■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■

フレイ様人生劇場SSスレpart2〜陽炎〜
1 名前: 950 投稿日: 2003/07/07(月) 18:46
フレイ・アルスター先生のSSが読めるのはこのスレだけ!
|**** センセイ、          ・創作、予想等多種多様なジャンルをカバー。
|台@) シメキリガ・・・       ・本スレでは長すぎるSSもここではOK。
| 編 )    ヘヘ         ・エロ、グロ、801等の「他人を不快にするSS」は発禁処分。
|_)__)   /〃⌒⌒ヽオリャー     ライトH位なら許してあげる。
|       .〈〈.ノノ^ リ))    ・フレイ先生に信(中国では手紙をこう書く)を書こう。
        |ヽ|| `∀´||.      ・ここで950を踏んだ人は次スレ立てお願いね。
     _φ___⊂)__
   /旦/三/ /|     前スレ
   | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|. |    http://jbbs.shitaraba.com/anime/bbs/read.cgi?BBS=154&KEY=1052063640
   |オーブみかん|/    
              既刊作品は書庫にあるわ。
             ○フレイスレSS保存庫 ttp://oita.cool.ne.jp/fllay/ss.html

2 名前: 950 投稿日: 2003/07/07(月) 18:48
早いと思うが、たてますた。前スレ埋まったら使ってください。

3 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/07(月) 18:49
>>1
乙フレ〜。
しっかし、ついに2番目まできたか。

4 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/08(火) 09:14
>>1
乙。
まさか2スレ目に突入とは・・・
色んな意味で驚異だ。

5 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/08(火) 20:20
とりあえず前スレ埋めますか……
作者さんも前スレ埋まるまで前スレにお願いします

6 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/14(月) 16:25
とうとう前スレ、1000までいったか・・・

7 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/14(月) 20:33
一応前スレのラストに目次追加しときました。
専用ブラウザ使ってないと意味ないけど…。

8 名前: 約束 七話 投稿日: 2003/07/14(月) 23:02
「うぅ……入稿日まで3日…………」
「……9秒の時点で俺が…………」
「お二人ともこんなところで寝ていると体を壊しますよ
アイザックさんでも風邪を引くかもしれないんですから……」
ラインがアイザックの体をもかもかと揺する
「う……ラインか、素敵な目覚めをありがとう
お礼に隊長とのブリーフィングを変わってくれ」
「いえ、遠慮します
隊長はたいそうアイザックさんがお気に入りのようなので邪魔しちゃ悪いのですので」
「そういえば昨晩の記憶がない……俺は一体ここでフレイと何を……」
向かいのシミュレーターを見るとフレイがなにやらうなされていた
「見れば大体予想できますけど、結果はどうでした?」
「言うまでもなかろう」
「そうですね、アイザックさんが勝てるはずありませんでしたね」
「真実だが少しは虚像を混ぜていい勝負したことにしておこう
フレイも最後の方の記憶はあるまい」
「わかりました」

9 名前: 約束 七話 投稿日: 2003/07/14(月) 23:03
アイザックは未だにうなされているフレイに近づき耳元で
「ジリリリリ……ジリリリリ……ガチャ……モシモシ、ふれい先生デスカ?
スミマセン、入稿日ガ間違ッテイマシタ、アサッテデシタ」
フレイはそのアイザックの声を聞くと急に苦しみだして目を覚ました
「ね…!寝ている場合じゃないわ!!
……アレ?」
「おはようございます、フレイ先生……年末進行は辛いでしょうけど頑張りましょう
これを過ぎればしばらく楽できますよ」
「あんた人の夢の中身にまで出現しないでよ……
しかしいつの間にか寝てしまったみたいね……あんた上達しなかったわねぇ……」
「そんなことないぞ、最後はイイ感じに勝負になっていたよな
なぁ、ライン?」
「えぇ、僕もみていましたけど少しだけ上達した可能性も否定できないなんてこともありえるかもしれませんから」
『………………』
何故か沈黙が唱和した
「僕もアイザックさんを見習って精進します、それでは」
ラインは非常にすばやく敬礼をするとMSやコンテナの間に消えて行った

10 名前: 約束 七話 投稿日: 2003/07/14(月) 23:03
「さて、食事でもして演習の開始時間でも待つか」
「そうね、じゃあ部屋に戻るわね」
「ん?食堂によらないのか?恐らく出るメシは同じだぞ」
「ん〜、じゃあそっちに寄ろうかな……
わたしって監禁されているのよね?」
「あの変態曰くな、どうせ出張でいないし部隊の実権は俺が握ってるから
いない間なら何しても判んないからイイんじゃねぇの?」
「その割には暇そうだけど……」
「我、愛すべき隊長を見習って適当に押し付けてるんだよ……」
「…………」
「いや、本当は隊長のワンマンの隊だからいないと何もすることがないんだよな」
「まぁ、そう言うことにしておくわよ……」

11 名前: 約束 七話 投稿日: 2003/07/14(月) 23:04
さて、次回は長くなる予定なので今日は短く……
新スレおめでとう!一番乗り!<これがしたかっただけ
次回は珍しくシリアス(?)ですぞ

12 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/14(月) 23:36
>8-11
乙ふれ。そしてトップバッターおめ。
相変わらず掛け合いが楽しいですなあ。
ラインくんも中々芸達者でいらっしゃる。
ところでこのアイザックはいくつぐらいなんでしょうね、年齢。
既出だったらすいません。

次回はシリアスですか。
そういえばジェシカと言う人は一体どうなったんでしょーか…。

13 名前: 約束 七話 投稿日: 2003/07/14(月) 23:49
>>12
とりあえずアイザック君の年齢は18〜22程度で主人公達よりも
一回り程度年上に設定しています

ジェシカについては覚えていますよ
というか伏線好きなので七話以外の全ての回に伏線はいってます
ほぼ次回とその次で使い終わるでしょうけどね

14 名前: 宇宙、重なる想い/作者 投稿日: 2003/07/14(月) 23:51
乙フレ!!
原稿…!!

ところで読者様には申し訳ありませんが、
当方コミケ原稿が赤色反転サイまたは近況フレイ様の出番のごとくピンチであります。
当面原稿に専念せざるを得ず、更新は当分先になると思われます。
暫くお待ちいただければ幸いであります。

15 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/15(火) 00:01
>13
なるほど。そんな感じっすね、彼。
伏線そんなにあるんですか。
次回投下の前に前の読み直さねば。

>14
異様に緊迫感のある表現だ…w
原稿頑張ってください。
更新気長に待ってますので。

16 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/15(火) 00:39
>>14
マジで切羽詰ってる感じですな…
人の事言えないけど、ゆっくりやって下さいね。

17 名前: 約束 八話(前半) 投稿日: 2003/07/15(火) 12:14
「さて、フレイさんでしたっけ?
イザークさんとアイザックさんの演習が向こうで生中継されるのでこちらに来てください」
「ここって……俗に言う管制室とか言われる場所では……」
「御明察です、あと5分くらいで始まりますね」
(……何故部外者を入れるのかな?……この隊はこんな人ばかりなの?)
とりあえずその辺にある椅子に座ってプロジェクターに映された二機のMSを見る
両方とも見たことがある、アイザックが乗っているのは何度か見たザフト軍の量産型MSだろう、画面隅にジンと書いてある
もう一方は艦隊戦やその他で何度も出てきたこちらを追いかけていた、ヘリオポリスで強奪されたという機体だった、やはり端にデュエルと書いてある
「ねぇ、多分だけどかなりアイザックの機体って相手に比べると弱かったりしない?」
「おおーさすがですね、そうです
まったく性能が違います、イザークさんが乗ってるのは連邦が極秘で開発していたMSで
あのジンとは桁違いの性能を誇ります
運動性・武装の強さ、なによりもビーム兵器以外は基本的に効果のない特殊な装甲が使われていて
ジンの装備ではまったく破壊することができません」

18 名前: 約束 八話(前半) 投稿日: 2003/07/15(火) 12:15
「ちょっと!それじゃアイザックに勝ち目なんてないじゃない!!」
今指摘されてはじめてそのことに気が付いたらしく少し考えていたが
「……?そういえばそうですね
まぁ、アイザックさんですから勝てますよ
それより気になっていたのですけどフレイさんはアイザックさんの何なんですか?」
フレイは多少顔を赤くした後
「な……何ってわたしはここの隊長とやらに連れてこられているのよ
あいつとは無関係」
ラインはさも意外そうに
「え……?だってフレイさんアイザックさんの妹ジェシカさんにそっくりじゃないですか
従兄妹とかじゃなんですか?」
「え………………なにそれ………………」
「前見せて貰った写真ではその子はポニーテイルでしたけど、
貴女の髪型をポニーテイルにしたら生き写しですね」

19 名前: 約束 八話(前半) 投稿日: 2003/07/15(火) 12:15
「ほっほっほ、よくぞここまで来た勇者よ
だがここまでだ、わたしのちからをみるがいい」
「ふざけるな!
前からお前のその人を馬鹿にしたような態度が嫌いだったんだ」
「…………人を馬鹿にしているのはどっちだろうな?
お前は私怨で命令・チームプレイを無視し何度も貴重なMSで撃墜されてるけど……」
「お前に何が分かる!」
「分からないな……なんでお前はチームプレイを乱してまであのMSにこだわったんだ?
ブリッツは策敵・奇襲、バスターは遠距離からの砲撃支援や対艦、イージスは中・近距離での戦闘
デュエルはイージスと同じくブリッツと一緒に近距離戦闘したり、バスターの砲撃の援護や支援、イージスと同じ間合いを生かしての協力が本来の運営のしかただろう

お前一人突っ込んでその支援のためにブリッツやイージス引っ張りまわしたり
そのためにバスターを援護する機体がいなくて、
バスターが苦手とする高速戦闘小型艇とタイマンを強要したりするのはなんでだ?」
「うるさい!うるさい!!」
「そうだな……そろそろ時間だ、口で言っても分からないなら無理やり分からせるぞ」
「この機体の差で勝てるものか、負けたら土下座を付いて今の台詞を撤回させてやるぞ!」
「いいぞ……約束しよう、ただし負けたら反省しろよ」

20 名前: 約束 八話(前半) 投稿日: 2003/07/15(火) 12:16
「あ、始まりますね」
フレイは返事をしなかった、なにやら深く考え込んでいるようだ
ラインはあまり気にせず
「アイザックさんのジンは自分用のジンじゃないみたいですね
これは余裕の表れなのかもしれませんね」
「……そう」
「あ!……ん〜いつものことながら凄い避け方ですね…………
え?もう勝負が付いた?」
フレイはその言葉に驚き、画面を見ると
演習終了の文字がプロジェクターの画面に浮かんでいた
「勝者……アイザック……?」
「さすがですね〜、あの圧倒的なMSの性能差で一分もかかっていないとは
ビーム兵器なんか一切使ってないのに大した物ですね、
どうやって勝負が付いたのかな……?」

21 名前: 約束 八話(前半) 投稿日: 2003/07/15(火) 12:17
『演習開始まであと5・4・3・2・1…スタート』
デュエルは開始と同時にビームライフルを撃ちつつジンに突進して来た
ジンはそのビームをまるで前からそう来るのを分かっていたように避け、
マシンガンで応射する
デュエルはその弾丸を無視してジンの脇を通り越して背後からビームサーベル(演習用のただの光の剣)で切りつける
イザークはその瞬間勝利を確信してにやりと笑う
ジンのことは良く知っていた、だからこの状況でデュエルを確認することはできないし
どんなパイロットであろうとも背後からのサーベルを正確に避けることも不可能だ
手か背後のスラスターのどちらを削ればジンにもう勝ち目はない
がジンはそれも予想していたように既にこちらに振り向いている途中で
シールドでサーベルを受け、次の瞬間デュエルのコクピットのある場所にいつの間にか持ち変えていた
追加装備のバズーカを当てて、引き金を引く振りをした
「終わりだ……」
演習終了のアラームが鳴った
「何故だ?!何故終わる?
PS装甲があるからバズーカ程度では撃墜されるはずはない!」
「だからそれがお前の甘えなんだよ……確かに機体自体は大した損傷も受けないけど
中に乗っているお前は零距離でバズーカの爆発に耐えられないのだよ
良くて内臓破裂と頚椎損傷で全身麻痺、普通は即死するんだ」
「く……」
「わかったか、だから自分の力を過信しないで仲間と―――」
「だからうるさいって言ってるだろ!
……本気で勝負だ、アイザック!」
イザークはデュエルの演習プログラムを解除し、実弾での攻撃を使用可能にした
「この分からず屋!そんなことを繰り返していたら死ぬだけなんだぞ!…………クッ!」

22 名前: 約束 八話(前半) 投稿日: 2003/07/15(火) 12:17
「ちょ……ちょっと何よ?
また戦い始めたわよ?しかもアレは実弾じゃないの!」
「そんな……」
ラインは顔を青ざめさせてマイクに向かって叫んだ
「イザークさん!!やめてください!
もう演習は終わったんですよ?!」
『うるさい!邪魔をするな!』
「ちょっと待ちなさいよ!何をしてるのよ!」
『ナチュナルの女は黙ってろ!」
『あ〜フレイか、別にいいよ
ちょうどいい機会だから徹底的に分からせるさ、さて忙しいからアデュー』
「何いってるの!本気で殺すつもりよ?あいつ」
『だから忙しいのだ、後でな〜』
「……無理しないでくださいね、アイザックさん」
「何?止めないの?」
「ええ……大丈夫ですよ、アイザックさんMSでの戦闘は誰にも負けませんから
どうしてか僕は知りませんけど、シミュレーターじゃ全然ダメだけど
実戦じゃアイザックさんは負け知らずなんです、うちの隊の一番のエースなんですから……」

23 名前: 約束 八話(前半) 投稿日: 2003/07/15(火) 12:21
―――――アイキャッチ―――――

後半に続く、夜に後半を投稿します
……う〜ん、らしくない展開だなぁ
しかも後半はオリ設定で怒られそうだ……

24 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/15(火) 13:30
前スレより下がっているので上げます

25 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/15(火) 13:30
って上がってない

26 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/15(火) 15:54
>17-25
おつ〜。
相手が誰だろうと自分より勝ってる奴は認めないのか、遺作w
年上の実力者の余裕が見えてカッコいいな、アイザック。
それが遺作の癇に障るのかも知れんが。

しかし妹と来たか…てっきりこいびt(ry
まあ彼らしいと言えばそうかw
後半投下楽しみにしてます。

27 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/15(火) 21:35
>>23
乙です。
オリ設定で怒られるなんて事は無いですから安心して下さい。
後半も楽しみです。
しかし遺作、何かあったらおまい懲罰もんだぞ・・・w

28 名前: 約束 八話(CM中) 投稿日: 2003/07/15(火) 22:04
―ザフト公共放送―
ただいまザフトはプラントを守る戦士を募集中です!
電波を受信したい貴方!
「ふ…感じる、感じるぞ!お前の気配がお前も感じているのだろう○○!」
回想でもいい!とにかく出番が欲しい貴方!
「○○……僕のピアノを……ばーん」
口癖が欲しい貴方!
「グレィト(以下略)」
どんなに不利でも死なない展開をお望みの貴方
「ストライクィ〜!今日こそ!――う、次こそ」
かっこいいホモ達が欲しい貴方!しかも敵で幼馴染萌える設定だ!
「キラ……俺はお前のことを!」
ザフトはいつでも貴方の熱意を受け止めます!
電話番号0120-**-×○■△

29 名前: 約束 八話(後半) 投稿日: 2003/07/15(火) 22:04
「いい加減、諦めろイザーク……」
「何故だ……何故ナチュナルでジンに乗っているお前に勝てないんだ!
なんでだ!!」
既に二人とも演習用武器ではなく実際の武器を使って戦っていた
(どうせマシンガン程度じゃデュエルに傷すら付けることができないからな……)
アイザックは最初からイザークが演習で負けた程度では諦めず実弾を使ってくるであろうことは予想していた
だから対PS装甲に有効なビームバズーカもバッテリーに負担がかかるから持ってきていない
(それに万が一当たったら大変だし、実弾ならエネルギーを削ることができるからな……
この状態で俺が勝つとしたらデュエルのエネルギーが切れる以外考えられない)
だからわざと距離を置いてビームライフルの乱射を誘い
当てやすくデュエルを傷つける可能性が低いマシンガンを主武装にした
デュエルを見失ったが右下後方にイザークの気配を感じる
ビームライフルを数秒後にこちらに向けて5,6発程度撃つだろう
向かって左上が攻撃範囲には入ってないのでそちらに移動しておく
(あと2分ほどでエネルギーが危険域にはいるはずだ……)
ビームがジンの脇を通り過ぎている間に既に位置が分かっていたので
デュエルを振り向きざまにマシンガンで射撃
(次は……距離を置くのか?
イザークにしては珍しい、エネルギーが危険域にはいっているのかもな……)
デュエルが後ろを向く、やはり距離を置くつもりのようだ
後ろ向く間に接近しておいて、実体剣で叩く
デュエルは海面に叩き付けられる

30 名前: 約束 八話(後半) 投稿日: 2003/07/15(火) 22:05
(くそ!何故だ!あいつに完全に動きを読まれている
撃てば撃つ前から何故か当たらない場所に移動しているし
接近戦は近づこうとするとその前に逃げられる
距離を置こうとしたら既に分かっていたようなタイミングで追い討ちを貰った)
距離を取られ、仕方なくライフルばかりを使っていたがそのせいで既にエネルギー残量が危険域に入っている
『イザークさん、これ以上は無駄ですやめてください!
気が付かないんですか?!』
「俺が何に気が付いてないって言うんだ!」
『ジンの加速性能ではデュエルが距離を置こうとしたら追いつけるはずがないんですよ』
「!?」
(……そうだ、確かにそれだけの性能の差はあるなのに奴は追いついてきた……ということは)
『イザークさんが後退を始めるよりさきにアイザックさんは既に後退をすることが分かっていて先に加速していたんですよ!』
「馬鹿な……そんなことが……」
『ま、そーゆーことなんでイザーク諦めろよ』
「そんなことが…………あるはずない!」

31 名前: 約束 八話(後半) 投稿日: 2003/07/15(火) 22:05
「なにこれ……勝負になってないじゃない……」
「ええ……」
「なんでこんなことができるの……?」
「……わかりません
アイザックさんの乗っているジンはOSは原形を留めないほど改造してありますけど
それはコーディネーター用に作られたOSではアイザックさんは乗りこなせないためなのでここまで圧倒的なはずはないのですけど……
むしろ、動かしやすいだけで元のOSより性能が落ちている位なんですけどね……
無論、ジンはただのジンで普段アイザックさんが乗っている専用のジンですらないのです……」
「あ……終わったみたいね」
「そうですね」
デュエルの色が落ちて、燃え尽きた灰みたいな色になっていた

32 名前: 約束 八話(後半) 投稿日: 2003/07/15(火) 22:06
「で今日の演習は勝ったかね?」
「はい……判ってくれたかどうかは判りませんが」
アイザックの部屋にあるパソコンでアイザックは出張中らしいクルーゼと話していた
「わからなければ死ぬだけだ
しかしジン対デュエルでもやはり勝ったか……さすがわたしの『同類』だ」
「そんな言い方やめてください!」
「……そうだな、
君とわたしでは比べ物にならないほど君の方が優れている、一緒にするのは失礼だったね」
「…………」
「そう嫌がらないでくれ、アイザック君
それがあったから血のバレンタインでも死なずにすんだのだろう?
それともまだ妹さんのことでも気にしているのか……?」
「そんなことありません、ただわかったんです……もうすぐ……」

33 名前: 約束 八話(後半) 投稿日: 2003/07/15(火) 22:06
「あ、アイザックさんお疲れ様です」
ドアの外にはフレイとラインが待っていた
演習が終わった後アイザックはすぐに隊長に結果を連絡しなければならないと言って
今まで部屋に閉じこもっていたらしい
「うむ、演習とは言え久しぶりにマジに戦ったからもうGで体が痛くて痛くて……
早速だがライン、尊敬する先輩のために背中でも揉んでくれ」
「はい、こちらにどうぞ!」
ラインが手を差し伸べたほうをみるとホテルなどにおいてある
電動マッサージ椅子が置いてあった
「む、手もみじゃないのか?」
「いつも出撃するたびに言われていたので部隊の経費を使ってこの間入れておきました」
「おぉ、気が効くなそれでは早速………
…馬鹿なッ!」
アイザックは椅子に座ってコントローラーらしきものを凝視して固まった
「こ……この穴はもしや……
コインいっこ入れる……では?!」
「そうです、経費で入れたとはいえ経費節約をするべきかと」
「Noooooo!今日の演習を中止にすれば椅子が何個買えたのだろう!?
く……演習やらなきゃ良かったよ…………」
「…………あんた変わらないわねぇ……」

34 名前: 約束 八話(後半) 投稿日: 2003/07/15(火) 22:06
「ん?どうしたフレイ?そんなに容易に大人の階段を上りたくはないぞ
もしや、おまえは昔からウジウジした自分に嫌気がさして変わりたいがために
転校したその日にやたら明るく振舞って周りから浮いたりするタイプだったのか」
「なんで、転校するのよ!」
「論点がソッチですか……」
思わずラインが突っ込む
その瞬間、アイザックは雷鳴に打たれたように体を震わせた
「アイザックさん!漏電しましたか?!
大変だ、フレイさん漏電したときはとりあえずコンセントに触らないように
特にコタツ火災のときは注意してください」
「……アイザックは?」
「電流が一定以上になると触った瞬間筋肉が固まり、
手を離そうとしても離れなくなることがあるので感電してるものに触るのは御法度です」
「だからその場合アイザックはどうするの……?」
「おおお!おお!おおお!つ……ついについについに
こここ……この日がきき来た」
フレイとラインは目を合わせると
「演技力いまいち……」
「そもそも台詞が意味不明ね……」
しかし何を言われてもアイザックのテンションは下がらなかった

35 名前: 約束 八話(後半) 投稿日: 2003/07/15(火) 22:06
「そうか……まだまだ修行が足りなかった……
じゃなくて!ついに俺に突っ込み役が回ってきたみたいだ……
いわゆる蝋燭は燃え尽きる前に明るく輝くと言う奴だな!」
「何に感動してるのかしらね…………?」
「さぁ……アイザックさんには何か感じることなんでしょうけど……
それよりお腹が空きませんか?
食堂へ食事にでも行きませんか?」
「そうね……行きましょ」
「うむ、俺も……ぬ!こ……これは?」
ラインは思い出したように
「そういえばその椅子には強制徴収機能が付いていてお金を入れるまで
ベルトが外れませんよ?」
「そ……そんな…………」
「アイザックさんは椅子でくつろいでいるみたいなんで僕達だけで行きますか?」
「そうね」
二人の後姿が廊下の奥に消えて行く
悲痛にアイザックは叫んだ
「パイロットスーツに財布をいれるポケットなんてあるはずないじゃないか〜!!!」

36 名前: 約束 八話(後半) 投稿日: 2003/07/15(火) 22:09
ふぅ……シリアスなの特にMS同士の戦闘の描写はわたしには無理だと痛感しました……
次からはまたギャグに……できるかな?

仮面とアイザックの設定が段々……

37 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/15(火) 22:25
>28-36
おつ。
シ リ ア ス な の か ?
という疑念は拭えませんが楽しめたのでオールOK。
これを機に学べ、遺作w
しかしライン君のキャラもどんどん崩れて言ってるような…(笑

仮面とアイザックは同類?
彼も兄貴を感じちゃったりするんだろーか。

38 名前: 約束 八話(後半) 投稿日: 2003/07/15(火) 22:40
しまった!
>>28
大佐の台詞のキラは○○にしておいてください
伏字にし忘れたよ……

ライン君は意図的に崩してみました
アイザック君がどうも仮面の話を引きずってノリが悪かったので
彼にとばっちりが……

39 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/15(火) 23:22
>>36
乙。
ライン…君は鬼だw
しかし、仮面と「同類」って…気になるなぁ。
>>28のCMは爆笑しました。いいなぁこのセンス。

40 名前: 火サスノリで行ってみようか 45 投稿日: 2003/07/16(水) 00:11
「あ……ッ…」
女は拳銃を取り落として、腕にフレイを絡ませたまま崩れ落ちた。
それと同時に、護衛兵が女に飛びついて取り押さえた。
女の左手を狙撃したのはアスランだった。
「女性に銃を向けるのはいい気分じゃない…」
アスランは銃を護衛に返しながらため息をついた。
女から引き剥がされるようにされたフレイの手には、イヤリングが握り締められていた。
「毒ガスか何か…地面に叩きつけるかして、一定以上の衝撃を与えると爆発して撒き散らすってわけか…」
イザークはイヤリングを確かめると、複雑そうな表情をした。
「まったく、あの女…いや、彼女は俺達を助けてくれたってわけか?」
「フン、素直にお礼を言ったらどうなんだ?」
「馬鹿言え…そんな事出来るかよ」
ディアッカの冷やかし気味の言葉にそう答えたが、視線は穏やかになっていた。
カガリは、キラに抱きかかえられているフレイが無事なのを確かめながら、
「大丈夫か?しかし、何であんな事…」
と、不思議そうに、戸惑ったように聞いた。
「…私、パパの事を、忘れたわけじゃない…」
キラとサイは目を伏せた。ラクスは凝っと、フレイを見つめている。
「でも、もう、あんな事は、しちゃいけないって…」
「……」
「あれは、私だったわ。私がいて、引き金を引いた。皆を、殺そうとして…」
「でも、それを止めたのも、貴方でした。そうでしょう?」
ラクスがそっと、フレイの手を握ってそう言った。
「キラ…」
促されて、キラも手を重ねた。
「…私、本当は、怖かった。パパが死んだって事を…キラを好きだって事を、認めるのが…
 でも、もう、パパはいない。忘れたり、許したりなんて、出来ないわ…でも…」
フレイはそっと、キラの手を握り返した。
「私、何も知らなかった。コーディネーターだって、生きてるんだって事も…
 もう、4年も経っちゃった…昨日はね、夢の中で、パパが小さな私を抱き上げて、笑ってた。
 私も、無邪気に笑ってたわ…あんなに笑ってる私、初めてだったような気がするの」
サイは顔を横に向けた。こみ上げてくるものをフレイに見られるのが嫌だったのだ。
「サイも、キラも…ごめんね…許して欲しいなんて思わないけど、本当に…」

41 名前: 火サスノリで行ってみようか 46 投稿日: 2003/07/16(水) 00:11
数日後、オーブの空港に、フレイとキラ、サイの姿があった。
「フレイ…本当に行くのか?」
サイの問いに、フレイは確信を持ったように頷いた。
「私、何も知らなかったから…これじゃいけないって。少しでも、罪滅ぼしをしないと」
「罪滅ぼしなんて言い方はいけません。貴方なら、立派な仕事が出来ます」
フレイの隣に立っているラクスがそう言った。
「私の我がままを聞いてくれて、ありがとうございます。本当なら、プラントに行くなんて、とても無理だったのに…」
「いえ、プラントにも、ナチュラルの方がいて下さらないといけない時期になっています。
 貴方が秘書として私の側にいて下さるのは、とても心強い思いがします。色々と助けて欲しいのです」
「…私に、そんな事が本当に出来るのか、分からないけど、精一杯頑張ります」
フレイとラクスは互いの手を取り合うように、握手をした。
「…じゃあ、ラクス。フレイを宜しく頼む」
「キラは、後からくるのでしょう?」
「僕も、オーブでやり残している事があるから…近いうち、少し時間が出来たら行ってみたいな」
「フレイさんの事は、心配なさらないで…」
「あぁ、じゃあ、フレイ、元気で」
「頑張れよ、フレイ」
「…ちょっと…痛いわ」
キラとサイがそれぞれフレイの手を力強く握ったのでそう言ったのだ。
照れたように二人は笑った。
「行ってくるわ…皆、元気で…」

42 名前: 火サス エピローグ 1 投稿日: 2003/07/16(水) 00:12
オーブの市街地からやや離れた場所にある戦没者の慰霊地の一角に、イザークとアスランが立っていた。
「…ようやく、ニコルの墓に来れたな…」
「ザフトの軍人も差別無く葬ってくれたんだ。感謝しないとな」
アスランは墓前に花と、楽譜を入れた小さな箱を置いて、静かに瞑目した。
風にざわめいた木々の影と共に、二人の髪も揺れた。
「…もう来てたのか」
ディアッカが二つの花束を持って二人の後ろから現れ、墓前に花を置くと、アスランと並んでしばらく目を閉じた。
「…何で花が二つなんだ?」
「宜しくって頼まれてね。プラントから、動けないから」
「あぁ、奥さんか。…じゃあ、向こうの墓に花を置いたのも?」
「…ボーイフレンドだったそうだ。彼女は元気だから安心して欲しいって報告しておいたよ」
「そうか…」
雲の隙間から明るい日差しが顔を覗かせた。
「ラクス達は、もうオーブを発ったな?」
「あぁ、今朝の便で発った。ここにも来たいと言っていたが、早めに出てもらった。あんな事もあったし、次の機会にしてもらうさ」
三人はしばらく黙って、ニコルの墓を見つめていた。
「ニコルは…どう思ってるかな。俺達を見て」
「笑ってるさ。きっと…」
アスランの呟きに二人は静かに肯いた。
「そうだな…そう思いたいな…」

43 名前: 火サス エピローグ 2 投稿日: 2003/07/16(水) 00:13
一ヵ月後、プラントのとある病院の一室。
フレイがドアを開けると、甲高い赤ん坊の泣き声が飛び込んできた。
「ご免ねフレイ、今、お乳をあげなくちゃいけないから…」
「ううん、構わないで良いわ。ここで、待ってるから」
フレイはベッドの傍らの椅子に静かに腰掛けた。
母親が、子供をあやしている光景。それをフレイは眩しそうに見つめていた。
「来週には退院。そうしたら、地球に降りようと思ってるの。2年半も降りてないし…」
「そう…ご両親に、お子さんの顔も見せてあげないといけないわね?」
「この子は連れていけないかも知れないけど、上の子の顔は見せてあげたいし…初孫だから、喜ぶだろうなぁ…フレイ!?」
フレイの頬を涙が伝っていた。しかし、それは決して、悲しい涙ではなかった。
「どうしたの?…あ、ごめんなさい…私だけ、喜んじゃって…」
「違うの、私…私も、嬉しいの。嬉しくて、涙が出るの」
いつの間にか、赤ん坊は静かに寝息をたて始めていた。
「フレイ、この子を、抱いてあげて」
「えっ、良い…の?」
「お願いだから、抱いてあげて」
抱き上げた赤ん坊の柔らかい肌の感触が、服の上からでも感じられて、フレイはまた、涙を流すのだ。
赤ん坊が、フレイの小指を握るような仕草をした。
「凄いね…温かくて、とても、強くて…」
そっと赤ん坊を返した時、またドアが開いて、ラクスが一人の子供の手を引いて入ってきた。
「ラクスさん、ご免なさい…子供の相手をしてもらって」
「あら、もう終わりましたの?残念ですわ。もっとお相手して差し上げたかったのに…ね?」
ラクスはそう子供の方に笑いかけた。フレイもつられて笑った。屈託の無い笑顔だった。
「今、地球から、キラの乗っている船が港に到着しました。迎えに行きましょう」
「着いたんですね?…行きましょうか。じゃあ、また来るから、体には気を付けてね」
「フレイ…ここに住むの?」
「しばらく、ここにいるわ。私、もっと、色んな事を、知らなくちゃいけないと思うから」
「そう…じゃあ、また会えるわね?」
「えぇ、いつでも、会えるわ…」
フレイは立ち上がると、歩き始めた。


fin.

44 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/16(水) 01:28
>火サス様
長編の完結を、乙かれさま。
実に爽やかな読後感です。
最後の女性達のやり取りが素敵ですね…・゚・(ノД`)・゚・。

45 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/16(水) 14:00
>>40-43
長編乙!
いやー、きれいに終わりましたね〜。
長い間楽しませていただきました。
やはりフレイ様は素敵だ…。

46 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/17(木) 00:54
火サスさん乙かれさまでした!!
爽やかな読後感を有難うございました。
最近の本編の展開に鬱々としていた心に、涼風がさっと吹き込んだように
感じました。
本当に有難う。

47 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/17(木) 19:31
>>44-46
感想どうもです。
最初に書いたのいつだったかと思ったら、5月29日…一ヶ月半前…
長い間放置してましたからね。
無理やり文体変えようとして失敗したり、見事に繋がりが破綻していたり、
正直、放棄しようと思ってましたが、エピローグが一番最初に固まってたので
勿体無いなと思って最後まで…ま、もう良いんだけどさ
これからは読み専ですが、職人の方々頑張って下さい。

48 名前: 約束 九話 投稿日: 2003/07/18(金) 00:02
「でフレイさん、何が聞きたいのでしょうか?
僕に分かることなら軍事機密から隊長の病歴まで喋りますけど」
二人は椅子に囚われたアイザックを無視して二人で食堂で食事をしていた
「……なによ、わたしは別に何も言ってないじゃない」
「いえいえ、僕にはわかります
フレイさんは僕に何かを聞きたい、しかし我慢しています
我慢は体に良くありませんよ」
フレイは食事の手を止めると聞いた
「……何か気に入らないけど聞くわ、あいつの妹って今どうしてるの?」
「妹さんは血のバレンタインでお亡くなりになったそうです
……ご両親と弟さんも同時に亡くされていますね」
フレイはしばらく何かを考えているような様子だったがさらにラインに聞いた
「…………じゃあ、もう一つ聞くけどあの男の―――」

49 名前: 約束 九話 投稿日: 2003/07/18(金) 00:04
「むぅ、貴様ら俺を置いてもう食事をしているとは!
隊長のいないこの隊で今一番偉いのは誰だと思っているんだ?!」
「フレイさんですね」
「そうね、いつの間にかわたしも大物になっていたみたいね」
「Nooooo!ワァッツ?アイキャントスピークイングリッッッッシュッッッッ!
ハロー、マリア。ナイストゥミーチュ!ハローミスタシャア、ユーアーレッド!」
「…………とりあえずあんた英語苦手でしょ…………」
「ぁgfdjjふぁあいえfなふぁいkっぁdls!!」
「ああ!!そ……それは伝説の発音不能なのに台詞にははいると言う伝説の大技!
僕も見たのは初めてです!!さすがアイザックさんこんな大技を今まで温存していたとは……」
伝説の大技を見せられたフレイは顔を嫌そうにゆがめると
「しかしあんたどうやってあの椅子から逃げ出したのよ?」
「俺は財布は持っていなかったが運良くナイフと50ウォン貨幣が手元にあった!
そして俺はナイフで50ウォン貨幣の真ん中に穴を開けると(貨幣を削るのは犯罪です)
それを500円玉の代わりに椅子にいれて脱出したのだ!」
「ダメよ……それは500円玉と50ウォン貨幣の大きさが同じで削って重さを一緒にして機械を騙した
そこまで説明しないとわからないわ、調子悪いじゃないのどうしたの?」
「アイザックさん、今日は疲れてるんですよ
早めにお休みになったほうがいいんじゃありませんか?」

50 名前: 約束 九話 投稿日: 2003/07/18(金) 00:07
「く……お前ら寄ってたかって……
ふ……とりあえずメシでも優雅に食べますか
親父さんいつものアイザックスペシャルをくれ」
厨房にアイザックは顔を突っ込むと顔馴染みの料理長にいつものを頼んだ
「あいよ!若い内はドンドン食べて成長しろよ!
特にアイザックお前は頭の中身がスカスカなんだからな」
「無駄口はいいから………………お、ありがと」
フレイやラインの食べていた○○定食とは何かが違っていた
「ふーん、それがアイザックスペシャル?…………これは」
フレイは何かに違和感を感じたがそれを形容する言葉がどうしても見つからなかった
色も形も臭いも同じなのに……あえていえば量がちょっと多い程度の定食になぜここまで違和感を感じるのか不明だったが
フレイはその場にいるのに危機感を覚えて
「あ、わたし部屋に戻るわね。そ……それじゃ」
フレイは駆け足で廊下の向こうに消えて行った

51 名前: 約束 九話 投稿日: 2003/07/18(金) 00:07
「ああ……どうしたんだ、あいつ?」
「アイザックスペシャルが原因だと思うのですけど……だってそれは」
「気にするな、うまいぞ?」
「だってそれの材料――――」
ラインは異様な殺気を感じて後ろを振り返った
「あんちゃん……常連だからといっても言っていいことと悪いことがあるんだぜ」
料理長が首筋に中華包丁を当てていた
「ちょっと教育が必要みたいだな……アイザック!お前の手下をしばらく借りるぜ!!」
「うん、じゃラインさよなら
ムショぐらしもたまには悪くないと思うぞ、半日くらいで済むし
その半日が長いんだけどな…………」
アイザックは猛烈に遠い目をして定食を貪っている
「そ……そんな、アイザックさん〜」
料理長とラインは厨房の闇の中へ消えて行った…………

52 名前: 約束 九話 投稿日: 2003/07/18(金) 00:08
(なんだったのかしら……あのザラッとした嫌な感じは)
フレイはさっきの定食のことを思い出しつつ部屋へ向かっていた
(ん……あれはイザーク?だったっけ?)
例のマッサージ椅子に座りなにやらもがいている男がいた
「うぅ、これはなんなんだ!はずれない!
くそっ!またあの二人の仕業だな」
フレイはその脇をそ知らぬ振りで通り抜けようとしたがイザークが哀れに思えたので
「確かそれお金を入れると外れる仕組みらしいわよ」
「ぬ、そうか済まない!」
以外と素直だった
イザークはコインを椅子に入れると
「ぬおぉぉ!んぅ……うふぅ……あはぁ……」
と妙に色っぽく呻き出した
「ど……どうしたの?」
しかしイザークは我を忘れて呻いている
(こ……これは凄いわね……とりあえず逃げましょ……)
「あぁ、た…たすけてぇん、と止めて……うふぅん……」
フレイは逃げ出した、後ろを振り向く勇気はなかった

53 名前: 約束 九話 投稿日: 2003/07/18(金) 00:11
む〜……絶不調ですな……
ギャグがつまらない……でも書かないとついついさぼってしまいそうな気がするので
不調でも無理やり書いて見ました

う〜、なんとかそろそろ終わりの伏線を書きたいのだけどなぁ……

>>47
お疲れ様です
完結させるのは大変ですねぇ……凄い凄い

54 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/18(金) 00:16
>>48-53
おつふれ〜。
ど ん ど ん キ ャ ラ が 壊 れ て い く … 。

特にライン君のあの初期の雰囲気は一体どこへw
でも自分はこういうノり大好きなので楽しい。

55 名前: 約束 九話 投稿日: 2003/07/18(金) 00:24
>>54
確かに 壊 れ て ま す ね 

そろそろ終わらせ時なんだけど最後までもっていくための話が……
どんなときもギャグ入れなければいけないような気がしてたまらないので
話が進まなくて……
特にライン君の破壊が進んでるので完全にギャグキャラになる前に何とかしないと……

56 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/19(土) 19:29
別にどっちでもいいや
乳揺れ(*´д`)ハゥハゥ・・・

57 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/19(土) 19:29
誤爆・・・

58 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/19(土) 21:37
>>55
乙です。
今回も期待を裏切らない面白さw

スローペースでギャグ満載でも全然いいです。
むしろそのほうg(r

次回投下もお待ちしております。

59 名前: ヘリオポリスの学園祭 投稿日: 2003/07/19(土) 23:31
「あーあ残念、もうちょっとだったのに…」
「でも、女生徒の中では一番だったんだし、やっぱりフレイは凄いわ」
フレイを取り囲んだクラスメイトはそう言ってくれたが、フレイは今にも泣き出しそうなのを堪えるのが精一杯だった。
「皆ありがとう…でも、楽しかったから良かったわ…」
無理に笑顔を作って答えるフレイだったが、そう言えば言うほど悔しさがこみ上げてくる。
負けた相手がマリュー先生あたりならまだ悔しさを押し殺す事が出来るのだが、よりによって男の子に負けるなんて…
そんな感情が表情に出てしまっているのだろう、クラスメイトもどう慰めて良いのか迷っている様だった。
「でも、確かにあの子、は似合ってたわよ、ね。ちょっと悔しいけど…」
フレイとしては精一杯強がったつもりだったのだが、所々言葉がつっかえるのが逆に痛々しい。
「元気出して、フレイ。来年もあるじゃない」
「そうよ、そしたらフレイの圧勝よ」
「来年…そう言えば、そんな事考えてなかったわ。そうよ、そうよね!」
空元気かも知れないが、そう言って笑顔を見せるフレイに、クラスメイト達は少し安心するのだった。
「フレイ、お疲れさん」
「あ、サイ…」
フレイはサッと顔を赤らめた。
こうして終わってみると、コンテストに出場したのはやはりちょっと恥ずかしい事だったような気がしたのだ。
それに、男の子に負けているのである。どうしても恥ずかしさが先に立った。
「どうしたのフレイ、顔赤いよ、大丈夫?」
無神経な質問に少しムッとしたが、サイはサイなりに気を使っているのだ。
「今日はありがとう、本当、大成功だった。結果はちょっと残念だったけどね」
サイの笑顔は本心からのものだった。それが分かるから、フレイも少しはもやもやした気分が晴れたような気がするのだ。
フレイは壁にかけておいたドレスを見て、パパが見てたら何て言ったかな、と思った。

60 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/19(土) 23:57
キラが死んだって誰かが言ってた。誰だったっけ。
キラは死んだんだよ。爆発して、粉々になって、ぐちゃぐちゃに溶けちゃって、
もういない。
どこにもいない。
死んじゃった人は帰ってこないんだって。
だからキラも帰ってこないんだって。
もう二度と、私に抱きついて泣いたり、私に優しくしてくれたり、
私とキスしたり、私と一緒に寝ることもないんだって。

そんなことあるわけないのにね。キラが約束を破ることなんかあるわけないのにね。
AAの人間はみんな馬鹿なんだ。何もわかってないのよ。
だって、まだキラはコーディネーターを殺しつくせてない。全然、足りない。
キラは約束してくれた。私を守るって。
キラは戦って、コーディをいっぱい殺すまでは死なないの。
だからキラは帰ってくるの。私のところへ、ただいまって、そしてメットをとって笑って、続きは?って訊くの。
そしたら私も、今度はキラにうんと優しくしてあげるのよ。
もう泣いたりしないでいいよって言って、抱きしめてあげるの。
きっとキラも喜んでくれるよね。


ねえ、キラ。
はやく会いたいよ。

61 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/19(土) 23:59
パパが私に会いに来てくれた!
パパは死んじゃったけど、帰ってきたのよ。
死んじゃった人が二度と帰ってこないなんてこと、やっぱり嘘だった。
だからキラも、もうすぐ戻ってくるわ。
パパの声がする。
大好きなパパ。
パパの声が、優しく私の名前を呼んでくれる。
フレイ、心配しなくていいよ、私が守るから、って。
私には、私を守ってくれる人が二人もいる。
なのに、私はなぜ気絶してしまったんだろう?
パパの声が聞こえたあと、なんで気を失ってしまったんだろう。


キラ、キラ、私を守るって言ったのに。
私はあなたを守るって言ったのに。ごめんね。

62 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/20(日) 00:27
職人さん、乙です。

>59
おお!続きお待ちしておりましたよ学園祭。
男子に負けて泣きそうになるフレイ様(*´Д`)ハァハァ
しかしサイ…そこでもっと何か言わんかい!
口説き根性がありませんな、まだまだw


>>60-61
フレイ様、おいたわしい…・゚・(ノД`)・゚・。
こんな状態の少女一人、
仮面にとっては苦もなく操れてしまうんだろーか…。

63 名前: 約束 九話 投稿日: 2003/07/20(日) 00:52
職人さんお疲れ様〜

part1が過去ログ倉庫に移動しました
http://jbbs.shitaraba.com/anime/154/storage/1058354309.html

64 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/20(日) 00:53
ちぃ、名前が残っていたか……

65 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/20(日) 02:40
頭が痛い。おなかも。
わからなかったとはいえパパに銃を向けたりなんかしたから、ばちがあたったのかもしれない。
パパ、どこ?
私、急いで起きるから。
せっかくきてくれたのに、私ったらこんな状態で。
もういなくなったりしないでね。
私の目の前から、どこか遠くへなんて行ったりしないでね。

サイのこと説明しなくちゃ。
とても大切にしてくれたのに、私、彼と結婚はできないの。
わかって、パパ。
わかってくれる?
私、生まれて初めて、自分が本当に欲しいものを見つけたのよ。
パパがくれるものだけじゃなくて、自分で見つけたの。
キラが戻ったら、キラのこと、ちゃんと紹介するね。
パパ、お願いだから彼のこと殴ったりしないでね。
パパはコーディネーターが嫌いだから怒ると思うけど、ううん、私だってまだコーディネーターを憎んでるけど。
キラはね、特別なの。
なんていったら、パパ、もっと怒るかな。

キラ、私がキラのこと好きってパパに言うから。
キラ、あなたのことが好きってあなたにちゃんと言うから。
……聞いて、くれるよね?

66 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/20(日) 23:33
パパじゃない。
パパじゃなかった。
声はすごく良く似てて、目をつぶればパパがそこにいるみたいだった。
でも、この人はパパじゃないんだ。
怖いよ、キラ。
目が覚めたら知らないコーディネイターがいっぱいいて。
怖いよ。
パパはやっぱり来てくれないの?
じゃあキラももう来てくれないの?
どうしようどうしよう、すごく怖い。
守ってくれる人が誰もいない。
ひとりぼっちなんてそんなの、
死んじゃって吹っ飛んでからだの欠片もないなんてそんなの。
パパじゃない人の口からパパの声が言う。

「フレイ、心配しなくていい」

クルーゼが私の肩を抱く。
私は目を閉じてその声を聞いた。

キラ、私どうしたらいい?

67 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/20(日) 23:34
コーディネーターがみんな私を見てる。
あんまり人のいるところに行きたくないよ。
でもクルーゼの声を聞いていないと不安になっちゃって、どうしようもなくて、
何かにすがりたくてでも何もない。
パパの声の、亡霊だけ。
顔に傷のあるコーディがいつも私に怒鳴る。
いやだ。私がナチュラルだからなのかな。
私がコーディが嫌いなように、あいつらもナチュラルが嫌いなんだ。
私のこと嫌いだって、気に食わないって視線が言ってる。
なにやってるのかわからない。
いっつもおどおどして、クルーゼのそばにいるだけ。
ママが死んで、パパも死んだし、友達も死んだ。
やっぱりキラも死んじゃったの。もう会えない。
みんなみんな死んじゃったのに、
私だけ生きてる。
私にはもう誰もいない。
ひとりぼっちで生きてる。
キラは会いにこれない。私はこんなところにいる。
キラが会いにこれないなら、私が会いにいけばいいのかもしれない。

待っててね、キラ。

68 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/21(月) 15:23
>泣いてほしい(ry

うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
やばいよ最高だよ…。つーか今マジで泣いてます。

69 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/21(月) 22:57
もうすぐあえる。
きっとあえるわ。
その方法を見つけなくちゃ。
このごろそればっかり考えてる。
ぼうっとしてるって、コーディに怒られる。
あの傷のあるコーディは、私がぼうっとしてるとイライラするらしい。
よくわからないけど。
どうすればいいのかな、ねえ、キラ。
あなたが死ぬとき怖かった? やっぱり痛かった?
あのね、寝るときいつもキラの顔が浮かぶの。
夢の中で、キラ、いっつも笑ってるのよ。
変なの。
笑ってるキラより、泣いてるキラのほうが私はいっぱい見てきたのにね。
でも夢ではキラは私から離れたとこにいて、こっちを向いて笑ってるの。
そのあと私は融けちゃって、何も見えないし声も出せなくなって目が覚める。
目が覚めた後も真っ暗で見えなくて喉もふさがってるのに、涙だけは出てるの。
馬鹿みたい。
優しかったキラ。
キラはいつだって優しかったのに、どうして肝心なときに優しくしてくれなかったの?
死んじゃうなんて、ひどい。
でもそれも私のせいよね。
私があなたを死なせたようなものだから。

キラ、私のこと憎んでいいから。
泣かないで。

70 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/21(月) 22:57
銃にしようって決めた。
でも回りに気づかれないように撃つのはけっこう難しい。
チャンスをうかがってるけど、もうちょっとかかりそう。
ごめんねキラ、なるべくはやくするから。心配いらないわ。
コーディたちはまだ怖いけど、もうすぐお別れできるからあんまり気にならなくなった。
でもそれがまた、あいつらの神経を逆なでするみたい。どうでもいいけど。
毎日がのろのろ過ぎるのに、寝るとすぐ次の日になっちゃうのはなんでかな?
夢の中で会えるだけでも嬉しい。
もうすぐほんとに会えると思うともっと嬉しい。
なのに起きたときかならずほほが濡れてて、
叫びだしたくてたまらなくなる。どうしてだかわかんない。
キラ、キラ、苦しいよ。
急がなきゃ。
気持ちばっかり空回りしてる。

その日がはやく来ればいい。
そうすればきっともう苦しくなんてないのに。
私がそっちに行ったら、キラ、夢のときみたいに私に笑ってね。

お願いだから、ね、キラ。

71 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/22(火) 00:31
フ、フレイ様、早まっちゃ、早まっちゃ駄目だ(ノД`)

72 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/22(火) 15:03
コーディたちが忙しく動き回ってる。
なんか殺気立ってるみたいだけど、
何がどうなってるのか状況がわからない。
クローゼはどこに行ったんだろう。
私には誰も何も教えてくれない。話しかける相手も私にはいないから。
ただ混乱してる。
でも、銃は手に入った。
どさくさにまぎれてこっそりとった。
ちゃんと撃てるといいんだけれど。
おろおろして流されるだけだったけど銃のことは忘れなかったのよ。
ここがどこかなんてもう関係ない。あとは撃つだけ。
それでおしまい。私は解放される。
キラ、見てて。
どうか一瞬で終わりますように。
ああ、クローゼ、邪魔しないで!
なんであなたがこんなときに来るの?
人がせっかく、せっかく
見つかってとりあげられたら困るから、隠さなきゃ。
何を言ってるのかわかんない。わかんないことだらけ。
あと少しなのに。
クローゼが言ってることも、パパに呼ばれてるみたいで、なんだかひどく現実感がない。
なに?
力が入らない。
腕が、あげられない。これじゃ銃がうてない。
キラのところにいけない。

どうして、どうして?
キラ。

73 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/22(火) 15:04
ずっと真っ暗だった。
ずっとキラの名前、よんでた。
頭、ぐるぐる。
どのくらい時間がたったんだろう。
すごく長かった気もするし、一瞬だった気もする。
何が起こったんだろう。
だんだん感覚が戻ってくる。
身体に触れてる銃の冷たい感触に安心した。
良かった、気づかれなかったみたい。
とりあげられなくて良かった。
突然まぶしくなった。
腕……うん、あがる。大丈夫。
かすんでた目もだんだんはっきりしてくる。
キラが見えた。
迎えに来てくれたの?
今、行くから。
一緒に行くから。
置いていかないで。ちゃんと連れてって。
胸に銃口を押し付ける。
キラのことさいごまで見てたいから、目は閉じない。
怖くなんてないわ。

キラ、ありがとう。

74 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/22(火) 15:09
うわわ。クルーゼがクローゼになってる。なんでだー
かなりてんぱってたらすい。スマソ。

75 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/22(火) 17:44
>>74
うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ

乙・・・

76 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/22(火) 18:43
 待てッ! 大逆転があるかもしれない! この描写はフレイが死ぬ0,5秒前だ!まだ泣いちゃだめ〜

77 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/22(火) 20:33
フレイ様・・・
うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ

78 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/22(火) 20:53
フレイ様死にそうだな。
まっとりあえず・・・


うあ゛ぁあ ・゚・(@台⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ

79 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/22(火) 21:03
漏れもすぐに行くよ・・・

うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ

80 名前: ヘリオポリスの学園祭 投稿日: 2003/07/22(火) 21:54
学園祭最終日の夜は、大食堂を使ってダンスパーティーが行われる。
試作品の展示の片付けに追われていたキラに、トールが声をかけた。
「キラ、お前今日のダンスパーティー行くだろ?片付け終わったら一緒に行こうぜ」
「あ…うん、分かった。これ片付けたら、シャワーを浴びるよ」
いつに無くキラの返事が素早かった事にトールは少し驚いたが、既にミリアリアを誘う方に気持ちは向いていた。
盛大、とは言っても、お酒は無しである。可愛いものだが、生徒達の心は浮き立っていた。
「あれ、フレイどうしたの?踊らないの?」
「え、ちょっと…ね、ごめん、先に行っててくれる?」
会場には来たものの、どうも雰囲気に乗り切れない。まだあの結果を引きずっているのかも知れない。
(サイったら、生徒会長で忙しいから仕方ないかも知れないけど、少しくらい居てくれても良いのに…)
サイがフレイを妹のように思っているのと同様、一人っ子のフレイも、サイを兄のように慕っている。
それだけに、この場にいないのが少し寂しいのだ。
一人所在なげなフレイの姿を、キラは見つけた。
「キラ?どうしたの?今日はお疲れ様!」
ミリアリアにそう言われて、慌てて視線をフレイから逸らした。
コンテストに出場したミリアリアに、あちこちから「可愛い」と声がかけられて、
ミリアリアはトールの側で照れ笑いを浮かべながら少し恥ずかしそうにお礼を言った。
「グゥレイィト!可愛…い!」
一時の現実逃避から立ち直り、何時の間にかパーティーに参加していたディアッカだった。
「先輩…僕、今日は帰ります…何か、嫌な予感が…」
「何言ってるんだ!優勝したお前が参加しないでどうする!これは義務、義務だ!」
逃げ腰なニコルをそう叱り付けたが、視線は女の子の方にしか向いていなかった。
「よし、行くぞニコル!」
「やっぱり、行くんですか…」

81 名前: 約束 十話 投稿日: 2003/07/22(火) 23:12
「恐らく連邦軍とオーブの衝突は避けられないだろう
連邦は決着を急いでいる、オーブにあるモルゲンレーテとマスドライバーを狙って協力を強要するだろう
でオーブはあのウズミがあくまで中立を叫び戦場になるのは確実だな
そうなれば例の新型の情報の獲得が難しくなる
……そこでキミに頼みたいのだよ、オーブが戦場になりモルゲンレーテから
例の新型の情報が消える前に奪取してもらいたい」
「……冗談言わないでください、今のオーブへ侵入しろと?
連邦とぶつかるのを覚悟して目一杯警戒を堅くして、新型量産機をどんどん配備してるところですよ?」
「キミにしかできないと思うのだけどね……」
「無理です、絶対無理」
「そうか……ならイザークに頼むとしようか」
「あいつを殺す気ですか……」
「誰かがやらないといけないのでな……私がやれるといいのだが忙しくてね」
「……時期をずらしていいなら」

82 名前: 約束 十話 投稿日: 2003/07/22(火) 23:13
「……なんだか顔がむくんでるわよ?」
「うむ、隊長と夜を徹して会議したからな
どーも、我故郷に一度帰郷しなければならないようだ」
「あんたの故郷?」
「うむ、サムライと芸者と最先端技術の国オーブだ」
「……………お願いだからいかにもな勘違いを広めないでよ……
しかしあんたもオーブに住んでいたのね」
「うむ、繊細で働き者で観光に行くと首にカメラを下げていてA型が多いいかにもオーブ出身者って感じだろ?」
「でもあんたA型じゃないでしょ?」
「うむ、O型だ…………お主いつの間に医務室に忍び込んで俺のカルテを?!」
「ああ……もう」
ここで放送がはいる
『9:00から会議をします、アイザック・イリヤ、イザーク・ジュール、ライン(略)はただちに作戦室へ来てください
繰り返します…………』
「あ、そういやそんな予定もあったな
じゃフレイまた後で〜」
「ちょ……ちょっと待ちなさいよ、(略)ってなによ―――」

――会議中略―――

83 名前: 約束 十話 投稿日: 2003/07/22(火) 23:21
「ということでオーブに襲撃するらしい」
「……オーブは中立のはずだけど?」
「うむ、極秘だが新型のMSだか戦艦だかの開発をしてるらしい
なのでこっそり侵入し、密かに情報を集めるわけだ」
「いつもながらノリが軽いわねぇ……」
「うむ、今オーブは連邦艦隊に降伏を迫られていて激しく戦場化しそうだからな
火事場泥棒ということわざがある、それに従えば成功は間違いないだろう
……そういえばお主もオーブ出身だったっけ?寄り道して何か土産でも買ってこようか?」
フレイは顔を手に平で覆いつつ
「……………………どこから突っ込めばいいのやら……」
「俺とお前の仲じゃないか、遠慮しなくてもいいぞ
よし、では俺の家によって妹のお古の服でも持ってきてやろう
軍服ばかりではアレだろう」
さらに手を増やして両手で頭を抱えつつ
「わたしはあんたの着せ替え人形か……?
って思い出したわたしはあんたの妹に似てるって本当?!」
アイザックはやたら遠い目をすると
「…………いや、似てない
俺の妹はボケ属性だった……いつも俺が突っ込んでいたなぁ……」
「……突っ込むところなの?それは」

84 名前: 約束 十話 投稿日: 2003/07/22(火) 23:28
「ふ……俺もいい大人だ、外見がちょっぴり似てる程度で馴れ馴れしくしたりしないさ……」
「そこは明らかに突っ込むところね…………」
フレイは最近体得した『アイザックの話を無視して自分の言いたいことだけを言う』という戦略を駆使して
「で似てるってどのくらいなの?写真持ってないの?見せなさい」
「写真か………」
アイザックは懐を探る
「おお!これは……!」
「それはいいから」
「え?!まだ何も言ってないし、見せてないのに……?」
「いや、なんだか展開が読めたし」
「ウホッ、いい写真なのに……」
急速にフレイは顔色を赤くすると叫んだ
「中途半端に使うな!!それは前振りがあってこそのものなの!」

85 名前: 約束 十話 投稿日: 2003/07/22(火) 23:29
アイザックは老け込んだ表情で
「……最近めっきり突込みが板についてきたな……しかもボケ突っ込みも既に完璧……」
「……わたしをこんなになったのは誰のせいだっけ……?」
「あぁ……古きよきボケまで…………というかついに壊れたか……
我々の知っているフレイは死んだ、何故だ?!」
「……あんたが常にボケてるからよ……わたしだって好きでこんなになったんじゃ……
パパ……わたし汚れちゃったみたい……」
「やめろ!やめてくれ!俺は……俺は突っ込み役は嫌なんだ!!
そんな……そんなフレイはいやだ!!
ボケると妹に限りなく似てるから……」
「ん?なんか言った?」
「うむ……とりあえず気にするな」
「ふぅ……ああもう、とりあえず服はどうでもいいから無事に帰ってきなさいよ」
「うむ、まぁ……アレだ、善処しよう
約束するのは苦手だからな」
「なんか結構していたような気もするけど……気のせい?」
「気のせいだろう、うむうむうむうむむむむううむ」
「……もう突っ込まないわよ……」

86 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/23(水) 14:27
痛いよ。
血、いっぱい出てる。
そこから寒くなってく。
腕、つたって、生あたたかいのが流れてる、気持ち悪い。
ぬるぬるする。
身体、重い。けど、誰かが支えてる。
私を抱きしめてるの、キラ?
キラの腕に抱きしめられてるとこ、そこだけあったかい。
あったかい、なんで?
キラは死んだのに。あったかいはずないのに。
でもこれはキラの腕だわ。
覚えてる、あの夜の力強さとか。
「フレイ……フレイっ」
どうしちゃったの。私、わたしちゃんと撃てなかった?
胸じゃない、肩が痛い。気、遠くなりそう。
ぱたっ、て。液体が顔に降ってくる。
キラ?
泣いてるの?
キラ。
泣き虫ね。
ねえ、もう泣く必要なんかないのよ。
ひとりぼっちの、さびしがりやのキラ。
これからは私がそばにいるから。
一緒にいるから、さびしくなんかないわ。

そうでしょ? キラ。

87 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/23(水) 14:28
ほんとに泣き虫なんだから。
いつまで泣いてるのよ。
「……っフレイ」
腕、しびれちゃって伸ばせないの。
だから、涙を拭ってあげられない。
頭をなでて、抱きしめて、慰めてあげることもできないの。
ああ……ほら、泣かないで、キラ。
もう泣いたりしないでいいの。何回言わせるの?
まったく、仕方のない子ね。
「なっ……泣いてるのは、君のほうじゃないか……!」
そう、私も泣いてる。
これからは、私があなたのかわりに泣くから。
あなたを想って泣くから。
優しいキラ。優しすぎたね。
コーディネイターなんて、大嫌いだったのに。
なんでかな。いつから、どうして?
こうなっちゃったんだろう。
いっぱいいっぱい傷つけた。
ひどいこといっぱいした。それなのに。
それでも、
好きだったわ。

「好きよ、キラ」

大好きよ。

88 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/23(水) 20:50
フ、フレイ様致命傷は避けたんですか??

89 名前: 真黒 投稿日: 2003/07/23(水) 23:22
ドアの外で、どたばたと歩く音を聞いて、フレイは目を覚ました。
頭の奥がやけに痛い。
もぞもぞと足を動かすと、ぬめった感覚を憶える。

キラを起こさないように、そうっとシーツから体を起こし、立ち上がる。
手を陰部に当ててみると、べとりと何かがついた。

「あ……」

それは白濁した液体だった。
フレイはすべてを思い出した。

アフリカで、レジスタンスの青年に貰ったお酒。
ほんのちいさなモノだけど、フレイは嬉しかった。
誕生日の時にのむ高級なシャンパンのような美味を期待してはいないけど、
それでも、そのうち飲もう、と決めていた。

けれど安い酒ほど悪酔いするということだろうか、
コップ半分を飲んだときには、既に顔が熱くなっていた。
そんな時だ、キラが帰ってきたのは。

なんとなく、お酒を勧めて。そうして飲んでいると、体がどんどん火照りだした。
あまりに熱いから、服を脱ごうと思って、そして-----

あんなに激しく狂うなんて、今まで無かった事だった。
昨日の痴態を思い返して、フレイは顔が熱くなるのを自覚する。
お酒のせいだろうか、感度が鋭敏になって、ものすごく-----

だからって、浅はかすぎだ。
彼も同じだったのだろうか、いつもより随分強引で。
自分の中に、放った。恐らく三度とも、そうだったように思う。
輸送の度に泡になって精液が溢れていた。

途端、急激に体温が下がったような感じに襲われる。
がくがくと、体が不規則に震えた。
呼吸もままならない程だ。

「わたし、わたし・・・・・」

……妊娠……してしまう!
コーディネーターの、子を!

次の瞬間、
フレイは蹌踉ける足のまま、シャワールームに駆け込んでいた。

洗わなきゃ、洗わなければ。
あれからどれだけ時間が経っているのだろう。
おぞましい、気色悪い。コーディネーターの精液が、自分の体を浸食していく。
いやだいやだいやだ。

フレイは幼い事もあって、まだ生理が不規則だったし、いつが安全かなど知りはしない。
決して中には出してはいけなかったのだ。キラもそれを知ってるはずだ。
なのに何で。自分がそれを咎めなかったからだろうか。

「う、あああ!」

シャワーの水をかけながら、がむしゃらにそこを洗う。
それだけでは飽きたらず、フレイは浴槽に腹を押しつけた。

ドン、ドン!

容赦なく押しつける。鈍い痛みが何度も走るが、躊躇しなかった。
浴室に音が響く。

突然扉が開いた。
キラがいた。少し息が荒い。

「何を…フレイ!」

「っぐ…?」

途端、フレイを襲ったのは、強烈な嘔吐だった。
唇を押さえると、傍らにあった便器に吐く。

キラはびっくりしたように、フレイを見た。

「どうしたの?何が---」
「なんでもない…なんでも…」

「なんでもないって……」

そんな筈は無かった。キラはフレイの肩に触れようとする。
しかしその寸前でフレイは身を翻した。

「いや、触らないで!」

ぱしん、と伸ばした手を払う。
キラはその光景に呆然とする。

「フレイ?」

フレイの頬を、涙が伝っていた。

「キラ…?昨日…なんで、中に出したの?」
「え」

キラは今初めて、昨日の情事を思い出したのだった。
顔がみるみるうちに青ざめる。
フレイは何故か薄く笑った。滑稽だった。
馬鹿なコーディネーター。

「こども、出来たら…どうするの?私たち」
「…!!!あ、あ…そ…れは」
「どうやって降ろそう?ね。ここは戦場なのに、今みたいに、こうやってお腹を----」

「フレイっ!」

キラは叫んだ。

「ごめん、ごめん、僕----そんなつもりじゃ」
「ふふ、私、ばかみたい」

憎い、憎いコーディネーターの子供を宿すとしたら?
本当に馬鹿みたいだ。

「フレ…」

堕胎するしかないだろう。きっと。軍医にそんな事できるのか?
醜い金属の棒で、掻き出すのだ。怖い。からだをいじられるのは嫌いだ。
ああでも、これでキラをずっと、縛っておけるかもしれない。

遠のく意識の中で、フレイはそんなふうに考えていた。

90 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/24(木) 00:13
…何か、昨日から淡々とSSが投下されてるな…

91 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/24(木) 00:17
でも全体的に反応が薄いな。住人自体あまりいないのかも?
ともあれ投下人さん達、乙フレイ。

92 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/24(木) 00:24
自分で書いて感想も、ってのも結構大変なのよこれがw
やっぱ、書く人以外は来ないスレかな?

93 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/24(木) 00:24
昨日は泣き祭だったじゃないかw
乙です

94 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/24(木) 00:39
>>89
乙。なにげにエロいっすね。
フレイ様はまだ未成年なんだけどw。

95 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/24(木) 00:56
それにみんなして後書見たいなの書かないと自分もそれに倣って書かないようになってしまう
……ってことで激しく約束行き詰まり〜
う〜ん……なにをどーしたものか

96 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/24(木) 01:43
うお、ちょっと見ないうちにすごい投下が。
職人さん、おつふれ〜。
しかし皆さんホントお上手ですな。
新作チェックするのが楽しみです。

>学園祭
ニコルがえらい苦労人ですよね…
NOと言える大人にならないと先々辛いぞ、少年

>約束
仮面黒ッ!
ていうか結局似てるのかよw
伏線ぽいのがちらほら見えますな。
これが後々どうなっていくのか楽しみです。

>泣いて〜
いや、泣くなといわれてもこれは泣くしか…
うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ

>真黒
…なんつーかこう、一歩間違えばシャレにならん状況でしたな。
本編でこんなフレイ様を見せられた日には枕を濡らす以外他に。

97 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/24(木) 21:10
平和だったとき。
まだ、ヘリオポリスで友達に囲まれて、
自分がコーディネイターなのをあまり気にしなくても生きていくことができた、
あの時間。
僕は君を遠くから見てた。
見ていることしかできなかった、とも言うけどね。
どこにいてもフレイは目立ってた。
友達に囲まれて、華やかに笑ってた。
僕の目には、そこだけ色が違って見えた。
その笑顔が自分に向けられたらどんなにいいだろうって、よく思ってたんだ。
でもそんなことはまずないだろうっていうこともちゃんとわかってた。
フレイはよく、告白されたりしてたね。
僕ときたら、どんな返事をしたんだろうって、そのたびに噂に耳を傾けてた。
君の返事はいつもノーだったから、僕はよくほっとして。
今思うと、あのころ君が断ってた理由はサイだったんだよね。
それでもそのときの僕は君に、
フレイ=アルスターに、
憧れてた。
鮮烈だった記憶の中の君。

フレイ、もう一度、フレイの笑顔が見たいんだ。

98 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/24(木) 21:12
僕の後ろにできるのは死体の山だ。
重なっていく屍。
腐肉と流れる血のにおい。
君が僕に守ってと頼んだ、君のお父さん。
僕に紙の花をくれた小さな女の子。
君のお父さんも、あの子も、僕は守れなかった。
守ってくれてありがとう、
ありがとうなんて言ってもらえる資格僕にはないのに。
どれだけの命があの艦に乗っていたのだろう。
僕が守るといった人たち、
僕のことを信じて死んでいった人たち。
たくさんのたくさんの、子供や大人や、女の人や男の人の命。
すべてが、一瞬で。
そのたった数秒で、終わってしまった。
光となって消えてしまった。
僕は押しつぶされそうだった。
命の重さに恐怖した。
「わたしのおもいがあなたをまもるわ」
あの言葉が嘘だったとしても。
嘘だとしても、君の言葉が僕を救ってくれたんだ。
僕だって、誰かに守って欲しかった。

ねえフレイ、僕は君の言葉に、
確かに守られてたんだよ。

99 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/25(金) 14:48
>>97-98
乙ふれ〜

本編で、キラがこういうセリフを一言でも言ってくれたら、
もう全部許してしまうんだがなあ…

100 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/25(金) 15:14
>>97-98
うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
やべえ、キラが大好きになりそうw
>僕だって、誰かに守って欲しかった。
ここが特にグッときたっす…。

101 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/25(金) 19:17
自分のせいだと思っていた。
ずっと。
気づかなかったんだ。
守りたかった。守りたくて戦った。
守りたくて戦って、でも守れなかった。
守れなくて、泣いた。
ぶちまけてしまいたかったんだ。
それを受け止めてくれたのが君だった。
誰かにわかって欲しかった。
近くにあったぬくもりに、君に。
すがった。
そのときは、そう……同情でも良かったんだ。
とにかくなにかにしがみついていたくて、
そこに君が手を差し伸べてくれたから。
君が何を思っていたかなんてどうでもよかった。
余裕がなかったといえばそうだね。
言い訳になっちゃうけど、周りが見えていなかったんだ。
ひとつのことを考えるので精一杯だった。
僕が守れなかったたくさんの命。
何のために戦うのか。
本当は守れたんじゃないか、僕のせいだ、僕の、
僕の!!

ごめんね、フレイ。ごめん。
君が本当はずっと泣いていたことに、気づけなかった。

102 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/25(金) 19:17
舞い上がってた僕は馬鹿としか言いようがない。
君の身体はどこもかしこもやわらかくて、あたたかくて、
僕はその甘さに酔った。
君の傷の痛みがどれほどのものだったか、
どんなに打ちのめされていたか、
僕にキスをくれたその唇は、悲鳴を上げたくて仕方なかったのに。
好きになってもらえたんだと、単純に思ってた。
ひどく……調子のいい考えだよね。
最初は同情でも良かったのに、いざ君を手に入れられそうになると、全部が欲しくなった。
フレイだけが僕をわかってくれる。
フレイだけが僕を抱きしめてくれる。
溺れるのは心地よかった。何も考えなくてすんだんだ。
無我夢中で君を求めた。
君の手は優しくて、君の声は穏やかで、君の身体は美しくて、君の笑顔は安らかだったから。
僕は君の大嫌いなコーディネイターだったのに。
憎まれても当然だったのに、君がすべて許してくれたから。
僕は君が傷つくこと、傷ついていたこと、思いやってあげられなかった。
優しい手は、僕に触れるのもいやだったはず。
穏やかな声は、僕と話すのだっていやだったはず。
美しい身体は、僕に抱かれるなんていやだったはず。
そして、君の笑顔は、僕ではない彼に向けられるものだったはず。
それなのに僕は。

いまさら許してなんて言えないかもしれないけど、フレイ。

103 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/25(金) 19:21
感想ありがとう。
つたない文だけど、おまけにキラフレフィルターめちゃくちゃかかってるけど、
がんばるよ。
そんな自分は真黒の続きが激しく気になる。

さて、本スレに誤爆しないように気をつけよう……。

104 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/25(金) 19:37
真黒は「まっくろ」と読むのですかな?

105 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/25(金) 22:44
新ED FIND THE WAYにやたらとはまったのであれを題材になにか書きたいんですが
いまいち思い浮かばず・・・
最近物書き業から離れてた所為だな・゜・(つД`)・゜・
なにか「こんなの書いて欲しい」というのがありましたらネタ投下してくだされば
リハビリを兼ねて書きますのでよろしくお願いします。

106 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/26(土) 00:51
ではわたしの代わりに「約束」を書いて……
っち、話がシリアスは入ると途端に書けなくなるぜ!
脳内ではもうかなりできてるのになぁ……

107 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/26(土) 01:49
ワラタ

108 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/26(土) 22:12
君に好かれていないこと。
君の気持ちがただの同情だということ。
これ以上思い知らされたくなくて、離れたほうが楽だと思った。
ずっとサイに嫉妬していた。
サイがうらやましかった。
君はサイが好きなのに、無理をして僕と寝たんだと思って、つらくて……。
コーディネイターであることの優越感なんて一瞬の間だけだ。
それはそのまま、『君の嫌いなコーディネイター』という事実となって返ってくるだけだったから。
本気を出せば、喧嘩は勝てる。
でも、
いくら肉体が優れていても、頭脳が優れていても、
内面はどうやったって僕はサイに勝てなかった。
サイはいいやつだから。
僕なんて足元にも及ばないくらいいいやつだった。
僕はまた罪悪感につぶされそうになった。
こんなの耐えられないと思った。
君の気持ちとサイの気持ちと、僕の気持ち。
その全部に責められているような気になった。
どこで間違ってしまったんだろうね?
ひょっとしたら最初から。

今、僕の前で銃を握り締めてる君。
フレイが一番責めていたのは、フレイ自身だったなんて。
ねえフレイ、一度間違ったことは、もう取り返しがつかないの?
そんなの嫌だよ。

109 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/26(土) 22:13
あのとき、互いの本心がわからずに、傷つけあうしかなかった僕たち。
僕がとった行動は最低だった。
逃げたんだ、僕は。
君の目から逃げた。
“可哀想なキラ”
君の優しさが単なる同情だってことが決定的になって、
考えないようにしていたことを目の前に突きつけられて。
もうやめよう――――そうして終わりにした。
僕が出撃する前に、君は何か言いたそうだったね。
『帰ってから』
そのときは、そのつもりだった。
でも、トールが死んで、僕は吹っ飛んで……
ラクスに助けてもらって。
僕が帰ってきたとき君はもういなかった。
君と最後に交わした言葉、あの続きはなんだったんだろう。
それがずっと気になってた。
ラクスやアスランやカガリやAAのみんなのおかげで、今の僕は変われた、と、思う。
もう逃げない。そう決めた。
迎えに来たのに。
やっとまた会えたのに。
どうしてこんなことになってるんだろう。

僕は帰ってきたから。
ちゃんと話、聞くから。
僕は、今度こそ君を守りたい。
だから、ねえ、お願いだから、目を開けてくれ。

110 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/28(月) 11:24
真黒はまっくろでいいですよw
実はこれの以前に本番があったのですが、フレイ様に怒られるので事後のみにしました。
そのうちエロパロにでも投下するかな、、、

「泣いて〜」いいなあ。泣けまつ!!

111 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/30(水) 01:43
>>108-109
ラスト1行の「だから〜」が気になるんですが…
アニメの種は心理描写ないけど、
実際こんな感じならフレイ様も報われるってもんよ!

112 名前: 自由への奔走0.1 投稿日: 2003/07/30(水) 04:25

 立ちはだかるアスランのジャスティスに、キラは声を荒げていた。
「アスラン! どいてくれ! 僕はいかなきゃならないんだ!!」
 両の腕を左右に広げ、見るからに遮っているジャスティスのアスランは、キラのことが理解できない、と言いたげに口を開いた。
「キラ! 自分がなにをしようとしてるのか、わかっているのか!? 罠かもしれないんだぞ!」
「わかってるよそんなこと! だからって、放っておくわけにはいかない! 助けを求めてる人がいるんだ!!」
「お前らしくないじゃないか! 感情的過ぎるぞ、キラ!」
「いいからどいてくれ! どかないというなら・・どかないというなら、腕づくでもどいてもらう!」
 ビーム・サーベルを抜き払ったフリーダムに、ジャスティスのアスランを始めとして緊張が走った。
『キラ! なに馬鹿なことやってんだ!? 相手はアスランなんだぞ!?』
 クサナギで怒鳴りつけるカガリの姿が、ディスプレイの隅に映し出される。明らかに瞳には動揺が浮かび、ともすれば泣き出しそうな雰囲気だ。
『キラ・・・』
 エターナルのラクスは、立ち上がったまま言葉を失っている。その瞳には悲しみの色が漂う。
「どくんだ! アスラン!」
「行ってはダメだ、キラ!!」
 自機にむかい突っ込んでくるフリーダムに、アスランは否応なくサーベルを抜いた。
 バチュゥ!
 無機質な宇宙空間に砕けたビーム粒子が飛び散り、ビームとビームが接触する嫌な音が響き渡る機体の中で、アスランはもう一度叫んだ。
「キラ! 行ってはダメだ!!」

113 名前: 自由への奔走0.2 投稿日: 2003/07/30(水) 04:26

 ことの始まりは、強襲艦アークエンジェルに入った一通の謎の通信だった。
 ノイズだらけのその通信に、ミリィは首をかしげた。
「ノイズが酷くて・・・ホントに一瞬ずつしか聞こえないんです」
「レーダーに反応は?」
 マリュー・ラミアス艦長の言葉に、サイは首を横に振った。
「反応なしです。相当ノイズが乗っているようですから、かなりの遠距離からの通信ではないかと思われます」
「オールレンジの通信なのよね?」
「はい。そのようです」
 マリューが指を唇に押し当てていると、ブリッジにキラとフラガが姿を現した。
「艦長、整備と点検終わったぜ」
「ご苦労様です、2人とも」
 フラガに応えながら、難しい顔をしているマリューに、2人は顔を見合わせた。
「なにかあったのか?」
「ええ・・ノイズだらけの通信が入っているようなの。オールレンジで」
「オールレンジの通信・・? まさか、救援とか・・?」
 キラの言葉に、マリューは意を決したようにミリィに告げた。
「音声をメインアウトプットにまわして。発信先の探索、レーダーにも気をつけてね」
「了解」
 ミリィがコンソールをたたくと、ザラザラとした耳障りなノイズ音がブリッジに響いた。
「うひゃあ! こりゃあ、雑音だらけで・・・ただの不快な音楽だな、こりゃ」
 肩をすくめたフラガに、ミリィは音量を下げた。
「ミリィ、音量さげないで」
「えっ・・? キラ、でも・・」
「いいから」
 なにか思いつめたような視線のキラに気圧されて、ミリィは音量を先ほどまでにあげた。
「・・・け・・・・・キ・・・・・ア・・ク・・・フ・・・ア・・・・・」
「・・・・・・・」
 キラは、目を閉じると、声の部分だけに耳を傾けた。
「・・・なにかわかりそうなのか、キラ?」
「すみません、静かに・・」
「すまん」
「・・・・・た・・・て・・・・キラ・・・・」
 その声の後、どこからかとんできたトリィが、キラの肩に乗った。
「トリィ!」
「!」
 キラは、思い出したかのように思いっきり地面を蹴って後ろに飛ぶと、そのままブリッジを出て行ってしまった。
 取り残されたメンバーは、なにがなにやら、といった顔でお互いを見ている。
「今・・・キラって言ったか?」
「え? 私にはノイズばかりでよく・・・」
「・・・キラ・・? どうしたんだ・・?」
「アウトプット、切断しますか?」
「ええ、お願い・・・」
 腑に落ちない表情のままのマリューの顔は、数分後に困惑に染まることになる。

114 名前: 自由への奔走0.3 投稿日: 2003/07/30(水) 04:27

「キ、キラくん! どういうことなの!?」
「フリーダムで出ます! 早くカタパルトデッキをあけてください!!」
「説明してくれなきゃわからないわよ、キラ!」
 ミリィの声に、キラは苛立ったように声を上げた。
「なんでわからないんだよミリィ! フレイじゃないか! フレイが僕を呼んでたんじゃないか!」
「えっ?」
「フレイだって・・?」
 サイの表情に緊張感が走る。懐かしいとまで思えてしまう顔が、頭をよぎった。
「そんな・・聞き間違いじゃないのか? 俺にはフレイの声だなんて・・」
「サイ! もう一度聞いてみればきっとわかるよ! フレイなんだ! いいから、もう、とっととあけてくれ!」
 まるで今にもビームライフルで壁を突き破ってでも発進してしまいそうなキラの声に、ミリィはうろたえるしかなかった。
「・・・艦長・・・」
 指示を請うようにミリィに視線を向けられて、マリューは仕方なくうなずいた。
「しょうがないわね・・・」
「キラ、今からカタパルトを開けるわ。あけるから、ちゃんと説明してよ」
「説明なら今したじゃないか! フレイを助けなくちゃいけない!」
『キラ、どうしたんだ。お前らしくない』
 クサナギで作業をしていたアスランが、ジャスティスのコクピットから通信を入れた。
『落ち着け。俺はそのフレイって人を知らないが、確実にそうだっていう根拠はあるのか?』
「間違えるわけないじゃないか! キラ・ヤマト、フリーダム、出ます!」
 まだ半開きのカタパルトから強引に飛び出していったフリーダムに、アスランは舌打ちをしながらジャスティスを向かわせた。
 二本の閃光が絡み合うようにして宇宙を駆ける。
「キラ、だってフレイは地球にいるはずだろ?」
 動揺が伝わるサイの声に、キラは首を振った。
「なにかあったんだ。きっと」
 あまりにも迷いのない視線に、サイは思わず言葉を失っていた。
「キラくん、あなた一人で行ってどうにかなるものなの? もし彼女だったとして、艦隊で行けば安全に行けるわ」
「艦隊じゃ遅すぎます! それに、目立ちすぎます! フリーダムなら・・フリーダムならすぐに助けられます!」
「キラ!」
 追いついてきたジャスティスの腕が、急加速するフリーダムを押しとどめた。
「アスラン! なにするんだ!」
「お前、なに考えてるんだ!? わけわかんないぞ!」
「友達が僕に助けを求めてるんだ! それだけじゃないか!」
「もしなにかの罠だったりしたらどうするんだ! フリーダムが奪われでもしたら、どうなると思ってる!」
「そんなことにはさせない!」
 まるで子供の喧嘩のようになってしまいそうなのをこらえて、アスランは勤めて冷静に言った。
「落ち着けよ、キラ。お前らしくないじゃないか。それに、おかしいと思わないか? なんで音声だけが届き、レーダーに映らないんだ。救援信号も今のところ受け取っていない」
「救命ポッドが壊れているのかもしれないじゃないか!」
「落ち着けって言っているだろ。大体、レーダーにも映らない救命ポッド・・だとして、それをどうやって探すって言うんだ? この広い宇宙の中で。それこそナンセンスだろう」
「可能性が低いから、助けるのを諦めろって言うの、アスラン! 僕たちは戦争を終わらせるために戦っているんだろ!? もう誰も悲しまなくていいように!」
「そうだ。だから、その為に、お前も冷静に・・・」
「女の子ひとり助けられないで、戦争なんか終わらせられるもんか! フレイは、幸せにならなくちゃいけないんだ!」
 珍しく激昂し本音をぶつけるキラに、アスランは訝った。
「・・・・お前、その女のことが・・」
「いいからどいてくれよアスラン! 僕はまだ・・フレイと話していないことがあるんだ!」
「いかせてやりたいところだが・・・そうはいかない!」
 立ちはだかるジャスティスに、キラは唇をかんだ。
「アスラン!」
「キラァ!」
 二機のガンダムが、漆黒の宇宙で対峙していた。あたかも、あの時のように。
 ストライクと、イージスのように。


 フレイ様の登場までつづく?
 スレ汚し申し訳ないです・・

115 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/30(水) 04:28
>>112〜114
 30分ぐらいでちゃちゃっと書いたものなのでかなり設定がいいかげんっぽいのは
勘弁してください・・・
 ご指摘があれば遠慮なく言ってくださいな。

116 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/30(水) 08:01
>>115
例のカードのネタですな。
激しく燃える展開っす。(*´Д`)ハァハァ
続ききぼん。

117 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/30(水) 12:53
そういうネタもありですな。
乙です。

118 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/30(水) 17:22
>>115
乙でつ。早めに続きがほしいですね。ヽ(´ー`)ノ

119 名前: 人妻隊 1 投稿日: 2003/07/30(水) 18:39
フレイ「今日、皆さんにお集まりいただいたのは、他でもありません・・・
    我々に緊急事態が迫っているのです!」
金銀『な、なんだってー!!??(AA略』
カガリ「どーせ大した事じゃないだろ。いっつも大袈裟なんだよなー・・・
    大体、私にとって、お父様以上の・・・お父様・・・うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ (ry」
フレイ「あーもう姉弟揃って同じ泣き方してんじゃないわよ!
    これ乗り越えたらお父様でも何でも会わせてあげるから!」
カガリ「本当だな!?約束だぞ!! ルレ!!*゜∀゜リ オトウサマ!」
遺作「(案外現金な奴だな・・・)で、話早く進めてもらいたいんだが?」
フレイ「そうね・・・では、まずこれに目を通して」

『 【サユリ・ヤマト】 キラ・ヤマトの(義理?の)母親
  【エリカ・シモンズ】 リュウタ・シモンズの母親
  【ロミナ・アマルフィ】 ニコル・アマルフィ(故)の母親
  【エザリア・ジュール】 遺作・ジュールの母親   』

カガリ「・・・何だこれ?」
遺作「俺、本名まで『遺作』じゃないんですが・・・」
痔「お母さんばっかりだね」
フレイ「そう。何か知らないけど息子持ちの女性がこんなにもいるわけよ。他にもまだいるけど。
    これは一つの可能性を示唆しているの。・・・そう!
    『今、時代は子持ち、熟女、人妻が大ブーム』ってことよ!!」
カガリ「・・・ルレ!!;-Д-リ マイドナガラムチャナリロン」
遺作「人妻ブームキタ━━━━━(゚/∀゚)━━━━━!!!!」
痔「イザリンのど真ん中に入っちゃったみたいだな・・・」

120 名前: 人妻隊 2 投稿日: 2003/07/30(水) 18:40
カガリ「・・・で、どうしろと言うんだ?人妻にでもなれっていうのか??」
フレイ「若い身空のアンタにそんな酷なこと言わないわよ・・・って私の方が若いじゃん!!」
痔「あまつさえ俺とイザリンは男だしねぇ・・・」
遺作「熟女マンセ━━━━━(゚/∀゚)━━━━━!!!!」
フレイ「壊れてる遺作に象徴されるように、人妻の魅力は絶大よ。
    でも、まだまだ私達だって負けてはないはず。『若々しさ』って武器もあるわ。
    そこで今回の作戦内容を発表します!
    人妻達とガチンコでぶつかり、完膚無きまでに叩き潰す!
    その名も『撃滅!人妻隊!!』です!!」
カガリ「作戦、と呼べる代物か?大体、『ガチンコでぶつかる』って何だよ・・・」
フレイ「読んで字の如く、『ガチンコ』よ。
    直接対決で私達の力を世間の人妻萌え連中にに思い知らせてやりましょう!」
遺作「( ´/,_ゝ`) プッ  思い上がりも程々にしとけよ小娘風情が!
   お前如きが人妻の魅力に勝てるわけな ヽ||#`Д´||;y=ー(゚/д゚)・∵. ターン」
フレイ「雉も鳴かずば撃たれまいに・・・さ、そうと決まったら早速敵情視察よ!」
カガリ「勝手に決めただけじゃないか・・・遺作も一応連れていってやるか。
    痔、よろしくな」
痔「はーい・・・( T∀T)オレガツレテイクノネ」
遺作「・・・ひ、ひと・・・人妻・・・ハァハァ・・・」

121 名前: 人妻隊 3 投稿日: 2003/07/30(水) 18:40
フレイ「何事も無く大気圏突入に成功し、何事も無くヤマト邸前に潜伏してるわけだけど・・・」
痔「死ぬかと思いましたよ」
遺作「ひ、人妻は何処だ!?(;゚/∀゚)=3 ムハームハー」
カガリ「(傷が完治してやがる・・・恐るべし、萌えの力)
    来たはいいけど、どうやって視察するんだ?インターフォンからこんにちわ?」
フレイ「その辺はぬかりないわ。こんなものをラクスから借りてきたの。
    極地偵察用超小型ハロ、その名も『これで貴方もカズイ様 ver-0.86』よ!」

                     /    |    |    |
                 |     |    |    |
                   |ー |   l ー-  l
           /⌒ヽ   |    |   l     l
           l   l    |    |  |      |
            |   l   | ー-  |  l   - l
             |  -‐|    |    |   |      |    /⌒ヽ
           |   |    |    |  |ノ     l   |    ヽ
             l    _!   |    !__,! ‐  一 |   l     ヽ、
         /⌒ヽ l ‐ \  |,           l    〉-‐  l
         l〉   )ヽ、   ヽノ           ヽ、 |     |
        /  人 ヽ、                ヽノ (    |
          l     ヽ、\,               /       l
        ヽ  ノ \,/                  ヽ  l
         \    /     コレ→ .            |
          ヽ、                            |
           ヽ、                       l
            ヽ、                    /
             ヽ、                     /
              ヽ                  /

カガリ「・・・絶望的なネーミングセンスを補って余る程の小型っぷりだな」
痔「ハロ・・・ってことは、これもアスランが作ったんだよな?何のためにこんなの作ったんだ、アイツ?」
遺作「は、早く人妻を見せろ!!(;゚/∀゚)=3 シンボウタマラン!!」
フレイ「危ないわよ、遺作・・・ではハロよ、行ってらっしゃい!!」
〜 〜 ・ ハロハロー

サユリ『・・・はぁ〜・・・愛しのキラきゅんは大丈夫かしら・・・
    宇宙食ばっかりじゃ飽きちゃうだろうから、お弁当でも送ってあげようかしら。
    ・・・そういえばウズミ様、姉弟のこと、ちゃんとお話になられたのかしら・・・
    カガリちゃんに手出したりしないか心配・・・近親ソカーンは流石に・・・
    でも昼メロとしてはまぁまぁポイント高いわね・・・あぁでも・・・』

フレイ「(キラきゅん・・・?)昼メロが好き、と・・・」
痔「(キラきゅん・・・?)心配するところが微妙にずれてるような・・・」
カガリ「(キラきゅん・・・?)こういうものなのか?人妻って・・・」
遺作「うおおおおおお!!!俺の股間が光って唸る!!!( ☆/∀☆)パリーン」
カガリ「種まで割っちゃったよ・・・個数少なそうなのに勿体無い」
フレイ「変なトコ唸らせてんじゃないわよ!!黙らせる意味も兼ねてヽ|| `∀´||;y=ー(゚/д゚)・∵. ターン
    さ、次の相手はクサナギにいるエリカ・シモンズよ!」
痔「イザリンは・・・やっぱり俺が引きずって行け、と。( T∀T)ガクシュウシテクレ、イザリン」
遺作「悔いは無い・・・悔いはないぞぉぉぉ!!!( T/∀T)・:;:・ ゲホァッ」

122 名前: 人妻隊 4 投稿日: 2003/07/30(水) 18:41
フレイ「道中これといった問題も無くクサナギに潜入できたわけですが」
カガリ「・・・いいのかな、こんな目的で艦に入れても・・・」
遺作「ひっとづま!ひっとづま!!( ^/∀^)」
痔「イザリン・・・俺はもうお前についていけないよ・・・( TДT)ソンナスガタニナッテ」

エリカ『・・・本日のM1操縦テスト・・・う〜ん、みんなかなり上達はしてきてるけど・・・まだまだねぇ。
    そういえば、バスターの整備は大丈夫かしら・・・無精髭の人と金髪グゥレイト坊やじゃ不安ね・・・
    後でAAまで見に行ってみましょうか。
    あとは・・・ストライク・ルージュね。そろそろ稼動させてみたいんだけどなぁ・・・
    でも、我ながら、この色合いに惚れ惚れするわ・・・
    やっぱ赤色ね・・・4倍も邪道よね、3倍よ3倍・・・ウフフ』

フレイ「う〜む、こっちも手強そうね・・・流石は技術主任」
痔「妙な趣味がありそうな・・・そのうち『足なんて飾りですよ』とか言ったりするのかな」
カガリ「ルージュ!ルージュ!!ルレ!!*゜∀゜リ ノリタイノリタイ!」
痔「カガリンのテンションまで上がっちゃった・・・」
遺作「ストライク(#゚/Д゚)ゴルァ!人妻(;゚/∀゚)サイコウ!ストライク(#゚/Д゚)イッテヨシ!!人妻(;゚/∀゚)ハゲシクモエ!!」
痔「忙しいな、イザリン・・・」
フレイ「さ、残りは2人・・・プラントまでいくわよ!」
痔「ほら、イザリンカガリン、流石に2人は担げないから・・・」
カガリ「スットライク!スットライク!!ルレ!!*^∀^リ」
遺作「ストライク(;゚/Д゚)ゴル、ハァハァ・・・人妻(;゚/∀゚)モエ、ハァハァ・・・」

123 名前: 人妻隊 5 投稿日: 2003/07/30(水) 18:41
フレイ「さ、次はロミナ・アマルフィよ」
痔「ここは・・・止めといた方がいいと思うんだけど・・・」
遺作「人妻のためなら!!(;゚/∀゚) ・・・と言いたいが、流石にニコルの親は・・・カオミセデキナイ」
フレイ「何、ここまで来て怖気づいたの?アンタ達それでもコーディネーター!?
    この程度のことでビクビクしてんじゃないわ・・・Σヽ||;゚Д゚||ワゥ!!??」
カガリ「どした?発作か何かか?」
遺作「仮面上司からパクってきた薬でも飲むか?」
フレイ「ヽ||;゚Д゚||アゥアアウアァアアゥ・・・ヽ||;-Д-|| ガクッ」
痔「フ、フレイたん!?ちょ、ちょっとマジで危ないって!救急車!!117!!!」
遺作「午前、10時、32分、40秒を、お知らせ・・・って時報じゃねーか!!!」
カガリ「落ち着けって!!溺れた時は時は人工呼吸!!」
痔「わかった!じゃあ俺が・・・」
遺作「俺がやるに決まってるだろうが!!!」
カガリ「あの・・・『溺れてないだろ!!』ってツッコミを期待してたんだが・・・」
ヽ|| ゚Д゚||「ハウッ!!」
痔「お、起きた!フレイたん!大丈夫か!?」
ヽ|| ・Д・||「なーんか不穏な空気が漂ってると思ったら、貴方達でしたか・・・」
金銀『その声・・・ニコルン!!!???((((;TДT))))ガクガクブルブル』
ヽ|| ・Д・||「人の家の敷地内で何なさってるんですか?全く。
       そんなことしてる暇あったら、僕のこと、じゃんじゃん回想してくださいよ。
       但し、腹掻っ捌き以外で、お願いします」
カガリ「なんだ・・・?丁寧な物腰・・・フレイじゃない・・・のか??」
ヽ|| ・Д・||「えーと確か・・・カガリさん、でしたっけ?初めまして、ニコル・アマルフィです。
       そういえばこの間、ウズミさんにお会いしましたよ。伝言を預かってるんですが・・・」
カガリ「お、お父様!?何でもいい、何でもいいから教えてくれ!!」
ヽ|| ・Д・||「えーとですね・・・あ、カガリさん宛てはこれですね。
       『虎柄の男がヨーグルトソースを布教させようと舞い戻ったので注意されたし』
        ・・・以上です」
カガリ「・・・『何でもいい』と言った手前ではあるけど・・・ルレ!! TДTリ ソレダケデスカ、オトウサマ」
ヽ|| ・Д・||「さて、他にも用事がありますので、僕はこの辺で・・・」
金銀『ジョウブツ・・・シテクダサイ・・・オナガイシマス・・・(;-人-)ナンマンダブナンマンダブ・・・』
ヽ|| ・Д・||「ずっと見てますからね。まだまだこちらに来てはいけませんよ、2人も。
       では・・・ヽ|| -Д-||」
フレイ「・・・Σヽ||;゚Д゚||フェッ!?な、なんだったのかしら・・・」
金銀『帰りましょう。お願いですから帰りましょう。心の底から帰りましょう( TДT)』
フレイ「な、何よアンタ達。泣かなくても・・・まぁいいわ。私も体調悪いみたいだし。
    帰りましょうか・・・ってまだ一人残ってるわ!最後、エザリア・ジュールの偵察!!」
遺作「俺の実家じゃねーかよ!!」

124 名前: 人妻隊 6 投稿日: 2003/07/30(水) 18:41
フレイ「さて、最後の敵である、エザリア・ジュール・・・」
遺作「ママンを覗き見なんぞするな!!この俺が許さんぞ腰抜けがぁぁぁぁ!!!」
フレイ「あっそう?アンタが今まで覗き見してきたのもバッチリ録画してあるんだけどなー。
    『お宅の息子さん、覗きの趣味があるようです』って送りつけちゃおっかなぁ・・・」
遺作「((((;T/ДT)))) オレガワルカッタデス、オレガワルカッタデス・・・」
痔「一蓮托生だよ、イザリン・・・( T∀T)オレモオソラクオナジウンメイ」
カガリ「(腰抜け・・・)」

エザリア『・・・ラクス・クラインは利用されているだけなのです!
     その平和を願う心を・・・え〜と、次なんだったかしら・・・
     あ〜もう何で私が演説なんぞしなければならないのよ!!
     あのザラだかヅラだかが議長になってからこんなのばっかり・・・ウンザリしちゃうわ!!
     まあ確かにTV映りがいいのは私だけだからしょうがないけど。
     ・・・今一瞬カナーバの姿が脳裏をよぎったけど、無視ね。無視。練習練習〜。
     ラクス・クラインは利用されるれ、痛っ!舌噛んじゃった!もう最悪!!」

遺作「マ、ママンの一大事!今助けに行くから!!」
痔「もちつけイザリン!!今飛び出したら・・・」
フレイ「ヽ|| `∀´||ノ‥‥●)/д゚)・:;:・ ボグォッ!!」
カガリ「意外と・・・黒い面が見えたな。カナーバって名前に妙に惹かれるんだが」
フレイ「これで調査は終了ね。さ、今度こそ帰って作戦を練るわよ!」
カガリ「そういやすっかり忘れてたな。戦うんだったっけ」
痔「イザリン、俺、お前背負うの飽きたから、一人で頑張ってついてこいよ・・・」
遺作「ママン・・・すぐそこに・・・ママンが・・・( T/ДT)」

フレイ「若干データに欠損はあるものの、ある程度敵の実情は計れたわ。
    勝ちは貰ったも同然!行くわよカガリ!!」
カガリ「勝手に敵に仕立てられた方はいい迷惑だろうな・・・」
フレイ「うだうだ言ってないでさっさとラクスを呼んできて!私はミリィを呼んでくるから」
痔「あ、あのー・・・俺とイザリンは・・・?」
フレイ「女性同士のガチンコバトルだから華があって盛り上がるのよ。男は邪魔(キッパリ
    解説でもやってたら?」
痔「わかりやした・・・( T∀T)ナンノタメニホンソウシタンダロウ」
遺作「勝てるわけないのに無駄なことを( ゚/Д゚)コムスメガ」
フレイ「何か・・・言った・・・?」
金銀『 い え 何 も 』

125 名前: 人妻隊 7 投稿日: 2003/07/30(水) 18:42
遺作「全国20億の人妻ファンの方々、お待たせいたしました!!
   只今より、『壮絶!人妻達の宴 〜一夏のアバンチュール〜 』を開催したいと思います!!!
   実況・解説は私、お前の妻は俺の物!イザーク・ジュールでお送りしたいと思います!」
痔「勝手にそんなタイトルつけていいんだろうか・・・あ、小麦色の転校生、ディアッカ・エルスマンです!グゥレイト!!
  尚、本日はスペシャルゲストがいらっしゃってま〜す!
  まずはこちら、その乳揺れは艦をも揺らす・・・アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスさん!」
マリュー「セクハラで訴えますよ。マリューです」
遺作「おっぱい大好きだ(;゚/∀゚)モルァ!!」
マリュー「ローエングリン、発射許可します」
ナタル「地表に影響が出るから撃っちゃ駄目なんじゃなかったでしょうか???」
痔「あー紹介の前に喋らないでくださいよ・・・
  というわけでもう一方はこちら、今日もお菓子はヴァリアント・・・ドミニオン艦長、ナタル・バジルールさん!」
ナタル「お菓子にヴァリアントを食べたことなぞ一度もない!!ナタルです。
   最近少佐になりました。少佐です。少佐ですよー」
遺作「貧乳(゚/゚)イラネ」
ナタル「ヴァリアント、ってぇー!!ヽd#゚д゚ノ⊃)/Д゚)・:;:・ ムグォッ!
   貧乳ではない!どこぞの誰かさんが大きすぎるだけだ!!」
マリュー「どう見ても直殴りにしか見えないわよ、それ。あ〜何か小腹空いちゃったなぁ」
ナタル「イッショニオカシヲタベマショウ ヽd ゚ω゚ノ丿■ ッパ」
痔「イザリンがダウンしてしまったので、暫くは3人でお送りしたいと思い・・・ってもう試合始まってるし!」

126 名前: 人妻隊 8 投稿日: 2003/07/30(水) 18:42
痔「第一戦目は、このカード!
 『外ハネは世界を救う』 ミリアリア・ハウ vs 『結婚してくれ弥生ママ』 サユリ・ヤマト です!!」

澄屬海鵑覆海箸笋辰討覯砲覆い鵑世韻匹覆 ΑΑΣ燭靴討鵑世蹇∋筺
サユリ「あら、あなた・・・ミリアリアちゃんだったかしら?」
澄屬蓮△呂ぁミリアリアです」
サユリ「いつもうちのキラきゅ、キラがお世話になって・・・」
澄屬◆△い─△修鵑福△世話になってるのは私達の方ですから・・・」
サユリ「仲良くしてあげて下さいね。あの子、内気なトコあるから・・・」
澄屬蓮△呂ぁ△海舛蕕海宗
サユリ「・・・そういえば、トールくん、でしたっけ・・・お気の毒に・・・」
澄屐ΑΑΑΑΑΑΑΑΑΑΑv b´T-ノレ 」
サユリ「とても辛くて、とても悲しいことですね・・・
    でも、ミリィちゃんがずっと悲しんでいては、トールくんも悲しくなると思いますわ。
    ミリィちゃんには未来があるのだから・・・」
澄屐ΑΑΔ修Δ任垢諭ΑΑΕ潺螢▲螢◆△い辰舛磴い泙后 v b^ -゚ノレ」

痔「これ・・・勝ち負けってあるの?ほだされた、って形でサユリさんの勝ち?」
ヽd ´_ゝ`)(見守ってるよ、ミリィ・・・それと、痔、手出したらシメルから)
痔「げ、幻聴・・・?((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
  と、とりあえず二戦目をどうぞ!
 『今はオーブの仔猫ちゃん』 カガリ・ユラ・アスハ vs 『影の支配者は艶っぽく』 エリカ・シモンズ です!!」

カガリ「全く・・・ガチンコでもなんでもないじゃん・・・」
エリカ「その割にはやる気満々、って感じですが?」
カガリ「ルレ!!;゜∀゜リ バレタ? だって退屈だし・・・つーか、ストライクルージュにルレ!!*゜∀゜リ ノセロ!!」
エリカ「・・・カガリ様、お父様のお言葉をもうお忘れに?
    『憎しみの連鎖を断ち切れ』との言葉、カガリ様の中で生きていますか?」
カガリ「そ、それはその・・・って何でそれ知ってるんだよ!?」
エリカ「技術主任の力を侮ってもらっては困ります。この程度のことなどお茶の子さいさいです。
    この間も私の部屋を覗きに来ていたこともちゃんと存じてますよ」
カガリ「あ、あれはフレイが無理矢理・・・」
エリカ「言い訳などなされては駄目です!次代のオーブを担うともあろうお方が・・・
    キサカさんにお灸を据えていただかないといけませんね」
カガリ「嫌だ〜助けて〜嫌だ〜・・・ルレ!!;TДTリ 」

痔「・・・これも、エリカさんの勝ち?人妻隊、二連勝ですね。哀れカガリン・・・」
マリュー「あの子達も可愛いんだけど、もうちょっと磨かないと・・・ね。
   あ、お酒切れちゃった。痔悪化君、買ってきて〜」
痔「は、は〜い・・・( T∀T)パシリデスカ」
ナタル「お菓子ウマー ヽd ゚〜゚ノ ムグムグ」

127 名前: 人妻隊 9 投稿日: 2003/07/30(水) 18:43
痔「・・・パシリに行かされてる三戦目が始まってますね・・・
  『ハロとトリィで鬼退治』 ラクス・クライン vs 『貴女の涙はエメラルド』 ロミナ・アマルフィ です!!」

ロミナ「・・・・・・ニコル・・・・・・」
ラクス「ニコル様のお母様でしたかしら・・・私も、ニコル様のピアノの音色は好きでしたわ。
    少しお待ちくださいね・・・(ガサゴソ
    さ、ネイビーちゃん、いきますわよ。霊魂憑依システム!ポチッとな♪」
~○~「ハロハロ!オカン!オカン!」
ロミナ「ニ、ニコル!ニコルなの!?」
~○~「ハロハロ!オカン!ピアノ!ワイノピアノ!!」
ロミナ「ピアノ、毎日掃除してるわ。毎日綺麗にしてる・・・だから安心して」
~○~「ハロハロ!オカン!オオキニ!オオキニ!」
ロミナ「ニコル・・・」
ラクス「あらあら、涙をお拭きになられてくださいな」

痔「・・・関西弁?明らかにおかしいけど・・・一応、ラクスたんの勝ち・・・かな?」
( ・/Д・)「母さん・・・」
痔「こっちに憑依してるし・・・((((;T∀T))))モウメチャクチャ
  さ、最終戦!
  『辛苦の女神か真紅の魔神か』 フレイ・アルスター vs 『白銀を統べし戦乙女』 エザリア・ジュール です!!」

フレイ「本当に情けないんだから・・・私だけでもしっかりしなくちゃ」
エザリア「小娘の戯言に付き合ってる時間はないわ。さっさと終わらせてもらえるかしら」
フレイ「親子揃って小娘小娘五月蝿いわよ!!三十路も過ぎてお肌の曲がり角も90゚以上で折れ曲がってるくせに!!」
エザリア「ナ、ナチュラルの分際で・・・15、6のガキンチョが何をほざくか!!!」
遺作「俺のママンを侮辱するなぁぁぁぁぁ!!!!」
痔「イ、イザリン!!乱入しちゃ駄目だってば!!!
  え〜と、え〜と・・・収拾がつかなくなったので、この辺で失礼したいと思います!!みなさんさようならー!!!」
マリュー「ゲストも何もあったもんじゃないわね・・・さて、もう3軒くらいハシゴして帰ろうかしら」
ナタル「お菓子無くなった・・・ヽd ´・ω・`ノ ションボリック」

128 名前: 人妻隊 10 投稿日: 2003/07/30(水) 18:43
フレイ「全く・・・コイツら(※1)のせいで無茶苦茶よ!!」
カガリ「無茶苦茶なのはお前のせいだろうが!!
    あの後、キサカにたっぷり説教されるわ、マーナにお茶の作法だのを半日もやらされるわ、
    挙句の果てにルージュは見せてすらもらえないわでもう散々だったんだぞ!!」
フレイ「まあいいわ、『人妻を叩き潰す』という目的は果たせなかったけど、
    『決して人妻に負けてはいない』ってのは充分証明されたはず!」
カガリ「最初っから負ける負けないの問題じゃないと思うぞ・・・
    って思い出した!お父様に会わせろ!!」
フレイ「そんなことできるくらいなら私がパパに会ってるわよ!!」
カガリ「お前は・・・どこまで人をおちょくれば気が済むんだ・・・ルレ!!#゜Д゜リ タイガイニシロ!!」
フレイ「よくよく考えれば、アンタとの決着がまだだったわね・・・ヽ||#`Д´|| ヤッテヤロウジャナイノ!!」
カガリ「チリソース漬けにしてやるから覚悟しろ!!」
フレイ「望むところ・・・って望まないわよ!!!」



(※1)
   ‖              ‖    
   ^ ~ヽ           /巛 》ヽ, 
 三ノ三从          ヾノ"~^ヽ,^
 从'/A`ノヽ          ('A` リ   
   ( )             ( ) 
   | |               | |

 ヒト・・・ヅマ・・・     オレ・・・ナニモシテナイヨ・・・

129 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/31(木) 14:23
嘘じゃなくて、本当に、このまま死ねたら幸せだなと思ったのだ、フレイは。
だってフレイには生きる為の理由になるものが何もなかったし、好きな人はみんな死んでしまった。
彼女を守ってくれる人も、彼女が守りたい人も、もう誰もこっちにはいない。
最後に見たのがキラの幻なら、綺麗に笑っていくことが出来るだろう。
……そのつもりだったのに。

微笑みの形をしていたフレイの口の中に、鉄の匂いと血の味が広がった。
唇にやわらかい感触を感じて、フレイは意識を軽く浮上させた。
彼女の意識は朦朧としていたので、血と柔らかいモノのどちらが先に唇に触れたのか自信は持てなかった。
ひょっとしたら柔らかいモノが先だったかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
だが、彼女には覚えがあった。以前、ずっと以前、自分はこれに触れたことがある。
私はこれを知っている。そう思った。
なんだろう、優しい、柔らかな――――……くちびる。
いつだってそれは自分から求めたものだった。
時には嘘で塗り固めたキス。あるいは繋ぎとめておくための手段として。
安心させるための呪文とともに優しさをこめて。
彼のほうからしてくれたのは、自分と寝たときだけだ。
だがそれはただの獣じみた行為の一環でしかない。
愛情としての証ではない、そして自分もそうだったのだから。

血の味というのは不快なものだ。
自分は吸血鬼ではないし、食べ物だって生臭いものはあまり好きではなかった。
それなのにこの唇は、自分に血を飲ませようとしている。
どういうつもりなんだろう。表面には出てこない意識の下でフレイはぼんやりと思った。
しびれて動かなかった肩、感覚などとうに忘れたものとしていたその器官に激痛が走ったのはそのときだった。
皮肉にも、その痛みが彼女を完全に覚醒させることとなった。
「い……いったーぁ……!」
「フレイ!?」
その声を聞いたとき、フレイは自分の心臓が止まるかと思った。
夢でも幻でもない。実態だ。生きている。だって温かい。だってこんなにはっきり、自分の前にいる。
でもどうして。彼は死んだはずだ。MIAはたいてい助からない。コックピットはどろどろに融けていた。
それがどうしたというのだろう。彼はここにいる。今フレイのところに。それでいいじゃないか。
それが全てだ。どうして助かったかなんて必要ない。彼が生きていてくれたという、その事実だけが大事なのだ。

130 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/31(木) 14:25
キラは一種のパニックに陥っていた。
彼の腕の中のフレイは、彼が今まで見たことのない極上の笑顔で、目を閉じていた。
くたりと力を抜いて、彼の腕に身体を預けきっている。
ぞくりとした恐怖が身体を駆け抜けた。
自分が抱いているこれは、生きることをやめてしまった人間の身体だ。
にわかには信じられなかった。誰がこんな結末を望んだだろう?
僕が見たかったのは、生命力に溢れた、大輪の花のような笑顔だ。

キラはおもむろに、フレイの血まみれの服を破った。
むきだしになった肩の傷口から血が流れている。銃弾は貫通しているようだ。
どうすればいい、どうすれば?
混乱した頭のまま、キラは溢れる血を吸い、たっぷりと口に含んだ。
祈るような気持ちで、フレイの唇に自分のそれを重ねた。
どこかでは、そんなことでは輸血にもなりはしないことをわかっている。
だがそれでも、もしかしたら……という、希望を捨てることは出来なかった。
飲んで。お願いだから、飲んで。少しでもいいから。
笑みを形作った唇を割って、口の中の血を全部流し込む。
フレイの唇は口紅を差したように真っ赤だった。
死に行くものの唇はもっと血の気の失せているものだ。
フレイはまだ生きている、大丈夫だ。信じろ。
そうだ、血を止めなければ、とキラは破った袖の布を、フレイの肩にまきつけた。
ぎゅっと上のほうを縛る。とにかく必死だったせいで、余計な力が入ったのだろう。
きつく縛りすぎた。それほどに、血を止めなければという思いがあったのだが。
フレイの唇が動いた。
「い……いったーぁ……!」
「フレイ!?」
フレイの目が開いて自分の姿をとらえる、映し出す、そのことに、キラは思わず歓喜の声を上げていた。

131 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/07/31(木) 14:28
バレ……まじですかぁー
うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ

せめてSSで脳内補完いたしませう。いや、まだあきらめないっ!!

132 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/31(木) 15:07
悲劇の肯定要素が皆無ではないけれど、否定要素も多いですから。
ここは前向きに考える方がよろしいかと。
現状では不安要素以上のものではないと、個人的には思います。

とりあえず、乙フレ〜です。

133 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/31(木) 16:04
age

134 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/31(木) 16:23
人妻ハァハァ

135 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/07/31(木) 23:53
人妻の人も泣いての人も乙フレです。
あんたら、神だよ。

136 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/01(金) 06:42
泣いての中の人乙!素晴らしい!

137 名前: ヘリオポリスの学園祭 投稿日: 2003/08/01(金) 19:57
フレイはこういう場は初めてではない。
父に連れられて、何回かパーティーに出席した事はある。
しかし、今日は疲れていて、少し頭がぼうっとしていた。
その肩を、ポンと叩く者がいた。
「あ、マリュー先生」
「どうしたの、こんな所に一人で…」
マリューは本気で心配そうな表情をフレイに向けた。
「いえ、何でもないんですけど…」
「もしかして、男の子に負けたのが悔しいのかしら?でも、落ち込んじゃ駄目よ。貴方は頑張ったわ」
「ハイ。ありがとうございます…」
「ほんと、最近の子は凄いというか、綺麗になったわね…ちょっとびっくりしたわ」
「え?」
「だって、みんな綺麗で可愛かったわよ?一緒になって出たのが、ちょっと恥ずかしかったわ」
そう言うと、マリューはちょっと笑った。
マリュー先生がそんな事を言うのは意外だった。
「あ・・・」
「マ、マリュー先生!?」
ちょうどその時、会場に入ってきたディアッカとマリューの目が合った。
「貴方、来週に追試だと言うの、忘れていない?」
口調は穏やかだが、声のトーンは有無を言わせない迫力があった。
「い、いや、たまには羽を伸ばさないと…」
「貴方の場合は、『たまには勉強もしないと』じゃなくて?」
「そ、そうかも知れないですね、ハ、ハハ……」
きょとんとしたニコルを楯にするようにして、ディアッカはマリューの前から姿を消した。
フレイはそのやり取りのおかしさに耐えられなくなって笑い出した。
「やっと笑ったわね…。そう、笑わないと、元気も出ないわ」

138 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/03(日) 15:39
現状では悲しいけど悲劇路線で書くしか無いからなあ。まあ、とりあえず自分的妄想全開で行くしかないか。
てな訳で、ドミニオンに収容後からで書きますぜ。ちょっとフレイの出番少ないかもしれないけど許せ。あと、キラフレファンも寛容な心で見てくれい



 フレイの乗ったポッドはドミニオンに回収された。
 ポッドから出てきたザフト軍服の少女を見て兵士達は銃を付きつける。銃口を向けられて怯える少女だったが、いささか芝居がかった声が兵士達を止めた。

「はいはい、その女の子は私の大事な客人です。手荒な真似はしないようにね」

 やってきたのは白いスーツを着込んだ、軍人というよりも企業のエリートという感じの男だった。だが、そん言葉に兵士達は慌てて向けていた銃を降ろしたことを考えると、この艦では偉い人らしいと分かる。
 男はフレイの前に来るとにこやかに語り書けてきた。

「やあフレイ・アルスター、初めまして、と言うべきかな。僕はムルタ・アズラエルといいます」
「ムルタ・アズラエルって、確かブルーコスモスの総帥の・・・・・・」
「そう、君のお父上には実に世話になった。本当なら君とはもっと早く会えていた筈なんだが、どうやらアクシデントがあったようだねえ」
「は、はい。アラスカでクルーゼというザフトの士官に捕まってしまって」

 顔を俯かせて答えるフレイに、アズラエルは僅かに口元を歪ませ、心底楽しそうな口調で答えた。

「なあに、気にする事は無い。確かに捕まった事は悲劇だったが、今君はこうしてザフトの魔の手から逃れ、我々ナチュラルのもとに自力で帰ってきたんだからね。これはなかなかに凄い事だよ」
「凄い事?」
「そうだろう、ザフトに捕まったナチュラルが帰って来た事は無い。君はその第一号という訳だ。まさに英雄だよ」
「英雄・・・・・・」

 フレイにはその言葉が重かった。別に自分はナチュラルの勢力下に帰りたかった訳ではない。アークエンジェルに戻りたかっただけなのだ。アズラエルはその辺りを勘違いしているらしい。

「ところで、敵艦から脱出する際、何か持ってきた物などはないかね?」
「え?・・・・・・あ、はい、ありますけど」

 フレイは持ち出してきたディスクをアズラエルに渡した。それを受け取ったアズラエルは満足げに頷くと、フレイの肩に手を置いた。

「いやあ、ありがとう。これは実に重要なデータなんだ。そう、戦争を終わらせられるぐらいにね」
「戦争を、終わらせられる?」

 フレイにはアズラエルの言ってることが理解できなかった。何故ディスク1枚で戦争が終わるのだろうか。あれはそんなに大切な物だったのだろうか。
 フレイの疑問?答える者はいない。アズラエルは兵士の1人にフレイを休ませるように言うと、一人でどこかに行ってしまった。私は案内役の兵士に言われるままに歩いて行く。
 あてがわれた部屋は個室だった。一応の物は揃っているようだ。私はベッドに腰を下ろすと、じっと天井を見上げた。これからどうなるのだろう。ただその事だけが頭の中を占めていた。

139 名前: ヘリオポリスの学園祭 投稿日: 2003/08/04(月) 00:02
そう言われると、今まで何をそんなにふさぎ込んでいたのか、不思議な程楽な気分になるようだった。
「ありがとうございます。少し、元気が出てきました」
マリュー先生が笑顔を返してくれた。それでまた、気分が軽くなった。
音楽が切り替わり、会場では男女がペアを組んで踊り始めた。
「貴方も行ってらっしゃい。今日は楽しまないと」
「え…でも…」
サイはまだこの場にいない。フレイが躊躇するのは当然だった。
その時、フレイの前に一人の男が立った。
フレイにとっては、顔と名前が一致する程度…サイと知り合いなので、何度か顔を見ている、と言った間柄でしかない。
「あ、あの…」
多分、面と向かって話をするのも初めてではないだろうか?フレイの記憶には無かった。
フレイの隣にいたマリューは不思議そうな顔をしたが、すぐに何かに勘付いたような顔になった。
「クスッ…二人とも、踊ってきたら?」
「えっ…でも…」
恐らく、赤くなった顔をマリューに見透かされていたのだろう。
「あら、男の子のダンスの誘いを断るのは失礼よ。いいから、行ってらっしゃい」
そう言えば、サイがいないのに何で私はここに来たんだろう。もしかしたら、誰かに誘われたかったのかな…
ふと、そんな思いが頭をよぎった。
キラが差し出した手は微かに震えているように見えた。

140 名前: ヘリオポリスの学園祭 投稿日: 2003/08/04(月) 00:03
誰も読んでないみたいだけど気にせず投下し続けるぞ!ペース遅いけどな!(藁

141 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/04(月) 00:08
読んでたりw

142 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/04(月) 00:19
>>140
読んでるよー(・∀・)ノ
最近ここ寂れてて不安だったんだ、どしどし投下してくれい。

143 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/04(月) 01:46
実は学園祭が一番好き。平和な感じで。

144 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/04(月) 08:07
職人の皆さんいつもご苦労様です。

145 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/04(月) 19:34
学園祭待ってますた。続き早くキボンヌ。

146 名前: 終末に向って 投稿日: 2003/08/05(火) 20:03
138の続き〜
誰も見てなくてもSS書きのプライドで書いた以上は完結させるぞ。


 フレイを収容したドミニオンは弾幕を張りつつフリーダムから離れていった。フリーダムは必死に追い縋ろうとしているがドミニオンの快速と火力、そして3機のガンダムに邪魔されてしまい、遂には振り切られてしまう。
 フリーダムを振り切ったドミニオンはその足で連合軍第7機動艦隊主力との合流を果たした。
 第7機動艦隊と合流すると、アズラエルは用があると言って艦橋から出ていってしまう。忌々しい男がいなくなった事でようやくナタルは一息つく事が出来た。

「まったく、なんであんな男を乗せねばならんのだ」

 あの新型3機は自分の指揮下に有ると言うより、アズラエルに貸し出されているようなものである以上、彼の言うことを無視する事は出来ない。だが、その事がますますナタルの神経を苛立たせていた。
 そんな荒んだナタルの眼前にいきなりドリンクが差し出されてきた。

「艦長、少しは気を楽にした方が良いですよ」
「あ、ああ、済まないな」

 ドリンクを受け取ったナタルは一口啜った。こういう時は何かを飲むと不思議と落ち着くものだ。
 幾分か気分を和らげたナタルは、ふと気になった事を尋ねた。

「そういえば、あのポッドには誰が乗っていたのだ?」
「それが、ザフトから脱走してきた少女兵だそうです。アズラエル氏が何か受け取ったそうですが、詳しい事は分かりません」
「・・・・・・そうか、あの男、何を考えているのか」

 ナタルはまた不機嫌になった。自分の艦の中で勝手をされているかと思うと、また苛立ちが表に出てくるのだ。

 アズラエルが自分に物資の搬入を求めてきた時、ナタルはそれがミサイルだと確認するとそれ以上の興味を失い、勝手にしろと言い放った。
 ナタルの許可を受けたアズラエルはにこやかに頷き、その物資を搬入していく。
 この時、ナタルはアズラエルの計画を知らなかった。もし知っていればどんな手段でも使って抵抗しただろう。
 それは、核弾頭ミサイルだったのである。

147 名前: ヘリオポリスの学園祭 投稿日: 2003/08/06(水) 00:12
「マリュー先生、こんな所にいたんですか」
フレイが逡巡している間に、フラガとナタル、ノイマンが現れた。
「どうしました?一緒に踊りましょう」
フラガの顔は少し赤くなっていた。
ナタルはまだ悔しそうな表情が消えてはいなかったが、努めて平静を装っているように見えた。
「ちょっとフラガ先生、貴方まさかアルコール…」
「イヤだな、そんなわけ無いじゃないですか。それより、こんな所にいるより踊りましょう!」
そう言うと、フラガは強引にマリューの手を取った。
明らかにほろ酔いである。フレイもキラも、唖然として見守るだけだった。
「もう…」
マリューは苦笑して立ち上がると、フレイの方を見て言った。
「さ、あなた達も行きましょ?」
マリューとフラガ、ナタルとノイマンが会場の方に出ていくと、生徒達の歓声と口笛が響いてきた。
キラとフレイの目が合った。
「踊って…くれないかな?少しの間で良いから…」
フレイは笑いをかみ殺した。彼は何でこんなに緊張しているのだろう。
少しいたずらしてやれ、と言う小悪魔的な思いつき。
「えぇ、お願いします。踊りましょう?」
キラはフレイの手を握った。
それを見てトールが口笛を吹き、ミリアリアが「トール!」と腕をつねった。

148 名前: ヘリオポリスの学園祭 投稿日: 2003/08/06(水) 00:15
>>146
乙です。何か危険な雰囲気になってきましたね。

>SS書きのプライドで書いた以上は完結させるぞ。
耳が痛い…頑張ります…

149 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/06(水) 01:03
>>148
がんばれ〜、負けるな〜w

150 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/06(水) 02:33
お二方乙です!
>>146
見てますよ!続きを読むのが楽しみでありながら怖くなってきました…(泣)フレイ〜
>>147
トルミリ◎です かわいいですね〜!

151 名前: 終末に向って 投稿日: 2003/08/06(水) 20:56
 プラントへ向けて進撃を開始した連合艦隊。その戦力は激減しているザフト軍とは比較できないほどの物量であった。
 この大艦隊に対し、アズラエルはドミニオンから放送を始めた。

「皆さん、これからコーディネイターどもに今までの借りを返す戦いが始まります。あの美しい地球を戦場とした愚か者どもに、自分たちのした事がどれほど罪深い事だったかを思い知らせてやるとしましょう」

 ブルーコスモスでなければ聞いていられないような台詞に、ナタルは流石に顔を顰めた。ナタルとてコーディネイターが好きという訳ではないが、ここまで憎悪する気にもならないのは確かだ。
 もちろなずらえるはナタルの変化になど気にもかけていない。気付いていたとしても何も言わなかっただろうが。
 アズラエルは楽しそうに演説を続けていく。

「それでは皆さん、戦いを始める号砲として、これから盛大な花火を打ち上げます。見逃さないで下さいね」

 アズラエルはマイクを置くとナタルを見た。

「艦長、先ほど搬入したミサイルを装填してもらえますか」
「ミサイルを装填だと。ここから何処を狙うつもりなのだ?」
「決まってます。ザフト軍前線基地、アボス基地ですよ」
「・・・・・・だが、ここからミサイルを撃っても迎撃されるだけだぞ」
「迎撃されても構いませんよ。ある程度まで近くに行けば十分です」

 アズラエルが何を言いたいのかナタルには分からなかったが、とりあえず言われた事を実行した。搬入されたミサイルをランチャーに装填し、アボス基地に向けて撃ち放つ。
 だが、この手の長距離攻撃が意味の無いものであることは常識だ。軌道計算でミサイルを撃つことは可能だが、途中で必ず迎撃されてしまうからだ。
 だが、このミサイルはそれでいいのだ。そう、ある程度近くで炸裂してくれればそれで成功なのだから。
 そして、アボス基地は幾つかの巨大な閃光に包まれ、消滅していったのである。

 アボス基地消滅の知らせを受けたナタルは驚愕して振り返った。

「どういう事だ、あのミサイルはまさか!?」
「そう、核ミサイルですよ。我々は核の封印を解き放ったのです」
「・・・・・・貴様は、血のバレンタインを再現するつもりなのか?」

 ナタルは怒りに顔を歪ませた。あのユニウス7の残骸と、そこに漂う住人達の姿は今でも覚えている。あの惨劇を拡大再生産しようとでも言うのだろうか?
 アズラエルはナタルに皮肉な笑みを向けて答えた。

「まずは脅しですよ。これで降伏しない様なら核攻撃を加えていきます」
「私はこんな命令は受けていない!」
「この作戦はサザーランド大佐から上層部の許可を取り付けたものです。艦長の意思は関係無いのですよ」

 アズラエルの嘲笑を受けて、ナタルは足元が崩れていくかのような衝撃を受けていた。
 今まで信じてきたもの、その最後の糸が切れてしまったかのような衝撃だ。この時、ナタルの中で1つの決意が形を成したのである。

152 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/07(木) 03:44
>>151
乙です。
アズのワルっぷりが(・∀・)イイ!w

153 名前: ヘリオポリスの学園祭 投稿日: 2003/08/07(木) 22:33
はっきり言うとキラはダンスが下手、というより殆ど経験が無いのだろう。
一々動作がぎこちないので、自然とフレイがキラをリードして踊る形になった。
もっとも、キラはそんな事を気にかけるような余裕が無かった。
その必死さが余計フレイには可笑しいのだ。
お世辞にも呼吸が合っているとは言えないダンスだが、周りの視線が時々二人に注がれるのはやはり華があるからなのだろう。
「コンテストは見てくれたの?」
「…うん、見てた」
フレイは音楽に合わせてくるっと体を一回転させた。
スカートがその回転に従って、ふわりと円を描いた。
「で、どうだったの?」
「え…どうって…」
我ながら少し意地の悪い質問だとは思う。しかし、そんな質問で困らせてやりたいような雰囲気をキラは持っている。
案の定、答えに窮して視線が泳ぐキラの顔を見て、今度こそフレイは笑いが堪えられなくなってしまった。
「ご免なさい、変な事聞いて…」
笑いを含んだフレイの声で、逆にキラは少し安心したようだった。
「私、初めての学園祭で、コンテストに出たのも初めてだから、みんながどう思ったのか、心配だったの」
「そう…!?でも、とても似合ってたと思うよ」
キラとしてはそれが精一杯の言葉だったし、それはフレイにもわかった。
「ありがとう、そう言ってもらえて嬉しいわ」
緊張した表情だったキラもようやくはにかんだような笑顔を見せた。

154 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/07(木) 23:07
>>153
( ´∀`)σ)∀`) コイツ、オトコナラハッキリシロヨ!!

155 名前: どうか深層心理へ 投稿日: 2003/08/08(金) 14:54
帰ったら、話を聞くよ。
帰ったら、やり直そう。


「父が・・・死にました」

そう告げた後、耐えるような、耐えられぬような表情をしたかと思うと、ラクスが泣きながら僕の胸に飛び込んできた。
震える小さな肩を見ていると、胸が締め付けられた。

でも、その彼女の肩を包むことは出来なかった。
何故か、出来なかった。


出来なかった。
彼女を慰める事など。
泣きながらサイの胸に顔を埋めるフレイ。
惹かれる人に、引き裂かれるような言葉をかけられた僕は、罪悪感のような傷心のような後悔のような、今となっては何かよくわからない感情に狂いながら泣き叫んだ。
なぜ、逃げたのだろう。もっと謝ればよかった、抱きしめたかった、せめて、許して欲しかった。
でも僕は、あの時部屋を出て行った。これ以上つらい言葉と、そしてフレイを慰めるサイを見ていられなかったから。


「キラ・・突然すみませんでした。少し、楽になりました」

僕の胸から顔を上げると、ラクスはまだ泣き後が残っている顔のまま、目を伏せて静かに頷いた。
次に目を開けた時は指導者の顔。何かを見据えたような眼差しのまま、彼女は彼女を必要とする者達の所へと歩いていった。まだ、やるべきことは沢山ある。今はひたすら未来を突き進まなければいけないのだ。細い小川のような道をつたってでも。

それでも、すぐには消えない涙の後が、痛々しかった。


フレイは、何度泣いたのだろう。フレイ、君はあの後何回泣いたの?
君が父親を失ってから、僕は君が泣くであろう回数を、少しでも減らしてあげられたのだろうか。
きっと、そんなことはなかったかもしれない。
泣いていたのは僕。
泣きたかったのはフレイ。
でも、泣いたのは僕。
今になって思う。僕は、泣いていたであろうフレイを抱きしめるべきだったと。

そう思うと、無性に彼女を抱きしめたくなった。
でも、もう僕の傍に彼女はいない。


「キーラー」
「えっ」

急に呼びかけられ、僕は少し驚いた。そんな僕を見て、呼びかけたカガリはしょうがないな、と笑いながらつぶやいた。

「カガリ、アスランの怪我は・・・」
「大丈夫だろ。アイツ結構丈夫だし。それに、私からの・・あーえーっと、まぁ、うん、丈夫だから」
「・・・?そっか」

言葉の途中でなにやら声のトーンが高くなったけれど、どうかしたのかなぁ・・・。
少しの沈黙の後、カガリが強気な、でもあたたかい笑みを向けて、僕の背中を叩いた。

「・・・・苦しいよ、な?」
「・・・。」
「でも、みんなだってきっとそうなんだ。それでも頑張ろうとするから、やっとつかめるものだってあるんだ」
「例えば?」
「例えば、幸せな未来とか」
「誰が?」
「欲しいと願う人々皆に。私はそういうのが欲しいな」
「僕も?」
「お前がつかむんだよ」

つかめるのだろうか。そんなこと、そこまで考えたことはなかった。

「お前ならつかめるよ。少なくとも、私はお前を支えようと思う。お前が知らないだけで、そう思っている誰かがどこかにいるもんだよ」

そう言うと、カガリはじゃあな、と言い僕の前を歩いていった。一度振り返り、

「それから、これは私からの個人的な言葉だが・・・頑張って頑張ってそれでも頑張って頑張ったら、お前の好きに生きろ。お前は自由だよ」

という言葉を残して。

自由にするための光が自由になる。僕は何をするだろう。
間違いなく、フレイの言葉の続きを聞きに行くと思う。
その時、彼女はまだ僕にお帰りと言ってくれるだろうか。
もし彼女がお帰りと言ったら
ただいまと僕が言う。
彼女が笑ったら。
抱きしめよう。

もう同情はいらないから、
あの時より、僕は少しでも強くなれたと思うから
だから、もう同情しないでいいから
そしたら、今度こそ好きになってもらえるよね。
好きになってもらえるよね。

会いたいよ。
ワガママなんて言ってられない。
でも、会いたいよ。


帰ったら、話を聞くよ。
そして、やり直そう。

156 名前: どうか深層心理へ 投稿日: 2003/08/08(金) 14:57
長い・・・すいません

157 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/08(金) 17:31
>>155
乙です。
本編のキラもこの位フレイを想っていてくれたらいいのに‥‥
フレイの笑顔が見たいなあ。

158 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/08(金) 18:05
>>155
キラいい奴だな(´Д⊂ヽ

159 名前: 熱の隙間の悪い夢 投稿日: 2003/08/08(金) 18:15

部屋はとても静かなのに、フレイの体はずきずきと痛んだ。
でもそれは甘さを含む、内なる高ぶりだった。
おのずと、震える指を下着に這わせた。

「ふぅ…」

その場所をなぞると新たな熱が生まれ、やがてじんわりとしめって来る。
やがてもどかしい下着を割って指が直にそこに触れる。
静かな部屋の中には湿った音と荒い息遣いのみが響く。
フレイは身をちぢこませ眉を寄せて快感を追い求める。
それに必死で、自分が甘い声を上げていることすら聞こえない……

だから部屋に現れた気配もその存在が息を呑んだことも、すぐに気付かなかった。

(いっちゃう…)

自分のうちに出口がある気がした。それを追いつめたと思ったその時。

「フレイ…?」

突然外から聞こえた男の声に、フレイは現実に引き戻される。
弾かれたように振り向くと体を強張らせた。
「…、ッラ…」

目の前の人物の名を唱えようとした声は掠れてしまう。そしてまた彼も…

「はやく、おわったんだ…装丁だけで…あとは…だからもういいって…」

キラの声が掠れ、その視線はフレイに固定されている。
そして一歩踏み出す。それにひと怕遅れてフレイはシーツを掻き寄せた。

「いやぁッ!」

顔に熱が集中し、あたまがくらくらする。
ただフレイを支配するのは羞恥とそして恐怖だった。

キラは信じられなかった。自然息が荒くなる。
まさかフレイがこんなことするなんて…。
スーツの裾か見える脚のなまめかしさにごくりと息を呑んだ。

「こないでツやだぁ…」
泣きそうな悲鳴をあげるフレイの声がどこか遠くに聞こえて、
キラはその膝に手を置いた。そしてそのままシーツを引き下ろす。

「嫌!」

フレイの下肢があらわになる。下着がよれた隙間から陰部がのぞき、
そこは濡れそぼっていた。

「すごい…」

思わず漏らした声にフレイはまた弱い拒否の言葉を繰り返す。
しかし体には少しも力が入って無くて、
キラが両手で膝をわると造作もなく開かれた。

まだだめと言うその唇の声を聞くこともできず
キラは吸い寄せられるように濡れた秘部に触れた。

:::::::::::::::::::::::::::
以上まだ続く。フレイ様に怒られそうで怖いんだけど
エロパロに投稿すべきか悩んでこっちにしてしまいますた。
住人の皆さんの反応をみて続き投下しますんでよろしく。

160 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/08(金) 19:49
ネトネトのエロになるならエロパロへ、
ピロートーク中心で行くならこのまま、ではどうか?

どっちにしろ続きはきぼんw

161 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/08(金) 19:58
ネトくはないけどあまりトークはしませんフレイ様。
やっぱりエロパロ逝きかなあ。

もう少し反応みてみます。あんまりエロパの雰囲気好きじゃないもんで。

162 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/08(金) 21:24
エロの方が食いつき良いし、こっちで良いと思うよ。
投下気にするほど人がいる訳でもないしw

163 名前: 熱の隙間の悪い夢2 投稿日: 2003/08/08(金) 21:44
ありがトン。
ではお言葉に甘えて続き。所詮自給自足のSSなんだがw


...
卑猥な音がはじまる。キラの息が荒くなる。
強弱や指の角度を調節してそこを責めると、
フレイの顔が苦悶に快感の交じったものになる。
キラはこの顔を見ると激しい情欲をそそられるのだ。

早く自らで貫きたいという衝動を押さえるのは、
彼の内に潜むある歪んだ感情、おそらくは支配欲だろうか。

「すごいヌレてる…シーツまで、ホラ見て」
「アッ…だめェ。やだ、やだぁキラァ」
「だったらなんで一人でシタの?」
「やっ違…あ、そこだめ!」

フレイの快感の壷を刺激すると、その腰ががくがくと浮く。
フレイの快感のすべてはキラがみつけたものなのだ。
どこをどうすれば感じるかキラは知っている。

164 名前: 熱…3 投稿日: 2003/08/08(金) 22:22
「あっ!ッー…」

がくんと腰が浮き、キラの指を膣壁が締め付けた。
そのままぐったりとフレイはシーツに倒れ込んだ。
タンクトップごしに胸が上下している。
イッてしまったことを恥じる余裕もないのだろう。
すでにキラ自身が痛い程に高まっていた。
そのままフレイに覆いかぶさると、シャツを捲くり上げた。
桜色の先端を舌に絡めながら、キラはもどかしく自らの服を脱ぎ去った。

「フレイ…いれるよ」
貧るように重ねた唇の隙間でキラは囁いた。
「やっだめそんなの…」
おかしくなっちゃう、という言葉より先に、キラは激しくフレイを貫いた。

165 名前: 熱…4 投稿日: 2003/08/08(金) 23:34
「ハ、やぁ、はんっ…駄目、止めて、だめエ!っつあゥ!」

激しく腰を打ち付けられながらのフレイの懇願はしかし、
キラの熱を煽るだけだった。
だからフレイにあらゆる快感を与える。
「だめ!変になっちゃうよお」
「なっていいよ、…見せて」
キラは掠れた声で囁いた。
そう、もっと見せて。僕の腕の中で狂うその顔が本当なら。

キラは唐突に輸送をとめた。
それに顔を持ち上げたフレイの脚を掴むと、自らの肩に乗せた。

「ホラ、こうするともっと奥まで繋がるよ」
キラはフレイと脚を交差させるような恰好なって、微笑んだ。

166 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/08(金) 23:37
すみませんまだ続きます。
後半になると互いの深層心理描写になってくるんだけど。

ではヘリポリ学園祭で癒されてくださいw

167 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/08(金) 23:47
>>166
>ではヘリポリ学園祭で癒されてくださいw
ワロタ

ちゃんと読んでるから安心して投下汁。

168 名前: キラ・ヤマトいきます! 投稿日: 2003/08/09(土) 00:16
そういってもらえると後ろめたさが薄らぐよw
さていよいよフィニッシュなわけだが話としてはまだ終わりません。
エロスレになってしまうので他の作家さん宜しくと言ってみるテスト。


「や!いゃ!」
「当たってる。わかる?」
「やめて…、んっ、キラ、変よ!」
「君があんなことするから」
理性の箍が飛んでしまったのだ。
目を潤ませながら嬌声をあげる様を見下ろしながら、
キラは自身の限界が近づいているのを感じた。
そして一気に加速する。
「フレイ…フレイ!もう…」
「あ、んん…だ、め!キラだめえ!」

ぎりぎりの理性で熱を放射する一瞬前にキラは、
フレイの胸に放った。しかしまだその熱はなお、
彼に燻り続けるのだった。

169 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/09(土) 00:39
避妊はちゃんと汁!
男の子のマナーなり!

170 名前: 終末に向って 投稿日: 2003/08/09(土) 08:17
 核攻撃。一年前に封印された禁忌が今破られてしまった。
 連合将兵達も流石に勝利の余韻に浸る事も出来ず呆然としている者が多い。
 連合艦隊はプラント侵攻を前に一度動きを止めていた。プラント側に降伏を勧告した為だ。だが、この勧告はプラント側に蹴られてしまった。返されてきた電文を読んだアズラエルは皮肉げに笑うとその用紙を握り潰す。

「くっくっく、どうやら現実が見えていない様ですねえ。良いでしょう、躾の悪い野良犬は一度教育してやるとしますか」

 アズラエルの指示で連合艦隊は再び前進を開始した。攻撃目標はプラントとの間に立ちはだかる最後の防衛線、ヤキン・ドゥーエ要塞。ここを突破すればプラントは完全に裸になる。まさにケリをつける戦いという訳だ。
 アズラエルは戦いの前にやっておくことを思いついていた。

「さてと、そろそろ彼女に役に立ってもらうとしますか。奇跡の生還を遂げたヒロインに」



 連合軍の核攻撃にキラ達は揺れていた。まさか、NJCが連合の手に渡ってしまうとは。
 この事態にAAに集まった一堂は今後の事で協議を重ねていた。

「連合が核攻撃を開始した以上、これをどうにかするのが優先でしょう」
「ですが、どうやってですか? いくらフリーダムトジャスティスでもあの大軍を止めるなんて」

 ラクスがプラントを心配するのは当然だが、マリュ−は現実的には不可能だと思っている。連合軍にはあの新型の3機がいる。あれはフリーダムとジャスティスでも手を焼く強敵だ。これに2機が拘束されれば後はダガーの大軍を食いとめる術は無い。
 つまり、自分達3隻の戦力でどう足掻こうとも連合軍を止めることは出来ないのだ。バルトフェルドとキサカもマリューの言葉に頷いている。彼らも軍人であり、現実を無視できないのだ。
 ラクスは沈痛な表情でキラとアスランを見た。

「キラ、アスラン、あなた達はどう思いますか?」
「僕は、連合軍はとめなくちゃいけないと思う。でも・・・・・・」
「我々が出撃した後、艦を誰が守るのです。M1とバスターだけでは持たないでしょう」
「・・・・・・それなら、2機だけでの強襲という手もあるな」

 キサカがかなり無茶な事を言うが、2機の戦闘力を考えれば不可能ではないかもしれない。キラとアスランはキサカの提案に頷いていた。
 だが、この作戦会議を中止に追い込む、ある放送が連合艦隊から発せられたのである。
 それを受信したAAではサイが驚いてメインモニターに回している。
 そこに映っていたのは、赤い連合軍の制服を着たフレイであった。

「フレイ!?」
「どういうこと、何であの娘が?」

 キラが驚きの声を上げ、マリュ−が訝しがる。
 そして、アズラエルの声がこの放送の意味を教えてくれた。

「皆さん、彼女はザフトの捕虜という危険極まりない状況から奇跡の生還を果たした勇敢な兵士であり、戦場で非業の死を遂げられた事務次官、ジョージ・アルスター氏のご令嬢です。これから彼女がザフトの実態を語ってくれますから、ちゃんと聞いてください」

 これは、フレイを利用した連合の宣伝放送だったのである。フレイを利用した卑劣な手段に、キラ達はアズラエルへの怒りを募らせていた

171 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/09(土) 09:56
>>169
つっこむところが違うw

172 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/09(土) 10:08
>>170
週末乙です!続きが気になる・・・フレイ様〜!
>>169
やっぱりあれは避妊とはいわない?w

173 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/09(土) 14:37
>>172
いわゆる先走りでも十分妊娠するので避妊になりません、とマジレスしてみるw

174 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/09(土) 16:12
>>170
乙です。
なんか本編より気になるぞこれw

175 名前: ヘリオポリスの学園祭 投稿日: 2003/08/09(土) 16:39
だんだんフレイとキラのダンスの呼吸があってきた。
「…すごい、上手ね」
フレイの言葉は本心から出たものだった。自分の時はこうも早く上達はしなかった気がする。
「貴方、サイとはお友達よね?それで私の事知ってたの?」
何気なく投げた質問だが、キラは返答に困っているようだった。
「…!?…どうかしたの?何か悪い事言ったかしら…」
「いや、そういう訳じゃないんだ。唯…」
「ただ…!?何?」
今度こそキラは顔を背けてしまい、フレイはいたずらっぽく笑った。
フレイは自分の魅力を自覚している。ある意味嫌な女なのかも知れないが、そんな感じを受けないのは本来素直な性格だからだろう。
キラの初心な反応はフレイにも新鮮だったし、素直に嬉しいと思う。
考えてみれば、互いに始めて会話を交わしているに等しいのに、何故こんなに打ち解けた雰囲気なのだろう。
フレイがそうさせるのか、キラが持っている何かなのか…
「貴方とは、良いお友達になれそうね?」
踊っている内に、フレイの顔はほんのりと上気していた。
二人は間違いなく会場で一番目立っていた。
何しろコンテストで二位になっているのだ。視線を集めてしまうのは仕方ない事だった。
音楽の最後、二人は互いに挨拶のポーズを取った時に視線が合った。
自然と二人から笑みがこぼれた。
キラの目は、とても優しい、温かい光を宿していて、一瞬フレイは胸をつかれた。
「…キラ、ありがとう、とっても楽しかったわ」

176 名前: ヘリオポリスの学園祭 投稿日: 2003/08/09(土) 16:43
>>166
俺に振らんでくれよw
皆結構楽しみに待ってるんだからさ。
個人的には「約束」の中の人の降臨希望。

177 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/09(土) 16:46
>>175
乙っす!
なんかかわええなあ…(*´Д`)モエー
キラが羨ますぃw

178 名前: ヘリオポリスの学園祭 投稿日: 2003/08/10(日) 00:06
「フレイ!ここにいたのか」
聞き慣れたサイの声。
キラはちょっと慌てたようだが、サイはたった今来たばかりで、二人が踊っていたのは見ていないらしい。
もっとも、見たところで特別な反応を示すものでもないだろう。
「…どうした?キラ…」
「んーん、何でもないの!」
サイの質問を遮ったのはフレイだった。
キラが困っているのを見かねた…と言うより、少しからかっているような雰囲気があった。
「フレイ…!?」
生真面目なサイの反応にフレイは少し不満げな表情を見せた。
もう少し、駆け引きを楽しみたかったのだ。が、サイはそんなフレイの気持ちに気づいてくれない。
そんな、どこか鈍感なところがあるのがフレイには不満といえば不満だった。
しかし、それは結局フレイの我侭なのだろう。
キラは困ったような視線をサイに投げたが、サイはそれに気づいていなかった。
「フレイ、これからさ、コンテスト入賞者に挨拶して欲しいんだ。ちょっと来てくれないかな?」
「え?でも、表彰式も終わったじゃない」
「そうなんだけど、声が聞きたいって要望多くてさ…な、お願いだから」
「なら良いけど…みんな揃ってるの?」
「大丈夫、呼んできてもらったから」
「分かったわ。キラ、本当にありがと!楽しかったわ」
サイは不思議そうな顔をしたが、遠くでアスランが手招きしているのに気づくと走って行ってしまった。
「もう、ほんっとに鈍感なんだから…」

179 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/10(日) 00:09
>>178
お兄さん!
しっかりしてないと
意外と手の早い誰かさんにフレイ様をとられてしまいますよ!w

180 名前: 終末に向って 投稿日: 2003/08/10(日) 18:52
ドミニオンに作られたステージに上げられたフレイ。その顔には困惑と躊躇いが浮かんでいる。
どうして自分の演説が連合軍将兵に有効だというのだろう。自分は15歳の、なんの力もない小娘でしかないのに
放送が始まる前にその事をアズラエルに尋ねたが、その答えはフレイを愕然とさせるものであった。

「私に演説なんて出来ませんよ」
「いやいや、別に難しい事を話せという訳じゃないんだ。君がこれまでにザフトとの戦闘で見てきた彼らの非道ぶり、コーディネイターに捕まって受けた屈辱の数々を語ってくれれば良いのさ」
「・・・・・・コーディネイターの非道ぶりを?」
「そう、そうすれば連合軍将兵達の敵への怒りは沸点に達するだろう」

ようするに、自分を戦意高揚のプロパガンダに利用するということか。
フレイはそう悟り、皮肉に口元を歪めた。結局何処まで行っても私は利用されるだけの存在らしい。

演台に立ったフレイは、これまでの儚げな雰囲気を捨て去ると、強さを秘めた目で語り出した。

「皆さん私はフレイ・アルスター。連邦事務次官、ジョージ・アルスターの娘です」

フレイの演説に連合軍将兵は聞き入った。フレイの持つ容姿が彼らの興味を引いたということもあるが、アズラエルの命令がやはり大きい。
そして、この通信はザフトでも傍受されていたのだ。クルーゼやイザーク、ザフトの兵士達もこの演説を見ていた。

「私の住んでいたヘリオポロスコロニーは、ザフトの突然の襲撃を受け、破壊されました。住む場所を奪われた私は連合軍の戦艦アークエンジェルに救助され、地球までザフトの襲撃に怯える日々を送ったんです」
「途中、幾度もザフトは襲ってきました。そんなアークエンジェルを守っていたのはヘリオポリスに住んでいたコーディネイターの少年でした。彼だけが連合のMS、ストライクを扱えたんです」
「そして地球まで後少しという所でアークエンジェルは迎えの艦隊と合流できそうになりました。そこには私の父も乗っていたんです」
「しかし、その艦隊はザフトの攻撃を受け、全滅しました。父の乗っていた艦も私の目の前で沈められて・・・・・・」

 
その時の光景を思い出してしまい、フレイは顔を伏せた。感情を押さえるのにしばしの時を必要としたからだ。

「私はコーディネイターを憎みました。そして復讐を誓いましたが、私には力が無かった。そんな私が目をつけたのが、ストライクのパイロットだった少年でした」
「私は彼を利用してやろうと考えました。コーディネイターがコーディネイターを殺す。そして最後にはその少年もコーディネイターに殺されれば良い。そう考えたんです」

この言葉にAAにいたキラは衝撃を受けた。サイ達の顔にも怒りの色が浮かんでいる。

「彼は私の思惑通り戦ってくれました。ザフトを次々に倒していったんです。そして最後には自分の友人が乗っていたイージスと相打ちになり、彼は死にました」
「その後、私はアラスカでザフトのクルーゼという男に攫われ、ずっとザフトと行動を共にしていたんです」

そこでフレイは言葉を切った。内心を整理する時間が欲しかったのだ。

フレイの放送を聞いていた人々の反応はさまざまだった。同情するもの、怒りを露にするもの、困惑するもの。
そして、フレイが再び口を開いた。

181 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/10(日) 19:50
>>178
穏やかだなぁー、平和だ。

>>180
フレイ様ガンガレ!

182 名前: ヘリオポリスの学園祭 投稿日: 2003/08/10(日) 21:56
「皆さん揃いました?では、お願いしますね」
そう言いながらてきぱきと指示するラクスの横顔は、フレイが見ても綺麗だと思う。
もしかしたら来年一番のライバルになるのはこの人かも知れないと思うと、急に緊張してくるのだった。
フレイの隣にいたカガリはいつものラフな格好に戻っていて、あまり気乗りはしていない様子だった。
「こんな事なら着替えなきゃ良かった。もっと早く言ってくれよ!」
そんな感情がありありと顔に出ているのが可笑しかった。
「…どうする?挨拶するか?」
アスランに尋ねられたニコルは、きっぱりと首を横に振った。
「いや、遠慮します。おとなしく下から見てます」
「そうか、まぁ無理強い出来ないしな…わかったよ」
アスランはそう言って、ニコルの肩を叩いた。
「でも、良かったじゃないか。もしかしたら卓球部に入部してくる子が出るかもな?屋台の方、凄かったんだろ?」
「そうだと良いんですけどね…でも、イザーク先輩何処行っちゃったんだろう…ディアッカ先輩もいなくなっちゃうし」
ニコルは、自分が二人に大損害を与えている事も知らずに心配しているのだった。
そこへ、マリューとナタルの二人が、サイに連れられてやって来た。
「あら、ニコル君も挨拶するの?」
「ぼ、僕は違います!見てるだけです」
「そう…あ、そうそう、ディアッカ君に会ったら私の所に来るように言っておいて。全く、あの子ったら…」
「あれ、ナタル先生も挨拶するんですか?」
「ま、まぁな…」

183 名前: ヘリオポリスの学園祭 投稿日: 2003/08/10(日) 21:57
周りを生徒達で取り囲まれたスポットライトの中にコンテスト出場者が出てくると、クラッカーの破裂音と共に紙テープが降り注いだ。
フレイ自慢のたっぷりとした髪にもテープが絡みついてとても鬱陶しかったのだが、フレイはそれを我慢した。
フレイの視線は無意識にキラを探していたが、見つける事は出来なかった。
「どうしたのフレイ?キョロキョロして…」
ミリアリアがフレイの服を引いた。
「え!?あ、何でもないわ。私、キョロキョロしてた?」
「してた?って……呆れた、さっきから何か変よ」
ミリアリアに指摘されるまでも無く、自分自身に何か異変が起こっている事は分かっていた。
しかし、一体それが何なのか、どうしても分からないのだ。
「ほんと、どうしちゃったんだろ、私…」
「…フレイ!何独り言言ってるの?ほら、貴方の番よ?」
「え?あ、はい…」
何か気の利いた一言でも言って、集まってくれた人達の喝采を浴びようと思っていたのだが、どうやらその目論見は崩れ去りそうだった。
「はは、緊張してるみたいじゃないか。口ごもっちゃって…やっぱり一年生だなぁ」
ラクスの質問にたどたどしく答えるフレイを見て、何も知らないアスランはそう言って微笑していたが、サイは首をひねっていた。
フレイがこんな場面で物怖じしたり、言葉に詰まったりするような性格ではないのは知っていたからだ。
今のフレイは、ここにいながら全く別の事を考えているように見えた。
しかし、生徒達はそんなフレイの心中を知らないから、むしろ可愛い反応に映ったのだろう、フレイが逃げるようにマイクから離れると一番大きな拍手が沸いた。
フレイには自分の体と心が自分のものではないように感じられた。
「本当、どうしちゃったの?私…」

184 名前: ヘリオポリスの学園祭 投稿日: 2003/08/10(日) 22:03
そろそろラストかな?
(放置期間が)長かった…
最初から読んでた人がどの位いるのか知らないが、種より先に終われそうで良かったです。

185 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/10(日) 23:08
ずっと読んでますよー
毎回すごく楽しみにしています。

186 名前: ヘリオポリスの学園祭 投稿日: 2003/08/11(月) 23:26
それから何日か経っても、フレイはどこか所在なげな様子で、クラスメイトを心配させていた。
「フレイ、もしかしてまだ気にしてるのかしら?」
「まさか…でも、結構引きずるタイプだから…あり得るかも」
「どうしよう、私、可愛いからニコル君に入れちゃった…ばれたら何て言われるか…」
しかし、フレイの様子がおかしいのはそれが原因ではなかった。
「フレイ!今日、お父さんが帰ってくるんだろ?港まで送っていくよ」
「サイ…」
サイの運転するエレカの助手席に、フレイは体を滑り込ませた。
「サイも昨日までいなかったじゃない、どうしたの?」
「実習で工業ブロックに行ってたんだよ。で、今帰ってきた」
「そう…じゃあ、キラも?」
「そうだよ……?どうしてそんな事聞くの?」
「ううん、何でもない…」
本当に、何故そんな事を聞いたのか分からなかったからそう言ったのだ。
フレイはそのまま黙って外を眺めていた。
その夜、フレイはジョージと久しぶりに夕食を囲んでいた。
「学園祭はどうだ、楽しかったか?」
「えぇ、とっても…」
ジョージはフレイの微妙な変化に気づいたが、それが何なのかまでは分からなかった。
男親の粗忽なところだ。もっとも、親にどうこうできる問題でもないのだが…
「ねぇパパ、パパがママと初めて会った時、どんな感じだった?」
「…? おいおい、どうしたんだ?いきなり…」
ジョージにとっては答えにくい質問だが、フレイの目は真剣だった。
「そうだな…もう20年前になるか……母さんと出会ったのは…」
ジョージの話は、フレイが初めて聞く話だった。
「…素敵ね。とっても…」

187 名前: ヘリオポリスの学園祭 投稿日: 2003/08/11(月) 23:26
フレイは爽やかな朝を迎えていた。
自分の両親がとても素敵な出会いをしたという事は、フレイにはとても嬉しかった。それは、誇りにも似た感情だ。
「でも、あのパパが…ね」
思い出すと思わず微笑してしまう。朝食を取るとき、フレイはジョージの前で笑いをかみ殺すのに苦労した。
いつも通りの通学路も、今日は少し違って見えた。
「あ…っ」
目の前に、キラの姿があった。
「キラ!」
自分でもびっくりするほど、大きな声だった。
キラの背中が一瞬揺れて、こちらを振り返った。
「フ、フレイ…おはよう…」
「おはよう!工業ブロックに行ってたんでしょ?パーティー以来ね」
「え?誰に聞いたの?僕が工業ブロックに行ってたの…」
「呆れた、サイと一緒だったんでしょ?」
「あ、そうか…」
「パーティーの時は、本当にありがとう。お陰で楽しかった」
「そんな…お礼を言うのは僕の方だよ。ほんと…」
「ほんと…何?」
フレイはキラの横顔をのぞいた。キラの瞳は一瞬揺れたが、すぐにフレイの方に向き直った。
「ほんと、嬉しかったし、楽しかったよ…それに…」
「それに?」
畳み掛けるようにフレイは聞いた。
「何か、夢を見てるみたいだった。とっても…綺麗で…」
最後のほうは消え入るような声だった。キラの顔は目に見えて赤くなっていた。
学園祭の時からフレイを包んでいたもやもやは、消えていた。
「ほら、早く行こう!急がないと、遅刻しちゃうわよ!」
「あ、待ってよ、フレイ」
フレイは駆け出し、キラもそれを追って駆け出した。
新しい一日が、始まった。


ヘリオポリスの学園祭  終

188 名前: ヘリオポリスの学園祭 投稿日: 2003/08/11(月) 23:31
何とか終わりました。
フレイ様を奔放に動かしたいと思って書き始めたのですが、多分最長不倒でしょう(放置期間が)。
本編の方と比べるとアレですが、元々設定完全無視のSSなので大丈夫でしょう。
SS書きのプライドは…守ったのかな?w
読んでくれた方々、感想カキコしてくれた方々、ありがとうございました。

189 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/11(月) 23:34
乙です!!!
楽しく読ませていただきました!
ああ…輝くような笑みのフレイ様が目に浮かぶ…
ジョージパパとママの出会いも聞きたいですなあ。
しかし…サイ……

190 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/11(月) 23:47
>>188
     /巛 》ヽ,
    ヾノ"~^ヽ,^,      乙グゥレイト・・。いままで ごくろうさまでつ。
     (´∀` リ_     
     とと,,___つ ゛

191 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/11(月) 23:50
乙です
本編でもフレイ様の明るい笑顔が見たいものです。

192 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/11(月) 23:57
>>188
ヽ(゚∀゚)メ(゚∀゚)メ(゚∀゚)ノワーイ

楽しかったよ!

193 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/12(火) 00:14
おつふれ〜。

こっちの世界での三角関係は泥沼しないよう密かに願うことにしますw

194 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/12(火) 00:55
>>188
乙フレ。
ほのぼのした感じがとても良かった。
もし、戦争が無かったらフレイ様もこんな可愛らしいところを見せてくれたんだろうな…

195 名前: 遺されたものの祷り 投稿日: 2003/08/12(火) 02:56
ほのぼのしている所悪いのですが…
タイミング逃したものを投下しますm(_ _)m
ラスト、誰が氏ぬかよくわからん時に
AAが沈み、キラも死んでしまうことを想定して書きました。
後日談です。
心理描写を削りまくった、どえらく地味な話ですが…つなぎにでも。

196 名前: 遺された者の祷り 1/6 投稿日: 2003/08/12(火) 02:57
陽射しの強い午後。

「あー…」
気まずそうに、男は視線を彷徨わせた。
「遅っせぇな、あいつら……」
いかにも、間を持たせようとして発したと思われるその呟きはすぐに終わり、
かわりに、風が木立をゆらすざわざわという音が、間を埋める。
「座りましょうか」
その男の前に立っていた女は、ふわりと笑うと、道端に腰を下ろした。
女の纏った長い薄紅色のスカートの裾が、無造作に伸びた芝生とすれあう。
「あ、おい…」
「立って待っていても仕方ないでしょ?」
女は、風がさらおうとする赤い髪を手で抑え整えながら、
まだ立ったままの金髪の男を見上げた。
「そりゃあそうだけど」
だが男は座るそぶりを見せなかった。
女はそれを察し、目を前方に移しながら言葉を返す。
「並んで座るような仲じゃあない、って?」
「……」
男は答えず、手にもった花束の形がくずれないよう、気にしながら腕を組んだ。
大輪の黄色い花と、その花束を持つ浅黒い手とのコントラストが鮮やかだ。
男は女につられるように、前方に続く草原を見下ろす。
芝生と言うには不揃いな雑草が生え広がる中に、ところどころ茶色い地肌が見える。
またよく見れば、白褐色の石片や、ガラスの欠片が散らばっている。
一年前に終結した、戦争の傷痕とでも言おうか。
多くのものが失われた戦いだった。
二人が初めて顔を合わせた、1隻の戦艦もまた、そのひとつ。
二人が知る、あるパイロットも、そのひとつ。

197 名前: 遺された者の祷り 2/6 投稿日: 2003/08/12(火) 02:59
しばらく二人は黙って、陽を浴びていた。
この丘から見下ろせる墓地に、宇宙に散った彼らは、いない。
それでも、花だけでも添えたいと、集まる事にしたのだった。

男がちらと腕時計に目をやり、他の者たちの到着を危ぶみだした頃、
女はまた、前を見たまま口を開いた。
「…あの時は、…ごめんなさい」
「あの時?」
男はすっとんきょうな声をあげた。
が、直後、揶揄するような笑みを口元に浮かべる。
「あ〜らら、謝られるとはおもわなかったねぇ」
言いながら、男はスッと両足を肩幅に開き、花束を肩の高さで両手に持ちかえた。
銃を構えるような姿勢だ。
「『コーディネーターなんて、皆死んじゃえばいいのよ!』…だっけ?」
「そうよ、それよ」
女は、謝ったわりには悪びれもせずそう答えた。
「ありゃあ流石にびびったね」
「でしょうね」
「ちびりそうだったよ」
「そこまで聞いてないわよ」
「ははっ」
ぴしゃりと言う女の言葉に男は思わず笑い、…そしてすぐその笑顔をしまいこんだ。
「…謝るのは俺の方だ」
「……私に、じゃないでしょ」
「そうだな」
男はまた、腕を組みなおした。陽の光に、眩しそうに目を細める。
大きく一陣の風が吹き、女は、はためくスカートの裾に手をやった。
かわりに手から解き放たれた暗紅色の髪が風に広がり、つややかに陽光を弾き返す。
「謝り足りない事ばかりだ…」
「……」
男の呟きに、今度は女が黙り込む番だった。

198 名前: 遺された者の祷り 3/6 投稿日: 2003/08/12(火) 03:00
「はじめ艦でみて、バカにしたことも。彼氏の事も。他いろいろ、感謝だってあったさ」
女は眼を閉じた。
「だから、戦うことで返せればなって、思ったんだ。思ってたんだぜ」
男はたんたんと語りつづける。だがその声はこわばっていた。
我知らず、女は耳に全ての神経を集中させていた。
男の声だけでなく、風の音さえも聞き取れるほど。
何故かその後に来る言葉が、わかった気がしたからだ。
「なのにっ、…守れなかったんだっ……!」
女の肩が震えた。
スカートの裾を握り締めるその手が、
血の気が引くほど握り締められる。
男はそれにふと、気付いたようだった。
「悪ぃ…お前のほうが、もとはあの艦にいたんだもんな」
女は青灰色の眼をふたたび開けた。
「ううん、違うの。続けて」
「そっか」
男はとってつけたようなのびをして、また口を開く。
話す事が贖罪にはならなくとも、いや、ならないからこそ、話してしまいたいのかもしれなかった。
「…ジンとかゲイツとか…中に知ってる奴が乗ってるかもしれなかった」
男の口にまた一瞬、皮肉げな笑みが浮かぶ。
「やっりにくいよなー…なんてバカな道選んだんだろうって思っちまったぜ、流石にさ」
「……」
「そして俺の目の前でアークエンジェルは沈んだ」

199 名前: 遺された者の祷り 4/6 投稿日: 2003/08/12(火) 03:01
「守りたいって気持ちは嘘じゃなかったさ。
…今さらそんな事言っても、誰も信じないだろうけどな」
「信じるわ」
女はすぐさま決然と答えた。
男が一瞬気を飲まれたほど、その語調は強い。
女は、キッ、と前方の空を睨みつける。
「今なら。信じるわ」
宵の空のような瞳が揺れた。
「もし…知ってるヤツ殺したくなくて、本気で戦ってなかったかもしれなくても?」
男は、本当に謝罪すべき相手のかわりに、今、隣りに座るこの女に
そう問い掛けてしまう自分を、卑怯だと思った。
そして、返ってきた答えは、厳しいものだった。
「それは赦せない」
「…だよねぇ」
男は自嘲気味に言った。
「言い訳にもならねえよな、こんなの」
「……でも…」
「ん?…何?」
スカートの膝に顔を半分埋めるようにして言う、その声を聞き漏らすまいと、
男は思わず女の顔を覗き込む。
その仕草に、僅か一瞬、ある人の姿が重なり、慌てて女は眼を伏せた。
(悪い、癖だ…)
重なったのではない、無理に重ねてでも、その人の影を見たいのかもしれなかった。
「赦さないけど、でも…」
女は、胸にこみあげるまま、言葉を、口にした。
「…私も、赦されない事ばかりしてた」

200 名前: 遺された者の祷り 5/6 投稿日: 2003/08/12(火) 03:02
「それは」
男はそれに口をはさもうとして、だがそこで止めた。
その言葉が誰に向けられたものか、急に、理解できたからだ。
「だから…」
「…だから?」
男は痛ましげな顔で、先を促す。
「だから、謝らせてよ、……」
最後の方は、嗚咽にまぎれて、なんと言ったかはわからなかった。
だが男は、それが、喪われた者の名であることを、確信していた。
「なんで、あんたはここにいないのよっ……!」
女は泣き崩れた。
男は、目蓋を閉じた。
忘れられない声が、耳に蘇る。
(『なんで、あんたみたいなのがここにいるのよ!』)
「…守ってあげられなかった」
ともすれば風にかき消されそうな、男の無造作な低い声に、
女ははっと顔をあげる。
自分が、間違った相手に感情をぶつけてしまった事を少し悔いる。
だがまた、相手も自分でない者に話し掛けているのが、理解できてしまったのだ。
いつの間に、他人の痛みも、わかるようになってしまったのか。
「…いいわよ」
自分の言葉なのか、相手の想う者の替わりに答えているのか、
わからないまま、女はそう言った。
「それでも、守ろうとしてくれてた…それはわかるから」
また、相手に、彼を重ねてしまったのかもしれなかった。

「帰る場所も壊した」
「…あなただって失ったじゃない」

「傷つけた」
「…私こそ」

「ごめん」
「…ごめんなさい」

二人はそれきり、黙り込んだ。
草の上を風が渡る音だけが響く。

201 名前: 遺された者の祷り 6/6 投稿日: 2003/08/12(火) 03:03

この丘から見下ろせる墓地に、宇宙に散った彼らは、いない。
それでも、謝罪の言葉を、聞いて欲しかった。
何一つ、赦されなかったとしても。
声を聞きたかった。
それが、自分を責める言葉でもいいから。

202 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/12(火) 08:11
>>196-201 乙フレイさま〜

逝ってしまった恋しい人を想うモノローグ二つ、重なり合って…
切なすぎるぅ〜  。・゚・(ノД`)・゚・。

203 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/12(火) 08:31
>>195-201
おつふれ。
組み合わせが新鮮で楽に読めました。
ここまでとは言わずとも、本編でもう一度しっかり絡んで欲しい二人ですな。

204 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/12(火) 12:05
 /巛 》ヽ,
ヾノ"~^ヽ,^
 (´∀` リ<久々にシリアスな漏れ、グゥレイト
 ( つ旦O
 と_)__)

205 名前: 熱の隙間の悪い夢 投稿日: 2003/08/12(火) 18:48
ヘリポリ乙!さわやかですた。
さて、場違いな空気に気圧されつつ漏れもぽつぽつと投下していきまつ。



なんであんなことしてしまったんだろう。
熱の間でフレイは考えた。今まで、そんなことをしたことがないといえば嘘になる。
でもそれは例えば興味や好奇心であって、
飲み込まれることはなかった。

艦にのってからはまるでそんな気分ではなかったし、
キラに抱かれてから暫くは、自分の裸を見るのも
嫌だったのに。
はじめての夜、フレイは拒めなかった。
キスをした唇に舌が割り込むのに驚いた時には
キラはもう子供のような彼ではなかった。
母親よろしく慰めていたフレイはたじろいだが、
それでも今拒絶することは許され無かった。

206 名前: 熱… 投稿日: 2003/08/12(火) 18:54
激情にかられたキラはすごく乱暴にフレイを抱いた。
いや実際は慣れて無い故が大半だったろう、
捕まれた裸の胸が痛く、そして割り込んでくる指が彼女を裂いた。
まるで犯されているような気分だった。

「はぁ、はぁ、フレイッフレイ…!」

キラは繰り返しフレイの名をよんだ。ひとみは涙に濡れていた。

「あっ…く…」

深く突き上げられて、フレイは過去から舞い戻った。
しかししてることは同じだ。
ただいつからか覚えた快感の揺るぎを伴って彼女を襲う。
座位のまま腰を抱かれてフレイはまた鳴いた。
脚を投げ出し、キラの肩に爪を立てる。その唇をキラは求める。
呼吸を呑みこまんとする強さに、フレイは顔を背けた。

207 名前: 投稿日: 2003/08/12(火) 18:58
「キラ…苦しい…」

そう呟くとキラの動きが止まり腕が緩んだ。
フレイはそれにほっとして、溜息をついた。
…もう何度目だろう。
キラはまるで疲れというものを知らず、フレイを貪欲に求めた。
フレイが逃げようとするほど強く抱き締め、逃がさないようにした。

キラの、この執着は多分、
普段抱えている不安や孤独によるものだろう…
とフレイは考えていた。
そしてそれは大半で当たっていた。
キラはフレイを失うことを恐れ、そして彼女に逃避し、
熱の中ですべてを忘れようとしていた。

けれど、キラの思いのすべてをフレイが知ることはない。

208 名前: 熱… 投稿日: 2003/08/12(火) 19:05
激しい疲労に肩で息をするフレイの火照った体をまた引き寄せると、
キラはその耳朶を噛んだ。

キラは見たかった。ほんとうの彼女を。

フレイの与えてくれた愛は唐突で、それを疑い無く信じることは彼には出来なかったのだ。
でもそれでも、フレイの温もりはたしかにここにあって、
キラはそれに溺れていればよかった。最初のうちは。
でも近頃はいろんな事が見えて来た。見えて来るにつれ、
闇雲に縋った少女のひとみが虚に揺れることに気付いてしまった。

「っ…キラ、やめて…」

普通に抱いたのでは、フレイはキラの名を呼んではくれない。

羞恥と快感、それを与えればフレイは涙を流しキラと呼ぶ。
すると確かに今彼女を抱いているのは自分だと確認されるのだ。

フレイの流す涙に胸が痛むのを感じながら、
それでもキラは止めることができずにいた……

209 名前: 熱… 投稿日: 2003/08/12(火) 19:15
揺れる肩は向こうを向いてしまい、
キラはその白い背中を眺めていた。

またこんなふうに抱いてしまった。また彼女を泣かせてしまった。
熱の海での高揚感のあとキラを襲うのは、
虚しい喪失感だった。

「っく…」

フレイの肩が震え、背を向けた彼女は、
泣いてるのではないかと思う。

泣かせたいわけではないのに。

しかし熱が醒めると、その素肌に触れることすら躊躇われる。

まだフレイを抱いた感触が残っていた。
キラは恐る恐る、フレイの髪にふれた。

「フ、フレイ…」

髪先を指に絡めると隙間から首筋が覗き、そこには赤い斑点があった。
キラが噛んだ痕だった。
フレイはそれをすごく嫌がるのに、
キラの腕の中に入ってしまえば逃げることは叶わない。

キラはそれを知っている。

そしてそれが、すごく卑怯だということも。

210 名前: 熱… 投稿日: 2003/08/12(火) 19:22
「僕……」

「いいのよ。キラ。」
「フレイ?」

「わたしはいいの。あなたがそうしたいのなら。
辛いのよね?あなたはすごく頑張って、辛いことを続けなきゃならないもの。
私たちのために。
だから私があなたのためになることなら、なんだってしてあげたいの…」

キラに背を向けたまま、フレイは淡々と言葉を続けた。
それは幾度となく繰り返した呪文だった。キラという番犬を繋ぐ鎖。

もし食いちぎられようとも、甘んじてこの身を捧げるしかない。

キラが女であるフレイを開き、
繰り返し自覚させるとしても、なお。



………
長々とすんまそ。まだ続きます。

211 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/12(火) 20:36
>>202-204
ありがとうございます!感想もらえるなんてすげえ嬉しいです。 
なんか結局互いに違う人を重ねてるんで
絡んだといえるのかわからなくなってしまったんですが。
もっと読みやすくて、深いの書きたいなあ。
精進しまつ。

212 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/12(火) 20:40
心理描写きましたね〜!
生々しいのに嫌味がなくて、いい感じでキラの想いが真に迫ってます。
フレイ様も覚悟の程が垣間見えて…
続きもがんばってください。

213 名前: 投稿日: 2003/08/12(火) 21:59
緩んだ陰部から零れ落ちるものがまた不快感を与え、フレイはようやく身を起こす。

立ち上がろうとすると、腕を捕まれた。

「フレイ…」

先程の支配者の微笑みは微塵もない、
濡れた子犬のような瞳でキラはフレイを見上げる。そしてそのまま抱き寄せた。

「フレイ…フレイ…ごめんよ」

「…いいのよ、キラ?泣かないで、良い子だから」
「でも、僕…フレイが」

キラは泣きながらフレイをまたベッドに引き寄せた。そして彼女の唇を求める。

「うっん…」

舌で咥内を刺激され、フレイは甘い吐息を漏らす。

いいのよ。あなたには苦しんで、死んでもらうのだから。

かわいそうなキラ。

だから私が、慰めてあげる。

214 名前: 熱… 投稿日: 2003/08/12(火) 22:01
痛いほどにしがみつくキラの手を感じながら、フレイの意識は朝焼けに落ちた。

キラはフレイを後ろから抱き、その髪に顔を埋めた。

許されない罪から逃れるように、強く目を閉じて。

215 名前: 熱… 投稿日: 2003/08/12(火) 22:06
だいぶ長編になりそうなヨカーン。
感想くれた人ありがトン。



目を開けるとあるはずの人影はなく、
フレイはそれに安堵して体をおこした。
全身にけだるい痛みが残り、体がやけに重い。
引きずるようにバスルームに向かう。


湯をかけると体のそこかしこが滲みた。特に陰部がひりひりとする。
一体昨日は何度したのだろう?

