒的なザフト空中部隊に痛撃を与え続けている。
「フラガ少佐、アグニのエネルギーはどれくらいです？」
「あと５発ってところか。そっちは？」
「こっちも似たようなもんでっ！」
言い終わるよりも早く次の目標を捕らえたキースがアグニを放った。直撃を受けて四散するディン。
「･･････ううん、そろそろ本気で不味いですな。先に帰らせてもらいますわ」
「分かった。出て来たら教えてくれ」
「了解」
言葉のキャッチボールを交しながらキースのスカイグラスパーがアークエンジェルに向けて機首を翻す。２人が同時に戻る訳にはいかないのだ。そんな事をしたら制空圏を奪い返されてしまうかもしれないから。
３度目の出撃をしたフレイは、今度は最強の火器であるバズーカを携帯していた。ザフトの地上戦艦が出てきて、これを迎撃する必要に迫られたからだ。その脇にはスコットのデュエルがいる。こちらはビームライフル装備だ。
「いいかフレイ、俺がうるさい奴らを押さえるから、お前は戦艦を沈めろ！」
「は、はいっ！」
命令してるのが同格のコーディネイターだという事を気にしている暇も無い。ジンに護衛された陸上戦艦めがけてバズーカを構えて駆けて行く。そのすぐ後ろをスコットのデュエルがついてビームライフルで援護している。目の前の戦艦は大口径の主砲をこちらに向け、盛んに砲撃してくる。時折近くに着弾した砲弾が凄まじい衝撃波でデュエルを吹き飛ばそうとするが、直撃さえしなければデュエルならさほど恐れるものでもない。流石に直撃したらフェイズシフト装甲も持たないかもしれないが。
「いいか、とにかく戦艦に近付け。懐に入られたら奴はこっちを撃てない！」
「そんな事言われたって！」
フレイは戦艦をロックオンするとバズーカを２発放った。白煙を引いて飛んでいった砲弾が戦艦の側面に命中し、爆発をおこす。これで暫し砲撃が止み、その間に２機のデュエルは戦艦との距離を詰める事が出来た。近付いた事でフレイは目の前に広がる戦艦の装甲板に息を飲む。
だが、それも一瞬の事だった。すぐに気を取り直すと戦艦に向けてバズーカを叩きこんでいく。その都度戦艦は身悶えするように震え、遂には艦内から幾つもの爆発を起しはじめた。
「や、やったっ！」
「よし、離れるぞ。急がないと弾薬庫が誘爆して巻き込まれる！」
慌てて離れていく２機のデュエル。そして、その背後で弾薬庫が誘爆を起した戦艦が大爆発を起した。周囲に破片と爆風が吹き荒れ、周辺のザフト地上軍が巻き込まれている。この攻撃でフレイは恐らく１０００人近い人命を奪った事だろう。そのことを認識してしまい、フレイは苦い思いで下唇を噛み締めた。
ザグレブ基地司令のブルクナ−司令は怒りを込めた拳をデスクに叩きつけ、部下を一喝した。
「ナチュラルども相手になにをやってるんだ。態勢を立て直せ、状況を纏めて報告しろ！」
「司令、その前に増援を出して敵を押し返すべきです。このままでは敵に前線を突破され、後方部隊を蹂躙されます！」
参謀が意見具申をするが、頭に血が上っているらしい司令官はその意見に苛立ったように激高した。
「ならさっさと送りこめ。奴らの足を止めれば反撃のチャンスも生まれるっ！」
「先頭に立つ足付きはどうしますか。これには強力なＭＳ部隊がついているようで、迎撃に出たＭＳ部隊がいいように翻弄されています。連合の動きはこの部隊の前進に引っ張られているようです」
「足付きか。クルーゼめ、奴の失態で我々が祟られるとはな」
忌々しそうにブルクナ−は呟く。
「奴の部下が確かジブラルタルに居たな。丁度良い、奴等に足付きと連合部隊への反撃をやらせろ」
「それでは、ザラ隊を足付きに、ジュール隊を他の部隊へと向けます」
「急がせろ！」
ブルクナ−は苛立っていた。ナチュラルどもが自分達コーディネイターに反撃してきという事実そのものが苛立ちの原因なのだ。地面の上で蠢く劣等種どもが、我々に歯向かうなどとは。
「身の程を教えてやるぞ、ナチュラル風情が」
奥歯を噛み締めてブルクナ−は呟いた。だが、彼は理解していなかった。すでに前線部隊は崩壊状態であり、反撃を行うには相当の増援を必要とする事を。アスランやイザークの隊でどうこうできる状況でないのだ。
連合軍の反撃のニュースはジブラルタル基地にいたアスラン達の元にも届けられた。新人のジャックとエルフィを交えて話していたのだが、そこに血相を変えたミゲルが飛び込んできたのだ。
「おいアスラン、ニコル、大変だぞ！」
「どうしたんだミゲル、そんなに血相を変えて？」
何時になく落ち付きを無くしているミゲルにアスランが不振そうな顔をする。だが、ミゲルの話しを聞いて流石のアスランも血相を変えた。
「連合がヨーロパで反撃に出た。物凄い大軍が総攻撃に出たらしい」
「連合が動いた？ だが、前線部隊で支えられないのか？」
「すでに前線は突破されてる。ナチュラルの奴ら、とんでもない大軍を動員したらしい。それに、味方を蹴散らして進んでる部隊の先頭には足付きが居るらしい」
「足付きが！？」
ニコルが驚いて立ちあがる。まさかこうも早く足付きの足取りがつかめるとは。
「ですが、幾ら足付きでもストライク１機と戦闘機が２機でしょう。どうしてそこまでの強さを？」
「いや、足付きはストライク以外にデュエル３機、バスター１機を投入してるらしい。この５機に前線のＭＳは良い様に磨り減らされてるそうだ」
「Ｇが５機もですか！？」
今度こそニコルは驚愕した。Ｇが５機もいればジンやザウートしか持たない前線部隊では歯が立たないのも無理は無い。アスランはしばし考えた後、ジャックとエルフィを見た。
「俺達はこれから出撃する。イザーク達も出るだろう。２人はこれがザラ隊として初めての実戦となる。とりあえずは生き残る事を最優先してくれ」
「わ、分かりました！」
「大丈夫ですよ、ナチュラルのＭＳくらい」
少し不安そうなエルフィと、自信を見せるジャック。２人ともこれが初陣となるから、アスランとしては無理をさせたくない。まして２人の機体はジンなのだ。アスランは少し考えるとミゲルを見た。
「ミゲル、悪いが２人の事を頼めるか。俺とニコルは敵のストライクやデュエルの相手をしなくちゃならない」
「まあ、しょうが無いな。ジンじゃあいつ等には手も足も出ない事はヘリオポリスで思い知らされてるからな」
そう、ジンの武器ではフェイズシフト装甲には何の役にも立たないのだ。特火重粒子砲を持って来れば別だが、あれはバッテリーを食いすぎる。結局は対抗できるアスラン達に任せるのが１番なのだ。
「ザラ隊長、出撃しますか？」
「･･････ああ、イザーク達はイザークの指揮で動いてくれて構わない。俺達は足付きを攻撃することにした」
「それは俺の目的でもあるぞ。獲物は早い者勝ち、と言う訳だ」
「好きにしろ」
アスランはイザークの対立意識に辟易していた。なぜここまで突っかかってくるのか。案の定イザークは面白く無さそうな顔でアスランの前から歩き去った。その後ろをいささかにやけた顔のディアッカが続いて行く。そして緑色の制服を着た新人が２人付いて行き、最後に赤服を来た金色の髪の少女がアスランにすまなそうに頭を下げてイザークの後を追って行った。
その後姿を見送ったアスランはミゲルを見た。
「ミゲル、あの赤を着た娘は誰だ？」
「ああ、イザーク隊に配属された新人で、フィリス・サイフォンだよ。良い所のお嬢様らしいけど、赤が着れるだけの腕はあるらしい」
即座に答えるミゲルに、アスランとニコル、エルフィにジャックがなんとも言えない視線を向ける。
「なあミゲル、聞いておいて何なんだが、どこで調べたんだ？」
「･･････アスラン、新人の情報くらい調べるものだぞ」
「そうでしょうか？」
ニコルの疑問にミゲルは暫し沈黙した後、開き直った様に白状した。
「ま、まあ、ジュール隊に凄い可愛い女の子が入ったっていう話を聞いてね。ちょっと色々と調査をしてな」
「へえ、で、どれだけ分かったんですか？」
ジャックが興味津々という顔で聞いてくる。ミゲルは手帳を取り出してページを開いた。
「ちょっと待て、フィリスはなあ、ええと、１６歳で１５８ｃｍ、３サイズは上から８２の･･･････」
何時の間にかアスランやニコルまで聞き入っている。だが、そんな彼らにエルフィの冷たい声がかけられた。
「隊長、ミゲルさん、ニコルさん、ジャック？」
「「「「は、はいっ？」」」」
エルフィの顔色をチラリとうかがう４人。そして、エルフィの可愛い笑顔のなかに微かに浮かぶ青筋に気付き、一斉に姿勢を正した。
「そ、それでじゃあ、ザラ隊も出発だ。急いで格納庫に向うぞ！」
アスランの懸け声のもと、４人は格納庫の方に駆けて行った。まるで逃げ出すように。それを見送ったエルフィは困ったもんだと言いたげに溜息を吐く。この時、何となくザラ隊の力関係が決まったのかもしれない。
出撃準備を整えたザラ隊。すでにイザーク隊は出撃している。イージスのコクピットに座った。すぐに整備兵が駆け寄ってくる。
「地上用に調整はしましたが、なにぶん時間が足りませんでした。ダストフィルターの状態に気を付けてください。それと、右腕の反応が微かに遅いです」
「分かった、短い時間で無理させてすまなかった」
「いえ、それが仕事ですから」
整備兵はニコリと笑うと、アスランに簡単なレクチャーを始めた。
「地球上では常に上下というものがあることを念頭においてください。宇宙から降りて来たばかりだとこの事を忘れて変な動きをしてしまう事がありますから」
「そうだな、気を付けるよ」
「後これを、幸運のお守りです」
整備兵が水晶で作った首飾りを差し出した。ジブラルタル基地ではこれが幸運のお守りとされているらしい。アスランは微笑してそれを受け取り、首に掛けた。たとえ迷信の類でも、それは兵士の支えとなるものだ。アスランもそれを馬鹿にするつもりは無かった。
「では、ご無事で。我等の正義に星の加護があらんことを」
整備兵は敬礼を残してコクピットを降りていった。それを見送ったアスランはハッチを閉じると、イージスを起動させた。
「こちらアスランだ。全機調子はどうだ？」
「ミゲルだ、何時でも出れる」
「ニコルです。問題ありません」
「ジャックです。出れます」
「エルフィ、行けます」
部下たちの返事を聞き、アスランは頷くと管制に通信をいれた。
「ザラ隊、出撃準備完了。これより出撃する」
「了解した。足付きを何とか食いとめてくれ」
「分かっている。アスラン・ザラ、イージス出る！」
イージスを載せたグゥルが飛び立って行く。それを追う様にブリッツやジン３機が続いて行く。目指すは足付きとそのＭＳ隊だ。キラとアスランの激突が再び起きようとしていた。
遂にサイが捨てられる時が来ましたか。しかし、本編よりも振り方が酷いなあ
サイもなんだかキラへの憎悪が本編よりも酷そうだし、かなりの修羅場が想像されます
ミリィは仲を取り持ってくれるのだろうか･･･････
>>the ORIGIN
乙です。てっきりザフトの接近にもっと早く気付くかと思っていましたが、本編通りに行ってしまいましたか
ＭＳも奪われてしまいましたし、フラガはメビウスゼロですかね。
それでは、次回も楽しみにしています
キラも辛そうだなあ(´Д⊂ヽ
>>225
俺はがんがってないから受け取れないけどフレイ様のハート･･･嬉しいです
>>春コレ
ギャグ調で和みますｗ 流離う翼たちにもキースがのの字書くシーンがあったりして笑えるんですが、
あれも重厚な話ですからね。
>>流離
ハウプトマンが一番役立たずと予想してたんだけどそうでもないですなあ。
そんなもんだからフレイ様やスコットまで底上げされてつ、強え〜〜〜
そして今回もギャグを忘れてませんなｗ ミゲル生きててよかった(´Д⊂ヽ
キース自体ミゲルが味方になったようなキャラかもしれません。
>>キラ♀
千両役者のフレイきゅんに拍手！ はっきり言ってすごすぎる。
>>オリヂン
続きｷﾀ───( ゜∀ ゜)───!
並み居る名作の中でも一番重厚ですね。ジンにいちいちナンバーがでっかく書かれてたり
でもサイ、この時点で優秀さをしっかり描かれちゃったらそれこそキラは規格外品(ガイバー？)ですよ(´Д⊂ヽ
カズイ様落ち込むな！ 情報に関する能力はアズラエルやエリカ以上じゃないか！(笑)
乙。みっしり書き込まれてますね。
秒単位まで書かれている時間表示が切迫感
煽りまくりでよいです。ミゲルの代わりに
ラスティがジンに乗ってますね。ああ、あ
とジンは4機あるのか。本編では｢ウッ！」
しか言ってなかったらしいので、今後のラ
スティの活躍…といっても、ヤバそうですね。
>流離
こちらではミゲル大活躍ですなw
>いささかにやけた顔のディアッカ
痔ハケーン。まだイザ―クの付き人
みたいですね。新キャラに負けるな！！
エルフィとフィリスですか。萌え萌え全開ですな。
発表会を迎え、ぼくたちは最終チェックに余念がない。
会場はヘリオポリスという場所で最大で２０００人収容できる施設だ。
ここまできた・・・
プロジェクトのチーフデザインをまかされ、
紆余屈折をえて発表会を今日を迎えた。
でもなんだろう・・・ホントは緊張するのに
心地よい緊張感とでもいうのか・・・そんな気分なのだ。
成功したい！やりとげたい！
自分だけのためじゃない、
アークエンジェルのため、チームみんなのため、
アスランたちのため、そしてフレイのため・・・
やるべきことはやった。あとは天命を待つのみ。
ティーンエイジャー 春コレクションは
３０のブランドが参加する。
まだ立ち上げたばかりの新規ブランドから
大手有名ブランドまで参加する。
賞与は全部で５つ、それぞれに意味がある
ファーストインプレッション、コーディネーター
プロダクト、イマジネイション、プレジャー
審査は有名な評論家はもちろん、ファッション雑誌、
抽選で選ばれた一般の人々、メディア関係者を含め
８０人ほどで構成される。
なかでも最近はコーディネーターがもっとも評価が
受けやすい。
やはり衣装とモデル、演出などトータルパッケージ
がこれに該当するようだ。
もちろん賞をとれればいいにきまってる。
でも本当は見にきてくれてる人たちに服のデザインの
創造性、楽しさ、驚き、美しさ そんなものを感じ取って
くれたら、それで十分だ。
それでいい・・・それで
「いよいよだな、アークエンジェルもこの春コレで
ロイヤリティーをもっと高める
まれにないチャンスだ。もっとブランド力を高め
知名度を高め、アパレル業界でも上のランクを目指す。
キラ・ヤマト そしてデザインチームはよくここまで
がんばったな 感謝してる 礼を言うぞ。
結果が待ち遠しいな。」
当日、セレモニーが始まる前、僕らを集め、
ナタル・バジルール総合責任マネージャーが
激励してくれた いよいよだ。
「キラ〜」誰かが呼んでいる。振り返ると、
アスラン？！ それにラクス、カガリ、
え？フレイ？フレイがどうして・・・
みんな・・・ありがとう
フレイ 「キラ、大丈夫よ。リラックス リラックス」
アスラン 「いよいよだな、キラ、ザフトも
来月、いやもしかしたら 今月の
春コレ速報で載せたいんだ。
なんてったってアークエンジェルの、
キラのデザインした物が世界に
お披露目されるんだから
今からこっちが興奮しちゃうよ。
楽しみだな、キラ」
カガリ 「おまえんとこのモデルのメイクも
おれんところの専属がやってるんだぜ
見たやつらもびっくりするはずだぜ
うちにメイクやらせたら他のメーカー
もびびるぜ。絶対に勝とうな」
ラクス 「あら、カガリさん、今日の主役はあくまでもキラなのよ
そこのところ理解なさってる？
キラ、あなたのデザイン、楽しませてもらいますわ。」
カガリ 「べつにいいじゃないか、メイクも重要なんだぞ な〜キラ？」
キラ 「もちろんだよ、これはぼくだけの挑戦じゃない、
ここにいるみんなの挑戦でもあるんだ。
みんな力をくれ」
若い３０代の青年が声をかけてきた。
「おやおや、あなたがたがアークエンジェルですか？
うわさはかねがね聞いてますよ〜
けっこう噂になってますし、
どんなトリックをつかうのか、楽しみですね〜フフフ」
「アズラエルさん、ちゃかすのはやめてください、
われわれはトリックなどもうとう 使うつもりなどない
かってな推測で物事をいわないでもらいたい
われわれは正々堂々、真剣に望みたいのだ。」
ナタルさんが珍しく怒ってる。
アズラエル？そうかあのアズラエルってこの人なのか。
噂は聞いている。ブルーコスモスグループというメディア全般を取り扱っていて、
メディア王とよばれ、いろんな企業を買収して、いらなくなったらポイ捨てし、
自分たちの都合のよいものしか放送、宣伝をせず、
故意に他社の悪口やイメージを悪くするような
手口を平気でする、悪評高いのがブルーコスモスだ。この人がアズラエル会長か・・・
でもなぜ、この人がここにいるんだ？
「いや〜うちの社員も実は参加してるんですよ、
この春コレに ドミニオンっていうブランドでね。
ご紹介しましょう、
左からオルガ・サブナック クロト・ブエル シャニ・アンドラスです。」
なんだこのひとたち、なんか不気味で、ほかの人たちと
雰囲気が違う・・・
しかもみんなﾌﾞﾂﾌﾞﾂ独り言いってて、
「瞬殺」とか「撃沈」とか何言ってるんだろう・・・
怖いな・・・
「おっともうこんな時間だ、わたしも審査員なんでね〜
そろそろ戻らないとね
どんな結果になるのか楽しみですね〜ではまた後ほど
いくぞ、お前等」
「アズラエルが審査員なんて、なにか裏がありそうだな
過去にも数々の不正疑惑がもちあがり、警察も目を
光らせてるが、なかなか捜査が難航してるとか
いずれにせよ、用心が必要だな」
ナタルさんが苦々しく口を開いた。雰囲気が一気に重くなってしまった。
「気にすることないよ、ぼくたちはぼくたちができることをやればいいんだ。
みんなみてくれてる、ぼくたちを・・・
だから胸張って前だけを見よう」
ぼくはみんなを励ました。不思議にみんなの笑顔が戻り、ホッとした。
そうだ、ここで意気消沈してどうするんだ。
まだはじまってもないというのに
やってみなきゃ分からないじゃないか、ここまできたんだ
やってみせる、必ず・・・」
主催者代表の挨拶、参加する各ブランドの簡単なプロフィール紹介、
審査員の挨拶等を行い 本番が始まる。
ぼくたちは１８番目に出る予定だ。最後の方だから
プレッシャーは半端ない。
控え室に行くとモデルが最後のメイクの打ち合わせをやってる最中だった。
モデルは全員１０代で構成されてて、男１０人 女１２人という具合だ。
メイク担当はカガリのオーブの所に頼んでもらい、４人の女性を中心に１４人体制でやってもらうことにした。
やっぱり出番中は忙しいので１４人は必要と考え、協力してもらうことにした。
チーフはエリカ・シモンズ サブチーフは
マユラ・ラバッツ アサギ・コードウェル ジュリ ウー ニェンだ
最初はちがう化粧品メーカーに依頼しようと思ってたが、
カガリがうちにまかせろ、こういうことはだな
おまえのデザインはうちのメイクで
もっと可能性を引き出せると引き下がらなかった。
でもコレがよかった。 自分の理想としてる雰囲気を
上手く出してくれそうだ。
次に登場順の最終確認
まずいきなり春を最初から意識しすぎるのではなく
冬が終わり、春の季節感を徐々にしんみりと雰囲気を
だす、そういう演出が必要と考えてた。
モデルもこれを意識して服を着てもらい、ウォーキングもしてもらう。
静止したときの顔の表情、体の姿勢、目線、ポーズ、
ここはトールたちとけっこうはげしい議論になったけど、最終的に
ぼくの考えをとおさせてもらった。
そして音楽、ここも議論がわかれた。
トールはロック、ヘビメタを中心 ミリアリアは
クラシック中心 サイはテクノ系（笑）
カズィはポップでと これもけっこう悩まされた。
決まったのはクラシック→テクノ→ロック→ポップ
こんな感じでなんとか組み合わせできないかと曲探しでヘトヘトになった。
ここでもフレイやカガリに助けられた。
もっともフレイはどういうセンスしてんのよ？と不満たらたらだった。
でも何回聴いてもこれで決めたい、これしかないと思った
最後に全員で手をあわせ、いくぜアークエンジェルと締めくくった。
一人一人の顔つきが変わり真剣そのものだ、
ひとりでもミスすれば、積み木の山が崩れるが如く
終わってしまう。
そんな矢先に事件は起きた。
モデルの女の子 １人が急に倒れ、救急車で病院に緊急入院することになってしまった。
原因は詳しくは知らないが、そんなに重病ではないと
おもった。
しかし、１人でも欠員がでては話にならない。
代わりがいない・・・
こんな時に・・・どうして・・・
現場は大混乱になった。
こういう時に備え、モデルの補欠候補も待機してるのは普通だが
きょうは他のファッション誌の撮影ということでこの場にはいないのだ。
一応、欠員者が出た場合、追加として３人まで
参加が許されることになってるが、
困ったことにトップバッターの子が出られなくなるなんて
どうしてこんな時に・・・どうして・・・
もうだめかも・・・現場が真っ暗になった。
現場にいる女性を代わりにという意見も出た。
でもカガリはオーブの広報責任者だし、ラクスだって
モデルの経験はおろかファッションの世界に
そんなに興味もってないというし・・・
あとは各自それぞれの仕事で精一杯だし、
全てが万事休すと思ってたそのとき、
「待って！わたしが代わりに出るわ」
そのに声に皆が振り向いた。その声の主は
フレイ・アルスターだった。
えっフレイ？まさか本気なの？
この時、誰一人、これから起きる とんでもないハプニングを知る由もなかった。
ほんとにうまいですね このストーリーは
読んでいて その場その場の演出というか緊張感が
びんびん伝わってきますね
ぼくもまだまだ勉強不足だな。くやしいけど
流離> イザーク いいっす！ うらやましいだろうな〜
ほかの部隊からみれば
ザフトも女性兵士は少し出てきたけど
前面に押し出す形ではでてこなかったですね
製作側の判断なのかな？
女性兵士の死はマイナスと判断したのかな
キラフレ> このあたりから本編はくだり気味になっちゃったから読んでて
本編のあほとおもってしまった。
ダークキラいいすね でもフレイはつらいのう
投下されるのは楽しみですが、読むのも大変なほど分量があるとは
これいかにｗ
「SEED the ORIGIN」は本編再構成ですが、話数は半分ほどになる予定です。
本編が切り捨てた「群像物／青春物／成長物」あたりをメインにすえてます。
１クールの大筋は本編に準じるはずですが、後半は・・・・・・同じにするのはお
そらく無理でしょう、色々と（藁
週一ペースくらいになるとは思いますが、終わるまでここがあるといいなあ。
ちなみに、オーフェンは読んだことないでつ。
流離>相変わらずボリュームがすごいのと、定期的に投下されるので楽しみです。
こちらのような大人が本編にもいればなあ。
春コレ＞ギャグ物も好きです。ときどき本編思い出して泣いてしまうのが・・・
キラ♀＞逆転発想が、はじめて見たとき笑ってしまったわけですがｗ
黒っ！ ♂フレイ様黒っ！！
刻還り＞生きて還ったら幸せになったのかなと思うとフレイ様( ´Д⊂ヽ
幻＞ドキドキ、え、今後の展開は？！
アスラン達より早く出撃していたジュール隊の面々は地上で行なわれている戦いに息を飲んでいた。
「おいおい、一方的にやられてるじゃないか！？」
「ナチュラルに、これだけの力があるなんて･･････」
ディアッカが呆れた声をあげ、フィリスが驚きの声を漏らす。地上にはジンやディン、シグー、といったザフトのＭＳが残骸となって散らばっており、すでに戦線が崩壊したことを教えている。
イザークは怒りに顔を赤くしながら目指す目標を捜し求めた。
「何処だ、何処にいる足付き。何処にいるんだ！？」
「落ちつけイザーク、俺達の任務は･･････」
「足付きを落すことだ、それが俺達の任務だ！」
ディアッカを怒鳴りつけると、イザークは更にグゥルを進めて行った。味方ＭＳの残骸を追っていけば足付きに辿りつくと考えたのだ。そして、ほどなくしてイザークは自分が賭けに勝ったことを知った。
暫くして視界にようやくアークエンジェルの巨体が見えてきたとき、イザークは喝采を上げた。
「やったぞ、足付きだ！」
「ひゅぅ、負けたぜイザーク。大した勘だ」
ディアッカが口笛を吹いてイザークを褒め称える。新兵２人もイザークの力量に感心していたが、フィリスだけが慎重論を唱えた。
「ですが隊長、我々の受けた命令は地上部隊の援護です。足付きの撃破はザラ隊の仕事ですが？」
「フィリス、この隊の隊長は誰だっ！？」
「･･････ジュール隊長です」
「そうだ、お前は俺の命令にしたがってれば良い！」
有無を言わせぬ口調に、フィリスは渋々頷いた。
「了解です、隊長」
「よし、俺とディアッカで敵のＭＳを片付ける。お前達は足付きの足を止めろ！」
それだけ言うと、イザークは低空へと降下して行った。目指すのはストライクやデュエルだ。戦車や戦闘機などに用は無い。
「新たな敵ＭＳ５機接近。うち２機はデュエルとバスターです！」
「なんですって！？」
「くっ、またあいつ等か」
ロメロの報告にマリュ-が驚きの声を上げ、ナタルが忌々しげに呟く。マリュ-はミリアリアにキラを呼び戻す様に命じた。ミリアリアが通信機で必死にキラを呼ぶ。
「キラ、今すぐにこっちに戻って、キラっ！」
「どうしたのミリアリア。こっちも忙しいんだけど！？」
「デュエルとバスターが来たの。フレイとハウプトマン准尉じゃ持たないわ！」
デュエルとバスターと聞いてキラの顔色が変わった。あの２機はビーム兵器を持っているのだ。フェイズシフト装甲もビーム兵器には意味が無い。だが、戻ろうとした途端、ストライクのコクピットに警告音が鳴り響いた。
「何･･････イージス、アスランか！？」
新たに現れた５機のＭＳにキラはビームライフルを放った。そんなものに当たるザラ隊ではないが、牽制くらいになればと考えたのだ。だが、アスランはそんな甘い相手ではなかった。
「ニコル、お前は右側のデュエルを押さえろ。俺がストライクを叩く。ミゲルはジャックとエルフィを連れて左のデュエルの動きを止めるんだ！」
「分かりました！」
「やれやれ、俺は引率かよ。まあ良い、付いてこい、２人とも！」
ミゲルがグゥルから飛び降りる。それに続いてジャックとエルフィも地上へと降下した。ニコルとアスランもその後を追う。地上に降りてきたイージスとブリッツにキラは舌打ちして戦う態勢を取った。
「こんな事してる暇はないのに、なんで来るんだよ、アスラン！？」
駆けて来るイージスにビームライフルを放つが、それを回避してイージスが迫ってくる。キラはストライクを走らせてイージスとの距離を取りつつ、スコットのデュエルに通信を繋いだ。
「スコットさん、下がってください。この２機は強いです！」
「馬鹿を言うな、お前１人置いて逃げられるか！」
「え、１人？」
言われて周囲を確認したキラは、何時の間にかレナンディーのデュエルが後退しているのを見て愕然とした。一体何時の間に。
愕然としたキラを見て、スコットの顔に怒りが浮かぶ。
「これが俺達への対応さ。コーディネイターを使い捨ての道具くらいにしか見てないんだ、中尉は！」
「･････････････････」
「とにかく、俺達も下がるぞ。このままだと孤立して危険だ！」
「逃げるのか、キラ！？」
逃げるストライクを追うイージス。イージスの執拗な攻撃にキラは苛立ちながらも必死に応戦する。対ビームシールドでビームを弾き、ビームを撃ち返す。すぐ隣ではスコットのデュエルがブリッツの攻撃を受けて苦戦していた。
「くそっ、こいつ、ちょこまかと動き回りやがって！」
巧みに回避運動を取りながら距離を詰めてくるブリッツにスコットは忌々しさを隠せない。だが、これはさまざまな理由がある。スコットの使用しているＧＡＴ−１０２Ｂデュエルは原型となったＸ−１０２よりも機械的な性能面では優れている。だが、ＯＳの性能は遥かに劣っており、スコット自身の技量もニコルに劣っているからだ。
苦戦しているキラとスコットをみて、艦橋にいたカガリは立ちあがってマリュ−を見た。
「おい、キラが危ないぞ。援護しないのかよ！」
「こっちだって手一杯なのよ。そう簡単に言わないで！」
「じゃあ見捨てるのかよ！」
喧嘩腰にマリュ−に食って掛かるカガリ。誰もが自分の仕事に手一杯で２人の言い合いを止めようとする者はいない。いや、１人だけいた。言い争いを止めようとはしなかったが。
「ハウ二等兵、ストライクとデュエルを下がらせろ。ゴッドフリート照準、目標はイージスとブリッツ！」
「副長！？」
サイが驚いた顔でナタルを見る。まさか、ここでナタルが２人を助けようとするとは思わなかったから。
「何をしている、急げ！」
「は、はい！」
怒鳴られて慌ててミリアリアが慌ててキラを呼び戻す。すでにアークエンジェルの周囲にはジン３機のほかにデュエルとバスターまで飛んでいるのだから無茶も良い所だ。だが、ナタルは命令を撤回はしなかった。
「畜生、あのコーディネタ−はどこに居やがる。何で戻ってこねえ！」
ハウプトマンの悲鳴にフレイは何も返さなかった。そんな余裕も無かったし、キラが帰ってこないのは自分も手一杯だからだと何となく分かるから。それに、さっきからビームを撃ち下ろしてくるデュエルが鬱陶しい。
「この、しつこいんだから！」
空を飛ぶデュエルにビームライフルを放つ。最初は震えて必死に撃ち返すことしか出来なかったフレイだが、幾度かの補給と出撃を繰り返す内にどうにか戦いというものに慣れ始めていた。襲いかかってくる敵が怖いという感覚は消えないが、それでパニックを起す事だけは無くなった。デュエルに対する攻撃もちゃんと狙って行っているものだ。しかも、かなり正確に狙っている。
空を飛ぶイザークはデュエルの反撃に顔を顰めていた。
「ちっ、こいつ、なかなかやる。ストライクほどじゃないがな」
イザークにして見ればナチュラルがここまで戦えるという事が信じられない。ストライクのパイロットは異常だとしか言えないが、このデュエルもなかなかによく戦っている。だが、その認識がよりイザークの不快感を煽った。
「ふざけるなあ、ナチュラル風情が、このイザーク・ジュールをてこずらせるのかぁ！」
叫んで動きを止めた所をハウプトマンのバスターに狙われた。両肩から撃ち出された大量のミサイルが自分めがけて跳んでくるのを見て、イザークはグゥルを捨てて地上へと向った。グゥルはイザークの身代わりとなってミサイルを受け、四散してしまう。落ちてくるデュエルをアークエンジェルのイーゲルシュテルンが狙うが、数発が命中しただけでダメージとはなっていない。地上に立ったイザークのデュエルはフレイのデュエルとハウプトマンのバスターを睨みつけると、ディアッカに通信を入れた。
「ディアッカ、お前はバスターを殺れ！」
「へいへい。イザーク、熱くなり過ぎだぜ」
「うるさい！」
ディアッカに言い返すと、イザークはフレイのデュエルに向かって行った。フレイは下がりながらビームライフルを続けて放つ。
「こ、来ないで、来ないでよ！」
迫るデュエルにビームライフルを撃ちまくるが、イザークは巧みにそれを回避しながら迫ってきた。ビームライフルをアタッチメントに固定し、ビームサーベルを抜いている。これはフレイにとってかなり不利だった。格闘戦はかなりの技量を必要とする戦いだからだ。
イザークのデュエルが懐に飛び込んできてビームサーベルを振るう。フレイは必死に機体を操ってその一撃を回避したが、ビームライフルの銃身が切られて破壊されてしまった。
「ラ、ライフルが！？」
ライフルを失った事で青褪めるが、すぐに役立たずになったライフルをイザークのデュエルに投げつけて後退する。イザークはそれを追おうとしたが、その頭上からアークエンジェルのミサイルが降り注いできたために追撃のタイミングを逃した。
「ちぃ、足付きめ！」
イザークには忌々しい相手だが、その実力は認めるしかない相手が足付きだ。余程凄腕の艦長がいるのか、攻撃と防御の双方にまるで隙が無い。先ほどのミサイルもあのＭＳの援護をしたのだろうが、あの至近距離にいた２機を分かつ様に着弾させるとは。
だが、このまま引き下がるつもりも無い。態勢を整えると逃げたデュエルの追撃を始めた。
ううん、アズラエルが嫌味な人ですな。頑張れナタル！
でもフレイ様モデルデビューとは。でも、これで起きるハプニングってなんですかｗ？
驚異的な回復力を見せつける。既に普通に歩けるまで健康状態を回復させたキラだが、
何故か未だにベッドの中にいた。
「･……………熱はないように思えるけど？」
「ごめんなさい、フレイ。まだちょっとフラフラするの…」
既に定番になった、おでこキッス式体温測定でキラの病状を図ったフレイに、
シーツからちょこんと顔を出したキラは、申し訳なさそうに恐縮する。
「意外に甘えん坊なんだね、キラは…」
包帯を巻いた手で器用に林檎の皮を剥きながら、まるでキラの下心を見透かしたように
クスリと微笑むフレイに、キラは彼の手にある林檎に劣らず頬を紅く染める。
「まぁ、ここでゆっくり休むのもいいかもね。今まではキラには辛いことが多すぎたし…」
「フレイ……」
フレイは、器用にウサギの形に切り抜いた林檎の切り身を、楊枝に刺して差し出し、
キラは雛鳥のように大きく口を開けて頬張った。
見ているほうが恥ずかしくなるような甘々な雰囲気だ。
「よう、元気かい、キラ？」
突然扉が開き、場の雰囲気をぶち壊すようにフラガが姿を現し、次の林檎を待機
していたキラは口を大きく開けたままの体勢で固まった。
「おや、おや、こいつはお邪魔だったかな？」
フラガは軽く頭を掻き、キラは真っ赤になって頭からシーツを被る。
フレイは特に動じることもなく「お一ついかがですか？」とフラガにも
林檎の切り身を差し出した。
「キラ、乳繰り合ってたとこ悪いが、一緒に来てもらえるか？艦長と副長がお呼びだ」
フラガは、フレイからもらった切り身を頬張りながら、キラに出頭を促したが、
愛の巣に未練たらたらのキラは「私、まだ調子が…」と渋り始める。
「ＯＳを直さなかった件で、バジルール少尉はカンカンだぞ。少しでも胡麻を擂って
おかないとやばいんでないの？」
ナタルの名をダシにしたフラガが、両指を角の形に突き出したゼスチャーでキラを脅し、
「いってきまぁ〜す」と、病み上がりとは思えない勢いでベッドから飛び出したキラは、
仮病の馬脚を現した。
「よぅ、色男。あんまり女の子を泣かせるんじゃないぜ」
食堂での修羅場を見ていたフラガが、生真面目な表情で忠告し、フレイは軽く肩を竦める。フラガ自身は、ＡＡ内で今のキラを色眼鏡で見ない数少ない人間の一人だが、流石に
サイの一件が記憶に新しいうちに、ああまでキラといちゃつくのは問題があると思われた。
「どちらにしても無理ですね。サイのことは仕方ないけど、キラはキラで泣き虫だから、
嬉しくても悲しくても、結局、最後は泣くしかないんですよ」
「確かにそうかもな…」
フラガは苦笑すると、律儀に林檎の皿を空にしてからキラの後を追う。
この時のフラガは、フレイの言葉の裏に隠された真意を全く理解していなかった。
マリュー達の前に出頭したキラは、戦時のドサクサでうやむやになっていた除隊の
有無について問われ、改めて艦に残る意思を確認すると、ＯＳの件についてナタル
から厳しく詰問を受けた。
キラは、まさかキスされて浮かれていた…などと答えるわけにもいかず、
というか、ナタルの迫力からそんな舐めた返答をしたら、今度こそ銃殺されると
感じ取ったキラは、出陣を急いでいたので直す暇が無かった…という苦しい言い訳をした。
案の定、ナタルからコッテリ搾られ、彼女の目の前でＯＳの書き換えを行った
ところで何とかキラは解放され、その時、キラは少尉に昇進した旨の辞令を受ける。
同じタイミングで、マリューとフラガは少佐に、ナタルは中尉に昇進し、
階級だけでいうなら、ＡＡ内でキラは彼女たちに次ぐＮｏ．４の地位を得たことになる。
これが飴と鞭という奴かしら。
軽く首を傾げたキラは、未だに自分の特殊技能の価値の高さに気がついていなかった。
確保する必要性に迫られていた。
アークエンジェルに来た当初は、何事も他人任せで、王侯貴族のように振舞っていた
フレイだが、自分から率先して志願した手前、何時までも根無し草状態を続けるのは
まずいと思われる。
今のフレイは、命じられればゴミ漁りでも便所掃除でも何でもやるつもりだが、
もう少し自分の希少性をアピールできる仕事はないかと思案するが、サイ達と異なり
機械にはあまり強くなく、彼の得意分野である法経学知識もここでは無用の長物だ。
このままでも、まさかＡＡから放りだされることはないだろうが……とさんざん悩んだ
末に、フレイは母の為に生涯封印する予定だった技量の一つを解放することにした。
「ええっ！？、また今夜もカレーなのですか？」
本日の食事当番として厨房に顔を出したミリアリアとトールが、この一週間で三回目
となる品目にお互い不平の表情を見合わせる。
「しょうがないだろ、調理主任なんて偉そうな肩書きを持っちゃいるが、俺は元々
砲術担当で、調理も片手間でやってるだけなんだ。今の材料じゃこれが限界だよ」
マインホフは元来の調理担当官ではない。クルーゼ隊がヘリオポリスを強襲した時、
ＡＡの多くの正規クルーが殺され、その中には前の調理主任の名も入っていた。
そのような事情で、急場を凌ぐ為、生き残ったクルーの中から比較的料理の心得
がある者を選んで、ＡＡ内での調理を任されていたという次第なのである。
「ＡＡのご婦人方が頼りになれば、そもそも俺はこんなところにいないですんだのだがね」
マインホフが当然の嫌味を口にし、守勢にまわったミリィは思わずトールの影に隠れる。
三人娘の技量は言わずもがな、マリュー・ナタルの二人は不明瞭だが、忙しさを理由に
一度も手伝おうとしないところを見ると、あまり過度の期待はしないほうが良さそうだ。
「あ…あのっ、何か私にも手伝えることはないでしょうか？」
最近、何やら乙女コスモに目覚めたらしいキラが厨房を訪ねるが、マインホフの目から
は実に迷惑な闖入者としか映らなかった。
「ヤマト少尉。君には君にしか出来ない大切な責務があるはずだ。こんな誰にでも
出来る些細な雑用は我々凡人に任せてくれたまえ」
マインホフがキラの両肩を掴んで必死に説得し、トールとミリアリアの二人も
「そうよ、キラ」と、先程のマインホフとの不協和音が嘘のように熱唱する。
「そうですか…」
マインホフ達の本音は見え透いていたが、キラにも一応自覚はあったので、
凡人に出来ることも、やらせてもらえない私は一体何なのかしら？
と悩みながら、トボトボとした足取りで厨房を後にし、三人は流石にお互いに
後ろめたそうな表情を見合わせたが、集団食中毒の可能性を恐れて、心を鬼にして
キラを見送ることにした。
そのキラと入れ違いになるように、今度はフレイが厨房に姿を現す。
「何か手伝えることはありませんか？キラが元気になってから暇を持て余してまして…」
「手伝ってくれるのは助かるのだが、腕の方は大丈夫かい？」
マインホフが胡散臭そうな目でフレイを見る。キラのスープを飲み干したフレイに、
一部では、実は彼は深刻な味覚音痴なのではないか…という噂が囁かれているからだ。
「多分、花嫁修業を怠っていたらしい彼女たちよりは…」
謙遜をあまり美徳とは考えないフレイは、ミリアリアの前でそう堂々と言い切った。
うんざりした表情を見合わせたが、ほんの数秒で考えを改め直した。
先程からスパイシーな食欲中枢を刺激するカレーの香ばしい臭いが充満している。
我先にとルーをスプーンですくったクルーから、悲鳴のような声が食堂全体に響き渡る。
「お……美味しぃ〜！！！！」
「この舌に心地よく残る濃厚なコクと旨味は…」
「ライスの絶妙な食感が、パリっとして香ばしく、しかも硬すぎずにルーを程好く
浸透されている」
「このヨーグルトにつけたらしいチキン、水気も脂気も少ないのに、すごく柔らかくて
味も濃厚…」
「辛すぎず…かといって甘くもないルーの味と香りが絶妙なハーモニーを…」
まるでグルメ番組のような品評をしながら、クルー達は何度もお替りを繰り返し、
三つも用意したルーの鍋は、瞬くに空っぽになった。
一体誰がこのカレーを作ったのか…というクルー達の当然の疑問に、トールが
フレイを指差して、皆を驚愕させる。
一同の視線がフレイに集中したが、フレイは照れるでも、逆上せ上がるでもなく、
淡々と自分の食事を取り続ける。元来、注目を浴びることにフレイは慣れていた。
「フレイ、お前これだけの腕があるなら、なんでもっと早く作ってくれなかったんだ？」
「別に自慢になるようなものだとは思わなかっただけさ。第一、多少美味しく
ご飯を作れたところで戦争の役に立つわけじゃないしね」
カズィの当然の質問にフレイは面倒臭そうに答えたが、それはフレイの正直な本音だった。
実際、大衆食堂から三ツ星レストランへと見間違わんばかりの料理も、フレイには
まだ不満だ。材料が根本的に足りなかったし、最低二日は煮込んでおきたかったのだが、
いかんぜん時間がなさ過ぎた。
「そ…そんなことはないと思う。ＭＳの操縦が出来るよりも、他人の為に美味しい
ご飯を作ってあげらる方がヒトとして素敵だと思う」
フレイの新たな魅力に感動したキラが、まるで自己の存在意義の否定のような
ことを口にしたが、それもまたキラの正直な本音だ。ロボットの操縦と調理技術。
乙女にとってどちらが大切なスキルかは、キラからしてみたら比べるべくもない。
それから満場一致で、マインホフは従来の砲術担当に専念し、役職のなかった
フレイが新しい調理主任に推されることになる。
居場所の確保を図っていたフレイとしては、とりあえず満足する結果になった。
もっとも、フレイは「今後目的のために必要となれば、何時でもＡＡのクルー
を全員纏めて毒殺することも可能な立場になったな」などと内心で極めて物騒なことも
考えていたが。
フレイの内に潜む悪魔の呟きを看破したわけではないが、トールは異星人でも見るよう
な目つきでフレイを睨んだ。最初は単なる世間知らずのお坊ちゃまだと思っていたが、
今では得体の知れない怪物に見える。一体フレイは、あの細い身体に後いくつ
引き出しを隠し持っているのだろう。トールはチラリと俯き加減のサイの方を見る。
サイなら何か知っていそうな気がするが、フレイとの確執を抱えた今のサイに、
そのフレイの事を尋ねるのは、デリカシーに欠けるトールでも流石に躊躇われた。
キラや周りのクルーからの褒め言葉に、フレイは軽く謝辞を返しながらも、
内心では全く別のことを考えていた。
他人の為にだって？違うね、僕が料理を作ったのは母さん一人のためだよ。
窓に手を当て、少年はひたすら待ち人の姿を捜し求めるが、広大な庭先の風景は
一向にかわらない。
少年の後ろの扉がゆっくりと開く。
「ママっ！？」
強い期待をこめて後ろを振り返った少年の黒い瞳に失望が過ぎる。
現れたのは彼の母親ではなく、頭に白いものが混じった初老の執事だ。
「メイスン…」
「フレイお坊ちゃま。残念ですが、奥方様は仕事が長引いて、今夜は戻られ
なくなったそうです」
「そう……」
悲しそうに俯く赤毛の少年。瞳には既に涙が溜まっている。
そんな光景が何日も繰り返されるうちに、メイスンは少年に一つの提案をした。
「りょうりを作るの？僕が？」
「奥方様は、あの通りの仕事人間ですから、あまり炊事の方は得意ではありません。
お坊ちゃまと一緒に食事をする時も、手料理を振舞えないことを後ろめたく
思っていたようです。ですから、ここはお坊ちゃまの方から挑戦してみては
どうでしょうか？ただ、待っているよりも張り合いもあるでしょうし」
「ママは喜んでくれる？」
「ええ、必ず…」
少年に似た赤毛の美しい女性が、流れるような優雅な手つきでスプーンで
スープを一口啜った。少年は心臓を破裂させそうなぐらいに高鳴らせながら
期待と不安に入り混じった瞳で、彼の母親を見つめる。
突然、彼女の陶磁のような白い頬に一筋の涙が伝わった。
「ママっ…！？」
失敗したと思って怯えた少年を、母親は優しく抱き締めた。
「ありがとう、フレイ。とっても美味しかったわ。何よりも、あなたの
その気持ちが本当に嬉しいわ。最高のプレゼントよ、フレイ」
「ママっ！」
「フレイ、愛しているわ」
それから少年は母親が出張に出る都度、常に新しいメニューに挑戦し、
母の喜ぶ顔が見たい一心で切磋琢磨し、出張帰りの母親に料理を振舞った。
それから十年の間で、少年のレパートリーは軽く百を越えていたが、それは
常に家に不在な少年の母親の忙しさを証明するものでもあった。
少年には天賦の才能があったのか、彼の料理はどれも確実に美味い範疇に
入ったが、メニューにより多少味にばらつきが存在した。
新しいメニューに拘った少年は、三日間の短期出張でも、三ヶ月の長期出張の間も、
常に一つの料理しか作らなかったからである。
ママっ、美味しい？
ママ、美味しい？
母さん、美味しかった？
母さん、何か味で気になるところはある？母さんの好みに合わせるから遠慮なく言ってよ。
久しぶりに母さんに会える。戦艦じゃ碌なモノが作れないけど、今度は何を振舞おうかな？
爆発するモントゴメリ。母親は少年の見ている前で宇宙の塵と化す。
スプーンをすくったままの体勢で固まって、頬に涙を伝わされるフレイに、キラが
心配そうに声をかける。
「な…泣いていたのかい、僕は？」
コクリと肯くキラに、フレイはゴシゴシと涙を拭くと
「ちょっと、ルーが辛かったみたいだ。僕は辛いのが苦手でね」
「ふ〜ん、変なの。このカレーちっとも辛くないのに…」
フレイ……。
サイが潤んだ瞳でフレイを見つめる。
今この食堂にいる人間の中では、ただ一人彼女だけがフレイの涙の意味を理解していた。
サイはほんの数回ほどだが、フレイの母親の紹介で、一緒にフレイの手料理のお相伴
に与ったことがあり、彼の料理の実力とその健気な目的を知っていた。
実力の方は女の矜持から複雑な心境だが、母を喜ばせたいと願うフレイの一途な想いは
フレイの些細な欠点を帳消しにするほどサイには魅力的に映った。
やっぱり、私はフレイが好き。こんなところで諦めたくない。
チラリとキラを見たサイの中で、今フレイの心を捉えているこの少女の姿が、
次第に敵として認識しはじめられた。
ママ、見ていてね。
きっと、僕がママの仇は取るから。
戦場につまらない恋愛感情を持ち込んで、故意にママを見殺しにしたアイツに、
それに相応しい報いを必ず受けさせてやるから…。
必ず……。
フレイﾏﾏﾝ(´Д⊂
しかし、キラとサイの対決が本編より激しい展開になりそうですな。
フレイきゅん、女心をよく分かっていらっしゃる！
本編がこのフレイきゅんだったら、腐女子人気NO1だったろうにｗ
第八艦隊司令のハルバートン准将の戦艦であり、旗艦メネラオスのすぐ横につける。
光景はまさに壮観の一言。
この光景を作り出したのはハルバートンであった。
ハルバートンはマリューの上官で、今回の計画の推進者の一人である。
そのことについて、マリュー誇らしげにクルーに語る。
その言葉には尊敬の意が込められていた。
民間人についてはこれを機にメネラオスに移ることとなった。
そして、サイ、トール、ミリアリア、カズイはようやく戦争から開放されると信じて話し込む。
マリューはハルバートンを迎える準備のためブリッジを離れようとする時、ナタルとの確執が起きた。
ナタルはストライクの性能、キラの力をそのまま軍に残そうと言うのである。
確かにそれは軍人であるならば誰しもが考えることである。
しかし、それは人としての情を踏みにじることとなる。
マリューはキッパリとナタルの案を拒否する。
ナタルは有能な軍人である。
しかし、軍に傾倒しすぎていることもたしかなことであった。
この二人の確執はいつまで続くのか？
それを知るものは誰もいない。
未来を知るフレイでさえ、知らない道を歩もうとしているのだから。
キラとフラガは格納庫にいた。
パイロットの仕事である、機体の整備である。
もっともフラガは、整備をキラに任せて居眠りをしている。
そこに突然、キラが話しかけた。
「艦隊と合流したって言うのに、なんでこんなに急がなきゃならないんです？」
「不安なんだよ、壊れたままだと。」
自分が居眠りしていたことを棚に上げてフラガは言う。
第八艦隊のメビウス部隊は新人ばかりなのだ。
ただでさえジンとメビウスの戦力差は大きいのに、そのパイロット達が
新人となると不安になるのも仕方がない。
しかし、キラはそれよりもストライクのことを気にしていた。
そう、ストライクは未だにキラがＯＳを改良したままの状態なのだ。
スペック的には最初の時より格段に上がっているだが、それを扱えるのはキラだけだと思われている。
それはキラがコーディネーターだからだ。
「できれば、あのまま誰かがって思っちゃいますわよね。」
キラとフラガ、マードックの輪にマリューが話しかけてきた。
「あらら、こんなところへ。」
フラガが大歓迎といった感じで声をかける。
「ごめんなさいね、ちょっとキラ君と話したくて。」
「え？」
マリューの言葉に、疑念を抱くような表情を見せるキラ。
マリューは安心させるかのよう微笑んだ。
キラとマリューはストライクの前にいる。
マリューは自分の状況を話し、キラにお礼を言いたいというのだ。
「あなたには本当に大変な思いをさせてほんと、ここまでありがとう。」
マリューはキラに対して頭を下げる。
「いろいろ無理言って、がんばってもらって感謝しているわ。」
「いや、そんな。」
戸惑うキラ。
さらにマリューはみんなキラにお礼を言いたいと伝え、「がんっばって」と言って握手を求めて手を差し出した。
キラは素直にマリューの手を握り返すと、マリューは柔らかな微笑を見せた。
ハルバートンはアークエンジェル、そしてストライクを無事に第八艦隊と合流させたマリューの苦労をねぎらう。
この時、マリューはキラの今後の処遇を信頼を持って応えたいと進言をした。
だが、ナタルはキラを軍に留めるべきと進言する。
その方法として、両親を保護という名の人質にとると言うのだ。
ナタルの言にハルバートンは机を叩き、即座に怒りを示した。
「ふざけたことを言うな。そんな兵がなんの役に立つ。」
怒りを返されるとは思ってもみなかったナタルすぐさま謝りは恐縮した。
これを見たホフマンはいけ好かなそうな目でハルバートンを見た。
どうやらホフマンの考えはナタルと同じらしい。
ハルバートンはマリューたちにアークエンジェルの今後を伝える。
アークエンジェルは今の陣容のままアラスカ本部に降りることとなった。
その為に、大気圏での戦闘のを考慮した新型の戦闘機、スカイグラスパーが２機、配備された。
そのころ、ザフト軍エースパイロットのラウ・ル・クルーゼの戦艦ヴェサリウスはプラントの歌姫、ラクス・クラインをラコーニの戦艦に
受け渡し、アークエンジェルを追っていた。
「月本部へと向かうと思っていたが、奴ら“足付き”をそのまま地球に降ろすらしい。」
仮面で顔を隠したエースパイロット、ラウ・ル・クルーゼは作戦図を見下ろしながら言う。
「降下目標はアラスカですか。」
ヴェサリウスの艦長、アデス。
職業軍人であり、上官に対して冷静な意見を進言できるクルーゼの副官である。
「何とかこっちの庭にいるうちに沈めたいものだが、どうかね？」
アデスと同意見なのであろう、クルーゼはアデスの言葉に返答せず話しを進める。
それに対して、アデスは自軍の戦力を述べた。
ツイグラにジン６機、ヴェサリウスにイージスとジンを含めて５機、ガモフにバスターにブリッツ、これが今持てる最大戦力であった。
ガモフにはデゥエルもあるのだが、パイロットであるイザークが負傷のため戦力に含めていない。
アデスの言葉を聞いて、クルーゼは小さく笑みを浮かべた。
「智将ハルバートン、そろそろご退場願おうか。」
「除隊許可書？」
トールが何ですかこれ？
と言った感じに声を上げた。
「私たち軍人だったの？」
「第八艦隊アークエンジェル所属。」
前者がミリアリア、後者がカズイである。
どちらにしても理解できないといった感じが含まれたいた。
「キラ・ヤマトは？」
ナタルが聞く。
ここにいるのはサイ、トール、ミリアリア、カズイの４人であった。
ここにいる誰もが、キラが何処にいるのかを知らない。
「まあいい、後で渡してやれ。」
なぜこのような除隊許可書が必要になるかはナタルと共にいたホフマンが教えた。
非常事態であっても民間人が戦闘行為を行えば罪になるのである。
それを防ぐために、形だけでも入隊していたということが必要になるのだ。
現段階で履歴書を書くならば、軍への入隊と除隊が付け加えられる。
その頃キラは格納庫でストライクを見ていた。
思い出されるのは、炎に囲まれた中での親友であるアスランとの悲しい再会、そして敵対、戦闘である。
そんな悲しい思い出で包まれた小さな世界。
それがキラにとってのストライクであった。
「トリィー。」
突如、肩に乗っていたトリィーが一声鳴いて、キラの肩から飛び去った。
「あ、トリィー。」
何処に行くのかと、トリィーの飛んでいく方を見ると、トリィーの先にフレイがいた。
フレイは右手を差し出すと、トリィーはその場が自分のお気に入りと言わんばかりにとまる。
フレイはトリィーをあやすように左手でくちばしをつつく。
「ほら、いきなさい。」
フレイの言葉に導かれるように、トリィーは羽ばたき、定位置であるキラの肩にとまった。
フレイは床を蹴って、キラと同じ場所にきた。
「フレイ、どうしてここへ？」
突如現れた、憧れの少女に驚きを隠せないキラ。
フレイはキラの疑問に応えず、ストライクを眺める。
「キラはこれに乗って私たちを守ってくれたのね。」
「あ、うん、そうだけど・・・。」
キラはなぜフレイがこんなこと言うのかがわからない。
「怖くなかった？」
そう言ったフレイの表情は、見るからに心配だと言っている表情であった。
コーディネーターはナチュラルと違い力がある。
何でも出来て当たり前。
そんな囲いの中で自分を心配してくれる人がいる。
この表情を見たとき、キラは心の中で不謹慎にも嬉しいと思った。
「怖かったけど、しかたがないよ。僕がやらなきゃ「しかたがなくない、しかたがなくないわよ、キラ。」」
キラの言葉を遮って、フレイは否定をした。
キラの内罰的な感情を否定した。
キラをキラとして見た。
アークエンジェルに乗って以来、誰もそうは見てくれなかった。
サイ達でさえ、キラがストライクに乗って戦うことが当たり前と思っている。
そんな中でフレイだけが。
キラの中でフレイの存在が大きく、かけがえのないものへと換わりゆく時間であった。
「ねえ、キラ、中をみたいんだけど。いいかな？」
「え、いいと思うけど。」
突然のフレイの願いに、訝しく思いながらキラはコクピットを開ける。
フレイはコクピットの中を覗き込み、ゆっくりと見回し、唇の指を当てて何か考え込むしぐさを見せる。
一つ頷き、フレイは常人なら、ナチュラルであるなら聞こえるはずのない小さな声で決意の言葉を述べた。
「今度はわたしが護るから。」
キラがその意味を知るのは地球に降りてからである。
フレイ様、モデルデビュー。
いったい何人を魅了させるのかドキドキです。
＞オリジン
細かい描写に感服いたしました。
この先が非常に楽しみです。
＞キラフレ
マザコン爆発フレイ様。
いつまで心は闇の中なんですか？(ToT)
＞流離う
フレイ様ＶＳイザークにｶﾞｸﾌﾞﾙ
神様、仏様、ナタル様です。(´Д⊂
ま、まさかフレイ様・・・・！！！
アズラエルの活躍にちょっと期待してみたり。
>>刻還り
フ、フレイ様…だめですそんな！ＮＴ覚醒もしてないのに！
>>キラフレ
(´Д⊂ヽ･ﾟ･ 健気でつね、黒フレイ様…
泣けてきますた。
キラの一人称語りはホノボノとしていて良いです。
キラの性格を上手くとらえていると勝手に思ってます。
キラもヘリオ組もオーブガールズも理系？だから
物作りネタは合いますね。アスランがファッション
誌の記者とは･…大丈夫なのか。
＞オリジン
後半変わりますか。楽しみですな。［Phase-01 complete］
の文字が出たとき、脳内にEND曲が流れました。
＞流離う
ザフトが劣勢でアタフタしている場面って本編
ではあまりなかった(終盤とスピットブレイク失
敗ぐらい？)と思うので、違う視点が見られて良
いです。イザ―クのビームサーベル使っていると
ころは49話を彷彿とさせますな。フレイ様危ない危ない！
＞キラフレ
料理の話がこんなところにつながっていたとは。
料理のレパートリが増えることがフレイ様の怨念の
度合を示すゲージなのですな。アスランではもはや
相手にならないような…。本編ならこの回想シーン
は何度も登場するところですね。
>刻還り
フレイ様とキラの会話は初々しいですね。キラは前と同じ
でフレイ様だけが自分の苦労をわかってくれると思って
いるところが良いですね。フレイ様の側の思いだけが変化
しているのがすごく良く伝わってきます。しかし何を決意したんだ？？
クライスラー少将の指揮する第４８装甲師団はアークエンジェルの停滞を知ってはいたが、遮二無二前進を続けていた。まだザフトの混乱は続いており、このまま押しきれると判断したのだ。
クライスラー自身も陸上戦艦エウリアに座乗し、指揮を取っている。
「急げ、アークエンジェルの足が止められようとも、このままザグレブ基地を落せばカスタフ作戦は成功する。ここで勢いを止められれば、今度はこちらが押し返されるぞ！」
戦車や装甲車、自走砲、攻撃ヘリ部隊を擁する部隊が土煙を上げてザグレブ基地を目指す。残り僅か４０ｋｍなのだ。ザフト側も必死に反撃しているが、勢いの差というものはそのまま戦力差となって出てくるものだ。そして衝撃力という要素もある。勢いのままに突入してきた敵を食い止めるのは困難な事この上ない。
ジンのパイロット達は突入してくる戦車の大群に怯み出していた。士気もみるみる衰えていく。
「何なんだよ、こいつらは！？」
「駄目だ、どれだけ叩いても止まらない！」
「撤退命令は、撤退命令はまだなのか！？」
悲鳴が通信網を駆けぬけ、それがより士気を落してしまう。ザフトは自分で自分の首を締めていたのだ。この連合の勢いを止めるには予備兵力の投入が必要だが、ギリシアで大損害を受け、そちらに予備を回したザフトは余力に乏しい。通信網を駆けぬける悲鳴も少しづつ少なくなり、やがては消えていってしまう。ジュール隊がアークエンジェルに向ったツケはなかなかに大きなものになろうとしていた。
クライスラー少将の指揮する第４８装甲師団はアークエンジェルの停滞を知ってはいたが、遮二無二前進を続けていた。まだザフトの混乱は続いており、このまま押しきれると判断したのだ。
クライスラー自身も陸上戦艦エウリアに座乗し、指揮を取っている。
「急げ、アークエンジェルの足が止められようとも、このままザグレブ基地を落せばカスタフ作戦は成功する。ここで勢いを止められれば、今度はこちらが押し返されるぞ！」
戦車や装甲車、自走砲、攻撃ヘリ部隊を擁する部隊が土煙を上げてザグレブ基地を目指す。残り僅か４０ｋｍなのだ。ザフト側も必死に反撃しているが、勢いの差というものはそのまま戦力差となって出てくるものだ。そして衝撃力という要素もある。勢いのままに突入してきた敵を食い止めるのは困難な事この上ない。
ジンのパイロット達は突入してくる戦車の大群に怯み出していた。士気もみるみる衰えていく。
「何なんだよ、こいつらは！？」
「駄目だ、どれだけ叩いても止まらない！」
「撤退命令は、撤退命令はまだなのか！？」
悲鳴が通信網を駆けぬけ、それがより士気を落してしまう。ザフトは自分で自分の首を締めていたのだ。この連合の勢いを止めるには予備兵力の投入が必要だが、ギリシアで大損害を受け、そちらに予備を回したザフトは余力に乏しい。通信網を駆けぬける悲鳴も少しづつ少なくなり、やがては消えていってしまう。ジュール隊がアークエンジェルに向ったツケはなかなかに大きなものになろうとしていた。
唯一レナンディーのデュエルだけは強敵を相手にしてないが、変わりにザラ隊とジュール隊のジン部隊の猛攻を受けている。
フレイのデュエルはイザークのデュエルを相手によく健闘していた。戦っているフレイ自身がどうして自分がまだ生きてるのか不思議に思っているくらいだ。右手に持つビームサーベルのエネルギーも残り少ない状況で、後どれだけ戦えるかという問題があるが。
そして、この均衡が遂に崩れる時が来た。ハウプトマンのバスターがディアッカのバスターの収束砲に撃ち抜かれたのだ。
「うわぁっ！！」
悲鳴を残してハウプトマンのバスターが爆散してしまう。
「ハウプトマン准尉！」
フレイはそれをサブモニターで確認して辛そうに顔を顰めた。余り良い印象の無い相手だったが、初めてともに戦った仲間を失ったのだから、その死を悼むくらいはしても良いだろう。
ハウプトマンのバスターを仕留めたディアッカはすぐに上にいるアークエンジェルを狙って収束砲を放ったが、ラミネート装甲はこの熱量を容易く受け止めてしまい、何の被害も与えていなかった。
「ちっ、相変わらずふざけた装甲だぜ！」
吐き捨てるとディアッカは砲身をフレイのデュエルに向けた。こちらなら致命傷を与えられるからだ。こちらに背面を向けているフレイのデュエルは気付く様子も無い。
「背中からってのは卑怯だが、悪く思うなよ」
フレイはイザークのデュエルにイーゲルシュテルンを叩き込みながら距離を計る様に数歩下がる。その時、ふいにフレイは何かを感じた。脳裏に自分の死のイメージが浮かび、背筋が冷たくなる。ここにいては殺される、そう感じた。
「何よ、一体！？」
慌てて機体を後ろに跳躍させ、シールドをそちらに構える。すると強力なビームがつい先ほどまで自分がいた辺りを貫いていった。シールドを構えていなければ周囲へのエネルギーの余波で機体を焼かれていたかもしれない。
助かった、とフレイは思った。自分の勘に助けられたと。
だが、撃ったディアッカは驚愕していた。
「何だ、嘘だろ、気付いてたのかよ！？」
まさかあの一撃を避けられるとは思わなかったディアッカは驚き、足を止めてしまう。そして、それを見過ごすようなナタルではなかった。たちまちミサイルがバスターに降り注ぎ、回避行動の遅れたバスターはミサイルを立て続けに浴びて吹き飛ばされてしまう。ディアッカも体を激しく揺さぶられて脳震盪を起し掛けている。
「ディアッカ、大丈夫か！？」
「あ、ああ･･････だが、こいつは不味いな。悪いが下がる」
「分かった、後は任せろ！」
後退していくバスターを見送ったイザークは残るデュエルを見た。その顔に肉食獣の笑みをうかべる。
「さてと、そろそろ終りにしてやるよ！」
イザークの殺気をまともに受けたフレイは怯み、逃げ腰になった。今まではなんとか耐えられたのに、今は目の前のデュエルが恐ろしかった。怖かった。このままでは殺されるとの確信が持てた。
「嫌、なによ、これ。助けて･･････助けて、キラぁ！！」
周りは敵だらけというこの戦場で、フレイはキラに助けを求めた。聞える筈が無いのに、来てくれる筈が無いのに。
>>キラ♀
ううむ、キラ君なんだか幸せそう。でもフレイ様、まさかそんな技能を隠し持ってたとは。そかも封印していた技能の１つということは、まだ何か隠してるのですなｗ
>> 刻還り
フレイ様、一体なにを。地球に降りてからってことはストライクには乗らないんだろうけど、まさかキラに秘密を話す？
では、次を切望していますｗ
バスター同士の戦闘って想像するとエライ地味ですね。
次はデュエル同士ガチンコですね。フレイ様がんばれ！！
「アスラン、邪魔しないでくれ！」
言ってもアスランが引く筈が無い。だが、力押しで勝てるほどアスランは甘い相手ではない。だが、アスランにキラが手間取っている内に、隣で戦っていたスコットがニコルに追い詰められていた。
「くそっ、こいつ！」
ビームライフルを放ったが、ニコルのブリッツはこれを上手く避けて懐に飛び込んできた。トリケロスに取り付けられた３連ランサーダートが至近距離から放たれ、スコットのデュエルを直撃する。フェイズシフト装甲は不条理なまでの防御力を見せてこの攻撃さえも弾いて見せたが、衝撃だけはどうにも出来ず、制御の限界を超えた負荷にデュエルは仰向けに吹き飛ばされてしまう。地面に叩き付けられた衝撃に目の前が暗くなるが、必死に意識を繋ぎとめて機体を起こす。
「こいつ、強い･･････」
自分では勝てないと思い知らされるスコット。同じＸナンバーなのだから、腕に差があれば勝てないのも当然だ。それでも諦めずに抵抗を続けるが、ついにスコットの一撃を避けて懐に飛びこんできたブリッツのビームライフルがコクピットに押し当てられた。その直後、コクピットはビームの熱に焼かれた。
スコットのデュエルが爆発するのを見たキラは一瞬我を忘れ、それを見続けていた。
「ス、スコット、さん･･････スコットさんっ！？」
スコットの言った言葉がキラの内心を過る。帰ったらみんなで飲もうと言ってくれたのに、自分を一人前の男と認めてくれた人だったのに。連合に来て初めて出会えた、自分と同じ境遇の人だったのに。
その時、キラの耳に１つの悲鳴が聞こえてきた。通信機を介した訳でもないのに、それはとてもはっきりと聞えたのだ。
『助けて、キラぁ！！』
「フレイッ！？」
確かにフレイの悲鳴だった。サブモニターでアークエンジェルの状況を確かめたが、フレイのデュエルの姿までは分からない。だが、さっきの悲鳴は、間違い無くフレイのものだと確信できた。
フレイが危ないのだ。そして、アークエンジェルも。
「フレイを、アークエンジェルのみんなを、絶対に死なせたりしない」
この時、キラの中で何かが弾けた。
迫るアスランのイージスの動きが妙にはっきりと分かる。次のイージスの動きさえ手に取るように分かった。キラはただ、イージスの次の動きに合わせて機体を動かし、素早く左腕で抜いたビームサーベルをイージスの右肩に下から斬り上げた。ビームの刃がイージスの右腕を本体から切り離してしまう。それが地面に落ちる前にキラはストライクを下がらせていた。ニコルのブリッツがこちらを振りかえった時にはすでにビームライフルがブリッツをロックオンしている。
放たれたビームにブリッツの頭部が撃ち抜かれ、擱座させてしまった。あれだけ苦しめられていたイージスとブリッツが一瞬で無力化されてしまったのだ。アスランとニコルは何が起こったのか分からずに呆然としている。
「な、何なんだ、あの動きは？」
「一体何が起きたんですか？」
呆然と呟くアスランとニコル。キラは２人にとどめを刺す暇さえ惜しんでアークエンジェルの方に戻っていった。ミゲルとジャック、エルフィののジンがそれに追い撃ちをかけるが掠りもしない。仮に当たっても何のダメージにもならなかっただろうが。
追い詰められていくフレイをアークエンジェルの艦橋では焦りさえ浮かべて見守っている。動きが早くて援護がし辛いのだ。更にフィリス達のジンが纏わり付いてくるのが邪魔だ。
「ハウ二等兵、ストライクはまだ戻らないのか！？」
「イージス、ブリッツは沈黙した様です。キラはもう少しで到着します！」
「そうか、だが、すでにデュエルとバスターを１機ずつ喪失か。訓練度の差は如何ともし難いのか」
ナタルは唇を噛んだ。ストライクが間に合えばいいのだが。
「フラガ少佐は、キース大尉は！？」
「駄目です、２人ともディンとの相手で手一杯です！」
「レナンディー中尉のデュエルは！？」
「敵のジン３機に拘束されています！」
「たかがジン３機にか！」
ナタルは不甲斐ないレナンディーに悪態を付いた。初陣のフレイでさえ敵のデュエルと渡り合っているというのに、デュエルに乗ってジン３機に梃子摺るとは。だが、このジン部隊がザラ隊であることを考えればレナンディーの苦戦も仕方の無いものかもしれない。
上空ではフラガのスカイグラスパーが強敵と遭遇していた。白いディンが現れたとき、フラガにはそれが誰か分かってしまったのだ。
「この感じ、ラウ・ル・クルーゼか！」
「やはりいたか、ムウ・ラ・フラガ」
フラガのスカイグラスパーとクルーゼのディンが激しい空中戦を行う。だが、この勝負は機体性能の差でフラガの方が不利だった。互いの武器は一撃で相手を仕留められるが、空中での運動性能で負けているのだ。
激しい機動を繰り返すフラガはＧに顔を顰めている。それを笑いながら撃っているクルーゼだったが、ふいに感じた違和感に眉を顰めた。
「なんだ、この感じは。私やムウのような者がこの戦場にいるのか？」
クルーゼをして無視できない何かがこの戦場にいる。そして、それはフラガも感じていた。フラガはクルーゼとは違い、この気配に覚えがある。
「まさか、この感じは、フレイか。何であいつが！？」
イザークは苛立っていた。目の前のデュエルはどうしてまだ立っているのだ。このイザーク・ジュールが本気で相手をしているのに、どうしてまだこいつは立っている。自分よりも遥かに劣るナチュラルのくせに。
「生意気なんだよぉ！」
怒りに任せてビームサーベルを振るう。この一撃もフレイは盾で止めて見せた。フレイ自身もどうして目の前のデュエルの動きに付いていけるのか分かってはいない。ただ、何故か敵の動きがフレイには見えていた。イザークのデュエルが何処を狙ってくるのか、何を狙っているのかが分かる気がするのだ。そして、今の所その勘は外れていない。
だが、勝つことは出来ない。フレイではイザークには勝てない。フレイにはイザークを押しきれるだけの経験も、技量も無いのだから。
「しつこいのよ、あんたは！」
振りこまれたビームサーベルを盾で受けとめ、頭部のイーゲルシュテルンを至近距離から叩きこむ。フェイズシフト装甲には無力だが、アサルトシュラウドにはそれなりの効果がある。機体上面を包みこむ火花にイザークは慌てたが、それで怯んだりはしなかった。勢いのままに体当たりをかけ、フレイのデュエルの体制を崩す。
「もらったあ！」
突き込まれたビームサーベルがフレイのデュエルの頭部を貫き、破壊してしまう。それでフレイの運命は極まったかに見えた。センサーの大半を失ったフレイのデュエルは自力で立つことさえままならなくなり、その場に転倒してしまう。
「きゃああああっ！」
衝撃に悲鳴を上げるフレイ。光を失ったモニターを急いで操作し、サブカメラに切り返る。少ししていささか不鮮明な画像が表示されたが、そこにいたのは自分にとどめを刺そうとしているデュエルの姿だった。
殺される。そう確信した時、フレイは思わず叫び声を上げた。
「いやあ、助けて、キラああ――――っ！！」
その叫びを聞いたのは戦闘管制をしていたミリアリアだけだった。ミリアリアはフレイがキラの名を呼んだことに驚いたが、すぐに我に帰るとフレイの名を呼んだ。
「フレイ、逃げて、フレイっ！」
逃げられる訳が無い。だが、そう言わずにはいられなかった。通信機からフレイの絶命の叫びが聞えてくる瞬間を想像して目を閉じる。だが、次に飛び込んできたのは想像したものとは違っていた。
「キ、キラ？」
キラのストライクが間一髪で戻ってきたのだ。ビームライフルがフレイとイザークのデュエルの間を貫き、イザークが舌打ちして下がろうとする。だが、キラのストライクはイザークのデュエルを逃がすつもりは無かった。
「デュエル、またお前かああっ！」
キラの脳裏に撃ち落とされたシャトルが蘇る。あの時にこいつがシャトルを撃たなければ、それ以前にこいつを撃墜しておけば、あの幼女は死なずに済んだのだ。後悔しない為には、敵は倒せる時に倒さなくてはいけない。それがキラの得た答えだ。例えこれに同朋が乗っていようと、今のキラには倒すことへの迷いは無い。そう、もうあの幼女や、ブカレストで死んだ兄妹のような人を出さないためにも。
まして、こいつはフレイを殺そうとしたのだから。
「お前は逃がさない。ここで倒してやる！」
「チィ、ストライクか！」
素早く態勢を整えるデュエル。だが、今日のストライクの動きは何時もと余りにも違っていた。動きが速過ぎる。自分が付いて行けないほどだ。
「なんだ、こいつはぁ！？」
慌てて下がるデュエル。歴戦のパイロットの勘が告げていたのだ。こいつと戦ってはいけないと。
下がるデュエルを追い掛けるストライクに、部下のジンが援護射撃をしてきた。
「隊長、早く逃げてください！」
「馬鹿、来るな！」
イザークが部下を怒鳴りつけるが、それは余りにも遅すぎた。銃撃してくるジンに目をやったキラは色合いの変わった瞳でそのジンを見やり、機械的な動作で迷わずビームライフルで撃った。直撃を受けたジンが一撃で爆発してしまう。
その犠牲でイザークは安全圏に逃げられたが、初めて持った部下をいきなり失ったという喪失感がイザークを襲っていた。
「くそぉおおおおお、ストライク、そしてあのデュエル、次は必ず仕留めてやる！！」
イザークの後退に合わせて２機のジンも下がっていく。フィリスのジンが殿に残りながら牽制の銃撃を加えている。イザークを撃退したストライクに喧嘩を売る機はさすがに無いようだ。
「･･････あのストライクとかいうＭＳ。ザラ隊長に、ニコルさん、ジュール隊長まであっさりと撃退するなんて。あれがラクスの言っていたストライクのパイロット、キラ・ヤマトですか･･････最高にして禁断のコーディネイター」
その余りの戦闘力の高さにフィリスは恐れと同時に高揚感を感じていた。整った容姿である分だけに機械的な冷たさを宿す事の多いコーディネイターにしては自然的、と表現しうる柔らかな美しさをもつフィリスだが、今はその顔に冷静な観察者としての仮面を被せている。
そして、フィリスはもう１つの気になる存在に目を向けた。こちらにもまた驚きを隠せない。
「･･････ナチュラルであれほどの動きをするなんて。天才なのか、それともあれもコーディネイターが乗っているの？」
フィリスはアークエンジェルから十分に距離をとったと見ると、機体を翻して逃げ出した。ストライクがこちらに狙いをつけたような気がしたから。
フレイが代役をつとめる？代わりに？本気かよ、なに考えてんだ？
どうしちゃったの？
現場は怒号や悲鳴、驚愕、奇声、感嘆、が交わり
現実とはかけ離れた空間になってしまった・・・
ぼくも一瞬、頭の中が真っ白になりそうだったけど、冷静さを取り戻し、
「静かにしてください！」
ぼくは一喝した。もう時間がないんだ。こんなことで時間を費やしたくない。
キラ 「ムリだよ、フレイ、彼女の代役なんて、君には、
昔、ちょっとモデルの経験があるからって、今回は・・・
それに 参加資格は十代なんだよ、
それにどうみてもフレイは十代には・・・」
フレイ「なによ、あんたいつからそんな
ヘタレになったのよ？やる気あんの？
あんた成功させたいんでしょ、だから
がんばってきたんでしょ？
あんたなんのために今日までやってきたのよ、
あんたのやる気ってそんな程度なの？
あんたの夢って何なの？
あんたの夢ってそんなもんなの？
あんたの希望は何？あんたの意欲ってその程度なの？
あんたの信念ってその程度なの？
あんたの生きる目的ってなんなの？
ふっ、あきれたわ がっかり」
キラ 「フレイ・・・そりゃぼくだって、ぼくだって
ここまでがんばってきたさ、けど・・・
こんな事態になったら・・・」
フレイ「どうして前をみようとしないの？
だめだ だめだっていってたらすべてだめよ
なぜダメだと思うなら、もうほかに可能性は
ないのか考えないの？
どうしてすぐ諦めようとするの？
どうして下ばかり見るの？
どうして希望をみつけようとしないの？
あんたなんにもわかってない、なんにも・・・
スキルよりＷＩＬＬなのよ！
意思 いや信念があればぜったいにどんな苦難や苦痛だって乗り越えられる
わたしは生まれてからずっとそう思って生きてきた・・・
もうだめって何度もあきらめかけたこともたしかにあったわ・・・
パパが死んだ時だってそうよ、見るものすべてが暗闇の世界で
生きる意思も、目的も、理性も、
希望も、夢も、願望も、
もう終わりだと思った・・・本当に全てが・・・
でもあなたがいてくれて、生きる希望が見つかったの
生きてる今だからこそ、命が続くからこそ、
なにかできることもあるかも知れない・・・
なにかを達成させなければいけない・・・
なにかをやりとげなければって
それが人として命を与えられた者の使命・・・
それがわたしをここまで成長させたの
たしかに無謀よ、正直にいってね・・・
どうみてもわたしは１０代にはみえないし、ありえない話だわ。
でも戦わなきゃ！現実と！
いま自分がどういう状況で何ができるかを考え、
それを導くのがあなたの役目でしょ。
キラ、そんなに諦めないで
夢を、希望を、誇りを・・・お願い
あなたならできる、必ず。だから・・・
お願い・・・もう一度、もう一度・・・」
そうだ、ぼくが間違ってた。
なんのためにここまで頑張ってきたんだ。
ぼくは馬鹿だ。ホント、諦めたらなんにもなんないじゃないか
いままでの労力が無駄になってしまう
人間として、デザイナーとして自分が見失ってたものを
フレイが教えてくれた。諭してくれた。叱ってくれた。
もう迷わない、諦めない、引かない、引き下がらない、
できることをやる、自分の意思を示すために
ぼくの中で何かが弾けた、
アークエンジェルは沈めさせやしない！！！
キラ 「トール、サイ、カズィ、ミリアリア、
悪いけど、変えるよ、予定のアークエンジェルの
演出、音楽、証明、ヘアメイク、モデルの登場変更 全てね」
ナタル「どういうつもりだ、キラ・ヤマト。
事前決定事項を覆し、衣装まで変更したら われわれは失格、
いやわが社のこれまで築いてきた信頼、
ロイヤリティー、イメージが、がた落ちだ」
キラ 「衣装は変更しません、しかしそれ以外は全て変えます。
今大切なのはアークエンジェルのモデルたちを
無事にステージに送ることです。そして全員のチームワークで
アークエンジェルを成功させることです。
この１０代、２０代 若い世代は生き方、
考え方、物事の捉え方 個性、哲学、こういったことに
すごく敏感で繊細でもろいものでもあります。
ただ決めれらた物事によって、
決められた考え方で
決められた固定概念を植え付けるだけでは、成長しません。
考えなければいけません、真剣に・・・
たかが１０代２０代向けの衣装ではないんです
衣装だって、人間をかえるものがあるかも
知れないんです。
人生そのものも・・・
人間が着るものですから・・・
衣装の組み合わせ、衣装の着こなし、
衣装の扱いで
その人の人間性を読み取れるかも
しれないんです。
可能性が大きいんです。若い世代は・・・
無限の可能性が・・・
決められた狭い視野だけをみつめては
いけない、もっと広い視野を見渡せるように
そのためにも知ってもらいたい、
感じ取ってもらいたい、読み取ってもらいたい
彼らにぼくたちが作った衣装を見てもらいたい、
ただの衣装じゃなく、人が作った衣装を・・・
感じ取ってもらいたいんです。
人の創造性を・・・可能性を・・・
未来を・・・夢を・・・
そのためにはぼくらが若い世代に人の可能性という
種をまかなければいけないんです。
ＳＥＥＤ、コレが今回のぼくらのテーマです」
もちろん、意識はあったし、状況判断の区別もできてた
でも・・・なにかが覚醒したのか、
それとも・・・フレイの力が・・・
マリュー「よく言ってくれたわ、キラ君。
あなたにまかせられるわ、アークエンジェルを」
キラ 「マリューさん！それにフラガさんまで、
どうして・・・」
フラガ 「ボウズ、いやキラメインチーフ
見事だったぜ、名演説。
新しいリーダーの誕生だね〜」
ナタル 「関係者以外は立ち入り禁止のはずです。
すぐ出てってください」
マリュー「キラ君が前にパスをくれたのよ、ぜひ見に来てくれってね」
ナタル 「それは・・・失礼しました。
でもなぜここへ・・・！？」
マリュー「ナタル、もういいでしょう。
わたしたちは見届けないと、ＳＥＥＤを・・・
わたしたちはまちがっていなかった・・・
次の世代へ引き継ぐために蒔いた種は
無事に芽をだしてくれた。
そして彼らもまた、あたらしい種を蒔こうと
してくれてる・・・
人のもつ可能性という名の種を・・・
見届けてあげないと・・・次の世代、
そしてその次の世代を・・・」
ナタル 「わたしは・・ただ・・・いえ、了解しました。
しかしまだ完全に納得したわけではありません ご理解を」
フラガ 「それにオレの愛する女にも種を蒔いたし（笑）なんちゃって」
マリュー「な、なにをいってんのよ、こんな場所で（赤面）」
控え室が笑いの渦になり、すこし明るさがでてきた。
まだ終わっちゃいない。
ノイマン「キラ、時間がない もう開始２０分前を きってる、
幸い、おれたちは１８番目だからすこし余裕がある。
変更事項を本部まで もってかないと」
ノイマン広報部長が時間を気にしながらもおしえてくれた
キラ 「すいません、今書きます。それと ノイマンさん、トノムラさん、
終了後のメディア対応の準備をお願いします。いろいろ聞かれそうだし、
こちらもいまから準備しとかないと」
アスラン「キラ、もう時間だ。
おれとカガリは客席にもどる。
ほかの取材もあるしね 健闘を祈ってる」
カガリ 「キラ、おまえならできる、
このオレが認めるんだから心配すんなよ。
ちゃんとみてるからな
それにマユラたちがオーブの最高傑作を
施してくれるし ヘアメイクは問題ない。
それに、これでおまえが成功したら、
カガリブランドも株が上がりそうだし うちも一躍、注目を浴びることになるし
たのむぜ〜キラ」
アスラン「カガリ、キラを困らせるなよ、じゃあまた後で」
キラ 「ありがとう いろいろ」
アスランたちが控え室を出て行こうとしたら、遅れてマードック広報カメラマンが入ってきた。
マードック「わるいわるい、遅れてすまねー
どうも方向音痴なもんで、ここに来るまで
いろいろ迷子になっちまった。
おっ、全員集合だな、気合はいってきたな」
キラ 「マードックさん、しっかり頼みますよ。
うちの専属のカメラマンなんですし
その写真がうちの広報写真として雑誌に
載るわけですから
みんな、今の状況はホントに厳しいと思う、 でも成功させたい、
きょうここまできたのも、チームワークの
賜物だと思う。
ぼくらの強みはチームワークだと思う。
他に負けないくらいに
だからチームワークでこの至難を乗り越えたい
そしてアークエンジェルの、
ぼくらの想いを伝えたい
手を貸してくれ」
一斉がうなずき最後にもう一回全員で手をあわせ、いくぜアークエンジェルと締めくくった
キラ
まず最初にコレを・・・着て
次にアレ、三回目は４人で一緒だから、
そして・・・・・・・・・」
スケジュール工程を綿密に説明し、時間がないのでみんなで話し合いをしながら
工程作成をつくるという、むずかしい処理をしいられなければいけなかった。
なんせ、すべてを変えるのだから労力は半端ない。
頭の中で考えた物をすべてまとめあげ
アークエンジェルのプレスリリースにまとめ
ノイマン広報部長に本部まで持っていってもらった。
キラ「フレイ、トップバッターだから緊張するのは当然だ。
でもうまくやってくれると信じてる
ウォーキングやポーズ、止まるタイミング、アティテュード、アップなどは
ミリアリアたちが教えてくれる。
コンテも見て、タイムスケジュールの経過工程も見といて。
時間まで、練習しといて。
ただ覚えるんじゃなく、体の五感すべてを感じとるように、
今、自分はアークエンジェルのデザインした
衣装をまとい、楽しんでる、喜んでる、
祝ってる、そんな表現、演技をしてほしい」
フレイ「キラ、やってみせるわ。難しいけど
キラのためにも、アークエンジェルのためにも・・・
うれしいわ キラのデザインした衣装を着て、
ステージに上がるなんて夢のようだわ
神様がわたしのためにくれたプレゼントかも・・・
キラごめんね。あんなひどいこといっちゃって・・・
自分でも悪いと思ってる わたし・・・」
キラ「いいんだ ぼくこそフレイに謝らないとね。
勝負しないで逃げようとしてた
でもフレイの想いがぼくを吹っ切らせてくれたんだ。
迷いも、恐れも、弱音も
やっぱりフレイがいないとだめかもね・・・ぼくって（苦笑）
サイズがどのくらいちがうか心配だったけど、
幸い二人の体型はそんなに違いは無く
フレイに衣装がピッタリあったことにほっとした。
あとはメイク・・・
ノイマン 「はじまったぞ、最初のが・・・もうでてる。
1クールあたりがだいたい１５分〜２０分だから、おれたちは１８番目
だから６時間後か！ギリギリかもな」
キラ 「すいません、スケジュール経過を
モニタリングしといてください。
それからトノムラさんは、シュミレーションで
各ブランドの評価予測を
レポートしといてください。
あと引き続き、メディア対応の準備を。」
マユラ 「キラ、メイクの基本コンセプトはこれでいいの？
あなたの考えだとたしかに、
間に合うことは間にあうけど・・・」
キラ 「お願いします。最初のフレイの登場から
最後までこのラインで崩したくないんです。
ギリギリまでこのコンテに書いてあるとおりでやって下さい。
パルさん、ダリダさんは照明の照らし方は
コンテに書いてある
通りにやるんですが、最後をこのように
変更してくれませんか」
キラ 「待って、あれを使おう
ラクスが前に歌番組のオーディション受けて落選したけど
あの歌はけっこう好きだし、
たしか水の証だっけ・・・
あれをフィナーレにもってきたいな」
ラクス 「本気なのですかキラ、わたしはあの
オーディションで落選したことの
ショックがまだ、残っているのです。
そんな状態であの曲をステージで流すのは
酷というものです」
キラ 「ラクス、たしかに辛いかと思うけど、
もしかしたら 君の歌声がアークエンジェルの演出に
ぴったり合うかもしれないと思うんだ
前に君の歌声を聞いたけど、かなりいいと思ったんだ。
こんな機会だからってわけじゃないけど、
やってみる価値はあるんじゃないかって思うんだ。
あの歌は一度聴いたら なかなか忘れられない、
そんな感じの歌なんだ・・・
ラクス、協力してくれないか、
ぼくだけじゃなく、ここにいるみんなのためにも・・・」
ラクス 「キラ・・・そこまでいうなら・・・いいですわ、キラを信じます」
キラ 「ありがとう 大丈夫、うまくいくよ。メディア借りるね」
それから、ぼくたちは死に物狂いで準備に入り、
ほかのブランドのことは
気にする時間もないし、余裕もなかった。
ただすべてはアークエンジェルのため、みんなのため、
そして・・・フレイのため
自分の五感はただそのことだけを集中し、
作業に取り組んだ。
そして、時間は確実にアークエンジェルの出番を迎えようとしていた。
上のタイトル２５です
キラフレ> 少年は心臓を破裂させそうなぐらいに高鳴らせながら
期待と不安に入り混じった瞳で、彼の母親を見つめる。
突然、彼女の陶磁のような白い頬に一筋の涙が伝わった。
･ﾟ･(⊃Д`)･ﾟ･ ･ﾟ･(⊃Д`)･ﾟ･ ･ﾟ･(⊃Д`)･ﾟ･ ･ﾟ･(⊃Д`)･ﾟ･
フレイとママの関係は涙なくしてみれません。
ええのう、じつにええ
刻還り> 「今度はわたしが護るから。」
キラがその意味を知るのは地球に降りてからである
この辺から本編は↓気味になってったんだ
この頃が妙に懐かしいね・・・
でもハルバートンが生きてたらっておもっちゃう
流離> イイ！フレイ、ニュータイプですか、
イザーク、ディアッカの攻撃かわし方
かちょいいです。でもスコット（涙）
フレイのキラに助ける場面は最終話を思い出しました。
やっぱもれはキラフレ万歳です派と再認識しますた。
なにやら複線が一杯出て来たみみたいで先が気になって気になって・・・・・
もしかしてフラクルとフレイ様に何か関係があるのか？
フィリスの動向も気になるなぁ・・・
スコット、いいやつだった。(´Д⊂ヽ･ﾟ･ フレイ様もピキ―ン
ってくるのか。
>春コレ
完璧超人の歌姫さんの落選はワロタ
の乏しい食生活は大幅に改善されることになる。フレイはさして豊かではない食材から、
並外れた創意と工夫で、毎回バラエティ豊かな料理を食卓に提供し、
長年の軍隊生活で単なる栄養補給と捉えがちだったＡＡクルーに、食事とは人生
最上の喜びの一つであることを思い出させ、あらためて戦争における補給の重要さ
を認識させてくれた。昔から良く言うではないか、「腹が減っては、戦は出来ぬ」と…。
自然、母が亡くなった時の醜態やサイに対する冷遇振りで、一時下落していたＡＡ内
のフレイの評判は大きく回復することになる。
アークエンジェルは艦長であるマリューの人柄のためか、軍隊としてはかなり威風で
気さくな雰囲気に包まれてはいるが、それでも人格よりも能力によって個人が評価されて
しまうあたりは、悪しき軍隊社会の洗礼を免れない一面が確かにあった。
だが、ＡＡのクルーとは異なり、古くからフレイを知るヘリオポリス組のフレイへの
評価は複雑だった。
「やっぱり、何か納得いかないんだよなぁ」
派閥というには大袈裟だが、例の一件の後、ヘリオポリス組は大きく二つに分裂した。
トール・ミリアリア・カズィ・サイのグループと、フレイとキラのコンビにである。
「納得いかないって何がだよ、トール？」
「決まってるだろう、フレイだよ。あいつのせいで俺たち何かグチャグチャだぜ」
サイはこの場にいないので、トールが遠慮なく問題提起を図るが、二人は無条件には
トールの扇動に賛同しなかった。
「確かにサイのことは気の毒だと私も思うけど、結局は本人たちの問題でしょ。
私たちがどうこう言うのも……」
「学園で今まで何人の女の子が、あいつに泣かされてきたと思っているんだ！？
サイという許婚が出来て、ようやく落ち着いてきたと思ったら、今度はキラかよ！」
トールはイライラした口調で吐き捨てる。つい先日までフレイに反発を抱いていた
はずのミリィが、今では明らかに好意的中立以上の態度をフレイに取っているのが、
トールには気に入らなかった。ハンサム君からちょっと凛々しいポーズを
見せつけられると、すぐこれだ。これだから女は信用出来ない。
ミリアリアはミリアリアで、トールの主張に一部肯きながらも、どうしても
自分の恋人の狭量さが気になった。
確かに学園でのフレイの同姓からの評価はあまり芳しくないだろうが、異性からの
評価は全く逆である。武闘派でないにも関わらず、危険な魅力を発散するフレイに、
火に魅入られる虫の如く惹かれる女の子は後を絶たず、キラもまたその内の一人だろう。
関係まで持った女の子を一方的に捨てるのは問題だが、それでも不思議とあまり
恨まれたという話しを聞かないのは、フレイは何故か複数の恋愛を平行させた
ことがなく、その娘と付き合っている限りにおいては極めて誠実に対応していたからだ。
女の子の方でも、自身の器量不足からフレイを繋ぎ止める不可能さを実感し、大人しく
身を引いたからこそ、今まで大きなトラブルが起こらずにすんでいたのではないか。
相当フレイ贔屓の視点である事は十分自覚しているが、最近思い知らされたフレイの異様
なプロパティを考慮すれば、ミリィにはあながち見当外れな考えだとは思えなかった。
「で、トール。具体的にはお前はどうしたいわけ？」
フレイに対して完全中立の立場のカズィがそう問いかけ、トールは言葉に詰まった。
それをこれから話し合うのだろう…と云うトールに、カズィはやや白けた目を向けると、
「トール、お前アンチフレイを貫くなら、旗色を明らかにした上で、自分自身の態度
も首尾一貫させた方がいいんじゃないの？」
「どういう意味だよ？」
「だから、フレイの作った物なんか食えるかって…ハンストするとかさ…」
「か…関係ないだろ、そんな事！？」
「十分あるだろ、フレイの恩恵だけは当然のように受け取っといて、影でコソコソ愚痴を
溢すなんて、政治批判する口先だけの若者と全然変わらないじゃないか…」
「何だと、この野郎！」
「止めてよ、二人とも！」
一発触発の危険な雰囲気になった二人をミリアリアが必死に分ける。自分達を見つめる
周りの様子に気づいた二人は渋々矛を収めたが、三人の間には気まずい雰囲気だけが
残される。
フレイの存在は、キラとサイだけでなく、トール達の間にも確実に不協和音を及ぼした。
本当に笑えないブラックジョークだな。悪意を以ってトール達を巻き込んだ僕の行動が、
かえって彼らの生命を救うなんてね。
偶然、ヘリオポリスの難民シャトルが墜落したことを耳にしたフレイは、その運命の
悪戯に、ミクロン単位で唇の片端を皮肉に吊り上げる。
実際、シャトル消滅の背景には、イザークやキラの確執など色々な要素が複雑に
絡み合っていたので、彼らがシャトルに乗っていても同様の現象が再現されたのかは
微妙なところだが、そんなことは神ならぬフレイに分かるわけもなく、
フレイは彼らの生命の恩人という自分の立場を無感動に受け入れた。
これで生き残ったヘリオポリスの難民は、アークエンジェルいる自分たちだけである。
トール達に敢えて恩着せがましいことを主張するつもりは全然ないが、今後、運命が
彼らにどういう残酷な席を用意していたとしても、フレイはさして大きくもなかった
良心を咎めさせる必要性は全くなくなったみたいだ。
そんな事より問題なのはこれからだな。
デュエルとバスターの二機が、重力に巻き込まれて地球に降下したのは確認されて
いるが、元々彼ら二人はフレイの眼中にはない。
アスラン君は未だに空の上か…。
アークエンジェルに対するクルーゼ隊の粘着的なしつこさを考えると、そう遠くない
将来、再び姿を現すのは間違いなさそうだが、それまではしばらくの間、つまらない
戦いが続きそうだ。
救いは、ＡＡは僚友の勢力圏ではなく、ザフト圏のアフリカに降下してしまった為に、
今後、激しい敵の攻撃が予測されることで、是非ともキラには今のうちにコツコツと
経験値を積んでもらって、アスラン君を倒す牙を研いでもらいたいところだった。
「よう、坊主、ちょっと良いか？」
丁度、ストライクの格納ドックの側を通りかかったフレイは、整備主任のマードック
に呼び止められる。
「嬢ちゃん……じゃなかった、ヤマト少尉に頼まれていたものが出来たので、
届けてくれるかい？」
マードックはフレイの包帯を巻いた手に薄い封筒を渡すと、フレイの返事も聞かず
に自分の作業に戻ってしまう。
徹夜でストライクの修復作業を続けていたマードックは、シャトルの撃墜を知らなかった。
知っていたら、忙しい仕事の合間を縫ってまで、わざわざキラを苦しめると判り切って
いる写真を現像したりはしなかっただろう。
フレイは封筒の中身に好奇心を刺激されたが、何とか自制して中を見るのは控えた。
女性の秘密を盗み見ようとしないのは、女の子の好感度を得るための重要な
エチケットである。
結果としてこのフレイの選択が、元々隣接間際だったキラとフレイの距離を、
さらに加速度的に縮めることになる。
最近、トール達と何故か疎遠（これもフレイの遠謀だが）になっていたキラは、
わざわざ自分の部屋を訪ねてくれたフレイを本当に嬉しそうに出迎えた。
「キラ、今日はお土産があるんだ…」
フレイはキラの目の前に例の封筒を差し出す。
「何かしら、コレ？」
「マードックさんから君にって…。中身は手紙か写真かな？
案外、ラブレターだったりしてね、僕は外に出ているから確かめてみたら…」
マードックさん、手紙…………写真………………………！？
キラの頭の中に危険信号が灯り、無意識にキラはフレイの手の封筒を跳ね除けた。
「キラ？」
宙を舞った封筒の中から、封をし忘れた写真が零れ落ち、フレイは写真を拾い上げる。
キラを中心に４人の子供たちと笑顔で撮った姿が写っている。
「可愛い子供たちだね、何時の間に知り合いになったんだい、キラ…！？」
写真の風景が視界に飛び込むと同時に、キラの瞳孔が開く。
自我を守るために、キラの防衛本能が無意識の内に心の奥底へと封印した子供たち
との記憶が、まるで洪水のようにフラッシュバックされ、映像がデュエルに破壊
されたシャトルのところまで再現された時、キラは発狂した。
「い………いやぁあぁああ……………！！！！」
「キラっ！？」
慌ててフレイがキラを抱き止めるが、キラはフレイの中で激しく暴れ捲くる。
聡いフレイは、写真の子供たちが恐らく墜落したシャトルにいた避難民であることに
気づいて、心の中で舌打ちし、予め封筒の中身を確認しなかったことを悔やんだ。
まずい、キラには刺激が強すぎる。今、壊れられでもしたら元も子もない。
全身のアドレナリンを解放したキラの力は明らかに男性であるフレイをも凌ぎ、
フレイは改めてコーディネイターの身体能力の異常さを実感させられ、これ以上、
キラを抑え切れなくなったフレイは、最後の強行手段に出る。
てっきりキラを叩くのかと思いきや、フレイは焦点の定まらないキラの顔を
無理やり自分の方に向かせると、強引に唇を奪って二度目（正確には三度目）
のキスをしながら、背骨が折れるぐらいの勢いでキラを強く抱き締め、そのままの
体勢で嵐が過ぎるのをひたすら待ち続ける。
経験上、女性のヒステリーへの対処には、殴るよりも、こっちの方が効果が高い
ことをフレイは知っていた。
もっとも、フレイ以外の男性（例えばカズィとか）が同じことをやっても、同様の
効果が得られるかは甚だ怪しいところではあるが…。
やがて、キラは大人しくなり、焦点のぼやけた瞳に理性の色が戻った。嵐の通過を
確認したフレイが唇を離したが、ぽろぽろと涙の零れ落ちたキラの顔を見たフレイは、
今度は別な嵐の来訪を予感する。
「フレイ…、私……私ぃ………うわああぁぁあああ………！！！」
キラはフレイの胸の中で激しく泣きじゃくり、フレイは軽くキラを抱き締めて、
とりあえずキラが落ち着くのを待つことにしたが、キラの涙の貯蔵量は常人のそれを
はるかに上まわっていたので、存外に長い時間フレイは待たされることになる。
「………私が…浮かれていたから…………本当はあの子達を守れたはずだったのに……
なのに…………あの子達が私の身代わりに…………」
フレイの軍服をびしょ濡れにして、ようやく泣き疲れたキラはポツリポツリと
シャトル墜落の背景について語りはじめ、フレイは神妙な顔つきでキラの相方を務める。
「そう、あの時、本当はミスを犯した私が死ぬべきだったの。
そうすれば、あの子達は死なずにすんだのに……」
キラの瞳に再び涙が溜まりはじめる。
あの無尽蔵に流れ出る涙は、一体どこから補充されるのだろう…と、フレイは内心
不思議に思いながらも、口に出しては誠心誠意キラを慰める。
「キラ、母さんが亡くなって僕が自棄になっていた時、僕が死んだら悲しい…って、
キラは僕を諭してくれたよね？」
「えっ？」
「あの時の言葉をそのまま返すよ。キラは自分が死ねば良かった…って嘆くけど、
僕はキラが生きていてくれて嬉しいよ。シャトルの人達には本当に申し訳ないと思うし、
不謹慎なのも分かっているけど、それでもキラが生きて戻って来てくれたからこそ、
僕もまた生きていられるんだよ、キラ…」
それは、全くの虚実というわけではなく、ある意味ではフレイの心からの本音でもあった。
「フレイっ！」
「大丈夫、キラ…。僕がいるから……。僕の想いが君を守るから……」
涙が再チャージされ、激しく慟哭するキラに再びキスしながら、フレイはキラの心を
包み込むように、強く強くキラを抱き締める。
自我の崩壊という流水に面して、無我夢中で溺れかけていたキラは、フレイから
差し出された一本の藁に、必死にしがみ付いた。
あるいは、今夜は長い夜になるかもしれない。
気まずそうな表情で顔を背ける。
食堂でカズィと喧嘩別れした後、周りの目を気にした二人は、邪魔の入らない
トールの部屋へとしけ込み、そこで色々話し合っているうちに何故か良い雰囲気
になって一線を越える機会を得たのだが、土壇場でトールが尻込みしてしまい、
結局いつも通り、軽くキスを交わしただけで部屋を出てきた次第である。
「ほら、襟元が曲がっているわよ、ちゃんと着なさいよ…」
ミリアリアが甲斐甲斐しくトールの服装の乱れを正してくれたが、自分を見上げる
ミリィの瞳は「意気地なし」と自分を詰っているように感じられて、トールは
思わず目を逸らした。
思春期真っ只中の健康な男子であるトールが、その手のことに興味がないはずはない。
ただ、最近募りはじめたフレイへの子供じみた反発心から、フレイと同じことを
しようとしている自分の行為に抵抗を感じてしまったトールは、通算三度目になる
ミリィと良い仲になる好機を自らフイにしてしまう。
ちょうどその時、間の持たなかった二人の視界に、部屋の外から必死にフレイに
話しかけるサイの姿が目に入った。
「フレイ、こんな遅くにごめんなさい……。でも……その、婚約破棄のことについて、
もう一度お話しがしたくて……」
部屋からのフレイの返事はない。
「もしかして、もう寝ちゃったとか？ちょと…その……、起きてきてくれないかしら？」
サイが口を閉ざすと同時に、辺りは静寂に包まれる。やはり返事を返してくれない
フレイにサイは不安になる。
本当に寝ているのかしら…。
それとも、故意にフレイから無視されている！？
実は今現在、フレイはキラのところにいて、自分の部屋にいないだけなのだが、
冷静さを欠いたサイは、不在の可能性には思い至らず半狂乱になる。
「ねぇ、フレイ。入ってもいい？それとも迷惑！？」
誰もいない部屋に向かって、必死に問い続けるサイの姿は、傍目には憐れであり
滑稽でもあった。
それでも無反応な現状に剛を煮やしたサイは、フレイの部屋に強行突入しようとしたが、
その寸前、途惑った瞳で自分を見つめるトールとミリアリアの二人に気づいた。
「トール、ミリィ……」
今までの醜態を全て他人に見られていたことに気づいたサイは、恥ずかしさと惨めさ
に耐えられなくなり、何とか嗚咽を堪えながら、二人の前から駆け逃げする。
トール達も、流石に今のサイに掛けられる言葉を持たなかった。
「おい、ミリィ。あれを見ても、まだ放っておけってお前は言うのかよ！？」
「トール…」
表面張力限界に達していたフレイへの不信感に、サイという一石が投じられて、
溢れ出る感情の濁流を抑えきれなくなったトールは、ついに決断する。
「フレイには俺が話しをつける。だから、お前はキラを頼むぞ」
騎士道精神に目覚めたトールは、強くミリアリアの両肩を掴んで、ミリィの意志とは
無関係に勝手に話しを進めようとする。完全に腹を括ったトールとは違い、ミリアリアの
中からは未だに戸惑いと納得以外の感情が抜き切らなかったが、目の前のトールの
迫力に気圧されて、思わず反射的に首を縦に振ってしまう。
その頃、アークエンジェルを外から見つめる二組の視線があった。
一人は、夜襲の機会を虎視眈々と窺っている、砂漠の虎と呼ばれるザフト地球軍
きっての名将、アンドリュー・バルトフェルド。
もう一人は、バイクの上からＡＡを見下ろす、金髪の謎の少年。
一見、女の子と見間違わんばかりの線の細い、フレイとは異なるタイプの美少年だが、
頬についた十字の傷痕と、ゴーグル越しでも隠しきれない鋭い眼光が、歴戦の勇者と
錯覚させるような少年の精悍な雰囲気を醸し出している。
このどことなくキラに似た面影を持つ少年との出会いが、揺れ続けるキラの心に
新たな波紋を呼び起こすことに、この時は誰も気づかなかった。
すげえ。ヘリポリ組個々の描写が痒いとこに手が届く感じです。
もうハラハラして見ちゃいられません。
職人さんについて言及しちゃイカンとは思うのですが
文章、プロ並みに達者ですね…個人サイトとかお持ちでしたら
是非見てみたいと…思ってしまったり…
つづきたのしみにしてます。
本当にすごいｯスね。物語にどんどん引き込まれていきます。
トールのアンチフレイにﾜﾛたｗ
キラちゃんとフレイきゅん、本編とは違って幸せになれればいいんだが…。
(−人−）ﾅﾑﾅﾑ
乙フレです。
本編のさりげない補完（部屋からでるトールミリ）が
良すぎです！
てかトール、・・・情けない・ﾟ・(つД｀)・ﾟ・ もうちょっと甲斐性つけろよぅ
泣きキラに萌えつつ、金髪の少年（カガリたん？！）の登場にもドキドキです。
乙！いつもながら楽しませてもらいますた。それにしても・・・
カガリまで逆転してるのか！ｗｗ
スコット・・・・ﾟ・(つД｀)・ﾟ・
しかしフレイたんつおいね。今後が楽しみ楽しみ。
>キラ（♀）
やっぱりフレイきゅん策略家だなあｗ それこそクズリくんのお父さんみたいに。
トルミリ描写がグッジョブです。しかしカズイ様、飯食うなとは殺生なｗ
「フレイ、大丈夫？」
だが、問い掛けに対する答えは無い。怪我でもしたのかと思ったが、暫く待っているとようやく返事が来た。
「え、ええ、大丈夫、よ」
「そう、良かった」
キラは安堵の声を漏らした。フレイを守れたという満足感と安心の混ざった心境だ。
だが、フレイはそう単純にはいかなかった。今のキラは何時もの優しいキラだ。だが、さっきのキラは何なのだ？ 苦戦していたはずのイージスとブリッツを圧倒し、デュエルも容易く撃退してしまった。さっきのキラは何だと言うのだ。コーディネイターという言葉だけでは片付けられない力を、恐ろしさを感じた。
怖かった。さっきのまるで化け物のようなキラが怖かった。多少とはいえＭＳを動かせる今のフレイには、さっきのキラがどれほどの化け物なのか分かるのだ。戦闘中に感じていた何か、としか言えない感覚もキラを危険だと告げている。
だが、今のキラは何時ものキラだ。そう思うとようやく肩の力を抜くことが出来る。キラはストライクでフレイのデュエルをアークエンジェルへと運んでいく。その間、フレイはじっと考えていた。先ほどの戦闘で感じた不思議な感覚と、キラの変化について。
「なんだったのよ、あの感じは。相手の動きが感じられたというか、周りの状況が見えたというか･･････変な感じだったわ。それにあのキラは一体･･････？」
分からなかった。何がどうなっているのか。ただ１つだけ確実なのは、自分の初陣はこれで終わりだという事だ。頭部を失った以上、この作戦にこれ以上参加する事は出来ないだろう。
それに、ようやく自分は１つだけだが答えを見付けられたのだ。その事がとても嬉しく、そして悲しい。そう、自分は、とても酷い過ちを犯していたのだから。戦場とは自分の望む様にはならない。本気を出さないなんて余裕は全く無い。自分が何時殺されるか分からない。そんな恐怖に晒され続けるのだ。
「ご免ね、キラ。私が間違ってた」
悔恨とともに、フレイはそう呟いた。父を救えなかった事でキラを恨んだのは間違いだった。あの時は何も知らなかったから、ただ感情のままにキラを責めてしまった。あの時はまだ仕方が無かったかもしれないとも思う。だけど、その後にキラを利用したのは、復讐の道具にしようとしたのは間違いだった。
自分には、あの優しさに包まれる資格は無い。キラと共に居てはいけない。許しを請うことも出来ないだろう。
「･･････全てを話そう。そして、キラの部屋から出ていこう。きっとキラは怒るだろうな。もう２度と口も聞いてもらえないかもしれない」
そう思うと凄く辛いが、これが自分の背負う罪なのだ。それに、このまま騙し続ける方がもっと辛いから。
フレイのデュエルをアークエンジェルに運びこんだキラは補給を受けると再度出撃していった。まだまだ敵は多いのだから。アークエンジェルもザグレブ基地目指して進撃を再開する。
ザグレブ基地に入ったクライスラーはヨーロッパ方面軍司令部に作戦成功の暗号通信を送った。これを受けたヨーロッパ方面軍は予備兵力を前線に投入し、一気に勝負に出た。ザグレブ基地という補給拠点を失ったザフトの抵抗は急激に弱まり、指揮系統も寸断され、遂に降伏か玉砕かの選択を迫られる部隊が続出することになる。
ザグレブ基地に下りたアークエンジェルは完全に制圧され、安全が確保された基地でようやく一息付く事が出来た。あの激戦からやっと解放された乗組員の疲労は大きく、持ち場で倒れこむ様に寝てしまう者も少なくはない。
そんな中で、フレイは１人で戦火の跡が生々しいザグレブ基地を歩いていた。あちこちに擱座した戦車やＭＳの残骸が見られ、戦死した両軍の兵士の遺体が回収もされないままに放置されている。フレイはそんな中で、１人のまだ若い、自分と同じくらいのザフト兵士の死体が持っている物に気付き、屈んでそれを手にとって見た。それは、おそらくプラントに残してきたであろう家族の写真だった。両親と、まだ小さな弟と一緒にこの兵士が写っている。
この兵士は何を思ってこの写真を見ていたのだろう。もう会えない家族への謝罪か、それとも望郷の念か。この写真に写っている家族はとても幸せそうだ。戦場になど出てこなければこの幸せを維持できただろうに、どうして出て来たのだろう。
「･･････あなたも、守りたかったの。家族を？」
きっとそうなのだろう。プラントを戦火から守るため、この写真の家族を守るために武器を取ったのだ。キラも友達を守りたくて武器を取っている。敵も味方も同じ理由で武器を手に殺し合っている。なんて空しい行為なのだろう。
「･･････でも、今は戦うしかない。そういう時代なんだから」
写真を返して、フレイは立ち上がった。乾いた風が赤い髪を揺らす。その顔には深い悲しみの色があった。だが、目を逸らす事は無い。この悲惨な光景を忘れてはいけない。これが戦争なのだと、自分の胸に刻まなくてはいけないのだ。
「帰ろう、アークエンジェルに」
踵を返し、フレイはアークエンジェルへと戻った。次にすべき事を自覚して、決意を秘めた目で1歩を踏み出す。もはや、迷いは無かった。
うーん、フレイ様に一喝されてキラ君エンジンがかかってますねえｗ
でもアズラエル、あの３人組が作ったファッションとは一体･････こっちの方が気になるのは何故？
>>キラ♀
トールのフレイ君不信が上昇しまくっている。だがカズィよ、苛立ってる人にそれは火に油だぞ
あの写真は確かに痛いだろうなあ。本編と違って４人もいるし･･･････
ああ、でもサイを見て憤慨するトールもなんだかカッコイイし、どっちを応援した者やら･････
でも、まさかカガリまで反転してたとは･･････虎は大丈夫っすよね？ｗ
おバカガリたんｷﾀ───( ゜∀ ゜)───!?って男！！十字の傷痕!？
ふもっふの主人公みたいですね。フレイ様のスレだけど、おんなじ
くらい萌え萌えなのでお許しを。
>流離
フレイ様一気に頓悟したようですね。でもキラとの間で何かありそう。
連合のAAの扱いも興味津津。
うーん、前向きですな！
がんばって困難をのりこえてほしいものです。
随所に本編の重要セリフが使われているのがﾜﾗﾀｗ
＞キラ（♀）×フレイ（♂）
前のほうにフレイ様について「怜悧な思考」とあったけどその通りだなあ…
クールだｗ
そしてトールの騎士道精神ナイス！
ひとりひとりが丁寧に描かれていていつも読み応えがあります。
カガリがどれくらいオトコマエなのかも気になるところ。
＞流離う翼
フレイ様初陣おつかれさま！
この悟りがどうつながっていくのか…
そしてスコット -人-ﾅﾑﾅﾑ
フィリス他、不穏さをましてきた展開も楽しみです
もともと相当の遅筆なので、続くかわかりませんが…
本編後日談補完です。
５０話終了直後からと思ってください。
人物描写以外を書くのは初めてなので
軍隊用語等、間違っていたらツッコンでやって下さいm(_ _)m
また、見返す時間が足りなくて、展開を勘違いしている点があれば
大目に見てやってください…
では。
"大天使"の名を冠する戦艦も、今は星海を漂うひとつの鉄屑であるかのようだった。
不沈艦と名を馳せたその威容は、僅かに面影として留まっているに過ぎない。
艦橋の中は、その外の真空空間が染み込んだかのような
異様な沈黙が支配している。
引っ張りすぎたゴムのような、倦怠した緊張感。
誰もが少しも動かない。
数分か、それとも僅か数秒に過ぎなかったのだろうか、
その奇妙な時間が過ぎた頃、ただひとり立っていたディアッカが、ふっと肩の力を抜いた。
「…終わったな」
その呟きに硬直を解かれたのか、ミリアリアは彼にきょとんとした眼を向ける。
「え？」
「聞いてなかったのかよ、今の…あのオバサンの放送」
「そうね」
マリューは、溜め息を細く吐き出しながら、その頭を背もたれにもたせかけた。
「ディアッカ君の言うとおりだわ。戦闘は終わった…」
そして、眼を閉じて小さく付け加える。
「…たぶん」
「艦長！」
眼を閉じたまま動かなくなったマリューを心配して、
サイが通信士席を蹴って艦長席の前へ回り込む。
マリューは力なく眼だけを動かしてサイを見る。
「…ああ、悪かったわね。…戦闘配備、解除していいわ」
「艦長」
サイはだがまだ、命じる声も弱々しいマリューを案じるような様子だ。
「艦長は、少し休まれた方が…」
マリューは、そんなサイを見て少し微笑んだ。
（キラ君のことも心配で気が気でないでしょうに…）
が、それもミリアリアの言葉でまた、軍人の顔へとひきしまる。
「艦長！ドミニオンの脱出艇２隻から、救援信号がでています！」
「……」
「…どうしましょうか？」
「ほっとけよ」
マリューが口を開く前に、吐き捨てるように言ったものがいた。
ディアッカだ。
「おい！」
すかさずトノムラがそれをたしなめる。
確かに今はそれどころではない。
航行に不具合がないか艦の検査も必要だし、乗員は疲労しきっている。
見捨てるとなれば条約には違反だが、無条件に受け入れればいいというものでもない。
ましてや、相手は先ほどまで撃ちあっていた艦…
暫くすれば他の連合艦も通る可能性がある。
放置、もしくは拒否したとしても、批難されるような行為とは言えないだろう。
だがディアッカの判断がそこまで考えてのものか、
ただ自分達を傷つけた相手だったからという少年じみた被害意識によるものなのか、
それはその場にいる誰にもわからなかった。
トノムラは、ディアッカの年の頃から後者だととっさに考え声をあげたのであったが、
それは早計であったかもしれない、と思い直していた。
何しろディアッカは、コーディネーターであるという一点を以ってして、
考察力や判断力が、この場の誰よりも勝っている可能性があったのだから。
一方、当のディアッカは、トノムラの制止を「艦長の命令を待て」という意味だと解釈し
しまったというように口を閉じた。
ミリアリアが一瞬、彼を敵を見るような眼で見たのも彼を落ち着かなくさせた一因だった。
ナタルさんがいるかもしれない。ミリアリアはそう思っていた。
その可能性が低いということは彼女にもわかったが、
それでも期待をよせずにはいられなかった。
（だって、ナタルさんが少佐を殺すはずがないもの）
そこまで思ってから、彼女は自分の中で何かが麻痺しているような気持ちに捕らわれた。
「…バジルール中尉」
その生存を願ってしまう自分を、ノイマンは心の中で叱責した。
違う、俺は、あのひとが率いた乗員と会ってみたいだけだ。
言い訳のように、無理やりそう考えてみる。
「…同じ事か」
ノイマンは自分の女々しさに失笑した。
少佐を失った艦長に無理はさせられない。俺がしっかりしなくてどうする。
マリューは唇をかみしめた。
もともと自分は判断が得意な方ではないと思う。
今はそれに輪をかけて、どうすればよいのかわからない。
その決断が重大なものなのか、瑣末なものにすぎないのか、そんな事でさえ見当がつかない。
今、艦に他艦の乗員を受け入れている余裕などない。
ましてや、連合の軍人など受け入れたところで、どう扱えばいいのか。
返還するとしても、返還の機会はあるのだろうか。
停戦を迎えた今、連合軍と接近するだけで敵とみなされ撃たれる事はないかもしれなくとも、
脱走の罪を問われないという保証などない。
どう考えても、受け入れることは得策ではない…
だが、あの脱出艇にはナタルがいるのではないか？
ナタルが沈む艦を後にするとは考えにくい。
だが逆に、その後のクルーを責任を持って指揮する事を選んだとは考えられないか。
しかし、艦長以外の者がローエングリンを許可できるのか。
ああしかし、早く決めなければ…乗員は私の判断を、命令を待っている。
思考は乱れるばかりだった。
（こんな時、あなたなら何て言うかしら、ムウ…？）
また一筋の涙が、頬を伝った。それはいつ枯れるとも知れぬ悲しみの発露。
だがその呼びかけが彼女に、ひとつの答えを与えたようだった。
涙にぬれた唇が言葉を紡ぐ。
「…わかったわ」
その声は自分でも意外なほど、力強かった。
「受け入れると伝えて。カタパルトは脱出艇の着艦準備」
遂にフレイ様とキラの関係が･････････
フレイ様が自分から分かれるのか。少し意外ですな。この後どうなって行くんでしょう
艦内の人間関係の変化も気になるです
>>メビウスの円鎖
ドミニオンからの脱出艇ですか。これでナタルの死亡と、フレイ様もドミニオンに居た事が伝わるのかな
しかし、扱いは微妙だよなあ。ＡＡは脱走艦で、投降者を引き渡そうとしたら確かにそのままＡＡも捕まるかもしれんし
マリュ−が悩むのも仕方無いだろうなあ。
＞フレイは何故か複数の恋愛を平行させたことがなく、その娘と付き合っている
＞限りにおいては極めて誠実に対応していたからだ。
ロイエンタールｷﾀ━━━━━（ﾟ∀ﾟ）━━━━━!!!!
キラではＧの優秀性を証明する事にはならなかった。コーディネイターが乗ったから、という事になってしまうから。Ｇはナチュラルが乗ってもコーディネイターに勝てる性能を備えたＭＳなのだから。その意味では今日のフレイの戦果は大きな意味を持っている。
このフレイの活躍に誰よりも感動したのがマリュ−だった。ナチュラルが乗ってもコーディネイターに勝てるＭＳとして開発されたＧ兵器達。その開発に最初から関わってきたマリューにしてみれば、このフレイの活躍はまさに自分の努力が報われた瞬間だったのである。
クライスラーの直属の上司である第６軍司令官のコリンズ大将自らがザグレブ基地を訪れ、アークエンジェルの活躍を声高に称えている。
「このカスタフ作戦の成功はアークエンジェル隊の活躍による所が大きい。私は彼らの功績をここに称え、感謝したい。そして、デュエルパイロット、フレイ・アルスター准尉の活躍にも」
コリンズ大将はフレイを壇上に上げ、自らその胸に勲章を授けた。幾らＭＳを駆っての事とはいえ、初陣でＭＳ４機を堕とし、７機を撃破したというのは空前絶後の戦果なのだ。勲章を与えるに十分な活躍と言える。
フレイは表向きはとても嬉しそうにしてみせていたが、内心では随分と冷めていた。自分が生きているのはキラのおかげなのだ。キラが助けてくれなければ自分はあそこで死んでいた。そのキラが、自分よりも遥かに多くの敵機を屠ったキラが認められないのに、なんで自分がという思いがあるからだ。何となく分かってはいる。連邦事務次官の娘が死んだ父の敵を討つ為に自らＭＳに乗って戦場に立つ、などという陳腐な宣伝でもするつもりなのだ。別にそれくらいはかまわないが、面白い訳ではない。
フレイは壇上から仲間たちの姿を探した。ここには士官しか招待されてないからサイ達の姿はないが、マリュ−やフラガ、キースといった人たちの姿はある。みんな自分の方を見て笑っているようだ。
勲章の授与が終わって解放されたフレイはマリュ−達の所に来ると疲れた苦笑を浮かべた。
「少し緊張しました」
「そうは見えなかったわね。あなた、こういう場所は慣れてるの？」
「父に連れられて、少し」
マリュ−の問いに答えながら、フレイはワイングラスを手に取った。それを見てフラガが面白そうな顔になる。
「おや、飲めるのかい？」
「えへ、こうみえても結構強いんですよ」
「ほお、人は見掛けによらないねえ」
おどけて肩を竦めるフラガの前でフレイはワインを口にした。白い液体が瞬く間に消えていく。それを見てどうやら本当に酒に強い様だとフラガは思った。
フレイとフラガとマリュ−の隣のテーブルではキラとキース、ナタル、ノイマン、トールがいた。５人とも、いや、ナタルを除いた４人がおいしそうに料理を口に運んでいる。
「これ美味いなあ」
「ですねえ、何か分かんないですけど」
キースとトールが我先にと料理を平らげていく。その隣ではノイマンがワイングラスの山を作っている。そしてキラは顔を赤くしてテーブルに突っ伏していた。どうやらノイマンにしこたま飲まされたらしい。意識はあるようだが起きる気にはならないようだ。そしてナタルは額を押さえて頭痛に耐えていた。
「･･････大尉、ケーニッヒ准尉、もう少しマナーというものをですねえ」
「俺の生まれはそんなにご立派なものじゃ無いからな〜」
「俺はテーブルマナーなんか教えてもらってませんよ」
２人して胸を張って言い切ってくれた。その一言にナタルの中の何かが切れそうになる。
「艦長、少し良いでしょうか？」
「何かしら、アルスター准尉？」
「前の、続きを聞いてほしいんです」
フレイの目に強さの光りがあるのを見て取ったマリュ−は小さく頷いた。隣に立つフラガに声をかける。
「少佐、ちょっと席を外しますので、後をお願いします」
「お、おいおい、どういう事だよ」
「いえ、女同士の話ですわ。少佐が気にするような事じゃありませんよ」
一見笑顔で、だがハッキリとした拒絶の意思を見せるマリュ−に、フラガは渋い顔になりながらも頷いた。それを見たマリュ−はフレイを連れて人気の無い方へと歩いて行く。十分に距離を取ったと判断した所でマリュ−は足を止めた。
「それで、話というのは？」
「･･････前に、言いましたよね。私が憎まれて当然だって」
「ええ、あの時は理由を教えてくれなかったけど」
マリュ−はフレイの言いたい事が分からなかった。何故憎まれるのだろう。だが、フレイの話した内容を聞いた時には流石に驚愕を隠せなかった。
「私は、パパを殺された時、復讐を誓ったんです。コーディネイターへの復讐を」
「復讐って、それで軍に？」
「はい。でも、私には力が無かった。だから私が利用しようとしたのがキラなんです。あの子なら、コーディネイターを倒せるから。コーディネイター同士で殺し合って、最後はキラも死ねばいい。そう考えたんです」
「じゃあ、あなたがキラ君に近づいたのは？」
「キラを、闘わせる為だったんです。その為になら何を犠牲にしても良いって、自分がコーディネイターに抱かれるくらいどうってことないって、そう思ってたんです」
前と違って、フレイは泣いていない。何らかの心境の変化があったのだろう。だが、まさかこんな事を考えていたとは。でもこれなら全ての理由がハッキリする。何故彼女がキラ君に近づいたのか、どうしてサイ君から離れたのか。
「･･････フレイさん、あなた、カスタフ作戦で何を見つけたの？」
マリュ−にはこれが気にかかっていた。キースは何かフレイが答えを求めていると言っていたそうだ。そして、今目の前にいるフレイは明らかに何処か違う雰囲気を持っている。
「私は、知りたかったんです。戦場を、戦いを。キラは私のパパを助けてくれなかった。私はそれでキラを、コーディネイターを憎みました。でも･･････」
フレイはブカレストの街で体験したことを語った。戦火に逃げ惑う人々。目の前で死んでしまった、守りたかった子供たち。そして、民間人を平気で殺していくＭＳたち。その全てがフレイには初めてで、そして恐ろしいものだった。
これが戦争なのだと、その時フレイは初めて実感した。自分は何も知らなかったのだ。だから、それを知らなくてはと思ったのだ。だからデュエルに無理して乗りこんだ。そして戦場に立ち、キラと同じ恐怖を自ら体験した。
「キラを憎んだのは間違いだと、分かったんです。戦争に行ってるのに、守ってくれと言われても守り切れる訳じゃない。なのに、私は･･････」
マリュ−はどうしたものかと夜空を仰ぎ見た。フレイの気持ちが分からない訳ではない。自分も恋人を殺された時、同じように復讐を考えたものだからだ。だから今も軍にいて、Ｇ兵器の開発にも携わってきた。
「あなたは、どうしたいの？」
「･･････全てを話して、キラの部屋を出ていきます」
「そう、本当にいいのね？」
マリュ−の問いに、フレイは頷いた。フレイにはすでに個室が与えられているので、移る場所についての問題は無いからだ。ただ、フレイがキラと別れることの影響がどう出るかはまだ分からないが。
だが、１つだけフレイに伝えておきたい事があった。
「フレイさん、バゥアー大尉があなたの事をとても心配していたわよ。あなたが何か答えを捜しているって、バゥアー大尉は気付いてたみたい」
「そうですか、キースさんが」
自分を何時も鍛えてくれたキースは、同時に何時も自分を見守ってくれていたのだ。思えばあの人は何かといつも気を使ってくれていたように思う。あの人にも礼を言わないといけないと、フレイは思った。あの戦いを生き延びられたのは、間違い無くあの人の訓練のおかげだから。
戦後、ですか。それも直後の。ドミクルーを収容しても、返還に行ったら包囲されて主砲を向けられる可能性が高いで小ねえ。少なくともＡＡは味方でも無いし、停戦が有効な相手でもないですから。
しかし、ドミで起きた出来事の全てを聞かされたら、マリュ−はどれほどのショックを受けるのかなあ
>「聞いてなかったのかよ、今の…あのオバサンの放送」
って停戦申し入れの放送したのディアッカのママンでは？
自分のママンをオバサン扱いかよ。
上げ足のような気がしましたが気になったので
うわああ。ありがとうございます。しょっぱなからとんでもない間違いをしちまった…
アイリーン・カナーバだと思ってました。見返さなければ…
どうもディアッカママンって印象弱いんですよね…どんなヒトだっけ（おい
タッド・エルスマンやイザークママンエザリアは忘れられないんですが(汗)
すんませんでした。
痔は父だけで母の存在は一言も出てない。
フレイ様、お疲れさまでした。
そして答えを見つけられたのですね…
強くなったね ･ﾟ･(´Д⊂ヽ
魔乳のお姉さんっぷりもイイ！
そして本編とはまた違う形で酒に強い弱いが表れていて(･∀･)
トール…マナーのないのまで自信いっぱいなのかよ…ｗ
ありがとう。了解しますたm(__)m
キラとは格納庫から一緒に居住区まで戻ってきたが、フレイは用があるからと言ってキラと分かれた。
そして、フレイは今、人を探している。
賭けであった。
以前はキラを戦わせるための賭け。
その為に、サイたちを巻き込んだ。
今回は違う、友達の命を護るための賭け。
キラに、みんなに戦争から離れてもらう。
幸せになってもらう。
それが、今のフレイの願いであった。
すでに一度失った命。
その命を戦争という名の天秤に乗せる。
夢でも失いたくないキラの笑顔。
それを護るのがフレイの選んだ戦いである。
しばらく探し続けていると、目当ての人物を見つけた。
アークエンジェル副官ナタル・バジルール中尉。
おまけとしてホフマン中佐もいる。
「バジルール中尉。」
「んん。」
フレイの呼びかけにナタルが気付き、振り向く。
「フレイ・アルスター」
「アルスター、では彼女が？」
ホフマンの問いにナタルは頷く。
フレイはナタルの前に立ち、決意を述べる。
「私、軍に志願したいんです。」
「何をばかな。」
訝しげに首をかしげるナタル。
ナタルはフレイとの面識が少ない。
その少ない面識の中でナタルは、フレイのことを戦争に恐怖する子供という認識であった。
「私、何も知りませんでした。平和なヘリオポリスにいて、戦争なんか遠くのことだとばかり思っていました。だけど、戦争はこんなに身
近で起きている。パパは戦争をなくすために仕事をしてきました。パパの意志を継ぎたいんです。軍に入って私が役に立つのかわかりませ
ん、戦争に勝ったら平和になるとも思っていません。でも、私のような悲劇を少しでもなくしたいんです。護りたいんです。だから私、軍
にしがんしたいんです。」
決意の言葉。
それが思いを志へと変える。
フレイの志を聞いてナタルは衝撃を受けていた。
自分より１０才も違う少女が今だけではなく先をも見ている。
今までナタルは戦争に勝てばいいと考えてきた。
その為の行動をしてきた。
しかし、その先はどうだろ？
「わかった、我々は君の意志を尊重しよう。」
そんな考えにふけっていた時、ホフマンがフレイの志願を了承した。
「いいかね、バジルール中尉。」
「は、はい。」
躊躇しながらも、ナタルは返事をする。
フレイの戦いが始まる瞬間であった。
民間人がメネラオスへのランチへと次々と乗り込んでいく。
その中には先の戦闘の時にぶつかった少女もいるし、キラやサイ、トール、ミリアリア、カズイもいる。
「フレイ、遅いなぁ。」
サイは後ろを振り返りながら呟く。
民間人はメネラオスに移るという話は艦内放送で伝えられており、またキラからフレイは用事があると伝えらていたため先に移送船にきて
いた。
「俺、ちょっと見てくるよ。」
「あ、僕も。」
キラがついていこうとすると、サイは押しとめる。
「いいって、ちょっと行って来るだけだからさ。」
と言って、サイはキラ達から離れた。
この時、サイの中には焦燥感が生まれていた。
頭の中に渦巻く闇。
なんでキラと一緒にいた？
なんで俺の傍にいてくれない。
アイツは君の嫌いなコーディネーターだぞ。
そんな考えが浮かんでくる。
「何を考えているんだ俺は。」
頭を振り、先の考えを頭の隅に追いやり、フレイを探すことだけに集中する。
ベサリウス、ガモフ、ツィーグラが合流し、戦闘への準備が着々と進んでいた。
全てのＭＳの整備が終了し、パイロットが乗り込んでゆく。
アスランはイージスに乗り込み、いつでも発進できるようにを起動させる。
また、先の戦闘で顔に傷を負ったイザークも、介護兵を振り切りデゥエルに乗りもうとする。
今のイザークにはスライクへの復讐だけが心を占めていた。
連合
ナスカ級一機、ローラシア級二機が接近をレーダーが感知し、全艦に第一戦闘配備が発令された。
警告音よ艦内放送により、キラ達も戦闘が近いことを知る。
「おいそこの、さっさと乗れ。」
ランチにいる連合兵がキラ達を急かす。
「どうする？サイとフレイがまだ来てないよ？」
そわそわしながら、カズイは訊いてくる。
その言葉には、さっさと乗ろうと言う気持ちが見え隠れしている。
「もう少し、待てませんか？」
トールが尋ねる。
「戦闘が始まっちまうんだよ。」
連合兵は言葉にはいらつきが見える。
このグループのリーダー的な存在のサイがいない。
今、キラ達は究極の選択をしなければならなかった。
震えていないか？
泣いていないか？
そんなことを考えながらフレイを探す。
そして、視界の先に赤い髪が見えた。
「フレイ。」
赤い髪を追うサイ。
もう一度、呼ぶ。
「フレイ。」
赤髪の少女が振り返る。
「サイ・・・。」
言葉と共に表情がフレイの驚きを伝える。
また、サイもフレイの着ている服に驚きを隠せない。
フレイの着ている服は先ほどまでミリアリアが来ていた服と同じ連合の制服であった。
「フレイ、なんでその服を・・・」
「軍に志願したからよ。それよりサイ、早くランチに乗って、戦争が始まるわ。」
と、言いフレイはその場を去ろうとする。
「軍に志願？だったら俺に相談ぐらい、俺は君の・・・」
「ごめんなさい、サイ。私、あなたのこと嫌いじゃないわ。でも、好きかって訊かれると頷くことはできない。」
フレイの言葉に衝撃を受けるサイ。
思ってもいない言葉であった。
あんなに自分を頼りに、傍に、寄り添っていたのに。
・・・好きじゃない。
その考えがサイの思考を反転させた。
「だったら、なんで。」
サイはフレイの腕を掴み、強引に振り向かせる。
「痛い、サイ。」
しかし、サイは力を弱めることはない。
むしろ強くなっていく。
「どうして婚約の話が出た時、君は拒否をしなかったじゃないか。」
「・・・パパが言ったからよ。」
フレイの答えにサイは力を弱める。
「パパがそうしろって言ったから。でも、そのパパはもういないわ。だから、私は自分の意志で歩くの。それに、婚約も話だけで正式なも
のじゃないでしょ？だから私達の関係は変わらないわ。」
この二人は恋人関係ではない。
というか、その関係を飛び越えて婚約者になろうとしていた、家族ぐるみのよい友達である。
「そんな・・・」
フレイの腕を掴んでいた手を離し、力なく俯くサイ。
「サイ・・・。」
・・・ごめんなさい。
心の中で謝罪をするフレイ。
「早く、ランチへ。」
フレイはその言葉をサイに残して去っていった。
残されたサイ。
フレイの言葉通り、ランチへと向かう。
しかし、その足取りには力なく、一歩一歩が重い。
暗い気持ちの中、乗り場へと着くが、すでにランチは出発しており、取り残されるサイ。
心の中は、愛しい少女が自分の元より去っていったことだけが占めていた。
「サイ。」
俯き、沈んだ表情をしているサイを呼ぶ声が聞こえた。
ゆっくりと声をしたほうを見る。
声の主はトールである。
だが、いたのはトールだけではなくキラ、ミリアリア、カズイもいる。
「なんで、みんないるんだ。」
「そりゃあ、フレイは来ないし、サイだって帰ってこない。俺達だけ行くってのなぁ。」
「そうよね。」
トールの言葉にミリアリアが同意する。
「みんな心配なんだよ。」
カズイも言う。
「サイ、フレイは？」
フレイがいないことに気付き、キラが尋ねた。
「・・・フレイは軍に志願した。」
「「「「えぇ。」」」」
サイの言葉に皆、驚きを隠せない。
あれほど戦争を恐怖してきたフレイが志願したことが信じられないのだ。
「嘘でしょ？」
ミリアリアがサイに確認をとる。
「いや、本当だ。」
一同沈黙する。
そんな空気を嫌って、カズイが訊く。
「これから、どうする？ここにいても・・・」
「ああ、そうだな。とりあえず部屋に行こう。」
トールの言葉に皆同意し、今まで使っていた部屋に戻った。
フレイ様のクールさとトールの熱さの対象がいいです。
カズイは相変わらず日和見みたいだすね。
乙です。
＞＞メビウス
脱出艇をどうするか？
マリューがどう思うのか？
苦しみぬいた結果の判断がたのしみです。
乙です。
＞＞流離う
初の実践を潜り抜けたフレイ様が別れを選べるほどの精神を得ました。
それでも、寂しがり屋の女の子。
キラの行動に注目です。
乙です。
「やっぱり 今回の春コレは各ブランド様子見という感じのデザインが多いと見られても
否めないな。
保守的というか守りに入ったデザインばかりで
新鮮味が全く感じられない。
昔はいきのいいデザインを多く見せられたし
ワクワクさせられたもんだが・・・
こんなのばかり見せられてばっかりだと、
ウインドーショッピングやってるほうが面白いかもな、
右向け右のデザインじゃすぐに飽きられるということに
気付かないのか 上の連中たちは、
でもここのコーヒーはまずいな、 どこのケータリングサービスだ？
まともに豆も挽けないのか、よくこれでコーヒーなんていえるな。
こんなんだったら 自分で挽いたものを持って来るべきだったな」
愚痴をこぼしてるのは バクーという老舗のファッション雑誌の編集長バルドフェルドだ。
アスランのザフトとは姉妹関係に近いが、お互いライバルでもある。
売上もほぼ同等で 世界ファッション誌グランプリでも何度も受賞したことのある
世界的に各付けの高いファッション誌でもある。
コレカラヨ オモシロクナルノハ
ワタシガチュウモクシテルノハ
アークエンジェルノ キラヤマトヨ、アノワカサデドンナデザインヲシテクルカ チュウモクネ」
秘書のアイシャがバルドフェルドをたしなめた。非常に優秀な秘書でもあり
アンディの恋人でもあるようだ。
「それにしても、うちのダゴスタ君はちゃんとカメラとってるのかね〜
肝心なところをミスるのが欠点なんだが 集中してる時はいい写真とるんだよ
あいつは そこが魅力で雇ってるんだ うちの雑誌になくてはならない存在だよ」
あいつはもっと評価されてもいいはずなんだがな〜
いろいろヘッドハンティングの話がくるのに ほとんど断ってるのはなんでだろうな」
「キットアンディヲソンケイシテルノヨ ソレニアノコハ コノバクーニロイヤリティ
ミタイナモノヲカンジテルカモシレナイワネ」
「ならいいんだがね〜いずれにしてもあのザフトにだけは 負けられないからな」
「それはお互い様です。バルドフェルドさん われわれもただ見にきてるわけじゃないので」
アスランとカガリはにらみつけるように席に座ってるバルドフェルドを見下ろした
「おー、ザラ君にオーブのお嬢ちゃん な〜んだいたのか奇遇だな〜こんな所でバッタリとは」
「お嬢ちゃんじゃない！カガリだ。なんでおまえなんかに お嬢ちゃん呼ばわりされなきゃ いけないんだよ
この虎野郎（怒）」
カガリの顔はタコ以上に赤く怒っていた。
「まあまあ 落ち着いて、コーヒーでも飲んで リラックスリラックス。
お互いライバルとはいえ、ここは一杯やりながら取材しましょうよ、お二人さん」
そこへカガリの上司 キサカ オーブ春コレ取材部長とその部下のアフメドがきた。
「カガリ、さがしたぞ 打ち合わせが始まる サイーブ部長もカンカンだ
われわれの席はむこうだ 時間がない いくぞ」
「わかったよ、じゃな アスラン またあとでな」
「ふ〜 苦手なんだよな〜あういうタイプは
いつまでも追っかけられそうでね〜
ところできみのところは だれがカメラマン？
写真で定評のあるうちとおたくでは甲乙つけがたいしね 〜
うちのダゴスタ君のライバルはだれなのかな〜と思ったんだがね」
「ミゲルとラスティですよ。ふたりともぶっきらぼうで そっけないですが 実力は本物です
うちもだてにファッション誌をやってるわけではないので」
「あらそう、それはそれは楽しみですな どんな物ができあがるか」
「わたしも取材がありますので ここで失礼します。また のちほど・・・」
「なるほどね たしかザラ君はアークエンジェルの
キラ・ヤマトと親しい関係と聞いたことがあるな、
気になるね〜 アークエンジェルのキラ・ヤマト君
どんな才能をもってるのか・・・気になるね〜
ダゴスタ君に分析を頼もうかな〜
携帯は っと、ピポパっと あ〜もしもしダゴスタ君 ちょっと用事頼まれてくんないかな」
「
プラント社に勤めるアスランの友人３人の１人 イザーク・ジュールが愚痴をこぼした
「しょうがねえだろう おれたち男だけで遊ぶっていって もつまんねーし、
それに女もいないし 金もそんなにないし、アスランがくれたパスで
春コレ鑑賞するのも けっこうおもしろいかもな
それに グレイトなモデルの女もいるかもしれないし、ナンパするにはもってこいの場所だしな」
ディアッカ・エルスマンが楽しそうに答えた。
「でも雰囲気がいいですね〜こういうの僕初めてなんです この春コレって 世界的にも 名のあるコレクション
なんでしょう？ こういう雰囲気っていいですよね〜
ぼくも 今度のピアノのコンサートもこんな雰囲気でや りたいですよ」
もう１人 髪は緑で童顔のニコル・アマルフィが答えた。
「おまえはいいよな 特技があってさ おれとイザークは シューティングゲームくらいだよ
知ってるか ＧＵＮＤＡＭ ＳＥＥＤって流行のゲーム があるんだけどさ
それのストライクってモビルスーツが強いの何のって おまけにフリーダムっていうのも
強すぎるんだ でもそのストライクをイザークは
一回だけ倒したんだぜ すげーだろ？」
自慢そうに答えるディアッカだったが 返ってきた答えは冷めたものだった。
「すいません ゲームは興味ないんです、それに目が悪く なるし ごめんなさい」
「そうだよな、ピアノが友達のニコルは興味ないのは当然か ま、いいけどさ
あ〜あ どっかグレイトな女をナンパできないかな〜
あれ？あの向こうに走ってるあの子めちゃかわいいじゃ ん どこの子かな？モデル？
にしては地味な格好してんな、
首にぶらさがってる パスカードの名前はええとなんて 書いてあるんだ？・・・
くそっ 見えねえな えーと どれどれ
アークエンジェル所属 ミリアリア・ハウ？
いいね〜もろタイプ あんな子もこんなところで働いて るんだ。
パスもあるし、べつに疑われるわけでもないし
ちょっと声かけてくるわ」
「おい待て ディアッカ 貴様 男として恥ずかしく
ないのか！男なら男らしく」
イザークが追おうとしたが ディアッカの足は速く消えてしまった。
「しょうがない人ですね ディアッカは女性をみつけると すぐナンパするくせは
よくないですね、でも分からないでもないですけどね。
とにかくせっかくきたんですから イザークも別行動を とってもいいのでは？
ぼくもいろいろ見たいですしね じゃ またあとで」
「おい ニコル！ 待て まったくどいつもこいつも
勝手な行動ばかりとりやがって
知らないからな 俺は フン（怒）」
「
でもキラのためにも アークエンジェルのためにも」
ホールから控え室に向かおうとしてた その時後ろから男の声が聞こえた。
「ねえ 彼女 名前なんていうの？
おれはディアッカ・エルスマン
暇だったら、どっか遊びに行かない？わるいことはしなからさ〜」」
「すいません、忙しいんです。ナンパだったらお断り、
ほかにアタックして
それにタイプじゃないし、彼氏はちゃんといますから またね」
「あ〜ちょっと待ってよ 彼女ったら〜
そういわれちゃうと ますます知りたくなっちゃうんだ よな〜、そういうたちでね 俺って」
「ミリアリア 悪いね フレイのことで忙しいのに
いくら人手が足りないとはいえ 買物までやってもらうなんて 」
キラがばつの悪そうな顔を浮かべて謝った。
「いいのよ それにみんな動きっぱなしじゃ
あと持たないし、一息入れるのも 大切だと思ったから 気にしないで
それより私 今さっき ナンパされちゃった。
信じられないでしょうトール？」
「なんだって〜？どこのどいつだ ミリアリアにナンパ なんてしようとしたやつは！」
トールがめずらしくヒステリック気味に怒ってる。
「心配しないでトール ちゃ〜んとお断りしといたわ、
タイプじゃなかったし
それにナンパって大嫌いなのよ 軽軽しくみてて 浅はかなのよね〜
女はそんなに甘くないのよ 」
「ミリアリア・・・よかった〜おれ本気で心配しちゃったよ」
二人は見つめあい、互いの気持ちを確認し、心を落ち着かせた。
そんな甘い雰囲気をいつまでも味わう時間などなく逆に時間に追われる身
とはいえ、この瞬間を大切に心に刻み 自分たちの仕事に戻った。
その様子を控え室の入り口付近で覗き見していたディアッカは幸せそうな二人をただ見守り、
グレイトなカップルだな〜と羨ましくおもっていた。
>自分を何時も鍛えてくれたキースは、同時に何時も自分を見守ってくれていたのだ。
やっぱりキースいい味だしてますね〜
やっぱり演出がすごくうまいし、実感が沸いてくる・・・
うまいですね、頭下がります。おれもまだまだ勉強不足だな・・・
メビウス> 乙です。おれも気になってたんですよその後の展開、
ノイマン好きなんですよ、いい感じで。
ナタルとノイマンの再会もあったら・・・よかったのに・・・
キラフレ> 乙です。
女性のヒステリーへの対処には、殴るよりも、こっちの方が効果が高い
ことをフレイは知っていた。
フレイはつぼをよく抑えてますよね〜このＳＳも好きです。
イザークは、その放送の声に聞き覚えがあった。
プラントの将来を担う者として育てられた彼は、そして軍のエリートとして戦争に参加していた彼は
ひととおりの有力者とは面識がある。
「カナーバ評議員…拘禁されていたクライン派じゃないか」
（――なぜ、戦闘終了の指令がザラ議長ではない！？）
プラントで何かあったのか。
ヤキン・ドゥーエでの巨大な爆発は何を意味している？
ザラ議長が指揮をとれなくなったのだとしても、
何故…母上ではない？
不穏な憶測が頭を駆ける。
戻らなければ。
イザークは「アークエンジェル」へ通信チャネルをあわせた。
「おい！足つき…『アークエンジェル』！」
その艦を墜とすために戦ったことがあった。
その艦と戦ってニコルは死んだ。
「聞こえてるのか、返事をしろ、ディアッカ！！」
だが彼は元来そのような感傷に浸る傾向など持ち合わせてはいず、
また今はそのような間もない。
苛々とパネルの端を叩いているうち、幾ばくかのノイズの向こうから、応えがあった。
「艦長！デュエルより通信要求です」
「そう、こちらにつないで」
マリューは通信士席のミリアリアに答え、肘掛の受話器を取った。
「こちらアークエンジェル。デュエルのパイロットね。」
『…艦長か。デュエル離脱の許可を頂きたい』
「…勿論いいわ。君はこの艦の指揮命令に従う必要などないでしょう」
『そうだが…』
戦闘中にディアッカのバスターを運んで来た時の、怒鳴るような通信とは違い、歯切れが悪い。
マリューは小さく頷いた。
戦闘時は自分の判断で動き、そうでない時は行動に規範の裏づけを求める…
この少年は、軍人なのだ。それも優秀な。
「わかりました。離脱、許可します」
『…感謝する』
「待って」
通信を切ろうとするデュエルに向かって、マリューは今一度声をかけた。
「ディアッカ君や我々との共闘、感謝します」
『…別にお前らのためじゃない。…切るぞ。デュエル、離脱する！』
イザークは通信を切ると、デュエルの手からストライクのシールドを放させる。
ついで機体をプラントへ向け、ペダルを一杯まで踏み込んだ。
バーニアが爆発的な推進力を生む。
シートに体が押し付けられ、操縦桿を握る手に力がこもった。
（軍はどうなった。母上は。無事なのか？）
気の急く彼にとっては、それだけのGですら物足りなかった。
加速しきるまでの僅かな間ももどかしい。
（無事でいてください、母上）
速く。プラントヘ。
ディアッカは、モニターから遠ざかるデュエルの後姿を見送るように眺めていた。
「あの人も、仲間？」
「…ああ」
ミリアリアの言葉に、彼は肯定の言葉を返す。
彼の仲間という事は、彼女にとって、かつての敵という意味だ。
「キラ！おい、どうしたんだよ！眼を開けろよっ！」
「落ち着けって！気を失っただけだ…」
アスランは、心配してわめくカガリをなだめながら、静かに浮かぶフリーダムの機体を見やる。
腕や脚部の連結が千切れてばらばらではあるが、
残った翼の形のバーニアで、それがキラの搭乗機であった事がわかる。
「カガリ、キラを頼む」
キラをカガリの腕に預け、アスランはフリーダムへと向かう。
いくらなんでも、ストライクルージュのコクピットに３人は入らない。
フリーダムでキラを運べれば。
そう思い機体を調べ、胴部に辿り着いた時、彼は驚愕した。
フリーダムのコクピット付近は、ビームの直撃を受けたのだろう、
完全に熔けおち、シートが露出している。
メインカメラを内蔵する頭部も切断されている。
エンジン部に攻撃を喰らわずにいたのが不思議、と言ってもいい。
そうでなくとも、損傷がそこに達していれば機体は爆散していたに違いない。
キラが生きていたのは、奇跡としか表現のしようがなかった。
「うわ、…ひどいな、これは」
いつの間にか彼の隣に来ていたカガリが、フリーダムの惨状に声をあげた。
「…ああ、キラのやつ、よく…無事でいてくれた」
アスランは小さく微笑むと、首をめぐらせた。
あとは帰るだけだ。だがフリーダムに乗せて帰れない以上、他の手段を考えるしかない。
「さて、こうしていても仕方ないな。エターナルに信号弾を打とう」
「ああ」
カガリはふわりとルージュの機体へと舞い込む。
アスランは、カガリの腕から放されたキラを受け止め、彼とフリーダムとを交互に眺めた。
つい先ほどまで戦場を駆け、修羅の如き働きを見せた人型の鉄塊は
今や完全に静寂の中にある。
死闘の跡を、無残なまでに全身に刻んで。
「フリーダム、お前が守ってくれたのかな……それとも」
それとも、運の名を借りた宿命か。生きようという意志か。誰かの、強い、想いか…
そういうものが、彼を守ったのかもしれない。
いつもは遠く、戦闘を冷ややかに傍観しているような星々が
この時は、暖かくフリーダムやキラたちを見守っているかのように感じられた。
フレイ様はほとんど登場しませんが、ところどころフレイ様フィルターかかってるので…赦してください。
＞刻還り
＞夢でも失いたくないキラの笑顔。
フレイ様…･健気です。
その賭けは…吉と出るのか、凶と出るのか…？
そしてサイは、彼女が考えていたよりも彼女を思っていたんですね…
早い破局を迎えてしまってサイやヘリオ組が心配。
＞春コレ
虎ｷﾀ――(･∀･)痔ミリｷﾀ――！
とってもおバカなディアッカに笑いました。
トールが生きてたらおとせるはずないじゃんか！ｗ
人物多くて壮大になってきましたなあ…乙ですｗ
ニュートロンジャマーの影響で、著しく索敵能力の衰えていたアークエンジェルは、
砂漠の虎率いるザフト地上部隊の闇討ちをまともに受ける羽目になる。
第一級戦闘配備の発令に、自分のベッドから跳ね起きた艦長のマリューは、
後手にまわってしまったことに軽く舌打ちする。ニュートロンジャマーの悪影響
で広範囲のレーダー索敵が難しいのは敵とて同じだ。だったら、ＡＡの修理が
完了するまでは、じっと動かずに身を潜めていたほうが、敵に気づかれる可能性
は少ないと思っていたのだが、どうやらそれが裏目に出てしまったみたいだ。
それでも、これまで稼いだ貴重な時間で、アークエンジェルの外装修理は９割方完了し、
補給物資の調達こそ出来なかったが、ストライクと、フラガの地上用の戦闘機である
スカイグラスパーの戦闘準備もほぼ整えてある。
ただ、マリューを含めＡＡのクルーには、ほとんど地上戦闘の経験はなく、
敵は間違いなくザフトの砂漠専門の陸戦部隊であり、苦戦は必至である。
機先を制されたマリューは、ストライクとスカイグラスパーをギリギリまで温存し、
ＡＡのみの火力で敵に対抗するという、正攻法による撃退を指示する。
果たしてこのマリューの選択は、吉と出るか、それとも凶になるか。賽は既に投げられた。
突然鳴り響いた第一級戦闘配備の警報に、マリューと異なり、のそのそと亀のように
ベッドから這い出たキラは、一糸纏わぬ自分の姿に気づいて、慌てて反射的にシーツを
纏う。そのキラの狂態を面白そうに見つめているフレイの姿に気づいたキラは、
「もう、見ないでよ」と頬を赤らめながら、疾風のような勢いで軍服を着込んだ。
キラと同じベッドの上で、上半身を裸にし、腰から下に軽くシーツを侍らせた姿の
フレイは、「何を今更…」と言いたげな表情でクスクス笑っていたが、急に生真面目な
表情に切り替えると、「行くんだね、キラ…」と出陣の有無を問いかける。
苦味走ったフレイの凛々しい横顔から、女の子を危険な戦場へ送り出した上で、自身は
どうする事も出来ない己の無力さを嘆くフレイの苦渋を、キラは見て取ることが出来た。
キラは、フレイの心理的負担を少しでも和らげようと、初めてキラの方からフレイに
キスすると、「守ってね」と一言呟いて部屋から出て行こうとしたが、下腹部に強烈
な痛みを感じたキラは、危うくドアの前で扱けそうになった。
平気よ、このぐらい…。この前の生理痛の方がよっぽどきつかったんだから…。
キラは健気にも肉体の変調に耐えながら、身体を引き摺るようにして部屋を出て行き、
キラの姿が視界から消えた途端、フレイの表情が再び切り替わる。左手で自分の額を
抑え、必死に笑い声を堪えるフレイの歪んだ笑顔は、メフィストフェレス染みていた。
守ってね…か。
可愛いものだね。あんなオマジナイの効果を本当に信じているのだろうか。
マジナイは漢字に直すと、“呪い”と書く。つまりは実は呪怨の一種である。
そうとは知らずに、あの呪いのフレーズを心の支えとしているらしいキラ
のことを思うと、流石のフレイも憐れさを禁じえなかった。
そろそろ自分も服を着ようと、右腕を杖にして、ベッドから起き上がろうとした
フレイは、ぬるりとした感触に反射的に右掌をベッドシーツから離す。ゆっくりと
自分の右腕を目の前に掲げると、右手の真っ白な包帯に微かに赤い染みがついている。
「ふーん、コーディネイターも血の色は、ナチュラルと同じ赤なんだ…」
フレイは妙に関心したようにそう囁きながら、ペロリと包帯についた血を舐めてみる。
僅かに鉄分を含んだ生臭い血の味がする。
「くっくっくっくっく…。あははははははっ…！」
何が可笑しいのか、フレイは目元を片腕で隠しながら、音程のずれた声で笑い始め、
そのフレイの悪魔めいた笑い声はしばらく止まらなかった。
まさしく晴天の霹靂で、彼らは慌てふためきながら艦橋の自分の持ち場につく。
隣の席同士に座ったサイとミリアリアは、一瞬目が合うと、お互いに気まずそうに
目を反らしたが、目の前の緊急事態にすぐに気持ちを切り替え、自分達の職務を
果たそうとテキパキと端末を操作する。
赤外線スコープによる視的探索というかなり原始的な手段で、ようやく敵戦力を
見極めたナタルから撃退の指示が飛ぶ。
「敵はバクゥ五機か。これ以上、アークエンジェルに近づけさせるな。
バリアント、１番から５番まで装填。数秒刻みで発射せよ！」
レーダー照準の使えない今の状況では、ナタルも当たるとは思っていなかったので、
ストライクが発進するまでの足止めになればいいと考え、敢えて大雑把な指示に留めた。
案の定、ナタルの予測通り、砂漠での高い機動性を誇るバクゥは、ＡＡからの砲撃を
巧みに避けて、着実に本艦との間合いを詰めていく。
地上のバクゥに気を取られていたアークエンジェルは、空中の戦闘ヘリから思わぬ
奇襲を受け、艦橋に軽い衝撃が走る。ヘリごときの火力では致命傷は受けないだろうが、
補給の利かない今のＡＡには血止めの手段がなく、僅かな出血から、出血多量死
へと繋がりかねない。フラガのスカイグラスパーの発進準備が予定外に遅れており、
焦る艦橋の雰囲気の中、ミリアリアにストライクからの通信が入る。
「ストライク、今すぐ出れます！」
「キラっ！………じゃなくて、ヤマト少尉！」
艦橋ではなるべく私情を控えようと、敢えて階級で呼び直したミリアリアだが、
このどこかで見たようなシチュエーションに、嫌な既視感（デジャブー）を感じ、
不安そうな顔でキラを見つめる。
「平気よ、ミリィ。私、蛹から蝶に生まれ変わったんだから…」
「はぁ！？」
ミリアリアと違って、やや鳥頭の気があるらしいキラは、前回失策を犯した時と似た
ような行動を堂々と繰り返し、最近のキラの妙なハイテンションについていけない
ミリアリアは、素っ頓狂な声を上げる。
「マ…じゃなくて、ラミアス艦長？」
「まあ、大丈夫でしょう。今回はＯＳは既に戻してあるし、発進を許可します」
ミリアリアと同じく、マリューも今のキラに自分達の生命を預けるのに一抹の不安
を覚えたが、他に選択肢もないので、ストライクを送り出すことにする。
「くぅっ…！」
慣性の法則により、ストライクがカタパルトから射出される時に掛かる、
Ｇ（重力）の衝撃にキラは涙目になりながら必死に耐える。
今回のストライクの不安要素は、機体のＯＳではなく、パイロットの身体状況の方にあり、
今の変調をきたしたキラの身体にＧはきつかった。
ようやくＧから解放されたキラの眼前に、広大な砂漠と、犬のような形をした四足の
ＭＳバクゥが近づいてくる姿が目に入り、さっそくキラはランチャーを構えるが、
「きゃあっ！何よ！？」
足が地面についた途端、砂地に足を取られてあやうくバランスを崩しそうになる。
何とか体勢を立て直して、ランチャーを放つが、砂漠の熱放射で狂い捲くった照準
は出鱈目な方向にミサイルを飛ばし、動きの鈍ったストライクの機体には容赦
なく敵のミサイルが打ち込まれたが、かろうじてＰＳ（フェイズシフト）装甲に守られる。
宇宙の戦闘では八面六臂の活躍をしたキラも、流石に地上戦闘では勝手が違うようだ。
「こいつはもしかすると、このまま終わってしまうかもしれんな…」
赤外線機能のついた双眼鏡でじっと戦況を見つめるバルトフェルドは、彼の副官で
あるダコスタにそう振り返る。
名将と謳われる砂漠の虎は、戦闘に勝つ三つの重要な要素を開戦前から全て満たしていた。
曰く有名な、天の時、地の利、人の和である。
夜襲により確実にアークエンジェルの機先を制し、天の時を得て、
孤立無援に近いストライクを、彼の高い指揮能力のもとバクゥで取り囲み、人の和を得、
そして、砂漠での戦闘では圧倒的に地の利を得ている。
あのクルーゼ隊を何度も退けた実績を持つアークエンジェルとストライクだけに、
今回は単純な敵情視察に留めるつもりだったが、このまま楽に勝てるのならそれに
越したことはない。戦争はゲームではなく、敵の成長は味方に何ら益を齎さない。
バルトフェルドは一気に決着をつけるべく副官のダコスタに、彼の旗艦である
ザフト軍陸上戦艦であるレセップスにも攻撃参加を指示する。
だが、虎が設定した天地人の三つのアドバンテージのうち、地と人の二つが、キラと
謎の第三勢力によってこれから覆されようとしていた。
キラは得意の高速プログラムモードで端末を叩きながら、機体の砂漠への適応
を開始し、熱放射による照準の乱れまで修正する。慣れない砂漠の戦闘に戸惑って
いたキラだが、考えてみれば宇宙での戦闘だって、元々軍人でないキラにとっては
十分に最初の体験だったのだ。キラにはどんな戦闘環境にもその場で適応できる、
パイロットとして非常に稀有な資質を持っていた。
「二度も同じ醜態を晒せないのよ！ だって、私は女の子…いや女なんだから！」
キラは意味不明な発破を自分にかけながら、見違えるような動きと正確さで、
バクゥ一機を踏みつけると、至近距離からアグニを放った。
久しぶりに人を殺した感触に、キラの瞳から涙が零れそうになったが、
キラは必死に嗚咽を堪えた。
考えちゃ駄目…。考えたら、フレイも皆も死んじゃう。あの子達みたいに…。
「もうこれ以上、誰も死なせない。 絶対に死なせないもん！」
マリューやミリアリア達がどう思うと、キラ自身は大真面目に敵と戦おうとしている。
キラは瞬く間に、バクゥ二機を血祭りにあげると、アグニでＡＡを狙った砲弾を
撃ち落すという離れ業まで演じてみせる。後バクゥ二匹。何とか終わりが見えてきた。
その頃には、ようやくフラガのスカイグラスパーも出陣し、敵戦艦レセップスも
ＡＡへの砲撃に参加して、戦局は次第に総力戦の模様を帯びてきた。
「そこのモビルスーツのパイロット。死にたくなければ俺の指示に従え！」
突然、ストライクに発信者不明の謎の通信が入り、同時に地図が転送されてくる。
地図の点滅ポイントに罠があるから、そこまでバクゥをおびき寄せろ…という
得体の知れない人物からの指示に、キラは一も二もなく従った。序盤の苦戦と補給物資
の不足が祟り、ストライクのエネルギーはほとんど底をつき、ＰＳも既に落ちている。
さらに、先ほどからザフトの軍用ヘリが、スカイグラスパーやＡＡ以外の、何者かの
砲撃で全て落ちされている。ザフトに敵対する第三勢力が潜んでいることは間違いない。
何よりも、バス（低音）の人物の声が、キラに不思議な安心感を与えた。はじめて聞く声。
けど、どこか懐かしく、他人とは思えない…。
キラは様々な思いに囚われながらも、バクゥを地図で指定されたポイントまで誘導し、
バクゥの爪先を避わして、大きくジャンプする。次の瞬間、軽い爆発と共に地面が
陥没し、バクゥ二匹は落とし穴に落ち込んだ。
「クククっ…。掛かった、掛かった。何たって、エサが上等だからな…」
バイクの上から、偉そうに腕を組んだままその光景を見下ろしていた金髪の少年は、
ゴーグルの下の好戦的な瞳に肉食獣の笑顔を閃かすと、躊躇うことなく手元の起爆
スイッチを押す。その瞬間、キラの真下で大爆発が起こり、バクゥは粉々になる。
一連の戦闘経過を、顔色一つ変えずに見つめていたバルトフェルドは撤退を指示する。
虎は、ストライクの劇的な変化に地の利を失い、第三勢力の加入で人の和も失った
ことを知っていた。敵の戦力評価という当初の目的を十二分に達した今では、
深追いせずに大人しく退くのが、天の時というものだろう。
それにしても、あのストライクのパイロットの男性…まさかな……。
キラの鬼神の如き活躍に、ストライクのパイロットが単なるナチュラルでは
なさそうだと当たりをつけた虎も、流石にストライクのパイロットが、
まだ１６歳の少女であることには全く気づかなかった。
一応敵でないことは確認されているが、それでもマリューは用心しながらも、
自らＡＡの外に出て、彼らとの交渉に直接当たる。アラブ系の男たちは、自分達を
「明けの砂漠」と名乗った。どうやら、ザフトに抵抗するゲリラ組織の一つらしい。
例の声の持ち主が気になったキラは、ストライクから降りてヘルメットを取る。
辺りがざわめく。豪胆そうな男たちも、ＭＳのパイロットの意外な正体に驚きを隠せない。
「おい、お前……！」
キラが捜していた声の主が、自らキラの前に姿を現す。
「何でお前が、あんな物に乗っている？何故、お前があれを操縦できるんだ！？」
こ…この人は！？
キラは、目の前の金髪の少年の姿に見覚えがあった。
「あなた、モルゲンレーテの工場にいた……」
一緒にストライクの姿を見た時、「親父の裏切り者！」とか叫んでいたような気がする。
「そういえば、お前、あの時には色々と世話になったよな！」
言葉とは裏腹に、少年の態度に謝意はない。少年の敵意に近い視線にキラは身を竦ませる。
「まず、俺のことをいきなり女と間違えたよな？俺は女扱いされるのが一番嫌いなんだ」
「あ…あれは、頬の傷痕に気づかなかったし、あなたがあまりに奇麗だったから…」
「何より、お前の為に呼んでやった緊急用シェルターのエレベーターに、土壇場で
俺を押し込めやがったよな。あの後、俺は自分の命惜しさに、女の子から無理やり席を
奪った悪党として、シェルターにいた間、周りからずっと白い目で見られていたんだぞ！」
「ご…ごめんなさい！」
少年の迫力に気圧されたキラは、何でこの人の生命を助けた自分の方が謝罪するの
だろう…と疑問に思いながらも、反射的に頭を下げる。
先ほどのストライクの活躍が嘘のように、ビクビクと縮こまったキラの様子に、
まるで自分が弱い者虐めをしているような錯覚に捕らわれた少年は、軽く舌打ちして
しぶしぶ矛を収める。
「俺はカガリ。カガリ・ユラ。明けの砂漠の一員だ。で、お前は何て云うんだ？」
「キラ・ヤマト…、地球連邦軍少尉。アークエンジェル所属、ストライクのパイロット」
自分の姓名を名乗ったカガリに応えて、キラも自分の身分を名乗るが、そのキラの
自己紹介がカガリに与えた衝撃は大きかった。
キラ………キラだって！？ それじゃ、こいつがあのキラ・ヤマト！？
例のコーディネイターで、そして俺の……。
「きゃあっ！」
無意識に拳に力の篭ったカガリは、反射的にキラの頬を叩く。
「な…何するのよ！？」
理不尽な暴力に晒されたキラは、涙目になりながらカガリを睨もうとしたが、
その表情が途中で萎縮する。倒れこんだキラを見下ろすカガリの瞳には、
先ほどまでの敵意の他にも、今度は明確な憎悪までが追加されている。
「お前が…お前が、キラ・ヤマトか！？あのコーディネイターの…！」
これほどの害意に直接晒されたのは、母が亡くなった時のフレイ以来のキラは
完全に萎縮してしまう。何故、このカガリという少年が、キラがコーディネイター
である事を知っているのかと疑問に思う余裕もない。
さらにキラに詰め寄ろうとするカガリを、筋肉質の大男が後ろから抱き止める。
ＡＡのクルーと、明けの砂漠の男たちの間が、一発触発の危険な空気に包まれてきた。
キラの涙で一張羅の軍服の上着を台無しにされ、ズボンを穿いただけで、上半身は
未だに裸のままの状態のフレイは、アークエンジェルの自分の部屋の窓から、
興味深そうに外でのキラとカガリの揉め事を観察している。
アスラン君の長期不在に、これからのＡＡでの退屈を憂いていたフレイの瞳には、
まるで新しい玩具を見つけた子供のような、無邪気な好奇心に溢れていた。
カガリきゅんｷﾀ━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━!!
今後の展開がますます楽しみになってきますた。
がんがってくださいｗ
>メビウス
痔が空気読めてないのが本編のまんまでイイ！
ナタルの直臣コンビに焦点当ててるのも良いです。
>流離う
>ナタルの中の何かが切れそうになる
種がはじけたりしてw キースがらみの複線もでてきそう
ですね。
>刻還り
へリオ組やっぱり残るよなあ。これからどうなる？
サイがこの時点でフラれてしまって今後どうなるか。
>SEED春コレ
イザ―ク、こっちでもママンなのか。SEEDオールスターズ
総出演。アイシャ全部カタカナで面白いす。
>キラ（♀）×フレイ（♂）
もはやフレイ様の皮を被ったMONSTERになっている。
カガリきゅん、やっぱり、おバカガリきゅんだw
オスキラ、メスフレの人。
あんたの作品は確かに上手いけど、微塵もフレイ様への愛が感じられない。
なんだよ、俺オリ要素全開のフレイ様のフの字も感じさせない完全オリキャラと、
その俺オリキャラ用に、ギャルゲーから出張してきたような雌キャラは。
一度もレスを返そうとしない高みから見下ろした態度からしても、あんた、
種にもフレイ様にも何の思い入れもなく、単なる文芸修行で書いてるだけだろ？
だったら、文芸板なり別なところでやりな。
ここはフレイ様への愛に溢れる人間が未熟なりにも、フレイ様の愛を綴る場所で
あんたみたいな人にいられたら良い迷惑だ。
周りの人は何も言わないけど、俺と同じことを思っているよ。
さっさと消えちまいな。
>俺と同じことを思っているよ。
少なくとも私はそう思っていません。
どうか完結させてください。
こっぴどいフレイが立派に成長するところが見たい。
煽りにマジレスカコ悪かったらごめんなさい。
フレイ様の思惑とは逆に、みんなAA降りてないし。
フレイ様計画、いきなり頓挫？
＞SEED春
アイシャの台詞がカタカナなのが笑えます。
なんか音声が脳内変換されます。
＞メビウス
イザークなら許可なんか求めず、すっ飛んでくような印象が…。
マザコンっぽいことへの葛藤があって、背中を押してもらいたか
ったのだろうか？
＞キラ（♀）×フレイ（♂）
＞私、蛹から蝶に生まれ変わったんだから…
キラきゅん飛ばしてますな。鋭い人にはバレバレな台詞がなんと
も…。
皆さん、シリアスな連作を幾つも投稿されている中で、
今回、ベタベタのキラフレで申し訳ないですが、また、「クローン・フレイ」の
後日談となる短編を投稿します。
個人的にはバンダイの「SEED ヒロインズ」のフレイ様と艦長のフィギュアを
改造して連合仕官服のフレイ様を作っていて、その仮組状態での
凛々しい姿に感動して書き上げたものです。
「クローン・フレイ」は、フレイ様がクルーゼと同じクローン人間という
秘密があったというオリジナル設定で書いた断片的なストーリーで、
これではフレイ様は生存して、キラと共に姿を隠したことになっています。
それでは、どうぞ。
私の名は、フレイ。今、とあるところで、キラと一緒に暮らしている。
停戦から、もう数年になる。キラと私は、私達の宿命から逃れるため、身を隠した。
だけど、世捨て人のような暮らしができる訳もなく、
キラが頼ったマルキオ様や、私を宇宙で助けてくれた人達の協力で、
今の生活を続けている。
キラは、ときどき裏の仕事を頼まれて、私達を養ってくれている。
私は何もできないから頼るしかないけど、それでいいと思っている。
最近、時折、キラはすごくクールな表情を見せるようになった。
私、そんなキラに、またうっとりしちゃう。
でも、若い癖に、昔を思い出しては懐かしがってるところは相変わらず。
キラが、どこかから連合軍の見習い兵の制服を入手してきた。
私達が、出会ってアークエンジェルで暮らしたときの服だ。
今夜は、この服を着て、昔の想い出に浸りながらしようということだ。
私自身の、この服はザフトに拉致された時に、クルーゼに
持ち去られてしまった。どうなってしまったのかは、もう分からない。
私は、あの想い出の服を残しておきたかった。
とにかく、着てみよう。私は、真新しい連合服のスカートに足を通した。けれど...
