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フレイ様人生劇場SSスレpart1
- 1 名前： 994 投稿日： 2003/05/05(月) 00:54
- フレイ・アルスター先生のＳＳが読めるのはこのスレだけ！
|**** ｾﾝｾｲ、 ・創作、予想等多種多様なジャンルをカバー。
|台＠） ｼﾒｷﾘｶﾞ･･･ ・本スレでは長すぎるSSもここではOK。
| 編 ） ヘﾍ ・エロ、グロ、801等の「他人を不快にするSS」は発禁処分。
|_）__） /〃⌒⌒ヽ ライトＨ位なら許してあげる。
| .〈〈.ノﾉ^ ﾘ)) ・フレイ先生に信（中国では手紙をこう書く）を書こう。
|ヽ|| ｀∀´||. ・ここで950を踏んだ人は次スレ立てお願いね。
＿φ＿__⊂)__
／旦／三／ ／|
|￣￣￣￣￣|. | 既刊作品は書庫にあるわ。
|ｵｰﾌﾞみかん|／ ○フレイスレSS保存庫 ttp://oita.cool.ne.jp/fllay/ss.html
- 2 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/05(月) 01:50
- >>１乙ふれ〜
漏れもＳＳ挑戦してみようと思ってます、フレイ様。
- 3 名前： サイ視点SS 1/5 投稿日： 2003/05/05(月) 12:47
- 見慣れた風景が突然変わって見えるというのは恐ろしい事だ。
ブリッジではサイの横のシートがぽっかりと空いている。
ミリアリアは当分戻って来れないだろう。
サイにとっても、トールの死と言う現実は重い。
そして、キラとフレイ…
（だからって、落ち込んでばかりいられるかっ）
（これは戦争だ。戦わなければやられる。分かりきった事じゃないか。）
あれからミリアリアは軍務から外れている。
艦長は彼女の気持ちを慮って容認しているが、いつまでもという訳にもいかないだろう。
サイはカズィと大部屋へ向かいながら、言葉一つ発しない。
「…なぁ、これからどうするんだ？アラスカまで行ったら、俺達の任務は終了だろ？」
堪りかねたようにカズィが口を開く。
- 4 名前： サイ視点SS 2/5 投稿日： 2003/05/05(月) 12:47
- 「俺達、そこでアークエンジェルから降りられないかな？このままだと、また…」
「そこで降りてどうするんだ？のこのこオーブに帰るのか？」
「いや…そんなつもりは…」
「そういう事はアラスカに着いてから考えよう。今は、敵の追撃を振り切る方が先だろ？」
サイの強い調子の言葉に、カズィは押し黙るしかなかった。
ひとつ、ベッドに空きがある大部屋。入る度に胸がつまる。
「ミリィは、まだ自分の部屋には戻ってないよな…」
「当たり前だろっ！」
「サイ…」
「あ…ごめん。つい…」
「俺だって、これが現実だって信じられないよ。何だか悪い夢を見てるみたいで…」
着替えながら喋るカズィの言葉は、やはり夢を見ているように揺れていた。
「…ごめん、先に休んでてくれ。医務室に行ってミリアリアの様子を見てくる」
サイはそう言うと、一人通路に出て行った。
「何だよ…サイ、本当に軍人になっちゃったのかよ…」
一人取り残されたカズィは、そうつぶやくとベッドにもぐり込んだ。
- 5 名前： サイ視点SS 3/5 投稿日： 2003/05/05(月) 12:48
- 「まだ少しな…アドレナリン値も高い。もう鎮静剤は必要ないレベルだが…」
「そうですか」
軍医の説明を聞きながら、サイはチラとミリアリアが寝ているベッドに目をやった。
「じゃあ、そう副長に報告します」
「あぁ、そうしてくれ」
サイはベッド脇の椅子に腰を下ろした。
「…ミリィ、少しは落ち着いた？」
サイの問いかけに、ミリアリアはけだるそうに上体を起こした。
「うん…大分、ね。まだ頭痛が酷いけど…」
「もう鎮静剤も必要無いって言ってくれてる。明日になれば頭痛も治まるさ」
案外落ち着いた様子に、少し安心しながらも、何か胸騒ぎがする。
「…サイ？どうしたの？」
「いや、何でもない…元気そうだから安心したよ」
「悲しんでばかりいても、トールが戻ってくるわけじゃないもの」
その時、サイはミリアリアがシーツを異常な力で握り締めるのを見た。
「また来るから…ゆっくり休んで。敵影も無いし、上手く行けば、アラスカまで無事にいけるかも知れない」
目を背けるように、サイは立ち上がった。
- 6 名前： サイ視点SS 4/5 投稿日： 2003/05/05(月) 12:48
- キラ・ヤマトの部屋。フレイはまだこの部屋で寝起きしている。
最初こそストライク爆破に動揺していたが、捜索が打ち切られると、フレイは何も言わずに軍務に戻った。
（あまりにも、冷たいんじゃないか…!?）
かつての許婚だったサイですら、そう思ってしまう。
と言って、今更自分がフレイにかける言葉があるのだろうか。
しかし、今のフレイに言葉をかけられるのは自分だけなのだ。
サイは大きく息を吸い込むと、部屋の扉を開けた。
「フレイ…!?」
綺麗にシーツが張られ、整頓されたキラのベッド。
キラの制服も、きちんと折り畳まれてベッドの上に置かれている。
サイが入ってきたことに気づいたフレイが、驚いたような表情を見せた。
「フレイ…何をしてるんだ？」
「何って、部屋の掃除をしてるの。キラが帰って来ても困らないように…」
サイは体の中から、不意に激しい怒りが湧いてくるのを感じた。
- 7 名前： サイ視点SS 5/5 投稿日： 2003/05/05(月) 12:49
- 「フレイ、止めろよ、そんな事…」
思わず口をついて出てしまった言葉。
「そんな事をしても、キラはもう」
「もう、何よ？何が言いたいの」
「フレイ…ストライクがあれだけ大破したんだ、キラが無事な訳無いだろ」
「…そんな事、分からないじゃない！何でそんな事言うの」
言い過ぎたかも知れない。しかし、これは現実なんだ。生き残る為には、受け入れるしかないんだ。
フレイに生き残って欲しい、そう思うから、俺はこんな言葉を口にしているんだ。
「フレイ、俺だって、考えたくないよ。キラやトールが戦死したなんて…」
「いやよ、それ以上言わないで！」
フレイは力無く座り込んでしまった。
「でも、受け入れなければいけないんだ。これは…」
フレイが顔を上げ、サイと視線が合った。怯えと怒り、困惑…何かにすがるような目。
初めて会ってから何年にもなるが、サイはフレイのこんな目を始めて見るような気がした。
「出てってよ…」
「フレイ、俺は」
「出てってよ！出てって！！」
フレイはスプレーの缶を投げつけたが、サイはそれを避けなかった。
サイの体から跳ね返って床に落ちたスプレー缶が、沈黙の中、異様に大きい音を立てて転がった。
- 8 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/05(月) 13:13
- >>3-7
記念すべきスレ最初のＳＳ乙です
フレイ様・・・いじらしい・・・（つΑ｀）
- 9 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/05(月) 13:31
- >3-7
おつふれ〜。
ミリィの落ち込み方は多分こんな感じなんだろうなぁ。
フレイ様もいじらしい…誰に言うでもなくただキラの帰りを…！
しかし、サイ。本当にそれだけか？ｗ（生き残って欲しいから〜云々）
にしてはやけに自分に言い訳してるような口調なのが気になる。
スプレーのシーンは目に浮かぶようです。
- 10 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/05(月) 13:47
- 初SSｷﾀ━━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━━!!
そうだよ、フレイ様はきっとこんなカンジだよ
みんなの前では平静を装ってるけど1人になると・・・
にしてもサイ視点とは意表をつかれた。職人さんｱﾝﾀはｽｺﾞｲ！
- 11 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/05(月) 18:30
- >>8-10
感想どうもありがとうございます。うｐした甲斐がありました。
>>9
書きながら言い訳がましいかな…とは思ったんだけど、まぁ書いたヤシがそういうヤシだと言う事でｗ
- 12 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/06(火) 21:42
- まだまだ募集中よｗ
- 13 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/06(火) 22:08
- （´-`）.｡oO（こんな感じのLASを読んだことがあるような・・・）
- 14 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/06(火) 23:14
- LASは明かに「あのアスカがシンジに媚びるなんてありえねぇ〜！」
になるんで受けつけないがキラフレのこういうのは激しく切ないな。
- 15 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/06(火) 23:21
- アスカよりフレイの方が自分の気持ちに素直そうだからな。
ＬＡＳより自然な感じがする。
- 16 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/06(火) 23:58
- 貴様ら・・・ＥＶＡ板のフレイスレ住人か！？
よしなに
- 17 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/07(水) 20:27
- ＥＶＡ板でわざわざフレイ様擁護をするのも私だ
- 18 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/07(水) 20:28
- すまんあげちゃった・・・
- 19 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/07(水) 20:28
- 許そう
ていうか俺も実はあそこ覗いてる
- 20 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/07(水) 20:32
- 今ちょっと覗いてみた･･･なかなか熱いな･･･。
しかしEVA板とは盲点だった。
- 21 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/07(水) 20:37
- 人によって、明らかに書き込みに温度差が出てるよな、あのスレ。
擁護してる奴、ここの兼任者だけじゃないのか？w
- 22 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/07(水) 20:40
- 向こうでもキラ叩きが凄い･･･
なんか種総合の話題になっててフレイ様の話題が最近あんまない
- 23 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/07(水) 20:41
- ここは「SSスレ」でっせ、みなさん。
違う話であんまり進ませるのも、どうもねぇ。
- 24 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/07(水) 20:42
- まったくだ
スマン
- 25 名前： 万が一サイフレが有り得るなら… 投稿日： 2003/05/07(水) 23:17
- 「…本気か？」
ムゥ・ラ・フラガ少佐が厳しい声を出した。
「これはアーガイル二等兵が希望した事です。パイロットとして働けるのがフラガ少佐だけでは危険が大きすぎます」
ナタル中尉の口調はあくまで冷静だ。
「だからってなぁ…彼をパイロット候補生として訓練するなんて…どう思う？」
「…確かに、パイロットが一人と言う状況は危機的です。」
「おいおい、艦長まで…」
「これから先、いつ敵襲があるとも限りません。打てる手は打たないといけないわ」
マリュー艦長の口調は静かだが、断固としたものが感じられ、フラガ少佐は口をつぐんだ。
「…どちらにしろ、大破した機体の修理はすぐには無理です。早急に実戦に投入する事はありません」
「…はい、それは承知しています。」
「それでいいですか？フラガ少佐」
「良いも悪いも…」
フラガは肩をすくめ、ため息をついた。
- 26 名前： 万が一サイフレが有り得るなら… 投稿日： 2003/05/07(水) 23:18
- 「中々筋が良いじゃないか」
シミュレーションマシンの中にいるサイに、フラガは努めて明るい声をかける。
「ありがとうございます。…段々、コツが掴めてきた気がします」
「…訓練を受けるのを志願したそうだが、何故だ？」
「何か、動かないといけない気がして。」
「アラスカに着いたら、アークエンジェルから降りるとか…」
「志願兵と言っても、もう僕らは軍人ですから…それに、アークエンジェルから降りるのは、トールとキラに対する裏切りじゃないかって…」
「あんまり思い詰めるな。もう時間だ。休むのも仕事の内だ」
サイの後姿を見つめながら、フラガの心は重かった。
「全く…俺達大人が、だらしないんだよな…」
「えっ…」
サイが訓練を受けている、と知った時のフレイの驚きは大きかった。
何かに突き落とされるような感覚、と言っても良いかも知れない。
「何で…そんな事…」
信じられなかった。フレイは走り出していた。
- 27 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/07(水) 23:18
- ２次創作でハマれるカプなんてキラフレが初めてなのに・・
LASとかは無理にくっつけるためにキャラがすりかえてあるからな。
もっとみたいでつ、自分は書けないけど。
- 28 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/07(水) 23:58
- LASって何？
- 29 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/08(木) 00:19
- ラブ・アスカ・シンジの略。レイだとＬＲＳ。
キラフレとかアスラクと同レベルの略語。
- 30 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/08(木) 00:21
- フレイ様お持ち帰りはどうやらマジらしいです（ネタなら良かったのに）。
独房に入れられちゃったら、コーディ兵士達という狼に投げ入れられた餌になっちゃう予感…
- 31 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/08(木) 00:23
- >>30
誰かそれで書いて！
- 32 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/08(木) 01:07
- 小説書いたことないですが、兵士達の台詞は簡単に予想できますね。
基地でも戦艦の中でも、とにかくフレイが捕まっている状況下です。
「おい聞いたか？クルーゼ隊長が捕虜をつれて来たぜ。今独房に入れられてる」
「別に捕虜なんて珍しく無いだろ？興味ないよ」
「馬鹿、ただの捕虜じゃねぇ。ナチュラルの小娘だ。気が強そうだが、相当な上玉らしいぜ」
「ホントかよ。ナチュラルの女か。俺、ナチュラルの女なんて初めて見るよ…」
「決まったな。非番の時に取調べ室に行って見ようぜ。俺達みたいな一般兵にも尋問させてくれるんだ」
「ま、ま、ま、マジかよ！！！行く、俺は絶対行くぜ！！！」
「よし。明日の休みは無理だから５日後か。たまんねぇな。」
「明日じゃまずいのか？」
「ふん、予約制になってるんだよ」
フレイ様ぁぁぁぁぁ！！！
- 33 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/08(木) 08:00
- >>32
うわ、すっごい萌えちゃった。
フレイ様ごめんよぉぉぉぉ！！！
- 34 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/08(木) 08:48
- だれか同人誌つくってコミケに間に合わせて下さい。
絶対買います！！
「キラ……」とつぶやく虚ろな目のフレイ様…。
うわぁぁぁぁぁぁぁ！！！
- 35 名前： 風にたなびく秋桜 1/7 投稿日： 2003/05/08(木) 22:52
- ベッドの上で目覚めた時、私は傍らに座る一人の男に気がついた。
夢見心地なまどろみはすぐに消え去り、掴みようのない不安感が私の胸を締め付ける。
私は警戒感をあらわにして拒絶を示したが、彼は諭すように穏やかな声を掛けてきた。
「そう怖がる事はない」
「いやっ、近寄らないで！ その格好…ザフトのコーディネイターなんでしょう！？」
「確かに私はザフトではあるが、しかしコーディネイターではない。
私は君を、君の真の価値を知らない、連合の無能な連中から救い出したに過ぎないのだよ」
「ど…どういう事？」
「私は君のお父上とは知己の中でね、フレイ＝アルスター嬢。かくいう私も…蒼き清浄なる世界の為に生きる者だ」
「パパを知ってるの？」
「そうだよアルスター嬢。君は、お父上の遺志を継いで…この戦争を終結させたいとは思わないかね？」
「私にそんな力はないわ…ブルーコスモスもお断りよ…」
「ならば、コーディネイターに蹂躙されるであろう世界を受け入れるのかね」
「……」
「私達は、聡明な君の判断に期待している」
そう言い残して、彼は部屋を去った。
白一色に染められた清廉な部屋に、たった独りで取り残される孤独感が息苦しくて、
私は毛布をたぐり寄せ、震える身体を宥めようとする。それでも止まらない震えが、私の冷えた心を蝕む。
あの言葉にかすかな誘惑を感じたのは、私が何も持たない身だったからに他ならない。
キラを喪った今、それが私に見えた只一つの光明だった。
- 36 名前： 風にたなびく秋桜 2/7 投稿日： 2003/05/08(木) 22:52
- 無限定な混沌とは対極的な万物を秩序とし、統一されている世界。それが地球。
母なる大地に慈悲を求め、その地から離れた異形の存在を許さぬ者。それがブルーコスモス。
母なる大地を忘れて生き、摂理を犯して生きる者。それがコーディネイター。
そして、それらに縋りよって生きるしか能が無い者、それが私…フレイ＝アルスター。
白と青を基調とした薄地のドレスを着せられた私の格好は、心理そのものを示しているようで滑稽ですらあった。
君はテラスに立っているだけでいい。クルーゼという男はそう言った。
私だってそれ以上の事ができるとは思ってはいない。口達者な男が数人、
私の矢面に立って高説を語るのを、黙って聞き流している事しかできないのだから。
ブルーコスモスという組織は、私が思っていたよりも遥かに地味で、しかし巨大で、結束力が強いらしい。
テラスの階下に見える群像の中には、ザフトの仕官服のみならず連合軍の制服姿も多く見受けられた。
表世界では憎悪を叩き付け合っているはずの彼等は、しかしこの場では肩を寄り添いあっている矛盾。
いっそ彼等だけが生き残れば、この世から戦争など消えて無くなってくれるのだろうか。
（それじゃ世も末だわ）
虚ろな目をして諦観する私は、傍目からはまことに御愁傷な風体らしい。
彼等曰く私は「悲劇のアイドル」なのだ。私をシンボルとして擁立する群集は、日々益々と結束を強めている。
でも私にとっては、収まりどころの無い無能な娘が、偶然手に入れた居場所に過ぎない。
好きで手に入れた立場じゃない。ただ、他に行くあても無かった。
よしんば連合軍に戻れたところで、雑務担当の二等兵が精々のところ、
ましてやキラの居ないアークエンジェルなど、私にとって針のムシロも同然である。
彼が生きているうちはそれでも良かった。互いに傷を舐め合っては、慣れない慈愛心にただ励んでいられた。
（自然の摂理に逆らうコーディネイターなんて、お互いに戦い抜いて死ねばいい）
しかしキラは私にとって優し過ぎる存在だった。私の歪んだ願望の全てを受け入れて、爆炎に身を焦がされて死んでいった。
復讐が型通りに実現した事がどれだけ恐ろしくても、逃げ出す事すら出来ない無力な私。
そんな私を拾ったのが、かのクルーゼである。
- 37 名前： 風にたなびく秋桜 3/7 投稿日： 2003/05/08(木) 22:53
「さあアルスター嬢。いつものように、彼等に慈悲を与えてくれたまえ」
齢二十八と聞いたが、時折私に差し出す手の甲はそれより遥かに年老いて見える。
両眼部を仮面が覆っているので素性は知れないが、元よりそんな物に興味は無かった。
しかし彼の緩やかに語りかける口調に反感的にもなれず、今の私は彼の為すがままの存在になっている。
こんな状況でも毅然と振舞えそうな少女には、二人ほど心当たりがあるけれど、
私は彼女達ほどのカリスマも、強い意志も、高潔な理想も持ってはいない。
傀儡扱いも、自らを傀儡と意識して生きていればそう苦しい物でもない。つまり彼と私はそういう相互関係だった。
慈悲を与えろと命じられた私は、テラスの最前部にまで歩み寄ると、無言で祈りを捧げた。
眼下の群集達もその光景に同調し、たちまち厳かな雰囲気が会場を包む。
蒼き清浄なる世界の為に祈る。ただそれだけの儀式のはずであったが、
クルーゼは私の横に歩み寄ると、その群集達のこうべに向かって語り始めた。
「諸君、ヒトはヒト自身の努力によって、未来へと躍進すべき存在である。
しかしこの世には、人の世の摂理に逆らい、欲望のままに改造された遺伝子を持つ者達が存在する。
その始祖であるかの男、ジョージ・グレンは自らを『コーディネイター』と名乗った。
彼等は、母である大地と決別し、新たな世界への掛け橋であると僭称する輩である。
ならば自然の子なる我々は、 母なる大地より生まれず、自然の摂理へ逆らいつづける者達の跋扈を許すべきか？
答えはＮＯである。ならばどうする。我々は、人の世の為に何が出来る？」
「コーディネイターをこの世から抹殺すればいい！」
「奴等の魂を全て地球へと還せ！」
「宇宙の果てに追放して、ヒトの汚点を消し去れ！」
「プラントごと宇宙の塵となれ、コーディネイター！」
「殺せ！ 殺せ！ 殺せ！ 殺せ！」
- 38 名前： 風にたなびく秋桜 4/7 投稿日： 2003/05/08(木) 22:53
途端に憎悪を噴出させはじめた群集達の大歓声を相手に、クルーゼは更に演説を続けた。
「そうだ、コーディネイターは人類にとって不要な存在である。だが私怨のみで戦ってはならぬ。
我々はあくまで、母なる大地と、大地が生んだ子の為にのみ戦うべきである。
さぁ、怒りを静め、憎しみを心の奥に封じ込め、我等がプリンセスを崇めよ。
そうすればたとえその命が失われようとも、その魂は戦士達の英霊として召されるであろう…
蒼き清浄なる大地のために！」
「蒼き清浄なる大地のために！」
怨念の渦巻く、おぞましいシュプレヒコールが鳴り響く式典場に背を向けて、かの男は
「どうかな、私の道化ぶりも中々だろう」
と私に語りかけた。私を気に掛けているつもりか、それとも自嘲なのか、口元が笑みで歪んでいる。
でも私はこの男の野望などにはなんら興味を感じない。せいぜい「後世の歴史家」とやらに笑われないよう振舞えばいい。
大西洋連合とザフト、そしてオーブをも取り込み侵食するブルーコスモスの思想は、
もしかすると勢力図をも一変させる可能性を秘めている。群集の背後にそびえ立つ数十機のモビルスーツと、
その最新鋭である三機のモビルスーツ…フォビドゥン、レイダー、そしてカラミティの力を以ってすれば…
（コーディネイターもナチュラルも結局…根源では変わりないんだわ。
憎しみだけで戦うような連中は、みんな死んでしまえばいい。クルーゼも、そしてそれを願う私も…）
もしこの男が夢破れて死ぬような事があれば、その時は私も一蓮托生するだろう。
彼に義理は無い。でも、もう私には逃げる場所も無いのだから。
それとも私に翼でもあれば、この虚無と苦痛から逃げ出して、自由に羽ばたけるのだろうか。
それも叶わない夢…自業自得を享受するだけが、きっと私に定められた最後の運命だ。
- 39 名前： 風にたなびく秋桜 5/7 投稿日： 2003/05/08(木) 22:53
数ヵ月後―――
ブルーコスモスのクーデターは失敗した。
混乱にまぎれてザフトと連合軍のトップを処分できたまでは上等だったが、
オーブを中心とした第三勢力軍の台頭を抑えきれなかったのが敗因だろう。この点については、
あのカガリという娘とラクスという娘が色々と取り纏めたようだ。やはり私とは役者の格が根本から違うらしい。
ブルーコスモスはクルーゼを陣頭に、宇宙に戦力を集結させて総反撃を行ったものの、
連合軍月面基地戦において六割の戦力を喪失…事実上壊滅の憂き目を見た。
私は震える恐怖を必死に押し隠しながら、世話役の男に問い掛けた。
「それでは、虎の子のＧ三機の連中はどうしたの？」
「月面上において、ザフトのエース二機に撃墜されたとの報告が」
「例の『自由』と『正義』の仕業か、皮肉なものね…。ところでクルーゼは？」
「同じく月面基地において、連合軍の『エンディミオンの鷹』と相打ちになったとの報告が…」
「そう…フラガ少佐が…」
「組織の幹部達も大半が逃亡、戦死、そして投降しました。
間もなくこのコロニーも侵攻を受けるでしょう、お嬢様もどうか脱出の準備を」
「…私はここに残ります。どうせ逃げるあてもありませんし、
前線ではまだ散発的な戦闘も続いているのでしょう？ 彼等を置いて私だけおめおめと逃げられません」
尤もらしい詭弁である。彼等に対する後ろめたさはあっても、慈悲の心などありはしない。私はそういう人間だ。
向こう側のアイドルならもう少し優しい言い草もできるでしょうけど、私に期待した彼等も大概馬鹿なのだ。
「しかし、アルスター嬢…」
「逃げなさい。今更あなた達の処遇をどうこう口出すつもりはありません」
少し逡巡したような顔をしていたが、やがて屋敷から弾かれたように逃げていく使用人達の後姿を
侮蔑の目で見ながら一方では、俗欲に縋って生きる彼等が羨ましくもあった。
「これでブルーコスモスも終わりか…判っていた事だけど、
それでもコーディネイターが台頭する世の中は想像したくないわね」
傀儡の糸が切れた人形が、バルコニーに手を掛けて外の様子を眺め見る。
私が連れて来られたこのコロニーは、元は工業用区画として建設された地らしい。つまりヘリオポリスと同じだ。
ブルーコスモスの賛同者のみならず、その家族や流浪者が多く集う雑多な居住区だが、
私はこのコロニーの醸し出す雰囲気が嫌いではなかった。
（懐かしいわね…フローレンスのお店に行きつけていたのも、つい数ヶ月前の出来事だったのに）
- 40 名前： 風にたなびく秋桜 6/7 投稿日： 2003/05/08(木) 22:53
庭園の木々で戯れていた鳥達が一斉に飛び立つ。何事かと思って視野を広げると、
揺らめく枝の向こう側に、コロニーの円心部を飛来してくる二機のモビルスーツの姿が見えた。
「騒々しいわね…あんな物々しいモビルスーツが出て来なくても、このコロニーに残った人達は無力なのに」
私は部屋を出ると階段を駆け下り、庭園に出る。私に出来る最後の仕事を果たすために。
いくら操られた立場だからといっても、数ヶ月もこなしていれば板に付く役目もあるのだ。
二機のモビルスーツも私の姿を認めたようで、庭園に着地した。
そのうち、赤銅色をしたモビルスーツのハッチが開き、ザフトのエース『ジャスティス』のパイロットが姿を現す。
今は亡きプラント国防省長官の子息の噂は聞いている。歳は見たところ私と同じか少し上…端正な顔立ちをした少年だ。
キラとパパの仇でもある人間だけれど、私の中にはもう憎悪を搾り出す気力も残ってはいなかった。
「君がブルーコスモスの『皇女』、フレイ＝アルスターだな？」
「そうよ。ここに残っているのはもう私だけ…好きにしなさい。ただしコロニーだけは傷付けないで」
「皇女の名において、降伏すると？」
「まさか、テロリストの扇動者が命惜しさに降伏したのでは、誰も納得しないわ。
そんな事くらいは私にでもわかるわよ。だから、この場において然るべき処断を希望します」
「何故そうやって死に急ぐ？ クルーゼ隊長…もとい、首謀者のラウ＝ル＝クルーゼはもう死んだ。
コーディネイターとナチュラルとの戦争は、もう終わったんだ」
「あなたも政治家の息子ならわかるでしょう？ 戦後の平和を示すというのなら、
戦犯首謀者に対するケジメというものが必要よ。クルーゼや三機のＧを殺したように、私もその手で殺しなさい」
「…それでも俺には出来ない。もし俺が君を殺せば、君を愛する者が俺を許さないだろう。
戦争が終わったというのに、そんな憎しみの連鎖はもう作りたくないんだ」
「知った風な口を利かないで。
だったら安心なさい、ブルーコスモスが滅びた今、私の死を悼む人間なんてこの世の何処にも居やしないわ。
あなたが私を撃てば、その憎しみの連鎖とやらも八方丸く収まるの。さあ…やりなさいよ」
「困った人だな…そんなに死にたいのか」
「私からパパとキラを奪った人が言う事じゃないでしょう！」
激昂する私に苦笑した彼は、傍らのもう一機のモビルスーツの方を振り向いた。
「だとさ。もし俺があの娘を撃てば、お前はどうする？」
傍らのモビルスーツ『フリーダム』はしばらく私達のやり取りを沈黙で見守っていたが、
彼がその言葉を投げ掛けると、右手に持っていたビームライフルを彼の方に突きつけた。
よもや本気で撃つつもりは無いのだろうけれど、そこには何かの強固な意志が感じられた。
しかし、戦場で最も戦果をあげたと噂されるモビルスーツのパイロットが、
わざわざ私ごときを庇う理由など、ついぞ思い当たるはずも無い。
「だからといって生きのびてどうなる訳でもないわ…野垂れ死にさせるのが望みなら、好きにしなさいよ」
「…少なくともここには一人、君の死を望まない人も居るんだ。そんな悲しい事言わないでよ、フレイ」
- 41 名前： 風にたなびく秋桜 7/7 投稿日： 2003/05/08(木) 22:54
その声が聞き覚えのあるものだという事に対して、すかさず理性が拒否を示した。
そんな馬鹿な事あるはずが無い。彼は死んだもの。私が…殺したようなものだから。そう信じていたのだから。
気が付くと、フリーダムのコックピットから一人の少年が降り立ち、私の前に歩み寄っていた。
見覚えのあるパイロットスーツ姿に、私は愕然とする。自分は、彼の死霊に呪われるほど業の深い人間なのだろうか。
「イヤだ、やめてよ…そんな格好で私を惑わせないで！ 私が憎いなら、いっそ殺せばいいじゃない！」
「フレイ、逃げないで、戸惑わないで。僕は確かにここにいるから」
残酷なくらい優しい声で、私を惑わせる彼の声。
そして、顔を覆っていたヘルメットを脱いで、その容貌を現した。間違いない…間違いない！
「……き、キラ？ キラなの？」
「ごめんねフレイ、迎えに来るのが遅くて…ごめん」
「キラ……キラぁっ！」
私は、自分に架した全ての呪縛を投げ打って、彼の胸元に飛び込んだ。
それが赦される事なのかどうか、私自身には否定的な答えしか出せなかったから、だからあえて省みない。
たとえ世界の全てが私を憎もうとも、この腕の中にいる間、この刹那だけでも幸せに満ちていられるから。
「やれやれ…ブルーコスモスの皇女は、気高くも禍禍しい少女だとばかり聞いていたんだがな…」
「そんなんじゃないよアスラン。フレイはただの、寂しがり屋で泣き虫な女の子さ」
「キラにだけは言われたくないわよぉ…ぐすっ…」
「ごめんごめん、不安にさせた僕が悪かったんだ。許してよ」
「……て」
「え？」
「私を赦して…助けて…キラぁ」
乾いていたはずの瞳から、涙腺が熱くなるほど涙がこぼれていた。みっともない、意地汚い、見苦しい懺悔。
それでもなお、生の為の気力を取り戻すきっかけが彼から欲しい。それが私の本音だった。
でも私がこんなに泣きじゃくってるのに、キラと言えば彼の方を見て苦笑いしている。
「えーと…どうしようか、アスラン」
「なんで俺の方を見るんだよ。そのくらい自分で決めろよ」
「いや、僕は最初からそのつもりなんだけどさ…」
「…わかったよ。ザラ家の名において、できる限りの弁護はしてみせる。ラクスとカガリにもそう伝えておくよ」
「ありがとう、アスラン」
「ったく、ラクスはともかくカガリには自分で言えばいいだろ？」
「君から言う方が角が立たないよ、きっと」
「お前なぁ…」
爽やかなはずの友情の会話も、すでに私の耳には届いていない。
ただキラの胸板が温かくて逞しくて、ずっと顔をうずめていた。
「フレイ…おかえり」
「ただいま…キラ」
- 42 名前： 風にたなびく秋桜 後書き 投稿日： 2003/05/08(木) 22:55
- 半日で速攻で書いたものなので、設定等についてはツッコミ無用でお願いしまつ。
おまけにキラフレ風味ですいません。
- 43 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/08(木) 23:01
- 乙でござる。
- 44 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/08(木) 23:05
- アスランとキラの会話がダメ男全開で素敵だｗ
- 45 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/08(木) 23:06
- キラとアスラン…笑える。
- 46 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/08(木) 23:09
- 乙〜。
ちょっと冷めた感じの皇女フレイ様が(・∀・)ｲｲ!
- 47 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/08(木) 23:17
- ウホッ！いいフレイ…。
- 48 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/08(木) 23:17
- 乙！
しかし、この長さを半日で書いたんですか。
凄いな、見習わないと。
流されるように翻弄されるフレイ様が切ないですね。
- 49 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/08(木) 23:24
- へ〜、かなり(・∀・)イイ!!
本編でキラと再開したときのフレイ様が本当にこんな風だったら号泣しまつ（ ´д⊂ヽ
- 50 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/08(木) 23:28
- 乙！
ところどころ泣きそうになってしまったよ。
ヘリオ時代を懐かしむシーンとか、自嘲気味に流されるところとか。
こんな風にキラに縋ってもみっともないだなんて思いませんよフレイ様！
むしろそうやってまた熱く激しく美しいあなたに戻って下さい。
少なくともここにも一人、あなたの死を望まない人も居るので
その辺覚えていていただきたいです。
- 51 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/08(木) 23:30
- 何気に伸びるなぁ、このスレ。
SS投下してくれた方々、お疲れさんです。
- 52 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/08(木) 23:31
- >>50
ここにいる誰もがフレイ様の死など望んでいないと思う・・・
このまま孤独にア○カのように精神崩壊や死などしてほしくない。
- 53 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/08(木) 23:38
- 良すぎます！！書いた方ありがとう・・
- 54 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/09(金) 00:33
- すげぇ、漏れにとってのＳＥＥＤ本編はこれだ！！！
- 55 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/09(金) 01:02
- 嫌なネタバレばかりで鬱になっていましたが癒されました。
職人さんに感謝！
- 56 名前： 無理やりクルフレ風にしてみた1 投稿日： 2003/05/09(金) 01:41
- 「君は、足つき･･･アーク･エンジェルに搭乗していたそうだな？」
フレイはクルーゼの言葉に身を固くした。
椅子に座っているフレイの周りを、クルーゼはゆっくりと歩きながら、まるで独り言のように言葉を続ける。
机と二脚の椅子のみが置かれた部屋の空気は乾いていて、クルーゼの言葉と靴音が必要以上に響くようにフレイには感じられた。
「あの艦には、我々は何度も苦渋を舐めさせられている。何より、あの艦には、モビルスーツと、それを操縦出来るパイロットがいた」
クルーゼの靴音が止まった。しばし訪れた重苦しい沈黙が、フレイを押しつぶしてしまいそうに迫ってくる。
「そんな話をして…私に、何の関係があるんですか？私は…」
やっと絞り出したフレイの声を遮るように、クルーゼの無表情な言葉が襲う。
「ストライクは墜としたが、足つきは健在だ。それに、これは未確認だが、連合がモビルスーツを量産する計画を立てているとう情報もある。」
フレイの呼吸が無意識に乱れてしまう。フレイは悟られまいと目を伏せた。
（キラ･･･）
「我々は今、情報が欲しいのだ。足つきの中で･･･!?」
突然、クルーゼの言葉が途切れ、椅子が荒々しく倒れる音が響いた。
目を上げたフレイの視界には、蹲って悶えるクルーゼの姿があった。
（･･･!? 一体、何が起こったの？）
クルーゼの苦しみ方は異常だった。まるで、体の中から何かにつき回されているような･･･言葉にならない、微かなうめき声が暗い部屋に充満する。
フレイは反射的に、誰かを呼ぼうと扉に向かった。しかし、クルーゼの手がフレイの手を掴み、それを許さなかった。
「他人を呼ぶな･･･」
「何故？貴方、病気なんでしょう？すぐに診てもらわないと･･･」
フレイも混乱していたのだろう、彼が、敵、であると言う事は頭に無かった。
「私のこんな姿を、見せる訳にはいかん･･･くそ、私はまだ倒れる訳には･･･」
クルーゼは震える手で胸ポケットから錠剤の入った小ビンを取り出そうとしたが、力尽きたようにそれを取り落とした。
フレイがそれを拾い上げ、錠剤をクルーゼの口に含ませたのは、一体何故だったのか。
後で幾ら思い返しても、フレイはその時の自分の行動を説明する事は出来ないだろう。
「すまない･･･」
クルーゼの微かな声が、フレイの耳に入ってきた･･･
- 57 名前： 無理やりクルフレ風にしてみた2 投稿日： 2003/05/09(金) 01:41
- あれから、クルーゼとフレイは、ザフト軍の軍人と捕虜と言う形で、行動を共にしている。
クルーゼはフレイから有益な情報が得られない事が分かっても、手放そうとはしない。
「彼女の存在は、足つきと交戦した時にバリアーになります。多少、姑息な手段を使っても、足つきは落さねばなりません」
パトリックに対するクルーゼの詭弁である。
フレイも、アークエンジェルに少しでも近くにいると思うと、気分は和らぐ。
（でも、あの人は何故、あの後私を殺したりしなかったんだろう･･･）
口封じ、と言う手段も十分に考えられた。しかし、自分は今、こうして此処にいる。
フレイが幾度目かの自問自答の淵に沈もうとした時、独房の扉が開き、クルーゼが入ってきた。
「あ･･･!?」
フレイは慌てて立ち上がる。
「突然入ってきたのは失礼だったかな･･･？」
そんなクルーゼの言葉も、今のフレイの混乱を助長するだけだ。
「君は、私の命の恩人だ。礼を言いたい」
「礼･･･？」
あまりにも意外な言葉。これが敵に向かって放たれる言葉だろうか？
「フレイ・アルスター。君の経歴について少し調べさせてもらったよ。父君は政務次官補･･･そして、ブルーコスモスの有力者だった、という事」
フレイは目を伏せた。この戦争は憎しみが憎しみを生んだ結果のものだ。
その憎悪が自分に向けられるという想像は、フレイを戦慄させた。
「これで、お互いの秘密を知った、という訳だな」
秘密？この男は一体何を言い出すのだろう。呆気に取られるフレイにクルーゼは言葉を継ぐ。
「コーディネーターは確かにナチュラルに比べて遥かに身体能力や知力は優秀だ。だが･･･遺伝子を人為的に操作するという行為には、神の叡智があったとしても、予想できない事態と言うものは起こるものだ」
「予想できない事･･･？」
「私の体は、既にナチュラルの数倍の速さで老化が始まっている･･･度重なる遺伝子操作の予期せぬ副作用という奴だ。君の前で発作を起こしたのはそのせいだ」
「そんな･･･」
「私は、私をこんな体にした者達を許す事は出来ない･･･私達コーディネーターとは、こんなに脆いものだったのか？」
憎むべき敵、コーディネーター。それはキラと共に過ごし、キラを喪った事で既にフレイの中では消えかかっていた言葉だった。
「私は、コーディネーターではあるが、ブルーコスモスと連絡を取っている。この忌まわしい血の流れは･･･断ち切らねばならない」
「そんな･･･」
クルーゼの言葉は、確実にフレイの心の中の何かを変えていった。
- 58 名前： 無理やりクルフレ風にしてみた3 投稿日： 2003/05/09(金) 01:42
- アークエンジェルに帰還したキラの衝撃は大きかった。
自分がいない間にフレイが拉致された事が、まるで自分の責任であるかのように。
それ以来、キラはフレイを救出する為に、鬼神のような働きを見せる事になる。
「駄目です、左半舷火器沈黙！これ以上防衛線を維持出来ません！」
オベレーターの悲鳴のような報告がヴェサリウスのブリッジに響く。
キラのフリーダム。アスランのジャスティス。彼らの強さは鬼神のそれだ。
「潮時だな･･･」
クルーゼはつぶやくと、総員に撤退命令を出した。
その足で、フレイの部屋へ向かう。
「フレイ･アルスター。この艦はまもなく沈む。撤退命令を出した」
「撤退･･･？」
「君は･･･アークエンジェルに戻るが良い。小型ボートを用意してある。投降信号を出せば誤認されて撃たれる事はあるまい」
「な･･･何故！」
意外な言葉に、フレイは驚きを隠せなかった。
クルーゼは驚くフレイの手を取ると、共にデッキに流れていった。
「私はこれから、ザフトに戻って、パトリックを追い落とす。その為の準備をしなければならない。ザフトに戻れば、君は間違いなく危険に晒される」
「貴方･･･死ぬ気？」
「まさか･･･私はそんなつもりはない」
「嘘！何で･･･何でそんな事するの？私には分からない！」
フレイの叫びに、クルーゼは応えず、
「ボートはあそこだ。自動操縦で、アークエンジェルがいる方向にセットしてある」
それだけ言うと、クルーゼは背を向け、シグーの方へ流れ始めた。
「待って！」
フレイの叫びは、ビームが船体のどこかに直撃した衝撃でかき消された。
「･･･あれは？」
キラの乗るフリーダムのセンサーは、他MSの数倍の性能を誇る。残骸が漂う空間をゆっくりと移動しているボートの存在に気づくのは容易だった。
「投降信号･･･誰かが乗っているのか？」
用心の為ビームライフルを構えたまま、ゆっくりとボートに近づいていく。
「そこに誰か乗っているのか？聞こえているなら返事をしろ！誰なんだ！」
キラの声が、ボートの中に響く。しかし、フレイはキラが生きている事をまだ知らない。
「何で、皆･･･」
フレイの頬を、一筋の涙が伝わった。
- 59 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/09(金) 01:45
- (´-｀).o０（実感した。クルフレは無理ポ）
- 60 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/09(金) 09:11
- キラフレに比べて無理があるかな…
- 61 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/09(金) 12:33
- 策略以外で動くクルーゼを想像できないのが致命的かな…。
フレイに優しい香具師なんて考えもつかん。
- 62 名前： フレイ様AA最後の夜 1/4 投稿日： 2003/05/11(日) 16:54
- 4月のアラスカではまだ雪が降る。
アーク・エンジェルがアラスカ基地に接舷した日も、空からは雪がちらついていた。
灰色に曇った空から降りてくる綿の様な雪…
雪の降らないオーブで育ったフレイには、初めて見る雪はとても神秘的だった。
「綺麗…まるで、星が降りてくるみたい」
テレビジョンで何度も見ていても、やはり生で見る雪はそんな感慨を抱かせる。
しかし、今、甲板に出て雪を見ているのは自分ひとりだ。
軍支給のコートは、ゴワゴワとして肌触りが悪く、フレイは嫌いだった。
艦長達は一足先に艦を降り、基地司令の所へ行っている。
サイやミリアリア達は、明日まではブリッジから離れられない。
明日、正式にアークエンジェルのクルーはアラスカ基地に上陸する。
その後どうなるのか、フレイは知らされていなかったが、おおよその予想はつく。
ヘリオポリス崩壊の混乱に紛れて、そのままここまでやって来た形なのだ。
正規の艦船要員も殆どいない艦が、このままで有ろう筈は無い。
恐らく、殆どのクルーは転属、再配置になるだろう。
そして、自分も…
- 63 名前： フレイ様AA最後の夜 2/4 投稿日： 2003/05/11(日) 16:55
- フレイはバスタブに身を沈めた。
静かな音を立てて、溢れた水が流れていく。
航海中と違って、水の遠慮をしないですむのは有りがたい事だと思う。
肘から指先までを丁寧に撫でながら、ふとため息をつく。
「肌が硬くなっちゃったな…」
艦内とは言え毎日働いたフレイの体は、ヘリオポリスにいた頃と比べると幾分そのしなやかさを失っているようだった。
浮力に身を任せて、フレイは天井を見上げる。
その力が抜ける感覚が好きだったのだが、今のフレイには何の感興も与えてくれない。
真っ白な天井に１つだけ灯る明かり。
窓からは日没時の微かな光が差し込んでいる。
フレイのきめ細かい、白い肌が水を留め、それら光を反射して、フレイ自身が光を発しているようにも見えた。
「キラ…」
もう何度呼んだかわからない呟きが、バスルームに反響した。
本当にキラは死んだのだろうか。
オーブが捜索しても、結局キラの遺体は見つからなかった。
何か痕跡くらいは見つかってもおかしくないのに不思議だ、と誰かが言ってたっけ…
私は、キラに復讐したかったのかな？
本当に、そうだったんだろうか…分からない…
そんなとりとめも無い事を考えながら、何時までも天井を見つめていた。
- 64 名前： フレイ様AA最後の夜 3/4 投稿日： 2003/05/11(日) 16:55
- キラの部屋からは私物が取り除かれ、主のいない部屋は冷たい静寂に満ちていた。
夜が明けて、新しい乗組員が搭乗したら、きっとこの部屋も見知らぬ誰かが使う事になるのだろう。
ここにキラがいた。ここで、私とキラは…
フレイはキラが使っていたベッドに腰を降ろすと、しばらくもの思いに耽っていた。
トリィ！
部屋に残っていたのだろうか、トリィがフレイの周りを旋回する様に飛んで、肩先に止まった。
フレイは夢から覚めたように体を震わせ、顔を上げた。
その頬には涙の筋が光っていた。
「そう…お前も、寂しいんだね…」
人差し指でゆっくりとトリィの頭を撫でると、フレイはそのままキラが寝ていたベッドに体を滑らせた。
トリィは2，3度羽ばたきすると、暗くなった部屋の何処かへ見えなくなった。
闇の中で、ゆっくりと呼吸をする。
まだほんの数日前の事なのに、とても遠い過去の出来事の様に思える。
あれは本当だったんだろうか？とさえ思えてくる。
私は、何をしてたんだろう…!?
キラをこの戦争に巻き込む為に、アークエンジェルに志願したはずだった。
目論見どおりにキラを戦わせ、そして…
しかし、この空しさと寂しさは何なのだろう。
そして今、自分はキラのベッドの中にいる。
- 65 名前： フレイ様AA最後の夜 4/4 投稿日： 2003/05/11(日) 16:56
- 「明日からは、ここで眠れない…キラとも、本当のお別れ…」
限りなく低い確率でも、キラが生きている事を信じていたかった。
アークエンジェルには、まだキラがいたにおいが残っていた。
でも、それも全て無くなって、この部屋ももうすぐ、キラのいた部屋ではなくなる。
それはフレイにとって、キラが生きているという信念を支えるものがトリィだけになる事を意味していた。
そんなのって、あんまりよ。そんなの…
寒さに震える猫のように、フレイは身を丸めた。
エアコンは効いているはずなのに、体の震えが止まらない。
「キラ…私のキラ・ヤマト…！」
フレイの指が、殆ど無意識に下半身に伸びる。
フレイがこういう「遊び」を覚えたのは1年位前からだが、アークエンジェルに乗ってからはする機会も無かった。
キラを失い、極限まで昂じた不安と寂しさを紛らわす為だったのかも知れない。
細い指が、恥丘と乳房をなぞると、不意に体が感電したかの様にビクッと痙攣して、
生暖かい蜜がじっとりと溢れ出てきた。
そのまま、ゆっくりと指を挿入していく。
「ウンッ…」
思わず漏れる微かな吐息。
部屋のどこかにいる筈のトリィは泣き声一つ立てない。部屋はフレイの声だけが満たしていた。
フレイの白い肌に血が拡がって、仄かに桃色がかってきた。
しかし、その熱さは空しい熱さでしかなかった。
「キラ…もう一度、戻ってよ…戻って、抱きしめてよ…」
フレイの喘ぎとも鳴き声ともつかない声が、静かに部屋に流れた。
- 66 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/11(日) 17:07
- >62-65 （・∀・）ｲｲ!!
寂しい夜の慰め（・∀・）ｲｲ!!
- 67 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/11(日) 17:20
- これでトリィまでいなかったら…と思うと最悪ですね。
トリィの存在が唯一の慰めかな。
- 68 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/11(日) 18:17
- 乙。
読んでいて、切なくてやりきれないあたりがまた極上です。
これがホントの手慰み…
- 69 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/11(日) 22:57
- 最悪まで言われちゃったか(;´Д`)
でも、萌えやハッピーエンド系は他に書く職人さんいっぱいいるし、
しばらくこの系統でいってみます。
- 70 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/12(月) 07:47
- >>69
あ、状況に対して「最悪」といったまでで、作品そのものは「最高」だと思います。
”ロミオとジュリエット”が最悪の結末に終わりながらも我々に何かを訴えかける作品になっているのと同じようにね。
この系統で頑張って下さい。次回作も鬱+切なさ全開風味で期待しています。
- 71 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/12(月) 07:56
- >>62-65
乙です！
激しく(*´Д｀)ﾊｧﾊｧ
- 72 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/12(月) 22:23
- >>62-65
素直にすごい。文才あるね！
ひとりエッチのシーンも何故かエロさを感じさせないところが(・∀・)イイ!!
続きぜひ期待してまつ！
- 73 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/13(火) 19:01
- >62-65
乙。そして激しく続きをキボンヌ。
- 74 名前： フレイ様AAを降りる 1/2 投稿日： 2003/05/14(水) 23:22
- その夜、夢を見た。
夕暮れ時のような赤みがかった光の中、キラが背を向けてゆっくりと遠ざかっていく。
必死に走って追いかけようとするが、歩いているキラに追いつく事が出来ない。
キラは徐々に遠ざかり、そして光は少しずつ薄れていき、やがて闇に覆われた。
「キラ！」と叫ぼうとしたが、開いた口からは言葉が出ず、そして…
『トリィ！』
トリィの鳴き声に、フレイは目を開けた。
時計は６時を指している。
「私…もう、朝…!?」
トリィはベッドの隅でフレイを見守る様に佇んでいた。
乱れた服を直しながら、よろめく足取りでバスルームに向かう。
「ひどい顔…」
鏡に映った顔は憔悴の色が濃く、別人のようだった。
疲労感と虚無感が襲ってきた。
（パパが死んだ夜も、こうだったかな…）
コーディネーターに、キラに、復讐を誓った夜。
そして、キラを失った夜。
改めて、失ったものと、自分の罪の大きさに愕然とするのだ。
- 75 名前： フレイ様AAを降りる 2/2 投稿日： 2003/05/14(水) 23:23
- 「フレイ・アルスター二等兵。本日15時を以て、基地広報部付きを命じる」
ブリーフィングルームに集まったクルーの前で、いかにもという印象の連合士官は事務的に辞令を読み上げると、すぐに立ち去った。
予想はしていた事だったが、やはり現実にアーク・エンジェルを降りるとなると、目の前が暗くなる。
一緒に降りる事になったマリュー艦長やナタル副長、フラガ少佐は一様に納得できないといった表情を浮かべているが、
フレイには命令を拒否する理由も、権利も無いのだ。
ならばいっそ、このまま身を任せてしまおうか…私には、おめおめと元の生活に戻って暮す資格は無いのだから…
立ち尽くすフレイの側を、アーク・エンジェルに残る事になったサイやカズィが通り過ぎていく。
サイは一瞬フレイの方へ視線を走らせたが、何も言わずに目を伏せて通り過ぎていった。
「アルスター二等兵、呆けている暇は無いぞ。すぐに自分の荷物を整理して、降りる準備をしたまえ」
ナタル副長の声で我に帰る。既にブリーフィングルームには人がいなくなっていた。
荷物といっても、ほんの少しの衣服と小物、箱一つに収まってしまう程の物でしかない。
父の遺品と呼べるものも無く、キラの写真一つ無い箱の中は、妙に空虚な風景だった。
そっと、キラの制服を箱の中に忍ばせた。
「ごめんね、キラ…これだけは、持っていたいの…」
すでにアーク・エンジェルに新たな物資と人を搬入する作業で、戦場のような騒ぎが始まっていた。
フレイは独り部屋を出ると、ゆっくりとした足取りでアーク・エンジェルの出口へ歩いていった。
『トリィ！』
トリィはゆっくりと羽ばたくと、フレイの頭上を翔んでいった。
- 76 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/14(水) 23:26
- 一応、>62-65の続きのつもりで書きますた。
>3-7も書いたので、3部作になるのか？
続きって、一人Hの続きの意味だったら期待した人スマンｗ
- 77 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/14(水) 23:42
- >>76
おつふれ〜。
一人ぼっちでどこへ行くのですかフレイ様！（つΑ｀）
マジでトリィが居てくれてよかったと思いました。
フレイ様の頭上を翔けて、
そのままキラのところに導いて下さらんものですかね。
しかし、サイ…次にフレイ様に会った時は笑いかけてやってくれ。
その頃にはフレイ様も笑えるようになってる、と…いいな。
- 78 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/14(水) 23:46
- >>74-75
いい！かなりグッときた。
でも、フレイ様せつない・・・(´･ω･`)
- 79 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/15(木) 00:11
- >>76
乙フレ〜。キラを想って遺品を胸にするフレイ様はせつないですなぁ・・・
俺も夏コミに向けて何か書くかな。
- 80 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/15(木) 00:15
- >79
どこにいったらエロじゃないフレイ様の同人誌あるのか教えてくれｗ
それはそうと、>76乙〜。
キラMIAから仮面お持ち帰りまではネタにすると楽しそうだな。
しかし、フレイ様切ねぇっす…。
- 81 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/15(木) 01:19
- イザフレは誰も書かないのかな？
- 82 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/15(木) 01:27
- >>76
乙です。
そういえばトリィって遺品扱いされるんかねぇ・・・
ずっとフレイ様の側にいれば大丈夫か。
>>81
実は考えてはいるけど・・・
投下するにしても接点ができてからにしようかな、ってところ。
- 83 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/15(木) 02:28
- >>76
乙〜！
すげーな。なんだろ、この気持ちは・・・。
とりあえず泣いとく･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･｡
- 84 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/15(木) 08:18
- いっそう確信した！
フレイ様スキー＝泣き上戸
- 85 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/15(木) 12:33
- >>81
エロパロのSEED板が今ちょうどイザフレ全盛だそ
イザークがえらく格好良く書かれてる
場の雰囲気悪くしたくないからあっちじゃ言えんが
個人的には違和感ばりばりだがｗ
- 86 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/15(木) 18:11
- NAVIにもサーチにも登録されてない穴サイトでイイSSを見つけた。
「偉大な冒険者 テニプリ」でぐぐってみてくれ
キラフレ派・内省的な描写に抵抗のない人にはお勧め
- 87 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/15(木) 18:37
- >>86
いがったよ。
でも一点。
＞キラ受けサイトなのにアスキラより熱くキラフレを語っている私（中略）今だ同志には巡り逢えません。
せ、切な……。
- 88 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/16(金) 02:39
- >>86
フレイ様切ないな、キラも寝たふりしてフレイ様の告白聞いてるなんてねぇ
男ならガバット置きだして(ryと思って、そういや二人とも超がつく不器用な
奴等だったと思い出してしまったよ。
不器用な奴同士幸せになる日が来て欲しいものだ。
- 89 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/16(金) 19:33
- 漏れも見てきた。
この二人はホントに切ないな。
だからこそ幸せになることを祈ってしまうのだが。
- 90 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/16(金) 21:31
- >>86
情報Ｔｈｘ！早速読んできたよ。
まさにすれ違う二人という感じでしたな。切ねぇ……･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･｡
個人的には最後はこの二人が向き合えるようになれると嬉しいねぇ。
- 91 名前： ヘリオポリスの学園祭 part1 投稿日： 2003/05/17(土) 01:31
- ここ、へリオポリスの工業カレッジでは、生徒達は間近に迫った学園祭の準備に追われていた。
学園祭と言っても、機械の試作品やコンピュータープラグラムのデモと言った実用的なものが大半を占め、
あまり人の目を楽しませてくれるものではない。
せいぜい、幾つかのサークルが出展する出店に子供達が集まる位のものだ。
しかし、今年の生徒会は大それた企画を提出した。
『ミスカレッジ・コンテスト』
「こ、これは…ついにキタか」
数台のコンピューターと機械、それを繋ぐ配線で足の踏み場も無い教室の隅で、チラシを手にした男達が集まっている。
「カレッジもだいぶ女子生徒が増えてきたからなぁ」
「まぁ時代の趨勢というか」
「でも、よくこんな企画通ったな、反対する人いなかったの？」
「水着無し？何だよそれ、コンテストの意味無いじゃん」
「いや、そうでないと誰も出ないだろ」
「うちのクラスから出て欲しいやついるか？」
盛り上がる男子生徒の輪の中から少し離れた所で、キラ・ヤマトはディスプレィと睨み合っていた。
「じゃ、賭けようぜ。誰がコンテストで優勝するか」
「いいね、それ。おいキラ、おまえも乗らないか？」
突然の呼びかけに、キラの反応は微妙に鈍かった。
「え…！？」
「だから、美人コンテストで誰が優勝するか、賭けないかって言ってんだよ」
「あ…うん、分かった、一口乗るよ」
そう言うと、キラはまたディスプレィとの睨めっこに戻った。
「ちぇっ…キラのやつ、いつもあぁなんだからな…」
- 92 名前： ヘリオポリスの学園祭 part1 投稿日： 2003/05/17(土) 01:32
- 「ふーん、ミスカレッジ・コンテストなんてあるんだ…」
フレイ・アルスターはチラシを手にして興味深そうに呟いた。
今年入学したばかりに彼女にとって、初めての学園祭である。
「ねぇフレイ、出てみたら？もしかしたらミスカレッジになれちゃうかもよ？」
「そうね、フレイなら本当になっちゃうかもね」
友人達の言葉が心地よく耳を撫でる。元々容姿には自信があるのだ。
「でも、私たち一年生が出るなんて、大丈夫かな…」
「大丈夫よ、フレイ、有名になるチャンスじゃない？」
「そうね、大丈夫よね」
何の事は無い、出る気満々なのだ。
サイが何と言うかな、という考えが頭をよぎったが、フレイは結局、出る事に決めたのだった。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「え〜っ、私そんなの興味無いもん、嫌よ」
「そんな事言わずにさ…初めてのコンテストだぜ、出てみる価値はあるって」
ミリアリアに半ば懇願する形になっているのはトールだ。
「ほらこれ、コンテストの内容…仮装なんて面白そうだろ？」
「何それ…各自、趣向を凝らした仮装をする事！？」
「そう、アンティークドレスなんて、良いんじゃない？」
要はトールが見たいだけなのである。
「…ほんとに水着無しなんでしょうね？」
「だ、大丈夫だって！ちゃんと書いてあるじゃないか…（でもホントは見たかったな）」
- 93 名前： ヘリオポリスの学園祭 part1 投稿日： 2003/05/17(土) 01:32
- 「マリュー先生、今年の学園祭ではミスカレッジ・コンテストがあるって話、聞きました？」
工業カレッジの職員室で、ムゥ・ラ・フラガはいつも以上に楽しそうに話し掛けた。
「えぇ、聞きました…まぁ、楽しそうだから良いんじゃないんですか？」
マリュー・ラミアスは苦笑交じりに答えた。
彼女の心は学園祭より、卒業が危ないディアッカの進路の心配の方に向いているようだ。
「でもこれ、別に生徒だけって訳じゃないんですよね〜」
「えっ？はぁ、そう言われればそうかも知れませんが…」
マリューはようやくフラガの方に注意を向けた。
「知ってます？このコンテスト、ナタル先生も出るらしいですよ？」
「はぁ？ほ、本当ですか？」
「えぇ、生徒との親睦を深めるってやつですか、ハハ…」
マリューとナタルは生徒の間で人気を二分しているし、何かにつけて互いに意識しあう仲なのだ。
尤も、主にマリューは男子生徒に、ナタルは女子生徒に人気があるのだが…
「どうです？先生も出てみたら。面白そうじゃありませんか？」
マリューは、フラガの言葉に驚いたようにかぶりを振る。嫌な予感が的中した感じだ。
「い、いえ、結構です！私は別にそんなのに興味は…」
「ほんの遊びですよ！まさか、本気で勝負するつもりじゃ無いでしょ？」
その言葉がぐさりと胸に突き刺さる。自分がナタルとの勝負を避けていると思われるのは心外だ。
「あくまで主役は生徒。先生方はおまけで参加すれば面白いんじゃありませんか？」
そこまで言われると、もはや断る理由を失くしてしまうマリューであった。
（良かった…。マリュー先生が出るって言って、ナタル先生を引っ張り出せたのに、
片方が出ないって事になったら大変な事になってたよ…）
悪ノリしたフラガが心の中で胸を撫で下ろしていたのは、もちろん二人とも知らない事である。
- 94 名前： ヘリオポリスの学園祭 part1 投稿日： 2003/05/17(土) 01:33
- 「…なぁ、これ見たか？」
部室の中でイザークはチラシをヒラヒラと舞わせた。
「見たけど…まぁ俺達には関係無いな」
ディアッカはそれどころでは無い、といった風情だ。学園祭明けの追試の方が大事なのかも知れない。
「でも一日中出店でたこ焼き焼いてるよりは見に行った方が…あ、ニコル」
「お疲れ様です先輩！あれ、どうしたんですか？何かあったんですか？」
その邪気の無い笑顔を見て、イザークの中の悪魔が囁いた。
「これ、ミスカレッジってあるけど、要は仮装大会なんだよな」
「は…！？」
ディアッカとニコルは突然のイザークの言葉に呆気に取られている。
「よし決めた。ニコル、お前出ろ」
「えぇえ！？僕がですか？でもこれ、ミスカレッジですよね？何で男の僕が…」
イザークはちらりとディアッカに目を走らせる。案の定、全てを了解したと言う邪悪な笑みが満ちていた。
「グゥレイト！面白いなそれ。女装も仮装だよな、確かに！」
「そ、そんな…いやですよ僕…」
僅かに後ずさりしたニコルの行く手を阻むように、鬼二匹が立ちふさがった。
「言う事聞かないとどうなるか、分かってるよね？」
笑顔の時のイザークが一番怖いと、ディアッカはよく承知している。
ニコルも危険な雰囲気を感じ取ったのか、目に涙を浮かべて頷くしかなかった。
- 95 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/17(土) 01:54
- >>91-94
一瞬、第１話以前の話かと思タﾖ！
うん、でもこれはこれでｲｲ！ ザフト組も健闘を期待しる。
……んで、歌姫と暴れん坊姫は未登場なわけだが、もちろん出るんだよな？
出るからにはフレイ様が勝利するんだよな、このスレ的には？ｗ
- 96 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/17(土) 01:55
- 乙。F91のミスカントリーサイドコンテストを彷彿とさせますな。続きを期待。
ところで昔あった「主人公達が兄弟だったら」スレはまだあるんだろうか。
＞彼女の心は学園祭より、卒業が危ないディアッカの進路の心配の方に向いているようだ。
仮にもコーディネーターが進級の危機かw
- 97 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/17(土) 02:17
- この学園的には、コーディは「選抜クラス」的な扱いでｲｲんじゃない？
痔は普通クラスに居れば優秀で通るけど…みたいな。キラはテストでは
実力を出せないタイプで、幼馴染のアスランとクラスが分かれてしまったとかｗ
って、この辺は職人さん次第だよな。続き待ってるよ〜ｗ
- 98 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/17(土) 04:21
- フレイ様と�世筌淵織襦�マリューの女の対決で水着審査まで追加なんてあったら
ちょっと嬉しいかもしれん。続き楽しみにしてます。職人さん頑張れ
- 99 名前： ヘリオポリスの学園祭 part2 投稿日： 2003/05/17(土) 23:04
- 「うーん、思ったほど出場者が集まらないなぁ…」
生徒会室では、生徒会長のサイ・アーガイルが頭を抱えていた。
「せっかく、今度の学園祭の目玉にしようと思ったのに…」
初めての試みは大体上手くいかないのが通り相場だが、もうちょっと集まるものと楽観していたのだ。
「心配いりませんわ。きっと成功します」
そう言ったのは副会長のラクス・クラインだ。コンテストの案が出た時、てっきり反対するかと思っていたサイにとって、
ここまで乗り気なラクスの態度はありがたいのだがちょっと不思議でもある。
「賞品をちょっと考えれば…皆さん喜んで参加しますわ」
そんなやり取りを不安げな様子で見守っているのは会計を預かっているアスラン・ザラである。
ラクスとの長い付き合いで、ラクスが積極的な態度に出たときには何かある事を直感している。
（いやそれより…賞品って、予算の事考えてるのか？）
アスランは自分の仕事が増えそうな予感に、サイとは別の意味で頭を抱えるのだった。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「あー、今日から君たちと共に勉強する仲間を紹介する。地球から来たカガリ・ユラ・アスハさんだ」
学園祭が間近に迫ったある日。さらっとした金髪が印象的な女性がキラのクラスに編入してきた。
「宜しく。カガリって呼んでくれ」
「へぇ、結構可愛いじゃないか」
「今度のコンテスト、出たらいけそうじゃない？」
ざわめく教室。キラはぼんやりとカガリを眺めていた。
- 100 名前： ヘリオポリスの学園祭 part2 投稿日： 2003/05/17(土) 23:05
- 「フレイ、何してるんだ！？」
ジョージ・アルスターは衣裳部屋に入るなり唖然とした。
様々な衣服が床に敷き並べられ、その中央でフレイが鏡に向かって服を合わせている。
赤や紫、黄色のドレスの花園の中に佇んでいるようだった。
「あっパパ！？どうこれ、似合うかな？」
「お前…それ、母さんのじゃないか」
「今度のコンテストで、仮装する事になったの。ママのドレスなら丁度良いでしょ？」
そう言うフレイに、ジョージは「お前にはまだ早い」という言葉を飲み込んだ。
「コンテストは見に来れるの？」
「いや…すまん、また地球に降りなくてはならなくてな…写真の一つも撮ってやりたいが…」
フレイは僅かに顔を曇らせたが、すぐに努めて明るい声で、
「そう…仕方ないわよね、仕事だもの」
ジョージが部屋を出ると、フレイは改めて鏡に向い、
「ママの若い頃って、こういう風だったのかな…」と呟いた。
ジョージは待たせていた車に乗り込むと、オフィスへ向かった。
ジョージは目を閉じると、20年前、初めて妻と出会った日を思い出していた。
「いつの間にか…フレイも、あいつに生き写しになってきたな…」
- 101 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/17(土) 23:54
- ｷﾀ━━(ﾟ∀ﾟ)━( ﾟ∀)━( ﾟ)━( )━(ﾟ )━(∀ﾟ )━(ﾟ∀ﾟ)━━━!!!!
今日の回を見た後だと癒されまつ……
続きもきたいしてますよー
- 102 名前： ヘリオポリスの学園祭 投稿日： 2003/05/18(日) 01:11
- 「え…！？ニコル、お前が出る？」
アスランとニコルは家が隣同士で、弟のように可愛がってきた。
それだけに、意外な言葉に驚いたのだ。
「先輩達に無理やり…脅されて…どうしよう…」
ニコルは半泣きだ。もっとも、アスランから見ても童顔のニコルは、
女装すると結構似合うのではないかと思ってしまう
「あらあら…それは大変ですわね」
ラクスはさも驚いたと言う顔をしているが、好奇心を隠し切れない様子だ。
「でも、やっぱり女装して参加なんて駄目でしょう？副会長」
アスランは助け舟を出した。しかし、
「いえ、面白そうじゃありませんこと？」
「ハイィ!?」
あまりに意外な言葉に、アスランとニコルは同時に声を上げてしまった。
「もちろん、ニコルさん一人ではちょっと可哀想ですわ。誰か一緒に出て差し上げればいいんですわ」
（これだ…ラクスはこれだから良く分からないんだ…）
アスランは心中でため息をついた。
「ちょうど出場者が少ないって会長が心配されていましたし、この際、女装もOKにしましょう。
ニコルさん、お洋服が無いなら私のものをお貸しします。家にいらっしゃい」
「………ﾊｲ」
ニコルは生徒会室に相談に来た自分の浅はかさを呪っていた。
- 103 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/18(日) 01:15
- 今日は此処までにします。
正直、あまりの鬱展開に書く気力が萎える…
まぁ、遅筆なんで何時になるか分からんけど、気長にうpしていきます。
（何時になるかわからんからpart* は取りました）
- 104 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/18(日) 08:23
- >>103
乙です。
こちらも気長にお待ちしております。
- 105 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/18(日) 10:15
- >>乙です。
本編のフレイ様は鬱全開。自分は切ない系のＳＳが好きですが
今回連載中のＳＳはほのぼのしていて慰められます。
期待して次待ちます。
- 106 名前： ヘリオポリスの学園祭 投稿日： 2003/05/19(月) 00:15
- 互いに出場すると知った日から、唯でさえ少なかったマリューとナタルが口をきく機会は更に減っていた。
けしかけたフラガも正直ここまでライバル意識剥き出しになるとは思っていなかったので、ちょっと後悔している。
「最近、二人とも黙りこくっちゃって…ちょっと近寄りがたいんですよね」
「フラガ先輩、何があったんですか？あの二人」
ノイマンに聞かれても、
「さ、さぁな…本当、何があったんだろ、ハハ…」とごまかし笑いをするしかない。
「それにしても、最近二人ともすぐに帰りますよね…以前は殆ど毎日残ってたのに。本当、どうしたんだろ？」
「さぁねぇ…」
あくまで教師の参加は余興、というのは頭では分かっている。しかし、女としてのプライド、感情が付いていかない。
（絶対に負けられない！）
ナタルの悩みは衣装であった。仮装、と言うからにはそれなりの格好をしたいのだが、あいにく人目をひくような持ち合わせが無い。
これまでの男っ気の無い生活を僅かに反省しながら、定時後はウィンドーショッピングをする日々が続く。
一方、マリューの方はこっそりとエステに通っている。出費はかさむが、女の執念が上回っていた。
「これで駄目だったらどうしよう…」と呟きながらも、止められないマリューであった。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
トールはミリアリアが黄色のドレスを着ている姿に見惚れていた。
オーバーブラウスとたっぷりとしたスカート。その淵はフリルで装飾されている。
「どう、似合うかな？初めて着るんだけど」
トールの前でくるりと身体を回転した。トールは花が咲いたような香りを感じた。
「いや…ほんと、良く似合うよ。ミリィ」
思わず声が上ずる。毎日のように会っているのに、何でこんなに緊張しているのか不思議だ。
赤面したトールは、それを隠す為に顔を横に向けた。
「…ねぇちょっと、聞いてる？」
ミリアリアの声で我にかえる。ミリアリアは花柄のケープをつけ、はにかんだ笑顔を見せた。
「一応、これ着て出るつもりなんだけど…これなら大丈夫だよね？トール？」
半ば強引にミリアリアに出場させながら、トールはこのミリアリアの姿を独り占めしたい衝動に駆られていた。
- 107 名前： セシリーEND風 0/3 投稿日： 2003/05/19(月) 15:29
- 本スレで歴代ヒロインENDの話題が出てましたが、
なんとなくF91セシリーEND風味のラストシーンを
想像してしまったのでSSに挑戦してみますた(^^ゞ
設定等、ツッコミどころは満載かと思われますが、
とにかくノリ重視で書いてますのでご勘弁を＼(__ )
状況としては、最終決戦でフレイ様も何やらMSなり
MAなりに乗って出撃していたという設定で（汗
F91本編に倣って、コクピットから放り出された
フレイ様が宇宙空間に流されてしまい行方不明に…
というところからスタートですのでよろしこw
- 108 名前： セシリーEND風 1/3 投稿日： 2003/05/19(月) 15:30
- 「フレイが…フレイが見つからないんだ！」
フリーダムのコクピット内でキラが声を震わせて呟く。ヘルメット内には涙の粒が浮遊している。
激しい戦闘がたった今終わったばかりだというのに、キラは喪失感に自分の身体が冷えていくのを実感する。
そこへAAからの通信が繋がった。フリーダムをモニターしていたミリィからの報告で、いたたまれなくなったサイが通信に割り込んだのだ。
「バカ野郎！ お前がそんなことでどうする…！ フレイを助けられるのはキラ…
お前しか…お前しかいないんだぞ…！」
「…サイ…」
そしてラクスもまた、モニター越しににっこりと微笑みながらキラに語りかけた。
「そうですわ…諦めないで。きっとあなたなら出来ます。ご自分の力を信じて…」
「ラクス…」
サイの叱咤に、ラクスの激励に、キラは心を決めた。
フレイ…
僕の大切なフレイ…
きっと君を見つけてみせる…！
その瞬間、キラのSEEDが弾けた。
- 109 名前： セシリーEND風 2/3 投稿日： 2003/05/19(月) 15:31
- キーボードを引っ張り出すと、超高速でOSを調整しはじめるキラ。
爆発の状況、規模、周辺空間に存在するデプリの運動、フレイのパーソナルデータ…考え得るあらゆる情報をインプットし、流されたフレイの行方をシミュレートする。
それでも…
それでもまだフレイの位置を特定するには至らない。
ダメなのか…もうダメなのか…？
サイが、ラクスもが息を呑んでキラの動向を見守る。
…まだだ…まだ諦めない…！
あらゆる可能性を想定し、複雑な計算を続けるキラ。しかし、刻一刻と時間は無情に過ぎる。
そこへ、先刻までの激闘で傷ついたアスランのジャスティスがフリーダムに接触した。
「キラ…俺の機体のセンサーも使え」
「アスラン…！ ありがとう」
フリーダムと…ジャスティスの持つ対人センサーの感度を最高レベルにまで引き上げる。
感じるんだ…フレイを。大好きなフレイ。僕の大切なフレイを…！
その時、キラの全感覚とフリーダムはシンクロしていた。
- 110 名前： セシリーEND風 3/3 投稿日： 2003/05/19(月) 15:32
- フリーダムのセンサーの反応と、キラの視界にその光が映ったのは同時だった。
「！！」
スラスターを弱く吹き出し、その空域へとフリーダムを移動させる。
そこに漂っていた光の正体は…
「トリィ…！」
キラは慌ててハッチを開けると、無謀にも宇宙空間へと飛び出した。
トリィに手が触れるやいなや、まるでトリィは意志を持ったかのようにある方角へ向かって飛行した。
まさにキラを導くように。
弾かれるようにその方角を見つめるキラ。すかさずノーマルスーツのスラスターを吹かしてトリィを追う。
そして…
キラは愛しい人をついに見つけた。
暗い宇宙に漂っていたフレイを。
「フレイ…！ フレイ…っ！」
ノーマルスーツのフレイを抱きしめ、激しく呼びかけるキラ。
バイザーの向こう側で、フレイはゆっくりと目を開ける。
「…キラ…私…生きてるの…？」
「うん…そうだよ、フレイ…君は生きてる…」
嗚咽しながらキラは語りかけた。
「キラ…キラ……！」
フレイは思わずキラにしがみついた。
「還ろう、フレイ…みんなのところへ…！」
フレイのヘルメットの中でも涙の粒が宙を舞い、煌めいた。
「……うん」
FIN
- 111 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/19(月) 19:24
- >>107
乙。いいねー、F91は地味な扱いだけどシリーズの中では一番好きだ。
フレイ様に見惚れるまではセシリーが一番好きなヒロインだったしな。
クロボンの事も考えると、一番の辛苦と幸せを手に入れたヒロインだったと思う。
フレイ様もそうなってほしいものだ。
- 112 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/19(月) 19:57
- >>111
現状、セシリー的なエンディングを見い出すのは厳しいなあ…（ため息）
もし実現したら、住民の涙が集まって、板は洪水だｗ
- 113 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/19(月) 20:05
- >>112
大丈夫だ、フレイ様はきっと幸せになれる、なれるさ、なれる…よね…
漏れはフレイ様の幸せをお祈りします。南無南無………
- 114 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/19(月) 20:07
- 結構Ｆ91スキーいるんだね。
まぁ住民が一番飢えてるハッピーエンド系だからな。
- 115 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/19(月) 20:08
- 漏れは結構ならないかな、とおもてたりするぞＦ９１エンド。
まあ、かなり分の悪い賭だが。
持ち点全部かけとこう。
- 116 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/19(月) 20:47
- おや、自分以外にもＦ91ネタがｗ
でも、このエンディング物凄く好きなんだよなぁ。
こうなる事を祈っています。
- 117 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/19(月) 20:58
- 自分もＦ９１ＥＮＤ大好きだ。
こうなったら、種は傑作。
- 118 名前： 107 投稿日： 2003/05/19(月) 21:39
- 初挑戦のSSに好反応がついて感激ですわ(つД`)
みなさん生暖かいご声援感謝です。
これからバイト逝ってきま〜す（笑
- 119 名前： ヘリオポリスの学園祭 投稿日： 2003/05/20(火) 21:14
- 「なぁ、お前はどうなんだ？」
カガリに聞かれたキラは困った様に目を逸らした。
結局、転入生のカガリがキラのクラス代表として出場する事になったのだ。
「どうって言われても…」
相変わらず煮え切らない態度に、苛立ったように声が高くなる。
「男子がコンテストで賭けをしてるって聞いたぞ。誰に賭けたんだ？」
周りに聞こえる様な大声でこんな事を言う辺り、カガリは男の心の機微が分かっていないようだ。
他の男子生徒は逃げるように教室から消えていった。
「…お前まさか、他の誰かに賭けたんじゃないだろうな！？」
キラにとっては針の筵だ。目で助けを求めるが、誰も応えてくれない。
世間の無情さをかみ締めながら、「いや、僕は、カガリに賭けたよ」とか細い声で言うのが精一杯だった。
目が泳いでいる。元々嘘を突き通せるような性格ではないのだ。
「本当か？…お前、嘘を付いてるな！？」
カガリに胸ぐらをつかまれて、キラは糸の切れた操り人形の様に力無く揺さぶられるのだった。
- 120 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/20(火) 21:18
- とまぁ、非常に長い前置きでしたが、ようやくコンテスト本番の日を迎える予定です（あくまで予定）
さてここからが困った。フレイ様に何着せるか決められないｗ
カタログ見てあーだこうだ考えても、目移りするんだよな。
どうせなら良いもの着せたいし。
>>106はミリとトールへの追悼かも。これで成仏しろよトール
- 121 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/20(火) 21:28
- キタ〜
さて、ほのぼのとした話が続いてるわけですが
シリアス・バットエンド系は出しちゃだめですか？
まだ書き終わったわけじゃないのですが、ここにはあわないかな…
- 122 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/20(火) 21:33
- フレイ様の服(*´Д｀)ﾊｧﾊｧ
- 123 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/20(火) 21:39
- >>121
シリアスエンドはまだ受け入れられやすいと思うけど、バッドエンドはどうかな。
それがフレイ様への愛を感じさせられるものなら余地はあると思うが……茨の道
じゃないか、と忠告はしておくよ。
先にハッピーエンドを書いておいて、フレイ様への愛をアピールしておくとか、ダメか？ｗ
- 124 名前： 121 投稿日： 2003/05/20(火) 21:42
- >>123
愛なら溢れてこぼれそうです
ただ、フレイ様にかっこよく書きたい
そうしたらバットになりそうだなぁ…
って流れなので…う〜む最後だけ取ってつけたようなハッピーしてみようかな？
最後に付け加えるだけでよさそうだしなぁ
- 125 名前： 123 投稿日： 2003/05/20(火) 22:13
- ま、バッドエンドとハッピーエンドは紙一重にもできるしね。
言うばっかりじゃアレなんで、Ｆ91エンドネタにあやかってちょっと書いてみたよ。
バッドの方は叩かれるの覚悟だけど、ハッピーと見比べてもらえれば幸い。
（しかし、ダシに使ったラクスから見ればバッドとハッピーが真逆なんだよね。
……だからこそ面白いのだよｗ）
- 126 名前： カテ公エンド（バッド版） 投稿日： 2003/05/20(火) 22:14
- その日、プラントは地球連合との戦争終結後、初めての“血のバレンタイン”追悼の週を迎えていた。間近に迫った式典に出席するため、ラクス・クラインは郊外の邸宅、その門へと向かう……。
「あら？ あの方は……」
ふと、ラクスは見覚えのある髪の色に目を留めた。真紅の、どす黒い血の塊のような紅い髪は、あの戦争中に、彼女が背負った業に似つかわしいようにも、思える。
「あの……」
「……」
ラクスの声に、その女……フレイ・アルスターは虚ろな瞳を向けた。
全てを失って、魂までも無くしてしまった、そんな瞳。
「すみません……ヘリオポリスには、どう行ったらいいんでしょうか？」
「……！」
息を呑むラクス。当然だろう。ヘリオポリスという名のコロニーは崩壊してしまい、もうこの宇宙のどこにも無い。
「帰らなきゃいけないんです、ヘリオポリスに。……トールやミリアリア、カズイ、サイ、それから……キラが、待ってるから」
キラ。
その名を告げた時だけ、彼女の顔に生気が差したようにも見える。
「……」
しばらくの間、ラクスは無言でフレイの顔を眺めていたが、やがてお気に入りのハロをあやすような猫なで声でそっと言った。
「ヘリオポリスは、こちらではありませんわ。……もっと、ずっと遠い場所に、ありますの」
「そう、ですか……。あ、あの」
す、と指差すラクス。その先には、穏やかな芝生の広がる丘へ道が続いていた。
よろけながら、また歩き出すフレイ。
「ありがとう……ございました」
少しずつ小さくなる彼女の背中を見つめる、ラクスの表情は硬いままだった。
そんな彼女に、邸内から近づいてくる人影。
「どうしたの、ラクス？」
「いえ……何でもありませんわキラ。さ、行きましょう。そろそろ出発しないと、式典に間に合いませんわ」
にこやかに、夫となった愛しい人の腕を取りながら、最後にもういちどだけ、ラクスはフレイの去って行った道を見た。もう、彼女の影はどこにもないことを確かめると、ラクスは安心して再びキラに微笑み、その胸に頭を預けるのだった。
- 127 名前： カテ公エンド改（ハッピー版） 投稿日： 2003/05/20(火) 22:15
- カテ公エンド改（フレイ様への愛、満載ｗ）
その日、プラントは地球連合との戦争終結後、初めての“血のバレンタイン”
追悼の週を迎えていた。間近に迫った式典に出席するため、ラクス・クライン
は郊外の邸宅、その門へと向かう……。
「あら？ あの方は……」
ふと、ラクスは見覚えのある髪の色に目を留めた。真紅の、痛々しい鮮烈な
血のような紅い髪は、あの戦争中に、彼女が背負わされた重い業の象徴のよう
にも、思える。
「あの……」
「……」
ラクスの声に、その少女……フレイ・アルスターは虚ろな瞳を向けた。
大切にしていたもの全てを失って、魂までも見失ってしまった、そんな瞳。
「すみません……ヘリオポリスには、どう行ったらいいんでしょうか？」
「……！」
息を呑むラクス。当然だろう。ヘリオポリスという名のコロニーは崩壊して
しまい、もうこの宇宙のどこにも無い。
「帰らなきゃいけないんです、ヘリオポリスに。……トールやミリアリア、
カズイ、サイ、それから……キラが、待ってるから」
キラ。
その名を告げた時だけ、彼女の顔に生気が差したようにも見える。
「……」
しばらくの間、ラクスは無言でフレイの顔を眺めていた。気付かず握った拳が
小刻みに震えているのが分かる。どうして、どうして貴女がここに！ 叫び出し
そうになるのを必死に抑えるが、それでも表情が硬くなるのは止められない。
「？」
虚ろな、だがそれゆえに無邪気な瞳を上目遣いにして、自分を覗き込んでくる
フレイ。それは、彼女からキラを奪い、この１年を過ごしてきた“罪”を責めて
いるようにも思えた。
「ヘリオポリスは、もうありませんわ」
絞り出すように、告げるラクス。
「でも、キラ……キラ様は、ここにいらっしゃいます」
「キラが！？」
ぱっ、とフレイの表情が輝く。確かに、それは魅力的だった。どんな形であれ、
彼女の発露する感情表現は素直に人の心を打つ。それがラクスに無くて、フレイ
にある自然(ナチュラル)さであり……だからこそ、この１年、キラがフレイを
忘れていないことを、常々ラクスは思い知らされてきたのだから。
「フ、フレイ？！」
「キラ……ッ！！」
遅れて邸内から出てきた少年を見た瞬間、脇目も振らず赤い髪の少女はラクス
の傍を駆け抜け……その勢いのまま、彼の腕の中に飛び込んでいった。
少しだけ振り返り、微笑んで……。
ラクスは、式典に向かうエレカにひとり、乗り込んだ。
- 128 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/20(火) 22:17
- しまった……せっかく血バレの季節にしたのに雪降らすの忘れたw
あと、改行しないとダメダメだね。行数計算も甘いし。
お目汚し失礼ｼﾏ（･∀･）ｼﾀ
- 129 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/20(火) 22:19
- どっちも乙。と思ったけど一つ。
カテ”公”は微妙かとｵﾓﾀ
- 130 名前： 128 投稿日： 2003/05/20(火) 22:26
- >>129
う゛、しまった……。フレイ様ファンにとって最も恐ろしいルートの１つが
カテジナルートなので、ついついバッド的な意味を強くし過ぎたかな…＜“公”
素直にＶガンエンドとかにしとけばﾖｶﾀﾖ。カテジナさんファンの人ｺﾞﾒﾝﾖ(´Д⊂ヽ
- 131 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/20(火) 22:41
- >>129は「カテ公」って呼び方の問題を言ってるだけじゃないの？
確か、ことぶきつかさの漫画が元だよね、コレ。
愛称の一つと言うことで軽く流してあげれば？
- 132 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/21(水) 00:09
- てゆーか、Ｖガンのラストそのままフレイにしただけじゃ？一応乙。
色々つっこみ所があるけど取りあえず、>>121氏のオリジナルフレイＳＳが読みたい。
- 133 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/21(水) 00:15
- >>132
おそらくそれがバッド版の事じゃないの？
- 134 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/21(水) 00:39
- タイトルがＶガンエンドでFA？
- 135 名前： 121 投稿日： 2003/05/21(水) 00:39
- >>133
ちがいやす
完全オリジナル予定…まぁ、どこかで見た展開になりそうですが
- 136 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/21(水) 00:44
- >>135
うｐキボン。
シリアスでバッドエンドでも俺は構わんよ。
- 137 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/21(水) 00:51
- >>134
禿同。Ｖガンの劣化コピー。
- 138 名前： ヘリオポリスの学園祭 投稿日： 2003/05/23(金) 16:52
- 賑やかではあるが華やかさには欠けていた学園祭も、今年はどこか浮き足だった、そわそわした雰囲気に包まれていた。
行き交う生徒達も−特に男子は−表情に生気が漲っているように見える。
例年通りの展示や屋台が並ぶ中で、今年は校庭に10m四方程のステージが設置される。
ステージの周辺には様々な花が飾られ、いやが応にも華やかな雰囲気が高まる。
イザークとディアッカは、たこ焼き屋台の裏で賭け率の計算をしていた。ちゃっかり胴元になっていたのだ。
「うーん、思ったより割れてるな。もっと集中するかと思ったんだけど」
何しろ教師二人が出場するというのは予想外であり、ディアッカは目算が狂って憂鬱だった。
コンテストの結果次第では、マリュー先生がご機嫌斜めになるかも知れないと思うと尚更だ。
「ラクスが出れば良かったんだけどなぁ。出たら本命だったのに」
「副会長が司会やるんだろ？しょうがないさ……ニコルは？」
無理矢理出場させた手前、一応イザークはニコルを気にかけているようだ。
「あぁ、試着しに行くって出てったけど」
その頃生徒会室では、ニコルとラクス、アスランが集まっていた。
「口紅は５号でこう…まぁ素敵。思った通り、お似合いですわ」
ラクスの褒め言葉にアスランは思わず相づちを打ちそうになった。
（こりゃ、もしかすると優勝もあるかな…）
と思ってしまうくらい、ラクスから借りたアイボリーのワンピースと化粧はニコルに似合っていた。
もっとも、ニコルの方はまだ決心がつかないのか、浮かない顔でラクスにされるがままになっている。
「大丈夫ですわ。これなら、皆さん喜んでくれます。…記念にお写真、撮りましょうか？」
ラクスの言葉に、ニコルは慌てて「結構です！」と叫ぶと、部屋から逃げるように出ていった。
「コンテストはお昼からですよね…司会の方はお願いします」
アスランの言葉にラクスはにっこりと微笑むと、「お任せ下さい」と応えた。
その言葉がアスランにはとても自然に聞こえた。
- 139 名前： ヘリオポリスの学園祭 投稿日： 2003/05/23(金) 16:52
- 学園祭当日の生徒会長は結構忙しい。各種イベントの監督、問い合わせ・苦情の対応その他色々。
のんきに祭を楽しんでいる訳にはいかないのだ。
そのちょっとした合間をぬって、サイはフレイの様子を見に行った。
実は、ジョージから写真を撮るように頼まれてもいた。
フレイが出場すると聞いた時は驚いたが、フレイの装いを目の当たりにすると、それは別の驚きに変わった。
これまで、どちらかと言えばサイにとってフレイは「可愛い妹のような」存在であり、それ以上でもそれ以下でも無かった。
しかし、今、目の前には「女性」がいた。
ワインレッドのストラップドレス。白いレースの手袋。
大きく開いた背中から見える白い肌が、ドレスと美しいコントラストを成している。
１５歳の少女が着るにはやや不釣り合いと言えなくもないが、そんな事を感じさせないものがフレイにはあった。
ひいき目無しで見ても、他の出場者とは違う華やかさがあると思える。
「どう！？ママが舞踏会の時に着ていたらしいんだけど…」
少し照れくさそうに笑う。その笑顔も、これまで見たことが無いほど可憐なものに見えた。
これまでに無い感情に少し戸惑いながら、サイは「綺麗だ」と素直に褒めた。
「ありがとう。少し自信出てきたわ」
今度は安心したような笑顔を見せると、フレイは控え室に戻っていった。
振り向いた時、香水だけではない甘い香りが振りまかれた。
その後ろ姿を見送りながら、サイはフレイの母さんも同じ位の背格好だったんだろうかと想像して、
フレイが舞踏会でダンスをしている姿をイメージしていた。
- 140 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/23(金) 18:17
- 乙です！！
本編ではもはや幻と化しつつあるサイフレですか？
自分はキラフレ推奨ですが、このＳＳはこれで続きを読みたいであります。
次が楽しみ〜
- 141 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/23(金) 19:44
- >>139
乙カレー。
続きをまってました。サイフレになりそうな感じだけど、どうなるんでしょ？
自分も140氏と同じフレキラなのですが、この小説の続きが気になります。
- 142 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/23(金) 19:44
- >>139
乙カレー。
続きをまってました。サイフレになりそうな感じだけど、どうなるんでしょ？
自分も140氏と同じフレキラなのですが、この小説の続きが気になります。
- 143 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/23(金) 23:03
- >>1で書かれている「ライトH」ってのは何処までが許容範囲？
具体的な喘ぎ声・前戯描写を書かず、双方同意の上でのラブHならおけ？
- 144 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/23(金) 23:30
- >>140-141
感想どうも。
別にサイフレにしようと思ってるわけじゃないんだけど（と言うか、カプなんてどうでも良い）。
どうしても1話時点でのイメージで書いちゃうから、こんな感じになるのは仕方ないのです。
しかし、一体何時終わるのか自分で不安になってきたｗ
>>143
よく分からんけど、それ位なら文句は言われないんじゃないんですか？
つーか、喘ぎ声は欲しいですよやっぱりｗ
- 145 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/24(土) 00:21
- >>143
同意です。
- 146 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/24(土) 00:25
- 設定、ブルコスの象徴になったフレイ様が何故かＭＳに乗って出撃、キラと遭遇という場面から始まり始まり〜
乗ってる機体は両手、両つま先、両膝のビームサーベルを仕込んだだけの変な機体（適当です）、やたら稼働時間が短い代わりに高性能の設定
「フレイ……なんでこんなことを？」
「コーディネーターなんていらないのよ！そんなものがいるから戦いが起こるのよ！
この……この程度の力、人が生きるためには必要ないのよ。
なのに持たざるものは持つものを羨むし、持つものは持たないものを見下す
これは良い悪いじゃない！自然なことなの！だから戦いは終わらない
キラ……貴方は何で戦うの？
わたしは……コーディネーターを全て滅ぼす、そして平和で平等な――」
「――フレイ、僕は……僕はただ友達が……仲間が見殺しにできなかったから」
「じゃあ！………わたしは貴方の何？まだ恋人？友達？仲間？
……もう敵でしかないの？」
「フレイ！やめてくれよ……もう僕たちは」
「―――そうよね、私はコーディネーターの敵
貴方はコーディネーター、貴方の守るべき仲間のはずないわよね……」
- 147 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/24(土) 00:26
- コーディネーターって何なのだろう
最初にこれを疑問に思ったのはいつだろうか
遺伝子組み換えにより普通の人間の数倍の運動能力、高い知力、病原菌などへの高い抵抗力などを得た新しい人類
はたして人はコーディネーターにならなければならないのだろうか
この程度の能力のために払った代償は人と人の平等さ、新しい生命を作り出す力、幾万の罪のない命
私はこの程度のもののための代償としてはこれらは大きすぎると思う
人類が皆コーディネーターになれはしないのだし、なれば子供が生まれないためヒトは滅びるだろう
コーディネーターは無理のある不自然な存在、だから滅ぼす
摘出手術は痛みを伴うものなのだから……
バッテリーをサブからメインへ、駆動を戦闘へ
普通のガンダムタイプでは最大起動でも２０分は持つバッテリーを３００秒で使い切るこの機体はバッテリーが持つ間はスペックだけ見れば史上最大の兵器のはずだ
ザフトの新型だって圧倒できるはずだ
- 148 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/24(土) 00:26
- ライフルの射線をかいくぐり、フリーダムに接近する
右のビームサーベルで袈裟懸けに切りつけるがフリーダムのビームサーベルに受け止められる
「フレイ、やめてくれ！ ナチュナルとコーディネーターは分かり合えるはずなんだ！」
「じゃあ、何故ザフトと連邦は未だに争いをやめないの？！
分かり合えるなら何で殺しあうの？なんでユニウス7は……血のバレンタインは起こったのよ？」
左のビームサーベルで胴を狙うが鍔迫り合いをしているサーベルを支点に回転してかわされた
「……それは」
一旦距離を離される
無駄だ、限界まで機動力を強化してるこの機体からは逃れられない
すぐさま距離を詰める、体当たりをするように右膝に内蔵されてるサーベルで切りかかる
「――何故平和だったヘリオポリスは崩壊してしまったの！何故トールは死んだの！！
何故お父様は死ななきゃならなかったのよ！！！」
フリーダムは体を９０度回転させてよけるが
「戦争だったから――」
かかった、左足のつま先からサーベルを出しフリーダムの右の羽二つを切り飛ばす
「………戦争？そんな言葉じゃ許せない！私は争いの種になるものを全て無くす！
戦争なんて言葉で全てが許されるなんてこと絶対に……絶対にさせない！」
- 149 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/24(土) 00:27
- この機体で全力戦闘したのは初めてだがこの機体は例え稼働時間の問題が解決しても実用できないだろう
人が乗るにはGがきつ過ぎる、それともコーディネーターなら大丈夫なのだろうか
ナチュナルである私が覚せい剤で無理やり意識を保ってるように
「キラ……貴方いつから戦う理由が友達を守ることから戦争をしてるからになったのかしら？」
「――フレイッ！」
中略（笑）
- 150 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/24(土) 00:27
- ３００秒経過、エネルギー不足フェイズシフトダウン
「フフ……」
自然にこみ上げてくる笑いを抑えきれなくなった
スクール時代から弁論大会では負けたことはなかった、力ずくでも良いから誰かに負かされてみたかったのかもしれない
特に自分でも否定したかったこの考えを――
「キラ……わたしの負けよ、これでブルーコスモスはお終い
貴方の正義が証明されたのよ」
ブルーコスモス内でのフレイの地位は新参の飾りのはずだったが卓抜な弁論、目を引く容姿、ゆるぎないカリスマによって既に大きく確立されていた、ここでフレイが死ぬようなことがあれば組織に大きなダメージを与えるだろう
「さぁ、キラ私を殺しなさい。それが貴方の役目でしょ」
「できないよ、フレイ………僕はフレイのことを殺したいなんて思ってないよ」
「どうせ私は戦犯首謀者、捕まえても死ぬことになるわよ？」
「でも……じゃあどうしたら………」
「――キラ、私からの最後のアドバイスちゃんと覚えておきなさいよ？
貴方は仲間を守りたいのよね？戦争を終わらせたいのよね？
なら私を撃ちなさい、私は敵。憎むべきコーディネーターの敵
遠慮することないわ……」
「……フレイ！でも僕……ボクッは本当は！」
「世話の焼ける子ね……私が勝っていたら貴方を殺してコーディネーターを皆殺しにすることにした、もし貴方が勝ったら私は死んで貴方を信じることにしたのよ」
「――フレイッ？！」
「………頑張りなさいよ、この私の期待を裏切ったら今度こそ殺すわよ」
――自爆装置稼動残り１０秒
私の言ってることは全部本気……だけどどこかで間違ってることもわかっていた
でも屁理屈が得意で強情な私は自分じゃ認められなくって、賭けをしてみようと思った
勝ったら私が正しい、負けたら相手が正しい
相手は知ってる奴の中で最も強くて、最も情けなくて、最も何も考えずに戦っているキラにした
……今でも好きだから
正直、今キラにしたのに疑問を感じてるけど仕方ない勝負は勝負だ
さよなら、キラ
>>108-111に続く（……続くのか）
- 151 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/24(土) 00:28
- Ｑ、中略…？手抜きですか？
Ａ，手抜きです、あえて言い訳すれば自己設定のＭＳと出てきてもいないフリーダムとの戦闘は想像に余ったので…
Ｑ、ラスト、人の借りてるんじゃねぇ
Ａ、思いつきませんでした（笑）107氏のＥＤより良いのが思いつかなかったので借りました、107氏すみません〜
Ｑ、俺のフレイ様はこんな人じゃない！
Ａ、すみません…段々自己設定が暴走してしまいました。でもフレイ様の言ってることは割合私の考えです（笑）、コーディネーターって本当に必要かな？
暇があったら次はコメディでも…
- 152 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/24(土) 00:58
- >>151
ゴルァ！！
何でもいいから、漏れは読む。だから書け！！中略なんてするな！！
後、人のＥＤは借りるな！！このＳＳの流れからすれば、貴方なりのＥＤは作れたはずだ！！
真似でもいいから自分のＥＤを書け！！
このＳＳの完全版、待ちます。
- 153 名前： フレイ・アルスターその愛と死 投稿日： 2003/05/24(土) 10:42
- （これはキラとフレイが共にそれと知らず戦い、そしてキラがフレイを撃墜し、脱出した彼女を保護し、ＡＡに帰投したところから始まる）
「フレイは！フレイは大丈夫ですか！」
ムウと共に医務室から出てきた軍医の胸ぐらにつかみかからんばかりの勢いでキラが問う。
「…ああ、手は尽くしたよ。外傷は大した事はない」
「キラ、彼女の事ならお前が心配することはない」
「…？」サイはムウと軍医の言葉に不自然なものを感じ怪訝な表情を浮かべる。
キラは医務室に入るとベッドで昏々と眠り続けるフレイの傍らに腰をかけた。
「良かった。もう会えないかと思っていた…キミが目を覚ましたら、あの時の約束通り話を聞かせてもらうよ」
「キラ、何をしている。早くハンガーに行ってフリーダムの準備をしておけ」
ムウの支持にキラは不満そうな表情を向けるが、そこにムウの一括が飛ぶ。
「お前が彼女を守らなかったら、誰が彼女を守れると言うんだ！」
「分かりました…御免ね、フレイ。また後で」
キラは後ろ髪を引かれる思いで病室を後にした。病室に残ったのはフレイ、ムウ、軍医そしてサイである。
「どうしたサイ？お前もブリッジに行かないか」
「先生、少佐、本当の事を教えてくれませんか？フレイはどうなんです？」
絞り出すような声だった。聞きたくはない、だが聞かねばならない、それがどれほど辛い事であろうとも。
「…いや、だから君達が心配するような事はないと…」
「それは…フレイにはもう手の施しようが無い…だから、だから俺たちが『心配出来るような事はもうない』…そういう意味ですか！」
「！」ムウと軍医は揃って息を呑む。その表情は何より雄弁にサイの指摘が事実である事を証明していた。
「…そうだ。彼女はもう意識を取り戻すことはあるまい。それどころか。もって精々２、３日の命だ」
「！な…なぜそんな…外傷は大した事無いって」
「彼女の体は過度の薬物投与でもうボロボロだった。恐らく短期間でＭＳに乗るために無理に無理を重ねたのだろう。こんな体で戦闘が出来た事そのものが奇跡と言ってもいいぐらいだ。残念ながらもうどうしようもないのだ」
「お、お願いです、先生！フレイを、フレイを助けてやって下さい！」
胸ぐらを掴んで懇願するサイだが軍医の宣告は非情だった。
「ここにはもう何の設備も…いや仮に最高の設備を持ってしても２，３日の命が精々１月に伸びるだけだ。手遅れだったんだよ」
「そ、そんな…」サイは掴んだ手を離し、床に力無く崩れ落ちる。
「いいか。これは決してキラには伝えるな。あいつが知ったらフリーダムに彼女を乗せて飛び出して行きかねんぞ」
例え助からないと分かっていてもキラならそうするだろう。だがそんなことになればキラは確実に銃殺である。それだけでなく最大の戦力を失ったＡＡにも撃沈の危機が迫ることになる。
「もしキラが思いとどまったとしても、今度は『フレイを見殺しにした』という十字架を背負って生きねばならん。アイツはそう言うヤツだ」
ムウはヘリオポリス以来共に戦ってきた「優しき戦友」を思い浮かべていた。
「この事は艦長も知らない。全ては俺の独断だ。お前も俺に騙されたということにしておけ。俺一人が恨まれるだけでキラとＡＡが救われるなら安いもんだ」
「うぐ…ひぐう…」
サイはもうムウの声など耳に入っていなかった。
- 154 名前： フレイ・アルスターその愛と死 投稿日： 2003/05/24(土) 10:42
- 「敵機接近。総員第一戦闘配備」
フレイの傍らで寝泊まりしているキラの耳朶を警報が打つ。キラがためらいがちな視線をフレイに向けていると、医務室の扉が開きサイが姿を見せる。
「キラ…どうした早く行けよ」
「え？！サイ！どうしてここに」
「艦長の許可はとった。お前が安心できるように、出撃しているときは俺がフレイの傍らにいるから」
「…そうか分かったよ。フレイ、これが終わったらまた」
一度フレイの方を振り向くとキラは決心を固めたように医務室を後にする。
キラの去った後、サイはベッドの傍らで先ほどまでキラがかけていた椅子に力無く腰掛ける。一人しかいない軍医は現在手術室で別の負傷者を手術中であり、この部屋にはフレイとサイの二人だけである。
もちろんサイがキラに言った言葉は本心ではない。ただフレイの命があるうちに共に過ごせる時間が欲しかったのだ。
「フレイ。俺たち何でこんな事になっちゃったのかな…」
ベッドにいるフレイはヘリオポリスのいたころと変わらず美しいままだった。それを見ている内にサイにわき上がる衝動があった。
「フレイ…キラ…許してくれよ…」
サイは口づけようと顔を近づける。だがその時予想もしない事が起きた。サイの目の前でフレイが目を開けたのだ。
「フ、フレイ！目が覚めたのか！」
サイは歓喜と共に声をあげる。だがフレイの口から放たれた言葉はサイの喜びを一瞬にして霧散させるものだった。
「キラ…キラ…私ね…」
「え？フレイ、俺が…」
口づけようと顔を近づけた結果、サイの顔はフレイの目の前だ、にも関わらずフレイはキラと自分の区別がついていない。
「御免ね。あの時はあんなひどいこと言っちゃって」
「…い、いいんだよフレイ…そんなこと」
サイには涙を流しながら、フレイに相づちを打つ。フレイが言った「ひどいこと」が何のことだかサイには分からない。だが一つの確信があった。今まさにフレイは最後の命を振り絞ってキラに自分の思いを伝えようとしているのだ。
「私ね。ホントは最初あなたを利用しようと思って近づいたの。でもあなたはそんな私に優しくて、いつの間にか私はあなたのことが本当に好きになって…だから私それが耐えられなくなって。思いあまってあんな事を…」
フレイはサイにはかまわず話を進める。混濁したフレイの意識はキラが「戦死」する直前の出撃時に戻っていたのだ。
「でもあなたと離れて気付いたの。私にはあなたが必要だってこと。ホント私って身勝手な女ね。お願いだから許して」
「そんなのも終わった事じゃないか。気にしないよ…（キラなら）」
サイの拳は血の気が無くなるほど固く握りしめられていた。「辞めてくれ。そんな言葉聞きたくない」少しでも気を緩めたら、そう叫びだしたい衝動に捕らわれてしまうだろう。
「有り難う。嬉しいわ…」
フレイは本当に嬉しそうに微笑む。ヘリオポリスにいた頃この微笑みはサイのものだった。そして今はキラの為の微笑みだった。
「ねえキラ？抱きしめてくれる？」
「…え？！ああ分かったよ」
サイはぎこちなくフレイの上半身を抱き起こす。
「戦争が終わったら、私と一緒に…」
そこまで喋ったところでフレイは眠るように目を閉じた。
「フレイ！しっかりするんだフレイ！しっかり…そんな、そんな事って…」
広くもない医務室にサイの嗚咽だけが残っていた。
- 155 名前： フレイ・アルスターその愛と死 投稿日： 2003/05/24(土) 10:43
- 「フレイを守らねば」という思いの元で戦うキラのフリーダムはまさに鬼神のごとき戦いぶりだった。圧倒的な戦力で敵部隊を撃退するや即座にきびすを返してＡＡに帰投する。
格納庫に収容される否やキラはコクピットを飛び出す。だがそこに意外な人物を見つけて怪訝な顔をする。
「サイ…何でここにいるんだ？フレイは？」
「うぐう…ひぐう…フレイはお前に…お前に御免と…」
涙を止めどなく溢れさせながら、それだけを口にするのがやっとだった。
「な…何言ってるんだよ…わけわかんないよ…フレイは、フレイはどうしたんだよ」
ここでキラも気付いた。周囲の整備兵、そして同じく帰投したムウが悲痛な視線を自分とサイに向けている事に。
「ウソだ…そんなのウソだ…フレイが…そんな…ウソだぁぁ！」
キラは格納庫を飛び出すと脇目もふらず医務室へと飛び込む。そこにはサイと同様に目を泣きはらしたミリアリアと沈痛な表情のカズイが待っていた。
それで何があったのか分からないキラではない。
「何故？！どうして？！大丈夫だといったじゃないですか！」
キラは検死中の軍医の胸ぐらをつかみ声を荒げる。だがその手は横割って入った紫のノーマルスーツにつかまれ、軍医から引き離される。
「辞めろ。先生にそう言えといったのは俺だ」
「少佐…なぜ？」
「分かっているはずだ。俺たちは戦争をしているんだ。彼女の命が残り少ないと知ればお前は戦えまい」
「だから…だから僕に…」
「そうだ。俺がお前を騙した。ウソをついてお前を戦わせたんだ」
「フ…フラ…フラガァァァ！」
キラは羅刹のような形相を浮かべてフラガを殴り倒す。
「殺してやる！殺してやるフラガ！！」
周囲に集まっていた大勢の人間に取り押さえられるが、それでも興奮状態のキラは止まろうとはしなかった。
「離せ！僕の気持ちが！僕の気持ちがお前達に分かるのか！」
次の瞬間サイの拳がキラの顔面にたたき込まれた。
「甘ったれんな！」
キラも、そして周囲も呆然とサイを見る。まさかサイがこのような行動に出るとは誰も思っていなかったのだ。
「甘ったれんな…『僕の気持ちが分かるのか』だと…ならお前の俺の気持ちが分かるのか…お前に俺の気持ちが…」
サイの表情にはキラが見たことのない憤り、嫉妬、怒り、悲しみが混じっていた。
「フレイを見ろよ。笑ってるだろ。何で笑っていると思う？フレイはな俺の腕の中で、だけど…だけどな。お前に抱かれていると思って…死んでいったんだ。フレイは目の前にいた…いや長年一緒だった俺に気付かず、俺をお前だと思って…」
サイの言葉にキラはフラガではなくフレイに視線を向ける。フレイの死に顔を見たくは無かった為、これまで無意識に視線をそらしていたのだ。そこには最後の瞬間を「愛する者」と過ごすことの出来た満足の笑みが浮かんでいた。
「フレイは最後の命を振り絞ってお前への思いを伝えるため、ただそれだけのために意識を取り戻したんだ。お前の為だけに…」
もうキラは暴れようとはしなかった。周囲の人間も拘束を解く。
「俺にはお前が心底うらやましいよキラ。フレイは俺ではなくお前を選んだんだ。そしてその告白をお前の替わりに聞かねばならなかった俺の気持ちがお前に分かるか…お前に分かるのかよ！」
サイの言葉にキラの胸中へは憤怒に替わり悲しみが吹き上がってきた。
「フレイ…御免。御免よ。僕は…君を…君との約束を…守れなかった」
この日、ＡＡの医務室における最後の悲しみの嗚咽が上がった。
- 156 名前： フレイ・アルスターその愛と死 投稿日： 2003/05/24(土) 10:43
- 「やれやれ艦長にはこっぴどくお灸をすえられたよ」
顔に絆創膏の後も痛々しくそれでもフラガは軽口を叩く。あの後、涙目のマリューに「もう自分一人だけ悪者になるようなことは二度としないで」と念入りに釘を刺されたのだ。
「しかし坊主は大丈夫ですかね」
ストライクを整備中のマードックならずとも不安になるだろう。あの後、キラは医務室でフレイの亡骸の傍らから離れようとしない。
「仕方あるまい。アイツが立ち直れないのなら俺が何とかするしかない」
「そうですね…今まで坊主には頼りっぱなしでしたから今回は俺たちが何とかしないと…ぼ、坊主！」
「何！」フラガが振り向くとそこにはノーマルスーツ姿のキラが立っていた。憔悴した様子は伺えるが、その目には強い意志が宿っていた。
「坊主…もういいのか？」マードックは注意深く口を開く。
万一また興奮してムウに飛びかかるような事があったら即座に止めるよう、周囲に目配せをする。
「ええ…心配かけました。それに何かしておかないと押しつぶされてしまいそうで…」
サイも悲しみを振り払うかのように現在、ブリッジで一心不乱に仕事に取り組んでいる。
「フラガ…少佐」
キラは一瞬躊躇しつつもムウに声をかける。
「正直、あなたのことは許せそうにありません」
「だろうな。俺も許して貰えるとは思っちゃいない」
「でも…もし僕が戦わなかったら、またフレイのような犠牲が大勢出る。だから僕は戦います。戦争を終わらせるために」
そう言うとキラはフリーダムへと足を向ける。
（フレイ…約束を守れなかった僕だけど、天国から見守っていて欲しい）
もう戦争が終わるまで涙は流さない、キラはそう決心してフリーダムへと乗り込んだ。
＜完＞
- 157 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/24(土) 11:32
- >>156
乙ふれ。フレイ様もキラもサイも兄貴も、みんな、みんな切ないな・・・。
うあ゛ぁあ ･ﾟ･(´Д⊂ヽ･ﾟ･ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
でも、最期の瞬間にフレイ様が幸せであったのなら、人間らしく逝けたのなら、
想いを継いでくれるひとがいるなら。こういうのもアリだと思う。ﾖｶ（･∀･）ﾀﾖ!!