大鏡に姿を写すと、ひどい顔だった。
首から胸にかけて腫れたような痕がある。

「バカね…私。」

フレイは自嘲の笑みを零した。
しかし鏡の向こうの少女は、泣いていた。

キラはどんな顔をしたのだろう?

もたもたと制服を着た。今日は髪を降ろす。首筋の痕が極力見えないようにと。

惨めだ…フレイは髪をとかしながら部屋を出た。


集合場所に集まって、指示をうける間も、フレイはぼうっとしてしまう。上官に叱咤されると慌てて配置についた。

「12番…粉乳、なつめ缶格20…問題なし」

そう言われてチェック項目に印をつけるだけの退屈な仕事だったが、それでも量だけは多い。

216 名前: 熱… 投稿日: 2003/08/12(火) 22:17
やっとの食堂に行くと、ちょうど誰もいなかった。
厨房のシャッターも閉まっている。
ホットカートのトレイをひとつ出し、最近アフリカめいた遅いランチを取る。

しかし食欲はない。ベーコンをつつくも、全く食は進まない。

サイはどうしてるだろうか、ふとそう思う。うす暗い部屋の中でパンだけだなんて可愛そうだ。私はどうせ食べたくないのだし、これをサイにあげられたらいいのに。

パパの選んだサイ。優しいサイ。
彼とあのままいずれ恋人になったなら、こんなに苦しい事も無かったのに。

そんな考えに襲われて、フレイははっとした。
今更何を考えているのか?
憎い憎いコーディネーターをこの世からなくして戦争を終えなくてはいけないのに。
そのためにキラを選んで、そして彼の求めに応じて抱かれもする。
キラを縛って置くのにこの体が必要なら、それで構わない。

けれど、もし妊娠したら?フレイは下腹を服ごしに掴む。
キラもフレイも、避妊具を持っていない。

軍にはそういったものもあると聞いたが…軍医に相談する気にもならなかった。

買い出しのついでにと頼んだけど、結局女の子と一緒だったし、
途中事件があったというから、無理だったのだ。
こんな筈じゃ無かった、…パパ。

わたし、まちがっていますか?


答えは、無い……

217 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/12(火) 22:25
長々と投下したので休憩しまつ。

だいぶエロ描写削りつつ、また明日にでも…

218 名前: 週末に向って 投稿日: 2003/08/12(火) 23:36
170の続き

そして、フレイは再び口を開いた。その表情はキラやサイですら見たことが無いほどに美しく、そして何処か悟ったような危うさがあった。

「ですが、私はザフトと行動を共にすることであることに気付きました。それは、彼らの戦う理由と、私たちの戦う理由が同じだということです」
「私は父の敵を討つために軍に入りましたが、ストライクのパイロットだた少年は友人を守る為に軍に入りました。皆さんも同じはずです。最初からコーディネイターへの憎しみだけで武器を取ったわけでは無いはずです。家族を、友人を、故郷を守りたくて武器を取ったのではないのですか?」
「彼らも同じなんです。プラントを守りたい、家族や友人を戦火から守りたい。同じ思いでコーディネイターも戦ってるんです」

フレイの発言は周囲に大きな衝撃を与えていた。コーディネイターを憎んでいた少女が、まさかコーディネイターを擁護するとは。
それはAAクルー達も同じだ。フレイのコーディ嫌いは有名だったから。

「彼らも人間なんです。確かに遺伝子は違うかもしれない。今まで殺しあった相手を受け入れるのは大変かも知れません。でも、このまま殺しあってたら、私みたいな子供が増えるだけなんです」
「もう、これ以上無駄な殺し合いをしないで下さい。家族の元に帰ってあげてください。復讐なんかしたって、後に残るのは空しさだけなんですから・・・・・・」

涙声で語るフレイの言葉は、聞く者の心に確かに響いていた。実体験から来る説得力というのか、連合の兵士もザフトの兵士もフレイの注目していたのだ。
だが、そんな舞台の中で1つの変化があった。銃を構えたアズラエルが舞台に上がってきたのだ。

「どういうつもりですか、フレイ・アルスター。誰がそんな事を言えと?」
「あなたは私の体験を語れといったわ。だから語ったのよ」

フレイとアズラエルがしばし睨み合う。そして、フレイは目を閉じると胸に手を当て、懐かしむように優しい声で語り出した。

「滑稽な話だと思うでしょうね。コーディネイターを憎み、復讐を誓った私が、そのコーディネイターに恋をしてたと言ったら」
「・・・・・・コーディネイターに、恋だと?」
「ええ、私は自分で利用していた少年、キラ・ヤマトを好きになってたのよ。最初は認められなかった。必死に否定してた。でも、彼が私を拒否して、そして私の前から永遠にいなくなって、ようやく私は自分を受け入れることが出来たわ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「私は、彼が好きよ。今でもね。彼が死んでからようやくその事を受け入れるなんて、自分でも馬鹿だと思うけど」

自嘲気味に笑い、そしてフレイは顔をあげ、アズラエルを見た。

「ブルーコスモスのあなたに言っても無駄かもしれないけど、ナチュラルとコーディネイターは分かり合えるわ。だって、私がキラを好きになれたんだもの。他の人にできないはずが無い。排斥することしか考えないあなた達に未来は無いわ!」
「小娘が知った風な口をっ!」
「・・・・・・あなたはラクスに、AAに勝てはしないわ」

フレイはアズラエルから顔を背けると、自分を写すカメラを見た。

「皆さん、もし私の話を少しでも理解してくれたなら、AAに、ラクスに手を貸してあげてください。あの人たちならきっと未来を切り開いてっ・・・・・・・」

フレイは最後まで言う事は出来なかった。舞台に一発の銃声が響き渡り、フレイの胸から血飛沫が上がる。
そしてフレイは、多くの人が見ている前で舞台に倒れ伏した。

219 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/12(火) 23:49
痔フレヨカターヨ!

220 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/12(火) 23:50
痔フレヨカターヨ!

221 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/12(火) 23:51
二重スンマソ!

222 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/13(水) 00:03
>>218
乙です!
フレイ様美しすぎる……! 歌姫を認めているのも泣ける
でも… このままじゃ悲しすぎだ 奇跡よ起これー!

223 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/13(水) 01:35
 神よ!! 救いを!!

224 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/13(水) 01:36
>>219-221
thx!!

225 名前: 熱1/4 投稿日: 2003/08/13(水) 13:47
今日も投下。さして反応も無いのが恐いところだが…
やはりこの時期に鬱話はキツイか…?



胸が苦しくなって席を立とうとすると、食堂のドアが開いた。
入って着た人物にフレイはたじろぐ。

キラ。

一瞬、昨日の情事の断片が頭を掠めて、フレイは顔が熱くなるのを感じた。
それはキラも同じで、うつむきながらこちらへ歩いてくる。

隣に座っても、キラは喋らない。
重い沈黙が流れた。

「…みんな、は」

やっとキラが口をひらく。

「知らない。配属違うもの…カズイは夜勤だろうし。」

「そう…」

サイのことは言いたく無かった。

「キラ…」
「えっ?」
「食べないの?」
「え、ああ…そうだね」
席を立とうとしたキラの手を掴む。

「じゃあ、これ食べて。私、お腹空いてないし、勿体ないから」

そう言ってトレーを差し出すと、キラは席についた。

「うん、でも」
「インゲンは私が食べてあげるから。キラ苦手でしょ?」

キラは苦い野菜が嫌いだった。
フレイはそんなことも知っている。


同じトレーから二人して黙々と食べる。
コーディネーターとこんなふうに食べるなんてすごく恐いとフレイは思っていた。
でも今は気にならない。

慣れてしまっただけかもしれないが。

昨日のキラの行為を、咎めるべきではないとフレイは思った。仕方ない。
このくらい、なんでもない。私は大丈夫だ。

けれどキラはフレイの降ろした髪の隙間に見える痕を見つけて、
急いで目を反らした。

226 名前: 熱2/4 投稿日: 2003/08/13(水) 13:54
「フレイ…あのさ」

そう言いかけた時、唇の端に柔らかいものが触れた。

「ソースがついてたわ?」

フレイは微笑む。
しかしそれは疲労した弱々しい笑みで、ますますキラの胸を締め付けた。
無理をしてる笑顔。
こんなものがみたいわけじゃない。
ただ自分を愛してほしいだけなのに。

その思いが、衝動となってキラを襲い、フレイを毎夜苦しめているのだ。
でもキラは止められない。手放せるはずがない。

だからキラは離れようとする唇を追い求め、深く重ねた。
フレイの口は彼の嫌う苦さがあったのに、
それでも途方もなく甘く、キラはまたそれに溺れたいと願う。


部屋には同じ時間に戻れた。
髪をかきあげピンでとめると白いうなじが見えて、気付けばまた後ろから抱き締めていた。

「焦らないで、キラ」
フレイの声が聞こえる。
「汗かいたもの、シャワーしたいの」

するとキラは頷いて、フレレイの手を引きバスルームに入った。

227 名前: 熱3/4 投稿日: 2003/08/13(水) 14:01
ひどく、疲れていた。

満たされないままそれを追い続けるのはすごくつかれる。
空虚な行動をひた繰り返す、砂漠での日々。
それはふたりを追い詰め、そして消耗させていった。

体を折り畳んでフレイは泣いていた。
悲しいし苦しい。体には性行為の余韻。キラは俯いたままだった。

フレイにはわかっていた。このままじゃだめだと。
いわないと、ごめんなさいと…ちょってびっくりしただけだと笑って。

でもそれができない。恐かった。
そして悲しい。もう…嫌だ。

「フレイ…」

フレイが躊躇ったから、キラが口を開くのが先になってしまう。

「僕、おかしいかな」
「?」
「不安なんだ。君が僕のものなんて、信じられなくて。
こんな…でも君がいやなら、もうしないよ、しないから、お願いだフレイ」

僕を一人にしないで。
キラは孤独を恐れている。フレイと同じように。
フレイはそれに涙を止めた。

「キラ…違うの」

フレイは涙するキラにそっと触れた。
彼が弱くあるとき、フレイはいつだって驚く程優しくなれた。

「ごめんなさい……あなたを不安にさせて。
私はずっとここにいるのよ、変わらずに…ずっと。
そしてあなたを思うわ」

不安だから、いつもあんなふうに抱くのだろうか?
なんて馬鹿なコーディネーター。
フレイは嘲笑を慈愛の微笑みにかえてキラの涙を吸った。

キラは驚いたようにそれを見ると、こみあげてきたものにフレイを掻き寄せた。
これはぼろぼろだ。
フレイは思った。
だから私が守ってあげないといけない。


明日の戦場に立つ為にも。

228 名前: 熱4/4 投稿日: 2003/08/13(水) 14:05
もう…どうしたらいいかなんてもう解らない。

フレイを部屋に残したままストライクの中にまた篭った。

ここで眠るといつも悪い夢を見る。だけどキラはここ以外に居場所を知らない。

ついでにプログラムを見直そう。こういったものはしすぎていけないということは無い。忘れたかった。自分を襲う孤独を。

明日か、明後日か。ごく近い内にあの人と戦うのだろう。そして殺さなければならない。または…殺されるか。
それは許され無かった。自分が死ねば終わりなのだ。すべて。

(フレイ…)

フレイを守りたい。それは見返りを求めぬ慈悲でない。愛してくれるだろうか?

打算的な思いを振り切るように、キラはキーボードを叩いた。

229 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/13(水) 14:08
こんな感じで…なんか結構書き溜めてるもんで。
スレうめちゃってスンマソ。

次回は虎と戦闘かな。また夜くらいに投下しまつ。

230 名前: 男たちの挽歌 投稿日: 2003/08/13(水) 20:24
たまにはギャグを書こう。フレイじゃないけど


その夜、2人の男が肩を並べて屋台で安酒を酌み交わしていた。
一人はオーブのキサカ一佐。
もう一人はダコスタ君である。
何故彼らはこんな所で酒なんか飲んでいるのだろうか。

「ふうぅぅぅぅ、ダコスタ君、私はねえ、毎日毎日胃が痛いよ」
「キサカ一佐・・・・・・」
「ウズミ様にカガリ様を任されて以来、気の休まる時が無いからなあ。いつも無茶してくれるし」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「まあ、信頼されてるのは嬉しいんだがね。こう苦労ばかりだと体がもたんよ」

溜息をつくキサカの姿に、ダコスタは目尻に涙さえ溜めて頷いていた。

「分かりますよ。私だってバルトフェルド隊長の趣味のせいで毎日振りまわされて、やっと解放されたと思ったら今度は更にとんでもない人の部下になって・・・・・・」
「ダ、ダコスタ君」
「ラクス様って、笑顔で平然とキツイ台詞言ったり、さらりと無茶苦茶な命令出すんですよ。そりゃあんたは命令出すだけだから良いでしょうけどね。実行するのはこっちなんですよ」

ダコスタは空になったコップを置くと、はんぺんを口に運んだ。
キサカはそんなダコスタをじっと見ていたが、フッと笑顔を作ると、ダコスタのコップに酒を注いだ。

「お互い、苦労が多いな」
「キサカ一佐」
「良い胃薬を知ってるんだが、どうだね?」
「・・・・・・・貰いますよ」

ダコスタとキサカの間に友情が芽生えていた。それを見ていた屋台の親父こと、サイが帯状の涙を流している。

「うう、ええ話や」
「サイ君、キャラが違うぞ」
「今日くらい良いじゃないですか。俺だってAAじゃ苦労苦労で」
「君もか、サイ君」
「ええ、キラは面倒ごとを全部俺に押し付けてくるし、ミリィはトール忘れて男に転ぶし、カズィは艦を降りるし、もう話相手さえいないんですよ」
「そ、それはそれで辛いな」
「全く、主役どもは我々をなんだと思ってるのか。我々脇を固めるキャラがいてこそ主役も引き立つというのに」
「目の前でラブラブやって、こっちは平然と無視ですからね」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

男たちは据わった目を向け合った。そして同時に立ちあがる。

「殺るか」
「ええ、殺りましょう」
「正義は我にあり、です」

こうして男たちは夜の街に消えていった。その後、何があったのかは定かではない。
ただ、翌朝に口から泡吹いてゴミ袋から頭だけ出してるキラと、何故か真っ白に燃え尽きているアスランが発見されたということだけ書いておこう。

231 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/13(水) 20:35
>>230
ワロタw

232 名前: ヘリオポリスの学園祭 投稿日: 2003/08/13(水) 21:25
サイ、はまり過ぎw

233 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/13(水) 22:05
>>225-228
乙です。
キラとフレイのいびつな関係、読んでて切なくなります。
この二人の心からの笑顔が見たいなあ。
続きに超期待です。

234 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/13(水) 22:38
>>熱さん
。・゚・(つД`)・゚・。泣けます。

 男たちの挽歌もヨカターヨ!

235 名前: フレイの日常 投稿日: 2003/08/14(木) 00:04
フレイは朝起きるとまず鏡を見るのが習慣になっている。
そして丁寧に髪を梳かすと、一杯のお茶を飲む。
一度、父が普段飲んでいるコーヒーを失敬して試してみたのだが、どうもフレイには合わなかったようだ。
通っているカレッジは私服なので、何を着ていくのかは悩みの種だ。
悩んでいるうちに遅刻してしまったのも一度や二度ではない。
以前はエレカを使って通学していたのだが、ウォーキングが美容と健康に良いと聞いてから徒歩通学にした。
周りからは少し呆れられているが、フレイは当分続けるつもりである。
地球から上がってきて、ようやくコロニーという環境にも慣れてきたが、基本的に青空が無いというのが嫌いだった。
顔を上げると別の街が見えると分かった時、フレイは危うく倒れそうになったものだ。
それに、朝の空気の爽やかさというものにも欠けている気がする。
しかし、今は戦時中であり、そんな不満は贅沢以外の何物でもない。
しかしフレイにも、通学途中で挨拶を交わすクラスメイトにも、今が戦時中であるという認識は乏しい。
ここは、あまりにも平和過ぎた。
フレイがそれを僅かながらでも認識するのは、父ジョージが今まで以上に家を留守勝ちにしている事だ。
仕方の無い事だと分かっていても、やはり寂しい。
しかし、それを表に出さないようにしているのは、父に余計な心配をかけたくないと言う思いがあるからだった。
だから、フレイは時として、「お高く止まっている」と言う陰口を叩かれる事もあった。
しかしフレイはそれを無視していた。
フレイはフレイなりに、自分のやっている事に確信があったからだ。
例え、それが多少間違ったものであったとしても。

236 名前: 熱1/3 投稿日: 2003/08/14(木) 00:37
>>233>>234
感想ありがとん。がんばりまつ。予告したからちょっと投下。


話はこれより数時間前に遡る……

細りゆく肉体と心を持て余しながらフレイは、サイのことをまた考えた。
彼はフレイにとって庇護を求める対象であり、顔を見て何が変わるわけでもないのに、でも縋りたいと思った。

処罰室に食事を持っていくのは交代で二名。
フレイにその当番はまわってこなかった。
そして今日の当番はカズイと、キラだった。

二人のあとを距離を持って追う。
その扉の開く一瞬に見える筈もないのに、気付けば目を懲らしていた。
するとキラの目がこちらを向いた気がした。
心臓を捕まれたようにフレイは驚き、身を翻し持ち場に戻った。

237 名前: 熱2/3 投稿日: 2003/08/14(木) 00:39
(フレイ…?)

たぶん、いや絶対そうだ。抜群の視力が恨めしい。気付きたくなかった…こんなときに。
胸の内に嫉妬が猛る。なんで今更。サイに何の用だろう?
君は僕のものだと、そう言ったのに…

ぐるぐると思考が巡って、キラは暗い部屋に一人佇む。
すると通信と同時に見慣れたシルエットが移った。

「なぁに、暗いままで?」

そう言ってフレイは電気をつける。

「あ…うん」

キラはもぞもぞと身を起こした。何気ないフレイを憎らしく思う。
だからつい口から出た。

「さっきは、どうしたの?」
「え?」
「サイのところ…来てたでしょ」

238 名前: 熱3/3 投稿日: 2003/08/14(木) 00:50
キラの掠れた問いに、フレイはああ、と声をあげた。
やっぱり気付かれていた。

キラの横に座ると、その肩に頭を置いた。
なんだか一人はいやだった。

「サイ、馬鹿よね?」
「えっ」

「あなたに…叶う筈なんかないのに…馬鹿なんだから」

ほんとうに馬鹿だ。
サイは優しくて、ナチュラルなのに。
この孤独なコーディネーターに叶うわけはない。
そんなわけ…ないのに。だから私はいまここにいるのに。


フレイはその言葉とともに溜息をついた。するとキラの表情がみるみる暗くなる。

「キラ?どうしたの」
顔を覗き込もうとするとキラはふいと反らす。
なにかいけないことをしてしまったのだろうか。
そう感じると、フレイはキラに縋り付いていた。

いつものように甘い言葉と口づけを与える。
これで落ち着くはずだった。

また彼はフレイを抱いて、そしてまたいつもどおり。

ベットにおしたおすと、しかしキキラは抗った。

「…やめろよッ」

拒絶をあらわにすると、
キラは部屋を飛び出した。フレイが自分の名を呼ぶのが聞こえる。

キラはフフレイを独占したと、そう思っていた。

体を重ねるたび不安になったが、確かな温もりに溺れ、
またフレイを求めた。

キラはフレイを知っているつもりだった…誰よりも。そう自惚れていた。
だけどそれが何だ?フレイは今もサイが好きなんだ。
じゃあ何故自自分に抱かれたんだろう?わからない。
同情だろうか、それとも。

絶望の中でもキラはなお願っていた。
愛して欲しい。僕を。そのためにどうしたらいい?

フレイに愛されたい。フレイを…失いたくない。
たとえそれが偽りだとしても、いつか本当に愛してくれるだろうか?

239 名前: フレイの日常 投稿日: 2003/08/14(木) 06:28
フレイが専攻しているのは工業デザインである。
もともと、家具や室内装飾のデザイナーになるのが夢だった。
成績は…まぁ中の上と言った所だ。
今のところ、理論ばかりで実技が少ないのがフレイには不満だったのだが、これからの為、と言い聞かせている。
ジョージが不在勝ちなので、ヘリオポリスに借りたアパートメントにはフレイ独りでいる事が多い。
寄宿舎に入った方が良くないかとジョージは勧めたが、寄宿舎の雰囲気には馴染めそうも無いのでフレイは断った。
アパートメントでは猫を一匹、飼っている。
寂しいだろうから、とここに移ってきた時にジョージが連れてきたのだ。
美しい毛並みとしなやかな身のこなしのショートヘアで、リリー、と呼んでフレイは可愛がっていた。
雇っているお手伝いさんは夕食を作ると帰ってしまうので、寝るときは独りだ。
リリーがベッドにもぐりこんで来て、一緒に寝る時もある。
誰だったか、リリーを見て、フレイみたいね、と言った人がいた。
確かに、フレイの美しさは猫科の動物をイメージさせる。
もっとも、フレイ自身はあまりそういう意識は無い。
そうかな、と思っただけだ。
どこか、周りが抱くイメージとは違っているのが、フレイだった。

240 名前: 熱1/5 投稿日: 2003/08/14(木) 15:51
砂漠での戦いにも少し慣れたが、それでも”虎”は強敵だった。

「もう退いてください」

キラは必死に無線で呼び掛ける。
しかし虎は聞き入れなかった。

(フェイズシフトが…落ちる!)

撤退を呼び掛けていたキラだが、
装甲保持が危険域に入る警告音に息を呑む。
このままでは、やられる!

そう思った瞬間、急速に視界がクリアになり、
聴覚が研ぎ澄まされる。アラームと爆音と汗のしたり落ちる音すべてが別々に認識され、
敵機の砂を踏む音、ギミックの軋みそれぞれまで聞こえそうだった。

アサルトナイフを射出し、次の瞬間はラゴゥの背に突き立てていた。

爆音。

(殺した…)

震えとともに涙が溢れ、キラは叫んだ。


「キラ…」

ストライクが帰投したというアナナウンスを聞いて、
フレイは駆け足にブリッジに向かった。

(きっと泣いてるわ…)

慰めてあげないといけない。拒絶されたのに?
しかしそれでも今、キラにはフレイが必要なはずだ。
フレイがそうであるように。

整備クルーが騒々しく動き回るその中で、キラを探す。

「坊主なら、もうロッカーに…」

何度目かの呼び掛けにやっと応じてくれた
整備士に礼もそこそこにフレイは駆け出した。

「キラッ!」

戸を開けるなり叫ぶと、まだスーツのまま座っているキラがいた。
「フレイ…なんで」

驚いたように顔を上げた時、視線が交差するが、
すぐにキラはそれを反らす。

フレイはかまわずキラの前に立った。

241 名前: 熱2/5 投稿日: 2003/08/14(木) 15:59
「大丈夫…?」

キラは俯いてしまって、その表情は読めなかったが多分泣き顔なのだと思った。

「………」
「来ちゃいけなかった?私がいると、キラは迷惑かしら…今」

それは少し当たっていた。
こんな余裕の無い状況で見たくない。
またフレイに縋ってしまうからだ。

愛されてはいないのに…
それすら無視して、彼女に溺れ、占有したくなる暗い願望。
それはキラな心が弱れば弱るほど吹き出して来るのだ。

242 名前: 熱3/5 投稿日: 2003/08/14(木) 16:01
「何もいわないのね…私…」

フレイは背を向けて、ぽつりと呟いた。

「あなたが、泣いてると思ったから来たの」
でもいらなかったわね、
フレイはつまらなそうにそう言い残して部屋を出ようとした。
しかしその腕を捕まれる。

そして抱き締められた。

「キラ?」

キラは息苦しかった。だからそれでも自分を律しようとする気持ちが、
フレイの甘い言葉によってぐらりと揺らいだ。
いけない、いけないと思いながら、
縋る他に立っている術をキラは知らない。

震える唇をフレイの髪に押し付けると、
腕の中でフレイがこちらを向く。うすく開かれた唇。

キラは呼吸を求めるように、それを吸った。

243 名前: 熱4/5 投稿日: 2003/08/14(木) 16:03
「んっ…、フレイ…フレイ…フレイッ!」

一度重ねてしまえば、必死に押さえた孤独が溢れ、キラは弱い心に支配されてしまう。
またたえずフレイの唇を求めた。

「キラ…」

フレイの声がキラの心を溶かす。
頭の中でたえず警告が聞こえた。

いけない。いけないと。

それでもキラはその唇をもとめ、懐かしい膨らみに手を添えた。

244 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/14(木) 16:04
次はいよいよエロだw
今まで散々カットしてきたからなー。

245 名前: 熱5/5 投稿日: 2003/08/14(木) 16:06
「キラ…?」

フレイはそろそろとキラの髪を撫でた。胸に感じるキラの指が求めてるものを知りながらに。

「うんっ…」

キラの唇がまた重なる。フレイは薄目をあけそれを見た。
キラの手が慣れた仕種で軍服のボタンを外しきり、下着を持ち上げる。

「キ…駄目よここじゃ…」

悪戯をした子供のようにフレイは囁き声で告げた。

「キラってば」
「少しだけ…」

キラはそう呟くとフレイの胸に顔を埋めた。
「……ぃゃ」

フレイの小さ過ぎる声は虚空へ消え、フレイは目を閉じる。
襲いくる甘美な疼きと、堪え難い光景を見ない為に。

246 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/15(金) 01:27
>>240-245
乙フレー
第2クールのキラフレ補完(・∀・)イイ!!
他所では評判悪いみたいだけど漏れ的には第2クールは一番ヨカタヨ

247 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/15(金) 14:12
 全く吉良、おまいも懲りないヤシだなあ。 ( ´∀`)σ)Д`;)

でも同情の余地がないではないよね、とりあえず職人さん乙でした!!

248 名前: 熱の隙間の悪い夢1/3 投稿日: 2003/08/15(金) 17:17
感想ありがトン。懲りずに書いてきますw
お盆なのに雨でつフレイ様。
せめて鬱気分を紛らわすために花火でもみたいよ……




ロッカールームの中に男女の荒い息だけが響いた。
キラは殆ど無意識にフレイの太ももの隙間に手を延ばしていた。
つうとなぞれば、フレイの体がびくびくと跳ねる。

顔を見上げるとフレイは両目を堅く閉じていた。
キラはそれを悲しく思う。

指を差し込むとそこはもうとろけていた。
熱をもつ陰部をキラは弄ぶ。
するとフレイ反応する。しかし場所を気にしてか、唇を噛んでそれに耐える。

「ふっ……んんっ」
「誰も来ないよフレイ」

キラが囁くと、フレイは目を少しあけてキラを見た。

249 名前: 熱2/3 投稿日: 2003/08/15(金) 17:20
「キスして」

鼻がぶつかる距離でキラはそう囁く。
フレイは一瞬怯えたような目をしたが、そうっと唇を重ねた。

「んっ…」

キラが舌を押し出すとフレイは反応して小さな舌を持ち上げる。

咥内を激しく絡ませながらキラの指はたえずフレイの快感を呼び出す。
そしてキラはフレイの下着を引き下ろした。

「足、浮かせて」
「…っここで、するの?」
「フレイ…」

フレイへの答えの変わりに、キラはスーツをはだけた。
既に苦しいほどに張り詰めた自身を、
まるで出口のように思うフレイの濡れた秘部へと押し当てた。

250 名前: 熱3/3 投稿日: 2003/08/15(金) 17:27
「ひっく…」
「……フレ…イ」

そのまま片足を抱いて全てを埋めきると、キラは息をついた。

「動くよ」
「えっ…」

足は力を失い、フレイはキラに寄り掛かる恰好となっていた。
もうくたくただった。
キラだってその筈なのに。何故そこまでして?

「つあうっ!!」

激しく突き上げられてフレイの思考は消し飛んだ。
思わず大きな声を出したのが恥ずかしくて口を押さえる。

「フレイ、…き…だ…よ」

キラは小さく呟いた。

好きだよ。君に縋るのは、もうこれで最後にするから。君を傷付けるのはもうやめるから。
もし僕という存在が君を最も傷付けるのだとしたら……
僕は多分迷うけど、その時僕は一人ど立ってみせるよ。
君があるべき所に帰れるように、もうすこし強くなる。答えを見つけてみる。

だから今だけ、あと少しだけでいい、僕だけの君でいて。

キラはフレイにキスをすると、再び熱の中に落ちていった。

251 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/15(金) 17:29
一人ど=一人で
ですた。

252 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/15(金) 19:34
>あと少しだけでいい、僕だけの君でいて。
泣きますた。

253 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/15(金) 22:54
>252さんの真似して部分引用。

>好きだよ。君に縋るのは、もうこれで最後にするから。君を傷付けるのはもうやめるから。
 漏れはここで泣きました。(/_;)

キラがんがれ! 否、がんがり過ぎないで!!

254 名前: 別離1/4 投稿日: 2003/08/15(金) 23:39
たくさん書き溜めてあったのだが、
一気に投下するのも気が引けるからといって小出し。

でも結局職人さんも盆休みか…。

感想ありがとう!
暗くて申し訳ないがお付き合い下さい。
でもエロは当分ないかもw
がんがり過ぎない程度に。
一段落ついたのでタイトルが変わりまつ。

熱の隙間〜

愛と別離


死者の魂を弔う火が空に上って行くのをキラは眺めた。フレイの傍らで。

(5…6…)

何人も死んだ。
けれど、自分は生き残った。フレイも。

(だから…)

こうするしかない。


紅海。眩しい太陽の下、許可が下りたつかの間に、キラはデッキへと出た。

激しく射す光に目が眩んで、キラは太陽に手を翳す。
またキラは一人きりだった。
抑え切れない孤独が沸くが、それでももうフレイに縋ることはしたくない。
感情のままにフレイを抱くたびに、落ちていく気がしたから。

255 名前: 別離2/4 投稿日: 2003/08/15(金) 23:43
「虎」の言葉がこだましていた。しかし迷えばそれは死に繋がる。だから迷うことは許されない筈だ。
でも虎の問い掛けはキラを揺さぶり、迷わせた。
それでも結果は変わらなかったが。

自責の念に混乱して、キラはうずくまった。
思わず滲む涙を、拳で拭うと、後ろから声がした。

カガリだ。

気まずさにキラはデッキを去ろうとしたが、腕を引き寄せられた。
「?!」
「よしよし…大丈夫だ…」

優しく抱き締められた時、はりつめた力がふっと抜けたように思えた。
キラは黙ってカガリに抱かれる。

抱き締められて安心するなんて、単純で子供みたいだと思う。

でもフレイを求めたのも同じ理由だったのだろう、恐らく。

256 名前: 別離3/4 投稿日: 2003/08/15(金) 23:50
どうしてそれだけに留められ無かったんだろう。
貪欲になってしまったんだろう。

その後、ふたりはデッキに座り話をした。

カガリは不思議な子だ。えらく直球だけど、その分裏表がない。
差別感情にも無縁なようだし、きっと恵まれた環境で育ったんだろう…。
そんな彼女が、少し羨ましかった。


フレイはキラを探し館内をうろついていた。
デッキまで来ると話し声がして、
それがキラと、あの少女のものだと判った時、苛立ちを覚えた。

フレイはカガリが嫌いだった。それは幸福そうだからだ。
およそ暗いものを知らないような無垢さと、誰にでも溶け込める気さくさが気に入らない。

それは以前フレイが持っていたもので、そして今は持たないもの。

カガリはどこかキラに似ている。性格とかではなく、顔かたちの話だ。
瞼を閉じる一瞬が驚くほどそっくりに見えたことがある。
明るいキラ。自由なキラ。そんなものはいらないのだ。

フレイに必要なのは盲目的なキラだ。
そしてまた、孤独に苦しむキラにはフレイが必要なのだ。


カガリははキラを変えてしまう気がした。


だから邪魔だ。

(私のキラに触らないで)


フレイは上着を脱ぐと、ふたりの前に踊り出た。

作り込んだ声で部屋に戻りましょうと囁き、胸を押し付ける。

少し露骨にしなを作れば、カガリは嫌悪を含んだ眼差しをこちらに向け、
デッキを去って行った。

257 名前: 別離4/4 投稿日: 2003/08/15(金) 23:59
それをすまなそうな顔でキラは見送る。
フレイは悔しくなって、キラの顔をこちらにむけさせた。

「何はなしてたの?」
「なんでも無いよ…」
キラはそう微笑むと、すぐに顔を反らした。
フレイは増々苛立ちを覚える。

「あの子と仲いいのね。」
「…え?」
「キラ、あの子の事可愛いって思ってるんでしょう」

意地悪な質問をする。唇を尖らせて拗ねたように問うフレイは天性のものなのか、
子悪魔的にかわいらしく、キラは思わずどぎまぎした。

「何言ってるんだよ…」

否定しない所を見ると遠からず、という事だろう。増々嫌な女だ。
化粧もせず女として苦しまなくても、人をひきつけられるのだから。

フレイはキラの腕を強く掴んだ。

「キラ、キスしよう」
そう言ってキラの目を見つめた。
キラは困惑の表情をうかべる。
突然どうしたのかと言いたそうだ。

「あの子より私が好きなら、キスして?」

さらりと恐いことを言ってのけるフレイに、キラはつい胸を高鳴らせた。

そしてゆっくり唇に触れる。
これは偽りのキスだ、キラは思う。


いくらキスを繰り返しても、抱き合って肌を重ねても、
手に入れられない気がしていた。

僕は君を好きだけど、君は僕を好きじゃないから。


軽い絶望を感じながらキラは胸の内で告げる。

(それでも…守るよ)

その時、警報が鳴り響いた。

258 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/16(土) 12:34
>>254-257
乙フレ
フレイ様目的が変わってますよ。・゚・(ノД`)・゚・。

259 名前: 別離1/3 投稿日: 2003/08/16(土) 18:32
ぐるぐると視界が回り、気が気で無い。
はっと気付くとベットの上だった。

キラがとても優しい。
それが意外な程、心地良かった。


艦が海上に出て暫くして、フレイは体調不良を訴えた。
食欲はないし、気力もない。加えて慣れない海の揺れに、酔った。
「平気?」

キラの顔がすぐそばにある。フレイは首を振った。

「平気じゃないわ…お腹痛いし」
「冷えると良くないんでしょ、毛布かける?」
「ヤダ、熱いもの」

フレイは今日は特に我が儘だった。こんな自分は久しぶりだ。
まるで父親に、サイに甘えたようにキラに甘えていた。

260 名前: 別離2/3 投稿日: 2003/08/17(日) 00:34
「気持ち悪い…」

何度目かにフレイは呟いた。

「タオル、かえようか」
「うーん」

キラが濡れタオルを持って立ち上がるのを眺めて、フレイは溜息をついた。
気持ち悪いし、腰は重い。それでもちゃんと月のものが来て安心はあったが。

(よかった…)

これを期に軍医に相談しようか。
トールとミリイはどうしてるのだろう。あの二人はそんな雰囲気じゃないが、男と女のやる事なんてひとつだ。

少し醒めた感情にフレイはわれながら驚く。
でもあの砂漠を最後に、ふたりは別のベットで寝ていた。
キラはフレイを抱かない。

261 名前: 3/3 投稿日: 2003/08/17(日) 00:39
辛いことが減って、良かったと楽観視できなかった。キラの心が離れていってしまう気がした。

そのかわりキラは、フレイと話をするようになった。
おはようとかおやすみとか、そんな些細な事を言うようになった。そして今のように、優しい。

キラは少し変わった。それは許せないことな筈なのに、すごく心地良かった。


「ミリアリアに来てもらう?」

キラは心配そうに声をかける。僕は男だからわからないし、と付け足して。

「いい」

ミリイ達とは顔をあわせたくない。この部屋には二人だけで充分だ。
他はなにもいらない。
フレイは本心からそう思っていた。

「キラさえ傍にいてくれればいいの」

弱く呟いて手を重ねると、キラは顔をふいと反らした。

<続>

時間あいちまったスマソ。
>258氏感想thx.

262 名前: 私の思いが名無しを守るれ 投稿日: 2003/08/17(日) 12:40
>別離さん
 いつもながら泣かせてくれますねえ。(:_;)

263 名前: フレイの日常 投稿日: 2003/08/17(日) 17:50
フレイの母は、フレイが3歳の誕生日を迎える前に亡くなった。
フレイを抱いている母…優しい笑顔―細かな輪郭までは判らない―を微かに覚えているだけだ。
若い母の写真はどこか儚げな、幸の薄さというものを感じさせる微笑を浮かべていた。
しかしフレイは、そんな母を美しいと思った。
透き通るような白い肌と艶のある髪は母から受け継いだものだ。
フレイは、それを大事にしたいと思った。
ジョージは、交通事故で亡くなったと言っていたが、それが嘘である事は、ジュニアスクールに入る歳にもなれば、分かってしまう。
ジョージは、娘の前で感情を押し殺して演技が出来るような男ではなかった。
基本的に、優しかったのだ。
母の命日に、フレイを連れて教会で祈りを捧げている時、その手には青水晶で作られた十字架が握られていた。
幼いフレイが欲しいと言うと、銀色の小さな十字架をくれた。フレイは青いものが欲しいと泣いたが、ジョージは渡さなかった。
フレイの前で、ジョージがこれほど頑なな態度を取ったのはこれが初めてで、そして、最後だった。
時折、夜遅く深刻な顔をしているジョージに気づいていたが、理由を聞いても、何でもないとはぐらかされるだけだろうし、
フレイにはそれ以上何ができるものでもなかった。
子は、親の愛が自分に向けられている事がはっきりしていれば、親の内奥の葛藤や苦悩などに気づく事は無いし、必要も無い。
ましてやフレイは、まだ幼かった。

264 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/18(月) 00:22
>263
 こういう教会描写っていいですよね。
だってガンダムワールドの登場人物ってさ、

基 本 的 に 信 教 不 明 な ん だ も ん w

 いいもん見せてもらいました。

265 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/18(月) 01:59
>青い十字架

これってまさかブルコスの…(((((((゚Д゚;))))))ガクガクブルブル

お父さん、娘はブルコスにしなかったわけだが、もし今の状況を予見して
いたとしたらスゴい人だったのかもw

266 名前: 264 投稿日: 2003/08/18(月) 15:11
>これってまさかブルコスの…

 うっ、俺の読みって浅いなあ。

267 名前: フレイの日常 投稿日: 2003/08/18(月) 18:47
フレイがコーディネーターを意識したのは戦争が始まってからの事だ。
それまで、フレイはそんな事には興味も無かったし、気にも止めていなかった。
ただ、戦争が始まる直前から毎日のように報道されたデモ、集団リンチ、殺人のニュースを、気持ち悪い、と思った。
人を傷つける行為をフレイは本能的に嫌った。
優しさ、と言うより臆病さの為かも知れなかった。
確信を持って人を傷つけるのは、愛するのと同じようなエネルギーを使うものだ。
フレイには、そんな愛憎の感情に耐えられるような強さが感じられなかった。
触れれば壊れるようなガラスで造られた精神を瑞々しい肉体が覆っている…そんな印象だった。
そのくせ、フレイは寂しがり屋で、一人でいるのを嫌がった。
物心ついた時には母は亡く、父も不在勝ちで独りの時間が長かった事が、フレイに人との交わりを求めさせたのかもしれない。
人に見られる事が好きというのは本能であり、自分をよく見せる事が出来る、というのは才能であり、
フレイにはそれが両方とも備わっていた。
だから、フレイはどこでも好かれた。
しかし、フレイは自分がアイドル的立場にいる事には、どこかありがた迷惑に感じていた。
好かれている事自体は嬉しいのだが、それ以上のものは特に欲してはいなかったからだ。
そういう意味では、フレイはごく普通の少女だった。

268 名前: 週末に向って 投稿日: 2003/08/18(月) 20:27
218の続き


フレイが撃たれる瞬間を見たAAのクルーたちは誰もが言葉を失っていた。
キラとミリィ、サイを除けばフレイと付き合いのあった者はいないが、それでも同じ艦で戦った仲間には違いない。
その少女が目の前で殺されたのだ。動揺しない方がおかしかった。
むしろこの事態を冷静に受け止めていたのはクサナギやエターナルのクルーたちの方だった。カガリが驚きを交えた声で誰にとも無く問いかける。

「どうして、フレイがラクスのことを知ってるんだ。何でラクスを助けろなんて?」
「恐らく、私の演説を聞いているのでしょう。フレイさんはザフトに囚われていましたから」

カガリにラクスが答えた。その顔には困惑と悲しみが浮かんでいる。
だが、それ以上に深い悲しみを背負っている男たちが居る。サイとキラだ。サイは自分のコンソールに体を預けて涙を流し、キラは床に膝を付いて拳を床に叩きつけている。

「あの時、あの時僕がポッドを収容できてれば、こんな事には!」
「キラ・・・・・・サイ・・・・・・・」

ミリィにかけられる言葉は無かった。恋人を失う悲しみを知っている彼女ではあるが、その辛さを生かせるほどには長生きしてる訳ではなかった。
2人の慟哭が艦橋に響き渡り、誰もそれを慰められないで居る。フラガがいれば言葉をかけられたかもしれないが、彼は未だに病室に居る。
だが、救いの手は誰もが予想しなかった所から差し伸べられた。

「泣くな、少年達っ!」

2人を一喝したのはバルトフェルドだった。誰もが驚いて彼に視線を集中させる中、淡々と言葉を紡いでゆく。

「少年、あの娘はなんと言っていた。もう戦わないでくれ。殺し合いなんか止めてくれ。そう言っていただろう。なら我々はどうすれば良い、何をすれば彼女の勇気に報いてやれる!?」

バルトフェルドの問い掛けに、キラもサイも答える事はできなかった。ただ瞳に理解の色を宿してはいる。それを確認したバルトフェルドは力強く頷いた。

「そうだ、我々に出来ることは戦争を終わらせることだ。それだけが彼女に報いてやれる唯一の手段だ。だから今は泣くな。悲しみを怒りに変えて立ち向かえ。俺のようにな」

最後にバルトフェルドはふっと寂しげな笑みを一瞬だけ閃かせた。それに気付いたキラはバルトフェルドもアイシャを失った事を思いだし、彼もこの苦しみに耐えて戦っているのだということを悟った。

「バルトフェルドさん、あなたは・・・・・・」

キラはそれ以上なにも言わなかった。袖で涙を拭い、すっくと立ちあがる。サイも少し遅れたが顔を上げた。

「分かりました、バルトフェルドさん」
「そうだ、それで良い。この戦いが終わったら、彼女の墓に胸を張って言ってやれ。俺達が戦争を終わらせたってな」

自分で立ち上がったキラに、これまでに無い強さを見たバルトフェルドは顔を綻ばせた。今のキラはバルトフェルドから見ても1人の男の顔になっていたのだ。誰の助けでもない、自分で答えを見つけて逆境から立ち上がる。それが出来たとき、人は本当の成長を見せるのだ。

だが、その時、連合艦隊のいる宙域を一条の閃光が埋め尽くした。それが何なのか、分かる者は誰もいなかった。

269 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/19(火) 11:10
>268
 寅さん(・∀・)イイ!
滅多に出てこないからなあ。

270 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/19(火) 11:38
木伽c

271 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/19(火) 11:39
がんがれ!

272 名前: 別離1/1 投稿日: 2003/08/19(火) 12:26
フレイがまるで、昔のように甘えた声を出す。それが愛しかった。だけど胸の奥のしこりはどんどんその質量を増す。
でもキラは耐えた。
そして願っていた。

孤独なフレイ。フレイがくれた優しさのかわりに、自分も優しさをあげたい。
そしていつか愛して欲しいと。

「なんか、ジュースみたいの飲みたい」

フレイがねだると、キラは微笑んだ。

「タオルももう温ーい」

今替えたばかりなのに。しょうがないな、とキラは溜息をつくが、実の所嬉しかった。

本当のフレイが見たいと思っていた。
今は少し、見せてくれているように思う

273 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/20(水) 02:00
ひさびさに覗いてみれば・・・たくさんの神々が降臨しとる!
一気に読破しますた。

・ヘリポリ学園祭お疲れさまですた。微笑ますい。
・遺された者の祷り・・・、すげー(・∀・)イイ!
・2クールの保管・・・・・、マジ凄過ぎ。
ひょっとしたら、今度9月1日に出版される小説よりできが良い可能性が・・・。<エロないだろうし・・・。

他の方々も乙です。
種の本編スルーして、こっちが真実の物語だと錯覚してしまいそうなくらい良かった。

・・・ちょと誉めすぎかい?

274 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/20(水) 02:55
>>273
>・・・ちょと誉めすぎかい?
うんにゃ。ここの住民はホントレベル高いと思うぞ。

275 名前: 別離1/4 投稿日: 2003/08/20(水) 03:58
しかし食堂でサイを見た時、そんな浮かれた思いは消沈した。

フレイはサイが好きなのに、ほんとうに求めているのはサイの筈なのに。
自分は代用品でしかないのかもしれないと思うとすごく惨めだった。


部屋に戻ると、待ちくたびれたという様子で顔を上げた。

「キラ、遅い」
「ごめん…はい、飲物」
「ありがと」

すこし吸って、フレイは眉をひそめる。

「どうしたの?」
「林檎味がよかった」

今更そんな我が儘を言う。

「林檎なんて無いよ」
「あったわよ。前、見た気がするもの。」

拗ねた顔のフレイに、キラはメニュー覧の記憶をたどる。

「それ、ゼリーじゃない?先週の…」

確かにあった。キラは思い出したことが嬉しくてフレイを見たが、睨み返された。

「キラの意地悪!優しくないわ」

つんとそっぽを向くフレイが可愛くて、キラの表情がつい綻んだ。

276 名前: 別離2/4 投稿日: 2003/08/20(水) 04:03
「総員!第一戦闘配備!」

警報にはじかれたようにキラは立ち上がる。
「フレイ、ごめん、いくよ!」
「あっ、キラ!」

フレイは叫んだひとみに、またいつもの暗い火が宿る。

「守ってね…あいつら皆、やっつけて」

胸が痛くなった。フレイはやはり昔のフレイではいられないのだ。
キラは頷くことができぬまま部屋をとびだした。

「寝れるなら寝ちゃったほうがいいよ、そのほうが…」

フレイに声をかけた所でサイ達に鉢合わせた。

(あっ…)

思わず顔を反らす。なにかいけないことを見られてしまったように。

「…頼むな」

しかしサイは絞るような声で、告げた。
うん、と返事をして、その後ろ姿を見送る。

(サイは強いな…)

自分には真似できない。フレイの気持ちを知って尚、彼女を繋ぎ止めようとする自分とは。
本当はサイに打ち明けるべきなのにそれは出来ない。したくない。

(僕は…本当に弱い)
キラはそんな思いを振り切るように、ブリッジへ駆けた。

277 名前: 別離3/4 投稿日: 2003/08/20(水) 04:14
海中での戦闘は困難を極めた。
先日のグーンもそうだが、ゾノという魚擂を思わせるMSのパワーに圧倒された。海中戦用にプログラムを調整したのはいいが、それでもなんとか勝てた、という状況だった。

AAにとって一応の危機は逃れたものの、砂漠で見たデュエルとバスター…二機のガンダムもこちらの後を追って来るのだろう。
そして…ブリッツとイージス…アスランもまた。

戦いたくない。
次に会う時は撃ち合う時だった…殺す気で。
戦いたくない。守りたいものは何なのか、キラは考える。
それは友人…そして、フレイ。
フレイもアスランもどちらも大事だ。

自分の大切なものだけ守れれば良いのに。
現実は彼に天秤しか与えない。
残酷な選択を迫られていた。
そして選べもしないまま、ここまで来てしまった。

278 名前: 別離4/4 投稿日: 2003/08/20(水) 04:23

「待って。キラ、全然寝て無いわ」

耐え切れないように身を起こしたキラの袖を、フレイは引いた。

「今日はもう寝ろと言われたでしょう?副長さんに怒らたばかりじゃない」

眉を寄せて、叱るような口調だった。それには様々な感情が交じり、フレイは自覚しないままに苛立った。

「でも…、ほっとけないよ。僕は大丈夫だし、ストライクも動けるし。」

「そういう問題じゃないわ」

まだだるそうな体で、フレイは立ち上がる。
「あの子が心配なのはわかるけど…どうせ夜は見つけられないって言ってたわ。それに、キラがいなかったらこの艦だって危ないじゃない!」

フレイの意見はもっともだが、キラは頷くことが出来ない。優しく、一本気なカガリ。彼女がどこかで救援を待っているに違いないのだ。

「ごめん。フレイ」

そう謝ると、制服に袖を通した。

「キラは私よりあの子が大事なんだ…」

ふと、小さく呟いた。フレイは一番に愛されないと不安になる、そういう所があった。
しかし自分の放った言葉にびっくりして唇を押さえる。

「何?」

キラは聞き取れなかったようで振り返る。だが、フレイは首を振るだけだった。


キラがいなくなって、フレイはまた寝転んだ。キラの匂いのするベッド。それが落ち着くと思ったのはいつからだろう?


何かが変わろうとしていた。
いや、もう既に変わってしまったかもしれなかった。

キラが…違う。
キラが自分と距離をとっているのは感じていた。

そしてそれを、追い駆けている自分自身にも。

279 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/20(水) 04:27
2の修正
×フレイは叫んだ
○叫んだフレイの

脳内変換よろ。

>>273
ありがとう!
小説の焼き直しという気もしないでもないけどね、これ。
自分なりの解釈で保管しまつ。

280 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/20(水) 04:59
作家さんいつも乙〜!俺もここのレベルは高いとオモ。

281 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/20(水) 06:55
>>279
  | 》ヽ,   
  |~^ヽ,^
  |∀`) <乙〜
  |⊂) 
  |/

282 名前: 愛と別離 投稿日: 2003/08/20(水) 14:37
(恐い…恐いよ、パパ)

キラはもうフレイがいらないのかもしれない。
フレイの望みを叶えてくれないのかもしれない。

もしそうなったら…キラが今いなくなったら、私はどうしたらいい?


フレイは震えを覚えて、身を縮こまらせた。

それで全て終わってしまう。

恐ろしい認識だった。

キラを失ってはならない…失いたくない。

その為にどうすればいい?
もう全て与えた筈だ。欲しいというから、フレイは抱かれもしたのに。

これ以上、何を与えればいい?あのカガリという子は、キラに何を与えたのか。

追い詰められる恐怖と、孤独感があいまって叫びだしそうだった。
キラは私に、何を求めるんだろう?
フレイには、判らなかった。

<続く>

書き溜めた分は全部投下しますた。お付き合い頂きありがとう。
感想くれた人にも感謝します。
これからも続くんでよろー。

283 名前: 終末に向って 投稿日: 2003/08/20(水) 21:29
268の続き

ザフトの最終兵器、ジェネシスは連合艦隊の半数を焼き払ってしまった。生き残ったのは未だに集結を終えていなかった艦隊であり、それらも突然の事態に混乱し切っている。
ジェネシスの余波を受けたドミニオンも大破しており、戦闘行動どころか航行さえ危ぶまれる状態となっている。

「姿勢を保て、消火を最優先だ。弾薬庫の誘爆だけはなんとしてでも阻止しろ!」

ナタルの指示が矢継ぎ早に飛ぶが、その指示も焼け石に水であった。ドミニオンの最後は刻一刻と迫っていたのである。
そして、遂にナタルは総員退艦を決意した。

「総員退艦しろ、この艦はもう持たない。近くの艦を呼び寄せろ!」
「護衛艦サンフランシスコが近いです。今連絡を取ります!」

オペレーターが通信を交し、程なくして受け入れ要請受諾を取りつける。ナタルは頷くと総員にシャトルとポッドでの脱出を指示した。
そして、ナタルは医務室に通信を繋ぐ。

「艦長だ。軍医、負傷者は動かせるか?」
「なんとか大丈夫だと思います。シャトルで移送します」
「ああ、最優先で頼む」

慌しく飛び出して行くオペレーター達を見送ったナタルは、悠々と出て行こうとするアズラエルを呼び止めた。

「待っていただこうか、アズラエル」
「はい?」

アズラエルがナタルの振り返り、そして体を硬直させた。アズラエルの視界には、自分に銃口を向けるナタルの姿があった。

「な、なんのつもりですか、艦長。冗談にしてはいささか・・・・・・」
「冗談ではないさ」

ゆっくりとアズラエルに近づいて行く。その顔には明確な殺意と怒りがあった。

「フレイ・アルスターを撃ったことの報い、受けてもらおうか」
「・・・・・・おやおや、そういえば貴方もアークエンジェルのクルーでしたねえ。仲間同士の友情という訳ですか」

肩を竦めるアズラエルに、ナタルは淡々と告げた。

「ムルタ・アズラエル氏は沈むゆく艦から脱出に失敗、戦死したと報告しておこう」
「ほう、思っていたよりずっと悪知恵が働くんですね」

アズラエルは感心してナタルを誉めた。まるで銃口など見えていないかのような態度にナタルは苛立ちを見せる。
ナタルはアズラエルに向けて銃を撃ち放った。これでアズラエルは死んだはずだった。少なくともナタルの頭の中では。
だが、ナタルの視線の先にはすでにアズラエルの姿は無く、そして一発の銃声が響き渡った。


アズラエルは倒れたナタルを見やり、皮肉な笑みを作るとその場から立ち去っていった。

「やれやれ、仕方ありませんねえ。渡し自ら頑張るとしますか」

いつもの皮肉さの中に危険な何かを閃かせ、アズラエルはMSデッキへと歩いていった。そこには、自分を待つ最強の機体が眠っているのだ。

284 名前: 泣いてほしいわけじゃなかったんだ 投稿日: 2003/08/21(木) 23:21
早漏でサイト作って先にそっちのほうにのっけちまったんですが、結末投下させてつかぁさい。


あのとき、すっごく痛かったんだから!
しょうがないじゃないか、僕だって夢中だったんだから。
なによ、言い訳する気なの? だいたいあなた、見かけによらず馬鹿力なのよ、少しは手加減しなさいよね。肩が千切れるかと思ったわよ。
だって、止血しようと……それに、それを言うなら自分で撃ったくせに……。
それはそうだけど、それだってあなたが――――っと。
僕が何?
ううん、別になんでもないわ。
ふーん?
あ、そういえばあなた、なんで私に血なんか飲ませたの?


二人とも口の周りが血まみれで、まるで吸血鬼みたいだった。
急所をはずしたことも幸いしフレイは一命をとりとめ、アークエンジェルに運ばれた。
フレイはキラが死んだとずっと思っていて、キラはフレイが転属先で、AAにいたときよりはずっと安全な日々を送っていると思っていた。
そんな二人が今はどうだろう。こんな風に再会するなんて、思ってもみなかったのに。


ねぇキラ。
ん?
あのとき私、実はよく覚えてなくって自信ないんだけど、……ちゃんと言えてたかしら。
え、なんのこと?
だから、その……何よその顔。
何って、さあ。
キラ、あなた……本当はわかってるんじゃないのっ!?
ううん、さっぱりわからないよ。それで?
……むかつくからもう言ってやらないわ。
フレイ?
……。
フレイ、怒ったの? ごめん、やりすぎたかな……。
……ありがと。
えっ?
あと、ごめんなさい。ずっと、それが言いたくて……でも、言えなくって。あなたが帰ってきたら、ちゃんと……そう思ってて、でも。
……うん。
言えてよかったわ。なんか、すっきりした。ふふ。
でもそれ、あのとき言ってくれたのと違うよね?
……!
出来ればもう一回聞きたいんだけど、ダメ……かな。

 
今度は、血以外の味がした。

 

今までありがとっした。

285 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/23(土) 06:45
>>284
乙フレ〜
お疲れさんでした。
本編でも幸せになってもらいたいものです(;´Д⊂)

286 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/23(土) 13:30
>>284
乙です。
色々と泣かせて頂きました・゚・(´Д⊂ヽ・゚・

287 名前: フレイの日常 投稿日: 2003/08/23(土) 22:33
「血のバレンタイン」の報道は、プラントの農業ブロックで事故が起こったというものだった。
だが、その報道を見たときに父の表情で、フレイはそれは嘘だと分かった。
ただの事故ならば、ああも深刻な反応は見せないだろう。
何か、決定的な事が起こってしまったのだ。
そして、フレイは自分の身の上にも何かが降りかかるのではないかと言う不安。
少なくとも、父が政治の世界にいる限り、無関係という事はあり得ないのだ。
オーブは表向きは平穏なままだったが、日ごとに薄暗い影のようなものが全体を覆ってくるような感覚が隠しようが無かった。
それは、戦争の匂い。
プラントが地球連合に宣戦布告した日を、フレイは忘れないだろう。
オーブの街頭テレビは終日そのニュースを報じていて、正直なところフレイは少々うんざりしていた。
オーブがすぐさまこの戦争に介入しない、中立を宣言したニュースも、聞き流していた。
家は、静かだった。本当にこの空の上で戦争が起こったのだろうか、信じろという方が無理なほど、静かだった。
今日は、父の帰りは遅くなるだろう。いや、今日だけではない、これから、戦争が終わるまで、ずっと。
それがフレイに実感となって押し寄せてきた。もしかしたら、帰ってこないかもしれない。怯えだった。
フレイがシャワーを浴びていると、玄関の方で車の止まる音がした。玄関が開く音。どこか疲れた、たどたどしい足音。
初めて見る父だった。これほど疲れ切った顔、魂の抜けたような顔を、人がするものだとは、知らなかった。
一緒に夕食を食べられるのは、しばらく無理かもしれない、だから今日だけは早く帰ってきた、という言葉に、フレイは何故か涙がにじんだ。
それからしばらくして、突然ヘリオポリスに疎開する、と言われた時も、フレイは驚き悲しんだが、どこかで来るべき時が来たのかも知れないと思った。
最後に家を出るとき、フレイは家族の写真を二つ用意して、一つは置いていった。
そして、母が使っていたという部屋を丁寧に掃除して―これだけは人任せにしなかった―部屋に香水を撒いて、ドアを閉じた。
シャトルから見る蒼い地球の輪郭は宝石のように美しく、そっと指をかざして指輪にはめ込まれた宝石のように想像してみたりした。
外から見たヘリオポリスは無骨な印象だったが、この中に数百万の人が住んでいるという想像はフレイを楽しくさせた。
そして、これが戦争でなければ良いのに、と思った。

288 名前: 終末に向って 7 投稿日: 2003/08/24(日) 19:33
遂に激突した連合とザフト。ジェネシスで戦力を半減させた連合にザフトの主力艦隊が襲いかかる。遂に最後の戦いの幕が上がろうとしているのだ
この戦いを遠くから見ていたAAと草薙、エターナルは主要メンバーがAAに集まって今後の行動を考えていた。

「それで、俺達はどうするね。連合につくのか、ザフトにつくのか、双方が消耗し切るまで待つのか?」

フラガがラクスに問いかけた・一応この集団のリーダーはラクスだから当然なのだが、何も知らない人が見ればさぞかし奇妙な光景に映るだろう。
問われたラクスはしばし考えこんだ。そして、ゆっくりと口を開く。

「私達はヤキン・ドゥーエ要塞を攻略します」
「おいおい、俺達だけで要塞に手を出そうってのかい?」

フラガが呆れた様に肩を竦める。他の者も発言はしないが一様に戸惑いを見せている。

「今のヤキン要塞には最低限の守備隊しか残っていない筈です。勿論プラント本土にも。これを陥落させればプラント本土は丸裸となり、私達でも圧力をかけられるようになります」
「その上でプラントに残る同士達が決起し、ザラ議長を初めとする強硬派議員たちを拘束します」

ラクスの言葉に一堂は言葉を失った。いや、ある程度事情を知ってたらしいバルトフェルドは厳しい表情を崩さずに居る。

「私達は前から準備を進めていたのです。プラントを掌握後、地球連合でも戦争継続派を逮捕、拘束する手筈になっています」
「連合にもって、どうやってコンタクトを?」

マリュ−が不思議そうに問うた。

「オーブのマルキオ様やウズミ様を通じてですわ。全てが成功すれば月にある連合基地も艦隊も意味を無くします。ザフトも押さえる事は不可能ではないと思ってます」
「言うのは簡単だが、まずはヤキン要塞を落とさないといけない。これとて容易ではないぞ」

キサカの提示した問題にはバルトフェルドが答えた。

「その点は大丈夫だ。すでにフリーダムとジャスティスの強化パーツであるミーティアの準備が完了している。これの戦力ならどうにかなる筈だ」
「じゃあ、後は僕とアスランが上手くやるだけですね」

キラの言葉にアスランが頷いた。
話の細部を詰めて皆がそれぞれの艦に帰って行くなか、フラガがラクスを呼びとめた。

「ちょっと、良いかな?」
「はい、何でしょうか?」

ラクスがフラガの方を向く。作戦室にはマリュ−とフラガ、ラクスの3人しか残っていない。
フラガは厳しい顔でラクスに問いかけた。

「正直に答えて欲しいもんだな。お姫さんは、俺達がヤキン要塞攻略を終えるまでにザフトなり連合なりが押し寄せてくるとは考えなかったのか?」
「・・・・・・・・・勿論、考えていました。恐らく要塞攻略前に押し寄せて来るでしょう」
「それを承知で、こんな無茶をさせるのか?」

フラガの声には押し殺された怒りがあった。

「分かってるのか、余程上手く行かない限り、俺達は全滅するんだぞ?」
「・・・・・・分かっています。ですが、これは最初で最後のチャンスかもしれないのです。逃す訳にはいきません。多少の犠牲は覚悟の上です」
「そう、かい。分かったよ!」

フラガはキッとラクスを睨みつけると、それ以上何も言わずに作戦室を後にした。その後をマリュ−が追っていく。
残されたラクスは顔を伏せると、じっと床を見続けていた。


そして、遂にラクス達は動き出した。目指す攻撃目標はヤキン・ドゥーエ要塞である。

289 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/24(日) 20:56
作家さん乙!
あと6日か…長いな。とりあえず今日はラジ種だ。

290 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/24(日) 20:58
>泣いて〜
乙!

291 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/24(日) 22:29
>終末さん
 戦国時代あたりで、城を戦わずに奪えばまんまと取られた側の後詰めが取り返しに来ても
かなり篭城で粘れるが・・・未来の宇宙戦で、しかもミーティアやローエングリン
(陽電子"破城"砲だから使わない手はない)によりボロボロにされた要塞が
どれほどの助けになってくれるか…ヒヤヒヤものだな。

292 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/25(月) 09:24
フレイ様までクローンだと融和云々がw

293 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/25(月) 09:25
本スレへの誤爆スンマソ

294 名前: 48 投稿日: 2003/08/25(月) 15:44
部屋のドアを開け歩くとラクスに会う

・キラ…あの方は前にベサリウスの攻撃で…。
・うん、軍に志願したんだ。
・そうでしたの…。
・あの、ラクス。
・はい?
・改めて、ごめん。ぼくの勝手な行動で、きみにも迷惑をかけた…・キラ
・それだけ言いたかったんだ。ラクスに託されたフリーダムに乗る責任を、僕は

・もういいのです。あの方も…無事だったのですから。大切な…方なんでしょう
・…うん。
・…恋人…ですか
・いや、だけど僕にそんな資格ないんだ。フレイに…。
・キラ?
・あ、ごめん。それじゃ…
・あ……

295 名前: 48−2 投稿日: 2003/08/25(月) 15:47
・あれ、お嬢ちゃん、まだAAにいたのかい・フラガ少佐?
・少佐、はやめてくれよ…こんなもの着てても、俺もう軍属してないんだしさあ
・クスッごめんなさい。皆さんそう呼ばれるものですから
・キラみたいにムウさんでいいよ
・…
・そういえばキラは?・いえ…ご用があるようで、あちらに
・忙しいやつ。ちゃんと寝てるのかねえ?
エターナルに部屋をうつす暇もなしに、荷物は全部こっちだろ。
まあこの状況じゃしかたないが…
・しばらくは大丈夫でしょう。でもキラは…エターナルはお嫌いのようですわ。

296 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/25(月) 18:33
・ザフトですから…お辛いのでしょう
・だな。ここでのアスランも同じだしな。傷は浅くない。
みんな考えないふりをしてるだけさ。
・そうですね…ええ。厳しい途です
・あの子もな…まさかクルーゼの奴が
・…あの方は…
・!そうか以前、君を…
・それはいいのです。あの方…フレイさんは…?
・キラが錯乱するのも仕方ないんだよ…あいつの彼女だからさ
・……!
・女のためにっ、てやつか。わからんでもないけどな。
・でも、彼女はコーディネイターを…いつから…
・地球に降りてからだろうな。詳しいことは知らんがね。
・……

297 名前: 終末に向って 8 投稿日: 2003/08/25(月) 22:51
それは、突然に起こった。ヤキン・ドゥーエ要塞に超遠距離から2条の光が叩き付けられたのだ。
勿論2発程度で要塞が崩壊する訳も無いが、メインゲートがこれで完全に破壊されてしまった

「なんだ、何処からの砲撃だ!?」
「待ってください・・・・・・分かりました、大型艦3隻を確認。連合のAA級と未確認艦1、それと・・・・・・エターナルです!」
「エターナル、あの反逆者の艦か」

要塞司令官は怒りに顔を赤くした。要塞駐留のMS隊をボロボロにされたのはまだ記憶に新しい。

「迎撃だ。要塞砲の砲門を開け。MS隊と艦隊は直ちに出撃。奴等に身の程を教えてやれ!」

司令官の命令で駐留軍が出撃してくる。連合主力の迎撃にかなりの戦力を割かれたとはいえ、まだまだその戦力は多い。
だが、彼等の士気はいきなり挫かれる事になる。敵艦隊から高速で迫る2機の巨大MAを前に、迎撃に出たMS隊は大損害を受けたのである。
突入してきた2機のミーティアは味方の為に突破口を切り開いていた。キラはなんとか殺さない様努力はしようとしたのだが、ミーティアの攻撃は大味過ぎてそういう手加減は出来ない。もともとそういう事を考えていないアスランは一方的に敵を蹴散らしていた。

「キラ、こっちは押し切れそうだ。そっちはどうだ?」
「大丈夫だと思う。だけど、思ってたより多い!」

キラの言う通りだった。迎撃に出てきたジンとゲイツは当初の想定をかなり上回っている。
そして、キラとアスランで引き受けた敵以外は高速で突入してきたMS部隊の熱い歓迎を受けていた。

「ローエングリン第2射用意!」
「すぐには無理です!」
「MS8機、天頂方向より接近!」

AAの艦橋は蜂の巣を突ついたような喧騒に包まれている。なにしろ敵の数が多すぎるのだ。だが、これでもAAは持ち前の大火力で多くの敵を引きつけて奮戦していた。なんだかんだ言っても歴戦の艦なのである。
問題なのはエターナルとクサナギだった。エターナルは近接防御力が不足していたし、クサナギは致命的に実戦経験が不足している。数十機のMSに襲われるなどという事態に対処し切れていないのだ。
この穴を埋めるべきMS部隊も大苦戦していた。フラガは負傷しているからストライクの動きは精細を欠き、バスターは乱戦には向かない。アストレイはゲイツには分が悪かった。

「ええい、くそっ、突破できん!」
「おっさん、怪我してんだから無理すんなよ!」
「だからおっさんはやめろと言ってるだろ! 俺はまだ若いんだ!」

かなりヤバイ状況なのに軽口だけは忘れない2人。それを通信で聞いていたマリュ−は青筋立てて2人を怒鳴りつけた。

「ムウ、ディアッカ、こんな時に何ふざけてる訳!? 口動かす暇があったら1機でも堕としなさい!!」

通信機が壊れそうなマリュ−の怒声にフラガとディアッカは首を竦めてしまった。そして恐る恐る謝り出した。

「い、いや、やっぱ気分を少しでも軽くしようかと思って」
「軽口でも叩かないとやってられないんだよ」

まあ、軽口叩きながらでも確実に敵を落としているんだから問題は無いのだろう。だが、マリュ−は額を押さえて頭痛を堪えていた。


戦闘そのものはミーティア2機を擁するAA側がなんとか押し切る形で推移しようとしていた。やはりこの超兵器の存在は大きい。
だが、その活躍は余りにも凄すぎた。ヤキン・ドゥーエ要塞は主力艦隊に救援を求め、ザフト主力艦隊とそれを追撃する連合艦隊を呼び寄せる結果を招いたのだから
ただ、連合艦隊の動きはおかしかった。カラミティ、フォビドゥン、レイダーを率いるアズラエルのMS、デザイアを先頭にザフトを追撃して行く部隊と、やや遅れて戦力を集結している部隊とにである。
なにか、連合艦隊の中に変化が起こり始めていたのだ。

298 名前: 48-3 投稿日: 2003/08/26(火) 08:14
部屋のブザーが鳴る
・…キラ?
・こんばんわ
・っ…なんで
・フレイ様、あなたにお聞きしたいんですの
・……
・そう警戒なさらないで。ドアはあけておきますから

向かいのベッドに座る。ラクスの美しさに、寝ていたフレイはあわてて髪をとかす

・ご気分は…もう?
・え…ええ
・お久しぶり…ですわね?
・………
・あの時は私達は軍人ではありませんでしたね。でも今は…
・あ…あの時は…めんなさい
・えっ
・…ひどいこと…して
俯くフレイ

299 名前: 48−4 投稿日: 2003/08/26(火) 08:17
・ザフトにいらしたんですのね。コーディネイターは違いましたか
・……
・…あなたは、キラの…恋人ですのね?
・!
・そうお伺いしました・…キラが?
・いえ
・……そう
・フレイ様、わたくし、キラが好きですわ
・えっ…
・あなたは?
・……わ…たし…
・キラはコーディネイターです。あなたは…彼を愛していたのですか?

ドアがあいたまま
キラ、扉の前で声に立ち止まる

・憎んでいらしたでしょう?でも恋人だった。なぜ?
・……それは
・愛ではなかったのですか

(・ラクス…?)

300 名前: 48−5 投稿日: 2003/08/26(火) 09:02
・…にくんで…いたわ。ずっと。コーディネイターが憎くて、
だから…彼に戦って貰わないといけなかった
・でもキラもコーディネイターですわ
・そう。だから復讐だったの…はじめは…

キラ、諦めの顔

・でも、キラは優しかった。孤独だった。暖かかった…ちがうって、思ったの。
私の想像とは…でも気付く前に、キラは死んでしまったし
・ええ
・そこからはずっと後悔した。サイ…人にキラが好きなんだと言われて、はじめて気付いたのに、キラはもういなくて…
・…そうでしたの
・…好きだった…ううん、今も。愛してるわ。キラだけを…ずっと。

301 名前: 48−6 投稿日: 2003/08/26(火) 09:04
キラ、目を見開く。

・彼がコーディネイターでも?
・キラは、キラよ。キラだから好きなの。多分わたしの…コーディネイターへの感情は簡単に変わらない。あなたのことも…あなたの船の人も、恐い
・……
・でも、キラが好きなの。でもこんなこと、言えるわけない。たぶんばればれだけど、それでも好きだという資格なんかないから。
だからあなたが…
・キラも同じように言っていました。
・えっ
・自分には…資格はないと
・…キラ…が?
・ええ。聞いてみたらいかがですか。
・なんで…
・はい?

302 名前: 48−7 投稿日: 2003/08/26(火) 09:06
・だって、あなただって…あなたのほうがいいんだわ!
キラは…ナチュラルといれば孤独で…無理ばっかするの!そんなの…
・あなたはよくキラをご存知なのですね
私は知りませんわ。そこまでは。やはり無理をしていらっしゃるのでしょう
・……
・許しあえば…それを望んでいるはず
・わからないわ…
・いいえ。お話されたらいいのですわ…わたくしとのように
・あっ…ラクスさん…
・では、おやすみなさい

303 名前: 終末に向って 9 投稿日: 2003/08/26(火) 21:01
ザフト艦隊が帰って来た事はすぐにAAの知るところとなった。元々それあるかを警戒して常に監視していたのだから当然だ。
だが、それは今の状況を考えると絶望的な報告だった。まだヤキン要塞は落ちていない。すでにAAもクサナギもエターナルも要塞に取り付いてはいるが、まだ内部では抵抗が続いているのだ。
予想通りと言うか、最悪の事態にマリュ−は1つの決断をしなくてはならなかった。

「アークエンジェルは直ちに反転。ザフト艦隊を足止めします。ストライクとバスターを戻して。出来ればフリーダムも呼び寄せて!」
「艦長、我々だけであの大軍を相手取るつもりですか!?」

ノイマンが驚愕した叫びを上げる。他のクルーは声もでない様だ。
マリュ−は厳しい顔でノイマンを見た。

「エターナルを危険に晒す訳には生きません。あの艦には未来がかかっています!」
「・・・・・・艦長」
「すまないとは思うわ。でも、今はこれしかないのよ」

マリュ−の覚悟は全員に伝わったのか、誰もがそれ以上は何も言わず、自分の任務に戻った。暫くしてアークエンジェルの要請を受けた3機のMSが戻ってくる。
そして、たった1隻の戦艦と3機のMSは圧倒的な戦力を持つザフト艦隊と対峙したのである。
流石のキラでもこの状況には思わず生唾を飲み込んだ。

「多い、ですね」
「そうだな。ヤキン守備隊の比じゃないな」
「まさか、元味方の艦隊にビビる日が来るとはなあ〜」

3人とも喉がカラカラに乾いている。余りの敵の多さにいつもの余裕さえ無くしているのだ。
そして、更に致命的な報告がもたらされた。

「ザフト艦隊後方に連合艦隊を確認。更に連合艦隊の一部がプラントに向かっています!」
「まさか、プラントを直接攻撃するつもりなの!?」

マリュ−は歯噛みしたが、今更どうにも出来ない。自分たちにはそれだけの戦力が無いのだから
自分たちの無力感を噛み締めている間にもザフト艦隊は殺到し、ついに戦闘が開始された。
ビームとミサイルの雨にAAは次々と被弾していく。3機のMSも雲霞の如く押し寄せるザフトMSに翻弄されていた。ミーティア装備のフリーダムでさえボロボロなのだ。
圧倒的な敵部隊にどんどん押し返されるAA。迫り来るローレシア級巡洋艦の姿に、マリュ−は自らの最後を悟った。

「前方ローラシア級、主砲温度上昇中!」

サイの悲鳴のような報告が届くが、AAの主砲はすぐにそちらを撃てない。もはや打つ手は無かった。



だが、まさに覚悟を決めたとき、いきなり目の前のローラシア級が爆発したのである。
誰もが突然の事に呆然とした。MSも近くにいないのに、誰が助けてくれたというのだろうか?
そして、1つの通信がAAにもたらされたのである。それは、戦局を決定的に覆すことになる、まさに奇跡ともいえる通信だった

『アークエンジェル、こちら第7機動艦隊司令官代理ダウディング少将。これより貴艦を援護する』

304 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/27(水) 00:47
>48シリーズさん

 最初は「セリフ前の点Uzeeeee!」なんてオモタが、
ラクスとフレイの会話をここまで描けるとはすごいです。
噛めば噛むほど味がw

305 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/27(水) 06:34
乙です。
「終末〜」シリーズも9本目ですか。
長期になってきますたな。

306 名前: 燃え尽きる命 1 投稿日: 2003/08/27(水) 18:06
終末そっちのけで書いたSS。一応覚悟を決める為に書いたので、フレイが死にます。そういうのが嫌いな方は見ないで下さい

沈みゆくドミニオンから打ち出された1つのカプセル。それを回収したキラは驚愕してAAに帰って来た。そのポッドから接触回線で聞こえてくる声。それは聞き間違えようも無い声。フレイの声だったのだ。
ただ、様子がおかしかった。まるで怪我でもしているかの様に苦しそうで、時折くぐもった悲鳴も聞こえてくる。

キラはAAに着艦すると慎重にポッドを降ろし、フリーダムから降りて急いでポッドを開けた。
中に入ると濃い血の匂いがして顔を顰め、次いで驚愕する事になる。ポッドの中には無重力で漂うフレイが居たからだ。腹部は血で赤く濡れており、無数の血球がポッドの中に漂っている。

キラは慎重にフレイをポッドの中から出すと、格納庫の床に横たえた。集まってきた整備兵達が驚いている。

「おいおい、こいつはお嬢ちゃんじゃないか」
「マードックさん、先生は!?」
「今来たぞ」

マードックが場所を開け、駆け付けてきた軍医がフレイの傷口を調べる。だが、すぐに顔を顰めると取り出した無針注射器でなにかの薬剤をフレイに投与した。

「先生、フレイは!?」
「・・・・・・鎮痛剤を投与した。暫くすれば目を覚ますだろう」
「先生!?」
「・・・・・・すまないが、手遅れだ」

頭を下げる軍医。だが、キラは納得できなかった。軍医の襟首を掴み、締め上げる。

「あんた医者だろ。なんで女の子一人助けられないんだ!」
「お、落ちつけ!」
「これが落ちついてられるか、フレイを見殺しになんかして見ろ。絶対に許さないぞ!」

締め上げる力を強めるキラ。誰もが圧倒されて動けないでいる中、1人だけ進み出る者がいた。
締め上げる腕を誰かに掴まれ、キラは殺気だった目でその相手を睨みつける。

「誰だ!」
「止めるんだキラ、こんな事して何になるんだ!?」

キラを止めたのはサイだった。その強い眼差しにキラは自分の頭が冷えて来るのが分かった。締めあげていた手を緩め、軍医を解放する。

「・・・・・・僕は」
「ああ、分かってるよ。お前の辛さは俺にだって分かる」

サイはキラの肩を叩いた。何時の間にか艦橋に居たマリュ−ミリィやノイマン達も降りてきている。フラガやディアッカの姿もあった。キラはサイに促されるままにフレイの脇に膝を付いた。サイもキラと向かい合う様に反対側に膝を付く。サイの後ろには今にも泣き出しそうなミリィがいた。

307 名前: 燃え尽きる命 2 投稿日: 2003/08/27(水) 18:18
のままじっとフレイを見つめていると、いきなりトリィが飛んできてフレイの体の上に止まった。慌ててキラが掴まえようとするが、そのトリィの声に反応したかのようにフレイがようやく薄目を開け、回りを見渡した。

「・・・・・・ここは?」
「AAだよ。フレイ」

かけられた声にフレイは驚愕した。もう2度と聞けないはずの声なのに。
フレイはようやく自分を囲んでいる友人達に気付いた。キラが、サイが、ミリィが自分を見下ろしている。

「・・・サイ、ミリィ・・・・・・それに、キラ? なんで」
「フレイ、君はAAに帰って来たんだよ」
「・・・・・・AA,そう、帰って来れたんだ」

サイの言葉にフレイは目を閉じた。幾つもの想いが脳内を駆け抜け、閉じられた瞳から涙が零れていく。どれほど望んだだろうか。もう2度と帰れないと思っていた場所に帰ることを。そして、この人たちと話をする事を。

フレイはゆっくりと目を開けると、サイを見た。

「・・・サイ、あの時は・・・ごめんなさい。 私、酷い事を・・・」
「いいんだ、フレイ。もう良いんだ」
「でも・・・あなたを傷付けて・・・・・・」
「いいよ、もう俺は気にしてない。全部許すさ」

涙声でフレイを許すというサイに、フレイは安堵の吐息を漏らした。

「・・・・・・ありがとう」

そして、フレイは視線をサイからミリィに移した。

「ミリィ、あなたにも・・・・・・迷惑をかけたわね」
「フレイ・・・・・・」
「できれば、もう一度あなたとテニスをしたかったわ」

ミリィはそれに答える事ができなかった。胸の前で手を組み、こぼれる涙を拭う事も出来ない。ただ押し寄せる悲しみに必死に耐えていた。

「カズィは・・・・・・何処?」
「カズィは・・・オーブで・・・艦を降りたわ」
「・・・・・・そうなんだ。じゃあ、私がご免と言ってたって、伝えて」

フレイはそれだけ言うと、疲れたように大きく息を吐いた。
集まったクルーたちは誰もが泣いていた。マリュ−はフラガの胸を借りている。ノイマン達は顔を伏せ、あるいは腕で目を擦っている。ディアッカでさえ体を小刻みに振るわせていた。
フレイは自分の為にこんなに沢山の人が泣いてくれるということに驚き、嬉しくなった。自分がAA内では嫌われている事くらい知っていた。それも全ては自分の所為なのだ。誰を恨む事も出来ない。もし自分に何かあっても悲しむ人は居ないと思っていた。なのに、こんなに沢山の人たちが泣いてくれている。自分を看取ろうと集まってくれた友人達が居る。これは、望外の喜びではないだろうか。
そして何より、誰よりも傍に居て欲しかった人が今傍に居るのだから。

308 名前: 燃え尽きる命 3 投稿日: 2003/08/27(水) 18:18
フレイは、最後にキラを見た。死んだ筈だった。もう2度と会えないはずだった。なのにどうしてここに居るのだろう。

「キラ、死んだんじゃなかったの?」
「色々あってね、こうして生きてるよ」
「・・・・・・そう。聞いてみたいけど、無理みたいね」

フレイは無理に笑顔を作った。最後くらいは笑って逝きたいのだ。特にこの人の前では。
あの時は言えなかった。いや、あの時はまだ形になっていなかった想い。もう伝える事は出来ないはずのそれを伝える機会を得る事が出来たのだから。

「・・・ねえ、キラ。私と最後に話した時のこと、覚えてる?」
「うん、忘れないよ。忘れるもんか」
「そう・・・・・・良かった」

フレイは安堵した。忘れられてなかったのだ。

「キラ、私ね・・・・・・あなたの事、好きだったよ」
「え?」
「最初は、パパの復讐の道具としか、思ってなかった。利用するつもりで近づいたの」
「・・・・・・・・・・・・・・」

何となく分かってはいた。フレイが自分への愛情で近づいたんじゃない事くらい。だが、今はそれを責めて良い時ではなかった。

「でもね、何時も泣いて、傷付いて苦しんでるあなたを見てたら、だんだん憎めなくなった。気が付いたらあなたに惹かれてて、それを否定したくて・・・・・・」
「・・・・・・フレイ」
「おかしいよね。憎んでた相手に、惚れちゃうなんて」

フレイは自嘲気味に笑った。もう笑うだけでも大変なのだが、笑いたかったのだ。
そして、笑いを鎮めたフレイは、真剣な眼差しでキラを見た。

「でも・・・今ははっきりと言えるわ。キラ、私はあなたを愛してる」

そこまで言った時、フレイは内から込み上げる苦痛に顔を顰めた。すぐに咳込み出し、口から血の固まりを吐き出す。
キラは苦しそうなフレイの上半身を持ち上げ、膝枕をしてあげる。
フレイは自分の顔を覗き込むキラを見て、懐かしさと共に不思議な違和感を覚えた。その違和感の正体に気付いた時、フレイは内心で苦笑した。そうか、私は初めて愛しい想いでキラの顔を見てるからだ。今まではキラという道具を見てたから、こんな気持ちになるんだ。

「フレイっ!」
「・・・・・・ご免ね、キラ・・・もう、駄目、見たい」
「フレイ、そんな事と言わないでよ」

涙を流すキラ。フレイはそれに気付き、振るえる手でキラの涙を拭ってあげた。

「泣き虫なのは、変わらない、のね」
「フレイ・・・・・・」
「もう・・・キラの顔も、よく、見えないの」

フレイは手探りでキラの頬に手を当てた。

「・・・お願い。最後にもう一度で良いから・・・・・・好きじゃなくても良いから、キスして」

フレイの願いをキラは受け入れた。自分の唇をフレイの唇に重ね合わせ、彼女の体を強く抱き締める。フレイは涙を流して、残る力を振り絞って両腕をキラの背中に回した。初めてだった。キスがこんなに気持ちいいものだと思えたのは。

そして、その想いと共に、最後に得られた充実感と共に、フレイは逝った。

309 名前: 燃え尽きる命 4 投稿日: 2003/08/27(水) 18:19
突然力が抜け、キラの背中に回されていた腕が力無く漂う。キラはフレイの変化に気付き、フレイの顔をじっと見つめた。その顔には苦痛の色は無く、満足げな笑顔が浮かんでいる。美しい死に顔というのはこういうのを言うのだろうか。
キラはフレイの亡骸を抱き締め、涙ながらに彼女の名を叫んだ。

「フレイィィィイ−−−−−−ー!!」

キラは冷たくなっていく少女の体を抱き締め、号泣した。サイは床に拳を叩きつけ、ミリィはサイの背中にしがみついて声を上げて泣いている。ヘリオポリスからアラスカまで色々な摩擦があった。だが、死んで欲しいなどと思った事は無い。生きてまた昔のように学校に行く日が来ると信じていたのに、トールに続いてフレイまで逝ってしまったのだ。

マリュ−を置いてキラの傍に歩み寄ってきたフラガはナイフを取り出すとフレイの髪を1房だけ切り取りとった。キラが不思議そうに見ていると、フラガは今度は飾り気の無いペンダントを取り出し、そこにフレイの髪をいれていた。そしてそのペンダントをキラに差し出す。

「お守りにでも持っておけ。きっとお前を守ってくれる。後で写真でも入れておけ」
「ムウさん」
「死んだ者は生き返っては来ない。俺達に出来ることは、決して死んでいった奴を忘れない事だ。お前もお嬢ちゃんのことを忘れるなよ」
「・・・・・・・はい」

キラはフラガからペンダントを受け取り、首に掛けた。そしてポケットから今や形見となってしまったルージュを取り出す。

「フレイ、僕はこの戦いを終らせて見せるよ。そうしたら、みんなでオーブに帰ろう。それまで、待っててね」

フレイの亡骸にもう一度口付けをすると、キラは立ちあがった。ルージュをまたポケットに入れ、決意を秘めた目でフリーダムを見る。その顔に、もはや迷いや後悔は無かった。



一人の少女が命を落とした。戦争という悲劇に巻きこまれ、運命を弄ばれた少女が。
この数日後、戦争は終わった。

310 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/27(水) 18:56
>>306-309
乙フレ
もう泣くしかありません
うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ

311 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/27(水) 19:04
「燃え尽きる命」なら全ての記憶を失っても生き延びてくれないと・・・

312 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/27(水) 21:44
>306-309
 なんか、なんか、ルセットさんを思い出してしまったよ
。・∴(つД`)∴・。

313 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/27(水) 23:31
うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ

乙です。
本編では希望を見せてほすぃ…・゚・(´Д⊂ヽ・゚・

314 名前: 終末に向って 10 投稿日: 2003/08/28(木) 18:45
突然の連合艦隊の豹変ぶりに戸惑いを隠せないAAクルー達。マリュ−も最初は罠ではないかと思ったが、現実に連合艦隊の砲火はAAから敵を遠ざけるように放たれており、ストライクダガー部隊はザフトMSを押し返している。
そして、メネラオス級戦艦の巨体がAAに近付いて来た。通信モニターに40代半ばほどの将官の姿が映し出される。

「第7機動艦隊司令官代理、ダウディングだ」
「・・・・・・何故、我々を助けてくれるのです?」

マリュ−の問い掛けに、ダウディングは口元を綻ばせ、気恥ずかしそうに答えた。

「私にも、16の娘がいるのだよ。フレイ・アルスターの演説を聞いて、娘に諭されたような気になってしまった」
「フレイさんの、演説で?」
「ナチュラルとコーディネイターが分かり合えるのかどうか、私のような年になると正直言って自信が無いとしか言えない。だが、彼女のような若者なら未来をその様に持っていけるのかもしれん」
「提督、それでは!?」
「ここは引きうける。君達はプラントに向ったアズラエルを止めてくれ。奴はプラントを直接核攻撃するつもりだ。そんな事を許してはいけない」

ダウディングは敬礼を残してモニターから消えた。そして安堵する間もなく今度はクサナギとエターナルから通信が飛びこんでくる。

「お、おい、なんで連合軍と一緒にいるんだよ!?」
「ラミアス艦長、説明をお願いします」

なにやら誤解してるらしい2人に、マリュ−は少し誇らしげに答えた。

「第7機動艦隊は私達の味方よ。フレイさんの演説を聞いて、彼女の歳後の言葉に応えてくれたのよ」
「連合軍が、私達の味方だって!?」
「フレイさんの言葉で、これだけの部隊が動いたというのですか!?」

カガリは信じられないという表情で絶叫し、ラクスは驚きのあまり呆然としている。無理もあるまい、駆けつけた連合艦隊は50隻以上の艦艇と200を超すMSを保有していたのだから。
実際には傷付いたアストレイがダガーに援護されているし、ザフト部隊はヤキン要塞に近づく事さえ出来なくなっている。
マリュ−はダウディングに感謝しつつ、AAの進路を変更した。

「これより、アークエンジェルはプラントに向ったアズラエル部隊を追撃します。クサナギ、エターナルは続いてください!」

AAが進路を変え、プラント方向へと向う。それにやや遅れてエターナルとクサナギも続いた。さらにダウディングの格別の好意か、1隻の戦艦と4隻の護衛艦が同行してくれた。
連合艦隊の離反、クルーゼとアズラエルの描いたシナリオは、フレイの命を賭けた言葉によって脆くも崩れ去ろうとしていた。

そして、フレイの言葉を受けとめたのは、連合軍だけではなかったのである。

315 名前: 遺された者達へ… 投稿日: 2003/08/28(木) 20:05
フレイは結局、人と人の間と、自分自身の悪意に翻弄され、利用されるだけの存在だった。
生きて戦後を迎えることが出来たのは奇跡に近い。
もっとも、生き延びた事が善いことであると、言い切れるかどうかは、分からない。
背負うには重すぎるものを背負ってしまった人の余生−年齢に関わりなく−は、辛く厳しいものになるだろう。
しかし、それでも生きていかねばならないのも人である。
オーブ領の小さな島。人口は数百人、あまりにも小さい島だった為、戦火に遭うことも無かったこの島に、戦後まもなく一組の男女が住み着いた。
いわゆる戦争難民。住処を失った人は多かったが、こんな島に流れ着く者は珍しかった。
男はどこからどう見ても異様だった。歩様は一定せず、目が見えているかどうかも怪しかった。やせ細った体。病気か、何かの後遺症か。
島の住民は、あの男は戦場で核の光と放射能を浴びたのさ、と噂した。
一方、女の方は、男につきっきりで暮らしている。
島の住民は、遠巻きにするようにしていたが、追い出すわけでもない。
それは、互いに生きていくために身につけた優しさなのだろう。
そして、一年。
もう立って歩くこともできなくなった男は、車椅子を女に押してもらっている。
しかし、それは必ずしも悲惨な光景ではない。
穏やかな陽が、さしていた。
この時間が、いつまで続くのかは分からないが、男の命が尽きるのは、そう遠くはない。
そしてまた、女は一人に戻るのだろう。
その時、女がどうするのか、どうなるのかは、自身にも分からない。
しかし、それで構わなかった。
結局、皆が不幸だった。そして、罪は、誰も償えるものではない。
だから、せめて一人くらいは、静かに、安らかにその生涯を閉じてほしいのだ。
利用された恨みが無いと言えば、嘘になる。
しかし、それももう終わったことだ。
思えば、一番不幸だったのは女ではなく、男の方だったのかも知れない。
男は目を閉じて、物思いに耽っているようだった。
その胸に何が去来しているのか、奥底を明かすことは無いだろう。
それでも、それを受け入れてあげようと女は思う。
空を仰いだ。どこまでも蒼い空の更に上、嘗て様々な人の命と想いが吸い込まれた場所がある。
もう、戻ることは無い場所だ。
時折、あれは夢だったのではないかと、思うことがある。
あれが夢なら…しかし、それももう過ぎたことだ。
僅かに男が身じろぎして、何か言ったようだった。
その手が、何かを探すように宙を掴んだ。
女は、その手をそっと握り返して、二人は元来た道を戻っていった。

316 名前: 遺された者達へ… 投稿日: 2003/08/28(木) 22:05
戦後、地球圏の人の動きは激しく、戸籍データなどは戦火で散逸していたので、人の出入りを管理する事は不可能に近い。
だから、二人は紛れ込む事ができたのだろう。
脱走軍人、難民、中には再びの戦火を期待する者。
様々な人がいても、そこで生きているという事実だけは変わらない。
しかし、この小さな島はそんな事とは関係なく、静かに時間が流れているように思えた。
「星が綺麗…」
家々の灯りも少ない夜空は荘厳だ。
「ねぇ、見えて?…綺麗な夜空…」
男−かつてはラウ・ル・クルーゼの名を持っていた−の反応は無い。
ただ黙って星空を見上げている。その瞳に星の光が反射して、星座を形作っているように見えた。
女−フレイ・アルスターの名は、捨てた−は、その隣で同じように見上げている。
二人が今、同じ思いを抱いているのかどうか、確かめる術は無い。
男は、もう口を開く事も滅多に無かった。
それだけの体力も、失いつつある。
薬で人並−コーディネーターなのだが−の体を保つ事を拒絶して、一年が過ぎている。
本来なら、地獄の苦しみにのた打ち回って徐々に肉体が朽ち果てていくはずだった。
むしろ、ここまで命を永らえているのが異常と言えるのだ。
せめて、苦しまずに…女は、鎮痛剤を打ちながら、果たしてこれが正しい事なのだろうかと、疑問に思う事がある。
それを尋ねても、男は何も答えなかった。
ただ、決して女に苦痛の顔を見せたり、非難めいた目をすることは無かった。
だから、側にいられるし、いてやらねばならないという気持ちに駆られるのだ。
「少し、肌寒くなってきたわ。もう中に入りましょう」
その言葉を押し止めるように、男は微かに手を上げた。目は、空を見据えている。
もう少し、このままにしてあげようと、女は思った。
「待って、今、何か羽織るものを持ってくるから…」
家の方に戻りながら、女はふと、およそ一年前のあの日を思い出していた。

317 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/28(木) 23:33
>燃え尽きる〜
乙です…! うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂
でも、笑顔で逝ってくれて良かった…

>終末〜 10
キタ―――――――(AA略
フレイ様の演説がこんなに、こんなに…・゚・(´Д⊂
司令官代理、エエ人や…

>遺された〜
枯れたクルフレ…静謐な感じがいいです。
静かに鎮静剤を打つフレイ様、それに任せている仮面…
胸をうたれますな。

318 名前: 紅い髪の少女へ ミリアリアの場合 1 投稿日: 2003/08/28(木) 23:41

補給のための停泊。おかげで、今日はゆっくりできる。
そうは言っても、いつ戦闘があるかわからないから、気は抜けない。
少しの間に、自分は心ごと軍人になってしまったのかな…と
たまに、思う。
マリューさんや…ナタルさんに比べれば、この程度で軍人なんて
言っちゃいけないのかもしれないけど。

こうなってしまったのは、いつからだろう。
トールが、…いなくなってしまった日から?

お風呂の順番が、回ってきた。

バスルーム手前の脱衣室に、大きな鏡がある。
私は思わずそこに映る自分を、覗き込んでいた。
「あ〜あ、髪とか、ぼさぼさね」
眼のまわりにも、くまがある気がする。

髪も肌も、戦争が終わったら、ちゃんと手入れしなきゃ。

そう思ったら、ふっと、ある光景を思い出した。
ううん、何度も同じことを思い出してる気がする。
お風呂の時間のたびに、思い出しているような…既視感、だろうか。

319 名前: 紅い髪の少女へ ミリアリアの場合 2 投稿日: 2003/08/28(木) 23:42

「なによ」
「なによ、って…フレイこそ何よ、何やってんの?」
「パックよ。見てわかんない?」

下着姿のままのんびりとパックをしてるフレイを見て、
戦場でパックなんて!とあの時は思った。
でも今から思えば、私のほうが「戦場に立ってる」なんて
舞い上がってたのかもしれない。

お父さんの前で、きちっとしてたかったのよね、フレイ。
たとえばもしトールが帰って来るなら、私は恰好なんてぼろぼろでも、
とびきりの笑顔で迎えたい。それが一番だと思うから。
でもフレイにとっての一番は、きっと
『大西洋連邦事務次官の娘らしい、きちんとした恰好』だったのよね。

もう、会えないんだもんね…
フレイはパパと、私はトールと。
そういえばフレイは、キラが生きている事も知らないんだ。
フレイはキラのことどう思っていたんだろう。
やっぱりコーディネイターのことなんて好きになれなかったのかな。
本当はサイのことが好きだったのかな?
二人の間で好き勝手やってるみたいだったけど、
お父さんがいなくなってから、思いつめてたような気もする。
お父さんの代わりが欲しかったのかな…。

320 名前: 紅い髪の少女へ ミリアリアの場合 3 投稿日: 2003/08/28(木) 23:43

フレイ、今どうしてるんだろう。
もう私たちみたいに、戦闘につぐ戦闘であくせくしなくていいけど、
でもお父さんもお母さんもいないし、
転属ってことは、一般の暮らしに戻れるわけじゃないから
知らない軍人に囲まれているのかな。
政治家の娘の地位を悪用されてないといいけど。

 * * *

彼女に初めて会ったのは、サークルの新入生紹介の時だった。
「フレイ。フレイ・アルスターよ。よろしくね」
そう、にっこり笑っていた。
「先輩には、よろしくお願いします、だろ?」
サークルの先輩にそう言われて(言いながら先輩は鼻の下伸ばしてたけど)
「あっ、ごめんなさァい」
甘えた声でそう答えていた。
そして次に「よろしくお願いします」と言い直した時、
その言い方や頭の下げ方が、あまりにも滑らかで完璧すぎて、
周りはひそひそと「やっぱ政治家の娘は違うよなあ」とか言い始めたんだっけ。
それが聞こえたらしくて、彼女の顔が曇った。
さっきの笑顔がとても無邪気だっただけに、その表情の変化は見ていても辛かった。
私は思わずそんな彼女に手を差し出していた。
「あっ、…ねえ」
「え?」
「私には敬語とか使わなくていいから。
私はミリアリア・ハウ。ミリィ、って呼んでね★」
「…ありがとう、…ミリィ」
彼女は素直にそう言って、また、大輪の花がほころぶような笑顔をみせた。

321 名前: 紅い髪の少女へ ミリアリアの場合 4 投稿日: 2003/08/28(木) 23:55

実際話してみると、彼女はかなりワガママで、
でもとても素直で、思ったことが顔に出る子だった。

だいぶ打ち解けた頃、初対面の時の事が話に出た。
「特別扱いとか、されたくないわよねー?」
と言う私に、フレイは口を尖らせて答えた。
「だって、パパのことばかにするんだもの」
「えーっ。そうだったの?」
この子、ちょっとずれてる、と一瞬思ってしまった。
だがフレイは私のリアクションには気もとめず(これもフレイのいい所だと思う)、
ぶすっとした表情のまま機関銃のようにまくしたてた。
「パパはすっごく頑張ってるのよ。
休日なんてぜんっぜんないし、普段だってユーラシアや他の人たちと
会合だなんだって言って、帰ってくるの遅いもの。
それでも家ではいつも、にこにこ笑って、色んな話してくれるの。
海外出張から帰ってきたときは、必ずおみやげ買って来てくれるし。
パーティーではね、食べ方とか挨拶の仕方とか、パパの言う通りにしたら
いつだって『いいお嬢さんですね』って誉められるの。
そのたびにパパがすごく嬉しそうでね、だから私もすっごく嬉しかった。
なのに、あの人たちっ…」
「…フレイ…」
あれから結構たっているのに、フレイは下唇を震わせて怒っていた。
さっき、ずれてるなんて思ってしまったことを、私は反省した。
きっとあの時フレイは、本気でつらかったんだ。
「でもじゃあフレイ、よく怒らなかったわねー?」
そう聞くと、フレイはけろりとした表情で、人差し指を唇に当てた。
「だってー、初対面の人に対しては怒っちゃいけないよって
パパが教えてくれたのよ」
「えーっ」
「第一印象は大事だもの」
呆気にとられる私を尻目に、フレイは悪びれもせずそう言うと、にこりと笑ったのだった。

 * * *

322 名前: 紅い髪の少女へ ミリアリアの場合 5 投稿日: 2003/08/28(木) 23:57

お父さんが死んじゃった後、あんなふうに笑うフレイを見ていない。
そういえば、オーブに留まって私たちが親と面会してた時、
フレイ、辛そうだったな。
あの時は自分がお母さんたちと会えることで嬉しくていっぱいだったけど、
悪いことしたな…。

ねえフレイ、あなたが前のように笑うことは、もうできないのかな。
誰か…たとえばサイとか、他の人でもいい、
お父さんの代わりになってあげることはできないのかな。

何もかもを元通りにはできない、
それは誰よりも、この心にあいた穴が知っているけど、でも。
戻れないわけじゃない。
フレイ、キラのことも認めてあげて?
サイも、フレイの事許してあげて?
カズイとも会って、みんなでまた、あんなふうに話そうよ。


私、頑張るから。
フレイもどこかで、頑張って。
戦争終わったら、みんなで会おうね。
みんな、…そうよきっと、もしかしたら、トールだって、
「俺が死ぬわけないだろ」って、…そう言って
帰ってきて、くれるんだから。
絶対にみんなでまた、会おうね。ね?


(ミリアリアの場合 終)

323 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/29(金) 00:07
書き込んでから読んでみると、スレ違いくさい…ごめんなさい。
でも、他の登場人物から見たフレイ様ってどんなだろう、と思って書いてみますた。
一遍における描写は薄いけど、何人か重ねることで
色々な角度からフレイ様を描いてみたいので…ゆるしてくらはいm(_ _)m

324 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/29(金) 02:14
。・゚・(つД`)・゚・。
やっぱ世燭鵑詫イ靴い福痔が追っかけ回すのもわかる。
ガンダムエースの、キャラ紹介を思い出しながら読みますた。

325 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/29(金) 02:15
>>323
いや良かったです。他のキャラのも是非お願いします。

326 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/29(金) 04:02
>>323
泣けますた・゚・(ノД`)・゚・
次も楽しみにしてます。

327 名前: 遺された者達へ… 投稿日: 2003/08/30(土) 00:25
フレイが再びクルーゼの姿を見た時、クルーゼは半壊したゲイツのコクピットから降ろされるところだった。
キラは、何故クルーゼを助け出したのか、という問いには答えなかった。
はっきりとした答えなど、持っていなかったのだろう。
虫の息、といったクルーゼと目を合わせるのを、フレイは本能的に避けた。
かつてクルーゼの船から救助された自分が、何故そんな事をするのか。唾を吐きかけても、おかしくないのに。
戦闘は、急速に収束に向かっていた。終戦は、もう時間の問題だろう。
喜びに沸くクルー達を、フレイはどこか醒めた目で見ていた。
敗者となった側に、望まずとは言え、一時的に身を置いていたからだろうか。
喪失感と、やるせなさがフレイを支配していた。
『勝った人なんて、いないのに…』
それを知っているのか、キラも、どこか浮かない顔つきをしていた。
実質的な勝利とはいえ、負傷者で溢れかえっている中をクルーゼは医務室に運び込まれた。
ただでさえ忙しいのに余計な仕事を増やしやがって、と愚痴を言っていた軍医を、バルドフェルドは叱りつけた。
しかし、正直なところ、クルーゼの扱いには困惑していた。
「さて、どうするか…どっちにしろ…」
互いに虫が好かない相手だったとは言え、仮にも仲間だった男の処刑を見る趣味は無い。
かと言って、助ける訳にもいかない相手だった。そうするには事が重大すぎた。
「全く困ったもんだ。撃破せずに助けちまうなんてな…まぁ、そこがいい所なんだが」
どうするか判断がつかないまま、厳重に見張りをつける事が、今、バルドフェルドにできる対応だった。
そして、ラクスと共に、医務室へ向かった。
「どうでしょう。彼の容態は…」
「ま、今すぐどうなるというわけではありません。もっとも、それが良かったのか悪かったのかは分かりませんが。それと…」
ラクスの問いに、多弁な軍医が珍しく口ごもった。
「それと?何でしょう?」
「いえ、あの男の体、一体どうなってるんでしょうね?今すぐは、と言いましたが、戦闘で傷つかなくても、どっちみち長くはありませんでしたよ」
「…?どういう事でしょうか?」
「内蔵、筋肉、神経系、ありとあらゆる器官がめちゃめちゃです。あれでどうやってパイロットとして働けたのか分かりませんな」
そう言いながら軍医はラクスにカルテを渡す。説明を受けてラクスは目を丸くし、バルドフェルドは絶句した。
コーディネーターと言えども、生きているのが不思議な数値が並んでいたのだ。
「どの位、でしょうか」
「生きられるか、という事ですか?さて、前例などありませんから…しかし、もって半年、もしかしたら2,3ヶ月かも知れません」
二人はため息をついた。覚悟はしていても、とてつもなく重いものを抱え込んでしまった気がした。
「それと…この薬なんですが」
軍医はカプセルの入った小瓶を取り出した。
「あの男が持っていたので調べたのですが、一種の麻薬、劇薬です。もしかして、これで肉体を支えていたのでは」
「そうですか…わかりました。それは保管しておいて下さい。それと、この事は漏らさないようにお願いします」
「分かってますよ。こんな気持ち悪い話、しても嫌がられるだけですから」
ラクスは、クルーゼと話し合う必要を感じていた。何故、貴方はそんな事をしたのか。何故、そこまでして。何故。何故。
しかし、クルーゼがいつ目を覚ますのかは、軍医も保障は出来なかった。
このまま、眠るように…あるいはそれが、この男にとっては幸せなのかも知れないと、ラクスは思った。

328 名前: 遺された者達へ… 投稿日: 2003/08/30(土) 00:25
フレイが医務室を訪れた時、軍医はフレイを睨みつけて外に出そうとした。
「今は忙しいんだ。怪我してないなら出てってくれ」
しかし、フレイの頑固さに負けたように、クルーゼの所に連れて行った。
見張りがいるから問題ない、と判断したのだろう。
「いいか、絶対安静の患者だが、くれぐれも注意してな」
そう言うと、あたふたと出ていった。
フレイは、じっとクルーゼを見つめていた。
美しい寝顔だった。そういうのはおかしいのだが、そうとしか言えなかった。
ふいに、涙が溢れた。これも、説明がつかない涙だった。
「何故泣く?」
フレイは危うく飛び上がりそうになった。クルーゼが目を覚ましている事に気づかなかったのだ。
「…分からないわ。ただ、勝手に涙が出てきたのよ」
「そうか…」
クルーゼは身動き一つしなかった。その視線だけが彷徨うように揺れ動き、逆にフレイの視線は床を這った。
しばしの沈黙。フレイにはかける言葉が無い。大体、どうしてここに来たのかも、分からなかった。
「フ、フフ…」
突然、クルーゼは忍び笑いを漏らした。
「こうして生き恥を晒すか…私は…全てを憎んて、力に変えたつもりだったのだがな…」
独り言。フレイは黙って聞くしかない。
「私は、ある日突然、小さな子供が、知らない街に置き去りにされたようなものだ。しかも、どうやって帰って良いのかも、分からない」
フレイの怪訝な顔を見て、クルーゼは苦笑した。
「一体何処から来たのか、どうやって此処まで来たのか、何処へ行けば良いのか…まるで分からない…怖いな…」
思わずクルーゼの顔を見つめた。そんな言葉が出るとは思わなかったのだ。
「こわ…い…?」
「帰る所が無い、と言う事ほど、怖いものはない。ましてや、私は…」
そこで言葉が途切れた。それ以上、フレイの前で言うのを躊躇ったのだろう。
フレイもそうだ。もう帰る所は無い。そして、罪を重ねてしまった…目の前で体を横たえているこの男と、同じだ。
「地球へ…」
クルーゼが再び口を開いた。心なしか、言葉が揺れていた。
「地球?」
「地球へ、行きたいな。人は、地球で生まれ、育って、死んでいったのだろう?私も人なら…人だと言うのなら…」
再び、静寂が訪れた。

329 名前: 遺された者達へ… 投稿日: 2003/08/30(土) 00:26
「人質を取って、モビルスーツデッキに向かってます!どうします!?」
その報告に、バルドフェルドは顔を歪めた。
どう見ても、動けるような状態では無かった。それがどうだ。完全に自分の判断ミスだった。
「人質は誰だ!」
「フレイ・アルスター二等兵です!」
「どうやって人質に取ったんだ!」
肘掛に拳を思い切り叩きつける。クルーが一斉に首をすくめた。
バルドフェルドは内心で、面会を許可したと思われる軍医を罵っていたが、それを面に出すことはない。
「モビルスーツデッキを封鎖しろ!外に出してはならん!」
人質の命と、クルーゼの身柄のどちらが重いか。天秤にかけなければならない。
『全く、俺が引くのは貧乏くじかよ…』
しかし、バルドフェルドの命令が実行されることは無かった。
「…何か持ってます!あれは…爆薬じゃないですか!?」
「何だと…」
めまいがした。そんなものまで、何処から持ってきたのだ?
「フリーダムとジャスティスのコクピットをロック!その他のは仕方ない、使わせろ!艦内で爆発されたらひとたまりもない…キラとアスランを呼べ!」
キラとアスランが駆けつける間もなく、デッキからゲイツが飛び出し、一直線に遠ざかっていく。
「フリーダム、ジャスティス。後を追って、捕獲が無理なら、撃墜しろ!キラ、これは命令だ、分かってるな!」
「了…解」
アスランは眉をひそめた。キラにそんな事ができる訳がない。いざとなれば、自分が泥をかぶるしかない、か。
最初にジャスティス、遅れてフリーダムが飛び出し、後を追う。
「…どうなっています?」
呼ばれてブリッジに上がってきたラクスの顔も青ざめている。
「損傷したゲイツと、あの二機ではスピードが違いすぎます。しかもゲイツは武器を持っていません。すぐに追いつきます」
いっそのこと、撃墜してくれれば良い。その方が、後腐れがない。
説明しながら、バルドフェルドは、そう思った。

330 名前: 遺された者達へ… 投稿日: 2003/08/30(土) 00:27
「逃げられるわけないだろうに…あれか!」
ジャスティスのモニターに、微かに映る、移動する閃光。ゲイツだ。
ビーム・ライフルを構え、照準を合わせるが、さすがに丸腰の相手に問答無用の攻撃をするのは躊躇われた。
「聞こえてるか?この距離なら大丈夫のはずだ…逃げられるものじゃない、投降を勧告する。…クルーゼ!」
最後の叫びには微かな憎悪が込められていた。父を策略にはめた男。
袂を分かってはいたが、父はやはり父だった。それを…
「せめていさぎよく裁きを受けろ、クルーゼ!見苦しい…」
トリガーにかけた指に力がこもって、震える。
「…お願い…」
ジャスティスに、通信が入った。ゲイツから。微かな、女の声。
「行かせて、あげて…」
「何だと?」
一瞬、アスランは呆気に取られたが、すぐに我に返る。
「何を言ってる…。脅されてるのか?卑怯だぞクルーゼ!どこまで堕ちれば気が済むんだ!」
「違う、脅されたわけじゃないの。彼の、最後の願いなのよ。せめて…」
「せめて…何だ!」
そこへ、フリーダムが追いついてきた。
「アスラン…!?」
異様な光景だった。丸腰のゲイツとジャスティスが、凍りついたように動かない。
しかし、ジャスティスのビームライフルはゲイツに向けて固定されている。
そこへ、フリーダムにも二機の間の通信が入ってきた。
「この人には、帰る所が無いわ…そして、もうすぐ…だから、せめて…」
「その男は重罪人なんだぞ!戦争の…」
「罪人じゃない人なんているの?そんな人、どこにもいないじゃない!」
声が、泣いていた。だから、アスランも、キラも、沈黙した。
「この人は…罪人よ。そうよ。でも、とてもかわいそう…」
アスランは、トリガーにかけた指の力を緩めた。
「しかし…」
「貴方にも…キラにも、帰る所があるわ。例え、何処から来たか分からなくても…でも、この人には、無い…」
アスランにも、キラにも、返す言葉が無かった。
「私も、罪を犯したわ。それが償えないって事も、わかる。帰るところも、無いわ」
「フレイ…」
キラは、唇をかみ締めた。
「何処にも無いなら、この人は地球で、死にたいというだけなの。他に何もないの。本当よ。せめて、この人だけは…」
キラを、悔恨の念が襲う。勝った?違う。誰一人、幸せを掴んでなどいないではないか。
途轍もない虚無感。そして、目の前の傷ついたモビルスーツに乗る男も、そうなのだ。
「もう、この人は何ヶ月も生きていられないの。だから、せめて…最後だけは…お願いよ…」
「アスラン!」
キラの呼びかけにアスランは肩を震わせたが、ジャスティスのビーム・ライフルを構え直した。
「くそっ…くそぉっ!…そんな事言われたら…!」

331 名前: 遺された者達へ… 投稿日: 2003/08/30(土) 00:27
「…抵抗したので撃墜したそうです」
「…?…そんなコールは無かったが…どっちがやったか、分かるか?」
「ジャスティスだそうです」
心なしか、二機の姿には勢いというものが感じられなかった。パイロットの心理は、機械を通してもわかるものだ。
それが、バルドフェルドには気がかりだった。
「もう、いいでしょう…」
そう言ったラクスは目を閉じて、シートに身を沈めている。安堵なのか、悲しみなのか。別の感情か。
一方、キラは、歯で切り裂いた唇から流れ出る血を拭こうともしなかった。
フレイも、自分も、罪人。そして、フレイには帰る場所もなかった。
何をしてたんだ、と言う自責の念にかられる。しかし、今の自分に一体何が出来るのか。
無力感。
「キラ…」
ほぼ同時に割り込んできたラクスとアスランの声。
はるか前方を航行しているカガリの乗った艦。
更に、アーク・エンジェル。
フレイについては、今の自分にはどうすることもできない。
せめて、目の前の事を一生懸命やって、それから…でなければ、前には進めない。
「フレイ、御免。少しだけ、待ってて…」
キラは、前を見据えた。
一方、ゲイツは月に向かっていた。
地球に降りるには、どこかでゲイツを放棄し、地球に降りる船に潜り込まねばならない。
それまで、月に身を隠すつもりだった。
クルーゼの素顔が、ほとんど知られていなかったのが幸いするだろう。
「うぐっ……」
不意に、クルーゼが顔を歪めて体を折った。
発作だ。フレイは医務室から持ち出してきた小瓶からカプセルを取り出して差し出したが、クルーゼはそれを受け取らなかった。
「もう、いい…それは、私が復讐の為に使ったものだ。人間であることを捨てる為に…。だから、それはもういらない」
「でも、とても苦しいんでしょう?」
「そうだ。しかし、苦しむのも、人間だからだろう?…私は、人として死にたい。だから、苦しみを受け入れて、死にたい…」
フレイには、分からない論理だった。しかし、見守ることしかできないと、思う。
「フフ…しかし、あの二人には感謝しないといけないな。見逃してくれるとは…いや、君のお陰か。フレイ・アルスター」
コントロールスティックを握る手が苦痛で小刻みに震えている。フレイはそれに自分の手を添えた。
「これで、震えなくて済むでしょう?もう少しで、月まで行けるわ」
「ああ…そうだな…」

332 名前: 遺された者達へ… 投稿日: 2003/08/30(土) 00:28
そして、二人は地球に降りた。
あれから、キラにも、他の誰にも、会ってはいない。
会う資格も、無いだろう。
時たま、ニュースで、ラクスやカガリの名前を聞くだけだ。
きっと、皆、精一杯生きているのだろう。
そう思うことで、自分も生きようと思うのだ。
「遅れて御免なさい、寒くなかった?」
そう言ったフレイの顔色が変わった。
クルーゼの顔から、血の気が失せている。
星明かりの下でも、その青白さが、はっきりと分かった、それほどのものだった。
「ね…ねぇ!大丈夫!?」
思わず肩を掴んだフレイの手に、恐ろしいほど冷たい感触が伝わってきた。
死、を、嫌でも実感させる感触。知らず、涙が溢れた。
「ねぇ!クルーゼ!」
叫んだフレイの声に反応したように、枯れ木のような腕が動いて、フレイはそれを握りしめた。
「どうやら…今度は駄目のようだ…」
喘ぎとも、声ともつかない異様な音が、クルーゼの口から漏れ出た。
「ひ、人として、死ぬのが…これほど苦しいとは…な。」
フレイはただ見つめるだけだ。今まさに、目の前で、一つの命が失われようとしている。
しかし、これは、受け入れられた、望まれた死、なのだ。
「しかし…これほど、安らげるとも、思わなかったよ…フレイ・アルスター…」
最後の力。フレイの手が、砕けるほどに握り締められた。
「人は…死んで土に還っていったというが…私は、還れるかな…フレイ・アルスター」
「大丈夫よ…貴方は、この星の土になれるわ…だから…」
急速に、クルーゼの腕から、力が抜けていった。
その唇が、微かに動いて、何か言ったようだったが、途切れた。
しかし、その瞬間、フレイは確かに、『あ、り、が、と、う』という言葉を、聞いた。

333 名前: 遺された者達へ… 投稿日: 2003/08/30(土) 00:29
凪いだ海を見下ろす丘に、碑銘も無い十字架が一つ。
この星に、確かに一つの命が吸い込まれたという証し。
それが、彼が望んだ事。たった一つの、望み…
「あんた、この島から、出る気か」
島の老人が、陰気な声をフレイに投げかけた。
「はい…今まで、お世話になりました」
「…何処に行く?」
「分かりません。でも、もうこの島に戻る事は無いでしょう」
「…そうか…」
「彼は…自分の望みを、果たして…とても、幸せだったと…」
そこで、言葉が途切れた。
「次の漁に出る船に、送らせよう…オノロゴ島で、良いんだな?」
フレイは、涙を拭いた。いつまでも泣いていては、キラにも、クルーゼにも、皆にも、笑われると思った。
「…はい…!」
いつか、自分も土に還る時が、来るのだろう。
それは、決して悲しい事ではない。
人は、生まれた所へ、帰っていく。
それまでは、皆のように、あの人のように、一生懸命生きようと思うのだ。
だから、せめてその日までは、笑っていたいのだ。

334 名前: 遺された者達へ… 投稿日: 2003/08/30(土) 00:33
SSスレpart1>>56-58と併せて読むことをお奨めします。それの続編を意図して(本スレでのネタを拝借したのですが)書いたものです。
ま、はっきり言ってこんなの受け入れられないのがこの板の本音でしょうが、笑ってスルーして下さい。

335 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/30(土) 00:41
キラとナシさえつけられれば(フレイたまが自分で)そういうのもありなので(;´Д`)ハァハァ
です。

乙。

336 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/30(土) 00:58
>>327-334
乙ふれ〜。

やべぇ。
こんなラストならフレイ様クルーゼと一緒でもいいやと本気で思っちまった。

337 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/30(土) 02:22
>>334
乙。

ラウにも救いがあれば・・・いいな。
・・・フレイ様に妙なことせんかったら、だが。

338 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/30(土) 07:47
>>334
乙フレイ様。

本スレに溢れるフレイ様への愛は、
全てのカップリング、全てのエンディングを飲み込んで、
なお、広がっていくんだなあ…

339 名前: 終末に向って 11 投稿日: 2003/08/30(土) 15:37
連合艦隊によってヤキン要塞に取り付く事さえ出来なくなったザフト軍。彼等は各部隊の指揮官が独自の判断で戦闘を継続していたが、その中には連合の動きに明らかな戸惑いを覚える者がいた。イザークである。
イザークは自分に与えられたナスカ級高速巡洋艦キラウレの艦橋で意外な方向に転がり始めた状況に歯噛みしていた。

「くそっ、ナチュラルがラクス・クラインの味方をするだと!」
「イザーク隊長、どうしますか?」

部下に問われたイザークは咄嗟に答える事ができなかった。頭の中では既に答えが出ている。だが、それを実行するには感情がなかなか許さない。
分かっているのだ。最善の策は、目の前の連合軍と一時休戦してでもラクス・クラインに協力し、プラント本土を守る事だという事は。
だが、ナチュラルと協力して戦うなど、これまでのイザークの矜持が許さない。
自分から膝を屈することはできない。それがイザークという男だった。だが、今回は彼は連合に救われる事となる。
連合軍から全域周波数で送られてきた通信。それを受け取ったイザークは目を丸くした。

「連合軍ダウディング少将より、ザフト艦隊へ。我々は貴軍との一時休戦を要求する。応じる者は通信で答えてもらいたい」
「何を馬鹿な事を・・・・・・今更そんな事が」

部下が口にした戸惑い。それは自分の気持ちの代弁でもあった。分かっているのだ。今ここで自分が動かなくてはいけないのだという事くらい。
そして、連合軍が何故このような行動に走ったのか、その理由もまた分かっていた。あの赤い髪の女の言葉が原因なのだ。

「・・・・・・ふん、あんな女の口車に乗せられるとはな」
「イザーク隊長?」

部下たちが不思議そうにイザークを見るが、イザークは構わずに通信士に指示を出した。

「連合艦隊旗艦に通信を繋げ!」
「は、はい!」

慌てて通信機を操作し、スクリーンにダウディングが映し出される。イザークは心底嫌そうではあったが、はっきりとそれを口にした。

「ザフト軍、ジュール隊隊長、イザーク・ジュールだ。要請は了解した。これよりわが艦隊はエターナル援護の為急行する」
「ほう、それは助かるが、良いのか?」
「我々ザフトの存在理由はプラントの防衛だ。そちらが優先されるべきだろう」
「確かにな、分かった。貴官の勇気に感謝する」

ダウディングがモニターから消えたのを確認すると、イザークは部下にエターナルを追えという指示を出し、自らはシートに腰を降ろして僅かに口元を緩めた。
もしかしたら、俺達は歴史の変わる瞬間に立ち合ったのかもしれない。

340 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/30(土) 20:34
>>339
乙。
イザーク…おまえってヤシは…つД`)

341 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/30(土) 23:12
>>339
 設定がうまいですね。イザークを味方につけつつ、彼のカコヨサを殺してない。

342 名前: 意思1 投稿日: 2003/08/31(日) 01:58
…確か、あの日は雪が降っていた。
とても底冷えのするとてもとても…寒い、日。
だけれども、彼女、フレイ・アルスターの手を握る、父の手からは確かに温
もりがその掌を通して伝わっていた。

眠りと覚醒の繰り返し、そんな単調な毎日を送っていると次第に夢と現の境
が曖昧になり、ふと此処が何処で、何をしているのかが分からなくなった。
そういう時、フレイはつかの間幸せになれた。
だけれども、現実はまるで鋭く尖った短剣のように、彼女の首元に突き刺さる。
ヴェサリウス艦内、お仕着せのザフト軍の制服。
全ては違和感に満ち、何より彼女の傍らには…誰も居ない。
…母の形見と、父から送られた小さなイヤリングに白い指を絡め、それを弄び
ながら、父の欺瞞と優しさに想いを馳せる。
そう、父と…あいつは似ていた。

「…人は大地より出で、終には土に還らん。神聖なる大地との契り、汝は誓う
と約束出来るか、如何……?」
蒼を基調にした、時代がかったその室内に跪く、父と幼い頃のフレイ。
全てのメカニックな物を廃したその室内には、外の冷たい冷気が流れ込んでいた。
「はい、清浄なる大地に誓って」
フレイが覚えている限り、或いは彼女の前では何時も笑顔を絶やさなかった父が
その時だけは、表情を消し、そのフレイ達を囲んでいる不思議な人たちに対し、
畏まっているのが不思議で…少し怖かった。
父の隣で小さく震える幼い彼女に対しても、周囲の蒼色に黒い腕章を付けた者達
が同じ文句を、同じように唱えた。
…父には此処に来る前に、何度も自分と同じ言葉を復唱するように念を押されて
いたが、彼女には良く分からなかった。
ただ、怖さと寒さで身が竦み、助けを求めるかのように、父に視線を向ける。
父は頷きながら、小さく囁く。
「…さあ、きちんと言えるね…フレイ」
フレイはコクコクと頷き、たどたどしく、呪文のように訳の分からない言葉を、
父と同じように畏まって復唱した。
だって…パパがそうすると誉めてくれるから。

343 名前: 意思2 投稿日: 2003/08/31(日) 01:59
「蒼き清浄なる大地に…か。面白い言葉遊びだとは思わんかね、君は?」
連合のプロパガンダ映画に何度も頻出するその言葉を、いや全てを嘲るように、
フレイの生殺与奪を握る男…クルーゼが呟いた。
フレイは父と声が類似しているこの男に対し、別段悪意は持っていなかった。
…ただ、それ以上の感情はなんらなかったのだが。
強いていえば、溺れ掛けた時、指の先に触れた一本の藁のようなもの。
そして、以前はフレイ自身がある少年にとっての藁だった。

「…私には、政治は分かりません」
ふ、とクルーゼは口元を歪める。
「知っているかね、人間には二種類の者が居る事を。…愚かな愚者と、知者ぶった
愚者だがね…君は前者ではあるまい?」
そこで口を噤み、フレイの耳元に目を遣る。
「…そして、君が身に付けている物…その意味、だからこそ私は君に働いて貰お
うと思ったのだよ」
フレイは俯き、ぎゅっと掌を握り締める。
想いは、世界がこんなにも暗いとは知らなかった…幼き日へ。

「ジョージ・アルスター外務参事官、フレイ・アルスターの両名を我等が大地へ
の奉仕者と任ずる」
その言葉を聞き、パパは安堵の溜息を付いていたのが何故か、その日の記憶の中
でも、より強く脳裏にこびり付いていた。
フレイも何だか嬉しくなり、そんな父の手を握る。
驚くほど汗ばみ、そして冷えていた。

344 名前: 意思3 投稿日: 2003/08/31(日) 02:00
と、突然、周囲の何だか怖い感じのする人たちの間から、つと、彼女たちの前に
一人の女性が歩みより、そっとフレイの前に跪く。
仮面めいた笑顔をフレイに向け、フレイも釣られてにっこりと微笑んだ。
その女性はフレイの頤に優しく触れ、その手を頬、うなじ…と上へ上へ這わせて
行く。
それは突然来た。
「…痛いッ!!」
フレイは反射的に耳に手をやろうとすると、父がその手を留め、フレイに向かい笑
みを浮かべた。
それだけで良い。
それだけで…もう痛みは忘れることが出来たから。
「もう終わったよフレイ。ほら、見てごらん」
父が差し出す鏡に映る自分に当然変化は無く、ただ海の底のように真蒼な丸い球体
のイヤリングが、白い肌に栄えていた。
「わぁ!ね、パパ。丸い丸いお月様…ううん、地球みたい!」
思った事をそのまま口にすると、父は彼女の頭を撫で、周りの人間も仰々しい拍手
と歓声をフレイに注ぐ。
訳がわからないけれど、嬉しかった。

時は過ぎ行き、時代も彼女も何一つ留まる物は無い。

鍵は彼女により齎され、扉は開かれた。

そして、今フレイは壇上に上がっている。
この放送は自らの行為を正当化し、その優位を誇るために連合のサザーランド大佐
により仕組まれた、一層茶番というに相応しい物と誰もが知る、そんな程度のもの。
だけれども、そこにフレイは立っていた。
何故かは…自分の中でもまだ良く、形にならない何かが、あったから。
だから、フレイはその答えを自らの内に探し、過去を彷徨う。

345 名前: 意思4 投稿日: 2003/08/31(日) 02:00
その儀式の最後はこう結ばれた。
「蒼き清浄なる大地の為に」
母は物心が付く前に他界し、フレイには父しか居なかった。
ただ幼いながらも、父が何か悩みを抱えていて、その苦悩は酒量の増加という目に
見える形で表しだしてからは、彼女にとって父は…パパであり、また同時に守るべ
き、自らの伴侶ともなった。
…幼くて、何も形にならなくても、フレイだけはそう思っていた。
どうして、当時の自分にそれが分かったのか、今でも判然とはしない。
ただ、妻を無くしてからのジョージにとって世界は灰色の仕事と、妻の忘れ形見で
あるフレイしか存在せず、その仕事は完全に行き詰まっていた。
本来、官僚であるジョージにとって、政治と実務は切り離すべきものであった。
しかし、暗黙の掟は旗色を判然とさせない人間は排斥する。

「ね、パパ。私、えと…う…んと……ブルーラベンダーになりたい」
その日も酒が進み、どんよりと酒気で濁った目をフレイに向け、ジョージは笑った。
「…はは、家の小さなレディはまだそんな事を言っちゃいけないよ」
ぶんぶんと、首を振りフレイは繰り返す。
「ううん! だって…パパ、そうした方が良いって…そう思ったの、だから…」
その後の言葉が続かず、フレイは俯き、ぎゅっと唇を噛んで佇んでいた。
そんなフレイを抱き上げ、ジョージは娘の頭を愛撫する。
しばらくの沈黙の後、ジョージは道を定めた。
それは良心を売り渡した返礼に、彼に栄達を齎す道であった…。

だけれども、ジョージが一人になると何時も毒づいていた言葉を忘れられない。
「…私は、娘の尊厳を売った…と」

346 名前: 意思5 投稿日: 2003/08/31(日) 02:01
「で、趣旨は分かってますよね…? スマイルと泣き文句、そして核施設がもたら
す恩恵を連呼…OK?」
ヤキン・ドゥーエを核の業火のより焼き払い、世界を再び蒼く染め上げる為に、プ
ラントを核により滅却しようと目論んでいる男がおどける。
「アズラエル様。その点、十分彼女に言い聞かしております。それに彼女とてアル
スター家の娘、我等の趣旨を分からない歳でも無いでしょう」
「ふぅん、ま…当然ですね」
その言葉とは裏腹に、この世界に向けてのプロパガンダは内々で行われていた。
それだけ世論が移ろいやすく不安定であり、‘万が一の不測の事態‘には、彼女と
その映像は永遠に闇に葬られる予定でもあった。
立会人の一人として、ナタル・バジルールが選ばれたのも、彼女が所謂反連合の
立場に以前属していたからに他ならない。
一人ぽつんと広い会見席に溶け込んでいるフレイを見つめながら、ナタルは悲痛な
思いに囚われ、嘆息する。

フレイは茫洋と立ち上がり、お決まりの文句を連ねていく。
募る、虚しさを噛み締めながら。
「…私の父は民間人でした。でも、そんな無抵抗の父も殺されました……」
そう、だから私は父を殺したコーディネーターが憎かった。
だから近くにいた少年を道具にし、だけれども父と同じようにフレイ自身もブルー
コスモスにはなり切れず、だからこそお互いに傷つけ合い、心身を疲弊させた。
「そして、私は戦いました。最初は逃げていただけだったような気がします。だけ
ど、それでは駄目、戦わなくてはと自身の良心と神聖なる大地を守るため……」
自身でも不思議なほど、空虚な言葉が唇から噤まれて行く。

347 名前: 意思6 投稿日: 2003/08/31(日) 02:02
そう、私には政治は分からない。
何時か言った言葉に、嘘は無い。
人と人とが殺し合い、憎み合い、その痛みを体験を持って知ったフレイにとっては、
戦争を続ける為のお約束としての政治は分かり得なかった。
彼女は常に、自らの感情と…状況に流されてきただけだから。
そうして、罪を重ねて、その罪に気づき、本当は求めていたものを傷つけていた事
を知ったときは、既に手遅れ。

「……でも、それは間違っていました」
自分で言った言葉にフレイ自身驚き、沈黙が支配する場に立ち尽くしながら、今の
言葉が自身の今の感情に、想いに相応しいと理解した。
不思議と恐怖は無く、全てが透き通っている。
サザーランドが立ち上がり、無言で保安兵に指示を飛ばした。
録画機材の停止、削除。
そしてフレイへと拳銃を手にした、保安兵が歩み寄る。
それを挑戦的にねめつけながら、一層演説卓に乗っている水差しの水でもかけてや
ろうかと、フレイは思った。
死ぬのは怖い。
…そして……キラに会いたかった。
サイに謝りたかった。
みんなに会いたかった。

348 名前: 意思7 投稿日: 2003/08/31(日) 02:02
と、その時。
ぱちぱちぱち。
芝居がかった拍手が人気が絶えた場に木霊し、皆がそこへと目を向けると、足を倣
岸に組みながら、ムルタ・アズラエルがせせら笑っていた。
「面白い! これは面白いなぁ。ビジネスの世界では意外性は有効な場合もありま
すが、この場はねぇ…」
そして、手でサザーランドに合図を送り、保安兵の動きも止まった。
「良いでしょう。その勇気、いや無謀さに免じて最後まで話して下さい! 一世一
代の、そして最後の弁論、いやはや期待しちゃいますよ」
このアズラエルの気まぐれな一言で、二つの事が決定された。
誰も見るもののない、演説の続行。
そして、フレイへの極刑。

向こうではバジルール少佐と保安兵が揉み合っていた。
それすらも、今のフレイにとっては何だか遠い世界のような気がする。
…フレイは記憶を手繰りながら、ようやく一つの埋もれていた記憶を掘り起こした。
その記憶は痛みが伴う、だからこそ自身の心の奥底に埋もれていたもの。

「…私は一人のコーディネーターを憎みました。そして…確かに愛しました。その
二つの感情はどちらも私に取っては真実。彼は私の道具で、私は彼の道具…そんな
関係だった…けれど」
突然のフレイの言葉は場違いで、だからこそ一瞬だが場は彼女の独壇場となった。
沈黙の中、淡々と自らの心中を曝け出す。
「けれど…いえ、今も憎しみは消えません。理由は無い…だけれども、憎しみが消せ
ない…。コーディネーターを殺したい、私はNJCを世界に解き放ってしまって、だ
から沢山人を殺したけれど、でもまだ…殺したい」
アズラエルの拍手の音が、再び空虚に響く。
意に返さず、フレイは続ける。
「何故…?とずっと自身に問い掛けて、でも答えが出なくて。それに…やっぱり今で
も、会いたくて…。核の焔で焼け爛れるコーディネーターを想像し、何度も何度も
笑って。どれもが本当だから…」
「フレイ・アルスターッ! もう、良い…。もう……これ以上自分を傷付けな……」
ナタルの言葉を遮り、小さく微笑み返すフレイ。
「…私は自分を欺いていました。パパは…父は隠していたけれど、物心がついて来た
私は真実を知って…それから自分を騙し続けて生きて来ました」
「簡単な事です」そう前置きし、フレイは泣き笑いの表情を浮かべ、寂しそうにナタ
ルを見つめながら。

349 名前: 意思8 投稿日: 2003/08/31(日) 02:03
「最初に言ったように、私には政治は分かりません。でもコーディネーターを憎みま
す。何故なら…」
アズラエルを指差し、続ける。
「あんた達に、後づけで前頭葉前頭野に組み込まれたナノマシーンで、シナプス配列
をそう、組み込まれたから。遺伝子操作、そう言った単語に対する嫌悪感を植え付けて。
それをされたのが5歳だったけど、だけどね…それが全てじゃないのよっ!」
辺りがざわめきだす。
流石に狂信的なブルーコスモスに属しているとはいえ、脳内を幼少時に操作され、配
列を任意に定められて、平静を装えるものはいない。
「……連れて行ってよ。もう、話は十分。くだらない与太話には飽きたよ、僕は」
その時、何かを思いついたかのように、アズラエルはにたりと笑みを浮かべ、顎に手を
やる。
「…なら、試してみましょうか」
そう言いながら、懐から覚束ない手つきで拳銃を取り出し、フレイに突きつける。
「僕はこれから経済的に、負債となったコーディネーターの完全抹消に向かいます。で、
ですね。君がそれに賛成したら何もしません」
芝居じみた動作で、空いている方の掌を開いてみせる。
「…ただ、君がその妄想の脳内シナプス配列に反して、これに反対したら…私は君を賞
賛しましょう! そして、死んで頂きます。どう、お分かりですか?」

暫しの沈黙の後、フレイはほっこりと寂しげに微笑み、唇から言葉を紡ぐ。
フレイの頬に、一筋の光の軌跡が走っていた。

「………キラ、ごめんね」

そして、銃声が響いた。


戦後、ブルーコスモスは解体され、穏健な自然保護思想にシフトしたという。
それには盟主が戦陣により倒れた事の他に、リークされた後天的な人体への人為操作が
絡んでいるという噂が流布しているが、戦後弱体化した連合はそれとブルーコスモスと
の繋がりを公式には否定している。
だが、条件付きながら自治権を獲得したプラント側による捜査は進められていた。
尚、ブルーコスモス盟主ムルタ・アズラエルは何故か、爆散する寸前のドミニオンから
脱出せず、ドミニオン艦長と運命を共にしたことから、謀殺という説も後世に一定の指
示を集める結果となった。

350 名前: 終末に向って 12 投稿日: 2003/08/31(日) 16:41
AAはザフトのプラント直衛部隊と衝突する連合部隊を遂に捕捉した。放たれたゴッドフリートが闇を切り裂き、アズラエル艦隊に襲いかかる。それは直撃こそしなかったが、アズラエル艦隊の足を止めるには十分な一撃であった。

「なんです、この忙しい時に?」

アズラエルは機体を止め、振り返った。そして新たな敵を見やり、皮肉そうに口元を歪める。

「アークエンジェルに、フリーダム。あの時殺せなかった事がここまで響くとはねえ、キラ・ヤマト」

アズラエルは過去のミスを振り返り、ここまで災いをもたらすはと苦笑した。
そして、機体をフリーダムへと向けた。

「良いでしょう、最高のコーディネイターとブルーコスモスのTOP、決着をつけるという意味ではこれほどの役者は無い」

キラは迫ってくる見慣れない機体に戸惑っていた。たった一機なのにこの妙な威圧感は何なのだろう。
そして、その機体から通信が入ってきた。

「キラ・ヤマトですね」
「その声はムルタ・アズラエル!?」
「名前を知って頂いていたとは光栄ですね。ヒビキ博士の生み出した至高のコーディネイター。もっとも自然の摂理から外れた化け物」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

キラは否定できなかった。何しろ自分がそう思っているのだから。そしてアズラエルのセリフは続く。

「ここでナチュラルとコーディネイターの決着を付けるとしましょうか。どちらが生き残る種なのか、私と君が決めるのです」
「僕達が、人類の行く末を決めるだって。そんな傲慢が許される訳無いだろ!」
「許されるんですよ、君と私ならね。君も私もそういう存在なんですから」

デザイアが持っているビームライフルを撃ち放ってきた。フリーダムは咄嗟にそれを回避して反撃のビームを叩きこむが、それは当たる直前で曲げられてしまった。

「ビームを曲げる、こいつはあの機体と同じ!?」
「当然でしょう、折角完成した技術、使わないとでも思ったんですか?」

デザイアの機体に備えられている2門のビーム砲がフリーダムに襲いかかる。その攻撃力はカラミティにさえ引けを取っていない。
圧倒的な戦闘力を持つデザイアに流石のフリーダムも攻めあぐねていたミーティアは確かに強力だが、これまでの戦いでガタが来てる上に、小回りが効かない。

「くそっ、これじゃどうにもならない。防御も完璧、攻撃も完璧じゃ、どうしろっていうんだ!?」

キラは焦りを浮かべてミサイルの弾幕を張ったが、TP装甲を持つデザイアにはほとんど意味が無かった。
そして、焦りから生まれた隙を付かれ、キラは懐にデザイアが入る事を許してしまった。

「しまった!」
「終わりですね、キラ・ヤマト!」

デザイアの手にはビームサーベルが握られている。それを防ぐ事も避ける事も、もうキラには出来なかった。

351 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/31(日) 22:35
さあ、終末だ!

352 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/08/31(日) 22:35
あ、ごめんなさい。

353 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/01(月) 04:10
>意思
乙です!
ブルコスへの恐怖で打ち震えますた。
アズの手のひらの上で躍らせれながら、それでも必死なフレイ様がいとおしい…(´Д⊂

>終末
本編もこんなに恰好良ければいいのに。キラがんがれ!

354 名前: 終末に向って 13 投稿日: 2003/09/01(月) 19:18
避けられない死を前にキラは思わず目を閉じた。だが、いつまで経っても予想した衝撃は来ない。恐る恐る目をあけて見ると、デザイアのビームサーベルはストライクのビームサーベルにかろうじて受け止められていた。

「大丈夫か、キラ!?」
「ムゥさん・・・・・・」
「なにぼぅっとしてやがる、さっさとそのでかいのを外して身軽になれ!」
「は、はいっ!」

急いでミーティアをパージし、フリーダムを自由にする。これでデザイアに運動性能で負けることは無いだろう。
アズラエルは割り込んできた邪魔者を苦々しい目で見やる。

「X−105ストライク。誰が乗ってるのかは知りませんが、目障りですね」

デザイアがその大火力を生かして容赦の無い攻撃を加えてくる。あらゆる面で性能に大きな差があるストライクでは勝負になる相手ではなかった。
必死に機体を操りながらも、覆しそうのない性能差に歯噛みするフラガ。

「くっそぉ、勝負にならんか!」
「くっくっく、死になさい、身の程知らずのお莫迦さん」

向けられるビーム砲。だが、その砲撃を邪魔するようにフリーダムが反撃に出てきた。立て続けに放たれるビームとレールガンの雨にアズラエルは舌打ちして回避運動に入る。
勝負は第2ラウンドへと突入していた。



激突するラクス艦隊とアズラエル艦隊。既にプラント直衛艦隊は壊滅状態であり、こちらはほとんど影響力を持っていない。
フリーダムがデザイアに翻弄され、ジャスティスもカラミティ、フォビドゥン、レイダーを1機で相手取っている状態では数の差がそのまま戦力差となってしまう。
AA、クサナギ、エターナルと5隻の連合軍艦艇は良く戦っていたが、数倍する敵を相手にすることはできなかった。

「護衛艦カンバーランド中破、後退します!」
「くっ、穴を埋める事は出来ないわね・・・・・・」

歯噛みするマリュ−。だが、次の瞬間には直撃の衝撃が艦を大きく揺さぶる。そして、その被害報告にマリュ−は青褪めた。

「右舷ゴッドフリートに直撃、完全破壊されました!」
「何ですってっ!!」

つまり、火力が激減したというのだ。砲力が落ちれば撃ち負けてしまう。AAはこれ以上敵の攻勢を支え切れないのは明白であった。

だが、このAAの窮地を救ったのは皮肉な事に最後までAAの敵として戦い続けた男であった。
イザークは被弾し、ボロボロになっているAAをスクリーン越しに見ると、いささか複雑な表情を浮かべ、同行してきた艦艇に指示を出した。

「全艦横一文字に展開、攻撃をアズラエル艦隊に集中しろ。MS隊は直ちに発進。敵味方が同じ機体を使っている。識別信号に注意しろ。俺もデュエルで出る!」
「連合の艦隊はどうします?」
「勝手にやらせておけ。どうせ命令系統が違う」

それだけの指示を出すと、イザークはMSデッキへと向った。
横一文字に展開したザフト艦艇は12隻。それがアズラエル艦隊に砲火を叩き付け出した。それにやや遅れて方形陣を形成する連合艦隊からもビームとミサイルが雨霰と叩き込まれ出した。
その砲火の下をデュエルを先頭にジン、ゲイツ、ダガーが戦場へと突入していく。
圧倒的な援軍を得たラクスはようやく愁眉を開いた。安堵の吐息を漏らし、自分の席に深く腰を掛ける。

「どうやら、勝てそうですわね、バルトフェルドさん」
「ええ、勝てそうです。まさか、こんな事になるとは夢にも思いませんでしたが」

バルトフェルドの言葉にラクスは一瞬だけ、自分を人質にしようとした赤毛の少女を思い浮かべ、彼女の最後の言葉を思い浮かべ、小さな声で答えた。

「私もです」

355 名前: 終末に向って 14 投稿日: 2003/09/03(水) 19:17
戦場は完全に2つの勢力に割れていた。ブルーコスモスの考えを受け入れるものと、受け入れない者とにである。もう1つの勢力、コーディネイター史上主義とも取れるパトリック指揮下の部隊は既に壊滅し、残るはクルーゼ率いる部隊だけとなっている。
クルーゼはザフト、連合、ラクス軍の合同部隊がブルーコスモス艦隊を押し返して行く光景をジッと見続けていた。

「クルーゼ隊長、ジェネシス第2射の準備があと2分で終わりますが、照準はどうしますか?」
「・・・・・・前方のエターナルに向けろ。ラクス・クラインを仕留める」
「宜しいのですか?」
「エターナルが奴等の中心だ。丁度良い目標だろう。裏切り者でもあるしな」
「分かりました」

部下が足早に去って行くのを見送りながら、クルーゼは再び考えた。何処で間違えたのだろう。本当なら連合とザフトはお互いに殺しあって全滅する筈だったのに、気が付けば双方が手を取り合って戦っている。
ラクス・クラインではない。彼女の言葉では連合は動かない。ならば、フレイ・アルスターの演説だとでも言うのか。馬鹿馬鹿しい、あんな小娘の言葉に惑わされるものか。
だが、では何が原因だというのだろうか。自分は丁度良い駒を手に入れたつもりだったのだが、実はあの娘はエースでは無く、ジョーカーだったのだろうか。自分は切っていはいけないカードを切ってしまったのではないだろうか。
クルーゼの悩みは消えなかった。


ジェネシスが発射態勢にある事に最初に気付いたのはザフト艦隊の艦艇だった。情報が渡されていたので、すぐにそれに気付く。

「ジェネシスだ。我々を狙っています!」
「まさか、我々ごと敵を一掃するつもりなのか!」

各艦の艦長は焦った声を上げ、連合艦隊にも警告が発せられる。それを受け取った艦は次々に戦場から後退を始めた。
そして、それを受けたエターナルではバルトフェルドが艦長席の肘掛を叩いて罵声を発した。

「ふざけるな、今から逃げ出して、どれだけの数が安全圏に達すると思ってるんだ!」
「バルトフェルドさん、キラとアスランをジェネシス破壊に向わせてください。発射を食い止めます!」
「無理です、今フリーダムは敵との交戦で手一杯です。これでジャスティスまで欠けば、戦局が一気に覆ります!」
「今はそれしかありません。キラが無理なら、アスラだけでも向わせなさい!」
「彼を殺す気ですか!」
「他に手段がありません!」

これ以上の議論はしない、という意思を言外に込めてラクスは言い切った。バルトフェルドは苦虫を噛み潰した表情で部下にラクスの指示を伝達する様に伝える。
ラクスの命令を受けたアスランはジャスティスをジェネシスへと向けた。既にフォビドゥンは破壊され、カラミティとレイダーも小破している。

「手前、逃げる気かよお!」
「逃がす訳ねえだろが!」

レイダーとカラミティが猛攻をかけてくる。アスランはそれを回避しながら振り切ろうとするが、2機のガンダムの攻撃は激しかった。

「くそっ、こいつら!」
「逃がさないって言ったろ」
「ここで仕留めさせてもらうぜ」

だが、カラミティもレイダーもジャスティスには取り付けなかった。強力なビームが3機の間を分けたのだ。

「早く行け、アスラン!」
「ディアッカか!」
「ちっ、まさかお前を助ける事になるとはな!」
「イザーク、お前も来てくれたのか!?」

バスターとデュエル。それに4機のゲイツと10を超すダガー部隊。

「早く行け、こいつ等は引き受けた」
「死ぬんじゃないぞ。貴様には言いたい事が山ほどあるんだからな」
「ディアッカ、イザーク、済まない」

アスランはジャスティスをジェネシスに向け加速させた。ミーティアの強大な機動力がたちまち戦場から遠ざけてくれる。
カラミティとレイダーは新たに現れたMS部隊との交戦に拘束され、追う事は出来ない。ジャスティスはジェネシス発射までにこれを破壊出きるのだろうか。

356 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/03(水) 20:45
職人さん淡々と投下していただき有難う御座います。
ちゃんと読んでますよ。

357 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/03(水) 21:08
乙っす

358 名前: 終末に向って 15 投稿日: 2003/09/04(木) 19:43
ジェネシス破壊に向ったアスラン。それを迎え撃つジェネシス防衛隊。あと数分で発射出来るのだ。ここで邪魔をさせるわけにはいかない。
だが、ミーティアを装備したジャスティスを食い止めるには、ジェネシス防衛隊の数はあまりに少なすぎた。一瞬で防衛隊を突っ切ったジャスティスは持てる火力の全てを使ってこれを破壊し始めた。
これを見たクルーゼは自らゲイツを駆って出撃したが、圧倒的な機動性を持つジェネシスを捕らえる事さえできなかった。

「くそっ、ここまでの化け物とはな・・・・・・」

かつて部下であった少年に最後の武器すら奪われたクルーゼは愕然とするしかなかった。
そして、ジェネシスは発射不可能なほどの被害を受け、使用不能となったのである。だが、ここでアスランも遂にミーティアを放棄した。被弾しすぎて使えなくなってしまったのだ。

「ジェネシスは潰したか。後はどうやって帰るかだが・・・・・・」

ジャスティスの前にはジェネシス防衛隊が立ちはだかっている。ジャスティス攻撃に集中して防衛隊を無視していた為、ほとんど無傷で残っているのだ。
アスランは自らの死を覚悟しつつ、コントロールスティックを動かした。


カラミティとレイダーを相手取っているイザークとディアッカは大苦戦していた。基本性能が余りにも違ううえにパイロットの技量も向こうの方が上だ。
連れてきたイザークの部下たちも、ダガー部隊もどんどん撃ち減らされている。

「畜生、これじゃいずれ殺られるぞ!」
「じゃあどうする、尻尾をまいて逃げるのか、ディアッカ!?」
「んなダサイ真似できるかよ!」

ランチャーを続けて撃ち放ってカラミティを牽制するが、返ってくる砲撃は自分に数倍するものだ。相手は後継機なのだから仕方ないのでが、ディアッカには面白くない。
面白くなくても敵の攻撃は止む気配さえない。SEEDを発動したキラとアスランでさえ手を焼くこの2機を相手にイザークとディアッカでは役不足だったのだ。
だが、運命という気まぐれな存在は、時として愉快なほどの幸運を運んできてくれるものらしい。
絶体絶命だった2人を救うかのように一条のビームがカラミティを襲う。カラミティは辛うじてそれを避け、ビームの射線を追いかけた。

「畜生、何処のどいつだ!?」

新たに戦場に突入してきた敵、それは3機のM1を率いる赤いMSだった。

「何やってるんだ、ディアッカ!」
「・・・・・・えっと、カガリだったか?」
「お前、まだ名前覚えてなかったのかよ!」
「いや、お前と話した事なかったしな」

とたんに崩れる緊張感。カガリはむっとした顔をしていたが、とりあえずディアッカへの追求は止める事にした。

「さてと、オーブの借りを返させてもらおうか!」

勝利の女神は、久しぶりに自ら戦場へと踊り出てきた。その赤い機体は戦場で一際輝いてさえ見れる。ストライク・ルージュ、それがこのMSの名前だった。

359 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/04(木) 21:58
しばらく来ていませんでしたけれど、神々の降臨に圧倒される次第です。
もう自分は種を見る気力なく、感想系でチェックしているだけですが…
フレイ様に出会えたことを神様に感謝しますでつよ。

フレイ様にケイレイ(゚д゚)ゞビシッ!

360 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/05(金) 01:23
>>358
 カガリたんもすきでつ。本編ではヒヤヒヤなわけですが、こちらでは勇ましい登場
キタ─(゜∀゜)─!

361 名前: 終末に向って 16 投稿日: 2003/09/06(土) 21:52
終わる事の無い戦い。ただ無意味に殺されていく兵士達。戦争では珍しくもない光景だが、それが戦争の現実だ
救われない絶望的な戦い。それの終止符を打つ決定的な力は戦場にはなかった。それは、戦場の外にあったのだ。

プラントにある評議会ビル。そこに武装した兵士達が大挙して突入してきたのが始まりだった。警備の部隊は油断していた所を付かれて制圧されてしまい、評議会ビルは短時間で制圧されてしまったのである。
執務室で銃を付きつけられたパトリック・ザラは憎々しげに指揮官らしき軍人を睨みつける。

「どういう事だ、ユウキ!?」
「クーデターですよ。あなたのやり方では戦争は終わりません」
「ラクス・クラインの言葉に惑わされたか!」
「どうとでもお取り下さい。我々はアイリーン・カナーバ議員を含む穏健派議員を奪還しました。以後の行政はご心配なく」
「貴様等あ!」

パトリックは激高したが、それで状況が変わる訳でもない。武装した兵士に拘束されてパトリックは連れていかれてしまった。
それを見送ったユウキはさっそく現在の状況の把握にかかった。

「地球のほうはどうなっているか?」
「順調の様です。各地で拠点を制圧、既に臨時政権の発足を宣言する用意が整ったと」
「そうか、いよいよだな。これで世界が変わる」

ユウキは感慨深そうに目を閉じ、天井を見上げた。そう、まさにこの瞬間をもって、世界は代わろうとしていたのだ。


そして、プラントと地球連合の双方から、同時にある放送が行なわれた。それは、世界を震撼させる放送であった。

「我々は地球連合、プラント政府の双方の合意の元に、休戦協定を結んだ事をここに宣言する。各地で交戦中の部隊は戦闘を中止し、次の指示を待つように」

この放送を聞いたザフト、連合の兵士達は驚愕した。いきなり戦争が終わったと言うのだ。しかも、双方の政府からの連名で。これで混乱するなという方が無茶というものだが、ともかく公式宣言で戦争は終わったと言われたのだ。
戦場に動揺が広がっていく。少しづつ戦いを止める兵士達。ヤキン要塞と破壊されたジェネシス周辺の戦火は少しづつ下火となっていった。
この放送を聞いたラクスは感動の余り涙を零した。ついに戦争は終わったのだ。あとはこの戦いを終わらせればすべての決着がつく。

「バルトフェルドさん、前方の艦隊に休戦を申し入れてください。戦いは終わりました」
「了解しました」

直ちにバルトフェルドが通信を送る。だが、帰ってきた答えはバルトフェルドをして顔を顰めさせるものであった。

「参りましたな、連中、戦いを止めるつもりは無いようです」
「・・・・・・何故、そこまでして戦おうとするのです?」

ラクスには理解できなかった。何故こんな空しい行為を続けようとするのだろう?
こうして、世界の戦いは下火になっていった。だが、ここの戦いは今だ終わる様子を見せなかったのである。

362 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/07(日) 23:19
>終末さま

乙です。いよいよクライマックスですね。
ある意味非常に手堅い解釈のSSで、楽しんでおります。
9月に入って、一人でこのスレを支えている感がありますが、完結まで頑張って投下してください!

363 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/08(月) 01:05
あのさ、まじでラクフレ気味なもの書いちまったんだが、
投下したら読んでくれる香具師いるか??
どこかにうpして、URL貼ろうかとも考えたんだが
それほどやばいシロモノにはならなさそうなんで。

364 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/08(月) 02:44
かまわんですよ。
それほどやばく無ければ、ここでも。
18禁の場合はリンクでw

365 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/08(月) 07:26
18禁だって結構投下されてるし、誹謗中傷目的じゃない限りは別に問題無いと思います。

366 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/09(火) 01:14
ありがとう。それでは、投下はじめてみます。
しかも言葉を削っているうちに、ただのシリアスになりました。

367 名前: 羽と鎖、陽と風 1 投稿日: 2003/09/09(火) 01:31

「僕が、止めなくちゃ」
あなたは何度、その言葉を繰り返すのだろう。
「僕には止める責任が、あるんだ。…だから」
あなたに課せられるものは、いつも、とても大きい。
悩みながら、泣きながら、それでもあなたは立ち向かっていってしまう。
そして。

「……キラ…」

うっすらと開けた眼に、光が眩く降り注ぐ。
起き上がると、寝室のカーテンは既に開けられていた。
「あら…また、寝坊してしまいましたわ」
ラクスはベッドから身を起こし、長いピンクの髪をくるくるとまとめた。
居間の方から、規則的な羽音が聞こえてくる。


「おはようございます」
居間の入り口からの声に、フレイは振り向いた。
「起きた?紅茶、入ったわよ」
「トリィ」
ポットを片手に持つ彼女のうえを、トリィが弧を描いて飛び回る。
「あら」
「トリィ」
「また、朝食の準備をさせてしまったのですね」
ラクスが、申し訳なさそうに言う。
フレイは、自分のカップに紅茶を注ぐと、ポットを置いた。
「いいのよ。そんなの……」

そう、私が朝食の準備をしてあげるのだ。
キラが帰ってきたら。私が。
だからそれまでに、ちょっとはまともに台所に立てるようにならなくちゃ。
キラは朝に紅茶を飲むだろうか?牛乳?それともオレンジジュース?
私はまだ、そんなことも、知らない…。

368 名前: 羽と鎖、陽と風 2 投稿日: 2003/09/09(火) 01:33

「…フレイさん?」
うつむいたままのフレイの顔を、ラクスが心配そうに覗き込んだ。
「どうかなさいましたの?」
フレイは我に返った。思わず、見られてはならない所を見られたような気になり、
いささかつっけんどんに、言葉を返す。
「なっ、なんでもないわ」
「そうですか…でしたら、あの」
言いにくそうに口ごもるラクスに、フレイは苛立ちのこもった目を向けた。
「なによ」
ラクスは、意を決したように、フレイを真正面から見据える。
「さっきからなにか、焦げくさいにおいがするのですけれど」

「トリィ」

フレイは一瞬ぽかんとし、あわててトースターの方へ振り返った。
「なんで早く言ってくれないのよっ!」
怒気をはらんだ声を軽くあげつつ、彼女はトースターの脇のボタンを押した。
チャンッ、と音を立てて、ほんのりと茶色に焼けたトーストが跳ね上がる。
「もうっ!」
フレイは唇を尖らせた。
ラクスはそれを見て思わず、くすりと笑ってしまう。
「なによっ…見てないでさっさと座りなさいよっ」
「そうですわね」
やつあたりともとれるフレイの言葉をあっさりと流して、
ラクスは食卓の席についた。
「でしたらそのパンは、私がいただきますわ」
ラクスは優雅な手つきで、トーストをさっさと自分の皿にのせてしまう。
「いいわよっ」
フレイは手を伸ばすと、それをまた自分の皿に置きなおす。
「いえ、でも私、言うのが遅くなってしまいましたし…」
「焦がしたのは、…私、だもの」
両者はしばし、一枚のトーストをはさんで向かい合った。
先に、相手から視線を外したのはラクス。
彼女は、ふっと肩の力を抜くと、微笑む。
「…はんぶんこ、しましょうか」
「〜」
フレイはまだ何か言い募ろうとしていたが、
ラクスの笑顔に毒気を抜かれたのか、彼女もまた肩の力を抜いた。
「…そうね」
「トリィ」
トリィが、フレイの肩にとまった。

369 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/09(火) 13:37
乙です。
キラを失った(?)2人が肩を寄せ合うというのもいいですな。

370 名前: 終末に向って 17 投稿日: 2003/09/09(火) 20:49
激突するフリーダムとデザイア。性能の差か、少しづつ追い詰められていくフリーダム。この2機の最強MSの戦いに介入できる者は存在しなかった。
放たれるビームをキラは必死に回避していく。お互いに実弾が効かないのでビームの応酬になっている。そして、ビーム戦では圧倒的にフリーダムが不利であった。

「駄目だ、このままじゃ押しきられる!」

キラは焦りを浮かべて時折反撃を加えるが、そのビームは空しく弾かれてしまう。まさに完璧な性能を持つデザイアにキラは絶望にも近い闇を感じた。
キラの動きに焦りを見たアズラエルは苦笑していた。

「おやおや、どうしたんです? 最強のコーディネイターともあろう者が、この程度でもう音を上げますか」
「なんだと!」
「違うと言うならかかって来なさい。最後くらいは憂愁の美を飾るのも良いでしょう」
「ふざけるな!」

キラは怒りに身を任せて攻撃を再開した。守りを無視した攻め一辺倒の攻撃にデザイアも僅かに押される。

「ほう、やれば出来るじゃないですか」
「お前なんかに、僕は負けたりしない!」
「おやおや、憎まれたものですねえ」

アズラエルが肩を竦めるが、キラの目は真剣だった。余りに真剣なキラの視線にアズラエルの顔から笑みが消える。

「僕は、絶対にお前を許さないぞ。戦争をここまで拡大し、核を使い、そして・・・・・・そしてフレイを殺したお前をっ!」
「・・・・・・そう言えばそうでしたね。フレイ・アルスターは君が好きだったんでしたか」

アズラエルは再び口元に笑みを浮かべた。そして、馬鹿にして問い掛ける。

「それで、敵を取ろうという訳ですか。ですが、そんなざまではね!」

ビームサーベルを抜き、斬りかかる。キラはそれを辛うじてビームサーベルで受け止めたが、パワー差からジリジリと押されていく。

「彼女も愚かでしたね。大人しく私の言うことを聞いていれば死なずに済んだものを」
「なんだと!」
「私に逆らうのがいけないんですよ。おとなしく従っていれば、戦後にそれなりの待遇をしてやったものを。馬鹿な娘です」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

その時、キラに明らかな変化が起こった。キラの表情は見ていて怖くなるほど冷たい表情で、強烈な殺意だけを見せていたのだ。
抜き身の刃のような鋭い殺意の視線を受け、アズラエルは明らかに怯んだ。そんなアズラエルにキラは冷たく言い放つ。

「・・・・・・殺してやる」
「な、何を・・・・・・」
「お前みたいな腐った奴は初めてだ。こんな奴のせいでこんな戦争が起きて、トールが死んで、オーブが滅びて、フレイが殺されたっていうのか!」

キラの目の色がまた少し変わっていく。そして、直後のフリーダムの動きが目に見えて変わっていた。まるでそれまで遊んでいたかのように動きの切れがよくなり、素早くなっている。
キラは、生まれて初めて純粋な殺意に身を委ねたのだ。

371 名前: 「羽と鎖、陽と風」改め「北風に羽、太陽に鎖」 3 投稿日: 2003/09/09(火) 23:37

戦争の終結後、二人は復興したオーブの郊外に、住んでいた。
決して大きくはない家と、少しだけこだわりの家具とを買って。
それ以上の、親の遺産は全て戦災復興のため寄付をした。

二人を結び付けているのは、戦争による数々の痛みと、
一人の少年への思い出。
彼は戦争の最後、搭乗していた機体の爆発の中、姿を消した。
しかし彼女たちは、彼が帰ってくると信じていた。

同じように、彼が生きていると信じるアスランとカガリは、彼を探しに出かけた。

あいつは自分で帰ってくるかもしれない、だから残って待つ者も必要だ、とのカガリの言葉に、
フレイはしぶしぶと、ラクスは静かな笑顔で、それに同意したのだ。
だから、彼女たちは二人で彼を待っている。今日も。

372 名前: 北風に羽、太陽に鎖 4 投稿日: 2003/09/09(火) 23:39

それは必ずしも、良い事ばかりを表すわけではなかった。

ラクスは地球軍時代から彼と共に戦っていたサイという青年から、
彼が最後まで、フレイの口紅を持ち歩いていた事を聞いた。
それが何を意味するか…
ラクスには、彼女自身の意識よりもなお深くで、わかってしまっていた。

フレイは後に彼に協力したディアッカというコーディネータの青年から、
彼に戦う意味を指し示し、前へ歩かしめたのがラクスだったと聞いた。
皆の知る彼は、フレイの知る彼とは違う事。それを変えたのがラクスだという事…
それは、彼女の想いの裏側で、不安として渦巻きつづけていた。

だからだろうか、共に暮らしていても、
二人はめったに彼の話をしない。


暮らし始めてから四ヶ月。
その一点において以外、二人はうまくやっていた。
寧ろ、心を許したと言ってもいい。
フレイは最近ではその天性の我儘ぶりを発揮してきていたし、
ラクスもまた、ところ構わずとぼけてはフレイの調子を狂わせていた。

そうやって等身大のまま理解しあい、ボランティアに協力する二人を、
「和解の象徴」と見る人々もいた。
もっとも、誰も二人の本当の身分など、知りはしなかったが。

373 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/10(水) 01:10
>>370
乙〜。本編とズレても気にするな。このまま突っ走れ!w
でも、もちろん最後にはフレイ様大復活だよな、な?