嘘、ホックが止まらない。ちょっと、上着もキツイじゃない。
やだっ! キラ何考えてるのよ。ひとサイズ小さいじゃない。
それでも、昔の私なら、入らないことも無かったけど、
今じゃ、ちょっと...
キラに文句を言おうかと思ったけど、あんなに喜んでいたキラが
残念がるのを見たくは無かった。
私は、戸棚の中をぶちまけると、ある服を探し出した。
キラが、見習い兵の青い軍服を着て待っている寝室へ、私は入って行った。
「フレイ、その服は?」キラが驚いた声をあげる。
私は、ドミニオンに乗っていた時の連合仕官服を着ていた。
もともとゆっくり目のサイズだったせいか、今でもピッタリと着ることができる。
ストッキングも同じ色のがあった。
キラは、私のこの姿を初めて見るはずだ。見習い兵の服に比べて、
膝まであるタイトスカートが私の腰から太もものラインを優雅に見せている。
キラ、どう、この私。
「あの服少し小さくて。で、これ着てきた。ドミニオンの時の。どう、私」
「うーん。僕は、それを着ている君を見たことなくて...ちょっとイメージ違うな」
「なによ! ぐっと大人の色気が出ているじゃないのよ。分かんないのキラ」
「いや、僕はあの頃の君がが好きなんで...」
「じゃ、今は嫌いなんだ!」
「おい! 待てよ。何でそうなるんだ!」
「何でってそうでしょ。ああ、キラって私が、どんどん年をとっても、
あのころの私しか愛せないのね。もう、キラってロリコンだったんだ」
「ちょっと、無茶苦茶だぞ。いいかげんにしろよフレイ」
「何よ、元はと言えば、キラが私が着れないような服持ってくるのが悪いんでしょ。
私だって、ちゃんと着たいわよ。でも、今じゃ入らないのよ!!」
「だったら、ちゃんと言ってくれよ! まったく君ってやつは」
「ああ、優しくない。昔の優しいキラは、どこに行ったの?」
「フレイこそ、昔の僕のことばかり言って。人のこと言えないぞ」
やっちゃった。せっかくのキラの趣向だったのに、喧嘩して台無しにしちゃう。
どうしよう。
口げんかをしているとき、急に泣き声が聞こえた。
ああ、ミルクの時間忘れてた。
「キザシ、ごめんなさいね。よしよし」
私は一目散に、ベビーベッドに駆け寄ると、泣いている赤ちゃんを抱き上げた。
私は、おろおろしながらキラに言う。
「キラ! 早くミルク作ってきて」
「また、僕がやるのかい」
「私に、キザシあやしながら、ミルク作れる訳ないでしょ。また、台所にぶちまけて掃除の仕事増やしたいの!」
「うん、それもそうだな」
「キラ〜! 分かったんなら、さっさと行きなさい!」
「はい! 分かりました」
台所へ駆けて行くキラを見送りながら、私は仕官服の胸を開き、シャツをたくし上げ、
ブラをゆるめると、乳房をキザシに含ませた。少し落ち着いたようだ。
無心に吸いつくキザシの顔を見ながら、私は母性をくすぐられる。
でも、若い私の母乳は、あまり量が出ない。キラ早くして。
「お待たせフレイ」
キラが超特急でミルクを作ってきた。キザシに哺乳びんを含ませる。
キザシの満足そうな顔に、私とキラは微笑みを交わす。
キザシは、私が生んだ、私とキラの子。
アークエンジェルがオーブに寄った時、その後、私とキラが分かれ分かれになる前、
最後に抱かれたあの時、授かったんだと思ってる。それ以降、私と一緒にザフトや
悲惨な戦場を、くぐり抜けてきた。
この子は強い子。最後の戦いの後、半死半生で宇宙を漂うキラを私が見つけることが
できたのは、この子が呼んでくれたからだと思っている。
キザシ、大好きよ。
やっと、落ち着いてキザシは寝息を立てだした。
私は、仕官服の胸を緩め、胸を出している、そんな私を、キラは、近寄って来て、
胸を覗きこむようにし、タイトスカートのお尻を撫でながら言った。
「フレイ、その服も結構いいね。その、そそるし...」
「なによ、今ごろ分かった」
私は服を直し、キザシをベビーベッドに優しく寝かしつけた。
「さあ続きしましょ。これからは、ちゃんと曹長と呼んでね」
「はい! フレイ曹長」
「ヤマト曹長、じゃなくて... アルスター曹長でしょ。ヤマト少尉」
「ハ!」キラは、おおげさに敬礼する。
「ちょっと、あなたの方が上官なのよ。命令して」
「いや、なんか艦長に命令されているみたいで。
それではアルスター曹長、ちょっとベッドまで来てくれたまえ」
「ハ! 少尉どの」私は敬礼して、二人のベッドへ向かった。
ベッドに腰かけて、キラが、私の胸元に手を入れる。
タイトスカートに手を入れて足を触ってくる。ストッキングの上から、私に触れてくる。
「うふ! いけないわ軍規違反です。少尉」
「いいじゃないか、誰も見ていないし。上官の命令を聞けないとでも」
「ああ、セクハラだわ。うふ、あは」
「じゃ、曹長のここは、なぜ誘っているのかな」
じゃれるように軍の用語で話し合い、自分達を刺激しながら、
少しずつ乱れて行く服と共に、私の息は上がって行く。
スカートが降ろされ、ストッキングをゆっくり、巻き取られ...
私は声を立てる。
「ねえ、キラのも頂戴」
私は、キラのズボンのジッパーを降ろした。
二人、裸で抱き合いながら、私はキラの耳元でささやいた。
「キラ、艦長って言ってたでしょ。マリューさんのこと、思い出しちゃった。
フラガ少佐亡くなって...」
「泣いてるのフレイ」
「うん。それとナタルさんのことも...う、う、う」
「フレイ...」
キラは嗚咽をあげる私を、優しく抱きしめて、髪を撫でてくれた。
「キラのこと笑えないな。昔のことばかり思い出して。相変わらず、すぐ泣くね、私」
「いいんだよ。辛いことが多かったから」
「マリューさん、どうしてるかな」
「分からない、けど、きっと元気でいると信じてる」
「私、マリューさんみたいになれたかな。私達、マリューさんとフラガ少佐みたいになれたかな」
「なれているよ。フレイ」
キラは、涙をこぼす私の目尻にキスしながら、しっかり体を抱きしめてくれた。
ベビーベットでは、キザシが安らかに寝息を立てている。
私は幸せを胸に噛み締めた。
(了)
テーマにしているので、ちゃんと描写できたかどうか分かりませんけど。
キザシは、自分では男の子のつもりで、漢字では、「大和 兆」でした。
でも「大和 萌」という字もあり、そのうち気が変わって、女の子でにするかもしれません。
では、どうも。
今更ながらザーっと読みました。ヘリオ組の関係凄い良いです。
後、キラたん(;´Д｀)ﾊｧﾊｧ カガリきゅん(;´Д｀)ﾊｧﾊｧ
こんな幸せな夢に浸るのもいいと思う。
もれてきにキラフレ＝グレイトとおもってるから
「君が、有名なフラガ少佐かね？」
「はい、ムウ・ラ・フラガです」
「そうか、カスタフ作戦でも大活躍してくれたそうだね」
「いえ、それほどでは」
フラガは謙遜して見せたが、内心ではなんで大将閣下が俺たちのところなんぞへと考えていた。
「･･･････ところで、君達には確か、コーディネイターのパイロットがいると聞くが？」
「･･････はい、おりますが、それが何か？」
「いやなに、一度会ってみたいと思ってね」
コリンズはアークエンジェルのクルー達を一瞥した。視線を向けられたメンバーがキラを見たのを見て、コリンズはこの少年だと確信した。
「君かね、ストライクのパイロットは？」
「は、はい」
「ふん、本当にこんな子供がな。コーディネイターとはつくづく恐ろしい物だ」
コリンズの物言いに嫌なものを感じたアークエンジェルクルーは一様に良い顔をしなかった。程度の差こそあるが、彼らにとってすでにキラは仲間なのだ。キラは怒りを押し殺してコリンズの話を聞いている。
「１つ聞かせてくれないかね。同胞を裏切るというのは、どういう気持ちかな？」
「なっ」
「君はコーディネイターを殺しているのだろう。どういう気分だね？」
軽蔑するような眼差しを向けてくるコリンズに、キラは気分が重くなるのを感じた。どこまでいっても自分はこう扱われるのだ。裏切り者のコーディネイター。厄介者。便利な道具。誰もがそうとしか見てくれない。アークエンジェルのクルーだってそうだ。誰もが自分をストライクのパイロットとしか見てくれない。マリュ−も、フラガも、マードックも。そしてヘリオポリスの仲間達もそうだ。サイがストライクに乗ったのは自分にもやれる事を証明する為だったという話だ。つまり、サイも自分の力を見て、妬んだ事になる。たぶん、カズィやトール、ミリィも内心では思っているだろう。そして、多分彼女も･･････････いや、多分みんな以上に。
表情を曇らせたキラを見て、クライスラーがコリンズに何かを耳打ちした。コリンズは頷くとフラガに一声かけて雑踏の中へと消えていく。それを見送ったクライスラーはキラを見るとすまなそうに声をかけた。
「気に障ったかな。許して欲しい。コリンズ閣下も悪い方ではないのだが、コーディネイター嫌いでな。まあ、今の時勢でなら別に珍しいという訳でもないが」
「･･････分かります」
戦争をしている相手を好きになれというほうが無理だろう。そういう意味ではコリンズが特別おかしい訳ではない。おかしいのは自分の方なのだ。
「しかし、コリンズ閣下がどうあれ、今回の君の活躍は見事だった。君の働きはアラスカに報告しておいた。君の今後の処遇に付いて一定の方向性を与えると思う」
「･･････ありがとう、ございます」
喜んでいいのかどうか、キラは迷った。自分の有利になるように手を尽くしてもらったと言うのだから、礼を言うべきなのだろう。だが、キラはあえて辺り触りの無い言葉で誤魔化した。クライスラーはキラの返事に特に気分を害した様子も無く、敬礼を残して立ち去っている。
残されたキラは俯いたまま祝賀会場から立ち去っていった。トールはそれを追おうかと思ったが、何故か追えなかった。キラの背中が付いてくることを拒否しているように見えたから。
仲間達から離れたキラは苛立ちを拳に乗せて樹木に叩きつけた。悔しさで涙が零れてくる。なんで、どうして僕だけがこんな目にあわなくちゃいけないんだという悔しさだけがただ渦巻いている。
宇宙でアスランが誘ってくれた時、あのまま僕はザフトに行くべきじゃなかったのだろうか。そうすればこんな孤独感を味わう事も、差別にもあわずに済んだ。なんでナチュラルのために同胞と戦って、こんな目にあわなくちゃいけないんだ。
「スコットさん、あなたがいてくれたら････････」
キラは死んでしまったスコットを思いだし、また涙を流した。あの人がいてくれたら、この孤独感からは解放されたかもしれないのに。
「ようキース、飲んでるのか」
「少佐ですか。ええ、飲んでますよ」
キースはワイングラスを軽く持ち上げてフラガの挨拶をする。その前には何故か手付かずのグラスが２つあり、赤ワインが満たされて並べられていた。
「これは？」
「ハウプトマンと、スコットの分です」
「･･････そうか、あいつ等のな」
キースは帰ってこなかった２人の為にグラスを置き、彼等を弔っていたのだ。特にスコットはコーディネイターだった事もあり、誰もその死を悼んではくれない。だから、せめて自分だけでもと思っての事だろう。
フラガは自分のグラスにワインを注ぐと、それを軽く掲げて一息に飲み干した。それを見たキースが小さく頭を下げる。フラガもまた、戦友の死を弔ってくれたのだ。パイロットの気持ちはパイロットにしか分からない。帰ってこなかったパイロットを誰よりも悼むのは結局同じパイロットなのだ。
戦勝祝賀会も終わり、アークエンジェルにクルーたちが帰ってきた。キラも落ち込んだ様子を隠しながら部屋に戻ってくる。だが、そこでフレイが待っていたのは何時もの事なのだが、何処か様子が違う。
「どうかしたの、フレイ？」
「･･････キラ、大事な話があるの」
「大事な話？」
キラは首を捻った。大事な話とはなんだろうか。ただ、フレイの表情が気にかかってしまう。今目の前にある顔は、これまで見た事も無いほどに強く、そして脆そうに見える。
「キラ、私があなたに近づいたのは、どうしてだと思う？」
「･･････フレイ、何を？」
「答えて、キラ」
フレイの問い掛けにキラは迷った。これを言ってしまえば、今の関係が完全に崩れてしまう気がする。だが、フレイの目には拒否を許さない強さがあった。
「･･････同情から、なんだろ？」
「違うわ」
一言で否定されてしまった。その答えにキラは怪訝そうな表情を浮かべる。そして、次のフレイの言葉を聞いた時、キラは凍りついたように固まってしまった。
「私があなたに近づいたのは、復讐の為よ」
「復讐？」
「そう、パパを殺したコーディネイターをあなたに殺させる事、そしてキラもそのコーディネイターに殺される。化け物は化け物同士で殺しあえばいい。それが私の復讐」
「･････････････････」
「わたしは、あなたを道具にする為に近づいたのよ」
「そんな、そんなのって･･････････」
「あなたが優しくて･･････友達思いなのを利用して、私、あなたを無理やり戦わせたの。好きな振りして利用して･･･････コーディネイターだからってっ！」
「････････････････････････」
「分かってたの、あなたが本当は戦いたく無いんだって事は。誰も殺したくない、傷つけたくないのに、みんなを守ろうとして戦場に出て、戦ってたこと。それでいつも傷付いて、１人で泣いて、何時も１人で苦しんで、みんなに心配かけないように１人で全部抱えこもうとしてたことも」
「フ、フレイ･･････」
「私、そんなキラを見て、傷付いて苦しむキラを見て、喜んでたの。パパを殺された恨みが晴れる気がして･･･････」
本当に自分は酷い女だ。あんなに凄くて強いキラ。でも、その内面は酷く弱くて、脆い。辛くて、悲しくて、泣き虫で、何時も独りぼっちなキラ。そしてとても優しいキラ。キラにはいろんな面がある。私はそれを知ってしまった。知っていながら利用してしまったのだ。だからこそ、彼と共にはいられない。
「ごめんなさい、謝って済むとは思わないけど、それでも･･･････ごめんなさい」
フレイは頭を下げると、部屋から出ていこうとした。その肩をキラが掴む。
「待ってよフレイ、何処に行くの？」
「出て行くのよ。もう、２度とこの部屋には来ないから、安心して」
「来ないって、そんな、フレイ」
肩を掴む手から力が抜ける。その隙にフレイはキラの手から逃れた。
「さようなら、キラ」
最後にもう一度だけ振りかえって、フレイは部屋から出ていった。その後をトリィが追いかけていく。残されたキラは整理できない感情を抱えたまま呆然と立ち尽くしている。憎まれているのは知っていた。でも、まさか利用してたなんて、これまでの全ては復讐の道具にする為だったなんて。
「なんで、何でだよ、フレイ･･････」
フレイが出ていった扉をじっと見つめる事しかキラにはできなかった。もうこの部屋にフレイは来ない。自分があのぬくもりに縋る事はもう出来ない。もう、帰ってきてもフレイはいないのだ。
途端に物凄い孤独感がキラを襲った。愛されていなくても、同情でも、今の自分にはフレイが必要だったのだ。それを無くした今、自分は何を支えに戦えばいいのだろう。いや、そもそも戦う理由などあるのだろうか。守りたかった人が、自分から離れて行ったというのに。
「う、うわぁああああぁああああぁああああああ！！」
言葉にならない激情が、叫びとなって溢れ出した。いつもならフレイが慰めてくれたが、今日は１人だ。これからは１人でこの苦痛に耐えなくてはならない。だが、果たして自分に耐えられるだろうか。
ううむ、フレイ様志願は予想してましたが、まさかここでサイを振るとは。
みんな乗り遅れてるし、まさかこっちでもやること成す事裏目に出る特性が発揮されるのか？
>>春コレ
ここでもダコスタ君はパシリなのか。本当に上司に恵まれないな、彼
ディアッカとイザークとニコルは仲良いのか悪いのか。ディアッカがいきなりナンパに走るのが良し！
でも、確かイザークとディアッカはフレイ様に粉かけてたはず。モデルフレイ様見たらどういう反応するんでしょう？
>>メビウス
イザークがちゃんと断って行く所に違和感がｗ 何時からそんなに真面目になった？
キラを拾ったアスランとカガリは安心したでしょうねえ。でも、キラは大丈夫かな
>>キラ♀
キラちゃん、その状態で出撃するのは危険ですぜ。あと、カガリはキラを知ってるみたいですね。多分正体まで
フレイ君はますます黒くなってるなあｗ
>>コスプレ
キラ君、なんてマニアックな男なんだ。いつからドリーミングに目覚めたんだろうｗ
でも、養ってる筈なのに家庭内の権力は奥さんに握られてるっぽいですな
━━⊂⌒~⊃｡Д｡)⊃━⊂⌒O｡Д｡)⊃━O(｡Д｡)O━⊂(｡Д｡O⌒⊃━⊂(｡Д｡⊂~⌒⊃━━!!!
乙です。ついにきてしまいました・・・つらいっす、キラフレどうなっていくのやら
>途端に物凄い孤独感がキラを襲った。愛されていなくても、同情でも、今の自分にはフレイが必要だったのだ。
それを無くした今、自分は何を支えに戦えばいいのだろう。いや、そもそも戦う理由などあるのだろうか。
守りたかった人が、自分から離れて行ったというのに。
･ﾟ･(⊃Д`)･ﾟ･ ･ﾟ･(⊃Д`)･ﾟ･ ･ﾟ･(⊃Д`)･ﾟ･ ･ﾟ･(⊃Д`)･ﾟ･
━━⊂⌒~⊃｡Д｡)⊃━⊂⌒O｡Д｡)⊃━O(｡Д｡)O━⊂(｡Д｡O⌒⊃━⊂(｡Д｡⊂~⌒⊃━━!!!
乙です。ついにきてしまいました・・・つらいっす、キラフレどうなっていくのやら
>途端に物凄い孤独感がキラを襲った。愛されていなくても、同情でも、今の自分にはフレイが必要だったのだ。
それを無くした今、自分は何を支えに戦えばいいのだろう。いや、そもそも戦う理由などあるのだろうか。
守りたかった人が、自分から離れて行ったというのに。
･ﾟ･(⊃Д`)･ﾟ･ ･ﾟ･(⊃Д`)･ﾟ･ ･ﾟ･(⊃Д`)･ﾟ･ ･ﾟ･(⊃Д`)･ﾟ･
キラがシンジ君化してて笑ったw
フレイきゅんはカガリとはどう絡むんでしょうか。
気になります。
フレイきゅん(*´д｀*)ﾊｧﾊｧ
>>翼
ついに１５０ですか。
乙です！
読みごたえがあって投下を楽しみにしております。
>>コスプレ
エロに突入するのかと思っちゃいましたよｗ
人妻フレイたん(；´Д｀)ﾊｧﾊｧ
最近は職人さんの投下が激しくて嬉しいかぎりです。
皆様ネ申でつね！
フレイ様。告白タイミング，悪すぎでつ。(´Д⊂
どうするキラ？果たして立ち直れるのか？
アムロみたいに脱走してくれたりして...
順調に進んでるのかな？
クローンフレイの作者でしたか。作風が微妙に
違っていて、うーん引き出し多いですね。
オレも連合服フレイ様が良いです。see-sawENDの時
マリューのダラしない着崩し方をまねて欲しいです。
>流離
コリンズ大将の無自覚無神経ぷりは中々いい味
出してまふ。フラガ･キースは漢だねえ〜。
フレイ様はキラのショックにはまだ気づいてない
でしょうなあ。
「でもファッション業界もモデルだけじゃなく
ヘアメイクもあんなにかわいい子もいるのは 意外や意外
もっとブスばっか かとおもってたけど
すてたもんじゃないね〜」
そんなことを思ってたディアッカだが 控え室入り口を挟んで向こう側にさっきから、
入り口を覗いてたり、携帯でメールを送ってたり、メモ帳になにか書き込んでいたり
とさっきから、誰が見ても不信極まりない行動ととられても仕方ないことをやっている男が気になって仕方なかった
「なんだあいつ、ずいぶん色黒だな、
ま、オレの方が色黒だけど・・・
んなことはどうでもいいが、それにしてもスパイにしては
やることがあからさまだし、
首からぶら下げてるのはカメラか・・・
カメラマンがここでなにやってんだ？
本番中なのに仕事さぼって
あれ？ここってアークエンジェルの控え室だよな
たしかアスランの友人が アークエンジェルの春コレのデザインやるって聞いてたし、
名前はたしか・・・キラ・ヤマトとか いってたっけ
キラ・ヤマト・・・ 思い出した うちの会社の受付嬢 と付き合ってる奴だ。
あんなにかわいい顔して怒らせたら半端ない女だからな 〜 そんな女と付き合ってるなんて興味深々だね〜
あのカメラマン きっとアークエンジェルのモデルの裏 部隊を取材しに来てるのか
それとも キラ・ヤマトだけかそれとも・・・
「おい！お前 そこでなにをやってる！アポとってうちの 取材にきたのか
それともただのスパイか？ パスを見せろ！」
ディアッカが振り返るとそこにナタルが鬼神に近い表情でディアッカを睨みつけていた。
「やべぇ 見つかっちまった！ ここで捕まったら 恥も いいところだ。
それにイザーク達にこけにされちまう おまけに
プラントにもスパイ容疑で
疑われるとかで大恥かけちまう、大ピ〜ンチ」
幸い、ディアッカは逃げの姿勢に入っていて 急加速で通路を突っ走っていった。
しかしもうひとりのスパイと疑われてもしかたないカメラマンは逃げようとした
時にこけてしまい、すっかり御用となってしまった。
パスも携帯もラップトップもメモ帳も書類関係も全て取り上げた
ナタルは軍人のようなきつい口調で捕まえたスパイ容疑のカメラマンを問い詰めた。
「マーチン・ダゴスタです。バクゥー所属のカメラマンです」
ダゴスタがおびえながらも 正直に答えた。
「では控え室入り口付近で何をしていた？スパイ工作か？ それとも・・・」
「いえ違うんです。スパイなんかじゃありません。
そんな・・・
ただ、その・・・そこにいる女性に・・・女性に・・・
「正直に答えろ！」
「あら？ダゴスタさんじゃありませんか？まあこんな
ところでお会いできるなんて
奇遇ですわね。きょうはどのようなご用件で参りました の？」
ラクスが不思議そうな顔でナタルとダゴスタの間に入り込んできた。
「知り合いか？ラクス嬢 失礼だがこの男との関係は？
以前にも関わりがあったのか？」
「ええ、前にわたくしが歌番組のオーディションを受けた時に、
そこの スチール撮影のカメラマンで、 仕事をなされたましたの。
わたくしが落選してしまい」、落ち込んでいたところを 励ましてくださいましたの。
「あなたが悪いんじゃない、悪いのは評価する上の連中 だ。
ぼくはあなたの歌が好きです。水の証、 とてもいい曲です。」って
うれしかったですわ、あの時 わたくしはすごく落ち込 んでいて、泣き崩れてました
そんなときにダゴスタさんが声をかけてくださり、
すごく励まされました。
ところでダゴスタさん 今日はどのような用件で
まいられたのですか？」
「いえ、うちの編集長がアークエンジェルの取材をしてこ いとうるさいものですから・・・
いくら取材とはいえ、公式のアポもとってないし
いきなり取材させてくださいと
いわれても、どうかなぁと迷ってて、状況を携帯で
メールを送っても受信拒否に
何度もなってしまって、それでメモ帳に
アークエンジェルの様子を書こうとしてたところに
この人が・・・」
「どちらにせよ あんなところでコソコソしてたら
スパイと間違われるのも無理はない。
だが、どうやらお前はスパイではなさそうだ。
この件は水に流そう。
ただし、今日のうちの取材はお断りだ。
取材をしたければ次の機会に正式なルートで
アポを取るように 以上だ。」
トノムラ広報副部長が血相を変えて部屋に入ってきた。
「みんな、大変だ、マードックさんが、
階段から足をすべらせて、
右腕の手首を骨折してしまった。
どうしよう、こんな時に・・・
うちの広報カメラマン、マードックさん以外いないし、他に代役はいないし・・・
今日は災難続きで厄日だよ、
トップバッターの子は倒れちゃうし・・・
全く、よりによって本番当日になんて・・・」
一同のショックは大きかった。
アークエンジェルの広報カメラマンといえば 彼ぐらいしかいないのだから・・・
アークエンジェルの公式カタログの写真もすべて彼が撮ったものであり、
その出来栄えはいつも高い評価を受けていた。
今回の春コレの公式写真も彼の手腕に期待が寄せられていたのだから
一難去ってまた一難、今度こそダメかもと思ってた
その時、
「俺にやらせてくれませんか？
アークエンジェルのカメラマン、」
えっ？一同がその声の主に振り向いた。声の主はさっきまでスパイ容疑で疑われてた
マーチン・ダゴスタだった。
「何を言ってるんだお前、はやくここから立ち去れ、 部外者はすぐに・・」
「待ってください・・・本当にやってくださるんですか、 広報カメラマンを」
ナタルの発言をキラのひと言が止めた。
たしかにパンフレットやカタログは非常に重要だ。
ましてや春コレとなればなおさらだ・・・
この人ならやってくれるかも・・・それに・・・今この危機を乗り越えないと
だから、今はこの人に頼るしかない。
「正気か、キラ・ヤマト よその会社のカメラマンに
うちの撮影など言語道断だ。
ましてやさっきまでスパイ容疑にかけられてたんだぞ。
そんな男に任せられるはずがないではないか」
「いい加減にしてください、ナタルさん ではどうすれば いいのですか？
もう時間はないし、カメラマンの代役はいないんです。
こうなった以上、今できることを考えなくてはいけない んです。
ここはダゴスタさんに任せる以外方法はないです。
くわしいやりとりを至急しましょう。 時間がない すぐこちらまで来てください」
ダゴスタはだまってうなずき、キラたちと一緒に隣の部屋に向かった
>>「平気よ、ミリィ。私、蛹から蝶に生まれ変わったんだから…」
キラ イイ！このセリフすごく気に入った。
>>「親父の裏切り者」
ワロタ
コスプレ> 人妻フレイたん(；´Д｀)ﾊｧﾊｧ
しかしキラフレ＝グレイトだな〜と思う
この二人にこんな幸せな時間をつくってあげたかったね
流離 >パイロットの気持ちはパイロットにしか分からない。
帰ってこなかったパイロットを誰よりも悼むのは結局同じパイロットなのだ
本編でもニコルの死にアスランが自分の甘さがニコルを殺したと悔やんでる
シーンがあったけど、痛々しかった。
ＳＳはちょっとちがうけど、気持ちが痛いほどつたわってきますね。
あ〜でも流離さんのは続編が毎回楽しみです。
メビウス> イザークの今後って気になりますね。
結局敵なのか味方なのか よくわからないところがあるから・・・
「これは、一体？」
ナタルが疑問符を付ける。どう考えてもこれはおかしいのだ。たった１機のストライクがイージスとブリッツを圧倒してしまったり、初陣のデュエルが実戦でこれだけの反応の速さを見せるなど。
「･･････確かに２人の反応は速過ぎるな。だが、フレイのこの動きはなんだ？」
フラガが幾つかの場面を再現して見せる。背後からのバスターの一撃を回避して見せたデュエル。時折敵の動きが分かっていたかのような先読み機動をするデュエル。おかしい。こんな動きは理論上じゃ有り得ないのだ。キラの動きも確かに異常だが、フレイの動きはもっとおかしい。
「こんなふざけた回避行動があってたまるか。時折だが、ほんの一瞬とはいえ相手が動くよりも早くそれに対応した動きに入ってるんだぞ。あの娘、本当にナチュラルなのか？」
「間違いない筈ですが･･････」
ナタルも戸惑いを隠せない。まさか、たいした訓練も受けていない新兵が歴戦パイロットを驚愕させるような動きを見せているとは思わなかったからだ。だが、なにか理由がなければフレイが敵のデュエルを相手にあそこまで持ち応えられる筈がない。
「天才、という事なのでしょうか？」
「こいつはそんな言葉で片付けて良いレベルじゃないぞ。今はまだまだたいしたもんじゃないが、このまま経験を積んでいけばどう化けるか･･････」
キースは顔を顰めてフラガを見た。今の所、フラガは何も言っていない。ただ厳しい表情でじっとモニターを見ているだけだ。
『まさかな、あの時感じたのは間違いじゃなかったって訳か。フレイが俺の同類だったとはな。確かにそれならこの動きも納得出来るが』
考えていたところにキースから声をかけられたフラガは驚いてキースを見た。
「あ、ああ、なんだ、キース？」
「いえ、フレイのこの動きについてどう思うか意見を聞きたいのですが」
「あ、その事ね。まあ、気にしなくても良いんじゃないか。才能があるんならそれに越した事はないんだし」
「まあ、それはそうなんですが」
いささか毒気を抜かれた顔でキースは答える。フラガはそれ以上この問題に関わろうとはせず、次の問題に気を向けた。
「それよりも、キラの方が俺は気になるな。なんだよこの強さは」
「これですね」
瞬く間にイージスとブリッツを撃破してしまうストライク。それまでとは明らかに違う動きだ。まるで機械仕掛けのバーサーカーとでもいうか、ここまで冷静に、完璧な動きで敵を倒せるものなのだろうかと思う。こんな動きが出来るＭＳなど見た事がない。
「反応の速さだけじゃない。こんなに完璧に、1分の無駄もない動きが出来るもんなのか。あいつには相手の動きが全て見えていたとでもいうのかよ」
「たしかに、まるでプロが経験の浅い素人をあしらうみたいな動きですね。イージスのパイロットは何が起きたかさえ分かってないでしょう。その直後にブリッツをビームライフルで一撃。俺だって反応できるかどうか」
「･･････もし、戦ったら、勝てますか、大尉、少佐？」
ナタルの問い掛けに、キースとフラガは複雑な表情を作った。
「今ならまだ、何とか勝てる気はする。反応の良さや動きの切れだけで勝てると思われたら困る」
「まあねえ。今なら対等の条件でやれば勝てる自信はあるな。能力的には向こうのが上でも、殺すのはこっちのが上手い」
２人はまだ勝てると思うと口にする。実際にはキラの戦い方はまだ素人に毛が生えた程度のものだ。戦い方に関してはキースやフラガの方が遥かに上である。だが、これで経験を重ねて実力をつければ、いずれは。
３人が解析を進めていると、部屋にマリュ−が入って来た。３人がそちらを見る。
「おや、どうしたの艦長？」
フラガが声をかけるが、マリュ−はフラガを無視してキースを見た。
「バゥアー大尉、少し、いいかしら」
「は、俺ですか？」
「ええ、ちょっと話があって」
何やら良い難そうな表情のマリュ−に内心で首を捻りながらもキースは頷いた。
「分かりました。ここでは不味いようですから、どこか別の場所で」
キースの言葉に頷いて部屋を出るマリュ−。その後に続くキースを見送ったフラガは面白そうな顔でナタルを見た。
「おやおや、これはどういうことかな、中尉？」
ナタルの方を見たフラガは、その笑顔を僅かに引き攣らせた。隣にいたナタルは明らかに怒っていたからだ。その表情に浮かんでいるのは嫉妬と焦り。
『お、おいおい。まさか中尉はキースにマジで惚れてるのか？』
すぐ隣にいてかなり怖い状態になってるナタルに冷や汗を掻きながら、フラガは小さく溜息をついた。どうやら今日はこれで終わりらしい。
あんまりお待たせするのも悪いので一応貼っておきます。
ちょっと予定外に忙しくなっちゃったので
暇になるまではちょっとずつまとめていく予定です。(ﾉД`)ｼｸｼｸ
フレイ様人生劇場まとめサイト
http://fllaystory.s41.xrea.com/
今更ですが
フレイ様専用お絵描き掲示板も作ってみますた。
ご利用ください。
「こんなに、広かったんだ」
感慨を含めて呟く。これからは１人で頑張らなくてはいけないのだ。もうキラはいない、サイもいない、多分トールもミリィもカズィも自分を許してはくれない。艦長だけは助けてくれそうだけど、それに頼り切る訳にもいかない。これからはＭＳパイロットとして頑張らなくてはいけないのだから。そして、自分の手で父の敵を討つのだ。クルーゼ隊という部隊を、自分の手で倒す。
「そうよ、私はまだ死ねない。パパの敵をとるまでは」
キラを利用した事は許されないだろう。彼がどういう要求してきても甘んじて受けるしかない。もしキラが自分を殺したいというなら、殺されても良い。でも、殺されるのは敵を討った後の事だ。それまでは死ねない。
ベッドに仰向けに横たわり、じっと天井を見上げる。胸の中を寂しさが過る。１人でベッドに横になるのが、１人用の筈なのに、ベッドの広さが辛い。
「･･････あの狭いベッドにも、いい所はあったんだなあ」
肩を寄せ合って寝られるベッドも良かったと、今更ながらにフレイは思った。
その夜、キースはマリュ−の部屋を訪れていた。マリュ−に呼び出されたからなのだが、何故か酒を交えての話になっている。キースはいつもと随分違うマリュ−に引き攣った笑顔を浮かべている。
マリュ−は一気に飲み干した缶ビールをテーブルにおいて、親父臭い息を吐いた。
「プハー、この一杯の為に生きてるわ−！」
「あ、あはは、そうですか」
とてもじゃないが他の乗組員には見せられない姿だなと思いつつ、キースは自分を呼んだ理由を尋ねた。
「それで、どういう用件です。まさか酒に付き合わせる為に呼んだ訳ではないでしょう」
「まあそうですけどね。ちょっと話しておきたい事があって」
マリュ−はこれが５缶目というビールを開け、キースにフレイの話した内容を語った。それを聞いたキースは暫し瞑目し、そして一気にビールを飲み干して缶を握り潰した。
「そうですか、フレイが自分からキラのもとを離れましたか」
「ええ、それが良い事なのかどうかは分からないけど」
「そうですねえ。フレイにとっては良い事なんでしょうが、キラにはどうですかねえ」
キースは新しいビールの蓋を開けながら意味深なことを口にする。それを聞いたマリュ−がビールの缶を口から離す。
「どういう事です？」
「･･････振られるってのは、結構きついですよ。キラは確かに大した奴ですが、それでもショックでしょう」
「まあ、そうでしょうね」
「艦長なんかは振る方だったでしょうから分からないかも知れませんが」
「何か仰いまして、大尉？」
「いえいえ、なんでもないですよ」
マリュ−の問い掛けを躱すと、キースはまた新しいビールに口を付けた。だんだん飲み過ぎという気がしないでもなかったが、とりあえず飲んでしまう。だが、どうしても１つだけ気になってしかたのない事がある。一体、この部屋には何本のビールが備蓄されているのだろう？
ダコスタ君、君ってトコトン報われない男だね･･･････。ディアッカの逃げ足は流石だｗ
まさかよりもよってナタルさんに見つかってしまうとは。詰問中はまるでベテランの刑事に詰め寄られてる気分だったでしょう
しかし、ダコスタ君がカメラマンか。良いのか？ たしかアークエンジェルにはあの盗撮の神、カズィ様がいらした筈なのにｗ
パパ、激務の中本当に乙です〜〜！！
気長に待ってますんで、頑張ってくださいね！
>>流離
寂しげなフレイ様・・・・・・ﾟ(ﾉД｀ﾟ)･｡
フレイ様に捨てられたキラはどうなってしまうのか、心配っす
･･････マリュー、ミサトさん化！？ｗ
警官でもないのに尋問口調になってしまうあたりがさすがナタルさんです.
ラクス＞「きょうはどのようなご用件で参りましたの？」
えっと，敬語の使い方からいくと，「いらっしゃいましたの？」の方が正しく
ありません？ラクス嬢あたりは，結構敬語とか叩き込まれてそう．
＞＞流離
フラガの兄貴は特殊能力持ちでしたか．しかも，自覚的．
フレイ様は，まだ復讐をするつもりなのですね...
戦場を知ることと復讐とは別でしたか．
クルーゼ隊を全滅させても,戻ってくるものなど無いのに...
だが、アレはカガリの個人的な暴走ということで何とか落ち着き、マリュー達幹部三人
は交渉の為に、岩山の中にある彼らの砦に案内された。
明けの砂漠はザフトに完全に敵対しているが、かといって連邦に与するつもりもない。
敵の敵は味方…という言い方が、一番しっくりくるかもしれない。それでも、彼らは
アークエンジェルの隠し場所と、可能な限りの物資と情報を提供してくれた。
その貴重な情報によれば、アフリカにおける連合の拠点であるビクトリア基地は、
既に砂漠の虎によって壊滅させられたとのことで、まずはビクトリア基地へ合流し、
そこで補給と人員の補充を図ろうとしていたマリュー達は、大幅な針路変更を余儀
なくされることになる。
こうなると、後は紅海を抜け、大西洋から直接アラスカを目指すしかなくなるが、
その侵攻ルートには、砂漠の虎と、地上空母レセップスが立ち塞がっている。
アラスカへの道を切り開く為にも、そして、共通の敵を持つ明けの砂漠の助力に
応える為にも、アークエンジェルのレセップス攻略は既に至上命題となりつつあった。
「ところで、あのお嬢ちゃ……じゃなかった、あの腕白な坊主は何者なんだい？」
「俺達の勝利の女神だ…」
フラガの問いに、彼らのリーダー格であるサイーブが、熊のような髭面を震わせて
ニヤリと笑う。
「女神って、あいつは男だろ？」
「兄ちゃん、あんただって、今、慌てて性別を言い直しただろ？
カガリは見ての通り、チビで線が細いから女と間違われるのを嫌がるのさ。
頬の傷痕だって、レーザー治療でいつでも完治できるのに、わざと残しているんだぜ」
サイーブが可笑しそうにクククっ…と笑い、周りのメンバーも邪気のない笑顔に包まれた。
なるほど…あのカガリという少年は、戦士としての能力の方はまだ未知数だが、
本人も気付かない内に、明けの砂漠のムードメーカー的な役割を果たしているのか。
こんなアイドル的な扱われ方では、本人にとっては堪らないだろうが…。
「そちらの女神様に暴力を振るった件は謝るが、原因は多分、お嬢ちゃんがカガリの
コンプレックスを刺激した当たりじゃないか？まっ、口は悪いけど、根は決して悪い奴
じゃないんで、気長に温かい目で見てやってくれ…」
思考に耽るフラガに、サイーブがまるでカガリをＡＡに押し付けるかのような発言
をする。これでアークエンジェルへの弱齢の珍客は、ラクスに次いで二人目である。
フラガには、何となくキラ達が苦労する様子が目に浮かんだ。
アークエンジェルのクルーは影で、トール達四人をヘリオポリス本家と呼び、
フレイとキラの二人を分家扱いしていたりする。
そのヘリオポリス本家では、彼らの溜まり場となっている食堂で、今旬の話題である、
明けの砂漠のマスコットガール…じゃなくてボーイについて語り合っている。
カガリは、キサカという映画ランボーに出てきそうな大男をお供に引き連れて、
我が物顔でＡＡ内をうろつき回り、トール達にも何度かチョッカイを掛けてきた。
キラに暴力を振るったことが確認され、軍属として日が浅く未だに軍人としての
覚悟が徹底しない未熟な少年兵であるトール達を小馬鹿にした態度が透けて見え、
その上、ラクスと違って愛想の欠片もない傍若無人な少年に、トール達が好感を
抱けるはずもなかったが、カガリには一つだけ気になる要素があった。
「あいつ、キラに似てるよな…」
もちろん雰囲気や性格は天と地ほど違うが、身長はほぼ同じか、カガリが数センチ高い
くらい。顔の骨格もそっくりなので、焦茶色の鬘を被せ、スカートを穿かせたら、
線の細いカガリはキラと瓜二つになるのではないかと、トール達は意地悪に首肯し合う。
当然、堪忍袋の緒が、蜘蛛の糸よりも細そうなカガリに、面と向かって言えること
ではないが…。
そのキラは、フレイと二人連れで廊下を歩いている時に、バッタリとキサカを連れた
カガリと遭遇してしまう。カガリの存在に気づいたキラは、そそくさとフレイの
影に隠れて、恨みがましい目でカガリを睨む。いくら温厚なキラとて、一方的に
理不尽な暴力を振るわれ、その上で、身に覚えのない敵意を未だに自分に注ぎ続ける
相手に好意を抱けるほど、お人好しではない。
カガリはカガリで、自身の以前の行動を謝罪する意思がないどころか、まるで
親の敵のような目でキラを睨み返し、元々気の弱いキラは、カガリとの睨めっこに
敗北し悔しそうに目を反らす。大人気なくも勝ち誇った表情で離れていくカガリを、
キラは瞳に涙を溜めながら口惜しそうに睨み、フレイはそんなキラを慰めるように
キラの頭を撫でながらも、実に興味深そうにカガリの後姿を観察していた。
「なあ、ミリィ。あいつも、かつてのフレイみたいな、ブルコス思想のアンチ・コーディ
なのかな？」
「うーん。どうかしら。私には、フレイと違ってコーディネイターというよりも、
キラそのものに何か怨恨があるような感じがするんだけど……」
とある計画のために、廊下の影から一部始終を覗いていた、トールとミリアリアの
二人は、カガリとキラの関係について推測するが、流石にこの場で答えは出てこない。
そうこうしているうちに、キラ達が動き出したので、二人は慌てて追跡する。
ヘリオポリス分家の二人は、軽く腕を組みながら仲睦まじく歩いていたが、
やがて廊下が二つに枝分かれると、名残惜しそうにお別れのキスを交わして、
フレイは厨房に、キラはストライクの格納ドックへと、それぞれの職務を果たしに行く。
「よしっ…」
二人が離れたのを確認したトールとミリアリアは、お互いにコクリと肯き合い、
それぞれのターゲットの追跡へと移行する。いよいよ作戦開始である。
ただ、フレイはまだしも、今の幸せそうなキラに、これから自分達がしようと
していることを考えて、二人は多少気が滅入ってきたが、ここ数日一度も笑顔を
見せたことがないサイのことを想い、敢えて非情に徹することにした。
君には嫌われていると思っていたんだけどね」
「べ…別に、俺だって特に嫌っているわけじゃ……」
いきなりのフレイの牽制に、トールは言葉を詰まらせる。
厨房で、夕食の四時間も前から料理の仕込みに入っていたフレイは、予期せぬトール
の来訪に、一時休憩して手を休める。学園内でもほとんど面識のなかった男子二人は、
はじめて正面から向かい合うことになる。
「遠慮しなくても良いよ、昔から何故か同姓にはあまり好かれた記憶はないんだ。
もっとも、異性から嫌われたことも滅多になかったので、その代償かもね」
ぬけぬけとそう主張するフレイに、トールは改めて自分がこの目の前の男を嫌っていた
事実を認識させられる。否、同姓でフレイを好きになれる奴など、絶対的な希少種だろう。
「で、用件は何だい？昔と違って、今は僕も忙しい身分なんでね。早めに済ませて
くれないかな…」
フレイは面倒臭そうにトールに催促するが、トールは無言だ。素朴な騎士道精神を友とし、
意気込んで乗り込んではみたものの、実際に面と向かってみれば、お調子者ではあるが、
この方面に関しては口下手なトールとしては、どう話しを切り出して良いのやら
見当もつかない。
フレイも、自ら訪ねておきながら、だんまりを決め込んだトールに少しいらつきはじめる。
既にＡＡにトール達を巻き込むことに成功し、さらにはキラの身も心も完全に掌握して
しまった今では、フレイのトール達への興味や利用価値も薄れてしまっている。
現在フレイが心惹かれているのは、キラに何やら因縁めいたものを感じさせるカガリで、
フレイとしては、何とか切っ掛けを掴んで、彼にちょっかいを掛けたくて仕方がないのだ。
「もしかして、サイのことについてか？」
さっさとこの退屈な案件を打ち切って、仕事に戻りたいフレイは、敢えて彼のほうから
トールに助け舟を出す。動揺したトールの態度からヤマが当たったことを確信した
フレイは、危険な戦場で明日死ぬとも分からぬ我が身の心配よりも、他人の色恋沙汰
を優先させるトールの御目出度さに内心呆れ果てながらも、
「だったら、僕から言えるのは一つだけだね。他人の恋愛に第三者が首を突っ込むこと
ほど野暮なことは他にないと思うよ」
それだけ一方的に告げると、フレイは仕込みの続きに戻ろうとする。
いくら手を抜いても、ＡＡのクルーに美味いと言わしめる範疇で料理を提供することは
可能だが、完璧主義の気があるフレイは、一端手をつけたことには手を抜きたくないのだ。
「おい、待てよ！」
トールがフレイの肩を掴み、煩わしそうにフレイがトールを振り返る。
ここに来て、ようやく腹を括ったトールは、強い情熱とそれに反比例する貧困な
ボキャブラリで、フレイの無情を詰るが、フレイは理知的に、トールの主張に一つ一つ
的確に反論し、トールはグウの音も出なくなってしまう。いずれ、母の仕事を継ごうと、
弁論コンクールなどに積極的に参加し、外交用の対人話術を研いてきたフレイにとって、
最低限の理論武装すら出来ていない直情型のトールなど、舌戦の相手としては役者不足も
甚だしかった。
「お前、いつかサイに刺されても知らないぞ」
もはや刀折れ矢も尽き果てたトールが、自分でも負け犬の遠吠えだと思う実効力の
ない嫌味を口にしたが、フレイははじめてトールの言葉に感銘を受けたように、
クスクスと笑い出した。
「何が可笑しいんだよ？」
「いや、僕は本当にサイに殺されるほど悪いことをしたのか疑問でね…」
「してるだろうが！本当に自覚がないのかよ、お前は！？」
「だとしても、僕はサイに刺されてやるわけにはいかないね。
僕はサイ以上に僕を刺す権利を持った女の子を何人か知っているのでね。
いくら許婚とはいえ、キス止まりの相手に刺されたのじゃ、それ以上のものを
僕に捧げながらも、大人しく身を引いてくれた彼女たちに申し訳がたたないだろ？」
トールは目の前にいるのが、自分と同じ生物だということさえ信じられなかった。
だが、フレイのあまりの非人道振りに、一時萎え掛けていたトールの怒りゲージ
が再びチャージされる。
「何が身を引いてくれただ。お前が無理やり泣き寝入りさせてきたんだろうが！？」
「泣き寝入りだって？違うね、本当に大切なモノを奪われたと思うのなら、
何故彼女たちは戦わなかったんだ？」
「戦うって…お前な…」
あまりに大袈裟なフレイの物言いに、トールは言葉に詰まったが、フレイの言葉は
次第に熱を帯びてくる。
「力で敵わないのなら、頭を使えばいい。必要ならプライドを捨て、貞操でも友情でも
何でも利用し捨て身になればよい。僕なら必ずそうする。大切なモノを奪われて
泣き寝入りなど絶対にしない。それが出来なかったということは、結局、彼女たちが
失ったものは、その程度の価値しかない代物だったということなんだろ？」
先ほどまで飄々としていたフレイの得体の知れない迫力に、トールは言葉が出てこない。
柄にもなく熱くなったことに気づいたフレイは、自分を戒めるようにトーンダウンすると、
「そんな他人のことよりも、君自身はどうなんだい、トール？」
「えっ？」
「君がミリアリアと恋仲なのは知っているが、どこまで進んでいるんだい？
もっとハッキリ言えば、ミリアリアを抱いたのか聞いているんだよ」
あまりに直接的なフレイの言い方に、トールの表情が目まぐるしく入れ替わる。
「どうやら、まだみたいだね…」
読心術でも使えるのか…と疑いたくなるような、相変わらずの悪魔的な洞察力で、
トール達の現状を看破したフレイは、憐れむようにトールの肩に手を置くと
「だったら、早く済ませた方がいいんじゃないか？僕達は何時死んでもおかしくない
身分なんだぜ。どちらかが亡くなってから、その時になって悔いても…」
「んなことは、大きなお世話だ！ほっとけよ！」
フレイが全て言い終える前に、トールが逆上して、フレイの手を振り払う。
フレイは、そのトールの言葉を待っていたかのように、トールの行動矛盾を指摘する。
「そう、確かに大きなお世話だよね。けど、それは先程まで君が僕にしようと
していた事と何が違うんだい？だから、野暮だと最初に忠告したんだけどね」
フレイの指摘通り、悪質なダブルスタンダードを犯したトールは、己の完全な敗北
を悟った。自分では、到底この口の悪魔には勝てそうもない。いや、こいつは口先
だけでもないから余計性質が悪いんだ。トールはチラリと包帯を巻いたフレイの両手
を見ながらそう考えたが、それでも最後に、どうしてもトールはフレイに伝えて、
そして確認しなければならないことがあった。
「キラも………キラも飽きたら、そうやってサイみたいに捨てる気か、フレイ！？
サイもそうだけど、キラも本当にお前のことが好きなんだぞ！」
フレイはトールの恐らく最後となるであろう弾劾に、軽く腕を組んだままクールな
表情を崩さなかったが、内心ではトールの識見不足を嘲笑っていた。
キラが僕を好きだって？違うね、キラの想い人は他にいるんだよ。
別にキラにとっては、僕でなくても誰でも良かったのさ。
婚約者のいる想い人の事を忘れさせてくれた上で、今のキラの現状を理解し、
キラに優しい言葉をかけて、キラを慰めてくれる奴なら誰でもね。
もっとも、あの娘にはシンデレラ願望があるようだから、カズィあたりじゃ、
ちょっときついかもしれないけどね。
内心で軽く苦笑するフレイの葛藤に気づかず、トールは最後の言葉を言い放つ。
「そこまでキラをその気にさせておいて、この先キラを泣かせたら、
どんな屁理屈を捏ねても、俺は絶対にお前を許さないからな！」
燃え尽きる寸前の蝋燭の炎が、最後に見せる一瞬の煌めきのように燃え上がった
トールの情熱に、容赦なく水をかけ鎮火するがごとく、フレイも今回の茶番劇に
終止符を打つ最後の一言を口にする。
「心配するな、トール。キラは僕の終着駅だよ」
それだけ告げると、もはやフレイは二度とトールを振り返らなかった。
終着駅！？それって、結婚して責任を取るってことか？
本当にそこまでキラに本気なのか、あのフレイが…。
トールでさえ、ミリィに対してそこまでの覚悟はまだ持っていなかったので、
そのフレイの只ならぬ覚悟の深さに、トールの蝋燭の炎は完全に燃え尽きてしまう。
かつてのフラガと同じく、トールは、フレイの言葉の裏に隠された真意に気づかずに、
フレイの言葉を抜本的に誤解していた。そう仕向けるよう、敢えて曖昧なニュアンス
をフレイが故意に使用しているのだから、無理からぬところだが。
まずは前半戦、トールｖｓフレイの対決は、フレイに軍配があがることになった。
どんどん面白くなってきましたね、キラがフレイにどう対応していくのか…
＞女キラ
フレイ様怖すぎｗ
面白いw
女キラＶＳ女サイはあるのだろうか・・
男フレイ様強すぎｗ
いやぁ、ありゃ誰にも止められないねぇ････
ふと、思ったんだが、アストレイ３人娘も男になるのかなぁ？
いや、どうでもいいっちゃ、どうでもいいことなんだがｗ
嫌味なだけであっさりと殺られそうなんだけどｗ
ダコスタはSSでは人気者だ！
やっぱりラクスつながりなのかw
>流離
マリュ―5缶かよ！多分ザグレブ基地の食料庫
から残らず…
>キラ（♀）×フレイ（♂）
暗黒フレイ様とトールのバトルはすごく面白い！
次はキラVSミリアリアですか。
いずれキラの愛情に溶かされるのでせうか。
フレイきゅんｶｺｲｲ！（・∀・）
前半戦ということは、後半戦はキラvsサイ？
楽しみだ。
パパさん。お忙しいとこありがとうございます。私のＳＳも載せてくださって感謝です。
それなのに、心苦しいのですが、1, 2章の副題 [ドミニオン] [アークエンジェル]が
抜けています。そのうちに訂正していただけるとありがたいです。
>流離
ここでのフレイ様は、TV本編で謝りたくて心残りだったことを、中盤で果たしてしまっているのですね。
この物語では、そのことが心を解き放つ鍵にはなっていないようですけど。
悟りフレイ様。これから、どうなるのか気になります。
パパさん乙フレです！
自分の作品が一番上にのっている…しかし誤字が多いなぁ。
だが、この噂を無視できない者達もいた。ヘリオポリスの学生達である。この話をカズィから聞かされたサイは驚きのあまり眼鏡をずり落としてしまった。
「フレイが、キラと別れた！？」
「う、うん、なんでもフレイの方から別れ話を持ちこんだみたいだよ」
カズィの話を聞いたサイはどうしても理解できなかった。何故、どうしてフレイがキラと別れるんだ。どうして･･････
この噂を聞きつけたのはトールとミリアリアもだった。
「フレイがキラと別れた！？」
「嘘、なんでよ？」
食堂でそれを聞いたトールとミリアリアは顔を見合わせた。だが、２人ともどこか納得してしまう部分もある。あの２人はあのまま付き合っていたら絶対に壊れてしまっていただろう。別れた方が良かったのだ。
だが、食堂に入って来たキラを見た時、２人は改めて顔を見合わせてしまった。今日のキラはまるでこの世の終わりが来たかのように暗い雰囲気を漂わせ、眼の下には黒々とした隈を作っていたから。
「キ、キラ？」
ミリアリアが声をかけると、キラはこちらを見た。
「何、ミリィ？」
「だ、大丈夫なの、酷く疲れてるみたいだけど」
「大丈夫だよ、まだ大丈夫だから」
キラは弱々しい笑みを浮かべ、食事のトレイを持って１人別のテーブルに腰を降ろす。どうやら相当ショックだったらしい。あの状態で敵と遭遇したりしたら何もできずに落されかねない。
「キラ、大丈夫かしら？」
「失恋に付ける妙薬なしだからなあ。こればっかりは」
トールも打つ手なしという感じで肩を竦める。トールは内心ではそれがフレイの選択だった訳だと納得しながらも、どうしたものかと考えてしまう。キラとフレイが別れたのは間違ってないと思うけど、あのキラを見てしまうとどことなく自分の判断に自信が持てない。例え間違った関係でも、キラにはフレイが必要だったのではないだろうか。と、今では思えてしまうのだ。
「本当、難しいな」
男女の関係というものは難しい。これで良かったと思えるのに、キラはより深く傷付いてしまっている。キラも間違った関係だと気付いてた。フレイも自ら別れたのだからそれに気付いていたのだろう。なのにこの結果だ。
「あ、トール、ここにいたわね」
「俺に、なにか用？」
どうしても声に不機嫌さが出てしまう。今のキラを見た後ではフレイに好感を持てという方が無理だろう。ミリアリアに至ってはあからさまな敵意を向けているくらいだ。だが、フレイは気にした風もない。
「ザグレブ基地に敵のＭＳが近付いてるわ。ジン３機にザウートが１機。私も迎撃に出撃するけど、トールにも念の為戦闘配置につけって艦長が」
「迎撃に出るって、キラは？」
「私のデュエルに戦車隊で十分に撃退できる数よ。キラは休ませておくことになったそうだわ。それに、キース大尉も出てくれるし」
フレイは簡単に事情を説明してくれた。艦長の命令では逆らう訳にもいかないし、トールはミリアリアに断って席をたった。そのままフレイについて食堂を後にする。
食堂から十分に離れた所でトールはフレイに問い掛けた。
「フレイ、おまえ、なんでキラと？」
「･･････別れたかって事ね」
フレイは足を止めずにトールを見た。その表情にトールは内心で驚く。これが、こんなに穏やかで、空虚な笑みを浮かべるフレイは見た事がないからだ。
「私が全部悪かったのよ。キラを傷付けると分かってて近付いたんだもの」
「利用する為にかい？」
トールの言葉にフレイは足を止めた。表情に驚きが走る。
「なんで、それを？」
「いや、ちょっとした推理だよ。君の様子が変わったのはお父さんが死んだ時からだったからね。サイもその頃から君の様子をおかしいと言い出してたし、多分お父さんの敵討ちが目的なんだろうって思っただけさ」
「･･･････当たりよ。よく考えたわね」
重苦しい溜息をついて、フレイはトールから視線を逸らした。そして言い難そうに語る。
「でも、もう大丈夫よ。私はもうキラを利用したりしないから。これからは自分で続きをやる事にしたから、もうキラを苦しめる事はないわ。キラには私がいなくてもカガリやみんながいるし、大丈夫よ」
「･･････本当にそう思うのか。おまえはそれで良いのかよ？」
「ええ、思うわよ。私だって、本当はキラと、コーディネイターと一緒になんか居たくなかったんだからっ！」
叫ぶように言うと、フレイはパイロットルームに駆けて行ってしまった。残されたトールは去り際に見せたフレイの辛そうな顔に後を追う気力を奪われて立ち竦んでいる。そして、少し離れた所から今にも壊れそうな声が聞こえた。
「そんな、フレイ･･････」
「なっ！？」
驚いて振りかえると、食堂に残ってた筈のキラが居た。身体は小刻みに震え、顔は蒼白になっている。
トールが驚いて硬直していると、キラは覚束ない足取りで後退りだした。
「僕は･･････嘘でも良いから･･････一緒に居て欲しかったのに･･････」
「キ、キラ･･･････お前」
「僕は･･････僕は･･････」
キラはトールの前から駆け出してしまった。残されたトールはやりきれない感情を拳に乗せて壁に叩きつけた。
「馬鹿だよ、キラも、フレイも、大馬鹿だ。変な意地張りやがって。変な思い込みなんかしやがって」
例えそれが間違っていたとしても、何時の間にかそれがかけがえのない絆となってしまう事があるのだという事を、トールは初めて実感した。例えお互いを傷付けあうだけでも、キラにはフレイが、フレイにはキラが必要だったのだ。だが、それがようやく分かった時にはすでに手遅れだったのだ。
トールは通路の壁に背中を預けて、右の掌で顔を覆いながら空虚な声で笑い出した。何が友人だ。２人を観察して、何かやれると意気込んで、分かった気になって。結局何も分かってなかったじゃないか。この先２人がどうなっていくのか、もう分からない。もう自分には何もできないだろうから。
「サイ？」
「久しぶりだね、フレイ」
サイだ。何故彼がここに居るのだろう。どうやら自分に会いに来たらしいが、今更私にどんな用があるというのだろう。
「フレイ、聞いたよ。キラと別れたんだって？」
「あなたもなの。噂が広まるのは速いのね」
「何でだよ、フレイ！？」
サイはフレイの肩を掴もうとしたが、フレイをそれを躱してサイから離れた。
「私とキラの事よ。あまり詮索しないで欲しいわ」
「だけど、君は！」
そこまで言って、サイは口をつぐんだ。君は、何なのだろうかとフレイは思ったが、それを聞くより早く放送がかかった。
＜アルスター准尉、出撃１０分前です。格納庫へ急いでください＞
放送を聞いたフレイはサイの脇を抜けて歩き出した。そんなフレイにサイが声をかける。
「フレイ！」
「ごめんなさい、出撃だから」
これ以上サイの声を聞きたくなかったフレイは格納庫へと駆けて行った。それを見送ったサイは肩を落とし、床に視線を落す。そして、小さな声で言いたかった事を吐き出した。
「なんでキラから離れたんだ。君は、あいつの事が好きなんだろ」
フレイ君の背中に隠れるキラちゃんが可愛いｗ
だが、トール君。もっと頑張らないと行けないぞ。君は勢いで戦う方が似合っている
しかしフレイ君、もう黒過ぎｗ
どんどん話に引き込まれていっています、ところで質問。
この板で短編かかれたことありましたっけ？
おいおいキラだいじょぶか？？
それはそうとトール君はこのスレで大活躍ですね。
「受け入れ許可、出ました！」
ドミニオン脱出艇の副操縦席に座る士官の声に、
操縦席についている士官―その襟から見るに、中尉であるようだ―ハンス・ペーターゼンは
うなずいてみせた。
「よし、感謝すると伝えてくれ。
これより当艇はアークエンジェルへ着艦体勢に入る」
救命艇の後部ですし詰め状態になっていたドミニオンの乗務員（クルー）たちから
安堵とも不安ともつかないざわめきがおこる。
「助かった！」
「…それはどうかな」
若い整備士が声をあげると、その横にいた士官が重苦しい声で水をさした。
「そもそも、アークエンジェルは軍を脱走した連中だろうが。
それが、戦争法に則った捕虜の扱いをしてくれると期待しちゃいけないさ」
「はあ…。でも、元は連合の艦なんでしょう？」
「今は敵なんだ。乗務員だったっていうアルスター曹長ならともかく、俺たちは…」
「そうだ！フレイちゃんの乗ったランチは？ちゃんと後続してきてんだろうな？」
アルスター、の名前を聞くやがぜん元気になる整備士を、
また他の乗務員がたしなめる。
レーダーにちらと視線をやる副操縦士を、ペーターゼンは目で制止した。
最後に母艦より射出された救命艇は、超高速でとびまわる戦闘中のＭＳに接近された時
信号が途絶えた。
副操縦席側の窓から、ひときわ強く光が閃いたのもその頃だ。
大抵の艦橋クルーはそこに乗っていた。
副長も、多くの仲間達も、そしてまた今となっては
唯一、アークエンジェルとの交渉役になってくれたであろう通信士、
フレイ・アルスター曹長も。
今はそれを艇内に伝えても、パニックになるだけだ。
副操縦士もそれを察したと見え、静かにうなだれる。
副長の乗る艇が指揮をとっていないことを不審に思う者は、
幸い、まだいないようだった。
アークエンジェルに着いたら、彼らに伝えよう。
ペーターゼンもまた僅かに頭を垂れ、
戦友たちに今はこれだけの追悼しかできぬことを、心の中で詫びた。
イザークは、自己顕示欲も強いので、どこかへ動く際に何も言わないことはないかなと思いました。
また、あわよくばディアッカが出ないかと思っていたのかも…
って、そんなことあの文章じゃぜんぜんわかんないですね。表現力の不足を痛感します＿|￣|○
＞コスプレ
キラ…変態と任命して良いですかｗ
でも、最後はしんみりしました。フレイ様のカカア天下ぶりに乾杯。
＞流離う
ついに来てしまいましたか、この時が。
戦闘出動を淡々と語るフレイ、立ち聞きするキラ…
もう本編と、逆になっていますね。何かが。
そして思いだけでなにもわからず、何もできないトール君。
泣けます…。
＞キラ♀
フレイ君、黒くかつ賢こすぎる…少しトールを応援してしまった。
もうこれはラスボスの器ですなｗ
＞春コレ
ダコスタ君大活躍…「色黒」のくだりには笑いました。
彼はきっといい仕事をしてくれるに違いない。
しかしナタルさん、流石ですねｗ
サイとトールいいヤツだ。
フレイ様の空元気ぷりが痛々しい。
>ジン３機にザウートが１機
今度の敵は小勢だし、余裕ですな……
>メビウス
脱出艇の受け入れかあ。たしかにドミニオン
のクルーからすればAAは得体の知れない連中
だろうから不安だろうな。
日本海海戦の時は、降伏した艦隊の乗員を三笠とかに移す時
非常に丁寧な対応でロシア兵が驚いたそうですから。
あと部下が捕虜を見て「万歳」と言った時、東郷長官が怒って制止したり。
マリューやＡＡクルーにもそんな度量が……ないかも。
「遅いぞ、何をしてた！」
「す、すいません！」
キースの傍まで来たフレイは慌てて頭を下げた。キースは僅かに表情を緩めると「もう良い」と言って顔を上げさせる。
「今度の敵は大した事はない。ジンが３機にザウートが１機なら、デュエル１機でお釣りが来る程度の相手だ。俺が上空から支援するから、気楽に行け」
「気楽って言っても、これが２度目の実戦なんですけど」
フレイは苦笑した。気楽にやれなどと言われても無茶な話だからだ。キースは小さく笑いながら自分の失言を認め、素直に謝った。そして、懐から１つのペンダントを取り出してフレイに渡した。
「持ってけ、お守り代わりだ」
「お守り、ですか？」
「ああ、まだ開けるなよ。どうしても怖くなったら開けて中を見るんだな。多分お前を助けてくれる」
キースの言葉に不思議そうにペンダントを目の前にかざし、首を捻った。一体、この中に何があるのだろうか。気にはなるが、開けるなと言ってるのだから開けない方が良いだろう。
「さてと、それでは行くか。死ぬんじゃないぞ」
「はいっ」
キースの激励に頷いて、フレイはデュエルに乗りこんだ。訓練も数えればもう幾度このコクピットに収まっただろうか。こうして２度目の実戦へと挑むというのに、ここには不思議な安心感がある。これが愛機を得るという事なのだろうか。
出撃したフレイはさっそく戦車隊と合流して基地の前方へと進出した。上空にはキースのスカイグラスパーを含む戦闘機隊がいる。そのまま予定地域で待機していると、前方にジンとザウートの構成部隊が現れた。機動力を確保するためか戦車は伴っていないようだ。
「見つけたわ、ジン４、ザウート１。情報より１機多い！」
「アルスター准尉、我々はここから砲撃を加える。やつらが近付いたら頼むぞ！」
「任せてください」
戦車隊の隊長の言葉に元気よく答えて、フレイはデュエルのシステムをバトルモードに移行した。ビームライフルとシールドを構え、近付いてくるジンを狙う。向こうもこちらに気づいたのか動き回りだした。
「殺ったか！？」
「いえ、まだです！」
フレイは迷うことなくビームライフルを放った。すると、まるでそこに来るのが分かっていたかのように煙の中からジンが飛び出してきた。飛び出してきたジンが右肩を直撃されて大きく仰け反る。そこに更に２発目、３発目を撃ち込んで止めを刺した。
「よし、１機堕とした」
「よくやった准尉！」
いきなりジン１機を撃破したフレイに戦車隊長が喝采を上げる。だが、まだ敵はいるのだ。キースからの通信がフレイの耳を打つ。
「フレイ、ジン３機が同時に来るぞ。それと、ザウートが狙ってる。動け！」
「わ、分かりました！」
言われてフレイはデュエルを走らせた。すぐに大口径砲弾が着弾し、照準が付けられてる事を知る。
「俺がザウートを仕留める。お前はジンを殺れ！」
「はい、気をつけてください！」
フレイはデュエルをジンに向けて走らせた。気付いたジンが重突撃機銃を向けて撃ってくるが、そんなものを気にする必要は無い。フェイズシフト装甲を展開している以上、７６ｍｍ弾くらいでは掠り傷にもならないのだ。この着弾の衝撃にさえ耐えられれば致命傷にはならない。
ジンをロックオンするとフレイは迷わずトリガーを引いた。ビームがジンに吸いこまれ、これを一撃で破壊してしまう。そこで足を止めて次の目標を探した。キラならすでに次の相手を決めているのだろうが、フレイにはそこまでは無理だ。
幸いにして残る２機のジンは戦車隊が押さえ込んでくれている。自分が狙われる事は無かった。
「後２機で終わりね」
フレイは落ちついて近い方のジンをロックオンし、ビームライフルを放った。相手も動き回ってるせいで１射目は外れたが、構わずに続けて撃ち続ける。４射目でジンの右足を捕らえ、地面に転倒させる事が出来た。残るは１機と考えてそちらを向いたが、最後の１機は全力で逃げだしてしまっていた。
「逃がすもんですか！」
フレイは追い掛けようとしたが、キースに止められた。
「よせフレイ、敵は撃退した。もう十分だ！」
「キースさん、でも！」
「追撃の必要は無い！」
叩き付けるように言って、キースは一方的に通信をきった。フレイは渋々ライフルを降ろし、デュエルを転んでいるジンの傍まで歩かせる。コクピットが開いてないからパイロットはまだ中だろう。死んだかと思ったが、駆けつけてきた歩兵がハッチを開けて中に入り、１人のパイロットが引きずり出されてきた。どうやら生きているようだ。
だが、フレイはそこで信じられないものを見た。連合の兵士が捕まえたザフトのパイロットに数人がかりで暴行を加えていたのだ。
「ちょっと、何をしてるのよ！？」
「あ、これは、アルスター准尉ですか」
軍曹の階級章をつけた兵士が敬礼をする。どうやら向こうはこっちを知っているらしい。だが、今はそれどころではない。
「何をしてるのよ。捕虜の虐待なんて！」
「大丈夫ですよ、コーディネイターはこれくらいで死んだりしません」
軍曹は嘲るような目でジンのパイロットを見た。そのパイロットは自分と同じくらいの年で、ヘルメットを脱がされた顔には暴行の傷痕が生々しい。それを見たフレイは痛ましさを感じてしまった。だが、その目の前でその少年にまた蹴りが入れられる。その一撃で少年は横向きに転がった。
「けっ、これだけやってもまだ生きてやがる。化け物ってのはこいつらの為の言葉だな」
「ああ、本当に便利な体だよ」
軽蔑混じりにパイロットを見下ろす兵士達。兵士はコーディネイターの頑丈な体が災いして未だに意識を失っていないらしい。そこにさらに一撃を入れようとする兵士を見て、フレイの中でなにかが切れた。
「止めて、もう止めてっ！」
フレイの叫びに兵士達の動きが止まり、怪訝そうな顔でフレイを見る。
「何故でありますか。所詮コーディネイター、敵ですよ？」
「捕虜なんでしょ。だったら捕虜らしく扱いなさいよ！」
「･･････････････」
軍曹は困った顔でフレイを見ている。内心では何を甘い事を言ってるのかと思っているのだろう。だが、相手は准士官で、昨日は勲章まで貰っているのだ。流石に無視する事もできないと考えたのだろう。渋々手を出すのを止めた。
「もう良いわ、早く任務に戻りなさい」
「はっ、我々は周囲の警戒に戻ります。この男には拘束具を付けてありますから大丈夫とは思いますが、気を付けてください」
「分かってるわよ」
フレイはもうこれ以上この兵士達と話をしていたくなかった。ナチュラルの醜さを見せつけられている気がするから。そして、彼らの醜さは自分の醜さでもあるのだ。
「暴れるんじゃないわよ。もし変な動きしたら撃つからね」
傷についた泥を拭きとったあと、消毒をしていく。ジンのパイロットはそんなフレイを不思議そうに見ていた。その視線に気づいたフレイが露骨に眉を顰める。
「何よ？」
「い、いや、なんで手当てなんかしてくれるのかと思って･･････」
「煩いわね。気紛れよ。私だって何が楽しくてコーディネイターの手当てなんかしなくちゃいけないのよ」
ブツブツと文句を言いながら、それでも手を休める事はない。消毒を終えて無針注射器で鎮痛剤を投与する。これで痛みがだいぶ和らぐ筈だ。
「これで楽になるはずよ。これ以上の手当てはここじゃできないから、軍医にでも看てもらうのね。そろそろ憲兵が来ると思うから」
フレイは医療キットを纏めると立ち上がった。そのままデュエルに戻ろうとする。だが、その背中に声がかけられた。
「お、おいっ」
「何よ、まだ何か用なの？」
フレイは振り返った。ジンのパイロットは言い難そうに顔を背けた後、小さな声をだした。
「あ、ありがとう。助けてくれて」
「････ふん、コーディネイターでも礼を言うのね」
「あ、当たり前だろ！」
向きになって言い返してくるパイロットに、フレイはおかしさを感じて僅かに口元を綻ばせた。コクピットに医療キットを戻し、レーダーで周囲を確認する。どうやら敵はいないようだ。帰ってくる反応は味方のものばかりで、未確認の反応はない。フレイは安堵すると、外に出て空を見上げた。友軍の戦闘機が何機か何機か旋回しているのが見える。この辺りが味方の勢力圏である事をなによりも如実に表している光景だった。
そのまま暫く待っていると、憲兵の乗ったジープがやってきてジンのパイロットを連行していった。これから尋問して情報を吐かせるのだそうだ。あとは自分にはどうする事も出来ないので黙って見送るが、去り際にジンのパイロットが自分に頭を下げるのが見えた。
フレイ様とキラ、ヘリオ組の関係は･･･････ご想像に任せます。フレイ様はまだ変わった訳じゃないんですけどね
>>410
ええと、短編は前に４本ぐらい載せましたよ。気が向いたら書くって感じですね
>>メビウス
そりゃ、反乱起こした艦に投降だからなあ。する方は生きた心地がしないでしょう
でも、フレイ様ってドミクルーには結構人気者だったのかｗ
下士官を叱責するフレイ様。凛々しいですね。
ミリアリアの方は、未だに後半開始のホイッスルを待ち続けている状態だった。
「ごめんね、ミリィ。後ちょっとで終わるから、もう少し待っていてね…」
キラは、ストライクのコックピットから引き伸ばした端末の鍵盤を、お得意の高速
プログラミングモードで、まるでグランドピアノを演奏するピアニストのような優雅な
手つきで、せわしく指を動かし続ける。同時に複数平行しながら、出現すると同時に
即座に処理されていくディスプレイの情報量の異常さに、思わずミリアリアは息を飲む。
これが、キラの……いいえ、コーディネイターの本当の能力？
公業カレッジでのキラは確かに有能な学生だったが、あの頃のキラの技能は一応
人間業の範疇だったので、キラが故意に自分の実力を隠していたのは間違いないだろう。
「これで終わりっ…と。……で、何の話だっけ、ミリィ？」
端末を閉じて、ニコニコとした笑顔でこちらを振り向いたキラは、ミリアリアの良く
知る何時ものキラだったので、ミリィは内心で軽く安堵の溜息を漏らす。
ピィーと笛が吹かれ、いよいよ後半戦の開始である。
「仕事以外で、こうしてミリィと話しをするのも久しぶりよね、どうしてなのかな…」
最近、ヘリオポリス本家と疎遠になっていたキラは、ミリアリアの来訪を心から
歓迎しているみたいで、キラを不幸にするお土産を持参してきたミリィの良心が
チクリと痛んだ。今、彼女の目の前にいるキラは、海千山千のフレイとは大きく異なり、
まさしく純粋培養物そのものだったので、フレイの相手を務めたトールに比べれば、
数百倍は与し易い相手だと思われるが、フレイと違って悪意の欠片もないキラは、
トールほどの確固たる信念を以って今回の件に臨んだわけじゃないミリアリア
にとって、ある意味ではフレイ以上に遣り辛い相手と言えなくもない。
「最近、フレイと仲が良いのね、キラ…」
いきなり本題を切り出すのも気が引けたミリアリアは、まずは無難な出だしから
スタートし、フレイの名を聞いたキラは破顔する。
「えへへ…。やっぱり分かる？分かっちゃう…」
誰が見ても恋する乙女と分かる表情で、キラはクネクネと身体をくねらせる。
それからフレイとの惚気話しを、洪水のような勢いで聞かされたミリアリアは、
危うくお惚気の海で溺死しかけそうになる。今の天よりも高く舞い上がったキラに、
フレイとの別れ話を切り出すことより悪どい事など、何一つ思い浮かばなかったミリィは、
このまま逃げ出したくなったが、どうしても一つだけキラの態度で気になる事がある。
それは今のキラから、サイに対する負い目のようなものが全く感じられないということだ。
サイがフレイの許婚だったのはキラも知っているはずで、二人が既に別れたことを
キラが承知していたとしても、それでもサイの後釜に座る自分自身に後ろめたさを
感じるのが自然な流れのはずなのだが、不思議と今のキラにはそれが無いのだ。
もしかしてサイのことを完全に忘れている？
ミリアリアは、まさか…と思ったが、キラには意外に鳥頭の傾向があるようなので、
念のために、当初の目的へのステップを一段階進ませて様子を見ることにする。
「ねぇ、キラ。最近、サイがフレイから一方的に婚約破棄された件について知ってる？」
何とか、キラの話しの腰を折ったミリアリアは、言葉の濁流の僅かな隙間にサイの名を
上手く滑り込ませて、キラの舌を停止させるのに成功する。サイの現状を聞いたキラの
顔色がみるみると青ざめる。その変化があまりに鮮明だったので、「まさか本当に忘れて
いたの…」と驚き且つ呆れたミリィは、ここぞとばかりにキラのサイへの無情を詰った。
「キラ、私も流石にフレイと別れろとまでは言わない。けど、少しはサイの気持ちも
考えてあげ……」
「どうして…どうして、そんなこと言うの、ミリィ……？」
「キラっ……！？」
一番肝心なところで話の腰を折られたミリアリアが、思わずキラを叱咤しようとして、
ハッと息を飲む。キラの瞳からポロポロと涙が零れ落ちている。
「やだよぉ、ミリィ…。お願いだから、今更、私からフレイを取り上げようとしないでよ」
キラ……。
周りの整備クルーが皆注目するほど、激しく嗚咽を漏らすキラの姿を見て、ミリアリア
はキラは狡いと思った。ああやっていきなり泣き出されたら、それ以上、対話のしようが
ないではないか。ミリィは今日まで親友の泣き癖を、キラのチャーミングポイントだと
思ってきたが、今では単なる自己防衛の手段としか映らなかった。
それにしても、先ほどの恰幅の良い仕事振りや、戦場での雄雄しい活躍に比べて、
今の生身のキラの弱々しさはどうしたことか…。
キラは確かに泣き虫で臆病だが、それでも今までのキラならば、ミリィ達を守るために
武器を取って戦うことを選択し、不条理な人質案に抵抗するために自ら率先してラクス
を返還したりと、芯の通った自分なりの主体的な意思で以って行動していたはずだ。
なのに、今のキラからはそれが全く感じられない。ひたすらフレイの存在にしがみ付いて、
道理もへったくれもなく、ただ幼児のように泣き喚めいているだけだ。
これまでミリアリアは、比較的キラとフレイの仲を好意的な目で見てきたが、極度に
フレイに依存したキラの状態を目の当たりにして、はじめてヘリオポリス分家の二人
の関係性に危機感を抱いた。
へたり込んで泣き続けるキラの様子を心配して、マードック達が集まってきて声を掛ける。
これ以上、この場ではどうすることも出来なくなったミリアリアは、キラの姿を尻目に
そのまま格納ドックから出て行った。
前半と違い、後半戦の結果は、どうやら双方痛み分けということになりそうだ。
そんな鬼みたいなことは私には言えなかった」
「俺の方は、もっと酷いザマさ。ミリィに偉そうな口叩いておいて、情けねえ…」
夕食後、人気の少ない営倉の手前で落ち合ったトールとミリアリアの二人は、
お互いの結果報告をし合ったが、当初の予定外の戦果の芳しさに軽く溜息を吐く。
「正直、口喧嘩じゃ俺は…いや、多分誰でもフレイには勝てないだろうな。
殴り合いなら何とかなるかも知れないけど、それじゃ全然意味ないし、何より
信じられないけど、どうやらフレイの奴、キラに真剣（マジ）みたいなんだよな…」
トールとしては、フレイが学園時代のプレイボーイ感覚で、サイからキラに乗り換えたと
いうのなら、鉄拳制裁へと踏み切れるのだが、正式な夫婦でも離婚が認められている
今のご時世で、いくら、フレイのサイへの振り方に問題があったにしても、既に完全
に心が離れた許婚に生涯添い遂げろなどという無茶を通すわけにもいかないだろう。
「ねぇ、トール。私、以前はトールの主張していたことに懐疑的だったけど、今なら
何となく実感できるの。キラとフレイをあのままにしておくのは良くないと思う。
サイの件は別にしても、今の二人の関係性は、多分どちらの為にもならない…」
ミリアリアから一連の経過を聞かされたトールも、ヘリオポリス分家の二人の在り方
に疑問を感じたようだった。
「やっぱり、私達の態度にも問題はあったんじゃないかしら。サイの件で、私達もキラ
に隔離を抱いていたから、孤立したキラは、尚更フレイに逃げて強く依存してしまった
んだと思う。だから、昔のようにもう一度キラ達を迎え入れてあげましょうよ…」
トールはミリィの提案にしばらく考え込んだ後、複雑な返事を返す。
「俺は大丈夫だ。キラには何の含みもないし、フレイは嫌いだけど何とか耐えられる。
多分、カズィも同じだろう。けど、問題はサイだよな…。俺たちだけだから、何とか
サイも普通の顔していられるんであって、あの二人が混ざったらどうなることか…」
トールの鋭い指摘にミリアリアも全く同感だった。そう結局、ヘリオポリス組が本家と
分家の二つに分裂した原因を追求すれば、一番のネックはそこへ行き着くのだ…。
初級の算数と違って、人間関係は何と複雑怪奇なことよ。それにしても、この短期間の
間で、キラとフレイの親密度の加速具合は、自分たちが恋仲になるまでに必要とした
期間を考えると異常なほどだった。一体あの二人の間に何があったのだろう…。
「平気よ、ミリィ。私、蛹から蝶に生まれ変わったんだから…」
まっ…まさか、キラは…。男女の営みに抵抗感を感じる乙女心と同時に、キラに先越
されたという矛盾した想いが複雑に絡み合って、頬を真っ赤に染めたミリアリアの眼前に、
何時の間にかトールが至近距離に顔を突き出しており、ミリィの顔がますます赤くなる。
期せずしてトールの方でも、フレイから指摘された、行き先不明な自分たちの不確実な
未来へと思いを馳せており、目の前の紅く染まったミリアリアの初々しさとの相乗効果で、
ミリィを意識したトールは、無意識にミリアリアの腰へと腕がまわされる。
「ミリィ…」「トール…」
何時どこで何が切っ掛けで、ムードが再燃するか分からないものだ。ミリアリアの腕も
トールの腰にまわされ、二人の恍惚とした顔がゆっくりと近づいていく。
私もこれで蝶蝶になれるのかしら…。二人の唇が重なろうとした、その時、
「何やってるんだ、お前ら？」
偶然、その場を通りかかったカガリが、醒めた瞳で二人に声を掛け、トールとミリアリア
は石化したかのようにその場で固まってしまう。
「仕事をサボって、本当にいい身分だよな、お前たちは…。
けど、そういうことは、誰も見ていない自分達の部屋でしろよな」
カガリがこれ以上ない正論を口にして、その場を後にしたが、傷痕のない右側の頬が
少し赤く染まっていた。カガリに影のように付き従っていたキサカは、軽く二人に
ウインクすると、そのままカガリの後を追う。
渾身の機会を邪魔された二人は、お互い背中合わせになりながら、極めてバツの悪い
表情を見合わせる。ミリィが、蛹から孵化するにはまだまだ時間が掛かりそうだった。
の外に出て、人気のない岩陰の方へと歩いていく。
「母さん…」
何時になくセンチメンタリズムな雰囲気を漂わせたフレイは、心の中で亡き母親を想い、
軽く溜息を吐く。どれほどヘリオポリスの同僚達に悪魔然とした振る舞いをしていても、
母の面影の前ではフレイは母親想いの純朴な子供に過ぎなかったが、常に外見上では
超然と振舞っているフレイの、その孤独な心情を理解できる人間はＡＡにはいなかった。
「フレイ…」
否、一人だけいた。フレイの後を付けて、邪魔の入らない二人っきりになれる機会を
待ち望んでいたサイが、後ろからフレイに声をかける。どうやらトールとミリアリアの
前後戦は、単なる本番前の前哨戦に過ぎなかったようで、舞台は本来の主賓を交えて、
これから延長戦へと突入しようとしている。
フレイは最初煩わしげにサイを振り返ったが、「ごめんなさい」といきなり頭を下げる
サイに戸惑った瞳を向ける。詰られる事はあっても、謝罪されるとは夢にも思わなかった
のだろう。サイはまずは、トールを手玉に取ったフレイの意表をつくことに成功した。
サイの謝罪内容は、モントゴメリが撃沈されフレイの母親が亡くなった時に、自分が
フレイの人質案を躊躇してしまった不手際に対してだ。
「あの時、私が艦長への許可を求めずに即座に対応していたら、きっとモントゴメリは
沈まなかったと思うの。本当にごめんなさい…。その為にフレイに悲しい思いをさせて
しまって…」
軽く嗚咽を漏らしながら、俯いたサイの姿を見て、珍しくフレイの魂から邪気が消えた。
「気にしなくても良いよ、サイ。いきなりあんな乱暴な提案をされれば誰でも戸惑う
だろうし、君は軍属として、上官の裁可を求める義務があったのも確かだ。責任は
全部、決断力に欠いたあの無能な艦長にある。だから、サイは悪くないよ…」
フレイとしては、何よりも責任を負うべき人間は、戦場でロミオとジュリエットごっこ
に興じたあの娘にあると信じていたが、流石にそれは言わなかった。
サイは自分の肩に手を置いて、逆に自分を慰めてくれたフレイの手を軽く握ると、
本当に嬉しそうに微笑んで
「ありがとう、フレイ…。後、婚約破棄の事だけど、それは今ではどうでもいいの。
元々、女癖の悪いフレイを戒めるための安全ピンとして、あなたのお母さんが設定
しただけの話しだったわけだし…」
「サ…サイ…」
偽りでなくフレイが苦笑し、信じ難いことに、少しずつだがフレイはサイのペース
へと巻き込まれていく。そんな事態はアークエンジェルに来てから、前代未聞の話しだ。
「だからね、フレイ…。許婚云々じゃなくて、もう一度、一からあなたとやり直したいの。
私はあなたの母親にはなれないけど、今のあなたの気持ちを誰よりも理解してあげられる
と思うから…」
サイは言葉巧みに、フレイに母親の影をちらつかせて、ゆっくりと…だが、着実に
フレイの心の鍵を抉じ開けていく。サイはフレイの母親であるジョアン女史を
心から尊敬していたので、亡き彼女をダシにしてでもフレイに取り入ろうとする自身
の遣り口に、内心で強い自己嫌悪を感じたが、今のサイは手段を選ぶ余裕がないほど
キラに追い詰められていたのだ。この千載一隅の好機にフレイの心を奪い返せなければ、
恐らくフレイは永遠にキラのものになってしまうだろうから。
確かに、ここ数日のフレイとの夢のような進展具合に完全に舞い上がっていて、
彼にはサイという許婚がいたことさえ頭の片隅にも思い浮かばなかったことは、
実に迂闊としか言いようがない。
でも、ミリィは、サイはフレイから婚約破棄された…って言っていた。
二人が正式に別れたのなら、何も心配することはないんじゃ…。
本来の彼女らしからぬ、邪な考えに囚われたキラの口元が怪しく歪む。
ミリアリアと顔を合わせ辛かったキラは、アークエンジェルの外へと抜け出し、
まるで何者かに用意された舞台に誘い込まれたかのように、フレイ達のいる方向へと
足を進め、そこで二人の姿を目撃する。
フレイ…………！……そ…それに、サイ！？ う…嘘、どうして、この二人が！？
も…もしかして、サイがフレイに復縁を迫ろうとしているの！？
キラは岩塊の陰に隠れて様子を見ながら、フレイが毅然としてサイを突っ撥ねて
くれるのを期待していたが、珍しくもフレイは困惑しているようにキラの目に映り、
事実フレイは、自分が切り捨てたはずの婚約者の存在に戸惑っていた。
それはフレイがキラの今の辛い心情を慮り、キラの心を鷲摑んだのと同じように、
サイもまた、多少の下心があったとはいえ、母親を亡くしたフレイの傷心を誰よりも
労わり、彼の支えになろうとしていたからである。確かにフレイを理解するという一点
において、古くからフレイを知るサイは、フレイの外面の優しさに惑わされているキラ
を大きくリードし、フレイもまた一方的な復讐の相手と見做したキラに、時が来るまでの
束の間の安らぎを与えつつも、キラから自身への理解など欲してはいなかった。
傍目からでもフレイがサイに篭絡されていく様がありありと伺え、キラは焦った。
サイが復縁に成功すれば、自分はフレイの元から弾き出されて、すっぴんのまま
寒空へと一人放り出されてしまうだろう。フレイに身も心も全てを奉げてしまい、
もう何も残されていないキラが…。
そうなったら、キラはまた一人ぼっちになってしまう。想い人や同胞を裏切った負い目や、
人を殺した罪の意識と、守り切れなかった者達への良心の呵責に毎晩脅かされながらも、
そんな自分の心情を誰からも慮ってもらえることなく、一人寂しく泣き続けるしか
なくなるのだ。
そんなの無理よ。フレイの温もりを知ってしまった今更、そんな惨めな生活に
耐えられるわけない。きっといつか壊れてしまう…。
ミリィ達からも見放されつつあり、その上、今フレイに見捨てられたら……、
その恐怖が、考えるよりも先に、キラの身体を突き動かした。
「キラ！？」
岩塊から飛び出したキラは、サイとフレイの心の繋がりを切り裂くかのように、
強引に二人の間に身体を割り込ませ、フレイを守るような姿勢でサイを睨んだ。
もう一人の主演女優が乱入し、舞台は今まさにクライマックスを迎えようとしている。
「…ったく、この艦のガキどもは一体どうなってやがるんだ！？戦争してる真っ只中で、
どいつもこいつも、盛りのついた猫みたいに色気づきやがって…」
先ほどから別の岩陰から、この狂乱の舞台を見つめている一人の観客がいた。
センサー付きの魚雷のようにぴったりと自分を追跡してくるお目付け役のキサカを
振り切るために、アークエンジェルの外へと強引に飛び出したカガリである。
ＡＡの中でトールとミリアリアのラブシーンを見せ付けられたと思ったら、外では
今度は何やら壮絶な修羅場が展開されようとしている。
「…にしても、あいつ、男を見る目がねえな。あんな二股がけの優男に引っ掛かるなんて。
勿体ねえ、自分に与えられた選ばれし力を、もうちょっとマシなことに使えねえのかよ」
さんざんキラを毒づきながらも、カガリはこの場を離れる気配はない。
全く予期しなかった闖入者の存在に、サイは最初戸惑ったが、キラの出現に、
苦労して抉じ開けつつあったフレイの心が再び施錠されたのに気づいたサイは、
遠方のカガリをびびらせるほどの、激しい憎悪の篭った瞳でキラを睨み、当然、
気の小さいキラは足がガタガタ震えるほど怯みかけたが、この戦いに賭かっている
物の大きさを思い出し、心の底から蛮勇を振り絞って何とか踏み止まり、声を出す。
「やめなよ、サイ。さっきからフレイが嫌がっている」
そのキラのふざけた物言いにサイはカーッとなったが、フレイの手前、何とか自制する。
「わ…私は、フレイに話しがあるのよ、キラには関係ないわ！」
「関係ないのは、あなたの方じゃないの、元許婚さん？」
キラの声から毒素が滲み出て、キラに注がれていたサイの視線が、憎悪から殺意へと
昇華されつつあるが、既に致死量の毒を喰らい尽くして感受性が完全に麻痺したキラは、
サイの殺気を受け流し、さらに毒の受け皿にまで噛り付いた。
「どちらにして、もう手遅れよ。だって私、昨夜はフレイと一緒にいたんだから…」
キラの放った手榴弾はすぐには爆発しなかった。そのキラのニュアンスを理解するのに、
サイは数瞬のタイムラグを必要とし、やがて効果的に爆発した手榴弾の破片はサイの
心をズタズタにする。
岩陰のカガリは、傷のある側の頬も含めて真っ赤になっている。数多の戦場を駆け抜け、
それなりの修羅場を潜り抜けてきたカガリだが、この方面への武勲は皆無だ。カガリは
何故か、明けの砂漠に入ってから、自分に懐いて、ウザイぐらいに付き纏ってくる
レジスタンスの少女アフメの事を思い浮かべた。
「な…何で………何でよぉ、キラぁ！？」
瞳に涙を溜め、般若のような表情でキラを睨むサイと同じく、キラも瞳に涙を溜めながら、
サイに見せ付けるように、フレイに抱き縋ると、
「フレイは優しかったのよ。
みんな、私がどんな思いで戦っていたか、誰も判ろうともしてくれなかった癖に！
一つぐらい、私が欲しいモノを手に入れたっていいでしょう！？」
「こ…この、泥棒猫ぉ！！！」
サイが、腰まで届く長い髪を振り翳すほどの勢いで、キラに猛然と殴りかかろうとする。
目を瞑って、引っ叩かれることを覚悟したキラだが、衝撃は来なかった。
恐る恐る目を開けるとフレイがサイの腕を掴んで、キラを守っていた。
「フ…フレイ……」
「もう止せ、サイ…」
どうして…という表情で自分を見つめるサイを、フレイは演技ではなく辛そうに諫めた。
フレイがサイを止めたのは、キラを守るためではなく、サイを守るためだった。
「殴りっこをしたところで、キラに敵うわけないだろう。
大体、そんなことで張り合ってどうするんだ？女の子なら他に……」
「じゃあ、どうすれば良いのよ！？お互い下手な料理で低レベルで張り合えばいいわけ！？
貴方の方がはるかに上手なんだから、全然意味ないじゃない！
何で…何で、キラなのよ！？どうしてキラを望んで、私を求めてくれなかったのよ！？」
サイはフレイの腕を振り解くと、激しく嗚咽を漏らしながら、その場から駆け出した。
「サイっ！」
「待って、行かないで、フレイ！」
サイを追おうとしたフレイを、キラが引き留める。フレイは顔に出さなかったが、
フレイの腕を掴んだキラの異常な握力に、フレイの筋肉が悲鳴を上げ、フレイは、
サイを止めた、先ほどの自分の選択が正しかったことを、改めて確信した。
「お願い…」
縋るように自分を見上げるキラの泣き顔を、フレイは無表情のまま見下ろした。
クールな外面とは裏腹に、フレイの内では、自分に理解を示してくれたサイと、
母の復讐相手であるキラのどちらに手を差し伸べるべきか、激しい感情の漣同士が
ぶつかっていたが、やがてフレイは選択する。
キラの腰に手を回したフレイは、きつくキラを抱き締める。フレイはキラを選んだのだ。
母の復讐を成し遂げるためには、サイの想いを切り捨ててでも、今、キラを見離す
わけにはいかなかった。
「フレイっ〜！！」
身体中の緊張感が抜け落ち、まるで熱病から醒めたかのように正気に返ったキラは、
フレイの胸に顔を埋めて激しく慟哭する。自分を追ってこないフレイに気づいたサイは、
ガックリと砂地に膝を落とし、さめざめと泣いた。サイは今度こそ自分が完膚無きほど
にキラに敗れ、もう再戦の機会が自分には与えられないことを無意識に悟った。
一体、何なんだ！？あのフレイとかいう二股野郎は…。
命を賭した戦場に勝るとも劣らない緊迫感を感じさせた、壮絶な修羅場をリアルタイム
で見せつけられたカガリは、最後にフレイがキラを選んだことに何故かホッと安堵した
のも束の間、優男だと思っていたフレイの氷のような表情にゾッと寒気を覚える。
己の腕の中で、子供のように泣き続けるキラを見下ろすフレイの黒い瞳には、
キラを慈しむ暖かさは欠片もない。それどころか、カガリなど足元にも及ばない、
深刻な憎悪の光が宿っているのをカガリは見て取れた。
アークエンジェルの全ての人間を欺き通した、フレイのキラに対する危険性に、
皮肉にも、本来ＡＡとは全く無関係なカガリがはじめて気づく事になった。
女の修羅場って怖いなと心底思いますたw
しかし本編よりも楽しんで読ませて頂いてます。
カガリがいい味出してますな。
本編通りアスカガになったら大変だw
カガキラに期待しつつ、次の投下を楽しみにしてます。
がんばれフレイ様〜！
「･･････結局、私はまだキラに守られてるってことなのかな」
少なくとも、この機体を使いこなせるようになるまではそうなのだと思う。だったら、少しでも早くこの機体を使いこなせるようにならなくてはならない。それが自分の為でもあるし、キラへの贖罪にもなるだろう。自分が強くなれば、それだけキラの負担が減るのだから。
この後、フレイは更に３度の戦闘を経験し、ヨーロッパに来てからのＭＳ撃墜スコアは合計で１２機に達するという活躍をしていた。これは空前絶後の数字だが、迎撃に出たＭＳがフレイのデュエルだけであった事、敵がジンやザウートばかりであったこと、常に５機前後という少数であったことなどが理由だった。フレイは戦車隊や航空機の支援を受けられたので、終始有利に戦えたのだ。ザフトは最後までこのデュエルの性能を舐めていたのか、それともそれだけの戦力が無かったのか、最後まで纏まった数をぶつけてくる事は無かった。
そして、その活躍からフレイは連合内で１つの名前を送られる事になった。目を引く鮮やかな赤い髪と美しい容姿から、「真紅の戦乙女」と呼ばれるようになったのだ。ヨーロッパ方面軍の兵士達がフレイの活躍をたたえる為に付けた異名らしいが、付けられた方の心境は複雑だった。
アークエンジェルの格納庫で整備兵達が話しているのを聞いたフレイは、その名前におかしさと同時に奇妙な納得をしてしまったのだ。
「真紅の戦乙女、戦士を戦いへと導く女ね。私にはピッタリかも。真紅ってのは赤い血ってことかしら。血に塗れてる私をよく現した名前よね」
小さな声で笑いながら、フレイは人気の無い展望室へと足を運んだ。そしてベンチに腰掛け、じっと手を見る。別になんともなってはいないが、フレイにはそこに赤い血糊がこびり付いているような気がしてならなかった。その罪の意識に体がカタカタと震え出す。ようやく自覚が出てきた。自分は人を殺しているという自覚が。
両手で身体を抱き抱えるようにして震えを押さえようとしたが、そんなことで押さえる事はできない。そしてその脳裏に、前に基地で見た敵兵の持っていた写真が、前に助けたパイロットが思い浮かんだ。
「は、ははは、ははは･･･････。何よ、私、何やってるのよ？」
いつか、あの写真の少年が兄の敵を討つために武器を手に自分のように戦場に出てくるのかもしれない。
「殺されたから殺して、殺したから殺されて、それで最後には何が残るのよ。何も残らないじゃない」
キラは守る為に戦うと言っていた、力さえあれば全てを守れると。あの時に感じたその言葉への疑問にフレイは再びぶつかった。力だけで全てが守れるのだろうか、そうとは思えない。力はただ奪うだけものだから。
フレイが１人で震えていると、いきなりその肩を誰かに叩かれた。心臓が止まるかのような驚きとともに振りかえると、そこにはキースがいた。
「よう、どうしたんだ、こんな所で？」
「キ、キースさん」
「顔色が悪いな。何かあったのか？」
キースが心配そうに顔を覗き込んでくる。フレイは少し身を引いた。
「な、なんでもありませんよ」
「大人を甘く見るなよ。そんな顔してれば誰だって気付く」
苦笑混じりに返されてしまい、フレイは暫く悩んだ後、自分の考えていた事をキースに話した。フレイの話を１通り聞き終えたキースはなるほどと頷き、そっと外の景色に目をやった。懐から安物の煙草を取り出し、口に咥えて火をつける。
「･･････フレイ、お前は運が良いのかもしれないな」
「え？」
それはどういう意味なのだろうかと聞き返そうとしたが、何故か言葉にできなかった。キースの顔がまるで一気に老け込んだかのような疲れを見せたからだ。
「･･････お前の辿ってる道は、俺と同じだ。俺も戦争が始まった頃に家族をザフトに殺されてな。それで軍に入った。復讐の為に」
「そうだったんですか」
「軍に入った俺は狂ったように戦場を求めたよ。一人でも多くのコーディネイターを道連れに死んでやるって決めてたからな。まあ、そんな状態が半年も続いたか」
キースは昔を思い出しながら、ゆっくりと煙を吐き出した。
「それは･･････」
「もう戦う事はできないと思ったんだが、俺はメビウスに乗りつづけた。復讐心で戦う気にはならなくなってたが、仲間達の為に戦おうって気にはなれたからな。それに、これ以外に食っていく当ても無かったし」
キースは懐からパスケースみたいな物を取り出すと、それを開いてフレイに見せた。その中には優しそうな中年の男女とキース、そして･･･････。
「この娘は、私？」
「よく似てるだろ。アネットって言うんだ。俺の妹さ」
寂しげに笑うと、キースはパスケースをしまった。
「白状するとな、俺はお前に妹を重ねてた。お前を見てると妹が帰ってきたような気がしてな」
「それで、いろいろ私のことを気にかけてくれてたんですか」
マリュ−がキースが自分のことを心配してくれていると言っていた。最初は教え子だからだと思っていたのだが、なるほど、そういう理由があったわけだ。
「俺は半年かかって復讐の空しさを知った。今でも身体に染みついた狂気は完全には消えてないんだ。特にコクピットに収まるとな、自分の命なんかどうでも良いと思える時がある」
「でも、そんな風には見えませんけど？」
「表に出ないだけで、自分では自覚があるんだ。だが、お前は引き返せる。こんなに早く気付けたんだ、だからまだ間に合う」
キースはフレイの頭にポンと手を乗せた。フレイはその掌から伝わってくる暖かさに不思議と気が落ち着くような気がした。
「いいか、これは経験者の言葉として聞け。復讐だけに身を委ねるな。常に自分を見失うな。自分を支えられる、正気でいさせてくれる何かを見つけろ」
「正気で、いさせてくれる何か、ですか？」
「そうだ、復讐にかぎらず、憎悪や狂気に身を委ねるというのは正気を無くすという事だ。それはただの殺戮マシーンでしかない。自分は人を殺しているという自覚を無くしたら、その身体から血と硝煙の臭いが消える事はないぞ」
キースの目には何時になく真剣な光が宿っている。この人も自分と同じように復讐の炎に身を焦がし、そしてその痛みに狂ったのだろうか。
それにしても、マリュ−といいキースといい、この艦にはおせっかいな人が多すぎる。こんな私を親身になって心配してくれるんだから。この人たちが居なければ、あるいは復讐に身を落とし続けられたかもしれないのに。
フレイは滲んでくる涙を右腕の袖で拭った。
「･･････ずるいですよ、大尉は。自分に出来なかったことを私にさせようだなんて」
「子供を導くのは大人の務めさ。なんたって経験が違うからな。俺もそうだった。リンクス隊長って言ってな。もう５０近いのにメビウスを駆る「生涯現役」が口癖な凄い人だよ。昔はフラガ少佐の上司で、メビウスゼロにも乗ってたらしい。筋骨隆々で、渋くてカッコイイ、俺が３番目に尊敬する人さ」
ニヤリと笑うキース。そして、頭に置いた手を離した。
「何かあったら、何時でも相談しにこい。俺は勿論、艦長もきっと力になってくれる。お前は１人じゃないよ」
「･･･････はい･･･はいっ」
「よし、飯でも食いに行くか。その後でまた訓練だ。そろそろ味方との細かい連携や戦術も覚えないとな。トールの実機訓練もある。お前がサポートしてやれ。戦術に関しては後で最高の教師を紹介してやる」
「はいっ！」
この時、フレイは心からの感謝を込めてキースに返事をした。復讐という澱んだ底無し沼に沈もうとしていた自分に、マリュ−とキースは手を差し伸べてくれたのだ。そして自分を掴み上げてくれた。もう一度日の当たる場所へと。その事は感謝してもし足りないくらいだ。この恩には全身全霊で報いなければならないだろう。
だが、この後紹介された戦術教官を見た時、フレイはその時の感動を忘れ去ってキースを呪ったのである。
「バゥアー大尉から話は聞いている。アルスター准尉、これから暫く一緒にがんばるとしようか」
「バ、バジルール中尉･･････」
実技面のキースと並ぶスパルタ教師、バジルール先生の誕生であった。
なんと言いますか、サイが可哀想で、可哀想で･･･････
でもサイ、髪長かったんですね。初めて知りましたよｗ
キラちゃんのフレイ君への依存度は本編以上みたいですねえ。なんというか、トールとミリィの活躍に期待したい所です
フレイ様，すでに雑魚相手だと全く危なげない感じですね．
こうも余裕があると，かえって今後の戦いでやばいことにな
るのではないかと心配です．
＞＞ キラ（♀）
うわー．凄ー．修羅場だー．本当の修羅場だー．
乙です．これ以上無いぐらいの修羅場を見せていただきました．
心臓に悪いです．まだどきどきしています．
キラのフレイへの依存度は，本編より相当高い感じですね．
き・・・キーフレ！！？(;´Д｀)
カガリはこっちでものぞき魔だなあ。
暗黒フレイ様の心情描写よかったなあ。
サイはあそこまで引きだしゃ立派。いいもの見せて
もらいました。
＞流離
ナタルは指示がバンバンとぶからフレイ様
パニくるなよw 本編のドミのクルーも最初は
オロオロしてたし。
次々とザフトのＭＳジンが発進していく。
そして、アスランも例外ではない。
「アスラン・ザラ、出る。」
言葉と共に、カタパルトよりイージスが発進する。
また、ガモフでは負傷したイザークが修繕され、火力を強化されたデゥエルアサルトシュラウドに乗り込んでいた。
「よせイザーク、お前はまだ「うるさい。さっさと誘導しろ。」」
官制からの心配の言葉をかき消すかのように叫び、デゥエルを起動させる。
その表情には狂気が宿っており、ストライクへの恨みを晴らさんと発進させた。
周りのザフト兵からしてみれば迷惑なことこのうえない。
しかし、イザークはザフトの中でもエリートである赤だ。
その為、緑のザフト兵は従わずにはいられない。
彼を止めれる人物と言えば、現時点ではクルーゼ以外にいなかった。
そして、連合とてザフトが来るのを待っているわけではない。
各艦に搭載しているＭＡメビウスを放出し、戦闘に備える。
また、ハルバートンはアークエンジェルをこの戦闘に参加させるつもりはなく後方に回していた。
戦闘前の緊張に包まれるアークエンジェル。
そんな中、フレイは決意を持ってノーマルスーツを手に取った。
ノーマルスーツに袖を通す。
どうも少し大きく、だぶついている。
いつものポニーテールでは邪魔になるため、髪を結い上げヘルメットを被る。
フレイの鼻腔になんとなくだがキラの香りが感じ取られた。
その場で宙に浮き、手足を抱きしめるフレイ。
小刻み震えている。
「キラ・・・護るから。」
ポツリと呟き、フレイはその場を蹴った。
多数のザフトのＭＳジンが先陣を切って連合軍に襲い掛かる。
連合軍もＭＡメビウスで応戦するが、その戦力比は１：５。
火力は同等としても、機動力、なにより小回りの差は絶大であった。
その場での旋回が可能なＭＳに対してＭＡは大きく旋回するしかない。
このアドバンテージは絶大である。
その差を埋めることが出来るＭＡはオールレンジ攻撃が出来るフラガの乗るメビウス・ゼロだけであった。
そして、この戦闘にはジンだけではなくＰＳ装甲をもつイージス、デゥエル、バスター、ブリッツのＧ４機もいる。
この４機に対してメビウスの攻撃はほとんど無に近かった。
実弾ではＧを撃破することはできない。
せいぜいパイロットに衝撃を与えるだけである。
それすらも、あらかじめ覚悟をしておけばさほど影響ない。
そして、Ｇを撃破できる戦艦の砲撃はまず当たらない。
逆にＧは戦艦を一撃で落とすことができる火力がある機体がある。
これらのことから戦況は一気に連合側の不利に傾いていった。
そのころキラ達、ヘリオポリス組みは今の状況からどうするかを話し合っていた。
「やっぱりブリッジに行ったほうがいいって。」
「でも、俺達いないことになってるんだぜ。」
トールの言葉に対して消極的に反論するカズイ。
カズイとしては戦闘をまじかでかんじるブリッジには行きたくないのだ。
それに対してトールはアークエンジェルのクルーの少なさから、今までどおり手伝いをしたほうがいいと言っている。
そのため、話し合いは平行線上となっていた。
さらにその原因となっているのはサイである。
いつもなら、サイが話し合いの中心となりリーダーシップを発揮してどうするかを決める。
しかし、今のサイはずっと黙っており話し合いに参加しようとしない。
このまま、折り合いがつかない話しが続いていくと思われたとき、ミリアリアがサイに意見を促した。
「サイはどうした方がいいと思う？」
「え、あ、そうだな。とりあえずトールの言うとおりブリッジに行ったほうがいいかもな。」
サイの言葉にトールは味方を得たという表情をし、カズイは「サイが言うなら」っとしぶしぶ答えた。
「キラはどうする？」
「僕は格納庫に行くよ。」
「そうか。じゃあ、また後でな。」
サイ、トール、ミリアリア、カズイはブリッジに、キラは格納庫へとそれぞれ向かった。
そのころ格納庫ではフラガが発進できないことに苛立ち、マリューに文句を言っていた。
「なんで俺だけ発進待機なんだよ。第八艦隊であの４機が相手じゃやばいぞ。」
モニターに映るマリューにむかって怒鳴る。
フラガは自分が発進したからといって戦況が覆るとは思っていない。
だからといって、このまま何もしないというのは我慢できない。
その苛立ちをマリューにぶつけている。
「フラガ大尉、本艦への出撃支持はまだありません。待機していてください。」
マリューとてわかっている。
あの追撃を何とかかわして合流できたのも、アークエンジェル、エンディミオンの鷹といわれるフラガ、ストライクを操ることができるキ
ラ、そして何よりも逃げの一手で作戦行動を行ってきたおかげである。
その相手と正面決戦を使用ならばアークエンジェルとて長くは持たない。
そしてマリューは苦渋の決断をすることとなる。
「くそう。」
フラガは壁に拳を叩きつける。
マリューの言葉は正しい。
正しいからこそ何もできない自分が歯がゆかった。
「んん。」
そんなフラガの視界の隅に、ノーマルスーツを着ている者を見た。
それは真っ直ぐストライクへと向かっている。
「おい、お前。」
整備主任のマードックが叫ぶが、それはコクピットに滑り込み、ハッチを閉めた。
ストライクに火が灯る。
Ｕｎｉｌａｔｅｒａｌ
Ｎｅｕｒｏ−Ｌｉｎｋ
Ｄｉｓｐｅｒｓｉｖｅ
Ａｕｔｏｎａｍｉｃ
Ｍａｎｅｕｖｅｒ
起動によりモニターに浮かびあげる文字。
ストライクに乗り込んだのはフレイ。
誰もが気付かず、思いもしない人物である。
フレイはたどたどしく端末を操りながら、以前のことを思い出していた。
ドミニオンに救助され、月での訓練をしていた時のことである。
そこでフレイは容姿、女の子、捕虜されたいたということが重なって、一種のマスコット的存在に扱われていた。
なのでフレイが尋ねれば大概のことは教えてもらえたのだ。
例えば、ナチュラルとコーディネーターのモビルスーツのＯＳの違い、モビルスーツの操縦方法、ブルーコスモスのスローガン、アズラエ
ル理事の秘密などさまざまなことである。
「あった。」
オートバランサー＜姿勢制御機能＞。
コーディネーターの使うＯＳの多くはこの機能をカットしている。
それは、オートバランサーを使用せずともそれを制御できるだけの能力がコーディネーターには備わっており、また自分達の反応速度に合
わせるための処理速度を必要とするため余計な機能を使いたくないのだ。
その為、十の行動をしようとする時、コーディネーターのＯＳでは十の操作をしなければならい。
それをコーディネーターは平然とできるのだ。
逆にナチュラルのＯＳは補佐を重点的置いており、処理速度は二の次である。
もっとも、処理速度を上げてもナチュラルの反応速度では空白の時間ができ意味をなさない。
このＯＳでは十の行動をするならば、七の操作でいい。
後の三はＯＳが補佐をしてくれるのだ
フレイはフットペダルをゆっくりと踏み込み、ストライクを動かす。
記憶を思い出しながら操作するが、傍から見ると危なっかしいかぎりだ。
「ストライクから全員離れろ、踏み潰されるぞ。」
作業を中断しわらわらっとその場から避難する整備班。
その中にはフラガもいる。
「いったい、誰が乗ってんだよ。」
フラガの問いは誰もが知りたい答えだった。
第八艦隊の劣勢が続く中、マリューは戦闘中の大気圏降下をハルバートンに進言した。
このままでは全滅を免れないと考えたマリューの苦渋の選択であった。
それを理解し、また希望を託して、ハルバートンは許可を下す。
まさにこれから大気圏に降下しようとしたとき、ブリッジに思わぬ人物達が入ってきた。
「手伝います。」
サイ、トール、ミリアリア、カズイのヘリオポリス組みである。
「あなたたち、なんでここに・・・」
困惑するクルー。
「その〜、乗り遅れちゃって。」
頭を掻きながら、困った笑顔で訳を話すトール。
「乗り遅れた「艦長、今は戦闘中です。話は後でいくらでも聞けます。」」
マリューの言葉を遮るように、ナタルが叱責する。
人手不足のアークエンジェルにとって、サイ達は役に立つ人材であった。
先ほどまでは一人二役状態であったのに対して、今は一役に集中できる。
大気圏の降下の安全率をより高めれるのだ。
ナタルの言葉によって困惑を持ち直したマリューに格納庫より連絡が入る。
「艦長、誰かがストライクを動かしてるぞ。」
「まさか、そんな、いったい誰が？」
「こっちが訊きたいぐらいだよ。」
フラガからの報告はサイ達以上にクルーを悩ませる。
「と、とりあえずストライクに通信を。」
マリューはカズイに指示をだす。
「ダメです。回線が閉じられてこちらからの一方のみです。」
それに続いて、さらに嫌な報告が続く。
「イーゲルシュテルン起動を確認。隔壁がロックオンされてます。」
「なんですって。」
最悪であった。
マリューにはストライクから隔壁を破ってでも外に出ようとする意思があると感じられたのだ。
・・・どうする？
もし撃たれれば、隔壁は破られ艦に穴が開くかもしれない。
そうすれば、大気圏の降下すら危うい。
「っく、ストライクを発進させなさい。」
「艦長、なにを考えているんですか。」
何を考えているのかとナタルが噛み付いた。
「今、艦に穴でも開けられれば降下はできなくなるわ。」
「イーゲルシュテルンで装甲が破られると思いません。」
「ストライクにはアーマシュナイダーもあるし、内部からならラミネート装甲も破られる可能性があるわ。」
もともとマリューは技術仕官である。
アークエンジェルの事に対してならナタルよりよく知っているのだ。
苦虫を噛むナタル。
「このことは報告書に書かせていただきます。」
「勝手にしなさい。」
マリューの考えもナタルの考えも正しい。
それゆえに衝突する。
今のところ、二人の考えが一致する接点はあまりにも弱かった。
遂に修羅場が・・・
それを覗くカガリ。
カガリがどう動くか楽しみです。
＞流離う
ナタル教官。
今のナタルなら厳しい中にも暖かみをくれそうですね。
フレイ様、ガンバ。
後、キラはどこへ行ってしまうんだろう？
評議会でオペレーション・スピットブレイクに向けた数々の作戦を提出するザフト。それらを吟味しながら、幾つかの作戦が承認されていく。その中の１つが近々発動される事になった。
「ふむ、月面基地を攻略し、制宙権を完全なものとするか」
「はい、きたるべきオペレーション・スピットブレイクに備え、月基地の脅威を排除しておくべきです。幸い、宇宙の戦力には余裕がありますし、問題は無いかと」
「別に攻略出来ずとも、艦隊を無力化できればそれで良し、か」
パトリックは納得すると、その作戦書にサインし、ユウキ隊長に渡した。これでこの作戦は承認された事になる。パトリックは両手を組んでその上に顎を乗せると、少し考えてユウキに問いかけた。
「だが、ナスカ級５隻、ローラシア級２４隻の戦力で月基地を攻略できるのか？ 仮にも宇宙におけるナチュラルどもの拠点だぞ？」
「可能だと思います。ただし、こちらもそれなりの損害を覚悟する必要があるでしょうが」
「ゲイツは間に合わんのだぞ？」
「ジンとシグーで何とかなりましょう。ＭＡ相手なら数の差は大した脅威とはなりません」
ユウキの自信ありげな態度に、パトリックは渋々頷く。だが、内心では舌打ちを隠せない。ザフトはこれまで連戦連勝に浮かれ、先のヨーロッパでの敗北も奇襲を許した為と考えている。ナチュラルを舐めきっているのだ。
『ナチュラルとて全くの無能揃いではない。いずれ反撃してくるだろう。ヨーロッパ戦では多くの兵を失ったが、あの大損害を直に埋められる補給能力は我々には無い。もし、あのような消耗をこれからも重ねれば、遠く無い未来、ザフトは瓦解する』
パトリックは小さく身震いした。連合が配備しだした強力なＭＳは数が少なくとも大変な脅威となる事が確認されている。あれが試作品を多少の改良を加えて量産した物である事は分かっているが、もしあの性能を維持した本格的な量産型が出てくればどうなるか。
今のザフトの優位はＭＳに頼り切ったものだ。別に戦略上の絶対的な優位を持っている訳でも、総合的な軍事力が連合に勝っている訳でもない。ただ、ＭＳが連合の兵器に圧倒的なアドバンテージがあっただけに過ぎないのだ。
ＭＳの優位性が崩れる時、ザフトは雪崩をうって敗退するだろう。その最悪の未来を想定している者が、果たして何人いることか。
評議会が終わり、全員が去った円卓に１人残っているパトリックは、疲れた顔でじっと正面を見据えている。そして、暫くすると扉が開き、１人の中年男性が入ってきた。
「･･････来たか、シーゲル」
「パトリック、スピットブレイクを可決したそうだな」
「ああ、他の幾つかの作戦も承認された。もう全ては動き出したのだよ」
シーゲルはパトリックの横まで来た。その顔には苦々しさが見て取れる。
「何故だパトリック、何故そうまでして戦わなくてはならない。我々はもう十分に勝ったはずだ。ここで矛を収めて何がいけないのだ？」
「･･････シーゲル、まだなのだ。後一押ししてナチュラルの弱気を引き出さなくてはならん」
「その為のスピットブレイクか。だが、あと何人の犠牲が必要になると思っている？」
「ＭＳと海中艦隊で責める事になっているが、３割の損失は覚悟している」
３割と言いきったパトリックの顔を、シーゲルはまじまじと見やった。
「３割だと、地上の戦力余力を全て投入する作戦で、３割の損失だと！？」
「そうだ。だが、この作戦が成功すれば、そこで戦争は終わるだろう。ならば無意味な犠牲ではない！」
「パトリック、お前も終戦に向けて考えていたのか？」
「当たり前だ。このままナチュラルを殺し尽くすまで戦う気は無い。だが、私はお前のような理想を建て並べるつもりはない」
「私が理想主義者だと？」
「そうだ。今の時点での講和など、ザフトも国民も納得する訳が無い。ナチュラルはまだ負けたつもりでは無いようだからな」
パトリックは自分の鞄から１枚の書類を取り出すと、それをシーゲルに見せた。それを手に取り読んだシーゲルの顔色が見る見る青褪めていく。
「こ、これは･････」
「大西洋連邦から送られてきた講和の条件だ。お前はそれを読んでなお今の時点での講和を主張するのか？」
そこに書かれていた内容はおおよそ承諾出来る内容ではなかった。主だったものだけでもかなり無茶な要求である。
１． ザフトの縮小
２． 戦闘艦艇、ＭＳの配備数、兵員の制限
３． 戦争指導者の大西洋連邦への引渡しと処分
４． ポアズ宇宙基地、ヤキン・ドゥーエ要塞の譲渡
５． 大西洋連邦軍の無期限駐留の承認
６． 評議会への傍聴権
ようするに、事実上の半植民地化である。一応の軍備は残るし、評議会の解散も要求されていないから自治権だけは残されるが、それも形だけのものだ。いずれ実効支配を進めるに違いない。
これは対等の講和の条件ではない。勝者が敗者に突き付ける条件付の降伏だ。さしものシーゲルも受け入れられるような条件ではない。
パトリックは肩を振るわせているシーゲルをじっと見ている。彼の回頭を待っているのだろう。シーゲルの中で葛藤が暫し続いている。そしてなんとかそれに決着をつけたのか、シーゲルは大きく息を吐き出した。
「これは、正式な物なのか？」
「非公式ルートを通じて送られて来たものだ。私とて地球連合各国へのパイプは維持している」
パトリックの答えにシーゲルは暫し瞑目する。
「仮に、これが正式なルートで送られてきたとしたら、評議会はどうする？」
「受け入れる訳が無いだろう。誰がこれで納得するものか」
「･･････だろうな」
シーゲルは苦々しい表情で頷く。これでは自分が議長でも受け入れることは出来なかっただろう。一体大西洋連邦は何を考えてこんな無茶苦茶な要求を突きつけてきたのか。
パトリックは書類を鞄に戻すと、席から立ちあがった。
「シーゲル、お前が連合との講和を水面下で進めていることは知っている。今の所それを邪魔する気は無いが、条件はそれなりのものにして欲しいものだ」
「･･････わかっている」
パトリックの注文に頷くと、シーゲルは肩を落として部屋を出て行った。その後姿を見送ったパトリックは暫しシーゲルの出て行った扉を見ていたが、視線を外すと自分も出て行ってしまう。プラントを指導している２人の男は、同じ未来を目指しながらも、辿ろうとしている道は違う。２人が力を合わせる日は来るのだろうか。
そして２人はまだ、自分たちの足元でもう１つの動きがあることを、ある程度は察知していたものの、まだ正確には掴んでいなかった。
ううむ、フレイ様、いきなりストライクに乗っちゃいけませんぜ。多少知識があっても、ＯＳはキラ用だし、訓練無しじゃ乗れないよ
そのまま出撃したら復讐に燃えるイザークに殺されちゃいますよ。頑張れキラ、フレイ様を止めるんだ！
眠れる悪魔を呼び出すための呪文は、十六桁のアルファベットと数字からなる
暗証コード。メインバスにコードを放り込むと全てが息を吹き返した。
闇に、ひとつひとつ、電子光が点っていく。
パネル、配置、暗証コード。寸分違わずあきれるくらいに情報と同じだ。訓練
は十分繰り返した。目を閉じたままでも起動シーケンスを終えられる。
悪魔の名前は、ＧＡＴ−Ｘ１０２〈デュエルＴＲ−１〉。
先頭の「ＧＡＴ」はＧ−Ｏ．Ｓ．対応型機動兵器へ新たに与えられた識別であ
り、「Ｘ」は運用評価試験用のトライアル機であることを示し、「１０２」の開
発ナンバーは「１００型系列の２号試作機」を現している。
Ｇユニット―――通称Ｘナンバーと呼ばれる連合軍の新型機動兵器だ。
イザークはデュエルＴＲ−１のコクピットで冷たく笑う。
卑劣にも中立の隠れ蓑の下、人目を忍んで地球軍が建造していた虎の子を横か
らさらっていくという作戦は、イザークの矜持をいたく満足させた。後生大事な
虎の子だけあって機体の方は大した出来だ。完成したばかりの新兵器を強奪され
る地球軍の切歯するのを想像すると口元がゆるむ。ナチュラルが造ったという一
点に、少しばかり面白くないものを感じはするが。
駆動音が低く唸った。起動シーケンス・フェーズ３まで正常終了。正面パネル
に外部の映像が結ばれる。サブモニタのウィンドウをステータスが滝のように流
れていく。自己主張をはじめたパネルの光が、イザークの銀髪と冷笑をコクピッ
トの薄闇にぽっかりと浮かび上がらせる。その笑みが一瞬歪んだ。ニューロリン
クにともなう衝撃が軽い苦痛となって伝わった。
「こちらイザークだ、起動シーケンスは終了。特に問題はないが、ニューロリン
クの閾値の設定が高すぎる。せっかくの機体もナチュラルに合わせてあっては宝
の持ち腐れだな。そっちはどうだ、自爆装置の解除を忘れるなよ」
『ＯＫ、ディアッカだ。こっちは問題ない』
『ニコルです。あとしばらく……いえ、一分待って下さい！』
「ちっ、いつまで遊んでる、さっさとしろっ！」
『……す、すみません』
通信機ごしにわびるニコルへ、もう一度小さく舌打ちしながら、イザークは機
体を始動させた。世紀の一瞬だ。わずかな振動と浮遊感。モニタに表示される景
色の視点がなめらかに二十メートル近く上昇していく。
トレーラーのデッキから固定用のフックとボルトを吹き飛ぶ。
デュエルＴＲ−１が、ゆっくりと、ぎこちなく立ち上がった。
「ディアッカ、作戦の状況はどうだ。そっちのセンサーで確認できるか？」
『全部で八機だったな。俺とニコルとお前……確認できるのは三機だ。まだ半分
いってないとは、地球軍もやるね。アスランたちとは連絡つかないぜ』
「ヤツならしくじらん」
『なら残り四機だ』
突然の警告音。刺々しいシグナルと同時に、一ダースものメッセージが物理モ
ニタとニューロリンクされた網膜の両方に表示される。
「…………ふん、どうやら一つは失敗のようだな」
カメラがズームする。モニタの隅、レティクルの四角の中にそれがいた。
おぼつかない足取りで立ち上がっている。
鋼の鎧をまとった巨人。
金属の地金剥き出しの装甲が、手品のようにグレーへと変色する。
敵意と戦意とライフルを手に「そいつ」は振り向いた。
映像に識別コードが表示された。
ＧＡＴ−Ｘ１０２〈デュエルＴＲ−２〉。
ダリダ・ローラハ・チャンドラ�鏡ご廟�士は「ＥＭＥＲＧＥＮＣＹ」の文字が
点滅表示するモニタをにらんだまま唇をなめた。乾いていた。
「デュエルＴＲ−２、起動信号確認しました」
指揮車内には二桁の数のディスプレイが並んでいるが、生きているのは半数ほ
どだ。広帯域へのＥＣＭの影響だった。なんとか無事なモニタはデュエルＴＲ−
２の起動信号と味方の識別コードとひとまとめで点滅させている。付近にはさら
に三つの識別なし反応。二機はおそらくジンで、残る一機は、
「デュエルＴＲ−１の識別コードはどうなってる？」
ムウ・ラ・フラガがチャンドラの肩越しに呼びかける。
「識別信号解除……ダメです。呼びかけにも答えません」
そりゃそうか、とムウは思う。
ＩＦＦ（敵味方識別信号）を抹消しているＴＲ−１はザフトに奪われた可能性
が高い。これで返事があるなら一緒に飲みに行きたいくらいシャレのわかる相手
だ。にしても、Ｘナンバーの起動にはどれも暗証コードが必要とされる。この短
時間であっさり奪取されたということは、かなりの情報が事前にもれていたと考
えるのが正解だろう。
「連合の情報部もつくづくザルだよな、給料分くらい働けってぇの」
「……どうしますか、フラガ大尉」
チャンドラの表情が堅い。せわしなく唇をなめている。眼鏡に照り返したＥＭ
ＥＲＧＥＮＣＹ表示が、口に出さない不安を代弁している。
ふと気がついた。
「実戦、はじめてか？ 肩の力をぬけっていっても無理だな。まあ、無理せずや
れよ。戦争も女も緊張するのは最初だけさ」
「え……あ、はい、ここの前はアラスカでしたから…………大尉、やはり何度や
っても発令所から応答ありませんが、ＴＲ−２とは回線繋げます」
「よし、上出来」
ひと言称賛し、ムウはヘッドセットをつけた。
「デュエルＴＲ−２、こちら指揮車、フラガだ。誰が動かしてる、リャンか？」
『…………ああ、リャンだ。ＴＲ−２起動シーケンス、クリア』
一瞬のノイズと空白をおいて、リャン・リャオシー大尉の返事があった。
ムウは安堵の息をもらした。リュウの東洋系らしい、やせぎすで神経質そうな
顔を思い浮かべる。戦況も被害状況のすらも確認できない現在、テスト・チーム
の旧友が無事というのはなによりだった。
「リャン、ザフトの目的はＧユニット奪取の可能性が高い。お前が乗り込んだん
なら不幸中の幸いだ。なんとかアークエンジェルまで……」
今度の返事には、さらに数秒の空白があいた。
『…………フラガ、ベントンが死んだ』
チャンドラが固まった。ムウはわずかに目を細めただけだった。そんなとも、
まさかとも言わない。短く尋ねる。
「……ザフトか？」
『最初の爆発で破片に……当たり所が悪かった。ツキが無かったんだ』
悪運の塊のような強面の、テストチームのナンバー２の姿が脳裏をよぎった。
昨日の夜はカードで大勝ちしていた。つまらないことで運を使うなと、ムウは負
け分のチップと一緒に苦笑いを投げつけた。
「リャン、後退しろ。退路を指示する」
『ベントンの仇だ。こいつらは片づける』
「待てリャン、おちつけ！ まだＧユニットで実戦は無理だ。歩けもしない赤ん
坊に戦争させられると思ってんのか」
『お前こそ冷静になれよ、フラガ。赤ん坊がこいつら振りきって船渠まで逃げ切
れるわけがないだろう…………どっちみち、やるしかないんだよ』
「リャン……リャン返事をしろ？！ くそっ―――おい、少尉！」
ムウは吐き捨てるように叫ぶ。こちらも返事がない。モニタとのにらめっこを
続けているチャンドラの肩を掴んで強引に揺する。緊張しきっていたチャンドラ
は、今初めて気がついたというような表情でムウを見あげた。
「状況確認だ。敵の数、それから味方。他に起動信号の出てる機体は？！」
「は、はい……１０３、２０７、３０３の起動信号を確認。いずれもＩＦＦをデ
リート、敵に奪取された模様です。それと―――」
「それと―――？」
「大尉、１０５〈ストライク〉が起動してます、こっちは味方です」
「…………なんで？」
場違いな声でムウは尋ねた。１足す１が２にならないと言われたような顔。
「俺ここにいるんだよ。誰が動かしてんの？」
１００型系列の５号試作機ＧＡＴ−Ｘ１０５、コード名〈ストライク〉はムウ
の機体で、Ｘナンバーの起動には例外なく暗証コードが必要だ。テスト・パイロ
ット以外で暗証コードを持っている人間は即座に思い当たらない。
「さあ、それはちょっと……」
確かめろというムウの命令は、回線が繋がらないと切り替えされた。指揮車と
いっても大層なのは名前だけで、元々は運用試験時の観測補助が役割の車両であ
る。探知機器も通信設備も不十分だ。弱出力の広域ＥＣＭ程度でも、目の耳も鼻
もとたんに精度が落ちてしまう。悪い目の時は何をやっても裏目に出る。負け戦
の予感がムウの肩にのしかかった。だめ押しのような接近警報音が車内に大音量
で鳴り響いた。
「熱源２、デュエルＴＲ−２に接近！ こいつはジンです！」
デュエルＴＲ−２を映していた外部カメラの画面を、二機のジンが横切った。
二機のジンは左右に散った。
ジン０１は右に、０３が左に。コンクリートを踏み砕きスラスターを併用し、
羽でも生えたような勢いで疾走する。０１はＪ型と呼ばれる脚部と推力を強化し
たタイプ、０３は各種ミサイルを主とした火器をオプションした通称Ｂ装備。リ
ンクが低速のデュエルＴＲ−２からは、どちらも消えたとしか見えない。
史上初のＭＳ同士の実戦である。
歴史的な一幕だった。
当事者たちにとっては、歴史的意義などまるで感慨がない。
容赦なくトリガーした。
最初は二七発だった。二機のジンのライフルが斉射した七十六ミリ弾の内、二
十七発が命中した。戦車どころかＭＳであっても、およそ地上兵器なら撃破した
上に跡形もなくなるほどの攻撃だ。
デュエルＴＲ−２は無傷で一歩を踏み出した。
着弾の衝撃を吸収しきれずふらついた以外、当たったのが嘘のようだ。
「ミゲル、ライフルが効かないわ？！」
ジン０３のバージニア・カースンが悲鳴のような声をあげた。
あり得ない光景だった。硝煙の向こうで身じろぎしている機体が、兵器ではな
く常識を越えた灰色の怪物にさえ思えてきた。人間の顔によく似た緑のカメラが
こちらをじろりと見回して、お前たちを殺すと嘲笑っている。
半ば以上恐慌していた。
三度の出撃を経験していても、バージニアはまだ十六歳だった。
クルーゼ隊のパイロットはいずれも若い。男もいれば、バージニアのような女
性兵士も混じっている。ジン０１のミゲル・アイマンは十八歳だが、すでにＭＳ
隊では最年長だった。コーディネーターそのものが種として若いのだ。誕生して
ようやく半世紀余り、プラント人口の若年比率はまだまだ高い。
もっとも、クルーゼ隊がアカデミーあがりのエリート・パイロットぞろいなの
は、要約するならプロパガンダのためだった。
仮面の英雄に率いられた若きエリートたち。
自らの手でコーディネーターの未来を勝ち取ろうとする明日の英雄。
高貴であるがゆえに義務がともなう、という旧世紀のことわざは、プラントの
社会を支える第一の通念でもある。
若い連中だってこんなにがんばっているんだから皆さん文句を言わず勝利の日
まで各自の義務を果たしましょう、である。古今も東西も、戦争中の為政者のや
ることにそれほど大きな違いはない。
若くてもミゲルは冷静だった。アスランやイザークが配属されるまでクルーゼ
隊のエースを張っていたのは伊達でも酔狂でもない。作戦前の説明を思い出す。
フェイズ・シフト装甲、連合が実用化に成功した防御システム。プラントでも理
論化はされている。ライフル「程度」では効果がないという与太話を聞いた時に
は笑ったものだが。
「多少の火力じゃ歯がたたん……俺が先行する！」
ジン０１が跳ねた。Ｊ型の大推力にものをいわせた力まかせの大加速で、デュ
エルＴＲ−２の正面に回り込む。発砲。ありったけ撃ち込んでも効果は皆無だっ
たが、はなから期待していない。ミゲルは囮役だ。牽制できればそれでいい。
ミゲルの低い声に、バージニアは落ち着きを取り戻した。
バージニアは第一世代だった。第一世代とはコーディネーターの両親を持たな
い世代を指す言葉だ。ナチュラルの両親の、調整処理を施された受精卵から生ま
れた者がそう呼ばれる。病気がちの母と小さな家。裕福な家庭ではなかった。娘
をコーディネーターにするため無理を重ねもしたのだろう。
父が早くに死んで苦労があった。プラントへ移民して、ようやくという矢先に
戦争が起きた。コーディネーターとナチュラルの戦争だ。プラント人口の約七割
を占める第一世代やその家族は憶えている。地球にいた頃の白い目を。コーディ
ネーターであること、その家族であること。思い出が怒りに薪をくべた。視線は
どこまでも追ってくるのだ、倒さない限り。ＨＵＤに浮かぶ影を睨む。今やそれ
は「怪物」ではなく、倒すべきプラントとコーディネーターの「敵」だった。
―――あたれ！
勇気をふりしぼる。全部撃った。大小あわせて一六発のミサイルは一つ残らず
命中した。両側に並んだビルをまとめて砕くほどの、冗談のような爆発が広がる。
爆風と爆音と爆炎がセンサー系を真っ白にする。熱と光と衝撃に呑み込まれ、敵
の姿が消えていく。
一部始終をモニターしていた指揮車の画面も真っ白になる。チャンドラは狼狽
し唇を歪ませた。ムウは何かを信じて、何も映さない画面を見つめている。
ミゲルはエースだった。センサーよりも確かな勘で、電磁波よりも気配を感じ
て異常を察知した。考えるよりも先に回避機動をとりながら、
「ヴィー、動け！ 何か、」
何かがいた。爆煙の中だ。最初に黒煙の間から現れたのは肩に描かれたトライ
アル機を指す「ＴＲ」のロゴ、番号は「２」。
バージニアの思考が停止した。
かすり傷一つないデュエルＴＲ−２が、爆煙の向こうで蠢いていた。緑色の瞳
が嘲笑うように光っている。悪魔のような顔でビームライフルを支え、第３の目
のような砲口がジン０３を正確に狙っている。
だから、ヴィー……あなたが幸せになりますように、
バージニアは思う。プラントで待つ母の口ぐせを思う。寒い夜に抱いてくれた
手と温もりを思う。小さな暖炉と薄暗い部屋で、くすんだブロンドを愛おしそう
になでてくれた優しい手、眠れない夜に聞かせてくれたいくつもの物語。悪い魔
法使いに捕まったお姫様は最後には幸せになる、いつだって、
―――か、
祈りのように唱えようとした。
ミゲルが機体を反転させ、ＴＲ−２の動きを止めようと発砲した。
そのときにはもう、ＴＲ−２のビームライフルが０３を撃ち抜いていた。
【 PHASE-02 ： 戦う者ども 】
三十センチの差で、ナタル・バジルールは死ぬところだった。
非常電源へ切り替わり、広大な船渠（ドック）の所々に光が戻ると惨状が照ら
し出された。真横に船渠を支えていてたぞっとするほど巨大な鉄骨が落下してい
た。ナタルの身代わりのように押し潰されている技師の、ついさっきまでアーク
エンジェルの仕様を楽しそうに説明していた声を憶えている。
一瞬だ。ほんの一瞬だった。
爆発音と衝撃がきて、何がと思う前に意識は頭蓋の外に弾き飛ばされた。
気がついたら、みんな死んでいた。みんな、みんなみんなみんな―――、
泣き出したかった。
三代続いた軍人としての教育と矜持が、ナタルにその行為を許さなかった。
「……生存者…いるか……ノイマン……アーノルド・ノイマン少尉！」
薄く涙がにじんでいたが、そんなことにも気がつかない。
気づかないまま声をだして返事もないのにひたすらに呼び続ける。
見回す限りおもちゃ箱をぶちまけたような有様だ。
どこもかしこも瓦礫に埋もれている。倒れた機材、散らばった資材、見えない
ところで小さな爆発。ショックで岩盤が落ちてくる。血の匂いがして、オイル臭
と混じって息が詰まる。見えるのは死体の山と怪我人の海、聞こえるのは苦鳴と
破壊音。どうやら生きている者は他にも居るらしいが確かめる手段も助ける方法
も今はない。遠くから断続的に響いてくるのは、まるで地鳴りのような振動。
「……中……バジルール中尉……」
瓦礫の一部が崩れた。
下から、真っ黒になったノイマンが這い出してきた。
「―――少、尉……無事か……よかった」
瓦礫を避けながらナタルは駆け寄る。
「……中尉こそ。しかし、これは……一体何が」
「おそらくザフトだ」
ナタルはそのまま押し黙って状況を計算した。
船渠から外の様子はわからないが、直前にキンケイド大佐から各部署へ警戒が
通達されている。偽装船の破壊、中立コロニーでの兵器テスト、通達―――後は
数学の問題だ。方程式に当てはめれば答えが出る。
「…………狙いはアークエンジェルですか」
「違うな、我々はまだ生きている。この艦が標的なら、船渠は最初につぶすはず
だ。おそらく港は封鎖されているのだろうが…………目的は……Ｇか！」
ナタルは、またしばらく黙り込む。
焦れば負けだ。努めて冷静になろとする。
ザフトにはＭＳ信仰がある。単独で戦闘艦艇を破壊可能な機動兵器、ＭＳの投
入で戦局を一変させたザフトにとって、アークエンジェルはどこまでいっても母
艦にすぎない。重要度は低い。だから見逃した。
「……少尉、手分けして生存者を集めるぞ。怪我人も含めて、生き残っている者
はアークエンジェルに移動させろ」
「アークエンジェルに？ 何をするおつもりですか」
ナタルは答えない。黙って見あげる。
眼前にはアークエンジェルの白い牙城が爆発にも揺るがずそびえ立っていた。
ナタルの横顔には、ついさっきノイマンが確かに見たと思って驚いた少女のよ
うな表情が、間違いかと首をひねるほど断片もない。軍人の、研ぎ澄まされた刃
のように美しい顔で純白の船にまなざしを向けている。
ナタルが、言った。
「このままですませるものか」
◎
避難する人の川に溺れながら、トールは二回殴られ三度突き飛ばされた。
足下のおぼつかないミリアリアに肩を貸したトールは、はっきりいうなら避難
の邪魔だった。それでも二人が手を差し伸べてきて、あちらはダメだと異口同音
に言った。五回目に流れからはじき出されて、疲れはてた二人がそろって廊下の
隅にへたり込んだとき、サイの声がした。
「トール！ お前たち何やってるんだ、こんなところで……」
サイとカズィが走ってくる。
死ぬほどほっとした。
「サイ……カズィも……二人ともよく無事で……。ミリィが怪我して……シェル
ターを探してなんとかここまで……でも、どこもかしこも一杯だったり、道がふ
さがってたりで……」
「２区の方はだめだ。Ｂ棟が崩れて行けなくなってる。いま４区の方へ回るとこ
ろなんだけど、正直どうだか。端末も全部使えなくなってて、避難状況とか全然
わからないんだ。携帯もだめだった。父さんたちに連絡もつけられない………く
そっ………そういえばキラは？ 一緒に来たんじゃないのか」
トールは強ばった顔で力なく笑う。
「途中で別れたんだ………ちょっと色々あって」
「ねえ……何が起こってるのかな、僕たちどうなるのかな……」
カズィが不安をそのまま口にした。
全員の気持ちの素直な代弁だった。尋ねられても誰にも答えられない。沈んだ
顔でお互いを見合わせた。ミリアリアがトールの袖をぎゅっと掴む。何も言わず
にトールがその肩を抱く。
Ｆ棟もだめだ、という悲鳴が人の壁の向こうから聞こえてきた。
「そ……そんなぁ……」
カズィはさらに青くなった。
ちょっと静かにしてくれとサイの語気が強くする。
「―――どうやら４区の方もだめらしいな。しかたない……３区の方に回ろう。
あっちなら道も広いし、建物が崩れてても迂回できると思う。シェルターは少な
いけど、なんならぐるっと回って２区の方まで抜けてってもいいし」
サイの判断に、トールたちも少しは明るい顔をした。
すがるような目的でも、あれば不安を忘れることができるのだ。
決まれば早い。人の流れから飛び出した。建物の間の入り組んだ路を３区の方
へ向けて走っていく。ふらつくミリアリアに、トールとサイが左右から手を貸し
た。遠くから爆発音が聞こえる。ときおりびりびりとビルの壁が震えている。
コロニー中で戦争をしているのかも知れない。
妄想めいた考えがサイの中に現れる。もうここ以外の場所は全滅してしまった
のかも知れない。父と母も死んでしまったのかも知れない。一度沈めば際限がな
く、悪い考えだけがいくら追い払っても湧いてきた。
最初に気がついたのはトールだった。
呼ばれてサイは我に返る。
振動だった。足下から伝わってくる。さっきの爆発よりずっと近い。まるで何
かが歩いているような一定の間隔で、少しずつ大きくなっていく。
「トール、これって……何か……近くなってる気が、」
次の瞬間に、目の前の研究棟が爆発した。
熱も爆風もなかったが、轟音と滝のような瓦礫が降り注いだ。それだけでも十
分だったが続きがあった。腰でも抜かしたみたいにへたり込んだサイたちの前、
巻き上がった爆煙の中で、巨大な何かが動いていた。
低い駆動音が聞こえた。サイズからすれば驚くほどに静粛だった。
動いていた。もがいていた。立ち上がろうとしていた。
四人は呆気にとられて見守っていた。
ＧＡＴ−Ｘ１０５〈ストライク〉。
白いＧユニットが眼前にいた。
◎
最初の七秒で十分だった。
マリューは死ぬほど後悔した。システムが立ち上がり、ストライクとのニュー
ロリンクがはじまり、神経接続の初期段階で現れる「光の渦」が網膜に投影され
た頃には気分が悪くなっていた。車酔いと二日酔いと風邪ひきを足して十倍した
ような感覚。脳を直接掻き回されているような気がする。
悪寒に奥歯を噛み締めながら、必死でストライクを立ち上がらせた。
このまま逃げよう。マリューは思った。限界だった。二三歩進ませるだけのつ
もりだったのに視界が歪んだ。機体は倒れるように走りだし、前方の建物に頭か
ら飛び込むまで止まらなかった。倒れながらめり込んだ。
激突の衝撃の方が、まだしも心地よかった。
テスト段階で二度ほど乗ってみたことがあるが、その時は神経接続の閾値がで
たらめに高く設定されていて、いうなればお子さま用だったのだ。野獣みたいな
テスト・パイロットたちですら一日乗れば顎を出す。マリュー程度では真っ直ぐ
歩かせるのさえ至難の業だ。元々コーディネーター以外には運用できないシステ
ムを、こねくり回しながら何とか使い物にしようと悪戦苦闘している毎日で、実
用になるところまで達していない。
苦心惨憺立ちあがらせたところを狙撃された。
もう一度、建物に突っ込んだ。
「くうっ、一体……どこから―――」
倒れた拍子にシートベルトが肩の傷に食い込んで、内臓を吐き出したくなるよ
うな激痛が走る。おかげで意識はかえってはっきりした。慌てて敵を探す。気つ
く余裕が無かっただけで、センサーはずっと警告音を鳴らし続けていたらしい。
真上。急降下してきたジン０４が正面モニターにいきなり現れる。
マリューは何もできない。
ジンが発砲する。面白いように被弾した。
ＰＳ装甲を貫通したものは、一発もなかった。
ラスティは驚くよりも自分の目を疑う。
無様な格好でビルに埋もれたストライクに、いきなり頼り気なくなったライフ
ルをポイントしながら、アスランが奪った機体へ通信回線を開く。
「ラスティです。アスラン、聞こえますか……アスランはその機体を早くヴェサ
リウスに。こいつは、俺が」
ＧＡＴ−Ｘ３０３〈イージス〉。
アスランが乗りこんだイージスはストライクの後方、ストライクに比べればず
いぶんましな足取りで立ちあがる。コーディネーターとナチュラルでは、ニュー
ロリンクへの耐性も適正も反応速度もまるで違う。金属の地金むき出しの機体が
赤く変色した。起動と同調してＰＳ装甲が展開されたのだ。
『ラスティ』と、アスランからの通信。
『そいつは……ストライクは捕獲しろ』
「えっ……ストライク……この白いやつですか。でも、クルーゼ隊長の命令では、
奪取に失敗した場合は速やかに破壊と」
『手に入るなら一機でも多い方がいい。地球軍の機体は未完成だ。ナチュラルな
ら歩かせるのも難しいだろう。今なら捕獲するのは難しくない』
どこかアスランらしくない歯切れの悪さだと思った。
ストライクは瓦礫の山から這い出そうとしていた。断末魔のように手足をばた
つかせる姿はたとえようもなく不恰好だ。
なんとかなりそうだ。ラスティは思う。
「―――了解。ストライクを捕獲します」
アスランはモニタのストライクを食い入るように見つめている。
金属色だった機体は、ＰＳ装甲を展開しトリコロールに変色していた。
「…………キラ」
無意識に声になった。
アスランは頭を振る。否定する。そんなはずが無い。地球軍の新兵器の開発現
場などにキラ・ヤマトがいるはずが無い。親友だった。同い年だが弟のようだっ
た。人一倍優しい、戦争とは一番結びつかない、何かにつけてよく泣き出すキラ
のことを今でも鮮明に覚えている。
―――だが、
キラのことを間違えるはずがない。
本当の兄弟同然に過ごしてきたのだ。プラント市長の父と研究で不在がちな母
の代わりのように、キラの母親はアスランにも優しくしてくれた。
それに。
アスラン、とたしかに呟いたのだ。
モニタに映ったストライクを、キラを呑みこんでしまった機体を仇のように睨
みつけながら、アスランはイージスを離脱させた。スラスターを全開。港の入り
口めがけ、イージスの赤い機体が一散に飛びあがる。
「……キラ」
大丈夫だ。
束ねて引かれる後ろ髪を立ち切るように、口の中で言葉にする。
あれがキラだとしても、きっとラスティなら上手くやってくれる。
今は軍人として任務を果たさなければならない。
大丈夫だと信じた。信じようとした。
結論から言うならば。
アスラン・ザラはミスを犯した。取り返しのつかないミスを。
◎
キラは対Ｇシートの背に死にものぐるいでしがみついていた。ストライクが踊
るたび、いい様にふりまわされた。声がそのまま悲鳴になる。ランドリーの洗濯
物の気分だ。肩を強く打って、背中をぶつけた。ようやく静かになった。
「………………あ、」
立ち直って最初に目に入ったのはサブモニタが捉えたイージスだった。
思う。アスランは、あのイージスのコクピットへ入り込んだのだ。
キラの思考はそのまま一足飛びに過去へと巻き戻る。
別れの朝。桜並木。寂しげな親友の顔。トリィ。頭上には青い地球―――。
頭の中がぐちゃぐちゃになる。ありったけの絵の具をぶちまけて混ぜ合わせた
みたいに何の色にもならない。一つだけ確かなことは、あれがアスラン・ザラだ
ったということだ。それだけは間違いようがない。親友だった。三年経ったから
といって、アスランを見紛ったりはしない。
そこでキラは止ってしまう。
「……アスラン」
ザフトの兵士だった。
ヘリオポリスを攻撃していた。
人を―――殺していた。
何故そんなところに。どうしてそんな事を。
血の赤い色が網膜に焼き付いてどこまでもどこまでも広がっていく。
ほんの一時間前までいつもと同じ一日だった。トールがふざけ、ミリアリアが
からかい、フレイ・アルスターが微笑っていた。夕飯のこと。明日提出予定のテ
キストのこと。ゼミの帰りはどこに寄ろうか。他愛もないことを考えていた。
どこかで何かが崩れていく。
崩れていくのがわかるのに、キラの心は崩れる速度に半分も追いつけず、あの
瞬間記憶に焼きついた血まみれのアスランだけを反芻する。思い出にある優しい
親友とは絶対に重なるはずの無い姿を、繰り返し繰り返し思い浮かべる。
キラの追求を振り切るように、イージスが上昇した。スラスターの光が目に痛
い。赤い機体が遠ざかる。
キラは為す術もなく、まばたきもせず親友の影をただ見送る。
そして、コクピットがひっくり返った。
ジン０４が至近距離からやけくそ気味に発砲した。
滅茶苦茶な揺れだった。我に返った時にはシートは腕からすり抜けていた。正
面のコンソールへしたたかに背中をぶつける。痛みを知覚する前に揺れ戻しがく
る。何が起こっているのかさっぱりわからず、ふんばる事もできず、キラはコク
ピットをボールみたいに跳ねまわる。顔からぶつかった。マシンの中なのに壁は
拍子抜けするほど柔らかくて気持ちいい、と思ったら実はそれはマリューのエア
バック並の胸で、意識と同時に恥ずかしさがこみあげて飛びのこうとしたが、再
度の揺り戻しで今度は身体ごと飛びこんだ。
マリューが低くうめいた。
キラは慌てて跳ね起きる。目を見開いた。
マリューが脂汗を浮かべている。顔色が悪い。反応が鈍い。一目でわかった。
ニューロリンクのキックバックだ。
キラには馴染みの分野だった。『神経接続による多脚機械の制御』はカトー教
授のゼミでも扱っている。モビルスーツの制御系としてクローズアップされてい
る技術だが、基幹技術の誕生は早い。技術の一部は民間でも使用されている。
「大丈夫ですか！ しっかりしてください！ これだけの機体を、ナチュラルの
人がニューロリンクしようだなんて……」
失神寸前のマリューにまともな返事など期待できない。キラはシートの右にあ
るキーボードを引っ張り出し手早く操作する。サブモニタのウィンドウをスクロ
ールするステータスに目を走らせた。
あきれた。
一般的なニューロリンク・インターフェースとはふた味違うシステムに、ほと
んど投げやりなパラメータが設定がされていた。コンマ五秒でフィードバック値
と適正領域を暗算し、答えの数値に愕然とする。
機体をまともに動かす気があるとは思えない設定だった。
もはや聞き慣れた接近警告音がコクピットを渦巻いた。どうやら撃つのを諦め
たらしいジン０４の接近をレーダーが教えている。
正面モニタに居丈だかなジン０４の、グレーの機体が大写しになる。
来る、とキラは思った。
その時、キラは見つけた。見つけてしまった。
ナチュラルなら当然見落とすような光景だった。
サブモニターの隅、瓦礫の合間にトールたちがいた。
カズィがこちらを指さして何かを必死に叫んでいる。ミリアリアを左右からト
ールとサイが支えている。トールとサイが互いに激しく言い合っていた。
二機の巨人の、踏みしめるような足下だ。
迷ったのは、ほんの一瞬だった。
何かを考えていたわけではない。衝動に突き動かされて、何も考えずにマリュ
ーを押しのけようとする。ぬるりとした。その感触にキラは掌を確かめる。血が
ついていた。
マリューは負傷してる。アスランが撃ったのだ。
掌を染めた血の、リアルな重さに思い切り後頭部を殴られた気がした。
「……代わってください！ シートの後ろに、早く！」
横からキーボードでシステムに殴り込むような接続をかけ、ニューロリンクを
強制解除。突然リンクを遮断されたマリューがすっかり色をなくした顔に驚きを
浮かべるが、冷静でないキラの冷静でない剣幕に気圧されてなす術もなく座席の
後ろに追いやられる。地を蹴たてて近づいてくるジン０４の眼前で、リンクを断
たれたストライクは糸の切れた人形みたいにがっくりとうなだれた。予想外の反
応に０４は寸時とまどった。貴重な数秒だった。その数秒間で、キラはシステム
の再接続をかけると同時にスラスターを二秒間キックする。
背後でビルの残骸が爆発した。
ストライクは、０４の腕をかいくぐり、一瞬で後方へすり抜けていた。
ラスティは何が起こったのかわからない。
数秒前までと何かが変わったことだけを朧気ながら理解する。
チェックシーケンスを軒並みスキップしてパラメータを更新。コントロール構造
の一部を組み替え。機動モーメントのポイントを暗算で計算しながら再設定。突
っかかってくるジンの腕を回避するストライクの機動が少しずつ変化していく。
足取りが一歩ごとに確かになる。バランサーが精密に機体を支え始める。
「……これ……教授のデータ……なんで……」
キラはトールたちから離れるように機体を操る。ジンを避けるストライクの動
きはそれまでと明らかに異なっている。神経接続されたストライクの感覚と自分
の感覚のすりあわせは簡単ではないが、船外作業機の操作経験ならこれまでにも
あった。だが、とキラは息を呑む。制御システムの構造が短剣のように胸元に突
き刺さった。見覚えがある。このシステムには、キラ自身が教授を手伝って組み
上げたものも含まれている。
教授は一体何をしていたのか。
キラは黒い疑念を抱いた。ジンの接近が疑問を押し流した。
「武器は……なにか武器はないのか？！」
キラは正確に、迅速に、並列に、機械のように動き続ける。機体の制御。シス
テムの更新。逐一表示されるフィードバックのデータを元に、ステータスの再計
算と再設定を繰り返す。ジンの動きに反応する。
キラの姿は、敵の存在よりも、マリューの背筋に冷たいものを走らせた。
じくりとした胸の痛みを伴う、口に出せない悪寒だった。
「…………コーディネーター…………」
呟きを聞き分けるだけの余裕はキラにもない。
マリューの震えるまなざしには複雑な色がついている。畏怖とも恐怖とも嫌悪
ともいえない、そのどれでもある複雑な視線で、未完成のストライクを手足のよ
うに扱う少年を見つめていた。
キラはスペックをチェックする。どの武器にも使用不可のシグナルが点灯して
いた。システムの更新でＦＣＳとの接続が正常に作動していない。
「それならぁ！」
キラは叫んで、スラスターを全開にした。
型のＸ１０２〈デュエル〉、支援型のＸ１０３〈バスター〉といった、シンプル
なフレーム構造と機能が売りであり、構造も単純で運用面でも優れている。
だが、ストライクは違う。
ストライクのコピーは「究極の汎用型」だ。
設計者の頭が悪かったのか、器用貧乏という言葉を知らなかったのか。何でも
できる兵器というものは得てして馬鹿高くなってしまうか、実は何もできないか
のどちらかになる。試作品という大義名分と必要にかられた地球軍のバックアッ
プにつけ込むような資本投下の合わせ技で、単価と実用の折衷点を模索したプラ
ンは両手の数ほど現れてほとんど消えた。残された唯一の解答がＸ１０５〈スト
ライク〉であり、ストライカーパック・システムである。
ストライクは背面のバックパックを換装することで各戦局に対応できる。
エール、ランチャー、ソードの三種類を必要に応じて運用する。
まさに究極の万能機というふれこみを文字通り信じたテスト・パイロットは皆
無だったし、事実そうだった。構造の複雑化や故障率の増大、操縦の煩雑化、整
備の手間や運用する母艦にも換装補助用のシステムを必要とする等々。山積みの
問題は残らず後回しにして最終テストが行われていた。
今のストライクはエール・ストライカーパックを装備している。
コード名はエール・ストライク。
エール・ストライクの四基のベクタードノズルが手加減抜きで開放された。カ
タログ・スペックの数値からは実感できない加速だった。ストライクは文字通り
弾丸と化して一直線に前方へ飛ぶ。運悪く突っ込んできたジン０４との距離がま
ばたき一回分にも満たない時間でゼロになる。コーディネーターであっても「よ
ける」も「かわす」もできるはずがない。
激突。
死んだ方がましだと思った。
加速のＧと激突のショックで意識を持っていかれそうなりながら、キラはスト
ライクをジン０４に組み付かせ、さらに加速をかけた。
二機はひとかたまりのまま弾き飛ばされるように跳んだ。
ジンを叩きつけるようにして、正面のビルを二つまとめてぶち抜いた。
対Ｇシートの許容限界をあっさり振りきる衝撃だった。
ジンのコクピットで、ラスティは意識を失った。
マリューはとっくの昔に失神してた。
（後編へつづく……）
>>流離
キラ･･･抜け殻になっちまってからに(´Д⊂ヽ
ナタルがますます活躍しそうで楽しみです。不謹慎なようですが、
後々フレイ様デュエル以外にも乗りませんかねえ？
>>オリジン
つくづく硬派で息を呑んでしまいますなｗ でも神経接続ってなんか世界観が違うんですけど。サイコミュ？
>>キラ♀
金曜日はフレイきゅんの特製カレーだ！
＞｢もう止せよ、サイ･･･｣
のシーンがヨカターヨ！
>>コスプレ
悲しげな作品が多い中エロとして楽しめるのもおいしいでつ。
>>春コレ
アズラエル理事ッ！！ いや、なんでもないです。
フレイ様，いきなり大気圏突入状態でストライクですか？セイラさんより無謀です！
＞＞流離
＞ザフトはこれまで連戦連勝に浮かれ、先のヨーロッパでの敗北も．．．
太平洋戦での日本軍を思い出しますね．なまじ最初に勝ちすぎているので，なかなか
方向転換も出来ない．
＞＞Origin
＞だから、ヴィー……あなたが幸せになりますように、
自分が無理をしてでも，あるいは他人に後ろ指を指されながらも，娘に才能を与
え，娘の幸せを願った母親の想いが無に帰す瞬間．最後に母親を呼ぼうとした娘．
胸が締め付けられる気がしました．
＞マリューは死ぬほど後悔した。
＞マリューはとっくの昔に失神してた。
最後の失神にを想像して，思わず噴出しそうになりました．マリューさん，全く
今日は厄日ですな．
おお、久々に投下されている
以外な事にデュエルが２機いるんですね。片方は残ってるということは、こっちにフラガかな？
しかし、神経接続で機体制御。まるでバトルテックの神経接続ヘルメットのようですｗ
後、ミゲルとラスティの運命が気になるところ。どっちかは生き残るのかな？
>>457
ええと、フレイ様はデュエル以外にも乗りますよ。予定ではストライク、Ｍ１、ルージュです。ＭＳ以外の物にも乗ったり、意外な椅子に座ったりもしますねｗ
待ってました！！
すごい、すごすぎる。
ここまで引き込まれる小説は、アナログのものも含めて久しぶりです。
がんがってください。応援してるので。
毎日一回ここ見にくるのが楽しみでつ。
月基地でMSの勉強していたというのは
フレイ様がMSに乗る理由としては結構アリかな
と思った。メカニックの連中がフレイ様に
自慢げに話す様子が目に浮ぶまふw
でも上手に使いこなすかは別なんだよなあ。
>流離
｢一戦勝利して終戦」って発想は為政者にとって
抗し難い魅力を持つのかなあ。うーん良策には･…。
かといってシーゲルのチャネルも貧弱そうだし…。
親父達による対話篇、いろいろ考えさせられました。
>オリジン
>イザーク・ジュールは古式に則り、召還の呪文を唱えた。
冒頭からガツンとヤラれました。カッコいい。
メカについては難しくてよく分からないけど、Gの操縦が
エラく特権的なものであることはガンガン伝わってきます。
普通、外交ってお互い（ブラフも含めて）少々無茶な位の要求を付き付け合い、
あとでそれを擦りあわせていくもんだと思うんですが、パトさん最初の段階で
これは無理だと諦めちゃってますね。
一戦勝利して終戦、は誰でも考えることですが、相手だってそれは同じ事でしょうに。
シーゲルには期待できそうにないしｗもう一つの動きっていうのも気になります。
まさか、強硬派によるクーデター！？
＞オリジン
冒頭で一瞬、タイトル間違えたか？と思いましたｗ
でもカッコ良かったです。何時もながらハードな表現にシビれます。
本編と違い、Ｇは６機だったんですね。デュエルが２機ってことは量産型のベース
としてやはり最有力ってことなんでしょうね。
＞『全部で八機だったな。俺とニコルとお前……確認できるのは三機だ。
とか言ってるので、さらに２機あるものと。
バスターとブリッツも２機づつ？
今日から、二編のＳＳを並行して投稿します。二つ合わせて 70章の長編になります。
ひとつは、オーブ編のフレイ様視点の話です。本編、２５話「平和の国へ」〜３０話「閃光の刻」に当たります。
私は、２８話「キラ」のキラフレ別離のくだりが印象的で、ここは何回も見直しましたが、
解釈は見るたびに変わりました。特に、あの後、キラから何も言わないのが不満でした。
そこで、本編で実質３話分、話の中の時間で、長くても一週間程度と思われるオーブ編を、二週間以上に
大幅にふくらまし、新規エピソードを加えて自分なりに再構成したのが、これです。
結果的に、本編通りキラからは、やっぱりフォロー無しなんですが、書いている内に、当初の意図から外れて、
結末は、本編と、まったく違うものになりました。というか、最初から、フレイ様自身、別人かもしれません。
私なりの、解釈として見ていただけるとありがたいです。
もうひとつは、ミリアリア視点の話です。こちらは第一話からですが、必要なエピソードのみ補完します。
本編と異なり、キラを密かに恋するミリアリアという設定で、フレイ様の行動に対する思いを綴ったストーリーです。
こちらは、ミリファンには、申し訳ない内容になっているかもしれません。
ストーリーでは、最初を除いて、フレイ様を指す言葉は「あの子」に統一されます。
二つのＳＳは、視点は違いますが、その中で起きる出来事は、相互にリンクし、
補完し合っています。合わせて読んでいただけると幸いです。
元々、私が個人的にエロＳＳを書いていたこともあり、かなり卑猥で、しかも妄想爆発の内容があると
思います。だけど、削ると、ストーリー展開にも影響が出るため、そのまま投稿します。
まずい場合は、言ってください。
では、どうぞ。
あなたとのことを、キラ…
砂漠から太平洋。あんなに一緒だった二人。でも、それは、偽りの二人だった。
それは、たった二週間離れていただけで壊れてしまった。
でも、私は気づいたのよ。私があなたのことを、どう思っていたのかを…
キラ、最後の私の言葉覚えている？ 私、やっとあなたと対等になれると思ったのに。なのに…
そのまま二度と会えなくなるなんて。キラ…
あの時、もし、キラを引き止めることができたなら…
今は、アラスカに入ったアークエンジェル。私は一人キラの部屋で、トリィを手に思い出す。
アークエンジェルがオーブに入港した日、それからのことを。
キラが、部屋に飲み物を持ってきてくれた。ここはキラの部屋、そして、私の部屋。
私とキラは同棲している。いつも、同じベッドで寝ている。ここは軍艦の中だというのに。
私は、次々と映像を切り替えていたモニタを見つめるのを止めて、
キラを振り返る。別に見たいものがあった訳じゃない。ただ、退屈だっただけ。
アークエンジェルは、ザフトの激しい攻撃で痛々しく破損した後、
今、オーブの施設に入港している。中立国オーブ、平和の国。私の故郷。
「上陸できるかもしれないよ。食堂でみんな話してた。
フレイもオーブに家あるんでしょ？」
キラは、私を慰めようとして言っているのかもしれないけど、それは、私には辛いこと。
「オーブにもあるけど、誰もいないわ。ママは小さい時に死んじゃったし。パパも…」
私は淡々と告げる。それを聞いてキラは暗い顔をする。
私自身も悲しくなって、キラの肩に頭を預ける。キラは責任を感じているのか、
辛そうで、いつもするはずなのに、私の肩を抱こうともしない。
けど、もたれかかる私を支えてくれる。それだけで、私の心は少し癒される。
いつから、こんな風に思うようになったのだろう。
宇宙でパパが殺された時、パパの乗った連合軍の戦艦が、ザフトの砲撃で沈んだ時、
守ると言った癖に、パパを守れなかったキラ。パパを殺した憎いコーディネータの一人であるキラ。
それを私は、死ぬほど憎み、自分の体まで捨てて復讐を誓ったはずなのに。
今は、こんなに暖かく感じるなんて、心が癒されるなんて。
私の体が、またキラを求めだしていた。
そう…、体よ。
私は、キラを戦いから逃さないために、自分の処女をキラに捧げた。
そして、幾度となく関係を続けるうちに、私自身がキラの体に溺れた。
でも、私は、それを嫌とは思わない。もう幾度となく、その肉の快楽に飲み込まれてきた。
もう、私の中では、そんな自分の体に対して折り合いを付けられるようになっている。
太平洋を航海している間、私は毎晩のようにキラに抱かれた。キラが求めることもあったし、
私から懇願したこともあった。私の体には、キラの唇と舌の感触が全身に残っている。
顔・胸・アソコは言うに及ばず、うなじ・脇・腿・足の指先まで。
今は、キラの体のぬくもり無しにはいられない。
でも、心は、どうなんだろう？ 私は、今、キラをどんな風に思っているのだろう？
今は、午後三時を過ぎたころ。二人睦み合うには時間が早かった。
オーブの施設に入港して、キラは戦闘待機から開放されている。
こんな時間にキラがフリーになるなんてめずらしい。
「ねぇ! ちょっと早いけど、一緒に食事に行こう。艦内ぶらついてさ。時間つぶして」
珍しく私のほうから、キラを部屋の外へ誘った。
私、キラが好き。
私はミリアリア・ハゥ。ヘリオポリスの工業カレッジの学生だった。
今は、軍人で二等兵。
キラとは、カレッジに入学してからの付き合い。
いろいろな学科のあるカレッジでもコンピュータ専門の学課に入った女の子は、
そんなに多くない。それも、みんなバリバリのエリートか、ガリ勉。
そうで無けりゃオタク。それで、私は最後の…
キラは、あまりオタクっぽく無いけど、友達のトールは、すごいマニア。
なんでこんなこと知ってるのだろうという、つまらないことばかり知ってる。
でも、私も一緒。その、つまらないことで話が合う。それで、キラも、
その話題で盛り上がる。なんか、安らぐ。
キラは、コーディネータ… つまらない話題でも、学校の勉強でも、
すごく理解が早い。私、結構、コンピュータ詳しかったのに叶わない。
でも、それを鼻にかけるようなことはしない。分からないとこは、丁寧に
教えてくれるし、私が分かることは素直に聞いてくれる。
キラに不満があるとすれば、子供っぽいところ。今でも、昔流行った
ロボット鳥をトリィと名づけて可愛がっている。私も小さい時持っていたけど、
今考えると、あのデザインやプログラムは最低。単なるオモチャ。
そんなの今でも持ってるなんて。
でも、私、それでも、キラが好き。もっとキラと仲良くなりたい。
でも… ダメ。もっと私を見せると、キラ幻滅する。
トールに連れられてキラの宿舎へ行った時、こざっぱりした部屋にびっくり。
キラは、いつもは散らかっているというけど、多分、違う。
自分の部屋へ帰ってきて、ため息。もうグチャグチャ。パソコンが何台も
常時動いてるし、本が散乱。読みかけのマンガがアチコチに山積み。
誰にも見せられないような男の子同士の恥ずかしい本がベッドのすき間に一杯。
でも片づけることなんてできない。
キラどころか、だれも部屋に呼べない…
キラが好き。キラといつも一緒にいたい。だけど、キラに直接告白なんてできない。
結局、私、トールと付き合うふりをすることにした。ごめん、トール。
トールは本当にいい人。まわりから彼氏・彼女という言い方されるようになって、
やっぱりそう思う。でも、私は、やっぱりキラが好き。
いつかは、壊れるのだけど、今は、ずっとキラとトールと三人で仲良くしたい。
でも、壊れる時は私の想像よりも早く来た。ザフトのヘリオポリス進入。ヘリオポリス崩壊。
私たちみんな連合軍の軍艦に拘束された。キラは、軍事機密のモビルスーツを動かして、
無理矢理、戦いに巻き込まれていく。
キラを助けたい。トールもサイもカズイも、同じ気持ちでいてくれた。
後先考えずに軍務に志願。でも、これでキラを助けられる。
トールは戦艦の操船補佐。サイは CIC 電子戦情報分析オペレータ。カズイは通信管制補佐。
そして私は…
なんと、CIC モビルスーツ管制担当。モビルスーツやモビルアーマーの発進指示、
戦況や各種情報、指示の伝達。機体状況のモニタなどなど。
つまり、私はキラと直接話す仕事。キラをずっと見守る仕事。
キラは私の声で発進する。
「ＡＰＵ分離。カタパルト接続。
ストライカーパックは、エールを使用します。
エールストライカー・スタンバイ。
システム・オールグリーン。
ストライクどうぞ！」
「キラ・ヤマト。ガンダム行きます！！」
すごい。うっとりする。
私の好きなアニメやマンガの、ヒーローとヒロインみたい。
どうしよう。私、このままキラと、だんだん打ち解けて、いつか…
でも… 世の中、アニメみたいに、そんなに甘くなかった。
フレイ・アルスター、私、あの子好きじゃない。
はっきり言う。フレイは嫌い。大嫌い。
カレッジのデザイン学科の一年生。うちの学科とは打って変わって、
女子も多い中でも、ひときわ彼女の存在は目につく。
赤毛を美しくセットし、お洒落な服装を着こなす彼女は、私と正反対の雰囲気。
でも、なぜか同じサークルにいる。でも、あの子、あまりサークル活動には
真面目じゃなくて、友達とおしゃべりに来ているみたい。
最初のころは「ミリアリア先輩、真面目ですね」とか言っていたけど、
部長や友達と、うちとけたころ、だんだん私のことは蚊帳の外になっていたような気がする。
でも、別にそんなことは、気にしてない。
嫌なのは、男関係。
どうやら、私のゼミのサイ・アーガイルと付き合っているらしい、
なにやら、手紙でやりとりしているという話。小さい頃からの幼なじみとの噂も聞く。
時折、フレイがサイに会っているのを見かけると、なにか甘えているような素振り。
いやらしい子。でも、別に、そのカップルがうらやましい訳でも無い。
許せないのは、フレイがキラが片想いの相手であること。
最初、トールから聞いた時は信じられなかった。キラって、あんな軽薄そうな女の子が
好きなの？ 私と正反対。
なんか、男に甘えたような声。男を惑わす声。男を手玉にとるような声。
意識なんかしていないのかもしれないけど。鼻につく。
あんな子、キラにはふさわしくない。
それなのに、あの子 アークエンジェルに来た。ヘリオポリス崩壊の時の
脱出ポッドが壊れていて漂流しているところを、キラがアークエンジェルへ
運んだのだ。でも、助けてくれたキラをほっといて、サイに抱きついている。
それに、ザフトの攻撃や船の揺れで、自分勝手な不満ばっかり。
嫌みのひとつでも言いたくなる。
それだけならまだ良かったけど、あの子が言ったこと、私、絶対許さない。
それは、プラントの歌姫、ラクス・クラインをアークエンジェルで保護した時。
「ちょっと、何よ! コーディネータの癖に馴れ馴れしくしないで!」
なんてこと言うのよ、キラもいるのよ。キラの目の前でコーディネータを
差別扱いするなんて。それに、キラはあなたのこと憧れていたのに。
キラ傷ついているのが分かる。酷い、許せない。
その後、フレイの父親がザフトに殺された。悲しんで気絶までしたフレイに、
さすがに同情したけど。でも、そんな、気づかいは不要だった。
「あんた！ 自分もコーディネータだからって、本気で戦ってないでしょ！」
みんなを守って戦っているキラに、こんなことを言うなんて許せない。