- 158 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/24(土) 12:16
- 切ない…切な過ぎる…もう泣くしかないのか？
うあ゛ぁあ ･ﾟ･(´Д⊂ヽ･ﾟ･ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
- 159 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/24(土) 12:45
- こ、これはフレイ様にとって幸せと言えるのか！！？
幸せだったと信じたい。彼女は最期の瞬間、紛れも無く幸せだったと。
でも、でも…
うあ゛ぁあ ･ﾟ･(´Д⊂ヽ･ﾟ･ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
- 160 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/24(土) 12:51
- でも、このSSでもそうだが、ほんとサイっていい奴だよな。ちゃんとフレイ様の
最期の気持ちをキラに伝えてるもんな。・・・もしかしたらフレイ様、サイだと
分かってて、サイならきっとキラに自分の気持ちを伝えてくれると思って、最期
にあえてサイにキラを重ねながら・・・・・・ッ、ううッ
うあ゛ぁあ ･ﾟ･(´Д⊂ヽ･ﾟ･ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
- 161 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/24(土) 13:06
- このＳＳはﾖｶﾀけど本編ではこうなって欲しくないな・・・。
フレイ様の死が種全体の物語の踏み台にされてる感じが否めない。
カッコ悪くても良い。生き延びて下さい。･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･
- 162 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/24(土) 14:41
- おまいらもちつけｗ
まぁしかし、ホントに住民は切な系が好きなんだなと実感したよ。
反応が全然違うもんな。
- 163 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/24(土) 23:34
- まぁ、146からの一連のは手抜きでしたからねぇ…
むしろ正しいのでは？
- 164 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 00:14
- ↑なにか誤解招くと悪いですが書いた本人が言うので間違いないですぜ…へっへっへ
- 165 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 01:43
- アークエンジェルから降りたフレイには、個室が与えられた。二等兵には破格の待遇である。
「何かある時はこのインターホンで連絡をして下さい。貴方の新しい任務は後ほど指示します」
そうフレイに言う女性士官は、どこか探るような目つきで部屋を、フレイを眺め回した。
では…と扉が閉じられると、フレイは急に体中の力が抜けるのを感じた。膝から力が抜けていく。
よろめくように座り込むと、急に奥底からの寒気を感じ、身震いした。
「私…どうなっちゃうの！？」
何か特別な理由があって艦を降ろされた事は薄々分かっていた。さらにこの待遇だ。
目に見えない、どうしようもない巨大な手に無理やりつかまれて、どこかへ連れ去れてしまいそうな感覚に怯えた。
何より、今まで行動を共にしてきたサイ、ミリアリアやカズイ、アークエンジェルのクルー達と完全に
切り離された事は、例えようも無い不安と孤独をフレイに叩きつけた。
備え付けの備品意外に何も無い部屋は、牢獄のように巨大な圧迫感を持ってフレイに迫って来る。
微かに吐き気を感じ、フレイは立ち上がった。
別室では、フレイの部屋をモニターしている軍人達の一団があった。
「どうですかな、アルスター家のご息女の様子は」
「そうですな…戦争を終わらせる為に志願して、これだけの経験をされただけでも立派ですよ」
「つまり、利用価値があると言う事ですな…」
「ハハ、そうはっきり仰られると困りますな」
寒々しい笑いがひとしきり起こった後、彼らは部屋を出て行った。
- 166 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 01:43
- 「フレイ・アルスター二等兵、君には明日、テレビ・インタビューを受けてもらう」
「…インタビュー…ですか！？」
フレイの前に現れた、情報担当将校と名乗る士官は、ふち無しの眼鏡から鋭い眼光を投げつけてきた。
その光の冷たさに、フレイは身を硬くした。今まで見たことの無い、表情の無い目…
「インタビューは、君が連合の一員としてこれまで戦ってきた事に対する質問をする形式で進められる。
これが質問事項だ。よく読んで、頭に入れておくように…時間になれば、迎えに来る」
渡された紙には、志願した動機や、ザフト軍との戦闘に対する質問が並べられていた。また、フレイの生い立ちに関する
質問も幾つかあった。
（私を使って、宣伝するつもりなの…！？）
この戦争では、連合軍は女子供でも志願して戦っている、という事なのだ。さらに、それが高級官僚の令嬢が、となれば、
その効果は倍増する。要はそう言う事なのだと悟った。
「どうした？何か質問でもあるのか？」
将校の物腰は柔らかいが、どこかで威圧するような雰囲気を感じて、フレイは言葉を発する事が出来なかった。
自分の立場が、もう自分ではどうにもならない所にいる事を、認めざるを得なかった。
もし言えば、彼らの意向一つで彼女の運命などどうにでもなるのだ。フレイはまさしく、飛ぶ事の出来ない籠の中の鳥だった。
- 167 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 01:44
- その夜、フレイは独り闇の中で考えていた。
ヘリオポリスの生活…ザフトが攻めてきた日…パパ…キラ…！！
暗い部屋の壁が押し寄せてきて、今にも押し潰されてしまいそうな感覚に震えて、止まらなかった。
このまま彼らの言いなりになって、宣伝に協力したら…私がコーディネーターが憎い、と言う事を殊更に強調していくだろう。
パパを殺したコーディネーターは憎い、確かに憎い！でも…あの時、キラと眠っていた夜…なぜ、あんなに安らいだんだろう…
あの捕虜に銃を向けて、ミリアリアに止められた時…何故もう一度撃とうと思わなかったのか…
フレイは寝返りをうった。ベッドの軋みが耳を打った。
「パパ…私、ごめんなさい…もう訳がわからない…」
つぶやきが涙とともに零れ落ちて床を這っていった。
翌朝、フレイの部屋を訪れた将校は、部屋の前で少し待たされた。
「アルスター二等兵、時間を厳守してもらわねば困るな…」
やや苛立った声を遮るように現れたフレイの肩にはトリィが乗っていた。
「何だね、その機械は？」
これは…と言いかけて、フレイは一瞬沈黙した。
それは将校にとっては数秒だが、フレイにとっては生涯で最も長い一瞬だったであろう。
父の顔、サイやミリアリア達の顔、キラの顔が、浮かんで消えた。
そして、フレイは息を吐くと、
「これは…大切な人からの預かりものです。とても私になついてるんです」と言った。
将校はやや不機嫌そうな顔を見せたが、「まぁいいさ」と言うと、先にたって歩き出した。
- 168 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 01:46
- 30分ででっち上げたから、あちこち突っ込み所あると思いますが、平にご容赦を。
結構、こういう感じの、どっちつかずの割り切れない思いでアラスカ攻撃の日を向かえそうだなと思いますた。
- 169 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 08:55
- >>165〜168
乙！！もうこのＳＳスレは切なさ全開ですね。萌えです。
- 170 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 09:40
- ＳＳ書くつもりですが…
ブルコス側のＭＳとか、プラントとか、オリジナルでいいですか？
もちろんフレイ様主役ですが。
- 171 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 13:26
- >>170
>>１さえ守れば、その辺は自由にしていいと思いますよ。
楽しみにお待ちしております。
- 172 名前： 171 投稿日： 2003/05/25(日) 13:30
- あれ、最後の1行、日本語が変だｗ
- 173 名前： 暗闇の後には・・・�� 投稿日： 2003/05/25(日) 19:37
- もうずっと私の心は暗闇の中をさまよっている･････
「フレイ！ どうしたの？」
そう言われて私は我に返った。
「えっ、何？」
反射的にそう答えたものの、自分がどこに居るのか、
何をしていたのかハッキリしなかった。
「何って、ボーっとしてるから･･･ 危ないよ？」
そう言ったのは一番仲の良かった友達であるジェシカだ。
ちょっと呆れた顔をしている彼女を見ながら私はどういう状況にいるか思い出した。
････そう、ここはヘリオポリス、オーブのコロニーだ。
今日の授業が終わり、二人で雑談しながら帰ってたんだけ･･･？
ちょっとした違和感を覚えながら私は再びジェシカと雑談しながら歩きだした。
連合軍とザフトとの戦争が始まったとき、私のことを心配したパパは
このコロニーに移り住む事を決めてきた。パパと離れて暮らすことになるの
は嫌だったけど、戦争に巻き込まれるのはゴメンだ。
中立であるこのコロニーにいれば、戦争なんかモニター越しの
出来事でしかない。心配することなんて何もないはずだ。
それにここにはサイも居る。
サイ・アーガイル、私の婚約者。（みんなには内緒だけど）
親たちが勝手に決めた婚約ではあったが、私は彼のことが好きだった。
私がどんなワガママを言っても彼はそれを優しく包み込んでくれる。
時にはたしなめられた事もあったけど、そういう時でも彼からは私の事を
思ってことだって伝わって来る。まるでもう一人のパパみたいだ。
「また何か考えてる･･･ さてはサイ・アーガイルのことを考えていたな〜♪」
「ちょ･･なに言ってるのよ！ 違うってば！」
ちょうど彼のことを考えていたところに、そんな風に言われてしまい、
慌てて否定しようとしたが、ジェシカはそんな私の姿に確信をもったのか
続けて言ってくる。
「ホント〜？ この間からどうも怪しいんだけどなぁ」
こうなるとジェシカは止まらない、彼女の悪い癖だ。
「白状しなさいよ、好きなんでしょ？ それとももう付き合ってるとか？
キャ〜♪カレッジ一の人気者とアイドルのカップルだって〜〜！！」
「ちょっと！いいかげんにしてよ！！」
いい加減頭に来て止めようとした時、タイミング悪く前にサイとその
ゼミ仲間が話している姿が見えて来た。
ハッと慌ててジェシカの方を見ると、怪しげな笑顔を浮かべている。
「噂をすればなんとやら･･･ これは本人に直接確かめてみましょうかね〜」
「えぇ！？」
「ハァーイ、ミリアリア〜！！」
そう言いながらジェシカは私の腕をつかんで半ば無理やりにサイ達の
方へ引っ張って行った。
- 174 名前： 173 投稿日： 2003/05/25(日) 19:40
- 初めてＳＳなるものを書いておりますのでつたない文
だとは思いますが、気を悪くしないで下さい。
設定やら話しの展開が他の方々と似たりするかもしれないので
そちらも大目に見てやって下さい。
後、別にサイフレって訳じゃないんで一応注意を。
こうしたほうがいいよってところがあれば是非ご指導のほどお願いします。
では
- 175 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 19:52
- >>174
乙！
フレイ様と言うと、地球降下以降のガクガクブルブルなところが印象的なので、
どうしても平和だったころのＳＳは少ないですよね。
新鮮です。
- 176 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 19:54
- ところで、この板には100名ほどが在籍していると思われますが、
何でもいいから、もう少しこのスレに感想書き込んで欲しいですね…
- 177 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 20:33
- >>176
ＳＳ投下して反応が鈍いと、確かに書き続けようとはならないかもね。
それ以前に俺のＳＳは全く読まれてないかも知れんがｗ
- 178 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 20:37
- 終わりまで読まないことにはｶﾞﾝｶﾞﾚとしか言えないYO!
- 179 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 20:39
- 自分の場合は自己満足で書いてる部分があるから別に構わないけど
それでも反応あったら嬉しいからね。
まあ人にも感想も書いていなかったから・・・
なにかうｐあったら今度からはちゃんと反応するようにしないといけないな
反省。
- 180 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 20:39
- >>174
これ続くんですか？
どうなるか分からんけど、こういうＳＳは貴重だと思うので頑張って続けてください。
- 181 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 20:43
- >>173
平和だ・・・・・あまりにも平和だ・・・･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･｡
- 182 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 20:48
- 案外、このスレの存在に気づいてない住民もいたりして…
- 183 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 21:00
- じゃあ時々上げたり、同じシチュが出たらたまーに誘導してみますか。
反応が無いと不安ですよね。
- 184 名前： 新スレ 投稿日： 2003/05/25(日) 21:19
- http://jbbs.shitaraba.com/anime/bbs/read.cgi?BBS=154&KEY=1053865059
ごめんちょっとまちげた
- 185 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 21:20
- 誤爆かよ！ｗ
- 186 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 21:27
- >>180-181
ありがとうございます。
いま頑張って執筆中です。
というわけで調子に乗って��投下しま〜す。
ちょっとへんですけどかんべんしてくださいね。
- 187 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 21:27
- 俺は感想書くとスレ汚しになると思って控えてた。
SS職人さんﾅﾙｹﾏﾚﾊﾞﾝｶﾞｶﾋﾟｶｯﾋﾟ！！
- 188 名前： 暗闇の後には・・・�� 投稿日： 2003/05/25(日) 21:30
- � �>>173
「あぁ、フレイ、ジェシカ。 そっちも今帰り？」
近づいてきた私たちを見てミリアリアは笑顔でこちらに手を振ってきた。
そっとサイの方を見ると彼もわたしの方を見ていたらしく目が合ってしまう。
すると彼がフッっとほほ笑みを浮かべた気がして、ドキッとしてしまった。
カァっと顔が赤くなったのが自分でも判る。私は不自然にならないように
そっと目を逸らそうとしたが、逸らした先にトールを見たとき一瞬違和感を覚えた。
トールはもう死･･･いや、彼がここにいるのは間違ってなどいない。
そう、そんなことあるはずないじゃない･･･
「何？ 俺の顔になんかついてる？」
私が変な表情を浮かべていたのか、トールが話しかけてきた。
「あ、その･･･」
「トール、またへんなことしたんじゃないでしょうね！」
「またって、なんだよそれ･･･ なあ？」
「日頃の行いが悪いせいじゃないのかなぁ」
トールはミリアリアに疑われたのが不満だったのかカズイに同意をもとめたが、
にべもなく返されている。
「もうそれくらいで許してやったらどう？」
頃合を見てサイがトール達の言い合いを止め始めた。彼らはいつもこんな感じだ。
サイの所属しているカトウゼミのメンバーはカレッジの中でも有名だ。
サイはその容姿と優秀とその性格から来る人望で特に有名だし、
トール少し軽い性格だが気が付けば誰とでも仲良くなっていて顔が広い。
ミリアリアはそんなトールの彼女で、トールといつも一緒にいるせいと
面倒見の良い性格のおかげか誰にでも好感を持たれている。
カズイは例外みたいなものだが彼は以外に情報通らしい。
そしてこの場にはいないが、･･････にも以外にファンがいることを
私は知識として知っている。
そう、その程度のものでしかない、私にとって････
私にとってココが、この時が一番幸せだったのだから･･･
��に続く
- 189 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 21:39
- 感化されて、漏れもちょっと投下してみる。
手慰み。
ちょっち８３っぽいか。
長くなってしまったので、読みづらかったらごめんなさい。
最後の４分３０秒なので、挿入歌をかけて、最後にフェードしながらエンディングをかけて
お楽しみください。
- 190 名前： PHASE-51（私家版）１／１１ 投稿日： 2003/05/25(日) 21:41
- マリュー・ラミアスは、唇を噛んだ。
絶望し、諦観した。ヘリオポリスから数ヶ月、数え切れないほど同じ行為
を繰り返してきた。
アークエンジェルを幸運の艦と呼ぶ者もいる。
くそくらえだ。確かに私たちは生き残り、勝ち残った。ヘリオポリスで、
大気圏で、砂漠で、紅海で、あのアラスカからすら生還した。が、代償を
支払ってきた。大天使の足跡は幾人の、幾十人もの、数え切れない死者の
列だ。まだたった一六歳だった学生も、その中には含まれている。
ここは戦場だ。戦えば犠牲は出る。ビームの光芒に呑まれるのは味方ばか
りでなく敵も同様だ。生き残るための一発は幾人の、幾十人ものトール・
ケーニヒを量産する。
当然のことです、とナタル・バジルールなら言うだろう。そんな簡単なこ
とも、未だに割り切れない自分はつくづく軍人には向かないとマリューは
思う。
―――戦いの犠牲。
簡単な公式だ。解くまでもない解答だ。
大天使の航路に新たな血が一滴加わるだけのことだ。
「……報告を」
「被弾による機関出力の低下、常態の約４０パーセント。ローエングリン、
ヴァリアントを含む、兵装の半数が使用不可。X103《バスター》は健在で
すが彼我戦力比は今だ４：１を下らず―――」
トノムラの報告を要約するなら、手詰まりと一言航海日誌に記述すれば事
足りる。
同時にブリッジが至近弾に揺れた。
マリューは艦長席に掴まりながら、モニターの時刻表示を確認する。赤い
デジタル表示が近づく限界を無情にも告げていた。残された時間はわずか
しかない。そして、手段もない。
ただ、息を詰めて注視する。
マリューだけでなく、トノムラが、ノイマンが、チャンドラが、パルが、
サイとミリアリアが、ブリッジの全員がモニター中央の威容に、吸い寄せ
られるように目を奪われていた。星が散りばめられた漆黒の宇宙に、巨大
なクジラが浮かんでいた。
月軌道、Ｌ５付近。
本物のクジラのような、シンプルな形状の物体だった。が、それは鉄槌だ。
裁きの神がまつろわぬ者を焼き滅ぼしたように、プラントを一瞬で死滅す
る滅びの炎を宿した忌まわしき艦だ。
メタトロン。
自らを無慈悲な神になぞらえたがるブルーコスモス主義者たちは、滑稽な
ほどふさわしい名称を、その巨艦にあたえた。サイクロプス・システム運
用艦であるコズミックイラのモービディックは、ローエングリンの直撃に
すら原型と機能を維持したまま、プラントを射程に納める阻止限界点へ直
進している。
- 191 名前： PHASE-51（私家版）２／１１ 投稿日： 2003/05/25(日) 21:41
- 「……プラントの人口って、たしか……」
「……約二千万です」
パルの独語に、サイが解答する。声が震えている。
二千万。そう、実に、二千万人だ。
想像を絶する数だ。避難など物理的に不可能だ。公表するだけで取り返し
のつかないパニックになる。
サイ・アーガイルは歯がみする。何かできることはないのか。わずかでも、
少しでも。
二千万のコーディネーターが、否、「人間」が一瞬で容赦なく区別なく殺
戮される。歴史上の、どんな民族浄化すら及ばない悲劇があとわずかで現
実の光景となる。その虐殺はただの殺戮ではない。歴史と倫理と人間性と
未来そのものへの犯罪だ。
また至近弾。
ブリッジが激動する。クルーは我に返って、現実のそれぞれの作業を再開
した。幾度も船体が揺れる。すぐ近くで無音の閃光が爆発する。隙間を縫
うようにアークエンジェルは満身創痍で加速する。クルーは一瞬も気を抜
けない。わずかな生き残りの火器を操作し、幾重もの防衛ラインを突破し、
残された時間でメタトロンを撃破するという役割が残っている。
たとえ、可能性が限りなく少ないとしても。
できる力のある者はやらねばならない。
そのために―――。
キラ・ヤマトは、アスラン・ザラは、行った。
フリーダムとジャスティスなら防衛ラインを突破できる。が、損傷の重な
った二機にはメタトロンを撃破する力がない。一つを除いて。
自爆するのだ。
二機に搭載された反応炉の自爆モードを艦内部から作動させれば、計算上、
ローエングリンの直撃で損傷したメタトロンを撃破するに足る。
だから、これは戦いの犠牲だ。
未来への尊い足跡だ。
機体を失えば二人は脱出できない。救助可能なアークエンジェルが追いつ
けるとは思えない。そして、他の艦載機の一機すら残されてはない。
解答がわかっているから、マリューは唇を噛む。
「……ムウ」
逝ってしまった人を思い出す。この艦を守るため犠牲となった人を。その
顔を、言葉を、ぬくもりを、思い出を。
「結局、私には……」
「艦長！」
ミリアリアが、思わずとでもいった声をあげた。
「マードック軍曹から、カタパルトを開けろと命令したのかと確認です。
『嬢ちゃんが許可は下りてるからとすごい剣幕で』」
「……誰？」
カガリさん、とマリューは突飛な連想をした。
そんなはずがない。カガリ・ユラ・アスハはオーブ艦隊旗艦に座している。
誰が、と思った。咄嗟に出てこない。
「―――フレイか、フレイ・アルスターっ？！」
サイだけが気付いた。ミリアリアのコンソールを横から割り込んで操作す
る。モニターの表示はX105《ストライク》。着慣れないノーマルスーツの
バイザーから、強ばったフレイの表情がうかがえた。
- 192 名前： PHASE-51（私家版）３／１１ 投稿日： 2003/05/25(日) 21:42
- 「フレイ……アルスター二等兵ッ？！」
『行きます。艦長、ハッチを開けてください。今ならまだ間に合います。
《ストライク》ならあそこに届きます！』
「冗談は止めなさいっ、アルスター二等兵。あなたに扱えるはずがないで
しょう！ だいたい―――」
《ストライク》はまともではない。右腕がない。左脚もない。先の戦闘の
損傷を修理する暇などなかったからだ。
『できます。シュミレーションはやりました』
「あなた、忘れたのっ！！」
マリューの語気が爆発した。一言で十分だった。
フレイも、ブリッジも水を打ったようになる。
全員が記憶している。同じ台詞で出撃して、二度目でトール・ケーニヒは
戦死した。同じ間違いを繰り返すわけにはいかない。
この戦況、損傷した《ストライク》でフレイが出撃しても、ＭＩＡを２か
ら３に増やすだけである。
それもまた、わかりきった解答だ。
「わかったら早く、」
『…………いかせてください』
フレイの言葉は呟きめいて力がない。それなのに、回線越しの人工音声な
のに、誰もが息を呑んだ。
『私は行かないとだめなんです。今度こそ。だって何もできなかったから。
いままで、いつだって……なのに……私がキラを戦わせたから……私がキ
ラを殺したから……だから……だから、』
折れない声だ、とマリューは思った。
『―――私は、キラを守るわ』
どこまでも堅く尖った声は、怒りより悲しみより自責の色だ。この声で話
す人間を、止める術を、マリューは思い付かない。
どうすればいいのか。同じ過ちを繰り返すのか。
「―――カズィ、可能な限り周辺を索敵。それとメタトロンの予測進路の
軌道データをこっちに送ってくれ。ミリ、マードック軍曹に発進準備と伝
えて。ただし、カタパルトはまだ開かなくていい。《ストライク》はエー
ルに換装を」
「―――サイ・アーガイルっ」
マリューは驚きに目を見張った。
- 193 名前： PHASE-51（私家版）４／１１ 投稿日： 2003/05/25(日) 21:43
- 「責任はっ」打ち返すようにサイが語気をあらげた。
「全ての責任は取ります。後ほど処分してくださっても構いません。でも
……艦長。フレイが行くといってるんです。行かせてやってください」
「……死ぬわよ」
死なせるのかと、マリューは問うた。
「……マードック軍曹、発進許可おりました。《ストライク》はエールに
換装。何分かかりますか」
『しらねーぞ、いいんだな。五分、いや３分だ』
「敵第六波確認。接触まで１５０秒。機数３、ちがうか……４」
「あなたたち……」
「死なせません」
サイは、正面からマリューを見返して、答えた。
「キラも、フレイも、僕らの友達です。誰も死なせない。みんなで生き残
ります」
サイ・アーガイルが見つめていた。
ミリアリア・ハウは肩越しに一度だけ振り向いた。
カズィ・バスカークは少し照れた顔で笑っていた。
「……予測軌道のデータをこっちによこせ。直行できる軌道につけてやる」
「先にこっちだ。軌道は計算してやるから、おまえはレーダーから目を離
すなよ」
「ヘルダート及びコリントスに目標緒元をインストール。対空防御戦用意。
よろしいですか艦長」
マリューは、呆気にとられた。
全員そろって馬鹿なことをしている。
どうにもならないことを何とかしようとしている。
無茶と無謀と無益な感傷で十六歳の少女を殺害する行為に荷担しようとし
ている。
なんて愚かな話だろう。
不意に、おかしくなった。
どうにもならないこと、なんて今さらだ。思えばこの旅は、最初からどう
にもならないことを、どうにかしながら、なんとか来たのだ。
マリューは、眩しいものをみるようにして、少年たちを見つめた。雛だと
思っていた。けれど、当然だ。雛はいつか巣を離れる。ムウがいなくなっ
て、そんなこともわからなくなっていたのか。
雛など、もうどこにも居なかった。
大天使の羽根などなくても、彼らには自分で飛ぶための羽根がある。
「バスカーク二等兵」
「は、はい」
そして、マリュー・ラミアスは短く命じた。
「艦隊旗艦に回線を。《ストライク》の発進支援を要請して」
- 194 名前： PHASE-51（私家版）５／１１ 投稿日： 2003/05/25(日) 21:43
- 「―――馬鹿か！」
どういうわけか自分ではわからないのだが、カガリ・ユラ・アスハはよく
そう言われる。腹が立つので機会があれば言い返すことにしている。それ
を差し引いても、圧縮通信の内容は馬鹿げていた。
「いかがなさいますか」
副官のキサカ一佐がいつものように律儀に尋ねる。
カガリは聞くことか、といいたげに睨んだ。
この乱戦の最中に艦載機の発進など自殺行為だ。だいたいアークエンジェ
ルの所属機は出払っている。逆さにふっても予備の機体などどこにもない。
元々優秀な艦長と思うが、いくところまでいってしまったのかも知れない。
「ラミアス少佐は《ストライク》を出すと」
「この状況で中破の《ストライク》を誰の棺桶にするつもりだっ。もしか
して……ディアッカとかいうヤツが機体を無くしたのか」
「フレイ・アルスターとのことです」
おそらくキサカは承知していた。
そして、カガリも、キサカの一言で、フレイの意図を正確に読みとった。
判らないはずがない。気に入らない相手だったが、同じ女なのだから。
思考が止まった。ほとんど無意識の内に、カガリは自分でまったく似合わ
ないと思っている艦長席から腰を上げかけ、肉眼では光点としかわからな
いメタトロンに目をむけ、それから、指が白くなるまで拳を握りしめた。
あそこは、アスラン・ザラが居る場所だ。できることをするために、死ぬ
ために選んだ戦場だ。羽根があるなら、今すぐにでも飛び出して、あそこ
へ行きたい。
カガリであろうとした頃は、それでよかった。
けれど。
今は、カガリ・ユラ・アスハなのだ。
そして、それは、カガリにしかできない、カガリだけができることを成す
ための、戦場なのだ。
「……キサカ」
「はい」
言葉選ぶには少し時間が必要だった。
「私は、はじめて、あいつが羨ましいと思う」
「―――いかがされますか」
「一つだけ、わがままをいいか？」
- 195 名前： PHASE-51（私家版）６／１１ 投稿日： 2003/05/25(日) 21:44
- 『いいな、フレイ。交戦は絶対に避ける。キミの役目はキラとアスランの
救助だ。エールの加速なら防衛ラインを突破できる。万一戦闘になったら
全速で離脱する。どのみち勝てッこない』
「交戦は避ける。戦闘からは全速で離脱」
『軌道データを送る。微調整は必要だから、位置の表示をよく見て。判ら
ないときは地球を基準に』
「位置をよく見る。地球を基準に」
『メタトロンは出力の大半をサイクロプス・システムの運用に取られてる。
近接火器はたいしたことはない。ＰＳ装甲で防げる。怖がらず、位置を確
認したらシフトダウン前に全力で取り付くこと』
「たいしたことない。怖がらずに取り付く」
フレイは目を閉じてサイの言葉を聞いている。
私はキラを守る。
魔法の呪文を胸の奥で繰り返す。そうしている間だけ恐怖を忘れることが
できる。少しサイズのきついノーマルスーツの下で心臓が音をたてて暴れ
ている。手足だって気を抜くと怯えて震え出す。情けないほど逃げだした
いと思っている。今この瞬間にも。
パパが死んでから、と焼き付いた記憶を目蓋に描く。
父を、永遠に、失ってしまったあの一瞬。
おそらく一生忘れることのないあの光景。
あの日から、ずっと戦闘が恐ろしい。自分を、他人を、大事な者を、何も
かもを容赦なく奪っていく戦いの光と音。身体の芯にぽっかりと穴が空い
て、呼吸することすらできなくなる喪失感に追いつかれてしまう。
二度、味わった。
そのつど、誰かを、何かを憎んだ。
憎むことだけが悲しみから逃れる方法だった。一方的な、理不尽な現実を
認めたくなかった。が、憎む度に誰かを傷つけた。何かを失った。
同じ過ちの繰り返しだった。
憎むことでは何一つ変わってはくれなかった。
自分に嘘をついても現実は追いついてきた。。
子供のわがままが通用するのは、箱庭の楽園だけだ。
パパの膝も、サイの手も。
失って、失って。
着飾っていた作り物の羽根も何もかも消え失せて。
残ったものは幾多の悔恨と、無力で小さな「私」ひとつ。
それだけが本当の「私」だった。
本当の「私」に嘘をつきたくないから。
これ以上後悔なんてしたくないから。
だから。
行こうと思った。
- 196 名前： PHASE-51（私家版）７／１１ 投稿日： 2003/05/25(日) 21:44
- 『右舷、ジン機数２……あっ、４？！ いえ、Ｍ１……味方です！ 識別
確認、アサギ機他２』
どうしても伝えられなかった言葉がある。
今さら伝えようとも思わない。
好かれようとも思わない。
『Ｍ１より入電。下命ニヨリ助太刀イタス……とか』
『……感謝スル、と伝えておいて』
利用して、傷つけて、そして死なせて。
それは間違いなく自分のしたことだ。
過去を無かったことになんてできるはずがない。
『第六波撃退。第七波との接触まで３６０秒』
嫌ってくれてもいい。
憎んでくれてもいい。
それでも。
生きていてほしい。
『……フレイ』
サイの声を聞けばわかる。心配してくれているのだと、フレイは思った。
サイ・アーガイル。
私の婚約者であった人。
私を心底愛してくれた人。
そして、私が愛してあげられなかった人。
「フレイ……」サイは言った。
「キラたちを、頼むな」
こんな時なのに、フレイは笑った。サイが私に何かを頼むなんて。そんな
こと考えたこともなかった。はじめてだ。いつだって頼むのは私で、いつ
だって甘えるのは私で。それでよかったと思っていた日々が、どうしよう
もなく遠く感じる。
「大丈夫」
だから、心の中で、付け加えた。
さよなら、と。
さよなら、サイ。
一度は、きっと、好きだった人に別れを告げる。
フレイはようやく目を開いた。
どこまでも窮屈で閉ざされたひとりぼっちのコクピット。こんなところに
一人でいるなんて、以前なら考えただけで気が狂いそうだったに違いない。
まけるもんか。
逃げるもんか。
歯を食いしばる。痛いほどスロットルを握って手の震えを掴み殺す。フレ
イを吐き出すためにカタパルトが開いていく。
遠近感の失われた虚空の果てで、いくつもの爆発と火線が、花火のように
宇宙を飾っていた。至近弾がいくつも、アークエンジェルの白い船体を霞
め、焦がした。
そこへ行くのが怖かった。
呪文を唱えた。キラ、と。
恐怖はちっとも消えなかった。
それでも一欠片の勇気だけは手に入った。
『アルスター二等兵』
マリューだった。
『命令です。必ず帰ってきなさい、三人で』
「―――はい」
カタパルトが開いた。光が射し込む。地球光だ。
青。
左手に宝石のような色がある。
地球。人類が生まれたところ。青い揺りかご。雛はいつかはそこから飛び
出して、羽を広げて自分の空へ飛んでいく。
吸い込まれそうだと、フレイは思った。
そして。
リニアカタパルトのステータスが青に変わった。
「フレイ・アルスター、ストライク。行きます」
《ストライク》は矢になった。
青い星を横切る、一筋の白い矢。
- 197 名前： PHASE-51（私家版）８／１１ 投稿日： 2003/05/25(日) 21:44
- 振り返ることすら忘れたように《ストライク》は飛んでいく。あっという
間に見えなくなる。
サイは軽くため息をもらした。
恋愛なんて真剣になった方が負けだ。使い古された言葉を今日くらい身に
しみたことはない。
結局、俺は、フレイには逆らえないんだな。
苦笑してしまう。笑う余裕などどこにもない戦況で、だからいっそ笑う他
にどうしようもない。
「フレイってさ」
ミリアリアがこちらをのぞき込んでいた。
「変わったよね」
「そう……そうだね、変わった。……いや……きっと、変わってなんてい
ないよ」
謎掛けみたいな言葉にミリアリアがいぶかしむ。
他の誰にも判らないだろう。そう思うと少しだけ誇らしい。たぶん、キラ
にだってわかりはしないのだ。飛び出していったフレイは、サイがはじめ
て見る、そして、どうしようもなくよく知っているフレイだった。
わがままで、意気地なしで、そのくせ意地っ張りで。
そして、子供みたいに真っ直ぐ走っていったのだから。
- 198 名前： PHASE-51（私家版）９／１１ 投稿日： 2003/05/25(日) 21:45
- X103《バスター》は、《ストライク》のほぼ進路上に位置していた。
「おい、イザーク聞こえてんだろ！ 《ストライク》がアスランたちの救
助に出た。突破を援護するの、手伝えって！」
『俺の知ったことか！ 言うに事欠いて《ストライク》の援護だとぉっ！！
』
「だから、ヤツじゃないって。フレイって赤毛の女。お前も知ってるだろ」
『―――ふっざけるなぁっ！ キラ・ヤマトの女の露払いだとぉ！ 死ん
でもするかぁ！！』
「おい、おいイザーク！ 俺だけか。俺一人でやれってのか。話ぐらい聞
けよ！」
- 199 名前： PHASE-51（私家版）１０／１１ 投稿日： 2003/05/25(日) 21:45
- ラクス・クラインの座乗艦から、《ストライク》の機体は視認できた。
相対速度差から邂逅は一瞬でしかない。
かつて、悪魔とザフト全軍に畏怖されたガンダムが、今は、愚かな程一直
線に、走っていた。
記録によれば……。
ラクス・クラインは座乗艦の席にあって、常に平静の態を崩さなかった、
という。
だから、普段のラクスを知る者ほど、艦上にある彼女を見て衝撃を受ける。
女神のようだと、称される所以とされる。
だが、幾つかの証言によるならば。
この時、アークエンジェルからの連絡を受け、ストライクの軌道から艦を
動かし、両者が交差したその瞬間だけは、ラクス・クラインはなぜか年相
応の、ほんの十七歳の少女に見えた、と言う。
ラクスは何も語らなかった。
ただ、沈思のまま《ストライク》を見送った。
- 200 名前： PHASE-51（私家版）１１／１１ 投稿日： 2003/05/25(日) 21:46
- フレイは、飛ぶ。速く。もっと速く。
一息に宇宙を貫いていく。
設計限界いっぱいの加速と負荷とＧが、機体と身体の双方を責めさいなん
だ。
残された時間は少ない。
思うことはたった一つだ。
他のことは考えない。頭の中から放り出す。
その思惟を託されたように、熱と光と破片の地獄を、そのためにだけ《ス
トライク》は走った。
（私が……）
巨大な白鯨が見えた。
断罪の天使の名を冠された殲滅の鎚。
手を伸ばせば届く距離に、それが、キラが、いる。
（私が、あなたを、守る、から―――）
そこまで行こうと、フレイ・アルスターは思った。
- 201 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 21:49
- >>198
乙です！！！
はぁ、漏れもＳＳ書いているけどさ、フレイ様幸せに出来るのか不安になってきたんだよね…
フレイ様、幸せになってください…
イザーク、やはりお前も好きだ（笑）
- 202 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 21:52
- >>190-200
乙フレ！
実際の最終話もこんなノリならいいな。
ストライクで発進するフレイとそれを手助けする
サイがいい感じです。
- 203 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 22:19
- 乙！
いやー凄いね。これだけ書けたらどんなにか良いだろうかと…
正直、才能の差を感じちゃうよ（苦笑
- 204 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 22:20
- >>190-200
乙フレです！！
いやぁ、カッコイイっすね、
最終回こんな感じなら歴史に残るものになるな・・・
文章的にもとても読みやすく、燃える書き方で・・・
実力の差を痛感するな。
- 205 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 22:22
- >189-200
乙！
とりあえずMeteorとRIVERをかけつつ楽しませていただきました。
いや、すばらしいの一言ですな。
言葉の選び方運び方、各キャラの心情描写。
サイとフレイの「終わり方（？）」、カガリやラクスのフレイへの態度、
マリュー他AAクルーの反応、トールの扱われ方、すべてがツボです。
この充足感、そうそう得られるものでは。
カガリやラクス、キラともアスランとも違ってフレイは何も持たない、
だからこそ、最後の時はまっすぐまっすぐ飛べるんじゃないかと自分は思う。
こういうかたちでのフレイのMS搭乗なら支持したい。
実際の最終話も、こんな感じだったらと切に願っております。
- 206 名前： ヘリオポリスの学園祭 投稿日： 2003/05/25(日) 22:38
- 「それでは、第1回ミスカレッジ・コンテストを始めます！」
ラクスの宣言と共に、コンテストが始まった。
ステージの前には既に生徒や参観者等で黒山の人だかりが出来ている。
ラクスがステージの中央に立つと、人垣のあちこちから口笛や歓声が上がった。
後ろの方から眺めているサイとアスランは、ラクスがそつなく司会をしているのに少し感心していた。
出場者が紹介され、それぞれステージに出てくると、歓声が一段と大きくなる。
その人垣の中に、イザーク、ディアッカ、キラの姿もあった。
「どうなるかな…ラクスが出ないから、混戦だよなぁ」
「票が割れたら俺達が得するんだろ、大丈夫だって」
心配しているイザーク、ディアッカだったが、ステージ上の出場者のチェックも忘れていない。
「お、あの子結構良いんじゃない！？後で声かけてみるか」
一方、キラはトール達クラスメイト数人と一緒にステージを見ていたが、あまり興味は無さそうであった。
正直なところ、賭けに参加したのもあくまで「お付き合い」であって、それ以上でもそれ以下でもない。
しかし、朴念仁ではないから、ステージに視線が固まって動かなくなるのは仕方がない。
「4番、ニコル・アマルフィさんです」
おぉっ、と、ざわめきが大きくなる。
「おい…あれ、ニコルか？」
「そうみたい…」
一瞬、イザークとディアッカは我を忘れた。面白半分でやらせたのがあまりにも似合っているので驚いたのだ。
「…ニコルに賭けてる奴、いるか？」
「3人いる…どうしよう、もし優勝したら大変だぜ」
心配する二人を余所に、「6番、ミリアリア・ハゥさんです」とラクスの声が響き渡る。
人垣の一角から、「ミリィ〜」と声が上がり、ミリアリアはそれに照れたように下を向いてしまった。
「ミリアリア、よく似合ってるよね」
キラが声をかけると、トールは「そうだろ、そうだろ！」とすっかり浮かれていた。
キラは苦笑しながら、ステージに再び目をやった。
- 207 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 22:40
- 何か今日は凄いＳＳがたくさん投下されてますが…俺は俺の道を行くぞｗ
- 208 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 22:48
- ホント、今日はどうしたんだろう。
ＳＳスレがこれほど盛り上がるとは。
感想が追いつかん（笑）
- 209 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 22:50
- 凄いな今日は……
神々に感謝と敬意を表しつつ、明日会社で読みますｗ
- 210 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 22:52
- 自分で書いといて何だが、コンテストＳＳは2chか南極に投下した方が良かったかも知れん…
場違いな気がする今日この頃。
- 211 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 22:56
- >>210
いや、そんなことないぞ！
激しく楽しましてもらってます。
で、続きは何時ですか？
- 212 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 22:57
- ここ、当然作家さんも読んでると思うけど、投下する前はどんな気分？
やっぱり不安ですか？
- 213 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 23:07
- 不安はあるが、なるようになれ、という気持ちのほうが大きいかな・・・
- 214 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 23:09
- >>212
私の場合はここが始めてということもあって
それはもうどきどきでございます。
皆書き方が上手いから浮いてそうで不安にもなるし。
- 215 名前： PHASE-51（私家版）１１／１１ 投稿日： 2003/05/25(日) 23:09
- >>210
本と、楽しく読ませて貰ってますよ。
本編がアレなので心慰められてｗ
これからもガンがってください。
- 216 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 23:10
- >>215
わははは。
名前消し忘れｗ
- 217 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 23:11
- >>210
私もすごい楽しみにしてますんで是非ここで続きをお願いします。
- 218 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 23:11
- エロパロにもなんか凄いのが来てるし…今日はなんなんだ!?
- 219 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 23:17
- >>211
今週は出張があるから…早くて水曜日かな？
書き溜めたいんだけど、もう酔ってるから無理ｗ
- 220 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 23:19
- >>219
ありがとう！
からだに気をつけてお仕事がんがってください。
気長にお待ちしております。
- 221 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 23:22
- >>218
エロパロ板にも来たか…純粋にフレイ様ファンが増えていると喜びたいな。
- 222 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 23:23
- >>190-200スゲー。
読んでて映像が直接脳内に生成されますた。
最後あたりはマジでこんな感じになってほしい。（ｗ
乙フレイ。
>>206
コンテストは明るくて(･∀･)ｲｲ!
何も考えずにリラックスして読めます。
乙フレイ。
- 223 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 23:30
- >>190
今読みました。乙です！！
こんなラストだったらＳＥＥＤは永遠の名作になりますねぇ。
ところで、メタトロンは作者様のオリジナルですか？
- 224 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 23:34
- 後藤リウ本人じゃないだろうな？ｗ
- 225 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/25(日) 23:39
- >>224
ここで金にもならん事はせんだろｗ
- 226 名前： 190 投稿日： 2003/05/25(日) 23:49
- ご精読ありがとうございました。
拙いもんですが、感想いただけると励みになります。
また機会があれば、投下いたしますのでヨローっす。
メタトロンとかは設定はオリジナルですが、
現行の本編ラインを鑑みて、なるべくありそうな筋を狙ってます。
本当にあったら笑いますが。
予想が難しかったので仮面とか常夏とかアズラエルとかはパスでｗ
- 227 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 00:06
- エロパロのどのスレでつか？
教えて君でｽﾏｿ。
- 228 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 00:06
- >>226
是非お願いしま〜す。
気が向いた時でいいで。
- 229 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 00:09
- 大分落ち着いてきましたね。というわけで、そろそろ投下するか…ドキドキ。
フレイ様ブルコスルート、ＭＳ搭乗話です。オリキャラ登場。
>>35〜>>41 風にたなびく秋桜の影響を受けて書いたモノです。
- 230 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 00:11
- >>227
ttp://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1034752307/
もちろん21禁なのでそのつもりで
- 231 名前： ランプシュタンダルテ・フレイ・アルスター／０ 投稿日： 2003/05/26(月) 00:25
- このＳＳはＳＥＥＤの世界観を大幅にアレンジしてあります。
特にブルコスのＭＳはバーチャロン世界から引用しています。
設定変更については、全て作者の責任であることを明記します。
登場ＭＳ設定
ＨＢＶ−０５ライデン
ブルーコスモスが切り札として用意していた重ＭＳ。肩部に戦艦を一撃で撃沈する対艦レ
ーザーを装備し、最高度のＦＣＳと制御システムを備え、分厚い装甲を併せ持つ大変贅沢
な機体である。それ故にコストは莫大で、本機一機辺りの調達価格はテムジン２１機分に
相当する。ゆえに僅か26機しか量産されず、本機の大量配備は夢と消えた。
一機は赤く塗装され、皇女フレイ･アルスターの元に納入された。
殆どが独立親衛隊ＬＦＡに配備されている。
- 232 名前： ランプシュタンダルテ・フレイ・アルスター／０ 投稿日： 2003/05/26(月) 00:26
- ＳＡＶ-07ベルグドル
ライデンの量産型。ライデンの配備が絶望的になったことから、僅か三週間で設計された。
余りモノの武装や安価な部品を大量に導入した、「とりあえず間に合わせ」な機体。安定性
が悪く、未熟なパイロットでは直進させることさえ困難だったと言われる。主兵装がミサ
イルという次点で終わっていると思われる。ミサイルで牽制、体制を崩し、ビームピスト
ルで狙撃／テン・エイティを援護という戦術を取る予定であった。
各種設定
ブルーコスモス
連合から分離独立した対コーディネイター最強行派。人員はまだ少なく、一部のエースパ
イロットやＭＳの個々の能力に頼らざるをえないのが実情だ。
連合
ブルーコスモスが離脱し、コーディネイターの独立を認めようとする穏健派が力をつけつ
つある。ブルーコスモスとザフトの戦闘では旗手を明らかにせず、勝者に味方しようと各
策している。それはオーブも同様。
- 233 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター／０ 投稿日： 2003/05/26(月) 00:28
- フレイ・アルスター
我らがヒロイン。このＳＳではＭＳに搭乗。
ブルコスでの扱いは『皇女』。
エミール・アルカード
元連合中佐。ブルーコスモスだが、コーディネイターへの偏見はほとんどない。
プロの軍人にして屈指のＭＳ乗り。ドラキュラ伯爵がモチーフです。
キラアスラン
多分最後の方で登場予定。
- 234 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター／1 投稿日： 2003/05/26(月) 00:35
- 私、フレイ・アルスターが、ラウ･クルーゼの手によってアラスカ基地から連れ出され、
ブルーコスモスの象徴として祭り上げられてから一ヶ月が過ぎた。
私にはもう何もなかった。大切なパパは私の目の前で死に、復讐の道具となるはずだったコーディネイター、
キラ・ヤマトは私との約束を破って（正確には約束を守って戦って）死んだ。父が死んだころは、父のことばかりが思い出された。
なのに、最近はキラのことばかりを思い出す。
キラは私の道具だったから？
キラと肉体関係を持ったから？
「そうじゃない…」
私ははっきりと呟いた。多分、私は、キラのことが好きだったのだ。
コーディネイターのくせに、泣き虫で、甘えん坊で、優しくて、一人でいつも悩む情けないキラが。
同情から来た、幼い愛だったかもしれない。それでも私が一人の人間に対し、傍にいたいと想い、痛みに共感し、離れ離れになることが怖かった。
それは事実だと思う。でも、私の想いが彼に伝わることは無い。
彼の存在の証は、私の肩を止まり木代わりにし、いつでもじゃれついてくるトリィだけになってしまったのだから。
結局、私は自暴自棄になっていた。クルーゼに拉致されて、ブルーコスモスに協力しているのも、コーディネイターに対する復讐というより、
全てに対する「諦め」だった。流されるなら、流されるところまで身を委ねようしているに過ぎない。
- 235 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター／2 投稿日： 2003/05/26(月) 00:39
- 「皇女、準備はよろしいかな？」「ええ、出来ています」
豪華な個室の扉が開き、仮面を着けた男が入ってきた。ブルーコスモスのリーダーの一
人、私を拉致した張本人、ラウ・クルーゼだ。どこか父親に似た声だけに好感が持てたが、
この男の思想も行動も私は嫌いだった。
クルーゼはうやうやしく私を立ち上がらせた。私はパーティ以外滅多に着ることなどな
かったドレスを纏っている。私はお姫様なのだから。
（似合わない。私にはドレスは似合わない。あの子の方が、よっぽど板についている。く
やしいけどね）
脳裏をコーディネイターの歌姫と、キラに似た金髪の少女のイメージが走った。
あの二人なら、私の立場におかれたら、何をするだろうか。
周囲を巻き込んで、自分に忠実な派閥を作り、内部から変えていこうとするだろうか。
それとも、ＭＳを奪うか或いは自らサブマシンガンを構えて、ブルーコスモスをたった
一人で制圧しようとするだろうか。
「皇女、どうかなされましたか？」「いえ、何でもありません。気になさらぬよう…」
二人の活躍があまりにも自然に想像出来て、表情が緩んでいたようだ。付き添いの男（貴
族の執事そのままだ）が尋ねて来た。一応威厳を持ってこの話を打ち切る。
貴族としての礼儀作法や口調はこの一ヶ月、散々たたき込まれてきた。
おかげで人をあしらうのがうまくなった。立場上の面もある。私が何を思っても、誰も
気にしたりもしない。ブルーコスモスの線路通りに歩いている限り、彼らも私に干渉はし
ないだろう。人間関係が煩わしかったＡＡよりマシになったのはその点かもしれない。
（なのに、なんで、あの頃が懐かしいんだろう…）
おせっかいな友人達、そして傷つけてしまったサイの顔が浮かび、消えた。
私は大きく息を吐いて、クルーゼに導かれるまま歩き出した。
トリィが私の頬に身を摺り寄せてきた。こういう場面では、トリィは大人しくしてくれ
る。歩きながら、トリィをそっと撫でた。
- 236 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター／3 投稿日： 2003/05/26(月) 00:41
- 今日の予定は、ＭＳ開発工場の視察だった。
穏健派の連合から事実上独立分離したブルーコスモスは、自軍の戦力を独自に調達する
必要があった。ナチュラルにコーディネイターへの恐怖が根強いからといって、コーディ
ネイターを全て排除せよと主張するブルーコスモスを諸手を上げて歓迎するほど、彼らは
単純ではない。連合に残ることを選択した兵士は多く、当分の間、ブルーコスモスは少数
精鋭を余儀なくされることになった。
その対策が、私であり、目前でロールアウトしたばかりのＭＳ達であった。
私が「悲劇のヒロイン」を演じ、ブルーコスモスに対する賛同とコーディネイターへの
憎悪・偏見を煽る。特にデュエルによって撃墜された民間シャトルのシーンは何度も何度
も放映されていた。私の悲痛な叫びと共に（もちろん演技だ）。
ザフトを数で圧倒するまでは、少数精鋭のＭＳ達によって戦局を支える。そしてブルー
コスモスの旗の元にナチュラルがまとまった時、コーディネイターは最期を迎えるわけだ。
「そう都合よく行くものかしら？」
「皇女、その心配はありませんよ。このデータをご覧下さい」「……」
ある時、私はクルーゼに皮肉ともとれる疑問をぶつけてみた。
暗に「私なんかで世論が煽れるわけ無いでしょ」と言ってみたのだが。
彼の答えは志願者数の増減を示した書類だった。
私の姿が地球圏に放映されるたびに、グラフの線が跳ね上がって行く。ブルーコスモス
に対する支持率も上昇し、コーディネイター融和路線への支持率は下がって行く。
私は唖然とした。世の中は、これほど馬鹿が多いのだろうか？
私が惰性でやっていることに、騙される人間がいるとは。
私は暗澹たる想いでファイルをクルーゼに返した。
ふと思う。サイが見たら、私になんと言うだろうか。彼のことだ、私の演技など一瞬で
見抜かれているだろう。「馬鹿な奴だ、お前は！！」と言うに違いない。
ナチュラルも、コーディネイターも、ブルーコスモスも、馬鹿ばっかりだ。
そして、一番馬鹿なのは、この私、フレイ・アルスター。
- 237 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター／4 投稿日： 2003/05/26(月) 00:45
- クルーゼと武官達が私の前を歩いてる。
私は付き人にかこまれて、金網の張られた足場をしずしずと歩いていた。
ＭＳ工場。鋼鉄の巨人達が命を吹き込まれる所。最新ＭＳの視察と工場の士気向上の為、
私がつれてこられたというわけだ。
専門的な話に没頭するクルーゼ達から視線をそらし、佇む新型ＭＳを見上げる。
ＰＳ装甲が起動する前の無機質な灰色。
ＡＡの格納庫で、私は何度もストライクを見上げた。
ストライクは細身で、華奢で、優雅で、どこかキラを連想させた。
今、目前にあるＭＳはストライクとは全く違う。重厚で、頑丈そうで、武骨一点張りで、
全てを破壊する意志で捏ねられたゴーレムのようだ。
鳥肌が立ち、誰にも気づかれぬようそっと腕をさする。
不意に技術者の会話が耳に飛び込んできた。どうやらシュミレーションの結果を説明しているようだ。
「ごらんください。このＭＳは単機で戦艦を撃沈できる能力を持っています。
具体的に申しますと、月面から衛星軌道上の戦艦…例えば、あの足つきさえも、撃沈できます！！」
技術者は喜色を満面に浮かべ、興奮しながらモニターをさしていた。その中では、変形した肩部から打ち出されたレーザーが
見慣れた艦艇―ＡＡ―を攻撃するシーンが流れていた。光の柱が奔流となってＡＡを貫き、小爆発を起こしながら分解していくＡＡ。
私は呆然としてしまった。皆が乗ったＡＡが、沈む。トールを失ったミリィが、カズィが、フラガが、そしてサイが死ぬ。
爆発に巻き込まれて肉体を砕かれ、宇宙空間に吸い出され、焼き尽くされる。
「ですが、このＭＳは単なる移動砲台ではありません。圧倒的火力と重装甲を備えながら、
機動力でもさして他機種と見劣りするわけではありません。十分に習熟したパイロットが
搭乗すれば、空間戦闘でもストライクに勝つことは十分可能です！！」
シーンが変わった。今度は宇宙空間だ。相手はストライク。そう、キラのストライク。
ストライク、いやキラの動きは凄かった。だが、このＭＳの動きも鋭かった。
機動力そのものは劣るが、反応速度や機体制御はキラに負けていない。ストライクは徐々に追い詰められ、
そしてレーザーがストライクに吸い込まれていく…。
キラが死ぬ。
「やめてぇぇぇぇぇ！！！！」
私は絶叫し、視界が暗転した。
- 238 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター／5 投稿日： 2003/05/26(月) 00:47
- 視界に真っ先に入ってきたものは、ベッドの豪華な天蓋だった。
顔を横に向ければ、クルーゼが椅子に腰をおろし、私が目覚めるのを待っていた。
僅かながらにすまなさそうな雰囲気が漂っていたのは私の錯覚だろうか。
「すまなかった、アルスター皇女。
お父上が散華された瞬間を思い出させてしまって」
私が気を失ったのはキラが死ぬ瞬間をみせつけられたからだが、クルーゼや周囲の人間
はＡＡ撃沈の光景が影響を与えたと映ったらしい。
（そうね…。誰だってそう解釈するわ。キラとのことは、私達だけの秘密。クルーゼが知
るわけがないもの）
少なくとも、周囲のブルーコスモスは絶対に気付いていない。コーディネイターへの憎
悪の象徴ともいうべきフレイが、まさかコーディネイターと情を通じていたなんて。
誤解しているのなら、そのままにさせておこう。
私はそう考え、クルーゼの謝意を受け入れた。
「あの工場へ君を連れ出したのは、君に引き受けて欲しい役があったからだ」
部屋には誰もいないから、クルーゼの口調もやや砕けている。無言で続きを促した。
「回復したら、ゆっくり離そう。今日のことはすまなかった。ゆっくり休んでくれ」
- 239 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター／6 投稿日： 2003/05/26(月) 00:49
- クルーゼが去り、私は一人残された。
あのシュミレーションは、私にあることを突きつけた。
『キラは死んだ』
ＡＡで、私はキラが死んだ瞬間を見ていない。あの時、私は頭から毛布を被り、震えな
がらキラの名前を繰り返していたのだから。戦闘終了後、艦内の雰囲気がおかしいことに
不安になり、カズィに問い質した。そこで初めて「ＭＩＡ」と聞かされたのだ。
キラの最期がどうだったのか、誰にも分からない。どんな戦い方をして、イージスにど
のように撃破されたのかも。
ただ、私にはわかった。先ほどのように、ストライクが爆発を起こし、その中で粉々に
なったのだと。
正直、心の何処かでは希望を抱いていた。行方不明なら、万が一、キラは戻ってくるの
ではないかと。回収されたストライクの惨状から目をそむけながら。
論理的に考えれば、あの状態でキラが生きている筈がないのだ。
ここ最近の諦めさえも、甘えだったのだ。
シュミレーションは、逃げていた私に現実を突きつけたのだ。囚われの姫を助ける白馬
の王子様を信じていた私。だが、白馬の王子は現れないのだと。
「き、キラ……」
握り締めた拳に溢れた涙が滴り落ちた。涙が止まらない。
「キラ、あんた、なんで死んだの？なんで死んだのよ！！！なんで……！！！」
私は目の前で父を失い、そしてまた、目の前で大切な人を失った。
- 240 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター作者 投稿日： 2003/05/26(月) 00:54
- 今日はここまででつ…
我ながら、長い…。
題名はＬＡＨ（ライプシュタンダルテ・アドルフ・ヒトラー）から
フレイ・アルスター親衛隊という意味で使っています。
フレイ様の、キラによらない成長物語です。
- 241 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 00:59
- >>240
真夜中に乙フレー
漏れは本編でも皇女なフレイ様をキボンしていたり・・・
続き待ってるYO!
- 242 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 01:00
- >>240 m9（・∀・）ｲｲ!!
＞今日はここまででつ…
(´･ω･`) つづきは明日期待してもよろしいですか？
- 243 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 01:00
- >>231-240
乙フレ〜！！
これからどんな展開になるかとても楽しみです。
キラにたよらない成長物語、がんばってください
- 244 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 07:20
- >>230
ｱﾘｶﾞﾄ!(´▽｀)
- 245 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 07:51
- >>230
このイザフレも凄いですねぇ〜
こもＳＳスレでも連載して欲しいですよ。
- 246 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/7 投稿日： 2003/05/26(月) 08:04
- 感想ありがとうございます。出かける前に続きを。
翌日、私は再び工場を訪れた。
技術者は平謝りだったが、私にはどうでもいいことだった。
一晩中泣き明かしたので目は真っ赤だった。加えて悲しみと絶望が溢れて出したのだろ
う、一種の冷気を身に纏っていたに違いない。付き人も、工場のスタッフ達も、一言も漏
らさず硬直していた。
凍りついた時の中、クルーゼが動いた。
「皇女、このＭＳが我々の手による最初の機体です」
「そうですか。労苦、感謝にたえません」
「はっ。…皇女。つきましては、このＭＳを、貴方様に差し上げます」
「わかりました……えっ！？」
私は今まで被っていた「皇女」という仮面を外し、素顔のフレイ・アルスターを覗かせ
てしまった。
- 247 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/8 投稿日： 2003/05/26(月) 08:06
- 「いったい、どういうこと？クルーゼ！？」
邸宅に戻り、クルーゼと二人っきりになったところで私は疑問と怒りを爆発させた。
「何もそれほど動揺することもあるまい」「お、驚いてなんかいないわ！」
仮面に隠された目がキラリと光ったような気がした。
それに圧倒されぬよう、私は喋り続けることにした。
「なぜ、私がＭＳに乗らなければならないの？」「不満かね？」
「貴方は計算が出来ないの？私はナチュラルなのよ。それに戦闘訓練だって受けていないわ。
戦闘に参加したって、即刻撃墜されるのがオチよ！！」
「皇女。君は何か勘違いしているようだ」
クルーゼはやれやれといったいつもの調子だ。
「何も私は君に『戦場へ出て戦え』と言っているわけじゃない。
戦場の矢面に立つのはもちろん私のような軍人だ」「じゃあなぜ？」
「象徴だよ。君の役目だ」
クルーゼは語り出した。ブルーコスモスへの支持は高まりつつあるとはいえ、それがコ
ーディネイター打倒には結びつかない。コーディネイターをこの宇宙から排除するには、
武力を持ってするしかない。その為にはＭＳ隊を大々的に編成する必要がある。
「だから、君に総大将の役目をお願いしたい」
「………」
「心配することはない。出撃前の演説や観閲式にドレス姿じゃ様にならないからな。
用は使い分けだ。儀礼の場所には儀礼の服、戦場には戦場の艶姿がある。
…それに、モウ一つ頭の痛い件があってね」
私はクルーゼの口元が自嘲気味にゆがむのを見た。
- 248 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/9 投稿日： 2003/05/26(月) 08:08
- 「あの新型ＭＳ、量産が不可能なのだ」
「ハァ？」
「とにかく強力なＭＳを開発しなければ、ということで、コストやスケジュールが度外視
されてしまった。更に工程や日程、部品の調達にも人的ミスが続発してね。特に主武装の
レーザーを生産していた会社が倒産してしまって、４０機分のパーツしかないのだ。もう
あの機体の量産は出来ない。今、代替機を製造しているところだ」
私は笑い出しそうになった。込上げてくる笑いの衝動を必死に押さえつけなければなら
なかった。用意周到、準備万端な筈だった対コーディネーター殲滅の戦略が、会社の倒産
などという些事から躓くとは。
クルーゼからの説明を聞きながら、私は自嘲していた。
要するに、周到に計画されたと見せかけていても、ブルーコスモスの蜂起は綱渡りに過ぎなかったのだ。
偶然に偶然を重ねた上に成り立つ計画。一つが崩れ出せば、雪崩をうって崩壊する。
（歴史の失敗する側って、こういう小さなミスの積み重ねで自滅するものなのよね。
ブルーコスモスも、間違いなくこのパターンだわ。何より、その象徴が私だもの）
私は運命を悟った。
ブルーコスモスはやがて終わる。その時は私も運命を共にするであろうことも。
死ぬことは怖くなかった。全てがどうでも良かったからだ。父やキラに会う時が早まる
だけなのだから。
「で、私はＭＳに乗ればいいわけね。護衛は如何するの？」
「心配ない。あのＭＳの運用上の理由からも少数精鋭の独立大隊を編成することにした。
名目上は君の手駒、護衛部隊としてね」
「ファンクラブってわけ？」
「親衛隊、と訂正しておこう」クルーゼは苦笑しているようだった。
「名称はどうするの？」
「そのままだ。フレイ・アルスター親衛隊。通称ライプシュタンダルテ・フレイ・アルス
ター（ＬＦＡ）というわけだな」
私は今度こそ笑い出した。笑いが止まらなかった。
- 249 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/10 投稿日： 2003/05/26(月) 08:11
- 一週間後、私はクルーゼにつれられて再び工場を訪れた。
「あれが君の機体だ」
私の前に鎮座したＭＳに電源が入り、灰色のＰＳ装甲に命が吹き込まれる。
「！」
武骨な機体に血が巡ったのかと錯覚した。
機体の大部分の面積を占める真紅。
上腕や脚部の装甲など要所要所を抑えたブラック。
アイバイザーを筆頭に、機体各所のセンサーに煌々と灯るグリーン。
それが私のＭＳだった。
「皇女。紹介しよう。君の親衛隊の隊長を勤めるエミール・アルガード中佐だ」
「お目にかかれて光栄です」
呆然とＭＳを見上げていた私の脇に、クルーゼがいつの間にか男を連れて立っていた。
私の親衛隊（名目上は）の隊長を勤めるという酔狂な男。
私は嘲笑と皮肉をこめて挨拶してやろうと思ったが、出来なかった。
その男は私を凍らせるのに十分な迫力と存在感を持っていたから。
彼は本物の軍人だった。
私がＡＡやブルーコスモスで見てきた軍人とは全く違う。
もちろんキラやサイ達、捕虜となったディアッカとかいうパイロットと比べることも出来ない。
彼は任務を与えられたら、全力を尽くして遣り遂げるだろう。それを感じた。
アルカードの第一印象は、強い意志を持ったドラキュラ伯爵、といった感じだった。
力強い握手をされる。冷たそうな大きな手の印象とは裏腹に、非常に暖かかった。
続いて、隊員達を紹介される。年長者はアルカードのみで、他は私と同年代の少年達がほとんどだった。
それでも、ＭＳに乗る基礎訓練は相当期間受けていたのだという。ＭＳ戦の経験とデータの蓄積が、
大きく水を開けられていたＭＳの差を完全に埋めようとしていた。だから、彼らも戦える。
彼らは私をブルーコスモスの象徴と信じ、この部隊を自ら志願したのだった。
彼らの想いがいたたまれずに。彼らからキラを思い出して、私は顔を伏せた。
- 250 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/11 投稿日： 2003/05/26(月) 08:12
- それから一ヶ月。ＬＦＡは訓練に訓練を重ねていた。
配備された新型ＭＳ…ライデンと呼ばれる…はかなり癖のある機体で、若いパイロット
達はようやくこの機体を手足のように扱えるようになりつつあった。
そして、何の因果か、この私も戦闘訓練に参加させられていた。
クルーゼが語ったところによれば、私はお飾りに過ぎず、私がＭＳに乗るのは式典や訓
練の視察ぐらいの筈だった。ところが、アルカードに連れられるまま、私は暇さえあれば
ＭＳに乗せられ、振り回されることになった。
おりしもザフトとブルーコスモスの衝突は間近に迫っており、もう私がＴＶに出る機会
も少なくなっていた。放送そのものは続けられているが、90パーセントは以前の録画。私
は暇になり、結果、私の居場所はＭＳのコクピットになりつつあった。
ある日、訓練で疲れ果てた私は自室に戻り、ＴＶをなんとなくつけた。放送中の番組は
ブルーコスモスのプロパガンダで、なんと私の戦闘訓練の様子が放映されていた。
『アルスター皇女も自ら出陣する。それほど、ブルーコスモスの決意は固いのだ』という
ことを言っていたような気がする。得意の自嘲すらも出ず、疲れきっていた私はベッドに
倒れ込んだ。
- 251 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/12 投稿日： 2003/05/26(月) 08:14
- 『ついに雌雄を決する時が来ました。自らを人以外のモノへと変貌させ、
この青き大地を犯そうとするモノに我々は屈してはなりません。
母なる大地を守るため、人としての尊厳を守るため、私達の命を捧げましょう』
モニターの中で、真紅のＭＳを前に、私は髪を振り乱して演説していた。
私の演説が終わると、群集から無数の拍手と「コーディネイターを殺せ！」
「ブルーコスモス万歳！」などとシュプヒレコールが聞える。
中には「皇女万歳！！」などと叫ぶ者もいたが。
ついにブルーコスモスとザフトは交戦状態に入った。
この映像は、昨日のモノ。モニターに流れる映像は繰り返される宣戦布告のニュース映像だ。
こうして、歴史はつくられていくのだ。後世から、私のこの演説はどう評価されるのか。
少なくとも、人類の希望となった…とは言われないだろう。
『アルスター、何をしている。機動が遅れているぞ』
「は、はい！！」
ニュースを閉じ、私は目の前の訓練に集中した。
アルカードは私を皇女だからと言って、一切手加減しなかった。
彼は教官であり、私は生徒なのだから。
- 252 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/13 投稿日： 2003/05/26(月) 08:16
- 私に求められるものは、万が一私が戦闘に巻き込まれた場合、いかに周囲の邪魔になら
ず逃げ切るか、だった。仮想敵（アグレッサー）のライデンが包囲するように展開し、私
に向けて模擬弾を発砲してくる。
私は回避しつつ、アルカード中佐に護衛されながら安全地帯を目指すのだ。
もちろん、排除できるならば私も攻撃する。
当初、私はアルカードに食って掛かった。お飾りに過ぎない私が、なぜこの訓練に付き
合わなくてはならないのかと。
アルカードは丁寧に、だがきっぱりと
「貴方は我々の隊長です。指揮官が安全な後方に腰を下ろし、訓練にも参加しないようで
は部下に示しがつきません」「でも…」「それに、皇女。貴方が最前線に立つという事態が、
決して来ないと断言できますか？」
「あっ……」
「我々は貴方の剣です。ですが、我々が盾となって、貴方を直接守らねばならない状況が
来るかもしれません。そうなった時、貴方と我々が作戦行動をとれないようでは、僭越な
がら到底守りきれるとは思いません」
暗に私が足手まといになることをアルカードは指摘していた。
だから、そうならない様、せめて彼らと共に行動出来るだけの腕はつけて欲しいと言っ
ているのだ。
「…わかったわ。でもね、アルカード中佐」
私の言葉に、アルカードはちょっと身じろぎしたようだった。
「どうせなら私をエースに育てなさいよ」
「……わかりもうした」
彼は苦笑していた。私は初めて彼が笑うところを見た。
- 253 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/14 投稿日： 2003/05/26(月) 08:17
- フレイ・アルスター皇女。ブルーコスモスの象徴。
私の身に何かがあれば、この組織は回復不能な程の打撃をうけるだろう。
ブルーコスモスは利害、打算、思惑、憎悪、個人がそれぞれ抱える一つ一つの想いが、
私という旗の元に「打倒コーディネイター」という目的に集約されている。
なんという脆い、危うい集団だろうか。
私はそれが嫌で、それでもブルーコスモスに縋らざるをえない自分が嫌で、ＭＳの訓練に没頭した。
- 254 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/15 投稿日： 2003/05/26(月) 08:19
- 開戦から３週間。ザフトは地球から駆逐され、月面での決戦が始まろうとしていた。
ＬＦＡも戦線に投入され、大戦果をあげると同時に、何人かの戦死者も出した。
報告を受け取り、私は込上げる涙を必死で抑えた。私の名の元に、未来ある若者が死んだのだ。
私は遺族への補償を指示し、沈痛な表情で政治家と語り（ブルーコスモスへの支持を広げるためだ）、部屋に戻った。
そこで初めて泣いた。
地上戦が一段落すると、ＬＦＡが私の元に帰還して来た。
皇女としての私は泣いてもいいのかもしれない。
だが、指揮官としての私は泣いてはいけないのだ。まして、個人としての私に泣く資格は無い。
見知った顔が欠け、補充兵と思われる新顔がそこを埋めていた。
初めて会った時は幼さを残していた少年達も、今では兵士の顔になっていた。
彼らは戦場で何を見、何を体験してきたのだろうか。
私の戦場体験とは異なるだろう。私のＡＡでの思い出といえば、揺れる艦、
遠くから響いて来る爆発の振動、小刻みに身体を揺らすエンジンの駆動音。
私は敵機を見たこともなければ、自分に向けて弾が飛んでくる感覚も味わったことがない。
それを体験したキラ、トールは死んでしまった。
ウマが合わなかった金髪の少女は、オーブで何をしているのだろうか。
私はＡＡのクルーに、無性に会いたくなった。
- 255 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 09:28
- >>246-254
乙！続編来ましたねー
おそらく全体の構想の中ではまだ「起」→「承」の部分なんでしょうけど
運命に流されるだけだった少女が、現実を見つめ歩き出すサマが伝わってきてｽｺﾞｸ（・∀・）ｲｲ!!