>>371-372
こちらも乙。なんか、イイ雰囲気だw
案外、フレイ様とラクスは出会いこそ最悪だが打ち解ければお互い地金を
出せあう親友になれるかもナー。一歩間違うとそれこそパトとアズの如く
そりあわなさそうなところがまた(((((((゚Д゚;))))))ガクガクブルブル

374 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/10(水) 13:00
>>370乙フレ!いい話だと思うんだけど、フレイ様(⊃Д`)

>>371
こういう光景は、種本編では見られないんだろうなぁ

375 名前: 終末に向って 18 投稿日: 2003/09/10(水) 20:52
ルージュの参戦それ事体は大して状況を好転させる事はなかった。所詮はストライクの色違いであり、カガリの技量もフラガに較べるべくもないからだ。
だが、ルージュの参戦は間接的な効果をもたらしていた。あちこちから連合、ザフトのMSが集まってきてオルガとクロトを集中攻撃し始めたのだ。

「ちいい、こいつ等!」

クロトは雲霞の如く集まってきたダガーやジン、ゲイツの集中攻撃を受けている。機体性能とパイロットの技量で大きく上回ってはいるのだが、流石に数十機のMSに囲まれては逃げるだけで手一杯だ。時折掠めるビームが少しづつ機体にダメージを蓄積していく。
そして、遂に致命的な一撃がレイダーを襲った。ダガーの放ったビームがレイダーのスラスターを掠め、焼き溶かしたのだ。
これで機動力を激減させられたレイダーは回避さえ難しくなり、集中されるビームに機体を貫かれてしまった。

「う、うわああぁぁぁぁぁぁっ!!」

爆発し、四散していくレイダーをモニターで見たオルガは一瞬我を忘れ、呆然としてしまった。

「ク、クロ、ト?」

最後の仲間を失った事で強気なオルガも流石に怯みが出たが、すぐにそれを掻き消すような怒気がこみ上げてきた。

「手前ら、ぶっ殺してやる!」

全ての火器を総動員して撃ちまくるカラミティ。圧倒的な火力に迂闊に近づいたMSが数機撃墜されてしまう。
だが、オルガはこの時致命的な間違いを犯していた。ビーム兵器主体のカラミティはバッテリーの消費も激しいのだ。たちまちバッテリーを使い果たし、危険値に達してしまう。
警告音でようやくそれに気付いたオルガは舌打ちして後退しようとしたが、動きが鈍った所をイザークに付かれ、ビームサーベルで左腕を半ばから切り落とされてしまった。

「こいつぅ!」
「しめた、バッテリー切れか!」

反撃が来ないのを見てイザークが歓喜の声を上げる。それを聞いたディアッカとカガリが攻撃を集中する。
火力重視で動きの鈍いカラミティにこれを単独で捌ききることは出来なかった。
カガリがカラミティをビームサーベルで切り裂き、止めをさした事でようやくこの宙域の戦いも終わったのだ。

カラミティを落としたカガリはようやく一息ついてシートに体を沈めた。

「終わったな、これで」
「そう言いたい所だが、まだ終わってないみたいだぜ」

ディアッカが宇宙の一角を指し示す。そこには、人外の戦いを繰り広げるデザイアとフリーダムが居た。ストライクもいるのだが、戦いの動きに付いて行くことさえ出来ないでいる。

「どうする、助けに行くか?」
「当たり前だろ。キラを見捨てられるか!」
「だが、あの戦いに加わっても、邪魔になるだけかもしれんぞ」

ディアッカは恐怖さえ浮かべた表情でその戦場を見ている。フリーダムが僅かに押されているが、桁違いの戦闘がそこでは行なわれているのだ。
そう、そこは、他者の介入を許さない戦場だったのだ。もし加わる資格があるとすれば、それはフリーダム級のMSに乗る者だけだろう。
だが、カガリ達の見ている前で、遂にフリーダムがビームの直撃を受けてシールドを破壊され、吹き飛ばされてしまったのだ。

376 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/10(水) 23:06
>>375
乙フレ!戦闘描写カコイイ!(・∀・)
ああ…あはれ常夏。

377 名前: 終末に向って 19 投稿日: 2003/09/11(木) 18:47
シールドを吹き飛ばされた衝撃でキラの意識は朦朧としていた。すでに疲労は限界に達し、ただ怒りと殺意だけで体を動かしていたのだ。
朦朧とする意識を必死に繋ぎとめようとするが、それも難しくなってくる。

「はあっはあっ・・・・・・駄目なのか、僕じゃ勝てないのか?」

薄れゆく意識の中で、キラは周囲の状況を確認した。多くの仲間たち。駆けつけた連合とザフトの援軍。これだけいればこの化け物を倒す事も出来るだろう。僕はここで終わっても良いのかもしれない。
ラクスに渡された指輪を返せない事だけが心残りだったが、キラはもう疲れ切ってしまっていた。この戦争に、守れなかった約束に、疲れていたのだ。
だが、目を閉じようとした時、キラの耳に聞こえる筈の無い声が飛び込んできた。

「もう諦めるのか、だらしないぞ、キラ」
「トール!?」

驚くキラの目の前で、トールが笑っていた。死んだはずのトールが。そして、オーブで降りた筈のカズィが、アークエンジェルにいるはずのミリィとサイが、地球の両親いた。

「キラは、まだ戦える筈だよ」
「私達は信じてるよ、キラの事を」
「お前は帰ってくるって言ったろ、俺達の所に」
「キラは、私の大切な子供よ」
「いつでも帰って来い」

友人達の言葉に、キラは動揺した。まだ帰れる所が自分にはあるのだろうか。それはこれまであえて考えないようにしてきたこと。
自分で勝手に帰る所は無いのだと思い込んでいた。だが、こんな自分を、出生を両親は承知で育ててくれたのではないのか。サイ達は自分をコーディネイターと知ってなお友人と呼んでくれた。
そして、あの赤い髪の少女は、憎いコーディネイターの筈の自分を愛していると言ってくれた。

そして、キラの傍らからもう1人の声が聞こえてきた。

「大丈夫よ、キラ。言ったでしょう、私の想いがあなたを守るもの」
「フ、フレイ・・・・・・」

キラのすぐ右側に赤い連合制服を着たフレイがいた。その顔は優しい笑みが浮かんでいる。

「疲れたなら、休むのも良いわ。でも、今はまだ立ち止まっちゃいけないでしょ」
「でもフレイ、僕は、君を守れなかった、あの娘も、トールも・・・・・・」
「だからって、あなたが死んでも良い訳じゃないでしょ。みんなが待ってるんだから」
「フレイ・・・・・・」
「さあ、もう一度立ち上がって。私の力も貸してあげるから」

キラの右腕にフレイの手が添えられる。そして、ゆっくりとそれを動かしていく。

「キラ、いくよ」
「ああ、フレイ、分かったよ」

そして、キラは再びフリーダムを動かした。

それは偶然だったのだろうか。キラはどれほどの時間意識が混濁していたのだろうか。だが、フリーダムが下から振り上げたビームサーベルは、デザイアの左腕を肩から完全に切り落としたのである。

「なんだとっ!?」

もう死に体だったフリーダムが突然動き出し、デザイアの左腕を切り落とした事にアズラエルが狼狽した声を上げる。
そして、キラは完全に目を覚ましていた。瞳には殺意では無く、決意を秘めて。

「ありがとう、みんな。ありがとう、父さん母さん。そして、ありがとう、フレイ。僕はもう、死んでも良いなんて思わないよ」

378 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/11(木) 22:10
>>377
乙フレ〜。

フレイ様が、フレイ様がキラを守ってる……っ
感動的なんだけど、でも切ねえっ

うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ

379 名前: すみません。。。 投稿日: 2003/09/12(金) 18:25
GG某と申しますが、
以前書いた自作SSをココに
まとめて貼ってもよろしいでしょうか?
・・・稚拙な出来ですが、記念に残したいのです。

380 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/12(金) 18:27
>>379

>>1に違反しなければ。

381 名前: GGの種 1 投稿日: 2003/09/12(金) 18:45
※48.49.50話の予想半々の構成です。
そこから膨らんでしまったものですので。。。
ヘンなテンションになっていますのでご注意下さい。

−−−−−−−−−−−−−−−−


☆ラスト3話の特大妄想www

・ジェネ1発目、連合艦隊&核部隊大半あぼん
・現場旗艦になったドミの主導権ナタル握る
・ナタル撤退決断、フレイ微妙に嫌そう、アズがゴネるが折れる
・ドミ補給、三馬鹿消耗、ヤクのダメージもう限界?
・ラクシズも一時休養、その間にアスカガでハグkissし、キララクで指輪kissゲット
−核非道痛感しVIPでも紅Gで出撃決意に心打たれたアスの一気押しで互助ペア参戦決定!
−フレイ病再発おそれ=あぼん予防に天性の媚び&癒し&記念品駆使、キラ籠絡し戦力保守完了!

・ジェネ2発目セット!
・ラクシズ察知して速攻出撃!
・ドミ、核満杯でリベンジGO!
・ジェネ2発目、月基地あぼん!
・ドミ、月あぼん鑑賞!w
・三馬鹿また出る、しかしヤク限界超えてカラミティ暴走乱射、仲間2機損傷!
・三馬鹿マジギレ2vs1で殺し合い、カラミあぼん→不明に!
・内ゲバの隙突かれてWミーティア+紅Gが急襲、レイダー&フォビドゥンあぼん→不明に!
・ドミのアズ、手足を失い不覚不利窮地の連鎖で凹み焦るが、虎の子核ボムでプラント突撃命令!
・ところがナタル、突撃攻撃するも核使用を断固拒否、フレイ歓喜し瞳、輝く!
・テンパったアズ、銃向けてフレイ人質にしてナタルに核使用迫る、フレイ負けずナタル折れず!
・ブチギレのアズ、フレイ撃つがナタル・タックルに邪魔されて転び、同時に砲火受けて船体大振動!
・混乱ブリッジ、指揮麻痺巨艦、ザフトがタコなぐりにして一気に大破ピンチ!
・アズ、ダウンの隙に、ナタルフレイの乙女組脱走、しかしナタル肩に負傷ややキツイ!
・アズ、艦長席に座り、核ボム突撃命令するも、船体へろへろ!w
・最後の意地、散華咲かせるべく、アズ、プラントにドミぶつけようとするも、爆砕あぼん!
・かろうじてフレイナタル、救命艇で脱出、AA通信コードで連絡して合流目指す!
・AAクルー、乙女組のピンチに驚愕、速攻向かうが乱戦中で遅れ気味ガクブル!
・連合残存、一部の核がジェネ、ヤキンに被害もたらしザフト弱体化!
・永遠クサナギ、好機逃さず接近し一気にあぼん狙う!
・停止したジェネ内部、びびるパト父を仮面が射殺、ジェネ自爆セットし神意Gに乗って脱出!
・後衛、Wミーティア+紅G、そろそろラクシズと合流に向かう!
・途中、キラがピキーンきて離脱し、AAの所へ!
・アスラン、父と決着のため、ジェネに取り付き、紅G他に守り頼んで、ジェネ内部潜入開始!
・一方、仮面神意G=仮面MS、AA見つけて迫る!

382 名前: GGの種 2 投稿日: 2003/09/12(金) 19:04
・不運にも、合流寸前のドミ救命艇がAA近くで被弾停止して動けず漂流中!
・仮面MSの攻撃に、救命艇が近く火線制約大きいためAA応戦しきれず中破!
・あわや救命艇まであぼん危機にキラ自由ミーティア駆けつけ激闘決戦開始!
・その頃、アスラン、ジェネ中心部司令室で倒れる瀕死の父と再会&会話、和解して死別!
・アスラン、次代担う決意と仮面あぼんに燃え、ジェネ自爆までに脱出急ぐ!
・一方、仮面MS強すぎ、小回り利かして対応するためキラ、自由ミーティア外し格闘!
・と、AA経由の連絡で救命艇inナタフレ知らされキラ、一気に驚愕テンパる!
・仮面も通話聴いていてフレイ多少意識する!
・キラ隙出来て救命艇にビーム迫るが間一髪、駆けつけた遺作がフォロー!
・仮面、遺作が相手とわかるや裏切り陰謀バラしてテンパらせる!
・遺作、速攻で大破するも、ついに種割れして驚異的な粘りで救命艇護る!エルタン回想アリ!
・棒立ちだったキラ自由、遺作の奮戦に目ェ覚める!
・ピキーン兄貴&痔ようやく前線から駆けつける!
・多勢に無勢? 救命艇囲んで安全確保し、AAから近寄って収容完了!
・仮面はザコなど要らないとばかりに大火器で兄貴痔をボコり、大気圏へ向かう!
・キラ自由、仮面を追って加速!
・AA内部、救命艇からナタフレ出てくる、ナタルは係員の手で移動寝台から医務室直行!
・フレイ、おそるおそる、AAクルーの前に現れる!
・ブリッジから迎えに来たサイのフォロー、いたわりの言葉とキラへの気遣いなど、
互いの成長を知り、わだかまりが解け、感涙、和解!
・フレイとサイ、ブリッジに上がり、フレイはモニター見て混戦乱戦に愕然とするが、
すぐにキラのことを思い起こし、ミリの昔の席について乗員フォローに入る!
・仮面の火器で損傷した各機は退避して中破したAAとともに戦域離脱する!
・そのとき、ジェネがついに 自爆 !!!
・途中、アスランの連絡と前後して、ジェネ自爆の業火がヤキン要塞をも砕き、
多くの艦隊が沈む!
・熟考の末、エザリアら幹部連が共闘表明し、ラクス永遠に艦隊集結始める!
・停戦でなく共闘なのでラクスこそっとぼやく、虎苦笑、ラクス、遠く見つめ、「キラ...溜息?
・辛くも事前に離脱していたラクシズ2隻とともに、キラを追尾しつつ合流をはかるAA!
・事態を知らされたアスランカガリ2機もキラそして仮面を追って猛加速する!

383 名前: GGの種 3 投稿日: 2003/09/12(金) 19:08
・その頃、キラは既に大気圏に達しつつあり、すぐ前方を行く仮面に迫っていた!
・追尾しつつ仮面と口論するキラ、仮面MSの核搭載と地球攻撃の意図を告げられ
激しく動揺する。サシwの決着が迫る!
・その時、通信機のチューナーから響くキラと仮面の叫びが、フレイの耳に入り、
反射的にチャンネルを合わせ「キラ!!!」と絶叫していた!
・小さなモニターに映った久しぶりの互いの顔!フレイ様、落涙止まらず!!!
・AAクルーも気がつき、チャンネルを合わせ、皆で各モニタのキラを見つめる!
・フレイはありったけの想いを告白し、モニターに手を当て、キラもモニター越しに
手を触れ合わせる!その一連のやりとりはキラフレの評価を一気にを押し上げ、
クルー皆を感動させた。短いやりとりからもキラはフレイの深意を十二分に
理解できており、大きな満足を感じていた。
・だが、今は泣けない。すぐ目の前に巨大な哀しい敵、クルーゼがいるのだ!
「必ずフレイ、君を護ってみせる!」
・キラはフレイの存在を確認できたことで無限の高ぶりとともに
最大の種割れを発動させた!
・かくして、キラ自由は仮面神意Gに追いつき、ガチを開始した!!
・キラは今や鬼神と化し、仮面の次の瞬間の動きが見えていた!
最高のコーディゆえの能力なのか、愛の奇跡か、キラはいわば、
空間予知によって、仮面の攻守をことごとく封じていた。
・もはやいつでも仮面MSの急所を突き打ち倒すことが可能なのだと、
戦いながら、キラには予知できていた。己の次の一撃さえも読めるのだから!
・だがキラは、その、予知の境地にある今だからこそ、
不殺の信念にとらわれて、必殺の一撃を予知するたびに、自ら外していたのだった。
「このままではいけない!」
・いずれ核が撃ち込まれてしまう悪夢、NJCとフレイの心痛、そういった想念と恐怖に駆られた!
・そのとたん、キラは狼狽し、種割れが解けてしまった!
・見た瞬間、隙をついてきた仮面の必殺の一撃が迫っていた!

384 名前: GGの種 4 投稿日: 2003/09/12(金) 19:12
・まっしろに停止したキラの脳裏に、フレイの声が響き、その顔が心の視界全体に広がった!
・その瞬間、キラはただただ、フレイの確かな幻影に向かって飛翔した!
・それは正に、愛の磁力だった!だだ無心に、キラは磁力のままに相手に組み付いた!
・キラはただチカラに惹かれるままに、抗う仮面MSの無数の触手を瞬時になぎ払い、
急所ユニットに激突し、自らの機体の頭がひしゃげるほどの圧力を加えていた!
・修復不可能な急所へのダメージを受けても、仮面は無表情のままだった。
・キラは悟った。彼は僕たちの器を超えた世界に心をあずけた存在であり、
今の若く未熟な自分の言葉は決して届かないことを悟っていた。
・その次にはもうキラは判断を下していた。自由Gの自爆装置を迷いなく起動させ、
自動脱出ポッドの作動カウント表示に見入っていた。
「私の人生は楽しかったよ、キラくん、色々とな!」
・仮面の遺言と止まらない高笑いが続いていた。しかしキラにもう動揺はない。
・種子さえも異なってしまった彼の死と引き替えに、その死を与える己の罪と引き替えに、
たとえ仮初めであっても、世界に平和をもたらしたいとの想いが溢れていた。
その想いは全てフレイにつながっており、今のキラにはそれだけで、
いつまでも十分だと思い信じることができたからだ。
。。。やがて、ポッドが機体から離れた。少しして、自由の自爆音と、
禍々しい核を詰め込んだ、神を騙った黒い機体、ブロビエンスGの爆砕音も聞こえてきた。
・キラにはわかっていた。ポッドは進入角度から大気圏突破できないことを。
危険域を超えて大気圏の深部に触れてしまっていたことも。
・このまま落下すれば死ぬかもしれなかった。だが怖くはなかった。
だだ、疲れた体の奥にある心の窓からフレイの微笑みだけが見えていた。
その微笑みが持つ、癒しの心地よさだけに包まれ昏睡しけたとき、
・今、再び、フレイ自身の、そして、仲間達の叫びがキラの耳と心に激しく響き渡った!
「フレイ・・・アスラン!?」
・キラの名を呼ぶ、最も近く親しい声の主は、キラと魂を分け合った
もう1人のSEEDを持つ戦士、アスラン・ザラだった!
「キィラアアア!!!」

385 名前: GGの種 5 投稿日: 2003/09/12(金) 19:15
・落下加速加熱してゆく自由のポッド
・「フレイ・・・!」
・内部で汗だくでうめくキラ、瞳は種割れし体からオーラ
・ポッドに手を伸ばす正義、ギリギリで届かないまま落下加速加熱続く
・クルー皆の絶叫が宇宙にこだましていく
・フレアスラクの叫びと形相が交錯連鎖する
・アス種割れして正義加速増し少しずつポッドとの距離縮める
・アス、「キラァアアアアア!!!」さらに絶叫し自身と機体オーラ出て再加速
・瞬間、ポッドに種割れイメージが幾重にも重なりオーラの帯がのびて
膜が包むかのように見えて落下速度が落ちる
・ついに正義が追いつきポッドを手につかみ取って急速上昇離脱する
機体から光の帯が伸びたように見える
・AA他クルー皆大喜び&号泣
・涙を浮かべてキラをねぎらうアス
・息絶え絶えで礼を述べるキラ
・正義は一気にAAへ向かう
・AA内部整備エリアで表面のただれた種のようなポッドを開くアス
・緊張して見守るAAクルーそしてサイ&フレイ
・ポッドが開き疲労困憊のキラが転がり出て膝をつく
・「キラ!」叫んで駆け寄るフレイがキラに抱きつき涙声で次々喋るが聞き取れず
・周囲うるうる、ミリ顔面ふさいで泣き、アスは少し寂しげに伏し目で頬染める
・「本当に・・・良かったな、キラ!」サイ涙声漏らして眼鏡はずして腕で涙隠す
・キラに縋り付いたまましゃくり上げるフレイの背に手を回すキラ
・「フレイ・・・」膝建ちで抱き合いやがて見つめ合うキラフレ
・フレイ気まずそうに視線外し俯くがキラが両頬を挟んで顔を持ち上げ見つめ合う
・涙で顔面ズルズルのフレイをじっと見つめた後、初めて自らkissするキラ
・瞬間目を開いて拒むがすぐに受け入れるフレイ、キラの瞳からも怒濤の涙
・ロングキッスでぷるぷる無敵ラブラブ完成!

386 名前: GGの種 6 投稿日: 2003/09/12(金) 19:17
・場面替わってAAブリッジ、クルーに囲まれるキラフレ
・モニターにはラクシズの面々が次々現れて短い談笑と報告
・やがてラクスがモニターに登場、キラフレ生還成就を喜び、意味深げな微笑みでキラを促す
・促されたキラ、少し躊躇しつつもすぐに真顔になってフレイの耳元にささやく
・聴いたフレイは動揺するがキラが無言でラクスからの指輪を抜き取りフレイの手を取ると、
抗わず素直に指輪をはめてもらう
・気恥ずかしくも暖かな雰囲気のクルー達
・涼しげな笑顔のラクスがモニタの中にいる
・カガリがモニター越しに頬を染めているのをアスはブリッジの端で見つめ、
微笑み合うキラフレをそっと一瞥してから船を離れ、クサナギのカガリの所へ向かう
・やがて、三隻の「箱船」は再び宇宙を駆けて行く
・キラフレはひとつのベッドで穏やかに眠っている

→エンドロールへ

387 名前: GGの種 7 投稿日: 2003/09/12(金) 19:20
エンドロール・スタート
ED曲:『ファインド・ザ・ウェイ』
(フルコーラスです)

エンドロール

・前半−終戦(止め絵)
・部隊収拾/プラント全景/ラクス演説/観衆と記者団他/エザリアと握手会見
・地球/連合ビル/調印式/各地核処理作業/ブルコス血バレ関与報道
・各地復興/新生オーブ報道/ヘリオ2建設中/今度こそ慰霊するラクス

・後半−後日(セリフ無し)
・3人娘&エリカ−M2アストレイ改の模擬戦テスト&監視(隣に夫とジュースのむ息子)
・アスカガ−ラフスタイルでオーブ海岸散歩
・マルキオ−小屋で書き物タイプ
・ナタル−ロングヘアになり宇宙艦のブリッジで指示叫び中
・ムウマリュ−乳児を世話しており壁面にAAクルー皆の写真
・ディアミリ−トールの墓の前に献花持ち立つ
・サイカズィ−電子図書館でお勉強中
・イザ−なんかTVで背広来て答えてる
・虎愛鮹−ショッピングとコーヒーブレイク、荷物持ちと車椅子押し、2+0.1w
・キラフレ−小高い丘の上に立つ2人のシルエット
      風が吹いて口元笑う肩にトリィ
      つないだ指先ラクスの指輪光る

・終幕−宇宙、地球、トリィの飛翔でシメ


―――――――――――――――――― FIN ――――――――――――――――――

388 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/12(金) 19:52
>>387
乙…と言いたいが、SSにするかと思っていたぞ。

389 名前: 終末に向って 20 投稿日: 2003/09/12(金) 20:50
いつ果てるとも無く続くキラとアズラエルの戦い。余人の介入を許さないその戦いは凄まじいを通り越して誰もが振るえ上がるほどのものとなっている。
ようやく帰ってきたアスランは戦いを遠巻きに眺めているだけの仲間達に声をかけた。

「何をしてるんだ、どうしてキラを援護しない!?」
「援護しろったって、どうやれって言うんだよ?」

ディアッカの問いにアスランは改めて戦場を見た。イザークのデュエルとフラガのストライクが追い付こうと必死になっているが、追い付くどころか影を追うことさえ出来ないでいる。あの2機の戦いには普通のMSでは介入できないのだ。
アスランはそれを悟るとジャスティスを加速させた。あそこに加われるのは自分しかいない。
それを見送ったクルーゼは考え込んでいた。彼等は何故戦うのだろう。キラ・ヤマトは、自分の出生を知りながらそれでも戦い続けるというのか。何故だ、分からない。
クルーゼは1つの間違いを犯していた。ひたすら思考のループに陥っていたクルーゼが最後に辿りついたのは、演説をするフレイの姿だった。何の計算も打算も無く、ただ自分の想いを口にした少女。
そして、自分が間違えていた理由、ようやく彼がそれに気づいた時、彼はくぐもった笑い声を上げ始めた。

「ク・・・クククク・・・・・・そうか、私は・・・・・・」

何かを悟ったクルーゼ。そして彼もまた戦場へと身を躍らせた。


キラとアズラエルの戦いに介入してきたアスラン。ジャスティスが加わった事で戦局は一気に有利になるかと思われたのだが、アスランはようやくこの場に立つ二人の凄さを思い知らされる事になる。

「は、速い!」

そう、アスランから見てもこの2人は速過ぎた。ジャスティスでさえ付いて行くのがやっとというレベルの戦いをしている。
恐ろしいレベルの戦闘を行うキラ。そしてそれと互角に戦うアズラエル。この2人は一体何者なのだろうか。キラは本当に自分と同じコーディネイターなのだろうか。この時アスランは初めて疑問を抱いた。

ビームサーベルを振りかざすフリーダム。それに応戦するデザイア。両機とも満身創痍になりながらも戦いを止めようとはしない。

「ふははは、流石です、キラ・ヤマト。私とここまで戦えるとは!」
「お前は何なんだ。ナチュラルじゃないのか!?」
「ナチュラルですよ。薬と身体改造で限界まで強化された、ね」
「えっ?」
「コーディネイターに対抗する為、私は体を改造したのですよ」

キラは愕然とした。何故そこまでするのだろうか。狂ってるとしか思えないが、アズラエルは正気だった。だからかえって理解できない。
この狂気こそが戦争をここまで酷くした原因なのだ。だが、この男を倒せるのかという不安がキラにはある。今の自分はここまで全てを捨てては戦えないからだ。
だが、その時1つの影がデザイアの背後から近づいて来ていることに、気付いた者はいなかった。

390 名前: 終末に向って 21 投稿日: 2003/09/13(土) 20:10
デザイアに攻撃するジャスティス。だが、デザイアはそれを容易く回避し、あまつさえジャスティスに反撃を加えてきた。

「さっきからうるさいんですよ。邪魔しないでくれますか!」
「貴様こそ、ここで終わりにしてやる!」
「アスラン、駄目だ!」

キラの叫びも空しく、ジャスティスは容易く背後を取られ、スラスターを破壊されてしまった。デザイアが武器をほとんど使い果たしていなければ止めを刺されていただろう。

「そんな、俺が・・・・・・」
「アスラン、大丈夫!?」

キラが駆けつけて来てデザイアを追い払う。ジャスティスの傷は致命傷ではなかったが、戦闘が可能な状態ではなかった。

「アスラン、下がってくれ」
「だけど、キラ!」
「悪いけど、足手纏いだ!」

それだけ言うと、キラは再びデザイアに向かっていった。ビームサーベルを構え、後先考えずに斬りかかっていく。デザイアもそれに応戦しようとビームサーベルを振りかぶった。

「さあ、これで決着ですよ。キラ・ヤマト!」
「アズラエルゥゥゥゥゥ!!」

だが、2機が切り結ぶよりも早く、1機のMSがデザイアに突っ込んできた。それは、白いゲイツ。
それに気付いたアズラエルはそのゲイツを切り払った。だが、ゲイツの勢いは止まらず、持っていたビームサーベルを体ごとぶつけるようにデザイアに突き刺した。コクピット近くに突き刺さり、アズラエルがスパークに襲われる。

「な、なんだと・・・・・・」
「く、くふふふふ、悪いが、この辺りで終わりにしたいのでね」

ゲイツに乗るクルーゼの声がフリーダムの通信機にも入ってくる。キラはその声を聞いて驚いた声を上げた。

「クルーゼ、どうして?」
「ふふふ・・・・・・キラ・ヤマト。私はいささか頭だけで考え過ぎていたようだ。もう少し早く君や、フレイ・アルスターのような人に出会い、自分を見詰め直せていたなら、あるいはと思ってな」
「クルーゼ・・・・・・」
「私の馬鹿な復讐心が起してしまった戦争だ。ならば、私の手でケリをつけるべきだろう」

不敵に笑うクルーゼに、キラは全力で呼びかけた。

「それが分かったなら、死んじゃいけない。生きなくちゃ駄目だよ!」
「ふっふふふふ、何処までも優しいのだな、君は。フレイ・アルスターが惚れる訳だ」

クルーゼは微笑した。もうすぐ機体が爆発するというのに、 何故か不思議と落ちついているのだ。

「私はもう長くはない。せめて死ぬ時くらい自分で決めたいのだ」
「・・・・・・そんなのって」
「キラ・ヤマト。フレイ・アルスターを利用したのは私だ。彼女を死なせた原因は私にもある。済まなかった」

クルーゼに謝られても、キラはどう答えて良いのか分からなかった。フレイを利用したこの男を憎む気持ちは確かにある。だが、この男を哀れむ気持ちも確かにあるのだ。
クルーゼは戸惑うキラを見て、最後に忠告のような言葉を残した。

「君は、私のようにはなるな。孤独感に押し潰され、世界を憎むようにはなるなよ」

それを最後に、クルーゼからの通信は一方的に打ち切られた。もうどれだけ呼びかけても返事は返って来ない。
そして、デザイアを道連れに、クルーゼのゲイツは爆発したのである。

こうして、世界中を巻き込んだ大戦争は終結した。地球とプラントはクーデターによって強硬派政権を打倒し、破滅的な最終戦争をどうにか回避したのである。
失った物は大きく、得る物は何一つとしてない戦い。だが、それでもとにかく戦争は終わったのである。もう核ミサイルがプラントを襲うことも、ジェネシスが地球に向けられることもない。将兵が数百、数千人単位で殺されることもないのだ。
だが、残された者たちは、胸の内に開いた空白に苦しむ事となる。それが、戦後に生き残った者の背負う十字架なのだ。

そして、今度は破壊された世界を再建するという、より困難な戦いが始まろうとしていた。

391 名前: 終末に向って・作者 投稿日: 2003/09/13(土) 20:22
さて、これでバトルは終わりです。感想くださる皆様。こんな駄文にここまで付き合ってくれてありがとう
こっから先は戦後になります。それぞれの歩む道という感じですね。
もう少し続きますので、お付き合いください

392 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/14(日) 08:52
前スレで「宇宙、重なる思い」を投下していた者です。
コミケで中断した上、その後創作意欲が薄れて放置してしまいました。
謹んでお詫び申し上げます。

ところで、最近の種を見て新しいのを書いてみようと思いまして、
また書いてしまいました。最後まで完成していますので、二回にわけて
投下しようと考えています。
 オリジナルMSも出てくる上、非常に鬱です。
 その点はあらかじめご了承願います。

393 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/14(日) 08:58
設定
地球連合軍重MS「フォートレス typeE」

全長50M、全幅40M。
NJCによる核融合炉を搭載した重MS。
月から無補給で月⇔プラント間を往復可能。
乗員は指揮官兼操縦手、副操縦手、砲撃手、機関手、銃手の5名。
機体内部に仮眠室もあり、一種の小型艦艇とも言えるかもしれない。
レールガンと大威力ビーム砲、ミサイルを満載し、
尚且つTF装甲に守られているため火力と装甲は全MS中最高。

394 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/14(日) 09:04
地球軍重MS「ガンシップ・フォートレス」

フレイから得たザフトNJCを参考に、小型化したNJCを搭載したフォートレス。
通常フォートレスが対要塞/艦艇戦闘を意識しているのに対し、
こちらはMS戦闘に特化した、移動要塞とも言うべき仕様。
パイロットも操縦手と砲手の二名のみになっている。
推進ユニットも、長距離移動ではなく機動戦闘に対応したものに換装され、
フォートレスの火力、装甲を維持しながらもダガー程度の機動力も併せ持つ。
ミーティアを装着したフリーダムを上回る、最強のMS。

イメージとしてはノイエ・ジールです。

395 名前: 夢の向こう/1 投稿日: 2003/09/14(日) 09:06
 ザフト軍宇宙要塞ボアーズは核の光の中に消えた。
 残されたのは焼け爛れた巨岩とろう細工のように醜く変形し融解したザフトMSと戦艦の残骸。
 無線はかろうじて生き残った兵士の悲鳴と助けを求める声で溢れていた。
 その中を、地球連合軍MSダガーが飛翔し、未だ稼動状態にある戦艦やMSを容易く撃墜していった。
 核の衝撃によってザフト兵は放心状態で、とても反撃できる余裕はなかった。
「これが……核」
 地球連合軍アークエンジェル級強襲揚陸艦「ドミニオン」艦長、
ナタル・バジルール少佐はやっとのことで声帯を振るわせた。
「いやぁ、ホント凄いですねぇ。
 どうです?綺麗に、そしてあっという間に片付いたでしょ?」
 ドミニオン艦橋。艦長席の左隣にどっしりと腰を落ち着けた優男風の青年がピクニックでサンドイッチを進めるような口調で答えた。オーダーメイドの高級スーツが戦闘艦艇にはとても相応しくないが、身体全体から立ち上る狂気がそれを打ち消していた。
 ブルーコスモスの盟主、ムルタ・アズラエルである。

396 名前: 夢の向こう/2 投稿日: 2003/09/14(日) 09:07
「…貴方は!!」
 普段から鋭い声と明確な論点で部下達に恐れられるナタル少佐だが、この時ばかりは違った。
 詰問するような、咎めるような意志が明白に込められていた。
 アズラエルは軽く手を振って舌鋒をやり過ごした。
「核を使うのは反対ですか?実は僕も反対です」
「だったらなぜ!!」
「では、貴方ならどうしました?」
 アズラエルは挑戦的にナタルを正面から見つめた。
「正攻法ですか?正面からボアーズを攻略する?
 それで何人、未来ある若人が散るんでしょうね?
 味方の損害を最小限に抑え、敵には最大限の打撃と衝撃を与える。
 その為ならば何でもする。軍事常識ではありませんか?」
 ナタルは返答に詰まった。
「それにね」
 アズラエルは愉快そうだった。
「我々には時間がないんです。核を使った以上、宇宙人共も対抗手段を使ってくるはずです。
 我々はそれを阻止しなくてはならない」
「対抗手段?」
 襟首を掴まん勢いでアズラエルに詰め寄ろうとしたナタルだが、上部通信席から響いてきた少女の声が動きを止めた。
「艦長、サザーランド司令官より入電!作戦は第二段階に移行するとのことです」
「司令官より?フレイ、詳細は?」
「わ、わかりません。本艦が入電した通信はそれだけです」
 萌えるような赤い髪を後ろにまとめた少女、フレイ・アルスターは手元のコンソールをカタカタと叩いたが、
コンピューターは先ほどと同じ返答を返してよこした。
 もう一人のオペレーター、レイ・バーグ曹長も背中越しに振りかえり、フレイに対して首を振ってみせた。

397 名前: 夢の向こう/3 投稿日: 2003/09/14(日) 09:09
「どういうことだ…?作戦など、何も聞いていないぞ?」
「それはね、私が知っているからです」
 アズラエルの何気ない一言に、艦橋内全員の視線が彼に集中した。
 アズラエルは手元のキーをポンポンと軽く叩き、封印された情報を呼び出した。
 やや間が開いて機密データがドミニオン艦橋のメインパネルに映し出される。
 アズラエルは立ち上がり、大観衆の注目を集めたオペラ歌手のように両手を広げ、ゆっくりと左腕をパネルにむけた。
「隠していて悪かったが、今こそ話そう。これが今回の作戦の要。
 そして、我々人類か、それとも遺伝子を弄んだ宇宙人か、どちらかが地球の覇権を手にするか。
 その運命を決める戦いの幕開けだ」
「こ、これは!」
 軍人として優秀なナタルは、その正体を一目で見抜いた。
 それは、ザフトがジェネシスと呼ぶ宇宙要塞だった。
「そう。プラントから地球を直接狙えるエネルギー兵器。
 我々の目標はこれ。こいつを破壊しないことにはザフトは戦争を止めないだろうからねぇ〜」
 何がおかしいのか、くつくつと笑いをこぼす。
「こんだけ大きいと、普通の手段じゃ攻め落とせないよね。
 我々はこれから進路変更し、ジェネシス破壊に向かうんだけど、戦いが長引くとザフトはこいつを使うかもしれない。
 艦長、君にこの要塞を手早く落せるアイデアはあるかな?」
 暗に核を使えという命令。ナタルは反論できなかった。
 上部席に座るフレイは、ナタルの肩が震えているのを見た。
 やりきれない気持ちに襲われ、彼女は目を逸らした。

398 名前: 夢の向こう/4 投稿日: 2003/09/14(日) 09:11
 宇宙に浮かぶ、円錐を組み合わせたような巨大構造物。コロニー。
 そのコロニー住民で構成されたプラント議会議長パトリック・ザラは怪訝な表情を浮かべていた。
 彼だけでなく、周囲の議員や軍人達も同様だ。
 その原因は、戦術モニターに示された地球軍の動きである。
 ボアズ要塞を落とした地球軍は補給を済ませ、ザフトの本拠地にして中枢たるこのプラント群に侵攻をかけると見せかけるや、素通りしたのである。
 急遽編成された防衛隊は肩透かしを食らい、射程外を悠々と通過していく艦隊をぼんやりと眺めていた。
 ミリタリーバランスを一変させたアラスカ攻略失敗、パナマでの惨敗、プラント歌姫ラクスによるフリーダムの強奪、何よりも愛息子アスラン・ザラの裏切りとジャスティスの喪失。この2ヶ月で、彼は20歳も年を喰ったように思えた。しかし「俺がしっかりせねばプラントは終わりだ」という驚異的な責任感と意志により、彼は周囲に猛烈な存在感と気迫を醸し出していた。
 だが、彼が右腕と頼む仮面を装着した男、ラウ・ル・クルーゼが、
その仮面の下で嘲るような色を瞳に浮かべていたことは気付かなかった。
 クルーゼは醒めた目でプラント最高指導部の面々をそっと見渡した。
(ふん、貴様等に明日はない。
 明日になれば、コーディネイターであることを魔女の釜で悔いることになるのだからな)
 一方で、彼にも予想外のことがあった。
 地球連合艦隊の動きである。
(直接プラントに攻撃をかけてくると思ったのだが…。どうしたことだ?
 核を撃たせ、そして激怒したザラがジェネシスを発動させる…。
 どこでシナリオを逸脱したのだ?)
 クルーゼは間違いを犯していた。
 彼がシナリオを書いたことは事実であったが、役者は誰もシナリオを知らないのである。
 したがって、彼は意図と違う演技をする役者を止めることも軌道修正することも出来なかった。
(…まさか!!)
 その時、ヤン・ドウーイェから緊急入電が入った。

399 名前: 夢の向こう/5 投稿日: 2003/09/14(日) 09:14
 連合艦隊はジェネシスを包囲するように展開した。
 万一ジェネシスの砲口が彼等に向けられた場合、被害を最小限にする為である。 
「MS部隊、発進!」「主砲の射線上には展開させるなよ」
 戦艦や空母から、地球連合主力MS「ダガー」が発進し、宇宙空間にみごとなフォーメーションを組み上げる。
 MS部隊の展開が終わると同時に、艦隊は主砲の一斉射撃を行なった。
 直撃すればフリーダムでさえ一瞬で蒸発させる戦艦のビーム砲。
 漆黒の空間を閃光をまとった死神の鎌が一閃する。
 ビームは何も無い空間に虚しく撃ちこまれ、エネルギーを浪費したかに見えた。
 しかし、人の目やセンサーは騙せても、殺意を持って撃ちこまれるビームに対してミラージュコロイドは無力だった。融解した隔壁や構造物が砕け散る。よくよく観察すれば人体だった蛋白質や衣服も混ざっているだろう。
 偽装シールドの効果が薄れ始めた要塞に対し、連合艦隊は容赦なく砲撃を続けた。
 ジェネシス守備隊MSによる反撃は小規模にとどまり、艦隊にたどりつくことなくMS防衛網に引っかかって撃退された。
 元々要塞駐留防衛軍の規模は小さい。この要塞が完全な機密であったこと、それ故に目立つ哨戒活動が出来なかったこと、そして連合艦隊がプラントを襲う進路をとったことでパトリックが慌てて守備隊を呼び戻してしまったからである。
 では、なぜ連合軍はジェネシスの存在を知っていたのか?
 実は、諜報活動により情報を入手。その位置を特定していたのである。
 ザラ派、反ザラ派、コーディネイター至上主義派、穏健派、シーゲル派。
 様々な派閥が乱立していたザフトは、地球連合の諜報活動に危機管理の甘さを露呈した。
 情報は漏洩し、さらに偵察活動によって物資の搬入先を突き止められた。
 ジェネシスそのものの偽装は完璧だったが、物資運搬船や技術者達を送り迎えする輸送船を覆い隠すことを怠ったのである。
 連合艦隊はジェネシスに接近。
 息絶え絶えの護衛部隊に止めを刺し、核を撃ちこんだ。
 それで終わりだった。
 破壊できなかった部分は、全艦隊が主砲のつるべ撃ちを浴びせた。
 演習よりも簡単な標的射撃が終了し、ザフトは切り札を失った。

400 名前: 夢の向こう/6 投稿日: 2003/09/14(日) 09:16
「これでザフトは終わりです」
 ジェネシスの最後の欠片が爆発し、閃光から乗員の目を守るべく自動的に艦窓シャッターが落ちる。
 その閃光に目を細めながら魅入っていたアズラエルがナタルを見やって微笑んだ。
「状況は我々に圧倒的に有利です。兵力もさることながら、我が方には核がある。
 しかし、彼等にそれを防ぐ手段も、また報復の手段も無いのです」
「…しかし、彼等がそれでも停戦の交渉テーブルにつかなかったら!?」
「違います、艦長。停戦ではありません。降伏です」
 神経を逆撫でする動作で指を振ってみせると、アズラエルは立ち上がった。
「我々の目的は、コーディネイターを宇宙から消すことです。
 だからといって、今生きている彼等を抹殺するなんてことは出来ません。
 端的に言えば、ナチュラルに戻ってもらう、ということですな」
「気の長い話ですね」
「そう。そのためには、我々が管理する必要があるのです。つまり奴等の首に縄をつけるのです」
 ジェネシスを失って狼狽するプラント評議会に、連合からの最後通告が突きつけられたのは、
その僅か1時間後であった。
「な、なんですか、これは!?」
 穏健派を自他共に認めるエザリアでさえ顔色を変える講和条項であった。
「連合は、ザフトが以下の条項に同意した場合のみ停戦を受け入れるものとする。
一、 ザフトによる自治権の放棄。
二、 ザフト政府が保障する全ての権利の剥奪
三、 軍備の完全放棄
四、 連合軍に対する反逆者、アークエンジェルとクサナギの両艦を引き渡すこと
五、 ザフトは以上の条項を受け入れる/または追加条件を加えるに際し、一切の異議を唱えない」
 要約すると、一言につきる。無条件降伏。
 パトリックは勿論、穏健派も受け入れられる代物ではなかった。
 ザフト議会は全会一致でこの条件を一蹴した。
 それがアズラエルの狙いであることも知らずに。

401 名前: 夢の向こう/7 投稿日: 2003/09/14(日) 09:17
 フレイは忙しかった。
 ドミニオンのオペレーターとして、400名を超える乗員の生死をその手に握っているのである。
 命令に的確な指示を出し、またナタルに必要な情報を選別・処理して挙げなくてはならない。
 緊急時は艦長に代わって指示を出さねばならない時もある。
 入ってくる報告が途切れ、フレイは大きく息を吐き出した。
 あの作戦から二ヶ月が経過した。
 連合艦隊は月基地に帰還した。アズラエルはそこで降り、地球に戻った。
 ボアーズとジェネシスを破壊した所で引き上げたのである。
 同時に艦隊の大半もドッグ入りし、月とプラントまでの宙域に哨戒艦を貼り付けている程度である。
 プラントは連合艦隊が突然反転したことを疑問に思いつつ、目先の脅威が去ったことに胸を撫で下ろした。
 しかし、連合はプラントに安寧をもたらす為に引き上げたのではなかった。
 補給や戦力が整っていなかったという理由もあるが、本当の目的は辛らつだった。
 新型MSによるプラント本土への無差別攻撃を実行したのである。
「あ……」
 フレイは小さく声を上げた。
 ドミニオンの右側面をMSの編隊が飛翔する。
 その機影が太陽光線に反射し、漆黒の宇宙を背景にした小波のような光をフレイに投げかけた。
 数100。
 彼等が、ドミニオンが今守るべき対象。
 そしてプラントに死を振りまく厄災の天使。
 月とプラント間を無補給で往復可能な重MS「フォートレス」である。

402 名前: 夢の向こう/8 投稿日: 2003/09/14(日) 09:21
 フォートレスは全長50mという巨大MSであった。
 もはやMSというよりMA、小型艦艇と呼ぶのが相応しいかもしれない。
 乗員5名。脚部は巨大な推進装置。両腕は長距離砲撃を可能にした大威力レールガン。ウェポンバインダーと化した両腕に挟まれるごとく細長い頭部を持ち、それが唯一MSであることを主張しているようであった。
 フォートレスの目的は只一つ。月基地から発進し、プラント付近に展開。
 プラントに向けて搭載したレールガンとミサイルを撃ち込むのである。
 敵中に突出するため、フォートレスには機体各部に6基のイーゲルシュテルンを持ち、さらにトランスフェイズ装甲を備えている。
 そのエネルギーはNJCによって搭載可能になった核融合炉から供給される。
 生半可な攻撃ではダメージを与えることすら出来ない。
 つまり、フォートレスは連合版のフリーダムなのである。
 軍事企業はこのMSの生産で莫大な利益を計上していた。
 NJC、TF装甲、核融合炉を備えたフォートレスの生産単価は目が飛び出るほど高価だったからだ。
 また使用する弾薬も半端ではなく、企業は嬉しい悲鳴を上げていた。
 フォートレスだけではない。
 ダガーやロングダガー、そしてデュエル改といったMSの整備、それを効率よく運用できる次世代艦艇の配備も進み、各軍事企業は利潤を、地球連合軍はかつてない戦力を手に入れた。これがアズラエルの真意だった。コーディネイターに容赦ない打撃を与えると同時に、軍事企業も莫大な利益を得る。
 一石二鳥。
 そんあ言葉がフレイの脳裏に浮かんだ。

403 名前: 夢の向こう/9 投稿日: 2003/09/14(日) 09:22
 一方、ザフトの弱体は目を覆うばかりだった。
 ボアーズとジェネシス陥落による損失、連合艦隊による封鎖、そして農業コロニーを優先的に狙ったフォートレスの砲撃。農業コロニーが全滅すると、目標は一般コロニーに向けられた。ザフトの反撃は悉く叩き潰され、艦隊も壊滅。二ヶ月の間に全コロニーの1/4が破壊、もしくは放棄された。
 400万人のコーディネイターが死んだ。
 フレイの思いを断ち切るように新たなフォートレスの編隊がドミニオンを追い抜いていく。
 彼等は、これからボアーズを超えて砲撃ラインに進出。そこからコロニーに一斉射撃を浴びせるのである。
 フレイには分かっていた。
 この機体が帰路につく時、また何万人ものコーディネイターが死ぬのだと。
 それを止める力は、彼女にはなかった。ナタルにもなかった。
 更に言えば、ブルーコスモスであるサザーランドやアズラエルにもなかった。
 フォートレスは、コーディネイターに対する、全人類の恐怖と断固たる拒絶の象徴だった。
(昔は、あれほどコーディネイターを憎んだのに)
 あの時吹き出していた黒い炎が嘘の様だった。
 皮肉なものだ。フレイは自嘲する。
 コーディネイターを心から憎んだ自分が、今はコーディネイターに同情している。
 コーディネイターを生み出した人類が、今はコーディネイターを滅ぼそうとしている。
「この渦は、もう止まらない。なら、私は、何をすれば良いの…?」
 フレイが呼びかけた相手は遠く離れてしまった。
 もう二度と会うことはないかもしれない。
 それを思うと何よりも哀しかった。

404 名前: 夢の向こう/10 投稿日: 2003/09/14(日) 09:23
 それから一ヶ月後。地球連合とザフトの戦争は、後者の無条件降伏で幕を閉じた。
 パトリック・ザラは自決。議長代理はイザークの母エザリアが勤め、降伏文書に署名した。
 美しい彼女の顔は屈辱で歪んでいた。

 ザフトの人口は半分になっていた。

405 名前: 夢の向こう/11 投稿日: 2003/09/14(日) 09:26
「アルスター、ちょっと、来てくれないか?」
「はい?」
 ドミニオン艦長、ナタル・バジルール少佐がオペレーター業務をこなすフレイに声をかけた。
 ドミニオンはジェネシス攻略戦後、以前の扱いにくい三人組を降ろし、新しいMS小隊を受け入れていた。彼等は訓練に余念がない。戦争が終わったとはいえ、それは続けられていた。
 今は訓練中。パイロットとコミュニケーションをとることもオペレーターの仕事。
(忙しいのに…)
 フレイが怪訝に思ったのは、ナタルが声をかけたことだった。
 脳に仕事の予定表が既に入力されているのでは?と思うほど几帳面に仕事をこなすナタル。
 彼女自身はもちろん、クルーにもそれを要求していたから、自分からクルーに仕事を外すよう求めることは今まで全くなかったのだ。
 何かあったのだろうか?
 良く見れば、ナタルの表情が曇っている。フレイは嫌な予感に頬を強張らせた。
「フレイ、ここは引き継ぐ。だから行っていいよ」
「あ、そ、そう?悪いわね」
 もう一人の担当カーク・マッケンジー軍曹が振り返り、気楽に声をかけた(ドミニオンオペレーターは4人の交代任務)。
 ベルトを外し、フレイは腰を浮かした。
『フレイちゃん行っちゃうの?そんなぁ』
 無線機ごしにドミニオン所属アントン小隊2号機パイロットのペグ・ライアン少尉の情け無い声が響いた。
「ごめんなさい。艦長に呼ばれてるの。埋め合わせはするわ」
「そんなこと言っちゃって、いいのかよ?」
 マッケンジーが笑いながら担当を引き継いだ。
 ライアンは尚もぼやいていたが、直ぐに小隊長ロドニー・グリーン大尉にどやしつけられて大人しくなった。
 フレイは他愛無いやり取りに少し救われた思いがした。

406 名前: 夢の向こう/12 投稿日: 2003/09/14(日) 09:28
 ナタルは一言も漏らさず、艦内を進んでいた。フレイも雰囲気に飲まれ話かけられない。
 複雑な艦内を進み、二人は展望室に到着した。誰もいないことを確認し、ドアを閉める。
 ここなら二人きりで話せるからだ。
「アルス…いや、フレイ」「はい」
 ナタルは、二人だけの時はフレイのファーストネームを呼ぶようになっていた。
 それだけ二人の距離が縮まったことの証明でもあった。
「次の任務が決まった」
「任務ですか?戦争は終わったのでは?」
「いや………」
 ナタルは言いづらそうに顔を伏せたが、直ぐにフレイを見つめた。
「正直に言おう。次の任務は、アークエンジェル、エターナル、クサナギの撃滅だ」
「げ、撃滅……」
 フレイの脳裏を「撃滅」の二文字がぐるぐると乱舞した。
 サイ、ミリアリア、カズィ(フレイは彼が除籍したことを知らない)マリュー、フラガ。
 見知った顔が浮かび、闇に消える。
 そして、キラ。
「…どうして、どうして急に」
「急では無い。以前から連合は彼等の行方に重大な関心を抱いて追跡していた。
 それが発見された。だから攻撃するのだ」
 理論を述べつつも、ナタルの表情は痛々しかった。
「廃棄されたオーブコロニーに潜伏しているとの見解は、当初からあった。
 ザフトとの戦争中はそちらを優先していたから哨戒にかえる人手も限られていたが、戦争は終わった。
 連合は不安分子を取り除きたいのだろう。虱潰しに捜索し…」
「それで、見つけたのですね」
「そうだ。現在別働隊が廃棄コロニーの破壊作戦を開始すべく展開中だ。
 我々は脱出を計る彼等を捕獲する。
 抵抗する場合は、排除も止む無しとのことだ。」
 フレイは押し黙った。二人の間に沈黙が重く圧し掛かる。

407 名前: 夢の向こう/13 投稿日: 2003/09/14(日) 09:30
 先に沈黙を破ったのはナタルだった。
「…フレイ。お前は艦を降りたほうが良い」
「……」
「『自由』と『正義』を擁する彼等の戦力は見かけ以上に強力だ。
 我が艦も沈む可能性もある。何よりも、我々はアークエンジェルと雌雄を決することになる。
 お前にとっては、それは辛すぎることだろう」
「…戻れないのですか?
 もう一度、キラと、いえみんなと話し合うことも」
「無駄だ。この作戦は既に発動された。もはや止めることは出来ない」
 ナタルは静かに告げた。ここで遠巻きにごまかしたても、何の解決にもならない。
 それならばいっそ単刀直入に告げる。
 それがナタルの思いやりだった。
「明日0800までに答を決めておけ。
 このまま任務につくか、それとも艦を降りるか。
 答はこの場所で聞こう」
 窓にもたれ、後ろに纏めた赤毛をたなびかせるフレイを残し、ナタルは踵を返した。
 エアロックが閉まる音が響き、フレイは展望室に一人残された。
「…うっ、うっ…キラ…キラぁぁぁぁ!!!」
 肺腑を振り絞るような泣き声は、
 誰にも聴かれること無く宇宙に溶け込んでいった。

408 名前: 夢の向こう/14 投稿日: 2003/09/14(日) 09:33
 連合艦隊は単形陣を形成し、オーブの廃棄コロニーを射程圏内に捕らえた。
 巨体にずらりと並んだ主砲が重々しく旋回。コロニーに狙いをつける。
 ミサイル巡洋艦のハッチが順序良く開き、ミッドナイトブルーに塗装されたミサイルがちょこんと顔を出す。
 MSでありながら戦艦と同等の火力を持つフォートレスが編隊を組み、死刑囚に狙いをつける銃殺隊のごとく一列に並んだ。
「ファイア!!」
 司令官が高く掲げた腕を振り下ろした。
「射撃開始!」
「了解、射撃開始します!」
 司令官の命令は各艦の艦長へ、そして砲術長を伝わって砲手に伝えられる。
 砲手がスイッチを入れ、艦は設計通り目標に対してビームを発射した。
 一番艦、二番艦、三番艦…と順序良く発砲。
 コロニーという巨大な静止目標に対して外れようがなく、数秒後、廃棄コロニーに直撃弾炸裂の閃光が煌いた。
 続いて二斉射、三斉射と戦艦の主砲がうなる。その度にコロニーに閃光が瞬き、同時に内部の可燃物に引火したのか爆発がはじまった。
 その頃、ミサイル艦が放った大型ミサイルが到達。
 ビーム命中とは明らかに違う閃光がコロニーを覆った。
 核ではない。
 核をつかえば、コロニーごと内部に潜むAA達を葬ってしまう。
 連合軍は、AAを撃沈したという確かな「証拠」が欲しかったのだ。

409 名前: 夢の向こう/15 投稿日: 2003/09/14(日) 09:35
 およそ20秒ごとに、艦隊は主砲を放つ。
 艦隊に負けてなるものかというように、フォートレスも装備されたレールガンと長距離ビーム砲を親の仇とばかりに唸らせる。
 この砲撃によって、フォートレスは多くのザフトコロニーを住民ごと葬ったのである。
 今回の作戦には20機ほどの参加であるが、それでも集中される砲撃の威力は圧倒的だった。
 砲撃開始から僅か一分。
 旗艦から発砲止めの信号が送られ、各艦とフォートレス部隊は砲撃を停止した。
(酷いものだ)
 誰もが思うほど、廃棄コロニーは痛めつけられていた。
 重金属のたっぷり詰まった構造材、エポキシ系の補填剤、元が良く分からない機械の破片。
 それらを宇宙空間に火山弾のごとく撒き散らしながらコロニーは崩壊していく。
 この光景は、終戦直前のザフトでは日常的に見られた光景だった。
 このコロニーは無人であるが、ザフトでは内部に何十万人もの人々が生活を営んでいたのだ。
 しかし、それは兵士達にとって何の意味もないことだった。
 彼等は戦争を終わらせる為に出撃し、命令どおりに行動し、そして破壊した。
 それだけである。

410 名前: 夢の向こう/16 投稿日: 2003/09/14(日) 09:37
 崩壊するコロニーから距離をとって、3機のMSがその様子を静かに観察していた。
 三機はいずれもフォートレスだが、通常の機体とはだいぶ印象を異にする。
 中央の機体は脚部にレドームがついている。機体各所にもゴテゴテとセンサーを備え付けている。極めつけは鶏冠のように後方に跳ね上がった何本ものアンテナだ。フォートレスの偵察タイプであり、指揮仕様でもある。
 その機体を守るようにそびえるニ機はさらに異質だった。
 フォートレスのダイヤのような推進ユニットではなく、ザリガニの鋏のような推進ユニットを装備している。
 フォートレスの長距離行動能力を諦める替わり、火力と機動力を向上させたガンシップタイプだ。
 通常のMS並の機動力を持つ、脅威の存在だ。
 指揮官機はガンシップを付き人のように随伴させ、その時を待った。
 彼等の位置は連合艦隊のちょうど反対側にあたる。
 つまりMSからは艦隊の姿も見えず、また盛んに爆発を起こすコロニー表面も見えない。
 各機のモニターには、日食のように赤々とした爆発の閃光を背負ったコロニーの暗い表面が写るのみだ。
 表面上は何の変化もない。艦隊は廃棄コロニー相手に過剰なまでに演習を行なっているようにしか見えない。
 だが、機体に搭載された高性能センサーは僅かな動きも見逃さない。
 外壁にソーセージを無理やり裂いたような醜い亀裂が走る。その中に金属動体反応を捕らえたのだ。
 直ちに情報が解析され、データが更に包囲するように展開する別働隊…サザーランド大佐の戦艦ナガトを中心としたα任務部隊に伝えられる。
「来たな、鼠ども」
 ナガトのCICで、報告を受けたサザーランドはほくそえんだ。

411 名前: 夢の向こう/17 投稿日: 2003/09/14(日) 09:39
 MSから送られたデータは、そこに三隻の艦艇が存在することを指し示していた。
 アークエンジェル、クサナギ、そしてエターナル。
 いずれも連邦に弓引いた愚か者であり、処分の対象だ。サザーランドは、彼等がコロニーの崩壊に巻き込まれなかったことを神に感謝した。彼等は、連合によって、コーディネイターはもちろん、全人類に明白な形で処分されなくてはならない。その為に今日まで彼等を泳がせ、万全の体制でこの時を迎えたのだ。
 廃棄コロニー外周から艦隊が砲撃し、彼等をいぶりだす。
 外周艦隊は勢子だ。獲物を追い出し、包囲網を破って逃げ出さぬよう威嚇する。
 狩人は、サザーランドの率いるα任務部隊。
 戦艦ナガト以下、大天使級強襲揚陸艦「ドミニオン」、「パワー」、「ヴァーチャー」、「ソロネ」、戦艦「ノースカロライナ」、「サウスダコタ」、「グナイゼナウ」、ガンシップタイプのフォートレス8機。
 脱走艦三隻を撃沈するには大袈裟すぎる戦力かもしれないが、敵にはなにせ『自由』と『正義』がある。
 石橋を叩いて渡る性格のサザーランドには当然の準備だった。
「サザーランドより全艦へ。
 敵艦発見。アークエンジェル、クサナギ、エターナルの三艦である。
 全ては作戦どおりだ。MS隊発進。艦隊はAAとクサナギの射線を避けて立方体陣形をとる。
 蒼き清浄なる大地の為に、裏切り者を倒せ!!」
 サザーランドの命令を待っていたかのように、各艦が一斉に搭載機を発進させる。
 MSは、全て最新鋭機、デュエル改で統一されている。
 この機体はダガーに対するハイ・ロー・ミックス思想に基づく機体だ。デュエルの改良型というより、ストライクの発展型という方が正確である。ストライクの武装を換装によって全て使用できる上に、出力や運動性も格段に向上していた。2対1ならば、ミーティアを装備しないフリーダムやジャスティスと互角以上に戦えるだろう。
 このMSが、AA級強襲揚陸艦には2コ小隊8機が搭載されている。ドミニオン、ヴァーチャー、ソロネの各艦搭載機が対MS戦闘装備、パワーの機体が対艦装備という分担だ。これにフォートレスG6機が加わり、AA攻撃部隊となる。
 一方戦艦部隊のMSと残りのフォートレスGはフリーダムやジャスティスが艦隊に特攻してきた場合の抑えとなる。
 対するアークエンジェル側は、フリーダム、ジャスティス、ストライク2機、バスター、現地生産したM1アストレイ40機、メビウス改20機。
 だが、パイロットの錬度は総じて低く、経験を積み連携プレーに長けたデュエル隊に太刀打ちできるとは言えない。
 結局、ガンダムチームとコーディネイターに頼るしかないのだ。

412 名前: 夢の向こう/18 投稿日: 2003/09/14(日) 09:41
「MS部隊、発進終了です」
 ドミニオン艦橋。フレイはMSが全機発進したことを確認し、報告をあげた。
「うむ。予定通りだな。
 今我々がすることはここまでだ。
 後はMS隊を率いるグリーン大尉とジャレット中尉に任せるしかないか…」
 ナタルが指を口に元に寄せながら脚を組んだ。
 フレイは眉をひそめ、艦橋正面の戦術モニターに視線を移した。
 最大望遠モードの画像の中に、ぼやけつつも懐かしい艦が移っている。
 向かって右からクサナギ、エターナル、そしてアークエンジェル。
 二隻はエターナルを守るように、僅かに前に出ていたが、天頂から見ればほぼ横一列に並んでいた。
 アークエンジェル。
 そこには、フレイの大切な人がいた。
 思い出があった。
 しかし、彼女は今、それを葬る側に身を置いている。
(……なんで、私、ここにいるんだろう?)
 フレイの思いは千路に乱れた。
 フレイは艦を降りなかった。
 AAが沈むならば、せめて、それを自分の眼で見届けなくてはならないと思ったから。
 だが、戦場に身を置き、AAを実際に目の当たりにしてフレイの決心は揺らいだ。

413 名前: 夢の向こう/作者 投稿日: 2003/09/14(日) 09:44
また夜にでも続きを投下します。
アズラエルが本編より軍事商人になってます。
戦争続けて儲けるのが商売の人ですから、
核で一気に片付けるとMSや戦艦の生産で利益があがりませんからねぇ〜。
その意味ではフォートレスは儲かるMSだと思います。

よろしければ、感想、ご批判お待ちしています。

414 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/14(日) 10:59
乙です。
感想は後編投下後に通して読んで後、あらためて書きますが。
長編にもかかわらず乙です。
「終末」以来久々の長編、期待いたします。

415 名前: 8 投稿日: 2003/09/14(日) 12:26
>終末作者さん
乙。シメ方が良いです。なんかプロビデンスがいらないような気がしてきた・・・

>夢の向こう作者さん
一気にここまで書き上げるとは、乙でした。
最初「フォートレスUzeee!」なんて思ってましたがこれはコストの高さも長所のうちなんですね。
イイ。

416 名前: 415 投稿日: 2003/09/14(日) 12:26
8って何だよ8って。
俺はロウの相棒か?(藁

417 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/14(日) 13:34
何気にシチュエーションがSガンダムのよーだな。
旗艦ナガトか(ニヤソ)。

ともあれ乙フレ。続き待ってるよー。

418 名前: 最終回に添えて 投稿日: 2003/09/14(日) 15:21
「フレイの死」というシチェーションは構成作家の罪滅ぼしではな
いかと、現時点では思う。

物語のテーマとしては、キラとフレイが結ばれれば最も自然に多く
のテーマに区切りがつく、という意見の持ち主は多い。異なるもの
と理解し合える。カテゴリーでなく個人を見れば愛し合える。壊れ
た関係は修復できる。過ちはやり直すことができる。
最終的な表現方法として、キラとフレイか、当初予定通りのキラと
ラクスかという制作コンペは何度も行われたと思われる。行われた
という噂もある。フレイというキャラが予想外に「立った」ことに
よる物語の要求もあったろう。結果としては当初予定に収まったよ
うだ。
作家両澤としては、それに抵抗したかったのではないか。
フレイというキャラが32話までの時点で、実質物語を左右する力
を持っていたのは確かである。
そのフレイというキャラの去就に、あえて大きな変動のない誘拐劇
で本編からオミットし、淡々とした描写に徹した。それはフレイの
存在によって「食われる」キャラたちにスポットを当てるという側
面も、またあったとは思う。
結末としても、生き延びさせる、身をひかせる、成長させラクスと
対峙させる、はっきりとキラとラクスの恋愛を描写する……様々な
可能性を、あえて取らなかったのではないか。
テーマ的にヒロインの位置にいながら、そうするわけにはいかなか
ったキャラクターへの、作家からの贖罪と見るのは、それほどうが
ちすぎた見方ではないと思う。

419 名前: 最終回に添えて 投稿日: 2003/09/14(日) 15:22
「フレイの死」によって、フレイは主人公キラにとって不可分の、
ラクスと等価のヒロインとして永遠に残る。あるいは視聴者にとっ
ても大きな意味を残す。
展開を予想してみる。

負傷したフレイを乗せた救命艇/回収しようとするAA/襲いくる
プロヴィデンス/そこにキラがたどり着く
クルーゼとキラは戦う/キラはあえて不殺を貫こうとする
フレイは傷ついたまま回線を開く。緊急回線は皆に届く/フレイは
命がけで謝罪する/フレイはやって来た、謝罪のために、戦場に/
サイに、ミリに、死んだトールに、そこにいないカズィに。誰より
もキラに
フレイは許される/サイも、キラも、フレイは切っ掛けに過ぎない
ことを告げる/志願した意志を、当時はネガティブに描かれていた
ものを、今は確固として持っている
だから、フレイは告げる、キラに/「愛している」/クルーゼはそ
れを認められない/異なるものは愛せないというクルーゼの理念に、
コーディネーターを憎み、自分が利用した少女が反論することが許
せない
クルーゼはキラの出生を告げる/「キラは人間ではない」/フレイ
はそれを越えていく/「キラはキラだから」/キラだから愛してい
る。何者であろうと。もし全てを許してくれるなら、もしやり直す
ことができるなら、もし愛してくれるなら、もう一度あの、平和な
場所へ帰りたい、二人で
フレイは、ラクスにも与えられなかった本当の赦しをキラに与える
/そしてキラは応える/「愛してるから」/この瞬間、本当に、キ
ラは義務でも負い目でも責任でもなく、フレイを愛する
だから、クルーゼはフレイを殺す/クルーゼはフレイを許せない/
自分の憎悪の全てを否定する目の前の光景を許せない
フレイの死/ラクスのSEEDが覚醒する/フレイの行動は、言葉
は、常にラクスに衝撃を与え、動かす/(フレイと)ラクスの「言
葉」が戦争を終わらせていく
キラはラクスとの約束を振り切る/キラはクルーゼを殺す/死に近
づくキラをフレイの思い出が引き留める/フレイの想いがキラを守
る/アスランはキラを救う/キラはフレイを思い、物語が終わる

420 名前: 最終回に添えて 投稿日: 2003/09/14(日) 15:22
物語の後、キラが生きる時間を支えるのはラクスである。いつかは
キラもラクスを本当に愛するようになる。
だが、それは今ではない。
48話のキラとラクスのキスシーンは、ひいき目抜きで、キラの側
が好意以上愛情未満であることの表現なのだろう。それはアスラン
とカガリ、ラミューとムウの二組との対比でわかる。キラは口づけ
せず、フリーダムを与えられた時のようにキスをする。
おそらく。
作中のキラはフレイを愛していたことに、あるいは、愛せることに
気がつく。
フレイは「愛の人」である。
良かれ悪しかれ、フレイは、本当に大事なひとりのために自分の全
てを捧げて悔いない。
キラは応えようとする。
そして失う。
フレイはキラの魂に残り、根を下ろし、「永遠の女」となる。
ラクスはキラと共に生き、それを支え、「共に生きる者」となる。

個人的に「悲しい」という点をのぞけば、三角関係の収束点として
物語の結末として、ある種美しいとは思う。
個人的には、フレイの立ち直った姿と笑った顔を見てみたかったと
も思う。
この終幕に付け加えるものはない。
できるなら、あそこよりも幸せな世界で、再び出会って、今度こそ
愛する者と添い遂げられるよう祈るばかりである。

421 名前: 最終回に添えて/作者 投稿日: 2003/09/14(日) 15:25
ひさびさに投下してみましたが、SSではなく、考察です。
まだ見ぬ最終回を、予想して、考察して、解釈してみました。
長文ですし、ネタものですのでSSスレに投下です。
もし、本編がその通りであれば、泣きつつ、祈りましょう。

フレイ様がいつかもう一度出会えますように。

422 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/14(日) 16:13
言いたいことはわかりますが人は生き抜いてこそ価値がある。
好きな人のために死んでいくなんて描写一見綺麗だが逃げ以外の何者でもないと思う
どんな無様な姿さらしても好きな人のために生き抜く姿勢こそ美しいのではないか
まぁ考えは違いますが今までお疲れままでした

423 名前: もう1つの道・キャラクター紹介 投稿日: 2003/09/14(日) 18:20
前々から出すといってたSSのキャラ変更点。本編載せるのは終末終わってからね

キャラクター変更点

キラ    原作とほぼ同じ。不器用で苦労性。あることが切っ掛けで徐々に禿げるのを恐れるようになる。思い込みが激しいのも相変わらず

アスラン  AA視点で語られるので、出番は少ない。原作ほどキラキラ言ってない。ラクスへの愛情と執着が少し強い。

トール   原作と違って随所に出まくり。ミリィと共にギャグを担当する事も多い。友情に厚く、仲間の変化にも敏感に気付いている。パイロット適性がある。

ミリアミア トールとセットで出る事が多い。和み担当で、場の空気を和らげる事が出来る。フレイとは友人同士であるが、一時不仲になる。

サイ    ほぼ原作通り、フレイの彼氏だが、振られてから暫く荒む。フレイと絡まないと出番が少ない男。常識人である。

カズィ   1番陰の薄い男。キラに抜き難いコンプレックスを持っている。実は1番真面目に仕事をしていたりする。キラ、トールと一緒に馬鹿な事をする事も多い。

フレイ   ほぼ原作通り、コーディネイターに強い偏見を持つ少女。作品を通して少しずつ成長を見せる。キラとキースによって少しづつ強くなっていく。後に大きな変化が彼女におきる。

ナタル   ほとんど原作通りだが、キースに度々叱責される内に徐々に自分のあり様を考えるようになる。

ラクス   原作とは違い、キラとほとんど絡まない。キラの素性を知っており、後に彼にフリーダムを託す。アスランの積極性の無さに少し呆れているが、ある事件を契機に少しづつ変化していく。原作よりアスランを大切にしている。

カガリ   ほぼ原作通りだが、スカグラに乗らないのでアスランとの出会いが無い。キサカに苦労を掛け捲り。何かするとすぐにキースに怒られており、キースを苦手としている。

キース   オリキャラ。本名キーエンス・バゥアー。ナチュラルのウルトラエースだが、どっちかというとパイロットとしてよりも少年少女のメンタルケアに活躍している。正確はフラガ以上に飄々としている。
      養父母と義妹の復讐を誓って軍に入ったという経緯があり、似た境遇であり、義妹の面影を持つフレイを何かと気にかけている。
      実は世界情勢にとても詳しく、さまざまな技能を持っている謎の多い男。

424 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/14(日) 18:26
オリキャラの文字列からPFが浮かんだ。頑張ってくださいな〜。

425 名前: 週末に向かって・22 投稿日: 2003/09/14(日) 20:47
戦争は終わった。キラはフレイがどうなったのかを調べたが、ドミニオンから運び出されたことまでは確認できたのだが、その後月基地で死亡したという記録に辿りいた。

戦いが終わり、傷を癒したアークエンジェル、クサナギは係留されていたプラントを離れ、オーブに帰る事になった。
アスランはキラがアークエンジェルと共に地球に帰ると知って、強く引き止めたのだが、キラはそれに頷くことは無かった。

「なんでだキラ、コーディネイターならプラントに住めばいいだろうに」
「アスラン、僕の父さんと母さんはオーブに居るんだ。あそこが僕の帰る所なんだよ」

キラは忘れていなかった。幻とはいえ、両親は何時でも帰ってこいと言ってくれたのだ。あの言葉が、キラには嬉しかった。
だから、キラはオーブに帰るのだ。多くの友人たちと共に。

アスランはなおも説得を続けようとしたが、ラクスに腕を掴まれた。ラクスは頭を左右に振り、それ以上引き止めてはいけないとアスランに伝える。
アスランはまだ残念そうであったが、渋々諦めた。そして、ラクスがキラの前に立つ。

「キラ、あなたの帰る場所は、ここではないのですね?」
「うん、僕は、僕の帰りを待ってくれてる父さんと母さんの所に帰りたいんだ」
「そうですか」

ラクスも寂しそうであった。キラは懐から指輪を取り出し、ラクスに返す。

「これ、ありがとう。おかげで帰って来れたよ」
「いえ、お役に立てて良かったです」

ラクスとキラの視線が微妙に絡み合う。そして、キラはもう一度ラクスの頬にキスをした。ラクスが驚く。
そして、それを最後に、キラはアークエンジェルへと歩いて行った。2度と2人を振り返ることは無く。
残されたラクスの頬に一筋の涙がつたり落ちる。
そして、その涙を拭うと、ラクスは表情を為政者のそれに切り替えた。これから自分はプラントの象徴として再建という戦いに赴かなくてはいけない。もう、キラは休んでも良いだろう。
アスランはそんなラクスを補佐して行くことが決まっている。婚約は解消しても、最も頼れるパートナーであることは変わりない。もしかしたら時の流れが再び2人の気持ちを結び付けるかもしれないのだから。


オーブに帰ってきたカガリは早速オーブの再建を開始した。占領されていたオーブだが、終戦と共に独立を果たしている。連合からは賠償金としてかなりの援助を受けることが決まっている。
カガリの役目は1日でも早く国家機能を再建し、国民を呼び戻すことだ。キサカは相変わらず苦労の耐えない毎日らしい。

キラたちは学生に戻ったものの、カガリに頼まれていろんな仕事を手伝ってもいた。何故かモルゲンレーテにはディアッカが就職している。もっとも、エリカ・シモンズに馬車馬のようにこき使われて悲鳴を上げる毎日のようだが。
マリュ−はフラガと結婚したものの、まだフラガともども軍に残っている。今は2人ともオーブ軍所属に変わっていた。当面、アークエンジェルはオーブ防衛の要なのだ。

そして、終戦から半年が過ぎようとしていたある日、キラの元に1通の手紙が届いた。それはマルキオ導師からのもので、トールが死んだ場所が良く見える場所に墓を立てたので、一度来て欲しいというものだった。
ただ、何故かキラだけを呼んでいた。これが何を意味するのか、キラにはよく分からなかった。

426 名前: 最終回に添えて/作者 投稿日: 2003/09/14(日) 23:00
>>422
本音としてはまったく同意なのですが、
本編の構成の意図する解釈としてはこうではないか、ということです。
個人的にはどんなであれ生き残ってくれればそちらの方がよほどマシです。

427 名前: 終末に向って・23 投稿日: 2003/09/15(月) 17:35
手紙に従ってマルキオ導師のもとを訪れたキラ。マルキオ導師は孤児院を運営しており、戦災孤児を養っている。
キラが孤児院を訪れるのは初めてではない。だが、前に較べると妙にきれいになったというか、手入れがされている建物や周囲の様子に少し驚いていた。
やってきたキラをマルキオは中へと招き入れ、お茶を出した。

「すいません、運営も苦しいものでして」
「いえ、構いませんよ」

お茶に口を付け、しばしの時が過ぎる。そして、キラが口を開いた。

「孤児院、随分と手入れが行き届いてますね。」
「ええ、私だと目が見えないのでそういう事は手が出せないのですが、少し前に1人の女性が来てくれまして。おかげで助かってます」
「お手伝いさんでも雇ったんですか?」
「まあ、そんなところです」

マルキオは窓から外を見やる。その目は光を映さないのに、何かが見えているような気さえする。

「キラ君、世界は、変わりましたか?」
「・・・・・・いえ、ラクスやカガリも頑張っていますが、未だに戦いは終わっていません」

そう、戦いは終わっていない。戦争という状態は終わったが、未だに各地で紛争は続き、コーディネイターとナチュラルの確執は続いている。アズラエルを倒してもブルーコスモスのテロ活動は終わらない。
結局、自分たちのやった事はなんだったのだろうか。どうしてフレイは、トールは死ななくてはならないのだろうか。
2人の死は無駄でしかなかったというのか。ラクスの唱えるナチュラルとコーディネイターの融和など、夢物語でしかなかったのだろうか。
キラの答えに、マルキオは振り向いた。

「キラ君、君は、ナチュラルとコーディネイターは分かり合えると思いますか?」
「・・・・・・分かり合える筈です。いえ、そうならないといけないんです」

それはキラにとって史上命題だ。あれだけの犠牲を払って、得たものが偽りの平和では余りにも辛すぎる。自分たちもかけがえの無い者を幾人も失ったのだから。
だが、今だ明確な実例は現れていない。アスランとカガリ、ディアッカとミリアミアはその可能性を見せているが、アスランとカガリはまだ表沙汰には出来ない。そんな事をすればカガリがブルーコスモスのテロの標的にされかねない。重要人物であるカガリをそんな危険には晒せなかった。
逆にディアッカとミリアミアはまだ恋人とは言えず、親しい友達程度だ。ミリアミアの中のトールの存在はまだ大きいのだろう。
つまり、いまだこれと公表できる実例がないのだ。ナチュラルとコーディネイターが分かり合えるという明確な実例が。

この事がラクスの理想を阻んでいた。先の戦争はナチュラルとコーディネイターの溝をより広げてしまっている。両者が互いの溝を超える事など、信じている者はほとんどいないのだ。
キラの返事を聞いたマルキオは微笑むと、窓の外に見える海岸沿いの崖の上を指した。

「あそこにトール君の墓が立っています。是非見舞ってきてください。彼も喜ぶでしょう」
「色々とすいません。無理なお願いをしてしまって」
「いえ、構いません。私も一応神に仕える身ですから。死者を弔うのは当然です」

キラはマルキオに何かを試されているような気がしていた。何故かは分からないが、そんな気がするのだ。自分を呼んだ理由も明確に語ろうとはしない。
キラはマルキオに一礼して、孤児院を後にした。マルキオはそれを見送りながら、小さな声で呟いた。

「あなたは全ての希望なのです、キラ・ヤマト君。あなたが選んだ未来によって、この世界の未来が決まるでしょう」

428 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/15(月) 20:30
>>427
おお〜何かが起きる予感(・∀・)

429 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/15(月) 21:07
ドキドキ。ドキドキドキ。とにかく乙! 続きが気になって仕方ないよw

430 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/15(月) 21:40
>>427
乙!  (・∀・)<どきどきどきどきどき

431 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/15(月) 23:26
乙!
続きお待ちしとしますщ(゚Д゚щ)カモォォォン

432 名前: 終末作者 投稿日: 2003/09/16(火) 00:04
何か期待されてる・・・・・・
これで期待に外れた展開だったら・・・・・・面白いかも
墓に向う途中には生きてたアズラエルと常夏がとかw

433 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 00:11
(゚Д゚;)ナ、ナンダッテー

434 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 00:34
途中ならそれも良し! って1話増えませんか職人さんw

435 名前: 夢の向こう/作者 投稿日: 2003/09/16(火) 00:59
…今回は…結構きつい内容になってしまいました。
でも、連合が太平洋戦争時のアメリカ並にシビアだったらラクス一行はどうなっていたでしょうか?
そのコンセプトで書き上げてみました。
では…

436 名前: 夢の向こう/19 投稿日: 2003/09/16(火) 01:01
 フレイのコンピューターがけたたましい電子音をあげ、彼女の心臓は飛び上がった。
「どうした、アルスター!?」
「アーク…いえ、敵艦から入電!!通信を求めています!!」
「旗艦への無線では無いのか?」
「いえ、この周波数は本艦に対してです」
「……」
 ナタルは押し黙った。
 フレイはもちろん、艦橋内の全員がナタルを注視している。
「よかろう。アルスター、通信開け!」
「はいっ!!」
 フレイは喜んで通信回線を開いた。
 正面のモニターに、アークエンジェル艦長マリュー・ラミアスの姿が大写しになる。
 フレイは息を飲んだ。
 溌剌としていた彼女はやつれ、疲労が目元に隠し様もなく浮かび上がっていた。
 この数ヶ月、彼女の心労はいかばかりだったのか。
『ナタル、久しぶりね』
「ふっ…ラミアス艦長こそ」
『挨拶をしている暇はないの。
 ナタル、攻撃をやめて!我々は、ザフトでも連合にも敵対する意志はないわ!
 だからもう良いでしょ?私達をそっとしておいて!!』
「艦長…」
 ナタルの口から悲しみとも哀れみともつかない溜息が漏れた。

437 名前: 夢の向こう/20 投稿日: 2003/09/16(火) 01:03
 かつてのマリューは、ナタルからすれば大甘だった。人情に流されて戦局での判断を何度も誤った。だが、筋を通そうとしていた。いかなる局面でも自分の信念を曲げようとしないこと。それだけは評価していた。
 が、今のマリューからは悲愴感だけしか感じなかった。
 ナタルは、自分が軍人として、マリューをとうに追い越してしまったことに気付いた。
 マリューは軍人としては最低の行動をとった。AAがアラスカから勝手に離脱したことは、後の経過を聞いてその行動は理解できる。しかし、その後オーブに身を投じ、連合と正面から戦うとは。指揮官ならば、たとえ処刑されようとも連合に戻るべきだったのだ。マリューはそうしなかったことで、AA全クルーを反逆者の立場に置いてしまったのだ。オーブで何人かは退艦したらしいが、それでも多くのクルーはそのままAAに留まった。そのつけを、今、彼等は払うことになる。
「艦長。あなた方に連合に敵対する意志がなくとも、AAは連合の脱走艦です。
 クサナギは連合の交戦国の艦艇です。逃すわけにはいきません」
『でも、ナタル!この艦には、あなたの部下だった人も、ヘリオポリスの子もいるのよ!
 それでも攻撃するの!?』
 ナタルは反射的にフレイを見上げた。 
 フレイは胸に握りこぶしを当て、肩で大きく息を吐いている。
「艦長、降伏してください。
 あなたが責任をとれば、部下の罪は軽くできるかもしれない。
 生き残るチャンスは増えます」
 ナタルとしては、マリューや以前の部下達に対する、精一杯の譲歩だった。
『でも、出来ない…』
「な、なぜ!?」
 ナタルは戸惑った。

438 名前: 夢の向こう/21 投稿日: 2003/09/16(火) 01:06
『生き残るチャンスが増えるだけでは…。皆殺されるかも』
「ですが、今のままではあなたがたに万一の生存確率もないのですよ!?」
『いいえ、違うわ』
 ナタルはマリューの返答に息を呑んだ。
 マリューの目が、ある種の人々を連想させた。
 例えば宗教弾圧の最中、来世への希望を抱いて喜んで我が身を犠牲に捧げる殉職者のような。
『私達には、キラ君が、ザラ君が、カガリが、ラクスがいる。
 彼等なら、この世界を変えてくれると信じている。
 彼等がいる限り、私達は諦めない』
「そ、そんな……」
 フレイが絶望したように頭をふった。
 フレイには彼等の孤独が自分のことのように理解できた。
 彼等は孤独だった。
 アークエンジェルとクサナギは、連合から終われる身。
 そしてエターナルはザフトから終われる身。
 彼等が終結し、一つの徒党を組んだところは良かった。
 しかし、その後は?
 世界は連合とザフト、ナチュラルとコーディネイターの二色しかないのだ。
 この両方に追われる身が合わさった集団は、両方から迫害される運命になる。
 事実、彼等はザフトに自分たちを認めるよう何度も交渉を申し入れたが、パトリックはもちろん、穏健派にも相手にされなかった。だから、彼等は彼等自身でお互いを認め合い、オーブ再興、コーディネイターとナチュラルがお互いを認め合える新しい国家を樹立するという夢に縋って細々と生きていくしかなかったのだ。
 それは団結力を高める意味では有効だったかもしれないが、
いつしかその夢を守ることが彼等の生そのものになっていった。
 この夢を手放すことは、彼等にとって死よりもつらいことだったのである。
「ラミアス艦長。これ以上話しても、無駄のようです。通信、終わります」
 フレイは言われるままに通信スイッチを切った。
 ナタルは全力マラソンをした後の選手のように、シートにもたれかかった。
 艦橋内の全員が、同じ感覚を共有した。
 フレイが耐え切れずに泣きじゃくり始めた。
 誰も咎めようとはしなかった。

439 名前: 夢の向こう/22 投稿日: 2003/09/16(火) 01:08
『こちらエーブル1。敵艦隊から発進したMS部隊を確認。これより攻撃に入ります』
 エーブル小隊を率いるグリーン大尉から連絡が入る。
 重苦しい沈黙が淀んでいた艦橋内に、一気に戦闘の緊張感が戻る。
 涙を流していたフレイもバーグからハンカチを渡され、涙を拭って気を取り戻した。
 オペレーターがいつまでも泣いているわけにはいかない。
 続いてベーカー小隊、さらに他艦のMS部隊からも交戦突入の報告が入る。
 艦窓からは蛍のような光点がちかちかと瞬いた。MSが撃墜され、爆発した時の閃光だ。
『いたぞ、右上方にアストレイ5!ベーカー、攻撃位置につく』
『エーブル3、アストレイロック!』
『マックス、後ろにM1、援護する…撃墜!』
『すまない、追撃を続行…撃破!!』
『気をつけろ、ヴァーチャー隊、フリーダムががいった!!』
『なんだって、畜生!』『落ち着けレッド4、援護する!』『すまない、助かった』
『ちっ、メビウスが多いぜ!うっとおしい!!』
『122、掃討する。射線を開けてくれ』『こちら、ファング1、助かる』
 たちまち無線機はパイロット達の交信で一杯になった。
 援護を求む通信、撃墜の雄たけびを上げる者、冷静に味方に注意を促す者。
 ただ、撃墜された時の絶叫と通信機が機体もろとも散華した際に生じる無線の空電は今の所一件も入っていなかった。連合MS部隊は予測どおりAA側を圧倒していた。フリーダムとジャスティスですら、フォートレスGとの戦闘に拘束されて、艦隊を襲撃するどころか仲間の援護にすら赴けない。
 常に撃墜を喜ぶ誰かの声が飛び込んできた。
 戦闘開始10分後。早くも大勢は決した。

440 名前: 夢の向こう/23 投稿日: 2003/09/16(火) 01:10
 クサナギに砲撃を浴びせていたフォートレスGから報告が入る。
 この戦艦は2機のフォートレスに翻弄され、相手がTF装甲に守られているのにもかかわず、
そちらに対空砲火を集中させていた。その隙にデュエル改に潜り込まれ、主砲を含むほとんどの火器を破壊されたのだ。
 ジャスティスがまとわりつくデュエル改を排除しようと奮戦したが、別のフォートレスGに阻まれ、デュエル改を一機撃墜したに留まった。フォートレスGの火力はミーティアを装着したジャスティスと同等かそれ以上だった。
『クサナギ沈黙!轟沈は時間の問題だ!
 ダイブ中の部隊はクサナギから退避しろ!』
『了解、退避する』
 ややあって、クサナギの巨体が力尽きたように進路からずれた。
 渡り鳥の群れから耐え切れなくなった固体が死に場所を求めるように脱落していく。
 数分後。
 艦体のあちこちで内部機構の爆発によると思われる緑色の閃光を瞬かせていたクサナギは艦中央部で大爆発を起こした。
 空気の無い宇宙空間であるが、そこに居合わせた人々は確かに身を震わせる大音響を直接感じたのだ。
 続いて後部エンジン区間にも火球が出現。この爆発で、エンジン区画や居住区、輸送区画を繋ぎ合わせていたジョイント部分が
耐え切れなくなり、クサナギは各部がバラバラになりながら宇宙空間に破片を撒き散らしていく。
 そして反応炉が崩壊し、クサナギは青白い火球の中に轟沈した。
 フレイはクサナギを良く知らない。
 クサナギが沈もうともさしたる感傷は受けなかったが、アークエンジェルのことを思うと震えが止まらなかった。

441 名前: 夢の向こう/24 投稿日: 2003/09/16(火) 01:12
『こちらアントン1、クサナギからの脱出ポッド多数を確認。どうしますか?』
 ソロネのMS部隊から報告が入った。
 各艦の小隊が混同しないよう、各MS小隊は名称が異なる。例えばドミニオンならば第一小隊を「エーブル」、第二小隊を「ベーカー」、ヴァーチャーなら「レッド」と「ブルー」というように。ソロネは「アントン」と「ブルーノ」、パワーは「ファング」と「フォックス」であった(フォートレス部隊は、「121」と数字コードがついている)。
 サザーランドからの返信は簡潔であった。
『ほうっておけ。戦闘が終わったら回収しろ。今は敵の排除が優先だ』
『了解…おや?ストライクがいるぞ?』
『こちら125、ストライクはこちらが抑えているが…新型か?』
『いや、赤い機体だ。予備機かもしれない。
 アントン2、アタックだ。ついてこい。アントン3,4はフォローを頼む』『了解』
『こちら123、ジャスティスは124と俺が補足中。安心してアタックしろ』
『了解…ケツは任せた』『お入んなさい(兵士達のスラングで攻撃せよの意味)』
 戦術モニターには、各機の動きが立体的光点となって表示されている。
 二機のデュエル改が赤いストライクを挟み込むように展開。
 二機が援護にかけつけようとするアストレイを牽制する。
 ジャスティスはフォートレスG2機の攻撃を回避するのがやっとだ。
『ジャスティスめ、そんなに赤いストライクが大事なのか?ろくに照準しないで撃ってきやがる』『恋人か?』『まさか』
 恐ろしいことにパイロット達の冗談は真実をついていたのだが、パイロット達は知る由もない。
 知っていたとしても、自分達が彼等の代わりに犠牲になろうとは夢にも思わないだろう。
『アントン2、アタック!』『いいぞ、その調子だ…俺も入る』
『ちっ、仕留めそこなった!大尉、頼みます』『よし…命中、命中!!』
 モニターの中で、また一つ、蛍が出現し、そして消えた。

442 名前: 夢の向こう/25 投稿日: 2003/09/16(火) 01:14
 これで、戦場に残されたのは、アークエンジェルとエターナルになった。
 弾薬とエネルギー消耗が激しいフォートレスGが全機後退し、今まで艦隊護衛任務についていた2機と、指揮官機を護衛していた2機が改めて投入される。MS部隊も戦艦所属の搭載機と順序良く交替した。
 数的に圧倒的優勢とはいえ、自由、正義を擁するAA達は強敵だった。
 パイロットも機体の消耗も激しい。しかし、既に最大の補給能力を持つクサナギが轟沈している。
 艦隊の全員に、なんとなく安心したような空気が漂う。そこを艦長や熟練兵が兵の弛みを一喝し、引き締めを計った。
 ドミニオンも、エーブル・ベーカー小隊が帰還し、補給に大騒ぎになっていた。スコアを挙げた者も多く、その喜びもある。だが、最大の喜びは全機が無事に帰還したことだ。パイロットと整備員が手をとりあって、或いは合図を交わして互いの健闘を祝う。
 ドミニオンに勝利の高揚感が漂った。
 フレイは目の廻る程多い仕事に忙殺され、AAやキラのことも考える余裕はなかった。
 ある意味では仕事に逃避したといえるが、彼等が再出撃して仕事が一段落すると、悪寒に襲われて身震いしてしまう。
(キラ……)
 両肩を抱いて、キラの顔を思い浮かべる。
 苦笑したようなキラの笑顔を思い出し、涙が一粒、宙を舞った。
 
 第二次攻撃は、AA側の勝利だった。
 錬度がやや劣る第二次攻撃隊のメンバーはフリーダムとジャスティスの十字砲火に誘い込まれ、フォートレス2機を含む全MS中1/4の戦力を失って追い戻された。
 サザーランドは渋い表情を浮かべたが、すぐに元の表情に戻った。これも計算の内である。当初の計画は『波状攻撃によって自由、正義パイロットの消耗を誘う。絶え間ない攻撃で、補給の暇を与えない。同時に邪魔なアストレイの母艦であるクサナギを排除し、さらに自由の補給艦であるエターナルを叩く。そうして弱らせ、最後は袋叩きにする』ことだった。現在の時点で、既にクサナギの撃沈は達成されている。
(この状況なら、第三次攻撃で作戦終了だな)
 ほうほうの呈で逃げ帰ってきた第二次攻撃隊と入れ替わるように出撃する第三次攻撃隊の雄姿を眺めながら、サザーランドは一人思った。

443 名前: 夢の向こう/26 投稿日: 2003/09/16(火) 01:18
 第三次攻撃が開始された。
 補充機を加えた第一陣のメンバーがそのまま参加。デュエル改32機、ガンシップ・フォートレス6機。
 対するAA側は、フリーダム、正義、ストライク、バスター各1。アストレイ17、メビウス7。戦力差は圧倒的だった。
 最初の目標に選ばれたのはエターナルだった。
 本来ならば、エターナルは連合の攻撃対象ではない。彼等を追う者はザフトなのだから。
 ただ、ザフトが無条件降伏し武装解除された今、彼等を始末できる者は連合しかいなかった。
 いわば「ついで」の仕事であった。
 だが、追加仕事であろうと、パイロット達は自分たちの仕事に誇りをもっていた。手を抜くことはありあえない。
 生き残ったアストレイがエターナルを守ろうと果敢に展開しようとするが、その数は僅か10機に減っていた。
 更にフォートレスGの火線に遮られ、彼等はエターナルに近づけない。当然対空砲火の援護を受けられず、
アストレイ部隊はデュエル改によって戦場の一角に追い詰められ、各個に掃討されてしまった。
 MS部隊の傘を失った戦艦は脆い。
 エターナルの悲劇は、頼りの綱であるフリーダムとジャスティスが、地球連合の予想外の強敵によって拘束されてしまったことにあった。
 今度のフォートレスGのパイロットはベテランだった。決定打は与えられないものの、フリーダムとジャスティスを上手く牽制し、
エターナルの援護に向かわせない。
 その奮闘は直ぐに報われた。
 二機のフォートレスGが艦上方と艦底方向から逆さ落としに突撃し、ミサイルとビームの雨を浴びせたのである。
 フォートレスGのビームは、一発が戦艦の主砲に匹敵する。それを二方向から、しかも至近距離から被弾しては到底耐え切れなかった。
「エターナルは悲鳴をあげているようでした」とは、この時エターナルに止めをさしたパイロットが、戦後、記者のインタビューに答えた時の抱負である。
 醜い穴が無数に穿たれたエターナル。優雅さを湛えていた構造物は瓦礫の山と化し、無数の鉄片と人体の破片が虚空に撒き散らされていた。
戦闘能力は完全に失われた。エターナルは、もはや動く鉄塊でしかなかった。
『これ以上手を下す必要はないだろう。122、離脱する』
『了解。125、離脱します』
 125号機は残り少なくなったミサイルを使いきってしまおうと、離脱前に発射。
 これがエターナルに対する止めとなった。一発がエンジンブロックに飛び込み、そして爆発。
 対処する者がいなくなった艦は、この破局を食い止める手段も、僅かに生き残った者が脱出を計る時間も与えなかった。 
 正視に耐えぬ閃光が収まったとき、既にエターナルの艦影は無かった。

444 名前: 夢の向こう/27 投稿日: 2003/09/16(火) 01:19
 フレイはボンヤリと艦窓を眺めていた。
 無線機からは、盛んにパイロット達のやりとりが入ってくる。
 どれも勝利が間近であることを悟り、高揚した感じだ。
 先程のエターナル轟沈の閃光が収まると、戦場の蛍は急速に減って行った。
 撃墜する敵MSがもう残っていないからである。
 残るは、フリーダム、ジャスティス、ストライク、バスターのみ。
 アストレイ部隊も、メビウス部隊も全滅した。
 それに対し、連合側は第一次攻撃から第三次攻撃に至るまで、フォートレス2機、デュエル改8機を失ったにすぎない。
『ベーカー1、バスターを補足した。どうしますか?』
『ベーカー1よりベーカー3、俺達が援護する。ミサイルの後の砲撃に気をつけろ。お入んなさい』
『了解、ベーカー4、行くぞ』『了解』
『さすが、火力だけは凄いな』『無駄口を叩くな…どうだ!?』
『ベーカー3、外したぞ。背面をさらしている、離脱しろ!ベーカー1、入る!』『了解』
『ちっ、ちょこまかと…』『よし、脚を壊した!サイドアタック!』
『了解、入ります…命中、命中!!』
『ベーカー1よりドミニオン。バスターを撃墜!!』
 蛍が一つ、現れ、消えた。
 続いてヴァーチャー隊からもストライク撃墜の報告が入る。
(フラガ少佐…!!)
 見知った人物が去っていく辛さ。
 フラガの記憶がフレイの胸にまざまざと蘇り、そしてモノクロのように色あせて去っていく。
 フレイは手を伸ばすが、それを止めることは出来ない。それでも伸ばさずにはいられないのだ。
 そして、ついにその時は訪れた。

445 名前: 夢の向こう/28 投稿日: 2003/09/16(火) 01:22
 「能天使(パワー)」搭載機は「ファング」と「フォックス」のコードを使用していた。
 パワー搭載機は、最初から新開発の対艦ビームライフルを装備していた。これで敵艦を落とす任務を与えられていたのだが、彼等の最初の仕事はフリーダムに追い回されて命をかけた追いかけっこをすることだった。フォートレスGの援護によってなんとかフリーダムを振り切ったものの、今度はメビウスとの戦闘に忙殺され、その間にクサナギとエターナルは沈んでしまった。
 なんとしても、最後の一隻は落す。
 その意気に支えられ、彼等はAAの対空砲火をものともせずダイブを仕掛けた。
 対艦攻撃は基本的に一撃離脱だ。可能ならば複数方向から同時にアタックすることが望ましい。
 そうすることによって、敵の対空火力を分散できるからだ。
 彼等にとって幸運なことに、AAにとっては不運なことに、パワー隊には充分な機数があり、AAは単艦だった。
 左後方天頂、右後方天頂からのダイブアタック。4機のデュエル改は分散して密度が薄くなった対空砲火を突破し、
次々とビームを叩きこんだ。アンチビーム爆雷も、至近距離からのビームには対して役に立たなかった。
 艦後方部に次々とビーム命中と続く爆発による火球が出現する。
 AAの受難は続いた。攻撃成功を確認した残り4機が接近。対空砲座やミサイル発射口に向けてビームキャノンを撃ちこみ、先にダイブした連中も再び上昇して取り付き砲口を向ける。そして一斉射撃。
 これでAAの運命は定まった。予備ミサイルが誘爆、さらに主砲が吹き飛ばされた際のエネルギーの逆流によって火災が発生し、全艦に広がりつつあった。艦内では自動消化装置はもちろん、応急補修隊員や手隙の乗員が必死の形相で火災を鎮火しようと試みたが、彼等の努力を嘲笑うかの如く誘爆は続いた。そこに外殻を溶かして浸透したビーム粒子が押し寄せ、自分の義務を果たそうとしていた乗組員を分子レベルに分解した。
 火災と誘爆は艦後方から艦全体に広がろうとしていた。隔壁閉鎖も間に合わない。爆発が隔壁ごと外殻をふきとばし、哀れな乗組員が宇宙空間に吸い出されていく。
 止めの一撃は、ファング2の放ったビームだった。
 艦橋基部に命中した一発が電力系統を引き裂き、艦橋からの指示が伝わらなくなる。
AAは沈黙した。
『隊長、撃沈確実です』
『よし。誘爆に巻き込まれるぞ。退避する』
 過剰とも言える攻撃を一度に叩きこまれたAAは後部と主砲跡で小規模な爆発を繰り返していたが、
デュエル改が散開退避するのを待っていたかのように爆発が艦全体に連鎖する。
 やがて艦橋部分から艦中央部を貫くように上下に火柱が吹きあがり、
そこから発生した火球にAAは艦体をへし折られるように飲み込まれた。

446 名前: 夢の向こう/29 投稿日: 2003/09/16(火) 01:25
「あ、あれは!!?」
 フレイが立ち上がり、宇宙の一点を指差した。
 艦窓の向こう、崩壊するコロニーを背景に眩い閃光が走った。
 青白く膨れ上がり、その中から爆発の赤色のエネルギーが覆い尽くすように拡散、数秒間煌いたのち、元の宇宙空間に戻った。
『アークエンジェルの撃沈を確認!!』
『やった、俺達が足つきを落としたぞ!!』
 パワー隊からの報告が伝えられると、静寂が訪れ、続いて爆発した。規則にうるさいことで有名なサザーランドの鎮座する足元でも、オペレーター達が帽子を投げて喜びを全身で表現する。彼等の騒ぎを、サザーランドも珍しく満足気な顔つきで静観していた。
 どの艦でも同様の光景が繰り広げられていた。それはドミニオンですら例外ではない。
 艦橋に詰める2名を除いて。
 ナタルは帽子をとった。喜びに湧いていた艦橋要員が怪訝な顔をする。
「敵とはいえ、圧倒的優勢な我々に対し、ここまで奮闘した勇敵だ。
 喜ぶのも良いが、敵に対する最低限の礼儀を忘れてはいかん」
 気然として、そしてどこか哀しげなナタルの注意に、冷水を浴びせられた後の酔いのようにドミニオンは冷静を取り戻した。
「それに、まだ気を緩めてはいかん。最大最強の敵が残っているのだからな。あの二機を倒した時、初めて戦争は終わるのだ」
 事実、ナタルの言葉の最中にも、MS部隊からの戦闘報告が次々と入ってくる。
『サザーランドだ。各艦、デュエル部隊は撤退させろ。
 モビルアーマー同士の戦闘では、かえって味方に誤射される危険が高い』
 旗艦からの通信によって各艦が信号弾を打ち上げる。
 信号弾赤。MS部隊のみ撤収の合図だ。
 それを確認したデュエル改が一斉に踵を返す。
 AAの仇とばかりにその後を追おうとしたフリーダムの鼻先に巨大な影が舞い降り、猛烈な砲撃を浴びせて強引に進路を捻じ曲げた。ガンシップ・フォートレス。彼等はこの瞬間の為に存在した。自由と正義を倒すべく、最強のMSとして設計されたのである。
『各機、機体状況を報告』『121、異常無し!』『122、ミサイル残弾が残り少ないです』
『123、戦闘可能』『124、戦闘準備完了』『125、問題なし。いつでも行けます』『126、ジャスティスとの戦闘でエネルギー消耗大です』
『了解、122と126は補給の為に後退。121と123はフリーダム、124、125はジャスティスを相手にしろ』『了解!!』
 戦術モニターの中で、6つの光点は3グループに別れた。
 後退する122と126、フリーダムの相手をする121,123、ジャスティスを狙う124と125である。
 モニターの中で、再びビームの閃光が煌いた。

447 名前: 夢の向こう/30 投稿日: 2003/09/16(火) 01:28
「うあああぁぁぁぁぁぁ!!!」
 キラは絶叫していた。
 AAを、エターナルを、クサナギを失った。ラクスも、カガリも、そしてアスランも。
 アスランはキラを庇おうとし、彼の盾となって散った。
 彼が守りたいを思った者は、全て死んだ。
 奪ったものへの呪詛。守れなかった自分自身への呪怨。
 二つの暗黒に燃えたぎるマグマがキラを突き動かした。
 ミィーティア・フリーダムを鬼神のように操縦、眼前に立ちふさがるフォートレスGに大口径ビーム砲を浴びせる。
 一発、二発、三発。
 しかし、ビームはTF装甲に弾かれ、虚しく飛沫となって飛び散った。
 フォートレスGの反撃。ミサイルポッドを展開し、マイクロミサイルを放つ。直撃すればMフリーダムでも大破する。
 だが、キラにはミサイルの動きが手に取るように分かった。放たれた24発のミサイルの全ての動き、予想進路、到達までの時間が一連の情報としてキラの脳に入力され、最小限の動きで回避出来るルートを導き出す。それにしたがって寸文の狂いなく巨大な機体を走らせる。
 ミサイルの軌跡と軌跡の隙間を通り抜けるMフリーダム。ミサイルの自爆光が白い機体を赤く染めた。
「殺してやる!!貴様ら、みんな殺してやる!!!」
 魂の底から絶叫するキラ。
 闇雲に目の前のフォートレスに食い下がる。
「!!」
 何かを感じ取る。
 背筋を走る悪寒。
 殺意という冷気が背中を這い上がる不快な感覚を覚える。
 それを感じると同時にコントロールスティックを操作し、キラは機体を垂直に上昇させた。

448 名前: 夢の向こう/31 投稿日: 2003/09/16(火) 01:30
 キラの直感はあたった。
 Mフリーダムが先程まで進んでいた進路を大口径ビームが焼き尽くした。
 前方の機体にばかり気を取られているうちに別機体に後方をとられたのだ。
 逃げるMフリーダム。
 追うフォートレスG。
 機体各所からビームが雨霰と撃ち出され、キラに襲い掛かる。
 Mフリーダムが分解した。撃破されたのではない。フリーダムとミーティア部分に分離したのだ。
 キラは悟った。火力でも装甲でも、フォートレスGはMフリーダムより高性能だ。
 ならば小回りの効くフリーダム形態で接近戦に持ち込み、一機ずつ撃破していくしかない。
 ミィーティアが自爆する。爆風がフリーダムにも押し寄せ、台風の中に迷い出した釣り船のごとく揺さぶられる。
 同時に、追撃するフォートレスGのセンサーも一時的に麻痺を起こした。その瞬間にフリーダムは反転し、ビームサーベルを構えて突進した。
 反応が遅れたフォートレスGの胸部にビームサーベルを深深と突き立てる。
「死ねェェェェェェ!!!」
 コクピットのパイロットニ名がとうに分子分解しているにも関わらず、キラはサーベルを突き立ててフォートレスを抉り続けた。
 それは先程のフォートレスGが仲間の棺と化した機体ごとフリーダムを撃つまで続いた。
「………」
 迫り来るビームを無表情に見返し、キラはフリーダムをフワッと浮かせる。
 主を失ったフォートレスの巨体を盾にしてビームを避ける。
 幾度かビームを避けつつ、隙をついて新たな獲物を目掛けて突撃。
 今度もビームサーベルを構えた。降り注ぐビームを紙一重で回避しつつ仇敵に接近する。
 ビームサーベルを大上段に構えて接近する。
 フォートレスG、収納されていたメインアームを展開。アームの先からビームの刀身が延びる。戦艦ですら真っ二つにする巨大ビームサーベルだ。振りかざし、フリーダムに対して振り下ろす。
 キラは紙一重でそれを見切り、フォートレスの懐に入り込んだ。こうなると巨体が枷となる。アームをサーベルで切断し、返す刀で胸部に突き立てた。TF装甲によって激しいスパークが散るが、キラは意に返さずサーベルを押し込んだ。
 時間をかけて嬲り殺しにしてやる。
 だが、キラの目論見は中途で諦めざるをえなかった。
 ジャスティスを撃墜した二機がキラをロックしたからだ。
 ならばこいつだけでも。サーベルを思いきり押し込み、コクピットを焼く。
 サーベルが機体に癒着して取り出せなくなる。
 獲物を捨て、キラはフリーダムを飛翔させた。

449 名前: 夢の向こう/32 投稿日: 2003/09/16(火) 01:33
 ビームを避けてながら操縦するキラ。
 彼には、もう何もない。守るべき者も、帰る場所も。
 絶望に突き動かされてキラはフリーダムを艦隊に向けた。
 後方から激しい射撃を受けるが、偶然先程撃破したフォートレスが爆発し、二機からの射撃が途絶える。
 キラはその混乱に乗じて一気に加速した。
 遥か向こうに円錐陣形をとったAA級を含む艦隊が見えた。
 シルエットは同じなのに、キラが身を寄せたあの艦ではない。
 それがキラの憤怒を煽り、攻撃意志となって突き刺さった。
「沈めてやる…みんな、沈めてやる!!!」
 ひたすらその一念に導かれ、フリーダムは死の天使となって駆けた。
 コクピットに警報。先程引き上げたデュエル改部隊だ。
 網の目のような陣形を形成し、全機がフリーダムに砲口をあわせている。
「う、うわああぁぁぁぁあぁ!!」
 絶望、憎悪、恐怖の叫びがコクピットを満たすのと、デュエル改部隊が発砲するのが同時だった。
 集中して叩きつけられるビームを回避。人間業ではない。しかし、デュエル部隊はそれも織り込み済みだった。
 全機が一斉射撃するのではなく、一群はキラが回避行動に移ってから発砲した。
 右の翼、右腕、左膝から下が砕け、脱落した。頭部にも命中。外装が陶器のように砕けた。わずかに傾けた為にもぎとられることはなかったが、メインカメラもイーゲルシュテルンも機能しなくなった。腰に装備したレールガンももぎ取られる。
 それでもフリーダムは止まらない。残った左腕でサーベルを構え、進路に立ちふさがった哀れな二機を分断する。
 更に一機を捕らえ、体当たり。コクピットに左腕を撃ちこんでひしゃげさせると、そのデュエル改を即席の盾にした。首根っこを掴み、艦隊に向けて突き進む。
 一瞬デュエル部隊からの砲撃が止む。
 キラの目に艦隊最左翼を形成するAA級が飛び込んできた。
 表情と色彩を失った瞳が無表情に黒く塗装された艦影をする。
 フリーダムは満身創痍だった。
 キラも戦闘に次ぐ戦闘によって疲労が蓄積し、操縦があやしくなってきた。
 こいつを道連れにしてやろう。
 盾にしていたデュエル改を投げ捨てると、キラは体当たりに備えて筋肉を硬直させる。
 被弾の衝撃で誤操縦をして目標から外れては元も子もない。
 特徴的な艦影がモニターの中に見る見る大きくなる。

450 名前: 夢の向こう/33 投稿日: 2003/09/16(火) 01:35
 その瞬間。
『キラ……』
「フレイ!!?」
 キラの脳裏を静かな哀切を含んだ少女の声が貫いた。
 それは通信や無線ではなく、キラの脳に直接飛び込んできたイメージだった。
「フレイ!?まさか、君が」
 フリーダムの操縦幹を慌てて引き、黒色のAA級揚陸艦…ドミニオンへの直撃コースを外す。
「フレイ?ドミニオンにいるのか!?」
 フリーダムはドミニオン上方で静止した。
 予想外の人物が予想外の場所にいた。
 キラはイメージに混乱し、ドミニオンと無線を開こうとした。

 フレイは別に艦橋で叫んだわけではなかった。
 戦術モニターの中で急速接近するフリーダムの機影に、ただ心の中で叫んだだけであった。
 キラと話をしたい。キラともう一度会いたい。だが、このままキラの手にかかるならばそれでも良い。自分がキラにしたことは、到底許せるものではないから。
 だから、誰にも聞えない声で「キラ…」と呟いたのだ。
 そしてフリーダムは静止した。
『ドミニオン、援護する!!』
「グリーン大尉!?」
 ナタルが叫ぶ。ドミニオンのデュエル改エーブル隊がフリーダムに追いついたのだ。
 先程フォートレスを葬った時の気迫が嘘のように、フリーダムがのろのろと反応した。
 ロドニー・グリーン大尉率いるエーブル隊はフリーダムを狙ったビームがドミニオンに命中することを恐れ、
一旦ドミニオンの艦底方向にもぐると、そこから突き挙げるようにダイブした。
 彼等は必死だった。
 母艦を守ろうと、乗組員を守ろうと、
そして、慣れぬ業務にとまどいながらも自分達を補佐しつづけた赤毛の少女を。
 守るべき者を背負った者達同士が激突する。
 フリーダムが唯一残された武装、左肩のビームキャノンで応戦。
 だが、その姿はどこか機械的に反応しているように見えた。
 4機のデュエル改は一筋の奔流となってフリーダムに突き刺さった。
 散開するエーブル隊の背後でフリーダムは四散した。

451 名前: 夢の向こう/34 投稿日: 2003/09/16(火) 01:38
 青い空はどこまでも澄み切っていた。
 オーブの初夏にしては珍しく、上空には雲ひとつ無い。
「嫌になるわ。なんでこんなに暑いの?お肌に悪いなぁ」
 地球連合軍緊急展開軍所属、強襲揚陸艦ドミニオン艦長フレイ・アルスター少佐は汗ばんだ上着の襟をパタパタと動かした。
 制帽を脱ぎ、花束と一緒に小脇に抱えて丘を一歩一歩踏みしめる。
 闊歩する度、マリューのように肩のところまで垂らした赤毛が美しく波打った。
 ここは地球連合直轄領にして、重要拠点の一つ、オーブである。
 過去の大戦末期、連合の攻撃をうけて占領されたオーブは、その後、宇宙港を備えた大規模基地や軍事企業が集中していることを見初められ、連合の重要拠点の一つとなった。フレイが所属する緊急展開軍も、ここに地上本部を置いている。
 彼女は新型MS受領の為に帰還したのだが、可愛い部下に書類仕事を押し付けて外出してきた。

 大切な人達に再会する為に。

 丘を登りきった所に先の大戦における戦没者の墓所があった。
 ここに眠るのは、主にオーブ攻防戦で戦死した人々であるが、それだけではない。
 「彼等」の墓もあるのだった。
 フレイはある一角で歩みを止めた。
 もう何度も訪れた、懐かしさすら覚える場所。
 ここに、アークエンジェルクルーの、カガリの、ディアッカの、アスランの、ラクスの、そしてキラが眠っている。
 もちろん、墓の下には遺品も遺体もない。ただフレイの思い出だけがそこにあった。
 ヘリオポリス脱出後。
 彼等は偶然にも一同にAAに集うことがあった。
 その時のメンバーで、大戦を生き延びた者は、ナタル、カズィ、そしてフレイのみ。

452 名前: 夢の向こう/35 投稿日: 2003/09/16(火) 01:40
 フレイはよく考える。
 もし、自分がドミニオンでは無く、アークエンジェルに救助されていたらどうなったのだろうかと。
 大勢には影響はないだろう。フレイからNJCの技術を手に入れずとも、連合のNJCは完成段階にあった。
 地球軍は開戦直後から捕獲したNJを研究に没頭し、既にNJCを開発していたのだ。ナタルに聞いた所によれば、フレイがもたらしたデータはNJCの小型化という点においては独創的だったものの、連合の研究を覆すほどの衝撃ではなかったという。
 つまり、いずれフォートレスは完成し、ザフトは無差別砲撃によって降伏を余儀なくされる運命にあったのだ。
 そうなれば、連合はAA一派を掃討しようとするだろう。フレイが経験した運命の繰り返し。
 違うことは、フレイが狩る側か、狩られる側にいるか。そのどちらかだ。
「ねえキラ。
 それって、こうやって一人生き残るか、それとも、貴方と一緒に死ぬかってことよね」
 眼前でキラが散ったあの後、フレイは本気で自殺を考えた。
 実際に手首を切ったこともある。
 しかし、ナタルに思いっきり張り手を喰らい、彼女はキラの元に駆け昇ること無くこうして大地を踏みしめている。
 キラがいない世界を生きることに意味があるのだろうか。
 フレイを悩ませる心の声だ。
 私はあの時、皆と一緒に死ぬべきだったのだろうか?
 心地よい海風に身を任せながら尽きぬ問いに答を模索する。

453 名前: 夢の向こう/36 投稿日: 2003/09/16(火) 01:43
「わかってるわよ、キラ。自分で考えろってことでしょ?
『フレイの人生は、自分で決めるしか無いんだよ』ってこと?
 まったく、先に死んじゃった癖に偉そうなんだから」
 何はともあれ、フレイは自分の脚で歩き出した。
 ナタルの推薦によって士官学校に入校。18歳で少尉に任官し、新設された緊急展開軍にナタル共々身を投じた。そこでいくつかの動乱や武装蜂起の鎮圧に能力を発揮し、23歳にして少佐を拝命。あのドミニオンの艦長となった。
 あれから大きな戦争は起きていない。
 コーディネイターとナチュラルの亀裂は決定的とも言えるレベルだが、国力も技術力も連合の方が上だ。
 なにより軍事力が違う。それ故軍も積極的な拡大を続けようとはせず、段階的に縮小。予算も削られ、
艦艇やMSを10年20年使うのは当たり前になっている。 AA級強襲揚陸艦も、何度か全面改修を受けつつ、当分現役だ。
 新型艦艇の予定は、まだない。
「要するに、平和ってことね」
 フレイは立ち上がり、大きく深呼吸。
 潮の香りが混じった新鮮な大気を心一杯吸い込んだ。
 自分が生きていることに後悔はない。
 だが、彼女は自分を死ぬまで縛り続けるであろう棘の存在も自覚していた。
 自分がAAと行動を共にした時のことも考えてしまうのだ。
 フレイは思いを馳せる。
 キラと直接最後に話したのは、あの救命艇の時だ。あれからキラを含めてAAが掃討されるまで4ヶ月が流れた。
 その間、キラやカガリ、ラクス、サイ、彼等はどうやって過ごしたのだろうか?
 見えない不安、絶望、それとも希望?
 そして考える。キラが死ぬまでの数ヶ月。
 もし自分と彼が一緒にいられたら、その間にどのような交流が出来たのだろうか、と。

454 名前: 夢の向こう/37 投稿日: 2003/09/16(火) 01:46
 以前のような関係?
 破局?
 それとも、新しい「何か」に踏み出せたのだろうか?
 自分がどんなに充実した生を送ろうとも、
キラと一緒にいたかったという思いを打ち消すことは出来なかった。
「失われた可能性に何時までも拘るのは時間とエネルギーの浪費だ。
 そのようなことにうつつを抜かすならば、前に進めば良いではないか!」
 フレイが悩んでいるのを見かねた、士官学校で新たに得た親友からの忠告だ。
 確かにその通りだ。
 思い出は、記憶に過ぎない。
 思い出は逃げ込む場所ではないのだ。
 いつまでも浸り続けて、今を逃がしてはならない。
「だから、泣きたくなったら……。
 キラにどうしても会いたくなったら、また来るね」
 フレイは立ち上がった。
 休暇は今日で終わりだ。
 明日はドミニオンを指揮し、再び宇宙に戻る。
 新たな家。新たな家族。
 変人ぞろいだが、仕事は確実にこなすドミニオンクルー達の表情を思い浮かべ、フレイは表情を引き締めた。
 その顔は、若くして艦長の責務を背負う、生気に溢れた魅力的な女性士官のそれだった。

 過ぎ去った人ではなく、今大切な人へ。
 そして、まだ見ぬ誰かの未来の為に。
 フレイは生きていく。
 丘の上を海からの風が優しく吹きぬける。
 皆の墓にフレイが備えた花が風に僅かに揺れた。

                          END

455 名前: 夢の向こう/作者 投稿日: 2003/09/16(火) 01:52
「夢」は「もし自分がAAに助けられたら…」というフレイの適わぬ想いです。
これは誰しも抱く想いだと思います。また、その向こうに未来はあると思うので。
最近ガンパレードマーチにはまって、その影響ですね。
「そしてまだ見ぬ誰かの未来の為に」は一番好きな言葉です。

拙文にお付き合いくださってありがとうございます。
コミケ会場で、全く関係ないジャンルでフレイ様の表紙を見たら、是非。
ではでは…

456 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 03:24
>>〜455
乙です。一気に読みきりました。
艦隊戦闘描写、かっこよかったです。
軍事方面に詳しくないので、実情はわかりませんが
個人的にはとてもリアルで、シビアに感じました。
ご都合主義でないストーリー(フレイが軍人として出世するかはともかく…)で、
胸に迫ります。
ラクスやカガリを一切描かずとも、命の散る辛さを感じさせる
緻密な表現が、イイです。

欲を言うなら、せっかく名前の出てきたドミニオンクルーを
もう少し書くことで、
フレイがドミニオンを第二の家のように思う事や
>慣れぬ業務にとまどいながらも自分達を補佐しつづけた赤毛の少女を。
の一文の唐突さがやわらぐんじゃないかと。

でも、あまり書き込みすぎると完全オリジナルになってしまうし、
文章が冗漫になって緊張感を失ってしまうし、
逆に、読者にとっての文章の長さとフレイにとっての時間経過とに
違いがあるのも自然だとおもうので、難しい所ですよね。

あと、アスランの死もいつあったのかやや飲み込みにくかったので、
30の冒頭、『薄れゆく爆煙の中、キラは絶叫していた』など、
ジャスティスが沈んだことをさす表現が欲しかった気もします。
あっ、宇宙空間に爆煙があるかはわからないので、あくまでものの例え、ですが。

やたら長くすみませんでした。
それくらい熱中して読んだんだ、って事で、許してやってくださいm(_ _)m

ナタルもいいですね。
また逆に、おちぶれたマリューが、哀れで、涙が出ました。
まだ、胸の奥に重い塊が残っています。
自分がご都合主義の甘い人間である事を思い知りました。
こんな作品を書けるようになりたい。

イイ作品を、ありがとうございました。

457 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 14:47
>彼等は彼等自身でお互いを認め合い、オーブ再興、
>コーディネイターとナチュラルがお互いを認め合える新しい国家を樹立するという夢に縋って
>細々と生きていくしかなかったのだ。
> それは団結力を高める意味では有効だったかもしれないが、
>いつしかその夢を守ることが彼等の生そのものになっていった。
> この夢を手放すことは、彼等にとって死よりもつらいことだったのである。

 なんか蜀の懸命な北伐みたいで泣けますた。
うわあ゛ああぁ゛ぁぁ。・゚・(つД`)・゚・。あ゛あ゛あ゛ぁぁ

458 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 15:12
フレイ様ぁぁぁぁぁ(⊃Д`) …じゃなくて
キラぁぁぁあ゛ああぁ゛ぁぁ。・゚・(つД`)・゚・。あ゛あ゛あ゛ぁぁ

459 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 15:41
 キラの新しい泣き方は人気ないと言ってみるテスト。

460 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 16:47
>>306-309
遅レスですが、泣きました。うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ

フレイ様がポッドで射出された時、サイと世糧娠薄かったけど、こういう最期ならまだ納得できるような気がします。
乙でした。

461 名前: 終末に向って・24 投稿日: 2003/09/16(火) 18:11
海から吹きつける風が気持ち良い。舗装されていない、ただ土を踏み固めただけの道が続いている。
周囲には木々が木陰を作っているが、オーブの日差しは強い。
この丘の上にトールの墓が立っているのだ。これまで忙しくてトールやフレイの墓を立てることも出来なかったが、マルキオ導師がトールの墓を立ててくれたのだ。
自分たちが忙しさにかまけてつい疎かにしていまったことをキラは恥じていたが、こうして見舞いにくることができるのは嬉しかった。

「ここなら、フレイの墓を立てても良いかな。トールもいるし、2人なら寂しくないよね」

フレイが寂しがりやだったことを思いだし、キラはクスクスと笑い出した。戦争が終わった頃はフレイを思い出すだけで辛かったのだが、今ではこうして笑うこともできる。これが時の流れというものなのだろうか。
どんなに辛い記憶も、楽しい記憶も全ては時と共に思い出になってしまう。フレイを忘れることは決して出来ないだろう。でも、それで良いと思う。誰かが忘れない限り、その人は確かに生きていたのだと言えるのだから。
暫く歩いてると、徐々に林が開けてきた。どうやら林を抜けたようだ。
そして、一気に視界が開けた。眼前には広大な海が広がり、水平線を境に澄みきった青い空が広がっている。
そして、海岸沿いの崖の上に1つの石造りの墓が立っていた。

ゆっくりと歩いて行く。こちらからは崖に見えるが、反対側に回れば小高い丘でしかないようだ。海岸沿いに回って行けば良い。
散歩気分で歩いて行くと、ようやく丘の麓にまで来た。そこから上へと歩いて行く。すると、墓の前に誰かがいるのが見えた。どうやら膝を付いて何かをしているらしい。白い服を着て、大きな麦藁帽子を被っている。
誰だろうと不思議に思ったが、自分より先に家族なりにでも話していたのだろうと納得した。
だが、ある程度登った所でいきなり肩にいたトリィが飛び立ち、墓の前に居る人の所に行ってしまった。

「あっ」

慌てて早足で墓の方に行く。トリィが迷惑をかけてしまったからだが、その墓の前の人の声を聞いたとき、その足が止まってしまった。

「トリィ!?」

墓の前の人は驚き、立ちあがった。その人は女性で、麦藁帽子から伸びる赤い髪が印象的だ。
そして、その女性がこちらを振り返った。その顔を見て、キラの体が硬直する。
ありえない。月の記録でも死んだとなっていたのだ。あの後どれだけ探しても見つからなかったのだ。なのに、どうして・・・・・・
キラは、振るえる声で彼女の名を呼んだ。

「フ・・・レイ・・・・・・?」
「・・・・・・キラ?」

フレイもまた信じられないという顔で自分を見ている。お互いに相手が死んだと思っていたのだ。
その相手がこうして目の前にいる。お互いにその現実を受け入れるのに暫くの時間が必要であった。

462 名前: 終末に向って・25 投稿日: 2003/09/16(火) 18:57
キラとフレイは言葉も無く向き合っていた。お互いに何を言って良いのか分からないのだ。
だが、先にフレイが顔を逸らした。トールの墓に向き直り、背後にいるキラに声をかける。

「生きてたのね、あなた?」
「うん、僕もどうして助かったのか、良く分からないんだけどね」

キラはフレイの横に立った。トールの墓にはフレイが作ったらしい花輪がかけられている。

「・・・・・・どうして、ここに?」
「マルキオさまが、トールの墓を作ったと教えてくれてね。一度見舞いに来いって」
「そう、マルキオさまが。お節介な人ね」

フレイは小さく笑うと、風になびく髪を右手で押さえた。
キラはどうしても聞きたいことを問いかけた。

「フレイ、君は、どうして生きてるんだい?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「僕は必死に調べた。でもどれだけ調べても君の生存は確認できなかったんだ。死んだものと諦めたよ」
「・・・・・・死んだことに、してもらったのよ」

フレイが死んだのは、記録上のことであった。ドミニオンで撃たれたフレイはすぐに医務室に運ばれ、そこで辛うじて一命を取りとめたのだ。
その後ドミニオンから脱出させられ、月基地で本格的な処置を受けた。フレイがNJCを持ってきた張本人であることを危惧したドミニオンの副長がフレイの記録を改竄し、月基地で死んだことにしたのだ。大損害の混乱で改竄そのものは容易かった。
死者に責任を追及することは出来ない。戦後になってプラントには核攻撃の責任者の処分を求める声が上がり、フレイが生きていればその槍玉に挙げられる可能性があったのだ。結果として副長の判断にフレイは救われたことになる。
秘密裏に地球に降ろされたフレイは、オーブ経由でマルキオ導師の元に預けられたのだ。

「私がここに来たのは3ヶ月前、あなた達に連絡を取らなかったのは、そうする必要が無かったからよ」
「必要が無いって・・・・・・」
「私はあなた達に散々迷惑をかけて、戦火を拡大した張本人よ。どの面下げてあなた達に会えっていうの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「私は、死んでいる方が良いのよ。そうすれば誰にも迷惑がかからない」

フレイは立ちあがった。そして、その場で踵を返す。

「さようなら、キラ。私のことは忘れて頂戴」

463 名前: 終末に向って・26 投稿日: 2003/09/16(火) 19:54
離れて行くフレイ。キラはその背中を見て、内側から込上げてくる不安を確信に変えた。間違い無い、フレイはマルキオ導師の所を出て行くつもりだ。
それを確信した瞬間、キラは動いていた。フレイを背中から抱きしめたのだ。フレイは俯きながら、小さな声で頼んだ。

「キラ、離して」
「離さないよ、絶対」

キラは抱きしめる手に力を込めた。

「死んでいるほうが良いなんて、言わないでよ。フレイが死んだら、僕は悲しいんだ。きっとみんなも」

その言葉に、フレイの体がビクリと震えた。そして、苦しそうな声で言葉を紡いでいく。

「私は、重罪人として裁かれるかもしれないのを怖がって逃げ回ってる臆病な女よ。いても迷惑をかけるだけだわ」

フレイは、罪の意識に苛まれていたのだ。それを1人で抱えこんだまま、生きていこうとしている。あんなに独りぼっちになるのを、孤独を恐れていたフレイが。
だから、キラは優しく宥めるような声でフレイに語り掛けた。

「罰なら、一緒に受けてあげる。罪なら、僕も背負ってあげる。どんなに辛い道でも、2人でならきっと乗り越えて行けるよ」
「・・・・・・キラ・・・・・・・でも」
「だからさ、一緒に帰ろう、フレイ。みんなのいる所へ」

キラの誘いに、フレイの体が小刻みに震えだした。涙が零れ、声が揺れている。

「あなた・・・・・・本当に馬鹿よ。私なんかと一緒にいても、苦労ばかりよ」
「そうかもね」

フレイの体から力が抜ける。それを見てキラもフレイの体から手を離した。
そして、振り返ったフレイは笑っていた。涙で顔をくしゃくしゃにしていたが、確かに笑っていたのだ。

「・・・・・・でも、もっと馬鹿なのは私よね。一度捨てた夢に、また縋ろうとしてるんだから」
「フレイ・・・・・・」
「キラァ――!」

フレイはキラの胸に飛び込んだ。オーブでの別れから、幾ばくかの月日を経ての再会。時間的にさほど長い別れではなかったが、2人に起こった激動の日々を思えば、それは久しき再会であった。
あの日に分かたれた道は、ここで再び1つに交わった。この先がどうなるかは、2人の努力次第だろう。
だが、その時、2人の耳に風にのって声が聞こえてきた。もう聞ける筈の無い声が。

『よかったな、2人とも』

その声に2人は顔を上げ、一緒にトールの墓を見た。そこには誰もいない。ただトリィがとまっていて、掛けられた花輪が風に揺れているだけだ。
だが、2人は確かに聞いたのだ。トールの祝福の声を。

「トール」
「トール・・・・・・ありがとう」

2人は、小さな声でトールに感謝した。
そして、キラはフレイの顔を見ると、ゆっくりと顔を近づけた。キラの意図を察し、フレイが目を閉じる。そして、2人の唇がゆっくりと重なり合った。
打算も何も無い、初めての愛情だけのキスであった。
それを祝福するかのようにトールの墓から花輪が空に舞い上がり、トリィがそれを追って空を駆ける。

トールの墓を前に、重なりあった2人の姿は何時までもそこにあり続けた。ナチュラルとコーディネイターの未来を示しているかのように。

464 名前: 終末に向って・作者 投稿日: 2003/09/16(火) 19:59
終わったあ。ああ、長かった
これでようやく次のが書けるよ。今度のは本編アナザーストーリーでいこう
皆さん、「終末に向って」はいかがでしたでしょうか。
色々と気に食わない所もあったかと思いますが、ご容赦下さい

実はラストシーンで待ってるのはフレイじゃなくアスランというギャグバージョンも考えてましたが、流石にヤバイので没にしました
ギャグバージョンは全てはラクスの野望の為。彼女のヤオイの世界のための物語だったのだという恐ろしいラストシーンでしたw

465 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 20:10
うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ

乙です。感激です。サンクスです

466 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 20:12
>>464
乙フレ〜
うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
トールちゃんサイコー!!フレイ様本編でも生きてくれ!!

本当にお疲れ様でした。

467 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 20:22
>>464
乙フレ・・・・。
うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
本編よりこっちのほうがよっぽど感動するよ・・・・。

468 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 20:24
>>467
それを言っちゃ駄目だろう本当のことでも
うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ

469 名前: 467 投稿日: 2003/09/16(火) 20:26
>>467

470 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 20:27
こんな時期にどうかと思うが、エロコメとか投稿しても宜しいですか、フレイ様。

471 名前: 467 投稿日: 2003/09/16(火) 20:29

ぬお!!すまん、ミスった・・・・・。
>>468
ごめんよ・・・・。でもこれを読んだ後に本編見るととてもじゃないが悲しくなる・・・。
うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
逝ってくる・・・・。

472 名前: 最終回に添えて/作者 投稿日: 2003/09/16(火) 20:29
>>470
別にいいとおもいまつ

473 名前: 終末に向って・作者 投稿日: 2003/09/16(火) 20:37
なんか、思ってたより喜んで貰えたみたいですな
こんな甘いラストは認めないとかの意見もあるかと思ってましたがw
実は、フレイの生存はナタルがドミから負傷者を運び出せるかと聞いた時に伏線が張ってあったんですね
このラストシーンは結構前から決まっていました

次から書くアナザーストーリーは前から予告していた通り、長いです。
本編とだんだん離れて行きます。ラクスとフレイが話してたりとか。
まあ、期待しないで待っててください

474 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 20:52
>>473
お疲れ様でした!
終わり良ければ全て良しだよ・゚・(ノД`)・゚・
フレイ様よかたよ・゚・(ノД`)・゚・

次回作もお待ちしております!

475 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 20:53
うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
大作、乙ですた!

次回作もがんがって下され!

476 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 21:39
>>470
是非にもお願いします。
このスレ、ちょっとシリアス系に偏ってるから息抜きが欲しいの。

477 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 21:44
>>476
なんだ、お笑いが欲しかったのか。
言ってくれれば書いたのに・・・・・・最悪のネタでw

478 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 21:56
ぜひともギャグ希望!
ギャグSSなんてここ少ないので……

479 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 21:58
ほのぼの微笑ましいネタでも良いよ〜

480 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 22:00
>>476
了解。最初エロパロ用に書いてたんだけどね。
最近空気重いから投稿しようと思いますた。
ちょっと修正するから二〜三日待ってください。



それはそうと終末乙。

481 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 22:33
最近投下される作品、鬱ネタばかりのような…。
(⊃Д`)

482 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 22:45
(´-`).。oO(漏れは鬱展開も好きだったり・・・。職人の皆さん、本当にお疲れ様です。)

483 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/16(火) 22:52
やっぱり、フレイ様にはギャクより鬱ネタの方が似合うような。
泣き顔→透明な笑顔というコンボが好きでつ。

フレイ様ぁぁぁぁぁぁ(⊃Д`)

484 名前: LFA/夢の向こう/作者 投稿日: 2003/09/17(水) 00:26
>>456
御指摘感謝します。正直、文章に関しては手探りであります。
御意見保存させて頂きました。

種世界の中のフレイ様に関しては、「LFA」と「夢の向こう」で
自分なりの解答を出して決着をつけたという感じがあるので、長編を書くことはもう無いでしょう。

今後は別作品世界の中でフレイ様を成長させていきたいと思います。
自分の守備範囲が○○○○とかフロン○ミッションとかパンツァー○ロントなどと偏っているので
戦場からは逃れそうにありませんが、フレイ様。

ここは良作が大量投下されて本当に楽しいですね。
新たな職人が出現することを祈るであります。

485 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/17(水) 01:22
>○○○○とか

全部伏字ってそりゃないですよw
ここも3文字入れてください。

しかし夢の向こう、LFAに次ぐ対策だあと思っていたら同じ方でしたか(^^)

486 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/17(水) 01:25
すいません、一発で分かるヤツですから。
バグゥの元ネタです。SEEDの前に放映してましたねぇ(遠い目)

487 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/17(水) 07:25
>>484
まぁ文章や作風で同じ人が書いてるとすぐわかりましたけど。
しかし、相変わらずと言うか凄い描き込みようで、正直よくやる気が持続するなと感心してしまいます。
そういやもう一つ、途中になってるのも完結させて下さいとお願いしてみたりw

488 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/17(水) 18:15
何かあんま怖くないな…
ttp://product.bandaivisual.co.jp/web_service/images/b_image/BCBA-1578.jpg

489 名前: 488 投稿日: 2003/09/17(水) 18:15
誤爆スマソ。

490 名前: 流離う翼たち・1 投稿日: 2003/09/17(水) 19:44

中立国家、オーブに所属するコロニー、ヘリオポリス。ここは今だ戦火に巻き込まれていない貴重なコロニーだ。ここには戦火を逃れて多くの人々が集まっている。誰が危険な戦闘地域になど住みたがるだろうか。だが、今このコロニーに1つの危険が迫ろうとしていた。

ヘリオポリスに入航しようとしている1隻の輸送船がある。いや、正確には連合の仮装巡洋艦だ。ヘリオポリスは戦闘艦の入航を認めていないので、このような処置をとっているのである。艦の中には戦闘用のメビウスが3機と、メビウス・ゼロが1機収められている。
 艦内でメビウス・ゼロの調整をしていたフラガは、通りかかった部下を見つけて声をかけた。

「おいキース、どうした、やけに嬉しそうじゃないか?」

 呼び止まられたのはキーエンス・バゥアー中尉。フラガの部下の1人で、フラガが最も信頼している仲間でもある。キースとは彼の愛称だ。
 キースはフラガの方を向くと、嬉しそうに相好を崩した。

「そりゃ嬉しいですよ。久しぶりの上陸ですからね。もうこんな狭い艦の中はコリゴリです」
「なるほどな、そりゃ言えてる」

 声を上げて笑うフラガ。彼は連合の中では屈指の実力を持つエースパイロットで、エンディミオンの鷹という2つ名を持っている。彼の専用MAとも言えるメビウス・ゼロは彼にしか扱えないという事で知られる特殊なMAだ。
 キースはスコアこそフラガに劣るものの、その実力はフラガに劣らないと言われている。何しろメビウスで多くのジンを叩き落しているのだ。彼はエメラルドグリーンに塗装された目立つメビウスを駆る事で知られている。その装備はとにかく重武装・高機動で、付けられるだけの火器とブースターを取り付けている。これでひたすら一撃離脱を繰り返すのが彼の戦法だ。
 これだけの実力を持つエースを2人も乗せている事を見れば、この艦がどれだけ重要な任務を与えられているかが分かるだろう。この艦には、開発中の連合のMSのパイロットが乗っているのだ。
 だが、まさに運が悪いと言うか、この艦がヘリオポリスに到着すると同時期に、2隻のザフト艦がヘリオポリスに迫っていたのである。


ザフト軍ナスカ級高速巡洋艦ヴェザリウス。ザフト軍のエース、ラウ・ル・クルーゼが率いるクルーゼ隊だ。ヘリオポリスを見つめるクルーゼの顔は半ば仮面で隠され、その表情を伺う事は出来ない
ヴェザリウスを預かる艦長、アデスは自分の懸念をクルーゼにぶつけた。

「評議会からの返答を待ってからでも遅くは無かったのでは・・・・・・隊長?」
「遅いな・・・・・・私の勘が告げている。ここで見過ごせば、その代価、いずれ我等の命で支払わなくてはならなくなるぞ」

 クルーゼはヘリオポリスを攻撃してでも連合の新型を奪取するつもりだった。その為なら多少の外交問題など考慮する必要は無いと考えているのだ。



 ヘリオポリスの中では多くの人々が平和に暮している。そんな中に、1人の少年がいた。コーディネイターであるがプラントに移り住む事は無く、両親と共にヘリオポリスにやってきた少年、キラ・ヤマトだ。
 彼は仲間達とエレカでモルゲンレーテの工場へと向っていた。自分たちの教諭であるカトウ教授に会うためだ。だが、そこに教授の姿は無く、代りに3人の同年輩の人物がいた。1人はサイ・アーガイル。ゼミの仲間で、仲間内ではリーダー格でもある。もう1人はカズィ・バスカーク。やはりゼミの仲間だ。あと1人帽子を被った人がいるが、こちらは見覚えが無い。
 この華奢な少年を放っておいてキラ達は和気藹々と話していたのだが、いきなり彼等は激しい振動に襲われ、慌てて近くの物に捕まる事になる。

「な、なんだ!?」
「隕石でも当たったのか?」

 彼等が事実を知るのはすこし後のこととなる。それは、ザフトの攻撃だったのだ。平和な筈の世界、それは、ここに住んでいる人々の思惑を無視して壊されようとしていたのである。

491 名前: 流離う翼たち・2 投稿日: 2003/09/17(水) 19:48
 ヘリオポリスに入航していた仮装巡洋艦は慌てふためいて出向してきた。すでにコロニー防衛隊とザフト軍の戦闘は始まっている。仮装巡洋艦からも5機のMAが飛び出して来た。だが、ザフトの主力機であるMSジンとMAメビウスのキルレシオは1対5。とても勝負にはならないだろう。

「全機、ジンをコロニーに近づけるな。何としてでも粘れ!」

 フラガは指示を出したが、正直言ってどれだけ持ち応えられるか、という思いが強い。自分とキースを除けば残る2人は実戦経験が少ないのだ。
 そんな事を考えていると、すぐにジンが向かってきた。フラガは意識を切り替えるとそれに立ち向かっていく。1対1ならジンごときに遅れを取らない自信が彼にはあった。有線ガンバレルを展開し、四方八方から攻撃を加えて行く。フラガ自身はジンとのドッグファイトに入った。そのジンは予想外の所から砲撃を受け、左腕を失ってしまう。
 だが、フラガの奮戦も戦局には大した影響を与えてはいない。
 フラガの予想通り、メビウス隊は自分の身を守る事さえ出来ず、ヘリオポリスにMSの侵入を許してしまった。キースは舌打ちしながらも目の前のジンに向って行く。

「悪いけどな、堕とさせてもらう!」

 緑色のメビウスが一直線にジンに向っていく。ジンのパイロットは小癪なメビウスを撃とうとしたが、その機体を見て狼狽した声を上げた。

「緑のメビウス。まさかこいつ、噂の「緑玉(エメラルド)の死神」か!?」

 エメラルドの死神。そう呼ばれるメビウスパイロットがいる。フラガのエンディミオンの鷹ほど有名ではないが、シップエースとして名を馳せているのだ。当然MS撃墜数も多い。
 キースの前に出た事がこのジンパイロットの不運だった。積めるだけの武装を積みこんだキースのメビウスの正面火力は凄まじい。絶大な火力を叩き付けられたジンは回避運動に入ったものの、キースから見てその動きはいささか腰が退けたものに映る。どうやら自分を知っているらしい。キースは機体性能の限界まで加速させ、一直線にそのジンに迫った。下手な回避運動は一切しない。投影面積を最少に止め、すれ違いざまにありったけの武器を叩きこんでいく。これがキース流の一撃離脱戦法だった。
狙われたジンはたちまち攻撃を受け、機体をバラバラにされて破壊されてしまった。

「オロール機被弾! 緊急帰投!」
「オロールが被弾だと、こんな戦闘でか?」

 アデスが意外そうな口調で問いかけたが、次に来た報告には驚愕をしてしまった。

「クライム機反応消失、撃墜された模様!」
「馬鹿な、クライムまでだと!?」

 アデスは椅子を蹴って立ちあがった。クルーゼ隊のパイロットはエース級で揃えられている。それなのに、たった数機のMAにこうまで苦戦しているのだから。
 そして、何処かの宙域を見ていたクルーゼがふっと笑った。

「どうやら、いささか煩いハエが1匹、飛んでいるようだぞ」
「はぁ?」
 
 意味が分からず聞き返すアデスに、クルーゼは滑らかな動作で椅子から立ちあがり、告げた。

「私も出る」

492 名前: 流離う翼たち・3 投稿日: 2003/09/17(水) 19:48
 ヘリオポリスの中は大変な事になっていた。数機のジンが侵入して暴れまわり、施設を破壊して回っている。民間人の犠牲もかなりの数に上るだろう。そんな中で、モルゲンレーテの施設から2機のMSが飛び出してきた。連合の新型機動兵器、GAT X−303イージスと、GTA X−105ストライクだ。

「良くやった、アスラン!」
「・・・・・・ラスティは失敗だ、向こうの機体には地球軍の士官が乗っている!」
「なに、ラスティは!?」

 アスランは無言で頭を左右に振った。それを見たミゲルも辛そうに顔を顰める。

「なら、あの機体は俺が捕獲する。お前は先に離脱しろ!」

 アスランを下がらせてミゲルのジンがストライクに向って行く。ストライクを操るマリューは咄嗟にフェイズ・シフトのスイッチを入れた。機体の色調が変わり、振るわれたジンのサーベルが弾き返される。

「な、なんだ、こいつの装甲はどうなってるんだ!?」
「この機体はフェイズ・シフトを装備してるんだ。ジンのサーベルなど通用はしない」
「ちっ、厄介な」

 ミゲルはジンを僅かに下がらせたが、すぐにまた前に出た。このまま動きの鈍いストライクを殴りつづけ、バッテリー切れにさせようと考えたのだ。
 ストライクの中のキラはモニターで友人達が瓦礫の中を逃げ惑っているのを見つけ、思わず機体の操作に手を出してしまった。襲い来るジンのサーベルを機体を沈める事で躱し、体当たりでジンを吹き飛ばす。

「まだ人が残ってるんです、こんなものに乗ってるなら、何とかしてくださいよ!」
「君!」

 女性士官が咎めるように叫ぶが、キラは構わずに計器類をチェックしていく。

「無茶苦茶だ、こんな堕粗末なOSで、これだけの機体を動かそうなんて!」
「ま、まだ全て終わってないのよ。仕方ないでしょう!?」
「どいてください!」

 女性士官が慌ててシートを譲る。キラはシートに滑りこむと端末を引きだし、凄まじい速度で叩き始めた。戦場でOSを書換えようというのだ。その余りの速度に女性士官、マリューは驚きの目を向けていた。
 襲いかかるミゲルのジン、だが、ミゲルの予想に反してストライクの動きはいきなり良くなった。それまでぎこちなくしか動けなかったのに、突然変化したのである。そして、その変化に戸惑っている間に、ミゲルは機体を失ってしまったのである。


 キースは1機のジンを堕とし、更にローラシア級巡洋艦のガモフに手傷を負わせた辺りでようやく周囲に変化に気づいた。何時の間にか味方が1機も見当たらないのだ。

「おいおい、冗談だろ、まさかフラガ大尉まで殺られちまったってのか!?」

 あのフラガ大尉がそう簡単に殺られるとは思えないが、このまま孤立して袋叩きは嫌だったので、キースは機体を近くのデプリに飛び込ませ、ゴミに貼りつけた。これで発見される確立は激減するからだ。機体の動力も落として熱反応も押さえ込む。
 後はそのうち敵が立ち去って、ヘリオポリスにでも逃げ込めるのを期待するしかない。

「酸素が無くなるまでに終わってくれれば良いがなあ」

 暢気にそんな事を考えていると、いきなりヘリオポリスの外壁に大穴が開いた。内側から強力なビーム砲が放たれたのは分かるのだが、あれではまるで艦砲でも撃ったかのようだ。その穴から1機のシグーが出てくるのが見えたが、今は相手にするつもりは無い。
 この時、コロニーの中で起きている事件を知ったら、キースは驚愕しただろう。まさか、中で戦艦が暴れているなどとは普通は思わない。

493 名前: 流離う翼たち・4 投稿日: 2003/09/17(水) 19:49
「ラミアス大尉!」

 少年達にストライクの部品を載せたトレーラーを運転させ、アークエンジェルに帰ってきたマリューを出迎えたのは、ナタル・バジルール少尉だった。

「ご無事で何よりでした」
「あなたこそ、よくアークエンジェルを。おかげで助かったわ」

 その時、ストライクからキラが降りてきた。それを見た整備長のマードックらが驚いている。
 ナタルの隣から見た事の無いパイロットスーツ姿の男が現れた。端正な顔立ちに気さくそうな笑顔を浮かべている。

「地球軍第7機動艦隊所属、ムウ・ラ・フラガ大尉だ。宜しく」
「あ、地球軍第2宙域第5特務師団所属、マリュー・ラミアス大尉です」

 敬礼を交し合った後、フラガが切り出した。

「乗艦許可が欲しいんだが。俺の乗ってきた船は落とされちまってね。この艦の責任者は?」
 
思い口調でそれに答えたのは、ナタルだった。

「艦長以下、主だった士官は全員戦死されました。よって、ラミアス大尉がその任にあると思いますが」
「え・・・・・・・・?」

 マリューが凍り付く。まさか、艦長達が戦死していたとは。
 フラガは疲れた顔で額を押さえる。そして、戦艦には似つかわしくない少年たちの方を見る。

「で、あれは?」
「ご覧の通り、民間人の少年です。襲撃の時、何故か工場ブロックにいて、私がGに乗せました。キラ・ヤマトと言います」
「ふーん」
「彼のおかげで、先も人1機を撃退し、あれだけは守る事が出来ました」
「ジンを撃退した。あんな子供が!?」
「俺は、例のXナンバーのパイロットになるひよっこ達の護衛できたんだがね。あいつらは・・・・・・?」

 ナタルはフラガの問いに沈痛な顔で頭を左右に振った。それを見たフラガの顔が辛そうに引き締められる。

「彼が、ストライクを操縦してくれたおかげで、あれだけは守ることが出来たんです」

 ナタルが驚いた声を上げる。フラガは面白そうにキラを見ると、近づいていった。キラは僅かに身を固くし、警戒した声を出す。

「な、なんですか?」
「・・・・・・君、コーディネイターだろ?」

 何気ない口調での問いかけ。だが、それのもつ意味は大きかった。コーディネイターという言葉に反応した兵士達が銃を向ける。その銃口の前にトール達が立ちはだかり、キツイ目で兵士達を睨みつける。

「キラはコーディネイターでも敵じゃねえよ。さっきのを見てなかったのか。どういう頭してるんだよ!」
「トール・・・・・・」

 緊迫した空気を吹き払ったのは、自分たちをここに連れてきたマリューだった。

「銃を降ろしなさい」
「ラミアス大尉、これは一体?」
「別に、おかしな事じゃないでしょう。ここは中立コロニーですもの。戦争に巻き込まれるのが嫌で、移り住んだコーディネイターがいても不思議じゃないわ。違う、キラ君?」
「ええ、僕は、1世代目のコーディネイターですから」

 キラの答えに誰もが顔を向き合わせている。そんな中からフラガが一歩前に出てきた。

「つまり、両親はナチュラルという事か」

 頭を掻きつつ振りかえり、気安い声で謝辞を口にする。

「いや、すまなかったな。こんな騒ぎを起すつもりは無かったんだが。俺は、こいつのパイロットになる連中のシュミレーションを見てきたんだが、あいつ等、のそくさ動かすのにも四苦八苦してたからな」

 それだけ言うと、フラガは艦内に向けて歩き出した。ナタルに呼び止められて一度足を止めるが、人を食ったような答えを返すだけでまた中へと歩いていってしまう。フラガは外にいいるのがクルーゼ隊だと言い、また仕掛けてくると言う。この少ないクルーで何処までやれるか、マリューもナタルも暗澹たる思いに囚われてしまった。
 そして、再びクルーゼ隊の攻撃は開始されたのである。

494 名前: 流離う翼たち・5 投稿日: 2003/09/17(水) 19:50
 1人戦闘から離れた所で漂っているキース。そのまま飄々としていたら、今度はコロニーが崩壊を始めたのだ。これには流石に驚愕を隠せなかった。

「おいおい、どうなってんだよ。何が起きてるんだ!?」

 コロニーが崩壊する。そんな事は通常では考えられない。D型装備のジンが数機コロニーに向っていくのが見えたが、まさか奴等はコロニーの破壊が目的だったのだろうか。
 そしてコロニーの残骸から1隻の戦艦が現れた。白い、見たことも無い戦艦。味方の識別表には載っていない艦だ。あれは敵だろうかとも思ったが、それにしては妙な気もする。   
何が起きているのか分からないのだが、ヘリオポリスが崩壊した以上はもう何処にも行くことが出来ない。ならば敵でも交渉して投降するのも手だろう。動力を入れ、機体を起動させる。

「さてさて、あれは味方かな、それとも敵なのかな」

 通信機を操作し、戦艦に通信を入れる。出来れば味方であってくれればと思いながら。

「こちら連合軍のMAだ。貴艦の所属を教えられたい」

 暫く待つ。そして、帰ってきた声にキースは驚愕した。

「キース、その声はキースか!?」
「へ、フラガ大尉。生きてたんですか?」
「当たり前だ。お前こそ、良く無事だったな!」
「まあ、俺はしぶといですから」

495 名前: 流離う翼たち・6 投稿日: 2003/09/17(水) 19:51
 機体をアークエンジェルに向ける。とりあえずこの場は生き残る事が出来そうだった。だが、近くに1機のMSを発見し、慌てて戦う態勢を取る。

「フラガ大尉、MS1機を発見、攻撃します!」
「ちょ、ちょっと待て、そいつは味方だ。撃つな!」

 慌ててフラガが止める。キースはトリガーにかけた指を寸での所で止めた。

「味方って、じゃあ、あれがXナンバーなんですか?」
「ああ、X−105ストライクだ」
「あいつがストライク」

 キースの見ている前でその鮮やかなカラーの機体はゆっくりと近づいてくる。手に抱えているのは脱出ポッドだろうか。コロニーの住人が入っているのだろう。乗ってるのが誰かは知らないが、軍人としては甘い奴だと思えた。
 機体をアークエンジェルの軸線に乗せ、ゆっくりと着艦していく。入ってきたMAを見て整備兵達が驚きの声を上げていた。

「おいおい、こりゃ随分重武装のメビウスだな。誰が乗ってるんだよ」

 整備班長のマードックが楽しそうに機体を見ている。そして降りてきたパイロットを見て今度は僅かに驚いた。

「こりゃまた、思ってたより若いパイロットさんだな」
「まだ22だよ。キーエンス・バゥアー中尉だ。よろしく」
「マードックです、宜しく」

 差し出された手を握り返し、マードックはニヤリと笑った。こいつは面白い奴だ、そう感じたのだ。
 キースは格納庫を見渡し、ストライクを見つけると、マードックに問い掛けた。

「ところで、あいつのパイロットは?」
「ああ、ヘリオポリスの子供が動かしてるんですよ」
「子供? 俺が護衛してきたパイロットはどうしたんだ?」
「全滅です。みんな艦長達と一緒に」
「・・・・・・そうか」

 キースはガックリと肩を落とした。結局、死なせる為にここに連れて来たようなものだったのだ。そしてストライクに乗っている少年とやらを探しに歩き出した。どんな奴が乗っているのか興味があったのだ。
 だが、いきなり格納庫に少女の声が響き渡ったのには流石に驚いてしまった。

「ねえ、一体何があったの。ヘリオポリスは? 私、1人で、とても心細かったのよ!」
「大丈夫だから、もう大丈夫だから、ね」

 黒い服を着た少年に赤い髪の少女が抱き付いている。何で軍艦の中でこんな光景を目にするのかと持ったが、民間人を保護したのだと考えれば納得もいく。自分たちの住んでいたコロニーがいきなり崩壊すればそりゃ混乱するだろう。
 キースはどうしたもんかと考えていたのだが、女の子が離れたのを見て少年に声をかけようと思った。だが、少女が別の少年に抱きついたのを見て少年の表情が一瞬曇ったのを見て口元を楽しげに歪める。床を蹴り、ゆっくりと少年、キラに近づいて行く。

496 名前: 流離う翼たち・7 投稿日: 2003/09/17(水) 19:52
「やあ、君がストライクを?」
「え、ええ。あなたは?」
「ああ、第7機動艦隊のMA乗りだよ。キーエンス・バゥアー中尉だ。キースで良い」
「僕はキラ・ヤマトです」

 キースはキラを掴んで床に降ろした。そして小声で問いかける。

「しっかし、なんで君がストライクを動かしてるんだ。あれは軍の重要機密なんだぞ?」
「・・・・・・乗りたくて乗ってるんじゃありません。ラミアス大尉に頼まれて仕方なく」

 ラミアス大尉が誰かは知らないが、キースは理由は分からないが、この少年が自分の意思で乗っているのではないという事は分かった。そして、改めてキラを見る。

「ところで、話は変わるが君、さっきの娘のこと、どう思ってるんだ?」
「えっ?」
「隠すんならもう少し上手く隠すんだな。彼女が離れた瞬間の寂しそうな顔、見ていて一発で分かったぞ」

 ニタニタと笑うキースにキラは顔を真っ赤にして下を向いてしまった。

「うーん、片思いのようだな。青春真っ盛りだね〜」
「キ、キースさん!」
「はっはっは、頑張れよ、キラ君」

 キラを冷やかすだけ冷やかしてキースは艦橋に行ってしまった。残されたキラはまだ顔を赤くしながらその後姿を見ていると、背後からトールのタックルを受けてしまった。

「よおキラ、どうしたんだよ?」
「ト、トール。何でも無いって!?」
「そうかあ、フレイに抱き付かれて顔が赤かったぞ?」
「トールまでそういう事言うのかよ!」

 顔を赤くして喚きたてるキラだったが、致命的な失言に彼は気付いていなかった。トールが不思議そうに問いかける。

「トールまでって、俺以外にも誰か言ったのか?」
「さ、さっきの中尉さんが、トールみたいな事言ってからかったんだよ」
「へー、まあ、キラは分かり易いからなあ」

 楽しそうなトール。その後ろからやってきたミリィとカズィ、サイと一緒にきたフレイ。ヘリオポリスから脱出した6人の少年少女達と、アークエンジェルに乗り込む数人の士官たち、マリュー、フラガ、ナタル、キース。
 物語は今、動き出した。待ち受けるのは悲劇か、それとも・・・・・・

497 名前: 流離う翼たち・キャラ・機体 投稿日: 2003/09/17(水) 19:53
登場オリキャラと機体解説

キーエンス・バゥアー 22歳 中尉
 愛称はキース。「緑玉(エメラルド)の死神」の2つ名で呼ばれる凄腕のMA乗り。孤児であったらしく、バゥアー家に引き取られて育てられた。戦争によって両親と妹を失ったことでザフトに復讐を誓い軍に志願。MA操縦に天賦の才能があり、MAを駆って数々の武勲を立てる。今でこそ明るく振舞っているが、昔は復讐だけが全ての危険な男で、死神というのはその頃のキースの異常な戦い振りから付けられた。
 その出生には何か秘密があるらしいが、それを誰かに語った事は無い。
 部下の面倒見がよく、多芸でいろんな技能を持つ、いささか調子に乗るところはあるが、頼れる男である。キラ達の事を気にかけ、なにかと世話を焼いてもいる。特にフレイには死んだ妹の面影を重ねているところがある。


エメラルドのメビウス
 超重武装、高機動の両立を追及し、徹底した一撃離脱思想を具現化したメビウス。機体はノーマルだが、機体バランスの限界までオプションを装備している。常人では扱い切れないほどの火器とブースターを取り付けてあり、その加速は並のナチュラルには殺人的でさえある。
 エメラルドグリーンの機体は戦場では非常に目立ち、この機体色を使うというだけでキースを狂っていると見る者もいる。実際、昔のキースはわざと目立つ事で敵を自分に引き寄せようとしていた事実があり、その頃は間違い無く狂っていたと言える。
 だが、戦場で武勲を重ねる内にこの機体はザフトから恐れられるようになり、ザフトからは緑玉の死神と呼ばれるようになる。遂にはそれが連合にも伝わり、キースの2つ名となったのだ。

498 名前: 終末/流離う翼たち・作者 投稿日: 2003/09/17(水) 20:02
はっはっは、やっぱり馬鹿みたいに長くなってしまいました。
これでようやくヘリオポリスを出たところなんですよねえ。
後どれだけ続くのやら、考えると頭が痛いですな。
とりあえず暫くは本編とほとんど同じルートです。変化するのはもう少し先ですね
とりあえずミゲルが生きているので、彼の活躍はあります。

499 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/17(水) 20:22
>流離う翼たち作者さん
 実は私も、専用カラー持つならエメラルドグリーンだろ〜
な口です。かつてはアーマード○アなんかでいろんなカラー試しましたね。

500 名前: もっとたのしくて 投稿日: 2003/09/18(木) 00:33
けたたましい時計のベルの音でフレイは目を覚ました。
「…うっ…、うるさいわねぇ。…時計?…」
何かに弾かれたように飛び起きたフレイだったが、途端に頭を押さえて顔をしかめる。
「…イッタァ…何?この頭痛…それに少し吐き気もするわ…」
全くひどい目覚めだった。大体、朝は爽やかなもの、と相場が決まっているだろうに。
フレイは、何故こんなに頭が痛いのか、その理由を考えようとしたのだが…
「………嘘………」
一大事だった。一体いつ眠ったのか全く覚えていない。
一晩…いや、正確には昨日の夕方からの記憶が、抜けていた。
混乱したフレイの目が宙を泳ぎ、思い出したように時計に止まる。
途端にフレイは頭痛も忘れてベッドからシャワールームに駆け込んだ。
僅か数分で、いつもならたっぷり時間をかけるシャワーを終えると、ろくに鏡も見ずに服を着て部屋から飛び出した。
「…お嬢様、今日は学校はお休みですか?」
フレイは他人に起こされるのが大嫌いだったし、寝坊するなんて事は今まで一度も無かった。
だからこそのメイドの言葉だったのだが、今のフレイには皮肉以外のなにものでもない。
「…今日は朝食はいいからっ!気分悪いの」
立ち止まりもせずにそう言ってドアを開けると、朝から強烈な日光が突き刺す。
フレイは一瞬立ちくらみを起こしてよろめいたが、きっと唇を引き締めると駆け出した。
『でも、昨日は何があったかしら…?』
頭痛を我慢して走りながらも考えていた事はそれだった。
『確か…サイの誕生日パーティーだったわよね…昨日は…』

501 名前: もっとたのしくて 投稿日: 2003/09/18(木) 00:34
「おはよう!」
フレイの言葉で振り返ったクラスメイトは一様に、少し驚いたような表情を浮かべていた。
「おはよう…フレイどうしたの?いつもはもっと早いのに。顔色も…」
「…ちょっと…ね」
どうにか始業に間に合った安堵感でフレイは汗をかいた不快感も忘れていた。
汗をかいたおかげか、頭痛も少し和らいだような気がする。
「フレイ、今日提出するレポートどう?私自信無いな〜」
「え…っ?レポート?」
「やだ、忘れちゃったの?」
「どうするのよフレイ、放課後呼び出されるよ」
「禿の説教、しつっこいのよね。ネチネチと。一対一だとかなりきついわよ」
どうしてこんな日に限って…フレイは目の前が真っ暗になった。しかし、現にフレイの鞄の中にレポートは無かった。
「え〜では、先日の講義のレポートを提出してもらう。後ろから集めてくるように」
禿頭の教師の言葉を、判決文を聞く被告のような気持ちでフレイは聞いていた。
自分でも、顔が真っ赤になるのが分かる。出来るなら逃げ出したいくらいだった。
「…ン?フレイ・アルスター、君のレポートは提出されていないようだが…」
「すいません…忘れ…ました…」
我ながら情けなくなるような、蚊のなくような声。
フレイの後ろで、ジェシカが十字を切って手を合わせていた。

502 名前: もっとたのしくて 投稿日: 2003/09/18(木) 00:40
>>498
乙です。
しかし…まさか、1話から50話までをしっかり書くおつもりですか?
とてつもない長編になりそうですねぇ…種終了に間に合うんでしょうか。
何はともあれ、頑張って下さい。