フレイは嫌い。こんな子、どこかへ行ってしまえばいいのに。
連合の本体に合流して、私たち、アークエンジェルを降りられるという時、
なぜかフレイは、逆に軍に志願した。それで、他のみんなも軍に残った。
私は一人抜けられなくて、結局、軍へ。そして、キラも残った。
結局、フレイとキラと私たち、そのままアークエンジェルに乗って地球に降りた。
アークエンジェルは地球に降りた。降りた場所は砂漠。ザフトの領地。
また、攻撃を受けるかもしれない。
それよりも心配なのはキラ。キラは、地球へ降りる時、ストライクで出撃して、
戻れずに、そのまま大気圏へ突入した。アークエンジェルがなんとか回収したけど、
すごい高熱でキラはうなされている。キラが心配。いても立ってもいられない。
「大丈夫！、大丈夫！、キラ！！」
キラを必死で看病して、心配そうに声をかけるのは… フレイ。
どういうこと？ あの子は、コーディネータが嫌いなはず。
でも、今は必死でキラの汗を拭き、つきっきりで面倒を見ている。
おかげで、私は、キラに近づくこともできない。
「ミリアリア、私が付いているから。あなたは仕事に戻って」
私は、キラに付いていたいのに。なんで邪魔するのよ。
翌朝。キラは回復したそうだ。私はうれしかった。
でも、あの子の一言は、それを大無しにした。
「やっぱり、体のデキが違うのね…」
あの子、やっぱりキラを差別している。なのに、一生懸命、看病して、
訳が分からない。もっと訳が分からないのが、その後のサイとのやりとり。
あの子は、婚約者のサイを、みんなの前で振ったのだ。
婚約者だったのも驚きだけど、父が死んだからと、あっさりサイを振るなんて。
サイは、決して悪い人では無い。何が不満だったと言うのかしら。
あの子は、そのまま、そそくさとキラの看病に行った。
もう、さっぱり訳が分からない。でも、これだけは言える。
あの子は、やっぱりキラの思っているような女性じゃない。
できれば、あの子にキラの看病なんてして欲しくない。
でも、今にもザフトが責めてくるかもしれない砂漠で、みんなに仕事が
山積みの中、キラの面倒を見れるのは、まだ、仕事が無いあの子だけ。
ブリッジの交代の時間だ。戻らなきゃ。
ああ、キラ。早くよくなって。そうすれば、また、私、仕事でもキラを
見ていられるのに。
いきなり章タイトル入れ忘れました。下記の通りです。
次回から忘れないように気をつけます。
オーブ・フレイの心 1
[それだけで、私の心は少し癒される]
>>ミリアリア・あの子許せない
乙です〜。
ちとアダルトチックなフレイ様の描写と
ミリィが実はキラのことが好きだったという驚き（？）の展開･･･
フレイ様とキラとの関係をミリィが知った後どうなるのかこれからが楽しみです。
頑張ってください。
アークエンジェルではサザーランドが来ると聞いて慌てふためいていた。マリュ−とナタルが血相を変えて艦内の掃除をさせ、目立つ所においてある私物を急いで片付けさせる。何しろ相手はあの堅物で有名なサザーランド大佐だ。何を言われるか分かったものではない。そして、何よりも大きな問題がある。そう、キラのことだ。
マリュ−はフラガとナタルを集めてキラをどうするかを話し合った。
「キラ君ですが、やはり隠しておいた方が良いんじゃないでしょうか？」
「そうだな、サザーランド大佐はブルーコスモスだって言うし、キラを合わせるのは不味いよなあ」
「ですが、サザーランド大佐が面会を望まれたら、どうします？」
ナタルの問い掛けに２人は深刻な顔を向け合わせる。そう言われたら合わせない訳にはいかないが、ブルーコスモスがコーディネイターを見ればどうなるかは火を見るより明らかだ。下手をすれば訳の分からない冤罪を着せられて処刑場送りにされるかもしれない。
さんざん悩んだ挙句、３人は結局キラを表に出すことにした。下手に小細工をして薮蛇になるより、目の前に出しておいた方がいざという時庇いやすいと考えたのだ。
この深刻な事体に、キースは一人我関せずとばかりに甲板上にでて横になっていた。その表情には戸惑いが浮かんでいる。まるで会いたくない、苦手な誰かと会わねばならないかのような苦り切った表情だ。
「ウィリアム・サザーランド大佐かあ。まいったよなあ、会うのはあの時以来か」
どうやら知人らしい上官の名を呟き、キースはわしわしと頭を掻く。一体、キースとサザーランド大佐の間に何があったのだろうか。
そして、遂にサザーランド大佐がやってきた。部下を２人伴っただけの来艦だ。マリュ−を始めとする士官がサザーランドの前に立ち、兵士達は後ろに整列している。一見するととても整然としているが、実はナタルが大急ぎで教えこんだ付け焼刃の隊列だったりする。
「ようこそ、アークエンジェルへ。艦長のマリュー・ラミアス少佐でありますっ！」
「うむ、大西洋連邦参謀本部のウィリアム・サザーランドだ。君の事はハルバートン少将より聞かされている」
サザーランドはニコリともせずにマリュ−に応じた。その風格や周囲に与える威圧感はこれまでに会ったいかなる上官をも凌駕している。あのハルバートンでさえもこれほどまでの覇気は感じさせないのではないだろうか。
サザーランドはそのまま視線をフラガ、ナタルと移し、次いでフレイの前で視線を止めた。
「･･････君が、フレイ・アルスター准尉かね？」
「はっ」
「そうか、お父上の事は聞いている。惜しい人物を亡くしたものだ。君の活躍は耳にしている、これからも頑張ってくれたまえ」
「はいっ！」
背筋を正し、ビシッと敬礼するフレイ。ナタルの付け焼刃にしてはなかなかしっかりしたものである。
「君が、キラ・ヤマト少尉かね？」
「は、はい･･････」
キラは目の前に立つサザーランドがとてつもなく大きく見えた。ナチュラルの、それも４０代半ばと思われる年齢を考えれば、自分にかかれば容易く捻り倒せるような相手の筈なのに、キラにはこの男に勝てる自身が全く無かった。
サザーランドはキラに感情を感じさせない視線を向けている。まるで観察しているような視線だ。
「･･････ふむ、君は確か、第１世代コーディネイターだという事だったな」
「そうですが、それがなにか？」
「簡単な事だ。君は、これからも我々連合のために戦ってくれるのか、という事だよ。第１世代という事は、両親はナチュラルという事だ。君はナチュラルの、両親の為に同じコーディネイターと戦っていけるのかね？」
サザーランドの言葉に、キラは凍りついた。まさに自分が直面している最大の問題に、こうも簡単に踏みこんでくるとは思わなかったから。周りのクルー達でさえ驚愕を隠し切れないでいる。それはだれもが薄々感じていながら、口に出来なかったことだからだ。
その問題に僅かとはいえ踏み込んだ所にいたフレイは辛そうに俯いている。キラをこの艦に縛り付けていたのは自分だったから。
じっとキラの答えを待つサザーランド。その目に映るのは有能だが、信用の置けない兵士である。軍の高官である彼にとって、前線の将兵などただの駒でしかない。駒に感情など必要はないのだ。
何も言わずとも場を圧する威圧感を持つサザーランドに、ナタルやフラガでさえ声をかけられないでいる。ましてマリュ−では竦んでしまってどうしようもない。この息苦しさは永遠に続くかと思われたが、そのサザーランドに声をかける男がいた。
「ヤマト少尉は信用出来る男ですよ、サザーランド大佐」
だれもが驚愕してキースを見た。サザーランドの御付きの２人も驚いている。連合広しと言えども、サザーランドに自分から声をかける者は滅多にいないからだ。そして更に周囲を驚かせる事体が発生した。なんと、あの厳格で生真面目、歩く軍規とまで呼ばれるサザーランド大佐が小さく笑ったのだ。
「ふふふ、相変わらずだな、キーエンス・バゥアー。今は大尉だったかな？」
「はい、その節はお世話になりました」
何やら顔見知りらしい２人の態度に、マリュ−とナタルは顔を見合わせ、フラガは混乱し切っている。軍部におけるブルーコスモスの有力者であるサザーランドと、キラの良き先輩の位置に自らを置いているキースでは余りにも違いすぎるのに。
「まさか、君がここまで成長するとは思っていなかったよ」
「まあ、私にも色々とありますから」
「しかし、君が抜けてもう２年か。戻ってくる気は無いのか？」
「ありませんよ。私は昔が好きだったんです。今の際限無い過激路線には付いていけません。それに、あいつが私は大嫌いですから」
サザーランドの言葉に苦笑しながら返すキース。その会話は間違い無く２人が顔見知りであると教えている。サザーランドはキースに艦内の案内を頼むと、そのまま艦内へと入っていってしまう。それを見送ったアークエンジェルクルーたちは驚愕と困惑を混ぜ合わせた、なんとも言えない澱みを抱え込んでしまう事になる。一体、キースは何者なのだろうか。
この件に疑問を感じたナタルは、密かにキースのことを調べることを決めた。もしかしたら、キースは････････････
「バゥアーが死んで、もうすぐ一年になるのか」
「ええ、そして、私が軍に入ってからもう一年になります」
「･･･････キーエンス、戻って来い。今のブルーコスモスには君が必要だ」
サザーランドの誘いに、キースは首を横に振った。
「言った筈です。今のブルーコスモスは、私が賛同し、参加していたブルーコスモスではないと。昔にも過激派はいましたが、極一部でした。それが今はどうです。まるで狂信者の集団じゃないですか？」
キースの声は限りなく苦々しい。サザーランドもそれには同感なのか、小さく頷いている。
「だからこそ、君に戻って欲しいのだ。このままではブルーコスモスは際限ない過激路線に飲みこまれてしまうだろう」
「アズラエルを盟主の座から降ろせばすむ事でしょうに」
「それはできん。アズラエル様は今の連合に必要な方だ。あの方がいなければ、ＭＳ開発計画をここまで進める事は出来なかった」
「･･････Ｘシリーズは、奴の狂気と妄執が生み出した産物、という事ですか」
考えてみれば当然の結論だった。未知の新兵器を開発するのには膨大な予算が必要となる。今の苦しい大西洋連邦の台所のどこからそんな金が出てきたのか。アズラエルがその資金を捻出していたとすれば全ての裏が繋がってしまう。あいつは悪い意味で無能ではない。これまでの通常兵器ではザフトに勝てない事を知っているし、コーディネイターを殺したい一心でなら多少の出費は気にしないだろう。
だが、キースはアズラエルが大嫌いだった。あの極端なコーディネイター排斥思想には付いて行けない。元々キースは穏健派に属し、第１世代コーディネイターが生まれないように社会に訴え掛け、現在のコーディネイターはナチュラルに交わり、緩やかにナチュラルへと回帰するべしと唱え続けてきた。この地道な活動はナチュラルには受け入れられやすく、コーディネイターにも賛同者が少しづつ増えていたのだが、アズラエルを始めとする強硬派のテロがブルーコスモスを過激な集団と印象付けてしまっている。
この過激路線が主流派となってきてしまったため、キースは嫌気が差してブルーコスモスから抜けてしまったのだ。穏健派の若手リーダーの１人だったキースは人望に厚かった為、彼の脱退はそのまま穏健派に大きな打撃となった。
ブルーコスモス内では中立的な立場にいたサザ−ランドにしてみれば、アズラエルの存在はありがたいが、軍や政府内にブルーコスモス細胞が余り浸透するのは好ましくないと考えている。
サザーランドの考えでは、アズラエルは金を出してくれれば良いのだ。口まで出す必要はない。戦争は自分たち軍人がやるというのがサザーランドの考えだ。ハッキリ言って、軍事のド素人でしかないアズラエルにでしゃばられて、戦略を引っ掻き回されては堪らないのだ。自分とハルバートンが進めてきたＭＳ開発計画とその運用艦量産計画は順調に進んでいるが、アズラエルは独自の戦力の整備を進めているらしい。遠からずアズラエルがでしゃばって来る事は確実だろう。そうなれば軍の指揮系統に混乱を招く恐れが高いのだ。
「もし、アズラエル様が前線に出てくれば、色々困るのだよ、キーエンス」
「それを何とかするのがあなたの仕事でしょう、サザーランド大佐」
「私の言う事など聞く方ではない。あの方に意見出来る数少ない男であるお前が必要なのだ」
「･･････そこまで増長しましたか、あいつは」
キースの声は限りなく苦々しい。アズラエルの高慢な性格を知っているだけに、その様子が想像出きるのだろう。
「アズラエル様は３人の強化人間を完成させ、実戦テストの場を求めている」
「強化人間、まさか、そんなっ！？」
「今は月基地に上げている。ハルバートンなら上手く操ってくれるだろう」
サザーランドの言葉に、キースは言い知れぬ怒りを感じていた。押さえていた何かが切れ、頭の中でスイッチが切り替わる。無造作に壁に叩きつけた右拳が、壁に小さな凹みを作った。
「･･･････あいつは、あいつは何を考えている。強化人間というのが、どれほど悲劇的な存在なのか、知らないとは言わせないぞ」
「アズラエル様の作り出した強化人間は、２２年前の試作品とは違う。更に進んだ改良型だそうだ。まあ、危険性が減った分、能力は劣るそうだがな。薬物強化と脳内インプラントで無理やり能力を引き上げているそうだ」
「なるほど、フィフスの改良型という訳ですか。確実といえば確実ですね。でも、あれは使い捨て前提の計画でしたよ？」
「その通り、彼らに明日はない。彼らには記憶も、なにも残されてはいないのだ」
サザーランドの答えに、キースはギリッ音を立てて歯を噛み締め、怒りを露にしていた。握り締めた拳が小刻みに震えている。
「そうまでして、そんな事までして勝ちたいのか、あいつは･･･････」
「戦争は勝たなくてはならない。それはお前にも分かっているだろう？」
「分かってますよ。その為に形振り構っていられないという事も。ですが、私が受け入れられると思いますか？」
キースの血走った目に、サザーランドは何も言えなかった。ただ、喋りすぎたかと僅かな後悔を抱いている。
そして、暫くお互い無言のまま歩き続け、サザーランドが今度は違う話題を出した。
「そういえば、君はあの少年、キラ・ヤマトをコーディネイターだと知っている筈だな？」
「勿論ですよ」
「･･･････ブルーコスモスだった君が、何故コーディネイターを受け入れているのか、私には疑問だよ」
「別に私はコーディネイターの排斥を唱えていた訳ではありませんから。ただ、これ以上コーディネイターが増えるのを防ごうとしていただけですよ。それに、キラは私にとって希望でもありますから」
「希望？」
キースの言葉に疑問を感じたサザーランドが問い掛けた。キースは悪戯を楽しむような目でそれに答える。
「私の主張していたコーディネイターのナチュラルへの回帰。それが初めて実現するかもしれないんですから」
「･･････なるほど、君が目を掛ける訳だな。だが、彼は確か」
「ええ、そうですよ。でも、あいつは何も知らないようです」
「知らない、か。しかしまさか生きていたとはな。私も最初は気付かなかった」
「アズラエルには黙っていてください。もし奴が知れば、何をするか分かりません。その時には私も全力で相手をする事になります」
「･･････心配するな。私も、余計な波風は立てたくない」
一瞬だけ殺気を滲ませたキースに、サザーランドは神妙な顔付きで答えた。
「やれやれ、お偉いさんってのは疲れるねえ」
「全くですね」
フラガのぼやきにマリュ−が苦笑しながら応じた。ナタルは背筋を伸ばしながら窓から外を見た。
「しかし、サザーランド大佐は、キース大尉とどのような関係なのでしょう？ 実戦部隊の一介の大尉と参謀本部の大佐、格が違いすぎます。なのに、大佐の大尉に対する態度は、まるで友人に接するような態度でした」
ナタルの疑問に、フラガとマリュ−が表情を曇らせた。キースを信頼しない者はこの艦にはいない。どのような人物にも分け隔てなく接し、キラやフレイを引っ張っているキースは、誰もが一目置く人物なのだ。マリュ−やナタルから見ればキースは豊富な経験を有し、確かな戦術眼を持つ頼れる同僚であり、フラガからすれば共に戦場を生き抜き、今なお生き残っている数少ない戦友だ。そのキースがまさか、ブルーコスモスだなどとは思いたくない。
苦悩する３人に、操舵席に座っていたノイマンが自分の考えを口にした。
「ですが、もしキース大尉がブルーコスモスなら、なんでヤマトにあそこまで気安く接してたんでしょうねえ。確か、ブルーコスモスってのはコーディネイターと見たら容赦しない連中でしょう？」
そう、それが最大の問題なのだ。キースがブルーコスモスだと言うなら、キラへのあの態度は腑に落ちない。それこそフレイのようにキラを憎み、さまざまな手段で迫害を加えて然るべきなのだ。なのに、キースにはそういった兆候がまったくみられなかった。キラに対しては常に良き先輩であろうとし、さんざまな助言でキラを助けている。
仮にキースが自分からブルーコスモスだと告白したとしても、自分たちにそれを受け入れられる自信はない。キースは、自分たちのブルーコスモスのイメージと、余りにもかけ離れていた。
「お前なあ、幾らなんでもキースさんがブルーコスモスだなんて言われても、信じる訳無いだろう？」
「でも聞いたんだって。艦長やフラガ少佐、バジルール中尉にノイマン少尉までキースさんをブルーコスモスじゃないかって」
「でもな、フレイじゃあるまいし、なんでキースさんが」
ミリアリアはどうしたものかと傍らのトールを見る。トールも戸惑いを浮かべていた。まさかと思うのだが、ナタルまでが言っていたとなると冗談とも思えない。だが、あのキースがまさか、という思いもあるのだ。
「この事をキラが聞いたら、ショックだろうな」
サイの漏らした一言に、トールとミリアリアがギクリとした。ただでさえフレイと別れたばかりのキラは酷く傷付き、自分たちも声を掛け難い状態なのだ。キラはキースを信頼しているようなので、もしキースがブルーコスモスでは、などという話を聞けば、裏切られたと思うかもしれない。
この事に思い至った４人はそれぞれに違う思いを抱いた。
サイは今にも壊れそうなキラを心配し、キラと離れたフレイに反感を持った。
ミリアリアはキラを捨てたフレイを軽蔑し、傷付けられたキラに同情した。
カズィは新たなる騒動を予感し、関わりにならないよう願った。
トールはキラとフレイ、それぞれの心情と事実を知るだけに、何もできない自分の無力さが悔しかった。
「とにかく、この事は誰にも言うなよ。まだ噂なんだから」
サイの釘を刺すような言葉に、３人は小さく頷いた。こんな噂が広まっても、良いことなどありはしないのだ。
幸いにして、この噂は４人組と士官４人から先には流れる事はなく、キラの耳に届く事は無かった。だが、この日を境にキースに対する子供たちの態度に差が出るのは避けられなかった。カズィは明らかにキースを避けるようになり、サイとミリアリアの態度は距離を置いたものとなった。唯一トールだけはこれまでと同じく、いや、これまで以上にキースを頼るようになった。トールだけはキースを信じたのだ。例えブルーコスモスであったとしても、キースは信用出来る男だと。何故なら、キースはブカレストの街で自分を助けてくれたし、自分とフレイの教官であり、信頼出来る人だとずっと前に分かっていたから、トールはキースを信じる事が出来た。
この周囲の変化にキースは気付いていたが、今更自分の態度を変えることは無かった。キースの知る限り、この艦に乗っている士官は馬鹿でも無能でもない。自分とサザーランドが知り合いだというのを感じ取れば、それとなく自分の素性を察する奴が出てくるだろう。
このヘリオポリス組の変化に、キラとフレイは気付いていなかった。キラはヘリオポリス組から距離を取っていたし、フレイは元々空気を読むのが苦手だ。加えて２人と接する機会のあるトールにはこれといった変化が無かった為、気付きようが無かったのだ。
こうして、アークエンジェル内にまた新たな波紋が広がっていった。この波紋がどのような変化をもたらすのか、それは誰にも分からない。
アジア編は出会いと戦い、成長の章です。別れた２人はどうなるのか、フレイ様の成長の行く先は･･････
そして、世界の流れを自分の望む方に向けようとする者たちはの動きは･････
何気にアスランの出番も増えます。キラとは別の意味で彼も不幸なのですがねｗ
>>オーブ・フレイの心
ミリィのキラへの入れ込みぶりが凄いなあ。トール君は眼中に無し！？
フレイ様は寂しそうですねえ･･････
フレイを巡ったサイとキラの壮絶な修羅場から一夜明けた朝食の席上、隅の席で一人、
ポツンとお通夜のように打ち沈んだ暗い表情で、まったく箸が進まないサイに対して、
果たして声をかけて良いのか、トール達は躊躇われた。
「おい、サイ……」
「止めとけよ、そっとしておいてやれ」
意を決してサイに声をかけようとしたカズィを、隣の席で黙々と朝食を食べていた
カガリが引き留める。アークエンジェル内に席などないにも関わらず、何の違和感も
なく食堂に溶け込んでいる図々しさは、ある意味賞賛に値するかも知れない。
「何だよ、お前には関係ないだろ！？」
ムッとした表情でカズィがカガリを睨む。ヘリオポリス本家が、カガリに対して
好意的であるべき理由は今のところどこにもない。
「俺は親切で忠告してやっているんだぜ。あのサイとかいうの、昨夜、厨房にいる
優兄ちゃんにこっ酷く振られたみたいだからな。まぁ、仕事中ににゃんにゃんして
いる、そこの二人には分からないだろうけどな」
カガリの言葉に、カズィは白い目で二人を見つめ、トールとミリアリアの二人は
顔を真っ赤に染める。
「一体何なんだよ、お前は！？アークエンジェル内で出歯亀しまくっているのかよ！？」
「知るか！俺の行く先々で、お前らが勝手に恋劇しているだけだろうが！
お前達も一応は軍人の端くれなら、もうちょっと真面目に戦争しろよな！」
照れ隠しにカガリに詰め寄るトールに、意外にもカガリはこれ以上ない正論で対応し、
トールはグウの音も出てこない。
「それより、あいつと、フレイっていう優男は一体どういう関係なんだ？」
「あいつって誰のことだよ？」
「決まってるだろう。キ……キラのことだよ」
カガリは何故か、言い難そうにキラの名前のところで痞えた。
「何でお前がそんな事を聞くんだよ？お前はキラを嫌っていたんじゃねえのかよ！？」
「べ…別に嫌っている分け…はある。でも、あいつに手を挙げたことについては、
ちゃんと謝るつもりだ。ただ、それとこれとは別で、俺はあいつを許す気はない」
少し傷のない頬を紅く染めながら、支離滅裂なことを宣うカガリを、トールとカズィは
呆気に取られた表情で見つめ、ミリアリアは可笑しそうにクスリと笑うと
「いいわ、話してあげましょうよ、トール」
「おいおい、ミリィ…」
トールは、またかよ…という表情でミリアリアを睨む。最近トールは、自分の恋人は
実は面食い気質なのでは…と疑っていたりする。
「情報交換の代価だと思えばいいじゃない、トール。どうやら、カガリさんは、サイが
どうしてああなったのか事情を知っているみたいだし、そうでしょ、カガリさん？」
「カガリで良い」
カガリはむっつりとした表情で答え、ミリィは笑いを押し殺した表情で肯くと、利害の
一致した両者は、お互いの手持ちのカードを見せ合って情報交換を行った。昨夜の修羅場
にキラまで関わっていたことをトール達は驚き、またカガリも、つい最近までフレイが
コーディネイターを嫌っていたという情報を聞いて、何やら意味深に考え込んだ。
「ねぇ、カガリ。一つだけ聞いてもいいかしら？あなたはどうしてキラに無理やり隔意
を抱こうとしているの？もしかして、あなたもコーディネイター嫌いなの？」
「俺は別にコーディ嫌いじゃない。明けの砂漠の一員としてザフトと戦ってはいるが、
それはあいつらが攻めてくるからであって、他に遺恨はない」
それどころか、カガリは内心では、コーディネイターの持つ多大な戦闘能力に憧れて
いたが、そこまで説明する必要性もなかったので、それは言わなかった。
「じゃあ、やっぱりキラ個人に遺恨があるわけなのね、どうして……」
「そこから先は別料金だ。新しい代価を仕入れてから、また尋ねるんだな」
カガリはミリィの疑問を遮ると、空になった朝食のトレイを片付けて、トール達に
挨拶もしないで勝手に食堂を飛び出していく。
「何だよ、あいつ…」
トールとカズィは、やっぱり好きになれそうもない…という表情でお互いを見合わせて
いたが、ミリアリアは興味深そうにカガリの小柄な後姿を見つめている。
あの一見ぶっきらぼうな少年が、もしかしたら、これからサイに掛かり切りになる
であろう自分達の代わりに、今の孤立したキラの新しい窓口になってくれるかも
しれない…という密かな期待を内心に秘めながら…。
憂鬱そうな溜息を吐き出した。
あの晩、サイの気迫に対抗するために全神経を磨耗したキラは、あの後、へなへなと
腰が砕けて立ち上がれなくなってしまい、フレイにお姫様抱っこで抱きかかえられたまま、
自分の部屋へと運んで貰って…そして、そのまま一晩中フレイから愛された。
明け方、朝食の準備があるから…と、結局一睡もせずにキラの部屋を出て行ったタフな
フレイは、その時、朝食は自分が運ぶから、今日は敵襲でもない限りは、せめて昼過ぎ
までは部屋の外に出ないように…との言付けをキラに残したのだ。
理由は、流石に昨日の今日じゃ、キラもサイと顔を合わ辛いだろう…という一見、尤もな
話しで、フレイとの愛の営みに浮かれかけたキラは、危うくまた同じ失策を繰り返しそう
になった鳥頭の自分を反省する。
一時の熱狂から完全に目を覚まし、正道に立ち返ったキラは、昨夜の自分のサイへの
醜悪な振る舞いを思い出して、自分が大量殺人者だという事実すら翳むぐらい、自身が
堕落したような錯覚に囚われ、強烈な自己嫌悪に陥った。
確かにキラは多くの人間を殺したが、殺したいと思って殺したことなど一度もない。
キラの戦闘には、常に悪意が介在したことがない為に、極めて専守防衛としての
意識が強く、キラとしては、その一点に、人殺しという重罪者である自分に対して
一縷の救いを見出せていたのだが、サイの件は違う。
あの晩キラは、サイを追い落とす悪意に満ち満ちて、一切手段を選ばずにサイを地獄へ
と蹴落としたのだ。結果、公業カレッジにいた当時、ゼミの頼り甲斐のあるリーダー
として慕っていたサイとの亀裂は、もはや修復しがたいほど深い物となってしまった。
今までキラの自我を辛うじて救ってきた、悪意の有無という唯一のタブーすら犯して
しまったという現実は、キラの心を苦しめたが、だが他にどんな選択があったというのか？
指を咥えてサイとフレイの復縁を黙って見送るなど論外だ。もし、あの時、フレイが
キラを見捨てて、サイを追いかけていたら…それだけでも、キラは自分が壊れてしまい
そうになっていたのを自覚していたのだから、他に選択肢などあるわけがない。
結局、どんな選択をしようとも、キラは常に誰かを裏切り、何かを傷つけて…、一歩一歩
着実に、地獄への道程を歩いているのではないか。思考の袋小路へと嵌ってしまった
キラは、再び大きく溜息を吐き出した。
朝一番で、フレイが届けてくれた朝食のトレイを平らげて、手持ち無沙汰となった
キラは、ベッドに腰掛けたまま退屈そうに足をブラブラさせた。サイとキラ、どちらが
行動に無理が効くか…と問われれば、当然、二等兵として自由がないサイよりも、
ストライクのパイロットとして優遇されているキラの方なので、仕方なくキラはフレイ
の指示に従ったが、ミリアリアとの揉め事が原因でうっかりストライクの格納ドックに
自分のノートを置き忘れてしまったキラは、自室ですることがなくなって、完全に暇を
持て余してしまう。
実はフレイのキラへの指示には、サイとの衝突を避けさせる他に、もう一つフレイに
とって極めて重要な意味があった。それは、キラとヘリオポリス本家との交流を完全に
絶たせて、さらにキラを孤立させるという、一石二鳥の策略である。
やがて審判の時が満ちて、キラが総てを失ったその時に、キラがフレイの代替として
縋れるような存在があってはならないからだ。今のサイの状態を見れば、お人好しの
トール達が、サイの方に加担するのは火を見るよりも明らかであり、ほんの少し
キラを足止めできれば、それだけで本家との修復は不可能になるはずである。
このフレイの悪魔の計算式はある程度正しく機能していたが、一つだけフレイが見落と
している要素があった。それは、フレイ自身も気にかけていたはずのカガリの存在である。
フレイの言いつけを破って、部屋を飛び出したキラは、バッタリとサイに遭遇したり
しないように、慎重に一つ一つ廊下の先を確認しながら歩を進めていく。
部屋でする事もなくじっとしていても、すぐに憂鬱な考えに囚われてしまうし、何よりも、
フレイの策略に気づいたわけではないが、キラ自身も、自分が何となくヘリオポリス本家
から孤立しつつあることを自覚していたからだ。昨日の今日なのでミリアリアは無理
としても、せめてトールかカズィのどちらかにコンタクトを取って、出来ればキラの
話しを聞いてもらいという想いが、今のキラを突き動かしていた。
いかにも怪しさ全開の自分の行動に、思いっきり自覚を持っていたキラは、後ろから
呆れたように自分を呼び止める声にビクッと身体を振るわせた後、恐る恐る後ろを
振り返り、さらに身を縮こませる。キラを呼び止めたのは、あろうことか、彼女に
一方的な敵意を抱き続けているカガリである。
カガリの姿を視界に捉えたキラは、まるで天敵を見つけた小動物のようにあたふたと
泡めきながら、キョロキョロと周りを見渡して、隠れられる対象（フレイ）がいない
ことに気づくと、両腕で自分自身を抱き締めるような体勢になって、強く身を固める。
「…んなに怯えるなよ、別に獲って喰おうってわけじゃねえんだからよ。
こんなところを他人に見られたら、ますます誤解されちまうだろうが！」
「ご…ごめんなさい」
とにかくカガリの機嫌を損ねたくなかったキラは、再び反射的に頭を下げる。
自分よりはるかに巨大な力を持つはずのキラが、カガリの一挙一動に脅えてビクつく様は、
キラに対して強いコンプレックスを抱いていたカガリの優越感を、多少刺激しないでも
なかったが、それ以上に、自分が弱い者虐めをしているという嫌悪感の方が勝った。
カガリは話しの途中で、キラに逃げられたりしないように、慎重にキラを廊下の袋小路に
追い詰めながらも、害意がないことを証明するために、二歩ほどキラから離れて距離を
取りながら、先の自分の行動で、キラが誤解するよりも早く次の行動へと出る。
「お前、この間は悪かったな。殴るつもりはなかった。
あ…ないわけでもないが、あれは単なる弾みだ、許せ」
まさか、カガリから襲い掛かられるのでは…と身構えていたキラは、思いがけない
カガリの不器用な謝辞に呆然とする。
「ただし、謝罪するのはその一点のみであって、俺がお前を嫌っていることには何ら
代わりはない。だから、決して勘違いするんじゃないぞ。
大体お前は、それだけの力を持ちながら、何でそんなにビクビクしているんだ？
ああ、もう本当にお前を見てると、何故かイライラするんだよ！」
一応の弁解に続いて、トール達の時と同様に、何やら支離滅裂なことを宣いはじめた
カガリを、最初、キラは唖然として見つめ、次の瞬間にはプッと吹き出した。
「な…何が可笑しい！？」
「あ…その、ごめんなさい。ただ、あなた、口は悪いけど、思っていたより
良い人みたいで…」
真っ赤になって抗議するカガリに、キラは慌ててフォローを入れたが、カガリは
調子を狂わされたかのように、ますます赤くなってしまう。
「カガリ…」
「えっ？」
「俺の名前はカガリ・ユラだ。あなたなんて言うな！」
「キラ・ヤマト…」
「！？」
「私の名前もキラよ。もう、お前なんて言わないでよね、カガリ」
「判ったよ、ヤマト…」
「キラ…」
拗ねたような上目遣いで自分を見つめるキラに、カガリは少し躊躇った後、「キラ」と
彼女の名前を呼んでやると、キラは我が意を得たりという表情で嬉しそうに微笑んで、
そっと右手をカガリの方に差し出した。
「一体、何の真似だ、ヤマ…じゃなくて、キラ？」
「仲直りの握手…」
「はぁっ！？」
つい先程まで、お互いに隔離を抱いていた相手に何考えているんだ…とカガリは思ったが、
キラのニコニコとした表情には全く邪気がなかったので、カガリは仕方なくキラの
手を握りながらも、あまりのキラのお人好し具合に軽い危惧を抱いた。
こんなに無防備だから、フレイとかいう得体の知れない男に付込まれたりするんだ。
「なぁ、キラ…」
「なあに、カガリ……」
「い…いや、何でもない」
あのフレイって奴には気をつけろよ…と忠告し掛けてカガリは止めた。
血の繋がりがあるとはいえ、つい先程まで反発を抱いていた自分（カガリ）と、
あれほどの修羅場を演じてまで守ろうとした、多分、肉体関係まで持つキラの恋人（フレイ）。
キラがどちらの言い分を信じるかなんて、火を見るよりも明らかじゃないか。
大体、俺はキラを嫌って憎んでいるはずなんだ。キラが、あの優男の皮を被った悪魔に
騙されようが、捨てられて不幸になろうが俺の知ったことか。
カガリは、そう偽悪的に自分を振舞おうとしたが、どうしても気になってしまう。
内心の想いがすぐに顔に出てしまうカガリの百面相を興味深く拝見していたキラは、
本当に可笑しそうにクスクスと笑い出した。
カガリは自分でも全く気づかない内に、フレイの作った魂の牢獄に囚われていた、
キラのささくれだった心に通風孔を開けて、温風を注ぎ込んでいたが、その事実を意識
していたのは当事者の二人ではなく、廊下の影から二人を覗く第三の人物だった。
フレイは、キラとカガリの遣り取りを無表情に覗き見しながら、軽く思案する。
あのカガリとかいう少年が、キラの心をフレイにとって望ましくない方向へと舵取り
しているのは確かで、このままおいそれと見過ごせるような存在ではない。
罠でも仕掛けて排除するか…。それとも今この場で飛び出して、得意の口八丁手八丁で、
強引にでもキラとカガリの繋がりを遮断してしまうべきか…。
フレイの心は一瞬、妨害方向へと動きかけたが、すぐに思い直した。
ここまでの展開は、あまりにフレイにとって都合良く行き過ぎた。
キラとの一線を越える切っ掛けになったシャトル事件にしても、いずれはあの手この手で
ゆっくりと、美味しく頂こうとは企んではいたが、まさか、キスすら未体験だったらしい
初心なキラと、あの地点で関係を持てるとは、流石のフレイも夢にも思っていなかったのだ。
このまま総て予定調和で復讐が成し遂げられるのなら、それはそれで重宝な展開なの
かも知れないが、少しぐらいは不確定要素が混じって、ライブ感覚に流れるのも
悪くないかも知れない。どうのこうの言っても、今のカガリの立ち位置では、大本命の
アスラン君とは大きく異なり、まだまだフレイの優位を脅かすほどの脅威は感じられな
かったし、キラに奇妙な因縁を感じさせるカガリの正体も気になったので、フレイは
しばらくカガリを泳がせる決断をしたが、それを後押しした最重要の要素は、実は先程
から絶え間なく襲い掛かってくる睡魔の存在だった。
昨夜は一晩中、心が不安定に揺れていたキラのお相手を務めて、それから一睡もせずに
朝食の準備をし、先程、前倒しで昼食の仕込まで行ってクタクタだったフレイは、
とても目の前の面倒ごとに介入するような気力はなかった。女抜きで構わないので早く
ベッドに倒れこみたいフレイは、大きな欠伸を噛み殺しながら、二人の側から離れていく。
昼食の仕込みは既に完了して、指示は当番のクルーに出してあるし、もしかしたら
夕食の仕込みまでに起きられないかも知れないが、犬だって贅沢に慣れると、
安物のドッグフードを食べなくなるらしいのだから、たまには一食ぐらい抜かせて、
フレイの有り難味を実感させてやらないと、自分の価値が下落してしまうかもしれない。
フレイはそう自分を正当化させながら、ヒュプノスの誘いに身を託して、眠りの園へと
就いていく。
かくして、キラの初恋の君である本命のアスランがいない中で、キラを中心に、
何やらキラとの血縁を匂わせるカガリと、キラとの身体の繋がりを持つフレイという、
奇妙な三角関係が、アークエンジェルの内側に形成されることになった。
中々驚愕の事実が浮上しましたね。キースがブルコスとは。キラが知ったらどうなるんでしょ。
人間不信に陥りそうで…
>>♂フレイ
一晩中…の上に食事まで、中々健気じゃないですかｗ（違
カガリは泳がされて今後どうなるんでしょう？色々な意味で期待。
しかし、まだ目標であるアークエンジェルまでは届いていない。
「ちぃっ。」
あまりの数の多さに舌打ちをするアスラン。
「まだ来る。」
ゴキブリのように沸いて出てくるメビウスに驚くニコル。
「グゥレイトッ、数だけは多いぜ。」
言葉とは裏腹に、真剣な表情でバスターを操るディアッカ。
「出て来いストライク。でないと傷が疼くだろうがぁー。」
ひたすらストライクを追い求め絶叫するイザーク。
第八艦隊は物量を持ってアークエンジェルまでの道を塞いでいる。
そして、アークエンジェルは降下シークエンスの準備、およびストライク、メビウスゼロの発進の作業が進められていた。
フレイは誘導に従い、ストライクを操作する。
少しも気を緩めることはできない。
常に慎重にゆっくり操作しなければ、ストライクは思い通りに動かなくなる。
オートバランサーのおかげでバランスの問題はある程度クリアーできているが、出力、タイミング等は自分の操作である。
微調整をＯＳはしてくれない。
ストライカーパック“エール”を装備しカタパルトに接続されるストライク。
この時、マリューから通信が入った。
「臨界点までおよそ５分よ。それまでには必ず戻ってきて、お願い。」
なんとも不思議な会話だ。
軍規に違反しているものに対して上官が命令ではなくお願いをしているのだ。
しかし、それこそマリューらしい。
そのことに対して、フレイは返答をしない。
いや、できるわけがない。
今はただ一つ、シャトルを守ることだけを考えているのだその為、次の通信が誰のものか気付かなかった。
「ストライク発進、どうぞ。」
ミリアリアの声でカタパルトより射出されるストライク。
急加速によるＧがフレイを襲う。
「くぅぅ。」
シートに押し付けられ、息をすることもできず苦しみの声が漏れる。
一瞬、視界が赤く染まる。
赤視症、いわゆるレッド・アウトと呼ばれる現象だ。
それでも何とかスイッチを押し、ＰＳ装甲を展開する。
続いて、フラガのメビウスゼロがカタパルトに接続される。
「フラガ大尉、ストライクをお願いします。」
「簡単に言ってくれるね。」
「大尉を信じていますから。」
「ヒュー。良い言葉だな。」
口笛を吹き、真剣な表情になるフラガ。
美人から信じていると言われれば、男なら誰でもやる気が出る。
それこそ気になる相手ならばその効果も倍になるというものだ。
「ムウ・ラ・フラガ、出る。」
声と共にカタパルトよりメビウスゼロが射出された。
フレイが射出されて初めて見た光景は、幾多の光と共に沈みゆく戦艦であった。
それが全てフレイの見たくない、逃げたくなる悲劇の光であった。
「ひっ。」
その光景に押され、再び恐怖がフレイをを苦しめる。
ジェネシスや核ミサイルの時のような一瞬にして消えてしまう恐怖ではなく、人の逃げ惑う断末魔が聞こえてきそうな恐怖だ。
そして、フレイはそれを認識し感じてしまった。
一度死を経験したフレイは知らぬ間に誰よりも死を身体で理解し、“死の気配”に敏感になっていたのだ。
雪崩れ込んでくる死の恐怖に震えながらスラスターの出力を上げ、シャトルを捜そうとするフレイ。
が、その震える手では出力の調節が思うよう出来ず、右往左往してしまい、思うように進めない。
訊いたからといって、操縦が出来るほどＭＳは甘くない。
それも、キラ専用のＯＳであるため、操縦をするほうが無理である。
「気持ち悪い。」
右に左に振り回され、吐き気を模様しそうになるフレイ。
蛇行を繰り返すストライクを見ながらフラガは困り果てていた。
「あれをどう守れって言うんだよ。」
ストライクの動きを見ていればさすがにやる気も失せてくる。
上方よりその状態をさらに厄介にするものが現れた。
デゥエルである。
第八艦隊の先陣を突破してきたのだ。
「しまった。」
フラガは明らかに気付くのが遅れていた。
ストライクの動きを見てて気が緩んだのだ。
フラガらしからぬ失策である。
「見つけたぞー、ストライクゥゥ。」
デゥエルよりストライクに殺意の込められた一条の光が放たれるた。
突き刺さるような感覚。
フレイにはわかっていないが、それは“死の気配”。
それが上から襲ってくる。
フレイはその場から無性に離れたと思い、無造作にスラスターの出力を最大まであげた。
その結果、上方より放たれたデゥエルのビームが寸でのところでかわしたのだ。
「避けた。・・・偶然か？」
それを見ていたフラガには腑に落ちない光景であった。
デゥエルの攻撃にまった気付いていないように見えたストライクが避けたのだ。
あの時のキラほどではないが異常な動きである。
「って、見惚れてるわけにはいかないな。」
フラガはガンバレルを機体より離脱させ、主砲であるレールガンと共にデゥエルに向けて一斉射撃をする。
襲い来る攻撃を避け、イザークはビームを乱射する。
「邪魔するなぁー、カトンボがぁ。」
乱射されるビームをフラガはなんとか避ける。
牽制の意味もあったのであろう、イザークはメビウスゼロに追撃を行わずストライクを追う。
「行かせるか。」
フラガはデゥエルに追わせないように立ちふさがろうと突っ込む。
しかし、横合いからミサイルが襲われ回避をよぎされなくなる。
「くそっ。」
と、言葉を履き捨てるフラガ。
攻撃してきたのはバスターであった。
「イザーク、こいつは俺が仕留める。」
「ああ、俺はストライクを追う。」
そう言うと、イザークはストライクを追うべく、スラスターを吹かせた。
アークエンジェルが降下シークエンス“フェイズ２”に移行した時、格納庫にキラが到着した。
「坊主、船を下りたんじゃなかったのか？」
マードックがキラを見つけ驚く。
「乗り遅れちゃって・・・」
キラもまたトールと同じように苦笑いをする。
「乗り遅れたって？お前、バカか？」
痛いところをついてくるマードック。
しかし、マードックの言葉は当たり前のことである。
せっかく戦艦から降りれる機会を逃がしたのだ。
このままアークエンジェルにいれば、キラの能力からして軍に縛られる可能性が高い。
そんなこともわからないのかとマードックは言ってるのだ。
キラとしては反論の使用がない。
「それより、ストライクは？」
キラの視界にはあるはずのストライクが見えない。
「ねえよ。誰かが乗っちまって、今は外だよ。」
「ええ、そんな無茶な。」
キラにはナチュラルであるアークエンジェルのクルーがストライクを操縦することなど出来ないと思っており、その考えは誰もが思ってい
たことなのだ。
ましてや、フレイが操縦しているなどとは夢にも思っていなかった。
「シャトルは、シャトルはどこ？」
ひたすらシャトルを捜すフレイ。
しかし、見つからない。
それもそのはずである、まだシャトルは射出されていないのだ。
そこに、デゥエルが襲ってきた。
「ストライクゥゥ。」
アサルトシュラウドの装着により新たに追加されたミサイル、およびレールガン“シヴァ”の放火が飛んできた。
「ひっ。」
フレイはとっさにシールドで防ぐが、衝撃がなくなるはずもなく振動がコクピットに届く。
「きゃあああ。」
フレイは悲鳴を上げ、その場から逃げようとするが、それを見越したようにデゥエルが斬りかかってくる。
逃げ惑うストライク、追うデゥエル。
なんとも情けない光景である。
致命的なビームだけは何とか避ける、もしくわシールドで受ける。
しかしミサイルなど多重に飛んでくる攻撃には対処できず何度も被弾し、そのつどコクピットの中で悲鳴がこだまする。
ＰＳ装甲でなかればとっくにフレイは死んでいた。
何度も被弾し、もう逃げられないと思ったフレイはビームライフルを構える。
「こ、この、この。」
デゥエルに向かってビームを放つも、軽く避けられる。
というより、フレイの反応がストライクに順応できず遅すぎるのだ。
デゥエルのビームサーベルを何とかシールドで受け止めるが、鍔迫り合いの状態になる。
ストライク、デゥエルのジェネレーターに出力の差はない。
しかし、ストライクは力負けした。
イザークはすぐさま出力上げたのに対して、フレイはどうすればいいかわからなかった。
その差で、フレイは命綱であるストライクのシールドが弾かれ無防備となった。
「もらったぁ。」
イザークは勝利を確信し、ストライクに向かって斬りかかってきた。
第八艦隊旗艦メネラオスは激戦の中にいた。
次々と友軍が沈んでいく中、ひたすらアークエンジェルの盾となるべく砲撃を続けている。
そんなメネラオスに向かってザフト軍ローラシア級のガモフが特攻をかけてきたのだ。
「くそぉぉ。」
それを見たフラガは、阻止をするべくガモフのエンジンに向け一斉射撃をかける。
被弾するガモフ。
しかし、悲しいかなメビウスゼロの火力ではガモフを沈めるどころか軌道すら変える事が出来ない。
同様に連合の他の艦もガモフに砲撃を加えるが、逆に撃沈される。
「すぐに、避難民のシャトルを脱出させろ。」
ハルバートンはガモフの特攻に気付き、シャトルを脱出させる。
意地でもこの場を動かず、アークエンジェルの盾になろうとする。
シャトルが脱出され、文字通りガモフと一騎打ちとなった。
この間にアークエンジェルは降下を続ける。
降下シークエンス“フェイズ３”まで残り２分をきる。
フラガはこの時点で限界を感じ、アークエンジェルに戻る。
また、フラガとドッグファイトを続けてきたディアッカは地球の重力に捕まり、戻ることが出来ない。
メネラオスはハルバートンの意地どおり盾となり、ガモフを沈めた。
しかし、その代償は激しく、艦の撃沈と引き換えだった。
アークエンジェルは降下シークエンスを“フェイズ３”に移行した。
ストライクはいまだ戻らない。
避難民の脱出シャトルである。
ちょうど、ストライクとデゥエルの間を割るように降下してきたのだ。
「ああ、キラ。」
シャトルに気付き、想い人の名前を言うフレイ。
その時、デゥエルがシャトルを狙っている光景が視えた。
”死の気配”
「よくも邪魔を、逃げ出した腰抜け兵が。」
レールガンをシャトルに向けて放とうとした時であった。
「だめー。」
フレイの感覚と反応が初めて一致した瞬間。
この戦闘でストライクは初めて限界の性能をはじき出された。
「なにー。」
ストライクの思わぬ体当たりに反応できない。
絡み合うストライクとデゥエル。
「やめて。」
ストライクより悲痛なまでの女性の声で通信が入った。
「おんなだと？」
驚くイザーク。
「あのシャトルには民間人が乗っているのよ。」
「馬鹿な。」
こんな場所に民間人などがいるわけないと考えるイザーク。
「あなた達、ザフトの攻撃で破壊されたヘリオポリスの人達よ。」
フレイの言葉には攻めている意があった。
「っくぅ、貴様らナチュラルが何人死のうと・・・」
「ヘリオポリスはオーブ領よ。コーディネーターだって住んでるわ。」
「なにぃ。」
コーディネーターは総じて同胞意識が高い。
それは少数からなるコーディネーターが戦争していく中で必然の意識であった。
「私の友達だってそうよ。」
「貴様の友だと。」
イザークの知識の中でナチュラルは下等な生き物と認識されている。
そのナチュラルと同胞が親しい関係であることが信じられなかった。
「そうよ。キラは私たちを守るために、同胞であるあなた達と戦ったのよ。」
「戦っただと？」
さらにフレイから衝撃の真実が伝えられた。
自分は同じコーディネーターと戦っていた。
さらにフレイは言う。
「キラの苦しみながら、わたし達を守るためにストライクに乗ったの。それが幼い頃の友達との決別を意味するのに。」
フレイの声には哀しみのオブラートに包まれている。
「イージスのパイロットはキラの友達よ。」
「なんだと。」
イザークの頭の中は戦闘中であることが消えていた。
ヘリオポリスにコーディネーターが住んでいたこと。
ナチュラルとコーディネーターが友人関係であること。
自分達が戦っていたのは同胞であったということ。
アスランに友人であること。
どれも信じたくないことであった。
だが、この女の言葉には嘘が感じられない。
「貴様、名前は。」
「フレイ、フレイ・アルスターよ。」
「覚えといてやろう。俺の名前はイザーク・ジュールだ。」
イザークはそう言って、ストライクから離れた。
イザークはスラスターの出力を最大にして、重力から逃れようとする。
「ちっ、機体が重い。」
イザークはアサルトシュラウドのスラスター以外の部分を外し、重量を軽減させる。
それが功をそうし、ディアッカの乗るバスターだけが地球に落ちることとなった。
「キラ、さようなら。」
と言って、涙を流しながらシャトルを見るフレイ。
その表情はもう二度と会えないという悲痛なものであった。
「後は、・・・アークエンジェルに帰るだけ。」
自分に言い聞かせるように声をだすフレイ。
だが、フレイの肉体と精神はストライクの操縦、デゥエルとの戦闘で激しく消費されいる。
それに重ねて、シャトルを守るという目的も達成したために緊張の糸も切れていた。
モニターに映し出される映像、計器、全てが赤。
警告音が鳴り響く。
それに伴い熱がフレイを蝕んでゆく。
灼熱地獄。
まさにぴったり合う言葉だ。
その苦しみを味わう中、遂にフレイの身体に異変が起きた。
「あれ、アークエンジェルが二つ？」
フレイの目はまともに見ることが出来なくなってきた。
体力、精神の限界がフレイをアークエンジェルに着く前に訪れることとなった。
「あの時・・・キラは・・こんなに苦しかった・・・んだ。やっぱり、あた・・・しなにも・・・わかっていなかっ・・・た。」
フレイの意識は闇の中に消えた。
「ストライクは？」
「こちらに向かっています。」
ミリアリアからの報告に一安心するマリュー。
しかし、それを一変する報告がきた。
「ストライクの軌道がそれていきます。」
「なんですって。」
ストライク、アークエンジェルの突入角が計算され、降下地点が大きく異なること判明する。
「ストライク、戻ってきてください。ストライク、戻ってきてください。」
ミリアリアの度重なる応答にも反応がない。
「無理だ。ストライクの推力ではもう。」
ナタルの正論がミリアリアの心に突き刺さる。
「艦を寄せて、アークエンジェルのスラスターならまだ。」
マリューは降下地点よりストライクを選んだ。
それは愚かでありながら、正しい選択であった。
アークエンジェルのみでアラスカに行っても意味がない。
だが、それによりザフトの勢力圏に降下してしまう危険性もある。
人にはどうにもならない状況がある。
まさに今がそれであった。
アークエンジェルのスラスターを吹かせ、ストライクの真下に動く。
そこにストライクは降ってきた。
着艦ではなく、文字通り降ってきたのだ。
もう少しまともな言葉を使うなら不時着である。
フレイは生死をさまよう中、戻るべき場所に帰る事が出来た。
キースが元ブルコスに驚く中、もっと驚いたのがサザーランド。
まともだ。
本編でもこの半分くらいまともならなぁ〜。
乙です。
＞キラフレ
フレイ様、余裕がありますね。
やはり職持ちとプーの差なのか？
それとも性別の差なのか？
カガリきゅんの動向に注目です。
乙です。
深夜、ザフトが攻めてきた。
戦闘ヘリの攻撃。砂漠といえど、地形は起伏に飛んでいて、
ヘリは、すぐに砂丘の影に隠れてしまい、アークエンジェルの火砲では捕らえきれない。
そのとき、私のコンソールに呼び出しが入った。ストライクからのキラの通信。
キラ回復したんだ。でも、大丈夫なのキラ。
そんな、私はキラの言葉に声を失った。
「なにやってんの。ストライク発進する。早くハッチ開けて！ 僕がやっつけてやる！」
これがキラの言葉なの？ どちらかというと、大人しめで優しい言葉づかいの
キラが怒ったように、私にまくしたてる。どういうことなの？
「言いようは気に入らないけど、出てもらうしか無いわね。
ヤマト少尉、発進させて」艦長が言う。
「了解、キラ発進よ！」私はキラに伝える。
「ハゥ二等兵、私語は控えて。『ヤマト少尉、発進』 復唱して！」艦長が叱るように言う。
軍に残ってから、艦長はとって返したように階級に厳しくなった。
キラをヤマト少尉と呼ぶことに違和感を持ちながら、キラに伝える。
「はい！ ヤマト少尉、発進です」
「早くしろ！」キラが、また怒鳴り散らす。
なんで、こんなことになったのだろう。キラと話せる仕事だったのに。
やっとキラが帰って来たと思ったら。他人行儀な言葉と、見たことも無いキラの叱責に
挟まれるなんて。
ランチャーストライカーを装備してキラのストライクが発進すると、
それを待っていたかのようにモビルスーツが現れた。犬のような四つ足の
モビルスーツ、バクゥ。それも五機も。
バクゥに囲まれたキラのストライクは、砂漠の不安定な足場に取られて、
ろくに動けない。一方の、バクゥは、砂の上を高速で動き回り、ストライクを
四方から攻撃する。キラのビーム砲は、その動きにかわされるだけ。
バジルール中尉が、援護のミサイル発射を命じる。
「キラ！ 避けて！！」 叫ぶ私。
けど、バクゥは逃げてしまい、動けずにいるストライクにダメージを与えただけ。
「これでは、どうしようも無い。ストライクを一度戻せ」とバジルール中尉。
「キラ、いえ、ヤマト少尉、早く戻って」
「うるさい。まだ、やれる。こんなやつら、やっつけてやる、僕がやってやる！
アークエンジェルは、やらせない！」
「キラ…」
「接地圧が逃げるなら合わせりゃいいのだろう。逃げる接地圧を想定して…」
私は信じられなかった。ストライクの動きが、どんどん変わっていく。カズイが言ってたＯＳを
書き換えるって、このことなの。
すっかり砂漠に足を取られることが無くなったストライクは、
いきなりダッシュして、バクゥに近づくと足で、思いっきり蹴り飛ばす。
後ろからレールガンを打ちながら迫ってきたもう一機も、攻撃をよけて、なんなく跳ね飛ばす。
あお向けにひっくり帰ったバクゥを足で踏みつける。
スゴイ！ キラってこんなにスゴイの。私は、キラの強さに、ときめいた。
だけど、次の瞬間凍りついた。
キラは、足で踏みつけて動けないバクゥの、コクピットめがけて、
アグニを直に突きつけると、ためらわずに引き金を引いた。
大爆発するバクゥ。振り向きざま、さっき蹴飛ばして、これも動けなくなった
もう一機に、肩に装備された対艦バルカンを打ち込んで蜂の巣にした。
「やった、二機撃破だ」
CIC の誰かが喜んだように叫ぶ。でも、私はキラの思いもかけない
残酷な倒し方に、とまどう。キラが、こんなことをするはずが無い。
その後も、キラは悪鬼のごとくバクゥを破壊して行く、敵戦艦からの長距離砲の砲弾まで、
アグニのビーム砲で打ち落として、アークエンジェルを取り憑かれたかのように守る。
ビームの使いすぎで、ＰＳダウンしなければ、その後、砂漠のレジスタンスの援護が無くても、
敵を殲滅させていたかもしれない。
アークエンジェルを守るため、敵を躊躇いもなく倒して行くキラ。
今のキラは、本当にキラなのだろうか。
考えられるのはフレイとのこと。キラが寝込んでから、今まで、キラと一緒にいたのは、あの子だけ。
あの子のせいでキラはこうなったの？ 一体、何があったというの？
あの子、キラに何をしたの？
手を繋いで、キラと食堂に向かう。まるで、本当の恋人のように。ヘリオポリスのみんな、
特にサイに見られたら、また気まずくなるけど。でも、今日の私は、そうせずにいられなかった。
その時、通路に急に人だかりがしているのに気がついた。
キラと不思議そうに目を見合わせながら、その原因を見てみると…
なんと、それは、ドレスを来たカガリだった。
私も話を聞いていた。カガリって、アスハ前代表の娘だったって。今まで私達を騙してたって。
カガリって気に入らない。なにかとキラにちょっかいだす。私をなぜか不安にさせる。
初めて見た時からそうだった。砂漠でキラを殴っていた。何か因縁がありそうな雰囲気、
その時から気になった。
太平洋のころでも、キラが、なかなか帰って来ないと思ったら、
ちゃっかり展望デッキでキラと話し込んでた。
私が、船酔いで寝込んでいた時、トイレで…ハプニングで…腰を打って、腰痛で動けない時、
その間も、キラが仕事に出ているときは、用も無いのに、キラの仕事場に顔を出していたそうだ。
何か、カガリはキラに影響を与えている。カガリに会ってから、キラは雰囲気が変わった気がする。
相変わらず、戦闘の度に辛そうなキラだけど、今は、前と違うことを考えているような気がする。
私には何も言わないけど。
そのカガリが、いつも汚い戦闘服を着ていたカガリが、今は、お姫様のようなドレスを着て、
メイドらしき人に手を引かれながら通路を歩いてくる。
ふいに、カガリの目がキラと合う。キラは見とれたようにカガリを見つめ、カガリは、
それに気がついて、恥ずかしそうにうつむく。そんな、二人の仕草を、私は気に入らない。
キラと繋いでいる腕をぐっと抱き寄せ、キラに私の方を向かせる。
「何よ！あの子」
私の剣幕に、キラは驚いた様子だ。私、カガリに嫉妬してる。それは、キラにも隠すことはできない。
私は、キラの腕を強く抱きしめた。
キラは渡さない！
食事を終えて、部屋に戻った私は、キラを求めた。
いつものように、交代でシャワーを浴びる。先に、シャワーを浴びた私は、
わざわざ下着を付け、香水をひと吹きして、ベッドでキラを待つ。
キラが下着をはずす。それが、キラを興奮させる。それを見て、私も興奮するから。
キラの優しい愛撫。ゆっくりと、下着を外して、露になっていく、私の体。
キラの指が私の秘所を、とろけるように熱く濡らしていく。
その間、じっとキラの愛撫を堪能する私。私は、何もしなくても、キラの指が、唇が、舌が、
私を絶頂に導いてくれる。いつから、こうなった？
確か、最初は、私の方からキラを誘った。私から服を脱いで、裸の胸でキラを癒した。
でも、今は、まったく逆。キラが、私を癒してくれる。私はキラにまかせ、ただ、感覚を鋭敏にしているだけ。
アークエンジェルが、アフリカを出る頃から、キラはだんだん積極的になっていった。
ベッドランプの明かりで、生まれたままの私を見たがった。私の体を何かに取り憑かれたように指で撫で回した。
私の、ここにもあそこにもキラは唇をつけた。ここは汚いからいいって、私は嫌がるのにキラは聞かなかった。
どんどんエスカレートするキラの愛撫に、私は、なすがままに快楽に溺れて行った。
キラが入ってきた。それだけで私は軽くオーガズムを迎える。
キラの激しい動き、絡み合う舌。腕がキラの背中を抱きしめる。
私の口から絶えず、あえぎ声が漏れる。イク!
キラの体は、私から抜かれ、熱い迸りが、お腹にも顔にも飛び散っていく。
息を荒げ、快感と気だるさに身を任せる私を、キラがティッシュで拭ってくれる。
いつもは、これで、ひとまず満足する私。でも、今日は、足りなかった。
カガリへの嫉妬心が私を煽る。なにか、せずにはいられない。
前に、何度かキラのを口に含んだことがある。私、アレを口に入れるなんて、
正直、嫌だった。汚らしいと嫌悪してた。でも、今は分かる。
あれは、女の方から男にできること。私は、キラにしてあげたい。
「キラ、口でしてあげる」
私は、四つんばいの格好になって、まだ雫の垂れるキラのそれを口に含んだ。
口を半開きで頭を前後する。
「う! 歯を立てないで...」キラがうめく。
「ごめん、キラ」
歯を立てないように、半開きで口を前後するのは疲れる。それでも、これは、
私がキラにしてあげてることだから、カガリなんかにできないことだから我慢する。
しばらくして、私は、おかしいことに気がつく。
キラが射精しない。
もう、かなりの時間、口を動かしているのに、キラは射精しない。
前にやったときは、口に入れて、数分とたたずキラは射精した。
もう、とっくに、私の口に放っていいはずなのに、キラは出さない。
「ねえ、どうしたの」私は口を離してキラに聞いた。
「ん! どうって？」
「ねえ、キラ良くないの？ 気持ちよく無いの？」
「いや、そんな訳じゃ」
私は、もう一度、キラを含んだ。今度は、もっと早く口を動かす。
頭が揺れて、クラクラする。でも、キラを気持ちよくしなきゃ。
我慢しながら、口を動かす。もう、口も首もクタクタ。舌が小さく縮こまる。
フェラチオって、こんなに疲れるの。でも、キラを気持ちよくしなきゃ。キラをイかせなきゃ。
「フレイ、もっとカリの方… もっと舌を」
「んぐ？」
キラが言っていることの意味が、私にはよく分からない。
カリって何？フェラチオって口でするものでしょ。舌でどうするの？
激しく突き込んだキラの熱い塊が、私の喉の方に入った。途端、吐き気を催した。
「ケホ！ ケホッ！ ケホ！ ケホ！」
キラを吐き出して、激しく咳き込む。唾がベッドに滴り落ちる。
「大丈夫、フレイ」キラが気づかうように背中をさする。
「ケホケホ… 大丈夫。キラ、もう一度」
もう一度しようする私をキラが制した。
「もういいよフレイ。気持ち良かった。今度は僕がしてあげる」
嘘、そんなはずない。キラ出さないもの。私の口、気持ちよく無かったの？
不満そうな私をキラは、腕で持ち上げてベッドに押し倒すと、私の股間に顔を埋めた。
キラの舌が、私を刺激する。声を押さえられない。数分と立たずに、私は絶頂に達する。
蜜に溢れて、ヒクヒクする私のアソコを、キラがすするように慈しむ。
キラの舌は、こんなにも、私を快楽に導くのに、私の口はダメなの？
キラをイかせてあげられないの。私は悲しくなった。
それまでの私個人のキラフレ・ベッドシーンＳＳを凝縮してあり、
一番エロなところです。これ以降は、少なくとも本番はありませんので許してください。
>刻還り
すごいですフレイ様、かっこ良すぎます。ここまで成長していると、
この当時のキラではつりあわないかも。
>流離
>>459
意外な椅子ですか？なんとなく想像つきますね。
私のフレイ様もミリィの椅子には座ります。どういう目的かは、お楽しみに。
>キラの舌は…
キラはいろんな意味で言葉が足りないんだよなあ。
フレイ様の過剰な罪悪感がたまりません。
>ミリアリア・あの子許せない
砂漠編でキラの変化に戸惑うミリアリアのカットが本編でも
ありましたがこのSSの描写を入れるとガラッと変わって面白いw
>流離
前回に続いて大局モードですね。シーゲル＆
パトリックと同様にサザーランドも見えない
強硬派に苦しめられている設定ですか。先の見通
せる人が小物に容易に足を掬われたり、かき回される
というのは結構リアリティがあって面白いっす。強硬派に期待w
>キラフレ
このSSのミリアリアは考察分析大好きっ子ですね。読むほうとしては分かりや
すくて良いです。
暗黒フレイ様の渾身の作品を単純なカガリが打ち破るか…
ってわけにはいかないようですね。ヒュプノの誘いから覚めたフレイ様に今から
ガクガクブルブルです。
>刻還り
やっぱりMS越しのパイロット同士の会話はガンダムの醍醐味だよなあw
フレイ様とイザ―クの会話はカッコ良かったです。全てを知ったイザ―ク
とアスランはどうなるんだろう？フレイ様はキラが戻ってきちゃって嬉しい
のやら悲しいのやら。複雑ですね。
空の旅を続けるアークエンジェル。その中での生活も新しい段階へと入っていた。キラとフレイが別れ、フレイはキースやマリュ−、ナタルといった主要スタッフとの関係を深めている。仕事上の付き合いだというのは分かるのだが、頼る人を無くして孤独に追いこまれてしまったキラと比較すると、その立ち回りの良さに狡猾な女という印象が生まれるのは避けられなかった。
無論、事情を知る、もしくは察している幾人かの人物はこの状況に心を痛めているが、ある者はあえてなにも語らず、ある者はフレイに何も言わなくて良いと釘を刺されていた。
この為に、フレイとヘリオポリスの仲間達との距離はますます離れてしまった。特にミリィとの関係は断絶と言ってもいい程だ。仕事ではお互いに話はするが、双方とも明らかに仕事だから、以上のものではないという態度が見え見えで、周囲にかなり悪い雰囲気を撒き散らしている。
キラはと言えば、こちらはフレイに対する怒りを内心に押さえこみながら暗い空気を纏っており、人を寄せ付けなくなっている。整備兵たちでさえキラに近付くのを避けるようになり、キラと口を聞くのはマードックかフラガ、キース、カガリくらいになっている。今日も格納庫でカガリとキラが話していた。
「なあ、本当にお前、最近暗すぎるぞ」
「うん、そうかもね」
キラは生返事を返しながらストライクの調整を進めている。カガリは溜息をつくと更にキラに話し掛けた。
「お前、フレイと別れて何日たつと思ってるんだよ。いいかげんに立ち直れよ」
「･･････そう簡単には割り切れないよっ」
キラは寂しげな笑顔を浮かべた。寄る辺を無くした、とでも言うのか、その顔にはまるで覇気というものが感じられない。何時ものカガリなら怒鳴りつけてでもシャンとさせるのだが、今のキラにはそれが出来ない。事が失恋というカガリのもっとも苦手とする分野なだけに、どう扱って良いか分からないのだ。
「あいつの方から別れたんだろ。なのに何で怒らないんだよ。落ちこんでばかりでさ」
「･･････････････」
「なあ、キラッ」
「･･････これでも、かなり怒ってるんだけどね」
静かで、何かを押し殺したような声で返事をする。それだけだった。
もくもくと仕事に打ちこむキラにこれ以上話し掛けても無駄だと悟ったカガリは仕方なくストライクから離れた。アレでは付ける薬も無いだろうから。
だがしかし、アレでは鬱陶しくて堪らない。キラを振って平気な顔をしているフレイは許せない。だが、あいつを殴ればキラは怒るだろう。それが分かるだけに余計に歯痒いのだ。
「本当に馬鹿な奴だ。あんな自分勝手な奴に振られて落ちこむなんて」
それだけ言い残すと、カガリは格納庫を後にした。ああいう状態の奴と付き合ってるとこっちまで気が滅入るからだ。
カガリはフレイに近付くと声をかけた。
「おい！」
「えっ？」
驚いて本から顔を上げると、そこにはカガリがいた。なにやら凄く怒っているように見える。
「あ、カガリ、なにか用？」
「ああ、用がなければ誰がお前なんかに話し掛けるかよ」
「な、なによ、いきなり？」
「いいからちょっとこっちに来い、聞きたい事がある！」
カガリはフレイの腕を掴むと人の入ってこないパイロットルームに連れ込んだ。そこでカガリは訳の分からないという顔をしているフレイの胸倉を掴みあげると、そのまま壁に押しつけた。
「お前、なんでキラを振ったんだよ。あいつの何が不満なんだ！？」
「･･･････････それは」
フレイは顔を逸らした。流石に誰彼構わず言いふらせるような内容でもない。だが、その態度がカガリには気に食わなかったのだろう。胸倉を締め上げる手に力が込められた。
「答えろよ！」
「･･････私には、キラの傍にいる資格が無いからよ」
「なんだよ資格って。人を好きになるのに、そんなもんが必要なのかよ！」
「いるのよ。そして、私にはそれが無いの」
一切の迷いを感じさせない返答に、カガリは次の言葉に詰まってしまった。何を言えばいいのか分からない。ただ、フレイが本心から言っていることだけは分かった。カガリは理屈ではなく、感情で理解するタイプだから。
だけど、納得できないものは納得できない。カガリは先程よりは勢いを弱めてもう一度問いかけた。
「なあ、お前、キラが嫌いになったわけじゃないのか？」
「違うわ。キラが嫌いな訳じゃない」
「だったら！」
勢い込んだカガリだったが、フレイの目に思わず息を飲んでしまった。その目は、深い悲しみと、愛しさと、諦めを同時に映していたから。その危うい美しさにカガリは掴み上げていた手を離してしまう。
フレイはカガリが手を離した隙にカガリの前から離れた。そして、服を整えると部屋から出ていこうとする。その背中にカガリがもう一度声をかけた。
「おい、フレイ！」
「･･････カガリ、キラをお願い。あの子、凄く寂しがり屋だから、傍にいてあげて」
それだけ言い残して、フレイは部屋を出ていった。残されたカガリはフレイの言った言葉を反芻し、首を捻る。
「キラが寂しがりやって、あいつ、何時も１人で何でもこなしてるじゃないか。そんな訳無いだろ」
だが、さっきのフレイが嘘を言ったとも思えない。あんな目で頼み込んできたのだから。だけど、ならどうして自分が付いていてやらないのだ。嫌いじゃないなら自分が傍にいいてやればいいのに。
「資格が無い、か。なんなんだよ、それは」
ううむ、カガリ、お前は何処まで情報を握ってるんだ。というか、全てを知ってるのか？
>>刻還り
むう、フレイ様訓練無しにしては強いな。それともイザークが雑魚？
フレイ様はイザークを覚えてるんだろうか。ただの嫌味なコーディぐらいかな
しかし、イザークは宇宙に戻れたのにディアッカは落ちていったのか、可哀想にｗ
>>オーブ･フレイの心
こ、これは、フレイ様ったら頑張ってますねｗ
ミリィはキラの変化に気付きましたか･･････トールは？
フレイ、あの子がキラと寝た… 艦内に、そういう噂が流れている。
まさか、信じられない。どうして、こんなことになるの。
お願い、夢なら醒めて。私を昔のヘリオポリスのころに戻して。
ダメ！ 考えがまとまらない。どうしよう。
そう、整理しなきゃ。ゼミのカトウ教授が言ってた。分からない時は箇条書きに整理して、
考えてみろって。もう少し、噂を客観的にまとめてみよう。
噂を要約すると、次の３つになる。
1. フレイが、婚約者のサイからキラに乗り換えた
2. キラが、フレイを婚約者のサイから横取りした
3. フレイが、夜、キラの部屋に行ってるのを見た
1. に関して、確かに、地球へ降りてすぐ、あの子は婚約者のサイを振った。
でも、それが、あの子がキラに乗り換えたということなのか、
どうしてそうなのかということは、はっきりしない。
実際に、あの子に聞いた訳でもないし、そもそも、誰もあの子にもキラにも、
そのことを確認しようとしない。今、二人には、何か近寄り難い雰囲気がある。
事実としては、あの子が地球に降りたとき倒れたキラを付きっきりで看病したこと。
ストライクのコクピットに篭るキラに対し、あの子が食事を持っていったり、
夜中に、側に一緒についているのを何人もの人が見たことなどがある。
艦長やフラガ少佐もそれを知っている。
あの子は、そうしてキラに接しているうちに、サイから乗り換えたのだろうか。
でも、そもそも、あの子はコーディネータに強い偏見がある。それは、
地球に降りるまでの、あの子の行動で、はっきりしている。
そして、今も、何かにつれてキラに差別発言をしている。
あの子がキラを好きになるなんて、あり得ない。
噂よ。単なる噂よ。
2. は、もっと考えられない。確かに、キラはヘリオポリスにいた時、
フレイに片想いをしていたわ。トールだって、そのことを知っている。
でも、キラとサイは、ゼミではいつも二人でリーダシップを取っていた。
研究で皆を引っ張るキラと、そんなゼミのまとめ役となっていたサイ。二人は親友だった。
そんな、親友の彼女、しかも婚約者となっている女性を、無理矢理、横取りするなんて
キラがする訳が無い。
サイがストライクを無断で動かそうとして、独房に入れられたことがあった。
サイは、その理由を口にしないけど、あれは、キラがザフトに捕まったのを
助けようとしてやったのだと思う。キラとサイの仲が悪いわけは無い。
例え、あの時、サイが、今まで見たことないような半狂乱で泣き喚いていたとしても…
それなのに、噂では、キラをみんな悪く言っている。食堂で談笑している整備兵達は、
さらに噂に、おひれを付けて、キラが、あの子を無理矢理自分のものにしたとか、
酷いことを話している。そんなことありえない。キラが、そんなことするはずない。
そうに決まっている。そのはず…
今のキラは、前と雰囲気が違う。変…。だけど、そんなはずない。
でも…
3. は事実。
あの子、度々、夜に部屋を出てどこかに行ってる。同じ四人部屋の私が言うのだから間違い無い。
どこへ行ってる？行き先は？
それも、間違い無いキラの個室。だって、私、あの子の後付けてみたもの！
夜に男女二人、個室ですることといったら…
まさか、あの子は体を売っているの？ コーディネータだと嫌っているキラを体で誘惑しているの？
何のために？ 分からない。でも、そう考えるとつじつまが合う。
それで、キラはおかしくなったの？ あの子に、おかしくされてしまったの？
初めて砂漠で、キラが戦った夜。キラがキラで無いような素振りだったのも、そのせいなの。
まさか、あの子が一人で看病していた、あの夜、すでに、キラは、あの子に…
ああああ！ だとしたら、あの子許せない。許さない。
なんてことなの。どうして、こうなったのよ。
キラ、なんで、こんなことになったの。昔のキラはもう帰ってこないの。
前にシャワー室で見たことある。あの子、私よりずっとグラマーな体。
大きな胸。むっちりした腰回り。あの子、毎晩、キラの前に、あの体をさらして…
ああああ！ 許せない、あの子許せない。
ああ、いやらしい子、キラを誘惑する娼婦。キラを変えてしまう女。
キラは悪くない。みんな、あの子が悪いのよ。
あんな子、居なくなればいいのに。
私は、あの子を憎んでいる。キラを変えた、あの子を許せない。
でも、現実の私は、こんなことを面と向かって言う勇気なんて無い。
なんて、臆病な私。
ある日、当直が終わって帰る私と、共同の四人部屋を出ようとする、あの子が鉢合わせした。
そのとき、私の問いかけた言葉。
「どこへ行くの」
「どこだっていいじゃない。私の勝手でしょ」
「キラのところへ行くんでしょ」
「あなたには関係無いわ」
「関係無く無いわ。キラはトールの友達だもの」
「友達だったらどうだっていうのよ。これは私とキラの問題よ」
「そんなこと無いわ、キラとトールのことも考えてあげないと。あなたのせいで、
二人は友達なのに、最近、顔を合わせようともしないのよ」
「そんなのキラとトールの問題で、私には関係ないわ。それにミリアリア、あなたにも
関係無いじゃない。トールに頼まれでもしたの」
私もずるい、トールをだしにしか、話を言い出せない。
「トールは何も言わないけど、多分、困っている。きっとサイやカズイも」
「じゃあ、私にどうしろっていうのよ。はっきり言ってよ。
もう行くわよ」
フレイ、あの子嫌い。
何よ、男の子には甘えるような声で話すくせに、
女友達には、つまんないおしゃべりをいくらでもする癖に、
こんな冷たい言葉で、私を傷つけて…
あんたなんか、キラにふさわしくない。
これ以上、キラを誘惑しないで。
これ以上、キラを汚さないで。
「キラと仲良くしないで！！！」
私の口から、思わず飛び出た言葉に自分でもビックリした。
目に涙も滲んでいた。思わず、フレイから逃げるように部屋に飛び込んだ。
なんてことを言ったの。
あの子に気づかれた？ 私の気持ちを…
もしも、キラに、私の気持ちが、ばれたら。
あの子が、変に脚色して、キラに伝えたら…
ああ、どうしよう…
混乱の中、私の指は、いつのまにか、自分の体をまさぐっている。
それは、あの子がいない夜、いつもしてること。
あの子がキラにしているだろうことを想像して、一人、空虚に繰り返す行為。
ああ、このことまで、キラに知られたら…
どうしよう、堪えられない。
キラに会うのが恐い。キラが、私のこと軽蔑した目で見るのが恐い。
ああああ！ 許せない、あの子許せない。
みんな、あの子が悪いのよ。
艦長に呼ばれていたキラが帰ってきた。
私は昨夜のベッドでのモヤモヤを振り払うように、わざと明るい声で尋ねた。
「キラ！、何だったの」
「オノゴロのモルゲンレーテに行って、モビルスーツ開発を手伝って欲しいと
いうことだって。ストライクに乗ってオノゴロへ上陸する」
「え！どういうこと？」
「オーブも、モビルスーツを作っているんだって。中立なんだけど」
「ふうん」
私にとっては、オーブのそんな事情は、どうでもいいこと。
私が気になるのはキラがどうなるのか。
「しばらく、モルゲンレーテに行ってる。向こうで泊ることになると思う」
「え！ どのくらい」
「まだ、行って仕事を見てみないと、どれくらい、かかるのか分からない。
艦長は一週間くらいと言っていたけど…」
「ねえ！ キラなら二、三日で、すぐ済んじゃうでしょ」
「分からないよ。ナチュラルでも動かせるＯＳの開発だから、
僕が、ただ動かせりゃいいというものでも無いし」
一週間、キラがいない。それは、私がアークエンジェルに乗ってから無かったこと。
「キラ 私も一緒に行けないかな？」私は懇願する。
「フレイ…」
「ねえ！ 一緒に連れてって！ 私、邪魔しないから」
「艦長に相談してみるよ。フレイ、一緒に行こう」
キラを逃さないという下心はあったはず。でも、それ以外にも、
私は、キラが私を一緒に外へ連れ出してくれることが、なにか純粋に嬉しかった。
−−−−−−−−−−−−−−−
艦長室、艦長とフラガ少佐の前、私とキラは、一生懸命、お願いした。
けど、艦長は許してくれなかった。
「アルスター二等兵、今回は特別なの。政治的な意味合いもあるし、
失礼なことは許されないの。用も無い、あなたを上陸させる訳には、いかないし、
もし、あなたが行けても、ヤマト少尉と部屋を一緒にすることもできないわ。
アークエンジェルのような黙認は許されないの。今回は、こらえて頂戴。
別件で、あなた達、ヘリオポリスの志願兵には、オーブへの
一時上陸を申し込んでいるから、それまで我慢して。できるでしょ」
艦長に淡々と説得され、私は頷かざるをえなかった。
「お嬢ちゃん。一週間なんてすぐだよ。な！」
フラガ少佐が、明るく言った。
「キラ、お前は、がんばんなきゃな。愛しい女のためなんだから」
「はい、フラガ少佐」
キラは、フラガ少佐の問いに男らしく答えた。キラの、その顔に、私は、
まだ不満だったけど、何も言えなくなくなった。
「あんまり、キラ君に変なことばかり吹き込まないでよ」
艦長は腕組みしながら、困った顔をしていた。
艦長室を出て、キラは言った。
「向こうに行ったら毎日連絡入れるよ。フレイ、それで我慢して」
「うん！ 毎日よ。忘れないでね」
「ああ」
キラは、まだ通路だと言うのに、私を抱き寄せ、軽くキスをした。
キラがエッチになったのって、フラガ少佐のせいもあるんだろうな。
私は今さらのように考えていた。
翌朝、モルゲンレーテに出かけるキラをデッキで見送る私。
キスは、部屋を出る時にした。ここではサイも見てるからキスはできない。
「行ってらっしゃい」小声でキラにそれだけ告げる。
艦長は、キラを見送った後、私を自室に招いた。
私は、緊張する。キラがいるならいざ知らず、一人で、目上の人と話すなんて、
私は、あまり無い。つい口数が少なく、しどろもどろになってしまう。
宇宙で、私が軍に志願した時の長台詞なんて、一字一句、先に考えてあったから
できたことで、普段の私に、そんなことができる訳でもない。
同級生の女友達なら、ペラペラ話せるのに…
「フレイさん、キラ君を借りるわね。申し訳無いと思うけど、彼は必要なの。
いつか埋め合わせはするから」
「はい、ありがとうございます」
「どう、キラ君は、あなたに優しくしてくれてる？」
「う、うん…、最近、特に…」
私は、昨夜のキラとのことを、つい思い出してしまう。
艦長は、そんな私の顔を見て、ちょっと驚いたようになった。
けど、すぐに、にこやかな表情に変わった。
「すごい。もう、女の顔してる。羨ましいわ。邪魔しちゃったかな？ 私」
「あ、そんなことは… それで、あの、私…」
「どうしたの」
「私、このまま、キラの部屋にずっといるの、良かったんですか？」
「問題が無いわけじゃないけど、今は構わないわ、心配しないで」
「そうですか、済みません」
艦長は、私を優しく見つめて言った。
「あなた達若いから心配なの。もし、なにかあったら、なんでもいいから、私に相談して」
「はい」
「私、艦長の仕事で一杯一杯だったから、あなたとなかなか、お話しできなかったけど。
話せて良かったわ。キラ君も、早く私のところに連れてきてくれれば良かったのにね」
「キラも一杯一杯だったから、私も…」
二人で、微笑みを交わす。
プライベートな口調で、話しかける艦長、いえ、マリューさん。
私の口調は、だんだん打ち解けたものに変わって行った。
マリューさん、私とキラを認めてくれている。私は、それが嬉しかった。
私とキラは、本当は、そんな奇麗な関係だけでも無いけど。嘘ついてることになるけど。
それでも、心が暖かくなった。
「それと、もう、今さらのことだけど…」
「え？」
「避妊には注意してね。必要なら言ってちょうだい。私ならピルも申請できるから」
「そうなんですか。知らなかった…」
マリューさん、もうひとつ嘘ついてしまうけど…
私、昨夜、キラのを中で受けました。
この前のフェラチオではキラを満足させられなかったから。
キラのを体に染み込ませておきたかったから。
いいよね。別に……
本編の抜け殻フレイ様とは逆に、抜け殻キラですか。
まあ、本編では、その描写の時間無くＭＩＡということかもしれませんが。
フレイ様は、大人組行きなんですね。本編考えるとナタルとの関係補完は
しておきたいところですが、具体的なのは、これからかな？
私のＳＳでは、クライマックス近くで補完する予定。
カガリは、キラフレの橋渡しをして、いいやつですね。本編ではフレイ様が
カガリに一方的に嫉妬したまま終わってしまいますが、ここでは嫉妬解消してますね。
そのフレイと入れ違うように、キラとカガリを別の舞台へと誘う運命の使者が、
一人の女の子の姿を借りて現れた。
「カガリぃ！探したのよ、こんなところにいたのね！」
「げっ！、アフメっ！？」
その使者の名はアフメと言う。真紅のパンダナを巻いて、緑色のコンバットスーツ
に身を包んだその出で立ちは、天からの身使いとしては色気の欠片もなかったが、
ボーイッシュで、健康的なエネルギーを身体全体から発散させている、キラと同年代
ぐらいの中々可愛い女の子だ。
「アフメ！ お前、何こんな所まで追いかけて来てるんだよ！？」
カガリは辟易とした表情でアフメを睨む。彼女は、カガリと同じ明けの砂漠で共に
戦う同士ではあるが、キサカに匹敵するカガリストーカーであるこの少女を、カガリ
は決して嫌ってはいなかったが、苦手としていた。
「冗談言ってる場合じゃないよ、カガリ！明け方と同時に、タッシルの街がザフトの
連中に襲われたのよ！」
「何だって！？それで街の人たちは！？」
「分からない…。けど、戦える大人たちは皆、砦の方に出払っていたから…。
今、サイーブさん達が急いで、タッシルの救援に向かったんだけど、多分もう…」
「く…くそっ！」
タッシルに家族がいるアフメが辛そうに俯き、カガリは慌ててアークエンジェルの外に
飛び出したが、自分のバイクを砦に置いて来たことに気づいて、無謀にも徒歩でタッシル
へと駆け出そうとする。
「こっちよ、カガリ！」
女だてらにジープを乗り回しているアフメが、激しく砂漠の土煙を巻き上げながら、
カガリを迎えに来たので、カガリはジープの助手席に飛び乗る。さらには、もう一人
のカガリストーカーであるキサカと、何故かキラまでが、オープンシートである
ジープの後部座席に慌てて乗り込んできた。
何で、あんたまで一緒に来るのよ！？
同じ無断乗車員であるはずのキサカの方は完全に無視して、ゴーグルの下からでも、
十分に認識可能な敵意をキラ一人に注ぎ続けるアフメは、いかにもそう言いたげな表情
でキラを睨んだが、問答しているような余裕はなかったので、ジープを急発進させる。
違うんだけどな…。
誤解しようのない、いっそ清々しいほどのキラへのジェラシーを身体全体から発散
させているアフメに、キラは苦笑しかけたが、事態の深刻さに気を引き締めなおした。
「誰か…誰か、生き残っている者はいないか！？」
遠目から炎上するタッシルの街を確認したカガリ達は、全滅を既定のモノとして、
覚悟を決めたが、それでも一縷の望みを捨てきれずに、ジープがタッシルに到着
するや否や、大声を張り上げて、生存者を求めようとしたが、
「心配するな、坊主。負傷者は何人かいるけど、死亡者数はゼロだとよ」
スカイグラスパーでキラ達よりも先に到着していたフラガが、困惑した表情でそう説明し、
カガリ達はお互いに狐につままれたような表情を見合わせる。
聞けば、砂漠の虎は、数体のＭＳでタッシルの街を焼き払う前に、敢えて避難勧告
を出したそうで、タッシルの街そのものは灰と化してしまったが、おかげで何とか
犠牲者だけは出さずに済んだという次第である。
「こいつは砂漠の虎の、明けの砂漠に対する「お仕置き」と言ったところかな。
無差別に爆撃した方が手っ取り早いのに、敢えて女子供の非戦闘員を巻き込まないよう
にするなんて、なかなか憎いことするじゃないの…」
「まぁ、虎さんって実は良い人だったのね」
フラガの説明に、キラは素朴に感動して相槌を打つ。キラの中での砂漠の虎のイメージが、
凶暴そうな半獣人から、ヘリオポリスにいた頃、毎週楽しみに見ていたバラエティ番組
の主役の風来坊の姿へと切り替わった。
「お前ら……」
カガリやアフメをはじめとした、タッシルの人達の怒りの視線に囲まれ、
フラガはバツが悪そうに軽く頭を掻き、大顰蹙を買ったキラは、「ご…ごめんなさい」
と小さく縮こまったが、
「で…でも、犠牲者は一人も出なかったんでしょ！？街が焼かれても生きてさえいれば…」
「食料や武器を焼かれて、これからどう生きていけっていうのよ！？
何よりも故郷の街を焼かれた、私たちの無念の気持ちがあなたに判るの！？」
カガリとの仲を誤解してキラに根強い反感を抱いているアフメが、キラに詰め寄り、
キラは言葉に詰まった。長年、キラが踏み締めていたヘリオポリスの大地が崩壊した
あの時の悲哀を、キラとて忘れたわけじゃない。
ただ、復讐心に燃え滾ったレジスタンスのメンバーが、彼我の実力差を弁えずに
砂漠の虎に復讐戦を企図するとあっては、キラも黙ってはいられなかったが、
怒りに我を失っている彼らにキラの説得の言葉は届かず、次々にバギーで出陣していき、
彼らの中で唯一、冷静な戦術眼を失っていないサイーブも、明けの砂漠のリーダーとして
仲間を見捨てるわけにはいかず、仕方なく無謀な襲撃に同行する。
「正気か、あいつら…。対戦車用装備程度の火力と、バギーの貧弱な機動力で、
本気でザフトのＭＳと渡り合うつもりなのかよ。一体、何考えてやがるんだ！？」
「フラガさん…。これって……」
「水鉄砲片手に、ゴジラの群れの中に、チャリンコで特攻かますようなもんだぜ…」
対戦車バズーカーを担いで、キサカと一緒にアフメのジープに乗り込んだカガリを
制止する事が出来なかったキラは、青ざめた表情でフラガを見上げ、フラガも
遣り切れない表情で、両陣営の実力格差を比喩的に説明した。
「連中、自殺願望でもあるんですかね？わざわざ、主力部隊の留守の隙を見計らって
タッシルを襲撃したというのに、何であんな命をドブに捨てるような真似を…」
「大切なモノを奪われれば、ヒトは好む、好まないに関わらず戦わねばならないのだろう。
そういう人間の執念を侮ってはいけないよ、ダコスタ君」
数体のバクゥと共に、ジープでレセップスへ帰途する途中、自分達を追撃してくる
バギーの集団に気づいたバルトフェルドは、有能だが未だに軍隊擦れしていない彼の
若い副官にそう供述する。
砂漠の虎は、部下のバクゥ達に撃退を指示する。彼は捕虜虐待や民間人虐殺などの無益な
殺生は好まなかったが、どれほど貧弱な装備とはいえ武器を手にして立ち向かって
くるのなら話しは別だ。百獣の王である獅子が、兎を狩るのにも全力を尽くすように、
一切手加減せずに叩き潰すのが、戦場での戦士に対する礼儀であろう。
とはいえ、そんな虎の思いとは対照的に、それから始まったバルトフェルト隊と
明けの砂漠との戦いは、戦闘というのもおこがましい一方的な虐殺に近い代物だった。
フラガの予測通り、対戦車バズーカー程度の火力では、バクゥの装甲に傷一つつけられず、
バクゥの前足が唸り、背中のキャノンが火を噴く毎に、バギーごと尊い命が失われていく。
そんな中で、カガリ達の乗るジープは異様に善戦していた。アフメの巧みな運転で、
バクゥの砲火を避けて、強引に懐の死角に潜り込むと、カガリとキサカの二人が、
対戦車バズーカーで、前足の装甲の繋ぎ目をピンポイントで狙って、バクゥの動きを封じ、
最後は静止した敵のコックピットに直接砲火を打ち込んで、フラガに水鉄砲と皮肉られた
貧弱な火力で、バクゥ一体を完全破壊することに成功する。
「やったぁ！！」
大金星を挙げたカガリとアフメが、お互いの手と手を叩き合わせ、軽快なラップ音が響く。
だが、カガリ達の奇跡的な活躍もそこまでだ。窮鼠猫を噛まれ、怒りに燃えるバクゥ
二体の同時攻撃を受けたカガリ達は、アフメの運転技量を以ってしても避け続ける
のが精一杯で、砲手の方も、装甲の弱点部分をピンポイントで狙えるような余裕はない。
ついにバクゥの砲撃がヒットし、右後輪タイヤを失って、大幅に機動力の衰えたジープ
に対して、バグゥが前方から大きく前足を振り上げる。避け切れないと悟ったキサカは、
自分の使命を果たすべく、後ろからカガリを抱き抱えてジープから飛び降り、次の瞬間、
バクゥの一撃でジープは粉々にされ、運転席にいたアフメの身体が空高く舞い上がる。
「アフメっ！！！！」
自分の腕の中で、必死にアフメに手を伸ばそうとするカガリの悲痛な叫びを聞いて、
キサカの顔も歪んだ。彼の力量でも、あの状況で二人とも助けるのは無理だったのだ。
激しく地面に叩きつけられ、壊れた人形のように動かなくなった目の前の少女を
見捨ててでも、カガリを優先して守らなければならない理由が彼にはあった。
味方の著しい損害にようやく熱狂が醒め、逃げ越しになり始めた明けの砂漠だが、
はるか格下と侮った相手に仲間を殺され、怒り狂ったバクゥ達は、虎の指示を離れて
暴走し、敵の逃走を許さずに一方的な虐殺へと走り始めた。
サイーブは、仲間を一人でも逃がすために、玉砕覚悟でバクゥに突っ込もうとしたが、
そのタイミングで、フラガの乗るスカイグラスパーが、船腹にストライクをぶら下げた
まま姿を現す。最初フラガはスカイグラスパーで直行することも考えたが、無装備に近い
戦闘機単騎では、ＭＳ数体にはかなり分が悪い為、急がば回れの精神でキラを
アークエンジェルまで送り届け、スカイグラスパーの船底にＭＳ緊急輸送用の新装備を
取り付け、キラをここまでストライクごと運んできたという次第である。
船底の取っ手から手を離し、スカイグラスパーから飛び降りて地面に着地したキラは、
背中の剣を引き抜き、ソードストライクモードで、三体のバクゥと対峙する。
部下たちに、ジェット・ストリーム・アタックの指示を出したまえ」
ダコスタはややうんざりした表情で、自分の上司を見つめる。彼は、優秀で部下からの
信望を篤い自分達の隊長を尊敬していたし、指示されたフォーメーション自体は戦理に
適ったものではあるが、どこかのＴＶアニメから拾ってきた必殺技を、わざわざ戦術名
に付けたがるネーミングセンスと、珈琲の味への妙な拘りには付いていけなかった。
先程まで殺戮に酔っていたバクゥ達も、ストライクの出現に、戦士である自分達の本懐
を思い出し、虎の指示を再び受け入れフォーメションを組み直す。先の戦闘から、
ストライクが侮れない相手であることは重々承知しているからだ。
キラは、バクゥの三身一体の攻撃を、慎重に避け続けながら、サブスクリーンでカガリ
の姿を捜し求める。戦場の彼方此方に転がる死体の山に心を痛めながらも、何とか
生き延びたらしいカガリを見つけて安堵したのも束の間、
アフメ！？
カガリが泣きながら取り縋っている少女の無残な姿に、心臓が止まるような想いを味う。
何で、どうして！？
ヘルメットの中のキラの瞳から涙が零れ落ちる。
キラはアフメとはほとんど面識がなかったので、まだ友と呼べる存在ではなかったが、
それでも彼女のカガリへの気持ち良いぐらい直情的な態度と、自分と同じ女だてらに
大切なモノを守るために武器を取った姿勢に、密かに好感を抱いていたのだ。
再び接近してくるバクゥに、キラの中で何かが弾け、その瞳に憎悪の炎が宿った。
この人達が殺したのね、こんないたいけな少女を…。
次の瞬間、ストライクの巨大な対艦刀シュベルトゲーベルによって、バクゥ一体が
真っ二つにされる。ストライクとすれ違い生き残った二体は、振り向きざま砲火を
放つが、ＰＳ装甲のストライクには実弾は効果が無く、ストライクがぶん投げた
ビームブーメラン“マイダスメッサー”が一体のバクゥを貫き、さらにブーメラン特性で
戻ってきたマイダスメッサーが、残り一匹のバクゥの後ろ足を切り裂き、動きの鈍った
バクゥにフラガのスカイグラスパーが、アグニを打ち込んで止めを刺す。
砂漠での地の利を物ともせず、瞬く間にバクゥ三体を瞬殺したストライクに、虎は疑惑を
確信に変え、彼の副官のダコスタは慌ててジープを急発進させて安全圏への脱出を図る。
キラ達は、レジスタンスの救出が目的だったので、敢えて深追いはしなかった。
「死にたいの、あなた達は？」
ストライクから降りてヘルメットを脱いだキラは、彼女らしからぬ冷たい声で、僅かに
生き残ったサイーブ達を詰り、自分達の無謀さを骨身に染みていたレジスタンスの
メンバーは怯みかけたが、一人カガリが瞳に涙が溜めながら、怒りと共にキラに詰め寄った。
「うるさい、みんな必死で戦っているんだ！大事な人が大事なものを守るのに必死でな！」
「でも、あなたはアフメを守れなかったじゃない？
アフメの方はともかく、あなたにとっては、アフメは大切な人じゃなかったからなの？」
「キ…キラぁ！！お前………」
カガリが次の言葉を吐き出す前に、パーンと砂漠に乾いた音が響き渡る。
キラがカガリの頬を叩いたのだ。キラの瞳からもポロポロと涙が零れ落ちる。
「気持ちだけで…、裏付のない想いだけで、一体何が守れるというのよ！？
アフメを殺したのはザフトじゃない。カガリ、あなたのその思い上がりよ！」
「……………に何が判る？」
「えっ？」
「お前に何が判る、キラぁ！！何でも出来てしまう、お前にぃ！」
カガリはそう叫びながら、上着を脱いで上半身を裸にする。一瞬、顔を赤らめかけた
キラだが、細身のカガリの生身に刻まれた、数え切れないほどの夥しい傷痕に唖然とする。
「キラ、お前は、その怪物（ストライク）を操るのに、どれだけの労力を必要とした？
どうせ、ほとんどぶっつけ本番でも、上手く起動させられたんだろ！？
最強の剣（ＭＳ）と、最高の剣技（操縦技量）を、何の努力も無しに無償で与えられた、
恵まれたコーディネイターのお前に、身体と生命以外に何も張るものがない、俺たち凡人
のナチュラルの気持ちが判るか！？
天高く大空を羽ばたく鷹に、地べたを這う蛇の気持ちが判るっていうのかよ！？」
「カガリ、あなた…」
「俺は……俺は、それでも戦ってきたんだ！
数多の戦場を駆け抜け、多くの死を見取り、身体の傷跡の数を増やすことしかできない
自分の無力を痛感させられながらも、それでも迷わず戦ってきた。なのに、お前は…」
そこまで言いかけて、再びカガリの瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。
カガリも分かってはいるのだ。いくら偉そうなことを言っても、キラの方が正しいことを。
自分はアフメを守れなかった。好きか…と問われれば分からないが、それでも心を通わ
せた大切な仲間であるアフメを彼は見殺しにし、結局、彼らを救ったのはキラの力だった。
何よりも、こんなみっともない傷痕を晒して、相手の憐れみを請うような遣り方で、
キラの理論に対抗しようとした、自身の女々しさが情けなくなってカガリは泣いた。
「何で…、何で、お前だったんだ？どうして、お前が選ばれたんだ、キラ？
俺にお前の力があれば…、俺があの時、選ばれてさえいれば…俺はアフメを守れて……」
カガリ……。
カガリの前半の弾劾はともかく、後半の意味不明な問いかけは、キラには全く理解
できなかったが、それでも膝を落として、子供のように泣き崩れるカガリの姿を
見ていられなくなって、キラはそっとカガリを抱き締める。
カガリは一瞬ビクッとしたが、何故か抵抗しなかった。
キラの、カガリとの心と身体の交流は、ミリアリアが危惧していた、キラがフレイに
よって奪われ失われていた大切な何かを、徐々にではあるが回復させつつあった。
「いやいや、世の中、生きていれば何が起きるか分からないものだね。僕はこんなに
驚いたのは人生で生まれてはじめてだよ。あの悪鬼のようなＭＳのバイロットが
まさか、あんな可憐なお嬢ちゃんだったとはね…」
退却したように見せかけ、キラ達に見つからないギリギリの距離にジープを停止
させたバルトフェルドは、超遠視スコープで、キラの正体を確認し、カガリとの一連の
遣り取りを興味深く拝見する。ストライクのパイロットがコーディネイターである事を
既に疑っていなかった虎も、キラの意外すぎる正体に、奇襲を喰らったような気分だ。
「た…隊長。要件が済んだのなら、さっさとレセップスへ帰艦しましょう。万が一にも
発見されたら、今の我々の装備じゃ一溜まりもないですよ」
「まあまあ、そう慌てるなって、ダコスタ君。戦場の真っ只中での少年少女の恋劇など、
そうそう見られるものじゃないぞ。確かに命を見物料とするには高すぎるがね」
「は…はぁ」
上官ほど図太い神経を持っていない彼の副官は、青ざめた表情で仕方なく相槌を打つが、
ようやく帰艦の許可が出たので、ホッと安堵してジープを発進させる。
最後にもう一度だけ、スコープでキラの表情を確認した、虎の心は踊っていた。
どれほど可憐に見えても、あの少女は我々コーディネイターの中でも類を見ない
ずば抜けた技量を持つ戦士であり、強敵との戦いを何よりも喜びとする自分が、
久しぶりに巡り会う事が出来た好敵手なのだ。近い将来、必ず発生するであろう
勇敵との命を削る凌ぎ合いを思い浮かべて、砂漠の虎は心を弾ませたが、その前に
是非一度、あの少女に直接会ってみたいと思った。出来れば隣にいる少年と一緒に…。
二人とも良い素材だから、可愛い者好きのアイシャが、無骨な軍服に包まれた彼女達を
きっと見違えるように可愛くコーディネイトしてくれるだろう。
それからほどなくして、舞台をバラディーヤに移して、その虎のキラ達との会見の願いは
叶えられることになる。
アークエンジェルは砂漠の敵を破り、海へ出た。
キラは、また変わった。砂漠での張り詰めたような顔から、
昔のような穏やかな表情に戻った。何か言葉尻に優しさが垣間見える。
でも、その優しさが、私に向けられることは無い。
優しさの向けられる先は、あの子。
どう考えても、そんな資格が無いはずの、あの子。
あの子、フレイって大嫌い。
あの子の私物、気がつくと、私と同室の四人部屋から消えていた。
あの子、今、キラの個室で暮らしている。…同棲してる。
ここ軍艦よ。そんな破廉恥なこと許されるはず無いのに。
でも、誰も何も言わない。あの規律に五月蝿いバジルール中尉さえ、
見て見ぬふりをしている。
キラのせい？ キラは、アークエンジェルを守るストライクの
パイロットだから。あの子、その彼女ということで立場が守られている？
何よ、あの子、キラを利用して。狡猾な女。
船酔いだの、腰痛だので、度々、艦内の仕事を休むあの子。
相変わらず勝手だ。
腰痛 ！？… あの子、何やってるのよ！！ トイレで腰打ったとか言ってたけど。どうだか？
でも、そんな、あの子をキラは優しく気づかうような素振りを見せる。
船酔いの、あの子を心配して、キラの部屋で寝込む、あの子に、食事を持っていったり、
飲み物取って来たり。私に看病頼んだり…
「ミリィ、時間あったらフレイのこと見てあげてくれないか。
僕は男だから分からないことがあるかも知れないし…
フレイは、いいって言ってるんだけど…」
キラは、私に、こんなことを言う。私は言葉に詰まる。
「薬飲んだんでしょ。後は寝ていた方がいいと思う。
フレイは、いいって言ってるし。大丈夫でしょ」
あの子の看病なんてしたく無い。あの子とキラの二人の部屋なんて行きたくない。
なんか、二人の行為の匂いを感じそうで嫌… 汚らわしい。
トールは、あの子のことで、すっかり男女関係に染まったようなキラに、とまどい気味。
サイは、あれから塞ぎ込んでいる。私とは普通に話すけど。キラを見ると言葉が重くなる。
カズイは、休憩中は、始終、アークエンジェルを降りることばかり考えている。
友達の、みんながギスギスしている。
きっかけは、あの子。みんな、あの子のせい。
ある日、私が休憩中に、洗濯物を出しに行くと、あの子がクリーニングの仕事していた。
「ハーイ！ ミリアリア」
あの子、なにか浮かれたような感じ。私に声をかける。
「フレイ。久しぶりね。船酔いとか、腰とか、もういいの？」形式的な挨拶を返す私。
「うん！ もう大丈夫。これ洗っとくわね」
「どう、仕事」
「うん、ちょっとサボってたんで、仕事堪ってて大変。なんか、洗濯とか掃除とか、
今まで、自分では、あまりやってなかったことだけど。
私、こんなことくらいしかできないし。
キラも、みんなも戦っているのにね」
あの子から、こんな言葉を聞くなんて意外。今まで、あの子の方からも
避けていた癖に、今日はなんか変。
そりゃ、ヘリオポリスの時から、人当たりだけは良い子だったけど。
しばらくぶりにまともに見る、あの子。なんか、忙しそうに仕事する、
あの子の物腰が今までと違うような気がする。
なんか、大人びたというか優雅に見える。落ち着いてみえる。私より年下のはずなのに。
あの子、いいところのお嬢さんだったのに、クリーニングとか雑用とか
喜んでやっているように見える。
なにか、取り組む意欲、目的みたいなものが感じられる。
「キラは、どうしてる」 ふいに、あの子が聞く。
「今、ザフトの機影は見つからないから、とりあえず待機中。
モビルスーツデッキにいると思う。ストライクのメンテとか、スカイグラスパーとの
連携シミュレーションとか、やってるんじゃないかな」
「ふうん。私、夕方、早めに仕事上がるから、もし、話できたらキラに言っといてもらえるかしら」
「うん」
仕事に取り組む意欲、それはキラに関することなのだろうか。なんとなく直感する。
あの子、キラに執着している。もう、すっかり彼女気どりでいる。
本当は違うのに。あの子が、キラを誘惑したのに。
体でキラを狂わせたのに。
キラの話をした、あの子、少し気になる仕草をする。
なにか、モジモジして、やたらスカートの方を気にしている。
なんか、いやらしい感じがする。なんか不潔な感じがする。
「どうしたの、まだ腰痛むの ?」
「ん！ なんでも無いの。ちょっとね。きつくて… あ、なんでも無い」
ふん、どうせ、いやらしい、きつい下着を付けてるんでしょ。
腰が痛むのなら、やめればいいのに。別に、あの子のことなんかどうでもいいけど。
どうせ、あの子、キラの目の前で自分でパンツ脱ぐんだろうし。
それで、私のキラを誘惑するのよ。ふん、いやらしい。
私、自分の四人部屋へ戻る。今は、私一人の部屋。休憩は、後、二時間。
ちょっと、ベッドで横になる。
クリーニングの仕事をしながら、キラの話をして、落ち着かないように
スカートのあたりを気にしていた、あの子の様子。
キラのことを思い出してる？ キラとの夜を思い出してる？
キラとの行為を思い出してる？ キラに欲情してる？
いやらしい！ 不潔！ 汚らわしい！
キラを誘惑する娼婦。魔性の女。
あの子、キラの部屋で、服を脱いで、ブラも取って、パンツも脱いで、素っ裸で。
酔ったような目で、口を半開きにして、キラの体の上で…
あの子の体が激しく揺れる。淫らな音。大きな胸も弾むように揺れる。
感じてる。快楽に酔っている。いやらしい声を上げている。
ふいに、あの子の動きが止まる。下になったキラを、じっと見つめる。
見つめ返すキラの表情は…
やめて！ こんなことやめて！
キラに、こんなことしないで。いやらしいことしないで。
純粋なキラを汚さないで。狂わせないで。
お願い、キラに、あんな顔で、あなたを見させないで。
あああ！ あの子許せない。
そのとき、部屋の通話用モニタの大きなコール音が、私を夢から現実に戻した。
私寝ていた？！
あわててモニタを通話に切り替える。
「馬鹿者。休憩の時間はとっくに過ぎているぞ、何をしている」
「すみません。すみません」
「早く来い。まったく、このごろの学生は、時間も守れないのか」
バジルール中尉はカンカンだ。また、怒られる。女同士で、頬を思い切り叩かれる。
私は、自分の体の異変に気づく。
やだ！ 濡れてる。パンツ変えなきゃ。
パンツを穿きかえながら、ぼんやりと、これを明日、あの子に
洗濯に出すことにやりきれない思いを感じる。
ふいに、頭の中で、ある直感が閃く。
そうなんだ。あの子、だから、あんなに洗濯に熱心なんだ。
自分の汚れたの、自分で洗えるから。他人に知られないから。
そして、いくらでも汚せるから。
だとしたら、ずるい。何が、「こんなことしかできない」よ。
なんて身勝手な女なの。なんて淫乱な女なの。
部屋を出ると、既に夕刻になっていた。私、何時間寝てたんだろう。あんな夢見て。
居住区の通路を急ぐ私の目に、二人の人影が飛び込んできた。思わず、もの影に身を隠す。
ここはキラの部屋。仕事を終えて帰ってきたらしいキラ。
キラの部屋から身を乗り出してキラを迎えている、あの子。
あの子の、キラをじっと見つめる目。うれしそうな顔。もの欲しそうな瞳。
ささやくようにキラにねだる声。
「昨日まで腰痛で、ずっとショーツ脱いだままだったでしょ。なんか、きつくて、堪らないの。
ねえ! キラ、早く脱がせて」
それを、見返すキラの顔は…
優しく微笑んでいる。そして、目には、あの子と同じ酔いしれた色が…
それは、私の夢と同じ。
そのまま、部屋へ吸い込まれていくように消える二人。
あああ！ あの子許せない。
あの子に、そんな資格無いのに。
キラを貶めた、あの子に、そんな、優しい目が向けられるはずが無いのに。
あんな、嬉しそうな、切ないような顔する資格ないのに。
私、あの子嫌い。あの子許せない。
キラのいない朝が来た。
無意識に伸ばして空を切る手に、キラがいないことを実感する。
いえ、別に、こんなこと初めてじゃない。私が寝坊している間に、
キラが出かけるなんて、しょっちゅうだったんだから。
仕事にも、身が入らない。洗濯・掃除・その他雑用。
いつもは、自分たちの汚したシーツを、どうやって見つからずに洗おうか、
ドキドキしてたけど、今日は、そんなことも無い。
私が、如何に、下心ありで仕事をしていたかが分かる。
修理中で動かないアークエンジェルの中では、いつもより、
さらに時間の進みが遅い気がする。キラからの連絡は夜。
ジリジリしながら、その時まで待つだけ。
私の体に、一昨日のキラのぬくもりが蘇る。
その感触を噛み締めながら、ひたすら時間が過ぎていくのを耐える。
夜、やっと待ち焦がれたキラの通信が入った。
何か声が上ずっていたのを、取次ぐミリアリアに気づかれなかったか心配。
「フレイ、元気だった」
「ええ、キラ…」
モニタごしに見るキラの顔、今までと違う感じがする。
私、キラに言葉をかけようとする。だけど、言葉が出て来ない。
何を話していいのか分からない。
今まで一緒にいたときは、ただ、キラに触れれば良かったのに。
唇を合わせれば良かったのに。体を重ねれば良かったのに。
ろくなことも話せないまま、通信時間は終わった。
不完全燃焼な気持ちが残っただけ。
私って、こんなに口下手だったっけ。こんなに不器用だったっけ。
<トリィ？>
キラが置いていった、トリィが、私の肩にとまった。
トリィは、ロボット鳥だ。といっても、大層なものでは無く、
私が小さい頃に流行ったオモチャに過ぎない。私も、いくつも持っていたけど、
単純な動きで、すぐに飽きてしまった。
だけど、キラのトリィは、どこか違う、まるで本物の鳥のような動きをするし、
特に私には、よくなついてくる。あちこちを改造してあるらしい。
キラが作ったの？って聞いてみたことがあるけど、自分では無く友人の作ったものだという。
多分、あのザフトにいるという友人のことなのだろう。
ただ、プログラムについては、その友人といろいろ話し合って作っていたことがあり、
おそらく、トリィも、それを使っているだろうと言っていた。
だから、トリィの行動は、キラの考えを写したものであり、そういう意味では、
キラの分身とも言えるのかもしれない。
私は、トリィに話しかける。
「ねえ、トリィ、私ってキラと普通に話してたわよね。
今まで、普通に話してたわよね。変じゃ無かったわよね」
<トリィ！>
肯定したのか否定したのか、分からないままトリィは頷いたり、首を振ったりしている。
「トリィ、あのね…」
私は、トリィを手に乗せて、ベッドに横になると、明日こそはちゃんとキラと
話そうと、トリィを相手に言葉を選びはじめていた。
「艦長は不味いよな。副長も苦手だ。となるとキースだが、あいつに借りを作るのもなあ。サイなら知ってるかも」
まずは安全牌からいこうと思ったカガリはサイを求めてサイ達の部屋を目指した。幸いにサイは自室のベッドに腰掛けて本を読んでいた。
「おい、入ってもいいか？」
「ん、なんだ、カガリか」
「私で悪かったな」
カガリは不満そうに口を尖らせながら部屋に入ってきた。どうやらサイ以外に人はいないらしい。カガリはサイと向かい合うように椅子を引っ張ってきて腰掛けた。
「なあ、お前は、なんでキラとフレイが別れたのか、知らないか？」
「･･････なんでそんな事を聞きたがる？」
本から顔を上げたサイは怪訝そうに問いかけた。カガリは少し困った顔でさっきのフレイとの話を聞かせる。それを聞いたサイはやっぱりかと呟き、重苦しい溜息を吐いた。カガリはそれはどういう意味かと問い質すと、サイは気乗りしない様子で語り出した。
「フレイは、キラの事が好きなんだよ」
「おかしいじゃないか。好きならどうして別れたんだ？」
「俺にも分からない。ただ、最初にフレイがキラに近付いたのは別の理由だったと思う。最初は好きでもなんでも無かったみたいだ。それが何時の間にか本当に好きになってたんだろうな」
「じゃあ、その好きじゃないのに近付いたって辺りに理由があるのかな？」
カガリは神妙な顔で考え出した。だが、サイは気乗りしないらしく、また本に視線を落とす。それを見てカガリは気分を害したようで、いささか刺のある声で文句を言った。
「何だよ、お前も一緒に考えろよ」
「興味無いよ」
「じゃあお前は２人があのままでいいってのかよ！？」
声を荒げるカガリに、サイは勢い良く本を閉じるとキッとカガリを睨みつけた。
「お前に何が分かる。フレイは、元々は俺の婚約者だったんだぞ！」
「･･･････え？」
「それがいきなりフレイが離れていって、納得出来ない感情をやっと押さえられるようになったんだ。頼むから俺を巻き込まないでくれ！」
サイの激情混じりの言葉に、カガリはそれまでの勢いが嘘のように肩を落とし、しおらしくなった。
「ご免、そんな事知らなくて」
「･･････いや、俺の方こそ怒鳴ったりして悪かった」
サイもまた勢いを無くし、本を置いてカガリを見た。カガリも困り果てた顔をしている。
「フレイが何を考えてるのか、俺にも分からない。知ってるとしたらキラか、キースさんか艦長だろう。フレイは２人にいろいろ相談してるみたいだし」
「だけど、キラは論外として、あの２人が教えてくれるとは思えないぞ。特にキースは締める所はちゃんとしてるしな」
「･･････じゃあ、どうするんだ？」
サイの問い掛けにカガリは悩みこんでしまった。結局、教えてくれそうな相手がいないのだ。サイも当てが無く、２人は延々と考え続ける事になる。そして、サイは１つの決意を固めていた。自分にも決着を付ける時が来たのだと。
本格的にリンクしだします。
フレイＳＳでも、少し話が出た「腰痛」ですが、これは、私の未発表の個人ＳＳのエピソードで、
フレイは、本当にトイレで転んで腰を打っています。この時、キラとフレイの間で
何が起きたのか、フレイが回復する数日間に、どういうことがあったかは、ご想像におまかせします。
(ちょっと、このスレでは発禁ものなので)
>キラ（♀）
スカイグラスパーで、ストライクごと運搬するなんて無理ありそう。
大河原さん、怒ってくるかな。
ソードストライカーでの砂漠線。ボツったって、どこかの文章にあったから、
こういう補完もたのしいかも。
「キースさん、俺は、どうしたら良いんでしょう？」
「どうしたらって言われてもな。そもそも、トールは２人をどう思ってるんだ？」
これが１番の問題なのだ。２人をどう思っているかによって、これからどう関わって行けば良いのかが変わってくる。トールはキースの問い掛けに、言葉に詰まったが、渋々という感じで口を開いた。
「キラと別れたフレイの判断は、間違って無かったとは思います。父さんを殺されたフレイの気持ちは分かりますし、同情しますが、それでキラを恨むのは筋違いですから。フレイがそれに気付いて、キラに謝罪したのは良かったと思ってます」
「ふむ、それで、その後は？」
「･･････今更ですが、キラにはフレイが必要だったんじゃないかと思います。別れるのは仕方ないにしても、もう少しやり方があったんじゃないかと･･･････今みたいな断絶じゃなくて、友達に戻るとか」
でも、ならばどうすれば良かったのかと問われたら、トールにも答える事は出来ない。別れなければ良かったとは言えない。あのまま一緒に居るのが２人にとって良い事だとは思えない。
トールの答えを聞いたキースは、ポンとトールの肩を叩いた。
「そこまで考えてるなら上出来だ。正直、お前達は全員キラとフレイを見限ったかと心配してたんだがな」
「ミリィは完全にフレイを見限ってますね。サイもフレイを嫌いになってる様に見えます。カズィは、我関せずですね」
「･･････賢い選択だな。カズィは」
キースはやれやれと溜息をつき、トールにフレイの決意と、彼女を取り巻く環境を教えた。フレイの決意と、自分たちが彼女を支えている事を。それを聞かされたトールは流石に驚いていた。
「あのバジルール中尉までフレイを？」
「まあ、お前達が考えているより、フレイの味方は多いって事さ。何しろ艦長はあの性格だし、俺はフレイを気に入ってる。バジルール中尉にフレイを任せたの俺だよ。おかげで随分鍛えられてるみたいだがね。その内ＣＩＣに座るフレイが見られるかもよ」
「ま、まさか、そんな事は無いでしょう？」
「分からんぞお。バジルール中尉は『やるからには、私の全てを彼女に叩き込みます！』と息巻いてたからなあ。気が付いたら大化けしてるかもしれんぞ」
「････････････････････････」
トールは、フレイが決して馬鹿でも、物覚えが悪い訳でもない事を思いだし、ゾッと身震いした。もし、フレイがＣＩＣに座って指示を出すようになったら、アークエンジェルの命運は･･･････
「ま、まあ、その事は置いとくとして、俺に何が出来るのかです」
「そうだな、とりあえずキラとフレイ、２人に今までと変わらず接してやってくれ。フレイはとりあえず目前の課題をこなすのに手一杯で、他の事に気を回す余裕は少なそうだから、キラの方を優先的に」
「は、はい。でも、キラは俺達を避けてるみたいなんですけど」
困った顔をするトールに、キースは困った顔になった。
「そこまでは俺にもどうしようもないしなあ。頑張ってくれとしか言えん。一応、俺も頑張るけどな」
なんだか肝心な所で頼りないキースに、トールはガックリと肩を落とした。
なんというか、アメフドまで反転してたのか･･････カガリはやっぱり全てを聞かされているみたいですな。キラが羨ましいのか、それとも憎いのかが微妙
しかし、スカグラでストライクの輸送は流石に無茶では･･････ガンペリーやコルベットブースターみたいな輸送ユニットじゃないから推力不足だと思う
何気に虎が本編以上にお茶目な性格で、ダコスタの苦労が更に増えていそうです
>>503
ええと、フレイ様の嫉妬が解消というのは少し違います。こっちではフレイ様はカガリに嫉妬する以前の段階で過ちに気付いてしまってるので、フレイ様から見たカガリは嫉妬の対象ではなく、キラに接してくれる自分以外の女性という立場です
ううむ、ミリィの性格がどんどん危険な方向に向って、妄想癖までが生まれている。すでにフレイ様以上の危険人物という気さえしてきたのは何故？
フレイ様は下心ありありでお仕事してたのか。だが、いざ話そうとすると何も言えなくなるって、恋する乙女の前段階か？
いきなりなのですが、作者の皆様方に質問があります。
種のシリーズ構成、Ｍ沢Ｔ晶氏がガンダムＡのインタビューにて、
”（種に出てくる女性は強いといわれるが）フレイは弱い。彼女の
性格は弱さゆえのもの（手元にガンダムＡが無いので若干ニュア
ンスが違っているかもしれません）”と語っていました。
こちらのＳＳには様々なフレイが存在している訳ですが、彼女達（彼）
もＭ沢氏のいう”弱さ”を持っていると思いますか？
（特に”キラ♀”のフレイ君）
また物語を作る上でそれを意識される事はありますか？
もちろん物語の進行具合等によって彼らの状況は異なるかと思いますが、
答えられる範囲でいいので教えて頂けると有難いです。
もしネタばれになりそうでしたら、スルーして貰って構いません。
これからも皆さんの作品を楽しみにしてます。頑張って下さい。
私のＳＳは始まったばかりで、そのうちに、それと直接分かる表現が何度も出てきます。
ただ、話を作る時は、"弱さ" を、例え一歩でも克服していくのは、王道のひとつとしてあり、
それ故に、自分はフレイ様の魅力に取り憑かれているのだと思っています。
>流離
投下中、割り込んですいませんでした。
サイは動くんですね。トールは優柔不断ぽいな、その方がらしいけど。
フレイ様 CIC というより、本編イメージ的には副長席に座るということですね。
「ゴッドフリート照準。当てるのよ。テーッ！」
うーむ、私は見たいかな？
カガリがなかなかいいヤツですね。ただの
バカじゃないというか、本編の要領の悪さ
を継承しつつも、もうちょっと屈折していますね。
>流離
今はただの無駄飯食らいでリストラ寸前の
カガリですが、フレイ様から託されたキラ
のサポートは重大な仕事なるのかもしれませんね。
CICってナタルのポジションかあ。たしかにあの声
で｢てー」は聞いてみたい気はします。
>ミリアリア
昨日再放送４話でミリアリアが｢よろしくね」とか
言ってウインクしてましたが、ssの影響で深読みし
まくりで、まともに見れなくなりましたw
しかしミリアリアの｢純粋なキラ」とか｢キラがザフト
に捕まったのを助け」るとか、脳内で自己完結しまくり
で面白いです。
>オーブ･フレイの心
ああ、ミリアリアssとつながりましたね。最初
｢相互に補完」という意味がわからなくて。中々荒業
繰出してきますね。
「まったくあいつらはどこいったんだ 勝手な行動ばかり とりやがって
迷子になっても知らないからな。
しかし春コレがこんなににぎやかで華やかだとは思って もなかった。
ファッションの世界でも数あるファッションショーとはいえ
これだけの関係者やマスコミ、プロダクション、ブランド、モデル、セレブが一斉に集まると
こうなるのか・・・
前にテレビでちらっとみたことはあるが、
百聞は一見に如かずか・・・
でもおれはこんな華やかな世界には縁がないし、
興味もない。
そういえばアスランはどこにいるんだ、
あいつも取材できてるとは思うんだが
ザフトも毎月８０万部以上売れるんだから、
やりがいがあるんだろうな
それにくれべ、おれは開発企画部なんかに
配属されなきゃいけないんだ！
もっとおれはいろんなことをやりたいというのに」
アスランから春コレのパスをもらって見にきていた
イザーク、ディアッカ、ニコルの三人だったが
二人が勝手にどこかにいってしまったため、
一人取り残されたイザークは一人で会場を歩き回っていた。
一般の人が想像すると笑ってしまうのだが、
その髪型とルックスがとてもマッチアップしていて、
美男子いや貴公子ともいえるかもしれない
それがイザーク・ジュールだ。
べつに髪型にこだわってるわけではない、ただ自然に任せればこういう髪型になった
ただそれだけのこと、この髪型が自分に合うかどうかなど知ったことじゃない。
そんなぶっきらぼうなことを思ってるイザークだが周りの反応は違ったみたいだ。
「あのルックスだからこそあのヘアスタイルが生きるのよ」
「どうしたらあんなイイ男になれるのかしら」
「あの女心をゆさぶるあの目つきがたまらないのよ〜」
「名前も素敵、わたしの白馬の王子様になってくれないかしら」
「あの髪の美しさは誰に手入れしてもらってるのかしら」
「母性反応をくすぶられるわ」
社内の女性からはこういった声が聞こえられる。イザーク様をものにしたいと！
そんな反応をよそにイザークはクールだった。
オレはオレだ ひとの物でもなければ会社のものでもない
アスラン、ディアッカ、ニコルの３人だった。
自分でもわからない・・・性格も、人格も、人柄も、考え方も、教養も、思考も知識も、全然違うのに、
なぜかこの３人だけは心を許せるのか・・・
なぜだろう、友達？家族？親友？盟友？仕事仲間？兄弟？同志？
おそらくすべてかもしれない・・・こいつらだけは・・・許せる・・・？
でもこれだけはいえる、俺たちは固い絆で結ばれてる。
喜怒哀楽を共にし、痛みを共有できる仲だ、それでいい これからも・・・
そんなことを思って歩いていたイザークはあるブースに出くわした。
それはまだ未発売で新商品のゲームソフトプロモーションコーナーで、展示されてるゲームを一つでもクリアし、
最高得点を記録したものは賞品がでるという
イザークにとって興味深いところだった。
その賞品とは主催してるゲーム会社が出版しているゲーム雑誌の表紙を飾れるという
ものだった。
ファッションショーに新作ゲームのプロモーションコーナーがあるというと
疑問に思うところだが、今回が初の試みでもあるということで
関係者の期待と心配がそこにはあった。
ま、ゲームが得意の俺様にはもってこいだがな、
さて目当てのゲームとは・・と
ん？ あれは・・・」
イザークの目にとまったのはイザークがもっとも苦手とし、どうしても
クリアができなく、ついイライラしてしまう、
ＧＵＮＤＡＭ ＳＥＥＤだった。
自分の欠点がすぐイライラするのは欠点だと思ってるのだが、ついゲームになると
その欠点が表に出てしまう、それをわかりつつも挑戦しようとおもったイザークだった。
新作とはいえ旧作より難しくなってるのは当然だ。
でもちょうどいい、今日こそこの場で、大勢のみている
場でケリをつけてやる。
イザークはこのゲームをやる時はデュエルという
モビルスーツを選択する。
理由はとくにないが、おれにあってるし、動きやすいし、かっこいいし
好きだからというシンプルな理由だ。
イザークがもっとも苦手としてる敵はストライクというモビルスーツだった。
とにかく強いのだ、あと少しで勝てるという時もあったが、最後は負けるのだった。
前の人がどいたので、イザークの出番がやってきた。
「今日こそ、ケリをつけてやる、ストライク〜、
この傷の礼をたっぷり返してやる！」
その傷とは家で前にＧＵＮＤＡＭ ＳＥＥＤをやってた時にデュエルで戦っていたイザークはもう少しで勝てると
おもってたのに最後でストライクに負け、
イラついて 手元にあった灰皿を窓ガラスに投げつけ、
それで砕け散ったガラスの破片が
額に当たり、大きな傷跡を残してしまったのだった。
目の中にガラスの破片がはいらなかったのは不幸中の幸いだった。
「なぜ、こんなに強いんだ、こいつは、たかがゲームなの に・・・
こいつのせいでオレはイライラする。強すぎるんだ
こいつは、
でも今日こそ この場でケリをつける、
この傷のお礼もな！」
イザークがコントロールスティックを握り、ゲームを開始した。
「おれのデュエルがアサルトシュラウド・デュエルにパワーアップしている。
これなら勝てる、ストライクに！
見ていろストライク〜」
ゲームは終始イザークが圧倒し、ほとんどを制覇していき
ついに悲願のライバルストライクとの対戦まで
たどりついた。
そして決戦の火蓋はきられ、アサルトデュエルのイザークは最初から攻撃的に攻めた
「よし、いけるこのアサルトデュエルなら・・・ フフフ 今日こそ傷の礼を返してもらう」
そしてついにイザークのアサルトデュエルが勝ち、その場にいたギャラリーも盛り上がった。
「やった！ついにストライクを撃沈した。しかもダメージ をそんなに受けてないし この満足感はたまらない
ハハハ やったぞ今度こそ」
喜びのつかの間、最後の敵が現れ、イザークは戦闘モードにもどった
「なんだ、こいつ・・・ フリーダム？
見たことも聞いたこともないやつだ
ま〜いい、どちらにせよ、ストライクと同じ運命をたどるのだから」
だが、イザークの意気込みとは裏腹に完敗してしまったのだ。しかも相手はノーダメージでだ
「なんなんだこいつは、いったいどうなってるんだこいつ は、フリーダムだと〜
どうしてこうつよいやつが出てくるんだ、くそ〜
くそ、くそ、くそ、くそ、
くそーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
そのイザークのあまりの苛立ちとあせりは盛り上がっていたギャラリーを冷ましてしまい、周りにいた子供たちも
泣きだす子がでてきてしまうほどだった。
Ｍ沢Ｔ晶氏には「なるほど、ラクスとカガリとミリィとマリューは強いのですね。
結果は国家反逆者とキレると見境がつかない…機密ＭＳ強奪、ジープでＭＳに特攻、
包丁ぶっさし、自らはともかく部下全員脱走兵ですものね（藁」と言いたいですね。
人間誰でもそうですが、強さと弱さが同居しています。
コインの裏表ですね。フレイ様はどちらかというと弱さや脆さが前に出がちですが、
ある環境においては強さを選択できる人だと思っています。
ただ、キラが傍にいる（頼れる人が傍にいる）、ザフトに拉致られる、といった条件では
強さが前面に出てくることは無理でしょう。逆になにかのきっかけで
「強さ」が発揮される局面は多いにあるでしょう。
私の場合は、優秀な上官と「指揮官」としての義務と責任という事態に直面した時
「フレイ様にもこういう成長はありえるだろう」ということで書きましたが。
私はそんな強さと弱さが見えるフレイ様は魅力的だと思います。
…というより、冬コミ原稿がザフト拉致フレイ様状態でピンチだよヽ(｀Д´)シ)))w
まだ逆転の目があることを信じて。
初恋のアスランとは完全に敵対し、処女を捧げた（奪われた？）相手は常人にはまず
理解不能な理由でキラ（♀）をしつこく逆恨みする最凶の悪魔という薄幸のヒロイン。
単に台詞を男から女に変えるだけじゃ面白くないだろうということで、本編の
泣き虫属性を大幅にパワーアップ。鳥頭については本編キラを見て、筆者が
素直に感じた事をそのまま継承。意外に面食い気質。種割れはしない予定。
☆フレイ・アルスター（♂）１７歳 身長１７４ｃｍ
今現在、最も筆者の手を離れて一人歩きし、暴走を続けるラスボス候補最右翼。
書き始めた当初は、本編フレイ様との、単なる男バージョンの完全互換を目指していたが、
フレイ様のあのキャラクターは、可愛い女の子だから許されるところがあったみたいで、
書いている方でさえ、あまりに殺意を抱く情けないヘタレっぷりに急遽設定を大幅変更。
結果、本編に比べてかなり現実感覚が高くて有能なキャラになってしまったので、
フレイという名の完全オリキャラと皮肉られても正直反論できないのが辛いところ。
そのうち、お話の中で紹介するが、（♂）フレイ様は、本当の意味でのマザー・コンプレックス
という病気。母が望むなら、平気で人を殺せるし、死ねと命じられれば喜んで死ぬ。
これを強い・弱いの尺度で測るか、単なるガイキチと取るかは微妙なところ。
My thought defends noname氏の質問に答えるならそんなところ。
あと、自分はガンダムは初代しか知らなくて、種もフレイ様の活躍のみ目当てで見ていた、
完璧なフレイ様原理主義者の口なので、種はともかくフレイ様への愛を疑われたのは
ちょっとショックだった。
☆サイ・アーガイル（♀）１７歳 身長１６４ｃｍ Ｂ８６Ｗ５７Ｈ８４
多分、キラ（♀）に匹敵する薄幸のヒロイン（全部、あの悪魔が悪いんだけど）
基本的には本編と同じく、凄く良い娘なんだけど、（♂）フレイ様のはっちゃけ具合に
引っ張られて、ちょっと暴走気味。このまま落ちるところまで落ちるか、それとも
本編のように立ち直って良い人に戻れるかは未定。これから反転キャラを出す時は、
最初にイメージを作りこめるように、性格や外見の詳細描写をする予定。
☆カガリ・ユラ（♂）１６歳 身長１５９ｃｍ
多分誰でも知っているキラの双子の兄妹。本編では男と間違われ気味なので、逆を目指す。
本編ではウズミが死ぬ寸前まで隠していた出生の秘密を、どこからか聞きつけたらしく、
今現在はキラ（♀）に愛憎並存（アンビバレンス）状態だが、シスコンの素養がある
ようなので、（♂）フレイ様と完全対立するのは時間の問題。キラ（♀）とは、血縁を
最初から知っているので、本編のような一時的な恋愛状態にはならないはず。
☆ニコル・アルマフィー（♀）１５歳 身長１６０ｃｍ Ｂ７７Ｗ５４Ｈ７９
反転要望のリクエストに応えて、とりあえず反転させてみただけ。
反転させた以上は、そのうちアスラン絡みででも何かエピソードを作る予定。
反転要望は意外に登用率が高いようで、例の三人組も今のところ反転予定。
（自分はビデオ追っかけ組なので、ラスト五話を除けば、現在のビデオ地点（３２話）
までしか映像を見ていないので、今はオリジナルの彼らに思い入れがないからだが）
☆ジョアン・アルスター（♀）３３歳 身長１６５ｃｍ Ｂ８８Ｗ５８Ｈ８６
（♂）フレイ様の母親で、連邦の外務次官。故人。
１６歳の若さで、アルスター家に嫁いでいて、（♂）フレイ様を産んで、すぐに夫に
先立たれて政界入り。お約束だが実年齢よりもはるかに若く見える（外見年齢２４歳）
故人ではあるが、この先も物語のターニングポイントでちょくちょく出演する予定。
イメージ的には、本編フレイ様の十年後の姿から、さらに母性要素を強くした感じ。
☆アフメ（♀）１６歳 身長１６９ｃｍ Ｂ７９Ｗ５６Ｈ８３
アフメド反転バージョンでカガリストーカの少女。故人。
カガリ（♂）が彼女を避けていたのは、チビのカガリ（♂）は長身の彼女に
コンプレックスを感じている要素が強かったからで、（かぼちゃワイン状態）
カガリ（♂）には是非ともシークレットブーツの購入をお勧めする。
メカオンチの筆者でも少し無理があるかなとは思いましたが、あの流れだとああしないと、
どうしてもフラガの方がかなり早く戦場についてしまうので、仕方なくああしました。（反省）
今後も筆者はノリ優先で、あまり深くメカ考証せずに、どんどん思いついた
無茶設定を追加していくと思うので、楽しく突っ込んでもらえれば幸いです。
後、今までたくさんの感想どうもです。全くレスは返さないけど励みになってます。
筆者は一度感想の遣り取りで酷い目にあったトラウマが未だに抜け気っていないので、
多分、今後もレスは返さないと思いますが、きちんと作品を完結させることだけは
約束します。
ＨＰは持っていません。単なる流れ者のフレイ様ファンの一人なので御気になさらずに。
キラとの通信、毎日すると約束した。時間は、夜、宿舎に帰ってからのはずだった。
でも、時間はかなり前後して安定しない。
通信が入るまで、ただ、私は待つことしかできない。
いつ来るのかという焦燥感。胸が苦しい。
なんで、私がこんな目に逢わなきゃならないのよ。
いつしか、心の中で、キラに毒ついたりもする。
やっと、キラから通信が入る。呼び出すミリアリアの声、
そのとき、私の胸は一気に高まる。顔が上気する。
鏡で見たら多分、自分でも驚くような興奮した顔をしていたのだろう。
ミリアリアとの受け答えももどかしく、キラとの交代を伝える。
キラの顔がモニタに写る。再び、私の顔が変わる。表情が緩んでいるのが分かる。
でも、私の歓喜は、ここまで。
キラに話しかける言葉が出て来ない。あれほど、考えて準備してあったはずなのに。
私の口から出るのは、キラの名と曖昧な返事だけ。
ただ、沈黙と意味のない受け答えだけの時間が過ぎる。
キラとの通信が切れる。ミリアリアに通信終了をを告げる。これは、艦外との通信の規約だ。
守らないと、次回通信できなくなる。
通信が切れた途端、私は不満と自己嫌悪に悩まされる。
こんなことが何日も続いている。
明日こそは、明日こそはと思いながら、何も変わらない。
私って、いつの間に、こんなにダメになったの。
自分の気持ちを、言葉にして伝えることが、まるでできない。
キラに触れられさえすればいいのに、キラに体を預ければ、
それだけで伝わるはずなのに。
だんだん キラとの通信自体が恐くなる私。でも、通信への期待感は止められない。
どんどん 落ち込んでいく私。
こんなはずじゃ無かったのに、毎日連絡するからいいと思っていたのに、余計に私の心を苛むなんて。
私、思い余ってマリューさんに相談に行った。
「マリューさん、キラの仕事はどうなんですか。もう終わっているんじゃないんですか」
「キラ君から直接、話は聞いていないの？」
「キラからは忙しいとしか…」
「専門的な話だからかしらね。とにかく、キラ君の話だと一週間では難しいらしいわ。
こちらも出発をあまり伸ばしたく無いから、キラ君には無理をしてもらっているけど。
予定より、少し伸びることは我慢してもらわないと」
「嘘、一週間で終わるって言ってたのに」
「仕方無いわよ、予定だったんだから。仕事だから伸びることもあるのよ。分かって」
「嘘、そんなことって。約束なんだから、キラ、一週間で帰るように言ってください」
「無理よ、キラ君自身が言ってることだから」
「嘘、嘘、約束したのに」
「フレイさん。聞き分けないこと言わないの。大人でしょ」
私は、まるでパパに無理を言って、駄々をこねる子供のようだった。
艦長はさすがに見かねたのか、私を静かに諭すように言った。
「フレイさん。あなた、もっと大人になりなさい。キラ君は、大人よ。
彼に恥ずかしくないの」
「いや！ 私、大人なんかじゃ無い」
私はマリューさんの部屋を飛び出した。
私は辛いことがあると、すぐに、その場を逃げ出してしまう。
私って、まるで子供だ。
次のキラとの通信のとき、私は、もう言葉を選ぶことをしなかった。
キラの話も聞かず、ただ、キラに帰って欲しいということだけを何度も言った。
「キラ！帰ってきて! お願い帰ってきて! 早く! お願い」
「フレイ、どうしたんだ」
「もうすぐ一週間よ、仕事、もう終わってるんでしょ。意地悪してるんでしょ」
「フレイ、ごめん。もう少しかかるんだ、我慢して」
「嘘、キラなんでしょ。キラなんだから、そんなにかかる訳ない」
「本当なんだ分かって、フレイ」
「嘘つき、一週間て言ったくせに、嘘つき」
「フレイ…」
「ねぇ、キラ、本当に帰ってよ。ちょっとでもいいから、ほら」
私は、モニタのカメラの前で服を脱ぎはじめた。
「ちょっと、フレイ、落ち着いて！」キラが焦ったように声を立てる。
私は全裸になると、キラに見えるようにカメラに体を近づけながら言った。
「ほら、キラ、欲しいでしょ私の体。堪らないでしょ。帰ってきてよ、ほら」
「フレイ、今日はもう切るよ、お願いだ。頭を冷やしてくれ」
キラの通信が切れた。私は、しばらく、ぼうっとしていた。
やがてのろのろと服を拾い集め、上着で上半身だけを隠すと、
規約に従って、ミリアリアに通信終了を告げた。
「ずいぶん、長かったわね。キラどうだったの？」
ミリアリアが、あきらかに嫌みを込めた口調で聞く。
「別に、なんでも無いわ」
私はそっけなく言うと、そのまま通信を切って、ベッドに突っ伏した。
さすがにやりすぎたと思った。後悔していた。悲しかった。
自分でも何で、こんなことしたのか、ここまでしなければならなかったのか分からなかった。
(大人になりなさい) マリューさんの言葉が思い出された。
自分で裸になったせいか、無性に、キラの体が欲しくて堪らなかった。
自分の指で、初めて自分の体を、触ってみた。
でも、いくら自分でいじっても、キラの愛撫が思い出されるだけ。
下手くそな自分の指に、余計、嫌悪感が募り、私は 裸に上着を羽織っただけの
肩を震わせて泣いた。
<トリィ！>
嗚咽を繰り返す私の背に トリィがとまった
私は、トリィを手に乗せると、まるでキラの胸にしたときのように、
軽くほおずりをした。今は、トリィだけが、私を癒してくれていた。
オーブに帰ってきた。私の故郷オーブに。
アークエンジェルがザフトの四機のＧの攻撃を受けて、オーブの領海に落ちた。
その時、アークエンジェルを取り囲むオーブの軍艦に向かって、砂漠のレジスタンスの子、
カガリさんが叫んでいた。
「父をウズミ・ナラ・アスハを呼んでくれ。私はカガリ・ユラ・アスハだ！」
びっくり。カガリさんで、アスハ前代表の娘だったんだ。
私の生まれた国のことなのに、全然知らなかった。
カガリさん、砂漠からアークエンジェルに無理矢理乗り込んで来た。
私は、全然覚えていないけど、キラによると、あのヘリオポリスの
ザフト襲撃の時、カトウゼミに来ていたのだそうだ。私には、どういう経緯なのか、
さっぱり分からないけど。
砂漠の時、カガリさんは、私が軍人なのに、銃も使えないと驚いてた。
スカイグラスパーにも乗って、フラガ少佐と一緒にザフトと戦っていたし、
私とは違う戦争のプロだと思っていたのに。まさか、私の国の、お姫様。
オーブに来て、カガリさんがドレス姿でアークエンジェルを降りた時は、
あまりに似合ってるんで驚いた。普段のカガリさんからは思いもつかなかった。
なんだかびっくりすることばかりだ。
お姫様、昔あこがれた。私、本好きだったから、いろいろなお話も読んだ。
好きなマンガにも、結構、お姫様とか出てくる。
カガリさんみたいに、男勝りに戦うお姫様のストーリーもたくさんある。
お姫様と一緒に、必ず出てくるのは、王子様、またはお姫様を守るナイト。
お姫様は、このどちらかと恋に落ちるの。
カガリさんの王子様・ナイトは、誰なんだろう。
やっぱり、ナイトはキラなのかな。
カガリさんが、タッシル襲撃の復讐でバクゥに無謀な反撃をした時に、助けたのはキラのストライク。
それに、砂漠の虎に二人が捕まった時も、キラが守って、釈放されたということらしい。
アークエンジェルに乗り込んだ後も、カガリさん、キラの仕事しているところに、
ちょくちょく顔を出していた。
そして、カガリさんが太平洋でスカイグラスパーに乗って遭難した時。
キラは疲れた体を押して必死でカガリさんを捜索した。
見つかって、ストライクのコクピットからキラとカガリさんが、一緒に現れた時、
それは、お姫様とナイトそのものだった。
でも、不思議とカガリさん相手だと嫉妬心は沸かない。
カガリさんは、まっすぐで、思ったことを素直に話して、行動する。
なんだか、キラは、カガリさんと話すようになって、
砂漠での、おかしい状態から、元に戻ったような気がする。
こんな人なら、キラが憧れても許せるかもしれない。
カガリさん、私より、ずっと立派な人。あの子とは全然違う。
カガリさんが、お姫様なら、あの子は、キラを惑わせる魔女。
マンガの場合、最後のカタルシスのためには、魔女は徹底的にナイトを陥れる。
場合によっては、惑わされ敵になったナイトを、元に戻そうと必死で、お姫様は戦う。
お姫様は、苦しんで苦しんで、それでも希望を失わずに戦って、
やがて、その努力は報われ、お姫様とナイトは手を取り合い、魔女は退治される。
でも、現実は、マンガみたいにいかない。カガリさんは、あの子の
魔女的な部分を、そもそも知らない。
おかげで、魔女はナイトを好き勝手し放題。
今も、あの子は、キラと一緒に部屋にいる。
あの子は、キラに魔法の言葉を囁く。魅惑の魔法をかける。
キラを貶めて、キラを誘惑して、キラを虜にして。
お姫様、キラを救ってよ。
でも、お姫様・ナイト・魔女の出番があっても、私の出番は無い。
キラが好きなのに、私には何の出番も無い。
私の故郷、オーブに帰ってきて、私はセンチメンタルになってる。
ここには、カレッジ入学で離れていた、お父さん・お母さんもいる。
「リタイヤしちゃおうか…」
私は、そんなことを呟いた。
どうも、メッセージ受け取りました。感想は、その度ごとになにかあれば
付け加えますので、どうか完結までがんばってください。
ジョアン・アルスターって、この紹介だと、私が以前、「クローン・フレイ」というＳＳを
書いていた時のフレイ様のクローン元の女性のイメージに重なりますね。
私の方でも、少しずつイメージが固まりつつありますが、文章にまでなるかは
分かりません。
「トリィっ」
「ただいま、トリィ」
フレイはトリィを肩に乗せたまま抱えていた資料をサイドテーブルに置いた。ナタルのスパルタぶりはキースを凌ぐほどで、毎日が地獄のような日々なのだ。
「ふう、これじゃ体が持たないわ」
椅子に腰掛けて少しだけグッタリした後、シャワーを浴びてベッドに入った。明日もまた地獄のような訓練と勉強があるのだ。少しでも体力を回復させないといけない。シーツを被って寝ようとする。
だが、目を閉じても脳裏に浮かぶ姿に苦しめられる。何故、もう彼の所には戻れないのに、諦めると決めたのに、未練がましく思い出してしまう。
それでも暫くするとうとうとしてくる。だが、そうなると決まって悪夢にうなされて目が覚めてしまう。あのデュエルとの戦いが、今でも恐ろしい。あの時は本当に殺されると思ったのだ。
キラと別れてから、もうずっとこんな日々が続いている。でも耐えなくてはならない。これは、自分には丁度いい責め苦でもあるから。キラの分まで恐怖に震えれば良い。
「･･････キラ、今頃どうしてるかなあ」
私がいなくなって清々してるだろうか。それとも寂しくて１人で泣いてるのだろうか。何となく後者という気がする。キラは本当に泣き虫だったから。でも、きっと大丈夫。キラにはみんなも、カガリもいる。すぐに私の事なんか忘れて元気になれる。
どれほど時が立っただろうか、扉が開いたような気がした。そちらを見ると、そこにキラが立っている。
「キラっ！？」
驚いてベッド上に起き上がる。だが、そこに彼の姿は無かった。慌てて辺りを見回してもキラの姿は無い。そもそも扉のロックはちゃんとかかっている。
「キラ･･････････」
私は馬鹿だ。あんなに酷い事をしたのに、まだ彼を吹っ切れないでいる。いるはずの無いあの人が見えるなんて。忘れなくちゃいけないのに、目を閉じればあの人の顔ばかりが浮かんでくる。もうあの時は取り戻せないのに。
「･･････私は･･････私は･･････」
シーツを体に巻いてきつく握り締める。寒かった。室温は適温に保たれている筈なのに、酷く寒かった。
上半身を起した私に気付いたのか、トリィが飛んできて私の前に止まった。軽く首を傾げる姿は見ていて可愛いが、今はどうしても彼の姿を思い出させてしまう。その頬を熱いものがつたり落ちると、もう止める事はできなかった。
「トリィ、私、私･･････どうしたらいいの･･･････」
涙を流しながらトリィに問い掛けるフレイ。答えなど期待してはいない。ただ、話す相手が欲しかったのだ。壊れそうな心を繋ぎとめるために。
ただ、何処となくおかしいのだ。その空気がうつったのか、ＣＩＣのミリアリアまでがギスギスした空気を撒き散らすようになり、近くに座るサイやトノムラ、チャンドラに冷や汗をかかせている。
今も訓練中だというのに、まるで殺気寸前のようなヤバイ空気を漂わせているミリアリアの様子をチラリと見たトノムラが背後のサイに小声で問いかけた。
「お、おい、一体何があったんだよ。何時もこの調子じゃ堪らんぜ」
「俺にも分からないんですよ。艦長は何か知ってるみたいですけど、聞いてみますか？」
「冗談はよせって」
小声で語り合う２人。ミリアリアに気付かれないよう自分の仕事をしながらやっているのだから大したものだ。この空気にはマリュ−もナタルの気付いているはずなのだが、今の所２人はなにも言っていない。キースもなにも言わないから情報は完全にシャットアウトされてしまっており、さまざまな憶測が艦内を満たしている。その多くがフレイを非難する類の物だが、とうのフレイがその噂を否定していないのでより事態は悪い方向へと進んでいるのだ。
デュエルを降りてきたフレイはキラの声を聞き、そちらに顔を向けた。ＭＳベッドの方からキラがやってきたのだ。カガリと楽しそうに話している。楽しそうなキラを見たのは本当に久しぶりだ。自分といる時には本心から笑ってはくれなかったから。
あの笑顔は今はカガリのものだ。自分はキラを手放してしまったのだから。もう自分はキラの隣にいることはできないけど、こうしてキラの笑顔を見ることはできる。それでいいのだとフレイは自分に言い聞かせていた。
だが、よく見ればキラの笑顔にやはり翳りがある事に気付けただろう。無理に笑っていると。それに気付けないまま、フレイはまたキラの前から去っていってしまう。
訓練を終えて戻ってきたフレイはＭＳから降り、整備兵に必要な事を話し合うと誰とも顔を合わせることもなくパイロットルームへと消えて行く。何時も通りの事なのだが、それまでが何時もキラと一緒だっただけに違和感が離れない。
「フラガ少佐、何があったんですかねえ。いろいろと悪い噂は飛び交ってますが」
マードックがスカイグラスパーの整備をしているフラガに問い掛けたが、フラガは肩を竦めるだけだった。
「俺にも良く分からないんだよ。話し掛ければちゃんと返事もするし、笑いもするからな。ただキラと会話をしないだけでさ。別れたばかりだっていうならしょうが無いんじゃないか？」
「まあ、そいつは分かるんですがね」
マードックは頭を掻きながらぼやいた。
「付き合うこっちは堪りませんや。縒りを戻せとは言いませんが、せめてもう少し仲直りしてくれないっすかねえ」
「まあなあ。俺もやり辛いってのはあるんだけどな」
フラガも似たような感想を抱いていたようで、苦い表情をしている。まったく、子供達に何があったのやら。
この後はキラは休憩に入るが、フレイはそのままナタルの元で勉強会の筈だ。ナタルが自室を使用して行っているこの勉強会は流石のフラガも介入できない聖域であり、ナタルがどういう教育をしているのかは未知である。また、フレイがどういう生徒なのかも分からない。
この疑問に挑戦した勇者が幾人かいたのだが、全員志半ばで倒れている。その中で数少ない生存者であるＫ氏は後にこう語っている。
「見たんだ。あの副長が伊達眼鏡をかけてハリセンを持っているのを･･････グハァ！」
ただ、Ｋ氏は日頃の言動と行動に少々問題があるためと、この時はもはや息絶え絶えだったという事もあり、この話の信憑性は疑問符をつけられている。また、Ｋ氏は回復後、何故かこの時の事を一切語ろうとはしなかったため、真相は完全に闇の中となってしまっていた。
弱いですか。私の設定だと強さ、弱さは微妙ですねえ。自立出来る強さと言うなら、現時点ではノーです。まだうちのフレイ様は誰かにきっかけを貰わないと変われない人ですし、基本的に依存体質は抜けてません。
皆さんの感想を見ると強くなったとか言われてますが、まだ強くなった訳じゃないんですよね。別れた事でやっとスタートラインに立ったというか、やっと前に進めるようになったというくらいです。
キラは弱いですね。フレイ様とは別の意味で彼も弱くしてあります。強いと言うならヘリオ組では多分トールが１番強いと思いますね。１人で立ち、誰の手も借りずに前を向いて何かをしようとするのは彼だけです。
こんな所ですかね。子供達が強くなるのはまだまだこれからです。大人組も以外と弱い人が多いですけどね。ナタルの弱い面というか、人に依存するシーンも出る予定ですしｗ
>>春コレ
イザーク、そんなに狂犬病じみた壊れ状態でゲームしなくても･･････会社での評価大丈夫か？
>>オーブ･フレイの心
フレイ様、キラが帰ってこないからって体で迫っちゃいけませんよ。キラが引いちゃいますよ。マリュ−さんのいう事を聞いて大人しく待ってましょうね。ミリィは逆に諦めモードですか。これからどうなるのやら･･････
気が付くと私は見渡す限り全てが白い――何もない不思議な場所に立っていた。
「私････死んだはずじゃ･･･？」
「そう、あなたは一応死んだことになってますね。」
「きゃっ！？」
後ろに人がいた！？ 全然気が付かなかった･･･
慌てて振り向くとそこには―――
「――っザフトの制服･･･コーディネーター？！」
緑のザフト服に身を包んだ赤毛の男が立っていた。でも何故か背中に羽根が生えている。
どういうこと？ 私、またザフトに捕まったの？
え？でも死んだはずだし･･･どういうこと？
後ろの人物から距離を取りつつも頭は混乱の極致にいた。
「あぁ〜違います違います、便宜上そういう風に見えるというだけで、実際はこういう格好じゃないんですよ。
これはあなたが描いたイメージみたいなもので･････
大体羽根の生えたコーディネーターなんかいる訳ないでしょ？
わたくし、こういう者です。」
そう言いながら彼がこちらに名刺を差し出して来た。
「『人生２課 ダゴスタエル』？ 何それ？」
「あなた方に分かるように簡単に説明しますと、いわゆる天使ってやつですか？」
「バカじゃない！？ 天使なんている訳ないじゃない！！」
一体このイカレた男は何なのだろうか････
もしかしたらヘンな宗教に入ってる奴かも――やだ！どうしよう････
「何か人を変人扱いしてません？勘弁してくださいよぉ〜こっちも仕事なんですから･･･
まったく･･･あの神（ひと）は面倒な仕事ばかり押し付ける････」
･･･今度は上司の愚痴！？ ますますもって天使らしくないじゃない。
「････まあいいわ、」
とりあえず、コイツがどんな奴かは置いておいて、現状把握をしたほうがいいかも･･･
「じゃあ一体ココはどこなの？」
「あの世とこの世の狭間みたいなものです。
あなたは死んでしまってここに飛ばされてきたんです。」
「そう････やっぱり私は死んでしまったのね･････」
やっぱり現実だったのね････
さしずめ彼は私を天国に連れに来た天使ってとこかしら？
「あなたホントに自分が天国いけると思ってます？まあいいですけど････」
何故か天使もどきは呆れた顔をしていたが私は気にしないことにした。
相手は一度大きなため息をつくと話を切り出してきた。
「ところであなた運命ってやつ信じます？」
「･････なんでいきなりそんな話になる訳！？」
「まあまあそう言わずに話を聞いてください。
実は人間の人生って物は我々の上司が大体のあらすじってやつを決めちゃいまして･･･
人はそのシナリオにそって生きてゆくシステムになってるんです。
まあ細かい所までは決まってないんですが････」
「･･････はぁ？ じゃあ私は今日死ぬってことが生まれる前から決まってたっていうの！？」
そんなバカな――そんな話ありえないわ。
もしその話が本当なら私が生きてきた意味って何なのよ！？
「いやぁ、それがですね･･･実はイレギュラーな出来事が起こってしまいまして･･･
ホントはあなたは９６歳まで生きるはずだったんです････」
「どういうこと！？ まさか間違って死んだとか言うんじゃないでしょうね！！」
「ラウ・ル・クルーゼって人知ってますよね？」
「――あの仮面のヘンな人？」
「そう、彼は実はクローン人間でして･･･
クローンって存在は私たちが関与していないまあバグみたいなものでして、
彼に深く関与してしまったせいであなたの人生が狂ってしまったみたいなんです。」
「そんな――！？ あんまりだわ････」
「そうですよねぇ――
ですからそんなあなたに修正プランをご用意しました。
もしやり直す気があるのなら、あなたを過去に戻してあげます。」
「やるわっ！！！」
それを聞くなり私は即答した。
だってこのまま死んでしまうには余りに遣り残したことが多すぎる。
まだみんなにも謝ることも出来てないし、キラとだって････
私は後になって後悔することになるなんてこれっぽっちも頭にはなかった――その時は。
そう言って自称天使が差し出してきた書類に、私は彼の忠告も聞かずに適当に読み飛ばして
サインした。だってこんな分厚い物読むなんてめんどくさいもの。
大体こういうものって難しい言葉で書いてるだけで、たいしたこと書いてないし。
・
・
・
「はい、書いたわよ。」
「どうも、じゃあ受理しておきますね。」
鳥男は私から笑顔で書類を受け取ると、どういう原理か知らないがポンッという音と共に
どこかに消した。
「では書類にも書いてましたが、一応注意事項を。
まず、あなたの意識をある一定時期まで戻しますが、同軸時間上にあなたはすでに存在していますので、あなたは別の存在になっています。
ですからあなたはあなた自身の行動を修正してなんとか死なないように工面してください。
ただし、あなたがフレイ・アルスターであるとばれてはいけませんし、未来に起こる事を人に話してもいけません。分かりました？」
「･････え？」
っちょ――どういうこと！？
「違反したらその場で即アウトですからお気をつけて･･･それではご健闘をお祈り致しますよ。
よき未来があらんことを・・・」
「え？ え？ ちょっとま――――」
眩しい！
人の話もよく聞かず天使（仮）はヘンな呪文を唱えたかと思うと激しく輝きだした。
とても見ていられずに手で顔を覆い目を瞑った私を次に襲ったものは――
・
・
・
・
・
・
・
・
――冷たい風と浮遊感――
･･････というか落ちてる？
目を開けた私が見えたものは空――コロニーの空だった！
「トリィ〜〜〜〜！！！（いやぁ〜〜〜〜！！）」
今日何度目かのパニックに陥った私だが、本能（？）が働いたのか、手を羽ばたかせ始めた。
え！？ 私･･･空を飛んでる！？
そう――信じられないことに私は空を飛んでいた････。
････とりあえず地上に降りないと･･･
少しずつ下降していくと見の覚えのある場所を発見した。
あれは私の通っていたカレッジ！！ ここはヘリオポリスなんだわ！
信じられないがもう存在しないはずの場所に今私はいる。
つまり過去に戻ったということ！？
呆然としながらも地上に降りた私をたまたま写したガラスを見た私は絶句した。
「トリィ！？（えっ！？）」
――写し出したその姿は―――
「トリィ！？（トリィ！？）」
そ ん な の っ て あ り ！？
いやぁ、ほかの作者方々のスピードにはただただ驚愕するだけです。
みんな魅力的な作品ばかりで、またもや勢いだけで投稿した私を許してｗ
すでに逆行物も何作品かあるのに私もついやっちゃいました。
勢いで書いてますんで文章がなってません、ゴメンなさい＿|￣|○
ちなみに正式タイトルは「幸せを運ぶ緑のトリィ？」っす。
次回からはこれで通しますんで、暖かい目で笑って許してやってくださいませ････
>春コレ
>額に当たり、大きな傷跡を残してしまったのだった
数多くのSSでいろんなイザ―クを見てきましたが、
ここまでおバカなのは初めてですw。なんとなくヤツ
ならやりかねないから読んでて違和感なかったですw
>キラ（♀）×フレイ（♂）
公式ガイドブック、キタ━━(ﾟ∀ﾟ)━━!!!
乙です。SS職人にも色々苦労があるみたいですね。
>泣き虫属性を大幅にパワーアップ
このSSのキラは妙に嗜虐心をそそりますw
>オーブ・フレイの心
オーブ滞在日数を倍増という設定の変更がこんなところ
で生かされているは…フレイ様の痴態の痛々しさも倍増
って感じです。マリュ―との会話もハラハラしました。
>ミリアリア・あの子許せない
魔女･娼婦･魔性の女。ボキャブラリが豊富すぎですw。
アンチフレイ様の連中の魂の叫びを耳にする思いです。
カガリがお姫様かあ…たしかに間違っちゃいないです…。
>流離
フレイ様の外部に現われている成長と一方で内面の依存体質を
含めた問題が依然として解消されていない状態とのギャップ
は見ていて面白いです。フレイ様とキラの緊張のオーラが周囲
にどう影響するか楽しみです。読んでる方も緊張しっぱなしですw
>幸せを運ぶ緑のトリィ？
新作キタ━━(ﾟ∀ﾟ)━━!!!
フレイ=トリィ？すごい発想ですね。クルーゼの話はマトリックス
のエージェントスミスみたいで面白いです。トリィ視点で見る
コロニーの風景は読んでて気持ちいいですね…って本人はそれど
ころじゃないみたいですねw
流離> ヨーロッパ編乙です。
やっぱりキースの演出設定すごくイイです。
わたしがＳＥＥＤで不満の一つが穏健派がもっと前面にでてきてほしかったこと
どんな組織でも強硬派、中立派、穏健派がいるわけで
アズラエルの突出もやりすぎで全く面白みもなかった。
ハルバートンを中心とした穏健派と強硬派のぶつかり合いをみたかった。
キラフレ> アフメド笑いました。あと各キャラのスリーサイズもピッタリだ
フレイの心> フレイの魔性がうまくでてる。まるでトマトソースみたいに濃厚だ
これからキラをどう料理していくのか・・・
ミリアリア> やっぱりミリアリアの存在はＳＥＥＤでも重要要素
キラミリもいいかも・・・
刻還り > フレイのストライク操縦か・・・
最終回のわたしなにも知らなかったを思い出した
フレイも戦争の犠牲者の一人ということをＳＳみてて
強く感じた。
トリィ > 笑いすぎておなかがいたくなった。
オーブ本国から、少し離れた島 オノゴロで修理を受けるアークエンジェル。
結局、私たちは艦から降りることはできない。本国に上陸も許されない。
何もすることが無い艦内。こんな時こそ、キラを見ていたい。
でも、艦内にはキラはいない。
キラは、オノゴロのモルゲンレーテ本社にいる。そこで、戦闘データの提出と
ストライクの改修・ノウハウ分析。オーブ軍のモビルスーツ開発に協力しているという。
アークエンジェルの修理は、その見返りという話だ。
中立国だったはずの、私の祖国オーブ。そこへの連合軍の機密流出。
本当にいいのという気がするけど、それは大人たちの話だ。
私には分からない。
分かっているのは、みんなキラだけを頼っているということ。キラを犠牲にしているということ。
キラは忙しいらしい。ストライクと一緒に出ていってから、一週間一度も帰って来ない。寂しい。
けど、それは、今までも一緒。アークエンジェルにいても、私はキラとは、ほとんど無関係。
何も変わっていない。
キラは一日一回連絡だけは入れてくる。
だけど、連絡を取る相手は、あの子。私にじゃない。
カズイが、すっかり、やる気をなくしていて塞ぎ込んでいるので、
代わりにキラからの連絡を取り次ぐのは私の役目になっている。
あの子に、キラの取り次ぎなんてしたくない。けど、仕方ない。
キラの求めに応じて、キラ自身の部屋をコールする。出てきた、
あの子の顔、声、トーンが違う、何か嬉しそう。
魔女の癖に。キラを誘惑している癖に。
回線を秘匿に切り替えて二人の間を繋ぐ。
なんで、私が二人の間を繋がないといけないのよ。
なんで、こんなことになるのよ。
二人の通話が終わるまで待つ。場合によっては、数十分、待たされる。
何を話しているのか想像もしたくない。まるで、拷問のような時間。
やっと、二人の通話が終わると、あの子が私に対して、礼を言う。
「お待たせ。終わったわ。ありがとうミリアリア」
言葉は感謝のようだけど、あきらかに上の空のような実感の伴わない口調。
お礼なんて言わないでよ。形ばかりの癖に。
私が惨めになるばかりじゃない。
いつも、私より優位な、あの子。めぐまれている、あの子。
私、今、すごく残酷になる。言わないでおこうと思ったけど、
止められない。それは、キラが連絡してきたとき、いつも、思うこと。
私には、ショックなこと。だから、あの子にもショックなはず。
「ううん、仕事だから、気にしないで。
ところで、キラ連絡してくるとき、変に思ったことない」
「え! 変て何よ。ミリアリア」
「フレイのときは、見えないのかな。
私がキラの連絡を取る時、いつも、後ろにカガリさんが見えるのよ。
後ろで、話してる声も聞こえるし、大声で、『キラ早くしろよ』って言うのも聞こえる」
「……」
「カガリさん、オーブのお姫様で、本国に帰ったと思っていたのに、
キラ、モルゲンレーテの工場にいるのに、
なんでカガリさんとキラ、一緒にいるのかしらね」
「……」
「チラと見たのだと、また、ドレスから、戦闘服みたいなのに戻っているみたいだし。
なんか、あの方が似合ってるわよね。キラともね」
「……」
「ひょっとして、カガリさんて、キラのこと…」
「知らないわよ！」
プツンと、あの子の通信が切れる。動揺しているのが分かる。
お姫様が、魔女をやりこめたのよ。
いい気味。ちょっと、胸が晴れる。
でも、こんなことしてる私って陰湿だ。最低…
それに、これは、私にもショックなこと。
カガリさんなら、キラを取られてもいいかもと思っていたけど、
いざ、そうなるとやっぱりダメ。胸がざわざわする。
私のストーリーは、全然、進まない。
いつまで、こんなことが続くのだろう。
本当にもうリタイヤしちゃおうか。
そうすれば、楽になるのかな。
私は席を立った。そして、ある場所へ向かって歩きはじめた。
私が、映像通信で裸になったせいか、次の連絡では、キラは警戒して、
通信の代わりにＥメールだけで連絡を寄越して来た。
一応、映像も添付されていて、近況連絡はキラ自身の言葉で聞けた。
生の言葉を聞かせたいというキラの心づかいだった。
キラの物である官給のノートパソコンで、それを受信した私は、返事に
「ごめんね、もうしない」
とだけ書いて返信した。おかげで翌日から、キラとの映像通信は復活した。
駄々をこねてもキラは帰って来ない。
また、慎重に言葉を選ぶけど、想いの半分も伝えられない日々が続く。
既に、約束の一週間は過ぎていた。
このごろのキラの通信は、宿舎からでは無く、仕事場の
片隅にある端末から直接連絡しているようだった。
キラは、追い込みで宿舎にも帰らずに、泊まり込みで仕事をしているらしい。
キラとの通信を終えて、取り次ぎのミリアリアに連絡する。
「お待たせ。終わったわ。ありがとうミリアリア」
言葉は感謝のようだけど、キラへの伝わらない想いから、あまり実感の伴わない口調。
「ううん、仕事だから、気にしないで。
ところで、キラ連絡してくるとき、変に思ったことない」
「え！ 変て何よ。ミリアリア」
珍しく、話題を振ってきたミリアリアに、思わず返事をする。
変って、なにかあったっけ？
「フレイのときは、見えないのかな。
私がキラの連絡を取る時、いつも、後ろにカガリさんが見えるのよ。
後ろで、話してる声も聞こえるし、大声で、『キラ早くしろよ』って言うのも聞こえる」
私は、記憶をたどった。キラのことで頭が一杯で、気がつかなかった。
いや、気がついていたのに、気がつかない振りをしていた。認めたくなかった。
「カガリさん、オーブのお姫様で、本国に帰ったと思っていたのに、
キラ、モルゲンレーテの工場にいるのに、
なんでカガリさんとキラ、一緒にいるのかしらね」
そうよ、ミリアリアの言う通り、カガリが、キラと一緒にいるはずないのよ。
たから、私は否定しようとしていた。
「チラと見たのだと、また、ドレスから、戦闘服みたいなのに戻っているみたいだし。
なんか、あの方が似合ってるわよね。キラともね
ひょっとして、カガリさんて、キラのこと…」
「知らないわよ！」私は、いきなり、プツンと通信を切った。
そうだ、カガリの声、確かにしていた。ミリアリアに言われて初めて、それに気づかされた。
カガリ、キラと一緒にいる。
キラ、忙しいって、一週間以上、ずっと帰って来ないのに、カガリは一緒にいるの。
私は一緒に連れてってもらえなかったのに、カガリは、いていいの。
オーブの姫だって、特権を使ってるの。
いや！ そんなの！
カガリがキラと寝るなんて思えない。まるで、子供のように純情で、
直情的な、あの子の行動には、男を誘惑する素振りは見られない。
でも、カガリはキラの心に影響を与える。カガリと一緒にいると、
キラは心をカガリに向けられていく。私の方を見てくれなくなる。
そう、そうよ！あの時もそうだった。
太平洋で遭難したカガリをキラが探しにいこうとしたとき、
私は、キラ疲れているからと言って止めようとしたのに、
キラは私を無理矢理に黙らせて、カガリを探しに行ってしまった。
あの時…
キラは、船酔いで吐いたばかりの私の口にキスをした。胃液の混じる私の唾を飲み込んだ。
私が、汚いからって嫌がるのを力ずくだった。私、それで何も言えなくなってしまった…
何かしなきゃ。私の心は焦るけど、何をしていいのか分からない。
私の思考は突拍子も無い方向に向く。キラが出かける前に、私がカガリに嫉妬してやった
フェラチオ。失敗して、キラを喜ばせられなかったけど。あれさえ、もっと、うまくなれば、
カガリなんか恐くないはず。これは、絶対カガリなんかができないことだから。
そして、キラに通信で言うのよ。
「キラ、私、口でしてあげるから、今度は大丈夫だから、
私、一杯、一杯、気持ちよくしてあげるから、
ねえ、早く帰ってきて。ねえったら、キラ」
私は、フェラチオのことを、もっと知ろうと、思いをめぐらせた。
そう言えば、クラスメイトのミーシャに聞いたことがある。
ヘリオポリスの展示場で年に数回、マンガのイベントがあるって。
そこでは、女性でも、エッチな本とか一杯売り買いしているらしい。
一度、ミーシャの知り合いの、そういう子に見せてもらったことがあるけど、
いやらしくて、びっくりした。男の子同士で、あんなこと。
私は、とても、そんなものを買うなんて考えられない。
でも、ミーシャの話だと、ミリアリアは、よく出入りして、そんなものを買い漁っていたらしい。
なんか、ミリアリアの学科の数少ない女生徒は、多かれ少なかれ、そうだったらしい。
ミーシャの知り合いというのも、その一人だったのだけど。
さらに、その知り合いの話だと、ミリアリアは、女性向けだけでなく、男性向けも
買っていて、仲間うちでも変わっていると言われていたそうだ。
よく分からないけど、ミリアリアなら、その方面は詳しいだろう。
トールという恋人もいるし、フェラチオくらいやっているはずだ。
ミリアリアって、他の人へは人当たりがいいくせに、私には、いつも、嫌みを込めた口調で
責めてくる。でも、今回は、私が教えて欲しいと頼むんだから、大丈夫よね。
私、ミリアリアを探しに、部屋を出た。夜も更けてきているけど、
ミリアリアが当直なら、まだ起きているはずだ。
カガリとキラのこと、私がキラにうまく話せないことなどを
考え込みながら、通路を歩いていると、丁度、ミリアリアが歩いてくるのが見えた。
何か元気が無さそう。
でも、そんなことはどうでもいい。聞いてみよう。
夜で、通路と言えど、まわりに人影は無かった。
「ねぇ、ミリアリア」躊躇いがちに話しかける。
「何、フレイ？」
「フェラチオってしたことある？」
「……」
ミリアリアの顔が真っ赤になった。
失敗したと思った。多分、ミリアリアとトールは、まだ、そこまでやってなかったのだ。
別の聞き方をすればよかったと後悔した。
「無いならいいわ」
あきらめて立ち去ろうとすると、ミリアリアが腕を掴んで来た.