こりゃ続きを期待しないほうがムリってことで、待ってますよ〜( ´ｰ`)ノ
にしても本編みたいに、ここのSSの考察をしたくなるのは俺だけ？w
- 256 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 12:49
- >231-240,>246-254
おつふれ〜。
いやぁ、表向きには利用されてるだけの少女が、
内面では深く考えるようになって、
現実を見つめようとしているのが伝わってきていいですね。
AA時代を懐かしんだり、カガリやラクスを思い出したりとか、
キラの死に様を考えたりとか、今の彼女は辛くて出来なさそうだから。
しかし、フレイ様が覚醒（？）すればする程現実とのギャップに
苦しまなくてはいけないわけで。
彼女がそこからどう成長するのか、楽しみにしてます。
- 257 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/16 投稿日： 2003/05/26(月) 17:05
- 本スレに名前消し忘れてカキコして鬱デス。
続き。
私は再び宇宙に上がった。
ザフトの本拠地、プラント群を攻撃するためには、橋頭堡として月衛星軌道と月面都市
を確保しなければならない。その督戦の為だった。
月での戦闘が始まった。性能的に劣るベルグドルが主力とはいえ、訓練も重ねてきた兵
士達の錬度は高く、士気も高い。それにクルーゼの切り札というべき三機のガンダムの活
躍もあって、月面からもザフトは駆逐されつつあった。
「皇女。本気ですか。今行く必要はないと思いますが」
「今こそ、その機会です。これを逃していつ出撃するのですか」
クルーゼや側近達をふりきって、私は待機するＬＦＡの元に移動した。
強引な出撃には訳があった。戦局はブルーコスモスの勝ちで動かない。ならば、ＭＳに
よる初陣を体験しておきたかったのである。ぶっつけ本番がいきなり激戦より、勝ち戦の、
いわば楽な戦の方がいいと思ったからだ。
私はなんとなく予感していた。いずれ、私自らが戦場の矢面に身をさらす時が来るので
あろうことを。ブルーコスモスが歴史の彼方へ消えて行く日のことを。
アルカードは何も言わなかった。ただ、愛機に乗り込もうとする私の肩を軽くたたいて
くれた。それだけで十分だった。
- 258 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/17 投稿日： 2003/05/26(月) 17:06
- 「フレイ・アルスター、ライデン231号機、出ます！！」
加速の猛烈なＧに押さえつけられた瞬間には、私の身体は宇宙空間の中を漂っていた。
前方には、既にＬＦＡの全機ライデン18機が見事なフォーメーションを取っている。
これは訓練どおり。訓練どおりやればいのよ。
高鳴る鼓動を押さえつけながら、私は機器を操作し続けた。警告音。後方から機体が接
近中だ。
口から飛び出しそうになった心臓を抑えれば、それはアルカードのライデンだった。彼
にフォローされがら、私は月面への降下シーケンスに入る。
ザフトにとって、それは寝耳に水だったはずだ。
ブルーコスモスの攻勢に対し、ザフトの戦力はそれを支えきれなくなっていた。それに、
ここに着ての予備兵力投入。しかも、死神黒騎士の異名を誇るＬＦＡである（フレイ以外
のライデンは全機、漆黒に塗装されていたからだ）。
普通だったら、ザフト軍は絶望に駆られ、逃亡を選んだかもしれない。ところが、逆に
彼らは奮い立った。ＬＦＡの中に、真紅のライデンが守られるように降下したからだ。
ブルーコスモスの象徴、フレイ･アルスターが紅いＭＳに搭乗していることは広く知られ
ていた。いわば、敵の皇帝機が、一発逆転のチャンスが、向こうからやってきたわけであ
る。ザフトが色めきたつのも当然と言えよう。
また、ブルーコスモスがコーディネイターの捕虜をとらなかったことも影響した。その
場で処刑されてしまうことが多かったのだから。ブルーコスモスに対する怒りと憎しみが
ついに爆発したのである
- 259 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/18 投稿日： 2003/05/26(月) 17:07
- 『231、ザフト全軍に動き！お前めがけて移動してきているぞ！』
アルカードから突然の警報が入った。
「な、なによ、それ！！」
理不尽じゃない！私はただ、かるく初陣を飾りたかっただけなのに！！
後から考えれば可笑しい考えなのだが、私は心底そう思った。その間にも、ほぼ全ての
ザフトＭＳが戦線を捨て、私を目指してスピードを上げつつあった。
「第一中隊右翼、第二中隊左翼、俺とシュトライバーが皇女を護る。全軍、戦闘開始」
たちまち私の周辺はレーザーとビームが交錯する最大の激戦地となった。
私は、状況の変化についてゆけず、呆然と突っ立っていた。
残敵の掃討戦のはずが、なぜ天王山になってしまったのだろう？
- 260 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/19 投稿日： 2003/05/26(月) 17:09
- 月面での戦闘は、地球でのそれとは違って、ひどく違和感があった。
音が無いからだ。
宇宙空間の戦闘も基本的には無音で進行するのだが、こちらは完全な空間戦闘だから、
地球のそれと違っていて当たり前。ところが、月面では微弱な重力ながらも脚をつけて戦
うわけだから、どうしても地上を連想してしまう。
一方、音は無いわけなのだから、破片を撒き散らして爆発するＭＳ、目標を見失って飛
び交うミサイル、殺意を実体化したビーム、ビームサーベルに切り落とされて月面に突き
刺さるＭＳの腕や頭部がやけに幻想的で非現実的な感覚を呼び起こす。
『231、ついてこい』
「りょ、了解！」
青く輝くアルカードのライデンに先導されて、私は後方へ下がり始める。制空権は完全
にブルーコスモスによって掌握され、降下する戦艦や揚陸艇の姿が私からもはっきりみえ
た。今の一時的な混戦を抜け出せば、私達の勝利は揺るがない。
私が死ななければ。
ザフトのＭＳは、狂信的に攻撃してきた。なんとしてもＬＦＡの戦線を突破し、私に一
太刀あびせようとしていた。だが、その想いは適わず、レーザーの十時砲火やビームキャ
ノンの集中砲撃によって機体を砕かれ、憎悪と無念を月の砂に残して散ってゆく。チーム
として戦うＬＦＡに、コーディネイターとしての個々の能力に頼ったザフト軍は敵ではな
かった。
玉砕に近いザフトの攻撃を横目に、私の心は乾いていた。
この私を殺すために、よく頑張るわね、というのが本音だった。
まだ、私は戦場というものを理解していなかったのだ。
- 261 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/20 投稿日： 2003/05/26(月) 17:11
- 「231、止まれ」「え？」
急に私の前方を進んでいたアルカードが停止した。私も機体に制動をかけ、
彼の右後方にピタリとあわせた。訓練の成果である。
「前方にザフトのＭＳ、六機。ジンが三、ザウートの宇宙仕様が三機か」
「中佐、後方にもＭＳ、ジン三機。挟撃されました！」
中佐の副官であるシュトライバー軍曹が鋭く注意した。
アルカードの決断は早かった。
「332（シュトライバー）、お前は後方三機を抑えろ。撃破は考えず、牽制にとどめろ。
231、準備はいいな」
頷いた瞬間には、私達は機体を発進させていた。それを見た前方のザフトＭＳは二機ずつの小隊にわかれ
（便宜上、フレイから向かって右よりＡ・Ｂ・Ｃ小隊と呼称）、それぞれが独立した運動をはじめた。
ＡとＣ小隊が私達の側面を付こうとし、Ｂ小隊が正面から私達に挑みかかる。
- 262 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/21 投稿日： 2003/05/26(月) 17:15
- 「奴ら、何を考えている？」
アルカードが疑問を呈した。ザフトは、愚かにもジンとザウートをペアとして分離させたのだ。
たちまち機動力の差が現れ、ザウートが後方に取り残される。
「231、正面の奴らの間隙にレーザー！我々との違いを教育してやれ」「はい！！」
私は初めて、ＭＳに対して発砲した。人に対しては二度目。
ディアッカとかいうコーディネイターの捕虜に拳銃を向けたことを思い出す。
コクピットに軽い金属音が響き、ライデンの肩が変形。レーザー照射機が現れた。
それは私の意志のままに光を収束させ、膨大な奔流となって溢れだした。
外れた。
もともと当てようとしたわけではないが、戦艦の主砲級のレーザーが至近距離を通過し
たことでＢ小隊のジンはパニックになった。それを逃さずアルカードがレーザー照射、
ジンは砕け散った。続いてモタモタと追従していたザウートにも照射。モニターの中で奔流
が走り、爆発がおこった。
「231、反転してＡ小隊を抑えろ。俺はＣ小隊を片付けてから援護する。それまで持たせろ」
「りょ、了解」
視界の片隅に反転するアルカード機を捕らえつつ、私は不安になった。
正面モニターには徐々に大きくなるジンの機影が映し出されている。
ナチュラルで、戦闘経験がなくて、１：２の状況で勝てるのか。
「なるように、なるしかないわ」
私は乾いた唇を舐め、コントロールスティックを握り締めた。
- 263 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/22 投稿日： 2003/05/26(月) 17:17
- 予想通りというべきか、Ａ小隊のジンとザウートは私の遥か手前で二手に分かれた。
徹底して左右挟撃のセオリーに従っている。
（違う機種同士で組んでいるのに…）
私は敵に同情した。戦術訓練も満足に出来ていないではないか。ここで私に倒されなく
ても、彼らはいずれ散ることになるだろう。
（…私が同情している？敵に？私からキラとパパを奪った、あいつらに？）
私は左側面に廻り込もうとしているジンに機体をよせていった。そのパイロットは新米
だったのか、停止すると、遠距離にも関わらずビームライフルによる攻撃を仕掛けてきた。
「あっ、きゃああ！！」
初めて見る敵の射撃。私を殺そうとする敵の殺意。私は思わず目を瞑ってしまった。
これが戦闘機だったり、並みのＭＳだったら、この次点で私は死んでいたはずだ。
だが、ライデンの重装甲は、ビームをあっさりと弾いた。
軽度の被弾を示す小さな警告音が私を現実に引き戻した。
体中から溢れだしていた冷や汗が嘘のように引いて行く。
- 264 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/23 投稿日： 2003/05/26(月) 17:21
- コクピット内に電子音が響き、ジンをロックしたことを告げる。
私の腕と、機体のＦＣＳとプログラムがジンを捕らえた。レーザーに貫かれたジンは機体を真っ二つにされ、月面に崩れ落ちた。
爆発はしなかったが、コクピットとパイロットは完全に焼き尽くされて消滅したはずだ。
憎きコーディネイターを殺したはずなのに。この瞬間を切望していた筈なのに。
私は何の感銘も覚えなかった。むしろ、ＭＳを一機落した、そのことの方が嬉しかった。
予想とはことなる感触を奇妙に思いながら、残るザウートを片付けるべく、私はライデンを走らせる。
ザウートの砲撃を、回避プログラムのサポートを受けながら、私は最小限の機動でかわしていった。
素早く側面をとると、二股のビーム・ランチャーを構え、ザウートに突きつける。
トリガーを引く、発砲、離脱、そして爆発。
私の背後でザウートだった破片が月面にばら撒かれていた。
- 265 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/24 投稿日： 2003/05/26(月) 17:32
- あの後、私は残敵を一蹴したアルカードとシュトライバーに護衛されて帰路についた。
帰投した私を待っていたものは、フラッシュとリポーターと撮影クルーの大群だった。
クルーゼまでもが直々に格納庫まで出向いていた。
疲労困憊、彼らをライデンで押しのけてやりたい気分だったが、これでも皇女なのだ。
「初撃墜の心境は」とか、「これが戦いが歴史を変えますか？」とか、愚劣な質問ばかり。
精一杯の笑顔で質問にこたえてやった。本当は殴りつけるか喚き散らしたかったのに。
私も大人になったのだと妙に感心した。
Ｐ・Ｋ・Ｄをようやく振り切って、私はパイロットの控え室に転がり込んだ。ずいぶん
時間がたったのか、私に気をつかったのか、そこには誰もいなかった。
「うっ……」
急に嘔吐感が込上げてロッカーに手を預け、私はうずくまった。
出撃前に食事はとっていないから、胃から逆流するのは胃液だけだ。
胃液独特の臭いが更に吐き気を催し、控え室の空気を染めていく。
戦闘中の恐怖が。自分が死ぬかもしれないという恐怖が。人を殺したという事実が。
戦場では感じなかった全ての恐怖が、突然私を襲った。涙が止まらず、何度も何度も戦慄の
衝動が身体の芯から沸きあがって走り抜け、同時に今自分が生きていることが嬉しくて仕方が無かった。
「大丈夫か？」
渋い声に私は振り返った。
ヘルメットを抱えたままのアルカード中佐が静かに佇んでいた。
- 266 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/作者 投稿日： 2003/05/26(月) 17:37
- まだ半分です。長いな……
結局、本編のフレイ様は自分のやることが分かって無いんだよね。
最前線で戦ってれば、「とにかく戦うだけさ」と言えるけど、
雑務じゃどうしようもないし。
飾りとはいえ「皇女」になったことで視野が広がるんじゃないかと妄想中。
その妄想がこれなんだが（藁）
- 267 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 17:48
- >>266ｷﾀ━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━ !!!!!
朝と午後分を一気に読みました。
素直に面白いです。
あと半分ですか？読んでる方としては3分の1消化くらいかなと感じました。
今後の「皇女」フレイたまの活躍に期待しております。
- 268 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 17:52
- いいですねぇ。
特に、戦争で人を殺したときに差別意識を感じなかったところとか、いいです。
- 269 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 17:58
- >>266
すごい面白いです。
続き楽しみに待ってます。
戦うフレイたんｶｺｲｲなぁ(*´д｀*)ﾊｧﾊｧ
- 270 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 19:01
- >>266
トンビが鷹を産んだような心境で見守っております。
どうかあと半分、是非頑張ってください。
「皇女」という名称が馴染んでるのが複雑だ・・・
- 271 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 20:27
- 土曜からの大量投下から考えるに、ＳＳ書いても投下せずに死蔵してる人が結構いると見た。
どんどん投下して欲しいですね。
- 272 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 20:32
- すぐ投下したいけど、修正と推敲の必要もあるので。
- 273 名前： 1/6 これはSSと呼んでいいものなのか 投稿日： 2003/05/26(月) 21:46
- 〜某日、某所にて〜
フレイ「・・・というわけで今日の定例会はこれにて終了します。
何か質問は？」
遺作「はい！(ﾟ/дﾟ)/」
フレイ「はい腰抜け君！」
遺作「腰抜け言うな！ 俺はいつになったらストライクに勝てますか？
というかストライクの戦場復帰はいつですか？」
フレイ「復帰予定日は回収担当のオーブの姫様にでも聞きなさい。
と言っても最近連絡取れないのよね・・・忙しいのかしら？
勝利に関しては当局は一切助言できません。他には？」
遺作「はい！(ﾟ/дﾟ)/」
フレイ「はい傷物君！」
遺作「傷物言うな！！ 痔の野郎はいつになったら戻ってきますか？
最近奴の炒飯が妙に恋しいです。というより一人が寂しいです・・・」
フレイ「そんなに会いたいなら脱走の手伝いでもしてあげたら？
今頃牢屋で呑気に踊ってるかもね。他には？」
遺作「はい！(ﾟ/дﾟ)/」
フレイ「はい負け犬君！」
遺作「負け犬言うな！！！ 今現在二人なのはなんとかならないでしょうか？」
フレイ「黙れ！！！ヽ||#｀Д´||;y=ｰ（ﾟ/дﾟ）･∵. ﾀｰﾝ」
・・・イザーク・ジュール 享年17歳。安らかに眠れ・・・」
遺作「・・・勝、手に・・・頃・・・すな・・・」
フレイ「ったく使えない連中ばっかり・・・もう今日は解散、解散！！
それとアンタの上司の仮面に言っときなさい！
『拉致するのは勝手だけど、何か変なことしたら、
仮面の下と心の奥底に一生消えない傷付けてやる』って！！
あ〜もう怒ったらシャワー浴びたくなっちゃった。パックもついでにしちゃおっと♪」
遺作「(・・・痔・・・俺・・・今本気で平和が欲しいよ・・・)」
- 274 名前： 2/6 仮に呼べても投下していいものなのか 投稿日： 2003/05/26(月) 21:46
- 〜同日、アークエンジェル内にて〜
痔「・・・ここを・・・もっとこう・・・だったかな・・・？
駄目だ・・・な〜んか違う。もうちょっと作戦開始が遅かったらちゃんと習えたのに・・・
え〜い、そんなこと言ってても何も進まない！練習練習！！」
�澄�(・・・何やってるんだろう・・・踊ってる・・・のかしら？不思議な動き・・・)」
痔「よっ・・・ほっ・・・ｸﾞｩﾚｲﾄｯ！！」
�澄�(どうしよう・・・食事持ってきたのに・・・割って入るタイミングが・・・)」
痔「そいやっ・・・あらよっ・・・ﾋﾞ〜ﾝｺﾞｩ！！」
�澄�(早く終わらないかな・・・時間が・・・また今日も食事抜きかなぁ、私・・・v b T-Tﾉﾚ )」
〜同日、オーブにて〜
カガリ「なーキサカー、ストライク乗っていいー？」
キサカ「駄目です。それに今は帝王学の時間です。」
カガリ「だってこれ退屈なんだよなー・・・なーアストレイでもいいからー。」
キサカ「駄目です！！全くもう少しオーブを担う者としての自覚を・・・」
カガリ「あーもう説教は聞き飽きた！耳タコ！！ストライク見てくる！！」
キサカ「あ、駄目ですってば！！お父様に怒られるのは私なんですから！！
それにストライクはOSの詰め替えが完了してないから
姫様では動かすことすらままならないと・・・」
カガリ「言ったなー、今に見てろ！！キラ以上に操縦できるようになってやるからな！！」
キサカ「(・・・煽ってしまった・・・不覚)」
- 275 名前： 3/6 まあ職人さんの作品が 投稿日： 2003/05/26(月) 21:46
- フレイ「・・・はぁ〜・・・でも確かに遺作の言う通り、２人じゃ活動しようがないし・・・
新規メンバー募ろうにも・・・はぅ。・・・よし！！」
〜数日後、アークエンジェル内にて〜
痔「あ〜退屈だな〜・・・ん？この匂い・・・炒飯か？」
�澄嵎疥困機爾鵝⊃�事持ってきたよー。今日は早く食べちゃってねー。」
痔「ﾋﾞﾝｺﾞｩ！料理人としての嗅覚はまだ鈍ってなかったようだぜ！！」
�澄�(料理人・・・？？？)あ、あとこれ。手紙が届いてたよ、ハイ。」
痔「THANK YOU！・・・ってフレイたんから？？」
〜同日、オーブにて〜
カガリ「ﾙﾚ!!*-ω-ﾘ zzz・・・見た・・・か・・・私だって・・・」
キサカ「講義中に寝ないでください！！！」
カガリ「Σﾙﾚ!!；゜Д゜ﾘ ﾊｯ！ 寝、寝てなんかないぞ！！」
キサカ「・・・もういいです。それと先ほどお手紙が届きましたが時間が終わるまｄ」
カガリ「今見せろ！今、今！！ﾙﾚ!!*゜∀゜ﾘ」
キサカ「・・・いい加減勉学もキチンとなさるように。こちらです。」
カガリ「はいはい♪(←聞いちゃいない) ・・・フレイから？？」
『
─┼─
＿!＿|＿/__ | ＼
／|＼ | |
／ | ＼ レ
from フレイ・アルスター 』
,""⌒` 、 /巛 》ヽ,
.ルﾊﾉﾙﾉﾉ〉 ヾﾉ"~＾ヽ,＾
ﾙﾚ!；゜Д゜ﾘ 『・・・・・・いつ、どこに・・・・・・？？？』 （´Д｀；ﾘ
- 276 名前： 4/6 出来上がるまでのつなぎにでも 投稿日： 2003/05/26(月) 21:47
- 〜更に数日後、某所にて〜
遺作「・・・虚しい・・・何故俺は孤独なんだ・・・
それもこれも全部ストライクのせいだ・・・！！(＋激しくやつあたり＋)」
〜痔入室
痔「だ〜れも知らない知られちゃいけ〜ない〜♪ｴﾙｽﾏﾝが誰なのか〜♪
・・・イ、イザリンじゃないか！会いたかったぜｸﾞｩﾚｲﾄ！！( T∀T)」
遺作「な、なんだお前！いきなり現れて泣くな抱きつくな！！
俺の知らない間に勝手に捕虜になりやがって・・・この腰抜けがぁぁぁぁ！！！( T/ДT)ｹﾞｼｯｹﾞｼｯ」
痔「イ、イザリン、泣くのか蹴るのかどっちかにしてくれ！！」
〜カガリ入室
カガリ「・・・来てみたはいいが・・・お取り込み中なら帰るか(ｽﾀｽﾀ」
痔「カガリ〜ン！！会いたかったよ〜！！！(T∀T )よしよししてくれ〜！！」
カガリ「・・・ふざけたことぬかすのはその口か？ﾙﾚ!#゜Д゜ﾘ ﾁｮｳｼﾆﾉﾙﾅ！！」
遺作「貴様！さっきまで俺に抱きついてたくせに何を・・・」
痔「イザリン誤解招く言い方するなって！！」
カガリ「・・・すまん、やっぱり私は帰らせてもらう・・・」
痔「ま、待ってよカガリン！ほらイザリンも止めて！」
遺作「知るか！！・・・というか・・・お前ら何で急に揃ってやって来たんだ・・・？」
〜フレイ入室
フレイ「お〜みんな揃ってるわね。ご苦労ご苦労♪」
痔「フレイた〜ん！俺、頑張って脱走してきたよ〜！！( T∀T)想いで守ってくれ！！」
フレイ「戦って戦って氏ぬ覚悟があるならねヽ|| ｀∀´||」
遺作「(こいつの精神も結構追い詰められてるんだろうか・・・来る奴来る奴に泣きついて・・・
確か『ナチュラルの女に殺されそうになった』とか聞いたが・・・)」
- 277 名前： 5/6 なれればいいかなー・・・といった感じ 投稿日： 2003/05/26(月) 21:47
- カガリ「おいフレイ！何なんだよだあの手紙！
『来い』ったって、いつ、どこにかくらい書かないか、普通！？」
フレイ「フフフ・・・そう、私は賭けに勝ったのよ！！」
３人『・・・はい？？？』
フレイ「わからない？今この４人がここに揃ってるのが何よりの証拠！
そう・・・私は手紙にはただ『来い』としか書かなかった・・・
でもあなた達は今この時間、この場所に揃ってる・・・
つまり、私達は切っても切れない縁の元に生まれた存在だったということよ！！！」
痔「そ・・・そんなｸﾞｩﾚｲﾄな人間だったんだ、俺達！！！」
カガリ「・・・感動するところか？何か滅茶苦茶な論述展開だし・・・
というか、私はたまたま今日が暇だっただけだぞ？」
フレイ「あ〜もううるさいうるさい！！とにかくそうなの！そうといったらそう！！」
遺作「はい先生！(ﾟ/дﾟ)/ 俺の所には手紙すら来なかったんですが！！」
フレイ「誰が先生よ！！！ヽ||#｀Д´||;y=ｰ（ﾟ/дﾟ）･∵. ﾀｰﾝ
・・・というか、よく来たわね、アンタ・・・感心したわ。」
遺作「・・・言、葉・・・と行動が・・・合っ、てな・・・」
痔「イザリーン！！お前のことは一生忘れないよーーーー！！」
カガリ「何か・・・変わったな、痔も遺作も。
で、結局召集して何する気だ？」
フレイ「何って・・・召集しただけよ。確かめたかっただけ。もう帰ってもいいわよ。」
カガリ「お前は・・・相変わらずだな、その性格・・・ﾙﾚ!；-Д-ﾘ ｵｺﾙｷﾘｮｸﾓﾅｲ」
痔「そういえば俺、どこに帰ろう・・・脱走って捕まったら頃されるんじゃ・・・(((；TДT))))」
遺作「(・・・ほったらかし・・・ですか・・・俺・・・三途の川・・・)」
- 278 名前： 6/6 職人さん達、頑張ってください 投稿日： 2003/05/26(月) 21:48
- 〜後日談〜
痔「あれは〜誰だ！誰だ！誰だ！あれは〜ｴﾙｽ！ｴﾙｽﾏ〜ﾝ！ｴﾙｽﾏ〜ﾝ！(ｺﾞｼｺﾞｼ」
兄貴「えらいご機嫌だな・・・(ｷｭｯｷｭｯ」
痔「まぁねっ♪久しぶりに”仲間”とも会えたし・・・
というか普通、捕虜にトイレ掃除なんてさせるか？連合、というよりここの艦長って変わってのるな(ｺﾞｼｺﾞｼ｣
兄貴「縛り首にでもされたいならリクエストしてきなよ。しっかし何で手助けしたのバレたんだろう？(ｷｭｯｷｭｯ｣
･･････痔脱走の数時間後、マリュー・ラミアス少佐の部屋に
一通の匿名の投書 〜ムゥ・ラ・フラガ少佐が痔から”雑誌”数冊を受け取っている写真封入〜
が届けられていたことを２人は知らない･･････
エリカ「大丈夫ですか？いきなりストライクに乗るなんて・・・せめてアストレイになさっては」
カガリ「いや、こっちでいい。私だって”アイツら”に負けてられないからな！！」
エリカ「まったく言い出したら聞かないんですから・・・
まあその元気さが姫様の長所ですけどね。同時に短所でもあるのが・・・」
カガリ「姫様って言うなー！！！」
･･････この数時間後、学問をほったらかして外出したことでキサカにお説教を受け、
ストライクに搭乗したことでウズミに叱られることをカガリは知らない･･････
遺作「失礼致します。イザーク・ジュール、入ります。」
仮面「何かあったのか？イザーク」
遺作「フレイ・アルスター嬢からの伝言を請け賜っております。
『拉致するのは勝手だけど、何か変なことしたら、仮面の下と心の奥底に一生消えない傷付けてやる』
・・・以上です。」
仮面「そ、そうか・・・わかった、下がってくれたまえ。」
遺作「では失礼致しました・・・(どうだ、見たか”お前ら”！！俺は腰抜けじゃないぞ！！！)」
･･････この数日後、仮面に『心神耗弱による精神病』と認定され、
強制入院の処置を取られてしまうことを遺作は知らない･･････
フレイ「・・・”みんな”・・・元気そうだったなぁ・・・よし、私も頑張るかなっ！！」
へ( ﾟ∋ﾟ)へ「ﾄﾘｨ・・・(仕事はちゃんとしような。それと、たまには俺を磨いてくれ。)」
- 279 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 21:57
- 懐かしいね、愛され隊。遺作と痔悪化に藁たよ。
- 280 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 22:00
- 乙！
て言うか、貴方充分に職人さんですｗ
笑わせてもらいました。また書いてほしいなぁ。
- 281 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 22:25
- 愛され隊、いいな〜。
ほのぼのしてて、和むよ。
- 282 名前： ヘリオポリスの学園祭 投稿日： 2003/05/26(月) 22:51
- カガリが萌葱色のドレスで登場すると、大きなざわめきが起こった。
転校したてで初めて見る人が多い為、予想もしなかったと言う驚きがあったのかも知れない。
「うひゃ〜、凄いな…」思わずそんな声が上がったのも無理はない。
キラもトールも、一瞬呆気に取られて見とれてしまい、互いに気づかれまいと慌てた。
出場者が立つステージ上は、さながら色とりどりの華が咲く園になっていた。
そして、その花園の中にフレイが加わったとき、彩りが一際明るくなった。
背中の大きく開いたドレス姿に、男子からため息と口笛が飛ぶ。
フレイが着ているワインレッドのドレスが、紅い光を放っているように煌めいて見える。
アスランがちらりと隣のサイを見ると、サイは微笑を浮かべて目を細めていた。
（まるで親御さんのようだな）とアスランは思ったが、それはアスランの思い違いだろう。
サイはフレイの中に女性を見ていたのだから…
一方、キラはフレイの姿を目にした瞬間、生まれて初めての感情に捕らわれていた。
動悸が激しくなり、頬に血が昇った。トールが目ざとく「どうしたキラ！？ははぁ、さては…」と囃したてる。
しかし、そんな言葉もキラの耳には入っていないようだった。視線はステージに集中していた。
トールも真剣なキラの表情に少し驚いて、それ以上キラをからかう事が出来なかった。
- 283 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 22:53
- 一日1文になってるが…気長にやるか…
- 284 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 23:23
- がんがれ！ トール！(´Д⊂ヽ
- 285 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 23:28
- 乙フレです！
キラ、フラグ立ちですか？
これからの展開が楽しみです。
･･･そろそろナタルＶＳマリュー？
- 286 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/26(月) 23:39
- 乙です！
いやぁ、ここでキラフレフラグが来るとは思わなかった。
がんばれ、サイ！負けるなサイ！！(´Д⊂ヽ
- 287 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/作者 投稿日： 2003/05/27(火) 00:55
- 何とか終わりが見えてきた今日この頃。やっぱり1/3だったｗ。
今回の投下がフレイ様一番重要な転機かも。うまく書けたかは正直微妙です。
- 288 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/27(火) 00:57
- なにが凄いって、筆力や描写力もそうだけど
そのモチベーションが凄い。俺は最近凹んでてとても書けないよ・・・
- 289 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/25 投稿日： 2003/05/27(火) 01:32
- ちとトラブルがって遅れたけど、再開。
「そのままでいい。初出撃は誰でもそうなる」
立ち上がろうとする私を座らせ、アルカードは私の傍に腰を下ろした。
私はよだれが白く糸を引いているのに気付き、赤面して慌てて袖で拭いた。
アルカードは何も言わず、黙って自分の手を見つめていた。
どうしてだろう。なぜだろう。
先ほどまでの恐怖は過ぎ去り、私の中に疑問が生まれた。ブルーコスモスと言えば、
コーディネイターへの無慈悲な仕打ち、偏見がいわば「売り」とも言えるのに、アルカード
はそういうことを一切言わない。態度にも出さない。隊長の薫陶のおかげか、
ＬＦＡは『ブルーコスモスの思想的中核』というより、『ライデンを擁した最強の精鋭部隊』
としての評判が一般的だった。
また、『皇女』として下にも付かない扱いだった私を、出会った時から一介の訓練生とし
て見ていたように思える。
「どうして……」
「………」
「どうして、私を、フレイ・アルスターとして見てくれるの？」
私はフレイとして、一人の少女として、アルカードを見つめた。
- 290 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/26 投稿日： 2003/05/27(火) 01:35
- アルカードは懐から煙草を取り出すと、自分で紫煙をくゆらせた。
健康に悪いと目の仇にされる煙草だが、兵士達の間では絶対に欠かせないアイテムだっ
た。彼も、ＬＦＡも、そして連合も例外ではなかった。
「君の立場が何であろうと、私には関係がない」
彼はいつもの口調で語り出した。
「もし私が君の部隊に配属されなかったとしたら、私は君を皇女として敬った。
しかし、君は我が部隊の隊長でもあり、同時にＭＳ乗りでもある。
皇女としての君か、チームの一員としての君か。
どちらを選ぶかと言えば、答えは決まっている」
私は彫りの深い横顔を見上げた。
ブルーコスモスの誰もが、連合の上層部が、アークエンジェルのクルーが、
肩書きや立場として私を扱っていたのに、この男は最初から私を「仲間」として見ていたのだ。
「本当に、そうなの？」
「もちろんだ、フレイ・アルスター。我々は皇女としての君ではなく、仲間としての君を護る。
その為にここにいる……」
「……なぜ、ブルーコスモスに入ったの？」
「特に理由はない。私が世話になった上官がブルーコスモスに入った時、私も誘われた。
断る理由は何も無かった」
「…じゃあ、貧乏くじ、ひかせちゃったかな…」
「なぜだ？」
「貴方は優秀な軍人だわ。見ていればわかる。最前線で戦いたいんでしょ？
なのに、与えられる任務は、手のかかる私のお守りだもの。うんざりしたんじゃない？」
「それは考え過ぎだ、フレイ・アルスター」
俯き加減になった私の肩に彼の手が置かれた。
「正直、最初この任務を拝命した時は厄介な任務を仰せつかったものだと思った。
生産中止になったＭＳを運用し、ノウハウを作り上げ、隊員を一から養成し、
尚且つ貴女の護衛だからな。
だが………」
アルカードは初めて顔を綻ばせた。
- 291 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/27 投稿日： 2003/05/27(火) 01:36
- 「貴方の護衛は、正直、これほど面白いとは思わなかったぞ」
「それって、褒めてるの？」
「もちろんだ。私がいままで接してきた生徒達の中でも、貴女が一番面白い。
私は良い生徒を持てて幸せだと思っているぞ」
「………」
「おい、どうした？」
私は泣いていた。
父を失い、キラを亡くし、サイと離れた私には、もう何も残っていないと思っていた。
唯一心を許した彼らを除けば、私自身、誰にも自分を見せようとはしなかった。
私を利用するものはいたが、私を理解してくれる者はいなかった。
でも、この人になら。この人達ならば。この人達とならば。
私は、生きていけるかもしれない。
私は彼の胸で泣いた。アルカードは軍人としては優秀で、非の打ち所の無い男だったが、
女の子の扱い方は落第点だと思う。それでもいい。不器用な父親のように私をあやしてく
れたのだから。
ようやく涙が収まった私に、アルカードは煙草を差し出した。
一本吸い、たまらずむせかえる。初めての煙草。未青年なのに吸ってしまった罪悪感も
あったけれど、初めて仲間として認められたようで嬉しかった。
- 292 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/28 投稿日： 2003/05/27(火) 01:39
- 初出撃から３ヶ月が過ぎた。
戦局は大きく動いた。連合とオーブがこの戦争に飛び込んできたのだ。
ザフトの同盟軍として。
こんなことになるのではと私は思っていた。ブルーコスモスの主張は過激すぎた。
コーディネイターに嫌悪を抱くものは少なくないが、さすがに「一人残らず全滅させる」とな
るとナチュラルといえども流石に鼻白んだのだろう。
かくいうブルーコスモスの皇女である私自身が、コーディネイターの全滅などどうでも
いいと考えているのだから。
パパの仇。キラの仇。コーディネイターは私の愛する者を奪った敵。
毎日その事実を確認し、黒い炎を絶やさないようにしてきたのに、突き動かしていた復
讐の衝動は、いつしか薄まってしまった。
コーディネイターへの漠然とした嫌悪感は、未だに拭えないが、少なくとも『無視』ぐ
らいで手を打てないものか。なぜ相手そのものを『否定』しなければならないのか。
最近、私はそう考えるようになった。
なぜだろう。私は鏡に写った自分の顔を眺めながら自問してみる。
もちろん、鏡に映る私の顔は、ヘリオポリスの頃とは違う。疲れていて、人の死を直接
左右してきた者独特の深みと苦悩が刻まれていた。なのに、以前と比べて魅力的になっ
たと思う。まして、ＡＡの時より顔つきがずっと良くなってきた。
私自身の変化によることころが大きい。あれから数回の出撃を経験し、私は更に３機を
撃墜してエースの仲間入りになってしまった。
当然、私自身がコーディネイターからは仲間を殺した仇となるわけだ。
「パパとキラを殺された私はコーディネイターを憎んで、奴らを殺して、
殺されたあいつらは私を憎んでナチュラルを殺そうとして、更に…」
憎しみの連鎖というやつか。
際限の無い考えを振り払い、私はファイルを捲った。
- 293 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/29 投稿日： 2003/05/27(火) 01:42
- ＬＦＡ隊員とライデンに関する報告書がアルカードから上がってきた。
政治の話は全てクルーゼに任せている。私が唯一権限を握っているのがＬＦＡなのだ。
これだけは手放すことが出来ない。人任せにも出来ない。クルーゼにも犯させない。
（彼らがいるから、なのかな）
ＬＦＡの少年兵達を思い出す。今も私に憧れの眼差しを向けてくる者、敬意だけは払ってくれる者、
負傷して隊を離れた者とその時のすまなさそうな表情、傷が癒えて戻って来た時の笑顔、
戦死する前の出撃で最期に交わした言葉。
全てを私は鮮明に覚えている。
それは忘れてはいけないことだ。
結局、巨大な組織の頂点に立つフレイ･アルスターより、少数精鋭部隊の指揮官（実質的
な指揮官はアルカードだが）としてのフレイ・アルスターの方が遥かに容易く実感できた。
同時に、自分が彼らに対して責任を負っていることも痛感していた。
私の判断で彼らは戦場に送り込まれ、戦い、死ぬ。
作戦計画を立てる役はクルーゼやアルカードだが、それを承認するのは私だ。
特にＬＦＡに関して、私が「否」と言えば作戦は発動されない。
「クルーゼの言う事には逆らえない」という論理は通用しない。
- 294 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/30 投稿日： 2003/05/27(火) 01:44
- （責任を、負う。）
単語を反芻してみる。
私はなんとなく理解した。
私は逃げていたのだ。
平和だった時は、自分が責任を負う事態など考えられなかった。
ＡＡに在籍していた頃は、キラを戦わせることだけに神経を注ぎ、
キラを操って父の復讐を果たすという考えに没頭し、自分が何をすべきかなど考えなかった。
皇女として崇められていた時は、諦めから物事に無条件に反応していただけだ。
そういう意味では、私は、今、初めて自分が生きていることを実感していた。
義務と、責任。私にはその重さが自分の肩にかかっている。
そして、嫌々ではなく、自らの意志で責任と義務を引き受けようとしている。
私の名の元に、戦場に身を投じた若者達。
ひいては、私の名の元に集まり、狂気の沙汰に身を染めた全ての者達に対して。
- 295 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/31 投稿日： 2003/05/27(火) 01:47
- ヒトの一人一人に使命があるのなら、私の使命は何だろう？
少なくとも、キラを戦いに駆り立てることでも、コーディネイターを憎むことでもない。
ブルーコスモスの設立とこの戦争そのものは、時代が求めていたものだ。
歴史の奔流の前では、個々の出来ることなどたかが知れている。
同時に（矛盾しているようだが）、歴史を動かすモノは「流れ」などという曖昧な存在ではなく、
一人一人の人間なのだ。そして、私には他の人間より『力』がある。
いつものように頬にすりよってくるトリィを撫でながら、私は決意を固めた。
私は、ＬＦＡとブルーコスモスを構成する人々の為に戦う。
父とキラを失った悲しみも怒りも、私の中から消えることはない。
だが、それを復讐に向けてどうするというのか？
ＬＦＡを使ってコーディネイターを情け容赦なくいたぶる？
それともコロニーに向かって全軍を出動させ、人々もろとも全滅させる？
その為の作戦で、また人が死ぬ。それも、私の決断によって。
もう人が死ぬのは嫌だ。でも、彼らは守りたい。
この決意の前では、個人的な復讐など優先事項は最低ランクでしかなかった。
- 296 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/32 投稿日： 2003/05/27(火) 01:48
- 今ではすっかりＬＦＡの指揮官としてパイロットスーツ姿が板についてしまった私だが、
時々クルーゼから依頼が来る。その度に私はドレス姿に着替え、カメラの前で心にもない
台詞を吐く。月面都市の政治家や、地球からご苦労にもやってきた政治家の機嫌をとる。
台本どおり喋っていた当初は苦痛でもなかったが、最近は違和感が日増しに大きくなって
きた。演技が嫌でたまらない。本音をぶちまけたい。
『もう人が死ぬのは嫌です。戦争を終わらせましょう』
だが、うかつに暴走は出来ない。
ＬＦＡは掌握したとはいえ、その数はブルーコスモス全体の極少数に過ぎない。
頭脳と思想的中核を司る指導者達に食い込んだわけでもない。
ＬＦＡを使えば月面の首脳部を抹殺することも可能かもしれないが、その後は？
今までさんざん「コーディネイターを殺せ！！」と煽ってきた皇女がコーディネイター
との和解…少なくとも一方的な敵視を抑え、とブルーコスモスの解体を宣言する？
私は苦笑した。
ザフト、連合、オーブはテロリストの象徴が何を血迷ったかと一笑される。
身内のブルーコスモスからは裏切り者と断定され、粛清される。
残念ながら、私の頭ではこれ以上この計画を進めることはできなかった。
- 297 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/33 投稿日： 2003/05/27(火) 01:51
- 八方塞がり。
ブルーコスモスは本気でコーディネイターを葬り去ろうとするだろう。
どこかで歯止めをかけなければ。
どうやって？
私はある種の徒労感と絶望感に襲われた。
自分の成すべきことが分かっても、まだ、私には何も出来ない。
（…いまさらながら、なんでクルーゼの計画に乗っちゃったんだろう。
あの時殺されていた方が、こんな苦労することなんてなかったのに…）
こんな時想い出すのが、ピンクボールをまとわりつかせたあの天然娘だった。
彼女のアドバイスを聞きたかった。彼女なら、私が見えないことも、気付いていないところも指摘し、
的確に事態を打開してくれるかもしれない。あのアイドルには、人をその気にさせる何かがあった。
オーブの金髪娘のことは考えなかった。どうせ暴走意見しか出てこないだろうから。
彼女の突進は組織の変革にはむかない。革命にはいいかもしれないが。
二人を思い出して、私は久しぶりに笑った。
丁度そのころ、オーブと連合がブルーコスモスに宣戦布告を宣言した。
- 298 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/34 投稿日： 2003/05/27(火) 01:54
- 「フリーダム？」
聞いたことの無い新型ＭＳの噂は、アルカードの副官、
ヴォルフガング・シュトライバー曹長（昇進した）から聞いた。
指揮官という体面上から、また私は実際に忙しいことから、ＬＦＡ個々の隊員との交流は少ない。
アルカードとは毎日会話したり会議する関係だが、彼自身指揮官であり、
そうそう隊員達が気軽に話せる人間ではない。
そこへ行くとこのシュトライバー曹長は、気さくな人柄も手伝って、部隊の兄貴といった雰囲気だった。
立場的にはフラガに近いだろうか。
私にも気後れなく声をかけてくれ、いつの間にか、私は「ヴォルフ」と名を呼んでいた。
ちなみに私を彼は「フレイ様」とからかうように呼んでいる。
「『自由』？連合はネーミングセンスが無いわね」
「いえ、機体はザフト製みたいですよ。しかも所属はオーブです」
「ザフトとオーブの同盟成立の手打ちか…」
同盟設立にあたって、互いの技術や兵器を交換することはよくある。
私はその程度のことだと思っていた。
- 299 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/35 投稿日： 2003/05/27(火) 01:57
- 「フレイ様、違うんですよ。この機体、ザフトから盗まれたヤツらしいんです。
もう、その時は凄かったらしいですよ。ザフト改心の作が強奪されたってんで、
警備部は降格と減棒の嵐。このフリーダムをとりかえせっていうんで、
あのザラ家の坊ちゃんが直々に討伐奪還部隊の隊長に選ばれたそうですから」
ヴォルフは気付かなかったが、私の体は無意識に反応した。
アスラン・ザラ。イージスを駆り、キラを殺した男。戦争だから仕方無いとはいうが、
戦場で見かけたらレーザーで撃ち抜いてやろうと心の片隅では未だに思っていた。
今もザフトコロニー防衛隊の守備隊長として最前線に立っている。
ＬＦＡも二名の犠牲者を彼によって出していた。強行偵察隊として参加したものの、
ジャスティスとかいう新型に乗った彼の為に落されたのだ。
私は溜めていた息を吐いて気持ちを落ち着かせた。
戦場で会えば戦う。それだけのことだ。
「で、まんまと逃げられたわけね。フリーダムに」
「なんでもザフトの歌姫が手引きしたって噂です」
「ラクスが！？」
「ええ。一時期は国家反逆罪に問われたそうです。
同盟結んだのと、ザラ家の坊ちゃんと婚約していたおかげでなんとか免れたようですが」
「………」
- 300 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/36 投稿日： 2003/05/27(火) 02:01
- 私は違和感を感じた。
私の知っているラクスは、非常に複雑な人物だ。
彼女は必ず深い考え無しでは行動しない。ところが、天然の裏で「深く考えている」ことが天然に出来るので、
「天然」に見えるのだ。私はそう結論付けていた。不思議な才能だった。
ラクスが、何も考えずにザフトの最新鋭機を持ち出すはずが無い。何か遠謀思慮があったと考えるのが妥当だ。
もちろん、考えたところでどうにもならないが。
「ところでヴォルフ。どうしてフリーダムの話をしたの？」
「ええ。実は先日、うちのアッシュがオーブの先遣隊とやりあいましてね。
こいつとガチンコ勝負をしたんです。で、片腕吹き飛ばされて帰ってきましたがね」
「彼は大丈夫なの？」
私は眉をひそめて尋ねた。正直、オーブの新型より隊員とライデンの方が大事だった。
この時は。
「大丈夫です。コクピットに一発くらいましたが、流石ライデン。
一部がぶっ壊れただけでした。ただ、中の人は破片で包帯巻きですけど」
「やっかいな敵が増えたものね」
「写真ありますよ？ガンカメラから頂いてきました」
ヴォルフはそういって懐から数枚の写真を取り出した。
そこには空間を自由に駆ける白いＭＳの姿があった。
（………ストライク！！？）
- 301 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/37 投稿日： 2003/05/27(火) 02:04
- 天使の翼のように広がったウィングは別物だが、全体の印象は極めてストライクに似ていた。
ザフトが持ち帰ったイージス、デュエル、ブリッツ、バスターの研究の集大成とすれば
わからなくもないが、私の直感がフリーダムとストライクを結び付けていた。
「…ヴォルフ。そのオーブ軍の母艦、わかる？」
「結構有名な奴ですよ。ホラ、ヘリオポリスからザフトの攻撃を振り切って
アラスカまでたどりついた船があったでしょ？足つき。誰も正式名称じゃ呼びませんけど。
あの船、今度は何を狂ったか、オーブに投降してその所属艦になったんです」
（アーク・エンジェル…………）
私は写真を貰って自室に戻った。
デスクの上に並べて見た。嫌な予感がしてならない。
そうだ、キラは死んだ筈だ。オーブからの連絡で、自分も焼け爛れたストライクの惨状を見た。
あの爆発で生き延びられるはずが無い。
だが、同じ爆発に巻き込まれながら、アスランは生きていた。
同じくコーディネイターであるキラは？
私は首を振って妄想を振り払おうとした。
ＡＡが参戦してきているから、無意識にストライクとフリーダムを結び付けているのだ。
理性で無理やり納得させてみる。
けれど、女の勘が告げていた。
これはキラだと。
- 302 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/38 投稿日： 2003/05/27(火) 02:06
- 数日後、私はクルーゼからオーブの新聞を入手していた。
ゴシップ誌に近かったが、ほとんどが戦争の話題ばかりだった。
第一面は大々的に「オーブの新型ＭＳ、死神ＬＦＡを撃破！！！」と掲げていた。
私は食い入るように記事を読み漁った。
『ザフト軍から譲渡された新型ＭＳは、ブルーコスモスの最強最悪部隊ＬＦＡと交戦し、初陣を飾った。
卑怯にも一機に集団で襲い掛かるＬＦＡに対し、フリーダムはアークエンジェルの援護の元、勇敢に反撃。
敵を全滅させた』とある。
突っ込みどころは満載だが、私はさらに読み進めた。
『なお、パイロットはコーディネイターである。
コーディネイターを人として認めない狂信者集団と違って我がオーブは云々………』
涙がこぼれ、新聞に黒いしみをつくった。
一つの名前に私の視線は吸い寄せられて離れない。
キラ・ヤマト
彼は、生きていた。
- 303 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/作者 投稿日： 2003/05/27(火) 02:10
- お目汚しすいません。
次回は「フレイの選択」でつ。
こんな物語もあるか…という感じで暖かく見守って下されば幸いです。
- 304 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/27(火) 02:15
- 長い・・・なんというかその創作意欲にまず脱帽。
ついにキラの生存を知ってしまったフレイ様が見物ですな。
ラクスとカガリが常に対比対象として脳裏に思い浮かぶところが、妙味を出してます。
- 305 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/27(火) 03:13
- >>ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/作者
毎回楽しみにしています。
長い、と言えば確かに長いかもしれませんが、
それでも飽きさせない書き方が非常に巧いですね。
次の展開が楽しみです、本編並に（ｗ
続き、期待してます。
- 306 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/27(火) 07:25
- お疲れ様です。
正直、ここまで長編だと読むほうも気合入れないと駄目ですね。
完結まで頑張って下さい。
- 307 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/27(火) 07:57
- >>303
乙です
これからどうなるんだ(*´Д｀)ﾊｧﾊｧ
- 308 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/27(火) 07:59
- 乙フレです
とても読み応えのある長編で毎回楽しみにしています。
フレイ皇女がキラの生存を知った最後のシーンは
しびれた〜〜！
- 309 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/作者 投稿日： 2003/05/27(火) 12:23
- 感想ありがとうございます。
これが無いと、読んで貰えているのかなぁと不安になるんですよ。
で、後投下３回で終わりそうです。
皇女まっしぐらなフレイ様……
- 310 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/39 投稿日： 2003/05/27(火) 12:26
- その日、私は一歩も部屋から動けなかった。
クルーゼとアルカードには疲労で体調が悪い、一日休ませてくれと通告しておいた。
毛布にくるまって泣き続けた。
私が戦いに駆りたて、死に追いやった筈の人が生きていた。
私が愛した男が生きていた。
傍にいてあげたかったあのキラが。
夢の中にまで出てきたあの光景
「…ごめん。帰ってきてから」
キラのすまなさそうな表情。
私の口から言えなかったあの言葉。私は何度自分を呪ったことか。
なぜ喉元までこみあげていた言葉を出せなかったのか。
今なら、言える。
私の本当の想いを。
例えキラが私を許さなくても、私を拒んだとしても、この気持ちだけは本当だと思うから。
だから伝えたい。
今すぐ、貴方の元に飛んで行きたい。
全ての鎖を振り切って、貴方の胸元に飛び込みたい。
抱きしめたい。
もう一度、貴方を愛したい。
- 311 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/40 投稿日： 2003/05/27(火) 12:28
- 私は立ち上がった。突然動作に移ったため、足元が揺れる。
何かに憑かれたように、私は付き進んだ。
何人かとすれちがったかと思ったが、認識できなかった。
私の思考はただ一つしかなかった。
キラに会いに行く。
「そうよ、アイツがいるんだもの。生きているんだもの。会いにいかなくちゃ。キラに、キラに…」
熱病にかかったように私はうわ言を繰り返し、廊下を走った。
時間が遅かったこともあって、格納庫には誰もいなかった。
常識的に考えれば、一人で発進できるほどＭＳは単純な機械ではない。
そんなことも忘れてしまったほど、私は想い憑かれていた。
私のライデンにたどり着き、リフトを上げる。
コクピットまでの時間がなんとまどろっこしいことか。
コクピット開放スイッチを背を伸ばすようにしながら押し込み、ライデンに乗り込もうとした。
ふと、振り返った。
去る前に、別れの一瞥をくれたかったのか。
私の目に入ってきたものは、ハンガーに固定された修理中のライデンだった。
キラと交戦したアッシュ軍曹の機体だった。
右腕は胴体との関節部分から斬られ、胸部にもビームが命中した醜い焼け焦げが残る。
ヴォルフは損傷はそれだけと言っていたが、あちこちに窪みや傷が目立ち、満身創痍で帰投したことがわかった。
私は知らなかったが。前線基地では修理不能ということで月面都市まで輸送され、昨日到着したのだのだった。
- 312 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/41 投稿日： 2003/05/27(火) 12:30
- 私は頭をハンマーで殴られたような衝撃を覚えた。
私は、何をしようとしてたの？
キラやＡＡのクルーが『敵』であるという事実は棘となって私につきささる。
だけど、自分がＬＦＡやブルーコスモスの人々を見捨てようとしてたことの方がショックだった。
私はライデンのコクピットに乗り込んだ。
私を惑わせていた思いはもう霧散していた。目の前にかかっていた霧は、もう晴れた。
シートに身を預け、コンソールをそっと撫でる。
私の愛機。
相棒。
武器。
盾。
そして戦友。
このＭＳに乗って、私は５機のＭＳを倒し、戦艦も一隻撃墜した。恐らくコーディネイターを何百人も殺しただろう。
（キラが、このこと知ったら何て言うかな。きっと悲しい目をして「フレイ……」って呟くわ。アイツ）
もし、ここにいるのがキラだったら。
（僕は、僕は、もう殺したくないんだぁぁぁ…って泣きながら叫ぶかな）
私は苦笑した。
私の想いはキラに馳せた。
キラは、私の知る限り、自分がＭＳに乗って人を殺していることに悩んでいた。
あるいは私に縋ることで現実を見ないようにしてきた。顔を背けていた。
それが人間としては正しい姿なのかもしれない。
けれど、私は戦場で敵を殺したからといって、余り悩まなかった。
私には守りたい者がいる。組織や立場ではなく、人を守りたい。
究極的には、ＬＦＡのアルカードや少年兵だ。彼らの命を脅かすモノは誰であろうと許さない。
気付かないうちに、私の頬を涙が伝わった。
キラがあれほど悩んだのは、彼が一人で戦っていたためではないだろうか？
彼は私やＡＡを「守るべきモノ」と認識していたことは確かだが、「戦友」という考えは持っていなかった。
彼はいつも一人で抱え込んでいたのだから。彼はいつもつらそうだった。
- 313 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/42 投稿日： 2003/05/27(火) 12:32
- カワイソウナキラ。イツモナイテ、ナイテ、ナイテ……
私は違う。守りたい者を守り、時に私自身が守られてきた。
私は、この大戦を引き起こした中心人物の一員として、ブルーコスモスの人々に対する責任も感じていた。
私の中では、もうブルーコスモスの崩壊は避けられないと結論づけていた。
それも内部崩壊ではなく、ザフト・連合・オーブの武力侵攻によって。
多くの犠牲がでることは避けられない。
だが、全滅から救うことも出来ると思っている。
一人でも多くの人間を地球へと、元の平和な日常へと帰すのだ。
その為には、私自身の命も、そして私の命よりも大切なＬＦＡも捨て駒にする時がくるかもしれない。
私は初めて、自分の死よりもつらいことがあるのだと実感した。
一介のパイロットであるキラやアスランがうらやましい。彼らは目前の戦いに挑み、戦い、そして生きるか死ぬ。
私は違う。私が死ぬ時は、ブルーコスモスの最期を見届けてからでないと、死ねない。
ＬＦＡを犠牲にしても、見捨てても、私の命を使い捨てても、私の責任において人々を救う。
それが上に立つ者の責務であり、私の選んだ道であり、責任であり、義務だった。
だから………
- 314 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/43 投稿日： 2003/05/27(火) 12:33
- 「ごめん、キラ。…わたし、まだ、あなたには会えない。あなたの元には戻れない」
トリィが悲しそうに鳴いた。
後悔は無い。
駒でありつづける安寧よりも。逃げ出した先に幸せがあろうとも。
苦渋の道であろうが自分で選んだ道の方がマシだ。
それでも
私は、涙を止められなかった。
「キラ………」
- 315 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/43 投稿日： 2003/05/27(火) 12:33
- 「ごめん、キラ。…わたし、まだ、あなたには会えない。あなたの元には戻れない」
トリィが悲しそうに鳴いた。
後悔は無い。
駒でありつづける安寧よりも。逃げ出した先に幸せがあろうとも。
苦渋の道であろうが自分で選んだ道の方がマシだ。
それでも
私は、涙を止められなかった。
「キラ………」
- 316 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/44 投稿日： 2003/05/27(火) 12:35
- 二重スマソ。
その時はあっけないほど早く、そして唐突に訪れた。
地球を発進した連合＆オーブ軍は各ラグランジュポイントを封鎖し、月と地球の補給路を絶った。
ブルーコスモスは基盤となるべき国家を持たない。支援国や占領国からの有形無形の支援をうけて活動してきたのだ。
その補給路が絶たれたことで、私達は月面で孤立してしまった。
なんとしても、地球との連絡を回復しなくては。
焦ったクルーゼはガンダム三機を含む精鋭を封鎖艦隊にぶつけ…敗北した。
ジャステスを旗機とするザフトの精鋭部隊が臨時に編入されていた。
フリーダムの強さが圧倒的だった。
クルーゼが戦死した。
ガンダム三機も撃破された。
ベルグドルが惨敗した（この機体は空間戦闘ではネギ鴨のように撃墜された）。
オーブ軍に攻勢をかけることが情報漏洩によって発覚し、連合に挟撃された。
敗因を上げればきりが無いが、ブルーコスモスの主力部隊は壊滅した。
大半の兵はそのまま投降してしまった。ザフトに降伏すれば、自分達がコーディネイターにしてきたのと
同じ仕打ちを受ける。それを知っていたからだ。また連合はかつての仲間であり、同胞意識が強かったことも影響した。事実、戦争終結後連合に復帰した兵は多い。
残されたのは、月面に残された三つの月面都市と、軍属と、二線級部隊と、ＬＦＡ、そして私。
ザフト軍は万全の体制で侵攻を開始した。
オーブと連合は封鎖宙域から前進しようとしない。
ザフトは復讐の蜜を味わおうとしていた。
- 317 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/45 投稿日： 2003/05/27(火) 12:36
- 「酷いモノね」
私はアルカードから報告を受け取って眉をひそめた。
もうクルーゼはいない。フラガ少佐の手にかかって虚空に散った。
ブルーコスモスの指導層は地球にいる。彼らは状況が極めて不利とみるや、私に全権を一任してきた。
トカゲの尻尾きりというやつだ。
ドレスを着る必要は無くなった。
私は普段着もパイロットスーツで通すことにした。
戦況を見る。ザフトの艦艇を示す赤い光点が続々とプラントを出撃し、月面軌道へと移動しつつある。
これを迎撃する力は無い。
元はといえば、ベルグドルが悪いのだ。
一度、クルーゼの指揮下、ブルーコスモスはプラントに攻勢をかけた。
結果は惨敗。ＬＦＡやテムジンは奮戦したが、ベルグドルは一方的に叩き落されていた。
その後密かに着けられた仇名が「七面鳥」。剛毅なクルーゼも、これには青くなっていた。
ブルーコスモスは根本的な作戦の転換を迫られた。
またザフト軍に翻弄されたことで、オーブと連合もザフト融和路線に傾きつつあった。
クルーゼの出した結論は、新兵器の開発だった。
私には想像も出来なかったが、全長10キロの巨大戦艦にプラントを一瞬で葬る新兵器が搭載されているらしい。
私は、心底、ブルーコスモスに、いやクルーゼに愛想がつきた。
本気で戦争をするつもりがあるのかと思った。
勝つつもりなら、ベルグドルの替わりに量産中の簡易ＭＳでも、或いは捕獲したダガーでもいいから、
とにかく戦力を増やさねばならないのではないか。
案の定全長１０キロの巨大戦艦…メタトロンとか言うらしいが…は完成せず、
艦半分のフレームが剥き出しのまま軌道上に停泊している。
- 318 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/46 投稿日： 2003/05/27(火) 12:38
- 私はアルカードと何度も協議を重ねた。
一人でも多くの人間を月面から脱出させ、地球へ送り届けるか。最低でも連合の封鎖艦隊へと投降させるか。
「あのデカブツを利用します」
アルカードは淡々と意見を述べた。
「既に脱出準備は始まっていますが、ザフトの動きは速い。恐らく軌道上への脱出は全員完了まで間に合わないと思われます」
「そうね」
「ならば、軍主力はメタトロンに陣取り、ここを防御陣地とします。メタトロンを我々の月面都市上空へ移動させ、
ライデンのレーザーによって都市上空を制圧します。敵はＭＳによる攻撃でメタトロンを排除しようと試みるでしょうから、
その間に月面都市を放棄、軌道上に終結後、地球へ向かいましょう」
「でも、ＭＳによる攻撃は続いているわけでしょう？」
「犠牲は覚悟の上です」
「………」
私は俯いた。時々足元が揺れるのは、軌道ステーションに脱出するシャトルの発射音だ。
この都市に在中するブルーコスモス軍属の安全な脱出は確保できたが、
残り二つの月面都市の人々の脱出はますます厳しくなっている。悪いことに、
片方の月面都市では暴動にまぎれて工作員が暗躍し、シャトル発進場を破壊してしまった。
この都市に駐在する５万人のブルーコスモスが生き延びるためには、今、私がいる都市まで
移動しなければならない。
都市無防備宣言は出したが、復讐に燃えるザフトにどこまで通用するか。
私ははなはだ疑問だった。
- 319 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/47 投稿日： 2003/05/27(火) 12:41
- 私は外の空気が吸いたくなって、作戦司令室を出た。
喉を潤したかったので自販機を探す。無機質で殺風景な廊下の一角にベンチや観葉植物が置かれていた。
「皇女」
「大佐、どうしたの？」
アルカードが私の後を追ってきた。話したいことがあるらしい。私達はベンチに腰を下ろした。
「皇女。貴女には決断を下してもらわなければならない」
「？」
話の筋がわからない私に続ける。
「端的に言う。メタトロンに配備するライデンは、回収できない。防御戦の要になるからな。
彼らには戦死を覚悟で出撃命令を下さねばならないのだ」
「……」
「現在、残存するライデンは１３機。うち３機は貴女と私、シュトライバーが乗る。
二機が修理中で、これは固定砲台としてメタトロンに備え付ける。
その援護として、第一中隊か、第二中隊のどちらかを選ぶ」
口の中が無性に乾き、私はジュースを煽った。味覚が狂って変に甘い。
「私は第一中隊をメタトロンに配備しようと考えている。
ベテラン兵が多いから、彼らなら粘り強く戦い続けるだろう。
…ＬＦＡの隊長として、決断を願う」
- 320 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/48 投稿日： 2003/05/27(火) 12:43
- アルカードは私に究極の選択を迫った。 第一中隊と第二中隊、どちらの４人を死地に残し、
どちらの４人を脱出艦隊の護衛として連れて行くかを選べというのだ。
当然前者の生存確率はコンマが付くほど低く、後者は助かる見込みが高い。
この決断を私に委ねたアルカードは冷酷な人間だと思うかもしれない。 彼が全ての責任の元で指示すれば、
部下は素直に従い、私は苦しまずにすむ。アルカードの指示でやったことという言い訳がたつ。
しかし、彼はあえて、この決定に私の意志を聞いた。
彼は独断で決定することも出来た。それは名目上とはいえ隊長の私を、上官の私を、
そして仲間としての私を無視することでもあった。
アルカードは私の強さを信じてくれた。
私がこの決断を下すことも、それを受け入れることも出来ると信じていた為だ。
私は彼の信頼に答えた。
「大佐の判断を支持します。第一中隊と修理中の二機をメタトロンに配備してください」
震えるペン先で、私は命令書にサインを書く。
アルカードは敬礼し、去った。
沈黙が、何よりも嬉しかった。
- 321 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/49 投稿日： 2003/05/27(火) 12:44
- 一人きりになると、途端に堪えていた涙が溢れてきた。
大切な人。守りたい人。人々を救うために、自分よりも大切な人を切り捨てる矛盾。
それを平然と下さねばならない強さと精神力。
私は理解した。これが責任を持つということ。指揮官ということなのだ。
階級があがっただけではダメなのだ。機体をパーソナルカラーで塗り、通信アンテナをつけただけではダメなのだ。
最小限の損害で、最大の効果をあげる。その為に部下を犠牲にしてでもやり遂げる。
時に部下を切り捨てる覚悟を持つことが、指揮官には求められるのだ。
自分で選んだ道だ。
なのに…。どうして、涙が止まらないのだろう。
私の手は、敵の血よりも、味方の血が染み込んでいるのかもしれない。
もしかしたら、私の赤い髪は、情熱の赤ではなく、血の色なのかもしれない。
空き缶を握りつぶしながら、私はぼんやりとそんなことを考えた。
- 322 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/作者 投稿日： 2003/05/27(火) 12:49
- また夜に投下するかも。
このＳＳの中では、フレイ様はキラの生存を知ってもブルコスに残ることを選んでしまいました。
そりゃ、恋する女の子が恋人の元へ駆けつけるのは美しい光景かもしれないけど、
「大切なモノ、責任、義務」を投げ出していては、フレイ様の成長は無いと思っているので。
衛星軌道上の死闘、封鎖宙域、最終話と続きます。
- 323 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/27(火) 12:52
- >>322
長篇乙フレです。
現時点でもう49話ですか・・・凄いですね。
続きを楽しみにしてますね。
- 324 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/27(火) 14:17
- >>322
おつふれ〜。
フレイ様の葛藤が痛いほど伝わってきます(´Д⊂
そして、密かにアルカード燃え萌えｗ
種本編にも彼みたいな軍人が出てきてくれないかなー。
- 325 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/27(火) 15:41
- 本スレで、フレイ様のF91エンドキボンという話題があったけど、この長編は、
寝返らなかったセシリーと、職人堅気なおやじザビーネによるパラレルワールド
とも嫁ますね。
- 326 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/27(火) 20:10
- >>322
乙フレ〜。ブルーコスモス、まるでWW�兇離疋ぅ帖▲戰襯螢鸚錣澆燭い世諭�
フレイ様ははたして無事にキラの元に帰れるのか？それとも、宇宙に散華してしまうのか？
続きが楽しみです。
- 327 名前： 190 投稿日： 2003/05/27(火) 21:53
- ネタもの。
どちらかといえば含み笑いです。
笑えるかどうかはともかくとしてｗ
- 328 名前： 歴史はかく騙りき・１ 投稿日： 2003/05/27(火) 21:53
- 『戦場の女たち』【せんじょう・−・おんな・−】
この書籍はC.E.200年までに出版された、第一次近地球圏戦争関係
の書籍の中でも、著者の独特の視点と他方面からのアプローチ、か
なり精度の高い調査で評価が高い。この書籍は後に……｛後略｝
- 329 名前： 歴史はかく騙りき・２ 投稿日： 2003/05/27(火) 21:54
- ……このように例を挙げるまでもなく、数奇な運命とその英雄的な
結末から、第一次近地球圏戦争におけるアークエンジェルの物語は
戦後、映画、ノベルをはじめとして様々なメディアで、数限りなく
題材として取り上げられてきた。
これらの題材は、実に半世紀以上が経過し、歴史となった現在では
普遍的な人気を博しており、先年公開された大作映画「Ｌ５」は、
キラ・ヤマトとラクス・クラインの関係を悲恋として描いたエンタ
ーテイメントで、歴代興行収入７位という好成績でロングランした。
このように……｛中略｝……しかしながら、筆者がフレイ・アルス
ターに心惹かれたのは、歴史の登場人物らしく真実の姿よりその一
部の伝説によって知られているからではなく、今日としては意外な
ことに伝説を除けばほとんどの真相が不明のままであるからだ。
フレイ・アルスター（当時。戦争時の最終階級は二等兵）は戦中よ
りも戦後に歴史の人物となった。最初の「SEED」第二世代の母とし
て……｛中略｝……戦中の行動の大半が不明であるにもかかわらず、
多くの作品に彼女の名前を見つけることができる。
名家アルスター家の一人娘についての資料が極めて少ないことにつ
いては、歴史の悪意としかいいようがない。学生時代の彼女に関す
る価値ある資料の多くは「ヘリオポリス事件（注74）」に際して失
われたと思われる。アークエンジェルの航海日誌等の貴重な資料も、
Ｌ５会戦における同艦沈没で消失した。今日もっとも信頼できる資
料は、連合及びオーブに断片的に残されていた航海記録の一部、ク
ルーの手記等の私的記録である。当時はニュートロンジャマーによ
る通信妨害などにより、地球上のネットワークは寸断されており、
これに限らず甚だ不完全な記録しか……｛後略｝
……にもかかわらず、フレイ・アルスターの名は様々な劇作に登場
する。多くはキラ・ヤマトの恋人として、あるいはキラ・ヤマトと
サイ・アーガイル（アーガイル家長男。後に統合軍幕僚本部長等の
要職を歴任した）との間で揺れる心優しき女性として描かれる。C.
E.150年に公開されたネットワーク・ドラマ「緋の人」はフレイ・
アルスターの半生を描いたもので、少女期のフレイ役を努めた女優
ミシオ・フリーマンの熱演もあって好評を博した。第三話で、コー
ディネーター排撃運動を強めようとする父に、幼いフレイ・アルス
ターが断固異議を唱えるシーンは、今日でも名シーンとして名高く
……｛後略｝
- 330 名前： 歴史はかく騙りき・３ 投稿日： 2003/05/27(火) 21:54
- 当時、いまだコーディネーター差別の華やかなりし時代である。一
方はブルーコスモス主義者であった父ジョージ・アルスターとアル
スター家令嬢としての責任、一方ではコーディネーターであったキ
ラ・ヤマトへの愛情との葛藤に深く悩んだろう彼女の姿は、我々に
ロマンチックな空想をかきたててやまない。
アークエンジェルの行動に関しては、連合側よりも敵であるザフト
軍側に精度の高い記録が多い。それによるならばC.E.71.01月末、
アークエンジェルには、当時ユニウス７慰霊団代表を務めていたラ
クス・クラインが保護されていた。偶然と呼ぶにはできすぎたこの
事件は、多くの創作家の意欲をかきたてたようだ。創作家でなくと
も、フレイ・アルスターとラクス・クラインとの間に何らかの交流
があったと見るのは自然なことだ。
アークエンジェルに救助されたラクスは、数日後キラ・ヤマトによ
ってザフトに返還される。通説によれば、この時期の交流が、フレ
イ・アルスターとラクス・クラインの間に深い友情を芽生えさせた
とされている。
筆者もこれには同意したい。
あるいは父の死に打ちひしがれるフレイを支えたのは、ラクスであ
ったのかも知れない（これにはキラ・ヤマト説、サイ・アーガイル
説等諸説がある）。筆者は歴史家ではなく小説家であるから、どの
ように空想することも自由である。
筆者が思うに、フレイ・アルスターが本当の意味で偉大であったの
は、父の死という激しい悲嘆と苦悩の直後、わずか数日の後に、彼
女の戦時中の言動で唯一公式文書に記録の残されている名言「アル
スターの宣言」あるいは「１月宣言」と呼ばれる発言をものし、軍
に志願した点だろう。戦争の大局から見ればとるにたらない些事で
はあった事件が、これは確かに歴史を動かした発言であり、その重
要性はいささかも……｛後略｝
- 331 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/27(火) 22:16
- >>328-330
終わったのかな？ 乙フレイ様。
新しい形式のSS登場age
- 332 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/27(火) 22:25
- 乙フレー！
笑わさせてもらいました。
いや、こういう小ネタ聞かせた文章書けるってすごいね
- 333 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/27(火) 22:34
- 乙ふれ〜。
いやあ、こういうのもおもしろいですねー。
続編期待！
- 334 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/27(火) 23:03
- >>328-330
乙ですぅ！
後世の歴史から見れば、ＡＡのこともこういう扱いになるんでしょうね。
ちょっぴり物悲しかったり。
- 335 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/27(火) 23:14
- >>328-330
乙。笑わせてもらいました。
一世紀過ぎりゃ、あの惨劇もこんな感動的な歴史の挿話になるわけだ。
しかしフレイ様のデータが消えていてよかった。
でなければ勝手な憶測がさらに蔓延して、
世紀の悪女扱いされるところだったｗ
- 336 名前： ＬＦＡ物語作者 投稿日： 2003/05/27(火) 23:21
- フレイ様のＳＳはイイなぁ。こんなに妄想のし甲斐があるキャラも珍しいです。
最後まで付き合いますよ、フレイ様…
>>190 PHASE-51（私家版）１／１１様、メタトロンの設定、勝手に引用して
申し訳ありません。名前も設定も、自分のツボに来たもので。不快でしたら謝罪します。
さて、いよいよ長すぎるこのＳＳもそろそろ最終局面です。
どうなる我らがフレイ様。そして、ラスボスはやはり…
- 337 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/50 投稿日： 2003/05/27(火) 23:25
- 三時間後。私はメタトロンに設けられた急造のＭＳ格納庫にいた。
私の前には、ライプシュタンダルケ・フレイ・アルスターの兵士達、１０人が整列していた。
最盛期には予備パイロットを含めて３０名以上いたというのに、今は三分の一に減ってしまった。
私はつらい命令を伝えた。
第一中隊と修理中の二機のパイロットをメタトロンに配属する。
ＭＳ突撃兵と共同で絶対防衛線を死守せよ、と。
作戦の詳細はアルカードが伝えた。その間、私は１０人の若者達の顔を一つ一つ、網膜に焼き付けていった。
シュタイガー少尉、エッグホルム少尉、フェルスター上級曹長、イエッセン軍曹、リーチ少尉、タチアナ軍曹、
パール軍曹、タポネ軍曹、ソトカ曹長、アッシュ軍曹。
これが、ＬＦＡ最後の兵士達だった。うち、ＬＦＡ設立当初からの古参兵は、シュタイガー少尉、リーチ少尉、フェルスター上級曹長の三名に過ぎなかった。
彼らの搭乗するライデンは次の形式番号であった。
シュタイガー少尉から順に、ライデン１０１、１０２、１２１、１２２、２０１、
２０２、２２１、２２２、３０１、３０２号機である。
ちなみに私フレイ・アルスターが２３１、エミール・アルカード大佐が３３１、ヴォルフガング・シュトライバー上級曹長が３３２号機である。
うち、１０１、１０２、１２１、１２２、３０１、３０２がメタトロンに配属された。
彼らの顔、一人一人を見つめ終えたところでアルカードの説明が終了した。
私は、今まで生きてきたなかで、最大の勇気を振り絞り、一歩前へ進み出た。
キラがＡＡ残るか賭けた時より、初陣の緊張、そんな瞬間よりも遥かに胸を締め付ける重大な時。
私の命令によって、少なくとも６人の命は失われる。その彼らに何と言えばいいのだろうか。
皆の瞳が私に集中した。
- 338 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/51 投稿日： 2003/05/27(火) 23:27
- 「ＬＦＡの皆さん」
ややかすれた声が出た。本当は声が出るかどうかが一番心配だったのだが。
挫けそうになる心を叱咤する。背を向けて駆け出したくなる衝動を必死で抑える。
「私は…皇女フレイ・アルスターではなく…ＬＦＡ司令官フレイ・アルスターとして話します」
隊員の間で小さなどよめきが走った。尚も続ける。
「私…私は、ＬＦＡを本当に大切に思っています。私の命よりも、大事だと思っています。
この命令を伝えることは……本当に……」
熱いものが、喉元までこみあげてきた。
ダメよ、フレイ・アルスター。泣いてはダメ。
全ての気力を自制にまわした。
一端言葉を切った。溜まった思いをゴクリと飲み干して唇を舐める。
「…この最終防衛ラインが突破されれば、退避する輸送船団は敵艦隊の射程内に補足されます。
あなた達の任務は、一秒でも長く戦闘能力を持続し、この宙域を火制下に置き続けることです。
この大命は、あなたがたにしか出来ないことです」
私を支えてくれるものは、静かに左肩にとまったトリィの鼓動。そしてキラへの思い。
彼に胸を張って会えるよう、私は崩れ落ちてはならない。
「ＬＦＡ最後の命令を伝えます。第一中隊と第三中隊はメタトロンの防衛。
第二中隊は輸送艦隊の護衛と敵防衛ラインの突破」
『おお』というどよめきが走った。既に作戦概要は伝えられていても、
私から言われるのは一味違うようだ。
「私は、あなたがたを誇りに思います。あなたがたと出会い、
夢破れたとは言え共に戦えたことを心から誇りに思います。
ですから、最後に一つだけ、お願いを言わせて下さい。
………
………
………
………
………さよならは、言いません。
思う存分、ザフトやオーブの奴らに、ＬＦＡの恐ろしさを見せつけてやりましょう！！」
『ＬＦＡ司令官、フレイ・アルスター皇女に敬礼！！！！』
兵士達も、ＬＦＡの整備員達も、一斉に踵をあわせ、私に敬礼した。
私も敬礼を返す。
「ＬＦＡ出撃！奴らもう勝ったと思っているぞ。たっぷりと教育してやれ！！」
『了解！！』
敵接近のアラームが鳴るなか、パイロット達は一斉に愛機へと走り去った。
- 339 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/52 投稿日： 2003/05/27(火) 23:29
- ザフト艦隊は、目標の月面都市上に巨大戦艦が停泊しているのを認め、やや動揺したようだった。メタトロン正面からの接近をためらい、
大きく迂回して月の裏側から衛星軌道に侵入する。それが私達の作戦とも知らずに。
私たちは貴重な時間を稼ぎ出した。
多くの軍人と軍属、そして地球への帰還を臨む難民が戦火にさらされることなく月を退去した。
幸運は続くのか。私には祈ることしかできない。
第三中隊のソトカ曹長とアッシュ軍曹のライデンがレーザー照射機を展開した。
この二機は以前の損傷から機動ユニットが万全ではなく、空間戦闘能力は喪失していた。
その代わりに、二機の動力ユニットはメタトロン内部に増設された反応炉と動力パイプで直接結ばれていた。
つまり、完全に移動不能状態であるが、エネルギー切れを心配することなく、最大出力での連続射撃が可能だったのだ。
通常ライデンのレーザーとは比べものにならない程の光線が宇宙を切り裂いた。
戦艦３隻が一斉射で撃墜され、月面に落下した。慌てて艦隊は後退をかけるが、
ザフト軍はレーザーの射角を抜けるまで更に戦艦４隻、空母２隻を失う。
ザフトはライデンによるレーザー攻撃を、メタトロン固有武装による砲撃と誤認したようだった。
艦隊戦が不利とみるや、ザフトはＭＳによる強襲作戦を展開してきた。
小回りのきくＭＳによる波状攻撃でメタトロンを無力化しようというわけだろう。
新型ＭＳゲイツを筆頭に、ジン、宇宙仕様ザウート、供与されたダガーまでもが一斉に襲い掛かってきた。
一方のブルーコスモス側は、ようやく量産されたテン・エイティが空間を、
ＬＦＡとベルグドルがメタトロンに陣取り、対空砲台としてＭＳ部隊を迎え撃つ。
数的にも質的にも圧倒された中での戦闘が始まった。
- 340 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/53 投稿日： 2003/05/27(火) 23:31
- メタトロン司令室。重装甲で何重にもガードされた艦中央部に、そこは存在した。
灰色の死の世界である月面と、凍て付く宝石達を貼り付けた漆黒の虚無、
そして生命に溢れた青い星が天井と床の巨大モニターに一画面として収められていた。
そのどこも、超新星のような一瞬の閃光がそめ、すぐに蛍のように消える。
ＭＳの爆発だ。
時折、ライデンのレーザーが漆黒を切り裂き、幾つもの蛍がまた生まれる。
メタトロンの艦体や装甲には、ザフトＭＳが運んできた対艦ミサイルやバズーカがさかんに命中しているのだが、
致命的な損害はうけず、この司令室には僅かな震度と音しか届かなかった。
なんという皮肉なのだろう。
あの青き星を守る為に立ち上がった者達が、虚無の空間で戦い、青い星を背景にその命を死の世界に散らして行く。
私の目からは何もこぼれなかった。涙が枯れ果てていた。
私は視線をサブモニターに転じた。
月面都市のシャトル発射場。数百人が乗り込める巨大シャトルに最後の脱出者達が収容されていく。
あのシャトルは、月面と衛星軌道を何往復しただろうか。脱出者達は衛星軌道に到達するや、
待機中の輸送艦に乗り移り、一目散に連合の封鎖艦隊へ向けて加速する。
戦闘開始から一時間。
戦闘中に３０機のシャトルが飛び立ち、２７機がメタトロン内部の臨時ドックに待機した戦艦に到着した。
３機は流れ弾に当たって爆発し、たどり着けなかった。
- 341 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/54 投稿日： 2003/05/27(火) 23:33
- （また、あの時と同じ……）
エルという、私に懐いてくれた幼女。
第８艦隊から地球へ脱出しようとする際、戦闘に巻き込まれて撃墜されたシャトル。
あの時と全く同じ光景が３度展開された。
でも、私は崩れ落ちるわけにはいかない。
半数近くが撃墜されると考えていた当初の計画からすれば、奇跡ともいうべき成功率だ。
この程度の犠牲は許容範囲だ。
（そう、損害はこの程度。だけど、あのシャトルに乗っていた人にとっては…）
私はどこかの本で読んだ一節を思い出した。
たとえば地震や戦争で「何万人死んだ」と簡潔に描写される。
逆に「一人の人間の死が、何万回起こった」としたらどうだろう。父や、トールや、エルのような最期が何万回も。
それでも、指揮官はあえて「何万人」という死を「数字」として、「戦術単位」として扱わなければならない。
泣くのは後だ。
私は肩に垂らした赤い髪を短くまとめた。
- 342 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/55 投稿日： 2003/05/27(火) 23:34
- 「発着場より連絡。最後のシャトルを打上げます」
「来たか」
オペレーターが報告し、最終防衛戦の総司令官を拝命したアルカード中将が頷いた。
全権を任されたのだから、人事権も私のモノ。私は勝手に解釈した。
真っ先に脱出をはかったり、篭城による玉砕を声高に訴える高官達を一掃する。
事実上、皇女とＬＦＡによるクーデーターだ。
現場の兵達は、私の行動を支持してくれた。
ブルーコスモスの兵士も、この組織がどこかおかしいことに気付き初めていた。
コーディネイター殲滅を訴える政治家や高官は、地球の高級リゾートでワインを飲み、
月面のもっとも安全なシェルターでサラミをつまみながら指示を出す。
恐るべきコーディネイターと直接戦うのは現場の兵士なのに。
私はアルカードに司令官を命じた。
深い考えがあったわけじゃない。
経験と人望と能力からいって、当然の人事を断行したまでだ。
心底、私はそう信じていた。
- 343 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/56 投稿日： 2003/05/27(火) 23:36
- 「アルカード。行きましょう。直にシャトルが到着するわ。
ＭＳ戦力が健在なうちに艦隊を離脱させないと」
「うむ。皇女、ＬＦＡを頼むぞ。私はここに残る。防衛戦の指揮を取り続けなければな」
「え……？」
私は、彼の言葉が理解できなかった。
単語の意味を一つ一つ理解し、呆然となる私を横目に、アルカードは司令官席を立ち上がった。
すらりとした長身と短く刈り込まれた銀髪が本当に美しかった。
「全軍聞け！！ただいまより、皇女と別命を受けた兵以外の戦闘員及び難民を退避させる。
第５ブロックの艦隊ドックに集合せよ！！」
「ちょっと待ちなさい、アルカード！！」
私は彼の元に駆け寄った。
「話が違うじゃない。あなたはＬＦＡの実質的な指揮官なのよ！！
一緒に退避するって言ったじゃない！！」
「皇女。私は君を騙していたことになる。すまない」
「……ど、どういうことよ」
一段高い司令席から床に降り、アルカードは私を正面から見た。
彼の宣言を聞いた時から。彼に見つめられた時から。『フレイ・アルスター皇女』という虚飾は崩壊しつつあった。
うろたえながら反発した時の私は、もう「フレイ・アルスター」だった。
「これが、私の義務なのだ。今もそうだが、我々は本当にぎりぎりのところでザフト軍を支えている。
自慢になるかもしれないが、ＭＳ戦を熟知した私でなければ、奴らの猛攻は支えきれまい」
「だからといって……」
「フレイ・アルスター。先程、私が君に命令の確認と発動の認可を貰いにいったことを覚えているか？」
「忘れるわけないじゃない！」
「あの時、私は君に感銘した。よくぞここまで強くなったと思った。
そして、やはり貴女の為なら死ねると確信したのだ、フレイ・アルスター。
貴女がＬＦＡに対する全責任をしっかりと両肩で受け止めたように、私も今戦っている全ＭＳ部隊と兵士達の責任を負っている。
貴女が第一中隊と第三中隊に命令を下したように、通常ＭＳ部隊を死地に配備したのも私なのだ」
私は一言もなかった。
ただ震えながらアルカードを見上げるしかなかった。
- 344 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/57 投稿日： 2003/05/27(火) 23:38
- 「それに、私が貴女を退避させるのは、皇女だからでは無い」
「え？」
「貴女が、我らＬＦＡの最高責任者だから、ＬＦＡの指揮官だから、
第二中隊とシュトライバーを、整備員達の命を預かり、導く義務があるから、私は貴女を退避させるのだ。
私はブルーコスモス軍の最高責任者だからな。ここで逃げるわけにはいかないのだよ」
「それって……私が、任命したから？」
つい先刻の任命式を思い出す。
私の命令が、またしても大切な人を死地に追い込むことになったのではないか？
彼は僅かに表情を崩した。この笑顔を見るのは二度目だ。
「考えすぎだ、フレイ・アルスター。この台詞を君に言うのは二度目だな。
教官として、生徒に忠告しておこう。君はどうも思い悩む傾向が強い。
もう少し楽観的になった方がいいな」
「あ、アルカード…･･･」
「私は君に感謝している。これほど心が弾む仕事は、今までなかったぞ。
さあ行きたまえ、フレイ・アルスター。ここは私が支えてみせる。
ここは私の戦場だ。君は、君の戦場へ赴くのだ」
- 345 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/58 投稿日： 2003/05/27(火) 23:39
- 私は動けなかった。
強張った表情を貼り付けながら、アルカードの顔から瞳を動かせない。
私の目の前で、また、大切な人が死地に赴く。
腰から下が、私の身体じゃないように震えている。
苦笑したアルカードが私の肩に大きな手をおいた。
「軍人というものは、美しい御婦人のために戦うものだ。この任務は本望だよ」
恋人同士の内緒話のように、身を屈めたアルカードが私の耳元で囁いた。
「…そうなの？」
「……冗談だよ」
アルカードは憮然と答えた。
オペレーター達は爆笑していた。
悔しくて、悲しくて、嬉しくて、私も泣きながら笑った。
「…アルカード。ありがとう。でも、死ぬなんて言わないで。生きて、会いたい」
「フレイ・アルスター。私も無駄死にはしない。貴女も気をつけるのだ。
貴女は私の自慢の生徒なのだから、私の教えた戦術通り戦えば良い」
「はい…！」
真っ赤に腫れた目をこすりながら、私は敬礼した。
アルカードが、オペレーター達が自分の仕事を一時止め、私に敬礼する。
「さあ行くのだ。振り返ってはならない」
私を促してアルカードは司令席に戻った。
零れる涙を虚空に浮かべながら、私は司令室を出た。
それが私が見たアルカードの最期の姿だった。
- 346 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/59 投稿日： 2003/05/27(火) 23:41
- 臨時ドックでは艦隊の出航準備が完了していた。
戦艦５隻、巡航戦闘艦４隻、輸送艦１０隻、大型シャトル２０隻。
どの船も、廊下はもちろん、隔壁の中まで人が詰まっている。
一隻撃沈されるだけで数千、或いは万単位で人が死ぬ。
その様を想像して、私の背中を寒気が走った。
「フレイ様ぁぁぁ！」
「ヴォルフ！！」
シュトライバー曹長が私をみつけ、ライデンのコクピットから宙を飛んできた。
「ヴォルフ、アルカードが、アルカードが……」
「落ち着いて下さい、フレイ様」
ヴォルフは副官としてアルカードを非常に慕っていた。
彼が私たちと同行しないことを、何と告げたら良いかと考えていたのに。
「アルカード中将のことですね。話は、中将自ら伺っています」
「！！」
「中将は、前から決意されていたのです。貴女の盾になることを。
今は、中将の意志を尊重してあげてください」
冷たいじゃない！！
私は一瞬憤慨したものの、すぐに後悔した。
冷静に話すシュトライバーの口元が震えていた。やはり、彼もつらいのだ。
私だけがめげているわけにはいかない。
そう、私はＬＦＡの指揮官をアルカードから受け継いだのだから。
- 347 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/60 投稿日： 2003/05/27(火) 23:43
- 「こちらです」
シュトライバーに先導され、私のライデンが収納された整備場へ急ぐ。
そこはメタトロンを守るために傷ついたＭＳや予備兵力が集められ、整備員たちが鬼の形相で機体と格闘していた。彼らも脱出を選ばなかった。
前線で戦う兵士達だけが戦争をしているわけではない。改めて思い知る。
「あ、皇女。お待ちしていました」
初老の整備主任と数人の若い技師が私を待っていた。
「ちょっ、これ…！！」
私は唖然とした。
その機体はライデンではなかった。正確には、今まで搭乗していたライデンではない。
機体はやや大型化していたが、全体のシルエットはすっきりとしていた。
機体各部のセンサーが増えている。うまく装甲で隠されているが、各部のスラスター口も増設されていた。
「新型？」
「ええ、ザフトやオーブにも新型が出るという噂はありましたからね。
随分前から取りかかっていましたが、ようやく完成しました。ＯＳもプログラムも、完璧に調整済みです。
皇女のライデンのデータをベースにしましたからね。直ぐに馴染むこと請け合いです」
整備員は嬉しそうに言った。
モノは試し。私は早速コクピットに入ると新型を起動させてみた。
テスト動作を繰り返す。
反応が良い。
ライデンには独特の反応の鈍さがあったのだが、それが大幅に改善されている。
ロックから開放され、重厚な機体がフワリと浮かびあがった。
レスポンスの反応のよさにとまどう。
『皇女、使う内に直ぐに慣れると思います。
安全な宙域に出たら、慣らし運転してくださいね』
「故障しないでしょうね」
『それは大丈夫』
いつのまにかライデンに乗っていたシュトライバーが後ろにつけていた。
『僕がテストパイロットになって、一週間以上みっちり動かしたから。
故障なんてほとんどなありませんでしたよ』
「……心配ね」
『そんなぁ……』
情け無い声を出すシュトライバー。私は冗談よと付け加え、機体を発進させた。
新型の開発に携わった若い技師達は私が乗る旗艦に移動したようだが、
あの初老の整備主任は「面倒みなきゃいけない奴らが多すぎる」といって、礼を言う暇もなく立ち去ってしまった。
彼の仕事に答えるためにも、私は挫けるわけにはかない。
決意を新たにし、動き出した戦艦の間をすり抜けるようにして宇宙空間に躍り出た。
- 348 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/61 投稿日： 2003/05/27(火) 23:47
- 脱出艦隊はザフトの追撃を振り切った。
私たちの出航を認めたザフトはＭＳ部隊を艦隊に差し向けようとした。
その瞬間、アルカードは全予備兵力を投入したのだ。
戦場は一時的ながら、ブルーコスモスの優勢になった。
長時間に渡る戦闘で消耗していたザフト第一陣は戦力の半数を失って壊滅。
ほうほうの体で母艦へと帰還していった。
直後、数分と時間をあけず、第二陣が到着。波状攻撃をしかけた。
しかし、その数分間の間に、脱出艦隊は加速。
月衛星軌道を離れ、地球への航路を取ることに成功した。
代償は大きかった。
全ての兵力を投入してしまったブルーコスモスの戦線は薄かった。
ザフトは宙域からブルーコスモス側のＭＳを駆逐すると、メタトロンそのものの制圧にとりかかった。
メタトロンは沈んだ。
ＬＦＡの精鋭も、満身創痍で戦い続けたブルーコスモスのＭＳ達も、ＭＳを献身的に整備し続けた整備員も、
そしてアルカードも。
ほぼ全員がＭＩＡとなった。
戦後の資料でも彼らの運命はわからない。
ただ、地球に帰った者が一人もいないことは確かである。
- 349 名前： 190 投稿日： 2003/05/27(火) 23:49
- 意外に好評なようなので、またそのうちに書いてみますです。
フレイ様。
後世から見るときっと、１２話の演説とかだけで印象決まるんだろうなあｗ
最大の武器は「頭の悪いこと」だと言うのが私見であったりするわけですが。