503 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/18(木) 08:34
乙です。

504 名前: 流離う翼たち・作者 投稿日: 2003/09/18(木) 17:35
>>502
お疲れです。ヘリオポリスの日常ですね。こっち路線も良いですなあ

勿論ラストまで書きますが、まあ、地球に降りた辺りでかなりストーリーが変わっていきますね。アナザ−なんだから本編そのままにする必要は無いですし
種終了には全く間に合わないんで、ここが閉鎖されたら自分のHPにでも載せようと思ってます
とりあえず、中盤のフレイは本編よりも不幸かもしれないですねえ。はっはっは・・・・・・

505 名前: 流離う翼たち/ 投稿日: 2003/09/18(木) 19:10
 ヘリオポリスを離れたアークエンジェルは、ヴェザリウスの追撃を恐れながらも友軍の拠点であるアルテミス要塞を目指していた。戦略上の要所という訳ではない。むしろ、戦略上の意味を喪失したからこそザフトの攻略対象とならなかったのだといえる。
 ただ、この要塞が攻略されなかったのにはもう1つの理由がある。それは、アルテミスの傘と呼ばれる光学シールドの存在だ。これがある限り、アルテミスは攻略不可能に近いのだ。

 ここに逃げ込めばとりあえずの安全は確保される。補給も受けられる。それがナタルの意見だった。これを聞かされた3人の士官、マリュー、フラガ、キースはどうしたものかと顔を見合わせた。

「アルテミスねえ」
「ユーラシアがこちらをどう思うかですね。何しろこの艦には友軍コードさえない」

 フラガが難色を示し、キースが不安を口にする。自分たちは大西洋連邦に所属し、ユーラシア連合とは友軍とはいえ反目している。迂闊に近づけば攻撃されるかもしれない。だが、月に行くにはナタルの言うとおり物資が持たないし、他に選択肢が無いのも確かだ。
 最終決定権を持つマリューは、仕方なくナタルの意見を受け入れた。

「仕方ないわね、アルテミスに行きましょう」
「・・・・・・まあ、良いですがね」

 キースはそれだけ呟くと、自分が腰掛けていた手摺から離れた。そして艦橋から出て行こうとする。

「中尉、どちらへ?」
「何となくだがね、嫌な予感がするんだ。今の内に機体の整備をしておこうかと思ってな。それに、ストライクにもう一度乗ってもらわなくちゃいかんかもしれんし」

 意味深な言葉を残してキースは艦橋から出て行った。ナタルとマリューは煙に巻かれたような顔をしていたが、フラガだけが嫌そうな顔をし、右手で顔を覆った。

「やれやれ、もう1戦するしかないか」
「フラガ大尉?」
「あいつの勘はやたらと当たるんだ。戦闘準備をした方が良いな」

 フラガも立ちあがり、キースと同じように艦橋を後にする。残されたナタルとマリューは顔を見合わせ、同時に溜息をついた。どうにもMA乗りというものの考え方は理解できない。

 だが、キースの悪い予感は当たっていた。デコイを使っての進路変更を見破ったクルーゼがアルテミスの航路上に待ち構えていたのだから。ヴェザリウスで宙域図を眺めるクルーゼの口元には笑みが浮かんでいる。

「さて、そろそろ脚付きが網にかかる頃だが、ガモフからの連絡は?」
「未だ、何も」
「慣性航行で音無しの構えか。厄介ではあるが、何処まで隠し通せるかな」

 アークエンジェルを追い求めるクルーゼ。だが、その場にいながらもアスランは別の事を考えていた。

『何故だキラ、どうしてお前が地球軍に・・・・・・』

 月で別れた親友が敵にいる。悪夢としか思えない現実にアスランは苦しめられていた。同じコーディネイターなのに、何故ナチュラルに味方するのか。それがどうしても理解できない。友達の為と言っていた。だが、自分もキラの親友なの筈だ。友人を守る為に友人と戦う。矛盾してるじゃないか。
 この作戦ではストライクの破壊が加えられている。投入される戦力は連合から奪取したMS4機。敵はMS1機と戦艦1隻、とても勝負にはならない。ストライクは確実に撃破されるだろう。ヘリオポリスではジンとストライクの性能差で何機ものMSを仕留められたが、今回は性能面で引けを取ることは無い。
 だが、それはアスランには辛すぎる事実だった。キラをこの手で殺すかもしれないのだから。

506 名前: 流離う翼たち・8 投稿日: 2003/09/18(木) 19:10
 ヘリオポリスを離れたアークエンジェルは、ヴェザリウスの追撃を恐れながらも友軍の拠点であるアルテミス要塞を目指していた。戦略上の要所という訳ではない。むしろ、戦略上の意味を喪失したからこそザフトの攻略対象とならなかったのだといえる。
 ただ、この要塞が攻略されなかったのにはもう1つの理由がある。それは、アルテミスの傘と呼ばれる光学シールドの存在だ。これがある限り、アルテミスは攻略不可能に近いのだ。

 ここに逃げ込めばとりあえずの安全は確保される。補給も受けられる。それがナタルの意見だった。これを聞かされた3人の士官、マリュー、フラガ、キースはどうしたものかと顔を見合わせた。

「アルテミスねえ」
「ユーラシアがこちらをどう思うかですね。何しろこの艦には友軍コードさえない」

 フラガが難色を示し、キースが不安を口にする。自分たちは大西洋連邦に所属し、ユーラシア連合とは友軍とはいえ反目している。迂闊に近づけば攻撃されるかもしれない。だが、月に行くにはナタルの言うとおり物資が持たないし、他に選択肢が無いのも確かだ。
 最終決定権を持つマリューは、仕方なくナタルの意見を受け入れた。

「仕方ないわね、アルテミスに行きましょう」
「・・・・・・まあ、良いですがね」

 キースはそれだけ呟くと、自分が腰掛けていた手摺から離れた。そして艦橋から出て行こうとする。

「中尉、どちらへ?」
「何となくだがね、嫌な予感がするんだ。今の内に機体の整備をしておこうかと思ってな。それに、ストライクにもう一度乗ってもらわなくちゃいかんかもしれんし」

 意味深な言葉を残してキースは艦橋から出て行った。ナタルとマリューは煙に巻かれたような顔をしていたが、フラガだけが嫌そうな顔をし、右手で顔を覆った。

「やれやれ、もう1戦するしかないか」
「フラガ大尉?」
「あいつの勘はやたらと当たるんだ。戦闘準備をした方が良いな」

 フラガも立ちあがり、キースと同じように艦橋を後にする。残されたナタルとマリューは顔を見合わせ、同時に溜息をついた。どうにもMA乗りというものの考え方は理解できない。

 だが、キースの悪い予感は当たっていた。デコイを使っての進路変更を見破ったクルーゼがアルテミスの航路上に待ち構えていたのだから。ヴェザリウスで宙域図を眺めるクルーゼの口元には笑みが浮かんでいる。

「さて、そろそろ脚付きが網にかかる頃だが、ガモフからの連絡は?」
「未だ、何も」
「慣性航行で音無しの構えか。厄介ではあるが、何処まで隠し通せるかな」

 アークエンジェルを追い求めるクルーゼ。だが、その場にいながらもアスランは別の事を考えていた。

『何故だキラ、どうしてお前が地球軍に・・・・・・』

 月で別れた親友が敵にいる。悪夢としか思えない現実にアスランは苦しめられていた。同じコーディネイターなのに、何故ナチュラルに味方するのか。それがどうしても理解できない。友達の為と言っていた。だが、自分もキラの親友なの筈だ。友人を守る為に友人と戦う。矛盾してるじゃないか。
 この作戦ではストライクの破壊が加えられている。投入される戦力は連合から奪取したMS4機。敵はMS1機と戦艦1隻、とても勝負にはならない。ストライクは確実に撃破されるだろう。ヘリオポリスではジンとストライクの性能差で何機ものMSを仕留められたが、今回は性能面で引けを取ることは無い。
 だが、それはアスランには辛すぎる事実だった。キラをこの手で殺すかもしれないのだから。

507 名前: 流離う翼たち・9 投稿日: 2003/09/18(木) 19:12
崩壊した日常、失われた世界。ヘリオポリスを追い出された少年達は居住区の一室で身を寄せ合う事しかできなかった。

「俺達、どうなるのかな?」
「さあ、わかんないよ」

 誰にも未来なんか見えやしない。昨日までずっと続くと思っていた日常が、僅かな時間で崩壊してしまったのだ。これからどうなるかなんて、誰にも分かるわけが無い。
 そんな中で1人だけぐっすりと眠りこけているキラがいる。フレイはそんなキラに薄気味悪そうな視線を向けている。

「ねえ、この子、コーディネイターだったの?」

 フレイの問いにサイは小さく頷いた。それを見たフレイが僅かにキラから離れる。このフレイの反応が一般的なナチュラルのコーディネイターに対する反応というものだ。サイやトールのように平然と付き合える方が珍しいのである。

 疲れて眠っているキラの元を、マリューとフラガが訪れた。気付いたトールが慌ててキラを起す。起されたキラにマリューが頼みごとを告げた。それまで寝惚けていたキラはそれを聞いて一気に覚醒する。

「お断りします!」

 怒りさえ見せてキラは叫んだ。

「何で僕があれに乗らなくちゃいけないんです。あなたが言った事は正しいかもしれない。僕らの周りで戦争をしていて、それが現実だって。でも、僕は戦いが嫌で、中立のヘリオポリスに来たんだ。もう僕らを巻き込まないで下さい!」
「だが、あれは君にしか乗れないんだから、しょうがないだろ?」
「しょうがないって、僕は軍人じゃないんですよ!」
「いずれまた戦争が始まった時、今度は乗らずに、そうやって死んでいくか?」

 フラガの言葉にキラは言葉を失った。

「今この艦を守れるのは、俺とお前、そしてキースだけなんだぜ?」
「でも・・・・・・僕は・・・・・・」

 声を震わせるキラに、フラガは優しいとさえ思える声をかけた。

「君は出来るだけの力を持ってるだろ、なら、出来ることをやれよ」

 キラははっとしてフラガの顔を見たが、すぐに顔を逸らすと彼を付きのけるようにして部屋を飛び出して行った。それを見送ったフラガとマリューの表情は硬い。どれだけ理由を取り繕おうと、民間人を戦争に送り出すという事実は隠せはしない。

 飛び出したキラは展望デッキに来ていた。そこで星を見ながらじっとフラガの言葉を反芻している。

『君は、出来るだけの力を持っているんだろ、なら、出来る事をやれよ』

508 名前: 流離う翼たち・10 投稿日: 2003/09/18(木) 19:13
 キラにはあの言葉を否定する事はできなかった。自分には出来るだけの力は確かにある。だが、自分はそれを使いたくなかったから、ヘリオポリスに逃げてきたはずだった。なのに、何故こんな事になってしまったんだろう。自分の力を見せればまた周りから化け物でも見るような目で見られてしまう。サイやトール、ミリアミア、カズィでさえ離れて行くかもしれない。それが怖いのだ。
 だが、苦悩するキラの目の前に1つのドリンクがいきなり差し出された。驚いて振りかえると、そこにはキースが立っていた。

「どうしたキラ、背中で悩めるとはなかなかの高等技術だが、あんまり悩んでると禿げるぞ」
「は、禿げるって、僕はそんな年じゃありませんよ!」
「いや、世の中には若禿げというものがあってだなあ、20前から禿げ出す奴もいない訳では」
「だから何でそうなるんですか!」

 ムキになって反論してくるキラに、キースはニヤリと笑って見せた。

「そうそう、それで良い。何を悩んでたのか知らないが、悪い方向にばかり考えるのは良くないぞ」
「・・・・・・キースさん」
「で、何を悩んでたんだ?」

 キースに問われ、キラはフラガとマリューの言葉をキースに伝えた。キースをそれを聞くと、どうしたもんかと頭を掻いた。

「なるほどねえ。まあ、そいつは俺も頼みに行こうかと思っていた事なんだが、まさかこうも速く動くとはなあ」
「キースさんも、僕に戦えって言うんですか?」
「まあ、なあ。あれを動かせるのはキラだけだしな。俺も腕にはそれなりに自信があるつもりなんだが、流石にMAだとMSには不利なんだよな」
「でも、僕は軍人じゃ・・・・・・」

 キラは手摺を掴み、俯く。ただ戦うのが嫌なだけではない。怖いのだ、戦場に出るのが。それを非難する事は誰にも出来ない。何処の世界に戦って死にたいなどと思う馬鹿がいるのだ。誰だって死にたくはない。戦いたくない者に戦いを強制するのは悪でしかないのだ。
 だが、キースは俯くキラの肩に手を置き、諭すように話しかけた。

「そう、お前は軍人じゃない。だから出撃したくなければそれでも良い。俺も、フラガ大尉も文句は言わないさ」
「キースさん?」
「乗るも乗らないもお前の自由だ。好きにしたら良い。俺はお前に強制するつもりは無いよ」
「・・・・・・・・・・・・・・」

 キースは戦うならキラの意思で戦えという。だが、それはキラの望んでいた言葉ではなかった。キラは戦えと言って欲しかったのだ。自分が乗らなくちゃいけないというのは分かっているが、踏ん切りが付かないのだ。
 キースはキラの肩から手を放すと、最後にもう1つだけ付け加えた。

「キラ、もし、本当に守りたい何かがあるなら、それを守る為に戦うってのも悪いもんじゃない。1番怖いのは、何かを失って、全てが手遅れになってから気付くことだ」
「全てが、手遅れになってから?」

 キラはキースにその意味を問いたかったが、キースはそれには答えず、展望デッキから出て行ってしまった。残されたキラはじっとキースの言葉を噛み締めている。


 艦内に敵発見の報が響き渡り、艦内に緊張が走る。そしてキラを艦橋に呼ぶ通信が響き渡った。それを聞いたミリアミアがそっとトールに話し掛けた。

「キラ・・・・・・どうするのかな?」
「あいつが戦ってくれないと、かなり困ったことになるんだろうな」

 サイがそれに答えた。トールはさっきからじっと口を曲げ、むっつりと考えている。その腕をミリアミアが揺する。

「ねえトール、私達だけこんなところで、ただ守ってもらうだけで良いのかな?」
「出来る事をやれ、か・・・・・・」

 ずっと考えていたこと。自分たちにも出来ることがあるのではないのか。キラだけに戦わせるのでは無く、自分たちにも出来ることが。そして、トールは立ちあがり、みんなを見渡した。みんなも頷き、立ち上がる。みんな思っていたのだ、キラだけに戦わせてはいけないと。

 アナウンスを聞いたキラはまだ迷っていたが、3つの言葉が頭の中で反芻し続けている。「出来る事をやれ」「本当に守りたい何か」「全てが手遅れになってから」この言葉が頭の中から消えないのだ。
 でも同時に苦悩もある。何故自分なのだろう。死にたくは無い、殺したくも無い。どうして自分ばかりが手を汚さなくてはいけないのだろう。それに・・・・・・

「アスラン」

 ヘリオポリスで望まぬ形での再会をした親友。もしかしたら彼とも戦わないといけないかもしれない。

509 名前: 流離う翼たち・11 投稿日: 2003/09/18(木) 19:14
 キラはのろのろと艦橋へと向う。重々しい足取りが彼の内心を示しているかのようだ。角を曲がった所でキラは足を止めた。向こうからやってくるのは仲間達だ。だが、どうして軍服なんか着てるんだろう。

「トール・・・・・・みんな、どうしたの、その恰好?」
「ブリッジに入るなら軍服を着ろってさ」
「僕らも艦の仕事、手伝おうかと思ってさ。人手不足だろ。普通の人よりは機械やコンピューターの扱いになれてるし」

 サイの説明にキラは呆然としてしまった。チャンドラが窘める声が響く。

「お前にばっか戦わせて、守ってもらってばっかじゃな。俺達もやるよ」
「こういう状況だもの、私たちも出来る事をするわ」
「・・・・・・・みんな・・・・・・」

 キラは胸が熱くなるのを感じた。僕は1人じゃないんだ。


 格納庫に現れたキラを見て、フラガがからかうような声をかけた。

「やっとやる気になったってことか、その恰好は?」
「大尉が言ったんでしょう。今この艦を守れるのは僕達だけだって。戦いたいわけじゃないけど、この艦を守りたい。みんな乗ってるんですから」

 キラの答えにフラガは頷いた。

「俺だってそうさ。意味もなく戦いたがる奴なんてそうそういない。戦わなきゃ守れないから戦うんだ」

 キラはこの男を見直した。そうかと思う。軍人だから戦うのかと思っていたが、彼らだって自分と同じように守りたいものがあるから戦っているのだ。
 そして、そんなキラの背中をどやしつけるように誰かが叩いた。

「よう、戦うことにしたのか、キラ?」
「キ、キースさん・・・・・・ええ、そうします」
「そうか、お前が決めたんなら、俺は何も言わないよ。フラガ大尉は敵艦攻撃に行くから、俺とお前でこの艦を守るんだ」

 キースは何時もと違い、真面目な顔で説明した。

「敵はナスカ級が1、ローラシア級が1、多分ヘリオポリスを襲った奴らだ。奪取されたGが出てくる可能性もある。気をつけろよ」
「・・・・・・はい」

 不安そうなキラを見て、フラガがキースに文句を付けた。

「おいキース、余り新人を怖がらせるようなこと言うなって」
「大丈夫ですよ大尉。俺がキラをカバーしますから。そうそう殺らせはしません」

キースが胸を叩いて断言する。だが、フラガの表情は固かった。

「だが、Gはフェイズシフトを装備している。実弾はほとんど役に立たんぞ?」
「ビームガンとレールガン、マシンガンで出ます。ミサイルは使うつもりはありませんよ」

 キースの返事にフラガは頷くと、今度はキラを見た。

「坊主は戦闘中はキースの指示に従え。とにかく、生き残ることを考えるんだ」
「は、はい。大尉こそ、気をつけて」

 心配するキラにフラガはにやっと笑うと、自分の愛機の方へと飛んで行った。残されたキラの肩をキースが叩く。

「俺達も機体で待機だ。分かってると思うが、余り艦から離れるなよ。あと、味方の対空砲火にも気を付けろ。この艦の乗員は慣れてないから、味方撃ちの危険がある」
「分かりました」

 キラも自分の機体へと向っていく。それを見送ったキースも自分のメビウスへと向ったが、一度だけ振りかえり、キラを見た。

「なんの因果かね。まさかこんな所で・・・・・・」

 キースは頭を振って雑念を追い払うと、メビウスに乗りこんだ。

510 名前: 流離う翼たち・12 投稿日: 2003/09/18(木) 19:14
 フラガのメビウス・ゼロが飛び出して少し立てから、いよいよ戦闘開始となった。

「エンジン始動、同時に主砲発射用意、目標、前方のナスカ級!」

 マリューの指示を受けて機関が始動され、鈍い音を立て始める。同時に主砲であるゴッドフリートMK71がせりあがり、ヴェザリウスに照準を付ける。

「主砲、撃てえ!」

 ゴッドフリートから光が迸る。それに僅かに遅れてヴェザリウスからイージスが飛び出してきた。イージス発進を聞いてキラが硬直する。アスランが出てきたのだ。

「キラ、ストライク発進です!」
「・・・・・・了解」

 ミリアミアへの返答も重苦しい。だが、機体は自動で発進シークエンスに入り、リニアカタパルトに誘導される。

「キラ・ヤマト。ストライク、行きます!」

 カタパルトから打ち出されるストライク。バッテリーケーブルが弾けるように機体から離れ、激しいGが襲いかかる。それに少し遅れてキースのメビウスも飛び出していた。

「キラ、あまり離れるなよ。それと、後ろからも3機来ている。デュエル、バスター、ブリッツだ」
「そんな、それじゃあ!?」
「ああ、あいつ等、マジで奪ったGを全部投入してきたみたいだ。嫌な連中だよ!」

 キースは吐き捨てるように言うと、キラにイージスを止めるように言った。

「お前はイージスを頼む。俺は後ろから来る3機をなんとか食いとめてみる!」
「キースさん、1機じゃ無理です!」
「お前に複数同時に相手に出来るだけの技量と経験があるのか!?」

 キースに問われたキラは反論できず、黙り込んでしまった。キースはそれ以上何も言わず、3機のGへと向って行く。全部を防げるなどと自惚れてはいない。だが、1機でも多く引き付けるつもりではあった。

 アスランと対峙したキラは高速で擦れ違いながら通信で会話を交していた。

「止めろキラ、僕らは敵じゃない。そうだろ!」

 キラはそれに答えられなかった。アスランを敵と思う事など出来はしないからだ。だが、続くアスランの言葉にはキラは頷けなかった。

「同じコーディネイターのおまえが、何故地球軍にいる。何故ナチュラルの味方をするんだ!?」
「僕は地球軍じゃない!」

 キラは咄嗟に言い返した。

「でも、あの艦には仲間が、友達が乗ってるんだ!」

 その時になってようやくキラはアークエンジェルが2機のMSに襲われている事に気付いた。MSと渡り合っているのはキースのメビウスだろう。
 キラは慌てて戻ろうとしたが、その前にイージスが割り込んでくる。

「やめろ!」
「アスラン・・・・・・」

 焦りを感じつつ、だが攻撃もできず、キラはやり場のない怒りをアスランにぶつけた。

「君こそどうして、何でザフトなんかに。戦争なんか嫌だって、君も言ってたじゃないか!」

 それにアスランが答えを返すより早く、一条のビームが2機の間に割り込んできた。イザークのデュエルだ。アスランが手間取っているのを見たイザークが苛立って介入してきたのである。


 アークエンジェルはブリッツとバスターに攻撃されながらも良く持ち応えていた。2機のGは強力な武装を持つアークエンジェルの懐に飛び込む事ができず四苦八苦している。

「へえ、中々の武装じゃないか。だがな!」

 ディアッカがバスターの94mm高エネルギー火線収束ライフルが咆哮し、エネルギーの束を叩きつけるが、アンチビーム粒子にあえなく弾かれてしまう。舌打ちして第2射を放とうとしたが、それより早く下方から襲い来る火線に晒されてしまった。

「チッ、またあいつか!」

 エメラルドグリーンのメビウス。さっきからうろちょろして目障りな上に、馬鹿にできない火力と機動力を持っている。砲戦型のバスターには相手にしずらい敵だった。

「くそっ、イザークは何処に行ったんだ!?」
「イザークはアスランの援護に回りました。こちらは我々だけでやるしかありません!」
 
 ニコルのブリッツが下方から攻撃しようとしたが、イーゲルシュテルンの弾幕に阻まれて失敗してしまう。それどころか無理にロールをかけて艦体を捻ったアークエンジェルが主砲まで撃ってきたのだ。
 中に乗っている民間人たちは当然ながらこの無茶な機動のツケを払わされることになる。フレイも必死にベッドルームの柱にしがみついて悲鳴を上げていた。

511 名前: 流離う翼たち・13 投稿日: 2003/09/18(木) 19:15
 キースは単独で2機のMSを相手に文字通り奮戦しているといえる。だが、奮戦であって勝利ではない。確かにビームガンはあるが、自分の想像を超えて2機のGは強敵であった。

「参ったな、対MS用に武装を選んで来ってのに、まさかここまで良く動くとはな。やっぱメビウスじゃキツイな」

 向こうで2機を相手に戦っているキラの事も気になるのだが、助けに行けるほど楽な状態でもない。どうやら向こうも先にこっちをかたずける気になったらしく、攻撃をこちらに集中してきている。
 キースは動きをわざと直線的にして2機のGを誘った。ブリッツとバスターがそれに釣られてメビウスを追撃してくるのを見たキースはそのまま2機をアークエンジェルの対空砲火の射線上に誘いこむ。2人が罠に嵌められたと悟った時には、すでに最悪の場所にいたのである。

「少尉、今だ!」

 キースの指示を受けてナタルがありったけの対空火器を撃ちまくらせた。集中する火線に晒されてブリッツとバスターの機体表面に物凄い火花が散る。実体弾を受けつけないフェイズ・シフト装甲を備える2機だが、エネルギーは無限ではない。弾を食らえばそれだけバッテリーを消耗し、いずれはフェイズ・シフトも落ちるのだ。
身の危険を感じた2人はアークエンジェルの射程外へと退いて行った。キースをそれを見送ると機体を翻したが、そこで見たのは、イージスに良いように追いまくられるストライクの姿だった。


 アークエンジェルではナスカ級にロックオンされた事で騒ぎが起こっていた。先制攻撃を主張するナタルと、フラガを信じるマリューが対立していたのだ。もしフラガが奇襲に失敗していれば、どのみちアークエンジェルは助からないのだが。

 それに気付いたのはクルーゼだった。突然感じた殺気ともとれる不思議な感じは。

「アデス、機関最大、艦首下げろ、ピッチ角60!」

 いきなりの命令にアデスが戸惑った表情で上官を見る。この時、クルーゼは部下の反応の鈍さに苛立ったが、この感覚を伝えられない以上、どうしようもなかった。
 そして、1機のMAがヴェザリウスをしたから突き上げるように出現した。

「うぉりゃああああああああっ!!」

 雄叫びを上げてフラガがヴェザリウスに近づき、ガンバレルを展開させてリニアガンを機関部に叩き込む。擦れ違いざまに機関部が火を吹くのを見てフラガは歓声を上げながらそのまま情報へと突き抜けた。咄嗟にアンカーを発射してヴェザリウスに撃ちこみ、振り子のように向きを変えて宙域を離脱してしまう。
 アデスが被害対処に追われる中で、クルーゼは珍しく怒りを露にしていた。

「ムゥめ・・・・・・」


 フラガからの作戦成功の報を受けたアークエンジェルは湧きかえっていた。マリューはこの気を逃さずに命令を下す。

「この気を逃さず、前方、ナスカ級を仕留めます!」
「了解、ローエングリン1番、2番、発射準備!」

 ナタルの指示でローエングリンの砲口が艦首から突き出す。

「―――てェ!」

 凄まじい威力を持つローエングリンが発射された。ヴェザリウスは傷付いたエンジンで必死に回避運動を行うが、ローエングリンは右舷を掠め、大きな被害を与えた。これでヴェザリウスは完全に戦闘力を失い、クルーゼは歯噛みしながら撤退を命じるしかなかった。


 撤退信号を出された事にアスランは驚いたが、同時に敵艦からも撤退信号が上がるのを見た。それを見てストライクは後退しようとしたが、イザークのデュエルが追撃を止めようとはしない。

「イザーク、撤退命令だぞ!」

 だが、イザークはアスランの忠告に耳を貸す事は無く、ストライクを追っていく。アスランは一瞬迷った後それに続いたが、いきなり目の前でデュエルが多数の直撃弾を浴びて吹き飛ばされるのを目の当たりにすることになる。

「な、何が!?」

 慌てて周囲の状況を確認すると、1機のMAが何時の間にか近づいているのが分かった。それは、キースのメビウスだった。

「はっはっは、まだ生きてるな、キラ!?」
「キースさん、助かりました!」
「いいかげんバッテリー切れだろ。先にアークエンジェルに戻れ。俺はこいつ等をもう少し引き付けたら逃げるから」
「分かりました。気を付けて」

512 名前: 流離う翼たち・14 投稿日: 2003/09/18(木) 19:15
 キラのストライクが艦へと戻って行く。それを追撃しようとイージスが追ってきたが、それを遮るように放たれたミサイルがイージスを襲う。ブリッツとバスターが抜けた事で混乱を脱したアークエンジェルが援護してくれたのだ。加えてキースのメビウスがビームを織り交ぜた攻撃をしてくるのでこれへの対処もしなくてはならない。

「くっそぉ、MA風情が舐めやがってえ!」
「よせイザーク、危険だ!」

 イザークのデュエルが血気に早ってキースを攻撃してきたが、キースにはそれに付き合うつもりは無かった。もうアークエンジェルは安全圏に達したと判断し、加速性能にものを言わせてさっさとデュエルから逃げ出してしまう。
 イザークは逃げていくメビウスに向って罵声を叩きつけていた。

「こ、この、卑怯者がああぁぁぁぁぁ!!」

 逃げていく緑色のメビウスに向ってイザークは数回ビームライフルを放ったがそんなものが命中する筈も無く、彼らは敵を取り逃す事になったのである。


 逃げ延びたアークエンジェルに着艦したキースはまだメビウス・ゼロが帰艦していないのを見て首を傾げた。近くの整備兵を捕まえて問いかけると、もうすぐ帰ってくるという答えが来たので僅かに安堵する。
 そして、ストライクの所にやってきた。なにやらマードックがストライクのコクピットに声をかけている。

「どうしたの、一体?」
「それが、坊主が出てこないんですよ」
「・・・・・・まあ、そうだろうな」

 大体の事情を察したキースはハッチを強制解放し、コクピットに体を滑りこませた。予想通りというか、キラはシートに座ったままの姿勢で完全に硬直している。キースは微笑しながらコントロールスティックにかけられたままの指を1本1本はずしていく。

「もう終わったんだ、キラ・ヤマト。お前はみんなを、友達を守りきったんだよ」

 キースの言葉にキラはビクリと体を震わせた。吐く息が荒くなり、体が小刻みに震えている。新兵が陥りやすい状態だ。無理も無い。これが初陣のようなものなのだから。

「ほら、どうした。もう戦闘は終わったんだ。誰も死ななかった。お前は良くやったよ」
「・・・・・・キース、さん?」

 キラはようやくキースを認識したようだ。キースは苦笑しながらも振るえるキラの体を掴み、コクピットから引っ張り出してやる。
 外に出てきたキラをみっともないと笑う者はいなかった。これが初陣なのだし、しかも子供だ。誰が彼を馬鹿に出来ようか。キースはキラに肩を貸しながらマードックに目で後は任せたと伝え、格納庫を後にした。

 こうして、キラの初めての本格的な戦闘は終わった。すでに目的地であるアルテミス基地は目の前にある。誰もがようやく見方の勢力圏に帰ってこれたのだと安堵する中で、フラガとキースだけは不安を抱えていた。

513 名前: 流離う翼たち・作者 投稿日: 2003/09/18(木) 19:16
すいません、8番を二重投稿してしまいました

514 名前: もつとたのしくて 投稿日: 2003/09/18(木) 23:12
朝の頭痛と、放課後のお説教のダブルパンチ。
憂鬱な一日を振り払うべく、フレイは部室に向かっていた。
「ハァ…」
全く最悪の一日だった。それもこれも、寝坊したのがいけないのだ。
しかし、その前の問題として、一体昨日何があったのか、という疑問がフレイの頭を占めていた。
部室のドアを開けると「おはようございまーす」と挨拶をする。
…この演劇部独特の挨拶を初めて聞いた時、『もう夕方なのに?』と思ったのだが、今では何の違和感もなくフレイ自身が使っている。
慣れとは恐ろしいものだが、もちろん今のフレイにそんな感覚は無い。
台本を読んでいたミリアリアが顔をあげ、視線が合った。
「…!?」
どことなく感じた違和感。いつもなら明るく返事をしてくれるのだが、今日は一瞬の間をおいて、「お、おはよう」と返事が返ってきた。
「フレイ…もう大丈夫なの?」
「え…っ?大丈夫って…何がですか?」
「え…フレイ…」
また一瞬、ミリアリアの言葉が詰まる。
「ううん、覚えてないならいいのよ…来月は一年生だけの舞台でしょ、もうセリフは覚えたの?」
「もう気合入っちゃって、台本読んでる夢を見るくらいですから」
「そうなんだ。じゃあ、ちょっと練習しましょうか?私が相手役になるから、フレイは台本無しでやってみて」
「ハイ!お願いします!」
最初のミリアリアの態度に一抹の不信感を覚えたフレイだったが、舞台の話になると途端にそんな事は忘れて夢中になってしまう。
何しろ初めての舞台でヒロインを演じるのだ。夢中になるなと言うのが無理な話ではあった。
フレイは、時間が過ぎるのも忘れていた。

515 名前: もつとたのしくて 投稿日: 2003/09/18(木) 23:20
…スレの雰囲気に真っ向逆らうSSですが、ここ以外に投下する場所思いつかないんですよ。
HP持ってるけど全く違う趣旨のサイトだし、今さら新しいHP作るのも何なので。
多分そんなに長くないと思いますので、ご容赦下さい。

516 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/19(金) 00:07
>>515
乙です
このスレのSSは鬱が多いですが、別に明るい話が悪いわけじゃないですよ
私はちょっとアレなギャグSSを準備してますし。テーマは温泉ですw

517 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/19(金) 00:26
>>516
ドキッ!男だらけの(ry

・・・ってなりかねないから種は怖い。

518 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/19(金) 01:12
>>515
乙です!ギャグ大歓迎ですよ。
生き生きしてる人物を見るのはやっぱイイなあー

519 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/19(金) 12:53
>>517
ニコルたんなら充分萌(ry
南極に逝ってきます・・・

520 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/19(金) 16:32
age

521 名前: 最終回に添えて/作者 投稿日: 2003/09/19(金) 18:03
乙です。心あたたまるよ。

522 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/19(金) 18:04
ログ残り。・゚・(つД`)・゚・。

523 名前: 温泉で逝こう!・1 投稿日: 2003/09/19(金) 19:08

「温泉なんて久しぶりよねえ」
「そうだなあ、宇宙じゃこいつは味わえないからなあ」

 フレイとカガリは湯船に浸かりながら思いっきり寛いでいた。寛ぎまくっている2人を見てラクスが微笑む。

「お2人とも、お疲れさまでした」
「私はあんまり出番無かったけどねえ。最後が見せ場だったし」
「私なんかルージュ乗っただけだった様な気が・・・・・・」
「うふふ、カガリさんはカラミティを落としたじゃないですか」

 ここは温泉の女湯。週末に向ってが終わったことを祝してみんなで温泉旅行に来ているのだ。少し離れた所ではマリュ−がエリカとお猪口を手に談笑している。そのスタイルは凄まじいの一言に尽きた。

だが、今回は読者の方々には非常に残念だろうが、まずは野郎どものたむろする男湯のほうから覗いて見よう。

「あ−、生き返りますねえ」
「そうですなあ、バルトフェルドさん」

 仲良く温泉に浸かっているバルトフェルドとキサカ。

「まったく、ダコスタも来れば良かったのに」
「はっはっは、まあそう言わずに」

 温泉の魔力でおっさん化が進んでいる2人。そこにアスランがやってきた。

「あれ、お2人だけですか? 他の連中は?」
「いや、我々だけだが?」
「・・・・・・アスラン君、他の連中とは?」
「ええ、キラとディアッカとフラガさんと、トールとカズィですが?」

 面子を言われたキサカはじっと考え、そっと女湯の方を見る。

「まさかな、ここから女湯までは相当距離があるし」

 キサカの独り言にギギギギギギ・・・・・・・・と、機械的に顔を向けるアスラン・

「女湯って、まさか、あいつら!?」
「い、いや、ただの推測だよ。わざわざ女湯に行っても、絶対にばれるに決まってるじゃないか」

 慌てて否定するキサカ。だが、バルトフェルドが何かを思い出す様に呟いた。

「そう言えば、昨日ディアッカがミラージュコロイドどうとか言っていたな」
「のあわにいいぃぃぃいぃいいいいいい!! それで、どうしたんです!?」

 アスランに首をしめられて揺さぶられるバルトフェルド。

「ま、待てアスラン。そんなこと言われても俺が知る分けないだろう!」
「ま、まあそうですが・・・・・・」

 仕方なく手を離し、どうしたものかと天井を見上げる。

「で、でもまあ、あいつ等にそんなもの作れるわけが・・・・・・」
「ああ、そういえばマードックに頼んで作ってもらったと言っていたな」

 天井から湯船に滴が落ちた。
 マードック、あのこんな事もあろうかととか言って4次元ポケットやタイムマシンでも出してきそうな男。奴にかかればミラージュコロイドくらい・・・・・・

「しいいいいいいいいいいいいいいいいいまったああああああああああああああっ!!」

 キラ達の思惑に気づかなかった自分を責めるように、アスランはムンクのように絶叫した。

「こうしちゃいられない!」
「行くのか?」
「ええ、俺はカガリを守ると約束したんです!」

 アスランは湯船を飛び出すと、急いで駆け出した。

「待ってろよ覗きども。お前等の好きにはさせない!」

524 名前: 温泉で逝こう!・2 投稿日: 2003/09/19(金) 19:09
時間は少し遡る・・・・・・・


「ふ、俺は今日ほど、この装備に感謝したことは無い・・・・・・」

 女湯との分岐点で、ディアッカは妖しげなジャケットを手に感涙の涙を流していた。

「このディアッカ・エルスマン。青春に一片の悔い無し!」
「ねえディアッカ、僕も行くの?」
「何を言ってるんだキラ、覗きは男の浪漫だぞ」
「1人だけ良い子ぶるのは感心しないなあ」

トールに肩を叩かれ、フラガに凄惨な笑顔で凄まれる。こいつ等は・・・・・・
だが、そんな彼らの頭上から1人の漢が飛び降りてきた。

「そこまでだ!」
「「「「なにっ?」」」」

 アニメチックに振り返ると、そこには1つの黄色いマスクを被った怪しい男が。

「ふっ、彼女持ちでありながら、婦女子の風呂を覗こうとは言語道断。貴様等の邪悪な野望は、この俺、ジュールマスクが許しはしない!」

 怪しすぎるマスクを被った男がビシィと覗き集団を指差しつつ糾弾する。

「ちっ、知られたからには口封じを・・・・・・って、イザーク、お前こそ何でこんな所に?」

 ここはすでに女湯へ向う通路である。野郎がこの場所にいるのは、非常に不自然なのだ。

「な、ななななななななななななにを言っているんだ!」

 明らかに動揺しているジュールマスク・・・・・・・いや、イザーク。フッと渋く微笑むフラガ。

「恥じる事はないさ。それは健全な男子たるもの、誰もが抱く正常な反応だからな」

 悟ってますね、フラガさん・・・・・・
 4人はは呆気に取られるイザークに歩み寄ると、やおら彼の肩をがっしりと掴む。

「漢は幾つになっても夢を追う生物なのだ。お前は自分を偽らなくてもいいんだ」
「お、おおっ・・・・・・そうだ、そうだったな。俺は、なんて馬鹿な事を・・・・・・そうっ!」

 ガシィッと5人の漢は手を取り合った。

「「「「「覗きは漢の永遠の浪漫!!」」」」」

 今ここに、漢達は分かりあったのだ。

「同士よ、さあ、これを着るんだ」

 トールの差し出すジャケットを受け取るイザーク。それに袖をとおし、5人は同時に姿を消した。



乙女達、大ピンチ!

525 名前: 温泉で逝こう!・3 投稿日: 2003/09/19(金) 19:10
乙女達、大ピンチ!


話は女湯に戻って・・・・・・



「良い気持ちね・・・・・・本当、こんな気分も久しぶりだわ」
「そうねえ」

 体を伸ばしてゆったりと湯に浸かるフレイの隣で、マリューが頭にタオルを載せて肩までを湯に沈め、幸せそうにしている。
 2人ともほんのりと頬を染めていて、なかなかにいい絵になっている。
 だが、この光景は・・・・・・・

「くそっ」

 カガリが何やら敗北感に打ちのめされていた。

「辛そうですわね、カガリさん?」
「うわひゃああ! ラ、ラクス!?」

 突然真後ろから声をかけられて、びっくりして飛びあがる。一体何時のまに近づいたのだろうか?

「カガリさんはまだ成長途上ですから、気になさらずとも良いですよ」
「でも、フレイは私達より年下なんだが?」
「・・・・・・・あの人は異常です」
「そうかなあ・・・・・・って、なんで私の考えてる事が分かるんだよ?」
「いえ、何となくです」

 何時もの良く分からない笑顔を浮かべ、ラクスは答えをはぐらかした。


 そして、女湯に向う通路にて

(フッフッフ・・・・・・もうじきだ・・・・・・)
(あと少しで僕達は桃源郷に辿りつくんだね、トール)
(ああ、あと少しだ)
(俺がナチュラルの裸などに・・・・・・・でもいいかな)
(ふっ、青いな)

 誰も見えていない虚空にて、野郎どもは熱き思念だけで会話をしていた。もうテレパスである。
 だがそこに・・・・・・・・・・

「そこまでだあああああああああああっ!!」
(((((!!)))))

 5人がそーっと振り向くと、遥か後方に大声を上げて立つ一人の少年の姿が。

「ニコルの遺産を悪用し、婦女子の入浴を覗こうとは言語道断! お前達の腐った根性を俺が叩き直してやる!!」

 ビシィっと指を突きつけられて、5人は額に汗を流した。まさか、見えているというのだろうか?
 だが、5人が迎撃しようかと思ったとき・・・・・・

「お客さん、困りますねえ。女湯に向けて絶叫されたりしては」
「後、誤解だ、おばあさん! 俺はただ、姿を消して覗きをやろうとしてる不届き者どもを叩き潰そうと・・・・・・」
「はいはい、若いから血気盛んなのは分かるけど、大人しく男湯に行ってくださいね〜」
「いやあのちょっと・・・・・・・」

 老人とは思えない力でズルズル引きづられて行くアスラン。やがて、その姿は完全に見えなくなった。

「ふっ、アスラン、相変わらず詰めが甘いね」
「さあ、俺達は最大の難関を突破した!」
「ああ、俺達の漢の友情パワーの勝利だ!」

 なにやら勝利のポーズを取る5人。だが、なにも見えないのでただ空しいだけだったりする

526 名前: 温泉で逝こう!・4 投稿日: 2003/09/19(金) 19:10
ごしごしごしごしごしごし・・・・・・・ジャバァァ!

「ふうっ」

 泡だらけの体を洗い流して、再びカガリは溜息をついた。また胸に視線をやって・・・・・・

「別に、小さくは無いと思うんだけどなあ」

 そしてまた大きな溜息。

「はあ、神様、私、もうキサカに迷惑かけないようにするから、もう少し何とかしてくれないかな・・・・・・」
「ほらほら、なに追い詰められてるのよ?」

 完全に呆れ声でフレイが突っ込む。だが、カガリは恨めしげにフレイを見上げて、涙目になって、やっぱり溜息を付いた。

「フレイに、私の悩みなんか分からないよ」

 スタイル抜群の人は全て敵ですか?

「どうして私の方が年上なのに、こうまで差が出るのかな?」

 トホホ顔で呟くカガリ。フレイは少し悩んでから答えた。

「やっぱり、体質じゃないかしら」
「違うわね、牛乳を飲んで無いからよ」

 横からミリアミアが口を挟んできたが、その意見は迷信の一言で却下された。
 そこに今度はラクスが真剣な顔で意見を述べた。

「いいえ、皆さんは1つ、肝心なことを忘れてますわ」
「な、なんだ、ラクスは何か知ってるのか?」

 返事をわくわくした顔で期待するカガリに、ラクスはフッと悟った顔で微笑む。

「それは・・・・・・」
「「「それは?」」」」

 女性4人が顔を寄せて来る中で・・・・・・

「ずばり、経験の差ですわ」

 ビッと人差し指を立てて意見するラクスに、皆はポカンとした顔を見せた。

「け、け、経験って、まさか・・・・・・」
「そうですわ。フレイさんやマリュ−さんのスタイルが良いのは、つまりキラやフラガさんにあ〜んな事やこ〜んな事をされ続けた努力の賜物なのですわ」
「ちょ、ちょちょちょっと待ちなさい、ラクス! 人聞きの悪いことを言わないでよ!」

 直球勝負なラクスの発言にフレイが慌てふためく。

「では違うのですか・・・・・・・」
「そ、そうは言ってないでしょう!」
「否定はしないという事ですね?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 ラクスの鋭いツッコミに押し黙るフレイ。

「まあ、そうかもねえ」

 そこで肯定しないで下さい、マリュ−さん

「でも安心してください、カガリさん。裏を返せばまだまだこれからと言うことです。アスランはあの通り臆病者の甲斐性無しですが、まだ希望がないわけじゃありません」
「・・・・・・そうだよなあ。私も頑張ればフレイ達みたいなスタイルになれるってことだよな」

 まんまと乗せられてるカガリ。フレイはジト目で突っ込んだ。

「なにを頑張る気よ、あんたは?」
「そうですわね、お相手を殺さない程度に頑張ってくださいね」

 なにやら恐ろしい事を笑顔でのたまうラクスさま。
 と、女の子達が盛り上がってる所に・・・・・・

「そうかなあ・・・・・・?」
「どうかしたの、ミリィ?」

 首を傾げるミリアミアに問いかけるフレイ。

「アスラン君、胸無い方が好みかもしれないわよ」
「「「「・・・・・・・・あ・・・・・・・」」」」

 ミリアミアの的確なツッコミに、彼女達は思わず言葉を失った。

527 名前: 温泉で逝こう!・5 投稿日: 2003/09/19(金) 19:11
 乙女達の浴場に遂に欲望に塗れた獣達が現れた。だが、それに気付く者はいない。
 戯れる美女美少女たち。まさに男から見れば楽園のような湯船の中、体を拭こうかとやおら立ちあがった。その瑞々しい肢体があらわとなる・・・・・・・・

ぶしゅゆううううううううううううっ!!

突如として透明な湯船の一点から赤い色が広がり出した。そのまま湯船が赤く染まっていく。

「な、なによ、これは? まさか心霊現象とかいうやつ!?」
「ちょっとフレイ、何とかしてよ!」
「私に言ってもどうにかなる訳ないでしょ!」

 慌てふためくフレイとミリアミア。こういうのが苦手らしいカガリはすでに湯船の外に避難している。そんな中で何かに気づいたマリュ−が辺りを見まわす。

「何かいるわ!?」
「え、え、え、え、え?」

 いきなり訳の分からない事を言われてパニ来るカガリ。そんなマリュ−の言葉を証明するかのように徐々に人影が露になりだした。男達は自分の姿がさらけ出された事に呆然としている。ちなみに湯船にはイザークが浮かんでいる。こいつだけ女に免疫が無かったのだ。哀れイザーク。いきなりフレイのナイスバディを間近で見たりするから。

「こ、これは一体?」
「どういう事だよ、ディアッカ!?」
「・・・・・・ふっ、どうやらバッテリーが切れたようだな」

 キラの悲鳴のような問い掛けにわざわざ恰好をつけて答えるディアッカ。それは死を前にした男のせめてもの矜持だろうか。

「キ・・・・・・キラ?」
「トール・・・・・・それにディアッカ?」
「ムウ?」

 それぞれのお相手が呆気に取られて名前を呼ぶ。

「な、何でお前等がいるんだよ!?」

 恥ずかしさの余り無事な湯船に飛びこむカガリの声。

「うふふふ、まさか、覗きですか?」

 すでに体にバスタオルを巻いてるラクス。何時の間に・・・・・・・
 
「ふっ・・・・・・そぉ・・・・・・そぉなの・・・・・・ふふふふふふふふ」
「あ、あの、フレイさん?」

 尋常じゃない彼女の様子に、キラはビビリながらも声をかける。が、フレイは激怒の余り前を隠すのも忘れ、ギンと殺気の篭った目でキラを見た。

「キ〜〜ラ〜〜〜〜〜!?」
「は、はいいいいいいいいいいいいいいいっ!!」

 かくいうキラも見えていることさえも完全に失念するほどの恐怖に陥り、直立不動モードに。

「そおおおおおおおおおおおおおんなに見たいんだったら・・・・・・・」

 右手を伸ばし、むんずとキラの首を握る。いけませんフレイさん、そこは止めを刺してしまいます。

「好きなだけ見せてあげようじゃないのぉぉ!! た・だ・し・・・・・・生きていられたらね!」
「はひぇええぇええええええ!!」

 クルッとフレイは女の子達を振り返った。

「悪いけど、このクズの始末は私がさせてもらうわ・・・・・・」

 誰も口には出せなかったが、恐怖に染まる目は「どーぞどーぞ」と言っている。

「そういう事で覚悟するのね・・・・・・死の」
「ま、待ってフレイ、まさかあれですかああああああ!!?」

 キラの悲鳴に対する答えは無く、フレイはキラを引きずって湯煙と岩陰の向こうに消えていった。それの後に同じようにフラガを引きずるマリューが消えて行く。
 2人を見送った後、カガリが震えながら呟いた。

「フレイの奴、物凄く怖かったな」
「そうですわね」

 ラクスが頷く。因みにトールとディアッカはミリアミアの折檻を受けていたりする。時折「グレイトゥ!」 とか聞えるのは何なのだろうか?

528 名前: 温泉で逝こう!・6 投稿日: 2003/09/19(金) 19:11
 そして、そこにようやくやってきた男が一人・・・・・・

「そこまでだぁぁ!!」

 やってきたのは、目隠しをしたアスランであった。

「ミラージュコロイドで女湯に忍び込み、婦女子の入浴を覗こうとは言語道断天罰覿面! そんな奴等は俺が纏めてあの世に送ってやる!」
「・・・・・・ア、アスラン?」

 カガリが呆然として呟く。現れたアスランにディアッカはミリアミアに踏みつけられながらも問いかけた。

「ば、馬鹿な、どうしてお前が?」

 ディアッカの問い掛けにアスランはふっと声のするほうを見て答えた。

「決まっている。番台のおばあさんにひたすら頭を下げ、なんとか目隠しをすることで妥協してもらったのだ。おかげで何度体をぶつけたことか」

 なんとも言えない苦労を積み重ねてたらしいアスラン。だが、彼は1つ致命的な間違いを犯していた。それは・・・・・・・

「うふふ、アスラン。男の方が女湯に入ること自体がタブーなのであって、目隠しをしてもそれは変わりませんことよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・え?」

 ラクスの指摘にぴたりと動きを止めるアスラン。確かにその通りである。

「アスラン、お前ってやつはあ!」

 カガリの何処か悲しそうな声に、アスランはその場にガックリと膝を付いた。

「お、俺は間違っていたのか・・・・・・・」

 そしてアスランはその場にあぐらをかくと、潔く処刑を受けると言いきった。それを聞いてラクスとカガリが顔を見合わせる。

「処刑って言っても、どうする?」
「口に手榴弾を詰め込むというのはどうでしょうか?」

 それは確実に殺してしまいます、ラクスさん。
 しばらく考えこむ2人。静まり返った女湯に響くのはフレイとマリュ−の喘ぎ声のみ・・・・・・先ほどまではキラとフラガの悲鳴だった筈なのだが、一体何が起きているのだろか?
 ラクスはポンと手を打った。

「そうですわ、カガリさん、手伝ってください」
「何をするんだ?」
「アスランを縛り上げますの」

 抵抗するつもりのないアスランは二人がかりで動けない様にしっかりと縛り上げられた。

「はい、カガリさん」
「な、何?」
「これで今のアスランは完全無抵抗状態ですわ。後は好きにしてください・・・・・・(ぼそぼそ)」
「・・・・・・お、おう!」

 カガリは顔を赤く染めて、しっかりと受け取った。

「ちょっとまてえええええ! 今何耳打ちしたんだラクス――!?」
「潔くありませんね、アスラン。敗者は大人しく勝者に従ってください」

 ラクスの死刑宣告とも取れる底冷えする声に、アスランは押し黙った。
 そしてカガリはニコニコ微笑みながら、ズルズルとアスランをやはり岩陰に引きずって行った。

「うふふ、頑張ろうな、アスラン!」
「て、その意味深な台詞は何? 何? 一体なんなんだ―!?」

 そして、後に残るは静けさ・・・・・・ちょっとアレな声が響いてるが、静かになった。トールとディアッカはすでに動かなくなり、イザークは鼻から大量出血したまま湯船に浮かんでいる。
 ミリアミアはラクスの隣まで来ると、問い掛けた・

「何を言ったのよ?」
「いえ、ただ、気が済むまでスタイルの向上に励んで下さいと言っただけですわ」

 この後、何があったのかは想像にお任せします・・・・・・・

529 名前: 温泉で逝こう!・7 投稿日: 2003/09/19(金) 19:12
そして、誰もいなくなった女湯で・・・・・・

「「「ふっ・・・・・・」」」

 ガラガラと積み上げられていた洗面器の山が崩れる。中から現れたのはダコスタ、サイ、カズィであった。

「良いもの見させて貰ったぜ」
「ふっふっふ、あいつ等も良く考えたが、まだまだドリーミングな俺達には及ばない様だな」
「でも、3人とも激しかったね」

 なんと、彼らは女性陣が女湯に入る前に突入、洗面器の山に埋もれて様子を見ていたのだ!!
 だが、彼らはまだ出てくるのが早過ぎた。トコトコと新たに女湯に入って来る一人の女性が・・・・・・

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 完全に目が合う。ナタルは徐に荷物から拳銃を取りだし(何故そんな物をもってる?)、3人に向ける。

「貴様等・・・・・・こんな所で何をやっているのかああああああああ!!!」
「「「ちょっとまってぷり〜〜〜〜ず〜〜〜〜!!」」」




おまけ

「いいですか君達、覗きにカメラは邪道です」
「曇り防止双眼鏡ならいいんだよな?」
「携帯のカメラも、ですね?」
「姑息なんだよ、おまえら!」

 アズラエルと常夏はせっせと岩を登り、目指す桃源郷へと辿りついた。風が湯煙をそっと吹き流す。

「「「「おおおおお〜〜〜〜」」」」

 そこにいたのは、ウズミ、ホムラ、ハルバートン、サザーランド、シーゲル、パトリックといったナイスミドルな叔父様方であった。

ピシィッ!!!!

 4人はその場で化石と化してしまった。どうやら女湯へのルートを完全に間違えてしまっていたらしい。しかし、本編ではあれだけ対立していたのに、今は何とも気持ち良さそうにお酒を飲んでますねえ、みなさん


 翌日、病院には多数の重傷者が担ぎこまれる異常事体が発生していた。特にキラ、アスラン、フラガの3人は何があったのか、精も根も尽き果て、真っ白に燃え尽きてしまっていたのである。その代わりと言ってはなんだが、フレイ、カガリ、マリュ―はお肌もつやつや、ストレスの欠片も感じさせない笑顔で甲斐甲斐しくそれぞれの相手を看病していたという。


お・し・ま・い

530 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/19(金) 19:14
職人様方乙です。
泣きますた(´Д⊂グスン

531 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/19(金) 19:21
ふう、ギャグも上げたぞ。
後は流離う翼たちを書くのみ
もうプロットは完成したからひたすら書くぞ。
フレイがルージュ乗ってたり、オーブがザフトに攻められたりしてるけど、良いよね

532 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/19(金) 20:34
温泉、乙ですた!
こういうノリも良いですなあ(・∀・)

533 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/19(金) 20:40
もはや(;´Д`)ハァハァとしか言いようがないw
最後の石化4人組もヨカターヨ

534 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/19(金) 20:58
面白かった。乙。
ただ、ひとつだけ言っていいっすか?
ミリアリアの名前、ずっと間違ってるよー

535 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/19(金) 20:59
温泉乙です。
ギャグは和みますねw

翼も楽しみにしています。

536 名前: 紅い髪の少女へ 投稿日: 2003/09/19(金) 21:41
えー、やっとこ第二弾を書き込みます。
ちょっと、別人くさいですが…&例によってフレイ様の扱いがやや小さいんですが…
色々からませたいもんで、ご容赦くださいm(_ _)m

537 名前: 紅い髪の少女へ  アデスの場合 1 投稿日: 2003/09/19(金) 21:42
艦が傾く。自分の命は、あと少しで沈みゆく…この艦と共に。
不思議と、静かな気持ちだった。
戦争の行方は、プラントの未来は。気がかりな事は多い。
死に物狂いで脱出し、新たな艦を率いた方がザフトのためになったかもしれぬ。
殉職が唯一の道ではないことはわかっている。

だが…。生への執着が、今さら何を生み出そう。艦長が生きようと取り乱して、何になろう。
意志をついでくれる者がいる。それで良い。
それに、私は駒だ。盤上に駒がなくなれば、この戦争は終わる。
戦後、復興は困難を極めるだろう。だが兵が死ぬ事もない。

不思議なものだ。死を迎えるこの時まで、戦後の事など思い浮かべはしなかった。

ラクス・クライン。元最高評議会議長の娘が、プラントから寝返り、第三勢力を名乗った。
ナチュラルとの融和。相互理解。
ナチュラルとコーディネーターとの混成軍である彼ら自身が、その可能性を唄っている。
だが。
戦艦のレーダー越し、弾幕越しにしか遇い見えぬ者同士が、
どうして解りあえようか?
我らに、我らの肉親に、その住む土地に、尊厳に、矛を向ける者に
どうして手を差し出せ得ようか?
我らは、生身で逢った事すらないというのに。

538 名前: 紅い髪の少女へ  アデスの場合 2 投稿日: 2003/09/19(金) 21:43

いや。一人だけいた。
ラウ・ル・クルーゼが捕獲してきた、一人の捕虜…。
およそ軍人らしからぬ、一人の少女。
無論、我がザフトにも、少女兵は居る。
だが、彼女は違うのだ。一目でそれと見てとれる。
立ち振る舞いもなっておらぬ。軍人としての誇りも、持ち合わせていないようだ。
なぜ、彼女のような者が軍服を着ていたのか。
物量に於いて勝るはずの地球軍も、人材不足なのか。それとも慰安婦か何かか。
悲惨なものだ。
地球軍は、あんな少女までも、戦場に駆り立てた。
地球軍の倫理は、どうなっているのか。

だが、そこまで追い詰めたのは、我が軍…か。
軍に居たのだ、あの少女の知己も、幾人と死んだことだろう。
殺したのは我々だ。すまないとも思う。
だがその知己は、我が同胞を殺したこともあろう。
どこまで、その死を悼んでよいものか。

我らは、同じ人間。
その事を、今まで考えないようにしようとしていただけではないのか。

539 名前: 紅い髪の少女へ  アデスの場合 3 投稿日: 2003/09/19(金) 21:48

クルーゼ隊長が何を考えているのかはわからぬが、
この目で彼女の死に様を見ずに済んだのは、せめてもの幸いだったかもしれぬ。
少女よ、もし無事に地球に帰ることが出来たならば、二度と戦場には戻ってくるな。
我らに銃を向けてくれるな。ならば、死ぬ事もなかろう。
戦争に相応しからぬ考えか。軍人にあるまじき考えか。
だが…あのような少女が、何の屈託もなく笑える時代が、早く来て欲しいものだ。

そのような歳の頃の者といえば。
ヴェサリウス搭乗員だったクルーゼ隊の最後の一人、
イザーク・ジュール。
世界が違えば、あの少女と共に、遊び笑うことすら、あったのかもしれぬ。
それにもかかわらず、身も心も戦争に染まってしまった。
お前たちの笑うときは、敵を撃墜した時だ。
人間を、殺した時だ。
すまない。
戦争を終え、その手を染めた血を洗い流せる時が来るように祈る。

だが、それまでの間。
戦わねば、守れぬものがある。
殺しても、守らねばならぬものがある。
最後の、誇りある赤着る者として、
プラントを。ザフトを。頼む。

540 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/19(金) 22:06
>温泉
めちゃめちゃ笑いました!!乙です!
みんな個性出てて素敵ですな
それにしても
フレイ様&ラクス こわっっ

541 名前: 少年の失敗・1 投稿日: 2003/09/19(金) 22:22
前にエロコメ予告した者でつ。
最近SSスレが活気づいているんで便乗して投下。

「少年の失敗」

キラはことごとく機会を逃していた。
つい鬱になってフレイの誘惑を一度拒絶し
てからというもの、フレイとエッチしてない。
以前はそれとないキラの態度を察して促してくれていたのに、
あれ以来総スルーなわけである。
キラとしても「ほしいのはこんな関係じゃなく本当の愛だ」などと思ってはいる
が、一度味をしめた16歳男子としてはそんな決意をゆらいでピンクな欲望が頭
を満たす。

したい。

フレイは相変わらずキラの部屋にいついているのでおちおち自己処理もできない
…ということもあって、キラの頭の中はヤることでいっぱいなのだった。

しょうがなくふて寝しつつ、一生懸命数式を唱えるが、まくらにおちた赤い髪と
甘いニオイにまた妄想は膨らむ。

(この間はよかったなぁ。
お風呂場の時鏡に写したアレは…エッチだったなぁ…
…なんかだんだんフレイおっぱい大きくなってるような。
やっぱ揉むと大きくなるってほんとなのかな。
あと腰のラインとか…うっヤバイ)

白い体を思い出すと、下のほうが反応仕出した。

(はぁ。やっぱり駄目だ…ひらきなおってお願いしてみようか…それとも無理矢
理…)

イヤ!キラ!やめて…あっあん!


「……」

(いいかもしれない。あっやばいなんかよけい立ってきたよ…ハァハァ…い、い
やいけない!そんなことしたら彼女を傷つけるだけ…)

そういいつつ、脳内強姦プレイはどんどん加速していく。

「ふっ…フレイ…」

我慢できず、キラはおもむろにフレイのショーツをとりだすと(キラ的にお気
に入りの薄いブルーのシルク)それで初めてしまった。

542 名前: 少年の失敗・2 投稿日: 2003/09/19(金) 22:22
「ハァハァ…フレイっフレイっ」

と、その時。

「キラぁ、食堂いこ…」

ガタン。

絶頂寸前でフレイが帰ってきたのである。キラは自分を握り締めたまま硬直した
。同じくフレイもひきつった表情のまま一点をみつめている。

カシャー。
ドアの閉まる音を合図に、我にかえったフレイは悲鳴を上げた。

「っ…いやぁああああ!何してんのよアンタはぁあ!」
「ち…違うんだフレイ!」
「何が違うのよこの変態男子が!なっなによソレ私のパン…キャァ!」
「いやこれはその…ええと…もう…」
「はっ早くしまいなさいよ!」

フレイに言われたがキラのソレはまだ元気そのもので、ついでにいうと爆発寸前
だった。

しばらくの沈黙の後、フレイがぼそりと呟いた。

「気持ち…いいわけ?それ…」
「あ…うん…まぁ…」
「キラもひとりでしたりするんだ」
「そりゃ…するよ」
「……そう」

落ち着いたフレイは恐る恐る近づくと、キラの真正面まで着た。

「キラ」
「な、何?」

撲られるかも、という不安を感じたキラに投げ掛けられたのは予想がいの言葉だ
った。

「続き、してみせて」
「えっ!!」
「…見たことないし、興味あるじゃない?」
フレイは強がってそう言うが、頬は染まっている。

ごくり。

(フレイがぼくのを…凝視してる…ハァハァハァ(;´д`))

というわけで受け気質も持ち合わせたキラは再び開始した。今度は目の前にフレ
イ。興奮も四倍以上である。

「ハァ、ハァ、ハァ…」

(すご…)

思わず見入ってしまうフレイは、つい顔を寄せた。それが間違いだった。

「……ウッフレ…イ」
ドクン!

「あ」

「……」

勢いよく飛び出したキラの種は、おもいきりフレイの顔にかかったのである。

しまった!キラは慌てて謝ろうとするがフレイは完全に固まっている。そしてキ
ラといえば詫びる気持ちをおして再び興奮仕出していた。

(フレイな顔に…くちびるに僕のが…こ…これが世に言う顔射…!!)

先走る若い妄想。フレイは我に帰った時、キラの目がすでにヤバく、自分がロッ
クオンされていることにきづきあとずさった。

「きっ…キラちょっ…」
「ふっフレイ!ゴメン!」

かばっ!

「きゃー!」

こうして二人は同棲の危機セックスレスを克服。キラはたまっていたぶんを取り
戻す勢いであったため、腰を痛めたフレイは船酔いに重なり、ダウンしてしまう
わけであった。

543 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/19(金) 23:01
ワロタ! キラ、若いなぁ(w

544 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/19(金) 23:07
実際若いから。

545 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/19(金) 23:11
>>531
ほのぼの温泉(・∀・)イイ!
流離うも期待してまつ

>>537-539
アデス艦長カコイイ・゚・(ノД`)・゚・

>>541-542
腰を痛めるまでイタしたフレイ様(*´Д`)ハァハァ

546 名前: 少年の作者 投稿日: 2003/09/19(金) 23:13
2クールの補完SSも途中なんだけど、こんなのを。
しかし、誤字が多いな。読みにくくてスマソ。

547 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/19(金) 23:13
微笑ましい///

548 名前: もつとたのしくて 投稿日: 2003/09/19(金) 23:15
フレイが部室を出たときには既に辺りは暗くなり始めていて、人気の無くなったキャンパスはいつもより圧迫感があった。
思い切り声を出し、動き回り、汗をかいたフレイは家路につこうとしていた。
「…まだちょっと…上手くいかないわね…」
イメージしたヒロイン像とうまく噛みあわない自分に多少苛立つ。
演じるという快感は好きなのだが、いきなり実力以上のものを自分に求めてしまうのがフレイの悪い癖であった。
舞台に立つまで残された時間は少ないという焦りが自然と表情に現れていた。
「フレイ!」
「サイ…まだ残ってたの?」
「うん、ちょっと機械の調整に手間取っちゃってね…」
フレイとサイの家は隣同士、と言っていいほど近い。自然と一緒の方向に歩く形になった。
「フレイ、昨日の事なんだけど…」
サイが物凄く言いにくそうに、しかし言わねばならないという風に、妙に気張った声色で言い出した。
「あの後、大丈夫だった?」
「え?…あの後?」
まただ。部室でのミリアリアと同じだった。
『昨日、昨日…サイの誕生パーティ…?でも、そこで一体…』
「フレイ?…こんな時間まで残ってたなんて、クラブ活動だろ?劇、何やるんだっけ?」
「…えっ?…あぁ、『ジャンヌ・ダルク』よ。演劇部の伝統らしいわ」
「ふーん…で、フレイがジャンヌをやるんだ」
「そうよ、せっかく主役をもらったんだから、頑張らないと」
「そうか…」
どこかサイの言葉には落ち着きが無く、フレイはそれが気がかりだった。
「ねぇサイ、私に何か隠してるでしょ?」
「え?そ、そんな事…」
本当に、飽きれるほど嘘が下手な男。馬鹿正直とはこういう事を言うのだろう。

549 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/20(土) 00:19
今更ながら「温泉で逝こう!」読んで癒されました・・。

550 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/20(土) 00:33
>少年の失敗作者さん
吉良もこんぐらい明るい面があったらなあ・・・っていいのか悪いのかw
本編でのセックルは悲痛なとこばっか目立つし、そんとき以外ほとんど受け身な上
フレイ様は覚えが早くてドンドン攻めに回っちゃうし(;´д`)ハァハァ

痔の爪の垢を煎じてやりたいw

551 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/20(土) 00:34
職人様乙ですw

>>紅い髪
。・゚・(ノД`)・゚・。
艦長最高!

>>少年
キラたん(*´д`*)ハァハァ
青春ですね〜(遠い目

>>もつと
続きが気になりまつ。
ふ、フレイ様に何が…!!

552 名前: 流離う翼たち・15 投稿日: 2003/09/20(土) 15:43
 アークエンジェルはアルテミスに入航した。ここは難攻不落の光波防御壁に守られる軍事要塞で、ユーラシアに所属している。識別コードを持たないアークエンジェルでは簡単には入航させては貰えないのではないかと思われたのだが、予想に反してアルテミス側はあっさりと入航許可を出してきた。
 だが、入航前にフラガがキラに1つの指示を出していた。

「ストライクの起動プログラムをロックしておくんだ。君以外の人間には、誰も動かす事が出来ないようにな」

 キラにはその言葉の意味が分からなかったが、程なくしてその意味を知る事になる。
 入航したアークエンジェルはいきなり武装した兵士やMAに囲まれたのである。エアロックが破られ、武装した兵士達がなだれこんでくる。クルー達はたちまち食堂に集められてしまった。
 マリュ―が気色ばんで抗議しているが、相手の士官はのらりくらりとかわすばかりだ。キースとフラガは案の定と言いたげに顔を見合わせて肩を竦める。

「まあ、予想通りの反応というところですか?」
「そうだな、とりあえず、俺たちは呼び出されてるみたいだけどな」

 キースとフラガを含む4人の士官は基地司令の元へと連れて行かれることとなった。後に残されたクルーたちは不安げに体を寄せ合い、ひそひそと話している。そんな中には当然キラ達の姿もあった。キラ、サイ、フレイ、トール、ミリィ、カズィが一纏めに座っている。

「なあ、何がどうなってるんだろうな?」
「さあなあ、艦長たちも連れて行かれちゃったし、色々問題があるんだろ」

 カズィの不安そうな問い掛けにサイがぶっきらぼうに返す。彼にだって答えが分かっている訳ではないのだ。そのサイに体を預けているフレイが心細げに呟いた。

「私たち、何時になったら安心出来るのかしら?」

 その質問には誰も答えられない。誰も明日の事さえ何とも言えないのが現状だ。フレイの不安はみんなの不安でもある。キラだってサイだってこんな状況からは一刻も早く抜け出したいのだ。そもそも、両親が無事でいてくれるかどうか。それさえも分からない。

 みんなが不安でいる所へ、ユーラシアの士官が入ってきた。禿頭の男が横柄な口調で尋ねる。

「私は当衛星基地司令官、ジェラード・ガルシアだ。この艦に積んであるMSのパイロットと技術者は何処だね?」
「あ・・・・・・」

 素直に手を上げて立ちあがろうとするキラをマードックが押し止めた。キラは訳が分からずキョトンとしていると、ノイマンがむっつりした声で問い質した。

「何故我々に聞くんです・艦長たちが言わなかったからですか?」

 キラはようやく理解した。フラガがストライクをロックしておけといった意味がようやく理解できたのだ。
 ガルシアは幾分気分を害したようだが、ふいに笑うとノイマンの近くまで歩いてきた。

「別にどうもせんよ。ただ、せっかく公式発表より先に見せていただく機会に恵まれたのだ。色々聞きたくてね。パイロットは?」
「フラガ大尉ですよ。お聞きになりたいことがあるんあら、大尉にどうぞ」

 マードックが答えたが、ガルシアはそれを鼻で笑った。

「先の戦闘はこちらでもモニターしていた。ガンバレル付きのゼロを扱えるのはあの男だけだ。それくらい私でも知っている」

 ガルシアは辺りを見渡した。誰も答える様子がない所を見ると、近くにいるミリアミアの腕を掴んだ。

「きゃっ」
「まさか女性がパイロットとも思えないが、この艦の艦長も女性という事だしな・・・・・・」

 ガルシアの余りのやりようにトールが立ちあがる。

553 名前: 流離う翼たち・16 投稿日: 2003/09/20(土) 15:44
「ミリィを放して下さい!」
「威勢が良いな、坊主。なら誰がパイロットなのか、言ってもらおうか?」
「そ、それは・・・・・・」

 トールは俯き、黙り込んでしまった。友人を売る事など出来るはずも無い。トールの苦悩を察したキラは自分から立ちあがった。

「止めてください。僕がパイロットです」
「キラっ」

 トールが非難めいた声でキラの名を呼ぶ。だが、ガルシアはキラの体をねめつけるように見やると、鼻で笑った。

「ふん、あれは君のようなひよっこが扱える物じゃないだろう。ふざけた事を言うな!」

 ガルシアは突然殴りかかってきたが、コーディネイターであるキラにはその拳は全く脅威には感じられない。あっさりそれを躱すや、逆に腕を掴んでねじり上げた。

「僕は、あなたに殴られる筋合いは無いですよ!」
「なんだと!?」

 ガルシアの顔が怒りと屈辱でどす黒く染まる。周りの部下たちが慌ててキラを取り押さえようとするが、それをサイが邪魔した。

「止めてください!」

 だが、サイは殴られて床に転がされた。悲鳴を上げたフレイがサイの体に縋りつき、兵士達を見る。

「止めてよ。その子がパイロットよ。だってその子、コーディネイターだもの!」

 マードック達が痛恨の表情となり、兵士達の動きが止まる。そしてまるで敵を見るような目でキラを見た。キラはそんな彼らの視線を逆に睨み返している。
 連れて行かれたキラを見送った後、トールがフレイをなじった。

「何であんな事言うんだよ、お前は!」
「だって、本当の事じゃない!」

 フレイは詫びれずに言った。それがトールの癇に障る。

「キラがどうなるとか、全然考えない訳、お前って!」
「お前お前ってなによ。だってここ、地球軍の基地なんでしょ。パイロットが誰かぐらい言ったって良いじゃない。なんでいけないのよ!?」

 罪の意識が無いばかりか、状況が全く理解できてないフレイの物言いに、トールが激しい憤りを感じていた。

「・・・・・・地球軍が何と戦ってると思ってるんだよ!」

 問われたフレイは僅かに体を振るわせ、身を固くした。トールの言いたい事にようやく思い至ったのだ。地球軍の敵はザフト、コーディネイターなのだ。そしてキラはコーディネイター。フレイは、友人を売り渡すも同然の事をしてしまったのだ。


「OSのロックを外せは良いんですね」
「ふむ、それはもちろんやって貰うが、ね。君にはそう、もっといろんな事が出来るだろう。たとえばこいつを解析して同じ物を作るとか、逆にこういったMSに対抗できる兵器を作るとか」
「僕はただの民間陣です。軍人じゃないんです。そんな事をしなくちゃいけない理由はありませんよ」
「だが、君は裏切り者のコーディネイターだろう?」

 ガルシアの言葉に、キラは凍り付いたように動きを止めた。

「・・・・・・裏切り者?」
「どんな理由でかは知らないが、どうせ同朋を裏切った身だ。ならばユーラシアで戦っても同じだろう?」

 ガルシアは機嫌よさそうにキラに言った。キラはそんなガルシアの言葉に体を振るわせている。

「ち、違う・・・僕は・・・・・・」

 そうなのだ。今は戦時下であり、自分はコーディネイターなのだ。今までそれを余り意識した事は無かったが、今の自分の回りにある環境はそれを許してはくれない。自分はコーディネイターであり、友人達はナチュラルなのだ。彼らを守るためには自分はコ‐ディネイターを、同胞を殺さなくてはならない。両方を同時に満足させる事は出来ないのだ。

 OSのロックを外し、機体を起動させたキラだったが、いきなりの振動に愕きの表情を浮かべた。下にいるアルテミスの兵士達も驚愕している。ガルシアが管制室を呼び出した。

554 名前: 流離う翼たち・17 投稿日: 2003/09/20(土) 15:45
「なんだ、この振動は!?」
「不明です、周囲に機影無し」
「だが、これは爆発の振動だろうが!」

 続いて更なる振動が襲ってくる。間違い無い、攻撃を受けているのだ。

「ぼ、防御エリア内にMSが!?」
「なんだと、そんな馬鹿な!?」

 笠が破られた事に呆然とするガルシアたち。キラはその隙にハッチを閉じると機体を動かし、ソードストライカーパックを装着させる。
 僕は何をしているのだろう。その思いがキラの頭からはなれない。自分を利用する事しか考えないガルシアのようなナチュラルたち。あんな奴らの為に自分は同じコーディネイターを斬らなくてはならないのだろうか。
 だが、その時、ふとキースの言葉が蘇って来た。

「1番怖いのは、何かを失って、全てが手遅れになってから気付くことだ」

 その言葉を反芻したキラは、機体を動かした。何が正しいのかなんて、今は分からない。でも、自分は友達を守るために武器を取ると決めたのだ。今はそれが全てだった。


 振動で動揺した見張りの兵士達を制圧したアークエンジェルクルーたちは自力でアークエンジェルの発進準備を進めていた。艦長たちが戻らない事に不安を感じてはいたが、このままではただの的になってしまう。
 だが、彼らの心配は杞憂であった。程無くして自力で脱出したマリュ―たちが艦橋にやってきたのだ。

「艦長!」

 クルー達が喜びの声を上げる。フラガが労いの言葉をかけ、マリュ―とナタルが自分のシートに付く。

「アークエンジェル、発進します」

 すでに外の戦いにはバスターやデュエルも加わり、激しい戦いが繰り広げられている。アークエンジェルは反転して戦いから離れるように艦を移動させて行く。ストライクと戦っていたブリッツがそれを追おうとしたが、爆発に邪魔されて追撃を遮られてしまった。

 そして、アークエンジェルが離脱して数日後、アルテミスは陥落したのである。

555 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/20(土) 17:01
>「ストライクの起動プログラムをロックしておくんだ。君以外の人間には、誰も動かす事が出来ないようにな」
これがなければサイでももう少し動かせたかな?

ともかく、乙です。(_ _)

556 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/20(土) 17:31
乙です。
ついでにage

557 名前: もつとたのしくて 投稿日: 2003/09/21(日) 03:10
父ジョージ・アルスターがいない家にも慣れてきた。寂しい事だが、とにかく父は忙しいのだから仕方が無い。
夕食の後、メイドさんが帰ってしまうと、ぽつんと一人取り残されたような感覚が残る。
最近は台本を読んだりしていて寝るまでの時間を過ごすのだが、今日は集中する事が出来なかった。
「はぁ、駄目ね…」
フレイは自分の部屋から出ると、水を飲もうとキッチンに向かった。その途中、ジョージの部屋のドアが僅かに開いているのに気づいたのは全くの偶然だった。
「…?いつも鍵をかけて出ているはずなのに、何で…閉め忘れたのかしら?」
そっとドアを開け中を覗いてみる。誰もいない部屋の中央、どっしりとした造りの木の机の上に、ワインの瓶が一本置かれていた。
「…?…これ…パパが飲んでたのかしら…いえ、もしかして…」
もしかしたら、メイドが盗み飲みしていたのかも知れない。
フレイにとっては家族の一人とも言って良い付き合いの長さだが、それだけに少しだけなら、という甘えがあったのかも知れない。
「もう…仕方ないわね…」
メイドに問うのは明日にする事にして、瓶を手に取るとたくさんの瓶が並べられた棚の中へ戻そうとしたが、
「うわ…」
微かに香ってきたアルコールがフレイの鼻腔を刺激して、一気にフレイから平衡感覚を奪っていく。
その時、フレイは思い出した。確か3年前、いたずら心でワインを一口飲んでその後の記憶を無くしたこと。
気づいた時は自分のベッドの上だったがジョージは怒り心頭で、それ以来出かける時は部屋に鍵を掛けてフレイが入れないようにしたこと。
そして…昨日のサイの誕生パーティー。
招待されたのはフレイの他には主にサイのクラスメイト達だった。
サイやトール、カズイはシャンパンなんか飲んでいたけど、勿論フレイはそんなものを飲むつもりは無かった。
けれど、3年前の事など知らないミリアリアが「おいしいわよ」と勧めてくれて、それと知らずに口に入れたのは…
『有名菓子店製ウィスキーボンボン』

558 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/21(日) 12:17
乙ふれ〜
でも、ウィスキーボンボンで記憶無くすんですかw

559 名前: 流離う翼たち・18 投稿日: 2003/09/21(日) 12:20
辛くも脱出に成功したアークエンジェル。クルー達は何でこんな目にあわないといけないのかと愚痴をこぼしつつも任務を全うしている。幸いにして付近に敵影は無く、当面の襲撃の心配は無い。アルテミスがいいめくらましとなってくれたのだ。
 だが、マリュ―やナタルの表情は晴れない。結局の所、アルテミスへの寄港はなんの役にも立たなかったからだ。物資の欠乏は依然として解決せず、水も弾薬も不足している。月基地まではどんなに頑張ってもそれなりの時間を必要とし、ナタルを苛立たせている。間にデプリベルトがあるのが問題なのだ。
 だが、しばらく何事かを考えていたフラガがいきなり不敵な笑みを浮かべ、呟いた。

「不可能を可能にする男かな、俺は?」


 アルテミスを後にしたキラはストライクの整備をしていた。機体の整備を人任せにするなというフラガの助言に従ったのだが、その意味はキラにも分かる。やはり、自分の命がかかっているのだから。
 コクピットでOSの調整をしていたキラにコクピットハッチに手をかけたマードックが声をかけてくる。

「よお坊主、あんまり根を詰めすぎると、後で体に響くぜ」
「大丈夫ですよ、そんなに疲れてません」
「なら良いけどよ・・・・・・」

 マードックは少し逡巡した後、コクピットから離れた。そして小声で呟く。

「馬鹿野郎が、無理してるのが見え見えなんだよ」

 だが、今は好きにさせた方が良いと考えたマードックは、自分の仕事に戻って行った。他にもやらなくてはいけない事が沢山あるからだ。
 マードックと入れ替わるように今度はキースがキラの所にやってきた。

「おいキラ、そろそろ飯でも食べに行こう」
「キースさん、でもまだ調整が終わってません」
「近くに敵影は無い、そう急がなくても大丈夫だよ」

 キースはキラの手を掴むと強引に引っ張り出した。

「休むのもパイロットの仕事の内だぜ。アルテミスで何があったか知らないが、そう思い詰めるな」
「別に僕は、思い詰めてなんかいませんよ・・・・・・」

 そう言いながらも表情を曇らせ、うつ向いてしまうキラを見て、キースはやれやれと肩を竦めた。まったく、こいつはどうしてこう何でもかんでも自分で背負い込んでしまうのだろうか。人間1人が背負い込めるものなど、たかが知れているというのに。
 キラを引っ張って食堂へと向うキース。キラはその間一言も発しなかった。
 食堂に入ると、先に食事をしていたらしいトールとミリアミアが声をかけてきた。キラがそれに返事を返し、席に付く。その隣にキースが腰掛けた。

「おやおや、うちの食糧事情はかなり悪いらしな」

 キースが残念そうにぼやく。キラはそんなキースを見てようやく微笑を浮かべた。そして、自分も食事をしようとした時、意を決したようにフレイが声をかけてきた。

「あ、あの、キラ、この間はごめんなさい」
「え、な、なに?」

 突然頭を下げられてキラは動揺した。キースは事情が分からずにキョトンとしている。トールがそっと口を添えてくれた。

「ほら、アルテミスの時さ」

 あの時のフレイの言葉を、ガルシアの言葉を思い出してキラの体が強張る。だが、無理に笑顔を作ってフレイに答えた。

「いいよ、別に。気にして無いから・・・・・・本当のことだしね」

 許された事で、とたんにフレイは安堵した表情になった。

「ありがとう」

 そして傍らに立つサイを見てニッコリと微笑む。仲睦まじい2人の姿はキラの心に影を落してしまう。

560 名前: 流離う翼たち・19 投稿日: 2003/09/21(日) 12:20
 そんなキラの様子に、キースはトールを掴まえると小声で問いかけた。

「アルテミスで、何があったんだ?」
「・・・・・・いえ、ちょっと、キラのことで色々と」

 言い難そうにするトールを見て、キースはそれ以上の追求を断念した。何となく察する事は出来たし、無理に聞き出して良い内容でも無さそうだ。仕方なくまた食事を再開しようとして、ふとフレイの方を見た。2つの事が脳裏に引っかかる。あの赤い髪そして、アルスターという姓。
 キースの頭の中を辛い記憶と、自分たちの国家のお偉いさんの名前がよぎった。

「・・・・・・・参ったな、こいつは」

 やれやれと頭を掻きながらキースは食事を再開した。前者はともかく、後者は一介の中尉如きが思い悩むような問題ではないと思えたからだ。
 そして、暫くするとマードックがやってきてマリュ―が呼んでいる事を伝えた。怪訝に思いつつも艦橋にやってきた彼らに伝えられたのは、デプリベルトで物資を掻き集めるという、まるで墓泥棒でもするかのような行為であった。だが、それは少し語弊があるだろう。デプリから使える物の回収は、立派な商売として成り立つのだから。そういう仕事で生計を立てるものもいるのだ。
 デプリベルトにやってきた彼らは直ちに作業ポッドで船外活動を開始した。キースがリーダーとなって周囲を捜索していく。時折使えそうなものを見つけては回収し、艦に持って来て使える物と使えない物を分けていく。破壊されたメビウスや軍艦からは弾薬や推進剤、食料を手に入れるのに都合が良いから集中的に狙っていく。驚いた事に中破しているローラシア級巡洋艦の中からはほとんど無傷のシグーさえ出てきたのである。総員退艦する際に乗り手が無くて放棄されたのだろう。
 これらを回収しつつアークエンジェルはデプリの中を進んでいく。そんな彼らの前に、1つの巨大な大地が現れた。破壊され、申し訳程度に貼りついている自己修復ガラスや、さまざまな構造材。もっとも目立つのは沸騰したように荒れ狂いながら凍っている海だろうか。

「あ・・・ああ・・・・・・」
「な、なあ、これって・・・・・・」

 キラとトールは震える声を搾り出し、それが何なのかを言葉を介さずに確認する。ユニウス7.かつて、血のバレンタインと呼ばれた、核兵器で破壊されたプラントコロニ−の、現在の姿であった。
 ここには死しかない。虚空の宇宙よりも恐ろしいその場所は、かつては多くの人々が暮し、平和な生活が営まれていたのだろう。だが、その全てが、一瞬にして葬り去られたのだ。自分たちのヘリオポリスのように。

 そして、戻ってきた彼らにナタルは残酷ともとれる指示を出した。それを聞いた一同が驚愕する。

「あそこの水を・・・・・・本気なんですか!?」
「あそこには1億t近い水が凍り付いているんだ」

 ナタルは淡々と事実だけを口にしていく。それで納得するようなキラではないのだが。

「でも、見たでしょう。あのプラントは何十万人もの人が亡くなった場所で!」
「でも・・・・・・水は、あれしか見つかってないのよ」

 キラははっと息を飲んだ。トールが辛そうに顔を顰める。
 そんな子供たちにフラガが強い口調で語った。

「誰だって、あそこには踏みこみたくは無い。けど、しょうがねえだろ。俺達は生きてるんだ。ってことは、生きなきゃなんねえって事なんだよ!」

 フラガの言葉に誰も反論する事が出来ず、内側に不満を閉じ込めたまま艦橋から出ていった。残されたフラガとマリュ−は顔を見合わせ、同時に深い溜息をつく。

「また、嫌われたかな?」
「かもしれませんね」

 2人とも分かっているのだ。自分たちが子供たちにどれほどの無理を強いているのかくらい。
 そんな2人の内心など気にする風でもなく、ナタルが作業開始の指示を出している。だが、そんなナタルの肩をキースが掴んだ。ナタルが肩の痛みに僅かに顔を顰める。

「中尉、何をなさるんです!」
「・・・・・・バジルール少尉、君は正しい。だがな、もう少し部下への配慮が出来るようにならないと、下は付いて来ないぞ」
「何を馬鹿な事を、私が正しいのなら、問題はないでしょう!?」

 キースに反発するナタル。だが、キースの視線に射竦められ、ナタルは勢いを失った。優れた才能を持ち、高度な教育を受けたナタルだが、実戦経験は足りない。フラガと並ぶ戦場の勇者であるキースとではまだまだ役者が違っていた。

「バジルール少尉、覚えておくんだな。兵士だって人間なんだってことを」

 それだけ言うと、キースはナタルの肩から手を放し、自分も作業に従事する為に艦橋を後にした。それを見送ったフラガが苦笑してナタルを見やる。ナタルは不満そうではあったが、何かを考えているようだ。

561 名前: 流離う翼たち・20 投稿日: 2003/09/21(日) 12:21
 かつては砂浜であったろう凍てついた大地から、ミリアリアは両手一杯の花を投げた。勿論生け花などこの艦には無い。ミリアミアやトールたちが作った折り紙の花だ。それが荒れ狂う海に広がり、散っていく。
 凍った大地の上で、艦の中で、人々は黙祷を捧げた。ここは自分たちの、ナチュラルの罪の烙印。例え気休めでしかなくても、彼らには祈るしかなかったのだ。

 船外作業を開始したクルーたち。キースの指示のもとに必要な物資をあたりから掻き集めていく。凍りついた水を切り取り、アークエンジェルに運び込む作業も行なわれている。それを護衛するようにストライクが哨戒を続けていた。
 そのストライクのレーダーが接近する機影を捕らえた。ぼんやりとしていたキラはギクリとしてそれを確認する。デプリの残骸の中に1つだけ熱反応を持つ何かがいる。識別がそれを複座の強行偵察型ジンだと教えている。キラは狙撃用スコープを引き出し、そのジンに狙いを定めた。

「行け、行ってくれ・・・・・・」

 キラは必死に祈った。その祈りが通じたかのようにジンが去ろうとしたが、いきなりそのジンが向きを変えた。近付いて来た作業ポッドを発見したのだ。

「馬鹿野郎、なんで気付くんだよ!」

 ジンがライフルを放つのが見えた。銃弾がポッドを掠める。それを見たキラは思わずトリガーを引き絞った。ビームが放たれ、ジンに吸いこまれて行く。ビームに機体を貫かれたジンは仰け反り、そのまま爆発してしまった。
 通信機からカズィの感謝の声が聞こえてくる。狙われていたポッドにはカズィも乗っていたらしい。だが、キラはそれには答えない。不審に思った何人かが声をかけてくるが、それにも答えず、通信機のスイッチをOFFにする。
 自分は何をやっているのだろう。目の前に広がるユニウス7を破壊したのは地球軍だ。その地球軍に為に同じコーディネイターを殺して、こんな苦しみを味あわなくてはならない。
 そんな苦しみに耐えていると、またレーダーが別の移動物体を捕捉した。また別の敵かと緊張したが、レーダーに映るそれはMSではなかった。


「つくづく拾い物が好きなのだな、君は」

 ナタルの声には苦々しさと諦めが混じっている。キラは憮然として答えなかった。
アークエンジェルの格納庫にはキラが曳航してきた救命ポッドが横たわっている。マリュ−とフラガは視線を交して溜息を付いている。そんな3人とは異なり、キースだけは面白そうにポッドを見ていた。
 マードックがポッドを操作し、「開けますぜ」と言った。
 ハッチが音を立てて解放され、周囲に待機していた兵士が銃を構える。だが、中から飛び出してきたのは誰もが想像もしなかった物であった。

「ハロ・ハロ・・・・・・」

 間抜けな声を発しながら漂い出たのは、ピンク色をした球状の物体だった。パタパタと羽ばたくように動き、なんとも愛嬌のある顔つきをしている。どうやらペット用のロボットらしい。何者が出てくるかと警戒していた一同は完全に毒気を抜かれてしまった。

「ありがとう、ご苦労様です」

 ハッチの中から一人の少女が出てくる。やわらかなピンク色の髪と長いスカートの裾をなびかせ、ハッチから出てきたのはキラたちと同年代くらいの愛らしい少女だった。

「あら・・・・・・あらあら?」

 慣性のままに漂っている少女の体をキースが掴んだ。そして床にまで引っ張ってくる。

「ありがとうございます」
「・・・・・・あ、ああ」

 どう対応したものかと戸惑うキースだったが、ふいにその少女の顔が驚いたように変化した。その視線はキースの軍服に向けられている。

「あらあら・・・・・・まあ、これはザフトのお船ではありませんねの?」
「は・・・・・・はい」

 マリューが気の抜けた返事を返し、一拍おいてナタルが深々と溜息を付いた。キラは突然現れたこの不思議な少女に魅せられていた。
 これが、アークエンジェルと、プラントの歌姫、ラクス・クラインの出会いであった。

562 名前: もつとたのしくて 投稿日: 2003/09/22(月) 00:53
>>500-501>>514>>548>>557

「フレイ…?」
「…」
「ねぇ、フレイったら!どうしたの?」
「……」
フレイ、無言。
ミリアリアは、フレイの前に回って表情を窺おうとして…かなり危険な状態である事は直感で分かった…
「ちょっと、トール…」
トールに救いを求めようとしたミリアリアの腕を、ミリアリアが痛みで顔をしかめるような力でフレイが握り締めた。
「ねぇ、ミリィ…」
思わず総毛立つほどの、甘ったるい、蟲惑的な声。心なしか視線の焦点が合っていない。
透き通るような白い肌に仄かに血がのぼって、顔に薄いピンク色が差していた。
「最近、私、自信無くしちゃって…私に、主役できるんでしょうか…?」
フレイはミリアリアの手を取り、見上げるような哀願するような目でそう言った。微妙に舌がもつれている。
「な、何言ってるのよ。大丈夫、あれだけ練習してるじゃない…自信を持てば大丈夫だから…」
そうは言ったものの、果たしてフレイに聞こえているのかどうかは判らず、ミリアリアは動揺していた。
フレイは目を伏せて少し考えているようだったが、やがて顔を上げると不安そうに
「そうかな…?」と呟いた。
ミリアリアは自分が初めて舞台に立った時の事を話して、懸命にフレイを落ち着かせようとした。
それを聞いて、フレイも少し安心したようだった。
「…だから、とにかく一生懸命やれば良いのよ。そんなに思い詰めないで」
「…分かりました。頑張ります!」
ようやく笑みを見せたフレイは、側にあったグラスに手を伸ばすと一気に飲み干した。
「あ…それ…」
ミリアリアが止める間も無く飲んだそれは…シャンパンだった。

563 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/22(月) 01:28
>翼
毎度ながら乙です! キースの言動が少しづつ、回りを変えていきそうな気配がしますね…
楽しみです

>たのしくて
乙です。
ほろ酔いフレイ様激萌えッ!!!
やばいっマジ可愛い、その声を聞きたい、見上げられたい〜…

564 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/22(月) 17:09
>たのしくて
>>563
 ウッ、時間差で萌えが・・・最初は気にしなかったのに!

565 名前: 流離う翼たち・21 投稿日: 2003/09/22(月) 18:32
 プラント最高評議会。召集を受けて報告を行ったアスランは会場を出た所でどっと肩を落とした。やはり、こういう所は疲れるものなのだ。その背中に声がかけられる。振りかえったアスランはとっさに敬礼した。

「クライン議長閣下!」
「そう他人行儀な礼をしてくれるな、アスラン」
「いえ、これは・・・・・・その」

 苦笑混じりに言われてアスランはようやく自分が敬礼している事に気付いた。慌てて手を下ろし、シーゲルと顔を見合わせて笑いあう。

「やれやれ、せっかく君が帰ってきてくれたのに、いまは娘が仕事で出かけておる。擦れ違いが多いというのも困ったものだな」
「ラクスは、いないのですか?」

 残念そうなアスランに、シーゲルはすまなそうに答えた。

「ユニウス7の慰霊団代表になってしまってな。今は事前視察に出かけておる。あれも君に会いたがっておったよ」
「そう、ですか」

 アスランは懐に手を入れ、1つのロケットを取り出した。それを開くと、中にはラクスの写真が入っている。2人を繋いでいる絆の1つである。これと対になるロケットをラクスが持っている。
 ロケットを閉じたアスランはシーゲルを見た。

「また、休暇が取れたら会いに来ます。ラクスにもそうお伝え下さい」
「ああ、伝えておこう」

 アスランはシーゲルに軽く頭を下げ、その場を後にした。
 だが、このすぐ後に、彼を驚愕させるニュースが飛び込んでくる事になる。



 デプリベルトで拾った少女。彼女の尋問は士官室の空き部屋で行なわれていた。その扉の前に人垣が出来ており、キラやトール、サイ、カズィ、何故かトノムラやパルまでが加わっている。
 ふいにドアが開き、扉に寄りかかっていた連中は一斉に折り重なって倒れ伏した。それをなんとも言えない冷たい視線で見下ろすナタル。

「お前たちはまだ積み込み作業が残っているだろう。さっさと作業に戻れ!」

 ナタルの怒声に一同はいっそ見事とさえ言えるほどにその場から消え去った。それを見ていた少女は驚いていたが、すぐにクスクスと笑い声を立てる。その隣で立っていたキースも同じように笑っていた。
 扉が閉じると同時にマリュ−が軽く咳払いをした。

「失礼しました。それで・・・・・・」
「私はラクス・クラインですわ。これは友達のハロです」

 少女がピンク色のロボットを出して紹介する。ハロハロ・ラクスなどとほざいているロボットを見てフラガがガックリと頭を抱え、マリュ−とナタルが疲れた顔になる。ただ1人、キースだけは面白そうな顔でハロを突つき、ラクスに問いかけた。

「ラクス・クラインね。俺の記憶が確かなら、そいつはプラントの歌姫にして最高評議会議長のご令嬢の名前の筈だが」

 キースのそれは問い掛けでは無く、確認だった。ラクスが嬉しそうに頷く。

「その通りです。良くご存知ですのね」
「まあね。こう見えても社会情勢には詳しいのよ」

 なんだかネジが数本抜けてるんじゃないかと思えるような2人のやり取りに、3人は更にガックリと肩を落とした。どうやらこの少女の独特の空気について行けるのはキースだけらしい。

「そんな方が、どうしてこんな所に?」
「ええ、私、ユニウス7の追悼慰霊の事前調査に来ておりまして・・・・・・」

 ラクスの語った内容は、4人を驚愕させずにはおかなかった。民間船の臨検はともかく、その後いざこざを起して民間船を攻撃するとは。ラクスは船が沈められたとは言わなかったが。キラの報告でポッドの傍には砲撃で沈められた真新しい船があったという。まず間違いあるまい。
 監視に残ったキース以外の3人が去った後で、ラクスは壁にあるモニターを見た。そこにはユニウス7の残骸が映されている。ラクスはそれを見ると、ハロを膝の上に抱き上げ、ささやきかけた。

「祈りましょうね、ハロ。どの人の魂も安らぐように」

 そんなラクスを見ていたキースは、うっかりラクスの目を見てしまった。たったそれだけなのに、キースは目の前にいる少女が先ほどとは別人のように映った。先ほどの何処か天然を感じさせる世間知らずのお嬢様と、僅かな間だけ表に出てきた深く透き通った、全てを睥睨するかのような眼差し。どちらが本当の彼女なのだろうか。
 この僅かな印象の変化で、キースはラクスへの警戒心を強めた。これまでの全てが擬態ではないのかという疑いと共に。

566 名前: 流離う翼たち・22 投稿日: 2003/09/22(月) 18:33
 プラントでは1つの騒ぎが起きていた。いや、ごく一部と言うべきか。プラント最高評議会議長の娘、ラクス・クラインが行方不明になったというのだ。ラクスの捜索に幾つもの部隊が派遣され、アスランの所属するヴェザリウスも当然ながら捜索の為出撃する事になっている。
 ラクスが行方不明といわれたアスランは動揺を隠しきれなかった。婚約者であり、2年の時を過ごしてきた少女が消息不明などと言われれば誰だって動揺する。 
 出撃したヴェザリウスの中でアスランはラクスの安否を気遣うと共に、あんな所で消息不明になったという事に疑問を感じていた。確かにデプリベルトは地球に近いが、あの辺りの制宙圏はどちらかと言えばこちらにある。そんな所に地球軍の哨戒部隊が来るだろうか。
 アスランはある疑惑を捨てきれなかった。ラクスを襲ったかもしれない地球軍と、自分たちが取り逃した敵の新型戦艦。もしかしたら、あの艦が襲ったのではないのか。だとしたら、あいつが・・・・・・・

「馬鹿な、そんな事するような奴じゃない!」

 アスランは否定したかった。まさか、キラがラクスを襲うんなんてことがあるわけが無いと。
 だが、一度噴出した疑念はなかなか消える事は無く、アスランは次々に沸き起こってくる不吉な想像に苛まれる事になる。



 食堂から少女の甲高い声が聞こえてきて、キラは立ち止まった。

「嫌ったら嫌、!」
「もう、フレイってば、なんでよお?」

 フレイとミリアリアが、食事のトレイを前に言い争っている。トールは仲裁には入れないようだ。キラは食堂に入り、カズィに事情を問いかけた。

「何があったの?」
「お前が拾ってきた女のこの食事だよ。ミリィがフレイに持ってくように言ったんだけど、フレイが嫌がってるんだ」

 フレイが叫んだ。

「嫌よ、コーディネイターの所に行くなんて、怖くって・・・・・・」
「フレイッ!」

 ミリアリアが慌ててたしなめた。フレイもキラに気付き、失言を悟る。

「も、もちろんキラは別よ。でも、あの子はザフトでしょ。コーディネイターって、反射神経とかも凄く良いんでしょう。なにかあったらどうするのよ!?」

 よりにもよってキラに問いかけるフレイ。キラはどう答えて良いか分からずに沈黙する。
 その時、新たな人影が食堂に入ってきた。

「まあ、誰が誰に飛びかかりますの?」

 おっとりした声が背後からかかって来て、キラたちは反射的に振りかえった。そこにいたのは例のラクス・クラインだった。隣にキースもいる。

「あら、驚かせてしまったのならすいません」
「い、いえ、別に・・・・・・」

 キラはしどろもどろになりながら答えた。そんなキラをキースが一瞥する。

「お前等、何を言い争ってたんだ。外にまで響いてたぞ?」
「いえ、大した事じゃないんです」

 カズィがフレイの顔を伺いながらキースに答えた。キースはフレイを見た後、テーブルに置かれている食事のトレイを見て、事情を察した。
 ラクスが複雑そうな顔をしているキースに問いかける。

567 名前: 流離う翼たち・23 投稿日: 2003/09/22(月) 18:34
「あの、私、喉が乾いているのですが・・・・・・それにお腹もすいてしまいまして」
「あ、ああ、そうだったな。丁度食事も用意されてるようだし、食べて行くと良い」
「まあ、そうでしたか。ありがとうございます」

 キースに連れられてラクスが入って来る。それを見てフレイが怯えたように少し下がった。ラクスはニコニコとしながらフレイの前に歩み出る。

「あの、私はザフトではありませんのよ。ザフトは軍の呼称ですから」
「な、なんだって一緒よ。コーディネイターなんだから!」

 フレイはあくまでラクスを受け入れようとはしない。そんなフレイにラクスはあくまでやわらかな物腰で話を続けようとした。だが、そんなラクスをキースが遮った。

「ほらほら、あんまり外に出してると副長が煩いんだ。お前等もあんまり騒ぎを起すんじゃないの。さっさと座る」

 キースに促されてラクスは椅子に腰掛けた。その隣にキースも腰掛け、チラリと少年少女を見やる。キースに視線で促されたキラたちも渋々と腰を降ろした。
 そして、何処か異様な雰囲気の中で食事が始まった。あくまでもふんわりとした雰囲気を崩さないラクスと、そんなラクスに露骨な警戒心を隠さないフレイ。一緒にいるトールとカズィとキラはこの胃の痛くなるような緊張感に必死に堪えていた。
 そんな中で、ミリアリアがラクスに話し掛けた。

「ところで、あなた、名前は?」
「私はラクス・クラインと申します」
「そうなんだ、私はミリアリア・ハウ。よろしくね」

 ミリアリアの良い所が最大限に発揮されていた。この挨拶のおかげでようやく場の緊張が僅かにほぐれるのが感じられる。ミリアリアに続いてトールが、キラが、カズィが自己紹介をし、最後にフレイが残された。みんなの視線が集中する中でミリアリアがフレイを肘で突っつく。

「ほら、あんたも」
「・・・・・・わ、分かったわよ」

 フレイが渋々という感じでラクスを見る。

「フレイ・アルスターよ」
「ラクス・クラインです。よろしくお願いしますね」

 ようやく名前を聞かせてもらえたことで、ラクスは嬉しそうに微笑んだ。そのラクスの笑顔を見てキラとトールは心臓の鼓動が僅かに早くなるのを確かに感じた。
 トールの変化を敏感に察したミリアリアがジロリとトールを睨む。

「トールゥ?」
「な、何、ミリィ?」

 まるで浮気現場が発覚した瞬間を見られたかのようにトールは青褪めている。そのトールの反応を見てミリアリアの視線はますます厳しいものとなった。そんな2人を見て他のみんなが噴出すように笑い出した。
 これでギスギスした空気がなくなり、会話が弾むようになった。フレイだけはまだラクスへの不信感を持っているようだったが、とりあえず表立って酷い事を言うようなことはしていない。
 だが、そんなフレイも注目してしまうような内容に話が移って来た。

「私、プラントに婚約者がいますの」
「えー、婚約者って、その年で?」
「はい、2年前に紹介されまして」

 僅かに頬を染めて語るラクスに、ミリアリアが興味津々という感じで聞いている。フレイも女の子らしく、こういう話には加わってきた。

「どういう人なのよ。その相手って?」
「ええ、とっても優しい人ですわ。今は部屋に置いて来てますけど、ピンクちゃんを作ってくれたのもその人なんです」
「へー、いいなあ。私の彼氏にはプレゼントなんて甲斐性ないのに」

 ミリアリアのさりげない一言にトールが息苦しそうになった。キラとカズィが含み笑いをしている。だが、すぐに2人も顔色を変える事になった。

「でも、なかなか会いに来てくださらないんですの。お仕事が忙しいのは分かりますが、少し寂しくもあるんです」
「まあ、男ってのはどいつもこいつも女心ってのが分かって無いからね」
「そういうものなの、ミリィ?」
「そうよ。フレイは付き合って無いから分かんないかもしれないけどね」
「うふふふ、フレイさんも好きな方が出来れば分かりますわよ」

 フレイにはサイという親同士が決めた婚約者がいるが、サイとはまだ恋人同士と言える関係ではない。だから2人の言葉はフレイには新鮮なものだった。
 逆にキラとトールとカズィは物凄く居心地が悪そうだった。キースだけは我関せずとばかりにコーヒーを口に含んでいるが、頬を流れる一筋の汗がその内心を示していた。

568 名前: もつとたのしくて 投稿日: 2003/09/22(月) 22:31
>>500-501>>514>>548>>557>>562

喉を鳴らしてシャンパンを飲み干したフレイを、おろおろしながら見守るミリアリア。
話に夢中になっているサイやトール達はそんな二人の様子にまだ気づいていない。
燃え広がるように、フレイの顔が一気に赤くなった。
「フレイ、フレイ!大丈夫?」
そう言ってフレイに近づいたミリアリアに、いきなりフレイが抱きついてきた。
「ミリィ〜」
「きゃっ!」
それを支えられなかったミリアリアはフレイを上にして床に倒れてしまい、テーブルの上から菓子や飲み物がこぼれて散らばった。
「痛ぁ…フレイ、大丈夫?」
「フレイ!ミリィ…どうしたんだ?」
物音に気づいたサイ、トール、カズィが駆け寄ってきて、二人を起こそうと手を伸ばした。
「サイィ…」
サイに手を取られたフレイは、もたれかかるようにして立ち上がると、
「ねぇ、来月は絶、対見に来てね。…約、束よ?」と、ろれつが回らない舌で一生懸命に言った。
「サイ、フレイは寝かせた方が良いんじゃないか?…家に帰した方が…」
カズイがそう言うと、ミリアリアを助け起こしたトールも同調して頷いた。
「そうだな…フレイ、家に帰った方が良いよ、僕が送っていくから…な?」
サイがそう言うと、フレイは表情を一変させた。
「何?…私に帰りなさいって言うの?…まだパーティー終わってないん、で…しょ?」
怒り、というより純粋に不思議がっているような声だった。
「いや、その…フレイ、少し酔ってるみたいだし、明日も学校があるから」
「…何言ってる、のよ。私、酔ってなんかいないわよ。大丈夫だか、ら」
そう言うのが酔っぱらいなのだとトールは心中で突っ込んでいたが、少し落ち着かせるように、とサイに目で合図をした。
カズイはさりげなくフレイの周囲からアルコール類を遠ざけるように片付け始めた。
「フレイ…とにかく、落ち着いて、ほら、椅子に座ろう?」
「大丈夫だったら!…う…ごめんなさい、ちょっとお手洗い、に行ってくるわ」
フレイはそう言うと、フラフラした足取りで部屋の出入り口の方へ向かおうとしたが、ちょうどそこへキラ・ヤマトが入ってきた。
「サイ、遅くなってごめん。カトウ教授にまた仕事頼まれちゃって…」
と言ったキラの目の前にフレイの体が揺れながら現れたかと思うと、それが覆い被さってきた。
「あっ…ちょっと、フレイ…?」
キラはフレイの身体を受け止めて立ちすくむ格好になった。フレイの身体は羽毛のように柔らかく、軽く感じられた。
ほんの少し感じられる、アルコールだけでは無いフレイそのものから感じられる甘い香りに、一瞬、キラの意識が遠のいた。
「ねぇ、フレイ、フレイったら!」
フレイは答えず、そのまま眠っていた。
「トール、ど、どうしよう…」
「とにかく、寝かせようよ。落ち着いたら、家まで送ればいいさ。…サイ、フレイがこうだと知ってたんだろ?」
「いや、今までアルコールを飲んだことなんか無かったし…キラ、本当、御免」
サイはトールとキラに謝ったが、二人にはサイを責めるつもりなど無い。
「フレイ、大丈夫?」
「多分ね…しかし、こんなに弱いとは知らなかったよ。これからは気をつけないとね」

569 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/22(月) 23:00
>流離う
うーむ、本編よりは和んだかな?
キースっていいキャラですね。兄貴だけでは足りないところを見事にw
ともかく、乙です。

>もつと
キラ・・・w きっとハァハァしてたなw こちらも乙です。

570 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/23(火) 03:08
>流離う翼
乙です!キースさん効果が徐々に… 本編でもこんな女の子の会話、少し聞いてみたかったなあ。
ノイマン<キース<兄貴、 みたいなキャラ・位置付け、なんですかねえ。

>たのしくて
トラブルメイカーだ…w
酔っ払いのお約束セリフに笑いました。乙です。

571 名前: 北風に羽、太陽に鎖 5 投稿日: 2003/09/23(火) 04:19
>>367,368,371,372



朝食とその片づけが終わり、一息つくと、フレイはピアノの蓋を開いた。
ヘリオポリスへ移住した頃からは、学業のこともあり
それほど触っていたわけではなかったが、
ピアノは3歳の頃から習い続けていた趣味の一つだ。
最近は、ラクスの歌にあわせて、また弾くようになっていた。

そして、ラクスがどこかから手に入れてきた
中古品のこのピアノの音色が、フレイは好きだった。
ピアノの音には、長年その鍵盤を叩いた者の性格がうつる。
このピアノのやわらかい音は、弾く者、聴く者の心を和ませた。
きっともとの持ち主は女性か、そうでなくとも、とても優しい心の持ち主だったのだろう…。

ゆったりとした曲で指ならしをしていると、ラクスがそこに旋律を乗せる。
透き通った声だ。何度も聞いているフレイでも、そのたびに引き込まれそうになってしまう。
だが、そうしてはおれないのだ。
ラクスはいつも即興で、どんどん旋律を変えていくのである。
忘れた頃にもとの曲に戻ったり、他の曲を転調して挟んだりするので
歌に伴奏を重ねるフレイにとって、それは油断のならない時間なのだった。
だがしかし、フレイはそんなラクスの気まぐれを止めようとした事はない。
ついていけないと思われるのは、彼女のプライドが許さなかったのだ。

572 名前: 流離う翼たち・24 投稿日: 2003/09/23(火) 13:35
「どんな人なの?」
「ちょっとお待ち下さい」

 ラクスは首に下げているロケットを開き、中に収められている写真を見せた。中に映っているのは黒髪の、優しげな少年だった。

「へー、本当に優しそうな人ね」
「ねえねえ、その人、何て言う名前なの?」
「アスラン、アスラン・ザラですわ」

 ラクスの口から出てきた名前を聞いた時、キラは凍り付いたように固まってしまった。

「ア、 アスラン・・・・・・」

 キラが心ここにあらずという感じで呟く。それを聞いた全員が不思議そうな顔でキラを見た。

「キラ、知ってるのか?」

 トールの問い掛けに、キラは震えながら頷き、アスランの事を話し出した。

「アスランは、僕が月にいた頃の友達なんだ。3年前にアスランはプラントに行ってしまって、僕はヘリオポリスに移り住んだ」
「へえ、偶然ってあるもんなんだなあ」

 カズィが驚いて感想を口にし、フレイとミリアリアが頷いている。だが、次にキラが語った言葉にはさすがに驚きを隠せなかった。

「・・・・・・アスランは、ザフトにいたんだ。ヘリオポリスを攻撃した連中の中に、彼は居た。イージスのパイロットになって・・・・・・・僕と、戦ったんだ」

 キラの告白は、場の空気を一気に重くしてしまった。今の友人を守るために昔の友人と殺しあわなくてはならない。それが悲劇で無くて何だと言うのだろう。コーディネイターに強い偏見を持つフレイでさえこれにはキラを不憫だと感じると同時に、小さな驚きもあった。その内心が口から漏れてしまう。

「コーディネイターでも、そういう事で悩んだりするんだ」

 それを聞いたのは隣に居たミリアリアと、前に座っていたラクスとキースだけだった。ミリアリアはフレイが何を言いたいのか分からず、訝しげな顔をしていたが、ラクスはニッコリと微笑んだ。キースは口元を僅かに歪めてコーヒーを一口啜っている。
 また深刻になっているキラを見て、キースは心の底から心配しているような声をかけた。

「キラ、前に言っただろう。あんまり悩んでると禿げるぞ」
「だから、僕は禿げてません!」

 力一杯否定するキラだったが、友人たちは心配そうな声で訪ねてきた。

「何だキラ、お前、もう禿げてきてるのか?」
「言ってくれれば養毛剤を紹介してやったのに」
「あらあら、大変ですわね。若禿げですの?」
「禿げたキラって・・・・・・プッ」
「コーディネイターでも禿げは克服できなかったんだ」

 口々に勝手なことを言いたてる一同に、キラはガックリと頭を足れて項垂れた。何故だろう、これまでで1番傷付いた気がするのは。
 この日、キラの心に深いトラウマが刻まれたのである。

573 名前: 流離う翼たち・25 投稿日: 2003/09/23(火) 13:35
 キースはラクスの食事が終わったのを確認すると、空になったカップをソーサーに戻した。

「食事は終わったな。それじゃ帰るか、と言いたい所だが、幸いまだ時間がある。どうだ、一曲歌ってくれないか?」
「私がですか。構いませんが?」

 ラクスが不思議そうにキースを見る。他の者も不思議そうにキースを見ている。

「ラクス嬢はプラント1の歌手なんだ。その生の歌声を聞けるチャンスを逃す手は無いだろう」

 キースの説明にフレイ以外の全員が頷いた。フレイだけは抵抗があるのか顔を背けていたが、とりあえず反対はしていない。それを見て、キースはラクスに頷いた。ラクスは立ちあがると、透き通った声で歌を歌い始めた。美しい、胸に染み入るような歌声。その歌声は聞く者の心を癒し、立ち直らせる。キラはその歌声がささくれ立った心に染み渡るような感触を覚えていた。

 聞き終わったみんなは口々にラクスを賞賛した。フレイは複雑そうであったが、その歌を認めてはいた。だが、続く質問が空気を僅かに重くする。

「あなたの歌声って、やっぱり遺伝子を弄ったせいなの?」

 こういう無神経な所がフレイの悪い所である。それを聞いたキラがまた表情を曇らせた。だが、ラクスは気にした風も無く首を左右に振った。

「いいえ、確かに私はコーディネイターですが、第2世代ですから、調整はほとんど受けていません。喉を強化するなどという事はしてませんわ」
「コーディネイターって、みんな遺伝子を弄って生まれてくるんじゃないの?」
「第1世代はそうですが、第2世代は違います。出生率の問題で多少の調整は行なわれますが、第1世代のような改造は行なわれません」

 それを聞いたフレイは意外そうな顔をした。どうやら彼女の頭の中ではコーディネイターとは全て第1世代のような生まれ方をするのだとなっていたらしい。第2世代はそんな事をしなくてもコーディネイターとして生まれてくるのだ。

 キースがラクスを連れて士官室に戻った後、食堂に残ったキラたちはラクスの事で談笑していた。やはり、ラクスの歌が話の中心になっている。

「しっかし、あの歌は凄いよなあ。あんな綺麗な歌初めて聞いたよ」
「そうよねえ。私もあんな風に歌えたらなあ」
「ミリィじゃ無理だと思うけどね」

 トールとミリアリアとカズィが軽口を交している。余計な事を言ったカズィが頭を叩かれてるが。そんな友人たちの中で、キラは何か物思いに耽っているフレイに気付いた。

「どうかしたの、フレイ?」

 キラに問われてフレイははっと我にかえった。慌てて周りを見回す。するとキラだけでなく、トールもミリアリアもカズィも不思議そうな顔で自分を見ている事に気付いた。フレイは慌てて頭を左右に振る。

「な、なんでも無いわよ」
「そう、何か真剣に考えてるみたいだったからさ」

 キラはフレイの答えに納得はしていなかったが、それ以上の追求はしなかった。だが、この時のフレイの悩みは深刻であった。その内心を知るものが居ない事は、フレイにとって幸運であったといえた。


 不安な航海を続けるアークエンジェルに、1つの光明がさしたのはそれから暫くたっての事であった。第8艦隊のコールサインをキャッチしたのだ。それを見たパルが歓声を上げ、急いで解析に入る。マリュ−もナタルも期待を込めた目でそれを見ていた。
 そして、ようやくスピーカーから雑音混じりの音声が聞こえてきた。それは聞き取り難かったが、第8艦隊先遣・・・・・・という部分ははっきりと聞き取れた。

「ハルバートン提督の部隊だわ!」
「位置は!?」

 ナタルの問いにパルはまだ距離があって分からないと答えた。
 だが、希望が出てきたことは確かだ。このまま行けば遠からず友軍と合流出来る。その光明は艦内を隅々まで照らし出し、避難民とクルーの表情を明るくする。
 そんな中で、フレイにサイが良いニュースを持ってきた。

「パパが!」
「ああ、先遣隊と一緒にこっちに来てるって」

 ここにも間違い無く希望の光がさしていた。フレイの笑顔を見てサイも微笑む。フレイが片親である事を知るミリアリアもフレイの肩を叩いて「良かったね」と声をかけている。

574 名前: 流離う翼たち・26 投稿日: 2003/09/23(火) 13:36
 だが、実際には喜んでばかりもいられなかった。アークエンジェルよりも早くこの艦隊に気付いた部隊があったからだ。ザフトのナスカ級高速巡洋艦、ヴェザリウスである。

「ふむ、地球軍の艦隊が、こんな所で何を?」

 アデスが疑問を口にする。哨戒部隊にしては妙な位置である。それに答えるようにクルーゼが言った。

「足付きがアルテミスから月に向うとすれば、どうする?」
「では、足付きの出迎え部隊だと?」
「ラコーニとボルトの部隊の合流が遅れている。もしもあれが足付きに補給を持ってきたなら、このまま見過ごす訳にはいかん」

 クルーゼはラクスの捜索よりも敵撃滅を優先するというのだ。これには流石にアスランが大きな声で反論した。

「隊長、それではラクスはどうなるんですか!?」
「アスラン、我々は軍人なのだ。たった1人の少女の為にあれを見過ごす訳にも行くまい」
「ですが、我々の任務はラクスの捜索です。足付きの撃沈ではありません!」

 アスランは珍しく食い下がった。ラクスの身を案じる余り、つい焦りが出てしまったのだ。アデスもクルーゼもそれに気付いたのか、アスランの反論を咎めはしない。だが、クルーゼは自分の意見を取り下げるつもりは無かった。

「我々はこの艦隊を攻撃する。これは命令だぞ、アスラン」
「・・・・・・了解」

 アスランは俯き、血が滲むほど唇を噛み締めた。握る拳がぶるぶると震えている。

『ラクス、無事でいてくれよ・・・・・・』

 アスランは、この時ほど自分の行動を自分で決められない自分の立場を恨んだことは無かった。

575 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/24(水) 03:31
>翼
おっ、アスランの様子がちょっと違いますね。
そして第八艦隊…悲劇の時が近づいている…キース、助けてくれ!
ともかく乙です。

576 名前: 北風に羽、太陽に鎖 6 投稿日: 2003/09/24(水) 03:35

この日のラクスは、特に調子が良いようだった。
流れるように、変化にとんだ旋律を歌い継いでゆく。
そこにピアノの和音が重なり、
時に耳になじみの良い音が、時に前衛的な音が続く。
部屋に豊かな響きが満ち、それが窓の外へとひろがっていった。

だが美しい演奏の反面、フレイは指がつりそうな思いをしていた。
ラクスの次の転調をよみかねて和音をはずすと、ラクスはそれに気付いてか
おちついた単調な繰り返しをはさむ。
その声が美しくあればあるほど、フレイは、
どこか自分が惨めに思えて、唇を噛みしめる。

ふと、ラクスの歌がやんだ。
彼女はそれにつられて指を止めたフレイの顔を見る。

「わたくし、何か…良くなかったでしょうか?」
「ううん…」
フレイはそう答えるものの、うつむいたまま不機嫌そうに、ピアノの蓋を閉じた。
「なんでもないわよ」
「でも、フレイさん…辛そうな顔をなさってますわ」
「仕方ないじゃないっ!」
心から心配そうに、自分を見つめるラクスの表情に、フレイは逆に癇癪を起こした。
「あんたが、どんどん先に歌っていっちゃうから!」

ラクスは、まるで考えが及ばなかったと言うかのようにきょとんとし、その一呼吸後、目を伏せた。

「そうですか…私は、フレイさんも喜んで奏でてらっしゃるとばかり思っていました」
「…それとこれとは」
「ごめんなさい」
「…だからぁっ、そうじゃなくて…もうっ」

フレイは、ラクスのこの、落ち込んだような表情が苦手だ。
自分のせいにするようなその様子は、なぜだか胸がざわつくのだった。

実際、彼女はラクスと合奏する事は嫌いではなかった。
ピアノを弾くのも楽しいし、ラクスの声も、今は美しいと素直に思える。
だが、その和音を乱すのがいつも自分である事が、悔しくて情けない、などと
口にできるはずもない。
結局、それを全くわかってくれる気配のないラクスへと、怒りが向いてしまうだけなのである。

577 名前: 流離う翼たち・27 投稿日: 2003/09/24(水) 18:18
「レーダーに艦影が捕捉される。戦艦モントゴメリ、駆逐艦ロウ、バーナードです!」

 アークエンジェルの艦橋に喜びの声が溢れた。しかし、レーダーパネルを見詰めていたパルは、急に怪訝そうな表情になる。ノイズが入ったのか、画面が乱れたのだ。計器を調整しても修正されない。

「これは・・・・・・」
「どうしたの?」

 マリュ−がパルに目をやったが、青褪めているその表情を見て表情を変えた。

「ジャマーです、エリア一体に干渉!」

 パルの悲鳴のような報告に、艦橋は一気に静まり返った。それが何を意味するのか、誰にもはっきりと分かっていたからだ。先遣隊は、敵に見つかっていたのだ。

 次々と報告が入る。敵戦力はナスカ級高速巡洋艦1、MSはジン3機、そしてイージス。モントゴメリからは逃げろと言ってきたが、マリュ−は友軍を見捨てられるような女性ではなかった。

「先遣隊を援護します。全艦第1戦闘配備!」

 アークエンジェル艦内に警報が鳴り響く。それを聞いたキースはラクスの見張りから本業に戻ることにした。

「どうやら敵が来たらしいな。俺は戦闘に出るけど、君はここに居るんだよ。もし勝手に出ると撃たれるかもしれないからね」
「また、戦争ですの?」
「ああ、ザフトが攻撃してきたらしい。全くしつこい連中だよ」

 少し忌々しそうにキースがぼやく。ラクスはハロを膝の上にのせ、そんなキースを見上げた。

「キースさんは、コーディネイターがお嫌いですの?」

 ラクスの問い掛けに、キースは少し考えて答えた。

「昔はそうだったが、今はコーディネイターそのものを憎んでる訳じゃないな。ザフトは嫌いだがね」

 キースの答えにラクスは満足そうに頷いた。
 キースは部屋を出てしっかりと鍵をかけ、格納庫に向おうとしたが、何やら通路で揉めているキラとフレイを見つけて足を止めた。

「だ、大丈夫よね。パパの船、殺られたりしないわよね。ね!?」
「大丈夫だよフレイ、僕達も行くから」

 キラはフレイの腕を放すと急いで格納庫に向けて走っていった。その後姿を不安そうにフレイが見送っている。キースはフレイが父親しか居ないのを思いだし、フレイの不安も当然だと思った。
 そして自分も格納庫に行き、愛機であるメビウスに乗りこむ。急いで計器をチェックし、異常が無いのを確かめると緊急発進のプロセスをとった。

「急いで出る。緊急発進だ!」
「分かりました。整備員は急いで退避しろ!」

 整備兵たちがエアロックの向こうに退避する。それを確認して艦首ハッチが開き、リニアカタパルトが起動する。発進前にミリアリアが敵戦力を報告してくれた。

「敵はナスカ級1、ジン3機、イージスもいます!」
「・・・・・・イ−ジスか。敵はクルーゼ隊という事だな」
「はい、気を付けてください!」

 ミリアリアにウィンクを返し、キースはメビウスを発進させた。すでにフラガのゼロは出ている。キースにやや遅れてストライクも出てきた。キースは機体をストライクに寄せると、キラと通信する。

「キラ、どうする。なんならイ−ジスは俺が相手をするが?」
「・・・・・・いえ、僕がやります。僕がやらなくちゃいけないんです!」

 キースはキラに危うさを見たが、それを追求する時ではなかった。

「分かった、イージスは任せる。俺と大尉で艦隊を援護する」

 それだけ言うと、キースはメビウスを最大戦速まで加速させた。エールストライクを遥かに上回る速度性能で艦隊へと向っていく。元々MAの方が構造上、足は速いのだ。キースの機体はそれを限界までオプションで強化しているから尚更である。たちまち先行しているフラガのゼロに追いつく。

「大尉、お先に!」
「ああ、死ぬんじゃないぞ!」

 キースのメビウスがゼロを追い越していく。その脇をアークエンジェルが放ったらしいバリアントが通過して行った。幸いまだ沈んだ艦はいないらしい。キースは飛びまわっているジンの1機に目をつけると火器のセーフティーを解除した。

578 名前: 流離う翼たち・28 投稿日: 2003/09/24(水) 18:19
 アークエンジェルの艦橋は目が回るような忙しさだった。戦況は目まぐるしく変わり、それに対応してマリュ−とナタルが指示を出している。そんな時、ドアが静かに開き、フレイが艦橋に入って来た。少しでも戦況を知りたくてやって来たのだが、モニターに映る戦闘の様子を見ると青褪めてしまう。
 フレイにいち早く気付いたのはカズィだった。

「フレイ!?」
「パパ、パパの船はどれなの!?」

 カズィの声など聞えていないかのようにフレイは問い掛けたが、マリューがきびしい声でフレイを叱咤した。

「今は戦闘中です、非戦闘員は艦橋を出て!」

 マリュ−の言葉に後押しされてサイがフレイを連れ出そうとするが、フレイはサイの腕の中で暴れ出した。

「離して、パパの船は、どうなってるのよお!?」

 なおも叫ぶフレイをサイが強引に艦橋から連れ出す。そんなサイにフレイは詰め寄った。

「キラは、あの子は何やってるのよ!?」
「キラは、戦ってるよ。でも・・・・・・向こうにもイージスが居るし」

 イージス、キラの友達が乗っているというMS。それを聞いたフレイは冷水を浴びせられたように暴れるのを止めたが、今度は小刻みに体を振るわせ出した。

「でも、あの子、大丈夫だって、言ったのよ」
「キラはイージスを良く押さえ込んでるよ。フラガ大尉は被弾して帰艦してきたけど、まだバゥアー中尉が頑張ってる」
「でも、あの様子じゃ!」

 MSにMAが不利なのは常識だ。キースが常人離れした強さなのは知っているが、1機でどうにかなるとは思えない。それくらいはサイにもフレイにもわかっている。だが、2人にはどうすることも出来ないのだ。サイは泣いているフレイを抱いて居住区に戻ろうとしたが、途中でいきなり歌声が聞えてきたのに足を止めた。

「これは?」
「・・・・・・ラクス?」

 フレイはその歌声がラクスのものだと分かった。先ほど聴いた歌だったから。そして、すぐにあることを思い出した。イ−ジスのパイロット、アスラン・ザラがラクスの婚約者だということを。
 それに思い当たったフレイはサイを突き飛ばすとラクスに部屋に向った。すぐに扉を開け、中に入りこむ。中にいたラクスは突然入って来たフレイに驚いていたが、フレイにはそんな事に構っている余裕は無かった。

「ラクス、お願い、イージスを止めて!」
「フレイさん、なにを言って・・・・・・?」

 ラクスは最後まで言葉を続けられなかった。フレイがラクスの手を取って無理やり引っ張り出したからだ。艦橋へと引っ張りながらフレイが説明する。

「あんたの婚約者のMSがキラの邪魔をしてるのよ。だから、そいつを止めて!」
「アスランが、ここに?」
「そうよ、このままじゃパパの船が攻撃されるわ。だから早く!!」

 大体の事情を察したラクスはフレイに続いて急いで艦橋に向った。
 再び開く扉。飛び込んできたフレイとラクスを見てカズィは言葉を失った。フレイは顔面蒼白で、病人のように目だけがギラギラしている。

「通信を、イージスに繋いで、早く。敵の艦でも良いから!」
「何を言ってるの、あなたは?」

 訳が分からずマリュ−が問いかけるが、焦るフレイにはそんな言葉は耳に入らなかった。だが、今度はラクスがマリュ−に願い出る。

「私からもお願いします。この戦いを止めなくてはいけません」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 マリュ−はようやく事情を察した。確かにこの少女の言うことならそれなりの政治的効果を期待でいるかもしれない。
 だが、それは余りにも遅すぎた。通信が繋がる前に、フレイの目の前でモントゴメリーは撃沈したからである。それを見たフレイは悲鳴を上げてふらついた。慌ててサイがその体を抱きとめる。
 ラクスは目の前で父親を殺されたフレイを痛ましげに見やった。
 だが、今の彼らにはそんなことをしている余裕はなかったのだ。生き残ったジン1機とヴェザリウスがこちらに向ってくるのが見えたのだから。それを確認したナタルはラクスを見やると、上に上がってカズィからインカムを奪い取り、全域周波数で通信を飛ばした。

「ザフト軍に告ぐ。こちらは地球連合軍所属艦、アークエンジェル。当艦は現在、プラント最高評議会議長シーゲル・クラインの令嬢、ラクス・クラインを保護している!」

579 名前: 流離う翼たち・29 投稿日: 2003/09/24(水) 18:20
「ラクスさま!?」

 ヴェザリウスの艦橋でアデスが声を上げた。スクリーンに映った地球軍女性士官の背後に確かにラクスの姿があったからだ。

「偶発的に救命ポッドを発見し、人道的立場から保護したものであるが、以降、当艦への攻撃が加えられた場合、それは貴艦のラクス・クライン嬢への責任放棄とみなし、当方は自由意思でこの件を処理するつもりであることをお伝えする!」

 通信内容を聞いたヴェザリウスの艦橋は水を打ったかのように静まり返っていた。そんな中でクルーゼだけがせせらわらうようにひとりごちる。

「恰好の悪いことだな。援護に来て、不利になったらこれか」
「隊長・・・・・・」
「分かっている、全軍攻撃中止だ」


 キラとアスランも戦闘を中止して呆然とこの通信に聞き入っていた。あまりの内容に言葉を失ってしまう。

「卑怯な・・・・・・」

 アスランがうめくように叫んだ。

「救助した民間人を人質にとる、そんな卑怯者と共に戦うのが、お前の正義か、キラ!?」

 キラに言い返す言葉は無い。なにも言ってこないキラに背を向け、イージスが遠ざかっていく。最後にアスランは厳しい口調で吐き捨てた。

「彼女は取り返す、必ずな!」


 人質によって一時的に戦闘は終わった。キースは忸怩たる思いを抱えてアークエンジェルへと帰ってきた。彼自身1機のジンを堕とし、またスコアを伸ばしたものの、艦隊を救うことは出来なかったのだ。更に先ほどの通信内容。戦争に卑怯だなどという言葉は存在しないが、民間人を盾に取ることは明白な軍規違反だ。一兵士の暴走ならともかく、ナタルは士官として最低限のルールさえ破ったことになる。
 そして、なによりも腹立たしいのは、そんな手まで使わなくてはいけないほどの窮状に追いこまれてしまった自分自身への不甲斐なさだ。

 艦に戻ってメビウスを降りたキースの耳に、キラとフラガの会話が飛び込んでくる。

「あの子を人質にとって脅して、そうやって逃げるのが地球軍って軍隊なんですか!?」
「そういう情ねえ事しか出来ねえのは、俺達が弱いからだ!」

 フラガはキラの肩を掴み、呟いている。

「俺にもお前にも、艦長や副長を非難する権利はねえよ・・・・・・」

 その声は何処か悔しそうだった。キースはフラガも自分と同じ思いだったことを理解したが、それをキラが受け入れられるかどうかは疑問だった。
 制服に着替えるとキラと一緒に居住区へと向う。お互いに一言も発してはいない。フラガだけは艦橋に行ってしまった。
 暫くすると通路の向こうから引き裂くような悲鳴が聞えてきて、2人は足を止めた。

「なんだ?」
「あの声は、フレイ?」

「あんたの仲間が、コーディネイターが私のパパを殺したのよぉ!」
「フレイ!」
「落ちついて、フレイ!」

 どうやらフレイが誰かと揉めているらしい。サイとミリアリアの必死な声が聞えてくる。キラとキースは顔を見合わせるとそちらに駆けて行った。どうやら医務室の中で騒いでいるらしい。ドリンク容器が転がり、自動ドアが開け閉めを繰り返している。
 医務室の中には辛そうな顔をするラクスと、宥めようとするサイとミリアリアがいた。首を振って泣き叫ぶフレイの姿が見ていて痛々しい。辺りに散らばっている物はフレイが投げたのだろうか。キラとキースが入口に立つと、ドアは開閉を止めた。気づいたミリアリアがはっとして2人を見る。
 フレイは衣服を乱し、髪もくしゃくしゃにして泣きじゃくっている。キースはそれを見て無理は無いと思った。父子家庭で育った少女が、目の前で父親を殺されたのだから。
 キースの隣から一歩前に出たキラがおずおずとフレイに声をかけた。

「フレイ・・・・・・」

 そん声を聞いた途端、泣いていたフレイがギッと振り向いた。

「嘘つき!」

 その視線の凄さにキラは思わず半歩引いた。

「大丈夫って言ったじゃない。僕達も行くから大丈夫って・・・・・・何でパパの船を守ってくれなかったの。何であいつ等をやっつけてくれなかったのよおぉ!!」
「フレイ、キラだって必死に・・・・・・」

 金切り声を上げるフレイをサイが宥めようとするが、フレイは聞く様子も無い。

「あんた、自分もコーディネイターだからって、本気で戦ってないんでしょう!?」
「フレイさん、それは言い過ぎですわ!」
「煩い、あんたは黙ってなさいよ!」

 ラクスが黙っていられなくなって口を挟むが、それはフレイの感情をより逆なでするだけであった。

580 名前: 流離う翼たち・30 投稿日: 2003/09/24(水) 18:22
 フレイの言葉が、キラの胸に突き刺さる。ゆるゆると頭を振りながら後退り、ドアを出ると駆け出した。ミリアリアとラクスが後を追うとするが、キースに止められる。

「今は、1人にしてやれ。あいつにも悩む時間が必要だろうからな」
「ですが、キラさまは苦しんでいるようですが?」
「そうよ。慰めてあげるくらい」

 詰め寄ってくる2人に、キースは頑として首を縦には振らなかった。ただ一言だけ、2人に答える。

「泣いてる顔を女に見せたがる男は、いないさ」

 キースの言葉に、2人は渋々キラを追うのを諦めた。



 誰もいない展望ルームで、キラは己の立場に苦悩していた。
 ここには誰もいない。キラの思いを本当に理解してくれる人は。 
 みんなを守るために、みんなの為にアスランを敵に回してでも必死でやってきたのに、自分は安全な場所にいて、もっと戦えというのか? そう思うとやりきれない気持ちで一杯になる。
 だが、同時に内なる声が囁くのだ。フレイが言った通りなんじゃないかと?
 本当に必死で戦っているのだろうか。何処か、気づかないところで逃げているのではないだろうか。アスランと戦いたく無いから、同胞を殺したく無いから、真剣に戦ってるつもりでいただけではないのか?
 そうだとしたら、フレイの父親を死なせたのは、自分ではないのだろうか・・・・・・

 キラは展望ルームで滅茶苦茶に喚いていた。そうしないと自分が壊れてしまうそうだったから。ガラスに何度も頭を打ち付け、その都度涙が散っていく。
 そんなキラを、展望ルームの入口からじっと伺っている人影があった。その人影はゆっくりと展望ルームに入ってきて、キラの肩を叩いた。

「どうしたんだ。キラ?」
「ト、トール!?」

 驚いてトールを見る。何時の間に入って来たのだろう。トールは心配そうにキラを見ている。

「フレイに、なんか言われたのか?」
「い、いや・・・・・・別に・・・・・・」

 キラは顔を背けた。その態度がなによりも雄弁に何事かがあったことを物語っている。トールは深い溜息をついた。

「まあ、目の前で親父さんが死んだんだ。フレイの気持ちも分かるけどな」
「トール、僕は・・・・・・」
「お前は、良くやってたよ。フラガ大尉もキースさんも、お前の事は褒めてる」
「でも」
「フレイの親父さんを守れなかったって言うなら、俺やミリィも同罪だよ。同じように間に合わなかったんだからな」

 トールはキラだけの責任じゃないと言う。その心遣いは嬉しかったが、キラの辛さは晴れなかった。どう言われようとも、フレイの父親を守れなかったことに変わりはないのだから。



 ナタルの独断先行によるラクスの人質は、ナタルとマリュ−の反目を呼んでいた。軍人として作戦目的の完遂しか頭に無いナタルに対し、何処か甘さの残るマリュ−はナタルのやり方に我慢ならないのだ。
 そのギスギスした空気の漂う艦橋で、キラを連れてやってきたキースはマリュ−に問いかけた。

「艦長、あのラクスという少女、いつまでこの艦に乗せておくつもりですか?」
「どういう事、バゥアー中尉?」

 マリュ−はキースの言いたいことが分からないようだ。キースはいささか顔を顰めてマリュ−に説明する。

「敵はラウ・ル・クルーゼです。確かに今は攻撃を控えてますが、本国に攻撃許可を求めているのは確実でしょう。この艦とストライクを敵に渡す軍事的デメリットと娘1人の命、シーゲル・クラインはどちらを取るでしょうね」

 キースの言葉にマリュ−は考えこみ、キラはショックを受けていた。

「そんな、父親が娘を見捨てるなんて事・・・・・・」
「それが政治家ってもんだ。そういう決断が出来るから、国家のTOPを任されるんだからな」

 人の上に立つというのは、それなりの覚悟と強さを必要とするものだ。というキースの言葉に、キラは黙ってしまった。
 今度はナタルが横から口を挟んでくる。

「つまり、敵がラクス・クラインを見捨てる決断をする前に、こちらから新たな交渉を持ちかけると?」
「ああ、ラクスを返すから大人しく帰れ、とかいう条件でな」
「ですが、乗ってくるでしょうか?」

 ナタルの疑念はもっともだ。わざと交渉に応じた振りをして騙まし討ちをしてくる可能性もあるではないか。だが、キースはその疑問に苦笑で返した。

「当たり前だろ。そんな条件、誰が易々と飲むもんか」
「では、どうするというんです?」
「簡単だ。イージスに迎えにこさせる」

 イージスという名前にキラは動揺した。アスランに迎えに来させるというのか。

581 名前: 流離う翼たち・31 投稿日: 2003/09/24(水) 18:22
「イージスに彼女を乗せればイージスは戦闘に加入できなくなる。そうなれば敵の戦力は多くてもMSが2機だ。こちらはストライクに俺とフラガ大尉。互角以上の勝負が出来るだろう」
「なるほど、悪くないな」

 キースの提案を聞いていたフラガが頷いた。確かに五分以上の勝負が出来る条件だ。例え敵がラクスを見捨てる決断をしていても、いざ返すと言われれば躊躇するだろう。
 キースはマリュ−を見た。ナタルがどう言おうと、最終的な決定権は艦長であるマリュ−にある。

「どうします、艦長?」
「・・・・・・分かったわ、やってみましょう」

 マリュ−が決断した以上、ナタルも異論を挟むことは出来ない。ラクスの返還を条件とする交渉が決定したのだ。


 アークエンジェルからの通信を受け取ったヴェザリウスは再び驚愕に包まていた。ラクス・クラインを返還するから攻撃を中止し、引き返せという内容であった。

「どういうつもりだ、奴等?」
「ちっ、どうやら後手に回ったようだな」

 クルーゼは舌打ちした。クルーゼは本国にラクスごと討ってもいいかという許可を求めていたのだが、その返事が来るよりも早く敵が動いてしまったのだ。これでは見捨てるという選択は出来ない。
 誰かは知らないが、小賢しい奴がいるようだとクルーゼは考えていた。

「ふむ、非武装状態のイージスを迎えに寄越せ、か」
「敵は、これを機にイージスを奪還するつもりでは?」

 アデスの言葉に、クルーゼは頭を左右に振った。

「いや、違うだろうな。恐らく狙いはイージスの無力化だ」
「・・・・・・なるほど、ラクスさまを乗せていては戦うことは出来ない」
「そうだ。その隙に足付きは全力でこの宙域から逃げ出してしまう。我々はラクス・クラインを連れていては戦闘は出来ないから本国へ引き返すしかない。敵ながら良く考えている」

クルーゼが敵を賞賛するのは珍しい。アデスが驚きの目で上官を見ていた。
 いずれにせよ、こうなっては相手の要求を飲むしかない。クルーゼはアスランにイージスでの出迎えを命じた。そして、アデスにイージスが足付きから離脱すると同時にエンジンを始動するように命じ、自分もシグーの所へと向った。

 ラクスを迎えに出たアスランは警戒しながらゆっくりとアークエンジェルに近づいて行く。側舷に並べられているイーゲルシュテルンが慎重に自分を狙っているのが分かる。そして、艦首ハッチが開いたのを確認するとそこに機体を誘導していった。格納庫にタッチダウンさせ、そのまま誘導にしたがって行く。
 そして、艦首ハッチが閉じて与圧が確認された所でようやくアスランは外に出た。下からは幾つもの銃口が自分を狙っている。下手な動きをすればたちまち蜂の巣にされるだろう。
 アスランは辺りを見回してラクスを探したが、ラクスが何処にも見当たらない事に焦りを覚えた。

「ラクス・クラインを迎えに来た。彼女は何処にいる!?」
「はいはい、そう慌てなさんなって」

 何処からか飄々とした声が聞えてきた。みればキャットウォークの辺りにラクスを連れた連合軍士官が3人と、キラの姿があった。

「ラクス、それに、キラまで!?」
「お久しぶりですわね、アスラン」
「・・・・・・・・アスラン」

 ラクスが嬉しそうにアスランに手を振り、キラが辛そうに顔を逸らしている。ラクスの隣に立つ連合軍士官がラクスに問い掛けた。

「あれが、君の彼氏?」
「はい、そうですわ」
「ほう、なかなか良い男じゃないか。でもちょっと押しが弱そうだな。ここぞという所で優柔不断なとこが無いか?」
「え、ええと、それはですねえ」

 さらりとキツイ質問をしてくれるキースにラクスはどう答えたら良いか迷っていた。さすがに本人を前にして頷くのは不味いかなと思ったのだ。言われた当人はラクスが地球軍の士官と楽しげに話しているのを不思議そうに眺めている。
 キースはラクスの手を引っ張るとイージスのコクピットに連れていった。

582 名前: 流離う翼たち・32 投稿日: 2003/09/24(水) 18:23
「さてと、アスラン君、彼女は返すよ」
「・・・・・・・礼は、言わないぞ」
「結構だ、礼を言われるようなことじゃない。後で彼女の飯代を返してくれれば良い」

 何でそっちのが重要なんだろうとアスランは思った。そしてキースはラクスをアスランの胸に少し強引に放りこむ。叩き付けられるようにして飛び込んできたラクスを受け止めたアスランは慌てて彼女を抱きしめた。

「だ、大丈夫ですか、ラクス!?」
「ええ、大丈夫ですわ、アスラン」

 心配して自分の顔を除きこむアスランに笑顔で頷くラクス。そんな2人にキースは声を上げて笑っていた。敵の士官に笑われてアスランが少しむっとする。

「貴様、何がおかしい!」
「敵艦の中でラブコメしてられるとは、なかなか余裕だねえと思ってな」

 しれっと言い放つキースに、アスランとラクスは僅かに頬を染めた。キースはニヤリと口元を歪めてコクピットを蹴る。

「それじゃあな、お2人さん」
「キースさん、またお会いしましょう」

 ラクスの言葉にキースは少し驚いたが、すぐにいつもの笑顔を浮かべた。

「そうだな。平和になるまで生きてられたら、また会う機会もあるだろう」
「はい、それまで、ご壮健で」

 キースが簡単な敬礼を残してその場を去る。アスランは訳が分からずその地球軍士官を見送っていたが、その視線を今度はキラに向けた。

「キラ、お前も一緒に来い!」

 いきなりのアスランの言葉に、キラは驚いた。キラだけではない、その場にいる全員が驚いている。

「コーディネイターのお前が地球軍と一緒にいる理由が何処にあるんだ、キラ!」
「・・・・・・僕は」

 キラは辛そうだった。だが、すぐにキッと顔を上げてアスランを見据える。

「僕は行けない。この艦には守りたい人たちが、大切な友達がいるんだ!」

 キラの答えにアスランは顔を顰めた。今のキラには自分よりも大切な人たちがいる。それがはっきりと認識できたからだ。

「そうか、ならば仕方ない。次に戦う時は、僕がお前を撃つ!」
「・・・・・・僕もだ・・・・・・」

 答えるキラの声は震えていた。そして、アスランはイージスのハッチを閉じ、機体を翻らせる。それを見たキラはストライクへと向い、キースとフラガはすでにメビウスの中で待機している。すぐに来るであろうクルーゼの攻撃に備える為だ。

583 名前: 流離う翼たち・33 投稿日: 2003/09/24(水) 18:23
 そして、アスランのイージスが外に出て距離を取ったと見るや、ヴェザリウスのエンジンに火が入った。すぐにクルーゼのシグーとジン1機が出てくる。それを聞いたフラガ叫んだ。

「こうなると思ってたぜ!」

 フラガのゼロが飛び出し、次いでキースのメビウスが飛び出す。キラのエールストライクが若干遅れた。

「ラクス嬢を連れて帰艦しろ!」
「クルーゼ隊長!?」

 アスランは上官の思惑を悟った。始めからこうするつもりだったのだ。自分は利用されたのだと悟り、アスランは唇を噛んだ。
 その時・・・・・・

「ラウ・ル・クルーゼ隊長」

通信機のスイッチを入れ、凛とした声を出しているのはラクスだった。

「止めてください。追悼慰霊団代表の私の居る場所を、戦場にするおつもりですか。そんな事は許しません」

 いつもとは違うラクスの姿にアスランは驚き、クルーゼは通信に舌打ちした。

「すぐに戦闘行動を中止してください。聞こえませんか!?」

 ラクスの強い意思を感じさせる言葉に、暫くして通信機から返事が返ってきた。

「・・・・・・了解しました、ラクス・クライン」

 唖然としているアスランの前で通信を切ったラクスは、アスランの顔を見るとにっこりと微笑んだ。

 出撃したキラとフラガ、キースはいきなり敵が引き上げていったことにいささか拍子抜けしてしまっていた。だが、とりあえず戦闘が回避できたのは間違いないらしい。3人は敵が完全に去るのを確認して、自分たちもアークエンジェルに帰って行った。


 戦闘が終わった頃、医務室で1人ベッドにいたフレイは憔悴しきった顔に目だけを病的にぎらつかせ、内から吹きあがる激情を口に漏らすことで形にしていた。

「・・・・・・このままには・・・しないわ」

584 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/24(水) 18:45
>流離う
 乙でつ。本編よりはフレイ様もちついてるかな?
それにしたって見るのが辛いよ・・・
ラクスも苦い顔してたろうし。キラとアスランも銃に囲まれての会話だったろうし。
(あんな危険の中で『俺がお前を撃つ!』とか言ってたら逆に芝居的ですが)

585 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/24(水) 18:54
>流離う
あまりアゲないほうがいいと思うが・・・

586 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/24(水) 22:01
「みんな、いい? よく聞いて。この包みの中には、私の証言を
収めたテープや証拠の品が入ってるの。私がザフトの捕虜に
なった経緯と地球軍が核兵器を使えるようになった理由を
知る限り喋った。もし私が死ぬことになったら、
これをマスコミ各社に届けて。大人が本当だと信じてくれたら、
週刊誌の記事くらいにはなると思う。私が月面基地に残って
直接マスコミ各社にたれこもうとも思ったんだけど、
なんていうか・・そうするのが逃げるみたいに思えて。
ここで戦うのをやめると、自分が自分でなくなるような・・。
コーディネーターが憎いとかパパたちの仇を討ちたいとか
いうんじゃないの。上手く言えないけど・・彼と、キラと
話しがしたかったの。会えるかどうかは、わからないけど・・。
・・みんな、私はたぶん死ぬかもしれない。でも、そのことで、
負債や仮面を恨んだりしないで。彼らだって私と同じで、
自分がやるべきだと思ったことをやってるだけなの。
無理かもしれないけど、他人を恨んだり自分のことを責めたりしないでね。
これは私の最後のお願い。もし、運良く生き延びて本放送が終わったら、
かならずこのスレに帰ってくるわ。会いに来る。約束よ。
・・これでお別れ。じゃあ、みんな。元気でね!」

587 名前: もつとたのしくて 投稿日: 2003/09/24(水) 22:21
>>500-501>>514>>548>>557>>562>>568

フレイはパーティーに参加した人に謝らなければならないと思った。特にサイには。
シャンパンを飲んだ後の事はどうしても思い出せないが、ろくな事をしていないのは、昨日のミリアリアとサイの態度を見れば明白だ。
昨日とは別の意味で憂鬱な朝だった。どうやって顔をあわせたら良いのか、わからなかった。
とりあえず、メイドには注意だけしておいて学校へ向かったが、足取りは重い。
「どうしよう…」
出来る事なら行きたくなかったがそうもいかない。ため息ばかりが出た。
「フレイ、おはよう!」
「…おはよう…」
「どうしたの?また気分悪いの?ははぁ、さては…サイ…」
「…!ち、違うわよ!何言ってるの!」
自分で半ば白状しているようなものだ。それに気づいた時には既に遅く、フレイは更に憂鬱になった。
お昼休みの時間に、フレイはサイのいる教室に向かった。謝るなら早い方が良い。
「あ…」
入り口から出てきたのは、キラだった。
フレイと目が合った瞬間、キラの顔が、火がついたように赤くなる。
フレイは、キラがパーティに来ていた事すら覚えていない。もちろんキラに助けてもらった事も…
「ごめんなさい、サイ、中にいるかしら?」
「あ、う、うん…」
「ありがとう、ちょっと失礼するわ…」
キラの視線はフレイを追っていたが、フレイはそれには気づかずサイの所へ行っていた。

588 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/24(水) 22:47
>流離う
このままフレイ様はダークサイドに一直線か・・・
ダークフレイ様(*´Д`)ハァハァ

>>586
絶対に帰って来て、フレイ様。・゚・(つД`)・゚・。

>>もっとたのしくて
キラが赤くなってるのは何でだろ〜
ナニかあったのか(*´Д`)ハァハァ

589 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/25(木) 00:10
>>流離う
面白い!!一気に読まさせていただきますたw
アスランも良いですね〜。

590 名前: 流離う翼たち・34 投稿日: 2003/09/25(木) 19:27
 キラとキースは前のデプリベルトで得た戦利品を弄繰り回していた。ほとんど無傷のシグー。これはなかなかに美味しい収穫だったのだ。乗れるのはキラだけだが、無いよりはあった方が良い。

「やれやれ、ほとんど問題無いな。バッテリーさえ充電すればすぐにでも使えるぞ」
「キースさん、なんでMSの整備なんか出来るんです?」

 キラが不思議そうに問いかけるが、キースはニヤリと笑うだけで答えなかった。代りにキラに別のことを聞いてくる。

「なあキラ、こいつに乗ってるOS、ナチュラル用に改造できるか? なんならストライク用のOSを改造してくれても良いが」
「そりゃあ、出来ると思いますけど、キースさんが乗るんですか?」
「そいつは分からないが、できるならやっておいてくれ。お前が艦を降りる前にな」

 キースの言葉に、キラはもう月艦隊との合流が近いのだという事を思い出した。そう、月艦隊と合流できれば、自分は地球に降りられるのだ。
 これまで何かとキースに助けられて来たことを思い出し、キラはその足をシグーに向けた。これが、せめてもの恩返しかもしれないと考えながら。



 ラコーニ隊と合流したクルーゼ隊は、ラコーニにラクスを預けて再びアークエンジェル追撃に向おうとしていた。
 アスランはラクスを迎えに来た。扉の前に立ち、深呼吸をして声をかける。

「お迎えに上がりました」

 アスランが中に入ると、いきなり目の前にピンクの固まりが飛び出してきた。

「ハロ・ハロ・アスラ−ン!」
「うおっ!」

 慌ててアスランはそれをキャッチした。ラクスがくすくす笑いながら言う。

「ふふふ、ハロがはしゃいでましたわ。久しぶりにあなたに会えて嬉しいみたいです」
「ハロにそんな感情みたいなものを与えた覚えは無いんですが」

 久しぶりに見るラクスの笑顔にアスランは一瞬見惚れてしまった。それを見たラクスが不思議そうに首を傾げる。

「どうかなさいましたの、アスラン?」
「い、いえ、何でも無いです!」

 慌てて顔を背けるアスラン。内心の動揺を隠そうとしているのだが、見ているラクスはちょっと残念そうだった。

「あー、えっと、御気分はいかがですか・・・・・・その、人質にされたり、いろいろありましたが、体調とかは大丈夫ですか?」
「ええ、大丈夫ですわ。あの船の方々は、良い方ばかりでしたから」
「・・・・・・そうですか」

 アスランはあの艦にいた奇妙な男を思い出した。名前は分からなかったが、面白い男だった。自分の敵意と警戒心を何時の間にか忘れさせ、対等に接していた。
 そして、キラも・・・・・・

591 名前: 流離う翼たち・35 投稿日: 2003/09/25(木) 19:28
「キラさまは、あなたのお友達なんですのね」
「どうして、その事を・・・・・・」
「キラさまから聞きましたわ」

 アスランの顔に苦いものが混じる。

「あいつは、馬鹿です。軍人でもないのにあんな物に乗って!」
「・・・・・・・・・・・」
「あいつは利用されてるだけなんだ。友達とかなんとか言われて・・・・・・あいつの両親はナチュラルだし・・・だから・・・・・・」

アスランは最後まで言うことはできなかった。自分を見詰めるラクスの目が、クルーゼを制した時の光を宿していたから。

「アスラン、あなたは友達がキラさまを騙していると、そう仰るのですか?」
「・・・・・・そうでなければ、どうしてあいつが僕と戦うんです?」
「キラさまの友人の方々は、みんな優しい方でしたわ。キラさまのように。キラさまがあの方々を守りたいという気持ち、私にも分かります」
「ラクスっ!」
「私の一時とはいえ、あの方々と接しましたわ。そして、あそこで悲しいものも目にしました」

 ラクスの視線に厳しさと悲しさが混じる。

「キラさまの友人の女性のお父様が、地球側の艦隊にいたそうです。彼女は目の前で父を失いました」
「そ、それは、戦争だから・・・・・・」
「ユニウス7でお母様を失ったあなたが、それを言うのですか、アスラン?」

 ラクスの言葉に、アスランは答える術を持たなかった。母を殺されたからザフトに入り、地球軍と戦ってきた。それが間違っているとはこれまで考えた事も無かった。だが、自分の手で誰かを自分と同じ境遇に追いこみ、自分と同じ苦しみを味あわせていると言われたら、動揺しない方がおかしかった。

 自分の言葉がアスランを追い詰めてしまった事を悟ったのか、ラクスはいつもの笑顔に戻った。

「すいません、言い過ぎました」
「・・・いえ、あなたの言うことは間違っていません。僕は、人を殺しているんですから」

 2人は格納庫に来た。そこにはクルーゼたちが見送りに来ている。仮面に隠された表情からはその内心を伺う事は出来ない。

「クルーゼ隊長にも、色々お世話をかけました」
「お身柄はラコーニが責任を持ってお送りするとの事です」
「ヴェザリウスは追悼式典には戻られますの?」
「さあ、それは分かりかねます?」

 アスランから見て、その言葉の掛け合いは不思議なものだった。互いに何かを隠しているような、探り合っているような印象を受けるのだ。

「戦果も重要な事でしょうが、犠牲になる者の事もどうか、お忘れなきよう」
「・・・・・・胆に銘じましょう」

 それで、2人の会話は終わりだった。最後にラクスはアスランを振りかえり、穏やかな表情で問いかけた。

「何と戦わねばならないのか、戦争は難しいですわね」
「・・・・・・はい」

 寂しげに答えるアスラン。先のラクスの言葉が胸につっかえているのだろう。ラクスはニッコリと微笑むと、アスランの頬にそっと口付けをした。

「お早いお帰りをお待ちしておりますわ、アスラン」
「ラ、ラクス!」

 慌てふためくアスランを置いて、ラクスはさっさとランチの方に行ってしまった。残されたアスランは真っ赤な顔のままでまだあたふたしており、仲間たちに冷かされている。
 その冷かしている仲間の中にミゲルの姿があった。アスランは何時の間にか自分をどついているメンバーにミゲルの姿があるのを見て驚いた。

「ミゲル、もう良いのか?」
「ああ、体に問題はなしだ。すぐにでも復帰できる。今度は俺のジンを持ってきたしな」
「そうか。じゃあ、次は一緒に戦えるんだな」

 アスランは久々に笑顔を見せた。魔弾の射手、ミゲル・アイマン。クルーゼ隊で少し外れた意味で1番危険な男である。

592 名前: 流離う翼たち・36 投稿日: 2003/09/25(木) 19:30
 アークエンジェルを追撃している巡洋艦ガモフでは、イザークとディアッカ、ニコルが揉めていた。月艦隊が迫っている状態で、アークエンジェルに手を出すかどうかが問題であった。

「確かに、月艦隊との合流前に足付きを捕捉する事は出来ますが・・・・・・」

 ニコルは気が進まなそうであった。なにしろ戦闘可能時間がたったの10分程しかないのだ。だが、イザークとディアッカは違っていた。

「10分はあるって事だろ」
「臆病者は黙ってるんだな」

ニコルの慎重論をいつものようにディアッカとイザークが嘲笑う。

「10分あると見るか、10分しかないと見るかだ。俺は10分もあるのにそれを見逃すなんてのはご免だな」
「同感だ、奇襲の是非は、その実働時間で決まるもんじゃない」
「それは分かりますけど・・・・・・」

 なおも難色を示すニコルを無視し、イザークは言った。

「ヴェザリウスはすぐに戻ってくる。その前になんとしても足付きは沈める」

 ようするに、功績争いだ。イザークはアスランがいない今のうちに足付きを沈めたという実績が欲しいのだ。

「いいな、ニコル?」
「OK」

 ディアッカはすぐに乗ってきた。ニコルも渋々ではあるが頷く。これで、攻撃が決定された。



 アークエンジェルはようやく月艦隊との合流を目前にしていた。中にいる避難民たちも安心しているようで、会話にも明るい話題が増えてきている。食堂ではキラもトールやミリアリアとこれからについて話し合っていた。少し離れた所ではキースが本を手に紅茶を飲んでいる。因みに食堂に紅茶など置いてはいない。

「月艦隊と合流できたら、僕達も降ろしてもらえるんだよね」
「当然だろ。俺たちは元々軍人じゃないんだし」

 トールはあくまで気楽だ。だが、ミリアリアもキラも地球に降りれると期待しているのだ。今になってそんな不吉なことを口にする者などいない。
 暫く談笑していると、2人の前に座っていたミリアリアの顔色が変わった。どうしたのかと2人が振りかえると、2人も固まってしまった。そこにはフレイが立っていたのだ。

「フレイ、良いの? まだ休んでたほうが・・・・・・」

 ミリアリアが席を立ってフレイに声をかけるが、フレイはそれが聞こえていないかのようにキラの方にやってくる。以前の出来事を思いだし、キラは体を固くした。
 フレイは俯いたままキラの前まで来た。

「キラ・・・・・・」

 今度は何を言われるのかとキラは身構え、トールとミリアリアは表情をきつくする。

「・・・・・・あの時は、ごめんなさい」
「え・・・・・・」
「あの時、私・・・・・・パニックになっちゃって・・・・・・凄い酷い事言っちゃった」

 チラッと見上げたフレイの目に、涙が浮かんでいる。

「ごめんなさい、あなたは一生懸命戦って、私たちを守ってくれたのに・・・・・・私・・・」
「フレイ! そんな、良いんだよ、そんなの・・・・・・」

 キラの胸がじわりと暖かくなった。嫌われてしまったと思っていた。憎まれて、もう2度と口もきいてもらえないと思っていたのに、フレイは許してくれたのだ。自分だって辛いだろうに。

「ありがとう、フレイ。僕こそ、お父さんを守れなくて・・・・・・」

 キラは一瞬言葉に詰まる。フレイは言った。

「戦争って嫌よね・・・早く終わればいいのに・・・・・・」

593 名前: 小ネタ 投稿日: 2003/09/26(金) 00:27
こんなのがあればいいなあ …いいか?


シミュレーションRPG「ガンダムSEED」攻略
今日は、第1章の流れを解説するぞ!

第1章「僕にその手を汚せというのか」

後半にかかわる大きなシナリオ分岐が特徴の第1章。
数々の名イベントを見逃すな!

・まず、ヘリオポリス崩壊までは一直線。目の前の敵を叩こう。 
・その後何度かアスランが出てくるが、基本的に、アスランのHPは0にしない事!
 特に第8艦隊先遣隊の戦闘で0にする(=イージス破損)にすると
 その後のラクス返還イベントで迎えにくるのがシグーになり、
 ザフトルートへの選択肢が消えてしまう。
 この場合、イベント直後から戦闘に突入。
 経験値稼ぎにはちょうどいいので、今後楽に進めたいならこちらを選ぶのも手だ。
・第8艦隊先遣隊の戦闘前に、フレイとのイベントがある。
 ここで「…大丈夫だよ〜」を選ぶか「…約束はできない〜」を選ぶかで、後で変化がある場合がある。
・ラクス返還イベント直前の選択肢も大事だ。「お2人が戦わないで済むようになれば…」に対して
 「…うん」を選ぶか「…でも、もう彼は敵なんだ」を選ぶかで、後で変化がある場合がある。
・ラクス返還イベントでアスランが迎えに来た場合、ザフトルートへの分岐。
 「共に来い!キラ」で「…あの艦には、守りたい友達が〜」を選ぶと、地球軍ルートへ。
 「…それが、正しいのかもしれない」を選ぶとザフトルートへ。
 地球軍ルートの場合、その後も引き続きアスランたちを相手に戦う事になる。
 一方、ザフトルートでは、地球軍を相手にする事に。この場合はAAが敵になり、フラガの他に
 2章でトールが、3章ではフレイが敵パイロットとして登場する場合がある。
 「みんな、お前が帰ってくるって信じていたのに…!」「コーディネーターなんてこの手でみんな殺してやるわ!」
 と言われてしまう。同朋殺しか、友たちへの裏切りか。シビアな選択肢だが、心して選ぼう。
・地球軍ルートの場合、第1章ラストバトルはザフトの攻撃からAAを守る戦いに。
 ザフトルートの場合、第8艦隊の猛攻からヴェサリウスを守る戦いに。
 こちらのマップは味方MSが多いが、10ターン以内に敵を全滅させないとガモフが撃沈してしまう。注意しよう。

そして第2章、舞台は砂漠へ。
「誰も僕を責めることはできない」(ザフトルート)、
「思い通りにいかないのが世の中なんて割り切りたくないから」(地球軍ルート)
へと続く。

594 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/26(金) 00:53
>>539
おもしろそうだな。システムはともかくSEEDのifだけで十分いける。
ザフトルート、2章でカガリたんは出ませんか?