「してないなら、どうだって言うのよ！」
ミリアリアが、急に怒りだす。まずかった？ 触れてはいけないことだったのかしら。
「いや、もういいから」私は逃げようとする。
「そっちから言ったんじゃない、何なのよ！」ミリアリアは、なおも問い詰める。
何よ、急にすごい剣幕で怒りだして。腕つかんで問い詰めて。ミリアリアどうしたのよ。
訳が分からないわ。いつもは、私のこと無視するくせに。
嫌みばかり言う割に、こっちが突っ込むと、ろくに言い返しもしないくせに。
やめてよ、私、真剣だったんだから、キラのことだったんだから。
「ダメなのよ。私の口では、キラがイかないの。
いくら口動かしても、イかないの…
なぜか分からなくて。
ミリアリアなら、何か知ってるかと思ったけど…」
思わず、口走ってしまった。こんなことまで言うつもりは無かったのに。
私が悩んでいることまで言うつもり無かったのに。
ミリアリアは、驚いた様子だった。
「もういいわ、離して！！」
私は、ミリアリアの腕を思い切り振り切って逃げるように立ち去った。
今度は、私の顔が真っ赤になっていた。
やめておけば良かった。
こんなこと聞くべきじゃ無かった。
ミリアリアに、私がキラに何をしているか、私がキラとのセックスで
何を悩んでいるかを知られてしまった。
ミリアリアは、トールと実際にやってはいなくても、知識だけはあるはず。
きっと、今ごろ、私のこと笑っている。
あれだけ、キラと寝ているくせに、キラを口で満足させられない私を嘲笑っているだろう。
どうしよう。もう、ミリアリアには聞けない。
どうしたらいいだろう、マリューさんに聞いてみる？ バジルール中尉はダメだよね。
フラガ少佐に…私から聞けるはず無い。
あれ、どうしたんだろう…
さっきまで、フェラチオのこと、真剣に知りたかったのに、聞ける人が、
思いつかなくなった途端、どうでもよくなっちゃった。
こんなことできたって、カガリをキラから追い返せる訳じゃない。まったく、無意味。
もう、どうでもいい。
このごろの私は変。まるで、小さい子供のように、急にあることに取り憑かれたように
熱くなったかと思うと、もう、次には興味を持てなくなっている。
考えが首尾一貫しなくなっている。
フレイ様が、状況を感覚的に捉えているのに対し、理系才女（？）のミリィは、
もう少し具体的です。それではミリィどうぞ。
「以後、状況説明、及び戦闘描写は、あの子に変わって私が担当します。ヨロシクネ！」
よろしくお願いします、だよ！
まあ、私と一緒で政治には疎いので、体勢的な話は出ませんけど、よろしくお願いします。
「でも、私が、今日、あの子の話で怒っている理由って、あ、ヒドーイ、こんなこと… モガモガ」
で、では、また。
ナタルは何故か自室に持ち込んでいる小型スクリーン上に戦況図を示し、生徒に問い掛けた。
「アルスター准尉、このように３方を囲まれた場合、君ならどうする？」
「え、ええと、この場合だと、まず正面のジン部隊を私とキラで叩いて、そのまま左右どちらかの各個撃破に･･････」
「馬鹿者！」
スパァンと小気味良い音を立ててハリセンがフレイの頭を打った。音は大きいが大して痛くないこのアイテムは女性を叱るには丁度良いのだ。フレイは両手で叩かれた頭を押さえて痛そうに顔を顰め、ナタルは伊達黒縁眼鏡をかけ直す。
「アルスター、お前はナポレオンにでもなったつもりか！？」
「で、でも、ストライクとデュエルならジン３機くらい一瞬で片付けられますよ？」
「その間にアークエンジェルが教われたらどうするつもりだ。包囲された時は一度下がって十字砲火を避ける事を考えろ」
「は、はぁい」
しゅんとなってしまうフレイ。ナタルはそんなフレイを見て僅かに口元を綻ばせた。自分と較べれば１０も年下の少女だが、こうしてマンツーマンで指導しているとだんだんと情が移ってくるものなのか、最近はこの少女の反応を見るのが楽しくなってきている。この娘は本当に感情がすぐに表に出る。感情を制御する術を学んでいないのか、とにかく喜怒哀楽が表に出るのだ。
なおも暫く戦術パターンの勉強が続けられた。時計の針がどんどん回っていく。時折行うコンピューターでの戦術シミュレーションではナタル自らが対戦相手となってフレイを指導しているが、思いのほかフレイの成長は早い。覚えが良いらしく、応用力もある。何よりタイミングを見分ける戦術眼は確かなものがあった。ナタルからして見ればまだまだなのだが、自分の動くタイミングを正確に見切られた時などは冷やりとさせられる場面もある。
それをどれだけ続けたか、フレイに集中力が落ち始めたのを見て取ったナタルは肩の力を抜いた。
「もう良い、休憩にしようか」
「え、でも････」
「ただがむしゃらにやれば良いというものでもない。休憩をいれたほうが総合的な成果は上がるものだ」
そう言うとナタルは自分で紅茶を淹れ、お菓子を沿えて持ってきた。ナタルがお菓子好きだというのは艦内のクルーではフレイとキースしか知らないナタルの隠された一面だ。最初は自分も驚いたものだが、ナタルの部屋には実に沢山のお菓子がある。聞いたところによると、ブカレストの街でかなり買い込んでいたらしい。なんでもキースを荷物持ちに使ったそうだ。前にキースが疲れた顔で教えてくれた。
ナタルはフレイと向かい合うように椅子に腰掛けると、紅茶とお菓子をフレイの前に置いた。
「しかし、君もいろいろと大変なようだな」
「え？」
レモンを数滴垂らしていたフレイは、ナタルの問い掛けによく分からないという顔をした。ナタルは紅茶を一口啜るとソーサーにカップを戻す。
「艦内に流れている噂、君も聞いているのだろう。まあいろいろあるようだが、どれも君を悪く言うものばかりだ」
「･･････仕方ありませんよ。悪いのは私なんですから」
「ふむ、私もキース大尉に聞いた時は驚かされたがな」
ナタルの性格上、このような噂を聞けば黙っていられる訳も無く、フレイを捕まえて問い詰めたのだ。結局フレイは語ろうとはしなかったのだが、後にフレイの変わりにキースが教えてくれたのだ。
「あの時、志願したのも裏にはそういう事情があったのだと知った時は、流石に呆れたよ」
「すいません」
「しかし、あの時言った言葉は嘘ではないのだろう。本当の安寧を得たいからというのは。だから君はデュエルに乗っている」
ナタルの言葉にフレイは頷いた。いろいろと嘘を塗り固めた自分だが、戦争を終わらせたいという気持ちだけは本物だ。だからキースやフラガのシゴキにも、ナタルの講義にも必死についていっているのだ。幾度かの実戦を経験する事でその実力をメキメキと伸ばしている。流石にザフトのＧと戦える程ではないのだが、それでも最近は戦力の１つとして考えられるようになっている。
フレイの成長はナタルにとってもありがたい事なので、自分もキースの求めに応じてフレイを教育している。物覚えのいい生徒は教えていて面白く、この教師生活も何となく気に入ってしまっている。別にハリセンの感触に味をしめてしまったなどという事はない。断じてない。
「そういえばバジルール中尉、１つ質問があるんですが？」
「あ、ああ、何だ、何か分からないことでもあったか？」
先の講義の質問だろうと思ったナタルは紅茶を啜りながら先を促した。
「中尉って、２５歳ですよね？」
「･･････なんだ、いきなり。まあそうだが」
「キースさんは２２歳ですよね？」
「ああ、その筈だが」
何でそんな事を聞くのか分からないでいると、フレイがとんでもない事を言い出した。
「バジルール中尉って、年下好みだったんですね」
ナタルは口にしていた紅茶を吹いてしまった。鼻に入ったのか激しく咽ている。
「な、な、なにを･･････」
「うふふ、だって、キースさんに聞きましたよ。２人で街にショッピングに行ったんでしょう」
「あ、あれは、買い置きの菓子が無くなったから買い足しに行っただけで！」
「そういう理由で連れ出したんですよね〜」
「ア、 アルスター、余り大人をからかうんじゃない」
ナタルは露骨に焦りを浮かべながらフレイを窘めたが、ことこういう問題では堅物のナタルにはフレイは強敵過ぎる。フレイはクスクス笑いをしながらナタルの胸元を見て、またからかう口調で話し掛けた。
「でも、そのペンダントってキースさんの贈り物ですよね。ずっと身に付けてて、キースさん喜んでましたよ」
「な、な、な、な、な」
顔を真っ赤にして言葉にならない言葉を漏らし続けるナタル。その分かり安すぎる態度にフレイは笑いを堪えられなかった。最初の頃は厳しいだけの怖い人だと思ってたのに、こうして付き合ってみると実はとても可愛い人だということが分かる。キースが惚れるのも納得出来るのだ。
フレイはキラと別れて、あるいは正解だったのかもしれない。キラと別れて自分のやるべき事を見据えた彼女は、新たにマリュ−、ナタル、キースという、キラよりも遥かに包容力と強さを兼ね備えた人たちと縁を結ぶ事が出来たのだから。３人ともフレイの相談役として、良き人生の先輩として、技能を教えてくれる教官として得難い能力を持っているし、人間的にも優れている。
この３人と居ると、自分がどれだけ幼稚で、何も知らない子供だったかを自覚させられてしまう。恋人を殺されながらも戦い続けたマリュ−。孤児であり、養ってくれた家族さえも皆殺しにされるという過去を持つキース。厳格な軍人の家系に生まれ、生まれた時には将来を軍人と決められていたナタル。誰もが自分などより遥かに辛い人生を歩んでいる。この人達から見れば自分の苦悩など大したものとは映らないのかもしれない。
この３人といるフレイは、何時の間にか自分が格下だという事を受け入れられるようになっていた。この認識が、フレイを頑なに覆っていた殻の１つを破る事になる。そして、それがフレイの急成長の始まりであった。
志願したあの日以来、フレイは普通に笑う事ができなかった。そのままここまで来て、結局キラとの間違った関係には自ら終止符を打ってしまった。だが、おかげで今は笑う事が出来るようになった。父を失った悲しみもマリュ−やキースに慰められたおかげか、今ではだいぶ薄れている。
だが、その一方でキラと距離を取ってしまったために、フレイはキラの状況に気付いていなかった。自分が離れれば解放されると思っていたのに、キラが自分が離れた為に逆に精神的に追い詰められ、今にも壊れそうな自分を抱えて苦しんでいる事に気付いていなかった。キラが弱く、脆い存在だと気付いているのはフレイだけなのに、そのフレイが離れてしまったために誰もキラの変化に気付いていないのだ。
フレイ以外の誰もキラの弱さを知らない。この事が事態を少しづつ、だが致命的なまでに深刻化していったのである。
むう、ここでもダコスタ君（仮）が働いている。彼って一体何者なんだろう？
その内過労死しそうだなあ。何処に出てきても上司に恵まれないのは変わらないようですがｗ
>>フレイの心
フレイ様、あなたって人は･･････本当に子供の思考になってますよ。もう少し考えて動きましょうね
ミリアリアは別の意味でなんだか危なくなってますけど、カガリはまともな人なんだろうか。なんか不安になってきましたｗ
―また、夢を見ている。笑っているのか、泣いているのか、手を差し伸べているようにも、遠ざかっていくようにも思える感覚。
唇が動いて、何か言ったようだった。何と言っているのだろう？わからなかった。
吸い込まれるようにして消えていくと、今度は闇から更に深い闇へ、無限にどこまでも落ち込んでいくような感覚。
『寂しい』と思った。温かさが欲しかった。だから、叫んだ。が、何を叫んだのかはわからない―
「まだ目を覚まさないのか？」
目を開けないキラの顔を覗き込んで、アスランは何度目かの確認をした。
キラの寝顔は僅かに歪んで、うなされている様だった。
「出血は酷いのですが、内蔵や神経に損傷はありませんから。この程度の怪我で済んだのは幸運ですよ」
医師は、アスランのしつこい問いに辟易したように同じ事を繰り返した。
「そうか…」とアスランはため息をつき、首を振った。
硬い表情でアスランが病院から港に戻って来ると、警備隊の建物の前に車が止まっていて、国防隊の隊員が人待ち顔で乗っていた。
アダムスキーと警備体制の打ち合わせに来たようだった。
「アスラン・ザラ中尉…だな？敵を取り逃がした気分はどうだ？」
階級章から大尉、とわかる。敬礼を返しながら、「残念です。力不足で…」と答えると、相手は口の端を歪めて笑った。
「トレス・ラブル大尉だ。ま、これからは国防隊が中心になって敵を狩るから安心するんだな。…警備隊には荷が重いだろうしな？」
「ご協力感謝します、ラブル大尉。…申し訳ありませんが、急ぎますので…失礼します」
「待てよ！敵と戦った感想を教えてくれても良いだろう？それとも、国防隊には教えられないか？」
やけに絡みつくような物腰にアスランは生理的に反発した。だが階級が上の者に向かって、それを顔に出す事は出来ない。
「姿を見る事が出来ませんでした。恐らく、ミラージュコロイドかと…しかし、戦い方は未熟でした。国防隊なら、充分対処できると考えます」
「…そうか…未熟ね…フフ、気をつけるとしよう」
妙な含み笑いだと感じた。が、それ以上は何も言わずにアスランは司令室へ向かった。
感想遅れましたが、なんか、心温まるお話になりそうで期待しています。
>流離
いつも感想ありがとうございます。
フレイ様とナタルの暖かい会話来ましたね。「年下好みなんだったんですね」は
ツボにはまりました。そのうちキラも救ってあげてくださいね。
飲み物として紅茶が出てきますけど、私のＳＳでは、ほとんどコーヒーです。
この辺りは書いている人の趣味の差になりますね。
私のフレイ様は意図的なものもありますが、
何分、書いている人の頭の中が… 後半、うまく行くかな？
カガリについては、多分、本編 or 小説版に準じていると思います。フレイ様やミリィの
捉え方ば別として。
フレイ様の船酔いの件は２３・２４話の補完として別に考えてあったものを、
急に思い出して流用しました。本当は、もっと、こってりした内容だったのですが、
限られた字数でということで、こうなってます。
通信士の仕事はちょっとミリアリアには酷ですねw。｢回線を秘匿」の間が苦しそうです。
>オーブ・フレイの心
クルクル関心が変わってしまうフレイ様、良いです。あと両SSが一緒になるんですね。
楽しみにしてます。しかしフェラチオにあんな熱心になってしまうフレイ様を見てると
ニヤニヤしてしまうのと同時に、ちと淋しくなりますね。
>流離
ナタルはやっぱり嚴しいみたいですね。お菓子好きって…ああ確かにモバイル状態でし
たからw。前にラジオかなにかでナタルの中の人が「ナタルは赤面症だから」と言っていた
のをふと思い出しました。
>別にハリセンの感触に味をしめてしまったなどという事はない。断じてない。
力強いお言葉ですw
>幻
久しぶりの投下乙です。楽しみにしてました。なかなか不気味な足音が近づいているようで。
>アスランのしつこい問い
確かにこんな感じでしょうね。五年の歳月をもってしても変わらないみたいですね。
キラとフレイも幾度も出撃を重ね、スコアを重ね続けている。キラの強さは相変わらずだが、フレイの実力の向上振りには目覚しいものがあった。特に反応の良さと射撃の勘の良さは際立っている。教官役を務めているキースとフラガは、ひょっとして自分たちより強いんじゃないのかという悪寒を覚えていた。
だが、戦うほど、強くなるほどフレイは自分が怖くなってもいた。徐々に強くなってくる謎の第６感とでも言うしかない感覚。何故か伝わってくる相手の強い意思。戦場に満ちる殺意と憎悪を、我が身に襲いかかる死の気配を感じる度、フレイの弱い心は恐怖に打ち震えてしまう。
だが、これを相談できる相手もいない。キースもマリュ−もナタルもそんなものを感じたことはないと言うし、フラガは何も答えてはくれなかった。一体この感覚はなんなのだろうか。
この感覚のおかげでこれまで生き残れたのだということは分かっている。だが、気味が悪くて仕方がない。こんな妙な力なんて欲しくはない。他人の心など分からない方が良い。知らない方が良いことが世の中にはあるのだ。
だが、伝わって来てしまう。敵対するパイロットの自分に向ける恐れ、憎しみ、死ぬ時の恐怖、そのような感情が稀に伝わってきて、自分に強い不快感を与えるのだ。
「なんで、こんな力があるのよ。知りたくなんかないのに･･････」
自らに備わる良く分からない能力。制御できる訳ではない。感じたく無いからといってシャットアウトできる訳でもない。こちらの意思を相手に伝えられる訳でも無いようだから、小説とかに出てくる超能力の類でもないらしい。
なんと便利で、不便な力だろうか。制御できない力など無いも同じだ。他の誰にもない力というのが、持ってみるとこれほど忌々しく思えるとは。
キラとは異なるが、彼の感じていた孤独感が何となく実感として理解できる。人と違う力なんて欲しくはない。他者と違うなんて嬉しくも何ともない。こういう力を持って悦に浸れるのは、余程の見栄っ張りか、傲岸不遜な人物なのだろう。
いつまで続くのかと思える襲撃される毎日。だが、今日はいささか様子が違った。味方の救援要請を受けたのだ。受け取ったマリュ−はどうしたものかと艦橋に来ているフラガとキースに問い掛ける。
「どうしましょうか、少し進路からずれていますが？」
「どうしましょうって言われてもな。状況も敵の規模も分からないし」
フラガは困った顔で首を捻る。キースもフラガに同感だとばかりに頷いた。下手をすれば敵の罠かもしれないのだ。そんな所にのこのこ出向いて、敵に包囲されたらどうするのだ。
だが、意外な事にナタルがフラガに反論した。
「ですが、もし本当に味方が救援を求めているのだとしたら、どうします？」
「･･････そりゃあ、助けに行かんといかんだろうけど」
フラガは気乗りしないようだ。マリュ−もどうしたものかと俯いている。ナタルはそんな２人を見た後、視線をキースに転じた。視線を向けられたキースはギクリという感じで顔を引き攣らせる。
「･･････もしかして、俺に見て来いと仰るので？」
「お願いします、大尉。デュエルを追わせますから」
「はあ、分かりましたよ」
最近手綱を握られてる気がしつつ、キースはとぼとぼとスカイグラスパーに乗るべく格納庫へと向った。それを見送るフラガの目には同情の色がある。
「フレイ、俺は先に出るから、後から追って来い」
「な、なんで私まで？」
「もしもの保険さ。俺が救援要請を受けた場所に行ってみて、何も無ければそれで引き返せば良い。もし本当に味方がいたら、暫くフレイが支えるんだ」
「そ、そんな無茶な･･･････」
フレイはキースの命令に途方に暮れてしまった。まさか、最悪デュエル１機で敵部隊を相手取らないといけないのだろうか。
出撃して行くキースのスカイグラスパー。そしてフレイもデュエルに乗り込んだ。整備兵に装備を指示する。
「ビームライフルと、あとバズーカをお願い。長期戦を覚悟しないといけないかもしれないですから」
「分かった。あんまり無理するなよ」
「そうね、出来ればそうします」
何となく無理をしなくてはいけない気がするフレイは、整備兵の忠告にいささか困った顔で答えた。そしてハッチを閉じ、機体をカタパルトに誘導する。ふとモニターを確認すれば、キャットウォークにトールとキラ、カガリの姿があった。どうやらキラの事は２人がフォローしてくれているらしいと思い、僅かに安心した。
カタパルトに来ると、ミリアリアがモニターに出た。
「デュエル、発進、どうぞ」
「･･････デュエル、出ます」
ミリアリアの冷たい声にフレイは一瞬返答に詰まるが、直に事務的に返して機体を発進させた。何時頃からだったろうか、彼女との通信がこうも辛くなったのは。私には相談出来る人がいる。１人じゃないということはとても嬉しいけど、もうヘリオポリスからの仲間達の元に戻る事は出来ないんだと思うと、どうしても辛くなってしまう。
アークエンジェルを出てキースの後を追って行くデュエルの中で、フレイは考えをめぐらせた。キラと距離をとる事でフレイは自分のポジションというものが理解できている。自分と昔の関係を繋ぐものは今ではパイロット繋がりのあるトールだけになってしまった。ミリアリアもサイも、カズィも自分を疎ましく思っているようだし、キラは自分を憎んでいるだろう。
自分自身の醜さも良く分かっている。人を利用して復讐を果たそうとしたのだから、見限られて当然なのだ。今の自分に出来る事は、キラの変わりに戦って戦って、そして彼の負担を少しでも減らす事しかない。
乙です。アスラン君は５年たってもまだキラキラ言ってるのか。カガリはどうしたｗ？
しかし、国防隊と警備隊の関係は、警察と自衛隊の様に悪いようですな
>>549
なるほど、質問に答えていただき、ありがとうございます
飲み物に関しては、私は紅茶党ですからｗ
あと、キラを救うですか。フレイ様が前に進んでるのとは対照的に、キラは後ろ向いてる状態ですから、まだ当分無理ですね。
欠乏する物資を調達するために、多少の危険を覚悟で、砂漠の虎の本拠地である、
バラディーヤ市場に潜入したキラ達四人は、それぞれの役割分担を確認する。
ナタル、フラガの大人組みは、サイーブの仲介の元、闇の武器商人との武器や資材の購入
交渉に当たり、キラ、カガリの子供カップルは、フレイから頼まれた食材の買出しである。
「…にしても何なんだ、このメモに刻まれた膨大な食材の数は！？
調味料関係だけでも百種類以上あるじゃないか。この上、肉や野菜の本材は別なんだろ？」
「本格的な料理を作るには、そのぐらい材料が必要なんだって…。
フレイは本当に料理が上手なのよ、カガリも知っているでしょ？」
「だったら、俺じゃなくて、あの優兄ちゃんが自ら買出しに来ればいいじゃないか！
俺一人でこんなに持ち切れるわけないだろう！？」
「私がいるから平気よ、カガリ。私、料理は苦手だけど、力仕事はけっこう得意なのよ」
キラは、ニコニコとした笑顔でガッツポーズを決める。ポパイと異なり、キラの二の腕
の筋肉には、まったく力瘤が隆起しなかったが、それでも、その気になればあの細腕の
中には、自分をはるかに凌駕する力が秘められている事をカガリは知っていた。
「それでも、女の子の荷物持ちを務めるのが、彼氏の役割だろうが…」
カガリはブチブチとフレイへの愚痴を溢しながらも、お姫様をエスコートする騎士の如く、
キラの荷物持ちという今回の自分の役割を果たした。
「カガリィ、大丈夫？私が一つ持って…」
「いいから平気だ！話しかけるな、気が散る！」
摩天楼のように聳え立つ複数の買い物袋に、完全に視界を塞がれ、酔っ払いのように
ふら付くカガリを心配し、キラが救いの手を差し伸べようとしたが、カガリは生物学上
は男である自分のなけなしの矜持に賭けて、断固として断った。
「お前には借りがあるからな…」
本当に照れ臭そうに砂漠の件の謝意を示した、荷物に隠れたカガリの顔は、きっと真っ赤
に染まっているのだろうと確信したキラは、くすぐったい想いに捕われ、クスクスと笑う。
フレイみたいな華麗なスマートさは文句の付けようも無く素敵だけど、それはそれとして、
生真面目だけど素直じゃない男の子の、こういう不器用な思い遣りも悪くないかな…。
そう考えた次の瞬間、キラは気の多い自分に気づいて思わず赤面してしまう。
ようやく百種類を超える調味料関連の買出しを終え、カフェの椅子に腰を下して一息
ついたカガリに、キラが注文していたドネル・ケブバを運んできた。肉、魚、野菜、果物、
缶詰などの長期保存可能に加工してもらった本材の方は、分量はダース単位、総重量は
軽くｔ（トン）単位に達するので、とても個人で持ち運べるような代物ではない。
既に買い付け注文だけ先に済ませて、いずれ注文店側のトラックで、アークエンジェルの
ところまで送り届けてもらう手筈になっている。
「やっと、これで食材の方は終わりか。後、残っているのは……朝鮮朝顔、福寿草、
スズラン、水仙？……なんだ、こりゃ、花類じゃないかよ！？
こんなの料理の一体何の役に立つんだよ！？」
「きっと、食堂にでも飾るんじゃない？男の人でも花を愛でる感性を備えているって、
何か素敵よね。戦場に咲く一輪の花ってイメージかしら」
花より団子のカガリは、少女趣味にウンザリした表情で、「花なんか食えるかよ」と嫌味
を口にしたが、乙女コスモを刺激され、恍惚とした表情のキラには効果がなかったようだ。
二人が花類の裏知識にあまり詳しくなく、これらの植物からは、ちょっとした調合知識
があれば毒物を検出できることを知らなかったことは、多分僥倖だったのだろう。
トリカブトやケシのように素人でも知っている有名どころは敢えて避けるあたり、
フレイの悪どさは並大抵ではなく、アークエンジェルのクルーは、恐らくＡＡで最大
の危険分子であるフレイに、自分達の生命の源である厨房を預けることの危険度の
高さに全く気が付いていなかった。
厨房で夕食の仕込を行っている最中だ。目的に合致さえすればいずれ毒殺することも
厭わないＡＡクルーの為に、一切手を抜かずに食事を作り続けるフレイの今の心境は、
惨殺した被害者の遺族に、善意から形見の品を送り届ける犯罪者の、屈折した心理状況
に近いものがあるのかも知れない。
そんなことは露知らず、以前のフレイの危惧通り、贅沢に慣れ始めたＡＡクルーは、
ナタル達に、万が一に備えて軍用のレトルトパックの購入を指示しながらも、その事実
を調理主任であるフレイには伝えていなかったし、ヘリオポリスの三人娘が手伝うと、
（キラは既に厨房を永久追放の身だが）味が二・三割落ちるので、当番表から彼女たち
の名前を外そうかと画策していたりする。
厨房の当番者制限に対して、キラと異なり他の娘は今はまだ白紙の状態だったので、
フレイの隣では、本日の夕食当番であるサイが、不器用そうな慣れない手つきで包丁で
葱を刻んでいる。ミリアリアが気を利かせて、自分が当番を代わろうかと申し出てきたが、
サイは彼女の思いやりに感謝しながらも、敢えて丁重に断った。キラが外出している
ことが確認され、その上でフレイと二人っきりになれる千載一隅のチャンスを彼女は
逃したくなかったのだ。既に勝負付けは完了しているので、もはやそんな好機を得ても、
今更どうする事もできないと判ってはいても、それでもサイはフレイの側にいたかった。
とはいえ、バラディーヤ市場にいるキラ、カガリ・カップルのフレッシュな雰囲気とは
対照的に、厨房の雰囲気は実にギスギスとしている。内心はともかくフレイは超然とした
態度でサイに指示を出し続け、主任とそのお手伝いとしての一線を、決して越えさせ
なかったので、サイはフレイのことを意識しながらも、私語を発することすら出来ない。
フレイは昔から公私混同を嫌う性質だし、前回のような奇襲が効果を奏するのは
一度限りで、今更フレイに母親の情を訴えても無意味だろう。
そう、もはや自分にはフレイをどうすることも出来ないのだ。後はもうキラに退場して
もらうくらいしか手が無……………！？……って、何を考えているのよ、私は………
……………でも、キラが消えてくれたら…………
……！？……い…痛ぅ…！
妖しい考え事に囚われ、手元がお留守になっていたサイは、包丁で自分の指を切ってしまう。
痛みに顔を顰めたサイの瞳に、ツーと赤い血が滴る包丁の鈍い光が目に入った。
真っ赤な血。
ヒトは刃物で刺されたら血が出る。
それはナチュラルでもコーディネイターでも何ら変わらない。
キラだって刃物で刺されれば、血が出て死ぬんだ。
そうなればフレイは…………私の………
「おいっ、サイ！？どうした、しっかりしろ！」
じっと包丁を見つめたまま、指から血を滴らせ続ける、惚けたサイの様子を心配して、
フレイがサイの肩を掴んで声をかけ、サイはハッと我にかえる。
まるで血に飢えた妖刃村正に魅入られたが如く、血で染まった包丁の妖しい光に
魅せられたサイは、後ろめたそうにフレイから顔を背ける。
フレイは思慮深そうな瞳でじっとサイを見下ろしていたが、そっとサイの腕を取ると、
傷ついたサイの指先に、自分の口元を近づける。
「フ…フレイっ！？………あ……ひゅうっ！？」
フレイは接吻するように軽く舌先でサイの傷痕を舐めて血の痕跡を消し、指先に伝わる
その背徳的な感触に、サイの口から艶やかな吐息が漏れる。
「サイ、馬鹿なことは考えるなよ…」
先の一連の儀式の後に、きちんと傷痕を消毒液に浸してから、器用な手つきでサイの指先
に大型のバンドエイドを張り込んだフレイは、まるで先ほどのサイの狂気を見透かした
かのように、そう牽制し、人の心を見抜く伝説の妖怪サトリと見間違わんばかりのフレイ
の異常な洞察力の鋭さに、サイはビクッと身体を振るわせる。
「僕にも…そしてあの娘にも、君の将来と引き換えにするほどの価値はないよ」
フレイはそれだけを一方的に告げると、再び職務に戻ってしまい、完璧に公私混同を
切り分けて、二度とサイに言質を与えなかった。
フレイ………。
フレイの、キラをあの娘呼ばわりする冷たい物言いから、彼は決してキラを愛してなど
いないことを改めて確信したが、その事実は何らサイを慰めはしなかった。
どんな形であれフレイが、サイよりもキラを選んだことに何ら変わりは無いのだから…。
先ほどフレイにキスされた、バンドエイドの下の傷口の暖かさだけが、今のサイのフレイ
への想いを辛うじて繋いでいた。
周りは全てザフトの兵士の海で固められた陸の孤島で、単身、明けの砂漠の対敵の親玉
である砂漠の虎と正面から対峙したカガリは、そう自分に疑問を呈したが、すぐには
答えは出てこない。
買い込んだ食材をジープに積み込んできて、一息ついて腹ごしらえをしようと、
ドネル・ケバブを注文し、カガリはキラの分にも、自分の好みのチリソースをかけよう
とした時に妙な男が乱入してきて、ケバブにはヨーグルトソースの方がマッチする
などという邪道なことを主張しはじめたのが、そもそもの切っ掛けだったはずだ。
カガリとその謎の男は、主体性なくビクビクするキラを無視して、ケブバの味付けと
いう実に下らないことで口論した挙句、同時にソースをかけてキラのケブバを滅茶苦茶
にしてしまう。二人の迫力に、キラが泣きながら、ソースの味しかしないケブバの残骸を
平らげていた時に、あの忌まわしいブルーコスモスのテロが発生したのだ。
キラは、目の前の銃撃戦よりも、「青き清浄な世界の為に！」というブルーコスモスの
キャッチフレーズの方に反応して、テーブルの下に隠れて、頭に手を当てて涙目になり
ながらガタガタと震えだした。その様は、まるで物心付く前から、ナマハゲの伝説を幼心
に刻み込まれて、「ナマハゲが来た！」と叫ばれただけで、反射的に身を竦ませてしまう
地方の子供たちを彷彿させるものがあり、カガリだけが知る特別なコーディネイター
であるキラは、今までどれだけブルーコスモスの有形無形の魔の手に、その身の安全を
脅かされてきたのか、そのトラウマの深さを見て取る事が出来た。
キラが戦士として全く役立たずの代物と化してしまったので、カガリはそれが自分の
使命であるかのように、キラを庇うような姿勢で銃火の前に立ち塞がる。この混雑した
状況で、ナチュラルとコーディネイターを見分けるのは至難の技のはずなのだが、
ブルーコスモスの連中は、聖戦の為には多少の犠牲は止むを得ないという狂信的な考えの
所有者らしく、ほぼ無差別に近いテロ活動を続けて、その狂気の銃口の先がキラ達にも
向けられた時、武器を持ち合わせていなかったカガリは死を覚悟したが、それを救った
のは、先ほどソース口論に興じた奇妙な男だった。男は的確な連射で、マシンガンを乱射
する男達を薙ぎ倒し、さらに男が手を挙げると、客に紛れ込んでいたザフトと思わしき
兵士達が一斉に反撃して、あっという間にブルーコスモスのテロを鎮圧してしまう。
事の急激な顛末に、呆然とするカガリ達を尻目に、ザフトの兵士が三人を取り囲んで、
まだ若い青年仕官が、キラ達の生命の恩人の妙な男を「バルトフェルド隊長」と呼んだ
のをカガリは聞き逃さなかった。
このふざけた男が、砂漠の虎、アンドリュー・バルトフェルド！？
頭からケブバのソースを被り、さらに水玉模様の白のワンピースまでソース塗れにして
しまった酷い有様のキラの姿を見て、虎は「銃撃戦で迷惑をかけたことだし、換えの
着替えを用意しよう」と部下達に命じて二人を拘束し、カガリ達の意思を無視して、
二人を無理やり彼の屋敷へと連行してしまい、今現在へと至る。
連れていかれ、一対一で虎と相対したカガリは、内心の敵意を顔に出さないように
気を遣いながらも、虎の思惑について思案する。
虎が何を考えているのかは不明分だが、一つだけ判っていることは、決してキラの
正体を感づかせてはいけないということだ。もし、キラがストライクのパイロットだと
ばれたら、虎は労せずして、ザフトを苦しめている敵手を葬ることが可能なのだ。
そんなカガリの必死の想いを嘲笑うかのように、既にキラ達の正体を承知している虎は、
内心の思いが顔に出やすいカガリの百面相を、実に興味深そうに眺めている。
やがて、控えめなノックと共に、アイシャがドレスアップしたキラを引き連れて
部屋の中に入ってきた。
「えへへ…、どうかな、カガリ……」
肩口を露出して、胸にバラの刺繍を誂えたピンク色のドレスに身を包んだキラは、
頬を赤く染めながら、照れ臭そうに上目遣いでカガリを見つめ、ほんの一瞬だが、
カガリは血縁上の妹の可憐な姿に心を奪われた。
「ま…まぁ、似合ってるんじゃないか。馬子にも衣装って云うしな…」
目のやり場に困ったカガリは、顔を真っ赤に染めながら、視線を宙に浮かせて、
毒舌も普段の勢いが全く感じられない。キラはそんなカガリの皮肉れ加減は既に
重々承知しているので、「うふふ、ありがとう、カガリ」と素直に謝意を示し、
ますますカガリを困らせてしまう。
「どうやら、気に入ってもらえたようだね。それじゃ、お近づきの印と言う事で、
そのドレスはプレゼントさせてもらおう」
「ええっ、本当ですか！？わーい、ありがとうございます」
その虎の薄気味悪い気前の良さに、カガリが口を挟む前に、キラが歓喜の悲鳴をあげる。
この馬鹿娘が…、敵から賄物を貰って喜ぶ馬鹿がいるか！？
目の前にいるのが敵の親玉である砂漠の虎であることを、既に忘れているとしか思えない
キラの鳥頭具合にガカリは呆れ返り、さらに「フレイは、奇麗と褒めてくれるかしら？」
と聞こえてきたキラの無邪気な乙女心に、キラへのシスコン的なフレイに対する
ジェラシーを刺激されたカガリは、ますます不機嫌になってしまう。
「さて、次はあなたの番ね」と、彼の肩を掴んで、自分を見下ろす長身のアイシャ
の妙艶な視線に、カガリは何となく身の危険を感じてゾクッと身体を振るわせる。
「お…俺は別に、服を汚しちゃいないんだけど…」
「いいから、いいから…」
アイシャは、カガリの抗議に取り合わずに、コーディ特有の女性とは思えない
凄まじい腕力でカガリを引き摺っていき、キラをおめかしした部屋へと消えていく。
キラは何となくポーとした表情で、消え往くアイシャの艶やかな後ろ姿を見つめている。
既に少女から大人への階段を駆け昇り、お洒落なピンク色のドレスに身を包んで
ドレスアップしている今の可憐なキラでも、あのアイシャの熟艶とした大人の色気は、
逆さまに振っても、まだまだ出せないと思われる。
「やれやれ、またアイシャの病気が始まったか。あの少年も気の毒に…」
軽く片手で額を抑えた虎の声に、キラは意識を現実へと引き戻し、その言葉の意味を
尋ねたが、虎は「今に判るよ」としか言わずに、キラの疑問に取り合わなかった。
やがて、カガリの声と思しき悲鳴が聞こえて、それからシーンと静まり返ってしまい、
キラは何が起こったのかとハラハラしていたが、十数分後、扉を開けたアイシャは、
薄い草色のドレスに身を包んだ、見慣れない金髪の少女を連れてきた。
「お…女の子……？」
「！？……………キ…キラぁ、てんめえーっ！」
「そ…その声は！？も…もしかして、カガリ！？」
最初キラは、本当にカガリだとは気づかなかった。カガリは不思議と肩口から上体には
例の傷痕はなく、特徴ある頬の十文字の傷痕も丁重にクリームで消されていた上に、
女の子であるキラが嫉妬したくなるぐらい、カガリの女装姿は嵌り過ぎていたからだ。
「…に、決まってるだろうが、馬鹿野郎！」
別室でアイシャに何をされたのやら、先ほどまで、まるで去勢されたかのように頬を赤く
染めモジモジしていたカガリは、そのキラの残酷すぎる言葉に、アイシャに圧し折られた
野生の牙を再び生え戻し、怒りと共に猛然とした勢いでキラに詰め寄ったが、
今の女装させられた姿では迫力に欠けること甚だしかった。
「か…可愛い（ぽっ）」
「こ…殺されたいのか！？、キラぁ！！」
「ご…ごめんなさい、カガリ。でも、本当に良く似合っているよ」
「そんな事言われて、喜ぶ男がいるか！！」
カガリは涙目になりながら、毅然としてアイシャを睨むと
「おいっ、おばさん！早く俺の服を返せ！！」
「お姉さんでしょ、坊や？残念ね、坊やの服はさっき焼却してしまったわよ。
気の毒だけど、このお屋敷にいる間はその格好で通すしかないわね。
まさか、そちらのレディの前でそのドレスを脱いで、裸になるわけにもいかないでしょ？」
「な…何だと！？ふざけるな、ババァ！本当に殺すぞ！？」
「婆あ…なんて、いけない子ね。うふふ、そういう悪い子にはまたお仕置きしちゃうわよ？」
アイシャが寒気がするほどの妖艶な笑みを浮かべ、怯んだカガリは情けなくも反射的に
キラの影に隠れるが、今の格好ならそれほど違和感はなかっただろう。
「おいおい、本当に酷いことをするなぁ、アイシャ。この前の少年みたいに、彼が
目覚めてしまったら、どうするつもりなんだい？このお嬢ちゃんにも悪いだろ？」
口ほどには、カガリへの同情心をあまり感じさせない自分の愛人と、「んなことあるか！」
と吠えるカガリを、アイシャは等分に見渡しながら、
「あなたがいけないのよ、アンディ。
こんな可愛い素材を連れてきて、私が耐えられるはずないじゃない。
それにしても、本当にこの食べちゃいたいくらい可愛い子供たちが、砂漠の虎と謳われた
あなたの手を煩わせている、敵の主力部隊だなんて未だに信じられないわね」
さり気無い口調で爆弾を投下させたアイシャに、もう少し楽しみたかったな…という表情
で、虎は軽く舌打ちし、正体がばれていた事に気づかされた二人は顔を青ざめさせる。
今まで温存していた敵意を纏めて解放したかのようなカガリの激しい視線を、
虎は今までどおりの人を喰った態度を崩さずに軽く受け流す。
「いい目だねぇ、真っ直ぐで……そして、迷いがない」
「ふ…ふざけるなぁ！」
自分の格好も忘れて、虎に飛び掛ろうとしたカガリは途中でその動作を停止させる。
何時の間にか虎の手に拳銃が握られていて、その銃口がぴったりとカガリの胸元
へと向けられている。
「君も、死んだ方がマシなクチなのかね？あの時の無謀なレジスタンスのように？」
バルトフェルドは、さっきまでの飄々とした態度が嘘のような、冷たい言葉に、
明確な殺意を上乗せした視線で二人を一睨みし、キラは反射的に身を竦ませ、
キラの様子に気づいたカガリは、キラを銃口から守るように立ち塞がる。
女装したドレス姿の男が、同じドレス姿の女の子を庇おうとする姿は、傍目で見れば
相当シュールな光景なのだろうが、本人達は真剣だった。
「そちらのＭＳのパイロットのお嬢ちゃんに聞きたい。この戦争、どうすれば終わると思う？」
「！？」
虎の問い掛けに、キラは言葉に詰まる。キラは正当防衛意識で目の前の敵を倒すのに
必死で、一度もそんなことを考える心の余裕はなかったし、結局、末端の一兵士でしか
ない自分には、上の立場の人間と異なり、そんな戦略上の要点は無縁だと思っていたのだ。
「戦争はゲームとは違う。時間制限も得点も判定もない。なら、勝ち負けはどう決める？
何処で終わりにすれば良い？敵である者を全て撃ち滅ぼした時か？」
疑問が一つ上乗せされる毎に、虎の身体全体から発散される危険度がさらに高まり、
キラ達は声も上げられない。
「ならば、僕は君たちを、今この場で始末するべきなのだろうな。
そうすれば、少なくともこの先の自軍の損害は最小限で抑えられるだろうしね」
「もう、止めてください。あなたは良い人なんでしょう！？」
「キラっ！？」
この土壇場での、あまりにピントぼけしたキラの発言にカガリは眉を顰めて、
虎は意表をつかれた表情で、興味深そうにキラを観察する。
に襲われた私達を助けてくれた。それにこのドレスもくれたし…だから…だから……」
どんどん虎の良い人レベルが低下していき、トーンダウンしたキラの主張を、面白そうに
味わっていた虎は、銃を下すと、堪えきれない表情で吹き出した。
「はっはっは、本当に面白いお嬢ちゃんだ。良いだろう、帰りたまえ。
部下たちには一切、手を出させないよ」
キラとカガリは、お互いに信じられない…という表情を見合わせる。自分たちを敵の主力
だと知った上で、無傷で逃がそうとするこの男の神経を疑っているのだろう。
「ただ、お嬢ちゃんは一つ勘違いしているみたいだね。僕は決して良い人などではないよ。
なぜ、僕がさっき君を助けて、そして今敢えて見逃そうとしているか理由が分かるかい？」
「えっ……？」
「それはね、僕は君と戦いたいからなんだよ」
虎の身体全体に危険な雰囲気が蘇り、キラ達は思わず息を飲んだ。
「君が自分をどう評価しているかは知らないが、君は我らコーディネイターの中でも
突出した才能を誇るずば抜けた戦士だ。私はそんな君と是非とも戦いたいのだよ。
君をこの場で野放しにしたら、この先どれほど私の部下が酷い目に遭うかを承知した上で、
敢えて私は、部下の安全より自分の個人的な闘争意欲の方を優先させようとしているのだ。
そんな指揮官失格のエゴイストの私が、良い人の訳ないだろう！？」
「そ…そんな……………」
「お嬢ちゃん、君にはないのかね？ そういった愚かな闘争本能の類は？
勇敵を前にして、戦士の血を熱く滾らせるということは今まで一度もなかったのかね？」
「わ…私は、戦う事が楽しいなんて思ったことは一度もない。
出来ればもうこれ以上、誰一人殺したくない。どうして、皆仲良くできないの？
お互いに傷つけあっても、一つも良い事なんてありはしないのに…」
キラの瞳からポロポロと涙が零れ落ちて、キラはその場に泣き崩れる。
恐らく、それこそが男と女の…というよりも、生まれつきの闘士である砂漠の虎と、
生粋の戦士ではないキラとの、決して相容れることがない一線なのだろう。
「だが、君は再びあのＭＳに乗って戦うのだろう？コーディネイターでありながら、
ナチュラルに味方する少女か。浅からぬ事情があるのだろうが、敢えて問うまい」
虎はほんの少しだか、キラに同情したかのように、キラを見下ろすと
「帰りたまえ、確かに今の君は戦士ではないようだ。
私は良い人ではないし、数え切れない程のナチュラルを地獄へ叩き落してきたが、
それでも、戦士でない者には一度も手を出したことがないのが私の自慢でね。
今の君に対して差し向ける銃を、僕は持っていないよ」
こうして、砂漠の虎とキラ達との危険な会見は終わりを告げた。
途中、騙し討ちされるのではずっと警戒していたカガリは、一瞬拍子抜けした表情
を閃かしたが、すぐに、無事ザフトの溜まり場である広大なお屋敷の門の外に出て、
なんとか自分達の身の安全を確保できたことにホッと安堵する。
「ねぇ、カガリ…」
キラは、先の涙で化粧の一部が剥げ落ちた顔をカガリの方に向ける。
「さっき虎さんが言っていたことどう思う？カガリにも戦いを嗜む感情はある？
男の人は皆、あの人と同じように戦いたいの？」
「キラ……」
キラの真摯だが、どこか縋るような瞳に見つめられて、カガリは内心の葛藤を抑えこむと
「俺もずっと戦場で戦い続けてきた口だから、虎の主張した、戦いにはそれに伴う
高揚感みたいなものがあるのは否定しない。
だが、力があるからって戦いたくもない女の子を、敵として喜んで戦場で待ち受けよう
とするあいつとは絶対に相容れない。俺はキラとは絶対に戦いたくないからな…」
最後のほうは完全に語勢が弱くなって、照れ臭そうに赤くなるカガリに、
キラは涙を拭いて、太陽のような笑顔で微笑むと
「ありがとう、カガリ…。今日は一日中、ずっと私を守ろうとしてくれて…。
今日は怖かったけど、本当に楽しかった…」
「よ…よせよ」
カガリはぶっきらぼうにそっぽを向いてしまい、キラはクスクスと笑い出す。
ありがとう、ミリィ。
キラは心の中で自分の親友に感謝した。実は今日、キラが買出しに行くと知って、
その相方としてフレイではなく、カガリを連れて行くことを強く勧めてくれたのは、
ドッグでの一件をすぐさま和解してくれたミリアリアだったのだ。彼女はその理由
として、フレイがアークエンジェルを離れたら、食事を作れる人間がいなくなって
しまうし、カガリならバラディーヤに詳しいだろうから、案内にはうってつけだろう
という尤もな話しを挙げたが、本音は、今のキラにフレイ以外の窓口を作ってあげた
くて、その御眼鏡にどうやらカガリが適いそうだったからである。ミリアリアは、
もしかしたら、この先二人がキラを巡って面倒な関係になりはしないかとも危惧
したが、それ以上に、今のフレイとの異常な関係性を先に是正して欲しかったのだ。
お互いを見詰め合い、良い雰囲気になりかけていた二人に、その雰囲気をぶち壊すよう
に声を掛けてきた者がいる。キラ達を心配して、危険覚悟でジープを屋敷の前まで
移動させてきたフラガ達である。
「フ…フラガさん？」
「随分とお洒落な格好してるじゃないか、キラ。
待ち合わせの時間になっても現れないから、街の人に聞き込みをしてみたら、
ブルーコスモスのテロに巻き込まれかけた子供二人が、ザフトに連れて行かれたって
いうから、バジルール中尉とこれから特攻をかけようかどうかで揉めてたところなんだ」
「ご…ごめんなさい」
「いや、キラが無事ならそれで良いよ。それより、カガリの小僧はどうしたんだ？
あと、キラの隣にいるお嬢ちゃんは？」
「あっ！？」
二人は、先のドサクサですっかり失念していた、カガリの今の格好に気が付く事になった。
「み……見るなぁ〜！！」
「も……もしかして、お前、カガリか！？」
真っ赤になってジープの扉の裏側に隠れるカガリの正体にようやく気づいたフラガは
驚いた声をあげ、ナタルはこの異常な世界についていけずに呆然としている。
「カ…カガリィ。平気そうな顔していれば、絶対にばれないって」
「うるさい！うるさい！」
キラは、無意識にカガリの心の傷を抉る残酷な台詞を吐き、フラガは最初、唖然として、
次に一瞬ニヤつきかけたが、直ぐに生真面目な表情へと切り替える。
「そうか、坊主。同じ男として気持ちは判るぞ。男にとってこれ以上の屈辱はないからな。
虎の奴、なんて酷え真似を…。心配するな、今すぐ俺が着替えを買ってきてやるから」
フラガはいかにも同情した顔で、軽くカガリの肩を叩くと、すぐさま買い出しへと
飛び出していき、カガリは安堵の溜息を漏らしたが、キラの顔は引き攣っていた。
キラは、あのフラガの顔に見覚えがあったからだ。確か、ラクス返還に伴う軍事裁判
の時も、フラガはあんな人好きのする笑顔でキラに脅しをかけたのだ。
それから十分もしないうちに、フラガは男物の着替えを買い込んできたので、
カガリは歓喜して、すぐさまジープの中で着替えて、ようやく女装した自分と
さよならすることが出来たが、何故か後日、アークエンジェル内で、カガリの女装した
ドレス姿の写真が出回ることになる。
最後に、このドサクサで、キラ達がフレイから頼まれていた花類を買い忘れたのは、
多分、天の思し召しだったのだろう。
>戦場に満ちる殺意と憎悪を、我が身に襲いかかる死の気配
フレイ様の驚異的な成長と裏表にあるモノみたいですね。フラガの反応も気になります。ナタル
もどうしたんだろう？
>戦って戦って、そして彼の負担を少しでも減らす事しかない
危険なかおりがプンプンしますね。
>キラ（♀）
｢青き清浄な世界の為に！」＝｢ナマハゲが来た！」の構図は笑えました。
｢カガリィ」←｢ィ｣の間延びした部分は思いっきり萌えるか、腹立たしくなるかのどちらかですねw
暗黒フレイ様は相変わらず罪作りなことを･･…。アイシャも何気に怖いw
今回も大作乙です。
シスコン全開のカガリと乙女コスモ全開のキラがいい感じですねｗ
しかし、虎さんの言っていた女装に目覚めたらしい『この前の少年』ってまさか遺作（大穴で痔）なのか！？
「…つまり、一機の相手に手出し出来なかったわけだな…？」
額に軽く手を当てて聞いていたアダムスキーが確認するように、淡々と聞いた。
アスランは俯いて唇を噛みしめるしかなかった。
「一機でそれほどの戦力か…しかし、中尉は母艦を発見していない。可能性は二つある。一機でこのコロニーの周りを徘徊し、ゲリラ的に攻撃を仕掛けている。または、母艦そのものがミラージュコロイドを装備している…」
「艦体を覆い隠す程のミラージュコロイドなど考えられません。それに母艦があるのなら…」
「たった一機で襲ってくるわけはない、な」
マリューの言葉を先回りしてアダムスキーは言葉を継いだ。指で机を叩く音が乾いて響く。
「最初の攻撃から三十六時間。一人のパイロットが補給も休養も取らずにコクピットに座り続け、攻撃し続け、肉体的にも精神的にも耐えられると思うかね？」
無理だ、と言う言葉をアスランは飲み込んだ。それは、アダムスキーの言う可能性、どちらでもないと言う事を意味していた。
「当初予想した以上に容易ではない事態になっている。場合によってはプラント本国から艦隊の派遣を要請するかも知れない」
「敵の規模も判らないのに、ですか？」
「判らないからこそだ。今まで一機での攻撃だったからと言って、これからもそうとは限らない」
現在では最善の判断であろう。マリューもアスランも頷いた。
「十一艦隊の援護も当然必要だが…キッドマン大佐は主導権を取りたがって困る。これは戦争ではないのだ。…いや、戦争という事態にしてはならないのだ」
アダムスキーは手元のモニターを操作して、コロニー内部の居住区を映すようにセットした。それをジッと見ながら、マリューとアスランに諭すように、独白するように言葉を続けた。
「できれば、ことが小さいうちに迅速に処理できれば良い、と思っている。ゲリラか、そうでないのか。そうでないとしたら、いったい誰なのか…」
しかし、と言いかけてアスランは言葉を飲み込んだ。戦争は、そんな個人の感傷にはお構いなく、凶暴に理不尽に始まる。母の死も理不尽なら、父の暴走と最期も全くの理不尽だった。
だから、アダムスキーの言葉を理解しても、心のどこかでそれは甘いのかも知れないという冷めた感情が働いてしまう。
しかし、カガリやラクスの顔を思い出し、その萎えそうになる感情を奮い立たせようとする。
例えこれから十年、二十年先も闘争を続けているとしても、その先も人は生きて、暮らしをしているのだろう。なら、その時の為にできる事を今しなければ、死んでいった者達に顔向けできないではないか？
母、父、二コルをはじめとする戦友達、上官。プラントの人間だけではない。ナチュラルもコーディネーターも全て、生き残った者は皆、死んでいった者に対する責任がある。
そう思うから、アスランはここにいる。そうでなければ、それでは、悲しすぎる…
私は、いつもヘリオポリスのみんなが、たむろしている食堂に向かった。
そこには、トールとカズイだけがいた。
サイは、男子組の四人部屋にいるらしい。最近、なにか軍の勉強をしているそうだ。
本気で軍に残るらしい。
トールは、カズイのぼやきを一人聞かされてうんざり気味だったようだ。
私を見てすぐに反応した。
「ああ、ミリィ仕事交代？」
「うん、トール。ねぇ、ちょっと付き合って」
とりあえず、今のカズイから開放されるということで、トールは、何も聞かずに
私に付いてきた。
「ミリィ、どこに行くんだい」
「ちょっと」
私は、はっきり答えずに足を進める。私の四人部屋の前に来たところで、
トールを振り返る。じっとトールを見つめる。
「ねぇ、トール、私のこと好き？」
「おい、何、今さらなこと言ってるんだよ、ミリィ」
私は、四人部屋の戸を開けた。
「じゃ、ここでキスして」
「ミリィ！？」
トールは、とまどっている。トールとキスぐらいしたことある。服の上から、
体を触らせたことはある。でも、そこまでだ。私たちは、一線を越えていない。
トールとは、いつも、友達の延長で付き合ってきた。
「おい、冗談だろ」まだ、信じられないようにトールが言う。
「私は本気よ」
私は、真剣な顔でトールを見つめる。やっと、トールにも伝わったようだ。
目の色が真剣になる。
「ミリィ… 急にどうしたんだよ。
俺、まだ、そんな… ミリィに、そんなことできるほど、そんな…」
まだ、トールは、とまどっている。でも、私は、もう戻れない。
自分で、トールを部屋に引きいれる。部屋の戸を締める。
「急にって訳じゃない。ねぇ！ トール…」
私の方から、トールの首に手をかける。ここまで、露骨に誘うのは始めて。トール、私に幻滅してる？
でもね、私は、もうリタイヤしたいの。キラからリタイヤしたい。もう疲れちゃった。
私の処女を、トール、あなたにあげる。
今なら、トール。私を、本当にあなたのものにできるのよ。
そうすれば、私はキラを忘れられる。忘れざるを得ないようにできる。
もう、あの子がキラに何をしても、カガリさんがキラと仲良くしようと、
私は胸を痛める必要が無くなるの。
さあ、トール、私を奪って。
しばらく、逡巡した後、トールは意を決したように、私を抱き寄せキスをした。
トールの体が震えているのが分かる。
心臓がドキドキしている。私の心臓もドキドキしてる。
唇を離したトールが、私の肩をつかむ。いよいよ、次の段階に入るのよ。
「本当にいいのかい」
「うん！ 来てトール」
どちらともなく、ベッドに倒れ込んだ。トールの震える手が、
私の制服のジッパーを、そろそろ降ろした。
アンダーシャツをたくし上げる。私の小さめの胸にブラの上から、
おずおずと触れた。女の子を初めて触れるような初々しい愛撫。
トールは、ブラの外し方が分からないらしい。手が迷ったように動く。
「ちょっと待って」
私、半身を起こして自分で背中のブラのホックを外す。
露になった私の胸に触れるトールの手は、汗ばみ、さらに震えている。
少しずつ、少しずつ、あくまでも控えめに動く手。
私、セックスって、もっと荒々しいものと思っていた。
キラを忘れられるほど、激しいものだと思っていた。
もっと、そう、昔読んだ、いやらしい本のように。
トールに処女をあげようとしている私。
瞬間、私の中で、過去に読んだ本、マンガ, アニメなどの性的表現が駆け巡る。
裸、あえぎ声、処女を失う痛み。
一瞬、体を縮めこめる。目を閉じる。
妄想に凝り固まった私の思考は、思いもかけない方向へ流れる。
レイプ、強姦、 暴力による処女喪失、それは、私が、好んで読んだ、
いやらしいマンガのシチュエーション。
私、友達から特殊だって言われたことがある。女の子は男の子同士のエッチ本を
よく買うのに、私は男が女の子を陵辱する本も買っていた。無理矢理犯される女の子、
それに私は興奮していた。
でも、それが現実の自分に置き換わると…
関係無いわよ。私、今は無理矢理、犯されるのじゃない。違うわよ。
キラからリタイヤするのよ。楽になるの。
だけど、私の中に溢れたイメージは、それを否定する。
本当にそうなの？ 望まない男に抱かれたヒロインは、けなげに自分の真の恋人を想って涙するのよ。
そして、別の男に征服された体と心のギャップに苦しむのよ。それは、もっと大きな苦しみ。
決して楽になんかならない。その覚悟があなたにあって？
違う、トールは、望まない男なんかじゃ無い。トールはいい人よ。決して、そんなことにならない。
トールの手が、私の太腿に触れる。スカートの中に手が伸びる。
ああ、来る。
「あ！…」
途端に、私の中に恐怖感が芽生える。
また、私の記憶のイメージが、私を襲う。マンガの中で、当たり前のようにあったレイプシーン。
悲鳴。痛み。そして…
恐い、恐い、恐い、助けて、助けて、助けて、誰か助けて。
助けて、お願い。助けて、キラ！…
トールの手が、急に私から離れた。目を開けると、苦悩するトールの顔が見える。
え！ 私、涙出てる？ なんで、こんな時に。ダメよ、こんな時に。
「ミリィ、やっぱり、まだダメだよ。俺、まだ資格無いから。
まだ、頼りないから。頑張るから。俺、もっと頑張るから。
ミリィ、ごめん」
私が答える暇もなくトールは出ていった。
私は、自分の想いで一杯で、そんなトールのことを考える余裕が無かった。
恐かった。まだ何もしていないのに。スカートに手を入れられて、
下着の上から触られただけなのに。
楽になると思っていたのに。リタイヤすれば楽になると思っていたのに。
キラを忘れられると思ったのに。
あの瞬間何を考えていた？
キラに助けを求めていた。キラを忘れようとしたことなのに。キラのことばかり考えてた。
なんでこうなったのよ。
私が臆病だったせい？
私の先入観が大きすぎたせい？
私が耳年増だったせい？
私の妄想が大きすぎたせい？
トールが、こんな、私を無視して、強引に奪ってくれたら、
私が、こんなこと考える暇なく、私を蹂躙してくれたら…
でも、優しいトールに、そんなことできる訳がない。
馬鹿よ、私。
リタイヤしたいのに、いざやろうとするとできないなんて。
馬鹿よ、私。
乱れた制服姿のまま、私は手で目を覆って泣いた。
のろのろと立ち上がった私は、服を直すと、部屋を出て歩きだした。
とりあえず、食堂で暖かいコーヒーでも飲んで心を落ち着かせよう。
とぼとぼと、通路を歩いていると、同じように、とぼとぼ歩く、あの子と出会った。
どちらともなく目が合ってしまう。
あの子も、何か元気が無い。
そう言えば、さっき、キラとの通信の時に、カガリさんのことで、ちょっと復讐したんだっけ。
何よ、あの子と私、一緒に落ち込んでいるなんて、私は違うわよ。あの子と違うわよ。
「ねぇ、ミリアリア」あの子が、躊躇いがちに話しかける。
「何、フレイ？」
「フェラチオってしたことある？」あの子が突拍子も無いことを聞く。
「……」
何、何なのよ！ 私、顔が真っ赤になった。
こんなところで、急に、何言ってるのよ。
「無いならいいわ」
私は、立ち去ろうとする、あの子の腕を掴んで止めた。
「してないなら、どうだって言うのよ！」
私は怒った声で、あの子にまくしたてた。
どうせ、私は何もしてないわよ。
胸を触られただけで、終わったわよ。
トールを自分から誘ったのに、恐くて、できなかったわよ。
私は、さっきのことで、いつもの私じゃなかった。
「いや、もういいから」
「そっちから言ったんじゃない、何なのよ！」
何よ、フェラチオが何なのよ。なんで、わざわざ私に聞くのよ。
キラにしてたことを、私に自慢する訳？
そんなこと、キラにしてた訳？
いやらしい、いやらしい、いやらしい。
ああ、そうでしょうね。
あなた、キラを体で虜にしたんだから、そうでしょうよ。
最初っから、キラにフェラチオしてたんでしょ。
いやらしい顔して、キラのアレ舐め回してたんでしょ。
私が恐くて恐くて堪らなかった処女を捨てるのも、何の抵抗も無かったんでしょ。
自分から腰を振って、キラをイかせて。まだ足りずに、色々、いやらしいことしてるんでしょ。
どうせ、私は妄想ばかりで、知識はあっても、やったこと無いわよ。
やる勇気も無いわよ。
でも、あの子の言葉は、私の妄想を打ち砕いた。
「ダメなのよ。私の口では、キラがイかないの。
いくら口動かしても、イかないの…
なぜか分からなくて。
ミリアリアなら、何か知ってるかと思ったけど…
もういいわ、離して！！」
え！ 予想外の、あの子の言葉に、私は言葉を失った。
茫然自失する私の手を振り払って、あの子は逃げるように立ち去っていった。
あの子の顔、真っ赤になっていた。
何よ、あの子。キラを誘惑して、すっかり虜にしているくせに。
フェラチオがうまくいかなくて悩んでいるの。
口動かしてもイかないだって。
舌を使うとか、吸引とか… いくらでも、やることあるじゃない。
エッチな本でも、一杯出てくるのに。私でも知ってるのに。
今さら、何言ってるのよ、あの子。何よ純情ぶって。むかつく。
キラをすっかり自分のものにしているくせに。
キラと毎晩のようにやっているくせに。
淫乱な娼婦。魔性の女。キラを惑わす魔女。
それなのに、それなのに…
部屋に帰ってきたキラを、切ない顔で見つめてる？
キラの連絡があると、子供のようにうれしそうな顔をする？
フェラチオが下手で悩んでる？
あなたが、そんなことしないでよ。
魔女のあなたが、そんなことしないでよ。
むかつく、むかつく、むかつく！！！
キラを誘惑しているくせに、純情な乙女の素振りを見せる、あの子。
エッチなことで頭が一杯のくせに、いざ、処女を捨てようとすると、勇気の無い私。
私、あの子にも自分にも腹が立って堪らなかった。
そのまま、通路を駆け出し、また、自分の部屋のベッドに倒れ込んだ。
馬鹿、馬鹿、馬鹿…
私の、頭の中からトールのことは、ふっ飛んでいた。
キースは通信機を操作してアークエンジェルを呼び出した。
「こちらキース。味方の部隊を見つけたぞ。どうやら本当だったらしい。フレイを急がせてくれ」
「了解、アークエンジェルもそちらに向います」
「俺はフレイが来るまでここで旋回してるから」
そこで通信を打ちきると、キースは今度は地上からの通信を待つ事にした。なにしろこちらは向こうの周波数が分からない。暫く旋回していると、雑音混じりの通信が入ってきた。
「こちら、ユーラシア連邦所属、第３４師団所属、第１１連隊第２機械化中隊です。そちらの所属を教えていただきたい」
「こちら大西洋連邦所属、第８艦隊所属艦アークエンジェル所属機のパイロット、キーエンス・バゥアー大尉だ」
「ア、 アークエンジェル隊、あのカスタフ作戦でザフトを蹴散らした最強部隊ですか！？」
「･･････なんだ、その最強部隊ってのは？」
キースは呆れた声で問いかけた。そして、返って来た答えを聞き、押し寄せる偏頭痛に顔を顰めたのである。どうやらヨーロッパ方面軍は全軍の士気を高める為、自分達の戦果を誇大に発表したらしい。なんでも自分達の活躍を使った戦意高揚ニュースまでが流されたそうだ。まあ分からないでもないが、自分としてはこういう事に利用して欲しくは無い。多分やったのはサザーランドだろうが。
ほどなくしてフレイのデュエルが来たのを見たキースは旋回を止めてアークエンジェルの方に帰還していった。変わりにやってきたフレイは、デュエルを指定されたビルの傍にかがませて止めると、機体を降りてビルから出てきた兵士に挨拶した。
「救援要請を受けてやってきました。フレイ・アルスター准尉です」
「真紅の戦乙女の噂は伺っている。中隊長を務めているギリアン・クリスピー大尉だ。良く来てくれた」
精悍な黒人であるクリスピー大尉の顔には深い疲労と、安堵の色がある。一体どういう戦いをしてきたのだろうか。その答えは、ビルの中にあった。
うち捨てられたビルの中に、寄り添って体を休めている難民達がいる。その数は４００人はいるだろう。この中隊、いや、実際には小隊規模の数も残ってないのだが、は連れて逃げてきたのだろうか。
「大尉、この人達は？」
「この先の街の住人だ。ザフトに襲われてな、我々が保護できた住人はこれだけだった」
「じゃあ、他の人達は」
フレイの問い掛けに、クリスピー大尉は力無く首を横に振った。皆殺しにされたのか、他の部隊とともに脱出したのかは分からないのだろう。それを聞いたフレイもまた胸を締め付けられるような息苦しさを感じてしまった。ブカレストの街での体験から、フレイは民間人を巻き込んだ戦闘がどれほど悲惨なものかを理解している。あの体験がトラウマとなっているフレイには、市街戦そのものがすでに許し難いものなのだ。
「･･････この人達を、どこに連れて行くんですか？」
「言い難いのだが、アークエンジェルで近くの友軍基地まで運んで欲しいと思っている。彼らには不自由な思いをさせるだろうが、それが１番安全だろうからな。それに、これ以上の移動は彼らの体力が持たないだろう」
そういってクリスピー大尉は民間人の方を顎でしゃくる。確かに彼らは疲れ切っている。中には赤ん坊を抱いた女性までいるではないか。これでは確かに味方の勢力圏まで辿り着くのは難しいだろう。
「大尉、アークエンジェルにこの人たちを収容してもらえるよう、私が頼んで見ます」
「そうか、助かるよ」
クリスピー大尉は安堵の溜息を漏らした。だが、まだアークエンジェルが来るまでには暫くある。その間に敵が来たらどうすれば良いのか。自分はデュエルがあるから問題ないが、デュエル１機でどうにか出来るという保証も無い。それでも戦うしかないだろう。
「私はデュエルの近くで待機しています。何時敵が来るか分かりませんから」
「ああ、頼むよ」
フレイは大尉から離れてデュエルの傍まで来た。もう愛機と呼べるほどの戦闘を経験しており、このデュエルには愛着さえ感じている。もしこのデュエルが無ければ自分は生き残れなかっただろうし。
フレイはのんびりとデュエルの装甲板に持たれかかって空を見上げていた。彼女はこの地球の景色が、吹きつける風が、自然の変化が好きだった。確かにコロニーは住み易い。だが、なんだか違和感があるのだ。作られた環境が生み出す快適な居住空間。それはそれで良いものだったが、自分はこっちのほうが良い。
緑の香りを風が乗せてくる。その風に髪をなびかせる感触を楽しんでいたら、ビルの中から子供たちが恐る恐る出てきた。そして自分を見るととてとてと駆け寄ってくる。
「お姉ちゃん、お姉ちゃんがこれに乗ってるの？」
「えっ。ええ、そうだけど」
「すっげえ、これってＭＳだよね？」
「そうよ。ナチュラルでも乗れるＭＳなの」
フレイはデュエルを紹介してあげた。ビームライフル、シールド、バズーカ。全てがザフトと戦う為の強力な武器だ。子供達はこの珍しい兵器に興味津々らしく、目を輝かせて聞き入っている。
だが、説明を聞いた子供の１人が漏らした言葉に、フレイは衝撃を受けてしまった。
「凄いなあ、僕も大きくなったらこんなＭＳに乗ってザフトをやっつけてやるんだ！」
「君は、軍に入りたいの？」
「うん、ＭＳに乗って、父さんと母さんの敵を取るんだ！」
「そうだよね、俺だって戦うんだ！」
口々にザフトへの敵意を見せる子供達に、フレイは自分の姿を重ねてしまう。この子達も戦争で親を無くしたのだろう。その姿に悲しさを覚えたフレイは、自分の問いに答えた子供をそっと抱きしめた。
「大丈夫だから。あなた達が戦わなくても、私たちがきっとこの戦争を終わらせるから。あなた達を守るから」
「お、お姉ちゃん？」
「だから、敵討ちよりも先に、あなた達がちゃんと生き残ってね」
これがフレイの偽らざる気持ちだった。もうあんな光景は見たくない。子供が戦火の犠牲になるなんて間違っている。もうあんな子供を増やさない為に、キラの負担を減らす為に、フレイは戦っているのだから。
>>キラ♀
･･････アイシャさん、物凄く怖いです。でもカガリ、ババア呼ばわりは流石に不味いぞｗ
キラは相変わらずですが、カガリが女装･･････背が高いから意外とドレスは似合うかな？
だが兄貴、面白がって写真焼き増ししてばら撒くたあ、これって将来オーブにとて大問題かｗ？
>>幻
アスランは何処まで行っても苦労とは離れられないんですね。上司のアダムスキーさんがなんか味があって良いｗ
>>ミリアリア
ミ、ミリィさん、あなたもフレイ様の事言えないくらいに危なくなってますよｗ
だがトールが不憫過ぎる。ミリィにとってのトールってキラの変わりぐらいでしかないんだろうか
朝からムシャクシャしていた。
夕べあの子の話を聞いてから、いつもにも増して、あの子に苛立ちを覚えている。
そう、あのフェラチオの話を。
口を動かしても、キラがイかないだって！ また、むかついてきた。
仕事をしている時も、昼食を取っている時も仏頂面の私に、
サイもカズイも目を丸くしていた。トールが見当たらないのに、
私は気づいてさえいなかった。
夜、私は、また、キラからの通信を、あの子に取次ぐ。
キラは今日も仕事場から通信しているらしい。
カガリさんの声が、後ろで聞こえていた。妙に神妙な顔をしたあの子に、
通信を取り次ぎながら、私は、あの子に、何かバチでも当たればいいのにと、
密かに思っていた。
カガリさんがいるなら、あの子に何か言ってくれないかと思った。
戦うお姫様カガリさん。お姫様、キラを惑わす魔女を懲らしめてよ。
そんなことを考えながら通信終了を待つ。
あの子から通信終了の連絡が入った。通信前と打って変わって、
なんだか、キョトンとしたような顔をしてる。
あの子は、何か思い出したように、次のように付け加えた。
「カガリいたわね。でも、あの子って可愛いわね。
キラと私のこと彼氏・彼女だって」
それだけ言うと、あの子はすぐに通信を切った。
私の心の中は、激しい怒りに震えていた。
カガリさんの裏切り者！！！！
お姫様が、ナイトと魔女の仲を認めてどうするのよ！
魔女に可愛いとか言われてどうするのよ！
私、カガリさんのこと、キラを救ってくれると期待していたのに。裏切り者！！！
あの子、夕べは純情ぶったこと言っておいて、さっきの通信のとき、
カガリさんまで陥落したの。あの子、魔女よ。絶対に許せない。
もう、カガリさんには、まかせておけないわ。私が自分でやってやる。
あの子に、なにかキツイ一言を言ってやるのよ。
次の夜。キラとの通信の時、私はカガリのことを問い詰めた。
「キラ、隠してることあるでしょ」
「どうしたんだ、フレイ？」
「とぼけないでよ。カガリよ、カガリいるんでしょ」
「ああ、いるけど」
キラは悪びれもせずに言う。なんてこと。
キラは、私がカガリに嫉妬しているのを知っているはずなのに。
「もう、カガリとなんか一緒にいないでよ。だいたい、何でカガリが一緒にいるのよ」
「カガリは、モビルスーツ開発を手伝ってくれてる。カガリ自身もテストパイロットとして参加してるんだよ」
「嘘ばっかり。そんなの言い訳でしょ。キラに近づきたいからでしょ」
キラは、少し黙って、私の顔を見つめた。何か辛そうな顔を一瞬した。
でも、私だから気づいたくらいの、ほんの一瞬。すぐに明るい顔に戻った。
「それなら、カガリを呼ぶよ。直接話を聞けばいいよ」
キラは急にモニタの前から居なくなった。しばらくすると騒がしい声が近づいてきた。
「おい、何で私が出なくちゃならないんだ。お前の彼女と話すなんて、やだよ」
「いいから、ちょっと頼むよ」
キラは、本当にカガリを引っ張ってきた。何考えてるの。
「やだよ、あ！ ハイ！ フレイ」
「ハイ…」と私。カガリと形式的に挨拶を交わす。というか、まともに挨拶をしたのは初めて。
「で、何を話すんだよ」とカガリ。「仕事のことさ。カガリが来てる訳とか」キラが言う。
「まあな、せっかくキラに来てもらってるのに、こっちの開発グループの派閥争いとか、
ゴタゴタで迷惑かけてるからな。ちょっとでも、仲裁してやろうと思ってキサカと来てるんだが。
まあ、キラがんばってくれてるよ。ゴタゴタ納めてもらって、やっとまともに開発動きだしたとこだし」
ちょっと、どういうこと？ こんなこと、私との通信では言ってなかった。どうしてキラ？
「でもね、カガリも結構うるさいんだ。仕事でもああしろ、こうしろと。自分で乗ってみて文句ばっかり」
「ちょっと、やめろって。ああ、だからさ、スポンサーとしてはだな、いろいろ注文があってさ」
キラが話を混ぜ返すようにカガリの後ろから口を出す。カガリは照れ隠しのように喋りだす。
「そんなこと言うなら、私もフレイに、ばらしてやるぞ。
フレイ、キラをなんとかしろよ。スタッフと息抜きしようって食事に誘っても、
お前と話すからって、すぐ抜けられて。下手に突っつくと、今度はお前とのノロケを聞かされるし」
「キラって、そんなこと言ってるの」私は、思わず聞き返す
「そうだよ。お前ってさ、キラ縛りすぎ。あいつも付き合いあるんだから、もうちょっとさ。
誰もキラを取りゃしないんだし」
私は、カガリに嫉妬してるのに、当の相手が、こんなこと言う？ なんか変。
「そうだよ、お前ら、もうちょっと彼氏・彼女だって自覚しろよ。
だいたい、なんで私が、会う人会う人に、キラに彼女がいるって言って回らないといけないんだよ」
なおも、ぼやくカガリに、私とキラが合わせたように声を出す。
「え！ ちょっと、そんなのやめてよ」 「おい、カガリ！ 待てよ」
「だから、もうちょっと自覚をさ…」顔に手を当てるカガリ。その下の複雑な表情。
「おい、カガリ、そんなこと言わせるために呼んだんじゃないぞ」とキラ。
「来たから、言ったんだよ。悪いかよ」とカガリ。
「悪いかですって、冗談じゃ無いわよ」と私。
なんだか、おかしな方向に話が向かっているのを察して、キラが締めに入る。
「とにかくフレイ！ カガリは仕事の仲間なんだ。モルゲンレーテのスタッフとも、
なんとか、うまくやってる。フレイには迷惑かけるけど、もうしばらく頼む」
「うん… 分かったわキラ」
何が、とにかくなのか、さっぱり分からないのだけど、
なんとなく、キラの言葉に押されてうなずいてしまう私。
「だから、私の前で、のろけるなよ。だから嫌だって言ったんだ」
カガリは大声でぼやいて、照れたように顔を染めている。
でも、私は、カガリのそんな表情を可愛いと思った。
どうしたんだろう。昨日まで、カガリのことあんなに怒っていたのに。
むしろ、カガリのこと、まるで妹のように可愛らしくさえ思える。
私とキラの妹だったみたいな気がしている。拗ねたような仕草さえ愛しく思える。
なんだか、訳の分からないうちに通信は終わった。
通信終了を告げるミリアリアに、私は、なんとなく、次の一言を追加した。
「カガリいたわね。でも、あの子って可愛いわね。
キラと私のこと彼氏・彼女だって」
私は、ふくれっつらのミリアリアを無視して通信を切った。
キラとの通信にカガリが乱入した夜。私はさっきの通信に思いをめぐらしていた。
カガリへの嫉妬心は、さっぱり無くなっていた。
カガリったら、やたら、私をキラの彼女・彼女と持ち上げて、なんか、
こっちが意識してたの馬鹿らしいくらい。
前は、塞ぎ込んだり荒れてたキラと、明るいカガリの比較で、キラが影響を受けてたように
思えたけど、今は、キラの方がカガリより優位に立っている感じ。なんか、心配すること無いみたい。
だけど…
今日のこと、よくよく考えると、相変わらず、キラは帰って来ないし、
カガリはキラと仲良く一緒に仕事している訳で、私にとっては、
なんにも解決していないんだけど…
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
その夜、私は淫夢を見た。
いつもよりは、キラとの通信の後の落ち込みが少なかったからかもしれない。
キラのぬくもりが肌に蘇っていた。
私はベッドに座ったキラの膝の上に抱えられている。キラが揺するように腰を動かす。
私もキラの背中に手を回して抱きしめ、腰を淫らに揺り動かし、声をあげる。
ふいに、私の後ろで声がした。
「やだよ、私の目の前で…いやらしい…恥ずかしい…やだよ」
(この声…)
「仲間だから、一緒にしよう。恥ずかしがらずにおいで」
キラが私を揺さぶりながら、後ろの声に、優しく話しかける。
私の背中に、まだ硬さの残る乳房が押しつけられた。手が私の胸に回される。
「とっても柔らかい…でも、先だけすごく硬くなってる。すごいよ…ああ」
甘えた声で、私の耳元で囁きかける。
「フレイお姉様〜、キラお兄様と気持ち良さそう…。すっごく、いやらしい顔してるよ。とっても奇麗だ」
(ちょっと、これは…ちょっと、待って！！)
夢の中の私は、心の声に気が付かないかのように、顔を後ろに向けて、こう囁いた。
「うふ、あなたも、とっても可愛いわ。私の可愛いカ・ガ・リ」
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
私はガバと飛び起きた。寝ぼけた目で、キョロキョロとまわりを見回す。
ベッドランプの薄暗がりの中、トリィが驚いたようにベッド端まで、飛びのいて、私を見ている。
汗が急に吹き出してくる。
どうしたんだろう。私、こんな趣味無かったはず。
確かに、さっきの通信で、カガリを可愛らしく感じたけど、こんな夢を見るなんて。
キラが、カガリに影響されないと安心した途端に、カガリを、こんな風に見てしまうなんて。
私の中に背徳感が込み上げてくる。
頭を手で抱えて、妄想を追い払おうと振ってみるけど、一度、私の中に出来たイメージは消えない。
これは、いくらなんでも異常だ。私、ヘンタイだ。アブノーマルだ。
こんな…こんなこと、考えるなんて…
どうしたんだろう。やっぱり変だ。今まで、自分が持っていた価値観が、
この一週間余りの間で、コロコロ変わっている。
嬉しくなったり、落ち込んだり、
フェラチオに急に執着したかと思うと、すぐ興味なくなったり。
カガリに嫉妬して怒ったかと思うと、今度は、可愛くてたまらなくなって…
何だかダメダメだ！ 自分が何なんだか、さっぱり分からない。
(もっと大人になりなさい) また、マリューさんの言葉を思い出した。
そうだ、もう一度、 マリューさんに相談してみよう、今度は私のことで。
うちの主役達（または書いている当人）が変なので。
私は、全部書き上げてから投稿を始めましたが、1/3 程度投稿した時点で、やはり、
後で気になる点が見つかって、現在、調整中です。
さっき、ＳＳ置き場を覗いてました。私は「二人で一人」も好きでした。
>流離
淡々とした戦場描写続きますね。私も、こんな渋い話が書ければいいんでしょうけどね。
十一艦隊、露骨に怪しいです。過去ログ見るとカナ―バの治世を非難してましたし…左遷トリオがどう動くか。
>ミリアリア
>いやらしい、いやらしい、いやらしい
ミリアリアも十分いやらしいですw。フレイ様の衝撃の発言からすごいひねくれた珍見解を･…妄想スパイラルですね。
>流離
>「･･････なんだ、その最強部隊ってのは？」
言われた当人もびっくりしたでしょうね。でも言った本人は藁にもすがる気持ちなんでしょうね。
>とてとてと駆け寄ってくる
すさんだ戦場の中でほのぼのします。フレイ様頑張れ!
>オーブ・フレイの心
>やだよ、あ！ ハイ！ フレイ
本編でも見てみたかった。キャットファイトも好きですが、不器用な2人のやりとりもいいですね。
エロ苦手な人は読み飛ばしてください。
フレイの心境の変化を追っていく予定。
そう言って、くちづけた。
くちびるは、やわらかくて、あたたかくて・・・・・
キラが息を呑んだのがわかった。
最初は、利用するつもりだった。
私には、力が無いから。戦うことが、できないから。
パパを助けられなかったキラなんて、死んでしまえばいい、そう思った。
２度目のくちづけは、涙の味がした。
花を模した折り紙、整備の人に頼まれてキラに渡したのだけど・・・キラ、泣いてた。
覚えてる、私が折りかたを教えてあげたんだもの。
そう・・・脱出艇、沈んでしまったのね・・・・・・・・・可哀想・・・・皆も・・・キラも・・・・
戦争なんて早く終わればいい。
そのために戦ってくれるでしょう・・・？キラ・・・・・・？
「私の思いが、あなたを守るから・・・」
そうしたらキラは、まるで溺れた子供のように私にしがみついてきた。
「大丈夫よ・・・・・」
言った口をふさぐように、深いくちづけ。
「んっ・・・むぅっ・・・・・・・・・・」
こんなキスを受けたのは初めてで、うまく息ができない。でもだめ、キラを拒絶しちゃ・・・・・・・・・・
キラは私のために戦うんだから・・・そうしなきゃ、いけないんだから・・・・・
「フレイ、震えてるの・・・・？」
不安げにキラがささやいた。
言葉のかわりにキラの背中にまわした腕に力をこめた。
後戻りはできない。私は賭けに勝ったんだもの・・・・・・・・・
「フレイ・・・・・フレイ・・・・・・・・」
熱に浮かされたような表情で私を求めるキラ。私のすべてをあげるわ、あなたの力と引き換えに。
そのために軍に志願したのだから。
と、素肌に冷たい空気を感じた。
「あっ・・・・・やっ・・・・・・・・・」
思わず洩れた声にキラが少しだけびくっとするのがわかった。
「ごめんなさい、何でもないの、大丈夫だから・・・・・！」
必死に言い募る私に優しく微笑んで髪を梳いてくれたキラ。そして頬に、くちびるに、首筋にくちづけをおとす。
大丈夫、大丈夫、大丈夫・・・怖くない、怖くなんて無い・・・・・！
キラはたどたどしい手つきで、私の全身をさぐった。
「やっ・・・・くすぐったい・・・キラ・・・・・・・・」
「あっ、ごめ・・・・っ・・・・・」
「ふふ、大丈夫・・・・・続けて・・・・・・」
軍服から覗いたブラをはずし、とまどいながらも胸の先端に口付けるキラ。
「んっ・・・・ぁ・・・・・・」
どうしたらいいのかわからない。馴染みの無い感覚が体中にひろがっていく。
「キラ・・・・キラ・・・・・っ・・・・」
やるせなくて名前を呼ぶ度に、キラは私を抱く腕にそっと力をこめた。
「あっ・・・・・・」
思わず互いに赤面する。
キラは恥ずかしさを隠すように私の首筋に顔をうめ、手は別の場所をさぐり始めた。
スカートをたくし上げられたとき、さすがに恥ずかしくて声をあげてしまった。
「やっ・・・キラ・・・・・っ・・・・・」
「大丈夫だよ」
私の反応をうかがいながら太ももからお尻にかけてやさしく触れるキラ。
キラを拒んじゃいけない、拒んじゃいけない・・・・
そう思ってせいいっぱい受け入れる表情を作ると、キラは行為を続けた。
そうしているうちに、濡れてきているのが自分でもわかった。
「フレイ・・・・僕もう・・・っ・・・・入れてもいい？」
せいいっぱいの笑顔をつくってうなずく。
「いいよ、キラ・・・私があなたを受け止めてあげる・・・・・」
怖かったけど、痛かったけど、パパを助けてあげられなかった私への罰だと思った。
ごめんなさい、パパ・・・・あの時間に合わなくて・・・・・・・・
「痛いの・・・？フレイ・・・・・？」
いつの間にか私の頬を流れていた涙をぬぐいながらキラが尋ねた。
「うん・・・痛いけど・・・大丈夫、大丈夫よ、キラ。」
「フレイ・・・フレイっ・・・・・・・・！」
私の名前を呼びながらキラはその行為に没頭していった。
「もう誰も死なせない・・・・・！死なせるもんか・・・・・」
そう言って彼は飛び出していった。
「・・・・ふ・・・・・ふふふ・・・・・・」
思わず唇から笑いがこぼれる。
「・・・・守って、ね・・・・」
そう、私は賭けに勝ったのだ。キラは私たちを守る。
だってパパを守れなかったんだから。償いをしてもらわなくちゃ。
コーディネイターなんだもの、利用したっていいの。
「そうよ・・・・あの子は、戦って、戦って、戦って死ぬの・・・・じゃなきゃゆるさない・・・・・」
そう、そのために体も差し出した、守ると偽りを語ったりもした。
「あいつら、皆やっつけて・・・・・・」
そうよ、皆やっつけてもらわないと戦争は終わらないんだから。
もう、パパをなくしたときみたいな悲しいのは嫌・・・・・
「ふふ・・・うふふふ・・・・・・」
大丈夫、私はうまくやったわ。あとはみんなキラが片付けてくれるから・・・・
そう思うとこみ上げてくる笑いを止めることはできなかった。
自らの流した涙には気が付かないままに。
「真紅の戦乙女、か。大仰な名前だからどんな奴かと思ってたが、こうしてみると普通の女の子じゃないか」
「そうですね。あんな子供があのＭＳに乗ってるんですなあ」
「ニュースでは彼女は父の敵を取る為に軍に入ったそうだが、大変だろうな、これから」
「我々が不甲斐ないから、彼女にも苦労をかけてしまうのですな」
軍曹は辛そうに顔を顰めた。自分達大人が不甲斐ないから、あのような子供までが前線に出てきてしまう。それは職業軍人である自分には耐え難い現実なのだ。自分の部下にも２０前の志願兵がかなりいるが、その多くが初陣で戦死してしまう。コーディネイターの歩兵はその身体能力から絶対的に有利なので、どうしてもナチュラルは不利なのだ。自分のような訓練を積んだベテランなら戦いようもあるのだが、訓練の足りない新兵ではまともに戦うことも出来ない。
彼女は初陣を機体性能に頼ってなんとか飾れたそうだが、かなり運が良かったのだろう。訓練の足りない、あんな子供がザフトのＭＳに勝てるとは思えなかったから。
だが、軍曹はすぐにその想像を覆される現実に直面する事になった。見張りに立っていた歩哨が大声で悲鳴のような報告をしてきたのだ。
「て、敵だっ。ジン４機、戦車、装甲車の数は不明！」
「ちっ、もう来たのか！」
大尉は吐き捨てるように言うと、軍曹に戦闘配置に付くよう命令を下した。そして、フレイも子供達にビルの中に戻るように言って自らもデュエルに乗りこんだ。機体を起動し、立ち上がらせる。
「早く来て、アークエンジェル。私だけじゃ持たないかもしれない」
自分の背中にはあの子供達が、難民達が、中隊の兵士達がいるのだ。敵のＭＳを１機でも通せば彼らに助かる術は無い。最低でもＭＳだけは近付けてはいけないのだ。
だが、その認識がフレイの体を縛ってしまう。彼等を守れるのは自分しかいないという認識が、押しかかる重圧がフレイの臆病な心を容易く打ちのめしてしまう。だが、それでもやるしかないのだ。今、この人達を守れるのは自分しかいないのだから。
必死に自分に言い聞かせていたフレイだが、ふとあることに気付き、苦笑してしまった。今の自分は、アークエンジェルがヘリオポリスを出たばかりの頃のキラに似ている。あの時のキラも自分しかいないという気負いで戦場に立った。
「そうよね、キラでも耐えれたんだから、私にだって耐えられるわよ」
いささかキラには酷い言いような気もするが、フレイはキラをだしにしてどうにか自分を奮い立たせた。機体を低いビルの影に潜ませ、窓から見える視界にジンが通りかかるのをじっと待つ。まず１機を仕留めなくては。
永遠とも思える僅かな時間。ヘルメットのバイザーに汗が水滴となって付いている。緊張が胃を締め上げ、キリキリと痛ませる。そして、遂に１機のジンが視界に入った。
「もらったっ！」
正確に照準を付けられて放たれるビームの光芒が正確にジンを貫き、これを爆散させてしまう。これで残るジンが敵の存在に気付いた。慌てて近くの物陰に身を潜めるが、音響パターンの解析によりどの辺りにいるかは大体の見当がつけられる。なにより、向こうはこちらを見つけていないのが強みだ。
生き残っている３機のジンがこちらを向き、戦車隊が砲をこちらに向ける。フレイは急いでその場を離れようとしたが、それよりも速く砲撃が開始された。集中される弾量に機体が激しく打ち据えられ、中にいるフレイも衝撃にシェイカーのように振られる。
「こ、こんな所でぇ！！」
フレイは機体を跳躍させると、近くのビルの屋上に飛び移った。直にバズーカを残りの戦車に向け、砲撃する。動きの鈍い戦車は上から狙えば容易く破壊出来るが、この位置は敵ＭＳに良いように狙われる場所でもあった。たちまち７６ｍｍ弾が殺到し、足場のビルが崩されてしまう。だが、デュエルはそれよりも早く移動していた。
思いの他動きの良い連合ＭＳに、ザフト部隊を率いていたグリアノス隊長は感心したように呟いた。
「良い動きだ。度胸もある。ナチュラルにしておくのは惜しいな、あのパイロット」
まさか、乗っているのがＭＳに乗ってまだ間も無い１５才の小娘だとは夢にも思ってはいない。グリアノスは部下達にあのデュエルを追い詰めるように指示を出すと、自らデュエルに向ってジンを突撃させた。
フレイは真っ直ぐ向ってくるジンを狙ってバズーカを放ったが、紙一重でそれを躱された事に驚いた。
「躱された、そんな！？」
驚いている暇は無い。ジンは重斬刀を抜くと斬りかかってきたのだ。慌てて回避しようとしたが、避け切れずにバズーカの砲身を斬られてしまう。フレイは仕方なくバズーカを放り出すとビームサーベルを抜いた。
だが、すでに正面にそのジンはいない。フレイはどこにいったのかと視線を巡らせたが、ふと感じた殺気に慌ててシールドを上に向けた。直にシールドに物凄い衝撃が加えられる。飛んでいたジンが自重をかけて重斬刀で斬りつけてきたのだ。デュエルは踏ん張り切れず、後ろに向けて押し倒されてしまった。
デュエルはすぐに起きあがったが、もうジンの姿は無い。フレイはとにかくデュエルを走らせた。このままではまた奇襲を食らってしまう。すると、直後に自分が居た所を７６ｍｍ弾が穴だらけにしてしまった。
「このジン、強い」
フレイは自分が戦っている相手が物凄い実力を持つパイロットだとようやく悟った。これまで戦ったいかなる相手よりも強い。恐らくは、カスタフ作戦で戦ったあのデュエルよりも。
一方のグリアノスも、このデュエルの想像以上の反応の良さに賞賛混じりの驚きを感じていた。
「やるではないか、ナチュラルとは思えない反応の速さだ」
ビルの屋上で構えていた重突撃機銃を下ろすと、一気にデュエルめがけて跳躍した。デュエルのカメラがこちらを捕らえるよりも早く再び重突撃機銃が火を吹く。撃ち降ろされる砲弾がデュエルの上半身を幾度も打ち据え、兆弾が周囲を抉る。
「フェイズシフト装甲、何時まで持つかな！？」
フレイは焦っていた。こんなに直撃弾を受けてしまってはフェイズシフトが持たない。バッテリーの消耗速度は恐ろしい速さだ。加えて周囲を戦車やＭＳが包囲しようとしている。このままでは間違い無く殺されるという確信がフレイを襲った。
ミリィさん、そんな、あっさりカガリまで恨まなくても。次はとうとう自分で動きますか
そしてカガリ、ナチュラルに良い奴だな、お前は。毒が無いだけにとっても良い奴に思える
そしてフレイさま、悪い事言わないからマリュ−なりフラガなりにカウセリングしてもらいなさい。フラガの方がひょっとして良いかも？
>>散った花、実る果実
新作乙です
これは砂漠の頃ですな。丁度壊れフレイ様の頃ですか。この頃は怖い人だった
次はカガリを見ての嫉妬フレイ様ですかな？
その場所は、見る限り全てが砂の世界、砂漠であった。
「どうやら無事に降りれたらしいわね。」
ホッと一息つくマリュー。
「突入角と地表データーより現在位置を割り出せ。」
すぐさま次の仕事を指示するナタル。
この二人の行動を見れば軍人として優秀なのはナタルであることがはっきりとわかる。
「艦長、ストライクを収容させるべきです。」
ナタルはキッパリとした言い方で意見する。
「あ、そうね。」
マリューは一瞬であるがストライクのことが頭から離れていた。
マリューは通信機を取り、マードックに指示をする。
「マードック軍曹、ストライクの収容してください。」
「了解。おい、ストライクを収容するぞ。」
通信機を切る前からマードックは部下に指示した。
その行動がマードックらしいといえるだろう。
マードック達、整備反は後部甲板上に前倒れになっているストライクの収容に取り掛かる。
「おい、大丈夫かよ？いくらＰＳ装甲だって言ってもかなりの衝撃だぞ。」
ストライクが倒れている場所は陥没しておりストライクの４分の１は沈んでいる。
それほどの衝撃があったのだ。
外装は無傷に見えても内部はどうなっているかわからない。
そして、乗っているパイロットはさらに酷い状態である可能性が高かった。
クレーンを使ってストライクをトレーラーに移し、外部よりコクピットのハッチを開放する。
「おい、まじかよ。」
その場にいた誰もが予想しえない人物であり、驚きを隠せなかった。
地上に降下して慌しい中、フレイの思惑とは逆にアークエンジェルに残ってしまったキラ達、ヘリオポリス組は部屋に集まっていた。
５人の処遇はまだ決まっていないが、十中八九、軍人として扱われるだろう。
「俺達、軍人になっちゃうのかな。」
カズイは情けない声で言う。
「たぶんな。まあ、しょうがないさ。」
トールは上を向きながら言う。
声質はかるい。
それは、悲壮感が漂っている中で少しでも気分を紛らわそうとしているのだ。
「そういえば、フレイはどこにいるのかしら？」
ミリアリアは軍に残った友達であるフレイの心配をする。
以前までならサイの傍にいたはずなのだが、今はいない。
そのことについて誰もサイには聞かなかった。
ただ、何かあったことはサイの態度を見れば一目である。
そんな時、廊下から話し声が聞こえてきた。
「おい、聞いたか？ストライクに乗ってたパイロットの話。」
「ああ、聞いた。マジ？って思ったよ。乗ってたのがザフトの姫さんを人質にしようとした、あのお嬢ちゃんとわね。」
この艦に先の人質事件のことを知らない者はいない。
キラ達はそろいもそろって顔を見合わせた。
全員が同じ考えだ。
ストライクを操縦していたのはフレイ。
そう思ってから一番早く動いたのがキラであった。
「待って下さい。さっきの話、本当ですか？」
キラは掴みかからんばかりの勢いで尋ねる。
「ああ。」
あまりの勢いに腰を引かしながら答えるクルー。
「今は、医務室にいるはずだぜ。怪我をしたとかどうとかってな。」
「怪我を・・・」
「ああ。」
それを聞いたキラはすぐさま医務室へと走り、それに続いてサイ達も走り出した。
「騒々しいぞ、お前ら。」
中にいた医師が驚きながら言う。
キラ達はそれを無視してフレイを探そうとする。
しかし、探すまもなくすぐに見つかった。
フレイは奥のベットに寝かされていた。
頭には包帯が巻かれており、腕には点滴がうたれている。
その表情は苦悶に歪められており、汗が絶え間なく滴っていた。
それは素人目にもかなり酷い状態であることがわかる。
「先生、フレイはどうなんですか。」
言葉を発したキラを中心に医師を囲む。
勢いに負けて、思わず椅子から落ちそうになる医師。
医師としてみれば自分が責められていると錯覚してしまいそうだ。
それだけの雰囲気がキラ達からは伝わってきている。
「あ、頭の方の怪我は心配ない。それよりもあの中にいたほうがやばかったな。」
灼熱の大気の焼かれた続けたフレイの身体は著しく消耗しており、生きていたのがまさに運がよかったとしかいえないほどであった。
「とりあえず、今は水分補給をしとくしかないさ。」
と投げやり気味に言う。
どうやらこの医師はあまり適正がないようだ。
「すごい汗。」
ミリアリアは絶え間なく流れ落ちる汗を拭く。
他のヘリオ組もフレイに近寄る。
「先生、熱は大丈夫なんですか？」
「感染症じゃないから心配ないよ。」
医師は机に向かったまま答える。
やる気があるのか疑われそうな態度だ。
今のフレイは上着を着ておらず、タンクトップ一枚といういでたちで寝かされている。
白い肌の上を汗がつたい、１５歳としてはいささか成長しすぎているふくよかな胸の谷間に消えていく。
上着を脱がしたのは医師であろう。
治療のために脱がしたとはずだ。
決して、私欲のためではないはずである。
「キラ。」
苦しみの中、フレイの口から言葉がこぼれた。
この場にいた医師以外の全員が驚愕した。
寝言とはいえ、キラの名前が出るとは思わなかったからだ。
サイの中にまさかっという考えが浮かんだ。
・・・フレイはキラのことが
フレイの言葉には続きがあった。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。」
それは謝罪の言葉。
誰もが真の意味を知らない。
フレイの罪を。
フレイは夢を見ていた。
父親であるジョージ・アルスターの死。
キラへの罵倒。
キラとの間違った関係。
孤立。
キラの拒絶。
関係の破綻。
キラの哀しみの笑顔。
そして、ＭＩＡ−キラの死。
それが走馬灯のように何度も何度もオーバーラップしているのだ。
決して再会することなく、キラを死なせ続ける夢であった。
フラガは地図上を指差しながら言う。
現在地はアフリカ大陸、向かわなければならないのはアラスカである。
ここは現在ザフトの勢力圏にあり、アークエンジェルは今後も死闘を続けながらアラスカまでたどり着けなければならないのだ。
「しょうがありませんわ、あのままストライクと離れるわけにはいけませんから。」
マリューはフラガを見ずに答える。
今の任務はストライクとアークエンジェルをアラスカまで届けること、それがハルバートンが残した最後の命令だ。
マリューはどうしてもハルバートンの命令に応えたいのである。
「ともかく、本艦の目的および目的地には変更はありません。」
マリューは前髪をいじりながら言う。
フラガは心配そうにマリューを見る。
マリューは今の状況＋副長−ナタルとの確執もあり心労はたまる一方だ。
ただ官位が上だということで艦長になったマリューの重責はどれほどのものであろうか？
誰もわかりはしないであろう。
その身に味わっていなければ。
「そういえば、ストライクに乗っていたお嬢ちゃん、ナチュラルだろ。」
「ええ、そのはずですが。」
突如、フラガは話題を変える。
「ちょっと気になることがあってね。」
と言って、フラガは懐から一枚のディスクを取り出す。
「なんですか、それは？」
「ストライクの戦闘データー。観賞してみない？」
と言って、フラガはマリューにディスクを渡す。
その言い方はまるでナンパをしているようだ。
「え、ええ。」
多少呆けながらもマリューはディスクを受け取り、備え付けのパソコンにセットする。
まずはキラの戦闘データー。
パワーバランス、反応どれをとってもすさまじいの一言である。
さらに、第八艦隊との合流前の戦闘においては、戦闘途中で反応がさらに上がっている。
「コーディネーターというのはすごいですね。」
感嘆の声を漏らすマリュー。
フラガとてマリューと同じ気持ちである。
そして、降下時の戦闘−フレイの戦闘データーである。
「見事にバラバラですね。」
キラに比べるまでもなく凸凹なバランス、そして反応においてもまちまちな結果が出ている。
「んん。」
そのデーターの中で不思議な部分にマリューは気付いた。
「少佐、こことここのデーターなんですけど。」
「気付いた？」
頷くマリュー。
マリューが気付いた部分というのは、一つ目がバランスがバラバラで振り回されてるところで突如スラスターを一気に上げている部分。
もう一つは最後の方にある部分、パワーバランス、反応共に正確な値が出されているのだ。
「これをシュミレートしてみればわかるさ。」
フラガは端末をいじり、戦闘データーより先の戦闘を再現させた。
よたよたに飛んでいるストライクの上部よりデゥエルのビームが放たれるが、それを見事の避ける。
動きはモニターの上に見事に再現されており、ストライクは明らかにデゥエルの存在に気付いていないように見える。
そして、もう一つの部分においてはデゥエルがシャトルに狙いを定めた瞬間に体当たりをしたのである。
その行動は明らかにシャトルを守るための動きであるが、反応が早すぎるのだ。
この瞬間だけは、コーディネーターのキラより早く反応している。
動きを読んでいるというより、わかっていたというしかない。
そして、戦闘が終わった。
「・・・少佐、こんな動きが可能なのですか？」
「さあね、少なくとも俺にはこんな動きは出来ないさ。」
エンディミオンの鷹と呼ばれるフラガが出来ないことをフレイという少女がやってのけたのだ。
驚くほかにない。
さらに、その根底にはフレイ・アルスターがストライクを動かせたという事実もある。
二人の見解はフレイ・アルスターという少女がただのナチュラルとはとても思えないというところで一致していた。
アスランはＧを見ながらほんの少し前、ヘリオポリスでの思いがけぬキラとの再会を思い出していた。
血と硝煙の匂い、爆発による火に包まれながらアスランはキラと再会した。
そして、互いにＭＳを乗って戦闘をする。
敵として。
アスランは何度も呼びかけた。
なぜ地球軍にいる？
俺達は敵じゃない。
こっちにこい。
キラの事情を知ろうとせず、信じようとせずただ呼びかけた。
「アスラン。」
呼び声に気付き、顔を振り向けるとイザークがいた。
「お前に訊きたい事がある。」
「なにを？」
イザークは床を蹴って、アスランの前に立つ。
「キラという名の男を知っているか？」
その言葉にアスランは目を見開き、イザークに詰め寄る。
「何処でその名を・・・」
アスランの動揺に多少驚きながらもイザークは確信を得た。
「そうか、ならあの女が言っていたことは本当だというか。」
一人納得するイザーク。
「イザーク、なぜキラを。」
力を込めて詰め寄るアスラン。
「離せよ、アスラン。」
「ああ、すまない。」
襟を正すイザーク。
態度からみてキラというのがアスランにとって親しい人物だということが伝わってくる。
「フレイ・アルスターという名のナチュラルの女から教えられただけだ。」
「フレイ・アルスター？」
「そうだ。」
そして、端折りながらもイザークは先の戦闘での行為を教えた。
「アスラン、お前はどうするんだ？」
「どうするって・・・」
普段見ることがなかったアスランの動揺がありありとわかる。
「俺は討つぞ。裏切り者だからな。」
「・・・俺だって、キラを討つ。敵だからな。」
アスランは俯きながらイザークに言う。
「面白みのない答えだな。」
冷ややかな声で言い放つイザーク。
「だったら、俺にどうしろって言うんだ。」
苦虫を潰したような表情で言うアスラン。
「そんなこと知るか。お前の問題だろう？他人に答えを求めてどうする。お前が今の答えに納得できてないんなら納得できる答えをだすまでだ。」
イザークは突き放すように言う。
その言葉はアスランに衝撃を与えた。
言葉は違えどもラクスと同じ印象を受けたのだ。
ただ、ラクスの言葉はもっと先を、全体を言ってるのだが。
「だだ、お前の境遇には同情をするがな。」
と言い、イザークはその場を蹴り離れる。
「アスラン、イザーク、ここにいましたか。」
「どうした二コル。」
二コルが二人に近づく。
「ディアッカが無事に地上に降りたそうです。通信が入りました。」
「そうか。」
イザークがほんの少しだがホッとした表情へと変わった。
やはり、ディアッカのことが心配だったのだ。
アスランはというと、ディアッカよりキラが、そしてフレイというナチュラルの女の子とが気になっていた。
「後、隊長がお呼びです。」
「わかった。」
イザークはその場を蹴り、部屋を出て行く。
しかし、アスランはその場を動かない。
「アスラン、どうかしましたか？」
「いや、行こう。」
アスランは思考を頭の隅に追いやり、その場を蹴った。
二コルはアスランの行動を不思議に思いながらも、後に続いた。
＞ミリアリア・オーブの心
フレイ様の心の比重がキラ一色に染まっていって、何処まで行くのかが楽しみです。
ミリアリアの方はトールのことがどんどんと隅に追いやっていますね。
カガリに期待していたようですが裏切られ（？）、今度は自分が動くのかな？
乙です。
＞幻
お久しぶりの投下になりますね。
アスラン、やはり未来の義弟がきになるのかな？
乙です。
＞キラフレ
なにやらキラはカガリといい雰囲気になってますな。
これもフレイ様にとって予想の範疇なのか？
毒殺すら考えているフレイ様にｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙです。
乙です。
＞散った花
このあとどのようにストーリーが進むのか楽しみです。
本筋どおりに進んで、カガリに嫉妬かな？
新作乙です。
＞流離う
気になっていただいてありがとうございます。
カガリがなにやら動いてますね。
もしかして重要なポイント？
フレイ様は目的を持って戦っています。
目的を失ったキラを救うのは誰か心配です。
乙です。
翌日、私は、再び艦長室を尋ねた。部屋にはマリューさんの他にフラガ少佐もいた。
「ああ、フレイさん、丁度良かったわ、こちらから呼ぼうと思っていたの」
マリューさんが先に話しかける。
「あの、何ですか？」
「ヘリオポリスの志願兵の両親面会が、実現しそうなの。
他の人たちは、両親が健在だから、いいのだけど。
あなた、お父さんが亡くなっているから、話を聞こうと思っていたの」
「私、ママも小さい時に亡くしました」
「ごめんなさい、辛いことを」
「いえ」
「それじゃ、代わりに親戚のだれかでも」
「親戚はいません」
「そんなこと無いでしょ。誰かいるでしょ」
「いないんです。パパに仕事で会いに来る人は一杯いたけど、
親戚も、親しい友人の心当たりも一人もいないんです。
使用人も次々変わっていて、これといって親しい人はいませんでした」
正確に言うとサイの両親は、パパの親しい友人ということになるのかもしれない。
だけど、私はサイの両親には会いたくなかった。私がサイを振ったのとは別の意味で…
マリューさんは、困ったようにフラガ少佐の方を見る。
「なあ、お嬢ちゃん。だったら、お母さんの友達みたいな人でもいいんだ。
心当たりないかい」今度はフラガ少佐が質問する。
「ママは… ママの記憶そのものが無いんです。
ママの写真も見せてもらったことないし、どんな顔だったかも、
思い出せないんです」
「そうか… 悪かったな。まあ、お嬢ちゃんのお母さんなら、
お嬢ちゃんによく似た美人だったんだろうな」
「ごめんなさい、まったく知らなくて」
「いや、別に謝らなくても。それにしても、君のお父さんも変だね。
お嬢ちゃんにお母さんの写真も渡さないなんて、普通じゃないな。
何かあるのかな」
「ちょっと、ムウ!」マリューさんが フラガ少佐を制する。
マリューさん、フラガ少佐をファーストネームで呼んでる。そうなんだ。
でも、フラガ少佐の言葉は、まったくその通りだ。
パパは、ママのことを何も言わなかった。
私も不思議に思ったことがあるけど、私が、どんなに聞いても、
『ママはいないんだよ』としか答えなかった。
パパは、その分、愛情を注いでくれたし、ママがいなくて辛いと思ったことは
無かった。パパがいてくれたら…
マリューさんが話を引き継ぐ。
「とにかく、フレイさん、一応、上陸申請だけは出しておくわ、
キラ君もいるし、なんだったら、キラ君のご両親に一緒に会えばいいわ」
え！ キラの両親と会う？ 私はびっくりした。
そんなことになるなんて。キラとは当然会いたいけど。
キラのパパ・ママと会うなんて。私は、素直に喜べなかった。何か抵抗があった。
「それでフレイさん、私に話があったんじゃなかったの」
「あの、相談」私は、フラガ少佐をチラと見やった。
「フラガ少佐、ちょっと外して」とマリューさん、艦長の顔に戻って命令する。
「ハイハイ、女同士の話ね。俺も明日キラと会うし、男同士の話でもしようかな」
「ムウ！ 無駄口言わずに、さっさと出てきなさい」
フラガ少佐がかき回して、マリューさん、艦長の顔になったり、女の顔になったり。
マリューさんとフラガ少佐、二人の話の雰囲気は絶妙だ。
私とキラも、こんな話をするようになるのだろうか。
「フレイさん、相談て何」マリューさんが質問した。
「あの、私、変なんです」
「変？」
「急に嬉しくなったり、落ち込んだり、
何かに急にこだわったかと思うと、次には興味なかったり…」
「気持ちが不安定なの？ 生理は？」
「まだ、一週間くらい先。それに、私、いつも遅れるから、多分、まだ」
「違うのかしらね」
「今まで、こんなこと無かったのに。私、自分が分からなくなって。
自分が何やってるのかも分からなくなって…」
「キラ君がモルゲンレーテへ行ってから？」
「はい」
「そうね。前にもいったけど、多分、あなたが大人になりきれていないからよ」
「でも、大人ってどういう？」
「大人って、別に聞き分けがよくなりなさいということでは無いのよ。
要は自立しなさいっていう事」
「自立？」
「あなた達、早くから深い関係になってしまったから、
あなた、キラ君に無意識に頼りきっているのよ。
だから、彼と離れると、不安になって、自分が何をしていいのか分からなくなるのよ」
「私、キラを頼ってますか?」
「うん。帰ってきてなんて我が侭言ってるくらいだから。
確かに、仕事ばかりに夢中になって、彼女を放っておくような男なら、
少し言ってやってもいいけど」
マリューさん、急に遠い目になった。フラガ少佐ってことは無いよね。
誰か他に、そういう人がいたんだろうか？
「キラ君、本当に毎日連絡して、
決してあなたを放っておいているようには見えないし。
キラ君の重荷になるようではいけないわ」
「私、そんなつもりは…」
私、キラに頼ってる？ キラの重荷になってる？
「あなただから言うけど、体の関係なんて、実は簡単なのよ。
女の方から言えば…抱かれて気持ちいいってだけだもの。そうでしょ？」
「気持ちいい…う、うん…」
私はモジモジしながら答えた。マリューさんは、そんな私を優しく笑って見つめた。
「抱かれれば気持ちよくて、繰り返してなじんできて、
相手は自分のものだって思いこむけど。それは当たり前。
女と男って、もともとそういう風にできているものだから。
大切なのは、心よ。心が通じてなきゃ、それはもう人間じゃなくて
雌と雄ということだけ。
自立って言うのは、相手を突き放すことでは無いのよ。
精神的な依存から抜け出て対等になりなさいっていうこと。
それが、心を通じ合わせることになるの」
私とキラが対等に。キラを利用するために近づいた私が…
「フレイさん、あなたキラ君のどこに惹かれたの」
「……」
「サイ君のこともあるしね、言いたく無ければ言わなくてもいいのよ」
「あの… キラ辛そうだったから、寂しそうだったから」
「そう。あの時ね。地球に降りた時の…
でもね、フレイさん、同情だけでは二人のためには良くないわ」
「私、同情してる？」
同情、確かにそうだったのだ。今言った言葉は、間違い無い真実。
マリューさんとの受け答えで、やっと分かった。
復讐のために誘惑したはずのキラの隠していた辛い想い、悲しい想い。
私は、それにいつのまにか同情していた。だから、必要以上に憎めないでいる。
「同情ばかりだと、後で、必ずおかしくなるわ。相手は変わるから、成長するから」
「キラ変わってますか？」
「キラ君は、立派にやってくれているわ。あなたも、それにふさわしいようにならなきゃ」
「ふさわしいって…」
「あなたも一緒に成長しなさい。それが、キラ君との関係を続かせることになるのよ」
「成長って、どうすればいいんですか」
「具体的ってのは無理よ。成長は人それぞれだし、
これはあなたとキラ君だけのことなんだから、
とにかく、今までのあなたとキラ君とのことをもう一度、よく考えてみるといいわ。
丁度、いい機会と思って」
マリューさんの言葉は、ひとつひとつが私の心に染みた。
でも、これが分かったからと言って、私はどうすればいいの。
もともと、キラを利用して、キラを戦わせて、コーディネータを殺して、殺して…
キラも死んで欲しかった私が…
マリューさんと話をして、私は部屋へ戻った。
私は、一人キラのことを考えていた。
キラは、私の復讐の道具のはずだった。パパを助けられなかった。許せなかった。
(キラ、あなたは戦って戦って死ぬのよ、でなきゃ許さない！)
かつて、私が心の中でキラに呟いた台詞だ。
でも、キラは、戦うたびに辛そうだった。いつも孤独に震えていた。
そんなキラを目の前で見ていた私は、キラのその姿にいつしか、
同情するようになっていた。同情、私のキラへの気持ちは、それから始まっていた。
では、どうしたら良いのか、私の心が楽になるのか、分からなかった。
キラから通信が入った。
今日のキラは、どことなく元気が無さそうだった。
「キラ、マリューさんから話聞いた？ パパ・ママと会うのよね？」
「ああ」
なぜか、このことに対しても生返事だ。嬉しそうな顔をしてもいいはずなのに。
両親のことが理由になっているとは思えない。昨日、仕事のトラブルの話もしていたし、
他に、何かあったのだろうか。
私は、キラの顔に向かって心の中で、かつての言葉を言ってみた。
(キラ、あなたは戦って戦って死ぬのよ……で、でなきゃ……そ、そんなことしたら…)
なぜか、涙が出てきた。ダメだ。私は、もう昔の私でいられない。
「どうしたのフレイ」キラが聞いた。
「何でもない、明日、フラガ少佐が会いに行くのよね」私は話を近況に振る。
「ああ、シミュレーション手伝ってもらうんだ」
「私も、今日、マリューさんに会った。いろいろ話した」
「どんなこと？」
「いろいろ… 女同士の。いろいろ教えてくれた」
「良かったね」
「いい人ね。マリューさん」
「そうだね」
「私も、あんな女性（ひと）になれるかな？」
「なれるよ。フレイは、やさしいから」
二人とも短い言葉で他愛ないことを、ポツリポツリと呟き合う。
言葉の間の沈黙。
キラとの通信は、今日は、昨日と打って変わって静かに終わった。
でも、今日だけは私は満足していた。
言葉じゃなく、二人の見つめ合う時間に満足していたのかもしれない。
「終わったわミリアリア」通信終了を告げる私。
キラとの通信で初めて得た満足感。でも、それをミリアリアの言葉が、ぶち壊した。
「ハイ！ どうも！ さっさとしてよね。
待ってるほうの身にもなってよ。いつもいつも…
あなたがキラとやってる間、私、一歩も動けないんだから。
毎日毎日してるんだから、すぐに済むでしょ。
まったく、もう、関係ない時にペラペラ喋るくせに、
肝心な時に愚図な口なんだから！」
一昨日の夜、ミリアリアにフェラチオの話をした時も、急に腕を掴んで怒りだした。
今日になっても、まだ、怒っている。もう、しつこい子。私の何が悪いってのよ。
ミリアリアのイライラが移ったように、私も怒りの言葉を放った。
「アンタには関係無いわ！ 大きなお世話よ」
通信を切った。
ミリアリアの言葉を反芻してみた。聞きようによっては、
私がフェラチオでキラをイかせられないことを馬鹿にしているように聞こえた。
「肝心な時に愚図な口」ですって！ どうせ、私の口はダメよ。
でも、いいわよ、もう。私の中でも外でも、キラは何回でもイクんだから。
私の、不安定な心は、怒りに転化していた。自分に腹が立った。
なぜか、今さらのように、一度も帰って来ないキラにも腹を立てていた。
私は、今日もムシャクシャしていた。
昨日、あの子に思い知らせてやると思った割には、
気の聞いた台詞など思いつかない。そんな自分にも腹を立てていた。
何だか、考え事をしているような、あの子に対してキラの通信を繋ぐ。
また、あの子からの終了の連絡を待つだけの悶々とした時間。
時計を見る。もうこんな時間、いつもよりずっと長い。何やってるのよ。
あの子がヘリオポリスにいたときの、おしゃべりの様子を思い出す。
サークル活動そっちのけで、女友達同士喋ってた。
いつまでしゃべってんのよ、もう。
私は、つい出来心で、通話状況のモニタのため、コンソールを操作しだした。
あの子とキラが使っている映像通信は、特殊な秘匿機構がかかっていて、
艦長の許可など、よっぽどのことが無い限り、通信内容の盗聴はできない。
だけど、音量レベルのモニタぐらいなら、なんとかなる。話している内容は
分からないけど。
私のやっていることは、どちらかというと違法行為、ハッキングに近い。
でも、今は非戦闘体勢なので、ブリッジには交代要員が数人しかいない。
サイも、今は非番で休んでいる。私がやっていることを咎める人は、
だれもいなかった。
手元のモニタに、音量レベルのグラフが映し出された。細かい解読処理を
行っている訳では無いので、話しているのが、あの子なのか、キラなのかは分からない。
ただ、いずれにしろ、その状況は、私の想像とは違った。
私は、ひっきりなし、あの子が喋って、音量レベルが大きくなっているものと、
思ったけど、実際には、ポツッ、ポツッと、ときどきレベルが大きくなるだけで、
ほとんど音量ゼロ状態。つまり、あの子もキラも黙っている。
何、愚図愚図、話してるのよ、あの子は！！
話すことないんなら、さっさと終わりなさいよ！
私は、この予想外の状況にも腹を立てていた。
私の怒りは、ついに、爆発した。
通信終了を告げるあの子の、何か妙に満ち足りたような安らかな顔に、
ついに私は我慢できなくなった。
私は怒りの言葉をぶつける
「ハイ！ どうも！ さっさとしてよね。
待ってるほうの身にもなってよ。いつもいつも…
あなたがキラとやってる間、私、一歩も動けないんだから。
毎日毎日してるんだから、すぐに済むでしょ。
まったく、もう、関係ない時にペラペラ喋るくせに、
肝心な時に愚図な口なんだから！」
「アンタには関係無いわ！ 大きなお世話よ」あの子も憎まれ口を叩いて通信を切った。
一緒にブリッジにいた当直の人達が、私の怒鳴り声を聞いて、目を丸くしていた。
「おい、びっくりしたな」
「なんか、卑猥なこと言ってなかったか？」
私は、声をする方をキッと睨みつけた。
何が卑猥よ、私、そんなこと言ってないもの。
新作期待してます。描写も奇麗ですね。
>刻還り
短編だと思っていましたが、意外に長編になりそうですね。がんばってくたさい。
「気のせいじゃないの、カガリ…」
キラとカガリの二人が、砂漠の虎との危険な会見から無事帰還してから数日後、
カガリと一緒にアークエンジェルの廊下を歩いていたキラは、一応カガリにそう
フォローは入れたものの、カガリ同様、最近ＡＡクルーのカガリを見る目が
何となく変化していることを肌で感じていた。だた、その視線は悪意とは無縁で、
どちらかといえば、素朴な好奇心に近いものだったので、キラは敢えて無視を
決め込んでいたが、その理由についてはさっぱり思い当たらなかった。
明けの砂漠から、まるで厄介払いのようにアークエンジェルへと送り込まれてきた
カガリは、それなりに有能だが、それ以上に面倒な揉め事の種をＡＡへと持ち込む
トラブルメーカーでもあったために、元々、傍迷惑な闖入者として悪い意味で
ＡＡクルーの注目を集めていたのだが、ここに来てどういうわけか、その注目の
形が奇妙な方向へと捻じれつつあった。その原因は出所不明の一枚の写真からである。
お揃いのドレスでキラと一緒に、カガリの女装した姿を写し出した写真は、出現と同時に、
まるで癌細胞が増殖するような勢いで、ＡＡ全体に焼き増しされ、今ではＡＡ内で
この写真の存在を知らないのは、当事者である二人を除けば、この手のノリには
全く興味がなさそうなフレイと、分け有りのサイだけである。
「やっぱり、このキラの隣に写っているのはカガリよね？」
「間違いねえ。けど、怖いぐらいに嵌まりすぎだぜ。カガリだって指摘されなければ、
多分、俺は女の子だと疑わずに絶対に気づかなかったと思うぜ」
「けど、どうすりゃ、こんなシチュエーションが発生するんだ？
もしかして、あいつ、そういう危ない趣味を持っているのかよ！？」
「それはないと思うけど、カガリは自分の中性具合を揶揄されると本気で怒っていたし。
う〜ん。分からないわね」
ヘリオポリス本家の三人は、例の写真を片手に、廊下の影からカガリ達を覗きながら、
この写真が撮られた舞台背景について彼是想像力を巡らせたが、流石に納得する回答は
出てこない。ただ、こうなってくると、以前、彼らが冗談交じりに話していた、
もしカガリに女装させたら、キラと瓜二つになるのではないか…という架空の案件
が非常に気になり始めた。
………程度の良い、焦茶色の鬘さえ手に入れば…。Ｂｙ Ｍ嬢
………フレイに次いで気に入らない、あいつの泣き面が拝めるかも…。 Ｂｙ Ｔ．Ｋ
………陰謀実行後に、自分の身の安全が確保できるのなら…。 Ｂｙ Ｋ氏
もし、条件さえ整えば、命懸けの激しい戦闘や、ゴタゴタした人間関係やらで
フラストレーションが溜まっている彼らが、通常なら決して有り得ないような、
とんでもない行動に出る可能性はどうやら決してゼロではないみたいだ。
現在、アークエンジェルの内部に、カガリを台風の目とした奇妙な乱気流が発生しつつ
あるが、ＡＡのクルーは、別段その一事に気を取られて遊んでいたわけではなく、
レセップス攻略への準備は着々と進められている。
カガリ達が虎と戯れていた裏側では、ナタル達が武器商人との交渉を成功させ、
武器弾薬の補充や、外装修理用の資材を調達し、補給体勢はほぼ整いつつある。
もっとも、交渉成功の背景には仲介人だったキサカの資金援助の面での尽力が大きかった
ので、ナタルは、キサカと彼が守護しようとしているカガリの正体が気になったが、
流石に今の段階では見当も付かなかった。
そのキサカは一時的にカガリのお守りを離れて、ゲリラ達と一緒に、サイーブの指揮の下、
戦場になるだろうと想定しているポイントの彼方此方に罠を仕掛けている最中である。
そして艦長のマリューは、フラガの予備機であるスカイグラスパー二号が、何時でも
発進可能な体勢に調整されているのに、態々余らせておくことを勿体無く思い、
歴戦のパイロットであるフラガの撃墜可能性の低さと、ＡＡの現在の苦しい台所事情を
考え、戦力アップ作戦の一環として、スカイグラスパー二号の実戦投入を作戦会議で
本採用事項として決定し、その適格者を見極める為のテストが行われることになった。
「きゃあっ！！トゥール、凄ぉい〜！！」
「へへーん、どんなもんよ、ミリィ。惚れ直しただろ？」
マリューとフラガの監視の下、早速、ヘリオポリス組の新兵達を掻き集めて、彼らを
シミュレータの機材に乗せてみたが、厳粛なはずの試験場で、まるでゲームセンター
で遊んでいるかのように、キャーキャー騒ぐトール達に、マリューは頭を抱える。
「…で、どんな感じかしら、ムゥ…じゃなくて、フラガ少佐？」
「技術的に見ても、かろうじて見込みがあるのは、トールぐらいかな。
それだって、実戦で使えるレベルにはほど遠いし、何よりも………」
フラガがその先、主張したい事はマリューにも分かっていた。仮に技能が及第点に達して
いたとしても、パイロットの選抜試験と銘記してあるにも関わらず、あまりに緊張感の
欠片も感じさせない今の彼らを、危険極まりない戦場へと送り出すのが不安なのだろう。
やっぱり、元々無理があったのかしら…。マリューが、計画を白紙に戻そうか悩んで
いる時に、カガリが試験会場へと姿を現した。
「カガリ、あなたもやってみない？けっこう面白いわよ、このゲー…じゃなくてテスト」
試験官達の白い目に気づいて、慌てて言い直したミリアリアに、カガリもマリュー達と
同じ色の目を向ける。流れ者の傭兵として戦場経験豊富なカガリは、れっきとした軍属
であるにも関わらず、今ひとつ覚悟が徹底していないヘリオポリス出身の少年兵達の態度
を苦々しく思っていたところがあり、目の前の玩具にも全く興味を惹かれなかったが、
このテスト結果如何で、スカイグラスパー二号のシートが手に入るかもしれないと聞いて、
慌てて飛び入りで参加を申し出て、トールを押しのけてシミュレータ機材に乗り込んだ。
「ほう、こいつは中々……」
フラガが関心したように呟く。水鉄砲でゴジラを仕留めた実績があるだけのことはある。
照準も正確だし、それ以上に回避タイミングは見事という他なく、自機を一機も失わずに、
トールの三倍近いスコアをカガリは叩き出した。スコア自体はフラガクラスから見れば
大したレベルではないが、たかだがシミュレータに賭けるカガリの緊迫感は、マトモに
被弾したら次の機会というものが与えられない一発真剣勝負の戦闘機乗りの怖さという
ものを、身を以って体感しているようにフラガには感じられ、どうやらあの小僧には
戦闘機での実戦経験があるみたいだな…と彼は当たりをつけた。
「凄いじゃないの、カガリ！」
唖然とするヘリオポリス組の中で、一人素朴に自分を褒め上げるキラに、無論カガリも
悪い気はしなかったが、敢えて自分を戒める。
「別に凄くなんかない。単に俺にはそのキャリアがあっただけの話しだ。事実、最初に
これと似たシミュレーターをやった時、俺はトールの半分もスコアを出せなかった」
「キャリアって？」
「その名の通りだよ。正式な免許は持ってないけど、戦闘機や戦車を実戦の中で
動かして、何とか生き残った経験がある」
「ふ〜ん。意外に凄いのね。カガリって…」
何が凄いって言うんだ！？、嫌味かよ、キラ。
最高のコーディであるお前から見れば、俺もトール達と同レベルだろうが…。
カガリの中で、久しく忘れていたキラへのコンプレックスが、鎌首を擡げ始める。
彼が今現在備えている戦闘技量は、キラのように戦神から無償で授けられた才能
という名の賜物ではなく、死と隣り合わせの戦場の中で、彼自身が身を削るような
思いをしながら獲得した努力と修練の結晶の証だった。それでもカガリは最近ひしひし
と自分の戦闘能力の限界を感じ始め、さらには底なしにとも思えるキラの戦闘への
異常なキャパシティを嫌というほど見せ付けられて、焦っているのだ。
カガリはもう一度キラの顔を見つめる。カガリの視線に気づき、何らの悪意も感じさせ
ないニコニコとした笑顔で微笑むキラに、カガリは内心で軽く溜息を吐き出した。
こいつが本当に嫌な奴だったら、俺はキラを嫌うことが出来るんだけどな。
カガリは、再びキラに対する深刻な愛憎並存（アンビバレンス）状態に陥り、
フレイは軽く腕を組んだまま、彼の内情を推し量るような瞳でカガリを吟味している。
今回のテストで、ミリアリアを差し置いて最低スコアを記録したのは、意外にもその
フレイだった。彼は学園の体育祭や球技大会では、運動部顔負けとまではいかなくても、
十分にトール並みの活躍はしているので、決して運動神経が悪いはずはないのだが、
アルテミス要塞であっさり敵兵に熨された時といい、彼の身体はあまり戦闘向きには
出来ていないのかも知れない。単に手を抜いていただけの可能性も十分にあるが…。
今回のテストで、技量、精神共にはじめて、彼のお眼鏡に適う逸材を見つけたフラガが、
そう呟いたが、マリューは、「でも、彼は…」とあまり乗気のしない表情で俯いた。
トール達のような正式な志願兵ではないカガリを戦闘機に乗せて、万が一の事態が
発生したら色々と面倒な事になるからだ。
そんな折、シミュレータの置いてある、スカイグラスパーの格納庫に警報が鳴り響く。
砂漠の虎が、部下のバクゥ数機を引き連れて、自ら出陣してきたというのだ。
キラはすぐさまストライクの発進準備を整えるために、ドッグから飛び出していき、
トール達も自分の持ち場に着こうと続いていく。艦長であるマリューも艦橋に向か
おうとしたが、マードックの制止を振り切って、スカイグラスパー二号のコックピット
に乗り込んだカガリの姿を見て、慌てて足を止める。
「ちょ…ちょっと、カガリ君！？」
「艦長さん、とりあえず、俺を出陣させてみてくれよ。
そうすれば俺が使い物になるかどうか、分かるだろう？」
裁定権限を持つマリューが、自分の機乗にあまり乗り気でないのを肌で感じ取った
カガリは、どうやら実戦の中で、直接自分を売り込む腹積もりのようだった。
「ふざけるのもいい加減にしなさい！実戦は遊びじゃない……」
「いいから、やらせてみようぜ、マリュー…じゃなくて、ラミアス艦長」
見込みがあるかと思っていたカガリも、結局彼らと同じ遊び感覚なのか…と失望しかけた
マリューを、フラガが静止する。
「彼は、決して遊び半分の気持ちで、主張しているわけじゃなさそうだ。
何よりも、本当に適性があるかどうかは、実際に飛ばしてみなければ分からない。
戦闘機での実戦は、セスナの安全運転と違って、免許という紙切れの存在も、
シミュレーターでの成績も全く当てにはならない。分かるだろ？」
「で…でも」
「心配するな、俺がきちんとバックアップする。ちゃんと俺の指示は守れるよな、小僧？」
「当たり前だろ、俺はこれでも傭兵だぜ」
阿吽の呼吸で連携する二人に、マリューは未だに戸惑いが抜き切らなかったが、
彼女が個人的に信頼するフラガの言があり、さらに、この艦の総責任者である自分が、
何時までもこんな所をうろついているわけにもいかなかったので、この場はフラガに
任せて、彼女は艦橋へと向かうことになった。
「感謝するぜ、兄ちゃん。見た目は軽そうだけど、あんた意外に良い人みたいだな」
カガリの不器用そうな謝意にフラガは軽く苦笑する。カガリに男物の着替えを買い
与えた裏で、ＡＡ内にカガリの女装写真を流行らせたのも、また彼だったからだ。
だが、フラガは直ぐに気を引き締めて、カガリに注意事項を説明する。
日常レベルではいくらでもお茶目な悪ふざけに走るフラガだが、一度戦闘が始まれば、
精神のチャンネルを完全に切り替えて、その顔つきはまさしく真剣そのものだ。
戦闘配備中はどこにも席が無い遊軍のフレイは、そんな二人の遣り取りを意味深な
目つきで眺めていたが、ここにいてもやることはないので、黙ってドックから出て行った。
まるで、少女漫画で度々描かれる運命の出会いのように、廊下の曲がり角の先にいた
人物と正面衝突し、相手に尻餅をつかせてしまう。
「あっ…ご…ごめんな………サイっ！？」
キラは決して洒落をかましたわけではない。その宿縁（宿怨？）の相手は、指先の
怪我が原因で、キラを除けばヘリオポリス組の中で唯一人、先のテストに参加して
いなかったサイだった。同じ艦内にいながら、あの夜の修羅場以降ずっとお互いを
意図的に避け合っていたフレイを巡る二人の少女が、やや変則的な形とはいえ、
こうして再び正面から向き合ったのは、これが初めてだ。
衝突のショックで眼鏡を落としてしまい、廊下にへたり込んだまま、不安定な手つきで
床を弄って眼鏡を探していたサイは、ぶつかった相手を視別出来なかったので、最初、
キラと同じタイミングで反射的に謝ろうとしていたが、声色から相手がキラだと知ると、
先の晩と同じ激しい情念の篭った視線を、眼鏡を通さずに直接キラに奉げて、キラを
怯ませる。既に完全に熱狂が醒めたキラと異なり、サイの凶氣は未だ継続中のようだ。
考えてみれば、キラはサイの婚約者を寝取った上に、さらに彼女が起死回生を賭けた
背水の舞台にわざわざ乱入して、直接サイに止めを刺したのだ。もし、キラがサイの
立場だったとしても、怨まれない方がおかしいとキラ自身も思ったが、心臓に毛の生えて
いないキラの脆い魂は、その原罪を正面から受け止められるほど強く無かった。
「ご…ごめん、サイ。私、今急いでいるから！」
キラは、眼鏡を拾ってサイの掌の上に置くと、誠意とはまるで無縁な口先だけの謝罪の
言葉を並べながら、自分が突き飛ばしたサイを捨て置いて、必死にその場から逃げ出した。
背中から自分の心臓を突き刺すかのように、ほとんど固形化されたサイの殺気を直接肌
で感じ取ったキラは、涙目になりながら反射的に身を竦ませる。
今の羅刹と見間違わんばかりのサイの、キラに対する底なしの憎悪と怨念の視線の前に、
その身を晒すぐらいなら、本物の殺意と共に自分に襲い掛かっている名無しの敵のいる
戦場へと出るほうが、はるかにマシなようにキラには思えた。
「軍曹、どうやらアルスター准尉だけでは持ち堪えられそうも無いな」
「はい、我々も戦闘に参加しましょう」
「俺もそう思う。軍曹、君は歩兵を纏めて民間人を最後まで守れ。装甲車を残す。俺が戦車隊を率いて敵と当たる」
「そ、そんな、大尉！？」
軍曹は驚愕した。たった３両の戦車だけで援護に行くというのか、この人は。だが、歩兵が出ていっても何の役にも立たないのは確かだ。まして民間人を放り出す事も出来ない。軍曹は諦めの溜息をつくと、クリスピー大尉に敬礼した。
出撃するクリスピーの戦車隊。軍曹は部下達を纏めると周囲への警戒を強めるように指示を出した。敵の歩兵が浸透している可能性もあり、もし白兵戦になったらこちらに勝ち目は無いのだから。
フレイは自分を包囲する敵部隊が鬱陶しくてしょうがなかった。目の前のジンだけでも強敵なのに、周囲から砲撃までされては堪らない。頭部イーゲルシュテルンが姿を晒した戦車に叩き込まれる。無数の直撃弾で一瞬で破壊される戦車。
再びビームライフルを握ると、フレイはデュエルを大きく跳躍させようとして、右側から感じた悪寒に慌てて機体を前に出した。すぐに火線が背後を貫いていく。感じる気配からさっきの強いジンに間違いない。
「なんだってのよ、このジンは！？」
フレイは撃ってきたジンにビームを撃ち返したが、それは容易く回避されてしまった。だが、フレイが距離を取るだけの隙は作れた。改めて大きく飛び、高い所に陣取って下を見下ろす。そこからだと動き回るジンや戦車が見て取れる。
「とりあえず、ジンよね」
ビームライフルを向け、続けて連射を叩き込む。狙われたジンは慌てふためいて回避しようとしたが、続けて撃ちこまれたビームを回避し切るなど余程の実力がなくては不可能だ。そのジンのパイロットにはそこまでの腕は無かったようで、たちまち直撃を受けて爆発してしまう。
残り２機と思った所で、いきなり離れた所にいた戦車が爆発した。何かと思えば、連合軍の戦車が３両こちらに向ってきているのが見える。
「クリスピー大尉、なんで！？」
フレイは驚いた。こっちは自分に任せて、戦車隊は難民の最後の盾として使って欲しかったのに、なんで出て来たのだろう。フレイの脳裏に自分の到着を喜んでくれたクリスピーや兵士達、震える難民達と、元気そうな子供達が過る。
このままでは彼らも死んでしまう。目の前で殺されてしまう。その恐怖が襲った直後、目の前で戦車が一両直撃を受けて爆煙に包まれた。
「大尉、クリスピー大尉っ！」
「おお、フレイ・アルスター准尉か」
どうやら彼はまだ無事らしかった。だが、安心してる暇は無い。
「すぐに後退してください。戦車じゃ無理です！」
「子供だけに任せておけるか。俺とてプロの軍人だ。志願兵が命を張ってるのをただ黙って見てろと言うのか！？」
これが軍人の誇りなのだろうか。民間人を守りながら必死にここまで来て、子供だけを戦わせられないと身体を張る。だが、勝算の無い戦いでは命を無駄に散らすだけになる。それが分からないほどクリスピーが愚かだとは思えない。
嫌だ、そんなのは嫌だ。もう、あんな守られ方はしたくない。
「冗談じゃないわ。あの人達を死なせたりしないんだからっ！！」
そうだ、今の自分は守られるだけの弱い存在じゃない。戦う力がある。戦う理由もある。私はあの子供達に私が戦うと、守ると約束したのだ。フレイは初めて、自分の中に生まれたあの不思議な力を求めた。周囲を立体的に知覚し、周りの全てが把握出来るようなあの感覚を。
そして、これまで望まれなかった力は、心から否定されていた感覚は、主に望まれた事で初めてその力をはっきりとフレイに示した。周囲に広がる感覚の手。それぞれの人の存在が、戦う人々の殺意と憎悪が、怒りと願いが流れ込んでくる。あらゆる動きが知覚出来る。頭の中に何か、別のチャンネルがあるような感覚だ。目に見える物だけが全てではない。言葉では説明できないが、ハッキリとではないが、その全てがフレイには知覚できた。
フレイは一瞬幻視で来たビルの向こうの戦車めがけてビームライフルを放った。光りがビルを貫き、その向こうの戦車を直撃して破壊してしまう。
この攻撃にグリアノスは驚愕した。まさか、完全に死角だった筈なのに。
「なんだと、どうやってあそこから狙えた！？」
グリアノスは物陰から飛び出すと右手で重突撃機銃を撃ちまくりながら左手に重斬刀を持った。フレイのデュエルがシールドで銃弾を弾く。もう、これ以上弾を受ける訳にはいかないのだ。距離を詰めたジンが重斬刀を振るってくるが、フレイは機体をビルから飛び降りさせてそれを回避した。落ちながらビームライフルを２度撃つが、グリアノスのジンはこれを躱した。
道路に降りたフレイはバッテリー残量を確かめると、これ以上のビームライフルの使用を断念した。これ以上撃てばバッテリー切れを起す。素早く辺りを見渡し、ジンの残骸を見つけると急いでそれに駆け寄った。残骸から重突撃機銃と重斬刀を拾い上げ、両手に持たせる。
「とりあえず、これを使うわ」
重突撃機銃を持ち、通りを駆けて行く。とにかく敵の戦車を減らさなくてはいけない。フレイは見つけた戦車に向けて重突撃機銃を撃ち、手当たり次第に破壊して回った。フレイのデュエルの動きを戦車はまともに捉えることさえ出来ないでいる。
５両目を破壊した所でフレイは迫りくる敵に気付いた。素早くそちらに向けて重突撃機銃を放つ。赤い曳航弾がそちらに向うが、そこにジンはいない。なんとそのジンはビルの壁を蹴って空中を飛びながらこちらに向ってきたのだ。
「こいつ、さっきからの奴！」
「おのれえぇぇぇえい！！」
グリアノスは重突撃機銃を捨てると、重斬刀を両手で構えて全力で叩きつけてきた。フレイも重突撃機銃を捨てると左手の重斬刀を右手に持ち替え、ジンの一撃を自分の重斬刀で受け止める。
「やるな、ナチュラル！」
「何よ、こいつ！」
「なに、子供だとっ！？」
接触回線で飛びこんできた声にグリアノスが驚く。その一瞬の隙をついてデュエルは力任せにジンを押し返した。押し返されたジンも空中で態勢を立て直して着地する。グリアノスは相手の周波数を探ると、通信回線を開いた。
「貴様、子供だと言うのか！？」
「通信ですって、どういうつもりよ！？」
「やはり、子供なのか･･････」
グリアノスは途端に不愉快になった。まさか、自分をここまで苦戦させたＭＳのパイロットがまさかナチュラルの小娘だったとは。これでは自分の価値が大きく下がってしまうではないか。
ううん、生きててくれましたか。コクピットで焼け死んじゃいないかと不安でしたよ
しかしフレイ様、いきなりフラガとマリュ−に疑い持たれてしまってる。おまけに逃がした筈のみんなは艦に残ってるし
一方、ストライクのパイロットがコーディネイターだと知ったイザークは、少しは気が楽になるのかな？
>>オーブ・フレイの心
フレイ様、マリュ−さんに言うこと聞いて良い女になりましょうね。でも、まだ情緒不安定っぽい？
ミリィは･･････だんだん怖くなってきている。怒りの方向性が嫉妬からたんなる八つ当たりにまで悪化してくるとは、この危険さは昔のフレイ様を彷彿とさせるものがあるような
>>キラ♀
カガリ、可哀想に。女装趣味があるとまで疑われる様に･･････恨むなら兄貴を恨めよ
まあスカグラ２号機はカガリですか。他に人もいないし。ここは定番ですな
でも、そうなると島でアスランとカガリは銃撃戦でもするのか？
さらに次の日のキラからの通信。今度は、妙にキラは浮かれているように見えた。
キラも、コロコロ気分が変わっている。
「フラガ少佐に聞いたよ。フレイも、僕の両親に会いに来るって」
「いえ、まだ会うって決めた訳じゃない」
正直、マリューさんに、キラの両親に会うように言われた時は、
どうしていいか迷った。結論は出せなかった。
キラの両親に会う。公認のカップル。婚約者。
なにか、どれも、今の私とキラとの間には現実感が無かった。
私の記憶に無い、母親という存在、それをキラのママで補えるかもしれない。
ひとりぼっちの私に、新しい家族ができるのかもしれない。
そのようなことも思ったけど、やっぱり、抵抗感の方が大きかった。
どちらかと言うと、息子と勝手に同棲している女として、キラのママに罵られるような気がしていた。
「母さん、フレイに会ったら、きっと喜ぶよ。家だったら、
得意の料理を披露してくれただろうけど」
今日は、キラが一人で喋っている。
キラのママが、私のこと気に入ると勝手に思い込んでいる。
ママがどうこうとかしきりに言っている。
私は、おもしろく無い。
何よ、昨日は両親に会うこと気乗りしない振りしてて、やっぱり、
ママが恋しいんじゃない。何よ、キラってマザコンだったんじゃない。
私は自分のファザコンを棚に上げて思った。
私が会うかどうか決めかねているのも知らず、キラは一人はしゃいだように喋って通信は切れた。
私はミリアリアに通信終了を告げると、即座に通信を切った。また、からまれては堪らない。
キラに対して腹が立っていた。昨日、ミリアリアにからまれてから、
何かにつれて腹が立った。どうにもできなかった。
そのせいで、いつも手抜きする掃除も意地になって床を磨いていた。
<トリィ！>
近寄ってきたトリィを、私は、手を振って追い払った。
このところ、いつも手に乗せて、あやしていたけど、今日は、トリィにも
八つ当たりしていた。
何よ、マザコンのキラなんて見たくない。ママに甘えるキラなんてごめんよ。
誰が会ってやるもんですか。
誰が、大人ですって。成長したですって。キラなんて子供じゃない。
泣き虫の甘えんぼじゃない。私が、同情したままの…
私は、マリューさんの申し出を断ることを決めていた。
あれから、さらに数日たった時のこと。
「両親と！…」カズイ、サイが同時に呟く。
「ええ、事情が事情だけに、家にも帰してあげられないし、短い時間だけど…
明日、軍本部での面会が許可されました」
艦長が優しく微笑む。この人は、本当に私たちのことを分かってくれている。
私は嬉しくなる。このところ、なにかとイライラしていたけど、
本当に久しぶりに、はしゃいだ気分になる。
ふと、同じように喜ぶトールと目が合う。今さらのように、あの時の…、
処女をあげようとことを思い出し、目をそらす。
あの子のことで、トールのことは頭から消え去っていた。
あれから、しばらく艦内でトールの姿を見かけなかったけど、気がつかなかった。
「詳しい予定は、明日、朝、話します。とりあえずブリーフィングルームに集まって。
私が同伴します」
一緒に話を聞いていた、あの子が、振り向いて離れていく。背中が寂しそう。
艦長が、そんな、あの子を呼び止める。
「フレイさん、あなたも行ってもいいのよ」
「いえ、行きません。前に言ったとおり、私には両親も親戚もいませんから」
あの子が言う。お父さんが死んだのは知っているけど、
あの子って、そうなの。いいとこのお嬢様のはずなのに。
親戚もいないなんて。
「本当に行かなくていいの？
キラ君も、向こうで、ご両親と面会するから、あなたも一緒に会っていいのよ」
艦長が言う。
ちょっと待ってよ。両親に紹介なんてやめてよ。あの子に、そんなことやめてよ。
サイの横顔がけわしくなっている。
「いいんです」
あの子は、ポツリと呟くと、そのまま去っていった。
サイは、けわしそうな顔のまま、何も言わなかった。
もう、十日以上会っていないキラと会える。キラの両親を初めて見れる。
それだけで、私の心は密かに期待する。
それなのに、あの子は拒絶する。
やっぱり、後ろめたい関係なんでしょ。
両親と会うのは都合悪いのでしょ。
誘惑していることを、お母さんに悟られたく無いんでしょ。
私も、去っていく、あの子を無視した。
いいのよ、あの子なんか。どうでもいいのよ。
「両親と！…」カズイ、サイが同時に呟く。
「ええ、事情が事情だけに、家にも帰してあげられないし、短い時間だけど…
明日、軍本部での面会が許可されました」
マリューさんが話している。
ヘリオポリスのみんなの両親との面会が決定した。
私もみんなと一緒にマリューさんに呼びだされた。でも、私は、もう関係ないのよ。
「詳しい予定は、明日、朝、話します。とりあえずブリーフィングルームに集まって。
私が同伴します」
マリューさんは、話を続ける。
喜んでいるみんな。にっこり微笑んでいるサイ。トール。
大声ではしゃぐミリアリアとカズイ。
そんなの私には無関係よ。私はひとりぼっちなんだから。
何も言わず、私は踵を返すと、部屋へ戻りはじめた。
「フレイさん、あなたも行ってもいいのよ」
マリューさんが呼び止める。
「いえ、行きません。前に言ったとおり、私には両親も親戚もいませんから」
私は、答える。
そう、誰もいないの。私はひとりぼっち。
パパは殺された。ママも小さい時に死んだ。
誰もいない。誰も…
「本当に行かなくていいの？
キラ君も、向こうで、ご両親と面会するから、あなたも一緒に会っていいのよ」
マリューさんは、なおも言うけど、もう、それも私には関係無い。
キラのパパ・ママとなんてごめん。キラなんて、たっぷりママに甘えていればいいのよ。
「いいんです」
私は、断ると、部屋へ歩きはじめた。
私は、ずっとひとりぼっち。
もういいのよ。このままで。
夜、キラからの通信はとうとう来なかった。
キラも明日のママが恋しくて、私のことなんか構っていられないのよ。
私は独り寝のベッドで、思いを巡らす。
布団から差し出した掌には、さっきからトリィが戯れるようにくちばしで
つつくことを繰り返している。
マリューさんと相談したキラとのことを思い出す。
「あなた達、早くから深い関係になってしまったから、
あなた、キラ君に無意識に頼りきっているのよ。
だから、彼と離れると、不安になって、自分が何をしていいのか分からなくなるのよ」
違うわ。私の心がおかしいのは、キラが悪いだけなのよ。
毎日通信してても、なんだか聞こえのいい言葉だけのやりとりの繰り返し。
帰ってって言っても帰って来ない。私の言う事なんて何も分かってくれない。
一人勝手に、ママのこと恋しがってる。
そんなキラにイライラしているだけ。私が頼っていることなんて無い。
「同情ばかりだと、後で、必ずおかしくなるわ。相手は変わるから、成長するから」
キラに同情してるわ、それで関係が悪くなってどうだっていうのよ。
別にキラとそういう関係を続けていきたい訳じゃ無かったはず。
キラはパパを守れなかったんだから。
コーディネータなんだから。ザフトに友達がいるんだから。許せない相手なんだから。
単に復讐の道具なのよ。それ以上でも、それ以下でも無かったはず。
それで良かったはず。
トリィが愛らしい動作を繰り返す。私の掌から、体、ベッド、掌と
飛び移り、私を慰めるように盛んに首を振る仕草をする。
キラとしている時、キラに抱かれている時も始終こうだった。
私たち二人のまわりを飛び回って、二人の関係を祝っているようだった。
でも、どうせ、体だけよ。そんな関係なんて。
「抱かれれば気持ちよくて、繰り返してなじんできて、
相手は自分のものだって思いこむけど。それは当たり前。
女と男って、もともとそういう風にできているものだから。
大切なのは、心よ。心が通じてなきゃ、それはもう人間じゃなくて
雌と雄ということだけ」
マリューさんの言葉。
私がキラの体を求めていたのだって、そうよ。心なんて通じてない。
私は、キラの体でなきゃダメって思いこんでいただけ。
別に誰でも良かったのよ。単に雌と雄の関係だったよ。
別にもういいのよ。フェラチオとか、してあげるとか、どうでもいいのよ。
「キラ君は、立派にやってくれているわ。あなたも、それにふさわしいようにならなきゃ」
「あなたも一緒に成長しなさい。それが、キラ君との関係を続かせることになるのよ」
もう、キラのことなんて本気で考えるのはよそう。
復讐の道具なんだから、関係なんてどうだっていい。
昔のように憎めないとしても、体は離れられないにしても、
心は今のまま突き放していけばいい。
一緒に成長なんて、もういい。必要ない。
キラは、相変わらず泣き虫の甘えんぼなんだから。
キラの方から縋ってくるんだから。
キラなんて成長していない。私が成長する必要なんて無いのよ。
私はいつのまにか寝入った。
翌朝、目に涙の後のような筋がついていたのは気のせいだと思った。
サイがそう言って私の腕をつかんだ。
サイ・アーガイル。パパの決めた婚約者。
でももう、パパもいない。パパの仇をとるためには、キラの力が必要で、そのためにはもう今までのようにサイに頼るわけにはいかない。
「話って何！？」
本当はまだサイに頼っていたい。そんな迷いが私の語調をきつくする。
「何・・・・・って・・・・・・」
サイが言いよどむ。しかしためらいながらも口をひらいた。
「婚約の事だよ。こないだのあれはなんだよ、もう関係ないって」
「サイ・・・あなたとのことは、パパが決めたことよ。そのパパも・・・・もういないわ」
「え・・・・・」
呆然としたようにサイがつぶやいた。
「まだお話だけだったんだし、いろいろ状況も変わったんだから、なにも昔の約束に縛られることはないと思うの・・・・・」
たまたま食堂に居合わせた皆も驚いた顔で私を見ている。
無理もないかもしれない。アークエンジェルに乗り込んでからというもの、私はずっとサイにべったりだった。
パパの認めた婚約者だから安心、というのもあったし、やっぱり頼りになる人だったから。
でも、サイもパパが死ぬのを止めることはできなかった。そんな復讐の気持ちもちょっとはあったかもしれない。
「じゃ・・・・・」
キラのもとへ戻る為に私は食堂を出た。
私を呼び止めるサイの声が聞こえたけど、今の私には答えるすべはなかった。
「約束に縛られることは無いって。そんなの突然どうしたんだよ。」
この間のサイとのやりとりを思い出して少しぼうっとしていた私にサイが責めるように言う。
「だって、あれはパパが決めた婚約じゃない。もうパパはいないんだから。」
「君はパパのいいつけでだけ俺とつきあってたの？俺はフレイのことちゃんと・・・・・」
本当は私にだってわかってる。サイは優しい。それは婚約してるからじゃないって事。
「私はこのお話はなかったことにしていいと思うの。ねえ、もういいでしょ？」
これ以上サイに向き合っているのが怖くて私はその場から逃げ出した。
サイはまだ追いかけてくる。
「うるさいわね！話ならもうしたでしょ！？」
さすがにイライラし始めて怒鳴りつける。
と、視線の先にキラがいた。びっくりしたような顔でこっちを見ている。
私はキラの腕にしがみつき、その背中にかくれた。
サイは一瞬躊躇したがなおも私に呼びかける。
「フレイ！」
「何？」
意外なことに、それに応じたのはキラだった。
「フレイに話があるんだ。キラには関係ない。」
サイは部外者が何で口をはさむんだと言いたげな表情でキラに向かって言った。
「関係なくないわ！だって私、昨日はキラの部屋にいたんだから！」そういってキラにしがみつく。
さっきからそばにいた金髪の女の子が顔を赤くしてどこかへ去っていったのが見えた。
ふん、あんな子、関係ないわ。
「は・・・・・？」
サイは事態がのみこめないようで、呆然として尋ねる。
「どういうことだよ・・・・フレイ、きみ・・・・・」
「どうだっていいでしょ！サイには関係ない！」
そう、サイには関係ない。
パパのための復讐も、そのための私の犠牲も。
「関係ない？関係ないってどういうことだよ！」
なお激昂した様子でサイがつめよるのにキラが答えた。
「もうよせよ、サイ」
その様子は、普段のキラからはおよそ予想できないものだった。
なんだかかわいい、頼りない子だって思ってたのに。
サイも驚いたようにキラを見上げる。
「どう見ても、君が嫌がってるフレイを追いかけてるようにしか見えないよ」
「・・・・・なんだと？」
サイの目に凶暴な光がかすめた。
「もう・・・・みっともない真似やめてよ。こっちは昨夜の戦闘で疲れてるんだ」
キラがそう言って背を向けたので、私はキラにしたがってその場を離れようとした。
「キラアァァッ・・・・・！！」
突然サイが叫び声をあげてキラにとびかかる。
しかし、キラは何のことなくサイの腕をひねりあげる。
「やめてよね・・・！本気でけんかしたらサイが僕にかなうわけ無いだろ」
言い捨ててサイを突き飛ばす。
そうだ、キラはコーディネイターだもの・・・・サイがかなうわけない・・・・
忘れていたコーディネイターへの恐怖が沸き起こり、思わず一歩後ずさる。
「フレイは、優しかったんだ・・・・・」
一瞬、その言葉に胸をつかれた気がした。
あんなの、本当じゃないのに。私はあなたを利用するために・・・・・
「僕がどんな思いで戦ってきたか、誰も気にもしないくせにっ・・・・・！」
キラが泣いているように見えて、私はキラを抱きしめる。
「大丈夫よ、私、ずっとあなたのそばにいるから・・・・」
かわいそうなキラ。こんな私の優しさにもすがらずにいられないほど、寂しかったんだ。
優しくしてあげる。そう、利用するためだもの。
キラがかわいそうだからじゃない、コーディネイターをやっつけてもらうために、優しくしてあげるんだから。
キラの体のぬくもりが心地良いなんて、考えちゃいけない・・・・
いえ、カガリバージョンまで話が進まなかっただけです・・・すんません・・・
>>流離う
いつも大作すごいですね！尊敬してます。
フレイ様が凛々しくなって来て、素敵の一言です。
>>刻還り
ああ、フレイ様、おいたわしい〜。（涙）
そしてなんだかイザークが格好良くてびっくりです。
>>オーブ・フレイの心
ミリアリアの清々しいまでの壊れっぷりに惚れてしまいそうな今日このごろです。
フレイ様も心情的につらいところに来てますね。頑張れフレイ様〜。
文章誉めていただいてありがとうございます。過分なお言葉ですが励みになります。
>>キラ♀フレイ♂
いつも楽しく拝見してます。
私は黒いフレイ様も好きなので男フレイ様にめろめろですよ。頑張ってくださいねー。
＞＞ 刻還り
＞どうやらこの医師はあまり適正がないようだ
うーん、本編では、医者も、コーディの医療には詳しくないのかな、って感じでしたが、
こっちでは、そもそも藪っぽい人なのですね。町医者ならともかく、軍艦の軍医でそれは
やばいぞ。
＞決して再会することなく、キラを死なせ続ける夢であった。
フレイ様。結局キラとは再会できませんでしたからね。辛いです。
＞＞オーブ・フレイの心
＞『ママはいないんだよ』
本当に文字通りの意味だったりして...