>>336
いえいえ、どうぞご自由にお使いください＞メタやん
すでに５０ページの執筆には頭が下がります。
わたしも完結を楽しみにしておりますので。
- 350 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/62 投稿日： 2003/05/27(火) 23:49
- 「終わったわ…」
脱出艦隊旗艦「アドミラル・レーダー」の展望室から私は月を凝視していた。
メタトロンが前代未聞の巨大戦艦といえども、１０キロは宇宙からみれば極々小さなものにすぎない。
それでも、ＭＳの爆発光がちらちらと光り、私に激戦が続けられていることを教えていた。
それが無くなった。
戦場からＭＳがいなくなったのだ。
ザフトとブルーコスモス、どちらが壊滅したのかと問われれば、間違いなく後者である。
「もう、残るのは、我々だけですね」
シュトライバーが唇をかみ締めた。
言いようのない不安感が私を襲っていた。
ブルーコスモスは終わった。だが、私の最後の仕事は終わっていない。
「あっ、ちょっと、フレイ様！」
きびすを返して展望室を出た。
慌ててシュトライバーが私の後を追う。
艦橋に到着した。
「状況は？」
「……良くありませんな」
艦長ルドルフ・ティヒゼン大佐が髭面に憮然とした表情を浮かべて答えた。
膝の上においていた報告書を私に渡してくれた。
「…どういうこと？」
「先発隊は無事に連合の奴らの所まで進出、降伏できました。
連合の奴らも、ブルーコスモスの残党…我々ですな…に対し、
武装解除に応じるなら保護すると通達してきました」
艦長は酒瓶を煽った。
どうにもならない事態に対する苛立ちが酒を求めているのだろうか。
私は顔をしかめた。
「しかし、オーブの所にいった連中がまずいことになりました。
オーブの奴ら、降伏した連中をザフトに全部引き渡しちまったんです」
「！！」
- 351 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/63 投稿日： 2003/05/27(火) 23:52
- 「オーブ奴、連合が降伏を受け入れているのを見ると、連合を包囲するように展開して
宙域を通過できないようにしちまいました。
連合の封鎖線にたどりつくには、オーブの包囲網を突破しなければなりませんよ」
ブルーコスモスはザフトの報復を恐れていた。
捕虜になったブルーコスモスの運命には諸説あるが、一つ分かっていることがあった。
二度と生きて地球を踏めない、ということだ。
（自業自得…）
この一言がぴったりと当てはまる。
私達ブルーコスモスはコーディネイターの抹殺を公言してきたのだ。
そんな奴らをコーディネイターが許すだろうか。
冷笑がうかんだが、だからといって何も解決するわけではない。
一介のフレイ・アルスターなら冷笑していればいいかもしれないが、
ＬＦＡの指揮官としてやるべきこと、決断することは山ほどあった。
「それで、オーブは連合の監視にどの程度の艦艇を裂いたの？」
「偵察隊の報告によれば、2/3程」
「…おかしいわ。自軍の封鎖網を手薄にするなんて」
「…オーブの封鎖宙域はザフト軍が進出しました。総合戦力は前より増えています」
「強行突破は無理か……」
- 352 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/64 投稿日： 2003/05/27(火) 23:55
- 私は掌握する残存艦隊の戦力を想い出した。
ＭＳは３０機ほど。テン･エイティが２０、ベルグドルが１０。
戦える艦艇は戦艦５隻、巡航戦闘艦４隻だが、これらにも難民は満載している。
正面戦闘には投入できない。そして、虎の子ＬＦＡのライデンは激減していた。
私の231、シュトライバーの332、タチアナ軍曹の221、パール軍曹の222号機のみ。
リーチ少尉とタポネ軍曹は脱出戦で戦死した。
パール軍曹の２２２号機も機動ユニットの調子が思わしくなく、固定砲台として運用するしかあるまい。
とても、オーブ軍の警戒線は突破できない。
絶望感が艦隊に漂う中、一つの朗報がもたらされた。
地球のブルコス寄り中立国家が軌道上のプラントを開放し、
難民を受け入れても良いと密かに通達してきたのだ。
条件は武装解除と士官以上の逮捕。
ただし、ザフトへの引渡しは行なわない。
皇女に関しては連合・オーブと協議の上、しかるべく扱う。
私は喜んだ。
受け入れ先があるだけでもいい。
…それが私の破滅を意味することでも。
- 353 名前： ＬＦＡ物語作者 投稿日： 2003/05/27(火) 23:59
- …おかしいな。今日の投下でラストバトルまで行くはずだったんだが。
もう仕事中でもこのＳＳの展開とか推敲が頭のなを乱舞してしょうがないんです。
とにかく、もう、完結させなければ！！
自分で書いておいて勝手ですが、フレイ様、幸せになって下さい…
>>349
ありがとうございます。今回の投下で沈んでしまいましたが…。
巨大戦艦というのは、いつの時代でもどんな作品でも萌えですね。
- 354 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/28(水) 00:07
- >>353
乙フレー
フレイ様〜
一体どうなっちまうんだ〜(；´Д｀)
- 355 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/28(水) 00:09
- >>353
・・はぁ〜。
何も言わずじっくり読みふけりたい作品ですな。
毎度乙ふれです。次の投下がクライマックスっぽいので期待
- 356 名前： ＬＦＡ物語作者 投稿日： 2003/05/28(水) 09:46
- >>355
すまんね、今回いれて後二回（笑）
結末をどうするか、ちょっと迷ってます。
今日中のラストは無理かも。
では、爆撃ハッチを開きます。投下用意〜！！
- 357 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/65 投稿日： 2003/05/28(水) 09:48
- 残存艦隊は、暗礁宙域を通過し、直接地球軌道へ向かうことにした。
希望が見えた。それだけで艦隊全体の士気があがった。
私は全ＭＳ部隊を集め、３つの中隊に分けると交代で哨戒に当たらせた。
ＬＦＡの三人だけでなく、全員が電撃で打たれたように私の命令に従った。
私は不思議だった。
シュトライバーに聞いて見ると
「フレイ様はお美しくて迫力ありますから」という返事が帰ってきた。
喜んでいいのか、憤慨するべきなのかわからない。
複雑な顔をしたまま、私はシュトライバーを連れて哨戒偵察に出た。
- 358 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/66 投稿日： 2003/05/28(水) 09:50
- 暗礁空域は月と地球の重力バランスから宇宙のゴミが集まってきた場所だ。
隕石、戦艦、シャトル、ロケット、ＭＳ、そしてコロニーの残骸。
回避したコロニーの一部にヘリオポリスの名をみつけ、鳥肌が立つ。
『フレイ様、聞こえていますか？』
「332、どうした！？敵か！？」
『いえ、違います！！ちょっと、お話したくて…』
私は大きく息を吐いた。
「何？敵がどこにいるかわからないんだから、私語は謹んでよ」
『フレイ様、これから如何なさるんですか？』
シュトライバーの静かな声に、思わず右後方をカバーするライデンを振り返った。
『…ブルーコスモスは終わりましたよね。うまくいけば、皆さんは連合なりどこぞの国なりに保護されて、
命の安全は保障されます。でも、フレイ様は……』
「ヴォルフ…」
私にはシュトライバーの言うことが理解できた。
そう、私の運命は決まっている。
最後の作戦がうまく運び、ブルーコスモスの残党たちの安全が保障されても。
私は逮捕され、Ａ級戦争犯罪人となることは間違い無い。
ブルーコスモスの象徴、お飾りとはいえ指導者であった者がまさか『無罪放免』というわけにはいくまい。
裁判の後、公開処刑。良くて軍刑務所の中で銃殺。最悪、ザフトに引き渡されたらどんなことになるか。
「ヴォルフ、心配してくれてありがとう。でも、こればかりはどうしようも無いことだわ」
『そんな、フレイ様！！』
正直、私も怖い。降伏した後の運命など考えたくもない。
いっそ、アルカードと一緒に運命を共にできたらどんなに良かったか。
（クルーゼの操り人形として生きていたら…。多分、あの場所で自決していたわね）
それが一番楽な道だ。しかし、私はそれを選ぶわけにはいかないのだ。
なぜなら、この道が、私が自ら選択した生き方なのだから。
- 359 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/67 投稿日： 2003/05/28(水) 09:54
- キラを追い詰めた罰？
考えないこともなかったが、やはり違う。
罰と考えるなら、今まで自分の人生を自分の脚で歩いてこなかったこと。
罰というより、結果というべきだろう。
「ヴォルフ。私、今までの人生なんて生きてきたとは言えない。
平和な日常が続いて、友達とおしゃべりして、学生生活に勤しんで。
でも、夢や将来のことも、自分がどう生きるかなんて考えたこともなかった。
…ヴォルフなら知ってると思うけど、私、ブルーコスモスに来る前はアークエンジェルにいたわ。
戦争に巻き込まれて、父が死んで。コーディネイターに復讐しようと誓って。
でも、自分で考えたわけじゃない。何が最善かもわからず、ただ自分の感情に憑き動かされて。
色んな人に迷惑をかけたし、傷つけてきた。何より自分自身を傷つけてきた」
私は一端息を吸い込んだ。昔。そう、僅か数ヶ月前のことなのに、何年も時がたったように感じる。
「ブルーコスモスの指導者になって、ＬＦＡの指揮官になって、初めて自分の意志で動くようになった。
全く後悔していないわけじゃないわ。やり直したいことも、自分を呪うこともある。
でもね、ヴォルフ。誰にも後ろ指さされることなく、自分の脚で歩いてきた。
それは自信を持って言えるわ。
なら、その結果がどうなろうと、受け入れるしかないもの」
- 360 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/68 投稿日： 2003/05/28(水) 09:55
- 『フレイ様……』
シュトライバーは絶句したようで、しばらく無言の時が流れた。
『なら、僕もお供します』
「何を言ってるの？あなたはＭＳパイロット、しかも階級は曹長よ？降伏すれば助かるわ」
『ですが、僕は栄光のＬＦＡのパイロットです。誇りあるＬＦＡです。
僕は最後の時まであなたについていきます！！』
今度は私が押し黙る番だった。
私より二歳年上で、いつも私をからかうように話しかけてきたシュトライバー。
彼の口からＬＦＡのことが出てきたことは衝撃だった。私は、こんな人まで戦争に引きずりこんでしまったのか。
『フレイ様、違います。あなたが貴女の意志で道を選んだように、僕も、僕自身の意志で貴女についていくことを選びました。
……だから、せめて、傍にいさせて下さい』
「……わかったわ。ありがとう」
彼が言いきる以上、私は説得を諦めた。
私の意志が固いように、彼の意志も固いのだ。
これ以上翻意を促すことは、彼への侮辱になってしまう。
私は別の想いから溜息をついた。
「それにしても、ＬＦＡは何で物好きがそろったのかしら」
『フレイ様が隊長だからでしょ？』
「……レーザーくらいたい？」
こんな調子で私たちは暗礁区域を進み続けた。
幸いにも敵機は発見されず、艦隊は暗礁空域をぬけた。
正面に青い地球が美しく浮かんでいた。
- 361 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/69 投稿日： 2003/05/28(水) 09:58
- 「最終減速に入る。軌道侵入コース計算」
「了解、減速します。推力逆噴射、進路変更します」
ティヒゼン大佐の指示が全艦に伝わり、各艦が一斉に減速をはじめた。
地球は正面モニターを圧倒する大きさにせまり、長旅に疲れた兵士達に故郷に戻って来たことを実感させる。
私はＬＦＡ最後のメンバーと共に「アドミラル・レーダー」の甲板上で徐々に大きくなる地球に見入っていた。
もちろん、ライデンのコクピットからだ。
流石に私の胸にも込上げるものがあった。
私達を受け入れてくれる手はずは整っていた。
衛星軌道に浮かぶ巨大宇宙ステーション「ポツダム」からの指示に従い、各艦は減速を開始していた。
「ポツダム」は地球と地上を結ぶターミナルステーションの一つだったが国家の所有物で、治外法権が認められていた。
それゆえに、ブルーコスモスが難民として入ってもザフトやオーブには手が出せないのである。
メタトロンには及ばないが、全長は数キロ。箱舟のような形状を持ち、艦隊をまるごと収容できる。
ブルーコスモスの歴史も終わりに近づいた。
そして、私の旅も。
私は唇をかみ締めた。
- 362 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/70 投稿日： 2003/05/28(水) 10:00
- 「警告！！ポツダムへの入港進路上に障害物あり！！」
感動を打ち切るオペレーターの叫び。艦長が間髪を入れず指示を出した。
「戦艦？機雷か？」
「いえ、違います！これは…も、モビルスーツ！？所属は……オーブです！！」
「まさか！？」
艦橋でのやりとりはライデンに乗る私にも聞えていた。
詳細を聞かずとも、私には正体がわかった。
ずっとこうなるような予感がしていた。
心のどこかで恐れていた瞬間。
心のどこかで望んでいた瞬間。
太陽が地平線から昇る。
強烈な光線。自動的にフィルターがかかり、私の目を護る。
逆光を背景に、翼を広げたＭＳが浮かび上がった。
敵対するものを容赦なく屠ってきた、殺戮の天使。
フリーダム。
自由の名を冠する、最強のＭＳ。
そして…
「待っていたよ、フレイ」
ライデンのコクピットに、聞き慣れた少年の声が響いた。
- 363 名前： ＬＦＡ物語作者 投稿日： 2003/05/28(水) 10:12
- 多分、このシーンを書きたいが為に全編があると言っても過言じゃないと思う。
大きく成長したフレイ様と多分全く変わっていないキラ。
はたして二人の運命は？
次回最終話「決戦（仮）」
そろそろタイトルとか、章ごとの名前をつけなきゃあかんですな。
各話のタイトル考えるの大変。ＳＥＥＤ本編笑えないよ。
「心重ねて」とか、「フレイ」にしようかと思っちゃうし（笑）
- 364 名前： ＬＦＡ物語作者 投稿日： 2003/05/28(水) 10:14
- 漏れはフレイ視点で書いたからフレイ様はかなり成長したと思うけど、
これをキラから書いたら全編ウジウジしたまんまだろうなぁ〜（笑）
- 365 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/28(水) 18:59
- >>364
乙フレー。
ついにキラと御対面でつね。
ラストはどうなるのかﾄﾞｷﾄﾞｷ(;´Д｀)
フレイ様幸せになってね！
- 366 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/28(水) 20:01
- 乙フレー！
なんて、感想を書くのは初めてだったり。
マジで面白いです。
５月２９に出るバーチャロンマーズにフレイ様を登場させてほし
板違いですかスンマセン。
とにかく、フレイ様には幸せになって欲しいです。
例えバッドエンド濃厚だとしても！
- 367 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/28(水) 21:22
- >257-266,>289-303,>309-322,>336-348,>350-353,>356-364
おつふれ〜。
ぐあ、ちょっと覗いてない間にこんなに進んどるｗ
これだけの量を書くその熱意にまず乾杯。そして構成力にも乾杯。
各イベントごとにフレイ様の成長がしっかり描写されてて凄い。
ただの傀儡だった少女が上に立つものとしての自覚に目覚めて、
それ故に求められる決断力や責任感に悩んで。
その中で、しっかりと大事なものを掴んで学んできたフレイ様。
というか、このSSのキラは変わってないんですか。
キラと同じように戦場に立ちながらも、
「大切なものを守る」という決意とともに強くあったフレイ様とキラとの会話…。
楽しみなような、ちょっと怖いような…。
とにかく最終回楽しみにしています。
本編でもアルガードみたいなキャラが出てきてくれないだろうか。
なんちゃって軍人ばっかりだしｗ（それが種のスタンスだと判ってはいるが）
- 368 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/28(水) 23:15
- 乙フレー！
いや〜毎回の事ながら面白い！
キラｖｓフレイ様になるのか？
次も頑張ってください
- 369 名前： ＬＦＡ物語/作者 投稿日： 2003/05/29(木) 00:32
- 毎度感想ありがとうございます。
皆様の感想のおかげで続けることが出来ています。
キラについては、書いているうちに正直「こいつダメじゃん」と思ってしまいました。
異論はあると思いますが、広い目で見てください。では、爆撃ハッチ開放〜！！
- 370 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/71 投稿日： 2003/05/29(木) 00:36
- 白いＭＳが私たちの行く手を遮るように立ちはだかった。
誰も、一言も口を開かない。フリーダムの圧倒的な強さは、衆目の一致するところだった。
特に、封鎖宙域でのオーブｖｓブルーコスモスの決戦時の活躍は後世にまで語り継がれた。
三機のガンダム相手の戦闘はたまたま付近に従軍記者がいたため全地球圏に放映され、
阿修羅の如き戦いぶりに誰もが恐怖した。
「フリーダムの後方に艦影。数、２！！」
凍りついた空気を溶かすのは、いつもオペレーターだ。
そして、良い報告であることはまず無い。
最大望遠で、やっとわかる小さな光点二つ。
光点は地平線の向こうからせり上がり、私達の方向へと向かってくる。
「艦照合…。出ました、足つきとザフト艦です！！ザフト艦のデータなし。
新型のＭＳ運用艦だと思われます！！」
「艦長、大変です！！」
「ええい、今度はなんだ！？超新星爆発でも起こったか！？」
「7時方向に艦影多数。ザフトの追撃艦隊です！！戦艦、ＭＳ搭載母艦、多数！！」
「5時方向からもだ。こっちは…オーブだ！オーブの艦隊が接近中です！！」
「罠か？ザフトの奴らは、俺たちをここにおびき寄せて殲滅する気だったんだ！！」
誰かが口走ると、艦はパニック状態になった。いや、艦隊の全員が。
前門の虎、後門の狼…ではなく、Ｔ−ＲＥＸとラプトルといったところか。
もう少しで助かるという希望を持っていただけに、
絶望的という状況へ急変したことへのショックは大きかった。
- 371 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/72 投稿日： 2003/05/29(木) 00:38
- 「うろたえるな！！」
自分でも信じられないほど強い声が出せた。
無線機から耳やかましく響いていた喧騒がピタリと収まる。
「冷静に状況を報告するのよ。取り乱したところで状況は変わらないわ」
『は、ハイ！』
「規模と敵接触までの時間を報告！」
やや間をおいて計測結果が出る。
『5時方向のオーブ艦隊接触までは一時間。
ザフト艦隊は…現在のままの速度を維持という条件ならば、３０分後に敵艦艇の射程圏内に入ります！』
「罠じゃないわね。
網を張っていてら、いつまでも獲物がかからない。いらついているうちに、ポツダムからの電波を受信して、
おっとり刀でかけつけたんでしょ。まぁいいわ。
こちらのポツダム入港までの時間は？」
『どんなに急いでも…あと３５分かかります！』
私たちは接舷の為に速度を落さねばならない。
しかし、追撃部隊は入港する予定は無い。そのままの速度で航行し、
射程に収めながら気楽に砲撃すればいいのだ。
現在の艦隊勢力ならば、一斉射で全艦撃沈は疑いない。
- 372 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/73 投稿日： 2003/05/29(木) 00:40
- ５分。
僅か５分の為に。
私の脳裏にこの作戦の為に散った人々が浮かびあがった。
櫛のように欠けて行くＬＦＡ当初のメンバー。
死地に残ったＬＦＡ第一、第三中隊のパイロット達。
脱出中に戦死した二人のパイロット。
私に最新のＭＳを渡し、自ら脱出の機会はあったのにあえてメタトロンに残った整備主任。
そして、私を信頼し、ＬＦＡと全ての兵士達をまかせて散ったアルカード。
死なせるものか。
もうこれ以上、誰にも。
その為にはどうすればいい？
５分あれば、ザフト艦隊は速度が殆ど落ちた私たちを容易く撃滅できる。
悪いことに、どの艦も敵にエンジンを向けている。
考えるんだ。考えるのよ、フレイ・アルスター。
必死で私は目の前の白いＭＳを睨みつけた。
まるで、睨みつければ解決策が浮かびあがるかのように。
- 373 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/74 投稿日： 2003/05/29(木) 00:42
- 『皇女！』
これはティヒゼン艦長だ。
『我が艦は反転し、ザフト艦隊を抑えます。その間に、皇女と残存艦隊はポツダムへ。
５分ほどの時間は稼いで見ましょうぞ』
「だめよ！」
私は一喝した。
『あなたの艦に何人、非戦闘員（厳密には兵士だが、戦艦同士の撃ち合いやＭＳには役に立たないから）が乗っていると思うの？
むざむざその人たちごと、あなた方も失うわけにはいかないわ』
「し、しかし」
ティヒゼンの進言は妥当なところだった。
戦艦を全隻反転させ、盾とすれば巡航艦や輸送艦が逃げ込む時間は稼げる。
だが、私たちの戦艦には水兵だけでなく、兵士も難民も軍属も一万人単位で乗っている。
彼らには脱出の時間も方法も無いのだ。
シャトルは月脱出時に邪魔になるので放棄してしまった。
なんとか方法はないのか。
奇策でもいい。如何なる手段を用いても、もう、誰も死なせるわけにはいかないのだ。
目の前に立ちはだかるフリーダムとアークエンジェルをなんとなく眺め…
…アークエンジェル？
…艦長は、まだ、あのマリューか？
これしかないわ！！
分の悪い賭けだけれど…やってみる価値はある！！
私の中で歯車が噛み合った。
- 374 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/75 投稿日： 2003/05/29(木) 00:45
- 「艦長！！」
『は、ハッ』
「ＭＳ部隊を艦隊後方に配置！艦はそのままポツダムへのアプローチを続けなさい！」
『！？そ、それでは、ＭＳ隊をむざむざ見捨てることになります。
その上、今のＬＦＡとＭＳ部隊では、５分どころか１分と支えられません』
「１分で足りるわ。私の作戦がうまく運べば、艦隊は無事入港出来るんだから」
『どういうことですか？』
「私に秘策があるの。まかせてくれるかしら？」
私は自信たっぷりに頷いて見せた。
本当は自分でも半信半疑だったが、不安な表情を見せては部下達も難民達も怯えるだろう。
『ではＭＳ部隊を配備する意味は？』
「決まってるわ。もし交渉が失敗したら、その時はあなたの戦艦を反転させるしかない。
ＭＳ部隊に、その時間を稼がせるの。この速度なら、反転は一分で可能でしょ？」
『殿軍ですな……』
ティヒゼンは沈黙した。
「他に、名案がある？あるなら聞くわ」
- 375 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/76 投稿日： 2003/05/29(木) 00:46
- あろう筈がない。
ティヒゼン最良の案が、先程の自らを犠牲にする戦法だったのだから。
『わかりました』
無線を通じても、ティヒゼン断腸の想いが伝わった。
ＭＳ部隊の命運は定まっている。
交渉が決裂すれば、彼らはザフト艦隊の攻勢を正面から受け止めて全滅する。
ライデンがいるから多少は奮戦できるかもしれないが、遅からず全員戦死するだろう。
交渉がうまく運べば、残存艦隊はポツダムに保護される。
当然ＭＳ部隊は取り残され、獲物を取り逃がして頭に血が上ったザフト艦隊に袋叩きにされるだろう。
ティヒゼンも、アルカードと同じく生粋の軍人だ。
部下に犠牲をしいることを厭わぬと同時に、自らも最前線に立つことを望む男だ。
そんな男が、最後の戦闘で強大な敵を前に、みすみす全滅すると分かる部隊を差し出し、自らは敵に背を向ける。
そのことが、どれほど彼を苦しめるか。
これからどれほど、彼を苦しめ続けるのか。
それでも、私は決めた。
多分、私が流す味方の最後の血。
私の名の元に道を誤った者達への償いとして捧げられる最後の生贄。
- 376 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/77 投稿日： 2003/05/29(木) 00:49
- 私はライデンの無線を全周囲モードに設定し、語りかけた。
「ブルーコスモスの誇りあるＭＳパイロット達。
ＬＦＡ司令官フレイ・アルスターです」
私は『皇女』の肩書きを使わなかった。
「ブルーコスモスは燃え尽きました。後は、生き残る為の戦いが残るのみです。
私は、あなた方に最後の任務を与えます。
ＭＳ部隊は艦隊後方に展開、ザフト軍の攻勢から味方を護衛します。
端的にいって、生還は極めて難しいでしょう」
覚悟を促すため、一呼吸おいた。息をとめて私の言葉を待つパイロット達の心境が手に取るように分かった。
「ですが、もう、あなた方しか戦える者はいません。
同時に、あなたがたの奮戦がなければ、私たちが守るべき人々は生き残れないでしょう。
……命令を下します。
ＭＳ部隊は敵艦隊の進撃を阻止。可能な限り時間を稼ぎます。
国や思想ではなく、人々の笑顔を護る為に。
人々の未来を護る為に戦いましょう。
ＭＳ部隊、発進！！
青き地球の加護があらんことを！！」
静寂。そして、爆発。
『青き地球の為に！！』
『フレイ・アルスター皇女万歳！！』
パイロット達は笑って命令を受け入れた。
それが、自分たちの使命であることを、義務であることを知っていたから。
そして、人々の為に命をかけることを誇りと思っているから。
ＭＳ部隊が次々に甲板を離れ、後方に展開していく。
空の蜉蝣。
二度と戻らず、歴史に名を残すこともない、真の英雄たち。
- 377 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/78 投稿日： 2003/05/29(木) 00:52
- 私は溢れ出る涙を拭いて今度は艦隊の人々に語りかけた。
「皆さん、フレイ・アルスターです。
今、前面にはオーブの精鋭が、後方にはザフトの追撃艦隊が迫ってきています。
ですが、決して諦めないで下さい。私達は、あなた方を守るためにここにいるのですから。
…ブルーコスモスは終わりました。
私、フレイ・アルスター皇女は、正式にブルーコスモスの解散を宣言します。
そして、最後のお願いをします。
平和な生活を築き、この美しい星を、少しでも平和に、幸せにして下さい。
一人の人間として、この思いをあなたがたに託します」
私は無線のスイッチを切った。最後の演説は終わった。
『フレイ様…』
シュトライバーがおずおずと声をかけてきた。
「情け無い声出さないでよ、ヴォルフ。ブルーコスモスは終わったけど、ＬＦＡは終わらせないわ」
私は決然と宣言した。
『そうなんですか！？』
「そうよ。それとも、除隊したい？今なら退職金も出せるけど」
『まさか！！僕は決めたんですから。ＬＦＡの誇りある一員として、あなたについていくと。今更辞めませんからね』
「そう言うと思ったわ。…そろそろ行くわよ。彼を随分待たせたわ」
『彼？ああ、フリーダムですか』
「そう。色々と因縁があるの。
さぁ、シュトライバー曹長。出撃するわ！ティヒゼン艦長、後は頼むわよ！」
『了解！！フレイ様、御気をつけて！！』
「…ティヒゼンに『フレイ様』と言われるのも微妙ね。
まぁいいわ。ＬＦＡ、発進！！」
「332、了解！！」
- 378 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/79 投稿日： 2003/05/29(木) 00:54
- 甲板を蹴り上げ、宇宙空間に浮かび上がる。
体勢をかえると、コントロールスティックを押し込み、フルスロットルで加速。
それにシュトライバーのライデン332号機が続く。
倍率を上げたモニターの中で、キラのフリーダムとアークエンジェルの姿がはっきりと見えてきた。
これから。これからが正念場だ。
なぜか胸が高鳴る。
策がうまくいかなかった場合の惨状。
ＭＳ部隊への罪悪感。
不安材料はいくつもあるが…それだけではないだろう。
（そう、アイツに会えるから…。もうすぐ…）
- 379 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/80 投稿日： 2003/05/29(木) 00:58
- フリーダムは静かに浮かんでいた。それが私を不安にさせる。
それに、私は赤いライデンをそっと前進させた。
左後方の下にシュトライバーが控えている。
『フレイ、聞いている？僕の指定するチャンネルに合わせて…』
不意にキラの声が飛び込んで来た。言われるままに震える指先で無線チャンネルを操作、コードを打ち込み、おずおずと口を開いた。
「キラ…？」
反応はすぐにあった。
『フレイ……。やっと…会えた…』
「キラ……！わ、私…、私は…」
どうしたんだろう、私は。
彼に再会したら、言おうと思っていた言葉が沢山あった筈なのに。何も出てこない。何を言っていいのかわからない。
『フレイ…どうして…』
「え？」
『どうして、どうして、戻ってきてくれなかったんだ！』
思いがけないキラの強い口調に、身体が勝手に反応した。幾分シートに身を預ける。
「どうしてって、だって、貴方はイージスと戦って、行方不明になったのよ。
それに、すぐその後に私も誘拐されて。貴方が生きているのを知ったのは、もっと後よ」
『違う、違うよフレイ。
僕はアスランと戦ったあと、重傷を負ってプラントに運ばれた。
そこで、ラクスに会った。
ラクスに、僕は、「戦う道も、このままプラントで生きる道もある。自由な道を選べ」と言われた。
…だから僕は選んだ。君を、君を守って戦う道を！』
- 380 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/81 投稿日： 2003/05/29(木) 01:00
- 「……」
『僕はフリーダムを譲り受けた。
でも、僕がアークエンジェルに帰ったら、フレイを守る為に帰ったら…
フレイは行方不明だって言われた。どうしたらいいかわからなかった。
そうしたら、君が、ＴＶに出ていたんだ！』
「……」
『君はブルーコスモスの皇女になっていた。でも、僕は信じなかった。
無理やり言わされていると思ったから。
それに、僕が生きていることも知らないはずだと思った。
だから、だから！！』
キラは泣いていた。キラの泣き声がライデンのコクピットに幾重にも反響する。
『僕が生きていることを知らせようと、僕は頑張った。
もう戦いたくなかったのに、ブルーコスモスの奴らと戦って、戦って、味方にも恐れられるぐらいに戦った！
沢山殺したよ！！マスコミにも名前が出るぐらい頑張った！フレイだって見たはずだ！知ったはずだ！！』
（あ、あの時の！！）
私が初めてキラの生存を知ったのは、シュトライバーからだった。
戦場の噂などに無頓着だったＬＦＡのパイロットが気にするぐらいなのだから、
大衆誌に名前が出るくらいなのだから、キラは相当な戦果と戦いぶりを残したはずだ。
あれは、全て、私に自分の生存と健在を訴えたかったのだ。
そのために、戦うなんて。それだけを目的に、戦場を駆ける。
なんて、なんて……！
私は絶句していた。
- 381 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/82 投稿日： 2003/05/29(木) 01:04
- 『なのに、なのに…。君は、いつのまにかＭＳに乗っていて…。
皇女としてだけじゃなくて、自分から最前線に出て、ザフトと戦って、ブルーコスモスとして戦って…』
キラ、あなたは…。あなたという人は……
『どうしてだ、フレイ！！僕はフレイを守るために、こいつに乗っているんだ！！
それでなきゃ、こんなモノ（兵器）に金輪際乗るもんか！！
それなのに、なぜ、僕がこいつに乗って、君と戦わなければならないんだ！！』
「キラ…」
『誰も、僕を理解してくれなかった。
アークエンジェルの奴らも、カガリも、ラクスも、アスランも。
僕は、君を護るために戦うんだ。
フレイは、フレイだけは、それを分かっていると思った。
だから、直ぐに僕の元へ戻ってきてくれると信じていたんだ……』
キラの声が弱々しくなる。そうだ、こんな光景が前にもあった。
あれは、私とキラが初めて関係をもった直後。サイと人悶着あった時。
食って掛かったサイを捻り上げて、
「誰も僕のことを理解してくれなかった癖に。フレイだけが僕を解ってくれたんだ」
と言い捨てた。
ああ、キラ。あなたは、まだ、あの日から抜け出せていないのね…。
『フレイ。そんなに、コーディネイターが憎いの？
それとも……僕が、僕が憎いの！？言ってくれ、フレイ！！』
絶叫と言って良いだろう。
はらわたが捩れる様なキラの声が私を動揺させた。
- 382 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/83 投稿日： 2003/05/29(木) 01:06
- コーディネイターが憎いのか？
そんなことは無い。
自然の摂理に背いている、不自然だとは今でも思う。
でも、だからといって、コーディネイターが憎いとは思わない。
「キラ、それはあなたの思い込みよ。パパが殺された時は、心の底から憎いと思ったわ。
でも、だからといって、人々そのものを憎んでいるわけじゃない。まして、キラを憎むなんて」
『本当？フレイ、信じていいの？』
「当たり前よ」
私はキラの叫びが痛かった。幼子のように、一人迷子になって泣きじゃくる子供のように、私に訴えるキラ。私がＭＳを捨て、母親のようにキラを抱きしめてあげたら、彼を救えるだろうか？
『…フレイ。お願いだから、僕のところに帰ってきてくれ。今ならまだ間に合う。
ザフトやオーブだって、アスランやカガリが説得してくれるよ。
フレイ、僕は君を守る。フレイは僕が守る。だから、帰ってきて…。
フレイがブルーコスモスの奴らに付き合う必要なんてないじゃないか』
- 383 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/84 投稿日： 2003/05/29(木) 01:08
- ブルーコスモスの人々。
その言葉がキーワードになった。
（……そうだ！ここで、キラと話している暇はないわ！
こうしている間にも、ザフト艦隊は近づいているんだもの！！）
頭が廻りだした。キラへの想いで一杯になっていた思考回路がたちまち入れ替わり、
少女フレイ・アルスターではなく、ＬＦＡ指揮官フレイ・アルスターへと切り替わった。
「キラ！！」
『！？』
突然私から名前を呼ばれて、キラは面食らったようだった。
『な、なに？』
「アークエンジェルの通信コードわかるでしょ！？教えなさい！！」
『え、え、フレイ、いきなり、な、なん』
「教えなさい！！！」
キラの声はぼそぼそとしていて聞き取りにくかったが、何とかわかった。
直ちにそのコードを打ち込み、フリーダムの脇をすりぬけてアークエンジェルへと機体をむける。
キラは何が起こったか分からず、呆然とフリーダムと共に漂っていた。
数秒後、私がいなくなったことに気付き、慌てて反転するのが見えた。
『ふ、フレイ、待ってくれ！！』
『動くな、フリーダム』
軍人の声がキラを止めた。
- 384 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/85 投稿日： 2003/05/29(木) 01:14
- この宙域にいた、もう一人のパイロット。
レーザー照射機を展開したシュトライバーがフリーダムにぴたりと狙いを定めていた。
いかにフリーダムが超絶的で常識外れの機動力と運動性能を誇ろうと、
停止状態で、しかも光速のレーザーが相手では回避出来ない。
『な、なぜ…お前は…』
『フレイ様には、大切な任務がある。
それが終わるまで、お前をフレイ様の元に行かせるわけにはいかない』
キラに冷たく宣告するシュトライバーの声には、私に話しかけるような暖かさは何もない。
21機の敵機を撃墜し、4隻の戦艦を沈め、数え切れない出撃から生還したエースの声だ。
『お前の、判断か？』
切れ切れの、キラの声。
『違う。ＬＦＡは、フレイ様の意志のままに動く。そして、彼女にはお前よりも重要なことがあるのだ。
これもフレイ様の御意志だ。悪く思うな、フリーダム』
『僕よりも、大切なことだと？そんなの在るわけないじゃないか。
ねぇフレイ、そんなことないよね。フレイ、返事をして。返事をしてよ……』
私は答えなかった。
今、私には自分のことより、キラのことより、優先事項があるのだから。
もっとも、通信コードをアークエンジェルに合わせてしまったのからなのだが。
そういう意味では、私は、キラよりブルーコスモスの人々の命を優先した。
私は、キラに護られる私よりも、自分の意志のままに歩く私を選んだのかもしれない。
『う、うそだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！！』
キラの絶叫が宇宙に響いた。
- 385 名前： ライプシュタンデ・フレイ・アルスター/86 投稿日： 2003/05/29(木) 01:16
- ＡＡ上方。私はブーストをかけ、ライデンの速度を殺した。
通信プログラムは変更した。私の耳には、アークエンジェルの中の混乱がはっきりと聞えていた。
『フリーダムは、ヤマト中尉は如何したの！？』
『敵ＭＳに完全に補足されたようです、動けない模様！』
『では撃墜されたのか！？』『しかし、反応はあります』『ではヤマト中尉に繋げ！』
『通信回線が繋がりません』『敵ＭＳ接近、対空射撃許可願い…』『アホ、キラにも当たるだろ』
『おいおい、そろそろ俺の出番じゃないの？』『ダメ。ヤマト中尉がどうしても一人で出るって』
『その前に落とされるよ。バスターの準備出来てる？』『出来てます。いつでも発進できます！お願い、キラを助けて』
『グゥレイト！まかせとけって』『カタパルト使用許可は出せません』『おいおい…』
『艦長、もう目の前まで来てますよぉ』『艦長、どの火器で攻撃しますか！？指示を下さい！！』
『でも…』
あきれた。
この調子で、よくいままで落されなかったものだ。
よっぽどの幸運艦だったか、あまりの馬鹿らしさに相手にされなかったに違いない。
私は、この通信が引き起こすＡＡクルーの驚愕を予想して、皮肉な笑みを浮かべた。
いよいよだ。
- 386 名前： ＬＦＡ物語/作者 投稿日： 2003/05/29(木) 01:21
- 今日はここまでです。
ええ、キラはここまで情けないんです。
ヤツにとって、フレイ様も含め、全ては「護る」対象であって、
成長したフレイ様の「共に戦う」という意志とは相容れないのです。
次回は大混乱のＡＡ、そして予期せぬＭＳの登場（トゲトゲ）。
果たしてフレイ様は残存艦隊を守りきれるのか？そして振られたキラは？
よろしければ、御期待下さい。
- 387 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 01:25
- >>386
乙フレー。
甘ちゃんのキラがブチ切れて最悪の結末になりそうな予感・・・。
続きが気になって寝られんかも(;´Д｀)ﾂﾂﾞｷｵﾏﾁｼﾃｵﾘﾏｽ
- 388 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 01:35
- >>386
乙フレー。
フレイたんどうなっちゃうの(；´Д｀)
本編同様ﾄﾞｷﾄﾞｷです。
もう気になって眠れません。
作者様はマジで神ですね。
でもキラフレ好きなので少し(´･ω･`)ｼｮﾎﾞｰﾝ
本編ではもうちょっと成長しててﾎｽｨ
- 389 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 01:52
- >>386
乙。ここまで来たら最後まで突っ走ってﾎｽｨ
>>388
キラフレ好きの神の降臨を待つのだｗ あるいは自分で（ｒｙ
- 390 名前： ＬＦＡ物語/作者 投稿日： 2003/05/29(木) 01:55
- 寝る前に一言。
漏れもキラフレなんでつ……
キラフレへの歪んだ愛情がこんなカタチに……
- 391 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 02:54
- キラ・・・ヘタレすぎる・・・完全にフレイ様のかませ犬ですな。
彼に汚名返上のチャンスは到来するのか？
- 392 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 03:14
- >>391
フラガ「キラ・・・死ぬぞ！それでも行くのか？」
キラ「はい・・・フレイは絶対に死なせない！！」
クライマックスで、これぐらい言ってほしいもんだ。
- 393 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 06:41
- 乙です！単行本化キボンと言ってみたりｗ
しかし、これだけの分量書くと言う事自体が信じられません。凄いですね。
スレ汚しになるから連載終わるまでは投下は控えよう…
- 394 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 09:37
- スレ消える前にHPに保守っておくと頭がいいぞ
- 395 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 10:00
- >369-386
おつふれ〜。
予想通りと言えばそれまでだが、キラ本当にフラれちまったよw
いやしかしまさかここまで成長して無いとは…（AAの面々もあれですが）
30話から１クール分退行している感じですな。
フレイ様に届くように、そのためだけに戦い続けたと言うのは、
確かに「どうよ、それ」という感じですが、胸に来るものもあり。
フレイ様が打ち捨てた「恋に走る」を
実践したのはキラだったと言うことでしょうか。
キラは汚名返上出来るか否か!?
次回も楽しみにしています。
- 396 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 10:42
- 乙ふれ。
落涙とまらず(´Д⊂
フレイ様、いい女になったね、でも哀しすぎだ･･･。
- 397 名前： ＬＦＡ物語/作者 投稿日： 2003/05/29(木) 11:48
- このＳＳで、「フレイ様はやっぱりいい女だ」と思って頂けたら、
いい意味で漏れの勝ちです。それでは、投下用意〜
あ、ＨＰ無いので…出来たら、フレイ様保存庫や南極にでも収めていただけたら。
作家の業として、色んな人に読んでもらいたいと思うので。
- 398 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/87 投稿日： 2003/05/29(木) 11:53
- >>377 シュトライバーは曹長ではなく、少尉に昇進してまつ。
後で気付いた…
「オーブ所属艦、アークエンジェル。聞えますか？
ブルーコスモス皇女、フレイ・アルスターです。
繰り返します。
オーブ所属艦、アークエンジェル。聞えますか？
ブルーコスモス皇女、フレイ・アルスターです。
一時停戦を望みます」
やかましいほどだった無線の混乱が、オーケストラの最終章のようにピタリとやんだ。
私にはおかしくて仕方が無い。
もう一度試みるかと発声しようとした瞬間、無線機が赤く点滅した。
『…フレイ？』
ああ、この声だ。懐かしい、もう一人の大切な人。
「サイ？久しぶりね」
『……』
それきり、サイは沈黙した。アークエンジェル全体が不気味な沈黙を守っている。
いつまでもこうしているわけにはいかない。
焦れてきた私は、レーザー照射機を展開、アークエンジェルの斜め上方から狙いを定める。
「さっきの答えを聞かせてくれる？今すぐやりあう？それとも話し合って見る？」
- 399 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/89 投稿日： 2003/05/29(木) 11:54
- 『ま、待って、アルスター！』
ようやく艦長、マリュー・ラミアスが出た。
私は照射機を収納した。
『本当に、フレイ・アルスターなの？』
「そうよ、この声聞いてわからない？」
私はコンピューターに手早くコードを打ち込んだ。
正面モニターにウィンドウが開き、アークエンジェルの艦橋が投影される。
もちろん、向こうには私の姿が大写しになっているはずだ。
唖然と口を開けるクルーの姿が映った。
私はヘルメットを脱ぐと、髪をほどいた。無重力空間に漂う、赤い私の髪。
手早くまとめ、アークエンジェルにいた時のようなポニーテールにした。
これも作戦の内だが。
映像に動きがあった。艦橋の扉が開き、サイとミリアリアが飛び込んでくる。
『フレイ！！』
今にも私に向かって飛び掛ってきそうな二人をマリューが制止する。
『アルスター、元気そうでなによりね』言葉とは裏腹に顔をしかめ、沈痛そうなマリュー。
「そちらもね。サイもミリィもカズィも元気そうで安心したわ」
『馬鹿野郎が……』
サイが腹からねじきれそうな声を出した。
やっぱり。言うと思った。
「でもね、ラミアス艦長。私はなにも再会を祝うために来たんじゃないわ」
『………』
「交渉よ」
- 400 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/90 投稿日： 2003/05/29(木) 11:56
- 『説明してくれる？』
マリューの口調は、私がＡＡ所属の二等兵に対するものそのものだった。
それで威圧感をもたらす為か、萎縮させる為か、それとも説得させるためか。
「簡単よ。今、私の指揮下には月面から脱出してきた艦隊があるわ。
私達はあなたの後ろの宇宙プラントと交渉し、降伏を受諾されたわ。
だから、そこへ移動中なの。それに際し、あなたの艦の傍を通過しなければならないわ。
ブルーコスモスとオーブはまだ交戦中ですが、我が艦隊が降伏するまでの間、停戦を提案します」
『本気？』
「ええ」
私とマリューはモニター越しに睨みあった。
『私達が受け入れなかったら？確かに戦艦の数はあなた方の方が多い。
けれど、私達には最強のＭＳがあるわ。戦力的には私達の方が遥かに優勢なのよ？
どうせ降伏するなら私達オーブに、今すぐ、無条件降伏なさい』
「最強のＭＳ？私の後ろで、レーザー突きつけられて固まっているヤツ？」
私は鼻で笑った。マリューは蒼白になるかと思ったが、哀れんだような目をしていただけだ。不快な気分だ。
『私達の戦力は、フリーダムだけじゃないわ。まして…』
「…カードは見せないってわけね。別にいいわ」
この方向から攻めるのはやめだ。
別の攻略ルートを見つけなければ。
私は乾いた唇を舐めた。武器の手入れをするように。
- 401 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/91 投稿日： 2003/05/29(木) 11:58
- 「話題をかえるけど、オーブに降伏したブルーコスモスの噂は聞いてる？」
『！！』
今度は成功した。マリューの顔から血の気が引いていく。
「確か、ザフトに引き渡されて、その後の捕虜の運命は不明。
私達が降伏しても、あなた方が私達をザフトに渡さないと確証は？」
『アルスター！私達はそんな非人道的なことを…！！』
「へぇ、じゃあザフトは非人道的なことをしてるのね」
やはり私の方が一枚上手だ。
『…す、少なくとも、私達オーブは捕虜を人権に基づいて、適正に扱います！
あなたもこの艦にいたから、そのことは知っている筈よ！！』
ディアッカのことを言っているのだろう。動揺しながらも反撃してきた。
「アークエンジェルの対応が適正だったことは認めるわ。でも、それは連合の話。
今のあなた方はオーブなの。それに、オーブには捕虜をザフトに引き渡した前科があり、
あなたの艦の隣にはザフトの艦がいる。後ろにはザフトの大艦隊がいて、もうすぐ到着する。
これでもザフトに引き渡さないと言える？」
『……』
マリューは考え込んでいるようだった。
政治家として、指揮官としても彼女は失格だが、今はそれが頼りなのだ。
ブルーコスモスに、私達に残された唯一の命綱。
私は切り札を出すことにした。恐らくマリューにしか使えない、ジョーカーを。
「それに、捕虜をアークエンジェル一隻で処理できるかしら？」
- 402 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/92 投稿日： 2003/05/29(木) 12:00
- 『なんですって？』
「月から脱出した時、各艦とも載せられるだけ人は乗せたわ。兵士だけじゃない。
軍属も、民間人もいる。見せて上げましょうか？」
返答を待たず、ファイルを呼び出した。
今、アークエンジェルのモニターには、ブルーコスモス艦艇内の状況が映し出されているだろう。
疲れ切った兵士、着の身着のままの軍属、疲れた難民と思しき婦人と、元気一杯でたしなめられる子供たち。
「これが、今の私達の艦隊よ。一隻に一万人は乗っているわ。アークエンジェルの独房は何個あったかしら？
仮にあなたが捕虜をザフトに引き渡さなかったとして、それはアークエンジェルに乗っている人々だけでしょうね。
さて、他の人々はどうなるの？」
私はファイルを開いたまま、マリューに迫った。
マリューは画面を食い入るように眺めたままだ。
相手がザフトや生粋の軍人には使えない禁じ手。
第8艦隊脱出時に守れなかったシャトルを想い出させ、情に訴えて停戦を勝ち取るのだ。
我ながら卑怯な手だと思う。マリューの、いや、アークエンジェルのトラウマを利用した誘導作戦なのだから。
だが、このファイルを見た以上、マリューはこのことを無視できない。
ザフトや普通の軍人ならば躊躇なく艦隊ごと沈めるだろう。マリューにそれが出来るだろうか？
出来ないはずだ、と私は考えた。
そして、私達を通過させた後、ザフトをむざむざと通過させはしまい。
私達の盾となって同行するか、消極的サボタージュで、進路を邪魔するか。
少なくとも、なんらかのリアクションは起こす。稼いだ時間を元に、ＭＳ隊が数分食い止めれば、私の勝ちだ。
- 403 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/93 投稿日： 2003/05/29(木) 12:01
- 「もう一つ提案があるわ」
『……何？』
僅か数分の交渉なのに、マリューはすっかりやつれて見えた。
……ごめんなさい。
心の中でわびるが、まだ、折れるわけにはいかない。
「あなたが停戦に合意してくれるなら…艦隊の降伏後、私はアークエンジェルに投降するわ」
『な、馬鹿な！！』
割り込んで来たのはサイだ。
『ここにきたら、オーブにきたら、君は間違いなく殺されるぞ！
せっかく受け入れてくれる場所があるなら、そこに行けばいいじゃないか！！』
「…違うわサイ。これは交渉よ。
ギブ・アンド・テイクなんだから。見返りを与えるのは当然じゃない。
そして、ブルーコスモスがアークエンジェルに与えられるものは、私ぐらいしかないもの」
『…なぜ、なぜだ、フレイ。なぜ自分から死ぬような真似を…』
「サイ。私はヒトラーやスターリン並みに歴史に残る虐殺をしようとしたブルーコスモスのリーダーよ。
静かに余生を送れるとでも思うの？」
『…お前は、本当に大馬鹿野郎だよ！！』
サイの悲痛な叫びが私の心をえぐった。
鈍感な私にも、サイの痛み、サイの想いはわかる。わかるからこそ…。
アークエンジェルの人々も、黙然としている。
私は時計を見た。あと15分。
ザフト艦隊の射程距離はすぐそこまで迫ってきている。間に合うだろうか？
背中を嫌な冷や汗が伝わった。
- 404 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/94 投稿日： 2003/05/29(木) 12:03
- 『…了解した、ブルーコスモス』
「え！？」
気をとられていたので、確認が遅れる。
『アルスター皇女。我がアークエンジェルはあなたを信じ、停戦に応じます。
ブルーコスモス艦隊のこの宙域の通過を認めます』
『艦長！！』
ＡＡクルーが騒然となる。
断腸の思いだったのだろう。
眉間に深い皺がよせられ、マリューは一気に老け込んだようだった。
「わかりました、アークエンジェル。私の名に誓って、条項は守ります。
艦隊のステーション到達を確認次第、降伏します。それまで私はここで待機します」
そこで無線を切った。
私は大きく息を吐いてシートにもたれかかった。
やった。やりとげた。
そこで初めて、心臓が自分でも分からないほど速く脈打っているのを覚える。
「これで…約束は守れるわ、アルカード……」
突然、センサーの反応音が開放感のあまりまどろみそうになっていた私の意識をコクピットに引き戻した。
「ＭＳ反応？…アークエンジェルからじゃない？後方のザフト艦！？」
カタパルトが展開される間もおしいのか、一機のＭＳが飛び出してきた。
小豆色の塗装にフリーダムとは異なる鋭角的なシルエット。
背部に展開したウィングはフリーダムが天使の翼を思い起こさせるのに、この機体は悪魔のそれだった。
フリーダムと対になって建造された、もう一機の最強ＭＳ。
「ジャスティス！？」
『ブルーコスモスの皇女、聞えるか？俺の名はアスラン・ザラ。
キラやアークエンジェルがお前にたぶらかされようと、俺は騙されはしない！！』
明らかに殺意を含んだ声が私を貫いた。
- 405 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/95 投稿日： 2003/05/29(木) 12:09
- 「どういうこと！？」
『この、大馬鹿野郎！！』
「！！」
サイやキラから言われるなら解る。だが、ほとんど初対面の人間から面と向かって罵倒される筋合いはないはずだ。無性に腹がたった。
「ちょっと、聞き捨てならないわね。ザラさん、だっけ。あんたに私の何が解ると言うの？
私とキラとのことに、アークエンジェルとのことに、口を出す権利があるの？」
『あるさ。キラは、俺の親友だ！そして、俺は、今回の掃討作戦において、戦場での全ての権限を与えられている』
キラの親友。ＡＡをしつこく追いまわしたのも、キラを行方不明に追い込んだのも、確かこいつ。
「複雑な事情があるみたいね」
『ああ。それも、これも、全部お前の責任だ！！』
「ちょっと、なんでよ！
そりゃ、戦争になった責任は私にもある。
けれど、キラのことにまで責任は持てないわよ！！」
『ここ最近、俺たちは共に行動することが多かった。
あいつから、いつも相談を持ちかけられた。全部、お前のことだ！！
あいつ、出撃する前も、帰ってきた後も、いつも顔をゆがめて、苦しそうで、誰とも話そうとしないで、
一人黙々とＭＳの調整をしていたんだ。
自分だけじゃない。汎用ＭＳのデータも、他人の分まで、オーブや連合に渡すものまで調整していたんだ。
なぜかわかるか？』
- 406 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/96 投稿日： 2003/05/29(木) 12:11
- 「…」
『ブルーコスモスを一日でも早く叩き潰して、お前を解放するためだ！！
その為に、自分の手を血に汚しても構わないと決意して…。
あいつ、戦場に立てるほど、兵士として敵を躊躇なく殺せるほど、強い奴じゃない。
優しくて、繊細で、傷つきやすくて。そんなヤツが、お前のために！！
あいつが、キラが、お前のことをどれ程思っていたか、愛していたかわかるか！！』
「わかるわ」
私は静かに呟いた。そう、キラも私と同じことをしようとした。戦争を終わらせようと。大切な人を救おうと自ら決意した。
ただ、私は自分の義務を果たそうとすることで。
キラは、ブルーコスモスという鎖から私を解き放とうと。
私はＬＦＡの報告書を思い出した。
戦争が終盤に近づくにつれ、オーブや連合のＭＳが徐々に手強く成ってきているという報告だった。
ＯＳが飛躍的に強化されているらしいが…それは、キラのＯＳだったのだ。
キラだけでなく、全てのＭＳが強くなり、そしてブルーコスモスの兵を一人でも多く倒すことで、戦争を早く終わらせる。
それが、キラの戦争だったのだ。
皮肉なことに、キラは敵を倒せば私を救えると考え、私はキラの敵をあくまでも護りぬこうとした。
『嘘だ！お前はなにもわかっちゃいない。
…戦争中、戻って来れなかったことはまだ、認めよう。
だが、さっき、キラがお前を助けようと手をさし伸ばしたのに、撥ね退けたのはなぜだ！』
「そんな…！！」
- 407 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/97 投稿日： 2003/05/29(木) 12:13
- 『キラが、どれだけ苦しんで戦っていたか。
キラがどんなに思いつめていたか、俺にはわかる。
あいつが、あいつなりに必死に考えて、悩んで、お前を許そうとしたのに、なぜお前は…！！』
言いがかりだ。
先程は、私にとって最大の懸案が、アークエンジェルとの交渉・残存艦隊の無事を確保することだったからだ。
それに比べて、キラへの優先度が相対的に低下しただけのこと。
『こともあろうに、俺たちに降伏しようとした！！仲間の命を守るため？
お前の仲間は、コーディネイターを抹殺しようとした犯罪人だぞ！
そいつらを庇うために、お前自身の命を差し出すのか！？
キラがお前の言葉にどれほど傷つけられたか、わかるのか！！
お前は、キラの助けを蹴ってまで、あの連中を護るというのか！！』
「そうよ！！」
私は、一点のよどみなく言い切った。
「キラを傷つけたことは、私も重々承知している。
私だって、キラと共に生きられたら、どんなに幸せか。そのぐらいわかる。
でも、でもね…！！」
おかしい。私、最近泣いてばかりいる。
「私には約束がある。
大切な人から、ブルーコスモスの人々を護ることを託された。
そして、私自身が決断したの。その約束を守ろうって。
私が、自分の意志で、彼らを護ろうって。
その為には、私の命なんて、どうなろうと関係無いわ！！」
- 408 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/98 投稿日： 2003/05/29(木) 12:14
- 宇宙に、沈黙が舞い降りた。
それを破ったのはアスランだった。
彼の声は震えていた。今にも泣きそうだと思えた程。
『そうか…。そうか…。フレイ・アルスター。
キラが愛した女。お前は、あくまでも皇女として歩むと言うのか……』
「……」
『ならば、教えてやろう！！』
ジャスティスが双眼を妖しく光らせた。
『皇女よ。俺達が、たった二隻だけでノコノコ現れたかと思ったか？』
「まさか…！！」
アークエンジェルと、ザフト艦の後方に広がる闇が動いた。
いや、闇が割れた。潜水艦が水中から巨体を跳ね上げるように、ザフトの戦艦が何隻も出現する。
その数、１０。ザフト艦隊特有の四角錐型の立体陣形をとっている。
「…偽装シールド！？」
『ブリッツの、ニコルの遺産だ。さて、皇女。お前の戦力でここを突破できるかな？
戦艦だけじゃない。ザフトの精鋭ＭＳ部隊と俺もいることを忘れるな。だが……』
ジャスティスが動いた。
私が、予期せぬ艦隊の出現に呆然としてしまった。その一瞬だった。
気付くと、ジャスティスが至近距離からビームライフルを突きつけていた。
- 409 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/99 投稿日： 2003/05/29(木) 12:16
- 「な！？どういうつもり！？」
『決まっているだろ、皇女。
お前がどこに降伏しようと、お前の運命は決まっている。わかっているな？』
「…ええ」
『そうだ。最重要戦争犯罪人として極刑。処刑方法はいろいろあるだろうが、そのルートは変わらない。
ならば、今、ここで裁かれてもいいだろう』
「！！！！」
ライデンの胸部につきつけられた黒光りする銃口が。
アスランの、一片の感情も篭らぬ声が、単にブラフではないことを何より雄弁に物語っていた。
私は全く動けなかった。ほんのちょっと腕や脚を動かしただけで、その瞬間、ビームに撃ち抜かれているだろう。
ライデンの重装甲も、この至近距離では役にたたない。
一発、せいぜい二発耐えるが限度だろう。トリガーを引き続けるだけで貫通される。
「うそ…。アークエンジェルとの交渉が成立したのよ！？
あんただって、アークエンジェルと行動しているなら、従いなさいよ！」
自分でも血の気が引いていくのがわかったが、反撃しないわけにはいかなかった。
アスランは余裕だった。憎たらしいほど落ち着いていた。
『皇女、先程までの余裕はどうした？
残念ながら、俺のザフト艦隊は、アークエンジェルの、オーブの命令系統には属していないんだ。
ザフトとオーブは、軍事同盟を結んだというだけで、どちらが上とかは無い。
今、俺がここにいるのもアークエンジェルとの共同作戦をしているからだ。
だから、君とアークエンジェルが停戦したからといって、ザフトがそれに従う義務は無い』
「そ、そんな……」
『さようならだな、フレイ・アルスター。
お前は馬鹿な女だった。折角キラがお前を救おうとしていたのに、それを自ら捨てるとは。
その報いをうけるがいい』
アスランは本気だった。
- 410 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/100 投稿日： 2003/05/29(木) 12:18
- 彼は、なぜここまで私を憎むのだろう。
キラやサイだったらわかるけど…。
もしかしたら…。
キラを、私に取られたと思ったの？
キラのことが大切だから…。
彼を苦しませる私は、殺さなくてはならないと、そう考えたの？
彼を苦しみから解放するために、私を殺すの？
そんな馬鹿な。
そんなくだらない理由で、私は死ぬの？
嫌。
嫌。
これが、死ぬということなの？
私……まだ、死ぬわけにはいかない！！
死にたくない！！！
- 411 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/101 投稿日： 2003/05/29(木) 12:20
- 突然、閃光がモニターを覆った。私は撃たれたのかと思った。
コクピットモジュールを突き破ってきたビームが、真っ白の光として認識されたのかと思った。
二人の男の声がした。
『フレイ様！！』『アスラン！！』
何が起きたかもわからず、私はただコントロールスティックを握り締めていた。
閃光は直ぐに収まった。
死んでいない？
私は指先を動かして見た。動く。
状況を確認。天国でも、地獄でもない。ここは、ライデンのコクピットだ。
「！！」
予期せぬものは、眼前にあった。
右半身が消失したジャスティス。
えぐりとられたように、右腕、右足、右翼、そして胸部の一部が融解していた。
私は状況を把握した。
後方に控えていたシュトライバーが、私の危機を察知して、ジャスティスを狙撃したのだ。
私に当たらないように砲撃したため、ジャスティスも致命傷は逃れたようだ。
コクピットは無事だった。ただし、アスランが衝撃で気絶したことは間違いないだろう。
私は大きく息を吐いた。
「た、助かったわ…。ありがとう、ヴォルフ…」
私はライデンごと後方を振り向いた。
返事はなかった。
- 412 名前： ＬＦＡ物語/作者 投稿日： 2003/05/29(木) 12:27
- アスランに関しては、キラとフレイの対決という構造上、どうしても
キラの意図を代弁する狂言まわしの役を当てはめざるを得ませんでした。
彼はキラのことが本当に大切だと思っていたので、キラを苦しめ続けるフレイは許せないだろうと。
嫉妬も確実に入ってますけど。
さて、ついに最終局面です。
フレイを取り戻すために、敵（ブルーコスモス）を討とうとするキラ。
守るべき戦友達を救うため、敵（ザフト、そしてキラ）から守りぬこうとするフレイ。
キラとフレイは、そしてＡＡに居候している痔はどうなるのか？
- 413 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 13:47
- >397-412
乙！
マリューの性格に付け込んだ交渉術、お見事ですフレイ様。
しかし、種一の無能キャラと言われたフレイ様が、こんな局面で
艦隊数個分と引き換えになる価値を持つようになるというのも
ある意味皮肉な話ですね。
サイもマリューも必死だけど、
フレイ様はそれ以上に必死なんだと気づいてくれると嬉しい。
それにしてもアスラン…気持ちは分かるが怖すぎる…。
ていうかこいつも作戦総指揮という大任担ってるんなら
少しはフレイ様の心情も察しがつくだろうて…
いや、キラの優先順位が高いのは分かってるが。
結局、キラはフレイ様の最大の敵になってしまったということでしょうか。
切ないなぁ…。
- 414 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 14:12
- このスレはじめて見たけど凄いなぁ・・・
もっと早くから見とけばよかった。
続きが楽しみです。頑張ってください！
- 415 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 17:33
- 乙です〜。
この時のアスランは、キラに拒まれた昔の自分とフレイに拒まれた今のキラを重ねていたのかもしれませんね…。
続き、楽しみにしています。
- 416 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 17:56
- 大作乙です。
ただ一点だけ僭越ながら申し上げると……フレイ様の成長過程の描写はお見事なのですが、
その対比対象である他レギュラーキャラの成長ぶりが一様に停滞、
あるいは退化してるように見える事については、いささか腑に落ちませぬ。
フレイ様主役の妄想SSに、わざわざ水を差す差し出がましさは百も承知のうえですが、ぜひご高配を賜りたく。
- 417 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 18:35
- 乙フレー。
毎回面白すぎでつ。
ついに最終局面かぁ。
次の投下で最後ですか？
続き楽しみにしています。
フレイ様がキラと戦ったりしたらどうしよう((((；ﾟДﾟ)))ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ
- 418 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 19:19
- 乙フレで〜す！！
まさにフレイ様の独壇場！！
イイッす！
アスランもなんからしくてよかった。
ラストスパート頑張ってください。
- 419 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 20:17
- なにか、５月末ぐらいから伸びがすごいなこのスレｗ
- 420 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 20:28
- 神々大量出現で高天原状態になってるからなｗ
立てた当時はpart2に行く事はあるまいと思ってたが、
この調子だとあり得るかも…
- 421 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 20:52
- マジで尊敬します！
今までの全て保存させて頂いてます。
凄い容量ですね。ワードで合計１８０ＫＢもありました。
ラストスパートがんばって下さい。
楽しみにしながらＰＣの前で正座してます。
- 422 名前： 世界名作劇場ノリで行ってみようか 投稿日： 2003/05/29(木) 22:25
- ある所に、一組のカップルが住んでいました。
まだ戦争の傷跡が癒えない時代。
二人もまた戦禍の中で多くのものを失ってしまいました。
でも、二人は、ただ二人でいるだけで幸せなのでした。
「じゃあ、行ってくるよ」
男の方は、毎日仕事に出かけていきます。
女は、男をキスで送り出します。
そんな平和な日常が、ようやく当たり前だと感じ始めた、ある日の出来事です。
いつものように男を送り出すと、女は慌てました。
地球の天気は気紛れです。ついさっきまでは晴れていたのに、突然の天気雨。
開け放しの窓を閉めようと、慌てて家の中に駆け込みました。
裏庭のドアを閉めようとした時、彼女はみてしまいました。
眼鏡をかけた、虚ろな目をした男がじっと、こちらを見ているのを…
男が帰ってくると、女は男にその話をしました。
男は女を心配したのか、表情を硬くして、
「これからは鍵をかけて、怪しい者は家にいれないようにするんだよ」と男は言いました。
女はこっくりとうなずきましたが、内心は不安を隠せませんでした。
その夜、女は怖くて怖くて、不安で不安で眠れません。
こっそりとベッドを抜け出すと、男の部屋へと向かいます。
「…眠れないの！？」と言う男に、不安そうな目をした女は少し涙ぐんでしまいました。
男は、自分のベッドに女が入れてやり、一緒に眠る事にしました。
男の温かさを身体全体に感じながら眠りにつける。
この温かさが、幸せという事なんだと、女は実感し、そう思うとまた涙がこぼれてきて、
男に気づかれないように女は目を閉じました。
次の日、男を送り出した後、女は恐る恐る裏庭を覗いてみました。
…眼鏡の男はいませんでした。
胸を撫で下ろしましたが、漠然とした不安感は消えません。
何故なら、その男には何処かで、過去に何処かで会ったような気がするからです。
しかし、女の記憶は影になっているようで、どうしても「〜気がする」でしかありません。
そんな状態が、より女の不安を強くするのです。
しかし、それも何日も姿を見ないうちに段々と小さなものになっていきました。
決して裕福とは言えないけれど、ささやかな、温かい家がある。
それ以上、何が必要だというのでしょうか？
二人は、充分幸せでした。
そう、二人は…
- 423 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 23:05
- 乙フレです。
実に(((((( ;ﾟДﾟ)))))ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ な話しですな・・・
いや、経験上素直に笑えなくて
でもとんちが利いててよかったと思います。
- 424 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 23:16
- >>422乙フレ〜！！
どっかで聞いたような話だなぁ。
元ネタなんでしたっけ。
- 425 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 23:17
- >>422
*****
（＠台＠）y─┛~~ ＜乙。漏れは皆が幸せならハッピッピーだＹＯ！
/(ﾍ ω )ﾍ
- 426 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 23:23
- サイ、いい香具師だなお前(´Д⊂ヽ
新たな恋、を噂されていたアストレイ３人娘は外伝の主人公にお熱でもはや出目もなく。
このままどこにいってしまうのか、サイ！
- 427 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 23:24
- >>424
え…元ネタっぽいものあるの？
一応俺の頭の中で考えたんだけどｗ
まぁ、誰でも考えそうな話ではあるしな…（苦藁
どうやら終わった事になってるので、続き考えたんだけど止めとくかｗ
何かダークな話になるし。
- 428 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 23:27
- >>427
いや、続きもぜひ見てみたいです。
怖い童話を読んでるみたいで・・・やみつきになりそうｗ
- 429 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/29(木) 23:45
- >>427
私も読みたいです。お願いします。
- 430 名前： 世界名作劇場ノリで行ってみようか ２ 投稿日： 2003/05/29(木) 23:59
- 眼鏡の男は、一人で酒を飲んでいました。
飲まずにはいられませんでした。
あそこには自分が欲しかったもの全てがあり、自分は…全てを失った。
幾分かは、自分から招いた結果でもあるのですが、やはりどこか釈然としないものがあります。
あの月日が、何か夢幻のように思えるのです。
しかし、幾ら酒を飲んでも、それを忘れる事は出来ません。
あれから幾年かを経て、たどり着いた町で、偶然、見てしまったのです。
それは、運命としか思えないのでした。
「そうだ、これは運命だ。俺に、もう一度、神様がチャンスをくれたんだ」と思ったのです。
一方、男は友人と会っていました。
「どうやら来るべき時が来た」と、男は覚悟を決めたように言いました。
友人は、少し心配そうでしたが、黙って聴いてやる事しか出来ません。
これは、どうやら自分には手の届かない問題らしい事が分かっていたからでした。
しかし、異様に緊張している男の様子を見ていると、できることなら何かしてやろうと言う気持ちになるのでした。
そんな男達の事を、女は何も知らずにいるのでした。
明るい月夜でした。こんなに明るい月光は本当に初めてだったかもしれません。
もうすっかり眼鏡の男の影も忘れていた女は、ふと、外で月を眺めてみたくなりました。
町の復興もまだまだ途中で、街灯も少ないので、月の出た空はほんの少し蒼味を帯びて見えました。
庭に植えられた木々が、月光に照らされて美しい銀色に光っています。
その美しさに見惚れていると、ふと、庭の向こうに何かの影が動いたような気がしました。
眼鏡の男でした。
- 431 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/30(金) 00:42
- 愛され隊ネタきぼんしまふ
- 432 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/30(金) 01:52
- >>430
乙フレ〜！
・・・・火サス！？
- 433 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/30(金) 03:03
- >>430
「友人」ってやっぱりあのお方ですか？
- 434 名前： 世界名作劇場ノリで行ってみようか ３ 投稿日： 2003/05/30(金) 11:05
- その姿を見た時、女は心臓が止まりそうになりました。
心の闇の中から、何かが頭をもたげ自分自身に襲い掛かってきそうな気がして、立ちすくむだけでした。
声を出そうにも、見えない何かに口を塞がれたようでした。
眼鏡の男は、黙って悲しそうな目で、まっすぐに見つめていました。
その視線も、何か…何か心の何処かで引っかかるものでした。
口が動いたようでしたが、声は聞こえませんでした。彼の声が小さすぎるのか、緊張のあまり聞こえなくなってしまっているのか…
月に照らされた影だけがゆっくりと動いていきます。ほんの少し、風が出てきたようでした。
その時、家のドアが開いて、男が出てきました。
その姿に安心した女が振り向いて、声をあげようとすると、もう眼鏡の男の姿は消えていました。
その夜、女は夢を見ました。
これまで行ったことのない…でも、どこかで見たような風景。
何かを叫んでいる自分。たくさんの人の顔、顔、顔…
暗闇の中を走る光の奔流。閃光。爆発。
誰かの手が差し延べられ、その手に包まれて遠くへ、遠くへ連れて行かれる…
そんな夢でした。
次の朝、女は男にその話をしました。
青ざめた男の顔を見て、心配させてしまったかと、女は少し後悔しました。
出かけるとき、「今日は早く帰るから」と、男は女の頬にキスをしました。
男の姿が見えなくなってから、男の方からキスをしたのは初めてだった事に気づきました。
- 435 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/30(金) 11:30
- >>434
おつふれ。
何だかドキドキしてまいりましたｗ
- 436 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/30(金) 12:43
- >422,>430,>434
乙〜。
なんだかサスペンスを見ているような気分で拝読しています。
でも、女と男（あえて代名詞で）のやりとりが愛し合ってる者同士、
という感じで見ていて心地よいですな。
何やら暗雲立ち込めてきたようですが…。続き、楽しみにしています。
- 437 名前： ＬＦＡ物語/作者 投稿日： 2003/05/30(金) 14:47
- >>416
いえ、御指摘はもっともです。
作者自身が「あれ、キラとアスランはヘタレすぎたかな」と思っているのですから。
問題は、このＳＳが全てフレイ様の視点であることです。
キラやアスランとの会話も、全て『』で無線でコクピットに響く音声のみです。
つまり、相手の内面描写が全く出来ず…
要するに、作者の力量不足でございます。
彼らは、彼らなりに成長しているのですが、全てを会話とフレイ様の感想で
描写するのは、力量的にまだまだですね。
そこは反省しております。何とぞ、暖かい目で見てくだされば…
- 438 名前： ＬＦＡ物語/作者 投稿日： 2003/05/30(金) 14:51
- さて、ラストのはずなのに、どんどん話が伸びているのは気のせいですかｗ
今回の投下でもラストは遠いです。
昨日今日と頭痛でぶっ倒れいたので、少々すすみ具合が鈍いですが、ご了承を。
では、投下用意〜
- 439 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/102 投稿日： 2003/05/30(金) 14:53
- 「う、そ……」
先程から、予想外の事態が繰り返されている。
アスランに殺されそうになったら、眼前のジャスティスは撃破され、
振り返ればシュトライバーからの反応が無い。
３３２号機は、破片を撒き散らしながら、宇宙を漂っていた。
頭部の真横に高出力ビームの貫通孔。
その延長線上には、ビームライフルを構えたフリーダムが、これも呆然とした様子で漂流している。
真相はこうだった。
シュトライバーは私の危機を見抜いた。
そして私を救うべく、レーザーをジャスティスに向けて照射。
それを、私の機体の影でジャスティスが認識できなかったたキラは、アスランが死んだと誤認。
最大出力のビームライフルで無防備な姿をさらす３３２号機を狙撃した。
『フレイ…僕は…僕は…』
キラの弱々しい声が無線に割り込んで来た。
シュトライバーは死んだのか？
私はレーザー照射機を展開した。彼がくれた、一瞬のチャンス。
彼は死ぬ筈だった私に命を与えてくれた。彼に報いるためにも、この機会を無駄にしてはいけない。
『フレイ！！聞いてくれ、僕は、僕は！！』
両肩に装備されたレーザー照射機に、莫大なエネルギーが集まっていく。
反応炉のエネルギーを一時的にチャージ。
全てを照射機に送り込むことでレーザーの威力を倍増させるターボ攻撃だ。
「う、うわぁぁぁぁぁ！！！」
私は絶叫しながら照準をあわせ、トリガーを引いた。
なぜ、叫んだのだろう。
シュトライバーへの悼み、死への恐怖、生への執着、味方が死ぬことへの恐怖、キラへの想い。
どれもが当てはまるし、違うとも言える。
レーザー発射の凄まじい反動のなかで、私はそんなことを考えた。
- 440 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/103 投稿日： 2003/05/30(金) 14:55
- 永遠とも思えるチャージと発射の時間。だが、実際には数秒のことにすぎない。
そして、最大出力のレーザーは機体の設計どおり目標に向けて照射された。
アークエンジェルの隣を航行していたアスラン艦隊の旗艦に、レーザーが突き刺さる。
爆発はなかった。艦橋と、エンジンが、スプーンでプリンを掬い取るように消滅した。
旗艦は右に傾くと、制御を失って右へ、右へと曲がりはじめた。
衝突を恐れたアスラン艦隊が陣形を乱す。私に砲撃をしてきたが、艦が動きながらでは当たらない。
長居は無用だ。アークエンジェルとの交渉は成立した。
後は、最後の難関、アスラン艦隊を突破するのだ。
- 441 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/104 投稿日： 2003/05/30(金) 14:56
- 反転加速するライデンの中で、残存艦隊と連絡をとる。
「ティヒゼン艦長！！交渉成立！！」
『おお、さすがはフレイ様！！民も喜びましょうぞ！！』
「喜ぶのは早いわ。敵艦は、アークエンジェルだけじゃなかったの！」
ティヒゼン以下の表情が固まるのが不鮮明なモニターを通してもはっきりとわかった。
「ザフト艦隊が待ち伏せていたわ。偽装シールドに隠れてね。
もし通過しようとしていたら、至近距離から砲撃をうけて全滅していたわね」
『敵艦隊の規模は？』
「戦艦が十隻。ジャスティスは戦闘不能にしたわ。今なら私達の戦力でも突破できると思う。
艦長、ＭＳ部隊を呼び戻して！！」
『え？しかし、彼らは万が一の場合の…』
「もうそんな事態を想定している場合じゃないわ！！
目の前の封鎖線を破らなきゃ、ポツダムへはたどりつけないの」
『しかし…これは賭けですぞ…』
「人生なんて、賭けみたいなものよ。それに、月からの脱出行自体が大博打なのよ。
いまさら賭けるチップが増えたところで構うものですか。
さぁ、ＭＳ部隊を、早く前面へ！！」
『了解！！』
- 442 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/105 投稿日： 2003/05/30(金) 14:57
- 手早く通信をきると、私は３３２号機へと機体を接近させた。
無線の呼びかけにも、全く応答が無い。
死んでしまったのか？それとも無線機が壊れただけか？
一か八か、接触回線ならば…。
「ヴォルフ、聞える？フレイよ。ヴォルフ？」
『……フレイ様？』
やった！思わず顔がほころんだ。彼は生きていた。衝撃で気絶していたのだろう。
「ヴォルフ、生きているのね！！良かった…。状態は？」
『すみません、腕を骨折しました…。機体の方も、飛ぶのがやっとです』
「誤るのはこっちよ。状況判断が甘かったんだから。それより、お礼をいわなきゃね」
『なぜ…ですか？』
どこまでも純粋なのだから。私は被りをふった。
「貴方がいなかったら、私は生きていなかったわ。だから…ありがとう」
『フレイ様……』
私は３３２号機を後方から抱きかかえると、ゆっくりと機体を加速させた。
負傷したシュトライバーに負担がかからないようにするためだ。
頭上を、フリーダムが立ち尽くしている。呆然自失しているようだ。
「キラ…。ごめん、あとで。帰ってくるから…」
『……』
反応はないが、キラにも私の言葉は聞えているはずだ。
キラと話すことは山ほどあるが、今はシュトライバーを残存艦隊へ連れてゆき、救護を受けさせることの方が先決だ。
モニターの中に、旗艦「アドミラル･レーダー」他、艦艇群が入ってきた。
後方から、ＭＳ部隊が慌てて艦隊を追い越して行く。そのままアスラン艦隊に突撃するのだ。
代理指揮官をまかせたパール准尉（艦隊全員、二階級突進させた）が２２２号機で敬礼しているのが見えた。
私も敬礼を返す。
その様子を見ながら、私は旗艦へと進路をむけた。
- 443 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/106 投稿日： 2003/05/30(金) 14:59
- 突然、私の横、ライデンの右至近距離をビームがかすった。
「！！！」
右脚の装甲が、僅かに削りとられた。
ライデンの破片が空間に飛び散り、太陽光と地球の反射光を受けてキラキラと輝いた。
もちろん、見とれる余裕は無い。
ザフトのＭＳかと思った。狙撃されたのかと思った。
ライデン一機を抱えながらだが、素早く周囲を見渡し、敵を探す。
センサーとプログラムも働き、狙撃者を割り出す。
…といっても、その正体は明らかだった。機体に頼らずとも、私にもわかった。
フリーダム。
さらに第二、第三のビームが私達をかすめた。
「キラ！！射撃をやめて！！」
『ダメだよ、フレイ。なんでそいつを庇うんだい？』
「き、キラ…」
『僕はわかったんだ。ブルーコスモスの奴らが一人でも生きている限り、フレイは帰ってこれないって。
ダカラ、ブルーコスモスの奴らはみんな殺すよ。そうすれば、フレイも僕の所に帰れるよね』
「ちょ、ちょっと！」
反論する間もなく、ビームの雨が降り注いできた。
フリーダムの翼が大きく展開し、輝く翼から何十発と連続でビームが撃ち出されて来る。
回避できない！
私はライデンのレーザー照射機を展開すると、いくつかのキーを手早く叩いた。
新型のライデンならば、出来るはず。
照射機から凄まじい電撃がはしり、直撃コースのビームの軌道を曲げて行く。
レーザー発振と位相を揃えるための磁界を開放し、即席のバリアを作ったのだ。
ビームを弾きつつ、危ういところでフリーダムの射角からシュトライバーを連れ出した。
- 444 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/107 投稿日： 2003/05/30(金) 15:01
- 「いったいどういうつもりなの！？
ＡＡとの停戦は成立したわ。
今ここで、私とアンタが戦う意味なんてないじゃない！
それともザラに感化されたわけ！？」
私は、多分一番激しい口調でキラをなじった。
あの、オーブでキラと別れ話となった喧嘩をした時のように。
私の知るキラならば、おどおどした口調と態度を取るのだが…
『さっきも言ったじゃないか。
フレイ、僕は君に戻ってきてもらいたい。僕が君を守るんだから。
でも、そいつらがいる限り、君は永遠に戻ってこれない。
フレイ、僕には解っているんだ。
君はホントは僕のところに帰りたいんだろ？
なら、僕が助けてあげる。
それが、僕の戦う理由だから』
淀みの無いキラの語り。自分の主張に一点の疑問も抱かぬ語り。
私は背筋が寒くなった。
空調は正常なのに、突然何度も気温が下がったようなコクピットの中で、
私はアルカードとのやり取りを思い出した。
- 445 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/108 投稿日： 2003/05/30(金) 15:02
- ＬＦＡでアルカードから軍事の講義を幾度も家庭教師状態で叩きこまれたが、その中で彼はこういっていた。
あれは、初出撃の後。彼と打ち解けてからの話だ。
『皇女。人はいつまでも戦い続けるわけにはいかないのです』
妙に哀しげな眼差しで、彼は戦術マニュアルから目を離した。私は唐突に話題をふられ、ちょっと混乱した。
『どういう意味？だって、戦争が数年続くことなんて、歴史にはゴロゴロしてるじゃない。
旧世紀の宗教戦争なんて、十年二十年平気で戦ってたわ。』
『いえ、そういう意味ではありません。連続して戦い続けることはできないのです。
皇女。戦場は非常に不自然な場所です。
常に緊張をしいられ、死の恐怖にさらされ、戦いの異常な興奮を味わい、戦闘後の奇妙な虚脱感の連続です。
それに人間の神経は長時間耐えられません』
『でも、アルカードやＬＦＡは耐えているじゃない？』
彼は寂しげに笑った。
『私達とて、そういう意味では連続して戦っているわけではありません。
ローテーションを組み、三日出撃したら一日完全休養をとる。
大きな作戦行動の後は一つの中隊を完全休養に出しています。
私もそうなのですよ。ＬＦＡが三個中隊制を取っているのは、伊達ではないのです』
『…そうなんだ。ねえアルカード。
じゃあ人間の戦場にとどまり続ける時間はどのくらいなの？』
- 446 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/109 投稿日： 2003/05/30(金) 15:07
- もちろん、キラのことを思い出しての発言だ。
キラは、私の知る限り、ほとんど毎日緊張状態にあった。
コーディネイターへの憎悪に固まっていた私が、思わず揺らいでしまうほどに。
『…個人差が大きいのですが、最前線の歩兵は一年。パイロットは三ヶ月、長くて半年でしょうな』
『パイロットの時間が短いわ』
『パイロットの場合、体力的な消耗もさることながら、常に出撃に対する待機が神経を蝕みます。
そして、戦死者が出ることが、一番大きい。』
『なぜ？』
『朝、トランプに興じ、談笑し、音楽を聞き、故郷からの手紙を見せ合った者が、出撃から帰還するといない。
主のいなくなった椅子が主人の帰りを待っている。その光景が、パイロットを一番傷つけます。
まして、戦闘が続けば、それは幾度となく再生産され、やがてパイロットはいつかは自分の番だと悟ります』
私は一言もなかった。
私はキラを戦わせ、多くのＭＳを撃墜させ、そしてキラとトールを失った。
二人が帰ってこなかった時、彼の部屋、トリィ、ベッドがどれほど虚しく、そして悲しみに溢れていたか。
トールがいつも座っていたシュミレーションシートにミリィが泣き崩れ、直後、捕虜に凶行に及んだのを、私は見ている。
あの時は、キラを奪ったコーディネイターに改めて復讐を誓ったのだが…。
私はなんと自己中心的だったことか。
それはザフトも一緒だったのだ。
見知らぬザフト艦の中でも、帰らぬパイロットの戦友は彼の帰りを待ち、そして悲しみにくれていたのだろう。
私だけが味わった思いではないのだ。
呆然とした私をアルカードは無言で眺めていたが、やがて煙草を取り出すと静かに火をつけた。
- 447 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/110 投稿日： 2003/05/30(金) 15:10
- しばらく紫煙をくゆらせていたが、意を決したように私に向きなおった。
『フレイ・アルスター。私は時々思うのだよ。人は、戦いに向いていないと』
『……』
『多くの者が、人の本性は戦いを望むと、人間は殺し殺されることで文明を進化させてきた。
戦争は歴史の真実で、人間の真実の姿なのだと。
だから人間の本能は戦いだと声高に唱える。
だが、人は戦いには耐えられない。何十年もある寿命のうち、たった一年やそこらで戦場には留まれない体となり、
精神は迷子になった幼き子供のように身を丸め、魂は故郷へ愛する者の元に一足先に帰る。
人の本性が戦いならば、人はいつまでも戦場に身を置き続けられるのではないか？
人は、戦い続けることに、お互いを殺しあうようには出来ていないのではないか？
動物にも、同種間で子孫をめぐる戦いはあれど、殺しあうことはまずない。
私は思うのだ。
戦いは、人の本性に反することだと』
アルカードは新たな煙草に火をつけた。
『皮肉だな、フレイ。
戦場に立ち、軍人を生業とし、黒騎士と敵から恐れられ、多くの敵を屠ってきた、
戦場を故郷としてきたこの私が、博愛主義者のような考えを持つのは』
一言もなく、私はアルカードを見つめつづけた。
- 448 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/111 投稿日： 2003/05/30(金) 15:12
- 不意に彼が微笑を浮かべた。
さみしげで、自嘲が混ざって、痛くて、そして愛しくて。
『…ごめんなさい。私、あなたに何と言っていいか、わからない。
かけて上げられる言葉が無い。これほど、自分の無知を呪ったことはないわ…。
…ごめんなさい』
『フレイ、貴女が泣く必要は無い。
人は国家や思想の為に戦うことは、まずない。
野望を抱いて戦う者も、たどれば幼少時の個人的な誓いであったり強烈な意志であることがほとんどだ。
そして、多くの人々にとって、戦場で最後の支えとなるものは戦友だ』
『戦友？』
『軍隊の最小単位。小隊、班。
人間的に反する者でも、一度共同意識が持てれば、かけがえのない戦友になる。
人は、その戦友の為に戦うのだ。
…だから、私にとっての戦友は、ＬＦＡの部下達と、そして貴女というわけだな。
さあ涙を拭きたまえ、フレイ・アルスター。
君の涙は美しいが、いつまでも見とれているわけにはいかんよ。
この様子を誰かに見られたら、責任をとらされるのは私だからな』
アルカードは初めて屈託のない声で笑った。
- 449 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/112 投稿日： 2003/05/30(金) 15:14
- 人は、長い戦いに耐えられない。
それを我慢して戦い続ければ、精神に異常を来たし、肉体的にも戦えなくなる。
だが、コーディネイターは肉体的に遥かにナチュラルより無理がきく。
だから、キラは戦い続けたのだ。
傷ついた心を抱えながら。
宇宙から地上へ。私に責められ、少女を守れず、砂漠を経て、親友や同族と戦い、傷つけ殺し合い、私との関係に悩み、自由になる機会を蹴って私を守ろうと決意し、私の生死不詳というプレッシャーに耐えながら戦い、信じていた私の変節にとまどい、理解してくれる者もおらず、逆に周囲から「コーディネイター」という偏見に翻弄され。
壊れない方が可笑しい。
肉体的耐久度を別にしても、私だったらとうてい耐えられまい。
戦場にでることもなく、私は壊れかけたのだから。
- 450 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/113 投稿日： 2003/05/30(金) 15:17
- （キラ、ごめん！！
私がいたから、あなたを苦しめた。
ごめんなさい！！）
フリーダムから撃ち出されるビームを回避しながら、私は詫びた。
そう、私がいなかったら。戦いに彼を駆り出さなかったら。 彼はここまで苦しむことはなかったのだ。
早期に艦を降り、ザフトへ行くなり、オーブに行くなり、平和な生活に戻れたかもしれない。
彼がバカなのでは無い。
私がバカなのだ。
死後に天国と地獄があるのなら、私は間違いなく地獄行きだ。
もし救いがあるとすれば、今すぐキラの元へ行き、彼を抱きしめ、彼を戦いから解放するのだ。
キラも、そして私のどこかがそれを望んでいる。
だからこそ…。
私は、キラの元へ駆け寄るわけにはいかない。
私は、残された最後の戦友を守る。
大切な戦友との、最期の約束を守るのだ。
人として、彼との約束を守りたかった。
自分で決めた道をやり遂げたかった。
全てはそれからだ。
…たとえ、キラと戦ってでも。
「キラ。あなたに、私の戦友達に指一本でも触れさせるものですか！！」
- 451 名前： ＬＦＡ物語/作者 投稿日： 2003/05/30(金) 15:23
- アルカードは出す予定なかったけど、推敲中に出てきてしまった…。
フレイ様を抱きしめてたらどうなってたかなぁ。脱線しそうだからやめたけど。
ちょっと思ったけど、フレイ様の活躍や放送を見るキラは痛そうですよ。
果たして、彼に幸せな日々は戻ってくるのか？
ってことで、次回投下をお楽しみに〜
- 452 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/30(金) 18:40
- 乙ふれ〜！
キラ、暴走っすか！？
フレイ様の明日はどこへ向かうのか･･･
どういう風に終息されるか、楽しみです。
- 453 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/30(金) 18:44
- >>438-451
乙〜。まだアルカードにお目にかかれるとは思っておりませんでした。
いい漢ですね、本当に彼は。考え方にも共感しました。
本当、人は戦うようにできていないと思います。
しかし、まさか本当にキラとフレイ様のMS戦があるとは！
フレイ様も痛々しいですが、キラも十分痛々しい。
復讐を止めれなかった間のフレイ様と重ねてしまいます。
戦いの先に穏やかな日々があることを信じてます。
- 454 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/30(金) 18:58
- >>451
乙フレー。
外出先では携帯で投下をチェックしてまつ。
料金が心配…(´Д⊂ｸﾞｽﾝ
キラとフレイ様はホントに切ないですね。
二人にはぜひ幸せになってほしいです。
しかしアルカードはｶｺｲｲ!