そもそもキラがいなきゃAAに乗らんか。キラザフトルートだとカガリたんザコのまま死にそうな悪寒(´Д⊂ヽ

595 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/26(金) 01:11
その代わり、パパを失ったフレイ様が最強のボスキャラになりまつ。
うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ

596 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/26(金) 01:29
>>539
一つ確かなことは


漏れはこれをゲットした日に完徹をしてでもフレイ様ルートをクリアしてみせるってことだ

597 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/26(金) 01:29
539じゃなくて、593だよな。
ゴメソ

598 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/26(金) 03:33
>流離う翼たち
乙〜。フレイたま(´Д⊂ヽ
>>593
すげ面白そうだ。
「僕はフレイを愛している」と説得するイベントを…。

599 名前: 終わらない明日へ 1 投稿日: 2003/09/26(金) 03:44


「この一撃で全てが終わるのだ・・・そう、全てが・・・」
 パトリック・ザラは、まるでにらみつけるような表情で、ジェネシスのミラー交換をモニタしていた。
 第一撃、第二撃と、確実に地球連合の戦意、そして戦力を削った。おそらくもう、ジェネシスを用いなくても戦局はザフトへと傾くだろう。
 望んでいたコーディネーターの勝利。
「ナチュラルどもが・・長引かせおって」
 先ほど入った情報によると、地球連合の足付きが一隻、撃ち合いによって轟沈したとのことだ。地球連合の旗艦として、そしてあの三機のモビルスーツの母艦として、大きな役割を占めていたあの艦がいなくなったという効果は大きい。
 もはや、時間の問題となった「勝利」という二文字に影を落とすのは、唯一、クライン派の連中だけとなったのだ。
「アスランめ・・・」
 苦虫を噛み潰すように吐き捨てたパトリックは、ミラーの交換を早くしろ、と促して、再びモニタを睨み付けた。


「艦長、ドミニオンからの脱出艇より着艦要請がでています・・・」
 重苦しいアークエンジェル・ブリッジの中で、サイが呟くようにいった。
 先ほどから、嗚咽を漏らすマリュー・ラミアス艦長の返答はない。
 ミリィと視線を合わせたサイは、通信を繋いだ。
「・・・・こちらブリッジのサイ・アーガイル二等兵です。カタパルト・デッキ開放、整備班、救護班待機してください。ドミニオンからの脱出艇を収容します。繰り返します・・」
「・・艦長・・」
 ミリィは、なんとか声を出さないようにして肩を震わせるマリューに、有益な言葉をかけることが出来ずにいた。トールを失った時の自分と同じだ。あの悲しみは、簡単に消えるようなものではない。
 目の前で、自分たちを守って消えていったムウのストライク。あの光景は、自分の目にも強く焼きついて離れない。戦争は、こうも簡単に知人の存在を削っていく。
 悲壮感あふれるブリッジを沈黙が流れた。
 数分がたって、ようやく落ち着いたのか、マリューは、なんとか顔を上げた。涙をぐっと拭うと、大きく深呼吸をして、口を開いた。
「ドミニオンからの脱出艇を収容。同時に、当艦の負傷者の救護にもあたって。・・もう、これ以上この艦は戦えないわ・・・」
 ドミニオンとの壮絶な撃ち合いの末、アークエンジェルは大きく損傷していた。なんとか自律航行をしており、兵装も殆どない、という状態では、戦場で足手まといになるだけだ。
「エターナル、クサナギとの通信は?」
「・・つながりました」
 ブン、と言う音の後に、正面ディスプレイにラクス、バルドフェルト、キサカの顔が映し出された。三人とも表情は硬い。当然といえば当然だが・・
「アークエンジェル級、ドミニオンを撃墜しました・・・・」
「そうか。・・こっちもなんとかやっているという状況だが・・・」
 そこまでいって、バルドフェルトはマリューの表情から何かを察したように、口を閉じた。同じように何かを感じたのか、キサカも、「こちらも同じくだ」と、短く告げた。
 ラクスが、決意を秘めた表情で口を開く。
「・・もう・・これ以上、犠牲を増やしてはなりません。その為に今、私たちが出来ることは・・・彼らのことを信じ、祈ることだけなのかもしれません」
 ぎゅっと、手の中にしまった指輪を、強く握り締めた。
 必ず帰って来ると、彼は言った。だから、信じなくてはいけない・・・
「アークエンジェルは状況から退避し、一度体勢を立て直してくれ。損傷度も酷かろう」
 キサカの言葉に、マリューは頷いて、敬礼をした。
「ご武運を」
「お互いにな」

600 名前: 終わらない明日へ 2 投稿日: 2003/09/26(金) 03:46

 フリーダム、ジャスティス、ストライクルージュの三機は、ただひたすらにジェネシスへと向かっていた。ミーティアに比べ加速力のないルージュは、ジャスティスのミーティアに掴まっている。
 戦局を切り開きながら移動を続けていると、キラのフリーダムが動きを止めた。
「・・・・!」
「どうした、キラ」
「・・いや・・・今・・・なにか・・聞こえたような・・・」
 ザラザラとした感触。今までにはなかった感触だ。不快・・というわけではないが、頭が重いような印象を受ける。
 いぶかしむキラの頭の中に、直接声が響いた。
(キラ、あとは頼んだぜ)
「・・・ムウ・・さん?」
「キラ?」
「いや・・・まさかそんな・・」
 パッパッと、断片的な光景が頭に飛び込んでくる。ストライクだ。
 なにかの攻撃を神懸り的な動きで避けるストライク。そして、アークエンジェルの前で光に飲み込まれるストライク・・・
 なかば放心状態のキラを、カガリの叫びが呼び戻した。
「こっからは簡単に先に進めなさそうだぞ!」
 徐々にジェネシスに近づくにつれ、プラントから出撃したモビルスーツが数を増してきたのだ。キラは、はっとなったように頭を軽く振ると、二人を促した。
「アスランたちは先に!!」
「キラ・・頼んだぞ!」
「死ぬなよ・・キラっ」
「わかってるさ!」
 アスランとカガリに応えて、ミーティアの全砲門を開き、フル・ロックオンする。
 ドゥッ!
 フリーダムを中心にして、円状に光線が広がっていく。
 光が収束すると、そこにはMSの残骸が並ぶ。これだけの破壊装備を持ちながら、自由だの正義だのと、よくいったものだ、とキラは思う。
「はぁっ・・・はぁっ・・・結局は、力だっていうのか・・・」
 荒く息をつきながら、キラは次の照準を合わせていった。


 一方イザークとディアッカは、宙域を少しずつ移動しながら、専用回線を開いていた。
「イザーク、聞こえるか」
「当たり前だ」
 その応えに、「相変わらずだな」と、苦笑をかみ殺して、ディアッカは続けた。
「俺はできることならお前とやりあいたくはない。お前だって、そうだろ?」
「・・・・フン・・・・」
 イザークが言葉を濁すのを感じて、ディアッカは少し安心していた。立場は変われど、長い間仲間同士として戦ってきた2人だ。血で血を洗うような戦闘はできれば避けたい。
「ジェネシス、お前は知っていたか?」
「・・・知っていたら、俺だって好きにはさせてはいない・・」
 呟くような言葉に、ディアッカはイザークの変化を感じていた。この数日の戦闘で、思うところがあったのかもしれない。
「お前にだって分かるだろ。あれじゃ、ユニウス7となんら変わりがないってことがさ。コーディネーターはナチュラルを超越する新たなる種・・そんなこといったって、やってることは一緒じゃないか」
「ディアッカ」
 言葉を遮るような形で、イザークが口を開いた。その表情は、まっすぐに自分を見据えており、少し気後れするほどだった。
「なんだよ?」
「お前はなんの為に戦っているんだ。それだけを聞かせろ。ゴタクはお前には似合わん」
「そうかもな」
 ディアッカは苦笑して、ミリィの顔を思い浮かべていた。
 あの優しい笑顔はどこからでてくるのだろうかと、時折不思議に思う。
 彼女の恋人は戦死したと聞いている。それでもなお、自分に優しくしてくれるあの優しさは、どこからくるのだろうか。
 ナチュラルっていうのは、そういうおかしな人種なのか?
 最初はそんなことも考えていたが、徐々にそれはミリィの個性だということに気付いていった。その頃には、気付けば視線で彼女を追っている自分に気付かされた。
「死なせたくないヤツがいる。そいつを守りたいだけだ。あとはまぁ・・成り行きもあるしな」
 ディアッカの返答に、イザークは少し笑って見せた。
 あまりみたことのない、すがすがしい笑顔に、ディアッカは苦笑をかみ殺すのに精一杯だった。
「フン・・・そんなことだろうと思ったが・・・ディアッカ。手伝え。プラントにこれ以上悪者のレッテルを貼られるわけにはいかん」
 クイ、と向きを変えたデュエルに、バスターもあわてて向きを変えた。
「どこへ行くんだよ?」
「・・・ジェネシスを落とす」
「ひゅうっ・・ジュール隊長、いいのかよ?」
「俺はパトリック・ザラの為に戦っているわけじゃない。俺は俺の為に、プラントの為に戦っているんだ。お前みたいなコシヌケとは違ってな」
「いってくれるね、隊長」
 そういいながら、ディアッカは笑みが零れるのを感じていた。
「ジュール隊全機に告ぐ。俺に続け! なにも迷うな。俺が、お前達を導く!」

601 名前: 終わらない明日へ 3 投稿日: 2003/09/26(金) 03:47

 脱出艇のアークエンジェルへの搬入は、予想した以上に困難を極めていた。
 破損した多数の箇所。各所であがる炎。負傷した艦員。自分たちのことで手一杯な状況で、他者のことまでやっていられるか、というのが正直なところだっただろう。
 おまけに、さっきまで戦闘をしていた艦からの脱出艇など、バカげている・・・
「ク、ブリッジは簡単にいってくれるけどなぁ!」
 コジロー・マードック曹長は、そう声を荒げると、負傷者の搬送や艦の損傷の対応に追われていた。
 もともと少数の人数でなんとか艦を動かしてきたアークエンジェルだけに、これだけの損傷をうけてしまうと、一気に行動は狭められる。ましてやそれで、他艦からの脱出艇の世話までしろというのが、無理な話である。
「こちらコジロー・マードック曹長だ! ドミニオンの脱出艇のほうは待たせてくれ! こっちだって、忙しいんだ!」
『・・す、すみません・・了解しました』
 マードックの怒鳴るような口調に気圧されたように、サイは反射的に応えていた。
「・・とにかく・・ナタルに聞きたいことは山ほどあるわ。アークエンジェルはこのまま動きが取れないんだもの。私たちでなんとか脱出艇を収容しましょう」
 マリューの言葉に、サイとミリィは頷いた。
「ノイマン少尉、あなたはここに残っていて。戦線からの離脱、頼むわよ」
「了解です! 艦長」
 ノイマンは、ビッと敬礼をして見せた。その姿に苦笑して、
「もう、敬礼はいいのよ」
「艦長。私も少尉ではありません」
 そういって笑って見せたノイマンに、マリューは少し癒されたような気がしていた。
(私がこうやって生きているのも・・あなたや、こういう、良いクルーに恵まれたからよね・・)
「そうか・・そうね、ノイマン君。頼んだわ。それじゃ、行きましょう」
 サイやミリィに視線を配って、マリューはブリッジを後にした。
「・・艦長・・・」
「・・・・・・」
 ノイマン、トノムラ、チャンドラ、バルの4名は、気丈な姿を見せるマリューの背中に、もう一度、敬礼をしてみせた。


「はぁっ・・はぁっ・・」
 キラは、流れる隕石に身を隠しながら、パイロットスーツのヘルメットを一度脱ぎ、水分を補給していた。続けざまに戦闘を繰り返すことは、極度の集中状態を作り出すことも可能だが、同時にそれは張り詰めた糸のような物で、いつ音を立てて切れていくかわかったものではない。
「・・アスランたちは、ジェネシスまでたどり着いたのかな・・」
 一息ついて、モニタで戦闘状況を確認する。
 死屍累々のその状況は嫌気がさすものだった。しかも、その多くは自分たちが作ったものだ。降りかかる火の粉を払うようにして戦ってきた自分たちだが、果たして、それは本当に平和の為になるんだろうか・・そんな考えが頭をよぎる。
「戦闘中にこんなこと考えてちゃ、死ぬぞ、ってムウさんに怒られちゃうな・・」
 呟いた瞬間、なにかが直接頭の中に響いてきた。また、さっきと同じザラザラした感覚・・・
「な・・なんだ!?」
(キラ! アークエンジェルへ戻れ!)
「・・・ム・・ウ・・さん?」
(早くしろ! ヤツが・・・ヤツが来ている!)
 その直後、爆発するストライクと、見たことのないモビルスーツの姿が頭に飛び込んできた。そして・・フレイ。さっきよりも鮮明なイメージに、キラは自分の鼓動が早くなるのを感じた。
「フレイ・・!? フレイになにか・・!? ・・・なんなんだ・・・この・・胸騒ぎはっ!」
 キラは、ミーティアをアークエンジェルの方へと向けながら、アスランとカガリの無事を祈った。
「ゴメン・・アスラン・・僕は・・いかなくちゃいけない!」
 加速しながら、群がる敵を撃ち落すフリーダムのミーティアが、戦場を上下に分かつ光を作り出していた。

602 名前: 終わらない明日へ 4 投稿日: 2003/09/26(金) 03:49

 アスランとカガリは、なんとか、という状態で、ジェネシスを、そしてヤキン・ドゥーエを目の前にすることが出来ていた。だが、お互いの機体も損傷し、励ましあってここまできた、というのが現状である。クサナギやエターナルの援護も大きい。
「アスラン! もうちょっとだ! こんなところでメゲるんじゃないぞ!」
「誰がいつ、メゲたんだ! 勝手なことをいうなよ!」
 お互いを鼓舞しながら、敵機、戦艦を駆逐して行く様は、プラントからすれば圧巻だったろう。僅か2機と2隻に駆逐されていく味方機。変えられていく戦局。
 ヤキン・ドゥーエに配属された多くのものが実戦経験が少ないということをひいても、有り得てはいけない状況であった。ここはプラントの最終要塞なのだ。これが落とされるということは、プラントの、コーディネーターの敗北を意味する・・・
 ヤキン・ドゥーエでは、アスランの父、パトリックが反故を噛んでいた。
 見せられる映像が味方機が落とされていく映像ばかりでは、指揮官としてはいらだつのも仕方がない。
「・・・アスランめ・・クルーゼはなにをしているんだ! プロヴィデンスはどうした!!!」
「プロヴィデンス、確認できません! 撃墜されたという報告は入っておりませんが・・・」
「彼奴め・・・ミラー交換! 急がせろ!! 何度いったら分かるのだ!」
「ハッ!」
 パトリックの苛立ちを感じて、兵士たちは先ほどよりもさらに機敏に動き始める。
 自分の息子まで撃った男だ。このような状況では、なにがあるかわかったものではない。
「忌々しい・・・忌々しいぞ・・・・」


 デュエルとバスターの前を遮ったのは、連合の黒い機体、レイダーだった。
 ジュール隊の機体が、一機、また一機と撃墜されていく。
「貴様ぁっっ!!!」
 短い間とはいえ、自分の隊の隊員として預かった命を、こうも安々と手放してしまった自分に腹が立った。同時に、ニコルを失った時のアスランの決意が、いま身にしみて分かるような気がする。
「ったく・・目的は同じだっていうのに、なんでこう、突っかかってくるかねぇっ」
 ディアッカは、対装甲散弾砲を組み合わせると、レイダーの付近に散布した。
「あたるかよぉぉぉぉぉ!!!!」
 クロトは、激しい動悸に襲われながら、朦朧とする意識の中でレイダーを操縦していた。
(俺・・・なにやってんだっけ? わっけわかんねぇ)
 無意識状態でバスターの対装甲散弾砲を潜り抜け、ミョルニルで攻める。
「抹殺ッッ!!!」
「つぅっ」
 間一髪避けたものの、さすがに手強い。MA形態とMS形態を上手く使い分け、戦闘宙域をうまく支配している。
「これ以上、やらせるかよ!!」
 ガキン、とガンランチャーとライフルの組み合わせを変え、超高インパルス長射程ライフルでレイダーを狙う。
「イザーク!」
「わかっている! 騒ぐなッ!」
 お互い共闘は慣れている。バスターが狙い、デュエルが誘い込む。アサルトシュラウドもない今、逆にデュエルの動きは軽快なそれだった。
 レイダーをビームサーベルで切りつけながら、射線上に追い込む。
「甘いんだよぉぉぉ!!!」
 機関砲をばらまきながら移動した瞬間、バスターの射線上にレイダーが乗った。
「くらえっ!!」
 超高インパルス長射程ライフルが火を噴き、レイダーに向かう。
「もらったぜ!」
「おりゃああああああ!!!!!」
 レイダーの顔がこちらをむいた、と思った瞬間、MSを人体にたとえるならば口の位置から、エネルギー砲ツォーンが火を吹いた。ライフルのエネルギーとぴったりと射線をあわせたそれは、閃光を迸らせ、その威力を相殺する。
「ツッ・・ま、まじかよ・・・」
「滅殺ッ!!!」
 ディアッカが閃光に目を焼かれていると、衝撃が体をシートに押し付けた。ミョルニルがバスターを直撃したのだ。はじけとぶバスターのコクピットで、ディアッカの叫びが木霊する。
「ぐぁぁっ!!!」
 その叫びに、イザークはデュエルで駆け寄りながら、バルカンでレイダーを牽制する。
「ディアッカ! なにをやっているっ!!!」
「ったく、ちっとは・・心配してくれっての・・・」
 衝撃で口の中を怪我したらしく、血の味が滲む。だがそれは、自分を生きている、と思わせるに十分の感覚だった。
「はぁーーーっ・・はぁーーーーっ・・」
 一方、レイダーのクロトは、激しい吐き気と頭痛に苛まれていた。
(なんだっていうんだよぉ・・・クソ・・・・頭イテェ・・・気持ちワリィ・・・目の前が歪んで・・・)
 殺気、というものを感じて、でたらめにレイダーを回避させる。でたらめなつもりだったが、それは確実な回避運動になったらしく、デュエルの一撃を避けきっていた。
(わっけわかんねえ・・・わっけわかんねえぞ・・・息苦しいんだよっ・・クソ・・・)

603 名前: 終わらない明日へ 5 投稿日: 2003/09/26(金) 03:51

 明らかに、レイダーの動きが鈍くなるのが、2人には見て取れた。
 好機!
 イザークのデュエルが、両手にビームサーベルを携え突撃する。
「落ちろっ!!!」
「落ちないよーっだっ!」
 切り掛かるデュエルに、強引にツォーンを放つレイダー。
「ぐッ!」
 近距離からのエネルギー砲は、ギリギリでかわしたデュエルの左足を、虚空へと流していく。バランスを崩したデュエルに、ミョルニルが迫る。
「死ぬかよぉぉぉ!! こんなところで死ぬかよぉぉぉ!!!!」


 アークエンジェルへの脱出艇の搬入は、カタパルトへ直接ランチするような形で行われることになった。すでに戦闘能力の大半を失い、パイロットもいない状況では不必要、ということで、スカイグラスパー二機をランチャー、ソード、各々のストライカーパックを接続し、放出することになった。大気圏内用の機体だから、ということも多分にあるだろうが。
 二機のスカイグラスパーが陣取るカタパルトの端末から、ミリィが注意を呼びかける。
「スカイグラスパー、射出します!」
 リニア・カタパルトを用い、ほぼ放り投げる状態で外に出されるスカイグラスパーは痛々しく、マリュー、ミリィともに、心に影を投げかけるものであった。
 一瞬、彼らの顔が頭をよぎる。それを振り切って、ミリィは唇を開いた。
「スカイグラスパー二機、射出完了しました」
「ご苦労様。サイくん、君は確か、工業カレッジの学生だったわよね?」
 マリューの言葉に、サイが軽く頷いた。
「はい。随分前の話ですけど」
「なら、作業用モビルスーツの免許は持ってる?」
「ええ、もってますよ。みんな忙しいみたいですし、俺が出て脱出艇を誘導しましょうか?」
「そうね、お願いするわ。・・デブリが多いから・・気をつけて」
「了解です」
 そういいながら、サイは地面を蹴って、作業用パイロット・スーツのあるロッカーまで流れていった。
 一方、ミリィは脱出艇との通信を図っていた。
 ローエングリンなど過干渉砲を多く使用したため、短距離通信にノイズが乗りやすくなっており、未だに「救難信号」は受け取っているものの、通信はできていない、というのが現状だった。
「どう・・?」
「少しずつ、ノイズが減ってきているようですが・・あ、つながりました!」
「ありがとう、回して」
「はい」
 ミリィは、マリューの回線に、脱出艇との通信を回す。

604 名前: 終わらない明日へ 6 投稿日: 2003/09/26(金) 03:52

「・・こちら、アークエンジェル艦長、マリュー・ラミアスです。聞こえますか?」
『艦長っ!!』
 はじけ飛ぶような声に、マリューとミリィは顔を見合わせた。レンジを合わせていたサイも、パイロットスーツを片手に二人のところへ流れてくる。ミリィは、そんなサイの手をとってあげながら、マリューを見て口を開いた。
「艦長、この声・・!?」
『マリュー艦長!! 私です! フレイ・アルスターです!』
「フレイ!」
 サイとミリィが、同時に声をあげた。ドミニオン撃沈の際、まさか・・と、思っていたのだが、彼女は無事だったようだ。
 安堵の声を上げる2人をみて、マリューも顔を緩める。
 だが、次の言葉を発する瞬間には、厳しい表情に戻っていた。
「ナタルはそこにいるの?」
『・・・それが・・・』
「どうしたの? フレイ」
 ミリィの声に、ぐっと喉を詰まらせたフレイだったが、ぽつりぽつりと話し始めた。
 ブルーコスモスの盟主、アズラエルのこと。ナタルの苦悩。そして、自分たちを逃がしてくれたこと・・・
「・・・ナタル・・・私・・・ナタルを・・・・」
 マリューの目に、もう一度涙が浮かぶ。憎しみの感情から放ったローエングリンは、自分に反発しながらも、自分を助けてくれた有能な女性を、塵にしてしまったのだ。ないまぜになる感情は、マリューに再び嗚咽を繰り返させるには、十分だった。
 沈黙が、あたりを支配した。サイもミリィも、もう口を開くことが出来なかった。
「・・なんなんだよ・・もう・・・なんなんだよ・・・」
 サイは項垂れ、フワ・・と、地面から離れていく。そのサイの手をとって、ミリィが涙を拭いた。
「フレイ・・・あなたは、無事なのね? 元気なんでしょ?」
『そうだけど・・でも・・』
「フレイ、とにかく、アークエンジェルに来て。ここもまだ、戦場だから・・」
『うん・・わかった・・』
 呟くようなフレイの言葉に、サイはパン、と自分の顔を軽く叩いて、気合を入れるようにした。
「フレイ、俺が作業用MSで誘導するから、アークエンジェルのカタパルトに着艦してくれ」
『やってみる・・』
 悲痛な声は、サイに重くのしかかってきた。こういうとき、キラならなんていうんだろうか・・そんなことを考えてしまう自分が、嫌になる。
(多分きっと、キラもなにも・・いえないよな・・)
 パイロットスーツを着込み、作業用MSに乗り込んだサイは、一つ一つ思い出しながらエンジンに火を入れた。
 カタパルトデッキから外に流れていく作業用MSを見ながら、マリューは自分の弱さを呪った。
(なんで・・・なんで、こんなことになるの!? もう・・何も分からない・・・考えたくない・・・)
 こんな自分を、ナタルなら、軍人なら他者の死で悲しんでいる場合ではないでしょう、と、諌めるのかもしれない。そう考えると余計に、涙は流れ出すのだった。

605 名前: 終わらない明日へ 7 投稿日: 2003/09/26(金) 03:53

 着々とミラー交換を続けるジェネシスに、アスランは焦りを感じていた。
(クッ・・・父は・・何を考えているんだっ!!!)
 カガリのルージュとともに、敵をかいくぐりながら、ヤキン・ドゥーエに迫るミーティア。その圧倒的な戦闘力に、ザフトは後退を余儀なくされていた。だが、こちらとて無傷ではない。殿を務めるキラも、まだ姿を見せていない。まさかとは思うが・・・
「・・・・直接・・話をつけるしかない! カガリ、援護を頼む!」
「任せとけ! ・・無茶は、すんなよ」
「わかっているさ!」
 アスランは、ヤキン・ドゥーエ近辺まで一気に機体を近づけると、ザフトの回線コードを開き、ヤキン・ドゥーエの参謀部に繋いだ。
「こちら、ジャスティスのアスラン・ザラ! 父上! 聞こえますか!!!」
 その声に、ヤキン・ドゥーエの中枢部がざわついた。パトリックの苦々しげな表情が、ジャスティスのモニタに映し出された。
「アスラン・・・この期に及んで、降伏でもするつもりか!?」
「父上! ご自分がなさっていることがどんなことだか、わかっているのですか!!」
 カガリのルージュの援護もあり、回避運動を取りながらパトリックとの会話を続ける。
「わかっているとも。当然だ。このジェネシスの一撃で、我々コーディネーターの勝利がきまるのだ!」
「地球には、プラントを支持するアフリカ共同体や、大洋州連邦があるのを、お忘れですか!?」
「忘れるわけがあるまい。だが、所詮はナチュラル。どうせ、我々の技術が目当てで近づいた奴等だ。惜しくはあるまい」
「本気で言っておられるのですか、父上!!! それに・・月は・・コペルニクスは、家族で暮らしたところではないですか!! 母上との思い出すら、その兵器でけしとばそうというのですか!!!」
 アスランの言葉に、パトリックは返答できずにいた。血のヴァレンタインで失った愛妻。彼女の復讐が、自分を駆り立てていたのは間違いのない事実だ。
「父上!」
「アスラン。お前なら、どうするというんだ。言ってみろ」
「・・もうここまでやれば十分でしょう。じきに地球連合から停戦の旨を伝えてくるでしょう・・それに従うまでです。これ以上、人が死ぬ必要があるのですか、父上」
「なら問うが、今まで戦い、死んできたもの達に遺された人々はどうなる? ここまで来て、父や、息子や、恋人を殺した相手と和解しろといわれて、お前がその立場ならそれができるのか?」
「つらい決断ですが、しなければならないでしょう。これ以上人が悲しむのを・・俺はみたくない・・・」
「アスラン、もう遅いのだよ。血が流れすぎた・・そしてこれからも流れるだろう。これは私の信念だ。コーディネーターとしてのな」
「父上ッ!!」
 アスランの叫びと、銃声が木霊するのが、ほぼ同時だった。
 ざわついていた中枢部も、あまりの出来事に静まり返っていた。
「・・ッ・・・」
 崩れ落ちて行くパトリック。アスランは言葉を失い、ミーティアは動きを止めた。
「もう・・あんたの時代じゃないんだっっ!! はは・・・ハハハハハハ!!!!」
 狂気的な叫びのあと、再び銃声が響き渡った。そして、ドサッ、という鈍い音・・
「ち・・・父上? ・・父さんッ!!!」
「アスランっ!? なにやってんだよ、死ぬ気か!?」
 カガリの声も、遠く聞こえる。アスランは、魂の抜け殻のような顔をして、モニタの一点を見つめていた。
「・・父さん・・・!? どうなったんだ!! 状況を報告しろッ!!」
 アスランの叫びに、止まっていた時間が動き出したかのように喧騒が再び木霊した。
「・・ザラ議長閣下が・・う、撃たれました・・・本人は・・・自殺・・です・・・」
 オペレーターも、動揺をありありと口調に出し、アスランに伝えた。
 アスランは、ぎゅっと唇をかむと、ミーティアをヤキン・ドゥーエへと向けた。
「ヤキン・ドゥーエの入り口を開けろ!! アスラン・ザラ、帰投する!! 父と狙撃者の治療を急げっ!!」
「アスラン!! どうしたんだ!? なにがあったんだ!?」
 追い縋るカガリに、アスランは呻くような声で答えた。
「・・父が・・撃たれた・・・」
「な!? どういうことなんだよ!?」
「わかるかよ!!!」
 激昂するアスランの声に、カガリは思わず息を飲んでしまった。
「すまない・・カガリ・・・俺はヤキンへと向かう。お前はクサナギに戻ってくれ」
「アスラン・・いいか、無茶するなよ。・・必ず・・・私のところに、戻ってくるんだぞ!」
 アスランは、しっかりと頷くと、笑って見せた。
「行ってくる」
 動きを止めたザフトのMSをかいくぐって、ミーティアはヤキン・ドゥーエの中へと吸い込まれて行った。

606 名前: 終わらない明日へ 8 投稿日: 2003/09/26(金) 03:54

 デュエルとレイダーのミョルニルの間に滑り込み、それを受け止めたのは、最後のジュール隊の機体だった。直撃をうけ、吹き飛ぶ機体を、デュエルが必死で追う。
「・・早くッ!! 脱出しろッ!!!」
 イザークの叫びもむなしく、機体は傾いていく。
「た・・隊長・・プラントのこと・・・頼み・・」
 ゴンッ、という重い音とともに、目の前で機体は閃光と化した。
 ディアッカは、レイダーに対装甲散弾砲を撃ちこみ、距離をとる。
「イザーク!」
「・・いくぞ、ディアッカ」
「・・・あ、ああ」
 イザークは、冷静だった。自分の部下を全て失うという状況に陥りながら、その視線には力が宿り、ただひたすらに前を見つめていた。
 敵も、明らかに動きが鈍くなっている。こちらも残りエネルギーが少ない。次どう動くかで、この戦闘の勝敗が大きく傾くことを、イザークは感じていた。
「はぁーーーっ、はぁーーーっ、はぁーーーっ・・」
 レイダーのクロトは、荒く息をついたまま、気だるさの中に身をゆだねていた。末端から痺れが来ている。指の一本一本を動かすことすら、ままならない。
(一体なんなんだよ、俺って)
 今まで考えたこともなかったが、自分は一体何ものなのだろう。どこからきて、そしてこれから、どこへ行こうとしているのだろう。
(んなムツカシーこと、考えるだけムダだな)
 視界も徐々に狭まってきた。もっとしなくちゃいけないことがあるのに。倒さなくては。だがもう、それも潮時なのか。
(死ぬのか・・・? 俺、死ぬのかな?)
 そんなことを考えていると、危険を告げる発信音が、ピピピピ、と耳に届いた。どうやらまだ、耳は聞こえているらしい。
「・・・がぁっ!」
 今までMSを操っていた時のような高揚感は薄れ、徐々に恐怖が体を蝕むのを感じた。怖い・・よく今まで、こんな状態を幸福だ、と感じていたものだ。
 殆ど勘だけでデュエルの攻撃をかわしながら、レイダーは徐々に後退していく。
「これでっ!!!」
 デュエルが追い込む中、再びインパルスライフルを構えるバスター。照準を合わせ、引き金を弾く。
 長く延びて行く金色の弾道。
「ハッ!」
 クロト・ブエルが最期に見た光景は、一杯に広がる金色の光だった。
「・・・急ぐぞ、ディアッカ」
「・・ああ・・」
 閃光に消えて行くレイダーを横目に、デュエルとバスターはジェネシスへと進路を向けた。

607 名前: 終わらない明日へ 9 投稿日: 2003/09/26(金) 03:55

 サイは、作業用MSでカタパルト前のデブリを排除しながら、フレイと通信を開いていた。
「・・久しぶり、フレイ」
「うん・・サイ・・」
 どこか弱々しげな声に、サイは胸が熱くなるのを感じていた。そんな自分を諌めるように頭を軽く振り、デブリをどかし続ける。
 しばらくの沈黙のあと、フレイの声がパイロットスーツの通信機から聞こえた。
「・・サイ・・わたし、サイに謝らないといけない・・・」
「なんで・・」
 そう返す自分は嫌なやつだ、と思いながらも、フレイの返答を待つ。
「わたし・・サイのこと・・傷つけたよね・・・いっぱい・・いっぱい・・ごめんね・・・」
 泣き出しそうなフレイの声に、サイは自分の視界が歪むのを感じていた。
「あ、謝らなくたって・・いいよ・・もう・・・俺・・気にしてないからさ・・」
 そんなの嘘だ、と心が叫ぶ。だが、ここでフレイを罵倒しても、なににもならない。
「ありがとう・・サイ・・・やっぱり、優しいね・・」
「や、やめてくれよ・・照れるだろ・・もうすぐで、終わるから。もうちょっと待ってて」
「・・うん」
 随分としおらしいフレイに、サイは自分が知らないところで傷つき、そして成長していることを感じていた。ヘリオポリスから脱出した直後と比べれば、かなりの変化だろう。
「キラは・・・」
 それ以上、キラのことについて話して欲しくないという感情がさせたのか、サイはフレイの言葉を遮って応えた。
「あいつは今も、MSに乗って戦ってるよ。・・まったく、凄いヤツだよ」
「キラ・・・・」
 フレイがその名を呟いたのと、2人の通信機がけたたましく鳴り響くのがほぼ同時だった。
「艦長!!! ザフトのものと思われるMSが一機、当艦に接近しています!!! 至急ブリッジに戻ってください!!」
 ノイマンの声に、フレイとサイはハッとなる。
「なんだってんだよ! もう!」
 サイは、デブリの撤去を急ぐ。が、いかんせん数が多すぎる。作業用の小型MSでは、作業の効率が悪すぎるのだ。
「サイくん、あなたは作業を続けて!! 危なくなったら、なんとかして脱出艇と一緒にアークエンジェルから離れるのよ!! わかった!?」
 マリューの声に、「了解!」と応えて、サイは作業用MSのスティックを倒す。
 焦りからか、上手くデブリの処理が出来ない。
(なんなんだよもう! 落ち着け・・落ち着けよ、サイ・アーガイル!)
 目を閉じ、大きく深呼吸をする。多少マシになったような気もするが、全然変わらないような気もする。
 だがとにかく、やるしかない・・・
「フレイ、大丈夫だからな。俺が、すぐ、助けてやるから」
 フレイは恐怖に震えているのか、返事はなかった。これ以上、フレイを泣かせるわけにはいかない・・・・

608 名前: 終わらない明日へ 10 投稿日: 2003/09/26(金) 03:56

 マリューがブリッジにたどり着くと、謎のザフト軍籍MSは、肉眼で確認できるほどに近づいていた。
「ローエングリンは使えないわ! 艦内状況からいって回避もできない・・応戦します!! アンチビーム爆雷散布!!! 牽制! バリアント、てーーーっ!!!」
 マリューの言葉に、クルーは素早く応えてくれた。アンチビーム爆雷がアークエンジェルを覆い、バリアントがMSに向かう。
「敵機データ照合できません!! ザフトの新型モビルスーツと思われます!」
 ミリィの言葉に、マリューは軽く舌を打った。
(なんでこんなときに来るのよ・・・っ!)
 確かに、ドミニオンとの戦闘を追え疲弊している、という情報を受ければ、アークエンジェルを討つには絶好の機会だろう。しかも、見た目以上に自分を始めクルーの心身のダメージが大きい。
「敵機、なおも接近!!!」
「クッ!!!」
 誰もが、何かを覚悟した瞬間、ピピピ、と通信を伝える電子音が鳴った。
「・・て、敵機から通信が入っています!」
「ひらいて・・・」
 ゴクリ、と喉を鳴らして、マリューはディスプレイを睨んだ。
「・・・了解」
 映し出されたのは、パイロットスーツに体を包んだ仮面の男、ラウ・ル・クルーゼだった。ムウの言葉を思い出し、マリューはその男を睨み付けた。
「・・クルーゼ・・!」
 呟くようなマリューの一言に、「ほう?」と、クルーゼが反応した。
『私をご存知とは、光栄だな。アークエンジェル艦長』
「・・何のようなの」
『ムウを出したまえ。そろそろ頃合だ』
 クク、と笑うクルーゼに、マリューはギュッと唇をかんで応えた。
 瞼に、ムウの顔が浮かんだ。
「・・ムウは・・・・ムウ・ラ・フラガは死んだわ」
『・・なんだと? ・・・ふ、ふははははは!!! 情けない男だな、ムウ・ラ・フラガ! 私と決着をつけるというのは、たわごとだったか!』
 続くクルーゼの嘲笑に、クルーは緊張感と怒りが入り混じった、複雑な汗をかいていた。
 悔しい・・・そんな感情が、徐々にマリューの体を支配しつつあった時、少女の声が響いた。
『クルーゼ隊長・・・』
『・・ほう? フレイ・アルスターか』
『どうして・・・どうして、あんなものをわたしに!!』
 フレイの叫びに、クルーゼは間をおいて応えた。
『君を利用しただけのことだ。それとも、あのままヴェサリウスで死にたかったかね?』
『たくさんの人が殺されたわ!! あの光で・・・どうして、そんな酷いことをして笑っていられるの!?』
『酷い? 酷いとはまた、心外だな。撃ったのは君達地球連合だろう。私はあくまで情報を渡したに過ぎないよ』
『情報を渡したら、撃つに決まっているわ!! 戦争・・ちっとも終わらないじゃない!! 悲しむ人が、増えるだけじゃないっっ!!!』
『私の言葉を信じたのは、君の間違いだった、ということだよ。フレイ・アルスター。・・残念ながら私は、こうるさいのが嫌いでね・・・これ以上騒ぎ立てるのなら・・』
『撃ってみなさいよ!! あなた、本当は弱い人間なんだわ! だから、そうやって他人を利用したりして、自分が弱いことを隠すしかないんだわ!! そんな人間なんかに、殺されるもんですか!!』
『フレイ、よせ!!』
 サイの静止も、フレイには届かなかった。涙を流しながら、感情のままに続ける。
『撃ってみなさいよ!! 私は脱出艇にいるわ!! 逃げも隠れもしないんだから! さあ!』
『・・ふむ・・どうやら君を過小評価していたようだ。そこまで潔いとは思わなかった』
『フレイッ!!!!』
『・・消えてなくなれ、フレイ・アルスター』
 パシュゥ、という音で、クルーゼの機体・・プロヴィデンスから小型のファンネルが飛び出し、フレイの脱出艇に近づく。
『やめてくれ!! 逃げるんだ!!! フレイ!!!』
 サイの叫びの直後、閃光が走った。
『キャァァァァァッッ!!!!』

609 名前: 終わらない明日へ 11 投稿日: 2003/09/26(金) 03:57

 ヤキン・ドゥーエ内に入ったアスランは、兵士達に促され、医務室へと向かった。
 軍医の話では、パトリック・ザラはかなり危険な状態であるという。ほぼ、絶望的だそうだ・・また、撃った犯人は即死だそうだ。
「・・父さん・・・」
 治療を受ける父の姿を遠目に、「お願いします」とだけ告げ、アスランは中枢部へと向かった。
 中枢部に入ったアスランを待っていたのは、沈痛な面持ちのザフト兵士達だった。
「・・・皆・・もう、やめよう。これ以上続けても、なんの意味もないことぐらい、皆にだってわかるだろう!!」
 アスランの叫びが中枢部に届くと、ディスプレイにエザリア・ジュールの顔が映った。
「ここで引けと言うのですか」
「そうです。一刻も早くジェネシスを停止し、停戦協定を結ぶべきです」
「アスラン様、それが・・・」
 アスランに耳打ちした兵士の言葉に、アスランは言葉を失った。
「なんだって・・? ジェネシスはもう止められない・・・?」
「現フェイズは最終区分です。現状での停止は不可能です・・・」
「なにか、緊急の停止装置はないのか!?」
「残念ながら・・・」
 アスランは、ぎゅっと唇をかむと、通信士のマイクをもぎ取り、チャンネルコードを合わせた。
「こちらヤキン・ドゥーエのアスランだ。エターナル、クサナギ、聞こえるか!」
『こちらクサナギだ。どうした』
『アスラン、なにかあったのですか?』
 キサカとラクスの声に、アスランは叫ぶように伝えた。
「ジェネシスはもう最終フェイズに到達している! 破壊するしか手立てはない!」
 二人の声がぐっと詰まるのが分かった。あれだけの巨大建造物を破壊するのは、並大抵のことではない。もちろん、全てを破壊するのではなく、なにか中枢となる部分を破壊すればよいのだろうが・・・それにしても、内部から破壊すれば、自分もどれほど危険な状態になるか予想がつかない。
「アスラン。今停戦協定を結んだとして、ジェネシスはどうするつもりだ。停戦協定を結んでおきながら、地球に向けて閃光を放つというのか?」
 エザリアの言葉に、アスランは強く首を振った。
「止めてみせる・・俺が! 俺達が!」
「もう時間もないだろう。無理というものだ・・・」
 深く息をついたエザリアに、凛とした声が届いた。
『母上! やる前から諦めていては、なにも変わりません!!』
「イザーク・・?」
 アスランとエザリアの声が重なる。ヤキン・ドゥーエのモニターには、片足を失ったデュエルと、それを支えるような姿で飛行するバスターの姿があった。もう残りエネルギーが少ないのか、その姿は痛々しくある。
『母上の望みは、ナチュラルの抹殺などという野蛮なものではないでしょう! 他者を淘汰して生きていける生物など、未だかつていません!! 他者と協力することが、我々人間の美しさであり、強さでしょう!』
 イザークの言葉に、エザリア、アスランを始め、ザフトの全兵士が言葉を失った。あのイザークが発する言葉だから、重みがあったのだろう。
 減っていくエリート軍団「赤」。その最後の一人イザーク。彼は続けた。
『アスラン、ジェネシスの破壊、俺も手伝わせてもらう。プラントへの核攻撃を何度となく防いでくれた礼だ。お前の借りを作っておくのは、居心地が悪い』
「頼む、イザーク。俺も出る!」
『俺に賛同するものは、皆続け!!! ジェネシスの中枢部を破壊する!!』
 イザークのデュエルとそれを支えるバスターを筆頭に、多くの大隊がそれに続いた。
「・・・イザーク・・・」
 呟くエザリアは、息子の成長を見守っているようだった。
 アスランは、もう一度通信機を持つと、口を開いた。
「・・アスランだ。エターナル、クサナギ、地球連合軍を頼む」
『わかりましたわ・・』
『任せておけ。ジェネシス、頼んだぞ』
「ああ!」
 アスランは、「父のことを頼む」と言いおいて、ヤキン・ドゥーエ中枢部から駆け出していった。

610 名前: 終わらない明日へ 12 投稿日: 2003/09/26(金) 03:58

 閃光が、あたりを支配した。フレイの乗った脱出艇に打ち込まれた一撃は、脱出艇を粉々に打ち砕くことは出来ず、むしろ、砕け散ったのはファンネルのほうだった。
「クルーゼッ!!!」
「・・キラ・ヤマトか!」
 フレイの脱出艇を庇う様に姿を現したのは、白い機体、フリーダムだった。
「フレイ!? 大丈夫!?」
 ギリギリで間に合ったフリーダムに、そしてキラの声に、フレイは涙が溢れるのをとめることなどできなかった。
「キラ・・・キラぁ・・・っ・・・」
 間一髪だった。脱出艇目掛けてファンネルの一撃が着弾する瞬間、フリーダムのビームライフルの一射が軌道を変え、もう一射がファンネルを打ち砕いたのだ。
「・・んっ・・」
 痛みを訴えるフレイの声に、キラは愕然として声を上げた。
「フレイ!?」
「だ・・大丈夫・・ちょっと・・火傷とか・・傷とか・・そういうの・・だけだから・・・」
 直撃は免れたものの、ビームで焼かれた脱出艇の中で、フレイは何度か壁に叩きつけられ、機器の破損により怪我を負っていた。
 キラは、自分の不甲斐無さに唇をかむと、叫ぶように伝える。
「サイ! フレイを頼むっ!」
「あ、ああ!」
 涙を拭って、サイはボロボロの脱出艇をアークエンジェルへと搬入する。ビームによってデブリが溶けていることが、搬入には幸いした。
「キラ・・・」
 涙まじりのフレイの顔に、キラは笑いかけた。
「フレイ、待ってて。すぐに、行くから」
「うん・・待ってる。いつまででも、待ってるから・・」
 搬入されていく脱出艇を後ろに、フリーダムのライフルがプロヴィデンスに向けられた。
「クルーゼ・・」
「ククク・・・そうか、キラ・ヤマト。お前が私を満たしてくれるというのだな!?」
 プロヴィデンスの背部から、数機のファンネルが飛び出す。その予期できぬ動きに、キラはとにかく、アークエンジェルと距離を離すことだけを考えて移動した。
(ここでやりあっちゃだめだ!)
「逃げるのかね、キラ・ヤマト!」
「くうっ!!」
 プロヴィデンスの用いるファンネルがフリーダムを囲む。
「なんだ・・・!?」
 閃光。
「うぁぁぁっっ!!!」
 他方からの攻撃に、ミーティアを装備したフリーダムは避けきれず、損傷を受ける。中破までいかない程度だが、偶々直撃しなかったにすぎない。
「こんなの・・どうしろっていうんですか、ムウさん!!!」
 レール砲とビーム砲を構え、打ち込むフリーダム。だが、プロヴィデンスの機動性は見た目以上に高く、いとも簡単に回避されてしまった。
「ミーティアじゃダメだっ!」
 加速性と攻撃力はあるが小回りが利かないミーティアをパージし、フリーダム単体になったのをみて、クルーゼはくく、と笑った。
「なるほど、そのままでは勝ち目がないと感じたかね」
(見て避けようと思うな。感じろ・・感じるんだ、キラ)
「感じるったって!」
 今度は、プロヴィデンスの大口径ビームライフルが火を噴く。アンチビームコーティングシールドでうけたにも関わらず、大きく吹き飛ばされるフリーダム。
「くそっ!」
「どうしたキラ・ヤマト! 最高のコーディネーターだというのなら、その証拠を見せてみろ!!!」
(感じるんだ! キラ! お前になら、できるはずだ!)
 再び、ファンネルが展開を始める。キラは、呼吸を整え、フラガの声に従う。
「感じる・・・感じる・・・」
 クン、とファンネルの一機が動き出した瞬間を、なんとか感知したキラは、ファンネルのビームを避けようと動く・・が。
「ぐぁぁっ!」
 初弾、二弾目とかわしたが、それ以後で被弾を受ける。集中できていない・・自分でもそう感じる。フレイのこともあったからだろう。頭に血が上っているのかもしれない。
 これではいけない・・・
(お前に教えてやるのは、これが最初で最後だからな)
「えっ?」
 フラガの声が聞こえた、とおもった次の瞬間、身体の自由が利かなくなるのを感じた。
 さらに次の瞬間、手が、足が、まるで勝手に動くものであるかのように、なめらかに動き始める。
(身体で覚えろ! 感じろ! 俺に出来て、お前に出来ないってことはないだろ?)

611 名前: 終わらない明日へ 13 投稿日: 2003/09/26(金) 03:59

「・・・ムウ・・!?」
 クルーゼは、フリーダムの影にムウのイメージを感じていた。直感が、ムウがくる、と伝える。確かめるように、フリーダムにファンネルを向ける。
「ムウ・ラ・フラガの亡霊だというのなら、避けてみせろ!!! 私の期待を裏切るなよ!!」
(いくぞ、キラ!)
「・・・!」
 キュン、と脳裏に映像が映る。平面的ではなく、立体的な知覚。まるで、周りのもの全ての位置が把握できるような瞬間。
「感じるって・・こういうこと!?」
 フリーダムは、軽やかに舞うような動きで、ファンネルの全砲撃を避けきって見せた。そして、そのまま流れるような動きで、漂っていたスカイグラスパーのソードストライカーを手に取った。
(くらえっ!)
 シュベルトゲーベルの刃がプロヴィデンスを襲う。堪らず後退するプロヴィデンス。
「くうっ! やるな・・やるな、ムウ!」
 その光景をただ汗を握って見つめていたマリューの頭の中に、ムウの声が響いてきた。
(撃て!)
「えっ・・?」
(お嬢ちゃんはもう搬入されたんだ。ローエングリン、だろ?)
 ムウの声にハッとなり、マリューは叫んだ。
「ローエングリン一番! 目標敵モビルスーツ!! てーーーっ!!!!」
 撃ちだされたローエングリンは、一直線にプロヴィデンスへと向かう。
「くううっ!!!」
 直撃、とまではいかないものの、左半身にダメージを受けたプロヴィデンスは、ビームライフルとファンネルで撹乱しながら後退していった。
「・・やるな・・・だが・・・・このままでは、終わらん!」
「はぁっ・・はぁっ・・・はぁっ・・・」
 荒く息をつくキラは、ムウのイメージが、もう近くに存在しないのを感じた。
「ムウさん・・ムウさん!!!」
 同様にブリッジでは、マリューが、亡き恋人の声に涙していた。
「確かに聞こえた・・貴方の声・・聞こえたわ・・・・」

612 名前: 終わらない明日へ 14 投稿日: 2003/09/26(金) 04:01
 キラは、フリーダムをアークエンジェルに着艦させると、医務室へと向かった。
 だが、そこではフレイの姿を見つけることは出来なかった。
「赤い髪の女の子? ああ、彼女なら治療がすんだから、部屋のほうへと搬送されたよ」
「ありがとうございます」
 キラは会釈も早々に、自分の部屋へと地面を蹴った。恐らく、そちらにいるはずだ。
 アークエンジェルを漂いながら、キラはフラガのことを思い出していた。
 先ほど聞いた話によると、ついさっき、ドミニオンのローエングリンからアークエンジェルを守り、なくなったそうだ・・・
 なんとなく感じていた予感が現実のものになって、キラは唇をかんだ。
「キラ」
 そんなキラを現実に引き戻したのは、サイの声だった。いつのまにか、キラの部屋の前に着いていたらしい。扉にもたれかかるようにして、サイがいた。
「サイ・・フレイは?」
「命には別状がないってさ・・」
 複雑な表情でそう言いながら、サイは扉を離れた。
「キラ・・フレイのこと、頼むぜ」
「・・うん・・」
 サイの言葉にゆっくりと頷いて、キラは部屋のドアを開けた。
 中に入ると、懐かしい香りが広がった。長い間自分が使用した部屋。最近はエターナルのほうで寝泊りしていたので、まるで家に帰ってきたような懐かしさがある。
 フレイは、ベッドで眠っていた。すぅすぅと、おとなしく寝息を立てている。
 ゆっくりと近づき、穏やかな寝息のその顔を見つめる。
「・・キラ・・・?」
 近づいた物音で気付いたのか、ゆっくりと瞳を開けるフレイに、キラは微笑んで見せた。
「フレイ・・・ごめん。僕がもうちょっと早く・・」
「ううん。いいの。助けてくれてありがとう・・」
 フレイのキラを見つめる瞳は潤んでいる。すぅっと、涙が眠ったままのフレイの目じりからこぼれおちた。
「・・ごめんね・・キラ・・・わたし・・・キラのこと・・」
「・・・・」
 キラは、黙って聞いていた。そうすることが大切だとおもった。
「最初は・・利用・・してたの・・・キラを・・戦争に狩り出して・・もっと・・もっとコーディネーターを・・・」
 そこまで言って、フレイはううっ、と嗚咽を漏らし始めた。キラも、必死で涙をこらえている。今はまだ、僕は泣いちゃいけない。
「わたし・・間違ってた・・・ごめんねキラ・・ごめんなさい・・・」
「いいんだ・・フレイ・・・僕も・・僕も一緒なんだ・・僕こそ・・謝らなくちゃいけないんだ・・」
 一回目じりにたまった涙を宙に流すと、キラは口を開く。
「気付いてたんだ・・なんとなく・・だけど・・だけど、僕はフレイと一緒に居たくて・・でも・・怖くなって・・・だから・・僕は・・・」
 そんなこともういい、というようにフレイはかぶりを振ると、キラの目をじっと見つめた。
 そして、なんとか起き上がろうとする。キラは、それを助けるように、フレイの背中に手を添えた。
「ありがとう・・あのね、キラ・・聞いて欲しいの」
「・・なに・・?」
 フレイと同じ高さに視線を合わせ、じっと見詰め合う。懐かしい瞳の色だ、とお互いが感じていた。少しの沈黙。手のひらに汗がじっと滲むのを感じる。
 間近に見たフレイは、やはり気高さを感じる美しさがあった。
 そんな唇が、ゆっくりと旋律をつむぐ。
「わたし、今、わたし、本当にあなたのことが好き。すきなの・・・」
「・・フレイ・・・」
「今頃気付いたの・・本当に好きになってるって・・もう、遅いのに・・気付いたの・・」
 そんなフレイに、キラは何も言えずにいた。涙をこらえるようにして、唇をかんでいるフレイに、キラは言った。
「泣いていいんだよ、フレイ。僕がずっと傍にいる。ずっと、傍にいるから」
 その言葉に、フレイはキラに抱きつくと、たまっていたものを全て吐き出すように泣いた。キラの胸で、ずっと。
「キラぁぁぁぁ!!!」
「フレイ・・・」
 自分の胸で泣く弱々しい少女を優しく抱きしめ、キラは誓った。この戦争を一刻も早く終わらせなくてはならない。もう、フレイを泣かせてはいけない・・・もう二度と、大切なものから手を離さない。失わない。
 数分がたった頃、涙が枯れて来たフレイは、「ありがとう」と言って、身体を離した。さっと、体温が下がるような気がした。

613 名前: 終わらない明日へ 15 投稿日: 2003/09/26(金) 04:02

「・・キラ、また、戦いに行くんだよね」
「うん。・・皆まだ戦ってる。僕も、いかなくちゃ」
「・・わたし・・戦ってるキラにできること、祈ってあげるぐらいしか出来ない・・」
 そうやって俯く彼女を、キラはいとおしいと感じた。
「それだけで、十分だよ、フレイ。・・フレイが祈ってくれれば・・僕は、それでいいから」
「・・わたしの想い・・守れるかな? キラを・・」
「いつも、守ってもらってるよ・・」
「・・本当に・・本当の、わたしの想いで・・あなたを守りたい。必ず・・帰ってきて、キラ」
「うん。約束するよ」
 キラは、フレイの手をとると、小指を絡めた。
「キラ・・」
 小指で指切りをしたあと、そのままお互いの手を絡めあう。絡み合う視線。キラは、フレイの身体を引き寄せると、優しく口付けした。
 短い口付けを終えると、ゆっくりと、彼女の身体をベッドに眠らせる。もう一度微笑むと、キラは絡めた手をベッドの中に戻した。
「・・キラ、気をつけて・・いってらっしゃい」
 いかないで、と言う言葉を飲み込んだフレイに、キラはしっかりと頷いて見せた。
「いってくるよ、フレイ」


 キラの部屋を出ると、サイが壁に背を預けて、天井を眺めていた。キラに気付くと、顔をこちらに向ける。
「・・キラ」
 サイの目が、一直線にキラを見据えた。キラは、それをまっすぐに見返す。
「サイ。・・ごめん。もう、同じ過ちはしないよ。誓う」
「・・そうか。フレイのこと、頼む」
「うん。・・任せて。・・・ありがとう・・」
 俯いたキラに、サイは笑って見せた。
「そんな、暗い顔すんな! ま、あんま明るい顔で戦場行かれても、困るけどさ」
「それもそうだね」
 2人の笑いが、通路に木霊した。わだかまりを洗い流してくれるような笑い声が止むと、キラの目がすっと鋭くなった。
「終わるまで・・フレイのこと、よろしく」
「ああ。任せとけ。・・頑張ってな」
「うん」
 キラとサイは、軽く手の甲を合わせると、お互いに頷いた。
 カタパルトへ向かうキラの背中を見ながら、サイは軽く、涙を拭った。
 きっと、こんな風に泣くのは、これで最後だろうな、と感じていた。


 カタパルトに戻ると、フリーダムの前で、コジローが待ち構えていた。
「遅かったな、ボウズ」
「すみません、マードックさん」
 軽く会釈をすると、コジローは嬉しそうに笑った。
「おいおい、なにしてきたんだ? 口に口紅がついてるぞ」
「えっ!?」
 驚いて自分の唇をなぞるキラに、コジローは意地悪く笑ってみせた。
「ははははは! 冗談だよ、冗談」
「や、やめてくださいよ、もう・・」
 顔を真っ赤にして照れるキラの肩を、コジローは優しく叩く。
「いってこい。・・そして、帰ってこいよ」
「はい。・・ありがとうございます」
「良い目になったな、ボウズ・・・いや、キラ」
 満足そうに頷いたコジローに笑って、キラはフリーダムのコクピットへと流れていった。
 シートに腰掛け、ハッチを閉める。
 エンジンに灯を入れると、一瞬だけ、低いヒュゥゥゥゥ、という音が聞こえた。
 軽く深呼吸をすると、頭の中が冷静になっていくのを感じた。
『キラ・・』
 モニタに、心配そうなミリィの顔が浮かんだ。
(なんだか僕は、皆に心配されてばっかりいるな・・・)
 思わず苦笑したキラに、ミリィが訝しげに聞いた。
『どうしたの?』
「ううん、なんでもないんだ」
『キラくん・・』
 マリューの声に、キラは視線を移した。
『・・これで、終わるわよね・・きっと』
「ええ。・・終わらせなきゃ、いけないと思います」
『キラくんに・・アスランくん、カガリさん、ラクスさん・・・矢面にたって戦っているのがあなたたちのような子供達で・・大人の私たちが助けてあげられなくて・・ごめんなさい』
「・・・・」
『だけど・・あなたたちなら、新しい時代を切り開いてくれると信じてるわ。・・頑張って、キラくん』
「はい!」
 キラは、しっかりと頷くと、パイロットメットのバイザーを下げた。
 リニアカタパルトがオープンされ、動線がクリアになる。回転を上げて行くフリーダム。
『フリーダム、キラ・ヤマト、発進どうぞ!』
「キラ・ヤマト、フリーダムいきますっ!!!」
 キラのフリーダムは、アークエンジェルを飛び出すと、先ほどパージしたミーティアと接続し、高速で戦場へと、駆け抜けていった。

614 名前: 終わらない明日へ 16 投稿日: 2003/09/26(金) 04:03
 イザークを先頭とするザフトの兵士達がジェネシスへ向かう中、エターナルとクサナギは、地球連合の抑えに回っていた。
 ジェネシスの砲撃で多くの艦隊を失ったにもかかわらず、未だに攻撃の手を緩めないその精神には頭が下がるが、怨念じみたものを感じてしまうのも確かだった。
「・・ク、諦めの悪い連中だ・・・」
「私達が言えることでは、ありませんよ」
 ラクスの言葉に、「違いない」と笑って、バルドフェルトは戦局をにらむ。ジャスティスはジェネシスへ。キラのフリーダムは先ほどのアークエンジェルの通信より、こちらに向かっているとのことだ。クサナギのルージュは現在整備中。M1アストレイは全滅とのことだった。つまり、まったく艦載機のないエターナルと、出撃可能な機体のないクサナギの2艦で、連合のモビルスーツを抑えなければならないのだ。かなり分の悪い試合だった。
 ラクスは、瞳を閉じてしばし時を空けたあと、すっと瞳を開いた。
「・・チャンネルオールレンジで、通信範囲を最大にしてください」
「ハッ」
 オペレータがすぐに対応し、バルドフェルトはラクスを振り返った。
「・・今、この戦場にいる皆さん。どうか、耳を貸してください」
 ラクスの声に、キラが、アスランが、全ての兵士が一瞬、耳を傾けた。アークエンジェル、クサナギの面々も、ラクスの次の言葉を待つ。
「この戦場にいる殆どの方が、戦争など望んでいないと思います。ですが、撃たなければ撃たれるというこの状況になれば、力を手に、他を圧倒すると言う感情は、仕方がないのかもしれません。そもそも、この戦争の発端はなんだったのでしょう。ユニウス7に核が打ち込まれた、血のヴァレンタインと呼ばれる事件でしょうか。それとも、ファースト・コーディネーターと呼ばれる、ジョージ・グレンがこの世に生を受けた時でしょうか。残念ながら、私には正確な答えを出すことは出来ません。しかし、今私達にとって大切なのは、始まりがなんだったか、ということよりも、どうやって終わらせるか、なのではないでしょうか。私も、一刻も早くこの戦争が終わるようにと願う一人です。地球連合は、ザフトのジェネシスという大量破壊兵器で多くの死者を出しました。ザフトは、地球連合の核攻撃で多くの死者を出しました。・・これ以上、悲しみの連鎖を続けることに、どんな意味があるのでしょう。どうか、もう一度考え直してみてください。相手を殺し、それで本当に得られるものがあるのでしょうか? もし何かを得られたとして、それを誇れるのでしょうか? それは、本当に欲しかったものなのでしょうか? もう一度・・もう一度、考え直してみてください・・・」
 ラクスの言葉に、戦場に、静謐な空気が流れた。と、信号弾が三色、宇宙に輝いた。
 撤退して行く地球軍のモビルスーツたち。
「・・ご苦労さん、ラクス」
「・・・私は、本当に・・・なにも、出来ないのですね・・・」
「よくやってる方さ。人一人でできることなんて、大した事じゃない。だから、協力するんだろ?」
 バルドフェルトの言葉に、ラクスが笑うと、ピンクのハロがパタパタと飛び出した。
「ミトメタクナイ!!」


 キラのミーティアは、ジェネシスを目視できる空域までたどり着いていた。マードックの整備もあるのか、妙に機体が軽い気がする。
「アスラン、聞こえる?」
『戻ったか、キラ』
「・・僕はこれから、クルーゼと決着をつけてくる」
『・・そうか』
 クルーゼとキラの間に何があったのか。色々と聞きたいことはあったが、キラの意思を感じる声に、敢えてアスランは聞かなかった。
『ジェネシスは俺達に任せろ。必ず止めてみせる』
「うん、頼むよ、アスラン」
『・・・キラ』
「・・うん?」
 アスランは、一呼吸置くと、肺にたまった呼気を吐き出すように、呟いた。
『死ぬなよ』
「・・もちろん」
『またな』
「また」
 確認しあうように頷くと、ジェネシスへ終結して行くザフトの大隊を横目に、キラは一人、別方向へと機体を向けた。
 感じる・・そう、気配を感じる。
 ラウ・ル・クルーゼの気配だ。目標は、廃コロニーの方角・・
 ミーティアが、閃光を残し、コロニーに近づいていく。まだ、迎撃の気配はない。どうやら、中で待ち構えているようだ。
 廃コロニーの中では、小回りが聞かない分ミーティアでは分が悪い。だが、意を決すると、ミーティアで側部に穴を空け、キラは突入していった。

615 名前: 終わらない明日へ 17 投稿日: 2003/09/26(金) 04:03

 先頭を進むイザークは、ジェネシスの護衛するように並ぶ、発射を望むザフトの部隊をみて、唇をかんだ。
「まだ戦い続けようというのか!!」
 イザークは、回線を開くと、大声で叫ぶ。
「貴様ら! そこをどけ!! 撃たれたくなければな!!」
『裏切り者がなにをいうか!!』
 裏切り者、という言葉にイザークは激昂しそうになる自分を抑えた。確かに、今の自分を少し前の自分が見たら、裏切り者となじるかもしれない。だが・・・
 今、ジェネシスを止めようと思うこの気持ちは真実だ。
「・・アスラン! 貴様は先に行け!! ここは俺達が抑える!! ジェネシスを落とせッ!!」
『イザーク・・・了解した!! こんなところで、死ぬなよ!!』
「誰に言ってるんだ!! 簡単な方を任せてやってるんだ! 貴様こそ死んだりしたら、許さんからな!」
 イザークの言葉に苦笑して、アスランはミーティアを加速させた。
「・・頼んだぞ、アスラン・・」
 イザークは呟くと、全機に渇を入れた。
「怯むな!! プラントの未来のためだ!!!」

616 名前: 終わらない明日へ 18 投稿日: 2003/09/26(金) 04:05

 キラが飛び込んだ廃コロニーは、さすがにひっそりとしており、恐らく隠れているであろうクルーゼを探し出すのは、簡単ではないようだった。
「・・・どこだ・・・?」
 低空を飛行しながら、いつでも攻撃を避けられるように、感覚を研ぎ澄ませる。感じること・・それが大事だと、フラガは言っていた。
 今まで考えたこともなかった。周りを感じる、ということを。もしかしたらそれは、当たり前のことなのかもしれない。自分がコーディネーターだから、感じられなかったのかもしれない。
 思考の迷宮に陥りそうな自分をかぶりをふって抑える。
「・・・近い・・!?」
 感じる。クルーゼの気配だ・・・
 ミーティアを停止させ、あたりに気を配る。
 近いはずだ・・なぜ見えない・・
 キラが殺気というものを感じた瞬間に、プロヴィデンスが空間からふらり、と姿を現した。
「ミラージュコロイド!?」
 ミーティアのままではかわしきれない、と瞬時に判断し、パージして離脱する。
 プロヴィデンスのライフルの一射が、ミーティアを直撃し、爆発が辺りを包んだ。
(・・ミラージュコロイドまで搭載してるなんて!)
 この状況では、とてつもなく厄介であることは間違いない。だが、ミラージュコロイドとて完璧なものではない。しかも、この一撃で勝負をきめられなかったことは、クルーゼにとっても不利なことだった。
「クルーゼッ!」
「キラ・ヤマト!」
 また距離を離されてミラージュコロイドを使われるわけにはいかない。
 キラは、ビームサーベルを抜き放つと、プロヴィデンスに切り掛かる。左腕を失ったバランスの悪い状態のプロヴィデンスは、ビームライフルを投げ捨て、サーベルでの切り払いを図る。
 バチッ、と光が爆発したと思うと、両者はそのまま切り合いながら、徐々に移動して行く。
「さすがは最高のコーディネーターというか!!」
「だからなんだっていうんだ!」
 切りあいを続けながら、プロヴィデンスはファンネルを展開する。
「させないっ!!」
 キラも、きりあいを続けながら肩口のビーム砲でファンネルを撃ち落しにかかる。が、いかんせんスピードが速すぎ、一機をおとしたに留まった。
「くらうがいい!」
 初弾、2段、3弾、4弾とかわすフリーダム。かわしながら、レール砲でプロヴィデンスの動きを牽制する。
「そう何度もっ!!」
 先ほどと見違えるようなフリーダムの動きに、クルーゼは舌を打った。
「・・容赦など、するものではないということか!」
 再びファンネルを一射すると、ミラージュコロイドを使い溶け込むプロヴィデンス。
 一瞬の隙を与えてしまったことに悔やみながら、キラは距離を離した。ミラージュコロイドを使われてしまっては、下手に距離が近い方が危険が高い。誘い込むしかない・・・
 背後を見せ、逃げるフリーダム。

617 名前: 終わらない明日へ 18 投稿日: 2003/09/26(金) 04:05

「・・どこか・・どこか、ないか・・」
 キンッ、と、頭の中のいっぺんが危険を感知する。素早く回避行動に移ったキラだったが、小型ファンネルの一撃をかわしきれずに左肩を損傷した。かすり傷だ、まだいける・・・
「・・本体はミラージュコロイドを使ったまま、あの小型兵器を使えるのか・・・!」
 キラはフリーダムに上昇を駆けると、コロニーのメインシャフトへと近づいていった。
 いわゆる港部・・そこで、待ち構えるしかない。
 クルーゼの気配は確かに近づいてきている。キラは、キーボードを開くと、素早くデータを打ち込んだ。
 ハイマット・モード。
 フリーダムに搭載された、オーバーロードモードだ。
 核エンジンのエネルギーをフルに使いきるため、背部にあるウイングにより強制冷却が必要となる。しかも、その状態でいられる時間は短く、各部への負担は大きい。
 だが、やるしかない。次で、プロヴィデンスをしとめるしかない・・・
 データを入力し終えたキラは、すう、と息を吸い込むと、Enterキーを叩いた。
 ディスプレイに、ハイマットモード起動、という旨の文章が流れ、背部ウイングが展開していく。次の瞬間、キラはシートに身体を押し付けられるようになった。
 圧倒的な加速。瞬時にコクピットの緩和作用が働いたが、瞬間的にかかったGに身体が悲鳴を上げた。
 一気に、港部が近づいてくる。
 金色の光を放ちながら進むフリーダムには、プロヴィデンスも追いつけず、徐々に距離を離して行く。
 港部にたどり着いたフリーダムは、最深部まで進んでいった。なるべく狭いところへ・・
「ここで・・」
 クスィフィアス・レール砲とビームライフルを構え、プロヴィデンスを待つ。
 気配が近づく・・・!
「いけぇっ!!!」
 放たれた閃光は、濁流となって港部入り口へと進んで行く。
 バチュ、と閃光がひときわ強くなると、そこにはプロヴィデンスの右足が浮いていた。
「はずした!?」
「惜しかったな、キラ・ヤマト!!!」
「まだだっ!!!」
 ファンネルの攻撃をスピードで避け、キラはビームライフルを連射した。
「落ちろぉぉっ!!!」
 ミラージュコロイドがとかれたプロヴィデンスのビームサーベルが、フリーダムの左腕を切り裂く。
 レール砲を撃ち、距離をとったキラは、ライフルを捨てサーベルを抜いた。
「はぁぁぁぁっ!!」
「おぉぉぉぉっ!!」
 サーベルに持ち替えたキラのフリーダムと、プロヴィデンスの一撃が交錯する!
 ズン、と、重い音が、港部に響き渡った。


 アスランは、追い縋る数機のモビルスーツを沈黙させ、ジェネシス内部に侵入した。
「・・中央部のシャフト・・これを完全に破壊することが出来れば・・・」
 長大なシャフト。これを破壊するのは容易ではない。が・・
「全弾撃ちつくすまでやってやるさ!!」
 ミーティアの兵装を全てオープンにすると、アスランはシャフト内部に突撃していった。
「おぁぁぁぁぁぁ!!!!」
 時折放たれる自律防御兵器のビームを避け、シャフトを少しずつ破壊して行くアスラン。
 時間はもう、残り少ない。間に合わなければ、自分も、そしてジェネシスの前で戦闘をしているイザークたちも、消え去ってしまう・・・
「そんなこと、させるか!!」
 内部までフェイズシフトしていなかったことが幸いし、実弾のマイクロミサイルがえぐっていく。
「間に合え・・・間に合うんだッ!」
 アスランの叫びの直後・・・
 重い音を立てて、ジェネシス内部の崩壊が始まった。
「・・やった・・!?」
 そして、ジェネシスは、大きな爆発に飲み込まれていった。

618 名前: 終わらない明日へ 20 投稿日: 2003/09/26(金) 04:06

「・・アスラン・・!? やったのか!? おい、聞こえないのか!!」
 ジェネシス防衛隊をほぼ活動不可能にしたイザークは、ボロボロのデュエルから通信を開いた。
「おい!!! アスラン!!!!」
 返事がない・・・まさか・・
「あのコシヌケ、爆発に巻き込まれでもしたのか!?」
「なんだって・・・!?」
 こちらももう、フェイズシフトすら落ちてしまったバスターのディアッカが、崩れ行くジェネシスを見ながら、呆然とした。
「おい、エターナル、クサナギ!! 聞こえるか!!!」
『こちらクサナギだ。どうした、ディアッカ』
 応えたのは、カガリだった。思わず、うっと言葉に詰まるディアッカ。
『なんだよ? 早く言え! ジェネシスなら、こっちで確認したぞ。やったな!!』
「それなんだが・・・ジェネシス内部にアスランが・・・返事がないんだ!」
『・・なに?』
「俺達はもうモビルスーツの活動限界だ! そっちの機体、あまってんだろ!? 探してくれよ!!」
『・・・・・・』
 こちらも、返事がなくなってしまった。
「おい!! なんとかいえよ!!」
『カガリは飛び出していったぞ。恐らく、ルージュで探すつもりだろう』
「キサカ・・さん」
『・・・今は、カガリに頼るしかないな・・全機、各艦へ収容する。ご苦労だったな』
「・・・・」
 ディアッカは、複雑な表情で、キサカとの通信を終えた。
 と、宙域に、一機のモビルスーツが飛び出して行く。赤いストライク・・ストライク・ルージュだ。
「カガリ・・」
『なんだよ! 今、急いでんだ!!』
「頼むぜ」
『任せとけ! まったくあいつは、無茶ばっかりしやがって・・・』
 カガリが、鼻をすするが聞こえた。泣いているのだろう。
 ディアッカは、パイロットメットを外すと、大きく息をついた。
「・・・ふう・・・コレで少し・・休めるな・・」


 キラの部屋で眠っていたフレイは、嫌な予感に目を開いた。
 傍らで、地球連合の制服を着た少年が、心配そうに自分を見ている。
 視界がぼやける中、思わず呼んでいた。
「・・キラ・・?」
「ごめんな、フレイ。キラじゃなくて」
「あ・・あ、ごめんなさい・・」
 苦笑したサイに、フレイはもう一度「ごめんね」といって、身体を起こした。
「大丈夫なの? まだ、寝てないと」
「・・ね、サイ・・お願いがあるんだけど・・・」
「ん?」
 真剣なフレイの表情に、サイは身構えた。なんとなく、感じるものはあったが・・
「アークエンジェルにも、小型艇があるはずよね。それ、運転できる?」
「・・ああ。・・なんで・・?」
「・・嫌な予感がするの。お願い、何も言わずに、私を連れてって。・・お願い・・」
「・・キラ・・か?」
 サイの言葉に、フレイはコク、と頷いた。
 サイは、大きなため息をつくと、ガタッと椅子から立ち上がった。
「サイ! お願い!!」
「フレイ、身体、悪くしてもしらないよ。・・パイロットスーツとってくるから、待ってて」
 サイは、そういうと、部屋から出ていった。
 サイのいなくなった部屋で、フレイは呟く。
「ありがとう・・サイ・・・」

619 名前: 終わらない明日へ 21 投稿日: 2003/09/26(金) 04:07

 戦闘がほぼ終結したのを受け、アークエンジェルもクサナギ、エターナルと合流することになった。3艦とも、艦自体、そしてクルーへの損傷が激しい。
「・・終わった・・のでしょうか?」
『一応はな。・・プラントも地球連合も、停戦を望んでいる。・・ま、これだけやったら、停戦でもしてもう一度戦力を集めなおさないとな・・』
 バルドフェルトの言葉に、マリューは言葉を失った。
「そんな・・・」
『まさか、の話だがね。私ももう、これ以上命が散るのをみたいとは思わんよ』
 ミリィが、耐え切れなくなったように口を開いた。
「そのっ・・・ディアッカは・・・・」
『彼は平気だ。今クサナギで収容した。よほど疲れているんだな。よく眠っている』
 キサカの応えに、安心したように声を漏らす。
「そうですか・・・」
 ムウのこともあって、ミリィはよかった、とは口に出来なかった。
『フリーダムと通信が途絶しているのですが・・なにか、ご存知ではないですか?』
 ラクスの言葉に、マリューとミリィは顔を見合わせた。
「いえ・・先ほど、当艦を出撃してからは、なにも・・・」
『そうですか・・・無事なら、良いのですが・・・トリィも・・艦内で見当たりませんし・・』
 鎮痛な面持ちのラクス。再び、沈黙な空気が漂う。
 と、警告音が、アークエンジェルを包んだ。
「どうしたの!?」
「カタパルトが開いています!! どうして・・!?」
 あせるミリィへの回答は、すぐに提示された。
『俺です』
「サイ・・くん?」
『・・わたしが・・お願いしたんです』
「フレイ!? なにやってるの! まだ怪我なおってないんでしょ!? サイ!! とめてよ!!」
『・・お願い、いかせて、ミリィ・・今度は、わたしの番なの・・わたしが、守ってあげる番なの!』
「フレイ・・? キラのこと・・?」
『・・・・・・』
 返事がないことが、ミリィにとっては返事だった。軽く嘆息をつくと、笑って見せた。
「フレイ、変わったね。・・でも、そういうフレイ、私、嫌いじゃないよ。・・気をつけてね」
『ありがと』
 ミリィの言葉は、フレイの背中を優しくおしてくれた。心のわだかまりが、ゆっくり溶けていくのを感じる。
『小型艇、出ます』
 サイは、小型艇をカタパルトから射出させた。
(俺って、こんなんばっかりだな、まったく・・・)
「本当は・・一人で行こうと思ったんだけど・・」
「いいよ。全部終わるまで、よろしくってキラに言われてるからさ」
「ありがとう、サイ」
 サイは、深くため息をついた。まったく、損な役回りだ。なのに、なぜか誇らしいのは、なぜなんだろう。


 崩れ落ちたのは、プロヴィデンスの方だった。胴体と下半身を切り分けられては、もう活動することは出来ない。
「はぁーっ・・はぁーっ・・」
 キラは、荒く息をつくと、顔の汗を飛ばした。
「・・やったの・・・?」
 パシュ、とプロヴィデンスのコクピットが開くと、そこからクルーゼが降りるのが見えた。一瞬、フリーダムを見る・・・
「誘ってる・・・?」
 キラは、コクピットから拳銃を探り当てると、走り出したクルーゼの後を追った。

620 名前: 終わらない明日へ 22 投稿日: 2003/09/26(金) 04:08

 カガリのストライク・ルージュは崩壊を続けるジェネシスへと進んで行く。
 いつ自分もつぶされるかわからない状況での捜索は正直緊張の連続だった。
「・・アスラン! どこなんだ! 返事しろよ!! アスラン!!!」
 喉が痛くなるまで叫び続ける。もう、大切な人を失うのは、いやだ・・
「アスラン! 頼むよ! 返事してよ!!」
 殆ど泣き崩れた状態のカガリは、グッと涙を拭うと、再び叫びだす。
「アスラン!! どこなんだよ!!」
 ガン・・・
「・・・?」
 大きな物音に、気配を配るカガリ。
 だが、背後から倒れてくる大きな鉄塔には、気付くのがだいぶ遅れた。
「ちっくしょ!」
 振り返りながら、なんとか鉄塔を避ける。もう一瞬気付くのが遅れたら、恐らくルージュごと鉄塔の下敷きになり、ミイラ取りがミイラになるところだった。
「・・・?」
 だが、その鉄塔が倒れたことで、遠くに先ほどまで見当たらなかったなにかを見つけた。
 赤い・・・ような、気がする。
「・・アスランか・・?」
 ゆっくりと、ルージュを近づけていくと、徐々にそれは明確になっていった。ジャスティスの頭部だ。
「アスラン!」
 ギリギリまでルージュを接近させると、カガリはコクピットハッチから飛び出していった。ジャスティスのコクピットにしがみ付くと、乱暴に開く。
 カシュゥ・・
 ハッチが開く僅かな時間すらもどかしい。ようやく開いたハッチの中に、アスランがいた。
「・・アスラン!! おい、なにやってんだよ!! おきろよ!!」
 バシバシと、思いっきりヘルメットを叩きつけるカガリ。やがて、うめき声とともにアスランが瞳を開いた。
「・・・いて・・痛い・・痛いだろ!!!」
「アスラン・・生きてたのか・・・」
「当たり前だ!! 何度も叩くな・・・」
 頭がガンガンする。体中もいたい。だが、どうやら、生きているようだ。
 頭がいたいのは、目の前の彼女の所為かもしれないが・・
「・・よかった・・アスラン・・・」
 涙目のカガリに笑いかけて、アスランはジャスティスのレバーを倒す。
「いつ崩れてくるか分からないからな・・」
 だが、ジャスティスは反応してくれなかった。
「・・なんだ・・?」
 状態確認をすると、先ほどの爆発で、ジャスティスは姿勢維持装置のほとんどを損壊していた。つまり、動くことが出来ない状態だ。
「・・ちっ、ダメか・・」
「アスラン、私のルージュに行こう」
「わかった」
 2人して狭苦しいコクピットから出る中、アスランはジャスティスを振り返った。
(短い間だったけど・・ありがとうな、俺の・・ジャスティス・・)
 軽く敬礼をして見せて、アスランはルージュのコクピットに滑り込んだ。
「・・狭いな・・」
「文句言うなよ! 人が、どんな思いして助けに来てやったと思ってるんだ!!」
「・・そんな、騒ぐなよ・・有難いと思ってるさ。それに、俺だって少し間違えば死んでるところだったんだぞ」
「だ、大丈夫なのか?」
 コロコロ変わるカガリの表情に苦笑して、「大丈夫だ」と応える。
「行こう」
「言われなくても、わかってるよ」
 ルージュは、閣座したジャスティスを背後に、ジェネシスの宙域から離れていった。


 フレイとサイを乗せた小型艇がアークエンジェルを飛び立って間もなく、目の前を小さななにかが通り過ぎた。
「・・なんだ? 今の・・」
 いぶかしむサイに対して、フレイはハッとなって立ち上がった。
「・・・サイ・・ありがとう、ここまででいいわ」
「え? なんだよ、フレイ? どうしたんだ?」
「・・わがままにつき合わせて、ごめんね。・・ありがとう・・」
 にっこりと笑ったフレイに、サイはもう一度聞く。
「どうしたんだ? 本当にいいの・・?」
「うん。大丈夫。あとは、わたしがやらなくちゃ」
 清清しい笑顔を見せられては、サイもこれ以上食いつくことは出来なかった。
「・・俺、しばらくここにいるからさ。なにかあったら、言ってくれよ」
「ありがと」
 操縦室を飛び出したフレイは、小型高性能バーニアを背中につけると、宇宙へと飛び出していった。
「トリィ!」
 それを待っていたかのように、緑色の鳥形ロボット・・トリィが、フレイの肩に止まる。
「久しぶりね、トリィ・・元気してた?」
「トリィ!」
 こくん、と頷くのを見て、フレイはくすっと笑った。
「キラの場所・・わかるのよね? お願い、わたしを連れて行って・・」
 トリィは、フレイの言葉が通じたかのように、すぅっと飛んで行く。
「・・コロニー・・?」
 トリィが飛んでいく先には、壊れかけのコロニーが、じっと佇んでいた。

621 名前: 終わらない明日へ 23 投稿日: 2003/09/26(金) 04:08

 銃を構えて、キラはクルーゼを追う。時折爆ぜる銃弾が、彼に近づいていることを明示していた。
「・・クルーゼ! もうやめるんだ!! これ以上、なにをしようっていうんだ!!」
「私はまだ何もしてないよ、キラ・ヤマト。全ての人類を粛清して、その時初めて、私は行動できるのだよ」
「・・なにを・・」
 チュン、と近場の地面が爆ぜた。近い・・・
 飛び出し、銃を構える。だが、クルーゼの姿はなく、開いたドアがあるだけだった。
「・・くだらんと思わんかね。自分達が夢だ希望だと囃し立てたコーディネーターを妬むナチュラル。ナチュラルよりも優秀だと言って譲らないコーディネーター・・・まったく、くだらない」
 徐々に、クルーゼはコロニーの中央制御室に向かっているようだった。キラは、弾丸の残数を確認しながら進む。
「勝手に作り出しておいて、失敗作だなどといわれた私の気持ちが、君に分かるかね!?」
「わからないさ!! 僕はあなたじゃない!! だけど、自分だけが不幸だと思うのは、被害妄想だ!!」
「私はね、見てみたいのだよ。滅亡を。破滅を。その扉の向こうで、人々がどのような姿を見せるのか・・私はそれがみたいのだ!」
 キィン、と中央制御室から弾丸が跳ねた。そろそろ、最深部のようだ。
「自分勝手な理屈だ!!」
「なら君は、なぜ戦う?」
「・・守りたい人がいるからだ! もう二度と、泣かせたくない人がいるから! だから僕は戦うんだ!」
 バッと中央制御室に飛び込むと、モニターが全て起動していた。
 思わず、一瞬その光景に呆然とする。
「・・・な・・?」
「終わりだよ、キラ・ヤマト」
 声に気付いた次の瞬間には、右肩に痛みが走っていた。手に握っていた拳銃も、入り口へ向けて流れて行く。
「ぐううっ・・・」
「私はこんなところで終わるわけにはいかないのでね・・君は、少し甘すぎるようだ」
 ゆっくりと、クルーゼが近づいてくる。キラは、痛みを堪え、ゆっくりと体制を起こす。
「・・ほう・・さすが、最高のコーディネーターといわれるだけはあるな」
「最高のコーディネーターとか・・関係ない・・・僕は、僕だ! あなたには・・あなた自身を感じない!! まるで全てを他人の所為にするような言い方じゃないか!!」
 キラの叫びに、クルーゼはフン、と笑って見せた。
「・・・さらばだ、キラ・ヤマト」
「うっ・・」
 自らに向けられた銃口に、キラが目を閉じた瞬間だった。
 ガァン!
 薬莢が、ふわっと空中に浮いた。硝煙の匂いが、鼻をつく。
「・・き・・・さま・・・・」
 腹部を押さえ、ゆっくりと崩れて行くクルーゼ。キラは、驚きの表情のまま、入り口に視線を向けた
「・・フレイ・・・!?」
 そこには、キラの拳銃を握ったまま、動くことが出来ずにいるフレイがいた。
「キ・・キラ! 大丈夫・・・?」
「・・・く・・・こんな・・終わり方・・とはな・・・」
 クルーゼは、ずるずると身体を引きずりながら、モニターへ近づくと、ガラスで覆われたスイッチを、拳銃のグリップで叩き割り、押した。
 警告音が、一気に部屋に鳴り響く。
「・・なにをしたんだ・・・クルーゼ!!」
「なに・・ただ・・コロニーの崩壊スクリプトを実行しただけだ・・・」
 クルーゼは、荒く息をつきながら、笑みを浮かべた。
「・・さあ・・生きたいのなら・・逃げ切って見せろ・・・時間はほとんどないぞ・・」
「・・くそっ!」
 キラは、震えたままのフレイの手から拳銃をもぎ取り、フレイに声をかけた。
「フレイ!! 逃げるんだ!! ここは・・・くっ、危ないんだ!!」
「う、うん・・・」
 キラに手を引かれながら、フレイはクルーゼの姿を見つめていた。なぜだかとても、満足しているような、そんな顔だった。

622 名前: 終わらない明日へ 23 投稿日: 2003/09/26(金) 04:09

「キラ、肩・・ちょっとまってて」
 フレイは、パイロットスーツのレスキューパックから消毒剤と応急テープ、固着シートを取り出した。
 そして、出口へと流れていきながら、キラのパイロットスーツを脱がせた。
「つっ・・・」
「痛いけど、我慢してね」
 患部に消毒剤を吹き、その上から応急テープを張る。しばらくすると、応急テープが真っ赤に染まった。あまりに痛々しい光景に、目をそむけそうになりながら、なんとか笑顔を作ることが出来た。
「・・今は、これで我慢して」
「・・あ、ありがと・・フレ・・イ・・」
 もう一度パイロットスーツを着せ、弾痕に固着シートをはる。これで、真空でも平気なはずだ。
「・・守るって・・言ったでしょ?」
「・・そう・・だね・・」
 キラの顔には、ふつふつと汗が滲む。いたたまれなくなる気持ちを抑えながら、フレイは顔を拭いてやった。
「・・ありがと・・」
「・・帰ってくるって・・約束したのに、あんな無茶しないで・・」
「ごめん・・とにかく今は・・逃げないと・・フリーダムは、まだ動くはずだから・・」
 まだ強い光を発し続けるキラの瞳に、フレイはこくっと頷いた。
「・・大丈夫。きっと、大丈夫・・」
 フレイの言葉を否定するかのように、徐々に警告音が激しくなる。
「くそ・・もうちょっとなのに・・・」
 遠くなる意識をなんとか振り戻していると、声がまた、届いた。
(おいおい、諦めるのかよ、ダサイぜ、キラ)
(キラ・ヤマト。フレイ・アルスターはお前に任せる。・・幸せにしてやれ。・・もう少しだ、必ず間に合う)
「・・ムウ・・さん・・? ナタル・・さん・・?」
 2人の幻影が、瞳に浮かぶ。2人とも、笑顔だった。優しい、笑顔。
 それが消えると、フレイの瞳が、自分を見つめていた。
「諦めちゃダメよ、キラ」
「そうだね、フレイ」
 お互いを支えあいながら、二人は、ゆっくりと進んでいった。
 支えあう身体は、人の温もりを感じさせてくれた。


 サイは、その瞬間を一番近くで見ていた。
 崩壊していくコロニー。先ほどから続けている通信に返答はない。
 だが・・それでも彼は、信じて疑わなかった。
 キラとフレイは生きている。当然じゃないか。
「・・・当然じゃないか・・・」

623 名前: 終わらない明日へ 25 投稿日: 2003/09/26(金) 04:10

 2年後
 C.E.73.04.18
 月
 コペルニクス

「無理しなくても、いいんだぞ?」
「無理なんかしてないよ・・今日中には、そっちにいくから」
「・・その・・悪いな、忙しいのに・・」
「いいさ。お互い様だろ。・・それじゃ、そろそろ切るな」
「うん、気をつけて」
 アスランは、カガリとの電話を切ると、ふう、と息をついた。
 プラントと地球の橋渡し的な役割を担っているアスランには、この2年間はあっという間だった。あの最後の戦闘から、もう2年がたったのだ。
 ふと視線を移すと、コルクボードの写真が目に入った。
 その中には、子供のころにキラとともに撮ったものが、片隅に一枚だけ張ってあった。
「・・キラ・・・お前、どこにいるんだ・・?」
 コロニーの崩壊に巻き込まれたというキラ、フレイ、クルーゼは、行方不明、という形になった。どこを探しても、彼らの姿を発見することは出来なかった。
 発見できたのは、僅かにフリーダムとプロヴィデンスの各種パーツのみ。腕や足といった、その類のものである。
 あれから世界は、取り敢えずの平和を手に入れることが出来た。ザフトと地球連合で結ばれた停戦協定。
 協定の日にブルーコスモスによるテロなどが行われたこともあったが、大事には至らず協定は無事結ばれた。
 各地ではまだ、小競り合いが続いている。そんなニュースを見るたびに、アスランは胸が痛むのを感じていた。

624 名前: 終わらない明日へ 26 投稿日: 2003/09/26(金) 04:11

 荷物をまとめ、ホテルを出たアスランは、カガリへのプレゼントを買いに、街を歩いていた。懐かしい街並み。子供の頃、キラと過ごした街並みだ。
 この景色が消えてなくならなかったのは、不幸中の幸いだ、としみじみ思う。
 駆け抜けて行く子供達が、自分の子供時代にかぶったりする自分は、やはり感傷的になっているのだろうか。
 カガリは今、オーブの再建に尽力している。彼女も毎日多忙な日々で、ここのところ会っていない。だが、今日は彼女の誕生日ということで、なんとか一日オフを作ったのだ。
 本当はすぐにでも地球に行きたい気持ちがあったのだが、地球にいる彼女に地球でプレゼントを買うのもな・・という感情が、アスランをコペルニクスに向かわせた。
 懐かしい街並みをもっとみていたかった、というのもあるだろうが。
 そんな時、クラシックな街並みの中に溶け込むようにして佇む、オルゴールショップを見つけた。ディスプレイしてあるオルゴールがかわいらしく、思わず足を踏み入れる。
 カランカラン、と、ドアについていたカウベルが鳴った。
「いらっしゃい」
 人懐こそうな笑顔の老人が、カウンターの向こうで迎えてくれた。
 アスランは、軽く会釈をして、店内を見回す。
 自分以外にも一人、少女がオルゴールを物色しているようだった。店舗がそれほど広くないので、2人でもちょうどいいぐらいだ。
 どれもこれも、手作りの雰囲気を感じる、いい品だな、と、素人ながらに思う。
 一通り眺めると、木製の男の子と女の子がオルゴールの上に立っている商品が、アスランの目に留まった。
 思わず手を伸ばす・・と。
「あっ」
「あっ」
 どうやら、少女もこれに目をつけていたようで、手があたってしまった。
 勢いよく手をひっこめるアスラン。
「・・ごめん。その、悪気はなくて」
 しどろもどろになって謝るアスランに、赤い髪の少女は笑って見せた。
「いえ、いいんです。カワイイですよね、それ」
「ああ・・うん、そうだな」
「プレゼントですか?」
 少女の鋭い質問に、アスランはコクコクと頷いた。
「そうなんだ。その・・あんまり、女の子の趣味はわからないんだけど・・」
(でもあいつ、女の子の趣味でいいんだろうか・・・)
 そんなことを考えるアスランに、カガリの「女で悪かったな!!」という声が響いた。
「これ、良いと思いますよ。私は、他にもいいの見つけたから、どうぞ」
 ふわっとつぼみが開くような笑顔を見せた少女に、アスランは少し頭にひっかかるものを感じながらも、笑顔で頷いた。
「ああ、ありがとう。・・君も、プレゼントかい?」
「そうなんです。お互い忙しくて、ホントは今日が誕生日なんです」
「奇遇だな、俺もなんだ。・・っと、シャトルに乗り遅れたら、今日中につかなくなっちゃうな」
 アスランは、時計を気にした。まだ平気といえば平気だが、なにか一つでも予定通りにならなければ、乗り遅れる可能性はある。
「結構女の子って、気にしないって言いながらそういうの、気にしますよ」
「そ、そうなのか? じゃ、急がないと・・・その、すまないな、譲ってもらって」
「いえ、いいです。彼女さんに、よろしく」
「ありがとう」
 アスランは、先ほどのオルゴールをカウンターに持っていくと、特注の箱に入れてもらい、きれいにラッピングしてもらった。
「それじゃ」
「ええ、また、どこかで」
 少女と笑顔で軽く会釈を交わして、アスランは店を出た。
 数秒がたって、彼女も店から出てきたらしい。カランカラン、という音が背中に聞こえた。
 そして・・・・
「トリィ!」
「トリィ、お待たせ。待っててくれたのね」
「・・・!」
 アスランは、思わず振り返っていた。赤い髪の少女の肩に、自分が作った・・あの、トリィがいる。
 その瞬間、アスランは彼女の顔を記憶の中で引きずり出せた。
「・・・フレイ・・アルスター・・・?」
 キラと一緒に行方不明になった少女だ。2年前に資料でみたきりだったが・・・
 アスランは、トリィを肩に乗せた彼女を見送りながら、優しい微笑を浮かべた。
「キラ、気に入ってくれるかな?」

625 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/26(金) 04:14
一気に書き込んでしまいました。何度か番号を間違えています・・
すみません。暇な時にでも、お読みいただければ嬉しいです。


     〃⌒`⌒ヽ ミё彡   ミё彡 |、 ・)。ョ"⌒` 、
     .i (`')从ノ            ∩ ルハノルノノ〉
     i。ョ。ョゝ ゚ー゚ノi 。/⌒⌒ヽ   へヘ  \リ゚ー゚* ! ル
    / 二]つづ ..|  从从 | @ ⌒⌒ヽ ヽ~ У / 〉
   //巛 》ヽ。ョ∫ノノw*´∀`)ノ〈 ノノ^ リ))  (・>⊂V
   ヾノ"~^ヽ。ョノ ノノヽ。ョ<<∞>>゚ノヽ||*゜ヮ゜|| ' / / ∧\\
    c| ´Д`リ∠ ー 、〜V ⊂〔二⌒)ヽ  ⊂⊃  ⊂⊃
   /二]つ´゚ノ   |_∧__| ノ ノ~ ⌒ノ⌒ノ  .  へ(゚◇゚ )へ ゙
   |__/|_|   _ l // 。ョ| | | ノ ノ ノ ノ      _
    〉_〉_〉   _l_ | | | | | |ノノ ノ  ノθ    ━|_|`⌒ヽ 
  '´   ヾ   |  ( ̄ )( ̄ ) ノ ノθ       i彡三ノ三从
  i ツ"~^"ツ | ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~~~l ̄l      _| 从//Д`ノ|_ 
  ゙、(ト( !)_(!) | ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄l ̄l     |===∪∪==|
  /ニ]つづ| ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄|    l~~~~~~~~~~~~~~~l
  |_/|_| | ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄|  、|゚〜゚〜゚〜゚〜゚〜゚| 。ョ
  | | | | ̄| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄|    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     ______
      \|        (___
    ♪  |\            `ヽ、
.〃⌒⌒ヽ |  \             \ 〜♪♪
(((((`'))。ョ) |   \             〉 
. v b^ -゚ノレ| ♪   \          / 〜♪" .⌒ノメ
( ( / つ| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄! ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ノ   ((( ´゙!リ)) 
┏(_匚______ζ--ー―ーrー´    、゚ヮ ゚从
 ┳┳ (__‖    ||         .||    ......甲⊂)_  !!`
 ┃┃ 、 ‖    ◎         .||    .  │ /  ヾリ ))
.     ◎             .◎    .. │。ョ。ョんムん'ゞ

フレイに、幸あらんことを。

626 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/26(金) 04:15
文字化け・・なんてこったい・・・・
泣けてきた・゜・(つД`)・゜・

627 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/26(金) 08:11
>>625
乙!
イザークが妙にカッコ(・∀・)イイ!
フレイ様の想いがキラを守った。・゚・(つД`)・゚・。
漏れが許可するから最終回の脚本コレにしようよw

628 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/26(金) 08:31
ここだけじゃなくいろんなSSサイトの話のほうが本編より面白いというのも
恐ろしいと言うか泣けてくるよ。

629 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/26(金) 08:36
>>625
乙です…
・゚・(´Д⊂ヽ・゚・
一気に読みました…
さらに・゚・(´Д⊂ヽ・゚・

なんで、本編はこうじゃないんだろうって、思ってしまっていいですか?
あと30分でここまでのエピソードは詰め込めないよね…
職人さん有り難う。
こっちのお話のほうがいいです…
フラガ兄貴…カッコイイし…
モヒトツ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・





ちなみに自作を投下しに来て大作を目の当たりにしてしまい、
ナチュラルに凹み中(滝汗

630 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/26(金) 09:50
…ん〜
でも恥をしのんで投下してみまつ。
まだ執筆途中なので、
一応プロローグ+2話分を…

序盤はエロエロなのでご注意くださいましw

631 名前: 輝く未来へ  −序− 投稿日: 2003/09/26(金) 09:52


ごめんなさい…
わたし、キラに酷いことを言った…
だからずっと、謝りたかった…
もう一度会って、ちゃんと話したかった…

『ごめん… あとで…帰ってから』

苦しそうに、そう呟いたあなたの心には、いったい何がつまっていたの?
すぐ、その時は訪れると思っていた。
キラは強いから。
すぐ、いつものように帰ってきてくれると思ってた。
戦いに疲れて、その心を痛めて、泣きそうになっても、
私の元に、必ず…

間違ったのなら、やり直せばいい。
きっと、やり直せる。
いつの間にか、わたしは、キラを…
誰よりも必要としていたの。


だけど。
キラは戻ってこなかった。
キラはわたしの前から…いなくなってしまった。
あの時伝えられなかった言葉…
お互いが飲み込んでしまった言葉…
もう、決して届くことはないと思っていた。

そう、あの時までは。

632 名前: 輝く未来へ  1−1 投稿日: 2003/09/26(金) 09:55

 ナイトランプに仄かに照らされただけの薄暗い室内に、くぐもった息づかいが二つ絡み合う。
「…あ…っ、フレイ…」
「ん…っ…キラ…ぁ」
 キラは、わたしの胸に顔を埋めている。
 キラの熱い吐息が、わたしの肌に心地よい火照りを与える。
 わたしも思わずキラの頭を抱えるように手を回してしっかりと抱き寄せた。
「フレイ……あの、僕、もう…っ」
 キラが切なそうな声をあげる。
「…や…まだっ…お願い…キス…して」
 わたしは、精一杯の甘ったるい声でおねだりをしてみた。躊躇うようなぎこちなさを残しながら、キラが体を起こす。
「うん…フレイ…」
 目を閉じ、少しあごを突き出すようにキラを待つ。
 はじめはゆっくりと。そして力強く押しつけられるキラの唇。
 わたしは、自分からキラの舌を求めた。
「んっ…ちゅっ…ぴちゃ…っ」
 唾液がいやらしい音を立てる。艶めかしく絡み合うお互いの舌…
 体中のいろんな部分でキラの体温を感じる。
 服の上からはほとんどわからない、キラの逞しい胸板。
 いつも折れそうで、弱々しい表情ばかりで…そんなキラの外見からはギャップがあった。
 …やっぱりコーディネイターなのね、と実感するところでもある…
「んふっ…」
 吐息を吐き出すのと同時に唇が離れ、糸を引くような唾液が二人の唇を結ぶ。
 体を起こしたキラが、横たわるわたしを熱い眼差しで見下ろしている。
 わたしは、両手をひろげてキラを誘った。
「…いいわ…キラ…来て…」
「うん…入れる…よ…」

633 名前: 輝く未来へ  1−2 投稿日: 2003/09/26(金) 09:55

 キラの動きは、まだどことなくぎこちない。ゆっくりとした動作でわたしの両脚を割ると、固くなった自分自身を脚の間に押しつける。
「…あっ…」
「ごめん…まだ、痛い…よね」
 わたしが切なそうな声をあげた為に、キラは腰を引いてしまった。
 正直、まだキラのを受け入れるには痛みが伴う。でも…それだけではない何かがわたしの中には芽生え始めていた。
 キラのを感じてついあげてしまった喘ぎだなんて、さすがに自分でも恥ずかしい…
「いいの…わたし…大丈夫だから…ね、キラ…」
 優しく囁くと、キラは再びわたしに覆い被さってくる。
「…フレイ…っ」
 キラのその吐息と共に吐き出された声と一緒に、わたしたちは繋がった。
 焼けるように熱いキラ自身がわたしの体内に埋まる。
 …さっきのキスよりも、もっと熱く、もっと激しく、そしてはっきりとキラの体温を感じる…
 一度入ってしまうと、もうキラは欲望の赴くままとなる。
 わたしは、ただ、それをじっと受け入れるだけ……
 ただ、耐えるだけ………
 その筈だったのに。
 わたしの中にもこみ上げる、この熱い想いは何?
 荒々しく突いてくるキラに応えるように、わたしも思いっきりキラを抱きしめていた。
「キラ…キラ……ぁっ」
 その名を呼ばずにはいられなかった。
「フレイ…フレイっ…僕…っ、よすぎて…っ」
 キラも耐えられなくなったのか、わたしの名を呼び返しながら突き上げるピッチが上がった。
 じゅぷじゅぷっ…じゅぷっ…
 接合部がお互いの潤滑液でびしょびしょなのがわかる…
 恥ずかしい…
 でも、その気持ちが逆にこの甘美な愛撫を燃え上がらせてしまう。
「僕…もう、イキそう……っ」
 切なそうにキラが呟く。
「いいわ…キラ……わたしはあなたを全て受け止めてあげる……」
 下腹部を繋げたまま、わたしは、キラを精一杯優しく抱きしめた。
「…フレイ………っ」
 キラの体が激しく痙攣するように震え、熱いものがわたしの中に注がれるのをわたしははっきりと感じていた。

……

 そこで、わたしは目が覚めた。

634 名前: 輝く未来へ  2−1 投稿日: 2003/09/26(金) 09:58

 強襲機動特装艦アークエンジェル級二番艦"ドミニオン"…
 そのドミニオン艦内の個室で、フレイ・アルスターはベッドに体を預け、休息を取っていた。

 ベッドの傍らで、目覚ましのアラームが電子音を奏でている。
「…ん〜」
 シーツに包まれたままフレイは手を伸ばすと、そのしなやかな指先でアラームのスイッチに触れる。
 音が消えてから、フレイはもぞもぞとベッドの上で半身を起こした。
「…起きなくちゃ……」
 眠い目をこすりつつ、パネルのデジタルを確認する。
「…3時間ちょっと」
 ふぅっ、と肩を落としてため息をつく。
 さすがにちょっときついな、とは思う。でも、これが自分の選択した道なのだから、と納得しなくてはいけない。
 そろそろ交代の時間だ。しっかり目を覚まして準備しないと、決められた時間に間に合わない。
 部屋の空調は快適に合わせられていたが、やけに肌がべとつく。
 かなり寝汗をかいたらしい。
 シャワーを浴びようと思い、フレイはベッドから降りようとした。
 ふと、股間の違和感に気づく。
「…やだ、濡れてる…」
 そうか、とフレイは思い当たった。
 夢…
 キラとのセックスの、その場面を夢で見てたんだ…
 その為に、彼女の瑞々しい肉体は健気にも反応してしまっていたのだ。
 羞恥心よりも、こんなにも彼を求めてしまう自分自身にフレイはより一層キラへの想いを強くする。
「キラ…っ」
 思わずシーツを胸にしっかりと抱きしめる。涙の粒がいくつもフレイの頬を伝ってシーツを濡らした。
「逢いたい…早く逢いたい…逢って話がしたいよ、キラ…っ」
 こみ上げてくる想いに突き動かされるように激しく嗚咽するフレイ。
 ひとしきり泣いて、泣いて、泣いて…
 やっと落ち着きを取り戻しつつあったとき、コンソールパネルのコールランプが点灯し、呼び出しのブザーが鳴り響いた。

635 名前: 輝く未来へ  2−2 投稿日: 2003/09/26(金) 10:00

 もしかして戦闘?
 と、フレイの心はざわついた。
 戦いへの恐れと、その一方でこの艦・ドミニオンの戦う相手がアークエンジェルであるが故の、ある種の期待感…
 呼吸を整えつつ、寝乱れたままの姿を見られぬように、音声端末だけをオンにする。
「はい。フレイ・アルスターです」
「…良く休めたか? アルスター曹長」
 その凛とした声は、この艦の艦長、ナタル・バジルール少佐だった。
「ありがとうございます。バジルールちゅ…あ、いえ少佐」
「…相変わらずだな。フレイ・アルスター」
 ナタルは苦笑しつつ続けた。
「そろそろ交代時間だが、上がって来られるな? …君も慣れないことばかりで大変だろうが…」
「大丈夫です。これから準備しますけど…」
「…そうか。慌てる必要はないが、なるべく早く心がけてくれ」
「わかりました。艦長」
 そこで通信が切れた。
 良かった…幸い戦闘配備の招集ではないようだ。フレイはほっと胸をなでおろした。
 …いろいろな縁があり、ナタルはフレイをかなり気遣ってくれている。
 この部屋も本来はナタル専用の個室だったが、乗艦している女性兵士がナタルとフレイの二人のみという状況を鑑みて、相部屋ということになっている。
 フレイ・アルスター、彼女の立場そのものも非常に特殊である為、ナタルは実にきめ細やかにフレイの世話を焼いている。
 …以前のナタルからは想像もつかなかったぐらいに。それはナタル自身も感じていることではあったが…
 アークエンジェルにいたときは、フレイにとってもナタルはある意味「怖い」存在だった。
「軍人」然としていて、規律に厳しくて…
 アラスカで一緒に転属を命じられ、二人共々大きな運命のうねりに翻弄された感がある。
 フレイ自身が、ザフトの庇護化にあって今まで見えなかったものが見えてきたように…
 ナタルにとっても大きな心情の変化を余儀なくされた、と言うことなのであろうか…
 ともあれ、今はナタルが頼もしい。フレイにとって、とても頼りがいのある女性になりつつあった。
「とにかく…シャワーだけは浴びておかないと…」
 汗でべとついた肌、そして湿った秘部…曲がりなりにも仕事をしに行くのだから、体を綺麗にして身だしなみは整えないといけない。
 その辺りの気遣いもあったからこそ、ナタルも「慌てる必要はない」と言ってくれたのだ。
 フレイは個室に備え付けのシャワールームに向かった。
 湿った下着を全部脱ぎ去り、コックをひねった。
 たちまち熱いお湯が噴き出し、フレイの肌を打つ。
 生き返る……まさにそんな感じ。
 クヨクヨして、停滞しているわけにはいかない。
 今は、自分から前へ踏み出していかなければならないのだから。
 フレイは全身にまとわりつく澱みを洗い流すかのように、その艶やかな裸体を温水の飛沫に晒した。
「やり直すんだ、絶対…わたしは…それが、みんなへの償い…だもの」

636 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/26(金) 12:20
>>625

(从
(д`*WW 。oO(誕生日が1ヶ月後だなんて、言えないよね…
 ノ :::::::)     
(__::::::)

637 名前: 625 投稿日: 2003/09/26(金) 12:38
>>627
 ありがとうございますヽ(´ー`)ノ
 シャトル撃墜あたりからイザークはあまり好きなキャラではなかったんですが、
最近の変わりようを見て少し気に入りました。
 一応このあとプラントを背負って立つ人間?のようなので、ちと美化しまくってみました。
 ED案はいくつもあったのですが、悩んだ末あーいう感じにしました。
 キラとフレイのF91も考えたのですが、それをやってしまうとエピローグが
余計になってしまうかな、と思えたので、棄却しました。


>>629
 629さんの作品のほうが断然(・∀・)イイ!!ですよ。
 長いこともあり細かい描写がオミットされている自分のよりも、
細かい描写で深く書き込まれた作品の方が素晴らしいです。
 がんがってください(`・ω・´)ヽ
 続き期待してます!


>>636
 Σ(゚Д゚)
 さあ皆さん、4と5をすりかえましょう。
 ・・最後の最後でなにやってんだ自分。ご指摘ありがとうございます、キラ殿・゜・(つД`)・゜・



自分のはプロトタイプと言う感じで、色々書き直してみようかな、と思ってます。
急いだワリには自己満足できるものは出来たかな、という気はしてます。

638 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/26(金) 18:11
>>630
モツカレー。
女性もエチーな夢を見たりするのかな(*´Д`)ハァハァ
キラよ、早く迎えに来い来い!щ(゚Д゚щ)

639 名前: 流離う翼たち・37 投稿日: 2003/09/26(金) 20:04
 突然艦内に警報が鳴り響く。それを聞いたキラとトール、ミリアリアは席を立ち、食堂を飛び出した。だが、そこで1人の女の子にぶつかってしまう。

「あ、ご免、大丈夫・・・・・・」

 ぺったりと尻餅をついてしまった幼女を助け起そうとするが、それを遮るようにフレイが前に出る。

「ごめんねえ、お兄ちゃん、急いでるから」

 フレイは優しい手つきで女の子を抱き起こした。

「また戦争だけど、大丈夫。このお兄ちゃんが戦って守ってくれるからね」
「ほんとぉ・・・?」

 女の子はおずおずとキラを見上げる。フレイは強く頷いた。

「うん、悪い奴はみぃんなやっつけてくれるんだよ」

 キラは女の子に何か言おうとしたが、背後からトールに呼ばれて慌てて走り出した。

「・・・そうよ」

 フレイは呟いた。

「みぃんなやっつけてもらわなくちゃ・・・・・・」
「いたぁい!」
 フレイの手に突然力が篭り、女の子はその手を振り払った。そしてフレイを見上げた女の子は、その表情に恐怖を感じてべそをかきながら駆けて行ってしまった。
 1人残された事に気づくでもなく、フレイは調子の外れた声で繰り返す。

「そうよ、みぃんなやっつけてもらわなくちゃ、せんそうはおわらないんだから・・・・・・」

 ただ1人だけ、そのフレイを見ていた者がいたが、その人影は声をかけることなく立ち去ってしまった。


 迎撃に出たストライクとゼロ、メビウス。対するのはブリッツ、バスター、デュエルだ。
 キースはキラとフラガに通信を入れた。

「俺がローラシア級を仕留めます。大尉とキラはXナンバーを頼みます!」
「やれるか、一人で?」

 フラガが心配そうに問いかけるが、キースは親指を立てて見せた。

「任せてください。航行不能くらいには追いこんで見せます。艦船撃沈スコア6隻の実績を信じてください」
「・・・・・・分かった、帰ってこいよ」

 フラガが許可を出す。それを聞いてキースは一直線にローラシア級巡洋艦ガモフに向った。それを見たニコルが焦った声を上げる。

「緑色のメビウス。まさか、エメラルドの死神ですか!?」
「どうしたニコル?」
「大変です、緑色のメビウスがガモフの方へ!」

 エメラルドの死神は艦船攻撃に長けている。下手したらガモフが沈められかねない。母艦を失ったらいくら3機が強力でも戦闘力を失ってしまうのだ。

「チィィ、どうする、イザーク?」
「俺が戻る、2人はこのまま足付きを!」
「「了解!」」

640 名前: 流離う翼たち・38 投稿日: 2003/09/26(金) 20:05
 デュエルが戻った。バスターとブリッツはそのままアークエンジェルに向って行く。戻るイザークは嬉しそうに呟いていた。

「緑色のMA。あの時はよくもコケにしてくれたなあ。あの屈辱、返させてもらうぞ!」

 前の交戦でストライク撃破を邪魔し、デュエルに傷をつけたMAを許すつもりはイザークには無かった。だが、やはり向こうの方が速く、デュエルの加速では追いつけない。ガモフが一撃加えられるのは覚悟しなくてはならないようだ。

 バスターの相手はフラガのゼロが引き受け、ブリッツの相手はストライクがしていた。ガモフの主砲がアークエンジェルを襲っているが、いきなりその砲撃が止んだ。アークエンジェルではその意味が良く分かっていた。キースが敵艦を捕捉したのだ。

 ガモフでは大騒ぎになっていた。緑色のメビウスが下方から突き上げてきているというのだ。特徴的なメビウスにエメラルドの死神だと判明し、ゼルマン艦長が焦った声で命令を出す。

「撃ち落とせ、奴を懐に飛び込ませるな!」

 対空砲火がキースの前面に弾幕を作り上げるが、キースはそれを難無く突破して全ての火器を叩き込んだ。抱えて来た対艦ミサイルが発射され、レールガンとビームガンが唸りを上げる。バルカンが高速弾を叩きこんでいく。それらは次々に巨大な船体に吸いこまれ、激しい爆発を起した。被弾箇所以外からも誘爆の光が見える

「よっしゃあ、これで航行不能だ!」

 機関部を使用不能に追いこんだと確信し、キースは喝采をあげた。だが、上に出て反転して再攻撃しようとした所で、デュエルが追いついてきた。

「貴様ああああ!!」
「チッ、デュエルか!」

 チラリとガモフを一瞥し、もうアークエンジェルに攻撃できる状態ではないと判断すると、重い推進剤タンクを切り捨てた。どうせ大して残ってはいないし、対MS戦なら機体を軽くしたほうが良い
 キースはデュエルの挑戦を受ける事にした。アークエンジェルの方に戻ることに変わりは無いが、このまま一機引きつけておけば向こうが楽になるからだ。

バスターはちょろちょろと動き回るフラガのメビウス・ゼロに苛立っていた。

「ちょろちょろとうっとおしいんだよ、MA風情が!」
「ええい、後何分稼げばいいんだ!」

 フラガの脅威的な技量がバスターとメビウス・ゼロの性能差を埋めている。その近くではブリッツとストライクが近接戦闘を行っていた。こちらはストライクの方が有利に戦っている。もともと奇襲、偵察機であるブリッツと汎用機であるストライクでは機体の相性が悪すぎた。

「くっそおお・・・・・・これがストライクですか」

 ニコルは初めて戦う強敵に苦しんでいた。ブリッツは近接戦にも対応してるのだが、ストライクの方が遥かに優れているのだ。これと格闘戦をするにはデュエルかイ−ジスでないと駄目だろう。
 仕方なくニコルはミラージュコロイドを展開した。いきなり目の前からブリッツが消えた事でキラが驚く。

「消えた、そんな?」

 慌てて辺りを見まわすが、近くにブリッツの姿は無い。すると、いきなりビームが飛んできた。咄嗟に回避するがそちらにブリッツの姿は無い。

 アークエンジェルはブリッツをロストした事を聞いて、マリュ−がその正体を察した。すぐにビームの射角からブリッツの予想位置を出させ、溜散弾頭ミサイルを装填させる。

「次にブリッツがビームを撃ったら予想位置へミサイルを撃って!」

 マリュ−の指示に従い、ビームが撃たれた位置へ向けてミサイルが発射された。広域に影響を及ぼす榴散弾がブリッツに襲いかかる。ミラージュコロイドを展開中はフェイズ・シフトが使えないので、慌ててミラージュコロイドを切り、フェイズ・シフトを使う。シールドで機体への直撃を阻んだが、もう一度ミラージュコロイドを展開する前にストライクが斬りかかってきた。

641 名前: 流離う翼たち・39 投稿日: 2003/09/26(金) 20:06
 アークエンジェルではMS1機とMA2機でザフトとここまで戦えるという事に驚いていた。キラはともかく、フラガとキースが桁外れた実力を持つからなのだが、マリュ−とナタルは改めて2人の実力を思い知らされていた。

「さすがは、エンディミオンの鷹に、エメラルドの死神ね。あの2人がいなかったらとてもここまで来れなかったわ」
「まだ終わったわけではありません。気を抜かないようお願いします」
「・・・・・・分かってるわ、ナタル」

 気分が良くなっている所に水をさされ、マリュ−は渋面を作った。ナタルは何時もこうだ。常に肩肘を張って、自分の考えに噛み付いてくる。

 暫くするとキースのメビウスがデュエルを連れて戦場に戻ってきた。キースはドッグファイトをしない主義なのでイザークはかなり苛立っている。

「この卑怯者があ。逃げるな、俺と勝負しろ!」

 ビームライフルを撃ちまくるが遠くを高速で動いているキースのメビウスに当てる事は難しい。時折突っ込んできて物凄い火力を叩きつけてくるのでデュエルの機体は無傷ではない。実弾は効かないのだが、ビームガンが掠めた焼け跡があるのだ。
 キースは通信でキラと会話した。

「キラ、こいつも任せて良いか?」
「ちょ、ちょっと、何言ってるんですか!?」
「やっぱ駄目か。こいつしつこいんだけどなあ・・・・・・」

 口調だけ見ると余裕ありそうだったが、実はかなり追い詰められているキース。メビウスのバッテリーではビームガンはそう何度も撃てないのだ。レールガンやバルカンでは効果が薄い。せめてフェイズシフト・ダウンを狙うのが関の山だ。
 ストライクと戦うブリッツだっったが、そのブリッツめがけてアークエンジェルからヴァリアントを使うと言ってきた。

「キラ、ブリッツから離れて。ヴァリアントを使うわ!」
「分かった!」

 キラのストライクが僅かに後退する。それを追おうとしたニコルは、嫌な予感がして周囲を確かめ、思わず絶叫を放った。

「ね、狙われてる!?」

 アークエンジェルから強力なレールキャノンが2発放たれ、ブリッツを襲う。一発目は外れたか、二発目がブリッツのトリケロスを捕らえた。シールドとしても使えるのだが、このヴァリアントの大口径砲弾の直撃は凄まじいと言う言葉では表現しきれないダメージを与えた。フェイズ・シフト装甲は実体弾を弾き返すのだが、この場合はもうそういうレベルでは無く、左肩のジョイント部から引き千切れ、吹き飛ばされてしまったのだ。

「うわあああああ!!」

 衝撃に悲鳴を上げるニコル。左腕以外にもダメージが及び、機体内にアラームが響き渡る。もはやブリッツに戦闘力は残されていなかった。
 
 ブリッツが後してもなお攻撃を続けようとするイザークとディアッカ。だが、2人は時間が無くなっている事に気づかなかった。それに気付いたのはニコルだった。タイムリミッタが来たことに顔色を変える。

「イザーク、ディアッカ、時間切れです。敵艦隊が来る!」
「ちい、ここまでかよ!」

 ディアッカは収束砲をぶっ放してフラガを牽制した後、後退しようとしたが、イザークがまだ退こうとはしない。

「何やってるんだイザーク、撤退だぞ!」
「ふざけるな、ここまで来て逃げられるか!」
「イザーク、敵艦隊が来るんです。あの大軍をバッテリーが無い僕らで相手取るつもりですか!?」

 近づいている連合第8艦隊は30隻を擁する大部隊だ。この部隊をたった3機のMSで戦おうなど、自殺行為でしかない。

「く、く・・・くっそおおおおおおっ!!」

2人がかりで説得されて、遂にイザークも後退を受け入れた。
 後退していく3機を見送り、キラはほっと安堵のため息を吐いた。地球の方から大艦隊が近づいて来る。その威容は、これまでの戦いで疲れ切ったアークエンジェルクルーの心に深い安心感を与えるだけの効果があった。フラガやキースでさえ嬉しそうに表情を緩め、近づいて来る第8艦隊旗艦メネラオスの巨体を見やっている。
 ようやくアークエンジェルは友軍と合流できたのだ。

642 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/26(金) 20:32
>輝く〜

おおお、乙フレです。
フレイ様がけなげに頑張る姿を応援しつつハァハァ(;´Д`)

643 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/26(金) 21:21
>>593
おもしろそうだな、やってみたい。
地球軍ルートフレイ様でゲッツできるイベントはあるんですかw
あと28話で別れない方法は「間違ったんだ」の後
>>後を追う
>>部屋にこもる

などないでつか?
むしろそれをネタにSSかきてえ。

644 名前: 流離う翼たち・40 投稿日: 2003/09/27(土) 20:55
「180度回頭、減速、相対速度あわせ」
「しっかし、良いんですかね。メネラオスの横っ面なんかにつけて?」
「ハルバートン提督がこの艦を良くご覧になりたいでしょう。自らこちらにおいでになるというし」
 マリュ−は微笑みながら言った。知将ハルバートン、Xナンバー計画機とアークエンジェルの建造計画を強行に推進した連合の名将。マリュ−の直属の上司とも言える人物だ。
 艦が慣性航行に移ると、マリュ−は後を部下に任せて自分はエレベータ−に向った。その後をナタルが付いてくる。2人はエレベーターの中で向かい合った。
「ストライクのこと、どうなさるおつもりですか?」
「どうとは?」
「あの性能だからこそ、彼が乗ったからこそ、我々がここまで来られたのだという事は、すでに誰もが分かっていることです!」
 ナタルの意図を悟り、マリュ−は顔を顰めた。ナタルはそんなマリュ−の内心など気にせず話を進める。
「彼も艦を降ろすのですか?」
「ナタル、キラ君は軍人じゃないのよ」
「ですが、彼の力は貴重です。それをみすみす・・・・・・?」
「力があると言って、彼を強制的に徴兵することは出来ない。そうでしょう?」
 マリュ−の言うことは正論だが、ナタルは不満そうであった。


 艦隊と合流したキラは、頑張って最後の仕事を終えようとしていた。キースに頼まれたシグーのOS改造。それを完成させたかったのだ。下の方では傷付いているフラガのメビウス・ゼロに整備兵やフラガ、キースが群がって直している。
 何故こんなに急いでゼロを直すのかがキラには分からなかった。これだけの規模の艦隊に仕掛けて来る敵がいるとも思えないのだが。
 そんなことを考えてると、コクピットの入口に誰かがやってきた。
「あら、何をしてるの、キラ君?」
「え・・・・・・艦長?」
 来たのはマリュ−だった。マリュ−は興味津々そうにキラの手元を見ている。
「OSの改造・・・・・・何でそんなことを?」
「キースさんに頼まれたんですよ。これが最後の仕事だと思うと、投げ出せなくて」
「そう」
 マリュ−はこの生真面目な少年を微笑ましく見ていた。そして、優しい声でキラに話し掛けた。
「今までこうして君と話す余裕も無かったわね」
「はあ・・・・・・」
 キラの顔に僅かな警戒心が浮かぶ。マリュ−はそんな彼を安心さえようと微笑んだ。
「その、一度、ちゃんとお礼を言っておきたかったのよ」
「え・・・・・・?」
「あなたには、本当に大変な思いをさせたわ。いままでありがとう」
マリュ−は深々と頭を下げた。思いもかけぬマリューの行動にキラは動転してしまう。
「いや、そんな、艦長・・・・」
 赤くなってしどろもどろとしていると、マリュ−がニッコリと笑いかけてきた。
「口には出さなくても、みんなあなたには感謝しているのよ。バゥアー中尉なんかは手放しの褒めようだったわ。こんな状況で地球に降りても大変でしょうけど、頑張って」
 マリュ−は片手を差し出した。キラは戸惑いながらもその手を握る。その手は暖かかった。


 そんなマリュ−を少し離れた所からじっと見ていたナタルの視線は冷たい。だが、そんな肩をキースが叩いた。驚いてナタルが振りかえる。
「バ、バゥアー中尉」
「どうしたの、覗き見なんかして?」
 キースの問われたナタルはキッとキースを睨みつけた。
「中尉も、キラ・ヤマトを降ろすのに賛成なのですか?」
「まあ、あいつは民間人だからねえ。当然でしょ?」
「ですが、彼の力は!」
 詰め寄るナタルに、キースは諭すように話した。
「なあ、バジルール少尉、俺たちは何の為に戦ってるんだ?」
「決まっています、この戦争に勝利するためです」
「・・・・・・俺は違う。俺は、最初は復讐の為に軍に入った。だが、今は・・・・・・」
「中尉、それは」
 ナタルも聞いた事があった。エメラルドの死神、キーエンス・バゥアーは、昔は気が狂っているのではないかと囁かれるほどに恐ろしい男だったと。それが今はこんな飄々とした性格をしている。噂に出てくる男と、目の前の男は余りにも違いすぎる。何がこの男にあったというのだろうか。
 同時に、ナタルは考えさせられてしまった。自分は、何のために戦うのだろう、と。

645 名前: 流離う翼たち・41 投稿日: 2003/09/27(土) 20:57
 アークエンジェルに1人の長身の将官が降りてきた。この人物こそ月に駐留する第8艦隊司令官、ハルバートン提督である。マリュ−たちがいっせいに敬礼した。
「閣下、お久しぶりです!」
「ナタル・バジルールであります」
「第7機動艦隊所属、ムウ・ラ・フラガであります」
「同じく、キーエンス・バゥアーであります」
「おお、君らがいてくれて助かった」
 ハルバートンがフラガとキースに労いの言葉をかける。
「いえ、さして役にも立ちませんで」
 提督は士官たちとの挨拶がすむと、今度は後ろの方で整列しているキラたちに目を向けた。
「ああ、彼らがそうかね」
キラたちは提督がこっちにやってくるのを見て慌てて背筋を伸ばした。
「はい、繰艦を手伝ってくれたヘリオポリスの学生たちです」
 マリュ−が誇らしげに紹介してくれるのを、彼らはくすぐったい気持ちで聞いていた。彼らを1人1人見つめるハルバートンの目は優しかった。
「君達のご家族の消息も確認してきたぞ。皆さん、ご無事だ」
 みんなの顔がぱっと明るくなった。何より嬉しい朗報であった。
「とんでもない状況の中、良く頑張ってくれたな。私からも礼を言う。あとで、ゆっくりと話をしたいものだな」
 提督と聞くと、お堅いイメージがあるが、このハルバートンはとても気さくで意外な印象をキラたちに与えていた。だが、この人がマリュ−の上司というなら何故か納得できてしまう。
 ハルバートンはマリュ−たちと一緒に去ってしまった。その後姿を見送りながら、キラはあの人と話がしてみたいと思っていた。


「ツィーグラー、エデス、合流しました」
「ふむ、ガモフは無理だったのか」
「残念ですが、大破しております。MSはエデスに移されていますが、ストライクと交戦したブリッツも損傷が大きく、今回は作戦参加は不可能という報告がきております」
「こちらの戦力は?」
「ツィーグラーにジンが6機、こちらにイージスを含め、5機、エデスにバスターとデュエルを含め5機」
 アデスの読み上げる数字を聞いて、クルーゼはしばし勝算と損害を天秤にかけた。そしてふっと底冷えのする笑顔を作る。
「知将ハルバートン、か。そろそろ退場してもらおうか」

646 名前: 流離う翼たち・42 投稿日: 2003/09/27(土) 20:57
 アークエンジェルではトールたちがナタルから除隊許可証を渡されていた。狐にでも包まれたかのような顔でそれを受け取った4人にハルバートンの副官のホフマン大佐が説明する。
「例え非常事体でも、民間人が戦闘行為を行えば犯罪となる。それを回避するため、君らは日時を遡って志願兵として入隊していたことにしたのだ。無くすなよ」
 ややこしい処置だと思ったが、必要なことと言われれば仕方ない。それに、降りられることには変わり無いのだから。
 まだ説明を続けるホフマンに向って、遠慮がちに声をかけた者がいた。フレイだった。ナタルが不審げに彼女を見る。
「君は戦ってないだろう。彼らと同じ措置は必要無いぞ」
「いえ、そうでは無くて・・・・・・」
 フレイは俯き気味に前に出て、目に決意を秘めて顔を上げた。
「私、軍に志願したいんです」
 一瞬誰もが呆気に取られ、ついで驚愕した。サイまでが驚いた顔をしているという事は、彼も聞かされていなかったのだろう。ナタルは眉を顰めた。
「何を馬鹿なことを」
「いいかげんな気持ちで言ってるんじゃありません!」
 フレイは必死に食いさがった。
「先遣隊と共に父が殺されて、私・・・色々考えたんです・・・・・・・・・・」
「では、君がアルスター事務次官の・・・・・・」
 ホフマンが思い当たったように頷いた。フレイは小さく頷く。
「父が討たれた時はショックで・・・もう、こんなのは嫌だ。こんな所にはいたくない。と、そんな思いばかりでした・・・・・・でも、艦隊と合流できて、やっと地球に降りられると思った時、何かおかしいと思ったんです」
「・・・・・・おかしい?」
 ナタルが聞き返すと、フレイは頷いた。
「だって、これでもう安心でしょうか。これでもう平和なんでしょうか。そんな事、全然無い!」
 フレイは激しく首を振り、潤んだ瞳でナタルを見た。
「世界は、依然として戦争のままなんです」
 誰もが言葉も無く、彼女の言葉を聞いていた。
「私、中立の国にいて全然気づかなかった・・・・・・父は戦争を終わらせようと必死に働いていたのに」
 フレイの言葉は、トールたちにも言えることだった。自分たちの周りの平和が、どれほど幸福なことかさえ知らなかったのだ。
「本当の平和が、本当の安寧が、戦わないと得られないのなら、私も・・・父も遺志を継いで戦いたいんです!」
 フレイの言葉はトールたちに大きな衝撃を与えていた。これで地球に降りられると喜んでいるだけだった自分たち。だが、戦争は依然として終わらない。共に戦ったこの艦の人たちはこれからも戦い続けるのだ。
 ふいに、サイが自分の除隊許可証を引き裂いた。
「サイ!」
「フレイの言ったことは、俺も感じていたことだ。それに、彼女だけ置いていけないしさ」
 その言葉を聞いて、トールの決意も固まった。彼が許可証を破り捨てると、ミリアミアが驚いた目で彼を見る。
アークエンジェルは人手不足だからな。俺が降りた後に艦が沈められたら、なんか嫌だし」
 すると
「トールが残るなら、私も」
「みんなが残るって言ってるのに、僕だけじゃな」
 ミリアミアとカズィが続いた。結局、みんな残ることにしたのだ。
 トールはまだ残されているキラの除隊許可証を見、キラの立場が自分とは全く違うことを思い出す。
「あいつは、降りるよな」
 寂しげに、トールは呟いた。

647 名前: 流離う翼たち・42 投稿日: 2003/09/27(土) 20:57
 キラはストライクを見上げていた。乗っていた間に良い思い出などありはしなかった。だが、いざ降りるとなると一抹の寂しさも感じるのだ。
 その背後から声をかけられた。
「降りるとなると、名残惜しいのかね?」
 振り返ると、どこにはハルバートン提督がいた。
「キラ・ヤマト君だな?」
 まさか名前を知っているとは思わなかったキラは驚きながらも頷く。
「報告書にあったんでね。しかし、改めて驚かされるよ。君達コーディネイターの力というものにな」
 ハルバートンの言葉にキラは身を固くしたが、ハルバートンの目は二心があるようには見えなかった。
「ザフトのMSに攻めて対抗せん、と造った物だというのに、君らが扱うととんでもない怪物になってしまうようだ」
「え、ええと・・・・・」
 キラは返答に詰まってしまった。色々話したい事はあるのだが、いざとなると上手く言葉にならない。ハルバートンはそんなキラを温かい目で見ていた。
「君の両親は、ナチュラルだそうだが?」
「え、あ・・・・・・はい」
「どんな夢を託して、君をコーディネイターとしたのか」
 キラは動揺した。今までそんな事を考えた事も無かったからだ。
「なんにせよ、早く終わらせたいものだな、こんな戦争は」
 その時、キャットウォークの向こうから一人の士官がやってきてハルバートンに何事かを報告した。ハルバートンは肩を竦めるとキラを見上げる。
「やれやれ、君らとゆっくり話す暇も無いわ」
 ハルバートンは改めてキラを見ると、しっかりした口調で言う。
「ここまでアークエンジェルとストライクを守ってもらって感謝している。良い時代が来るまで、死ぬなよ!」
 そのまま身を翻して帰ろうとするハルバートンにむかって、キラは遠慮がちに尋ねた。
「あの・・・・・・アークエンジェルは、ラミアス大尉は、これから?」
「アークエンジェルはこのまま地球に降りる。彼女らはまた、戦場だ」
 当たり前の様にハルバートンは答えた。そうなのだ。マリュ−達は軍人であり、アークエンジェルは戦艦なのだから。だが、自分がいなくて誰がストライクを動かす。どうやってこの艦を守るのだ。
 悩むキラを見て、ハルバートンは足を止めた。
「君が何を迷っているのかは分かる。確かに魅力的だ、君の力は。軍にとってはな」
 キラはハルバートンの顔を見た。だが、その顔には自分を利用しようとする様子は見受けられない。まるで孫を見るかのような優しい目をしている。
「だが、君がいれば勝てるというものでもない。戦争はそんな甘いものではない。自惚れるなよ」
「で、でも、『出来るだけの力があるなら、出来る事をしろ』と!」
「その意思が、あるならだ!」
 キラは言葉を飲んだ。
「意思の無いものに、なにもやり抜く事は出来んよ!」
 そう言ったハルバートンの目には、確かに強い意思の光が宿っていた。

648 名前: 流離う翼たち・43 投稿日: 2003/09/27(土) 20:58
 キラはストライクを見上げていた。乗っていた間に良い思い出などありはしなかった。だが、いざ降りるとなると一抹の寂しさも感じるのだ。
 その背後から声をかけられた。
「降りるとなると、名残惜しいのかね?」
 振り返ると、どこにはハルバートン提督がいた。
「キラ・ヤマト君だな?」
 まさか名前を知っているとは思わなかったキラは驚きながらも頷く。
「報告書にあったんでね。しかし、改めて驚かされるよ。君達コーディネイターの力というものにな」
 ハルバートンの言葉にキラは身を固くしたが、ハルバートンの目は二心があるようには見えなかった。
「ザフトのMSに攻めて対抗せん、と造った物だというのに、君らが扱うととんでもない怪物になってしまうようだ」
「え、ええと・・・・・」
 キラは返答に詰まってしまった。色々話したい事はあるのだが、いざとなると上手く言葉にならない。ハルバートンはそんなキラを温かい目で見ていた。
「君の両親は、ナチュラルだそうだが?」
「え、あ・・・・・・はい」
「どんな夢を託して、君をコーディネイターとしたのか」
 キラは動揺した。今までそんな事を考えた事も無かったからだ。
「なんにせよ、早く終わらせたいものだな、こんな戦争は」
 その時、キャットウォークの向こうから一人の士官がやってきてハルバートンに何事かを報告した。ハルバートンは肩を竦めるとキラを見上げる。
「やれやれ、君らとゆっくり話す暇も無いわ」
 ハルバートンは改めてキラを見ると、しっかりした口調で言う。
「ここまでアークエンジェルとストライクを守ってもらって感謝している。良い時代が来るまで、死ぬなよ!」
 そのまま身を翻して帰ろうとするハルバートンにむかって、キラは遠慮がちに尋ねた。
「あの・・・・・・アークエンジェルは、ラミアス大尉は、これから?」
「アークエンジェルはこのまま地球に降りる。彼女らはまた、戦場だ」
 当たり前の様にハルバートンは答えた。そうなのだ。マリュ−達は軍人であり、アークエンジェルは戦艦なのだから。だが、自分がいなくて誰がストライクを動かす。どうやってこの艦を守るのだ。
 悩むキラを見て、ハルバートンは足を止めた。
「君が何を迷っているのかは分かる。確かに魅力的だ、君の力は。軍にとってはな」
 キラはハルバートンの顔を見た。だが、その顔には自分を利用しようとする様子は見受けられない。まるで孫を見るかのような優しい目をしている。
「だが、君がいれば勝てるというものでもない。戦争はそんな甘いものではない。自惚れるなよ」
「で、でも、『出来るだけの力があるなら、出来る事をしろ』と!」
「その意思が、あるならだ!」
 キラは言葉を飲んだ。
「意思の無いものに、なにもやり抜く事は出来んよ!」
 そう言ったハルバートンの目には、確かに強い意思の光が宿っていた。

649 名前: 流離う翼たち・44 投稿日: 2003/09/27(土) 20:58
 敵の接近が知らされたことでアークエンジェルではランチの発進が急がれていた。キラもデッキにやってきたが、そこに友人たちの姿は無かった。暫く待っていると、子供特有の甲高い声が響き、振り返った。避難民のマスコット的な存在だったあの女の子がキラを見つけて飛び出してきたのだ。
「おにいちゃん、これ」
 女の子が差し出してきたのは、折り紙の花だった。キラは目を瞬かせる。
「僕に?」
「うん、いままでまもってくれて、ありがとう」
 キラは振るえる手でそれを受け取った。女の子はにこやかに手を振ると、母親の方へと戻って行く。キラはその手に折り紙の花を持ったまま、じっとその後姿を追っていた。
 その時、いきなり背後からヘッドロックをかけられた。こんなことをする奴は決まっている。
「止めろよトール!」
 笑いながら振り返ったキラは言葉に詰まった。仲間たちは何故か連合軍の制服のままだったのだ。怪訝な顔のキラに1枚の紙を突き付ける。
「これ、持って行けって。除隊許可証」
「え?」
「俺達、残る事にしたからさ」
「残る?」
「アークエンジェルにさ」
 キラは目を見開き、仲間たちの顔をまじまじと見た。
「どういう事・・・なんで・・・・・・?」
「フレイが志願したんだ。それで俺達も」
サイが答え、キラが更に驚愕する。まさか、彼女が志願するとは思っていなかったのだろう。
 そして、艦内に警戒警報が響き渡る。
「総員第1戦闘配備、繰り返す、総員第1戦闘配備!」
 みんなが反射的に振りかえり、持ち場へ向おうとする。背後から声がかかった。
「おい、そこの。乗らんのか、出すぞ!」
「待ってください、こいつも乗ります!」
「トール!?」
 トールはキラの肩をぐっと掴み、しばしその顔を見つけた。そしてニッコリと笑う。
「これも運命だ。じゃあな、お前は無事に地球に降りろよ!」
「元気でね、キラ!」
「生きてろよ!」
「何があっても、ザフトには入らないでくれよ!」
 仲間たちの別れの言葉に、キラは顔を俯かせた。取り残されたという焦燥感と、これで良いのかという迷い。自分は、何の為に戦ってきたのだろう。次々に浮かんでくる友人たちの顔。そして、赤い髪の少女の顔が浮かんでくる。
 悩むキラの背後からランチの搭乗員の急かす声が聞えてくる。その声に弾かれるように、キラは決断した。
「行ってください!」
 キラは床を蹴った。後にくしゃくしゃになった除隊許可証を残して。

650 名前: 流離う翼たち・45 投稿日: 2003/09/27(土) 20:58
マリュ−はハルバートンの指示でメネラオスの傍にいた。各武装が次々に起動し、戦闘準備が進んでいく。格納庫ではフラガとキースが緊急発進の準備を終えていた。
「艦長、メビウス・ゼロ、出撃する。ヒヨッコどもだけじゃ持たない!」
「ですが、大尉」
「艦長、俺からも頼みます。第8艦隊だけでは持ちこたえられない!」
 フラガだけでなく、キースまでが出撃許可を求めてきた。暫く黙考していたマリュ−も遂に頷く。
「分かりました、出撃してください!」
「「了解!」」
 2機のMAが飛び出して行く。それを合図に戦闘準備が一気に進みだした。艦橋が騒然とした空気に包まれる。
そこに降りたはずのヘリオポリスの学生たちが飛び込んできた。
「あなたたち・・・・・・」
 マリュ−が呆然として呟く。
「志願兵です。ホフマン大佐が承認し、私が受領しました」
事情を知っているらしいナタルが報告する。
「あ、キラは降ろしました」
「俺達じゃあいつの変わりにはならないでしょうけど」
サイとトールがマリュ−に教える。トールはノイマンに合図を送り、トノムラは背後の2人を見て笑みを浮かべる。はじめは驚いていたクルーたちも、今は嬉しそうに彼らを受け入れていた。
 マリュ−は彼等の決意をありがたいとは思ったが、同時に重荷にも感じてしまう。彼らの決意は余りにも甘く、愚かだ。後の人生にこの決断はどのような影響をもたらすのだろうか。
 キラがパイロットルームに飛び込むと、そこには先客がいた。
「フレイ・・・・・・?」
 キラが声を上げると、彼のロッカーを前にたたずんでいた少女が弾かれた様に振り向いた。
「キラ・・・・・・・降りたんじゃなかったの?」
 次の瞬間、フレイはキラの胸に飛び込んだ。柔らかい質感にキラは戸惑う。
「フ、フレイ・・・・・・なんで?」
「あなた、行っちゃたかと思ってた・・・・」
 以前から憧れていた少女に至近距離から見つめられ、キラは冷静な思考が出来なくなっていた。そんなキラの様子に気づいていないのか、フレイは続ける。
「私・・・みんな戦ってるのに・・・最初に言い出した私だけが何もしないなんて、だから・・・・・・」
 キラはようやくフレイがなんでここにいたのかを悟った。中からパイロットスーツが覗いているのを見て、フレイの意図に気づく。
「まさか!」
 フレイを引き剥がし、じっと彼女を見る。こんな華奢な体で、あのストライクに乗ろうとしていたのか。そこまで決意していたというのか。
「・・・・・・無理だよ、君には・・・・・・」
「でも・・・」
 諦めそうも無いフレイに、キラは微笑んだ。
「大丈夫、ストライクには僕が乗るよ。フレイの分も」
「なら・・・・・・」
 フレイは自分の体をキラにすり寄せた。
「私の思いは、あなたを守るわ」
 フレイの顔が近づき、唇が重なる。その熱い吐息に、その言葉に、キラは酔った。
 パイロットスーツに着替えて出て行くキラを見送って、フレイは自分の唇をそっと拭った。コーディネイターなんかとキスをしてしまったという屈辱が心に暗い影をおとす。だが、同時にもう1つの何かが過去に聞いた言葉を思い出させた。
「アスランは、僕が月にいた頃の友達なんだ」
「アスランはザフトにいたんだ・・・・・・」
「イージスのパイロットになって・・・・・・僕と戦ったんだ」
 フレイは浮かんできたその言葉を必死に否定しようとした。俯き、両手で体を抱きしめる。その口から漏れるのは、呪詛の言葉。
「そうよ、キラはコーディネイターを殺して、殺して、そして最後には自分も死ぬのよ。そうでなくちゃ、許さない・・・・・・そうじゃないと、いけないんだから」

651 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/27(土) 21:23
>>644-650
乙! なんか、少し昔を思い出してしまいました(´・ω・`)

652 名前: 流離う翼たち・作者 投稿日: 2003/09/27(土) 21:34
あと少しで第1クールが終わります
第2クールはmomentを意識して、いろんな人達が答えを求めてさ迷います
その結果、幾人かは本編とは全く違う答えを見つけ、歩き出します
第2クールからストーリーが本編とは大きく離れて行く予定ですので、ご期待下さい

653 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/27(土) 22:09
>>650
乙…でもさ、後藤の小説まんまな部分は…
ともかく2クール編に期待。

654 名前: クローン・フレイ 投稿日: 2003/09/28(日) 02:16
はじめまして。
シャア専用板のころから、ずっとフレイ・スレを見させてもらってきましたが、
今回、初めての書き込みで、SS を投稿させていただきます。

最終話の展開に決して不満がある訳では無いのですが、
フレイとクルーゼの関係が明かされなかったことで、
自分なりに、こんな展開は、どうかということで考えていたもの公開してみます。

内容は46話のすぐ後に考えて、序盤とラストだけの6章を書いていたものです。
これに最終話を見た後、[脱出艇][ジェネシス][宇宙]の3章を追加して、
最低限、本編と違う部分のみ話をつなげました。

話は、46話のメンデルの話の、すぐ後から始まり、本編から必要な部分だけを
章ごとに拾い上げています。

では、よろしくお願いします。

655 名前: クローン・フレイ1/9 投稿日: 2003/09/28(日) 02:17
[ドミニオン]

フレイを目の前にして、アズラエルが話す。
「連邦事務次官ジョージ・アルスター。この人、ちょっと疑問の多い人物でね。
経歴が、今ひとつはっきりしないんですよ。まるで、だれかが、
戸籍を偽って別人になりすましたように。」

「パパが、そんな訳ないわ」フレイは反論する。

アズラエルは無視して、さらにショッキングな内容を続ける。
「それに、娘がいるというのは間違い無いみたいですが、
結婚した記録が無いんですよ。それどころか、当人、
女性嫌いで内縁の妻も無いという話です。
じゃあ、娘っていったい、どこから生まれたのでしょうね」

「そんな...」フレイは息を飲む。

「それと、お嬢さんのお顔、財界の古い方には、何か記憶があるのですよね。
これ考えると、先程のアルスター事務次官の正体も自ずとわかりそうなものです。」

「何が言いたい」ナタルが言う。

「さあ。でも、お嬢さんには、ちょっと興味がありますね。
鍵っていうのは、お嬢さん自身のことかもしれませんよ」

656 名前: クローン・フレイ2/9 投稿日: 2003/09/28(日) 02:18
[アークエンジェル]

「キラ、大丈夫ですか」ラクスが聞く。
「ごめん、ラクス。もう大丈夫だよ。それより怪我をしたムウさんが心配だ。
ちょっと、アークエンジェルへ行ってくる。」
キラは ランチでアークエンジェルへ向かう。

アークエンジェルの医務室で、ベッドに横たわるムウにマリューが話している。
「お母さんのことは覚えていないの」
「記憶が無いんだ。親父が毛嫌いしていて、物心ついたころには、
ほとんど、お袋と顔を合わせることは無かったから。」

メンデルの研究所から持ってきた資料を見ていたマリューは、
ふと、クローンについての記述に目を留める。

「ムウ! クローンはクルーゼだけでは無いみたいよ。成功例として
上がっているものもあるわ」
「なんだって! じゃ、実際に何人かクローンがいる訳か、
そんなこと知れたら、コーディネータ以上に大騒ぎになるぞ」

「ムウ!!! これ。」
資料をめくったマリューは、真っ青な顔で資料を指差す。

成功例 被験者 xxx.フラガ 女性

「なんだって !!、お袋 !?」フラガは叫ぶ。そして、それに
付けられた写真。赤毛で大きな目の、人を引きつける女性。
それは年齢は重ねているが、フレイ・アルスターに驚くほど
よく似ている。

「なんてこった。かんべんしてくれよ。クルーゼが親父ってだけでなくて、
あのお嬢ちゃんが、お袋のクローンだって。しかも成功例の」
「こんなことが知られたら... あ」

マリューは気づかなかった、いつの間にか医務室の扉が開いていたことを。
そこには、顔面蒼白にしたキラが立っていた。

「キラ君!」叫んで、マリューは思わず資料を落とす。

つかつかと歩み寄ったキラは、資料を手に取り、そのフレイそっくりである
ムウの母親の写真をまじまじと見つめた。

「キラ!!」ムウが叫ぶ。その瞬間キラは踵を返して医務室から走り出す。
「キラ!! 待て!! イチチ」ムウは追いかけようとするが、傷が癒えていない。
「私が行くわ。」マリューが代わりに走り出るが、既にキラの影は無かった。

その時、アラートが鳴る。宇宙に大きな光が。核が使われたのだ。

657 名前: クローン・フレイ3/9 投稿日: 2003/09/28(日) 02:19
[プラント]

核攻撃を受けて慌ただしいザフト内で、クルーゼはひそかに
笑みを浮かべる。

そして、己自身蒔いた、もうひとつの「鍵」の行方に思いをめぐらす。
フレイを乗せたポッドの緊急回線。あれは、フレイに、一つめの「鍵」
Nジャマーキャンセラーのディスクの存在を連邦に伝えさせるためのものだったが、
クルーゼの予測もしない、もうひとつの「鍵」の成果を伝えてくれた。

「フレイーーー!!!」
「キラーーーー!!!」
明らかに恋仲を示す二人の通信に、クルーゼは嘲笑を隠せなかった。

(傑作だ!! 人工子宮から生産されたコーディネータと、
クローン成功例、人としてあらざるもの同士のカップルなんて)

例え、核戦争が回避されようとも、あの二人の存在は、人類という
種に新たな混乱を生むのだ。そして、いずれ生命の尊厳さえ忘れた
人類は化け物を作りつづけ破滅するのだ。

658 名前: クローン・フレイ4/9 投稿日: 2003/09/28(日) 02:19
[エターナル]

修理の終わったフリーダムで出撃するキラに、ラクスは
一人駆け寄って、想いを打ち明ける。

「アークエンジェルで出会う前から、私、キラのことが好きでした」
「ラクス... ?」

「キラは覚えていないかもしれませんが、私も昔、月の幼年学校にいたのです」
「!! .... それじゃ」

(桜の散る並木で一人待つキラを、もの影から切なげに見つめる少女の映像)

ラクスは、うなずく。

「知っていたのです、あなたのことを。あなたのやさしさを、あなたの強さを」

「どうして、あのアークエンジェルで出会ったとき...」
キラは、驚きを隠せずに聞き返す。

ラクスは表情を曇らせる。
「あのときは、決められた婚約者に従うことしか許されなかったのです。
それに、婚約者のアスランのことも本当に好きでした。
でも...

怪我をしたキラをマルキオ様がお連れしてから、私は、
キラのことしか考えられなくなっていました。」

ラクスは、アスランのことを想い話を続ける。
「アスランのことは、いくら償っても償いきれないと思います。
でも、私は自分の気持ちに嘘はつけませんでした。」

だが、今のキラには、ラクスの想いを、素直に受け止めることはできなかった。
「ラクス、僕は...」

ラクスはキラの言葉をさえぎるようにして、胸に飛び込む。

「キラ! 今は何も言わないで。戦争が、すべてが終わった後で...
だから、キラ、必ず帰ってきてください。必ず...」

やや、あってキラはラクスに告げる。
「分かった。ラクス、必ず帰ってくるよ。約束する」

ラクスはうなずいた。

659 名前: クローン・フレイ5/9 投稿日: 2003/09/28(日) 02:20
[脱出艇]

「アズラエルめ、鍵を二つも与えたのに不甲斐ないやつだ。回収させてもらう」
クルーゼの乗るプロビデンスがフレイの乗る脱出艇に近づく。

クルーゼの気配を察知したキラのフリーダムが、それを阻止に回る。
プロビデンスのファンネルが、フリーダムを圧倒する中、二機の放出する
Nジャマーキャンセラーの波動で周囲の通信妨害も解かれていく。
それは、フレイのノーマルスーツに接続した携帯用無線機 (通信管制の
特訓を受けた教官から、どんな事態があっても、これだけは持っていけと
言われた) にも、戦う二人の会話が明確に聞き取れた。

フレイは叫ぶ。「二人ともやめて、もうやめて」

「ほう、君も話を聞きたいか。フレイ・アルスター。君は、また私の手に戻ってくるのだよ。
鍵として」クルーゼがフレイの通信に答える。
「やめろ、そのことをフレイに言っちゃだめだ」キラも通信に割り込む。

「え! 何なの」驚くフレイにクルーゼは続ける。
「キラ君は知っているようだな。
フレイ君。君は、クローン人間なのだよ。私と同じ。私が、君のお父さんジョージ・アルスター、
いや、その正体はアル・ダ・フラガのクローンであるように。
君は、その妻であった女性のクローンなのだよ」
「やめろ!!!」キラが絶叫する。

「私が、クローン...」フレイは呆然とする。
「そう君は人にあらざるもの。そして、このキラ君も、また人工子宮により、人間からでは無く
機械から産み出された呪われたコーディネータ。君たち二人は、この戦争の後も、
また、愚かな争いの種になってもらわなくてはならない。殺しはしないよ。
二人とも私の手の中に戻るが良い」クルーゼは勝ち誇ったように言った。

「そうは、させない! フレイも僕も、お前の望みどおりにはならない」
キラのフリーダムの速度が急に上がった。堪らず、クルーゼのプロビデンスは、
ファンネルでビームの弾幕を張り後退する。その間に、キラはフレイの脱出艇の
近くに回り込む。

「フレイ !!!」
「キラ!!!」
「フレイ、僕は...作られたもの...だけど...」
「キラ!! そんなこといい。コーディネータでもなんでもいい。私がクローンとかどうでもいい。
キラはキラだもの。私は私だもの。私、キラに会いたかったから」
「フレイ、僕も会いたかった」
「キラ会いたい。今すぐ会いたい。会って伝えたい。好きなの。好きって言いたいの。キラ!!」
「フレイ!!!」

フリーダムが脱出艇に近づく。窓際にフレイが見える。その瞬間。

「抹殺!」
生き残っていたクロトの乗るレイダーの破砕球が脱出艇を襲った。バラバラに砕け散る脱出艇。

「フレイ−−−!」キラが絶叫する。

同時にレイダーのビーム砲がフリーダムに直撃した。炎を噴き上げて流されていくフリーダム。

「チィッ!」
クルーゼが舌打ちして、ファンネル制射でレイダーを葬りさる。

「くそ! 二人とも失うとは。こうなれば」
クルーゼは方向を変えるとジェネシスへ向かって引き返した。

660 名前: クローン・フレイ6/9 投稿日: 2003/09/28(日) 02:21
[ジェネシス]

クルーゼのプロビデンスから Download したプログラムで、
ジェネシスは再び動きだした。照準は地球に向けられている。

アスランは歯噛みするが、すでにヤキンに突入するために、
大破状態になったジャスティスでは、どうすることもできない。

そのとき、一條の光がジェネシスに突入するのが見えた。
キラのフリーダム。キラは生きていた。腕、足など、各所が破壊されていたが、
輝く翼のみが、その機体を突き進ませる。

「フリーダムの原子炉は臨界状態だ。暴走して爆発する。
これでジェネシスを破壊する」
キラの通信がアスランに入る。

それを見たクルーゼは、フリーダムを打ち落とすべく、
ファンネルを展開させるが、リミッターを越えて暴走する
フリーダムの動きにはついていけない。
フリーダムは、唯一残った片腕でビームサーベルをプロビデンスに突きたてる。

「キラ君、これで終わるのか、私も。それも良かろう」
クルーゼは絶命した。

フリーダムは、そのまま、プロビデンスごとジェネシスに突っ込んでいった。
そして、大爆発。二機の原子炉の爆発により、ジェネシスの
中枢部は破壊された。

661 名前: クローン・フレイ7/9 投稿日: 2003/09/28(日) 02:21
[宇宙]

キラはふと目を覚ました。自分はフリーダムごと爆発して死んだはずなのに。
だが、体の痛みは感じる。生きているのか。
まだ操縦桿を握る感触がある。コクピットごと投げ出されたのか ?

ストライクがイージスの自爆に巻き込まれた時もそうだった。
完全に死んだはずなのに、目を覚ますとプラントに居た。
今度も助かったのか。

なぜ、僕は死ねないのだろう。もう、フレイはいない。死んだってよかったのに。
フレイが死に、自分もフリーダムに致命的な一撃を受けた時だって、
既に死んでいてもよかったはずだ。だけど、あの時は、フレイと生きた、
この世界を終わらせてはいけないと思った。
だから、原子炉臨界ギリギリのフリーダムを、なんとか制御して、
クルーゼとジェネシスを止めた。

でも、もういい。できることはやった。もう疲れた。休みたいよ。
ラクスには帰る約束をしてたけど、ごめん。もう無理だ。

キラの目には無限の宇宙だけが広がっている。
おやすみ。

「....」
「キ...ラ....」

どこかで声が聞こえるような気がした。愛しくてたまらない声。
信じられない。また君の声を聞けるなんて。

.....

「キラ!」 トリィが見つけたフリーダムのコクピットの残骸に
アスランとカガリがたどりついた時、そこにキラの姿は無かった。

「キラは生きています。きっと帰ってきます」
ラクスは、エターナルで、それだけを呟いた。

662 名前: クローン・フレイ8/9 投稿日: 2003/09/28(日) 02:22
[地球、ある島で]

戦後、一年が経過した。
マルキオの密書を読み、ラクスは一人地球に降り立った。
それは、ラクスが戦後探し続けていたキラからの再会の
連絡だった。密書には、他言せず、一人で来てほしいと
書かれていた。

ラクスはマルキオの小屋を尋ね、そこで待ち合わせの場所を聞いた。
マルキオが保護している子供たちがラクスを歓待する。
ラクスは気づかなかったが、その奥では、赤ん坊をあやす女性の影があった。

待ち合わせた花びらの舞い散る林で、一人待つキラを見たラクスは、
想いを打ち明けることのできなかった幼年学校のころを思い出し、
胸に熱いものが込み上げる。

「キラ、会いたかった」
「ごめん、戻って来る約束だったのに、こんなに遅くなって。」

「キラ、いいんです」
涙を流すラクス。

しかし、キラは、少し曇った顔で伝える。
「もう、ひとつごめん、今日はお別れを言わなきゃならない」

「なぜ? アスランもカガリさんも、みんなキラのことを心配しているのに」
ラクスの言葉に対して、キラは寂しそうに答える。
「ダメなんだ」

キラは、メンデルでの出生のこと、クローンのことを話す。

「そんなこと、私は気にしません」

「でも、ダメなんだ。世界に知られれば、また、ブルーコスモスや
ザフトに狙われる。そして、彼女も、またそうなんだ、僕達は
表の世界にいてはならない」

キラは、ふっと顔を後ろに向け合図のようにうなずいた。
林の影から現れたのは、死んだと思われていたフレイだった。
手には、赤ん坊が抱かれている。
「ごめんなさい」フレイは呟く。

フレイは、あの脱出艇から奇跡的に無傷で投げ出され、ジャンク屋の船に拾われた。
その後、フレイの言葉で向かった空域でキラを見つけたのだ。
なぜ、フレイにキラの場所が分かったのかは謎だった。
ただ、その時、フレイは、既にキラの子を宿していた。

キラは、静かに話す。
「僕達は、世界に混乱を起こす呪われた存在かもしれない。
だけど、この子には関係ない。僕の両親がしてくれたように
愛情を注いで育てたいんだ」

ラクスは、涙を隠してうなずいた。

663 名前: クローン・フレイ9/9 投稿日: 2003/09/28(日) 02:23
[オーブ]

キラと会った帰り、再建中のオーブに立ち寄ったラクスは、
アスランとカガリに会う。
ラクスは、キラと会うことを二人には密かに連絡していた。

「キラはどうでした」聞くアスラン。
「二人は、大丈夫でしたわ」とラクスは告げた。

「二人...?」怪訝そうに聞き返すアスラン。
ラクスは、
「カガリさん、今は...ごめんなさい」
と呟くと、アスランの胸に泣き崩れた。

「ラクス...」訳も分からずカガリを見やったアスラン。
カガリは理解していた。カガリは、ふっと顔を背けて

「キサカが呼んでいたから、先に帰るな」

と歩き去る。

「二人... キラ、幸せにな...」

カガリの目にも涙が浮かんだ

664 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/28(日) 10:38
乙フレ…。

なぜ、本編では泣けなくて、ここのスレでは泣けるのだろう…。
EVAやガンパレである時代逆光ネタなんていいかもね…。

665 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/28(日) 13:55
乙フレ〜

>>664
時代逆行物って、キラの精神が1話のキラに宿って、もう一度歴史をやり直すって奴?
それだとヘリオで仮面は瞬殺、話がいきなり終わりになってしまうではないかw
仮に仮面が生き残ってもパパは救出、シャトルは落ちないどころか第8艦隊を単機で救うとか
種割れを自在に操れるキラなら楽勝になってしまうぞ

666 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/28(日) 14:49
乙フレっす

>>665
俺だったらフレイ様が十六話のトコに戻って間違った関係を直すとか言うのがみてぇ
まぁキラの一話逆行はないだろ、危惧してるとうりつまんなくなってしまうからな

667 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/28(日) 15:27
>>654-663
興味深く読ませて頂きました。力作お疲れ様です。
あの二人が不幸な生まれでも本当にこうやって幸せになればいいんですけどね。
ところで、漏れも最終回の展開から別の角度でキラ・フレイSS考えたので
読んでやってくれませんでしょうか?