＞なぜか、涙が出てきた。ダメだ。私は、もう昔の私でいられない。
＞昔のように憎めないとしても、体は離れられないにしても、
＞心は今のまま突き放していけばいい。
＞一緒に成長なんて、もういい。必要ない。
このアンビバレントな感じは、フレイ様の魅力ですね。なんだかとても哀しい。
＞＞キラ（♀）×フレイ（♂）
＞………程度の良い、焦茶色の鬘さえ手に入れば…。Ｂｙ Ｍ嬢
本編のキラに、金髪の鬘を脳内変換でかぶせてみて、ちょっと笑いました。キラが硬派だっ
たら、結構屈辱かも。
＞サイの、キラに対する底なしの憎悪...戦場へと出るほうが、はるかにマシ
自分に罪の意識があるだけに、元親友から向けられる憎悪は、余計こたえますね。戦場の方
がある意味マシ、という気持ちはよくわかります。まあ、それも、卓越した戦闘能力のおか
げで、出撃がルーチンワーク化しているからこそでしょうが。
＞＞流離う翼たち
＞「やるな、ナチュラル！」
＞「何よ、こいつ！」
＞「なに、子供だとっ！？」
ガンダムっぽさを非常に感じさせてくれる台詞です。どこが？といわれれば、なんとなく、
としか言いようがないのですが。実際、ナチュラル、というのがなくて、この台詞だけ抜き
出されても、やっぱガンダムだと思ってしまいそうだ。
新作ですね。本編のシーンの言葉足らずの部分を補完しまくりですね。エロは個人的にはOKです。描写も綺麗ですし。
>刻還り
フレイ様無事救出されたみたいですね。イザ―クも終盤のイザ―クを彷彿とさせますね。これで悪名高いシャトル事件から
解放されますね。
>・・・フレイはキラのことが
サイには気の毒としかいいようがないですね。
>流離
>周囲を立体的に知覚し、周りの全てが把握出来るようなあの感覚を
かっこいいですね。能動的に自分の意思でひきだせるんですね。これは強いかも！。新キャラのグリアノスもディンやシグー
ではなくジンを使うあたりがマニアックでいいです。
>キラ（♀）
>「気のせいじゃないの、カガリ…」
鈍感兄妹ですね。とはいえカガリの傭兵としての自負心は見ていて結構かっこいいですね。本編の萌え路線もいいですが。
>ショックで眼鏡を落としてしまい
サイはやっぱり眼鏡っ娘なんですね。ふむう…いいかも・・・・。
>オーブ・フレイの心
>マザコンのキラなんて見たくない
キラをマザコンと思うフレイ様の心情描写は中々新鮮ですね。マザコンといえばヤツでしたからw
キラママンは優しそうだから、フレイ様とも仲良くなれそう。逆にママンを困らせるフレイ様も見てみたいかも。
>ミリアリア
>軍本部での面会が許可されました
本篇のマリュ―も幼稚園の保母さんみたいな喋り方でしたねw
「グリアノス隊長、新たな敵部隊が接近しています。例の足付きの様で、戦艦１、ＭＳ１、戦闘機２です！」
「足付き･･････デュエル･･･････小娘･･････そうか、こいつが噂の真紅の戦乙女か」
グリアノスは噂が本当だった事を自ら確かめた事になる。ナチュラルでありながらヨーロッパで味方のＭＳを何機も屠ったデュエルパイロット。その実力はクルーゼ隊の赤服とさえ渡りあったという。そして、幾ら機体性能差がるとはいえ、自分とここまで戦うのだ。特に反応の良さと勘の良さ、射撃の腕前はナチュラルとは思えないものがある。
「･･･････このデュエルは私が相手をしよう。お前たちはナチュラルの残党を始末しろ！」
グリアノスの指示を受けて残るジンと戦車がクリスピー達の方へと向う。フレイはそれを阻止しようとしたが、それを阻む様にグリアノスのジンが立ちはだかってくる。
「行かせはせんぞっ」
「この、どきなさいよ。このままじゃ大尉が、あの子達がっ！」
フレイは焦ってジンを振り切ろうとするが、互いに飛び道具を持たないので接近戦をやるしかない。互いに重斬刀を構えての斬りあいになってしまったのだが、この勝負は容易に決着が付きそうも無かった。
すでにビルにはザフトの歩兵が迫っており、守備についている歩兵部隊が持てる火器を下に向けて打ち下ろしている。高所に居るという立地上の優位が辛うじて守備隊を支えているのだろう。だが、それに業を煮やしたのか、ザフトの戦車が砲を軍曹達の守るビルへと向けた。
この瞬間、言い様の無い悪寒がフレイを襲った。殺されてしまう、あの子たちが。それがハッキリと分かってしまった。慌ててモニターを操作し、ビルを撃とうとしている戦車を見つける。
「駄目、止めてぇ！」
フレイはジンを無視してデュエルをそちらに向けたが、それはグリアノスに背を向けることを意味している。グリアノスは口元を歪めると嘲笑混じりにデュエルの背中に重斬刀を叩きつけた。動き出した勢いもあってそのまま道路に叩きつけられてしまうデュエル。
「愚かな、戦いの中で戦いを忘れたか！」
嘲笑うグリアノス。だが、フレイにはそんな声は届いていない。今のフレイの頭には、主砲を撃とうとしている戦車しかなかった。
「やだ･･････止めて。駄目、やだっ！」
だだっ子のようなことを言いながらフレイはその戦車に手を伸ばす。そんなもので戦車を止められる訳が無いのだが、今のフレイにはそんな理屈は無い。
そして、フレイの目の前で戦車の主砲が火を吹いた。
「やめてぇぇええっ！！」
放たれた砲弾。それは真っ直ぐにビルの方へ飛んで行く。そして、ビルの直前で何かに着弾して爆発を起した。フレイは涙を流しながらその光景を見ている。一体、何が起きたのだろうか。
そして、煙が張れた後には、１機の白と青に塗り分けられたＭＳがシールドを構えて立っていた。間違い無い、キラのストライクである。
「キ･･･････キラ？」
信じられない思いでキラのストライクを見る。何故彼がここに居るのだろうか。アークエンジェルが来てくれたのだろうか。フレイの疑問に答える様に上空に２機のスカイグラスパーが現れ、地上を掃射していく。間違い無い、アークエンジェルが来てくれたのだ。
喜ぶフレイとは対照的に、グリアノスは苦渋に満ちた顔をしていた。
「まさか、こうまで早く来るとはな。やむをえん、全軍撤退だっ！」
グリアノスは素早く決断した。これ以上戦っても勝ち目はありはしない。噂が本当なら、あのストライクというＭＳは化け物じみた強さであり、２機の重戦闘機も名高い「エンディミオンの鷹」と「エメラルドの死神」が乗っているという。もしあのストライクはこのデュエル以上の強さだとしたら、手持ちの戦力では勝負にもならないのは確実なのだ。
グリアノスの命令で整然と撤退していくザフト軍。ビルに迫っていた歩兵達も急いで隠れていた装甲車に戻り、戦車隊を追いかけていく。ビルに立て篭もっていた軍曹達はアサルトライフルや軽機関銃を下げ、呆然とした顔で撤退していく敵を見送っている。そして、その頭上に巨大な戦艦が現れた。
グッタリと疲れた体をデュエルに預けて休んでいると、大尉が生き残りの兵士達とともにやって来た。腕を吊っている者、松葉杖をついている者もいる。何事かと思ったが、とりあえずフレイはよろよろと体を起した。
「どうしたんですか、クリスピー大尉？」
「なに、野暮用だよ」
クリスピー大尉は笑いをたたえて答えると、表情を引き締め、姿勢を正した。ちらりと軍曹を見やる。軍曹は頷くと、物凄い大声量で号令を発した。
「総員整列、気を付けぇ！！」
正規の軍人らしい、見事に統制のとれた動きを見せる中隊の兵士達。整然と並んだ兵士達に、フレイは目を丸くし、周囲の人々は何事かとこちらを向いている。
そんな視線など気にもかけず、大尉は軍曹の後を引き継いだ。
「フレイ・アルスター准尉に、敬礼！」
一斉に捧げられる、挙手の敬礼。それは、大尉達がフレイに対して向ける、最大級の敬意の現れであった。その命を掛け、全力で戦ってくれたフレイに、大尉達は戦友として感謝しているのだ。
そして、フレイは生まれて初めて自分が人から本当に感謝されている事を自覚した。自分を見る大尉が、軍曹が、兵士達が、集まってきた難民の人達が自分を見ている。彼らがみんな自分に笑顔を向けているのだ。難民の人達には頭を下げて「ありがとう」と礼を言っていく者もいる。
そして、あの子供達が駆け寄ってきた。
「お姉ちゃん、ありがとう！」
「凄いよなあ。本当に強かったんだ」
子供達の明るい声に、フレイは嬉しくなって自慢げに頷いた。
「そうよ、言ったでしょう。守ってあげるって」
はしゃぐ子供達に囲まれながら、フレイは自分が戦う理由を見つけられたような気がしていた。復讐なんかじゃない。このような子供達を、この笑顔を守るために戦うのだ。確かに敵の兵士達にも守りたい者がいるだろう。だけど、その為に自分の守りたい人達を見殺しにするのは本末転倒だ。
人間一人で守れる範囲など、たかが知れている。ならば、手の届く範囲だけでも、知っている人達だけでも守ろう。そのために戦おう。キースやフラガでさえ手の届く範囲しか守れないと嘆いてるのだ。自分如きが遠くの誰かの事で悩むなど、増長でしかなかったのだろう。
フレイは、ようやく自分の殻をまた１つ破る事が出来た。なにを気負っていたのだろう。どれだけ強くなっても、不思議な力があっても、個人の力などたかが知れているのだ。１人で何かを守るなどできはしない。今回もキラやアークエンジェルが間に合ってくれたからみんな助かったのだ。
「何があったのかな、フレイに？」
「私が知る訳無いだろう」
すぐ横にいたカガリが不機嫌そうに答える。ただ、カガリにはフレイの回りにいる人達の顔に覚えがあった。あれは、何かをして貰えて喜んでいる表情だ。多分フレイはあの人達を必死に守っていたのだろう。
「･･････頑張ったってことじゃないかな、あいつも」
「何を？」
「あいつ等を守るために戦ったって事」
カガリの答えに、サイは改めてフレイを見る。あんなに嬉しそうに、誇らしげ、楽しそうに笑うフレイを見るのは初めてだ。フレイは何時の間にか自分のやりたい事を、戦う自分なりの理由を見つけられたのだろうか。
「みんな、変わっていくのかな」
「変わらない奴なんかいないだろ。私だってお前だって変わるさ」
「･･････そうなのかな」
「そうだよ。それとも、お前は何も変わらないほうが良いのか？」
カガリの問いに、サイは答えなかった。明確な答えの出るような質問では無かったし、仮にあったとしてもそれを口にすることは憚られた。ただ、１つだけ言えることは、フレイは変わったという事だけだ。そして自分はまだ変われていない。
ただ、フレイとサイを比較するのはサイに不公平であっただろう。フレイは自分から変われた訳ではなく、あくまで周囲の状況に流されたという事と、キースやマリュ−、ナタルがフレイに干渉してきたせいだ。この３人を前にすればフレイは自分が１番格下だという事を嫌でも自覚させられてしまう。フレイの変化は自分が格下であるという事をまず自覚する事から全てが始まっていたのだ。
だが、サイも今のフレイを見る事で、ようやく今からの脱却を考えるようになった。これまでではなく、今の自分に決着を付ける事を決めるきっかけを得たのだ。そして、サイが出した答えが艦内に新たな波紋を呼ぶ事になる。
フレイ様、そこで癇癪爆発させちゃ行けませんよ。でも、なんだか寂しいとは違うみたいな。むしろ戸惑ってるのか？
フレイパパって一体何者なんだろう。フレイママの正体は？
>>散った花、実る果実
ううん、砂漠の修羅場でした。やっぱりここは第２クールの山場なのかなあ
次は海の上ですかな？
乙です。
投下を一番楽しみにしてます。
アークエンジェルは敵戦力を確認する。
「敵ＭＳ確認。バクゥ五体。その内の一体は、指揮官機ラゴゥです！」
「砂漠の虎直々のお出ましというわけね、レセップスは？」
「今のところ、確認されてません、ＭＳ単独で出撃してきた模様です」
索敵を担当しているカズィからの回答に、マリューは軽く眉を顰める。
ＭＳ収容艦である以上に、圧倒的な火力を誇る強力な戦力である陸上戦艦を虎が温存
してきたという事は、敵はまだ総力戦を仕掛ける意図がないということである。
マリュー達の予測より時期早々に敢えて出陣してきた敵の戦術目標の那辺を訝しむ
マリューの眼前で、以前、カガリがストライクと連携してバクゥ数体を仕留めた
トラップと全く同じ火の柱が連続して炸裂する。一瞬、ゲリラ達が仕掛けた罠に
再び敵が引っ掛かったのかと思ったが、そうではないようだ。まだ仕掛け途中で、
カモフラージュが完璧ではない為、設置場所が見え見えだった罠を、バクゥは遠距離
からの砲撃で次々と解除しているのだ。
「やられたわね」
マリューは軽く唇を噛む。彼女から見て、ゲリラ達の唯一の戦力源と言っても過言では
ない虎の子のトラップが、虎の即断により効果を発揮する以前の段階で壊滅させられた今、
もはや彼らは戦力とは呼べないだろう。一応の武器は所持しているが、アークエンジェル
の立場からすれば、逃げまとう避難民と何ら変わらない足手まといの存在でしかない。
「ストライクとスカイグラスパーの発進状況は？」
「ストライクは、エールストライクモードで何時でも発進可能です。
スカイグラスパーの方も、フラガ少佐の準備は完了……」
「俺も何時でも発進可能だぜ、ハウ二等兵」
「カ…カガリ！？」
スカイグラスパー二号のコックピットの中から、管制官であるミリアリアの通信に
割り込んできたカガリに、ミリィは驚きの声を上げる。
「兄貴…いや、フラガ少佐の承認は得ている。後は、艦長の許可だけだ」
カガリからの発進要請に、ミリアリアは困惑した表情をマリューに向け、彼女はほんの
少しだけ逡巡した後、「……発進を許可します」と、カガリの出陣を裁可する。
「ラミアス艦長、例のテストで何があったかは知りませんが、彼は志願兵ですら
ないのですよ、お忘れですか！？」
「今は、我々に協力してくれた、明けの砂漠の救出を最優先とします。責任は全て私が
負いますので、反論があれば戦闘終了後に再び提示してください、バジルール副長」
マリューの軍人らしからぬ判断への艦橋全体の戸惑いを代表する形で、ナタルが反対意見
を主張したが、彼女は艦長権限を振り翳した上で、「責任は私がとります」のお得意の
鶴の一声の一点張りで強引に議論を遮断し、ナタルは強い疑惑と不満の目を向ける。
元々、私情に流されやすい無能な艦長だとは思っていたが、まさか最近恋仲を噂され
ているフラガ少佐に唆されて、民間人の出撃を許可したわけではあるまいな。
そう信じ込んだナタルは、彼女の中でマリューへの軽蔑の色をより濃くしたが、
その根底にある自分自身の私的な感情に関しては、全く把握していなかった。
フラガを軸にした女性幹部二人が対立している間にも、艦橋のオペレーター達は
テキパキと自分達の仕事をこなし、ストライクに続いて、スカイグラスパーの姉妹機
が連続して発進される。
いよいよ、カガリの初陣である。
「俺だ、キラ。いや、今はヤマト少尉と呼んだほうがいいのかな…」
「カ…カガリ！？」
カタパルトから射出され、アークエンジェルの外へと飛び出したキラは、上空を見上げ、
ソードストライカーパックを装備したフラガの乗るスカイグラスパーの他にも、もう一機、
同系統の戦闘機が出撃している事に気づかされ、さらにストライクに入った通信から、
その機体のパイロットの正体がカガリだと知らされたキラは、驚きの声を上げる。
「な…何で、あなたが……」
「キラ、気持ちは判るが、今は戦闘中だ。お前は自分の責務を果たせ。
カガリの事なら心配するな、俺がきちんと面倒を見る！」
当然の疑問を提示しようとしたキラに、フラガが通信に割り込んできて、キラの疑惑を遮った。
前面では、レジスタンスのメンバーが、バクゥを相手に貧弱な火力で絶望的な反撃を
試みながら、防戦一方へと追い込まれていく姿が見える。色々、納得のいかないこと
だらけだが、迷っている暇はなさそうだ。カガリと、彼を援護するフラガの負担を
少しでも減らす為にも、一体でも多く自分がバクゥを倒して敵を惹き付けるしかない。
目の前の劣勢なゲリラ達と同等以上の比率でカガリの身を案じたキラは、何時になく
積極果断な勢いで、バクゥの群れの中に飛び込んでいった。
「来たね、泣き虫のお嬢ちゃん」
ラゴゥのコックピットの中で、趣味の悪い虎柄のパイロットスーツを着込んだ
バルトフェルドは軽く口笛を吹く。ゲリラ達の無力化という当初の目的を達しながら
敢えて撤退せずに、彼本来の気質に反して弱敵と化したレジスタンス達をわざわざ
追い込んでいたのは、ストライクを引っ張り出すためで、虎は、彼自身が直接キラと
手合わせをして、敵ＭＳの戦力分析の最終調整を果たす腹積もりなのだ。
キラも、バクゥ達の中で、別格の威風を放つオレンジ色の機体の存在に真っ先に気づいた。
「た…隊長機？もしかして、虎さん！？」
だとしたら、キラでもそう簡単に捻じ伏せられる相手ではない。キラは敵部隊を一睨みし、
一番手前にいるラゴゥを無視して、左後方にいるバクゥへと狙いを定める。
「な…何ぃ！？」
バルトフェルドが、部下たちにフォーメーションを組ませる前に、ストライクがエール
特性を駆使し、疾風のような勢いで突っ込んできて、まずはバクゥ一体をビームサーベル
で貫いて血祭りにあげる。そのバクゥのパイロットは、今日が初陣となる新兵だった。
キラは天賦の才で、直感的に敵陣の最も脆い部分を的確に見抜き、先制の一撃を与えて、
虎以外の相手を浮き足立たせることに成功する。生き残ったバクゥ達が口先に咥えた
ビームサーベルを展開し、ストライクへと襲い掛かったが、キラは背中の四基のバーニア
を吹かして、砂上での戦闘とは思えない高い機動力で敵を翻弄する。
キラに気を取られすぎたバクゥ一機が、スカイグラスパー二号機からの砲撃を受けて
破壊される。記念すべきカガリの初撃墜記録が刻まれ、一瞬、カガリは浮かれ掛けたが、
先の戦闘でアフメを死なせた時の教訓を思い出して、すぐに気を引き締め直し、
ストライクを援護射撃しながら、次の獲物へと狙いを定める。
制空権を確保したスカイグラパー二機からの、ストライクを上手く囮とした巧みな
砲撃に、部下たちはキラ一人を悠長に取り囲んでいられる状況ではなくなったので、
指揮官機であるラゴゥ自身がビームサーベルを展開して、直接キラへと襲い掛かる。
虎は一撃離脱を信条に、小刻みな高速移動を繰り返してキラに射撃の的を絞らせずに、
接近しては、ビームサーベルを確実にヒットさせてＰＳのエネルギーを削り取り、
離れては、ＰＳを無効化する背中のビーム砲を連射して、キラの肝を冷やさせる。
機体の性能やパイロットである虎自身の技量も含めて、今までキラが相手にしてきた
バクゥ達とは段違いの能力を誇るラゴゥに、最初こそキラは苦戦したが、徐々にキラは
ラゴゥの機動力に追いつきはじめる。ストライクを振り切れなくなって、接近戦オンリー
に持ち込まれ、ビームサーベル同士を鍔迫り合わせる虎の表情から余裕の色が消える。
遂にキラの攻撃がラゴゥを直撃し、ビームサーベルの一撃が肩翼の一つを切り裂いた。
「どうやら、このお嬢ちゃんは実戦の中で、果てしなく成長していくタイプみたいだな。
とすれば、戦力評価の為に、部隊を小出しで逐次投入してきたのは、却って藪蛇だったか」
気づくと、自分の部下たちは既に全滅させられている。冷静に戦力分析などしている
場合ではなくなった虎は、まだ機体に余力が残されているうちに撤退を図った。
「待て、カガリ。深追いするな！」
自分を追撃してくる、スカイグラスパーの存在に気づいた虎は、口に咥えていた
ビームサーベルを戦闘機目掛けて、手裏剣のように放り投げる。慌てて回避しようと
したカガリの目前で、フラガがソードパックのビームを展開して、サーベルを弾いた。
「損傷の少ない敵は深追いするなと、予め警告しておいただろう？減点一だぞ、小僧」
「か…掠ったかもしれないけど、直撃だけは十分避けられたよ。けど、済まない、兄貴…」
相変わらずの素直じゃない皮肉れ加減を発揮しながらも、面目なさげに俯いたカガリに、
フラガは軽く苦笑しながらも、教官視点からカガリを採点して、彼のスカイグラスパー
の実技試験項目に、『大変良く出来ました』の合格印を押し印した。
その教官のフラガ自身は、初陣のカガリの負担をなるだけ減らす為に、敵を自分の方に
惹き付ける目的で、敢えてソードスカイグラスパーで出撃していたのだ。
本来の戦闘機の特性である遠距離砲撃の利点を捨てて、ビームソードを展開しながら、
何度も直接敵陣に斬り込んで不慣れな近接戦闘を続けながらも、それでもソードで
バクゥ一体を切り裂いて、撃墜スコアを一つ上乗せしたのだから、やはり只者ではない。
そして、フラガの不肖の弟子のカガリは、バクゥ二機を撃破した上で、何とか被弾せず
に無傷でアークエンジェルへと帰艦することが出来た。フラガとキラの有形無形の
バックアップがあり、最後にミスを犯したといえ、初陣の戦果としては上出来で、
これなら彼の出撃を強引に後押ししたマリューの面目も十分に立つだろう。
「良かった、カガリは死ななかったんだ…」
虎の撤退を見届け、カガリの生存を確認したキラはホッと安堵して、心理的な武装状態
を解除する。すると、フラガとは逆方向の意味で精神のチャンネルが完全に切り替わった
キラの中から、闘神の申し子の姿が完全に消失し、罅割れた心の甲冑の隙間から、
本来のキラの属性である臆病で泣き虫の自分が這い出してきて、キラは涙目になりながら、
コックピットの中でブルブルと震えだした。
「これで、撃墜数は１４…いいえ、カガリが止めを刺した一機は、私が前脚を斬って
動けなくしたんだから……１５か……」
キラは今日まで、直接自分が殺してきた人間の数を律儀に数えていた。これは自分の
撃墜スコアを自慢する為ではなく、自分の犯した罪を忘れない為のキラ流の儀式だった。
二桁を超える殺人数自体、戦争という超法規枠を外れて、個人で独力に犯した罪なら、
十分死刑を求刑されるに値する立派な大量殺人ではあるが、それすら直接的な数に過ぎず、
ヘリオポリス崩壊に始まり、アルテミス要塞の消滅、避難民のシャトルの撃墜や、
敵戦艦破壊の際の支援など、キラが今まで有形無形で間接的に関わってきた敵味方の
夥しい死者に対しても、キラが責を負わねばならないとしたら、キラの撃墜スコアは
さらに天文学的な数値へと膨れ上がることになるだろう。
もし、そのキラの感傷をフラガが知れば「そんな事は、今日まで自分が食べてきた
パンの枚数を覚えておくような無意味な行為だ」と彼は主張しただろうし、現にフラガ
は自分が殺してきた人間の数など、１００より先だということぐらいしか覚えていない。
ただ、それでもキラは自分の行為の意味を忘れたくなかった。小心なキラにとって、
自身が大量殺人者であるという事実を正面から突き付けられるのは、気が狂うほど
辛いことだが、それすら忘れてしまい、自己の行為を正当化して、戦闘と殺人が単なる
作業と堕してしまう方が、キラにとってはるかに辛い事だからだ。
「今夜は久しぶりに、フレイに慰めてもらおう…」
キラはそう決意すると、涙を拭きながら、アークエンジェルへと帰艦していく。
以前と異なり、フレイという頼りになる異性の存在に抱きかかえられている今のキラは、
本来の弱虫の自分を殺さずに、心の隙間を身体で穴埋めする処世術を身につけていた。
だがキラは、自身の原罪を正面から胸のうちに刻み込もうとする殊勝さの一方で、
“心”と“身体”、 “プラトニック”と“アンプラトニック”
カガリとフレイというキラの内を占める二人の異性の存在を、何らの悪意もなく、
自己への対となる役割分担に切り分けようとしている、女としての自分の無意識の
狡猾さには全く気が付いていなかった。
これからの戦況について思案する。
恐らく、アークエンジェルは明日か明後日には、紅海を抜ける為に必ず動いてくるだろう。
今回の戦闘で、バルトフェルドはほとんど手持ちのバクゥを失い、レセップスには
数えるぐらいしかＭＳを残していない。
徒に日を置けば、ジブラルタル基地からの補充を受けて、虎が戦力を回復させるのは
目に見えているので、相手の指揮官がよほどのマヌケではない限りは、このレセップス
を攻略する千載一隅の好機を逃すことはしないだろう。
「だとして、僕は果たして勝てるのかな？あの戦いの女神に愛されたお嬢ちゃんに…」
元々、バクゥ系統の四足のＭＳは、砂漠での高い機動性で、地の利を抑えることを
前提としているので、相手が自分と同等以上の機動力を持つとなれば著しく不利となる。
既に砂漠での地の利などキラの前では無きに等しく、バクゥはおろかラゴゥですら、
今のキラには太刀打ち出来ないかもしれない。
「アレを使うしかないか…」
どうやら砂漠の虎には、ストライクに対抗する為の起死回生の切り札が、未だに残されて
いるみたいだ。何故、ここまで追い詰められるまで温存していたかは謎だが…。
アレを起動させるとなれば、久しぶりにアイシャにも現役復帰を願い出なければなるまい。
さらに総力戦となれば、役に立たないと思って今回の出撃には置いてきた、宇宙から
降ってきた彼らにも働いてもらうことになるだろう。
「しかし、蛇は卵のうちに潰せとは良く言ったものだ。
あの泣き虫のお嬢ちゃんを、殺せる時に殺さなかったツケがここまで来るとはね。
自分の闘争本能を満足させる為だけに、無為に部下を死なせて、自分の愛する人間まで、
戦場へと引っ張り出そうとする僕は、やっぱり良い人ではありえないね」
それどころか、死後、地獄の特等席は自分の為にこそ用意されているのだろうと、
彼は、以前、落ち込んでいた時のキラと似たようなことを考えていた。
ただ、一つだけ違っていたのは、その時、キラが泣いていたのに対して、虎は笑っていた。
それこそが自分の本望だ…とでも言いたげな、極上の人食い虎の笑顔で…。
>フレイの変化は自分が格下であるという事をまず自覚する事
清々しい終わり方で気持ちが良いですね。サイもフレイ様の行動から何らかの影響を受けたみたいですし。
おそらくフレイ様をめぐるというか、それ以外にも色々な謎があるみたいなので楽しみです。
>キラ（♀）
>“心”と“身体”、 “プラトニック”と“アンプラトニック
無意識とはいえ、ただの鳥頭とバカにできないところですね。暗黒フレイ様はキラの“心”の部分をカガリ
とすんなりシェアするつもりはないでしょうから、これからのフレイ様の暗躍に期待します。
両親面会の当日。
あの子は、やっぱり、来なかった。艦長は、なぜか残念そうだった。
艦長が、あの子のことなんて、今まで気にかけている素振りは無かったのに、
この数日、何度か、あの子のことを口にするのを聞いたことがある。
どうしたんだろう、今になって。
正直、あまりいい気はしない。艦長は、あの子に好意的なように思える。
まあ、いいのよ、今日は、あの子のことなんて忘れるの。
軍本部に行く間に、艦長にキラが来ないことを告げられた。
キラとも会えると思っていたのに。なぜ？
「まさか、フレイが行かないって言ったから？」私は聞いてみた。
艦長が二人を心配したように答える。
「ええ、フレイさんが残ることを話してから、キラ君の方から断ってきたの。
キラ君、前から、ご両親と会うの迷っているような口ぶりだったけど。
フレイさんも両親に会うと聞いて、
忙しい仕事を切り詰めて、今日の予定を開けてあったのにね」
キラ、あの子を両親に紹介したかったの？ そんな…
あの子が来ないからって、自分も会わないの？ どうして？
キラのお父さん、お母さんも、私たちの面会の場には現れなかった。
あの子とキラ、両方とも来ない。ちょっと気になったけど、
私には、どうしようもない。二人が隠れて会ってたって、今までと同じ。
何も変わらない。今は、忘れよう。
両親との久しぶりの語らいは楽しかった。
軍服を着た私に、お父さん、お母さんは驚いたけど、
変わらない私の言葉に安心してくれた。
このまま、私を軍から連れ出してくれたら…
そういう考えも、心をかすめたけど、艦長が、私たちを
見つめている。艦長の心づかいを裏切る訳にはいかない。
両親と語らうトール。もし、あの時、結ばれていたら、
私は、両親にトールを紹介したかもしれない。
そうすれば、完全にキラからリタイヤできたかもしれない。
でも、仕方ない。
私は、サイに目を向ける。サイの笑顔なんて、久々に見るような気がする。
サイは、あの子のことを両親に話したのかな？
サイとサイの両親が、私達のところに来た。一緒に話をする。
普通、婚約者が一緒にいれば、呼んで話をしたがるはずなのに、
サイの両親は、あの子のこと、婚約者のことに何も触れない。
一度、私の方から、あの子の名を出した時、サイの両親は、驚いたようになって、
それを無視した。サイも何も言わなかった。どうしてなんだろう？
楽しい時間は、あっと言う間に過ぎた。
別れ際に、お母さんが言った。
「どうして、あなたが軍にいなくちゃいけないの」
私は悲しそうに答える。
「分からない。でも、仕方ないわよ。志願しちゃったんだもん」
私が志願した目的、それはキラを助けたいということだけ。
でも、キラは、どんどん、私から遠くなるばかり。
あの子に取り込まれていくばかり。
軍にいる理由なんて、ほとんど存在しない。
でも、私は軍に残らざるを得ない。
離れていくキラを見つめざるを得ない。
これから、どうなるのか、自分でも分からない。
せめて、いつか、私の想いが届くとだけは信じていたい。
お父さん、お母さんも、信じていて。私は、きっと帰るから。
ジブラルタル基地の司令部はこの大敗の理由を、連合が配備しだしたＭＳにあると判断していた。僅か５機ではあるが、その５機が防衛線を食い破り、それを食い止めようと集まってきた部隊さえ蹴散らして進んできた。特に先頭に立つストライクの強さが脅威的で、あのザラ隊やジュール隊ですら撃破されてしまったのだ。
補給と補充を受けたザラ隊とジュール隊はアークエンジェル追撃の為に出動することになっている。だが、奴らは巧みに連合の勢力下を移動しているらしく、こちらの捜索網になかなか引っ掛からないでいる。
先の戦闘で部下を１人失ったイザークは荒れていたが、今では流石に落ち付きを取り戻していた。ただ、足付きとストライクに対する憎悪はこれまで以上のものがある。ディアッカでさえ呆れて手が出せないほどだ。
また、ジンやシグーでは足付きの搭載機にはまるで歯が立たないことが分かりきっている為、両隊には本国から完成したばかりの時期主力量産機、ゲイツの量産試作型が送られている。言ってしまえば試作機に毛が生えた程度の機体で、本格量産型に較べると信頼性などの面でかなり問題がある。いわゆる実戦テストに使われるということだが、これを渡されたのはザラ隊ではミゲル、ジュール隊ではフィリスだった。他のメンバーにはジンからシグーに乗換えとなっている。
ゲイツを渡されたミゲルとフィリスは渋い顔でこの新型機を見上げていた。
「なんだかなあ。本当に大丈夫かよ、これ？」
「気に入りませんね。戦場で故障したらどうしてくれるんですか」
まだ本格生産にも入っていない機体に喜ぶパイロットなどいない。カタログスペックこそ凄いが所詮はカタログ上のものだ。実戦ではどんな不都合が生じるか分からない。
だが、ビームライフルとビームサーベルを標準装備というのは、足付きを沈める為の必須条件だ。あれに搭載されているストライクとデュエルを倒すにはビーム兵器が絶対に必要なのだから。
ミゲルのゲイツはミゲル用のカラーに塗られているが、フィリスのゲイツは標準的な濃緑色だ。ミゲルは赤を着ている訳でもないのにこの辺りの優遇ぶりが凄い。まあ、それだけの実力はあるのだが。言ってしまえばミゲルの実力は赤を着るイザークにも引けを取らない。ただ学校の成績が良くなかっただけなのだ。
ザラ隊は出発を目前にして移動の準備に追われていた。とりあえず足付きがアジアに向かっている事だけは確かなので、そちらの友軍部隊と合流しようというのだ。アスランとミゲルは飛行場で輸送機に自分たちのＭＳが搬入されていくのをじっと見守っている。
「しかし、独立部隊ってのも良いもんだな。気は楽だし、自由に動けるし。なあアスラン」
「そうだなぁ」
「そして、なによりあの変態仮面がいない」
「開放的だなあ」
両手を上げて背筋を伸ばしながらとても嬉しそうに答えるアスラン。そして、２人の周囲をなんとも言えない不思議な沈黙が支配した。
「･････････俺、何か言ったか？」
「いや、何も聞えなかったぞ」
漏れ出たアスランの本音を、ミゲルは引き攣った笑顔で聞き流してくれた。そしてわざとらしく話題を方向転換させる。先ほどの会話は脳内からあえて忘却してしまう。
「まったく、ヨーロッパに来たと思ったらもう移動かよ。忙しいことだな」
「そう言うな。俺たちは足付きを沈める為に降りてきたんだからな」
ぼやくミゲルをアスランが苦笑混じりに窘める。だが、本当はアスランももう少しここに居たかったのだ。少し疲れが出ているのだろう。それに、明日にはラクスが戦場慰問でジブラルタルにやってくる事になっている。彼女の顔も見たかった。なんとも運の悪い事である。
「なんですか、ミゲルさん？」
「悪いけど、アスランのサポート頼むわ。俺はちょっと別の用事がある」
「はあ、分かりました」
何となく釈然としないものを感じながらも、エルフィは請け負った。そして少し嬉しそうにアスランの所に行ってしまう。ミゲルはそれを見送ると、突然顔を邪に歪めた。その顔は、悪戯を思いついた悪餓鬼そのものだったのである。
「ふっふっふ、アスラン、俺の友情に感謝しろよ」
ミゲルは無気味な笑いを浮かべながら輸送機に移す為の作業を行っているイージスの方に歩いて行く。一体彼は何を思いついたのであろうか。
それから１０分ほどして、アスランが整備兵に呼び出された。エルフィを伴ってやって来たアスランは整備兵から驚くべき話を聞かされる。
「イージスに致命的な故障が見つかった？」
「はい、まだプログラムチェックの段階なんですが、どうやら動力系に異常があるようで。これから一度ハンガーに戻して総点検に入ります」
「じゃあ、今日の移動は？」
「諦めてください。少なくとも１日はかかります」
整備兵の返事にアスランは困り果ててしまった。整備兵が動かせないと言う以上、ごりおしも出来ない。こと機体の調子に関しては整備兵の方が権威がある。だが、困っているアスランの肩をミゲルがポンと叩いた。
「まあしょうがないさ。お前は後からのんびり追って来い」
「ミゲル、だが」
「なあに、ニコルも俺もいる。イザーク達も行く訳だし、何かあっても戦力的な不足はないだろ。それに、不完全な機体で出られても戦力には数えられないぞ」
「･･･････そうだな、分かったよ」
アスランも渋々頷いた。確かに壊れたイージスで出撃しても足手纏いになるだけだろう。アスランが残る事が決まったので、ミゲル達は先に出発することになった。見送りに来たアスランに手を振りながらニコルが不思議そうにミゲルに語り掛ける。
「ですが、イージスだけ再点検ですか。前の損傷が思ったより酷かったんですかね？」
「う、うーん、まあ、そう思っておいてくれ」
あからさまに何か知ってますよと言いたげなミゲルに、ニコルは彼らしくもなく疑いの視線を向けた。
「何か知ってるんですね、ミゲル？」
「な、なんのことかな？」
「とぼけないで下さい。まさか、イージスに細工したのはあなたなんですか？」
非難の目を向けてくるニコルに、ミゲルは渋々頷いた。
「ばれちゃあ仕方ないな」
「なんでそんな事をしたんです？」
「明日、ラクス・クラインがジブラルタルに来るんだよ。それが理由さ」
「････････お節介な人ですねえ」
ニコルは呆れた顔になりながらも、ミゲルを責めはしなかった。いつもふざけてはいるが友情には篤い兄貴肌の男。それがミゲル･アイマンなのである。
キラちゃんまで腹黒くなってきたｗ？ 結構計算高かったですな
カガリはバクゥ倒してご満悦みたいだし、まあ問題無しか
しかし虎さんの切り札とは･･････まさかイザークｗ
>>ミリアリア・あの子許せない
あうう、キラも両親に会わなかったんですね。ミリィは相変わらず嫉妬してるし
でも、サイの両親の反応が気にかかる。なにか知ってるんですかな？
職人さん乙です。
＞「開放的だなあ」
アスランといえどやっぱ変態仮面のようなのと一緒に居るのは気詰まりなんですな（笑
あと、これってあれですよね、某アンドロイドな人のでてくる…
後々アスランはこのことをネタにミゲルにからかわれるんだろうか…
すでに最終回の後の話、というのも出て来てますし、私はＯＫです
申し訳ありません。自分の厨臭いなどという失礼な書き込みを不快に思われたようで
大変失礼致しました。慎んでお詫び申し上げます。
流離える翼たちは私も毎回楽しみにして読ませて頂いております。これからも1ファンとして応援させていただきます。
そして、ご意見ありがとうございました．
×流離える
○流離う
間違えました。重ね重ね申し訳ありません。
>>ミリアリア
>離れていくキラを見つめざるを得ない。
今までミリアリア得意？の妄想を面白おかしく見させてもらいましたが、冷静なミリアリアを見ると、これもまた良いかなと思いました。
あとマリューの主張を土台に一生懸命思考していたフレイ様の思考の軌跡が面白いですね。ここからどうなるのか楽しみです。
>>流離
フレイ様は出てこないですが、ザフト編も役者が揃っているという感じでにぎやかで楽しいですね。
>ただ学校の成績が良くなかっただけなのだ
なるほど合点がいきましたw
>ラクスが戦場慰問でジブラルタルにやってくる
ついに歌姫大気圏突入ですね。過去ログ見たらフィリスがお知り合いみたいですね。
>背中の半ばまで届く水色の髪
>少し嬉しそうにアスランの所に
こういう人だったんですね。本編の萌え隊員にビジュアルは近いのかな。いまいちイメージのつかみにくいキャラでしたがこれからが楽しみですねw
両親面会の当日。
再度、通信で、確認してきたマリューさんに、私はきっぱり断った。
一人アークエンジェルに残された私。
ヘリオポリスのみんなどころか、作業兵達も、ほとんどオノゴロの
工場へ行っている。マリューさんは、両親面会の同伴に行っていて居ない。
艦の修理は、やかましく行っているはずだけど、
中までは音は届かない。広い艦内は静まり返っている。
こんな時に限って、仕事も、ほとんど無い。
洗濯物も少ないし、掃除は、こないだからムシャクシャを
ごまかすように磨いていたので、別にしなくても良いくらい。
まだ、昼前だというのに、やることがなくなった私は、部屋に戻るしか無かった。
途中、休憩室を覗いたけど、だれも知った人がいなくて、ため息をつく。
私は不幸だわ。だれも、私の不幸を分かってくれない。
キラも、結局は自分のママが恋しいだけ。
私だけ、不幸なんて嫌。理不尽だ。
誰かを憎まなきゃいられない。やっぱり、復讐しなきゃ。
誰に？ ザフトに？ コーディネータに？ キラに？
私は部屋の戸を開けた。
「お帰り、フレイ！」
キラの声がした。驚いて振り向いた。
キラがそこにいた。デスクでノートパソコンに盛んに何かを打ち込んでいる。
でも、なんで、ここにいるの？
「ごめん、もうすぐ終わるから。終わったら君と… それとも先に食堂へ行く？」
キラを見て、私の体は一斉に騒ぎ出した。胸の鼓動が高まる。
体の芯が熱くなる。十日以上も干されていた肌がぬくもりを求めている。
腰に力が入らなくなり、足まで震えはじめる。
今にもキラに抱きつきたい衝動にかられる。
でも、それだけでは無かった。
心が求め始める。
昨夜、突き放すと決めたはずなのに…
さっきまで復讐のことを考えていたのに…
(キラがいるわ。ほら、私のキラが… もう安心よ。キラに復讐するの。
パパが死んだのなんて、もう寂しくないわよ。キラが復讐するのよ。
さあ、キラに甘えなさい。私のキラに。復讐よ、これは復讐なのよ。
ねえキラ、守ってね。あいつら、みんなやっつけて。復讐よ。みんな、みんなに復讐よ)
心の中の私。私を不幸にする、すべてに対し復讐を望む私。そして、キラに子供のように庇護を求める私。
―― キラは、相変わらず泣き虫の甘えんぼなんだから。
キラの方から縋ってくるんだから
私は、縋っているのは自分だったと分かった…
キラに復讐を誓った時から既に…
そして、今や、縋る私に同情の目を向けるのはキラの方なのだ。
両親面会の当日、独りぼっちの私をキラが待っていた。
もう二週間近く直接会っていないキラとやっと会えた、そのとき、
私の心を襲った陰り。
―― 私は、縋っているのは自分だったと分かった…
キラに復讐を誓った時から既に…
嘘よ！ 私はキラに縋ってなんか無い。キラに同情されるようなことなんてない。
なんで、こんな時にキラがいるのよ！！！
キラ、いったい何しに来たのよ！！！
私は、険しい顔に変わって言った。声が震えているようだった。
「キラも家族来てるんでしょ。なんで会いに行かないのよ？」
「え！」
「ママに会えるのでしょ。何で行かないのよ？」
「仕事、もうすぐなんだ。これ済ませないと」
だったら、私のところなんて来ないで、仕事場にいるはずだ。
私は、思わずキラに近づき、机に激しく手を叩きつけて言った。
「嘘よ！ そんなこと思ってないくせに！
なら、それだったら、なんで、私のところに来るのよ！
私が、いくら帰ってって言っても帰って来なかったくせに！」
「フレイ…」
「嘘！ 嘘よ、嘘！ 同情してるの？ あなたが、私に…
私には、誰も会いに来ないからって… だから可哀想だって…
そういうこと？」
「違うんだ、フレイ」
「どう違うのよ！ どこが違うのよ！ 違うっていうのなら、言ってみなさいよ。ほら！」
「……
僕は、父さん、母さんを憎んでいるのかもしれない…
だから、会いたくなかった。フレイが会うのならと思ったけど、
君も会いたくないって言ったから…」
「はぁ？
嘘！ 嘘、嘘！！
つくなら、もっとマシな嘘つきなさいよ。パパ・ママを憎んでいるですって。
あんなにママを恋しがってたくせに。マザコンのくせに、嘘ばっかり」
「本当なんだフレイ、僕は…」
キラは立ち上がって、私に手を伸ばした。その手を私は振り払う。
「何が本当よ… あ、アンタってさ、私に同情して、優越感に浸っているだけでしょ。
やめてよね、そういうの。
放っておいてよ、私は寂しくなんか無い。パパもママもいなくったって」
私は強がりの台詞を口にした。本当はさっきから寂しくて堪らなかった。
また、キラに体を預けたかった。慰めてほしかった。
でも、夕べ考えた、心はキラを突き放そうという認識が…
最初から、私が縋っていたという今までの私を覆すような認識が…
それが、私の行動を縛った。
今まで、キラを騙すため、かぶせていたはずの言葉のフィルターも、
すでにかなぐり捨て、私は、激しい口調でキラに怒りをぶつけていた。
今までの、偽りの甘い二人の雰囲気を捨てて、本性を現した私。
キラは、そんな私を見据える。
「そうだね。同情かもしれない。でも、フレイ、聞いて欲しい。
僕は… 辛そうにする君を一秒だって見たくない。
通信で、君が辛そうな時、僕は本当は飛んで帰りたかった。
でも許されなかった。やらきゃならないことがあった。
そして、これからも、こんなことが…
もし、フレイを辛い目にばかり合わすのなら、僕はこんなこと、もう…」
その目は昔と違う。泣きそうに訴える目とは違う。
マリューさんの言った言葉が、記憶の中に蘇る。
―― 「同情ばかりだと、後で、必ずおかしくなるわ。相手は変わるから、成長するから」
マリューさんの言葉が私の中で木霊する。私の心を苛む。
私は、それから逃れたくて、冷たい言葉を吐き出す。
「何よ！ 私は辛くなんか無いわ。
辛いのはアンタの方でしょ。可哀想なのはアンタの方でしょ」
涙が溢れてきた。
「可哀想なキラ、独りぼっちのキラ。
戦いたくないのに戦って辛くて、仲間を殺して辛くて、泣いて…
大切な人を、守りたい人を、守れなくて辛くて、また泣いて…
すぐ泣くキラ、泣き虫キラ、なのに…」
(変わるから…) また、マリューさんの言葉が響く。
キラは変わったの？
どうして、私の方が泣いてるの？
泣くのはキラの方なのに、
辛い言葉を浴びせかけられてキラが泣くはずなのに。
泣いて私に縋ってくるのはキラの方なのに…
「なんで、私が同情されなきゃならないのよ。
なんで、私が泣かなきゃいけないのよ。
なんで、私がアンタに…」
私はキラの胸に縋って泣いた。
―― 私は、縋っているのは自分だったと分かった…
キラに復讐を誓った時から既に…
そうなのだ。最初からそうだったのだ。私がキラに縋ってた。
キラが辛そうに私に縋ってきた時、私もキラに縋るしか心が保てなかった。
だから、何も考えずに抱かれた。体を差し出し、互いに縋りあった。
言葉で二人を繋ぐことをしなかった。
でも、今、変わっていくキラに、私は二人を繋ぐための言葉を持っていない。
ただ、キラを傷つけて、また泣いて縋るキラを望むしかない。
私は、もう止められなかった。
ダメ! もうダメ! キラ、私をやめさせて。抱きしめて、このまま、私から言葉を奪って！
でないと私… キラに決定的なことを言ってしまう。二人の関係を完全に破壊してしまう。
もう喉まで出かかっている。(コーディネータのアンタなんか…気持ち悪い…近寄らないでよ！)
私、こんなこと、もう思っていないのに！！
「フレイ、もうやめてよ。やめようよ」
キラ、何、何を言っているの…
「ごめん、フレイ。僕が間違えてた。僕達、間違ったんだ。このままじゃいけなかったんだ」
キラ、何、何なの。私とのこれまでのこと、全部、間違いだっていうの。
キラ、私のこと、どう思っていたの。
「フレイ、僕達もう…」
「いや！ 何よ。何よ、そんなの！！」
私は、キラを突き飛ばして、部屋を飛び出した。堪えられなかった。
私は辛いことがあると、すぐに、その場を逃げ出してしまう。
涙を流しながら走った。訳も分からずに走った。
やがて、共同のシャワー室を見かけると、そこに駆け込み、熱いシャワーを体一杯に浴びた。
まだ、キラの言葉が、自分の言葉が、頭の中で木霊していた。
なんでこんなことになったのよ。分からなかった。
(もっと、大人になりなさい…) マリューさんの言葉が、また思い出された。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
あれから時間がたって… 少し気持ちが落ち着いてきた。
私は、キラの部屋へ戻った。部屋にはキラはいなかった。トリィも… 持っていったらしい。
置き手紙には
―― モルゲンレーテから呼び出しがあったので出かけます。
君とは、もう会わないほうがいい」
と書かれていた。
「馬鹿！！」
私は、また机を思いっきり叩きつけて泣いた。
前書きにも書いた通り、「オーブ・フレイの心」は当初、このシーンの、
独自解釈による補完が目的で、この後は、 本編通りにシーンを流して終わる予定でした。
でも、ストーリーは、これで中盤を過ぎたところです。ここからが、大きく変わってきます。
今まで、ミリィより優位だったフレイ様が落ち込み、ミリィが一時的に優位になります。
それで、フレイ様やミリィが、どうなるのか？ もう少しお付き合いください。
>流離
アスラン出てますね。私のＳＳは全然出ないからな…
わざわざ口実を作ってくれる友達の気づかいの表現いいですね。読んでいて暖かくなります。
ミゲルよ、ばれたらお前懲罰房行きだぞｗ
アスラン、君は鰯水かｗ
小ネタが効いていて良かったです。
しかしラクスとアスランはどういう会話するんだろ。
>>フレイの心
あー本編では見てて一番きつかった時期ですな。
読んでて思い出し、軽く鬱入りましたよ。
ここまでは結構本編準拠ですが、ここから変わる？楽しみです。
>>626
これはもう人に聞くより自分で判断するしかないんじゃないでしょうか。
つーか、続編を妄想、厨くさいオリキャラ、オリMS、全て私にあてはまるじゃないか（笑
おまけにフレイ様死んだことになってますから、「流石にスレ違いだろ」と思って投下やめましたけど。私の場合。
まぁフレイ様登場のパラレルなら大丈夫だと思いますので、とりあえず投下してみてはどうでしょうか？
「･･････何をやってるんだ、あいつ等？」
「イザークの持ってる梱包はなんでしょうね？」
不思議に思った２人はイザークに近付いて声をかけた。
「おいイザーク、なんだよその荷物は？」
「な、なんだ、ミゲルか。暇なら荷物を持ってくれ」
「いや、だからこれはなんだよ？」
ミゲルの問い掛けに、イザークは言い難そうにぼそぼそと打ち明けた。
「これは･････その、この辺りの民芸品だ」
「はぁ？」
「だから、この辺りで買い込んだ民芸品なんだ。この辺りにはいろいろと面白いものが売ってるからな」
「そういえば、イザークはその方面に進みたいんでしたね」
イザークの趣味を知っているらしいニコルが納得して頷く。どうやらイザークは自分の趣味に没頭していたらしい。後ろからついて来ているディアッカが情けない声でミゲルを呼んだ。
「おいミゲル〜、手が空いてるならこっちも手伝ってくれ」
「あ、悪い、今丁度用事を思い出した」
無茶苦茶嘘っぽい事を言ってミゲルは逃げて行く。ニコルはいささか唖然としてその後姿を見送っていたが、それが彼の命取りだった。背後からイザークとディアッカがなんとも言えない目でこっちを見ているからだ。
「わ、分かりましたよ。だからそんな必死な目で見ないで下さい」
「そうか、やはりニコルは俺達の仲間だな」
「ああ、持つべきものはグゥレイトな戦友だぜ」
とたんに爽やかな笑顔を浮かべて２人はニコルに次々と荷物を渡した。その余りの量にニコルの顔が引き攣る。
「また随分と沢山ありますね」
「まだもう一度往復しなくちゃいけないんだ」
ディアッカがうんざりと言いたげに答える。それを聞いたニコルは騙されたと言いたげな顔でイザークを見たが、イザークはいそいそと逃げるように輸送機の中へと消えて行ってしまった。
基地に残るアスランにエルフィが幾つかの書類を渡している。どうやら機内で処理して欲しかった書類らしい。全然嬉しく無さそうな顔でそれを受け取ったアスランはボソリと愚痴をこぼした。
「ふう、偉くなったら仕事が増えた」
「なんですか、いきなり？」
「いや、人間関係複雑になったし、書類は増えたし、クルーゼ隊長と一対一で話さなくちゃいけないし････････」
「あんまり悩んでると禿げますよ？」
エルフィの本心から心配してますよ、と言いたげな瞳に、アスランは額に青筋浮かべながらもどうにか怒りを押さえることに成功した。ただ、ちょっと声が震えているが。
「はははは、ま、まあ、そんなつまらない事は気にしなくてもいい」
「は、はいっ」
僅かに漏れ出る怒気、というか殺気に気付いたのか、エルフィは背筋を正してビシッと答えた。そのまま何やらヤバゲな沈黙が続く。
「ザラ隊長、こちらでしたか」
「あ、ああ、フィリス・サイフォンか。何か用か？」
「いえ、用という訳でもありませんが」
フィリスは懐から手紙を取り出すと、アスランに差し出した。それを見てエルフィが大声を上げる。
「え、え、え、えええええええ―――っ！！ ま、まさかそんな･･････」
何やら凄いショックを受けた様子でよろよろと後ろに下がるエルフィに、どうかしたのかと不思議そうに首を傾げるフィリス。アスランはエルフィの様子にようやく状況を把握したのか、焦った顔になる。
「あ、あの、フィリス。僕にはその、婚約者がだね」
「･･････はあ、それが何か？」
「いや、だから･･････」
ごにょごにょと口の中で必死に台詞を探すアスラン。だが、それよりも先にエルフィが暴発してしまった。
「フィ、フィリスさん、ザラ隊長にはラクス様という婚約者がいらっしゃるんですよ。それくらいあなただって知ってるでしょう！」
「ええ、勿論知ってますが」
済ました顔で答えるフィリスにエルフィは更にショックを受けたようで、何やら顔面蒼白になっている。そして悔しそうに下唇を噛んだ。
「そ、そうですか。あなたは強い人なんですね。私にその半分も勇気があったら･･･････」
「あの、エルフィさん？」
何やら１人で青くなったり赤くなったりと急がしそうな同年輩の同僚にフィリスが戸惑った声をかける。だが、エルフィはキッと顔を上げるとそのまま走り去ってしまった。それを呆然と見送ったフィリスは戸惑いを隠しきれないままにアスランを見る。
「･･････あの、エルフィさんはどうなさったのでしょうか？」
「い、いや、どうなさったと言うか･･･････」
「まあ、いいですけど。それではザラ隊長、すいませんがこの手紙をラクスに渡しておいてください」
「･･････ラクス、に？」
「はい、ザラ隊長は明日降りてくるラクスに会うのでしょう。でしたらと思いまして」
フィリスの言葉にアスランは脱力してしまい、危うくその場に崩れ落ち掛けた。顔が安堵のあまりだらしなく緩む。
「そ、そうか、分かったよ」
「･･････あの、エルフィさんもザラ隊長も、本当にどうされたんです？」
まだ分かっていないフィリスに、アスランはなんとか精神を再構築して状況を説明した。
「いや、その手紙をラブレターだと勘違いしてしまってね」
「そんな事しませんよ。ラクスに怒られます」
「君は、ラクスの友達なのかい？」
「はい、戦前からのつきあいです。ザラ隊長の事もいろいろとラクスから伺っていますよ。惚気話が多かったですけど」
そう言って微笑を浮かべるフィリス。そのコーディネイターらしくない柔らかな笑みにアスランは胸が高鳴るのを覚えた。ラクスの微笑みもふわっとして可愛いのだが、フィリスの何処か人を落ちつかせる微笑みには、また違った魅力があった。
だが、すぐにそれを落ち着かせると、アスランは手紙を受け取った。
「分かった。ちゃんと渡しておくよ」
「お願いします。あと、エルフィさんへの言い訳を考えておいた方がいいかもしれませんよ」
「･････なんでだ？」
「それはご自分でお考えになってください」
煙に巻くような事を言い残して、フィリスは輸送機の方に行ってしまった。残されたアスランは途方にくれた顔でその後姿を見送っている。ラクスの言うとおり、本当に鈍いと言うか、なんと言うか。
>>628
誤解させてしまったみたいですね。すいません。別に不愉快とか、そういう事は無いですよ。
>>630
エルフィのキャラクターですか。一言で言うと、元気で一本気、真面目な女の子ですね。表裏の無い性格で、ザラ隊のお目付け役ですｗ
>>フレイの心
はあ、フレイファンにとって最も辛いシーンの１つが来ましたか。来るとは思っていましたが、何度見てもこのシーンは痛いなあ
でも、キラの部屋に戻ってきたんですね。フレイ様。そこに書置きを残したという事は、キラはフレイ様が一度ここに戻ってくると判断してたのか
さて、ここからどうなるのやら。楽しみです。
両親との面会が済んでから、急に艦内が慌ただしくなった。
キラの仕事が一段落しそうなのだ。予定よりも大幅に伸びたけど、
艦内は出発準備でごった返していた。
キラは、この時期になっても、やっぱりモルゲンレーテに詰めていて、
最終調整を行っているらしい。結局、戻って来れるのは出発直前ということだ。
気になることがあった。
毎日のようにキラの方からかけていた、あの子への通信が、
両親との面会の日の前後から、パタリと消えた。
あれほど、まめにかけてきていたのに。
あの子からも、それに対する文句はかかって来ない。
両親との面会の日、明らかに二人は会っていたのだ。
そこで何かがあった。何があったのかは分からない。
けど、今までの二人の関係に変化をもたらすことがあったことは想像ついた。
私は、気になったけど、それを知るすべもなく、仕事に追われていた。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
「ちょっと聞いてないぞ」 CIC の誰かが大声で叫ぶ。
「ハゥ二等兵、ちょっと頼む」
「はい、何ですか？」
「ちょっと搬入デッキまで降りて、見てきてくれないか？
ストライクの弾薬物資が、一部、違うものが届いているようなんだ」
「ええ！ マードック曹長がいるんじゃ無いんですか？」
「マードック曹長は まだストライクの調整でモルゲンレーテから帰ってないんだ、
残りの整備兵よりも、ストライクの兵装は、君の方が詳しいし、
行って確認してきてくれ」
「はあい」
私も忙しいのに…。ぐちぐちこぼしながら、私はストライクの兵装リストを持って席を立った。
「大変だな。頑張れよ」
隣のサイが 優しく声をかける。サイは、このところ元気が出てきているようだった。
あの子のことを完全に吹っ切ったのかもしれない。
「うん！ ありがとう」 答えた私は、近ごろ、またトールを見かけないことに気がつく。
でも、あれから、顔を合わせづらい。とりあえず、今は、このままでいい。
私が、搬入デッキに降りた時、あの子を見かけた。
人手不足で、あの子も補給物資のチェックを手伝わされていたらしい。
最初、あの子の顔を見て驚いた。
数日前とまるで違う。生気が無い顔。目は空ろで、ただ、
書類に向いているだけで、チェックにもなにもなっていない。
当然、担当の係官から怒られるけど、それさえ、上の空のように、
曖昧に返事を繰り返すだけ。
さすがに、見かねて、私は助け船を出した。あの子に変わって、
チェックを済まし、物資搬入のトレーラーを通す。
私は、本当に久しぶりに、あの子に直接文句を言う。
「何やってんのよフレイ！ 仕事なんでしょ。しゃんとしなさいよ」
「…やってるわよ」
「だったら、さっきのは何よ。係りの人が、迷惑してるじゃない」
「やるわよ、ちゃんと… ほっといて」
「本当ね！ 私も忙しいんだから迷惑かけないでよ」
「迷惑なんてかけてない」
本当に、あの子とはウマが合わない。ちょっと話すと、すぐ喧嘩腰になる。
あの子、私の返す言葉すべてに鸚鵡返しに反発する。他のことを考えていて、それを隠すかのように…
やっぱり、キラと何かあった。私は、どうしても、何があったのか聞きたくなった。
「ねぇ！ フレイ。何があったのよ」
「何って何よ？」
「私たちが両親に面会した日、キラと会ってたでしょ。何があったの」
「何にも無いわ。ほっといて」
「そんなはずない、どう考えても何かあったわ。キラも、あれから連絡して来ないし」
「やめて！キラのことなんて言わないで」
「どうしたの？ キラと喧嘩したの？ なんで？」
「うるさいわね！！ やめてって言ってるでしょ」
あの子は、スタスタと歩いていく。
まさか？ あの子の目に涙が浮かんでいるのが一瞬見えた。
「ちょっとフレイ、仕事！」
「さっき、通したから、少し時間があるの。トイレ行ってる。すぐ戻るから、
あんた、さっさと自分の仕事に行きなさいよ！」
あの子は、振り向きもせずに去っていってしまった。
どうやら、キラと喧嘩したのは間違いないらしい。
それはそれで、私には都合のいいことだけど。
でも、その原因が気になる。涙を浮かべていたなんて。
二人が、これで関係が無くなったら…
かと言って、それでキラが私に戻ってくるとは思わないけど。
なんとなく関係が悪いほうに行くことを期待してしまう。
ああ、私って、やっぱり陰湿だ。自分では何もしない癖に、こんなことばかり期待してる。
とりあえず今回は序章編ということで大まかな流れをご理解いただければ幸いです。設定に関して疑問等を抱かれた方は私ができる限りお答えしようと思いますので、お気軽に質問してやってください。また、ご意見もまだまだ募集しておりますし、もしよろしければご感想を頂ければ嬉しく思います。ド素人の自分にどこまでできるか分かりませんが全力を尽くすつもりです。
では、準備が終わり次第投下致します．
サイが皆に話したのか、皆も感じるところがあってかわからないけれど、皆も私たちと距離を置くようになってきたから。
キラも私を求めることが多くなってきて、私はキラの心をすっかり掌握したつもりになっていた。
「フレイ・・・・・」
キラは覚えたばかりのその行為に溺れているように見えた。
暇があればストライクの整備をし、休憩時間には部屋に戻ってきて私を腕に抱く。
私も、最初は嫌悪感が強かったその行為に、次第に慣れていった。
「キラ、ちょっと待って、まだだめ・・・・」
「フレイ、でも・・・・っ・・・・・」
キラがせつなげな吐息をもらす。
若さなのか、皆そうなのか、わからない。私もキラしか知らないから。
キラは行為をあせることが多かった。
でも、まだあんまり慣れていない私のなかは十分にほぐされた後でなければ痛みを感じ、体を投げ出したつもりの私にもつらく感じられた。
「ちょっとまって・・・・」
そういって、髪をかきあげてから、キラのそれを口に含む。
カレッジにいたころ、ジェシカ達とふざけ半分で見ていた雑誌の特集で覚えた行為で、実際にするのは初めてだった。
「・・・っく・・・・フレイ・・・・っ・・・・・気持ち良いよ・・・・」
そういいながらキラは私の体に触れる。
私も、何度も体を重ねることによって、そういった行為が気持ちいいと感じるようになっていた。
私は、キラのことを捕まえておくために何でもした。
時には積極的に自分からせまってみたり、わざと恥らってキラをじらしてみたり。
時折遠慮がちにキラが求める要求にもなるべく答えるようにした。
そう、それにもう、私にも居場所はなかったのだ。
サイと決別したことで、皆の視線は冷たいものへと変化していた。
覚悟していたことではあったけれど、カレッジにいた頃、いつでも友達にかこまれてすごしていた私には一人はつらかった。
だから、キラを利用するだけのつもりなのに、人のそばにいる安心感を覚えてしまうこともあった。
私、なにをやってるんだろう・・・・
どうやらストライクで寝泊りしているようだ。
ミリアリア達のように機械に詳しくない私は、戦闘においてはあまり役にたたず、もっぱら雑用を任されることが多かった。
今日もキラが散らかしてしまったらしいコックピット内の清掃を命じられてそれに従っていた。
そういえば、掃除も、ご飯をつくることも、家にいるときにはほとんどやったことなかったな・・・・
パパが手配したお手伝いさんがいつもしっかりしてくれてたから。
ああ、でももう、あの家もないんだわ・・・・
そんなことを考えながら作業をしていると、艦長とフラガ大尉の話している声が聞こえた。
「でも・・・・つから・・・んな・？」
「さあ、でも、・・・・りてからじゃないの？・・れまで、・・・余裕、なか・・・・」
「でも、あの子、サイくんの彼女・・ったんで・・・・」
一応声をひそめているらしく、切れ切れにしか聞こえないが、「サイの彼女」という言葉が耳に入った。
私のことだ！
私は気がつかなかったふりをして、ごみ集めを続けた。
「おかしくなったからあの娘とそうなったのか、あの娘とそうなったからおかしくなったのかは知らんが」
「あんまりいい状態じゃないわね・・・・」
二人で話し込んでいるが、どうも解決策が見つかったのではないようだった。
結局いつものように２人でじゃれあっている。
でも、よかった。キラをここでとられるわけにはいかないんだもの。
キラが中々帰ってこない。
やっとお気に入りの化粧品が手に入ると思ったのにな。
エリザリオ、いつも使ってた化粧品。
軍の支給の化粧品は、なんだかあんまり良くないような気がする。
早く帰ってこないかな・・・そういえばあの金髪の子も一緒何だっけ・・・別に、いいんだけど。
それにしても、遅いな・・・・・
気晴らしに艦内を散歩していると、格納庫の方がなんだか騒ぎになっている。
「おい、なんだってんだ、いったい誰が乗ってやがんだ！」
「そういえば、さっきそこを、サイってやつが・・・・」
サイ？サイが乗ってるの？ストライクに？なんで！？
と、あっという間にストライクはバランスを崩して四つんばいになった。
「うっ・・・・・うっ・・・・・なんでキラには・・・・・・！・・・」
転んだ拍子に通信ボタンを押してしまったらしく、サイの嗚咽が響く。
私はいたたまれずにその場を離れた。
サイ・・・馬鹿よ・・・私が本当はキラのこと好きじゃないって気がついてるんでしょ・・・？
なのに・・・馬鹿・・・・
涙を止めることはできなかったが、キラからもう離れられないこともわかっていた。
「おかえりなさい、ねえキラ、お願いしたもの買ってきてもらえた？」
甘えるようにまとわりつくと、
「大変だったよ、フレイ。なんかあんまりない化粧品らしくて、カガリはこんなところにあるわけないって言うし。でもね、ちゃんと見つけてきたから。はい、これでよかった？」
そう言って紙袋を差し出す。
「わあ、ありがとう！」
思わず勢い込んでお礼を言ってしまう。
いそいそと中身を確認する。ええと、ちゃんとあるわよね。
「あれ？キラ、これ色ちがーう。」
中に入っていたリップを確認して私は言った。
「え？嘘、ごめん。確認したつもりだったんだけど。」
「だって、ほら。」
リップの番号と買い物のメモを照らしあわせる。
「あっ・・・・ごめん！勘違いしちゃって、でも色を見たらフレイに似合いそうな色だったからこれでよかったのかって思ってそれで・・！」
必死に言い訳をするキラが可愛いくて、つい吹きだしてしまう。
「ふふっ・・・別にいいわよ。綺麗な色じゃない？・・・ほらどう？似合う？」
リップをつけてキラの方を向く。
「うん、似合うよ、フレイ」
キラは微笑んだ。
なんだかこうしていると私たち普通の恋人みたいだ。
「ねえ、キラ、町はどうだったの？私も行きたかったなあ」
うきうきした気持ちのまま尋ねると、キラはとたんに沈んだ顔になった。
「うん・・・色々・・・・・ごめん、疲れてるんだ。今日はもう休んでもいいかな・・？」
「あ、ごめんね。もう寝ようか」
同じ布団にもぐりこむ。
せまいベットでもお互いに分け合った体温が心地よく、私はすぐに眠りについてしまった。
今回はちょっとラブラブさせてみました。ｗ
>>流離う
ミゲルがいい味だしてますねー。ザフト組が仲良くてよいです。
アスランの増えた仕事で一番つらいのはクルーゼとの会話なのでしょうか・・・？（苦笑）
>>フレイの心
痛いシーンにたどりつきましたねー。でも、フレイ様も自分の心にたどりついたんだからわかりあって欲しいなあ。
フレイ様が幸せになることを祈っています。
>>名無しさん
こんな私でも（苦笑）SS投下しているので大丈夫ですよ。
私はオリジナル歓迎な人です。楽しみにしてますね。＾＾
アークエンジェルの艦長室に招かれたサイーブは、マリュー達、ＡＡの幹部三人に
そう謝意を述べる。サイーブの隣には、カガリと彼のお目付け役のキサカが控えている。
「礼には及びません、我々はあなた方から、一方ならぬ助力を受けてきたのですから。
それより、明けの砂漠のリーダであるあなたに、お願いしたいことがあるのです。
実は先程の緊急幹部会議で、明後日のレセップス攻略が正式に決定しました」
マリューは、そこまで言い切ってから一息入れる。今、この部屋には両陣営の中心人物が、
勢ぞろいしており、規模は小さいが、ＡＡと明けの砂漠のトップ会合と言えなくもない。
「攻略に成功したら、我々はそのまま一気に紅海を目指すつもりです。ですから…」
「ついて来られても、足手まといになって迷惑だから、我々はここで手を引け…と
言うことですな？」
「た…端的に言うなら、その通りです」
サイーブが、マリューの主張を先読みして彼女の言葉を遮り、今更言葉だけ飾っても
仕方がないので、マリューはサイーブの見解を全面肯定する。
「……諒解しました。同志達には、私から説得しましょう」
その、あまりの物分りの良さに、長期説得を覚悟していたマリューはかえって戸惑い、
フラガは関心したような瞳を向ける。近視眼で血の気が多いゲリラ達の中で、この熊面
のゴツイ男だけが、見掛けによらず戦術というものを心得ているように見える。
「私も昔はアフリカ共同体の軍属だったので、他の同志達よりは、少しは周りが見える
つもりです。その代わりというわけではないが、こちらからもお願いがあるのですが…」
フラガの好奇の視線に気づいたように、彼は自分の出自を明らかにした後に、逆に
マリュー達にも条件を突きつける。それは、カガリとキサカの二人をアークエンジェル
で預かって欲しいと言うのだ。
「艦長、先の戦闘機での出撃の件もそうでしたが、何時までこの民間人を自由に…」
「バジルール副長さんだっけ？俺は民間人じゃなくて、傭兵だ。間違えないでくれよ」
マリューがサイーブに理由を問う前に、ナタルが割り込んできて、前々からの不満を
ぶつけ、さらにはそのナタルにカガリまでが噛み付いてきて、乱戦模様と化してきた。
「ほおっ、それでその傭兵君は、アークエンジェルに志願したいとでも言うのか？」
「俺達をオーブ連合首長国の側まで、運んでくれれば良い。それまでは、あんたらが
持て余している玩具の兵隊よりは役に立ってやるよ」
そのカガリの暴言に、ナタルの瞳に危険な彗星の光が閃くが、カガリは怯んだ様子はない。
「傭兵というのは良い身分だな？好き放題暴れ捲くって、やばくなったら、何時でも
トンズラか？ふざけるのもいい加減にしろ！規律を乱す存在は、軍隊にはいらん！」
「おいおい、確かに小僧にも問題はありすぎるけど、君も言いすぎだって…」
「フ…フラガ少佐、艦長だけでなく、あなたまでこの民間人を庇われるのですか？」
仲介に入ったフラガに、ナタルが彼女らしからぬ拗ねたような顔を向ける。
「大体、バジルール副長だって、以前、ハルバートン提督に、キラの両親を拘束して、
まだ民間人だったキラを、無理やり軍属に押し留めるよう進言したことがあるだろう？
中尉はすぐに軍規、規律って主張するけど、力が曖昧なカガリは駄目で、キラのように
力がある者にだけは規律を緩和する…ってんじゃ、筋が通らないじゃないの？」
「そ…それは…」
部外者の前で、過去の恥部を暴露されたナタルは、顔を真っ赤に染めて言葉に詰まり、
妹への害意を仄めかされた目の前の女性仕官に、カガリは敵意そのものの視線を向ける。
「キ…キサカ！？」
カガリの後ろに控えて、置物のように口を噤んでいたキサカが、はじめて意見を述べる。
「女性仕官殿の不審も尤もです。ここまで話しが拗れた以上は、こちら側からも、
彼女たちを納得させる外交カードを切る必要があるでしょう。
我々の正体を明かす事にもなりますが、よろしいですか、カガリ様？」
「す…好きにしろ」
カガリはキサカに交渉権を丸投げすると、拗ねたように部屋から出て行ってしまう。
ここらあたりの無責任さは、どうのこうの言っても、まだまだ子供である。
「では、これから話す事は、他のクルーの方々には、くれぐれも他言無用でお願いします」
キサカはそう前置きしてから、カガリの後を引き継いで、改めてマリュー達との、
アークエンジェルへの自分達の残留交渉へと入った。
十分後、どんな魔法を使ったのやら、カガリ達のアークエンジェルへの受け入れを
認めさせたキサカは、サイーブと連れ立って部屋から出て行き、フラガが狐につままれた
ような表情の女性幹部二人に声をかける。
「このままアラスカを目指せば、どうしたってオーブの側を通ることになる。だとすれば、
キサカ氏の提案は、その時の、我々の選択肢の幅を大きく広げることになるわけだ」
「そうね」
「そ…それは分かりますが、万が一にも、あの少年を戦死させたりでもしたら、
オーブとの重大な外交問題に発展したりはしませんか？」
「それは平気だろう。それなら、最初から傭兵なんて危険な真似を黙認するはずがない。
とにかく、アークエンジェルで預かる以上は、あの小僧も一切贔屓なしで戦力として扱う。
きちんとした規律に基づいてね、いいかな、バジルール副長？」
「は…はい」
素直に首肯したマリューに続いて、敢えて反論を提示しながら、フラガの巧みな説得に、
不承不承ながらもしおらしく肯いたナタルに、フラガは苦笑未満の表情を閃かす。
「それにしても、とんだ拾い物をしちまったな。まさか、あの口の悪い坊主が王子様とはね…」
活躍から、今のカガリはちょっとした英雄扱いを受けていた。無論、捻くれ者のカガリ
といえども、褒められれば悪い気はしないのだが、フラガにおんぶ抱っこだった自分が、
独力で武勲を立て続けるキラ以上に騒がれるとなると、どうしても違和感を抑えられない。
カガリはふと気づいた。多分、彼らの中では、キラの活躍は既に常識になっていて、
何をしたところで、今更驚くには値しないことなのだろう。
逆に自分は、単に当初の期待値が低かったからこそ、まるで、道具の使用に成功した
チンパンジーを周りの人間が褒め称えるかのように、持て囃されているだけなのだ。
自尊心が高いカガリは、チンパンジーだから芸になるではなく、人間にも出来ないことを、
チンパンジーがやってのけた時にこそ、はじめて評価されるべきではないか…と思った。
さらに、先ほどキサカから、自分達の素性を明かして、あれだけ難航していたＡＡへの
残留交渉をあっさりと成功させたと聞き、どれほど背伸びしたところで、結局、最終的
には反発していた父親の威光から逃れられなかった、自分自身の無力さに溜息を漏らした。
「んっ…あれは？」
クルーからチヤホヤされるほど、却って鬱思考に支配されていた天邪鬼のカガリは、
気分転換に新しい自分の愛機が置いてある格納庫へと顔を出し、そこで、先の選抜試験
に使われたシミュレータに精を出すトールの姿を発見する。
「あいつ、今更どういうつもりだ？」
ゲーセン感覚だったテスト時の、おちゃらけた雰囲気とは大きく異なり、今のトールは
真剣そのものだ。その急激な心情変化の理由は、さしあたり武勲を立てた自分への
対抗意識ぐらいしか思い当たらないが、その根底となる感情は何だろう。
ふとガカリは、トールがミリアリアの彼氏であり、そのミリィがカガリをミーハーに
褒めちぎっていた時の、トールの憮然たる面持ちを思い出した。
「ジェラシーかよ、くだらねえ。それで彼女が愛想を尽かすわけでもないだろうに」
だから、お前らは玩具の兵隊なんだよ…とカガリは侮蔑したが、因果は巡るものだ。
カガリが、雲の上の存在であるコーディネイターであるキラに嫉妬し、そんな中途半端
なナチュラルの自分にさえ嫉妬してくれる者も、また世の中にはいるものなのだ。
トールは後ろでブツクサ呟くカガリに気づかないほど、シミュレータに熱中している。
フラガが控え目に評価したように、確かにトールは筋が良いらしく、先に比べれば
スコアを飛躍的に伸ばしているが、一番肝心なことに気づいていない。見ていて何となく
じれったくなったカガリが、トールに声を掛けようとした時、誰かが後ろからカガリの
肩を掴んで、彼を引き留める。カガリが振り向いた先には、彼の実技の教官が控えていた。
「あ…兄貴？」
「坊主、気持ちは判るが、止めとけよ。お前がアドバイスしても、トールは意固地になる
だけだぞ。お前だって、キラから何か指摘されても、素直に受け入れられないだろ？」
まるで、カガリのキラへのコンプレックスを見抜いたかのように、フラガはそう忠言し、
全くその通りだったカガリは言葉に詰まる。
「ここは、頼りになるお兄さんに任せておけ」
フラガは、カガリに軽くウインクすると、トールに声を掛けて、二言三言、カガリが
トールに忠告したかった内容を、さらに初心者にも判り易いレベルで掻い摘んで説明し、
トールは神妙な顔つきでフラガの助言に聞き入っている。
兄貴はもう、お兄さんじゃなくて、おじさんって歳だろ…と、カガリは心の中で減らず口
を叩きながらも、自分の正体を知って尚、態度を硬化させないフラガに、却って好感を抱く。
思えば、戦おうとする動機に、高尚や劣位などの上下関係など無いのかも知れない。
戦争を終結させたいと崇高な理想を掲げながらも、その根底には、父親や血縁上の妹
へのコンプレックスが眠っているカガリと、自分の大切な恋人に少しでも良い所を
見せたいと願っているらしいトールとの間で、一体どれほどの違いがあるのだろう。
フラガの良い方の人間性の影響を受けたカガリの中で、今まで小馬鹿にし続けてきた
トール達を見る目が、ほんの少しだけ変わりつつあった。
食堂で、ナイフとフォークを片手に、贅沢にもフレイシェフ特製の三ツ星クラスの
サーロインステーキを摘んでいたミリアリアは、最近、キラとの衝突で精彩を欠くサイ
に代わって、新たにヘリオポリス本家のリーダー格になった自分の恋人を心配する。
夕食時間になったので、彼を迎えに行ったミリィにトールは、「もう少しでコツが
攫めそうだから…」と、彼の大好物である牛肉のステーキにも目もくれずに
シミュレータ機器に噛り付き、ミリアリアの隣の席では、勿体無くも、彼の分の
極上のステーキ肉が冷えかけている。
何らかの目標を抱えて、一つのことに集中するトールの男らしい横顔は、確かにミリィ
もドキドキするほど凛々しいと思ったが、もし将来、トールが戦闘機に乗って出陣する
などという事態を考えたら、寒気を覚える。力があるとはいえキラのような女の子を、
ＭＳ管制官であるミリアリアは、彼女の発進音声で危険な最前線へと送り込んでいる
のだから、トールにだけは戦闘機乗りになって欲しくはないと願う自分は、相当利己的
なのだと理屈では分かってはいるが、それでもやっぱり自分の大切な人には、なるだけ
安全なところにいて欲しいと思うのが、人情というものだろう。
まあ、パイロットの定員は限られていて、ライバルとなるカガリが相応のキャリアと
実績を見せている以上は、彼女の不安はどうやら単なる杞憂に終わりそうではあるが…。
そのカガリは、夕食のトレイを抱えて、さっさと食堂から姿を消してしまっている。
どうやらＡＡクルーの、小さな勇者に対する熱狂のほとぼりが醒めるまでは、
姿を消す所存らしく、いかにも照れ屋のカガリらしいと、ミリィは思った。
「ご馳走様、フレイ。とっても、美味しかった」
「どういたしまして、お姫様に喜んでいただけて、光栄の限りだね」
トールを除くヘリオポリス本家の三人を囲むテーブルから、最も対極の位置に離れた所で、
キラとフレイのヘリオポリス分家の二人が、相席で楽しそうに談笑している。
「そ…それでね、フレイ………」
「どうしたんだい、キラ？」
「あっ…あの、そのっ………（汗）」
キラは頬を赤く染めながら、まるで突如言語障害を起こしたかのように、何度も言葉を
つっかえさせたが、聡いフレイは阿吽の呼吸で、彼女のシャイな望みを諒解する。
「それじゃ、また後でね、僕の可愛いお姫様…」
軽くウインクして席を離れていくフレイに、キラは太陽のように表情を輝かせる。
「幸せそうね、キラ…」
遠目からでも、一発で簡単に視別できるキラの浮かれ加減に、ミリアリアは多少の
皮肉の篭った視線を向ける。ミリィの目前で、暗い表情で黙々と食事を取るサイの
孤独を思うと、ある程度はミリアリア自身が自分で仕組んだことであるとはいえ、
要領良くフレイとカガリの二人の異性と折り合いをつけている今のキラに対して、
ミリィは単純ならざる感情を抱かずにはいられなかった。
そのサイは、チラリとキラの方を見た後、怪しい情念の篭った瞳で、じっと銀色の
ナイフの輝きに魅入られている。ステーキの肉片を切り刻み、肉の中から溢れ出た
赤褐色の肉汁で汚れたナイフの有様は、先日サイが怪我をした時に魅せられた、
真っ赤な血で染まった包丁の妖しい光を連想させるものがある。
キラがトレイを片付けてから席を立ち、サイもそれに釣られるように、何かを決意した
ような表情で席を立って、キラの後を追いかけるかのように食堂から出て行った。
モビルスーツ。かつて地球圏全体を巻き込む大戦の最中に生み出された鋼鉄の巨人。その巨人が存在する場所は、たとえどんなところであろうと戦場と化した。無論、この森もまたその例外では無かった。
その中に、ひときわ激しく攻防を繰り返す二機のモビルスーツがいた。ひとつは戦闘兵器とは思えぬほど美しい金色の装甲を身にまとい、もうひとつは全体を青を基調としたカラーリングで飾っている。二機のモビルスーツは互いに一歩も譲らぬ戦闘を繰り広げていた。
｢アスラン！そこをどいてくれ！｣
青いモビルスーツ、《ネオストライク》のパイロット、キラ・ヤマトは対峙している金色のモビルスーツのパイロット、アスラン・ザラに訴えた。
｢これ以上お前を先へは行かせない！｣
しかしアスランの操るモビルスーツ、イクスはそれを許そうとはしない。
ネオストライクの向かおうとしている場所には、アスランの所属する戦艦、アークエンジェル級９番艦《セラフィム》があった。『敵母艦の撃沈』。それが今のキラに与えられた指令であった。あの日、ブルーコスモスの残党によって大切な人と共にこの地に連れて来られて以来、キラは唯彼らの命令に従うしかなかった。
｢何をしているのかね？キラ・ヤマト｣
モニターの片隅に映るブルーコスモス旧リディエラ基地の指揮官、ハンス・オルドワ中佐は不敵な笑みと共に通信機越しに語りかけてきた。その傍らに、両腕を拘束され二人の兵士に囲まれた赤い髪の女性の姿がある。
｢君の行動次第で彼女がどうなるか、忘れたわけではないだろう？｣
｢そんなことは分かってる！だから彼女に手を出すな！｣
｢ならば君達と我々、双方にとってベストな行動を取りたまえ。｣
二人のやり取りを横目に、フレイ・アルスターは唯モニターの向こう側で戦う二機のモビルスーツを見つめていた。かつて父の復讐のために、そして自分を守らせるために彼女はキラを利用した。しかし、今彼は彼女がそれを望んでいないのにも関わらず、ただひたすら彼女を守ろうとしている。
（私の・・・、私のせいだわ・・・。どうしてキラが・・・。）
オルドワの言葉はキラを焦らせた。そしてキラはまず眼前にいる敵、アスランを片付けるべく彼の乗る機体に向かって突撃した。アスランもまた、それを迎え撃つ。
（フレイを守って見せる。例えそれがアスラン・・・、君を死なせることになったとしても！）
（キラ・・・、俺はお前を殺すつもりも、お前に殺されるつもりもない。お前とフレイ・アルスターは必ず救って見せる！）
二人はそれぞれ、己の内に秘められた力、《SEED》が弾ける感覚を覚えた。
To be continued
キラのいない朝が来た。
無意識に伸ばして空を切る手に、キラがいないことを実感する。
いえ、別に、こんなこと初めてじゃない。私が寝坊している間に、
キラが出かけるなんて、しょっちゅうだったんだから。
それに、この二週間ずっと…
でも、今までと違うのは、私とキラとは、もう他人であるということ。
これから、ずっと私一人であるということ。
昨日、キラは、もう会わないほうがいいと置き手紙を残して出て行った。
私とキラとの関係は事実上崩壊したのだ。
私は、夕べ一睡もしていない。腫れぼったい目、ぼさぼさの髪。
再度、どうして、こんなことになったのか考えようとする。
ただ、それまでと同様に、帰ってきたキラに笑顔を見せ、肌を触れ合えば、
以前のように関係を続けられたはずなのに。キラの腕の中で至福を迎えられたはずなのに。
前までは、何の抵抗も無く、そうできたはずだ。
なのに、なぜ昨日はできなかったのだろう。
たった二週間。なのに、私も、キラも、こんなにも変わってしまったの…
私の中で、いろいろな考えが渦巻いていた。縋っていた自分。
同情し合っていた二人。それをごまかそうとするような私の、キラへの憤り。
投げかけた心を痛めるだけの言葉。泣かないキラ。私から去って行ったキラ。
一体、私は何をしていたんだろう。それさえ分からない。
何も手につかない。何もする気がおきない。どうしてなんだろう？
こんなはずじゃなかったのに。
ずっと考え込んでいた。その次の夜もずっと…
私は祈るようにベッド横のモニタを見続ける。
また、そのコールランプが光ることを待ち続ける。
キラの顔が・声が、私に話しかけに来ることを、いつまでも…
でも、来ない。来るはずが無い。
そのまま、また眠れない夜が明ける。
無意識に手を伸ばして、そして…
変わってしまったキラ、変わってしまった私。
成長したキラ、成長していない私。
もう私を必要としないキラ、キラがいないと何もできない私。
私は、これからどうすればいいの？
キラが去ってから、一人落ち込む私。
ダメ。こんな時、仕事なんかしたくない。
でも、こういう時に限って、仕事に呼び出される。
人手不足だから手伝えって？ 物資搬入のチェック？
たくさんある物資リストを見ながらも、キラのことが頭を離れない。
おまけに、夜もろくに寝ていないので、眠気も襲ってくる。
気がつくと、居眠りしていて、立ち往生している係官に怒られどうし。
なぜか、ブリッジにいるはずのミリアリアまで、搬入デッキに降りてきて、
私に文句を言う。
「何やってんのよフレイ！ 仕事なんでしょ。しゃんとしなさいよ」
「…やってるわよ」
「だったら、さっきのは何よ。係りの人が、迷惑してるじゃない」
「やるわよ、ちゃんと… ほっといて」
「本当ね！ 私も忙しいんだから迷惑かけないでよ」
「迷惑なんてかけてない」
本当に、この子とはウマが合わない。ちょっと話すと、すぐ喧嘩腰になる。
しかも、キラのことを私に聞いてくる。
「ねぇ！ フレイ。何があったのよ」
「何って何よ？」
「私たちが両親に面会した日、キラと会ってたでしょ。何があったの」
「何にも無いわ。ほっといて」
「そんなはずない、どう考えても何かあったわ。キラも、あれから連絡して来ないし」
「やめて！キラのことなんて言わないで」
キラのこと、今、聞かないでよ。ほんと、無神経ね。
ダメ、涙が出てきちゃうじゃない。
「どうしたの？ キラと喧嘩したの？ なんで？」
「うるさいわね！！ やめてって言ってるでしょ」
私は辛いことがあると、すぐに、その場を逃げ出してしまう。
私は、ミリアリアから逃げ出した。
「ちょっとフレイ、仕事！」
「さっき、通したから、少し時間があるの。トイレ行ってる。すぐ戻るから、
あんた、さっさと自分の仕事に行きなさいよ！」
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
私は、その後も、失敗を繰り返し、担当の係官に、さんざん、怒られた。
「…………
お前、ヤマトのフィアンセだからって、いい気になってんじゃないぞ！」
「いや！ いや！」私は目をつぶって、頭を何度も大きく振った。涙を飛び散らせた…
掃き捨てるように私を傷つける言葉。私の心の傷口をえぐるような言葉。
辛い。辛いのよ。こんなの嫌！ 誰か助けてよ！ 誰か守ってよ！
「お前、泣きゃ許されるってもんじゃないぞ」
「いや！ いや！ いや！ いや！」
「もう仕事なんぞ、こっちから願い下げだ。とっとと帰れ！」
「いや！ いや！ いやあ！！」
私は、一目散に逃げ出した。また、キラの部屋へ逃げ込んで、ベッドに潜り込んだ。
私は辛いことがあると、すぐに、その場を逃げ出してしまう。
私は、仕事からも、人との関りからも、自分に関るすべてのものから逃げ出した。
一人、殻に閉じこもった。
辛くて堪らない。私は不幸だわ。少しでも、慰めが欲しい。
手を布団から出して、宙に差し出す。私がトリィを呼ぶ時の動作。
でも、トリィは来ない。キラはトリィも持って行ったのだ。
私は嗚咽をあげた。
子供のころのオモチャであるトリィ。私の中で、トリィはキラの分身だった。
キラがいない二週間、トリィが私の心を支えてくれていたことを、改めて気づかされた。
今は、それさえ無い。
辛い。辛いのよ。こんなの嫌！ こんなのいやああ！！！
とうとう、泣きつかれて。数日ぶりに、私は眠りにつくことができた。
でも、そのとき、私の中で、何かが壊れていた。
章分割していて投下遅くなってしまいました。
（その間に、2ch エロパロ板で、フレイ様ほのぼの ＳＳ投下されて和んでいたり…）
感想で皆さんフレイ様のこと心配されていますが、もうちょっとの間、落ち込んでいます。
立ち上がる時まで、もうちょっと待ってください。
>散った花、実る果実
乙です。素晴らしいです。不慣れな行為の表現にフレイ様の心が溢れています。
キラ、化粧品見つけてきて偉いです。さすが、フレイ様のポw
>chain《プロローグ 》
新作、>>640 の方ですね。内容的には、このスレで、まったく問題ないと思います。
このプロローグだけで、すべての状況を把握させるテクもなかなかですね。期待しています。
>私は辛いことがあると、すぐに、その場を逃げ出してしまう
いい場面ですね。前回思考の果てに選択したのが成長の拒否だったのにキラに会ったら
グラグラ気持ちが揺れてしまって…よいです。この場面を見るとつくづく活字向きのキャラだ思います。
>>流離
>ああ、持つべきものはグゥレイトな戦友だぜ
調子のいいヤツですねw
>青くなったり赤くなったりと
>顔面蒼白になっている。そして悔しそうに下唇を噛んだ。
たしかに真面目な人みたいですね。でも表情がクルクル変わって面白いヤツですねw
>よろよろと後ろに下がる←オーバーアクション気味で面白いです。
>>ミリアリア
>陰湿だ。自分では何もしない癖に、こんなことばかり期待
ミリアリアもフレイ様と同じですね。状況が変わるとやっぱりキラとの関係に期待したりして。
>ヤマトのフィアンセだからって、いい気になってんじゃないぞ！
いやあ、ううん、もうかわいそうで。
>>散った花、実る果実
>私、なにをやってるんだろう・・・・
この時期のフレイ様を一言で表すなら、この言葉でしょうね。
>サイ・・・馬鹿よ・
この場面はすごい好きです。サイもいい男だなあと思ったし、フレイ様の複雑な感情を垣間見る
ことができたし…いいですね。
>色ちがーう
脳内で反芻反復しまくりです。
｢放棄された大西洋連合の基地を隠れ家にするなんて、考えたものね。｣
特務組織《EYES》所属、アークエンジェル級９番艦セラフィム艦長、マリュ―・ラミアス中佐は艦長席に座りながらつぶやいた。
｢ですが、それだけに意外性があります。送られてきた情報が正しければ彼らがあそこに囚われているのは間違い無いでしょう。｣
｢そうね。けど、あっちの方は素直にこちらの言うことを聞くかしら？｣
｢・・・武装解除を行っているにしては時間が掛かり過ぎていますね。｣
相手は大人しく降伏するつもりは無いだろう。セラフィム副長、アーノルド・ノイマン大尉の言葉にはそんなニュアンスが含まれていた。やはり戦闘は避けられない様である。
C.E７５、《血のバレンタイン事件》をきっかけに始まったナチュラルとコーディネーター同士の戦いが終結し、既に五年が経過していた。戦後復興が進み、少しずつではあったがナチュラルとコーディネーターが互いに手を取り合い、共存の道を模索し始めていた時代。しかし、数多くの犠牲を払い、ようやく人類の手にした平和はまだあまりにも脆いものだった。
パトリック・ザラ、ムルタ・アズラエルといった指導者を失ってもなお、宇宙ではザフト強硬派、地球ではブルーコスモスの残党が暗躍し続けていた。ナチュラルとコーディネーター、両者の間に刻まれた溝は、今なお深いものであった。
こうした事態に対処するため、プラントと地球は共同で一つの特務組織を結成した。《EYES》と名付けられたその組織の目的は連合そして正規軍化したザフト両軍の戦力を監査し、そのミリタリーバランスを保つこと、そして、旧ザフト強硬派、ブルーコスモスのテロ活動を取り締まり、未然に防ぐことにあった。それはその名が示すとおり、新しい世界の軍事バランスを監視する｢目｣であった。しかしその名には、名付け親である地球・プラント親善大使、ラクス・クラインの、｢次代に蒔かれた平和の種を見守る目｣となり得るようにという願いも込められていた。
軍事力監査という特別な任務上、EYESは連合、ザフトどちらの命令系統にも属さず独自の権限を与えられていた。兵器の絶対数、規模は両軍と比べれば格段に劣る。しかし、両軍の最新兵器の配備やオーブのモルゲンレーテといった企業の協力を得ておりその戦闘力は高い。そして、両軍から｢ナチュラルとコーディネーターの共存｣という共通の志を持つ者達が種の垣根を越えて集まっていた。その中にはかつてのアークエンジェル、エターナルの乗員であった者達、そして旧ザフト軍のエース、アスラン・ザラ、イザーク・ジュールらの姿もあった。
｢リディエラ基地跡より熱源反応確認！数１！識別、モビルスーツです！｣
オペレーターの報告に、ブリッジに一気に緊張が走る。そして次の瞬間には、マリューの指示が飛ぶ。
｢全艦、対モビルスーツ戦闘用意！展開中のザラ隊、ジュール隊は敵モビルスーツの迎撃を！｣
｢了解。先に行ってるぞ、アスラン！｣
｢了解した。一機とはいえ油断するな。｣
｢フンッ！お前らが来る頃には片付いているさ。ジュール隊各機、俺に続けぇ！！｣
先行した５年来の戦友、イザーク・ジュール大尉の隊を見送りながら、アスラン・ザラ大尉はふと、この地のどこかにいるであろう親友、キラ・ヤマトのことを考えていた。
（キラ・・・、無事だろうか・・・。）
｢アスランさん！俺達も行きましょう。｣
｢！あっ、ああ・・・。すまん、クリス。｣
自分の部隊に所属するセラフィム隊最年少のモビルスーツパイロット、クリストフ・ヒースローの言葉を聞きアスランは今自分のすべきことを思い出した。
｢ザラ隊出るぞ！ジュール隊のバックアップに回る。｣
ザラ隊各機はその指示に従い、前線へと向かった。
このchainは４部構成になっています。SSを書くのに結構時間がかかってしまい完結するのはいつになるのか私にも分かりませんｗ。それでも最後までやらせていただきたいと思っています。
アスランの乗っていたモビルスーツ、イクスは恐らく皆様のご推測どうりSEED版百式です。続編のアスランには百式みたいなモビルスーツが似合いそうだと思って考えました。この機体のカラーが金色なのは、ちゃんと理由もあります。詳しくはSS内でご説明します。
第１章・１の最後に登場したザラ隊のメンバー、クリスは一応新主人公という設定です。しかしキラとフレイ様がメインのこのSSではほとんど見せ場はありませんｗ。そのためキャラがつかみにくいと思われるかもしれませんが、できるだけ立たせていきたいです。ちなみにオリキャラはこいつを含め四人、微妙なのが一人います。
続きは近日中に投下します。他の職人さん方も頑張ってください。
アスランも多忙なEYESでの活動の合間を縫って、何度か彼らに会いに行っていた。ただ、親友の恋人であるフレイとはほとんどまともな会話をしたことがなかった。自分は避けられている。そんな風に、彼はそんな彼女の態度を少々いぶかしく思ったが、それでもキラの傍らで幸せそうに微笑む彼女を見て、彼はそんなことを少しでも考えた自分を恥じた。唯この二人が幸せなのならそれで良いと思った。
しかし約十ヶ月前、二人は突然姿を消した。二人の暮らしていた家の状態から、彼らが何者かに拉致されたという線で捜査が進められたが、一向に手がかりは見つからなかった。しかし数週間前、ついに有力な情報が飛び込んできた。世界中を飛び回っているEYESの情報部員が彼らが北欧にある現在は放棄された旧大西洋連合軍の跡地に潜伏するブルーコスモスの残党に捕らえられている二人を発見したのだった。そしてEYESは、所属する部隊の中でも最も高い任務成功率を誇るセラフィム隊に彼らの救出を命じた。
セラフィム隊。アークエンジェル級戦艦の集大成として開発された戦艦セラフィムを母艦とし、アスランの他、かつてのアークエンジェルの艦長マリュー・ラミアス、もとザフト軍クルーゼ隊所属であったイザーク・ジュールといったそうそうたる顔ぶれがそろっていた。戦力として、オーブが開発した新型モビルスーツ《M２アストレイ》、改修、再調整された《デュエル改》、宇宙でザフト強硬派から奪取した新型｢G｣、《アサルト》をはじめとしたモビルスーツ群を所有する。
その中でもひときわ異彩を放つ一機のモビルスーツがあった。アスランの愛機、《イクス》である。もともとモルゲンレーテがいずれ開発する予定の新型モビルスーツの実験機であり、かつて連合が開発したGシリーズに用いられた技術が導入されている。その一方でGとは別系統の機体であり、むしろアストレイシリーズの発展型と言える。その名は、｢その他｣を意味する｢EXTRA｣に由来する。性能は現行のGにも引けを取らない高性能機だが、唯一問題があるとすれば、そのカラーリングである。それは全体が金色で統一されているという従来の戦闘兵器の概念では異常とさえ思えるものである。搭乗者のアスランは、常々｢こんな仕様を思いついた馬鹿の顔が見てみたい。｣と漏らしていた。
この機体がこんなカラーリングを施されたのには理由がある。実はこの機体の開発には、終戦後ザフトを退役し元パイロットの経歴を活かしてオーブのモルゲンレーテのMS技術者となったディアッカ・エルスマンが開発に携わっていた。彼にとっては初めての経験であり、その分この機体に対する愛着は強かった。そのため、彼は自分の開発したこの機体を大勢の者に見てもらいたかった。そこで彼は従来予定されていたカラーリングに関するデータを改ざんし、全体が金一色という嫌でも目立つ配色にした。それがあろうことか本当に行われてしまい、今のこの機体が誕生した。ちなみにディアッカはこのことがばれて上から大目玉を食らい、あわやクビ一歩手前まで足を突っ込んだが、上司のエリカ・シモンズらの弁解で減給処分だけで済んだ。なお、彼が本当に反省したかどうかは不明である。親友であるイザークに彼は、
｢グゥレイトなモビルスーツを作ったぜ！｣
と語っていたというが定かではない。
ＭＳベッドにストライクを固定し、整備兵に任せたキラはヘルメットを脱ぐと汗に濡れた髪を鬱陶しげにかきあげた。今日の戦闘では敵との交戦はほとんど無かったが、最近では出撃するだけで重苦しさを感じてしまう。理由は分かっている。なんのために戦うのか、それを見失ったからだ。
だが、パイロットスーツを脱ごうとロッカールームに行こうとしたキラを呼び止める声があった。
「キラ」
その呼び掛けに、キラは話が耳を疑った。まさか、なんで彼女が僕を呼ぶのだ。慌てて振り返ると、そこにはフレイがいた。自分にはこれまで向けた事のない優しい笑顔を浮かべて。
戸惑いを隠せずにいるキラに、フレイは小さく頭を下げた。
「ありがとうキラ、あなたのおかげで、みんな助けられたわ」
「な、なんの事？」
「ビルに撃ちこまれた砲弾を防いでくれたでしょう。あのビルには難民の人たちや、軍曹達がいたのよ。あなたが来てくれなかったら、みんな死んでた」
「ああ、そういう事」
キラは納得したが、同じに小さな疑念も生まれた。他人のことでこんなに喜んでいるフレイを見るのは初めてだ。あれだけ避けていた自分にわざわざ礼を言いに来るとは。
でも、今の笑顔を見ていると内心に悔しさが込上げてきてしまう。僕が見たかったあの笑顔を、フレイは遂に僕の傍では見せてくれなかったから。
「･･････フレイ、今日は笑ってるんだね」
「えっ？･･････そうね、やっぱり嬉しかったからね。みんな生きててくれたし」
「そうなんだ･･････」
寂しげに小さく笑うキラ。そんなキラを見て、フレイは胸のうちがズキリと痛むのを感じる。まだキラは、あの間違った日々を引き摺っているのだろうか。
フレイは小さく頭を横に振ると、踵を返した。顔だけでもう一度キラを見る。
「今日はお礼が言いたかっただけなの。ご免ね、話し掛けたりして、迷惑だったでしょう」
「そ、そんな事は･･･････」
無いよ、と続けようとして、キラは口篭もってしまった。自分を利用していた腹立たしい女、というイメージが今のフレイにあるのも事実だからだ。キラが何か言いかけてやめた事にフレイは不思議そうに小さく首を傾げたが、それ以上なにも言わないのを見ると、スタスタと向こうに行ってしまった。
残されたキラは１人、拳を握り締め、込上げてくる感情に必死に耐えていた。だが、それでも押さえていた内心が口から漏れてしまう。
「なんでだよ、フレイ。他人に優しくなれるのに、どうして僕には優しくしてくれないんだ･･･････」、
それは、キラが口に出して漏らした、初めての本心であった。
格納庫を出たフレイは、人通りの無い通路でフラガに呼び止められた。
「フレイ、ちょっといいか？」
「フラガ少佐？」
フラガが自分に話し掛けてくるのは珍しい。フレイは意外そうな顔で足を止めた。
「なんですか、少佐？」
「･･････フレイ、お前、前に俺に言ったよな。戦闘中に相手の動きがゆっくりに見えたり、声が聞こえたりするって」
「はい、言いましたけど」
フレイはフラガが何を言いたいのか分からなかった。ただ、フラガは何かを考えこんでいる。そして、フラガは何時もの彼らしくない、真面目そのものの顔でフレイを見た。
「フレイ、その感覚だが、自分で制御出来るのか？」
「ええと、クリスピー大尉達を助けた時は、何となく制御できたようたけど」
「そうか･･････いや、悪かったな。変な事聞いて」」
「はあ」
あからさまに怪しいが、深く追求する気にもならなかったフレイは敬礼するとフラガの前から歩き去っていった。残されたフラガは真面目な表情を崩さず、じっとフレイの背中を見続けている。そして、その口からだれにも聞えないくらいに呟きが漏れ出た。
「戦闘感覚、か。フレイ、お前も俺達と同じだったんだな」
「よくやってくれたわね。１人で敵部隊を支えるなんて、貴方ももう一人前のパイロットという事かしら」
「そ、そんな、私なんてキラに較べたら、全然駄目ですよ」
「ヤマト少尉と較べるのは流石に無茶ね。でも、ナチュラルパイロットとしては正直凄いと思うわよ。ねえ、ナタル？」
マリューはＣＩＣ指揮官席に座るナタルに声をかけた。ナタルは先のフレイの戦闘データの検証をしていたのだが、マリューに声をかけられてそちらを見た。そのナタルの顔にも珍しく満足げな笑みが浮かんでいる。
「悪くないですね。ＭＳ操縦技量もそうですが、戦い方もさまになってきてます」
「あら、貴方が素直に誉めるなんて、珍しい事もあるものね。明日は雹かしら？」
マリューのからかい混じりの言葉に、ナタルは憮然とした表情になった。
「艦長、私とてそれなりの成果を上げた者に賞賛の言葉くらい掛けます」
「そうだったかしら？」
「そうです。艦長は私を誤解しています」
はっきりと言い切るナタルに、マリューはクスクスと笑い出した。それを見たナタルはますます不機嫌そうに表情を顰めるが、それが気恥ずかしさを隠す為の仮面であることをフレイとマリューは見抜いていた。この副長は、最近は妙に感情の変化が分かり易くなっている。それが誰のせいなのか、２人には分かり切っているだけに面白くてたまらない。
だが、面白そうにナタルの横顔を見ていたフレイは、ふと感じた憎悪の視線にそっと目だけでその元を探し、それを確認してたちまち気が重くなってしまった。自分に憎悪の視線を向けていたのは、ミリアリアだったのだ。まるで汚い物でも見るかのような目で自分を見ている。
『ミリィ･･････？』
自分が嫌われているのは分かっているので今更ショックは受けないが、それでも気が落ち込んでしまうのは避けられない。だが、１つだけ分からないことがある。嫌われるのは分かるのだが、どうして自分がミリアリアに憎まれているのだろう。少なくとも、彼女に憎まれる覚えは自分には無い。
フレイに覚えが無いのも当然だった。この時のミリアリアは、フレイがマリューやナタルと親しそうにしているのを、狡猾に立ち回って取り入った結果だと思っていたのだ。冷静に考えればフレイにそんな器用な真似が出来るはずは無いのだが、ことフレイの件に関しては悪意のフィルターがかかるようになっている今のミリアリアに、そんな冷静な考えが出来るはずも無く、彼女はフレイを「卑怯で恥知らずな女」とみていたのだ。
仕事を終えてキラは部屋に帰ってきた。中に入り、明りを付ける。その中の空気は何処か寒々としていて、人を迎え入れる温かさに欠けている気がする。もうここには自分を迎えてくれる人はいない。例え偽りであっても、出迎えてくれる人がいるというものはなんて暖かな空間を作り出してくれるのだろう。
「利用していただけだなんて、本当にふざけてるのに、本当に腹立たしいのに･･･････」
分かっているいのだ。自分たちが間違っていた事は。その答えは彼女が示してくれた。利用する為に、復讐の道具にする為に近付いたのだと。だが、それでも･･･････
失ってみてようやくその価値が分かった。偽りであってもいい、愛してくれてなくてもいい、彼女がここにいてさえくれれば、それだけで僕は自分を保っていけるのだから。
この狭い部屋でさえ、今の僕には広すぎる。寒すぎる。狭いベッドに横になり、早く寝てしまおうとするが、辛さと寂しさのせいでなかなか寝つけない。
「･･････フレイ、僕は･･････」
どうしたら戻って来てくれるだろう。彼女は僕を利用していたと言っていた。だけど、もう利用しないと言って去っていった。何故？ 自分もデュエルに乗れるようになったから？ それとも僕が弱いからなの？ 僕が弱いから、復讐の道具にはなれないから、フレイは僕から離れて行ったの？
でも、ならどうして謝る。フレイは僕を理解してくれてた。僕の弱さに気付いてた。でも、だったらどうして傍にいてくれないの。謝るくらいなら傍にいて欲しかった。優しくして欲しかった。
もう、こんな寂しい思いをするのは嫌だ。僕がフレイの刃となれば、フレイは帰ってきてくれるのだろうか。もしそうなら、僕が強ければいいのだ。強くなれば、敵を沢山殺せば、きっとフレイは帰ってきてくれるから。この寂しさから逃れられるなら、幾らでも同胞の血に汚れてみせよう。そう、相手がアスランであったとしても･･･････････。
時間軸は本編よりもかなりＡＡの動きが遅く、本来ならオーブに到着してる筈がまだロシア南東部にいたりします
ここから先はちと意外と言うか、妙な展開が続きますので、その辺りを考慮してお付き合いください
>>散った花・実る果実
キラ、あの状況で買ってきていたのか。ある意味凄い奴だ。でも品を間違えてるのが彼らしいｗ
>>キラ♀
カガリと兄貴が良い仲に。しかし、もう正体ばらしちゃってるよ・良いのかキサカ？
あと、サイがなんだかとても怖いんですけど。女の嫉妬は男より怖いのだろうか･･････
>>オーブ・フレイの心
ミリィさん、人の傷口に塩を塗りこんじゃいけませんよ。フレイ様とは別の意味で君も成長しましょう
でも、フレイ様のほうはボロボロだなあ。大丈夫だろうか
>>chain
貴様かディアッカ。そんな百式みたいな機体作ったのはｗ
キラはフレイ守る為に暴走してるし、アスランはある意味身内に敵がいるし、大変だなあ
私的にはこれはＯＫだと思いますよ
ひぃぃ、キラが壊れて行くｗ
コワイコワイ
嗚呼、愛を得んと狂いだすキラ。…個人的に大好きです。
＞chain
グゥレイトなＭＳ…。
むしろ金色のバスターを（ry
アークエンジェルは、ついにオーブを出発した。
キラは、出発の日の朝にやっと帰ってきた。
出発の直前に、オーブからの要請で、キラは甲板に立ち、
お父さん お母さんに最後の見送りを受けた。
私、艦外のカメラをズームにして、
キラの両親を手元のモニタに写してみた。
キラのお母さん、やさしそうで、奇麗な人。一度、話してみたかった。
お父さん、キラには似ていないかな。キラって、どっちかというと、
お母さん似なのかな。
キラって馬鹿ね。なんで会ってあげなかったのよ。私は涙を浮かべた。
その後、カガリさんがキラに駆け寄って抱きついた。
それを見て、キラのお母さんとウズミ前代表が動揺していた。
カガリさんが、何を考えているのかは分からない。
結局、私は何も話す機会が無かったし、元々、私とは違う世界の人だから。
あの子、カガリさんが、あの子とキラの仲を認めているようなこと言ってた。
今日の行動では、そうは見えないけど… また、負け惜しみ言ってたんじゃないの。
もう、いいや、カガリさんのことは。
もうカガリさんと会うことは無いんだから、くどくど考えたってしょうが無い。
当のあの子は、帰ってきたキラとも会わずに、キラの部屋に閉じこもっているみたい。
そのせいか、キラは部屋にも行かず、モビルスーツデッキに詰めどおし。
もう キラの部屋なんだから、喧嘩してるんなら、あの子の方が、どっか行けばいいのに。
かと言って、私の四人部屋に戻って来られるのも嫌だけど。
それよりも、私にとっては重大なことがあった。
トールが、スカイグラスパーのパイロットとして任命されたのだ。
オーブでのアークエンジェル修理中、トールは、自ら志願して、本格的な訓練を受けた。
すでに、オーブの飛行場で、テスト機による飛行経験も積んだということだ。
このごろ、トールを見かけないと思っていたのは、そういうことだったのだ。
デッキでパイロットスーツに身をかため、スカイグラスパーのコクピットに
納まるトールを、私は心配そうに見つめる。いつしか、キラも近寄ってきて、
トールに心配そうに声をかける。私は、トールを心配する一方で、
本当に久しぶりに直に会うキラに横目で見とれてしまう。
「トール、本当に、大丈夫なのか」キラが言う。
「大丈夫だよ。フラガ少佐がいるし、俺はキラの支援だけだ。無茶はしないって」
トールは答える。
「なぜ、君が…」
「キラばっかりに迷惑かけたから、俺もがんばんなきゃってさ」
トールがなぜ、志願したのか、私には分かる。
あの時のこと。トールに処女をあげようとした時のこと。
――「ミリィ、やっぱり、まだダメだよ。俺、まだ資格無いから。
まだ、頼りないから。頑張るから。俺、もっと頑張るから。
ミリィ、ごめん」
あの時、トールは、処女を捨てるのを恐がる私に幻滅しただけじゃ無く、
自分が、まだ、私と次の段階に進むことに自信が無かったんだ。
それで、スカイグラスパーに乗って、私を守ることで、その自信を
得ようとしたんだ。
でも、本当に大丈夫？
既に壊れて久しい私とキラ、トールとの関係だけど、この三人は、
私にとって、本当にかけがえの無いもの。
あなたが、もし帰って来なかったら、私はどうすればいいの。
私は、キラと一緒に心配そうにトールを見つめ続けた。
私は、モビルスーツデッキにいた。スカイグラスパーのパイロットに任命されたトールを
心配してのことだった。同じくデッキにいるキラもトールを心配して来ていた。
トールがフラガ少佐やマードック曹長とのチェック作業に忙しい中、
私とキラは、二人そっとトールの元を離れた。しばらく、並んで歩く。
考えてみると、キラとこんな風に歩くのって、ヘリオポリス以来だ。
アークエンジェルに乗り込んでから、キラはいつも、戦っているか、
あの子のところにいるかで、私と一緒に歩くことすらなかった。
今、あの子と喧嘩しているらしいキラは、少し、私に近づいてくれているような気がした。
私は、ただキラと歩くだけのことに幸福を感じていた。
私は、まるで、幼年学校のころのカップルのような初々しい気分に浸っていた。
「ミリィ？」 キラが言った。
「キラ、何？」 私は、子供のように胸を踊らせて答える。
「済まないけど、しばらくトリィを預かってくれないか？」
「うん、いいけど。私の部屋、充電台無いし、引き寄せる腕輪も無いよ」
「バッテリは、まだ、しばらく大丈夫。後、トリィは腕輪いらないんだよ」
キラは、パイロットスーツの胸元に入っていたトリィを取り出し、手に乗せて言った。
トリィは、私が小さい頃に流行ったロボット鳥のひとつだ。
元々は、鳥と充電台がセットになっていて、ロボット鳥が自分で、
その充電台にとまっている間にバッテリを充電するようになっていた。
さらに、鳥を引きつける腕輪があり、本来、ロボット鳥は、それぞれの
識別コードにを登録した腕輪をはめた人にだけ、なついて近づくようになっていた。
腕輪には複数の識別コードを登録できるようになっていた。
でも、あまり裕福でない私の家は、一個しか買ってもらえなかったので、あまり意味は
無かったのだけど。
とにかく、キラのトリィはいろいろ改造してあるらしい。キラがやったのかどうか
分からないのだけど。
「分かった。でも、いいの？ 私のところで。いつもキラの部屋に置いていたのに」
「ちょっとね…」
キラは、あの子との喧嘩のことを、はっきり言わなかった。私も、こちらから聞くのは
憚られた。せっかく、今のキラとの、いい雰囲気を壊したく無かった。
私はキラの手からトリィを受け取った。私の手で可愛らしく動くトリィを見ながら、
私はヘリオポリスでも、あまりトリィを触らせてもらえなかったことを思い出した。
「キラ、こうやってトリィを私に触らせてくれるのって初めてだね。これって大事なものなんでしょ」
「昔、友達に…、大事な友達にもらった、大事なものなんだ」 キラは言った。
「そうなんだ」
私は、答えながら、そんなものを、ずっと預かっていた、あの子に、また嫉妬を覚えていた。
私は、キラが見送る中、後ろ髪を引かれる思いで、デッキを後にした。
途中、私の四人部屋へ寄ると、トリィを部屋に離した。部屋で飛び回るトリィを見ながら、
私は、
(これ、CPU 何bit の使ってるんだろう？)
(メモリは、どれくらいに増設しているのかな？ 対人データって多いから、
しばらく、私のそばにいると、あの子のデータなんか消えてしまうだろうな)
などと考えていた。私は、トリィをロボット、それもオモチャとしてしか認識していない。
それでも、あの子じゃなく、キラが私に預けてくれたことが嬉しかった。
(トリィ、早く、あの子のデータなんか消してしまいなさい)
と思いながら、私は部屋を後にし、ブリッジへ戻った。
アークエンジェル出発当日。私もブリーフィングルームに集められ、点呼を取らされた。
ヘリオポリスのみんなはブリッジで点呼を取っているので、ここには私だけ。
誰も知らない人達の中で、私一人。辛い、辛いのよ。逃げたい。私は逃げだしたい。
キラも帰ってきているはずだ。でも、私には何も言って来ない。当たり前か…
虚無感が私を支配している。もう、復讐の高揚心さえ、今は彼方のよう。
私は壊れてしまった。
モニタで、マリューさんから、出発とオーブへの感謝の言葉が述べられる。
モニタに、見送りのウズミ前代表が写った。私には、何の感慨も無い。
その傍らに、実直そうな男性と美しい女性がいた。オーブ官邸の人間とは思えない。
誰かが、小声で話しているのが聞こえた。
「あれ、ヤマトの両親らしいぜ」
あれが、キラのパパとママ？ キラのママって若い。とても美人。とても優しそうな人。
キラは、あのママを憎んでいたというの、そんなはず無い。嘘、きっと嘘。
今になって会いたくなってくる。会ってキラのことを聞きたくなってくる。
昔のキラを。私の知らないキラを。でも、それはもう叶わない。
私は、もうキラと関係無いから。二人の関係は終わったから。
私が関係を壊したから。キラが去ってしまったから。
モニタの映像が切り替わった。アークエンジェルの甲板にいるキラが写った。
そこにはカガリもいて、キラに抱きついている。私、そのカガリの顔を見て分かった。
そうなのよね。こういうことなのよね。
私は、ブリーフィングルームを出て行った。
不思議に嫉妬心は起きなかった。あの通信の時から、カガリには、
そんな感情を抱けなくなっていた。
女だてらに銃を取って、戦闘機にまで乗って敵と戦うくせに、純情で、
私とキラの、なにげないやりとり、ひとつひとつに顔を赤らめていたカガリ。
私はカガリがキラと仲がいいことに嫉妬していた。
でも、むしろ、嫉妬してたのはカガリの方。キラと私の、男と女の関係に戸惑って、
私達を彼氏・彼女と分かった振りして強がって。いつも、純情に顔を真っ赤に染めて…
カガリ、それはね。男性への興味、愛情の芽生えでもあるのよ。
私が、幼なじみだったサイに突然、男を感じて、戸惑った時のように。
良かったね、カガリ。キラと抱き合えて。
私は、まるで自分の妹が、彼氏を見つけた時のように祝っていた。
でもね、カガリ。
私、まだ、キラに未練があるの。もう少しだけ期待させて…
もし、私が完全にキラに捨てられたら、その時は、本当にあなたを祝ってあげるから。
部屋へ戻る通路でサイを見かけた。サイは、私をわざと無視するように通り過ぎる。
私は、心の中でサイに言ってみた。
(サイ、私、今フリーよ)
サイは、死んだパパの決めた人。パパが婚約者として決めた人。
私は、そんなパパの言いつけ通り、サイと付き合ってきた。
パパは、私がサイ以外の人と少しでも話をすると、酷く怒った。
だから、私はパパの笑顔を見るため、サイを好きでいるように努力した。
サイ以外を見ないようにした。
別にサイが嫌いだった訳じゃない。
私は甘えさせてくれるサイが好きだった。デートの度にコンパクト・デジカメで
私の写真を撮っては、メールでくれたり、印刷したのをくれたり。そんなサイが好きだった。
ズボラな私は、そんなサイのくれた写真を整理もせず、戸棚に放り込んでいたのだけど。
サイの撮る写真には、いつも私だけが写っていた。明るく笑う私だけが写っていた。
でも、サイが一緒に写っていたものは、ほとんど無かった。
私は写真の中で、いつも一人だった。
サイの家へ遊びに行って、サイの両親に会った時、私は、その団欒の中で話しながら、
サイのパパが、なにか私を恐れるような目を時々するのに気づいていた。
サイのママは、サイの背中を抱いて話をすることがあった。何かから、わが子を
守るかのように。私は、それに嫉妬を覚えて、ムッツリしていた。
サイの部屋で二人になった時、サイは言った。
「ごめん。いつもは、あんなこと無いんだけどな。母さんて、フレイに妬いてるんだよ」
「分かった。代わりに私を抱きしめてくれる？」私は、ねだった。
サイを母親から奪いたかった。幼なじみだったサイを、いつのまにか自分の男として見ていた。
サイは、照れてほっぺに軽くキスしただけで、抱きしめてはくれなかった。
私はサイを男として見ているのに、サイは、まだ、私を妹扱いしていた。
通じ合わない心に、私は、まだ埋まらないサイとの距離を感じた。
サイの家で、私は、みんなに、何か疎外感を感じていた。
サイの両親は、パパの古い友人だと言っていた。
でも、パパとサイの両親が会っているのを見ると、とても友人とは思えなかった。
パパは、圧倒的にサイの両親を見下すような目をしていた。
一度だけ、パパがサイの両親を罵倒しているのを聞いたことがある。
「とにかく、フレイを世間に目立たせないようにしろ。サイという、お前の息子にも、
フレイに悪い虫が付かないように、よく言いくるめておけ。
だが、息子も、今はフレイに手を出さないように、よく見張っておけよ」
意味は分からなかったけど、サイと私を純粋にパパが祝っているのでは無いことが分かって、
ショックだった。サイが可哀想になって、私は一層、サイに甘えるようにした。
パパが死んで、私はキラを復讐に利用するため、サイの元を離れた。
サイは、そんな私を追いかけた。私はサイを拒絶するしかなかった。
復讐で体さえ投げ出す醜い私をサイに見せたく無かった。
キラに乱暴に投げ倒されるサイ。モビルスーツを動かせなくて嗚咽を上げるサイ。
それに、私は涙を隠せなかった。
それから、サイは、私を避けるようになった。私がキラの体に溺れて行くうちに、
サイは、どんどん私から離れて行った。
当たり前でしょ。酷いのは私なんだから。自分を振って、友達の男の前で体を開く、
最低の女なんだから。もう、サイからすれば、見るのも汚らわしい女なんだから。
と、ふいにサイが私を見た。今、サイは、冷たい目を私に向けることさえある。
いつからなんだろう？
私が気づいたのは、キラが私の元を去ってから。サイが両親と会ってから。
でも、多分、もうずっと前から…
冷たい視線。あの、サイの家で感じた、サイのパパと同じ視線。
何か、自分と違うものを軽蔑するかのような視線。
そう、私が、昔、コーディネータのラクス・クラインに向けていたのと同じ視線を。
私は辛いことがあると、すぐに、その場を逃げ出してしまう。
私は、そのまま、サイを無視して歩き去った。
大好きだったサイから逃げ出した。
私は、もうサイのところへは行けない。私は、サイにとっては、今や、コーディネータと同じ、
異端の一人でしか無いんだ。
私が、キラをコーディネータという目で見ることを、いつのまにか忘れていたというのに。
私は部屋へ戻った。キラの部屋。私が居る理由が、もう無いはずの部屋。
もうキラからの通信も来ない。トリィもいない。でも、私は、まだ縋るように、
この部屋に居続けている。この部屋に居れば、キラはいつか帰ってくる。
何か話ができれば、どうにかすれば、また関係が戻らないかと思う。
――「自立って言うのは、相手を突き放すことでは無いのよ。
精神的な依存から抜け出て対等になりなさいっていうこと。
それが、心を通じ合わせることになるの」
――「あなたも一緒に成長しなさい。それが、キラ君との関係を続かせることになるのよ」
マリューさんが言っていた言葉。私が成長する。対等になる。そうすれば、
キラとの関係が続くはず。でも、どうすれば。
対等になるってことは、私がキラを復讐の道具だと見ていたことも打ち明けるということ。
私は復讐のためにキラに抱かれた。最初は、キラへの愛情なんて何もなかった。
そのことを、みんなキラに伝えるということ。
でも、それを言えば、キラは、私に失望するだろう。私を見限るだろう。
今は、そんなつもりは無いといっても、信じてくれないだろう。
たとえ、今、分かったつもりになっても、一度、心の中に出来た溝は、
二人を以前のような関係には戻さないだろう。そして、キラは私をいつか再び捨てるだろう。
キラに話すことはできない。決して話してはいけない。
でも、それを、私の内に秘めている限り、どう考えても対等では無い。
それは、私自身を苛み、また、あの時のようにキラに冷たい言葉を
吐き出すきっかけになるだろう。
私は、どうすればいいのだろう？
キラの前で、ただの雌に成り下がれば…、言葉を捨てて、ただ、
キラに肉体関係のみ迫れば。ダメよ… そんなこと。
砂漠で、私がサイに未練があることをキラに知られた時、ただ、体だけでキラに迫って、
ごまかそうとしたときは、「やめろ！」って、酷く拒否されたじゃない。
今のキラは、あの時とは違ってセックスは濃厚になったけど、決して、
そんな私を許した訳じゃない。
体だけと分かれば、キラは、遠慮無く私を放り出す。軽蔑する。
私は、一体どうすればいいのだろう？
私は壊れてしまった。自分では、もう、一歩も動くことができない。
艦が動きだす気配がした。
アークエンジェルが、二週間以上のオーブへの寄港を経て、再び動きだした。
私の祖国オーブでの日々。私は、結局、この艦から一歩も足を踏み出すことは無かった。
そして、今まで自分の拠り所にしていたものを失った。悲しい想い出だけが残ったオーブ。
私は、もうここへは戻って来ないかもしれない。
私には珍しくサイの話もありましたが、どうだったでしょう？ サイのファンの方ごめんなさい。
>流離
キラの、すれ違い感、強調されていますね。アスランとラクスも来るし、これから、
どうなるのか楽しみです。
ところで、エヴァ２スレで見たサイトに、フレイ様のＳＳがあったぞ。
「みゃあのお家」でググって逝けるはず。
＞ガ○ダムSEED
＞「SOUL OF FREY」 1/2/3
なかなか(ﾟдﾟ)ｳﾏｰ 、でもちょっとエロめ。Ｒ１５くらい。
ジュール隊所属のモビルスーツパイロット、シーナ・ティンベル中尉がイザークに通信機越しに報告した。彼女はかつての戦争末期、イザークが一部隊を任された時彼の副官的な立場にあった。エリートの証である赤い軍服を着こなし、当時最新鋭のザフト軍モビルスーツ・ゲイツを操り戦場を駆け抜け、そして生き残った。戦後、そのままザフトに身を置いていたが、イザークがEYESに加わったという話を聞きつけた彼女はすぐさま彼の元へ駆けつけた。イザークになぜそんな真似をしたのかと問われた彼女は、
｢隊長は色々と不器用なところがありますから、自分がいてあげないと駄目だって思いましたから。｣
と答えた。その時は余計なお世話だと怒鳴りつけたイザークだったが、内心そんな彼女の気持ちを嬉しく思った。そして現在、シーナはイザーク、アスランと並んでセラフィム隊の中心的戦力となっている。
｢よし、各機散開！敵を迎え撃つ！｣
イザークの指示に従い、ジュール隊各機がフォーメーションを取る。そしてようやく敵機がモニターで視認できる距離まで近づいたところで、シーナは目の前に映る敵の姿に驚愕しその名を叫んだ。
｢あっ、あれは『ストライク』！？｣
かつての戦いを生き延びた者ならその名を知らない者はいない。かつて数多くのモビルスーツを葬り去り、ザフト軍を震え上がらせた伝説のモビルスーツ。今それが彼らの前に立ちふさがろうとしていた。
｢形状が若干違うな。強化型か再設計したものってところだろう。｣
部下の反応に反し、イザークは冷静に対応した。彼にとって、ストライクは因縁が深い機体である。しかし、それは彼の知るストライクとは全く異なるものであった。細かなディティールの違いも見られるが、一番の違いは全体にブルーコスモスのシンボルカラー、青を基調としたカラーリングが施されているところである。それにストライクはかつての戦いで地球軍の戦艦の攻撃により撃墜されたと聞いている。ならば今自分達の目の前にいるのは、その亡霊なのだろうか？
（俺もつくづく奴に縁があるようだな・・・。）
向かって来る青いストライクを前に妙な因縁を感じつつ、イザークは乗機、デュエル改の手にするビームライフルの狙いを定めた。シーナら乗る二機のM２もそれに続く。
｢コクピットには当ててやるなよ。・・・撃てぇ！｣
イザークの命令が放たれ、三機のモビルスーツが一斉にビームライフルを乱射した。未だかつて彼らの連携攻撃から逃れられた敵はいない。しかし、ストライクは三方から放たれたビームの雨をことごとくかわしてみせた。
｢何ぃ！？｣
｢かわされた！？｣
敵の驚くべき行動に、ジュール隊の全員が我が目を疑った。そしてストライクはそのまま反撃に転じるかのようにビームライフルを構えた。
｢来るぞ！警戒しろ！！｣
イザークが動揺する部下達に呼びかけ終わる前に、ストライクは一撃を放った。
だが、現実は違った。キラは前以上に人を寄せ付けなくなり、トールでさえ声をかけられなくなっている。意図的にキラを見ないようにしていたフレイだったが、漏れ伝わってくる噂話でそれとなくキラの様子を知ることは出来たし、キースに聞けばそれなりの事を教えてくれる。そして、伝わってくる噂はいずれも自分の予想とは懸け離れていた。
今もキースから聞いた話に驚きを隠せないでいる。
「なんで、こんな事に･･････」
「お前は別れたら、キラは解放されると思ってたんだろうけど、いささか的が外れたかな」
「････････････････」
フレイには答えられなかった。別れてもなにも変わらなかった。いや、もっと彼を傷付けてしまった。自分はもはや、存在しているだけでキラの重荷なのではないのだろうかとさえ思ってしまう。もし自分が殺されてやれば、キラの気持ちも晴れるのだろうか。
「私、どこまでいってもキラの重荷なのかも」
「････････････････････」
「もし私がいなくなれば、キラも楽になるのかな？」
フレイの言葉に、キースは僅かに眉を顰めた。
「･･････まさかとは思うが、キラになら殺されても良い、などとは思ってないだろうな？」
「キースさん？」
何時になく不機嫌そうなキースの声に、フレイはキースの目を見て、おもわず息を飲んだ。今のキースは明らかに怒っていたのだ。
「もしそんな事を考えてるなら、そんな馬鹿な考えは今すぐに捨てろ。他人の為に自分が死ねば良いなんてのは間違いどころじゃない。ただの迷惑だ」
「め、迷惑って･･･････」
「いいか、世の中には死んで責任を取るなんて馬鹿な事を考える奴がいるが、そんな考えは俺に言わせればただの馬鹿でしかない。死んで何になる。生きてこそ責任ってのは取れるもんだ。お前がもしキラに何かを償いたいと思ってるなら、生きてそれを探せ。生涯をかけてもだ」
何時になくきつい事を言うキースにフレイは目を瞬いたが、すぐに顔を俯かせた。
「キースさんは、優しいのか冷たいのか、時々分からなくなります」
「俺は常にマイペースさ。ただ、妹分が道を踏み違えようとしてるなら、力づくでも正道に戻してやろうとしてるだけだ。確かに人間には命を賭けてでも何かを成し遂げるっていう時はある。俺もそれを否定はしない。だがな、残される奴の事を考えてみろ」
妹分、という言葉に、フレイは小さく肩を振るわせた。驚いた目でキースを見上げている。
「妹･･････私が？」
「前にも言っただろう。俺はお前に妹の面影を重ねてると。可愛い妹を見捨てられる兄貴はいないさ」
キースはフレイにもはや１人の肉親もいない事を知っている。いや、自分にもすでに１人の肉親もいない。今のフレイは昔の自分と同じであり、依る何かが無ければ倒れてしまうかもしれない。その考えがキースにフレイを保護させていた。ナタルにもフレイの事を頼んでおり、極力彼女が１人にならないように気を使っている。そのナタルもフレイを妹のように見だしているとは流石のキースも気付いてはいなかったが、
途方に暮れてキースは呟いた。そうなのだ、キラが何を求めているのか、それが分からなければ対処のしようも無い。だが、それを聞いたフレイは辛そうに顔を逸らした。
「･･････なんだ、何か分かってるのか？」
「･･････分かってる、なんて思うのは、私の思い上がりなんでしょうね」
だが、確信を持って言えてしまうのだ。キラは寂しがってると。彼が求めてるのは共に笑ってくれる仲間であり、自分を自分と見てくれる人なのだと。そう、「コーディネイターのパイロット」ではなく、「キラ・ヤマト」と見てくれる人が。
多分、キースでさえキラの辛さを、弱さを知らない。キースでもキラの余りの強さに、それ以外のキラを見れていないのだ。サイやトールでもそうだろう。
何となくフレイは聞いてみたくなった。キースから見たキラを。
「ねえキースさん、キースさんは、キラをどう思いますか？」
「どう思うと言うと？」
「つまり、キースさんから見て、キラはどういう風に見えますか？」
問われたキースはしばし考え、そして答えた。
「キラはなあ、凄い奴だと思うよ。カスタフ作戦で見せたあの強さといい、俺達と一緒に戦えるだけの体力といい、ＭＳの整備から調整までこなせる能力といい、さすがはキラだよ。他の奴らとは出来が違いすぎる」
キースの答えに、フレイは口の中で「やっぱり」と呟いた。キースでさえキラという人間を「強い奴」「凄い奴」と見ている。多分他のクルー全てもそうなのだろう。これではキラは誰にも苦痛を打ち明けられまい。
フレイは悲しくなった。何故、誰もキラをその様にしか見れないのだろうか。だが、キラも悪い。その悲しさを、辛さをもっと人に見せればいいのに、そうすれば艦長だってキースさんだって気付いてくれるだろうに。
「なあ、なんでそんな事を聞くんだ？」
「･･････いえ、何でも無いです」
フレイは寂しそうに口元を緩ませ、力なく答えた。キースはフレイが何を考えてるのか分からなかったが、１つ気になってることを問いただした。
「フレイ、お前はキラとやり直すつもりは無いのか？」
「･･････無理ですよ。私たちは、最初から間違ってたんですから」
自嘲気味に言うフレイに、キースは何も言えなかった。２人の関係が間違っていた事はキースにも分かる。だが、間違っているのなら正せばいいのだ。やり直せないなどと思うのは当人の間の問題だが、言ってしまえば当人同士がやり直そうと思えばそれは可能なのだ。
だが、すでに諦めているように見えるフレイの横顔を見ると、それを言い出すのは憚られた。こればかりは他人が言っていい事ではない気がするのだ。
自室から出てきたキラを、サイが待ち構えていた。サイを見たキラが驚いた表情になる。
「サ、サイ･･････」
「キラ、久しぶりだな」
サイの様子は何時もと違っていた。あの何時もの真っ直ぐな眼差しはそのままだが、キラが気圧されるほどの気迫を見せている。その強い眼差しに、キラは無意識に半歩身を引いた。
「キラ、今日は聞きたい事があって来た」
「聞きたい、事って？」
「なんでフレイと別れたんだ？」
余りにも直接過ぎる言葉に、キラはどう答えるか悩むよりも先にぶつける先の無かった苛立ちが込み上げてきた。なんで他人にそんな事を聞かれなくてはならないのだろう。
「なんでだっていいだろ、サイには関係無い」
「関係無くなんてないだろ！」
サイが強引にキラの胸倉を掴み上げた。その行為にキラの僅かな忍耐心がたちまち消費される。
「離せよっ！」
「煩い、お前に俺の気持ちが分かるかよ！」
「なにがだよ、振られたのは僕なんだ！」
「その前に俺からフレイを奪ったのはお前だろうがっ！」
サイの右拳がキラの顔を打ち付けた。予想よりも遥かに大きな衝撃にキラは一瞬ふらついたが、すぐに立て直して自分も拳を握る。
「何をするんだ、サイ！」
「黙れ、キラぁ！」
また殴り掛かってくる。キラは完全に頭にきて殴り返した。もう何もかもがどうでもいい。ただこのむしゃくしゃした気分を誰かにぶつけてやりたい。その一心でキラは動いていた。何時もなら無意識にやっている手加減も何処かに放り捨てて反撃する。
だが、この時のサイは誰もが驚く程の粘りを見せた。キラに殴られても倒れず、さらに殴り掛かって３発目の拳をキラに叩きこんだ。キラも口から血を流しながらさらにサイを殴りつけた。流石に２発もキラに殴られては耐えられなかったのか、サイは廊下に無様に転がった。キラはその上からサイの脇腹に蹴りを入れた後、馬乗りになってさらに殴りつけていく。
「お前に、お前に何が分かる。ただ利用されてただけの僕の気持ちが、サイに分かるのかよ！」
すでにサイの意識は無い。だが、気付かぬままにキラはサイの胸倉を掴み上げ、そのまま上下に激しく揺さぶった。その顔は涙と悔しさに歪み、見ていてどちらが敗者か分からないほどだ。
「何をしてる、止めろキラ！」
「離せ、離せぇ！」
暴れるキラを羽交い締めにしたキースはそのまま力任せに床に押し倒した。数人掛かりで押さえこみ、その自由を奪う。
キースはサイの様子を確かめると、すぐに軍医を呼びにいかせた。そして不機嫌さを隠さないままにキラを見る。
「キラ、なんでこんな事をした？」
「殴りかかってきたのはサイです！」
「お前ならサイをあしらうくらい簡単だろう。なんであそこまでした！？」
キースは明らかに怒っていた。だが、今のキラにはキースがこう言っているように見える。
「コーディネイターのお前がナチュラルを殴ればどうなるかくらい分かるだろう」
と。
馬鹿馬鹿しい、なんで先に殴られた側の僕が手加減などしなくてはならないのだ。悪いのは先に殴りかかってきたサイなのに。これで喧嘩したのが僕じゃなくトールだったら、ここまではされないのだろう。
キースは答えず、ただ怒っているだけのキラを見て今度こそ苛立った。
「もういい、こいつを独房にぶちこんでおけ。俺が良いと言うまで出すな！」
「は、はい」
衛兵がキースに敬礼をし、キラに拘束具をつけて立ち上がらせる。キラはまだ不満そうであったが数人掛かりで動きを封じられては逆らえないのか、渋々従っている。
キースはそれを見送ると、今度はサイの方を見た。サイは担架に乗せられて医務室の方に運ばれている。何故彼はキラに喧嘩など売ったのだろうか。勝てる訳無いと分かっているだろうに。
独房にぶち込まれたキラは不機嫌さを隠さないどころか、感情の激発に身を任せて荒れ狂っていた。独房の中の備品を手当たり次第に蹴りつけ、殴りつけ、扉を何度も激しく蹴りつける。警備に付いている兵が怯えてしまったほどだ。
キラの頭の中には行き場の無い怒りがあった。自衛でサイに反撃しただけなのに、何故こんな目にあわなくてはいけないのだ。自分がコーディネイターだからか。困った時は利用するくせに、平気で差別をする。なんて身勝手な奴らなんだ！
「こんな奴らを守る為に、僕は戦ってきたのか？」
もう嫌だ。なんでこんな目にあってまで戦わなくちゃいけないんだ。もう戦ってなんかやるものか。自分達だけで戦ってみれば良いんだ。そしてせいぜい苦労して、身の程を知れば良いんだ。誰のおかげで今まで生きて来れたのか、それを少しは肌で感じれば、少しは考えを改めるさ。
だが、キラの中に僅かに残る冷静な部分は、１つの疑問にぶつかっていた。あの時、キースは自分を力づくで押さえ込んでしまった。ナチュラルの筈のキースが、コーディネイターの自分を。おかしい、普通に考えればナチュラルがコーディネイターに力で勝てるはずが無いのに、何故キースは自分を押さえ込めたのだろう。
怒りと憎しみに支配されたキラは、感情のままにヘリオポリスの仲間達を、アークエンジェルのクルーを罵倒し続けた。キースやフラガさえも今のキラには敵だと思えている。今までに溜まった心労と鬱憤が捌け口を求めて暴走してしまったという状態なのだが、これから数時間後、キラは怒りも屈辱も、何もかもが消し飛ぶほどの衝撃を受け、凍り付く事になる。
サイとキラが殴り合ったという話はたちまち艦内を駆け巡る。これが、次なる騒動の幕開けであった。
遂にトールがスカグラに。でもミリィさん、なんか身代わりが早いと言うか、トールが可哀想に思えてきた
フレイ様はなんか燃え尽きちゃって悟りを開き掛けてるし。
でも、考えるようになったのは良いことですね。
>>chain
頑張れイザーク、敵はかなり厄介だけど、今のお前なら良い勝負になる筈だ。
でも、自分を追っかけてきてくれる女性がいるとは、結構美味しい役どころかｗ？
アークエンジェルがオーブの領海を出た途端、また、ザフトが
襲ってきた。あの四機のＧ。待ち伏せされていた。
アラートが鳴る。みんなが急いで、持ち場につく。キラは、既にストライクにいた。
バジルール中尉の命令で、この事態を想定していた作戦が発令された。
トールのスカイグラスパーが初めて出撃する。
「システムオールグリーン。スカイグラスパー二号、ケーニヒ機どうぞ。
トール気をつけてね！」
まず、二機のスカイグラスパーが発進。ストライクは艦上で待機し、
煙幕とＥＣＭで、アークエンジェルを隠す。
フラガ少佐のスカイグラスパーがオフェンス。
ソードストライカー装備で、敵に切り込む。
トールのスカイグラスパーはサポート。
エールストライカーを装備した高速飛行で上空に敵を振り切り、敵の位置を暗号コードで私に知らせる。
それを私が、キラに伝達する。それを元に、ランチャーストライカーを装備したキラのストライクが、
アグニで砲撃する。煙幕の中から飛び出したビームが敵に突き刺さる。
トールと私、キラ。三人の連携攻撃ッッッ！！
煙幕内から打ち出すキラのアグニは、敵を捕らえはしなかったけど、
敵の攻撃フォーメーションをズタズタに崩した。
ランチャーストライカーを外し、ライフルとシールドを手に煙幕から飛び出したキラのストライクは、
その間隙をついて、バスター、デュエルの乗るグゥルを撃破、
一瞬で二機を海中に、たたき落とした。
残りのイージス・ブリッツをフラガ少佐が射出したビームブーメラン・マイダスメッサーが押さえる間に、
トールのエールストライカーをキラのストライクに換装する。
「キラ！ エールストライカー換装します。
トール、フォーメーションに入って」私が号令をかける。
「トール、コントロールをくれ、ドッキング制御は、僕がやる」キラの凛々しい声。
「キラ、軸線合わせヨシ！ 後は頼む」トールが応えるように叫ぶ。
トールから射出されたエールストライカーは、寸分違わず、キラのストライクに装着された。
キラすごい。私達三人のベストコンビネーションは、ここでも発揮された。
さあ、キラがんばって。
エールを装備したストライクは空中を華麗に飛び回り、トールの援護射撃を受けながら、
ブリッツの腕をビームサーベルで切り落とし、海中に敗退させた。
私たちの連携攻撃は、あっと言う間に三機を敗退させた。
残りのイージスも、キラとフラガ少佐にはさまれて、敗戦一色だった。
アークエンジェルには、ほとんど被害は無い。ここまで優勢な戦闘は初めてだった。
トールがいたから？
私たち三人が力を合わせたから？
私、トールがスカイグラスパーに乗るのは心配だった。でも、これなら、いいと思った。
私とキラ・トール。三人で過ごした楽しい、あの関係が、また戻ってきたのだと思った。
あの子のことは、戦闘中、意識の外にあった。
いずれにしろ、キラと喧嘩した、あの子は、しばらく、キラに関って来ない。
私たち三人を邪魔するものはいないんだ。
私は、アークエンジェルに乗って以来、本当に久しぶりに
幸せな気分に浸った。
オーブを出た途端に襲って来たザフト。既に、敵モビルスーツ四機のうち、三機は敗退し、
残ったイージスに対し、キラのストライクとフラガ少佐のスカイグラスパーが戦っている。
最後に残ったイージスは強敵だ。キラでも、なかなか落とせない。
「押しまくれ、キラ。まだ、俺もスペアバッテリーを持っているぞ」
フラガ少佐が、キラに声をかける。
「キラがんばって！」私も声援を送る。
キラはエネルギーを気にせずに、ビームの砲撃をイージスに集め、
ついに、イージスの乗るグゥルが火を噴いた。
イージスは、近くの小島に不時着したものの、フラガ少佐のソードストライカーを換装し、
エネルギーを再チャージしたキラのストライクに追い詰められた。
既に、イージスはエネルギーを使い果たし、ＰＳダウン状態。キラの勝ちは見えていた。
キラがイージスを打ち取る。その瞬間、ストライクが不思議な動きをした。
ストライクの隣に槍のようなものが突き刺さる。
「あれは？！」ブリッジのみんなが目を疑った。
ストライクの隣に、いきなりブリッツが現れた。ミラージュコロイド。
あらゆるセンサーを無効にして姿を隠すブリッツの特殊装備。
何てこと！ 誰もが、このことを忘れていた。
すでに、ブリッツは長剣であるシュベルトゲベールの死角となる、間合いの内側に入っている。
もうシュベルトゲベールは役に立たない。
「キラ！ 逃げて！！！」 私は、思わず大声を出した。
片腕のブリッツが、ミサイルダートを槍のように突きたてる。キラがやられる！！
しかし、ビームサーベルを突きたてられたのはブリッツの方だった。
シュベルトゲベールは柄の部分に、もう一本ビームサーベルが仕込まれている。
それが、ブリッツのコクピットに突き刺さっていた。
ブリッツは爆発した。
キラは無事だった。だけど、ブリッツの爆発に巻き込まれてシュベルトゲベールを
失っていた。マイダスメッサーは既に、フラガ少佐が使ってしまっている。
イージスを倒す武器が無くなってしまっている。
「深追いする必要は無いわ。ストライクを戻して。戦線離脱します」
艦長が命令を出した。
「ですが、再度、ストライクを補給すれば、イージスを打ち取れます。そうすれば、
完全に追っ手を撃退できます」
バジルール中尉が、艦長に意見した。
「その必要は無いわ。撤収急いで」と艦長。
「せめて、潜水空母を。スカイグラスパー二号機で爆雷を」バジルール中尉はなおも言う。
「ケーニヒ二等兵には、これ以上の戦闘は無理よ。全速力で空を行けば、
いくら潜水空母でも追いつけないわ。離脱よ。敵が体勢を立て直す前に」
艦長は決定を下した。
各機が、次々に帰投した。トールは、着艦して、さすがにぐったりしているようだった。
戻ってきたキラは、なぜか沈んだ声だった。ブリッツを打ち取ったはずなのに。
多分、キラは疲れているのよ。オーブでは、ずっと私達のために仕事しどうしだったし。
トールとキラ、すごくがんばった。私が癒してあげよう。
キラからリタイヤしようとしてたけど、
もう少し、三人でいよう。キラにも、もう少しだけ甘えよう。
もう、あの子のものじゃ無いのよ。キラは、やっと私のところに帰ってきたんだから。
キラの部屋で、一縷の望みを持ってキラの帰りを待つ私。
でも、オーブを出て、すぐに敵襲を知らせるアラートが鳴った。
え！ もう、ザフトが来たの。キラは部屋にも戻っていないのに。
私は、ベッドに潜り込んだ。毛布を頭からかぶる。
戦闘中、私は、いつもこうしていた。攻撃を受けて、酷く揺れる艦内。
その揺れひとつひとつに脅えながら、ただ、ひたすら過ぎ去るのを待つ。
以前は、それでも心の支えがあった。
── 大丈夫、あの子が守るから、私を守るから…
キラに処女を捧げた夜。私は恍惚として、その言葉を囁いた。
そう考えると恐くなかった。私に心酔したキラが、私だけを守ることに、
私も酔っていた。今は、分かる。このときから、ずっとキラに縋ってた。
憎い憎いキラに、親に庇護される子供のように頼っていた。
でも、今は、キラは私のことなど考えていない。
艦を守るのは間違い無いはずなのに、この心細さは何だろう。
体の震えが止まらない。
戦闘が始まったらしい。時々、艦がガタガタ揺れる。モニタの映像に閃光が写る。
その度に、艦に衝撃が来るのを予想して脅える。モニタを消せばいいのだろうけど、
今度は揺れに対する恐怖が倍になる。揺れの度に、まるで心臓を捕まれたような恐怖心が襲ってくる。
居住区は艦の中央だから安全なはず。そう言い聞かせていても不安は拭えない。
今の兵器はビーム砲なんだ。当たれば鉄だって何だって、
溶けて貫通してしまう。そうすれば、私なんか何も考える間もなく消えてしまう。
キラにもう一度会うチャンスも無いまま。
「キラ…守ってよ… 私、守ってって言ってたじゃない…」
大きな閃光、私は悲鳴を上げる。
「いやー！！、キラ！！」
来ない、大きな衝撃は来ない。守っているの、キラが守っているの…
閃光は映るものの、艦の衝撃は、ほとんど来ない。
やがて、艦が速度を上げた気配がした。戦闘配備解除のアナウンスが流れる。
私は、ため息をついた。冷たい汗でビッショリ濡れている。
体が、まだ震えている。腰が頼りない。支えて欲しい。外からも内からも、
キラの熱い体で。
ダメなんだ。私、もうキラがいないと、本当にダメなんだ。
体だけでもなんでもいい。キラじゃなきゃダメなんだ。
同情でもなんでもいい。キラに縋らなきゃダメなんだ。
私は、おぼつかない足取りでようやく起き上がると、やっとのことでシャワーを浴び。
裸のまま、ベッドに潜り込んだ。キラが帰ってきたら、すぐに温めてもらえるように。
キラが帰ってきたら、私は雌になりきろう。心も、もういらない。
ひたすらキラの体を求めるだけの存在になろう。キラが、どう思おうと構わない。
もし、キラが私を放り出したら、もし、軽蔑して、許してくれなければ、私はキラの愛玩動物になろう。
もう、トリィと同じでもいい。抱いてくれなくてもいい、ただ、そばに置いてくれるだけでいい。
私、キラが「おあずけ」と言ったら、きちんと待って、「よし」と言われたら、お尻振って、
キラにひざまずいて、命令されたらなんでもしよう。
それだけでいい。もう、私は一人では生きて行けないのだから。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
待ちくたびれて、私は、うとうととしていた。
すでに、日は暮れていた。
それでも、キラは帰って来なかった。
モニタに外の様子を映すと、いつの間にか暗雲がたれ込め、雨が落ちはじめていた。
私の心を象徴するかのように。
復旧して何よりです。
今回の、ミリィＳＳの戦闘シーンは、書いていて、かなり燃えました。
これで、私自身、結構、ミリィに感情移入するようになりました (本編とは別人ですが)。
フレイ様は、本編より一回早く「ぶるぶる」にしています。
>流離
大分前に、サイが動くとの予告がありましたが、やっと来ましたね。
キラは、アムロみたいになるのかな？
でも、こういう時に限ってカガリは出て来ないのね。
>>668
見てきました。私的には、かなり収穫でした。
明るいフレイ様もいいのですが、こういう病的なフレイ様もそそります。
>>キラ♀
フラガが活躍してますね。利害調整能力抜群って感じでAAの番頭さん状態で面白いですね。
カガリもへリオ組の姿から劣等感解消のきっかけを得たようで、このへんの心の動き面白いです。
>三ツ星クラスのサーロインステーキを摘んでいたミリアリア
なに食べてんだw 本編の食事よりはるかに改善されてるし、なんか当たり前のように食べてますねw
>>chain
新作ですね。旧AA組とジュール隊の夢のタッグ実現って感じで楽しみです。フレイ様とキラがちょっと
不幸な状況で、これからどうなるのか期待してしまいます。キラも敵に回すと存在感増してきますね。
かなりセラフィムの人達が心配になります。あとはイクスの設計経緯は笑えました。ディアッカのその
後の身の振り方も面白いし、ありえそう。
>>流離
>何故キースは自分を押さえ込めたのだろう
キースのフレイ様との対話の内容とは裏腹に、意外とキラの境遇を理解できる位置にいるのかも
しれませんね。
>フレイは艦長やキース、ナタルと新たな関係を築き、キラは仲間たちの所へ戻れる
フレイ様のトール以外のへリオ組への説明不足から生じる誤解が、逆にミリアリア･サイ･トール
各々異なる反応を生んでいるという感じに見えて面白いですね。フレイ様やキラが彼等にどう向き
合うのか今後の展開が楽しみです。
>>ミリアリア
>トールと私、キラ。三人の連携攻撃ッッッ！！
ミリアリア燃えてますねw。でも三人でいることの充足感を戦闘の中で見出してしまったのはほろ苦い気分になりますね。
キラに対する恋愛感情というより、フレイ様を除いた三人の世界でキラへの恋愛感情を満たそうと関心がシフトしている
という感じですね。
>>オーブ・フレイの心
>トリィと同じでもいい。抱いてくれなくてもいい、ただ、そばに置いてくれるだけでいい
すごいですね。軽い高揚感に浸るミリアリアと対照的で面白いです。成長の拒否どころか思考まで停止してしまって…
>暗雲がたれ込め、雨が落ちはじめていた。
本編の悲劇のシーンを思い浮かべてしまいます。
ここのSSとはちょっと雰囲気が違いますね。なんとなくですけど。EVAぽいというか。
キラに温めてもらうつもりで、ベッドで裸で寝ていて、
すっかり冷え切ってしまった私の体。寒さに肩を抱きしめる。
すでに日は落ちて、モニタの映像は真っ暗となり、天候は崩れ、風雨が強くなってきていた。
私は、ガランとした部屋を見つめる。
キラが帰ってきたときの「お帰り、フレイ」という優しい声が耳についている。
また、目に涙が溢れてくる。すぐ泣く私。泣き虫フレイ。私は、もうダメだ。
入り口脇のデスク。そこにキラが座っていた。そこには、キラが置いて行った
官給のノートパソコンが今も置かれたまま。
そのとき、私はパソコンのランプが点滅していることに気がついた。
今まで、まったく気がつかなかった。素肌に上着を羽織ったまま、
デスクに近づき、パソコンを見る。点滅しているのはメール着信ランプ。
パソコンの蓋を開けてみる。自動的にメールソフトが立ち上がる。
│新着２件
メールはキラからのものだった。アドレスはキラのメールボックスだけど、
これは、明らかに私に当てたもの。
┌──────────────────────────────────────
│題名：フレイ、もう一度だけ弁解させて欲しい
│
│ フレイ、もう一度だけ弁解させて欲しい。
│ 僕が両親に会わずに君のところ行った時、
│ 確かに、君の言う通り、同情心があったのは事実だ。
│
│ でも、あの時言った。両親を憎んでいるというのも事実なんだ。
│ 戦争に巻き込まれてから、僕はコーディネータとして生まれたことに、
│ いつも苦しめられていた。これだけは、僕自身ではどうしようも無かった。
│ だから、両親を、特に母さんに憎しみを向けざるを得なかった。
│ でも、憎んでいることを、これまで僕を愛して育ててくれた母さんに知られれば、
│ 母さんは、これからずっと悲しむだろう。だから、僕は会いたく無かった。
│
│ せめて、君が一緒に会ってくれたら。
│ 僕は君の前ではコーディネータという言葉を出すことはできないから。
│
│ でも、君が来ないと知った時、僕は母さんに、この言葉を言ってしまうかもしれなかった。
│ 『どうして、僕をコーディネータに生んだの？』
│
│ だから、僕は両親に合わずに、君のところへ行った。
│ 自分に都合の良い癒しを求めて。
│
│ だけど、そんな僕の勝手な思いは、君にとっては、辛いだけのことだったんだ。
│ ごめん、フレイ。僕は、辛そうにする君を見たく無い。
│ もう、合わないようにするよ。
送信時刻は、キラが私の元を去った日の深夜。もう一件は、アークエンジェル出発の日の朝。
┌──────────────────────────────────────
│題名：フレイ、僕の部屋に居てくれていい
│
│ フレイ、返事はくれないようだね。こうなることは分かってたつもりだけど。
│
│ 君は、まだ僕の部屋にいるのだろうか。もしいるなら、そこに、ずっと居てくれてもいいよ。
│ 僕は部屋には戻らない。
│ オーブを出たら、すぐにザフトが来る。僕には分かる。すぐ戦闘が再会される。
│ その後も、アラスカに行ってからも、多分、戦いからは逃れられないだろう。
│ 君は戦いの中にいるべき人では無い。だから、僕は、もう君には会わない。
│
│ でも、僕は君を必ず守る。何があっても守るよ。いつまでも。約束する。
私は、また涙した。泣き虫フレイ、馬鹿ね！
これを見ていれば、私は恐くなんか無かったのに。私は、まだ、キラに守ってもらっている。
私は、裸の胸を抱きしめた。冷たい胸に暖かいものがこみあげてきた。
そして、私は、キラに話す言葉を見つけた。キラと私を繋ぐための言葉を見つけたのよ。
行かなきゃ、キラを探しに。泣いてなんかいちゃダメよ。立って、キラのところへ行かなくちゃ。
私は、シャワーを浴び、身仕度を整えると、キラの部屋を後にした。
昨夜の話との時間的な連続性が強いと思ったので先に投下します。
前書きに書いたキラの、あの件のフォローは、これなんですが、
第三者から見ればフォローにも何もなっていなでしょう。
でも、フレイ様は…
続きは、また今晩に。
>>680
そうですか。まあ、私は Eva のアスカも好きなので。
通信機から聞こえるシーナの悲鳴に、イザークはハッとした。振返ると彼女の乗機、《M2ブルーフレーム》が地面に倒れこもうとしている。つい先ほどストライクから放たれた一撃が彼女を襲ったのである。
｢シーナ！無事か！？｣
朦朧とする意識の中、シーナはイザークに返答した。
｢ハッ、ハイ！大丈夫です、隊長。｣
急いで意識を集中させ、機体の損傷度をチェックする。どうやら脚部を撃ち抜かれたようだ。
｢駆動系をやられました。戦闘続行は不可能です。｣
｢早く退け！言い訳なら後で聞いてやる！｣
｢すっ、すみません！｣
被弾したシーナに撤退を促し、イザークはもう一人の部下に彼女を援護させる。その間にも青いストライクは着実に距離を狭め、彼らに近づいて来る。
（よくもやってくれたなァ！！）
部下を傷付けられた怒りから、再度ビームライフルによる狙撃を試みるイザーク。それでもストライクの接近を止めることはできず、逆に敵の放つビームライフルをシールドで受け止める。ストライクは白兵戦に持ち込むために、バックパックにあるビームサーベルを手にした。その姿を確認し、デュエル改もまたビームサーベルを引き抜く。
｢やらせるかよぉ！！｣
敵が振り下ろしたビームサーベルを受け止める。その力に、デュエル改の巨体が後ずさりする。
（チィッ、コイツ！本当にナチュラルか！？）
眼前の敵の力に圧倒されるイザーク。しかし、ここで彼が負ければ後方の部下達が危険に曝される。それだけは、絶対に阻止しなければならない。
｢貴様なんぞにィィッ！！｣
イザークは渾身の力でストライクを押し返した。
彼、イザーク・ジュールは戦後再編成されたザフトで要職に就く機会が何度かあったが、机の上での事務仕事は性に合わないと自ら現場に戻った。アスランからEYESへの参加を求められた時は、特にすることがないからと言う理由でその頼みを受け入れた。最初はかつて敵であったナチュラルと共に働くことに違和感を感じていた彼だったが、その環境に次第に解け込んでゆく自分に気付いていた。
むしろ彼が気にしていたのは、母、エザリアのことであった。彼の母親、エザリア・ジュールは戦争終結後、ザフト強硬派の首魁パトリック・ザラの右腕であったことから、ザフト側の重要戦争犯罪人という扱いを受け裁判にかけられた。その時ラクス・クラインの弁護により極刑だけは免れたものの、プラント最高審議会の決定で彼女は幽閉されることとなった。そこで毎日のように彼女は自責と後悔の念に囚われ続け、遂には病に倒れてしまった。
（母上は、俺のことをどう思われるだろう。）
自分が今ナチュラルと共に働いていると知ったら、母は許してくれるだろうか？イザークには、それだけが唯一の気掛かりであった。
最後に母を見舞った際、彼は自分がEYESに入ったことを母に告げた。エザリアはそれを聞くと何かを考えるように顔を下げた後、ゆっくりと顔を上げた。その顔には、満面に美しい喜びの笑みが宿っていた。
｢イザーク・・・、あなたはあなたが正しいと信じることをやりなさい。決して、私の様にはなってはなりませんよ。｣
エザリアの言葉を聞き、イザークは母が自分を許してくれたことを悟った。そしてしばしの沈黙の後、
｢母上、俺はコーディネーターとナチュラルの可能性を信じてみます。｣
と自分の思いを彼女に伝え、イザークは母の元を離れた。これで、彼の進むべき道は決まった。
自分を許してくれた母の思い、自分を気に掛けてくれた仲間達の思い。そんな彼らの思いを無駄にはしない。その思いが今のイザークを突き動かしていた。
そんなラクスと個人的に会う事が出来るアスランは贅沢なのかもしれない。今もアスランはラクス用に用意された個室でラクスと向かい合っている。
その夜、ラクスは尋ねてくれたアスランに驚くとともに、満面の笑顔を浮かべて迎えてくれた。
「アスラン、昨日に出発したと伺っていましたが」
「いえ、トラブルがありまして、出発が遅れました」
「まあ、そうでしたの」
ラクスは嬉しそうにアスランを招き入れると、さっそく紅茶を振舞った。ラクスの紅茶の腕だけは確かなことを知っているアスランは礼を言ってそれを受け取る。
「そうでした、これをラクスにと」
アスランはフィリスから預かった手紙を差し出す。それを受け取ったラクスは差出人を見て驚いた。
「まあ、フィリスからですわ。何故アスランがフィリスの手紙を？」
「彼女は私の指揮下の隊のパイロットですから。あなたに会うのならと手紙を託されました」
「そうでしたか。ありがとう、アスラン」
手紙を開いたらラクスは僅かに表情を変えた。その表情にアスランは「ああ、まただ」と呟く。また彼女は僕の知らない表情を見せる。彼女は何を考えているのだろうか。あの手紙には何が書いてあるのだろうか。
「ラクス、手紙には何が書いてあるのですか？」
「え、あ、それはですねえ」
なにやら言い難そうに言葉を濁すラクス。アスランの僅かに目を細めた。その視線にさらされたラクスは困った顔で仕方なさそうに口を開いた。
「え、ええと、実は、アスランが浮気して無いかとフィリスに見張りを頼んでいまして」
「はぁ？」
アスランは脱力して肩を落とした。
「なんなんですか、それは？」
「い、いえ、別にアスランを信用していなかった訳じゃありませんのよ。ただ、少し不安を感じただけですから」
「それを世間一般では信用していないと言うんですが」
頬を引き攣らせて突っ込んでくるアスランに、ラクスはすまなそうに頭を下げた。
「すいません、アスラン」
「･･････まあ、良いです。で、どう書いてあったんですか？」
「ええ、安心しましたわ。あなたには浮気出来るような甲斐性は欠片も無いと断言してありますもの」
笑顔で酷いことを言ってくれるラクス。アスランは飲みかけていた紅茶を吹きそうになって咽かえってしまった。咽かえりながらも涙目でラクスを見やる。
「か、甲斐性無しって･･････」
「どうかなさいまして、アスラン？」
ニッコリと笑いながら首を傾げるラクスに、アスランはそれ以上の反論を封じられてしまった。何気にその笑顔が言っているのだ。あなたに甲斐性なんてものがありましたっけ？ と。反論できない事にアスランはガックリと肩を落してしまう。毎度の事ながらアスランは口ではラクスに勝てなかった。
「それでラクス、今後のはどのような予定で動くんです？」
「ジブラルタルに２日留まった後、アフリカ共同体、大洋州連合を訪問し、最後にオーブを表敬訪問します。そこからオーブのマスドライバーで宇宙に出て、迎えの艦に合流する事になってますわ」
「オーブにもですか。あそこは中立の筈ですが」
「きちんと内諾は得てますわ。父から頼まれた親書を届ける役目もありますし」
ラクスはどうやらただの戦地慰問だけの為に来た訳ではないと知り、アスランは少し驚いた。そして、シーゲルの託したという親書の内容に興味を持った。
「ラクス、シーゲル様の親書とは、どういう内容なのですか？」
「さあ、私は存じませんわ」
笑顔で答えるラクス。その表情には一点の曇りも無いが、アスランにはその笑顔がどうにも疑わしく思えた。時折見せる怜悧なラクス。あの表情はどういう時の彼女なのだろうか。
部屋を出るとき、アスランは意を決してラクスを正面から見た。そう、キラと戦う時の以上の勇気を総動員したのだ。
「ラ、ラクス」
「はい？」
ラクスは妙に緊張しまくっているアスランを不思議そうに見ていたが、いきなり目の前のアスランが決意の表情で自分を抱き寄せた事に驚いてしまった。そのままアスランの顔が近づいて来て、自分の唇を奪ってしまう。ラクスは目を見開いてアスランの意外な行動に驚いていたが、すぐに目を閉じると自分もアスランの背中に腕を回した。
暫くしてから、ようやく２人は見を離した。ラクスは暫し夢見ごこちでぼんやりしていたが、我に帰ると少し顔を赤くしてアスランを見る。アスランの方は、こちらは意外と冷静なようだった。
「･･････今日は、何時になく積極的ですのね？」
「甲斐性無しだなんて言われてしまいましたから」
どうやら、気にしてる事を言われて、流石に奥手なアスランも自分から動かなくてはと考えたらしい。もしかしたら、アスランは初めてラクスをリードできたのかもしれない。ラクスは少し嬉しそうにアスランを見ている。そして、アスランは笑顔でラクスの部屋を辞した。
ラクスの部屋を後にしたアスランは、自室に戻って父の言葉を思い出していた。ＮＪＣ装備の新型ＭＳとジェネシス。連合に対する切り札として開発されていると言っていたが、父はこれの開発には本音では反対だと言っていた。その為にも勝たなくてはいけないと言っていたのだが、ヨーロッパでの敗北はこの父の目的から大きく後退するものだろう。もしこれらの兵器が完成し、戦場に投入されるようになれば、その惨状は計り知れないものとなる。
そして、ラクスは何を考えているのだろうか。彼女のオーブ訪問に、アスランはシーゲルとラクスの企みがあるような気がしていた。シーゲルは、ラクスは何を考えているのだろうか。なにをしようとしているのだろうか。
「シーゲル様は早期講和を主張しておられるから、大体想像は付く。だが、ラクスは。ただのシーゲル様の使いなのか。それとも、彼女は彼女で別の思惑があるのか？」
アスランはラクスの持つ２面性に気付きはじめていた。時折見せる気丈な部分がそれだろう。そして、そのラクスは何をしようとしているのか、それがアスランには分からなかった。
「そうですか、やはりキラ様はＳＥＥＤを持つ者。彼なら私の理想達成の力となれる。アスランと彼を是非とも味方にしたいものですね」
ラクスは、彼女の表の顔しか知らない者が見たら自分の目を疑うであろう表情、何かを企む表情を見せた。キラとアスラン、２人を手中にして彼女は何をしようと言うのだろうか。彼女の理想とは、そしてＳＥＥＤと何なのだろうか。
そして、扉をノックする音が響いた。ラクスの表情に警戒の色が走る。
「どなたですか？」
「私です、ラクス様」
声の相手は自分の直属とも言える部下、マーティン･ダコスタだった。今回は自分の護衛をしてくれている。ラクスは扉を開けて彼を中にいれた。
「どうでしたか、ダコスタさん？」
「はい、アフリカ共同体を通じて大西洋連邦上院議員、カフス・ジグマール議員と接触することに事に成功しました」
「それで、成果は？」
「大西洋連邦内にも和平を望む声はあるようですが、やはりブルーコスモス細胞の侵食があり、なかなかに難しいと」
「･･････父もそうですが、どうして誰も事を進めるのが遅いのでしょう。急がなければ、それだけ犠牲となる人が増えるというのに」
プラント内部の穏健派は大きく分けて２つの勢力に別れている。シーゲルを中心とする、プラント内に講和に向けた流れを形成して、地球との戦争を終わらせようとするクライン派と、ラクスを中心とする過激な行動さえ辞さないラクス派である。穏健派と言うとシーゲルであり、ラクスはその娘でしかないと思われがちだが、ラクスは独自に暗躍を繰り返していたのである。すでにその活動の根はプラントのあちこちに広く張り巡らされ、クライン派よりも遥かに活発に活動している。
この動きに苦々しい思いを味わってるのがシーゲルだ。老練な政治家であるシーゲルには、ラクスのやり方が余りにも過激で急進的に映るのだ。政治とは力だけでどうにか出来るものではない。高い所から理想論を振りかざすだけでは人々は動かないのだ。ラクスは確かに国民的アイドルだが、指導者としての信用ではシーゲルやパトリックの足元にも及びはしない。ラクスの言葉がパトリックの言葉を超えることは有り得ないのだ。例えそれがどれほど清廉なものであれ、実績という壁には勝てはしない。
だが、ラクスはそんな父の心配など知りはしない。彼女はこの戦争を一刻も早く終わらせようと思っているから。戦火に散るものを一人でも多く救う為に。自分の信じる未来の為に。
何と言うか、久しぶりに正気なミリィを見たような気がするｗ でもニコル、なんか可哀想だ
フレイ様はキラへのメッセージに何を見たのか。そして何を伝えたいのだろうか。本編と違って出撃前には伝えられそうだけど
でも、運命は変わりそうも無いから、ＭＩＡ一直線かなあ･･････
>>chain
頑張れイザーク、どんなに不利でも、どんなにボコボコにされてもゾンビの如く立ちあがってくるお前が大好きだぞｗ
とりあえず部下を守ろうと頑張る姿勢は良いですね。
エザリアさん、やっぱ投獄されてるんですね
新展開ｷﾀｰ!!