ぜひ嫁に!(違
次回投下が待ち遠しいです。
- 455 名前： 暗闇の後には・・・作者 投稿日： 2003/05/30(金) 20:52
- 久々に投下させて頂きます。
最初に全国のジェシカファンの皆様謝らさせてください
勝手に性格作って暴走させてすみませ〜ん！！
いやぁ、すばらしい神々の作品の間に投下するのは
つたない私の文をより鮮明にわからしめてしまうとは思いますが
どうか、長い目で見てやってください････（涙）
ちょっと時系列が変に見えるとは思いますが
それは仕様なのでどうかお気にせずに。
それでは、私なりのフレイ・アルスターの世界へ、どうぞ！
- 456 名前： 暗闇の後には･･･�� 投稿日： 2003/05/30(金) 20:54
- 前回まで >>173 >>188
「ねえねえ、フレイ〜」
それからしばらくして、ミリアリアと何やら話していたジェシカがそう切り出して来た。
「ミリィたち、これからみんなで町のほうに遊びに行くんですって」
「へぇ〜」
「でね、私たちも混ぜてもらうことにしたから」
「えっ？」
さらりっとジェシカはとんでもないことを言い始めた。
「サイも別に構わないでしょ？」
「あぁ。別に構わないよ」
「まあフレイが一緒だったら断る理由も無いわよね〜♪」
「はぁ？」
「なっ！？」
あまり良くわかって無さそうなサイと固まる私。
サイと一緒に遊びにいけるのはうれしい。
でも彼との関係を秘密にしている手前、
みんなの前では気兼ねなく甘えられないから困る。
そんな私の思いを知ってか知らずか、なにか意地悪げな表情の
ジェシカはサイにぐっと顔を近づけた。
ヤバい！
「そういえば、忘れてた」
「ねぇ、サイ正直に答えて。どこまで行ったの？」
「いや、どこまでってどこ？」
サイは質問の意味が分からなかったみたいだ。
ジェシカはそんなことは気にせず、祈るように手を組み合わせながら
目を輝かせながら言った。
「あぁ〜私もこんな素敵な彼氏が欲し〜い！ 」
「だから何度も言ってるでしょ！！ サイとはそんなんじゃないって！」
「なんでこの中でなんで私だけ一人身なの？ 不幸だわ」
････だめだわ､全然聞いてない･･･。
ジェシカは一人勝手に盛り上がり続けている。
ふと、みんなの反応が気になって、周りを見ると
サイは弱ったなって感じであきらめ顔でジェシカを眺めていた。
ミリアリアも呆れ顔だ。
トールだけはニヤニヤとこの状況を楽しんでいるみたいだ。
どうでもいいけどトールのそういうところ、嫌い。
「僕も一人身なんだけどなぁ･･･」
不服そうだったカズイがそんな風につぶやいたがジェシカに
「アンタは論外！」と一刀両断された。
はぁ･･･
私は溜息をつきながらこの嵐が過ぎるのを待つしかなかった。
- 457 名前： 暗闇の後には・・・�� 投稿日： 2003/05/30(金) 21:00
- 「そう言えば、もう一人ゼミにいたじゃない？
ちょっと可愛い系のあの子、何ってったっけ？」
やっと落ち着きだしたジェシカが思い出したようにミリアリアに尋ねた。
「･････のこと？」
「そうそう、その子。」
そんな二人の会話を私は聞かない様にしようとした。
･･･そう、私には関係のないことだ･･･
「その･････って子、彼女いるの？」
「え〜っと、確かいないって言ってたけど･･･」
何故か私のほうをちらっと見るミリアリア。
「じゃあさ、今度紹介してよ。」
ジェシカの言葉に私は凍りついた。
･･･何を言い出すんだろうこの子は････
何をそんな勝手な･･･、そんなことは許さない！！
「あ、どうせな今から呼んで一緒に遊びに行くってのはどう？」
「ダメよ！ そんなこと！！」
みんなは突然大声を出した私をビックリしたように見た。
「あんた、さっきから聞いてりゃ何勝手なことばっかり言ってんのよ！
いいかげんにしてよね！！」
「何いきなり怒ってんのよ。」
「いつもいつも、ホントいい加減にして欲しいわ！」
「別にフレイに関係することなんか言ってないじゃない、まったく･･何がいけない訳？」
そう言い返されて私は戸惑った。
何を、････私は何を嫌がったのだろう、何が頭に来たのだろう、何が･････
そう･･･そうよ、
「そう、嫌なのよ･･･ あの子、なんだか････怖い」
「怖いって、」
トールがムッっとした表情を浮かべたが私は気にせずに話し続けた。
「それに今から呼んで、来るの待ってたら遅くなるじゃない。
このメンバーで行きましょうよ？」
「納得できな〜い、ちょっとぐらいいいじゃん！」
不機嫌そうなジェシカ。
でも私は･････に会わないようにするのに必死だった。
そんな言い合いがしばらく続いていたが、サイが助け舟をだしてくれた。
「もうそれぐらいで勘弁してやってくれないか？
何も無理に今日にって訳でもないんだろ？」
「でもぉ･･･」
何故かカズイも援護射撃をしてくれた。
「そういえば、今日は用があるからって先に帰ったし、
今からってのは無理なんじゃないかなぁ？」
「え〜！何それ、ほんと〜！？」
ジェシカはまだあーだ、こーだと言っていたが、
「いつまでもこうしててもしょうがないし、もう行こう。いいよな？」
サイのこの言葉に渋々頷いた。
やっぱりサイはやさしい。いつも私を守ってくれる。
････私にはあの子なんて必要ない････
「フレイ、どうしたんだ？ みんなに遅れるぞ」
いつの間にかみんなエレカ乗り場の方へ歩き始めていたみたいだ。
待っていてくれたサイに笑顔で答え、私はちょっと駆け足で彼のところまで向かった。
そして横に並んだところで、そっと手をつないだ。
サイはそんな私にちょっと驚いたようだったが、私を見てにっこり微笑んだ。
いつまでもこんな時間が続いていけばいい････
私はそんなふうに思っていた。
･････でも、どこか心が軋むのは何故？
- 458 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/30(金) 21:14
- 正に神々の競演スレだなここはｗ
がんばって完結させて下さい。お願いします。
- 459 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/30(金) 21:28
- ものすごい大長編ですね・・・
このまま映画化とかされても不思議じゃないっす、いやマジで。
- 460 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/30(金) 21:33
- ここのＳＳの方がＳＥＥＤ本編になってもいいかも。
- 461 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/30(金) 21:33
- おつふれ。
キャラの特徴ばっちりつかんでますね〜。すばらしい。
友達に囲まれた平和なひととき…今のフレイ様を考えると涙が出そうです(´Д⊂
- 462 名前： ＬＦＡ物語/作者 投稿日： 2003/05/30(金) 22:47
- こんなに長くなって申し訳ありませぬ。一日二回の投下はどうかと思いますが、
正直このＳＳで頭が一杯になって、終わらせないと他のことが出来ないので…
本日二回目。投下用意よし〜
- 463 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/114 投稿日： 2003/05/30(金) 22:50
- 「ヴォルフ、聞える？」
『ふ、フレイ様！？』
「フリーダムは私が抑えるわ。だから、早く艦隊に行きなさい！」
私は抱えていた３３２号機を離し、彼とフリーダム間の軸線上に盾になるようライデンを前進させた。
『そんな！フレイ様を危険にさらすような真似は…』
「ヴォルフ！あなたの機体は、今どんな状況なの！？傷ついた機体で、あいつに立ち向かえるの？」
問答をしている暇はない。傷ついた、しかも旧型ライデンでは、目前に立ちはだかるキラには手も脚も出ないのだ。
「あなたの機体が無傷なら、逃げろなんて命令は出さないわ。でも、今の貴方は正直足手まといよ。
あなたを庇いながら相手に出来るほど、甘い敵じゃないわ。
ヴォルフ。あなたは先に離脱しなさい」
『くっ………』
機体の振動による接触回線の向こうで、シュトライバーが苦悩しているのがわかった。
自分だけが仲間を残して帰投しなければならないつらさ。
圧倒的な敵、フリーダムを前に私を残さざるを得ない苦悩。
長い時間、だが実質的には数秒の沈黙の後、３３２号機が身じろぎした。
『わかりました、フレイ様。ですが……』
「なに？」
『死なないで下さい！帰ってきて下さい！』
「あたりまえよ、ヴォルフ。私を誰だと思っているの？」
『フ、フレイ・アルスターです…』
「なら、ここを安心して私にまかせなさいよ」
『……わかりました。シュトライバー、帰投します。フレイ様、御武運を…』
３３２号機が名残おしそうに私の機体から手を離し、反転して艦隊方向へ進みはじめる。
- 464 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/115 投稿日： 2003/05/30(金) 22:52
- 『に、逃がすか！！』
キラだ。
フリーダムが左手でビームサーベルを抜くなり、加速。
３３２号機を両断しようというのか。だが、彼の意図は達成されることはなかった。
私が、キラ進行方向上にレーザーを“置いた”からだ。
『フレイ！！』
「アンタを行かせるわけにはいかない。言ったでしょ？」
『う、うわあぁぁぁぁぁ！！』
絶叫と共にフリーダムが私に向きなおり、斬りこんで来る。
私は得物の新型ビームランチャーをかまえ、手早くキーを打ち込んだ。
刀身が変形し、ストライクの対艦ソードに匹敵する巨大ビーム・ブレードとなる。
宇宙空間に激しいスパークが散った。
フリーダムのビームサーベル、ライデンのビームブレードが絡み合い、粒子が干渉する電撃が周囲に走った。
『なぜだ、フレイ！！なぜ、君はそうまでしてブルーコスモスを守る！？』
「あなたに言っても、私の気持ちはわからないわ！！」
それが偽らざる私の答えだった。
キラにはわからない。
良いとか、未熟とか、成長、そんなものは関係ない。
戦場で、部下の生死を預かる立場になった者だけが分かる責任と義務だ。
指揮官としての苦悩、責任、戦友への思い、散った人との約束。
そういう意味では、今、この宙域で私を一番理解できるのはマリューだろう。
- 465 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/116 投稿日： 2003/05/30(金) 22:54
- フリーダムとライデンのパワーは、ややライデン有利だった。
だが、互いに譲らず、鍔迫り合いを続ける。
（なら、これはどう！？）
私は左腕に仕込まれた装備を思い出した。
近接防御用の拡散ビーム射出機だが、砲口付近の磁界を調節することでビームサーベルにもなる。
展開するなり、フリーダムへと振りかざす。フリーダムは左手にサーベルを持ち、右腕はライフルを抱えている。右手のライフルを構えようとすれば、ライデンのパワーの前に左腕が壊れ、そのまま一刀両断されてしまう。防ぎようがない筈だった。
キラは凄かった。
機体の微妙なバランスをかえ、ベクトルを変化させる。
ブレードを軸に鉄棒の要領で上方回転、ライデンの体勢を崩させつつ、左腕に空を切らせた。
丁度、ライデンの数メートル上空にフリーダムが馬乗りになる状態となる。
フリーダムが大きくサーベルを振り上げた。コクピットでも反応炉でも自由に付き伏せられる。
まずい。
私はキラの反撃を予測、瞬発的にスロットルをふかし、ブーストをかける。
それが功を奏し、フリーダムはサーベルを空振りした。
私はフリーダムとの距離をとった。反転しつつ、今度は射撃を警戒して微妙に軸線をずらす。凄まじいＧが私の身体を揺さぶったが、歯を喰いしばって耐えた。これでも緩和されているのだ。旧型や並みのＭＳならば、私は気絶しているはずだ。新型ライデン故の緩和システムなのだ。
案の定、フリーダムからのビームが降り注ぐ。
回避しつつ、左腕のソードを解除、目くらましのビームを放った。
ビームが膨らみ、空間に目視に耐えぬ閃光と衝撃波をつくりだす。
ＭＳそのものを撃破できる威力ではないが、パイロットの視界と機体センサーは盲目状態になる。
これで距離と時間を稼げる。
が。
- 466 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/117 投稿日： 2003/05/30(金) 22:56
- 「うそ！！」
フリーダムは突進してきた。
私が放った拡散ビーム弾は三発。その爆発と爆発の境界線を抜けて突破してきたのだ。
『フレイィィィィ！！』
キラの悲痛な叫びに合わせるように、フリーダムがビームライフルを乱射する。
私は闇雲にライデンを動かして回避につとめたが、キラの狙いは正確だった。
胸部に二発、右脚に一発。
偶然機体を傾けた状態で被弾したのが幸いした。直撃は胸部への一発のみ、他は弾かれて宇宙のあさっての方向へ消えた。
「くっ……」
それでも、Ｇショックとは比較できない衝撃が私に襲い掛かった。
装甲が蒸発し、メインモニターにダメージを示す赤い警告灯が灯る。
「うるさいわね、それぐらいわかるわよ！！」
毒づきながら体制をたてなおし、加速。フリーダムと軌道が交錯し、遠ざかるそれに向けてビームランチャーを構え、撃つ。
フリーダム、高初速ビーム弾を全弾回避。大きく旋回しながら遠ざかり、再びこちらに正面を向ける。
これがコーディネイターというものなのだろうか。いや、それにしても違う。
私だって、コーディネイターを相手に戦ってきた。彼らの操る８機のＭＳも落とした（三機は脱出戦時に撃墜）。
それにブルーコスモスのＭＳ、特にライデンはコーディネイター相手の戦闘を最初から想定して設計されている。
それでも、私はフリーダムに押されっぱなし。
僅か数十秒の交戦で、私は悟った。
相手が、キラだからだ。
私はＡＡでのフラガ少佐を思い出した。
偶然、整備員と話しているのを聞いてしまった。
戦闘中、キラが突然豹変し、バケモノじみた戦闘力を発揮すると。
少佐は「あいつはバーサーカーだよ」と何時になく真剣な表情で語っていた。
それが起こっているのだろうか。
- 467 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/118 投稿日： 2003/05/30(金) 22:57
- 確かに、フリーダムの戦闘能力は私の予想を超えている。
回避力が凄まじい。
フリーダムの機体性能だけで片付けるわけにはいかない。
ナチュラルでは、いやコーディネイターでも、到底耐えられるとは思えない機動をしているのだから。
先程の、ビームとビームの爆風の隙間を縫って飛翔するなど、コーディネイターにでも出来ない芸当だ。
瞬発力も同様。
ビームサーベル同士の反発力を利用して体勢を変えるなど、人間技とは思えない。
そう。
これが、キラなのだ。
一人で戦い続けてきたキラ。
彼に、私は勝てない。
「どうすれば、どうすれば、キラを止められるの？」
再びキラが突進してきた。ビームが襲い掛かるが、これは牽制。
キラの本領は、すれ違ってからの射撃にある。
私の射撃を余裕で回避したフリーダムがビームをはなち、また二発が命中する。
その度に機体が悲鳴をあげ、装甲が剥離する。
ライデンの重装甲が私の命を救っていた。
だが、その装甲も無敵と言うわけではない。
いつかは貫通され、撃破される。貫通されなくても、腰部関節や肩関節は装甲がない。
ここに被弾したら一貫の終わりであるし、キラなら狙って命中させるかもしれない。センサーの塊である頭部など、被弾は故障を意味する。
最強のＭＳ相手にメインセンサー無しでは目隠しをして剣豪とやりあうようなものだ。
- 468 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/119 投稿日： 2003/05/30(金) 22:59
- かつてない焦りが私を襲った。
キラのことだから、私を戦闘不能にすればそれで良しとするだろう。
私を放置し、ブルーコスモス艦隊に攻撃をしかける。
疲れ切った艦隊に、フリーダムが乗り込んだら。
半壊したシュトライバーのライデンはもちろん相手にもならず、即座に撃墜される。
今のキラなら、一機で艦隊全艦を撃沈するかもしれない。
それは絶対に許されない。
ブルーコスモスの人々の為にも。
キラ自身の為にも。
阻止するには、一秒でも長くこの戦闘に、私との勝負にキラを拘束し、ブルーコスモス艦隊に近づけてはならない。
彼らがポツダムに到着するまで粘るのだ。
コンソールに機体状況を表すデータが表示されている。装甲関係のデータは目を覆いたくなる状態だ。あと数発の被弾でＰＳ装甲が消失する。また、被弾の衝撃が内部回路や機構にも影響を与え始めている。
もう、ライデンは射撃戦に耐えられない。
（こうなったら、ビームサーベルでの格闘戦に持ち込むしかない！
射撃戦なら、徐々に装甲を削られ、いずれやられるだけ。一か八かの勝負ね！）
決意すれば、あとは行動あるのみ。
新型ライデンはＰＳ装甲へのエネルギー配分が多く、ビームへの対弾性能も持っている。これがこのＭＳの重装甲を支えている。そのエネルギーを駆動系にふりわけ、一時的に機動力を上げるのだ。もちろん、この措置は重装甲を誇るライデンが通常のＭＳ並みの装甲になることを意味する。被弾すれば、通常ＭＳのごとく、一発で爆発するだろう。
「いくわよ、キラ！」
私の中に湧き上がる不安を押さえつけるように声を張り上げる。
- 469 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/120 投稿日： 2003/05/30(金) 23:02
- スロットルを開く。
「ぐっ………」
思わずうめき声が漏れた。
今までとは明らかに違う加速だ。コクピットフレームがみしみしと嫌な音を立てる。
長時間この状態を維持することは、機体も、中の私も耐えられない。それでもやるしかないのだ。
振りほどかれそうになる腕に力をこえめ、コントロールスティックを握り締める。
「ちょっ、お…お願いっ、いい子だから、言う事聞いて…よ…」
暴れるライデンを押さえつけ、フリーダムからのビームをかわしながら接近する。
今のライデンは、明らかにフリーダムを上回る機動力を持っていた。
キラは不審に思ったのか、むやみな突進を避けて円運動からの射撃に切り替えた。
何度かフリーダムに接近するのだが、その度にタイミングが合わず、むなしくすれ違う。
旋回する度に強烈なＧが私を襲った。たちまちコンソールの機体状況を示すパネルが赤く染まっていく。
無理な運動とエネルギー配分が想定外の負担を各部にかけているのだ。
「で、でも！！」
私は意を決してフリーダムに接近した。ぎりぎりまで回避運動をしない。
ビームが迫った。僅かに機体を傾けたが、回避出来なかった。上腕部に命中。左腕がもぎ取られ、バランスが崩れた。
「きゃぁ！！」
ＭＳは五体満足な状態での行動を前提に、空間戦闘のプログラムをされている。
四肢のどれかが欠けるとプログラムがエラーを起こし、満足な運動はできなくなる。
これを解消する為には、各部の欠損に対応したプログラムを呼び出さなければならない。
だが、今の私にその余裕はなかった。
ライデンはバランスを崩し、高速で移動していた為に進路がずれる。
- 470 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/121 投稿日： 2003/05/30(金) 23:05
- それが幸いした。ライデンのずれた進路とフリーダムの回避行動が交錯する。
最後のチャンス。ランチャーをブレードモードに変換。
（お願い、当たって…！！）
ブレードを振った。
何かがかすった音。ビームブレードがフリーダムのライフルを切り裂いた瞬間だった。
「やった…！！」
これでキラは射撃が出来ない。最初に見た翼からの砲撃もあるが、あれは高速移動しながらは撃てないだろう。
回避に専念すれば十分対応できるはずだ。
フリーダムは我を失ったのか、追い討ちが無い。
一瞬緊張が解けた為だろうか。強烈な嘔吐感が沸き起こった。
戦闘プログラムを左腕欠損モードにしながら、慌ててヘルメットを取り、咳き込んだ。
「！！！」
口元に当てたパイロットスーツに、血がついていた。
抑え切れなかった血液が無重力の空間に球体となって浮かび上がる。
正直、こんな事態が来るのかもしれないと覚悟していた。自分の中から溢れてきた血をみても、特に動揺はなかった。
（当然だけど、赤いわ。私の髪と一緒…。
血が私の髪の色なのかな？
それとも、私の髪が血の色なのかな…）
とりとめのないことを考えつつ、コンソールディスプレイにかかってしまった血を拭く。
先程の設定変更が私の身体に相当無理をかけたようだ。
これ以上、この機動モードで戦闘すれば、機体が分解する前に私の身体が壊れる。
「無理かけてごめんね、ライデン」
あやまりながら、コンソールを見た。もう、エネルギー装甲を復帰させるエネルギーが残っていない。
それどころか、ＰＳ装甲を展開するだけでぎりぎりだ。私だけでなく、ライデンの消耗も激しいのだ。
ビームサーベルで薙ぎ払われただけで機体が分解するかもしれない。
「……」
唇についた血を無造作に拭い、ヘルメットを装着。
ここが正念場なのだ。
私はまだ倒れるわけにはいかない。
フリーダムがビームサーベルを掲げる。
私もビームブレードを構えた。
これからキラは私の懐に飛び込み、積極的に肉薄戦を仕掛けてくる。
そうなったら、いちいちビームランチャーの射撃モードを切換える暇はない。
最初からブレードモードで対峙した方が良い。
「勝負はこれからよ、キラ！！」
- 471 名前： ＬＦＡ物語/作者 投稿日： 2003/05/30(金) 23:07
- ＦＦや聖剣伝説、ＶＲサントラのボス戦音楽聞きながら書きました。
後三回ほどでラストまでいけると思います。
最後まで応援していただけたら幸いです。
- 472 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/30(金) 23:12
- >>471
乙フレ。
クライマックスっすね！緊張感が伝わってくる。。
『キラを本当の意味で救おうとするフレイ様』、本編でも見たいです。。
最後までがんばって下さい。楽しみにしてます。。
- 473 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/30(金) 23:12
- >462-471
おつふれ。
続きが気になる〜！何だってこんな美味しいところで！
しかし、まさか本当にこんな本格的な戦闘をするとは。
フリーダム＆キラの最強タッグに瞬殺されないとは、
本当にフレイ様はそっちの意味でもお強くなられたんですね。
しかし、見ていて痛々しい…。早く落ち着いてくれ、キラ。
- 474 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/30(金) 23:13
- キラフレは微妙に納得が行かない派の漏れとしては貴殿のＳＳが本編化するのをきぼんぬな訳ですがｗ
- 475 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/30(金) 23:14
- >>471
乙。
フレイ様血吐いてる・・・(;´Д｀)
マジ氏なないで、フレイ様！
- 476 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/30(金) 23:25
- >>471
本日２度目乙ふれ〜！
血反吐吐いて大丈夫でしょうかフレイ様
あと３回（４回くらいはいきそうだが）頑張ってください。
- 477 名前： 世界名作改め火サスノリで行ってみようか ４ 投稿日： 2003/05/31(土) 04:12
- 今度は、女の友人が尋ねてきました。
目の覚めるような金髪の女性です。
彼女にお茶を勧めながら、女は最近起こっている出来事を話しました。
すると、彼女はティーカップを揺らし、こぼれたお茶がテーブルクロスを汚した事にも気づかない様子でした。
どうにも腑に落ちない事ばかりです。何かある、と女は直感しました。が、追求できない自分を哀しく思うのでした。
みんな、何かを隠している。
そう思わざるを得ませんでした。
この温かい家…優しい人々…それを疑うという事は、女にはとても恐ろしい事でした。
しかし、知りたい、という感情を抑える事も出来ませんでした。
みんなが何を隠しているのか。その理由は、一体何なのか…
髪を洗う時、ふと物思いに耽る。
耳の後ろに手を伸ばす。
そこに微かに残っている傷。
誰にも気づかれない傷。
確か、子供の頃についた傷らしいけど…これにも何かあるのだろうかと考えてしまう。
もし、またあの男に会ったら、今度は自分から声をかけてみようと決心するのでした。
- 478 名前： 火サス書いてる人 投稿日： 2003/05/31(土) 04:23
- こんな時間に投下すまん。
正直、酔っ払って画面がくるくる回ってるので、誤字脱字があったら更にすまんｗ
- 479 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/31(土) 08:30
- 乙です！
誤字脱字はありませんから安心を。
フレイ様、一体何が…ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ
- 480 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/31(土) 11:38
- >477,478
おつふれ〜。
ついに作者様自ら火サス認定…。
カガリでさえ動揺する、フレイ様の過去とはいったい何だ!?
ということでハラハラしつつ先を楽しみにしております。
- 481 名前： 火サスノリで行ってみようか ５ 投稿日： 2003/05/31(土) 11:49
- どうするつもりだ？という問いに男は考え込みました。
このままずっと続くと考えていた、と言うのは流石に虫が良すぎた、と思わざるを得ません。
が、そうなった時、一体どうなるのか…全く予想できないのです。
頭を抱え込みたい気持ちでした。
友人は、逃げるな、と言いました。
もう、過去から、あの戦争から、想い出から、逃げるのは止せ、と…
自分には何も出来ないけど、前に進む為には、そうするしかないと、友人は言うのです。
その言葉に、男は頷くしかありませんでした。
今、彼の居場所を探しているけど、まだ分からない。
でも、この町のどこかに必ずいるはずだと男は確信していました。
何故なら、互いに、決着をつけなければならないからです。
例えそれがどんな結果になろうとも、もう、避けられない…運命。
女は買い物に出かけていました。
ごく普通の、ありふれた日常。
外に出た女の視線の先に、眼鏡の男の姿が飛び込んできました。
彼も、予期していなかったのか驚いた表情を見せました。
しかし、すぐに落ち着きを取り戻すと、真っ直ぐに近づいてきました。
女は、声をかけようとしましたが、その前に、男が目の前に立ちました。
「フレイ！」
フレイの耳の後ろの傷に、大きな音を立てて痛みが走りました。
- 482 名前： 火サスノリで行ってみようか ６ 投稿日： 2003/05/31(土) 17:21
- 「フレイ…？私…」
フレイは当惑していた。何故、この男は、私の名前を知っているのか。
「フレイ！俺は…」
男は、それ以上言葉を続ける事が出来ないように口をつぐんだ。
「どうして…貴方は…私の名前を？」
その言葉に、愕然としたようにフレイを見つめる。
「何だって？フレイ…俺だ、サイ・アーガイルだ！」
しかし、その言葉を聞いてもフレイの表情に変化は無い。むしろ困惑の色が濃くなった。
サイは、フレイの態度に我を忘れた。
「何だよ…フレイ！今更、そんな態度は無いだろ！みんな忘れたつもりなのかよ！」
人ごみの中で大声こそ上げはしないが、サイの声は震えていた。
傷の痛みに耐えかねて、フレイは耳を抑えた。
フレイは逃げるように走った。サイは人目を気にして追いかける事が出来なかった。
あの人は私の事を知っていた…でも、私はあの人を知らない。一体何故？
それに、あの人は私の事を怒っているようだった…。私が、彼に何をしたと言うの？
無数の疑問が頭の中を駆け巡り、フレイはその怯えから逃げるように走った。
- 483 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/31(土) 17:43
- >481,>482
乙。おお、ついに作中で名前が出てきましたね。
どうやらフレイ様は部分的に記憶喪失なご様子。
素晴らしく火サスノリですね。
それにしても、フレイ様だけが忘れている過去とは一体。
気になります。続き待ってます。
- 484 名前： ＬＦＡ物語/作者 投稿日： 2003/05/31(土) 22:25
- ほとんどラストなんですが…ホント悩みました。
でも、この物語にはこれしか無いと思います。では、投下〜
- 485 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/122 投稿日： 2003/05/31(土) 22:29
- 宇宙空間を駆ける白銀の機体。
爆発的な機動力で上下左右、自由自在に進路をかえ、蜂のように襲い掛かる。
私はキラの猛攻を受け止めるのが精一杯だった。
フリーダムはあらゆる方向から斬りかかってきた。頭上から、足元から、左右から、背部から。
その度に、私は紙一重でかわしつつブレードを振るのだが、振った時には、もうフリーダムの姿はない。
即座に移動し、思いも寄らぬ方向から攻撃してくるのだ。
私の命綱はライデンの反応速度と回避プログラム。
これがなければとっくに真っ二つになっている。
不思議と、先程の射撃戦のような焦りはなかった。
なぜだろう？
（キラと直接戦っている。それを実感できるから？）
フリーダムは手を伸ばせば届きそうな位置にいた。
実際は数百メートル、あるいは数キロ先にいるというのに。時に格闘戦を挑んで来た瞬間、二機の距離はゼロになる。
その時を待ち望んでいるような気がした。
（馬鹿なことを考えないで、フレイ・アルスター。一瞬の油断が命取りになるのよ！）
自分に言い聞かせながらコントロールスティックを動かし、ペダルを踏み込み、プログラムを呼び出し、真紅のライデンを操る。
- 486 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/123 投稿日： 2003/05/31(土) 22:30
- キラの攻撃。
頭部のイーゲルシュテルンと胸部マシンキャノンが火を吹いた。
「ぐっ…！」
私は回避を強いられる。コントロールスティックに握力を加えると同時に傾け、ペダルを踏み込み、スロットルを調節。
ライデンの強みであった重装甲は、もう無い。装甲の厚さそのものは、他のＭＳと大差があるわけではないのだ。
ＰＳ装甲も、最小限の働きしか維持できない。
大きく弧を書くような軌道で回避行動。
軸線から逃れるように宇宙を駆けた。
「！！」
私は驚愕した。目前にフリーダム。ライデンの回避行動を予測し、私が制動をかける地点へと先回りしたのだ。
振り下ろされるビームサーベル。無我夢中でブレードを構えた。鍔迫り合いになる。
嫌な予感がした。パイロットとしての直感か。
いや、短い時間とはいえキラと直接戦った者だけが感じる感触というのだろうか。
とにかく、不吉な悪寒が私の中を走った。
咄嗟にブレードの制御プログラムを変更。磁界を切り、ビームを消失させた。
『！！』
鋼鉄の装甲で隔れているというのに、私にキラの驚きが伝わってきた。
バランスを崩したフリーダムは前につんのめる。
ビームサーベルの切っ先が右肩のレーザー照射機を分断した。
無視できないダメージ。
それでも、やらぬより遥かに良い結果を生んだ。
- 487 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/124 投稿日： 2003/05/31(土) 22:32
- 私は悪寒の正体を見極めてゾッとした。バランスを崩した瞬間に、キラはトリガーを絞っていたのだろう。
フリーダムの頭部が火を吹き、イーゲルシュテルンの火線がライデンをかすめていった。
キラは、鍔迫り合いをしつつ、私にイーゲルシュテルンを叩き込もうとしていたのだ。
この至近距離から撃たれたら間違いなくライデンはバランスを崩し、無防備な姿をさらす。
勝負は一瞬で決まるところだったのだ。
だが、バランスを崩したのはキラの方。
「うわぁぁぁぁぁ！！」
自分でも良く分からない雄たけびをあげながら、再びブレードを展開。眼下のフリーダムへ向けて振り下ろした。ブレードはＰＳ装甲の抵抗をうけることなく、機体の右膝から下と右腕を斬り落とした。純白の装甲に飛び散ったビーム粒子が点々と黒い染みを穿つ。加えてブレードに触れたのか、天使のように開かれた翼が砕け散った。
不利を悟ったのか、フリーダムはスラスター全開で離脱を図る。
だが、軌道が安定しない。突然右翼を失ったため、キラといえども推力バランスが取れないのだろう。
すかさず残されたレーザー照射機を展開して威嚇すると、フリーダムは慌てたように左翼を切り離した。
砕けた右翼の破片と元の大きさの左翼がフリーダムの航跡に取り残され、宇宙を漂う。
ひどく幻想的な光景だった。
キラにしてみれば、右翼を失ったことによって左翼とのバランスが取れず、追い討ちをくらうよりはと思い切って両方とも捨てただけなのかもしれない。
私から見れば、キラがフリーダムという天使の鎧を脱ぎ捨て、ストライクとして…私の知るキラとして戻ってきたように思えた。
天使とは、人の手の届かない高みから矮小な人間を見下ろす、全てを拒絶した至高の存在なのだから。
私が手を伸ばせば、今のキラに触れられるような気がして。
（キラ………）
懐かしくて、切なくて、悲しくて。
私は目前の機体を凝視し続けた。
- 488 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/125 投稿日： 2003/05/31(土) 22:34
- 私とキラは数キロを隔てて対峙していた。
空気による歪みの無い宇宙空間では、お互いの状態が細部にいたるまで認識できた。
私のライデンも、キラのフリーダムも満身創痍だった。
ライデンは限界を超えた機動でフレームも各部の機構もガタガタ、右肩のレーザー照射機は融解、左腕は欠損、装甲のあちこちにビーム被弾による醜い抉れた傷が残る。
フリーダムは最大の特徴であった天使の翼を失い、機動力が大幅に低下していた。
さらに今の激突で右腕と右脚の膝から下を失った。
無垢を思わせる機体の白色は焼け焦げや凹みが目立つ。
何分？何十分？何時間？それとも、たった数秒？
時間の経過がわからない。
実際には、私とキラが刃を交えていたのは数分に過ぎなかった。
なぜなら、ブルーコスモスの残存艦隊は、いまだ、ポツダムに辿り着いていないのだから。
私達は睨みあったまま、全く動けなかった。
機体の性能は僅かにライデンの方が有利。パイロットとしてはキラが勝る。
総合的には五分五分だった。
私達は、ただ、目の前の敵を倒すために戦っていた。
目の前の敵を倒す。仲間、友情、愛、絶望、一切の感情とは無縁の、闘争本能ゆえに。
その闘争本能が、うかつに動くことを躊躇させた。
私達は、次の一撃がお互いにとって限界であり、同時に決着の一撃になることを知っていた。
私達の戦いを目撃している者がいたとしたら、先程まで激しく空間を疾走していたのが信じられぬ程、二機は静寂につつまれていた。
集中力が先に切れた方が、負ける。
それだけは分かっていた。
- 489 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/126 投稿日： 2003/05/31(土) 22:35
- やはり、先に集中力が切れ出したのは私だった。
余裕が出てきたのがまずかったのかもしれない。
私の想いは眼前のキラを飛び越えて、指揮官としての私を目覚めさせていた。
ちらりとサブモニターを見る。残存艦隊の方向に砲火が確認できた。
あまり大規模でないところを見ると、ＭＳ戦が展開されているようだ。
まだ艦隊そのものが交戦状態に入っているわけではなさそうだ。
残存艦隊はどうなったのか。
シュトライバーは無事帰投できたのか。
ＬＦＡの二人と通常ＭＳ部隊は耐えられるのか。
アークエンジェルとの停戦は続いているだろうか。
あのアスラン艦隊を突破できるのか。
一介のパイロットが気にする必要はなく、指揮官は認識していなければならない事項が私の頭を悩ませた。
例えるなら、今まで１００％の認知力を眼前のキラに当てていたのに対し、
今、私は７０パーセントにとどめ、残り３０パーセントを指揮官としての責務に裂いていたのである。
その瞬間は唐突に訪れた。
ライデンの無線機が強力な全周波無線を傍受したのだ。
突如点灯した無線機に私は驚いた。発信者が表示されると、もっと驚いた。
それはアークエンジェルだったのである。
『こちらオーブ所属艦アークエンジェル』
マリューの声だ。
『前方に展開中のザフト艦隊に告ぐ。本艦はブルーコスモス艦隊との間に成立した停戦協定に従い、同艦隊を指定地点まで護衛する。
速やかに進路を開けられたし』
- 490 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/127 投稿日： 2003/05/31(土) 22:37
- 『馬鹿な！！』
誰もがそう思ったに違いない。
その想いを代弁したのはアスラン艦隊の代理指揮官のようだった。
『アークエンジェル、いったいどういうつもりだ！？
まさか、我々に手を引けと？ブルーコスモスを庇うと言うのか！？』
『そう受け取りたいのでしたらご随意に。本艦は職務を遂行します』
マリューの声は清流のように澄んでいた。
先程私と交渉した時の疲れた声とは別人のようだ。
何かが、彼女に力を与えたのだ。
『ならば、貴艦をブルーコスモスの共謀者とみなしてよいのだな？
貴艦がどうなっても、全ての責任は貴公にあるのだぞ。それは十分解っているのだな！？』
『もちろんですわ』
ザフト艦隊が主砲をアークエンジェルに向けたのも、それに対しマリューが嫣然と微笑み返したのも。
不明瞭な無線機ごしでも明確にわかった。
『万が一の時は、私は本艦と運命を共にします。
もちろん、我が艦に乗艦なさっているザラ家のご子息共々』
『………！！！』
誰もが数瞬、マリューの言葉を理解できなかったに違いない。
もちろん私もだが。
- 491 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/128 投稿日： 2003/05/31(土) 22:39
- 事の真相はこうだった。
ブルーコスモス艦隊が艦隊とは名ばかりの難民船団であると知った時点で、マリューの戦意は完全に喪失していた。そして、今度は彼らを守りきる決意を固めたのだろう。だが、まともに当たったのでは、アスラン艦隊戦艦十隻には適わない。そこで、彼女はその目的を遂行するため、かつて自分が拒絶した手段をとることにしたのだ。
人質作戦。
オーブ軍に転籍、ＡＡ配属になってしまったディアッカを使って大破漂流中のジャスティスをＡＡに回収したのだ。
もちろん、ジャスティスに用はない。残骸の中で気絶したアスラン･ザラが必要だったのだ。
アスランがアークエンジェルの中にいる。
パトリック・ザラ議長の息子が、砲口を向けたアークエンジェルの中にいる。
その事実は、アスラン艦隊は勿論、後方から追撃中のザフト艦隊の動きも拘束した。
戦争が終わろうとしている時に、最高責任者の息子を葬り、その責任を取る勇気は彼らに無かった。
『くそぅ！！貴様等の行為、報告してやるぞ！！』
月並みの台詞を残して、アスラン艦隊はアークエンジェルとブルーコスモス残存艦隊の進路を開けた。
後方から迫ってきていたザフト追撃艦隊は進軍を停止した。
代償としてアークエンジェルが残存艦隊へ反転・併走するまでの時間を稼いだブルーコスモスＭＳ部隊は全滅した。
ＬＦＡ最後のライデン二機も相次いで被弾、虚空に散った。僅かにテン・エイティ４機、ベルグドル２機が帰還したのみ。
だが、彼等の犠牲は無駄ではなかったのだ。
ブルーコスモスの残存艦隊は一隻たりとも欠けることなく、１０万人の人々が生きて地球の大地を踏みしめられたのだから。
- 492 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/129 投稿日： 2003/05/31(土) 22:40
- 私はマリューに感謝した。
彼女は軍人として非情になりきれなかった。
指揮官としては失格だった。
そのかわり、人間として、目の前の無力な人々を見捨てなかったのだ。
この行為は同盟国ザフトへの重大な背信行為であり、軍人としても許される行動ではない。
恐らく、戦後なんらかの責任を取らされるだろう。
それでも彼女は人々を救うことを選んだのだ。
（……ありがとう）
遥か彼方を艦艇の噴射炎が青白くみえた。
ブルーコスモスの残存艦隊と、同行するアークエンジェル。
更に遠方で遠ざかっていくのはアスラン艦隊だろうか。
私一人の力ではどうしようもなかった。
最後の最後で、私はアークエンジェルに救われたのだ。
（……寒い）
知らぬ間に湧き出ていた冷や汗が私の体温を奪い、不快な重さとなって背中にはりついた。
私は姿勢を変えようと身じろぎする。
その行為は握り締めたコントロールスティックを傾け、
ライデンの右腕を僅かに振り上げさせる行為となってキラに認識された。
- 493 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/130 投稿日： 2003/05/31(土) 22:42
- 気付いた時には、フリーダムはゼロ距離にまで接近していた。
「あっ！！！！」
自動回避プログラムが作動。ライデンは大上段から振り下ろされるビームサーベルを受け止めた。
凄まじい干渉力で両機は一瞬バランスを崩し、再びフリーダムがサーベルを振りかぶる。
私は予想される攻撃に対し慌ててブレードを構えるが、それがキラの狙いだった。
振り下ろす体勢をフェイントにビームサーベルを投げつけ、同時に予備近接兵器アーマーシュナイダーを抜き放つ。
そして、バーニア出力全開で突撃。
キラの一連の動作は余りにも素早く、同時に見惚れるほど優雅だった。
投げ槍の如きビームサーベルをビームブレードで振り払った瞬間、私は自分の致命的なミスに気が付いた。
反射的な反応で構えを崩してしまったのだから。
「えっ、うそ」
それだけ言うのがやっと。
モニターには大写しになったフリーダム、そしてコクピットを狙う得物のナイフ。
（私の、負けか）
私の最後の思念はそこで砕かれた。
フリーダムの繰り出したナイフがライデンの胸部に突き刺さり、モニターとコンソールディスプレイが粉々に砕け散る。
機体フレームかコクピット構造体が原型と思われる捩れた部品が一面に散らばり、いくつかは私の身体に突き刺さった。
凄まじい衝撃の中で、私の意識は闇に閉ざされた。
- 494 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/131 投稿日： 2003/05/31(土) 22:43
- ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター（フレイ・アルスター親衛隊）最後の４機は使命を果たした。
彼等の犠牲を厭わぬ活躍により、ブルーコスモス残存艦隊はポツダムへ到着後、降伏した。
これにより十万人以上の兵士と難民がザフトの手を逃れ、地球へ無事帰還できた。
ＬＦＡ最後の構成員とその乗機は以下のとおりである。
フレイ・アルスター（戦死） ２３１号機（大破）
リュッヘ・タチアナ准尉（戦死） ２２１号機（喪失）
リゲルト・パール准尉（戦死） ２２２号機（喪失）
ヴォルフガング・シュトライバー少尉（重傷） ３３２号機（大破）
- 495 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/132 投稿日： 2003/05/31(土) 22:44
- 低い振動音と僅かな揺れは懐かしい子守唄のようなものだった。
私、フレイ・アルスターは気だるい、綿毛のような感覚の中、ゆっくりと目を開けた。
まず目に飛び込んできたものは、一片の染みもない天井だった。
蛍光灯の無機質な明かりが遠慮なく私の頬を照らしていた。
まぶしい。
私はいつライデンのコクピットから抜け出したのだろう。
死んだのだろうか。いや、死んだにしては体が重い。天国ではないし、地獄でもない。
何度か瞬きをした。夢ではないようだ。
状況を確認しようと痛む体を押して上体を起こそうとし、そこで私の目は釘付けになった。
見慣れた制服。見慣れた背格好。見慣れた顔つき。
「キラ………」
私が寝かされたベッドの横に腰かけ、悲痛な表情でじっと窓を見つめていた少年。
思いつめた瞳。眉間に刻まれた苦悩の後。頬に乾いた涙の後。
私が動いた気配に気付いたか、声に気付いたか、キラがゆっくりと顔を向けた。
「………フレイ」
私の名を一言漏らすと、とたんに大粒の涙が目元にたまり、たちまち溢れて頬を伝わった。
「フレイ、フレイ！！」
キラはうわ言の様に私の名前を連呼すると、ベッドに半身をのせて抱き付いてきた。
「ちょ、ちょっと！」
「フレイ、フレイ、フレイ！！」
こいつには私の名前以外のボキャブラリーが無いのかしら。
こういうシーンって逆だと思うんだけどなぁ…。
女の子が男の子に抱きつくものなのに。
私の首筋に鼻面をおしつけ、号泣するキラ。
こんな時、私は何をすればいいのかちゃんとわかっている。
私は彼を赤子のように抱きしめた。尚も泣き続けるキラ。
ホント、キラよね…。
キラの体温を感じながら、心地よいキラの涙を実感しながら、私も泣いた。
それは、キラと再開したことだけへの涙ではなかった。
- 496 名前： ＬＦＡ物語/作者 投稿日： 2003/05/31(土) 22:47
- ついに再会したキラとフレイ。
傷つけあった二人に待つ運命は…？
そして我等がフレイ様は何を思うのか？
最後までおつきあい頂けたら幸いです………
- 497 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/31(土) 22:49
- >>496
乙フレ〜
フレイ様、死んでなくてえがったよ（つд｀）
最集話までがんがって書き上げてください。
- 498 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/31(土) 22:54
- >>496
乙フレイ！
戦闘ではキラ相手に善戦し過ぎだとｵﾓﾀが、かなり燃えますた。
>>494読んだ時点で漏れの脳内は（ﾟ∀ﾟ）ｱﾋｬってたけど、
フレイ様は生きていらしたんでつね、本当に良かった。･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･
- 499 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/31(土) 23:12
- 乙です！
しかし、もうこの長さになると最初の頃のプロット忘れちゃいそう…ｗ
次が最終ですか？頑張って下さい！
- 500 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/05/31(土) 23:25
- >>496
毎度乙フレです！
フレイたん生きててよかったよ〜｡･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･｡
最後までついてきまつ！
がんがって下さい。
- 501 名前： 火サスノリで行ってみようか ７ 投稿日： 2003/05/31(土) 23:45
- その日の夕食で、フレイは昼間の話をする事が出来なかった。出来るはずもない。
もし彼が、何かを知っていたら…という恐怖。
「ねぇキラ…私…」
思い詰めたような表情のフレイを、キラは少し訝しげな、だが優しさのこもった瞳で見つめる。
「どうしたの？食欲無いの？あ、パセリは苦手だっけ…」
こんな会話も、今日はどこか虚ろに聞こえる。
本当は聞きたいのに聞けない。「私に何か隠してる？」という言葉。
そう言えば、私とキラが出会ったのは、戦争が終わってからだった。
その前…もしかしたらその前の事なの？
でも、私は戦争の時はヘリオポリスにいて、カレッジに通っていて、
そして、戦争が終わって、この町に降りてきて、キラと出会った…
そう、そのはず。だとしたら、私は一体、何を不安がっていると言うのだろう。
「…ィ…フレイ！？」
我にかえると、キラの瞳が心配そうに覗き込んでいた。
「ううん、何でもないの」照れ隠しに笑うと、キラは安心したように微笑みを返す。
その微笑みを、少し心苦しいものに感じてしまった…
- 502 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/01(日) 00:04
- これから火サス展開まっしぐら！？
火サスには死人が付き物だ((((((；ﾟДﾟ)))))ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ
- 503 名前： ＬＦＡ物語/作者 投稿日： 2003/06/01(日) 00:10
- >>501
乙！
お互い頑張りましょうねぇ〜
ああ、それにしてもどうしよう……
- 504 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/01(日) 00:13
- >>501
乙フレー。
マジで火サスでつか！？
探偵は
も、もしかしてカズイ様!!!!
続き楽しみにしてます。
- 505 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/01(日) 00:18
- >484->496
乙。フレイ死ななくて良かったー！
まさか生身で再びキラとフレイが会う日が来るとは。
表向き戦死、
ということはフレイにも未来が用意されていると言うことでしょうか。
その辺も楽しみにラストを待ちます。
- 506 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/01(日) 00:19
- >501
ついにキラの名前が出ましたね。
しかしいちいちこの二人のやり取りは激しく微笑ましくて和みます。
こんな二人が本編でも見たいものです。
しかしこれは火サス。サイの動向にドキドキです。
- 507 名前： 火サス書いてる人 投稿日： 2003/06/01(日) 00:53
- 人死に、探偵は出てくる予定無いです（でもカズィ様探偵は良いかも知れんなｗ）。
結構話がこんがらがってくるかも知れないので、ここからはよく考えて書かないといかんな…
- 508 名前： 火サスノリで行ってみようか ８ 投稿日： 2003/06/01(日) 13:54
- 「…本当に良かったのか？」
カガリは、キラに会うなりそう言った。フレイがいない時に会うのは本当に久しぶりだ。
「お前がどうしても、と言うから、二人に良かれと思ったんだが…後悔してないだろうな？」
カガリは小声だが、厳しい調子は崩していない。自分も責任の一端を負っているという気持ちもある。
「いいんだ。僕は後悔していないし、後悔するつもりも無い」
いつに無くキラははっきりと、断定的な口調で言った。
「でも、まだフレイの記憶は戻ってないんだろ？それなのに…」
「サイが生きていたなんて、僕も知らなかったし、予想もしてなかった。でも、彼は今、この町にいる。
これは確実なんだ。フレイはサイを見ているらしいし、会うのも時間の問題だ。もしかしたら、他にも
いるかも知れない。もう、後戻りは出来ないんだ」
カガリは沈黙した。目を伏せて何かを考えているようだったが、しばらくするとため息をついて
「…で、フレイには全部話すのか？まだ何も知らないのに…」
「それは…今はまだ早いと思ってる。でも、こうなったからには、何れフレイにも話さないといけない。
もう、あれから4年近く経ってる…」
キラもそこまで言うと黙り込んだ。重い沈黙が二人がいる空間に立ち込めた。
サイは部屋の中で考えていた。もう何日、こうしているのだろう。
戦争で重傷を負い、奇跡的に助かった身体は、時としてまだ痛みが走る。
フレイが生きていたというのはサイにとっても衝撃だったが、不可解なあの態度。
「何故だ…フレイ…」
もう怒りの感情は無い。時間が経ち過ぎたのだ。しかし、せめて、一言あっても良いではないか。
やりきれない思いでいっぱいだった。多くの仲間が死んだ戦争。ようやく気持ちの整理がついたと思ったのに…
- 509 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/01(日) 14:04
- >>508乙！
サイ、憐れ…
- 510 名前： ＬＦＡ物語/作者 投稿日： 2003/06/01(日) 14:06
- これからバイトなので、その前に投下。
今回と、次回で終了。長かったなぁ…
- 511 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/133 投稿日： 2003/06/01(日) 14:08
- 「フレイ、ゴメン！ゴメンよ！僕は、僕は、フレイを、フレイと戦って、それで…！！」
「キラ。泣かないで。私の顔を見て……」
それでもキラは私の胸に顔を埋めたまま泣きじゃくり続けている。
「トリィ！」
私の肩に緑の機械鳥がとまって鳴いた。
『アドミラル･レーダー』の格納庫に置いてきたのだが、降伏した同艦に乗り込んだキラによって戻ってきたのだ。
焦れた私は彼の頬を挟むなり、持ち上げて唇を重ねる。
キラの唇をなぞり、舌をからめるうちに、されるがままだったキラにようやく力が戻ってきた。
一端唇を離すと、今度はキラの方が私を求めてきた。キラからキスをされるなんて初めてのことではないだろうか。
私は嬉しくてキラの求めに答えた。
お互いを求めて。欠けていた半身を取り戻すようなキス。
キラと私の唾液が小さく糸を引いた。キラは赤面して唇を吹いた。
「落ち着いた？」
優しく聞いてあげたのに、またキラの目尻に涙が溜まって溢れだす。
「でも、僕は、僕は……！君と戦うつもりなんてなかったのに、フレイと戦って、そして」
「キラ。もういいのよ。私は私の義務と責任を果たした。貴方は貴方の願いを叶えるために戦った。
その過程で戦場で会い、戦い、傷つけあった。それだけよ」
「だけど、フレイ！」
キラの泣き顔はいつものことだ。この人はいつも泣いて、つらそうだ。
それでも私の前で泣くことは珍しかったのに、それを隠そうともしない。
「僕は、僕は……！」
キラの唇がパクパクと上下し、その先の言葉が出てこなかった。
私は溜息をついた。しょうがない、キラなんだから。
- 512 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/134 投稿日： 2003/06/01(日) 14:10
- 「キラ。もう言わなくていいわ。あなたが苦しむ必要はないの。
再会した時言ったでしょ？
これは私の選択の結果。私は、私の名の元に集まり、戦場に赴いた人達を見捨てるわけにはいかなかったの。
ううん、もっと、私が強ければ、こんなことにはならなかった。だから、その責任を果たしただけ」
「…僕は、君があいつ等に捕まって…無理やり…。だから、君を助けなきゃと思った…」
「ええ、わかるわ」
キラのやや癖のある髪をなでながら続きを促す。
「でも、フレイが…自分から、戦うのを見て、分からなくなった。
僕が、何の為に戦っているのか…。君が、ブルーコスモスの一員として、本気でコーディネイターを抹殺しようとしているのか……」
「キラ、ごめんなさい。あの時は、ゆっくり伝えられなかったものね。
だから、もう一度言うわ。もうコーディネイターは憎く無いわ。もちろん、貴方もよ」
「本当？じゃあ、なぜＭＳに乗ったの？」
私はキラの瞳を覗き込んだ。キラは、いつも泣いてばかりだからか。
彼の瞳は本当に綺麗で、真っ直ぐだった。だから、正直に言おう。
「大切な人がいたわ」
キラの身体がピクリと震えた。
「操り人形にしか過ぎなかった私を、人間として、仲間として扱ってくれた人が。
ただ生きているだけだった私を、本当の意味で『生きている』とわからせてくれた人が。
彼はＭＳパイロットだった。最初は儀礼的な意味でＭＳに乗ってたけど、いつの間にか、彼の役に立ちたいと思った。
彼だけに戦わせるわけにはいかない。そう思った」
「……」
「父親であり、兄であり、友人であり、そして愛する人…だったかもしれないわ」
私は悪戯っぽく微笑んでみせた。
- 513 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/135 投稿日： 2003/06/01(日) 14:12
- 「その人は…？」
「死んだわ。私を信頼して。私に、全てを託して…」
私達の間に沈黙が舞い降りた。
アルカード。
銀髪で痩せた長身の軍人。
厳格で、時々寂しそうな笑顔を浮かべていたＭＳ乗り。
戦場で死神と恐れられながら、人間というものを信じていた男。
彼がいなければ、私は人にはなれなかった。
そして、私が生き残ることも。
彼だけではない。シュトライバーが、ＬＦＡの誰もが、ＭＳパイロットが、ティヒゼンが、艦隊の水兵達が、整備員が、兵士達が、マリューが、アスランが、そしてあのクルーゼが。
誰か一人欠けただけでも、私は今、ここでキラを抱きしめることは出来なかった。
人と人が織り成す複雑なマトリクス。
その一つ一つが折り重なり、如何なる芸術家にも再現出来ない「運命」が私をここに存在させている。
そして、私に最後のチャンスをくれたのだ。
- 514 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/136 投稿日： 2003/06/01(日) 14:13
- 「キラ、私のライデンはどうなったの？」
「え？ああ、あの機体…。ボロボロだけど、回収して格納庫に置いてあるけど…」
「お願い。連れてって」
昔から、キラは私の“お願い”に弱かった。
「で、でも、フレイはまだ怪我が治ってないし、それに、なるべく外には出すなって言われているし…」
言われて、私は全身包帯巻きである事に気付いた。
ライデンでの無理な機動戦闘とキラに撃破された時の破片が相当なダメージとなったらしい。
「いいから、連れて行きなさいよ。貴方、私を随分待たせたのよ？今ぐらい聞いてくれたっていいじゃない」
「そ、それはフレイが自分から残った…」
私の視線攻撃が効いた。勝負はついた。がっくりとうなだれるキラ。
ＭＳ戦とはいえ、キラに負けたままというのは気分が良くないものだ。これで一勝一敗。良しとしよう。
「ちょっと、車椅子なんて出してどうするのよ！」
「えっ？だって格納庫まで…」
「あんた、コーディネイターなんでしょ！？私を抱きかかえて行くぐらいの体力無いの！？」
どこまでも鈍いんだから。それがキラらしくて良い所だとも思うが。
「じゃあ、僕の背中に…」
「……」
これ以上言うと医療室から一歩も出られそうにないので、仕方なく妥協した。
それでも、彼の背中に全身を預けると、本当に心地よい暖かさが私を包んでくれた。
キラと何度も関係を持ったことはあるが、これ程暖かいものだっただろうか。
キラをからかいながら私はアルカードを思い出していた。
「お前も来る？」
トリィが舞い降りてきて、私の肩にとまった。
キラが主人だった筈なのに、いつのまにか私を主人だと認識しているようだ。
- 515 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/137 投稿日： 2003/06/01(日) 14:15
- 戻る事は無いと思っていたアークエンジェルの中は妙に閑散としていた。
格納庫まで誰ともすれ違わないのだから。
キラに言わせれば、戦争が終結の反動で、ほぼ全員がベッドで撃沈しているらしい。
サイやマリューに会いたかったが後回しにした。先に会う相手がいるのだから。
ＭＳ格納庫は、最小限の人員がノロノロと動いているだけだった。
あれほど緊張感にあふれ、機敏に動いていた彼等が、明らかに気が抜けている。
私は戦争が終わったことを実感した。
マードックがいたことは意外だった。酒を飲んで真っ先に酔いつぶれていそうだが。
なんでも、フリーダムを元に戻すまで、彼の戦争は終わらないそうだ。
整備員達の会話が聞えた。
「おやっさん、フリーダムの射撃兵装はどうします？」
「んなもん、後回しだよ！もう撃つ相手はいないんだからな。スラスターユニットの調整だけでいい。
幸い予備の翼があったからいいが…」
「しっかし、よくここまでフリーダムとキラの最強タッグを追い込んだもんです」
「相手はあの嬢ちゃんだろ？まさかブルーコスモスに入るなんてなぁ」
「しかも皇女だろ？ワケがわからん。キラが捕まえてきたみたいだが…どうなるんだ？」
「一応ニュースでは行方不明扱いになってましたけど、オーブに到着したら引き渡すんじゃないスかぁ？
そしたら死刑は間違いないよなぁ」
キラが弾かれた様に私の顔を見た。
- 516 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/138 投稿日： 2003/06/01(日) 14:16
- 「どうしたの？」
「フレイ、戻ろう…」
無言でキラの手を振り解き、格納庫の中へ進み出た。目指すモノはすぐに見つかった。
格納庫の予備ハンガーデッキに固定された、一見屑鉄と見逃してしまいそうな、巨大な鋼鉄の騎士を。
整備員達のざわめきが大きくなるが、気にしない。
私は、つい先刻まで私の戦友だったライデンを見上げていた。
私の想像以上にライデンは酷い有様だった。各部の装甲が醜くめくりあがり、ビーム被弾による黒い染みは矢傷から滲み出た血液のよう。
そして、胸部に深い亀裂。フリーダムのナイフが命中した箇所だ。
良く私は助かったものだ。
私は気付かなかったが、後ろでキラが複雑な表情を浮かべていた。
私を敵として殺そうとしたのもキラならば、私を助けたのもキラなのだ。
そんなキラの思惑を知らず、私はライデンの装甲に指を触れた。
それは冷たくて、硬くて、ザラザラで、私を強固に拒む。
だが、私は身体全体を密着させ、ライデンに語りかけた。
「ライデン、酷い目にあわせて、ごめんね。
でも、お前のおかげで私はアルカードとの約束、守れたよ。
……ありがとう、ライデン
……安心して、おやすみ…」
頬に押し付けた装甲の感触を、私は忘れる事がないだろう。
一瞬、ＰＳ装甲が起動し、ライデンが赤く染まったように見えた。
それは気のせいだったのだろうか。
だが、確かにライデンが私に別れを告げたのを聞いたのだ。
最後に愛機を一瞥し、踵をかえす。
「…終わったわ。行きましょう、キラ」
「あ、ああ」
キラを引きずるようにして格納庫を後にした。
整備員達は一言も漏らせず、呆然と突っ立っていた。
- 517 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/139 投稿日： 2003/06/01(日) 14:18
- 私がキラにせがんだ場所がもう一つ。
そこはアークエンジェルの上甲板。
かつて、砂漠の虎を退け、紅海に出た時の頃。私達が日光浴に勤しんだ場所だ。
「うわぁぁ………」
私は単純に太陽の光りに感嘆の声をあげた。もう三月以上、宇宙空間からの地球しか見ていない。
空の青さが無性に懐かしく、そして嬉しかった。
アークエンジェルは母港であるオーブに向かっているらしい。
付随する戦艦は一隻もない。
アークエンジェルだけが、大海原の中、ただ一隻航行していた。
私の視界は１８０度雲ひとつ無い青空と水平線が広がっていた。
巨艦がおしのける空気が抵抗を発し、それが上甲板に風となって押し寄せてきた。
病人服のガウンがドレスのようにたなびく。目を瞑って、しばらく空気の塊の感触を堪能する。
「………綺麗だよね」
「………そうね」
遠慮して後ろに突っ立っていたキラが私の傍に歩み寄り、手すりに体重を預けた。
しばらく無言のまま、私達は水平線を眺め続けた。
キラに気付かれぬよう、視線をそっと横にやる。
キラの顔立ちは端正で、整っていて、肌にはしみひとつなくて、どこか人工的な…それがコーディネイターというものなのか…臭いがした。だが、美しい彼の瞳には、戦場を潜り抜けてきた者だけが持つ苦悩と、疲労と、諦めと、そして生きる事への喜びが同居していて、それが顔立ちを含めて同化してしまい、“キラ”という誠実で余裕のない、脆い少年として私の前に存在させていた。
私には伝えなければならないことがあった。
これが私の最後の戦い。
私が一人生き残ったことに理由があるとしたら…
多分、この瞬間の為に生かされていたのだから。
- 518 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/140 投稿日： 2003/06/01(日) 14:20
- 「キラ」
「ん？」
口元にかかった髪をのける。
「あなたがイージスと戦って、私の前から消えたわね。
あの時、出撃する前、あなたは言ったわ。『ごめん、帰ってから…』って。覚えてる？」
「ああ、忘れるわけないさ」
前日、私達は喧嘩をしてしまった。
オーブで両親が待っているというのに、両親を無くした私に気をつかって艦を降りなかったキラ。
彼の思いやりが、同情が、余裕のなかった私には痛くて、見下されているようで、復讐の手段にすぎなかった筈のキラにどうしようもなく傍にいてあげたくて、いて欲しいことに気付いて、キラをなじった。キラはつらそうに『もうやめよう。僕たち、間違っちゃったね』と静かに言った。
「あの時は、僕はどうかしてたんだ。ごめん」
「ううん。あなたの言ったことは間違ってないわ…」
私は顔だけを水平線に向けた。
「キラ。もう今のキラなら分かってると思うけど…
最初、あなたに近づいたのは、単純にあなたが好きだったからじゃないわ」
「…わかってる」キラは静かに同意した。
「復讐の為だった。
“パパを戦死させたのもコーディネイターなら、守りきれなかったのもコーディネイター。だから、殺し合わせて皆殺しにすれば良いの”って。
その時は本気だった」
「……こんなこと聞くのはこわいんだ。でも、聞きたい。フレイ、今でもそう思ってる？」
「さっきも答えたでしょ。馬鹿な事言わないで！」
私は言下に否定した。否定できるだけの強さが私にはあった。
「でも、フレイは、ブルーコスモスとして……」
「…キラは変わらないわね」
私は苦笑した。
相も変わらず顔をくしゃくしゃにして、私がちょっと声をかけるだけで泣き出しそうで。
「あの時、私にも言えなかった言葉があるわ。
だから、伝えたいの」
私は向きなおり、キラの火照った頬に手をあてた。
「キラ。愛しているわ」
- 519 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/141 投稿日： 2003/06/01(日) 14:23
- 「え？」
彼は目をパチパチさせながら硬直していた。
「ふふっ、ようやく言えたわ。
これを伝えず死んでたら、幽霊になってでも言わなきゃって思ってたんだから」
流石に私も恥ずかしく、笑いながら誤魔化した。
が、キラに伝えたことは本気だった。
「フレイ？今なんて…」
「バカ。女の子の一世一代の告白をもう一度言わせるの？
愛してる、って言ったのよ」
キラの唇に私の唇を重ねる。キラは、やっと言葉の意味を咀嚼したようだった。
「………なぜ、フレイ。なんで僕なんかを…君が…」
あきれた。ＡＡの連中もそうだけど、あんたには開いた口が塞がらないわよ。
「正直、キラの全てが好きじゃないわ。情けないし、泣き虫だし、優柔不断だし、一人で何もかも背負い込んでウジウジしてるし……」
「そ、そこまで言わないでも……」
「でもね、キラ」
私は正面からキラの瞳を覗きこんだ。
「私は、そんなところもキラだと思っているわ。
あんたの情け無いところも、全部ひっくるめて、私はあなたという人が好き。
私はあなたの傍にいたかったし、あなたに傍にいて欲しかった。
それだけは、伝えておきたかったの」
「…フレイ？どういう意味？」
キラが怪訝な顔をした。
- 520 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/142 投稿日： 2003/06/01(日) 14:24
- 私の使った言葉が“過去形”であることに気付いたのだろう。
「キラ。いままでありがとう。
そして、ごめんなさい。
私はあなたを傷つけたわ。許されないことは分かってるけど…本当にごめんなさい」
私は肩にとまったトリィを指先にのせ、キラに差し出した。
トリィはちょんちょんと飛び跳ねると、キラの肩に移った。
「トリィを返すわ。トリィは私が本当に苦しい時に、私の力になってくれた。
傍にいてくれるだけで、あなたを思い出せたから」
「フレイ、どうして…。
トリィはずっと君に預かってもらっても良いと思っていたのに。
なぜ返すの？」
「…キラ。私達は一緒になれない」
「なぜ、なぜだフレイ！
僕は、はっきり言える。
僕もフレイのことが好きだ！君も、僕のことを好きだと言った。
なら、なぜ“一緒になれない”なんて言うんだ！」
「……こういうことよ」
私は哀しい気持ちで視線をずらした。
「フレイ？」
「そこまでよ、アルスター」
銃を構える衛兵をつれたマリューが、私達を冷たく睨んでいた。
- 521 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/143 投稿日： 2003/06/01(日) 14:26
- 「…艦長？どうして…」
「離れなさい、ヤマト中尉」
衛兵が割って入り、呆然と立ちすくむキラを引きずり出した。
私はたちまち衛兵に取り囲まれ、腕を抑えられてしまう。
「痛い！乱暴にしないで！抵抗なんかしないから」
「それはどうかしらね」
ピシャリと反論を許さぬ一声。
私は恐る恐るマリューを見た。
笑顔が魅力とか、困った顔も素敵だぜ、とか、男性クルーが好き勝手にマリューを評価していたのを思い出す。
だが、目の前の彼女は一切の表情を消した顔立ちに般若の瞳をもって私を睨んでいた。
やはり、難民作戦はまずかったか。
「アルスター皇女、あきらめが悪いわね。最後までヤマト中尉を狙うなんて。
ヤマト中尉もヤマト中尉よ。
相手はコーディネイターを抹殺しようとしていたブルーコスモスのリーダー。
気を許したらダメ」
「そんな！艦長、違います！フレイは、フレイは！」
「アルスターは捕虜として扱い、オーブに引き渡します。
ヤマト中尉。あなたの行為は軽率だったけど、今日のことは見逃してあげる。
個室に戻りなさい」
「艦長！！離せ！！フレイ！！」
さすがのキラといえども、屈強な衛兵数人に抱えられては動きがとれない。
私は衛兵に突き出されるようにして歩かされた。
キラが泣き喚く声とトリィのけたたましい鳴声が、いつまでも私の耳に響いていた。
- 522 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/144 投稿日： 2003/06/01(日) 14:29
- 私はベッドが置かれただけの独房に入れられた。
身体の傷が全快したわけではなかったが、特に重大な傷はないということで、一日二回の医者の検診があるだけだった。
あれからキラも、サイ達も来なかった。
歩哨が立っているところを見ると、近づくことも禁止されているに違いない。
小さな丸窓の外から見える光景は、大海原から島々が点在する風景へと移り、ＡＡがオーブの領域に入ったことを示していた。
私はベッドに横になった。
私のやるべき事は、全て終わった。
ブルーコスモス最後の後始末。キラへ私の想いを伝えること。トリィを元の主人に戻すこと。ライデンに最後の別れを告げること。
（キラにさよらは言えなかったな…）
オーブに到着すれば、有無をいわさず当局に引き渡され、キラと言葉をかわすこともないだろう。
その意味では心残りだった。
とりとめのない考えに身を任せつつぼんやりと暗い天井を見つめていると、航空機の爆音が聞えてきた。
ちらりと視界をかすめ、ＡＡの飛行甲板方向へ吸い込まれる。オーブからの連絡艇だろうか。急に艦内が慌しくなった。
私を移送する準備かな…。
その時、ドヤドヤと足音あらく、誰かが私の部屋の前にやってきた。
歩哨の制止する声を「うるさい、私が代表なのだ、いうことを聞け！」と一蹴する。
まさか…。
- 523 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/145 投稿日： 2003/06/01(日) 14:31
- 「この大馬鹿野郎！！」
ドアを蹴破る勢いで金髪の少女が突進してきた。私の襟首をつかむなりガクガクと揺さぶる。
呆気にとられて、私はオーブ代表カガリ・ユラ・アスハのなすがままにされていた。
「これで二回目よ…。いったいどうなってるの？」
「何を言っているんだ！全く、お前は自分が何をしたのかわかっているのか！」
怒鳴り方まで、あのザラとそっくりだ。
「キラもキラだ。なんでこんな大馬鹿を庇うんだ！
私が飛行艇から降りるなり、『フレイを助けてくれ』だと？
それがアイツの身を心配して駆け寄った私に、開口一番かける言葉か！？」
カガリは本気で悔しそうだった。
「お前が一番バカだが、あいつもバカだ！
お前に利用されて、裏切られて、あんなに傷つけられたのにまだお前を庇うんだからな！
あいつにはＭＳ並みの学習機能もないのか！？」
「………」
「いいか。お前をこれから助ける。亡命者用の保護プログラムだがな。
お前は顔も名前もかえて、オーブで生活してもらうぞ。た、だ、し！」
カガリは私に指を突きつけながら断言した。
「二度とキラに会うことは許さない！あいつに近づいたら、必ずお前を殺すからな！
ＭＳに封印して、宇宙の彼方か太陽へ放逐してやる。覚悟しとけよ！」
「わ、わかったわよ」
彼女の剣幕におされるまま、うんうんと頷いてしまう。
彼女は暴風のようにひとしきり私に罵声をあびせると、私の手をつかんで引っ張り出した。
ＭＳに乗って最前線に飛び出た私もそうだが、カガリはそれ以上に一国の元首にはふさわしく無い性格かもしれない。
迷路のような艦内をスタスタと進みながら、しきりにぶつぶつ文句を言っている。
護衛を兼ね、影のようにカガリに付き従うキサカには困惑と諦めの色をかくせない。
恐らく、日々、この爆弾爆走娘のサポートに神経をすり減らしているのだろう。
- 524 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/146 投稿日： 2003/06/01(日) 14:33
- 「お前を助けるのは、あくまでもキラが頼んだからだ。
でなきゃお前がどうなろうと知ったことか！！」
カガリが強調したいのはその点のようだった。
私壁にへばりついて言われるがままに道を開けるＡＡクルーを尻目に、私達一行は飛行艇が待機する甲板に到着した。
一瞬、私の目はキラを探した。
だが、彼はいなかった。サイも、ミリィも、カズィもいなかった。
オーブの連絡艇がさびしげに待機していただけだった。
ようやく連絡が入ったのだろう。
慌ててマリューやフラガが飛び出してくる。
「ちょっ、いったいどういうつもりですか！」
「決まっているだろ。こいつは連れて行く」
カガリは機嫌が悪い。
「正式な手続きはまだです！書類の作成も終わっていません！」
「こいつに関する資料は全て破棄！回収した記録も消しとけ！提出は三日待ってやる」
「そんな、なぜですか！！」
「知るか、キラに聞け！！私に不愉快なことを何度も思い出させるな！！！」
「それでは納得できません！！説明をお願いします！！」
さかんにやりあう二人。
私は興味なくその光景から目をそむけた。
- 525 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/147 投稿日： 2003/06/01(日) 14:35
- 私はアークエンジェルをぼんやりと眺めていた。
もう私がこの艦に脚を踏み入れることもない。サイ達に会う事もない。
そして、キラに会う事もない。
目尻に熱いものが込上げ、溢れだした。
涙がとまらなかった。
なぜだろう。
やるべきことは全て果たした。
なのに、なぜ。
私は悲しみの正体に気が付いた。
私はキラに会いたいのだ。
彼と共に生きたい。
その気持ちが私に涙を流させるのだ。
（キラ………！！）
その時、アークエンジェルが揺れた。
- 526 名前： ＬＦＡ物語/作者 投稿日： 2003/06/01(日) 14:39
- やっぱり物語はこうでなくちゃと思いながら書いています。
カテジナや0080の悲劇系もいいですけど、物語は希望を見せてなんぼだと思うので。
キラとフレイの運命は、ついに重なりあうのか？
そして、最後の敵はやはり痔なのか！？（おい）
次回もこれぐらいの長さだと思いますが、最後まで応援して頂ければと思います。
- 527 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/01(日) 14:50
- >>526
乙フレイ
読んでて漏れも少し涙目に・・・(つД｀)
王道ストーリー万歳ヽ（´ー｀）ノ
- 528 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/01(日) 15:06
- 顔変えちゃうのね（泣
髪の色を変えるだけで、アニメ的には別人になれるのに…
- 529 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/01(日) 15:09
- 乙です。
次回最終回って、ハッピーエンドですか？
俺の方は結構ダーク系にやる予定なので、何卒フレイ様を幸せにしてやって下さい。
- 530 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/01(日) 15:16
- >>526
乙フレ〜。
先が読めない展開に最後までﾄﾞｷﾄﾞｷ(;´Д｀)
キラフレ成就はあるんでしょうか…。
作者様の愛に期待でつ。
次回投下お待ちしてます。
頑張って下さい〜。
- 531 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/01(日) 15:38
- 乙フレっす！
いやぁ、せいつないね〜
ラスト、楽しみにしてます。
- 532 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/01(日) 16:29
- 乙フレ〜。やはり最後はハッピーエンドがいいですね。
このままキラタンがフレイ様を奪って逃走になってくれればなお良し。
続き楽しみにしてます。
- 533 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/01(日) 18:09
- >510-526
今まで散々燃えさせていただきましたが、今回はひたすえら萌えでした。
MSを最前線で駆ける彼女も素敵ですが、
やはりこういう風に男を笑顔で振り回す、
小悪魔っぽく可愛らしいところに最初に惚れたので。
カガリの言動もいいですね。好感度うｐ。
告白の仕方も実にフレイらしくていいです。
もう一度言わせる気と怒り（？）つつ、結局言ってるし(笑)
ようやく想いが通じ合ったのに、引き裂かれる二人。
でも、作者様はハッピーエンド志向なご様子なので、
そのあたりに期待して最終回を待ちたいと思います。
- 534 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/01(日) 18:12
- >507,>508
まさかサイが死んだことになっているとは…。
フレイ様の記憶喪失は、やはりその死に際に原因が？
カガリが手助けした何かと言うのも気になります。
それにしてもサイが哀れだ…(´Д⊂
- 535 名前： 暗後作者 投稿日： 2003/06/01(日) 19:15
- 偶然（？）見かけたのはそこには存在しないはずの人物
どうにもこうにも無理矢理な急展開です。
相変わらず、ヘタレな文でどうもすみません。
では、私的フレイ・アルスターの世界へ！
- 536 名前： 暗闇の後には・・・�� 投稿日： 2003/06/01(日) 19:17
- 前回まで >>173 >>188 >>456-457
カレッジのエレカポートから３０分ほど行ったところにヘリオポリス
随一の歓楽街エリアがある。
巨大なショッピングモールやらアミューズメントパークやらがあり、
大学帰りに寄る者も多い。
とりあえず私たちは３時間ほどカラオケを熱唱した後
（殆どジェシカのワンマンショーだったけど）、
旧時代のゲーム機が多数おいてあり、実際遊ぶことも出来る博物館
（カズイ曰く『ゲーセン』らしい･･･）で少し遊んでみることになった。
「だぁ〜〜！また負けたぁ〜！！」
「トールがボクに勝てるわけ無いだろ」
どこか聞いたことのあるようなセリフで勝ち誇るカズイと
わざとらしく頭を抱えながら悔しがるトール。
二人はなんとも雑なグラフィックのロボットゲームで対戦している。
しかし、もう何度目だろうか･･･
さすがのミリィも暇そうだ。
それでもトールのそばを離れないあたり、ご馳走様って感じだ。
一方、ジェシカはと言えば、「うまくやりなさいよ」と勝手なことを言いつつ、
一人でどこかへ行ってしまった。
そんな訳で、残ったサイと私とで色々見て回ることになった。
「ねぇ、サイ。あれ面白そう。」
「え、どれ？」
私は人形の沢山入ったゲーム機を指した。
「あの人形かわいい〜♪ サイ〜、あれ取って！」
「分かった、ちょっと待ってて」
サイは早速コインを入れてクレーンを動かす。
なかなか上手く取れないものね･･･ これ、イカサマじゃないのかしら？
アームにひっかかりはするが、持ち上げるまでには至らない。
もう何度もやり直している。
いい加減飽きてきた･････
そんな時、私の足に何かがぶつかって来た。
「ﾃｨﾔﾝﾃﾞｰ！」
それは、この辺をピョンピョンと飛び跳ね回りながら、そんなふうに
音声を発するピンク色の球体型のロボットだった。
手に取ってみる。
「ﾏｲﾄﾞｰ」
････どこかで、見たような････？
しかし、思い出せない。というより思い出したくない！？
嫌な予感がする･･･ なにかが狂い始めてる････
「ピンクちゃ〜ん、どこにいますの〜」
どこかで聞いたことのある声か聞こえてきた。
誰か探している？ ････もしかしてこれのことかしら？
私は手に持っていた球体型のロボットを見た。
すると、ロボットは私の手からすり抜け、その呼び声の方へと飛び跳ねて行った。
私は釣られてその方向を見て驚愕した。
そんな馬鹿な！ そんな筈が無い！
だってあの子がココにいるはず無いじゃない！！
- 537 名前： 暗闇の後には・・・�� 投稿日： 2003/06/01(日) 19:19
- 「もう、勝手にいなくなってしまってはダメですよ」
「ﾐﾄﾒﾀｸﾅｰｲ！ ﾐﾄﾒﾀｸﾅｰｲ！」
のんきそうな声でロボットに話しかけているピンク髪の少女。
まるでテレビのステージ衣装のような格好･･･
どこか人間離れしたような感じを受けるその少女を私は確かに知っていた。
もう二度と会いたくなど無い人物。
少女は、しばらくそのロボットと会話（？）した後、出口のある方向へと歩いて行った。
「フレイ、お待たせ。やっと取れたよ」
サイが何か言って来たが、私は自分を言い聞かせることに必死だった。
「あの女のはずがない！ きっと人違いよ！そうに違いないわ」
「フレイ？」
確かめなければ！
そう、あんな不愉快なものがココにいて良い訳がない。
「おい、フレイ！どこ行くんだ！？」
「すぐ戻ってくるから、サイはここにいて！！」
怪訝そうな顔のサイを横目に私はあの女を追いかけた。
博物館を出て、少しした所で私は件の女を発見した。
男の連れがいたようだ、とても親しげで、腕を組んで歩いている。
（でも、ホントにそんなこと確かめていいの？）
もう一人の私が警告するが私は気にせず走り続ける。
あと少し！
前を見ると、女が何か男に話しかけていた。
男はすこし照れたように女の方を向く。
その横顔は････
「そんな！？ ･････！？」
私はさっきとは比べ物にならないぐらい驚愕することになった。
いつの間にか走るのも止めてしまった。
声が出ない･･･
目の前に見えるものが理解できない。
ピンクの髪の女、ラクス･クライン。
その傍らにいるのは･･･････
普通の人とは違った存在
私がずっと利用しようとした存在、
現実にはもういなくなってしまった存在、
だからもう否定したかった存在
･････キラ・ヤマト
なんであいつがあの女とそんな風に一緒に歩いているの？
なんでそんなことになってるのよ？
「キラ」
女の少し甘えたようなその呼び声が耳にこびり付く
私もあんな風に彼を呼んでいたのだろうか？
ふと、そんな馬鹿なことを考えた。
そんなことぐらいしか頭に浮かんでこない。
････ボロボロと泣いていることにさえ気付かずに、私はその場に立ち尽くしていた。
私の世界が崩れて行く････
- 538 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/01(日) 20:15
- >535-537
乙です！
まさかラクスが出てくるとは…。
しかし、いくら彼女とはいえステージ衣装でゲーセンもどきには
来ないだろう、というと…うーん、何か意味深ですね。
真相が気になります。
ジェシカのキャラがいいですね〜。
フレイときゃいきゃい言いつつ遊んでいた姿が目に浮かぶようですｗ
- 539 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/01(日) 21:09
- 乙です。
ありゃ、ここでラクス登場ですか。
何か波乱の予感。
しかし、あの格好でゲーセンに来てるのか歌姫ｗ
- 540 名前： 火サス書いてる人 投稿日： 2003/06/01(日) 21:39
- こ、これは…戦後の話なの？
てっきり戦争前の話だと…
一体どうなるんだ、もしかしたら俺のネタが被ってしまうんじゃないか、ﾊﾗﾊﾗﾄﾞｷﾄﾞｷｗ
被っちゃったらゴメンナサイｍ(-＿-)ｍ
- 541 名前： 闇後作者 投稿日： 2003/06/01(日) 21:50
- >>538-540
感想サンキュ！
火サスさん、戦後の話ではないのでご安心を
（戦後だったらトール生きてない）
だからって戦前の話でもない････
まあそこらへんは追々。
（たいしたネタでもないんですが）
歌姫の衣装はあの格好しか知らないからです。（誰が？）
そもそも登場自体違和感あるしね。
- 542 名前： 火サスノリで行ってみようか ９ 投稿日： 2003/06/01(日) 23:24
- ザフトと連合の戦争が終わっても、一時の小康状態でしかない。
ナチュラルとコーディネーター相互の無理解と不信、差別…恐らく、それが消え去る事は無いだろう。。
ブルーコスモスの思想は、決して消え去る事は無い。
例え、表面上は平和であっても…
暗闇の中の会話。
「ブルーコスモスは決して潰えた訳ではない。我々はまた蘇る」
「青き清浄なる地球の為に」
「コーディネーターはこの地上から一掃しなければならない」
「戦争が終わった！？我々の戦いは終わらない。コーディネーターの最後の一人を殺すまでは」
それは地球、宇宙の人間全てを伝う蔓であった。
キラとフレイが住む街−オーブ−にも、その根は確実に這ってきていた。
もともとオーブには少数のコーディネーターも住んでいたのだが、戦後は人の流入が激しくなっていた。
「おい！あれ…見たか？」
「あぁ、間違いない…フレイ・アルスターだ！こんな所に」
「報告の必要有りだな。しかし一体何故…」
二人の知らない所で、静かに何かが動き始めた…
「キラ！ついにサイのいる所がわかったぞ！」
息を切らしたカガリからの連絡。
「そう…ありがとう。…そうか、近いんだ…分かった。こっちから連絡しようと思う」
静かなキラの言葉に、カガリは言葉を失った。しばらくして、
「おい…あんまり、思い詰めるな。俺も一緒に」
「いや、僕一人で行くよ」
キラはカガリの声を遮ると、大きく息を吸い込んだ。
- 543 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/02(月) 00:14
- …俺カガリは勘弁して…。
カガリの一人称は「私」だよぅ…。
- 544 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/02(月) 00:32
- あ、しまったｗ
修正したつもりだったんだが
- 545 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/02(月) 00:36
- >542
おつふれ〜。
というか、なんでフレイ様そんなに有名人…((((((；ﾟДﾟ)))))ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ
なんだか個人レベルの
イザコザでは終わらなさそうな雰囲気になってきましたね。
戦中、いったい彼らに何が…？
- 546 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/02(月) 00:39
- フレイ様戦犯なのか〜？･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･
- 547 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/02(月) 00:49
- >>542
乙。ところでキラもその居場所が分からなかったサイと
何故カズイ様は接触できたのだろうか・・・・
もしかしてカズイ様活躍の伏線・・・？
- 548 名前： ＬＦＡ物語/作者 投稿日： 2003/06/02(月) 11:26
- とうとう長かったＳＳも最終回。
こうして種は受け継がれていきます。
ここまで読んでくださってありがとうございました。
では、最終投下、用意〜
- 549 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/148 投稿日： 2003/06/02(月) 11:28
- 「敵襲！？」
「まさか、戦争は終わったんだぞ！！」
倒れこんだマリューをちゃっかりフラガが身体の下に庇った。
「状況を報告しなさい！」
乗りかかったフラガを跳ね飛ばす様にマリーは腰から通信マイクをつかみあげ、怒鳴りつけた。
オペレーターの解答は、この場の全員を驚愕させるに十分すぎた。
「フリーダムが、発進する！？そんな馬鹿な！フリーダムは大破したはずじゃ！！」
『マードック班長が修理しました！飛ぶぐらいの性能は回復しています！！』
「すぐに止めなさい。緊急停止信号を送信！」
『やっていますが…だめです！信号拒絶！プログラムが書き換えられていきます。
…これは、ウイルス？アークエンジェルの発艦プログラムにバグ発生、フリーダムを止められません。
あ、ビームサーベルを抜きました！格納庫が！！』
「隔壁閉鎖！パイロットは誰？まさか、アーガイル上等兵？」
『いえ…認識番号はキラ・ヤマト中尉です！』
キラ？
私の想いに重なるように、オペレーターの悲鳴が響いた。
『だめです、閉鎖間に合いません！フリーダム、外に出ます！！』
「バスターを出して！フリーダムを止めるのよ！！」
マリューの命令が終わらぬうち、前の揺れとは比較にならぬ振動が私をおそい、全員が甲板に投げ出された。
- 550 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/149 投稿日： 2003/06/02(月) 11:31
- 「いたたた……」
傷が完治していない私に打ち身はきつかった。
包帯を見るが、血が滲み出る様子はない。傷口は幸いにも開かなかったようだ。
不意に甲板が翳った。
太陽は真上にあるはずなのに。
逆光の中、女王に忠誠を誓うナイトの如く、翼を広げたフリーダムが膝を折って鎮座していた。
私との戦闘で切り離してしまった翼も元通りになり、独特のシルエットを再び形作っている。
宇宙で見るよりも、地球の空の下で見たほうが、フリーダムは美しかった。
コクピットが開いた。スーツに身を包んだキラが心配そうに顔を出す。
「フレイ…」
「キラ！？あんた、何をしてるの？」
喜びよりも先に当惑が勝った。問いたださずにはいられなかった。
「フレイは言ったよね。“私は、私の大切の人の為に戦う”って。
だから、僕も大切な人の為に…君の為に戦うよ。
例え、それが茨の道でも。
それが、僕の選ぶ道だから」
「キラ…」
私はゆっくりと立ち上がった。
「今ならまだ間に合うわよ？本当に、それでいいの？」
キラはしばらく沈黙していたが、決意を秘めた瞳で答えた。
「ラクスがくれた、このＭＳ。
僕はこいつを、初めて自分の意志で使うんだ。
フレイが連れ去られようとしているのに、僕は運命を黙って見ているなんて出来ない。
でも、このＭＳには、運命の鎖から“自由”になる力がある。
だから、僕は“自由”の力を使う。
フレイ。僕と一緒に来てくれないか？
僕には、多分、君が必要だと思うから…」
多分？
私は苦笑した。最後まで、キラらしい。
普通の女の子なら怒ってると思うけど…
しょうがない。相手はキラなのだから。
- 551 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/150 投稿日： 2003/06/02(月) 11:32
- 「私も馬鹿だけど、アンタも相当馬鹿ね。
…私がいなきゃ、あんた何もできないでしょ？」
「フレイ！！」
緊張したキラの顔が見る見る綻んだ。
私は差し出されたフリーダムの手に乗り、コクピットに上った。
宇宙では、私はまだＬＦＡとしてのフレイ・アルスターを、皇女としてのフレイ･アルスターを捨てるわけにはいかなかった。結果として、私は差し伸べられたキラの手を撥ね退け、お互い傷つき、血を流し、泣きながら相まみえる結果になった。
だが、それは過ぎ去ったことだ。
回り道をしたけれど。
私は、ようやくキラの元に帰れたのかもしれない。
いや、私達のスタートラインはここから始まるのだろう。
私はキラに抱きついた。キラが力強く私を抱きしめた。
今度こそ、キラが私を求め、私の唇を奪った。
お互い、真っ赤になった頬をすり合わせ、鼻先をつつきあわせながら、想いは同じだった。
「お帰り、フレイ」
「ただいま、キラ」
私達の頭上を、トリィが嬉しそうに飛び回った。
- 552 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/151 投稿日： 2003/06/02(月) 11:33
- 『そうは問屋がおろさないぜ』
不意にＭＳからの音声通話が響いた。
キラが破壊した格納庫は左舷だが、今度は右舷格納庫が爆発し、重砲戦ＭＳ『バスター』が飛び出してきた。
「ディアッカ！」
「え？あいつ、捕虜になってたんじゃないの！？」
「いつのまにかＡＡのパイロットの一員になってたんだ」
『“何時の間にか”とは失敬だな、キラ・ヤマト。
お前とは、俺がクルーゼ隊にいたころからの、ヘリオポリスからの仲だな。
何の因果か、一時は呉越同舟を余儀なくされたわけだが、戦争は終わりだ。
よって、馴れ合いの関係も今日でおしまいだ！』
馴れた動作で巨大なバスターライフルを構える。砲口の先は、もちろんフリーダム。
『貴様との因縁、ここで決着をつける！勝負だ、キラ！！』
内容は深刻なくせにディアッカのどこまでも陽気な声が響く。
足元の一行が大慌てで制止するのが見えた。
「や、やめなさい！フリーダムの足元には私達がいるのよ！」
『いっくぜぇぇぇぇぇ！！』
マリューの叫びを無視して、バスターが射撃の体勢をとる。
「まずい！フレイ、早く僕の後ろへ！」
「う、うん！どうするの！？」
「飛び道具がない。ビームサーベルで応戦するしかない！」
私を押し込むと、キラはシートに深々と身を沈めた。
手早くシートベルトを締め、その手間も惜しく左手はキーボードの上をピアノを動かすように走らせる。
ビームサーベルを展開し、バスターの懐へ飛び込むべく、身をかがめる。
ビームの先制を貰うことは覚悟の上だったのだが…。
- 553 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/152 投稿日： 2003/06/02(月) 11:34
- 「え？」
バスターが崩れ落ちた。
「何かしたの？」
「いや…僕は何も…」
キラも私も、何が起きたか分からなかった。
ＰＳ装甲がダウンし、ピクリとも動かなくなるバスター。
ディアッカがコクピットから這い出るなり、両手をあげた。
『くっそぉぉ、さすがフリーダムだぜ。グゥレイトな戦いだった。
だがな、覚えておけキラ。決して貴様の腕が勝ったわけじゃない。
機体性能の差だということを忘れるな』
「何やってるの、ディアッカ！！！！！」
今度こそ切れたマリューの絶叫が響いた。数メートル離れたフリーダムのコクピットにいる私とキラも耳をふさいだほどだ。このままでは、マリューはストレスで早死にするかもしれない。カウンセリングを受けるか、フラガに鬱憤をぶちまけた方が良いだろう。
『キラよ。惚れた女を守って戦うなんて、羨ましいなぁ』
「…ディアッカ、お前…。すまない」
『ふん、さっさと行けよ。
お礼は、そうだなぁ。
カワイイ姉ちゃんがたぁっくさん載った雑誌を俺の住所あてに送ってくれよ。
そうそう、嬢ちゃん。
キラはかわいい顔して手が早いから、首に縄つけてしっかり見張っときな』
「ありがとう。そうさせてもらうわ」
「な、なんだよフレイ。その目は」
慌てるキラ。何かある。
後でたっぷり聞きだすとしよう。
- 554 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/153 投稿日： 2003/06/02(月) 11:36
- 『キラ！！お前、まだその女に騙されているのか！！』
ドレス姿のカガリがフリーダムの足元に走りよった。
「ハッチ、開けるよ」
私の前で再び外界が開けた。
外部集音マイクからではなく、生のカガリの声が私の耳を撃った。
「お前はどこまでお人好しで単細胞なんだ！その女はお前を利用しているだけなんだ！
なぜそれに気が付かないんだ！また騙されるつもりなのか！？」
「カガリ……」
彼女の叫びは当然だと思う。
まともに考えれば、キラは自分達を殺そうとした組織のリーダーを助けようとしているのだから。
それに、私にはキラを誘導し、戦いに駆り立てた罪があるのだから。
「ごめん、カガリ。こんな僕のことを、心配してくれて。
でも、僕はフレイと一緒に行く。その気持ちは変わらないから…」
「キラ！」
カガリは泣いていた。キラへ恋愛感情を持っている…とは考えにくかった。だが単なる他人に対してへの想いとは違う。
後から、カガリがキラの姉であることを聞き、仰天すると同時に納得もしたものだ。
私はキラの耳元で囁いた。
「キラ、なんでカガリに私を助けるよう頼んだの？」
「だって…」
彼は罰が悪そうに後頭部を掻いた。
「フレイが独房に入れられてたら、手が出せ無いでしょ。
フレイが外に出てこないことにはフリーダムでも助けられないし。
カガリには悪いと思ったけど、フレイを外に連れ出す“囮”になってもらったんだ」
「…呆れた。あんまり褒められた行動じゃないけど、許してあげる。
私を助ける為の事とはいえ、キラ、後で絶対後悔するわ。
だから、その時は傍にいてあげる」
「…ごめん」
「だからあやまらなくていいの！」
- 555 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/154 投稿日： 2003/06/02(月) 11:38
- その時、甲板上にヘリオポリス組が飛び出してきた。
サイ、ミリィ、カズィだ。
私とキラの名前を連呼しながら息を切らせて走りこんでくる。
「フレイ！」
サイが私の名を呼んだ。
「フレイ…君には言ってやりたいことが山ほどあるけど、時間はなそうだ。
だから一言だけ言わせてくれ。
幸せになれよ」
「サイ……」
本当は泣きたいだろうに、サイは無理をして笑顔をつくっていた。
彼の笑顔がとても痛かった。だが、逃げるつもりはなかった。
「さよなら、サイ。今までありがとう」
「さよなら、フレイ。いつまでも元気で」
そして、ごめんなさい。
その言葉は心の中に仕舞いこんだ。言ってはダメだと思ったから。
全ての想いを断ち切るように、フリーダムのハッチが閉ざされた。
キラが心配そうに私を見ている。
「キラ、行きましょう」
自信をもってキラを見る。
- 556 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/155 投稿日： 2003/06/02(月) 11:40
- 「うん。フリーダム、発進します！みんな、危ないから下がって！！」
マリュー達が艦内に退避したのを確認して、キラはスロットルを開いた。
莫大な推力がフリーダムの機体を軽々と持ち上げた。
バインダーが展開し、あの天使の翼となる。
直接やりあった時はこの翼が私を不安にさせたのに、今はそれが私達を守ってくれるように思えた。
出力最大。
フリーダムが凄まじい初速で飛翔した。
たちまちアークエンジェルが小さくなる。
僅か数秒でアークエンジェルは視界から消えた。
「キラ、これからどうするの？」
「うん。この近くに、世話になった知り合いがいるんだ。まずはそこに身を寄せよう」
「そうね。
…ああ、キラ。会いたかった。もう会えないかと思った」
「僕もだ、フレイ」
ヘルメットを投げ捨て、振り向くキラ。
もう一度、深く激しいキスをかわす。
「フレイ、愛している」
「私も……愛しているわ、キラ」
これから二人がどのような未来を歩んで行くのか、それはわからない。
だが、未来のことは未来のその時に考えればいいのだ。
私には、愛する人がいるのだから。キラとなら、どんな未来でも乗り越えていけると思うから。
疲れが急激に出たのだろう。
トリィの歌声を聞きながら、私は睡魔に誘われるがまま、心地よい眠りの中に落ちた。
フリーダムの振動が子守唄のように懐かしく暖かく、私達を包み込んでいた。
- 557 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/156 投稿日： 2003/06/02(月) 11:43
- エピローグ
オーブの夏は暑い。
私、フレイ・ヤマトは昼食と夕食につかう野菜を収穫した。
汗をふく。日焼け止めクリームは使っているが、もう高級化粧品をつける機械は滅多になかった。
街へ買い物にいくならいざ知らず、畑仕事には役に立たないのだから。
野菜かごを抱えながら家へと歩いていると、子供たちの泣き声が聞えてきた。
私は舌うちした。案の定、長男が三つ幼い長女を泣かせていた。
長女の泥をはらってやり、私に似た燃えるような髪を伸ばした頭を抱きしめる。
右手で長男を抱き寄せた。
「こら、ユリィ！ユラを泣かせちゃダメって何度言ったらわかるの！」
「ママ、だってユラが僕の捕まえた虫を潰しちゃったんだもん」
「ユリィはお兄さんでしょ？ユラはまだ小さいんだから、そのぐらいで怒らないの。
さあ喧嘩してる暇があったらお魚でも釣ってきて。
もうすぐお昼にするから、一時間したら切り上げて戻ってきてよ」
「わかった、ママ。ユラ、行くぞ」
「待って、お兄ちゃん」
散々喧嘩して泣かされていたのに、嬉々として兄についていくユラ。
子供というものはわからないものだ。私は苦笑しながら台所に入った。
- 558 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/157 投稿日： 2003/06/02(月) 11:45
- 私達が暮らす家は、オーブ領の一画、人口三千人程の島にあった。
かつて、負傷したキラを救ったマルキオ導師の紹介だった。
島中心部からは外れにあり、海が近い。平屋立てだが間取りは多く、私は気に入っていた。
次女のリラが小さな寝息を立てて眠っていた。
幼子を家に置いて外で仕事ができるのも、父親が家で仕事をしているからだ。
「フレイ、戻ったの？」
キラがＴシャツの上にアロハシャツをひっかけただけのラフな服装で現れた。
最近は眼鏡をかけることが多い。彼は翻訳を営む傍ら、エッセイなどを書いているのだ。
生活は基本的に自給自足なので、余り多いとはいえない収入でも十分にやっていけた。
「ええ。もうすぐお昼御飯にするけど…。リラは静かだった？」
「一回泣いたけど、あやしたらまた寝たよ」
「ユリィとユラは元気一杯、うるさいぐらいだったわ。
リラは静かね。キラ似なのかしら？」
「…髪の毛も顔立ちもフレイにそっくりだからなぁ。
今だけだと思うけど。ほら、能ある鷹はつめを隠すって」
「……何か言った？」
「さ、さあ…」
- 559 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/158 投稿日： 2003/06/02(月) 11:47
- こんな調子で月日は過ぎていった。
カガリには、フリーダムを返した際に住所を知らせた。
彼女は信頼できる数人にしか私達のことは話さず、尋ねてくる人は全てアークエンジェルかキラの知人関係だけだった。
カガリは私に思いがあったため、なかなか訪れようとしなかった。
しかし、子供が生まれたのをきっかけに頻繁に訪れるようになった。
ユラに「おばちゃん」と言われたことは相当ショックだったようだ。
アスランとラクスは、羽陽曲折の末結婚した。
アスランは（彼から見ればキラ奪った）私をまだ私を許したわけではないようだが、
ラクスが強引に引きずって私に謝らせた。プレゼントはやはりハロだった。
そのハロは、子供たちの良い遊び相手だ。
ただ、機械に興味を持ちはじめたユリィからは逃げ回ることが多くなった。
フラガやミリィは訪れたが、サイが来る事はなかった。
やはり、彼にはつらいのだろう。それでも手紙が時々届く。元気でやっているようだ。
そして、彼がやってきた。
- 560 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/159 投稿日： 2003/06/02(月) 11:48
- それは、ある日の午後。
昼食の片付けをすませると、遊びにいったと思ったユラとリラが戸口に立っていた。
「ママ、お客さんだよ。ママに会いたいって」
「キラじゃなくて、私に？
珍しいわね。その方はどちら？」
「門のところで待ってるって」
門といっても、厳重な『ゲート』ではない。
形ばかりの表札と外灯がくくりつけた大木のことだ。
私はエプロンで濡れた手を拭きながら正面にまわった。
そこに立っていた男は、ぴっちりとスーツに身を固めた、長身の若い男だった。
アタッシュケースを後生大事に抱えている様子が少壮の弁護士を思わせた。
「あの･･･？」
私の姿に驚いたのか。男は、僅かにたじろいだように見えた。
「どなたですか？」
「………フレイ様」
その一言でわかった。
「まさか…ヴォルフ！？」
彼はヴォルフガング・シュトライバー元ＬＦＡ少尉だったのだ。
- 561 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/160 投稿日： 2003/06/02(月) 11:50
- 応接室に腰を下ろしたシュトライバーは緊張しているようだった。
私のことを変わらず「フレイ様」と呼び続けた。
戦争終結後、彼は貿易企業に就職した。
偶然月に行く機会があり、彼は再び月面の大地を踏んだ。そこで、彼はある書類を入手したのだという。
シュトライバーは大事そうに抱えていた鞄から書類を取り出し、私に差し出した。
私は文面を見て驚愕した。それはＬＦＡの戦闘行動を詳細に記録した戦闘日誌だったのだ。
「まだありますよ」とシュトライバーは嬉しそうに言う。
ＬＦＡのライデンの配備や修理納品記録、戦果と損害、そして戦術マニュアルまで揃っていた。
当時としても間違いなく第一級の機密資料である。
「どこで入手したの？こんな資料が残っているなんて思いもよらなかったわ。
戦争終結とＬＦＡの解散でこういったものは全て失われたと思っていたのに…」
「実は、フレイ様。この資料は隊長が遺されたものなのです」
「アルカードが！！？」
「はい。月攻防戦の直前、信頼できる整備員の一人に託されたそうです。
戦後、ＬＦＡの関係者が尋ねてきたら渡せ、と。
月面で彼と偶然会い、書類を渡されたのです。
どうしてもフレイ様の消息を知りたくて、オーブと連絡をとったのですが…。
そこでアスハ殿にここを教えて頂きました。
フレイ様あてに、隊長からの手紙を預かってまいりました」
私は震える手で手紙を開封した。
アルカードらしい流暢でありながら几帳面な文字が綴れられている。
- 562 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/161 投稿日： 2003/06/02(月) 11:52
- 『フレイ・アルスター殿へ。
この手紙を貴女が見ているということは、私はこの世にいないということだろう。
そして貴女は無事生き延びたということだと認識する。
この戦争は終わるだろうが、貴女の戦いは終わってはならない。
敵味方を問わず、戦争で散った者の為に、今生きている者の為に、そしてこれから未来を担う者の為に生きて欲しい。
もちろん、聡明な貴女のことだ。私が敢えて言わずとも、そのような生き方を選んでいると思う。
だが、親心というべきか、老婆心故の戯言として心の片隅に留めてもらえたら幸いである。
なににせよ、貴女は私の最高の生徒であり、最高の上官だった。
貴女と出会えたことを私は神に感謝する。
願わくばフレイ・アルスターのこれからに神の祝福があらんことを。
エミール・アルカード
追伸 もし私も生き延びることがあったら、その時は貴女の邸宅にお邪魔させていただこう。
それまでに料理の腕を磨いておくよう望む。ＭＳの操縦技術や戦術に関して貴女は合格だが、
料理には、正直及第点をつけかねる。幸ある人生を送らんことを』
- 563 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/162 投稿日： 2003/06/02(月) 11:53
- 「…ヴォルフ。アルカードが私に言い遺したかったことって、本文？それとも追伸の方？」
「両方だと思います、フレイ様」
シュトライバーは真剣だった。彼も犠牲者の一人だったから。
溢れてくる涙を誤魔化すために、私は笑った。
（アルカード、やっぱりあなたも馬鹿よ。なんで生き残らなかったの？
…でも、安心して。心配かけるかもしれないけど、私はなんとかやってるわ）
目元を拭く私をそっと見守っていたシュトライバーは、折を見て私に額つきの写真を手渡した。
それは月で撮影したＬＦＡの集合写真。
私は忘れていない。初撃墜の後、「記念に」ということで大騒ぎになりながら撮ったことを。
私もその写真は貰ったのだが、愛機が撃墜されたり、戦後の大混乱の中でどこかに行ってしまった。
私は食い入るように写真を見つめた。
そこには私やシュトライバーはもちろん、アルカードや戦死していった戦友達の笑顔が私に微笑みかけている。
こんなところで彼等に会えるなんて。
あの時のことが次々と鮮明に蘇った。
私は涙を流し続けた。
子供達が怪訝な顔をしていた。
- 564 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/163 投稿日： 2003/06/02(月) 11:55
- キラも交えて会話が弾み、彼は我が家に一泊する羽目になった。料理にはシュトライバーもかなり心配していたが、私はキラや導師の尊い犠牲の末さんざん練習に励んだ成果を見せ付けた。彼は一安心したようだった。
翌朝、シュトライバーは帰途についた。
彼は、この資料を元にＬＦＡの真の姿を本にまとめ、一人でも多くの人に真実を知ってもらいたいと語ってくれた。
ＬＦＡの資料は極めて少なく、噂は一人歩きしていた。
一般に語られているＬＦＡとは『フレイ・アルスター皇女直属のコーディネイター虐殺部隊』ということらしい。
もちろん事実とは全く異なることだ。
「ＬＦＡに嫁せられた汚名と偏見を晴らすべく、頑張ります」と、シュトライバーは笑顔で決意を述べた。
本の執筆過程でお二人にインタビューするかもしれません、とも付け加えた。
去り際に、シュトライバーはあの写真を私にプレゼントしてくれた。
戦火を逃れたＬＦＡ唯一の写真。
- 565 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/164 投稿日： 2003/06/02(月) 11:57
- 深夜。私はキラを起こさないようベッドを抜け出した。
テーブルの上におかれたＬＦＡの写真。
ランプの揺れ動く光りのなかで、アルカードや隊員達が今にも動き出しそうな錯覚を感じる。
「もう会えないと思ったけど、また会えたね、アルカード。
あなたは、私の子供たちを見たらなんて言うかしら」
しかめっ面をしたアルカード。彼がユリィやユラの相手をする光景を思い浮かべた。
遊ばれるだろうな…。それとも子煩悩かしら。
私は額に金具をつけ、リビングの壁にぶら下げられるようにした。
キラと私、子供たち、それらの写真が並ぶ中、ＬＦＡの写真が納まった。
まるで、欠けていたピースが元の位置に収まるように。
「心配してくれて、ありがとう。私、これからも精一杯生きて見る。
あなたに恥じることの無い生き方は続けているつもりだから……」
私はベッドに戻った。
キラは子供達と一日中遊んで疲れたのか、よく眠っていた。
寝返りをうった彼を胸元にかかえるように抱きしめる。
ブルーコスモスの皇女として、ＬＦＡの指揮官として、私は一人でも多くの人を救おうと戦った。
今、私は何の為に戦うのだろう？
キラと戦ってでも意志を貫こうとしたあの強さは、まだ私の中に残っているのだろうか？
正直わからない。「何か」という特定のモノは断定できない。
しかし、キラの穏やかな寝顔を見ると、何となくわかる気がした。
守らなくては…と思うのだ。
愛する人。愛する子供たち。
彼等を守る為ならば、躊躇はないだろう。
「おやすみ、キラ。おやすみ、アルカード」
私はキラを抱きしめながら眠りについた。
満月の明かりが私達を穏やかに照らしていた。
- 566 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/165 投稿日： 2003/06/02(月) 12:01
- かつて、ＬＦＡという部隊があった。
ナチュラルとコーディネイターという対決の最中、
彼等は精強なＭＳを纏って戦場を駆けぬけ、そして歴史の彼方へ消えていった。
残されたものは、数々の伝説と異名。
だが、私の中の彼等は決して伝説ではない。
彼等は私の父であり、母であり、私は彼等の娘だった。
私は彼等の流した血の上に生きている。
それを恥じるつもりはない。
彼等は私を通じて、シュトライバーを通じて、その血を伝えていくのだから。
その種は、私や彼を通じて育ち、世界へ蒔かれていくのだから。
人の愚劣さと、
残酷さと、
勇気と、
献身と、
そして人が人に対して抱く、想いの暖かさを。
- 567 名前： ライプシュタンダルテ・フレイ・アルスター/166 投稿日： 2003/06/02(月) 12:02
- 夢の世界にまどろむ私とキラを、
子供から隠れる為に棚の上へ移動したハロが見下ろし、退屈そうに欠伸をした。
窓辺に止まって月を眺めていたトリィが小さく鳴いた。
オーブの夏はこれからが本番だった。
ＬＦＡ物語 終
- 568 名前： ＬＦＡ物語/目次１ 投稿日： 2003/06/02(月) 12:10
- 設定 >>231〜>>233
傀儡 >>234〜>>239
始動 >>246〜>>253
初陣 >>254・>>257〜>>264
変化 >>265・>>289〜>>297
再会 >>298〜>>302
決意 >>310〜>>314
選択 >>316〜>>321・>>337〜>>338
別れ >>339〜>>345
脱出 >>346〜>>348
- 569 名前： ＬＦＡ物語/目次2 投稿日： 2003/06/02(月) 12:17
- 逃避行 >>350〜>>352・>>357〜>>362
出撃 >>370〜>>377
嗚咽 >>378〜>>385
決裂 >>398〜>>411・>>439〜>>441
戦場 >>442〜>>450
死闘１ >>463〜>>470
死闘２ >>485〜>>493
終焉 >>494
青空 >>495・>>511〜>>521
一人 >>522〜>>525
門出 >>549〜>>556
エピローグ >>557〜>>567
- 570 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/02(月) 12:19
- 大作お疲れ様でした。
最初は独自の設定などが気にかかるかと思っていましたが、とても良かったです。
フレイ様が本編でもこのように幸せであってくれればと思います。ありがとうございました。
- 571 名前： ＬＦＡ物語/作者 投稿日： 2003/06/02(月) 12:23
- これにてこのＳＳは終了です。
最初はフレイ様死亡を念頭に書きはじめたのですが、うまくまとまったかなと思います。
またどこかでお会い出来れば光栄です。
感想を見るのがｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙなわけですが、出来る限り皆様の御意見をお待ちしています。
拙文にお付き合いくださってありがとうございました。
- 572 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/02(月) 12:36
- >548-569,>571
大長編乙でしたー！
まさかここまで長くなるとは思いませんでしたが、
毎日新たに投下されているのを見て喜ぶ日々に、
こちらも楽しませていただきました。
フレイが苦しみぬいて成長した先に、こんな穏やかな日々があることを
ますます願わずにはいられなくなりました。
家族に恵まれなかった彼女にとって、
夫と子供たちに囲まれる平凡で慎ましやかな生活というのは、
本当に諦め難いものだと思うので。
宇宙で再会した時のキラのあまりのへたれぶりに危惧したものですが、
こんな風に変化していてうれしい限りです。
惚れた女を守って戦うなんて、
ディアッカじゃないけど本当に羨ましい。しかも相手がフレイ（笑
まさか当初の予定ではフレイ死亡ラストだったとは…
こんな風に希望を見せるラストにして下さって、個人的には感無量です。
すばらしい作品を拝読させていただけて光栄でした。
次回作にも期待しています（どさくさ）
- 573 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/02(月) 12:48
- ああ〜、偶然ペースト作業の最中にアクセスしてしまったので、
続きを追って猿のようにリロードしてしまった。乙でした〜。
セシリー＝フェアチャイルドより激しく義務と責任を貫き、
アイナ＝サハリンより激しく主体的な人生を貫いた、
そんなフレイ様に乾杯！
- 574 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/02(月) 13:32
- 乙フレ〜
いやー、一気に読みきっちゃいました。
何気に痔が良いですな。
キラがしっかり姉者を利用してまでもやることはやるって事で一安心。
エピローグで子供が3人もいると言う事はあれから数年以上経過ですな。
ヴォルフが渋いですね。一人写真を収めるフレイ様。最期の小さなピースを
埋めて、過去の部分は補完されましたな。
アルガードも美味しい所を持っいくし、なんかこのまま本編にくっつけて
映像化して欲しいところですね。
- 575 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/02(月) 16:12
- >>571
長編乙フレー。
感動しますた。
死亡ENDからハッピーエンドにもってくるあたり、
やはり作者様のキラフレ愛は本物でつね！
またぜひ作者様の作品が読みたいです。
そういえばアルカードは何歳くらいなんでしょう？
最初は初老くらいかと思ってましたｗ
- 576 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/02(月) 18:47
- >>571
長編、乙フレ〜！！
これだけの面白い長編をこの期間で書き上げた
ことはただただ凄いとしか言いようがありません。
フレイ様、このラストみたいに幸せになれればいいですね。
- 577 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/02(月) 20:41
- 乙フレです。
フレイ様生きてて良かった。ハッピーエンド万歳。
WW２のドイツ軍ネタも各所にちりばめられていて面白かったです。
あと、痔悪化良い奴だ。このSSを俺痔スレで紹介したいくらいです。
次回作も待ってます。
- 578 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/02(月) 21:12
- 乙フレ〜。
アルカードのくだりはマジ泣きしてしまいました。
やっぱり最後までいい男です。
フレイ様も紆余曲折の末ではありますが一番欲していた家族を手に
入れることができてよかったー。
何だかホッとすると同時に、ＬＦＡ物語作者さんのＳＳが終わりかと思うと
寂しくもありますｗ
また創作意欲が沸いてきたらぜひ次回作を投下してくださいませ。
お待ちしてます。
- 579 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/02(月) 22:19
- 乙フレイ〜
グゥレイト激しくﾜﾛﾀ
それにしてもﾊﾋﾟｰｴﾝﾄﾞよかたよ･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･
本編でもどうか幸せに・・・
- 580 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/02(月) 22:34
- LFAは伝説になりますな。
乙でした！
- 581 名前： ＬＦＡ物語/作者 投稿日： 2003/06/02(月) 23:11
- 感想乙！！サイトに来るまでドキドキでした。反応無かったらどうしようかと。
>>577様 紹介しちゃってください（笑）
アルカードは四十代ですが、老けて見えます。
外見は若いですが、老成した雰囲気が実際年齢以上に見えます。
次回作ですか？今度は砂漠の虎に焦点を当ててみようかな、と。
フレイ様が捕虜に…って同じパターンでつ。あ、石投げないで！
ＡＡの旅が第二クールで終わりそうですが。
コミケあるのにどうしよう…
- 582 名前： ヘリオポリスの学園祭 投稿日： 2003/06/02(月) 23:13
- 「今回、先生方も特別参加してもらいました！ナタル・バジルール先生です！」
ラクスの声と共に、初めて女生徒の方から歓声が上がり、
珍しい事に、ナタルの方からその歓声に手を振って応えた。
ナタルは紺色のパンツルックだった。どうやらスカートの類を着る勇気は無かったらしい。
しかし、長身のナタルにはそれがまた似合うのだ。
そのナタルに厳しい視線を送っているマリューが入場すると、
今度は男子生徒の方から大きな歓声が上がる。
カガリやフレイとは違った大人の雰囲気がこの二人からは醸し出されている。
フレイは内心、強敵だと感じたが、それを顔に出す事はしなかった。
それらステージの上や下の様々な感情の交錯を知ってか知らずか、ラクスの明るい声が響き渡る。
「出場者の皆さんには、紹介を兼ねたゲームをして頂きます。その後、皆さんからの投票でミスカレッジが決定します！」
拍手が沸き起こると、サイとアスランは（これなら大丈夫、成功だな）と安心した表情を交わした。
表舞台はラクスに任せて、サイとアスランは投票を集計する為にステージ裏へ回った。
投票用紙が山と積まれているのを集計するのは、大変なのだが同時にちょっとした役得でもある。
とそこへ、イザークとディアッカが入ってきた。
「あ、ここは関係者以外立ち入り禁止…」
「いいだろ、別に邪魔するわけじゃないんだし。見るだけだから」
サイの制止を振り切ると、イザークは部屋の隅に腰を下ろした。早く結果を知りたいのだ。
鋭い視線を感じながら、サイとアスランは集計を進めていく。
ステージの方から歓声が上がったが、それに反応するでもなく黙々と作業は進められていく。
しばらくすると、ラクスの歌声が聞こえてきた。彼女の発案で、ミニライブをする事になっていたのだ。
中々終わらない集計作業に、イザークとディアッカがいい加減しびれを切らした頃、
「…よし、いいな？アスラン」「はい」という声があがり、二人は身を乗り出した。
- 583 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/03(火) 00:30
- 乙フレです！
久々の学園祭・・・
待っておりました！
果たして結果がどうなっているのか楽しみです。
- 584 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/03(火) 01:56
- ＞コミケあるのにどうしよう…
いっそこの作品刷ってｗ
- 585 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/03(火) 03:10
- >>584
そうなると挿絵も欲しいぞと・・・
良い作品だから一般種ファンにも読んで欲しい所だよね。
- 586 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/03(火) 04:04
- ラスト、キラフレはもちろん他のキャラもそれぞれ幸せになっているところにも感動しました。
本当に素晴らしい作品だと思います。こんな作品に出会えた漏れは幸せだー
- 587 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/03(火) 06:12
- >>585
誰か絵心のある香具師、挿絵うｐしてたも〜
あと、アルガードの設定画はないんでつか？
- 588 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/03(火) 08:13
- ＬＦＡ、名作ですからね〜。
みんなに愛されててうらやましい限りだ。
私ももっと精進だな。
- 589 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/03(火) 09:08
- 南極に収蔵してもいいんじゃない？
やり方がわからないけど。
- 590 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/03(火) 09:44
- つーか、このスレ以外に伸びがいいから、まとめて収蔵するってのはどよ？
- 591 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/03(火) 11:08
- これ程作家さんが集まってくるとは思わなかったよ
- 592 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/03(火) 12:36
- スレが出来たから書いてみた、という人もいるだろう（俺のように）。
立ててもらって感謝しています。
- 593 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/03(火) 12:41
- >582
果たして、フレイ様は大人の魅力に勝てるのか!?