668 名前: 二人で一人(仮題) 投稿日: 2003/09/28(日) 15:33
【ご注意】
1)これは、種最終場面からの後日談です。あのフレイ様散華に嫌悪感がある方は読まない方がいいかもしれません。
2)キラの一人称で書きますので、それに嫌悪感がある方も読まない方がいいです。
3)あれから種の世界がどうなるかはそれぞれ皆さんお考えがあると思いますし、いろいろ設定の間違いもあるかもしれませんがご容赦を。

669 名前: 二人で一人(仮題)1 投稿日: 2003/09/28(日) 15:45
 潮騒が聞こえる。
 ここはオーブ了解ぎりぎりにある孤島の1つだから、僕には何年も聞き慣れた音だ。
でも、心落ち着く音でもある。まだ、日が昇るには早い時間だ。
「起こしてしまった?」
聞き慣れた声が僕に語りかけた。
だけど、この声は潮騒と違って、最先端の音声・音波探知分析装置でも聞き取ることは
できないだろう。そう、僕にしか聞くことのできない声。
「いいや、大丈夫だよ。また、話そうか?フレイ」
 明かりをつけ、僕は机に向かった。

670 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/28(日) 15:47
>>666
16話に戻ってキラとやり直す、ねえ
そうしたらキラの望んだ関係が築けたんだろうなあ。サイとも和解出来るかも
ただ、未来を知ってるから悲劇を避けようと色々動くんだろうなあ。トール出撃を阻止とか

671 名前: 二人で一人(仮題)1 投稿日: 2003/09/28(日) 15:57
 宇宙を漂う僕を、トリイに導かれたアスランとカガリが見つけ、二人の存在を
肌で感じたとたん、僕の意識は途絶えた。
 次に、僕が意識を取り戻したのは医師や看護婦に囲まれた病院らしきベットの上
だった。僕の目の前にいた医師は不安げな顔で僕にこう尋ねた?
「君は、キラ・ヤマト君だね?」

「はい。」あんまりはっきりしない意識の中で僕は答えた。そして、今までのことを
思い出している中で、僕が常識としていたものの中では聞こえるはずのない、だけど、
僕が直接聞きたいと願った声が聞こえてきた。

「よかった・・・・・・・」
あの、激しくて優しいフレイの嗚咽する声だった。

672 名前: anatahe 投稿日: 2003/09/28(日) 16:06
 
あなたが涙を流したら私はあたたかい光を

あなたが私を願うならやさしい風で包み込む



最期まで何もできなかった
私には想いしかなくて
ただあなたへの強い想いしかなくて
力に変えることもできなくて
だから 私は想いをあなたに


あの頃 何一つ知らなかった私は
あなたに力を求めて
憎んで憎んで憎んで
柔らかな檻に閉じ込めた
あなたは守るといって
弱い自分に押し殺されそうになっても
私に縋って涙を流した
逃げることもできずに



祈りにも似たあなたの叫びは
私の想いを形にして
やっと赦し赦されたふたり
私にはもう何もないけれど
私には明日はないけれど
あなたには失えないものがある
あなたには明日がある

もう 泣かないで

あなたはもういいの
自分を責めないで
私を悔やまないで



私の祈りは光になってあなたの心を守るから

私の願いは光になってあなたの明日を守るから

私の想いは光になってあなたをずっとずっと守るから・・・




もう 泣かなくて いいのよ

673 名前: あなたへの光 投稿日: 2003/09/28(日) 16:09
>>672
題名間違えました・・・
ENTER押したときには遅かった・・。

あと、文章長くてスマソです。
区切る程でもないと思ったので・・・

674 名前: 二人で一人(仮題)3 投稿日: 2003/09/28(日) 16:12
>>671が2です。題名修正し忘れでスマソ。

 日にちがたって、医師達に聞いた話によれば、僕が医学的に意識が戻った時の
第一声は、「キラがどこ?無事なの?」だったそうだ。そして、名前を尋ねた時
「フレイ・アルスター」と名乗り、しきりに僕の安否ばかり聞いたそうだ。
困り果てた看護師の一人が手鏡を持ってそれに顔を映したとたん失神したらしい。

 僕が意識を取り戻して以来、フレイは誰も周りにいない時いつも僕に話しかけてきた。
話せな方、会えなかった隙間を埋めるように僕はいろいろなことを話した。病院の検査
の時もフレイはおもしろがって話してきた。僕はおかげで病院にいる間全く退屈しなかった。

 後で聞いた話だが、医師達はこれは深刻な事態だと受け止めていたらしい。僕と特殊な
出生もあって、完全の隔離して病院から出すべきで強硬な主張をした医師もいたらしい。
ただ、結論は全くまとまらず、僕は外傷もあったこともあり、病院暮らしを余儀なくされた。
面会謝絶もしばらく続いた。

675 名前: 二人で一人(仮題)4 投稿日: 2003/09/28(日) 16:25
>>674
 困り果てた医師達は、かってメンデル研究所の研究員であり医師でもあった
僕の育ての両親を呼び出し、意見を求めたらしい。両親は困惑しながら、
とにかく僕に会わせて欲しい、話はそれからだと主張し、それは受け容れられた。

 そのころには僕はフレイとスムーズに会話できるようになっていた。フレイは
幼い頃母親に早く死なれ寂しかった話や、僕を妬かせようと父親がいかにかっこ
良かったかとか話してくれた。それを聞いた僕は逆にあまり両親の話はできなか
った。本当の両親でないと完全に知ったばかりでもあったし。それでも、少しずつ
話し出すとフレイはずいぶん興味を持ったようだ。で、僕の小さい時の話を聞きた
がった。僕がなかなか話そうとしないので、よくふくれたりもした。育ての両親が
僕の病室に来たのはそんな時だった。

676 名前: 二人で一人(仮題)5 投稿日: 2003/09/28(日) 16:40
 後から聞いた話によると、二人とも僕の第1印象は「元気そうだ」というもの
だったらしい。父は「お前が生きていて良かった、今まで来れなくてすまない」
と言って、たわいない世間話を始めた。ある意味病室に隔離されていた僕は、
その話で今世界がどうなったのかをようやく知ったぐらいだった。ただ、それは、
今の僕には興味のない話だったが、話を合わせていろいろ聞いてみたりした。それ
よりも、話している父の顔に困惑の表情が浮かんでいたのを僕は見逃さなかった。
隣の母は笑顔を浮かべながら父の話に相づちを打ったりしていたが、瞳を隠すよう
薄目を開けたような笑顔だった。
 そして、父の話が一通り終わった後、母は言い放った。
「ねえ、キラ。フレイ・アルスターさんとお話しさせてくれないかしら?」

677 名前: 二人で一人(仮題)6 投稿日: 2003/09/28(日) 17:13
 僕は困惑した。医師が最初に聞いたという第一誠以来フレイの声を他人に
聞かせたことがなかったし、僕の中にフレイがいることは知られてないと
そのときは思っていたからだ。だけど、フレイは即座に反応した。
「話さしてくれる?ううん。話したいの!」
 僕は一瞬拒絶しようと思ったのだが、やめた。それで、僕の中のフレイが
消えるのが怖かったからもあるが、フレイが母と何を話すのか興味もあった。

「初めまして、キラのお父さん・お母さん。フレイ・アルスターです。お会い
できてうれしいです。」
 僕の声帯を通して話し始めたフレイの声は明らかに僕のものではなかった。
かといって、僕が知って、いつも話しているフレイの声でもなかった。しかし、
口調や言葉遣いは僕がいつも話しているフレイそのものだった。

 母とフレイの会話は問診というようなものでなく、あくまでも世間話的だった。
僕とフレイがいつ頃ヘリオポリスで知り合ったのか、そして病室ではどんなことを
話しているのかとか。戦争の話は巧みにはぐらかしながら。フレイの方からはやはり
と言うか僕の幼い頃の話を聞きたがった。僕のいたずら話とかを声を上げて笑ったり
して、僕は大いに恥ずかしい思いをしたものだ。
話に区切りがついたところで、
「ありがとうフレイさん。じゃあ、キラに変わってくれる?」
と、通信を変わるようにでも母はフレイに頼んだ。
フレイが「はい」と答えた後に、僕の言語音声機能は完全に僕のものに戻った。
「フレイさんと話させてくれて、ありがとうキラ。じゃあ、また来るわね。」
どことなく呆然としていた父を促して母は病室を去った。
「面白いお母さんね。」フレイはそう僕との会話を始めたが、僕は今ひとつ釈然
としなかった。なぜ今頃父母が来たのだろうと。フレイはそんなことお構いなし
に母が話してくれた僕の小さい頃の失敗をからかいだした。僕もそれにむきになる
ことで漠然とした不安を追い払うことができた、このときは。

 同じ頃、病院の会議室では担当医師達が僕の両親の報告を聞いたいた。
そして、母はこう結論づけた。
 「キラにアスラン・ザラとその同行者と面会させて下さい。その同行者には
フレイ・アルスターをよく知る者を必ず加えることを。」

678 名前: 二人で一人(仮題)筆者 投稿日: 2003/09/28(日) 17:20
 当方病み上がりのため、今日はここが限界なので、誠に申し訳ありませんが、
続きは後日にさせて下さい。で、次でようやく、アスラン・カガリ・ラクス
登場な訳なんですが、ここで続きを読みたいと思われる皆さんの意見を聞きたい
ことがあります。
 フレイ・アルスターを良く知る者は
1)サイ・アーガイル
2)ミリアリア・ハウ(ジアッカ付きw)
3)3人とも
のどれがいいでしょうか?
それによって病室の会話も変わってくるので。リクエストお待ちしてます。
念のため言っておきますが、カズィ様はお受けできませんw
それに、フレイ様と聞くだけで逃げ出しそうだし(爆)

679 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/28(日) 17:24
>>678
乙フレ〜
うーん、3人ともかな。
何となくジェシカとかでも良いかもw

680 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/28(日) 17:34
大穴でイザーク・ジュールというのはどうだろう。
いや、ザフト時代のぶるぶるフレイ様を知ってて、生き残ってるのって
名前付きキャラだと遺作くらいだし。

アデス艦長かナタルが生きてればなぁ・゚・(´Д⊂)

681 名前: 流離う翼たち・46 投稿日: 2003/09/28(日) 18:13
 第8艦隊は密集体形を取り、メビウス隊を展開させた。ザフト艦からもMSが射出されている。MAの数は120を超えているのに対し、MSの数はジンが13機にXナンバーが3機。数だけ見れば圧倒できるだけの兵力差だが、ハルバートンの気持ちは晴れなかった。
 これだけの艦隊を擁しながらも、敗北を覚悟しなくてはならない。それほどの戦力差がMSとMAの間にはあった。特にMAパイロットの消耗は激しく、多くはヒヨッコパイロットなのだ。
 ハルバートンは悲壮な覚悟で命令を下した。
「全艦砲撃戦用意。いいか、アークエンジェルだけは何があっても守りぬけ!」
 唯一の救いは、MA隊の先頭に立つ2機の強力なMA、メビウスゼロと、エメラルドのメビウスがあることだ。2機とも単独でジンと互角以上に遣り合えるとさえ言われる超エースだ。アークエンジェルを巡る戦闘でもその凄まじい強さを見せ付けている。
 先頭に立つフラガは突入してくるMSを見て命令を下した。
「全機、迎撃開始。生き残れよ!」
「了解!」
「キース、お前は好きにやれ。意味は分かるな!」
「はいはい、やらせて頂きますよ」
 キースは肩を竦めて答えた。そしてスラスターを限界まで吹かす。たちまち物凄い加速で緑色のメビウスがメビウス隊の中から飛び出した。
 たった1機でMSに向ってくるMAを見たジンのパイロットは呆れかえった。MAでMSに勝てると思っているのだろうか。
 だが、彼らはすぐに自分の甘さを後悔する事になる。突入してきたキースの狙いは2つあった。1つは1機落として数を減らすこと。もう1つは敵を掻き乱すことである。その為にはどれか1機を先制で叩き落すのが1番効率が良い。動きの鈍い1機に目をつけると、キースはそれに向かって行った。
 キースのメビウスに気づいたディアッカは狙われているジンのパイロットに警告をだした。これまでの戦いで、あのMAは舐めてかかれる相手ではないと思い知らされていたのだ。飛び出してきたMAを落そうと無造作に狙われたジンがキースの前に出る。
「おい、そいつの前に出るな。死ぬぞ!」
 ディアッカの警告は遅かった。見ている前でそのジンはレールガンやバルカンを浴びてたちまちバラバラにされてしまったのだから。そして開いた穴からそのメビウスが突入し、MS隊を無視して艦隊に向かっていく。
「あいつ、また艦隊をやるつもりか!」
「ちぃ、俺が戻る!」
「待てイザーク、俺達の任務は、足付きの撃沈だ。MAの始末はジンに任せろ!」
「・・・・・・くそっ、分かってる!」
 イザークの声には悔しさと、屈辱が滲み出ていた。自分をたった1機で翻弄したMA。ナチュラルのくせに遥かに優れた能力を持つ筈の自分を良いようにあしらったあいつは許し難い敵だ。
 キースが駆け抜けた直後にジンとメビウスが一斉に砲火を開いた。メビウスの放ったミサイルを躱してジンがバズーカを叩き込む。イージスとデュエルとバスターが卓越した機体性能を生かしてMAを蹴散らしながら艦隊へと迫ってくる。
 だが、MSも無傷ではすまない。群がるMAに集中攻撃を受けて避けきれず、直撃から火球へと変わるジンや、不運な艦砲の一撃に直撃されるジンもいる。
 MA隊の中で超人的な活躍を見せるのがフラガのメビウスゼロだ。有線ガンバレルを操り、確実にジンを仕留めていく。フラガの活躍が周囲の味方の士気に多大な影響を与えていることは間違い無かった。
「バゥアー中尉だけに任せるな。敵艦隊左側のローラシア級に向けてゴッドフリート照準、発射後、回避した方向に向けてバリアント1番2番を発射!」
 ナタルがキースを支援するべく砲撃を敵艦に向けさせる。4門のゴッドフリートから放たれたエネルギーの矛が狙われたローラシア級巡洋艦エデラを襲う。エデラは辛うじてそれを回避したが、続いて襲ってきた大口径レールキャノンの直撃を受けた。被弾の衝撃で艦が傾く。

682 名前: 流離う翼たち・47 投稿日: 2003/09/28(日) 18:15
 艦隊に突入したキースはその被弾したローラシア級巡洋艦に目を付けた。狙われたのはエデラだ。3隻は高速で接近するMAに気づいて対空砲火を撃ち上げるが、天頂方向から襲いかかってきたメビウスは2秒以上直進しようとはせず、小刻みに機体を動かしながら真っ直ぐに突っ込んできた。被弾しているエデラの対空砲火は見ていて可哀想になるほど対空砲火の照準に精密さを欠いている。
「沈めええええええ!!」
 キースが運んできた2発の対艦ミサイルを放ち、レールガンとビームガン、バルカンを撃ちまくる。艦橋を直撃したミサイルが艦の主要スタッフを抹殺し、主砲を直撃したレールガンが容易に主砲を粉砕し、エネルギーのリバースで誘爆を起こす。その周辺に着弾した弾が容赦無く装甲を貫き、艦を引き裂いていく。
 キースはエデラに重傷を負わせたことを確認し、真っ直ぐ下に突き抜けた。そして、今日は迷わず機体を反転させて再攻撃に入る。確実に仕留めるつもりだ。1機のジンがエデラの前に立ちはだかっているが目には入っていない。もう一度ありったけの武器を叩き込み、エデラに止めを刺した。メビウスが再度上に出た所で機関部の誘爆が起こり、援護に来たジンを巻き込んで爆発四散してしまった。
 エデラがあっさりと沈められたことに、ヴェザリウスの艦橋は驚愕に包まれていた。
「馬鹿な、たった1機のMAに巡洋艦がこうも簡単に!?」
「・・・・・・噂に聞くエメラルドの死神か。ガモフを大破させたのもあいつだという話だな」
 アデスの言葉にクルーゼが苦々しく呟く。これで貴重な巡洋艦を1隻失い、砲戦力が激減してしまったからだ。さらにジンが奴の為に2機も落とされている。1機は誘爆に巻き込まれただけだが。
 予想もしなかった損害に、しだいにクルーゼの勝算が覚束ないものとなろうとしていた。


 ハルバートンは巧みに艦隊を維持していた。損傷艦は多かったが、未だに陣形は崩されてはいない。アークエンジェルもその火力を生かして積極的に戦闘に参加している。
「味方撃ちを恐れるな。艦は対空砲火如きでは沈まん。艦隊を密集させて弾幕の密度を上げろ!」
「メビウス隊の損害、30%を超えました!」
 オペレーターの悲鳴のような報告が届く。恐ろしいほどの損失だ。20機にも満たないMSにこれだけの艦隊が苦戦しなくてはならないのだから、まことにMSとは恐ろしい兵器である。
 そんな中でフラガのメビウス・ゼロの活躍は凄まじかった。4基の有線ガンバレルを展開し、ジンを追い詰めている。
「ええい、お前1機に構ってられないんだよ!」
 四方八方から襲いかかるガンバレルのリニアガンに襲われるジンは必死に回避していたが、一発につかまって吹き飛ばされた。それで動きが止まったところに更に攻撃が集中し、完全破壊されてしまう。
 ジン1機を撃墜したフラガはすぐに次の目標を目指した。1機でも堕とせばそれだけ味方の被害が減る。その一心でフラガは新たな敵に挑みかかった。
 メネラオスでは次々に寄せられる被害への対処に追われていた。だんだん追い詰められていく友軍。だが、そこに喝采とも取れる通信が飛び込んできた。
「こちら、キーエンス・バゥアー中尉。敵巡洋艦1隻を撃沈、ジン2機を撃墜。これより本体に合流する!」
 ジン1機は嘘だが、士気高揚のためにあえて数にいれた。この大戦果に連合軍の士気が否応無く上がる。逆にザフト軍は動揺した。
「巡洋艦を沈めただと!?」
「エデラだ。エデラがやられたんだ!」
「そんな、俺の母艦が・・・・・・」
 ジンのパイロット達の士気がたちまち落ちてしまった。イザークが事情を察して歯軋りする。
「ガモフをやった奴だ。あの緑色のMAがエデラを沈めたんだ!」
「たったMA1機で、巡洋艦を沈めったっていうのかよ」
 ディアッカが呆れて呟く。出鱈目な火力だとは思っていたが、まさか1機で巡洋艦を沈めるとは。
 そして、戦力の低下はそのままザフト軍を窮地へと追いこんでいた。ここにキースも戻ってきたために更に損害が増していく。だが、3機のGは第8艦隊の防衛線を突破して遂にアークエンジェルに襲いかかろうとしていた。

683 名前: 流離う翼たち・48 投稿日: 2003/09/28(日) 18:16
「デュエル、バスター、イージスが防衛線を突破してきます!」
「ストライク、迎撃に向いました!」
「フラガ大尉とバゥアー中尉が戻るまで、少しかかります!」
「・・・・・・まずいわね」
 マリュ−は悩んでいた。このままアークエンジェルがここにいては第8艦隊は逃げられない。更に降下のタイミングが迫っている。このままでは降下できないかもしれない。マリュ−は決断した。
「降下用意、アークエンジェルは第8艦隊から離れ、地球に降下します!」
「艦長、それは!?」
 ノイマンが驚いて振り向いたが、マリュ−の意思は変わらなかった。
 ハルバートンにもその意思が伝えられる。
「提督、アークエンジェルはこれより地球に降下します!」
「なんだと!?」
「敵の狙いは本艦です・本艦が離れない限り、敵は諦めません!」
「だが・・・・・・」
「それに、もう降下のタイミングまでギリギリです!」
 マリュ−の言葉にハルバートンは苦いものを噛み潰したような顔になる。このまま戦っても勝てるかもしれないが、降下タイミングを逃せば大幅な時間のロスになる。その間に敵が同規模の部隊を差し向けてきたら、今度は守り切れないだろう。
「アラスカは無理ですが、この位置なら友軍の勢力圏には降下できます。行かせて下さい!」
「・・・・・・分かった。行きたまえ。後は任せろ!」
「提督、ありがとうございます!」
 マリュ−は頭を下げた。アークエンジェルは直ちに艦隊を離れ、地球に降下を開始する。ハルバートンはメネラオスをアークエンジェルの頭上に移動させ、敵を通すまいと盾とした。そこに3機のGが迫ってくる。
「副長、シャトルを降下させろ。本艦はここを動く訳にはいかん!」
「閣下、それは!」
 ホフマンは、上官が死を覚悟している事を悟った。直ちにシャトルが切り離され、メネラオスから離れて行く。それに少し遅れてデュエル、バスター、イージスが襲いかかってきた。
 メネラオスは護衛の駆逐艦と共に物凄い対空砲火を撃ち上げたが、3機のGはジンを遥かに凌ぐ機動性でこれを回避している。デュエルの放ったビームがメネラオスの上甲板に着弾し、大穴を作った。そしてバスターが2つのライフルを繋ぎ、照準を定めようとする。だが、メネラオスを狙っていたバスターに側面からビームが叩き付けられた。
「なにぃ!?」
 辛うじてそのビームを回避するバスター。そして、メネラオスの前にストライクが現れた。
「ハルバートン提督、大丈夫ですか!?」
「キラ・ヤマト君か!」
「僕がギリギリまで支えます。メネラオスは下がってください!」
「しかし・・・・・・」
 子供に任せて後退するのを良しとしないハルバートン。だが、そこにようやく2機のMAが駆けつけてきた。
「提督、アークエンジェルは我々で守り抜きます!」
「ここまで、ありがとうございました!」
「フラガ大尉、バゥアー中尉・・・・・・すまん!」
 メネラオスは上昇を開始した。メネラオスに続くように生き残りの艦が地球軌道から離れていく。逃げる訳ではない。より自由の利く所でヴェザリウスと砲撃戦を行おうというのだ。
「こうなればクルーゼだけでも仕留めるぞ。敵は僅か2隻だ。砲撃を集中して沈めてしまえ!」
 第8艦隊が陣形を再編していく。損傷艦を下げ、健在艦艇がメネラオスを中心に方形に展開していく。その左右にMA隊が集結した。生き残ったジンがこれに攻撃しようと襲い掛かってきたが、態勢を立て直した第8艦隊に対するには余りにも数が少なすぎた。
「メビウス隊は敵MSの迎撃に全力をあげろ。残すジンは僅か4機だ、恐れるな。艦隊は敵艦隊との砲戦に入るぞ、地球軌道は奴らの宇宙ではない事を教えてやれ!」
 ハルバートンの命令で全艦の砲撃がヴェザリウスとツィーグラーが圧倒的な砲火に晒され、艦がエネルギーの奔流に木の葉の様に揺られる。頼みのMSは主力のG3機がアークエンジェルに向った為、残るはミゲルのジンを含めて僅か4機。対するメビウスはまだ60機以上を残している。艦艇も損傷艦が多いが20隻近くが戦闘続行可能だ。
 ミゲルはオレンジ色のジンを駆ってメビウスを落としていたが、流石に残弾とバッテリー残量が不安になりだした。
「ええい、これじゃどうしようもない!」
 ミゲルは苛立って吐き捨てたが、そのすぐ横でまた1機のジンがメビウスに落とされてしまった。このままでは、いや、すでに負けは決定しているとしか言えなかった。

684 名前: 流離う翼たち・49 投稿日: 2003/09/28(日) 18:17
 アークエンジェルは迫るイージスとバスターに狙われていたが、フラガとキースのMAに邪魔されて取り付けずにいた。デュエルはストライクと交戦している。
フラガのゼロがガンバレルを展開し、重力のせいで動きの鈍いバスターを撃ちまくる。元々動きの鈍いバスターはこの攻撃にいい様に翻弄されていた。その近くではキースのメビウスと変形したイージスが高速機動戦を行っている。互いに強大な火力を持つが、小回りとスピードはイージスの方が勝っていた。その為、この勝負はキースに著しく不利だった。
そして、ストライクはデュエルと戦っていた。デュエルのビームサーベルをシールドで弾き返し、距離を取る。デュエルがビームを放って追い討ちをしてくるが、それは容易くキラに回避された。
 激戦のさなか、遂にキースのメビウスがイージスのスキュラに捕らえられた。間近を通過したスキュラが機体を焼き、武装を削ぎとってしまう。
「しまった、やられたか!」
 キースは機体状況を確かめ、これ以上の戦闘を断念した。武装を全てパージし、身軽にしてアークエンジェルに向う。
「こちらキース、機体が損傷、帰艦する!」
「了解しました!」
 キース被弾と聞いて艦橋クルーの顔色が少し変わる。貴重な戦力の1つが失われたことになるからだ。被弾した機体ながらもキースはなんとかアークエンジェルにまで持って来る事が出来た。駆け寄ってきた整備兵が爆発しないように科学消化剤で被弾箇所を埋めてしまう。これでキースの仕事は終わりだった。
 だが、激しい戦いを展開する間にも着実に地球は迫っており、遂にアークエンジェルから帰艦命令が発せられた。
「フラガ大尉、キラ、もう限界です、早く帰艦してください!」
「分かった、今戻る!」
 フラガが急いでアークエンジェルに向う。ディアッカが追撃しようとしたが、アスランに止められた。
「よせディアッカ、重力に捕まるぞ。俺達も退くんだ!」
「またあいつ等を逃がすのかよ!?」
「大気圏の摩擦熱で燃え尽きたいのか!?」
 アスランに大声で窘められ、ディアッカは渋々後退しだした。だが、イザークが退こうとはしない。
「イザーク、おい、イザーク、何やってるんだ!?」
「うるさい、俺はストライクを堕とす!」
 デュエルとストライクが危険な高度まで下がっていく。そしてデュエルがビームライフルを向けた時、デュエルとストライクの間に割り込む様に1機のシャトルが降下してきた。ヘリオポリスの避難民を載せたシャトルだ。
 キラは見た。デュエルのビームライフルがシャトルに向けられるのを。
「止めろおぉぉぉぉ!!」
 キラは絶叫した。バーニアを吹かし、ストライクをシャトルへと向ける。だが、次の瞬間、シャトルをビームが貫いた。ビームの高熱と大気圏の摩擦熱によって外壁がまくれあがり、ついで内側から引き裂かれる様に爆発してしまう。
 キラはコクピットで絶叫し続けた。守りきれなかった。守れると思っていたのに、守りきれたと思っていたのに。
 ハルバートンの、キースの言葉は正しかったのだ。“意思が無くては、何事も成し遂げられない” “1番怖いのは、何かを失って、全てが手遅れになってから気付くことだ”
 こうなる前にデュエルを撃墜しておくべきだったのだ。たとえ、同朋の血にその手を染める事になろうとも。それに今更気付いても全ては手遅れなのだ。もうあの幼女は生き返りはしない。キースはこの苦痛を知っていたのだろう。全てが手遅れになるという苦痛を。

685 名前: 流離う翼たち・50 投稿日: 2003/09/28(日) 18:17
降下して行くストライク。それを確認したアークエンジェルではミリアリアがキラを呼び続けていた。
「キラ、戻って、キラ!」
「駄目です、本艦とストライクの降下角度に差異があります。このままではストライクは全く別の場所に落ちます!」
 パルの報告にマリュ−は決断した。
「艦を寄せて! アークエンジェルのスラスターならまだ動ける筈よ!」
「そかし、それでは本艦の降下地点が・・・・・・」
 ノイマンが抗議をするが、マリュ−はねじ伏せる様に言いきった。
「ストライクを失っては、意味が無い。早く!」
 ノイマンは仕方なくスラスターを操作しだした。ゆっくりとアークエンジェルがストライクに近づいて行く。そして、新たに算出された降下地点はなんとアフリカ北部。完全にザフトの勢力圏下であった。


 降下して行くアークエンジェルを見送る第8艦隊。ハルバートンは保有戦力の1/3を失いながらもどうにかクルーゼ隊を撃破していた。クルーゼは巡洋艦1隻とジン11機を失い、残る2隻を中破されている。事実上の壊滅だ。クルーゼは生き残ったMSを収容すると地球軌道から撤退していた。
 地球軌道を守りきったハルバートンは、北アフリカに降下して行くアークエンジェルを心配そうに見送っていた。
「彼らは、無事にアラスカに辿りつけるだろうか?」
「どうでしょう。アフリカは完全にザフトの勢力圏です。友軍の勢力圏に逃げ込んでくれれば良いのですが」
 ホフマンはこれだけの犠牲を払って逃がしたアークエンジェルが沈められるのは我慢できなかった。これでは全ての犠牲が無駄になってしまう。
 だが、2人がアークエンジェルの未来に思いをはせていたのはごく僅かな時間だった。ハルバートンは生き残った艦艇を纏め、月基地への帰還を命じたのだ。損傷艦を守るように健在艦が外側を固め、メビウスが直援につく。クルーゼ隊以外の部隊がこの辺りにいるとは思えないが、念のためというやつだ。
 こうして地球軌道を巡る艦隊線は終わった。双方とも痛み分けともいえる結果だったが、アークエンジェルを守りきったという事で連合軍の勝利といえたかもしれない。
 そして、舞台は地球へと移っていく。

686 名前: もつとたのしくて 投稿日: 2003/09/28(日) 20:53
>>500-501>>514>>548>>557>>562>>568>>587

サイは「気にしないで、楽しいパーティーだったから」と言い、一緒にいたトール、カズイは苦笑いしていたが、お酒に弱いって知らなかった僕らも悪いから、と言ってくれた。
フレイの沈んだ心もそれで少しは慰められたが、とんでもない事をしてしまったという思いが消えた訳ではないし、顔を合わせるのは気恥ずかしかった。
自分の魅力を自覚しているだけに羞恥心も人並み以上で、他人に自分の弱みや失態を見せるのを何よりも嫌うのがフレイである。
しかし、事故に近い形とは言えこんな事になってしまって…何だか取り返しの付かない事をしてしまった気分ではある。
いつまでもクヨクヨしていても仕方ないのは分かっているのだが、あっさり忘れてしまうほど切り替えの早い性格でもなかった。
「おはようございます…」
いつものように部室のドアを開けて挨拶したが、自分でも内心嫌になるほど声に張りが無い。
「おはよう…フレイ、どうしたの?風邪でもひいてるの?」
案の定、の答えが返ってきて、正直なところ家へ帰りたくなったが、自分が劇の主役なんだから、という義務感が辛うじて踏みとどませた。
「そんなわけじゃなくて…ごめんなさい、何でもないの」
「?…なら良いけど…。さ、今日は第2幕からね。…」
部員達が集まって打ち合わせを始めたが、いつもは最前列にいるフレイは今日は後ろの方で申し訳無さそうに聞いていた。
「…フレイ…」
「!!」
後ろから、フレイの肩を軽く突付いたのはミリアリアだった。フレイは飛び上がりそうになったのを危うくこらえて、強ばった表情で振り返った。
「あ…ハ、ハゥ先輩…」
「ミリィで良いわよ。どうしたの?さっきから。何か変よ」
「…ちょっと、一緒に…」
フレイは小声で言うと、ミリアリアの腕を引いて部室の外に出た。
「どうしたのよフレイ…」
「あ、あの…ごめんなさい!一昨日の夜、サイの誕生パーティーで…」
そこから先は、お昼にサイやトールに謝ったように、必死だった。しどろもどろになる自分に少し腹を立てながらも、とにかく詫びた。
「……せっかく、みんなで楽しんでたのに、あんなことしちゃって」
「いいのよ。でも、大丈夫だった?あの後サイとキラで家まで送ったみたいだけど、フレイ寝ちゃってたみたいだし」
「…キラ?…キラも、いたんですか?」
「あら、覚えてないの?」
ミリアリアの話を聞いたフレイは血の気が引いた。まさか、酔ってキラに抱きついていたとは。それもみんなの前で…
お昼に会った時は、サイに謝ろうとばかり思っていてキラの事は頭に無かったので、無視に近い態度を取ってしまっていた。
きっと、キラはそれを快くは思っていないだろう。フレイはキラをよくは知らない。
キラがフレイを目で追っていた事にも、フレイは気づいていなかった。
「どうしよう…私…」

687 名前: もつとたのしくて 投稿日: 2003/09/28(日) 20:54
>>500-501>>514>>548>>557>>562>>568>>587

謝罪というものは、一旦機会を失ってしまうと中々言えなくなってしまい、小さな罪悪感でも気が付けば胸の内で勝手に膨らんで、自分が大罪を犯したように思ってしまう。
日常生活では接する機会が無い分、余計に声がかけにくくなってしまう。
たまに、キラの姿を目にすることはあるのだが、近づく事すら容易ではないように感じられ、フレイはキラに謝罪する事も無く時間だけが過ぎていく。
サイは多分、キラにはとっくに謝っていると思っているだろうし、迷惑をかけた手前トールやミリアリアに相談する訳にもいかなかった。
損な性格、かも知れない。生真面目というか、引きずってしまうというか…
だから、一瞬でもそんな気持ちを忘れられる演劇の練習時間は、真剣だった。
「フレイ、最近、何か鬼気迫るって言うか…凄い集中力よね」
「やっぱり、主役だから張り切ってるんでしょ」
「私たちも負けてられないわね…」
フレイは気づく余裕もないが、それが周りに良い影響を与えているのは間違いなかったし、ミリアリア達上級生も期待していた。
そうしている内に、とうとう劇の上演当日になった。
楽屋裏のごった返した、まるで戦場のような騒ぎの中、フレイは一人黙り込んで台本に目を通していた。
かなりの時間読み込んで、あちこち折り目が付いている。それでも目を通さずにはいられなかった。
今さら、なのだが、そうでもしないと気持ちが落ち着かずに舞い上がってしまいそうだった。
「フレイ!」
ミリアリアの顔を見ると、どうしてもキラの事を思い出してしまう。
「衣装、似合ってるわよ…そんなに緊張しないで、ね?いつも通りやれば良いんだから」
「はい…」
「どうしたの?あんなに頑張ったじゃない。大丈夫だから」
「分かりました。頑張ります」
自分を元気付けようとしてくれるミリアリアの気持ちが嬉しいから、たとえ作り笑いでも答えなければならないと思う。
幕が上がると、拍手が雨のように降り注いだ。どうやら観客は多いようだ。
ライトが逆光になっていて舞台から客席はよく見えないが、多くの人の目に曝されるというのはプレッシャーではある。
しかし、フレイはそれを楽しんでしまえる性格で、劇などを演じるのは天職なのかも知れなかった。
ふと、目の端に、よく知っている人を捕らえたような気がした。
『サイ……キラ…!』
それにトールにカズイ、合わせて四人が並んで座っている。
『実験があるから来れるかどうか分からないと言っていたけど、来てくれたんだ。』
自然に、顔がほころんだ。

688 名前: もつとたのしくて 投稿日: 2003/09/28(日) 20:59
前回投下からもう100レスも進んでる…(;´Д`)
ここに来てまたスピードアップしてますね。
読み次第感想書きますので、しばらくお待ちください。>職人の皆様
にしても、もしかしたらpart3行くかも知れませんね…

689 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/28(日) 21:03
>>688
乙フレです
いやあ、フレイとミリィの会話が先輩後輩してて良いですねえ
スポットライト浴びて楽しめるとは、結構神経太いのかな?
part3には行くんじゃないですかねえ。私もまだまだ上げる予定ですし

690 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/28(日) 21:45
微妙にエチィ描写があるけど書いてもかな?

691 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/28(日) 22:19
>>690
いいよ〜

692 名前: わたしの彼にはチャックがある 投稿日: 2003/09/28(日) 22:22
注意・この話に出てくる人物はガンダムSEEDと一見関係あるようで関係ありません

それはキラと二人でベットの中で睦みあっているときのことだった
キラの尾てい骨の上のほうを触ったとき何か金属質の感触がした、
フレイは何だろうと思いキラの背中のほうに回ってお尻のあたりを見ようとした
その時、
「フレイ…?あっ!」
キラが何かに気がついたようにフレイに背中のほうを隠した
フレイはキラが背中を向ける一瞬前にあるものを見たが―――
「き…キラ?それってもしかして……」
「ごっゴメン、そういえば機体の整備とかしなきゃいけなかったんだ!フレイ、また今度にしよう!!」
キラは逃げるように服を着て急いで部屋を飛び出していったがフレイはキラの背中に見た『アレ』のことを考えていた
「キラの背中に…………『チャック』?
えええーー!!なんでっっ!そんなのありなの〜!」



『わたしの彼にはチャックがある 』

693 名前: わたしの彼にはチャックがある 投稿日: 2003/09/28(日) 22:22
フレイは考えていた
つい三日前までは戦争のこと、復讐の事、更衣室を覗くディアッカのこと、夏の祭典の締め切りのこと、色々考えていた
しかし今は一つのことしか考えられなくなった、キラのことだ
いや、正しくは
(……『チャック』、キラの『チャック』……キラの?)
見間違いだと思いたかったし、何か医療用の特殊な器具なのかもしれないとあの後キラに『それ』について聞いてみたが

「ねぇキラ、わたしの気のせいだと思うけど貴方の背中に下ほうに金属の何かが―――」
「え……、な…名ナ奈那納那、何のことだい?
フレイ疲れてるんじゃないかい?人の背中にそんなものあるわけないじゃないか」
「………」

酷い動揺のしようだった、あれでは肯定してるのも同然だ(なんかキャラ違ったし)
その後、キラはフレイの部屋には寄り付かず、フレイがキラの部屋へ行っても
「今日はちょっと具合が悪いんだ」といってなんだか避けられているような気がした
(『それ』がなんなのか確かめないと……キラにこの後ずっと避けられるのは嫌だったし、
何か大変なことがあれば助けてあげないといけない――




というかすっっっっっっっっっっっごい気になるわね……)

フレイはそれを確かめるべく作戦を練ることにした
敵はキラだ、今迄で最大の作戦の予感がした

694 名前: わたしの彼にはチャックがある 投稿日: 2003/09/28(日) 22:24
一応、次回へ続く…
けど完結はあまり自分でもする気がしないので適当に読み飛ばしてくださいな
思いついて30分で書いた代物だしなぁ…一応もう二回はネタがあります

695 名前: わたしの彼にはチャックがある 投稿日: 2003/09/28(日) 22:27
あ、ちなみにいつとかどことか考えないでください
滅茶苦茶ですので、仮面と兄貴が同じ場所に出る予定だし……
ちょっと最初エチィでしょ?

696 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/28(日) 22:36
>>685
第8艦隊、というかハルバートン提督生き残りましたね。
正直、この人が生きてれば種もあぁも酷い殲滅戦にならなかった気がするので、
今後の活躍に期待(・・・まさか仮面、そこまで読んで第8艦隊殲滅にこだわったのか?w)

>>687
コミック版ではフレイ様は「舞台女優」と作者に思われてるとか。
なので演劇部はナイスチョイスです。舞台でも輝け、フレイ様!

>>693
中の人は誰だ。・・・まさかカズイさ(ry

697 名前: わたしの彼にはチャックがある 投稿日: 2003/09/29(月) 00:10
「トール…ちょっといいかしら?」
「ん、フレイ。僕に用なんて珍しいね」
「ちょっと頼みたいことがあるの、これ」
フレイはトールに防水の超ミニデジカメを渡しつつ、トールの目を見つめて言った
「…………パイロット用のシャワールームあるわよね?これでキラの背中の下のほうを撮ってきてくれないかしら?」
「ええっ!フレイ何考えてるの!?そんな―――」
フレイはトールにぐっと顔を近づけて囁くように言った
「お願い……やってくれたら何でもいうこと聞いてあげるわ……」
「で…でも」
フレイはトールの手を手のひらでやさしく包み……そのまま捻り上げ同時に足を払い素早くトールを地面に叩き付けた

698 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/29(月) 00:11
>>672「あなたへの光」
快作、乙です!
フレイ様の想いが十二分に表れております。
初見時は泣けて泣けてしょうがありませんですた・・・(´Д⊂

>もう 泣かなくて いいのよ
貴方のその言葉に涙が溢れてやまないのでつ・・・!・゚・(´Д⊂ヽ・゚・

699 名前: わたしの彼にはチャックがある 投稿日: 2003/09/29(月) 00:16
「そ……その技はまさか納化途流柔術!」
トールは驚愕と痛みに顔を歪ませながら叫んだ、と同時に―――隣の部屋のTVだろうか―――から「知っているのか、ジョニー雷電!」と声がした
「納化途流柔術、長い伝統と伝説を持つニホン柔術の中でも最強と呼ばれた柔術
536年、当時、時の二大勢力の決着のために編み出されあまりに強さに一子相伝の禁じ技となり、
1200年頃当時の当主が早死にをし失われたはずの幻の技のはず
その強さは武器を持った100人を相手にしてもかすり傷も負わず、当時の挌闘家を戦慄させた
なお、今現在残っている100人組み手はこの時の故事にあやかりこれほどの強さを得たいと考えた格闘家たちが模倣したのが原点と言われている
―――民明書房刊  「古代ニホンの最終兵器」より ―――  」
「それだけわかっているならこの技の後何をするか知っているでしょ?」
「わ………わかったよ、やるよ!やればいいんでしょ!
………やっぱり僕こんな役回りばっかりなのか……」


『わたしの彼にはチャックがある ――ドキッ、男だらけのしゃわーるーむ☆』

700 名前: わたしの彼にはチャックがある 投稿日: 2003/09/29(月) 00:17
迷っていた、猛烈に迷っていた
なにしろ隠し撮りだ、シャワールームだ、デジカメだ、SS級ブラブラだ
女子シャワールームを隠し撮りするならまだやる気も起こるが(しないけど)今回は男だ、ブラブラだ、死ぬほどやる気がおきない
しかしやらなければ納化途流柔術の第二の技、秘孔付きで爆砕だ、今までの扱いから見ても爆発するまで5コマくれないだろう、遺言すら残せない、やるせない
なんだか最近各地から「アレ?生きてたの?」って視線も受けるし冗談抜きで消されても誰も気がつかないだろう…ミリィすら、やるせない

今日は実戦形式の演習だ
みな終わったらシャワーを浴びるはずだ
僕は演習に出ていない、どうせ戦力として期待されてないしやることもいつも一緒だ
訓練メニューを艦長が考えてくれないらしい
しかも出なくても誰も気がついてくれない、いつも乗ってる機体にはいつの間にかカガリでも乗ってるのだろう、やるせない

701 名前: わたしの彼にはチャックがある 投稿日: 2003/09/29(月) 00:18
ん、そろそろみんな戻ってきたみたいだ
とりあえず任務を遂行しよう

早速腰にタオルを巻いて手のひらにはカード型デジカメ
こんな情けないことは早く終わらせよう
シャワー室は一応覆いがあって外からは誰が入っているかわからない、こっそり覗くしかない
一つ目の部屋を覗こうとしたら、腰にタオルを巻いてない仮面が出てきた、
腰は隠してないのに仮面は被ってシャワーなのか……やはり奴は予想通り変態なのだろうか
目ざとく僕の手の中のデジカメを見つけると奴は仮面の上からも顔を輝かせ、
「む!撮影か、うむ構わんしっかり撮ってくれたまえ」と微妙に腰を振りつつこちらに歩いてきた
猛烈に変態だ、身の危険を感じて走って逃げた
こんなに走れるほどシャワールームは広いのだろうか?なんとなくこれ以上考えると急に壁が現れそうなので
何も考えずに200メートルほど全力疾走して逃げた、やるせない

702 名前: わたしの彼にはチャックがある 投稿日: 2003/09/29(月) 00:19
酷い目にあった、とりあえずデジカメは絶対に見つからないようにとりあえずタオルの中に隠す
腰が隠せないけどさっきみたいな目には絶対にあいたくはない
キラを探し出してから取り出せばいいだろう
ちょうど近くに誰か入っているらしい部屋があった、耳を澄ますと「ふぅ……」と声が聞こえた
声が若い、少なくてもあの仮面やフラガさんってことはないだろう
キラだと確信してこっそり覗いた
アスランだった、しかも偶然こっちを向いていてこっちに気がついた
「トール君?どうしたんだい?……………」しばらく沈黙した後、ぽっと顔を赤らめた後
「そうだったんだ……ごめんね気がつかなくて、さぁ」とかいってさっきの仮面のように歩いて
――いや、股間が危険だ
わーにん、わーにん、第一級危険警報。総員急機動にそなえて対G体勢をとってください、非常に危険です、
戦闘要員は今すぐ持ち場へ限界まで恐怖を感じ、ふと気がついたら全力疾走して息が上がって歩くこともできなくなっていた
この果ての見えないシャワールームの広さに心から感謝したが、急に泣きたくなった、凄くやるせない
下半身を隠さないのは非常に危険な気がしたので、タオルで下半身を隠すことにする
デジカメはしかたないのでタオルと下腹部の間に挟む

703 名前: わたしの彼にはチャックがある 投稿日: 2003/09/29(月) 00:20
もうやめたくなったがまだ死にたくないので
これで最後と心を決めてシャワールームを覗き込んだ
心から安堵したキラだ、しかもこっちに気がついていない
後は後ろを向いてくれるのを待つだけだ
キラはなかなか後ろを向いてくれない、背中を熱心に洗っているみたいだ
ん?…今キラの……何というか……皮が動いたような、中を洗っている……そんなわけが……?
キラが背中を向けた、反射的にデジカメのスイッチを入れたが次の瞬間逃げ出した
何故ならキラの背中は……!
恐怖に駆られシャワールームを飛び出し、服を着るのもそこそこにフレイの部屋へ飛び込んだ
「ふっフレイ!キラ…キラの背中が!」
「どうだったの?ちょっとデジカメ見せなさい!」
フレイが僕の手からまだぬれているデジカメを奪った
フレイはしばらくそれを見た後、急に怖い顔をして
「仮面とあんたの汚いモノが映っているだけじゃないの!どうゆうこと!?」
しまった、タオルからデジカメを取り出すのを忘れていた
「ええぃ、天誅!!」
フレイが僕の背中の(危険に付き守秘)の場所にある秘孔をついた
「そ……そんな、僕は頑張ったのに………」

ごめん、やっぱり僕戦争を生き抜けなかったよ……


やるせないなぁ……

704 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/29(月) 00:48
>チャック
自分はこういうのスゲー好き。がんがって呉!!!

705 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/29(月) 01:21
>>664
もとEVASS書きだったので、逆行は考えたけど最初はキラしか思いつかなかったから
どうかなぁ・・と思っていた。
さっきフレイの逆行だったらどうだろう・・・と、妄想してみたけど、俺がかくとベタベタの
キラフレになってどうしようもないので誰か書いてください・・・
上手い人が書けばかなりいい感じだと思うので・・・

706 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/29(月) 09:39
>>705
ガンパレードマーチだと逆行が公式みたいになってるし、
ある意味EVA2もそんな感じ。
だからSEEDでもアリかなぁ…と思ってる。

キラ…逆行では王道かな。フラグはやはり無人島でのイージス戦だろう。
フレイ…彼女自身が戦局に積極的には関われないぶん、キラとの関係をどうするか…がメインになる。
    結局キラを操縦することになりそうだが。

この二人しか思いつかない。

707 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/29(月) 18:54
>>705
面白そうなのでちょっと連載の片手間に書いてみてる。
ただ、逆行する意味があるのはキラとフレイしないのがネックだなあ。
とりあえず50話の光フレイを砂漠編まで戻してみたけど、当時のフレイとは別人と化してるw
この時点だとAAクルーみんないるから大喜びしてしまうし、素直だし、通信技能持ってるし
まあ、書き易いんだけどね。キラのが逆行物には良いかも

708 名前: 流離う翼たち・51 投稿日: 2003/09/29(月) 19:31
 砂漠に降下してしまったアークエンジェル。回収されたストライクから連れ出されたキラは酷い高熱を発しており、急いで医務室に運び込まれている。友人達が看病しているようで、とりあえずこちらは任せていた。
 マリュ−とフラガ、ナタル、キースはこれからの事を決めなくてはならないのだ。彼らを含め、この艦のクルーは全員1階級昇進している。
「さてと、現在位置はここ」
 キースが北アフリカの一点を指差す。
「そして、目的地のアラスカがここ」
 指をつつっと動かして北アメリカの端を指す。
「随分遠いですな。とりあえず我々はどうやって味方の勢力圏に逃れるかが問題ですが」
 キースはチラリとマリュ−を見た。マリュ−の顔には後悔と苦悩の色が見て取れる。それを見てキースはマリュ−が可哀想になった。元々技術士官であり、戦艦の艦長になるなど考えた事も無いだろう。そんな彼女がこれほどの責任を負わされ、苦しんでいるのだ。
 キースは仕方なくフラガに目を向けた。
「大尉・・・・・・じゃなかった、少佐はどう思います?」
「そうだなあ」
 フラガはキースと並んでこの艦では経験豊富だ。艦のクルーは艦長や副長よりもこの2人を頼りにしているとさえ言われている。
「最短なら北上してユーラシア連邦に逃げ込むことだな。そこから陸伝いにアラスカを目指すってルートがある」
「ですが、地上は戦場が入り乱れてます。ザフトが何処に潜んでいるか分からない」
「まあ、そうだな。それが嫌なら海上に出るってルートもあるが、こっちだと遠回りな上に味方の援護が受けられない」
 フラガとキースの会話にマリュ−は入って行くことが出来ない。ナタルはまだ意見を出さず、じっと2人の会話を聞きいっている。2つのルートはそれぞれ一長一短だ。ヨーロッパに出れば確かに友軍に合流できるかもしれないが、強力な敵もいるのだ。下手をすれば敵に捕捉されて沈められかねない。だが、味方の援護は期待できる。
 対して海上ルートはほとんど孤立無援だが、敵の地上部隊の相手をしなくてもすむ。どちらが良いとは言いきれなかった。
フラガが悩みこんでしまったのを見て、キースはナタルを見た。
「副長は、どう思う?」
「・・・・・・私なら海上に出て、東アジア共和国に救援を求めます。ヨーロッパに展開する敵軍は強力だと聞きますから」
「ふむ、海上ルートね。副長の判断だとこのまま東進し、インド洋を目指す事になる」
「はい、幸い、アフリカの敵軍はさほど多くありません。突破は可能だと思います」
「まあ、ジブラルタルに向うよりはマシか」
 フラガが指で地図を叩く。西に向えばアメリカ大陸があるが、ここに行くには強力なジブラルタル基地を突破しなくてはならないのだ。とてもではないがこのルートは使えない。
 キースはしばらく考えて、地図の一点を指した
「とりあえず、マドラスを目指そう。そこで補給を受けて、アラスカを目指す」
「マドラスか。確かにあそこなら完全な友軍の勢力圏下だな」
「私もそれが良いと思います」
 キースの意見にフラガとナタルが賛意を示す。そして、3人の視線がマリュ−に集まった。マリュ−は疲れた顔で俯いた。自分に作戦立案能力が無いことを改めて思い知らされているのだろう。
 ナタルはそんなマリュ−を軽蔑した目で見ている。無能な上司は彼女にとって侮蔑の対象でしかないのだろう。そんなマリュ−にキースが声をかける。
「艦長は、一刻も早く友軍の勢力下に入った方が良いと思いますか?」
「大尉!?」

709 名前: 流離う翼たち・52 投稿日: 2003/09/29(月) 19:32
 ナタルが驚いた声を出し、フラガが面白そうにキースを見ている。キースは地図をもう一度指差した。
「ヨーロッパでは旧ドイツ辺りで両軍が睨み合っています。ここを避けるようにして、そうですね。ブカレストを目指すという事になります」
 ブカレストは旧ルーマニア領にある都市で、ユーラシア連邦の西部方面軍の司令部が置かれている。ここに行けばとりあえず友軍の勢力下に逃げ込めたことにはなるだろう。
 だが、マリュ−は憔悴した顔でキースを不思議そうに見上げていた。
「・・・・・・大尉は、どちらが良いと思うんですか?」
「俺は艦長の判断に従います。艦長がどちらに行くか決めてくれれば、後は俺と少佐とキラが頑張る。それだけのことです」
 キースは穏やかに、だがはっきりと言いきった。自分はマリュ−の判断を尊重すると。それはマリュ−に不思議な安心感を与えた。歴戦のパイロットが自分を信頼してくれるというのだから。そして、フラガもキースの言うことに頷いていた。ただ1人ナタルだけが不満そうな顔をしている。
 そして、マリュ−は決断した。
「ブカレストを目指しましょう。あそこがここから1番近い友軍の拠点です」
「ですが、それにはイタリアとギリシアの敵が問題となります!」
 ナタルが反対した。敵の最前線に自分から突っ込もうというのだから正気ではない。キースとフラガがマリュ−の側についた。
「俺は艦長に従うよ。敵は確かに強力だが、何処にでもいる訳じゃない。この艦のスピードを生かせばどにかなるだろ」
「それに、一度何処かで本格的な修理を受けないとな。この艦もあちこちガタが来てそうだし」
 ナタルはまだ不満そうだったが、上官が3人とも意見を一致させた事で自分の意見を引っ込めた。これで方針が決まる。フラガは自室に戻ると言って艦橋を後にし、マリュ−は疲れた顔のままやはり艦橋を後にする。後には当直のナタルと、まだ残っているキースがいた。
「・・・・・・大尉、1つお聞きしたいのですが?」
「なんだい、副長?」
 キースはナタルのキツイ視線を正面から受けとめて見せた。
「何故、あそこで海上ルートを変更なさったのです?」
「艦長が友軍との合流を優先したがってる様に思えたのでね」
「あなたは、ラミアス艦長をどう思っているのです?」
 その質問に、キースはジロリとナタルの顔を視線で一薙ぎした。その視線を受けてナタルの顔に僅かな怯みが出る。
「・・・・・・中尉、君が艦長を信頼していないのは知っている。だがな、まだ艦長は経験が浅いんだ。それを補佐するのが俺達の仕事だろう。技術士官なんだから無理も無い」
「ですが、ここは戦場です。経験が無いというのは言い訳にはなりません!」
 ナタルの言うことはキースにも分かる。確かに艦長が未熟だから、というのは逃げ口上にもなりはしない。だが、流石に今回はそれを口にするべきではないとキースは思っていた。マリュ−は技術畑上がりの士官なのだ。ナタルのような高度な戦術や指揮の教育を受けている訳ではない。
 経験が足りなければ、それを補佐するのが部下の務めだとキースは考えていた。マリュ−はいささか判断に情が混じるが、それは好感を持って迎えられる資質だ。ナタルの様な効率だけの指揮では部下は付いてこない。
 この2人がお互いの長所で短所を上手く補完し会えば理想的なのだが、とキースは思っていたが、それは遠い夢の様だった。
「俺からも、1つ聞いて良いかな?」
「なんでしょう?」
「なあ、バジルール中尉。お前さんは、なんで軍に入ったんだ?」
 キースの問い掛けに、ナタルは眉を潜め、そして答えた。
「私の家は代々軍人の家系でした。私もそれに習っただけのことです」
「なるほどね」
 自分とはまるで違う理由に、キースは苦笑を浮かべた。ナタルと自分、どちらが人として正しいのだろうか。少なくとも自分の軍への志願理由は誰にも褒められる類の物ではない。だが、ナタルの志願理由は誰もが頷くのかもしれない。
 キースはナタルの答えを聞くと、自分も席をたった。
「俺はキラの様子を見たら寝ることにするよ。後は頼む」
「お疲れでした」
 ナタルに見送られてキースは艦橋を後にした。残ったナタルは操縦員席に座りながらじっと砂漠の夜を眺めている。そこは目を奪われるほど美しい夜空が広がっているが、ナタルの目には映っていなかった。ナタルは、別のことを考えていたのだ。
『お前さんは、何で軍に入ったんだ?』
 キースの言葉が頭の中に引っかかっていた。これまでどうして軍に入ったかなど考えた事も無い。自分にはこの道しかないのだと考えていたのだ。だが、キースはどうして軍に入ったのだろう。マリュ−は、フラガは。彼らは何を考えて戦っているのだろう・・・・・・

710 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/29(月) 22:13
>>678
乙フレです。
1stのアムロ展開かと思いきや
何となくビリー・ミリガンっぽくもありますな。
珍しく本編準拠後日談のキラフレってことで
楽しみにしております。

フレイを良く知る者としては
やはり,妥当かと・・・
+ミリィでもいいとは思いますが。

711 名前: もつとたのしくて 投稿日: 2003/09/29(月) 23:01
>>500-501>>514>>548>>557>>562>>568>>587>>686-687

暗闇の観客席から見える舞台は白いライトを浴びて、それぞれの衣装に光を反射させながら演じている者達は、白銀に輝く月面で踊る星を想わせた。
その白銀の世界で、フレイの赤い髪がたった一つ静かに輝く炎のように揺れていた。
心地よい汗が頬を、首筋を伝い、フレイは一瞬、陶然となっていた。
微かに上気した肌が白を基調とした衣装により一層ひき立てられて、幻想とも言うべき光景になっていた。
その幻想が舞台から観客席へ溢れ出て、キラはそれに包まれたように感じて、あの日のフレイの身体の感触と香りを思い出していた。
『そうだった…こんな風に、とても暖かくて、柔らかくて…気持ちが良かった…』
そのイメージを抱いたのはキラだけかも知れなかったが、それ以外の皆も、吸い込まれるように観劇していたのは確かなようだった。
豪雨のような拍手の音にフレイは我に返り、部員の皆が一列に並び始めていたのに慌てて一緒に並んだ。
舞台裏でそれを見ていたミリアリアはにっこり笑って手を叩いた。
「みんなお疲れ様!凄く良かったわよ!」
初めての舞台を終えた部員達は、プレッシャーからの解放感と充実感に包まれた笑顔に溢れていた。それはフレイも例外ではなかった。
「片付けが終わったら、打ち上げするからね。今日は本当にお疲れ様」
その声に一年生の間から歓声が上がる。
「やった!これだけが楽しみで…」
「ちょっと、それ言い過ぎ」
「でも、ほんとに疲れたよね。この衣装結構着苦しくって…」
そんな声を聞きながら、フレイは肩の荷が下りたような急激な脱力感を感じていた。色々あったせいで緊張が続き過ぎていたのだろう。
しかし、それをおくびにも出さずに笑顔で部員達の輪の中にいた。
「フレイもお疲れ様。練習通りだったわよ。ほんとに綺麗だった」
「…ありがとうございます。でも、ちょっと、まだ少し」
「贅沢言わないの。あれだけ出来れば上出来よ。初めてだったんだから、また次頑張れば良いのよ」
私は欲張りなのかなとフレイは内心で思ったが、とにかく終わったのだから今は余韻に浸っていれば良いのだと思い直して、着替えと化粧を落とすために部室に向かった。
鏡の中のフレイは、まるで夢を見ているような目をしていた。
『夢、か…演じるのって、そう言う事かもね』
フレイは鏡の自分に笑いかけると、衣装を脱ぎ始めた。

712 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/29(月) 23:15
>>711
乙フレです。
毎回喜んで読ませていただいてます。
今後の展開も楽しみです。ガンガレ〜

713 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/29(月) 23:46
夢心地のフレイ様(*´д`*)ハァハァ。乙フレです。
一週遅れなので確実にネタバレしないSSに逃げてます。。。(´・ω・`)

714 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/30(火) 02:33
ここって俺フレとか書いていいのかな?
と馬鹿な提案をしてみる。

715 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/30(火) 09:04
>>714
却下に一票。

716 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/30(火) 10:23
>>714
ちょっとなぁ…勘弁してほしい

717 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/30(火) 10:47
俺は一応「止めはしない」と答えておく。
根っこ辿ると行き着く先は「オリキャラ加えたifストーリー」だろうから。
どうするのかは投下する職人さん自身に一任する。
「他人を不快にするSS」とやらに引っかかる(と思ってらっしゃる)なら止めるよろし。

718 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/30(火) 10:55
>714
エロは勘弁な。

719 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/30(火) 10:57
>>711
幸せそうだなあ(´Д⊂ヽ

720 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/30(火) 12:00
>>714
公式キャラxフレイ様はもちろんのこと、
オリキャラxフレイ様も当然の範疇。

だが俺xフレイ様は他人を不快にさせるのでやめるべし。
「俺」を投影したオリキャラなら良いけど。

721 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/30(火) 13:08
>714
漏れはいいと思うぞ。正直、オリキャラ入ってる話はきしょいので読んでないから
そのことを明言しててくれれば、読まずにスルーする

722 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/30(火) 16:12
投下ぐらいいいと思うぞ
まぁ漏れも、オリキャラマンセーとか苦手なんで、オリキャラものは正直すべてすっ飛ばしてるが

723 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/30(火) 16:15
オリキャラ系でも面白いのあるけど・・・
入るまでが大変なんだよな、オリキャラものってw

だから序盤にオリキャラの存在をうまくぼかせるといいかもしれない。
食わず嫌いしてるとRFAも読めん品。

724 名前: 流離う翼たち・53 投稿日: 2003/09/30(火) 19:18
 キラの部屋の近くまできたキースは、漏れてくる声に足を止め、耳を済ました。どうやら嗚咽のようだ。キラのものだろう。時折聞える女性の声はフレイだろうか。
『何があったんだ?』
 キースは暫くそこで話を聞く事にした。
「キラ・・・・・・どうしたの?」
「あの子・・・・・・ぼく・・・・・・・」
 キラはきしむような声で叫んだ
「守れなかった・・・・・・!」
「キラ・・・・・・」
「僕が・・・・・・キースさんが教えてくれたのに、ハルバートン提督が教えてくれたのに・・・・・・迷ってたりしたから・・・・・・守りきれなかったんだ!」
 まるで血を吐くかのような、懺悔のような叫びと慟哭。そして嗚咽。キラは戦うことの本当の辛さを初めて味わっているのだろう。
 だが、その後に聞こえてきたフレイの声にキースは眉を顰めた。
「キラ・・・・・・私がいるわ」
「大丈夫、私がいてあげるから」
「私の想いが・・・・・・あなたを守るから・・・・・・」
 フレイの優しい言葉にキラの泣き声がより激しくなる。どうやらフレイに縋りついて泣いているらしい。それは良い。自分を維持する為に何かに縋るのを悪いなどという奴はいない。
 だが、気になるのはフレイの態度だ。彼女はコーディネイター嫌いだった筈。それが何故キラの支えになっている? 悩むキースは、宇宙での戦いの時に見かけた、危険な雰囲気を纏ったフレイを思い出した。
『そうよ、みぃんなやっつけてもらわなくちゃ、せんそうはおわらないんだから・・・・・・』
 キースは自分の悪い予感が当たってたのかもしれないと考え、頭痛のしてきた頭を押さえた。キースはフレイの目を思い出したのだ。あの目に、自分はとても見覚えがあった。昔、鏡を見るたびに何時も見ていたのだから。



 寝静まるアークエンジェルをじっと観察する目があった。
「どうかな、噂の大天使の様子は?」
「はっ、依然、なんの動きもありません!」
 赤外線スコープを覗いていた副官のマーチン・ダコスタが上官に報告する。この面長の顔の男こそ、ザフト地上軍の名将アンドリュー・バルトフェルドだ。片手にはコーヒーの入ったカップを持っている。
「ふむ、暢気にもすやすやとお休みか・・・・・・」
 バルトフェルドは面白そうにコーヒーを口にし、満足そうに頷いている。この男の隠れた趣味はコーヒーのブレンドなのだ。
「どうします、軽く手を出してみますか?」
「敵はあのクルーゼ隊を幾度も退けた戦艦だよ。甘く見ちゃいけないな。ダコスタ君」
 バルトフェルドは軽い口調で返し、踵を返した。背後の砂丘の麓には巨大な機体が幾つも鎮座している。その周囲には急がしそうに動き回る人影が見られる。バルトフェルドが歩み寄っていくと、彼らは集まってきて敬礼をした。バルトフェルドはニヤリと笑い返す。
「さて諸君、我々の目的は敵の戦力評価だ」
「ということは、沈めてはいけないのでありますか?」
 意外そうな部下の声に、バルトフェルドはとぼけた返事を返した。
「まあ、何かの弾みという事はあるな」
 その返事に部下たちがどっと笑った。暗にやってしまえと言ってるも同じだからだ。バルトフェルドも口元を綻ばせ、アークエンジェルを振り返る。
「さあ、戦争だ。やるなら派手な方が良い」


 アークエンジェル内で突然の警報が鳴り響いた。アナウンスが第二級戦闘配備を継げている。乗組員達は慌てふためいて起きだし、自分の持ち場へと走って行った。そんな中でキラも慌てて自分の部屋から飛び出してきた。脱ぎ捨てた服を慌てて着こみながら。
 その部屋の中にフレイがいることを知る者はいない。その中でどういう行為が行なわれていたかを知る者もいない。まして、その少女がどういう考えでキラと一緒にいたかを知る者など、いる筈が無かった。
「守って・・・・・・ね・・・・・・」
 ポツリと呟き、狂った様に小さな声で笑い声を漏らす。自分はもう戻れない一線を踏み越えてしまった。後は何処までも堕ちるだけ。でも、それがどうだというのだろう。
「そうよ・・・あの子は戦って、戦って、戦って、死ぬの。じゃなきゃ許さない・・・・・・」
 その瞳に宿るのは憎悪と復讐の炎。コーディネイターを憎み、同じ憎しみでキラを利用する。そしてコーディネイター同士で殺し合わせる。それが彼女の復讐だった。その為なら何でも犠牲にして見せる。そう、友人であろうと、自分自身であろうとも・・・・・・
 だが、また自分の中の何かがそれを否定している。自分を狂気の淵から引き戻そうとする。こんな事をしても意味がないと言う自分がいる。まだ全てを捨てるのは早いと言う。  
馬鹿馬鹿しい。父を失った自分に何が残っているというのだ。

725 名前: 流離う翼たち・54 投稿日: 2003/09/30(火) 19:20
 攻撃を開始したバルトフェルド隊。スカイグラスパーは出撃できず、マードックとフラガがやりあっている。キースは早々に出撃を諦めてスカイグラスパー2号機から下りた。
「やれやれ、このまま棺桶の中で御陀仏かもな」
 どうしたものかと格納庫を歩いていると、何やら凄い形相で歩いてくるキラを見つけた。最初は出撃で気が高ぶってるのかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。
「おいキラ、何を焦ってるんだ?」
「焦ってなんかいませんよ。今から出ていって敵を倒すだけですから」
「何を言ってるんだ。まだスカイグラスパーは出られないんだぞ。おまえ1人で戦うつもりか?」
「そうですよ。援護なんか必要ありません!」
 キラの言葉にキースは顔を顰めた。これは増長ではない。だが、似た危うさを持っている。瞳がまるで麻薬でも嗅がされたかのように危険な光を発しているのだ。
「・・・・・・キラ、何があった?」
「別に、何もありませんよ!」
 キースの問いに過剰に反応するキラ。だが、その態度事体が何かあったことを物語っている。キースはさらに問い詰めようとしたが、直撃の振動がその詰問を断念させた。今は迎撃が先だ。
「ちっ、仕方ない、話は後だ。生きて帰ってこいよ」
「当たり前です!」
 キラはそれ以上キースと語ろうとはせず、ストライクの方に行ってしまった。キースはその背中を見送ると、大きい溜息を吐いて歩き出した。ここにいても仕方ないし、艦橋にでも行こうと思ったのだ。あそこが1番情報が集まりやすい。


 外に出たキラはランチャーストライカーを装備して出ていたが、初めての地上戦という悪条件がキラに襲いかかってきた。砂に足を取られ、思うように動く事さえできないのだ。
 戸惑うキラに容赦なくバクゥが襲いかかってくる。動きの鈍いストライクの機体に容赦なくミサイルが叩き込まれる。キラは衝撃に顔を顰めながら端末を引き出した。
「接地圧が弱いなら、調整すれば良いんだろ!」
 右手が物凄い早さで動いている。それと共にストライクの動きは少しづつ良くなってきた。構えたアグニの照準が正確さを増していく。踏みつけたバクゥに容赦なくアグニを叩き込み、止めを刺す。そして残るバクゥに目を向けた時、遠くから艦砲射撃が飛んできだした。着弾の衝撃がストライクとアークエンジェルを激しく揺さぶる。
「くそぉ、どっからの砲撃だ!?」
 キラは周囲を見まわしたが、視界内に戦艦の姿はない。自由の利かないアークエンジェルは離床し、高度を取り始めた。その格納庫からスカイグラスパーが1機飛び出してくるのが見える。フラガが出てきたのだろう。
 キースは艦橋に来ると艦長に許可を求めた。
「艦長、砲撃管制をさせて頂けますか?」
「砲撃管制を?」
「はい、直接照準で敵を狙い撃ちます」
 ヘリオポリスでフラガがやった様に、レーダーに頼らずに攻撃しようと言うのだ。ニュートロンジャマーのせいでレーダー照準は甚だ心許ない。ならば直接照準で狙い撃とうとキースは言うのだ。だが、それをやるには相当の技量が要求される。
「できるのですか?」
「まあ、昔にいろいろ経験しまして」
 小さく笑うキースに、マリュ−とナタルは訝しげな視線を向けた。一体この男はどういう人生を過ごしてきたのだろうか?
 マリュ−の許可を受けたキースは直ちに砲撃管制を回してもらい、フラガの連絡を待つ。だが、その前にやる事があった。周囲をじっと観察し、小刻みに照準装置を動かしていく。
「バリアント、1番2番装填・・・・・・」
「りょ、了解!」
 キースの指示でバリアントに砲弾が装填される。マリュ−とナタルはキースが何を狙っているのか分からなかった。レーダーではバクゥは捕らえ切れない。そもそもキースはレーダー照準に頼っていないのだ。熱源と光学照準スコープだけを頼りに狙ってるらしい。
 誰にも見えない何かを探す様に慎重にバリアントの照準を操作していたキースは、いきなり目を見開くとトリガーを引き絞った。二門のバリアントから加速された砲弾が撃ち出され、砂漠に着弾して周囲の物を吹き飛ばす。驚いた事に、着弾した砲弾は2機にかなりの重症を負わせていた。
 神業としか思えない砲撃を行ったキースに、環境にいる全員が驚いた顔を向けている。

726 名前: 流離う翼たち・55 投稿日: 2003/09/30(火) 19:21
「ど、どうして敵の動きが分かったんですか!?」
 ナタルの問い掛けに、キースはしかめっ面で答えた。
「熱源感知で敵の動きを見て、次の動きを推測したのさ。この辺りは実戦経験の積み重ねで得られるものだから、口じゃ説明しづらいな」
「大尉や少佐は、そうやって戦っているのですか?」
「まあ、歴戦のアーマー乗りなら大抵は身に付く能力だよ。というより、身に付けなければ生き残れない」
 MA乗りに限らず、機動兵器を扱うパイロットには脅威的な能力を持つ者が現れる事がある。まるで背後に目があるんじゃないかと錯覚させるような機動を行う者。出鱈目な機動を行いながら正確な照準で弾を撃ちこんでくる者。周囲の全てを肌で感じてるかのように把握している者。
 こういう能力を持つパイロットがエースと呼ばれるようになり、戦場を生き抜くことができるのだ。フラガやキースの様にこれらの全てを兼ね備える化け物も稀にだが存在する。イザークやディアッカがこの2人を相手に苦戦したのも仕方がないだろう。
 だが、キース達の見ている先で奇妙なことが起こった。アグニで砲弾を撃ち落とすという離れ業を演じていたキラだったが、時折自分たちのものではない攻撃が行なわれているのだ。勿論敵のものでもない。何が起きているのか。


 混乱していたのはキラも同じだ。自分を包囲していたヘリが次々に堕とされているのだから。
「何が?」
 問いに答える者はいない。ただ、通信機が発信者不明の通信をキャッチした。
「そこのモビルスーツのパイロット、死にたくなければこちらの指示に従え!」
 女の声だ。暫くして地図が転送されてくる。その一部が点滅している。
「そのポイントにトラップがある。バクゥをそこまでおびき寄せるんだ!」
 この少女は何者なのだろう。敵か味方か。ただ、ザフトと敵対する者であることだけは間違い無いようだ。キラは迷わなかった。迷っている時間などありはしない。逃げ出したストライクにまだ動ける2機のバクゥが追撃をかけて来る。キラは胃の痛くなるような焦燥感に囚われながら指定地点までやってきた。すでにフェイズシフトは落ちている。
 そして、まさにバクゥの爪が機体を抉ろうとした時、キラはストライクを大きくジャンプさせた。すると、それまでストライクがいた地点が爆発と共に陥没した。そこにいた2機のバクゥが爆発に飲まれながら穴に落ち、更に二度目の爆発で粉々になってしまう。
 飛び散る破片を、キラは無感情に眺めやっていた。そこに同朋を殺すことへの忌避感は微塵も感じられない。
 戦いを遠くから眺めていたバルトフェルドは難しい顔をして双眼鏡を降ろした。
「・・・・・・バクゥ5機がこうも簡単にな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 ダコスタに至っては声も無い。確かに最後のは予定外の要素が入ったせいだが、それにしてもMS1機でこれだけの事ができるとは。バルトフェルドは敵を甘く見ていたことを悟ったが、同時に1つの疑問を感じていた。機体のバランスを戦闘中に変えたこと、レセップスの砲撃を撃ち落としたこと、あれをナチュラルがやったというのか?
「・・・・・・そんな馬鹿げた話があるか」
「どうしましたか、隊長?」
「なんでもない、撤収する」
 バルトフェルドの命令で撤退を開始したザフト軍。その最後尾についていたバルトフェルドはもう一度アークエンジェルを見やり、口元を綻ばせた。久しぶりに会えた勇敵に、救い様の無い高揚感を覚えてしまっているのだ。これが戦場に立つ者の愚かさというものだろうか。

727 名前: 流離う翼たち・56 投稿日: 2003/09/30(火) 19:22
 アークエンジェルは戦場から少し離れた所に着陸した。その傍にバギーの集団が止まる。マリュ−は外に出るハッチまで来たところで部下たちを見た。拳銃のカートリッジを確認するフラガやアサルトライフルを持ち出してくる兵士達。それに混じってやはりアサルトライフルを手馴れた操作で扱うキースの姿があった。
「あら、バゥアー大尉は、銃が扱えるのですか?」
「こう見えても、地上戦の経験もあるんでね。機体を失った時に歩兵に真似事をやらされて、その時に覚えました」
 この男は本当にいろんな技術を持っている。艦砲を扱うことといい、MAの操縦といい、本当に何処でこんな技術を身につけているのだろうか。世間一般の広範な知識といい、ナタルと討論ができるほどの戦術や戦略知識まで持っている。フラガもキースが何処でこういう事を覚えたのかは知らないらしく、その多芸ぶりに驚く日々らしい。
 外に出たマリュ−達はアラブ系の男たちと対面した。先頭に立つ男がリーダーなのだろう。
「・・・・・・礼を言うべきなのかしらね。地球連合軍第八艦隊所属、マリュ−・ラミアス少佐です」
 マリュ−の挨拶に男はニコリともせずに答えた。
「俺達は「明けの砂漠」だ。俺の名はサイーブ・アシュマン。礼なんざいらねえ。分かってんだろ。別にあんた達を助けたわけじゃない」
 何処か探り合うような言葉の応酬が続く。そんな中でマリュ−の斜め後ろに立つキースに注がれる視線は一際キツイものだった。キースは彼等の前で露骨にアサルトライフルを担いでおり、しかも何時でも撃てる状態にしてあるのである。
 だが、結局はキースも銃を下ろす事になった。マリュ−に命令されては仕方ない。キラもストライクから降りてきた。キラを見てゲリラの男たちが驚いた声を上げるが、その中から一人の少女が踊り出てきた。
「お前・・・・・・!」
 飛び出した少女は、この探り合うような空気の中では明らかに異彩を放っていた。キラの前に立った少女はギッとキラを睨みつけると、いきなり殴りかかったのだ。
「お前が何故、あんな物に乗っている!?」
 キラは少女の言葉に怪訝そうな顔になった。見覚えの無いこの少女は自分を知っていると言うのだろうか。しばし記憶の糸を手繰り寄せていたキラは、ようやくその少女に思い当たった。
「君は、モルゲンレーテの工場にいた・・・・・・・」
 あの時、自分が緊急用シェルターに押しこんだ少女だ。何故彼女がこんな所にいる。
 キラが呆然としている間にも、少女はキラの手を振り解こうともがいていた。
「くそっ、離せよ、この馬鹿!」
 彼女のもう一方の拳がキラの頬を捉える。キラはその衝撃に思わず彼女の手を離してしまった。彼女は更に追い討ちをかけようとした。
「カガリ!」
 リーダーらしき男に咎められ、カガリと呼ばれた少女は渋々引き下がった。最後にあの印象的な眼差しでキラの顔を一薙ぎし、仲間達の所へ戻って行く。キラはぼんやりとした顔でそれを見送っていた。
 カガリが離れたところでキースがキラの所に歩み寄った。
「大丈夫か?」
「・・・・・・はい、何ともありませんよ」
「そうか、ならいいが、知り合いか?」
 キースがカガリを見やる。カガリはまだ怒ったような目でこちらを見ていたが、キースと視線があうと慌てて目を逸らした。
「・・・・・・ふむ、お友達って感じじゃ無さそうだな。昔に酷いことして恨まれてるとか?」
「そんなんじゃありませんよ!」
 とんでもない事を言い出すキースのキラが大声を上げて否定した。また馬鹿な事を言い出したキースにマリュ−が疲れた顔で肩を落とし、フラガが苦笑を顔に貼り付けている。まったく、こいつだけは常にマイペースを崩さない奴だ。
 だが、このキースの軽口は今回は良い方向に働いた。サイーブと名乗ったリーダーは面白そうにキースを見やり、マリュ−の隠れ場所を提供すると申し出たのだ。

728 名前: ある苦労人の記述・作者 投稿日: 2003/09/30(火) 20:08
ちょっと変わった切り口でフレイ様を表現したいと思い
ふと思いつくまま書いてます。
当然未熟者の拙い文章です。
まあ笑って見逃してやってくださいな

あ、一応戦後物です。
つまりそういうわけで本人は登場しません・゚(ノД`゚)・。
ではでは〜〜

729 名前: ある苦労人の記述・1 投稿日: 2003/09/30(火) 20:10
○月×日
今日ラクス様に頼まれごとをされた。
フレイ・アルスターという少女がどのような人物だったか調べてほしいとのこと。
どうも故人らしい。
こんな個人的なことを頼んでくるとはあの方には珍しいことだ。
しかしあの人はオレを便利屋か何かと勘違いしていないだろうか?
いつも難問ばかり押し付けてくる。
まあ戦後ずっとプライベートな時間などろくにとれないようだし、
なにも聞かず手伝うことにする。
ちなみに参考までにラクス様にもフレイなる人物について聞いてみた。

証言1:ラクス・クラインの場合

わたくしがあの方と直接お会いしたのはユニウス7でアークエンジェルに助けていただいたときです。
赤い髪の、とても綺麗な方でしたわ。
お友達になりたいと思いまして握手を求めたのですが、「コーディネーターのくせに―――」
と振り払われてしまいました・・・ それをすこし悲しく思った記憶があります。
・・・・あの時はキラとはあまり仲の良いようには見えなかったのですが・・・・
そうそう父親を助けようとわたくしを人質にしようとされたこともありました。
残念ながらお父上様は亡くなってしまわれましたが。
あとはメンデルでの救助ポッドからの通信を聞いたくらいでしょうか・・・・?

―――今サラリとすごいことを聞かなかったか?
・・・・まあいい。
なるほどフレイ嬢はあの訳の分からない通信をしてきた娘のことだったのか。
あの通信の言い合いは自分も聞いていたが、確かあんなの聞かされた日には
キラ・ヤマトと一体どういう関係だったのか気にならずにはにいられない。
しかしラクス様も出来た方だが、やはり年頃の娘でもあるようだ・・・少し安心する。

――本題に戻ろう。今の話だとどうもフレイ嬢はコーディネーターに対して
良い感情をもってなかったようだ。
そんな少女がコーディネーターであるキラ・ヤマトと関係を持つなどと少し考えられない気がする。
とにかくまずは出来るだけの情報を集めてみることにする。
まあ一番手っ取り早いのはキラ・ヤマトに聞くことなのだが―――

「そうそう・・・この件について、キラの耳に入るなんてことにならないようにして下さいね。」

そう思った瞬間、ラクス様がクギを刺してきた。
それはもう素晴しい笑顔でいらっしゃるが目は笑ってない。
もしそうなったら――と暗に告げている。
この人は読心術でも習得しているのだろうか・・・

・・・ラクス様の名誉と 自 分 の 命 の た め に 細心の注意を払うことにする。

730 名前: ある苦労人の記述・2 投稿日: 2003/09/30(火) 20:11
○月△日
とりあえず、フレイ嬢のパーソナルデータを調べ上げ、ラクス様に送っておいた。
まあこれくらいのことはあの方のことだ、
す で に 調 べ が つ い て い るだろうが。
しかし、中々面白い経歴の持ち主だ。
父親は地球連合軍事務次官でありブルーコスモスでもあったジョージ・アルスター。
(彼女がコーディネーターに良い感情を持ってなかったらしいことも頷ける)
オーブのヘリオポリスの大学に在学中、例の連合のGシリーズ強奪事件に巻き込まれ、
アークエンジェル(以下AA)に保護される。地
球降下の際に連合軍に入隊。
アラスカで異動になったと思えば何故かザフトの捕虜になり、
連合軍に再度保護され、ドミニオンのクルーとなり、ヤキン・ドゥーエ戦にて死亡。
彼女のような経験はなかなか出来るようなものではないだろう。

まあ後はフレイ嬢と直接接触のあった人物に話を聞いておきたいのだが
さすがにプラントでは皆無に等しい。
とりあえずダメ元でウチの隊長に聞いてみることにする。

証言2:アンドリュー・バルトフェルドの場合

フレイ・アルスター? 会ったこともない少女のことを僕が知ってるわけがなかろう?
しかしまあ君がそんな趣味だったとはねぇ〜〜。
ん?違うって? そんなにあわてた風で言われても説得力がないぞ。
まあこれでも飲んで落ち着け。
今回のは出来が良い、やはり――――――おい、待ちたまえ!


隊長に聞いてみようと思った 俺 が バ カ だ っ た !!

731 名前: ある苦労人の記述・3 投稿日: 2003/09/30(火) 20:13
○月□日
この間はひどい目に遭ったが今日アポが取れた人物はほぼ間違いなく証言がとれるはずだ。
フレイ嬢はラウ・ル・クルーゼがアラスカ戦の折に連れ帰り捕虜としたという。
捕虜であった期間に接触のあった人物に接触を試みたが、
「あの女は隊長に体で取り入ったのだ」だの「隊長はロリコンだったから」だの
誹謗中傷めいたことしか証言を取れなかった。
あの時期クルーゼの腹心であった彼ならばもっと正確な情報を持っているはずだ。
戦後のザフト再編に彼は中心となって係わっており、それだけに多忙だ。
このチャンスを生かして彼が知る限りのことを聞き出したい。
――しかし、砂漠で砂を耕すしか脳の無かったボンボンが
今ではザフトを代表する英雄に成長するとはさすがに驚きだな。

証言3:イザーク・ジュールの場合

フレイ・アルスター? どんな女だったかだとぉ? 
――――あぁ、たいちょ・・・いやクルーゼが連れ歩いていたナチュラルの女か。
いつも不安そうな感じでクルーゼに付き添っていたな。
あのオドオドした態度がどうにも気に食わなかった。
何ィ? 他に何かないかだと? いちいち覚えていられるか!
足つきにいた女ならディアッカにでも聞いてみるんだな。

少々期待はずれだ。この男はたいした証言をしてくれなかった。

―――大体何で死んだ女のことなど嗅ぎ回っている! 虎の差し金か?
お前のところの隊長は―――――――――――

まあいい。
コーディネーター嫌いのフレイ嬢もさすがにわが身ひとつで
ザフトに捕虜になっては不安だったようだ。
何故クルーゼが連れ回していたかは若干疑問も残るが、
まあ利用するためだったということで差し控えないだろう。

―――そもそも、あの砂漠のとき――――――

次は先ほどの話題にも出た、ディアッカ・エルスマンに接触してみることにする。

――――――オイ、貴様ぁ!! 聞いているのかぁ!!

やれやれ・・・ザフトの英雄殿はかなりしつこいタイプらしいな・・・。
お前の言いたいことは分かるし文句も言い足りないだろうが、
たのむから 俺 に か ら ま な い で く れ !!

732 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/30(火) 20:32
>>ある苦労
ウケますたw
誰の視点かは大体わかるけどおいしいでつね。

733 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/30(火) 21:18
>>728-731
アストレイではあんなに株を上げてるのになぁ・・・乙フレ!

734 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/30(火) 21:19
>ある苦労人〜
おつ!!すげえおもろい、コレ!
がんばれダ…ある苦労人!!期待してまつw

735 名前: もつとたのしくて 投稿日: 2003/09/30(火) 22:12
>>500-501>>514>>548>>557>>562>>568>>587>>686-687>>711

部室にはシャワーの類が備え付けられていないのが不満だったが、カレッジにそんなものを求めるのは贅沢というものだ。
急いで薄いベージュのワンピースに着替えてしまうと、片づけを手伝うためにとって返したそこでは、ミリアリアがトールやサイ達と談笑していた。
そして、その中にキラの姿を認めると、自然にフレイの足は止まってしまった。
「あ、フレイ、遅かったじゃない…今、トールも褒めてくれてたのよ」
目ざとく―フレイにとっては最悪のタイミングだが―ミリアリアが声をかけてきた。
「ぁ、ありがとう…ございます」
顔を赤らめたのは褒められた事への照れだけではなく、それ以外にも色々な感情が混じっていたのだが、フレイにもよく分からなかった。
うつむいて目を合わさないようにしてしまうのは決して意識してやっている事ではない。が、顔を上げる事は出来なかった。
「あの…私、後片付けがあるので…」
「あ!ごめんトール、私もう行かなきゃ。フレイ、一緒に行きましょ」
ミリアリアはトールにウィンクすると、フレイの後に続いた。
「フレイ、せっかく褒めてくれてたのに…ちゃんとお礼は言わなきゃ駄目じゃない」
「……」
「もう、どうしたのよ。…疲れちゃったの?なら、休んでて良いんだから」
「いえ、そういうわけじゃなくて…」
「じゃあ、何?」
多少、不満げな声だった。トールに褒めてもらったのにあんな態度を取ったのが、ミリアリアとしては納得出来ないのだろう。
そんな風に思われてしまったのがフレイを慌てさせ、思わずクチを滑らせていた。
「…えぇ〜っ、まだキラに謝ってなかったの?」
そう驚いてみせたミリアリアだったが、内心では『なーんだ』と半分呆れていた。
キラは、そんなことで怒ったり気にしたりする人ではないが、フレイはよく知らないからそうは思っていないのだ。
たしかに、一ヶ月も経っていればそう簡単に言い出せる雰囲気ではなくなっているし、フレイのプライドの裏返しとも言える羞恥心の強さも分かっていた。
要するに、もう自分からは言い出せなくなって、そのくせ気に病んで自縄自縛になっているのだ。
しかし、そんなフレイが少し可愛らしいとも思う。
と同時にミリアリアは、さっきフレイと会った時フレイに負けないくらいうつむいて恥ずかしそうにしているキラの姿も思い出していた。
『これは、何とかしてあげないとね…』

736 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/09/30(火) 22:21
すいませんあまりの大量投下に読むスピードが追いついてません(;´Д`)
取り合えず読んだものから…

>二人で一人
どことなく暢気なフレイ様に萌えですw
しかし、ああも冷静に対処するキラの母さんはさすがと言うか
次に出すのは…サイもミリアリアもイザークも、もうフレイ様知ってる人は全員…は言い過ぎですか。

>私の彼にはチャック〜
最高!
いや仮面はこうでないといかんだろ、と。
そうですか、トールはこうしてお亡くなりに…ヽ(`Д´)ノ ウワァン
中の人予想:大穴で…ラク(ry

>ある苦労人
ダコ(ry、ほんとに苦労してんなと。
しかしまぁ、何故種の男ってこう言う目にばっかりつД`)

737 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/01(水) 01:34
>>735
ミリィ優しいなぁ。・・・なんか場を引っ掻き回してくれそうでもあるがw
本編で実らなかったフレイ様の恋のキューピットになれるか、ミリアリア・ハゥ!

(それはそれとして、実は舞台女優フレイ様がステキで嬉しかったりw)

738 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/01(水) 13:00
>>728
あぁ、先にこのネタやられてしまったか…
カ ズ イ 様視点での話書きたかったけど、いいや。
大期待です、続き楽しみにしております!!

739 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/01(水) 17:34
もつとたのしくて>>

ミリィたん良い子だなぁw
キラとフレイたまの絡みが気になります!!

740 名前: 流離う翼たち・57 投稿日: 2003/10/01(水) 18:49
 アークエンジェルは最初の降下地点よりもかなり離れた所に案内された。岩山に囲まれた開けた場所だが、なんとかアークエンジェルを隠す事が出来る。
 そこでマリュ−とナタル、フラガ、キース、キラ、トノムラはサイーブの案内で岩山の中にあるアジトにやってきた。
 そこでキースは先のカガリと呼ばれた少女が早足にサイーブに駆け寄ってきて何事かを耳打ちして行った。フラガは去って行く彼女を見送り、サイーブに問い掛けた。
「彼女は?」
「俺達の勝利の女神だ」
「へぇ・・・・・・名前は?」
 返事は帰ってこない。フラガは僅かに肩を竦めて見せた。
「女神さまじゃ、名前を知らなきゃ悪いだろう」
 フラガの問いにサイーブはコーヒーを啜った後、むっつりした顔で答えた。
「・・・・・・カガリ・ユラだ」
 その名を聞いたとき、キースの目が一瞬驚きの形に見開かれた事に気付いた者はいなかった。
 サイーブは近況を教えてくれた。三日前にビクトリア宇宙港が陥落した事。徐々に連合側が追い込まれている事。アフリカの敵はさほど多くない事を教えてくれた。
「山脈を超えられないなら、紅海に出て海沿いに行くしかないんだが・・・・・・」
「いや、東地中海を突破して、東欧に出る」
 サイーブの話をフラガが遮った。サイーブの顔に意外さが出る。
「ほう、東欧にな。だが、あそこは最前戦だぞ?」
「分かってる。しかし、味方との合流を優先したいんだ」
 フラガの言葉にサイーブは渋面を作った。そしてヨーロッパの地図を指差し、なぞる。
「目的地はブレカスト、か?」
 サイーブの目にフラガだけでなく、ナタルも驚いた。これだけの話だけでこちらの目的地を読んだのだから。
「・・・・・・あんた、元は軍属か?」
「違うな。だが、その手の経験は豊富だぜ」
 サイーブは厳つい顔に笑いを浮かべ、フラガを見やった。どうやら気に入られたらしい。
 ヨーロッパルートをフラガとナタルが真剣に考え出した。サイーブの情報がそれを捕捉していく。それらを聞いていたナタルが疲れた顔で溜息を吐いた。
「戦況が酷いのは承知していたが、まさかここまで追い込まれているとは・・・・・・」
 ブカレストはまだ安全だと思っていたのだが、実際にはもう敵が200km辺りにまで迫っているらしい。激戦区に突っ込むのだと知り、キラとマリュ−の顔色が変わる。だが、サイーブの次の言葉が2人の顔色を更に悪くした。
「ザフトは徹底した攻撃をしてやがるからな。民間人を巻き込んだ無差別攻撃をしてやがるらしい」
「そんな事を・・・・・・」
「ああ、かなりの数の難民が出てるって話だが、連合軍はそいつ等を守り切れねえみたいだな。皆殺しにされた街もあるらしい。ザフトはナチュラルの捕虜を虐殺してるという噂もあるしな。実際、ヴィクトリアじゃ捕虜全員が銃殺されたそうだ」
 サイーブの言葉に一番衝撃を受けたのはキラだった。足元が覚束なくなり、よろけて壁に背を付ける。
「そんな・・・・・・嘘だ・・・・・・そんな事って・・・・・・」
「キラ君」
 同朋がそんな虐殺を行っていると聞かされ、キラは明らかに平静を失っている。そんなキラをマリュ−は痛ましげに見ていた。ナタルは顔を怒りに赤くしている。だが、フラガとキースは怒りを見せてはいるが、冷静さを失ってはいなかった。これが戦争なのだ。憎悪が増幅しあい、感情が理性を上回る。そんな事が当然という状況なのだ。攻守が逆だったら、連合だってコーディネイターを虐殺しただろうから。
 キラをマリュ−が宥めている間にキースとフラガとナタルはとりあえずの目的地を考えていた。
「とりあえず、ここ、トリポリを目指しましょう」
「そうだな、問題は敵がいるかどうかだが・・・・・・」
 悩むフラガに、いささか呆れ顔でサイーブが突っ込んだ。
「おいおい、1つ忘れてねえか?」
「「・・・・・・?」」
 本当に分からないらしい2人にサイーブは呆れて頭を左右に振り、キースはそっと地図の一点を指差した。
「バナディーヤにはレセップスがいます。砂漠の虎をどうにかしないと、ここから逃げる事もできませんよ。少佐、副長」
 キースの言葉にサイーブが頷き、フラガとナタルはガックリと落ちこんでいた。この上皿に問題を積み重ねられて、気が重くなってしまったのだ。

741 名前: ある苦労人の記述・作者 投稿日: 2003/10/01(水) 20:02
ご好評のお言葉や励ましのお言葉ををいただき、
ホントにありがとうございます。

>>738さん、先にネタ使わしてもらって、すんません・・・

調子に乗って第2弾行かせてもらいます。
今回も見苦しい文章でですみません〜〜

742 名前: ある苦労人の記述・4 投稿日: 2003/10/01(水) 20:05
>>729-731

○月○日
ディアッカ・エルスマンがプラントに報告に一時帰国するという情報を聞き、
彼に接触を図ることにする。
彼は現在連合・ザフト両軍での共同演習のため、地球に出張中だった。
融和政策の一環で、両軍の衝突を防ぐため、演習は中立国であるオーブで
行われているらしい。あの国も復興の最中なのにいい迷惑だろうな。
もっとも何かと理由を付けてはオーブに行きたがる彼にとっては
渡りに船だったのだろうが・・・

程よく彼との接触に成功する。

証言4:ディアッカ・エルスマンの場合

フレイ・アルスター? 誰それ?
赤毛の女―――あぁ!!あの女か!
あの時はひどい目にあったぜ。
あれはまだオレがアークエンジェルの捕虜だったときのことだ。
両手を後ろで縛られて動けないオレに向かって、いきなり現れて
銃を撃ってきたんだぜ、あの女。
信じられる?
「コーディネーターなんてみんな―――」とか言っちゃってさあ、
しゃれになんないっつーの。
もしミリィがいなかったら死んでたぜぇ? 俺・・・。

―――ん? 他に何かないかって?
オレが自由になったときにはもういなかったし
知んね〜よ。

・・・・・・・とんでもないことをするものだ・・・。
やってることがブルーコスモスの連中とさほど変わりが
無いと思うのは気のせいか?
まあこの件に関しては一方の意見しか聞いていないので
計画的なものだったのか、感情的になり、起こったものだったのか―――
判断は難しい。
もし後者なら、ラクス様の件といいフレイ嬢はかなり直情的な性格
なのかもしれない。

――――おい、アンタ。さっきの話、これ以上深く調べるなよな。

何か思いついたようにあわてた風に彼が言ってきた。
こちらも深くは突っ込まれたくないので一応合意しておくか。
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
――――――わかったな、絶対にこれ以上この件については調べるなよ!!

・・・・一体何度、念を押せば気が済むんだこの人は・・・・
これでは逆に他に、何かあったと言ってるようなものだろうに―――
そんなにいうほど隠さなくてはいけないことがあるなら
最 初 か ら し ゃ べ る な よ !!

743 名前: ある苦労人の記述・5 投稿日: 2003/10/01(水) 20:06
○月▽日
やはりプラントでの調査には限界がある。
いままでの情報をまとめるとフレイ嬢は
直情的な性格でかなりのコーディネーター嫌いであるらしい
としか、分からない。
それがどうやったらキラ・ヤマトと関係を持つようになったのか?
全くもって謎だ。

・・・もしかしてキラ・ヤマトは マ ゾ な の か !?




――――ラクス様に殺されそうだ、そういう考えはやめておこう。

やはりフレイ嬢の母国であるオーブに直接行き、
情報を集めたほうが賢明だな。
そうだな・・・名目はディアッカ・エルスマンと同じく、演習のため
ということにしておこう。
さっそく編入するための工作を行うことにする。


※月¥日
無事オーブに到着。
さっそく情報収集を開始する。
フレイ嬢の母国であり、更には
先の大戦で活躍したAAのクルーのほとんどは
ここのオーブ軍にそのまま所属となっているので
彼らからもいろいろ情報を聞きだせるはずだ。
しかし逆にフレイ嬢を調べることに不信感を
もたれてはいけないので、キラ・ヤマトを調べているように
カモフラージュすることにする。


――――おれはこんなところまで来て
 何 を や っ て る ん だ ろ う ・・・

744 名前: ある苦労人の記述・6 投稿日: 2003/10/01(水) 20:07
※月@日
彼女の家族はすでに死亡していることは知っていたが
知人・友人のほとんども例のヘリオポリスの事件で
死亡してしまっているとは思わなかった・・・・
この線からは調べ上げることはまず無理だ。
しかしAAのクルー(整備斑)より重要証言を得ることが出来た。
やはりオーブに来たのは正解だったようだ。

証言5:AAクルー(整備斑)達の場合
A:フレイ・アルスター? あぁ、覚えてるぜ。
ヤマトの彼女だった娘だよな。
B:そうそう、たまに腕組んで、仲良さそうに一緒に歩いてたよな。
C:途中からなんか同部屋でなんか暮らし始めてさぁ、
  てめぇらガキにゃあまだ早ぇっての。
A:エースパイロットともなるといろいろ融通が利いたんだろうな。
B:でも15であの胸は犯罪だよな〜
  ヤマトがうらやましかったぜ!
A:でも最初はサイって奴の彼女じゃなかったっけ?
C:奪ったんじゃねぇの?
B:女のほうが乗り換えたんじゃないのか?
  どっちかっていうとあの娘がいつもヤマトを
  追いかけてなかったっけ?


どうやらフレイ嬢とキラ・ヤマトは本当に交際関係に
あったようだ。
しかもフレイ嬢のほうが積極的だったとは!
意外だ―――コーディネーター嫌いではなかったのか?
それともキラ・ヤマトは例外だったのだろうか?
分からない―――更に彼らに話を聞いてみることにする。


B:そういやオーブについてからあの穣ちゃんなんか変じゃなかったっけ?
  心ここにあらず・・・って感じで。
A:そういやあの辺りから一緒にいるところを見なくなったなぁ
C:そうだったかぁ?
B:まあ二人ともすぐにいなくなったからなぁ。
  ヤマトは戻ってきたけど。
D:こらぁ!お前ら!! いつまでサボってんだ!!
A:うぉ、やべぇ―――
B:まあ知ってることはこれくらいだな
C:じゃあ、ちゃんと話したんだから、例の件頼むぜ!

ぬぅ、いいところで――

D:あんたも邪魔するならとっとと出てってくれ!

まあいい。
またの機会にしよう。


―――――めずらしく、何 も な い な ぁ ・・・







   『ドォォゲッシィィィィ!!!』

D:邪魔だって言ってるだろうが!!!―――


・・・・痛ひ・・・・・・・・

745 名前: ある苦労人の記述・7 投稿日: 2003/10/01(水) 20:09
※月#日
厄介な事態になった。
最近差出人不明の手紙が送られてきたり
(これ以上深追いするなとかいう内容だった)
ハッキングを受けたりと
明らかにこちらに対する妨害行為を受けている。
諜報員の内の何名かとも連絡が取れなくなった。
ついに今日は「これ以上は命の保障はしない」と
手紙が送られてきた。
訳が分からない。
たかがフレイ嬢のことを調べることで
他人が損をするような状況に陥るとは思えないのだが・・・・

さて、どうしたものか――――


諦めてラクス様にだめだったと報告するか――
もしくは命の危険を冒してまでもこのまま調査を続けるか――
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
――――調査続行だな!

しかし・・・何が悲しくてこんなことで
命 を 賭 け ね ば な ら な い ん だ !!


※月×日
誰かに追われている・・・
相手を撒こうとしたが何度やっても無駄だった。
一体どうすれば・・・・


考慮の末、こちらから打って出て、勝機を見出すことにする。
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
バカな!? あんたは!!
―――ア――ラ――――――――

746 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/01(水) 20:18
アスランか!?w
面白かったです。続きキボン!

747 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/01(水) 22:42
>>ある苦労人の記述

うわぁ…続き気になる〜〜まさか彼だとは!?

748 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/01(水) 23:40
「……第7機動艦隊、展開完了」
「MSは、発進準備の終わった部隊から順次出撃させよ」
「ボアズ要塞、スクリーンに出ます。距離800」

 C.E71年。
 長く確執を続け、開戦し、互いを殺しあってきたナチュラルとコーディネイターの戦争も、いよいよ最終局面を迎えていた。月基地を発進した地球連合軍第7機動艦隊を中核とするプラント打撃艦隊に与えられた武器は3つ。
 1つは量産型MSストライク・ダガー・
 2つはNJC技術の導入による核ミサイル攻撃部隊“ピースメーカー”
 3つは完成を見た3機の“G”兵器と、それを駆るブーステッドマンたち

 だが。
 そのどれにも属さぬ存在がもう1つ、アークエンジェル級2番艦“ドミニオン”のMS格納庫に搭載されていた。

「……スター少尉。アルスター少尉?」
「? っ、は、はい!」

 呼ばれているのだと気づいた真紅の髪の少女は、やっと自分がどこに居るのかを認識し直した。
 ここはMSの操縦席。シートに深く身を沈め、今は逢えない人……たちに想いを馳せるうちに、ぼぅっとなっていたのだろう。

「大丈夫か? 初陣、なのだからな。……緊張しているのは分かるが」
「大丈夫です、バジルール艦長。私は、行けます」

 そうか、と呟いた女性士官の表情が、モニターの中で僅かにほころぶ。
 20代半ばの若さで少佐にまで昇進し、最新鋭のMS運用艦の艦長を任されるほどであるから、普段のナタル・バジルール少佐を知る者であれば、この微笑は意外に思えたかも知れない。

「ストライク・ルージュの調子はどうだ? 戦闘データは充分に集まっている機体だし、OSも嫌というくらい調整したものだ。扱いに困ることは無いと思うが」
「ええ。これなら私でも、やれると思います」

 だが、今のナタルにとって、真紅に塗られた5番目の“G”兵器に乗る少女は、大切な妹のようなものかも知れなかった。それが分かるからこそ、フレイ・アルスターも彼女の前では素直に、時々ちょっとだけ強がって見せたりもする。

「私だって戦場に……立てます」

 様々な想いと決意を込めて、そう応えることもできる。

749 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/01(水) 23:40
「当たり前じゃないですか。それは普通じゃ考えられないくらい贅沢な造りのMSなんだ。トーシロが乗ったってジンの5〜6機くらいは墜とせて当然でしょ?」
「アズラエル理事!」

 突然、会話に割り込んで来たスカイブルーのビジネススーツを纏った青年。
 地球連合の軍産複合体企業団の理事を表の顔とし、コーディネイターの完全抹殺を目指して組織された反プラント過激派集団“ブルーコスモス”の盟主でもある、ムルタ・アズラエルその人である。
 どういう感覚の持ち主か、安全な後方ではなく、最前線の最新鋭艦に一席を設けている神経の太さだけは、ナタルも認めざるを得ない。

「ふフン」

 そんな彼女の制止も聞かず、アズラエルは出来の悪い生徒に諭す気取った教師のような口調で喋り始めた。

「そのMS、ストライク・ルージュはキミのために造ったMSなんだ。もともとバックパック交換システムなんて無駄なものを積んでいたのが幸いしたんだけどね。キミの背負ってるルージュストライカーパックに、何が搭載されてるかくらいはお勉強してるんでしょう?」
「……ニュートロンジャマー、キャンセラー」
「よくできました、その通り」

 皮肉っぽく、口の端を歪めた微笑を浮かべるアズラエル。
 ナタルさんとは天地ほども違う、とフレイは思う。いや、引き合いに出される地でさえ、こいつに例えられるのは可哀相だ。

「核動力による無限のエネルギー。おかげで無限運用できるTF装甲。対ビームコーティングだって最新式なんだ。これで撃墜されたって保険、効かないんですよ?」
「撃墜なんかされません! だって私……」
「はいはい。愛しい彼に会うまでは、でしたね? まぁ私もNJCが手に入った以上、敵に回らなければ見逃してあげてもいいんですけどねえ……?」

 いやらしい目つきで、ナタルの手元からフレイの映る小モニターを覗き込むアズラエル。
 言外に、それはフレイがいま一番逢いたいひと……フリーダムに乗るキラ・ヤマトを撃てと。撃てずとも目の前に現れれば、油断くらいはさせてみせろと雄弁に語っている。その間に、彼の子飼いの新型“G”3機が、今度こそキラを仕留めるだろうと。

「…………」

 それが分かっていて、フレイはMSに乗ることを選んだ。
 キラに会うために、キラに会って話をするためだけに、同じ戦場(ばしょ)に立てる道具を……MSをフレイは欲したのだ。

750 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/01(水) 23:41
「もうよろしいでしょうアズラエル理事。サブナック少尉たちの準備も終わったようです」
「あっそう。じゃ、とっとと発進させて、とっとと終わらせて下さい。……簡単でしょ? ピースメーカー隊の攻撃準備が整う15分。15分だけ、敵とやりあってくれればいいんだ」
「……くッ」

 一瞬、怒気と共にアズラエルを睨むナタル。
 だが、思い直すように手を振って彼を追い払うと、制帽を整え直し、矢継ぎ早に指示を繰り出す。

「ダガー隊を順次展開させろ。その後に“G”を出す。MS隊出撃後、本艦は対艦対MS戦に入る。イーゲルシュテルン、バリアント、ゴットフリート各兵装は今のうちに最終チェック、急げ!」
「了解。ダガー隊、発進!」
「X131カラミティ、発進」
「X370レイダー、X252フォビドゥン発進します」
「各兵装再チェック。コントロールシステム、異常ありません」

 CICから次々と報告が上がってくる。推進剤の白い尾を引いて出撃していくMS隊を見やりながら、艦長席のナタルは大きく息を吐いた。“G”3機については心配する必要も無いだろうが……。ダガー隊、そしてフレイの乗るストライク・ルージュ、いずれも本格的な実戦は初めてだ。
 果たして、何機が無事に戻って来れるのか……と考えたところでナタルは自嘲した。
 最悪の場合、この艦が沈められていることだって充分にありうるのだ。

(せめて、お前だけでも生き延びて欲しいな。……フレイ・アルスター)

 15歳の若さで軍に志願し、MSパイロットを志した彼女の胸中を測り知ることは、できなくも無いが苦手だとナタルは自分でも思う。それに、事がここまで来た以上、それも決戦の前の瑣末でちっぽけな感傷の1つでしかない。
 だがせめて、自分と10も違う少女の無事くらいは祈っても構わないのではないか。

「X115ストライク・ルージュ、発進どうぞ」
「了解。フレイ・アルスター、ストライク・ルージュ、行きます!」

 オペレーターの管制に、小気味よく緊張感を含んだ凛々しい少女の声が返ってくる。
 それはまた、人類史上初の宇宙要塞攻略戦の開始を告げる合図でもあった。

751 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/01(水) 23:41
「ったく、うようよいやがるぜッ!」
「オラオラオラオラーッ、抹・殺!」
「はーーーーー、うざーーーーーっ」

 3者3様の奇声を発しながら、次々と迎撃に出てきたザフトのMSを撃墜していく3機の“G”。彼らの戦いぶりを知らぬフレイでは無かったが、あらためて戦場で見ると、恐怖と共に幾ばくかの哀れみを覚えずにはいられない。
 そんな3機の攻撃に巻き込まれないよう機体をロールさせながら、周囲のMS……特に“G”タイプが居ないかと感覚を動かす。

「ッ? きゃあああ!」

 遠距離から76mm弾の直撃。PS装甲やTF装甲といった特殊装備を持たないメビウスやダガーなら、それだけで撃破されている程の衝撃が、ストライク・ルージュと操縦席のフレイを襲った。

「っくあ! こ、こんなところで……ぇッ!」

 OSに頼りながら、どうにか機体を立て直すフレイ。だが、慌てて反撃に移ろうと思った瞬間、横合いから突き刺さったビームが眼前のジンを光球に変えていた。

「??!」
「はッ、何ボケっとしてンだよ、お前!」

 振り向きざま一撃でジンを叩き落したのは、オルガ・サブナック少尉の駆るX131カラミティであった。砲撃戦仕様機として幾多の火砲を身に纏いながら、その機動性はダガーを軽く凌駕する化け物MSである。

「あ、ありがとサブナック少尉……」
「ハッ、何言ってやがる。……おいクロト、シャニ! あんまり出過ぎるんじゃ無え! オレたちゃ、この小娘のお守りも命令されてンだろーが!」
「……ちッ。護衛!」
「あ〜、うざーい」

 敵MS隊のド真ん中に突っ込もうとしていたレイダー、フォビドゥンの足が止まる。
 そこで均衡した戦線にダガー隊が押し寄せ、ザフト側のジンと激しい撃ち合いを始めた。これがMS戦に不慣れな地球連合軍にとって有利に作用したのは、戦線が安定し、しかも破壊力のある“G”兵器が存分に味方を支える形に持ち込めたからである。

「ッ、この! この!」

 3機の“G”に守られるようにして、フレイのストライク・ルージュもビームライフルを連射する。
 僅か1ヶ月の超短期訓練で仕上げたにしては、フレイの腕は悪くなかった。OSの優秀なロックオン機能とも相まって、2機のジンにビームが命中する。1機は右腕、1機は頭部を失って後退しただけで撃墜には至らなかったが、初の実戦にしては出来すぎとも言える戦果であった。

752 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/01(水) 23:42
「…………」
「意外ですか、艦長さん?」

 MS隊、正確には3機の“G”とフレイのストライク・ルージュの戦いぶりを黙って凝視していたナタルに声をかけたのは、艦長席脇の特設シートにゆったりと座るアズラエルであった。

「まぁ、我々にしても、あの娘に簡単に死なれては困りますからね。3人には乱戦ならアルスター嬢を守るよう、命令してあります」
「なッ? 何を勝手なことを。アズラエル理事……」
「艦長さんだって死なせたくは、ないのでしょう?」
「っ!」

 痛いところを突かれ、押し黙るナタル。
 満足そうに頷いたアズラエルは、再度正面のスクリーンを見やった。

「ほらほら艦長さん、正面におあつらえ向きの敵さんが登場ですよ。はやくやっつけちゃって下さい」
「敵艦です! 距離200、オレンジ30マーク12。ナスカ級1、ローレシア級2!」

 アズラエルの言葉を追うように、オペレーターの声が重なる。
 毅い闘志を取り戻した瞳で顔を上げたナタルは、一瞬で状況を把握し、的確な作戦を脳裏に思い浮かべ、唇を動かして指示を出す作業をやってのけた。それは彼女の才能の発露であって、コーディネイターとて簡単に真似できる代物ではない。

「バリアント、ゴットフリート1番2番照準、敵ナスカ級。射線上のMSに回避パターンDの4と伝えろ。……コリントス装填、1番から12番まで右ローレシア級、13番から24番まで左ローレシア級。こちらは牽制でいい! ランダムパターンの選択は任せる」

 ヒュゥ! と口笛を吹くアズラエルを無視して、ナタルは背後のオペレーターにも指示を出す。

「僚艦と同調時間差攻撃を仕掛ける。タイミングはスペードの8と伝えろ」
「りょ、了解! 護衛艦チャールズ、ウィンストン、こちらドミニオン。スペードの8で援護請う。繰り返す、スペードの8で援護請う……」

 ドミニオンの正面から、綺麗に散って射線を開けるダガー隊。虚を突かれたところに、連合の護衛艦とドミニオンのミサイルが雨霰と降り注ぐ。突然のことにザフトのMS隊とて迎撃もままならず、回避するのが精一杯だった。以前なら、このまま自分たちも対艦戦闘に入るのだが、それはダガー隊と3機の“G”にがっちりと押さえ込まれる。
 たまらず弾幕を張りつつ、回避運動に入るザフト艦たち。ナタルの狙いはその瞬間であった。

「ゴットフリート、バリアント照準完了。目標、敵ナスカ級!」
「よし。タイミング合わせ、当てろよ……。3、2、1、撃ぇーーーッ!!」

 激しい緑色の火線と、黄色い曳光弾を追いかけるレールキャノンとが、ドミニオンの正面に無防備な姿を晒したナスカ級の艦体に吸い込まれていく。瞬間、その外壁が膨れ上がり、音も無く宇宙に砕け散った。

「お見事です、艦長さん」
「まだだ! 続けてゴットフリート、バリアント、右ローレシア級に照準……。撃ェーーーッ!」

 敵艦撃沈にも表情を変えることなく、指示を出し続けるナタルの横顔を眺め、アズラエルは軽く笑みを浮かべると肩を竦めた。
 手元の専用コンソールを操作する。返ってきた応えは、核攻撃部隊“ピースメーカー”の準備完了を知らせるもの。緊迫する艦橋でただ一人、アズラエルはほくそ笑んだ。

753 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/01(水) 23:43
 それは、意外なほどあっけない幕切れだった。
 ドミニオンを中心とした囮艦隊がボアズ要塞の守備隊を引き付けている間に、レーダーの探知圏外ギリギリに接近するアガメムノン級艦隊。高速を活かした核ミサイル搭載メビウス部隊“ピースメーカー”による打撃……。
 作戦としてはごく単純なものだが、NJC技術を連合が手にしていると知らなかったザフト軍に与えた衝撃は、想像を遥かに超えたものとなった。

「…………」

 内部から青白い閃光に包まれ、崩壊していくボアズ要塞を、フレイはただ黙って見つめていた。あの中で出撃を待っていた戦艦が崩れていったのが、傷つき帰還しMSを下りたパイロットが蒸発したのが、祖国を防衛するため力の限りを尽くしていた司令部が炎に包まれるのが、見えた気がした。
 これは自分が招いた災厄の光なのだ。そう思うだけで、押し潰され吐きそうになるのを必死にこらえる。
 既にノーマルスーツのバイザーには幾つかの水滴が漂っていたが、フレイはそのことにまるで気づいていなかった。

「はッ、もう終わりか。あっけねェな」
「見敵! 必殺!」
「たるーい」

 今まで散々、ジンや見慣れぬMSを撃破しまくっていた3機の“G”から、つまらなそうな声が流れて来てもフレイは無反応だった。

「なンだ、シケてんな……。まぁいい、おい小娘、俺たちは前へ出るぜ」
「……勝手に、すれば」
「あぁ。じゃァな」

 核攻撃で要塞が無力化されたとは言え、迎撃に出ていた防衛部隊の戦力は健在だ。補給も無いではいずれ力尽きるのが自明とは言え、要塞を沈められた怒りのままに無駄な抵抗を続けている部隊も多い。
 これ幸いと、今のうちにコーディネイターを少しでも減らしておきたいのだろう。そんな思惑をオルガたち3人の“G”パイロットたちから感じ取って、フレイはまた陰鬱な気分に沈み込んだ。

「大丈夫だったかね、アルスター少尉?」
「カーライル隊長……」

 そんな時、接触回線で通信を入れてきた機体があった。コンソールには、ドミニオンのダガー隊を率いるカーライル大尉機を示す表示が流れている。彼のダガーは、隊長機らしく大きめのアンテナの付いた頭部が特徴であった。

「ボアズ戦は終わった。……後は彼らに任せて、ドミニオンに戻ろう」
「は、はい。あの、ありがとうございます、カーライル隊長」

 恐縮するフレイに、コンソールから気持ちのいい笑いが聞こえてくる。
 そこで初めて、自分が泣いていることにフレイは気づいた。隊長は気遣ってくれたのか、音声だけでモニターはONにしていない。

「…………」

 気を取り直し、ストライク・ルージュをカーライル機の斜め後方に付けるフレイ。
 ドミニオンが見えてきた、その一瞬、ほっと息を吐いた瞬間。
 目の前のカーライル機に、真下から盾のような爪のようなものが突き刺さり、爆散させた。

754 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/01(水) 23:43
「カーライル隊長っ!」

 泣き叫ぶと同時に、この一ヶ月の訓練の成果かフレイの身体は自然に反応し、ストライク・ルージュに回避運動を取らせていた。直後、さっきまで機体のあった位置をビームが掠めていく。恐怖に突き動かされながら、闇雲に操縦桿を引き倒す彼女の思いをOSが汲み取り、ランダムな回避運動に翻訳していく。

「なッ、何これ、ザフトの新型……?」
「クッ、この! よくもボアズを……!」

 コンソールにはザフトの新鋭MS“ゲイツ”の接近を警告する表示とアラームが踊っていたが、フレイにそれを読み取る余裕は無い。何度も浴びせられるビームを辛うじて躱し、あるいはシールドで精一杯に捌いていく。

「何で……どうしてっ? 要塞はやられたのに、何でまだ戦うの?!」
「お前たちの核で、もう戻る場所は無い! せめて道連れに死んでもらうぞ、赤いヤツ!」

 後退し、ドミニオンの対空射撃圏内に逃げ込もうとするストライク・ルージュを巧みに阻むゲイツ。もちろんナタルたちもこの戦闘は察知していたが、絡み合う2機に躊躇して援護射撃もできないでいる。

「TF装甲搭載ですから、撃っちゃってくれてもいいんですけどねえ」
「破片がバーニアにでも突き刺されば、それで終わりです。危険なことに代わりはありません!」

 ナタルの一喝に、やれやれと肩を竦めるアズラエル。
 だが、その表情はどこか自信に満ちていた。手元の独自回線を、ルージュに繋ぐ。

「何をやっているんですかお嬢さん。ストライク・ルージュの性能なら、そんなザコひとひねりのはずでしょう?」
「なッ、そんなコト!」
「じゃあそこで死んでも良いんですよ。保険金が入らないのは残念ですが、愛しい彼に弔電くらいは打ってあげてもいい」

 アズラエルがそれを口にした瞬間、フレイは固まった。
 ストライク・ルージュの機体にゲイツの放ったビームが命中し、左脚を半分、もぎ取っていく。

755 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/01(水) 23:44
「! ヘルダート装填、目標……」
「慌てなくても、大丈夫ですよ艦長さん。さっきも言ったように、あの機体はトーシロでもジンの5〜6機は墜とせる性能なんです。ここはあの娘の訓練の成果、じっくり見物しましょうよ」

 ストライク・ルージュの破損にも、アズラエルは平然としていた。
 その余裕に応えるように、ビームライフルを応射し始めるフレイ。OSに支援された的確な射撃が、回避するゲイツが機動する余地を次第に奪っていく。そして最後の一撃が、正確にコクピットを貫き――機体を火球に変えた。

「な……」
「ほーらやっぱり、あの娘の勝ちでした。当たり前なんですよ。あの機体、サザーランド大佐の肝いりでコスト度外視して造っちゃったヤツですからねえ。保険効かないって意味、分かりましたァ?」

 勝ち誇るように、ナタルを馬鹿にして笑うアズラエル。
 だが、当のナタルは自分が罵倒されていることにすら、気づいていなかった。

「まさか、あの少年と……キラ・ヤマトと同じ? いや……」

 そう言えば、自分がアークエンジェルに居た頃、大気圏突入の直前にフレイ・アルスターは軍に志願したのだった。後で聞いた話だが、その時彼女は動かす者の居なくなったはずだった、X105ストライクに乗り込もうとしていた、ともいう。

 まさかな、考え過ぎだ。
 そう自分を納得させたナタルに、X115ストライク・ルージュの帰艦を告げる報告が入った。パイロットを休ませるように告げてから、ナタルはドミニオンにも前進するよう発令する。

「これより味方機の回収及び掃討戦に移る。第1種戦闘配置は維持。各員、油断するな!」
「ま、今回は楽勝だったでしょ? 残ったコーディネイター、1匹残らず片付けちゃってください」
「…………」

 アズラエルの軽口を、あえて無視するナタル。
 手元の小モニターには、疲労困憊して整備兵たちにコクピットから引きずり出される、真紅の髪の少女の姿が映っていた。改めて、フレイを休ませるよう念を押してから、ナタルはあえて少女への心配事を思考から外し、目の前の戦況に意識を集中しなおした。


 かくてブラント攻防戦の緒戦は地球連合軍の勝利に終わり、ボアズ要塞は機能を失った。
 これに対しザフト軍はもう1つの要塞ヤキン・ドゥーエに戦力を集めると共に、地球連合軍の核ミサイルをも超える最終破壊兵器“ジェネシス”の発射準備に入る……。

756 名前: フレイ/ルージュルート:ボアズ編おしまいw 投稿日: 2003/10/01(水) 23:46
このスレではお初にお目にかかります。
1年間、種に付き合って来てフレイ様には(セイラさん的ポジションで)MSに乗って欲しいと思っていた1人なのですが、ストライク・ルージュにフレイ様が乗る案があったと知り……最終回の展開でどうしてもフレイ様のルージュルートが欲しくなってしまいましたw

そんなわけで、もしフレイ様がドミニオンに拾われた後、オペレーターではなくMSパイロットを選んでいたら……をスタートに、最終局面まで少しずつ書いていってみたいと思います。ルージュルートに興味のある方は、しばらくお付き合いいただければ幸いです。

各キャラの性格や境遇は本編に準拠していますが、フレイ様フィルターが強めにかかってます。他にも細かい突っ込みどころはたくさんあると思いますが、笑ってスルーして下さいw

ボアズ戦が終わったので、次はプラント打撃戦です。
あまり時間が取れないので、しばらく間が空くと思います(´Д⊂ヽ

……ちょっと長かったかもw 半分ずつにしとけばよか(ry

757 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/02(木) 00:15
乙です
ルージュが無茶苦茶豪華ですね。Gシリーズのロールスロイスかw
これでエネルギー偏向シールドが入ってたら無敵ですな

私はフレイはとりあえずデュエルに乗せる気ですけど、こういうルージュも良いかもと思っちゃいましたよ

758 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/02(木) 01:29
>>748-756
作者さま乙です!!
また一つ楽しみが増えたという感じです。
艦隊戦の臨場感のある台詞は自分にはまったくかけそうもないもので
憧れますです。続きを期待しております。

759 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/02(木) 02:57
あー、もう、みんな凄く良いでつ!!
ルージュも良いし、デュエルでもかっちょよさそう。
漏れはバグゥに乗せようと思ってましたが
;y=ー( ゚д゚)・∵. ターン

760 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/02(木) 18:21
フレイ様inデュエルか・・・。
そういえば保存庫にもそんなSSあったなぁ。やっぱり初心者向きの機体なのか?w

761 名前: 757 投稿日: 2003/10/02(木) 18:57
>>760
いや、たんに1番量産しやすそうだったからw
ダガーの前にXナンバーが正式採用されて
少数生産されて投入された事にする予定なの

762 名前: 流離う翼たち・58 投稿日: 2003/10/02(木) 19:49
 外でアークエンジェルに艤装を施していたカガリは、一緒に働いているアークエンジェルクルーの中に自分と同じくらいの年頃の少年少女が混じっているのを見て少し驚いた。その中の一人に声をかける。
「なんだ、この戦艦にはお前等みたいな子供も乗ってるのかよ?」
「子供って、あんただって子供だろう?」
 話し掛けられたサイは明らかに気分を害していた。いきなり見知らぬ相手に、それもかなり無礼な口調で話し掛けられたのだ。だが、相手は気にした風も無い。その挑発的な口調は変わらなかった。
「お前等よりはずっと大人だね」
「なんだとっ」
 サイの声を聞いてトールとフレイがそちらを見た。あの温厚なサイが珍しく感情を高ぶらせているように見えるからだ。最も、今のサイはかなり不安定でもある。ここ最近のフレイの態度のあからさまな変化に戸惑っているからだ。トールやミリアリアもそれには気付いていたが、今の所口を出してはいない。
 トールはサイに近づくとその肩を叩いた。
「サイ、なにを大声だしてるんだよ?」
「トールか、こいつが変な事言ってきたから、つい・・・・・・」
「変な事?」
 トールがカガリを見た。カガリはサイからトールに視線を移す。
「別に、本当の事を言っただけだぜ。お前等よりは現実を知ってるよってな」
「・・・・・・ふうん」
 トールは気にした様子も無く、背後のフレイを見た。
「フレイ、作業はこれで終わりだよね?」
「え、ええ。用意したネットは全部張り終えたから、終わりだと思うけど」
「そうか。じゃあもう用も無いし、仕事に戻ろうぜ」
 トールはカガリに背を向け、サイを引っ張った。サイはトールに文句を言っていたがトールは笑顔のまま取り合わない。フレイも2人の後に続こうとしたが、カガリに肩を捕まれた。
「おい、なんでお前等みたいなのが軍艦に乗ってるんだよ?」
「なんだって良いでしょう、手を離してよ」
 フレイは少し冷たい声でカガリに答えた。だが、カガリはそんな答えじゃ納得しない。
「お前等は良くても、私は納得できないんだよ」
「何でよ。私たちがどうしようと、あなたには関係無いでしょう?」
「そ、それは・・・・・・・」
 フレイの問い掛けにカガリは口篭もった。なにかを知っているが口にできない、そんな何かを感じさせる。フレイはカガリの態度を訝しげに見ていたが、いきなりカガリが顔を上げたので少し身を退いた。
「分かった。それは聞かない。だけど、1つだけ答えろ」
「な、何よ?」
「あいつの事だ。あのMSに乗ってた奴。なんであいつがあんな物に乗ってるんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
 フレイは答えられなかった。まさか、自分が乗るように仕向けたなどと言えるわけもない。だから、あえて辺り触りのない内容を口にした。
「キラは、私達を守るためにMSに乗ってるのよ。ヘリオポリスを脱出した時から、ずっとね」
「ヘリオポリスからずっとって、なんであいつにあんな物が動かせるんだよ?」
「・・・・・・あの子は、コーディネイターだから」
 フレイの説明にカガリは納得したのか、詰め寄るのを止めた。
「あいつ、コーディネイターだったのかよ。じゃあ動かせるのも当然か」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 疑問が氷解したのが嬉しいのか、カガリはあっさりした口調で言う。そんなカガリにフレイは少し驚いた。
「あなた、キラがコーディネイターと聞いても平気なの?」
「ん、何が?」
「だって、あなた達が戦ってるのもコーディネイターなんでしょ?」
「ああ、そういう事か」
 フレイの疑問を理解してカガリは砂漠の方を見た。
「別に、コーディネイターが嫌いって訳じゃないんだ。ただ、攻めこまれたから戦う。それだけの事さ。この大地はここで生まれ育った奴らのもんだ。砂漠の虎とかいう余所者が大きな顔をして良い訳無いだろ?」
 カガリにはナチュラルのコーディネイターもないらしい。敵だから戦う。この故郷を守るために戦う。それはナチュラルだから、コーディネイターだからなどという理由よりもはるかに純粋で、周囲の理解を得られる理由だった。当然だろう。この土地はここで生まれ育った人達のものだ。

763 名前: もつとたのしくて 投稿日: 2003/10/02(木) 22:40
>>500-501>>514>>548>>557>>562>>568>>587>>686-687>>711>>735

打ち上げと言ってもささやかなものではあるが、女子が大半を占める演劇部だから盛り上がりは凄いものがあった。
一年生は初めての舞台を終えて軽い興奮状態にあるのでそれに輪をかけていた。
『学内だからお酒は禁止』と部長から厳しいお達しがあったのだが、どうもそんな事は無視されているような雰囲気だった。。
フレイはオレンジジュースの入ったコップを手にして談笑していて、さっきのもやもやとした気持ちも大分和らいでいた。
「ねぇフレイ、次はどんな役やりたい?」
「そうね…男役なんてどうかな」
「いいわね!それ。じゃ、フレイはそれで決まりね」
「ちょっ、ちょっと!言ってみただけよ。何よ勝手に話を進めて…」
「いいじゃない。どうせ男子部員少ないんだから。誰かがやらなきゃならないのよ」
「ちょっと、あんた達まで…」
他愛ない会話が弾んでくると時間が経つのも忘れてしまって、もう外は暗くなり始めていた。
「フレイ、ちょっと…」
しばらく姿が見えなかったミリアリアがフレイを手招きして呼んでいた。
「ちょっといい?外に来て欲しいんだけど」
もしかしたら今日の舞台の事で何か注意でもあるのだろうかと、少し緊張してミリアリアの後ろについて外に出たフレイの目の前にいたのは、キラとトールだった。
「トールに呼んできてもらったのよ。フレイ、いつまでも気にしちゃ駄目じゃない。ここで謝っちゃいなさい」
どうやらミリアリアからトールを経由してキラは事情を聞いていたらしく、やや恥ずかしそうに黙って立っている。
突然の事に、フレイは絶句して立ちすくんでしまった。心の準備が全く出来ていなかった。
ミリアリアはフレイの後ろに回ると、囁くように
「大丈夫よ。キラも、全然気にしてないって言ってるから…」
と言ったのだが、フレイには聞こえていない。
「あ、あ、あの…」
真っ白になった頭には何の言葉も浮かばず、ただ津波のような息と心臓の音だけが響いていた。
「フレイ、あの…僕、別に…」
キラの言葉を最後まで聞く事もなく、フレイは突然身を翻すと部室に飛び込んだ。
忘れてしまいたい。この恥ずかしさとこの何とも言えない胸苦しさ。
カラカラに渇いた喉を潤そうと自分のコップに手を伸ばした。
が、動転していたので間違って隣のコップの中身を飲んでいた。味は、よく判らなかった。

764 名前: もつとたのしくて 投稿日: 2003/10/02(木) 22:41
そこから先の事は、フレイは翌日ミリアリアの口から聞いただけなので本当かどうかは分からない。

直角に頭を下げて謝るフレイに、逆に申し訳無さそうにおろおろとするキラ。
『大丈夫だよ。気にしてないし、フレイが悪い事したわけじゃないんだから』
と言うキラを涙を溜めた目で見つめると、またフレイは「ごめんなさい!」と謝った。
半ば呆れ顔のトールとミリアリアだったが、目で示し合わせると二人の間に割って入った。
『フレイ、もう大丈夫だから。キラも気にしてないって言ってるでしょ』
『キラもさ、ほら…』
ようやく落ち着いたかに見えたフレイだったが、肩を上下に揺らすほど荒い息をしていた。
キラはそんなフレイの肩に手を置くと、
『あの後、何も言わずに黙ってて…ごめん、謝るのは僕の方だよ…でも、ほんとはあの時…』

「……それ、ほんとですか?」
そこまで聞いた所で、思わずフレイは聞き返していた。何しろ身に覚えが無い。
「本当よ。こんな嘘言って何か私に得する事あって?」
「いえそれは…」
ミリアリアは澄ました顔をしていて、フレイに感情を読ませない。さすがに先輩である。
「あ、それと…フレイ、次の舞台なんだけど…男役やってみたいって言ってたわよね?やってみる?」
「な…!あれは冗談です!真に受けないで下さい!」
「え〜っ、素敵で良い役あったのに…フレイならイメージも合いそうなのに」
「…どんな役なんですか?」
結局、フレイはそっちの方に気が行ってしまっていた。ミリアリアが一枚上手である。
「あ、それと…トールには絶対、喋らないように念を押しておいたから安心して…フフ」

765 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/02(木) 23:11
>>763-764
乙です! 直角に頭を下げて誤るフレイ様萌え〜w
そこまで話が及ぶかどうか分かりませんが、男役フレイ様も激しく見たい!

にしても、ミリィはイイ先輩ですね〜。色んな意味で。

766 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/03(金) 01:33
>苦労人
乙!うわー続きが気になる!!がんがれダコ(ry

>もつと
ジワジワとハマってきました。フレイ様がおかわいらしい…

767 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/03(金) 04:49

ペースが速くて楽しみです、職人の皆さんw

768 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/03(金) 10:56
職人の皆様乙です!
毎回投下楽しみにしてます。

>翼
カガリたんそんな事言って・・・子供なのはカガリたんなんじゃw

>もつと
男役萌えです…(;´Д`)ハァハァ

769 名前: 流離う翼たち・59 投稿日: 2003/10/03(金) 18:40
 ようやく方針が決まったのか、マリュ−達がアークエンジェルに戻ってきた。マリュ−とナタル、トノムラはグッタリとしている。キラはまだ何か悩んで居るようだ。キースとフラガはスカイグラスパーの運用法で話をしている。この2人は実戦経験が豊富なだけにいちいち不安になったりはしない。
 だが、帰ってきた彼らの耳に子供の争う声が聞こえてきた。
「ちょっと待ってくれ、フレイ。そんなんじゃ分からないよ!」
「うるさいわね。話しならもうしたでしょ!」
「サイ、フレイも、もう少し落ちつけってば!」
 どうやらサイとフレイが原因らしい。トールとミリアリアの必死に止める声が聞こえてくる。気になったキースはキラを伴ってそちらに歩いて行った。どうやら岩塊の影で言い争っている様だ。キラとキースがやってきても気づかずに言いあっている。どちらかと言うとサイがフレイを捕まえようとして、それからフレイが逃げ回っている様だが。
「・・・・・・さて、これはどういう事だと思う、キラ?」
「どうって言われても・・・・・・・・・・」
 キラは困惑した声を返す。それはそうだろう。なんでフレイとサイが言い争っているのか、キラにも理解できないのだ。ただ、1つだけ心当たりがあるキラは小さく俯いた。
 2人の声でフレイがキラに気づいた。
「キラ!」
 フレイはキラの腕に両手でしがみつき、その背後に隠れた。サイは気まずげに立ち止まり、ミリアリアとトールは困った顔でこちらを見ている。キースは様子見とばかりに一歩下がった。
「フレイ!」
「・・・・・・何?」
 苛立ったように叫ぶサイにキラが答える。その眼差しはキラとは思えないほどに冷たい。
「フレイに話があるんだ。キラには関係無い!」
「関係無くないわ!」
 キラの背中からフレイが叫ぶ。
「だって私、昨夜はキラの部屋にいたんだから!」
 フレイの言葉にトールとミリアミアは顔を赤くし、キースは空を仰ぎ見た。サイは事情が飲み込めないらしく、ポカンと突っ立っている。
「ど・・・・どういう事だよ・・・・・・フレイ・・・・・・きみ・・・」
「どうだって良いでしょ、サイには関係無いわ!」
 キラの腕を握る手に力がこもる。その感触はキラの中にある罪悪感を押し殺すのに十分な力があった。もう、官女は自分のものなのだ。
「関係無い、関係ないってどういう事だよ、フレイ・・・・・・」
 声を荒げるサイ。そろそろ止めるかとキースが動き出そうとしたが、それよりも早くキラが冷たい声を出した。
「もうよせよ、サイ」
「・・・・・・キラ?」
「どう見ても、君が嫌がるフレイを追いかけてる様にしか見えないよ」
「・・・・・・なんだと?」
 サイが今にも爆発しそうな危険な感情を宿す目でキラを見る。だが、キラはそんなサイから顔を逸らした。
「もう、みっともない真似は止めてよ。こっちは昨日の戦闘で疲れてるんだ・・・・・・」
 キラはサイに背を向けて歩き出した。そのキラにフレイが付いて行く。それを見守っていたトールとミリアミアは驚きの表情で固まってしまっている。今のキラは、自分たちの知るキラとは余りにもかけ離れていた。
 だが、そこで更に驚く事が起きた。
「キラァアアアアア!!」
 なんと、サイがキラに掴みかかったのだ。だが、その手はキラによって一瞬で逆手に捻り上げられてしまう。2人の突然の戦いにフレイは怯えて身を離す。
「止めてよね・・・本気でケンカしたら、サイが僕に敵う訳無いだろ!」
 そのまま突き放すと、キラはアークエンジェルに歩いて行ってしまった。これ以上サイを見ている事に耐えられなくなったのだ。フレイはしばしキラとサイの2人を見ていたが、僅かなためらいを見せた後にキラの後を追って行く。
 サイは自分に背を向けて去って行く2人を呆然と見送っていた。何もかもが信じられない。フレイが去っていったこと。キラが自分にこんな仕打ちをしたこと。全てが悪い夢の様にさえ思えてくる。だが、これは現実なのだ。
「・・・・・・なんで、だよ?」
 サイは悔しそうに拳を握り締め、小さく振るえている。トールとミリアリアはかける言葉も無く、ただじっとサイの背中を見ていることしか出来ない。キースはサイを避けて2人の所にやってきた。
「何となく事情は分かったが、確かフレイは彼の・・・・・・」
「はい、親同士が決めた婚約者、だったらしいです」
 トールの答えにキースは偏頭痛のしてきた頭を押さえた。こいつは、子供たちの痴話喧嘩で済むような問題では無いようだ。前に見たフレイの狂気に囚われた瞳。そして目の前で慟哭しているサイ。辛そうにしているトールとミリアリア。早めに手を打たないと厄介な問題を引き起こしかねないだろう。

770 名前: 流離う翼たち・60 投稿日: 2003/10/03(金) 18:42
 その夜、大変な事が起きた。サイーブ達の住むタッシルの街が攻撃を受けたのだ。慌ててゲリラがジープで飛び出して行き、フラガのスカイグラスパーも飛んでいく。それを見送ったマリュ−は艦長席に腰を下ろしてグッタリとしている。キースはキラを呼びつけてすでに艦橋にいた。
「やれやれ、砂漠の虎、か。やってくれますねえ」
「ええ、ゲリラの狩り出しに街を焼き払うなんて」
「別に珍しい手法じゃありませんよ。ゲリラ対策としてはむしろ常道です」
 キースのあっけらかんと言う。その裏にはこれが現実というものですという意味が込められている。キースはマリュ−に早く良い艦長になって欲しいという思いがあった。それが自分の生存率を上げることにも繋がるからだ。
 だが、暫くして送られてきたフラガからの報告には流石のキースも驚いた。
「住民は全員無事って、あいつ等は街だけ焼き払ったという事ですか?」
「ああ、俺にも良く分からんがね」
 フラガも困惑気味だ。だが、次の報告には流石に眉を顰めてしまう。マリュ−に至っては怒りに顔を赤くしている。
「こっちの方が問題だぞ。あいつ等、街の敵だとか言って追って行っちまった」
「追って行ったて、なんて馬鹿な事を・・・・・・どうして止めなかったんですか!?」
「いや、止めたらこっちと戦争になりそうだったの」
 どうやら向こうは相当殺気だっているらしい。だが、見捨てる訳にもいかない。マリュ−はキースとキラを見た。
「悪いけど、今から出て頂戴。急がないとゲリラは全滅するわ!」
「了解です」
「分かりました」
 2人は艦橋を飛び出し、格納庫に向った。すでにスカイグラスパー2号機の調整も完了している。取り付けられているのはランチャーパックの様だ。マッドックが駆け寄ってくる。
「とりあえず調整は終わりました。何時でも出られますぜ」
「そいつは助かるな。ちと無謀な事してる馬鹿どもの尻拭いに行ってくる」
「お気をつけて」
 マードックの言葉に感謝しつつ、キースはスカイグラスパーに乗りこんだ。そして機体をチェックしながらも、ストライクに通信を繋ぐ。
「キラ、先に出る。お前もなるべく早く追いついてくれ」
「分かりました・・・・・・キースさん、頼みます」
 キラがゲリラ達の事を気にしている事を察し、キースは力強く頷いた。そしてキースのスカイグラスパーがカタパルトから打ち出された。そのまま暫く飛行を続けると、すぐに目指すバギーとバクゥが見えてきた。ゲリラ達はどうやら手持ちのミサイルランチャーでバクゥを狙っているらしい。
「なんて馬鹿な事を。あんな武器でMSが倒せる訳無いだろうに!」
 キースは怒りも露に怒鳴ると、バギーに襲いかかろうとしているバクゥを狙ってアグニを撃ち込んだ。その一撃は外れたが、強力なビームの一撃にバクゥが慌てて下がる。キースは少し安堵したが、次の瞬間激怒に変わった。なんと、バギー達は後退するどころか更に前に出て攻撃を開始したからだ。
「ふざけるな。こいつら、自殺したいのか!?」
 目の前でまた一台のバギーが砲撃を受けて粉々にされてしまう。どうやら1機のバクゥでジープを掃討し、まだ動けるもう1機がこちらを狙っているらしい。地上からのMS1機の対空砲火など怖くも無いが、眼下でジープが破壊されていくのは見ていて気分が悪い。
「ええい、邪魔するんじゃないよ!」
 キースは急降下をかけると再びアグニを撃った。今度は狙い過たずバクゥを直撃し、それをスクラップへと変えてしまう。
「よし、あと2機だ!」
 その時、ようやくストライクがやってきた。ビームライフルでバクゥを牽制している。キースはそのバクゥをキラに任せると、まだ動けない様子のもう1機に目をつけた。こういう時に情は不要。相手が降伏しない以上、止めを刺せる時に刺しておくのが生き残る要点だ。動けないバクゥにキースのアグニを回避する術は無く、そのバクゥも爆散してしまった。それに少し遅れてキラも目の前のバクゥを仕留めていた。
 少し離れた所で戦況を見ていたバルトフェルドはストライクとスカイグラスパーの戦闘力に目を見張っていた。
「やるね。あのMSも、戦闘機も」
「・・・・・・3機のバクゥが、こうも簡単に殺られるなんて」
 バルトフェルドの隣でダコスタが呆然としている。これでバルトフェルドは手持ちのMSのほとんどを使い切ったことになるからだ。砂漠の虎、アンディ・バルトフェルドの部隊がだ。
 バルトフェルドは生き残った部下に撤退を命じた。このままではこちらが全滅させられてしまう。

771 名前: もつとたのしくて 投稿日: 2003/10/03(金) 23:30
>>500-501>>514>>548>>557>>562>>568>>587>>686-687>>711>>735>>763-764

フレイは髪をアップにまとめて登校するようになった。
結局、男役を引き受けてしまった(ミリアリアの口車にのせられたようなものだが)ので、少しでもイメージを近づけようと思ったからだ。
いっそ切ってしまおうかとも思ったが、自慢にしていた髪を切る勇気までは持てず、そんな自分が少し嫌ではあったが、苦肉の策と言ったところだった。
そんなフレイを初めて見たクラスメイトやサイは驚きを隠せなかったがそれも徐々に慣れてきたようで、慣れてしまうと似合って見えてしまうから不思議なものだ。
むしろ、フレイが自身を似合うようにしてしまっているのかも知れなかった。
今までの風が髪をなびかせる感触が、アップにした事でうなじをなぞるように吹きすぎる感触に換わると、フレイはそれも気持ちいいなと感じていた。
新しい役に挑戦するという事は自分の中にある新しいものを発見するという事であり、それはフレイそのものを刺激して興奮させる。
一方、キラの方は何がなんだか分からないままトールに強引にフレイの前に連れて行かれ、取り乱したフレイの謝罪を受ける羽目になった形で、逆に自分の方が取り乱して何がどうなったのか良く分かっていない。
あれからトールはその事はおくびにも出していないし、サイやカズイにも口外はしていないようだ。
あの時は、トールに自分の気持ちを気づかれたのではないかと焦ったのだが、どうやらそういう訳ではなかったようだったから、その点だけは胸を撫で下ろしていた。
そうなると今さらトールに何がどうなってるのかなんて聞けないし、ある意味途方にくれていた、というのが正しく、そんなキラがフレイの髪型を見た時の驚きは大きい。
それとなくサイに聞いてみると、どうやら次の劇の役作りの為らしい事は分かった。
サイの誕生パーティーでフレイを抱きとめた時の甘い感触が蘇り、舞台の上で光を放っていたフレイ、そしてその夜、謝罪するフレイへの言葉…
キラは、フレイの気持ちを確かめたいと思った。言葉が、想いを伝えてくれるものだと信じられるのなら、同じように言葉を聞きたかった。
しかし、それには勇気が必要だった。
フレイにとっても事態は同じだった。考えてみれば、ミリアリアは最後まで話してくれた訳ではなく途中で打ち切った形になっていたから、フレイもどうなったのか知っていない。
つくづく、オレンジジュースと間違ってチューハイを飲んだ自分は馬鹿だと思う。が、これも後の祭りだ。
今度は誕生パーティーの後のようなことを繰り返す訳にはいかなかった。非はこちらにあるのだから。
放課後、意を決してキラのところへ向かおうとするフレイを、ミリアリアが呼び止めた。
「何処行くのフレイ?部室は逆よ?」
「いえ、その…」
何とも間の悪い展開だった。が、ここで躊躇していてはどうしようもない。それに、どうせミリアリアはあの時の二人の会話を知っているのだ。
「キラに用があるんです…」
「あ、そうなんだ。…そっかぁ…」
意味ありげな笑いを浮かべるミリアリアだったが、フレイはそれを見ることなく踵を返していた。
その背中を、白いうなじを見送りながら、ミリアリアは小さな声で『頑張って!』と、言った。

772 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/04(土) 14:10
>>もっとたのしくて
乙です。フレイ嬢の髪アップは没原画のあれですかな
ミリィが良いお姉さんというか、お見合い勧める伯母さんに見えるのは何故でしょうw

773 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/04(土) 14:34
職人の皆様乙カレー様でつ( ´∀`)ノ
文才無いけど読むのが好きなオイラにとってここは楽園でつw

>>769-770
黒キラ(*´Д`)ハァハァでつw
もう少し先でしょうけどアスランとカガリの出会いやトールがどうなるのか楽しみにしてます
キースが居るからカガリ、トールのスカグラ出撃は無い可能性が高いし・・・

>>もつとたのしくて
チョッピリドジな学園SEEDフレイ様激しく(*´Д`)ハァハァ
先週の放送以来ヘコミ気味なので癒されますw

774 名前: ある苦労人の記述・作者 投稿日: 2003/10/04(土) 17:25
一日空いてしまった・・・
まあともかくア○ラ○編完結ですw
ちとくどくなったかも・・・・
だったらゴメンです。

ではどうぞ〜

775 名前: ある苦労人の記述・8 投稿日: 2003/10/04(土) 17:29
>>729-731 >>742-745

※月△日
あれからどれくいらいたったのだろうか?
気がつくと薄暗い、見知らぬ部屋にいた。
身動きが取れない、後ろ手で椅子にくくりつけられている様だ。
しかし何故彼がこんなことを・・・・
アスラン・ザラ―――今は亡きパトリック・ザラの実子であり、
オーブの姫君、カガリ・ユラ・アスハと恋仲である彼は非常に微妙な立場にある。
自分の立場を利用されることを嫌った彼はしばらくの間姿を消していたのだが―――
まあ相手が知っている相手でまだよかった。
なんとか彼を説得しこの状況を打破しなくてはなるまい。

そして彼が現れた――――


尋問1:アスラン・ザラの場合
――お久しぶりです。まさかこんな形であなたと会うことになるとは―――残念です。
なぜこんな所にって? 警告はしたはずだ。
お前こそなんであいつのことを調べていた?
一体誰の命令でこんなことを!
何が目的なんだ!!


まずいな・・・
相手はかなり興奮状態に陥っており
こちらの言うことなど聞く耳持たない。


――なんで放って置いてやれないんだ!
あいつは・・・キラはもう十分傷ついた――――
もうあいつを面倒事に巻き込まないでくれ!!


ん? キラ? キラ・ヤマトのことだよな・・・
別に彼のことはどうこう――――――
 ・
 ・
 ・
 ・
あっ!!
・・・・・こいつはうかつだった、予想外だ。
まさかキラ・ヤマトをカモフラージュに使ったことが
逆にアダになるとは!!
とにかく誤解を解かなくては・・・。


――違う? 誤解だって?
本当はフレイ・アルスターについて調べていた?
今更下手な言い訳はよしてください。
もしそれが本当だとしても、それを証明できますか?
あなたがキラについて調べていたのには間違いはない。


むぅ・・・困った。
思った以上に誤解を解くのは難しそうだ。
長引くとキラ・ヤマトに話をされかねない。
考慮の果て、ラクス様に直接説得願うことにする。
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
――まったく、ややこしいことをするからこういうことになるんだ。
大体キラのプライベートなことを調べていることには変りはないんだが・・・・


アスラン氏はまだご立腹の様子だが、
結局、ラクス様に丸め込まれたみたいだ。


――しかたがない・・・・
今回は見逃すが、その代わりに一つだけ条件がある。それは―――


む・・・それは―――?


――その報告書をオレの所にも提出することだ。


はぁ? 
な ん で あ ん た が 知 り た が る ?


――い・いや、キラもまだ落ち込んだままだし、
何か立ち直らせる方法を思いつくかもしれないと思っただけで、
別にどんな女だったか気になるとかそういうことじゃあなくって、その―――


あぁ〜〜はいはいはいはい。
もぉなんでもいいから、いい加減開放してくれぇ・・・・

776 名前: ある苦労人の記述・9 投稿日: 2003/10/04(土) 17:30
※月$日
やっと開放された・・・・
まあキラ・ヤマトの親友である彼を仲間に引き入れることが
出来たのは大きいので良しとする。
さっそく、アスラン・ザラより得た情報をまとめてみることにする。


証言6:アスラン・ザラの場合
オレの知っていることは二つだけだ。
メンデルの時に、キラが「僕が傷つけた―――」と言っていたこと。
あとはカガリが彼女のことを「キラの仲間だ」と言っていたことだけだ。
あの時のキラはいつものキラじゃなくて・・・・
その、何故かボロボロで、追い詰められていたような感じだったな。


彼の証言から、キラ・ヤマトはフレイ嬢に対して強い思いがあったことが
伺える(愛情かどうかはともかく)
ただ、フレイ嬢本人に対しての情報が何もないのが残念だ。
さすがにカガリ・ユラ・アスハに接触するのは難しいだろうしなぁ・・・。

ん? ラクス様からのメールが届いているな。

「減点5ですわ」

・・・・・・・・・・・・・・・・・な ん で す と ぉ 〜〜〜〜〜!?

っていうか、減点って何!?

777 名前: 流離う翼たち・61 投稿日: 2003/10/04(土) 18:56
 キラとキースは機体を地上で止めると、レジスタンスの方に歩いてきた。キラもそうだが、キースも何時になく怒りを露にしている。2人を前にしたレジスタンスのメンバー達は気まずそうに顔を逸らしていた。
「死にたいんですか?」
 キラは頭にきていた。バギーとミサイルランチャー程度でMSに対抗できるとでも本気で考えていたのだろうか。
「こんな所で、こんな戦いを挑んで・・・・・なんの意味も無いじゃないですか?」
「なんだとっ!!」
 カガリが噛み付いてきた。彼女はキラに掴みかかると、片手を振って背後を指した。
「見ろ、こいつらを見てもそう言えるのか!?」
 そこには何人もの死体が横たえられている。カガリは涙を溜めてなおもキラに文句を言おうとしたが、それをキースがさえぎった。
「どうして、俺がバクゥの動きを止めた時に後退しなかった?」
 何時ものキースらしくない底冷えする、そして一切の反論を許さない威圧感を感じさせる声に、カガリはキラの胸から手を離した。
「・・・・・・だって、街の敵を討たないと・・・・・・」
「敵を取ろうとしてこの有様か。ゲリラならゲリラなりの戦い方があるだろうに、正面からMSに挑むとはな」
 キースは吐き捨てた。それがカガリの、ゲリラ達の怒りを誘う。
「ふざけるな、お前に、仲間を殺された私達の辛さが分かるものかよ!」
 掴みかかってくるカガリ。キースは背が足りないのに無理して自分の胸倉を掴み上げてくるカガリをじっと見ていたが、やはり感情の篭らない声でカガリに答えた。
「・・・・・・俺は、お前ら以上に多くの仲間を失ってるよ。一緒に出撃した部隊の仲間が、帰ってきてみたら俺しか残ってなかったなんてことも1度や2度じゃ無い。数千人の避難民が乗った輸送船を守り切れずに、目の前で沈められた事もある」
 キースの答えに、カガリは硬直してしまった。掴み上げた手もそのままに目を見開いている。それを聞いていたゲリラ達やキラも同様だった。
 カガリはキースの目を見てしまった。感情が篭ってない訳じゃない。だが、悲しみも見られない。もっと遠い、なにか達観しているような目をしている。
「帰ってきたら母艦が沈められてた。世話になったクルーやメカニックが纏めて死んじまったなんてこともあった。先輩も、同僚も、部下も次々に死んじまう。俺に出来る事は生き残れるように訓練をしてやって、手の届く範囲で守ってやって・・・・・・それくらいなんだよ」
 キースは自嘲気味に笑った。エメラルドの死神と呼ばれる男でも、他人を守りきるなんて出来はしないのだ。カガリは気まずそうに手を離し、一歩下がる。キースは諭すような声でカガリに語った。
「敵を討ちたいという気持ちは分かる。だがな、自分が生き残れないのに、どうして他人を守る事が、敵を討つことが出来る? お前等はまず自分が生き残る術を身につけるんだな」
 カガリには何も言い返せなかった。この男と自分ではあまりにも役者が違いすぎる。それが頭では無く、肌で実感できたからだ。カガリが黙ってしまった事でキースは口を閉ざした。少し顔を顰めているのは、喋りすぎたとでも思っているのだろうか。

778 名前: 流離う翼たち・62 投稿日: 2003/10/04(土) 18:56
 飛び出して行ったゲリラ達が帰ってきたが、帰って来た部下たちを見てサイーブは怪訝そうな顔になった。部下たちが余りにも元気がないのだ。誰もが叱られた子供のようにしょぼくれた顔をしている。あのカガリでさえガックリと頭を垂れているのだ。一体何があったのだろうか、とサイーブは首を捻っていた。
 そして、アークエンジェルに帰ってきたキラもやはり複雑な顔をしていた。自室に戻る途中でフレイに会ったが、そのフレイもキラの顔を見て怪訝そうな顔をする。
「キラ、何かあったの?」
「・・・・・・ちょっとね。キースさんは、どれだけのものを背負っているんだろうなあ。と思って」
 キラの言葉にフレイは首を捻り、どういう事かを問い質した。キラはキースが語った言葉をフレイに語り、それを聞いたフレイもキラと同じように複雑な表情になる。
「そうなんだ・・・・・・当然よね、キースさんは、私達よりずっと昔から戦ってるんだから」
「・・・・・・守れなかったんだ、あの人も。だからあんなに僕に色々言ってくれたんだ」
 キラはキースの飄々とした態度を思い出す。あの人を食った笑顔の裏には、どれだけの悲惨な現実を目の当たりした顔があるのだろうか。今日の感情を感じさせない、どこか透き通った目をしたキースがそうなのだろうか。
 フラガも同じような苦しみを耐えてきたのだろうか。
 自分の悩みなど、あの人にして見れば大した悩みではないのかもしれない。あの幼女の乗ったシャトルを堕とされたことで激しく落ちこんだ自分など、あの人からして見れば甘ったれた餓鬼でしかないのではないのか。そう思えてしまうのだ。
 辛そうなキラの顔を見て、フレイはかける言葉を浮べられなかった。ただ自分も俯いてしまい、肩を並べてキラの部屋に入って行く。昨晩は情事に浸った2人だが、今日はそんな気分になれるはずもなかった。

779 名前: 流離う翼たち・63 投稿日: 2003/10/04(土) 19:17
「じゃあ、4時間後だな」
 威勢良く車から降りたカガリが言い、続いてキラにフレイ、キースも降りる。何時もカガリと一緒にいる大男のキサカがカガリに注意をしているがカガリは聞いているのかどうか。
 どこか不満そうなキサカにキースが笑いながら語り掛けた。
「心配するなって。俺が首根っこ捕まえて大人しくさせとくから」
「・・・・・・頼む」
 キサカに頼まれたキースは軽く安請け合いをし、キサカ達を送り出した。隣に乗っているナタルとトノムラが何かや困った様な顔をしているのがとても印象的だったが。
 ジープが走り去っていくのを見てキースはやれやれと辺りを見回した。
「さてと、とりあえず案内頼む、カガリ」
「まったく、何でお前等まで付いてくるんだよ?」
 カガリの問いに、キースは何時もの人を食ったようなニヤリ笑いを浮かべた。
「何を言う。人では多い方が良いだろう。フレイは主計兵だから、これは本職の分野といえるだろう」
「本音を言え」
「・・・・・・たまには外出して羽を伸ばしたいの」
 あっさりと本音を暴露するキースに、3人は呆れた視線を向けた。本当にあの時カガリに冷たい視線を叩きつけた男と同一人物なのだろうかと思ってしまう。特にカガリの視線を冷たかった。
 キースは3人からの視線に耐えかねて辺りに視線を走らせた。活気があり、店の軒先には商品が溢れている。とても敵軍の占領下にある街とは思えない光景だった。
「しっかし、軍政下にあるにしては、平和そうな街だねえ」
「・・・・・・そんなの、見せ掛けだけさ!」
 カガリが吐き捨てる様に言う。キラとフレイはカガリの言葉に眉を潜め、辺りを見回した。
「そうかな、とても活気があるけど?」
「あれを見てみろよ」
 カガリが指差す先には崩れた建物があり、そこから突き出す様に軍艦があった。
「あれがこの街の支配者の姿だ。逆らう者は容赦なく消される。ここはザフトの、砂漠の虎の本拠地なんだ」
 キラはカガリの言葉に、理解に苦しむと言いたげに悩む表情になった。消されると言うなら逆らわなければ良い。何故そこまでして反抗しないといけないのだ。逆らわなければこんなに平和な生活がおくれるというのに。
 命を賭けても守りたい故郷。それがキラには理解できない。愛する人や、自分の命より大切なものがあると言うのだろうか。彼らはどうして戦い続けるのだろう。


 さっそく買い物を始めようとする4人。男だからという事でキラとキースは荷物持ちになる事が決定している。キースは少し諦め顔でキラに1つの忠告をした。
「いいか、キラ。これから俺達は過酷な戦いに挑む事になる。今のうちに覚悟を決めろよ」
「ど、どういう意味です?」
「・・・・・・女の買い物ってのはな、付き合うと疲れるんだよ」
 何処か諦めを漂わせるキースを見て、徐に女性たちの背中に視線を向ける。彼女等はとても楽しそうであった。だが、その笑顔に、キラは無意識に戦慄してしまったのである。そして、その悪い予感は見事に当たる事になった。

780 名前: 流離う翼たち・64 投稿日: 2003/10/04(土) 19:17
 あちこちの店を回り、注文の品を探すカガリとフレイ。キースとキラは両手一杯の荷物を手にすっかりトホホ顔になっている。
「キースさん、何時になったら終わるんでしょうか?」
「知らんよ。買い物のリストに聞いてくれ」
 心底疲れた声で問いかけてくるキラに、キースは苦笑して答えた。キラはこういう体験は初めてなのだろう。辛いのも無理は無い。キースは経験があるのか、そこそこ余裕を持っていた。
「おーい、お2人さん、キラがもうへばってるから、少し休憩いれようや」
 キースに呼び掛けられて2人はこちらを向き、キラに情けなさそうな視線を向けている。
「なんだよ、男のくせにもうへばったのかよ?」
「だっらしないわねえ」
 血も涙も感じさせないお言葉に、キラは心の中で涙を流していた。キースはそんなキラの背中を叩いて近くの木陰を指差す。
「とりあえず、あそこで休憩にしよう。悪いがフレイは飲み物でも買ってきてくれ。俺はちょっと買い物に行ってくるから」
「え、何処にです?」
 不思議そうに問うフレイに、キースは何時もの軽い口調で答えた。
「いや何、フラガ少佐やらノイマンやら、まあ男衆からの頼まれ物があってね。こいつは女性に買いに行かせる訳にもいかんだろう」
 キースの返答にフレイとカガリは顔を赤くして気まずそうに逸らした。変わりにキラが余計な事を聞いてくる。
「あの、それってまさか、エロ本ですか?」
 キラの質問に、キースは何とも言えない複雑な表情を浮かべてキラを見た。
「・・・・・・キラ、そういう事は気づいても聞くもんじゃないなあ。なんならお前の分も買ってこようか?」
「え、ええと・・・・・・」
 悩むキラ。だが、それは致命的な失敗であった。振り返ったフレイとカガリがなんとも言えない冷たい視線で自分を見ているからだ。軽蔑の眼差しに晒されて顔から血の気が引いていくキラを楽しげに見やり、キースはわざと状況を悪化させるような一言を残していった。
「そうか、じゃあキラの分も追加だな。それじゃ行ってくるね〜」
 手をヒラヒラさせて早足にさって行くキースの背中にキラは慌てふためいて手を伸ばしたが、そんなものが届く筈もなく、ジロリと2人に睨まれて縮こまってしまうのであった。
 3人と分かれたキースは頼まれ物を買い揃え、背負ってきたバッグに詰め込んでいく。男である以上、こういう物も必要なのだ。艦長や副長に見つかったら没収されそうだけど。
 重くなったバッグを背負い、キースはもと来た道を戻って行こうとしたが、ふと露天で売られている宝石やら装身具に目をやり、そちらに歩いて行く。
「いらっしゃい。どうですおひとつ?」
「なかなか安いな。この辺りは原産地か何かかい?」
「ええ、原石が取れまして。加工業も発達してますよ」
 素人であるキースから見ても並べられている商品の出来は大した物だった。値段も安く、これまでの戦いで溜まりまくっている給料からすれば安い買い物だと思える。しばし商品を眺めていたキースは、ふと一人の洒落っ気の無い女性を思い浮かべ、次いで気になる2人を思い浮かべた。そして、少し考えてからネックレスを1つと、対で作られているペンダントを買い求めた。いずれも派手さはないものの、品の良い作りをしている。落ちついた美しさとでもいうのだろうか。ネックレスにはキースのパーソナルカラーでもあるエメラルドの大きな輝石が真中で輝いているのが目だった特徴だ。
 それらを買い求めたキースは、再びリュックを担ぎなおすとキラ達の待つ木陰へと帰ってきた。だが、そこで彼を待っていたのは何やら激しく落ちこんでいるキラと、白けた目でキラを見る2人の女性であった。
「おいおい、何をしたんだ、お前等。キラがボロボロじゃないか?」
「いえ、別に何でもありません」
「気にしないでくれ」
 どうしたら気にせずに済むのかと思ったが、とりあえず反論が怖いので口にはしない。ただ、キラの肩を掴んで立ちあがらせた。
「ほらキラ、続きを買いに行くぞ」
「はあ・・・・・・僕ってなんなんでしょうね?」
 こりゃ重傷だと思いつつ、キースは自分の担当の買い物袋を持ち上げた。
 結局、2人はこの後も散々買い物に付き合わされ、ヘトヘトになって

781 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/04(土) 19:33
>ある苦労人
 いいなぁ、ダコ(ry
 ラクス嬢に減点されてもかんがれ。きっと君は最後に、あの戦争を
終わらせた鍵の1つを見出すことになるだろう。今ので私はいっそう
確信した!w

782 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/04(土) 20:28
>ある苦労
大変ですね、ダコス(ry
おっと、だんだん名前を出すのがエスカレートしてしまったよ・・・

>流離う
アクセサリーは今後の物語にどう影響するやら・・・
それにしても、さんざん言葉責めにされたキラは大変だw

783 名前: 種げー 投稿日: 2003/10/04(土) 21:24
>593
シミュレーションRPG「ガンダムSEED」攻略
今日は、第2章(ザフトルート)の流れを解説するぞ!

第2章「誰も僕を責めることはできない」

アニメ本編にはない展開のザフトルート。
キラの決断で運命を変えろ!

・宇宙での戦いは一直線だ。ブリッツやイージスと連携して敵を
叩くのみ。
・地上での最初の戦いはカガリのスカイグラスパーが相手だ。ここでは
イージスが一定のダメージを受けるとアニメの通りアスランとカガリの
無人島イベントが発生するが、そうでない場合はキラが無人島でカガリ
と再会する。今後の展開にも影響を与えるぞ。
・地上での戦闘はグゥルが撃ち落とされないように注意して戦おう。
・オーブ近海でのAAとの戦いも重要だ。ここではフラガの他にトール
が敵パイロットとして登場する。ここでトールを撃ち落すとフレイが
3章で敵パイロットとして登場する場合がある上、あのキャラが…?。
・オーブ潜入イベントでは、カガリと再会してた場合カガリと、
そうでない場合はフレイと会うイベントがある。
・第2章ラストバトルでは再度AAを攻撃する。AAの攻撃はダメージ
が大きいのでブリッツやバスターのHPには常に注意しよう。

そして第3章、地上の戦いは最終局面へ。
「それでも僕は…」
へと続く

784 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/04(土) 23:04
>783
オーブ潜入イベントではフレイ様を拉致キボンヌ!
だってさ…連合とザフトで揺れたキラに身の振り方を決めさせたのはフレイ様じゃないかな。
逆に言うとフレイ様がAAにいたらキラもザフトに留まれるかどうか・・・
あ、なんかキラ版「フェイズシフトダウン」の悪寒だ。

つーか何か援軍出さないとAA沈んじゃうよね・・・
キースみたいな。

785 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/04(土) 23:11
>>784
このルートだとフレイ様とキラはセックルしてませんので(ラクス返すときに
キラもザフトに行った)。

786 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/04(土) 23:25
>>783
タクテクスかよ(;´Д`)

787 名前: 784 投稿日: 2003/10/05(日) 00:04
セックルしてなくても影響は強いと思いますが・・・

788 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/05(日) 02:29
承前/ボアズ編:>>748-755


「……アルスター少尉の様子はどうか?」
「ええ、随分と集中したんでしょうな。だいぶ参っていた様子ですが。……栄養剤と鎮静剤を投与しておきましたから、数時間後には任務に戻れると思います」

 そうか、と応える女性士官の声で、フレイは目を覚ました。
 ここはアークエンジェル級2番艦“ドミニオン”の医務室。フレイにとってはある意味で見慣れた部屋であり、いつまで経っても居慣れない部屋でもある。

「しかしバジルール少佐。こう言っては何ですが、アルスター少尉にストライク・ルージュは明らかにオーバースペックではありませんか?」
「……何が言いたい?」
「操縦技術はともかく、精神力と耐久力がまるで追いついていません。ダガーに乗せた方が、まだ“持つ”と思いますが」
「しかし貴官も見ただろう。少尉は初陣、かつ単独で敵の新型を堕としたのだぞ?」
「確かに。ただ、今のままでは、そう長くは続きませんよ。最低でもγ−グリフェプタンの投与を……ヒッ?!」

 ほとんど殺意に近い怒気をナタルに叩きつけられた軍医は、そのまま逃げ出すように医務室から駆け出して行った。それを見送るでもなく肩を竦め、大きく息を吐き出すナタル。

「ナタルさん、あの……」
「何だ、起きていたのか? フレイ」

 この艦のみならず現在の地球連合軍にあって、アークエンジェル出身はお互い2人だけとなってから、フレイとナタルはプライベートであれば名前で呼び合うくらいには親密になっていた。フレイは実質ナタル以外に頼れる女性がおらず、ナタルはナタルで、フレイにどこかアークエンジェル時代の空気のようなものを求めているフシもある。

「今の話……γ−グリフェプタンって」
「お前が知る必要の無いことだ。それより今は一刻も早く、体力を回復させることだけ考えていろ」
「は、はい」

 恐縮するように、寝込んだままシーツを首元に引き寄せるフレイ。
 そんな彼女の姿に、ナタルは一瞬、サブナック少尉、ブエル少尉、アンドラス少尉ら3人の姿を重ねてしまう。ムルタ・アズラエル子飼いの“G”パイロットとして薬物強化されたブーステッドマンとなった3人は、確かに並のコーディネイターであれば赤子のように捻り殺すだけの能力を手に入れていた。だが、その強化薬が切れれば禁断症状にのたうち苦しみ、恐らく今出て行った軍医にすら敵わない無力な存在に成り下がる“G”兵器の生体CPUたち。
 そんな境遇をフレイが望んでいるかどうか、実際のところは分からない。だが、そうなるくらいならいっそ……と考えてしまう自分は偽善者なのだろうか。ナタルは自問するが、答えが返ってくるでもない。
 考えるだけ無駄なのだ。そう割り切った彼女は、本来の用件を切り出すための小道具を取り出すことにした。

「ちょっと待っていろ。今、りんごを剥いてやるからな」
「あ、ありがとう……ございます」

 素直に感謝の言葉を口にするフレイに、口元をほころばせた微笑で応えるナタル。
 軍人の彼女しか知らない人間が見れば、何かの冗談かと思うくらい柔らかい雰囲気のまま、しゃり、しゃり、しゃりと手際良くナイフを扱い、果実を切り分ける。

789 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/05(日) 02:30
「……それでフレイ。これから、どうする?」
「どうするって、ナタルさん?」

 半身を起こした少女がりんごを食べ終わるのを待ってから、ナタルはそっと切り出した。切り出してから、前提とすべき選択肢を何も話していないことに気づき、バツが悪そうに赤面する。

「す、すまない。……つまりだな、まだこの艦に残って戦うつもりなのか、ということだ」
「ナタルさん……」
「お前も、戦場に立つのがどういうことか分かっただろう? それに、これからの戦いは今回のように簡単には行かない。我々がNJC技術を手に入れ、核の封印を解いたことはプラントにも充分伝わったはずだ。それでも停戦なり和平交渉なりの気配はまだ無い……」
「ザフト軍は、最後まで抵抗するつもり、ということですよね」
「そうだ」

 真剣に頷いたフレイに、ナタルも真剣な表情で応える。
 あるいは今の地球連合に――ブルーコスモスに、プラントを許すつもりが無いからだ、とは言わない。
 だから、今からでもお前は月基地へ戻れ。ストライク・ルージュが戦場に立ち、無事に帰って来たのだからサザーランド大佐もそれを悪しとはしないだろう。……そう切り出そうとして、ナタルは機先を制された。

「私、この艦に残ります。残って、最後まで戦います」
「フレイ……。私は、お前に」
「私だって、キラに逢うまで死ぬつもりはありません。……でも、ここで何もかも投げ出しちゃったら、2度とキラに逢えないって。そんな気がするんです」
「…………」

 少女の強い決意に、ナタルはあっさりと折れた。
 凛とした瞳がひどく懐かしく羨ましくて、思わず微笑を浮かべてしまう。立場と場所は違えど、昔の自分も、この少女のようにまっすぐな瞳を輝かせていた刻が、確かにあったと思い出したから。

「それに……最後までこの戦いを見届けることが、私の責任だと思うんです」
「NJCのディスクを運んだことか? しかしあれは……」
「私の責任なんです! あれを私に託したのがクルーゼでも、回収されたのがアークエンジェルじゃなくてドミニオンでも! 何も知らないまま、あれをアズラエルに渡したのは、私の責任なんです……っ!!」

 ぐッ、と唇を噛み、白い指がシーツに溶けるのではないかとばかりに強く握り締められる。
 真紅の髪が揺れ、静かにフレイは嗚咽を漏らし始めた。

「フレイ……」

 傍に寄り、そっと少女の頭を抱く。胸の中で聞こえてくる声無き泣き声を感じながら、ナタルはこんな少女にこれほどの業を背負わせるほどの意義がこの戦いにあるのかと、また答えの出ない自問を彼女が泣き止むまで繰り返していた。

790 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/05(日) 02:30
「MS隊、順次展開」
「第3機動艦隊、補給作業完了。後詰めに入ります」
「旗艦ワシントンの位置を修正しろ。そうだ、ドミニオンは前衛部隊に回せ」

 ボアズ要塞を堕とした勢いを駆り、地球連合軍プラント打撃艦隊は作戦の最終段階に入っていた。ドミニオンを中核とした第7機動艦隊の前衛部隊が、MS隊と共にザフト軍の迎撃部隊を抑え、その間に後方で展開したピースメーカー隊が核攻撃による直接打撃を敢行する。
 この戦いでは、どこまでプラント側に戦線を押し込めるかが鍵であった。前衛部隊は、ちょうど弓なりにプラントとヤキン・ドゥーエ要塞の前に展開することとなる。次々と発進するMS隊の先頭には、X131カラミティ、X370レイダー、X252フォビドゥン、そしてX115ストライク・ルージュの姿もあった。

「栄えあるプラント打撃艦隊の諸君。いよいよ、我々の戦いも勝利を得る段階まで近づいてきた」

 通信回線からは、後詰めである第3機動艦隊の旗艦に座乗するサザーランド大佐の演説が聞こえてくる。

「全ての災いと諍いの種、母なる地球に与えられた遺伝子を自らの意思で歪めた悪しき者どもを。青き清浄なる光で焼き払う刻が来たのだ」

 顔を伏せて、フレイは回線を切った。
 狂っている。ナチュラルも、コーディネイターも、何もかもが……。そんな大きな流れに呑み込まれていると自覚するだけで、身体の震えが止まらない。逃げ出したくなる、吐き出したくなる、泣き出したくなる。
 でも止まれない。ここまで来て、投げ出すわけにはいかない。

「諸君らの父母も兄弟も子供たちも友人たちも、この宇宙(そら)に浮かぶ悪魔どもに殺されたのだ。なれば、我らの悲しみは怒りの鉄槌へと換わり、コーディネイターどもを叩きのめすだろう」

 ドミニオン艦橋、スクリーンに映るサザーランドの姿を、睨みつけるように見ているナタル。
 その横の特設シートでは、ブルーコスモスの盟主が軍における最高の手駒の演説について、内心で採点をつけていた。独創性には欠けるが効果は確かであって。まぁ80点はやっても良いかと苦笑する。

「青き清浄なる世界のために。諸君らの健闘を期待する!」

 おおおおおッ! と意気上がるプラント打撃艦隊。
 その前面に展開し、往く道を阻むのはヤキン・ドゥーエ駐留のジュール隊を中核とした、ザフト軍の迎撃部隊であった。

791 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/05(日) 02:31
「ハハハッ、まァたゾロゾロ出てきやがった!」
「うりゃあああああああッ、撃・滅!」
「邪魔くて、ウザいんだよね、お前ら」

 相変わらず、3機の“G”兵器の破壊力は凄まじい。人的資源の枯渇し始めたザフト軍にあって、彼らを相手取るジュール隊は、アラスカ戦、パナマ戦をくぐり抜け、あるいはボアズから辛うじて生き延びた精鋭パイロットたちを集めた最強部隊だったはずが、次々と撃たれ、数を減らしていく。

「ザフトが! 新型が! 何だっていうわわあああッ?」
「駆動系をやられた? 脱出を……ぅあ、ぎゃああッ!」

 無論、地球連合側の損害も僅かな時間で深刻なレベルに至っている。
 次々と撃破されていくダガー隊。ボアズ戦を生き延び、僅かばかり操縦に慣れたからと言っても、それを活かせなければ即、死に繋がる過酷な戦場。

「くっ、このッ!」

 そんな激戦の中にあって、フレイの駆るストライク・ルージュは1機のゲイツと死闘を繰り広げていた。味方のダガーを瞬く間に2機墜としたこの相手は、“G”兵器であるデュエルほどでは無いにせよ、間違いなく一線級のエース機と見て取れる。

「貴方たちが、こんなところまで来るから!」
「何よッ? 邪魔しないで! 私は、あンたたちと戦いたいわけじゃないのにッ」

 ビームライフルを撃ち合い、回避し、シールドで捌き、至近距離で絡み合い、イーゲルシュテルンを叩き込み、互いのシールドで互いのビームサーベルを払い合う。

「……やるわね! さすがイザーク隊長因縁の相手っ……色がちょっと違うみたいだけど」
「何よ、何よ何よ何よ何よ何よッこの女ッ?!」

 一度の実戦を、己の経験としてしっかり吸収し成長し次に活かす。
 フレイ・アルスターは、その意味において天性の才能の持ち主かも知れない。高性能機であるストライク・ルージュの力を、ボアズ戦より遥かに良く引き出しているばかりでなく、ゲイツの機動から他には見られない敵パイロットの特性まで読み取っているかにも見える。

「これでっ!」
「こんなものッ!」

 教本どおりにコクピットを狙ってきたゲイツのシールドクローを、半ばOS任せで再度、シールドで弾く。相手が姿勢を崩したところで、OSが冷徹に敵MSのコクピットをロックオンする。

「??!」

 だが、フレイがトリガーを引き込む寸前、ストライク・ルージュの機体が激しい衝撃に見舞われた。揺さぶられ、悲鳴にならない悲鳴をあげるフレイ。コンソールに走っているのは“G”兵器デュエルの接近を告げる警告であった。

792 名前: ルージュルート作者 投稿日: 2003/10/05(日) 02:33
今回はなんとか、ここまで。フレイ様、ぷちピンチw
引き続き、しばらくはプラント攻防戦の予定です。

793 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/05(日) 05:58
クローン・フレイ作者です。
最終回を見てハイになっていて、一週遅れの人を考えずに、
最終回の展開を含んだSSを投稿してしまい、すみませんでした。

その後も、いろいろな趣向のSSが投稿され、うれしい限りです。

>二人で一人
感想ありがとうございます。
この話は、本編最終回の後も、二人のストーリーが展開するので、
私としては非常に嬉しいです。
続きを楽しみにしています。

>もっとたのしてくて
今、一番楽しみにしています。
まったく、オリジナルの世界に突入していますね。
私にはマネできません。
頼れる先輩のミリィというのも、私は思いもつかなかったので、
興味深く見ています。

>フレイ/ルージュルート
私が考えもしなかった展開で、ルージュに乗るフレイにビックリしています。
このまま、最終回部分がどういう風になるか楽しみです。


今、自分自身は、まだ最終回を引きずっていて、フレイ様主人公のSSが
書けないので、ミリアリアが実はキラを好だったというアイデアで、
フレイ様を第三者的な立場から語るミリィ一人称独白形式のSSを試行錯誤中。
私のSS内のミリィは、どちらかというと理系おたく少女...

でも、最初から太平洋編まで書いて、自分が書いた他のSSのみのエピソードや
エロ (フレイ様の) も入ってきて、ここに投稿はできそうもありません。

794 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/05(日) 11:34
>ルージュルート
 ま、まさか萌え隊員か何かと戦ってるんでつか!?
ともかくフレイたま、がんがって!!

795 名前: ある苦労人の記述・作者 投稿日: 2003/10/05(日) 15:49
話も佳境(全然そうじゃないと言う意見多数?)に入ってまいりました。
はたしてある苦労人はフレイ・アルスターの
真実にたどり着けるのか?