毎日楽しみにしてますのでがんばってくださいな。
私は、キラを求めて艦内を彷徨っている。
キラに話せる言葉がある。ただ、どんな風に話すのかまでは考えていない。
それを少しずつ考えながら、艦内を歩き回る。
食堂に通りかかった。そう言えば、昼食は部屋にあったスナック類だけで、
まともに取っていない。さすがに、お腹が空いている。
中では、人だかりがしている。そっと覗いてみると、
ヘリオポリスのみんなが、整備兵を交えて談笑していた。
話の中心は、トールとミリアリアらしかった。どうやら、トールが
戦闘に出たらしい。その、トールの戦果を皆でたたえている。
みんなは、既に艦のスタッフとして溶け込んでいる。
「すごかった。見直したぞ」整備兵の一人。
「いつの間に、あれだけできるようになったんだよ」とサイ。
「シミュレーションとか、ずいぶんやったからな」とトール。
「キラの援護で、エール換装するとことか、かっこよかったわよ」とミリアリア。
「なあに、キラも手伝ってくれたし楽勝楽勝」トールは得意満面だ。
「でも、トール、調子に乗りすぎよ。私、最初、すごい心配したんだから」
「大丈夫だよ、心配無いってミリィ」
気づかうミリアリアの肩に、トールが優しく手をかける。
「お熱いねぇ」皆が囃し立てる。
仲睦まじい二人。屈託なく話す二人。祝福されている二人。
私は、キラと、こんなに明るく話したことは無い。皆に祝福されたことは無い。
そして、今は、キラとは別々だ。私、二人に嫉妬している。
「キラ…」私は一人呟いた。
いや、まだ、私から話せる言葉があるはず。
これで、キラが帰って来るという保証は無いけど、言うべき言葉が。
「そう言えばキラは？」ミリアリアが聞く。私は耳をそばだてる。
整備兵の一人が答える。
「ヤマトなら、ストライク降りた後、どっか行っちまったよ。部屋じゃないの。
でも、あいつな、俺達がせっかくブリッツ落としたって祝ってるのに、
不機嫌な顔して、行っちまうんだもんな」
「やめとけよ、フラガ少佐も言ってただろ。あいつ疲れてるんだって」
「だけどな」
「俺はオーブで、ヤマトの仕事見てたけど、半端な量じゃなかったぞ。
出港前日だって半徹夜に近かったし、それからすぐに出撃だろ。無理も無いって」
「それは分かるけど。せめて、ありがとうって言って欲しかったよ。
俺、あいつ頼りにしてるから」
整備兵達から見たキラ。キラは既に、この人達にも期待されている。
「え、アンタは？ ヤマトの…」
そのとき、整備兵の誰かが、食堂の入り口から覗きこむ私に気がついた。
一斉に場が静まり返る。
私に、視線が注目する。私は、いたたまれない気持ちになる。
私は自分が、みんなから取り残されてしまっていることを痛感した。
思わず、走り去ろうという衝動に駆られる。
私は辛いことがあると、すぐに、その場を逃げ出してしまう。
でも…
私は無言の中、ゆっくりと食堂に入り、食事を取りに進む。汗ばんでくる手を握り締める。
ヒソヒソ話が聞こえる。
「おい、あの子が一人で、なんでここにいるんだ…」
「フレイ、どうしたんだ」
「フレイ、キラと喧嘩しているらしいの」
私は、サンドイッチとジュースのパックを取ると、振り返って、静まり返った中で言った。
「ねえ、キラ探してるの。どこにいるか知らないかしら？」
みんな黙っている。サイは、あの冷たい目を私に向けている。
トールはミリアリアの方を向いたまま。カズイは、落ち着かないようにキョロキョロしている。
ミリアリアはキッと、私を見据えている。
「ねえ、お願い、探してるの、本当に知らない？」
整備兵の一人が重い口を開いた。
「更衣室に行ったのは見たよ。部屋じゃなけりゃ、仮眠室じゃないか」
「ありがとう。行ってみるわ」
私は答えると、ゆっくり部屋を出て行った。
部屋を出た途端、騒がしい声が復活した。その声を聞いて落ち込んで行く心を、
私は奮い立たせる。
泣いてちゃダメ。強くならなきゃ。私はキラに会うんだから。
夕食の時、食堂に、ヘリオポリスのみんなと若い整備兵が集まっていた。
皆、トールの初戦果を祝ってのことだった。
「すごかった。見直したぞ」整備兵の一人。
「いつの間に、あれだけできるようになったんだよ」とサイ。
「シミュレーションとか、ずいぶんやったからな」とトール。
「キラの援護で、エール換装するとことか、かっこよかったわよ」
私は、自分とキラ、トールの三人の息のあった、かけ声を思い出して余韻に浸る。
「なあに、キラも手伝ってくれたし楽勝楽勝」トールは得意満面だ。
私はニッコリ笑う。ああ、私は幸せだ。
「でも、トール、調子に乗りすぎよ。私、最初、すごい心配したんだから」
「大丈夫だよ、心配無いってミリィ」
トールは、私の肩に優しく手を回してきた。こうするのも、ずいぶん久しぶりの気がする。
「お熱いねぇ」皆が囃し立てる。
皆の声を聞きながら、私は、誇らしい気分になる。本当はキラを想っていても、
トールは、その替わりだということが心の中にあっても、祝福されることは、
悪い気がしない。今まで、恵まれなかったんだから、これぐらい、いいはずだ。
これで、キラも一緒に居てくれたら。
「そう言えばキラは？」私は、キラの話題を出してみる。
整備兵の一人が答える。
「ヤマトなら、ストライク降りた後、どっか行っちまったよ。部屋じゃないの。
でも、あいつな、俺達がせっかくブリッツ落としたって祝ってるのに、
不機嫌な顔して、行っちまうんだもんな」
「やめとけよ、フラガ少佐も言ってただろ。あいつ疲れてるんだって」
「だけどな」
「俺はオーブで、ヤマトの仕事見てたけど、半端な量じゃなかったぞ。
出港前日だって半徹夜に近かったし、それからすぐに出撃だろ。無理も無いって」
「それは分かるけど。せめて、ありがとうって言って欲しかったよ。
俺、あいつ頼りにしてるから」
整備兵達から見たキラ。キラは既に、この人達にも期待されている。
キラは、何か落ち込んでいるらしい。疲れてるのよね。
決して、あの子との喧嘩を気にかけている訳じゃ無いよね。
後で、キラを探そう。私が、キラを癒してあげよう。あの子に代わって。
「え、アンタは？ ヤマトの…」
そのとき、整備兵の誰かが、食堂の入り口を見て言った。
何、あの子が食堂を覗いてた。何してるのよ、あの子。立ち聞きなんて、いやらしい。
一斉に場が静まり返った。みんな、あの子に、視線が注目する。
あの子は、辛そうにうつむいている。もう逃げ出す寸前の顔をしている。
いいのよ、どこかへ行ってしまいなさい。ここは、あなたの来る場所じゃ無いのよ。
私達の場所だから、私とトールの場所だから。
そのうちにキラも、こちらへ来る。あなたなんてもう、キラのところへ来れなくなるのよ。
さあ、とっとと、どこかへ逃げてしまいなさい。
私の予想を、あの子は覆した。
あの子は、なんと食堂に入ってきた。ゆっくり食事を取りに進む。手をぐっと握り締めている。
沈黙の中、ヒソヒソと隣と話をする。
「おい、あの子が一人で、なんでここにいるんだ…」
「フレイ、どうしたんだ」トールがそっと聞いた。
「フレイ、キラと喧嘩しているらしいの」私はトールに伝える。
それを聞いたサイは、うつむいて黙っている。
あの子は、サンドイッチとジュースのパックを取ると、振り返って、静まり返った中で言った。
「ねえ、キラ探してるの。どこにいるか知らないかしら？」
みんな黙っている。
サイは、あの子を見ている、その目は、私が見たことも無いような厳しい目。
トールは私の方を向いたまま、場の雰囲気に緊張している。
カズイは、落ち着かないようにキョロキョロしている。
私は、あの子をキッと見据えている。私も答える気は無い。今さら何言ってるのよ。
あなたの方が、ここから消えなさい。楽しい場をぶち壊して、空気の読めない子ね。
さっさと、どこかへ行きなさい。
「ねえ、お願い、探してるの、本当に知らない？」なおも、あの子が言う。
整備兵の一人が重い口を開いた。
「更衣室に行ったのは見たよ。部屋じゃなけりゃ、仮眠室じゃないか」
「ありがとう。行ってみるわ」
あの子は答えると、ゆっくり部屋を出て行った。
あの子が部屋を出た途端、食堂に騒がしい声が復活した。
みんな、あの子への嫌な感情を口々に話する。
「ああ、緊張した。俺、苦手だよ、あの子」
「ヤマトって、あの子囲ってんだろ。もうちょっと愛想のいい子だといいのに」
「顔は可愛いのにな」
「でも、ヒドイらしいぞ。掃除は手抜きするし、洗濯物ちょくちょく忘れるし」
「この間なんか、物資搬入チェックの仕事サボってたの、叱られた途端に、泣いて逃げ出したそうだぜ」
「最低だな」
「あいつ、ヤマトのフィアンセって立場に思い上がってるんだよ」
「でも、喧嘩してるって」
「それで、追いかけられてるのかヤマト」
「痛い女だな」
私はサイに声をかけた、
「ごめんね、みんなフレイのこと悪く言って。悪気は無いんだと思う」
「いいさ、俺には関係ないさ。もう、キラの問題なんだ」サイは表情を変えずに答える。
「でも、フレイ、あれは無いよね。みんな楽しくしてたのに」カズイが言う。
「そうだな。多分、そういう子だったんだよフレイは。もう、俺の知らない、ずっと前から」
サイは答えた。 もう、サイは、あの子を完全に吹っ切ったようだ。
でも、あの子とサイは、小さい時からの婚約者だったから、その前なんて…
疑問を持ちながらも、私は、サイの言葉尻に乗ったように、つい、あの子への憎々しげな感情を吐露してしまう。
「そうよ、フレイって、昔からああなのよ。
あの子って、いつも人を不愉快にするのよ。いつもいつも…」
「ちょっとミリィ…」トールが、らしく無い私に気づいたように声をかける。
言われて、私は表情を戻す。でも、今のが私の本当の気持ち。私はいつも仮面をかぶっている。
「キラ、大丈夫かな。落ち込んでるところに、フレイが、また色々と
まずいこと言わなきゃいいけど」トールがキラを心配したように声を出す。
「私、キラの様子見てくる。なんかフレイが変なことしないように」
私は、立ち上がって、食堂を出て行った。
食堂を出て通路を歩きながら、私は、少し違和感を覚えていた。
すっかり逃げ出すと思っていた、あの子の、無理矢理、私達の場に入り込んでくる行動。
キラの居場所を知るということのために、無言の視線に晒されてまで
食堂に入ってくるなんて。
それに、今までと違う、あの子を感じていた。
本編、小説とも展開を変えています。
いや、このまま食堂で食事もせずに、徹夜で歩き回ったらフレイ様、お腹空くだろうって…
でも、ストーリー的には、前回がフレイ様の転機になるのですが、書いている方は、このシーンが転機になっています。
ミリィも、この後動き始め、話は終盤の山場に入ります。
それでは。
＞＞フレイの心
キラや，おそらくは過去の自分と，まっすぐに向かい合おうとして
いるフレイ様がいい感じです．真剣なフレイ様は，なんというか，
迫力あるんですよね．
＞＞chain
イザーク，かなり成長したようですね．にしても彼は，よくよくス
トライクと，そしておそらくはそのパイロットと縁がありますね．
まだ，顔の傷はそのままにしてあるのでしょうか？また負けたりし
たら傷が疼きそう．
＞＞流離う翼たち
＞安心しましたわ。あなたには浮気出来るような甲斐性は欠片も無
いと...おっとりモードを，半分だけ解除したようなラクスが楽しい
です．本編では，こういう中間的なモードは，あまり出てこなかっ
たのでは？（ダコスタ君への態度は，ちょっとこれに近かった？)
あと，他サイトのＳＳの紹介がありましたので，自分も2つほど見
つけたのを．
ttp://www.netlaputa.ne.jp/~komatsu/MAIN/
のMOBIUSと，
ttp://homepage2.nifty.com/supekter/novel.htm
の，機動戦士GUNDAM SEED Another Side Story
は，なかなかいい感じです．ただ，どちらも最近更新が無い．今度，
作者に信を送るつもりです．
「ああ、腹減ったなあ」
「アスラン、大盛りにお新香つけても良いか？」
カウンター席に座ったアスランにディアッカが問い掛ける。それを聞いたアスランがたちまち渋い顔になる。
「ディアッカ、我が隊の財政事情を知らない訳じゃないだろう？」
「アスラン、俺達は赤を着るエリートなんだぞ。なんでそこまで貧乏なんだ！？」
イザークがいきり立って詰め寄るが、アスランの隣でお茶を飲んでいたエルフィがボソリと呟いた。そのこめかみには血管が浮き出ている。
「誰かさん達が見境無く突っ込んでは機体やグゥルを壊したり、無駄弾撃ちまくるからです」
言われてギクリと身体を硬直させる人たち。口には出してないがフィリスも同じ気持ちなのだろう。エルフィの隣に腰掛けながら同じようなオーラを発している。この財政事情を誰よりも理解しているのは、ザラ隊とジュール隊の会計担当をしているこの２人なのだ。
２人に頭が上がらない両部隊の隊員（隊長含む）は、渋々と好きな席に腰掛けていった。しかし、牛丼屋のカウンターにザフトの赤服が５人も腰掛けているというのは、なかなかに壮観である。左遷された集団にも見えるが。
全員分の並盛りを注文し、お絞りで顔を拭いていたアスランは、いきなりジャックがくぐもった悲鳴のようなものを漏らしたのに驚き、そちらを見た。
「ど、どうしたジャック？」
「たい、隊長、あれ見てください」
指指された所を見れば、連合軍の制服を着た士官達がテーブルに向っている。その中にキラとフレイの姿を見つけてアスランは硬直してしまった。
「あ、あの２人は･･･････」
「知っているのか、アスラン？」
イザークの問い掛けに、アスランは慌てて答えを誤魔化した。
「い、いや、確か足付きの中にあんな連中がいたなと思って」
「あ、足付きだと。じゃああいつ等は」
イザークが立ち上がろうとするが、それをディアッカとミゲルが押さえ込んだ。
「まて、落ち付けイザーク」
「ここは中立だ。ザフトと連合の士官が喧嘩したらただじゃ済まんぞ」
「は、離せえ。俺はあいつ等に部下を殺されたんだ〜！」
小声で暴れるという器用なことをする３人。だが、そこにフィリスの落ち付き払った声が流れてきた。
「･･････隊長、今以上にお小遣いを減らされたいんですか？」
その声にピタリと動きを止めるイザーク。フィリスに向けられた顔には深い悲しみと絶望があった。
「ま、待ってくれフィリス、これ以上減らされたら俺はどうすれば？」
「知りません。文句があったら溜まってる書類でも片付けてください」
ピシャリと言われて、イザークは項垂れながら椅子に腰掛けた。どうやらジュール隊の権力構造のＴＯＰにいるのはフィリスであるらしい。
「今度はなんだ、エルフィ？」
「た、隊長、あの人達、特盛りを食べてますよ！」
「なんだと？」
見れば確かにキラ達は特盛りを食べている。自分達は並盛りなのに。その時、連合の士官の１人がこちらを見てニヤリと笑った。確かあいつは、足付きでラクスを返してもらう時に会った変わった男。
アスランは持っていた割り箸を持つ手に力を込めすぎ、圧し折ってしまった。
「く、くううううう」
「隊長、どうしますか？」
「アスラン」
ジャックとミゲルがじっと自分を見ている。イザークたちも同様だ。そして、アスランはエルフィとフィリスをチラリと見た後、決断した。
「すいません、卵を！」
「「「「「「「卵！」」」」」」」
「あ、はーい、卵８ですね」
店員の声が返ってくる。それでとりあえずは落ち付くかと思ったのだが、今度はニコルが声をあげた。
「ア、 アスラン、あの人達は味噌汁にお新香まで付けてますよ！」
「くそっ、こっちはすでに基本となる丼で差をつけられている･･････」
アスランは悔しそうに唇を噛む。すでに連合士官達はキラやフレイも含めて全員がニヤリ笑いを浮かべている気がする。いや、あのふざけた男の前にいる、長身の軽そうな男もニヤニヤ笑っている。
「アスラン、このままでは負け犬だぞ！」
「隊長！」
「決断を！」
イザークが、ジャックが、ニコルが緊迫した空気を纏って詰め寄ってくる。他の奴はどうしたのかと思って視線を転じれば、エルフィは蒼い顔をしてお金を数えてるし、ミゲルは手帳を手に連合士官にいる３人の女性をジッと見ている。時折漏れて来る「バスト８５以上は確実か････」などという呟きはなんだろうか。そしてフィリスは我関せずとばかりに牛丼を食べている。ディアッカも牛丼を食べているのだが、育ちの差か食べ方が雑だ。
アスランはキッと顔を上げると、無茶な事を叫んだ。
「ビフテキ８つ！」
「･･･････そんなのねえっすよ」
即座に返って来た店員の答えに、アスランは叫んだままの姿勢でピシリと硬直してしまった。イザークとジャック、ニコルも同じく真っ白になっている。エルフィは金額計算が出たのか、泣きながら並盛りを突っついてるし、ミゲルはなにやら小型カメラの画像を確認している。
そしてディアッカは食べ終えたのか、フィリスの前で手を合わせて「もう一杯」と拝み倒しているが、フィリスは涼しい顔で無視していた。
なんとも滑稽なザフトメンバーを見遣りながら、フラガは特盛り片手に面白そうに呟いた。
「ふっ、若いな」
自分でもカッコイイと思い、少し酔っているフラガ。自分の丼からマリュ−とノイマンが肉を奪っていくのにも気付かないで１人呟いている。因みに、お新香はキラとフレイが奪っている。ナタルだけは何もしていないが、止めないから同罪だろうか。
この物語はフィクションであり、流離う翼たち本編の展開とはなんの因果関係も無い、はずですｗ
時折気紛れで書くと思う不定期シリーズですので、続きは余り期待しないで下さい
>>オーブ・フレイの心
フレイ様、逃げなかったのは偉いです。でもサイ、君は何を知ってるんだ？
ミリィはフレイ様の変化に敏感ですね。彼女はどう動くのやら
ザラ隊の面々が前線に到着した時、イザークのデュエル改は青いストライクとビームサーベルによる激しい打ち合いを繰り広げていた。しかし、様子からではイザークがやや劣勢に追い込まれているようだ。
｢あいつ・・・、《アサルト》に似てる。｣
目の前でデュエル改と戦うストライクの姿が自分の乗機、アサルトに酷似していることに気付いたクリスが感想を口にする。その一方でアスランは彼が気にとめたことよりも、その敵の動きを見てデ・ジャ・ブのような感覚に襲われた。
（・・・どこかで、見たことが・・・。）
それがいつ、どこで、誰なのかまでは分からない。しかし、自分はかつてあの敵と戦ったことがある。それも幾度と無く・・・。
｢イザークさん！｣
｢！クリスか！なかなかやっかいな奴だ。気を付けろ！！｣
クリスのアサルトがデュエル改を援護するべくビームライフルを放つ。それに気付いたストライクはデュエル改から一旦距離を取り、回避行動に移る。
｢逃がすかぁ！！｣
その機を逃さずイザークがデュエル改の両肩に搭載されたレールキャノンを発射する。その攻撃を避けながら、ストライクは徐々に距離を離していく。その時イザークは、後方で動きを止めたままのアスランに気がついた。普段の彼らしくない行動に、イザークが声を荒立てる。
｢何ぼぉーと突っ立ってるアスラン！！｣
イザークの罵倒の声がコクピットに響き渡る。それでもアスランは動こうとはしない。その時彼は、自分の記憶の何処かにある敵の正体を必死に探し出そうとしていた。そして、ようやくその答えにたどり着いた。しかしそれは、彼にとってあまりに衝撃的で残酷なものだった。
（・・・まさかそんな。・・・いや間違いない。）
次の瞬間ストライクに更なる攻撃を加えようとしたイザークの耳に、アスランの緊迫した声が届く。そしてイザークは、アスランが口にした意外過ぎる言葉に驚愕の声を漏らした。
｢よせ、イザーク！その機体にはキラが乗っている！！｣
｢何だとぉ！！｣
（コイツが・・・、キラ・ヤマトだとぉ・・・！？）
イザークがそう考え攻撃の手を緩めてしまった隙に、青いストライクは新たな獲物に狙いを定める。その先には、クリスの乗るアサルトの姿がある。突如一直線に自分に向かって来る敵に、クリスが戸惑いを見せる。
｢行ったぞ！クリス！！｣
｢こっ、こいつぅ！！｣
敵を迎え撃とうとビームライフルを乱射するアサルト。だが、やはり敵にシールドを使わせることさえできない。その間、ストライクは刻々とアサルトに迫って来る。そして二機の距離がある程度まで狭まった時、ストライクは突然視界から姿を消した。
｢なっ！？どこへ・・・。｣
敵を見失ったクリスがその姿を探そうとした時、彼は一瞬目の前の視界が暗くなる感覚を覚えた。そして次の瞬間、コクピットを激しい衝撃が襲った。
｢うわあぁぁぁっ！！｣
｢クリスゥー！！｣
ストライクの放った強烈な飛び蹴りがアサルトの腹部に突き刺さり、その一撃でアサルトは木々を薙ぎ倒しながら後方に吹き飛ばされた。その動きに、イザークもまた自分の記憶に何か引っ掛かるものを感じた。そして、かつてストライクとの戦いの中で自分の顔に刻まれた傷が再び疼き始めたことにも気付いた。
（チィッ！あいつまさか本当に！？）
先ほどのアスランの言葉が嫌でも現実味を帯びてきたことを実感するイザーク。もし本当に目の前の敵がキラ・ヤマトだとしたら、状況は格段に悪化する。彼を敵に回すということは、それだけの危険性を秘めていた。
｢クリス！大丈夫か！？｣
｢・・・。｣
アスランの呼びかけにクリスは応答しようとしない。どうやらさっきの一撃で完全に気を失ったようである。そんな彼に止めを刺そうと、ストライクが再びアサルトに向かって行く。その様子を見たアスランとイザークが、一気に焦燥にかられる。
｢クッ！この距離では！！｣
イザークが悔しそうに呟く。そんな彼を尻目に、ストライクは突撃を止めようとはしない。そんな中、アスランの脳裏にかつての仲間達の顔が浮かんだ。ニコル、ミゲル、ラスティ。皆彼の目の前で命を落とし、散っていった者達。そして今まさに、再び彼の仲間が命を失おうとしている。もうあんな辛い思いは二度としたくない。その思いと共にアスランが叫んだ。
｢やめろぉぉぉっ！！！｣
その瞬間、アスランの乗るイクスがストライクの前に立ちふさがり、アサルトを狙う一撃をシールドで防いでいた。そのままアスランは、ストライクのパイロットに通信を試みようとチャンネルを合わせた。
｢キラッ！！｣
（・・・アスラン？）
ストライクのパイロットがその声を聞き、反応を見せる。青いストライクのパイロット、それは紛れも無くセラフィム隊が捜し求めていたキラ・ヤマトその人であった。
｢艦長！ここはひとまず撤退を！｣
｢分かってるわ。モビルスーツ部隊に通達！本艦はこれより前方の敵機に対しゴットフリートを発射する。各機はそれと同時に撤退し、本艦に帰還。全機回収後、すみやかにこの空域から離脱します！｣
マリューの指示に従い、砲撃手がゴットフリートの狙いを定める。その先では、ストライクとイクスの対峙が続いていた。
｢キラッ！俺だっ、アスランだっ！！聞こえているだろう！？｣
アスランの必死の呼びかけに、一瞬ストライクの動きを止めるキラ。しかし彼はアスランの声を聞いてもなお、攻撃の手を緩めようとはしない。アスランの呼びかけが続く。
｢俺達はお前とフレイ・アルスターを助けに来たんだ！それなのに何故お前がそんなものに乗って俺達を襲う！！｣
相手の顔が確認できるわけではない。それでも、アスランは目の前にいるモビルスーツのパイロットがキラであることを確信していた。
｢もうやめてくれキラ！俺達が戦う理由なんて・・・。｣
｢そこまでだ、アスラン！！｣
｢何故だイザーク！？目の前にキラがいるんだぞ！！｣
キラを説得している自分に横槍を入れたイザークにアスランが問い詰める。
｢撤退命令だ。もうすぐ敵の増援が来る。セラフィムがゴットフリートを撃った隙に後退するぞ。｣
｢ッ！！しかし！！｣
｢それとも貴様は、ここで自分と一緒に部下を死なせたいのか！？｣
｢！！｣
イザークの言葉にハッとするアスラン。そう、今ここには動けない仲間がいる。その仲間を頬って置いて、この場に居続け危険に曝すなど指揮官として、いや一人の人間として失格である。冷静さを取り戻した彼はイザークの言うことに従うことにした。
｢・・・分かった。｣
｢それでいい。クリスのことは俺にまかせろ。｣
ストライクを引き剥がし、撤退を開始するアスランのイクス。動けないアサルトを抱えたデュエル改といった他の機体もそれに続く。追撃しようとしたキラであったが、セラフィムから放たれたゴットフリートの艦砲射撃がそれを妨げた。
（キラ・・・、何故だ・・・。）
アスランは後ろ髪を引かれる思いで友がいる戦場を後にした。
>ラクスの言葉がパトリックの言葉を超えることは有り得ないのだ
含蓄深い言葉ですね。ラクスもなんかやんちゃな感じですね。急進派とし
て大人達をかき回してくれそう。でも子供の火遊びっぽくて、ちょっと怖いかも。
>>オーブ・フレイの心
フレイ様の復活する姿が良いです。メールも｢君は戦いの中にいるべき人では無い」
とか無茶言ってますが、若モン特有の潔癖な感じが出てていいですね。
>>ミリアリア
あの食堂シーンがこんな惨劇を生む場面にリファインされてしまうとはw
>「痛い女だな」
AAのクルーはキツイですね。でもミリアリアもフレイ様の変化に
ちょっと気づいたみたいだし、どうでてくるんでしょうか。楽しみです。
>>流離う翼たち・お約束劇場
>割り箸を持つ手に力を込めすぎ、圧し折ってしまった
牛丼をMS戦闘に置き換えても、なんとなく話が成立しそうで怖い。
>>chain
さすが元主役という感じでなんでしょうか。敵?味方？どうなるか分か
りませんが楽しみですね。エザリアも可哀想ですね。とはいえ憔悴して
も絵になりそうですね。
ちょこんとベッドの上に体育座りしたキラは、胸の内の枕を、それがまるで彼女
の想い人であるかのように、愛しそうに抱きかかえる。
やがて、キラの部屋の扉が、控え目にノックされる。
「は〜い、開いてますよ」
キラのハミングするような返事と、ほぼ同時にドアが開く。
愛しい男（ひと）の笑顔を予測し、期待に胸ときめかしたキラの表情が、一瞬で凍りつく。
「フレイじゃなくて、残念だったわね、キラ？」
封印された禁断の開かずの扉から出現したのは、彼女の王子様ではない。
腰まで届く茶色の髪に、眼鏡の奥に暗い情念を抱えた魔女の姿だった。
「サ…サイ！？」
予期せぬかつてのゼミ仲間の来訪に、キラは晴天の霹靂そのものの表情を閃かす。
後ろ手でドアを閉めたサイは、さらに邪魔が入らないように鍵を掛けて、
簡単な密室状況を制作する。
「で…出て行ってよ、サイ！ここは私の部屋なのよ！」
怨敵と二人っきりの閉塞空間に閉じ込められたキラは、本能的に身体を萎縮させたが、
何とかギリギリで踏み止まって、虚勢を張る。本来、ここは彼女のテリトリーのはずなのだ。
「私はキラに用件があってここに来たのよ、いけないかしら？」
先住権を主張するキラの正論を、別の後付け理論で粉砕する。サイは無表情の
ままキラに向かって一歩を踏み出し、キラは反射的にベッドの上を後ずさりした。
「わ…私は、これから人と会う用事が…」
「知っているわ、フレイでしょ？こんな遅い時間に、異性と二人っきりで部屋に篭って、
一体何をするつもりだったのかしら？いけない子ね」
サイはキラを嘲笑するように口元を歪める。情事の予定を見抜かれていたキラは、顔を
真っ赤に染める。また一歩、サイが距離を縮めてきたが、今度はキラは後退しなかった。
不撤退の勇気故ではなく、既に壁際まで追い詰められていて、退路がなかったからだ。
「この前は、本当にお世話になったわね、キラ？」
「こ…この前って、何よ！？」
「うふふっ、判っている癖に？私が主役の舞台に強引に乱入して、私を主演女優の座
から無理やり引き摺り下ろしたじゃないの。よくも、今更、しらばっくれられるわね？」
一つ一つ丁寧に逃げ道を潰され、もはや虚勢を張る余裕もなくなり、脅えるキラの泣きっ面
を嗜虐的に見下ろしていたサイは、とうとう目と鼻の先のベッドの上まで乗り込んできた。
「私は、その時のお礼をしに、ここに来たのよ。分かるでしょ？」
サイが軍服の胸元をはだける。そこから覗く金属片が、幽かに蛍光灯の光で反射され、
眩しさに一瞬、キラは顔を背ける。次の瞬間、キラの表情が完全に凍りついた。
サイの利き腕には、黒光りするような出刃包丁が握られている。
「…………う…嘘だよね、サイ？」
泣き笑いの表情のキラに、サイの顔から完全に笑みが消える。
「あなたが悪いのよ、キラ。自然の摂理に逆らう、遺伝子操作された薄汚いコーディネイター
の分際で、身の程知らずにも、私からフレイを奪おうとするからよ！」
まるで、かつてのアンチ・コーディだったフレイが憑依したかのような口調で、
サイは瞳に狂心の炎を宿らせて、魔術の詠唱と共に、キラに馬乗りになる。
「青き清浄な世界の為に！」
「ひぃっ！？」
サイが唱えた言霊は、キラの心と身体を金縛りにする魔法の呪文だ。MS同士の戦いでは、
数多の戦闘のプロを葬り去ってきたキラが、生身で、素人同然の女の子に抑え込まれた。
「ひっ……ひぃ……たす…助けてぇ……………」
「ねぇ、キラ。一つ聞いてもいいかしら？あなた、はじめてフレイに抱かれた時、
処女だったんでしょ？その時、破爪の赤い血は流れなかった？」
ひたすら助かりたい一心で、涙目でコクコク肯くキラに、サイは満足そうな笑顔を向ける。
「そう、良かった。コーディネイタにも血が流れていてくれて…。
ということは、刃物で刺されれば、真っ赤な血が出て死んでくれるということよね？」
「！？」
「うふふっ…、これで、フレイは私の物よ。くたばれぇ、コーディネイタァー！！！」
両手で包丁を握りこんで、大きく振り被ったサイは、そのままキラの胸を串刺しにする。
キラの瞳には、返り血を浴びて真っ赤に染まった、鬼のようなサイの姿が映し出されていた。
「いやあぁあぁぁ……！！！！！」
「おい、キラ！どうした！？しっかりしろ！」
彼の寝ている隣でずっと魘され続け、突如、大きな悲鳴を叫んだキラの尋常でない
様子を心配し、フレイがキラの肩を強く揺さ振りながら、ペチペチと頬を叩く。
そのフレイの行為が、キラを魔女の呪縛から解き放ち、彼女の魂を悪夢から
現実世界へと引き戻した。
「フ……フ…レ……イ……………？」
涙と汗でクシャクシャになったキラのぼやけた視界に、彼女の想い人の温かい笑顔が
飛び込んできた。呆けていたキラの思考が徐々に鮮明になっていく。
「良かった、キラ。目を覚ましてくれて…。悪い夢を見ていたんだね？」
「ゆ………ゆ…め……？あれは、夢だったの？」
一枚のシーツを仲良く共有する、一糸纏わぬ自分たちのあられもない姿に、キラは本物
の世界を思い出した。夕食後、キラのさり気無いモーションを理解したフレイは、
一時間と間を置かずにキラの元を訪ねてくれて、それから二人は人知れず情事へと
励むことになる。先に精根尽き果てて、天国へと昇天させられたはずのキラだったが、
それから魔女の作り出した悪夢の檻に捕まり、急転直下、地獄へと叩き落されたのだ。
「どんな夢を見ていたの、キラ？」
フレイは軽くキラを抱き寄せ、慰めるように彼女の耳朶の側の、
焦茶色の短い髪の汗で湿った先端の部分を、優しく撫でる。
「ご…ごめん、フレイ。わ……忘れちゃった…」
キラの不安の種を取り除こうと、敢えて抜本治療を試みようとしてくれたフレイに、
彼女は後ろめたそうに顔を背ける。
悪夢の内容は、一文字一句間違えようがないほど、未だに鮮明に覚えているが、
まさか、フレイの件で恨まれたサイから刺し殺された…などと言えるわけがない。
「そう……」
力になれず気を落としたフレイの姿に、申し訳なさそうに瞳を揺らしていたキラは、
ふと今の自分の状態に気づき、慌ててシーツを独り占めにすると、フレイから身体を離した。
「キ…キラ？」
「お……お願い、フレイ。見ないで、触らないで、近寄らないで……」
シーツに包まったキラは、瞳を潤ませながら、愛くるしい表情でフレイを睨んだ。
ふとキラから微かな異臭を嗅ぎ取ったフレイは、胸板に付着した自分の物でない大量の
体液の存在に、キラの変化の理由を目敏く察した。激しい情事に加えて、先の悪夢が
上乗せされ、ずぶ濡れのように汗びっしょりになったキラは、今の自分の体臭をフレイ
に嗅がれるのを、嫌がっているのだ。
「シャワーでも浴びてきたら、キラ？」
フレイはクスリとおかしそうに微笑むと、キラは恥ずかしそうにコクリと肯き、軍服
を纏いはじめる。汗でシャツが素肌に張り付いて、ベタベタして気持ち悪い。
「我が侭ばかり言って、ゴメンね、フレイ…」
キラは、替えの着替え一式を、汗が付着しないように大き目のタオルで包んで
抱きかかえると、一言フレイに謝罪してから部屋を出て行った。
部屋にシャワー室でも完備されていれば、情事に耽るには便利この上ないのだが、
ここはラブホテルではなく、本来、武骨な軍船の中なのだから、不便は致し方ないだろう。
「なんで、こうも極端なのかね…」
事に及んでいた時は、あれだけ激しく善がり狂っていた癖に、一旦熱が引くと、
妙にしおらしくなってしまう乙女心の摩訶不思議に、フレイは軽く肩を竦める。
経験上、女の子は情事の後になると、何故か、裸体を鑑賞されたり、臭いを嗅がれたり
するのを、極端に恥ずかしがるものらしい。
男と女はロジックではないので、フレイは一応は、その想いを尊重する構えではいるが、
ロマンチスト（浪漫主義）の対極に位置する彼には、その矛盾した乙女の心情は
理解と共感の遥か彼方にあった。
羞恥心に引っ張られて、勢い勇んで部屋から飛び出したことを早くも後悔しはじめる。
大量の汗やその他の体液を身体中に張り付かせた今の状態は、まるで素っ裸で
衆人環視の前に放り出されたような錯覚をキラに与え、もし誰かＡＡのクルーとでも
遭遇しようものなら、恥ずかしさでショック死してしまうかも知れなかった。
「こんなことなら、フレイに甘えて、慰めてもらえば良かったかな」
そう考えてはみたものの、キラは、繊細な乙女の事情と、悪夢のトラウマの癒やし
とを秤にかけた結果、ロマン主義者らしく前者を選んだのだ。
悪夢といえば、もし今、サイと出会ったら…と考え、一瞬寒気を覚えたが、すぐに
その発想を打ち消した。深夜二時過ぎ、現在はヒュプノスが支配する暗闇の世界で、
当直以外のクルーは皆、寝静まっている時間帯なのだ。
この極度に限定されたタイミングで、夢の中に引き続いて、現実の世界でも再びサイ
に遭遇するなど、宝籤に当選するか、交通事故に出遭うぐらい低い確率のはずだ。
この件に限り、キラは敢えて現実主義の常識に縋ったが、この夜は、どうやら
ロマン主義に属する世界だったらしいことに、キラは後に気づかされることになる。
慎重に一つ一つの廊下の先を確認しながら、早足でシャワー室へと向かうキラは、
一度もＡＡのクルーと遭遇しなかった幸運に感謝して、最後の角を曲がった。
ようやく、シャワー室の扉の前まで辿り着いたキラはホッと安堵して、自動ドア
を開いた瞬間、表情が凍りついた。
「キ……キラ？」
シャワー室へと続く洗面所には、あろうことか、夢の中に出てきた魔女が、
キラに劣らず驚いた表情で、じっとキラを見つめている。
舞台は、砂時計一つ分、ちょうどキラが悪夢から目覚めた時間まで遡る。
自室で軽く魘されていたサイは、跳ね起きるように目を覚ました。
キョロキョロと周りを見廻したサイは、自分の現実を認識すると、先の夢の
内容を思い出す。ブルっと一つ身体を震わせ、両腕で自分自身を抱き締める
ような体勢で、強く身を固める。
「う…嘘でしょう！？どうして、私がキラを…………」
一体、いかなる奇跡の為せる業なのか、サイはキラと全く同じ時間帯に、彼女と同じ
悪夢を見て、ほぼ同時のタイミングで悲鳴を上げて、夢の世界を脱出したのだ。
映像がフラッシュバックされる。返り血を浴びて、真っ赤に染まった自分の鬼のような
表情を思い出して、サイは頭を抱え込んだ。
「ち…違うわ、私はそんなこと考えていない。キラが死ねばいいなんて、そんなこと…」
そう自分に言い聞かせようとしながらも、サイの語調がどんどん弱くなっていく。
ヒトは、他人を騙す事は出来ても、自分自身には嘘はつけないものなのだ。
確かに、サイは刃物を眺める都度、キラをコレで刺し殺せたら…と、凶器の妖しい光に
心を奪われていたし、キラが出撃する度に、撃墜されて還ってこなければ良いと、
心の片隅で考えてしまうほど、今のキラを憎んでいた。
だが、殺意を抱く事と、実際に殺人を行えるかは、全く別の領域である。
無人島でロビンソー・クルーソーのような漂流者として、単独生活を営むならともかく、
閉鎖された現実社会で、他者と折り合いをつけながら共同生活を営んでいる以上は、
程度の差こそあれ、誰だって殺したい人間の一人や二人は抱えているものだろう。
ただ、ほとんどの人間は、法制度の罰則や良心の呵責などに心を縛られ、他者への
悪意をインナースペース内に留めて、やがては雪解けの水のように殺意を氷解させ、
敵対者への害意そのものが薄らいでいくのが通例なのである。
夢は、自分の心の奥底に眠る本当の願望の無意識の発露…と分析する精神学者もいるが、
このままだとサイは、殺意を己の内に留めることが適わずに、実際に実行へと及んで
しまった殺人犯達の、不幸な少数事例に属してしまうのだろうか…。
サイは頭を振った。いくら憎いとはいえ、自分に人を殺せる勇気があるとは思えないし、
かりにその蛮勇が自分の中に目覚めたとしても、異常な身体能力を誇るコーディネイター
であるキラを、非力な自分が、夢の世界のように手玉に取れるとは到底思えなかった。
ふと、寝巻きの下に汗をびっしょりとかいている自分自身に気づいたサイは、
就寝中だったので外していた眼鏡をかけて、現在の時刻を確認する。
「午前二時過ぎ…、この時間帯なら、多分誰とも出会わないわよね…」
汗ばんだ身体以上に、汁粥状態になった脳細胞の方をリフレッシュしたいと望んだサイは、
シャワー用に、防水用のコンタクトレンズを不慣れな手つきで装着する。
眼鏡派のサイは、レンズの扱いにあまり慣れていなかった為に、痛みで涙が零れてきた。
大胆にも、上着だけ外した、上半身はシャツ一枚の軍服姿に着替えたサイは、タオルと
替えの着替えを抱えると、そのまま部屋から出て行こうとする。
現実主義と浪漫主義の中間地点に位置するバランス派のサイも、まさか、先ほどの悪夢
を共有した少女と再開するなどとは、露ほどにも思いつかなかった。
自動扉を開けて、洗面所に飛び込んだキラは、今からシャツを捲ろうとして、
可愛いお臍を丸出しにしたままの体勢で固まったサイの姿に、驚愕する。
ただ、この予期せぬ再開は、双方共にまさしく寝耳に水だったので、
驚いたのはキラだけでなく、サイの方も全く同じだ。
二人は、ほぼ同時に先ほどの悪夢の光景を思い出し、途端に逃げ越しなる。
当然、頭が命じた退避命令を即座に行動へと直結できたのは、身体能力に
優れるキラの方が先だったが、その差が、この場の力関係を決定づけてしまう。
「どうして、逃げるの、キラ！？もしかして、私に刺されるとでも思った！？」
回れ右して、脱兎のような勢いで洗面所から身を翻そうとしたキラは、思わずサイが
反射的に放った疑惑の弾丸に、影縫いの忍術を受けたかのように、その場に足を縫い付ける。
さっきまで、自身も逃げる機会を窺っていたはずのサイは、おどおどとした表情で自分を
見上げるキラの姿を弱者として認定し、キラよりも先に心の余裕を取り戻した。
「へぇー、キラは私のことを、そんな風に見ていたんだ？」
「そ…そんな…ち…違う……わ……私は…………」
激辛のスパイスを効かせたサイの皮肉に、キラは瞳を大きく震わせながら言葉に詰まる。
平気よ、大丈夫。MSに守られていない、生身のキラなんて怖くない。
私の方がキラよりも強いんだから、夢の中も…そして、現実の世界でも……。
自分の有利を確信したサイがキラの方へと近づいてきたが、キラはガクガク震えながらも、
その場から一歩も動けなかった。決して、恐怖で足が竦んだわけでもないのだが、
今逃げ出したら、それはサイの疑惑を肯定してしまうような気がしたからだ。
「随分と臭うわね、キラ。あなたもシャワーを浴びて、汗を落としに来たわけね？」
軽く犬のように鼻を嗅がせたサイは、目聡くキラの来訪の目的を看破した。
もっとも、こんな夜更けに女の子がシャワー室を訪ねる理由など、非常に限られてはいたが。
「だったら、私と同じね。女同士で今更、恥ずかしがる事もないでしょ？」
サイがキラの腕を掴むと、キラは、まるで見知らぬ人間に毛皮を撫でまわされた
臆病な子猫のように、身体中の毛をビクッと逆立てさせる。
サイはそんなキラの脅えた様子に全く頓着せずに、自分よりはるかに体力に優れる
はずのキラを引き摺るようにして、洗面所へと拉致する。
夢の世界と同じように、再び怨敵と二人っきりで、閉塞空間へと閉じ込められたキラは、
ガタガタと膝を振るわせた。
キラは、サイがまさか自分と同じ夢を見ていたなどとは、それこそ夢にも思わなかったが、
夢でも現実でも、サイよりもはるかに生存能力に優れるはずのコーディネイターである
自分が、何故か常に捕食される側の弱い立場であることを疑っていなかった。
そんなキラの恐怖心を見透かしたかのように、サイはクスリと微笑むと、
シャツとスカートを脱いで、さらに薄紫色のお洒落な下着を上下とも外した。
その名の通り一糸纏わぬヌード姿を隠そうとせず、逆にキラに見せ付けるかのように、
サイは両腕を左右に展開して、両掌を大きく広げてみせる。
「ほら、見て、キラ。兇器なんか何も持ってはいないでしょ？」
サイはまるでキラを安心させるかのように、優しい猫撫で声でキラを諭しながら、
身体を張って、自らの潔白を証明してみせたが、キラよりも豊満な肢体を惜しげもなく
披露しながら妖しく微笑むサイの姿に、キラはさらに根強い疑惑と恐怖を植えつけられた。
や…やだぁ…、怖いよ。た…助けて、フレイっ…。
キラは涙目になって、上下の歯をガチガチと鳴らしながら、
まるで自縛霊に依り憑かれたかのように、その場に金縛りになる。
悪夢（ナイトメア）を異常な形で同調（シンクロニティ）させた二人の少女は、
今度は狂乱の舞台を夢から現実へと移し変えて、夢で演じた殺し合いの続きを
奇妙な方向へと変化させながらも、今まさに現実へと持ち越されたフレイを
巡る一連の騒動に、決着をつけようかとしていた。
｢いや、構わん。帰投させろ。｣
｢ハッ！｣
リディエラ基地の司令官、ハンス・オルドワ中佐は部下の進言を制し、冷たい口調でコクピットにいるキラに形だけの賞賛を贈った。
｢見事な戦いだったよ、キラ・ヤマト。おかげでネオストライクの実戦テストで良いデータが得られた。君のおかげだ。｣
そんなオルドワの言葉をよそに、キラが口を開く。
｢・・・敵は全て追い払った。約束通り・・・。｣
｢分かっている。彼女と会わせてやろうじゃないか。｣
キラの言葉が言い終わる前に、オルドワは彼の要求を承諾した。
それから基地の地下施設に帰投したキラは数人の兵士に連れられ通路を歩いていた。その首には、鈍い輝きを放つ首輪のようなものが着けられている。この首輪には放電機能が内蔵されており、司令室からの操作で自由に彼に苦痛を与えることができる。更には小型爆弾も内蔵しており基地施設から半径５０ｋｍから外にでると爆発する仕組みになっていた。しかしこの首輪はあくまで彼を縛り付ける為の『鎖』の補助でしかない。そして彼らはそのままある部屋の前までやって来た。
｢面会時間はいつも通り１０分だ。｣
部屋の前で一人の兵士がいつもと同じ言葉を口にし、別の兵士が部屋のロックを解除する。部屋の中ではキラがその対面を待ち侘びていた人物がガラス越しに座っていた。
｢フレイ・・・。｣
そこには彼と共にこの地下施設に捕らえられているフレイ・アルスターの姿があった。キラの目に映る彼女はまたやつれた様に見える。ほぼ監禁状態という今の環境では無理も無いことである。
｢キラ・・・。｣
彼女もまた、弱弱しく彼の名を呼ぶ。その声は、本来の彼女の明るさを微塵も感じさせない。二人が会うのはこれで５日振りである。ここに来てからというもの、定期的に出会えることなど無かった。
｢・・・外が何だか騒がしかったけど、何かあったの？｣
｢いっ、いや何でも無いよ！あれは警報機がただ故障しただけだってさ。｣
つい先ほどまで戦闘が行われ、自分が出撃していたことなど彼女に知られるわけにはいかない。キラはできるだけ明るく振舞い、彼女を安心させようとした。しかし・・・、
｢・・・。｣
｢なっ、何？フレイ。｣
｢フフッ、・・・やっぱり嘘が下手ね、キラって。・・・本当は、戦いに行ってたんでしょ？｣
｢えっ！？｣
フレイの言葉にドキッとさせられるキラ。ここ数年一緒に暮らしてきて、二人はお互いの考えることがほんの少しだが分かるようになっていた。彼女に隠し事は通じないと思ったキラは、真実をフレイに話した。
｢そう、なの・・・。ごめんなさい。私の為に・・・。｣
｢フレイが謝ることじゃないよ。それに、そうすることでこうして君にも会えたし。｣
楽観的に物事を言おうとするキラに、フレイは声を強めて言った。
｢でも、キラが危ない目にあったわ！もしあなたに万が一のことがあったら、私・・・。｣
｢大丈夫。僕は死なないよ。君をここから出してあげるまでは、絶対に・・・。｣
｢・・・キラ。｣
キラは自分を心配するフレイの言葉を制し、彼女を安心させようとした。
それから時間が来るまで二人は話しつづけた。その内容は昨日は何をした、今日は何を食べたといった他愛の無いものであったが、今の二人にはそれだけで十分だった。それにこの部屋には監視カメラがあり、会話も全て録音されている。下手に逃げ出そうなどとと話しても次の瞬間には兵士達が乱入し、二人は引き離される。そんな中でキラは何度か微笑むフレイを見たが、その微笑にはどこか悲しげな雰囲気が漂っており、キラは居た堪れない気持ちになった。ここ数ヶ月、キラはそんな表情しかしない彼女しか見ていない。自分が彼女をこんなことに巻き込んだ。そう思い、そんな自分に対しキラは苛立ちを覚えた。
（フレイは僕が守る。何があっても必ず・・・。）
かつて誓った言葉を胸に、今の彼はブルーコスモスの要求に従っていた。それが彼女を守り、せめてもの償いになるになると信じて・・・。
｢時間だ。｣
約束の１０分があっという間に経過して、タイムリミットを告げる言葉と共に兵士達が部屋に入ってくる。そしてキラはフレイの前で再び兵士達に連れられ部屋を後にした。そんな彼の背中を、フレイは物悲しげな眼差しで見送った。
（・・・ごめんなさい。キラ・・・。）
彼女の目から大粒の涙が零れ落ち、頬を伝った。
第１章・END
キラとサイの夢、本気で怖かったです。そして現実世界にそのイメージを重ねる二人。この先どうなってしまうんでしょう？
》流離う翼たち
遂にラクスが行動を見せ始めましたね。これから彼女が何を始めるのか、彼女の信じる未来とはどのようなものなのか気になります。
》フレイの心・ミリアリア
フレイ様に対するAAクルーの反応を見ると、とても悲しくなります。もうすぐキラがアスランと決戦を迎えますね。果たして二人の思いはどうなるんでしょうか？
ようやく第１章が終わりました。戦闘描写ばかりでフレイ様の出番が少なくて申し訳ありません。第２章からはもっと増やす予定ですのでご容赦下さい。
第２章以降は各キャラの心理描写も増えてきます。それにしてもSSってやっぱり難しいですね。自分でもこれからちゃんと書けるかどうか心配です。
キラとサイの夢、本気で怖かったです。そして現実世界にそのイメージを重ねる二人。この先どうなってしまうんでしょう？
》流離う翼たち
遂にラクスが行動を見せ始めましたね。これから彼女が何を始めるのか、彼女の信じる未来とはどのようなものなのか気になります。
》フレイの心・ミリアリア
フレイ様に対するAAクルーの反応を見ると、とても悲しくなります。もうすぐキラがアスランと決戦を迎えますね。果たして二人の思いはどうなるんでしょうか？
ようやく第１章が終わりました。戦闘描写ばかりでフレイ様の出番が少なくて申し訳ありません。第２章からはもっと増やす予定ですのでご容赦下さい。
第２章以降は各キャラの心理描写も増えてきます。それにしてもSSってやっぱり難しいですね。自分でもこれからちゃんと書けるかどうか心配です。
＞「フレイはまだかな…、フレイはまだかな…」
＞ちょこんとベッドの上に体育座りしたキラは、胸の内の枕を、それがまるで彼女
＞の想い人であるかのように、愛しそうに抱きかかえる。
や、やばい萌えてしまいますた(*´Д｀)
これを聞かされたミリアリアは怒り心頭に達し、カズィが止めるのも聞かずにフレイの部屋に殴りこんだ。フレイはトリィを右手のひらの上に乗せたままじっとトリィを見ている。あの電子ぺットだけがいまやフレイがキラといたという証となっている。キラの部屋にいたのだが、何故かフレイに懐いてしまったらしい。今では主人を放っておいてこちらに住んでいる。
だが、いきなり部屋の扉が開いたかと思うと血相を変えたミリアリアが飛びこんできた。トリィがフレイの掌から飛び上がる。フレイは驚いた顔でミリアリアを見た。
「ミリィ、どうしたの？」
「どうしたじゃないわ！」
ミリアリアはフレイに詰め寄るといきなり右頬を張った。室内に鋭い音が響き、フレイの頬が赤く染まる。
「あんたのせいで、キラとサイが喧嘩して、サイは医務室送りよ！」
「サイが！？」
フレイは驚いた。あのサイがまさかキラと喧嘩するとは。だが、一体どうして。
「あんたがキラと別れたって聞いたサイが、キラを問い詰めたのよ。何で別れたんだって。キラがちゃんと答えようとしないから、サイが怒って手を出したのよ！」
ミリィに理由を聞いてフレイは表情を曇らせた。また自分の罪が増えたのだ。これ以上キラを騙しつづけることに耐えられなくなって離れたのに、結果として２人をより苦しめてしまった。だが、ならば自分はどうすればいのか。
無意識に胸元のペンダントを握り、フレイは俯いたまま悩みこむ。どうすればいいのだろう。どうすれば昔のような関係に戻れるのだろう。自分が２人の前から姿を消せばいのだろうか。
何も言わないフレイに苛立ったミリアリアが再度文句を言おうとしたが、それをよりも早く艦内通信からカズィの声がフレイを呼んだ。
「フレイ、定時哨戒の時間だよ。トールが後１０分で帰ってくるから、準備して。機体はバゥアー大尉の２号機だよ」
「･･････分かったわ、カズィ」
フレイは立ち上がると部屋から出て行こうとした。その背中にミリアリアが突き刺すような声をかける。
「フレイッ！」
「･･････ごめん、時間が無いから、後でね」
フレイは逃げるようにミリアリアの前から駆け出していった。これ以上、彼女の非難に耐えられる自信も無かった。自室を飛び出して少しした所で足を止める。その肩にトリィが止まって自分の顔を不思議そうに見ていた。
「トリィ、私どうしたらいいのかしら？」
「トリィ」
だがトリィは首を傾げるだけで答えてくれない。当然といえば当然だが、その仕草にフレイは微笑を浮かべた。
パイロットスーツに着替えたフレイは格納庫に行き、キースのスカイグラスパーに歩み寄った。主翼にエメラルドグリーンの線が入った、観賞用としては優れてるが戦闘用としては心臓に悪い機体だ。できるならこれには乗りたくないというのがフレイとトールの共通した心境である。
マードックは２号機の整備用ハッチから顔を上げるとフレイを見た。
「おう、お嬢ちゃん。今トールの奴が戻ってくるからな。それまでその辺に座っててくれや」
「はい」
フレイは頷くと近くの箱の上に腰を下ろした。格納庫は常に喧騒に包まれていて五月蝿いが、フレイはここが好きだった。ここの人たちは自分を必要としてくれているから。ＭＳパイロットとしてではあるが、ここには居場所があるから。
「寂しそうだね、フレイ」
「ト、トール？」
フレイは驚いてトールを見た。内心を見透かされた気がしたのだ。今もトールだけは自分に話しかけてくれる。ヘリオポリスから続く友人関係を曲りなりにも維持してくれるただ１人の人だ。自分とキラが別れた理由を知りながらも、それを黙っていてくれることといい、本当にトールには感謝してもしきれない。
トールは気遣わしげな目でフレイの顔を見た。
「フレイ、その右頬、どうしたの？」
「え、ああこれ。ううん、何でも無いから。気にしないで」
まさかミリアリアに叩かれたなどと言えるはずも無く、フレイは苦笑いを浮べる事で誤魔化した。トールは疑わしげだったがあえてそれ以上追求しない。変わりに別の事を口にした。
「フレイ、キラと別れたことだけど、本当に構わないのか。色々悪い噂も立ってるし、フレイだって本当は･･････」
「トール、その事はもう良いのよ。終わったことなんだから」
「でも･･････」
「キラにはカガリがいるわ。私がいなくてもあの娘がいれば大丈夫よ」
そう、前に見たキラとカガリは楽しそうだった。あの様子ならキラは立ち直ってくれる。私がいなくてもきっと大丈夫だ。なかば自分に言い聞かせるようにフレイは口の中で呟く。
トールはなおも何か言おうとしたが、それを遮る様にマードックが大声でフレイを呼んだ。
「おーい、お嬢ちゃん、準備できたぜ！」
「あ、はい、分かりました！」
フレイは立ちあがるとトールに謝って駆け出した。それを見送ったトールは何も出来ない自分の不甲斐なさに舌打ちしてしまう。
「結局、俺は何もできないのかよ･･････」
キースにさえどうにも出来ないのだ。自分がどうにかしようなどとは思い上がりだったのかもしれない。トールの見ている先でフレイのスカイグラスパーがカタパルトから打ち出されて行くのが見える。定時哨戒だからそのうち帰ってくるのだろうが、帰ってきたらもう一度ちゃんと話してみよう。このままではキラにとっても、フレイにとっても決して良い結果には結びつかないだろうから。
偵察に出たフレイは東欧から中央アジアへと続く山並みを眺めていた。この辺りは一応連合の制空圏下だが、ザフトとの小競り合いが起きることもある。だが、レーダーにそんな機影は１つも映っては･･････
突如として響き渡る警報。レーダーが敵の機影を捉えたのだ。照合するとどうやらザフトの輸送機であるらしい。すぐにアークエンジェルに通信を繋ぐ。
「こちらフレイ、敵機と遭遇しました！」
フレイの報告を受けたマリュ−は状況の説明を求めたが、輸送機が１機と聞いて安堵した。それくらいなら脅威ではない。
「そう、分かったわ。輸送機１機なら大した問題じゃないわね。始末は任せるわ」
「分かりました」
だが、この後驚愕するべき事が起きた。フレイのスカイグラスパーは輸送機など相手ではない戦闘能力を持っているはずなのだが、何と次のフレイの通信内容は驚くべきものであった。
「輸送機を撃墜っ･･･････あれはイージスっ！」
その直後に何かを叩き壊したような音が響き渡る。そして空電の雑音がミリアリアの通信機から響いてきた。
頑張れキラと言うべきか、頑張れアスランと言うべきか、微妙過ぎる
そしてイザーク、他人を窘めるお前は、なんからしくないぞｗ
>>キラ♀
はうう、ベッドの上のキラちゃんが萌え
しかしサイ、何と言うか、女は怖いねえｗ
フレイ様とカガリがどう動くのかが気になる
食堂で聞いた情報で、パイロットの仮眠室まで行ってみたけど。
キラはいなかった。更衣室やモビルスーツデッキも覗いてみたけどキラはいない。
私は、食堂で取ってきたサンドイッチとジュースで、そそくさと食事を済ませると、
キラの行き先を思い巡らせた。
もう一度、部屋へ戻ってみたけどキラはいない。私がキラのメールを見て、
広げたままのノートパソコンのモニタが闇を照らしているだけだった。
キラ、一体、どこにいるの。
途方にくれて歩いていると、マリューさんの部屋の前を通りかかった。
ひょっとしてマリューさんのところに…
ベルを押してみる。
「誰なの？」マリューさんは、ブリッジでは無くて部屋で休んでいたようだ。
「フレイ・アルスターです。お休みのところ済みません。キラ来ていませんか」
マリューさんは、部屋の戸を開けた。
「キラ君は来ていないわ。フレイさん、どうしたの、こんな夜遅く」
「キラを探しているんです。いないのなら他へ行きます。済みません、お休みのところ」
マリューさんは、私をひきとめた。
「どうしたのフレイさん。キラ君と何があったの。教えてちょうだい」
マリューさんは、私を部屋へ引き入れた。
「ちょっと、どうしたの思い詰めた顔してるわよ。コーヒー入れるわ。落ち着いて。
砂糖とミルクは？」
「はい、入れてください」
私は、砂糖とミルクをたくさん入れないとだめだ。キラは砂漠以降、いつもブラックで飲むようになった。
それで、一度、私が自販機で取ってあげたの、顔しかめながら飲んで、それから、いつもキラが、
先にコーヒーを取るようになっていた。もう、言ってくれればいいのに…
暖かいコーヒーを飲んで、少し焦る気持ちも落ちついてきた。
マリューさんは、改めて私に問いかける。
「それで、キラ君とどうしたの」
「私、キラとダメになっちゃったんです。私、同情ばかりで。キラ変わっちゃってて。
今度はキラが同情してきて、私、酷いこと言って」
「フレイさん、あなた…」
「私、成長してないんです。キラ成長して、私のこと、もう必要なくて。私達、間違ったって」
「フレイさん。まさか、私があんなこと言ったから」
「いえ、マリューさんのせいじゃ無いんです。私が悪いんです」
「フレイさん。あなた、今日は、もう休みなさい。明日、私がキラ君に言ってあげるから」
マリューさんは、私を気づかってくれている。でも…
「ありがとうマリューさん。でも、私キラを探します。どうしても、自分で
キラに話したいことがあるんです。私が言わなくちゃいけないことがあるんです」
「あなた…」
「ねえ、ひとつだけ教えてください。同情ばかりだと、おかしくなるって言いましたよね」
「そうだけど」
「それって、二人が、お互いに別々のことで、縋って、同情しあって、いたわって。
それでもおかしくなるんですか。そういうのでも間違いなんですか」
「そうね。同情しあってても、お互いに相手を認め合って補うのなら、間違いじゃないわね。
そのための二人なんだから」
私は、笑顔を見せた。
「ありがとうマリューさん」
「フレイさん…」
マリューさんは、急に私を抱きしめた。柔らかい胸に私の顔が埋まる。
「ちょっとマリューさん！」
「フレイさん、あなた、お母さんのこと知らないのよね。これが、お母さんが巣立つ娘にすることよ」
「マリューさん…」
私は、マリューさんの胸で暖かい心に包まれて、涙をこぼした。ありがとうマリューさん。
私は、マリューさんの部屋を出て行った。
私は誓った。絶対、負けない。キラに追いついてみせるって。
私は、整備兵が言っていた仮眠室へ急いだ。あの子もそこへ向かっているはずだけど、
私はいろいろ近道を知っている。あの子より早く着けるはずだ。
たどり着いたモビルスーツデッキ近くの仮眠室には、誰もいなかった。他の部屋も見回してみたけど、
キラは見当たらない。通路の向こうに、あの子が歩いてくるのが見えた。
私は、あの子に見つからないように抜け出した。
やっぱりキラの部屋に帰ったのかな。今なら、あの子もいないし。
キラの部屋の前まで来てみたけど、パスコードを知らない私は部屋の戸を
開けられない。ベルを押して、「キラいるの？」と呼んでみたけど返事は無い。
こうなったら、監視モニタで調べてみよう。私の四人部屋からでも、
パスワードが分かれば使えるはず。私は自室に引き返した。
部屋のモニタからは、ブリッジなどセキュリティレベルの高いところはできないけど、
ほとんどの通路の監視カメラ映像にアクセスできる。一般的な場所なら、
ブリッジ勤務の私はパスワードを知っている。ただ、元々、部屋のモニタは、
そのような用途のものでは無いので操作に手間がかかる。ブリッジのマルチモニタを使えば、
簡単なのだろうけど、今は、艦長が休憩中で、バジルール中尉が、艦長席に座って仕切っている。
そんな私用に使おうものなら、また怒られるだろう。
自分は、そうでなくても遅刻や態度で、目を付けられているのだ。
もう何回、バジルール中尉に頬を叩かれたことか。
格闘すること数時間、やっとキラらしい人影を見つけた。
この通路の先には、共同の男子シャワー室がある。多分、そこに入るところなのだろう。
さすがに、シャワー室内にカメラは無いけど、利用状況だけは私のパスワードでもモニタできる。
今、シャワー室には誰もいない。入るのはキラ一人だ。
時計を見ると、もうこんな時間、無理もない。
私は、シャワー室に向かおうとした。そこで、はたと立ち止まった。
―― 私が、キラを癒してあげよう。あの子に代わって
その考えが、私によこしまな考えをもたらした。
私は、服を脱ぎはじめた。下着まで脱いで裸になると、
まだパックされたままの真新しい下着を取り出した。
新しい下着の清潔な臭いを確かめると、それを付けて服を着た。
私は、今日は夜遅くから当直があった。でも、それをすっぽかすつもりだった。
バジルール中尉が、どんなに怒ろうと構わない。
私は……
もし、キラと会って、もし、キラと… そしたら、私、朝まで…
トールが、私と関係を進めるようになりたくて、がんばっていたのに。
その活躍を祝った、その日に、私はキラに体を差し出そうとしている。
私はなんて酷い女だろうと思った。
でも、今しかない。あの子から距離を置いている今しか、私がキラに接近できる
チャンスは無い。キラは、私のところに帰ってくるのよ。永遠にあの子のところには戻らせない。
キラから預かっていたトリィが、私に近づいて肩に止まった。まるで、私がキラのところへ
向かうことを察したかのようだった。どんなプログラムを使っているのだろうと思った。
私は、トリィを肩に乗せたまま、部屋を出てシャワー室に向かった。
ザラ隊・ジュール隊の、やりとりがおかしいです。二人仲良く御新香を奪うキラとフレイも。
>流離う翼たち
フレイ様、いくらカガリにキラをまかせたからと言って、カガリの仕事奪っては…
でも、ピンチです。どう切り抜けるのかな。
>キラ（♀）
サイ（♀）が恐ぁぁい。コンタクトにして、いつもと雰囲気も違うみたいだし。
キラ（♀）の汗の表現とか、私には新鮮でした。
後、部屋の鍵や構成については、私と大分違いますね。人それぞれ何ですけど。
>chain
第一章終わりですか。まだ、舞台が提示されたばかりで、これからキラとフレイの拉致の意図とか、
色々な謎が明らかにされていくようですね。期待しています。
フレイはカレッジに登校したのは,チャイムギリギリだった。
彼女は教室に向かっている途中,キラと出会った。
「キラ！」
「フレイ君も遅刻かい？」
「キラこそ」
「徹夜でやらなければいけないことがあったからね・・・」
キラと教室が違うため,途中で分かれた。
昼休み,彼女はキラを探した。彼は昼食をしていたサイと一緒に・・・。
「フレイ！いつのまに」
「いた訳じゃないけど,と通り過ぎただけよ(アセアセ)」
キラは急いで去っていった。しかたないのでフレイはサイに
問い詰めた。
「サイ？何の話していたの？私,恋人でしょ」
「それはその・・・ハハハ」
サイはごまかし笑いをしていた。フレイはニコリと笑って
「はっきり言って♪サイ？」
「あっそうだ・・・イデオンとリヴァの相違点に関してですね〜」
「さっき話していたことと意味違うでしょ！」
サイは観念したように言った。
「ここだけの話だけど俺たち,ＭＳのアマチュアチームを作っているんだ」
「ＭＳチーム？」
「簡単に言えば,ＭＳファイトだな」
「というとＦ１みたいな？ねぇサイ,私もスタッフとして
参加していいかしら？」
まだトレーニングルームで練習前だったのでメンバーは気を
抜いてしゃべっていた。
キラは私に気がついたようだ。
「フレイ！何でここに」
サイは割り込んで
「フレイ,ついてきちゃったんだよ」
「私もスタッフとしてがんばるから,キラよろしくね」
サイはメンバーに言った
「おーい！みんな注目！俺の恋人のフレイだ,彼女はスタッフで参加
ようだ」
私は挨拶をした
「フレイ・アルスターよ,よろしく」
同じサークルでオペレーター見習いのミリィ
「フレイ,あなたも参加するの？！」
「ミリィこそ」
サイはこう言った
「フレイ,隣の彼はキラと同じパイロットのトマーシュ,その隣はシロー
彼は資金調達もやっている,オペレーターのトーレス,そして俺の担当は
総指揮,この「木馬」の主催者だ」
サイはイキイキとしゃべった。数時間後,練習が終わった時
フレイの肩をキラがポンとたたいた。
「フレイ疲れたかい？今日は一緒に帰らない？」
「ええ,キラとなら一緒に・・・」
「なら帰るとき,アルジェントソーマのよさについて語ろう」
「えっ？」
「ちょっとまて！」
シローが私たちの会話に入り込んできた。
「キラ・ヤマト！新入りの彼女にソーマファンにするなんて！
もっと別にマイトガインとかにしろ！」
「まってくださいシローさん！僕はアルジェントソーマが
大好きなんです！(リヴァとスクライドもね)」
「お前！俺をエアーズ・ブルーだと思っているだろ！」
「そんなことありませんよ！」
案の定シローとキラの大混乱は１時間かかったというのは言うまでもない。
中々に難しい立場になってますな。皆。フレイ様はもちろんだが、キラも気の毒に つД`)
>>流離う
フレイ様…アスランとガチじゃ流石にやばいでしょ。無事を祈る。
>>オーブ
やべ、マリューとフレイ様の会話に感動してしまった。艦長、迷えるフレイ様を導いてやってくれ。
しかし、ミリアリア…トールが可愛そう過ぎ。
たぶん私は思ったＭＳを見せるんだろって
案の定そのとおりだった。サイは格納庫につくなり
「キラはリ・カズィ,シローさんはＭＫ��,トマーシュはデュエル」
「サイは？」
「僕は総指揮だからスタッフのまとめ役さ」
「乗ればキラよりカッコいいのに」
私はイジワルに言った。
「よっよせやい！」
格納庫に入ってきたキラは第一声に
「みんな,日曜日,デニムのとこの「ジーンズ」と勝負だ」
チーム「ジーンズ」とはジーン,デニム,スレンダーの三人のチームだ。
まっこれなら楽勝だ。
今日の練習から３０分たった。ある女が尋ねてきた
「みなさんこんにちわ」
シローは彼女に駆け寄る
「あっアイナ,どうしたんだい？」
「みなさんに差し入れですけど・・・」
後ろからキラがやってくる。
「アイナさん！」
「あっキラ君！いたの？」
私はまるでドラマの三角関係な展開してるんだなーと思った。
そして,日曜日が来た
》流離う翼たち
この展開はまさか・・・。TV本編ではあの二人は関わりが無かったので期待大です。
６時間ずつの哨戒だったら大変だなあ。これだから単艦行動はｗ
ん？ キラ？ 切り札は戦闘機なんかに乗せない方がいいのかな・・・
>キラ♀
ガクガクブルブル。しかしうまいですなあ。
>chain
ブルコスようなんでそんなにフレイたまを苦しめるんだ(T_T)
そんな中グゥレイトエルスマンは良い元気補給になりますｗ
>リヴァ・八
旧作とのコラボですか。こういうゾイドφみたいなのも好きでつ。
しかしあれ、なんで死傷者あんなに少ないんだろｗ
ラスト以外無傷ばっかしでは？
続編を一日千秋の思いでお待ちしております。
フレイの心とミリアリアのあの子シリーズを
を毎日待ち遠しく想っています。
ｶﾞﾝｶﾞｯﾃ下さい〜
今日に限って今朝私がジェシカたちに教えてもらって
キラとサイのために弁当を作ったのだ。
会場についたのは試合開始３０分前だ。私はまっすぐ
控え室に向かった。ドアを開けた時
「おい遅いよ,マネージャーさん！」
トーレスの第一声だった。サイは私に雑用とマネージャーの
仕事を任せた。そして試合は昼に終わる。そのあとは・・・
私の妄想を打ち壊したのはサイの一言だ
「フレイ準備頼むよ」
「はーい,わかりました」
トマーシュは続くように
「さっさとしろよフレイ」
そして試合が始まった私はスタッフルームで待機している。
ミリィはオペレーターのトーレスの助手をしている。サイは
現場監督だ,まるで野球の監督のようだった。
「レディースアーンジェントルメン！お待たせしました
ＭＳファイトです！第１試合は木馬ＶＳジーンズ！」
私はキラがんばってと祈った。
「今日のスペシャルゲストは「白夜」で大ヒット中の新人歌手
シャニ・アンドラスです！」
私はあきれた試合前なのに歌？プロレスじゃあるまいし〜
数分たって歌は終わり,キラの戦いが始まる。
試合の鐘が鳴り,各選手は戦いに移る。ジーンズはジンだった。
まずトマーシュのデュエルがビームライフルでスレンダーの
ジンのコクピットを撃ち抜いた。
「スレンダー機デッド！」
続いて,キラのリ・カズィが大型メガビームキャノンで吹っ飛ばした。
「ジーン機攻撃不能！」
「よくもジーンを！」
後ろにデニムのジンが気がつかなかったキラはピンチに陥った。
またデニムのジンの後ろにシローのＭＫ�兇�駆け寄り,ビームサーベルで
ジンの両手を切り裂いた。
「デニム機攻撃不能！」
三期撃破したことで私たちの勝利だった。
昼になった私たちは公園で昼食をとることにした。
私はキラとサイに弁当を手渡した。
「サイ,私の弁当どう？」
「うっうん・・・うまいよ」
はっきり言うと,サイは汗だらだらだった。たぶん作ったのが
まずかったのだろう。一方キラもだった。
私は食事の一服に
「キラ,私とあなたの前世も一緒だったと思うわ」
「えっ？」
「前世も一緒だったて言うの,そうじゃななかったらあなたを
好きになっていないわ」
「フレイ・・・リヴァの見過ぎだよ・・・」
私は笑いを抑え切れなかった。シリアスなのにギャグな台詞を言うなんて
なんて人なの・・・
ミリアリアが驚きと焦りを浮かべてフレイを呼び続ける。だが、いくら読んでも返事はなく、ただ空電の雑音が帰ってくるだけだった。
「ナタル、スカイグラスパーの墜落した位置は分かる！？」
「電波障害が酷いですが、大まかな位置の見当はつけられます。ただ、この辺りは地形の起伏が大きい上に山林です。探すには最悪の場所ですね」
「くっ、でも･･･････」
マリュ−は悩んだ。ＭＩＡに認定するということもできる。だが、そうすればもし生きていたとしても、フレイは確実に死ぬ事になる。悩むマリュ−にナタルが声をかけてきた。
「艦長、ＭＩＡと認定しますか？」
「ナタル、それは･･････」
「どうなのですか艦長、探すのですか、諦めるのですか？」
ナタルは決断を迫ってきた。艦橋の誰もがじっとマリュ−を見ている。こういう時、艦長は孤独だ。辛い決断を迫られてしまう。マリュ−は辛そうな顔でもう一度ナタルを見た。
「ナタル、私は･････あの娘を見捨てたくないわ」
ナタルは否定するだろうか、という不安がマリュ−にはある。自分が甘いということは良く分かっているのだ。だが、ナタルはマリュ−の予想外の返事を返してきた。
「私も賛成です。幸い落ちたのは進路上ですし、フラガ少佐とヤマト少尉に捜索してもらいましょう」
「ナタル、あなたはそれで良いの？」
「私とて仲間を見捨てるのは忍びないです。それに、せっかく見つけた優秀な生徒を手放すのも惜しいですから」
ナタルがこのような態度を見せるのは初めてではないだろうか。いや、ここ最近のナタルは不思議と仲間の事を考えるようになっている。戦闘中にもキラやフレイを助けたりと、昔に較べると随分と変わっている。何かが彼女を変えたのだろう。
だが、安堵の空気が流れる艦橋の中で、ただ１人、ミリアリアだけが不服そうな顔をしていた。
フレイの捜索は直ちに実行に移された。独房から出されたキラとフラガにナタルが状況を説明する。
「アルスターはこの辺りに落ちた筈です。電波障害も酷いのですが、それが原因か、それとも通信機が壊れたかは分かりません。現在は通信が途絶、救難信号もキャッチできません」
「それじゃあ、フレイは･･･････」
キラの顔に絶望の色が滲み出たが、フラガがそんなキラにことさら明るい声で断言した。
「なあに、あのお嬢ちゃんはあれで結構しぶとそうだからな。生きてるって」
「フラガ少佐･･･････そうで、しょうか？」
「そうだよ、早く見つけて連れ帰ってやろうぜ」
その言葉に励まされて、キラは格納庫へと来た。途中でカガリと擦れ違う。
「おい、フレイが行方不明なんだって！？」
「うん、今から探しに行くんだ」
「･･･････あんな奴でも、探しに行くんだな」
「うん、やっぱりね。フレイの事は今でも怒れるけど、それでもやっぱり放って置けないんだ」
何時もの様に寂しげな笑顔を浮かべるキラに、カガリはもう言う言葉を無くしてしまい、やれやれと肩を竦めた。
「分かったよ。行ってこい。お前は本当にどうしようも無い馬鹿だな」
「自分でも、そう思うけどね」
「ああ、もう分かった。さっさと行ってこい」
シッシと手を振るカガリにキラは笑顔で返すと、ストライクの方に走っていった。それを見送ったカガリは苦笑を隠せなかった。あれだけ振られて落ちこんで怒ってた奴が、いざ振った相手がいなくいなるとああして探しに行ってしまう。まったく、好きなのか嫌いなのかハッキリしろと言いたくなる。
「おお、こりゃ酷い顔になったな」
「う、うるさい････」
「ああ、良いって。無理して喋るな」
カガリはサイとベッドの脇に椅子をもってくると腰掛け、袋をとんと床に置いた。その中からリンゴを取り出す。
「まあ、リンゴでも剥いてやるとするか」
「･･････出来るのか？」
「なんだよそれ。私が不器用だと言いたいのか？」
カガリは不服そうに口を尖らせると、慣れた手つきでリンゴの皮を剥いていく。どうやら本当に出来るらしい。サイはちょっと驚きながらカガリを見て、ついで問いかけた。
「何かあったのか？」
「･････ああ、ちょっとね。フレイが撃墜された」
「フレイがっ！」
驚いて大声を出して、苦痛に顔を顰める。どうやらまだかなりキツイらしい。
「ああ、今キラとフラガ少佐が探しに出てる。キラの奴、お人よしにも程があるよ」
「･･････そうか、キラがな」
サイはちょっとだけ安堵したのか、腫れた顔を引き攣らせた。どうやら笑った様だ。それを見てカガリは呆れて肩を竦めた。まったく、キラもだけど、こいつも本当にお人好しだ。
カガリはリンゴを八等分すると、それを袋から取り出した小皿に並べ、小さなフォークを立てて１つを差しだした。
「ほら、出来たぞ」
「ああ、悪いな」
だが、上半身を起せないサイは少し情けなさそうに顔を顰め、左手をゆっくりと動かしだした。どうやらなかなかに酷くひどくやられたらしい。カガリが呆れた声を出す。
「お前なあ、腕もまともに動かなくなるくらいにボコボコにされたのかよ？」
「う、うるさい、キラはコーディネイターなんだから、しょうがないだろ」
「相手がコーディネイターと分かってて喧嘩を売るんだから、やっぱり馬鹿だよなあ」
カガリの更なる追い撃ちにぐうの音も出ないサイは、プイッと顔を逸らしてしまった。その態度がカガリには面白くて仕方がないらしく、笑いの衝動を堪え切れなくなる。
「あはははははははははははっ」
「な、なんだよ、笑うなよ」
「だって、勝てる訳無いと分かってて喧嘩売ったんだろ。それも自分を一方的に捨てた女の為にさ。こんな奴、今時ＴＶドラマにしかでないような大馬鹿だぞ」
「悪かったな、馬鹿で」
「しかもそれでこんな怪我したんだろ。お人好しにも程があるって」
だが、カガリは笑っていた。こんな真っ直ぐな馬鹿を自分は嫌いじゃない。キラも、そしてサイも。２人とも違う様で意外と似ているのだ。
カガリは笑いながらリンゴをフォークに刺してサイの口元に運んでやった。
「ほれ、特別に私が食わせてやろう」
「･･････なんでそんなに偉そうなんだ？」
「うるさい、怪我人は黙って看病してくれる優しい私の言うことを聞いてろ」
「･･････優しいか？」
サイのマジで疑問ですという声に、カガリはこめかみの辺りに青筋浮かべた。そして、引き攣った笑顔のまま強引にサイの口にリンゴを突っ込んだ。突っ込まれたサイは腫れは頬が無理に動いたので痛さに悲鳴を上げている。
「ぐおおおおおおっ！」
「あああ、悲鳴が心地いい」
どうやらカガリさんは結構怒ってしまったようです。いいのか、怪我人に追い撃ち加えて。
ううん、マリュ−さんがグッジョブです。フレイ様も多少は覚悟が出来たと言うか、行動の優先順位がハッキリしましたね
でもミリィ、なんだか考えてる事が昔のフレイ様に近くなってるぞ。今のキラだとそういう近付きかただと逆に避けらるかも
>> リヴァオタと八アスのためでなく
ノ、ノリが、これはひょっとしてＭＳ競技なのか？
まるでゾイドゼロみたいだ。勝てば勝つほどランクが上がるとかあるのかな？
私は、男子シャワー室にたどりついた。私の近くを飛んでいるトリィを引き寄せると、
内蔵されている係留ワイヤーを引き出して、通路の壁に結んだ。私に付いて、
シャワー室に入って来られると湿気で傷んでしまう。それに、本来、ロボット鳥は、
これで繋いで遊ぶものなのだ。
私は、男子シャワー室の戸を開け、そっと中に入った。
中では一人シャワーを浴びている人影がある。シャワー前の脱衣かごに置かれた服から、
キラに間違い無かった。見習い兵の軍服で少尉の襟章を付けているのはキラしかいない。
私は、気づかれないように静かに服を脱いだ。下着姿になった。
さすがに、全裸になる勇気まではなかった。
キラが入っているシャワーの前に行く。キラの顔が見えた。すりガラスの戸がキラの体を隠している。
私はキラを呼んだ。
「キラ…」
「う！ ミリィどうしたんだ。ここは男子シャワー室だぞ。その格好！！」
キラが驚いて叫んだ。キラは、慌てて背を向ける。
「なんてことしてるんだ。おかしいぞミリィ。
トールのことどうしたんだ。変だぞ！ 何を考えているんだ」
キラはなおも言い続ける。
私は静かに言う。
「ずっと、変だったのはキラの方よ。
今まで、アークエンジェルで一緒にいて、ほとんど話もしてなかったじゃない。
おかしいのはキラだったのよ。
今日、トールとキラと私、みんなで戦って、私、嬉しかった。
また、前のように仲良くしようよ」
シャワーは小出しに出つづけている。キラの背中を絶えず濡らしつづけている。
キラは手を握り締めている。何か感情をこらえているようだった。
キラは呟いた。
「ミリィも言うのか。戦って嬉しいとか…よくやったとか」
キラは苦しんでいる。疲れている。
「キラ… 今、疲れているのよ。いいから、私が癒してあげるから」
私は、ブラとショーツも脱いだ。背を向けるキラの前で、生まれたままの姿になった。
シャワーの中に入るには、こうするしかないと自分に言い聞かせた。体が震えていた。
私は、すりガラスの戸を開けて中に入り、裸のキラの背中に抱きついた。
私の胸がキラの背中に押しつけられた。私にも、小出しのシャワーがかかった。
二人、まるで小雨の中で抱き合っているかのように、そぼ濡れて行った。
体が震えている。手はキラの胸を抱きしめている。
逞しい厚い胸板。軍服やパイロットスーツでは気づかなかった。
キラを感じる。私、すごくキラに感じてる。こんな気持ちは初めて。
あの子、こんなキラを独り占めして。羨ましい。許せない。私、あの子許せない。
「やめるんだミリィ。トールに申し訳ないと思わないのか」
キラが乾いた声をだす。
「キラが満足ならいいの。私はキラも大切なの。トールと一緒」
本当はキラだけが大切と叫びたかった。でも、それを言うことはまだできなかった。
「キラ、どうしてたの。食堂でトールと祝ってたのに、なぜ来てくれなかったの」
「僕は、そんな気分じゃ無かった。展望デッキで、ずっと一人で居た」
キラの言葉は寂しそうだった。
「どうして？」
キラは答えなかった。でも、答えなくても想像がついた。
「あの子でしょ」
「え？」
「フレイのこと、まだ考えてるんでしょ。でも、あの子、もう部屋にはいないわ。
艦内うろうろしてる」
私は、キラを探してということは言わなかった。自分に都合悪いことはすべて無視した。
「そうか。フレイ… そうなのか。フレイとは、もう合わないって言った。僕はもう…」
キラの言葉に、私は歓喜した。キラは、もう、あの子と別れたんだ。
もう、あの子は何でもないんだ。
「そうなの。キラ、フレイと別れたの。そうなの…」
私はキラを慰めるように言った。
「ねえ、キラ、かわいそう。私が癒してあげる。
キラ、私のところに来て、いいのよ、さあ来てキラ」
私は、キラの背中に、ますます自分の体を押しつけた。
トールの時とまったく違った。恐怖感は無かった。
私は、恍惚と至福感の中にいた。今、この時間だけに酔っていた。
このまま時間が止まってしまえばいいのにと思った。
マリューさんの部屋を出てから、ずっとキラを探して彷徨っている。
なかなかキラは見つからない。私に分かるアークエンジェルの内部は、
せいぜい居住区・食堂・モビルスーツデッキくらい。
この周辺を何度も歩いているけど、キラを見つけることができない。
一度、機関室やミサイル発射装置室など戦闘ブロックの近くまで行ってみた。
だけど、当直の兵に追い返された。
「キラ来ていませんか？」
「ヤマト少尉は来ていない。ここはダメだ。帰った、帰った」
仕方なく戻ろうと歩いていたときに、誰かから声をかけられた。
「おい、アンタ、ヤマトとは会えたのかい」
最初、誰なのか分からなかった。しばらくして、夕方、食堂で私に
仮眠室のことを教えてくれた整備兵だということに気がついた。
「いえ、まだ」 私は警戒してそっけなく答えた。
「そうか、アンタ、ヤマトと喧嘩してるんだって」
「喧嘩じゃない。私が悪くて、キラに捨てられちゃった」
私は自嘲的に、目を逸らして答える。
「そうなのか」
「うん、でも、もう一度話がしたくてキラ探してるの」
「それで、話して、どうするつもりなんだ」
「伝えたい言葉があるの。キラに。そして、謝りたい。私のこと」
今の自分を客観的に見ている。少し落ち着いてきた自分に安心する。
マリューさんのおかげだ。これなら、キラにちゃんと話せる。
「そうだったのか、さっきは、悪いことしたな。知らなかったんだ。
あの後、アンタの悪口も、さんざん言っちまって」
「いえ、いいんです」
「アンタ、まだヤマト探すのかい」
「うん、見つかるまで何度でも。さっき、マリューさん…艦長にも約束したから」
「そうか。……がんばれよな」
「ありがとう」
「やっぱ、ヤマトのやつ、羨ましいな。アンタみたいな彼女がいて」
私は、顔を赤らめた。オーブにいた時、通信でカガリには言われたけど、
アークエンジェルで、親しみを持ってキラの彼女と呼ばれて、
私は戸惑いと同時に嬉しくなった。
この艦では、マリューさんとフラガ少佐しか、私を認めてくれていないと
思っていたけど、本当は、そうじゃ無かった。
私は、機関室を後に、居住区へ戻りはじめた。
深夜の男子シャワー室。そこで、私は裸で背を向けるキラに体を
ピッタリ押しつけている。手は、キラの厚い胸板を抱きしめている。
あの子とキラは、もう別れた。ついにキラは、私の手の中に帰ってきた。
抱きしめる二人に、暖かいシャワーが小出しでかかっている。
絶え間なく濡れる私達。私はキラの耳元で誘う言葉をつぶやいた。
「キラ、かわいそう。いいから。私が癒してあげるから。
私を好きにしていいから」
私は、キラを自分の方に向かせようとした。その時。
急にシャワーから氷のように冷たい水が、激しい勢いで二人にかかかった。
私は思わずキラから離れて飛びのいた。
キラが、シャワーの温度を水にして、コックを全開にしたのだった。
凍えるように冷たい水をキラは数分間浴び続けた。
「キラ…」私は、そんなキラを見つめる。
キラは、キュッとコックをひねってシャワーを止めた。そして言った。
「ミリィ。僕は癒しを求めてはいない。
僕は昔のようには、もう戻れない。どこかへ行ってくれ」
キラは、こんなことを言う。どうして？
「キラ！ そんなこと無い。また昔に戻れるわよ。私ともトールとも。
こんなこと言わないで。気に障ったのなら謝るから。
もう、裸で抱きついたりしないから。また、元のキラに戻って」
キラは濡れた髪で視線を隠したまま、私の裸の体を無視して、横を通り過ぎた。
そして、バスタオルをかぶり。脱衣かごから服を取ると、裸のままスタスタと
シャワー室を出て行った。
「待って！！ キラ」
私も、慌ててバスタオルで体を覆い、濡れた髪にタオルを巻きつけ、
服を持ってシャワー室を飛び出した。でも、キラの姿は、
どこにも見当たらなかった。
シャワー室前に係留ワイヤーで繋いでおいたはずのトリィも消えていた。
キラが一緒に持って行ったらしい。
濡れた裸足の足で、ペタペタと通路を濡らしながら、うろうろと歩き回るけど、
キラがどっちへ行ったか分からない。
私はキラの言葉を反芻した。何を考えているのか分からなかった。
癒しを求めていないだって、昔に戻れないだって。
何でそんなこと言うのよ。キラは、辛いんじゃないの？悲しいんじゃないの？
なのに、なぜ、癒しを拒否するの。おかしいわ。
昔の仲良かった私達に戻ることが、そんなに嫌なの。なんで？
何が、そんなに嫌なの。
私は、キラを求めて、いずこかへと通路を走り始めていた。
バスタオルが、ずりおち、裸の体が、ときおり露になるのを押さえながら、
私は焦る心に囚われていた。
早くキラを見つけないと。
ダメ！ あの子に会っちゃダメ。キラを、あの子に会わせちゃダメ。
キラ、また、どこかへ行っちゃう。あの子のところか、もっと遠いところへ行っちゃう。
キラ、置いてかないで。戻って来て。戻って来て。戻って来なきゃ嫌。
キラ、先へ進んでは嫌。このまま、ここに居て。いつまでも変わらずに、ここに居て。
やっぱり、フレイ様、カガリの仕事を……
でも、カガリは別の仕事で幸せそうだからいいのか？ でもこれだと……
>「フ、フレイ、ちょっと、返事しなさいよっ！？」
なんか乱暴なミリィの喋り方に、私のミリィが出張したのかと思いました。
キラが家に着いたのは夕方だった,彼は部屋に入り
パソコンを立ち上げ,メールを見る。
「あいつからだ・・・」
それはアスランからだった。
『キラ元気か？俺も元気だ,今新作のタイタニックアドベンチャーの
撮影が終了したため,俺は休暇をとることにする。とにかく,俺は
今夜お前んちによるから,お土産はヒロイン役のセシリーのサインつき
写真だからな』
アスラン・ザラ,今人気の俳優だ。そして僕の友人・・・
やつはどうやら僕に好意を持っているようでしつこい。一言で言えば
ホモだ。その証拠に東京国際レズビアン&ゲイ映画祭の審査員に選ばれる
やつだからはっきりいって会いたくないのだ。クローゼットから
ガラッ
「実は到着していたりして」
キラはびっくりした,だってクローゼットから出てきたんだぞ
「アっアスランいつまのに！」
「いつの間にって30分前からだ」
「でなんのよう？」
「フッ,お前のためにセシリーのサインつき写真持ってきてやったんだ
少しは感謝しろよ」
ああ神様,アスランは映画の共演が縁でセシリー・フェアチャイルドと
結婚しますように・・・・
キラはそう願った。
>キラ（♀）
サイの良心とかバランス感覚が夢との偶然の一致で吹っ飛んじゃうのが怖いっす。
>>chain
第一章お疲れ様。フレイ様は首輪爆弾のこと知ってるのかな？ホントに可哀想な２人ですね。
>>リヴァオタと八アスのためでなく
>「実は到着していたりして」←キモッって感じなんでしょうか。
ネタが大量に混入してあって、ググりながら読ませて頂きました。
>>流離
ラクスが結構面白いなあと注目していたら、フレイ様がとんでもないことになってますね。
>>ミリアリア
>何が、そんなに嫌なの←ミリアリアは情報足りないから、辛いですね。見ている方も辛い。
>>オーブ・フレイの心
>お母さんが巣立つ娘にすることよ←この台詞はググっときました。
女としての業も喜びも知った年長の人って感じでカッコいいです。
AAクルーも実はいい人がいたり、これからだって言うのに･…
「キラ,お前に言いたいことがある」
「なんだよ」
「実は」
「ハイハイ,結婚してくださいだろ,筋からわかるよ」
「実は俺,ＭＳファイトにゲストとして出演するんだけど」
「まさか・・・」
「見に行くかい？」
うそだろと思った,なんせ来週の日曜日も出場するんだから
とにかく飯を食べたくなった。
「アスラン,ジョイフルに行かないか？」
「ああ,久しぶりにな」
キラとアスランはジョイフルに向かった。
行き道にアスランは聞いた。
「お前,このところどうだ？」
「今のところ,調子いいよ,アスランは？」
「なんとなく,仕事の多さでストレスたまりすぎ」
「そうだよな」
彼らはまっすぐジョイフルえの道に進んだ。
あり恋人でもある。彼は彼女の家でオムライスを食った後
テレビを見ている。古い映画だった。イーストウッドの
「荒野の用心棒」である。テレビを見るトマーシュにレインはいう
「トマーシュ,お風呂入れるわよ」
「いいやあとでいいんだ」
「ねぇトマーシュ・・・」
「ん？」
「あなたは,私のことが好き？」
「なっなんだよ！いきなり」
「だからトマーシュは私のことが好きかって聞いているの」
「ああ好きだよ」
トマーシュはいすから立ち,風呂場に向かった。
トマーシュは風呂場で考えていた。
僕は彼女と幸せにべきなりだろうか,また別れるべきなのか
風呂から上がったトマーシュは靴を履き
「レイン,また来るよ」
家に向かって帰っていった。
「うん・・・何とかなじめそうね」
サイは納得したように
「そうかそれはよかった」
サイは話を続けて
「明日,新型ＭＳの取引があるんだ行ってくれないか」
「いいわ,会社名は？」
「グレェイトエルスマン社」
私は首をかしげた
次の日,私はグレェイトエルスマン社をたずねた
普通の中小企業だった。
私は社員に連れられて一室にいた。
待つこと５分,社長のディアッカ・エルスマンがやってきた
「どうも」
「どうも」
「この俺がグレェイトエルスマン社のディアッカです」
「こちらこそ,私はフレイ・アルスター,実は商談に来たんです」
「商談？あの新型ＭＳか？」
「ええそうよ,ジアッカ社長」
「ディアッカです」
「あんたのところで作っているリ・カズィは飛行モードに戻らないという
欠点がありますね,ジアッカ社長」
「ディアッカ・・・」
「それより,あんたのメーカーのリックディアスが大量生産できないなんて
もう手作業の町工場のようなもんです,ジアッカ社長」
「ああー！もうわかったよ！」
ディアッカがとつぜん切れた
「リ・カズィが欠陥品だって？小娘のあんたにわかってもらいたくないね！
リックディアスは大量生産できないなんて？んなもんお前の知ったことか！
ワハハハハ！」
私は机においてあるリモコンを押した。
ピッ！
「大尉、心配ですか？」
「･･････ああ」
珍しく言葉少なく答えるキース。その態度からキースの内心の葛藤を悟ったナタルは、椅子を引いて来てキースの隣に腰掛けた。
「大丈夫ですよ、彼女は生きてます。ヤマト少尉とフラガ少佐を信じましょう」
「そうだと良いんだが」
「大尉が信じてやらなくてどうするんですか」
ナタルはキースの不安が良く分かった。フレイに妹を重ねているキースにしてみれば、もう一度妹を失うという恐怖を感じてしまうのだ。妹を失う経験など、一度で十分だ。２度も経験したくはない。幸運にも兄弟を戦場で失った事は無いナタルだが、父親はすでに戦場に散っている。
だからナタルにもキースの感じている不安が分からないでもないのだ。同じように今戦場に出ている兄が戦死したらという不安に駆られる時もある。それを人には見せないだけで、ナタルにだってそういう感情はあるのだ。
キースの不安を理解できてしまったナタルは、キースの肩にちょこんと身体を預けた。ナタルに持たれかかられてちょっと焦るキース。
「バ、バジルール中尉？」
「大丈夫ですよ、キース大尉。あの娘を信じましょう」
肩から伝わってくる温かさと、女性特有の香りにキースは気分が不思議と落ちついて来るのを感じた。
「す、済まない、心配させてしまったかな」
「いえ、構いません。フレイを心配しているのは、私も同じですから」
「･･････フレイ、か。勉強してる時はそう呼んでるのか？」
「いえ、こう呼ぶのは初めてです。普段はアルスターですよ」
「･･････２人の時くらいはフレイと呼んでやったらどうだ。きっと喜ぶぞ。あいつは中尉を姉の様に慕ってるからな。理知的でかっこいいんだと」
「そう･･･ですか。そう言われたのは初めてですね」
怖いとか、近付き難いとか、可愛げが無い女と言われたことはあるが、かっこいいなどと言われたのは初めてだ。だが悪い気はしない。自分にもフレイを羨ましいと思う時はあるのだ。
「私は、あの娘の女らしさが羨ましいんですけどね。私にはお洒落など分かりませんから」
「聞けば良いじゃないか。フレイなら喜んで教えてくれるさ」
フレイの指導を受けたナタル。それがどれだけナタルを変えるのか、とても興味があるキースだった。ナタルは化粧っけの薄い、というか、口紅くらいしか付けないので、化粧も肌の手入れも無しにこの美貌を保っている事になる。マリュ−だってそれなりの努力をしているのだから、ナタルはある意味脅威なのだ。すっぴんでもややキツイ美人で通るナタルが、フレイの手解きを受けてどれだけ変身するか、是非見てみたい。
「･･････そうだな、フレイは生きてる」
「そうですよ」
ほんわかした空間を生み出してる２人。軽いキースはともかく、ナタルは普段の雰囲気からは想像も出来ないほどに穏やかな表情をしている。これでまだキスどころか、まともに手を繋いだ事も無いと言うのだから、変わった関係と言える。
このほんわかした空間に、場違いな侵入者がやってきた。
「バジルール中尉、そういえば聞き忘れてたんですけど、俺はどうすれば････････」
扉を開けて入って来たトールは、穏やかな表情でキースに持たれかかるナタルと、そのナタルを優しい目で見ているキースを見て、そのほんわかした空気を感じて、入って来たその姿勢でビシリと固まってしまった。
「････････････え、ええと？」
目の前の光景を脳が受け入れられず、完全にフリーズしてしまっている。トールが入って来たのを見てナタルは体をキースから離したが、まだほんわか状態の余韻が残っているのか、怖いくらい穏やかな声で問い掛けてきた。
「どうした、ケーニッヒ准尉？」
「あ･･････いえ、俺はどうすれば良いのかと･･････」
「ああ、そうだな。君は捜索には加わらず、デュエルで待機していてくれ。いざとなれば、君だけがアークエンジェルを守る壁となるからな」
「は、はい」
返事をするトール。だが、その頭の中では別の事が渦巻いていた。
『あ、あのバジルール中尉が穏やかな笑顔を浮かべてるよ。信じられねえ。一体、何時の間にこの２人は付き合いだしたんだ？』
まだ付き合ってる訳ではないのだが、トールはすっかり誤解しまくっており、妄想をどんどん進めるうちに、すでに２人は経験済みにまで推し進めてしまったのである。これが後にアークエンジェル内に深刻ではないが、笑いを誘う騒動を引き起こす事になる。
「おーい、ミリィ」
「え、あ、トール･･････」
「どうしたの、なんだか元気がないけど？」
トールはミリィの何時になく落ちこんだ様子に怪訝な声を出したが、すぐにそれがフレイを心配してのものだろうと考えた。だが、それはトールの勘違いであった。
「そうか、フレイが･･･････」
「ええ、あの娘、どれだけ迷惑をかければ気が済むのかしらね？」
「ミリィ？」
声その物に毒が含まれてるのでは、と思わせるミリアリアの言葉に、トールはギョッとしてその顔を見て、その目に宿る危険な光に目を疑った。
「そうよ、あんな娘、帰ってこなければ、死んでればいいのよ。フレイさえいなければ、みんな上手くやっていけるんだから」
「ミリィ、なんて事言うんだ。フレイは仲間だろう！？」
「仲間ですって、フレイが？ 冗談言わないで。あんな娘、仲間じゃないわよ。サイを傷付けて、キラまで飽きた玩具みたいに捨てて、挙句に今は艦長達に取り入ってるじゃない。昔っから立ち回りだけは上手かったけど、ようやくその報いを受けたのよ！」
感情のままに言い切るミリアリア。その姿に、トールは昔のフレイに通じる醜さを見てしまった。感情のままに憎しみを増大させ、相手を理解することなくただ拒絶し、否定する。あの復讐に身を焦がしていた頃のフレイと、今のミリアリアは方向性の違いと程度の差こそあるが、同じ目をしていた。
顔を顰めるトールに気付かぬままに、ミリアリアは呪詛の言葉を吐き出し続ける。
「そうよ、死んで当然なのよ。みんなに迷惑かけ続けて、キラを、サイをあそこまで追い詰めて、自分だけ良い目をみようなんてするから、だから･･････」
「ミリィっ！」
鋭い音が通路に響き渡った。トールがミリアリアの頬を平手で張ったのだ。張られた頬を押さえ、状況が理解できないでいるミリアリアに、トールは肩を振るわせながら隠していた真実を語りだした。
「フレイは･･･････フレイは良い目を見ようなんてしてないさ。あいつは全部自分で背負い込むつもりなんだ」
「トール、何言ってるのよ、あなた？」
「あいつはキラを利用して父さんの敵を討とうとしてた。だけど、それが間違いだと気付いて自分からその関係を終わらせたんだ。今のあいつは自分の力で敵を討とうと努力を重ねてる。キースさんやバジルール中尉のしごきにだって、その為に必死に耐えてるんだ」
「でも、そんなの全部自分の為じゃない。フレイは自分の事しか考えてないのよ！」
「･･････ミリィは、最近のフレイをちゃんと見た事があるのか？」
何かを押し殺したトールの声に、ミリアリアは気圧されるのを感じた。トールは怒っているのだ。
「な、なによ。見た事なんて無いけど」
「･･････そうだよな、あのフレイを見ていたら、とてもそんな事は言えない」
トールは幾度も見ていた。まるで、一人ぼっちで泣いている子供のようなフレイの姿を。寂しさと悲しさに気丈に耐えるフレイを。あの姿を見るたび、何も出来ない自分の無力さに歯噛みしてきたのだ。そして、フレイが辛さに耐えながら前に歩き出す姿と平行して、壊れていくキラの姿も見てきたのだ。
それらを聞かされたミリアリアは最初、それが信じられなかった。あのフレイが、そんな殊勝な考えでいたなんて。間違いを認めて、キラに謝って、自分の意思で歩く道を決めていただなんて。
「･･････嘘･････嘘でしょ。何でよ、なんで教えてくれなかったのよ？」
「フレイが言うなって口止めしたんだ。悪いのは全部自分なのだから、このまま噂が自分を悪く扱ってくれる方が良い。キラの負担にならないで済むって言ってな。それに、自分が悪く言われれば、キラが俺達やカガリと仲良くなっても誰も何も言わないだろうって」
「あのフレイが、そんな事を･･････」
自分の知るフレイとは違う。あの娘は自分から謝ったりしないし、他人を気遣ったりしない。まして、自分を悪者にして他人を庇ったりなど絶対にしないはずだ。だが、トールの話を信じるなら、フレイは戦場に立つことで、色々なものを見て変わったという事なのだろう。
もしそれが本当なら、自分はとんでもない間違いを犯していた事になる。知らなかったとはいえ、フレイなんか死んだほうが良いとまで思っていたのだから。
「･･･････私、そんな、知らなかったのよ」
「知らなかったのはしょうがないけど、死んで当然ってのは酷すぎたな」
「わ、私、どうしたら良いのよ。もし本当に死んでたら、私、謝ることも出来ない･･････」
「今は、祈る事しか出来ないよ。キラや少佐が見つけてくれる事を信じよう」
「･･････うん」
すっかり落ちこんでしまったミリアリアの肩を抱きながら、トールはフレイの無事をただ祈り続けた。ミリィの為にも、生きて帰ってきてくれよ、フレイ。俺達は死ぬにはまだ早過ぎるんだからさ。
ミリィ、トールが可哀想すぎだよ。しかも迫るタイミング悪すぎだし
これが情報戦に破れるという事なのか･･･････・
フレイ様は逆に前向きだなあ。一体何を伝える気なのやら？
>>リヴァオタと八アスのためでなく
とりあえず、ディアッカに客商売は無理ですな。客怒らせると仕事が貰えないんだぞ
後アスラン、遂にそこはかとないホモから公然のホモに･･･････
難しいですね。全員結構普通のトーク(アスラン以外)してるのに、エラク不条理に見えます。
>>流離
ナタルやトールが活躍してますね。本編で不遇だった人達の救済って感じで良いです。
>怖いくらい穏やかな声←これはなかなか想像しづらいですw
｢シーナさんの怪我は軽い打撲だけでした。手当ても終わってそちらに向かわれてます。それから、お兄ちゃんの方はまだ検査中ですけど、頭を少し打っただけみたいです。｣
｢そう・・・。ありがとうユフィーさん。｣
｢いえ。・・・では失礼します。｣
医務室に務めているクリスの義妹、ユフィー・ヒースローからの通信で負傷したパイロット達の容態を確認したマリューは、深いため息をついた。取り合えず、パイロット達が無事であったことは確認できたが、目の前の問題は何も解決していない。
｢まさか、相手があんな戦力を保有しているなんて・・・。ティンベル中尉とクリス君には悪いけど、あの程度で済んだのが不思議なぐらいだわ。｣
彼女の言う敵とはもちろん、先の戦闘でセラフィム隊のモビルスーツ部隊を圧倒した青いストライクのことを指している。その上アスランからの報告では、それに乗っているのは彼女達の救出すべき相手、キラ・ヤマトだというのだ。
｢やはり、噂通りフォルキアがブルーコスモスの活動を支援しているんでしょう。そうでなければ、あんなものがでてくるはずがありません。｣
ノイマンが言う噂とは、この時代ではそう珍しいものでもなかった。地球・プラント間の現状を快く思わない国々はそう少なくはなく、そうした国が裏でブルーコスモスに協力し再び反プラント感情を再燃させようと目論んでおり、それがEYESの任務を妨げる最大の要因となっていた。今彼らのいるフォルキアも、その典型的な例である。
｢物的証拠も少ないから、返還を要求したところで相手にされないのが関の山ね。となると、やっぱり直接二人を救出するしか無いようね。｣
｢潜入している情報部員からの情報では、二人は別々の部屋に監禁されています。しかし、もしザラ大尉の報告が本当なら、あのストライクを止める必要もあります。｣
二人の会話をよそに、アスランはどこか上の空の表情で下の戦略モニターを眺めていた。あの機体には間違い無くキラが乗っていた。しかし彼は自分を撃った。もう自分達が戦う理由など、どこにも無いにも関わらず・・・。
｢おいっ、アスラン！！｣
突然イザークが自分の名を呼んだことで我に返る。彼は腕組みをしたまま視線を向け、アスランに問い詰めてきた。
｢あのストライクに乗っているが仮にキラ・ヤマトだったとする。もしまた奴が出てきた時、お前に奴を撃つことができるのか？｣
そう聞かれ、アスランは何も答えることができなかった。もしかしたら、キラは既に自分の知っている彼ではないのかも知れない。その時自分がどうすれば良いのか彼にもまだ分かっていなかった。マリューとノイマンも会話を中断し、アスランの答えが出るのを待った。しばしの沈黙が室内を支配した。
沈黙を破るかのように、シーナが会議室に入ってきた。その左腕には包帯が巻かれている。
｢中尉。もう怪我の方は大丈夫なの？｣
｢ハイッ、ご心配をおかけしました。ですが申し訳ありません。大切な機体を・・・。｣
｢全く、俺のブルーフレームをくれてやったと言うのに情けない。｣
落ち込むシーナに対し皮肉気に呟くイザーク。そんな彼をマリューは目で諌める。しかし実際問題として彼女の機体の損傷はひどく、恐ろしく正確な狙いで脚部の急所を打ち抜かれていた。取り敢えず応急処置は施したものの、次の作戦への出撃は見送るしかなかった。
｢・・・そのことで、気がついたんですが・・・。｣
何かを思い出したかのように、シーナは語り始めた。
｢あのストライクのパイロット、あれだけの腕を持ちながら、どうしてコクピットを狙わなかったのでしょうか？｣
シーナの一言に目が覚める気持ちになるアスラン。彼女の言う通り、キラならば同じ状況下でコクピットを狙撃するなら容易にこなすだろう。しかしあえてそうしようとはしなかった。このことは、キラがまだ自分の知るキラであることを証明している。そうだとすれば、まだ望みはある。
｢・・・艦長。｣
長らく閉じていた口を開いたアスランは、マリューをはじめとするその場にいる全員に自らの決意を語った。
｢次の戦闘であのストライクが出てきた時、その時は自分に任せて頂きたいのですが・・・。｣
｢ザラ大尉？｣
突然のアスランの言葉に、マリューは驚きを隠せない表情をした。しかし、彼の提案はあまりにリスクが高い。
｢貴方の気持ちは分かるわ。・・・でもあれにキラ君が乗っているとまだ決まったわけでもないし、仮にもしそうだとしても貴方の呼びかけに応えてくれるかどうか・・・。｣
｢キラはあの機体に乗っています。そして、必ず成功させて見せます。ですから・・・。｣
｢フンッ！その甘さは相変わらずだな。｣
二人の会話にイザークが横槍を入れる。彼が再び皮肉を言う気だと感じたマリューが止めようとする。しかし、次に彼の口から出たのは意外な台詞だった。
｢・・・だが、俺達の任務が二人の救出である以上、それに従うまでさ。しかし、さっき言ったことには責任を持てよ！｣
｢イザーク・・・。｣
｢・・・どうやら決まりね。ザラ大尉、この作戦が成功するかどうか・・・、あなたに賭けてみるわ。｣
そう言うと、マリューはアスランの肩に手を置き、彼に自分達の、そしてキラとフレイの命運を委ねた。
私は、シャワー室から消えたキラを探していた。キラの言葉が耳にこびりついている。
――「ミリィ。僕は癒しを求めてはいない。
僕は昔のようには、もう戻れない。どこかへ行ってくれ」
私は、焦った。早くキラを見つけないと。
裸にバスタオルを巻いて、男子シャワー室を飛び出したままだった私は、
狭い通路の奥に入って、やっと服を着た。
ただ、濡れ髪だけはどうにもならない。バスタオルをかぶりながら、キラを求め彷徨う。
キラの行き先を考える。そう言えば、キラは展望デッキからシャワー室に来たって
言っていた。また、戻っているかもしれない。
私は展望デッキへ行ってみた。キラはいなかった。代わりに展望デッキのベンチに座っていたのは、
あの子だった。私は、見つからないように物陰に見を隠した。
あの子は ため息をついていた。歩き疲れているようだった。
ポケットから、何かを取り出して見つめている。
「キラ…」切なそうに、独り言を呟いている。
あの子とキラ、別れたはずなのに。やはり復縁のため、追いかけている。
あの子より先にキラを見つけなきゃ。
さっき、シャワー室で抱いたキラの体の感触が残っていた。
あの子なんかに、もう渡さない。キラは私のものよ。
「キラも、どこかで休んでいるかも…」
あの子が、また独り言を呟いた。なら、キラの部屋に戻っているかもしれない。
私が、あの子が部屋にいないことを言ったから。
あの子に見つからないように、そっと、展望デッキを後にした。
歩きながら、展望デッキの窓に叩きつけるように振っている雨を見て、
交代直前、休憩を取る艦長に変わって艦長席につくバジルール中尉の言葉を思い出していた。
「進路の天候が悪くなっている。このままでは全速力という訳にはいかない。
だが、向こうは潜水空母だ、構わず追ってくるぞ。
くそ！ 何てことだ、あの時、イージスを打ち取るか、空母にダメージを与えていれば
良かったものを」
相変わらず、バジルール中尉は、艦長の甘さを指摘する。
でも、そんな考えは一瞬だった。私は、焦る心で、キラを求めて居住区を彷徨っていた。
私は、キラを探していて展望デッキに差しかかった。
さすがに疲れてきて、展望デッキに置かれたベンチに座り込む。
たしか、宇宙のときは無かったような気がするけど、地球に降りてから置かれたみたいだ。
風雨はますます激しくなり、窓に叩きつけるようになっている。
私は、またキラからのメールを思い出す。
私はポケットに入れてきた小さなメモリカードを出して握り締めた。
私は、それにキラからのメールを保存していた。
┌──────────────────────────────────────
│ 僕は君を必ず守る。何があっても守るよ。いつまでも。約束する。
キラの守るという想いが、私に勇気をくれる。
┌──────────────────────────────────────
│ 憎んでいることを、これまで僕を愛して育ててくれた母さんに知られれば、
│ 母さんは、これからずっと悲しむだろう。だから、僕は会いたく無かった。
│ でも、君が来ないと知った時、僕は母さんに、この言葉を言ってしまうかもしれなかった。
│ 『どうして、僕をコーディネータに生んだの？』
キラのママへの想い。私、誤解していた。こんな、誤解がきっかけで終わってしまうなんて嫌だ。
「キラ…」私は、また独り言を呟いた。
私の握り締めるメモリカード。
これは、私が以前、ノートパソコンを使う時に、キラから借りたままになっていたものだった。
──「ねえ、キラ、ちょっとメモリカード貸して。データ保存したいの」
「今、手持ちが無くて。仕方ない、フレイ、これ使っといて。中身は見ないでね」
「え、どうして？」
「ちょっとね…」
カードのラベル面には『カトウゼミ キラ・ヤマト』と書かれている。
ノートパソコンは軍から支給されたものだけど、このカードはキラが
ヘリオポリスのカレッジのころから使っていたもの。
メールを保存する時、私は、同時に、その中身を見てしまった。
すべてを見た訳では無い。でも、この中には、私の知らないキラの記録があった。
"Fllay" と言う名のフォルダ。その中には、ヘリオポリスのころの私の写真データが
幾つも入っていた。ほとんどはゼミのコンパの時の写真。
微笑む私。友達とＶサインをする私。キラも含む集合写真もあった。
単にコンパで取った写真を複製して配ったものなのだけど、それを選んで、カードに保存し、
いつも持ち歩いていたキラの、私への想いが感じられた。
私は、メモリカードを大切にポケットにしまった。これは、私にとっても宝物になった。
夜も更けてきた。眠気も襲ってくる。
「キラも、どこかで休んでいるかも…」私は、また呟く。
私は、負ける訳にはいかない。
メモリカードに秘めた、私の知らなかったころのキラの想いを垣間見たから。
キラを追いかけなくちゃ。
深呼吸をして、私は立ち上がった。
キラが、休んでいるのなら、キラの部屋か、パイロットの仮眠室だろう。
部屋に来ないのなら、仮眠室のはず。
もう一度、仮眠室へ行ってみた。マードック曹長が仮眠を取っていた。
でも、私の物音で目を覚ましてしまったようだ。
「なんだ、お嬢ちゃん。こんな夜中に」
「キラ知りませんか。探しているんです」
「ああ、坊主なら、さっきまで、ここに寝てたぞ。あれ、どこに行ったのかな」
「ここに居たんですね！ まわりを探してみます」
「そういや、寝る前に、なんかブツブツ言ってたな。昼間っからの不機嫌な様子は変わってなかったし」
「なんて言ってたか覚えていませんか」
「さあ、分からなかったな。そういや、シャワー室のタオル持ってきてたな。ほらそれだ」
「あ、本当」
仮眠室のベッドの脇に、シャワー室のタオルが置きっぱなしになっていた。
キラは、シャワーを浴びていた。キラの部屋にも専用シャワーはあるけど、じゃ無ければ、
共同の男子シャワー室だ。そこのことは全然気がつかなかった。道理で見つからない訳だ。
「お嬢ちゃん、坊主をゆっくりさせといてやんなよ」マードック曹長は、私にニヤニヤしながら話しかける。
「どうしてですか」
「久しぶりだからって、夜、そんなに責めちゃ可哀想だぜ」
マードック曹長は、わざといやらしいことを言って、私をからかおうとしているらしい。
でも、別に悪意を持ってのことでは無いのは分かった。この人は、こういう人なんだから。
「分かった。キラに会えたら、一回だけ軽くにしときます」 私は、事もなげに応えた。
「へえ？」
「キラと激しいのは、また、今度にします」
「へ？… ああ、それがいいな…」
「気を使ってくれて、ありがとう。じゃあ行きます」
「おい、冗談で言ったのに、最近の娘って」小声で言った。
逆にマードック曹長が照れているようだった。
私は悪戯っぽく笑って、仮眠室を後にした。
マードック曹長も、それに釣られて苦笑いを浮かべた。
ヘリオポリスのころの私なら、真っ赤になって逃げ出すか、逆に怒りだしていたはず。
でも、キラとの行為を積み重ねた私には、この程度の話は、いやらしくもなんとも無い。
もっと、すごいこともしてるから。
だけど、こんな風に、うまくやりかえすようなリアクションを他人にしたのは、
マードック曹長が始めてだった。私も、こんなことが言えるんだと自分で関心していた。
仮眠室のまわりを探して見たけど、キラは見当たらない。
キラも彷徨っているの。ずっと擦れ違っているの。
私、絶対、キラに追いつくんだから。
居住区や食堂などを、キラを求めて、何往復も行ったり来たりしていたある時、
私はキラの部屋の戸が開いているのを見つけた。私は一目散で飛び込んだ。
そこには、デスクのノートパソコンの前で立ち尽くすキラがいた。
トリィが肩にとまっている。
キラは、私に気づいて、ノートパソコンの蓋をパタンと閉じた。
「ミリィ、君か…」
キラはがっかりしたような声を出した。
「フレイだと思ったの。フレイは出て行ったわ」
「だけど、パソコンのメールソフトは 開いたままだ。荷物も、そのままだし、フレイは出て行った訳じゃ無い。
ミリィ、なぜ嘘ついたんだ」
キラは、語気を強めているようだった。
「でも、分かれたんでしょ。フレイと」
「ああ、そうだよ。でも、部屋は、そのまま使ってくれとメールした。返事はもらえなかったけど」
「変よ、おかしいわ。キラの部屋なのに」
「僕はいいんだ。これからどうせ戦いしか無い。それより、ミリィ、なんで嘘を付いたりするんだ」
「キラ、もうあの子のことなんか忘れてよ。また、昔に戻ってよ。トールと三人のころに、
辛いのなら、私がいるから」
「言ったはずだ。僕は昔には戻れない。辛いけど、僕は癒しなどはいらない」
「違うわ。そんなはず無い。昔に戻れないなんて悲しいこと言わないで」
「本当だよ。僕は人を殺した。もう何人も殺している」
「それは、戦争だから。敵なんでしょ」
「ああ、そうだよ。それで殺した。ブリッツのパイロットも。
あれは、僕の昔の友達の仲間だ。それが分かっていて殺した」
「キラ、そんな…」
「あの頃とは違うんだ。何も知らずに偽りの平和の中で暮らしていた時とは。
僕は、もう血塗られている。癒しを求める資格なんて無い。だから、僕に構わないでくれ」
「そんな、馬鹿なこと」
私の目から、いつしか涙が溢れていた。ショックだった。キラが、そんな風に思っていたなんて、
私が戦いに浮かれていた時に、そんなことを思っていたなんて。
「キラ、おかしいよ。そんなこと。自分ばかり責めて、おかしいよ。
そんなの戦争が悪いんじゃない。私達みんな巻き込まれて。私達は悪くない。
私達生きるために戦っているだけじゃない。私達悪くない。
キラはキラじゃ無い。変わってる訳ない。お願いだから昔の優しいキラに戻って。
トールと私と馬鹿な話で盛り上がっていた、あのキラに戻って。
私、キラを癒してあげるから。ねえ、私、キラのこと…」
私は言いかけて、言葉を止めた。(キラのこと好き) 叫んでしまうと壊れてしまいそうで恐かった。
「お願い、キラ。癒してあげるから、キラ」
私は、またキラに近づいていった。キラに自分を投げ出すために。
まだ、シャワーの水気が取れていない髪から雫がしたたり、涙とともに、私の服を濡らしていた。
トールすごくいいやつですね。ミリィも、うまく説得できて。
多分、うちのミリィは、こんなに簡単には説得されないでしょうね。和解は遠そうです。
>chain
イザーク、本編最後のようにカッコいい台詞ですね。マリューさんとのも会話して新鮮でした。
次は無人島かな？
フレイたまがどんな会話するか楽しみだなぁ。
SS職人さん達には期待してるんでがんがってくださいねｗ
司会の一言により,観客拍手喝采。
「今日のメインヒーローはディアッカ・エルスマン！」
「えっ？」
ディアッカ突然のことでびっくり,司会は続けるように
「対戦相手はグリズリー！」
観客大喝采,ディアッカは
「ちょっとまで！こんなのとしたら死ぬでしょうが！」
「おっとディアッカ選手,タイムです！」
審判が司会のところに駆け寄り話した
「皆さん！今回はなんでもよしでデスマッチ！相手を殺してもよし！」
ディアッカびっくりして
「わかりました！売ります！ＭＳ売ります！」
１０分後
エルスマン社の一室
「はいつまりこれがパンフレットだ」
「これガンダムタイプじゃない？」
「そうです,グレェイトな新型ＭＳのνガンダムです」
「ひガンダム？」
「νガンダム,νをニューと読むんです」
「わかりずらいわよ,グレェイトガンダムにすれば良かったのに」
「νの方がカッコいいんだ俺的には」
ディアッカは思い出したように
「あっ専門のメカマンも呼びますので,素人には難しいんだこれ」
「そう,それもたのむね」
こうして商談が成立した。
「参ったな、強力な電波障害を受けてる。これじゃ救援も呼べやしないぞ」
アスランは途方に暮れて空を見上げる。辺りには木々が生い茂り、イージスと言えども頭が出ない有様だ。機体を隠すには好都合だが、これでは味方にも発見してもらえないではないか。
仕方なくアスランはイージスを降りると、拳銃の安全装置を外し、イージスのコクピットをロックした。あのスカイグラスパーの姿を確認する必要があると考えたのだ。パイロットが脱出してる様なら襲撃されることも考えなくてはならない。
スカイグラスパーが落ちた場所は分かっているので発見は容易だった。イージスから１キロと離れてはいない山中に落ちているスカイグラスパーは木の間に機体を突っ込むような姿勢で地面に落ちていた。右の主翼がないのは、木にぶつかった時に折れて持っていかれたのだろうか。煙は立っていないし、コクピットも開いていない。どうやらパイロットはまだ中にいるようだ。
アスランは拳銃を手に慎重に機体に近寄り、コクピットを覗き込んだ。すると、予想通りパイロットがコクピットの中で気を失っている。コクピットの傍を探してキャノピーの手動開閉装置を探し、キャノピーを開けて中に入る。
「こいつは、女か･･･････」
アスランは顔を顰めた。ややラフに着こんだパイロットスーツから見て取れる身体のラインが女性だという事を教えており、それが分かった途端にアスランはどうしたものかと考えてしまう。甘いと言われようが、これがアスランなのだから仕方がない。しかも相手は気絶しているのだ。
さてどうしたものかと考えていると、女性の胸元から顔を覗かせているペンダントに気が付いた。興味を持ってそれを手に取り、中を見たアスランはその場で硬直してしまった。中に入っていた写真は、アスランのよく知っている相手だったから。
「これは、キラッ！？」
アスランの発した声に気がついたのか、女性が僅かに身動ぎをした。目を覚ますと思ったアスランはその女性に拳銃を突き付ける。そして、女性はゆっくりと目を開けた。
「･･････あ、あれ、ここは？」
「起きたか」
「え？」
そこでようやく女性、フレイも周囲を確認する事が出来た。キャノピーは開けられ、目の前には銃口が突き付けられている。
「な、何よ、これは？」
「余り騒がないでもらおうか」
拳銃を突き付けているのがザフトのパイロットスーツを来た男だと悟り、フレイは竦みあがってしまった。コーディネイターに自分が勝てる訳がない。
「さてと、ヘルメットを取ってもらおうか。そして機体を降りろ。あと、幾つか質問に答えてもらう」
「わ、分かったわよ」
フレイはヘルメットを取った。邪魔にならないようにポニーテールに纏めた赤い髪が汗に濡れて少し重い。そしてアスランの拳銃に脅される様にゆっくりとスカイグラスパーを降りた。幸い機首を地面に突っ込んでるから地上までの高度は大したものではない。
降りてきたフレイを見たアスランは厳しい表情を崩さずにフレイに問いかけた。
「さてと、幾つか質問に答えてもらうぞ。まずは姓名と、階級を教えてもらおうか」
「･･････フレイ・アルスター、准尉よ」
「なるほど、フレイ、ね。それで、どうしてこんな所を飛んでいた？」
「どうしてって、哨戒飛行中に偶然輸送機を見つけただけよ」
実に納得のいく理由だ。この辺りはどちらかと言えば連合の勢力下なのだから、哨戒機が飛んでても当然だ。アスランは何となく納得してる自分に困ってしまい、仕方なく次の、１番気になってることを聞くことにした。
「そうか、では、もう１つだけ答えろ。このペンダントに何故キラの写真が入っている。お前はキラの何なんだ！？」
アスランが突き出したペンダントの中には、困った顔で笑うキラの写真が入っていた。一体どこで撮ったのやらと思うようなキラの笑顔だ。フレイはそんな写真には心当たりがなかったが、あのペンダントを渡してくれた時のキースの言葉を思い出し、「あっ」と呟いた。
「･･････こういう事だったんだ」
あの人はと口の中で呟き、困った顔で微笑を浮かべる。まったく、どこまでお節介なんだろうか、あの人は。
「答えろ、死にたくなければな」
「･･････そのペンダントをくれたのは私の上官よ。なんでキラの写真が入ってるのかは知らないわ。私とキラの関係は･･････････」
フレイはそこで言葉を切ってしまった。恋人、とは言うことは出来ない。あれは利用していただけの間違った関係だったから。だが、どう言えば良いのだろうか。
「ええと、私とキラは･･･なんと言うのかしらね。色々あったのよ。昔はつきあってたと言うか････」
「つ、つきあってた･･････あのキラに女を作る甲斐性があるわけないだろっ！」
「あなた、何気に酷い事言うわね。そもそもなんであなたがキラの事知ってるのよ？」
「俺はキラの親友だったんだ！」
アスランの叫ぶような答えに、フレイの中で幾つかの記憶がパズルの様に組み合わさった。キラの友人。どこかで見たことのある顔。そしてイージス･･･････。
「あ、あなた、もしかしてアスラン・ザラ？」
「何でナチュラルが俺の事を知ってる！？」
「あの、その、前にラクスが見せてくれたロケットにあなたの写真が入ってたのよ。キラもイージスのパイロットの事を色々言ってたし」
ラクスの名前が出てきたことにまたまた驚くアスラン。一体この女は何なんだと思ってしまう。なんでか分からないが、奇縁とでもいうのか、とにかく何ともやり難い相手ではある。暫しどうしたものかと迷っていたアスランだが、徐々に空が曇ってきたのを見て仕方なく追求を断念した。
「雨が来るな。とりあえず戦闘機のキャノピーを閉めてついて来い。分かってると思うが、逃げようなんて考えるなよ」
アスランの脅しに、フレイは素直に頷いた。コーディネイターが自分たちより遥かに優れた身体能力を持っていることはキラとの付合いで分かっている。自分が抵抗してどうにか出来るとは思えなかった。まして、こいつはザフトの軍人。ちょっとした気紛れを起すだけで自分など簡単に殺されてしまうだろうから。
機体のキャノピーを閉じて下に降りようとするが、うっかり滑って機体の上から滑り落ちてしまった。
「あっ、きゃあああっ！」
「なっ？」
驚くアスラン。だが、上から降ってくるフレイを躱すことはできず、抱き止める形になってしまった。相手に勢いに押し倒されるように地面に倒れてしまう。
「いたたたたた」
「まったく、何をやってるんだか」
アスランは自分に圧し掛かっているナチュラルの女に文句を言いつつ起き上がろうとしたが、ふと右手に感じる柔らかい感触に不思議そうにそちらを見た。すると、フレイのやや開いたパイロットスーツの胸元から滑り込んでた右手が彼女の胸を揉みしだいていたりする。
「･････････････････････････」
硬直するアスラン。その顔には嫌な脂汗が滝となって流れ落ち、頭の中で危険信号が鳴り響いている。そして、恐る恐る顔を上げてフレイを見ると、フレイは顔を真っ赤にしてこちらを睨みつけていた。
「･･････あ、あ、あんた、なに人の胸を揉んでる訳ぇええ！！」
「ご、誤解だああぁぁ！！」
「やかましい、この変質者がああ！！」
アスランは多分、人生で１番不本意な罵倒を受けたことを自覚しつつ、右頬に食い込んだナチュラルとも思えないハンマーフックに一瞬だけ意識がとんだ。
「これ俺の好きな「アストレイ」のグループの新曲だよ」
「トーレス,「アストレイ」が好きなんだ」
アストレイとはマユラ,アサギ,ジュリの三人によるアイドルグループだ。
キラの知っている限り,トーレスはアイドル通であり,オタクなのだ。
ミリィが声をかけた
「あっトーレスさん,「アストレイ」の新曲の「PARADOX」ね」
トーレスは曲をかけた
「君の戯言〜♪夢を食ぶる〜♪」
ハッ,キラはぞっとして歌詞カードを見た
作詞：アスラン・ザラ
キラはため息ついて
「あいつの作詞かよ,一発でわかってしまった・・・」
トーレスは
「何でお前歌詞カードを見なずにわかったんだよ！」
「それはわけがあって・・・」
そしてミリィは
「キラ！すごい！」
「ハハハハ・・・・・ハァ」
こうして一日が終わるのである。
「ようこそ、僕らは君を歓迎するよ」
気がつけばそこは見慣れぬ緑色の光りに包まれた空間、目の前には色眼鏡をかけた同い年くらいの少年がいる。
「こ、ここは、お前は誰だ？」
「ここは向こう側の世界。俺はドリーミングの導き手」
「ド、ドリーミング？」
「そうさ」
今度は右から声が。そちらにはやや気弱そうな少年がいた。
「俺達はドリーミングに足を踏み入れた君を連れに来たのさ」
今度は左から。確かこの男は砂漠の虎、バルトフェルド隊長の副官だったはず。
「俺達は君を歓迎する」
「な、何を言ってるんだ、俺はそんな訳の分からないものには！」
「だが、気持ち良かっただろう、彼女の胸を揉みしだいた時の感触は？」
「そ、それは････････」
「認めちゃえよ。そうすれば楽になるんだ」
「そうだ、そして俺達とともに来い。君にはドリーミングな男になれる素質がある」
アスランを取り巻くドリーミングな男達。アスランはその誘惑に辛うじてあがらう事が出来た。
「ふ、ふざけるな。俺にはラクスという婚約者がいるんだ！」
自分達の誘いを断ったアスランに、３人は怒るでもなく僅かに距離をとった。
「まあいいさ」
「でも、君はいずれ必ずこっちに来るよ」
「その時、また会おう」
････････････････････････････････････････････････････････････
「はっ、お、俺は一体、何を！」
目を覚ましたアスランは周囲を見まわした。赤くなってる女。胸を揉んでる右手の感触。圧し掛かってくる相手の重み。どうやら意識が飛んでたのは一瞬らしい。
とりあえず、右手を離して、女と離れる。女は両手で自分の体を抱くようにしながら、まるで汚いものでも見るような目で自分を見ている。
「ザフトって最低ね」
「い、いや、あれは事故、そう、事故であって」
「じゃあ、なんで嬉しそうに揉みしだいてたのよ？」
「いや、それはあの、その･････」
「しかもだらしなく顔を綻ばせちゃって」
「まあ、柔らかくて気持ちよか････････って、違う、何を言わせる！」
一瞬ドリーミングな男達が浮かんできてあわてて頭を左右に振って打ち消す。俺は一体何を考えてるんだ。違う、これは俺のキャラクターじゃない、俺はもっとクールで理知的な筈なんだ。
こう、アイデンティティ崩壊の危機を迎えたアスランは必死に自分を保つ為に苦悩している。フレイはそんなアスランを気味悪そうに見ていた。
これが、後に「ザフトの赤い死神」と呼ばれ、連合パイロット達から恐怖の的となるアスラン・ザラと、連合にその名を知られる「真紅の戦乙女」フレイ・アルスターの運命の出会いであった。
英雄の出会いなんてのは、大抵碌なもんではないのである。
「ウド・サイパンショー」は「うたばん」みたいな歌番組である。
アスランは司会のウド・サイパンにインタビューを受ける。
「いや〜アスランちゃん,「タイタニックアドベンチャー」は
大ヒットを記録する大作ね,ウフッ」
「ええ,僕もこの作品は一押しだと思います」
「私,アスランちゃんの作詞する曲と映画は好きよ」
「ええ,ありがとう」
「では一曲目はアストレイの「PARADOX」よ」
歌が始まり,長ったらしいインタビューの後の曲はすがすがしいものだった
アスランはウドとしゃべるのは疲れてきた,ウドはなんせ,オカマだったのだ
そしてインタビューが始まる
「ではアスランちゃん,共演のセシリー・フェアチャイルドはどんなこなの？」
「結構かわいいです,意外としっかりしています,彼女にしたいですね」
「それではシャニ・アンドラスの「白夜」です」
アスランは考えていた。セシリーとるかキラをとるかを
一応、この出会いが１つのターニングポイントになるはずです
>>753
ええと、今いるのは海じゃなくてロシア南東部なので、針葉樹森が舞台ですね
>>chain
アスラン頑張れ。みんなの幸せは君の双肩にかかっているぞ
でも、アスランはついてない奴だからなあ。少し不安かもｗ
>>オーブ・フレイの心
ミリィとキラがどんどん離れている。でもキラもなんか後ろ向きだなあ
戦争なんだから殺すのは当たり前、くらいに割り切れないと辛いだけなのだが
フレイ様は遂に冗談がいえるようになりましたか。ユーモアはいいものですｗ
>> リヴァオタと八アスのためでなく
グ、グリズリーって、脅してνガンダム奪っちゃ駄目ですよ、フレイ様ｗ
出も整備員ねえ。出て来るのはアストナージですかなｗ？
ﾄﾞﾘｰﾐﾝｸﾞｷﾀｰｰｰｰ!!!ﾜﾛﾀよｗ
無人島のイメージ強くてすっかり脳からふっとんでましたｗ＞位置関係
ホント、大佐もアイデンティティが危ないなｗ
アスランとイザークがいいコンビになってきてる。カッコいい！
>>ミリアリア
キラをゲットしつつ三人の世界をキープ。ホントに難問を自分に課してますね。
>>オーブ・フレイの心
狭い艦内がこんなに広く感じるとは…。どちらもハッピーなっていうのも無理なんだろうなあ。
>>リヴァオタ
もうほとんど分からない世界ですが、なんか妙に病み付きになりますw
>>流離
アスフレって感じなのかしら。結構ありそうで今までなかった組み合わせですね。
初対面でアスランにパンチをかますフレイ様、さすがです(*´Д｀)ﾊｧﾊｧ
どうせならアスランも自分に正直に（略
楽しみにしていても更新が途絶えてしまう話が多いのが寂しいです。
最初の方で面白いと思っても、待てど暮らせど続きが出てこなくて。
作家さんたちにとって、書くことが義務じゃないとは分かるんですが…。
ヘリオポリスの崩壊から始まり、今までキラが、そう自問してきたのは何度目だろうか？
その間、自分にそう語りかける都度、死神の冷たい息吹きを肌で感じ取って、
死を覚悟したことは一度や二度ではなかった。
とはいえ、今回、生身のキラの死命を制している存在は、
星（コロニー）をも砕く、裁きの光（主砲）を撃ちおろす巨大な宇宙戦艦でなければ、
人の命を虫けらの様に叩き潰せる、悪鬼のような巨人（モビルスーツ）でもなく、
武具と体術の扱いに長けた、人殺しを天職とする職業軍人ですらない。
コーディネイターであるキラに比べれば、極めて非力で、武器はおろかおべべ一枚すら
身に着けていない、その名の通り身一つの女の子なのだ。
ただ、キラの一方的な認識では、その少女の本性は魔性の者（もののけ）だった。
その魔女は、夢の世界でキラを惨殺しただけでは飽き足らずに、こうして現実の世界
まで追い掛けてきて、再びキラの息の根を止めに来たのだ。
狂気を内包した、サバト（魔女の集会）の幕が、今開かれつつある。
シャワールームの自分のボックスの中で、両腕で自分自身を抱き締めるような姿勢で、
強く身を固めながらシャワーを浴びているキラは、まるで冷水の滝に打たれ
ている修行者のようにガタガタと震えている。
シャワーの設定温度は、平均体温より十度近く高く、キラの身体からは、もうもうと
湯気が立ち上っているので、それは単なる錯覚に過ぎない。
だが、キラ自身は、本当に自分は冷水を浴びているのではないかと疑ってしまうほど、
身体の芯からほとばしる震えが止まらなかった。
その要因は、キラが故意に背を向けている隣のボックスから聞こえてくる、
シャワー音の発信源にある。
振り返って確かめる勇気はなかったが、そこには今のキラと同じ一糸纏わぬ姿の
裸体の魔女が、自分を儀式の生贄に処そうと、キラを視姦しているはずなのだ。
その無言のプレッシャーは、キラの繊細な神経と脆いハート（心臓）に、強い負担を
与え、キラは上下の歯をガチガチと鳴らしながら、一秒でも早く、この生き地獄から
解放されることを、切に心から願った。
一体、自分はどれぐらいの時間、こうしてシャワーを浴び続けているのだろうか。
もう一時間以上、この体勢でいるのだと指摘されれば、そんな気がしないでもないし、
実はまだ秒単位で、数えるほどしか砂時計の粒は落とされていないと主張されても、
それはそれで納得してしまう曖昧な自分がいる。
魔女が作り上げた異次元空間に囚われ、時間の経過すら怪しくなってきたキラは、
一度頭を強く振ると、まだ自分の理性が残されているうちに、この異空間からの
強行脱出を決意する。
「サ……サイ、私、もう汗は完全に流せたから、先に出るね？」
キラは俯いたまま、敢えて後ろを振り返らずに、退出許可を求めたが、彼女の返事はない。
「………いいわよね？」
キラは不安そうに再度尋ねたが、音沙汰はない。本来、サイに裁可を得る義務などない
はずなのだが、無意識に彼女がこの空間の支配者だと認めているかのようだ。
「サイ………………！？」
とうとう痺れを切らして、恐る恐る振り返ったキラは驚愕する。半透明の隣のボックス
の中に、あるべき人影が見当たらないのだ。隣から絶え間なく聞こえてきたシャワー
の音に騙されたキラは、サイの姿を完全にロストしてしまう。
「サイ、どこにいるの？」
まるで魔法のように消失したサイに、キラは新たな恐怖に襲われ、軽いパニック状態
に陥る。もしかして、彼女は本当に魔女だったのでは…とさえ疑った。
もうもうと立ち上る水蒸気と、鳴り響くシャワー音に、著しく索敵能力の衰えていた
キラは、何時の間にか自分の背後に廻り込んだシルエットの存在に気づかなかった。
その謎の影は、パネルのボタンを操作して、キラの頭上から降り注いでいたシャワー
を停止させると同時に、キラを背後から抱き締めた。
キラは素っ頓狂な悲鳴を上げる。寝耳に水、襟首から背中に冷たい氷塊を落とされた
どころの騒ぎではない。比喩でも錯覚でもなく、キラを後ろから拘束したサイの身体は
氷のように冷たかった。この急激な温度差攻撃に、暖かいシャワーで湯だったキラの身体
は、突如、絶対零度の吹雪を吹き付けられたかのように心臓が一瞬停止し、まるで連続
した温度の急激な変化に耐えられずに砕けた食器類のように、キラの精神は罅割れた。
「うふふっ、キラぁ〜」
サイは、なめなめしい吐息をキラの耳元に吹き掛けながら、怪しい手付きで、キラの
瑞々しい肢体を揉みくちゃにした。年頃の美少女二人が素っ裸で絡み合う妖しい光景は、
入場料金が取れるほど見応えがあったが、観客が一人もいないのは淋しい限りだ。
「ひっ…ひぃいっ！？」
キラは涙目になりながら必死で抵抗する。背中には、キラよりもワンカップ大きい
サイズの豊満な胸の感触が押し付けられているが、異性なら天国と感じるこの状況も、
その手の趣味がない同姓のキラには、おぞましい悪夢でしかない。
「サ…サイ、ヤメテぇ〜」
キラはサイを振り解こうとしたが、恐怖で一時的にキラの運動神経が麻痺しているのか、
それとも、明らかに理性の箍が外れているとしか思えないサイが、火事場の馬鹿力を発揮
しているのやら、はるかに腕力に優れるはずのキラが、非力なサイの拘束を振り切れない。
まるで、雪女から生命を与えられた、女性の形をした活きた氷の彫像を抱かされたかの
ように、自分の体温を奪い続けるサイの人間冷凍庫振りを不思議に思っていたキラは、
未だに滝のようにシャワーを落とし続けるサイがいたボックスから、湯気がまったく
立ち上っていないことに気づいた。キラは目を凝らして、水滴と蒸気に隠された
パネルの設定温度を読み取り、驚然とする。普通ならぼやけた数字しか映らないはず
なのだが、コーディ特有のブッシュマン顔負けの視力を誇るキラの目には、「０度」
という、氷点下寸前の異常な数値が確かに見て取れた。
キラはそっと隣のシャワーに手を伸ばす。触れた途端、痛みと錯覚せんばかりの水の
異様な冷たさに、反射的に手を引っ込めたキラは、サイが、凍え一つ漏らさずに、
ずっとこの異常な水温のシャワーを浴びていたという事実に愕然とした。
「サ……サイ、あなた………」
未知の恐怖に耐え切れずにサイの方を振り返ったキラは、今のサイと目と目を合わせて
しまったことを、ほとんど本能レベルで後悔する。
普段見慣れた眼鏡を掛けずに、瞳に狂気の光を宿して妖しく微笑むサイの姿は、
明らかに魔性めいていて、キラは蛇に睨まれた蛙のように、完全に金縛りになる。
今のキラは、サイが生身でＭＳを撃墜させたとしても、決して驚かなかっただろう。
「キラぁ〜！！」
サイが、蛇のようにチロチロとした真っ赤な舌を伸ばす。キラの鎖骨から、うなじの
辺りにまでに舌を這わせ、その背徳的な感触に、「ひぃっ！？」とキラの鳥肌が立った。
「ふふっ、フレイの味がする…。もしかして、フレイに抱かれていたの、キラ？」
「………＄＃＆？＃＃＄！＄％…！？」
舐めた舌先から、先の情事でキラの身体にこびり付いたフレイの臭いを感じ取ったのか、
サイは彼女の身体状況を的確に見抜く。キラは、真実を映す魔法の鏡に照らされて、
仮の美しい乙女の姿から、醜い本性を暴かれた物の怪のような、奇怪な叫び声を上げる。
何とか人間の言語を取り戻したキラだが、今度はサイに唇を塞がれてしまい、最後まで
言い切ることが出来ない。彼女は身体ごと振り返ったキラの唇を無理やり奪うと、
蛇のような舌先で、キラの縮こもった舌を絡め取ると同時に、下腹部へと手を伸ばし、
キラの内部へと強引に指先を突っ込んだ。
「い……いやぁ〜！！！！」
同姓にキスされたショックと、秘所に感じた激痛に、バイオハザード（危険度）レベル
がＭＡＸ値を振り切ったキラは、身体能力のリミッターを解除して、ようやくサイの
呪縛を振り解き、狭いボックスの壁側に逃げ込んだ。
「はあっ…、はあっ…、はあっ…、はあっ…はあっ…」
涙目で大きく呼吸を乱したキラは、サイを振り切った際に、パネルの真下にあった
置き棚の中身を、大きく崩してしまう。石鹸や、手入れ用の剃刀などの浴槽用品が、
バタバタと床下に零れ落ちる。キラが暴れた時に、開始ボタンに指先が触れた効力で、
停止していたシャワーが活動を再開し、さらに偶然にも、シャンプーの瓶がパネル
の温度設定ボタンの上に倒れこんで、シャワーの温度をじわじわと下げ続け始めた。
サイは、雨中の路肩に捨てられた子犬のように脅え切ってブルブル震えるキラを、
楽しそうに見下ろしながら、先ほどキラの裡へと侵入させた、左手の細い中指と、
バンドエイドを巻いた人差し指を、キラの目の前に掲げてみせる。
故意に残酷な見世物にされた二本の指先には、白い粘着質の液体が付着していた。
「駄目じゃないの、キラ。ちゃんと外で出さないと、妊娠しちゃうわよ？」
今更ながらに情事の動かぬ証拠を突きつけられたキラは、羞恥と屈辱に頬を染めながら、
口惜しそうに顔を背ける。フレイはコーディの生殖率の低さなら大丈夫だから…って、
すぐに膣で出したがるから…などと、この状況では埒もない事を思い浮かべながら、
キラの瞳は、目を背けた先に転がっている物体に固定される。
キラの顔色の変化に気づいたサイも、キラの目線の先を追う。そこには、先ほど棚から
落ちた閉開式の剃刀が、刃を鞘から展開させている。慌てて手を伸ばそうとするキラを
尻目に、サイが先に剃刀を拾い上げ、キラの目の前が暗転する。今まで空手だった魔女
の手に、遂に殺傷道具が手渡るという絶望的な事態の到来を意味していたからだ。
「ねぇ、キラ。どうして欲しい？」
先の悪夢のトラウマからの、刃物に対するキラの恐怖心を感じ取ったかのように、
サイが敢えて優しい声色でキラに尋ねたが、キラは膝元をガタガタと震わせながら、
涙目で脅えるだけで、声一つ上げられない。
「私からフレイを奪い取った地点で、こうなる覚悟は出来ていたはずよね？」
サイは、ペロリと左手の指先に付着した精液を舐め取ると、右掌に直接握りこんだ
剃刀の刃を強く握り締める。当然、傷ついた右手からポタポタと血が零れ落ちたが、
狂気に支配され、恐らく痛みを感じていないであろうサイは、魔性の微笑を閃かせ、
キラは「ひぃっ！？」と、頭部を両腕でガードするような姿勢を取る。
自分の絶対的な優位を自覚しながらも、サイは用心深く窮鼠猫を噛む事態を警戒する。
というわけで、物は試しと、夢の中でキラを無力化した魔法の呪文を唱えてみた。
「青き……清浄なる、世界の為に…」
「！？」
その対（アンチ）キラ用に特化された呪いのスペルは、キラから抵抗する最後の
力と意志を奪い去った。キラは、へなへなと無防備のまま床下に崩れ落ちる。
己の一方的なジェノサイド（虐殺）を確信したサイが、驚喜と狂気の二重のいかれた凶器
の矛先を、彼女を出し抜いて先に女へと変化したキラの禍々しい肉体へと定めた。
「ひぃいやあぁあぁあ………！！！！！」
サイが血塗れの剃刀を大きく振り被ると同時に、キラが悲鳴を上げる。
湧き上がる憎悪と共に、振りかぶった剃刀の刃が、キラへと振り下ろされようとする。
あの泣いている女の子は誰？
「ひっく、ひいっく、やめて…、もうやめてよぉ……」
とうとう臨界点に達した、キラのガラスのように脆い精神は、粉々に砕け散ってしまう。
あれはキラ・ヤマト。私からフレイを奪った憎い存在。
「お願い…私が悪かったのぉ…。だから、許してよぉ……」
キラは幼児退行を起こしたかのように、ポロポロと涙を零して、激しく泣きじゃくる。
でも、あの子、泣いてるよ？
「許してぇ…、許してぇ……」
涙と鼻水で涎でキラの顔がクシャクシャに乱れる。あまりの恐怖に失禁してしまったのか、
キラの足元の水溜りが黄色く濁ったが、絶え間ないシャワーの水流に押し流され、すぐに
半透明の輝きを取り戻す。
それは、あの子の奥の手。困ったことがあると、ああやって何時も泣くの。
「うう…ひぃっく……。うううっ………」
園児というよりも、赤子そのものの弱々しさで、泣き続けるキラの姿を目の辺りにして、
キラを斬り付けようとしていたサイの動きが、はじめて停止する。
そうなると本当に手に負えなくなる。狡いわよね。でも、どこか憎めない子。
「寂しかったの…、怖かったの…、温もりが、欲しかったのぉ……」
二人の情念と錯覚するように、絶えずキラとサイを取り囲んでいた湯気が消えつつある。
先のドタバタで、パネルの温度設定ボタンに倒れ掛かったシャンプーの瓶に、水温の
生殺与奪権を握られたシャワーが、どんどん水流の温度を下げ続けていたからだ。
もう一度聞くけど、あの泣いている子は誰？
「ごめんなさい…、ごめんなさい……」
完全に冷水と化したシャワーが、サイの頭上から滝のように降り注ぐ。
どんな外界からの刺激も受け付けなかった、さっきまでの無感覚状態とは大きく異なり、
その冷たい水の感触が、サイの頭を冷やして、血に餓えた彼女の酔いを醒まし、
身体中の隅々にまで踊り狂っていた、熱狂のウィルスを除去した。
キラ・ヤマト。私のゼミ仲間で、泣き虫の親友。
それが、キラ…………本当のキ……ラ？
サイの手から、剃刀が零れ落ちる。床下とキスした剃刀がカキーンと鈍い音を響かせたが、
シャワーの大音量に打ち消される。
先ほどまで狂気一色に彩られていたサイの瞳に、みるみると理性の輝きが戻った。
わ……私は一体、キラに何を……………。
触れだけで粉々に砕けてしまいそうな、失禁し赤子のように泣き続けるキラのあまり
に脆くて惨めな姿が、最初の凍りつくようなシャワーでも冷やすことが出来なかった
サイの熱狂を醒まし、彼女の氷のように凍てついた心を溶かした。
こ……これが、私がキラにしたこと！？こんなのって……………！？……痛っ！？
彼女本来の良心が活動を再開すると同時に、封印されていた感覚までもが甦る。
痛覚を取り戻したサイは、傷ついた右手の痛みに思わず顔を顰めた。
「うう…ひっく、ひいっく……。うううっ………」
キラは床下にへたり込んだまま、ひたすら幼児のように泣き続ける。
従来の理性と優しさを完全に取り戻したサイは、みるみると顔色を青ざめさせた。
馬鹿なサイ、こんなことをして一体何になるというのよ！？
だって、あの娘はキラじゃないの。
優秀だけど、どこか要領が悪くて、いつもビクビクと脅えていた、あのキラなのよ。
引っ込み思案で、どこのグループにも入れずにまごまごしていたキラを、
サイが自分のゼミ仲間に招いたのが、二人の交流の始まりだった。
それ以来、キラはサイを頼りがいのあるゼミのリーダーとして慕ってくれ、
サイもキラを妹分のように可愛がっていたが、感情の分かり易過ぎるキラが、
どうやらフレイに憧れているらしいと知った時は、彼の許婚である事を隠していた自分に、
多少の後ろめたさを感じながらも、微かな優越感に浸っていたりしていたのだ。
それが、どこで…どうして、二人の歯車はこんなに狂ってしまったのだろう？
そう、婚約者であるフレイがサイを捨て、キラを選んだ瞬間、二人の友情は壊れたのだ。
サイは、泣きじゃくるキラの姿を無表情に見下ろす。
熱狂から完全に目覚めた現在でも、キラへの憎悪が完璧に消失した訳ではない。
ただ、今のサイは、キラを排除すべき敵としてではなく、今更ながら彼女の良く知る
臆病で泣き虫な親友として、改めて見直す事が出来た。
譬え自分から愛する恋人（フレイ）を奪った憎い相手でも、
今日まで数多の敵兵を殺してきた大量殺人者だとしても、
それでも、目の前で弱々しく脅え続ける、脆弱で脆い姿こそが、キラの本質なのだから。
そう、こんなにも情けなくて弱っちい、非力なサイにさえその存在を脅かされたキラ。
そんな弱虫なキラが、自身が大量殺人者であるという、常人でさえ気が狂いそうな現実を、
今日まで、彼女の中で、一体どのように折り合いをつけてきたのだろうか？
「フレイは優しかったのよ。
みんな、私がどんな思いで戦っていたか、誰も判ろうともしてくれなかった癖に！
一つぐらい、私が欲しいモノを手に入れたっていいでしょう！？」
確かに誰もキラを理解していなかった。自分もトールもミリィも、自分たちの身を
守らせる為に、キラの手を血で汚させながらも、キラのコーディとしての圧倒的な力に
心を惑わされ、彼女たちが本来良く知っていたはずの、泣き虫のキラを見捨てていたのだ。
そんな薄情な中、ただ一人フレイだけが、キラの辛い心情を慮ってキラを慰めていた。
未だにサイには、フレイが純然たる愛情や善意から、キラの心に近づいたとは、到底思え
なかったが、それでも、追い詰められていたキラには、フレイから差し伸べられた
救いの手に無条件で縋る以外に、何一つ選択肢は残されていなかったのだろう。
だからあの時、キラはサイと戦ったのだ。人と争うことが何よりも嫌いだった意気地なしが、
自分の居場所を必死で守る為に、恐らくは人を殺した時以上の蛮勇を身体の奥底から
振り絞って、親友の自分を無我夢中で蹴落としたのだ。
もう一度、脅え続けるキラの泣き顔を、今度は慈愛に満ちた瞳で見下ろしたサイは、
そっと、キラを慈しむかのように抱き締める。
先ほどまで、自分がキラに行っていた醜悪な行為の数々を考えれば、今更自分にそんな
資格はないとも思えたが、それでも、今のキラの姿を黙って見てはいられなかった。
キラは一瞬ビクッとしたが、何故か振り解こうとはしないで、サイに身を預けている。
「キラ…、ごめん…。ごめんね……」
何時の間にか、サイの瞳からも涙が零れ落ちていた。
洗面所で、替えの軍服に着替え終えた二人は、隣り合わせた椅子に座って、背中合わせ
になりながらも、お互いに終始無言だ。
一時的に幼児退行を起こしていたキラも、今ではようやく人並みの理性を取り戻したが、
それだけに、先の自分のあまりに情けない醜態振りに心を縛られ、サイの顔をマトモに
見られない。ただ、サイからさんざん酷い目に遭わされ、数々のトラウマを植えつけられ
ながらも、野生本能的に、今の彼女からは何故か全く危険を感じなかったので、敢えて
今すぐに逃げ出そうとはしなかった。
「キラ、私はもう明日からは、あなたにもフレイにも何も言わない」
しばらく続いた沈黙を打ち破り、身体ごと振り返ったサイがキラに声をかける。
それはキラにとって、実に有り難い申し出であるはずなのだが、恥ずかしさから
キラは頬を赤く染めて俯いたままで、未だにサイの方を振り向くことが出来ない。
「私ね、ここへ来る前に夢を見たの…」
何か第六感に閃くものがあったキラは、そのサイの言葉にはじめて反射的に振り返る。
そこには、コンタクトレンズをケースに仕舞い、手馴れた眼鏡を掛け直した、キラが
見慣れたサイの姿がある。眼鏡の有無で、人格を切り替えているのでは…と思わず
疑いたくなるほど、今の眼鏡姿のサイは理知的で穏やかだ。
あんな風に眼鏡を下半分にずらして、どうしてサイは全体の視界を確保できるのだろう？
彼女のズレ眼鏡振りを不思議に思えるぐらいには、キラは心の余裕を回復しはじめていた。
「それはキラを殺す夢。私はキラの部屋で、キラに馬乗りになって、こうやってキラを
刺し殺したの…」
思考に耽るキラに、サイは悪夢の共存という驚愕の真実を告白し、キラは唖然とする。
私とサイは、夢の内容をシンクロさせていたの？そんな偶然ってある！？
「あの時、確かに私は自分の中で憎いキラを殺したの。だから私の復讐はそれでお終い…」
サイは、キラよりも、むしろ自分自身にそう言い聞かせるように淡々と語った。
「サイ……」
キラは複雑な感情の入り混じった瞳を彼女に向ける。だが、サイはキラの同情を
跳ね除けるかのように、毅然とした態度を崩さずに話しを進める。
「約束通り、明日からは何も言わない。だから今、最後に言わせてもらうわ。
これから私が話すことを、負け犬の遠吠えとして聞き流すも、フレイを古くから知る者
の貴重な助言として生かすも、全てはあなた次第よ、キラ」
サイはそう前置きすると、キラに困惑する隙すら与えず、間髪入れずに質問する。
「キラ、あなた、自分がフレイから愛されていると本気で思っている？」
そのサイの実に原始的な問い掛けにキラはビクッとする。確かに、恋の鞘当に破れた
恋敵からの負け惜しみの捨て台詞としては、実に有り触れていたが、何故かキラは
「愛されている」と自信を持って答えることが出来なかった。
「フレイが本当に愛している人間を教えてあげるわ、キラ…」
彼女の意地悪な問いに、即答できなかったこと自体を、キラの無意識の回答として
受け取ったサイは、彼の真実を暴露する。
「地球連邦外務次官ジョアン・アルスター女史。つまりは亡きフレイの母親よ…」
その異常すぎる解答に、キラは思わず息を飲んだ。フレイにマザコンの気があることは
知っているが、いくらなんでも、その物言いは大袈裟すぎる。
「病気なのよ、フレイは…」
「びょ…病気！？」
「そう、病気。マザコン、シスコン、ロリコンなどの単語は、従来の病名用語の意味
は完全に形骸化してしまって、今では単なる悪口になってしまったけど、フレイは
今時珍しい、本当の意味でのマザー・コンプレックスという病名の末期患者なの。
多分、フレイは母親が望むなら、平気で他人を殺せるし、母から死ねと命じられたら、
喜んで死んでみせたでしょうね」
「そ…そんな…………そんなことって…」
あまりに常軌と理解を逸した世界に、キラの頭脳がオーバーヒートを起こす。
サイの言っていることが事実だとしたら、これはもはや、心が強い・弱いの尺度で
測れるような問題ではない。単なる狂人そのものではないか…。
そんなキラの疑惑を見取ったかのように、サイは彼女が知る限りの、フレイの母親に
纏わる逸話を、キラに聞かせてみせた。
顔色一つ変えずに最後まで食べ切って、まだ幼くて免疫力が低かったフレイが食中毒
で救急車に運ばれ、生死の境を彷徨ったという話（この時にフレイは殺人料理に対する
抵抗力が出来上がった？）は、微笑ましい笑い話として受け取れないこともない。
ただ、中学の頃、特にフレイと仲が悪かったクラスメートが、フレイの母親を、
「有力者に股を開いて、議員の席を勝ち取った売春婦」と侮辱してから、一ヵ月後に
自殺未遂事件を引き起こし、その彼は今でも白い壁の中で何かに脅えるように、
闘病生活を続けているというのは、到底、笑い飛ばせるレベルではないだろう。
その彼に、フレイが何かをしたという証拠など何一つないのだが、彼の末路を聞いて、
「あいつ、上手い場所に逃げやがったな」と舌打ちフレイを見て、サイはフレイが
極めて合法的かつ非暴力的に、彼の精神を壊したのだということを確信した。
その他、フレイの母親への倒錯した愛情を仄めかす逸話の数々を聞かされたキラは、
ガタガタと震えだした。
「だからね、キラ。百歩譲って、フレイの中で、あなたが私の上位に位置することは
あっても、百万歩譲ったところで、あなたが、彼の母親より上へ行く事だけは、絶対
に有り得ないのよ。少なくとも、今の段階ではね…」
サイはまるで、幼い子供をあやすかのように説明を繰り返す。キラは「嘘だ…」と
叫びたかったが、あまりに一つ一つの逸話のディテールが細かかったために、
仮に誇張が混じっていたとしても、全てが作り話しだとは到底思えない。
「確か、フレイがキラに近づいたのって、その大切な母親が死んだ直後よね。
あれだけ、キラを嫌っていたフレイの、突然の心変わりを不思議に思わなかった？
人を好きになるのに理由はいらない…と良く言うけど、幾らなんでも唐突すぎるわよね？」
そう謂われると、心当たりがありすぎるキラの表情が、みるみると青ざめる。
むしろ、他人から指摘されるまで、何故、その疑問に思い当たらなかったのか
不思議なくらいだ。もはや鳥頭ですむ話しではない。恐らく、その疑惑は今のキラの
根底を覆す禁句（タブー）として、キラの防衛本能が無意識に回避していたのだろう。
「どうやら、そういう疑問は、今まで全く思いつきもしなかったみたいね」
あまりに鮮明な顔色の変化に、キラの内情を正確に悟ったサイは、やや呆れたような
面持ちを啓かしたが、すぐにキラを憐れむような表情へと切り替える。
「まぁ、無理もないわね。今までフレイと付き合っていた女の子は、大抵は今の
あなたみたいに逆上せ上がって、全く周りが見えなくなっていたみたいだから。
やがて何時か必ず訪れる破局の日の、その瞬間までね…」
もう止めてよ、サイ。そんな話し聞きたくない！
キラはそう叫びたかったが、声が出なかった。もうこれ以上、フレイの幻想を壊された
くなかったキラは、両手で両耳を塞ぐ反抗的なポーズを主張したが、サイは容赦しない。
キラを傷つける目的ではなく、むしろキラの為を思って…である。
「私は、フレイの本質が善よりも悪であることを、何よりも彼の本性が、優しさよりも、
目的の為には一切手段を選ばない、氷のような冷酷さにあることも知っている。
そして、そんなフレイのネガティブ（陰）な部分も含めて、フレイを丸ごと愛して
あげられる自信があった。母親しか愛せない…という彼の病気を治してあげたかったから。
けど、それでもフレイは、結局最後まで、私を必要とはしてくれなかったのよね…」
今更、革めて誇らしくフレイへの想いを告白しながら、最後は自嘲するように、
そう締めくくったサイに、キラは掛けられる言葉を持たなかった。
「フレイが何故、あなたに近づいたのか、彼が何を考えているのかは、未だに分からない。
最初はキラの戦闘能力に目をつけて、母親の仇であるコーディネイターの皆殺しでも
謀っていたのかと思ったけど、どうやら違うみたいだし…。
ただ、一つハッキリと言えるのは、キラ。あなたが、フレイの光の部分だけに心を奪われ
ている限りは、何一つ変わらない。辛いことだとは思うけど、敢えて彼の闇の部分に踏み
込む勇気を示さない限り、待っているのは、鳶っきりの破局しか有り得ないわよ、キラ」
キラのフレイへの幻想を打ち砕く、一方的な演説を続けるサイに対して、先ほどからキラ
は終始無言だ。虚ろな瞳で、サイの言葉が心に届いているのかすら、疑問だった。
「あなた達二人が、どういう末路を辿るのか、見届けさせてもらうわ…」
サイは最後にそれだけを告げると、先に席を立ち、洗面所から出て行った。
サイは、フレイに纏わる、彼女が知る限りの全てを話したつもりだが、たった一つだけ
言い忘れていたことがある。
それは、フレイが何故か、キラの旧友であるアスランに拘っていたという事実だ。
彼女にとって、さほど重要視する必要性が感じられなかったこの情報が、キラにとっては
極めて重要な意味を持っていたことに、後に気づかされることになる。
サイが去り、後には、放心した表情のキラ一人が残された。
キラは、サイという敵を失った時、その代償のように、今までキラを暖かく包み込んで
きたフレイという味方への信頼までもが、同時に失われようとしていた。
温室の窓ガラスを叩き壊され、今まで侵入を許さなかったフレイに対する疑惑の暴風が、
今のキラの心の中を直接吹き荒れていた。
私は、今、キラの部屋にいる。
私はキラに近づいていく。キラを見つめる。震えながら話す。
「キラが望むなら、私をあげるから、お願いキラ。もう昔に戻れないなんて言わないで」
「ミリィ、本当に今日の君はどうしたんだ。トールのことなんとも思わないのか？」
キラは、うめく用に言う。
「今は、キラが大事なの。キラがかわいそう。キラを慰めたいの。
トールのこと、今は忘れて。考えないで。
もし、トールのこと、どうしても抵抗あるなら、
私、トールを捨てる。私は、キラだけに付いていく。一緒に戦おう、二人で」
キラは、頭をかかえて言った。
「もう、やめてくれ。かわいそう？ もうたくさんだ。
同じだよ。これじゃ、フレイのときと同じだよ。これで君に縋ったら、
フレイと同じことの繰り返しだ。今度はトールを裏切って。君を傷つけて」
「そんな… 私」
「僕は、癒しなどいらない。情けをかけられるだけ惨めになる」
キラは、私を突き放した。
キラは私を拒否した。完全に…
私は絶望した。声を失った。
放心する私に、キラは話を続ける。
「ミリィ、君を嫌っている訳ではないんだ。
だけど、僕は、君に縋る訳にはいかない。同じ間違いを繰り返すことはできない。
僕には、やらなければならないことがある。
君は戦争に巻き込まれただけで、自分は悪くないというけど、
僕は、自分が今までにしてきたことから、もう戦いから逃れられない。
辛いさ。戦いは辛いよ。でも、だからと言って戦いをやめても、何も変わらない気がする。
進まなきゃ、何も変わらない。
僕はコーディネータなんだ。やらなければいけないことをやる。
それだけでいいんだ。それだけで…」
私は、泣いていた。ただ、ショックでキラの言葉が頭に入らなかった。
「分からない。キラ、私、分からない。
なんでそんなこと言うの…
なんで、キラがやらなきゃいけないの…
嫌、そんなこと言わないで…
先へ進んじゃ嫌、ここに居て…
キラ、私と居て…
私と変わらずにいて…
行っちゃやだ… 行っちゃやだ…」
キラの想いを、私は、自分のことばかり考えて、受け止めることができなかった。
「頼む、出て行ってくれ」やや、あってキラは呟いた。
私は、キラの部屋を出て行った。
放心状態で、どうすることもできず、通路をとぼとぼと歩いた。
キラは、あの子と別れた。
でも、あの子と別れた辛い気持ちは、私との関係でも同じこと。
私の今の境遇。私がしていること。あの子と同じだなんて、なんてこと…
私ではキラを癒すことができない。
私、キラがまぶしかった。直接、好きって言えなかった。だから、トールと付き合って、
ずっと三人で仲良くしてた。そのうち、キラに自分の心を打ち明けられる日が来ると夢見ていた。
でも、それが、今は私とキラの間の枷になっている。
三人の関係を壊さないと、すべて無かったことにしないと、キラは、私の元には来ない。
私は、状況に流されてきた自分を後悔した。
食堂の前を通った時、あの子がノイマン少尉といるのがチラと見えた。
あの子も、キラを追いかけてる。でも、今のキラには酷く拒絶されるわ。いい気味。
私は、それだけ考えて、食堂前を通り過ぎた。
仕方なく、また、食堂に戻ってきてみた。
がらんとした食堂を覗くと、ノイマン少尉がいた。操船を交代して休む前に、軽く食事をとっていたようだ。
ノイマン少尉は私を見かけると、真っ先に小言を言った。
「こら、おまえ、深夜にうろうろしてちゃだめだろ。待機中なんだから、おとなしく部屋で寝てろ」
「済みません。あのキラ見ませんでしたか」
「ヤマト少尉なら、さっきも注意したところだ、あいつパイロットなんだから寝てなくちゃダメだろ」
「キラいたんですか。どっちへ行きました」
「部屋へ戻ったんじゃないのか」
「ありがとう。行ってみます」
「おい、待て！」
「はい何ですか」
「お前さんが、あいつを、気づかってやらないとダメだろ。一緒にいるんだったら」
「はい、分かりました。私がいたらないばかりに済みません。
キラには私からちゃんと言い聞かせます。済みませんでした」
私はペコリと頭を下げて、食堂を出て行った。
なんか、ノイマン少尉はポカンとした顔をしていた。
自分で言ってみて、まるでキラの保護者か妻のような口振りに自分でも戸惑っていた。
夕方の食堂の整備兵達は、私を嫌いつつも、私とキラをカップルとして見ていた。
さっき機関室で会った整備兵は、直接話をすると私達のこと分かってくれた。
マリューさんとフラガ少佐だけでなく、マードック曹長も、ノイマン少尉も、
その人なりに 私とキラを認めてくれている。
今まで、私はヘリオポリスのみんなとの断絶から、私とキラは認められていないものと思っていた。
後ろめたい関係だと思っていた。復讐のためなんだから、それでいいと思っていた。
でも、そんな思い込みを捨てて話してみると、だれもが、私とキラを普通のカップルだと
思ってくれている。認めてくれている。今まで知らなかった。知ろうともしなかった。
今、キラを探しながら、その人達からの目で見た私とキラを聞くことで、私も変わっている。
キラを、より自分の男として見ている。キラを取り戻したい。
私は、キラの部屋に急いだ。
通路の先に、一瞬、ミリアリアの影を見かけた。
ミリアリアも、うろついているの。何してるんだろう。
だけど、キラを探すのに一生懸命な私は、気にもせずに通り過ぎた。
キラの部屋を覗いた。真っ暗なままだ。
「キラ、いるの？」
声を出してみたが返事は無い。ふと、さっき、開いたままにしていたはずの、
ノートパソコンが閉じられていることに気がついた。キラは、この部屋に、来たことは来たんだ。
私はキラに追いついて来ている。
私は、なおも追いかけようと通路を急いだ。途中、通路を歩いてきたフラガ少佐に会った。
「あ、お嬢ちゃん、こんな時間にどうしたんだ」
「キラ、探してるんです。見かけませんでした？」
「キラなら、さっきも見かけたんで話をしたんだが…どこへ行ったかまでは…」
「とにかく、いたんですね。私、探します」
「なあ、お嬢ちゃん、ちょっと待ってやってくれないか」
「え、どうしてですか」
「お嬢ちゃん、キラ、昼間、敵のモビルスーツのパイロットを殺したと責任を感じている。
今までも、そうだったんだが、あいつ、オーブでいろいろあってナーバスになってる」
「どうして？」
「オーブでな、やつは開発グループの派閥争いに巻き込まれたんだ。下手すると開発中止の
可能性もあった。もちろん、だからといって、こっちのせいじゃないが、その場合、
アークエンジェルの修理も中止になるかもしれなかった」
「そんなこと…」
「だから、キラのやつ、プロジェクトの中心として、かなり苦労した。あそこまでやるこたぁはないというのに。
お嬢ちゃんを構ってやれないのも無理は無かったんだ」
「そうだったの」
「だがな、その分、やつは男になってる。今は、また落ち込んでいるが、やつは、きっと立ち直る。
待ってやってくれないか？」
「……私、許せません」
「おい、お嬢ちゃん…」
「私、キラを許せません。私に黙って苦しんで。多分、動けなくなってる。私が行ってあげなきゃ」
私は、さっきまでの、一人では一歩も動けなかった自分を思い出して言った。
「そうか、お嬢ちゃんの方が分かっているんだなキラのこと」
「そんなことは…。 それと、私フレイ・アルスターです。いつまでも子供扱いしないでください」
「分かったよフレイ。なんか、そっちの方が年上みたいだな。
やつのことを思いやる心、どこか、俺の、お袋に似ているような気がするよ。
そういや髪の色は一緒だったな、お袋と」
「茶化さないでください。少佐」
「そんなつもりじゃないんだがな」
「フラガ少佐のお母さんて、どこにいるんですか」
「亡くなったよ。俺がガキのころ。火事でさ。親父と一緒に」
「済みません。そんなこと聞いて。私ばっかり不幸な気になって」
「いや、いいんだよ。俺もお袋の記憶は、あまり無いんだよ。
今のような、なんとなく覚えている雰囲気だけでね。
親父が、お袋を毛嫌いしててさ。俺が、生まれたばかりの時、何かあったらしい。
結局、火事で家がまるごと焼けちまって、写真も何も無くなっちまった」
「そうなんですか。フラガ少佐も一人だったんですね。私よりも小さい時に」
「いや、違うだろ。俺は男だしさ。フレイとは違うさ」
「そんなこと」
「ああ、キラ探すなら、いっそブリッジに行ってみたらどうだ。
全艦の監視モニタがある。今、ナタルが艦長席に座っているから、私用で使えるか分からないけど」
「分かりました、ブリッジへ行ってみます。ありがとうございました」
「ああ、がんばれよ。キラが好きなら、あいつを離すなよ」
「はい」
「また、俺とも話しに来てくれ。マリューと一緒の時にでもな」
「はい、今度、またキラと一緒に四人で…」
私はフラガ少佐を後にした。
私は、フラガ少佐が、私に母親を感じたことが気になった。
変なの、私がママだなんて。
さっきも、ノイマン少尉にキラの保護者然とした口振りをしたし、
私の中で、何か母性に近いものが目覚めている。
マリューさんに、母親のことを教えてもらったからかもしれない。
私はフラガ少佐の言ったキラのことに、思考を切り替えた。
私に辛いことを隠していたキラ。
キラは、また泣いているのだろうか。それとも、もう泣かないのだろうか。
今のところは難しいです。私も愛着が沸いてきているので、次を企画中なのですが、なかなか進まなくて。
>キラ（♀）
サイ（♀）って、結構グラマーだったんだ。と、のんきな感想を言っている場合じゃないほど恐かったです。
でも、こういう時でも、キラ（♀）は泣きで切り抜けるのですね。
共同シャワー室・シャワーの温度を使ったシュチエーションは、私もミリィＳＳで使いましたけど、０度というのは恐すぎでした。
キラ（♀）×サイ（♀）の戦いは終わりを告げたようで、次の展開に移るようですね。
とにかく、面白いです。次も楽しみにしてます。
>流離う翼たち
これは、スーツＣＤ後半のアスランなのだろうか？ ああ、フレイ様がなんだか分からない時空に。
このままでは、本編OP のキラとアスランの間でクルっと反転するカガリの仕事まで、奪いそうな勢いですね。
キラはポケーとして,英語教師のアイナを見ている。
キラの隣のサイは鉛筆でキラを突く,小声で
「なんだよサイ」
「なにポケーっと見ているんだ？」
「なにって外をさ」
「お前・・・正直言ってアイナ先生見てただろ」
キラはドキッとした。
「なにいってんだよ,サイ」
「お前,おねティが好きだっただろ？」
「知っているのかサイ」
「あたりまえだ」
アイナはサイに問題を出した
「サイ,ＹＥＳ ＯＦＦ ＣＯＵＲＳＥってどういう意味？」
サイは戸惑ったこんなこといわれても,彼の結論は
「小田和正のバンド・・・」
そして,生徒は大爆笑した
へまはしないでくれたまえ」
「わかりました,アズラエル様」
シローは,アズラエルにいわれるがままその仕事を頼まれた。
ブルーコスモスグループというメディア全般を取り扱ってい
て,メディア王とよばれ,いろんな企業を買収して,いらなく
なったらポイ捨てし,自分たちの都合のよいものしか放送を
せず,故意に他社の悪口やイメージを悪くするような手口を
平気でする男だ。シローはこんな男の秘書の仕事をしていた。
「おっと君,もうひとつ忠告しておくべきことがあった」
「なんです」
「この前の君の彼女アイナっていうんだっけ？」
「そうですが」
「いや〜彼女,僕ごのみでしてね,はっきりいうと,僕に
くれませんか？出世のチャンスですよ」
「ちょっとまってください！それはいくらなんでも！
アイナは俺を愛しているんです,彼女も俺を愛してます！」
「ほ〜つまり手を引かないということですか？なら彼女は
私の元に行かせることにしますよ」
アズラエルはにやりと笑い去った。
「ああ、無理も無いよ、ていうかマードック軍曹、カンカンだったぜ？遊びで動かされて壊されたらたまらないって」
「まあ気持ちはわかるけどな、本人は真剣だったんだろうし。でもなあ・・・・・・」
「結果的にストライクは無傷だったからよかったじゃないの。本人も反省してるようだしさ、すぐ出してもらえるって」
最近サイを見かけないと思ったら、どうやらこの間の件で謹慎を命じられていたらしい。
皆と話すことのできなくなっていた私は、食堂で耳にする噂話ばかりが情報源になっている。
私を駆り立てたのはそんな噂話の一つだった。
「キラは隠れてた方が良いよ、またキレちゃったら嫌だろ、あのサイが」
カズイとキラが話している。
「サイ、入るよ」
カズイが声をかけてドアを開ける。
そのあと、いくつかのやりとりがあったようだった。
「ああ、わかってる・・・・俺は大丈夫だから」
いつもの通り落ち着いた声でサイが答えるのが聞こえた。
そっか、サイ、大丈夫なんだ・・・でも、私はあそこに入っていけない・・・・・
「キラ？いないの？」
返事は無かったが、キラはベットの上にうつむいて座っていた。
「やあねえ、なあに？暗いままで」
そう言って電気をつけると暗い声が問い掛ける。
「サイのとこ・・・きてたでしょ。」
ナチュラルであるサイがコーディネイターであるキラに敵うはずなんか無い。
それなのに・・・サイ・・・・・・
「サイ・・・・馬鹿よね・・・・・・あなたに敵うはずなんかないのに・・・・」
その瞬間、頭を預けていたキラの肩が硬くこわばるのがわかった。
「キラ？どうかした？」
目を向けるとつらそうに視線をずらすキラ。
・・・・私、間違った！？
「キラ、こっちを向いて」
私は必死だった、ここでキラを手放すわけにはいかない。
「大丈夫よ、キラ、私ずっと、あなたのそばに・・・」
あんまり一生懸命で、キラを押し倒すような格好になっていることにも気が付かないままキラに無理やりくちづけると、予想外な力で突き放された。
「やめてよっ・・・・・・！」
そう言って走り去っていくキラの目じりに涙が浮かんでいるのが見えた。
ああ、あのコは私のことが本当に好きなんだ・・・私、間違ったんだ・・・・・・・・・・・・
久しぶりに来たら本スレもSSスレも進んでてびっくり。
新作もあるようだし、楽しみに読みます。
「さてと、我々は極めて名誉ある任務を仰せつかった。それは、ザラ隊長の救出だ！」
「おやおや、それはまた名誉な事で」
ディアッカが大袈裟に肩を竦めた。それを見てイザークが愉快そうに小さく笑う。その２人の態度に気分を害したミゲルがやや高い声で先を促した。
「それで、これからどうするんだ！？」
「大体落ちた場所は分かっているから、この辺りをＭＳで重点的に捜索する。生きていれば向こうから居場所を教えてくるだろう」
「だったら、早く出撃しましょう」
ニコルが焦った声を出すが、その背後からディアッカのからかうような声が押し止めた。