投票結果お待ちしております。
つか、サイとアスランがつくづく苦労人だｗ
- 594 名前： フレイ様の大天使日記・１ 投稿日： 2003/06/03(火) 13:26
- ◎月×日 晴れ
今日から日記をつけておくことにした。大変なことがあったから。
今は軍艦の中、いつも持ち歩いてる手帳とペンで書いている。本当
に大変なことがたくさんあった。うまく考えがまとまらないので覚
えていることを順番に書く。
ジェシカたちとショッピングしていて、いきなり何かが爆発する音
が聞こえて、遠くの方にモビルスーツが見えた。戦争だ、と誰かが
叫んでいた。警報が鳴って、シェルターに逃げ込んだ。ジェシカた
ちとは途中ではぐれた。しばらくしてシェルターの救命ポットが発
射されたけど、すぐに調子が悪くなった。誰も知ってる人がいなく
て泣きたくなった。でも、その後すぐ軍艦に拾われて助かった。
軍艦の中にはサイがいた。すごくほっとした。
同日 ところにより残骸
ヘリオポリスが崩壊した、とサイに聞いた。
実感がわかないけど、サイが言うのなら本当なんだろう。
ジェシカたちが心配だ。無事だといいのに。
家はどうかしらと尋ねたら、サイに困った顔で「どうしようもな
い」と言われた。そんな顔することはないと思う。大切なものた
くさん置いてあったんだから。
パパに会いたい。きっと心配してるだろう。
同日
私を助けてくれたサイの友達はキラ・ヤマトというらしい。
以前にも紹介された気がするけど、すっかり忘れてた。
あの子はコーディネーターだそうだ。モビルスーツ動かしてたし。
薄気味悪い。
同日
戦闘になった。キラがモビルスーツで戦うらしい。それはいいけど
サイたちまで協力するからとブリッジにいってしまった。私だけ置
いていくなんて信じられない。サイやミリが友達思いなのはいいと
しても、あの子はコーディネーターなんだから、少しは私のことも
考えてほしい。
一人で待ってると船が何度も揺れてすごく怖かった。
戦闘が終わってすぐサイが来てくれたので嬉しかったけど、私を一
人にしたんだからキチンと謝るまで許してあげない。
- 595 名前： フレイ様の大天使日記・2 投稿日： 2003/06/03(火) 13:27
- ◎月△日 光波防御帯
何もしてないのにトールに怒られた。トールなんか嫌い。
アルテミスという基地に到着して、食堂で待機してたら感じの悪い
軍人が大勢やってきた。映画の悪役みたいな顔だと思ったら、ミリ
にセクハラしたり、やることもアクション映画並だった。ひどい騒
ぎになって「モビルスーツのパイロットは誰」っていうから、キラ
がコーディネーターだと教えてあげた。
そしたらトールが怒り出した。
ほんと信じられない。
早くパパのところへ帰りたい。
◎月＃日 水不足
水の使用制限とかでシャワーを浴びれない。
死んじゃいそうだ。なんとかして欲しい。
◎月□日 水不足
シャワー浴びてないから近くにこないでと言ったら「非常時なんだ
から」とか何とかいわれた。サイは乙女心がわかってない。シャワ
ーどころか着替えだってしてないのに。
おまけに、皆からアルテミスのことでキラに謝れと責められた。本
当のこと言っただけなのになんで悪者みたいに言われなくちゃいけ
ないんだろう。サイまで言うから仕方なく謝った。納得いかない。
追伸。
謝ってあげた時、キラはなんだかすごく嬉しそうな顔をした。
もしかしてこの子、私に気があるんだろうか。
コーディネーターのくせに。
◎月‖日 ところによりデブリ
ユニウス７跡から水が手に入ったそうだ。ほっとする。
サイがキラに助けられたと言ってた。私たちのために戦ってくれて
るんだし、コーディネーターだけどちょっとは特別ということにし
ておいてあげよう。
皆で花を送ることになって、エルちゃんという小さな子にねだられ
たので花の折り紙を教えてあげた。小さい頃パパの誕生日に折って
あげたら、すごく喜んでくれたのを今でも憶えてる。
ユニウス７では２０万人も死んだって聞いた。コーディネーターは
嫌いだし怖いけど、死ぬのはやっぱり可哀想だ。
戦争なんて早く終わればいいのに。
パパは今ごろ何してるんだろう。
同日
キラが変なのを拾った。
落ちてるものをすぐ拾ってくるなんて、まるで犬みたいだ。
コーディネーターで、ピンク色で、頭悪そうで、よりにもよって勝
手に船の中を出歩いてた。ミリなんか私に食事をもってけって言う
し。無神経すぎる。知らないコーディネーターなんか怖くてどうし
ようもないし、仲良くなんてできるはずがない。
パパがよく「ブルーコスモスのいうことは間違っていない」って話してたのを思い出す。本当にそうだ。
食堂で、そいつが馴れ馴れしくしてきたので怒鳴ってやった。
◎月◎日 晴れ
パパが来てる。すぐ近くに。
先遣隊と一緒だってサイが教えてくれた。
準備が忙しい。なにもないところだけど、外務次官の娘として恥ず
かしくない程度には身だしなみを整えておこう。
早くパパに会いたい。
オーブに帰ったら、しばらくは仕事を休んで一緒にいて欲しい。
◎月▽日
昨日パパが死んだ
- 596 名前： フレイ様の大天使日記・3 投稿日： 2003/06/03(火) 13:27
- ◎月■日 雨
忘れない様にパパが死んだ時のことを書いておく。
標準時0214にパパが乗ってた戦艦は、ザフトの攻撃を受けて爆発し
た。私もブリッジで見た。時間はサイに確認したから間違いない。
キラは嘘つきだ。大丈夫って言ったのに。
カズィが、赤いモビルスーツに乗ってたのがキラの親友だって言ってた。
許さない。
あの子は手を抜いたんだ。パパを見殺しにしたんだ。コーディネー
ターはコーディネーターなんだ。パパを殺しておいて、自分だけの
うのうと生きてるなんて、絶対に許せない。
パパの仇を討つんだ。
◎月◇日
うとうとするとパパの夢を見て飛び起きる。少しも眠れない。
キラがコーディネーターの女を敵に返した。
パパを殺した連中の仲間を返すなんて、やっぱりコーディネーター
はコーディネーターだ。
キラが帰ってきて、サイはそれをすごく喜んでた。
私もすごく嬉しい。
パパが死んだとき酷いことを言ったとキラに謝りにいったら、なん
だか涙まで浮かべてた。戦闘が始まったので、がんばってと声をか
けて送り出してやった。
ちょっと声をかけてやると子犬みたいに喜ぶ。わかりやすい。
本当にがんばって欲しいと思う。
悪いやつなんか皆やっつけてくれればいい。
そうすれば戦争だって終わるはずだ。
同日
整備員の人の話だと戦闘でのキラは凄かったらしい。どう凄いのか
わからないけど、とても素人と思えないほど強いらしい。
素敵な話だった。
カタパルトまで出向かえてあげるとすごく驚いて、すごく嬉しそう
な顔をした。
やっぱり、私に気があるんだ。
コーディネーターのくせに。パパを守ってくれなかったくせに。
でも、都合はいい。
パパ、見ていて。仇は絶対にとるから。
◎月●日 雨
キラと、キスした。
まだ感じが残ってる。でも我慢しなくちゃいけない。
私たちを除隊処分にして、シャトルで地上に送ってくれるといわれて慌てた。そんなの考えてなかった。
除隊なんてされたら仇が取れない。
いろいろ考えて、キラを戦わせるため軍に志願することにしたら、
サイたちまで志願して少し驚いた。
結局、キラも残った。
やった。私は賭けに勝った。
キスしてあげたら、もう有頂天な感じだった。
戦えばいいんだ。私のために。
船はまだ揺れてる。外ではまだ戦闘が続いてる。
キラは戦ってるだろうか。悪い奴をやっつけてくれてるだろうか。
でも。
本当に残るとは思わなかった。
キラ・ヤマト。なんて馬鹿な子なんだろう。
- 597 名前： 想いが 投稿日： 2003/06/03(火) 13:29
- リクエストにお答えしてみました。
フレイ様の大天使日記 １クール編。
お気に召しましたら、続編をお楽しみに。
- 598 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/03(火) 14:10
- >>597
おつふれ〜。
やっぱりフレイ様の世界はパパ中心に回ってるんだね(´Д⊂
2クール編になってフレイ様がどのようにかわっていくのか楽しみです。
お待ちしてますー。
- 599 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/03(火) 15:15
- >597
乙〜。
>◎月▽日
> 今日パパが死んだ
> もしかすると昨日かもしれない。
だともっとﾖｶｯﾀｗ
- 600 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/03(火) 15:36
- >594-597
乙。うまいっすねー。
我侭お嬢様の不満不平からファザコン少女の苦楽、
そして節々で感じ取れる罪悪感や葛藤が良く表されてると思います。
フレイ様のCDが出るんなら、こういう感じのもいいかも。
続編楽しみにしてます。
- 601 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/03(火) 22:14
- >>597
乙フレ〜。
淡々と語るフレイ様が激しく良いっす
続きプリーズ(*´Д｀)ﾊｧﾊｧ
- 602 名前： 火サスノリで行ってみようか １０ 投稿日： 2003/06/04(水) 01:15
- 「…っ！？キラ…」
サイはそれ以上言葉を出すことが出来なかった。目の前にあの男がいる。無意識に震えた。
「ごめん、いきなり来て…時間、いいかな？」
サイはキラを部屋の中に案内して、向かい合って腰を下ろした。
「俺がいるって、よく分かったな…フレイに聞いたか？」
「いや、フレイは知らないよ。何も」
サイは表情を動かした。何を言ってるんだ？フレイは…
「どういう事だ？それで庇ってるつもりなのか？」
それに答えず、キラは窓の外に目を向けた。何から話せば良いのか、考えあぐねているように見えた。
しばらくお互いに沈黙した後、サイはたまりかねたように口を開いた。
「…フレイは今、お前と一緒に暮らしてるんだろ？…お前もつくづくお人好しだよ。裏切られたのに。
一歩間違えば死んでたかも知れないんだぞ。生き残ったのは、奇跡だよ。…それを、何とも思わないのか？」
忌まわしい思い出が脳裏をよぎる。
「…フレイは…今のフレイは、何も知らないんだ…」
フレイが記憶を失っていると聞いて、サイは最初キラが嘘をついていると思った。
しかし、町中で会った時のあの態度や、キラの表情を見るとそう考えざるを得ない。
「…じゃあ、フレイは今は自分をどういう人間だと思ってるんだ？」
「戦争の後オーブに降りて、そこで僕と出会ったと思ってる。それ以前はへリオポリスに疎開していて、
そこで終戦までいたと…」
サイはため息をついて再び腰を下ろした。目の前にキラの辛そうな顔。
「…じゃあ、フレイは今…キラと一緒にいて、幸せだと思ってるわけだ」
キラは静かに肯いた。それが、ひどく悲しく見えた。
その頃から、見知らぬ人影がフレイとキラの家の周りに出現するようになった。
近寄るでも離れるでもなく、彼らは常に目を光らせ、何かを相談するのだった。
密かに忍び寄る気配を、キラもフレイも、まだ知らない。
- 603 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 01:29
- >>602
続きｷﾀ━━━━（ﾟ∀ﾟ）━━━━!!!!!!
しかし一体何が…
- 604 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 01:50
- >>602
乙フレ！！
忍び寄る影・・・一体どうなってしまうのやら。
楽しみです。
- 605 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 08:51
- 539 ：通常の名無しさんの３倍 ：03/06/01 16:24 ID:???
クルーゼの上で腰振ってるフレイ。
フレ「あぁん…いいわ…クルーゼさん…」
クル「そう？でも、もういいのかい、君の彼？」
フレ「あん…や、やめで。昔の事は…いい、あぁぁ、もっと…」
クル「しかし、男として辛い。私も男だから」
フレ「いやっ、私が嫌いなの？クルーゼさん？」
クル「そんなこと無い…だから、こうしてるんだろう？」
フレ「でも、まだ気にしてるわ…いいわ、私が忘れさせてあげる…」
クル「フレイ君…そんなこと…」
フレ「んんぐぅ…ぐぐっ…」
クル「ぅう」
フレ「んんん……はぁ……どぉ？いい？」
クル「あぁ。すごくいい。しかし、彼にもこんな事を？」
フレ「いやっ、そんなこと聞くの。しなかったわよ…信じて…」
フレ「うんぐぅぅ…ぐ、ぐぐっ…」
クル「だめだ…それ以上…我慢が…」
フレ「んんん…はぁ…いいわ…いかせてあげる…んぐ、んぐ、んぐ…」
クル「うっ…」
フレ「んんんっ！……ふふ…いっぱい…でたわ〜」
フレ「次は私を満足させて…パパ〜☆」
そしてフレイはスパイになって（ｒｙ
- 606 名前： 目次 0/4 投稿日： 2003/06/04(水) 10:03
- 保守のため目次を掲載する。
一部タイトルのないものは、適宜タイトル付けをおこなった。
特にジャンル等では分類していないので注意のこと。
へ
/〃⌒⌒ヽ
〈〈 ノﾉ^ ﾘ)) 皆さんのご協力
|ヽ|| ﾟ ヮﾟ|| よろしくお願いします
⊂_||二||つ
- 607 名前： 目次 1/4（読切短編） 投稿日： 2003/06/04(水) 10:04
- サイ視点ＳＳ >>3〜>>7
万が一サイフレが有り得るなら… >>25〜>>26
監禁もの（藁 >>32
風にたなびく秋桜 >>35〜>>41
無理やりクルフレ風にしてみた >>56〜>>58
フレイ様AA最後の夜 >>62〜>>65
フレイ様AAを降りる >>74〜>>75
セシリーEND風 >>107〜>>110
カテ公エンド（バッド版） >>126
カテ公エンド改（ハッピー版） >>127
フレイ様ＭＳ搭乗編 >>146〜>>151
フレイ・アルスターその愛と死 >>153〜>>156
フレイ様アラスカの夜 >>165〜>>167
PHASE-51（私家版） >>190〜>>200
これはSSと呼んでいいものなのか >>273〜>>278
歴史はかく騙りき >>328〜>>330
- 608 名前： 目次 2/4（連載中） 投稿日： 2003/06/04(水) 10:05
- 暗闇の後には・・・ >>173・>>188・>>456〜>>457・>>536〜>>537
フレイ様の大天使日記 >>594〜>>596
世界名作劇場ノリで行ってみようか >>422・>>430・>>434
世界名作改め火サスノリで行ってみようか >>477・>>481〜>>482
火サスノリで行ってみようか >>501・>>508・>>542・>>602
ヘリオポリスの学園祭 part1 >>91〜>>94
ヘリオポリスの学園祭 part2 >>99〜>>100
ヘリオポリスの学園祭 part3 >>102
ヘリオポリスの学園祭 part4 >>106
ヘリオポリスの学園祭 part5 >>119
ヘリオポリスの学園祭 part6 >>138〜>>139
ヘリオポリスの学園祭 part7 >>206
ヘリオポリスの学園祭 part8 >>282
ヘリオポリスの学園祭 part9 >>582
- 609 名前： 目次 3/4（ＬＦＡ物語１） 投稿日： 2003/06/04(水) 10:06
- ランプシュタンダルテ・フレイ・アルスター物語
設定 >>231〜>>233
傀儡 >>234〜>>239
始動 >>246〜>>253
初陣 >>254・>>257〜>>264
変化 >>265・>>289〜>>297
再会 >>298〜>>302
決意 >>310〜>>314
選択 >>316〜>>321・>>337〜>>338
別れ >>339〜>>345
脱出 >>346〜>>348
- 610 名前： 目次 4/4（ＬＦＡ物語2） 投稿日： 2003/06/04(水) 10:07
- 逃避行 >>350〜>>352・>>357〜>>362
出撃 >>370〜>>377
嗚咽 >>378〜>>385
決裂 >>398〜>>411・>>439〜>>441
戦場 >>442〜>>450
死闘１ >>463〜>>470
死闘２ >>485〜>>493
終焉 >>494
青空 >>495・>>511〜>>521
一人 >>522〜>>525
門出 >>549〜>>556
エピローグ >>557〜>>567
- 611 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 10:13
- >602
乙。
しかし庇うって、裏切りって、奇跡って、知らないから幸せって…
一体フレイ様戦時中に何を…？((((((；ﾟДﾟ)))))ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ
続きを見るのは怖い、でも知らずには居られないと言うこの心境。
まさに火サス。
- 612 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 10:15
- >>606
まとめ乙です。
こうして見ると、結構膨大な数ですね。
一から読むと大変そうだｗ
- 613 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 10:30
- >606-610
乙〜。これだけの量、大変だったと思います。
自分も一通りチェックしましたが、漏れもないと思います。
（>605は時間差ですね。ところでどっからのコピペ？）
しかし、これだとpart2行きそうですね。凄すぎるｗ
- 614 名前： フレイ様の大天使日記・4 投稿日： 2003/06/04(水) 16:35
- □月○日 晴れ
キラは許さない。
戦って、戦って、戦って、死なないと許してやらない。
どうすればいいのか、ずっと考えてる。
とりあえずは優しくしてやって戦わせることに決めた。
後のことはおいおい考えていくつもりだ。
アークエンジェルは地球に降りた。
アフリカのどこかで、ザフトの勢力圏だと艦長から説明があった。
ちょうどいい。ザフトがたくさん居るんだったら、あの子がたくさ
ん戦うってことだ。
問題がある。
地球に降りてからずっと、キラが熱を出して目を醒まさない。
お医者さまはコーディネーターだから大丈夫だと保証してくれたけ
ど、早く元気になってほしい。元気になってもらわなくっちゃ、悪
い奴をやっつけてもらえない。
心配なのでつきっきりで看病する。
同日
私たちの乗る予定だったシャトルが、地球に降りる時の戦闘で撃墜
されてたとミリが教えてくれた。アークエンジェルに残らなければ
私たちも死ぬところだった。
きっとパパが守ってくれたんだ。
シャトルの人は全滅だそうだけど、あの子も、エルちゃんも死んで
しまったんだろうか。
本当に戦争ってイヤだ。早く終わればいい。
サイが何かと話しかけてきて鬱陶しい。私は忙しいんだから放って
おいてくれればいいのに。
□月×日 晴れ
キラがやっと目を醒ました。本当にひと安心だ。
手なずけるため、なるべくキラと一緒にいることにする。
熱はすっかり下がったのに元気がない。
理由はわからないけど、ずいぶん落ちこんでるみたいだ。
一緒に食事もした。この子は人参がキライらしい。好きキライする
と病気になる。病気になると私が困るので、ちゃんと食べるよう勧
めた。でも、食欲自体あまりない様子だ。
食堂でサイがしつこく話しかけてきて困ったので、お別れしましょ
うと切り出した。
すごく驚いていた。
しかたない。これ以上係わり合いになられたらパパの仇が討てない。
少し。
胸がずきずきする。
同日
そういえば、キラの看病で昨日からあまり眠ってない。
どうせ眠っても、すぐパパの夢を見て目が醒めるけど。
整備員の人から折り紙の花を渡された。ストライクのコクピットに
あったからキラのだろうと言ってた。
ユニウス７で折ったやつだ。どうしてキラが持ってるんだろう。
疲れてるけど眠れそうにない。
シャワーを浴びて一休みしたらキラのところにいこう。
- 615 名前： フレイ様の大天使日記・5 投稿日： 2003/06/04(水) 16:36
- □月◎日 夜明け前
いろいろあった。
よくわからない。
さっきまでそとで戦とうがつづいてた。
キラが、みんなやっつけた。
わたしを、まもった。
かえってきたら、またやさしくしてやろう。
モニターをみてたらへんな女がいた。
キラと知りあいらしい。なにかどなって、それからなぐった。
あの女、きらいだ。
あの子は、わたしのなのに。
もう、ぜったいに、わたしのなのに。
わたしをまもって、戦って、あいつらをみんなやっつけて、
それで
からだ、奥がズキズキする。
痛くて泣きそう。
きのう、キラがないた。
子供みたい。あんな子だなんて思わなかった。
コーディネーターのくせに。
ジェシカの、うそつき。
やさしくないし、がむしゃらだったし、すごく乱暴だし、もういた
いだけだし、死ぬかとおもったし、ぜんぜんすぐ終わらないし、
わたし、
がんばらなきゃ
つかれてて、なにも考えられない。
書き終えたらしばらく眠るつもり。
からだ、まだ痛い。
パパ、
- 616 名前： フレイ様の大天使日記・6 投稿日： 2003/06/04(水) 16:37
- 同日 晴れ
ひさしぶりにゆっくり眠った気がする。
昨日、キラとした。
折り紙を見てキラが泣いた。守れなかったといって泣いてた。
慰めてたらキラがすがりついてきて、後は成り行きだった。
大丈夫。
私は平気。
どんなことでもするって決めてた。
戦闘配置がかかってから、キラはまだ帰ってこない。
変な女もいたし、ずっと帰ってこないのは不安になる。
シャワーを浴びて、シーツを片付けたら探しにいこうと思う。
でも、どこもかしこも筋肉痛だし、痛くてうまく歩けない。
痛いのなんて、きらいだ。
□月＃日 晴れ
キラとサイが喧嘩になった。
昨日の夜、キラを探してたらサイが追いかけてきて、鬱陶しかった
ので、はずみでキラのところにいたんだって喋ってしまった。サイ
とキラが口論になって、サイがキラに殴りかかって、でもキラはず
っと強くて……。サイが敵うわけないだろって、キラは言った。
やっぱり、コーディネーター、だから。
あんなサイ、はじめて見た。
でも、これ以上私の邪魔をしないでほしい。お願いだから。
あんなキラ、はじめて見た。
キラはまた泣いてた。戦うのが辛いんだろうか。
キラはすぐに泣く。本当に子供みたいだ。
ちょうど非常呼集のサイレンが鳴って、東の空が赤く燃えてて、一
次戦闘配置になった。
走って行くとき、キラが私の肩を抱いた。
その手が少し震えてたように思う。
出撃したまま、キラはまだ帰ってこない。
□月●日 晴れ
またキラが泣いてた。
元気になってくれないと困るので、優しくしてあげた。
ジェシカの言うことは本当に嘘ばっかりだ。
最初の時よりずっと痛かった。
キラは本当にすぐ泣く。
整備員の人の話だとすごく強いらしいのに。
キラって戦いがあるたびに泣いてるような気がする。
□月□日 晴れ
サイと顔をあわせてしまった。気まずい。
これからは、なるべくベットルームに近寄らない方がいいと思う。
空いてる時間はできるだけキラと一緒にいよう。
変な女はカガリというらしい。キラがヘリオポリスで助けたんだそ
うだ。助けられたくせに殴るなんて信じられない。
やっぱり、あれは変な女だ。
□月◇日 晴れ
キラがずいぶん思いつめている。
この子、戦うのがそんなに辛いんだろうか。
だめだ。
この子は、私を守って、戦って、悪い奴をやっつけるんだから。
どうしたらいいのかわからない。
とりあえず一緒にいてあげることにする。
□月＆日 晴れ
キラはときどき折り紙を見てる。
守れなかったって言うのを何度も聞いた。
少しはわかってきた。
この子は何もかも背負い込んでしまう性格なんだろう。
本当に、ばかみたい。
□月◎日 晴れ
キラの様子がおかしい。
朝からキラが部屋にいなくて、探しまわったらストライクのコクピ
ットに入りこんでた。昨日の夜からそこで眠ってたらしい。
迷子の子犬みたいな顔をしてる。
大丈夫って本人は言ってるけれど、ぜんぜん大丈夫に見えない。
何をどうやってもストライクから出てこないので、しまいにはこっ
ちが根負けしてしまった。
どうしたらいいんだろう。
- 617 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 16:43
- ２クール編１８話時点まで。
長くて終わらない・・・
- 618 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 17:12
- >>614-616
いかん、泣きそうだ・・・（ ´Д⊂ヽ・ﾟ・
- 619 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 17:32
- >>617
乙です！
ベッド泣きの山場をどう描写するかと思いましたが、本当の日記みたいで（・∀・）ｲｲ!
ここまで来たら、
「フレイ様を想って、書いて、書いて、本編に追いつくのよ。そうでなきゃ許さない。」
とか勝手なお願いをしてみるテスツ
- 620 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 17:34
- 乙ふれ〜。
淡々としてるぶん胸に迫ってくるよ、フレイ様・・・。
うあ゛ぁあ ･ﾟ･(´Д⊂ヽ･ﾟ･ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
- 621 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 17:40
- >614-616
感情移入しすぎて、かなり本気でキラに殺意を覚えてしまったｗ
フレイ様はキラが辛いの分かっていたが、
果たしてキラはその辺ちゃんと察して上げれてたんだろーか…。
- 622 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 18:01
- >621
２８話で両親に会わなかったんだから察してたんだろ。
- 623 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 18:48
- フレイ様の日記・・・・グレイトゥ！！でございます。
- 624 名前： とある街角のバーで 投稿日： 2003/06/04(水) 20:13
- ーいらっしゃいませ。いつもの…でございますね。
「ええ…。でも、いつものと言われると、ちょっとつらいわね。
１年に１度しか来ない客としては、何だか嫌みを言われているようで…。」
ーとんでもございません、お客様。今日はお出でになる日と、お待ちしておりました。
「本当にぃ。」
ーはい。私がこちらを任される前からの、大事な常連様ですから。
「上手ねえ。まあ、いいわ。 あなたがそこに立つようになってから何年？」
ーお陰様で、３年になります。
「そう…、もうそんなになるのね。とすると、このお店ができて８年かしら。」
ーはい。
「そう…。いやあね、最近は時間の経つのが早くなって。最初は、あなたがバイトで…」
ーはい。
「このあたりは、まだお店も少なくて、寂しい感じだったわ。」
ーまだまだ、戦後の混乱がひどいときでしたから。
「本当に。ひどい混乱だったわ。
私がこのお店に初めて来たのも、怖い連中に絡まれて、逃げ込んで来たのよね。」
ー除隊してぶらぶらしている連中が、よく暴れてましたから。
「今の賑わいを見ると、戦争が終わってからまだ10年しか経ってないなんて、信じられないくらい。
あなたもね。」
ーお笑い下さい。
「あら、失礼。でも、８年前のあなたは、とても客商売が向いている雰囲気ではなかったわ。」
ーお恥ずかしい限りです。
「まあ、でも、先代のマスターも、最初はなんか怖い雰囲気だったものね。
マスターとバイトと、二人揃って何て無愛想な店なんだろって、最初はびっくりしたもの。
でも、助けてもらった手前、何か注文しなきゃしょうがないか、って。」
ーそれから毎年いらしていただいて。毎年この日に。
「そう。毎年この日。あら、私とばっかりお喋りしてたら、仕事にならないわね。」
ーいいえ、今日はご覧のとおり暇ですから。お客様さえよろしければ。
「いつもはもっとお客がいるんでしょうね。この店潰したら、マスターが化けて出てくるわよ。」
ーお陰様で、それはご心配いただかなくとも大丈夫です。
「ここが潰れたら、私も行くところがなくなって困るわ…。
そういえば、私が何で毎年この日に通ってくるか、マスターから聞いてるわよね。」
ーいいえ。先代は、お客様のプライベートなことは、私には一切申しませんでしたので。
「そう。見た目通り、律儀な人だったのねえ。
まあ、遺伝子いじっても、性格まで社交的にすることはできないでしょうからね。
先代って、コーディネーターだったでしょう。」
ー ………
「最初、私を助けてくれたときの身のこなしを見れば、すぐに分かるわよ。
別に隠し立てしなくてもいいでしょ。」
ー ……はい。
「地上の、こんな片田舎に、コーディネーターがいるなんてねえ。
私も最初はびっくりしたわよ。
たぶん、マスターも内緒にして暮らしてたんでしょうけど、
こんな美人が困っていたんだもの。誰だって、助けに飛び込むわよねぇ。
あら、ここは相槌を打つところよ。
マスター、強かったわよねえ。５人をやっつけるのに、瞬きする暇もないんだから。」
ー ……失礼ですが、…お客様はナチュラルでらっしゃいますよね。
「そうよ。正真正銘、血統書付きのナチュラルよ。
私の父なんか、青き清浄なる、なあんて言ってたクチなんだから。」
ーそれがまた、どうして…
「にっくきコーディネーターの店に、通ってくるのか、って。」
ー ……はい。
「そうねえ、先代が生きてる間には、話す機会がなかったわね。
先代は、本当に何にも聞かない人だったもの。
考えてみれば、この店に来て、私のことを聞かれたのは、今日が初めてだわ。
毎年この日に私が通ってくる理由、聞きたい。」
- 625 名前： 冷たい砂に抱かれて 投稿日： 2003/06/04(水) 20:17
- 汗が引くのを、ぼんやりと待っていた。
心臓が早鐘を打っている。感じた事のない快感の余韻が、潮が引くように過ぎていった。
後に残ったのは、後悔と、羞恥。そして誰ぞへの懺悔だった。
目の端に彼女を見ると、赤い髪が映った。鼻先に艶やかなそれがあり、いい匂いがした。しかしそれよりも濃い、自分自身の放った匂いと、汗の匂いが部屋を満たしている。
僕はそれを感じて、それから思い出したように身を起こした。傍らにあったティッシュケースを持って、彼女に告げる。
「フレイ、拭かないと…ごめん」
今日は何度謝っただろう？しかし、そうしなければいけない気がしたのだ。僕の言葉に、フレイも身を起こす。
「やだ、べとべと…」
ソレは、フレイの腹と、乳房に至るまで飛んでいた。その言葉に、耳まで熱くなる。
「拭こうか？」
「うーん、いい。自分でするわ」
僕からティッシュを受け取ると、無言のままそれを拭った。
- 626 名前： 624 投稿日： 2003/06/04(水) 20:18
- ものすごい神が次々降臨しているので、楽しませてもらうばっかりでは悪いと思い、
ちょっと書き始めました。
神々に正面から対抗する文才はないので、新機軸で。
スレ汚しになると本意ではありませんから、続きｷﾎﾞﾝとかなければ、止めます。
- 627 名前： 冷たい砂に抱かれて２ 投稿日： 2003/06/04(水) 20:18
- 「ん、汗くさいかな」
フレイが眉を潜めて、そう言う。
「シャワー使う？」
「そうね…でも、つかれちゃった。足に力、はいんない。キラはもう平気なの？」
「うん、僕は…」
「そうよね…イタタ、うーん」
「ごめん…」
また、謝る。
「いいのよ、キラ。ね、少しは落ち着いた？」
「え」
彼女の熱に、身を埋めて、確かに、僕は忘れられていた。
「ああ…うん。ありがとう。フレイが、優しくしてくれたから」
「そう、なら、いいわ」
「フレイ…僕…よかったのかな」
「何が？」
「こんなふうに…いきなり」
- 628 名前： 107 投稿日： 2003/06/04(水) 20:19
- やべぇ…泣けてくるよ…フレイ様日記(つД`)、
このあたりのエピソードをフレイ様視点でSS化しようと
妄想してたんだけど、
ダメだ、これを超えられねぇ。漏れでは……
作者どの、がんがってくれぇ！
- 629 名前： 冷たい砂に抱かれて3 投稿日： 2003/06/04(水) 20:20
- いきなり、抱いてしまうなんて。
彼女に抱いていた淡い恋心。でも成就させる事など、叶わないと諦めていた。
むしろ、自分は彼女に嫌悪すらされているのではないか。そう思っていた。
なのに、急に。
心地よい優しさ。柔らかい身体。彼女とこんなふうになるなんて、
夢みたいだった。
「キラは悪くないわ。そんなことで謝る必要もないの」
「でも…」
そう言いかけた僕の頭を、フレイは裸の胸に引き寄せた。
柔らかい感触が広がる。
「いいの、ねえ、いいのよ…キラ。私はもうあなたのもの。
こうしたかったのは私だわ。キラ、気持ちよかったでしょ？
安心できたでしょ？それでいいの。私にはこんなことしかできないなら、
こうしていたいわ」
「フレイ…」
「ね、いいこ…。あなたが泣く場所はここよ」
「………う、ん」
緩い涙が、頬を伝い、フレイの裸の胸に落ちた。そこは暖かくて、
何もかも忘れてしまえるような、柔らかい褥だった。
叶うなら、このまま、永遠にここで微睡んでいたい。
そう願う。ここには、優しいものしかない。何も考えなくていい。
ただ、求め、委ねるだけ…。
- 630 名前： 冷たい砂に抱かれて４ 投稿日： 2003/06/04(水) 20:22
- 「フレイ、僕は」
「なぁに？」
「僕は、ずっと君を…好きだった。」
「そう。」
「今も…好きだよ」
「そう。」
あやすように、低い声でフレイはそれだけを言った。
僕は、その柔らかさに、微睡んでいった…
次に目が覚めたとき、フレイは横になって寝ていた。
僕はぶん、と頭を振って、あたりを見た。
服が、床に散らばっている。くしゃくしゃになって。
このままでは皺がついてしまう。僕はそれらを拾って、向かいのベッドに
軽く畳んで置いた。それから、身をひとつ震わせた。
汗が冷えて、寒気がしたのだ。フレイがシーツを持っていってしまって、
僕は殆ど裸で寝ていたらしい。Ｔシャツと下着だけ羽織ると、再びベッドに
横になった。目の端に、フレイの髪がある。
綺麗な髪。
目を閉じた。
（了）
- 631 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 20:31
- このスレで2つ同時投下は初めて見たような。乙です。
＞冷たい砂に抱かれて
流れるような美しい文体が良いですね。俺のごてごてした文体とはえらい違いだ。見習いたい。
>>626
スレ汚し？そんなの気にしてたら投下なんか出来ませんよｗ
ハードボイルドなフレイ様も良いです。続編期待！
- 632 名前： 630 投稿日： 2003/06/04(水) 20:38
- >631
ども。
しかし自分はフレイ様日記に感動してしまって仕様がないでつよ。
実はコレのフレイ様サイドもあるんだが如何なものか…
続きを早く投下してください！！
- 633 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 20:59
- >>624
理由聞きたい人？
ノ
>>632
（・∀・）ｲｲ!!
フレイ様サイドきぼんぬ
- 634 名前： 630 投稿日： 2003/06/04(水) 21:13
- フレイ様サイドは長いんで…それ以前のを投下
悲願があるというのなら。
ただ一人の肉親を殺した相手に復讐をしたい。
でも知っている。
私は何も持たないこどもだ。
ずばぬけて頭がいいのでも、力があるのでも無い。
軍事教育なんて受けているはずがない。
普通の、１５歳の少女だったのだから。
でも方法はある。この船にはあの子がいる。
憎むべきコーディネーターのあの子が。
目の前にいるあの子が憎い。
けれど、彼は必要なのだ。私の願いの為に。
彼だけが、私に残された最後の鍵。
その為には何だってする、と思った。
そのために、こんな事、畏れてなどいないわ。
時折、あの温く穏やかだったプラントの出来事を思い出す。地球と違い、毎日が春のような陽気。硝子天井のような青空。私はヘリオポリスの学生で、友達とゆるい坂を昇って登校していた。帰り道に買い物をしたり、何もかもがつくりもののような平和さ。眩しいほどに。
ナチュラルとコーディネーターの戦い。そんなものあそこには無縁だった。
オーブには１割に満たない少数ながらコーディネーターが居住していたし、
もそれに興味もなかった。軍人である父からコーディネーターについて聞
かされていたが、忌むべき存在であるかなど、目の前に見てみないと解ら
ない。いや、どうせ気付かなかったろう。
宇宙の闇の中で、赤い閃光が目を焼いた。目の前が真っ赤だ。
パパ、パパはどうして死んでしまったの？私は泣いた。
人間はこんなにも涙が出るのかと思った。
コーディネーターも、感情に押しつぶされて泣いたりするのだろうか？
目の前で、少年が膝を折った。
床に崩れ落ちると、嗚咽とともにぱらぱらと涙が散る。
涙は透明だ。どんどん溢れてくる。睫を濡らして、床に落ちる。
まるで動物を観察するような、そんな気分だった。
- 635 名前： 630 投稿日： 2003/06/04(水) 21:16
- 改行しわすれたｽﾏｿ
**********
意味の分からない言葉をいくつも呟いて、子供のように泣く彼は滑稽で、
哀れだった。あんな機体を自分の身体のように操るのに、
なんて脆いのだろう。壊れやすいのだろう。その弱さは、愛しくさえある。
わたしはその柔らかい髪を撫ぜた。顔を近づけるとシャンプーの香りがした。
唇を重ねると、暖かく感じた。その感触に、一瞬怯みそうになる。
背中を一筋、汗がつたり落ちるのを感じた。
唇の隙間から、唾液が零れた。どちらのとも知れない。
やっと離すと、熱い息が漏れた。キラは、すぐに目を伏せてしまう。
頬はまだ、濡れている。長い睫も。
私はそれを、嘗めた。例えば、猫のように。
キラの身体が、驚いたように反応する。私はその首に腕を回す。
そのまま両の瞼を嘗めた。けれどまだ涙を流す。こんどは、嗚咽も無い。
するすると頬を伝う。緩く。
「…キラ。泣かないで。泣かないで、いいこね」
あやすように、私は囁いた。そしてそのまま彼の頭を抱いて、
しっかり抱き締めた。彼の手が戸惑うように、腰にあてられる。
- 636 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 21:19
- おつふれ〜。
この頃、毎日、神の作品が読めて幸せです…。
>>624
新スタイルの作品ですね。
フレイ様、何だかいい女になってるなぁ(*´Д｀)ﾊｧﾊｧ
続編期待しております！
>>632
フレイ様もキラも痛々しいね・・・(´Д⊂
でも、そこが魅力なのかも。
フレイ様サイドお待ちしてます〜。
- 637 名前： 630 投稿日： 2003/06/04(水) 21:20
- こんなふうに誰かに触れたことはなかった。
「フレイ…」
キラが、私の名を呼ぶ。そう、私の名前を呼びなさい。私に縋るといい。
「フレイ、フレイ…！」
彼の腕が、痛いくらいに私を抱いた。肺が押されて、苦しかった。
自然と、息が荒くなる。彼は気付かないだろう。
愛してるわけじゃない。
憎んでいるのだ。
これ以上無いほど。
でも彼を繋ぎ止めないといけない。
キラは戦いたくないのだ。そんな人間じゃない。
でもそんな事考える暇もないくらい、戦わなければ。
そのためなら。
- 638 名前： 火サスノリで行ってみようか １１ 投稿日： 2003/06/04(水) 21:51
- オーブは戦時からブルーコスモスの過激な活動は少なかった。治安の良さもあって、キラも安心していた。
フレイとの生活が戦時中の鋭い感覚を奪っていたかも知れない。
ましてや、この4年近くは、平穏無事だったのだ。キラを責める事は誰にも出来ない。
夏のオーブには珍しく、朝から雨が降っていた。キラとフレイの家の前に二台の黒塗りの車が停まった。
数人の男が降りてくる。彼らが外にでてきたフレイに近づくと、あっという間に車に押し込めて連れ去った。
音すら立てない、白昼の一瞬の出来事。フレイの落とした傘だけが転がっていた。
フレイが目を開けると、真っ暗な部屋。一つだけ点いた明かりが目を射る。
その光から隠れるように、数人の男女が立っていた。
「目が覚めましたか？フレイ・アルスター」
誰？何で私の名前を知ってるの？ここはどこなの？何が起こってるの？
無数の疑問が交錯する。
「我々は迎えに来たのです。」
「まさかこんな所にいるとは思っておりませんでしたが…」
「あれから4年近く経ちました。壊滅状態になった我々ブルーコスモスも再び起つだけの力をつけたのです」
彼らは多少興奮気味に次々と言葉を繰り出す。何かが歪んだ空気。訳も無く恐怖を煽られる。
「ブルー…コスモス…！？」
フレイは聞きなれない単語を、無意識に口にしていた。
「蒼き清浄なる地球の為に」
その言葉を聞いた瞬間、傷が疼いた。
キラは自分の甘さを呪っていた。ここが安全な所であると言う事。フレイは幸せだと言う事。
全ては自分の甘さであり、幻想だった。
一体フレイは何処に行ったのか。目撃者がない為、まるで行方が掴めない。
「父上に頼んで極秘に警察にも動いてもらってるが…情報が少なすぎる。でも、心配するな。すぐ捜し出す」
カガリは暗い声になりそうなのを必死に押し隠し、努めて明るく振舞おうとする。
その優しさが、キラに後悔と自責の念を増幅させるのだ。
不意にドアのベルが鳴り、一瞬、キラとカガリは身を硬くした。
カガリを制すると、キラはゆっくりとドアに近づいて、一呼吸置いてドアを開けた。
そこには、サイ・アーガイルが立っていた。
- 639 名前： 火サス書いてる人 投稿日： 2003/06/04(水) 21:54
- 仕事忙しくて、一日1パートが限界…おまけに駄文だし。
しかし、スレ立って一ヶ月で600突破ですか。
大長編があったにしても、かなり早いペースですね。
ここんとこ毎日神が降臨しているというのが凄いです。
- 640 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 22:19
- ふと鏡を目をやる
そこには幸せそうな微笑を浮かべた私がいた
……っ！
なによ、この顔は！なんでそんな顔して笑ってるのよ！
あなたにそんな笑顔は似合わない
私の微笑みは偽りの仮面
パパを殺したコーディ……
あの悲しみを忘れちゃいけない
あの憎しみを忘れちゃいけない
それまで、あの子に……キラに心を許しちゃいけない
それまで？
キラは私の復讐のための道具でしかない
キラは私のために戦って死ななければならない
戦って戦って戦って戦って戦って……
……くるしい
- 641 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 22:27
- >>640
｡･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･｡
ここは、フレイ様への愛が炸裂するインターネットですね
- 642 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 22:47
- >638,>639
乙フレ〜。
ブルコスか…やっぱりブルコスなのか〜？｡･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･｡
駄文なんてとんでもない！毎日投下楽しみにしていますｖ
- 643 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 22:52
- >624,>626
＞続き気になる人。理由聞きたい人。
ノ
なんか、
世間の荒波にもまれていい女になってそうなフレイ様…(*´Д｀)ﾊｧﾊｧ
- 644 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 23:10
- 最近神出現率高いなぁ。
ここ見るのが楽しみだよ。
- 645 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/04(水) 23:11
- >625,>627,>629,>630,>632,>634,>635,>637,>640
乙です。
やることやってるのに、
いやらしさを感じさせない涼やかな文体に魅せられました。
フレイ様も切ないけれど、謝ってばかりのキラも切ない…(´Д⊂
フレイサイドのSSの投下もお待ちしております。
ところで>640、
内容と文体で勝手に同じ人だと思ってしまったのですが、大丈夫でしょうか？
- 646 名前： 火サスノリで行ってみようか １２ 投稿日： 2003/06/05(木) 00:47
- 「僕が呼んだんだ。心配しないで」
戸惑いの表情を浮かべるカガリに、キラは言った。
サイは無言で部屋に入ると、鋭い視線をキラに送った。何か言いたげだが、キラが口を開くのを待っているのだろう。
「何処に行ったのか…分からないんだ。でも、港にも空港にもそれらしい人がいたと言う情報は無い。まだオーブにいるはずなんだ。」
カガリの話を、サイは黙って聞いていた。
「…自分から出て行ったにしては不自然なんだ。身の回りのものも残ってるし、誰かに連れ去られた可能性もある」
「サイ、こんな事を言うのは非常識だと承知してる。けど、頼めるのは君しかいないんだ。協力して欲しいんだ」
サイは不意に立ち上がると外にでた。キラが後を追う。
「サイ…確かにフレイは、ブルーコスモスに走って僕らを連合に売ろうとした。でも、今のフレイは…」
不意にサイの拳がキラの頬を捉え、キラは後ろに吹き飛ばされた。
「バカ野郎…お前、お人好し過ぎるよ…」
サイの声は震えていた。怒りでは無かった。まだ許せずにいる苦しみと悲しみと、断ち切れない思い出。
それらが一緒くたになった声。
「サイ…御免…」
一方、カガリの父で、オーブの前代表でもあるウズミ・ナラ・アスハにも悪い知らせが届いていた。
コーディネーター国家、プラントから近く国賓を迎えるにあたり、国内で不穏な動きあり、との報告があったのだ。
「戦争が終わって、初めての公式訪問だというのに…」
ウズミはため息をついた。軍需産業を含む重工業が国を潤しているとしても、指導者として平和を願うのは当たり前の事である。
一体、人の心から人種の違いによる差別と闘争が消える日は来るのだろうか？
そう思うと、ウズミの心は重くなるのだ。
- 647 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/05(木) 00:55
- みなさん乙フレ〜〜！！
なんか今日は凄いな・・・
皆上手いし、面白い。
私は未だ苦戦中････
火サス、先が全然読めない、楽しみです。
まさかブルコスが出てくるとは・・・・
- 648 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/05(木) 01:01
- >646
おつふれ〜。
れ、連合にAAを売る!?
フレイ様、一体あなたは何を…((((((；ﾟДﾟ)))))ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ
オーブの人間ではない（？）と思われるサイが警察よりも役に立つとは
これいかに？フレイ様もだが、一体何者なんだ、サイ。
- 649 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/05(木) 01:06
- >>648
うっ、その突っ込みをされると辛いｗ
警察も表立って動いてないからねぇ。今のところ。
サイはあくまでキラと和解的協力をするって事で…なんか苦しいなｗ
- 650 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/05(木) 01:27
- >>649
毎回楽しみに読んでおります。
ところで俺はＳＳ内でのカズイ様の動向が気になっておるのですが
そこの所どうでしょうか？結構重要な役割をされるんじゃ
ないかと妄想しておるのですが・・・・・
- 651 名前： 630 投稿日： 2003/06/05(木) 02:02
- 637のつづき投下。
****
強く私を抱いたまま、彼は動かなかった。涙は止まったのかもしれない。
少し、戸惑っている風だった。腕の力が少し緩んだのと同時に、
私は大きく息継ぎをする。
「キラ…？辛いのね」
キラは答えない。
「私に側にいてほしい？」
私はまた聞く。
「いて…くれるの？」
彼の問いに、微笑んだ。壁に向かって。
それはどんなに歪んだ笑顔だったろう。
「いてあげるわ…あなたが望むなら」
目を閉じれば、宇宙を照らした爆発が見える。
塵となったパパは、最後にどんな顔をしたんだろう？
きっと最後の瞬間まで私の事を思ってくれたんだ。
だったら私も同じ。最後の瞬間までパパの事を思うわ。
「ねえキラ？私はあなたの側にいてあげる。あなたのモノになってあげる。
ねえ、だから、私の事を守って…私の為に戦って。
…あなたにはそれが出来るわ」
彼は腕を緩めて、私の顔を真正面から見た。私もそれを見返す。
私は今、ちゃんと笑えているだろうか。キラが守りたいと思うような。
キラは何も言わない。でも、すこし瞳の色が変わったように思えた。
「私の想いのかわりに、あなたは私を守るの」
パパの変わりに死ねば良かったのに、生きているのなら
そうだというなら貴方は苦しんで生きるといい。
「…フレイ」
そうして死ぬんだわ。私の為に。
私は、自分から身を離すと、軍服のボタンをはずした。上から、ひとつずつ。
キラの目がそれを追う。でも彼は動かない。
私は笑った。
「ねえキラ、私はあなたのモノなのよ？」
「見てないで」
次に見たのは天井だった。私は自分の指先を見上げる。それは踊っていた。
苦しみに喘いでいるように揺れている。救いを求めているようにも。
燃える空を見た、目を閉じたまま。
こみ上げる吐き気を抑えるのに必死だった。
ただ、一筋の光を残して。
愛してなんかいない。むしろ憎んでいるのだ。
あなたなんて死ねばいい。
死なないというなら、私の為に生きればいい。
私のように苦しんで、何もかも失って生きれば良いんだわ。
（了）
ダメSSでｽﾝﾏｿ。自分的には不発だったと面。
火ｻｽに期待して逝ってきます。
- 652 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/05(木) 02:33
- 乙ふれ。
>>646
フレイ様いったい何やったんだー！ｗ
まったく先の読めない展開でハラハラしています。
火サスよりすごい・・・。
続き楽しみに待ってます。
>>651
全然不発なんかじゃないですよ。
哀しいぐらいにフレイ様の気持ちが伝わってきました。
特に最後の9行は圧巻。
芸術的な詩を読んでいるような気持ちになりますた(´Д⊂
- 653 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/05(木) 12:29
- >>651
乙です。
はぁ、何て綺麗な文章なんだろ。憧れます。
＞ダメSSでｽﾝﾏｿ。自分的には不発だったと面。
＞火ｻｽに期待して逝ってきます。
不発どころか大ヒットでしょう。
俺のへぼ文章に期待しないでまた書いてくださいねｗ
- 654 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/05(木) 14:13
- >651
乙〜。
いかん、このシリーズはマジ泣ける(´Д⊂
- 655 名前： フレイ様の大天使日記・7 投稿日： 2003/06/05(木) 16:21
- □月▼日 晴れ
目を離すとキラはストライクのところへ行ってしまう。
さっき、ようやく部屋に連れて帰ってシャワーを浴びさせてベット
で寝かしつけた。ずいぶん苦労した。
あの子、戦うのが辛いんだ。
いつも泣いてる。
でも。
そんなのは許さない。
キラは私を守って、戦って、死ななくちゃ許さない。
同日
ミリたちに避けられてる。
サイのこととか、キラのこととか。気まずいことはいっぱいある。
しかたない。
ベットルームにはますます居辛くなった。
そういえば、キラはあんなにすぐ泣くのに、私の前以外で泣いたり
するところを見たことがない。
トールたちにも何も話してないみたい。友達なのに。
よくわからないけど、なんだか寂しい子だ。
コーディネーターのくせに。
それとも、そうじゃなくて。
コーディネーターだからなのかもしれない。
結局、キラは私たちとは違うんだから。
サイとは、あれ以来話してない。
大丈夫。
私は平気。
がんばろう。
□月●日 晴れ
キラがストライクから出てこない。
トールたちと顔を合わせると思うと私も部屋に帰り辛くて、昨日は
一緒にいてあげた。
でも、夜中に目を醒めたらキラがいなかった。探してみたらまたス
トライクの中にいた。
ちっとも良くならない。どうすればいいんだろう。
その時はどうしようもなかったので、毛布だけ渡した。朝になって
からもその調子で、仕方がないから食事も持っていった。
このまま出てこなかったらどうしよう。
さっき、キラ、泣いてた。
もう誰も死なせないって言った。
前にも何度か同じようなことを言ってたのを聞いたことがある。
守れなかったのが、死なせてしまったのが、辛いんだろうか。
だから戦うんだろうか。
戦うのも辛いくせに。
本当に馬鹿なみたいな子だ。
コーディネーターのくせに。
ひとりぼっちのくせに。
- 656 名前： フレイ様の大天使日記・8 投稿日： 2003/06/05(木) 16:21
- □月□日 晴れ
今日はキラが居ない。
バジルール中尉たちが街へ行くとかで、同行するように艦長が命令
した。気分転換とかになればいいと思う。
カガリとかいう子も一緒だ。
なんだかイライラする。
あの女は嫌い。
まとめて買いだしもするそうなので、化粧品を頼んでおいた。見つ
かるといいけど。
そういえば最近、まともにお化粧してない。
同日
サイが独房入りになった。
中尉たちが帰って来て、キラとカガリがはぐれたって騒ぎになった。
心配になって私もデッキに下りたら、ストライクが動き出した。
サイが、ストライクを動かそうとした。
そんなことするなんて思わなかった。
できるはずないのに。
キラとは違うのに。
キラに敵うわけないのに。
コーディネーターになんか、
見てられなかった。どうなったかは後で聞いただけだ。
ストライクが倒れて、サイがコクピットから引っ張り出されて、艦
長が独房に一周間と命令したらしい。
でも、どうしよう。
たぶんサイは気がついたんだ。
私がキラのこと、本気で好きになったわけじゃないんだって。
だからって、今さら止めるわけにはいかない。
私はあの子を許せない。
馬鹿だ、サイは。
これ以上私の邪魔をしないでほしい。お願いだから。
- 657 名前： フレイ様の大天使日記・9 投稿日： 2003/06/05(木) 16:22
- □月×日 晴れ
昨日、結局、知らない間にキラが帰って来てた。
虎とか狐とか、なんだかよくわからない名前の敵と会ってきたって
いうことらしい。
敵と会ったって、どういうことなんだろう。
サイは独房にいる。
一周間、大丈夫だろうか。マードックさんはたいしたことないって
言ってた。俺も前に入ったとか、ちょろいとか言ってたけど、サイ
を一緒したら可哀想だ。
サイは何も言わなかったらしいけど、ミリもトールもカズィも、サ
イがあんなことしたのは私とキラが原因だってわかってる。
態度にでてる。鬱陶しい。
この部屋には居たくない。
キラは少し元気になったようだ。ちゃんと部屋に戻ってるみたい。
昨日、結局、キラに会いにいかなかった。
後で行ってみよう。
□月■日 晴れ
どうしよう。
何か書かないと。
頭のなか、まとめなきゃ。
ぐるぐるする。なにもかんがえられない。
なにがいけなかったの。
わからない。
嫌われたかもしれない。
どうしてだろう。
ごめんっていってた。
どうして、ちっともわからない。
パパの仇がうてなくなる。
どうしよう。
やだ。
そんなのやだ。
こわい。すごくこわい。
どうしたらいいんだろ。
嫌われるようなことしたの。
泣きそう。
あの子、ないてたんだろうか。
わからない。
どこかいきたい。
どこって、どこいったって、
誰もいないのに。
いけるところなんて、
部屋にかえるのはイヤ
わたし、
- 658 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/05(木) 16:23
- ２クール編、２０話まで。
意外に重要なこのあたりの展開、予想以上になかなか終わりませんな。
次回あたりは海にでれるか・・・謎
- 659 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/05(木) 17:17
- >>655-657
(ﾉД`)･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･ｳｴｴｪｪﾝ
>>658
いつも乙です。
かなり)（´Д⊂ヽ･ﾟ･です。
急がず、じっくりと書いてください。
次回も期待しております。
- 660 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/05(木) 17:34
- >655-658
おつふれ〜。
なんつーかもう、ひたすら｡･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･｡という感じですな。
フレイ様、何かやってることと言ってることがすこーしずつ
ズレていってますよ？気づいてますか？(´Д⊂
- 661 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/05(木) 18:47
- かゆ…うま…
なんてならないでくださいね、フレイ様…
- 662 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/05(木) 18:59
- >>655-658
乙フレっす！
いつもながらフレイ様の心理状態を上手く現れていて凄い・・・・
それにしても、フレイ様・・・・涙無しには語れなくなってまいりました・・・
- 663 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/05(木) 20:15
- >>661
何ですかそれ？
- 664 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/05(木) 20:30
- カプコンが出した某ゾンビゲームネタだったような・・・
- 665 名前： 630とかの人 投稿日： 2003/06/05(木) 21:03
- >645>652>653>654
ども。ちなみに640は自分じゃないでつよ。気になる文章です…。
フレイ様日記にただ涙…
気付けば、日記の内容がキラばかりになっているフレイ様。
いつのまにか、依存してしまっているのですね…(´Д⊂
- 666 名前： 火サスノリで行ってみようか １３ 投稿日： 2003/06/05(木) 21:46
- 「まさか、記憶が無いとはな…」
「彼女の態度を見る限り、嘘はついていないと判断できます」
「我々ブルーコスモスが再起する、これからと言う時に」
彼らにとっても予想外の事態である。
「彼女の様子は？」
「変わりません。今のところ、安静にしてもらっています」
「近々プラントの使節団がこのオーブを訪問する。それまで無用な火種は抱えたくない。
まずは使節の暗殺を成功させてからだ」
暗殺。成功すれば、コーディネーターとナチュラルの国家間を取り持つオーブの権威は失墜し、
再び相互の不信感は増大するだろう。場合によっては紛争が再燃する可能性すらある。
しかしそれは、ブルーコスモスの支持者にとっては望むべき未来なのだ。
「しかし、将来的に彼女は有効な駒になり得ます。利用価値は十分にあるかと…」
「どうかな…戦争中の記憶が無いんだ。有効かどうか…」
「記憶が戻るまで待ってみても良いのではないでしょうか」
「しかし、このまま彼女を置けば、オーブの警察が動く可能性もあります」
「今すぐ彼女が必要というわけではありません。焦る必要は無いのでは」
「仮に戻すとしても、口封じをする必要がある。他言されるのは最も危険だ」
「…今の彼女は我々がブルーコスモスである事以外、何も知りません。暗殺計画も知りません。
記憶を取り戻したら、我々に協力してくれるでしょうし、監視を怠らねば、構わないとも思えますが」
「よし、今後彼女から目を離すな。何かあったら、すぐ動けるように…。我々は今は、プラント
の連中の事だけを考えれば良い」
数時間後、フレイは再び車に乗せられた。
プラントはオーブと同盟を結ぶ事で地球連合と講和を結び、自国での産業活動を認めさせたが、
国力の疲弊から完全に立ち直った訳ではない。
しかし、あらゆる資源が不足していても、希望という材料があれば再建は可能と信じたい。
ラクス・クラインは父と共に、新たに建設中の農業ブロックの視察に向かっていた。
「もうすぐ地球に降りるか…私はもう一線からは退いた身だから、一緒に行けないのが残念だ」
シーゲル・クラインは娘が地球に降りる事に多少の不安があった。
コーディネーターとナチュラルの対立の根深さを、骨身に染みて知っていたからだ。
「フフ…お父様、そんなに心配なさらなくても、大丈夫ですわ。オーブには、先にアスラン様が降りています。
それに…よく知っている人達もいます」
いつの間に、この娘はこんなに強くなったのだろうか。戦争が終わって約４年…プラントがまがりなりにも
復興への路を歩めたのは、彼女を始めとする若者達のの精力的な活動があったからだ。
我々の世代は、そろそろ身を引くべきなのかも知れない…
シーゲルは、威厳すら漂わせた娘の横顔を見つめて、そう思っていた。
- 667 名前： 火サスノリで行ってみようか １４ 投稿日： 2003/06/05(木) 21:47
- 『ハァッ、ハァッ、ハァッ………クッ…ウッ…』
家へ再び戻ってから、フレイは毎晩のように悪夢にうなされる。
そして、決まって誰かの叫び声を聞いたような気がして、夢から覚める事になるのだ。
キラやカガリに、何処に連れて行かれたのかは話していない。
話す必要も無さそうだった。恐らく、彼らには心当たりがあるのだ。
キラと再会した時、キラがフレイの身体が砕けそうなほど力いっぱい抱きしめた時、フレイは決心していた。
私が一体何者なのか、知らなければならない、と。
キラを愛している事、今の私にはそれだけで十分かも知れない。でも、キラは明らかにそれ以上の何かを抱えている。
本当に愛し合うのなら、互いの何もかも、素直に抱きしめあえるようにしなければ、
じゃなきゃ、キラが、私のキラが、あまりにも可哀想……！
ブルーコスモス。恐らくはこの単語がフレイが何者なのか、決定的にするものなのだろう。
知らない、では済まされない。私と、キラの未来の為に…。
カガリは、自分のやっていた事が、ある意味の監視であることを自覚していた。
フレイが戻ってきたのは僥倖と言えるが、キラのように単純明快に喜んでいるわけではない。
恐らくは、ブルーコスモス。まず、間違いない。
まさか、フレイはまたブルーコスモスに…
そう思うといても立ってもいられない。
問題は、近く予定されているプラントからの使節団だ。どうしても不吉な連想をしてしまう。
ここで何か事件でも起ころうものなら、４年前へ逆流する。それだけは、阻止しなければならない。
フレイを公然と監視するなど、キラが許さないだろう。しかし、野放しにしておく訳にはいかない。
彼女にもオーブ前代表の娘として、また、フレイとキラをここに住まわせた事への責任があるのだから。
- 668 名前： 火サス書いてる人 投稿日： 2003/06/05(木) 21:49
- 頑張ってみたけど、やっぱりこれ以上のペースで書くのは無理ポつД`）
今更ながらLFA書いた人は物凄いと実感。
つーか、話がようやく半分に到達したようなしないような。
どうするんだ、俺。
- 669 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/05(木) 22:17
- >>668
乙ふれー(´∀｀)ﾉ
急がずともゆっくり書けば良いさ
いつまでも待ちますYO!
- 670 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/05(木) 22:56
- >666-668
おつ〜。
所詮ブルコスもフレイ様を駒扱いにしかしねーんだよな…
そんな奴らがフレイ様の幸せに土足で入り込むなと小一時間(ry
しかし、フレイ様は恐れず真実を知ることを選んだのですね。
お強くなられて…(´Д⊂
ところでその真実とやらがさっぱり見当が付きませぬ。
先が毎回楽しみですなｗ
- 671 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/06(金) 11:22
- >666-668
乙ふれ〜
ま、急がずﾏﾀｰﾘいきましょうｗ
しかし、アスランを様つけで呼ぶラクス・・・
この二人の関係も気になりますなぁ
- 672 名前： 文通 投稿日： 2003/06/06(金) 22:08
- フレイ
『サイ・アーガイル様
サイへ。アーガイルおじさまとは昔から遊んでもらっていたけれど、
昨日の話にはびっくりしました。
あなたはもう知っていたんですってね。ずるいわ。教えて欲しかった。
久しぶりの手紙も、何を書いて良いか迷っています。
あ、まずお礼を言わなくちゃ。
昨日あなたがくれたブレスレットはとても気に入ってます。小さな宝石箱も。
でもぬいぐるみは子供っぽすぎると思うわ。私ももう13なんだから。
でも可愛いから許してあげる。
これからは、お兄ちゃん、じゃなくてサイと呼ぶようにパパから言われました。
すこし恥ずかしい。変なかんじ。いきなり言葉にするのは慣れないので、
手紙ではサイと呼ぶことにします。
それから昨日持っていったケーキのクリームは、私がやったのよ。
みんなには内緒にしたんだけど、もう一つは失敗しちゃったの。
うーん、他に書くことがみつからない。昔は沢山書いたのにね。
あなたがずいぶん前の押し花を持っていたのでびっくりしました。
懐かしかった。
それではまた。
フレイ・アルスター』
- 673 名前： 672 投稿日： 2003/06/06(金) 22:10
- 思いつきで書いてみました。
サイとの婚約が告げられたフレイ様１３歳ね。
これに対するサイの返事をきぼん。
誰かかいて呉。
- 674 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/06(金) 22:15
- >>673
乙ふれ〜。
フレイ様なんてかわいらしい(*´Д｀)ﾊｧﾊｧ
- 675 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/06(金) 22:17
- フレイへ
今までどおり、お兄ちゃんでいいよ。
いや、むしろお兄ちゃんで頼む。
お兄ちゃん こと サイ・アーガイル
- 676 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/06(金) 22:18
- >>675
サイ、変態かよ！ｗ
- 677 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/06(金) 22:34
- >>672
乙〜。
きっちり端を合わせて丁寧に手紙を折りたたむ
13歳のフレイ様を想像してしまいました(*´Д｀)ﾊｧﾊｧ
もらった手紙とか、サイならちゃんと保存してそうだな。
- 678 名前： フレイパパ 投稿日： 2003/06/06(金) 22:53
- サイ君、君の手紙を読ませて貰ったよ。
君は娘のことを真剣に考えてくれているのかね？
この事について、君のご両親も交えてお話したい。
ジョージ・アルスター
- 679 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/07(土) 00:06
- サイ
『フレイ・アルスター様
フレイ、まずは手紙有難う。
この間の事だけど、驚いたフレイの顔が見たくて秘密にしてたんだ。
予想通りに凄い驚いていたね。ああ、怒らないでくれよ？
そういうフレイの表情もたまには見てみたかったんだ。
プレゼントも気に入ってくれたみたいだね。良かったよ。
本当は…フレイには指輪をプレゼントしたかったんだ。
でも流石に、まだ早すぎだろ？僕達。
…そうだな、もう少し大きくなってから…
その時に改めて指輪をプレゼントして良いかい？
でも、フレイにはまだヌイグルミが合っているかな…。
サイって突然、名前を呼ぶのって抵抗があるよね。
だからフレイはフレイの呼びたい名前で僕を呼んで欲しいんだ。
だけど本当はフレイに早く名前で呼んでもらいたいんだよ。
ケーキ、凄く美味しかったよ。父さんも母さんも美味しいって喜んでた。
また作ってくれるかい？今度は一緒に作りたいね。
押し花って、ああ、アレを見たのかな…？
昔、2人で摘んだ花だよね。大切にとっておいてるよ。
フレイとの大切な思い出だからさ。
書きたい事が見つからない時は無理に手紙を書かなくて良いんだよ。
僕は時々、フレイと会えるだけでも嬉しいからね。
また会える日を楽しみにしています。
サイ・アーガイル』
- 680 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/07(土) 00:20
- >>679
乙。
て言うかサイ、恥ずかしい香具師だなｗ
フレイ様が13なら、彼は15か。初々しくて可愛らしい。
そういや、カレッジが一緒になるまで、
年に数回くらいしか顔を合わせなかった可能性もあるのかな。
- 681 名前： 文通 投稿日： 2003/06/07(土) 00:52
- フレイ
『サイ・アーガイル様
明日も会うかもしれないのに、手紙を書くのって不思議な気分です。
元気？とも書けないもの。
でも私、言葉にするより、文章にしたほうが、思っている事を伝えられる
みたい。だからこうしてあなたに手紙を書いてるんだけど。
学校には慣れましたか？というあなたのお手紙だけど、順調です。
仲のいい友達もできたし。紹介しようとも思ったけど、今はダメ。
だってみんな男の子の話題になると、とまらないんだもの。
サイの事なんて、ちょっと話たら毎日追求されそう。
みんなちょっと子供なのね。私たちの事知ったらどうなるんだろう。
当分は誰にも言わないでね。おねがい。
この間あなたが紹介してくれたお友達は、みんないい人ばかりだったな。
もう聞いたかもしれないけど、ミリアリアさんに紹介されて、同じサークル
に入ることにしたの。彼女、とっても元気な人ね。楽しそう。
学校の帰りに、かわいいお店をみつけたの。
そこで、いいものを買ったんだ。それはなんでしょう。
また明日、学校で。
フレイ・アルスター』
- 682 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/07(土) 00:54
- 工科カレッジに通うようになったフレイ様。
鼻の曲がるような返事キボン。
さりげなくキラとからめてくれたら神と予呼ぼう。
- 683 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/07(土) 00:54
- 予呼ぼう。＝呼ぼう
スマソ
- 684 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/07(土) 01:51
- フレイへ
思っていることを素直に伝えられることが必ずしも良いこととは限らないよ……
仲の良いい友達ができたのか。それは良かった。
でも、男の子の話をしだすと止まらない、ってどんな話をしてるの？
女の子は耳年増って言うからね。
あんな事やこんな事も話したりするのかな？……（妄想）……ウｯ鼻血が（汗
ミリィっていいやつだろ？
元気も良いが、なんといっても外ハネが良い。
カワイイお店でいいものか……
なんだろう……ピンクの下着かな？当たってる？
またあした学校で会えるのを楽しみにしています
お兄ちゃん こと サイ･アーガイル
追伸
お兄ちゃんの友達で、身の程もわきまえず君のことが気になるとか言ってる奴がいたから、
一発カマしておきました。
- 685 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/07(土) 01:58
- ＞一発カマしておきました。
つまり十七話のアレは因果応報だったとｗ
- 686 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/07(土) 02:00
- >>684
コレで「あのサイ・アーガイルから…」という一話に至るワケかw
そりゃ見せられん手紙だな。
- 687 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/07(土) 02:03
- >>685
今まで誤解してた。キラのあの行動も許す気になったよ…
- 688 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/07(土) 02:38
- フレイ・アルスター様へ
お手紙拝見させていただきました。
13の女の子らしい無邪気で可愛らしい文章に
大変微笑ましい気分にさせていただきました。
さて、今まで兄妹のように付き合ってきた男性と
突然、許婚になってしまい、あなたは大変戸惑って
おられる事と思います。しかし、心配は要りません。
友達の僕が言うのも何ですが、あなたの婚約者は
人の幸せを願い、人の不幸を悲しむ事のできる
イイ奴です。たとえ、人から理不尽な仕打ちを受けた
としても、決して相手を憎まず、むしろ、彼の気持ちを
思いやろうと努力するような男です。ちょっとお人好し
が過ぎて、損するような事も多い奴ですが、そこの所は
君がサポートしてあげてください。私の観察した限りですが
貴女は歳の割りに大人びた一面と、大変繊細で幼い一面を
共有する女性だと思われます。そんな貴女をサイは陰になり
日向になり支えてくれる事でしょう。たまに厳しいことも言う
でしょうがそれも貴方の事を思ってのことなのです。
貴女はこれからの人生の道のりにおいて様々なことを
経験される事でしょう。時には辛い事もあるでしょう。
そんな時、サイはきっと貴女の支えになってくれる事でしょう。
長々と書いてきましたがサイの美点については私などより
貴女の方がよくご存知でしょう。
これからもお二人の幸せを後ろからそっと見守らせていただきます。
二人に末永い幸せが訪れますように・・・・・
サイの友人 カズイ・バスカーク
追伸
サイには郵便箱の鍵はきちんと閉めておくように忠告しておいて
ください。今回は手紙だけで済みましたが、貴女まで盗まれるような
事があっては取り返しが付きませんからね。
あと、この手紙の事はサイには内緒にしておいてください。
- 689 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/07(土) 07:31
- 文通シリーズｷﾀ━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━━━!!
各方面乙！
次々と新形式を生み出すＳＳスレ、目が離せません
- 690 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/07(土) 07:38
- 次は一行リレー小説でもやりましょうか？
- 691 名前： 火サスノリで行ってみようか １５ 投稿日： 2003/06/07(土) 10:51
- アスラン・ザラが地球に降下するのは、使節団が正式訪問する下準備をする為だが、彼には他にも目的があった。
キラ・ヤマト…かつての友人で、敵として、また味方として戦った男。
キラがオーブに住んでから、アスランはキラと会っていない。プラント再建の為に奔走する毎日で、会う時間も無かった。
「4年ぶりか…」
オーブに向かう機内で、アスランはひとりごちた。
今年で20歳になるが、それより大人びた顔になっているアスラン。キラは、どんな顔になっているだろう。
通路を挟んだ席では、同行するイザークが目を閉じている。オーブに行くのはあまり乗り気ではなかったようだが、
「ちゃんとしたニコルの墓を作ってやらないといけない」という言葉で決心がついたようだ。
青く光る地球の輪郭が大きくなってくると、ここまで来たのか、と言う感慨が押し寄せてくる。
差別と憎悪の連鎖の戦いからどうにか抜け出して、コーディネーターとナチュラルが生きていく環境が築かれつつある。
互いのわだかまりが消え去ったとは思えないが、互いに殺しあって悲しみを増やすよりはずっとましだ、と思うのだ。
後は、時間が解決する問題なのだ…
「フレイを誘拐したのは間違いなくブルーコスモスだ。彼女はまだ記憶が戻ってないようだが、もうごまかせないぞ」
カガリの言葉を、キラは認めざるを得なかった。
所詮、フレイが記憶を無くしたまま生きていけるはずは無かったのだ。
しかし、仮に彼女が記憶を取り戻したとして、どうなると言うのだ？
もう戦争は終わっている。むしろ、フレイを更に苦しめるだけではないのか？
それに、フレイがかつてブルーコスモスと結託して、自分やサイを、皆殺しにしようとしたと知ったとしたら…
今の彼女がその罪の深さに耐えられるのだろうか？
しかし、戻ってきてからのフレイは明らかに憔悴していた。
夢にうなされるフレイ、時折言いようの無い不安な目をするフレイ…
彼女の為にも、キラ自身も、過去から逃げる事は許されない。
- 692 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/07(土) 12:15
- >681
乙〜。
そうか、確かにあのくらいの年の子は婚約者持ちどころか、
ちょっと仲のいい異性がいるだけで大騒ぎだからな。
それを慮っていたのなら、
ジェシカたちがフレイとサイの関係を知らなかった方がむしろ自然か。
- 693 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/07(土) 12:17
- >684,>688
おつふれ〜。
中々将来を危惧させる内容だな（藁
いいこと書いてるんだが、オチがえっらい黒いなｗ
- 694 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/07(土) 12:34
- >>691
乙！
フレイ様が記憶を取り戻したら・・・(((((( ;ﾟДﾟ)))))ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ
- 695 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/07(土) 12:35
- >>691
乙。
続々と役者が集結してきてるって感じですね。
て言うかフレイ様、皆殺しって…
そこまで過激なこと考えてしまわれたのですか!?