796 名前: ある苦労人の記述・10 投稿日: 2003/10/05(日) 15:51
>>729-731 >>742-745 >>775-776

※月@日
現在はオーブに所属する不沈艦アークエンジェル
その艦長は前と同じくマリュー・ラミアスが務めている。
艦長としては問題視される事項もあるが
これまでの激戦を潜り抜けてきた実績もあるし
部下の信頼も厚い。
そんな彼女から話を聞くことが出来た。


証言7:マリュー・ラミアスの場合
フレイ・アルスター? もちろん覚えているわ。
彼女も本当に残念なことになってしまって・・・・
ちょっと気の強そうだったけど、可愛らしい娘だったわ。

最初はサイ君の彼女だったのだけれど、
地球に下りたあたりからキラ君の彼女になってしまっていて・・・

あの二人の関係は少し健全とは言えない関係のような気がして
それを何とかしたかったのだけれど、あの頃のキラ君は
その・・・・非常に荒れてた時期でもあったから・・・
どうもうまくアドバイスをしてあげることが出来なくて――。
結局二人の好きなようにさせてしまっていた・・・
我ながら無責任だったと思うわ。

彼女はアラスカで異動になってしまって・・・・
それからどういう経緯でザフトの捕虜になってしまっていたのか―――
その辺は分かりません。


ふむ・・・・目新しい情報はないものの今までの情報の裏づけにはなったな。
社会的信用度が違うし。
・・・しかし、整備班から艦長まで二人の関係が知られているとは・・・
おおっぴらに付き合っていたんだな。


――本当に彼女といい、ナタルといい、死んでしまうなんて・・・・・
どうして―――ムウ――――帰って―来るって―――


・・・・あ〜え〜もしもし?
いきなり泣きだされても・・・・
オ レ に ど う し ろ と !!

797 名前: ある苦労人の記述・11 投稿日: 2003/10/05(日) 15:52
※月@日
Kと名乗る謎の人物より手紙が届く。
(最近、このパターン多いな・・・・)
あと何かのディスクが入っていた。


証言8:謎の人物Kの場合
「君は現在キラとフレイの事に関して調べているそうだね。
 僕は二人に関する重要な情報を複数持っている。
 実はそれを相応の物と交換してもらいたいんだ。
 でも、いきなりこんな事を言っても
信用してもらえないだろうから
 証拠としてその内の一つをプレゼントするよ。
 それを見てくれれば、僕の情報を信用してもらえるはずだよ。
 また連絡するから。                        K 」


何なのだ?これは・・・
半信半疑だがディスクの中身を確認することにする。
どうやら映像データのようだな。


――うあ゛ぁああ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ――

男の泣き声・・・?
泣いている男を女があやしているようだ。
キラ・ヤマトとフレイ嬢のなのか?
む?
おぉ!?
おぉぉぁぉ!!
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
――――む・むぅ、なんというか、その・・・・
激 し い な !!

どうやって撮ったのかはわからないが、K恐るべし。
他に一体どんな情報を持っているというのだろうか・・・。
しかし、さすがにこの情報はラクス様たちには見せられないな。

オ レ が 大 事 に 保管しておくことにする。

798 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/05(日) 16:13
ダコ(仮?)キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
いや凄い面白いッス!頑張れ負けるな苦労人!

799 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/05(日) 17:24
>>797
(Re)Kz様キタ───( ゜∀ ゜)───!

仮面もアズ公なんかよりカ(ry様から情報を買えばよかったのに。

800 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/05(日) 18:19
さすが、序盤はブルコスの盟主説まで出ていたK様。

い い 仕 事 だ な ! !

苦労人、ある意味報われたな。これからもがんがれw

801 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/05(日) 21:19
苦労人乙!一番楽しみにしてるよwおもしろすぎ!!
がんがれダコ(ry

802 名前: 流離う翼たち・65 投稿日: 2003/10/05(日) 22:41
 ようやく買い物を終えてカフェの椅子にドサリと腰を下ろしたキラとキースはグッタリと背もたれに持たれかかった。キラはキースの忠告を身を持って実感したのだ。まったく、女の買い物に付き合うもんじゃない。
 そんな彼らの前に給士がお茶と料理を並べていった。その料理を見てキラが珍しそうに問い掛ける。
「何、これ?」
「ドネル・ケバブさ。あー腹減った。お前も食えよ。このチリソースをかけてだな!」
「何言ってるのよ、ケバブにはヨーグルトソースでしょう?」
 ドネル・ケバブを知っているらしいフレイがヨーグルトソースをかけている。それを見たカガリが露骨に顔を顰めている。何か拘りでもあるのだろうか。
 カガリがチリソースの容器を手にして何か言おうとした時、いきなり脇から声が飛びこんできた。
「あいや待った!」
 突然の声に4人は驚いてそちらを見やった。そして、そこに立っている男の姿に目を丸くする。
「ケバブにチリソースとは何を言ってるんだ、君は。ここはヨーグルトソースをかけるのが常識だろうが!」
 拳を握り締めて力説するその男は、派手なアロハシャツにカンカン帽というおおよそこの場に似つかわしくない恰好をしていた。それを見た途端、キースが自分のケバブにチリソースをかける。
「ほらキラ、早く食え」
「え、で、でも・・・・・・」
 戸惑うキラ。ぶつかり合うカガリと謎の男。キースとフレイは我関せずとばかりに食事を始めていた。そんな訳で2人の視線は自然とキラへと向く。キラはビクリとからだを震わせた。
「ほらっ、お前も!」
「ああ、待ちたまえ! 彼まで邪道に堕とす気か!?」
「何を言う、ケバブにはチリソースが当たり前だ!」
「いいや、ヨーグルトソースだ!」
 2人はそれぞれの容器を手に睨み合い、ついでキラの皿の上で激しい戦いを繰り広げだした。そんな事をすればどうなるかは分かりきっているのだが・・・・・・
「ああッ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
 カガリと男は申し訳なさそうにキラを見た。キラのケバブは白と赤のソースにまみれ、大変な事になっている。まあ、多分食べられるだろうが。
 キラは仕方なくそれを頬張った。
「いや、悪かったね」
「・・・・・・いえ・・・・・・まあ、ミックスもなかなか・・・」
 と答えながらも、顔には苦痛の色が見て取れる。それを見ていたフレイは呆れながら水の入ったグラスをキラの所に滑らせた。キラは感謝の目でフレイを見てグラスを手に取る。はっきり言ってソースの味しかしない。
 カガリが何時の間に同じテーブルに腰を落ち着けている男に文句を立て並べている。それに男が色々言い返しているが、突然男は言葉を切って外に目をやる。同時にキラも身構え、キースはそっと荷物を脇に押しやった。
 カガリとフレイは何も気付いていない。キラは咄嗟にフレイの腕を掴み、キースはカガリの上着の襟を掴んで近くのテーブルの影に引っ張りこむ。それと同時に男がテーブルを蹴り上げ、即席の遮蔽物とした。もっとも、こんなもの銃撃戦では盾にはならないのだが。
「大丈夫か!?」
「な、なんとか」
 キラは体の下にフレイを庇いながら頷いた。フレイはまだ状況が理解できずに困惑している。向こうのテーブルではキースが何処から取り出したのか拳銃を手にこちらを見ている。
「キラ、お前はフレイを守る事に集中しろ。こっちは何とかする!」
「わ、分かりました!」
 キラが答えると同時に、数人の男がマシンガンを乱射しながら店に入って来た。
「青き清浄なる世界の為に!」
 どうやらブルーコスモスのテロらしい。キースは顔を顰めてカガリを見た。
「悪いが、もう少し小さくなっててくれ」
「私だって戦える!」
「拳銃はこれ一丁なんだよねえ」
 キースはそう言うとテーブルの影から敵を伺った。すると、あっちこっちから武器を手に襲撃者に反撃を開始した。どうやら客に紛れて色々潜んでいたらしい。
「構わん、全て排除しろ!」
 彼らに向けて、男は命じた。あきらかに命令する事に慣れた者の口調だ。この男は何者だとキラは思った。暫くの銃撃戦が続く。キラの体の下では突然の銃撃戦にフレイが震えている。
「やだ、何よこれ・・・・・・・・・」
「フレイ、落ち付いて、大丈夫だから」

803 名前: 流離う翼たち・66 投稿日: 2003/10/05(日) 22:42
 暫くして銃撃戦は終わった。キラは恐る恐る上半身を起こし、戦いが終わった事を確認する。キースも拳銃をしまうとこちらに歩み寄ってきた。
「大丈夫か、2人とも?」
「え、ええ、僕は大丈夫です」
 キラはフレイを抱起こしながら答えた。フレイはまだ震えが収まらないらしく、両手で体を抱きながらキラに体を預けている。始めて銃撃戦に巻きこまれたのだから無理もあるまい。
 フレイをキラに任せ、キースは男を見た。彼はこちらを見てニヤリと笑っている。
「で、あんたは何者だい。さっきの連中はお前さんを狙っていたんだろう?」
「ほう、何故そう思う?」
 男の問いに、キースは肩を竦めて答えた。
「あいつ等はブルーコスモスだった。狙われるのはコーディネイターだろ?」
「なるほどね。で、ボクは誰だと思うんだね?」
 男の問いにキースが答えるより早く、駆けこんで来た青年が男に離し掛けてきた。
「隊長、ご無事ですか?」
「・・・・・・ダコスタ君、良い所なんだから水ささないでよ」
 少し悲しそうな声で男がダコスタと呼んだ青年に答える。キースはダコスタの言葉を聞いて男の正体に気付いた。
「なるほどね、砂漠の虎どのか」
「知って頂いていたとは光栄だ。エメラルドの死神さん」
 しばし2人の間に異様な緊張感が走る。だが、すぐに2人とも緊張を解いた。殺しあう気ならもっと早く手を打っているはずだ。それが無いという事は、戦う気は無いという事だろう。
「それで、何か我々に用でも?」
「まあ、色々とね。迷惑もかけたようだし、一度うちに招待したいんだがね」
 バルトフェルドの誘いに、キースは辺りの様子を確かめた。今動き回ってるのは間違い無くバルトフェルドの部下だろう。これだけの数のコーディネイターから逃げ切れる自身は全く無かった。
「わかった、受け入れよう。ただし、子供たちには手を出すなよ」
「ボクはお詫びのつもりで招待するだけだよ。そんな事する訳無いだろう」
 バルトフェルドの答えに、キースは肩の力を抜いた。変な男だが、嘘をつくような人間では無さそうだからだ。脇に寄せた荷物を取り、キラ達を見る。
「お前等、動けそうか?」
「ちょっと待ってください、フレイがまだ落ちついてないんです」
 キラはまだ震えているフレイを抱きながらキースに困惑した視線を送っている。
「フレイ、もう終わったよ。もう銃弾は飛んでないから、ねっ」
「う・・・・・・・うん、ありがとう、キラ」
 震えは収まらないながらも、口からごく自然に漏れた感謝の言葉。意識して言った言葉ではないだろう。だが、初めてのフレイの感謝の言葉に、キラは嬉しそうな笑顔を浮かべた。
そんな2人を見てキースはバルトフェルドの顔をちらりと見た。
「悪いけど、荷物頼んで良い?」
「・・・・・・まあ、良いけどね」
 自分の正体を知りながら平然とこういう事を頼んでくるとは。バルトフェルドはこの男がどういう神経をしているのか、少し気になった。だが、すぐに置かれている買い物袋の山を手に取り、よいしょと持ちあげる。カガリがキースの後に続き、キラがフレイの体を支えながら付いてきた。店の前に止められた車に乗りこんでいく。部下たちはバルトフェルドと一緒に車に入っていく少年少女達に訝しげな視線を向けていたが、特に何も言わなかった。

804 名前: もつとたのしくて 投稿日: 2003/10/05(日) 23:59
>>500-501>>514>>548>>557>>562>>568>>587>>686-687>>711>>735>>763-764>>771

機械の間を色とりどりのケーブルが縦横無尽に接続され、まるで何かのコンサート会場のようにカラフルな教室にキラの姿は無く、いたのはトールとカズイだけだった。
今までの人生で一番、と言うほど緊張していただけにフレイは拍子抜けして座り込んでしまいたくなったが、だからと言って帰るわけにもいかない。
「あの…キラは、どうしたんですか?」
トールはフレイの声を聞くと、少し考えるような仕草を見せたが
「あぁ、キラなら…サイと一緒に外に出てるよ。すぐ帰ってくるはずだから、ここで待つ?」
と椅子を引き寄せた。
「あ、ありがとう…」
こうなったら待つしかない。腰を下ろしたフレイを、カズイは物珍しそうに眺めていた。
「よ、トール。フレイ、何しに来たんだ?この間も来てたし、何かあったのか?」
トールはカズイの質問には答えず首を振り、微苦笑を浮かべただけだった。
「さぁ、僕も知らない。待つって言ってんだから、待たせてあげたら良いさ」
キラとサイが来るまでほんの十数分、といったところだったろうか。しかしそれはフレイにとっては恐ろしく長い十数分だった。
「キラ、フレイが用があるってさ」
トールは努めてさりげなくキラに声をかけ、フレイを指した。
「人が増えると実験の邪魔になるから、悪いけど外でやってくれない?キラ、フレイ…」
キラとフレイの背中を押すようにして、トールは二人を外に出して戻ってきた。
「…?トール、フレイは何しに来たんだ?キラは?」
サイもカズイと同じ質問をトールに浴びせたが、トールは肩をすくめて「さぁ?」というジェスチャーで答えただけだった。
キラは、突然の事に驚いて口を開く事が出来なかった。フレイの方から、言葉を告げなければならない。
長い沈黙。
「あ、あの…」
ようやく口を開いたフレイだったが、舞台の上とは勝手が違い、次の言葉が出てこない。
「あの、キラ…この間は、ごめんなさい…私、とんでもない事、しちゃって…」
果たして聞こえているのかどうか分からないほど小さな声だったが、それでも一語一語、はっきりと、確かめるようにフレイは続けた。
「キラに、ちゃんと、謝らなくちゃって…私、ほんとに…」

805 名前: もつとたのしくて 投稿日: 2003/10/05(日) 23:59
キラにとっては意外な言葉だった。まるで、あの時の自分の言葉を聞いていないかのようなフレイの言葉に戸惑っていた。
「そんな…フレイ…そんな事、無いよ…」
フレイの目は、舞台の日の夜と同じに思えた。だから、キラも同じように素直な言葉を言わねばならないと思った。
「サイの誕生パーティーの時の事は、気にしてないから…ね、フレイ…」
フレイは言葉を止め、じっとキラの言葉を聞いていた。その目に、表情に魅入られるように、キラは言葉を続けた。
「でも、ほんとはあの時…僕は…ちょっと、嬉しかったんだ…」
フレイは「えっ?」と目を見開き、キラの顔は真っ赤になった。
「僕は、フレイに…フレイを…」
「どう言う事…?」と言いそうになってから、フレイはキラの言いたい事に気づいて同じように顔を赤くした。
予想外の言葉、と言えば嘘になるのかもしれない。と今さらながら気づいた。が、今すぐそれを受け止められる程の余裕はフレイには無かった。
「あ、あの…私…」
また、しどろもどろになってしまうフレイ。汗が噴き出してきた。
どうしてこうも、普段はうまく気持ちを伝える事が出来ないのだろう。
「あの…ごめんなさい!」
叫ぶように言うと、フレイは走った。
「フレイ!」
フレイのまとめていた髪がほどけて、広がりなびいていった。

「フレイ、その衣装も似合うじゃない」
「ほんと、意外だよね」
男装のフレイはいつもの雰囲気とは違っていて、かなり大人びて見えた。
もっとも、フレイはパンツに下半身が締め付けられて動きにくい感覚に慣れる事が出来ず、あまり好きではない。
「ま、やるしかないわよね…」
そこへ、部長が入ってきて、
「フレイ、今日の幕切れの口上お願いね。これも練習になるから。これ、原稿ね」
基本的に口上は一年生が交代でやる事になっていて、今回はフレイの番だったのだ。
手渡された原稿を読みながら、フレイはぼんやりとキラのことを思い出していた。
舞台も二度目になると周りを見る余裕が出てきて、以前は見えなかったものも見えてくるようになってくる。
観客の熱気もそうだし、一人一人の顔も、ある程度は見えてくる。
トールとカズイ、サイは前と同じように並んで座っていた。が、キラの姿はそこにはなかった。
しかしフレイは、キラの気配を感じていた。確かに、このどこかにいる、と思った。
そして、舞台が終わり、幕切れの口上を述べる為にフレイは居並ぶ出演者から一歩前に進み出た。

806 名前: もつとたのしくて 投稿日: 2003/10/06(月) 00:00
『……ご婦人の方よ、貴方が殿方を愛しいと思うように、この芝居を愛でてください。それから殿方よ、貴方がご婦人を愛しいと思う心にかけて、ご婦人共々このお芝居を愛でてください。もし私が女でございましたなら―』
フレイはここでひとつ、息を吸った。
『わたしの好きな方、わたしを包んでくれる方に、心から接吻致したいのです。そしてきっと、わたしの心を、想いをお汲みになって、わたしを愛してくださるでしょう。…』
フレイの後ろで聞いていたミリアリアは驚いていた。部長が渡した原稿とは違っていたからだ。
「フレイ?…もしかしてアドリブ?それにしても…」
しかし、フレイは淀みなく言葉を繋いでいる。事前に考えていたものに違いなかった。
どういうつもりなのか分からなかったが、舞台の上ではフレイに任せるしかなかった。
後ろから見ていると、フレイが一点を見つめている事に気が付いた。その視線は観客席の一番後ろ、暗くて舞台からはよく見えない所だった。
あそこに誰か…フレイがこの言葉を伝えようとしている人がいるのだろうかとミリアリアは想像した。
一体誰なのだろうかと目を彷徨わせると、トール達が目に入り、そこにキラがいない事に気が付いた。
「…?…もしかして…」
とにかく、この場が終わってから確かめれば良い事だと思っている間も、フレイの言葉は続いた。
『……こうして、わたしが膝を折ってお礼いたします時には、暖かな眼差しをお向けになって下さいますでしょう。では、さようなら!皆様も、さようならご機嫌ようと仰って下さいますでしょうね』
そこで幕切れの口上が終わると、フレイは客席に向かって頭を下げ、それと同時に拍手が鳴り響いた。
振り返ってミリアリアをはじめとする他の出演者の所に帰ってきたフレイには、満足げな笑みが浮かんでいた。
部長は呆れたような表情を浮かべていたが、どうやら観客には受けたようなので怒るわけにもいかなかったようだ。
もっとも、「口上を変えるなら一言言ってよね!」と注意され、フレイは舌を出して謝った。
ミリアリアはトールの所へ行くと、「キラはどうしたの?」と聞いた。
「え?キラ?さぁ…今日も見に行かないかって誘ったんだけど、遅れるって言って…席取っておいたんだけどなぁ。あ、ミリィ、今日の役凄いはまり役だったよ」
ありがとうとトールに答えながら、ミリアリアはフレイの行動に合点がいったので内心おかしかった。なにも舞台の上でやらなくても。
果たして、キラは自分に向けられた言葉として聞いたのだろうか。次、キラと会った時、お互いどんな顔をして、何を話すのか。
「ミリィ?何がおかしいのさ」
「え?うぅん、何でもないわ…あ、明日、キラは研究室に来るかしら?」
「そりゃ来るだろ。…キラに何か用でもあるの?」
その質問には首を振りながら、着替え終わったフレイが出てくるのを見つけると、からかってやろうか励ましてやろうかと思いながら、ミリアリアは「フレイ!」と声をかけ、手を振って応えたフレイの所へ駆け出していた。

807 名前: もつとたのしくて 投稿日: 2003/10/06(月) 00:08
当初予定と微妙に変更しましたが、とりあえず終わってほっとしてますが、
タイトルは、最初どうしても思いつかなくて悩んでいる時に見つけた詩のタイトルをそのまま借用しました。
仮タイトルのつもりだったんですが不精なのでそのまま…
その詩を引用して終わりにしたいと思います(ふるい詩なので仮名遣いが古いのですが)。

もつとたのしくてよいでせう
明るい色に塗りませう
わるい筆だがかまはずに
もつとたのしく描きませう
これはお前の似顔です
似てない姿がとりえです

808 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/06(月) 00:49
>流離う
キースはチリ派ですたかw
キラも意外なことにアクションしなかったけど、砂漠編にしちゃ珍しく本気のセリフがあるフレイ様にハァハァでつ。

>もつと
平和で・・・ラブ米で・・・戦闘関係皆無は難しそうなのに乙です。
いろいろ可能性を見せてくださったと思います。

漏れも修行して、平和に生きるフレイ様を描きたい・・・(´Д⊂ヽ

809 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/06(月) 01:35
>もつとたのしくて
乙フレでした! 舞台女優なフレイ様、最後は見事に舞台の上でキメて
くれましたなー。これからのキラとフレイ、サイとミリアリアとトール
(と、あとカズイw)たちの学園生活を想像するだけで、胸があったかく
なります。男役もハマってたんだろうなぁ・・・。

・・・私の方もこういうあったかいエンディングに持っていければ
いいのですが。なまじ現在殲滅戦の真っ最中ですよフレイ様_| ̄|○

810 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/06(月) 01:44

職人の皆様乙です!!
すべて欠かさず読ませて頂いてます。
毎日ここを見るのがとても楽しみです。
これからも執筆頑張ってください!

811 名前: 流離う翼たち・67 投稿日: 2003/10/06(月) 19:22
 4人が連れていかれたのは豪華なホテルだった。ジンがいたりと何気に物騒ではあったが、4人は促されるままに中へと入って行く。キースでさえ少し怯みを見せながらバルトフェルドに案内されるままに歩いて行くと、向こうから艶やかな黒髪を肩に流した、美しい女性がやってきた。
「あらアンディ、お帰りなさい」
「ただいま、アイシャ」
 バルトフェルドが彼女の細い腰に手を回し、引き寄せてキスをする。キラ達はどぎまぎして視線を逸らす。奥さんという感じではないのだが、恋人だろうか。
 アイシャと呼ばれた女性はニッコリと微笑むとカガリとフレイを見た。
「この子達ですの、アンディ?」
「ああ、どうにかしてやってくれ。ボクのせいで随分と汚しちゃったからね」
 カガリとフレイは揃ってソースやら水やらを引っかぶり、床に引き倒されたことで埃まみれにもなっている。アイシャは「あらあら」と面白そうに2人を改めて見やると、優しい手つきで2人を連れて行こうとした。2人とも流石に不安そうな顔で同行者を見やっている。キラが付いて行こうとしたが、アイシャが顔の前で指を振った。
「駄目よ、レディの着替えについてきちゃ。すぐ済むからアンディと待ってて」
 彼女は甘く叱る口調でキラを窘めると、楽しそうに2人を連れ去って行った。
「・・・・・・ま、まあ、大丈夫だよね」
 強引に自分を納得させるキラ。そして背後を振り返ると、別室に入ろうとしているバルトフェルドとキースの姿があった。
「おーい、君はこっちだ」
 中に入ると、バルトフェルドはサイフォンを取り出して弄り出していた。
「こう見えても、ボクはコーヒーには一家言あってね」
 キラはどうしたものかと辺りを見まわした。どれもとても高価そうな家具が置かれた室内は、おおよそキラにとって落ちつける空間ではない。キースはそんなこと気にするふうでもなくソファーに腰掛け、調度品を弄っていた。本当に動じない人である
 そんな中に、1つだけ見慣れた物があった。誰もが一度は目にしたことのある奇妙な化石のレプリカだ。
 キラが見つめていると、背後から声がかかった。
「Evidene01、実物を見た事は?」
 バルトフェルドがカップを2つ持ってやってくる。キラは首を左右に振った。これのオリジナルはプラントにある。プラントに行った事の無いキラが見た事ある訳が無かった。バルトフェルドはキラの横まで来ると、何でこれが鯨なのかを不思議そうに語っている。
 キラはそれに適当に受け答えしながら、コーヒーを口にした。苦い。
 キラの表情を伺っていたバルトフェルドは気を悪くする様子も無い。
「ふむ、君にはまだ分からんかなあ。大人の味は」
 嬉しそうに自作を口にするバルトフェルド。背後のソファーではキースが平然とそのコーヒーを口に含んでいる。大人になればこの味がわかるのだろうか?
 そのまま3人で話していると、控えめなノックの音が室内に響き、アイシャが入ってきた。カガリとフレイは彼女の背後にいてよく見えない。
「なあに、そんなに恥ずかしがる事無いじゃない。ほ〜ら」
 アイシャがカガリを前に押し出す。と、キラはポカンと口をあけた。
「お、女の子・・・・・・」
「てっめえ!」
 キラの呟きにカガリが反応した。キラは慌てて弁明する。
「い、いや、だったんだよねって言おうとしただけで・・・・・・」
「・・・・・・それじゃ一緒だろうに」
 横からキースにさらりと突っ込まれて、キラはしゅんとなってしまった。女の子を褒める言葉の1つも浮かばない自分が情けない。カガリに少し遅れてフレイもキラの前に立った。
「ど、どうかな、キラ?」
「え・・・・・・あ、その・・・・・・」
 カガリは薄い草色のドレスに見を包んでいるが、フレイは赤を基調としたドレスを着ている。こちらもキラの乏しい語彙では誉めることのできない美しさだった。どう言えば良いのか戸惑っているキラの様子にフレイが不満そうに口を尖らせ、そんな2人を見てバルトフェルドとアイシャがおかしそうに笑い声を上げ、カガリがキースの隣にどさりと腰を下ろす。キラとフレイもその隣に腰を降ろした。

812 名前: 流離う翼たち・68 投稿日: 2003/10/06(月) 19:25
 カガリとフレイを見て、バルトフェルドが感想を口にした。
「さっきまでの服も良いけど、ドレスも実によく似合う・・・・・・というか、そういう服も実に板についてる感じだね、2人とも?」
 バルトフェルドに褒められてカガリは更に不機嫌に、フレイはどう答えたものかと困った顔になる。フレイは連邦事務次官の娘で、その手のパーティーに父に連れられて出席したこともあるのでドレスは着慣れている。だが、カガリは?
 カガリとフレイが出されたコーヒーを口にする。キラは何となく真剣に2人の様子を伺った。2人は一口啜ると、別段文句を付けることも無くカップを置く。それを見てキラは大人の味が分からないのはどうやら自分だけらしいと悟り、少しがっかりした。
 少ししてアイシャが出て行く。それを待ってカガリが口を開いた。
「何で人にこんな扮装をさせる? お前、本当に砂漠の虎なのか。それとも、これも毎度のお遊びなのか?」
「ドレスを選んだのはアイシャだよ。それに、毎度のお遊びとは?」
「変装して街に出掛けたり、住民を逃がして街を焼き払ったりってことだよ!」
 カガリの言葉にキラとフレイは顔色を変え、キースは視線に混じる厳しさを増した。カガリの行動はあきらかに危険なものだ。
 バルトフェルドはしばしカガリを見つめた。
「いい目だねえ、まっすぐで」
「ふざけるなぁ!」
 両手をテーブルに叩きつけてカガリが立ちあがった。置かれていたコーヒーが零れ、テーブルに広がっていく。
 キラは慌ててカガリの肩を押さえたが、その肩が震えている事にキラは気づいた。そうだ、彼女はこの男に仲間を殺されているのだ。落ち着けと言っても無理だろう。
 バルトフェルドはさっきまでの人の良さが嘘のような冷たい目で2人を見上げる。
「君も、死んだほうがマシなクチなのかね?」
 その視線に縫い止められたかのように二人の動きが止まる。フレイも怯えた様に小さく震えている。キースだけはその視線を受けても平然としているが、まだ何も言おうとはしない。
「そっちの彼、君はどう思っている?」
「え・・・・・・・?」
「どうしたらこの戦争は終わると思う? MSのパイロットとしては」
「・・・・・・お前、どうしてその事を?」
 カガリが叫んだ。それに大してバルトフェルドが何か言おうとしたが、キースがそれを遮る。
「そいつは俺のことも知っていた。こっちの動きは筒抜けだったってことじゃないかな?」
 キースの回答にバルトフェルドは笑いながら立ちあがった。
「戦争には時間制限も得点もない。スポーツやゲームじゃないんだ。そうだろう?」
 キラはカガリを庇う様に身構えた。
「なら、どうやって勝ち負けを決める。何処で終わりにすればいい?」
 何処で・・・・・・

813 名前: 流離う翼たち・69 投稿日: 2003/10/06(月) 19:25
 キラはバルトフェルドの問いに答えられなかった。これまでそんな事を考えた事も無かったが、この戦争は何時終わるのだろう。答えられないキラに変わり、キースが口を開く。
「戦争とは、その開戦目的を達成した時に終わるものだ。今回の戦争なら、連合がプラントの独立を承認するか、プラントが連合に下るかだな」
 キースの答えにバルトフェルドはジロリとキースを見た。
「本当に、それで終わると思うかい?」
「・・・・・・戦争にだってルールはある。それが近代戦ってもんだ。お互いを滅ぼそうなんて考えるのは正気の沙汰じゃない」
 キースの答えにキラとカガリははっとしてキースを見やり、フレイは気まずそうに俯いた。キラとカガリはその可能性を考えた事は無かった。ナチュラルとコーディネイターの戦いが互いの殲滅戦にまで悪化する事を。そして、フレイはコーディネイターなんか滅びれば良いと思っているから。
 だが、現実はどうだろう。サイーブの語っていた事実。ザフトはナチュラルの虐殺を行っていると言っていた、捕虜を皆殺しにしているとも。すでにお互いの憎悪は引き返せない所まで来ているのではないのか。
 キースの答えにバルトフェルドは視線の厳しさを和らげた。
「君は、まだ正気の様だねえ?」
「いやあ、もう壊れてるだけかもしれんよ」
 キースはおどけて見せ、立ちあがった。そして外を見る。
「だいぶ日も傾いてきた。そろそろ帰らせて貰っていいかな?」
 キースの問いにキラとカガリ、フレイは驚愕した。自分たちを敵だと知っている男にかえっていいかなどと聞いているのだから。何処の世界にそんなふざけた要求を呑む奴がいると言うのだ。
 だが、バルトフェルドは堪えきれないという感じで噴出した。
「はっはっはっはっは、本当に面白い男だね、君は?」
「よく言われる」
「良いだろう、表に車を用意させる。次は戦場で会おう」
 バルトフェルドに促され、キースは3人を見た。
「それじゃあ、帰るとするか」
 キース達はバルトフェルドの部屋を後にした。すると廊下で今度はアイシャに会う。アイシャはカガリとフレイの服を持っていた。
「あなた達の服よ」
 自分の服を渡されて2人は慌てた。
「あ、じゃ、じゃあ、ドレスを返さないと」
「良いわ、あげる。その服、あなた達によく似合っていてよ」
 アイシャはクスリと笑うと、4人の脇を通ってバルトフェルドの部屋に入っていった。4人はそれを見送るとホテルを出るべくエレベーターに乗りこみ、入口にまで来た。そこにはダコスタという名の青年が待っていた。
「隊長より車を渡す様に言われています」
「すいませんね」
 キースは素直に頭を下げると、入口に止めてあるジープに乗りこんだ。荷台には自分たちの荷物が置かれている。キースは3人が乗りこんだのを確かめるとジープを走らせた。そのまま暫く走らせていると、隣に座るカガリが口を開いた。
「なんか、変な奴だったな」
「ああ、面白くて、手強そうな男だった。多分、そう遠くないうちに仕掛けて来るだろう」
 キースの言葉にキラの顔色が変わった。あの人と戦わなくてはならない。その現実を目の前に突きつけられたから。四人はそれ以上何も語ることは無く、アークエンジェルに戻ったのである。

814 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/06(月) 20:36
>流離う翼たち

>戦争にだってルールはある。それが近代戦ってもんだ。
このキースのセリフが秀逸でした。実際虎のセリフ初めて聞いたとき、ガキくせえなどと思ったんですよ。
でも虎も一応正しいんですよね、戦争が一時的で済まされない、深い深い憎しみのもと行われている環境では。
キースのような反論はいい視聴者代弁になってると思います。

でもフレイたんの描写がもっとほしかったよ・・・○| ̄|_
せっかくドレス着たんですし。

815 名前: 流離う翼たち・作者 投稿日: 2003/10/06(月) 21:35
虎の主張は間違っては無いんですが、あれは一兵士の主張であって虎みたいな指揮官の考えとしては問題ありだと考えてるんですよね。高級軍人が殲滅戦なんて馬鹿なこと考えてちゃいけない。もっと現実的な勝利を目指さなくちゃ。

フレイのドレス姿は・・・・・・また出ます!(断言) そっちでは長い描写の筈なので、ご容赦をw

816 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/07(火) 09:06
流離う翼たち乙。
フレイ様が買い物についてくるというのはイイ!ですね。
キースの味をじわじわと噛みしめてるよ。こういう場所で意味を持つなぁ。
自分もフレイ様のドレス姿については希望。また、を期待してるyo!

817 名前: 流離う翼たち・70 投稿日: 2003/10/07(火) 20:39
 アークエンジェルが砂漠に着陸して一週間が経過しようとしている。その間に整備やら補給物資の搬入やらといろいろやる事がある訳だ。そんな日々の間にも子供たちはやはりその珍しがりの血をたぎらせる事を忘れない。サイだけはキラ達がいない間にストライクを動かそうとしたという事件を起した為に営倉入りさせられている。
 アークエンジェルはMSの運用艦だけあって、戦闘機のシミュレーターだけでは無く、MSのシミュレーターも備えられている。これに使われているプログラムはキラが鹵獲したシグー用に作り上げたナチュラル用OSが使われている。
 ノイマンとキースが監督をしながら、まずカガリがスカイグラスパーのシミュレーターを使っていた。なかなか良い動きをするカガリにキースが口笛を吹く。
「へえ、やるねえ」
「当たり前だろ。これくらい軽い軽い」
 調子に乗って軽口を叩くカガリに、キースは少し真面目な顔で釘を刺した。
「だが、素人にしては、というレベルだ。実戦に使える訳じゃないぞ」
「なんだよ、少しくらい喜ばせろよ!」
 気分を害したらしいカガリがキースを見るが、キースはもうそれには取り合おうとせず、次のシミュレーターの方に行っている。残されたノイマンが気の毒そうにカガリを見ていた。
「まあ、気にしなさんな。あれで大尉は気を使ってるんだから」
「あれでかよ?」
「でなけりゃ、新兵の適正試験なんか引き受けたりしないだろ」
 ノイマンの言葉にカガリは口篭もった。確かに、あいつは一言多いが断ったりすることはない。何か頼めば大抵引き受けてくれる。そう考えれば悪い奴ではないのだ。
 今キースが見ているのはMS用シミュレーターだった。乗っているのはフレイで、四苦八苦しながら機体を動かしている。キースをその様子を見て、徐に教官用の端末からデータを引き出した。
「・・・・・・ふむ、まさか・・・・・・な」
 キースはフレイのテストデータを見て僅かに眉を潜め、もう一度フレイを見た。必至に機体を操るフレイ。その顔は真剣そのものだ。キースは端末を操作すると、シミュレーターの難易度を少し上げてみた。すると、驚いた事にフレイはその難易度の変化に付いてきたのである。
『やるね。コツを掴むのが上手いというか、とにかく素養はある』
 キースはトールに続いてフレイの項目にも○を付けた。

818 名前: 流離う翼たち・71 投稿日: 2003/10/07(火) 20:40
 何故このような事をしているかというと、鹵獲したシグーを戦力化できないかとナタルが持ちかけてきたためだ。確かにシグーのOSはキラの手で改良され、とりあえずナチュラルでも使えるぐらいにまでは仕上がっている。だが、現実問題としてフラガもキースもすぐにMSへの機種転換が行えるわけもない。2人ともスカイグラスパーのパイロットとして重要な存在であり、そんな事をしている時間的余裕に乏しいのだ。
 そんな訳で新兵であるヘリオポリス出身の少年少女から適正のある者を選び出そうとした訳だが、早々にカズィとミリアリアが試験に落ちた。カガリは良い成績だがキースは彼女を乗せるつもりは全くない。結局キースが残したのはフレイとトールの2人だった。
「さてと、トールはともかく、まさかフレイが残るとは思わなかった」
 キースがいささか呆れ顔でフレイを見る。他の4人も驚いた顔をしている。何より当のフレイが1番驚いているのだ。
「わ、私がですか?」
「そう、なんでか残っちゃてるのよね。よっぽど勘が良いのか、秘められた才能か」
 キースはボールペンで頭を掻きつつどうしたものかとノイマンを見るが、ノイマンも少し途方にくれた顔をしていた。
「まあ、適正がある以上、仕方ないんじゃないですか?」
「だよねえ。艦長も使えるようにしろと言ってるし」
 キースは溜息をつくと、トールとフレイを見た。
「とりあえず、2人には訓練をしてもらう。どっちが正規パイロットでどっちが予備パイロットになるかは分からんが、まあ頑張ってくれ」
 キースの言葉に、トールとフレイは情けない顔を見合わせた。まさか、自分達がMSの訓練を受けるはめになるとは、これまで想像もしていなかったからだ。
 そして、彼らは早くも地獄を見ることになる。
 帰艦してきたスカイグラスパーから、キースが下りてきた。その顔色は何時もと変わらないが、いささか疲れている。駆け寄ってきたマードックが問い掛けた。
「どうですかい?」
「まあ、始めてだしねえ。俺も少し調子に乗っちゃったし」
 キースの言葉にマードックは気の毒そうに後部座席を見た。同乗していたトールは完全に白目を向き、気絶しているのだ。整備兵が2人がかりで彼をコクピットから引きずり出している。そして、今度はフレイが震えながら後部座席に座った。操縦席にはキースが座る。ミラーで後部座席を確認すると、フレイは真っ青な顔をしていた。
「良いかフレイ、対G訓練だ。おまえはただ堪えていれば良い」
「は、はい!」
「ようし、それじゃ行きますか!」
 そして、再び大空に悲鳴が響き渡ったのである。

819 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/07(火) 21:41
>流離う
あの・・・もはや(((;゜Д゜)))ガクガクブルブルとしか言えないのですが。
ある意味期待といえば期待だけど今後の展開が怖いよ(´Д⊂ヽ

820 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/08(水) 01:54
乙です。
展開早くていいですな。でも、乗らないでフレイ様・゚・(ノД`)・゚・

821 名前: 流離う翼たち・72 投稿日: 2003/10/08(水) 19:24
 数日後、キースはフラガと共に訓練の評価を手に考えこんでいた。いささかおかしな感じがするからだ。
「どう思う、キース?」
「どうと言われても、これが現実って事でしょうね」
 2人の見ているデータでは、フレイの成長がやけに早いのだ。自分達は出来る限りの予定を組んで2人を鍛えているつもりだったが、それを考えてもフレイの成長は早かった。女性ということもあり、対G訓練の成果はトールに負けているが、MSシミュレーターの成績が急激に良くなっている。自分で訓練後も特訓でもしているのだろうか。決してありえない成長速度ではないのだが、それでも早い。
「才能がある、という言葉で片付けるのも、なんですね」
「まあ、早く一人前になってくれるならそれにこした事はないんだがな」
 何か期待するようなフラガの言葉に、キースは小さく笑った。
「そんな簡単に戦力化できるなら、苦労はしません」
「分かってるよ、そんな事はな」
 フラガがぶっきらぼうに言い返してきた。まったく、新兵が簡単に1人前になるなら苦労はしない。2人は確かに良い素質があるが、これが実戦で使えるようになるまでにはまだまだ時間がかかる。
 フラガが去った後のブリーフィングルームに一人残ったキースは、これからどうしたものかと顔を天井を見上げた。ふと、ヘリオポリスからここまで来た子供達がの顔が思い出された。そして、あの特徴的な赤い髪が思い出される。
「・・・・・・守りきるんだ、今度こそな。アネット」
 ボソリと呟く。誰もいない天井に向って。
 その時、いきなりブリーフィングルームの扉が開いた。そして驚いたような声が聞こえてくる。
「バゥアー大尉?」
「・・・・・・副長、かな?」
 キースは顔を戻し、声のした方を見る。そこにはタナル・バジルール中尉の真面目一徹な顔があった。
「こんな時間に、何か用かな?」
「いえ、パイロットの養成状況を伺おうと思ったのですが・・・・・・」
 キースは相変わらず真面目なこの同僚に少し呆れた視線を向けた。そして、よいしょっとかけ声を出して立ちあがる。
「少し疲れたよ。外の空気でも吸いに出ないか?」
「はあ・・・・・・構いませんが」
 ナタルはいささか面食らった顔になったが、別に異論を唱えたりはしなかった。キースに半歩遅れる位置に付いて歩いてくる。その間にも聞きたい事を問いかけてくるのは忘れない。
「それで大尉、トール・ケーニッヒとフレイ・アルスターの仕上がり具合はどうなのです?」
「まあ、そこそこかな。俺と少佐が教えこんでるんだから並の訓練所よりは余程早く仕上がるとは思うが、数ヶ月はみてくれないと」
「それでは実戦に間に合いません!」
「そんな事は分かってるけどねえ」
 キースはナタルを見た。あいかわらずキツイ表情だ。美人なのにその張り詰めた空気のせいでかなり損をしている。あとこの性格も何とかして欲しいところだ。
「なあ、中尉は子供達を前線に立たせる事に忌避感とかは感じない訳?」
「あの年で前線に立つ者など、珍しくはありません」
「・・・・・・・・やな時代だねえ。ほんと」
 そうなのだ、15歳ぐらいの子供が前線で銃を取ることが珍しくない。そんな時代なのだ。キースは暗澹たる思いに囚われてしまった。

822 名前: 流離う翼たち・73 投稿日: 2003/10/08(水) 19:27
 外に出た2人は少しアークエンジェルから離れた所まで出た。周囲が開け、遠くがとてもよく見れる。夜空に散りばめられた星々が美しい輝きを放っている。キースは夜空を見上げてその場に腰を降ろした。
「久々に、のんびりした夜だな」
「大尉、我々は遊んでいる訳には・・・・・・」
「まあまあ、中尉も座りなよ。あんまり気を張ってるとどっかで壊れるぞ」
 キースに促され、ナタルは渋々キースの隣に腰を下ろした。そして同じように夜空を見上げる。思ったより素直に従ったことにキースは少し驚いていた。てっきりもう少し文句を言って来るかと思っていたのだが。
「・・・・・・大尉、1つお聞きしても宜しいですか?」
「別に構わんよ。あと、部下の前じゃないんだ。キースで良いよ」
「は、はあ・・・・・・キース、ですか」
「そう、それで良い。で、何が聞きたいの?」
 キースに促され、ナタルは顔を俯かせて聞いてきた。
「キ、キース・・・大尉は、どうして軍に入ったのです?」
「・・・・・・どうしてそんな事を聞く?」
「前に私に言いました。何故軍に入ったのかと。私はそれをずっと考えていて、どうしてあなたが軍に入ったのか知りたくなったのです。大尉は復讐とか言ってましたが」
 ナタルの問い掛けに、キースは少し考えて答えた。
「俺は、家族の敵討ちだよ」
「・・・・・・すいません、余計な事を聞いてしまって」
「いや、気にしないでくれ。人に同情されたいとは思わないからね」
 キースの表情に変化はなかったが、何となく声に辛さが滲んでいるようにナタルには感じられた。そして、ナタルも空を見上げた。キースと同じ物を見れば、彼の考えが理解できる気がしたのだ。
 キースは横目でナタルの横顔を見た。珍しく口元に笑みが浮かんでいる。
「どうだい、なかなか気分が落ちついて来るだろ」
「・・・・・・そうですね。確かにリラックスできます」
 星空を見上げる2人。キースはナタルの肩の力が抜けてきたのを見ると、いつか話さないといけないと考えていた事を口にした。
「なあ、バジルール中尉。君はもう少し肩の力を抜いた方が良いと思うよ。俺やフラガ少佐みたいになれとは言わないけどな」
「キース大尉はいささかハメを外し過ぎですがね」
「そいつはキツイねえ」
 キースは声に出して笑い出した。それに釣られてナタルも小さく笑い出す。ナタルが笑う所を始めて見たキースは新鮮な驚きを感じたが、それ以上に笑いの衝動が込上げてきて、また笑い出してしまった。そのまま暫く2人で笑い続けている。
 笑いが収まって来ると、キースはゆっくりと腰を上げた。ナタルも立ちあがる。
「さてと、そろそろ戻りますか。あんまり遅くなると変な誤解を受けるかもしれんし」
「ど、どういう誤解ですか!」
 顔を赤くして怒鳴るナタルに、キースは笑いながら懐から1つの細長い箱を取り出した。それをナタルに差し出す。ナタルはそれを見て目を丸くしていた。
「ほい、プレゼント」
「わ、私に、ですか?」
「そうだよ。中尉は洒落っ気がないからねえ。せっかく美人なんだし、少しはそういう事に気を使っても良いんじゃないかと思う。艦長だって化粧とかには気を使ってるぜ」
 ナタルは渡された箱を開け、中からエメラルドが飾られたネックレスを取り出した。
「こんな物を・・・・・・高かったのでは?」
「なあに、どうせ滅多に使うことのない給料さ。もう溜まりまくりでね。少しくらい無駄遣いしてもどうって事はない」
キースはそれだけ言うと、ナタルに背を向けて歩き出した。ナタルはしばしその背中を見送った後、戸惑った表情で渡されたネックレスを見る。しばしの逡巡の後、ナタルはそのネックレスを首にかけてみた。
「・・・・・・こういう物も、良いかもな」
 少しだけ嬉そうな顔で、ナタルは首にかかるエメラルドを見た。こういう贈り物にエメラルドを選ぶ辺りにキースらしさが出ていると思える。そして、何となくこれまでキースが自分に言ってきたことの意味をもう一度考え直して見ようと思った。

823 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/08(水) 19:56
>流離
オイオイオイオイw
ノイマンの立場がないよ作者さん!

ってどうせネタの一人歩きであって公式でもなんでもないんですがね。
人気があるようでカプ版にスレ立たないのはかわいそうな気もw

しかしフレイたんとトールがゲルググとギャンに見えてきた・・・

824 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/08(水) 20:02
>流離う翼たち
職人様乙です!!
なんかやりたいことを全部先にやられてしまうような悪寒がゾクゾクきてますw
楽しみにしております。

825 名前: ある苦労人の記述・12 投稿日: 2003/10/09(木) 00:38
>>729-731 >>742-745 >>775-776 >>796-797

@月α日
AA所属のミリアリア・ハウに接触する。
彼女はフレイ嬢のヘリオポリスの頃からの(今となっては数少ない)
知り合いだ。
サークルの先輩だったそうだが・・・
当然キラ・ヤマトとも友人であるから少々危険が伴うが
それに見合った情報も手に入るはずだ。
調査を始めて2ヶ月目に突入しようとしている―――
いいかげんケリを着けたい。


証言9:ミリアリア・ハウの場合
フレイ? 確かにキラとフレイは付き合っていたけれど―――

――フレイは元々サイと付き合っていたの――
二人の親同士の約束で、婚約同然だったみたい。
AAに乗ってからはサイが休憩の時には必ず一緒にいたりして
ずっとサイに甘えていたわ、もうこっちが呆れるくらい。
でもアークエンジェルが地球に降りたあたりから急に
フレイはサイに冷たくなってキラと一緒にいるようになっちゃって――

それで、キラもフレイのことが好きだったから結局二人は
付き合うようになったんだけど、サイのこともあったから、
なんか二人と気まずくなっちゃって大変だったわ。

それにあの二人って普通の恋人同士とは違って何か・・・
ヘンな感じだった。
大体あのコ、コーディネーターのことあまり好意的に思ってなくて、
キラでさえ、余り近づこうとはしなかったのに――

それに・・・あんまり幸せそうに見えなかったというか――
戦争中だったせいかもしれないけれど―――


ふむ・・・・やはりフレイ嬢がキラ・ヤマトと付き合うようになった
動機が分からない・・・
ミリアリア嬢の話だと元カレ(?)のサイとは地球に下りるまでは
なんの問題もなく付き合っていたようだ。
一体フレイ嬢の心にどんな変化があってキラ・ヤマトに乗り換えたんだ?
―――見当がつかない・・・。
やはりサイ・アーガイルにも当たってみるしかないんだろうなぁ・・・
まあいいもう少しミリアリア嬢に話を聞いてみるか。


――他に何か? う〜ん、そぉねぇ――そういえば・・・・

ん? あの金髪こげ茶肌は・・・・


「ミリィ、探したぜぇ」
「ちょ・・・馴れ馴れしく呼ばないでって言ってるでしょ!」
「つれないこと言うなよ」
「私今日は忙しいの! あ、もういいでしょ?」
「オイ、待ってって!!」
「ついて来ないでよ。 アンタも自分の仕事ちゃんと―――」


・・・・・・・・・・ありゃ?
突然のことに呆然としてしまったが・・・
突然の乱入で何か言い出そうとしていたのに聞き逃してしまったではないか!?
まあ相手が相手だから俺がどうこうできる人じゃないからなぁ・・・。
仕方が無いのでラクス様に彼の
 減 点 の 申 告 で も し て お く か !!

826 名前: ある苦労人の記述・13 投稿日: 2003/10/09(木) 00:41
@月β日
昨日、Kから連絡が来た。
指定口座へ指示通りの金額を振り込むことにする。
――経費で落ちなかったけど――

帰ってきたらまたもやディスクが送られてきていた。
また映像データか・・・さっそく再生だな・・・



「ごめんなさい・・・・あなたは一生懸命戦って、私たちを――」
「フレイ!そんな――」
 ・
 ・
「フレイの思いの分も――」
「なら・・・私の思いは、あなたを守るわ・・・」
 ・
 ・
「大丈夫。キラ・・・私ずっと、あなたのそばに――」
「フレ――」
 ・
 ・
「キラァ、こんなところにいたのぉ?――」
「あ、ああ、ごめ――」
 ・
 ・
「キラがいれば――」
 ・
 ・
「フレイもオーブに家――」
「オーブにもあるけど――」
 ・
 ・
「おかえり――」
「キラ・・・どうして・・・?――」
 ・
 ・
「キラ・・・・キラ・・・私――」
「ごめん・・・後で――」


―――なんか延々とキラ・ヤマトとフレイ嬢との甘い会話が
録画されている・・・・
なんか見てるこっちが恥ずかしいぞ!
(しかも今回アレは無しか・・・・チキショウ!)

まあこれ見る限り、話しのとおりフレイ嬢の方が積極的に
迫っていて、キラ・ヤマトが受身って感じだな。
後、最後の方の映像では喧嘩でもしたのか?
それとも噂の破局場面か?

しかし、ホントどうやってこれ撮ったんだろ?
時々トリィ、トリィと聞こえてくるのと何か関連性が
あるのだろうか・・・・?

――おや? おまけ? まさか――
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
――クックックッ・・・・ハハ・・・ハハハハッハハッハ――
ぃやったぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!
思わず、頭をかきむしった後ガッツポーズ!

――あぁ・・・何 か 降 り て き た 気 分 だ !

827 名前: ある苦労人の記述・作者 投稿日: 2003/10/09(木) 00:44
すみません、遅くなってしまった・・・・・

いやぁ、ミリィ編がなかなか思いつかなくて・・・
今回オチあまり上手く逝ってない?

・・・・更に精進しなくちゃな・・・・_| ̄|○

次回はサイ登場!(多分)

828 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/09(木) 00:47
苦労人、乙!

って待て、あーたいちばんマズいヤツに憑依されてねーか?w

829 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/09(木) 01:54
苦労人よ・・・
K様のビデオあの時は楽しんでたのかよw

しかしこの話だとサイがラスボスになりかねませんな。
だって一番重要な情報を持ち、一番聞き込み難易度の高い相手だし。

830 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/09(木) 02:07
>苦労人

このネタで映画やってもらってもオモロイかも…

831 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/09(木) 07:39
凄いよ苦労人… つ い に ミリィたん登場だし、次はサイっぽいしもう続きが気になって気になって。
あのムルっち流歓喜のポーズのシーンは…もしや…

832 名前: 流離う翼たち・74 投稿日: 2003/10/09(木) 20:41
 翌日もトールとフレイの訓練は行なわれていた。キースのスカイグラスパーに乗って激しい機動を繰り返すという特訓を受けてもなんとか気絶しないようにはなった。だが、変わりに吐き気と凄い疲労に襲われるようになり、戻ってくるなりグッタリと格納庫の資材の上に横たわっていたのである。
「ト、トール、生きてる?」
「フレイこそ・・・・・・大丈夫か?」
 もはや毎日のように死にかけている2人にマードックが笑いながら声をかけて来る。
「なあに、気絶しなくなっただけでもたいしたもんさ。バゥアー大尉の機動は殺人的とまで言われてるからな。あの人の機体で気絶しないなら、フラガ少佐のグラスパーに乗っても平気だよ」
「そ、そんなあ〜」
 マードックの励ましにトールが情けない声を上げる。この後は午後からシミュレーター訓練が待っているのだ。このシミュレーター訓練も最近はなんとか動かせるようになってきてるが、まだまだ先は長い。
 フレイはよろよろと立ちあがると、何時ものようにストライクの方に歩いて行く。最近のキラはストライクで寝泊りしているという奇妙な行動をしており、フレイはそんなキラに会いにいっているのだと噂されていた。まあ、それが間違っている訳ではないのだが。
 フレイを見送ったトールは、少し複雑そうな顔でマードックに話し掛けた。
「マードックさん、最近、キラの様子はどうですか?」
「あん? ヤマトか。あいつもけっこう疲れが溜まってるみたいだぜ。ちゃんと部屋で寝れば良いのよ」
「・・・・・・あいつ、最近変なんですよ。サイもなんか様子がおかしいし、フレイのせいで何もかも滅茶苦茶になってる気がするんです」
「まあ、男と女の関係だけは方程式なんかねえからなあ。こればかりは本人達の問題さ」
「でも、あれじゃサイが可哀想ですよ」
「アーガイルに彼女を繋ぎ止めておくだけの魅力がなかったって事じゃないのかい?」
 マードックの言葉に、トールは違うと思った。サイは言っていたのだ。自分に落ち度がないのに突然フレイが離れて行ったと。何かあるのだ。フレイがキラに近づいた理由が。
 格納庫で愚痴っていると、フラガがやってきてトールを見た。
「お、今日もへばってるな」
「少佐〜、大尉に少しは手加減するように言ってくださいよ〜」
 トールの情けない言葉にフラガは軽く額を叩いた。
「何を言ってるんだか。訓練なら死ぬ事はないんだからそれくらい我慢しろよ」
「これは拷問ですよ〜」
「あいつなりにあれでも手加減してるぜ。あいつが本気出したらあんなもんじゃない。本職のアーマー乗りでも気絶してるんだからな」
 フラガの脅しにトールは真っ青になった。あれで本気じゃないなんて。
 3人が話していると、ナタルがやってきた。
「少佐、それにケーニッヒ二等兵、こちらでしたか」
「おや、これは珍しい。副長さんがどうしてこんな所に?」
 からかうようなフラガの問い掛けに、ナタルは小さく笑って答えた。
「私も一度現場の状況というものを見ようと思いまして」
「へ、へえ、そうなの・・・」
 何時もと違い、随分と柔らかい声で返答してくるナタルにフラガは少し引いた。いや、悪い訳ではないのだが、こう、違和感が付き纏うのだ。何かあったのだろうかと。

833 名前: 流離う翼たち・75 投稿日: 2003/10/09(木) 20:42
 そこまで考えてフラガはナタルがネックレスを身につけている事に気づいた。彼女にしては珍しい。
「おや、どうしたの、ネックレスなんかつけて?」
「これですか。たまには良いかと思いまして」
「ふぅん、似合ってるぜ、それ」
 どういう心境の変化かと思ったが、あえてそれ以上追求したりはしない。副長が丸くなってくれるならそれに越した事はないからだ。
 フラガとナタルが話している所にようやくといった感じでキースもやってきた。ヘルメットを小脇に抱え、やれやれといった風情でこちらにやってくる。
「ああ、腹減った・・・・・・て、副長じゃないの、どうしたの?」
「いえ、2人の様子を見に」
「そうか。まあ、それは良いことだ」
 現場を知らないナタルでは、指揮にどうしても無理が生じることがある。それを危惧していたキースだったが、ナタルが自分から現場というものを把握しようとするのはいい傾向だと言えた。
「それで、どうだい?」
「確かに、これではまだまだ時間がかかりそうですね。ケーニッヒ二等兵はボロボロです」
「す、すいません〜」
 ナタルにまで言われてすっかりへこんでしまうトール。キースはそんなトールを見やり、元気付けるように言った。
「心配するな。だいぶ耐えられる様になってきてる。この調子ならMSの実機訓練もそう遠い話じゃないぞ。その時はキラにでもしごいてもらえ」
「それはそれで疲れそうです〜」
 何処まで行っても楽にはなれそうもないという現実に、トールは悲しそうに言い返した。そんなトールを立ちあがらせると、キースは全員に問い掛けた。
「そろそろ食事にしようと思うんだが、よかったら一緒にどう?」
「俺は構わないぜ。腹も減ったしな」
「すいませんが、俺はまだ仕事がありますんで」
「俺に拒否権は無さそうですね」
 フラガとトールが応じ、マードックが済まなそうに断る。そして、そこに意外な人物が加わってきた。
「私も同席してよろしいでしょうか?」
「・・・・・・え、いいの?」
 フラガが意表を付かれて聞き返す。ナタルはそれに頷き、フラガとトールは心底驚いた顔になった。キースだけはニヤリ笑いを浮かべている。
「良いんじゃない。少佐もトールも問題あるかな?」
「い、いや、問題はないけど」
「俺も構いませんけど」
 フラガとトールが応じたので、4人は一緒に食堂へと向ったのである。その後姿を見送ったマードックは心底面白そうにその後姿を見送っていた。
「こいつは、何があったのかねえ」
 あのお堅い副長がどういう心境の変化かと思った。だが、キースの言うとおり、良いことなのかもしれない。あの副長には何処か近寄り難い雰囲気があり、整備班でも愚痴っていたくらいなのだから。
 マードックは仕事に戻ろうと身を翻し、奇妙なものを見つけた。カガリがじーっとシグーを見上げているのだ。
「おいおい、どうしたんだお嬢ちゃん?」
「え、あ、いや・・・・・・こいつ、動くのか?」
「シグーか? 一応動かせるぜ。もっとも、まだパイロットがいないけどな」
「ふーん、そうか」
 マードックはカガリの目の輝きに何やら不穏なものを感じたが、それ以上追及したりはしなかった。

834 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/09(木) 23:09
>>翼
今回も面白かったよ〜。
カガリ何かやらかす予感w
毎日投下楽しみにしてますのでこれからもがんばってくださいね〜

835 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/10(金) 00:53
>流離
フレイたんとカガリたん、別な形でバトルの悪寒ですなw
おもしろそうな、こわいような(-_-;)

836 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・プロローグ 投稿日: 2003/10/10(金) 00:53
「そう、行ってしまうんだね、キラ」
自分を見つめる少年の真っ直ぐ澄んだ瞳。少女は後ろめたそうに顔を背ける。
「ええ、今度ヘリオポリスの方に移ることになったの。ザフトと地球連合との
衝突が本格化してきたけど、あそこは中立だから」
「そう…」
一言呟いたきり言葉を閉ざした。心の中には激しい葛藤と情念が
渦巻いているが、今の彼には目の前の少女に対してかける言葉を持たなかった。
否、言葉をかける資格を持てなかったのだ。少女に自身の想いを打ち明ける
ことすら出来ない自分には。
「で…でも、これで後生の別れってわけじゃないのよ。いつか戦争が終われば
戦火に怯えることもなくなるわ。そうすれば、きっと…」
自嘲にも似たやりきれない想いが少年の端整な顔に暗い蔭を落とす。
その表情に耐えかねたように慌てて少年をフォローするが、
少年を覆う影を祓う効果は見られなかった。
「アスラン…」
少女の瞳が潤みはじめる。ひたすら自分一人の思考の淵に挟まっていた
少年は、少女の涙腺の弱さを思い出し、内心の想いを振り払って
笑顔をかえした。
その笑顔につられるように少女も徐々に笑顔を取り戻す。
まだ目元に涙の粒が数滴残ってはいたが、二人を覆う桜の花びらが舞う
春のイメージそのものに少女は笑った。
少年はこの少女の笑顔が好きだった。将来自分が伴侶として
迎えることになるであろうもう一人の少女よりも。
やがて何か思い出したように少年はガソゴソとポケットを漁り始め、
少女からは見えないようにポケットから取り出した何かを掌の中に
抑え込んだ。
「アスラン?」
少女の視線が少年の掌に注がれる。少年は少し悪戯っぽく微笑んだ後、
パッと両手を大きく広げる。その瞬間、何かが矢のように飛び出して
少女に襲い掛かった。
「ひゃっ!?」
少女は軽い悲鳴を上げ、反射的に両腕を十字に掲げて頭部をブロックする。
恐る恐る目を開けると自分の肩に何か緑色の物体が停まっている。
よく観察してみると、それは鳥のようだった。
「アスラン、これは?」
「トリィっていうんだ。僕が作った電子鳥さ。キラにプレゼントしようと思ってね」
トリィは少女に甘えるように彼女の周りをクルクルと飛び回った。
「あははっ…。可愛い〜」
自分に懐くトリィにつられて再び少女は笑った。
「ありがとう、アスラン」
少女の謝辞に満足そうに肯くと、少年はそっと少女に手を差し出した。
少女は一瞬躊躇った後、やや頬を赤く染めながらそっと少年の掌を握り返した。

少女は、その後自身に襲い掛かる過酷な運命を未だ知らない。

837 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・1 投稿日: 2003/10/10(金) 00:54
「ねぇ、キラ。どうしたの?さっきからボーっとしちゃってさ」
「ううん、何でもないのよ、ミリィ」
親友の声に思考を大宇宙に彷徨わせていたキラは慌てて意識を地表へと戻す。
ここはヘリオポリス。
「血のヴァレンタイン」以降、武力衝突の耐えない地球連合(ナチュラル)
とザフト(コーディネイター)のいずれにも属さない中立国家オーブのコロニー。
それ故、現在この地は両軍の戦火から無縁でいることができた。
だから私はここにいるのよね。
キラは頭を軽く振ってアスランとの邂逅を振り切ると、目の前の現実を直視する。
キラ・ヤマト。16歳。公業カレッジに通う女学生。
目の前にいる男女は同じゼミ仲間のトールとミリアリア。
二人はヘリオポリスでキラと最も仲の良い親友だが、二人が付き合っていることを
知っているキラは、3人で一緒にいると、自分のポジションを少し持て余している
ところがあったりする。
もう2,3人ほど一緒に行動してくれる仲間がいれば…、それとも私にもトールの
ような特別な相手がいれば、こんなくだらないことを意識しないですむのかしら。
一瞬キラの脳裏に再びアスランの姿が浮かび上がったが、キラはすぐに打ち消した。
もう終わったことなのに。なのに何時までたっても振り切れない。
気づくと、三人を乗せたエレカはモルゲンレーテの工場に着いていた。
道中、終始うつむき加減のキラに、二人は何故か声を掛けなかった。

「フレイ先輩ぃ〜」
エレカから降りた三人の聴覚に、黄色い声が綿毛のような軽さで漂ってくる。
前方に小さな人だかりがあり、中央では赤毛の少年が静かな自信を称えた
笑顔で、まとわりつく後輩の少女達を軽くいなしていた。
「相変わらず持てるな、フレイの奴。少しはあやかりたいもんだぜ」
トールが僅かにやっかみをこめて口笛を吹くと、ミリアリアは面白くなさそうな
表情で軽くトールを睨んだ。
「俺にはミリィちゃんがいてくれれば十分だからね」
「何言ってるのよ、バーカ」
ミリィの視線に気づいたトールが軽くミリアリアの肩を掴むと、
彼女は呆れたようにそっぽを向いたが、満更でもなさそうに俯いた。
「でも女の子って、何でフレイみたいな典型的な王子様に憧れるのかしらね、キラ」
ミリアリアは軽い照れ隠しからキラに話題を振ろうとしたが、途中で言葉を飲み込んだ。
キラ自身が軽く頬を染めながらポーとした表情でフレイを見つめていたからだ。
フレイ・アルスター。キラ達より一つ年上の17歳。
地球連合外務次官ジョアン・アルスター女史の一人息子で、名門アルスター家の次期当主。
そのルックスと相まって異性間の人気は高い。
学年も専攻学科も異なるので面と向かって話したことはなかったが、この赤毛の
少年にキラは密かな憧れを抱いていた。

「なるほど、キラお嬢様はフレイみたいなお坊ちゃんタイプが好みと」
トールの言葉にキラはハッと我に帰ると、別の意味で顔を真っ赤に染める。
「ち…違うわよ、私は別に……」
「照れない、照れない」
ミリアリアがバシバシと強くキラの背中を叩いたので、キラは少し咽込んだ。
そのキラの狂態を、ミリアリアは可笑しそうに覗きこんでいたが、僅かに表情を
引き締めると
「でも、キラ。悪いこと言わないからフレイは止めておいた方がいいわよ。
あの歳で婚約者がいるという噂もあるしね」
「だからさっきからそんなんじゃないって言っているでしょ」
キラは敢えて怒った表情をして、早足で駆け出して二人を置き去りにすると、
二人は慌ててキラの後を追った。
そっか…。もうお相手がいるんだ。
キラの脳裏に三度アスランの笑顔が思い浮かんだ。

838 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・2 投稿日: 2003/10/10(金) 00:55
なんで私はこんなところにいるのかしら。
場所はストライクと呼ばれるモビルスーツのコックピット。
ヘリオポリスは中立で戦火とは無縁のはずではなかったの。
現に今朝まではこのコロニーは平穏そのもので、キラはゼミの仲間と
いつもと変わらない平和な日常を過ごしていたのだ。
キラの脳裏に今日一日の出来事がまるで走馬灯のように浮かび上がってくる。
警告もなしに侵攻してきたザフトのモビルスーツ。
ジンにより破壊され火の海になった街を必死に逃げ惑う人々の群れ。
シェルターを求めて逃げ回っている時に出会った、自分とよく似た面影を持つ謎の少年。
どこのシェルターでも定員オーバーで門前払いされ、
気づくとキラはマリューという若い女性仕官と狭いコックピットの中に呉越同舟し、
この鉄の塊を動かそうと四苦八苦している。
まるで悪い夢のよう。
夢なら醒めて欲しいと思う。
けど、何度頬をつねってもこの現実は何も変わらない。
戦場という地獄を知らぬキラの心はすでに麻痺寸前まで追い込まれていた。
さらに極めつけの悪夢はコックピットの前で出会った……

「来るわよ」
マリューの緊迫した声が狭いコックピットの中に響く。
過酷な現実はキラに何時までも回想する自由を与えなかった。
「ひっ…ひぃ」
前方のメインスクリーン一杯に迫り来るジンの迫力に、キラは涙目になり、
必死でマリューの腰にしがみ付いた。
続けて機体全体に衝撃が走る。
マリューが咄嗟にフェイズシフトのスイッチを入れたので、機体に損傷
はなかったが、それでも衝撃を完全に押し殺すことは出来ない。
ジンの絶え間ない攻撃に揺れ続ける機体。
一緒にいる女性士官にはこのMSを上手く操作できないらしく防戦一方だ。
もう嫌、もう嫌ぁ。
キラは嗚咽を漏らす。
このまま自分はここで死ぬのだろうか。
誰に見取られることもなく、何故自分が死なねばならないのか
その理由すらも分からないままに。
だが、サブスクリーンに映った人影が、そんなキラの諦観した雰囲気を
一瞬で吹き飛ばした。
ミリィ、トール、カズィ、サイ!?
キラのゼミ仲間が焦土と化した街中を必死に逃げ回っている。
「お…お願い、私の仲間が地上にいるんです。助けて」
「わ…分かっているわよ」
キラの哀願に、必死にストライクを操作しようとするマリューだが、
現状は一向に捗らない。
このままじゃ…皆が死んじゃう。
その瞬間キラのスイッチが切り替わった。
「どいて!」
キラは自分でも予想しなかった乱暴な声と態度でマリューを押しのけると
コックピットのシートに陣取って、キーボートを叩き始める。
「無茶だわ、こんな粗末なOSで、これだけの機体を動かそうなんて」
「ま…まだ全部終わってないのよ、仕方ないでしょう」
キラはマリューの声を無視して、凄まじい勢いで端末を操作しはじめた。
どうやらOSを書き変えているみたいだ。
な…なんなの、この娘!?
突然の修羅場に放り込まれた民間人よろしく、つい先ほどまで年相応の少女らしく
泣き叫んでいたキラの変貌にマリューは呆然とする。
OSを完全に書き換えたキラはストライクを再起動した。
先ほどまで木偶同然でサンドバッグ一方だったストライクが、桁違いのパワーと
機動力で反撃し、その落差に対応できなかったジンは一瞬で破壊され炎上する。
ヒトを殺して…しまった。
無我夢中でストライクを動かしていたキラの中から力がスッーと抜け落ちていく。
あのジンにもパイロットは乗っていたのだろう。
彼にも家族や恋人はいるのだろうか。
友達を守るために私はヒトを殺してしまったんだ。
攻めてきたのは向こうの方なのだ。
そうしなければ自分も友人も殺されていた。
だが、それをすんなり割り切れるほどキラはまだ大人ではなかった。
泣き虫の自分なのに不思議と涙は出なかった。
ただ、自分がもう引き返せないところまできていることをキラは実感していた。

839 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・3 投稿日: 2003/10/10(金) 00:56
巨大戦艦アークエンジェルの船上でキラ達はようやく一息つくことが出来た。
ジンを撃退して地表に降り、ミリィ達との再会を喜んだのも束の間、
キラ達はマリューに銃を突きつけられ、民間人機密保護なんたらという
長い罪状を読み上げられ拘束されてしまう。
無我夢中でストライクを動かしジンを撃破したキラだが、一旦熱が醒めると
銃の持つ本能的な恐怖に身体がすくんで反抗する気力が起きず、
アークエンジェルへのストライクの運搬作業を手伝わされていた。
これからどうなってしまうのだろう。
先ほどからマリューと、別のリーダ格の男女の軍人が何か話している。
自分達のこれからの処遇について話し合っているのだろうか。
トール達も不安そうにお互いを見回している。
キラがストライクから降りてきた時、皆不思議そうな顔をしていたが、
今はその疑問も一時棚上げになっているみたいだ。
その時、パイロットスーツ姿の長身の男性がこちらに近づいてきた。
「俺は地球軍第七機動艦隊所属、ムウ・ラ・フラガ大尉だ。君があの
ストライクを動かしてジンを撃退したんだって?」
「は…はい」
言いづらそうにキラは応える。正直、友人達の前であまりあげて欲しい
話題ではなかった。
「ふーん」
フラガは端整な顔立ちの中に人好きのする笑顔を浮かべたが、その瞳の奥に
強い好奇心を感じたキラは警戒して軽く身を固める。
「な…なんでしょう?」
「君、コーディネイターだろ?」
「!!」
そのフラガの問いにますますキラは身を固めてしまう。
周囲がざわめきはじめる。銃をこちらに向ける兵士さえいる。
ミリィやトール達でさえ戸惑った表情を浮かべている。
深い孤独と絶望感にキラの視界が暗転しかけたその時、

「銃を降ろしなさい」
マリューがキラをかばうように銃を向ける兵士達の前に立ち塞がった。
「ラミアス大尉、これは…」
別の女性仕官が戸惑いの声を上げる。
確か先ほどナタル・バジルール少尉と紹介された気がする。
「別にそれほど不思議なことでもないでしょう。ここはオーブの中立コロニー
なのだから、戦乱を避けて移り住んだコーディネイターがいても不自然では
ないわ、そうでしょ、キラさん?」
「は…はい、私は一世代目のコーディネイターですから」
マリューの問いにキラはホッと安堵しながら応えた。

「つまり、両親はナチュラルということか」
フラガは軽く頭を掻きながら、謝辞を口にする。
「いや、すまなかったな。こんな騒ぎを起こすつもりは無かったんだが。
俺はこの機体のパイロットになるヒヨコ達の面倒を見てきたんだが、あいつら
ただ歩かすだけでも一苦労していたのに、それをこんな可憐なお嬢ちゃんがね」
可憐という言葉にキラは頬を軽く染める。
その様子を見たマリューは悪戯っ子のように瞳を輝かせると
「気をつけなさいよ、キラさん。エンデュミオンの鷹は撃墜王としてザフト軍に
恐れられているけど、女性に手が早いことでも有名なのよ」
「おいおい、やめてくれよ。18歳以下は俺の守備範囲外だって」
マリューとフラガの掛け合いに、場を包んでいた緊張感が次第に解されてきて、
和気藹々とした雰囲気に包まれてきた。こちらに銃を向けていた兵士も
何時の間にか全員銃を降ろしてる。
ただ一人堅物らしいナタル中尉はこの雰囲気についていけなかったようだが。

悪いヒトじゃないんだ。
つい先程まではマリューの軍人らしい高圧的な態度に反発を感じていたが、
今のキラを庇ってくれた態度や、怪我の手当てをしていた時に水を運んできた
サイに礼を言うマリューの姿を思い浮かべながらキラはそう考えた。

840 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・4 投稿日: 2003/10/10(金) 00:57
なんでこんなことになってしまったのだろう。
ストライクのコックピットの中。大気圏上空から崩壊するヘリオポリス
の惨状を眺めながら、キラはこみ上げてくる涙を必死に抑え込んだ。

AAとストライクの撃破を狙って再び侵攻してきたザフト軍に対抗する
ため、キラは再度のストライク機乗を要請された。
キラがOSを書き換えたストライクはキラ以外には扱えないからだ。
本音を言えばキラはもう戦場になんか出たくなかった。
死の恐怖に怯えるのも、またヒトを殺すのもどちらもイヤ。
あの平和だった日常に帰りたい。

「今、この船を守れるのは君だけだ」
多少の罪悪感の篭ったフラガの言葉が事態を決した。
君が乗らなければここにいる友達は皆死ぬ。暗にそう指摘しているのだ。
キラは冷たいコクピットの中に押し込められ、AAと共に迫り来るザフトの
MS相手に砲火を打ちまくっている。
今日一日で一体何人の命をこの手で奪い尽くしたのだろう。
対空砲火が命中し爆炎の花が一つ咲くごとにまた一つ同胞の命が失われていく。
常軌を逸した戦闘にキラの感覚は次第に麻痺していき、引き金を引く指の動きも
機械的になり、戦闘中キラを苦しめていた背徳感さえ徐々に薄れつつあった。
だが、空中で交戦中の敵に強奪されたイージスガンダムの無線から聞こえてきた
懐かしい声色が、そんな凍りついたキラの感覚を再び呼び覚ました。
「キラ…、乗っているのはキラなのか?」
「えっ!?」
この声には聞き覚えがある。やっぱりあの時工場で見た光景は夢ではなかったのだ。
「アスラン…まさか…」
「キラ…キラ・ヤマト。やはりキラ…キラなのか!?」
「アスラン…アスラン・ザラ」
何でアスランがこんなところにいるのだろう。
それじゃアスランはコロニーを滅茶苦茶にして大勢の人間を殺したザフト軍の一員なの。
私の知っているアスランはそんなヒトじゃなかった。
誰よりも優しくて、他人と争うことが嫌いで。
とても人殺しなんて出来るヒトじゃなかった。
人殺し…。
けど、それなら私は一体何なの。
昨日までの私には自分がヒトを殺せるなんて想像も出来なかった。
けど、今の私は…。

困惑し錯乱するキラの思考。イージスガンダムから放たれたアスランの通信が
ある意味キラを救った。
「何で君がそんな物に乗っているんだ」
「アスラン…わ…私は…」

相対する二人は一時的に砲火が沈黙していたが、周りの戦闘は次第に激しさを増し、
その負荷に耐えかねたコロニーは遂に崩壊の一途を辿る。
崩壊したヘリオポリスの大地から吹き荒れる暴風により、二人の乗るガンダムは
分かたれた。果たしてこの乖離はどちらの存在を救ったのだろうか。

「コロニーが…」
AAと共に宇宙空間に脱出したキラの眼前で、昨日までの平和の象徴だった
ヘリオポリスは完全に崩壊し原型すら留めずに四散していく。
その瞬間、シェルターから脱出用の救命ボートが次々に宇宙空間へと放り出されていく。
放心するキラの目の前に救命ボートの一つが浮かんでいる。
何かに救いを求めるようにキラはボートへと手を伸ばす。
その中に、キラの今後の運命を大きく左右する人物が乗っていることを
キラは知らなかった。

841 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/10(金) 09:04
>キラ(♀)
乙です。
最初、設定に引きましたが、シリアスにまとめられていていい感じです。
女性キラの台詞が微妙にフレイたん似なのがいい。
15話あたりの展開が今から楽しみです。

842 名前: 流離う翼たち・76 投稿日: 2003/10/10(金) 18:37
 プラントに戻ったクルーゼ隊。アスランはそこで得られた休暇を生かして母の墓参りをしていた。ここ最近は軍務で忙しくて中々来れなかったのを気にしていたからだ。花束を手にユニウス7の犠牲者達の遺体の無い墓が並んでいる墓地を歩いていく。
 そして、母の墓の見える通りまで来た時、墓の前に立つ人物に気が付いた。
「父上?」
 そこにいたのは、パトリック・ザラだった。常に評議会で辣腕をふるい、この戦争を指導している強硬派の実質的なリーダー。
 パトリックもアスランに気付いたのか、アスランの方を見た。
「お前か。レノアの墓参りか?」
「はい、父・・・・・・いえ、国防委員長閣下」
 敬礼をするアスランにパトリックは苦笑し、敬礼など不要だと身振りで示した。それを見てアスランが困惑した表情を作る。父は戦争が始まって以来、常に公人としての立場を示し続け、自分にもそれを要求し続けて来たのだから。だが、今目の前にいるのはザラ国防委員長ではなく、自分の父、パトリック・ザラに見えた。
「ふふふ、レノアの墓の前でまで堅苦しくせんでも良い。そんなことはレノアも嫌だろう」
「父上」
 パトリックは母の墓の前から一歩引くと、アスランに場所を空けてくれた。アスランは母の墓の目に立つと、持ってきた花束を添え、目を閉じて冥福を祈る。そして、振りかえって父を見た。
「父上、執務の方は宜しいのですか?」
「私とて、仕事より優先することはあるさ。レノアの墓参りに勝る仕事などありはせんよ」
 はっきりと言いきる父に、アスランは改めて父がどれだけ母を愛していたのかを思い知らされた。もしかしたら、自分が疎かにしていた間も父は激務の間にここを訪れていたのではないだろうか。
 パトリックは久しく見なかった笑顔を見せると、アスランを食事へと誘った。
「まあ、偶然とはいえお互いに時間が取れたのだ。どうだ、これから食事でもせんか。話したいことも色々あるしな」
「ええ、そうですね」
 アスランは穏やかな顔で頷いた。父の顔をこんなに穏やかな気持ちで見られるのは随分久しぶりだったのだ。
 2人は墓地の近くにある小さなレストランで食事をとる事にした。もともとパトリックもアスランも華美を好むタイプではない。母が生きていた頃は家で食事をしたものだが、今はお互いに会うことさえ難しい身だ。
 パトリックは赤ワインを手にアスランに今のプラントの実情や今後の方針を語って聞かせた。それを聞かされたアスランが驚く。
「オペレーション・スピットブレイク。アラスカ強襲作戦ですって?」
「ああ、すでに評議会には提出された。そう遠くないうちに可決されるだろう」
「ですが、アラスカの防備はこの上なく堅固だと聞いています。堕とせるでしょうか?」
「私はやれると思っている。この作戦が成功すれば連合も弱気になり、停戦に応じるかもしれないからな」
 パトリックは赤ワインを口にし、グラスを置いた。その目にはやや疲れが見て取れる。プラントの国防をその身に背負っているのだ。その心労たるや、想像を絶するのだろう。
「クラインの言うことも分かる。確かに我々は何時までも戦っている訳にはいかない。資源も生産力も兵役人口も劣るからな。だが、一度始めてしまった戦争だ。負けて終わる訳にもいかんだろう」
「ですが父上、何処で戦いを終わらせるつもりなのですか?」
 アスランの問いに、パトリックは難しい顔になった。
「私としては今の段階で戦争を止めても構わないと考えている。我々は十分過ぎる勝利を収めたし、連合が我々に妥協を示せばそこで終わらせられるのだ」
「では、地球側は未だに強硬な姿勢を崩してはいないと?」
「ああ、奴らはまだ負けたとは考えていないらしい。だからこそのスピットブレイクなのだ。これで総司令部を失えば、流石に奴らも強気の姿勢を崩さざるを得ないだろう」
 パトリックが何故こんな作戦を打ち出したのか、アスランにも理解できた。確かにこれなら連合の弱気を引き出せるかもしれない。これが最後の犠牲となるなら、無茶にもそれなりの意味があることになるだろう。

843 名前: 流離う翼たち・77 投稿日: 2003/10/10(金) 18:39
 パトリックの話はまだ続く。
「評議会も、軍も、民衆もこの戦争に勝てると思っている。私の演説が招いた結果なのだが、皮肉なものだ。舌禍とでもいうのか、自分で煽った世論に自由を奪われるとはな」
 苦笑しながら赤ワインをグラスの中で揺らす。多分、アスランに語っているのがパトリックの本音なのだろう。
「だから、奴らの側に弱気を見せてもらわねばならん。そうでなければ終戦へ持っていくのは難しい。クラインの言うことは間違ってはいないが、理想に走りすぎているのだ。奴のやり方では軍も民衆も納得しまいし、評議会の支持も得られないだろう」
「シーゲル様は、その事を?」
「無論、奴とて理解しているだろう。理解した上で言っているのだ。シーゲルの言い分も必要なものではある。私が主戦論を唱え、奴は非戦を唱える。それでこれまで評議会はバランスをとってきたのだ」
「ですが、今は主戦論が台頭している」
「そう、だからこそ頭が痛い。シーゲルも次の選挙で落選すれば評議会を追われるだろう。そうなれば戦争という流れを止めるのは不可能になる」
 パトリックの顔に苦悩の色が浮かぶ。アスランは自分の置かれている状況など、父に較べればどうと言うことのないほど軽い問題だと気付かされた。
 アスランとパトリックはレストランを後にすると、暗くなった道を並んで歩いていった。2人でこうして歩くのも随分久しぶりだ。
「そういえばアスラン、ラクス嬢とは、最近会っているのか?」
「いえ、忙しくて中々時間が取れないもので」
「それはいかんな、明日にでも会ってやれ。次は地球なのだろうが」
「は、はい」
 顔を赤くして答えるアスランをみて、パトリックは小さな声で笑いだした。息子の不甲斐なさを指摘し、自分はそんなに臆病でも甲斐性無しでも無かったぞと説教を垂れる。だが、もしこの事を妻、レノアが聞いたらどう指摘してくれただろうか。
 ひとしきり近況を語り合った後、パトリックは言い難そうに重要な話しを切り出した。
「・・・・・・お前には話しておこう。プラントは連合との戦いに勝利する為、2つの切り札の開発に着手した」
「切り札ですか?」
「そうだ。1つはジェネシスという強力なエネルギー兵器だ。地球を直接攻撃出来る射程と威力を持っている。もう1つはNJCを搭載した核動力MSの開発だ」
「核動力、ですって・・・・・・」
 アスランは絶句した。プラントはあらゆる核エネルギーを無条件で放棄した筈だからだ。今では使われているのは戦艦用のレーザー核融合炉ぐらいのものだろう。特にアスランは核で、血のバレンタインで母を失っており、核への憎しみが強い。
「何故です、プラントは全ての核を放棄すると言ったではないですか!?」
「私とて分かっているのだ。誰があんなものに好き好んで同意するものか」
 パトリックの声は苦々しさに満ち、彼自身が不本意であった事を教えている。無理も無い。自分の妻の命を奪ったのはその核なのだから。
「だが、やむを得なかった。連合のMS開発がはっきりした事で、評議会の中からより強大な戦力を求める声が高まったのだ。彼らを落ち付かせるには、それなりの材料を示す必要があったのだ」
「その為のNJC搭載MSと、ジェネシスですか」
「ああ、だが、NJC搭載MSはともかく、ジェネシスだけは不味いのだ。あんな物が完成する前にこの戦争を終わらせなくてはならん」
 真剣に語る父の横顔に、アスランも早くこの戦争を終わらせねばという思いを強くしてしまう。パトリックはアスランを見やり、念を押すよう言った。
「アスラン、その為にもお前には頑張って貰わねばならない。頼むぞ」
「・・・・・・はい、父上」
 頼み込むパトリックに、アスランは力強く頷いて見せた。

844 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/10(金) 19:03
>>翼
プラント視点キター
パトリックがカコイイ!!
本編もこんな感じならよかったのにw

845 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/10(金) 19:18
>翼
 さて・・・早くからジェネシスの存在を知ってしまったアスラン。どうなるんでしょうか!?
ともかく、もつかれさまでつ。

846 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/10(金) 20:57
>>翼
乙です。
こんなパトさんが見たかったー!!

847 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/10(金) 23:03
承前/ボアズ編:>>748-755/プラント打撃戦1:>>788-791


「堕ちろォ、紅いストライクゥゥ!!」
「きゃああああああああッッ?」
「すみません、イザーク隊長!」

 ゲイツを狙うフレイの機体に肩部装備のレールガンを叩き込んだのは、ジュール隊隊長イザーク・ジュールの駆る“G”兵器デュエルであった。そうして隙を作ってから、ビームライフル、レールガン、ミサイルポッドを全弾発射する。回避行動に入るのが遅れたフレイは、それが全て直撃すると感じ取った。

(やられるの?!)

 思わず目を瞑る。だが、覚悟していた衝撃も炎も無く、自分が助かったのだと感じ直す。
 デュエルとの間に、レイダーが割り込んでいた。360度振り回していた対MS用破砕ハンマー“ミョルニル”を手元に引き戻す。あれでデュエルの全弾発射を防いだのだとしても、俄かには信じがたく、フレイはしばらくあっけに取られていた。そこに追撃が来なかったのは幸運と云うべきだろう。

「なにィッ?」
「ハハハハぁッ、甘いんだよゥ! せえーーーのォ、撲・殺!!」

 レイダーの振り投げた“ミョルニル”が、デュエルを直撃する。
 たまらず後退したところに、今度はエネルギー偏向シールドを利用した、曲がるビームが襲い掛かった。これはレイダーではなく、フォビドゥンの攻撃である。
 さすがに歴戦のエースということか、トリッキーかつ致命的な攻撃を、機体を捻ってどうにか躱したデュエル。しかし、その回避運動でストライク・ルージュとは遠く切り離され、また別方向からのダガー隊の攻撃に対処せざるを得なくなった。苦境に立たされた隊長機を追うように、フレイと戦っていたゲイツも行ってしまう。

「あっ。あの……」
「護衛、完・了!」
「かったるーぃい」

 フレイが礼を述べる間も無く、別の獲物に襲い掛かっていくレイダーとフォビドゥン。
 それ以上何も云えず、フレイも機体を立て直すことに専念した。戦況は、どうやらじわじわと連合がザフトをプラント側に押し込んでいるらしい。何とかフレイは一息つくことができたが、プラント壊滅の時は刻一刻と迫っているとも言える。

「どうしよう……。私、どうすれば……」

 このまま核を撃たせていいのか。
 そんな疑問が湧き出して形になる前に、コンソールの警告音で雲散霧消する。
 先ほどとは別のゲイツの接近に戸惑いながら、フレイは生き延びるためにグリップを握りしめ、ストライク・ルージュを新たな敵に向き直らせた。

848 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/10(金) 23:03
「ゴットフリート照準、正面ローレシア級。撃ぇーーーッ!」

 ドミニオンから放たれた強烈なグリーンの火線が、正面に立ち砲火を叩きつけあっていたザフト艦のブリッジを砕き、艦体を火球に変えた。ボアズ戦から数えればこれで5隻目、プラント打撃艦隊にあって、艦船としては随一の戦果である。

「いやぁ、勇ましいなぁ艦長さんは。おかげでこっちも、楽に仕事が進められそうですよ」
「…………」

 皮肉かはたまた本気でか、ナタルを誉めそやすアズラエル。
 これまで努めて彼を無視し、この艦が生き延びることに集中してきたナタルだったが、MS隊の奮戦もあって戦線が安定したこの時、ついに耐え切れなくなって言葉を切り出した。

「アズラエル理事、本気でプラントに核を撃ち込むおつもりで……?」
「おやおや、何いまさらなコト云ってるんですか艦長さん? もともと僕たちは、そのためにここまで来たんですよ? さっさと撃って、さっさと終わらせちゃいましょう、こんな戦争」

 それは、そうなのだ。
 ここまで侵攻してきた地球連合軍の宇宙艦隊。“プラント打撃艦隊”という名称が、何よりもそれを雄弁に物語っている。この戦争で敵となったコーディネイターたち、彼らを殲滅すれば確かに戦争は終わる。それを目的とする集団が“ブルーコスモス”であり、今の地球軍に根深く食い込んでいる存在だ。

「しかし、ならばまずヤキン・ドゥーエ要塞を堕とし、その上でプラントに降伏を勧告して」
「はぁーぁあ、分かってないですねえ艦長さんは。そんな回りくどいことしてたら、こっちがどれだけやられちゃうか分かるでしょ? プラントさえ潰せば、補給の効かなくなる要塞なんてそれこそ石ころ同然。兵士たちに一進一退の消耗戦で死ねって云うより、よっぽど人道的じゃないですかァ?」

 一瞬、ナタルは押し黙り、怒りを秘めた瞳でアズラエルを睨んだ。
 だが、彼女が黙ったのを承服と受け取ったのか、その瞳に気づくことも無くアズラエルは特設シートのコンソールを操作し、子飼いの部隊に指示を出す。

「さぁて出番です。ここまで押し込めば充分充分。ピースメーカー隊、さっさとコーディネーターどもを灼き尽くして来て下さい」

849 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/10(金) 23:04
「はぁッ、はッ、はぁぁッ、はッ……」

 揺れるコクピットの中で、フレイは大きく肩で息をしていた。
 疲弊し、何度も途切れそうになる意識を精神力で無理やり縛り付けながら、ストライク・ルージュを駆って戦い続けたのだ。ただ、そうしているうちに戦線はプラント側により押し込まれたので、今のところすぐ近くに敵の姿は無い。
 と、ピピピッとコンソールに警告音が走った。

「回避、指示信、号? パターン、Nの、3……」

 唐突に流れる赤い文字列を、青ざめた表情で読み取る。
 それは後方で展開完了したピースメーカー隊、彼らが発射する核ミサイルの進路から退避しつつ、護衛を命じるコードであった。
 反射的に、フレイは思う。
 ここから離れないと! 今すぐに離れてあれを止めないと!
 そう考えているのに、コントロールグリップを握り締めた腕が固まったまま、動かない。こんなにも早く、ただのナチュラルである自分は動けなくなるのか。こんなにもあっさりと力尽きてしまうのか?

「駄目よ、駄目……。動け、動け、動け私ッ……!」

 フレイの必死な思いとは裏腹に、宇宙空間で脱力したように停まるストライク・ルージュ。
 鳴り続ける警告音が、後方からの核ミサイル群接近を知らせる。動きが止まっていたせいか、凶暴な破壊の牙の群れは誤爆することもなく素通りし、前方のプラントへと流れていく。
 虚ろに視線を動かす。
 核ミサイル群は、プラントへの直撃を阻止しようとするザフト軍と、彼らを抑える地球連合軍のMS隊とが揉み合う宙域の傍を悠々とすり抜けて行った。
 どういうわけか、もともとこちらに展開したザフト軍のMS部隊はそう多くない。このまま行けば遠からず、放たれた核の刃は無防備なプラントを切り裂き、灼き尽くすだろう。

 “血のバレンタイン”の再現――。
 ザフト艦ヴェサリウスに撃たれ、爆散する戦艦モントゴメリ――――。
 イージスに組み付かれ、為す術も無く爆発に巻き込まれるストライク――――――。

「駄目ッ、いやッ、いやああああああああああああああああッッッ??!」

 悪夢のような映像が脳裏をフラッシュバックした時、何かが水面の上で跳ねたようなイメージが重なる。
 無意識のうちにフレイはグリップを深く押し込み、ストライク・ルージュを全速で前進させていた。彼女の無茶な注文にも機体は忠実に応えるが、代わりに圧倒的なGという形で代償を要求する。
 肋骨がミシミシと悲鳴を挙げているのを、フレイは無視した。
 追いついて、追いついて、1発でも多く、あのミサイルを止めないと!
 そんな彼女の焦りとは裏腹に、もう手の届かないところまで核ミサイル群がたどり着こうとして――。

850 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/10(金) 23:04
 奇跡が起こった。
 少なくとも、フレイはそう思った。

「…………!!」

 目の前で、核ミサイル群がプラントを灼くことなく、次々と爆発していく。
 燃え広がる炎の中から飛び出してくる巨大な機影たち。2機の大型MA組み込まれているのは、アズラエルの言によればNJC搭載のMSたるジャスティス、そして。

「フリーダム……。キラッ……!」

 あの翼持つ白と青の機体に、彼が、キラ・ヤマトが乗っているのだ。
 我知らず視界が潤んでいるのは、あまりにも強烈な光量を直視したせいなんかじゃない。そんな確信のまま、フレイは誰ともなく頷いていた。

「そんな、馬鹿な……。たった、たった2機のMAにだとっ?!」
「逃がした魚。やはり随分と大きかった、か」

 ドミニオンの艦橋で、棒立ちになり虚脱してスクリーンを見つめるアズラエル。
 ナタルは、どこかホッとした表情で届かぬ光を散華させる核ミサイル群を見ていた。あれをやってのけるキラたちの、その自由な意思に痛快なほど素直な敗北感を感じていた。

「核ミサイル群、全弾撃破!」
「プラントへの着弾、及び深刻なダメージはありません!」

 その光景は、ヤキン・ドゥーエ要塞司令室のスクリーンにも派手に映し出されていた。
 危機を脱した故郷の姿に歓声が上がる中でも微動だにしないまま、プラント最高評議会議長パトリック・ザラは皮肉げに口元を歪める。

「フ……やはり出しゃばって来おったか、あばずれどもめ」
「ラクス・クライン。泳がせておいた甲斐がありましたな」
「何を都合の良いことを、クルーゼ。連中を撃ちもらしたのは貴様だろうが」

 斜め後ろに立つ仮面姿の青年の追従を、一刀で切り捨てる。
 確かに、放って置いても彼らが出てくると読んだからこそ、あえてこの局面、プラントの守備を手薄にしたパトリックである。それも全ては次に打つべき、この一手のため。

「これは我らコーディネイターに与えられた千載一遇の好機である。今こそ思い上がったナチュラルどもの軍勢を殲滅し、我らコーディネイターの正しさを証明する時が来たのだ。……ジェネシスを起動せよ。その一撃で、地球軍の邪悪なる艦隊は撃滅されるであろう。諸君らの奮励努力に期待する!」

 頃合を見定め、演説の1つも振っておくのは忘れない。
 そんなパトリックを見ながらも、クルーゼは僅かに歯噛みしていた。ラクス・クラインの一党が出てくるのは良いが、プラントに核の1発も落ちないでは己の“プラン”に狂いが生じるやも知れぬ――。

851 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/10(金) 23:05
 プラントに向けて放った核ミサイル群が阻止されたことで、地球軍には明らかに動揺が広がっていた。逆に意気軒昂と反撃に転じたザフト軍のMS隊に押し返され、再び乱戦状態となる。
 そんな中にあって、フレイはただただ、戦場を駆けるフリーダムを追ってストライク・ルージュを走らせていた。

「キラ、キラ、キラ、キラ……ッ」

 もどかしい手つきでコンソールを操作し、通信回線を開こうとする。
 キラの声が聞きたい。その想いに突き動かされているのが自分でも分かっていた。
 だから。
 フレイは繋がりかかった全周囲回線を、自らの意思で切った。今、キラに自分の声を聞かせるわけにはいかなくなったから。

「ハハハハァ! 今度こそ邪魔はさせねえ! クロト、シャニ、しくじるなよ!」
「誰ァれに言ってやがる!」
「……分かった。これはキレイだからね」

 接近してくる3機の“G”兵器。
 彼らに護衛されている、核ミサイルを搭載したメビウス“ピースメーカー”たち。

「! ……まだ、まだ撃つつもりなの?!」
「そうだよ? そうしなきゃ、俺らがやられちゃうんだぜ?」

 半ば怒りのこもったフレイの叫びに、捨てセリフで応えたのはブエル少尉だった。
 そのままレイダーがフリーダムに、フォビドゥンがジャスティスに挑みかかる。カラミティの重砲火が、近づこうとしたデュエルらザフトのMS隊を寄せ付けないため弾幕を張る。

「よゥし、しっかりそいつら、抑えておけよ2人とも」
「道は拓けた! ……蒼き清浄なる世界のために!」
「魂となって宇宙に散れっ、コーディネイター!」

 解き放たれた核ミサイルは、先ほどに比べれば僅かな数だ。しかし、それを阻止したフリーダムとジャスティスが、今度はがっちりと押さえ込まれてしまっている。彼らが背負う迎撃型追加装備“ミーティア”は豊富な火砲を搭載している分小回りが効かず、遠距離から核ミサイルを撃ち落そうにも懐に飛び込んだ“G”兵器が狙いを定めさせない。

「…………!」

 意を決して、フレイは敵味方識別コードを切った。そうしないとストライク・ルージュのOSが、味方のミサイルをロックオンしてくれないからである。このまま行けばどうなるか、そんな懸念は完全に頭の中から吹き飛んでいた。

852 名前: ルージュルート作者 投稿日: 2003/10/10(金) 23:06
だいぶ間が開いてしまいました・・・俺に才能と時間を下さいフレイ様_| ̄|○
とりあえず、プラント打撃戦編その2です。
例のアレが撃たれますので、このエピソードは次で終わる予定。


レス下さる皆さまに感謝です。ちゃんと燃料になってますw
しかしフレイ様と萌え隊員との対戦を見破られるとは思わなか(ry

というわけで、他の職人さんにもエールストライクを(違)

>翼〜
いみじくもパトさんと核とジェネシスがシンクロしてしまいましたが。
こういうパトさんは大好きです。アスランも頑張れー。

>苦労人〜
ダコ(ry氏にはいつも楽しませてもらってます。
つーかK様はやはり最強?w

>もつと〜
平和な国のフレイ様・・・。ほんとう、MSより舞台が似合うと思います。
無事完結おめでとう、おつかれでした!

>キラ♀フレ♂
性別入れ替えネタですねー。
アスランとフレイ様♂の三角関係が今から恐ろしいような楽しみなような・・・w
その前に、サイと一悶着ある?

853 名前: 流離う・作者 投稿日: 2003/10/10(金) 23:49
>>ルージュルート
いやあ、本当に奇遇ですね。うちのパトはシーゲルと同じく平和を目指してますが、コーディネイターの未来を信じてる点で違うんですよね
アスランは・・・・・・原作とは選ぶ道がまるで違います。彼は原作よりも己の信じる何かを持ってる人です
フレイは、砂漠編が終わってからはキラともども運命に翻弄される事になりますね。原作よりも可哀想かもw

では、次回作も楽しみにしてます。ジェネシスに巻き込まれて吹き飛んだりしませんよね?

854 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/11(土) 00:24
>ルージュルート

フレイ様種割れてたの気のせい?
いや、ひびまでは入ったのかも。いつぞやの俺のネタみたいにw

しかし三馬鹿って結構ちゃんと仕事するんですよね。皆さんも乙です。三馬鹿も乙です。(?)

855 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/11(土) 00:30
>>ルージュルート

乙フレです!面白いですねぇ。三馬鹿の援護が気に入りました。
しかし、フレイ様は核の阻止に入りましたか。
漏れが書いたら「給料分の仕事はしなきゃね…気に喰わないけど」で
あっさり核を見過ごすような((;゚Д゚)ガクガクブルブル

856 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・5 投稿日: 2003/10/11(土) 01:18
救命ボートの受け入れに関してマリューとナタルの間で一悶着あったが、
キラはボートを抱えたままAAに帰還することを許可された。
何となく様子が気になって、ボートを収用したドックに顔を出した
キラは思いがけない人物に再会した。
あ…あのヒトは!?
キラがそう思う間もなく、先方の方からキラを発見してくれた。
「君は?」
低重力空間の中を飛び跳ねるようにキラの前に現れた赤毛の少年は、
極自然な動作でキラの手を取った。
えっ!?えっ!?
「確かサイの友達の女の子だったよね。君もこの船に乗っていたんだ」
フレイは透明感溢れる笑顔で微笑み、キラは頬を真っ赤に染めたまま
コクコクと機械的に肯いた。
キラの手は未だフレイに握られたまま。動悸が早くなっていく。
「キラ・ヤマトといいます」
「僕はフレイ・アルスター。よろしくね、キラ。
ところでこの船は何だか知っているかい?」
「アークエンジェルという宇宙戦艦です」
「宇宙戦艦?」
フレイはようやくキラから手を離すと、軽く肩を竦める動作をしながら
「それじゃ、まだ助かったとは言えないわけか」
そのフレイの一言にキラの血管を流れる血の温度が微妙に下がったが、
フレイはキラの様子に全く頓着せず、「母さんに早く会いたいな」と呟いた。

キラに連れられて避難民居住区に顔を出したフレイは、サイの姿を発見するや否や
「サイ、良かった。君も生きていたんだね」
満面の笑みを浮かべながら、公衆の面前で堂々とサイを抱き締めた。
「ちょ…ちょと、フレイ。何もこんなところで…」
サイは恥ずかしさから頬を赤らめて抵抗したが、表情は嬉しそうだった。

二人の抱き合う姿を見せつけられたキラは、人知れず心の奥で溜息を吐いた。
馬鹿馬鹿しい。さっきフレイに手を握られた時、一体自分は何を期待していたのだろう。

その時、扉の前にフラガが現れて、キラにストライクの整備をするように促した。
二人の姿にいたたまれなくなったキラは、渡りに船とばかりにフラガに続いて
居住区から姿を消していった。

「整備?あの娘が?」
「実はキラはストライクのパイロットなのよ。
あのMSに乗って戦ってくれて、ここまで私達を助けてくれたの」
訝しげなフレイにサイはそう説明したが、フレイの疑惑は広がっていく一方だ。
「コーディネイターなのよ、キラは」
そのことを察したサイは最後に一言付け加える。
それを聞いたフレイの黒い瞳に一瞬嫌悪感が浮かび上がった。



アークエンジェルから百光秒ほど離れた宇宙空間に、ザフト軍のナスカ級高速戦闘艦
ヴェサリウスが浮かんでいる。
その中でアスランが上官であるクルーゼを相手に舌戦を交わしていた。
「ですから、ストライクに乗っているのは私の月の幼年学校時代の知り合いなのです」
「それは因果な巡り合わせだな。心中は察するよ、アスラン。
だが誰であれ敵である以上は撃たねばならぬ」
温和な口調だが、仮面の男ラウ・ル・クルーゼの言うことには容赦がない。
「あいつはナチュラルの連中に騙され利用されているんです。
優秀だけどいつもボーっとしていてお人よしで泣き虫で…」
思わず熱くなり、必要以上にキラの個人情報を漏洩するアスランに、
流石のクルーゼも苦笑する。
「で、そのキラ君は君の大切な女性(ヒト)だったわけか、アスラン?」
クルーゼの問いにアスランの表情が目まぐるしく入れ替わる。
心の奥底に激しい感情の嵐が渦巻いていたが、最終的には理性で抑制する
ことに成功した。
「キラは私の大切な友人です」
恋人と言うことが出来たらどれほど良かっただろう。
だが自分には物心付く前から定められた相手がいた。
故にキラに自分の気持ちを打ち明けることは出来なかったのだ。
「だろうな。あまりラクス嬢を悲しませてはいけないよ」
クルーゼの一言がアスランの胸に突き刺さった。
決してラクスが嫌いなわけじゃない。
もし月の幼年学校でキラと出会わなければ、自分はザラ家の次期当主として、
プラント連合最高評議会議長クライン家の令嬢であるラクスとの政略結婚を
何の抵抗も無く受け入れられただろう。

次の襲撃からアスランを外すというクルーゼの戦案にアスランは必死で抵抗した。
「私に機会を与えてください。必ずキラをストライクごと我が軍に迎えてみせます」
ストライクとそれを操る桁外れの才能を持つコーディネイターの少女にクルーゼ
も興味を惹かれたが、一級の指揮官らしく慎重に質問する。
「それでも、そのキラ君が君の説得に耳を貸さなかった時はどうするのだ、アスラン?」
「その時には……」
アスランは一瞬顔を顰めた後、迷いのない口調で宣言する。
「私がストライクを撃ちます」

857 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/11(土) 01:21
>>856
女のサイが思い浮かべると思わず噴出してしまう・・・w
何はともあれ男フレイ様の今後の行動が楽しみです。

858 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・6−1 投稿日: 2003/10/11(土) 01:24
ヴェサリウスと奪われたガンダム四機の同時攻撃をかろうじて振り切った
アークエンジェルは、友軍の軍事要塞アルテミスに緊急信号を送り、
入港と補給を受ける許可を求めた。

「やれやれ、今度ばかりは俺も駄目かと思ったぜ」
ストライクの格納ドックで、整備主任であるマードックがストライクの
修理箇所を点検しながら、キラの生還とAAの不沈を祝った。
その想いはキラも全く同じだ。
アルテミスへの航路変更を予期され、奪われた四機のガンダム(デュエル、
バスター、ブリッツ、イージス)全てを投入された地点で、キラ達は戦略的に
完全に敗北していた。
量産型のジンとは違って、個性差はあっても性能に大きな違いは無い最新鋭のMS同士。
パイロットは何の戦闘訓練も受けていないキラと違い、恐らくはアスランも
含め軍事の英才教育を受けてきたであろうエリート集団クルーゼ隊。
それが4対1で戦うのである。
最初から勝負になるはずがない。
事実、フラガが乗るMA(メビウス)によるヴェサリウスへの奇襲が成功しなければ、
ストライクとAAは敗死を免れなかっただろう。

マードックがストライクのコックピットに鎮座したキラに何か色々と言って
いたみたいだが、キラの耳には入らなかった。
アスラン…。
今回の戦闘で、キラがかつてほのかな想いを抱いていた大切な相手と
完全に決裂してしまった。

「やめろ、キラ。僕たちは敵じゃない。そうだろ?」
「アスラン…」
「同じコーディネイターの君が、何故地球軍にいる?
何故ナチュラルどもの味方をするんだ!?」
「私は地球軍じゃない!」
キラが悲痛に叫ぶ。
「でも、あの艦には仲間が、大切な友達が乗っているの!」
「キラ…」
そのキラの答えは、少なからずアスランの心にショックを与えた。
大切な友達?それは自分を敵にまわしてでも守らねばならないものなのか。
キラにとって自分のプライオリティはそれほど低いものだったのか。
「あなたこそどうしてザフトなんかに?
戦争なんか嫌だって、あなたも言っていたじゃないの!」
そのキラの問いにアスランが応えるよりも早く、イザークの乗るデュエル
とニコルの乗るブリッツが乱入してきた。
ディアッカの乗るバスターは遠距離砲でAAと砲火を打ち合っている。
たちまち乱戦となり、劣勢のキラは次第に追い込まれていく。
この時にはフラガの奇襲が成功して戦局は大きく変化し、ヴェサリウスから
四機のガンダムに撤退命令が出ていたが、戦果に逸るイザークがそれを無視
して執拗にストライクに襲い掛かった。
激しい戦闘の連続で、エネルギー残量がほとんど底をつき、とうとうストライク
のフェイズシフト装甲がダウンし、キラの機体は無防備に晒された。
それをチャンスと見たイザークが、ビームサーベルを振り上げ再びキラに襲い掛かる。
やられる!
一瞬死を覚悟したキラだが衝撃は来なかった。
目を開けると、アスランがイージスをMA形態に変形させストライクを拘束していた。
「ア…アスラン!?」
「ストライクはこのまま捕獲する」
アスランは厳かにそう宣言すると、凄い力でストライクを引っ張り始めた。
「は…離して、アスラン」
キラは必死に抵抗するが、ストライクにイージスを振り切るだけの燃料は
残されていない。
「キラ、一緒に来るんだ」
「イヤっ!」
一緒に行く…アスランと。
最初からそんな選択が可能ならどれほど楽だったことか。
キラはAAでのトール達との遣り取りを思い出す。
再びストライクへの機乗要請を受け悩んでいたキラは、艦橋へと続く廊下で
トール達に出会って驚いた。
皆が全員地球軍の軍服を着用していたからだ。
「トール…、みんな。どうしたの、その格好?」
「ブリッジに入るなら軍服を着ろってさ」
「私たちも艦の仕事を手伝うことにしたの。人手不足でしょ。普通のヒトよりは
機械やコンピューターの扱いにも慣れてるし」
サイの説明にキラは呆然とする。
「お前にばかり戦わせて、守ってもらってばっかじゃな。俺たちもやるよ」
「こういう状況だもの、キラのようにMSで戦うことは出来なくても、
私たちも私たちに出来る範囲のことを精一杯するわ」
「……みんな……」
皆の暖かい想いにキラの目頭が熱くなる。
「ところでさ、キラ…」
トールがキラの格好を指差したまま言いにくそうに指摘する。
「そろそろキラも軍服に着替えたほうがいいんじゃないか?
そのピンクフリルのスカートで女の子がコックピットに跨るのって
絵的にちょっとまずいんでないの?
俺としては一度見てみたい気もするけどさ」
キラはまるでトールにその場面を覗き見られたかのように赤面した。

859 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・6−2 投稿日: 2003/10/11(土) 01:26
あの艦には、私をコーディネイターだという偏見で見ずに、
私を励ましてくれた大切な友達が乗っているのよ。
彼らを見捨てて私だけが投降するなんて真似出来るわけがない。
そう思ってキラはイージスを振り解こうと必死にもがいたが、次に
アスランから放たれた通信がキラの抵抗する力を奪った。
「血のヴァレンタインで母が死んだ」
息を飲むキラに、アスランは自分がザフトに入った経緯について
得々と語り始める。
「だから僕は、核で母を…罪無き命を多く奪ったナチュラル達の
蛮行を絶対に許せない」
アスラン…。
正義感や確固たる信念に支えられて戦っていたわけじゃないキラの
倫理観の指針は、アスランの問い掛けに大きく揺れ動く。
一体正しいのはどちらなのだろうか?
そもそも何故、自分がアスランと戦い殺し合わねばならないのか。
戦う理由を突き詰めれば、キラはどうしてもそういった原始的な疑問に
ぶち当たってしまう。

ストライクから抵抗する意志が弱まっていくのを感じ取ったアスランは、
内心で密かに安堵の溜息を漏らす。
先ほどからイザークが通信でしきりに何か喚いているみたいだが、アスランは無視した。
これで良い。
ザフトに少なからぬ損害を与え続けたキラの受け入れに関して、イザーク
やクルーゼ隊長との間で一悶着あるだろうが、必ず自分がキラを守ってみせる。
そして今度こそキラに…。
キラへの想いに捕らわれ気を緩ませたアスランは決定的な隙を生んだ。
この戦場にはストライク以外の敵がもう一体いることを忘れていたのだ。

「諦めるなよ、お嬢ちゃん」
ヴェサリウスへの奇襲を果たして帰艦する途中だったフラガの乗るメビウスが、
イージスに拘束されたストライクに気づいて突っ込んできたのだ。
フラガは精密射撃でイージスのストライクへのジョイント部分だけを狙って
集中砲火を放った。
「くっ…」
フェイズシフト装甲のためにイージスに損傷はなかったが、衝撃でイージスの
機体が大きく揺れ、僅かにストライクへの拘束が緩んだ。
キラはその隙を逃さず、残存するエネルギーの全てを出し尽くしてイージスの
束縛を振り解き、イージスから脱出する。

「貴様ぁ〜!!」
アスランは自分からキラを切り離したフラガの乗るMAに殺気立った目を向けて
砲火を集中させたが、フラガは巧みに砲撃をかわすとストライクを援護しながら
AAへと帰還していく。
AAに着陸して、エネルギーとランチャーの補給を受けたストライクが
猛反撃に出る。
イザークのデュエルが小破し、バスターもブリッツもAAからの砲撃を受け、
無視しえぬダメージを負った。
再度突入しようとするアスランを必死に押し留めるニコル。
ヴェサリウスから再び通信が入り、これ以上の命令違反には軍法会議も
辞さないとの報告をディアッカから受けたアスランは歯軋りしながらも
撤退していった。

アスラン…。
AAの船上でランチャーを携えたストライクに乗るキラは、帰還し小さな
光点となって消えていくアスランのイージスの姿を呆然と見つめている。
道は完全に岐たれた。
次に出会う時は恐らくどちらかが死ぬ時だろう。
必死に涙を堪えるキラの視界に、銀色に輝くアルテミス要塞が近づいてきた。

860 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/11(土) 04:09
本編が終わり、寂しい土曜を紛らかすかのように多くの方々が思いの丈を
文字として表す…本当に素敵なことである…

書き手の皆様、本当にいつも愉しんでおります。とりわけ、♀キラ、「流離る」のボリューム、
苦労人〜のセンスには…大期待です

861 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/11(土) 10:03
キラ♀フレ♂のイメージって、もしかしてこんな感じですか?
ttp://www001.upp.so-net.ne.jp/atya/seedpa7.htm

862 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/11(土) 10:45
次々と大作が投下されているので、1000いく前に1000KB超えそうだなw

863 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/11(土) 14:12
>861
男フレイ様は後ろに髪縛ってるといいな。没設定生かしてw

864 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/11(土) 15:51
サイ女体化はどこもあまりかわいくない。
色眼鏡のせいなのか(´Д⊂グスン

>キラ♀
乙です。
例のレイープはどう書かれるのか
今からすごいきになります(*´д`*)ハァハァ

865 名前: 流離う翼たち・78 投稿日: 2003/10/11(土) 18:08
 砂漠の虎、アンディ・バルトフェルドは出撃準備を整えていた。アークエンジェル発進の報を受け、レセップスの出撃を命じたのだ。戦力は少ないが、ジブラルタルからの補充を受けて多少は回復している。バクゥはほとんど壊滅状態であり、稼動機は僅かに3機でしかない。これにバルトフェルドのラゴゥと、補充で送られてきたザウートが2機と、宇宙から落ちてきたイザークのデュエルが加わる。
 だが、バルトフェルドは苛立っていた。
「なんでザウートなんか寄越すかね。バクゥは品切れか!?」
「ジブラルタルの方も大変らしいです。ヨーロッパで攻勢に出るそうで、そちらに兵力が回されてるそうですから」
「ふん、狙いはバイコヌール宇宙基地か。旧式のマスドライバーだね」
「はい。小型の物なら宇宙にまで上げられます。それを奪取するか、破壊したいと」
 軍の方針は理解出来る。だが、これから決戦という時に厄介な事になったものだ。更にバルトフェルドにはもう1つの頭痛の種がある。クルーゼ隊のイザーク・ジュールだ。赤を着ているだけあってそれなりの腕なのだろうが、地上での実戦経験がないパイロットなどどれほどの役に立つか。
 だが、戦わなくてはならない。アークエンジェルは動き出したのだ。方角は北東。どうやら東地中海を目指しているらしい。相手がどういう成算を持ってヨーロッパを目指すのかは分からないが、その進路にバルトフェルドは意外さを隠せなかった。
「目的地はトリポリか、チェニスかな」
 まさかそう動くとは思っていなかった。ヨーロッパには強力な部隊が展開している。まさか自分から虎口に飛びこむと言うのだろうか。
「どうしますか。イタリアの友軍に任せるという手もありますが?」
 ダコスタが控えめに提案してくる。その裏にはこの戦力ではあの艦を沈めるのは難しいという現実がある。出来ればこのまま見送りたかったのだ。
 だが、バルトフェルドがこの意見をいれないこともまた分かっていた。この上官は戦いたがっているのだから。
 ダコスタはもう一つ、厄介な問題を報告した。
「実は、イザーク・ジュールはもう到着しているのですが」
「ほう、そうなの。じゃあ一度顔合わせしなくちゃね」
 バルトフェルドは何でもない様に答えると、立ちあがってレセップスの甲板を目指した。甲板ではすでにデュエルとザウートが降ろされ、艦内に搬入する作業が行なわれている。その中に目立つ赤いパイロットスーツを来た銀髪の青年がいた。彼はこちらに気付くと駆け寄ってきて敬礼をした。
「イザーク・ジュールであります」
「ご苦労さん、アンドリュー・バルトフェルドだ。空からのダイブから海水浴か、ご苦労だったね」
「・・・・・・バルトフェルド隊長、足付きは今何処に?」
 バルトフェルドの言葉に反感を覚えつつ、イザークは1番気になっている事を問い掛けた。ダコスタはこのイザークという少年に反感をもったが、上官が何も言わない以上、自分が口にするべきではない。もっとも、この上官はこの程度で怒るような人間ではないとダコスタにも分かっているのだが。
アークエンジェルでも決戦を決意していた。砂漠の虎はかならず仕掛けて来る。それがマリュ−を含めた全員の統一見解であった。だから出撃準備は入念に整えている。ゲリラが攻撃参加したがっていたが、これは断っている。はっきり言ってはなんだが、ゲリラの戦力では開けた場所での正規軍どうしの戦いに役に立つ訳がない。変わりにサーブからの頼みでカガリとキサカを乗せることになった。何故この2人をとマリュ−は疑問に思ったが、キースがそれを受け入れるように進言したのだ。
 艦橋に戻ってマリュ−とナタルはそのことをキースに問い掛けている。その答えは至極簡単なものだった。
「あそこで受け入れないと、ゲリラたちが無理してでもついて来そうだったんで。多少妥協してでもそれだけは避けたかったんです」
 2人の部外者を受け入れてでも身軽に戦いたい。それがキースの理由であった。だが、この事がとんでもない事件を引き起こしてしまう。

866 名前: 流離う翼たち・79 投稿日: 2003/10/11(土) 18:09
 航行するアークエンジェルのレーダーは少し前から自分たちを追尾してくる機影に気づいていた。艦船らしき反応が2つ。考えるまでもなく、レセップスと随伴艦だろう。マリュ−は艦内電話を取ると格納庫に繋いだ。
「フラガ少佐、バゥアー大尉のスカイグラスパーは直ちに発進、付近の偵察を頼みます。ストライクの発進は暫く待って!」
「了解、ムウ・ラ・フラガ、ソードパックで出る!」
「同じく、キーエンス・バゥアー、ランチャーパックで出ます!」
 フラガとキースのスカイグラスパーが出撃して行く。恐らくは最強の航空部隊だろう。2機のスカイグラスパーが出てすぐにフラガからの通信が入って来る。
「こちらフラガ、敵はレセップスに駆逐艦が1隻、ヘリが何機か出てきてる。バクゥが3機に似たようなのが1機だ。あと、レセップスにザウートが2機と、なんでか知らんがデュエルがいる!」
「デュエルですって!?」
 マリュ−は驚いた。まさか、デュエルがこんな所にいるとは。ナタルがCICから指示を出す。
「ゴッドフリート、バリアント発射準備、艦尾ミサイルランチャーにウォンバットを装填。イーゲルシュテルン全基起動!!」
「了解!」
 素早くCICクルーが動いていく。各種兵装に弾が込められ、ゴッドフリートがこちらに迫るレセップスを狙う。そしてストライクも出撃して行った。
 キラはフラガからの情報を元に敵の動きを大まかにに把握している。まことに制空権というものは大きい。レセップスを飛び立ったヘリ部隊は何も出来ずにフラガとキースに全滅させられたようだ。
「少佐、キラの援護を他のみます。俺はレセップスを!」
「分かった、堕とされるなよ!」
 キースの言葉に頷き、フラガは機体をバクゥに向ける。キースはスカイグラスパーの大火力を使ってレセップスと駆逐艦を仕留めるつもりでいた。ザウートとデュエルが煩いが、地上ではそれほどの脅威とはうつらない。
 それとほぼ時を同じくしてキラのストライクとバクゥが戦闘を開始した。3機のバクゥが激しく動きながら攻撃してくる。それをキラは上手く避けながらビームライフルの一撃で的確に仕留めようとする。上空からフラガのスカイグラスパーが援護してくれるのでこれまでよりも遥かに戦いやすい。アークエンジェルの方は敵艦隊と互角に戦っている様だ。
 その時、フラガの警告が飛び込んできた。
「キラ、気をつけろ、でかいのがそっちに行くぞ!」
「でかいの?」
 バクゥではないのだろうか。キラが緊張して辺りを見まわすと、すぐにそれは姿を現した。オレンジ色の、バクゥより一回り大きなサイズを持つ4足MS。明らかに今までのバクゥとは違う動きを見せる
「これは隊長機・・・・・・あの人か!」
 キラはシールドとライフルを構えなおすとバルトフェルドのMS、ラゴゥへと挑んで行った。
 アークエンジェルではストライクが敵の新型と応戦している為にバクゥが1機迫っていた。イーゲルシュテルンがそれを狙うが機敏に動くバクゥにはなかなか当たらない。逆にバクゥの砲撃で傷つけられる有様だ。
 そんなアークエンジェルの中で、カガリが勝手な行動を起していた。格納庫に来たカガリは無断でハンガーに固定されているシグーのコクピットに乗りこんだのだ。気づいたマードックが慌てて声をかける。
「おい、何してるんだお嬢ちゃん!」
「機体を遊ばせておく余裕なんかないだろ!」
 咎めるマードックに怒鳴り返し、カガリは機体を起動させた。
「私がこいつで出る!」
「馬鹿を言うんじゃねえ。お前は訓練も受けてねえじゃねえか!」
 マードックがなおも食い下がるが、カガリは機体を起動させると歩かせ始めた。何で動かせるのかとマードックは思ったが、それよりももっと大きな問題がある。
「止めろお嬢ちゃん、死ぬつもりか!」
「いいから早くハッチを開けろ。でないと内側から破るぞ!」
「おい、正気かお前!?」
 だが、言って止まる様子は無さそうだ。76mm重突撃機銃を手に歩き出す。仕方なくマードックはハッチを開けさせた。

867 名前: 流離う翼たち・80 投稿日: 2003/10/11(土) 18:10
 カガリが出撃した事は直ちに艦橋に伝えられ、マリュ−とナタルが驚愕する。幾らなんでも無茶苦茶だ。
「ちょっとカガリさん。何を考えてるの、すぐに戻りなさい!」
 マリュ−が命令するが、カガリは聞く様子もなかった。
「戦わなけりゃ殺されるんだよ!」
「それは素人に動かせる機体じゃないわ!」
「やってみなくちゃ分からないだろ!」
 カガリは砂漠に降り立ち、そこで早くも自分の目論見の甘さを露呈した。所詮は実戦の洗礼を浴びていないOSである。固い地盤の上でならそれなりに動けただろうが、砂地の上で動く事など考慮されてはいなかった。たちまち砂に足を取られて上手く動けなくなるカガリのシグー。
「おい、なんだよこりゃ!?」
 カガリは驚いて闇くもに機体を操作したが、それは余計に状況を悪化させるだけだった。艦橋からそれを確認したマリュ−がそれ見たことかと言わんばかりに右手で顔を覆い、ナタルが舌打ちして援護を命じる。シグーに迫るバクゥにウォンバットが撃ち込まれ、バクゥを牽制した。その間にミリアリアが通信でフラガを呼び出す。
「フラガ少佐、キース大尉、すぐに戻ってください。カガリがシグーで勝手に出撃して、追い詰められてるんです!」
「なにぃ、あの馬鹿、そんな事やったのか!?」
「キース、お前が戻れ!」
 驚いて機体を反転させるキース。対空砲火を放っていたデュエルは逃げ出したとしか思えないのスカイグラスパーに文句を言っていた。
「逃げるな、俺と戦え!」
 キースが戻ってきて見ると、砂に足を取られたシグーにバクゥが襲いかかっていた。ミサイルを受けたのか、機体から黒煙が上がっている。右手に持つ重突撃機銃を懸命に撃っているが、姿勢が悪い上に慌てているのだろう。まともな照準さえしていないようだった。キースはシグーに通信を繋いで声をかけた。
「おい、カガリ、まだ生きてるか!?」
「あ、ああ、なんとかね」
 いささか落ちこんだ声が返ってきた。だが、その声も今のキースには怒りを掻き立てるものでしかない。
「この大馬鹿やろうが。帰ったら覚悟してろ!」
 それだけ言って通信を切ると、キースはシグーを狙うバクゥに狙いを定めた。スカイグラスパーの固定武装である中口径キャノンと砲塔型の大口径キャノンを発射する。牽制が狙いだったので攻撃はバクゥの前面に砂埃を巻き上げただけに終わったが、こちらに気づいたバクゥはカガリのシグーから離れた。
 大口径砲の残弾を確認したキースは動き回るバクゥを見やると、アークエンジェルに通信をいれた。
「副長、バリアントでバクゥを狙ってくれ。こっちで動きを押さえ込む!」
「了解しました!」
 ナタルの返事を聞いて再びスカイグラスパーを反転させる。高速で動くバクゥにアグニは当て難いが、中口径キャノンと機銃で進路上を狙い撃つ事でその足を止めようとする。幾ら早くても2次元的な動きしか出来ないバクゥがスカイグラスパーの攻撃から逃れるのは困難だ。容易く動きを封じこまれてしまう。
 バクゥの動きが止まったのを見たナタルは鋭い声で命じた。
「バリアント1番2番、てぇ!」
 大口径レールガンが撃ち出され、瞬時にしてバクゥを粉々にしてしまう。直撃という訳ではないだろうが、戦艦の装甲さえ容易く貫通するバリアントの至近弾を受けたのだ。MSの装甲など紙のようなものでしかない。
 バクゥを片付けたアークエンジェルは高度を取り、今度はレセップスとの砲撃戦を開始した。ゴッドフリートがそちらに向けられ、艦尾発射官に対艦ミサイルのスレッジハマーが装填される。そしてキースは再びレセップス攻撃に戻っていった。

868 名前: 流離う翼たち・81 投稿日: 2003/10/11(土) 18:10
 ラゴゥとの死闘を繰り広げるストライク。ラゴゥの装備する強力なビーム砲がストライクを襲うが、キラはそれを巧みに躱しながらビームライフルを放っていた。だが、ラゴゥはたえず位置を変えて狙いを絞らせない。
 動いた先に上空から砲弾が降り注いだ。フラガのスカイグラスパーが上空から援護してくれているのだ。
「キラ、残ってるのはそいつだけだ!」
「フラガ少佐、それじゃあアークエンジェルは!?」
「無事だ。駆逐艦も沈めて、レセップスも動かなくなった!」
 フラガの声には安堵の響きがある。アークエンジェルはこの戦いに勝ったのだ。まだデュエルとザウートが1機づつ残っているが、これは砂漠では悲しいほど足が遅いので楽に振り切る事が出来る。後はこのラゴゥを片付けるだけなのだ。
 キース機も駆けつけて来た事で戦況は圧倒的になった。バルトフェルドは2機のスカイグラスパーの攻撃を躱しながらキラのストライクの相手もしなくてはいけなくなり、対処し切れなくなっている。すでにレセップスのダコスタには退艦命令を出した。もうこの戦いは自分の私戦でしかないのだ。
 その時、遂にキースの放ったアグニがラゴゥのビーム砲を吹き飛ばした。爆発の衝撃が機体を激しく揺さぶり、アグニの余波が上面を醜く焼けただらせる。
「やられたか!」
「どうするのアンディ?」
 愛する男に問い掛けたアイシャ。
「君は脱出しろ。アイシャ」
 アイシャはチラリと彼を見て、笑って言った。
「そんな事するくらいなら、死んだほうがマシね」
 思わずバルトフェルドは微笑んだ。
「君も馬鹿だな」
 バルトフェルドは苦笑した。まったくい、どうして自分の周りには器用に生きられる人間が少ないのだろう。自分が勝って気侭に生きてきた分、回りの人間が自分を反面教師にでもしたのだろうか。
 だが、まあいいさ。最後を彼女と共に戦い、逝くというのも悪くはない。
 アイシャを振り返り、その顔を目に焼き付けた。
「・・・・・・なら、最後まで付き合ってくれ」
 バルトフェルドはラゴゥを突っ込ませた。このMSと2機の戦闘機に勝てるとは思っていない。だが、せめて一矢報いたかった。残された最後の武器、ビームサーベルを展開させる。
 突っ込んでくるラゴゥに、キラはビームサーベルを構えた。これが最後の勝負だろう。上空からは2機のスカイグラスパーが猛禽の如く襲いかかってきている。ラゴゥがストライクを切り裂こうと突っ込み、ストライクは身を沈めてそれを避ける。振られたビームサーベルが前肢を2本とも切り裂き、ラゴゥを砂丘にめり込ませる。それで戦いは決した。動けなくなったラゴゥのコクピット部分にフラガが大口径砲を撃ちこみ、ラゴゥは爆発四散してしまった。
「・・・・・・バルトフェルドさん、あなたは、どうして?」
 破壊されたラゴゥの残骸を見下ろし、キラは小さな声で彼の名を呼び、聞きたかった事を問い掛けた。どうしてあなたはここまで戦ったんですかと。

869 名前: 流離う翼たち・82 投稿日: 2003/10/11(土) 18:12
 こうして砂漠の虎との戦いは終わった。残存部隊は後退していき、カガリのシグーはストライクによって回収された。帰ってきたカガリを待っていたのは怒り心頭という状態のキースであった。足音も高く歩み寄ってくると、いきなりカガリの右頬を拳で殴りつける。小柄な体が災いしてか、思いっきり吹っ飛ばされるカガリ。
 キラたちは驚きのあまり呆然としていたが、我に返ると慌ててキースの体を押さえた。まだ憤懣収まらない様子のキースは、放っておいたら倒れているカガリに蹴りくらいいれそうだったからだ。
「止めてください、キースさん!」
「離せキラっ!」
 キラが全力を出して押さえこもうとしたが、キースはナチュラルとは思えない力でキラの縛めを振り解こうとしている。キラは訓練された軍人の体をナチュラルと甘く見ていたのだ。きちんと訓練すればナチュラルとて素人のコーディネイターに負けたりはしない。ましてキースはその戦法上、桁外れなGに耐えられる体を持っているのだ。だが、それでもこの力は異常だとキラは思った。
 キラは堪らず回りに助けを求めた。フラガやマードックら整備兵が駆けつけてきてキースを押さえつけ、やっと動きが止まる。
「キースさん、女の子相手に何考えてるんですか!?」
「男も女も関係あるか。こいつはやって良い事と悪い事の区別もつかないらしいからな。言って無駄なら体で覚えさせるしかないだろう」
「だからって、殴る事はないでしょう?」
「死んでから後悔しても遅いんだよ!」
 キースの怒声にキラは吃驚した。死んでから後悔しても遅い。キースは何時もこう言う。後から後悔しても遅い、死んでからでは意味がない。過去の体験から来る教訓なのだろうが、普段が普段だけにこういう時のギャップには驚かされる。フレイやトールを鍛える時の容赦の無さも、この辺りに理由があるのだろう。
 ようやく起き上がってきたカガリがフラガに何か言い返そうとするが、キースの視線に射竦められて何も言えなくなる。キースは起きあがったカガリに酷く冷たい声で聞いた。
「何故勝手に出撃した。お前は訓練を受けていなかったはずだ?」
「・・・・・・あそこで黙っているなんて、出来なかったんだよ」
 顔を背けながらカガリは答えた。誰かに守ってもらうだけという状況に我慢できないタイプなのだろう。だが、キースはそれで許すつもりはなかった。訓練もしていない、しかも民間人が勝手に軍の装備を動かしたのだ。キラの時の様にこちらから要請したというのではない。
「お前のおかげでシグーは見ての通りボロボロだ。もう練習機にさえ使えない。トールやフレイに施してきた訓練も無駄になったわけだ」
「・・・・・・で、でも・・・・・・」
「しかも、俺はお前を助ける為にレセップスへの攻撃を中止する羽目になった。もしその間にレセップスの砲撃がアークエンジェルに当たってたら、死傷者はどれくらいになったかな」
 キースの問い掛けに、カガリは答える事ができなかった。キースやフラガの実力は先ほどの戦闘で見せつけられている。自分が出ていかなくても戦局には何の影響もなかっただろう。いや、むしろキースの言う通り足を引っ張っただけだった。

870 名前: 流離う翼たち・83 投稿日: 2003/10/11(土) 18:13
 キースは体の力を抜くと、近くにいた兵にカガリを独房に放り込んでおく様に命じた。キラが文句を言うが、これが正規の軍人だったら銃殺ものだと言って黙らせる。そして、キースはキラ達を振り払うと格納庫から歩き去ってしまった。それに少し遅れて落ち込んでいるカガリを兵士が連れていく。
 キースとカガリが去った事で整備兵たちは自分の仕事に戻っていった。キラはフラガにキースの言ったことを問い掛けてみた。
「フラガ少佐、キースさんの言ったことは、正しいんでしょうか?」
「まあ、正しいと言うか、正論だな。言い方はきつかったけどな。だが、お嬢ちゃんを心配して言ってることは確かだぜ」
「それは、分かります」
 キラは頷いた。キースがカガリの身を心配しているのはよく分かる。だけど、あそこまできつい言い方をしなくてもしなくてもいいのではないだろうか。それを口にすると、フラガは小さく笑った。
「キラ、お前はまだ戦争の本当の酷さを知らないんだな」
「そんなことは・・・・・・いえ、そうかもしれません」
 キラは俯いた。自分はあの幼女達を守れなかった。あれはキラには心が壊れそうなほどに辛かったが、キースやフラガはそれ以上の酷い現実を見続けて来たのだろう。でなければキースのあの目は出来ないだろう。
「キース俺も、守ろうとしてるのさ。自分の手の届く範囲でな。トールやフレイを鍛えてたのも、少しでも生き残れる様にと考えてのことだ。お嬢ちゃんを殴ったのだってそうさ。本気で怒ったからな」
「フラガ少佐は、なんで戦うんです?」
「俺か・・・まあ、昔はいろいろあったが、今は仲間を守るためかな。そして早く戦争を終わらせたいからかな」
 それは、キラの戦う理由とも同じであった。もしかしたらキースと自分は似ているのかもしれない。だが、キラはどうしても違和感を感じてしまう。キースと自分にはなにか、決定的な違いを感じてしまうのだ。キースはなぜ戦いに身を投じたのだろう。何時か、その理由を聞いてみたかった。



 ようやくアークエンジェルはヨーロッパに向けて進路を取った。トリポリに出て、地中海を突破し、イタリア南端を掠めてブカレストを目指す。運がよければどこかで補給部隊を送ってもらえるかもしれない。
 果たして、キラ達を待つのは何なのだろうか。

871 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/11(土) 18:40
>>翼
久々の大量投下お疲れ様です。
キースがいい味だしてていいですね。
ヨーロッパ編楽しみにしてるのでこれからもがんばってくださいね〜。

872 名前: 流離う翼たち・作者 投稿日: 2003/10/11(土) 18:47
ああ、やっと砂漠編が終わった。次からはヨーロッパ編に入ります。この辺りから大規模戦闘が始まります。キラとフレイはそこでなにを見つけるのでしょうか。そして、トールとフレイの運命は?
この辺りから本編から完全に外れて、オリジナルストーリーになります。キラとフレイはお互いにどんどん不幸になり、そして戦争と直に向き合う事に。
2人はここで自分なりの答えの1つを見つけます。ご期待下さい。 因みにヨーロッパ編でやっとキラ君種割れ予定。フレイにも変化が・・・・・・


>>キラ♀
まさかサイまで女だったなんて・・・・・・砂漠では修羅場という言葉では済まない恐ろしい対決がありそうですなw

873 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/11(土) 19:13
>>流離
 カガリたんさすがにMSはやめとけっての(´Д⊂ヽ
スカイグラスパート違って動かせもしないっちゅーに。

874 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/11(土) 23:21
そろそろpart2も目次作ったほうが良いのかな?
大分作品たまってきたしね…
しかし、保存庫の更新止まって久しいがこれらのSSは収納されるんだろうか?

875 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/11(土) 23:23
>>874
他に保存してくれる人を探すしかないかな〜?

876 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/11(土) 23:27
>>流離う翼
乙です。とうとうヨーロッパ…オリジナル編か。
フレイ様が不幸に…ちょっと鬱だが、応援してるよ!
フレイ様とキラ、ヘリオ組とのやりとりなんかも本編よりわかりやすくて良いですな。
これからもそういうのキボーン。

877 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/11(土) 23:30
ところでSS次スレのサブタイ、どうする?
多分前のスレ立てた人がつけたんだと思うけど、良い感じだな。
同じく漢字二文字がいいと思うが…
なんとなく自分は流離う〜に影響されてるから、『彷徨』とか思いつくけど。

878 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/11(土) 23:35
自分なら「陰陽」かな。
憎と愛 影と光ということで

879 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/11(土) 23:38
>>877
スレタイスレでやる?(ちゃんとSSスレ用と断ってね)
個人的には950取った人が適当にやればいいと思うけどね。

880 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/11(土) 23:41
>>879
まあ、それが良いかなあ

881 名前: 流離う翼たち・84 投稿日: 2003/10/12(日) 00:03
アスランは久しぶりにクライン邸にラクスを尋ねていた。これから任務で地球に降りる為、また暫く会えなくなるからというのが訪問の理由だ。会いに来たアスランをラクスは数えるのも嫌になるくらいのハロと共に出迎えてくれた。アスランはハロに囲まれながら、なんでこんなに贈ってしまったんだろうと自分の行為を激しく後悔していた。
 2人の会話は自然と最近の状況、つまりは戦争の事に移っていってしまう。ラクスが憂いを秘めた顔でアスランに近況を話した。
最近、私のお友達が幾人も軍に志願してしまいました。ザフトは何処まで戦争を広げるつもりなんでしょう?」
「分かりません。ですが、父が連合致命傷を与える一大作戦の準備に入ると言っていました。それが成功すれば、戦争はそこで終わるかもしれません」
 アスランは戦火が広がる事については憂慮していたが、連合という敵がいる以上仕方ないと考えていた。ただ、父の言うオペレーション・スピットブレイクが成功すれば戦争は終わると考えてもいる。これは、連合の総司令部であるアラスカを総力をあげて奇襲攻撃し、軍機能を麻痺させるというものだ。これが成功すれば連合は降伏しないまでも、こちらの要求を呑むかもしれない。
 そうすれば戦争は終わる。これ以上戦死者が出る事も無く、自分もラクスとゆっくり会えるようになる。
 その後も身の回りの事などを語り合う2人の所に、議会から帰ってきたシーゲルがやってきた。珍しくアスランがいる事に表情を綻ばせている。
「来ていたのか、アスラン」
「はい、今度地球に降りることになりまして。その前にラクスに会いたかったものですから」
「そうか」
 シーゲルは嬉しそうに頷くと、ラクスを見た。
「ラクス、今日の食事はもう食べたのか?」
「いえ、アスランやお父様と一緒に食べようと思いまして」
「そうか、それではそうするか」
 シーゲルはにこやかに食堂に行こうとしたが、次の娘の言葉に笑顔を凍り付かせた。
「では、早速作りますわ。2人は食堂でお待ち下さい」
「・・・・・・・お前が作るのかね?」
「はいっ」
 嬉しそうに頷く娘の姿に、シーゲルは何も言えなくなってしまった。好きな男に手料理を振舞いたいというだけの気持ちから言っているのだろう。シーゲルは嬉しそうに厨房に消えて行く娘を見送り、とぼとぼと食堂に向かっていった。その後を不思議そうな顔でアスランが追っていく。
 テーブルで向かい合ったアスランは、思いきってシーゲルに問い掛けた。
「あ、あの、どうかなさいましたか?」
「・・・・・・アスラン、君はあれの料理を食べた事はあるかね?」
「いえ、初めてですが」
 何となく嫌な予感がアスランを襲う。シーゲルは何を隠しているのだろうか。いや、何を恐れているのだろうか。

882 名前: 流離う翼たち・85 投稿日: 2003/10/12(日) 00:04
 アスランはおもいきって問い掛けてみた。
「あの、もしかして、ラクスって料理が下手なのですか?」
 その問いに、シーゲルはとても悲しそうな目でアスランに答えた。
「まあ、食べてみれば分かる。すぐにな」
 その答えに、アスランはこの場から逃げ出したい衝動に駆られた。だが、その思いを踏み躙るかのようにラクスが現れた。両手でシチューの入った鍋を抱えて。
「今用意できますから、楽しみにしててくださいね、アスラン」
「・・・・・・はい、楽しみにしてます」
 花のような可憐な笑顔を見せるラクスに、アスランは逃げ出す気力を奪われてしまったのだった。そして目の前に料理が並べられていく。見た目は問題無い。臭いも悪くは無い。ならば味も問題無いのではないだろうかと、アスランは淡い期待を抱いた。
 そして、ラクスがテーブルについてにこやかにアスランを見た。
「さあ、召し上がれ」
「は、はい」
 アスランはスプーンを手にシチューを一匙すくい、口に運んだ。そして、その凄まじい味わいに意識が飛びかけた。最悪の予想の斜め上をいかれたとでも言うか、まずい! などという生易しいレベルではない。もはやそんなレベルを通り越して口の中が溶かされていく感覚さえある。
 だが、アスランは脅威的な努力と精神力でこれを飲み下した。
「どうですか、アスラン?」
 期待と不安を目で力一杯表現しながら問い掛けてくるラクスに、アスランは渾身の努力で笑顔を浮かべて答えた。
「え、ええと、独創的な味ですね」
「そうですか、本の通りに作ったのですが?」
 ラクスは首を捻って自作を味わい、次の瞬間には顔色を変えて水を口に含んだ。そしてすまなそうにアスランを見る。
「す、すいませんアスラン、まさかここまで酷い出来だったなんてっ」
「いえ、気にしないで下さい。食べれないわけではないですから」
 アスランは笑いながらこの殺人的なシチューを平らげていく。恐るべき精神力だ。その姿にラクスは感激し、シーゲルはなにやら物凄いものを見ているような眼差しでアスランを見ていたのはいうまでも無い。
 この後、クライン邸から帰ってきたアスランは倒れてしまい、内臓に酷い負担があると診断された状態で地球に向う船に乗り込んだ。同行するディアッカ、ニコル、ミゲルは憔悴しきってボロボロになったアスランの姿に驚愕したという。
 後で判明したことだが、この時アスランが被った被害は、ナチュラルであれば死に至っても不思議ではないほどのものであったという。この時ばかりはアスランはコーディネイターという我が身に感謝したのだった。

883 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・7−1 投稿日: 2003/10/12(日) 00:34
アルテミス要塞への入港が許可されたアークエンジェルだが、入港した途端、
銃を持った兵士が大勢乗り込んできた。クルーはまるで捕虜扱いのように
拘束され、マリュー達幹部三人は腕を頭の後ろに組んだまま連行されしまった。

「どうして、アルテミス要塞は友軍のはずじゃなかったの?」
キラの素朴すぎる疑問にノイマン准尉が答える。
「確かに同じ地球連合ではあるが、俺たちが所属しているのは「大西洋連邦」で、
アルテミスは「ユーラシア連邦」に属していて、識別コードさえない。
同じ軍隊内でも色々とあるのさ」
ノイマンの答えにキラの顔色が悪くなる。
流石にキラも、戦争に絶対善対絶対悪(ハルマゲドン)があるほど単純なもの
だとは思っていなかったが、アスランから聞いた「血のヴァレンタイン」といい、
こうまで味方の暗部を見せられると、何が正しいのか分からなくなってくる。
今の問答でアスランの事を思い出したキラは
「どうしよう、艦長たちがいない時に敵襲でも受けたら…」
「その心配だけはないと思うな。アルテミス要塞は「全方位光波防御帯」とかいう
防御システムで難攻不落が売りなんだ。いくらザフト軍の精鋭部隊でもアレは
そう簡単には突破できないはずだ」
こんな状況が何時までも続くのなら、敵襲があった方がいいかも知れないがな…と
ノイマンは密かに心の中で思ったが。

ほどなくして、禿頭のユーラシアの仕官が入ってきた。本人は自分を基地司令官
のジュラード・ガルシアだと紹介した後、押柄な口調でMSのパイロットと
技術者について尋ねてきた。
恐る恐る手を挙げ、馬鹿正直に名乗り出ようとしたキラをマードックが押しとめた。
「何故我々に聞くのです?艦長たちが言わなかったからですか?」
ノイマンの質問にキラは息を飲んだ。何となくだが、アルテミス入港前にフラガ
からストライクのOSをロックして、キラ以外には起動出来なくするよう
指示された理由が分ったような気がした。
その間もノイマンとガルシアの舌戦は続いていたが、ガルシアは期待する回答が
得られないと分かると強行手段に出た。
「きゃあっ!」
ガルシアに腕を捻られたサイが悲鳴を上げる。
「まさか女性がパイロットとも思えないが、この艦の艦長も女性という事だしな」
「やめろぉ…!」
苦痛と恐怖に顔を歪めるサイを助けようとフレイがガルシアに飛びかかろうとしたが、
脇を固める警備兵に警棒で殴られあっさりと吹っ飛ばされてしまった。
「「フレイ!!」」
サイとキラが同時に悲鳴を上げる。
アークエンジェルのクルーが色めき、それに応じてガルシアの警備兵も殺気立つ。
「もうやめて下さい。ストライクのパイロットは私です」
この場の騒然とした雰囲気に耐えられなくなったキラがついに告白した。
「キラっ」
サイが申し訳なさそうな目でキラを見る。ガルシアはサイの腕を放して
キラに近づくと、乱暴にキラの顎をしゃくり上げる。
「先ほど私が口にした冗談を真に受けられても困りますな、お嬢さん」
「ほ…本当のことです!」
キラはガルシアに触れられる嫌悪感に耐え涙目になりながらも必死で言い返す。
「フン、アレは君のような小娘に扱えるような代物じゃない。
いい加減な事を言うな!」

「その娘の言っていることは本当だよ」
一発触発の雰囲気の場に乾いた声が響き渡る。
壁際まで吹き飛ばされミリアリアに介抱されていたフレイが、口元の
血を拭いながらノロノロと立ち上がり決定的な一言を口にした。

「だって、その娘はコーディネイターだから…」

884 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・7−2 投稿日: 2003/10/12(日) 00:35
「フレイ、お前!」
キラがガルシアに連れていかれ、銃を持った敵兵がいなくなり、
一見嵐は去ったかのように見えたが、食堂内には別の嵐が吹き荒れていた。
トールがフレイの襟首を締め上げる。実力行使も辞さない迫力だ。
「本当の事だろ」
フレイはトールから目を反らさず詫びれもせずに応える。
「地球軍が何と戦っているか分っているのか!?」
「知ってる」
あまりにあっさりと言い切ったフレイに一瞬トールは言葉に詰まった。
「だったら、何で…」
そのトールの問いに、流石にフレイは後ろめたそうに顔を背けると
「どうせ早かれ遅かれバレる事さ。時間の問題だ…」
「て…テメェ!」
「お願いやめて!」
フレイに殴りかかろうとしたトールの間にサイが必死に割って入る。
「お願い、フレイは私を助けようとしただけなの。許してあげて!」
「くっ!」
トールも、自分の婚約者を助けるために真っ先に飛び出して敵兵に殴られた
フレイの姿を思い出し、しぶしぶ拳をおさめた。
「後でキラにはちゃんと謝っておけよ」
離れ際トールはフレイにそう呟いたが、フレイは終始無言だった。

「OSのロックを外せば良いのね」
キラはストライクのコックピットに座ってガルシア達の前で端末の操作をはじめる。
先ほどの食堂での遣り取りを思い出し、キラの胸が詰まる。
「だって、その娘はコーディネイターだから…」
フレイはフレイなりに婚約者であるサイを助けようとして起こした行動なのは分かる。
だがその為に、自分がフレイからガルシア達に売られたという一面は否定できない。
フレイを助けようとパイロットであることを名乗り出たのに、フレイのキラとサイ
に対する扱いの差を思うと涙がこみ上げてくる。
フレイに守られるサイとフレイに売られたキラ。
どうして?
私がコーディネイターだから。
これは、この先も一生キラについてまわる問題なのだろうか。

「ところで君はOSの解除の他にも色々な事が出来るのじゃないか?
たとえばこいつを解析して同じ物を作るとか、逆にこういったMSに対抗する
兵器を作るとかな」
ガルシアの耳障りな声が、思考の淵に沈んでいたキラの意識を現実へと引き戻した。
「私はただの民間人です。軍人じゃありません。そんな事をするつもりはありません」
ガルシアの卑下た表情と発想の卑しさに、キラは嫌悪感を隠せなかった。
この人達はマリューさん達とは違う。一体どちらが軍人の本当の姿だろう。
「だが、君は裏切り者のコーディネイターだろう?」
そのガルシアの一言に、キラは凍りついたように動きを止めた。
「う…裏切り者?」
「どんな理由かは知らんが、どうせ同胞を裏切って、その屍の山を築いて
ここまで辿り着いたんだろ。ならユーラシアで戦っても同じだろう?」
キラの表情がみるみると青ざめていく。
「ち…違うの、私は……」

キラがOSのロックを外し終えて、機体の起動をかけた時、激しい振動と共に
警報が鳴り響いた。
後で知ったことだが、ニコルの操作するブリッツが、ミラージュ・コロイド
(機体のステルス化)の能力を使って要塞内に侵入して、アルテミスの防御装置
を破壊し、デュエルとバスターを招き入れたのだ。
そこから先の事はキラはあまり覚えていなかった。
これ以上あんな奴らと一緒にいたくない一心から、キラは混乱を利用して
ガルシア達を出し抜くと、ストライクを起動してその場から逃げ出した。
途中ブリッツとも遭遇して交戦したような気もするがよく覚えていない。
キラと同じく、混乱を利して自力で脱出したらしいアークエンジェルに飛び乗り、
アルテミス要塞を後にする。
直後、アルテミス要塞が爆発したが、今の冷え切ったキラの心には何の感慨
も与えなかった。

885 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・8 投稿日: 2003/10/12(日) 00:41
早朝(宇宙空間に昼も夜もないが)目を覚ましたキラは、鏡の前に立って
自分の顔を覗き込む。
昨日は一晩中泣き明かしたキラの顔には、涙の痕がクッキリと残っていた。
水不足でシャワーを浴びる事が出来なかったので、洗面器一杯のお湯で
顔を洗い、あまり得意でない化粧道具を駆使して何とか涙の痕跡を
消し去ることに成功したキラは食堂へと向かう。
昨日から、「裏切り者」の単語が頭の中にこびり付いて離れない。
えっ?
前方からフレイがサイと連れ立ってこちらに歩いてくるのが見えた。
「ほら、フレイ」
サイがそう言ってフレイの脇を軽く肘で小突いたので、フレイは少し躊躇った後、
「キラ、昨日はすまなかった」とキラに謝罪し頭を下げた。
「フ…フレイ?」
「すまない、サイを助けるためとはいえ、君を売るような真似をしてしまって。
僕は…僕は……」
フレイは辛そうに顔を背ける。
サイの目からは、フレイの大仰な仕草は少し芝居掛かって見えたが、
キラは素直にフレイが頭を下げてくれたことに感動し、
「いいのよ、別に。気にしてないから……」
まだ早朝からの鬱気分から気持ちを完全に切り替えられなかったキラは、
無理してフレイに微笑んで見せる。
それに、私がコーディネイターなのは本当のことなんだし…。
自嘲するように心の中でそう付け加えながら。

「そうか、そう言ってもらえると助かるよ」
フレイはキラからの許しが得られると、義務は果たしたと言わんばかりに、
サイを連れてその場を離れていく。
キラは仲陸まじく語り合う二人の後姿をじっと眺めながら、自身を惨めと感じて
いく気持ちを抑えることが出来なかった。


結局、アルテミスで補給を受けられなかったアークエンジェルは、深刻な
物資不足に悩まされていた。
その解消案として、フラガは遺棄された艦船等から物資を調達するために
デブリ帯へ降りることを提案する。
マリューの予想通り、最初その案をキラに聞かせた時、キラはあまり良い顔
をしなかった。
作業ポットを使い遺棄された艦船を漁って、物資を調達するところまでは
何とか耐えられた。
だが、その魔の手を、かつて血のヴァレンタインによって崩壊したユニウス7
にまで伸ばすと聞いて、キラは爆発した。
「あそこの水を……本気なの!?」
「あそこには一億トン近い水が凍り付いているんだ。他に水は見つかっていない」
キラは眩暈がした。
血のヴァレンタインと呼ばれた核攻撃で破壊され、何十万もの人間が亡くなった
プラントコロニー・ユニウス7。
それはコーディネイターにとっての聖なる墓所であり、凍りついた巨大な水の
固まりは、亡くなった同胞達の悲しみの涙のようにキラには思えた。
自分はその聖なる墓所に土足で足を踏み入れ、死者の涙を啜ろうとしている。
死者に対するこれ以上の冒涜が他にあるだろうか。

キラは必死で抵抗したが、フラガ達に説得されるまでもなく、ここで代案なき
感情論を唱えたところでどうにもならない事もまた分っていた。
ここで餓死したら、今までキラがしてきた事が全て無駄になってしまう。
同胞を殺し…アスランを敵にまわしてまで、キラが守ろうとしてきたもの全てが。

一体私はどれだけの罪を重ねれば気がすむのかしら。
護衛役を仰せつかったストライクから、僚友が凍りついた水を切り取り、
AAへと運搬する作業を尻目に見ながらキラは考える。
友達を守るためと称して、多くの同胞をこの手で殺してきた。
自分に救いの手を差し伸べてきた旧友の手を振り払い、あまつさえ刃を向けた。
そして、何十万もの同胞の眠る聖なる墓所を暴いて、
死者の涙さえも自分が生きる為に啜り尽そうとしている。
もしコーディネイターの神がこの世に存在するとしたら、きっと私は死後
地獄へ落とされるのだろう。
アークエンジェルと関わって以来、キラの気分が躁になった事など一度も
なかったが、今キラの気持ちはどん底までに落ち込んだ。

その時、ストライクのレーダーが移動物体を発見した。
敵!?
キラは緊張しながらも、狙撃用のライフルを取り出してスコープを
覗いてみる。スコープの中に映っていたのは……。

「つくづく拾い物が好きなのだな、君は」
ナタルの声にキラは赤面する。
キラが拾ってきたのは、個人用の救命ポットだった。
ザフト製であることが確認されているので、乗っているのはコーディネイター
である可能性が高い。マードックが慎重にポッドを操作してハッチを開く。
緊急の事態に備えて、ポッドを取り囲んだ兵士が銃を構える。
だが、中から飛び出してきたのは、ピンク色の球状の奇妙な物体を抱えた、
同じピンク色の髪をした不思議な少女だった。

886 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/12(日) 00:54
>>流離
茂さん・・・アスランがラクスを止められるわけないんだから親のあんたが止めてやれっての(´Д⊂ヽ
いい笑いの補給になりましたけど。

>> キラ(♀)×フレイ(♂)
こういうので書くのってかなり技量が要求されそうですね。すごいと思います。

そういえばコーディネイターの英知の結晶、ジェネシスにも光波防御帯はついてなかったんスね。
まああれは技術盗むルートが用意されてなかった品…
ミラコロ:ブリッツを解析、または民間のものを改造
PS:フリジャスの時点で実現

887 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/12(日) 08:13
>>女キラ
おつー。フレイ様、婦女子に人気出そうなキャラだなw
ラクスは女なんだよね。ところでカガリたんは?
ニコルは女だったり・・・しない?

888 名前: 流離う翼たち・86 投稿日: 2003/10/12(日) 18:49
 トリポリに近づいたアークエンジェルは、そこで驚くべき通信を傍受した。友軍の勢力圏が近づいたおかげで通信が繋がったのだが、ヨーロッパの軍が補給部隊を送ってくれると言ってきたのだ。合流ポイントはアークエンジェルが当面の目的地としているトリポリにほど近い場所だ。そこで艦を降ろし、補給部隊を待つ事になるのだ。
 マリュ−は嬉しそうにCICにいるナタルを見た。
「どうやら、ヨーロッパの友軍は私達を受け入れてくれるみたいね」
「はい、見捨てられたのではと心配していましたが」
 ナタルの顔にも珍しく笑顔が浮かんでいる。この辺りには有力な敵軍がいない事はフラガとキースが航空偵察で確認している。トリポリの町は戦闘で破壊されており、今では廃墟同然だ。
 アークエンジェルは指定された海岸線で身を隠しやすい場所を探すと、そこに艦を下ろした。そして上に迷彩ネットを張り巡らせる。その作業を監督しながらフラガとマリュ−はこれからどうするかを話し合っていた。
「どうだい、戦闘も無さそうだし、半舷休息にしちゃ?」
「ですが、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だって。俺とキースが交代で戦闘待機してるから、偵察部隊ぐらいは追い払ってやるよ」
 2機のスカイグラスパーは緊急発進出来る状態にされている。2人の腕なら偵察機どころかジンの1機くらいでも蹴散らしてしまうだろう。確かに余り気にする必要は無いのかもしれなかった。
 そう考えると、マリュ−もフラガの提案に魅力を感じずにはいられなかった。やはり、連日の戦闘で疲れている事も確かだからだ。
「分かりました。交代で自由にしましょう。幸い地中海の海岸ですし、泳ぎたい者もいるでしょうから」
「おお、話が分かるねえ」
 マリュ−の返事にフラガは大喜びだった。それを聞いてマリュ−は僅かに眉を顰めた。もしかしてこの人、自分が遊びたかっただけなんじゃないかしら? という疑念が湧いたのだ。
 半舷休息が伝えられたクルー達は大喜びだった。急いで何処からとも無く水着を持ち出す者。その水着を貸してくれとせがむ者。つり竿を取り出して来る者など、なんで戦艦にそんな物があるんだよと言いたくなるような物を持ち出してきている。
 当然キラ達もこの命令には歓喜していた。久しぶりに遊び倒せるのだ。だが、今の彼らは素直に喜べない現実もあった。キラとフレイがどういう訳か付き合い出した為に、一方的に振られる事になったサイとの摩擦が生じているのだ。自然とカズィ、ミリアリアもキラとフレイから距離を取ることとなり、トールだけが両者の間に立っているという状態である。今もキラとフレイ、サイとカズィとトールとミリアリアという境界線が存在するのである。
 だが、そんな6人に、この空気を全く気にしない、というか気付いていない奴が話し掛けてきた。
「おい、早く海行こうぜ!」
「カ、カガリ・・・・・・」
 キラはこのゴーイングマイウェイなカガリの真っ直ぐな所が気にいっていたが、もう少し回りの空気を呼んで欲しいと思うときもあった。だけど、珍しい事にトールがカガリの話に乗った。
「そうだな、行くか」
 全員を見回してトールが言ったので、みんなとりあえず頷いた。それで方針が決まり、各々水着に着替えて浜へと向ったのである。

889 名前: 流離う翼たち・87 投稿日: 2003/10/12(日) 18:50
 外にはもうすでに多くのクルーが出てきていた。海に飛び込む者、浜で遊ぶ者などさまざまである。そんな中で一際目を日いたのが水着姿のマリュ−だった。そのナイスバディに目を惹き付けられている男は数え切れない。特にフラガがほとんどナンパ同然に話し掛けている辺りがなんとも言えなかった。
 サイとカズィが海に向って行くのを見て自分も行こうとしたが、トールに呼び止められてしまった。
「キラ、ちょっと良いか?」
「トール?」
 珍しく真剣な顔をしているトールに、キラは何事かと思った。近くの木陰まで移動したところでトールが切り出す。
「なあキラ、お前、どうしてフレイと付き合うようになったんだ?」
「・・・・・・フレイは、優しかったんだ。僕を慰めてくれて、それで・・・・・・」
「お前が戦いたくないってのは知ってるよ。酷く疲れてるのも」
 トールはフレイからキラに近づいたという事にどうしてもおかしいと感じてしまうのだ。あのコーディネイター嫌いのフレイが、どうしてキラと付き合うんだと考えてしまう。
 だが、次にキラが口にした言葉にはトールも少し驚いてしまった。
「でも、フレイは僕に、同情で付き合ってくれてるみたいなんだ」
「同情って・・・・・・」
「落ち込んでる僕を見ていられなくなったんだと思う」
 フレイには、色々とみっともない所を見られてるからね。と、自嘲気味に笑いながら話すキラに、トールは言い知れない寂しさを感じてしまった。誰も本当に自分を理解してくれる事は無い。同情で付き合ってなど欲しくは無い。そう言いたいのだろう。
 トールはキラがフレイに惹かれている事は知っていた。昔からそれでからかってきたのだから。勿論キラの恋を応援してはいた。だが、いざそれが現実になってみると、こうもお互いを傷付けてしまうものなのか。フレイがどうしてキラに近づいたのかは分からないが、それが結果としてキラを支え、そして傷付けてしまっている。傷を舐めあうというようなものではない。まるでヤマアラシのジレンマだ。近づけば近づくほどにお互いを傷付けあってしまう。
 問題の根の深さを知ったトールは、もう一度考え直す必要があると思った。フレイは、どうしてキラに近づいたのだろう。本当にただの同情ならば、それはそれで良いのかもしれない。だが、もし何か別の目的があるのなら、それは不幸しか生み出さないだろう。その時は力づくでも別れさせるしかないと、トールは考えていた。



 艦橋で下を羨ましそうに見下ろしているノイマンは、傍らでコーヒーを啜っているキースに話し掛けた。
「良いですねえ。楽しそうで」
「順番が回ってきたら俺たちも降りられるんだ。そう焦るなって」
「でも、なんか待ちきれないと言いますか・・・・・・」
 はあ、とため息をつくノイマン。CICにいるトノムラやチャンドラからも似たようなため息が聞えてくる。キースはやれやれと思いながら背後の艦長席に座っているナタルを見た。こちらはじっと何かを考えているらしく、少し俯き加減だ。
 キースはノイマンとの話を再開した。
「でもまあ、艦長を見れないのは残念かな」
「大尉もそう思いますか? あーあ、フラガ少佐が羨ましい」
「あの人のことだから、今頃艦長に粉かけてるだろうなあ。まあ、艦長はかなり手強そうだけど」
「なるほど、確かにそうですね」
 ハッハッハと声に出して笑うノイマン。キースもその光景が想像できてしまい、笑い出してしまった。丁度その頃、浜辺でマリュ−に手を出したフラガが蹴り倒されていた事など、2人には知る由もなかった。まして、背後からナタルがいささかキツイ目で睨んでいる事など、気付いてもいなかったのである。

890 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/12(日) 21:25
>流離
キースとノイマンが語り合ってる後ろにナタルという何気ない構図がグッジョブ!

で、トールがマジメに考えてるところに悪いんですけどフレイたまの水着マダー?

891 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/12(日) 21:30
うあああ、しばらく見ないうちにものすごい投下ですね!
職人さんたち、乙です!!

>翼
こんな展開になってきたとは…そして随所のギャグ要素がイイですね。和みますw
しかし不穏な空気も…気になります。何よりもこのハイペースで書きつづける筆力に脱帽でつ。

>男フレイ様
DQNなのにカコイイのは何故だろう(笑) 難しいと思いますが頑張ってください!

>苦労人
爆笑です!センスいいですね〜 ダ(ry君のあの困ったような眉が脳裏に浮かぶ…w 

>ルージュルート
がんがれフレイ様!感情移入できて面白いです。次編待ってます!