「まあそう焦るなって。明日になってから探せば良さ。イージスで落ちたなら大丈夫だろ」
「そうだな、大気圏に落ちたわけじゃなし」
大気圏に落ちて死にそうな目にあったイザークが苦笑しながら応じる。ニコルはいささか不満そうであったが、イザークが指揮官である以上、これ以上異議を挟むことも出来ない。ただ、外を見てアスランの無事を祷る事しかできなかった。
だが、ニコル以上に焦りを見せる者がいた。
「イザーク隊長、今すぐ捜索に出るべきです。1分１秒が生死を分ける事もあります！」
「アスランは一晩放置されたくらいで参るほど、柔じゃないだろう」
「ですが、ここは地球です。野生動物に襲われる可能性だってありますし、地球軍の部隊に発見される恐れもあります！」
「･･･････エルフィ、アスランがいない以上、俺がこの部隊の隊長だぞ？」
「ですが、それでは！」
引こうとしないエルフィにイザークが苛立ちを見せるが、イザークが激発する前にミゲルがエルフィの前に立ってその視線を真っ向から受け止めた。
「･･････････････捜索は、明日の早朝から開始で良いのか、イザーク？」
「ああ、それで良い」
暫し睨み合う２人。だが、イザークの方が視線を逸らせた。そしてディアッカをつれて部屋から出ていく。残されたフィリスはザラ隊のメンバーに頭を下げていた。
「すいません、イザーク隊長が気に触る事を言って」
「いや、フィリスが誤る事じゃないさ。イザークはちょっとアスランに含む所があるからな」
「でも、あれは酷いですよ。エルフィやニコルさんの意見を平然と跳ね除けてるし」
ジャックが不満を口にするが、ミゲルが視線でそれ以上言うのを止めさせた。イザークを罵っても事態が変わる訳ではないし、今は捜索の準備を進めたほうが良い。ミゲルは地図を広げると、捜索する範囲を検討しはじめた。
フレイが薪の棒で自分とアスランの間に線を引く。
「いい、絶対にこの線から入ってこないでよ。この痴漢、変質者、ゴキブリ、生ゴミ！」
「なっ･･････生ゴミ･･････」
余りと言えば余りの言われようにアスランは頬を引き攣らせた。幾らなんでもそれは酷いんじゃなかろうかと思ってしまう。そりゃ、胸を揉んでしまったのは悪かったが、あれは言うなれば事故であって、決してわざとやった訳ではないのに。
だが、揉んだという事実の前にはいかなる言い訳も空しく響くだけで、ことこういう問題に関しては圧倒的に男の方が不利であった。
フレイは自分の身体を抱くようにして壁を背にして座りこみ、アスランは時折「生ゴミ････」などと呟きながら俯いている。結構ショックだったようだ。それから暫くして、フレイが恐る恐るアスランに問いかけた。
「･･････１つ聞いて良い？」
「なんだ？」
「どうして私を殺さないの。私は敵なのよ？」
「なんだ、そんなに死にたいのか？」
珍しいものでも見たような顔でアスランはフレイに問いかけた。フレイは頭を左右に振ることでそれに答える。アスランはそれを見ると苦笑した。
「別に暴れたりしなければ何もしはしない。もし武器を持ってるなら今の内に捨てておくんだな。お前が武器を取ったら殺さなくちゃいけなくなる」
「･･･････････分かったわよ」
フレイは持っていた拳銃とナイフをアスランの方に放った。それを見たアスランが少し目を丸くする。
「本当に捨てるとは思わなかったな」
「どうせ持ってても役に立たないもの。銃なんて撃ったことないんだから」
「撃った事がない？」
アスランは眉を顰めた。軍人なのに銃を撃った事がないなどということなのだろうか。その疑問をフレイにぶつけると、フレイは寂しそうに笑いながら答えてくれた。
「私は志願兵になってまだ３ヵ月くらいよ。碌な訓練も受けてないわ」
「･･････なんで、そんな奴が戦闘機に乗ってるんだ？」
アスランには訳が分からなかった。なんで訓練も終わってない素人が戦闘機に乗って戦っている。いや、そもそもこいつはなんで軍に入ったんだ。だが、アスランはその質問をした事をすぐに後悔するハメになった。
「私は、パパの敵討ちよ」
「敵、討ち」
「そうよ。私のパパは、あなた達クルーゼ隊に殺されたのよ。戦艦と一緒にね！」
ここ最近の出来事で、自分たちに父親を殺されたという話と、前にラクスにきつく言われた言葉が重なる。そうだ、あれはラクスが足付きから帰ってきた時の戦闘で、確か俺達は足付きと合流しようとしていた部隊を壊滅させたんだ。
「そうか、お前がラクスの言っていた父親を殺された奴か」
「ラクスがそんな事を言ってたの？」
「ああ」
アスランは右手で顔を押さえ、どうしたものかと外を見る。外には強い雨が降り、気温がかなり下がっている。コロニーでは考えられないような気候だ。これが地球などだと実感させられる瞬間である。
サイが、サイが怖い。サバトって、キラは生贄なのか？
でも、キラ泣きで正気に戻るのか。キラ泣きは敵無しなんですなｗ
でも、サイから真実を告げられたキラちゃんの明日はどっちだ？
>>オーブ・フレイの心
何と言うか、ミリィも壊れそうだなあ。少し可哀想かも
フレイ様は、なんだかその正体が朧に見えてきましたね。サイはそれを知っていたのかな？
そして、キラに会って、フレイ様は何を言うんでしょうか？
あと、フレイ様の位置は本編のカガリとは違いますので、キラとアスランの後ろでくるりとはしませんねｗ
>> リヴァオタと八アスのためでなく
アズラエルの秘書ですか。シローも酷い職場を選んでますね
でも、彼女をよこせと言われて頷くような男じゃないから、これは当然の流れか？
>>散った花、実る果実
サイの事件直後ですか。果たしてフレイ様の今後の選択は？
でもサイ、この頃は目立ってたのになあ･･････
フレイ様は一度も出てこないのに一番フレイ様の怖さを実感させられました。少年フレイは化け物です。
>>オーブ･フレイの心
マードック･ノイマン･フラガとAAクルーの対フレイ様感情を覗くことができて面白いです。
>>リヴァオタ
アイナの教師はありですね。シローやらレインやトマーシュやら渋いチョイスですね。
>>散った花、実る果実
ストーカーフレイ様ですね。｢私、間違ったんだ」残酷な勘違いだよなあ。フレイ様に策士は似合わないですね。
>>流離
｢本編のカガリとは違」うとのことで、ますます読めなくなってきてますが、仇の一人であるアスランと出会って
どんな心境に至るのか楽しみですね。
「で,フレイはグリズリーでディアッカ社長を脅したのか？」
サイは質問した
「脅したというか,カツを入れたのが正解かも」
「フレイ,それを脅していうのよ」
「ミリィのいうとおりだよ」
「キラまでそう言うの？だってあの社長,グレェイトとか
社長の貫禄すらなかったし,なんていうか社長ってさ
アラン・ドロンみたいな感じじゃない？」
「おいおいフレイ,それは違うぞ,俺はジャン・ポール・ベルモンド
かな？」
「サイ・・・お前も違うだろ・・・」
キラが突っ込む,キラは席からたって玄関に出た,サイもそれに続くように
ついていく。
「まってくれキラ！お前に聞きたいことがある」
「なに」
「お前,アイナ先生が好きなのか」
「うっ！」
キラびっくり
「そうなんだろ」
「ああ・・・あの人は好きだよ,なんか母さんのにおいするんだ」
「シローとアイナは公認のカップルなんだぜ,無理だよ」
「わかっているさ」
「アイナ先生は複雑さ,彼女の兄はシローと付き合うのは認めてないらしい
それにアズラエルもアイナ先生を狙っているらしいしさ」
「所詮僕はおねティマニアか・・・」
キラは残念そうに首をがっくんとした。
働いている。今日は出版社で会議で「アスラン＆セシリー」特集を
組んでいた。午前中から会議が始まり午後1時に会議が終わった。
これからはみんなは昼食に入る時間である。アルバイトのトビアは
ラーメンを食いながらしゃべった
「業界ナンバー２の軍事企業,か・・・・・・」
トマーシュはきょとんとして
「それがどうしたんだ」
「僕として,あの会社の裏側も見えてしまう。ひどいもんだよ,一部の
お偉さんのやってることは」
「もしかして,「アームズインターナショナル」のことか？」
「ああ・・・,ＭＳ主力候補大会で事前工作したり,脱税したり・・・」
「社長のパトリック・ザラ。副社長のウルベ・イシカワ,専務のバスク・・・
仕方ないよ、みんなエリートコースばかりだ。,世間は見て見ぬふりさ」
トマーシュはラーメンのスープをすすった。そして
「怒ったってどうしょうもないだろ。俺たちは所詮傍観者だから」
トビアは話題を変えて
「レインとはうまくやっている？」
トマーシュはブッとスープを吐いた
「へんなこというなよ！」
トマーシュはティッシュで顔を拭いた
彼女は,82年型シボレーカマロに乗っていて,地図を確認している
金髪の女性を見た,フレイは彼女に声をかけた。
「ねぇそこの赤毛の高校生,「木馬」の練習場に行く道知っている？」
フレイは何がなんだかわからずにいたが数分後意味がわかり,道を教える
ことにした
「ええ知っています,私もそこに向かうところなんです」
「えっ奇遇ね」
「フフ・・・乗せてくれたら教えてあげるわ」
フレイは女性の車に便乗し,練習場に向かった。
練習場に着いた彼女たちはトレーニングルームに向かった
そしてフレイはドアを開けた,みんなそろっていた
すると金髪の女性は挨拶を始めた
「私が,νガンダムの専門のメカマンを任せることになりました
ニナ・パープルトンです,よろしく」
みんな呆然としていた,だって女なんだぞ。
サイはなに考えているんだよディアッカと心でそう思った
私はブリッジに上がった。ここへ入ったのは、宇宙でパパが殺された時、ラクス・クラインを
連れて入った時以来だ。私は、あの時の自分を、なにか別人のように思い出していた。
ブリッジは、忙しそうだった。バジルール中尉が凛として、指揮を取っている。
「トノムラ軍曹。艦の速度は上がらないか?」
「はい、これ以上は無理です」
「周囲に敵は？」
「風雨が強く索敵には限界があります。海中までの探索は不可能です」
「天候の状況は？」
「もうすぐ、雲の切れ目が見えますが、以前、この状況は変わりません」
「むしろ、このまま荒れていた方が助かるのだが。
もし、海中で追いつかれていたら、天候が回復した途端に襲ってくるぞ」
忙しそうに話すバジルール中尉に、私は無理矢理割り込んだ。
「あの。済みません。バジルール中尉」
「なんだ。ここは非戦闘員が来るところではないぞ。だいたい、今は深夜だ。何をしている」
「キラを探しているんです。どこにも見つからないんです。
お願いです、監視モニタで探してもらえないでしょうか」
「見てのとおり、今は、いつ敵がくるかも分からない状況だ。そんな余裕は無い」
「お願いします。夜中じゅう探しているんですけど、キラに追い付けないんです。
私、どうしてもキラに言わなきゃいけないことがあるんです。お願いします」
バジルール中尉は、少し考えて言った。
「お前、ハゥ二等兵を見なかったか」
「途中、通路で見かけましたが、どこにいるのかは分かりません」
「あいつも仕方のないやつだ。 当直をすっぽかすとは…
まったく、遅刻はするわ私語は多いわ。有能なのは分かるが、態度が悪すぎる」
私は思った。ミリアリアって、そんなに仕事不真面目だったんだ。
私が仕事してないの、さんざん文句言ってたくせに。
「ハゥ二等兵の席なら、その通り、今開いている。そこで、お前が勝手に
モニタを操作するのなら構わない。好きにしろ」
「え、でも…」
「やる気が無いのなら、さっさと出て行け邪魔だ」
私は迷った。自分で監視モニタなんて操作できる訳がない。
でも… キラを探すには、これしかない。私、負けないって誓ったじゃない。
「やります！！」 私はバジルール中尉に言って、席に座った。
だけど、たくさんの操作パネルとボタンがあり、何をどうすればいいのか、さっぱり分からない。
「誰か、手の開いているものは、とっかかりくらい教えてやれ。だが、手伝いはするなよ」
バジルール中尉が命令した。
簡単なボタン操作を教えられて、やっと、私はモニタの映像を切り替えられるようになった。
どれが、どこのカメラなのか、艦内図を呼び出して探そうとする。それだけでも、
私は、なかなか分からずに悪戦苦闘する。でも、キラに会うためには、こうするしか無い。
私は一生懸命だった。
少しずつ、少しずつ、コンソールの操作に慣れてきた。
パッパッと切り替わる映像を確認しながら、艦内図と照らし合わせ、
キラの居場所を絞り込んで行く。
いつのまにか、私の指は、まるでキラがするようにコンソールの上を、
素早く、華麗に流れるようになっていた。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
キラが部屋で、パソコンを使って戦闘レポートを作っている時、私はベッドで、
トリィと戯れながら、いつも、キラの高速で動く指の動きを目で追っていた。
ときどき、キラを見ながら、指でキーボードを打つ真似をしていたこともあった。
それを見たキラは、口述筆記のゲームをしようと持ちかけてきた。
片方がボイスレコーダを持って喋り、もう片方がパソコンで、それを文章にする。
後で、照らし合わせながら得点を付けて競い合う。
当然、私がキラに叶うはずはないので、何回かに一回、私はハンデとして、
トリィを相手にできた。
繰り返すうち、私は少しずつ打ち込みが早くなって行った。キラは私の指を
触って打ち方を教え、私はキラの指を触り、その形、動きを感覚として記憶した。
その同じキラの指は、その後、ベットで、ゆっくりと私を触り、潤う私の内側を刺激するのだ。
自分では気がつかなかったけど、私はキラの指の動かし方を指でも体でも理解していた。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
今、私は、そのキラからもらった指で、キラを探し求めている。
「いた！！」
モビルスーツデッキ。それもモビルスーツの足元。普通なら見過ごしてしまうような小さな人影。
でも、私は見間違えるはずが無かった。それだけで、私にはキラと分かった。
私は、大声で叫んでいた。
「いました！キラがいました！！」
見つけた。ついに見つけた。キラ！！
ブリッジの監視モニタを操作して、ついにキラの居場所が分かった。
私は歓喜した。夕方から長い間、キラを探しては、すれ違っていたけども、
やっと報われるのだ。モニタで見るキラの人影は、しばらく移動しないようだった。
今から行けばキラに会えるだろう。
そのとき、ふいに後ろからバジルール中尉の声がした。
「大したものだなフレイ・アルスター」
「バジルール中尉！」
「私は、お前のことを少し過小評価していたのかもしれんな」
「そんなことは…」
「お前が宇宙で軍に志願した時の話を聞いたのは私だったのに、大した仕事もやれなくて。
地球に降りてからの行動に少し失望させられたことはある。
だが、それは杞憂だったようだ。どうだ、フレイ・アルスター、ブリッジ勤務に志願しないか」
「私なんて何もできません。今だってキラのためだけに、やっていたことです」
「構わんよ。やる気があれば。いずれ、ここのメンバーは、キラ・ヤマトと
共に戦うことが仕事だ。一人、あまりにも過剰なやつがいるが。
もう一人、増えたところで、戦いに勝てれば問題は無い」
他にキラを見て戦っている人がいるの。トール？ ミリアリア？
「考えておきます。キラと会えたら」私は答えた。
バジルール中尉は、私のそばに近寄ってきて、声を小さくして言った。
「ふ、まったく、こちらが恥ずかしくなるくらい、まっすぐな目をするようになったな。
最初は、どうなるかと思ったが、お前たち自身にまかせて正解だった」
「え！そんな、まさか…」
「お前とキラ・ヤマトのこと、軍の規律上、問題にしようとの話もあったが、
艦長の決定で不問とのことにしている。私も賛成はした。
あれだ、私も女だからな。特にお前くらいのころは恋にときめいたこともある」
「バジルール中尉…」
そんな、てっきり、私とキラのこと問題視していると思っていたのに。
認めてくれていたなんて。バジルール中尉…ナタルさん。私、ナタルさんのこと誤解してた。
「お前たち、何か放っておけなくてな。わ、私が何をできるって訳でもないが。
ただ、その代わりアラスカに着いたら、お前たちの始末で色々やらせてもらう。頭の痛い話だがな」
「どうなるんですか」
「ある程度素行問題で、二人とも処罰は課せられるだろうがな。まあ、形だけだ。なんとかはなるだろう」
「本当ですか、ありがとうございます」
「その代わり、しばらくおとなしくしていろよ」
「はい、でも、お願いします。今だけは許してください」
「そうか、まあそうだな。しばらくは見なかったことにしよう」
「済みません」
私はナタルさんに、心から感謝した。今まで、恐いと思っていたナタルさん。
私は、ナタルさんからも力をもらった。私は、もう負けない。
「そう、それと、もう今さらだが」
「はい？」
ナタルさんは、私の耳に口を近づけて、囁くような声で言った。
「避妊には気をつけろ。必要なら言ってくれ。私ならピルも申請できる。自分では使ったことはないが」
「ありがとうございます。でも、マリューさんにも同じことを言われました。
お気持ちだけ受け取っておきます」
私もナタルさんの耳元で囁くように答えた。忙しいブリッジの中、私とナタルさんだけの秘密のやりとりだった。
「そうか、そうだな。ふふ」
バジルール中尉が少し笑った。私も笑みを見せた。
「行きます。キラのところへ」 私は言った。
「ああ」
ナタルさんは、いつもとは違う優しい目で、私を見送った。
私は、自分の部屋に戻った。乱暴に服を脱ぎ捨てるとベッドに潜り込んだ。
行かなきゃ良かった キラに会いになんか。
憧れているだけにすれば良かった。こんなことになるなら。
私、トールが戦闘に出で、三人で戦ったことで舞い上がってて。
あの子と、別れたから、キラは私の元に帰ってくるって勝手に思い込んでた。
もう、キラは帰って来ない。あの子の元にも戻らないけど、それよりも、
もっと遠いところへ行ってしまう。
どうしたらいいんだろう。思い悩む私は、ある恐ろしい考えにたどりついた。
トールがいなくなれば… 私は、あの子と同じじゃ無くなる。
トールさえ、いなければ、キラに慰めてもらえる。
私は、頭を振って、そんな考えを追い払おうとした。私は、なんて恐ろしいことを
考えるのだろう。自分が、こんな酷い女だとは思わなかった。
そのまま、私は、うとうとと浅い眠りについていた。
ふと、目が醒めた。まだ、夜は開けていなかった。
私は、部屋のモニタから監視カメラにアクセスしたままにしてあるのに気がついた。
もう、関係無いわ。モニタを消そうと、私が近づいた時、モニタに、あの子の映像が写った。
あの子は、小走りに通路を急いでいる。おそらく、キラの居場所が分かったのだろう。
私は、その顔に驚いた。
オーブ出発直前の生気の無い顔、夕方食堂で見た辛いことから逃げ出しそうな顔。
それから、一変して、決意と希望に溢れていた。
絶望し、暗い考えに囚われた私とは、まったく、正反対だった。
一体、何が、あの子をこんな風に変えたのだろう。
私は、また、いつものように思った。
私、あの子嫌い。あの子許せない。
モニタに映しているカメラの位置から、あの子が向かっているのは、おそらく、
モビルスーツデッキ周辺。キラは、そこにいるのだろう。
私は、また、服を着直した。
そして、部屋を出て、モビルスーツデッキに向かった。
私は、あの子がキラに拒絶される様を見たかった。拒絶され、また、あの子が、
私と同じような暗い表情に戻るのを期待した。
やっぱり、私って酷い女だ。でも、今の私には、それしか縋るものが無かった。
「ストライクどうぞ」では無かったのですけど (そういうＳＳは、2ch エロパロ板で最近ありました)。
そして、このＳＳスレ名物。フレイ様、特殊能力。今回はスポ根風に特訓描写も入れてみました。
>流離う翼たち
フレイ様、あっさり拳銃渡して良いのか？
しかし、本編のキラといい、拳銃の訓練もしない種の軍隊って、なんか偏ってますね。
>散った花、実る果実
久しぶりです。ここでキラへの気持ちに気づいたフレイ様は、この後どうなるのでしょうか。
｢よく働く・・・。全くもって良い『道具』を手に入れたものだ。わざわざ危険を冒してオーブまで出向いた甲斐があったな。｣
そんな彼の様子を司令室よりコクピット内の監視カメラから眺めている人物がいた。今回の一連の事件の首謀者、オルドワ中佐である。元々この男はかつての大西洋連合軍の実力者、ウィリアム・サザーランド大佐の腹心であり、彼もまたムルタ・アズラエルの唱える思想の熱狂的な支持者だった。しかし前大戦末期、両名が死亡した事を知ると彼はX−１０５・ストライクのデータと共に裏社会に身を潜めた。そして再びブルーコスモスが活動を活性化する時を待ち、フォルキアやとある軍事企業の協力を得て新型モビルスーツ、《ネオストライク》を開発した。
この機体はいずれ来るべきはずのコーディネーターとの戦いで彼らの旗印となるべく開発された。ストライクのネームバリューは今現在も地球・ザフト両軍の間で強い力を持っている。それゆえ特にザフトに対しては絶大な心理的影響が期待できた。オルドワはこの機体を使い、今は亡きアズラエル、サザーランドらの仇討ちを目論んでいた。その時が来るまでに、この機体を最強の機体に仕上げる必要があった。
そこで彼は、かつてのストライクのパイロットであるキラに目をつけた。ストライクが鬼神の如く恐れられた理由は彼の力も大きく関係していたからである。それならその本人にやらせれば良い。彼が作り出すOS、そして彼の操縦技術、どれも最強のモビルスーツを生み出すための必要条件である。その全てをオルドワは欲した。そして戦後、キラがオーブで暮らしていることを知り、危険を承知で彼の元に赴いた。無論、彼にNOと言わせるつもりは無い。そのための下準備も怠りはしなかった。
｢フレイ・・・、ずいぶん遅いね。トリィ。｣
『トリィ！』
その日はここ数日続いた晴天が嘘だったとも思えるほどのひどい雨だった。窓から外を見つめながら、キラは近くの街まで買い物に出かけたフレイの帰りが遅いことに気付いていた。｢すぐ戻るから。｣と言って彼女が出かけてから、もう３時間以上経つ。彼らの暮らす家から街までは１時間もあれば往復できる距離である。いくら彼女がショッピングに夢中でも、今までこんなに遅くなったことは無い。ましてや外はどしゃ降りの雨である。何度も電話で彼女に連絡を取ろうとしたが、電源が切られていてつながらなかった。外では既に雷も鳴り始めていた。
その時、車のエンジン音が聞こえた。すぐ音の聞こえる方向を見るキラだったが、それはフレイの乗っていったものではなく、どこか不気味な雰囲気を放つ黒塗りの車だった。そこから三人の男達が降りて来る。一人は中肉中背の中年の男性、後に続く二人は同じ黒服を纏っている。
｢こんな日に・・・、一体何の用だろう？｣
突然の来訪者達に戸惑うキラ。しかしそのままにしてはおけなかったので、彼らを客間へと案内した。そこでハンス・オルドワと名乗る中年男性は、単刀直入に自分がブルーコスモスの一員であることを告げ、彼に開発中のモビルスーツの建造に協力するよう彼に要求してきた。キラはその言葉に驚きを見せたが、すぐに彼の要求を一蹴した。するとオルドワは客間の一角に置いてある写真立てに目をやった。そこにはキラとフレイが初めて一緒に旅行した時に写した、二人の笑顔を写した写真が納められていた。
｢確か君には・・・、恋人がいるんだったな。｣
そう言うとオルドワは立ち上がり、写真立てを手にした。
｢ほう、なかなかの美人だ。亡くなったジョージ・アルスター氏の娘さんと聞いて是非お会いしたいと思っていたが、今日は外出中かね？｣
その言葉に胸騒ぎを覚えたキラが外に止めてある彼らの車に目をやる。すると後部座席の窓が開き始めた。そしてキラは、その場にいた人物の姿を確認し愕然とした。
｢！？・・・フレイッ！！｣
そこには彼が帰りを待っていたはずのフレイが、死んだように瞳を閉じて座っていた。
いろいろと意気投合した,フレイはニナに恋愛の話をした
「でね,私はサイとキラどっちにすればいいのかわからないわ」
「だった二股はどうなの？」
「それってやばいんじゃあ・・・」
「大丈夫大丈夫ばれなきゃいいのよ」
「んー,それもいいことかも」
「いっぺんやってみなさい」
「アハハハ！私たちって気が合う！」
「そうかもね」
キラとサイは彼女たちを見ながら
「キラ,あのニナって人,リヴァでたとえると誰かなんだよな」
「深く考えるなよ」
そして話は進む
激昂したキラは、オルドワの胸倉に掴み掛かろうとする。しかし彼の後ろに控えていた二人の男が拳銃を突き付けそれを阻んだ。
｢何、彼女には眠ってもらっているだけさ。我々の敵はコーディネーターであって、ナチュラルではないのだからね・・・。｣
そんな様子のキラをよそに、オルドワは話を続ける。その間、キラは怒りの満ちた目で彼を睨み付けていた。
｢ただ、君が我々にとってベストな返事をくれないとなると、彼女の身の安全は保障はできないがね・・・。｣
｢！？｣
もはやキラに選択の余地は無かった。人質を取るという作戦は気が遠くなるほど古典的ではあったが、それだけに絶大な効果を発揮する。それが相手にとって大切な存在であればなお良い。その時、目の前の男のフレイを人質にするという卑劣な行為に対する怒りと共に、大切な人の危機に何もできなかった自分への憤りが同時にキラの心を支配していた。
作業を続けるキラから、オルドワは別のモニターに映し出されたフレイの姿に視線を移した。
｢・・・それにしても、愚かな女だ。ナチュラルでありながらコーディネーターを愛するなど・・・。｣
しかし、彼が彼女にも狙いを定めた理由はそこにあった。キラがフレイに対し愛情を持っている以上、彼がここから逃げ出そうという考えを持つはずは無い。それどころか彼女がいる限りキラは彼らの要求を聞く他は無い。つまりオルドワはフレイを、キラという便利な『道具』をこの基地から逃さないために縛り付ける『鎖』として利用しようと考えたのである。『利用できるものは例え何であろうと利用する』、それがこの男のモットーであった。そのことを思うと、彼はフレイに感謝の一言を言ってやってもいい気分にもなった。
そして彼にしてみれば、種を越えた愛情などという愚かな観念に縛られた、この哀れな一組の男女の運命は自分の手の内にある。それならその行きつく果てを傍観してみるのもまた一興である。そんな思いから込み上げてくる笑いを、彼は必死に隠そうとしていた。
(まあ、せいぜい楽しませてもらうとするよ。君達がどうなるかをね・・・。）
心の中で二人にそう言うと、彼はその場から立ち去った。
》流離
アスランとの会話、すごく斬新に思えます。それにしてもフレイ様、『生ゴミ』呼ばわりはひどすぎる・・・ｗ。
》キラ♀
おーいサイ！何やってんだ、と思わず叫びそうになりましたｗ。それよりも二人のしてたことにドキドキしてた自分がいますｗ。
》リヴァオタ
色んな人が登場して何だか物凄い世界観になってますねｗ。フレイ様がこの中でどうなっていくのか全く分かりません。
》オーブ・フレイの心
ナタルさんやっぱり良い人ですね。この頃から二人はこんな仲だったと思うと微笑ましいです。
》散った花、実る果実
なんだか放送当時を思い出しますね。あの時サブタイトルの『穏やかな日に（ですよね？）』に｢どこがだよっ！！｣と突っ込んでましたｗ。
探し求めていたキラに、やっと追いついた。私は、キラがいるモビルスーツデッキの下へ
降りる階段をゆっくり降りて行く。既に夜明けが近づいていた。
キラは、モビルスーツの足元で、うつむいて何かを考え込んでいた。
肩にはトリィがとまっている。
<トリィ！>
トリィは私に気づいた途端飛び立って、私にじゃれるように近づいてきた。
私は手を差し出して、トリィをとまらせる。
<トリィ、トリィ？>
トリィは、翼を羽ばたかせながら盛んに首を振り、私との再会を喜ぶようだった。
私はトリィに微笑みを返した。これまで、辛い時に、私を支えてくれたトリィ。ありがとう。
(私、これからキラと一人で話すね。ちょっと待っていて)
<トリィ！>
やがて、翼を羽ばたかせ、トリィはモビルスーツデッキ内に飛び立って行った。
私はキラを見た。
キラを見て、また、私の体が騒ぎ出していた。胸の鼓動が高まる。
体の芯が熱くなる。二週間以上も干されていた肌がぬくもりを求めている。
腰に力が入らなくなり、足まで震えはじめる。今にもキラに抱きつきたい衝動にかられる。
そして、また、心が求めはじめる。心が震え、縋り付きたい思いと、それに
相反する考えが、私の中でぶつかり合い、言葉の自由を奪って行く。
そんな雑念を、私は必死で押さえた。
また、あの時と同じことをしちゃダメ。待って、もうちょっと待つのよ私。
「キラ！」私は、胸に一杯の思いを込めて、その名を呼んだ。
キラは首だけ私の方を振り向いていた。でも、キラは、私をチラと見ただけで何も言わなかった。
もう、キラは、私のこと何とも思っていないの…
キラは目の前にいるのに、まるで、オーブの時に通信のモニタごしに話しているのと
同じような距離感を感じる。また、通信のときの、想いを言葉にできない不器用な私が邪魔をする。
――「まったく、もう、関係ない時にペラペラ喋るくせに、
肝心な時に愚図な口なんだから！」
私を罵ったミリアリアの言葉が思い出される。
何のために、今まで、苦労してきたの。負けないって誓ったじゃない。
マリューさんにも、フラガ少佐にも、ナタルさんにも…
「フレイ、僕は、君と、もう合わないと言った」キラが先に話しかけた。
私は、懸命に言葉をつむぎだした。でも、私が伝えたいこととは、別の言葉。
「何よ、別に通りかかっただけ…」
嘘！もうバレバレの嘘だ。馬鹿！ 私って、まだ意地を張る気。
なんで、こんなこと言うの。自分でも分からない。また、別の誰かが話しているよう。
一体、なぜこうなるの…
「キラこそ…何してたの、一人で？」私はポツリ・ポツリと言葉を続ける。
「悔やんでいた。敵を、人を殺して」キラは答えを返す。
「また、泣いてたの？」
「泣かない。そして、また殺すだろう、敵として」
「キラの…友達？」
「フレイ知ってたの？」
「うん… サイが話してたの聞いた」
「そう」
キラは、また顔を背けた。そして、沈黙。
会話が途切れてしまった。なんてこと、私、またダメなの。私ってダメなの。
祈るような気持ちで言葉を探し求める私に、キラの方から話を始めた。
「敵だから。戦わなきゃ、殺さなきゃどうしようもない。
分かっていても殺さなきゃいけない。どうしようもない。
僕は血塗られている。僕は、もう昔には戻れない。辛いけど、僕は癒しなどはいらない」
キラが自分のことを、こんな風に話すのは初めてだ。自分から辛い思いを口にする。
前は泣きじゃくるだけで何も言わなかったのに。
「だから、君とは、もう会わない」
そして、キラの方から、明らかに私を拒否している。私は、もうダメだと思った。
結局、用意していた言葉も伝えられないまま、また逃げ出してしまう。、
目の前がユラユラと揺れた。ごめんなさい。私、結局ダメだった。
私は黙って、うつむいた。結局、今までやって来たことは無駄だった。
踵を返して逃げ去ろうとしたとき…
キラは、また話を続けた。私に向かって…
キラの拒否の言葉に、キラへ伝えたい言葉も伝えられないまま、私は、絶望して逃げ去ろうとした。
でも、キラは話を続けた。私に向かって。
それはキラの新たな戦う意味。
「僕は、君とは、もう会わない。僕は昔には戻れない。辛いけど、僕は癒しなどいらない。
辛いよ。戦いは、どうしようも無い。
でも、何とかしたい。何とかしなきゃいけない。このままじゃ、みんな悲しむだけだ。
フレイも、アスランも、みんなも…
辛いからって戦うことをやめでも、何も変わらない」
キラは、私に向かって、自分の想いを話し続ける。
「今回の、モルゲンレーテとの仕事だってそうだ。フレイには言ってなかったけど、
いろいろな人の絡みや利権やで、つぶされそうになった。辛かった。
でも、僕は、アークエンジェルのことを思って、必死に仕事をやり遂げた」
キラは、オーブでの仕事の話をした。
「私、そのこと。さっき、フラガ少佐から聞いた…」私は小さい声で呟く。
「そう、済まないフレイ。君には言えなかった。心配させたくは無かった。
そう思ってかえって傷つけてしまった。済まない。僕は、もう」
「キラ…」
「君を犠牲にしてまでやりとげた仕事。ただ、一時の達成感、それだけだった。
むなしかった。
だけどね、キサカさん。カガリと一緒に来たキサカさんが、僕に言ってくれた。
一時の勝利、それ自体に何の意味も無い。でも、それを積み重ねていかなければ、
いつまでたっても最終的な勝利に結びつかないって。
最初から、あきらめていたら何もできない。
今は、この場をすりぬけて、一時の勝利でも、次の勝利の糧としたいと思ってる。
そのために、せめて、今、何ができるの考えてる。次の戦いで何ができるのか。
次のアスラン…友達との戦いに」
キラは、友達と戦うことを、ただ嘆いているだけでは無い。
戦うことの意味を考えている。そして答えを模索して苦しんでいる。
もう、泣いてごまかしたりしない。
「そして、いつか戦争を終わらせたい。そうすれば、みんな悲しまなくてすむ。いつか…」
キラは理想を語る。空を見上げて…
「僕は、この言葉を胸に、君から離れるよ。もう、君に縋ったりしない」
これが、成長したキラ。もう、私に縋ることの無いキラ。
「そんなこと考えてたの」私は、震えながら言った。
「私には、何も言ってくれなかったのね」
「フレイには、分からない話だから」
「そうね、私には分からないわ。でもね…」
成長したキラ。キラの話す戦いの意味。私には、今まで、してもくれなかった話。
ただ、自分達で縋り合い、快楽だけに逃げて耳を塞いでいたこと。
それを、今、私から離れたキラは私に話した。その話を聞いた私は、
キラが私から去ろうとした真の理由が分かったような気がした。
私の中で、何かが爆発しそうになっていた。
キラからのメールで見つけた私とキラを繋ぐ言葉。
夜中じゅうキラを探しながら、考えていたこと。
会う人ごとに変わって行った私自身。
それが、今、その殻を破ろうとしていた。
それが、成長なのかどうかは分からない。ただ、私はキラに向かって、
自分の言葉を投げかけようとしていた。
「フレイ,一緒に帰ろう」
キラが声をかけた
帰り道,フレイはキラに話しかけた
「私さぁ,サイとキラ・・・どっちを選べばいいかわからないのよ」
「えっ」
「あのねぇ私はあなたとサイどっちにすればいいのかって聞いているのよ！」
「それはフレイが決めることさ」
「えっ？」
「そういうことは人に相談せず自分自身で決めなきゃ・・・」
フレイは不覚にも涙が出た
「フレイどうしたのおなかが痛いの？」
「違うって,私は・・・キラがそのようなこといってくれるなんて
なんかうれしくて・・・」
「泣きそうなんだろ」
「違うってばぁ！」
フレイは少し笑った,キラも笑った
そして,キラの肩にほかの人の肩に当たった。
「そうね、私には分からないわ。でもね…」
私は言葉を連ねる。私が伝えたかったことを言うために。
「私には分からない。キラの求める答えなんか持っていない。
でも、だからって一人で抱え込むのは違うと思う」
「フレイ…」
私は、今こそ、あのメールで見つけた、私とキラを繋ぐ言葉を口にした。
「キラ、コーディネータだからって…」
キラはびくっとした。私が言った言葉に驚いている。
私は、あえてコーディネータという言葉を使った。私が宇宙で、さんざん、
キラを傷つけてきた言葉。
―― コーディネータの癖に、馴れ馴れしくしないで！！
そして、キラに復讐を初めてからは、道具として使うため、意識的に避けてきた言葉。
でも、それを使わないとキラに伝えられないことがある。キラの心に潜む闇を取り除けない。
そして、それを私自身が言わなきゃ、キラに伝わらない。
私は、その言葉を続けた。肝心な時に愚図な、不器用な、私の精一杯の言葉で。
「キラ、コーディネータだからって、自分で何でもできると思ってる。
一人で答えを出せると思っている。でも、それは違う。
私も、何でもできると思ってた。キラ、コーディネータで私達ナチュラルより優秀で、
どんなことをしても叶わない。私達と違う存在だと思っていた。
でも… そんなの嘘！ 嘘よ、嘘！ 嘘ばっかり。できないこと一杯。間違ったり、迷ってばかり。
ナチュラルの私と何も変わらない。
私と一緒。愚図で不器用な、私と一緒」
私は胸に熱い想いが込み上げていた。自分が言ったはずの 『私と一緒』。
その言葉が、ただ、私の胸を打った。
アレ、私、涙が溢れてきた。これを言うために、ここまで来たのに。
かっこよくキラに台詞を決めようと思っていたのに。駄目だな私。
「まさかそんな訳……」 キラは信じられないように呟く。
「ごめん…」キラが謝る。違うわよ、そんな意味じゃない。
「違うわよ… キラ、分かるでしょ。そんなことじゃ無くて…」
「フレイ……」
「馬鹿！分かるでしょ。馬鹿！私、キラのこと…」
「フレイ、君は…」
私は、嗚咽を上げだしていた。すぐ泣く私。泣き虫フレイ。駄目だね私。
「私、キラがコーディネータだからって… だからって…」
ああ、駄目だね。言いたい言い回しとか、一杯考えてあったのに。
ちっとも会話にならない。馬鹿だ私って。
「キラのママだって… ママだって… きっと同じよ。コーディネータだからどうなんて… どうなんて…」
声を上げて泣き続ける私を、しばらく見つめるキラ。やがて、キラは体を私の方を向けて言った。
「分かったよ。もう涙を拭いてフレイ」
私はキラを見た。優しいキラの顔に戻っていた。
私に優しく微笑みを返すキラの顔に。
「分かったよ、フレイ、僕は癒しを受ける資格が無いと思っていた。
でも、君のおかげだよ。誰かに縋るのじゃなく、僕を癒してくれる言葉があることが分かったよ。
今まで言われたこともあったはずの言葉なのに、君が話すと、こんなにも違うなんて…
フレイ、ありがとう。心が楽になった。
僕は、ずっと、フレイの、その言葉を待っていたのかもしれない」
伝わった。これ以上無いっていう不器用な言い方だったけど、私の想いは、
キラに伝わったんだ。私とキラは、また繋がったんだ。
「そんな、私、私、もっと早く、早く、キラに言っておけば…」
でも、ますます涙が溢れてきて、もう言葉にならない。
嬉し涙だ。やったね、泣き虫フレイ。
もういいよ、私。体も心もキラに甘えていいんだよ。
キラとは、また繋がったから。
クライマックス５章のうち、フレイ様が伝えたかった言葉の前のところで一旦引きにしようと、
ちょっと迷ったのですが、読む人のノリを考えて、そこまでの３章を、まとめて投下します。
残り２章は、今晩投下します。
乙フレ〜。いつも投下されてないかなーとちょくちょく覗いているのですが、続きを今晩にも読めると思うと今から楽しみです。
がんばって下さい！
「･･････その、すまなかったな」
「え？」
「お前の父親の事だ。戦争なのだから仕方がないんだが･･････その、何と言うか」
「な･･･何を今更謝ってんのよ！」
フレイは激怒した。何を今更謝っているのだろうか。謝るくらいなら最初から戦争になど参加しなければよかったのだ。
「あんたが謝ったって、もうパパは帰って来ないのよ。謝るくらいなら、パパを返してよ！」
「俺だって母上を殺された。ユニウス７でな！」
アスランも言い返した。
「お前が堕とした輸送機のパイロット達も死んだんだ。お前が殺したんだ！」
「何よ、そもそもあなた達がヘリオポリスを攻撃したからこんな事になったんじゃない。貴方達があんなことさえしなければ、私もキラも、あそこで平和に暮していられたのに！」
「先にヘリオポリスでＭＳ開発をしていたのは連合だ。あんな物を作って、俺達が黙っているとでも思ったのか！？」
「そんな事私達には関係ないわよ。偉い人たちが勝手にやってた事でしょ！」
「ナチュラルらしい物言いだな。自分が知らなければ関係無しか」
焚き火を挟んで睨み合う２人。だが、アスランの方が先に肩の力を抜いた。
「止めよう。ここでお前と言い争っても仕方がない。言い負かせば戦争が終わる訳じゃないしな」
「･･･････そうね」
再び沈黙が洞窟内を支配した。ただ雨音だけが響いている。そのうちに退屈したのか、アスランはイージスから持ち出してきた荷物から食料と毛布を取り出した。そしてそれをフレイに放る。受け取ったフレイは驚いた顔でアスランを見た。
「な、何よ、これは？」
「お前の分だ」
「私の分って、何でよ。私は敵なのよ？」
「さっきも言っただろう。暴れたりしなければ何もしないと」
アスランはそれだけ言うと、自分の分の毛布と食料を取り出した。そして携帯食料のパクを開ける。こちらはフレイのと違ってただの高カロリースティックだ。そのいささか味気ない固形物を口にしようとして、ふとアスランは自分の渡した食料をじっと見ているフレイに気付き、訝しげな声をかけた。
「どうかしたのか？」
「･･････その、食べ方が分からないの」
フレイの答えにアスランは呆気にとられ、ついでくぐもった声で笑い出した。笑われた事に腹を立てたフレイが文句を言う。
「な、何よ、笑う事ないじゃない！」
「くくくくくくっ、それじゃあ仕方ないな。ほら、かせ」
アスランは右手を差し出した。フレイは渋々その手に携帯食料のパックを渡す。受け取ったアスランはパックにある穴に備え付けの棒を差し込んだ。少しするとパックが膨らみ、袋が白くなる。それを確認したアスランは封を切り、中を取り出してフレイに渡した。
「ほら、これで食べられるぞ」
「あ、ありがとう」
フレイはそれを受け取ると、少し躊躇った後にそれを口にした。中はスープによく分からない宇宙食のような固形物だ。どれも温かく、身体の内からあったかくなるのを感じる。
だが、なんでこの男は私にまともな方の食料をくれたのだろうか。
「ね、ねえ、１つ聞いても良い？」
「なんだ？」
「どうして、私にこっちをくれたの？」
「･･･････････」
問われたアスランは何故か顔を赤くした。そのまま顔を背け、言い難そうに答える。
「その、なんだ、女性には気を使えとラクスに言われていて」
「･･････あなた、もしかしてラクスの尻に敷かれてる？」
フレイの何気ない質問に、アスランはかなり傷付いた。分かってはいるのだが、人に言われると傷付いてしまうのだ。ガックリと肩を落としたアスランにそうだったのかという確信を持ってしまうフレイ。変な所でキラに似ている奴だとフレイは思った。
「止めろ、お前は１時間くらいしか休んでないだろ！」
「でも、このままだとフレイが！」
「この天気だ。どこかで雨宿りでもして大人しくしてるさ。そうでなければ･･･････」
その先は言われなくても分かった。もし雨の中をうろうろしていれば、体力を奪われて死んでしまっているだろう。キラはフレイの世間知らずな性格を思いだし、ぞっとした。そしてフラガを振りきってストライクに乗りこむ。
「止めろって、おい！」
「何もしないで、後で後悔するのは嫌なんです！」
キラはフラガに怒鳴り返すとハッチを閉めた。そしてまたストライクを発進させてしまう。その必死さにフラガは呆れかえった。
「やれやれ、なんだかねえ。そんなに必死になるくらい守りたいなら、最初から手放さなければいだろうに」
毛布に包まった２人は焚き火を挟んで眠っていた。少なくともそう見えた。だが、フレイはゆっくりと起き上がると、アスランの傍に近寄った。その顔にはさまざまな感情が浮かんでいる。
『こいつはパパの敵、ヘリオポリスを壊した憎い敵･･･････』
この男を殺せば自分の復讐心もかなり晴らされる。そう思える。だが、その一方で本当にそれで良いのかという疑問も湧いてくる。前に感じた疑問。殺されたから殺して、殺したから殺されて、そしてその後に何が残るというのだろうか。キースさんは復讐心に完全に身を委ねたら戻って来れなくなると言っていた。もし私がそうなったら、キースさんを、艦長を、ナタルさんを裏切る事になるのではないだろうか。あの人たちが悲しむ顔は見たくない。
何時の頃からか、フレイの中で父の死のショックが和らいでいくにつれて、この３人を慕う気持ちが強くなっている。３人に励まされ、いろんな事を教えてもらったフレイは、気付かぬ間に父の死を乗り越える事が出来ていたのだ。
キラは力があれば全てを守れると言った。今の私はその考えに賛成できない。理想だけで何かが守れるとは思わないが、ただ力だけを求めるのは間違ってる気がする。それに、この男を殺せばキラは悲しむだろう。この男はキラの親友だと言っていたから。
フレイはアスランのずれていた毛布をかけ直してやると、自分の毛布をもって外に出た。どうやら雨は止んだらしい。
アスランは密かに持っていたナイフをしまうと、また目を閉じた。てっきり拳銃でも奪いに来たのかと思ったのだが、何を考えているのか。だが、少なくとも今ここで争うつもりはないらしい。そう判断すると、再び浅い眠りへと落ちていった。
フレイ様がやっとキラと会えたのか。なんというか、少しほっとしている自分がｗ
でも、ミリィがなんか怖そうだ。一体どういう行動に出るやら
とりあえず、ナタルさんに乾杯
>>chain
ううむ、フレイ様が誘拐されてキラは従っていたのか。古典的だが堅実な手ですな
でも、縋る藁はアスランとイザーク･･････何故か不安ｗ
>>リヴァオタと八アスのためでなく
アズの会社は変な人材ばかりですなｗ 信用度ゼロって感じで
でもニナさん、二股推奨は不味いです。それは不味すぎです
「てめぇ！どこ見てやがる！」
「すっすいません」
とおりにいた男の連れが
「こいつ,キラというコーディネーターじゃねーか」
「なに？ほんとかカクリコン」
「間違いねぇジェリド」
ジェリドとカクリコンは「アームズインターナショナル」の
専属パイロットだ。アマチュアで勝ち続けているキラを知っている
ジェリドは
「ふん,コーディネーターのくせに誤りもしないとはな」
「すいません・・・」
「聞こえないな」
「ちょっとあんたたち,いい加減にもほどがあるわよ！」
「なんだと！」
「殴ってみるもんなら殴ってみなさいよ！」
「フレイ・・・」
「キラは下がってて」
「けっ調子に乗りやがって,この女を捕まえてマワそうぜ」
それを聞いたカクリコンはフレイを取り押さえる。
キラは切れた
「お前ら！」
ジェリドの顔にストレートパンチが走った,
「やろう！」
カクリコンに回し蹴りを食らわせた。
「くそ覚えていろ！」
ジェリドは捨て台詞を吐き逃げた。
「フレイ！大丈夫」
「大丈夫よキラ・・・」
フレイは失神した
夕食としていた,そして話を出す
「みんなさ,彼女のことなんだけど・・・」
「サイ,何を気にしているんだ？」
「そうトーレスの言うように喋ったら少しは楽になるかも」
「彼女ってさ」
「彼女って？」
「ニナだよ」
「彼女がどうかしたの？」
ミリィが疑問系で言った。
「彼女さ,リヴァの誰かに似ているんだよ」
まず最初にトーレスが聞いた
「あおい？」
「フレイだろ」
次はミリィが
「こずえ？」
「違うよ」
トーレスはその傍ら
「ああ・・・「カードキャプターさくら」はよく見ていたなぁ〜」
「ええ！トーレスさんそんなの見てたんですか！」
ミリィびっくり,サイ愕然,トーレスは
「ふっ丹下桜は引退したけど,マガジンで「ツバサ」を連載しているから
大丈夫だぜ」
ミリィは切り出すように
「ネーヤ」
「そうだそれだ！」
トーレスは席を立って沈黙して,叫んだ
「って声優ネタじゃねぇか！」
「いいだろトーレスさん,いや〜ミリィいいことを思いださせてくれて
サンキュー」
「というとツケはサイが払うの？」
「えっ？」
サイはその場で真っ青になってしまった,なんせ２０００円しかなかった
からである。
「これＯＫ,これはボツ」
「没はないですよカミーユさん」
「なに言ってんだよ,いい写真とある意写真の二つがあるんだ,いい写真を
掲載するんだわかったな」
「わかりました」
「来月のアスラン＆セシリー特集は俺と組まないか？」
「えっ？」
「だから俺の本領を見せてやるよ」
「アシスタントは？」
「トビア」
「そうですね」
トマーシュは笑った。
昼食は,食堂でカツ丼を食べることにした。彼の隣に
「ちょっとここあいているか？」
聞いて,トマーシュは顔を見るとヤザンだった
「ヤ,ヤザン久しぶりだなぁ,おい」
「お前,外人部隊以来あっていないもんな」
「お前こそ・・・でお前なにやっている？」
「俺か,俺は「グレェイトエルスマン社」の用心棒をまかされているんだぜ」
「あの会社か,あの会社の新型ＭＳを購入したところなんだ」
「久しぶりに仲間と会わないか？ガリーもマットも呼ぶぜ」
「ああモチです」
今夜,トマーシュは飲み明かすことを決心した。
ついに、キラと私を繋ぐ言葉を伝えることができた私は、泣きじゃくりながら、
心と体を開放した。キラの胸にゆっくりと納まる。キラが優しく抱きしめる。
それは今まで私達がしてきた互いの肉体を求めるものとは違う。
キスさえしない。ただ、体を合わせているだけ。泣きじゃくる私は、言葉も出せない。
でも、これまで肉体が繋がっていた時以上に、私の中にキラを感じる。
私を官能に酔わせている。私は、何度も、感嘆の息を吐いていた。
キラの胸元にかかる私の息は、それさえもキラに私の想いを伝えているようだった。
私は、体では無く心で何度も絶頂を迎えていた。
キラも、私と同じなのが分かった。キラの逞しい胸が大きく鼓動を打ち、
私の髪に絶えず息を吹き掛けていた。
私達は、ただ、立って抱き合っているだけで、ベッドで一晩かけても到達することが
できないほどのエクスタシーを得ていた。
体だけだと、いろいろな制約や面倒ごとがある。
忙しいキラとの時間のすり会わせ。心が望む繋がりと実際にできる体位との微妙なズレ。
してあげたくても知識不足で応えられないこと。した後の後始末。避妊。
求めていても体力の限界は来る。コーディネータとナチュラル、理解したと言っても、肉体の持つ差は存在する。
だけど、心に、そんな差は存在しない。
今、私の心と体はひとつとなり、キラと共に、至福の世界にいた。
アンバランスだった、私の心と体。それは、今、溶け合ってひとつとなって新たな私となっていた。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
そのまま、私達は、どれだけ抱き合っていたのだろうか。永遠とも思える時間。
でも、実際はほんの数分だったのかもしれない。
どちらともなく、二人は離れて、互いの顔を見つめ合った。
私は、もう、泣きやんでいた。お互いに、今の官能の余韻に浸っていた。
心は満たされていた。それは一体となった肉体にも満足を与えていた。
キラと離れていた二週間あまり。既に、私もキラも、その空白期間を取り戻していた。
トリィが、いつのまにか戻ってきて、私達のまわりを飛び回っていた。
それは、私とキラの新たな旅立ちを祝福しているかのようだった。
心と体の充足を得た私は、言葉を続けた。さっきの二人の繋がりを確認するかのように。
「私、もうキラに帰ってきてなんて我が侭言わない。キラを信じる」
「僕も、フレイに隠して悩んだりしない、ちゃんと話す。相談するよ」
「私、キラが私を、いたわってくれるの素直に喜ぶ。意地を張ったりしない」
「僕も、フレイの優しさに甘えてばかりしない。フレイを暖かく包むよ」
そして、キラは言った。
「僕は戦いから逃れられない。でも、だからと言って、君を遠ざけたりしない。
君を守る。何があっても守るよ。いつまでも。約束する」
私も言った。
「私も戦う。キラから守ってもらうだけじゃなく、一緒に戦う。今日だって、
キラに追いつくまで戦ってきたもの。私、負けない。キラと戦う」
「分かったよ。僕は、辛そうにする君を一秒だって見たくない。だからって、
君から逃げるようなことはしない」
「私も、自分の辛さから逃げたりしない。キラを信じて待つ。みんながいるから、マリューさん、
フラガ少佐、ナタルさん。みんな…。みんなとキラを信じる」
私とキラは、また見つめ合った。
「キラ、私達、間違ってなんか無い…」
「ああ、そうだねフレイ、僕は君のこと………」
私の心は歓喜に包まれた。
私は、今こそ話すべきだと思った。謝ろう復讐のことを。キラは許してくれる。
その時、敵襲を告げるアラートが鳴った。
二人で、虚空を見上げる。
反射的に、更衣室に駆け上がろうとするキラに、私はアラートの中、大声で言った。
「キラ！！！ 私！ 私！」
キラも大声で答えた。
「帰ってから！！ 帰ってから聞くよ！！ 帰ったら君に話すよ！！ フレイ！トリィを頼む！！」
キラの手から、私の手にトリィが渡された。キラがこれ以上無いくらい、まぶしい笑みをもらした。
想いがキラから、私に伝わったような気がした。
私は、また目に涙を浮かべて、微笑みを返した。私は、トリィを大事に胸に抱えて言った。
「キラ！ 私、待ってる！！」
ああ、繋がっている。私とキラは、ずっと繋がっている。
帰ってきたら、次に帰ってきたら、すべてを話そう。
そして、キラと対等になろう。
私たち、間違っていない。マリューさんの言ったように、私たち、間違っていないのよ。
そのための二人だから、これからも二人だから。
私は戦闘準備で慌ただしい中を、トリィを大事に抱きながら、キラの部屋へ向かいはじめた。
私は、モビルスーツデッキにたどりついた。デッキ上から下を覗きこむ。
あの子は、既にキラと出会っていた。ストライクの足元に二人はいた。
ここからでは話は聞こえない。でも、階段を降りて下へ行こうとすれば、
私はまる見えになってしまう。ここから様子を覗きこむしかない。
私は、あの子は、会った途端に抱きついて、私のようにキラを誘っているかと
思っていたけど、そうはしていないようだ。
キラは体をストライクに向けたまま、首だけ、あの子の方を向けて話している。
あの子は、うなだれたまま。二人、距離をおいている。
私のときのように、突き放した言い方をしているのかもしれない。
きっとキラは、私と同じことを行っているのだろう。
――「僕は癒しはいらない。僕は、もう昔のようには戻れない」
私にとって痛すぎたキラの言葉。あの子も傷つくがいいわ。
そして、キラに二度と近づかないでちょうだい。
私は、もう、キラが、私の方を向いてくれることは諦めていた。ただ、あの子さえ、
キラから離れてくれればいいと思った。キラをあんなにしてしまったのは、
元はといえば、あの子のせい。もう、顔も見たくない。
どこか遠くへ行ってしまえばいいと思った。
キラと、あの子、距離をおいたまま、ポツリポツリと喋りあっている。
激情や罵倒する様子は見られない。でも、愛の言葉を交わしているようにも見えない。
ずっと静かに話し合っている。いきなり、激情にまかせてキラに抱きついたり、
体で誘惑したり、キラの方からも暴力を振るったりということは見られなかった。
しばらくして、あの子が泣き出した。泣きながら何かを話しているようだ。
体がブルブル震えている。とうとう、キラの言葉が、あの子を傷つけたのだろうか。
もうすぐ、あの子は堪えられなくなって走り去る。そして、キラの前に二度と帰って来ない。
「え？」
キラが、あの子の方を向いたのは見えた。
その後、キラと、あの子は二人抱き合っていた。
互いの体をむさぼっているようでもない。ただ、ひしと静かに抱き合っているだけ。
でも、キラと、泣きじゃくりながら抱き合う、あの子は、まるで一枚の絵のように
美しく融和して見えた。トリィが、その二人のまわりを飛び回っている。
まるで申し合わせたように。
そして、体を離して、見つめ合う二人。二人の間で交わされているらしい想い。
私は、もう、こんなものを見たくない！
その時、敵襲を告げるアラートが鳴った。
「キラ！！！ 私！ 私！」
「帰ってから！！ 帰ってから聞くよ！！ 帰ったら君に話すよ！！ フレイ！トリィを頼む！」
「キラ！ 私、待ってる！！」
アラートが響く中、大声で呼び合う二人の声は、私のところまで聞こえた。
あの子は、またキラと、よりを戻した。そして、キラの方からも、あの子を想っている。
それは、私には辛い認識だった。
「ブリッジへ行かなきゃ」
私は、ブリッジへ走り出した。
あの子が、キラのトリィを大事に胸にかかえる様が、記憶に残っていた。
結局、キラが、私に託してくれたトリィは、すぐに私の元を離れて、あの子の
ところへ戻ってしまった。あの子のデータが消える間も無く。
私にとっては、トリィは、子供の時に遊んだ昔のオモチャとしての認識しか無い。
プログラムを多少改造してあるようだけど、取るに足らないオモチャ。
それに対して特別な想いをいだいているかのような、あの子の気持ちは分からない。
私は、そんなものよりも、キラが欲しかった。
フレイは、後、最終章を残すのみです。休日ですので、少し投下ペースを早めて、
深夜ごろに最終章を投下したいと思います。
投下お疲れ様です。深夜を楽しみにしています。
キラ、いい男だな…
どれを指しているのかはわかりませんが、職人さんも忙しいのでしょう。
仕事してると、出張が重なったりすれば一週間は（プライベートで）パソの前に座れないなんてざらにありますし。
気長に待ってあげましょう。
乙フレ〜
そのための二人だから、これからも二人だから。
と
私は、そんなものよりも、キラが欲しかった。
のセリフが心に残りました。
「僕がどんな思いで戦ってきたか、誰も気にもしないくせにっ・・・・・！」
かつてキラが吐き出した言葉。多分このせいだろう、キラが私の元を離れないのは。
私が、嘘でも優しくしたから。守るって、そんな気もないくせに。
可哀想なキラ。ごめんなさい、私は間違ったけど、でも、あなたの元を離れない。
優しくしてあげるから。
サイの一件があってか、キラは私を求めることが多くなった。
不安なのだろうと思う、今までよりがむしゃらな行為。
「キラ・・・ちょ・・・・待って・・・・・・・・・あっ・・・・・」
「嫌だ・・・！フレイだっていいんでしょう？ほら・・・」
そう言って私の体液を確かめる、その指の感触に確かに私は快感を覚えていた。
「・・・ぁっ・・・・だめっ・・・・・・・」
敏感な部分に触れられて、体が反応してしまう。
「フレイ・・・っ・・・フレイ・・・・・好きだ・・・！」
「んっ・・・・キラ・・・・・ぁっ・・・・」
いつしか私の意識は白い靄の中に沈みこんでいった。
「フレイ・・・ごめん・・・・・・・・」
目が覚めると、申し訳なさそうな顔をしたキラがいた。
「あ・・・キラ・・・・私・・・・・・・」
「ごめん、僕、その・・・ちょっと歯止めが利かなかったみたいで・・・・」
「いいのよ、キラ。ごめんね。」
そういって抱きしめてあげると、キラは震えていた。
「フレイ・・・ごめん・・・・・・ごめんね・・・・」
でも、船に乗るという習慣のなかった私は、程なくして船酔いに悩まされることになった。
「ん〜・・・気持ちわる〜い・・・・・」
キラのベッドを占領して一日中うなっている。
「大丈夫？フレイ。ミリアリア呼んで来ようか？その、色々と・・・・」
「キラがいればいい・・・・ねえお願い飲むもの持ってきて？」
困ったような顔でキラが立ち上がり、部屋を出て行った。
ああ、本当、気持ち悪い・・・大体、重力あるのに一回転とかするんだもん、この艦、信じられない・・・・
「フレイ、持って来たよ」
「ありがとう」
体だけ起こしてジュースを受け取る。
「タオルももうぬる〜い」
「まったく、しょうがないな、フレイは。」
苦笑しながら再びキラが立ち上がる。
「他にはもうない？大丈夫？」
「うん、ありがとう、キラ」
「ああ、薬貰ってきたから飲んどいて。横になってたほうがいいんじゃないの？」
あれこれ世話を焼いてくれるキラ。
「ふふ、キラ、お母さんみたい」
「フレイ、いいかげんにしないと怒るよ、ほら、もう寝て！」
「はぁ〜い」
今だけはこれが真実だと思っていよう。キラは優しくて、私はそれで幸せで・・・それでいいじゃない。
真実なんていらない。いらないもの。
ゆっくりですが、絶対終わらせるので気長にお付き合いくださいましね。
>>オーブ
クライマックスですね！とうとうキラとフレイが・・・！
楽しみにしてます。
>>流離う
フレイとアスランの掛け合い、面白いですね。
あんまりない組み合わせですが、案外相性いいかもしれません。
>>chain
ああ、フレイ様が、キラが・・・・可哀想に。
アスラン頑張れ、二人を助けてくれ頼む！
>>リヴァオタ
残念ながら元ネタがわからず・・・・
でも楽しそうな雰囲気の作品ですね。頑張ってください。
>>キラ♀
あああ、サイが、サイが怖い・・・あわわわ。
やはり女性は魔性なのでしょうか。ということはキラちゃんもいずれ・・・
いえすいません冗談です。
歌手のシャニ,テレビドラマの弁護士役の新人俳優オルガ
人気デュオグループ「ゴー・ウェスト」のミケル,クロト
この三人がミーティングとして参加している。シローは喋る
「アズラエル様の指示で君たちは来月のプレミアショーに
出ることになります」
小説を読んでいるオルガは
「それで？」
「つまりだ,コンディションを崩さないようにしておきたい
コラァ！シャニおきろ」
シャニはアイマスクをしてソファーに寝て,ウォークマンを聞いていた
ミケルはシローに続いて
「シャニ！おきてください」
「うざ〜い」
シローはシャニを起こさないことにした
ゲームボーイをしていたクロトは気づいたようだ。
「アマちゃん,またお前おっさん(アズ)になにかいわれただろ？」
「うっ」
「へっどうせ彼女のことだろ,いーさ俺たちには彼女いないんだし」
「ちょっとまって僕にはＢ・Ｂが」
オルガは笑って
「その文通の彼女は別の男と付き合っているさ」
シローは話を終えると部屋から出て行った
戦闘が始まった。天候は荒れている。その中、戦闘も前と比べ物にならないくらい激しく、
艦は絶えず揺れ、衝撃が襲った。
でも、そんな中でも、私は恐くなかった。キラへの想いが、私を恐怖から守っていた。
「大丈夫、キラが守るから、私を守るから。
そして、私の想いはキラを守るから」
私はトリィをじっと見つめながら、ベッドに横たわり、戦闘が終わるのを待った。
終わったら、キラが帰ってきたら、キラと私の、新しい関係が始まるのよ。
そんなことを思いながら、私は、徹夜でキラを捜し回った疲れで寝てしまった。
心の中は安らぎに満ちていた。
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
私は夢の中でもキラのことを考えていた。すごく純粋に。
キラが帰ってきたら、すべてを話そう。キラを復讐の道具として見ていたことも、すべて。
キラは、許してくれる。あの優しい笑顔で許してくれる。
そして、私は言うんだ。
私、キラが好き。大好き。愛してる。こんな気持ちは初めて。
キラも私のこと好き？
私、これからキラと一緒に戦う。ナタルさん、ブリッジ勤務への志願を薦めてくれた。
私、ブリッジでキラと一緒に戦う。恐いけど、キラと一緒に頑張る。
復讐じゃなく、コーディネータを殺すのじゃなく、
キラの言うように、戦争を終わらせるため、みんなを悲しませないため。
これからは、二人で戦う。
キラ、もう一人で考え込む必要は無いのよ。私も一緒だから。
そして、夜の間、私が彷徨いながら、会った人すべてに言うのよ。
「私とキラは、これからずっと二人です」
キラは、喜ぶ？ 喜ばない？ どうする？ 私とじゃ嫌？
みんな祝福してくれるかな。
マリューさん。フラガ少佐。ナタルさん。
マードック曹長。ノイマン少尉。
トール、ミリアリア、カズイ。そして、サイ。
サイ、私、あなたに謝る。決して許してくれないかもしれないけど、何度でも謝る。
あなたが、私とキラを理解してくれるまで。
オーブにいるカガリ。ごめんね。やっぱり私、キラをあなたに譲れない。
今度、会えたら、あなたにちゃんと話す。ごめんね。
マリューさん、まるで、私のママであるかのように、私を暖かく包んでくれた女性（ひと）。
マリューさんとフラガ少佐。仲のいい二人。絶妙な二人。
私、マリューさんのようになれるかな？
私とキラ、マリューさんとフラガ少佐のようになれるかな？
どう思うキラ…
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
夢の中の私。これは、宝石のように純粋な私の心が求めたもの。
もうすぐ目が醒める。目が醒めたとき、私の宝石の心は死ぬ。心を閉ざす。
---------------------------------------------------------------
「キラはＭＩＡだよ。多分、死んだんだよ」 カズイが言った。
「キラが…死んだ……」
そんな、馬鹿な…… 嘘よ！ 嘘！ 嘘！ キラは生きてる。私の想いが……
＊ ＊ ＊ ＊ ＊
「オーブから連絡があったわ。ヤマト少尉の戦死が確認されました」
マリューさんが悲しそうに告げる。差し出された写真にあった焼けただれた
モビルスーツのコクピットに私は絶望する。
「ヤマト少尉は、爆発の熱で骨一つ残さず燃えつきてしまったのよ」
---------------------------------------------------------------
もうすぐ目が醒める。もうすぐ、私は…
(了)
ミリィの方は、後少し、フレイとは別のクライマックスが残っています。
これは、明日朝には、まとめて投下します。
フレイ様の社長イメージがヘンです。ついにZのキャラまで出てき
ましたね。今更ですが中の人繋がりのネタが多いのに気づきました。
>>オーブ･フレイの心
キラとのキータッチとハグによるシンクロ描写が綺麗ですね。
｢謝ろう復讐のことを」←まだ大事なことを話していないのかあ。
切ないですね。最終章を楽しみにしてます。
>>ミリアリア
｢ブリッジへ行かなきゃ」←なんかもう見てられないです。可哀想で。
こちらは見たいような見たくないような最終回という感じですね。
>>流離
大人組の教育の成果がフレイ様の精神も命も救いましたね。アスランも
御飯作ってあげたり、ナイフ持って警戒したりして、カッコいいです。
>>chain
『利用できるものは例え何であろうと利用する』←中々恐そうなヤツですね。
ストライクのネームバリューが浸透しているというのも面白いですね。
>>散った花、実る果実
｢重力あるのに一回転とかするんだもん｣←確かにそうですね。笑っちゃいました。
甘ったれフレイ様がかわいいですね。｢真実なんていらない｣←ここらへんがフレイ様らしいです。
>>chain
フレイ様の誘拐・キラ脅迫場面。ドキドキしました。
文章も手慣れてきていて、これからの展開に期待です。
>>流離う翼たち
フレイ様とアスランの夜は、本編カガリのドタバタ状態よりも静かですね。
しかし、キラ、砂漠の精神状態のままだったんですね。カガリの仕事はどうなった？
>>散った花、実る果実
乙です。最近、ちょっとソフトタッチですね。
>真実なんていらない。いらないもの。
偽りの関係に、縋ってしまうフレイ様。キラもそうなんですけど、これがやがて…
これから、どうなるのか楽しみにしてます。
Somewhere in the dark
I can hear the voice that calls my name
Might be a memory Might be my future
Might be a love waiting for me
どれほど眠っていたのか、アスランは耳に聞こえてくる歌声に目を覚ました。
「なんだ？」
それは外から聞えて来るようだ。ラクスの歌ではないが、なにか聞いていてとても落ちつく歌だ。誰が歌っているのかとおもったが、それは１人しかいない。そう、フレイだ。
外に出てみると、近くの岩の上に腰掛けて毛布に包まっているフレイがいた。雨が上がって雲が晴れており、夜空に輝く月を見上げながら歌を歌っている。
「･･････良い歌だな」
「え？」
驚いてこちらを見るフレイ。アスランはフレイの傍まで来ると、同じように夜空を見上げた。
「地球から見上げる夜空か。星が瞬いて見えるというのは本当だったんだな」
「･･････知らなかったの？」
「俺は地球に降りてきたのは今回が初めてでね。こうして夜空を見上げた事なんか一度もなかったんだ」
そう答えてアスランは満天の星空を見上げる。宇宙で見る星とはまるで違う美しさをそれはもっていた。まるで宝石を散りばめたような輝きの数々にアスランは見惚れてしまう。そうなのだ、この美しい夜空を見上げたから、人はあそこに行きたいと思えたのだ。
だが、感動しているアスランに、フレイは不思議そうに問いかけた。
「ねえ、どうして人は、宇宙なんかに出たのかな？」
「どういう事だ？」
「ここから見上げる星はあんなに綺麗なのに、宇宙に出ればそれはただのガスだったり、死んでいく星なのよ。瞬きもしないし、綺麗でもない。宇宙に出たりしなければそんな事を知る事もなく、人はずっとあれを綺麗だと思っていられたのに」
「･･････そうかもな。こうして地球から夜空を見上げると、そう思うよ」
そうだ。神秘は誰にも謎だから神秘なのだ。こんな幻想的な夜空を科学と常識で語るのはただ無粋なだけだという気がする。確かに地球は住みにくい所だが、コロニーでは決してみる事の出来ない自然の美しさというものが確かに存在するのだ。
「なあ、さっきの歌は？」
「え、ああ、あれ。あれは、ママが私に残してくれたものよ」
「残してくれたもの？」
「ええ、私のママは小さい頃に死んじゃったの。そのママが小さい頃に歌ってくれた歌よ。顔もよく覚えていないけど、なんでか歌ってくれた歌だけはずっと覚えてるんだ。ママは歌が好きな人だった。だから、ママの歌ってた歌を歌ってると、ママが近くにいてくれる気がするの」
「そうなのか」
つまり、彼女は天涯孤独の身という訳だ。そうなった原因の一端を自分が担っているのかと思うとやりきれない思いを感じる。なんでこんな事をしているのだろうか、自分たちは。
だが、同時にアスランには不思議だった。小さい頃に亡くした母親の残した歌などをどうして何時までも覚えているのだろう。もっと別の事に努力を振り向ければ良いのに。
戦闘が始まった。明け方、風雨が小康状態になった中、再び、残った三機のＧが仕掛けてきた。
私は、かなり遅れて席についた。バジルール中尉の叱責が飛ぶ。
「何をしていた。遅すぎるぞ」
「済みません」
「戦況は？」私は問いかける。
「既に、ストライクとスカイグラスパー一号は発進した」バジルール中尉は言う。
「トールは？」私は聞く。
「ケーニヒ二等兵は、この天候では無理だ。飛行経験が少なすぎる。今は待機状態だ」
また、キラとフラガ少佐二人だけに戻っている。私も、キラに絶縁された。
トールと私、キラの三人は、また、バラバラだ。
戦闘は激しかった。フラガ少佐がランチャーストライカー装備で、バスターを攻撃するけど、
バスターはびくともしない。キラは、エールストライカー装備でイージスとデュエルの二機を
相手にしている。キラが一機に仕掛ける間に、もう一機がアークエンジェルを攻撃して、
なかなか攻撃の的を絞れない。次々と被弾するアークエンジェル。
キラが、やっとのことでデュエルの足を砕き敗退させた。
でも、その間にイージスは、位相砲スキュラを展開し、アークエンジェルの
バリアント・レールガンを吹き飛ばした。衝撃とエンジンの一部をも、かすめた火線で、
アークエンジェルは大きく傾き、とある小島に不時着する。
キラはイージスを押さえるため、一人向かって行った。
再び、天候は荒れはじめ、空には稲妻が光っていた。
格納庫のトールから、私に連絡が入った。
「大丈夫かミリィ。キラはどうなっている？」
「うん、なんとか。キラはイージスと一対一で戦っているわ」
私は、キラのストライクの状況をモニタしている。
エネルギーの減少。次々に受ける被弾。
と、ストライクのビームライフルの反応が消えた。
位相砲スキュラを内蔵するイージス相手に、もうキラはビームサーベルしか武器が無い。
キラが死ぬ。私の中に、そんなイメージが沸き起こった。
――「僕は癒しはいらない。僕は、もう昔のようには戻れない」
辛い言葉で、私に決別を突きつけたキラ。
それでいて、あの子と抱き合い、再会の言葉を告げていたキラ。もう、私の手の届かないキラ。
でも…
それでも、私はキラを忘れられない。キラが危ないのを黙ってなんか見ていられない。
私はトールに向かって叫んでいた。
「トール、キラが危ないの！イージスがストライクを…」
「なんだって、ミリィ！！」
「トール、キラを助けて！」
「分かった。今行くよミリィ」
トールは答えた。私はキラのことしか考えていなかった。
「綺麗、だな」
「え、何が？」
フレイが不思議そうに聞くと、アスランはあわてて赤くなった顔を俯かせた。何と言うか、顔を会わせ辛い。
「あ、い、いや、その、星空がな」
「ああ、そうね。確かに綺麗」
もう一度夜空を見上げ、フレイは岩から降りた。
「さてと、そろそろ戻りましょう。身体が冷えてきちゃった」
「あ、ああ、そうだな」
洞窟に戻っていくフレイの後姿に、アスランはナチュラルの持つ美しさを見たような気がしていた。コーディネイターの作られた美しさとは違う。自然の持つ美しさと言うものだ。時として自然は人の手では決して及ばない美しさを生み出すと言うが、この夜空を見上げて、その夜空に栄えるフレイを見て、初めてアスランはそれを実感として理解する事が出来た。
フレイの容姿はそのまま見ればコーディネイターと較べても遜色ないほどの物だが、コーディネイターであればさほど珍しくもない程度の美貌だ。だが、アスランにはフレイがいかなるコーディネイターの女性も太刀打ちできない美しさを持っていると感じた。それが自然的な美しさなのだろう。人を惹きつけるとでもいうのか、単純な容姿という問題ではないのだ。
シーゲルが昔言っていた言葉をアスランは思い出した。
「全てを得る事は全てを失うに等しい。我々はコーディネイターとなった事で多くを得る変わりに、多くを失ったのだよ」
あの時はシーゲルが何を言いたいのか分からなかったが、今ならば分かる。確かに自分たちはいろんなものを失っているのだ。ナチュラルは肉親をとても大事にするとシーゲルは言っていた。それは生命の尊厳を弄ぶのが当たり前であるコーディネイターが失ってしまった人間らしい情であると言う。先ほどの歌もそうなのだろう。例え僅かでもその人の事をずっと覚えていることがそれを証明している。
コーディネイターは第２世代になると大分人間性が失われているとシーゲルが言っていた。命とは作り出すもの、という風潮がプラントにはあるからだ。自分はそれがおかしいとは思わないが、シーゲルはおかしいと言う。考えてみれば、自分は任務を理由に母の墓参りを怠っていて、それを特に気にはしていなかったが、父は激務の間も欠かさず通っていたようだ。これがその差と言うものなのだろうか。去年の血のバレンタインで無くした母を痛む気持ちさえこの程度の自分と、顔も覚えていないほど昔に無くした母に思いを馳せる彼女。これがナチュラルとコーディネイターの差なのだろうか。彼女はどうなのだろうか。それを聞いてみたくなった。
「なあ、１つ聞いていいか？」
「何よ？」
「お前は、コーディネイターというものを、どう思う？」
「どう思うって、どういう事よ？」
本気で分からないらしく、フレイは首を傾げた。アスランはフレイの物分りの悪さに少し苛立ったが、仕方なく少し言い方を変える。
「つまりだ、お前はコーディネイターについて、どういう印象を持っているんだ？」
「変な事を聞くのね。私はコーディネイターは大嫌いよ。パパの敵だし、第一遺伝子を弄って身体を強化するなんて変よ。おかしいじゃない」
「なんで、そう思うんだ？」
「だって、そうでしょう。子供の形を親が勝手に決めるなんて、命をなんだと思ってるのよ。子供は親の玩具じゃないのよ」
「･･････玩具、か。それがナチュラルの考え方か」
「違うと言うの、あなたは？」
フレイの問い掛けに、アスランは真顔で答えた。
「俺は、おかしいとは思わない。俺達にとってはそれが当然なんだからな。そうしないと俺達は滅びてしまう。第３世代の出生率は下がる一方なんだ」
「だったら、遺伝子を元に戻せば良いじゃない。ナチュラルに回帰すればそういう問題も解決するし、争いの原因もなくなるのよ」
「それは出来ない。遺伝子操作の否定は俺達コーディネイターという存在の否定だからな」
そうだ。ナチュラルの穏健派ブルーコスモスやシーゲル･クラインの主張するコーディネイターのナチュラルへの緩やかな回帰。コーディネイターはナチュラルと交わる事でその血をナチュラルへと緩やかに戻していくというものだ。これは時間がかかるが、確実にナチュラルへと戻っていける方法だ。
これを主張する者たちは確かにプラントにそれなりの勢力を持っているが、まだ大多数のコーディネイターはアスランのように考えている。自分がコーディネイターという事は誇りであり、ナチュラルへの回帰など冗談ではないと言うのだ。
だが、次のフレイの言葉がアスランを打ちのめした。
「なんでよ。コーディネイターである事に苦しむ人だっているのに」
「そんな奴がいるのか？」
「ええ、キラよ。彼はコーディネイターに生まれたくて生まれた訳じゃないわ」
フレイの答えに、アスランは驚愕してフレイを見た。
「キラ、が？」
「ええ、キラは、私達ナチュラルの中に交じって生きているわ。だから、自分がコーディネイターである事を事あるごとに思い知らされて、そんな力を持ってるから戦って、どんどん苦しんで」
「それは、ナチュラルのせいじゃないか。俺達の元へ来ればそんな苦痛とは無縁になるんだぞ！」
「そうかもしれないわね。でも、キラに友達を、一緒にやってきた仲間を捨てられると思うの？」
フレイの問い掛けに、アスランは黙ってしまった。キラをよく知るだけに、そんな事が出来る奴ではないと良く知っているから。だが、ならばあいつと戦わなくてはならない俺は、親友の俺はどうすれば良いんだ。
「あいつは馬鹿だ。友達の為、仲間の為とか言って騙されて。そんなだから苦しむんだ」
「･･････そうね。まったくその通りだわ」
自分に反論するどころか、同意したフレイにアスランは怪訝な顔を向けた。フレイはアスランの事などお構い無しに話を続ける。その表情には自嘲的な笑みが浮かんでいた。
「だって、私がキラを騙して戦わせてたんだもの」
「な、なんだとっ！」
アスランは自分の耳を疑った。こいつがキラを戦わせていた。そう考えると頭の中がその事で一杯になってくる。
「どういう事だ。お前がキラを戦わせていただと！？」
「ええ、そうよ。私はパパを殺したコーディネイターをキラに殺させようとしたの。コーディネイターと戦って、殺して、最後にコーディネイターのキラも死ねば良い。そう思ってね。その為なら他の事なんてどうでもよかったわ。大嫌いなコーディネイターに近付いて、抱かれて、優しくして、戦いに送り出した。そして苦しむキラを内心で嘲笑ってた」
フレイの言葉に、アスランは言い知れぬ怒りを覚えた。こいつがキラを戦わせていた。こいつが俺とキラを殺し合わせた。こいつがキラを苦しめた。
>リヴァオタ
遂にヤザンやジェリドまでが。でもジェリドは本編よりもガラが悪いかな？
何気にシローがダコスタ君並に苦労性だｗ
>>オーブ・フレイの心
重なっちゃったみたいですいません
フレイ様とキラはやっとくっつきましたか。とりあえずほのぼのですね。でもＭＩＡ････
本編通りに進むなら待ってるのは悲劇と言うことになりますが、どうなるんでしょうか？
ミリィは、ショックでしょうね。フレイ様のように放心状態にならなければ良いですが。
あ、キラは砂漠編の頃よりも悪化してますよ。カガリはキラの相手はしてますが、フレイ様の望んでいた「癒してくれる人」にカガリは不適当なので。この辺りの決着は、そう遠くないうちにとりあえず付く筈です。
>>散った花、実る果実
昔より描写が薄い。流石にエッチを続けるのは不味いのですなｗ
でも、やっぱりタオルぬるーいというフレイ様は可愛いｗ
「ケーニヒ二等兵、発進は許しません。この天候では、あなたでは無理です」艦長が叫ぶ。
「やめろ、ケーニヒ二等兵、死ぬぞ！
何をしているんだ。ハゥ二等兵。ケーニヒ二等兵を止めないか」バジルール中尉も叫ぶ
でも、私は、そんな声も聞こえなかった。
次々に減って行くキラのストライクのエネルギー。サーベルの使用時間も、
もう、ほとんど残っていない。
私は、ただ、このことだけを言った。
「トール、キラが危ないの。もうエネルギーが無いの、キラを助けて！」
トールのスカイグラスパー二号機が、カタパルトを飛び出した。
飛び立った瞬間、開いたままのカタパルトの前に、バスターが現れた。
「整備兵、すぐに避難して」艦長の声が飛ぶけど、間に合わない。
そのとき…
フラガ少佐のスカイグラスパーに装備したアグニのビームが、ついにバスターを捉え、
横からバスター背部のキャノンとバッテリを吹き飛ばした。
バスターは、最後のエネルギーで、肩からミサイルを放ち、それが、
フラガ少佐のスカイグラスパーの翼に被弾した。
バスターは、そのままカタパルト内に突っ込んで動かなくなった。
「自爆するかもしれないわ。注意して」艦長は言った。
「どうします？リニアカタパルトを作動させて排除しますか？」とバジルール中尉。
「いや、いい機会だわ。Ｎジャマーを最大に展開して、自爆されないように押さえて。
もし、大丈夫のようなら、この際、バスターは回収して、パイロットも捕虜にするのよ」
艦長は告げた。バジルール中尉は、まだ艦長の思いつきに不服そうだった。
「フラガ少佐は？ ハゥ二等兵どうなった」バジルール中尉が、私に聞く。
「翼に被弾。一番カタパルトから帰投します」私は空ろな目でコンソールの文字だけを
見つめながら答えた。
私は、受け答えをしていながら、そんな一連のことさえ、意識の範囲外にあった。
もう、エネルギー限界に近いキラのストライク。そこへ向かう、トールのスカイグラスパー。
雷鳴は、ますます激しくなり、通信状況はますます乱れ、音声通信もノイズにまみれて、
なかなか通じない。ただ、各機のシグナルのみが確認できる。
「トール、キラを助けて！」
私は、また叫んだ。
「キラ！キラ！聞こえる？大丈夫！」
「トール！トール！お願い！キラを助けて！」
必死に呼び続ける私。
強敵相手に武器もエネルギーも、ほとんど無いキラのストライク。
嵐の中を援護に向かうトールのスカイグラスパー。
私の大切な三人は、また、ここでお互いの心を通じ合わせるはず。
この困難を乗り越える力を…
プーーー
「え！」
そのとき、
┌──────────
│ SKY GRASPER 02
│ SIGNAL LOST
モニタ画面のトールのスカイグラスパーのシグナルが消えた。
どういうこと。そんな馬鹿な。トールが、そんなはず…
「トール！トール！聞こえる返事して！ お願い返事して！」
私の中に、昨夜の悪魔の考えが蘇る。
── トールがいなくなれば… 私は、あの子と同じじゃ無くなる。
トールさえいなければ、キラに慰めてもらえる)
ああ！そんなはずは！まさか、まさか、本当にそんなことに…
私は激しく動揺した。こんな、こんなはずは…
(でも、これで、また私……)
悪魔の自分が、私の中に入り込もうとした時、私の耳に一瞬キラの声が届いた。
「……アスラン、よくもトールを！！……」
怒りに満ちたキラの声。私の聞いたこともない呪詛を込めた声。
さっき、モビルスーツデッキで見た、にこやかな表情からは想像もできない言葉。
私は思った。
キラも悪魔になったんだ。
『私は、それが自分の勝手な想いが原因になっていたことに気がついていなかった。
そして、あの子とキラが、モビルスーツデッキで話していた二人の未来を、
私の手で踏みにじっていたことも』
「キラーーー！！！」
私は、またキラに叫んだ。その時。大きな爆発がブリッジの窓から見えた。
プーーー
「え！」
┌──────────
│ GAT-X105 STRIKE
│ SIGNAL LOST
キラのストライクのシグナルも消えた。私の心は凍りついた。
「キラ！キラ！聞こえる返事してキラ！」
「トール！トール！ キラが、キラが、返事して！キラを助けて！トール返事して！」
「キラ！キラ！お願い返事して！ 聞こえる？ 返事してキラ！」
「トール！トール！聞こえないのトール！キラが！キラが！」
「返事して！返事して！返事してよう！意地悪！ちゃんと返事してよう！！
キラ！トール！キラ！トール！キラーーーーー！！！」
私はいつまでも絶叫を続けた。
私、キラ、トール。大切だった私の三人は消えた。私一人を残して。
キラが死んだ。トールも死んだ。
バチが当たったんだ。私が、あんなことを考えたから。
トールがいなくなればいいなんて考えたから。
トールごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
私、なんてことを。トールは、私のためにスカイグラスパーに乗ってくれたのに。
私、何も答えてあげられなかった。
キラ、なんで死んじゃったの。いつも、元気に帰ってくるのに、
なんで死んじゃったの。なんで、私に別れの言葉を告げたまま死んじゃったの。
これじゃ、キラとの楽しい想い出残せないじゃない。辛い想い出しか残らないじゃない。
私、ここから一歩も動けないじゃない。
キラ、トール。馬鹿！ 私一人にしないで。
ああ、なんでこんなことになったの。
ヘリオポリスから今までの、私達のやってきたことが、私の頭の中を駆け巡った。
巻き込まれた戦争。巻き込まれた私達、巻き込まれたキラ。
戦わざるを得ないキラ。変わって行ったキラ。遠くなって行ったキラ。
待ち続けた私。私をいたわったトール。
お願い、私を一人にしないで。
キラもトールも死んだ。残ったものは、箱ひとつの遺品。
艦長室で、キラとトールの遺品が渡された。私にはトール。あの子にはキラ。
キラは逝ってしまった。私の手の届かないところへ。
キラが遠くなった原因。キラが進んだ先。それは、あの子。
あの子、フレイ・アルスター。
私、許せない。私、あの子許せない。
私、キラの想い出を、あの子になんか渡せない。
奪ってやる。キラのものは、すべて。あの子から取り戻す。
何であろうと…
私の心は、完全に悪魔に支配された。そして、この後、起きること。
それは、もう、ここには書けない。
(幕間)
ミリィの話は、実は、この結末があって書き始めました。
ミリィについて、期待されていた方、申し訳ありません。
感想で何度もトールのことを言われていましたが、私には、本編１６話「燃える砂塵」のミリィの台詞、
３６話「正義の名のもとに」で、キラに一番に駆け寄るミリィの演出が忘れられず、キラ一辺倒になりました。
その上で、トールのことでも、最後のキラのことでも、無意識に悲劇を呼び込む業をミリィに科せた演出としています。
でも、第一章の[キラが好き！]の一言で、私のミリィは、私の手をも離れて、独り歩きを始めてしまっています。
もし、続きが書けた場合は、本編と別の道を歩むと思います。
「オーブ・フレイの心」
「ミリアリア・あの子許せない」
これらのＳＳは、本編最終回直後から11月初めまでの二ヶ月で最後まで書き上げました。
長編ＳＳを、まとめるのは事実上初めてだったので、何度も推敲を重ね苦労しました。
それでも、投下中に、当初、合計７０章だったのが、サイズによる章分割や投下順序のバランスを取る関係で
増加し、最終的に８１章になりました。
内容も投下直前にかなり改変しています。特にミリィは、エロ部分を、かなりソフトタッチに変更しました。
何度も改変しての投下は辛かったのですが、感想を聞いて変えた結果、質が向上した部分も多々あり、
やはり、このライブ感覚は格別でした。
「オーブ・フレイの心」は、本編２８話「キラ」を中心とした補完ですが、
既に、お気づきの方もおられるように、私のＳＳ「クローン・フレイ」への伏線を、
かなり盛り込んでいます。また、ＳＳ最終章のフレイのマリュー、フラガへの言葉は、
別のＳＳ「コスプレ」に流用しています。公開は「コスプレ」が先でしたが、書いたのは
「オーブ・フレイの心」が先だったのです。
私なりの別世界の「ガンダムSEED」として統一感を取っていました。
フレイ板ＳＳスレで、よくあるフレイ様・特殊能力は、今回は次の三つを設定しています。
1. キラ直伝の高速キーボード打ち
2. キラとの心でのセックス
3. 嘘！ 嘘、嘘！ 攻撃
今回のはテーマが別にありますので、非現実にならない程度に押さえたつもりです。
3. は、私が書いていて気に入っただけですけどね…。そのため、ミリィは「嘘」という言葉を
使わないように「やだ」「そんなはずない」に言い換えたりしました。
フレイＳＳ４０章のフレイの伝えたかった言葉。これは、最初は
「馬鹿よね。そんなどうしようも無いこと一人で抱えこんで、コーディネータとは思えないわ」
というものだったのですが、これは、本編４２話のカガリの台詞
「コーディネータでも馬鹿は馬鹿だ」
に重なります。フレイがカガリの言葉を奪ってしまうことを、どうしても、やりたく無かったため、
試行錯誤して、自分で言葉を考えました。これは、私のコダワリでした。
ただ結局、ＳＳ４２章で、キラからフレイにトリィが渡される描写では、キラとアスランとのシーンに
重ねていますので、説得力が無いかもしれません。
二次創作に関するバランス感覚もあるのでしょうが難しいですね
最後に、長い間、私の作品を読んでいただいてありがとうございました。
こちらこそ、割り込んですいませんでした。
ミリィのラスト投下を朝と予告しておきながら、遅くなってしまったもので。
死んだママの歌を唄うフレイ様、しんみりしました。
でも、その後、いろんなことをアスランに、ばらしてしまうのはフレイ様らしいのかな。
肝心のキラには、うまく伝わっていないところもね。
しかし、カガリの立場って…
ああ,昼飯の時間だ,キラはそう思って,食堂に
行こうとした,教室を戸を開けてフレイがやってくる
「キラ,一緒に弁当,食べよ」
すると,後から隣のクラスのカガリがやってきて
「キラ,一緒に飯食うぞ」
「あっあっあ」
フレイがカガリに言った
「ちょっとアンタ！私のキラになんのようなのよ！」
「私は,キラと一緒に飯を食べようと来たんだ」
「私が先なのよ！」
「なんだと」
「まぁまぁ,二人ともなんなら三人で食わないか？」
フレイとカガリはそんなキラにＯＫした。
「キラ,どう〜？」
「キラ,私の弁当はどうだ？」
キラは緊張していたフレイとカガリにいたばさみされて
まるでお昼は冷戦のようだった。
放課後
「ははは,それは災難だったな,キラ」
サイは言う
「災難どころじゃないよ,下手すれば第3次世界大戦が
始まるところだったんだ」
「欲張りすぎだからよ,キラ」
「ミリィ,そんなこと言わないでよ,でもさフレイの弁当うまかったよ」
「えっ？」
「ハンガーグがとてもよかった」
「キラ,ありがとう♪」
校門のところに来ると刑事のクワン・リーとガルシアが立っていた。
「おい君たち,アマチュアの「木馬」のメンバーじゃないか？」
「そうですが」
サイの台詞を聞いたガルシアはこう切り出した
「昨日の暴力事件,だれが参加していた？」
「なんのことですか」
サイは疑問形で喋った。ガルシアはニヤリと笑った。
「ふん,ごまかすつもりか？,普通なら女がらみのトラブルで
起こすもんだがなぁ」
と、ミリィの腕をつかむ。クワン・リーはニヤニヤ笑う
「やめて下さいよ！ 何するんですか」
抗議したサイは殴り倒される。
「もうやめて下さい！僕がやったんです！」
我慢できなくなったキラは名乗り出た。
「ふん,だったら署まで来てもらおうか」
フレイは愕然と黙っていた。
カガリはその後ろで一部始終を見ていた。
カガリは,校門を出て帰る途中,背後から83年型BMW320iが
ちかずいてきた。カガリの隣に来てウィンドーをあけた
「よぉ,カガリ」
ジェリドだった。カガリはこう答えた
「なんのようだ？」
「俺と付き合わないか？」
「ことわる」
「ちっお前,キラのやつに片思いだろ」
「なんだと！」
カガリははっとした
「お前,キラに暴力事件の濡れ衣を着せたな！」
「おいおい暴力を最初に振るったのは,キラのほうだぜ」
「とにかく,おまえとは付き合いたくない,このクロノスおたくが！」
「ちっまた来るぞ,(マシンロボ)レスキューおたく」
ジェリドは車を発進した
自分の愛車の78年型ポルシェ928に乗り込んだ
エンジンをかけた後,セシリーがドアを開けて
はいりこんだ。セシリーは言った
「一緒に帰っていい？」
アスランはコクンとうなずいた,車をスタートさせた
「なんで君は俺の車に乗って帰るつもりなんだ？」
「あなたを信頼してるからよ」
「男,外見で選ぶな。中身は野獣だってこともあるんだ」
「わかっている,でもあなたは違う」
「なんで？なんでそういいきれる！俺の中を知らないくせに！」
「私はあなたのすべてを知らない・・・でも好きなの」
「それが一緒に帰りたい理由か？俺には・・・オット！言えねぇ」
車はセシリーの家に着いた
「じゃあねアスラン」
セシリーは言った。アスランは車をスタートさせた。
「ひさしぶりだなトマーシュ」
「マットもだよ」
「俺を覚えているか？」
「何とかタン」
「ガリー・タンだよ！」
「ハハ,久しぶりにみんなで酒を飲むなんて久しぶりだぜ」
「そういえば何年たっているんだっけ？」
トマーシュは答えた
「1年3ヶ月」
「早いもんだな」
とマットは言う
「外人部隊が懐かしいぜ」
「ほんとか？ガリー,お前,あの地獄の日々に帰りたいのか？えっ！」
みんなは笑った,トマーシュは笑えなかった。トマーシュは思い出した。
トマーシュは外人部隊にオデロとつるんでいた。しかも好きだった
女も一緒だった。オデロはエリシャのことが好きだったし,エリシャも
オデロが好きだった。それをトマーシュは面白くなかった。
トマーシュはあるへまをした,避難民のシャトルを軍のシャトルと間違え
破壊してしまった。その日,オデロに攻め立てられた
「トマーシュ！,お前なんてことをするんだ！」
次の日,トマーシュはボーナスが２０％上がったのだ。上司に呼ばれたのは
トマーシュはばれたことだと思っていた。うきうきで戦場に出た。
しかし,帰ってみるとオデロは戦死したということがわかった。
無論,エリシャに泣きながら攻め立てられた。
「あなたちゃんとしていれば,オデロは！」
「そんなことは仕方なかったんだ！」
「トマーシュ,あなたが死ねばよかったのよ！」
それがトマーシュの心に残っていた,今となっては外人部隊の苦い思い出だ。
トマーシュは食欲がなくなってしまっていた。
「撃つの、私を？」
「･･････････撃ちたいな」
「そう、キラになら殺されても良いと思った事もあったけど、変わりにあなたが殺すの？」
フレイに銃を向けながら、アスランは混乱していた。何故だ、どうしてこいつはこんなに落ちついている。銃を向けてるんだぞ。俺が引き金を引くだけでこいつは死ぬというのに、なんでこいつは恐れない。それに、キラになら殺されても良いと思ってただと･･･。
「お前、キラをどう思ってるんだ？」
「･･････悪い事をしたわ。あんなに弱くて、泣き虫で、繊細で優しい子を利用して傷付けたんだもの。地獄に落ちるのは確実よね」
「･････････････････････」
アスランは銃を降ろした。そして悔しそうに拳を握り締めて壁に叩き付ける。
「くそっ！」
いきなり悔しがるアスランを、フレイは不思議そうに見た。この人はなにをこんなに悔しがっているのだろう。私が憎いならさっさと殺せばいのに。だが、アスランは銃をしまってしまうと、両手で頭を抱えてしまった。
「なんでだ、なんでお前みたいな女がキラをそこまで理解してるんだ」
「･･････何よ、それ？」
「そうだろう。キラを利用して俺と殺し合わせるような最低の女なんだぞ。なんでそこまでキラの事が分かるんだよ！？」
「さっきも言ったでしょう。私はキラを利用する為に彼と一緒にいたのよ。そのせいで彼の良い所も悪い所も全部見れたわ」
「それで、今も利用してる訳か」
「･･･････言ったでしょう、昔は付合ってたって。もう別れたわ」
辛そうにするフレイに、アスランはどうしたものかと天井を仰ぎ見た。そして右手で髪を掻きまわす。気持ちの整理がつかない。何なんだこいつは。キラを利用した嫌な女かと思えば、キラの事をきちんと理解してるし、あいつの話をすると辛そうにする。しかも利用していた事に相当の罪悪感を感じているようだ。これじゃあまるで････････
「お前、ひょっとしてキラの事が好きなのか？」
「･･･････ええ、好きよ」
「じゃあ、なんで別れたんだ？」
「好きになっちゃったからよ。好きな人を利用して、道具として戦わせてたなんて、あなたなら耐えられる？」
「それは････････」
アスランはなにも答えられず、黙りこんでしまった。対するフレイもどうしてこんな、トールにも語っていない本心をあっさりと口にしてしまったのかと驚いている。なんでこんな奴に･･･････
暫く沈黙していた２人は、ほとんど同時に頭を下げた。
「すまない」
「ごめんなさい」
同時に頭を下げて、同時に謝って、同時に顔を上げて戸惑った表情を向け合った。
「なんでお前が謝るんだ？」
「あなたこそ、なんでよ？」
「それは、その、お前の古傷を抉るような事を聞いてしまったからな」
「私も、あなたの親友を利用して戦わせたわ」
「「･･･････････････････」」
何なのだろうか、奇妙な沈黙が場を支配している。そして、何だかおかしさが込み上げてきた２人はその場で笑い出してしまった。なんだか全てが馬鹿馬鹿しく思えてきたのだ。自分たちは何をやってるのだろうか。
「はははははははっ、何と言うか、馬鹿だな、俺達」
「ふふふふふふ、そうね。確かに馬鹿だわ」
２人はお互いの馬鹿さ加減を笑いあった。キラという接点を持ち、キラを理解する２人だから、自然と話題もキラ関係となっていく。昔のキラをアスランが語り、今のキラをフレイが語る。それはお互いにとって知りたい事であり、知らなくてはいけない事だった。キラが自分と戦ってまで守りたいと思う人たち。キラが親友と呼ぶ男と過ごした過去。それはお互いの知らないキラを補完しあうものだった。
何が違うというのだ。遺伝子は違うかもしれない。コーディネイターは確かにナチュラルより多くの面で優れているかもしれない。だが、人間である事は確かなのだ。考え方に若干の違いはあるだろうが、それでも人間なのだ。
フレイはふと、アスランに前から感じていた事を聞いてみたくなった。
「ねえ、ちょっと聞きたいんだけど」
「なんだ？」
「もし、その人のためを思ってした事が、結果として相手を苦しめたとしたら、あなたはどうすれば良いと思う？」
フレイの問いは、なんとも難しいものだった。アスランはしばし真剣に考えこみ、そして自信無さげに答えた。
「俺個人の考えだが、自分が良かれと思ってした事でも、相手には迷惑だったというのはよくあることだ。相手が何を考えてるか、膝を詰めてきちんと話したほうが良いと思う」
「･･････自分だけの考えは、独り善がりなのかな？」
「だから、人間には言葉があるんだろう。言葉にしなければ伝わらないものもあるさ」
フレイは、アスランの話を聞きながら目尻に涙を浮かべていた。蒙を開かれたような心情になっていた。
夜を徹して語り合った２人。やがて夜も明けて来て、朝日が差し込んで来たのを見た２人は外に出た。朝の清廉な空気が心地よい。アスランはその空気を思いっきり吸いこんで、そしてゆっくりと吐き出した。
「不思議なものだな。同じ空気なのに、朝だとこんなにも爽やかに感じられる」
「そういうものよ。プラントでは違うの？」
「プラントでは大気は完全に制御されてるからな。こういう変化は起こらない」
「そっか、それじゃあ仕方ないのかな。プラントは住みやすいって言うけど、私はこういう変化がないのは寂しいと思うけどな」
フレイの言葉に、アスランは新鮮な驚きを感じた。こういう変化が無いと寂しい。今まで考えた事も無かったが、改めて考えるとそうかもしれない。宇宙に上がればあの夜空も、この新鮮な空気も、この澄んだ青い空も、あの昇る朝日も見れないのだ。
プラントは確かに理想的な居住環境を実現している。だが、それはこういう素晴らしい物を切り捨てた便利さなのだ。例えプラントよりも住み難かったとしても、ここにはプラントには無い素晴らしいものが確かにある。それをアスランは知る事が出来た。ナチュラルの主張する「自然である事の素晴らしさ」を、悔しいがアスランは身を持って理解してしまったのだ。
「地球か。人類の故郷、ここにしがみつくナチュラルの気持ちも、何となく分かるな」
「･･････へー、コーディネイターにしては殊勝な意見ね」
「悪かったな」
苦笑して皮肉を言うフレイを見返す。まったく、たった一晩を一緒にいただけで、なんでこうも打ち解けてしまっているのか。自分はナチュラルを見下していた筈なのに。
「そういえば、言ってなかったな。俺は、ナチュラルを見下してるんだ。俺達より遥かに劣った存在だってな」
「あら、私もコーディネイターは大嫌いよ。遺伝子を弄くった人間なんて気持ち悪いじゃない」
言いあってから、お互いにまた笑い出してしまった。そうなのだ。自分達はコーディネイターであり、ナチュラルなのだ。この現実は変わらない。そして敵同士でもある。ここで別れれば、また戦場で敵として戦う事になるのだから。
「隊長、どこですか隊長、返事をしてください」
それを聞いたアスランが驚いてイージスのコクピットに入り、通信機を操作する。
「その声、ジャックか？」
「あ、隊長、良かった、無事でしたか。すぐに救助に向いますから！」
どうやらこの電波を追ってくるつもりらしい。アスランはどうやら迎えが来そうだと安堵すると、下にいるフレイを見た。
「俺の方は仲間が来てくれるらしい」
「そう、良かったわね」
「･･････お前は、どうする？」
「どうするって？」
「このまま俺の捕虜になるなら、一緒に連れていってやってもいい。身の安全は俺が保証する。相手が誰であれ、絶対になにもさせない」
アスランの提案に、フレイは寂しげに首を横に振った。
「遠慮するわ。言ったでしょう。私はコーディネイターが大嫌いだって」
「･･････そう、だったな」
アスランも寂しげに笑う。暫し２人は見詰め合っていたが、アスランのほうから視線を外した。そしてコクピットの中から何かを取り出すと、それをフレイに放った。受け取ったフレイは不思議そうにそれを見ている。
「これは？」
「残りの携帯食と、信号弾の銃だ。仲間が来たらそれで教えるんだ」
「えっと、良いの？」
「もう俺には必要無い。お前が使え」
フレイは暫しそれを見た後、アスランを見上げて笑顔になった。
「ありがとう、使わせてもらうわ」
「ああ、頑張れよ。そろそろ俺の仲間が来るから、洞窟にでも隠れてろ」
「ええ、アスランも元気でね」
「フレイもな」
フレイは最後に手を振ると、洞窟の中へと消えていった。それを見送ったアスランは聞こえてくるグゥルのエンジン音を聞きながら、じっと考えていた。ナチュラルを敵として戦ってきたが、考えてみれば俺はナチュラルというものを全く知らなかった。単純に敵だから、核を使うようなとんでもない奴らだからという理由で戦ってきたが、それは正しかったのだろうか。
自分は逃げていたのかもしれない。コーディネイターと向きあう事を。目の前にある真実から目を逸らす事で、逃げていたのかもしれない。知ろうとしなければ、語り合わなければ何も分からないというのに。自分の中だけで結論付けて、分かった気になるのは間違いなのだ。
「･･････そうよね。私、何も受け入れようとしなかったのよね。キラはコーディネイター。でも、キラはキラよ。もうずっと前に分かってたはずなのに、私、馬鹿だから」
帰ったら、キラともう一度話し合おう。彼が何を望んでいるのか、私に何が出来るのか、それをきちんと話し合って、それで新たな関係を築けば良い。全ては話しあって決めれば良いのだ。何を迷っていたのだろう。なにを苦しんでいたのだろう。問題の解決の糸口とは、こうも簡単に目の前に転がっているのに。自分の中だけで勝手に決めて、また彼に迷惑をかけてしまった。
でも、前の関係には戻れない。少なくとも、今はまだ戻ってはいけない。私もキラも、まだお互いを支えていけるほど強くはないから。だから、私も言うべきことはきちんと言おう。私は馬鹿だけど、ただ嘘を塗り固めていっても、それは絶対に真実にはならないという事だけは分かったから。
自分の馬鹿さ加減に苦笑していると、どこからともなく聞きなれた轟音が聞こえてきた。それを聞いて外に出てみると、やはりスカイグラスパーが飛んでいる。フレイは持っている銃を空に向けると、引き金を引いた。赤い信号弾が空に向けて打ち出され、鮮やかな色を空に描いていく。それを確認したのか、スカイグラスパーが引き返してきて自分の上空を旋回している。それに手を振りながら、フレイは助かったという実感を持つ事が出来た。アークエンジェルは自分を見捨ててはいなかったのだ。
そして、空の彼方から見慣れた艦影が近付いてくる。その少し前を歩いているのはストライクだろうか。コクピットハッチが開いていて、キラが身を乗り出している。ヘルメットを脱ぎ捨てて大声で自分の名を呼んでいるのが聞こえる。
「フレイ――――っ！」
「キラ―――――っ！」
私はキラの元へと駆けて行った。何故だろう、今はとても素直にキラを見れる気がする。そうだ、あの必死に私の名を呼んでいるのが、宇宙の化け物でも、気持ちの悪い、非道なコーディネイターでもない、キラ・ヤマトという人間なのだ。
「俺のスカイグラスパーがああああ！」
「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ、ごめんなさいっ！」
キースは主翼が片方もげ、全身ボコボコで傷だらけになった自分の愛機に縋りついて泣き出さんばかりに悲鳴を上げていた。それをマードックたち整備兵が引き攣った顔で見ている。帰って来たフレイが最初にした事は、ひたすらキースと整備兵に頭を下げて謝る事であった。
マ、マジか━━━━━━━━!!!
今更ながら、めちゃくちゃイイ話だよ……感動しました。
大量投下乙です。
今後の展開が気になるｗ
これからもがんばってくださいな〜。
１つ次回予告風に書いてみますね
流離っていた少女は、決意を胸に戻ってきた。だが、擦れ違う想いは、届かぬ言葉は、誰もが望まなかった最悪の対決を呼んでしまう。
運命は、大天使に更なる試練を用意しているのだろうか･･････
てな感じです。これで未来を読む人はいるかなｗ？
>>「オーブ・フレイの心」
「ミリアリア・あの子許せない」
ご苦労様でした。でも、ミリィが何をしたのかが気になります。出来ればもう少し続きを書いて欲しかったですね
>>リヴァオタと八アスのためでなく
なんというか、ジェリドってただの嫌な奴ですか？ なんか哀れです。キラは修羅場だったけどＷ
やべえよ本編より気になるしおもしろいｗ
乙！
そんな予告されたら期待感煽られまくりなんすけどｗ
続きお持ちしております！
『やあ、また会えたね。』
突然闇の中から声が聞こえる。それはキラ自身が誰よりもよく知っているはずの声、すなわち自分の声である。やがてその声の聞こえた先から人影が近づいて来る。徐々に姿を見せるその人物は、声どころかキラと全く同じ姿、同じ形をしていた。
｢・・・もう二度と現れるなって言ったはずだ！それに、どうしていつも僕の姿をしているんだ！？｣
『ねえ、どうしてあの時本気を出さなかったのさ？』
明らかに苛立ちを見せるキラの言葉を無視するかのように、もう一人のキラは語り出した。
『あの時、君があの力を使っていれば僕らは彼に勝てた。そうすれば、昔僕らが受けた借りを返せたのに・・・。』
あの時とは恐らく、その日あったアスランとの戦いを指しているのだろう。その一言に、キラが声を荒立てる。
｢アスランは僕達を助けに来てくれたんだぞ！お前は、そんな彼を僕に殺せって言うのか！？｣
『分かったよ。そんなに怒らないで・・・。』
キラの怒りを鼻で笑うような態度で、もう一人のキラは口を閉じた。もう一人の自分、自分の影。それは毎夜の如くキラの夢に現れ、彼を悩ませ続けていた。キラはずっと疑問に思い続けていたことを、自身の影にぶつけた。
｢・・・お前はどうして僕に拘るんだ？僕に何をさせたいんだ！？｣
影は、キラの疑問に淡々と答えた。
『だって、君は僕の大切な人だからね。君は生まれたばかりの僕に戦いを教えてくれた。あの時の喜びは、今でも覚えてる・・・。』
｢・・・。｣
『僕は一度死んで、ここで生まれ変わった。そして君にもう一度会いたいって願ったんだ。そうしたら、また君に会えた。唯それだけだよ。』
キラの影はどこか楽しげな口調で語った。まるで長く連れ添った友人と話をしているかのように。
『僕は思うんだ。ここでこうして会えたのは、僕らが運命の赤い糸・・・、いや、鎖で繋がれているからじゃないかな？』
｢ふざけるな！！誰がお前なんかと！！｣
『そんなに嫌わないでよ。僕達はベストパートナーじゃないか。どうしてそんなに僕を嫌うのさ？』
先ほどからキラの放つ言葉にコロコロと態度を変えながら、影は寂しそうにキラに尋ねた。
｢・・・お前はムゥさんを連れていった。それに、今回は僕はおろか、フレイまで巻き込んでるじゃないか！｣
アークエンジェルにいた頃、右も左も分からなかった自分を最後まで導いてくれたムゥ・ラ・フラガは、最後の戦いの時アークエンジェルを守るために自らを犠牲にして散っていった。その時の愛する人を失ったマリューが流した悲しみの涙を、キラは決して忘れることができなかった。
『・・・ああ、あの時のこと？あの時はむしろ、被害者は僕の方だよ。全くいい迷惑さ。それに・・・。』
どこか悪意に満ちた目で怒りを露にするキラを一瞥した後、影は言葉を続けた。
『・・・彼女のことに関しては僕にも分からないだよ。』
｢何だとッ！！｣
『ねえ、君はそんなに彼女のことが大事なの？』
｢当たり前だ！僕は彼女のことを・・・。｣
愛している、そう口にしようとした。しかしそれは、キラの影の予想外の一言によって遮られた。
『・・・愛してるって、本当に言えるのかい？』
｢なッ！？｣
最初は気にもしていなかった。
男の子みたいな服を着て、戦闘に加わってみたり、私の常識では、ありえないことばかりしている娘だった。
でも、何時の間にかキラと仲良く話すことが多くなって。
海に出たばかりの頃、看板でキラと楽しそうに話しているのが見えた。
キラ、最近は沈んだ顔ばかりだったのに。なんであんな娘の前では楽しそうにしゃべってるの？
あせりを感じた私は、キラを挑発してみることにした。
男の子なんて皆、簡単なんだから。
いつもよりちょっと肌を見せてくっつけば絶対反応するはず。
私は上着を脱ぎ、お腹が見えるようにタンクトップの裾をしぼった。
「キラぁ、こんなとこにいたの？」
会話が途切れて二人とも私の方を見る。
「ふう、あつーい。」
言って胸元をあおるとキラの視線はくぎ付けになった。
「探しちゃったわよ、甲板に出るなら誘ってくれればいいのにぃ」
二人の間に割り込むようにキラの腕にしがみついた。キラ、真っ赤になってる。
「気持ち良いわねえ、でも、長くいたら日焼けしちゃう。少ししたらお部屋に帰りましょう？」
牽制のために一緒の部屋にいることを匂わす。
そうよ、キラは私のものなんだから。あなたなんかには渡さない。
「じゃあな、お邪魔みたいだから」
そう言って、彼女は去っていった。
そんな彼女が、お姫様・・・・
私は、まだ信じられない思いで一杯だった。
確かに、ドレス姿は様になっているし、手をとられてしずしず歩く姿も品があると言えなくも無い。
でも、私だって、本当なら、ああやって綺麗な服を着て、パパと一緒に・・・・
「ふん・・・・何よ、あんなの・・・・！」
キラが私のほうを向いたのがわかったけど、かまっていられなかった。
目に浮かぶ涙を抑えるのだけで精一杯だった。
描写薄いですね。（笑）いやちょっと、書いてたらキラが鬼畜かエロ親父みたいになりそうだったんで自粛したんです。（笑）
でもこれからちょっとエッチシーンは少なくなるかもですー・・好きな人はごめんなさい。リクエストがあれば増やしますがｗ
>>流離う
なんか、だんだん面白くなってきましたねー。
ごめんなさいを繰り返すフレイ様が可愛い！
>>chain
マリューのあたりとか描写せつないですね。
キラは影には強く出れなさそう・・・心配です。
>>フレイの心・ミリアリア
なんかある意味本編よりもせつない展開に・・・・・
ミリィのこれからの行動も気になります。そちらはいずれ続きを書いていただけたらいいなー、とほのかに期待しております。ｗ
キラは困惑した。目の前にいるもう一人の自分が、自分が持つフレイへの想いを否定している。こんな馬鹿げたことがあるだろうか。そんなキラを嘲笑うかのように、影はなおも話し続ける。
『でも、僕は彼女に感謝しているよ。彼女は君が僕に乗り続ける理由を作ってくれた。全て彼女のおかげさ。』
そして次に影が放った一言に、キラの怒りは頂点に達した。
『ひょっとしたら、彼女が僕らを繋ぐ鎖そのものなのかも知れないね。』
｢ッ、ふざけるなぁあああ！！｣
キラの握り締めた拳が影の顔面に向かって行く。しかし、拳の命中する直前に影は姿を消し、キラの後方に現れた。
『もしかすると、彼女は今でも君を利用しているだけかも知れないよ。所詮彼女はナチュラルで、君はコーディネーター。どうやったって分かり合えるはず無いじゃないか。』
｢そッ、そんなこと！！｣
違う。フレイは自分がコーディネーターであることを分かっていながらも、愛していると言ってくれた。もうあの頃の、コーディネーターの滅亡という狂気の夢を追い求めていた頃の彼女ではない。キラはそう信じていた。
『ラウ・ル・クルーゼだって言ってたじゃないか。だから人は憎み合うのを止めない。だから僕は蘇ったのさ。そして・・・』
｢もうッ・・・、やめろッ！｣
キラのすぐ近くに近づいて来た影が、耳元で呟く。
『・・・君は心のどこかで彼女を憎んでいる。彼女を自分と同じ様に苦しめてやりたいと思っている。それから・・・。｣
｢それ以上言うな！！｣
キラが頭を抱えるように耳を塞ぐ。しかし、影の声はなおも彼の耳に届いた。
『・・・殺してやりたいって・・・。』
｢やめろぉおおおおおおおおおおおおおお！！！｣
叫びと共にキラは目を覚ました。彼は体中から汗を噴出し、その汗が彼の衣類はおろかベッドのシーツをも濡らしていた。
｢・・・クソッ！！｣
憤りから拳を壁にぶつける。そこから生じる痛みが、自分が今現実にいることを実感させる。しかしキラの中では、夢の中でもう一人の自分が言っていた台詞が反芻していた。
（アイツは、一体何を言おうとしたんだ？僕がフレイを・・・？そんなこと・・・。）
｢・・・ある訳が、ないじゃないか・・・。｣
そう言えなかった悔しさから、キラはうわ言のように呟いた。
｢82年型シボレーカマロ」と｢78年型ポルシェ928」
｢83年型BMW320i」←妙に凝ったディテールが好きです。
セシリーはなぜその男の本性がわからないんだw。
>>流離
アスラン編お疲れ様でした。アスランのナチュラルに対
する意識変化が面白いですね。コーディネーターの側か
らナチュラルを羨望する描写が新鮮ですね。すごいです。
>>chain
残酷キラを脳内に生んでますね。生き残った時に出てきち
ゃったのかな。これから苦しんでいきそうですね。オルドア
もイヤな奴でしたが、このキラは輪をかけてイヤな奴ですね。
>>散った花、実る果実
キラのあのぬぼーっとした顔で｢鬼畜」とか｢エロ親父」のよ
うに振舞うのを想像すると笑えます。フレイ様も没落フレイ
様って感じですね。ここらへんは痛々しかったシーンが多かったですね。
>>オーブ・フレイの心／ミリアリア・あの子許せない
お疲れ様でした。本編にしてみればわずか3話の話をここまで
膨らませてホント面白かったです。ミリアリアは私はまた投下
して欲しいですが、ディアッカとか出てきて大変だろうなあ、
とも思います。まあ、どんな内容であれ次回作の投下楽しみにしてます。
｢アスランさん。｣
｢ん？何だクリス？｣
不意にクリスが話しかけてきたことを、アスランは不思議に思いつつ彼に返答した。
｢・・・キラって人は、アスランさんの友達なんですよね？｣
｢・・・ああ。｣
｢必ず助けてあげて下さい。きっと、キラさんもそれを待ってます。・・・俺とユフィーを助けてくれたアスランさんなら、絶対にできますから。｣
そう、彼クリストフ・ヒースローは彼と妹のユフィーが暮らしていたコロニー・シャンバラがザフト強硬派のテロの被害に遭った際、その一部始終と彼らの運び込んでいた新型｢G｣、アサルトを目撃してしまったことで命を狙われることになった。その時彼ら兄妹を救ったのが、シャンバラに調査に訪れていたアスランであった。そして彼に導かれセラフィムに乗りこんだクリスは、平和のために自ら戦いの道に進むことを選び、強硬派から強奪したアサルトのパイロットとなった。以来彼はアスランの教え、イザークの特訓を受け、次第にモビルスーツパイロットとしての頭角を現しつつあった。
｢他の敵は、俺達に任せて下さい。アスランさんは、その内にキラさんを・・・。｣
｢ああ、分かった。・・・君達も気を付けろ。｣
｢フンッ！こないだ一発で伸びた腰抜けが、随分デカイ口を叩くじゃないか！｣
二人の会話に、イザークが割って入ってきた。この作戦中、ザラ隊のメンバーは一時的にイザークの指揮下に入っている。
｢ヒドイですよイザークさん！今日は大丈夫ですって！！｣
｢よし、言ったな。・・・もし今回も前みたいなことになったら、イザーク・ジュール主催、『地獄巡りスペシャルツアー』へご招待だ！｣
｢！！・・・アッ、アレデスカ？マジデスカ！？｣
イザークの言葉に、クリスの顔が急に青ざめていく。果たして彼は、かつてこの鬼コーチに一体どのような地獄に案内されたというのだろうか？
｢隊長！クリス君をあんまり虐めないであげて下さい！｣
通信機からシーナの声が聞こえる。今回の作戦で出撃が不可能な彼女は、かつてオペレーターの経験があったことからセラフィムよりモビルスーツ隊のサポートを命じられていた。
｢クリス君。なんだかんだ言ってるけど、隊長は貴方のことを心配してるのよ。・・・多分ね。｣
｢・・・シーナさん、・・・もう少し自信持って言って下さい。｣
｢シーナ！余計なことを言うな！！｣
そんな三人のやり取りを聞いていたアスランは、どこか肩の力が抜けリラックスできた気がした。その上で、自分を信じてくれている仲間達の期待に応えなければならないと再び心に誓った。
｢！敵モビルスーツ反応感知！距離四万八千！数８！内一機はあのストライクです！｣
｢来たか！！よしッ、作戦通り俺達が雑魚を引き付ける。・・・必ず成功させろよ、アスランッ！！｣
｢アスランさん！頼みます！｣
そう言うとイザーク達は進路を変え、敵の迎撃に向かった。そしてアスランはキラの乗るネオストライクを見つけ、彼を説得すべく近づいていった。キラもそれに気付いたが、今の彼にアスランの相手をしている暇はなかった。
｢あの金色のモビルスーツはアスランの・・・。デュエルとあの『ガンダム』は一緒じゃないのか？｣
（キラは俺が止める。だから、そちらは任せたぞ、アネット！）
今ここに、恐らく地球圏最強のモビルスーツパイロットであろう二人の戦いの火蓋が切って落とされた。
｢クッ、たった一体の敵に、何を手間取っている！｣
もう一人はそんな彼の様子を窺っていた。彼女の名は、アネット・チェンバレン。EYES情報部所属のエージェントである。彼女は元はザフトに所属しており、アスランとは彼が特務隊に入隊した頃から面識があった。その後エターナルに乗艦し、情報面で彼らをサポートしていた。数ヶ月前からこの基地に潜入して調査を続けていた彼女の目的は、自分と同じくこの基地に潜入している仲間がフレイを救出しその身の安全を確保した後、司令室を制圧することにあった。しかし・・・。
（・・・遅いわね。何かあったのかしら？）
予定の時間はもうとっくに過ぎている。彼女は何か悪い予感を覚えた。こういう時に限り、彼女の予感は的中するのである。そんな時、彼女が耳に着けていた超小型通信機から仲間の声が聞こえた。
｢すまん中尉、厄介なことになった！フレイ・アルスターはもうここにはいない！｣
（どういう事！？まさか・・・。）
すると突然後方のドアが開いた。その瞬間、アネットは自分の悪い予感がここでも的中したことを悟った。
キラとアスラン、二人の戦いはなおも続いていた。キラはアスランのイクスに遠巻きにビームライフルで狙撃し必死に引き離そうとするが、アスランは既にキラの狙いがセラフィムであることに気付き、キラの行く手を阻んだ。
『ほらッ、早くあの力を使いなよ！彼に借りを返そうよ！』
（煩い！黙れ！）
キラの影は、遂に現実のキラをも蝕み始めていた。それが幻聴であることはキラにも分かっている。それでももう一人の自分の声は、執拗に彼にアスランを殺すよう語り掛けてくる。
｢キラッ、もうよせ！！｣
｢・・・アスラン。｣
アスランは、戦闘中ずっとキラに呼びかけていた。その声が、次第にキラに迷いを生じさせていた。
（・・・駄目だ！僕にはもう、アスランを撃つことなんて・・・。）
｢キラッ！！｣
（！・・・嘘だろ！？何で君がそこにいるんだ！？）
その声は司令室からの通信であった。そしてそこにいるはずの無い人物の声を聞いたキラは、モニターに映るその声の主の顔を見て我が目を疑った。
｢キラァ！！｣
｢・・・フレイ。何で・・・？｣
彼女の声がもう一度聞こえた。聞き間違えるはずも無かった。そこに映っていたのは紛れも無くフレイの姿だった。彼女の横には、オルドワの姿もあった。焦りと怒りから、キラの声が荒立つ。
｢どういうつもりだオルドワ中佐！彼女には手を出さない約束だろう！？｣
キラの言葉をよそにオルドワは明らかに悪意のある目つきで笑い、キラの問いに答えた。
｢なに。君が苦戦している様子だったから、彼女に応援してもらおうと思って来て頂いただけさ。｣
｢・・・アンタって人はぁッ！！｣
｢さあ、もう勇気も湧いただろう。早く君の目的を果たしたまえ。｣
キラにもう迷っている時間は無かった。一刻も早く目の前の敵、アスランを振り切り、敵の母艦を撃墜しなければならない。そうしなければ、フレイの命が危ない。
｢・・・やるしか、・・・無いのかッ！！｣
キラは悲痛な覚悟を胸に、アスランの乗るイクスへと突撃を仕掛けた。
第二章・END
第二章に登場したキラの影（裏キラとでも呼んでやって下さい）の正体はもうお気づきの方もいらっしゃると思いますが、いずれSS内で明かします。しかしキラと全く同じ姿形であのキャラはちょっと軽すぎでは、と自分でも思いますｗ。
あとあまりに二人が可哀想というご意見をいただきましたので、その救済ということでギャグ物を投下したいと思います。内容はchainのパロディです。流離う翼たち・作者様、便乗させていただくみたいで申し訳ありません。
》流離
二人の会話、すごくよかったです。フレイ様もこれでキラと仲直りできればよいのですが。新展開の方も期待させていただきます。
》フレイの心/ミリアリア
長い間お疲れ様でした。今までの展開からもしやと思っていたのですがやはりクローン・フレイとリンクしていたんですね。せっかく二人が分かり合えたのにラストが悲しかったんですが、そう思うと二人の未来に希望が持てます。でも、ミリアリアの方が・・・。
ところで随分遅い質問なんですがクローン・フレイのラストで二人を助けたジャンク屋というのはやはり外伝で活躍中の『彼ら』なんでしょうか？それで自分の中では彼らとキラが一緒に仕事してる姿が思い浮かんでいます。もしよろしければお教え下さい。
》リヴァオタ
フレイ様、何気にキラのこと狙ってますねｗ。でも警察沙汰になるなんて・・・。ジェリド許すまじ。
》散った花、実る果実
カガリのドレス姿、よっぽど衝撃的だったんでしょうね。でもそれからパパとの思い出を思い出す姿に泣けました。
投下、乙です。感想ありがとうございました。
この辺から、私がやっていたところに重なって行きますね。
どのようなフレイ様の心の言葉を聞かせてもらえるか期待しています。
個人的には、以前のような濃密で、かつ奇麗なエッチ描写は大歓迎です。
でも、これからは本編の展開の関係で、少なくなるかもしれませんね。
私のＳＳでも、フレイ様は、冒頭一回だけ。後のクライマックスで伏線無しのままだった、
項目がひとつあったので、もう一回くらい入れておけば良かったと反省しています。
>>chain
心の中のキラ同士の会話が良かったです。EYES 側も、いろいろがんばっているのに、
相手が上手で、幸せになる日は、まだ遠そうですね。これからのストーリー楽しみにさせてもらいます。
後、私の場合、オリキャラの人名考えるの下手なのですが、どんどん、印象的な名前が出てきて感心します。
>クローン・フレイのラストで二人を助けたジャンク屋というのはやはり外伝で活躍中の『彼ら』なんでしょうか？
書いた時は、そういうイメージでした。
ただ、その後の二人との関りについては、むしろ、それを通じて知り合ったサーペントテールを、
今はイメージしています。多分、「コスプレ」の幸せそうなフレイ様には、ロレッタ・アジャーの助けも、
かなり入っているのではないか、というか、だったらいいなと思っています。
｢ちょっとぉ、化粧水切れてるじゃない！何してたのよ！！｣
｢今日のお昼、このレストランのフルコースが食べたいからシェフ呼んどいて！｣
ああ、朝っぱらから騒々しい。おかげで我が基地は大忙しだ。その原因は我々が連れてきたあの娘、フレイ・アルスター。彼女の我侭のせいで今この基地の財政は火の車だ。私を含む兵士達はここのところパンの耳で生活していると言うのに・・・。ウッ、そう思うとまた胃が・・・。
｢駄目だよフレイ！皆さんに迷惑かけちゃ！｣
｢えー、だってここの人達みんな駄目駄目なんだもん！それよりキラ、スキーしに行きましょ。｣
あの青年は彼女の恋人、キラ・ヤマト。一見大人しそうだが、以前あの娘の我侭に痺れを切らし怒鳴りつけて泣かせたうちの兵士二人が駆け付けた彼によって半殺しにされそれを止めようとした十七人が重軽傷を負った。それ以来誰もあの二人に逆らえないでいる。ん、こっちに来た。何かしたか私？
｢すみません。僕達ご迷惑をお掛けしてるみたいで・・・。｣
いや、君が気にすることは無い（本当はもっとして欲しいが）。むしろ我々が君達をここに連れて来たのだからそれぐらい当然だよ。
｢・・・あの、そのことなんですが・・・。僕は皆さんに何か頼まれ事をされていた気がするんです。｣
ムッ、君もかね。実は私もなのだよ。確か君に協力してもらいたいことがあったような・・・、どうしても思い出せないんだがね。それよりも、彼女があれでは君は将来苦労するかもしれんぞ。私も昔そういう事で苦労したことがあってね。・・・いやいや本当だよ、その目は何だね？・・・もう少し彼女に控えめになるよう君から言ってやったらどうかね？
｢・・・彼女、ご両親を早くに亡くして・・・、今そばにいてあげられるのは僕だけなんです。｣
・・・すまない、彼女に酷い事にも言ってしまったな。忘れてくれたまえ。私にも君らと同じ年頃の娘がいるが、一人にしてしまうと思うと辛くなるよ。ああアンナ、元気にしているだろうか・・・？あッ、アンナというのは娘の名前でね、これがまた美人でね、写真も持っているが見るかね？嫁にやるなら君のような若者にあげたいよ。・・・何顔を赤くしてるのかね、冗談だよ。もしそんなこと本当に言ったら君の彼女に殺されてしまうよ。
｢キラァ、早くぅ。｣
ホラ、君の彼女が呼んでいるぞ。早く行っていきたまえ。あとのことは我々がやっておくから。・・・フゥ、行ったか。しかし彼の言葉、どうも気になる。それに我々は何か重大な使命を持っていたような・・・。ンッ？どうした、何があった？・・・何ッ、EYESの戦艦が接近中だと！？・・・そうか思い出したぞ、我々の使命を。今までどうして忘れていたのだ。まさかあの娘の力か！？恐るべし！！
とにかく今こそ我らの使命を果たす時だ！早くあの二人を呼び戻せ！よしいくぞみんな、せーの！
『青き清浄なる世界の為にッ！！』
続く
質問にお答えしていただき真に有難うございました。そうですか、まさかサーペントテイルとも知り合っていたとは。なんだか意外です。まあロレッタだったら人の世話するの好きそうですし、適任ですね。
しかし、フレイ・アルスター・・・。どうして彼女まで攫われたんだ？その理由だけが全く分からない。そういえば彼女、明らかに俺のこと避けてたな。俺と目が合っただけでキラの後ろに隠れてたし。それならまだしも俺とキラが仲良く話していると｢キラァ。｣なんて猫撫で声出してキラを連れてったしな。そんなに俺のこと嫌いか！？全くどうしてキラは彼女を好きになったんだろう？あれならカガリの方がまだ・・・。
そういえば最近カガリと会ってないな。・・・この前の誕生日さえ一緒にいてやれなかった。ああ、許せカガリ。・・・ンッ、待てよ？確かその日は仕事でラクスの護衛をしてて彼女に食事に誘われて一緒に・・・。
マズイ。あいつただでさえ俺とラクスの仲を未だに疑ってるからな。ただの仕事仲間だって何回説明したことか・・・。それにラクスも何でそんなことを・・・？ハッ、まさか未だに俺に気があるとか！？・・・いかんいかん、ちょっと嬉しくなってしまった。・・・とにかくこのことはあいつに黙っておこう。
｢・・・さん！アスランさん！！｣
・・・クリス、人の部屋に入るときはインターフォンでまず呼んでくれって何度も言ってるじゃないか。
｢・・・すいません。何度も呼んだんですけど。それにドアのロックも開いてたんで・・・。｣
・・・で、いつからそこに？
｢・・・『そんなに俺のこと嫌いか！？』の辺りから・・・。」
・・・できれば俺の言ってたことは黙っていてくれないか？特にカガリには。・・・今度好きな物何でも奢るから。
｢・・・ユフィーの分もいいですか？｣
・・・君もなかなか残酷な奴だな。で、俺に何か用があるんじゃないのか？
｢あッ、そうでした。もうすぐ敵の基地だからパイロットは各自機体に搭乗して待機だそうです。｣
何ッ、本当か！？よしいくぞクリス！待ってろよキラ、ついでにフレイ・アルスター。
続く
｢マズイですよ！まだ出撃命令も出てないのに・・・！｣
それがどうした！？今の俺には関係無い。とにかくキラ達を助けるのが先決だ。・・・あれがリディエラ基地、キラ達が捕まっている場所か。ンッ、何だあれ？・・・白旗？あんなでっかい布どうやって用意したんだ？いや、今気にすべきはそこじゃない。もう降服すると言うのか？そうか、俺に恐れをなしたか、賢明な判断だ。だが例え今からどうしようがお前らの運命は既に決まっているけどな。おやっ、通信？あの基地からか？
｢・・・私はリディエラ基地の責任者、ハンス・オルドワだ！こちらで身柄を預かっていたキラ・ヤマト、フレイ・アルスターの両名を引き渡す。と言うか早く引き取ってくれお願いだから！うちの基地が食い潰される前に！！｣
・・・何言ってんだ、このオヤジは？お前らが二人を攫ったんだろう？まあ、どっちみち返してもらうからいいけどな。ンッ、罠かも知れないって？・・・例えそうだとしても、俺は行く！
どうやら連中は本当に二人を返すようだ。この中で二人はどんな辛い思いをしたのだろう？そう思うと今すぐこいつら全員殴ってやりたくなる。いやいや堪えろ、俺！！しかし何だろう、この地面に敷かれた絨毯は？それに沿うように兵士達が並んでいる。これは一体・・・？
『お気をつけてお帰りくださいませッ！！』
！？なっ、何だ？・・・あれはフレイ・アルスター！どうやら無事だったか。・・・しかし何だあの格好？高級そうな帽子、コートを身に纏い、肩には恐らくブランド物のバッグ、そして全身に飾られたアクセサリー・・・。彼女は本当に捕まっていたのか？そうだとしてもどこの世界の捕虜だ？
｢お迎えご苦労様。貴方のこと見直したわ！２ミリぐらい。あっ、これ持ってて。｣
えっ、お迎え？いっ、いや、君こそ無事で何よりだ。・・・ところでキラは？
｢もうすぐ来ると思うけど？じゃ私、先に行ってるから。｣
・・・。あっ、キラだ！アイツ、何持っているんだ？なんだか山のような荷物を・・・。って大丈夫かキラァ！？
｢ああアスラン、久しぶりだね。あっ、これお土産。皆さんと一緒に食べてよ。｣
ああ、有難う。・・・てそうじゃない！キラ、奴らに何もされなかったのか？｣
｢？う、うん。むしろとっても良くしてもらったよ。｣
｢・・・アスランさん。これもしかして・・・。｣
よせクリス、それ以上言うな！君の気持ちは痛いほどよく分かる。しかし俺には、友を疑うような真似はできない!・・・ところでキラ、怒らないから教えてくれ。・・・お前らここに旅行しに来てただけだろ？
｢・・・言っちゃってるじゃないですか。｣
another chain END
それと書き忘れていましたが、chain・第三章はプロローグからの続きになります。ではまた近日中に投下します。
さっそくキラは宇宙空間でテストをしてみた。
「サイ,なんとかこれは扱えるよ」
「そうか,でどうだ？」
「サイコフレームで調子いいよ」
「キラ,がんばってね」
ミリィが言った,そしてフレイは
「死なないでねキラ」
「あの・・・不吉なことを言わないでよフレイ・・・」
そのころ,宇宙空間のアステロイドに隠れて待機している
アームズインターナショナル製カリスト級戦艦にはジェリドと
カクリコンがいた,そこからＭＳ3機が発進する。
キラがレーダーで調べるとＭＳ3機を見つけた。
背後にいたゾロアットをビームライフルで撃破した。
ダギ・イルスのコクピットの中で専属パイロットのライラは
通信でジェリドにこうこたえた。
「ジェリドこいつは潰しがいがあるわ」
「ああ・・・ライラさん,徹底的に潰してくださいよ」
「そこか！」
キラのνガンダムはビームライフルで2機目のゾロアットを撃破した
ライラはキラのνガンダムに通信をした
「すこしはやるね！」
「なんだと！」
「これながらどうだい！」
ライラのダギ・イルスはビームライフルと拡散ビーム砲を乱射した。
キラはシールドを盾にして,逃げるしかなかった,しかし,通信でニナが
「キラ,フィンファンネルを使って！」
「しかし！」
「とにかく使って！」
キラはいわれるがまま,νガンダムのフィンファンネルを発射し
ライラのダギ・イルスにクリティカルポイントを当てた
「まさか・・・コーディネーターにやられるなんて・・・」
ライラは言った後,ダギ・イルスは大爆発をした
カリストにいるジェリドは
「なんてことだ,ライラさんがやられるなんて」
ジェリドは真っ青になった。
キラはカレッジに登校したとき,カガリがやってきた
「大丈夫か！キラ！」
「おいおい,カガリよせよ」
キラは言った
「じゃそういうことで」
とカガリはまた校舎に向かっていった。フレイはむっつりと
していた。
「どうしたんだフレイ？」
「なんでもないわよ！」
フレイは行った。昼食を食い終わった後,フェンスまで来た。
フェンスの向こうは小学校がある
キラはフェンスに向こうにアルフレッド・イズルハがいることに
気がついて,アルに声をかけた,そしたら来た。
「どうしたんだ？キラの兄ちゃん」
「アル,最近元気か？」
「元気だとも」
「それはよかった」
「それを聞きたかっただけか？」
「違うよ,お前に調査してほしいことがあるんだ」
「なんだよ」
「実は襲撃されたとき,モニターでカリストを見つけたんだ」
「それを探してほしいってこと？」
「ああ,頼むよ,「おねツイ」マニア」
「わかったよ,「おねティ」マニア」
これで商談は成立した
レインの入る医大に向かった。
トマーシュは医大の前にバイクを止めて,30分待った。
30分後,レインは出てきた,トマーシュは声をかけた
「やあレイン」
「あらトマーシュ」
「どうだい,今からジョイフルに行かないか？」
「だめなの・・・今日,用事があるから」
「なんでだよ」
「だから用事があるの」
駐車場に行き,レインは自分の車の80年型ルノー30に乗り込む
「なっレイン,明日はどうだい？」
「明日なら大丈夫よ」
車を発進させた,トマーシュはチェっと残念がっていた。
「やあ、心配かけてすまない」
「すまないじゃないだろ」
ミゲルが少し怒った顔で文句を言う。余程心配してくれてたのだろう。アスランは素直に頭を下げた。
「悪い、ミゲル」
「まったく、これからは迷子になんかなるなよ」
ミゲルはやれやれといった顔でアスランを窘めた。アスランがそれに答えようとしたが、それよりも早くエルフィがアスランに抱き着いてきた。そのままパイロットスーツにしがみつきながら泣き出している。
「馬鹿、隊長の馬鹿、みんな心配してたんですから―――っ！」
「わ、悪かった。だから泣き止んでくれ」
焦りまくるアスラン。それを見てミゲルとジャックとフィリスの目が光ったような気がした。ミゲルとジャックがわざとらしいくらいに大袈裟に肩を竦めて見せ、フィリスが腕を組む。
「ああ、やってられねえよな。こっちは必死に探しまわってたのに、隊長さんは女の子といちゃいちゃですか」
「ああ、なんだか気温が上がったような気がしますねえ」
「ミ、ミゲル。ジャック！？」
「これは問題ですね、次のラクスへの手紙に書いておかないと」
「フィ、フィリスまで！？」
胸で泣く女の子を懸命にあやしながら、アスランはとんでもない事を言い出した３人に悲鳴のような声を上げる。それを見てミゲルとフィリスは笑い出した。どうやら３人でアスランをからかっていたらしい。
ニコルが困った顔でようやく仲裁に入った。
「ほらほら３人とも、そんなにアスランを苛めちゃいけませんよ」
「ニコル、お前だけは俺の味方なんだな」
もう泣き出さんばかりに追い詰められていたアスランは、ニコルの助け舟に心底感謝した。だが、その船は泥舟であったことをすぐに悟る事になる。
「いえ、このまま放っておくと何時までもからかってそうでしたから。いいかげん周囲の視線が痛いんです」
「･･････それが理由か？」
「そうですよ」
他に何があるんですと言いたげなニコルの答えに、アスランは誰も自分の苦悩など理解してくれないのだと悟った。
悲しそうにしているアスランをくすくすと笑いながら、ニコルはもっと重要な話を切り出した。
「それではアスラン、あなたは休んでてください。僕達はこれから出撃ですから」
「出撃って？」
「足付きを発見しました。すでにイザーク達は出ています。僕達もすぐに出ますよ」
「それじゃあ俺も！」
「駄目ですよ、アスランのイージスはこれから点検がありますし、アスランも疲れてるでしょう。休んでてください」
すでにアスランのイージスは整備工場へと運ばれている。それを見たアスランは渋々ニコルの言葉に従った。
「分かったよ。だが、無理はしないでくれよ」
「大丈夫ですよ。今回はイザークからフィリスさんも借りてますから」
どうやら彼女が残ってるのはアスランの穴を埋める為の応援だったらしい。アスランはニコル達を見送ると、基地施設に入っていった。自分に出来る事はもう彼らの帰りを待つ事だけなのだから。
「キ、キースさん、元気だして下さいよ。スカイグラスパーはきっとマードックさん達が完璧に直してくれますって」
「あーあ、フレイが壊すから」
「トール、あなたまで余計な事を言わないでよ！」
トールの一言に焦りを見せるフレイ。トールは意地の悪い笑顔を浮かべており、明らかにフレイをからかっているのが見て取れる。
鬱陶しいくらいにどんよりしているキースはなかなか復活しない。キースがようやく復活してきたのは実に５分後の事であった。フレイとトールはグッタリと疲れた顔でキースの脇に腰掛けている。
「まあ、お前が無事で良かったよ。ザフトには捕まらなかったんだな」
「いえ、捕まりましたよ。解放されただけです」
「そりゃ運が良かったな。相手の気紛れに助けられた訳だ」
キースは良かった良かったと何度も頷いている。フレイはそんなキースを見ながら、アスランの事を話す事は止めようと思っていた。変わりに別の事を口にする。
「キースさん、私、もう一度キラと話してみます」
「いいの、フレイ？」
トールが少し心配そうに聞いてくる。キースもどういう心境の変化かと思いながらフレイを見ていた。
「私、やっぱりまだ間違ってたんです。私がキラと別れれば全てが解決すると思ってたけど、そうじゃなかったんです。キラが何を求めてて、私に何が出来るのか。それをきちんと話し合おうと思います」
フレイの出した答えに、トールとキースは顔を見合わせた。そしてその意味を理解すると、驚いた顔でフレイを見る。その顔には驚きよりもむしろ恐怖が滲み出ていた。
「そりゃ結構な事だが、何があったんだ？」
「フレイが、そんなにまっとうな事を言うなんて」
なんだか失礼な驚き方をしている２人を、フレイは腰に手を当ててジロリと睨んだ。
「ちょっと、どういう事、それは？」
「い、いや、なんでも無い」
「そうそう、なんでも無いよ」
冷や汗浮かべて誤魔化そうとする２人。なんだか最近のフレイはバジルール中尉みたいに迫力が出てきたなあと思ってしまうのだ。戦術を教えてもらううちに彼女の影響を受けているのだろうか。
「やあ、無事だったようだな、アルスター准尉」
「心配しておりました」
「クリスピー大尉、軍曹、みんな」
やってきたのは第１１機械化中隊の兵士達だった。それに、難民の子供達や馴染みの整備兵達の姿もある。そして、彼等を押し分ける様にナタルが前に出てきた。
「無事だったか、アルスター」
「バジルール中尉」
「みんな、心配していたぞ。艦長も、キース大尉もフラガ少佐も、整備兵達も、ケーニッヒ准尉も、私もな」
「･･･････私が、みんなに？」
フレイは意外そうに呟いた。自分が艦内で嫌われている事くらいは知っていた。だから、誰も自分の心配などしていないのではないかという不安があったのだ。だが、それは自分の思い込みだったらしい。現に、こうして沢山の人が自分の生還を喜んでくれてるではないか。
内から込上げて来た安心感に感極まったフレイは、嬉し涙を流しながらナタルに抱きついてしまった。抱き付かれたナタルは驚いたが、すぐにその体を優しく抱いてやった。その姿を見てキースが「バジルール中尉はフレイのお姉さんみたいだな」などと評し、周囲から多数の賛同の声が上がる。ナタルはキースを困った顔で見たが、特に文句をいう事は無かった。
落ち付いたのか、仲間達の前を辞して艦内へと消えていくフレイを見送ったキースとトールは、これから何が起きるのかに注目しようと思った。とにかく、これでまた何かが動くだろうから。
トールは格納庫の脇に備え付けられている艦内通信機でミリアリアを呼び出した。戦闘管制のミリアリアとはパイロットという事もあって疑われる事なく繋いでもらえる。モニターに出た恋人の顔に、トールは笑顔で語り掛けた。
「ミリィ、フレイは元気そうだぜ」
「そう、よかった」
「あとな、もう１つ面白い事がありそうだよ。フレイ、キラともう一度話し合うってさ」
「フレイがキラと？」
ミリアリアが意外そうな顔をする。これまでキラを避けていたフレイの態度から考えれば、無理もあるまい。
「これでどうなるか分からないけど、きっと何かが変わるよ。フレイの奴、凄く良い顔してたからな」
「そうなんだ」
「ミリィも、フレイと話したらどうだ？」
トールの薦めに、ミリアリアは何も答えられなかった。これまで散々酷いことを言ってきたのに、今更気安く話し掛けるのもどうかと思ってしまう。ミリアリアもまた、フレイの陥ってしまった陥穽に落ちてしまっているのだ。
答えられないでいるミリアリアに、トールは少しだけ呆れた。そして、その背中をそっと押してやる。
「フレイは言ってたよ、話し合おうって。黙ってちゃ何も始まらないんだよ。ミリィ、君もフレイと話してみなよ。話さなくちゃ、何も伝わらない」
「トール、でも･･････」
「俺もそう思うよ、ミリィ。君も勇気を出して」
トールの励ましに、ミリアリアは小さく頷いた。
キラは自分の中の影というか、殺意と戦ってるのかな？ あるいは闘争心？
アスランは色々気負ってる様ですし、ここは余裕ありそうなイザークに期待か？
でも、クリス君ってなんか面白い。シーナの反応をみると、もしかして天然年上キラーなのかなｗ
>>>>散った花、実る果実
そろそろオーブですか。この辺りはフレイ様の辛い所だなあ
私の方は何時になったらオーブに辿り付くのやらです。立ち寄るのは確実なんですけどね
>>another chain
別に便乗だなんて思いませんよ。面白ければＯＫｗ
しかし、フレイ様ったらそんな所でまで我侭全開ですか。オルドワさんって意外と良い人だったんですねｗ
でもアスラン、君って奴は。クリス君が結構したたかな所が良いです。アスラン、旅行だったんだろはちとアレではｗ？
>> リヴァオタと八アスのためでなく
違和感が、ジェリドが「ライラさん」なんて言ってると凄い違和感がｗ
しかしフレイ様、いきなりキラに不吉なこと言っちゃいけませんよ
フレイ様･裏キラ･爆弾と鎖が幾重にも絡まって…不憫ですね。
『地獄巡りスペシャルツアー』←やっぱり気になります。
クリスも会話がカタカナになってるし面白いです
>>another chain
フレイ様暴君モードですね。アスランは妄想とか独り言
とか良く似合うキャラだとつくづく思いました。
>>リヴァオタ
ニナとキラのコンボでライラ撃破って脳内妄想すると
結構カッコいいシチュエーションかもしれないw
>>流離
フレイ様･アスランそれぞれ帰還して、ほのぼの光景
ですね。ミリアリアも和解しそうですし。｢最悪の対決｣
はキラあるいはカガリなのかなあ。む、難しい。次の投下
をじっと待ちます。
乙です。アスランはどうもこの板でいじられる方向にあるなぁｗ
対してトール、イザークはいい男だし。
ところでおまいら、この勢いだと来週にも次スレですよ。
今日も楽しく読ませてもらいました〜。
キラとフレイ様が和解できるか非常に気になる次第ですｗ
今後もがんばってくださいね〜。
「なんだと,工場に何者かが侵入しただと！」
ディアッカはびっくりした,ヤザンとガリー,マットは
「ああ,そのようだ,鍵が破られていた」
「しかも,相手はサイレンサーを乱射してきたんだ」
「これは産業スパイどころじゃないぞ」
ディアッカは考え込んだ
「もしかするとこの手口はブルーコスモスかアームズインターナショナル
の手先かもしれない,よしこちらから調査しよう」
「おいおい,力づくでか？相手は知らん振りをするんだぜ」
ヤザンが笑った,ディアッカは
「なら探偵を使うってのはどうだ？」
「えっ？」
「俺に知り合いの探偵がいるんだ,腕はいいぜ」
ディアッカはいすから立ち,上着を着て,部屋から出た。
彼は自転車に乗り,探偵事務所に向かった。
その探偵事務所の名前は『マッケンジー探偵社』という
名前だ。ディアッカはドアを開けた,若い人の声が聞こえた。
「あっお客様ですか？,所長お客さんです」
「私がマッケンジー探偵社の,あっ！ディアッカ」
「ひさしぶり,クリス」
「ディアッカこそ」
「あの知り合いなんですか？」
「あっ彼は助手のハサウェイ・ノア」
「クリス,じつは俺は用事があってここに着たんだ,いっとくが
浮気調査や人探しじゃないんだ」
「というと？」
「産業スパイを見つけてほしい」
「ええー！」
クリスとハサウェイはびっくりしてしまった。
「報酬は50万円頼むよ」
「ええ・・・ところで景気は」
「いまいちじゃないさ」
「なら狙われても仕方ないわ・・・」
「ところでディアッカさんは何のお仕事なんです」
ハサウェイは言った
「ふっ「グレェイトエルスマン社」の社長さ」
「すごいー！」
「じゃあな」
ディアッカは事務所から出た。
キラとフレイのヘリオポリス分家に対して、あくまで武装中立的な態度を崩そうとは
しなかったが、それは他の本家メンバー全員に当て嵌まることなので、別段サイ一人
だけの問題というわけではない。
朝食の食堂でバッタリと顔を合わせたキラには「おはよう」と、営業スマイルでは
あったが、トール達の眼前で挨拶を交わしてみせたし（むしろキラの方が、明らかに
不自然にサイを意識していた）わざわざ厨房に顔を出し、フレイに一言「さよなら」と
告げて、昨晩の約束通り、長い間続いた二人への拘りにケジメをつけてみせる。
物心ついた頃から一心にフレイを見続けて、ようやく許婚まで漕ぎ着けた幼馴染への
想いを振り切るのに、内心で相当激しい葛藤があったことはミリアリア達にも簡単に
推測がついたが、今後、サイは少なくともその動揺を、外見上披かすことはなかった。
左手の人差し指の包丁の怪我に次いで、何時の間にやら負傷したらしい右掌にも、
包帯を巻きつけながら、多忙に身を任せる事により自らの未練を振り払うかのように、
アークエンジェルでの自分の職務に精を出し始めることになる。
「皆さん、静かに聞いてください。艦長として、お話しがあります」
その朝食の席上、マリューは食堂に集まった一同に、そう軽く前置きしてから、翌日の
レセップス攻略について正式に発表する。戦闘に勝利したら、補給で立ち止まらず、
ジブラルタル基地から敵の増援が来る前に、そのまま一気に紅海へと飛び立つ手筈で
ある事と、これでお別れとなる明けの砂漠から、今夜、戦死者の慰安（今までの死者
はアフメを含め、全員ゲリラ側であるが）も兼ねた送別会へと招かれている旨も伝えた。
ＡＡクルーの間に、軽い緊張感が走る。長い間続いた砂塵での戦闘も、明日で最後である。
もちろん、名将と謳われる砂漠の虎に勝てればの話しだが…。
というわけで、どんな結果になっても心残りがないようにと、寛大にも夜間のセレモニー
までの半日オフを提唱したマリューに、クルー達は先の緊張を高揚へと変化させ、
喝采を上げかけたが途端に意気消沈する。自由行動といっても、こんな殺風景な
砂漠の中では、やれることなど限られている。バラディーヤ市場まで行けば、
また話しは別だが、楽しい遊び場を求めて、命懸けで敵地に侵入するなど矛盾も甚だしい。
そのことに気づいたマリューも、白けきったクルーの雰囲気に失敗したか…という
表情で気まずそうに俯いたが、今更取り消すわけにもいかないので、そのまま
艦長権限で、その企画を強引に押し切ることにする。
ただ、例外的にキラにだけは、自由を確約したクルーの中では唯一人、バラディーヤへの
外出許可は与えずに艦内待機を命じた。既にキラの面が敵に割れているということも
あるが、万が一敵襲があった場合、仮にクルーの大半が留守だったとしても、
キラ一人がいれば何とか持ち堪えられるだろう…という現実的な計算からである。
まあ、劣勢の虎の方からわざわざ仕掛けて来る可能性は極めて低く、今更好き好んで、
危険極まりないザフトの溜まり場に近づくために、艦内を飛び出そうとする命知らずは、
常に死と隣り合わせの戦争を生業とする職業軍人のＡＡクルーの中でも、極々小数派の
ようなので、それこそ企画倒れになりそうではあったが…。
とある目的のためにバラディーヤへの再度の潜入を試みるフラガ兄貴と、身を守れる戦闘
技能など何一つ持ち合わせていない癖に、度胸だけは人百倍溢れているフレイである。
ＡＡのクルーは、以前女性のキラには頼めなかった秘密の買い物を二人に依頼する。
フラガは同じ生理を抱える男として心から同調（シンクロ）した表情で、キラとの秘密
のお付き合いをしているフレイは、自分には必要のない代物だったので、やや憐れむ目
でクルー達を見下ろしながらも、その買い出しを引き受ける。
フラガの運転で、二人を乗せたジープはバラディーヤへと発進して行き、万が一の事態を
密かに期待していた一部の人間の想いを裏切って、夜になる前には二人は無事に帰還した。
フラガは、女性陣の目の届かないところで、注文の品をクルーに配り捲くり、フレイは、
十種類を超えるたくさんの花類を抱えて戻ってきて、ダミーとなる薔薇、アイリス、蓮華、
菊などのカラフルな花々を食堂に飾ると、本命の方は密かに自室へと仕舞い込んだ。
今夜、フレイが自分の部屋で何をするのかは、知らない方が身の為である。
尚、フラガは、自身の買い物として少し大きめの紙袋を抱えていたが、中身は同行者の
フレイも知らなかった。どうせそっち方面だろうと高を括って、クルー達は茶化したが、
フラガは例の人好きのする笑顔で誤魔化すだけで、何も答えない。
その袋の中に秘められた謎のアイテムが、この先、アークエンジェル内で、ちょっとした
トラブルを引き起こすことになるのだが、この時には誰も気づかなかった。
明けの砂漠主催の夜間の送別会から一夜明けて、いよいよ旅立ちの朝がやってきた。
朝食後、厨房での自分の職務を終えて、昼食の準備までの僅かな自由時間を得たフレイは、
無表情にキラの部屋への道を歩んだが、内心では不機嫌さを隠せなかった。
昨夜のセレモニー自体は恙無く終了した。戦没した兵士達を慰める英霊祭も兼ねて、
キャンプファイヤーの焚き火の様な大きな灯火を燃やして、司祭役を務めたサイーブ
が弔辞を読み上げ、ＡＡのクルー達も殊勝な気持ちで祈りを捧げる。
その後は、タッシルの人達から郷土料理であるクスクスをご馳走（だから前回と異なり、
調理主任のフレイの外出が許されたのだが）になる。クスクスとはまた奇妙な名前だが、
以前キラ達が平らげたケバブと並ぶこの地方の名産料理で、羊の骨付き肉をベースに、
鶏肉と茹でた野菜をたっぷりと乗せたスープの味は絶品である。その独特の風味は
地方特有の郷土料理の醍醐味を感じさせ、料理には鉄人並みにうるさい完璧主義の
フレイでさえ、思わず作り手の女性達にレシピを聞いてしまった程の逸品だ。
クスクスの詳細なレシピを手に入れ、彼のグルメ・レパートリーに新たに１５３番目の
項目が追加されたのは良いのだが、このセレモニーの間、キラはずっとカガリの側を
離れずにいた。フレイと目線が合うと、何故か脅えたように目を逸らして、結局その日は、
フレイは一度もキラと会話する事なく、夜が明けることになる。
思い起こせば、一昨夜。悪夢から目を覚ましたキラが、シャワーを浴びに行ったきり、
一向に部屋へと帰ってこなかったので、朝食の準備で朝が早かったフレイは書置きを
残して彼女の部屋を去り、それからキラの様子がおかしくなったように感じる。
まるで、昨日までは自分に一心に懐いていた愛玩犬が、今日から気紛れで気分屋な
チェシャ猫へと変化したかのようで、とりあえず何ら落ち度が思い当たらなかった
フレイとしては面白かろうはずがなく、さらに昨朝、サイから告げられた決別の言葉が、
彼の不快感に一層拍車を掛けていた。
人間、失ってみて初めて気づくものがあるというが、フレイは、つい最近までさほど
重要視せず、自ら切り捨てたはずの幼馴染の婚約者の存在感の大きさに戸惑っていた。
自分がサイを愛していたとは思えないが、彼女が偏屈なフレイの数少ない理解者であった
ことは確かで、今更ながらに彼女と完全に縁を切り、母の仇敵である、あの娘のご機嫌
を窺わねばならない自分に、遂次たる想いを抱かずにはいられない。
あるかも知れないな…」
神の絶対視点から裁定すれば、誰がどう見てもキラを唆しているのは、カガリではなく、
フレイの方なのだが、自己の復讐の正義（昔は正義と復讐は完全に同義語だったそうだ）
を疑っていないフレイは、その自己欺瞞には当然気づかない。
フレイは最近のキラとの進展具合から、キラの変化に纏わる諸悪の根源はカガリでは
ないかと当たりをつけたが、流石にそれは読み違えていた。
いくらフレイが、天才的な策謀力と悪魔的な洞察力の両輪を極めているとしても、
今のＡＡ内の限定された立場では、得られる情報は限られ、推測にも自ずと限界がある。
フレイのシナリオとは無関係のところで好き勝手に動き捲くっている、ヘリオポリス本家
のメンバーの動向を完全に把握していなかったフレイは、今回キラにフレイへの多大な
不信感を与えたのが、自分が捨てた元許婚であることには気づかなかった。
ただ、一見硬派で、あまり女性を口説く事に熱心とは思われないカガリが、キラとの
仲をこの短期間で推進するにあたって、誰か二人の間を取り持っている第三者がいる
のではないか…と鋭い仮説を検証するあたりは、腐っても鯛と褒めるべきだろうか。
フレイが、キラとカガリの背後で糸を引いている黒幕（ミリアリア）の存在に気づくのは、
既に時間の問題かも知れなかった。
彼是とシャーロック・ホームズ張りの推理を巡らしている間に、キラの部屋へと
辿りついたフレイは、軽く扉の外から挨拶して入室許可を求める。
彼は手の内に植木鉢を抱えていて、その中には、キラへの贈り物となる多年草が、
黄色い鮮やかな花を咲かせている。
ほんの少し間が空いた後、「ど…どうぞ」とキラは、戸惑った声ながらも鍵を開けて
くれたので、遠慮なくフレイは、キラの部屋へと上がる事にした。
当然、さり気無く探りを入れ、今回の一連の出来事の背景について暴く腹積もりである。
一体、どうすればいいのだろう？
扉の外から聞こえてきたフレイの声に、一昨夜にサイから与えられたフレイに対する
疑惑の数々を全く拭い切れていなかったキラは、脅えた目を扉に向ける。
キラは、まだ気持ちの整理が全然ついていなかったが、何時までも正当な理由もなく
フレイを待たせるわけにもいかなかったので、努めて平静な声を装いながら、
彼に入室許可を与えることにする。
部屋に入ったフレイは、まずは電気をつけて照明を灯した。
キラは、薄暗い部屋の中で、さらにその雰囲気に拍車を掛けるように暗い表情で俯いて、
ベッドの上に一人で腰掛けている。
フレイは最初、不審そうな視線をキラへと注いだが、すぐに従来の包容力を感じさせる
温かい笑顔でキラの隣に座ると、手元の花を鉢植えごとプレゼントした。
「都草（ミヤコグサ）って言うんだ。気に入ってくれると嬉しいかな…」
「も…もちろんよ、奇麗な花ね。本当に嬉しい…」
そう謝意を述べながらも、何故かキラは後ろめたそうにフレイから顔を背ける。
もちろん、感謝の気持ちそのものには嘘はない。もし、この贈り物を頂いたのが
二日前なら、キラは乙女コスモを満開にして、天高く舞い上がっていたことだろう。
でも、疑惑に縛られた今のキラには、無条件にフレイの善意を信じる事が出来ないのだ。
あの優しい笑顔と、キラを慈しもうとする行為の裏側に、何かとてつもない悪意が
隠されているのではないか。そう考えるだけでフレイが怖くなり、何よりも肉体関係
まで築いた想い人の本性をそう疑ってしまう、自分自身の了見の狭さが許せなかった。
サイは、フレイの光でなく闇の部分に踏み込め…って言っていたけど、どうすればいいの？
そんなことして、万が一フレイに嫌われでもしたら…。その想像にキラは寒気を覚える。
どれほど彼の想いを疑ったところで、結局キラはフレイ抜きでは、現在の自分を維持
出来ないこともまた本能的に悟っていたのだ。
「あ…あの、フレイ。ごめんなさい」
「何がだい、キラ？」
いきなり謝りだしたキラに、フレイは笑顔の中に軽い戸惑いを貼り付ける。
どうのこうの言っても臆病なキラに、いきなりフレイの暗部へ飛び込む勇気など
あるはずがなく、先ずは手近な母親の話題から片付けようとした。
「そ……その、あの時、私、フレイのお母さんを助けることが出来なく……！？」
そう謝り切る前に、キラは恐怖で息を飲んだ。あの晩、サイから嫌というほど味合わされ
た狂気と殺意の波動が、フレイの笑顔の中を確かに横切ったのをキラは見逃さなかった。
それは、ほんの半瞬ほどで完璧に消失し、彼は何事もなかったかのように笑顔を取り戻す。
だが、フレイの微かな仕草も逃さず観察しようと、彼の一挙一動に注目していたキラは、
錯覚でも見間違いでもなく、かつてサイがキラに見せた怨念と同質の狂気を、フレイは
薄皮一枚の下に常に常駐させていた事に気づかされて、膝元をガタガタと震えさせた。
やっぱり、サイの言っていることは正しかった。フレイは私を許してなんかいない…。
フレイは、ともすれば目の前の少女に襲い掛かりたくなる心の手綱を何とか抑えながら、
「キラ、君は本当に自分が悪いと思って、謝っているのかい？」
「えっ！？」
外面的には、穏やかな表情と温和な声色を崩さずに、そうキラに問いかける。
キラの側から、母親の件が持ち出されたのは、完璧に不意打ちだった。
一瞬でも、内面の本性が、外面の表情に出現してしまわなかっただろうか？
最初から用心していたら、絶対にそんなヘマはしないのだが、迂闊だった。
「もしかして、サイあたりから、僕の母への拘りを聞かされ、謝罪を薦められたから、
今更になって、とりあえず形だけでも頭を下げておこう…とか考えているんじゃないか？
だとしたら、それは誰に対しても失礼な話しだと僕は思うけど…」
フレイは、内心で激しく渦巻くキラへの敵意を巧みに制御し、形としては正論
そのものの主張をキラに突きつけ、キラは言葉に詰まった。
サイから謝罪を推奨された…というフレイの読みは、当たらずとも遠からずである。
何よりも、確かにキラは、フレイの母親の死にそれほど強い負い目を感じていたわけ
ではなかったので、彼の主張の正しさに全く反論することができず、涙目になって、
「ごめんなさい」の言葉を、ひたすら鸚鵡のように繰り返すばかりである。
キラはビクッとさらに脅え上がり、肩に触れたフレイの指先には直に震えが伝わってくる。
「そんなに怖がらなくてもいいよ、キラ。別に責めているわけじゃないから…」
「ご…ごめんな………」
「だから、それを止める。謝るのは本当に悪いと思った時だけで良い。
そういう自虐的な態度は直していかないと、性質の悪い人間に突け込まれるだけだよ」
僕のようなね…と、フレイは心の中で嘯き、キラは何とか愛想笑いを浮かべた。
それにしても、トールの時みたいに、あてずっぽで出したサイの名前がまた当たるとは…。
自分達の歪んだ三角関係からの脱落(それとも解脱かな？)を決意したサイが、
どうやら鼬の最後っ屁的に、キラの心に自分への疑惑の種の数々を植え残して
いったことは想像に難くないが、サイはどこまで僕の本性を話したのだろう…。
いずれにしても、種が発芽して疑惑の華を咲かせる前に、摘み取るのが賢明だろう。
「キラ、サイが君に何を吹き込んだのかは知らないけど、気にする必要はないよ」
フレイは、意識的に肩を抱いている腕の力を強めると、正面からキラの顔を覗き込み、
学園の数多の後輩の女の子を魅了してきた、透明感のある笑顔で微笑んだ。
「サイはただ、君に嫉妬しているだけさ。今、僕の瞳に映っているのは君だけだよ、キラ。
嘘じゃない、僕のこの目を見て欲しい…」
「フ…フレイ……」
キラはまるで催眠術に掛かったように、恍惚とし始める。その拘りの方向性は別にして、
キラしか見ていない…というフレイの想いそのものには全く嘘偽りはなかったので、
特に演技の必要もなく、現在のフレイの顔は誠意と誠実さに溢れていた。
再びキラの心を手の内に抑えた事を確信したフレイは、大事な戦闘前なので、そのまま
行為に及ぶ訳にもいかなかったが、キスぐらいなら平気だろうと、キラを抱き寄せる。
トローンとした表情のキラと唇が重なった、その刹那、
「キラ、あなた、自分がフレイから愛されていると本気で思っている？」
「や…やめてぇ〜！！」
突然、サイの警告の言葉が頭の中に響いたキラは、悲鳴を上げながら、
フレイを突き放すと、そのままベッドから飛び跳ねるように離れた。
「キラ……」
どうして…と言いたげなフレイの表情に耐えられず、罪悪感に押し潰されそうに
なったキラの瞳から、ポロポロと涙が零れ落ちる。
「フレイ、ごめん………本当にごめんなさい…………」
キラは、さっきと違い今度は心からの謝罪をすると同時に、フレイを置いて自分の部屋
を飛び出した。人気のない廊下のところまで逃げてきたキラは、それ以上耐え切れずに
その場に崩れ落ち、激しく嗚咽を漏らす。
これから、自分とフレイはどうなってしまうのか、キラには見当もつかなかった。
キスすら涙一つで拒絶か。女とは…いや、キラというのは実に便利な生き物だな」
フレイは、キラが消えた開放されっぱなしの部屋の入り口をじっと見つめている。
その顔つきには、先ほどまでのキラを慈しもうとしていた暖かさは欠片も残されていない。
強い軽蔑感と僅かな憎悪が混在した彼の本性を閃かせ、醜い化けの皮が剥がれつつあった。
どうやら、何かが狂い始めたらしい…。
もはや、今までのように一方的にキラの心を懐柔した上で、やがては悪鬼のように
蹂躙し尽くすという夢は、もう叶わないのかも知れない。
だが、それでもフレイはまだ追い詰められてはいない。
彼の外面の表情や内面の心裡にも、何故かまだまだ余裕に満ち溢れていた。
「まあ、いいさ…。どのみちキラは、僕から逃げられはしないんだ。
キラが戦い続け、この先も人を殺め続ける限りは、絶対にね…」
聡いフレイは、キラが自分を求める根源が何なのかを、既に知り尽くしていたからだ。
「今日もまた派手に、同胞の生命を奪い尽くしてくるんだろ、キラ？
今夜、君が僕を拒む事が出来るのか、楽しみに待たせてもらうよ…」
主のいない部屋の中で、それだけを一方的に告げると、フレイはベッドの上に転がって
いた、彼が持ってきた都草の鉢を机の上に置いてから、キラの部屋から出て行った。
フレイの置き土産である都草は、花の形が鳥帽子に似て、日本では淀君に、西洋では
かのクレオパトラに愛されたと伝承では伝えられている。
だが、この色鮮やかなレモンイエローの多年草の花言葉は、なぜか「復讐」である。
当然、この贈り物の真意は、花言葉が指し示す通りで、キラが花雑学に博識なら、
フレイの本意に気づく危険性も十分にあったが、演出過剰癖のあるフレイとしては、
この脚本は絶対に外せなかったので、もしキラから問われた時は、花言葉なんて
知らなかった…と白を切るつもりだったが、どうやらそれは杞憂だったみたいだ。
元来、現実主義（リアリスト）のフレイが、調合も含めたあらゆる花知識を網羅し、
その名の通り、花も恥らう乙女でロマンチスト（浪漫主義）であるはずのキラの方が、
乙女雑識の嗜みである花言葉を全く知らなかったと…いうのも、また皮肉な話ではあるが。
尚、フレイはここへ来る前に、サイの部屋へも立ち寄り、不在の彼女の机の上に、
福寿草（ふくじゅそう）の鉢植えを置いてきた。都草と似たような黄色い花を咲かせた
同じ多年草の一種ではあるが、キラに与えた「復讐」という名の呪い花とは大きく異なり、
福寿草の花言葉は、花名に因んで、「幸福」「長寿」などを意味している。
その贈り物には、今更ながらにキラへの個人的な復讐に巻き込んでしまった元許婚への、
本来小器用なはずの、フレイらしからぬ不器用な思い遣りが篭められているかのようで、
その花言葉の意味を知っていたサイは、人知れず部屋の中で涙を零した。
彼の血縁上の兄であるカガリは、自分に新しく与えられた部屋の中で、彼の忠実な
従者であるキサカと、これからの自分達の行動指針について談話していた。
「やっぱり、すんなりとは通してくれませんよね」
「それはそうだろう、虎はキラと戦いたがっているみたいだしな…」
「ですよね。私が敵の指揮官だとしても、アレは見逃せません」
一見、粗野な豪傑に見えるキサカの瞳に理知的な光が浮かんだ。
カガリは、彼の本質が一騎当千の個人武勇を誇る戦士である以上に、本来なら、
大勢の部下を率いるに値する戦術眼を備えた部隊長であることを熟知していた。
「それにしても、よくオーブへ戻る決意をしてくださりました。
正直、また駄々を捏ねられるのでは心配していましたが…」
「一年経ったら、帰る…って、最初から、そういう約束だったしな。
親父は大嫌いだけど、男と男の約束を破るわけにもいかないだろ？」
恒例の傷のない側の頬だけを赤く染めて、照れ臭そうにそう応えるカガリに、
キサカの瞳は、まるで被保護者を慈しむような暖かい思い遣りに満ちていた。
「それで、この一年間、オーブの外の世界を見てまわって納得されましたか？」
「……正直、納得したわけじゃない。戦えば戦うほど、俺には中立という美名の元に、
オーブのみの安寧を貫こうとする親父の方針が分からなくなる。
ましてや、こんな代物を密かに作り上げておいて、何が中立国だよ、笑わせるぜ！」
カガリが遣り切れない表情で、「こんな代物」の一部分である壁を強く叩く。
「こんな代物」の頑丈さに、逆に拳を痛めたカガリは顔を真っ赤にしたが、
泣き虫の妹とは異なり必死で涙を堪え、その健気さに却ってキサカの方が涙した。
「と…とにかく、なんとしてもアークエンジェルにはオーブへと立ち寄らせる。
その上で、改めて親父に事の真相を問い詰めてやる！」
「それだけですか？」
「！？」
拳痛の痩せ我慢を誤魔化すかのように、大声を張り上げたカガリだが、その照れ隠しを
追及するみたいに、涙を拭いたキサカは冷静な態度を崩さずに、カガリに問いかける。
「オーブへの帰還ルートは他にいくらでも開拓できるのに、わざわざ正体を明かしてまで、
アークエンジェルに乗り込んだのは、それだけが理由じゃないでしょう？」
「ど…どういう意味だよ！？」
正体を明かすよう提案したのはお前の方じゃないか…と不審がるカガリに、
キサカは決定的な一言を口にする。
「気になるのでしょう？妹君のことが…」
「キ…キサカ、お前…」
動揺するカガリを落ち着かせるかのように、キサカは軽くカガリの肩に手を置くと、
「私はこの一年間、カガリ様と寝食と生死をずっと共にしてきたのですよ。
例の廃棄されたコロニーで、カガリ様が御覧になられたアレも一緒に見ています。
ですから、彼女の正体も大体見当がついていますよ」
「メンデルの遺伝子研究所のことか…」
カガリはまるで、転移療法で封印されていたトラウマを再び思い出した、失敗した
心療患者のような顔つきで呻いた。
「お前には感謝しないとな。キサカがいたから、俺はこの一年間、数々の戦場を
往来しながら、未熟なりにも何とか生き延びてこれたわけだしな。ＡＡ内でも部屋を
一緒にしようとした、相変わらずのストーカー振りは堪らないけど…」
一応の謝意を示しながらも、カガリの方こそ、相変わらずの素直じゃない減らず口
を叩いてきたので、キサカは軽く苦笑する。
双子のテレパシーで、妹の危険を感知したというわけでもないのだが、
その内容は、やがては今現在のキラが抱えている問題へと推移していく。
「カガリ様が、キラ殿を兄として心配なされる気持ちは判ります。ですが、彼女は…」
「…言うな、キサカ。確かにあいつは戦士としては、俺など足元にも及ばない程強い。
純武力的には、俺なんかの援護は必要ないし、却って足手纏いかも知れない。けど…」
ヒトとしてのあいつは、そんなに強くない…というか、むしろ本来なら戦争という過酷な
世界では生きていけないほど弱々しいとカガリは思ったが、それは言えなかった。
カガリ自身、まだまだキラへの愛憎並存状態を完全に解消したわけではない。
カガリのキラへの想いは、二者択一で彼にも与えられる可能性もあった力を独り占めに
した狡い妹と、庇護欲をそそられる泣き虫の可愛い妹…との間で大きく揺れ動いていた。
とはいえ、どちらにしても敵ではなく妹である。もはや、彼のアンビバレンスレベルは、
まるで美味しいオヤツの取り合いを演じた妹との兄妹喧嘩クラスまで低下したようなので、
この分だと、完全にキラと和解する日も近いと思われる。
キサカは、そんなカガリのキラへの複雑なシスター・コンプレックスを理解できたのか
は不明だが、さきほどから終始無言だった。
その時、艦内にアナウンスが鳴り響き、ストライク及びスカイグラスパー姉妹機の
パイロットは戦闘準備に入るようにと指示が告げられた。
いよいよ、砂漠の虎との最後の決戦の火蓋が切って落とされようとしている。
カガリは、スカイグラスパーの格納庫へと向かう前に、一言だけキサカに訴える。