一体何が…。
- 696 名前： 暗闇の後には・・・�� 投稿日： 2003/06/07(土) 17:24
- 前回まで >>173・>>188・>>456-457・>>536-537
どれくらい時がたったのか･･･
「フレイ、どーでもいいけど、道の真ん中でいつまでも泣いてんじゃないわよ。いい見世物だわ。」
「････ジェ シ カ ？」
いつの間にかジェシカが隣にいた。そんなことさえ気付かなかった。
「何で･･･ここにいるの････？」
「あ〜、フレイが走っていくのを見かけてさぁ、気になったから追いかけて来たんだけど･･･」
ジェシカはちょっと気まずそうな顔で聞いてくる。
「出来れば何があったのか教えて欲しいんだけど？」
「･･･ジェシカには関係ないわ。」
「あるわよ、友達なんだから。ほら、白状なさい。サイと喧嘩でもした？それとも････」
「うるさい！ ほっといてよ！！」
これ以上問い詰められたくなかった。
誰とも話したくなんてしたくない。
こんな場所にも何時までも居たくない。
そして私は逃げ出した。
何も変わらない、でも平和で小さな幸せの中で生きていたはずなのに････
何でこんなことになってしまったの？
それから私は何をする気にもなれず、ただ無気力に家に閉じこもっていた。
今がいつなのかもはっきり分からない。
結局どこに居ても私は報われないのかもしれない、そんな気がしていた。
ピンポーン
････呼び鈴が鳴ってる････いいや。めんどくさい。
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポーン
････煩い･･･一体誰よ！
私は気だるい体を起こし、玄関の方へと向かった。
「ちょっと止めてくれる！？ 煩いのよ！」
「あら、サボり姫がようやくお目覚めのようだわ。」
「ジェ、ジェシカ？」
ドアを開けると意地悪そうな表情を浮かべたジェシカが立っていた。
「あがってもいい？」
この前の事もあり、あんまり気は進まなかったがわざわざ尋ねて来たのを追い返すのも悪い。
「構わないけど････」
「ありがと。でもあんたとあろう者が凄い格好ね、鏡見てみなさいよ。」
「えっ････キャァ！？ ちょ、ちょっと待ってて！！」
ジェシカに言われるまで自分がどんな格好で居たのかさえ気にしていなかった。
玄関にジェシカを残したまま慌てて洗面所へ駆け込む。
････なんて酷い顔。自慢の顔も見る影も無かった。
- 697 名前： 暗闇の後には・・・�� 投稿日： 2003/06/07(土) 17:25
- 私が急いで身嗜みを整えている間に、ジェシカは勝手に居間の方でくつろいでいた。
「勝手にあがらないでよ」
「いいじゃない、何度も何度も来た仲なんだから。 それより････」
私が席に着くなり彼女は切り出してきた。
「結局何が原因だったの？」
やっぱりこの間のことか。でもジェシカには言って解決するものでもないし、
思い出したくも無い。
「もういいじゃない、そんなこと････」
「よくない。フレイ･･･あんた、逃げてるでしょ？」
「逃げてなんてない！！」
「何日も家に閉じこもっておいてよく言うわね。」
私とジェシカは睨み合う。
彼女の物事をはっきり言う性格は好きだったが、今はそれがうっとおしい。
「友達だからって何でもかんでも干渉しないで！！」
「ふん！ じゃあそうやっていじけてれば？」
「いいもの、私にはサイがいるもの！！」
「あんたがそんなんじゃあ、サイだっていつか愛想尽かして逃げちゃうわね。」
「！？」
その言葉が私の胸を突き刺した。
私はAAでのサイとの関係の末路が頭の中で蘇ってくる。
でもそれは････
「しょうがないじゃない！あの子が、キラが、いけないのよ！
私はあの子のためにサイだって何だって、何もかも捨てたのに、
もうやめようって！ 間違ったって！
そしていなくなってしまった････死んだのよ！」
「フレイ･･･あんた何を･･･」
「どうにかなりそうだった。
でもサイも、ミリアリアも、誰も助けてくれない。
だからこんなことに逃げ込むしかなかったのに････
それなのにどうしてあの子はあの女なんか連れて歩いて
私を苦しめるのよ！」
呆然としているジェシカ。泣き崩れる私。
溜まっていた感情が、一気に弾け飛んでしまった。
止め様も無く涙があふれてくる････
もう････駄目････
- 698 名前： 暗後作者 投稿日： 2003/06/07(土) 17:29
- 展開に悩むところがあって遅くなってしまった・・・・
ひとえに修行不足です。
後半に差し掛かりました。
フレイｖｓジェシカ・・・・うまく表現できたでしょうか？
- 699 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/07(土) 19:16
- >>698
乙です！何か痛々しい雰囲気になってきましたな・・・
負けるなフレイ様！
- 700 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/07(土) 20:15
- >>696-697
（・∀・）ｲｲ・・・・・・・・・(´･ω･`)
ジェシカがうまくキャラ立ちしてる。
フレイたまのお友達って感じ。
後半もがんばれ！
- 701 名前： 火サスノリで行ってみようか １６ 投稿日： 2003/06/07(土) 21:55
- キラはフレイを乗せて車を走らせていた。
フレイは窓の外を眺めて、キラと視線を合わせようとしない。
今日、キラはフレイを食事に誘った。
オーブで二人の初めてのデートの時行った店だ。
その後…キラは全てを話すつもりだった。
「フレイ…気分悪いの？」
「うぅん…どうして？」
「いや、さっきから、何も喋らないから…」
フレイにも今日のキラの雰囲気から、来る日が来た事が分かっていたのだ。
再び訪れる沈黙。夜空から、また雨が降り始めた。
オーブ政庁の前を通過する。その白亜の建物はライトアップされて、輝きを回りに放っていた。
ドゥンッ！！
その時、大地を振るわせる轟音が起こり、政庁前から閃光と火柱が上がった。
二人の乗る車はその振動で激しく揺れ、危うく横転しそうになった。
「な、何…！？」
「くっ…」
フレイが、何が起こったのか理解する間も無く、辺りは人が集まって騒然とした空気に支配された。
「何かが爆発したんだ！気をつけろ！まだあるかも知れんぞ！」
そんな怒声が上がり、人が駆け回る気配がする。
「降りて！フレイ。人が集まって車じゃ動けない。ここからすぐ離れるんだ」
キラとフレイが車から降りると、既に周りは人の海となり、身動きが取れない状態だった。
「キラ…一体、何が起こったの？」
「分からない…けど、ここにいちゃ危険だ。すぐ離れよう」
キラはフレイの手を取ると歩き始めたが、すぐに動けなくなった。
「くそっ、何だってこんな…」
「キラ！」
二人の近くで、再び爆発の閃光が走った。
- 702 名前： 火サスノリで行ってみようか １７ 投稿日： 2003/06/07(土) 21:56
- アスランとイザークがオーブに到着して最初に聞いたニュースは、先夜オーブ政庁前で爆発があったと言う事だった。
「全く…何だってんだ、これで使節を迎えるなんて、呆れるぜ」
本当に呆れ返ったように吐き捨てたのはイザークだ。尤も、彼の怒りも当然だ。
プラントの未来の為に一番大事なこの時に、こんな事が起こるのは、言語道断と言うべきなのだ。
「どうするアスラン？こんなんじゃ、使節どころじゃないだろ」
「…とりあえず、本国とは連絡を取る。我々は、予定通りにオーブの閣僚と会見するさ」
「そんなのんきな事で良いのか？次は何があるか…」
「これで友好関係が中断したら、それこそ思う壺だろ。また昔に戻りたいのか？」
「そりゃ…」
アスランの言葉に、イザークは言葉を失った。プラントの立場は、アスランの言った通りなのだ。
国力の疲弊したプラントに、もう一度戦う余力など無い。
何が何でも今度の使節団訪問を成功させねばならないのだ。
（どうやら、キラと会うのは先延ばしになるかも知れないな…）
アスランは準備に追われながら、そう思っていた。
- 703 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/08(日) 01:10
- >>698
ジェシカとフレイ様、お互いに心を許してる友達って感じでいいね。
ミリィとはこういう会話はないだろうし、ちょっと新鮮だｗ
>>701-702
記憶を失っているフレイ様の周りで起きる数々の事件。
謎が謎を呼び、恐怖が闇にこだまする…。
いやあ、続きが激しく気になります〜。
- 704 名前： 火サスノリで行ってみようか １８ 投稿日： 2003/06/08(日) 04:26
- 「キラは？キラはどうだ！？大丈夫なのか！」
血相を変えたカガリが医師に詰め寄っている。その剣幕に多少押されながらも、医師の言葉は冷静だった。
「キラ・ヤマトさんについては、多少打撲している程度です。幸い爆風の直撃からは避けられたようですな」
その言葉にほっとした表情を浮かべたカガリだが、次の言葉を聞いて顔色を変えた。
「問題は連れの方の方でして……」
「フレイが…？フレイがどうしたっ！？」
「どうやら頭部を強打しているようで…まだ意識が戻っていないのです」
！！？
病室のフレイは見た目にはそれ程怪我をしている、と言う様子ではなかった。
ただ、安らかな寝息を立てているだけだ。…少なくとも、カガリにはそう見えた。
「…いつ意識が戻るのか、というのは分かりません。今のところ、容態は安定していますが…」
カガリの後ろで事務的に説明する医師に、「後を頼む」と言うのが精一杯だった。
「キラ…」
キラにかける言葉が見つけられず、珍しくカガリは狼狽した。
「…」
キラは無言だった。今しがた、フレイについて聞いたばかりなのだ。
「キラ、大丈夫だ。すぐにフレイは…」
そこまで言って、カガリはキラの涙を見た。
「何で、また…」
そこまで搾り出すと、キラは声を出さぬように嗚咽して、カガリは部屋の外に出た。
「何て事を考えてたんだ、私は…！」
フレイの容態を聞いたほんの一瞬、カガリは、このままフレイが意識を取り戻さなければ良い、と思ったのだ。
ブルーコスモスの存在。
キラを含めた全てを消し去ろうとしたフレイ。
いっそ、このまま眠り姫でいてもらった方が…！
しかし、キラはそれら全てを飲み込んで、泣いていた。
…！？
カガリが振り返ると、廊下からサイが走りこんでくるのが見えた。
「キラは？…フレイはどうなんだ！？」
カガリはそれに口では答えず、指で部屋を指すと、サイが走りこむのも見ずに病院を後にした。
- 705 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/08(日) 06:16
- >>704
乙カレー
記憶が戻りそうな悪寒。
早く続きが読みてー。
- 706 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/08(日) 09:26
- >>704
乙フレー。
続きがすごい気になります。
やっぱり記憶が戻っちゃうのかな…。
- 707 名前： フレイ様の大天使日記・１０ 投稿日： 2003/06/08(日) 09:34
- □月◆日 晴れ
今、キラの部屋でこれを書いてる。
きれいだし、広いし、私たちしかいない。落ちつく。
別にはじめて泊まるわけでもないけど、何だか違って感じる。
昨日、キラが部屋を飛び出して、私は途方に暮れて、どうしたらい
いかわからなくて。でも、ベットルームには帰りたくなかったから
艦内をうろうろしてた。
消灯時間が過ぎても展望デッキにいた。
外は明かりもなくて、塗りつぶしたように真っ黒で、ぽつぽつとた
き火らしい光だけが忘れ物のみたいに灯ってた。
人のいるところはイヤだった。息が詰まりそう。
そしたらキラが来て、はち合わせた。
泣いてた、と思う。
ほんと、よく泣く子だ。隠してたけど今さらだ。
黙ってたら、先にキラが「ごめん」って謝った。
だから、許してあげた。
どうしたのって訊いてきたから、「部屋に帰りたくない」って答え
たら、キラにもどうしてだか判ったらしい。
部屋にしばらく居ればいいって言ってくれた。
男の子の部屋に普通に泊まるって、なんだか照れてしまう。
でも、ここの方がずっと落ちつく。
久しぶりにゆっくり眠って、朝は一緒に食堂に行った。荷物も取っ
てきた。キラの言うようにしばらく居させてもらうことにしよう。
ちょっと気にかかる。艦長とかうるさくないんだろうか。
何とかするって軽く言ってたけど。
キラは少し落ちついたみたいだ。
ストライクにも閉じこもらなくなった。
なんだか、優しい。
同日
部屋のこと、何とかなったらしい。
フラガ少佐に頼んだそうだ。艦長と仲がいいからって言ってた。
そういうものらしい。私も憶えておこう。
最近は艦内が落ちついてきて、私も主計課の仕事を色々とするよう
になった。主計班長は丸顔のおじさんで、人はいいけど根性は悪そ
う。顔はなんだかチワワに似てる。キラに話したら少し笑った。
この子が普通に笑うところ、そういえば近頃見てない。
ヘリオの頃は気にしなかったからよく憶えてないけど、たしか普通
に笑ってたように思う。
キラっておかしな子だ。
ときどき人付き合いが上手かったりする。そのくせ不器用で、辛い
くせに我慢して、一人で泣いて。
おかしくて馬鹿で。たぶん、損な子。
今日はひさしぶりにゆっくりお化粧できた。
じばらくしてなかったし、知らない銘柄だから不安だったけど、キ
ラは似合うっていってくれた。
少しほっとした。
- 708 名前： フレイ様の大天使日記・１１ 投稿日： 2003/06/08(日) 09:35
- □月＆日
サイはまだ独房にいる。
今顔を合わせても、たぶん私だって何を言えばいいのかわからない
と思う。私のこと、サイは気がついたはずなのに、キラには何も話
してないみたい。どこまで気がついたんだろう。
でも、今さら諦めたり止めたりできない。
早く戦争が終わればいい。
サイのことがあってから、キラも皆に避けられてる。
一緒に食堂にいったらミリとトールが先客にいた。お互い気まずく
て、離れて座って何もしゃべらない。
黙っいるだけで空気が重い。イヤになる。
トールは時々私たちの方へ、ちらちらと視線を走らせる。ミリと聞
こえないような声で何か話してた。目が合いそうになると、今度は
キラの方がそっぽを向く。
キラはひとりぼっちだ。
普通に仲良さそうに見えたのに、結局この子は独りっきりだ。
いつも美味しくない食事だけど、今日は特に味がしなかった。
明日からは時間をずらして来ることにしよう。
□月％日
何もかも火がついたみたいに騒がしい。
明後日の出撃が決定した。砂漠の虎とかいうザフトの部隊と決着を
つけるんだって艦長から説明があった。アークエンジェル全体が風
船みたいに張りつめてる。誰も彼もがそわそわしてる。
たくさんの物資が搬入されて、私も朝から目が回るくらい忙しかっ
た。こんなに働いたのはヘリオの学園祭の時以来。艦の人もゲリラ
の人も全員総出でやってるのに夜になっても終わらない。
主計班長に訊ねたら人手が足りないとぼやいてた。
アークエンジェルは員数不足で、元々今の４倍くらいの人数が乗る
予定だったらしい。考えてみれば空き部屋がたくさんある。
キラはブリーフィングにいったきり、夕食の時間になっても帰って
こなかった。
最近、キラの様子がおかしい。
ずっと何か悩んでるくせに何も言わない。
キラは優しい。前よりずっと。
でも、笑わない。
私といても。
今日からキラのベットで一緒に眠ることに決めた。
キラは戦わなくちゃいけないから。
私を守って、あいつらをやっつけなくちゃいけないから。
- 709 名前： フレイ様の大天使日記・１２ 投稿日： 2003/06/08(日) 09:36
- □月キ日
戦闘が続いてる。さっき大きく艦が揺れた。
第一戦闘配置なので、私はキラの部屋でこれを書いてる。
モニターで外の様子がわかる。時々爆発が映る。画面にノイズが走
って何秒か消えたりもする。すごく激しい戦闘みたい。たぶん、今
までで一番。
ついストライクを探してしまうけど、目が回るほど速くて一瞬しか
見えない。戦ってるキラは、よくわからないけどすごく強い。
あいつらを、みんなやっつけてくれてる。
でも。
きっと泣いてるんだろう。
帰ってきたらまた泣くのかも知れない。
あの子、馬鹿だから。
同日
キラは泣かなかった。
大丈夫だよっていって、私に笑った。
戦いには勝った。
もう爆発の音も聞こえない。船も揺れない。みんな疲れ果てて、廊
下に倒れるみたいにして寝てる人もいる。艦内の空気がまるで別の
場所みたいに緩んでる。
さっきデッキまでキラを迎えにあがったら、砂漠の何とかをやっつ
けたって整備の人たちが祝杯をあげてた。すごく有名なザフトのや
つだったらしい。キラがやっつけたそうだ。
キラは嬉しそうな整備の人にもみくちゃにされてた。
すごく疲れてる様子なのに、律儀に愛想をふりまいてた。
キラは泣かなかった。
大丈夫だよっていって、私に笑った。
嘘つき。
涙の痕があった。こっそり泣いてたくせに。ひとりぼっちで泣いて
たくせに。作り笑いしかできないくせに笑って。
何とか部屋まで連れて帰ったらそのままベットに倒れ込んで、今度
みたらもう眠ってた。
キラは泣かなかった。
でも、私を守って、あいつらをやっつけた。
なんだか今日は疲れた。
これを書き終えたら、キラの隣で朝まで眠ろうと思う。
- 710 名前： フレイ様の大天使日記・１３ 投稿日： 2003/06/08(日) 09:36
- □月＠日
夜。ゲリラの人たちが葬式をしてた。
昨日の戦闘や今までの戦闘で死んだ人たちを送ってるんだそうだ。
遠くから見てた。
空には星があった。
地球に下りてから、落ちついて空を見あげたことなんてなかった。
砂をまいたみたいな、ヘリオからは見えなかった星の空。あのどこ
かにパパがいるんだと思った。
全然信じられない。宇宙港で地球に向かうパパを見送ったのがパパ
を直接見た最後で、あの事件の一週間前にパパからかかってきた電
話がパパの声を聞いた最後だなんて。
ちっとも現実感がない。この宇宙のどこにもパパがいないって、ど
ういうことなのか判らない。
明日になったらパパが私を迎えにきてくれる気がする。
本当にそう思う。
サイが帰ってきてから皆とはいよいよ気まずくなった。
ほとんどしゃべらないし、あまり近寄っても来ないし。
最近は、キラがいつも一緒にいる。
この子は、私がいないとひとりぼっちだから。ひとりぼっちの私よ
り、ずっとひとりぼっちなキラ・ヤマト。
本当、可哀想な子。
- 711 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/08(日) 09:38
- ２２話冒頭まで終了〜。
このあたりは予想以上に難しかったでつ。時間かかったし。
たぶん、海編〜オーブ編あたりはさらに難しいはず。
持ち帰りのあとはタイトルどうしようｗ
- 712 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/08(日) 09:58
- >>707-710
乙フレ〜
どんどん孤立していくフレイ様とキラ（ ´Д⊂ヽ・ﾟ・
キラ部屋に移るのに兄貴を使うとはｗ
これからは猪突猛進カガリが出てくるから楽しみです。
頑張ってください。
作品の性質上、変える必要がある場合を除き、
タイトルは特に変える必要は無いと思います。
- 713 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/08(日) 10:55
- >>711
激しく乙フレイ様。
つたない字で一生懸命日記を綴る等身大のフレイ様が目に浮かぶようです。
- 714 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/08(日) 17:36
- やば・・・・・・面白いとか言ったら怒られるかもしれないけど、
本編で描ききれない日常が保管されてる様で、
読むのが楽しみでつ。続きがんがってください。
- 715 名前： 火サスノリで行ってみようか １９ 投稿日： 2003/06/08(日) 23:44
- キラが戦死した、と思った、あの瞬間、私の中の全てが崩壊してしまったのかも知れない。
謂わばブルーコスモスのスパイとしてアークエンジェルに戻って…そして、またキラと出会っても、
感情が激しく動く事は無かった。どうしてだか、分からない。
唯、コーディネーターが憎い、と言う感情だけが微かに蠢いている。
もしかしたら、あの瞬間、キラと一緒に私も死んでしまったのかも知れない。
そして、今の私は生きる屍。
若しくは、他人を全て不幸にして、何一つ出来なかった、生きるに値しない存在。
スパイと言っても、今の私に何が出来るのか、皆目見当がつかない。
しかし、そんな一種の頼りなさが、逆にこの船の人間には警戒心を抱かれない、という利点があるのかも知れない。
私は定期的に、暗号化された簡単な文章（としか思えない）を送る。今のところ、誰にも気づかれていない。
呆れたことだが、それだけ私の存在が軽く見られているという事なのかも知れない。
向こうからの指令は、恐ろしい事に、堂々と送られてくる。
恐らくオーブの内部にも、私のような内通者がいて、手引きしているのは間違いない。
そして私は、「所定時間にアーク・エンジェルの位置を連絡するように」との指示を受けたのだ。
その頃、連合上層部では新兵器『サイクロプス�供戮亮太鐡蠧�に向けた準備が進められていた。
地上で絶大な効果を挙げた『サイクロプス』を、宇宙でも使えるように改良し、一種の移動砲台にしたものである。
しかし、地上より桁違いに広大な宇宙の戦闘空域をカバーするのは『サイクロプス�供戮噺世┐標住�点では不可能であり、
正確なターゲットを絞る必要があった。つまりそれは、常に敵艦隊の中心にいる艦、アーク・エンジェル。
「全く献身的ですよ彼女は。ブルーコスモスの鏡、と言うべきでしょうな」
「お陰で、『サイクロプス�供戮亮太鐡蠧�も上手くいきそうですな」
「地上と違って、宇宙ですから…あくまで試験段階であることをお忘れなく」
「その辺りは了解している。しかし、位置を知らせてそこをターゲットに放射する、と言うのは少々酷ではないかね？」
「彼女一人の献身的な犠牲のお陰で、我々は最大の戦果を挙げる事が出来ます。さらに、これをプラントに向けて使えば…」
「一気にコーディネーターを殲滅する事が出来るというわけだな」
「彼女はこの事を知っているのかね？つまり、『サイクロプス�供戮鮖箸�事を？」
「まさか…しかし、知っていて敢えて身を捧げた事にすれば、宣伝効果は絶大でありましょう？」
「ハハ、そうだな」
宇宙の暗闇がこんなに空虚で、人を寂しくさせるなんて知らなかった。
もう、本当に私は一人ぼっちになってしまったんだと、嫌でも時間させられる。
また、砲撃の振動が襲った。
この空域で、コーディネーターとオーブが、連合と戦っている。
私の任務…それは、アーク・エンジェルの位置を内部から知らせる…これまでに無い任務だ。
ニュートロン・ジャマーが満ちた空間ではレーザー通信を使うしかないのだが、先ず間違いなく発覚するだろう。
それはつまり、私がスパイである事がばれても構わない作戦という事だ。
何か、とんでも無い事をやる気なんだ。
でも、もうどうなっても良い。何もかも、終わらせたい…そして、コーディネーターを道連れにできるのなら。
- 716 名前： 火サス書いてる人 投稿日： 2003/06/08(日) 23:47
- あぁーサイクロプスがあんなグロい兵器だったとは・・・(;´Д`)
当初の構想がとんでもない事になってしまう。
もう変更しないけど。
はっきり言って、コロニーレーザーとかあれ系想像してたんだが…
- 717 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/08(日) 23:53
- >>715-716乙フレ〜
やっぱフレイ様、酸っぱいなのねぇ〜（ ´Д⊂ヽ・ﾟ・
位置知らせてるということは、フレイ様の身にも危機が・・・
確かに、サイクロプスはグロすぎた。
次お待ちしております。
- 718 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/09(月) 00:39
- >>717
乙フレです。
フレイ様の空白の記憶が蘇って来ているのでしょうか・・・・
これから起こる事を想像するともう････
続き、楽しみにしてます。
- 719 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/09(月) 13:40
- 大天使日記乙フレー
本編とこれを楽しみにしてまつ。
これからの展開を考えるだけで泣ける（ ´Д⊂
なんだかキラのことが好きになってきたw
- 720 名前： とある街角のバーで ２ 投稿日： 2003/06/09(月) 15:18
- ーよろしければ、お話しいただけますか。
「私ねぇ、戦争前は、結構なお嬢様だったのよ。
父が地球連合の役人で、そこそこ偉くて。
あら、信じてないわね。」
ーいいえ。
「まあ、いいわ。
素敵な父だったわ…。私の誇りだった。
私ね、小さいころから父と二人暮らしだったから、完全なファザコン。
でも…
その父が、私の目の前で戦死してしまって…。」
ーそれは…、お気の毒です。
「ほんと、そのときは、自分が世界で一番不幸だと思ってたわ。
馬鹿みたい。戦争だもの、ありふれた話。
でも、あのころの私には、そんな周りのことなんか、見えなかった。
父を殺したコーディネーターに、絶対復讐してやるっ、てね。
あっ…、気分を悪くしたらごめんなさい。
もしかしたら、あなたも、その…」
ーお気遣いなく。
「マスターがそうなんだから、たぶん…、と。」
ーはい。
「だから、あなたの前では言いにくいんだけど…
私、その後、地球軍に志願したのよ。」
ー軍…ですか。
「そう、軍。軍人。笑っちゃうでしょう。
15、16の苦労知らずの小娘が、軍に入ったって、何ができるわけもない。
父が死んで、勢いで志願しただけだから、まともに訓練を受けたこともなくって。
ただの雑用係。
だから、言い訳っぽいけど、人に向かって発砲したことはないのよ。
ああ…、正確に言えば…、１回だけ…。でもまあ、当たらなかったし。」
ー…戦争ですから。
「父が死んだときに、私、子供の頭で、一生懸命考えた。
どうやったら、父のかたきが討てるかって。
私を大事に守り育ててくれていた父を失ったとき、私には何も残ってなかった。
私が自分一人でできることは、本当に何にもなかったの。
私は、無力だった…。
でもね、私のできることが、一つだけあったの。
その船には、コーディネーターの男の子が乗ってたのよ。」
- 721 名前： とある街角のバーで ３ 投稿日： 2003/06/09(月) 15:20
- ー地球軍の軍艦に…、ですか。
「そう。
最初は、彼も私も、難民としてたまたま乗ったのよ。その後いろいろあって…。
ともかく、その子は、コーディネーターだったから、子供なのに、武器を一番上手に扱えちゃうのよ。
私とは別世界。
それでね、何とかこの子を使って、パパのかたきをとるぞ、って。」
ー…その子に、自分の同胞が撃てますか。
「そうね。普通はできないわね。
でも…、私は、彼が私に気があるのを知ってた。
だから、彼に見せつけるように、私は軍に志願して…、船に残り…、
それから…
…彼と一夜を共にしたわ。
…はしたない話だけど、私に残されたものは、自分自身しかなかったから。
彼は、私を守るって約束してくれて、軍人になったの。」
…軽蔑したでしょう。」
ーいえ…。
「ふふ、顔が引きつってるわよ。
彼はね、それは素晴らしい活躍をしてくれたわ。
私の狙い通り、パパのかたき、ザフト軍を次々とやっつけて。
軍人として、これ以上ない才能を見せた。
周りの人は、彼の戦果に拍手喝采。
…でも…、私は知ってた。
彼は軍人には全然向いてない人だってこと。
彼は、戦って、敵…て言っても彼の同胞なんだけど。
敵を殺すたびに、一人で泣いて…、泣きじゃくって…。
彼は軍人になるには、余りにも優し過ぎたのね。
そんな彼に、私ができたのは、ただ身体を重ねることだけだった。
けど、そうすると、彼は私を守るために、同胞を殺して、また泣くの。」
ーあなたの前でだけ、本当の顔を見せていたのでしょう。
「たぶん、そう。
だけど、私は自分の本当の顔を、彼に見せられない。
そんな関係が長続きするわけもなくって。
結局、私は彼に振られたわ。
こんな間違った関係は、もう止めよう、って…。」
ー…彼は分かっていたんですか。
「たぶんそう。
いつからか…、もしかしたら、最初からだったかもしれない。
私は彼を利用しているつもりだったけど、結局は独り相撲。
馬鹿な話。
でも、もっと馬鹿なのは、自分自身のこと。
自分の気持ちすら捕まえられないのに、人の気持ちを支配できるはずがないわ。
私ね、彼から振られたとき、はっきり分かったの。」
ー彼のことが…
「…好きだった。
ちょっと小柄なところも…、変な服装の趣味も…、すぐに泣きじゃくるところも。
下手くそなキス…、不器用な愛撫…、
彼のことは全部。」
- 722 名前： とある街角のバーで ４ 投稿日： 2003/06/09(月) 15:22
- ーやり直せなかったのですね。
「当然。
私は酷いことをしたの。
今さら許してもらおうとは思わなかった。
ただね、一言、ごめんなさいって。
…ごめんなさいって、それだけを言いたかった…。
でも、次に戦闘に出たとき、彼はそのまま帰ってこなくて…
…
私が彼を…
…
…」
ーどうぞ。
「…
ありがとう。
もう、お化粧ボロボロ。
ハンカチに着けちゃった。」
ー今日は、もしかしたら…
「そう。
彼が戦闘中行方不明になった日。
そして…
私が、彼を、殺した日。」
ー…
…そうむやみに、ご自分を責めるものではないですよ。
「でもね、私が彼にできることは、こうやって毎年、彼のことを思いだして、
自分を罰することだけなの。」
ー戦争が終わってもう１０年です。
あなたは十分に、罰を受けたと思います。
それに、彼は、彼の守るべきもののために、戦ったんです。
それは、必ずしも、あなた個人ではないと思います。
彼は、自分の意思で、自分の守るべきもののために戦い、散ったんです。
自分も軍にいましたから、分かります。地球軍でも、ザフトでも。
彼の死を、あなたに利用されたがままの犠牲と考えることは、
彼の死を冒涜することになりはしませんか。
…
…失礼いたしました。言葉が過ぎました。
「いいえ…
…ありがとう。
…
…そうかもしれない。
彼は私のために死んだって、私がそう思いたいだけなのかもしれない。
私ね、先代のマスターがコーディネーターだと分かったとき、何故だか、ちょっと嬉しかったの。
戦争が終わっても、周りにそんな人いなかったし。
彼と違って、ごつごつのオッサンだったけど、でも、私を助けてくれたときの身のこなしをみたら、
何だか少し、ね。」
ーそれで毎年、今日、というわけですか。
「そう、それで毎年。
…
ああ、なんだか今日はしゃべり過ぎね。のど乾いちゃった。」
- 723 名前： とある街角のバーで ５ 投稿日： 2003/06/09(月) 15:26
- ーもう１杯、お出ししましょうか。
「そうね…、でも、スポーツドリンクはもういらない。
決めたわ。
おいしいカクテルを頂戴。」
ーお酒、お飲みになるのですね。
「女一人で生きてきたのよ。人間、必要となれば、すぐに飲めるようになるわ。
でも、毎年、今日だけは、飲まないようにしようって。
今日は罰を受ける日だから。
スポーツドリンクはね、死んだ彼が、よく私に運んでくれてたの。ストロー付きの蓋をして。
軍艦だから、そんなものしかなかったのよ。
先代に助けてもらったときに、お礼に何か注文しなきゃって焦ったら、
何故だかそんな思い出が蘇ってきて、思わず言っちゃったのよ。
まったく、バーで大人の女が注文するものじゃないわよね。
…でも、先代は、黙って用意してくれた。」
ーこっそり私を買いに走らせましたけど。
「え、そうだったの…。そうよねえ。
でも、今日はあなたと話して、思い切りができたから、この店で初めてお酒を飲むわ。」
ーどうぞ。
「…はあ〜、美味しい。
私ね、決めたわ。木星に行くって。
今日はその前祝い。」
ー木星って…、まさか、木星ヘリウム開拓団に志願されるんですか。
「そう。ずっと悩んでたんだけど。
何もできない、何も持たない、ただ流されて生きてきた私も、そろそろ、自分自身の力で、
誇りを持てることをしたいかなって。
30才以下の壮健な若者限定、任期１０年の開拓団、さすがに志願する女性が殆どいなくて、
困ってるみたいなのよ。」
ー確かに、戦後復興で不足するエネルギーを開拓する一大事業ですから、
誇るべき任務でしょうが…、しかし…。
「私が志願するのは事務部門だから、特殊な技能はいらないの。
要はやる気があれば、誰でもいいってこと。
でも、数百人規模の開拓団で、女が殆どいないってことは…
いい男、よりどりみどりじゃない。
これはチャンスよ。」
ーそうですか。
「そうよ。
…それに、もう１０年。
後ろを向いて生きるのは、お終いにする。
きっと、彼も、そう望んでいると、思えるようになったから。」
ーそうですか。
お客様の戦争が、ようやく終わるのですね。
「…そうね。
そうかもしれない。」
- 724 名前： 蛇足 〜とある街角の酒屋の娘の独白 投稿日： 2003/06/09(月) 15:26
- 父がお酒を卸しているお店の経営者は、おじさん、おばさんばかりだ。
しかし、珍しく、若い男が一人いる。先代が急死して、後を継いだらしい。
そして、彼は、たぶん、私の恋人だと思う。
彼に言わせると、初対面で彼を怖がらなかった若い女は、私が初めてだった。
それはそうだ。
私は、遺伝的な原因で、生まれたときから目が見えないのだから。
目が見えない私は、初対面の時、彼の空気を感じただけだ。
強がっているけれど、繊細な。背伸びをしても、つま先がぷるぷる震えていて。
若い女が彼を怖がる原因ははっきりしているのだが、彼はそれを取り除こうとしない。
私には、その理由が何となく分かる。
彼は、たぶん優秀な軍人だった。そして、戦争をしていた。
口に出すのも憚られる行為に及ぶこともあっただろう。
彼は、自分の過去の痕跡を消さないことで、自分を罰しているのだ。
私が初めて彼の顔に触れたとき、彼は、強張った声で、怖いだろうと問うた。
私は、むしろ安心すると応えた。
だって、こんなに大きな傷痕があれば、あなたを他の誰とも間違いようがないから。
私は、傷痕に、そっと唇を付けた。
彼は、その日初めて、私の前で泣いた。
- 725 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/09(月) 20:19
- フレイさま・・・。
そして、この傷の残る若いマスターは・・・遺作？！
うあ゛ぁあ ･ﾟ･(´Д⊂ヽ･ﾟ･ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
- 726 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/09(月) 20:32
- 酒屋の娘さん、エルたん、ってことはないよな？ｗ
- 727 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/09(月) 21:22
- 乙です。
こりゃまた新たな神の出現とは。
予想外に盛況ですな、このスレどこまで伸びるのかｗ
- 728 名前： 火サスノリで行ってみようか ２０ 投稿日： 2003/06/09(月) 22:18
- 突然上がった後退命令の信号弾に、連合のパイロット達は一様に驚いたが、命令に従わない訳にはいかない。
「何だぁ？こんな時に後退？」
「艦隊に何かあったのか？」
「とにかく、後退だ！フレアーを発射しつつ、後退しろ！」
連合の大部分の兵士は、この空域で何が起ころうとしているのか、知らされてはいない。
「おかしいです。敵が後退していきます！」
「……！？」
トノムラの報告にマリューは首を傾げた。
混戦状態ではあるが、こちらが一方的に押しているという訳でもない。敵が後退する理由は無い。
「敵MS部隊は？」
「同じです。徐々に後退します！いや、フリーダムの空域はまだです！依然、敵MSと交戦中！」
一瞬、マリューは迷った。敵の後退に何かを感じたのだ。勘を信じる事が、生き延びる事につながる場合もある。
その時、モニターに信じられないものが表示された。コンピューターグラフイックではあるが、戦慄させるには十分だった。
「何だ？…巨大なエネルギー源を補足！大きい、これは艦艇やMSなんかじゃありません！直径約6�辧�」
表示された姿を見て、ブリッジの全員が言葉を失った。
「何！？…あれ…」
例えて言うなら、宇宙に咲いた巨大な黒いランの花。花びらを思わせる５つの構造体。
その構造体に、蛸の触手のようにパラボラが配列されている。
「まさか…サイクロプス！？」
マリューが口に出した言葉に皆凍りついた。アラスカでの凄惨な威力をまざまざと思い出した。
「どうします！艦長！後退しますか！？」
ノイマンの殆ど悲鳴のような声。あれがこの艦隊に向けられたら…マリューは思わず身震いした。
「フリーダム、ジャスティスに連絡！今すぐに！」
今から後退しても、恐らくあれから完全に逃れることは出来ない。
ならば、ジャスティスとフリーダムの機動力・火力に賭けるしかない。そう判断したのだ。
「僚艦にはすぐに散開するよう、退避命令！急いで！」
「ジャスティス、フリーダムはサイクロプスに直進！破壊して！」
マリューの絶叫がこだまし、ミリアリアはキラとアスランを呼び出していた。
- 729 名前： 火サスノリで行ってみようか ２１ 投稿日： 2003/06/09(月) 22:19
- 「くっ…サイクロプスか！」
キラとアスランは、ミリアリアからの通信を聞いて戦慄した。
アラスカの惨状が脳裏をよぎる。
破壊しなければならない。あんなものを、再び使わせてはならない！！
だが、両機の前には、敵MS、MAが壁となって立ちはだかっていた。
「お前達もやられるぞ！どくんだ！」
アスランの絶叫も、敵機に届くはずはない。
「こいつらを仕留めずに退却なんて、出来るものか！」
カラミティのビームが至近距離をかすめ、ジャスティスのコクピットに激震が走る。
二人はカラミティ、フォビドゥン、レイダーの三機が作り出す壁を突破出来ずにいた。
時間が無い。焦りと苛立ちがつのっていく。
その時、一本のビームがレイダーに向かって伸び、直撃を受けてレイダーは後退した。
「クッ…何だっ！どこからだ！」
次の瞬間、絡み合う五機の上方から、機影が滑り込んできた。
「…ここは俺たちがやる！早く行け！」
「フラガ少佐！」
ストライクが飛び込み、やや遅れてデュエルとバスターが突入してきた。
「いつまでそんなのと遊んでるんだ！さっさと行くんだよ！」
「イザーク…」
ストライクとデュエルが三機を挟み込むように展開し、中央のバスターと共に持てる火力の全てを放出する。
凄まじい火線が開き、巻き込まれた連合のMAが爆発の火球を咲かせた。
「こいつらの足止め位はしてやるぜ！…っとぉ！」
バスターはカラミティの狙撃をかわすと、更に反撃に転じた。
「ディアッカ……すまない！」
敵が注意をそらした隙に、ジャスティスは最大戦速で一気に突破して『サイクロプス�供戮妨�かい、フリーダムもそれに続いた。
「アッ…逃がすか！」
「お前の相手は俺だあぁ！」
後を追おうとしたフォビドゥンだが、デュエルの攻撃でそのタイミングを失った。
その時、アーク・エンジェルから、光の糸が伸びた。それは、全てを破滅へと繋ぐ糸だった。
- 730 名前： 火サスノリで行ってみようか ２２ 投稿日： 2003/06/09(月) 22:20
- 「…？艦内から光通信の回線が開いています！誰なんだ！」
チャンドラが思わず叫んだ。咄嗟には何が起こったか分からず、マリューは唖然とする。
「艦内から…？！すぐに通信室をチェック！何処に発信されたか調べて！」
マリューは命令を下しながら、一体何が起こったのかを考えていた。
戦闘時に光回線を使うなど、よほどの緊急事態か、馬鹿でない限りあり得ないのだ。
「…回線は前方、敵艦隊に向けられています！」
今度こそ本物の悲鳴だった。これでは自分が何処にいるのか、教えてやっているようなものではないか！
「警備兵！通信室を封鎖！場合によっては、銃火器の使用を許可します！」
受話器に向かって叫ぶマリューを、惚けたような表情で見つめるサイとミリアリア。
何が起こっているのか理解できていないようだ。
マリューは艦内に内通者がいる可能性を一瞬たりとも考えなかった自分に腹を立てていたが、
今はサイクロプスの照射から身をかわす方が先決なのだ。
「ジャスティスとフリーダムの状況は！」
内通者があろうと無かろうと、今は２機のMSに全てを託すしかない、と、マリューは覚悟を決めた。
- 731 名前： 火サス書いてる人 投稿日： 2003/06/09(月) 22:24
- この辺りはホントは軽く流したいんだが…
このSSでは既に過去の話だし。
しかし、飛ばす訳にもいかんしなぁ…
- 732 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/09(月) 22:27
- >>731
乙フレ！！
フレイ様、次回が痛々しそうだな・・・・
次、楽しみにしてます。
- 733 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/10(火) 11:47
- >696-698
遅レスだが、おつ〜。そろそろ真相に迫ってきた感じですね。
ジェシカとフレイ様の友情がいいっす。
本編では女性キャラ同士の交友がほとんど見られないので、余計嬉しい。
ジェシカがこんなキャラで、生き延びてオーブ編とかで
フレイ様と再会してくれたら良かったのになぁ…(´Д⊂
- 734 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/10(火) 11:55
- >701,>702,>704,>715,>716,>728-731
乙！このシリーズでのキラとフレイ様の関係の描き方はホントツボだ。
あと、カガリとキラの関係もいいですな。
それにしても、そうか…こういうパターンなら、
キラが生きてるって知っても状況が好転しない可能性もあるんだよな。
本編ではどうかそうならないように…。
次回は修羅場でしょうか。楽しみにしとります。
- 735 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/10(火) 12:02
- >707-711
おつふれ。
前のほうで誰かも言ってたけど、
本当に本編補完のような気持ちで楽しませてもらってます。
キラへの心情の変化とか、やっぱり受け入れられない父の死とか、
サイやヘリオ組への態度とか、すごくよく描写されてて（・∀・）ｲｲ
- 736 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/10(火) 12:10
- >720-724
続きｷﾀ━━━━（ﾟ∀ﾟ）━━━━!!!!!!
カウンターを挟んで語り合う姿が目に浮かぶようです。
10年も引っ張るのはつらかったでしょうが、
どうか木星では幸せを掴んで下さいますように…(‐人‐)ﾅﾑﾅﾑ
- 737 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/10(火) 19:25
- SS投下されてる方々にちょっと聞きたいんですが、書いてる時のBGMとか何か聴いてますか？
書くのに苦戦してるんだけど、良いBGMを聞きながら書くと上手くいくかなーと…
あるいはインスパイアされたアニメとか小説とか。
- 738 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/10(火) 20:21
- >>737
定番だけど、種のＣＤ。
特にＩＮＶＯＫＥとＢＥＬＩＥＶＥは戦闘シーン書くときにお世話になるｗ
- 739 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/10(火) 20:35
- >>737
See-Saw のＣＤ。
ハックあたりの奴はことに良いの多いし。
- 740 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/10(火) 22:59
- >>737
ＲＰＧのサントラ聞きながら書いていたけど、最近は無音。
現在はコミケ原稿に追われてＳＳはお預け。ネタはいくつかあるけど。
インスパイア？
あれはＳＳ戦車隊から。避難民の先頭に立って奮戦、撃破されたティーガーが元ネタです。
フレイ様がその戦車隊の指揮官だったら…と思いまして。
- 741 名前： 火サスノリで行ってみようか ２３ 投稿日： 2003/06/10(火) 23:06
- 「フレイ・アルスター……？」
マリューは警備兵からの報告を聞いて思わず聞き返した。
それ程意外…いや予想外だったのだ。
たった１５の子供が。
しかも、彼女はプラントとオーブが同盟を結んだ際にザフトから戻されたのだ。
それが連合の内通者？
マリューの胸に無数の疑問が浮かんだ。が、今はそれに構っている時間は無い。
「総員、宇宙服着用！…分かりました。アルスター二等兵は独房に入れておいて。戦闘が終わり次第、尋問します！」
マリューにミスがあるとすれば、サイに聞こえるような声でその命令を出した事だ。
「なっ…フレイが！？」
「あっ、待ちなさい、アーガイル二等兵！」
シートから離れたサイを止めようとしたマリューだが、あっという間にサイはブリッジから走り出ていた。
警備兵に囲まれたフレイは、特に抵抗する様子も見せなかった。むしろ、進んで拘束されたようにすら見えた。
「フレイ！」
「…サイ…」
サイには、フレイはもう違う何かに見えた。奇妙に力の無い目。
（本当に、フレイなのか…？）
「フレイ、何で…こんな事…」
フレイは答えなかった。答えても、無意味に思えた。
もう、自分とサイが、何かを伝え合えるとは思えなかったからだ。
「待てよ！」
サイは警備兵の制止を振り切ってフレイの前に回り、その肩を掴んだ。
フレイは、人形のように無抵抗だった。これだけ力は入っていないのに立っているのが不思議なほどだ。
「どうしたんだよ…フレイ…どうしちゃったんだよ…」
サイの瞳を見たら、本当に砂の様に崩れ落ちそうで、フレイは目を伏せた。
「フレイ！」
「…わからないの」
目の前にいるサイですら、ようやく聞き取れる声だった。
「もう、どうなってるのか、わからないの。…私が、わからないのよ！」
- 742 名前： 火サスノリで行ってみようか ２４ 投稿日： 2003/06/10(火) 23:06
- 「フレイ…」
サイはフレイの方を掴んだ力を緩めた。このままフレイを粉々にしてしまいそうな気がしたからだ。
「私…パパが死んで…悔しくて…許せなかった。でも、寂しかった。何も出来ない私…だから…」
息も絶えだえで言葉を継ぐフレイに、サイも警備兵も無言で立ち尽くす。
「キラを利用して仇を討とうって…コーディネーターなんかみんな…死んでしまえって…でも、出来なかった…」
「私には、出来なかった、出来なかったのよ！可哀想なキラ…私に利用されたキラ…優しかったキラ…」
果たしてフレイは、自分の頬を伝うものに気づいているのだろうか。
もう、フレイの言葉は誰に向けられたものでもない。自分自身に向かって叫んでいる。
「私…誰かを憎んで憎んで、憎みきれるほど、強くなかった…だから…」
「だから…？」
「だから、私、誰の所にも戻れないのよ！みんなを傷つけて…サイも…キラも…みんな…」
「なら、せめて、パパの所へ行こうって…思ったのよ！」
フレイの言葉をフレイ自身が理解出来たのかどうか、誰にも分からない。
唯、その言葉に応える資格は、誰にも無いという事だけは分かった。
「フレイ…宇宙服を着るんだ…今は戦闘中で…危険だから…」
警備兵がサイを押しのける様にして、宇宙服を手にしたフレイを独房へと連れて行った。
サイはそれを見つめて、フレイの影が見えなくなると、ブリッジに戻っていった。
- 743 名前： 火サスノリで行ってみようか ２５ 投稿日： 2003/06/10(火) 23:07
- 「位置表示来ました！予定通りです」
地球連合艦隊旗艦のブリッジに緊張した声が走る。
「全く、よくやってくれる…」
サザーランドは思わず笑みを浮かべていた。
「『サイクロプス�供戮両伴佑泙任△箸匹琉未�かるか！」
「焦点を固定して照射まで、後、１０分はかかります！」
「遅い！５分でやれ！」
そう命令を下しながら、彼は沸き上がる興奮を抑えるのに苦労していた。
（これが成功すれば、我らがブルーコスモスの理想を実現するのも、そう難しくはない。プラントの連中を一気に始末する事も可能だ…）
実際には、地球連合とは言え彼のように急進的な者は極一部に過ぎない。しかし、照射を成功させる事は、連合内部の穏健派に対する恫喝にもなろう。
逆に言えば、この作戦を成功させない限り、急進派の未来が明るいとは言えないのだ。
サザーランドにとっても賭けであり、必死だった。
「……！？ 急速接近する機影２！我が軍のものではありません！」
「…来たか！MS隊を前に出せ！『サイクロプス�供戮剖瓩鼎韻襪福⊂伴佑泙濃�たせろ！」
数十機のMSが展開して火線を開いたが、２機はそれを無視した。
「な…何だこいつら、速すぎる！」
一気にMS部隊の壁を突破する。彼らがナチュラルであったなら、あるいはGで身体が潰れていたかも知れない。
既にジャスティス、フリーダム共に機体が悲鳴をあげはじめていた。
「もっと速く、速く！」
キラの目の前が赤くなり、そして暗くなる。生まれて初めて体験するブラックアウト。
骨がきしみ、筋肉が歪んで捻れるような感覚。
しかし、自分の身体に構ってはいられなかった。
『サイクロプス�供戮�その偉容を誇示するように、二人の前に迫ってくる。
「ダメです。MSの防衛ラインを突破されました！」
「…艦隊を正面に出せ！焦点付近にいなければどうと言うことは無い、何が何でも食い止めろ！」
更に濃密な弾幕が２機を襲う。今度は回避運動を取らざるを得ない。
「くそっ、ここまで来て…」
「キラ！お前は行くんだ！！」
「…！？…アスラン！」
キラが反応する間もなく、ジャスティスが艦隊のど真ん中に突っ込んでいく。
火球が開き、数瞬、艦隊の中にぽっかりと空間が開いた。
「俺が引きつける！早く！」
「アスラン…」
キラはフリーダムを翻すと、その空間に飛び込み、敵艦隊を突破しようとする。
フリーダムを追尾しようとした艦が、ジャスティスのビームを受けて爆散した。
その凄まじい爆発の光を隠れ蓑にするようにすり抜けて、フリーダムは『サイクロプス�供戮妨�かう。
遮るものは、もういなかった。
- 744 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/10(火) 23:09
- >>737
俺はVガンのサントラを主に聞きながら書きます。
特に2枚目がお気に入りで、無限ループ状態。
後は映画のサントラとか。
- 745 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/11(水) 12:32
- >741-743
おつふれ〜。静かに重い修羅場でしたな。
あんな風に言われちゃ、サイもフレイ様を責めきれなかろう…。
とりあえず、キラ、急いでくれｗ
- 746 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/11(水) 14:32
- >744
Ｖガンのサントラは最高だと、漏れも思うよ。千住明の音楽は素敵すぎる。
機会があったら、今度は岩代太郎あたりにガンダムの曲を書いて欲しい。
- 747 名前： 火サス 投稿日： 2003/06/12(木) 00:46
- 一応過去どこに投下したかまとめておこう。
…自分でももう分からなくなってて困るからｗ
>>422>>430>>434>>477>>481
>>482>>501>>508>>542>>602
>>638>>646>>666-667>>691
>>701-702>>704>>715>>728
>>729-730>>741-743
バラバラ過ぎるな。スレ汚しになるし、今後は書き溜めてからにしよう。
>>746
ガンダムに限らず、何かアニメの音楽やって欲しいですね。
- 748 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/12(木) 03:38
- >746
千住明氏も岩代太郎氏も、映画やドラマの曲では有名だからねぇ。
千住氏だと「家なき子」や「映像の20世紀」、岩代氏は「氷の世界」「アナザヘヴン」にNHKの
大河ドラマあたりが有名か。
個人的には光田康典氏あたりを希望ｗ
- 749 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/12(木) 09:08
- >747
少しずつでいいから毎日新作が読みたいとワガママを提言してみるw
いや、でもホント楽しみにしてるんだ。
- 750 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/12(木) 10:54
- >>749
同意。
毎日いつ投下されるか楽しみにしてまつ。
- 751 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/12(木) 14:53
- age
- 752 名前： 火サスノリで行ってみようか ２６ 投稿日： 2003/06/13(金) 07:13
- フリーダムのレール砲が発射されて巨大な爆発が起こると、『サイクロプス�供戮硫屬咾蕕琉譴弔牢�にその原型を失いつつあった。
元々、移動砲台の概念で設計された上に、急遽実戦投入されたものである。構造的には脆弱と言って良い代物だった。
アスランはフリーダムが『サイクロプス�供戮房茲衂佞い燭里魍稜Г垢襪函▲献礇好謄�スを駆って艦隊を突破しようとする。
圧倒的な機動力と火力の前に、連合は為す術がない。
「ここまで来て…何もしないで終われるか！…コントロールルーム！」
サザーランドは諦めてはいなかった。或いは、理想を阻まれる事に錯乱していたのかも知れない。
「何としても一射しろ！ザフトとオーブの艦隊を殲滅するのだ！」
「しかし、既に照射基が一基崩壊しています！エネルギー充填もまだです！これでは予定の出力の半分も…」
「撃てれば良い！このまま…」
サザーランドの言葉はそこで途切れた。目の前にジャスティスの機影。
対空砲火をくぐり抜けたジャスティスのビームライフルが艦橋を直撃し、艦橋はサザーランドもろとも消失した。
ジャスティスはその爆発の横をパスすると、フリーダムと並んで『サイクロプス�供戮帽況發魍�始する。
更に一基、花びらが崩壊した。
しかし、『サイクロプス�供戮話破�魔の叫びのような不気味な振動を始めていた。
「熱源発生！サイクロプスが…照射されます！」
『サイクロプス�供戮�ら照射された熱線は、空間を不気味に歪めてオーブ・ザフト艦隊を襲う。
「面舵一杯、回避！！全員、対ショック姿勢！」
マリューの叫び声と共にアーク・エンジェルは急速転回を開始し、艦内を激震が襲う。
独房内で宇宙服を着たフレイも、その振動で投げ飛ばされ、天井と床の間を往復した。
「…クッソオォォ！」
キラとアスランは照射を阻止出来なかった事に絶望的に叫んでいた。
しかし、『サイクロプス�供戮肋播世鮓把蠅靴�れておらず、またフリーダムとジャスティスの攻撃で既に半壊していた。
盲撃ちである。熱線はオーブ・ザフト艦隊を直撃はしなかったが、それでも熱線に近かった何隻かの艦が爆発した。
アーク・エンジェルの船体も、熱線の余波を受けて損傷した。
「……右舷エンジン損傷！速力30％ダウン！」
トノムラの報告は深刻だが、どこか安堵感があった。ひとまず『サイクロプス�供戮旅況發枠鬚韻蕕譴燭里澄�
「安心しないで！対空360度監視！」
マリューはそう命令しながらも、胸を撫で下ろしていた。最悪の事態は避けられたと思った。その瞬間、
「…！ 艦長！左舷10時から味方艦の残骸が突っ込んできます！」
『サイクロプス�供戮旅況發杷�発した艦の破片が、慣性で突っ込んできたのだ。
回避運動を取ろうにも、損傷したアーク・エンジェルにそんな余力はなかった。
「…接触する！全員、耐ショック姿勢！」
ブリッジに戻る途中だったサイは、突然横殴りの暴風のような衝撃を受けて、壁に身体を叩きつけられていた。
- 753 名前： 火サスノリで行ってみようか ２７ 投稿日： 2003/06/13(金) 07:14
- オーブ・ザフト艦隊の所へ戻ってきたキラとアスランの目に飛び込んできたものは、残骸が食い込み大きく傷口を開けているアーク・エンジェルと、救助活動をしているオーブの艦艇の姿だった。間に合わなかったか、という苦い思いが二人の胸を締め付けたが、今は落ち込むより救助活動をする方が先だと思い直して、機体を近づけていく。
「…？」
キラは、宇宙の暗闇に何かが流れているのを発見した。
カメラを最大望遠にして、宇宙服だと確認すると、フリーダムをそれに寄せていった。
「…フレイ！？」
キラはコクピットから外に出ると、宇宙服を抱きかかえた。
ヘルメットのスピーカーから、フレイの呼吸音が聞こえていた。
外傷は無いように見えたが、宇宙服の中がどうなっているかなど、脱がせてみない限りは分からないのだ。
キラはフレイをフリーダムのコクピットに入れようとした。
その時、フレイの両手が、キラのヘルメットを包むようにさし伸ばされた。
「フレイ！？」
「キラ…私…」
「喋らないで。どこか、怪我をしてるかも知れない」
「…私…キラに、謝らないと…」
「フレイ…」
フレイの手がキラのヘルメットを包んで、キラは、それが温かく感じるのは何故なんだろうと不思議だった。
「キラ…」
フレイの言葉は、そこで途切れた。
- 754 名前： 火サスノリで行ってみようか ２８ 投稿日： 2003/06/13(金) 07:14
- ……
カガリはもぬけの空になっているベッドに凝然としていた。
フレイがいなくなっているとの報告が入って病院に駆けつけたのだ。
「フレイを捜すんだ！」と命令しながら、これが何を意味しているのかを考えていた。
彼女の身体はまだ十分に回復したとは言えない。果たして何処に行ったのか。何か理由があるはずだ。
まさか、記憶が戻ったのか？
その可能性に思い当たって、今更ながら、厳重に監視をしておけば良かったと後悔する。
ブルーコスモスの活動が活発化しているこの時期に、フレイが何処に行ったのか分からないというのは憂慮すべき事なのだ。
キラの様子も心配だった。遅かれ早かれ気づかれるのだが、キラに知らせる勇気は、カガリにはまだ無かった。
その日の深夜、アスランとイザークは、オーブ政庁での会議から帰る車中にいた。
「全く、いつまで会議が続くかと思ったぜ。しかし、蒸し暑いな」
地球の気候に慣れていないイザークは、ネクタイを緩めてぼやいた。
「プラント市民の代表も来るんだ。何かあったら取り返しがつかない。当然の事さ」
爆発事件で、オーブとの打ち合わせは神経質なものにならざるを得ない。二人とも疲れていた。
その時、二人の乗った車の前に人影を見て、運転手は急ハンドルを切った。
「…な、なんだ！」車から飛び出した二人は、倒れているフレイを発見していた。
二人はとりあえずフレイを寝かせた後、部屋の入り口には警備を立たせておいた。
「アスラン、あの女は、クルーゼと一緒にいた女だ。なんでこんな所にいるのかは知らないが…」
イザークは古い記憶を辿っていた。裏切り者と一緒にいた女への警戒心は隠しようがない。
「そうか…ブルーコスモスなのか？」
「多分な…フン、目が覚めたら本人から聞けば良いことだ」
「厄介な事になったな…」
アスランは弱音を吐くような男ではないが、この時ばかりはため息をついた。
「どうする？オーブに引き渡すか？」
「そうしたいが…目が覚めるのを待ってからだな。聞きたい事もあるだろう？」
イザークはフン、と口を歪めて薄く笑った。アスランはこのイザークの笑い方だけは好きになれない。
しかし、オーブ側に無用なトラブルの種を持ち込みたくないし、ブルーコスモスの情報を得たいという思惑もある。
とりあえず、二人はフレイが目を覚ますまで待つ事にした。
- 755 名前： 火サスノリで行ってみようか ２９ 投稿日： 2003/06/13(金) 07:15
- 「何で教えてくれなかったんだ！」
カガリとサイに詰め寄るキラに、二人は答える術が無い。
「すまない…朝、見回りに来た時はもういなかったと…」
そんなカガリの言葉は、キラの耳には届いていない。
キラはしばらく黙っていたが、部屋の外に出ようとした。
「待てよ、キラ」
サイはキラの腕を掴んだ。目に鋭い光が宿っていた。
振り返ったキラの視線とぶつかり合う。一瞬、何とも言えない重い空気が立ち込めた。
「…サイ、離してくれ」
振りほどこうとしたが、サイは渾身の力で握りしめていた。
「今は…やめるんだ、キラ。フレイを、これ以上…」
「これ以上？」
「フレイは、苦しんでるんだ…」
サイの言葉は静かだったが、キラは沈黙した。
「多分、フレイはあの時に戻ったんだよ。アーク・エンジェルにいた時に。」
「でも、キラ、フレイはお前とここで過ごした時間を忘れた訳じゃない…。今お前の姿を見たら、フレイはどうかなってしまう。フレイを捜すのはオーブに任せるんだ」
その言葉に、カガリは弾かれたように相づちを打った。
「必ず捜し出すから…キラ、少し、フレイに時間をあげてやってくれ」
キラは俯いたまま、黙るしかなかった。
- 756 名前： 火サスノリで行ってみようか ３０ 投稿日： 2003/06/13(金) 07:15
- フレイが目を開けると、草花の天井画で彩られた部屋だった。
決して大きくはないが、暖かいベッドに寝かせられている自分に気づいて、しばし呆然とする。
「ここは…一体…？」
ドアが開くと、アスランとイザーク、そして警備と思われる男が一人、入ってきた。
「気が付いたか」
「あ、貴方達は…」
アスランの顔は知らなかったが、イザークの方は見覚えがあった。かつてザフトにいた頃、一度か二度、見た事があったのだ。と言う事は…
「ここは…ザフトなの？」
「…ここは、プラント大使館だ。君が倒れているのを見つけて、ここまで運んだ」
アスランは心持ち、探るような用心深い声色で答えた。彼にとって、フレイは未知の存在なのだ。
イザークは鋭い視線をフレイに投げつけたまま黙っている。その視線に射すくめられて、フレイは不安になった。
「君が何故あそこに倒れていたのかを知りたい。一体何があったんだ？」
この場合、一気に話を進めた方が良いとアスランは判断し、言葉を続ける。
「君は戦争中ザフトで、クルーゼという男と一緒にいたな？」
フレイの脳裏に、再びあの時の記憶が映像のように甦る。思わずカバーを抱きかかえて身体を丸くした。震えが止まらない。
思い出していたのだ。一緒に暮らしてきたキラが、コーディネーターだった事を−！
「自白剤を使うか？」
イザークがアスランに耳打ちしたが、アスランはそれには答えず外に出た。
「…甘いぞアスラン。あの女の反応は普通じゃない。絶対に何か知っている」
イザークの言い分は正しいのだが、アスランにはどこか心に引っかかるものがある。
「落ち着いてから、もう一度聞こう。警備は万全にするんだ」
アスランはそう命令していた。
- 757 名前： 火サス 投稿日： 2003/06/13(金) 07:19
- 仕事行く前に投下しとく。
…ありゃ、所々改行に失敗してるよ(;´Д`)
- 758 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/13(金) 12:36
- >>752-756
久々に続編ｷﾀ━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━ !!!!!
遺作、フレイ様に自白剤を使おうと考えるとは何て奴だ！
そんなお前はこうだ！
（ ﾟДﾟ);y=━(#｀/Д´)･∵.ﾀｰﾝ
y=ｰ( ﾟДﾟ)･∵. ﾀｰﾝ
- 759 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/13(金) 12:44
- >752-757
乙〜。ああ、やっぱり大惨事だよフレイ様･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･｡
アスランたちとこんな風に絡むとは思ってませんでしたなぁ。
考える時間をちゃんともらえればいいんだが…。
- 760 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/13(金) 23:37
- >752-757
乙。今回も楽しませてもらいました。
ところで回想にカズイ様の名前が無いのは
すでにカズイ様はＡＡを降りられたという設定
だからなのでしょうか？
- 761 名前： 暗闇の後には･･･�� 投稿日： 2003/06/14(土) 22:27
- 前回 >>696-697
気がつくと私はジェシカに抱きしめられていた。
そっと････優しい抱擁。
「何にそんなに怯えているのかは分からないけど･･･」
「私はフレイの味方よ。どうしようもない所もあるけど、」
「････ジェシカ････」
ジェシカを見上げた。
私を見てジェシカは微笑む････
でもすぐにたしなめる様な表情に変わった。
「でも、直したらいいと思うところがあれば私は注意するわ。それがフレイのためだもの。
辛くてもしっかり前を見て。後ろばっかり見てたんじゃ話しにならないわ。」
「ジェシカ････私･･･私･････」
「あ〜〜つべこべ言わない！
私が付いててあげるって言ってるんだからあんたはさっさと更正しなさい！」
「････なによそれ、まるで私が悪者みたいじゃない。」
「だってそうじゃない。」
ジェシカは今度は悪戯そうな表情を浮かべた、私は多分不満気な表情を浮かべているのだろう。
そんなお互いを見て私たちは、ささやかに笑い合った。
私にもまだ助けてくれる人がいる、少し気が楽になった気がした。
「ありがとう、ジェシカ･･･」
「あんまり私に頼りすぎんじゃないわよ。」
「うん････でも、聞いて欲しい事があるの」
だから、私は話し始めた。キラ・ヤマトと私との間にあった出来事を････
「つまりフレイはサイというものがありながら、キラって子に惚れて付き合ってたけど振られてしまった。
で、フレイは忘れようと思ったが忘れられずにいたのに、そいつは違う女と歩いてたってこと？」
「別に私はキラなんか････」
「ハイハイ････」
「ちょっと、ちゃんと聞きなさいよ！」
ジェシカは何か考えているような仕草をしながらウンウンと頷いている。
でもあまりに曲解すぎているのはどうにかならないだろうか、まったく････
「でアンタはこれからどうしたいの？ よりを戻したい？ 相手の女しめる？ それとも諦める？」
「だから！！ ････もういい。」
ジェシカの言い様はともかく、私はどうしたいのだろうか････
･････････分からない････ただ、
「････私はもう一度だけ話がしたい、ちゃんと･･･」
「そう････」
「じゃあとりあえず行きましょうか！」
そう言うとジェシカは手を差し出してきた。
「！？ ジェシカ、あの････まだ心の準備が･･･」
「思い立ったが吉よ！ でもまずは件の女のところね！」
「えぇ！？何で？ どこをどうやったらそうなるのよ！」
「だって、今はその子と一緒にいるんでしょ？ 会いに行くには一番近道だって！
一応筋道も立てて敵に宣戦布告するのも兼ねてさぁ〜♪」
「宣戦布告って！ちょっと！離してったら！」
ジェシカの思考回路は理解できない。
如何こうしているうちに、ジェシカは私を無理矢理立たされた。
そしてどんどん引っ張られていき、玄関口までやって来た。
ふと、ジェシカの呟きが聞こえてくる。
「燃える展開だわ････」
「ジェシカ！？あんた自分が楽しむためにそんなこと言ってるんでしょ！」
「そんな訳無いじゃない♪」
「絶対ウソッ！」
「いいからいいから♪」
「･･････まったく････」
････ジェシカをちょっとでも信じた私が馬鹿だったかも････
でも確かにあの子にももう一度会っておかなくてはいけない、この間のことは確かめなければ････。
さすがにキラ自身に聞く勇気はない。
そして、キラ･････私は･･････
- 762 名前： 暗後作者 投稿日： 2003/06/14(土) 22:32
- 気が付けば週刊化・・・・
もうちょっと早くまとめたいのですが・・・・中々上手くいかないものです。
フレイ様ちょっと立ち直り、上手く描けなくて･･･
直したらいいと思われる所あったら是非ご教授下さい。
次回、ｖｓラクス戦 スレ汚しで申し訳ないですがよろしくお願いします。
- 763 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/14(土) 22:47
- >>761-762
そんなことないですよ。
私のAAも週刊ですｗ
今日は回想以外フレイ様出ていなかったので、
かなり(´･ω･`)だったので、今は(`･ω･´)ですｗ
vsラクス戦 かなり期待しております。
フレイ様の返事に凄まじいカウンターを放つ歌姫をｗ
- 764 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/14(土) 23:09
- >761-762
おつふれ〜。ジェシカのキャラが本当に（・∀・）ｲｲ!!
平時ならばフレイ様と楽しそうに戯れていたんでしょうなぁ…。
ラクスとの会話、楽しみにしとります。
- 765 名前： 火サスノリで行ってみようか ３１ 投稿日： 2003/06/15(日) 20:45
- フレイが病院を抜け出したのは、もうキラに会わせる顔が無いと思ったからだ。
オーブで暮らしたキラとの生活が、今のフレイには却って罪悪感を募らせる。
「なんて事してたんだろう、私…」
一言で言えば、そういう事だ。
かと言って、再びブルーコスモスへ身を投じる事も出来ない。
二人で暮らした暖かさが、父を失った寂しさと、コーディネーターへの憎しみまで溶かしてしまったようだ。
そして、衰弱した身体と意識で倒れたのを、アスラン達に助けられた、という訳だ。
コーディネーターのキラの所から離れようとして、コーディネーターに助けられる…
フレイは、何とも皮肉な自分の巡り合わせ…運命というものにため息をついた。
これからどうするのか、どうなるのか、フレイには見当がつかない。
イザークの冷たい視線が甦る。事情を知っている者にとっては、自分は許し難い存在であるに違いない。
もし復讐されるのなら、それもまた運命なのかも知れない。それだけの事を犯してしまったのだから。
天井画を見つめながら、フレイは諦めに似た無力感に捕らわれていた。
その頃、アスランはプラント政府にこれまでの経過報告を行っていた。
「…はい、オーブ政府は万全の警備体制で出迎えると…しかし、先日も爆発騒ぎがあり、予断を許さない状況です」
「ブルーコスモスの過激派が潜伏しているのは間違いないでしょう。オーブも摘発を急いでいますが、今のところは…」
報告を行いながら、アスランは気分が沈んでくるのを抑えられなかった。
コーディネーターが自分達の力で暮らしていこうとしているだけなのに、何故こうも障害が多いのだろう？
自分達の子供や孫の世代になっても、この状態が続くかも知れないと言う予感を振り切りたいと思った。
「キラ…お前は、どうしているんだ？今を、どう思っているんだ？」
アスランは、しばらくは会えそうにない友人に心の中で問い掛けていた。
- 766 名前： 火サスノリで行ってみようか ３２ 投稿日： 2003/06/15(日) 20:46
- フレイに朝食を運んできた警備の男は、フレイに対して露骨に警戒と不信の目を光らせていたが、
フレイはそれに耐えなければならない。
ここは、フレイにとって最も招かれざる場所なのだ。
アスランが入ってきた時も、フレイは殆ど食事に手をつけていなかった。
「どうした？あまり口に合わなかったか？」
一晩経って少し落ち着いた様子のフレイに、アスランは少し安心する。
クルーゼと一緒にいたというのが事実だとしても、戦争は終わっていて、クルーゼも既に亡い。
過去の事なのだ。そう思いたかった。
「昨日は性急だったな。済まなかった…」
アスランの言葉に、フレイは俯いた顔を僅かに上げた。
「君が何者なのか…プラントとしては関心がある。しかし、今はもっと大事な事があるんだ。
プラントが…コーディネーターが人として生きていく為にな」
人として…生きる…
フレイの中を、キラの顔がよぎった。
「昨日、君が何故あそこに倒れていたのか…それだけでも、話してくれないか？」
アスランはフレイの様子で、「少なくとも現在は」ブルーコスモスではないと判断していたが、
だからと言ってこのまま帰す訳にもいかない。それではイザーク達が納得しないだろう。
フレイは自分の此処での立場を理解している。問答無用の扱いを受けてもおかしくないのだ。
キラと過ごした時間に嘘をつきたくない。キラが私を許してくれたのかどうかは、分からない。
でも、キラが私に注いでくれたものに応える為に、私は、過去にけじめをつけないといけない。私は…
- 767 名前： 火サスノリで行ってみようか ３３ 投稿日： 2003/06/15(日) 20:46
- 「キラ・ヤマト…！？」
アスランはあまりにも意外な人の名前が出た事に言葉を失った。
どういう巡り合わせなのか、アスランは混乱した。
しかも、プラントの怒りを買うような事をわざわざ話しているのだ。この女、何を考えている？
しかし、フレイの話を信用するのなら、有り得ない事ではない。連合にいた頃キラと知り合ったのだろう。
罠ではないかとも思うが、そんな態度にも見えない。
すぐには感情が整理できそうにない。
彼女がブルーコスモスのスパイだった事を、イザークが聞いたら何と言うだろうか。
イザークがこの場にいなかったのは幸運だった。
そして、オーブがフレイの事を知っていてここに住まわせているのなら、今の彼女に危険性は無い事になる。
が、事実かどうか、確証は無い。オーブやキラに連絡を取るべきかどうか、アスランも判断に迷う所だった。
取り合えず、フレイはまだ動ける状態ではないし、動けるようになるまでは、ここに置いておくべきかも知れない。
「分かった。君を今後どうするかについては、プラント、オーブが話し合った上で決めるだろう。
君は…本来なら法廷に出ないといけない身だ」
威嚇になってしまうかも知れないとは思ったが、アスランはそう言うしかない。
フレイは全てを話し終えて、アスランが部屋の外に出ると目を閉じてベッドに身を埋めた。
話した結果がどうなっても、もう良いのだ。
これまでの報いを、受けなければならない。そうでなければ、キラに顔向け出来ない。
だから、キラ以外のコーディネーターに、全て話した。
キラの名前を聞いたアスランが動揺していたのには、気づかなかった。
とにかく今は、休みたい…
- 768 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/15(日) 21:05
- >>765-767
乙フレイ〜
フレイ様一体どうなっちゃうのよ(*´Д｀)ﾊｩﾊｩ
- 769 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/15(日) 22:22
- >765-767
乙！
一気に緊迫してきましたな…今までも十分張り詰めていましたが。
フレイ様はもちろん、この後のキラやアスランの動向にも注目したく。
つか、イザークが…どうなんだ…。
- 770 名前： FEネタで（誰かわかるかな？） 投稿日： 2003/06/15(日) 23:50
- キラ「フレイ フレイってば！
フレイ「あっ キラ？」
キラ「どうしたの ボーッとして
フレイらしくない
ここは戦場だよ
気を抜いたら危険だ
フレイ「ええ ごめんなさい
キラ「一体 どうしたの？
フレイ「・・・ずいぶん遠くにきたなって
キラ「遠く？
フレイ「あ 土地の話ではないの
『状況』って言うのかしら・・・
わたしのまわり全てが ね
・・・キラ ヘリオポリスに
留学に来た時のことを 覚えている？
キラ「うん もちろん
２年・・・いや ３年前になるかな
フレイ「あの時は キラのお父様も
わたしのパパも 元気で
ヘリオポリスの地も 大きな戦争なんて
おこる気配もなかったわ・・・
不思議ね
もう十年以上も前の気がするわ
キラ「フレイ
フレイ「フフフ・・・
わたし バカみたいね
どんなに思い出しても
あの頃には 戻れないのに・・・
- 771 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/15(日) 23:56
- >>770
誰と誰の会話だっけ？
どうしても思い出せない…。
- 772 名前： もひとつ 投稿日： 2003/06/15(日) 23:59
- フレイ「キラ この前は ごめんなさい
キラ「この前？
フレイ「わたし 昔を思い出して
感傷にひたってた時があったでしょう？
戦争になったんだもの
まわりが変わるのは 当たり前なのに・・・
キラ「でも 変わってないことだってあるよ
フレイ「変わらないこと？
キラ「ぼくが フレイの側にいること
フレイが ぼくの側にいること
フレイ「えっ・・・
キラ「昔に戻ることは できないけど
新しい未来は作っていける
だったら 前を向いて歩こうよ
昔と同じ いや それ以上の
未来を作るために さ
フレイ「・・・クスッ
キラ「？
フレイ「クスクスクス・・・
キラ 格好つけすぎよ
キラ「そ そうかな やっぱり
実は 自分でも言ってて なんか
似合わないなって ハハ・・・
フレイ「でも・・・
キラ「えっ？
フレイ「でも うれしかった キラの言葉
キラ「フレイ・・・
フレイ「キラ わたしたち
ずっと いっしょよね
これからも ずっと・・・
キラ「・・・当たり前じゃないか
- 773 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/16(月) 00:49
- ロイとリリーナ？
- 774 名前： 本スレにも書いたけど 投稿日： 2003/06/16(月) 00:51
- 【フレイ】
キラ、何してるの？
【キラ】
何してるって、
戦ってるのに決まってるだろ
フレイは気楽でいいな
【フレイ】
まっ、ごあいさつね！
【キラ】
ほらっ、またすぐふくれる
そんなことだからきみは･･･
【フレイ】
可愛げがないって言いたいのでしょ
悪かったわねっ
【キラ】
ちがうよ、誤解されるって言いたいのさ
フレイは可愛いよ、
ぼくの大事な人だもの
【フレイ】
キ、キラ･･･、やめてよ！
【キラ】
フレイ、ぼく達、一緒になろうよ
この戦争が終わったら
オーブに帰って一緒にくらそう
【フレイ】
キラ･･･本気なのね･･･
うん、うれしい･･･ありがとう･･･
- 775 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/16(月) 01:26
- アーサーとフィーか(ﾟ∀ﾟ)
- 776 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/17(火) 02:34
- 王道カプｷﾀ━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━!!!!
- 777 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/17(火) 18:17
- （戻らなきゃ。戻らなきゃ。
あそこにいたって、何が出来るわけじゃない。
戦争は、怖い。足が震える。耳を覆いたくなる。
キラがいないのに。キラがいなくて、
わたしを守ってくれるものはもう無いのに。
でも、戻らなきゃ。
アークエンジェル、私の…
ただひとつの、居場所。
あそこにいなければいけない理由が、ある気がするの）
- 778 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/17(火) 18:20
- >>777
･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･｡
- 779 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/17(火) 18:34
- 33話フレイ様
サイに言われたことばが、頭の中ぐるぐる回ってる。
怖い顔、してた。はじめて見た。あんな顔。
すごく怒って、私が泣いてもやさしくなくて。
サイがもうやさしくない。私にやさしくない。
いつだって、いつだってやさしかったのに。
なんでかは、なんとなく分かる。
サイにひどい事した。あんな風に言っても、今さらなんだ。
でもサイは許してくれると思った。
私のしてること、分かってると思っていた。
ぜんぶ無かったことにしたい。
ぜんぶぜんぶ。私がしてきたこと。ぜんぶ。
きみはキラが好きなんだよと、サイは言った。
そんな事ない。キラはコーディネーターなんだ。
わたしがコーディネーターを好きになる筈ない。
サイのかんちがいだ。そんなの嘘に決まってる。
だってキラがやさしいからって。
キラがやさしくて、だから泣いたり、我慢したりしてたからって。
だからって、だからって、好きになるはずない。
なのに、涙がとまらない。
なんで泣いてるんだろう。
サイがやさしくないからだ。ミリィがわかってくれないからだ。
わたしがひとりぼっちだからだ。
そんなはずない。キラなんてだいっきらい。
守るっていったのに、まだまだなのに。
後でって、言ったのに。
勝手に死んで。いなくなっちゃって。
嘘つき。
だいっきらい。
- 780 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/17(火) 18:47
- ｡･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･｡ｳｴｴｪｪﾝ
- 781 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/17(火) 22:25
- ひとりぼっちのフレイ様･ﾟ･(つДT)･ﾟ･｡
- 782 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/17(火) 22:27
- フレイ様・・・うあ゛ぁあ ･ﾟ･(´Д⊂ヽ･ﾟ･ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
- 783 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/17(火) 23:53
- フレイ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！｡･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･｡
涙が止まりません。誰かフレイ様を幸せにしてくれ。絶対に幸せにしてくれ。
- 784 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/18(水) 12:06
- おまいらの涙が、やがて大きな流れとなって、
フレイ様の船を幸せの地へ導くはずだ…
- 785 名前： 鬱ＥＮＤ1 投稿日： 2003/06/18(水) 14:49
- フレイとキラが再会、抱き合うふたり・・・
次の瞬間フレイがたんから様へ変貌、ありえない笑みを浮かべるフレイ。
腹部を押さえて血の海に倒れるキラ・・・
その様子を笑いながら見下ろすフレイ｡
銃を取り出しキラに向ける。
「コーディネイターなんて、みんな死んでしまえばいいのよ」
笑みを浮かべてキラを見下ろすフレイ。
止めの一発を撃とうと、引き金に指をかける。
その時、キラが最期の力を振り絞って声を出した。
「……フレイ、今まで迎えにこれなくて…ごめん…。
フレイが、幸せになるなら……僕は……」
キラは最後まで言えず、事切れた。
フレイは硬直していた。
強張った笑みを貼り付けたまま。
やっとのことで、言葉を搾り出す。
「キラ。貴方はやっぱり馬鹿よ。
私は貴方を戦わせて、コーディネイターを皆殺しにしようとしたのよ。
それなのに、こんな私を救おうとするなんて…」
- 786 名前： 鬱ＥＮＤ2 投稿日： 2003/06/18(水) 14:49
- 嘲るような口調。だが、頬を一筋の涙が伝わる。
しばらく立ちすくんでいたフレイだが、やがて彼女は意を決したように座り込んだ。
動かなくなったキラの頭を幼子の様に抱きかかえる。動かした弾みでキラの血がフレイに飛んだ。
フレイは頬にかかった血を気にする様子もない。
「…ごめんね、キラ。
貴方は馬鹿。本当に馬鹿。
コーディネイターもナチュラルも、みんな許せない。でも、一番許せないのはこの私。
なのに、なんで貴方はそうなの？なぜ私を許すの？」
苦痛に歪んでいたキラの表情は、既に安らかなものに変わっていた。
僅かに開き、一筋の血が垂れる唇。それに、フレイは自分の唇を重ねた。
もし、この光景を見るものがいたとすれば、陶器の様な白い肌、それに飛び散ったキラの血、そしてたなびく鮮血のような赤い髪との対比に一瞬で眼を奪われ硬直するに違いなかった。
「さよなら、キラ。
死後の世界があるか、私にはわからない。
もしあるなら、貴方には会えない。だって私は地獄行きだもの。
でもね、キラ………」
フレイの声が涙に震えた。
繊細な手に収まった不釣合いに重く光る銃をとりあげ、自分の赤い髪にあてる。
「……もし、神様が奇跡をくれたら。
もう一度、キラに会えたら………
私…………」
通路に銃声が響き、消えた。
<<ＥＤ曲。あんなに一緒だったのに〜>>
- 787 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/18(水) 14:50
- 本スレより移動。多少加筆修正。
- 788 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/18(水) 16:42
- うあ゛ぁあ ･ﾟ･(´Д⊂ヽ･ﾟ･ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
- 789 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/18(水) 17:03
- （ノД｀）
- 790 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/18(水) 18:47
- ･ﾟ･(´Д⊂ヽ･ﾟ･ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
- 791 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/18(水) 20:52
- おまいら泣きすぎｗ
うあ゛ぁあ ･ﾟ･（´Д⊂ヽ･ﾟ･ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
- 792 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/18(水) 22:32
- ｡･ﾟ･(ﾉД`)･ﾟ･｡
- 793 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/18(水) 22:45
- 泣いてちゃ駄目だ！泣いてちゃ駄目なんだYO!
うあ゛ぁあ ･ﾟ･(´Д⊂ヽ･ﾟ･ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
- 794 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/18(水) 22:46
- 何か、異様な雰囲気になってるな･･･
うあ゛ぁあ ･ﾟ･（´Д⊂ヽ･ﾟ･ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
- 795 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/18(水) 23:27
- 大丈夫。こんな展開は無いさ。フレイ様は幸せな笑顔を見せてくれるはず……
なのに、何でこんなに不安なんだろう……
うあ゛ぁあ ･ﾟ･（´Д⊂ヽ･ﾟ･ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
- 796 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/18(水) 23:54
- 誰かこの不安をかき消してくれ！
うあ゛ぁあ ･ﾟ･（´Д⊂ヽ･ﾟ･ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
- 797 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/19(木) 00:11
- 頼む！フレイ様に幸せに！幸せにしてやってくれ！！
うあ゛ぁあ ･ﾟ･（´Д⊂ヽ･ﾟ･ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
- 798 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/19(木) 00:14
- 大丈夫。二人は天国で幸せに……
うあ゛ぁあ ･ﾟ･（´Д⊂ヽ･ﾟ･ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
- 799 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/19(木) 00:21
- 俺までもらい泣き・・・
うあ゛ぁあ ･ﾟ･（´Д⊂ヽ･ﾟ･ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
- 800 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/19(木) 00:40
- ここは「キラのように泣くスレ」ですか？
UA゛aA ･ﾟ･（´Д⊂ヽ･ﾟ･ A゛aAa゛AAaaUA゛aA゛AA
- 801 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/19(木) 01:09
- フレイ様が幸せにならないと、俺も幸せになれないんだ！
うあ゛ぁあ ･ﾟ･（´Д⊂ヽ･ﾟ･ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
- 802 名前： 火サスノリで行ってみようか ３４ 投稿日： 2003/06/19(木) 01:14
- ラクス達プラントの使節団を乗せたシャトルは、オーブを目指して飛行していた。
「ディアッカ、お子さんのご様子はどうですか？」
「おかげ様で、元気ですよ。やんちゃでね、一体どっちに似たんだか…」
「奥さんは留守番ですか？」
「二人目が来月だからな。来たがってたけど、我慢してもらったよ」
そんな他愛ない会話をしながらも、頭の中はアスランからの報告でいっぱいだった。
使節団の安全を確保する重責を担っているのだから無理は無い。
「まったく、こんな時期に地球に降下するってのが無茶なんだよな…」
しかし、これ以上待てないタイミングだと言うのも分かっていた。
「しかし、プラントにもナチュラルの移住を認める法案が提出されるってのは、本当ですか？」
「オーブに住んでるコーディネーターもいるんだ、認めない訳にもいかないだろ？尤も、住みたがる物好きがいるかどうか…」
「でも、ディアッカの奥さんはナチュラルなんでしょ？」
「あれは特例中の特例、例外だよ…」
そこまで言って、彼らはラクスの視線に気づくと慌てて話題を変えた。
「地球、どんな所なんでしょう？初めてなんですよ」
「そうだったかい？俺も、戦争中しかいなかったからなぁ…」
そんな彼らの話を聞きながら、ディアッカは地球に降りる前の最後の眠りに入ろうとしていた。
どうせ、地球に降りたら寝る間も無いほど忙しくなる。
シャトル内に大気圏突入のアナウンスが流れ、振動が激しくなってきた。
これを抜ければ、蒼い地球だ。
- 803 名前： 火サスノリで行ってみようか ３５ 投稿日： 2003/06/19(木) 01:14
- オーブの空港でプラントの使節団を出迎えたアスラン達は、オーブと共に晩餐会や明日の式典の打ち合わせもしなければならないので忙しい。
色とりどりの花やテープで飾られた沿道は歓迎ムード一色だが、警護する者にとっては一瞬たりとも気が抜けない。
そんな、華やかながらも緊張感が漂った雰囲気の中、使節団はプラント大使館に入った。
「午後８時から晩餐会があります。明日は午前９時からオーブ政庁で…」
ラクスはそんな説明を聞き流していたが、大使館の一室に警備兵が張り付いているのに気づいた。
「あれは…どうしたんですか？誰かいらっしゃるんですか？」
「それは…」
イザークは言葉に詰まった。
「いえ、二日前、けが人を救助しまして…動かせないので、とりあえずここで休んでもらっています」
咄嗟に言った言葉は嘘ではない。が、次の言葉を聞いてイザークは顔をしかめた。
「そうですか…それでは後でお見舞いしましょう。時間はまだあるのでしょう？」
まずいことになったと思ったが、止めるわけにもいかず、イザークは万が一の場合を考えて、密かにスーツの下に銃を隠し持った。
どんな事をしても、修好交渉の邪魔になるものは排除しなければならないというのがイザークの決心だった。
彼も彼なりに必死なのだ。それを責めることが、誰に出来るだろうか？
ドアがノックされる音でフレイは目を開けた。
ずいぶん眠ったような気がする。体も少し軽くなったような気がしていた。
「お体は大丈夫ですか？」
ラクスはそう言いながらフレイのベッドに近づいたが、フレイはぼんやりとラクスを見つめるだけだった。
「はい…だいぶ、良くなりました」
「そう、それは良かったですわね」
会話を交わしながらも、どこかで会ったような気がして、互いの顔を見つめる。
４年の歳月は二人の印象を随分変えていたが、しばらくして思い当たったのだろう。
「あ…貴方は…！」
- 804 名前： 火サスノリで行ってみようか ３６ 投稿日： 2003/06/19(木) 01:15
- ほぼ同時に声を挙げた二人を見て、イザークは動揺した。
二人が過去に会ったことがあるとは、予想していなかった。
イザークはスーツの前ボタンを外して、いつでも銃を抜けるようにした。
先に口を開いたのはラクスだった。
「貴方は…確か、アーク・エンジェルで、お会いしましたね」
フレイは目を見開いて言葉を発せない。目の前にいるのは、最も辛い記憶に直結する人。
「ヒッ……！」
唸りとも悲鳴ともつかない音が、フレイの喉から微かに漏れた。
「お怪我をして、ここに運ばれたと聞きましたけれど…」
言葉を継ぎながら、ラクスは静かにベッドの脇に腰を下ろし、フレイは体を起こして、後ろに体をもたれ掛かるようにした。
しばしの沈黙が、部屋の中に流れた。
わずか十数秒の時間が、数年の歳月に匹敵してフレイに押し寄せてきた。
ラクスがそっと、フレイの手の上に手を重ねた。それがとても暖かく感じて、フレイの手は震えた。
「私は…私は…」
それ以上言葉が出なかった。
「苦しかったんですね…」
フレイは、粉々になりそうな自分に懸命に耐えていた。
「イザーク…少し、二人でお話したいのです。外に控えていただけませんか？」
ラクスは不意に、イザークの方を向いて言った。それは、イザークの反論を許さない強い調子だった。
イザークはしばらく躊躇っていたが、仕方ないといった様子で外に出た。
ドアが閉じられると、ラクスはフレイの方に向き直った。
ラクスは、じっとフレイの瞳を見つめていた。
「どうして、此処に…？」
ラクスの問いは当然のものだった。フレイは、アスランに話したように、話した。
「貴方にも、謝らないといけないわ…。あんな事をして…」
それが本心からのものだと分かったのだろう、ラクスは微笑を返した。
「気になさらないで。もう、終わった事ですから…」
「でも、貴方がオーブでキラと暮らしていたと、初めて知りました…。キラを、愛していらっしゃるんでしょう？」
フレイの中の全てが一気に出口を求めて噴き出したようだった。
今まで耐えていたものが崩れ去って、フレイは身体を折るようにして泣いた。
「キラ・ヤマトも同じように、貴方を想っていらっしゃいます。それは、私にも、分かります…」
「お父様も同じように、貴方の事を、想っていらっしゃったんでしょうね…だから…」
イザークは、ドアの外に立っていたが、部屋の中から何かが聞こえてきたのに気がついた。
かつて追悼慰霊祭の時、ラクスが歌った歌。その歌が、今部屋の中で歌われている。
その歌声が、全てを包んで洗い流すように満ち溢れて、夜の空気を清めていくようだった。
イザークはしばらくその歌の中に佇んでいたが、やがて銃を外して警備の男に渡し、部屋の前から立ち去った。
- 805 名前： 火サスノリで行ってみようか ３７ 投稿日： 2003/06/19(木) 01:15
- カガリ、キラ、サイの3人が慌ただしくプラント大使館に入っていった時は、既に深夜になっていた。
出迎えたアスランとキラは４年ぶりの再会を喜ぶはずだったが、キラにはその前にしておく事があった。
「フレイ…」
３人の目の前には、フレイと、傍らにいるラクスの姿があった。
フレイは少し目を伏せたが、すぐに顔を上げて迎え入れた。
キラはゆっくりとフレイに近づくと、フレイはキラを見上げるような格好になった。
フレイの瞳は揺れていたが、もう、泣いてはいなかった。
「フレイ…！」
キラはそれだけ言うと、フレイを抱きしめた。
強く抱きしめられて息が詰まりそうになりながらも、フレイはキラの背中に手を回した。
「キラ…ご免なさい…。今まで…本当に、ご免なさい…」
キラは抱きしめた腕に更に力を込めた。
その痛い程の強さが、フレイには優しかった…。
「今まで連絡しなかった事を謝らなければならないな…」
アスランはバツが悪そうにキラに詫びた。
「良いんだ、また、こうして会えたんだから…」
尤も、キラはそう言えるのだが、カガリとしてはそうはいかない。
「アスラン、何があったのか後で説明してもらうぞ」
アスランはため息をついたが、仕方ないと観念した表情で頭を垂れた。
「明日、プラントとオーブの修好式典がありますが、皆さんにも是非出席して頂きたいのですが、構いませんか？」
ラクスの言葉に、サイは一瞬驚いた表情を見せた。既に軍属を離れている彼らは、本来なら出席など出来ない身分なのだ。
「構わないでしょう。こっちの仕事は増えますがね…」
ディアッカが苦笑交じりに答えた。
「私も…良いでしょうか？」
フレイの問いに、ラクスはにっこりと笑って頷いた。
- 806 名前： 火サス 投稿日： 2003/06/19(木) 01:18
- もう推敲したり修正したりする暇が無い(;´Д`)
何か滅茶苦茶だ…御免
続けられる自信が無くなってきたよ
- 807 名前： 1/4 投下するべきか微妙な空気・・・かと思い、 投稿日： 2003/06/19(木) 02:50
- 〜ラジオ局にて〜
・・・３・・・２・・・１・・・Ｑ！
フレイ「フレイ・アルスターの！『週刊・radioSEED』！！
さあ今週も始まりました、フレイのラジ種！みなさんこんばんわ〜、フレイ・アルスターです！
梅雨入りしてじめじめと鬱陶しいこの頃、皆さんいかがお過ごしでしょう？」
カガリ「いつからお前の番組になったんだよ！？
毎週聴いてる人にしてみれば電波ジャックじゃないか？これって」
フレイ「知ったこっちゃないわよそんなこと！こんなのやったもん勝ちよ！」
痔「カガリンの言う通りだよ・・・それにいくらフレイたんでも”俺の”ミリィたんの番組を・・・」
遺作「貴様ぁ！捕虜になってる間に何を抜け抜けと！！”俺の”だと！？
俺がどんな思いで戦ってたのか貴様にわかるか！？いいやわかるはずがない！！
俺が電子レンジでチンされそうになったり、にっくきストライクの後釜野郎に脚斬られてスカイダイビングしてる間に
ナチュラルの女といちゃいちゃしてるような野郎にゃわかるはずがないんだよ腰抜けがぁぁぁぁぁぁ！！！」
痔「も、もちつけイザリン！いちゃいちゃなんかしてない！！
それにこれ台本に書かれて・・・」
遺作「五月蝿い！黙れ！言い訳なんぞ聞く耳持たん！！
お前の炒飯なんか二度と食べてやらないからな！！」
痔「イザリンが・・・壊れた・・・( TДT)」
カガリ「女関係はこじれると厄介だからな・・・みんなも気をつけろよ」
フレイ「・・・そこで何で私を見るのよ、アンタ・・・
もういいわ、金銀に喋らせてたらそれだけで終わっちゃうし。ちゃっちゃと進めないとね。
そんなこんなでこれからの30分間、私達と一緒にドキドキしよっ♪」
カガリ「それ、違う番組・・・」
エリカ「この番組は、オーブ・モルゲンレーテ社の提供でお送り致します」
金銀カガフレ『うそぉん！！？？』
- 808 名前： 2/4 少し間を空けてたら、火サスさんのが。ホントに乙フレです。 投稿日： 2003/06/19(木) 02:51
- ミリィ「CM明けまーす、・・・３、２、１、ストライク、どうぞ！」
フレイ「(ストライク？)改めましてこんばんわ、”メ・イ・ン”パーソナリティのフレイ・アルスターです」
カガリ「しかし・・・この番組の後ろにモルゲンがいたなんて・・・ﾙﾚ!!；-ω-ﾘ ｵﾄｳｻﾏﾉｶﾝｶﾞｴｶﾞﾜｶﾗﾝ」
痔「あ、ミリィたんだ〜♪俺頑張ってるよ〜(*´∀｀)b ｸﾞｩﾚｲﾄ！
入って来て一緒に話そうよ〜」
フレイ「そこ！次余計な事言ったらスパナよ！！今週のメインは私なの！！」
遺作「回想でしか出てこなかったくせにメイン！？こいつはとんだ笑い話だぜ(ﾟ/∀ﾟ)ｱﾋｬﾋｬﾋｬﾋｬ！！
俺が習ってる民族伝承にもそんな話出てきた試しｇ ヽ||#｀Д´||;y=ｰ（ﾟ/дﾟ）･∵. ﾀｰﾝ 」
フレイ「えー只今、番組内で不適切な発言があったことを深くお詫び申し上げます・・・
尚、都合によりこの時間から急遽3人で進行することになりました。ご了承下さい」
痔「(((；TДT)))) ﾒｲﾝﾀﾞﾄﾅﾝﾃﾞﾓｱﾘｶﾖｫ・・・」
カガリ「私も回想にしか出てこなかったな・・・
まあ来週は私もフレイも痔も出られるみたいだしな、我慢しよう」
痔「俺・・・またミリィたんに何か言っちゃうみたいなんだよな・・・
何言わせる気なんだよ、監督さんよぉ・・・」
フレイ「アンタもつくづく空気読めてないところあるからね・・・少し同情。
それ以上に哀れなのは、今床で悶絶してるコイツよ・・・」
カガリ「全く触れられずだしな・・・ま、多分大丈夫だろ。多分」
遺作「死・・・んでた、ま・・・る、か・・・！羽野郎を・・・墜と、すまで・・・」
フレイ「無理ね(きっぱり)。旧型のアンタは大人しくしてた方が身の為よ？」
カガリ「だなー、ストライクだって・・・ｴﾝﾃﾞｨﾐｵﾝな方、だっけ？アイツが乗るみたいだし。
遺作にゃかまってる場合じゃなさそうだし」
痔「ｴﾝﾃﾞｨﾐｵﾝの鷹、だよ。つーわけで、イザリンも俺と一緒に量産型でも相手にしてようよ」
遺作「こ、の・・・腰・・・抜、けが・・・( T/ДT)」
フレイ「つーわけで今週のSEEDnewsExpressはここまで！
来週もネタてんこ盛りでお送り致します！」
カガリ「いつ始まったかぐらいちゃんと言えよな・・・苦情が来るぞ・・・」
- 809 名前： 3/4 眩し過ぎるくらいですよ。次回も激しく期待しております。 投稿日： 2003/06/19(木) 02:51
- フレイ「さて、今週は3人でお送りしております、フレイのラジ種ですが・・・」
遺作「4人だ4人！！！」
フレイ「・・・アンタもしぶといわね・・・しっかし、この後どうするの？」
カガリ「進行放棄かよ！！！よくそんなんでやろうと思ったな、パーソナリティを・・・」
フレイ「だってネタないんだもん・・・クイズ・ミリアリアもミリィがいなきゃできないし」
痔「お悩み解決とか・・・」
フレイ「面倒だからパス。自力でなんとかしなさい」
遺作「磐梯の広報とか呼んでないのか？」
フレイ「断られたわ。私が直々頼みに行ったのに・・・全くアイツらときたら！！」
カガリ「お前が行ったら来る者も来なくなるって・・・」
フレイ「も〜うるさいわね！アンタ達だってパーソナリティでしょ！？なんとかしなさいよ！！」
カガリ「全くもう・・・じゃあ何か曲でも流そうか？」
フレイ「それ、採用！でも何にしようかな・・・」
金銀『俺達のNEWシングル、「バスターデュエル砂漠の嵐 〜ニコルン追悼ミラコロver〜」！！』
フレイ「却下(1秒)」
カガリ「そんな歌出してたのかお前ら・・・」
フレイ「もうこれにしておくわ・・・はい、コレ。早くセットして！
・・・ではここで一曲お聴きください！フレイ・アルスターで『闇』！！」
『涙〜隠し〜た瞳〜で〜♪』
カガリ「これ・・・お前の曲じゃないじゃん・・・」
フレイ「じゃあ『アイスクリーム』にする？」
カガリ「だから番組が違うっての！！」
金銀『アイス〜クリ〜ム〜が、溶けていく〜時〜間だけ〜♪』
フレカガ『ハモってんじゃねえ〜！！！！』
- 810 名前： 4/4 ・・・この後に・・・投下するのか、俺よ・・・ 投稿日： 2003/06/19(木) 02:52
- フレイ「そんなこんなでお送りしてきたフレイのラジ種でしたが・・・
疲れたわ・・・こんなの毎週やってるの？ミリィ」
カガリ「普段は多分もっと気楽にできるんじゃないか？
この面子だから疲れるんだろうな・・・特にメインがこれじゃ・・・」
フレイ「何よ、私のせいだっていうの！？アンタ達がちゃんとサポートしないからでしょ！！
・・・何？『次回予告読んで』！？知らないわよそんなの！！来週まで待ちなさい！！」
カガリ「無責任っぷりにも程があるぞ！！そんなんだから仮面野郎に拉致られるんだよ！！」
フレイ「何よ、そんなの！！カガリには関係ないわ！！
それに私、夕べはアスランの部屋にいたんだから！！！」
カガリ「ﾅﾆ━━━━━ﾙﾚ!!；゜Д゜ﾘ━━━━━!!??(赤色反転)
詳しく聞かせろ！！事と次第によっては只じゃ済まさないぞ！！！」
フレイ「嘘に決まってるじゃないそんなの！！ばっかじゃないの！？」
カガリ「お前━━━━━！！」
痔「・・・えー、た、只今、フレイたんとカガリンの熾烈な争いが・・・出た〜、シャイニングウィザード！！」
遺作「全く無駄な時間を過ごしたものだ・・・帰りに民族資料館にでも寄ってくかな・・・」
痔「なんで俺が締める羽目に・・・（ T∀T)
SEED you next week！おやすみなさ〜い！ｸﾞｩﾚｲﾄ！」
ミリ「・・・放送事故じゃんこんなの・・・来週からどうしよ・・・」
- 811 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/19(木) 05:53
- >>806
ゆっくり待ってまつよ。
続き頑張って、と言いたいところだけど、
転換的に少し中休みを入れてもいい鴨。
それでまた自分で納得できるモンが書けるようになればいいんだろうし。
>>種ラジ
ﾜﾗﾀ。
ここの文章の中といい、本スレのＡＡネタといい、
金銀コンビは微笑ましいつーか、お馬鹿さんつーかｗ
- 812 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/19(木) 12:39
- 爆笑。キラフレやサイフレバージョンの種ラジも見てみたいもんだ。
後は魔乳・兄貴・ナタルのトリオとか・・・ちょっくら考えてみるか。
- 813 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/19(木) 15:39
- おつふれ〜。
>802-806
痔が…痔が！子持ちかよ！
つか頼りがいの有りそうな21才になってて個人的に嬉しかった。
落ち着くまで小休止入れてもいいのでは？
続き楽しみにゆっくり待っとります。
>807-810
この4人が揃うとまとまるモンもまとまらなくなるなw
それにしても和む…。
- 814 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/19(木) 22:47
- 愛され隊の続きｷﾀ━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━!!!!藁たよ。
- 815 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/20(金) 01:16
- ヘリオポリスの学園祭の続きが非常に楽しみなのだが
職人さんはもう居ないのかな・・・(´・ω・`)
- 816 名前： オレンジの花 投稿日： 2003/06/20(金) 16:03
- あるコーディの男が、自分を愛している(と思われる)３人の女の中で誰を本命相手とすべきか、
長いこと考えていた。しかし結論は出なかった。
そこで男はその３人に、自分がそれまでのパイロット稼業で得た報酬を三等分して各々に渡し、
彼女らがその金をどう使うか見ることにした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
一人目の女は、エリザリオの乳液や化粧水、露出度の高いドレスを買い、入念に入浴し、
自分を完璧に見せるために金を全て使ってこう言った。
「サイに言われたからってわけじゃないけど、私は、あんたを本気でが好きになったみたいなの。
だから、あんたがこの世界でいちばん可愛くて優しくて美しい奥さんを持ってるって、
他の連中に思わせてあげたいのよ。感謝しなさい」
二人目の女は、夫になるかもしれないその男のために、ザフトの軍服から虎柄のパイロットスーツ、
最新鋭のモビルスーツ至るまでを購入あるいは略奪し、こう言った。
「想いだけでも、お金だけでもダメなのです」
さらに何か説教じみたことを喋り続けたが、男は途中からまともに聞いていなかった。
三人目の女は、待ち合わせの場所には現れなかった。
替わりにそこには男の、子供の頃からの親友(♂)がいて、自分が以前からいかに男のことを
愛していたのか、興味本位で集まったギャラリーが皆嘔吐するほど情熱的に、切々と語った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
その晩男は、巨乳の上司の胸にすがって泣いた。
(完)
- 817 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/20(金) 17:52
- >>816
ﾜﾛﾀ
- 818 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/20(金) 18:02
- カガリどこ消えたｗ
- 819 名前： 某所からいただいてきた 投稿日： 2003/06/20(金) 18:19
- ttp://pulsate.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/17.png
キラちゃん「僕、フレイが好きなの」
空間が凍りつく。
ただサイが息をのむ、音のない音だけが聞こえてきた。
そしてキラちゃんは続ける。
キラちゃん「僕、フレイと寝たの──」
パアァ……ン………。
彼が言い終わらないうちに、その乾いた音は暗いスタジオに鋭く響いた。
私は目を疑った。
サイが、キラちゃんを平手で打ったのだ。
サイ「どうして…！」
瞳に涙を溢れさせて、サイはキラちゃんを問いつめる。
サイ「どうして、キラちゃん！ キラちゃん、僕とフレイのこと知ってたのに、どうして…」
キラちゃんは頬を押さえてうつむいたまま何も言わない。
サイ「僕が…僕がフレイのこと好きなの…愛してるの知ってるのにどうして、どうしてそんなこと言うの…！？」
パアァ……ン………。
だけど痛々しいその音はもう一度響いた
「やめてよね……本気で喧嘩したら、サイが僕に敵うはず無いだろ？」
- 820 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/20(金) 18:55
- キラちゃん？なぜ？
- 821 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/20(金) 21:28
- >>819
ﾜﾗﾀｗ元ネタ何？
- 822 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/20(金) 21:37
- >821
ttp://leaf.aquaplus.co.jp/product/wa.htm
- 823 名前： ヘリオポリスの学園祭 投稿日： 2003/06/21(土) 00:34
- ニコル・アマルフィー 120票
フレイ・アルスター 112票
カガリ・ユラ・アスハ 96票
マリュー・ラミアス 84表
ミリアリア・ハウ 80票
ナタル・バジルール 75票
・ ・
・ ・
イザークとディアッカは走っていた。屋台に戻ると、急いで撤収の準備に入る。
「誰だ、ニコルを予想した奴は！俺達大損じゃないか！」
「…きっと、ギャグやシャレで入れた票が集まっちゃたんだろうな…これだからこの学園は嫌いだ…でもニコル、可愛かったからなぁ…」
「馬鹿！褒めてるのかそれは！とにかくしばらく身を隠す！」
「もう駄目だよ、何もかも…」
逃げても無駄と分かっているのに逃げようとするイザークと、既に崩壊しているディアッカ。
彼らが被害者なのかどうかは分からないが、この結果は出場した女生徒を手酷く傷つけるものだったのは間違いない。
ナタルに勝って大喜びのマリューは例外だが、その他の面々は皆不満げな面持ちだった。
転校したてで顔を知られていないカガリは、むしろ大健闘と言うべきなのだが、もちろんカガリはそんなつもりはない。
正に「地団駄踏んでいる」。こうなると、折角のドレスが乱れて台無しだ。
ナタルはマリューに大差（と本人は感じている）をつけられてショックを隠せない。
「いやーお疲れ様でした。お二人とも、似合っていましたよ…」
フラガはそうナタルに声をかけた時、涙目で睨み返されて恐怖を感じた。
（来年こそ、本当の勝負よ！マリュー･ラミアス！）
ナタルは、既に次回のコンテストへ向けた対策を考え始めていた。
「サイ、アスラン、お疲れ様でした…」
「ラクスこそ、司会進行、ご苦労さん！」
「ところでアスラン…」
「ン…何だい？」
ラクスはアスランの耳元に口を寄せると、
「来年は…私も絶対、コンテストに出場しますから、そのおつもりで！それと、次回から女装は無しにしましょうね？」
ラクスの言葉は何気ないものだったが、アスランはその中に、『女』を感じて総毛だった。
「あーあ、一年生の男の子が優勝しちゃうなんて…どうなってるのよ！」
ミリアリアも勿論不満だが、他の出場者と比べるとやや穏やかな口調になっている。
トールが一生懸命フォローを入れたのだろう。
元々、勝負事にあまりこだわらないし、シャレが通じる性格でもある。
「ミリィ、今日はとっても綺麗だったよ！写真撮るから、また着てくれないかな？」
「もう、トールったら…」
トールに言われて、ミリアリアは顔を赤くしてうなずいた。
- 824 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/21(土) 00:37
- >>815
まさか覚えてる人がいるとは…
色々あって、遅れました（にしても遅れすぎだが）。
つーか、こんな展開で良いのだろうか
- 825 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/21(土) 10:24
- >>824
乙！
ニコルン優勝かyo!