>二人で一人
切ないやらおかしいやら複雑です。続き待ってますね!個人的にはサイに出てきて欲しいです。

892 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・9−1 投稿日: 2003/10/13(月) 00:32
「ラクス・クラインだって?」
フラガの記憶が正しければ、それはプラント最高評議会議長シーゲル・クライン
の一人娘で、プラントの歌姫と呼ばれるアイドルの名前だ。
「私も何度か立体映像で彼女の顔を見たことがあるけど、どうやら本人みたいね」
「マジかよ…」
聞けば、彼女はユニウス7の追悼慰霊の代表でその事前調査に来ていたところ、
地球軍の艦隊に船を沈められ、側近にポットに押し込められたそうである。
それを聞いてマリューは頭を抱える。
戦場でならまだしも、慰霊活動をしている非武装の民間船を沈めるとは。
この頃の地球軍のモラルは低下する一方である。
「それにしてもコーディネイターっていうのは、皆ああなのか?」
敵側の最高権力者の娘で、プラント市民の絶大な支持を集める歌姫となれば
敵国有数のVIPだ。
それが突然敵の戦艦に単身放り込まれたとなれば、どんな傑物でも
物怖じしても可笑しくない…というか不安に慄くのが普通の反応というものだが、
フラガが呆れたように指差した先では、早速自分の居場所を確保してキラ達と
談笑するラクスの姿があった。
本当に天然なのか…それとも天真爛漫な姿は卓越した演技の成せる業か…。
もし、後者だとしたら、やはり只者ではない。
「いえ、あの娘が特別なだけだと思うわ。キラさんとはじめて会った時は
歳相応の少女らしくガクガク震えていて可愛かったものよ。その後の活躍
には驚かされたけど。でも泣き虫なのは今も同じかしらね」
マリューがキラと出会った当初を思い出して、昔を懐かしむように述懐
したが、フラガは無言のまま人知れずラクスへの警戒心を強めていた。


「おいおい、何で僕がそんなことをしなくちゃならないんだよ?」
「そのぐらいしてくれたっていいでしょう?
あなた、この船に来てから一人だけ何もしてないじゃない」
食堂で、食事のトレイを前にフレイとミリアリアが何か言い争っている。
「ねぇ、どうしたの?」
食堂に顔を出したキラは、カズィに事情を問いかける。
「キラが拾ってきたラクスとかいうお姫様の食事だよ。ミリィがフレイに
持って行くように頼んだんだけど、フレイが嫌がっているんだ」
それを聞いたキラが、なら自分が…と立候補する前にフレイが
「大体、一人で彼女のところに行って、何かされたらどうするんだ?」
「お前、男の癖に情けないこと言ってんじゃないぞ。
可愛い女の子の扱いなら手馴れたものじゃないのかよ?」
そのフレイの物言いにトールは心底呆れた顔をして嫌味を口にしたが、
フレイは悪びれずに
「それは普通の女の子の話しだろう。コーディネイターの女の子なんて
外見がいくら可愛くても、中身は……」
「フレイ!!」
キラが側にいることに気づいたミリアリアが大声で叫んで、その後に
続いたであろうフレイの暴言を打ち消した。
「も…もちろん、キラは別だよ」
流石に傍若無人なフレイも、今にも泣き出しそうなキラの顔を見て、
慌ててフォローを入れたが、キラが受けたショックを和らげる効果は
見られなかった。

しばらく食堂に居心地の悪い沈黙が続いたが、その沈黙を破ったのは…
「あらあら皆さん。どうかしたのでしょうか、お顔が暗いですよ」
よりにもよって今回の騒動の原因だった。
「ラクス…」
ラクスはニコニコと微笑みながら、そっとキラを抱き締めると
「どうなされたのですか、キラ様。可愛いお顔が台無しですわよ」
彼女がハロと名づけたピンク色のボールが、ハロハロ言いながら
キラの周りを飛び跳ねている。
そのハロのコミカルな仕草と、ラスクの持つ不思議な包容力にキラの心が癒さる。
「ありがとう、ラクス」
キラは涙を拭うとラクスに向かって微笑んで、ラクスも「どういたしまして」
と微笑み返すと、キラから身体を離した。
周りにいる皆もラクスの持つ不思議な影響力に感化され、和気藹々とした
ムードに包まれてきた。
何故、彼女がプラント市民の心を一身に掴むことが出来るのか、その力の片鱗を
体感したような気分だ。
ただ一人、フレイだけがじっと腕を組んだままクールな表情を崩さず、黒い瞳に
冷めた色を浮かべてラクスとキラの遣り取りを見つめていたが…。

893 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・9−2 投稿日: 2003/10/13(月) 00:34
腹が減ったという理由で再び監禁されている部屋を抜け出してきたラクスに
ミリアリアは苦笑しながらも、今回の揉め事の要因となった食事のトレイを
差し出した。
「それにしても本当に可愛いわね、このロボット。確かハロって言ったけ?」
お行儀良く食事を頬ぼるラクスを見つめるキラの手の下では、ハロがまるで
バスケットボールのドリブル状態のような激しい上下運動を繰り返す。
可愛い物に目がないキラの顔が自然と綻ぶ。
「はい、正式名称はそう言いますが、わたくしはピンクちゃんって呼んで
いますわ。アスランに作っていただいた物ですの」
ラクスはさり気無く、だがキラにとっては無視し得ない一言を口にする。
「ア…アスラン……?」
その一言にキラの瞳孔が開いた。思いがけず聞いた旧友の名前に、
まるで癌細胞のように、キラの身体の芯から隅々にまで動揺が繁殖していく。
「まぁ、キラ様はもしかしてアスランをご存知なのですか?」
キラの変化を目敏く察したラクスは、瞳を輝かせながら尋ねる。
周りの皆も…フレイでさえ好奇心を隠せずにキラを見つめている。
「ええ、アスランは私が月の幼年学校にいた頃の友人なの。3年前、
私はヘリオポリスに移り住んで、アスランはプラントに行ってしまったけど」
流石にAAを執拗に攻撃してきたザフト軍の中に、アスランも混じっていた事は
キラは話さなかった。
「まぁ、そうでしたの」
同じ秘密を共有した友人を見つけたかのような口調で、ラクスは無邪気に喜んだ。
「それでラクス、あなたは……」
「アスランは将来わたくしの夫となる方ですわ」
内心の動揺を悟られないように尋ねるキラに、ラクスは決定的な事実を口にした。
「ええっ!?それって、もしかして婚約者ってこと?」
今時分の女の子の類に漏れず、この手の話には興味津々といった表情で、
まずミリアリアがラクスの話題に食い付いてきた。
「はい、そうですわ。物心つく前から定められた許婚です」
「サイ、お前と同じだな」
「わ…私達の場合は、親同士が勝手に決めただけで…」
軽く脇を小突いて揶揄するカズィに頬を赤らめるサイ。
「あら、サイ様にもそのような殿方がおられるのですか?」
「あそこにいるフレイだよ」
「まぁ、アスランと似て奇麗な殿方ですね。渋そうな顰めっ面もそっくり…」
「ねぇ、ねぇ。そのアスランさんの写真とか持ってないの?」
「はい、ありますわよ。ここに…」
「うわぁ…。可愛い男の子ね。良いなあ、こんな人がフィアンセだなんて」
「ああ、俺というものがありながら、ミリィの浮気者」
「うふふ、冗談よ、トール」
「皆様、本当に仲が宜しいのですね」

場はキラを無視して異常な雰囲気で盛り上がっていくが、キラの耳には入らなかった。
ラクスの告白を聞いた瞬間、キラは自分の踏みしめている大地が張り裂けるような
衝撃を受けて、目の前が暗転した。
婚約者……アスランに?
そっか…そういうことだったんだ。
まだ月にいた頃、キラは何時も一緒にいてくれたアスランに
ほのかな想いを抱いており、アスランのさり気無い仕草や態度から、
もしかしてアスランも自分に気があるのではと密かに期待していた。
けど、アスランは一度もキラを抱き締めてもキスしてもくれなかった。
臆病なキラには自身の気持ちを打ち明ける勇気はなく、アスランからの告白を
心待ちにしていたが、結局、最後まで仲の良い友人の一線を越えること
なく二人は別れることになる。
でも違ったんだ。
アスランの心は、はじめからキラの上にはなかった。
最初から、全てはキラの一人相撲に過ぎなかったのだ。

キラは虚ろな瞳でラクスを見つめた。
皆は…ラクス自身でさえ浮ついた話しに夢中になっているらしく、
キラの姿が目に入らないみたいだ。
ただ一人、目の前の猥談をつまらなそうに無視していた、
恐らくこの中でキラへの理解から最も遠い所にいるであろうフレイだけが、
皮肉にもキラの異常な様子に気づいていた。

894 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・10 投稿日: 2003/10/13(月) 00:35
不幸な話題には事欠かなかったアークエンジェルに、はじめて朗報が訪れた。
ハルバートン提督率いる第八艦隊のコールサインをキャッチし、先遣隊として、
「モントゴメリ」「バーナード」「ロー」の3艦がこちらに向かっているというのだ。
遠からず友軍と合流出来ると聞いてAA全体が色めき立つ。
サイからその事を聞かされたトール達はみな表情を明るくさせ、手と手を取り合って
喜びを分かち合ったが、フレイは腕を頭の後ろに組んだまま、興味なさそうに
皆がはしゃぐ姿を観察している。
「ねぇ、フレイ」
そのフレイの冷めた反応を予測していたらしいサイが、敢えてフレイに声をかける。
訝しむフレイ。眼鏡の奥のサイの表情は隠しきれない喜びに満ち満ちている。
「モントゴメリには、地球連邦外務次官が乗艦しているという話しよ」
サイが少し意地悪に、やや遠まわしな言い方をしたので、フレイはサイが自分の
母親の話しをしているのだと理解するのに、ワンサイクル思考の循環を必要とした。
だが、すぐに
「か…母さんが!?」
先程までのクールな態度が嘘のように、フレイは慌ててイスから跳ね起きると、
むしゃぶりつくようにサイの手を握った。
「ほ…本当に、サイ?」
「ええっ…。ジョアン女史は明日ぐらいには合流できるという話しよ」
フレイの顔が無邪気な子供のようにパッと輝く。
「良かったわね、フレイ」
サイはそんなフレイの幸福を我が事のように喜びながら労わりの言葉をかけ、
フレイは「うん…」と素直に肯いた。

キラは、良い雰囲気になったフレイとサイの様子をじっと見ていたが、
ラクスの告白を聞いて以来、不思議と以前のような嫉妬心を感じることはなかった。
やっぱり私がフレイに憧れたのは、三年前失恋したと思い込んでいたアスランを
忘れたいが為の一種の代替行為だったのかしら。
無論それだけではないにしても、アークエンジェルでフレイと出会ってからの、
キラに対する無情な仕打ちの数々と、彼のコーディネイターに対する偏見が、
フレイに対する幻想を打ち砕き、キラの熱を冷ましている事は確かだ。

「まぁ、あなたはそのようなお優しいお顔も出来ますのね」
その時、まるで図ったかのように、もう一人のコーディネイターの少女が姿を現す。
ラクスの姿を視界に捉えたフレイの顔からスーっと笑みが消えた。
「今の仏面顔も渋くて素敵ですが、先程のような柔らかな笑顔の方があなたには
もっと良く似合いますわよ」
「ラ…ラクス!」
今のラクスの台詞にはキラは全く同感だが、ラクス…いや私たちコーディネイター
の口から出た言葉を、フレイが素直に受け入れるとは思えない。
案の定、ラクスの言葉に、フレイはみるみる不機嫌になっていく。
本物の天然なのか、ひたすら空気の読めないラクスはフレイの変化に気づかず、
或いは気づかぬ風を装って、ニコニコと笑っている。
フレイはラクスに何か言おうとしたが、キラのおどおどした姿が目に入ったので、
チッと舌打ちしたそうな表情をしただけで、結局無言のまま部屋から出て行ってしまう。
「コーディネイターの癖に馴れ馴れしくするな」ぐらいのことは言われるんじゃ
ないかと身構えていたキラは、フレイの暴発が不発に終わったのを見て、
ホッと安堵の溜息を漏らした。


「母さん…」
フレイは恍惚とした表情で窓に手を当てて、予定宙域にモントゴメリが
姿を現すのを今か今かと待ち続けている。
その様は、電車の窓から外の風景を観賞して、瞳を輝かせている園児となんら変わらない。
「ねぇ、フレイって、もしかしてマザコン?」
「ほ…ほら、フレイは幼い頃に父親を亡くして、母子家庭で育ったから…」
思いっきり引き気味のミリアリアに、サイは苦笑いしながらも、何とかフレイを
フォローしようとしたが、マザコンという言葉自体を否定するつもりはないみたいだ。

キラはフレイの狂態を見て、百年の恋を醒ましたのかと思いきや、恋は盲目の方らしく、
「あんなフレイも可愛くていいかな」などと密かに考えて赤面する。
アスランへの想いを再確認して、フレイに対する想いを吹っ切ったつもりだったが、
まだ微妙に未練が残っているらしい。

「大変だ、みんな!!」
その時、フレイの不幸を告げる使者が、カズィの姿を借りて現れる。
「第八艦隊がザフト軍の攻撃を受けている」

895 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/13(月) 13:58
>>フレイ♀
予想はしてたが、やはりパパまで反転してましたか
ラクスとも中が悪そうだし・・・・・・でも、この後の篭絡はどうするんでしょう?
女フレイ様と違って熱くならないタイプみたいだし

896 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/13(月) 14:31
>>895
>フレイ♀
 おまいの書き方だと反転してねえじゃねえかw
ともかくアスランとラクスはうまーく立ち位置変更になってまつな。
これからフレイきゅんはどうなってしまうんでしょうね・・・

897 名前: 流離う翼たち・88 投稿日: 2003/10/13(月) 17:51
 交代で海岸で遊ぶクルー達。子供達はマリュ−の計らいで1日中遊べる事になっており、元気に遊び回っている。ようやく順番が回ってきたキースとノイマンは楽しそうなサイたちを面白そうに見やっていた。彼らは浜辺でビーチバレーをしている。
「いいねえ、子供たちはこうでないと」
「ここまで苦労させましたからねえ。あいつ等も15、6才の子供なんですよね」
「そう、酷い話さ。あんな子供の手を血で汚してるんだからな」
 アークエンジェルという軍艦に乗り、戦っている以上は彼らの手も血で汚れてしまっている。そういう自覚は無いだろうが、彼らの操作で放たれた砲弾は敵兵の命を確実に奪っているのだ。キラだけが人を殺した訳ではない。彼らも自覚が無いだけで人を殺しているのだ。
 キースは子供たちの中にキラとフレイの姿が無い事に気付いた。不思議に思って辺りを見回すと、2人だけ離れたところで一緒に座っているのが見えた。相変わらず子供たちの仲違いは続いているらしい。
「フレイは白のビキニねえ。あのスタイルは15歳とは信じられんな」
「大尉、子供に手を出すのは不味いですよ」
 苦笑混じりに窘められてしまい、キースは慌てて首を横に振る。自分にはロリコン趣味はないぞとばかりに。そして、すぐにまた神妙な顔にもどった。
 キースはどうしたものかと考えると、徐にノイマンを見た。
「どうだい、俺達も加わらないか?」
「良いですね。やりましょう」
「よし、決まりだ。少尉はあの2人を呼んできてくれ。俺も1人連れてくるから」
 ノイマンを2人を呼びにやり、キースは所在無さげに海を見ているナタルに歩み寄った。ナタルは黒い水着に身を包み、藍色のパレオを巻いている。
「中尉、ちょっと良いかな?」
「大尉、なんでしょうか?」
 不思議そうに自分を見るナタルの腕を、いきなりキースは掴んだ。
「た、大尉、何を!?」
「ビーチバレーのメンバーが1人足りないんだ。入ってくれ」
「わ、私がですか!?」
「でなきゃ誘ったりしないでしょう?」
 少し強引にナタルを連れてくるキース。その顔は笑いの衝動を堪えるのに必死という感じだった。今のナタルの顔は焦りと羞恥で慌てふためき、真っ赤になっていたからである。

898 名前: 流離う翼たち・89 投稿日: 2003/10/13(月) 17:53
キースがナタルを引っ張ってきた頃にはノイマンが2人を連れてきていた。明らかにいずらい空気が流れていて、ノイマンが辛そうな顔をしている。
「おお、集まってるな少年少女達」
「バゥアー大尉が集めたんでしょう」
 サイがいささか刺のある声で言い返す。キースは肩を竦めると、ナタルを入れた全員を見た。
「さてと、メンバーは9人。ビーチバレーをやるには十分な人数だ。」
「1人バランス悪いと思うんですけど?」
「1人は交代で審判やる役だ!」
 断言するキースを呆れた目で見る全員。キースは少したじろいだが、ここで負けたりはしなかった。
「では、さっそくチーム分けをするかね。最初の審判は俺として」
「だから、勝手に話を進めないで下さい!」
「なんで、やりたくない。せっかくこれだけの人数がいるのに?」
 問われてサイは返答に詰まった。こうも真顔で返されるとは思ってなかったのだ。トールとミリアリアは特に反対してないし、カズィは自分から意見をいうような男ではない。キラとフレイは顔を背けたままだ。
 だが、ここでキースは珍しい行動に出た。
「なら、こうしよう。上官命令」
「・・・・・・それって職権濫用って気がしますが?」
 キラのぼそぼそとした反論をキースは笑顔で無視していた。
「チーム割りはキラ、サイ、カズィ、ノイマンと、中尉、ミリアリア、フレイ、トールで組もうかね」
「女性は分けた方が良いんじゃないですか?」
「気にするな。カガリがその内来るだろうから、そうしたら男性VS女性の戦いにしようか」
「そんな、これじゃ勝負になりませんよ・・・・・・」
 こちらにはコーディネイターのキラまでいるのだ。これじゃ勝負になるわけがない。だが、キースな文句を言うサイを見たあと、トールとフレイを見た。
「2人とも、負けたら明日は地獄のフルコースだぞ」
「「っ!?」」
 それを聞いた途端、やる気無さそうだったトールとフレイの顔に驚愕と怯えが走った。2人して顔を見合わせ、頷き合う。
「いいか、フレイ、何がなんでも勝つぞ」
「分かってるわ、私達は負けられないんだから」
 突如として団結する2人。どういうわけかは分からないが、キースの言う地獄のフルコースというのが2人にとって死ぬほど嫌な事である事は確かなようだ。団結するトールとフレイのおかげでミリアリアとナタルも仕方なく手を合わせる事に。
「まあ、やるからには負けたくは無いな」
「そうですね」
 キースはそれを見て、サイ達を見た。
「さてと、それじゃ勝負といこうか」
 キースの合図で始められた試合。投じられるビーチボール。そして、戦いが始まった。そして、戦いは予想外の結果に終わったのである。
「・・・・・・なんで、負けるんだよ、キラ?」
「僕に言われても困るよ、サイ」
 そうなのだ。キラ達はナタル達に一方的に敗北したのである。体力的にも運動能力的にも勝っている筈の自分達がどうして勝てなかったのだろうか。キースは悩んでいる彼らを見ると、ナタルを手招きした。呼ばれたナタルにキースはそっと耳打ちする。暫く聞いていたナタルは小さく頷くと、自分のチームに戻った。
「お前達、このまま3セット取るぞ!」
「どうしたんです中尉?」
 いきなりやる気を見せるナタルにミリアリアが不思議そうに問うたが、ナタルは答えてくれなかった。そして、ナタルの指揮を得たナタルチームは圧倒的な強さを発揮して次々にポイントを奪っていき、反対にキラ達はどんどん崩れ出したのである。
「何やってるんだキラ、そのくらい拾えよな!」
「サイこそ、邪魔ばっかりして!」
「2人とも、喧嘩してる場合じゃないだろう!」
 サイとキラがお互いを罵り合い、カズィが止めるが聞く様子も無い。ノイマンは右手で顔を押さえて頭痛に耐えていた。キースはそんな男チームを見て面白そうに腕を組み、女チームを見る。こちらは男チームと違って勝利の喜びに沸いていた。
 トールが受けたボールをミリアリアが素早くトスする。そしてフレイが飛んだ。
「フレイ、いっけえっ!」
「えーい!」
 フレイのアタックが決まり、またナタルチームにポイントが加算されていく。
「やったね、ミリアリア!」
「なんか、フレイと一緒に試合するのもヘリオポリス以来よねえ。懐かしい!」
 掌を打ち合って喜び合う2人。カレッジでは同じテニス倶楽部に所属していただけあって息は合っている。この2人のコンビプレーに男チームは散々泣かされているのだ。結局、この後もチームワークを形成できなかった男チームは惨敗を続けるのである。

899 名前: 流離う翼たち・90 投稿日: 2003/10/13(月) 17:54
 一説によると、男チームの面々はフレイやナタルの揺れる胸に目を奪われ、動く事が出来なかったのだとも言われている。2人ともビキニタイプだからより激しい威力がある。少なくともキースやトールは目の保養に勤しんでいたりする。
 勝負が終わった後、喧嘩寸前の空気を漂わせるキラ達にナタルが強い口調で聞いた。
「お前達、自分達がどうして負けたと思う?」
「それは、サイが僕の足を引っ張るから!」
「何言ってやがる。お前が!」
「いいかげんにしないか、馬鹿者っ!」
 いがみあう2人をナタルが怒鳴りつけた。突然の叱咤にキラとサイは驚いてナタルを見た。
「お前達が負けた原因は、その連携の無さだというのが分からんのか!」
「「・・・・・・・・・・・・・・」」
 キラもサイも黙り込んでしまった。内心では分かっていたのだが、それを口にする勇気は無かったのだ。
「お前達、戦闘でもその様にいがみ合うつもりか。そんな事をしていたら、次の戦いでは死ぬぞ!」
 ナタルに叱られて落ち込むキラとサイ。キースは2人を叱るナタルの凛々しい姿をにこやかに眺めていた。
 これがキースとナタルが企んだ事であった。いがみ合っていては勝てる戦いも勝てない。それを分からせたかったのだ。口だけで言っても分からないだろうからこんな手のこんだ事をしたのだが、果たして何処まで伝わってくれるか。
 この後、キースも加わって遊んでいたのだが、カガリが来た所でキースはそっと場所を離れた。前に散々こき下ろした事もあり、こういう場所で顔を合わせると色々気まずくなってしまう事を気にしたのだ。
 離れた所で腰を下ろしたキースの前に、冷えたドリンクが差し出された。
「お疲れさまでした、大尉」
「え、あ、バジルール中尉? あ、ありがとう」
 少し驚きながらキースはドリンクを受け取った。ナタルは微笑むとキースの隣にそっと腰を下ろす。
「正直、大尉がどうして子供達のことをあそこまで気にかけているのか、よく分かりません。ですが、何か意味があるのでしょう?」
「俺は、子供をなるべく戦争に染めたくないだけさ。戦争は大人の仕事だよ」
 キースはドリンクを口に含んだ。そして少し驚く。オレンジ味だったのだ。
「・・・・・・中尉、何故にオレンジ?」
「お嫌いでしたか?」
「いや、そうじゃないがね」
 ちょっとチョイスが意外だっただけだよとは口にせず、キースはドリンクを口に含んだ。

900 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/13(月) 19:52
>>翼
キース(;´Д`)ハァハァ

901 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/13(月) 20:29
>翼
フレイ様ついに・・・ビキニv
半舷上陸種ではなかったからいいなーw しかしトールとフレイ様本編では
仲悪いのにキースのおかげですっかりナカマですな。ミリィともばっちり協力したから
本編のようなギクシャクはなしか・・・さてこの和気あいあいの艦でどうなることやら。

902 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/13(月) 20:57
>>901
もしもこれで撃墜なんてあった日には(((((;゜Д゜)))))タスケテヨゥコワイヨゥ

ともあれ、流離う翼たちの作者さま、いつも愉しんでおります!ナタルがいい感じでウレシィ

903 名前: 流離う・作者 投稿日: 2003/10/13(月) 21:44
感想ありがとうございます。何時も励みにしてます。
でも、前から思ってたんですが、撃墜されるというのはどっちの事を言ってるんでしょうか。フレイ、トール?

あと、ギクシャクはなし、という事はないです。もつれるのはこれからですからw

904 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/13(月) 22:16
>>903
最後の休息というわけですなw

905 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/13(月) 22:45
乙!しかしフレイとトールの絡みがおおいんだな・・・
どうなっていくやら。個人的には本編では「優しい」のみですまされた、
フレイ様がキラに惹かれていく描写が気になるところだが。
しかしナタルンいいなぁw

906 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/14(火) 00:11
>>フレイ♀
乙ー。毎回楽しみにしています。
男フレイ様を想像すると、何故かシュートカットのクロノクルを想像するオレ・・・

907 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・11−1 投稿日: 2003/10/14(火) 00:24
本来、消息不明となったラクスの捜索としてこの宙域を目指していたヴェサリウスが、
第八艦隊の先遣隊を発見し、クルーゼの指揮の元、急遽方針を変更し攻撃してきた。

「まったくしつこい奴だぜ。あのクルーゼの野郎は…」
クルーゼに何か因縁のあるらしいフラガがイライラした口調で格納庫へと向かい、
パイロットスーツに着替えたキラもそれに続く。
「キラっ…」
後ろから呼び止められたキラが後ろを振り返ると、そこにはフレイが立っていた。
「フレイ……」
意外な来訪者にキラは戸惑う。キラがコーディネイターだと知って以来、フレイ
からキラに話しかけてきたのはこれがはじめてだ。
「だ…大丈夫だよな」
フレイは縋るような目でキラに問いかける。よっぽど母親のことが心配なのだろう。
この船に来て、こんな不安そうなフレイの姿をキラは見たことがない。
「大丈夫よ、フレイ。私がきっと何とかするから」
今までのフレイのキラに対する態度を考えれば、ここにきてのフレイの頼みは
少し虫が良すぎたかもしれない。
とはいえ、フレイの哀願を突っぱねるにはキラはお人好し過ぎた。
結果、キラは今の状況を深く吟味せずに、フレイの頼みを安請け合いしてしまう。
「ありがとう…」
ほとんど無意識だろうがフレイがキラの手を握る。
キラの頬が少し赤くなったが、流石にもう以前のようなときめきは感じられなかった。
ただ、それでもキラにはキラなりの現実的な計算があった。
ここでフレイのお母さんを助けられたら、少しはフレイの私に…ううん、
コーディネイターに対する態度も変わるかも知れない。
今更キラも、フレイと恋仲になりたいとは思わなかったが、同じ船で生死を
かけて戦っている仲間同士で隔離を抱かれたのではあまりに悲しすぎる。
今回の件が…共解への最初の一歩になれたら…キラはそう願っていた。
だが、キラは何も気がついていなかった。
仮にフレイの母親を助けることに成功して、フレイに認めさせたとしても、
それは単にコーディネイターとしての能力を切り売りしただけの事であり、
フレイのキラ観には何の影響も与えないのだということを。
ましてや、もしフレイの母親を助けるのに失敗したら、その時に待っているのは…。


ストライクに乗り宙域に駆けつけたキラの目の前で、瞬く間にバーナードとローが
アスランの乗るイージスガンダムによって撃沈される。
アスラン…。
優しかった旧友の無情な所業にキラの胸が詰まったが、今は一時的にその想いを
振り払った。
守らなければ、せめてモントゴメリだけでも。約束したのだから…。
モントゴメリに群がるジンの姿を見て、キラは慌ててモントゴメリに
駆けつけようとしたが、その前にストライクの姿を発見したイージスが立ち塞がる。
「キラっ!!」
「邪魔しないで、アスラン!今はあなたの相手をしている暇はないの」
キラはイージスを振り切ろうとしたが、アスランは執拗にキラに絡みつき、
仕方なくキラもイージスと交戦する。

「何をやってるんだ、あいつは…」
イージスを振り切れないストライクの姿に、フレイの端整な顔が焦りに歪む。
キラと別れた後、艦橋に乗り込んだフレイは、サイに頼み込んで無理やり
艦橋に場を確保してしまう。
マリューが「今は戦闘中です。非戦闘員は艦橋を出て!」と叫んだがフレイ
は無視した。
艦橋のクルーは目まぐるしく変わる戦況に対応するのに手一杯で、とても
フレイを追い出すのに裂く余剰人員の余裕は無い。
戦況は素人のフレイの目から見ても極めて不利だった。
アークエンジェルはヴェサリウスの相手で精一杯。ストライクはイージスを
振り切れず、頼みの綱だった前回大車輪の活躍をしたフラガのメビウスは
被弾し帰艦している。
既に戦闘力を失ったモントゴメリは、今まさにジン達の生贄に処されつつある。
このままだと母さんが死ぬ。
追い詰められたフレイの頭に天啓のような考えが閃いた。
「フレイ!?」
今まで退去命令を無視し続けたフレイが、凄い勢いで艦橋から飛び出していった。

908 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・11−2 投稿日: 2003/10/14(火) 00:26
「あら、どうなされたのですか?お怖い顔をなさって」
フレイは無表情のままラクスの監禁されている扉を開ける。
脱走の常習犯のラクスだが、戦闘中とあって流石に大人しくしていたみたいだ。
「来い!」
フレイは一言そう呟くと、何の説明もせずに乱暴にラクスの腕を掴んだ。

突然、艦橋から消えたフレイ。
次にサイが艦橋でフレイの姿を見かけた時、何故か彼の隣にはラクスが控えていた。
「フ…フレイ?」
フレイはラクスを引き摺ったまま、鬼気迫る表情でこちらに近づいてくる。
「サイ、今すぐ通信を敵の艦に繋げ」
「フレイ、あなた一体何を言ってるの?」
「そして、ラクス・クラインがこの艦にいると伝えろ!
早くしないと母さんが死ぬ!」
サイはようやくフレイのやろうとしている事を諒解した。
フレイはラクスを人質にして戦闘を停止させようとしているのだ。
「艦長!?」
サイは指示を仰ぐようにマリューの名を叫んだが、マリューは顔に軽い驚きを
貼り付けたまま無言だった。
あまりの展開の突飛さとフレイの策の悪辣さに、決断を下していいのか否か、
咄嗟に判断がつかないのだ。
「どけ、僕がやる!」
フレイは軽蔑し切った目でマリューを睨んだ後、サイを押しのけると、
インカムを掴んだ。
だが、マリューの逡巡が取り返しのつかない事態を引き起こす。
既に戦闘力はおろか航宙能力すら失われたモントゴメリにヴェサリウスの
主砲が炸裂し、フレイの見ている前で艦が爆発炎上する。

「か…あ……さ………ん」
フレイはインカムを掴んだままの態勢でガックリと膝を落とす。
「フレイっ!」
サイが泣きそうな目で必死に崩れ落ちるフレイを支える。
ヴェサリウスとジン数機がこちらに近づいてくる。
ナタルはそれを確認すると、焦点の噛合わない虚ろな瞳をした
フレイからインカムを奪い取って全域周波数で通信を飛ばし、
フレイの案を引き継いで実行する。
ラクス・クラインを保護しているというナタルの放送に、
敵艦ヴェサリウスに衝撃が走る。
当初の目的であるラクスの所在を確認したクルーゼは、内心で何を思ったかは
分からないが、とりあえずの攻撃中止を命令する。
フレイは自分の母親の生命を救うことは出来なかったが、
彼の案はアークエンジェルのとりあえずの危機を回避する事には成功した。
今の廃人然としたフレイには何の慰めにもならないことだが…。

「卑怯な…」
戦闘を中止したストライクにイージスからの通信が入る。
その声は強い嫌悪と激しい怒りに満ちている。
「救助した民間人を人質に取る。そんな卑怯者と共に戦うのが、お前の正義か!?
それが俺を敵にまわしてでも守りたかった、お前の真実なのか、キラ!?」
「ア…アスラン」
キラはアスランの弾劾に、まるで自分が犯した所業のように身を縮こませる。
キラには何も言い返せなかった。
AAの行動は、ある意味アスランが受けた衝撃以上に、キラに強いショックを与えた。
キラの倫理観の指針の針が再び大きく揺れ動く。
「彼女は取り返す、必ずな!」
アスランはそれだけ宣言すると、ヴェサリウスへと帰艦していった。

アスランの姿が消えると同時に、今の人質事件以上の衝撃がキラに襲い掛かる。
守れなかった。約束したのに…。
フレイは元々キラを…というより、コーディネイターそのものを嫌っていた。
そして今、自分の目の前で大切な母親をコーディネイターに殺されてしまった。
艦に戻ったキラをフレイは許してくれるのだろうか。キラには自信がなかった。

909 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/14(火) 10:38
>>キラ♀
乙です。
投下毎回楽しみにしておりまつ。
ふ、ふれい様ぁぁ。・゚・(ノД`)・゚・。

910 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/14(火) 17:58
>>キラ♀
男フレイ様がすげぇドキュンでオモシロイw

911 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/14(火) 18:44
>キラ♀
フレイきゅん…これからどうなっちゃうの?(´Д⊂ヽ

912 名前: 流離う翼たち・91 投稿日: 2003/10/14(火) 18:45
 日もだいぶ翳ってきた頃になって、ようやく補給部隊が到着した。ストークス中尉率いるVTOL型輸送機の編隊が先導を勤めるフラガの案内の元、次々に降下してきたのである。降下した補給部隊はさっそくアークエンジェルに補給物資を搬入し始めた。普段は仕事の無い主計兵はこういう時は誰よりも忙しく。手にボードを持って走りまわっている。フレイも例外では無く、物資の確認と搬入作業に追われていた。
 補給物資の一覧を見てマリュ−が驚いた声を上げる。
「各種ストライカーパックにストライク、スカイグラスパーの予備部品。弾薬に食料、補修資材まで、よくこれだけの物を」
「正直、アラスカは我々を見殺しにしたのかと思っていましたが」
 ナタルの上層部を責めるような言葉に、ストークスは首を横に振った。
「そんな事は無いよ副長。アラスカはまだ君たちを忘れていはいない」
「そうですか」
 ナタルはストークスの言葉を信じる事にした。実際そうでもなければこれだけの物資を送ってくれる訳が無いだろう。だが、何よりも1番驚いたのは今降ろされている巨大な兵器である。それを見ていたフラガが呆れかえっている。
「おいおい、こいつは・・・・・・」
「はい、GAT−102Bデュエルです。ヘリオポリスで作られた試作1号機は奪われましたが、モルゲンレーテから受け取ったデータを元に改良され、アラスカで生産された機体ですよ」
「じゃあ、アラスカではMSの量産が始まってるのか?」
「本格生産型の開発も進んでいますが、とりあえず当面の戦線維持の為にXナンバーを改良して生産することを決定したんです。こいつはその内の1機で、経験豊富なアークエンジェルに配備するようにと回された機体ですよ」
 ストークスは自身満万で答える。だが、フラガは良い顔をしなかった。
「ひょっとして、こいつに俺が乗れって言うの?」
「少佐が嫌でしたら、バゥアー大尉でも構いませんが?」
 ストークスに問われたフラガはしばし考え、つまらなそうに顔の前で手を振った。
「やっぱ止めとくわ。俺にはMSパイロットは似合わないよ」
「あら、少佐はスカイグラスパーから降りたくないだけじゃないですか?」
「あ、ばれたあ?」
 マリュ−の突っ込みにフラガは頭を掻きながら笑い出した。結局この男は航空機が好きなのだ。空の男とでも言うのだろうか。だが、それはキースにも言える気がする。あの男もやはりデュエルに乗ることを拒みそうだ。
 格納庫に降りてきたキースもまた、マリュ−の予想通りデュエルへの搭乗を拒んだのである。現実問題として機種転換訓練をしている暇が無い。この機体は暫く搭乗者無しで放置される事になるだろう。
 だが、キラが乗って確かめた所によると、このデュエルはストライクに使われていたOSよりもだいぶ改良されたOSが搭載され、機体のレスポンスもかなり良くなっていると言う。兵器としての完成度それ事体が試作1号機よりも向上しているのだろう。量産型なので性能と品質が安定したというところか。
 デュエルから降りてきたキラにフラガが問い掛けた。
「どうだキラ、デュエルは?」
「悪くないですね。とても乗りやすいです。ただ、OSには改良の余地が大きいですね」
「まあ、そいつはおいおい何とかするさ」

913 名前: 流離う翼たち・92 投稿日: 2003/10/14(火) 18:46
 フラガとキラが話している。それをストークスとマリュ−、ナタルが見上げていた。
「彼が、報告書にあったコーディネイターですか?」
「ええ、そうよ。彼のおかげで私達は生きて来れたわ」
 マリュ−は少しきつめの視線でストークスを睨んだ。マリュ−はあの常に悩み、苦しんでいる少年を全力で守るつもりであった。少なくとも自分の力の及ぶ限り。
 だが、ストークスは別にマリュ−が警戒しているような事を言うつもりは無かった。
「そう警戒しないで下さい。私は別に、彼をどうこうしようとは思っていません。ただ、艦長の耳に入れておきたい事がありまして」
「・・・・・・なに、かしら?」
「キラ・ヤマト少尉の処遇について、上層部の意見が割れています。コーディネイターだという事で例外を認めず、早々に処分するべきだという勢力と、実際に功績を立てているのだから、このまま兵士として受け入れれば良いとする勢力にです。どちらに転ぶかはまだ分かりません」
「そんな、彼は我々の味方だぞ。上層部は何を考えている!?」
 ナタルが彼女らしくも無く怒りを露にしている。ヘリオポリスの頃はあんなにキラを乗せるのを嫌がっていたのに、いつのまにか彼女の中にもキラに対する戦友意識が芽生えていたのだ。
 ストークスは激高するナタルを手で制した。
「わかっている。そんな人ばかりじゃないから、こうして私が来たんだからな」
「・・・・・・信じても、良いんだな。アラスカを?」
「ハルバートン提督のような人は、アラスカにも居るという事だよ」
 ストークスに答えに、ナタルは不承不承引き下がった。ここで補給部隊の士官と言い争っても意味は無いし、信じるしかないのだ。

 ストークスの補給部隊は帰っていた。ヨーロパ方面軍に対する自分達の動きの伝達を頼んだのである。ブカレストに向うという方針を。それを聞いたストークスはクライスラー少将なら大丈夫だと太鼓判を押してくれた。今はそれを頼りにするしかない。
 ストークスが残していった現在の詳しい戦況を纏めたナタルは、それを投影した。そこに映されたものは、まさに絶望的なものだった。
「そんな、これだけの大軍がヨーロッパに集結していたなんて」
 マリュ−が真っ青になって震えている。
「狙いはバイコヌールだろうな。だが、連合もこれだけの部隊を集めてる。こいつは大きな作戦があるな」
「ザフトはジブラルタル基地がありますからね。あそこを拠点にすれば圧倒的な大軍を展開できるでしょうねえ」
「おいおいキース、何他人事みたいに言ってるんだよ。下手すりゃ俺達も戦うんだぞ」
 何も気にしていないようなキースの物言いにフラガが呆れる。だが、キースはフラガを見て首を傾げた。
「何を言ってるんですか少佐。どのみち敵とはぶつかるんです。それに、わざわざユーラシアが補給部隊を回してくれたのは、なんでですかねえ?」
「まさかっ!?」
「そのまさかでしょう。俺達が敵部隊にそれなりの打撃を与えてくれる事を期待してるんです」
 キースは作戦図を指で指した。
「俺達が突破しようとしてるギリシアには有力な敵部隊が居ますが、有力と言っても数事体は大した事は無い。広い戦線にMSを展開させているだけです。戦車主力のヨーロッパの部隊にはキツイでしょうが、アークエンジェルとストライクを擁する俺達なら突破は不可能じゃない」
「つまり、ユーラシアの部隊は我々に補給を与えた見返りに、敵に打撃を与えろと言っていると?」
「それ以外に取りようがある?」
 キースの問い掛けにナタルは沈黙した。確かに大西洋連邦と仲の悪いユーラシアが補給部隊を回してくれたというのはいささか都合がよすぎる。ましてデュエルまで届いているのだから。
「ストークス中尉は、その辺りを知っていたと思いますか?」
「どうだろうね。彼は大西洋連邦所属だったようだし、その辺りの事情は知らなかったんじゃないかな」
 キースはストークスを擁護した。補給部隊の指揮官が、それも対立する勢力の士官にそんな情報が与えられるとは思えなかったからだ。
 だが、ギリシアを突破するとなるとそれなりの損害を覚悟する必要がある。当分はフラガとキースが交代で哨戒に出なくてはいけないだろう。パイロットの負担が増える事が予想された。だが、突破しなくてはならないのだ。損傷箇所の修理もしないといけないし、機関部などの本格的な点検も受けたい。その為には友軍の拠点に行くしかないのだ。

914 名前: ある苦労人の記述・14 投稿日: 2003/10/14(火) 20:06
>>729-731 >>742-745 >>775-776 >>796-797 >>825-826

@月▼日
サイ・アーガイルから話を聞くため、様々な手を使ってみたが、
全然取り合ってくれなく、困っていたところにKより連絡が来た。

「サイに話を聞けなくて困っているようだね。
 しかし僕の手にかかれば彼の固い口を開けるのも簡単だ。
 だってあいつはドリーミンングな男だからね。
 おっと口がすべったかな?
 まあ僕の力が必要ならいつものところに頼むよ。
                                  K」


――あいかわらずふざけた奴だ。
確かに魅力的な提案だが、何故奴はこちらが
サイ・アーガイルと接触をもったことを知っているんだ?
・・・・・まさかKの正体はサイ・アーガイル?!
いや、彼は金では動かなかった――
彼の身近な人物かもしれない。それとなしにそっちも
調べておくか。
とりあえず、今回はKの申出に乗っておくことにする。

――しかし・・・・・・ド リ ー ミ ン グ って何!?


@月ν日
アスラン・ザラより連絡を受ける。
なんとカガリ・ユラ・アスハと謁見出来るよう
手配してくれたらしい。
オーブにおける王族の唯一の生き残りである彼女は
戦後、オーブ代表として表舞台に立った。
その若さから彼女が代表に就任することに色々非難等も
があったがその性格からくる実行力とカリスマ性、
そしてその脇を固める優秀な人材もいたおかげもあり、
現在はそのような意見も少なくなった。
そんな彼女だから、まず接触するのは無理だと思っていたのだが・・・
思わぬ幸運だ。さっそく話を聞いてくることにする。


証言10:カガリ・ユラ・アスハの場合
――大体私は影でコソコソこんなことすることは嫌いなんだが
アスランがキラのためにどうしてもって言うから話すんだからな!
分かったな?

――そのフレイってコがキラと付き合っていたっていうのは
本当だ。ただ、たしかに美人だったが、性格が良いとは思えなかった。
キラと一緒にいると、すごい顔で睨んできたり、妙に色気出して
キラに迫ったりしてたな。
何でキラはあんな女と付き合ってたのか疑問だった。
そういえばサイってやつと3人で大喧嘩してたこともあったか?
「私、夕べはキラの部屋に――」なんて聞いているこっちが
恥ずかしかったぞ。


キラ・ヤマトとカガリ様(一応敬称付けないといかんだろう)と
結構仲が良かったことは回りくどい調査により判明している。
それから考えてみるあたり、フレイ嬢はカガリ様に嫉妬していたのか?
――まあ、ありえない話ではないな。


――オイ、ところで私の国でこんな勝手なことを許してやってるんだ。
調査が終わったら私にも見せてもらうからな。


はぁ!?
いや・・・しかし・・・なんで?


――い・いや、別にキラが付き合っていた女がどんな女だったのか
興味があるとかそういうことじゃなくて・・・・
そ・そう、姉として落ち込んだままの弟のことを放って置けない
からであって、ほ・本当に他意はないからな!!


・・・・・・・・・・・・・あ ん た も か !!

915 名前: ある苦労人の記述・15 投稿日: 2003/10/14(火) 20:09
@月∞日
サイ・アーガイルの方から話があると接触してきた。
どう口説き落としたかは知らないが、Kに感謝しておこう。
サイ・アーガイルはヘリオポリス崩壊時よりAAに乗り込み、
クルーとしてあの激戦を潜り抜けてきた学生組のリーダー的
存在であり、フレイ嬢がキラ・ヤマトの前に付き合っていた
人物である。
(戦後もAAに残り、軍人として生きる道を選んだようだ。)
フレイ嬢と極めて近い関係であった彼ならば、かなりの話が
聞けるはずだ。


証言11:サイ・アーガイルの場合
フレイとは家族ぐるみの付き合いで、婚約同然の関係だった。
まあ親が勝手に決めた話だったけど、フレイは喜んでいたし
俺も満更じゃなかったから。
でも色々騒がれるのは嫌だったから周りには秘密にしていたけど。

でも、あの時ヘリオポリスが崩壊して、フレイの親父さんが亡くなってから、
すべてがおかしくなってしまったんだと思う。
結局、俺はあの時彼女の心をちゃんと助けてあげることが出来なかった――
彼女が父親が死んでずっと苦しんでいたことに気づいてあげられなかった。
うわべの言葉だけしかかけていなかったのかもしれない・・・・
――だから、多分フレイはキラに救いを求めたのだと思う。

最初はキラがストライクのパイロットだから、父親を殺したザフトを倒せる力を
持っていたから、キラに近づいたんだと思った。
だって彼女の行動はあまりにも突然でどこか嘘めいた感じがしたから。
それなら俺がストライクを動かせればフレイが帰ってきてくれるんじゃないのか?
そんな風に考えてしまって――結局余計無様な姿を晒してしまったけどね。

それ以降は、なるべく二人の関係を気にしないようにしようとしたけれど、無理だ
った。どうしてもキラと話す時はぎこちなくなってしまってね・・・。
ただ、少し離れて二人が一緒にいる姿を見ていて気付いたんだ。
どこか作られたようなフレイのしぐさの中に―彼女自身は気付いて無かったみ
たいだけど―たまにキラのことを本当に愛しそうに見ることがあるって――
そしてそれが段々と多くなっていったとき、俺は思った――
彼女はキラのことが本当に好きになったんだなって。
俺と一緒にいた時にはあんな表情を見たことがなかった・・・・
だから二人のことを応援してあげなきゃって思った矢先、
トールが死んで、キラも行方不明になった。

あの時フレイは俺にすがってきて――冗談じゃないと思った。
フレイはキラを失った悲しみを誤魔化すために必死で―別に誰でも良かったんだ――
俺のことなんかもう見てなかった。
それでつい感情的になってしまって突き放してしまったんだけど。
でもその後の彼女は見ていられない状態で・・・・
そんな彼女にどうすることも出来ずにいて――
そして彼女は異動になった―――

異動になったフレイが何故かザフトの捕虜になっていたときはビックリした。
ただ、必死に彼女を助けようとするキラを見て少しほっとした。
帰ってきた後のキラはラクスさんとすごく仲がいい感じで――
もうフレイのことなんてどうでもよくなっていたんじゃないかって疑っていたから。


フレイには幸せになって欲しかったから――
キラならそれが出来ると思っていたから――
なのに―――あんな結末だなんて――――あんまりだ――――


彼の証言から大体今まで調べ上げたことの整合性が取れるような気がする。
帰ってからこれを元に整理し、完成させることにしよう。

しかし、言い終わった後、泣きそうな顔をしている彼を見ながら
「いい人」ってこんな奴のことを言うのかとふと思ってしまった。
なんか 親 近 感 が 沸 く な ぁ ・・・・

916 名前: ある苦労人の記述・作者 投稿日: 2003/10/14(火) 20:14
すみません・・・・
週末東京に行ってたのでサボってました_| ̄|○

なんか少し見ないうちにあっというまに900台突入していて
びっくりです。
私と違い、他の方々は凄い方ばかりでただ驚愕と尊敬する日々です。


で、次回ついにあの方がフレイ様を語る!?(多分)
(1,000いかないうちにさっさと完結させなければ・・・・・)

917 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/14(火) 20:47
>翼
デュエル、キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
予想通り、フラガの兄貴とキースは機種転換を拒みましたなw とするとパイロット候補は、
◎本命カガリ(実戦経験アリ)
○対抗トール(頑張れ男の子!)
△注意フレイ様(だってフレイ板だし)
というところですか。早く動くところが見たいーw

>苦労人
なんとサイはボスキャラではなかったのですな。つーか、いい人だw
苦労人も大いに共感するところがあったようで・・・。
とすると真のラスボスは K 様 な の で す か ! ?

918 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/14(火) 20:51
>流離う
ゴクッ・・・フレイたまORトールの機体はおそらくデュエルか・・・
これでブリッツとか言われたら間違いなくフレイたまは乗りませんな。いやそう信じたい。・゚・(つД`)・゚・。
しかしいつもながら、大河ドラマみたいに壮大ですなあ。今までは本編+キースで済んでいたのが
航海ルートまで変わると大変ですね。でも面白いでつ。

>ダコ(ry
なんかサイの回想で、改めて話を整理されたら泣けてきますた。
おかしいなあ、ギャグのはずなのになあ(´Д⊂ヽ
いよいよ、クライマックスですね!

919 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/14(火) 21:26
>917
カガリたんが本命?
でもさ・・・「マケノケイケンデs(ry」
ここはトールを推したい。

920 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/14(火) 23:06
承前/ボアズ編:>>748-755/プラント打撃戦1:>>788-791/2:>>847-851


「あれは……紅い、ストライク?」

 レイダーのハンマーを回避しつつ、フリーダムのコンソールに流れた表示を読み取るキラ。
 一瞬、その機体がこちらを振り向いたように思うが、気のせいだろうと自分を納得させる。何より、しつこく挑みかかってくる黒い“G”兵器に、もはや躊躇している余裕は無いと思い知らされているのだ。

「悪いけど。……ごめん」

 脳裏に描かれる水面と、跳ねて弾ける種のイメージ。
 キラの瞳から、表情が消えた。
 “ミーティア”の各所に埋め込まれているミサイルポッドをフルオープンし、普段は敵MS隊に向けて広域に発射するそれを、並列計算した数十通りのランダムパターンを仕込んでただ1機のレイダー目掛けて全弾発射する。

「おわああああああッ、くそ、やられるかよゥ!」

 対するクロトも、薬物とインプラントで強化された知覚力、演算力でキラの攻撃を躱しきれないことを判断した。となれば反応も素早い。瞬時にレイダーをMA形態に変形させ、機体各所に内蔵された機関砲でミサイルを迎撃しながら錐揉み飛行で“ミーティア”から離れていく。それでも食い下がる何発かが至近で爆発するが、その程度はTP装甲に任せておけば問題ない。

「…………!」

 レイダーの機動力を使いこなす敵パイロットの実力に、キラは内心でかなり動揺した。確実に撃墜するつもりで浴びせたミサイル弾を、不完全とは言え凌いでくるとは思わなかったのだ。それでもレイダーを自機から追い払うという、最低限の目的は達したことになる。

「くそッ、間に合うのか?!」

 アスランの“ミーティア”は、フォビドゥンに加えてカラミティの介入を受け、身動きが取れそうにない。別方向から味方機――フラガ少佐のストライク、ディアッカのバスター、カガリのM1が接近しているが、撃ち込まれた核ミサイルを迎撃し切れるかの保証は無い。
 何より、彼らに向かっているのは地球軍の紅いストライクなのだ。あれも3機の“G”兵器と同等の実力を持っているのだとしたら――。
 背筋が凍るのを感じながら、キラは全速で“ミーティア”のバーニアを噴かした。

921 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/14(火) 23:07
「来るぞ。用意はいいな、ガングロ坊主、お嬢ちゃんッ!」
「グゥレイトに任せてくれ、おっさん!」
「お嬢ちゃんって言うなッ!」

 キラとアスランの“ミーティア”さえすり抜けてきた核ミサイルを、天頂方向から狙う“エンディミオンの鷹”ことムゥ・ラ・フラガ。随伴する2機に向けて軽口を叩いて見たが、どうやら少年少女2人とも余裕は充分あるようだ。これなら回避行動を取らないミサイルを撃墜するのは、比較的容易いとも言える。

「待ったおっさん、1機、何か来てるぜ?」
「何だって?」
「紅いストライク? ……私が、行く! 少佐たちは核ミサイルを!」

 フラガが止める間も無く、M1の進路を変えるカガリ。その先には、核ミサイルを追うように向かってくるストライク・ルージュが見える。

「おい、アイツ1人で大丈夫なのかおっさん!」
「おっさんじゃねえ! ともかく、ミサイルを潰すのが先決だ。援護はその後、考える!」

 タイミングを合わせて、バスターの対装甲散弾砲と、ストライクのビームライフル連射が核ミサイルに降り注いでいく。先ほどの“ミーティア”による迎撃ほどでは無いが、核ミサイル群は次々と撃ち抜かれ、プラントにたどり着くことなく宇宙に散っていった。

「ああッ?」
「しまった!」

 だが、砲撃と誘爆の中からまだ3本、生き残った核ミサイルが突き抜けて行く。
 天頂方向からの阻止限界点ギリギリで狙撃したストライクとバスターでは、もう迎撃が追いつかない。

「ッ、このおおおおおおっ!」

 もちろん、紅いストライクに向かったカガリのM1も、である。
 自分が火力を減らすために釣り出された。そう思い込んだカガリは感情のままにM1を敵機に向けた。その機体が敵味方識別信号を出していないことなど、まるで眼中に無い。

「!!」

 だが、それでも明確にこちらに向けられたビームライフルの銃口と、そこから放たれる鋭気を感じ取ることはできた。無茶に突っ込み過ぎた! そう考えるより早く身体が反応し、M1を紅いストライクの射線上から回避させようとする。

「カガリっ!!」

 その光景は、追いついてきた“ミーティア”からも見えた。幾らキラが叫ぼうが、もう間に合わない。1つ、2つ、3つと、紅いストライクがビームライフルを連射した。

922 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/14(火) 23:07
「何でこっちに来るのよ、この馬鹿ッ……!」

 ストライク・ルージュのコンソールが、オーブ軍のMSであるM1の接近を告げる。それを確認したフレイは。歯噛みしながら呻いていた。
 もう手段を選んでは居られない。体力も精神力も、とっくに限界は超えている。もともとフレイは射撃にもあまり自信が無く、核ミサイルへの命中率を上げるためビームライフルの出力を最大に設定していた。このままM1がこちらと戦うつもりなら、射線上に飛び出て来るのなら。機体ごと核ミサイルを墜とさなくては、ならなくなる。

「……頼むから、逃げてッ!」

 祈りながら、スコープを引き出して遠距離狙撃モードを起動する。
 天頂から進入してきたストライク、バスターの2機が大方の核ミサイルを撃破してくれたおかげで、残っているのはあと3発だけ。なのに射線の上にはM1の機影――。

「ッ。当た、れええーーーーーーッッ!!」

 OSが3発のミサイルをロックオンしたのを確認し、一瞬ためらってから、フレイは最後の力を振り絞ってトリガーを引き込んだ。その想いに機体が忠実に応え、両手で狙撃モードに構えるビームライフルを1つ、2つ、3つと連射する。

「うわ、わぁッ?!」

 その一瞬、フレイのためらいがカガリの生死を分けた。ギリギリで回避行動に移ったM1の傍を、グリーンの火線が掠めていく。エネルギーの余波が、M1の右腕をライフルごともぎ取っていた。AMBACも遅れていたため、あと一瞬ストライク・ルージュの射撃が早かったら、今ごろ機体は火球に変えられていただろう。

「カガリっ、……よくも!」

 急行した“ミーティア”が、フレイのストライク・ルージュを正面の射界に捉えた。
 ロックオンした時、その機体が敵味方識別信号を出していないことに、戸惑うキラ。
 ゆっくりと、こちらを振り向く紅いストライク。その瞬間、その背後で立て続けに3つ、核の華が激しく咲き誇った。

「あっ……?」

 不覚にも幻惑されるキラ。
 ふと、紅いストライクが微笑んだような錯覚を覚える。あれは自分の魂を奪いに来た死神なのか――? もしここで次の一撃を撃たれれば、キラとフリーダムは“ミーティア”ごと爆砕され、宇宙の塵に還元されていただろう。

923 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/14(火) 23:08
 だが、フリーダムは撃たれなかった。
 千載一遇のチャンスに紅いストライクは何もしては来ず、ただフリーダムの眼前で力無く遊弋していた。

「何で、撃って、こないんだ? あの、紅いストライク……地球軍じゃ、無い?」
「キラ。やっと、逢えたの、に……。私、バカみたい。もぅ、うご、けない、よ」

 半ば惚けたように、紅いストライクを見つめるキラ。
 何も強化を受けていないナチュラルの少女の限界など、とっくに超えてMSを駆り続けた結果、フレイも通信回線を開くことさえままならなず、ただフリーダムと“ミーティア”を見つめることしかできなかった。

「何をモタモタしてる、フリーダム、ジャスティスッ!」
「やああああッ、ああああっ?!!!」

 そこに天底方向から、ザフト軍のデュエルが介入してくる。因縁のフリーダムではなく、紅いストライクを狙って乱打されたビームライフルは、回避行動を予測したのか威嚇だったのか、どれも機体を掠めるだけに終わった。
 デュエルを駆るイザークとしても、最初から当てようという気があまり無かったか、それ以上の追撃はしない。

「なッ、何をするんだッ?!」
「ジェネシスが来る! さっさとこの宙域から離れろッ!!」
「じぇね、しす?」

 思わず反駁したキラへの返事代わりに、わざわざデュエルが全周波通信を使ったことが、イザークの言葉の真実性を裏付けている。
 2機の“ミーティア”も、破損したカガリ機を保護したストライクとバスターも、地球軍のダガー隊、ピースメーカー隊、3機の“G”兵器も、ストライク・ルージュのコクピットで朦朧とした意識を辛うじて繋ぎとめているフレイも……ゆっくりとミラージュ・コロイドの衣を脱ぎ捨て、PS装甲に彩られていく巨大なパラボラアンテナを思わせる超兵器の姿を、初めて目の当たりにすることとなった。

「なに、あれ……すご、く、嫌な、感じ」

 力無く、呟くフレイ。
 すぐに彼女は、己の直感の正しさを嫌というほど、思い知らされることになる。

924 名前: ルージュルート作者 投稿日: 2003/10/14(火) 23:09
プラント攻防戦編・・・・・・終わりませんでした_| ̄|○
いえ、このエピソードでのフレイ様の主な出番はちゃんと終わってるのですが。
この後、ちょっとナタルが頑張る予定です。これは割と日を置かずに出せる、はず。

少しずつですが、フレイ様以外にも本編と違いが出てきました。
いろいろ書きたいシーンもあるのですが、なにぶん遅筆なのは大目に見てください。

>翼〜
ヨーロッパ編に入ってから、がぜん面白くなってきたかと思います。
フレイ様の水着ハァハァ。
しかしこの展開・・・まさかユーラシア軍、AAを囮にオデッ(ry

>苦労人〜
私もサイの描写にホロリときました。ほんとイイ奴だよ、サイ。
そしていよいよクライマックス! ダコ(ryと「K」運命の対面!w
個人的にKの正体に思うところ大なので、期待して待ってますw

>キラ♀フレ♂
男フレイ様のマザコンっぷりがステキですw
しかし、この立場だとサイが報われない恋をする美少女に……!
ラクスも女の子のままなので、まさかフレイ様を巡って恋の鞘当て?(違

925 名前: 穏やかな日々 投稿日: 2003/10/14(火) 23:36
いつも読む側でしたが、勇気を出して投稿してみます。
フレイ様への愛でがんがります。短編ですが。

。 。

穏やかな日。

「お前、フレイ・アルスターが好きなんだろ」

昼下がりの食堂、その一角。
言葉をオブラートに包むという事を知らない友人が、
今日ばかりは恨めしく思えた。
あまりに唐突で、否定の言葉を探す暇もなく、急速に頬が火照るのを感じる。

「あ、赤くなった。やっぱそうなんだ」
「やめなさいよトール」

そう笑うもうひとりの友人も、言葉とは裏腹に随分楽しそうだ。

「だってさあミリィ。こいつ自覚すらしてなそうなんだもん。なんて言うか、奥手だし。だから俺が応援してやろうと思って---」

まったく偉そうに、とキラは思う。
それともつい先日まで恋に悩んでいた反動だろうか。
傍らで笑う美少女を射止め、最近のトールはやけに機嫌がいい。
それはしょうがないけど、だからって。

確かにフレイ・アルスターは可愛いし、彼女を見つけるたびどきどきする。
だけどそれは自分だけじゃない。彼女は学園でも抜きん出て目立っていたし、彼女に恋心を抱く男はたくさんいるのだろう。そんな子に告白する勇気はない。ましてや付き合うなんて。それこそただの妄想でしかない。

だからキラは密かに、心の奥で彼女を想うだけで充分だった。だけどトールにさんざんつつかれて、ならばと可愛いと思うことを告げたのに。フレイの友人であるミリアリアにそれを言うなんて。

少し不機嫌に俯いたキラに、さすがのトールも悪かったよと謝る。顔は笑っていたのだが。だけれどトールは憎めない何かがあった。今の自分にはトールのような友人が合うとキラは思う。彼には随分助けられているし。そう思うと許してやろうという気になり、キラは食べかけのパンを再び口に運んだ。

その時。

「あ、フレイ!」

ミリアリアの声に、心臓が飛び出るかと思った。

「ミリアリア。今頃ご飯?」
「そう、私たち今日は午前だけだから---フレイはひとり?」
「うん。次の授業まで空きがあるのよ。ね、座っていい?」
「勿論!そこ座んなよ」

そこでトールが声をあげて、キラの隣の席をすすめる。

なんてことを!
全く学習してないじゃないか!!

そう叫びそうにもなったが、勿論そんな事できるわけない。
トールの視線を極力無視するように俯きながら、キラはパンを囓った。

926 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/15(水) 02:33
苦労人…・゚・(つД`)・゚・サイ…あぁオチはどうなるんだ?或る意味山場越えたって感じだし…

はっ、いかん!! い つ も の 癖 で 考 察 脳 に な っ て る よ…

素直におもろいしいい話です。もしかしたらあと少しかも知れませんが、最後までがんがってください!

927 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/15(水) 02:39
>>925
学園ものキタ―――!!トール(・∀・)ぐっじょぶ!
これは続くのですよね?次も楽しみです。
キラの動揺が伝わってきて微笑ましいですな
がんがって下さい!

928 名前: 北風に羽、太陽に鎖 7 投稿日: 2003/10/15(水) 02:50
すんごい間が開きまくり今更ですが、本編も終わって少したったので
こんなアナザーも笑って赦してもらえるだろうかと…終わらせておきます。
いつぞやの百合スキーさんに捧げます。

>>367-368>>371-372>>571>>576


「…もういいわよ、なんでもないんだから」
「良くありませんわ」

吐き捨てるように言ってその場を後にしようとしたフレイを、ラクスはひきとめた。

「それで、フレイさんは辛くなくなるのですか?」

フレイは胡乱げにラクスを見る。
ラクスはフレイの手を握り、穏やかに続けた。

「わたくしも次はもっと、フレイさんにあわせますから。だから、何かお望みがあれば」
「だから何でもないって言ってるじゃない!」

ラクスの、思いやるような口調は、フレイの怒りに油を注ぐばかりだった。

「もう、ほっといてよ」
「少し互いにあわせて練習すれば、すぐに調子が揃いますわ」
「無理よ」
「大丈夫ですわ」

ラクスは相手をなだめるように微笑んだ。

「わたくしも、伴奏の方やニコルさんとはいつもそうやって…」

フレイは、自分の頭の中で何かが切れる音を聞いた気がした。

「…だから!」
叫んで、ラクスの手を振りほどく。
「コーディネーターと一緒にしないで!!」

929 名前: 北風に羽、太陽に鎖 8 投稿日: 2003/10/15(水) 02:54


「……フレイさん…」
「あっ」

フレイは、反射的といってよいほど慌てて、がば、と顔を伏せた。
鮮やかな赤毛が揺れる。

「ごめんなさいっ、私…」

もう、こんなことは言わないと決めたのに。
そんな枠で見ないようになったはずだったのに。
小さい頃から幾度となく繰り返していた考え方は、
無意識に言葉にしてしまうほど、まだ、私を支配していて。

「いえ」

口でそう言うものの、ラクスの表情は僅かに雲っていた。
それは諦観にも似た悲しみの陰。
何か思い出すような、遠い所を見るような、そんな、痛ましげな眼差し。

「ごめんなさいっ」

フレイは、彼女にしては珍しく、素直に、そして一生懸命に頭を下げる。

「私、たしか前も…!」

ラクスはそれを見て、心の中で何かが外れるのを感じた。
彼女もまた彼女にしては珍しく、刺を含んだような笑みを浮かべる。

「…人は、同じ過ちを繰り返してしまう。悲しい事ですね」
「…ラクス」

「おしおきしましょうか?」
「え…?」

フレイは、ラクスの唐突な言葉と、その声の悪戯っぽさに驚いて顔をあげる。
ラクスはそのフレイの顎を、つと引き寄せると、
無防備なフレイの唇に自らの唇を重ねた。

「……!」

フレイは反射的にラクスを突き飛ばそうとし、だが直前でその手を止める。
逡巡するようにその目蓋が震え、そして彼女は静かに両手でラクスを押しやった。
脳裏に蘇る感触。そう、確かに唇は飢えていて。
胸の動悸が高鳴るのを耳の底で聞きながら、フレイはそれを悟られまいと眼をそらす。
これが、キラだったならば。愛している、と、この喉の奥の叫びを、伝えられたのに。
そう言い訳がましく考えてしまった自分をおとなげなく思いながらも、
フレイは、ラクスがどんな顔でいるのかが気になり、一瞬ちらりと盗み見た。
その長い睫が一度大きく閉じ、また開いたあとには、いつものように微笑むラクスの姿がある。
フレイは我知らず、小さく安堵の溜め息をついた。
だがそこへ、ラクスの歌うような声が、追い討ちのように降りかかったのだ。  

「その唇で…、あなたはキラを操り…、戦わせたのですね」
「…!」

930 名前: 北風に羽、太陽に鎖 9 投稿日: 2003/10/15(水) 02:56

フレイは一瞬、何を言われたのかわからなかった。
だがその言葉を幾度か脳で反芻するにしたがい、意味が遅れて彼女のもとへと到達する。
途端、彼女は、視界が真っ暗になるような錯覚に襲われた。

「…ち…」
フレイの眼が怯えたように見開かれ、瞳は落ち着きなく動く。
「ちが…違う…!」
そう口走りながらフレイは、一歩後ずさった。

なぜ…?なぜそんな事を言うの…!?そんなの、ひどすぎる…!

いつも温和すぎるほどのラクスが、聖母のような笑顔のままそんな言葉を放った事が衝撃で。
言葉自体の品のない響きと、その意味することが罪悪とされる認識に、
フレイは殴りつけられたような気すらした。
そしてまた、その言葉に込められた情念、衝動のようなもの、に胸が押し潰される。

だがすぐに、ラクスの言葉への戸惑いと恨みは、悔恨へとすりかわった。
その言葉は違わない、それを誰よりも、彼女自身が知っていたから。

そう、私は、キラを騙して…戦わせようとしていた。

彼女の目頭に、熱いものがこみあげる。それは枯れる事のない、謝罪のしるし。

931 名前: 北風に羽、太陽に鎖 10 投稿日: 2003/10/15(水) 02:59

ラクスは自分で、自分の発した言葉が信じられなかった。
フレイの頬に添えていた自分の手が、まるで他の生き物であるかのように、そこから滑り落ちる。
目の前には、呆然と自分を見つめるフレイの姿がある。
そしてその灰色の両の眼から、涙が零れ落ちた。
「フレイ…さん?」
思わず相手の名前を呼ぶ。だがそれは自分の声と思われないほど、
しゃがれ、うわずったものだった。

私は何を、言ったのでしたっけ…?
ああ…きっと、…冗談、だったのですわ。
ただ、それは今まで一度も、私が口にしたことのなかった種類の…。
そして、絶対に言ってはならなかった種類の。

彼女はまだ、気付いてはいなかった。
自分の発した言葉が、一人の女としての言葉であったことに。

ラクスは純粋に、自分の言葉が相手を傷つけてしまったその痛みに、傷ついていた。
謝罪しようと、再び口を開く。
だがその時、フレイの体がふらりと傾ぐ。
「…フレイさん!」
ラクスは彼女を抱きとめる。
フレイはそれをまるで気にかけない様子で、ただ、うわごとのように呟いた。
「…ごめんなさい…」

ああ、なんで。
非道いことを言ったのは、私のはずですのに。
なんで貴女が、謝るのですか…?
それも、そのような、痛い声で。
まるであの時のキラのような、とても、悲しげな声で。

「騙してたの、キラ。あなたを、戦わせるため」
「フレイさん」
「パパが死んだ時から、コーディネーターを、憎んで。コーディネーターであるあなたを、恨んで」
「フレイさん…、もう、気になさらないで…!」

私は、本気であんな事を言ったわけではなかったのですから…!
そう、あれはただの…、…ただの、何…?

それは、時に嫉妬とよばれる、質(たち)の悪い、冗談。

ラクスは痛切に、自分の一言を悔いた。

932 名前: 北風に羽、太陽に鎖 11 投稿日: 2003/10/15(水) 03:00

フレイは、叱られた子供のように、
自らの手をもう片方の手で握り締める。

ごめんなさい。
キラだけじゃない。
私には謝らなければならない事が、たくさんある。

忘れられないあの光。
多くの命を奪った核爆弾…その力を地球軍にもたらしたのは私。
あの、熱と放射能でぐちゃぐちゃになってしまった基地に、
たくさんの人たちが生きていた。
もしかしたら、キラの知り合いや、ラクスの知り合いも、いたかもしれない。
パパが…誰かの父親が、いたに違いない。
その人の子供は、今どうしているのだろう?
誰かを憎むの?誰か?誰を?ナチュラルを?
…私を?

違う、私にそんなつもりなんてなかった。
私は戦争を終わらせたくて。
もうキラみたいに、誰かを死なせたくなんかなくて、それなのに。

キラは、そうしてひどくなった戦いを止めに行って…
今、ここに、いない。

ごめんなさい、ごめんなさい。
何万回だって謝るから。なんだってするから。
みんな、この戦争で死んじゃったみんな、生き返って。

「キラ、…帰ってきて」

933 名前: 北風に羽、太陽に鎖 12 投稿日: 2003/10/15(水) 03:01

ラクスは何を言えばよいかわからず、ただ、フレイの肩を抱きしめた。
その赤い髪は、自分の歌の意味を変えた瞬間を、思い出させる。

あの時の私は、戦場に立つ方々のことを
『生者』と『死者』、という分け方でとらえていた、けれど。
「パパを撃ったら、この子を殺すわ!」という、悲痛な叫びは、
戦場を支配しているのが『敵』と『味方』という分け方であることを、私に、突きつけたのです…

あなたのお父様の魂は、私の歌で鎮められるかもしれなくても。
お父様を亡くされたあなたの悲しみは、歌で慰められようはずがなくて。

それまでの私は、きれいごとの中にいたのだと、知りました。

あの時から、どうすれば『今生きている人』を救えるのかと。
何と戦えば、何をなくせば、これ以上悲しむ人がいなくてすむのかと。
私は考えて、戦って、…そして戦わせてきました。
アスランを。キラを。多くの人たちを。
その戦いの中で、幾人もが、血に染まりました。
数え切れない人が、命を落としました。

そう、"戦わせた" ……その罪は、私も、同じなのですよ。
"守れなかった" ……その罪は、私も、同じなのですよ。

「…ごめんなさい」

934 名前: 北風に羽、太陽に鎖 13 投稿日: 2003/10/15(水) 03:03

自分を包む腕の温かさに、フレイはふと我に返る。
「…ラクス」
目の前には朝の陽を受けてきらめく、桃色の髪。
ラクスの顔は自分の肩越しにあり、その表情は見えない。
ただ伝わってくる体温と。心臓の鼓動。
それを感じるなかで、なんとなく、フレイは思った。

もしかして、共に、泣いてくれている…?

自分の痛みを受け入れてくれる人がいること。
それが、赦されようのない自分にも、何かが残されているように思わせてくれる。
フレイはその頭を、軽くラクスの肩にもたせかける。
そしてまどろむように、目蓋を閉じた。

花片のように、優しく弾む口づけと。
羽で包むような、やわらかい抱擁と。
ラクスのそれは、フレイには持ち得なかったもの。
与え得なかったもの。

このように、やわらかく、暖かく、抱きしめてあげられたら。
キラ、あなたは苦しまずにいられた?

駆り立てるように、掻き乱すように。
思惑の鎖で絡めとるように。
そのようにしか、抱きしめてあげられなかった自分を思う。
そのようにしか、抱かれてあげられなかった自分を思う。

ごめんね、キラ。私たち、間違っていたわね。

想いは溢れ…、しかしそのやり場はない。
フレイは、ラクスの肩にしがみついた。
迷子だった子供が、迎えに来た母親に抱きつくかのように、強く。

935 名前: 北風に羽、太陽に鎖 14 投稿日: 2003/10/15(水) 03:05

きつく抱きしめられて、ラクスは眼を開けた。
「…フレイさん」
目の前には朝の陽がくっきりと陰影を刻む、緋色の髪。
ラクスはフレイの力のこもった腕と、震える肩を、そっとなでた。

離すまいとしがみつくような、固い抱擁。
鎖のように強い、千切れない想いの証。
フレイのそれは、ラクスには持ち得なかったもの。
与え得なかったもの。

…卑怯ですわ。
そうやって、全てを懸けるように、抱きしめられてしまったら。

ラクスは、焦げ茶色の髪もつ少年の優しい顔を思い浮かべ、笑みを漏らす。

守ってあげたくなってしまうに、決まっているではありませんか。

936 名前: 北風に羽、太陽に鎖 15 投稿日: 2003/10/15(水) 03:17

二人は、一人の少年への想いが、自分を変えたことにまだ気付いていない。

全てを慈しみ、人を暖めようとした少女は
その想いから、女としての自分に錨をおろす。

全てを憎み、人を凍えさせるようだった少女は
その想いから、誰かを愛せる者として翼を広げる。

戦いが壊した世界の片隅で、誰もが元のままではいられない。
戦いを治めた世界の片隅で、誰も元の自分に縛られない。


通り過ぎた旅人が帰途を辿るならば、寓話はその形を変えるだろう。

937 名前: 北風に羽、太陽に鎖 〜蛇足〜 投稿日: 2003/10/15(水) 03:19

「なあアスラン」
「なんだ」
「あいつらさ、ああやって家買って、キラが見つかったら一緒に住むつもりらしいけどさ」
「ああ」
「キラのやつ、親…あ、スマン」
「いいよ。親御さんと暮らすんじゃないか、ってんだろ」
「そ、そうだ」
「どうだろうな。ラクスの考えてる事は、わからないからな」
「元婚約者だろ?」
「だから元、なんだろ。…きっと」

「でもキラ、挟まれてどうするつもりなんだろうな」
「さあな…カガリ、なんでお前が楽しそうなんだ」
「昔のこと思い出してさ。すっげえぞ、フレイってやつは」
「いや、ラクスだって負けてないだろ」
「い〜や、フレイだね。お前は分かってない」
「分かってないって…何をだ?」
「…教えてやらない」
「なんでだよ」
「だってお前は、わからなすぎだからな」
「だから何を!」
「女ってヤツをさ」
「…ぷっ」
「…なっ、なんでそこで笑うんだよ!」




938 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/15(水) 08:45
>北風に
百合(・∀・)イイ!!

綺麗にまとまって、乙です
ああ、漏れも女の子アスランでアスフレにチャレンジしてみようかな(w

939 名前: 流離う翼たち・93 投稿日: 2003/10/15(水) 18:22
 海上を突破するアークエンジェル。敵の部隊が展開するギリシアはもう目前である。渡された資料から敵の基地やおまかな部隊配置は分かっているが、哨戒部隊に発見される事は覚悟しないといけないだろう。
 マリュ−は戦闘準備を命じた。
「全艦第1戦闘配備。本艦はこれより、ブカレストへ向けて直進します。全包囲を警戒。敵の襲撃に備えよ!」
「全砲門発射準備、ヘルダート、アンチビーム爆雷装填、艦尾発射管にウォンバットを装填。何時でも使えるようにしておけ!」
 ナタルの指示で全兵装が発射準備状態にされる。続いてスカイグラスパー2機が発進して戦闘空中哨戒に入る。ここはもう敵の勢力圏なのだ。海上から陸上に入り、そのまま暫く何事も起きない時間が続く。このまま見つからなければ良いと誰もが思ったが、その希望は甘すぎた。
「レーダーに反応、敵機です!」
 パルの悲鳴のような報告が響く。間違い無い、敵の偵察機だ。これで敵部隊がやってくるのは確実だ。艦内に緊張が走る。それから丁度5分後。フラガから報告が飛びこんできた。
「敵だ、ディン2機、ザウート3機。それに戦闘ヘリが10機!」
「こちらでも確認しました。フラガ少佐、バゥアー大尉は迎撃を。ストライクは直ちに発進、艦の直援をさせて!」
「キラ、ストライク発進です!」
「了解、装備はエールで!」
 ミリアリアがキラに発進命令を伝達する。キラは答えると直ちに出撃した。そのままアークエンジェルの進路前方に出る。ディンとザウートの始末はキースとフラガのスカイグラスパーがやっていた。
「良いかキース、敵を仕留めるより、時間稼ぎを優先しろ!」
「分かってますが、ディンだけは落とさないと!」
 ランチャーパックを装備した2機のスカイグラスパーが大空を駆ける。それを2機のディンが撃ち落とそうとしていた。ディンは空中を飛行できるMSだ。これだけは仕留めないといけない。
 ディンのパイロットは小癪な戦闘機を撃ち落とそうとしたが、この戦闘機はいろんな意味で普通ではなかった。
「邪魔なんだよ!」
 フラガのスカイグラスパーがアグニを放ち、狙ったディンを一瞬で蒸発させてしまう。それに怯んで回避運動に入ったもう1機のディンは回りこんでいたキースのアグニによって仕留められていた。
 ディンを仕留めた2人は迷わず機体を反転させた。ザウートではアークエンジェルについて来る事は出来ないし、戦闘ヘリ如きを恐れる必要は無い。それよりももっと厄介な敵に対処するべきだろう。
 そして、2人の判断は正しかったのである。
「少佐、大尉、すぐに戻ってください。進路上にMS多数確認。すぐに戻ってください!」
「今戻ってる!」
「やっぱりいやがったか」
 フラガとキースは怒鳴り返して機体を加速させた。だが、それよりも早く前方の空域で幾つもの閃光が煌いたのである。

940 名前: 流離う翼たち・94 投稿日: 2003/10/15(水) 18:23
アークエンジェルの艦橋でマリュ−が命令を下した。
「副長、正面を掃射。敵地上部隊を制圧する!」
「分かりました。主砲、バリアント、てぇ−っ!」
 強力なゴッドフリートとバリアントが撃ち出され、地上に展開するMS部隊や戦車、装甲車部隊が爆発に飲みこまれていく。更に空中に居る戦闘ヘリや戦闘機、ディンやグゥルに乗ったジンなどに向けてウォンバットが撃ち出される。そして地上を行くストライクが敵MSと戦闘に入った。
「数が多い、どれだけいるんだ、ミリィ!?」
「あなたの前には少なくともジンが5機、ザウートが2機よ!」
「左右の敵は?」
「足の速さで振り切るって言ってるわ。あなたは前だけに集中して!」
 キラは正面を見据えた。ジンが向ってくるのが見える。キラはストライクを走らせながらビームライフルを放った。3射目で狙ったジンを捕らえ、四散させる。その間に4機のジンが左右に回りこもうとしていた。
「くそっ、ア−クエンジェルを殺らせはしない!」
 だが、ストライク1機で対処し切れる数ではない。キラはジンを更に2機仕留めたが、残る2機が懐まで入って来た。それに向けてイーゲルシュテルンが高速弾を叩き出し、ジンを狙い撃つ。
 そして更に敵の増援が現れた。
「更にMS8、全てディンです!」
「まだ居るの!?」
 マリュ−が信じたくない一心で叫んだが、それで敵が逃げてくれる訳ではない。ナタルはそのMSにゴッドフリートを向けさせた。
「ゴッドフリート照準、てぇ−!」
 ゴッドフリートが放たれ、2機のディンが吹き飛ばされる。その威力に驚いた残りのディンが左右に散るが、それに向けてウォンバットが放たれ、更に2機のディンが砕け散る。残る4機は各々の好きな所から一気に突入してきたが、イーゲルシュテルンとヘルダートの盛大な歓迎を受けてしまった。Gに乗ったクルーゼ隊の赤服パイロットが手を焼いたアークエンジェルの対空砲火だ。ディンが飛びこんで無事に済むわけも無く、1機がイーゲルシュテルンに捕まって蜂の巣に変えられた。そして残る3機が突入してきたが、また1機が今度は横合いからの強力なビームに上半身を消し飛ばされた。
「なんだ!?」
 驚いた1機のディンが動きを止めた途端、イーゲルシュテルンに絡め取られて撃墜された。残る1機は慌ててアークエンジェルから離れようとしたが、これも逃げ切る事はできなかった。再度装填されたウォンバットが発射され、このディンを撃ち落としたからだ。
 艦橋に少し安堵の空気が流れた所にミリアリアの嬉しそうな報告が響く。
「フラガ少佐機、バゥアー大尉機、戻ってきました!」
 キースとバゥアーのスカイグラスパーが戻ってきた。強力なアグニが地を走るジンに叩き込まれ、擱座させてしまう。完全破壊ではないが、こちらを追ってくることは出来ないだろう。
 キースはスカイグラスパーを旋回させながら地上で戦うキラに通信を繋いだ。
「キラ、大丈夫か!?」
「な、なんとか大丈夫です。でも、数が多すぎますよ!」
「こっちも上空援護を続ける。なんとか頑張れ!」
 だが、その僅かな時間がキースの油断だった。地上からジンが90mm対空散弾銃で狙っている事に気付くのが遅れたのだ。機体の周囲で炸裂する砲弾にキースは慌てて上昇をかけたが、間に合わずに損傷してしまった。機体内に響くアラームに顔を顰める。
「クソッ、こちらキース。被弾した。緊急着艦する!」
「了解しました。無事に帰ってきてください!」
「あたりまえだっ」
 ミリアリアの返事に答え、キースは被弾して動き難くなったスカイグラスパーをなんとかアークエンジェルに持ってきた。
 キース機被弾と聞いてナタルの顔色が僅かに変わった。椅子から腰を浮かし、ミリアリアに声をかける。
「バゥアー大尉が被弾だと。戻れるのか!?」
「大丈夫です、今着艦コースに乗りました!」
 ミリアリアの報告を聞いて、ナタルは目に見えて安堵した。それを横目で見ていたマリュ−がクスクス笑いをする。ナタルはマリュ−の意地の悪い笑い方にむっとした顔で問い掛けた。
「何がおかしいんですか、艦長?」
「いえ、あなたがやけに慌ててるから、ついね」
「大尉のスカイグラスパーは重要な戦力です。失ったらこの場の突破さえおぼつきませんから」
「本当にそれだけかしらね?」
 マリュ−の意地の悪い問い掛けにナタルは返答に詰まり、僅かに頬を染めた。それを見たマリュ−がなんとも楽しそうに笑顔を浮かべる。なんとわかりやすい反応であろうか。

941 名前: 流離う翼たち・作者 投稿日: 2003/10/15(水) 18:36
>>苦労人
ううむ、K様の暗躍がなんとも・・・・・・幾ら渡したんだろう
ラスボスが気になるなあ。K様か、まさか嗅ぎ付けてきたキラ?

>>フレイ・ルージュルート
カガリがM1ですか、ヤバイ機体だなあ。スペック上ではゲイツに引けを取らないはずだけど
しかしフレイ様、種割れかけてるのかNTなのか、いろいろ感じてしまっているw

>>穏やかな日々
久々のほのぼの学園物ですね。トール君が確信犯チックなのがいい

>>北風に羽・太陽に鎖
ううむ、ラクスとフレイ様で百合・・・・・・もしキラが帰ってきたら凄い事になりそう
泣きながらカガリの家に転がり込む姿が想像出来るのが何とも言えないw

942 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/15(水) 19:41
>穏やかな日
トールも好きだったよ・・・。・゚・(つД`)・゚・。

>北風
百合好きじゃないがなかなか面白かったと思います。
ラストのカガリもウケたw

>流離う
魔乳にナタルをからかう余裕があるってこたあ、死なないんだろうけどビックリしちゃったよ(´Д⊂ヽ
キース・・・あんたはまだ作品に必要な人だ・・・

943 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/15(水) 22:53
>>苦労人
というかK様はカズ(ryだと思ってただけど、
Kiraだったり・・・するのか?

944 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/15(水) 22:57
穏やかの作者です。
感想ありがとうございます。短いですがまだ続きます。

>北風
本編では女の出すタイミングの悪いラクスたんだが、なんと愛しい。

>流離う
オリジナルストーリーがいい。キースのキャラって、種に必要だったんだろうなあ。
正しい事がひとつじゃない、という事を種は言わないのが、違和感の原因かと思う。
ただトーフレ雰囲気がミリフレの自分としては寂しいw

>苦労人
すげー好きだ。終わりが近いと思うと残念でならない・・・まだ続く?

945 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・12−1 投稿日: 2003/10/15(水) 23:28
「あの子を人質にとって脅して、そうやって逃げるのが地球軍って軍隊なの?」
「そういう情けない事しか出来ねえのは、俺たちが弱いからだ」
キラが珍しく乱暴な言葉遣いでフラガを詰るが、フラガの無情な返答に言葉が詰まる。
「俺にもお前にも、艦長や副長を非難する資格はねえよ…」
フラガは軽くキラの肩を2回ほど叩くと、キラに背を向けドックから出て行った。

何よそれ…。
軍服に着替えたキラの目に涙が溜まっている。悔しさで視界が歪む。
弱いから何なの?
弱いというのはそんなに罪なの。
私はみんなのために、あんなに一生懸命戦っているのに。
死にそうな怖い目に遭っても、誰も助けてくれない癖に。
せめて…せめて、
「それが俺を敵にまわしてでも守りたかった、お前の真実なのか、キラ!?」
私は正しい事をしているんだって、そのぐらい信じさせてよ。


「フレイ、しっかりして、フレイっ!」
突然聞こえてきた「フレイ」という単語に、キラはビクッと身体を振るわせる。
前方を見ると、フレイがトールとカズィに半ば引き摺られるように両肩を借りている。
恐らく医務室へと連れて行く最中なのだろう。
虚ろな瞳でブツブツと何か呟くフレイに、サイが必死に声をかける。
「フ…フレイ」
壊れた人形のようなフレイの姿を目にしたキラの表情が青ざめる。
怒りで熱く煮え滾っていたキラの心が、冷風に晒され、みるみる冷やされていく。
「キラ…」
フレイに付き添っていたミリアリアがキラに気づいた。つられて皆もキラを見る。
辺りに気まずい雰囲気が漂う。
ミリィの「キラ」という単語に反応したのか、フレイがゆっくりと顔を上げる。
「あ……あの、フ……フレイ………」
目と目が合ったキラはガタガタ震えながら、何か言おうとしたが、後が続かない。
そもそも何て言えば良い?
お加減大丈夫?
お母さんを助けられなくてごめんなさい。
どれも違うような気がする。
「わ…私ね………」
キラの姿を捉えた途端、先程まで焦点(ピント)がずれ、空洞のようだったフレイの
瞳に鈍い光が灯った。壊れて打ち捨てられていたフレイという名の自動人形が、
「憎悪」というエネルギーを注がれ活動を再開する。
「このアマぁ〜!!!!」
「ひぃっ!?」
トールとカズィの二人を振り払ったフレイは、飛び掛るようにキラの襟首を掴むと、
そのまま壁にキラを叩きつけるように押し込んだ。
「大丈夫だって確かに言っただろうが!?この嘘つきが!!」
「フレイやめろ!」「フレイやめてぇ〜!」
フレイは容赦なくキラを締め上げ、涙と呼吸困難でノイズのように乱れ捲くった
キラの視界に、負の感情を剥き出しにしたフレイの顔が飛びこんでくる。
母親を失い、行き場を求め暴走していたフレイの憎しみのエネルギーは、その矛先を、
AA内で最も強い力と弱い心を併せ持つ矛盾した存在に、不条理に叩きつけた。
「お前、自分がコーディネイターだから、真面目に戦ってなかったんだろう!?」
「そ…そんな、酷い」

「フレイ、いくら何でもそれは言いすぎよ」
ミリアリア達は四人掛かりで、何とかフレイをキラから引き剥がすのに成功する。
「うっ…うぅ……うわぁあぁあ………ん!!」
「キラ!?」
フレイから解放されたキラは、泣きながらその場を逃げ出した。
後ろで、取り抑えられたフレイが喚いていたが、キラの耳には入らなかった。

946 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・12−2 投稿日: 2003/10/15(水) 23:29
「うう…ひぃっく……。うううっ………」
自分の部屋へ逃げ戻ったキラは、鍵をかけると枕にうつ伏せて大声で泣き出した。
涙が滝のように流れ出して、一向に止まらない。
酷い、いくら何でも酷過ぎる。
みんなを守るために、自分の手を同胞の血で汚し、初恋の相手にさえ刃を向けて、
死の恐怖に怯えながら命懸けで戦ってきた、その報いがこれ?
「お前、自分がコーディネイターだから、真面目に戦ってなかったんだろう!?」
何で本来守られるべき女であるはずの自分が、危険な戦場で矢面に立ち、
その上、安全な場所にいる人間から口汚く罵られなければいけないの?
ここには誰もいない。私の本当の辛さを理解してくれる人は…、
私の抱えた重荷を一緒に背負ってくれる人は…。
キラにはもう何も信じられなかった。
仲間も…、自分が戦う正義も。
「助けて…、誰か私を助けてよ」
アスラン…。

その時、部屋の扉が開き、まるでキラの悲しみに惹かれたように、
もう一人のコーディネイターの少女が姿を現した。
「ラクス……」
キラは驚いた表情でラクスを見る。
鍵は掛かっていたはずでは…と疑問に思う間もない。
ラクスはキラの泣き濡れた顔を見ても、以前のような慰めの声をかけなかった。
その代わり、ただ歌った。悲しみを癒す歌を。
セイレーンのような透き通った奇麗な歌声が、キラの部屋全体に木霊する。
プラント数百万の市民を魅了してきたラクスの歌声が、ただ一人、キラの
心を癒すためだけに奏でられた。

「ねぇ、ラクス…」
演奏を終了し、長めのスカートの裾を掴んで挨拶するラクスに、キラは複雑な
感情の入り混じった想いをぶつける。
「あなたは、どうしてそんなに優しいの?」
「わたくしはキラ様もお優しい方だと思いますわよ」
ラクスは、キラの質問に敢えて別の見解で答えた。
「そ…そんなことない、私は………」
キラの心に動揺が走る。
最近、ほとんど己の事しか考えていない自分自身に気づかされたからだ。
ラクスはそれを見取ったように、そっとキラを抱き締めると、
「人は弱いものですわ。
誰だって心が悲しみに打ち震えていれば、周りが見えなくなるものです。
でも、その悲しみを知るヒトだからこそ、ヒトは他人に優しくなれるのです」
ラクス……。
キラの心が深い安堵と、幾ばくかの敗北感の入り混じった複雑な想いに満たされた。
このヒトはアスランの婚約者でありながら、彼の旧友である私にも優しくしてくれる。
もし、私が逆の立場だったとしたら、自分の知らないアスランと仲の良かった女性
に対して嫉妬心を隠せなかっただろう。
敵わない。
こんな素敵な女性(ヒト)だから、きっとアスランも彼女を好きになったのね。
気づくと何時の間にかキラの涙は止まっていた。
キラは立ち上がると、ラクスの手を取った。
「キラ様?」
不思議そうな顔をしたラクスにキラは軽く微笑む。
「行きましょう、ラクス…」
「どちらへですか?」
「あなたの本来いるべき場所へ……」
返さないと、この子をアスランに…。
全ての想いを吹っ切り、この少女への借りを返すために…。

947 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/16(木) 02:23
>>946乙フレです。

フレイ様はやはり女の子でないと話がつらいな…。
作者様の技量じゃなくて、構造的にね。
ホル・ホースじゃないが、女の子を戦いの正面に押し出す男ってやはりいかんよなぁ。
力があろうとなかろうと、女を守って闘うのが男ってもんだと思うから。

やはりフレイ様は女の子が一番でつよ…

948 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/16(木) 12:20
>>946
もしも本編がこんな感じだったら別の意味で恐ろしいまでの祭りが繰り広げ
られたろう事が予想できるよ…でもこれはきっと男性読者の方が男フレイくんwを
許せないのかもなぁ…

きっついけど楽しいですw 期待大!です

949 名前: ある苦労人の記述・作者 投稿日: 2003/10/16(木) 18:46
今回の話を見て、不快感を感じる方もいらっしゃるかもしれません
先に謝っておきます。
更に笑えるシーンもないんでもうひとつ謝っておきます。

自分も書いてて辛いところだったんですが
こういう意見も逃すことは出来ないんじゃないんだろうかと思いまして・・・・

で、これからの展開的に苦労人が辿り着く結論はAとBどっちがいいか
よろしければ皆さんの意見の多い方にしちゃおうかなぁ〜と
思ったり思わなかったりw
(フレイ好きな皆さんだから答えは決まってる?)

ではどうぞ〜

950 名前: ある苦労人の記述・16 投稿日: 2003/10/16(木) 18:50
>>729-731 >>742-745 >>775-776 >>796-797 >>825-826 >>914-915

同日
小包が届いた。例のごとくKからのようだ。
彼との取引ももう必要ないと思いながらも開けてみることにした。


「君がこれを見る頃にはサイからさぞ感動的な話を聞いた後のことだろうね。
しかし、物事には常に表と裏があるからね。僕の視点からのフレイ・アルスター
についても話しておかなくてはフェアではないと思ってね――
特別にこの情報を君に贈るよ。

フレイ・アルスターという少女は、良くも悪くも世間知らずのお嬢様だったね。
場の雰囲気も見極められずによく自分勝手なことを言っていたよ。
いつも振り回されているサイを見ながら、バカだなぁと思ったものさ。
それに自己正当化が激しくてねぇ、自分が悪いということを中々認めるような娘
じゃなかったよ。

父親が死んだ後はそりゃあひどかったものさ。
ワザとらしくキラに吐いた暴言に対して謝ったり、大げさな物言いで軍に入隊し
たりねぇ――おかげで軍から抜けるタイミングを失ってしまったよ。
地球に下りてからは、サイを捨ててキラに走ったように見せかけていたけど――
あれもキラを騙してザフトを戦わせるための方便さ。
まんまと騙されていたキラもかわいそうだったね。
まあ計画性の薄いものだったからキラに振られて失敗に終わったようだけど。

キラがいなくなってからはヤケにでもなったんだろうね、捕虜になったコーディネ
ーターに向かって銃なんて撃ったりして――
まったくおろかな行為だよ。もっとうまくやらないとねぇ。
まあ結局はミンナを騙し、自分をも騙そうとした代償に自分の命、使っちゃったん
じゃないの? 自業自得だね。


ずいぶん一方的な話だって? そういうと思うから僕の証言の正当性を示す映像
を同封しておいたから見ておいてよ。まあこの情報をどうするかは君しだいさ。
真実を示すか、騙されてやるか――好きにするがいい。」


―――いままで彼女に対してここまで毒を持った発言はなかったが・・・
いったいどう解釈すればいいのだろうか・・・・

一体全体 真 実 は ど う だ っ た ん だ !?

Kの言うとおり、皆うまく騙されていたのか・・・・?
それとも―――





A:Kの資料がそれを示している――やはり皆まんまと騙されていたんだ! 

B:いや、それは違う!! それが真実の一つだとしても、それだけではないはずだ!

951 名前: ある苦労人の記述・作者 投稿日: 2003/10/16(木) 18:52
あΣ(゚д゚lll)



_| ̄|○・・・・・・・950・・・・・ドウシマセウ・・・・

952 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/16(木) 19:02
ス、スレたてガンガ・・・

953 名前: 流離う翼たち・95 投稿日: 2003/10/16(木) 19:21
艦橋でそんな話題が繰り広げられてるとも知らず、キースのスカイグラスパーはよろける様に格納庫に飛び込み、ネットに機体を受け止められる。そしてすぐに整備兵が駆け寄ってきた。
「急げ、すぐに直すんだ。10分で飛べる様にしろ!」
 マードックが機体を急いでネットから退かせ、修理に取りかからせる。キースは機体から降りるとマードックに駆け寄った。
「済まないが、装備はエールで頼む。キラのストライカーパックを交換してやりたい」
「分かりました」
 マードックが頷き、走り去って行く。キースは疲れた体を休めようと近くの箱の上にどさりと腰を下ろした。流石にこの大軍相手ではかなりキツイ。そのままグッタリしていると、格納庫の中にこういう時に聞きたくない声が響き渡った。
「離せキサカ、私はこんな所で戦わずに死ぬのはごめんなんだ!」
「だからと言って、また勝手にMSに乗るつもりなのか!?」
「艦長の許可を取ればいいだけだろ!」
 またカガリが出撃しようとしていた。キースはやれやれと立ちあがると、2人に声をかける。
「残念だが、デュエルのコクピットハッチは開かない様にしてある。どうやっても乗れないぞ」
「なんだと!?」
 カガリがキースを見て怒鳴る。キースはカガリに近づくとその頭に手を乗せた。
「もう少し俺たちを信じてみろ。大丈夫だ、この艦を堕とさせはしない」
「だけど、私1人が後ろで見てるだけなんてのは嫌なんだ!」
「・・・・・・・・・・・・・・」
 この娘は真っ直ぐ過ぎる。そして素直過ぎる。キースは苦笑すると、キサカを見た。
「あんたも、もっとしっかりこのじゃじゃ馬を捕まえておいてくれないと困るよ」
「努力はしてるのだが・・・・・・」
「まあ、頑張ってくれよ。傷物にしたら色々と不味いんだろう?」
 キースの問い掛けにキサカは驚愕し、カガリは凍りついた。その反応を面白がる様にカガリの頭に置いた手で髪をくしゃくしゃにしてやる。
「まっ、身分を隠したいなら偽名でも使うんだな。変装も無し、実名をそのまま使ってるじゃバレバレだぞ」
 まあ、それでもバレてないんだから、問題無しかねえなどと呟いてると、いきなりカガリにパイロットスーツを掴まれた。
「お、おい、頼むからその事は他の奴には言わないでくれよ!」
「ああ、その事か。心配すんな。誰にも言う気は無い」
 キースの答えにカガリは目に見えて安堵した。キサカも頭を下げている。キースは感謝される事に慣れてないので、こういう態度を取られるとむず痒くなってしまうのだ。少し困っていると背後からマードックが呼ぶ声が聞こえてきた。
「大尉、修理完了、何時でも出れます!」
「分かった、今行く!」
 キースは2人の前から走り去ると、再びスカイグラスパーのコクピットに収まった。そして発進準備を進める。
「キラにこいつを渡したらまた戻ってくる。ランチャーパックの準備を」
「分かりました」
 整備兵に準備を命じて、キースはスカイグラスパーを発進させた。キースが出る頃には新たな敵部隊が現れ、再び戦いが激化しようとしている。まだまだ敵の前線を突破するのは先の様だ。
 上空にザフト戦闘機隊の姿があるが、キースはそれを無視してストライクへと向った。すでにキラのストライクのバッテリーは限界だろう。
「キラ、エールパックを落とす。付け替えろ!」
「キースさん、助かります!」
 言ってる傍からストライクの機体が色褪せていく。PS装甲が落ちたのだ。キースはストライクの傍に行くとエールパックを低高度で落とした。投下されたエールパックは衝撃吸収用のエア−パックとパラシュートを展開する。ストライクは今のエールパックをパージし、投下されたエールパックを拾って装着して急いでPS装甲を展開させた。
 間一発で展開が間に合い、ストライクは撃破されるのを免れた。再び鮮やかな色を取り戻したストライクは敵に向けてビームライフルを放っている。それを見たキースはアークエンジェルに戻ろうかと思ったが、その前に一仕事しなくてはいけないらしいと悟った。敵戦闘機の編隊がこちらに向ってきているからだ。アークエンジェル周辺にも多くの敵機が取り付いている。
「やれやれ、やるしかないのかねえ!」
 スカイグラスパーの火力と機動性は最高だ。だが、敵機は見た限りでも10機は下らない。1機で相手をするのは大変だが、あいにくとここ最近の戦いは何時もこうだ。やるしかない。
 キースは気合を入れなおすと敵編隊に向かっていった。

954 名前: 流離う翼たち・95 投稿日: 2003/10/16(木) 19:36
 キラの部屋にいるフレイは頭から毛布を被って震えていた。艦が直撃の振動に揺られるたび、小さな悲鳴が漏れる。その瞳は強く閉じられ、今起きている戦闘から逃避しようとしている。
 フレイは怖かった。戦争が、死ぬのが。
『いや、私まだ死にたくない、死にたくない、こんな所で死にたくないの!』
 だが、どんなに祈ってもこの現実は変わらない。周囲は敵に囲まれており、いつ直撃弾がこの部屋ごと自分を吹き飛ばしてしまうか分からないのだ。次の直撃弾の衝撃が艦を揺らした時、フレイの口から悲鳴と共に1人の男の名前が漏れた。
「キラっ!」
 呼んでからフレイは驚愕した。何故、どうして自分はキラの名を呼んだのだ。利用するだけの道具でしかないのに。憎いコーディネイターなのに。
 だが、キラの名を出した時、確かに気持ちが落ちついたのだ。その現実がフレイを更に追い詰めてしまう。自分の復讐心が、父を奪われた怒りが徐々に失われている気がしたから。それは、何故なのだろうか・・・・・・・

 アークエンジェルの艦橋では敵編隊の攻撃にナタルが必死に対応していた。
「イーゲルシュテルン自動追尾解除、弾幕で敵に対応しろ。ウォンバット、ヘルダート発射!」
 ミサイルが一斉に発射され、イーゲルシュテルンの射程に入る前に敵機を次々に叩き落としていく。それを突破した戦闘機にはイーゲルシュテルンの弾幕が対応した。
 弾幕から離れた機体にはフラガのスカイグラスパーが襲いかかり、火力差に物を言わせて叩き落している。一対一の空戦でならフラガが負ける要素は何処にも感じられないほど、その技量は際立っていた。まさに異名の通り、戦場で敵を狩る鷹である。
「ちっ、こう数が多いとやりにくくてしょうが無いぜ!」
 機体を旋回させながら次の目標の上面に出て、機首のバルカンを叩きこむ。4本の火線が敵機に吸い込まれたかと思うと、敵機はバラバラに撃ち砕かれて地上へと落ちていった。フラガは戦果の確認などはせず、また別の敵機に向っていく。落した数など覚えてはいない。艦に戻れば教えてもらえるだろうし、そんな余裕は無いからだ。
「バリアント用意、ストライクを援護する。ゴッドフリートは前方で戦闘中のバゥアー大尉機の援護、味方を巻き込むなよ!」
「了解、照準します!」
 サイとトノムラ、チャンドラが照準計算を始める。急がないと手遅れにあるが、戦闘中の味方を援護するのだから完璧な計算が要求される。程なくしてはじき出された照準所元にしたがってバリアント、ゴッドフリートが微妙に動いた。そして、ナタルの指示の元に発射される。
 発射されたバリアント2発が砲撃をしていたザウート2機を襲い、着弾の衝撃波でこれを爆砕してしまう。ゴッドフリートはキース機から少し離れた所を旋回していた4機の戦闘機を一瞬で蒸発させてしまう。決定的とは言わないが、確実に2人の負担は軽くなった。
 だが、ザフトはまだ諦めていなかった。そのプライドにかけてアークエンジェルを突破させまいとあるだけの部隊を形振り構わずに投入し始めたのだ。そして、ストライクの前に今度は戦車や自走重砲部隊、MLRS部隊までが展開しだしたのである。


 ギリシア方面でザフト軍が戦闘を行っているという報告は、連合軍部隊の知るところとなった。突然の事にブカレストの司令部でクライスラー少将が状況報告を求める。
「何が起きている、敵が動いたのか!?」
「いえ、どうもギリシアを強行突破しようとする友軍部隊がいるようです。かなりの数のMSがそちらに向ったと報告が」
「ギリシアを突破だと、誰がそんな事を・・・・・・」
 クライスラーはしばし考え、ようやくそれらしい連中に思い当たった。アフリカに降下してこちらに向うと言ってきた第8艦隊の新型戦艦のことだ。
「なるほど、アークエンジェルか。本当にここまで来たのだな」
 しばし考え、口元に面白そうな笑みを浮かべた。たった1隻でギリシアの敵を突破し、ここまでやって来ようとするとは見上げた度胸だ。クライスラーは電話を取り上げると、幾つかの指示を出した。
 連合軍前線部隊にも動きがあった。航空基地から次々に戦闘機が飛び立ち、戦車隊が敵に警戒心を起させるような大規模な移動を開始する。この動きはザフトをいたく刺激し、連合の反撃に備えて部隊の展開を始めたのである。これがクライスラーのアークエンジェルに対する援護であった。これで敵はアークエンジェルに対して兵力を割く事が出来なくなる。これがアークエンジェルを救う事になった。

955 名前: 流離う翼たち・作者 投稿日: 2003/10/16(木) 19:48
>>キラ・♀
いやあ、男フレイ様がむっちゃ嫌な奴と化してますなあ。キラは違和感無いどころか女の方が似合ってる気がするのは何故でしょうw

>>苦労人
うむむ、K様はまたきつい事を言いますなあ。嘘じゃないけど
さあ、果たしてダコスタ君はどっちを信じるんだろう。これでキラが出てきたら凄い事になっちゃけどw
このスレ住人なので私はBとしときます。では、スレ立て頑張ってくださいw

956 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/16(木) 20:09
>>苦労人
スレ立てガンガレ!!
K様・・すごいです。何もかも見抜いてらっしゃったんですな。
俺もBノフレイ様があれだけじゃないのを誰よりも知っているのはこのスレの住民ではないか!と言ってみる

957 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/16(木) 22:24
K様は、フレイ様がキラに対してマジ惚れしちゃったところまでは解からなかったみたいですな。

958 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/16(木) 22:41
承前/ボアズ編:>>748-755
プラント打撃戦1:>>788-791/2:>>847-851/3:>>920-923


「ミラージュ・コロイド解除。続けてPS装甲展開」
「NJC、正常に稼動しています。ニュークリアカートリッジ、起爆秒読み開始」
「出力60%に設定、チャンバー圧、フィールドゲージ共に異常ありません」

 ヤキン・ドゥーエ要塞司令室。
 いよいよ最終段階に入った最終兵器の様子に、パトリック・ザラはさして面白くもなさそうに頷いていた。背後に控えるラウ・ル・クルーゼが一歩進み出て、囁くように進言する。

「出力は60%で宜しいので? これでは地球連合の艦隊、半数を撃破できるかどうかでしょう。120%で撃ち放てば、確実に全滅させられるのでは?」
「吹くなクルーゼ。それではプラントへの影響も深刻では済まされないレベルになる。我らの目的が勝利だとしても、そこまでしては意味が無かろう」
「わざわざプラントを囮に核を撃たせておいて、そう仰いますか……難儀ですな」
「言うな。全ては勝つためだ」

 ははッ、と畏まった敬礼と共に、クルーゼは一歩下がった。
 どうやらこの段階でプラントに被害を出させるのは難しい情勢になったと見える。アズラエルと3機の“G”兵器は頑張ったようだが、2段構えの核攻撃も、どうやら全て阻止されてしまったらしい。

(これではジェネシス、地球に撃たせることは叶わぬか……)

 ラクス・クライン。いまいましい小娘だと冷笑を浮かべ、取り逃がした己を自嘲してみる。
 戦闘映像によれば、どうやら地球軍のMSによる誤射もあったようだが……まぁ良い。ならば別に用意しておいた“プラン”を実行すべきなのだろう。
 再び1歩進み出たクルーゼは、今度は声高に最高評議会議長に提案した。

「地球連合の艦隊、全て撃滅できねば、恐らく次は死に物狂いでジェネシスを狙ってくるでしょう。仮に追撃でここの艦隊を潰せたとしても、月基地からの増援もありえる話。ラクス・クラインの一党と手でも組まれては、聊か防衛の手数が足りますまい?」
「何が言いたい、クルーゼ」
「“プロヴィデンス”使用の許可を頂きたく」
「……好きにしろ」

 振り返りもせず、告げるパトリック。だが、承諾して退室しようとするクルーゼを呼び止めた時、その目はどこか品定めをするようにも見えた。やはり喰えぬ男だと、クルーゼは微笑する。

「クルーゼ」
「は」
「裏切るなよ?」
「無論です。それでは……ザフトのために!」

959 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/16(木) 22:43
 一撃。
 ただの一撃で、戦況とはこうも簡単にひっくり返るものなのか。

 突如ヤキン・ドゥーエ要塞の傍に出現した、巨大なパラボラアンテナを思わせる超兵器ジェネシス。解き放たれた圧倒的なガンマレーザーのエネルギーは、密度と集中度において核ミサイルなど軽く凌駕する破壊の嵐を、地球連合軍プラント打撃艦隊の中央部に叩き付けた。

 その一撃で、艦隊の50%が消滅したなどと、いったい誰が信じられるというのか。
 さらに呆然となった地球軍を撃滅するべく、ヤキン・ドゥーエ要塞から次々に出撃してくるザフト軍。プラント打撃艦隊は、まさに壊滅の危機に瀕していた。

「落ち着けッ、このまま黙って全滅する気かっ?!」

 そんな地球軍を立ち直らせたのは、ナタル・バジルール少佐の一喝だった。
 前衛部隊としてプラント方面に深く前進していたのが幸いし、ドミニオンと僚艦、搭載していたMS隊は、ほぼ無傷で残っている。

「各艦、各MSは手近な味方と連携しつつ後退! 緊急コードG−8で回線リンクを再編、動ける艦には本艦を目印に集結するよう伝えろ、急げっ」
「了解、緊急コードG−8開きます」
「護衛艦チャーチル、撃沈! 敵MS隊、接近してきます!」

 刻一刻と逼迫してくる戦況に、鋭い視線をスクリーンに叩き付けるナタル。
 手元の専用回線で“G”3機を呼び戻そうと絶叫しているアズラエルは、とりあえず無視と決め込む。このまま最後まで戦線に留まり、1艦でも多く生き延びさせる。それが今の、自分の任務だ。

「1番から24番まで、コリントス装填! 敵MSの回避パターンを好きにさせるな。バリアント、ゴットフリート、ヘルダート照準! イーゲルシュテルンは左舷に弾幕を集中させろっ」
「ダガー隊、ジョンソン中尉機より入電! 本艦の援護に入ります」
「分かった。CIC、ダガー隊にコリントスのランダムパターンを転送、忘れるな。……1番から24番まで、発射!」

 ドミニオンのミサイル発射管から、対空防御ミサイル“コリントス”が連打される。さらにイーゲルシュテルン、ヘルダートといった近接防御兵装が接近してきた敵MSを翻弄していく。

「今だ! ゴットフリート、バリアント、撃ぇーーーっ!!」

 戦艦をも打ち砕く、グリーンの火線とイエローの曳光弾を追うレールガンとが、ザフト軍のMSを薙ぎ払った。僚艦も手持ちのミサイルを惜しげもなく連射し、それでも撃ちもらした敵MSをダガー隊が撃退する。
 月基地に配属されて以来、ナタルの厳しい訓練に耐えてきたドミニオンのクルーは、もはや新兵と補充兵の集団の域を超えて高い能力を発揮し始めていた。これもアークエンジェル時代の経験の賜物なのだが、そのことに思いを馳せる余裕など、流石に今のナタルには無い。

960 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/16(木) 22:43
 アークエンジェル級2番艦、ドミニオンの奮戦ぶりは、あたかも地球軍の崩壊そのものを食い止めようとする決意と気概に満ちていた。ゆえにザフト軍も、躍起になってこの黒い主天使を沈めにかかってくる。
 CICから上がってくる報告を総合すれば、艦体の各所に受けたダメージの蓄積が、そろそろラミネート装甲の限界に達しようとしているのが判断できた。

「ここまでか……いや」

 もう一度制帽を調え直し、ナタルは正面のスクリーンを見つめた。
 生き残った味方の大半は、どうにか後退できている。あとは最後まで戦い続けたこの艦と僚艦をどう脱出させるかだが……さすがにナタルも、ここまで来て無事に済むとは到底思えなかった。

「護衛艦ウィンストン大破! ……通信が来ています。“我レ奮闘スモ命運尽ク。貴艦ノ武運長久ヲ祈ル”」
「くっ、ウィンストンも駄目か。総員、対ショック防御!」

 刹那、右舷で頑健に戦っていた護衛艦が爆沈する。
 その余波がドミニオンをも襲い、艦橋も激しく揺さぶられた。ナタルの制帽も脱げてしまったが、拾いに行く暇など、それこそありはしない。

「まだだ、諦めるな! ローエングリン1番2番用意! 発射後180度回頭、本艦も戦線を離脱する!」

 ここに来て、ナタルは切り札を使う決断を下した。だが、陽電子破城砲ローエングリンは、その破壊力を引き出すために若干の時間を要する。既に多くの味方が撤退したこの時になって、その時間を稼ぐのは直掩のMS、MA隊の役割だが……。

「ジョンソン中尉機、反応消えました……」
「メビウス第3臨時小隊壊滅! 左舷方向から敵MS隊!」
「くッ……」

 既に掩護を期待できる味方の戦力は、底をついたと言って良い。
 もはや藁にも縋る気持ちで、ナタルは特設シートに座っているアズラエルを見た。ちょうど同じようにこちらを見ていた“ブルーコスモス”の盟主と視線がぶつかり合う。

「アズラエル理事、3機の“G”は……」
「…………」
「X370レイダー、X252フォビドゥン帰投。着艦要請が出ています」
「X131カラミティから掩護要請。X115ストライク・ルージュを牽引しているとのことです」

 アズラエルの沈黙に、オペレーターからの報告が重なる。
 要するに、戻って来たはいいがクスリ切れか。運命の皮肉を感じ取り、ナタルはふと微笑んでいた。

「両方とも却下しろ。本艦に構わず、後方の味方と合流するように連絡を……」
「待ってください。さらに高速で接近する大型モビルアーマー有り! 距離80!」

 どうにかドミニオンまでたどり着いた3機の“G”兵器とストライク・ルージュ。
 それに追い撃ちをかけるような“ミーティア”の登場に、どう反応すべきかナタルは迷った。

961 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/16(木) 22:44
「あれは……キラ・ヤマトか?!」

 だが、“ミーティア”に組み込まれているのが白と青を基調とするMSであると見て取り、一抹の希望をナタルは抱く。迎撃は控えさせ、ドミニオンの全能力をローエングリン発射に振り向けるよう指示を飛ばした。

「ドミニオン……黒いアークエンジェル……バジルール中尉の艦……」

 “ミーティア”のコンソールがザフト軍のMS隊を着実にロックオンしていくのを、どこか他所事のように感じながらキラは呟いていた。ここまで来たのは、もちろん戦意を失った地球連合軍に必要以上の追い撃ちをかけ、ナチュラルを虐殺しようとするザフト軍を止めるためなのだが。
 それ以上に、キラはあの紅いストライクがどうしても気になって仕方が無かった。
 砲火の中で真紅の機体がX131カラミティに曳航され、ドミニオンに着艦する光景に、どうしても既視感を覚えずにはいられない。

「何をしているキラ。このままじゃ……」
「あっ、ああ。ごめん、アスラン」

 同じく追ってきた旧友に生返事を返す。アスランにしてみれば、同胞であったザフト軍に不名誉な戦いをして欲しくない気持ちも強いのだろう。
 ともあれ、迎撃機としての“ミーティア”は、それ1機がアークエンジェル級に匹敵する火力と制圧力を誇り、これにMAとしての機動力が加算される分、戦艦であるアークエンジェル級より“細かい”射撃が可能になっている。

「もう止めろ! 戦う気を無くした相手を撃って、何になるって言うんだ!」
「お前たちもコーディネイターだろう! どうして、憎しみだけで戦おうとする!」

 だがこれは、恐らくかつての自分たちの姿なのだ。
 かけがえの無い友を撃たれ、憎しみのままに傷つけあった自分たちの。
 だからこそ、止めなければならない。この憎悪と殺戮の連鎖を、どこかで。

 “ミーティア”から放たれたミサイル群が、レールガンが、ビーム砲が。次々とザフト軍のMSから戦闘能力を奪っていった。それも致命傷を与えずに、これ以上の死と憎悪の連鎖を断ち切ろうとするように。

962 名前: フレイ/ルージュルート 投稿日: 2003/10/16(木) 22:45
「これが、ザフトの“G”兵器のちから……」

 ドミニオンに喰らい付いていたザフト軍のMS隊を、一撃で退けた2機の“ミーティア”を見つめるナタル。恐らく、脱出できるチャンスはここしかないのはすぐに分かった。準備させていたローエングリンを撃ち、追撃部隊が怯んだ隙に反転、離脱する。
 そこまで指示を出したところで、彼女はオペレーターに命じ、手元の回線を国際救難チャンネルでフリーダムに繋げさせた。ここまで大胆なことができたのも、不甲斐なく戻ってきたサブナック少尉ら3名をなじりにアズラエル理事が艦橋を出て行ったからである。
 彼の直情径行もたまには役に立つのだな。そんな風に考えてから、自嘲気味にナタルは微笑した。

「キラ・ヤマトだな?」
「バジルール中尉?!」

 向こうは予想していなかったのだろう。少し驚きを含んだ声が返ってくる。
 今でも自分を“中尉”と呼ぶのは彼なりの敬意なのだろう、とナタルは思う。

「……何故、我々を助ける。今なら、この艦と3機の“G”を簡単に沈めるチャンスだぞ?」
「僕は……敵を滅ぼすために戦っているんじゃ、ないですから」

 何とつまらない。だが素晴らしい理由かとナタルは思った。
 もしこの艦にブルーコスモスの盟主が居なければ、このまま彼を招いてみるのも一興かとさえ考える。フレイ・アルスターには悪いが、自分ももう少し、この少年と話がしたかったのかも知れない。
 だが、所詮それは叶わぬ話だ。ならせめて、馬鹿みたいに優しい少年に相応のもてなしくらいはせねばなるまい。

「そうか。……では、艦を救ってくれたついでに、もう1つ礼を言わせてくれ」
「……?」
「フレイ・アルスター少尉の乗機、X115ストライク・ルージュは無事に帰艦した。感謝する」
「!!」

 スピーカー越しに、明らかに少年が動揺したのが分かり、ナタルは苦笑した。
 そんな自分を、ブリッジクルーたちが不思議そうな目で見ているが、些細なことだ。

「もう行け。私はともかく、地球軍は貴官らも敵と認識している。キラ・ヤマト。お前の帰るべき艦は、ここではないだろう」
「……はい。バジルール中尉も、その、どうかご無事で」

 寸時ためらってから、2機の“ミーティア”はドミニオンから離れていった。
 この通信を最後に、プラント攻防戦は地球軍の敗北という形で終わる。
 だがそれもまた、より凄惨な戦いの始まりを告げる狼煙でしかない。そんな予感を、この戦場を生き延びた誰もが感じ取っていた。

963 名前: ルージュルート作者 投稿日: 2003/10/16(木) 22:47
・・・メル欄が1つだけ大文字混ざってるし。
何やってんだ私 _| ̄|○

ともあれ、バジルール少佐撤退戦編でした。
フレイ様出ない場面なので、スレの埋め立てにぶつかってちょうど良かったような気もしますw

面白い作品いっぱいあるので、エールパックを交換w

>穏やか〜
またーり学園もの、(・∀・)イイ!!

>北風〜
素直になりきれないフレイ様と、思わず黒さの出たw ラクスが2人ともいとおしい・・・。

>翼〜
激戦が続いていますな・・・。ぶるぶる震えるフレイ様が可愛いですw
果たしてデュエルを動かすのは誰だ! って、封印されているのか_| ̄|○

>キラ♀×フレ♂
あれ、あれれ? キラが可愛いです。特にラクスをアスランに返そうとするあたり。
・・・男フレイ様の逆襲を希望!w

>苦労人〜
私もBを希望。今回の「K」は、自分を客観的かつ自虐的に見たキラと考えると、なんかずっしり来るものが。
ギャグのはずなのに、こういう味があるのがいつもステキです。

964 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/17(金) 03:30
北風作者です。感想ありがとうございますm(_ _)m
少女二人の対比が書けていたなら幸いです。 次こそは硬派なものを書いてみたい…(願望)
なんてことはさておき。

>翼
休めない戦闘にどきどきです。
兄貴がんがれ!そしてデュエルの勇姿を切望…!

>キラ♀×フレ♂
キラに違和感がないのは気のせいですかw
とても健気なイイ娘なんですが。
そして今はちょっと見るのが辛いフレイ様、どう進化してくれるのか楽しみ。

>ある苦労人
スレ立ともども乙です。逃がさず他の一面も書いていていいですね。
結論ですが…う〜ん、皆がBと言っているので、私一人くらいAと言っても大丈夫だろうw
何といわれてもこの板住民は真実を知り・信じているのだから、あえて反対論証を聞いてやろうじゃあないか、K様よ!

>ルージュルート
自分の役割を心得、果たすナタルはやはり恰好いいですね…
凄惨な戦いという言葉に戦慄しつつ、フレイ様の活躍に期待しつつ、見守りまつ。

965 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/17(金) 18:44
>キラ♀×フレ♂
フレイきゅんひどいよ・・・(´Д⊂ヽ

>ある苦労人
Kよ・・・あんたフレイきゅんよりひどいよ(´Д⊂ヽ
Kってフレイ様のアンチユニットなのか!?

>ルージュ
フレイ様の気配を感じつつ、それを真実と告げられつつ、ナタルを信じかえらなきゃいけないキラ。
切ないですな・・・
あと、パトや狂うぜのセリフが裏話じみててグッジョブ。でも真面目な兵器に出力120%っていかがなものか。

966 名前: 流離う翼たち・96 投稿日: 2003/10/17(金) 19:48
 戦闘を開始して3時間。絶え間無く襲いかかってくるザフト軍の猛攻にさしものアークエンジェルも疲れが見え出した。キラのストライクの動きも鈍り、2機のスカイグラスパーも明らかに動きが悪くなっている。連戦の疲労が屈強なパイロットたちを蝕んでいるのだ。
 アークエンジェルがここに来るまでに破壊したMSの数は30を超えていた。撃破した数はその倍近くにもなる。戦闘機や戦車、攻撃ヘリは数えるのも馬鹿馬鹿しいほどだ。ギリシア方面のザフト軍が著しく弱体化したのは確実だろう。
 だが、アークエンジェルも満身創痍になっている。艦体には数え切れない傷がつけられ、黒煙を幾つもなびかせている。イーゲルシュテルンもミサイル発射菅も半数残ってはいない。
「艦長、本艦の戦闘力は半分近くまで落ちました。あと一度本格的な攻勢を受けたら!」
「分かっているわ、ナタル。でも、後少しなのよ。頑張るしかないわ!」
「・・・・・・・分かりました」
 ナタルも腹をくくるしか無いようだ。周囲にはまだ3機のジンが動き回っている。これを始末すれば多少は息がつける。だが、その僅かな希望もパルの悲鳴が掻き消した。
「新たな反応多数。航空機です。数は不明ですが、50は下りません!」
「・・・・・・くっ」
 マリュ−は正面の空域を睨みつけた。確かに雲の間から雲霞の如く戦闘機が現れている。あれだけの編隊を防ぎきる力はアークエンジェルには無い。それでもフラガとキースが果敢に挑もうとしたが、その正体に気付いたフラガが歓声を上げた。
「違う、あれは味方だ。連合のサンダーセプターだ!」
 連合の主力戦闘機、サンダーセプターが急降下して来て3機のジンにミサイルを叩きこんでいく。飽和攻撃に3機のジンは成す術も無く撃破された。
 アークエンジェルを囲む様に展開するサンダーセプターの大編隊に、マリュ−は立ちあがって口元を手で覆った。涙が零れるがそれを拭う事さえしない。ナタルでさえ安堵の余りCIC指揮官席でみっともなく半ばずり落ちている。そして、大歓声が艦を包んだ。
「味方だ、味方が来てくれたんだ!」
「ええ、助かったのよね、私達!」
 サイとミリアリアが涙を見せながらも喜び合っている。そしてマリュ−が全身で喜びを表しているミリアリアに指示を出した。
「ハウ二等兵、ストライク、スカイグラスパーに帰艦命令を。それと、ご苦労様でしたと伝えて」
「はいっ!」
 ミリアリアは嬉しそうに通信機を操作し、キラとフラガ、キースに帰艦を指示する。それに返ってきた返事は疲労の色が濃く、弱々しいものであった。あのフラガや陽気なキースでさえまるで死にそうな声を返してきたのだから、その疲労の度合いがわかるだろう。

 帰艦してきた3人はコクピットから降りるなり倒れこんでしまった。駆け付けてきた整備兵や手空きの兵に助け起されている。キラも格納庫に来ていたフレイに抱き起こされ、近くの資材の箱に背を預ける姿勢で座らせてもらっていた。
「キラ、大丈夫なの、キラ!?」
「だ・・・大丈夫・・・・・・とは、言えない・・・・よ」
 キラは弱々しい声で返事を返した。無理も無い。これだけの長時間戦闘など、初めての経験なのだから。フラガやキースは今はなんとか自分の足で立っている。だが、キースはキラの隣に来た所でどさりと座りこんでしまった。
「よお、生きてるかキラ?」
「な、なんとか・・・・・・」
「そうか、偉いぞ」
 キースはどうにか返事をするキラを珍しく賞賛した。それほどの激戦だったのだ、今日の戦いは。フレイは憔悴し切ってるキラを心配そうに見ていたが、すぐに何処かに駆けて行った。そして戻って来た時には2つの高カロリードリンクを持っていたのである。
「はい、キラ、大尉」
「あ、ありがとう、フレイ」
「すまん、助かるよ」
 キラとキースはありがたくそれを受け取った。そのまま暫く無言でドリンクを啜る。そして、キースが口を開いた。
「キラ、どうだった、初めての本格的な戦争は?」
「・・・・・・・辛いとか、戦いたくないとか、思う暇も無かったですよ」
「そういうもんだ。今日は無事に帰って来れたが、明日はどうなるか分からない。俺やお前だって、明日は帰って来れないかもしれないぞ」
 キースの脅しに、キラとフレイは衝撃を受けていた。自分が死ぬかもしれない。キラが2度と帰ってこないかも知れない。その事実を明確につきつけられたからだ。そして、今日の戦闘を考えれば、それは決して誇張ではないだろう。優れた性能を持つストライクでも決して完全無敵ではない。事実、今日は2度もフェイズシフト・ダウンを起している。フラガとキースのストライカーパックの支援が無ければ間違い無く死んでいただろう。

967 名前: 流離う翼たち・97 投稿日: 2003/10/17(金) 19:49
 死の恐怖がようやくキラを襲った。ガタガタと震えだし、歯が噛み合わなくなる。フレイはその姿に初めてキラに憐憫を覚えた。本当は弱いくせに可哀想なキラ、と。
キースはドリンクを口に含みながら片目でフレイを見た。フレイはそれを見てしばし逡巡した後、キラの頭を胸に抱いた。その目には不安と、迷いが浮かんでいる。キラはフレイのぬくもりに縋る様に小さな声で泣いていた。
 近くを通りかかった整備兵達が何事かとそちらを見て、やれやれと肩を竦め、あるいは冷かして去っていく。だが、2人にはそんな声は聞えていない。キラは死の恐怖から逃れる為にフレイに縋りつき、フレイは迷いに支配されていたのだから。
 艦橋から降りてきたサイ、トール、ミリアリア、カズィは震えて泣いているキラを抱きしめているフレイを見て足を止めた。サイは辛そうに顔を背け、カズィも気まずそうにサイを見ている。
 ミリアリアは少し戸惑いながらトールを見た。
「ねえ、どうするの?」
「う、うん・・・・・・」
 トールはキラを、フレイを見ていた。理由は分からないが、キラは恐怖に震えているようだ。あんなキラは見たことが無い。フレイに泣きつく様はまるで怯える子供そのものだ。そして、フレイもおかしかった。今のフレイはキラを抱きながらも、その目はキラを見てはいない。彼女の目は何も映してはいない。空虚なのではない。何か別の事で頭が一杯で、キラの様子を認識していないのだ。まるで、何かを悩んでいるかのように。
「・・・・・・本当にヤマアラシのジレンマなのか。それとも、そう見えるだけなのか」
「トール?」
 いきなり変な事を呟いた恋人に、ミリアリアはどういう意味かを問い掛けたかったが、トールはそれよりも早くミリアリアを見た。
「なに、どうかした?」
「う、ううん、なんでも無い」
 トールに聞かれたミリアリアは慌てて誤魔化した。なんと言うか、聞いてはいけない気がしたのだ。
 トールの見方は正しかった。フレイは悩んでいたのだ。キラはコーディネイターと殺しあって自分も死ねば良いという復讐心は今も確固として存在する。だが、キースに言われて初めて感じた恐怖、そう、恐怖だ、キラを失うという恐怖を感じたのだ。死ねば良いと思っている男が、いざ死んだらと思うとその喪失感が怖い。矛盾している。何故、どうしてこんな相反する気持ちが内心でせめぎあうのだろうか。
 父を守れなかったキラは許せない。降下後にシャトルを守れなかった事で泣くキラを見てもどうとも思わなかった。むしろ都合が良いとさえ思った。だが、砂漠も街で自分を庇ってくれた時はどうだったろうか。あの時は初めて銃撃戦に巻き込まれて、間近を通過すうる銃弾に震えあがり、抱いてくれるキラの腕に必死に縋る事でどうにか落ちつけた。あの時、必死に守ってくれたキラに、自分は感謝したのではなかったか。
 どうして、なんで、私がコーディネイターなんかに・・・・・・・・・・

 それぞれの想いを乗せて、アークエンジェルはギリシアを突破し、遂に友軍勢力圏下に到達した。ヨーロパ方面軍の拠点、ブカレストに達したのだ。だが、ここはすでに後方拠点ではない。もうすぐそこ、30kmにまで敵が迫る、最前線なのである。

968 名前: ある苦労人の記述・17B 投稿日: 2003/10/17(金) 20:06
>>729-731 >>742-745 >>775-776 >>796-797 >>825-826 >>914-915 >>950

いや、それは違う!! それが真実の一つだとしても、それだけではないはずだ!
俺はサイ・アーガイルの話を――あの泣きそうな顔を思い出した。
彼の話のフレイ・アルスター――俺はそちらを信じたい。
今まで、いろんな人にフレイ嬢の話を聞いたが、決してそこまで悪意のある人間だ
とは思えない。それにラクス様が知りたいのは、多分キラ・ヤマトの中のフレイ・ア
ルスターという存在のことだろう。
そういう意味ではサイ・アーガイル、同じ少女を好きになった者の証言が一番それ
に近い気がする・・・・
やはり当初の通り、サイの証言を元に報告書を仕上げることにしよう。



#月△日 某所
ラクス様への報告が終わり、久々に我が家に帰ろうかという時、ベランダに佇む
キラ・ヤマトを見かけた。彼は終戦後、ずっとクライン邸にて療養中(?)であるらしい。
(プラント全市民が羨む様な待遇だな)
しかし――いつ見ても元気がない。体の傷は癒えているだろうが、まだ心の傷まで
は癒されてないのだろう。
――今の彼の状態こそが、フレイ嬢を大切に思っていたことの現われではないかと、
今なら感じられる。


おや?ラクス様だ・・・・


「キラ、お茶にしませんか?」

「ラクス――」
 ・
 ・
 ・
 ・
「―――フレイ・アルスター――」

「!?」

「素敵な方でしたのでしょうね――」

「――ラ―クス――」


「わたくしがアークエンジェルに助けていただいた時、あの方とは残念ながらお友達
 になれませんでしたけど――」

「・・・・・」

「もし今度出会えたならば、きっと良いお友達になれたと思いますの。
だから―――歌を作ってみましたの。」

「――歌?」

「はい、赤い髪の少女の歌を――」

「―――ありがとう――」


おっと、ついつい見入ってしまっていた・・・・・・
これ以上野暮なことはよしておいて、さっさと帰るか。
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
む?あれはラクス様のロボット?
手紙を乗せているのか?
え〜〜〜と、オカ・・・ズ?
―じゃなくてオカピだったっけ?
――俺宛だって!?


「実はもう一つお願いがありますの。それは―――」


―――な――な ん だ っ て ぇ 〜〜〜〜!!


完結?

969 名前: 流離う翼たち・作者 投稿日: 2003/10/17(金) 20:07
>>ルージュルート
キラ君のこれからが大変そう。ドミにフレイがいるんじゃ撃ちたくても撃てないだろうし
ルージュに乗ってると知ってしまった彼は、次に会ったらわき目も振らずに突っ込んでくんだろうなあ
ナタルさんも露骨に「私個人は敵じゃない」と言っちゃてるし、苦悩するキラの姿が目に浮かぶw

970 名前: ある苦労人の記述・作者 投稿日: 2003/10/17(金) 20:12
やはりBルートの方が多かったみたいなんでBにしてみました。
一応ラストです。

まあ矛盾だらけのなってない文章でしたが
なんとか終わりまで持っていけれてよかったよかった。

まあ一応Aルートも作っては見たんで希望が多ければまた投稿してみます。
でも、こっちのほうがくだらないネタなんでやめといたほうがいいかも。

読んでくれていただいた方々、ほんとうにありがとうございました〜

では、また?

971 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/17(金) 20:12
>>流離う翼たち
いつも楽しみに読ませてもらってます。
今回のフレイ様のの描写に思わず・゚(ノД`゚)・。
オリジナルな展開で大変でしょうけどがんばってくださいね!

972 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/17(金) 23:54
>>流離
トール・・・本編でもいいヤシだったがさらに変わってまつな。
まあ一緒に訓練した仲間だし、無理からぬことかも。
早めに友軍基地にたどり着くと補給ユニットがありそうでタノシーイ(・∀・)

>>苦労人
流石マーチ(ry今回は名前で)、フレイ様を見誤らなかった!
でも、キラ・・・辛そうだ(´Д⊂ヽ

973 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 00:41
とりあえず>490から流離う〜が始まる前までのSSをまとめてみたので投下する。
正直、分量が膨大すぎて途中で気絶しそうでしたが…
>490以降は…もう気力の限界でした(;´Д`) 誰か代わりに…俺がやるとしても後日、だな。
基本的に投下順です。抜け、間違い、タイトルが途中変更されてるものについては別物として集計している等ミスはあると思うが、
それは次回までに申告(して修正)ヨロ、ってことでお願いします。

・約束 7話 >>8-10
    8話 >>17-22
    9話 >>48-52
    10話 >>81-85

・火サスノリで行ってみようか >>40-43

・ヘリオポリスの学園祭 >>59>>80>>137>>139>>147>>153>>157>>175>>178>>182-183>>186-187

・泣いてほしいわけじゃなかったんだ >>60-61>>65-67>>69-70>>72-73>>86-87>>97-98>>101-102
                  >>108-109>>129-130>>284

・真っ黒 >>89

・自由への奔走0.2 >>113-114

・人妻隊 >>119-128

・終末に向かって >>138>>146>>151>>170>>180>>218>>268>>283>>288>>297>>303>>310>>339>>350
         >>354-355>>358>>361>>370>>375>>377>>389-390>>425>>427>>461-463

・どうか深層心理へ >>155

・熱の隙間の悪い夢 >>159>>163-165>>205-210>>213-216>>225-228>>236-238>>240-245>>248-250

・キラ・ヤマトいきます! >>168

・遺された者の祷り >>196-201

・男たちの挽歌 >>230

・別離 >>254-257>>259-261>>272>>275-278

・愛と別離 >>282

・・48 >>294-296>>298-302

・燃え尽きる命 >>306-309

・遺された者達へ… >>315-316>>327-333

・紅い髪の少女へ ミリアリアの場合 >>318-322

・意思 >>342-349

・羽と鎖、陽と風 >>367-368
 北風に羽、太陽に鎖 >>371-372

・GGの種 >>381-387

・夢の向こう >>395-412>>436-454

・最終回に添えて >>418-420

974 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 00:48
>>973
乙です。本当にご苦労様でした

975 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 00:50
>>973
お疲れ様です! これを機にもう一回読み直してみようかなぁ。
とにかく乙、です。

976 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 00:52
>>973
乙っす!
前半だけでこれだけあるのか・・・・
大変だなぁ

977 名前: 973 投稿日: 2003/10/18(土) 00:56
補足。
約束、火サスノリで行ってみようか、ヘリオポリスの学園祭はSSスレpart1から続いているものです。
最初から読みたければpart1まで遡る必要がありますのでご注意ください。
part1は過去ログ倉庫にあった…はず(だよね?)

978 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・13−1 投稿日: 2003/10/18(土) 02:22
「こっちよ、ラクス……」
深夜のアークエンジェル。当直以外のクルーが寝静まったのを確認したキラは、
ラクスの手を引っ張り、ストライクの格納ドックへと向かう。
後はこの角を曲がれば……そう思い覗き込んだ先には、
サイとミリアリアの二人が深夜にも関わらずに何か小声で話し合っている。
「フレイは?」
「今は大人しくしている」
「ついていてあげなくていいの?」
「流石に今はフレイに掛けてあげられる言葉が無いから…」
辛そうに俯くサイ。ミリアリアはサイの健気さに感じ入ったが、
敢えて前々から思っていた不満を口にする。
「フレイの気持ちは分かるけど、あれはやりすぎよ。あれじゃキラが可哀相」
「ご…ごめんなさい」
サイはフレイの行いを、まるで自らの罪のように謝罪の言葉を口にする。
「そもそもどうしてフレイはあんなにキラを嫌うの?
もしかして、フレイはブルーコスモスの信者だとか…」
「そ…それは…」
サイは口ごもる。実はサイにも分からないのだ。
フレイは、別に誰とでも打ち解ける性格ではなかったが、差別や虐めとも無縁で、
群れることも孤立することもなく、良家の優等生らしく周囲から相応の敬意と
幾ばくかの嫉妬を受けながら、堂々と生きてきたのだ。
なのに、何でキラに対してだけ……遺伝子操作されたコーディネイターに
対する、単なる生理的な嫌悪感にしては度が過ぎている。

その時、サイと、様子を伺おうとしていたキラの視線が交差した。
「キラ?」
「こ…こんばんは、二人とも。どうしたの、こんな夜更けに…」
キラは咄嗟にラクスに隠れるよう指示すると、自分でも不自然だとは自覚しながら
も、誤魔化す様に引き攣った笑顔で挨拶する。
ミリアリアは、今のキラが思ったほど落ち込んでいないのを見て、内心軽く安堵
すると、「キラこそ二人でどうしたの?」とキラの質問を鸚鵡返しする。
「二人?」
キラが恐る恐る後ろを振り返ると、ラクスがキラの努力を無にするがごとく、
角からひょっこりと顔を出して、ニコニコした顔で二人に手を振っていた。


「……というわけで、ラクスをアスランの元に返したいと思う」
キラは色々考えたが、独力でストライクを艦の外に出すのは難しいので、
それとなく二人にも協力を要請してみる。
アスランがイージスのパイロットであることも話した。
許婚のアスランが近くにいる事をラクスは素直に喜び、二人は複雑な顔を見合わせる。
今まで旧友と戦ってきたであろうキラの苦悩を察したからだ。
実際は、さらに複雑な想いが絡んでいたのだが。
二人は即答しなかった。キラのやろうとしている事は明白な軍法違反だからだ。
キラもそれを知っていたので、二人に無理強いは出来なかったが、
「やっぱり、どう考えても女の子を人質にするなんて悪役のすることよね」
「そうね。それに彼女はこの艦にいない方がいいかもしれない」
まずは腹を括ったミリアリアが答え、サイもミリィとは別の理由から同意する。
「ありがとう、二人とも」
キラは二人に感謝したが、サイの物言いが何となく引っかかった。
それを察したサイは、少し躊躇った後、ラクスに聞こえないよう二人だけに呟く。
「ほら、このままラクスを艦に置いておくと、フレイが彼女に何をするか分からないし」
恋人のサイとしては、これ以上、艦内でのフレイの評価を下げたくないのだろう。
「そうよね。ラクスを人質にする案も、元々はフレイが考えたのよね」
最近のフレイにあまり好意的でないミリアリアも、サイの見解に同意する。
フレイの名を聞いてキラの顔色が少し悪くなった。
キラの倫理観を大きく揺さぶったラクスの人質騒動が、フレイの発案で
あることにもショックを受けたが、それ以上に、
「フレイがラクスに何をするか分からない」という言葉は裏返せば、
「フレイがキラに何をするか分からない」と置き換える事も十分可能なのだ。
ましてや、ラクスがこの艦からいなくなれば、分散されていたターゲットは
一つに絞られてしまう。
キラは頭を振った。
今はそんな事を考えても仕方ない。全てはラクスをアスランに返してからだ。
キラは自分にそう言い聞かせて、問題を先送りする事にした。

979 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・13−2 投稿日: 2003/10/18(土) 02:22
二人の協力で格納庫のハッチを開けさせ、外に飛び出したストライクに、
AA内は半ばパニックに陥る。
敵襲!?
まさかストライクを強奪された!?
右往左往するクルーと入れ違えになるように、格納庫から逃げ出したサイ
とミリアリアは、展望ルームまで来てようやく一息ついた。
外を見ると、ヴェサリウスはエンジンを停止させ、イージスが単騎で
ゆっくりとストライクに近づいていく。
どうやらキラはザフトとの交渉を成功させたらしい。
「それにしても、あのイージスを操縦しているのが、ラクスの婚約者の
アスランさんだったなんてね」
「キラとも仲が良かった友人なんでしょ。辛いわよね、キラも…」
キラへの同情心で頭が一杯だった二人は、何時の間にか二人の背後に
現れたフレイが、密かにその話しを聞いていた事に気がつかなかった。
それが、キラを取り返しのつかない泥沼へと引き摺りこんでいくことになる。

980 名前: キラ(♀)×フレイ(♂)・13−3 投稿日: 2003/10/18(土) 02:23
光の単位を基礎とする広大な宇宙空間で、僅か数メートルの距離で向かい合う
ストライクとイージス。ほぼ同時に両機のコックピットのハッチが開く。
「アスラン…」
キラは慎重にランチャーの照準をイージスに突きつけながらも、久しぶり
に生身で出会った旧友の凛々しい姿に瞳が潤む。
「キラ、ラクス…」
アスランの見つめる先ではキラに抱かれるように、宇宙服も兼ねたパイロットスーツ
に着替えたラクスが、アスランに向かって手を振っている。
無意識のうちに、婚約者よりも先にキラの名前を呼んでしまった自分に、
アスランは気づいていなかった。
キラがそっとラクスの背中を押し出す。ラクスは短い宇宙遊泳をした後、イージス
のコックピットに飛び込み、アスランの胸に抱かれた。
「ラクス、怪我はなかったかい?」
「ええ、アスラン。お迎えご苦労様でした」
二人の抱き合う姿を無表情に見下ろしていたキラは、総てを吹っ切るように、
コックピットを閉じようとしたが、自分を呼ぶアスランの声にその動作を
停止させる。
「キラ、お前も一緒に来い!」
「ア…アスラン!?」
アスランの呼びかけに戸惑うキラ。キラの瞳が揺れている。
これがキラを自分の元に迎え入れる最後の機会(チャンス)だろう。
そう感じたアスランは必死に自分の想いをキラに訴える。
「コーディネイターのお前が地球軍と一緒にいる理由が何処にある?
何より、俺はお前とだけは戦いたくないんだ、キラ!」
「アスラン……」
「キラ、俺はお前が……」
そこまで言いかけてアスランの舌が停止する。
彼の隣にいる、何時も微笑みを絶やさなかったラクスが、まるで能面のように
無表情に、じっと自分の顔を見つめているのに気がついたからだ。
「クッ…」
アスランは唇を噛む。
何を言おうとしていたのだ、自分の婚約者の目の前で…。
もし、二者択一でどちらか一人しか連れて帰れないのなら、自分はラクス
ではなくキラにその手を差し伸べてしまうのではないか。
その思いが、かえってアスランのキラへの想いを封じ込めた。

アスラン…。
苦悩するアスランの姿を目前で見せ付けられたキラは、人知れず自分の想いに
決着をつけた。
「アスラン、私もあなたとは戦いたくない。
でも、前にも言ったように、あの艦には守りたい大切な友達が乗っているの。
彼らの安全を確認するまでは、私は艦を降りられない!」
友達を守る。キラが宣言した事は嘘ではなかったが、アスランとの決別を
決意した理由はそれだけではなかった。
キラにとっては辛いのだ。彼の隣にラクスがいる姿を見るのは。
艦を降りたとしても、戦場以外でキラが再びアスランと見えることは
恐らくないであろう。

「そうか……」
キラから決別の言葉を突きつけられたアスランはゆっくりと顔を上げる。
既にその瞳に迷いはない。アスランは軍人としての自分を取り戻した。
「ならば仕方ない。俺はザフトの軍人だ。
どんな事情であれ、次に戦う時があれば、俺がお前を撃つ」
「わ…私もよ」
アスランの宣戦布告に、キラは反射的に自分でも信じてもいない言葉を口にする。
「お前、自分がコーディネイターだから、真面目に戦ってなかったんだろう!?」
あの時のフレイの言葉は、実は的を得た真実だったのではないか。
キラには分からなかった。
気づくと、コックピットを閉じたイージスが、ヴェサリウスへと帰艦していくのが見える。
「さようなら、アスラン」
この瞬間、キラの初恋は終わりを告げた。


既にサイとミリアリアが去った展望ルームで、憔悴しきった表情のフレイが
瞳に異様な光を称えて、先ほどの二人の会話を思案する。
イージスのパイロットであったキラの旧知の者アスラン。
そして、アスランがラクスの婚約者だと知った時のキラの異常な態度。
今現在、精神のバランスを大きく崩しているとはいえ、本来怜悧な彼の思考は
その情報を一本の線で繋ぎ合わせ、かつて彼が衝動のままにキラに叩き付けた
言葉が事実だった事を確信する。
「このままで済ませるかよ、滅茶苦茶にしてやる!」

981 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 03:43
>キラ(♀)×フレイ(♂)
「このままで済ませるかよ、滅茶苦茶にしてやる!」
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
い、一体どうなってしまうんだろ・・・。
すんごく続きがききききになりますj。

ラクス、アスラン、キラの3角関係も濃いですね。
キラ、俺はお前が、って言いかけた時の
ラクスたんの態度も良かった!
こういう人間味溢れるラクスたんの方が(・∀・)イイ!!

今回も乙フレです。
作者たま、がんがってください。

982 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 11:16
>>キラ(♀)×フレイ(♂)
フレイきゅん・・・(´Д⊂ヽ
それにしてもこの展開、ムルタ侵攻時の和解後はどーなっちゃうの?

983 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 11:57
乙です!
しかし、何だかキラとラクスがヒロインで、フレイきゅんとアスランが主人公のように見えてきたw

984 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 12:55
>>キラ(♀)×フレイ(♂)
乙フレ!
俺もうフレイきゅんに萌え萌え\(゜∀゜)/

985 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 13:07
>>キラ(♀)×フレイ(♂)
私もビビっと来てしまいました・・・

フレイきゅんのこれからの暴走振りに期待大です!

986 名前: 流離う翼たち・98 投稿日: 2003/10/18(土) 13:21
 ブカレストにやってきたアークエンジェルは、そこでようやく味方基地に降りる事が出来た。だが、アークエンジェルほどの巨艦を収容できる陸上艦のドックはここには無く、整備と修理はドックの外で行なわれている。ブカレストの街はここから2kmほど離れており、車を使えば簡単に行くことが出来る。幸い、まだここは敵の攻撃圏内ではないので、安全が確保されている。この基地には強力な守備隊も駐屯しているので安心感が強い。だが、ここも間違いなく最前線なのだ。
 基地に下りたアークエンジェルクルーには休暇が出されていた。これまでの激戦を考えれば当然とも言える。望む者は街に出る事も許されていた。だが、流石に最前線の街に行こうとする者はおらず、僅かに買い出しを頼まれたフレイと、その護衛でキラが街に向ったに留まった。基地の兵士がジープの運転手として街への送り迎えをしてくれる事になった。
 ジープで街に向う2人を見送るサイに、トールが話し掛けた。
「いいのか、サイ?」
「・・・・・・任せるしかないだろ、あいつにさ」
 サイの声には未だに吹っ切れない辛さと、無力感が滲み出ている。トールはサイを責める気持ちにはなれなかった。誰だってあんな一方的な別れを告げられれば怒るだろうし、納得できないのも当然だ。フレイにした仕打ちを許す気にはトールもなれない。だが、サイが怒らないのなら、自分が怒ることも出来ないのだ。
 基地施設に向って歩いて行くサイの後姿を見送りながら、トールは持って行き様の無い苛立ちを足もとのコンクリートを蹴り付ける事でぶつけた。
「くそっ、なんでこんな事になっちまったんだよ。フレイ、お前は何を考えてるんだ?」


 ブカレスト基地司令のクライスラー少将の元に顔を出したマリュ−とフラガは、いかにも野戦将校上がりという印象を受ける司令官を前に緊張していた。その両眼は鋭い。
「君が、アークエンジェルの艦長かね?」
「はっ、マリュ−・ラミアス少佐であります」
 敬礼するマリュ−を、クライスラーは詰まらなそうに見た後、今度はフラガを見た。
「有名なエンディミオンの鷹、か。君に会えたのは嬉しいよ」
「光栄であります、少将」
 フラガはクライスラーが何か面倒ごとを持ち込もうとしていると察した。恐らく、キースの読みが当たっているのだろう。
 フラガの予測通り、クライスラーは目前に迫った反攻作戦、カスタフ作戦への参加を要請してきた。これはヨーロパ方面軍の一大反攻作戦であり、敵をオーストリア辺りまで押し返すという内容である。幸いにして敵のギリシア方面軍はアークエンジェルのおかげで弱体化が著しく、こちらから相当数の兵力を転用することが可能になった。
「かなりの激戦となるだろう。犠牲も大きいだろうが、ここで敵を押し返せなければ、我々はヨーロッパから追い出される事にもなりかねない。それは避けたいのだ」
「ですが、我々は一刻も早くアラスカに向わなくてはならないのです」
「それは分かっている。だが、そこを曲げて頼んでいるのだ。君たちが参加してくれれば勝率はかなり上がる。味方の犠牲もそれだけ減らす事が出来るのだ」
 クライスラーの頼みにマリュ−は困った顔になった。マリュ−にしてみれば友軍を助けるのは吝かではない。だが、その為にアークエンジェルを危険に晒すのもどうかと思うのだ。
「返事は、今すぐでないと駄目でしょうか?」
「いや、作戦開始までまだ1週間ある。それまでに決めてくれれば良い。勿論修理と補給は滞りなく行う」
「・・・・・・分かりました」
 マリュ−とフラガは敬礼して司令官室を出て、少し歩いた所でマリュ−がフラガに話し掛けた。
「どう思いますか、先ほどの話?」
「交換条件って事だろうな。補給と修理をしてやるから作戦に参加しろって」
「やはり、参加しないと不味いのでしょうか?」
 マリュ−の問い掛けにフラガは考えこんだ。一応は要請という形だが、いざとなれば強制する事も出来るだろう。あの司令官がどういう人かによるが、果たして断りきれるだろうか。
「・・・・・・やるしかないかもしれんな」
「やはり、そうでしょうか」
 ヨーロッパ方面軍の大作戦ともなると、また延々と続く戦いをする事になる。味方がいるだけまだマシだが、またクルーに大きな負担を強いるのかと思うと、マリュ−の気持ちは重くなってしまう。

987 名前: 流離う翼たち・99 投稿日: 2003/10/18(土) 13:30
 街に向うキラとフレイの乗るジープの運転手はバクシィと言う青年だった。まだ20だと言う。誠実そうな男だった。
「この辺りも最近は戦闘が激しくてね。ザフトのMSや爆撃機が来る事も多いんだ」
「じゃあ、あの街も攻撃を?」
「ああ、たまに空襲を受けてるね」
 キラは不思議に思った。空襲されると分かっている街に、どうして住んでいるのだろう。危険なのだから逃げれば良いのに、なんで今も住んでいるのだろう。その事をバクシィに聞くと、バクシィは当然だろと言いたげに答えた。
「あの街で生まれ育った人達なんだ。故郷をそう簡単に捨てられるもんじゃないさ」
「・・・・・・よく分かりません、そういうの」
 キラにはどうしても理解できない。砂漠で会ったサイーブ達も同じようなことを言っていたが、何故そうも土地に固執するのだろうか。この拘りがナチュラルとコーディネイターの差なのだろうか。
 キラの隣に座るフレイは終始無言だった。昨日の戦闘以後、フレイはキラの前で辛そうな顔をするようになっている。理由は分からないが、今のフレイにはキラの傍にいるのが苦痛なのかもしれない。
 キラはフレイの憂い顔を横目に見て気分が重くなるのを誤魔化す様にバクシィに問い掛けた。
「バクシィさんは、どうして軍に?」
「俺か。俺はな、家の食い扶持を減らす為さ」
「食い扶持って?」
「俺は5人兄弟の三男だったのさ。まあ、貧乏だったし、早く家を出て仕事に付かなくちゃいけなかった訳だ。軍なら食うに困る事は無いし、家に仕送りも出来るからな」
「そうなんですか」
 戦う理由も人それぞれなのだ。自分のように友達を守る為と言う者もいれば、バクシィのように家族の為に、生きていく為に軍に入る者もいる。キラは艦の他のクルー達の動機も聞いてみたい気がした。
 街に到着すると、キラとフレイは車から降りてデパートへと足を向けた。バクシィは車を近くの駐車場に止めておくと言って車を走らせて行ってしまう。2人は何処か余所余所しい空気を漂わせながらデパートの中へと入っていった。その中でクルーに頼まれた物を購入しながら歩いて行く。軍服を着ているが、年頃の少年少女が並んで歩いているのだ。端から見れば恋人同士とでも思うのだろうが、2人の間に漂う空気がそれを否定しているように見える。
 買い物袋を手に歩いているフレイに、彼女の3倍の荷物を持っているキラは遂に問い掛けた。
「フレイ、何か悩み事でもあるの?」
「・・・・・・・・・そうね、そうかも知れない」
「しれないって?」
 キラは訳が分からないという表情でフレイを見る。こんなフレイは初めてだ。ヘリオポリスの頃の生気に溢れた、大輪の薔薇のような彼女からは想像も出来ないフレイが目の前にいる。今の彼女は生気が無く、悩み、苦しんでいるように見える。かつての華やかな雰囲気は何処にも見られない。
 戦争が彼女を変えてしまったのだろうか。それとも自分が悪いのだろうか。サイとフレイが別れる原因となったのも自分の弱さのせいだ。サイを傷付けてしまった。フレイも自分に同情なんかしたせいで傷付いている。自分では守っているつもりでも、結局誰も守れていないのではないだろうか。
 2人でデパートのレストランで食事をしている時も、何処か重苦しい空気が2人の間を漂う。1人は葛藤を抱えたまま、それを解決できずにいる為に。1人は過剰な自己否定と自虐の為に。互いに相手を求める心がありながら、それを否定し、より自分を追い詰めてしまう。とてもではないが15、6歳の子供が抱えるような悩みではない。子供が道に迷った時には出口へと導いてやる大人なり先輩なりがいれば良いのだが、大人達はまだ2人の心のスレ違いを察してはなく、先輩ともいうべき人物は今だ答えに辿りついてはいない。

988 名前: 流離う翼たち・100 投稿日: 2003/10/18(土) 13:31
 だが、そんな2人をいきなりとんでもない事態が襲う事になる。いきなりデパートが大きく揺れたのだ。
「な、なによっ?」
 フレイが驚いた声を出す。キラはすぐにそれが爆発の振動だと察した。
「これは、まさかザフトの攻撃!?」
「攻撃って、もしかして空襲なの!?」
「だと思う。とにかく、早く非難しよう。何処かに防空壕ぐらいあるはずさ!」
 キラは荷物を放り出してフレイの手を取り、駆け出した。だが、窓から見える光景に思わず足を止めてしまう。フレイは突然足を止めたキラに不安そうな声をかける。
「ど、どうしたのよ、キラ?」
「・・・・・・拙いよフレイ、どうやら空襲だけじゃないみたいだ」
 キラの覗いていた窓から見えたのは、街を蹂躙しているジンやザウートであった。守備隊の戦闘ヘリが飛びまわってるが次々に撃ち落とされている。
「くそっ、MS相手じゃ防空壕なんて何の意味も無い。この街から逃げるしかないよ」
「そんなっ!」
 フレイの顔が真っ青になる。この戦闘の中を逃げようと言うのだ。ほとんど自殺行為としか思えない。だが、ここで蹲っていたら助かるとも思えない。フレイにはキラを信じるしか選択の余地が無いのだ。
 デパートから出た2人の前に一台のジープが滑りこんでくる。バクシィが運転席から叫んだ。
「2人とも、早く乗れ!」
「は、はい!」
 キラがフレイの手を引き、ジープに駆け込んだ。バクシィは2人が乗り込んだ事を確認すると、アクセルを思いっきり踏みこんだ。ジープが弾丸のように駆けだし、街から一刻も早く出ようと駆け出して行く。だが、崩れたビルの残骸や砲弾の穴があったりで思うように進めはしなかった。
「畜生、何処も瓦礫だらけだ!」
「守備隊はどうしたんですか!?」
「ヘリ部隊は全滅らしい。あとは戦車隊に期待するだけだな」
 悔しそうにバクシィが答えた。戦闘ヘリや戦車ではMSには絶対的に不利なのだ。膨大な犠牲をだしながらもMSに勝つ事は出来ない。アークエンジェルのような化け物じみた戦力は連合には存在しないのだから。
 キラとフレイはバクシィにかける言葉は無かった。自分たちはアークエンジェルに乗り、ストライクという強力なMSを持ち、フラガとキース、キラという3人の凄腕のパイロットを擁して敵のMSを蹴散らしてきた自分たちでは、彼の味わってきた屈辱を察する事は出来ないからだ。
 その時、走るジープのエンジン音に混じってかすかに飛来音がキラの耳に飛び込んできた。慌ててキラはバクシィに飛び降りる様に叫び、自らはフレイを抱き抱えてジープから飛び降りた。瓦礫の散らばる道路に叩きつけられるが、そのまま勢いを生かして転がって行く。やや遅れて爆発音と衝撃波、熱風が吹き寄せてきた。
 少し待ってからキラとフレイは顔を上げた。ジープの姿は無く、ただ残骸だけが散乱している。バクシィの姿は何処にも見えないが、油と肉の焦げる嫌な臭いが辺りに漂っており、バクシィの運命を2人に教えていた。
「嘘・・・・・・バクシィさん?」
「くそぅ!」
 フレイが呆然とバクシィの名を呟き、キラがアスファルトを殴りつける。ついさっきまで話していた人が目の前で爆発に殺され、焼かれている。フレイがこうならずに済んだのはキラが隣に座っていたからに過ぎない。ほんの僅かな幸運がフレイを死の淵から救ったのだ。
 だが、目の前で人が死んだという事実に、フレイは衝撃を隠せなかった。
「やだ・・・やだよ・・・・・・こんなの・・・なんでよお?」
「フレイ、しっかりして、フレイ!」
 ガクガクと震え、燃えているジープを見たまま動けなくなっているフレイ。キラは仕方なくフレイの頬を2度張った。鋭い音が通りに響き、フレイがようやく焦点の合って来た目でキラを見る。
「キ・・・ラ・・・?」
「しっかりするんだフレイ。こんな所で立ち止まってたら、僕達も死んじゃうよ!」
 キラはフレイの意識がはっきりしてきたのを確認すると、その手を掴んで走り出した。最初はもつれ気味だったフレイの足も、情況を理解しだすに従ってはっきりとした足取りになる。
 2人で戦場となった街を駆けていく。視界に入って来る光景はまさに地獄だった。破壊される街並み。逃げ惑う人々。そして、犠牲となった人達。五体満足な死体は少なく、ほとんどがからだの一部を欠損させている。それを目の当たりにしたフレイがその場で激しく嘔吐したりもした。

989 名前: 流離う翼たち・作者 投稿日: 2003/10/18(土) 13:43
>>苦労人
乙でした。苦労人は最後に人の良心を信じたんですね。それともサイに共感した?
でもラクスの次なる指令とは一体・・・・・・まさかキラの浮気調査とか!?

>>キラ♀
いやあ、フレイ様が怖いです。男が言うとこうまで危険になるのかw
浮気しようとするアスランを見るラクスも怖いけどね。 何気にキラがどんどんヒロインになっていく。


さて、流離うもとうとう記念するべき100に達しました。我ながらよくこのペースで書けるなあと少し不思議ですね。
ここから暫くの間、子供達に痛い展開が始まります。本編じゃ何したかったのか分からなかった彼女も動き出します。
キャラクター達の幾人かは何かを掴み、何かを失いますね。そして連合とプラントは決戦に向けて準備を整え出します。ご期待下さい。

990 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 14:04
みなさん乙彼様です!

>>キラ(♀)×フレイ(♂)
フレイ君怖ぇー(((((( ;゚Д゚)))))ガクガクブルブル
続き気になります!

>>流離う
100突破すげー
オリジナル展開面白いっす!
これからも今のペースでお願いします。

991 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 14:22
>>苦労人
乙フレー!
自分としてはAパートも気になります。もしよかったら投下お願いしたいのですが・・・

992 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 15:07
>>流離
・・・守るため、復讐のため、これ以外に「食ってくため」という理由で戦う人を描くとリアルでいいですね。
でもバクシィ、早くも爆死ですか(´Д⊂ヽ

993 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 16:54
>>流離
いや〜、面白いです。いつも引き込まれてます
投下のペースもハイペースでほぼこれを読むのが日課になってます。

これからも頑張ってください、応援してます

994 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 17:29
苦労人…完結おめです〜…ところで次の指令っていったい…?
いや、とってもおもろかったですよ

995 名前: ある苦労人の記述・作者 投稿日: 2003/10/18(土) 18:39
リクエストにお答えしてもう一つの結末もごらんください。
(元々こっちの予定ではあったんだけどね。)
某愛人さんがいらっしゃるのはアストレイ設定ということで・・・

996 名前: ある苦労人の記述・17A 投稿日: 2003/10/18(土) 18:39
>>729-731 >>742-745 >>775-776 >>796-797 >>825-826 >>914-915 >>950

Kの資料がそれを示している――やはり皆まんまと騙されていたんだ!
俺としたことが迂闊だった――
しかしあれだけの人達を騙しぬくとは、いやはやフレイ嬢には女優の才能が
あったのかも知れないな。
まあともかくKの資料を基に報告書を再構築しなくては!!

#月△日 某所
「お久しぶりです、バルトフェルドさん。」
「おう、少年。元気だったか? ちょうどいい、君も一杯どうかね?」
「いえ、遠慮しておきます。それより――――さん、いらっしゃいますか?」
「んん?そういや最近見ないなぁ。」
「彼ナララクス様ノ言イ付ケデ、ボアズノアッタ付近ヲ一人デ清掃中ヨ。」
「あぁ〜そうだった。減点がどうの言っていたが―――」
「ありがとうございます、そちらのほうへ行ってみます。」


「――まて、少年!」
「何か?」
「フリーダムの整備は万全だ、持って行きたまえ。」
「お言葉に甘えさせてもらいます。」
「あまりハデにならないようにな。」
「えぇ、分かっています。」
 ・
 ・
 ・
「むう―――」
「彼モ大変ネ。」
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
「――今日のは少し苦かったか?」



同日 ボアズ近海
どうしてこんなところに来てしまったんだろう―――
ふとそんなことを考えながら俺は作業を続けていた。

必至の思いで完成させたフレイ・アルスターに関する報告書だが
ラクス様には気に入っていただけなかったのだろうか?
無常にもこんな所を一人で清掃する羽目となってしまった―――
いったい何がいけなかったのだろうか?
 ・
 ・
 ・
分からない・・・・

ふと遠くを眺めた時、何かが近づいてくるのを発見した。
MS?
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
 ・
あ―あれは! フリーダム!?
しかもミーティア装備!?

一体全体何でフリーダムがこんな所にやってきたのかわからないが
何故だか非常に嫌な予感がする――
気のせいだろうか?全砲門がこちらを向いているような―――

・・・・・・ 俺 の 運 命 は !?

997 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 19:05
>>996
うあ゛ぁあ ・゚・(´Д⊂ヽ・゚・ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁこんなのって…いいかもw

キラくんは大人気ないよ…そこまでしなくてもK-Dという悪の連鎖は断ち切れるのに(意味不明)
いたもぅ、笑えないって言うか大笑いって言うか…乙です

998 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 19:48
>>996
まさか、ラクスは苦労人の報告書をもとにキラに送るフレイ様の歌を歌ったのか・・・・・
そりゃキラも怒るわな。きっとラクスはキラに怒られて苦労人を左遷した挙句にキラに都合の良い事情を暴露したんだなw
ああ、哀れ苦労人。でも、これで苦労人から全てを聞き出したキラは、今度は地球に行くのか?

999 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 19:51
>>996
乙。要望を聞いていただいてサンクスです。
ボアズ清掃中にワロタw

1000 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 20:39
490以降を纏めて見たよ。途中で抜けがあるかもしれんので、見つけた方は教えてくれ

流離う翼たち  >>490-497>>505-512>>552-554>>559-561>>565-567>>572-574>>577-583>>590-592
>>639-641>>644-650>>681-685>>708-709>>724-727>>740>>762>>769>>770>>777-780
>>802>>803>>811-813>>817>>818>>821>>822>>832>>833>>842>>843>>865-870
>>881>>882>>888>>889>>897-899>>912>>913>>939>>940>>953>>954>>966>>967
>>986-988

もっと楽しくて >>500-502>>514>>548>>557>>562>568>>587>>686>>687>>711>>735>>771>>804-806

温泉で逝こう! >>523-529

赤い髪の少女・アデスの場合  >>537-539

少年の失敗  >>541>>542

北風に羽、太陽に鎖  >>367>>368>>371>>372>>571>>576>>763>>764>>928-937

終わらない明日へ  >>599-624

輝く未来へ   >>631-635

クローン・フレイ  >>654-663

二人で一人  >>668-671>>674-677

あなたへの光 >>672

私の彼にはチャックがある  >>692>>693>>697>>699-703

フレイ・ルージュルート  >>748-755>>788-791>>847-851>>920-923>>958-962

種ゲー   >>783

キラ(♀)×フレイ(♂)  >>836-840>>856>>858>>859>>883-885>>892-894>>907>>908>>945>>946
>>978-980

穏やかな日々  >>925

ある苦労人の記述  >>729-731 >>742-745 >>775-776 >>796-797 >>825-826 >>914-915 >>950 >>996

1001 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 21:23
乙フレ〜
もっと楽しくては、もつと楽しくてだったと思うぞー

1002 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 21:23
おつかれさまです!ありがとう!!

1003 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 21:39
>>1000
お疲れ様です。
膨大なものをまとめるのは大変ですねぇ。

特に「流離う翼たち」は改めてその長さにひたすら尊敬するなぁ。

あ、種げーって >>783 もありましたよね?

1004 名前: 1000 投稿日: 2003/10/18(土) 21:44
>>1003
あれ、種ゲーの>>783は入れた筈だけど
もっと楽しくては・・・・・・・まあ勘弁と言うことでw

1005 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 21:45
'.,     _,.r'       ヽ、______,,,,..ノ    ____」
 "'ー┐'"   _,,,...   --ーー  '''' ""  ̄ _ }
    ゙tュ''",. 、  t,___,,.''" ̄、 ̄  ̄、_    'い、
.     ノ' "\.ヽミ'''___,,.'''""",,,......  ....,,,,__"''_''"_,,..ノ
.    ,' .,、,、 ヾ'''':;;''"....,,,',リソi`   ,. r''",. r/;'.ノ, . )
    i ti'.i.'.i"iヾ,rーァーェュ、"ヽ'、   ,rてゝソ, ''/. ,ノ
..   i、ii i .i i...\-ゝ゚ソ- `      " ̄,,.r', /'  さあ諸君、移動開始だ。
    i.i i i i 、,_ゝ-      i       '''"
...    i i l .i iゝ-''ー-         ',       ,'  
    i i ,' ' .i、」'、        _,,'_   ./ 次スレ↓
   ,i.' i     i '," ヽ,      " ニ "  イ     フレイ様人生劇場SSスレpart3〜月影〜
   i'      i.ri、   ┐、   " /i 「'ー- ..,,http://jbbs.shitaraba.com/bbs/read.cgi/anime/154/1066307205/
   i      i '、、  i i i"i' ー-, '' 、,', i)     ̄"'' ー- 、....、_
   i     ..i  '、、..U ,i i   i  、'v.i _         "、 、、
-ー''"i.       i_,,..>、、//   i   ヽ/' "'ーーー、         ', ,.',
   i      /      '-'  "' 、          、_     .i__」.i
'.、  ,'     ,'          i           "''ー- ..,,___ ,i
, '.、.i     i              ',             ,  / "'i
、vr"i _,,,,... .i....  - .,         ',              レ'    i
. y'""         i         ',            i  ,'  i

1006 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 22:02
>>1004
あ、ほんとだ、すいません>>593です_| ̄|○

1007 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/18(土) 22:10
了解です。じゃあ修正版を

流離う翼たち  >>490-497>>505-512>>552-554>>559-561>>565-567>>572-574>>577-583>>590-592
>>639-641>>644-650>>681-685>>708-709>>724-727>>740>>762>>769>>770>>777-780
>>802>>803>>811-813>>817>>818>>821>>822>>832>>833>>842>>843>>865-870
>>881>>882>>888>>889>>897-899>>912>>913>>939>>940>>953>>954>>966>>967
>>986-988

もつと楽しくて >>500-502>>514>>548>>557>>562>568>>587>>686>>687>>711>>735>>771>>804-806

温泉で逝こう! >>523-529

赤い髪の少女・アデスの場合  >>537-539

少年の失敗  >>541>>542

北風に羽、太陽に鎖  >>367>>368>>371>>372>>571>>576>>763>>764>>928-937

終わらない明日へ  >>599-624

輝く未来へ   >>631-635

クローン・フレイ  >>654-663

二人で一人  >>668-671>>674-677

あなたへの光 >>672

私の彼にはチャックがある  >>692>>693>>697>>699-703

フレイ・ルージュルート  >>748-755>>788-791>>847-851>>920-923>>958-962

種ゲー   >>593>>783

キラ(♀)×フレイ(♂)  >>836-840>>856>>858>>859>>883-885>>892-894>>907>>908>>945>>946
>>978-980

穏やかな日々  >>925

ある苦労人の記述  >>729-731 >>742-745 >>775-776 >>796-797 >>825-826 >>914-915 >>950 >>996

1008 名前: 私の想いが名無しを守るわ 投稿日: 2003/10/24(金) 15:43


■掲示板に戻る■ ■過去ログ倉庫一覧■