「とにかく、最高のコーディのあいつにとって、本当にヤバイ場所は戦場じゃない。
これから戦う虎やザフト軍も、多分、キラの本当の敵なんかじゃない」
カガリは、美しい人間の皮を被った堕天使の少年の姿を思い浮かべる。
もし、カガリの勘が正しければ、キラにとって最も危険な真実の敵は、本来キラの
味方であるこの戦艦の中にこそ潜んでおり、だからこそ、彼はキラを守る為に、
敢えてアークエンジェルへと残留したのだから…。
医務室に入ると、何故かカガリがいた。
「カガリ、あなたどうしてここに？」
「フレイか、無事だったんだな」
カガリは複雑そうな顔で自分を見ている。無事だったのは嬉しいが、やはりこいつは嫌いだと言いたいのだろう。フレイはカガリの前まで来ると、ベッドに横たわる人を見た。
「･････････傷の具合はどう、サイ？」
「良さそうに見えるか？」
「そうね、喋れるのが不思議ね」
フレイはくすくすと笑うと、隣に立つカガリを見た。
「カガリ、悪いんだけど、サイと２人にしてくれないかしら」
「何でだよ。私がいちゃ邪魔なのか？」
「ええ、だから、お願い」
珍しくはっきりと言って来るフレイに、カガリはどうしたものかとサイを見た。するとサイも頷いた。
「頼むよ、フレイの言う通りにしてやってくれ」
「お前まで･･･････ああもう、分かったよ！」
カガリはなんだかつまらなさそうに部屋を後にした。それを見送ったフレイは椅子を引っ張ってきて腰掛ける。
「キラと喧嘩したんですって？」
「ああ」
「ミリィが言ってたわ。私の事でキラに食って掛かったんですってね」
「はははは、ミリィもお喋りだな」
サイは笑い出した。その様子がフレイには痛々しく見えてしまう。私が一方的に傷付けた筈なのに、この人はまだ私の事を心配してくれている。本当に良い人だ。もしこの人と一緒に歩めるなら、私は幸せになれるだろう。でも、私はその道を選べない。例えそれが茨の道だと分かってても、困難しか伴わない道だと分かってても、私はその道を歩むと決めたのだから。
「･･････久しぶりね、２人でこうしているのも」
「そうだな、昔はフレイがすぐに甘えてきてたからな」
昔という言い方に、フレイの胸がずきりと痛んだ。ほんの数ヶ月くらい前の事なのに、もう随分昔の事のような気がする。だけど、今日はこのくらいの事で黙る訳にはいかないのだ。言わなくてはいけないのだから。
「サイ、私は、私は････････」
サイはじっと待っていた。フレイが何を言いたいのか、それが分かっているかのように、じっと待っている。そして、フレイはついに迷いを振りきるように言った。
「私は、キラが好きなの。彼と一緒にいたいの。だから、ごめんなさい。私は、あなたとは･･･････」
「････････････････････････」
「詰ってくれても良い、罵倒してくれても良い。土下座しろと言うなら土下座でもなんでもするわ。あなたを一方的に振るんですもの。でも、私はもう自分の気持ちに嘘は付かないって決めたから。だから、ごめんなさい」
サイは身動ぎもせずそれを聞いていた。そして、痛みを堪えて右手でフレイの頬を撫でた。戸惑うフレイに、サイは小さく頷いて、あの何時もの優しい声で語りかけてきた。
「やっと、言ってくれたな」
「えっ」
「分かってたんだ、フレイがキラを好きなんだって事は。最初は違ったみたいだけど、砂漠を抜けた頃から少しずつフレイの様子が変わっていったからな。はっきり確信できたのは君達が別れた頃かな」
「サイ･･････」
悲しそうな顔をするフレイに、サイは頭を左右に動かして気にする事は無いと伝える。そして、少し遠い目をした。まるでここではないどこかを見ているような、そんな目を。
「･･････････････････････････」
「アークエンジェルに乗ってからは、あいつの凄さばかり見せつけられて、自分がどんどん情けなく思えてきた。せめて君を彼女にしているという事で、あいつの惚れてる君を傍に置くことで自分を満足させてたんだ。フレイを取り戻そうとしたのも、キラへの対抗意識のが大きかったと思う」
「そうだったんだ。じゃあ、ストライクに乗ったのもキラへの対抗意識だったのね？」
フレイの質問に、サイは頷く事で答えた。同時にフレイの中の疑問も氷解していく。あのストライクの事件以来、サイは自分に関わろうとはしなくなった。自分に執着があるならそう簡単に諦めるとは思えないのだが、あれ以降のサイは完全に自分から距離を置いてしまっていた。
そして、自分もサイの事を本気で好きだったのかと問われれば、やはり答えられなかっただろう。結局、自分たちの繋がりとはその程度でしかなかったのだ。それと気付かないままに共に歩んでいれば、そのままゆっくりと絆を作り、本当の恋人となっていけたかもしれないが、自分たちは気付いてしまったのだ。
「でも、正直言うと悔しいんだ。俺には、君を惹き付けておけるだけの魅力が無かったって事だからな。どれだけ頑張ってもキラには敵わない。俺は、あいつが羨ましいよ。あいつは何でも持ってる」
サイの言葉に、フレイは穏やかに反論した。
「それは違うわ、サイ。キラは何でも持ってるわけじゃない。ううん、きっとキラはそれを疎ましく思ってる」
「それは、どういう事だい？」
「キラは、自分が違う者だという事を知ってるわ。自分はコーディネイターで、ナチュラルじゃない。自分はこんな力を持ってるから回りから恐れられてしまうってね。キラは、何時も１人なのよ」
そうなのだ。彼と同じＭＳパイロットになってみてよく分かった。整備兵も、フラガ少佐も、艦内の誰もがキラを「コーディネイターのパイロット」として見ている。確かにみんなキラを仲間だと見ている。だけど、それはキラ・ヤマトという意味でではない。パイロットとしてなのだ。
そのことにキラは苦しんでいる。それにサイでさえ気付いてはいない。トールは気付いているのだろうか。
「･･････キラはなんでも持ってるように見えて、実は何も持ってないのかもしれない」
「どういう意味だい？」
「そのままの意味よ。キラは確かに凄いけど、それが今の彼になんの役に立ってるの。力があるからＭＳに乗せられて、人殺しをしてる。力があるから回りに便利な奴だと思われてる。なのに、力があるから、回りから怖がられてるのよ？」
「･･･････怖がられる、か」
サイは最近のカズィの態度を思い出す。思えばカズィはキラに対して、常に一定の距離を置いているようだったが、あれはキラがコーディネイターだからという恐れから来ていたのではないだろうか。それが今ではより健著となり、カズィは間違い無くキラを怖がっている。そして、恐らくは艦内のクル−の大半はキラに恐れを抱いているだろう。
これまで気にしたことも無かったが、考えてみればクルーで仕事以外でキラに話し掛けるのはフラガとキース、マードックくらいのものなのだ。他のクルーがどうして話し掛けないのか、考えてみれば分かりそうなものなのに。強過ぎる存在は、周囲に恐れられるだけなのだ。
「いくらＭＳに乗れても、キラは人殺しになんか向いていないのよ」
「そうかもな」
サイもそれには頷いてしまう。自分の知るキラは、確かに人殺しになんか向いてはいなかった。それが何時の間にか、キラがＭＳに乗るのは当たり前だと思うようになっていたのだ。
自分は何を考えていたのだろう。キラの友人だと自分で思い込んでいて、その実はキラを利用することしか頭に無かった。キラはＭＳに乗って戦うのが当たり前。友人を闘わせる事が当たり前だなどと、どうして今までおかしいと感じなかったのだろうか。
そして、自分達がこれまで疑問にも思わなかった事を、フレイはおかしいと感じていたのだ。結局フレイは、今では誰よりもキラに近い場所にいるのだろう。コーディネイターを誰よりも嫌っていた筈のフレイが、今では誰よりもあいつを理解している。
フレイのコーディネイター嫌いの理由が「父親がコーディネイターを嫌いだから、自分も嫌い」というものである事を知っているサイは、フレイがキラを理解できた訳を、何となく分かっていた。彼女は、頑固な偏見を持っている訳ではなくて、ただ、何も知らなかっただけなのだ。だから、キラというコーディネイターと触れ合って、どういうものかを知った事で、彼女は理解し、受け入れてしまったのだろう。
「敵接近、ブリッツ、バスター、デュエル、シグーが４機、未確認機２機、急速接近中、総員第１級戦闘配備！」
放送に驚いたフレイは椅子を蹴って立ちあがった。
「敵が来たの！？」
「フレイ、君は早く行け、デュエルに乗るんだろ」
サイは無理して半身を起して、フレイを見た。その顔には心配そうな色が浮かんでいる。
「帰ってこいよ。君はまだ、あいつに好きだって言ってないんだろ」
「･･････うん、言ってないわ」
「じゃあ、帰ってこなくちゃな」
「うん、うんっ！」
フレイは大きく頷くと、医務室から出た。そして、格納庫に向おうとした所でいきなり呼び止められた。
「おい！」
「え？」
振り向けば、医務室の壁に寄りかかるようにして立っているカガリ。その顔は戸惑いと僅かな賞賛を含んでいる。
「悪いけど、話は聞かせてもらったよ」
「･･････盗み聞きとは、あまり良い趣味じゃないわね」
「そいつは謝るよ」
カガリはフレイの前まで来ると、僅かに顔を逸らしながらぼそぼそとフレイに謝った。
「その、悪かったな」
「何がよ？」
「いや、そのな、今まで酷い事言っちまってたからな」
「別に気にしてないわ。全部本当の事だもの」
これがカガリの美点だ。自分が間違っていたと認めれば、相手が誰であれ素直に謝ることが出来る。この素直さと表裏の無さは、万人に好感を持って迎えられるカガリの資質なのだろう。
だが、それが悪い方向に向くこともある。俯くフレイに、カガリは今度こそ気持ち悪そうな声をだした。
「しっかしなあ、しおらしいお前って、本当に見ていて気味が悪いな。なんかフレイって感じがしないぞ」
「何よそれ、あんた私をなんだと思ってる訳！？」
カガリの酷い言葉にフレイが腹を立てて怒鳴った。だが、その途端にカガリがニヤっと笑って大きく頷いた。
「そうそう、やっぱこっちの方がフレイらしいや」
「あ、あんた、私に喧嘩売ってるのかしら？」
「ああ、気にすんなって。これでも褒めてるんだから」
「どこをどう聞いたら褒めてるのよ！？」
顔を真っ赤にして怒鳴るフレイ。だが、その顔はどこか笑っていた。カガリはすでに笑いを堪えている表情だ。しかし、このやり取りでフレイはあることを忘れていた。通信機から飛び出してきた怒声がそれを思い出させる。
「こらあああ、どこだフレイ、さっさと格納庫に来い、出撃だぞっ！」
「キ、キースさん！？」
「ああ、こりゃ相当怒ってるな」
まるで人事のように言うカガリに、フレイは恨めしげな目を向けた。
「あんたのせいでしょうが。責任とりなさいよね！」
「何言ってるんだ。遅れたのはお前だろ！」
「いいわよ、あんたに絡まれてたってキースさんには言い訳するから！」
「ちょ、ちょっと待て、お前、私を売る気か！？」
「道連れと言って頂戴！」
「お前なあ！」
「こんな所で何をやっているのか、カガリ・ユラ。アルスター准尉っ！！」
「「バ、バジルール中尉っ！？」」
２人は同時に硬直した。怒れるナタルは天災にも等しいほどの災厄である事は、アークエンジェルのクルーならば誰もが知っていることだ。ナタルはジロリとフレイを見ると、底冷えしてくる怖さを含んだ声で問いかけた。
「アルスター、君は出撃の命令を聞いてなかったのか？」
「い、いえっ！」
「ではさっさと格納庫に行け！」
「はいっ！」
まるでカタパルトで打ち出されたかのようにその場から消え去るフレイ。ナタルはまだ憤懣収まらない顔で今度はカガリを見た。
「さてと、次は君だな」
「あ、あははははははは･･･････」
「ふむ、だが、君はパイロットでは無いし、別に軍属でもない。私が処分を決めるというのもおかしな話だな」
考えこんだナタルの漏らした言葉に、カガリは目に見えて安堵した。どうやらお咎めを受けなくてすみそうだ。だが、それは甘かった。ナタルは顔を上げるととんでもない事を言い出したのだ。
「私が決めることでもないな。君の処分は責任者のキース大尉に任せるとしよう。とりあえずはいつも通り艦橋に座っててもらおうか」
「ちょ、ちょっと待て、なんでキースが私の責任者になる！？」
「君はキース大尉の管轄だからな」
何を分かりきったことを、とでも言いたげなナタルの答えに、カガリは愕然としてその場に膝を付いた。そして、確実に訪れるであろう地獄に頭を抱えて唸りだしたのである。
自分の中のサイのいい人度がまた上昇しましたｗ
ほんといい奴だな、サイは…。
クリスって探偵だったんですか。でも助手がハサウェイって、なんか頼りない
しかしディアッカ、お前、よくあの接客態度で客が取れるなｗ
>>キラ♀
フレイ君、結局君は毒殺用の花を買ったのか。でも、兄貴は何を？
でも、流石のフレイ君にも一応の良心はあったんですな。サイへの謝罪が涙ぐましい
あと、カガリ。お前も良い奴だよ。キサカがさり気に美味しいしｗ
もう私に残っているのはキラだけだったから。
キラを繋ぎ止めて、戦わせることだけが私の存在意義に思えた。
キラも戦いに疲れているようだった。
何がきっかけかわからないけど、海に出た頃からか・・・・戦闘が終わった後はふさぎこむことが多かった。
砂漠にいた頃はむしろ「皆を守れた」と言って充実した顔をしていたのに・・・・
「キラ、どうしたの？何があったの？」
そういっても疲れた顔で微笑むばかり。
「なんでもないんだ、フレイ。ただちょっと・・・・」
答えを待っても続きは出ない。
「疲れているの・・・・？大変だったものね・・・・・私は何もできなくて・・・ごめんなさいキラ」
言いながらキラの髪の毛を梳いてあげると泣きそうな顔をしている。
「本当に・・・何かあったの？」
「フレイ・・・！」
久しぶりに涙の味のするくちづけ。
でもキラが心の内をさらすことはなく、ぬくもりですべてを誤魔化そうとしているかのようだった。
「キラ・・・・・」
今度は私のほうからくちづける。
私はキラを受け入れてあげよう。
何を聞いても拒絶しないように。キラがぬくもりに逃げたいというのなら、そのぬくもりで包みこめるように。
「大丈夫、私の思いはあなたを守るわ・・・・」
それはキラの好意を利用しようとした私の務めだと思った。
この孤独な人を受け入れてあげられるのは私だけだと思った。
正面から向き合わずに体を合わせるのは、確かに逃げかもしれない、間違っているかもしれない。
でも、キラがその間違いを犯そうとするのなら、私も一緒に堕ちてゆこう。
それができるのは私だけなのだから・・・
「大丈夫、大丈夫よ・・・・・」
いつもは行為の最中キラから発せられる言葉を、今日は私がつむいでいく。
服を着ているとわからない、意外にしっかりと筋肉の付いたキラの胸がいとおしくてそこにも唇をつける。
キラはされるままになっているのは落ち着かないらしく、私の軍服のファスナーを降ろしてゆく。
私は恥ずかしさをこらえ、指でブラと胸の間に隙間を作りキラを挑発してみる。
「ふふ、見たい・・・・？」
言葉もなく私の上半身を外気にさらしてキラは行為に没頭する。
すっかり馴染んだ感覚に思わず声をあげてしまう私。
「・・・・ぁ・・・・・んっ・・・・・・・」
「フレイ・・・・」
キラは慣れた手つきで私の全身をさぐってゆく。
繊細な指の動きに背中を走る戦慄をとめることができない。
「キラ・・・ぁっ・・・・んっ・・・・・だめぇ・・・・っ」
私もキラの反応しているそれに手をかける。
「んっ・・・・・・フレイ・・・・・っ・・・」
せつなげなキラの声が耳元で響き、私はもうおかしくなりそうだった。
私の手のひらの中で熱を孕んでいるキラ。
私の中で蠢くキラの指。
耐え切れずキラにもたれかかると裸の胸にキラの体温が暖かかった。
私の指が、肌が、息がキラに触れるたび、キラが反応するのがわかる。
もう十分行為に馴染んでいた私はキラが欲しくてしかたなかった。
「ねぇ・・・キラ・・・・・わかる？」
わざと耳元で囁きながらゆっくりとキラを飲み込んでいく。
「くっ・・・・・・！」
声をあげまいとして息を飲むキラ。
私の中が開かれて私でないものが入ってくる感覚。
たまらず動こうとしたキラを制して私は言った。
「だめ・・・・今日は、私がしてあげるから・・・ね？」
軽く肩を抑えて微笑むとキラを見つめたまま体を揺らす。
キラのカタチが、熱が、私に包まれて跳ねる。
私はそれを自分の体で感じながら、これ以上ない充実感を感じていた。
もう、キラは私のもの。
私のために戦って、私を守るの。そのためについた傷は私が癒してあげるから。
キラの涙は私がうけとめてあげる。
誰も知らない私のキラ。強くなんかない、キラはずっと誰かに守ってもらいたかった、優しくしてもらいたかったんだ。
「僕がどんな思い出で戦ってきたか、誰も気にもしないくせに」
私は知っている、キラの涙を、守れなかったと泣いたその悲しみを。
私はもう可哀想じゃない、キラを守る。
キラには私がいてあげないと駄目なんだから。
私もう、可哀想なんかじゃないでしょう・・・・・・？
今日投下した分は書くか削るか迷っていたシーンなのですが、皆さん意外とエロに寛大なようなので書かせて頂きました。
いやちょっとキラの回想シーンが忘れられなかったもので。（笑）
>>流離う
フレイ様、本当に大人になりましたね・・・・・
それに引き換え、キースが日々可愛いキャラになっていくのは気のせいでしょうか？
>>フレイ♂
ああ、とうとう男フレイ様の陰謀にも影が！
サイに花を贈るシーンはよかったですねー。フレイ様の心が伝わってきました。
>>リヴァオタ
ヤザンとディアッカって・・・・結構並んでて違和感ないかも。
>>chain
パロディーの方も楽しく読ませていただきましたよー。
私はアスラン好きですが、あれくらい崩れているのもむしろいいんじゃないかと。
らしいし。ｗ
来週を待たずに、今週末にも次スレ行きそうな勢いですが。
そろそろスレのまとめの時期ですな。
毎日投下してくれてる職人さん方、乙です。
乙〜。いつも楽しみにしていますよ。
自分はエロ嬉しいけどｗ
・エロ、グロ、801等の「他人を不快にするSS」は発禁処分。
ライトＨ位なら許してあげる。
今のところライトかな？ｗ不快という意見もなく、
皆楽しく読んでいるようだから、これからもがんがってください。
>>893
ここまで毎日高質なSSが投下されるスレも珍しいというかｗ
自分はここのために毎日フレイ板来てるよ。
この勢いが続いてほしいものだ。
刻還り、ORIGINも期待してます。
本スレの話題ですが、最近のムックで、キラの真ママ、ヴィア・ヒビキの声優が桑島法子さんと
分かって人気だったようなので、以前、ちょっとだけ書いて放置してあったヴィアさんのＳＳを
手直ししてみました。需要に答えられるか分かりませんが投下してみます。
フレイ様出ませんけどＯＫですよね。１章だけの短編で、続編はありません。
いやここフレイＳＳスレなんだけど…
明るい声が、私にかけられた。私は笑顔で出迎える。
「ハイ！ メル。こちらこそ」
ここは、Ｌ４コロニー 「メンデル」。遺伝子研究所。
私の名はヴィア・ヒビキ。ここの研究員だ。そして、今出迎えているのは、メル。私の友達。
「メル、今日は一人なんだ。旦那さんは？」 私は尋ねる。
「しばらく遠くへ仕事。退屈だったから来たの。ユーレンは今どうしてる？」
「うちの旦那も出張なのよ。男どもは忙しくて大変ね」
「そう…… 私、邪魔じゃ無かったかな？」
「いえ、そんなこと。ちょっと一服しましょう。コーヒー入れるわ。砂糖とミルクは一杯だったっけ？」
「うん、一杯お願い」
メルは、カフェオレかと思うくらいコーヒーにミルクを入れないと気がすまない。
それだったら、最初からカフェオレにすればと言ったことがあるけど、
一言、『それじゃ、コーヒーじゃ無いじゃない』……
「ヴィア、どう研究？」コーヒーを飲みながらメルは聞いた。
「このところ、変わりないわ」
「旦那さんとは、その後どう？」
「もう言わないでよ、あいつのことなんか」
メルは痛いところをついてくる。でも、当人には、悪気は無いらしい。
「まだ、喧嘩してるの？」
「いつものこと。もう、しばらく家にも寄りつかないわ」
そう、私の夫・ユーレンと私は、今、研究の内容について、意見が食い違っている。
果てしなく言い争い、意見は平行線のまま、私達は私生活でも別居同然になっている。
私は絶対に認めない。クローンの実用化なんて。
「いいの？」
「大丈夫よ、腐れ縁だもの。あいつの方から謝ってくるまで、許してやらないんだから」
ユーレンとは幼馴染だ。もう、喧嘩なんて果てしなくやっている。
それでも、カレッジ卒業後、二人この研究室に来て、結婚にゴールインもした。
私は、彼を愛している。
「でも、ヴィアって、彼のこと信じてるのよね。羨ましいな、私と違って幸せなのね」
「そうかな。あなたの方が幸せでしょ。旦那さんから愛されて、裕福に暮らせて」
メルは、急に思い詰めた顔をした。
「本当にそう思う？ ヴィア」
「どうしたの怖い顔して」
メルの声のトーンが変わった。
「私、幸せなんかじゃないわ」
「そんなこと無いわよ」
「嫌、違うわよ。私……私、あなたに嫉妬しているかも」
「どうしたのメル。私、そんなつもりは……」
メルは、急に悲しそうな目になって、私をじっと見つめた。
こんなメルは初めてだ。一体、どうしたんだろう。
「奪うかもしれない。私、あなたからユーレンを奪うかもしれない」
「メル、そんな馬鹿なこと……」
私は不安になった。メルの目は本気に見えた。そんな馬鹿な、メルがユーレンを……
メルは、私よりもずっとプロポーションが良く、私の目で見ても美人だ。
もし、ユーレンが誘惑されたら。メルに魅入られたら。
そんなことになったら、私はどうなってしまうの？
「嘘。そんなの嘘。嘘よ……」メルは、笑顔に戻った。
「私が、そんなことする訳ないでしょ」 メルは悪戯っぽく笑った。
「もう何言ってるのよ！」 私は、顔が真っ赤になっていた。
「本気にした？」
「この馬鹿！！ 意地悪！」 私はメルへの照れ隠しに、怒った素振りを見せた。
もう、メルのやつ、いつも私をからかって。また、この人のペースに巻き込まれている。
メルの方が年下だというのに。
この人のフルネームは、メルデル・フラガ。私達の研究所に資金援助をしてくれている財界の大物
アル・ダ・フラガの奥さん。でも、メルは、旦那さんより十歳以上も年下だ。
資金援助の関係で、旦那さんと一緒に研究所に来た時に知り合い、年代の近い私達は、
友人として付き合っている。
すぐ顔を赤くする私を見ながら、メルは美しい赤毛を手でかきあげて、微笑みを見せていた。
乙。でも住人の反応見てから投下するというのも大事だと思うよ。
一応ここフレイ様SSスレなんだから。声優同じでも、ナタルSSを投下するのはおかしいと思うし。（フレイ様を描くならともかく）
自分、オーブは好きで楽しませて貰ってたことを付け加えておく。
済みません、一足違いで投下してしまいました。
この間から、最後に変な自分語りを入れたりと反省しています。
1レスだけですのでスルーしてください。
いやこちらこそスマンカッタ
どうか創作意欲は失わないでね。オーブ好きだったし。
続編がみたいくらいなんだよ。
そんなわけで９００ゲトー
あまり気にしないでがんがれ！
オーブは漏れも大好きでつ。
「ねぇ,まだブライト学年主任が来ていないわ」
「ああ,あいつ近所だからもうすぐ来るだろ」
「えっブライト学年主任ってたしか,隣町じゃなかった」
「いやちかくに,トレーラーハウス構えているんだよ」
「えっというと,家族は？」
「単身でトレーラーハウスにすんでいるんだよ」
「たいへんだわ・・・」
「休日には帰っているんだぜ,長期通勤は大変だよな」
「みんなそろっているか！」
遅刻したブライトがみんなに挨拶した。こうして職員会議が始まった
職員会議が終わり,ブライト
「あっアイナ・サハリン」
「えっ？」
「放課後,キラ・ヤマトをつれて生徒指導室に来るんだ」
「えっ？キラ君がいったい・・・」
「なんでも暴力事件を起こしたらしいそうだが」
「まさか・・・」
「相手方からそういう電話があったんだ」
ブライトは話をやめるとドアを開けて職員室を出た
「失礼します」
「キラか,まぁ座れ」
キラはいすに座った
「お前,この前,暴力事件を起こして警察に連れて行かれたそうだな」
「はい・・・」
「これは本校でも問題沙汰だ,意味わかるか？」
「はい・・・」
「相手から電話がかかった,肩が当たったと同時に,殴ったそうだな」
「ちっ違います！」
「お前は,一週間,停学だ反省するんだ」
「・・・」
キラは指導室から出て,下駄箱にアイナとばったりあった。
「キラ君」
「アイナ先生・・・」
「あなたはしてないよね・・・」
「してないよ・・・,やったのは・・・」
「わかるわ」
「アイナ先生・・・アイナ先生・・・うあ゛ぁあ ･･
あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ 」
キラは泣いた,アイナは
「キラ落ち着いて,ねぇ私の家でゆっくり話ましょ,ねっ」
キラは言うとおりにした。
「フレイ,みんな大変だよ！」
「どうしたんだサイ？」
トマーシュは言った,それに続いてシロー,トーレス,ミリィ,ニナは
「何があったんだ」
「サイ悪いことでもあったのか」
「どうしたの」
「まさか,サイ,あなた・・・彼女に振られたとか」
ヒュー そこらへんはニナの台詞で真っ青になった。
「違うってば！キラが停学処分になったんだよ！」
「ええー！キラが！」
フレイに続いて,トマーシュ,シロー,トーレス,ミリィ,ニナは
「うそだろ！」
「あいつがそんな・・・」
「なんで・・・」
「うそでしょサイ」
「キラ,まさか幼稚園児相手に「いけないお遊び」したの？」
だから言うなってニナ,フレイはあることに気がついた,ジェリドとの
トラブルかもしれない,私のせいでキラは！
フレイは立ち上がって,外に飛び出した。
あれ？昨日の夜,何していたんだっけ？
たしか・・・アイナ先生の家に来て,梅酒ソーダを
ガバガバので・・・その後が覚えていない,しかも
裸だ・・・
「いったいどうなってるんだ？」
キラはベッドを飛び出した
「んっ・・・」
「えっ？」
「あっおはよ・・・キラ君」
「なにやってるんですか！アイナ先生,しかも裸で」
「なにって・・・覚えてないの？」
「ええ,覚えてません,でも広い家ですね」
「ええ,私,ここの家の令女だから・・・」
「幸せじゃない？顔でわかるよ」
「そうよ・・・兄はシローと分かれろと言っているわ」
「アイナ先生も大変だね」
「メイドや執事は？」
「まだきていないわ」
「なら後で送って」
「ええ」
キラは机においてあった車のキーをとった
ピンポーン
玄関のドアのチャイムが鳴った。
アイナは一階に降りて,ドアを開けた
キラは思った,「あれがアイナのお兄さんか」
キラは窓からジャンプして着地した,車庫に入った
アイナの車である84年型ＭＲ2のドアをあけて待っていた。
数分後,アイナが来た,その後,車を走らせ,自宅前で停車した
「アイナ先生もがんばってください」
「キラ君もよ」
アイナは車をスタートさせた。キラはまだ眠気があったので
家に入っていった。
食事をする羽目になった。カイ・シデンは同性相手の
ミハルとミハルの妹弟たちのために修理工場に働いている。
そして自宅のトレーラーハウスに帰ると,4人で食事をし
カイの夜の仕事の官能小説を書いている。
食事中カイは話を持ちかけた
「ところでアスランさんは同性愛も恋愛だとおっしゃいますね」
「ええ,そうですよ」
「しかし、801はなんなんでしょうねぇ」
「801は女の妄想です,女には同性愛は恋愛だということは
わからないんだよ」
「へー,それはいいことで,で新作はなんなんだ？」
「新作？新作ならＴＢＳで放送される瀬戸内海の孤島を舞台にした
サバイバルアクション「ザ・ビーチク」だ,いいタイトルだろ」
「それ,ＡＶでもあったような・・・・」
「共演はマウアー・ファラオ」
「あのマウアー・ファラオか！」
「ああ,そうだぞ,いいだろ」
アスランはニコッとした。
「フレイ、貴様、呼んでからどれだけたったと思っているっ！！」
「す、すいません！」
キースの前まで来たフレイはペコペコ頭を下げてひたすら謝った。なんだか最近謝ってばかりという気もするが、とにかく謝った。キースはまだ不機嫌そうではあったが、今はこれ以上叱っている状況でもない。
「もういい、さっさとデュエルに乗りこめ！」
「了解！」
フレイは適当な敬礼をするとデュエルの方に駆けて行こうとして、ふと足を止めてキースを振りかえった。
「キースさん！」
「何だ？」
「これ、ありがとうございました。すっごく役に立ちましたよ」
フレイは胸元からペンダントを取り出してキースに見せた。それを見てキースは僅かに表情を綻ばせる。フレイは嬉しそうにそれをしまうと、デュエルの方に駆けて行ってしまった。
それを見送ったキースは煙草を取り出すと、それに火を付けた。どうせ自分のスカイグラスパーはまだ動けないのだ。そこで寛いでいると、忙しそうなマードックが面白そうな顔で近付いてきた。
「どうしたんですかい、お嬢ちゃんは。帰ってきてから、随分と良い顔をしてるじゃないですか」
「きっと、吹っ切れたんだろ。いろいろさ」
「吹っ切れたって、何が？」
「そうだなあ、青春の痛みと苦しみって奴かな」
分かるようで分からないことをいうキースに、マードックは怪訝そうな顔をしながらも、もう１つの用件を済ますことにした。
「まあ良いですがね。あと、大尉」
「何？」
「格納庫は禁煙ですぜ」
「･･････････････････」
キースは無言で煙草の火を指で揉み消した。
コクピットに入ったフレイは艦橋に通信を繋いだ。すぐに管制のミリアリアが出る。つい昨日に喧嘩をしたばかりの相手なのでお互いに気まずい。だが、仕事なのだから私情を挟む余裕はないのだ。
「ミリィ、デュエル出れるわ」
「了解、装備を持ってカタパルトへ入って。今日はキースさんは出れないから、注意して」
「分かったわ」
「･･･････それと、フレイ」
「何？」
「トールから全部聞いたわ。あなたとキラの事」
「･･････そう」
フレイはトールが話したという事に特に怒りを感じる事は無かった。何時までも秘密にしておく事は出来ないだろうと思ってたし、ミリアリアならその内気付くだろうという考えもあった。
だが、次のミリアリアの言葉は、フレイの思っていたものとは違っていた。
「･･････正直、まだ気持ちの整理がつかないけど、あなたがキラの事を真面目に考えてる事だけは分かったわ。だから･･････だから、ちゃんと話しなさいよ。それでキラときちんと決着をつけたら･･･････」
続きを言えないでいるミリアリアに、フレイはクスリと笑うと頷いた。
「行ってくるね、ミリィ。帰ったら紅茶でも飲みましょ。ティーパックにもお菓子にも心当たりがあるから」
「どこにそんな物があるのよ？」
「ふふふ、それは秘密よ」
フレイは久しぶりにミリアリアの前で笑えたような気がした。そして、デュエルをカタパルトへと移動させた。
「フレイ・アルスター。デュエル、行きます！」
「やっぱり狙ってきたわね」
フレイはビームライフルで上空を飛ぶＭＳを狙った。大木が丁度良い遮蔽になってデュエルを隠してくれる。フレイはナタルの教えてくれた事を実践していた。ナタルはこう教えてくれたのだ。
「いいか、アルスター。地上戦では空を飛ぶ方が絶対的に有利だ。デュエルは地上を二次元的に動く事しか出来ないが、空を飛べれば三次元的に動く事が出来る上に、こちらを撃ち下ろす事が出来る。これと撃ち合うならまず遮蔽をとる事だ。身を隠して狙撃しろ。デュエルの装甲を信じてこちらの動きを止め、少しでも命中率を上げるんだ」
空を飛ぶザラ隊のＭＳは、姿の見えなくなったデュエルに苛立っていた。
「畜生、あのデュエルはどこに行った！？」
「ジャック、落ちついて。動きが単調よ」
苛立っているジャックにエルフィが声をかけたが、それは少し遅かった。森の中から放たれたビームがジャックのグゥルを撃ち落としたのだ。グゥルを失ったジャックのシグーは地上へと落ちて行く。
「ジャックっ！」
エルフィはビームの発射地点を重突撃機銃で掃射し、グゥルに搭載されているミサイルを放った。着弾の炎が上がり、その中に動く影を見つける。
「見つけた、デュエル！」
それに照準を付けたが、なんとデュエルはスラスターを全開にして空に飛びあがってきた。突然の事に驚くエルフィ。
「嘘、デュエルが飛んだ！？」
咄嗟に銃突撃機銃を放つが、それは機体表面に火花を散らすだけでなんの効果も無かった。
フレイのデュエルはビームサーベルを抜くと、エルフィのシグーに切りつけた。身を捻ってなんとか胴体への直撃を避けたが、左腕を丸ごと持っていかれたうえに、足場のグゥルまで破壊されてしまう。
「キャアアアアアアッ！」
悲鳴を上げて落ちていくエルフィのシグー。地面に叩き付けられ、そのまま動かなくなる。フレイはそれを確認するとビームサーベルを戻し、ライフルを構えた。
「とりあえず２機ね。さっすがデュエル、シグーなんか相手じゃないわ」
フレイは気がついていなかった。自分が実戦を経験するごとに急激にその力を伸ばしている事に。今撃ち落としたジャックとエルフィは確かに経験が浅いが、それでもその実力を買われてザラ隊に配属されたエリートだ。普通に考えればフレイが敵う相手ではない。
ヨーロッパではまともにデュエルの性能を引き出せないどころか、機体のおかげで辛うじて生き残れたという程度だったのに、今ではデュエルの性能をきちんと引き出している。機体を使いこなしている。
ナチュラルでありながら脅威的な成長だが、これには精神的な要因も含まれていた。実戦慣れしてきた事で焦る気持ちが消え、落ちついて敵を見れるようになった。機体操作にも自信が出てきた。そして何より、アスランとの出会いによってキラへの問題に対する自己嫌悪と自己否定が昇華された事が大きい。精神的な負担が減って余裕が生まれたフレイは、その潜在能力を少しずつ発揮させはじめたのだ。そう、フラガやキースさえ驚かせた、その秘めた力を。
次の目標を探そうとしたフレイは、ふと感じた物凄い殺気に慌ててそちらを見た。それは負の意識の固まり。焦りと怒りと、寂しさと恐れ、そして異常なまでの殺意。それらが交じり合った酷く危険な存在がそこにいる。その危険な気配の元は、ストライクだった。
「キ、キラ･･････なんで。あなた、どうしたのよ？」
信じられなかった。キラがこんな暗い殺意に身を委ねるなんて。これは、まるでパパが死んだ頃の私のようだ。
そこまで考えた時、フレイはキースの話を思い出した。
「憎悪や狂気に身を委ねるという事は正気を無くすという事だ。それはただの殺戮マシーンでしかない」
そうだ、そんなものはただの殺戮マシーンでしかない。今のキラはそうなろうとしている。ストライクから伝わってくるキラの痛みが、悲しみがそれを教えてくれる。キラは、寂しさと辛さに押し潰されてしまったのだ。
狂気に付かれたストライクが、目の前で撃ち落とされ、地面に叩き付けられたシグーのコクピットにビームサーベルを突き刺した。正気のキラなら絶対にやらないような攻撃だ。
「駄目、駄目よキラ、そんなのは駄目。あなたはそんな人じゃない！」
フレイはデュエルをストライクへ向けた。彼を止めなくてはいけない。自分はキースとマリュ−、ナタル、トールに救われた。おかげで私は正気に戻る事が出来た。今度は、私がキラを助ける番だ。
ライトＨですねえｗ うちのだとこういうシーンは･･････候補がいるかな？
フレイ様はもうキラしかいないのか。毎度思うけど、現実で考えるとかなり寂しい
世の中には色んな物があるのになあ
>>ヴィアとメル
乙です。このメルさんはクローン・フレイのオリジナルですか
性格がフレイ様に近いのか、何気に心臓に悪いことを言いますなｗ
>> リヴァオタと八アスのためでなく
いけないぞキラ君、アイナにはシローという彼女がｗ
でも、ブライトさんって、トレーラー生活だったのね。名前はホワイトベースかな？
なんというか、会話のテンポが独特です。
ストーリーよりはテンポを楽しむタイプでしょうか。完結まで頑張って下さい。
>>流離う
殺気立ったキラを止められるかフレイ様。ここが正念場ですね。
キラは昨日の夜から行方不明だ,彼女は自分に
責任があると重い,キラに誤ろうと思った。
そのとき,カガリとばったりあった。
「どうしたフレイ？」
「カガリこそ」
「私は近くのコンビニに「ジャンプ」を買いに行っただけだ」
「キラが行方不明なの！」
「えっ！」
「キラは昨日停学処分になったせいで,家出したのよ！きっと！」
「フレイ,私も捜すよ！」
彼女たちは二手に分かれてキラを探した
フレイは探している途中,アルとばったり会った
「そこの坊や,キラっていう高校生知らない？」
「キラの兄ちゃん,まだ今朝からみていないんだ」
「そう・・・」
フレイは駆け出した
「へんなの・・・」
アルは家に戻った,玄関で気がついた,スニーカーが二つあるのだ
「スニーカーが二つもしかして・・・」
居間のドアを開けた
「バーニィ！,シーブック兄ちゃん！」
「よっアル」
「やあ」
シーブックとバーニィはアルにとっては大切のお友達だ
シーブックは母親の知り合いの子で幼いころからつるんでいる
バーニィはシーブックの専門学校の友人でアルの兄貴分だ
アルは話しかける
「でどうしたの？」
「ああ,母さんがおばさんにお歳暮届けに着たんだ」
「おれはそのオマケ」
バーニィはニヤッと笑った。
彼女は「もしかするとキラは家に帰っていたりするかもしれない」と
思った。
フレイは大きな賭けに出て,キラの家に向かう。
家に入り,二階に上がり,キラの部屋に入った。
キラはベッドで寝ていた。フレイは寝ているキラに
抱きついた。
「キラー！」
「うわっ！フレイ！」
数分後
キラとフレイはベッドで裸で寝ている。
「なんでこうなっちゃったんだろ」
キラは考え込んだ,だって2回,Ｈしたことだ。
「今日は幸運なのか・・・」
キラは,今日はついていても,明日は不幸かもしれない
「んっ・・・キラ」
フレイが抱きついてきた,今日はどうやらラッキーな日かも
しれない。ハハハハ・・・・
「･･････見ててよフレイ。今、こいつらを全部やっつけるから。僕の力でね」
その瞬間、脳裏で水面のイメージが浮かび、跳ねて弾ける種のイメージが重なる。もう幾度目だろうか。このイメージが浮かぶたび、自分は巨大な力を手に入れるのだ。そう、この力があれば、ザフトなんか蹴散らせる。フレイも戻ってきてくれる。そうすれば、もう孤独に苦しむ事はない。
キラはストライクを走らせた。構えたビームライフルでグゥルを狙い撃つ。空を飛ぶイザーク達は地上からのビームに慌てて回避運動を行ったが、それは信じ難いほどの精度で自分たちを狙っていた。
「こいつは、ストライクか！？」
「イザーク、どうする。先に足付きをやるか！？」
「･･･････ディアッカは足付きをやれ。俺は２人を連れてストライクを殺る！」
「ミゲル達はどうする？」
「好きにやらせろ。ミゲルに任せて置けば問題はない！」
それだけ言うと、イザークはストライクに向かって行った。ディアッカは困った顔でそれを見送ると、どうしたものかとアークエンジェルを見る。
「おいおい、冗談だろ。足付きを俺１機で沈めろってかあ。やれるならとっくにやってるぜ･･････」
アークエンジェルの対空砲火は桁外れだ。いくらバスターの火力でも対抗出来るものではない。１機であれに挑むなどただの自殺行為だ。だが、他に助けてくれそうな味方もいない。
「やるしかないのかよ。シット、なんてこった」
なんだかイザークを恨みたくなるディアッカ。だが、そんな事を考えていると、いきなり強力なビームが機体をすぐ脇を貫いていった。驚いて周囲を確かめると、何時の間にか重戦闘機、スカイグラスパーが来ている。
「ちっ、またあいつか。もう１機の方は見当たらないが、まだ出てないのか？」
まさか、まだ直ってないとは思わないディアッカ。襲いかかってくるスカイグラスパーにランチャーを撃つが、それは容易く回避されてしまう。
「こいつ、確かエンディミオンの鷹だったよな。クルーゼ隊長がライバル視してるって言うが、確かに大した腕だぜ。ナチュラルとは思えねえ」
桁外れた技量を見せるスカイグラスパーにディアッカが呆れた呟きを漏らす。足付きと戦ってると、本当に自分たちがコーディネイターだということを忘れそうで困る。それほどにこいつ等は強かった。
アークエンジェルでは何時になく楽な戦闘に安堵した空気が流れていた。敵ＭＳは全てキラとフレイが相手取っている。バスターだけはこれを突破してきたが、これにはフラガのスカイグラスパーが対応している。バスターの鈍重な機体ではスカイグラスパーの機動性に翻弄されてしまい、こちらに近付く事もできないでいる。
マリュ−は見事な動きをするデュエルを見てしきりに感心していた。
「凄いわね、アルスター准尉は。デュエルに乗ってまだそんなに立たないのに、もうあれだけ動かせるようになってる。敵のブリッツを押してるわ」
「はい、今の彼女は連合でも屈指のナチュラルパイロットでしょうね。こう言っては何ですが、我々はキラ・ヤマトに続いて素晴らしい人材を得たのでしょう」
「あの娘は、フレイはもっと伸びるな」
ナタルは満足そうに呟く。自分の生徒の勉強の成果を確認した教師の満足感とでもいうものを感じていたのだ。
なんだか嬉しそうなナタルをチャンドラが不思議そうに見て問いかけた。
「副長は、アルスター准尉に何かを教えているんですよね？」
「ああ、戦術論をな」
「それで、教師の目から見て彼女はどうですか？」
チャンドラの質問に艦橋の全員が注目した。そして少し驚く。なんと、あのナタルが誇らしげに笑顔を浮かべているのだ。
「決まっている、実に出来の良い生徒だよ。このまま鍛えていけばどこまで伸びるか、楽しみだな」
なにやら口元に危険な笑みを浮かべるナタルに、ＣＩＣクルーは震えあがってしまった。不味い、あの目は非常にまずい。あれはサディストの目だ。誰もが心の中でフレイに同情しながらも、助けようとは微塵も思っていなかったりする。薄情な奴らだった。
ストライクに向ったイザークは、ついて来ている部下２機に指示をだした。
「お前達は上空から援護しろ。ストライクに実弾はほとんど効果がない、無理はするな！」
「「了解です！」」
だが、その返事に何か言い返す前に、１機がグゥルをビームに撃ち抜かれて落ちていった。投げ出されたシグーが地面に落ち、動けなくなる。
「隊長、駄目です、動けません！」
「脱出して適当な所に隠れてろ。後で回収してやる！」
イザークはそう指示を出したが、それが守られる事は無かった。シグーに近付いたストライクがビームサーベルを抜き、振り上げたからだ。
「た、隊長っ――――！」
「や、止めろ、ストライクぅぅぅ―――！」
イザークは叫んだ。だが、デュエルがビームライフルを向けるよりも早く、ストライクのビームサーベルがコクピットを貫いた。通信機から恐怖の絶叫が響き渡り、すぐに聞えなくなる。
イザークは震える拳をコンソールに叩きつけ、腹の底から怒りの絶叫を上げた。
「や、や･･･････やってくれたな、ストライクゥゥッゥウゥ！！」
続けざまにビームライフルを放ち、シヴァとミサイルを撃ち放つ。だが、ストライクは難無くその攻撃を躱すと、こちらを見た。それを見てイザークもグゥルを捨て、地上に降りる。
「貴様だけは、貴様だけはぁあぁぁぁっ！！」
ヨーロッパで部下をストライクに殺され、今また１人を殺されたのだ。イザークのストライクへの憎悪は凄まじいものとなっていた。
「デュエルか･･･････」
ビームライフルをそちらに向け、照準をつけようとする。だが、それが終わるよりも早くコクピット内にアラームが響き渡った。ロックオンされた警報だ。キラは素早くストライクを後退させながら周囲を確認した。すると、見たこともない新型が２機、こちらに向ってきている。どうやらビームライフルを装備しているようだ。
「新型･･････たかが２機か」
キラはそれでその２機の正体への興味を失った。たかが２機なのだ。ジンより多少性能が上がった程度なら恐れる事はない。何時も通り始末すればいいだけの事だ。今のキラにとって、それは新型ではなく、殺す予定のコーディネイターとしか映っていないのだ。
そんな風に思われてるとは知らず、ミゲルとフィリスはビームライフルを構えてストライクとの距離を詰めてきた。
「フィリス、背後に回れ。俺はこのままあいつを釘付けにする。イザークの奴が無茶しなければいいが」
「隊長の様子が変です。まるで平静さを失っていますよ！」
「あいつ、部下を殺されて切れたな。人一倍プライドが高い奴だが、責任感も人一倍だからな！」
ミゲルはゲイツを走らせながらビームライフルを続けて放った。その射撃でストライクの行き足を止めようとしたのだが、驚いたことにストライクはビームの射線の僅かな隙間を縫って回避してしまった。それを見たミゲルが絶句し、次いで掠れた声を漏らした。
「う、嘘だろ。化け物かよ、あいつ･･･････」
「ミゲルさん、逃げてください！」
フィリスの声に反射的に反応し、機体を動かした。直後にストライクの放ったビームが機体を掠めて通過していく。絶句していた僅かな間に狙われていたらしい。
「助かった、フィリス！」
「油断しないで下さい･･････でも、あのストライクのパイロット、本当に化け物ですね」
「ああ、イザーク、聞えるか、イザーク！？」
ミゲルはイザークに通信を繋ごうとしたが、何故か通信は繋がらなかった。モニター上ではデュエルがビームライフルをストライクに向けて乱射している。それを見てミゲルは顔を顰めた。
「まずいな、イザークの奴、本気で我を忘れてやがる」
「どうしますか、ミゲルさん？」
「すでに１機喪失、２機撃破されてる。今もニコルが敵のデュエルと殺りあってるし、ディアッカは足付きに取り付けないでいる。この状況で勝てると思うか？」
「ですけど、ＭＳ８機を投入して戦艦１隻、ＭＳ２機、戦闘機１機に負けろと言うんですか。赤服が４人も揃っていてですよ！？」
フィリスの声には屈辱が滲み出ている。まさか、ここまで一方的に負けるなどとは思っていなかったのだ。確かにストライクは強い、足付きも凄い戦闘力を持っている。だが、こちらもザフトの選りすぐりのパイロットを集められた部隊なのだ。それがまるで歯が立たない。いや、今は足付きがほとんど戦闘に参加していないから、たった２機のＭＳに負けている事になる。
「認めませんよ、私は、こんな事認めません！」
「よせフィリス、俺達じゃあいつには勝てない！」
「一戦も交えずには引けません。私にも意地があります！」
「このままだとイザークも死ぬぞ。撤退するんだっ！」
ミゲルは叩き付けるようにフィリスに怒鳴りつけた。フィリスは暫し沈黙し、やがて唸るような声で了解をよこしてきた。
「わ、分かりました」
「フィリスはエルフィとジャックを拾ってくれ。その後ニコルとディアッカと一緒に後退しろ。俺はイザークを連れて逃げる！」
「ですが、１人では難しいのでは？」
「俺を誰だと思ってる。魔弾の射手、ミゲル･アイマンだぞ。なんとかするさ！」
うひー、本気のキラはﾔﾊﾞｲですね…。
ミゲルと遺作は無事に逃げられるんだろうか・・・ｗ
第１話の頃から考えていた前半部のテーマが完結する日がやっときました。
これまでにどういう伏線が張られていたのか、気付いていた人はいましたかなｗ
>> リヴァオタと八アスのためでなく
フレイ様って、キラの幼馴染かなんかだったんですかい！？
何故に人様の家に突入出来るんでしょうｗ
正直なところ、伏線言われてもこれだけの長編だと前の方はほぼ忘れていますので（俺の記憶力の問題か…
しかし、これで前半って…一体どこまで続くんでしょう…
｢キラ、彼女は俺達が必ず助け出す！だから・・・！！｣
｢もう、そういう問題じゃないんだ！僕が戦うのを止めたら、フレイが殺される！！｣
（キラがああまで取り乱すなんて・・・。フレイ・アルスター、君はアイツにとってそこまで大きな存在なのか！？）
アスランがこの状態に陥ったキラを見るのはこれが三度目だった。初めは五年前、アークエンジェルと対峙した彼がキラの親友であったトールを殺してしまった時。二度目はコロニー・メンデルでのドミニオンとの戦いの最中、宇宙に放出されたフレイの乗った救命ポッドを救助しようとした時である。初回を除けば、キラの変貌にフレイ・アルスターの存在が関わっていることに間違いは無かった。今のキラを突き動かしているのは、ただ純粋なフレイに対する想いであった。アスランはこの時、身をもってそのことを教えられた。
｢あの娘の時も、トールの時も、僕はそこにいて何もできなかった！だから今度こそ、僕はフレイを守って見せるんだッ！！｣
『そうだよ、それが本当の君だ。君の力は戦いの中でこそ輝くんだ。これからはずっと僕が君の傍にいてあげるよ。だから、もっと僕と一つになろうよ！』
戦いが終わり、キラは自分の中にいる『戦士としての自分』を嫌い、ずっと封印していた。しかし再び戦いに身を置くことでキラの中でそれが解き放たれ、彼は次第に心を支配されつつあった。それに抗い続けるうちに、いつしかキラは自分を過酷な運命に追いやったモビルスーツ、『ストライク』とそれを重ね合わせるようになっていた。そして『ストライク』は、キラのフレイへの想いに付け込み、更なる狂気に彼を駆り立てようとしていた。
司令室では、フレイが二人の戦いを瞬き一つせず見守り続けていた。キラの口振りから、彼が戦っている相手がアスランであることは彼女にも分かっていた。フレイは彼のことを詳しくは知らない。それでも、彼がキラにとって一番の親友であることだけは理解していた。その二人が今、彼女の目の前で争っている。その間接的な原因が自分であるという事実ほど、彼女にとって辛いものは無かった。
（もう止めてキラ！貴方達が戦う理由なんて無いわ！それなのにどうして、・・・どうして私なんかの為に！？）
｢フンッ！つくづく恐ろしい連中だな、コーディネーターというのは・・・。｣
彼女の思いをよそに、隣りで二人の見ていたオルドワは明らかに彼らを蔑視した言葉を口にした。その発言に堪りかねたフレイは、彼に食って掛かった。
｢何であの二人をこんなに苦しめるような真似ができるの？貴方はそんなにコーディネーターが憎いの！？｣
｢苦しむ？私には血に飢えた獣か何かにしか見えんがね。・・・むしろ君が、何故そこまで奴らに肩入れするのかが私には分からんよ！｣
｢私は彼を、キラを愛してるわ！それが理由よ！！｣
｢ご高説だな。しかし今の君の姿を見たら、亡くなった君のお父上はどう思われるだろうな！？｣
彼女の父、ジョージ・アルスターはザフトとの戦いに巻き込まれて命を落とした。それによってフレイは、コーディネーターの滅亡という狂気に駆られてキラに近づいた。そのことは変え様の無い事実だった。
｢・・・ええ、そうよ！私はかつてコーディネーターを憎んだ。みんな殺してやりたいって思うほどに。でもキラは、そのことが間違ってるって私に教えてくれたの！そして私は理解したわ。コーディネーターとナチュラルは何も変わらないってことを！・・・血に飢えた獣は、むしろ貴方達の方じゃない！！｣
｢黙れッ！！私が、我らがあんな宇宙の化け物共と同じだとッ！？｣
｢貴方が何と言おうと、私は何度でも言うわ！ナチュラルとコーディネーターは分かり合えるって！！｣
オルドワの言葉に、フレイは凛とした態度を崩さなかった。そんな彼女の態度に、オルドワはひどく狼狽した。
その一方で、二人の戦いにも転機が訪れようとしていた。
》流離う翼たち
なんだかキラがえらいことになっちゃいましたね。うちのキラよりタチが悪いのではｗ？フレイ様が彼を止められるのか心配です。
》リヴァオタ
ハハハハ・・・ってキラｗ。それにしても歴代キャラ総集合な感じで豪華ですね。
》散った花、実る果実
確かにあの頃の二人はお互いに依存し合ってましたね。それで心を保っている感じでした。ちなみに自分はエロはOKですｗ。
》キラ♀
相変わらずフレイ♂様黒いなーｗ。カガリも妹守ろうと必死だし。兄にとって妹というのはそんなに可愛いんでしょうか？ついでに言うとうちのオリキャラ、クリスもシスコンですｗ。
うわぁ俺も忘れてる…読み直さないと。
伏線とかそんなに気にする必要ないんじゃない？ｗ
読んでてハッとするくらいでいいかと、気付かなくても面白いと思うしさｗ
>>作者さまへ
毎日楽しみに読ませてもらってます〜。
もう小説一冊分くらいのボリュームあるんじゃないでしょうか？ｗ
これからもがんばってくださいね。
アル、バーニィに留まらずシーブックも仲いいのね。何気に声が･･･(笑)
「終わりよ」
フレイは笑った。いい気分だった。目の前に広がる光景は、まさに彼女が望んでいたそのものだ。
赤く爛れた星々が彼女を口々に賛美する。あなたの勝ちだ、と。
振り返ることはしなかった。唇を吊り上げたまま、フレイは微動だにしない。
そっと瞼を下ろす。最後の瞬間に、思い出すのは薄茶色の髪のふりそそぐさま。
（わたしは正しいわ。ねえ、キラ）
吐息のようにその名を囁く。
それは轟音に呑まれ、彼女自身にすら聞こえる事はなかった。
そして星が弊える音に、ゆっくりと耳を傾けた――――――
このところ作品が減ったので、奮起してみた。
おお、中々なかった『様』モードのSSの予感ｗ
期待(・∀・)
爆音が幾重にも重なり、それが振動となってフレイを揺さぶった。
しかし瞼は重く閉じられたままだ。いまだ目覚めは訪れない。
彼女が今眠る場所は、空中だった。空を飛んでいたのだ。
いや、正しくは、空を飛ぶモビルスーツの、コックピットの中である。
しかし彼女は意識を失っている。MSを駆っているのは、仮面の男だった。
「見えてきたよ、お嬢さん」
男の呟きにも、フレイは目覚める事なく、ぐったりとその胸に寄りかかっている。
しかし男は構う事なく続ける。
「墓場からの奇跡の帰還だ。きのうまで君と言葉を交わした殆どの人間は、あと一時間もせぬ内に、消えるよ」
耳元に甘く囁く。まるで恋人にするような仕草だった。
フレイの眉に、僅かに皺が寄る。或いは男の声が、悪夢を読んだのかも知れない。
「そのとき、またひとつの扉が開く」
仮面の男は、そのまま真っ白いうなじにそっと口づけた。
「君は、鍵を持っているのかね？美しいお嬢さん」
（キラ…、キラ…）
フレイは、暗闇の中にいた。
どんどん遠ざかっていく後ろ姿。いつものように、鳥形のロボットを肩に乗せて。
フレイの網膜に焼き付いてしまった、おきまりの姿だ。
そして、いつものように、振り返って笑う、そのはずだったのに。
（キラ！）
声を上げても、振り返る事はない。そもそも、声なんか出ていないのかもしれない。
走っても、泥沼のような地面は衝撃を呑み込み、彼女はまったく前に進めない。
（なんでよ！なんでなのよ！なんで今になって！！）
フレイは叫んだ。声にならぬ声で。
（どうせなら、もっと前に、もっと早く、さっさと死んでくれれば良かったのに！）
酷い事を言っているのはわかっている。でも止まらなかった。
それは確かに、本心だった。ただし、その一片に過ぎない。
彼女自身、常に矛盾していた。
（ゆるさない！私を、私を…！！）
許さない、父を殺したキラを。
そして、キラを殺したザフト兵を。
決して許さない。
この世界を、これほどまでに憎んだ事は、かつてなかった。
その時、父の声が響いた。
そしてフレイは残酷な現実へと、覚醒する。
・
早速のレスありがとうございます。
「トマーシュ,実はお前に話がある」
「なんですか？」
「今日は暇か？」
「暇ですけど」
「なお俺の家に来い」
仕事が終わった後,トマーシュはカミーユの車,80年型シトロエンＣＸに
乗った。車を運転中,カミーユに聞いた
「俺に何のようですか？」
「お前に手伝いたいことがある」
「えっ？」
車はマンションの駐車場に着いた。その後,エレベーターで
上がり,8階にあるカミーユの部屋に着く。カミーユはドアを開けた
「あらおかえり」
「ただいま」
「この人,誰？」
トマーシュは聞いた
「ああ,妻のファだ」
「よろしくね」
「話って何です？」
「仕事の話じゃないんだ,お前に頼みたいことがある？」
「話は聞いてからにしてください」
「アームズインターナショナルに復讐をしたいんだ」
「アームズインターナショナルに？」
「ああ,ウルベ・イシカワって知っているだろ」
「知っている,副社長だろ」
「ウルベは俺の叔父で,やつは親父とお袋の研究を奪うため
親父たちを殺した」
「なっ！」
「そしてファの両親まで」
「なんて野郎だ・・・」
トマーシュの怒りは爆発していた。トマーシュは計画に
参加することにした。
アスランは「キラと一緒なら食欲あるのに」と思っていた。
あーあ,キラのやつ,なんで俺に興味をいだかないんだ？
「ねぇアスラン？」
「んっ？」
「明日,パーティがあるの」
「だから」
「一緒に来て」
「えっ？それかよ」
「いいじゃない,私とダンスしたり,キスしたり・・・」
「俺はお前の思っているやつじゃない」
「私はそう思わないわ」
「外見で選ぶのはよせ」
「一回ぐらい付き合って」
「・・・・・」
「おねがい」
「わかったよ」
アスランはうなづいた。アスランはわかっていた,セシリーの
芸能プロのパーティだと。
「イザーク、おいイザーク、聞えるか！」
「うるさい、何だミゲル！？」
「撤退するぞ、お前も下がれ！」
「ふざけるな、指揮官は俺だぞ！」
イザークは冷静さを完全に欠いている。ミゲルはそれを確信すると、余り使いたくない手を使う事にした。
「イザーク、このままだと、お前はまた部下を死なせることになるぞ！」
「なにぃ！！」
イザークは怒気を込めてミゲルのゲイツを睨んだ。機体越しにそれを感じたミゲルは無意識に首をすくめる。
「何が言いたいんだ、ミゲルっ！？」
「あのストライクは普通じゃない。アスランも加えた状態で当たるべきだ。あいつには俺達じゃ勝てない！」
「きっさまああああ、俺を、イザーク･ジュールを侮辱するつもりかぁあああ！！」
「文句なら基地に帰ってから幾らでも聞いてやる。喧嘩なら幾らでも買ってやる。だから今は退け、イザーク！」
何時になく強気に押し切ってくるミゲルに、イザークは意外さを感じつつも押し黙った。ミゲルと口論している内に少しづつ頭が冷えてきたのだ。そして、冷静になればミゲルの言うことが正しいという事も分かってきた。
「･･････分かった。全機撤退だ！」
逃げに入ったイザーク。それに続いて部下のシグーも撤退に入る。ミゲルも逃げに入ったが、それをストライクのビームライフルが邪魔をした。どうやら逃がすまいとしてるようだ。
「逃がす訳無いだろ。１機も生かしては帰さないよ。沢山殺さないと、フレイは戻ってきてくれないんだから」
「ちっ、素直に逃がしてくれりゃ良いのによ！」
ミゲルはビームライフルを撃ちまくった。もう逃げるつもりなので後を気にする必要は無いからだ。だが、ストライクはミゲルの射撃を難無くかわして近付いてくる。ミゲルはそのストライクから感じる威圧感に寒気を覚えていた。
「くそ、この化け物がああ！！」
ミゲルはナチュラルのパイロットにコーディネイターの自分が化け物呼ばわりしている事に、いささか場違いな驚きを感じていた。まさか、ストライクのパイロットがコーディネイターだとは思っていないのだ。
「邪魔するなよ、そのデュエルは色々と目障りなんだからさ」
距離を詰めてビームライフルを使い難くし、シールドでゲイツの胸部を付く。重量のあるシールドの一撃は思いのほか大きな衝撃となるため、ミゲルのゲイツは後ろに数歩押されてしまった。
中のミゲルは衝撃に顔を顰め、機体を必死に立てなおす。
「何なんだよ、こいつは。ゲイツはカタログスペックじゃデュエルに勝ってる筈なんだぞ。何でこうも一方的に押される！？」
そう、ゲイツは連合のＧ兵器を参考に、これに勝ちうる性能を与えられている。確かにフェイズシフト装甲は持っていないし、機体性能で劣っている面もある。だが、総合的に見ればデュエルくらいには充分勝てるはずなのだ。ストライクがデュエルに勝る性能を持っているのは間違い無いだろうが、その差はほとんど無い筈なのだ。なのにこうも一方的に押されるという事は、パイロットの技量が違うということなのだろう。
だが、その認識はミゲルのプライドをいたく傷付けた。ミゲルはイザークほどプライドの塊では無いし、相手が自分より上だという事を受け入れる度量もある。だからアスランを立てて、自分は縁の下の力持ちのような役割を演じてもいる。
だが、それは相手が同じコーディネイターであればだ。ストライクのパイロットはナチュラルであり、ナチュラルが自分よりも格上などというのは流石に受け入れ難い屈辱だった。いや、ストライクだけではあるまい。向こうではニコルのブリッツがデュエルに苦戦している。こちらははっきりとデュエルの方が性能に劣るはずなので、デュエルのパイロットはニコルよりも凄腕という事になる。
「ふざけるなよ、ナチュラルが、コーディネイターよりも強くなれるっていうのかよ！？」
それはコーディネイターにとっては、あってはならない事だった。コーディネイターはナチュラルをあらゆる面で上回る進化した人類である。それがコーディネイターの考えであり、矜持だった。いや、そう思い込む事で自分たちを騙し続けてきたと言っても良い。
そうなのだ、もしナチュラルが何もせず、自然なままの成長でコーディネイターを超えられると言うなら、自分たちは何故遺伝子を弄ってまでこんな力を手に入れたと言うのだ。払った代償は出生率の低下という、種の存亡に関わる問題だというのに。
「なんの代償も支払わずに、俺達を超えて行くっていうのか、ナチュラルが！？」
それは許し難い事。あってはならない事。もし、ナチュラルが進化して自分たちを超えて行くというなら、自分たちはまさに間違った存在だという事になる。
そんな事は、あってはならないのだ･･･････
ニコルは焦りさえ浮かべてこのデュエルに罵声を浴びせていた。
「なんなんですかこいつは、こっちの動きが見えてるとでも言うんですか！？」
もはやミラージュコロイドを使うメリットがないと判断し、ニコルはミラージュコロイドを解除し、フェイズシフトを展開する。理由は分からないが、とにかくこのデュエルにはこちらの動きが分かっているらしい。
「ミラージュコロイドを無力化する索敵装置でも開発したんですか。元々そっちの物ですから、そういう装置があるのかも知れませんが」
いずれにしても、こいつは厄介だと、ニコルは判断した。ビームライフルの狙いは背筋が寒くなるほど正確であり、回避能力もかなり高い。何より、こちらの動きをかなり正確に読み切られている。ふざけた話だが、ニコルはこのパイロットをエスパーか何かではないかとさえ思い始めている。そうでもないと説明がつかない動きをしているからだ。
苦戦するニコルにようやく駆けつけてきたジャックが援護射撃を始めた。
「ニコルさん、大丈夫ですか！？」
「ジャック、シグーでどうにかなる相手じゃありません。前には出ないでください！」
「分かってます！」
赤を着て、実戦経験も豊富なニコルがこうも苦戦を強いられているのだ。自分が勝てるとは思っていない。だが、ジャックには信じられなかった。ストライクといい、このデュエルといい、同じ連合の機体なのに、何故ザフトのエリート、赤を着るイザークやニコルが勝てないのだ。
フレイは目の前のブリッツが怖いとは感じなくなっていた。確かに強いが、勝てない相手ではないと判断したのだ。前に戦ったジンの方が遥かに手強かった。至近距離から放たれたランサーダートも躱してみせ、近付いた一瞬に抜いたビームサーベルの一閃でトリケロスと、その下に隠されているビームライフルを真っ二つにしてしまう。
「くううっ！」
トリケロスを失ったニコルは焦りを浮かべてブリッツを下がらせた。これでブリッツの武器はグレイプニールとビームサーベルだけになってしまった。ブリッツも高い格闘能力を持っているが、シールド無しでこのデュエルと斬りあう気にはなれない。大きく後ろに飛んでデュエルから離れ、ビームサーベルの間合いから離れる。
「強い、このデュエルのパイロット。ヨーロッパで戦った時はイザークに一方的に押されていたのに、この僅かな期間でここまで腕を上げたと言うんですか」
ふざけた話だが、事実は事実と認めるしかない。あのストライクのパイロットといい、ナチュラルでも訓練と経験を積み、才能に恵まれればコーディネイターのエリートでも勝てないほどの強さを発揮するのだ。
傷付いたブリッツとジャックのシグーでこのデュエルに勝てるとはもはや思えなかった。ニコルはジャックに退くように言い、自分も逃げに入る。だが、追撃されたら逃げ切れる自信は無かった。
そんな２人を助けたのはフィリスのゲイツだった。森の中から現れ、ビームライフルでフレイのデュエルの動きを封じる。
「ニコルさん、ジャックさん、無事ですか？」
「フィリス、助かりました！」
「ナイスタイミングだぜ、フィリス！」
フィリスの来援にニコルとジャックは歓喜の声を上げた。フィリスはクスリと微笑むと、フレイのデュエルと２人の間に割りこむ。
「撤退します。エルフィさんを回収して退がってください！」
「ですが、あなたは？」
「私は私で何とかします。だから早く！」
退いていくブリッツとシグーを見送ったフィリスは、デュエルを見据えると低い声で呟いた。
「私にも意地というものがあります。何もせずに負けるというのは気に入りませんので、本気でやらせてもらいますよ」
「ＳＥＥＤを発動するのは久しぶりですが、悪く思わないで下さいね」
フィリスはゲイツを走らせた。デュエルのビームライフルが狙ってくるが、今のフィリスにはそのビームの粒子さえもが見て取れる。ビームが放たれてからこれを回避する事が今のフィリスには可能だった。流石にキラほどの凄さではないが、その動きはやはり桁外れのものだ。
物凄い動きをするゲイツに、フレイは驚いた。
「何よこいつ、速い！？」
フレイの反応もナチュラルとしてはかなり凄いのだが、このゲイツの動きはその数歩上を行っている。だが、フレイのよく分からない感覚はこのゲイツの動きさえフレイに読むことを可能としていた。撃ちこまれるビームを巧みにシールドで弾き、反撃のビームを放つ。感覚を研ぎ澄ますほどフレイには相手の動きが読み取れる。いや、相手の動きその物がスローテンポとなっていく。これがフラガの呟いた「戦闘感覚」と呼ばれる能力らしいのだが、フレイはそんな事知る由もない。そもそも、この名前とてフラガ達が勝手に付けたもので、実際にどういう能力なのか、詳しいデータがあるわけでもないのだ。
フィリスは大木に機体を隠しながらゲイツを走らせる。試作ゲイツとデュエルではデュエルの方が防御力は圧倒的に高い。自分の方は頭部イーゲルシュテルンでもダメージになるのに、向こうはミサイルの直撃でも平気なのだ。これはハンデなどと言うレベルではない。相手のパイロットも生半可な腕ではないのだから。反対にゲイツはパワーと反応速度で勝っている。ようするに、フェイズシフトさえなければゲイツはデュエルより強いのだ。
だが、大木に隠れるゲイツにすぐ傍をビームが通過していき、散った粒子が機体に焦げ目を作る。フィリスは驚きを隠せなかった。
「今の私の動きを先読み出来るのですか、隠れている場所が分かるのですか、このパイロットは！？」
フィリスには信じられなかった。ＳＥＥＤを発動させている自分でも見えない相手を撃つ事は出来ない。このパイロットは一体･･････
「ナチュラルは魔法でも使えるって言うんですか？！」
吐き捨てながらもフィリスは木の僅かな隙間から見えたデュエルめがけてビームを放つ。向こうにして見れば完全な奇襲になるはずなのだが、手応えがまるで感じられない。負けるとは思わないが、このままでは不味いのもたしかだ。
しかし、フィリスにはまだ余裕があった。確かにこのデュエルは桁外れに強いが、勝てない相手というほどでもない。だが、もしこのデュエルのパイロットがヨーロッパの時と同じだとしたら、その成長速度は･･････････
「ここで戦う事に意味はありませんが･･････このまま見逃す訳にも･･････でも、今は仕方ありませんね」
悔しそうに呟いた。すでにニコルとジャックは十分な距離を離れている。そろそろ潮時だとフィリスも考えた。その時、機体の異常を示すアラームが鳴り響き、ビームライフルを持つ右腕の油圧系に異常が発生したことをサブモニターが表示して教える。
「機体故障、こんな時に･･････だから新型機というのは！」
フィリスはこれ以上の戦闘を断念すると、煙幕を展開して逃げに入った。フレイにも追うつもりは無かったので、これで戦いは終わる筈だった。だが、一息ついた途端に物凄い殺気を感じたフレイは視線をストライクへと向けた。
「キラ、早く止めないと、早く！」
フレイはデュエルを走らせた。急がないと、キラは本当に壊れてしまう。
「ミゲル、急いで！」
すでに安全圏まで退いているフィリスとニコルが撤退を促している。退けるならとっくに退いていると言い返したかったが、そんな余裕もない。今のストライクは恐ろしいほどの殺気を撒き散らし、自分はその攻撃を回避するだけで手一杯なのだから。
その頃、アークエンジェルでは余りにも敵を深追いしているストライクにミリアリアが躍起になってキラを呼び続けていた。
「キラ、もう良いわ。戻ってきて、キラ！」
「どういう事だ、ストライクは何故戻らない！？」
「分かりません。呼びだしにも応じません！」
ミリアリアの悲鳴のような答えに、ナタルは顔を顰めてマリュ−を見た。
「どうなさいますか、艦長？」
「とりあえず、信号弾を上げて頂戴。通信が妨害されてるか、故障の可能性もあるし」
「はっ、了解しました」
アークエンジェルから撤退の信号弾が打ち上げられる。だが、それにもキラは従おうとはしない。彼に何かあったのだろうか。必死に呼び続けるミリアリア。だが、それに返って来たのはキラの声ではなかった。
「キラ、駄目よ。もう止めてぇ！！」
それは、フレイの悲鳴のような叫びであった。通信機から艦橋内にその絶叫が響き渡り、聞いた全員が驚いた顔になった。フレイが、キラを止めようとしているから。
「な、何よ、アルスター准尉は何をしようとしてるの？」
「分かりません。フレイ、何が起きてるの、フレイ！？」
マリュ−の戸惑ったような質問に、ミリアリアは困惑した返事を返し、必死にフレイを呼び出すが、最悪の通信状態で思うように回線が繋がらないでいる。そうこうしているうちに、なんとフレイのデュエルがストライクに攻撃を開始した。デュエルのビームライフルの火線にストライクは追撃を止め、デュエルを狙って撃ちかえしだしている。艦橋のクルーがその光景に呆然としている。目の前で、味方同士が戦っているのだから。
キラは混乱していた。何故、どうしてフレイが僕を止める。フレイは僕にコーディネイターを殺せと言っていたのに、だから僕はこうして頑張っているのに、フレイはそれを分かってくれないのか。
「なんで、なんで止めるんだよ、フレイ」
「キラ、お願い、話を聞いて！」
「･･････話、話って、今更何を話すんだよ！？」
キラは怒りと絶望を前面に押し出して機体を動かしはじめた。フレイには見えた。キラの絶望と怒りが、暗い想念となってストライクを包んでいるのが。その怒りの矛先が自分に向いているのが。
止めなくてはいけない。このままだと、あの優しくて臆病で泣き虫なキラは消え去り、憎悪と殺意に支配されたキラと化してしまうかもしれない。それはもうキラでは無い。キラの姿をしていても、それはキラではないのだ。
「止めて見せるわ。私の全てを使って、何がなんでもキラを元に戻して見せる！」
一瞬命を賭けてでもという考えが過ったが、すぐにそれを打ち消した。キースも命を捨ててなにかを成し遂げるなんてのは馬鹿げた話だと言っていた。今ならそれが分かる。利己的と言われようが自分勝手と言われようが、私はキラと共に歩みたいのだ。キラだけを生かしてやろうなんてつもりは全く無い。サイを振ってまで歩むと決めた道なのだから。
フレイはキラという強敵を前に、不敵な笑みをひらめかせた。
「そうよ、私はキラと一緒に生きていきたい、キラと一緒に未来を見たい、キラだけが幸せになるなんて許さない、キラは私も幸せにしなくちゃいけないのよ！」
なんとも無茶苦茶で自分本意な意見だが、これがフレイの出した答えだった。巡り巡ってフレイが辿り着いたのは、自分らしくキラを好きになろうという答えだったのだ。自分を偽らない、飾らない、もう嘘を付くのも止めた。そして素直になったフレイは、昔の我侭振りを取り戻したのだ。
キラとフレイ、かつてはともにあった２人が、今武器を手に殺しあっている。キラはフレイを取り戻す為に。フレイはキラを正気に戻そうとして。お互いを求める心がありながら、２人は銃を向け合っている。
今、２人はその力の全てをもって激突した。
ええと、何処まで続くんでしょう。私にもまだハッキリしたことは分からないんですね
手元の完成状況では、もうすぐオーブに付くんですが、載せるのはいつ頃でしょうｗ？
>>chain
ううむ、どっちを応援すれば。頑張れキラというべきか、頑張れアスランと言うべきか
でも、フレイ様ってアスランをどう思ってるんだろう？
>> K.E.Y
これは、ジョジュアの時ですか。フレイ様が仮面にさらわれた時ですね。フレイ様結構酷い事言ってます。こういうのは久しぶりですｗ
>> リヴァオタと八アスのためでなく
遂にアスランとセシリーが！？ 駄目だセシリー、そいつはかなり危険な獣ぞｗ！
混乱していた。少なくとも地球軍はそうだった。
指揮系統が寸断され、自暴自棄と紙一重の交戦が開始された。
戦おうにも敵がどこにいるのかわからない。
退却しようにもどこに逃げればいいのかわからない。
守備隊が確認したジンの機数すら二機だ六機だと定まらなかった。あげくには
１ダースの編隊を目撃したといいだす兵士までいて、ふざけるなこの馬鹿者と上
官に殴られ、殴り返した時には本物のジンが砲弾と一緒に上から降ってきた。
ザフトのしかけた破壊工作とウィルス攻撃と広域ＥＣＭによる情報の遮断は実
に効果的だった。士官のほとんどが初期のテロのまきぞえを食って死傷するとい
う予想外の大当たりもあって、守備隊は組織的な行動をほとんど取れないまま一
方的に分断され、撃破されていった。
幸運の女神の大盤振る舞いをザフトは甘受していた。
少なくともこの時点までは。
現実には、戦闘がおこなわれているのは比較的狭い範囲に限られていた。
モルゲンレーテ社の工区とその周辺部である。
占領するのでもない限り、市街に被害を拡大させるのはリスクを伴う。外交的
に突き上げをくらうし、何より余分の戦力が必要になる。
民間人の損害を可能な限り考慮した、という言い訳が近代戦では重要だ。
可能な限り、というのがミソだった。
いくら巨大といっても密閉されたコロニー内部で戦闘をおこなって、被害がま
ったく拡大しないということはありえない。流れ弾、誤爆、状況誤認―――市街
を巻き込む原因は山ほどあったし、事実被害は広がりつつあった。
遅まきながらヘリオポリス市全域にレベル８避難勧告が出された。
非常に危険だからシェルターに逃げ込め、だ。
市民の避難がたいした混乱を伴わなかったのは事態が認識されていなかったと
いう、ただそれだけの話だった。戦争がやってきて玄関先で暴れているという脅
威を正しく理解していたものは、ヘリオポリス市民にも当局にも皆無だった。
中立国であるオーブは危機を想像するには平和すぎた。
誰もが理解しないまま、状況は悪化の一途をたどり続けていた。
ビームライフルの荷電粒子に貫かれたジン０３が誘爆を起こす。
直撃を受けた０３の胸部は超高熱による融解を起こし、ぽっかりとした黒い穴
が背中まで抜けている。最初のプロセスは機体内部で進行する。熱と推進剤との
結託が劇的な反応を引き起こす。機体のあらゆる接合部と隙間が炎を吐く。莫大
な熱量が瞬間的に内側を地獄に変える。人体など一瞬で消し炭だ。焼け爛れた内
装が黒煙を上げるが、それも束の間のことだ。わずかに遅れて爆発、閃光がモニ
ターしている画面全体を白く焼いた。衝撃波はそれよりさらに遅れ、それでも指
揮車まで届いて車体を激しく揺さぶった。
「やりやがった、やりましたよ！ 大尉、ジンをやりました！」
チャンドラは今にも拍手しかねないほど浮かれていた。
喝采だけでは全然足りない。目の前にいるならリャン大尉に抱きついてキスし
てやりたいくらいだ。地球軍士官としては無理ない反応だった。それほどにモビ
ルスーツの脅威は地球軍全体に深く濃く認知されている。
ジンと地球軍の主力機メビウスとのキルレシオは五対一以上とされる。
ジン一機を撃墜するまでにメビウスが五機落とされるという計算だ。単純戦力
比ですらこの有様で、実戦での格差はさらに広がる。だから、ムウのように五機
撃墜などというスコアを有するエースは、言ってしまえば雪男や宇宙人と同じ扱
いだった。現場からみれば一種崇拝の対象にすらなった。
そのジンを、一撃で沈黙させた。
「すごい……まったく、なんてヤツだ！ 大尉、正直『Ｇ』がこれほどだとは思
ってませんでした。こんなにあっさりジンをしとめるなんて！」
ムウは後ろで腕を組んだまま押し黙っている。表情が固い。
鋭い電子音が居並ぶモニタに反響した。
ムウの沈黙に同意するかのような「準優先」警告メッセージの文面はあまりに
簡素で、地球育ちのチャンドラは数秒間その意味するところを把握しそこねた。
デュエルＴＲ−２のライフルから発射された荷電粒子は貪欲だった。
熱量の矢はジンを破壊しただけではまるで飽き足らず、コロニーを横切って光
の川を貫通していた。五機種八機のＸナンバーが主兵装としているビームライフ
ルは巡洋艦の主砲クラスだが、Ｘ１０２〈バスター〉のテストベットになったＴ
Ｒ−２が装備しているものは一つ桁が上だ。戦艦の主砲クラスである。
巡洋艦級だろうが戦艦級だろうが、実のところ大した違いはない。
ビーム兵器にとって、コロニーの外壁など紙切れ同然だ。
当然のことながら大穴が空いた。
チャンドラは蒼白になってムウに救いを求めた。
コロニー内部の気圧が低下しつつある。原因は外壁の破損、空気の流出。
「―――リャン、敵を振り切って船渠まで逃げられるか？」
『だめだ……こいつは歩かせるのもひと苦労で、撃ち返すのがやっと……』
さらに一発、ビームがコロニーを横切った。気圧低下の速度が上がる。
「リャン、せめて回避行動を取れ！ 被弾しすぎだ、電源が落ちるぞ！」
『……無茶いうな！ そん、』
ＴＲ−２に直撃。回線がノイズで埋もれる。
ムウがインカムを投げ捨てた。蹴り飛ばすようにハッチを開けて運転席へ飛び
こんで、ものもいわずに指揮車のエンジンを始動させる。
「大尉、何するつもりです？！ 大尉！」
「船渠」
「船渠って……リャン大尉を置いては」
「俺らがいたってできることないでしょ。旗ふって応援してるよりいくらかマシ
だよ。アークエンジェルが生きてりゃ発令所と連絡が取れる。ハンガーにはＴＲ
−４だって搬入終わってんだろ」
ムウはちらりとモニタに横目を走らせた。
デュエルの背面が大写しになっている。知ってる限りの名前の神さまに、節操
もなくリャンの無事を祈願した。グレン・ショックで宗教界の地図が複雑怪奇に
書き換わっても、信心を駆逐することは誰にもできない。
ヒトには祈る対象が必要だ。戦場のような場所では特に。
「とばすぞ、舌噛むなよ！」
踏みつぶすようにアクセルを蹴りこんだ。
指揮車は太い駆動音でわめきながら船渠めがけて突っ走る。
イザークはキレた。
バージニアが死んだ。事実が塊になって腹の底へ落ちると同時に、怒りにまか
せてフットバーを蹴りこんでいた。
奪取したばかりの機体だ。慣熟訓練をはじめてもいない。機体捕獲後は速やか
に帰還せよという命令すら出ていた。
全部塗りつぶされた。
憤怒の色に頭の中が染まって真っ赤になる。
デュエルＴＲ−１は放たれた矢のように突撃した。
反応。ＧユニットのＦＣＳは優秀だ。ジン０３の爆発熱を捕捉する。
―――バージニア・カースン、出撃します。
リフレインする声を聞いた。最後の顔が何故かぼやけて思い出せない。ころこ
ろと笑っていた。無邪気な子犬のように跳ねまわる仕草だけが記憶にある。アカ
デミーの次席だったイザークの前だと、気の毒なほど緊張して堅くなる様子がお
もしろかった。
叩きつぶしてやる。イザークは決意する。
ＴＲ−１は街路樹を蹴散らしながら右から仕掛けた。
だが、反応が悪い。思うように機体がついてこない。
「くそっ、このガラクタが！」
Ｇユニットはナチュラルによる運用試験機だ。当然の結果でもある。
システムを再設定する余裕はなかった。
速度を維持したままフィードバック値をチェック。ゼロにゼロを掛けてもやっ
ぱり答えはゼロのままで、まるっきり期待できないとわかると、システムが握っ
ている制御の一部を強引にマニュアルへ奪いとる。ＦＣＳの精度を失うのは諦め
て、姿勢制御を反射神経と勘だけで代行し、ＴＲ−１を走行させた。
「ミゲル、引っ込んでいろ！ そいつは俺が殺る！」
ミゲルは待たない。
０１が０３の誘爆に身を隠して、ＴＲ−２に接近する。ミサイルが崩し損ねた
ビルの廃墟を遮蔽物に三度の一撃離脱を敢行し、二発のビームを避けた。０１の
七十六ミリ弾はＰＳ装甲を貫通できないが足止めには成功した。
気を取られたＴＲ−２はカカシも同然だ。ＴＲ−１はバランスの悪い機体を安
定させるため片ひざをつき、ほくそ笑みながらビームライフルの狙いを定める。
ビルがひとつ間に挟まっているが、磁束されて射出される荷電粒子には、そんな
ものレインコートほどの障害にもならない。トリガーを、
『―――イザーク、ライフルは使うな！』
絶妙のタイミングで入ったアスランの通信が神経を逆なでした。
『コロニーの被害をこれ以上広げたくない』
「腰抜けが！ ヴィーを殺られたんだぞ、見逃せるか！」
イザークが怒鳴る。回線ごしに息をのむ気配。バージニアが、というアスラン
の呟きを感度のいいマイクが拾ってしまう。
『……ライフルを使うな、といっただけだ。それで無理なら俺が行くまで待て』
意図しているわけではない分、アスランはたちが悪かった。
「無理なら」も「俺が行く」も、いちいちイザークの矜持を刺激する。
「………………いいだろう」
感情は沸点を越えると、かえって低温になるものらしい。
「ライフルは使わん。お前は機体を持ってさっさとヴェサリウスに帰還しろ。俺
はこいつを始末してから帰る」
『―――おいおい、大丈夫かよ。相手はジンを一発でやるような化物なんだろ』
ディアッカ・エルスマンは、この期に及んでどこか面白がるような調子。
「同じ機体でナチュラル相手に遅れをとるか。お前もさっさと帰って寝ろ！」
戦術システムの警告がリャンを躊躇させた。
ＴＲ−１の接近をセンサーが告げている。こちらの後方へ回りこむように移動
してくる。被弾とビームライフルの使用でバッテリーが残り少ない。ライフルな
らあと三四度の射撃が限度。数秒後には挟み撃ちにされると知って、逃げるか、
という弱気が頭の端をかすめた。
ベントンの仇だ、と言い聞かせるようにつぶやいた。
リャン・リャオシーは呆れるほどに単純な解答で勝負をかけた。
思い切りよく０１に背を向けて、ＴＲ−１を照準。ＰＳ装甲は健在だ。ビーム
兵器を装備するＴＲ−１を破壊すれば、残るジンは時間の問題にすぎない。
リャンが判断を躊躇ったのは、ほんの一呼吸程度の時間だった。
その一呼吸の間に、ＴＲ−１は至近距離まで肉薄していた。
広い輸送路をニ歩で横切り、ビルを迂回し、誘爆した０３の熱量と黒煙をダミ
ーにしてセンサーを欺瞞した。影のように疾駆するＴＲ−１が、交戦距離５０に
食い込んだのは戦術システムの予測値より二秒も早い。
同じ機体だとは、言われなければ断じて信じられない動きだった。
歯軋りは絶望の味がした。
コーディネーターとの越え難い壁の味かも知れない。
それ以上考える前に、リャンはビームライフルをトリガーする。
四発目のビームはあさっての方向に軌跡を描いた。
ＴＲ−１のビームサーベルが、長大なライフルを両腕ごと切り飛ばした。
マリューの頭上からコンクリートの塊が雹のように降ってきた。
ひどい話だった。
二日酔いよりひどい目覚めを迎えたばかりなのに、サイとカズィに支えられ、
ストライクの足下から離れるのに必死になる。巨大な脚部が大またで、すぐ上を
乗り越えた。誰なのあなたたちと尋ねて、学生ですキラの友達のと応える余裕が
あったのはサイひとりだった。サイにしても余裕というより反射で、誰もが逃げ
るのに懸命で余力も猶予もまるでない。
轟音に振り返って、マリューは見た。
瓦礫をはね飛ばしながらジン０４が再起動していた。恐怖を感じるより感心す
る。まだ生きていたのかと思う。見上げるジンの顔つきはなぜか髑髏を連想させ
る。死神と呼ぶには生々しすぎるライフルの砲口が鈍く煌いて、一連射で一区画
を丸ごと吹き飛ばしてしまおうとした、その瞬間、
ストライクが爆発した。
爆発と見紛う常識外れのフルバーストで、ストライクは跳躍した。
ビルの残骸がスラスターの炎に吹き飛ばされる。トールもミリアリアもマリュ
ーたちも、爆風にあおられて立っていることすら難しい。目を開けるのも困難な
熱風を巻きながらストライクが急上昇する。
「あぁ…………」
何ひとつ状況のわからないまま、マリューは手塩に掛けてきたストライクが、
自分の手を離れて飛び出す様子を悲痛な声で見送った。
ストライクが逃げる。
０４が追う。
ジンとは比較にならない推力にものをいわせて、ストライクはセンターシャフ
トを挟んだコロニーの反対側を一気に目指す。曳光弾の軌跡とスラスターの閃光
が飛び交う。０４からの火線がストライクの進路を遮る。ろくな回避機動もとれ
ないで笑えるくらい直撃する。それでもＰＳ装甲はしのいだが、体勢の崩れた隙
をついて０４はストライクの上方を奪い取っていた。
逃げるマリューたちのすぐそばに流れ弾が落ちてくる。衝撃と土砂を頭からか
ぶる。爆音に耳が死にかける。マリューは何度も何度も上空を見た。逃げてと叫
んだ気もする。届くはずもないが叫ばずにはいられない。
「―――へ」
「えっ、なん―――――、」
サイは立ち尽くした。起こっていることが理解できない。目の前に銃口があっ
た。肩にしがみついたまま、マリューが拳銃を突きつけていた。目と鼻の先にあ
るオモチャのような拳銃から、火薬と油の匂いが立ちのぼってくる。
「……第一船渠へ私を連れて行きなさい」
マリューは、骨まで届くような苦痛に脂汗を浮かべている。
「モルゲンレーテの第一船渠へ……早くっ！！」
背後でトールが悲鳴をあげた。マリューの呼吸も止まった。
上空。
０４がストライクを蹴った。
ひとたまりもなかった。どんなＭＳも、デリケートな空中機動の最中、他のＭ
Ｓに蹴り飛ばされる事態を計算しているはずがない。
墜落した。
目眩のするような角度と速度で、ストライクは一直線に地表めがけて落下する。
作戦はすでに五分の遅延を見せていた。
ヴェサリウスの発令所に管制官の沈着な声が飛び交っている。
「分析によれば使用されたのはビーム兵器、それも艦砲級とのことですが……」
アデスの眉間に深くしわが刻まれる。
正面ディスプレイ。ヘリオポリスが巨大な画面を占有していた。まるで銀色の
鯨のようだが、比較する物のない宇宙空間で現実感を喪失するほどの巨大さを実
感するのは難しい。ときおり太陽光を反射してコロニーの周りでキラキラと煌く
ものは、破壊されたミラーの破片だった。
コロニー外壁の破損はヴェサリウスからも確認できた。銀色の肌をえぐる破砕
孔の実害も、やはり肉眼では判別しがたい。
ラウ・ル・クルーゼは表情も変えずにサブモニターを眺めている。何をみてる
のか、とアデスは思う。サブモニターには、ヴェサリウスの左舷に並走する僚艦、
ローラシア級巡洋艦ガモフが映っている。
クルーゼの冷笑が深さを増した。
「ビーム兵器の小型化にも成功していたとは、地球軍の新型、予想以上だ。なか
なかに侮れん。もう少し早く察知できていればと悔やまれるよ」
「……よろしいのですか？」
「何がかな」
「コロニー内の戦闘で被害が拡大しています。仮にも中立国相手です」
「議会の許可は取りつけてある」
「国防委員長閣下の許可では？」という本音を、アデスは寸前でこらえた。
「アデス、気に病むことはない。協定違反は彼らが先に仕掛けたことだ。それに
忘れては困るな。我々ザフトは―――テロリストだよ」
揶揄するようなクルーゼの台詞は、少し癇にさわった。
今日でこそコーディネーターの聖地とされるプラント（P.L.A.N.T.）も、本来
は「Productive LocationAllyon Nexus Technology（結合的テクノロジーによる
生産的配列集合体）」の略称だ。グレン・ショック以降、北大西洋連邦など数ヶ
国によって成立した国際研究機関がその前身だった。規模の拡大にともなって特
別行政区として扱われるようになったものの、正式には、プラント理事国の管理
下にある一機関というものがプラントの立場だった。
ありていにいうなら、プラントは国家ではない。
数千万の人口が独立と自治をかかげ、軍備を整え核武装してもなお、少なくと
も地球連合は、プラントを公式に国家とは認めていない。
開戦の際にも、これは国家との戦争ではなく、あくまでもテロリストとの戦い
であることを繰り返し連合は強調した。テロリストとの戦いであるから、連合と
プラントの間には今もっていかなる戦時条約も締結されていない。
アデスは向き直るふりをしながら、目を逸らして言葉を濁した。
連合の振りかざす建前に従う限り、なるほどザフトはテロリストだ。中立コロ
ニーを破壊しようが民間施設を強襲しようが、条約すら結ばれていないのだから
協定違反で責められる筋合いはどこにもない。だが、それを良しとすることは自
らがテロリストであることを認めることにもなる。
二千万の同胞の盾であり剣であるザフト。
アデスは、自分を無骨な男だと思う。
が、出世には縁のない、気の利かぬ男ではあっても、プラントと同胞を守る軍
人としての誇りもあれば信念もある。
ザフトは軍隊としての階級を持たない。市民軍的な性質を強くする。もともと
プラント自警団を母体として生まれた組織だからだ。
我々は軍人であって、テロリストではない。
そう思う。
「未確認機、距離７００、グリーン・アルファ９に侵入。熱紋照合、該当なし…
…いえ、識別信号確認しました。アスラン・ザラです」
管制官の報告を契機に、クルーゼが席を立った。
「どちらへ、クルーゼ隊長」
「私も出撃するとしよう」
予期せぬ言葉はアデスの不意をついた。
「１０３が撃破されるとは予想外だったよ。まさかこんなところでジンを失う派
目に陥るとは、ザラ議長に顔向けもできん。イザークの帰還も遅れている。連合
の新型、それほど戦えるというのなら、一度この目で見ておきたい」
銀色の仮面が笑っている。
生まれて初めて、死の匂いを間近に嗅いだ。
棺桶のようなコクピットに、自分の荒い息づかいだけが狂ったように響く。
無人の市街は死骸のように沈黙している。
居住区の避難はとっくに終わっており、ただ人がいないというだけなのに何度
となく目にしたはずの街並みが安物のセットみたいにオモチャめいている。流れ
弾で所々歯の抜けた街並みの、ビルとビルの狭苦しい隙間に入りこんで息を殺し
た。使い方もろくにわからないセンサーは、黙っていても丹念に敵の行方を探し
続けている。
まだ生きているのが不思議だった。
考えてみれば当然だった。終わったと思い込んでいたのが最初から甘かったの
だ。失神したマリューをコクピットから下ろしたところで、死んだはずのジンが
息を吹き返した。ＦＣＳが照準波を捕捉するまでもなく相手の敵意は明らかだっ
た。一発でも発砲されれば、ストライクのキラはともかく、足下にいるトールた
ちは区画ごと根こそぎにされてしまう。
冷静さを失い、慌てふためいて無我夢中で上昇した。
逃げ切れなかった。
蹴り飛ばされた。
脳をシェイクされるような衝撃がきて上と下が入れ替わって意識が頭蓋の外へ
飛ばされかけて、空中でストライクの制御を失ったキラは、
死、
を思った。
どうしようもなく明確で逃れようのない死。
一瞬の何分の一かの時間で叫び出したくなる恐怖と絶望に追いつめられて、キ
ラは無様なくらい情けなくただ生き延びるためにコントロールレバーへしがみつ
いた。パニック寸前で研ぎ澄まされた生存本能とニューロリンクしたＯ．Ｓ．が
どうにか機体制御を取り戻した時、地表までの距離は百五十を切っていた。脊髄
反射でスラスターを点火。上も下もわからないまま当てずっぽうの逆噴射。地面
に抱きつかなかったのはひたすら運がよかっただけだ。地上すれすれを横っ飛び
に吹っ飛ぶストライクは、開発者が見たら泣き出すような曲芸じみた姿勢制御を
繰り返しながら、ロフトを二つ巻き添えにし、ビル一つを押し潰して、居住区の
ど真ん中に限りなく不時着に近い着地を遂げた。
安堵した瞬間、ぶり返しがきた。
歯の根がちっとも合わなくなる。震えて音を立てる。迫ってくる灰色の大地が
フラッシュバックする。震えが全身に広がって止まらない。レバーを握りしめた
指が、フットバーを踏む足が、石になったみたいに固まっていた。絞め殺される
ような嗚咽が押さえられない。悲しくもないのに涙がこぼれて、モニターがにじ
んで前が見えなくなり、雫が膝に落ちて幾つも幾つも染みをつくる。
ただ、怖かった。
膝を抱えて耳をふさいで目を閉じて頭を空っぽにして誰かが助けに来てくれる
のを何もしないで待ち続けたい。
警告音が鳴らなければ、ずっとそうしていたかもしれない。
キラが泣こうが喚こうが文句一つ言わず律儀に役目を遂行していた集音センサ
ーとＩＲシーカーが、崩れた瓦礫の下から微弱な反応をひろいあげていた。
かすかな呼吸音と心音、それから体温。
生存者か、それとも逃げ遅れた誰かがそこにいた。
誰かどころではない。
キラもよく知っている。
フレイ・アルスターだった。
ストライクで瓦礫を取り除いた瞬間、目が眩むほど驚いた。
意識のないフレイを背負ってコクピットに運び込む。狭い対Ｇシートの上。白
かった肌も桜色のワンピースも真っ黒に汚れたフレイのぐったりとした身体を、
座った自分の膝に乗せて、軽く揺すりながら囁き声で呼びかける。
「フレイ…………フレイ…………」
呼吸はしている。目立った怪我はない。
しかし、それだけだ。意識が回復しない。返事をしてくれない。
刃物のような鋭い冷たさが腹の奥に滑りこんでくる。
フレイが倒れていたあたり、瓦礫の下から白と黒の二色がのぞいている。片方
はバックで、片方はスカートの端だ。見覚えがある。ついさっきレンタルカース
ペースで目にしたはずだ。両方ともフレイの友達が身につけていた。名前をどう
しても思い出せない。フレイがサイから手紙をもらったんだと明るい声を弾ませ
ていた。あそこにいるのかも知れない。コンクリートの破片が小山のように積も
ったその下に。床と瓦礫の、ほんの二センチもない間隙に、
確かめる勇気はなかった。
「フレイ……フレイ……フレイ、フレイっ！」
声のトーンが上ずっていく。
他の言葉を忘れたように、ただ名前だけを繰り返した。
「フレイぃっ！！」
金切り声になった。
フレイが、びくっと、わずかだけ身じろぎをした。
「フレイ……」
「…………パ……パ……？」
心底、ほっとした。
「……よかった、聞こえる？ 僕が誰だかわかる？ 痛むところは？」
フレイはキラの言葉の半分も理解できていない。
ジェシカたちとエレカに乗っていた。突然大きな音がした。
そこでフレイの記憶は途切れている。
精神の機能がほとんど止まっているのに、それでも外からの刺激に反応して、
意識は活動を再開しようと躍起になった。もぞもぞと手足を動かす。座りごこち
の悪い椅子だと思う。ゆっくりと二三度まばたきをする。そこは薄暗く狭い、左
右に手を伸ばせばそれでいっぱいになりそうな場所で、情けないほどくしゃくし
ゃになった男の子の顔が、すぐ傍にあった。
この子、どこかで逢ったかしら。
そして、次の一秒。
キラが心臓の止まるような悲鳴をあげた。戦術システムがありったけの警告メ
ッセージをぶちまける。地獄の釜のような騒ぎの最中、キラが見たのは後方から
高速で接近してくるジン０４。
ストライクを反転させるより早く、０４は発砲した。
耳を聾する衝撃音、コクピットが台風みたいな騒ぎになって、
「きぃやぁぁっっ！！」
フレイが心臓の止まるような悲鳴をあげた。意識が突然接続されて、過去の爆
発と現在が一直線に結びつく。悲鳴、悲鳴、際限なく悲鳴の上に別の悲鳴を折り
重ねていく。周囲なんて何一つ目に入っていない。状況なんて何一つわかっては
いない。それでもフレイは息の続く限り叫びつづけた。
「いゃぁあ―――っ、やぁ、パパっ、パパぁ！ 出して、ここどこのなの！ い
やよ、私いやはやく早く出してェ！！」
「フレイっ、おちついて静かにして暴れないで止めて、やっ――――」
華奢な身体のどこのあったのかと思う力でフレイはキラを振り払う。でたらめ
に手足を暴れさせ、高純度のパニックにかられたまま座席から飛び出して、
「…………フレイ？」
キラの膝に座り込んで、フレイはいきなり静かになった。
「フレイ……フレイっ？！」
返事がない。意識がない。コクピットは情けないほど狭い空間だ。立ち上がっ
た時に頭でも打ったのかもしれない。
確かめる余裕はなかった。
０４が来た。今度は蹴られた。
警告メッセージとエラー表示と何種類ものステータス。それでも冷静に「逃走」
を推奨する戦術システム。もはやどこか上か下か転げまわるコクピットの中では
見当もつかない。それでもキラは必死になってフレイの身体を抱き止める。手を
離せば、飛ばされれば、当たり所が悪ければ、今度こそ本当に死んでしまうかも
しれない。絶対に、何があっても離さないよう両腕に力をこめる。
もう一発蹴られた。
フレイを抱えてキラの両手は塞がっていた。操縦を放棄されたストライクはひ
とたまりもなく転倒する。０４が蹴る。何度も蹴る。弾が尽きたのか、衝撃で中
身を破壊しようと考えているのか、キラにもよくわからない。
恐怖で視界が真っ暗になる。
膝の上の体重とそこから伝わってくるぬくもりと顔のすぐそばで聞こえる呼吸
の音が、キラをぎりぎり正気に踏みとどまらせた。
このままだと、フレイも、死ぬ。
守らなくちゃ―――。
キラは思う。強く強く思う。
死神が迫ってくる。
０４がビルの残骸を踏み潰して接近する。
メインカメラが飛び散る残骸に混じる青いポシェットを映していた。
あそこにはフレイの友達が「いた」はずだ。
火がついた。
キラの中で、ずっとくすぶっていた怒りが恐れを上回った。
ジンが来るまで三秒。フレイを抱く左腕に力をこめる。腕の中の暖かさと確か
にある形が力をくれる。右手だけでＦＣＳを再チェック。武器が欲しい。使用可
能な、敵を倒せる武器。
あった。
スラスターを併用して飛び起きる。一瞬立ちすくんだジンがとっさの反撃に出
るよりも、ストライクとキラの反応速度がまだ速い。左右の腰部ラックから両手
にアサルトナイフを抜き放ち、獲物を狙う野獣のように疾駆する。
「うぁあああぁあぁぁあぁぁ――――――――――っ！！！」
最後に背中を押したのは怒りよりも決意よりも、やはり恐怖だ。
死への恐怖。
敵への恐怖。
自分／フレイが殺されることへの恐怖。
アサルトナイフ�爛◆璽沺璽轡絅淵ぅ澄辞瓩詫廚垢襪烹唯咼汽ぅ困離淵ぅ佞世�
た。原始的な武器だが、設計上はジンの装甲を貫通可能とされている。
設計通りに、左右の切っ先は０４を苦もなく貫いた。
ＦＣＳの指示する最適攻撃目標をキラは寸分たりとも外さなかった。
左で駆動部を、右でコクピットを。
０４の両膝が落ちる。
糸の切れた人形のように擱座する。
「…………終わっ……た？」
結末がまるで信じられない。
勝利の実感も生存の感激も皆無のまま、キラはモニターをただただ睨みつけ、
気を抜けばさっきのように起きあがってくるのではないかと疑い続ける。
どれだけ時間そうしていたのだろう。
目と鼻の先に鮮やかな赤い髪があることに、ようやく気がついた。
煤と埃と瓦礫の臭いに混じって、女の子の甘い香りが鼻をくすぐる。必死に抱
えこんだ分だけ密着していたフレイの、こわれものみたいな細さと柔らかさに逃
げ出したくなるほど取り乱す。それでも、もうしばらくこうしていたいという欲
求は、どうしようもなく甘美で抗い難かった。
服の下が水でも浴びたように汗でべとついていた。そんなことに気を回す余裕
さえなかったのだと改めて思う。フレイの小さな鼓動は腕の中にたしかにある。
戦争も爆音もＭＳもコクピットも敵になったアスランも、そんなものが現実だな
んて信じたくないし納得したくもない。今、フレイは生きていて、自分も生きて
いて、その事実だけが間違いようのないキラにとっての現実だった。
思考を停止させた。何も考えたくなかった。
キラの腕の中。
フレイ・アルスターは死んだように目を覚まさない。
守れたのだと思って、キラ・ヤマトは泣いた。
機能を停止したジン０４の中。
ラスティ・アイザックはハッチとアサルトナイフに押し潰されて死んでいる。
儀式は厳かに行われた。
連合最大のアガメムノン級戦艦を二周りも凌ぐ三〇〇メートル級の船体から、
低くて重い目覚めの咆吼が船渠全体に轟き渡る。
アークエンジェル級強襲揚陸特装艦〈アークエンジェル〉。
白亜の巨獣が覚醒と解放の予感に喘いでいる。
開いた口が塞がらないほどだだっ広いモルゲンレーテの第一宇宙船船渠、半壊
したドックに横たわる白い巨艦が、眠る力を持てあましているかのように、不調
法な侵入者たちに怒りをたぎらせているかのように、かすかな微動を繰り返す。
その発令所。
船体のほぼ中央、ビルを思わせるアイランドの頂上に発令所は位置していた。
そこは巨体に相応しい十分なスペースがとられている。が、所狭しと押し込めら
れた新型機材のおかげで、スペックほどには広く感じない。
「機関、報告せよ」
『こちら機関管制室。現出力６５パーセント。定格まで４５０秒』
「船内状況、報告せよ」
『こちら船内管理室。生命維持システム問題なし。各部正常なり』
「デッキ、報告せよ」
『こちらデッキです。第一、第二、共に固定終了。出港準備完了なり』
「ＣＩＣ、報告せよ」
「全レーダー、全通信システム、全電子戦システム、異常なし」
「全兵装システム、リンク。テスト終了。異常なし」
「戦術システム〈Gabriel〉、正常」
艦長席でナタルは大きく深呼吸した。
あと一言でアークエンジェルは縛めを解かれる。胸が高鳴っている。興奮と期
待を抑えきれない。船乗りならいつの日か艦長席に座ることを夢見るが、こんな
形で夢が叶うとは思ってもしなかった。
もう一度、深呼吸をした。
覚悟を決めた。
「―――どういう状況？！ 答えなさい！」
狙いすましたようにマリューが発令所に飛び込んできた。
とっさに次の言葉がでてこないナタルの傍へ、衛生兵の肩を借りた真っ青な顔
色のマリューが、それでも大股で発令所を横切ってくる。
その後ろからジャッキー・トノムラ伍長が付いてきた。
衛生兵が当のマリューより青い顔をしているのは、手当てもすんでいないマリ
ューが走り出したからだが、トノムラは上官の負傷にも他人事めいた表情を崩し
ていない。トノムラは寡黙な男と周囲からは見られている。ときおりの冷笑癖に
も批判めいた評価が多い。孤独な男だ。
「バジルール中尉！」
「はっ。ザフトの攻撃で指揮系統が寸断されました。私の責任において生存者を
収容、現在アークエンジェルの出港を準備中です」
「アークエンジェルを……出す気なの。キンケイド大佐の許可は？」
「本部はだぶん壊滅だよ」
副操舵手席に陣取っていたフラガが、くるりとイスごと向き直った。
「俺もさっき着いたんだがね、途中で本部の近くを通ってきた。落盤があったら
しい。そりゃ生存者も探せばいるかもしれんがね」
「そんな……大佐が……」
「どうする、ラミアス大尉？ 先任士官は俺だが、パイロットの俺はここじゃあ
陸に上がった河童同然だ。この中で一番階級が高いのはキミだろ」
マリューは愕然とする。キンケイドのあっけなさすぎる喪失を感情が理解する
のを拒んでいる。ナタルはすでに直立の姿勢をとっていた。キンケイドの座るは
ずだった艦長席が、これ見よがしの空席でマリューの判断を待っていた。
いっそ逃げだしてしまいたい。
当たり前だった。これほどの艦の艦長をやろうというのだから。
艦長といえば大佐の役職と相場が決まっている。経験も経歴も見識もまるで足
りない。一人前になるまでどんなに早くても二十年という世界なのだ。マリュー
などオシメの取れたばかりの赤ん坊と変わらなかった。
ましてアークエンジェルは連合最大規模の特装艦だ。
だが、逃げることはできない。
命令してくれる者も他にはいない。士官である以上、望むと望まざると、乗員
全員の命と未来、それを背負って決断しなければならない。
マリューは、ニ三度躊躇ってから、ゆっくりと手を差し出した。
ナタルが、その手に艦長帽を手渡した。
「バジルール中尉、艦の指揮は……今より私が」
「アイ・マム。状況をお伝えします。生存者は１０６名。これは負傷者２１名、
重傷者６名を含んだ数字です。内、任務に従事可能なものは９２名。すでに全員
を作業にあたらせています。士官は艦長を含めて５名です」
「アークエンジェルの最低運用人数は１２６名……苦しいわね。人数不足の上、
公試も慣熟航海もなしで即実戦なんてね」
決断のために三秒かかった。
マリューは艦長席に就いた。
っている暇も与えない。中身と素肌に見とれていた男たちは、マリューに横目で
にらまれて、あたふたと目をそらす。
「……弾は貫通してます。動脈も外れてるようです。輸血と鎮痛剤を」
「鎮痛剤はいいわ。薬で頭がぼけたせいで艦が沈んだら笑えないでしょう」
衛生兵はそれ以上口を挟まず、手早く応急処置を終えた。
傷は痛むが緊張しきっているからか、あまり感じない。
おもむろに発令所を見渡す。
「マリュー・ラミアス大尉です。今より本艦の艦長に着任します」
「ダリダ・ローラハ・チャンドラ�鏡ぞ�尉であります！ 管制官に就きます」
チャンドラが慌てて立ち上がり敬礼する。
眼鏡の、センスと育ちの良さがうかがえる東洋系の士官だ。
「ロメロ・パル伍長であります。第八機動艦隊の巡洋艦〈クッシング〉で砲術科
におりました」
パルは小太りな男だった。
体型同様に丸い性格だと嬉しいのにと、マリューは秘かに思った。
「アーノルド・ノイマン少尉であります。操舵に就きます」
ノイマンは典型的な士官学校上がりのようだ。
経歴はマリューも知っている。巡洋艦〈フィラデルフィア〉の副操舵手を努め
ている。実戦経験はないが優秀というふれこみだった。本来ならアークエンジェ
ルの副操舵手だったはずだ。
「ジャッキー・トノムラ伍長であります。自分はＣＩＣに入ります」
トノムラはどこかぞんざいに敬礼する。
「ムウ・ラ・フラガ大尉だ。ま、お互い見ず知らずってわけでもないし、細かい
ことは端折っとくか。大丈夫さ、なんとかなるって」
ムウは不敵な笑みを浮かべる。こんな状況だというのに、右も左もわからない
どころか一分先の保証すらない事態だというのに、ムウは笑う。
軽薄でいけ好かない男だ。
ずっとマリューは思ってきた。管制局の女の子に手を出した。昨日は整備課の
子と店に入っていった。そんな噂を山ほど聞いた。聞くたびにひどい男だと感じ
たし、実際に逢っても反りの合わない印象だった。
けれど、今はその不真面目な笑みがありがたい。
軽口を叩かれて、はじめて、自分の余裕の無さに気がついた。
もう一度深く息を吸う。落ち着くことだ。なによりも生き延びるために。
「ナタル・バジルール中尉であります」
あらためてナタルが敬礼する。
「バジルール中尉。あなたが副長を」
「自分が、でありますか」
「他にいないでしょう。私の他にアークエンジェル級のことをわかってる士官は
この場に、あなただけよ」
「……イエス・マム。ナタル・バジルール、ただいまよりアークエンジェル副長
の任にあたります」
「よろしい、ナンバーワン。……チャンドラ管制官、Ｇの状況はどう？」
「Ｘ１０２ＴＲ１、１０３、２０７、３０３……以上が起動信号確認後に識別を
抹消。ザフトに奪取されたと思われます。Ｘ１０２ＴＲ３は起動前に破壊された
のが確認されています。ＴＲ４は本艦の第１デッキに収容。ＴＲ２は―――」
聞けば聞くほど絶望したくなる状況だった。
「リャン・リャオシー大尉が起動に成功。ザフトと交戦中に信号途絶…………撃
破、されたと思われます」
沈黙が落ちた。
ムウは一言ももらさない。軽く目を閉じただけだった。
「ですが、Ｘ１０５は現在も稼動中です。現在市街地に……」
「それだよ、回線まだつながらないのか。誰がストライクに乗ってるんだ」
「……乗ってるのは民間人です。子供の」
「はあ？」
マリューの解答にムウが当然の反応を示した。何言ってるんだこいつ、という
顔をムウはする。
「事情は後ほど説明します。今は出港の準備を」
「あの、ラミアス……艦長、同行された民間人の処置は」
衛生兵が申し訳なさそうに口を挟んだ。
「民間人……艦長いったい何事です？」
「ここまで連れてきてもらったのよ。………怪我で動けなかったから」
ナタルは渋面を作った。
「中立国の民間人を軍艦に乗せるのですか」
「ここから歩いて帰らせるわけにはいかないでしょう。見殺しにする気？！」
思わず声が荒くなる。
「…………いいわ、艦内に拘束しておいて。細かいことは戦闘後に」
敬礼して飛び出す衛生兵の背中に、手荒にはしないでと付け加えてから、マリ
ューは軽く唇を噛む。
他に手段はなかった。だが、巻き込んでしまった。
中立国の、民間人の、それも子供たちを。
慙愧の念を振りきる。そこに心を振り向ける余裕さえ、今はない。
「ナンバーワン、発進シーケンスは？」
「最終を残すのみです、艦長」
「発進シーケンスをスタート。非常事態のためプロセスＣ３０からＬ２１までを
省略。主動力オンライン」
「あの……航海長はどなたですか？」
不安げな顔のノイマンを、ナタルが鋭く一喝する。
「今は少尉が兼任だ。いない者をあてにするな」
「了解、です。……この歳で航海長になるとは思いませんでした」
「艦長。艦起動直後にローエングリンの発射を進言します。港にはザフト艦が待
ちかまえているはずです。コロニー側へ脱出しなければ沈められます」
「コロニー内部で陽電子砲を使ったら汚染が広がるわ」
表情を変えたマリューと対照に、ナタルは冷静を崩さない。
「他の兵装ではドック外壁の岩盤を破壊するには不足です。住民はすでに避難を
終えているでしょう。人的被害は最小ですみます」
最小の被害。
軍人にとって錦の御旗のようなその言葉。
マリューは一瞬だけ迷った。
「……特装砲〈ローエングリン〉発射準備。目標、正面ドック外壁。艦起動直後
に発射。発進後は対ＭＳ戦闘を想定せよ」
「アイ・マム。特装砲発射準備。目標、正面ドック外壁。対ＭＳ戦準備」
マリューが命じる。ナタルが復唱する。
発進シーケンスは着実にクリアされていく。主動力コンタクト。主機関異常な
し。全システムオンライン。気密隔壁閉鎖。インカムを通じて、総員衝撃に備え
よと、マリューは艦内全てに号令する。
どの顔も堅く色をなくしていた。
ムウだけが泰然と笑っている。
外面だけだ。それでも一人くらいは笑ってた方がいいと、ムウは思う。
いけ。
胸の中でだけ呟いた。
秒読みが始まる。
「ラスティがやられただとぉっ！」
左舷デッキの冷えた空気にイザークの叫びはよく響いた。
整備兵、つかみかかったイザーク、二人はひと塊になって重力のない格納庫の
中空を流れていく。イザークの声と拳に火傷しそうな熱がこもっている。気温ま
で上がったような気がする。Ｇユニットの再チェック中だったディアッカとニコ
ルは、何事かとコクピットから半身を乗り出した。
ヴェサリウス、左舷ＭＳデッキ。
奪取した４機のＧユニットと待機中のジンが居並ぶハンガーデッキは、巨大な
神像が居並ぶ古代の神殿を連想させる。
「奴だって赤を着てるんだ。そう簡単にやられるか！」
「そんなこといったって、先発からの報告なんですって……交戦中に信号が途絶
えて、その前に連合のＭＳを捕まえるって……だから、たぶんそいつに……」
「くそっ、こんな作戦で二人も死んでたまるか……確かめてきてやる！」
整備兵を乱暴に突き飛ばし、反動でイザークはキャットウォークへ飛んだ。慣
性の法則に従って整備兵はくるくる回りながら反対の壁へ流された。ディアッカ
とニコルの声が背中にあたるが、イザークは振り向こうともしない。
後ろも見ずに発令所へ急ぐイザークの熱も、アスランには届いていなかった。
最初の一言で十分だった。ハンマーのような衝撃に打ち据えていた。
ラスティがやられた。
連合のＭＳを捕獲しようとして、そいつにやられた。
俺のミスなのか。アスランは血の気を失うほど唇を噛む。
あの時、捕獲を命じたからか。Ｇユニットの捕獲が望ましかったのはたしかに
事実だ。が、アスランに判断させた理由は他にある。キラだ。誰が知らなくても
アスラン自身がそれを承知している。
狭いコクピットでは逃げ場が無かった。のしかかってくるものにアスランは吐
き気を憶える。罪悪感。自己嫌悪。悔恨。急き立てられるように、ハッチを閉め
て機体の起動シーケンスをスタートさせた。
突然の成り行きにハッチの外で整備兵たちが騒いでいた。
発令所からの回線が不審を尋ねた。
「出撃許可をお願いします、アデス艦長」
『何を言っている、クルーゼ隊長から命令は出ていない！』
「奪取に失敗した地球軍の新型が、戦闘行動を継続しているとうかがいました。
新型相手にジンの火力では対抗できません」
『だからといって鹵獲機体を持ち出して何になる！』
「イージスのライフルならＰＳ装甲を貫通できます。艦長、許可を。これ以上の
損害は避けるべきです」
切迫した声で説得しながら、アスランをエレベーター床の上へイージスを移動
した。出撃時は機体をリニアカタパルトへ運ぶエレベーターは、まだ動かない。
アスランは目を閉じて待ち続ける。
ごうん、という鈍い振動が機体全体を揺らした。
エレベーターが上昇をはじめる。
『……進言をいれよう。アスラン・ザラ、出撃を許可する。ただし、運用には細
心の注意であたれ。すでに１０３、１０４が損耗している。敵戦力は事前の予想
以上だ。キミのも、再調整も慣熟もしていない機体であることを忘れるな』
「艦長、感謝します」
アスランの胸中で小さなしこり渦巻いた。
何の為に出撃するのか、アスラン自身にもよくわからない。
ラスティの仇を討ちたいからなのか。
それとも。
キラの行方を確かめたいからなのか。
『…………ライク〉、Ｘ１０５〈ストライク〉、応答しなさい。Ｘ１０５』
ＥＣＭの壁を貫いて、回線が開かれた。
「あ、……はい……あの、僕ですか？」
『キミ……さっきの子？ 無事だったのね』
「あの…………？」
『私はマリュー・ラミアス。地球軍所属、アークエンジェルの艦長です。格納庫
でキミに助けられたわ』
「ああ、さっきのひと」
『詳しい話は後です。ストライクの状態はこちらでモニターできています。今は
速やかにアークエンジェルに合流してください』
「アークエンジェル……なんですか、それ」
『キミの真上にいます』
キラは真上を見た。
黙って流れていく雲。集光ミラーの光の壁。重々しいセンターシャフトと、そ
こから垂直に生えた無数の糸のようなアキシャルシャフト。その向こうには青空
ではなく円筒の大地が広がっている。
戦争など嘘のような、コロニーの空だった。
影が落ちた。
巨大な物体がミラーから入射する光を遮っていた。
ストライクの真上を、３００メートルはある巨大な船が横切っていく。
白い大天使がコロニーの空を舞っている。
エレベーター床がイージスをリニアカタパルトの待機位置へ運んだ。
ナスカ級の船体は細身のナイフを思わせる流線型のフォルム。両脇にある、モ
ビルスーツデッキを兼ねたバルジが外見上の特徴だ。左右のデッキブロックに挟
まれる位置、船体の中央のリニアカタパルトに、真紅のイージスは磁場に支えら
れて浮かんでいる。
「１０７、発艦位置に着いた」
『了解。１０７、離艦せよ。発進後は管制の誘導に従え。ザフトのために』
「１０７、了解。ザフトのために」
アスランは前を見た。
銀色の鯨。
真空の宇宙はどこまで無音で凪いで、ヘリオポリスは虚空を隔てた遥かな距離
に、戦火など知らぬげに巨体を横たえている。
呼ばれているような気が、何故かした。
発艦ステータスのシグナルが青に変わる。
「―――アスラン・ザラだ。イージス、出るぞ」
長い真紅の槍のように、イージスは飛んだ。
［Phase-02 complete］
次スレになったらどうしようかと思いましたが、かろうじて投下できました。
ほっ。
にしましても、
投下する前にドンドン新作が投下されていくってどうなのか。
以前にもまして作品が増えてるんですがｗ
愛されてるなあ、フレイ様。
感想は後ほどあらためまして。
次スレヨロ。
……まさか、SSスレ立てた当時はpart4まで行くとは考えてなかったよ…
住民の底力を甘く見てました。＿|￣|○ｽﾏﾝ
乙です。もう投下しないのかと少し諦め掛けてましたｗ
なんとかＡＡは動いたけど、結局Ｇは２機が破壊、２機が守れたですか
フレイさまはキラがもう助けてるんですねえ。でもコクピットで気絶･･････
ナタルは艦長になれると思った矢先にマリュ−さんに邪魔されてるしｗ
でも、イザークがコロニーに戻るんですねえ。ミゲルはもう死んでるし。
まさか、ミゲルの変わりにイザークが真っ二つですか！？
いつもながら、素晴らしいとしか言いようがないですね。
まさかここでフレイ様が！！
今のところ，死んでるのは，ヴァージニアとラスティでは？
イイ味だしてますよ！！
副官のダコスタからの、アークエンジェル発進の報を受けて、虎は軽く肩を竦める。
恐らくは、直接アラスカを目指す為に、紅海を抜ける腹積もりなのだろう。
アークエンジェルは、こちらの方向へと真っ直ぐ進路を定めており、この速度だと、
後三十分もしないうちに、レセップスとの戦闘可能区域に達する計算になっている。
「やっぱり、動いてきたか。後一日ほど出撃を遅らせてくれたら、助かったのにな…」
“時は金なり”とは良く言ったものだ。もう少し時間が稼げたら、ジブラルタル基地
からの増援も期待出来たし、何よりも例の秘密兵器を万全の体制に調整できるのだが。
「それと、例の二人組が隊長に直訴したいことがあるとか。何でも現在の戦闘配置
に不満があるみたいで…」
ダコスタがうんざりした表情で、そう言い終えないうちに、顔に傷を負った銀髪の少年と、
褐色の肌をした金髪の長躯の少年が、レセップスの艦橋へと入ってきた。
「イザーク・ジュール、入室します」
「ディアッカ・エルスマン、同じく入室します」
ザフトのエリートにのみ着服を許された、目立つ赤色のパイロットスーツに身を包んだ
二人の少年兵が、堅苦しく敬礼してバルトフェルドに挨拶する。
バルトフェルドは胡散臭そうな目を彼らに向ける。虎の以前からの再三の援軍要請に対し、
ジブラルタル基地が送り込んできたのが、宇宙から降ってきたクルーゼ隊のこの二人だ。
今現在、ザフトの各地上基地は、ザラ国防委員長発案で、彼らの隊長であるクルーゼが
全体指揮を執る、ザフト軍の命運を賭けた一大作戦「オペレーション・スピットブレイク」
の準備に忙しく、たかだが一隻の戦艦を沈めるのに割く戦力を惜しみ、ジブラルタル
でも持て余され気味だった、地上戦闘経験のないお荷物が宅配されてきたというわけだ。
戦争を早期終結させる鍵となる、スピットブレイクに懸ける軍の意気込みは分かるが、
たかだが一隻の戦艦と、何よりその艦を守るＭＳとパイロットの脅威を正しく理解して
いるのが、虎がお互いに反目し合っているクルーゼ唯一人だけらしいという軍首脳部
の現状認識の甘さに、些かの危機感を抱かずにはいられない。
巨躯な堰堤（ダム）の予期しえぬ崩壊は、常に蟻の一穴からと相場が決まっており、
何としても、足付きとあのＭＳはパイロットごと、ここで沈める必要性があるだろう。
「……ですから、何故我々が後方支援に廻らねばならないのですか？
遠距離砲撃タイプのバスターはともかく、デュエルは中距離以内の近接戦闘でこそ
真価を発揮する機体ですし、私はあのストライクを圧倒した実績もあるのです」
思考に耽る虎の意識が、イザークの熱弁によって再び現実へと引き戻され、目の前の
少年を見つめる虎の瞳は、ますます胡散臭い色を濃くした。
虎は、彼があの泣き虫のお嬢ちゃんを圧倒したなど信じられなかったが、別にイザークは
嘘を吐いているわけではない。彼自身は、シャトルの爆発で有耶無耶になった前回の
一騎討ちでの優勢は、自分の実力の成果だと信じ切っていた。その敵戦力評価の未熟さ
こそが、アスランが評した彼の能力の限界を指し示していたのかも知れないが…。
砂漠という特殊な地形効果が、ＭＳに及ぼす数々の悪影響について虎は説明し、今回の
戦闘ステージでの、彼らの役者不足を指摘したが、イザークは聞き入れない。
砂漠での機体の適応など、キラに出来るのなら自分も可能だと過信しているみたいである。
聞き分けのない子供のように駄々を捏ねるイザークに程ほど手を焼いた虎は、ポケットの
中に忍ばせた携帯のスイッチに手を伸ばし、最終兵器を発動させる。
「はぁ〜い、坊や達、元気にしてた？」
突如、イザークの演説を遮り、抱き締めるように後方から二人の肩へ手を廻した者がいる。
虎の現役復帰要望に応えて、今回の戦闘に参戦した、彼のパートナー（愛人？）である。
「「ア…アイシャ………さん！？」」
後ろを振り返り、アイシャの妙艶な笑みを視界に捉えた二人の表情が完全に引き攣った。
身体のラインがクッキリと浮き彫りになる、白の艶やかなパイロットスーツに身を包んだ
黒髪の美女は、しな垂れるように二人の顔の合間に、自分の頭を割り込ませると、
「うふふっ…、最近遊び相手がいなくて淋しいのよね。
坊や達は良い素材だし、また、私のところに遊びに来てくれないかしら？」
その彼女の言葉に、死をも恐れぬ歴戦の勇者であるはずの二人が震え上がった。
何かアイシャに強いトラウマでもあるのだろうか？
イザークとディアッカが彼女を見つめる瞳は、恐怖と脅えに満ち充ちていた。
「しょ…小官は、機体の準備をしなければいけないので、これで失礼致します！」
「お…おい、待ってくれ、イザーク。俺を置いていかないでくれ！」
二人は肩を抱かれたアイシャの手を振り切ると、転げるように艦橋の出口へと向かう。
「お〜い、ジュール君。さきほど君から具申があった戦闘配置の変更についてだが…」
「げ…現状のままで、十分であります！」
早く、この場を去りたかったイザークは、虎の見え透いた懐柔案に曖昧に肯くと、
ディアッカを連れて、艦橋から姿を消していった。
「あ〜あ、振られちゃった…」
逃げ往く彼らの後姿を名残惜しそうな瞳で見つめていたアイシャは、軽く両肩を竦めて、
桃色の吐息を吐き出した。
「アイシャ君、君の趣味は、前途ある数多の若者の人生を狂わしかけていることを、
もう少し自覚しないといけないね。まあ、今回はそれで助かったけどね」
敢えてそう嘯く虎に、アイシャはお茶目に舌を出してみせる。
一部始終を見ていたダコスタは表情を青ざめさせながらも、微妙な年齢制限に
引っ掛かって、青年である自分が彼女の標的（ターゲット）から外されている
という現状に、心からの安堵の溜息を漏らした。
もっとも、ダコスタ君の不幸せな未来は、イザーク達とは全く別の形で、
これから彼の身の上にも降り掛かることになるのだが…。
精神のチャンネルを切り替え、さっきとは打って変わって真摯な表情で虎に問いかける。
「それで、真面目な話し、彼らは今回の戦闘で使えそうなの、アンディ？」
「さて、どうだろう…。あのお嬢ちゃんのような異常な真似が、誰にでも可能だとは
思えないし、されても敵わないかな…」
キラのような規格外の化け物は、希少だからこそ、まだ可愛げもあるというもので、
もし、彼女のような存在が、数多く戦場で跋扈されたら、凡人としては非常に堪らない。
虎の大好きな東洋の将棋に喩えるなら、誰もが“歩”からスタートし、“金”に成り上が
ろうと必死なのに、彼女は“飛車”から始めて、さらに貪欲にも“竜王”に生まれ変わ
ってしまっている。イザークとディアッカの二人にも、髪の色に因んで、“銀”と“金”
ぐらいの活躍は望みたいところだが、宇宙空間ならともかく、この限定された環境化では、
彼らは“歩”としか思えなかったので、是非とも、彼女のように戦場でクラスチェンジ
（“金”成り）してくれることを期待したいが、果たしてどうなることか…。
「それで、アイシャ、アレの準備の方は？」
虎は気持ちを切り替えると、今回の棋戦の妙手となる切り札について彼女に尋ねる。
「もう少し掛かるわね。本当に後ちょっとだけど、それまで敵は待ってくれないわよね？」
「そいつはまずいかな。あの竜王（お嬢ちゃん）なら、単騎で王様（レセップス）を
詰ます（撃墜する）ぐらいの芸当は…」
「隊長、ラゴゥの方なら何時でも出撃準備は出来ています。ご決断ください」
二人の会話に割り込んできたダコスタに、虎は気難しそうな表情を向ける。
角の駒（ラゴゥ）で、竜王（ストライク）に打ち勝つ自信があるなら、虎とて、わざわざ
自分の愛人に現役復帰を願い出て、博打要素の強いアレを引っ張り出したりはしないのだ。
今回、悪手覚悟でアレの使用に踏み切るのも、既に最強の駒（竜王）と化したキラには、
将棋の既存の駒では対抗できないが故に、ルール違反を覚悟で、チェスの世界から
クイーン（飛車＋角）の駒を失敬してくるつもりだからである。
せめて、もう少しだけでも時間が稼げたら……待てよ！？
虎は急にニンマリとした悪戯っ子のような笑顔を彼の副官に向け、ダコスタは反射的に
身震いした。彼の上官がああいう表情をする時は、大抵、良からぬ悪巧みが閃いた時と、
常に相場が決まっていたからだ。
「ダコスタ君…」
「な…何でしょうか、隊長？」
虎が、力強い両腕で彼の両肩を掴み、ダコスタは天敵に睨まれた野生動物のように脅えた。
キラが今の虎の顔を見たら、フラガの例の人好きのする笑顔に似ていると評しただろう。
「君にこれから重大な特務と最大の栄誉を授ける。心して聞きたまえ…」
虎の副官についた自身の不運を呪い、己の運命を諦観しながらも、それでも最小の被害
で済む事を望む小市民的なダコスタ君に、彼の上司は恩着せがましい言葉を吐きながらも、
彼の最悪の予測のさらに斜め上を行く、鳶っきりの不幸をプレゼントするのだった。
に静止し、ストライクを砂漠との相性が良いエールモードで、スカイグラスパーの姉妹機
を共にソードパックで出撃させる。
戦闘終了後に、補給なしで紅海へと飛び立つプランを考えると、可能な限りＡＡ本体
への被害を食い止めたいところだが、果たして上手くいくだろうか…。
「敵ＭＳ確認、指揮官機ラゴゥに、バクゥ二体、砲撃型重ＭＳザウート二体……！？
さらに、レセップスの船上には、デュエルとバスターが確認されています！」
カズィからの索敵報告に艦橋は軽く息を飲む。宇宙空間でしつこくＡＡを追い回した、
クルーゼ隊が連合から奪取したＭＳが、再びマリュー達の前に姿を現したからだ。
だが、レセップスの船上から動かないところを見ると、彼らはまだ砂漠での戦闘に
慣れておらず、従来のＭＳの利点（機動性）を大きく損ねた、単なる人間砲台に徹する
構えのようであり、ならば、アークエンジェルとしては、当初の予定通り、レセップス
と一定の距離を保って戦艦同士の砲撃戦に持ち込み、砂漠に展開する敵ＭＳはキラ達に
任せる作戦を取るべきだろう。
ＭＳ管制官のミリアリアから、そう指示を受けたキラは、Ｖ字型のフォーメーションを
組んだ敵陣営を見渡して、一瞬呆然とする。気のせいか、中央に位置する強敵のラゴゥが、
キラの戦闘スカウターで測定した結果、何故か最低戦力値を示しているからだ。
虎流に喩えるなら、バクゥ二機が“桂馬”で、ザウート二機が“香車”だとすれば、
元来、“角”のはずのラゴゥが、キラの目からはどうしても“歩”に見えてならないのだ。
（因みに、従来、“銀”、“金”クラスの力を持つ彼ら二人も、今は“歩”に成り下がってる）
単なる錯覚だろうか。いや、こういう時は直接ぶつかってみた方が早い。
そう考えたキラは、ビームサーベルを展開して、無策で直接ラゴゥに突っ込んでいった。
「おい、キラ！？」
難敵のラゴゥへの無謀とも思える正面特攻に、スカイグラスパーでキラを援護しようと
していたカガリは一瞬肝を冷やしたが、ラゴゥが咥えていたビームサーベル同士が激突
した瞬間、ラゴゥはあっさりとサーベルを弾かれて、後方へと大きく吹き飛ばされた。
隊長機であるラゴゥのあまりの脆さに、カガリだけでなくキラ自身も唖然とした。
「なんか、もうばれちゃったみたいよ、どうするの、アンディ？」
「まあまあ、アイシャ君。彼が真髄を発揮するのはこれからだよ…」
レセップスの艦橋では、本来ラゴゥに搭乗していなければならないはずの虎が、
呆れたような表情のアイシャと悠長に会話を交わしながら、戦局を指揮している。
とすると、今、ラゴゥを操縦しているパイロットは誰だろう？
「はい、間違いないです。操縦技量は雲泥の差だし、何よりも、虎さん特有の突き刺す
ような殺気が、今のラゴゥからはまるで感じられません」
ラゴゥを守ろうとする複数の敵ＭＳと同時に交戦しながら、確信を以ってそう報告
するキラに、フラガは不審そうな顔を啓けかす。
タッシルの無血破壊や、カガリの強制女装（これは虎ではなくアイシャの悪戯だが）など、
虎が悪ふざけに走るのは、既に何度となく実証されているが、大事な隊長機を未熟な他の
パイロットに明け渡すことなど、現実として有り得るだろうか。
とはいえ、確かにフラガの目からも、戦場内をうろうろとまごつく今のラゴゥの姿は、
手負いの虎ではなく、迷子の可愛い子猫ちゃんに見えた。
虎が何を考えているかは不明分だが、この千載一隅の好機を逃す手はないだろう。
「良し、分かった、キラ。後々、虎に乗り換えられら面倒だ。
だったら、弱敵のうちに倒してしまえ。今のラゴゥなら一人でも平気だよな？」
「は…はい！」
キラはフラガの指示に肯くと、再びラゴゥへと狙いを定める。
その目前に隊長機を守ろうと、バクゥとザウートが立ち塞がったが、
「邪魔よ！」
キラは袖触一蹴、砲撃型なので近接戦闘に優れないザウートを、ビームサーベルで胴斬り
で真っ二つにすると、返す刀で、もう一体のバクゥの四足を切り裂いて戦闘能力を奪った。
バクゥとザウートを瞬殺したキラは、そのまま真っ直ぐラゴゥへと向かって行く。
「カガリ、俺はバクゥを仕留めるから、お前は残りのザウートをやれ。鈍重なＭＳだから、
砲撃を交わし切って、隣接できればビームソード一閃で決着が付くはずだ」
「わ…分かった、兄貴！」
今更ながらの、キラの戦闘に対する呆れる位の手際の良さに、我を失いかけていたカガリ
は、フラガの指示を受け入れると、タンク型へと変形したザウートに狙いを定める。
「それとレセップス上からの、デュエルとバスターの砲撃は無視して良いぞ。
以前、キラも梃子摺ったという、砂漠の熱放射で微妙に照準が狂っているみたいだから、
下手に回避行動を取った方が、却って危ないかもな…」
フラガは通信で、さらに貴重な助言を追加してくれたが、流石に今度は疑問を提唱する。
「それも分かったけど、万が一にも、まぐれ当たりでもしたらどうするんだよ、兄貴？」
「その時はただ撃墜されるだけさ。キラのような規格外ならともかく、運と勘の悪い
単なる凡人が、遅かれ早かれ何時までも戦場で生き残れるはずがないだろう？」
前半の理論的なアドバイスに比べて、あまりにも無責任な後半の放言に、一瞬カガリは
呆れかけたが、戦場経験豊富な彼には、確かにフラガの主張に頷ける部分もある。
何しろカガリ自身、類まれな強運と、生命の危機に対する野性的な勘だけを頼りに、
未熟ながらも、今日まで過酷な戦場を何とか生き抜いてきた節があったのだから…。
バルトフェルト隊長から、本来、彼以外搭乗することは叶わない、隊長機を預けられる
という栄誉を授かったダコスタだが、その羨望の境遇をちっとも感謝してはいなかった。
コーディネイターとはいえ、ＭＳに関してはシミュレータ訓練だけで、実戦経験の
ない彼をいきなりラゴゥに乗せて戦場へ放り出すなど、隊長は狂ったとしか思えない。
「い…生き残ったら絶対に転属願いを出して、あの狂い虎の元からオサラバしてやる！」
いや、それよりも密かにオファーが来ている、ラクス嬢の私設部隊とやらの隊長職に
再就職した方が良くないか？給料などの詳細条件はまだ未定だが、持病の胃潰瘍の種で
ある今の隊長と完全に縁が切れるのなら…。
そうこう考えているうちに、目の前のメインスクリーンでは、バクゥとザウートが盾にも
ならずに、瞬く間にストライクに斬り伏せられていく。さらにビームサーベルを死神の鎌
のように翳して、バーニアを吹かし、真っ直ぐこちらに斬り込んでくる悪鬼のようなＭＳ
の姿は、彼の目にはまさしく死神そのものに映った。
「ひっ…ひええぇっ………！！！！」
死の恐怖に囚われ、パニックになったダコスタは涙目になり、恥も外聞もなく逃げ出した。
ラゴゥの予期せぬ行動に、一瞬キラは狐につままれたような表情をしたが、
「こ…こら、待ちなさい！」
そう叫びながら、ラゴゥを追撃するが、ラゴゥは盛りの付いた雄猫のように縦横無尽に
砂漠の中を駆け巡り、そのあまりの行動の不規則（デタラメ）さ加減に、相手の殺気
まで感じ取れるレベルのキラも、却ってラゴゥの移動（逃げ）先の予測がつかない。
目の前で、砂漠をフィールドとした、前代未聞の命懸けの鬼ごっこに興じるラゴゥと
ストライクの姿に、カガリはもちろん、ＡＡの艦橋のマリュー達も呆れ果てて声が出ない。
ＡＡと異なりレセップスの艦橋では、ある程度はこの事態を推測していたとはいえ、
予想以上の醜態に、虎を見上げるアイシャの目も、流石に不審の色を隠せない。
「あ〜あ、男の癖になんてみっともない。ねぇ、やっぱり隊長機には実戦経験のある
部下を乗せた方が良かったんじゃないの？このままじゃ撃墜は時間の問題じゃない？」
「いや、あれで良いんだよ。下手にあのお嬢ちゃんと交戦したら、瞬殺される危険性
があるからね。ああやって、逃げの一手でいる分には、機動力だけならラゴゥの方が
上回るはずだから、そうそうは捕まらないさ…」
「ふ〜ん、僅かな時間稼ぎの為に、部下の命を囮にしたの？本当に悪い人ね…」
アイシャは口ではそう詰りながらも、自分の愛人を見上げる瞳には、軽蔑よりも感心
の要素の方が濃く、虎も一応は悪ぶっては見せながらも、キラの性格から、多分撃墜
されてもダコスタ君は生き延びるだろう…と、けっこう高を括っていた。
物心付いた頃から泣き虫の苛められっ子だった自分。常に虐めっ子の魔の手から
逃げ捲くっていたキラが、誰かを追い回すなど、一体何時以来の経験だろうか？
そういえば、あの頃は、私が泣きべそをかいていると、必ずアスランが助けにきて、
私を守ってくれたんだっけ…。
そう、昔を懐かしみながらも、キラは戦況を的確に判断して、サーベルのビームを収束
させると、今度はビームライフルを取り出して、まずは威嚇射撃を行う。
ビームの熱戦がラゴゥの逃げ先の砂煙を舞い上げ、一瞬、ラゴゥの足が立ち止まった
その刹那を見逃さずに、キラはラゴゥの後ろ右脚を、的確にライフルで打ち抜いた。
「あらら……」
「ちょっと、やばいんじゃないの？」
レセップスの艦橋で虎とアイシャがそう感じる間も無く、再びビームサーベルを展開
したストライクは、片脚を失って大幅に機動力が衰えたラゴゥに後ろから襲い掛かり、
逃げ越しのラゴゥの背中を直接サーベルで貫いた。キラがサーベルを引き抜き、
巻き添え恐れ、その場を離れてから数瞬後、虎達の目前でラゴゥは爆発を引き起こす。
「うおおおぉぉおお……！！！！ダコスタ君、何故死んだぁあ……！！？」
「坊やだからでしょ？」
号泣する虎の相方を務めるアイシャの声色は、絶対零度の氷壁の冷たさに満ちている。
これがイザーク達だったら、空涙の一つでも流すところだが、己の趣味の対象外の
利用価値のない相手への彼女の酷薄さに、艦橋の周りのクルーは薄ら寒さを覚えた。
「い……生きてますよぉ、た…たいちょ……！？（プツン）」
虎の読み通り、敢えてコックピットを避けて攻撃したキラの甘さのおかげで、辛うじて
爆発寸前で脱出したダコスタから通信が入ったが、虎は士気高揚の妨げになるという
理由で、途中で通信回線を遮断する。さらには、貴重な隊長機を失ったツケは、
ダコスタ君の給料から天引きしようなどと、血も涙もないことを考えていた。
虎が嘘涙を流しながら、ダコスタの弔辞を詠み上げ、味方の士気高揚を図っていた時、
整備班から、待ちに待ち望んでいた連絡が、虎の元へと送られてきた。
当初の期待値をはるかに下回る囮時間の短さに、犬死になるかと危惧していたが、
どうやら時間稼ぎをした甲斐があったというもので、これでダコスタ君の健気な
自己犠牲も報われるというものであろう。
「行くぞ、アイシャ。ダコスタ君の弔い合戦だ」
「だから、死んでないって…」
アイシャは虎に突っ込みを入れながらも、彼に続いて艦橋から姿を消していく。
どうのこうの言っても、この二人はボケ・ツッコミ属性を備えた良いコンビみたいだ。
ディアッカとイザークの二人は、バスターとデュエルに搭乗し、レセップス艦首の左右
の前足上に展開して、ＡＡや砂漠上の敵戦闘機を相手に、砲火を打ち捲くっている。
「たっく、何時までこんな真似をしなきゃならないのだ！？ＭＳは砲台じゃないのだぞ！」
「俺は別に構わないけどな…」
自分に与えられた任務の不条理さに思わず愚痴を零すイザークに対して、ディアッカは
マイペースでどこ吹く風だ。イザークは軽く舌打ちする。バスターは元々遠距離からの
重砲撃性を追求した機体だから、それで良いかも知れないが、汎用型のデュエルは違うし、
何よりも彼の性にも合わない。
「それにしても、さっきのラゴゥの醜態は何だったんだ？
まさか、アレに砂漠の虎が騎乗していたとは思えないが…」
「知るかっ！、俺に任せれば、ストライクなど直ぐに一刀両断にしてやるのに。
えーい、忌々しい！」
このまま放って置くと命令違反を犯して、今すぐ砂漠上に飛び出しかねないイザークに、
ディアッカは軽く肩を竦める。
イザークはこれまでの自分達の砲撃が、派手な威嚇効果のみで、全く成果が挙がって
いないことに気づいているのだろうか。銃撃の専門家であるディアッカは、機銃の照準
が微妙に狂っていることを既に悟っていた。これが、戦闘前にバルトフェルド隊長から
忠告された、砂漠の熱放射という奴か？
おかげで、敵の二機のスカイグラスパーは、自分達の砲撃を無視して、涼しい顔で
好き放題大空を飛び回り、とうとう彼らの眼前で残っていたバクゥとザウートの二体が、
同時にソードビームで切り裂かれて撃墜されてしまう。
砂漠上に展開していたＭＳが全滅した以上、敵がこちらに向かってくるのは至極当然で、
命令違反覚悟で砂漠に飛び出してもいいが、その前に照準の狂いは修正しておかないと
マズイだろう。ディアッカも先ほどからトライしているが、これが意外に骨が折れる
作業だった。もし虎から、その場で照準の修正に成功したパイロット（キラ）がいた
と聞かされても、ディアッカには到底、信じられなかっただろう。
イザ・ディアコンビの二人が、それぞれの不本意さを内心にひた隠して、一向に効果の
挙がらない砲撃を、レセップスへと進路を定めたキラ達に向けようとしていた瞬間、
彼らの真ん中に位置する、艦首中央のＭＳデッキが開いて、中から何か飛び出してきた。
おいおい、ＭＳは既に全機、戦場へと投入されていたのではないか？
そう、訝しむ二人の瞳に映った代物は…。
「何いっ！？」
「ヒュっー！！グゥレイトォ……！！」
レセップスから、突如出現した、異形のモビルスーツの姿にキラは息の飲んだ。
そのＭＳは、上半身はザフト軍の指揮官用ＭＳシグーそのものだが、腰から下の
下半身部分が、四足のバクゥ系統の機体で構成されているのだ。
喩えるなら、ギリシャ神話に出てくる半人半馬の種族、ケンタウロス族の姿にそっくりで、
フラガも一瞬唖然としていたが、すぐに記憶層の一部が刺激されて、大声で叫んだ。
「ま…まさか、マグネテス（偉大なる者）！？こっちが、虎の本命かよ！？」
〔TMF/A-804〕マグネテス（偉大なる者）
バクゥ系統の砂漠での高い機動性を維持した上で、ジン系統の汎用性の高い攻撃力を
付け加えようというコンセプトの元で、両者の長所をミックスして開発された機体である。
ただし、上半身と下半身部分の同時二重制御は、ナチュラルよりはるかに優れるはずの、
コーディネイターの手にも何故か余り（理由は、手足の合計数が四本と一致しないことが、
パイロットの生理に合わないが故などと推測されている）その欠点をパイロットを複数
用意するデュアルシステムで補おうとしたが、これが、あまり成果を挙げられなかった。
その訳は、それぞれ上半身と下半身部分を担当するパイロット達に、高いレベルの連携と、
何よりも、相手の技量と判断に生命を委ねる、相互の強い信頼関係が求められたからで、
独立気質で、プライドの高いパイロット連中には、あまり受け入れられなかったからだ。
理論上は、砂漠での高い性能を期待されたマグネテスだが、上記の理由から、バクゥに
すら及ばない乏しい戦果しか挙げられずに次々に破壊されるにつれ、量産化は見合わされ、
数多の失敗作品の一つとして完全に忘れ去れてしまう。
今回、虎が持ち出してきたのは、既に製造中止になったマグネテスの残り最後の一機で、
しかも隊長機用として、スペシャルなパーツで構成された特別機体である。
尚、マグネテス（偉大なる者）とは、ギリシャ神話のケンタウロス族の別称を表している。
「やれやれ、一時はどうなるかと思ったが、何とか最終局面には間に合ったみたいだな…」
マグネテスの上半身担当座席で、例の趣味の悪い虎柄のパイロットスーツに身を包んだ
バルトフェルドは、下半身担当のアイシャに向かって軽くウィンクする。
「確か、MSにはキラちゃんが、戦闘機の一つには金髪の可愛い坊やが乗ってるんでしょ？」
「そういうこと、あの竜王のお嬢ちゃんに、僕達の愛の絆の強さを見せてやるとするか」
「良い歳こいて、言っていて恥ずかしくならない、アンディ？」
今時、少年向けアニメでもあまり見られない青臭い台詞回しに、アイシャが柄にもなく
少し頬を染めて、虎は、彼らしく豪快に苦笑した。
「砂漠の虎もやるねぇ、まさか、この土壇場まで切り札を隠していたとはね…」
感心したように口笛を吹くディアッカとは対照的に、イザークはイライラを隠せない。
まるで図ったかのように、狙い済ましたタイミングで出現したマグネテスの存在感に、
自身が脇役へと追い遣られたように錯覚したイザークは、とうとう虎の命令を無視して、
レセップスの船上から砂漠へと降り立った。
「お…おい、イザーク！？」
「あのストライクは俺の獲物だ！あんな旧世代の遺物に譲れるか！」
「チィっ！」
ディアッカは、まだ照準の調整が完全に済んでいなかったが、腐れ縁であるイザークを
見捨てるわけにもいかず、つい反射的に自分も砂上へ飛び降りてしまう。
「くっ……何だよ、こりゃ！？」
足が地面についた途端、さっそく二人は砂地に足を取られて、まるでアリ地獄に
嵌まった蟻のように、もがき始める。
マグネテスのコックピット内の虎とアイシャは、そのお笑いコンビの醜態を呆れ果てた瞳
で見つめていたが、元々戦力としてあまり期待していなかったので、まあ、サンドバッグ
のように射撃の一方的なマトにされても、例のフェイズ・シフト装甲とやらが守って
くれるだろうと、二人に完全に見切りをつけて、キラ達の方へと向かった。
限りの、敵MSの特徴を簡単に説明する。
「…というわけで、連合が回収したアレの壊れた機体には、コックピット内に操縦座席
が二つ確認されたそうだ。つまりあの中には、虎に匹敵する高い技量と相性を備えた
パートナーとなる別のパイロットが、一緒に搭乗している可能性が高い」
そのフラガの説明にキラの中で、何か閃くものがあった。
「虎さんと相性が良いパートナーって…………まさか、アイシャさん！？」
その推測はほとんど当て論法に過ぎなかったが、キラには確信に近いものがあった。
バラディーヤで出会った彼女に、何故かキラは歴戦の戦士としての風格を感じたからだ。
アイシャの名前が出た途端、キラの通信にカガリのくぐもった笑い声が聞こえてきた。
「フッフッフ…、そうか、そうか。あの中には、あの魔女が乗っているんだな、キラ？」
「カ……カガリ？」
スカイグラスパー二号を駆るカガリは、憎悪と殺意に芽生えた視線をマグネテスに
注ぐと、フラガの制止を無視して、敵MSに向かって突っ込んでいく。
カガリの身を案じたキラは、虎の注目を自分の側に集めようと、ビームライフルを連射
したが、マグネテスは砂上とは思えない異常な機動力で、キラの射撃を交わし切ると、
まるでワープしたかのように、キラの正面に忽然と姿を現した。
「は…速い！」
マグネテスが、左手のビームサーベルで、ストライクを斬り付けたが、キラは反射的に
自身もサーベルを展開させて、かろうじて虎の斬撃を防いだ。
「よ〜し、良いぞ、キラ。そのまま、そいつを惹き付けておけよ」
短気で猪突傾向のあるカガリだが、戦闘機で正面から敵MSに突っ込む程には愚かではない。
大きく弧を描くように、キラと交戦するマグネテスの後方に廻り込むと、ソードビーム
を展開して、敵機体を射程内に捉えた。
「もらったぁ！！、くたばれ、魔女め！！」
そう叫んで、勝利を確信した次の瞬間、戦場で幾度も体感した、背筋が凍るような悪寒を
感じ取ったカガリは、今日まで未熟な自身の生命を何度となく救ってきた己の第六感を
信じて、反射的に機体を横にずらす。
その刹那、マグネテスのお尻の穴から、体長の二倍以上の長さの尻尾の形状をした
ビーム・ウィップが飛び出し、少し前までカガリがいた空間を貫き、翼の一つを掠らせた。
もう少しカガリの回避タイミングが遅れていたら、完全に直撃していただろう。
「カガリっ！？」
虎と交戦中のキラは、予期せぬ奇襲を受けたカガリの様子を心配したが、機体を
ふらつかせてはいるものの、どうやら無事のようで、ホッと安堵の溜息を漏らした。
「甘いわよ、坊や。虎の背後には、無敵の守護霊がついているんだから」
「ヒュー、頼もしいね」
彼の後ろの目の役割を果たして、カガリを撃退したアイシャに、虎は軽く口笛を吹く。
「さて、竜王のお嬢ちゃんに、角（ラゴゥ）の機動力と、飛車（シグー）の攻撃力
を併せ持つ、最強のクイーン（マグネテス）の力を存分に味わってもらうとするか…」
虎は、極上の人食い虎の笑顔で豪快に笑い、アイシャは魔女の妖しい笑みを浮かべた。
何故か、ややコミカルに流れた前半戦の戦いの不真面目さを補うかのように、後半戦の
バトルは一気にシリアスの度合いを深めようとしており、キラは、虎と魔女とが融合
したかのようなマグネテス（偉大なる者）と、今まさに最後の決着をつけようとしていた。
聞き込みをしていた。クリスとハサウェイはある男を見つけた
「ねぇハサウェイ,あれがもしかして」
「まさか・・・」
「まさかじゃないわあれよ！」
クリスとハサウェイは男のあとをつけた
男はジョイフルに入った,ジョイフルである男と出会っていた
それはムルタ・アズラエルだった。
「いや〜失敗するとは予想外でしたねぇ」
「ちっ俺だってこんなことになるなんて思ってなかったって」
「まぁ次の機会があるんですし,そのことは忘れましょう」
「アズラエル,俺は早く金がほしいんだ」
「まぁ,まってくださいよゴズ・バール」
ゴズは席を立ち,外へ出て行く。クリスたちもそれに続いて出て行く
外を出たところ,クリスはゴズに声をかけた
「ちょっとそこの人」
「ちっ！」
ゴズは懐からS&WM629を取り出し発砲した。クリスも反撃に出た
クリスはワルサーP38を取り出し,発射した,弾はゴズの左腕に
あたった。ことに気がついた警察がやってきた。クリスとハサウェイは
その場から逃げ出した。
「これで黒幕がわかったわ」
「でも派手にやりましたね」
「しかたないわ」
彼女たちはまっすぐ駆け出した。
》KEY
新作ですね。こういうタイプはホント久々です。続きを期待させていただきます。
》流離う翼たち
うわーとんでもないことに・・・。この対決、一体どうなるんでしょうか？
》「なんの代償も支払わずに、俺達を超えて行くっていうのか、ナチュラルが！？」←この台詞、凄く気に入りました。
》SEED the ORIGEN
お待ちしてました！やぱり大作です。これからどんな展開になるのか楽しみです。
》キラ♀
まっ、まさかこんな切り札を持っていたなんて・・・。虎さんやはり侮れません。それにしてもダコスタ君が不憫ですｗ。
運動しないと運動神経が鈍ってしまうからである。
彼はそのついでに学校によった。よって見ると,野球部が練習している
とりわけ目立つのはアムロ・レイだった。顧問はブライト学年主任だった。
「千本ノックいくぞ！」
「ＯＫ！アムロ行きまーす！」
ブライトの撃つ球をうまくとるアムロ,しかし後ろでは
「ブライト先生〜さっさと天才の僕んところに打てば〜」
カツが言った。無論,カツの顔面に弾があたる
「いたいじゃないですか！」
「ちゃんととれアホ！」
そして練習は終わった。キラはマネージャーのエル・ビアンノに
「ねぇアムロさん入る？」
「えっアムロ先輩？アムロ先輩！」
「おうどうしたエル？」
「彼がアムロ先輩に用事があってきたんだって」
「キラじゃないか！」
「えっエル！」
キラはエルという名前にビクッとした。それで沈黙していた。
なぜかそうなのかは本編(ＳＥＥＤ)を見てほしい。
「あっあっ僕は僕は」
「どうしたキラ？」
「アムロ,居間からうさぎ跳びだ！」
ブライトは言った
アムロはブライトがうさぎ跳びするように後ろについてうさぎ跳びを
していた。そして木の陰からブライトの妻ミライが立っていた。
私としては、投下レス数から判断して、納まるならば前スレから埋めて行った方が良いと思いますが、
他の方々はどうでしょうか。
>>キラ（♀）
ビーム・ウィップに脱帽。でも、キラ（♀）出番が少ないぞ。
>>リヴァオタと八アスのためでなく
アムロ・ブライト・ミライ。これは、さすがに私にも分かります。
テーマソングが頭の中で響いていますね。
「なぁ,キラ今夜,ディスコ「54」にいかないか？」
「ああ,いいね」
「じゃあ校門で６時集合」
キラは家に帰って,服を着替え,電話でフレイを誘った
フレイは数分後に校門に来た。
「キラ,まった？」
「今来たところだよ」
「ディスコに行くんでしょ？」
「どうした？」
「学生なのに入れてくれるかしら」
「大丈夫だよ」
アムロの75年型フォルクスワーゲンゴルフが到着した
アムロのほかにエルが乗っていた。キラとフレイは後ろに
乗った。ディスコ「54」に着いたのは7時ごろだった。
入り口に入り,4人は席に座る。そして男が来る
「よぉアムロ,エル」
「やあコウ」
「ひさしぶりにお前が来るなんて」
「知り合いなんですか？」
「コウは僕の知り合いでここの経営者なんだ」
「僕はキラ」
「よろしく」
「私はフレイ・アルスター」
「よろしくお嬢さん」
キラとフレイは楽しんだ,アムロとエルもダンスを楽しんだ
「ねぇキラ！」
「なんだいフレイ？」
「渡し楽しいわ」
「僕もだよ」
一方アムロとエルは
「着てよかったか？」
「ええ,楽しいよ」
「そりゃよかった」
「フフ,アムロ先輩も」
僕たちは今夜は楽しんだ。
キラはＳＥＥＤを発動し、フレイの動きを容易く見切り、機械のような正確さで攻撃を加えている。これに対してフレイは異常とさえとれる先読み機動と反応速度で対抗していた。キラはフレイが動いてからでしか反応できないが、フレイはキラが動く直前にその動きを感じ取る事が出来ている。どうしてかは分からないが、ヨーロッパ戦で起きるようになった第六感とでも言うのか、直感のようなものが更に強くなってきている。いや、すでに直感とは呼べないかもしれない。フレイはすでに自分の力の使い方を感覚的に理解していた。
集中力を高めることで得られる異常な感覚。周囲を立体的に知覚し、あらゆる変化を感じ取る。それどころか相手の瞬間的な未来の動きさえ読み取る事を可能とするこの力を発動すると、同時に相手の動きさえ緩やかに見えてくるのだ。自分の神経を極度の緊張に晒す事で過剰にまで研ぎ澄まし、一種のトランス状態に陥る事でこういう現象が起きるのだが、フレイにはそんな知識はなく、ただの便利な力としか認識していない。ただ１人、この力を知っているらしいフラガは『戦闘感覚』と呼んでいたが。
もっとも、フレイは自分がまだ、全ての力を使いこなせている訳ではないことも理解していた。人の思念や感情を見る力などは、未だにどうしてなのかは分からないのだ。能動的に全てを操れる訳でもないらしい。
だが、それでもまだキラの方が強い。戦いはなんとかフレイがキラに倒されないでいるという状況だ。フレイはストライクを捕らえられない自分の不甲斐なさに歯軋りした。
それでも、この不思議な感覚がフレイをキラと戦えるレベルにまで高めている。不思議な力のおかげで反応が異常なほど速くなってもいるのだ。凄まじい強さを持つキラに引き摺られる形でナチュラルでは有り得ないほどの速さを見せるフレイに、見ていたマリュ−が唖然とし、キースは賞賛の声を漏らした。
「な、何よ、あの動きは。あの娘、本当にナチュラルなの？」
「凄まじいな」
勿論フレイはナチュラルだ。だが、ただのナチュラルとは言えないだろう。今のフレイが感じている不思議な感覚は、コーディネイターにさえ備わっていないものだから。
「流石キラ、さっき戦ったブリッツなんか問題にならないくらいに強い！」
その機動、射撃の正確さ、放たれる殺気と威圧感、全てが桁外れだ。フレイ自身の体も無理な機動を繰り返した事によって悲鳴を上げだしている。フレイは知らなかったが、コーディネイターの標準を遥かに上回るキラの動きに付いて行くというのは、ナチュラルには殺人的な負担を要求する事なのだ。フレイはこの動きに付いていけるというだけで賞賛されるだろう。
キラは感情の篭らない目で動き回るデュエルを見ていた。いや、１つだけ感情が浮かんでいる。その目にはハッキリとした怒りが浮かんでいる。その怒りの眼差しでキラはフレイのデュエルを睨んでいた。
速い、さっき戦ったデュエルとは比較できないほどに速く動く。
「速い、これがフレイの実力なのか」
だからフレイは離れていったんだ。こんなに強いから。これなら確かに自分で敵がとれるかもしれない。でも、それじゃあ僕はどうすれば良い。ただ利用されるだけ利用されて、用が無くなったら捨てられた僕の気持ちはどうすれば良い。この孤独はどうすれば埋められる･･･････。
「僕は、僕は････････何の為に戦えばいいんだああ！？」
フレイのデュエルめがけてビームを撃ちまくる。だが、その射撃は僅かに正確さを欠いており、フレイに余裕を持って躱されてしまった。
フレイはキラの変化を察し、表情を曇らせた。
「キラ、何をそんなに苦しんでるの、何をそんなに不安がってるの？」
フレイにはキラの苦悩が伝わってきていた。ストライクの装甲を通して感じるこの不安な心に、フレイは焦りの色を濃くした。どうすればキラを止められる、ストライクを止められる？ 明らかにキラのストライクは自分よりも強いのだ。
ストライクもビームサーベルを抜いて斬りかかってきた。シールドを前に出してそれを受けとめ、力任せに押し返す。押し返した所をビームサーベルで斬りかかったが、これはあっさりと躱わされてしまった。
すでにバッテリー残量も残り少なく、フェイズシフトも何時まで持つやらというところだ。バッテリーが尽きれば機体は動かなくなり、キラに嬲り殺される事になる。しかし、バッテリー効率はストライクよりもデュエルの方が上の筈であり、本来ならストライクはもうとっくにフェイズシフト･ダウンしてる筈なのだ。なのにこちらが追い詰められているということは、答えは１つしかない。フレイは生唾を飲みこんでその事実に戦慄した。
「バッテリー消費が極端に少ないって事。そんな効率的な戦い方が出来るっていうの、キラは？」
恐ろしい想像にフレイは小さく震えた。キラはやはり化け物なのだろうか。自分にはそんな事は絶対にできない。
そのフレイの苦悩に答えるかのように、上空からフラガのスカイグラスパーが援護してくれた。撃ち下ろされる大口径砲弾の直撃の閃光がストライクを包む。砲弾は明後日の方向に弾かれたが、ストライクの姿勢は大きく崩れた。
「フラガ少佐っ！」
フレイが歓喜の声を上げた。それに答えるかのようにフラガから通信が入る。
「お嬢ちゃん、早くそこを退け。アークエンジェルの攻撃が来る！」
「りょ、了解！」
デュエルがスラスターを全開にして後方に跳び下がる。それを待っていたかのようにアークエンジェルから放たれた２４発のミサイルがストライクに降り注いだ。
「ちぃぃ！」
キラは舌打ちしてミサイルを迎撃したが、ナタルの指揮で放たれたミサイルの軌道パターンは今のキラでさえ冷や汗をかくほどに完璧なものだった。どこに逃げても直撃弾を食らってしまう。
アークエンジェルではナタルが次弾装填を終えてストライクの動きを待っていた。
「いいか、アルスター准尉の援護を第１に考えろ。ストライクのバッテリーを消耗させるのが狙いだ」
「ですが、もしストライクのフェイズシフトが落ちたところに当たったら！？」
「このままだとデュエルを落とされるぞ。ヤマト少尉は本気だ！」
ナタルは叩き付けるように言って反論を封じこめた。再びミサイルが発射され、ストライクの周辺に着弾の土煙が上がる。そして、土煙の中から出てきたストライクがこちらにビームライフルを向けているのが見えたとき、ナタルは思わず目を見開いた。
「艦長！」
「右に回避っ！」
ストライクからビームが放たれ、右舷の側面に直撃する。幸いラミネート装甲に吸収されたが、この一撃がナタルの覚悟を決めさせた。
「中尉、何をするつもりですか！？」
ミリアリアが驚いた顔でナタルに講義の声を上げる。だが、ナタルは鋭い視線だけでミリアリアを怯ませた。
「もはや彼は敵だ。ゴッドフリート照準！」
「ナタルっ！？」
マリュ−も悲鳴のような声を上げるが、ナタルはそれを黙殺した。彼女の目にはすでにストライクは敵と映っているのだ。艦橋の誰もがナタルの命令に驚愕している。そして、カガリが予備シートから立ち上がってナタルに講義した。
「お、お前、何考えてるんだ。あいつは仲間だろう！？」
「では、どうすれば良いと言うんだ。彼は通信も信号弾も無視しているのだぞ？」
「やりようはあるだろ。ゴッドフリートなんか撃ったら、ストライクが消し飛んじまうぞ！」
「敵となるならばやむを得ないだろう！」
「そういう問題じゃないだろ！」
「では、ヤマト少尉を止めてみろ！」
ナタルの要求に、カガリは悔しそうに黙りこんでしまった。どうやっても自分にキラを止める手段は無い。カガリの反論を封じこんだナタルが再び命令を下そうとした時、通信機からフラガの制止する声が聞こえてきた。
「待て、もう少し待ってくれ！」
「フラガ少佐、ですが････」
「もう少しお嬢ちゃんに任せてみてくれ。フレイなら、なんとか出来るさ」
「･･････根拠はあるのですか？」
「根拠って言うか、まあ、アーマー乗りの勘かな」
またかとナタルは思ったが、この勘はよく当たるので余り強い事も言えない。そして、それに続くようにおかしくて堪らないという声でフラガが言った。
「それになあ、あれだけ恥ずかしい台詞を吐けるんだ。何とかするさ」
「･･････恥ずかしい台詞？」
マリュ−が良く分からないという顔で聞き返すが、フラガはにやっと笑うだけで教えてはくれなかった。フラガだけは聞いていたのだ。あのフレイの自分勝手極まりない惚気台詞を。
だが、続いて放たれたビームが艦橋の傍に着弾してしまった。その部位はラミネート装甲ではなかった為、爆発の衝撃が艦を揺るがしてしまう。座席から立ち上がっていたカガリはその振動に足を取られてしまった。
「うわっ！」
そのまま転倒し掛けたが、咄嗟にキースが背中から抱き止める事で事無きを得た。
「大丈夫か、カガリ？」
「･･････あ、ああ、何とも無い」
「そうか。危ないから椅子に座ってろ。怪我するぞ」
カガリを抱き止めたカガリをそのまま椅子の方に押しやり、キースは再び正面を見据えた。ストライクとデュエルが戦うという、悪夢のような戦場を。
この時、キースは戦場に気を取られていたので、自分を見つめる１つの視線に気付いていなかった。もし気付いていたら流石のキースでも困惑を隠し切れなかったに違いあるまい。この時、キースに羞恥混じりの戸惑った視線を向けていたのは、カガリだったのだから。
きていた。
「アスラン,一緒踊らない？」
「俺はそういう気分じゃないんだ」
「ここの店長とは知り合いなの」
「へぇーへぇーへぇー」
二人は「54」に入った
それから二人はダンスを踊った。それから店長とばったり会った
「おっセシリー」
「コウさん！」
「あっセシリー,君の彼氏？」
「いや,お友達のアスランよ」
「よろしく」
アスランは挨拶をした。
アスランは隣に目をやった。
「キラじゃないか！」
ああ,俺はラッキーだ
>>963
グハァ！ すいません、ミゲルとラスティ間違えてました
>>キラ♀
虎さん、あなたって人は結構悪人だったんですね。あれほどの忠臣を玩具のように･･････
だがダコスタ君、その転職先の主も負けず劣らずアレな人だぞｗ
今回はイザークとディアッカに合掌。まさか、いけない趣味に目覚めた２人ってのはこいつらかｗ？
カガリはやっぱり根に持ってたんですね〜ｗ
>> リヴァオタと八アスのためでなく
ブライトは野球部の監督だったのか。しかも熱血系ｗ
アムロはエースか何かなのか？
しかし、高校生がディスコ･･････結構金持ち？
フレイ様とキラどうなってしまうんでしょうか。
続き楽しみにしています。
だが、それ以上にもう戦いを止めたかった。キラと戦いたくない、傷つけたくない、銃を向けたくない。どうして分かってくれないんだろう、私はキラと戦いたくないのに！
「キラ･･･････もう、いいかげんにしなさいよね。辛いのは、あなただけじゃないのよ！」
頭の中に彼のイメージを思い浮かべる。目の前にいるあれはストライクじゃない。キラなのだと。すると、ストライクの姿がぼやけ、キラのイメージが重なってきた。彼の息遣いさえ聞えてくるような気がする。
そして、彼の狙いが伝わってくるような気がする。キラが次に何を狙っているのかが分かる。キラが目の前にいるような錯覚さえ覚える。
「キラ、もう終わらせよう。こんな戦いは！」
キラの狙いが分かる。彼の動きが見える。フレイはデュエルを走らせ、再び格闘戦に持ちこんだ。もはやお互いにビームライフルを使う余裕も無い。互いに機体をぶつけ合い、シールドでビームサーベルを受け、イーゲルシュテルンを放つ。
だが、この戦いはナチュラルであるフレイには決定的に不利だった。衝撃が来る度、フレイの身体にはダメージが蓄積していくからだ。
フレイは朦朧としてくる意識を必死に繋ぎとめ、キラのストライクを見た。
「･･････もう止めようよ。こんな事しても、みんなが傷付くだけだよ！」
フレイはヘルメットを脱ぐと、ビームサーベルを捨てた。そしてシールドを前にして真っ直ぐにデュエルを突っ込ませる。突然動きを変えたデュエルにキラは戸惑い、一瞬迎撃が遅れた。フレイはデュエルをそのまま体当たりさせ、勢いに任せてストライクを地面に押し倒した。
押し倒されたストライクの中でキラは小さく悪態をつきながらデュエルを押し返そうと思ったが、ストライクが反応しないことに気付いた。計器類を確かめ、バッテリー残量がゼロになっていることを確認したキラは舌打ちしてコクピットの外に出る。
「キラッ！」
「･･･････フレイ」
近付いてくるフレイを見て、キラは一歩、２歩と後ずさっていく。その顔に浮かんでいるのは、焦りの色だった。
「キラ･･････もう良いの、もう戦わなくて良いのよ」
「なんでだよ、なんでそんな事言うんだよ。フレイは言ったじゃないか。コーディネイターを殺せって！」
「キラ･･･････」
「殺してやるさ、何人でも。アスランでも、誰だろうと殺してやるさっ！」
キラは激高した。フレイに向って、血を吐くような叫びを発した。それが今のキラの全てなのだろう。殺すこと、ただそれだけが彼を支えている。
フレイは悲しかった。こんな事を言ってしまうキラが。そして、自分が憎かった。彼をここまで追い詰めてしまったのは、間違い無く自分なのだ。
「･･･････キラ、あなたは」
「来るな！」
キラは拳銃を抜き、自分へと向けてきた。
「それ以上近付くな、フレイ！」
「キラ･･････」
だが、銃口を向けられてもフレイは足を止めなかった。一歩一歩、確実に近付いてくる。キラは遂に引き金を引いた。銃弾がフレイの右頬を掠め、頬に赤い筋を作る。その痛みにフレイは顔を顰めた。
「近付くなって言ってるだろ！」
「キラ、もう良いのよ。もう止めよう」
「言うなあぁ！」
近付いてくるフレイにキラは続けて銃を撃ったが、訓練をした事も無く、しかも平静を欠いている今のキラが正確な射撃など出来るはずもなく、銃弾はフレイの体を掠めるに留まっている。
掠った銃弾に右足を、脇腹を傷つけられながらも、フレイはキラへと向かって歩いた。キラはすでに銃が空打ちしている事に気付くことなく引き金を引き続け、近付いてくるフレイを止めようとしている。そんなに彼女が怖いのだろうか。
フレイはキラの前まで来ると、無傷の左手でキラの頬をそっと撫でた。
「もう良いの、キラ。私は、もう誰も憎んでなんか無い」
「嘘だ、そんなの･･････君は、僕を･･･････」
「もう良いの。だから、泣かないで」
キラは泣いていた。気付かぬ間に、その頬を涙が伝っている。フレイはその涙をそっと拭ってやった。
「泣かないで、あなたはもう、泣かないで」
「･････････････････････」
「お願い、戻って、元のあなたに。昔の、優しかったキラに･･･････」
フレイと目と合わせたキラは、ようやく正気の光が戻ってきた。手から拳銃がこぼれ落ち、ゆっくりと口が動く。
「･･････フ･･････レ･･･イ？」
まるで、確認するような呟き。それを聞いたフレイは、安堵の笑顔を浮かべた。どうやら正気に戻ってきたらしい。
今まで聞いた事も無いような優しい声をかけてくれるフレイに、キラは戸惑った。何故だろう、今のフレイは、自分をはっきりと見てくれているように思える。そのフレイの目を見た時、キラは自分が何をしていたのか分からなくなってしまった。
お疲れ様です。
錯乱キラ・・・。
リヴァイアスのイクミを思い出しました。
今後キラとフレイ様がどうなるのか気になります・・・。
２ちゃんならともかく、この規模の板で読むのが追いつかんってどういうことさｗ
また頑張って作るかなあ。無茶疲れるけど･･･････
キラ（♀）×フレイ（♂） >>17-20>>80-81>>101>>127-128>>178-179
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流離う翼たち >>24-26>>44-45>>58-61>>84-86>>111-112
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幻 >>53>>75-76>>83>>125>>169-175>>221-222>>548>>565
色あせる思い、色あせぬ想い >>63
フレイ／ルージュルート >>65-68>>142-145
帰って来てしまった人たち >>93-95
ラブラブ キラ×フレ >>106-109
ながれぼし >>151-153
SEED 春コレクション >>191-196>>226-231>>265-268>>299-305>>340-343>>379-381>>522-525
刻還り >>200-214>>282-284>>336-338>>437-439>>485-489>>585-588
51話 メビウスの円環 >>324-325>>345-346>>411
コスプレ >>358-362
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ミリアリア・あの子許せない >>468-470>>491>>499-500>>510-512>>531
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幸せを呼ぶ○の○○○？ >>536-537
散った花 実る果実 >>578-581>>606-607>>641-643>>780-781>>817-818>>850>>890-891
chain >>649>>654>>656>>669>>683
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リヴァオタと八アスのためでなく >>717-719>>721>>726-727>>736>>738-740
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>>929-930>>977>>979>>983
ヴィアとメル >>897
K.E.Y >>924>>927
正直、二度とやりたくないな。分量が多すぎる。
まとめてて思ったのが、「一体このスレ、何人の職人さんがいるんだ？」と言うことｗ
過去のも含めたら軽く20人は超えそうな気がする。
投下してくださった職人さん方、お疲れ＆これからも頑張って下さい。
こうしてみると圧巻だな。
大作あり、短編あり、すごいです。
次回は、一人にまかせず目次作りも分担できればいいですね。
こうやって自分の書いたものが、いくつも目次に並んでいるのを見ると感無量です。
また、タイトルを見て熱心に続きを追っていた作品を思い出して余韻に浸ってます。
まさかこんな展開になってくるとは思いもしなかったなぁ。
フレイ様が○キオ様にでも拾われるかと思ったｗ
次スレでもがんがってください。
それからまとめ作業、ほんと乙でした。
,. ‐-､_,.,.,.__
／ ノ 入_ _＞''"⌒｀ヽ
,. - ノ （( (_ ￣‐-- ｀､_
(_ （ ゝ＿＿＿_,.,. -‐' _ノ´ 人`ｰ- - - ､‐-､ ＼
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⌒ﾌ ,. --‐‐‐- ,. -‐'´ -‐' ,.--､ ゝ、,.＿ ｨ'´⌒`ヽ
（ 彡 -‐‐ , -‐'´ ,. - '´ /r'=/ / ﾃｭﾆ二＜ﾌﾘ⌒) ﾉ
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` （( / ,. =ﾆニ= ､ ＼ ヾﾚ'ｰ-‐‐'′
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次章
フレイ様人生劇場ＳＳスレpart4〜雪花〜
http://jbbs.shitaraba.com/bbs/read.cgi/anime/154/1070633117/
へﾍ
〃⌒`ヽ /〃⌒⌒ヽ
! ﾉﾘ从ﾙ）〈〈 ノﾉ^ ﾘ))
w*´∀｀）|ヽ||*´∀｀|| 職人さんたちがんがるのよｖ
（ つ旦O （ つ旦O
と ＿）__） と ＿）__）
前からほしかったなあ、ケンタウロス型ｗ
反則だけど嬉しいでつ。
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