- 826 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/21(土) 11:57
- >823,>824
続きｷﾀ━━━━━(ﾟ∀ﾟ)━━━━━!!!!
乙です。ニコルか、ニコルなのかよ！
どうなってんだこの学園は！（藁
カガリでさえあの荒れよう、
フレイ様は一体どうなっておられるのやら…(((((( ;ﾟДﾟ)))))ｶﾞｸｶﾞｸﾌﾞﾙﾌﾞﾙ
このSSのトーミリは和みます。
- 827 名前： 火サスノリで行ってみようか ３８ 投稿日： 2003/06/21(土) 23:37
- 修好記念式典の日の朝は霧のような雨だった。
プラント大使館で一夜を過ごしたキラとフレイは、大使館の車で一緒に会場へと向かっている。
昨夜、キラはずっとフレイの手を握ったままベッドの傍らで眠り、目を覚ますまで離さなかった。
「キラ…」
「うん？何？」
「昨日は、話せなかったけど…私、あの時、記憶が…」
「…アスランから、聞いたよ…」
キラの言葉に、フレイは少し反応して身体を揺らした。
「フレイ…本当は、謝らなくちゃいけないのは僕の方なんだ」
「え…!?」
キラの言葉はフレイの予想に反した。フレイが見たキラの横顔は、フレイが初めて見る顔だった。
「フレイ…あの時、気を失って昏睡状態になったのを、カガリに無理を言ってオーブに保護してもらったんだ」
「そして、記憶を失ってた…。だから、もう、思い出して欲しくなかったんだ。戦争なんて…」
「キラ…」
「フレイが、また思い出すのが、恐かった。だから、封印した」
「え…!?」
フレイは、息を呑んだ。
「フレイに、戦争を、思い出して欲しくなかったから…オーブのスタッフに…」
記憶を取り戻す前、オーブで初めてキラと出会った事。キラとの生活。それらがフラッシュのように駆け巡った。
「僕は、馬鹿だ。結局、フレイを、更に苦しめてしまったんだ…」
キラは、フレイの為…本当にそうだったのかどうか、今となっては誰にも判らない…を思った行動だったのだろう。
そして、4年前、そのキラを最も苦しめたのは、他ならぬフレイ本人だったのだ。
フレイは、キラの横顔を見つめ続けていた。涙こそ流していないが、間違いなくキラは泣いていた。
フレイは手を伸ばして、あの時と同じように、キラの顔を包み込むようにした。
「もう、大丈夫だから、私は…そう、大丈夫だから…もう、自分を責めないで…お願い、キラ」
キラが顔を起こすと、そこにはフレイの瞳があった。少し、濡れていた。
「ありがとう、キラ…」
そっと、唇を重ねた。
- 828 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/22(日) 10:38
- >827
おつふれ〜。
思ったより早く続きが拝めて嬉しいです。
しかしキラ、相変わらず時々すごいことをする…w
- 829 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/22(日) 11:20
- >>827
乙フレー。
毎回楽しみにしてます。
キラ・・・すごいなｗ
さすがです。
次回投下お待ちしています。
- 830 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/23(月) 22:06
- >>827
乙ふれー。いつも楽しみにしてます。
最近フレイ様サイトが増えたせいか、いい小説も増えてるね。
ネット回る時間が増えたよ。いいことだ。
- 831 名前： ヘリオポリスの学園祭 投稿日： 2003/06/24(火) 22:40
- ニコルがラクスへ衣装を返しに行くと、「おめでとうございます」とラクスは笑っていたが、目は笑っていなかった。
「凄いじゃないかニコル、まさか優勝するなんて思ってなかったよ」
アスランは褒めているつもりなのだろうが、ニコルにとってははっきり言ってありがた迷惑である。
適当に返事して、逃げ出すように生徒会室を後にすると、イザーク達がいるはずの部室に向かう。
「あれ？先輩達どこ行ったんだろう？…屋台の方かな？」
屋台裏に向かうニコルは、周りの人（特に女生徒）がこちらを見ているような雰囲気を必死に気にしないようにしていた。
「…あれ？ここにもいないや…一体何処行ったんだろう？あ、ディアッカ先輩！」
「ああニコル、もう駄目、もう駄目だ…」
「ち、ちょっと先輩、どうしたんですか？イザーク先輩は何処行ったんですか？」
「イザーク？奴は遠いところに行ったよ…」
何が何だか分からないが、かなりショックを受けているらしいディアッカをとにかく落ち着かせると、
ニコルは二人の代わりに自分が屋台に立つしかない事に気づいた。
「困ったなぁ。でも、売り上げが悪いと部費に響くし…」
あまり気乗りはしなかったが、表に回ってみると、ミゲルやラスティが忙しそうにしている。
「良い所に来た。ニコル、行商行ってきてくれ」
「え、今来たばっかりなんですけど…」
「人手が足りないんだよ。イザークの奴も何処か行っちまいやがって…。とにかく頼む」
後輩使いの荒さにため息をつきながらも、ニコルが行商に出ると、あっという間にクラスの女の子に囲まれた。
「え、えっ？一体何…」
「ニコル君、似合ってた！可愛かったよ！」
「私達、みんなニコル君に票入れたんだからね」
「あ、あ、そう…ありがとう…（喜んで良いんだろうか？）」
「でね、ニコル君…」
彼女達には、あの時のイザークと同じ笑みが浮かんでいた。猛烈に嫌な予感がしたが、生真面目に相手してしまうニコル…。
「可愛いニコル君と記念写真が撮りたいなぁって。お願い！」
「え、でも、もう衣装は返しちゃったんだけど」
「え〜、返しちゃったの？誰から借りてたの？」
「あ、演劇部から衣装、借りてくれば大丈夫だよね？」
「いや、そこまでしてもらわなくても…（またああいうの着るの？）」
「ニコル君、演劇部の所まで一緒に行きましょう！」
半ば引きずられるように演劇部に連れて行かれながら、ニコルは今日の運勢は何だったかと考えていた。
「今日は、最悪の厄日だったかも知れない…」
- 832 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/24(火) 22:41
- フレイ様のフの字もありませんが…まぁ次回って事でご容赦を
- 833 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/24(火) 23:01
- ところでかんじんの主人公キラは登場しないんだろうか？
- 834 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/25(水) 23:54
- ☆ ﾁﾝ
☆ ﾁﾝ 〃 Λ＿Λ ／￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣￣
ヽ ＿＿_＼（＼・∀・） ＜ 投下まだー？
＼＿／⊂ ⊂＿ ) ＼＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
／￣￣￣￣￣￣ ／|
|￣￣￣￣￣￣￣| |
| age .|／
- 835 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/26(木) 02:03
- >>833
違うぞ
ここでの主人公はフレイ様だｗ
- 836 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/27(金) 11:16
- エロスレに少しだけ投稿したまま放置してたやつ、投下しようか？？
あんまエロくないからフレイ様にもおこられないと思う…
- 837 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/27(金) 12:35
- >>836
神様どうか投下してください！！！
- 838 名前： オーブに着いた日1 投稿日： 2003/06/27(金) 12:45
- んじゃ投下。いまいちかもしれんが、暇を潰してくれ。
甘い言葉を幾度も囁いたベッドにひとり横になり、フレイは憎悪の念に駆られていた。
機械仕掛けの愛玩ロボット『トリィ』が彼女の肩にとまる。
それを許してやりながら、彼女の心の内は暗かった。
腹部が痛い。
彼女は月経期に入っていた。もう終盤になり腹血自体は微量だが、痛みは
ずきずきと彼女を襲った。ただでさえ乗り物は好きではないのに、
更にストレスがかかる。フレイは内心舌打ちをした。
彼を繋ぎ止めて置く方法が使えないでいる。”あの女”がいないというのに。
苛々がわき上がり、彼女は立った。
しかし足に力が入らず、すぐさま倒れるようにベッドに崩れた。
それにしてもキラは何をしてるのだろう。
飲み物を取ってくると食堂に行った筈だった。
でももう１０分以上立つ。ここに居る限りめだった事もないようだし、
彼が執務を押しつけられたとは考えられなかった。
誰かと話しているのだろうか？あの女が、帰ってきたのだろうか？
興味ない顔して、キラにすり寄って、豪華な洋服きてみせびらかしちゃって…！
何よ、あんなの。あたしだってあれより綺麗なの沢山もってるわ。
実家から持ってこさせようか。
折角オーブに来ているんだし、絹の上等のがいくらでもあった。
背中の開いたドレスもある。彼を誘惑するにはもってこいの、挑発的なドレス。
フレイは振り返って、ベッド脇の棚からリップクリームを取った。
金銀のビーズを埋め込まれた小さな蓋をあけると、白檀の香りの軟膏が入っている。
それを丹念に塗り込めた。彼女はこういった小物にこだわるのを好んだ。
化粧水から乳液に至るまで、業々硝子細工の瓶に入れ替えていた。
長年使っているもので、母の形見のひとつでもあった。
瓶の蓋には踊る兎がかわいらしく彫られている。硝子には丹念に春の野原。
美しい細工のそれらが並ぶ光景は乙女らしかった。
ここはキラ・ヤマトの部屋だった。荷物の少ない彼の部屋はいつしか、
彼女の荷物でうめつくされていた。部屋には彼女の好むローズオイルの匂いが
漂い、一見して軍艦内部とは思えない可愛らしさである。
「入るよ」
音声と共に、ドアが開いた。
盆にジュースと、それから生野菜のスティックを乗せたこの部屋の主が帰ってきた。
- 839 名前： オーブに…2 投稿日： 2003/06/27(金) 12:48
- （遅いじゃない）
フレイは内心で毒づいたが、口に出さずに頷くのみだった。
「具合はどう？」
「うん…」
彼は押しに弱かったが、だからといって気が強い女が好きというわけではないようだった。
自分が粛々としていれば、優しさを見せてくれるし、そのほうが操りやすかった。
キスもしてくれる。
「まだ、お腹痛い？」
「もう、殆ど平気なんだけど…酔っちゃったのもあるみたい。体調崩してると、チョットね…」
フレイの腹痛の原因を彼は知っている。そういう仲なのだ。
二日前、彼が求めてきたときに応じなかった。
それは初めてのことで、キラも驚いた様子だった。
何しろ彼が求めるということ自体珍しかったのに、それを拒否されたのだ。
けれどフレイは心を砕いて説明した。するとキラはたちまち赤くなり、ごめん、と謝ったのだった。
「今、何時？」
「９時すぎ。お腹空かない？野菜がいいかと思って、持ってきたけど」
「じゃあ、にんじんちょうだい。ねえ、食べさせて？」
「え」
フレイの甘えた言葉に、彼は少し、たじろぐ。こんな時、とても彼女を愛しく思える。
彼女が甘えたように肩に頭を乗せるときや、喉がかわいた、などと言うと、
何でもしてあげたくなってしまうのだ。これは惚れた弱みだろうか、と彼は思う。
オーブで研究室の前を歩く彼女を遠くから見ていた、そして心焦がしていた。
その彼女が今自分の前にいて、甘えてくれる。
「ディップは何がいい？」
「空豆ある？」
「ないよ」
「じゃあ、そのままでいい。あーん」
フレイは口を開けてみせた。
- 840 名前： オーブに…3 投稿日： 2003/06/27(金) 12:49
- キラはすこし紅潮しながら、にんじんをやる。
ぱくり、とフレイはそれを口に入れ、噛む。フレイの白い喉がこくり、と動く。
キラは思わずそれから目をそらした。
「キラ？」
「あ、ごめん…」
「つぎはチーズがいいな」
甘い声でフレイは囁く、キラを上目遣いにみて、猫か犬のように口だけで食べた。
その姿がやけに艶めかしくて、キラはどぎまぎしてしまう。
いけない感情が、彼の背から足へと駆けていく。
フレイはそれに気づいていた。隠そうとしても、それは明らかだったのだ。
フレイは微笑むと、いった。
「サワークリームが舐めたい」
「え、それだけで」
「うん。ねーキラ、ねえねえ、キーラ」
「え、でもさ」
「ちょうだい？」
フレイは媚びるようにそう頼んだ。キラに抗う事など不可能だったろう。
そして、すこし震えてしまう指を、そっとサワークリームに滑らした。
「早く」
そういってフレイは笑う。キラはそれから目をそらしながら、指を伸ばす。
フレイはそっと、それを舐めた。
- 841 名前： なんか会話が淡泊。オーブ…4 投稿日： 2003/06/27(金) 12:51
- 「う…」
キラはすでに真っ赤だった。自分の人差し指を、フレイが口に含んでいた。
そして舌で丹念にそれをしごく。
ある事を彷彿とさせるその動作に、キラは目を瞑った。
自分の内に衝動がわき上がる。彼女が誘っているのがわかる。軽く歯を立てられる。
でもからかわれてるのかもしれない。若い身体の、素直な反応が恨めしかった。
「あー」
フレイは、彼の下半身の変化に気づいて、彼を見上げた。
キラは目を伏せて、困ったように赤い顔をする。
「ゴメン…あのさ」
何事かを弁解しようとするが、どう言えばいいかわからない。
指を舐められて勃ってしまったなど、どう説明するべきなのか。
「キラったら、わるいこ」
言葉とは裏腹にフレイは、嬉しそうに笑うのだった。
そして身を起こして、彼の首に腕をまわす。息が掛かる至近距離で、フレイは言った。
「どうしたいの」
「でも、まだ、フレイは…ダメでしょ」
彼女の下腹が自分自身にあたるのを感じながら、キラは目をそらして言い訳をした。
「いいよ」
「え？」
「痛くしないで、ね。」
- 842 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/27(金) 12:54
このあと少しエロいけど、いいのかな？
駄目だったら言ってくれ、ってわけでとりあえず、ここまで投下しとく。
- 843 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/27(金) 14:16
- 野菜スティック(;´Д｀)ﾊｧﾊｧ
- 844 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/27(金) 14:21
- >>842
寸止めｲｸﾅｲ（ ﾟдﾟ）
- 845 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/27(金) 19:20
- >>842
乙です。
このSSに続きがあったなんて！
以前エロパロで見かけたときは
フレイ様の誘い方に(;´Д｀)ﾊｧﾊｧしっぱなしでした。
ぜひエロい部分もお願いします。
- 846 名前： オーブに…5 投稿日： 2003/06/28(土) 03:57
- >>845
見ていたヤシがいたとはw
寸止めスマソ。じゃあ、続き投下な。
そういってキラの鼻先を舐めた。それだけで彼には十分だった。
彼女の名を小さく叫び、その身体にのし掛かっていた。
すぐに手で、彼女の衣服をもどかしそうに解きにかかる。
素肌の乳房をさぐりあてると、それにキスをした。
「あ」
フレイは声をあげた。キラはそれに気づいてるのか、荒々しく上着を脱がせる。
フレイは体調のために下着をつけていなかったので、上半身はたちまち裸になった。
「電気、まぶしいよ」
フレイがそう言うと、キラは我に返ったように彼女を見下ろした。
すでにスカートのホックをはずすことに必死だった彼は、若者らしい焦り方を恥じていた。
彼女はまだ万全ではないのだ。目も眩むような興奮に、我を忘れていた。
彼はゆっくりと、腕を伸ばし照明のスイッチをオフにした。
フレイは眉を寄せて、行為に耐えていた。
実際の処、彼女はセックスに快感を覚えることは出来ないでいた。
それはキラがまだ慣れなくて、がさつな前戯だからなのかもしれない。
彼も彼女もついこの間まで、異性を知らなかったのだから。
フレイ・アルスターは、やんごとなき名家の令嬢である。
母を幼いときに亡くし、父は多忙の人である為、邸には常にひとりだった。
そんな彼女には幼くから手紙や花束を送り届けてくれる相手が居た。
婚約者、サイ・アーガイルである。
実際に彼に会ったのは、つい数年前の事であるが、フレイはサイを心の拠り所にしていたのだ。
サイは実直で、公平な人だった。控えめで無害だった。
だがナチュラルの中ではかなり優秀で、オーブの研究所でリーダーを努めたりしていたらしい。
フレイは彼のそんな処を尊敬していたが、同時に少し息苦しかった。親に決められた婚約者。
それが彼のような人で良かったと思う。彼は父を愛していたし、逆らうつもりはなかった。
だがそれも、父の突然の死によって終わる。彼女を繋いでいた柔い縦糸が、ぷつりと切れた。
- 847 名前： オーブに…6 投稿日： 2003/06/28(土) 04:03
- 「もう、パパはいないのよ。だから、パパに決められた縁談なんて、無いも同じだわ」
フレイは叫んだ。何故こんな事を言うのか、自分でも解らないでいた。
サイはサイなりに、彼女を精一杯愛してくれた、いたわってくれた、支えてくれたのだ。
それは身にしみて解っている。でも彼女が欲しいのはそんなものじゃない。
かつて父が彼女に与えてくれていたような、包み込むような愛情。
そんなものは、今は邪魔なだけだ。
「フレイ、本当に−−−−いいの？」
フレイの意識を割って、彼はもういちどそう訊いた。フレイはゆっくりと頷いた。
「うん、いいよ、やさしくしてね？」
甘い声に、キラは頭がくらくらした。
ゆっくりと、身体を沈めていく。言われたとおりに、やさしく。だけど彼には自信がなかった。
自らを全て埋めたその光景を腹の下に見下ろして、眉を寄せる恋人の貌、すべてが激しい情欲をそそる。
動かずにはいられない。
「あ、だめ、やだ…。」
彼の動きに、フレイは非難の声をあげたが、それは弱いものだった。キラは若さの衝動に身を委ねた。
永遠にも感じられる感覚だった。フレイは、呻きながら、シーツを握りしめそれに耐えた。
- 848 名前： オーブに…7 投稿日： 2003/06/28(土) 04:06
- キラはフレイに重さを感じさせないように、身体をずらして横になった。
ふう、と息をつく。横目にフレイを見ると、彼女もくるりとこちらを向く。
「キラ。ねえ、気持ちよかった？」
そしてそんなことを訊く。キラは真っ赤になった。
「ええ？そりゃ−−−−−いや、えぇと。」
しどろもどろに、答えにならない返事をする。
しかしフレイは許さない。
「何よ、ねえ、どうなのー？」
「…いいよ。」
どうにでもなれ、といった感じで、キラは答えた。
「とくに、どうしたらいいの？」
「うわっ。ば、何、何言ってるんだよ」
身を擦り寄せてきたフレイに、キラは大慌てでその肩を押す。
「だって知りたいんだもん」
「そんなの…僕が訊きたいよ」
「何を？」
「フレイは……なんかさ、痛そうだし…。いや、最初は痛かったんだろうけど、
今はどうなのかなって。少しは−−−−その」
あさっての方向を向きながら、キラは訊いてみる。それはずっと、彼が訊きたかった事なのだ。
「言っちゃっていいの？」
フレイは、キラの頬に手を置いて、そう訊く。
- 849 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/06/28(土) 11:19
- >>846-848
乙フレー
ちなみに実は自分もエロパロで読んでたｗ
しかし・・・
エロいはずなのに読んでて涙が滲んでくるのは何故なんだろう？、
ぎこちなくて不自然な関係だったけどこの頃が一番平和だったねぇ（つд｀)、
- 850 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/01(火) 13:54
- 感想くれたヤシthx.
じゃあ続き投下するか・・・・・
- 851 名前： 宇宙の風（仮題） 投稿日： 2003/07/01(火) 14:39
- 久しぶりにＳＳ書いてみました。
コミケ原稿もあるので前回ほど急激には出来ませんが、
まぁマターリとね。キラフレ度100％なので注意。
- 852 名前： 宇宙の風（仮題） 投稿日： 2003/07/01(火) 14:43
- 重苦しい灰色の空が広がっていた。
そこは地球の７割を占める海が広がっていたが、残り三割に過ぎない陸地が存在する場所でもあった。
数千メートル上空から見下ろせば注意しなければ見落とすであろう島々が点在する群島。
島は一面が若々しい緑に覆われ、大海原を旅する鳥たちにとって絶好の中継地点になっていた。
だが、その安息は破られた。
彼等が生きていく上でまず聞かないであろう金属音と低周波音に鳥たちは怯えた。同時に、その音に巻き込まれることが自らの死に直結することを悟った。だから、彼等は必死で音源から遠ざかろうとした。しかし、音達は鳥達を追いまわす猛禽類のように、島上空を飛び回り、彼等をパニックに落しいれた。
この音に怯えていたのは鳥だけではなかった。
僅かながらこの島々に住居を構える人々にとって、戦争…遺伝子改造された宇宙人と生粋の人類との…は無縁か、
もしくはＴＶ映像の中だけでの話しだった。
当然、ＴＶや新聞の活字からは戦場独特の風も熱気も、そして先を取り合って空中に撒き散らされる殺意も知識として会得していたとしても、それを体験として自ら経験することはなかった。
- 853 名前： 宇宙の風（仮題）2 投稿日： 2003/07/01(火) 14:45
- 「おじいさん、大丈夫？」
「ばあさん、早く、こっちにこい！」
ある家では老人が、50年連れ添った婦人を地下室に引きずり込んだ。
老婦人は自分達や孫の写真を後生大事に抱えていた。
老人にとってみれば一番大切なものは自分と老婦人なわけだが、老婦人にとっては写真も大事なわけだ。ランプの明かりだけとなった地下室が轟音で崩落する坑道のように震え、埃が老夫婦といわず、大切な思いでを固着した写真といわず、あたり構わず降り注いだ。
彼等は知らなかったが、ちょうどその時、上空を地球連合軍所属戦艦「アークエンジェル」搭載ＭＳ「ストライクガンダム」が地表へと急降下、墜落直前でスロットルを吹かし、上空へ退避したところだった。
全高18ｍ近い鋼鉄の巨人。戦う為に生まれた、おとぎ話に出てくる青銅の巨人を思わせる非現実的な兵器。
しかし、ストライクは実際にそこに存在する機械だった。味方には頼もしい守護神、敵からは畏怖と憎悪の対象である死神。
だから、その金属の巨体を持ち上げる推力は莫大なものであり、現実だった。
一瞬にして地上はハリケーンも裸足で逃げ出すほどの風速、それに伴う衝撃波、おまけにスラスターから吐き出される高熱の風、例えるなら火砕流の爆風に匹敵するエネルギーが駆け抜けた。
- 854 名前： 宇宙の風（仮題）3 投稿日： 2003/07/01(火) 14:47
- 老夫婦の家は子供がつくった積木よりも簡単に吹き飛ばされた。
老人は自分の家が消滅したことを悟った。
写真を胸に抱きかかええ、幼子のように背中を丸める夫人を抱きしめつつ、これらかのことを考えた。
ハリケーンにあった。ちょっと不運だったのだ。
そう考えて老人は自分を納得させようとした。
「あなた……」
老婦人が不安を身体全体に満ち溢れさせながら夫の顔を見上げた。
「大丈夫、だいじょう……」
精一杯の笑顔で答えようと老婦人を抱きしめた瞬間、二人の肉体は数万度の高温と粒子運動の中で分子レベルに分解された。ストライクを追撃していたコーディネイター軍組織「ザフト」所属ＭＳ 「イージス・ガンダム」がストライクを狙って上空から放ったビームが外れ、地下室を直撃したのだ。
螺旋を描いて上昇するストライクに対し、イージスは右手に構えたビームライフルのトリガーを引き続けた。
粒子と大気中の分子が反応する鮮やかな緑がストライクを追うが、白・青・赤がセンス良くまとめられた機体に命中することはなかった。虚しく虚空を貫いたビームは、陸地に着弾して森をえぐれたクレーターとし、たまたま射線上に飛び出した鳥を焼き鳥どころか炭に変え、海に突き刺さって水蒸気爆発を起こした。
- 855 名前： 宇宙の風（仮題）4 投稿日： 2003/07/01(火) 14:49
- もちろん、矛を交えるストライクとイージスのパイロットに、自分達の戦いの巻き添えになって人生を断ち切られた老夫婦を思いやる余裕も悲しむこともない。
そもそも戦争というものが、当事者間で行なわれることはまれで、たまたまそこに住む者や関係者に多大な迷惑をかけるものなのだ。財産を失って難民になるならまだマシで、自らの命で代価を払うことも珍しくない。
しかし、当人達がこの事実を知ったらどうなるのだろうか。
- 856 名前： 宇宙の風/作者 投稿日： 2003/07/01(火) 14:50
- 時間が無いのでここまで。
帰ってから続き投下します。
- 857 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/01(火) 14:52
- >>856
乙〜
漏れも帰ってからゆっくり読みまする
- 858 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/01(火) 16:02
- >851->856
おつふれ〜。
めっちゃ切ない話っすね。
フレイ様関係以外で涙ぐんだのは久しぶりでした。
- 859 名前： オーブに…8 投稿日： 2003/07/01(火) 17:50
- >>856
乙フレ！そうだよなあ、キラが不殺を貫こうが、こうやって死んでいく者も
あるわけで…。続きを期待しつつ、自分も続き投下。
−−−−−−−−−−−
「うん…」
そう言いながら、不安そうにキラは頷く。
「まだね、入れられるのは、ちょっと痛い。あ、でもね、こうやって…」
言いながら、フレイはキラの指を自分の秘部に誘う。
「長い指で、触られるのとかは、好き」
ゆっくりと、言葉を切りながらフレイは唱えた。キラは耳まで熱くなるのを感じた。
無心になっている時は平気だが、こうやって彼女のペースで誘われている時は
恥ずかしいので溜まらなくなる。けれど、彼はおのずとそ指を、まだ濡れたそこに這わせていた。
「うんっ」
それに応じて、フレイも嬌声を噛んだ声を上げる。その顔が可愛くて、キラは唇を寄せる。
すると、フレイはそれに応じる。唇と、触れたそこから、濡れた音が響いた。
自然と再び、息が荒くなってくる。頭の奥に靄がかかって、快楽に身を委ねてしまいたくなる。
自分の身体が、また熱さを帯びてこようというその時。
『プープープー』
「うわぁ！」
内線の呼び出し音が部屋に響いた。指先までそこに埋める行為に没頭しかけていたキラは、
心臓が飛び出すくらい驚いた。
「ヤダ…もう夜なのに、何の用？」
フレイが不満げに声を上げる。キラはそこから指を抜き取ると、慌てて布団から転げ落ちるように降りた。
そして傍らのバスローブをとりあえずに羽織った。
壁に設置された内線機だが、この位置だとフレイも映ってしまう。
言うでもなく知られている事ではあるが、やはり恥ずかしかった。（していたことがしていたことだし）
「フレイ、ごめん、ちょっとそこだと−−−−−−」
フレイはすこし不満そうに、裸のまま彼の横に歩いてきた。
ちょうど、画面には映らない位置だ。そして彼女はその場所にある、照明スイッチをつける。
ぱっとあたりが明るくなると、目の前すぐに、フレイの白い裸身がある。
キラは思わず唾を呑み込んでしまう。すぐ近くだから、太股につたった愛液も確認できる。
１６歳の少年には鮮烈すぎる映像といえよう。
呼び出し音は尚も鳴り続けている。
- 860 名前： 859 投稿日： 2003/07/01(火) 17:52
- しかしアレだな、ZAFTと違ってキラの部屋に内線なんぞ無かったヨカーン。
まぁ気にしないで読んでくれると、有難い。
- 861 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/01(火) 17:54
- 多分、戦艦なんだから内線くらいはあるんじゃないかーと邪推。
もしくはフレイ様が外を見ていたモニターがそれじゃないかと。
気にせず続けてくだちい。ヘソ下三寸が疼くっすｗ
- 862 名前： オーブに…9 投稿日： 2003/07/01(火) 17:57
- 「出なくていいの？」
悪戯っぽく、フレイは問う。するとキラは、我に返ったように彼女から目を反らす。
心臓が早鐘をうっている。しかし気を静めようと努力しながら、彼は内線をとった。
『キラ・ヤマト少尉です』
『こちら、ラミアス少佐。…これから、Ｂ管理室まで来てください』
『…これからですか』
『大事な話なの。いいですね。』
『了解。』
回線を切ると、キラはフレイの表情を伺いながら言った。
「行かないと。」
「そうよね」
フレイはあっさりと、身を翻した。黒子一つ無い真っ白な背が露わに光る。
拍子抜けなくらい、素早い動作で服を着るのだった。
『来て貰ったのは、あなたに一つお願いがあるからよ』
部屋には、ラミアス艦長と、フラガ少佐が鎮座していた。
キラは、はい、と小さく答えた。こんな事には慣れている。
「用件から言うと、あなたには明日以降、艦修復までの間に、オーブのモルゲンレーテ研究所
に赴いて貰いたいの」
「研究所、ですか」
「そう。オーブは、あなたの戦歴とその能力を高く評価しているわ…。
そこで、あなたにＧ研究開発に協力を求めているのよ」
「……」
キラは、顔を伏せた。つまり、それが先ほどの会合で突きつけられた条件ということだ。
自分を差し出す変わりに、隠蔽工作に協力しようと、オーブはそう言ったのだろう。
「少尉。我々は、あなたに強要するつもりはないわ。でも…。
勿論あなたを精密検査にかけたり、そういう事はしない約束を踏んでいるし」
「そういうわけだ。どうだ、キラ？」
「……わかりました」
早口で、彼は返答した。今更イヤだと言って、どうなるワケでもない。
彼にだってそのくらいは解った。
- 863 名前： オーブに…10 投稿日： 2003/07/01(火) 18:00
- この場所で、命令だと、そう言わないラミアスを優しい人間だと思う。
部屋を出た後、フラガに肩を叩かれた。
自販機のライトの前で、しばし無言でコーヒーを飲んだ。
「すまねえな、お前ばっかり」
「いえ、いいんです少佐」
「オーブとしても、タナボタって所だろうよ。お嬢ちゃんのパパは、随分な喰わせモノだぜ」
「……」
「お前もちゃんと休む時間は貰えよ」
「大丈夫です。休んでますよ、今も」
「お前はどっか、思い詰めるからなぁ。メシも喰わない時あるし。戦士は食って寝て、なんぼだぞ」
戦士、という言葉に、キラは視線を落とした。苦いコーヒーに、砂漠の虎の記憶が蘇る。
「オーブは、何故ガンダムを強くしたいんでしょうか。平和の国なのに…」
「……そうだな、まぁ、オーブの言い分とすりゃ、『強い楯』が必要だってことだろ。
他国の侵略を許さない、その為には力が必要だと、そういう事だろうさ。
表向きはね。実際、研究者達は違う思惑かもしれない。お前も、ほどほどにやれよ。」
「…？どういうことですか」
「お前の強くしたＧが、お前に牙を向くことだってあり得る、っていう話さ。」
「そんな」
「先のことは、わからんがね。戦争は、誰が敵になるかわからないものだぜ」
「そう、ですね…」
彼自身、かつての親友だったアスランと今は敵同士だ。
- 864 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/01(火) 18:03
- >861
そうかー。フォロー感謝。
- 865 名前： オーブに…11 投稿日： 2003/07/01(火) 18:10
- 思い空気を破り、唐突にフラガが声をあげた。
「…ん、お前、なんだここ…血がついてるぞ」
「え」
「お、ここにも。」
「…え？」
見れば、制服の合わせや、袖口に血のあとがついている。いつついたのだろう？
そもそも怪我なんてしてないし、まるで手で触れたところについたような…
「あっ」
突然、キラは声をあげた。そうだ、この血は…自分のものではない。
先ほど抱いた彼女の、その指を埋めた後、急いで服を着た。
つまりこれは、そのとき指にまとわりついた彼女の下血なのである。
その事実に気付いたキラは、顔が熱くなるのを感じた。
「お、何だよ。どーしたんだ？」
「い、いえ少佐…これはその…」
「これは？」
「これはその…ピザで…さっき食べて…」
しどろもどろに、キラは言い訳をした。
「ピザ？そんなもん、メニューにあったか？」
「…ありますよ。あったと思います」
「そうかなぁ……」
「…はは」
軽く笑って、キラはコーヒーを飲んだ。
この人に気付かれたら、どんな風に言われるかわかったものではない。
「…で、お前は何で顔が赤いんだ？」
「あ、赤いですか？」
「赤いなぁ」
「熱くて…その、コーヒーが」
「ふーーーん」
フラガは、ぐるりと天井を見回すと、いきなりが、とキラの両肩を掴んだ。
「ま、お前も若いし、色んなピザにでくわすだろうが、食べ過ぎには気をつけろよ、足に来るぞー」
にやり、と笑って、ぽんぽんと肩を叩く。キラは、ひきつった笑みを返した。
（バレてる…。）
「いやー、引き留めて済まなかったな！」
「いや、あの、僕は…」
「いい、いい。若いっていいよなーホント。あー俺もピザくいてー」
「違うん…」
キラが必死で取り消そうとするも空しく、フラガは手を振って去っていた。
- 866 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/01(火) 18:16
- ＞あー俺もピザくいてー
モッツァレラなのを一つ食ったくせにｗ
- 867 名前： 865 投稿日： 2003/07/01(火) 18:30
- >866
さんざんおあづけ食らってただけに、美味かっただろうなぁw
というわけで、書いたぶんまで投下。
28話の間違えたシーンまで続く話の予定なんだが、少佐…w
- 868 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/01(火) 19:13
- >>867
おつ〜。
こんなフレイ様になら迫られたy=ｰ( ﾟДﾟ)･∵. ﾀｰﾝ
それにしても兄貴はいいキャラしてますなｗ
- 869 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/01(火) 20:50
- 生理中にチャレンジできるなんてキラさん若過ぎっす(*´Д｀)ﾊｧﾊｧ
- 870 名前： 宇宙の嵐/作者 投稿日： 2003/07/01(火) 23:28
- 最近種本編に怒りがわいてしょうがないでつ…。
てなわけで、このＳＳのザフトや連合は、一応マトモです。
ついでに自由も正義も出てきませんので。では投下〜
- 871 名前： 宇宙の嵐/5 投稿日： 2003/07/01(火) 23:30
- ストライクを操縦するキラ・ヤマトは傷つきやすい繊細な少年だった。
コーディネイターとして生を授けられながらも、彼は偶然から連合のＭＳパイロットになり、
ナチュラルを守って同胞たるコーディネイターと辛い戦闘を繰り返してきた。それが自分で選んだ道だったとしても。
イージスを駆るアスラン・ザラはキラの親友だった。彼はザフトＶＩＰの息子だった。
そしてコーディネイター達の敵に味方し、ザフトへ攻撃をするキラを討ち取らなければならない立場だった。
敵、味方、親友、疲労、、生存欲求、困惑、憎悪。
ＭＳの装甲や国という複雑な鎖で物理的な関係は遮断されつつも様々な感情を胸の坩堝に溶かしこみ、
二人はそれを共有していた。だからこそ、キラとアスランは戦いを繰り広げていた。
この二人にとって、もはや国家や戦争などどうでも良いことだった。
他の全てが灰色に切り捨てられていた。
目の前のキラを、アスランを倒すことだけが、この時の二人の全てだった。
- 872 名前： 宇宙の嵐/6 投稿日： 2003/07/01(火) 23:33
- それぞれのコクピットでは、無線機がさかんに自己主張していた。
双方の母艦とも、現有戦力（キラとアスランのことだ）の帰還を促していた。
奇妙なことに、敵同士であるＡＡとザフト双方で手を引きたがっている。
だが、二人のために、彼等は戦場を去れなかった。二人を残したままこの場を後にすることは許されていなかった。
ＡＡの目的は、ザフトの増援が到着する前にこの戦場を離脱することであり、
究極的には今死闘を繰り広げているストライクとその戦闘データを連合のアラスカ本部に届けることだ。艦に搭載されたレーダーとセンサーは、戦場へ急行しつつあるザフト艦艇の姿を捕らえていた。今離脱しなければ、袋叩きにされてしまう。いかにキラが超人的活躍をしようとも、最期の時間が僅かに伸びるに過ぎないことをクルーは知っていた。
しかし、キラを置いて行けばストライクも放棄することになる。
ストライクは唯一連合側に残された貴重なサンプルなのだから。
ところが、あのイージスの「パイロット」とストライクパイロット「キラ」との間には何らかの因縁がある。
それ故に敵はここまでストライクに、いやキラに固執する。その結果、ストライクばかりかＡＡも危険にさらされる。
ＡＡのクルーは、キラがストライクに乗っていることをこれほど呪ったことはなかった。
- 873 名前： 宇宙の嵐/7 投稿日： 2003/07/01(火) 23:34
- ザフト側の目的は、当初はアークエンジェルを撃沈することだったが、今は完全に転換していた。
一刻も早くイージスを回収し、アークエンジェルの攻撃範囲から離脱しなければならない。
なにしろ、イージスに搭乗しているのは、プラント最高権力者パトリック・ザラの一人息子なのだ。
戦果をあげているうちはいいが、戦死などという事態になれば艦長の首が飛ぶぐらいではすまないだろう。
そして、イージスは生きるか死ぬか、危険な果し合いに没頭中である。
艦長は神経安定剤が手放させなくなっていた。
ザフト艦のクルーは、イージスにアスランを乗せた奴を心から呪った。
双方の思惑も知らず、二人の激突は最高潮に達していた。
- 874 名前： 宇宙の嵐/8 投稿日： 2003/07/01(火) 23:36
- 「くっそぉぉぉぉぉぉ！！」
キラが獣のような唸り声をあげ、ストライクのコントロールスティックを握り締める腕に力を込めた。
幾重もの特殊繊維で編み上げられたパイロットスーツに筋肉の盛り上がりによる明暗がくっきりと浮かびあがった。
メインモニターには、眼前で激しくスパークするビームサーベル。そしてイージスの鋭角的な赤い巨体。
鍔迫り合いだ。押し込まれるわけにはいかない。スロットルを開いて力任せに押し返す。
数十秒前からストライクとイージスの激突は、手持ちの火器を使用した射撃戦から、ビームサーベルによる肉弾戦にかわっていた。
双方、火器エネルギーが枯渇したのだ。
それまで距離を開けて旋回しながらお互いの背後を取り合うとういうドッグ・ファイトから一転、
正面からビームサーベルを構えての激突という構図に切り替わる。
空中で切り結び、自由落下しながら時々スラスターを吹かしつつ突きかかり、地上に着地した隙を狙って斬りかかり、再び上昇して切り結ぶ。
目まぐるしく跳躍しながら空間の位置を入れ替え、死闘は続いた。
- 875 名前： 宇宙の嵐/9 投稿日： 2003/07/01(火) 23:39
- その瞬間は唐突に訪れた。
垂れ込める暗雲から一条の光弾が飛来し、イージスを直撃したのだ。
ビームは右肩に命中し、肩装甲を完全に砕いた。
旧ドイツ軍の急降下爆撃機「スツーカ」、その伝説の急降下を思わせる勢いで
ＡＡ搭載の多目的戦闘機「スカイグラスパー」が最大出力て突進してくる。
『キラ、援護するぞ！！』
「トール！！」
突然の電話は前触れもなく鳴り響く。今の無線がそうだ。
キラのヘリオポリス時代からの仲間、トール・ケーニヒの声が不意にコクピットに響いた。
普段のトールの声は落ち着いた、人を暖かい気持ちにさせるものだ。
だが、無線越しの声は戦闘の興奮でそれは一オクターブ跳ね上がり、キラを不安を煽る。
一瞬体勢を崩したイージスは予期せぬ襲撃者に対し、頭部イーゲルシュテルンをもって歓迎の網をはる。
キラはその火線に絡められるスカイグラスパーを鮮明に思い描き滝のように冷や汗を溢れさせたが、
ＭＳならともかく、速度を出した戦闘機にそうそう弾があたるものではない。
それに方向ベクトルがずれている。
スカイグラスパーは一気にイージスの脇を駆けぬけ、イージスの射程圏外の出た。
そこでゆったりと機首を上げた。
- 876 名前： 宇宙の嵐/10 投稿日： 2003/07/01(火) 23:41
- 「トール、なぜここに！」
暗に“去れ”という気持ちが言葉に混入された。
アスランとの一騎打ちを邪魔されたくない。それもある。
一方で、トールを気遣う面も大きい。ある女性との一件で悩むキラにいつも通り接してくれたのもトールだった。
自分とその女性との関係で色々アドバイスしてくれたのもトールだった。
彼は、キラにとって「友達」と言える存在だった。だから、死と隣り合わせの戦場に出て欲しくなかったのだ。戦場に出れば、死ぬ可能性は艦内とは比較にならないほど高まる。まして、相手はイージスにのるアスランである。トールの技量と優秀とはいえ所詮戦闘機では、アスラン相手に太刀打ちできないことは目に見えていた。
（出撃してしまったものは仕方ない。出来うる限り援護しながら後退しよう）
キラとアスランとの関係においては、トールは異分子だ。
それでも、異分子の乱入が目前の「アスラン」に固着されてしまったキラ思考に冷や水を浴びせる結果となった。
アスランと決着をつけようというのはキラの個人的な意志にすぎず、大局的にはＡＡを無事離脱させることが主目的なのだ。
キラは自分がここでアスランと戦闘し続けることで、ＡＡを間接的に拘束していたことを恥じた。
- 877 名前： 宇宙の嵐/11 投稿日： 2003/07/01(火) 23:42
- 「トール、撤退する！君は一足先に帰還してくれ！」
斬りかかってきたイージスの刃を受け止めると、キラはストライクを蹴り上げさせた。
予想外の攻撃に虚をつかれたイージスは後方に吹っ飛び、無防備な姿をさらす。
これで数秒は稼げる。それを視界の隅に確認しつつ、キラはストライクを反転させようとした。
『もらった！！！』
トールの鋭い高揚した叫び。
キラは全てを悟った。
トールはあの旋回を終えたあと、再びイージス攻撃の体勢に入ったのだ。
放たれた矢のように、イージスに向けて一直線に突進するスカイグラスパー。
「ダメだ！！離脱しろ！！」
反転にかかっていたストライクを無理やり引き戻す。
その為に、重心バランスが崩れたストライクは「僅かに」硬直し、キラの思う行動に入る動作が遅れた。
その差が全てを決めた。
『この邪魔者がぁぁぁぁ！！！』
キラの脳裏に、親友アスランの絶叫が響いた。
憎悪そのものと言える衝動的な思考に、キラは思わず耳をふさいだ。
ストライクとイージスの間に無線が開いているわけではない。
先程からの戦いでも、目の前のイージスにアスランが乗っていることはわかっても、声を聞いているわけではない。
まして、キラは伝説のニュータイプでもない。超能力者でもないから、他人の思考を読み取ったこともない。
しかし、キラは確かにアスランの叫びを聞いたのだ。
- 878 名前： 宇宙の嵐/12 投稿日： 2003/07/01(火) 23:45
- キラは知らなかったが、アスランの胸中は激情煮えたぎるものがあった。
その直接のきっかけはニコルの戦死だった。自分を庇い、キラのストライクを前に無残な死を遂げた純粋な少年。
アスランがキラを思っているように、ニコルもアスランを思っていた。
そしてニコルは、対艦ソードにコクピットごと真っ二つにされるという、悲惨な最期を遂げた。
それだけならよくある話だ。
戦記にはこの手の話がゴロゴロしているし、この戦争でも多くのザフト兵、連合兵、そして民間人がニコルの運命をたどってきた。
訓練や実戦で、アスランもそのような修羅場に遭遇したこともある。
問題は、倒した相手が「キラ」だったことだ。
もしニコルを撃墜した者が単なる連合兵ならば、アスランはここまで悩むことも引きずることもなかっただろう。
自分の大切な者が、同じく大切な者、守りたかった者を葬った。それが、アスランを内側から焦がす溶鉱炉を燃え上がらせた。
「相手がキラだから、殺す」
その戦いを邪魔をするものは何人たりとも許せなかった。
例え同僚のイザークやディアッカが介入したとしても、彼は許さなかっただろう。
キラと自分。その決着を汚した者は、殺す。
アスランは突進してくるスカイグラスパーを全ての表情を失った瞳でとらえた。
- 879 名前： 宇宙の嵐/13 投稿日： 2003/07/01(火) 23:46
- 「！！」
キラの前でイージスが体勢を立て直した。
硬直するストライクに襲い掛かるかと思いきや、ビームサーベルを保持した右腕ではなく、左腕を振り上げる。
「や、やめろ、アスラン！！！」
キラはアスランの意図に気付き、肺の底から絶叫した。
イージスの頭部は、ストライクにむいていない。
その双眼が捕らえるものは、イージスに向けて無謀にも直線飛行を続けるトールだ。
コンマ数秒に過ぎないというのに、キラとストライクの周囲だけ時間が引き延ばされた感覚をキラは覚えた。
スロットルを開き、加速。イージスの左腕を切り落とそうとした。
イージスが、滑らかな動作で左腕を振った。
僅かな差で間に合わなかった。
キラの瞳は、イージスに装備されたシールドが左腕を離れ、
虚空をブーメランのように回転しながら飛んでいくのを捕らえた。
- 880 名前： 宇宙の嵐/14 投稿日： 2003/07/01(火) 23:48
- 『ひっ………』
それがキラが聞いたトールの最期の声だった。
理解できないことが起こった時、人が漏らす声。
トールが見たものは、巨大なＭＳ用のシールドが、磁石のように自分に向けて吸い込まれてくる光景だった。
脳が理解すると同時に神経に情報が筋肉に贈られ、機体を傾けて回避を試みる。
だが、それが遅かった。エースと呼ばれるパイロット達は、この動作が無意識のうちに出来る。
コーディネイターは訓練なしにある程度のレベルにまで達しているし、ナチュラルといえでも訓練と経験次第ではコーディネイターパイロットを上回る例は限りなくある。
ただし、トールは生粋のパイロットではなかった。
シュミレーターをこなしただけに過ぎない。前回の初出撃では運良く生き残れた。それだけに過ぎない。
もっとも、それをトールが知ったところで、どうにもならないものだった。
現実には、トールの常人としては合格だが戦闘機パイロットとしては「未熟」な対応の結果として、
イージスが放ったシールドは目前にあり、数秒後にはスカイグラスパーに突き刺さる運命にあった。
- 881 名前： 宇宙の嵐/15 投稿日： 2003/07/01(火) 23:50
- ストライクのモニターの中で、イージスが放ったシールドはスカイグラスパーのコクピットを直撃した。
キラの脳は、確かにその中に赤いモノを認識した。
トール・ケーニヒという、「キラの友人だった者」を構成していたカルシウムや蛋白質や鉄分を含んだ液体やその他の「モノ」が飛び散ったのだ。直後、設計者たちが全く想定していなかった巨大質量物の運動エネルギーによってスカイグラスパーは空中分解し、トールの遺骸ごと、島の森林地帯に落下していった。
「………！！！！」
キラの中で何かが弾けた。
高々と掲げたビームサーベルを振り下ろし、イージスの左腕を切り離す。
ストライクのシールドをイージスの右脇腹と右腕の間に差し込んで右腕を殺し、脚部を切断する（イージスの脚部にはビームサーベルがある。油断はできない）。
そして…。
そして？
今、キラは絶対的優位に立っていた。
イージスに止めをさすことは簡単だ。その上に、トールを殺したアスランを殺すことも。
コクピットにサーベルを射し込めば。苦痛なく、アスランを葬り、トールの仇をとれる。
アスランへの想いが、ニコルという少年兵を手にかけた時の感触が、そしてトールへの想いが、
キラにコントロールスティックを引かせようとした。
- 882 名前： 宇宙の嵐/16 投稿日： 2003/07/01(火) 23:53
- （……フレイ！！）
不意に、赤毛の少女の姿がキラの脳裏に結ばれた。
なぜ彼女のことを思い出したのだろうか。イージスの装甲の赤が、トールの無残な最期を示す赤が、彼女の美しい髪を連想させたのかもしれない。
『私を守って…。あいつらをやっつけて…』
彼女の甘い体臭をかぎながら、彼女の柔らかい肌の温もりに酔いしれながら、キラはその言葉を聴いた。何度も聴いた。
キラは、当初、コーディネイターを相手に戦うことに躊躇した。その甘さが自分に折り紙をくれた少女を含め、自分が守ろうとした者を葬った。愛する少女の、大切な存在を守れなかった。
躊躇していたはダメだ。敵は倒せる時に倒さなければならない。
だが。
『可哀想なキラ。可哀想なキラ！！
いつも泣いて、震えて、ひとりで悩んで、いつも泣いて……！！』
一人の少女が自分にぶつけた二つの想いが、キラの頭で螺旋を描いた。
前者の少女ならば、この状況のキラに対し、間違いなく『こいつをやっつけて！！私を守りたいなら、こいつを殺して！！』と言うだろう。
後者の少女ならば、どうだろうか。前の少女と同じことをいうだろうか。
（違う……）
キラは否定した。わからないが、違うと思った。
少なくとも、その答えを聞くまで、今ここで無防備な相手を殺すことは出来ない。
- 883 名前： 宇宙の嵐/17 投稿日： 2003/07/01(火) 23:56
- キラはビームサーベルを跳ね上げ、コクピットを避けながらイージスを斬り裂いた。
たちまちイージスは推力を失い、破片を撒き散らしながら落下をはじめる。
イージスは金属の塊の癖に、隕石のようではなく、ひらひらと舞い落ちてゆく。
「…アスラン、どうした？」
アスランが脱出しない。血流がすとんと脳から落ちていくのがはっきりと自覚できた。
キラの喉がゴクリと鳴った。高度はあまりない。今脱出しなければ、イージスもろとも中のアスランも粉々に砕けてしまうだろう。
「脱出してくれアスラン！！」
キラは、先程まで殺し合っていたのに、まるで今も親友のようにアスランに呼びかけていることに気が付いた。
「脱出だ、脱出するんだ！！」
その時、イージスが僅かにスラスターを吹かし、コクピットを上空に向けた。
間一髪だった。アスランが躍り出るのを待っていたようにイージスは落下し、砂浜に落ちて粉々になった。
彼はランドムーバーらしき携帯スラスターを吹かし、島を覆いつくす森の中に消えていった。
キラは心から安堵のため息をついた。
キラは勝ち、アスランは生き延びた。
しかし、すぐに表情は曇った。彼の大切な友人が、命を落としたのだ。
「ストライク、帰投します」
アスランを回収しようかと思ったが、今、彼には会いたくなかった。
敵同士であったし、先程まで死闘を続けていたし、そして彼はトールを倒した。
たとえ戦争とはいえ。
今アスランに会ったところで、お互いを傷つけるだけだろう。
キラは、ＡＡに向けてストライクのスラスターを思いっきり吹かした。
やること、尋ねることは、山ほどあった。
モニターの中で大きくなるＡＡの巨体を眺めながら、キラは、
腕の中に抱きしめたあの赤毛の少女の柔らかさを思い出していた。
- 884 名前： 宇宙の嵐/作者 投稿日： 2003/07/02(水) 00:01
- お目汚しでしたらすみません。
キラがアスランとの決戦でＡＡに帰投していたら…というコンセプトで書きました。
ラストまで考えてありますが、フレイ様立直れるのかな…。
気長に応援していただけたら幸いです。
- 885 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/02(水) 06:56
- お疲れです〜。
宇宙の嵐、すごくいい感じですね。
キラフレの今後が実に興味深いところです。
続き、期待してます。
- 886 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/02(水) 11:24
- >>884
キラが拉致されなかった場合の物語・・・
フレイ様が出撃前に言えなかった言葉をキラに言うのだろうか？
フリーダムは出てくるのだろうか？
とにかく楽しみに待ってます( ´∀｀)ﾉ
- 887 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/02(水) 12:50
- >870-884
乙ふれ〜。
フレイ様を思い出してアスランを殺すのを思い止まるところが（・∀・）ｲｲ!!
新シリーズ、期待してます。
- 888 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/02(水) 17:58
- >>884
乙フレー！続きが気になります！期待！
>>886
オイオイ拉致ってw
- 889 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/02(水) 19:18
- >>884
乙フレー。イージスが自爆しない設定ですか。
じゃあセーフティシャッターのしようも当然無しか。
それはともかく続き期待してます。
- 890 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/02(水) 23:26
- ＞「いい、いい。若いっていいよなーホント。あー俺もピザくいてー」
この言い回し、すっげー少佐っぽい。
- 891 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/03(木) 14:22
- 気がついたら890。
次スレたても秒読みかｗ
- 892 名前： 宇宙、重なる想い/作者 投稿日： 2003/07/05(土) 12:21
- 題名何度も変更して申し訳ない。
最終的には宇宙で終わるつもりなので。
- 893 名前： 宇宙、重なる想い/18 投稿日： 2003/07/05(土) 12:23
- 時は僅かにさかのぼる。
燃えるような赤毛に陶磁器を思わせる白い肌、そして強い意志を秘めた瞳が印象的と言われるフレイ・アルスターは、強襲揚陸艦アークエンジェルの一画で、頭から毛布を被って震えていた。本来の気の強さを湛えている瞳には力がなく、それすら専ら瞼を閉じているため窺い知ることは出来ない。聴覚を遮断し固く目を瞑っていれば、周囲の状況が彼女を避けて過ぎ去ってくれるのではないかとフレイは期待していた。
実際は、願望を明確に否定するように、戦闘騒音が絶え間なくベッドを揺さぶり、否応なしに戦場にいることを彼女に突きつけていた。主砲を発射した時の反動、ミサイルが命中した時の振動、最大出力で推力を提供する忠実なエンジンの鼓動、そしてスピーカー越しに戦況を伝えるオペレーターの声。
フレイは怖かった。
戦いが。
死ぬことが。
（いや、死にたくない！私、まだ死にたくない！こんなところで死にたくない！！）
再び衝撃が、うずくまるフレイを揺らした。
彼女はここから逃げ出したかった。どこへ行くかなど考えず、とにかく走り出したかった。
一方で僅かに残された理性がそれを抑えた。
ここは大海原の中、味方からも見放された形の軍艦の中。高度数百メートルの軍艦の中。
周りにはコーディネイターの連中がナチュラルを葬ろうと跋扈している。
逃げ出せない。
童話そのもの暗い森の中に一人置き去りにされた幼子の様に。
踏みしめる大地はＡＡしかないのに、基盤は砂上の楼閣のように大きく揺れる。
永遠に続く地震のような床。
物理的だけでなく精神的にも何かに縋らなければ、フレイは壊れてしまいそうだった。
- 894 名前： 宇宙、重なる想い/19 投稿日： 2003/07/05(土) 12:25
- 「キラ！！」
ミサイルが直撃したのだろうか。
今までにない大きな轟音と揺れが襲った時、フレイは思わずキラの名前を叫んでいた。
コーディネイターの少年。ストライクのパイロット。彼女の身体を何度も抱いた、父の敵の一人。
それでも彼の名前を呼ぶことで、少し落ち着ける様な感覚を覚えた。
名前を呼んだ時、フレイが真っ先に思い出した記憶。
それは、フレイを抱いたあの腕の感触だった。
彼女を激しく求めたあと、大抵キラは先に寝てしまう。まるで、フレイを抱くために彼の生命力の全てを注ぎ込んでいるよう。そして役目を終えた雄の様に、ぐったりと、力尽きた様に寝てしまうのだ。
そんな時、キラは腕をフレイに絡ませていた。そうでない時も、手を握っていた。
（コーディネイターに寝る時まで抱かれるのはいやだ）
そう思ったフレイが腕を外して背を向けたまま寝てしまっても、目が覚めるとやっぱり彼女を抱いているのだ。
最初のうちはいちいち逃げていたフレイも、やがて面倒くさくなって、そのまま彼の腕を枕にして眠るようになった…。
フレイは赤面した。こんな時に、キラの腕の感触と、暖かさを思い出したことを恥ずかしく思った。
キラはコーディネイター。父を奪った憎むべき敵。
だが、フレイがキラに向けている気持ちは、丁度父に向けていた時の気持ちそのものだった。
（キラ、私を見て。私を守って。私の傍にいて…！！）
フレイは不思議だった。
いつからキラに対する想いが変化してしまったのだろう。
- 895 名前： 宇宙、重なる想い/20 投稿日： 2003/07/05(土) 12:27
- 『戦って、戦って、キラは死ぬの。でなければ、許さない！！』
フレイはその結論を刃のように心に抱いてキラに抱かれた。
体を許しても、心は許さなかったはずだ。抱かれる回数が増えるごとに、キラを縛る鎖は増えていくのだ。
その結果、キラは彼女の望むままの状況に置かれていた。
コーディネイター同士で、彼は戦っていた。
いや、戦いではない。殺し合いだった。
相手が単なるザフト兵ならば、それは戦争だ。だが、相手はキラの親友である。
キラは苦悩していた。その苦悩を味あわせることこそが、フレイの復讐だった。
なのに…。
急にフレイは悪寒に襲われた。
恐怖では無い。
うすうす気付いていた。
激しい戦闘は“復讐”の思念で覆い隠されていた核を明確な形でフレイに提示したのだ。
「私、私は…キラを……」
震えが止まらず、両腕を抱きしめる。
キラは情けないぐらい繊細な少年だった。だからこそ、フレイを信じ、フレイを守ろうと、彼女の策略にまんまと引っかかってＡＡに残り、戦場に赴いた。つまり、キラの苦しみの原因となったのはフレイなのだ。
キラを苦しめているのは、私。
キラを戦場に送り込んだのも私。
キラを友達や同胞と戦うように仕向けたのも私。
彼を死地に追いやったのも……。
「！！」
大きく目を見開いて、フレイは初めて実感した。
キラは死ぬかもしれないのだ。
父のように。
キラの腕とストライクならば、そうそう撃破されることもないだろう。
だが、あくまでも「予測」であって、確定された出来事ではない。
戦争は「ありえないこと」を確実に引き寄せる。
- 896 名前： 宇宙、重なる想い/21 投稿日： 2003/07/05(土) 12:30
- キラが死ぬこと。
私の前から消えること。
私のせいで死ぬこと。
父の様に、私の目の前で死ぬこと。
今まで考えもしなかったことが、「現実」という身近に掴める固体として急速に凝固する。
瞼を閉じた暗闇の中で「キラの死」がナメクジの様にぬらぬらと這い回り、彼女の領域を侵食していった。
「嫌、嫌、絶対に嫌！！」
父が散った時の記憶と、先程「また、後で」と小さく笑ったキラの表情が彼女の中で重なった。
父が、最期に感じたであろう苦痛と、恐怖と、無念。
それをコーディネイターの奴等にもあじあわせてやらねばならないとフレイは思った。
だが、その行為の結果を理解していたわけではなかったのだ。
実際に苦しみ、恐怖に耐えることの意味を、辛さを知っていたわけではないのだ。
キラは、それに耐えている。
しかも、自分で選んだわけではない。
フレイのために味わっているのだ。
フレイは毛布を跳ね飛ばして立ち上がった。
そうでもしなければ、恐怖で凍えた身体を奮い立たせられなかったから。
ここにいるわけにはいかない。
ここで、震えているわけにはいかない。
キラを迎えに行かなければ。
とにかく、キラと話さなければ。
心の底から湧き上がる衝動に身を委ね、瞼に焼き付く自分と他人の死の恐怖をふりほどくように、
フレイは揺れる艦内を走り出した。
- 897 名前： 宇宙、重なる想い/22 投稿日： 2003/07/05(土) 12:32
- ＡＡの艦内は迷路状に入り組んでいる。宇宙戦艦だけあって細かい気密構造が多く、外見以上の階が存在していた。
加えて人手不足もあり、格納庫付近へ赴くまでフレイは誰とも会わなかった。
『ストライク、デュエルを撃破！！デュエルは戦場を離脱します！！』
不意に艦内のあちこちに配備されたスピーカーが、オペレーターの弾んだ声を大音響で流した。
艦橋も湧いているのだろう、喜びのどよめきが伝わってきた。
フレイはひとまず胸の底に溜まった息を吐いた。
しつこいガンダムチームの一体を仕留めた。一体は先日仕留めたから、残るは二体。
父の死のきっかけともなったイージスと、砲戦使用のバスター。
ただ、二体とはいえ油断は出来ない。特にイージスは性能もさることながら、パイロットはキラの親友である（キラから聞いた）。
ストライクとキラの腕ならば撃退できると信じているが、相手が親友とあっては中々うまくは運ばないだろう。
運ぶ？
駆けながらフレイは自問自答する。
彼女が今もっとも望むことはなんだろう。
コーディネイターを殺すこと？パパの敵をとること？キラが殺し合うこと？
（いいえ、違う。キラが、キラが無事で帰ってくることよ！！）
その時、走る私の後ろから声をかけてきた者がいた。
「あれ？どうしたのフレイ？」
「トール！」
ヘリオポリスからの友人の姿がそこにあった。
- 898 名前： 宇宙、重なる想い/23 投稿日： 2003/07/05(土) 12:34
- 人懐こそうな顔に「意外なモノを見たな」といった表情を浮かべたトール・ケーニヒが彼女に追いついて話しかけた。
「格納庫に行くの？何の用？」
「…別にいいじゃない。私は主計課なんだから、戦闘中は暇なの。どこにいてもいいじゃない。
それより、トールも格納庫に用があるの？」
「うん。スカイグラスパーで出撃するんだ。今、マードック曹長が機体を整備しているはずだから」
「！！」
先日の光景がフレイの脳裏をよぎる。
食堂で、ミリィやカズィ、ＡＡのクルー達に囲まれて得意げに自分の体験を語るトール。
自信ありげに抱負を語り、ミリィにたしなめられるトール。
フレイは顔を曇らせた。彼も、彼女が志願しなければそのまま艦を降りていただろう。
こうして死と隣り合わせの状況に赴くこともなかっただろう。
『キラを戦場に繋ぎ止めるならば、ヘリオポリスの仲間などどうでもいい。戦争に巻き込まれようが知ったことか』
それは、確かにフレイが考えていたことだった。そして、改めてその暗い想いを突きつけられてフレイは慄然とした。
絶句した沈黙を、トールは別の意味で受け止めたようだった。
「フレイ、心配してくれてありがとう」
「え、私は…」
「でも大丈夫さ。フラガ大尉もいるし、それに俺の役目は分かってる。キラを援護することだからね」
「えっ、キラを！？」
餌を与えられた鯉の様に反応してから、フレイは赤面した。
恥ずかしくて情けなかった。
自分自身に対しても隠していたキラへの想いと心配を他人に見せてしまい、
そしてキラを心配する自分に改めて気付いてしまったから。
- 899 名前： 宇宙、重なる想い/24 投稿日： 2003/07/05(土) 12:37
- 俯いたフレイの肩に、トールが手を乗せた。
キラの手とは違った暖かさが彼にはあった。
「フレイ。僕は君とキラのことは知ってるよ。だって、ヘリオポリスにいたころから、キラからは何度も相談されたから。
それに、地球に降りてからもさ」
「……」
「サイとのことは、色々大変だと思う。けど、隠す必要はないよ」
「……違う、違うわ！」
フレイはトールの手を撥ね退けた。
「トールは何も知らないもの。いえ、キラだって知ってないわ！私の気持ちなんて、絶対！」
「わかるよ。お父さんの敵を取るつもりなんだろ？」
フレイにとって重大すぎる言葉。決して他人には知られたくなかった、隠し通してきた決意を、トールはさらりと発した。
たっぷり数秒の沈黙が舞い降りた。脳がその情報を認識し、示す意味を理解するまでの時間だった。
やっとのことで、枯れる喉を叱咤して声をつくる。それでもかすれた声を出すのがやっとだった。
「………どうして、知ってるの？」
「別に『知った』わけじゃないよ。多分そうだろうと推測したんだ」
フレイは探る様な、それでいてガラスの破片のような鋭さを含んだ視線でトールを睨みつけた。トールは構わず続ける。
「俺はキラだけでなく、サイとも話したんだ。
キラは「フレイが同情のつもりで僕と付きあってくれているんだ」と思っているみたいだけど、
『特に自分に落ち度は無いのに、フレイが急変した』ってサイは言ってた。
キラへの同情だけなら、サイに対する態度がここまで変わるとは思えない。
となると、君の変化の理由は、誰かの為じゃなくて、君の中に理由があるってことだよ。
時期も考えれば、その理由は、お父さんが亡くなったから。
違うかい？」
- 900 名前： 宇宙、重なる想い/25 投稿日： 2003/07/05(土) 12:39
- 「…よく推理したわね」
憎悪というか、拒絶というか、複雑な冷たい感情に支配されたフレイの言葉が紡がれた。
「すると、なに？
キラを無理に戦いに引き込んだから、彼に謝れってこと？
私に『キラに近づくな』って言いたいの！？
まさか、キラに告げ口したの！？」
食ってかかるフレイ。怒りよりむしろ、“キラに知られたらどうしよう”という恐怖の方が大きかった。
無理に強気を装うことで、自分の傷つきやすい内面を隠そうとしたのだ。
「うーん、そうじゃないんだな」
冷たい眼差しで睨みつけているというのに、凍て付いた視線を柔らかく受け止めるトール。
「フレイがキラと付き合った理由が100％それなら、そりゃ止めるさ。
反対もする。
キラにも忠告しなきゃと思う。
でもね、それだけじゃないと思うから」
フレイの表情に動揺が走った。
「正直、キラとフレイが別れたと聞いて安心した。
でも、キラのことを心配しているフレイを見たら、違うなと思ったんだ。
同情や利用だけじゃない、何かがあるなって」
白い頬に急激に血液が上り、見事に赤く染まった。
自分でも熱くなるのを感じ、思わず隠そうと俯きかげんになる。
トールが青ざめたり赤くなったり忙しいねと笑った。
「フレイ自身はわかってないと思うけど、君の中にある気持ちは復讐だけじゃない。
それをもう一度見つめたら、整理できたら、キラとのことは一歩進めると思うよ。
二人にとって、一番良い方向にね」
トールはそう言って肩を抱いた。
- 901 名前： 宇宙、重なる想い/26 投稿日： 2003/07/05(土) 12:42
- フレイは、自分の胸の中で熱い想いが湧き上がってくるのを感じた。
それを止める意志は既に失われていた。
想いは、ダムを決壊させる水流の様に、フレイを僅かに縛っていたプライドや躊躇を破壊し、一気に溢れさせた。
「……トール、ごめん、ごめんなさい！！
私は、私は！！パパが死んだから、パパを殺したコーディネイターを殺さなきゃと思って、だからキラを戦わせなきゃと思って、自分から軍に残って…！！」
彼女は全てをトールに打ち明けて泣いた。
胸の奥に溜めていたもの、それを全て彼に吐き出した。
キラにも、サイにも、ミリィにも、誰にも言えなかった想いを。
「私の、私のせいで、キラも、貴方も、サイも、ミリィも、カズィも、みんな、みんな…！！」
父か死んでから、フレイは本当の気持ちを誰にも打ち明けたことがなかった。
泣き崩れたかったのに、泣き喚きたかったのに、それを抑えて無理に振舞ってきた。
（本当は、私は誰かに慰めてもらいたかったのかもしれない。
誰かに「つらかったね」と言ってもらいたかったのかもしれない）
トールに抱きしめられる中、フレイはそんなことを考えていた。
それが無性に嬉しかった。
- 902 名前： 宇宙、重なる想い/27 投稿日： 2003/07/05(土) 12:43
- しばらくして、トールがゆっくり口を開いた。
「フレイ、確かに君が志願したから、みんな軍に残ったという面はある。
でもね、そのことで誰も君を責めたりはしないよ。
最終的にこの道を選んだのは、僕自身なんだから。
誰かを責めるなら、それは自分ってことになる。ミリィ達だって、それは分かっているさ」
「トール……」
「逆に、俺は感謝しているよ。ＡＡに残らずシャトルに移ったら、俺たちは一まとめにやられていた。
今、俺達が生きているのはフレイのおかげなんだから。
おかげで俺はミリィといられる時間が増えた」
そう言ってトールは笑った。笑いを収めると、やや真面目な顔に戻る。
「でも、キラには言わないほうが良いかもしれないな」
「うん…。そうかもね…」
「まっ、言う・言わないも含めて、その辺りのところはゆっくり時間をかければ解決できるよ。
なに、迷ったら、俺もミリィもいるから」
「ありがとう、トール」
フレイは涙を拭った。
フレイが父を失ってから、初めて心から励まされた一瞬だった。
その時、また艦内スピーカーが戦況を報告する。
『フラガ少佐、バスターを撃破！大尉機も被弾しました。帰投します！！
バスターは…投降です！！投降を確認しました！！』
「まずい。フレイ、行かなくちゃ！」
「トール、気をつけて…」
月並みな言い方だが、それしかフレイには言えなかった。
笑顔で頷き、トールは彼女の前から走り去った。
- 903 名前： 宇宙、重なる想い/28 投稿日： 2003/07/05(土) 12:49
- トールと別れた後、フレイは格納庫には直接入らず、ベランダのように張り出したデッキに登った。
そこから格納庫の喧騒をぼんやりと眺める。
部外者の者が入れば、整備関係者の作業に支障をきたすばかりか、その者自体に危険がふりかかる。
それぐらいは彼女も認識していた。
先ほど、撃沈寸前の酔漢のようによろめいたフラガ少佐のスカイグラスパーが着艦した。
誘爆炎上にそなえて耐火スーツを着用した応急班が控えていたが、爆発の恐れなしのアナウンスと同時に整備員がわらわらと傷ついた機体に走り寄った。コクピットからフラガ少佐が引っ張りだされる。
入れ替わるように、トールが搭乗したスカイグラスパーが発進した。
本来ならフラガ少佐が着艦する前に発進しなければならないのだろうが、機体整備に手間取ったようだった。
カタパルトへ誘導されていく機体をフレイは凝視していた。
キャノピーごしに彼女の姿を認めたトールが、親指で“幸運を”のサインを作る。
ぎこちなく親指あげて返す。
だが、反応を確認する間もなく戦闘機はカタパルトへと押し出され、フレイの視界から消えた。
どこか虚脱したような冷たい風がフレイを包んだ。
（キラ……トール……。無事に、帰ってきて………）
軍という組織、そしてＡＡという戦闘に特化したシステムの中では、フレイは無力だった。
彼女には、仲間の無事を祈ることしか出来なかったのだ。
- 904 名前： 宇宙、重なる想い/29 投稿日： 2003/07/05(土) 12:51
- それから何分が経過しただろうか。
二人の無事を願う内、格納庫の喧騒は別として、フレイは周囲が静かになったことに気が付いた。
ＡＡそのものの揺れが収まったのだ。それは、ＡＡが直接戦闘からは離れたことを意味していた。
（キラは…どうなったの？）
急に不安に襲われる。
窓の無い格納庫からは外を窺い知る術は無い。
戦闘機の修理に必死の形相で取り組む整備員達に声をかける勇気はなかった。
フラガ少佐も整備員達と何やらレポート片手に議論している。
フレイはため息をついた。
彼女に出来ることは、待つこと。
何の力もない自分が、これほど恨めしかったことは無い。
その時、鼓膜を無遠慮に揺さぶる調整音と共に、スピーカーが三度目の戦況を報告する。
フレイはもちろん、格納庫に詰めた全員が作業の手を休め、スピーカーに耳を傾けた。
ニュースは明るいものだった。
『ストライク、イージスを撃墜しました！！ザフト追撃部隊、完全に戦闘能力を喪失！！』
撃…の時点で、腹の底から搾り出される大歓声の上昇気流に乗って整備員達の帽子が宙を舞った。格納庫だけでなく、ＡＡの全ての区画で、同様の光景が展開された。乗組員達が自らの職務を忘れて喜びの雄たけびをあげた。
ヘリオポリスを後にして以来、しつこくＡＡと彼等を追いまわし続けたザフト軍。皮肉なことに、憎き敵は本来この艦に搭載されるべきＭＳだったのだ。みすみす敵に奪われ、運用される屈辱。そして自らに牙をむく恐怖。その輪廻がついに断ち切られたのだ。
歓声が鳴り止むことはなかった。
フレイは歓声にこそ同調しなかったが、安堵のあまり腰が砕けてしまった。
今日ほど、キラが出撃したことへの不安を抱いたことはなかったからだ。
父の敵でもあるイージスが撃墜されたことより、キラが生き残ったことが何よりも嬉しかった。
張り詰めていた空気が眼に見えて弛緩し暖かいものに変わっていくのを実感しながら、フレイはゆっくりと立ち上がった。
- 905 名前： 宇宙、重なる想い/30 投稿日： 2003/07/05(土) 12:53
- しばらくすると、キラが投降したバスターを回収して着艦するという連絡が入った。
一度ストライクが舞い降り、コーディネイターのパイロット（ディアッカとか言うらしい）をマニュピレーターで連れてきた。
たちまち保安隊が取り押さえ、連行する。抵抗はなかった。大人しく引き立てられていった。
（あれが、コーディネイター。ザフトの軍人。パパの敵の一人。でも…）
フレイは意外に思った。キラを心底心配した為だろうか。“憎きコーディネイター”を見ても別段何も感じなかったからだ。
ディアッカへの興味はそれで終わった。
比較にならないほど大切な人が着艦したからだ。
そちらに気をとられ、僅かに感じた疑問は直ぐに塗りつぶされた。
その原因となったモノ。それはストライクである。
酷く傷ついたバスターを抱きかかえ、さすがのストライクも苦労しながら着地した。
先に大破したバスターが運び込まれ、続いてストライクが搬入される。
いてもたってもいられなくなったフレイは、格納庫に脚を踏み入れ、デッキに固定されるストライクの元に駆け寄った。
キラは既にＭＳを降り、周囲の整備員に祝福の賛辞をうけていた。
複雑な表情だった。
ＡＡを守りきったことは確かだが、親友と直接刃を交えてきたのだ。
先日ブリッツを撃破した時のこともあるので、整備員達も控えめではあったが、それでも溢れ出る喜びは隠せない。
それがキラの表情を曇らせているのだとフレイは思った。
- 906 名前： 宇宙、重なる想い/31 投稿日： 2003/07/05(土) 12:55
- 「キラ……！」
フレイの呼びかけに、キラは弾かれたようにこちらを見た。
大きく目を見開き、フレイを凝視している。
「フレイ………」
それきり、お互い視線を絡ませたまま動けず、一言も喋れない。
事情を察した整備員達が苦笑いし或いは冷やかしながらストライクの方へ去った。
「………」
「………」
沈黙が続く。耐えられなくなったフレイが口を開こうとした瞬間、キラが先を制した。
「………ごめん」
「え？」
予想外の言葉。フレイは意表をつかれた。
「キラが謝る必要なんてないわ。…だって、謝らなきゃならないのは、私だもの…」
「ち、ちがうんだフレイ。そうじゃない、そうじゃないんだ……」
正直、予想外の展開に首をかしげるフレイ。
「どうしたの？キラ、お願い。言ってちょうだい」
「………トールが」
「トール？」
そこで初めてトールが帰還していないことに気付く。
哨戒飛行を続けているのだろうと思って、特に気をとめてはいなかったのだが。
「守れなかったんだ。トールが…。トールは、僕の、目の前で、アスランに………」
「え？」
フレイの中で、何かが凍りつき、音を立てて割れた。
キラが何かを必死で説明しようとしていたが、何も聞えていなかった。
トールが死んだ。
彼は戦死した。
つい５分前、初めて自分の悩みを打ち明け、優しく励ましてくれたトールが。
彼は、もういないのだ。
彼はただの炭化物と蛋白質の化合物になって、海に散ってしまった。
彼の魂は、二度とＡＡに戻ることは無いのだ。
- 907 名前： 宇宙、重なる想い/32 投稿日： 2003/07/05(土) 12:57
- 「…どういうこと？」
フレイの意識を引き戻した声は、彼女の背中からやってきた。
すっかり血の気が引いた顔ながら、目は血走っているミリィがいた。
トールが搭乗したスカイグラスパーの認識コードがロストしたことに、慌てて艦橋から駆け下りてきたのだろう。
肩を大きく上下に揺らしていた。
『あ……』
二人は同時に絶句した。
何と答えていいかわからなかった。お互いが答えを求めて、困惑した顔を見つめあう。
「ねえ知ってるんでしょ！？答えなさいよ！！」
フレイが止める暇なく、ミリィがキラの襟首を掴み上げた。
細身の身体に、どこにこれほどまでの力が潜んでいたのだろうと思わせる程だった。
「ミリィ、ごめん。トールを、守れなかった…」
（キラの馬鹿！！）
フレイは胸の中でキラをののしった。
キラはミリィから顔をそむけ、視線を泳がせながら答えたのだ。
「うそ、嘘よ！！キラ、嘘つかないで！！あなた、いたんでしょ！！
トールが死ぬわけ、死ぬわけないじゃない！！」
激しく食いかかるミリィに、キラはすまなさそうに「ごめん」とぽつりと漏らした。
頬を打つ、平手打ちの乾いた音が、格納庫の喧騒を押しのけて幾重にも響き渡った。
- 908 名前： 宇宙、重なる想い/作者 投稿日： 2003/07/05(土) 12:59
- ようやく３０話終了。
次はアラスカだぁ！！
長編投下すいません……。
- 909 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/05(土) 13:22
- >>908
乙フレー。
フレイ様切なすぎです。
震えてるフレイ様萌え。
次回投下が待ち遠しいです。
- 910 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/05(土) 13:22
- >908
乙〜。
男を上げた途端に散らされるのがガンダムのお約束…。
- 911 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/05(土) 13:57
- >>908
乙〜｡･ﾟ･(つД`)･ﾟ･｡
- 912 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/05(土) 15:26
- >908
乙〜！おもしろかった！続きを期待してます。
トールイイヤシだなぁ・・・つД`）
- 913 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/05(土) 16:18
- >>908
乙フレ〜
トールが戦場で生き急いでいたのには理由があったのね・・・
うあ゛ぁあ ･ﾟ･(´Д⊂ヽ･ﾟ･ あ゛ぁあぁ゛ああぁぁうあ゛ぁあ゛ぁぁ
- 914 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/07(月) 00:12
- 職人さんはまだでつか？
- 915 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/07(月) 00:35
- 書いてもいいのか……？
どうも完結しないかもしれないのだが……
てか続きが思いつかん
- 916 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/07(月) 00:51
- >>915
キボンヌ！！
- 917 名前： 約束 一話 投稿日： 2003/07/07(月) 02:06
- 俺の名ははアイザック
ザフトクルーゼ隊の一人だ
悪運の良さと普段の運の悪さは天下一品と名が高い
今日は隊長に呼ばれている、良くない前兆だ
あの変態仮面、顔だけでなく普段の行動も直属の俺さえ隠しているうえに
隠密行動中の身代わりに俺を使いやがる、今日もろくでもないことだろうなぁ……
「アイザック君は信用できるから彼女の相手をしてやって欲しい
囚われの姫君はとても退屈しておいでだ」
「と…囚われの姫君ですか？」
「詳しいことはいえないがとても重要な人物なんだ、くれぐれも失礼のないように
あと逃がしてはならないよ、逃げる場所もないがな」
「はぁ……」
（いつも隊長はこれだ、ろくな説明もなく何か面倒なことは俺に押し付ける
ニコルが死んでからは特にその傾向が強くなったな……
しかしこれは今までになく嫌な予感がした……妙な勘が鋭くなってる、泣きたい）
アイザックは疲れた顔を隠す様子もなく姫君とやらが囚われているらしい賓客用の部屋の鍵を解除し入った。
ドアの先には一般的なザフト艦賓客用の部屋に置いてあるソファー越しに銃を構えた赤毛の少女の姿があった
「っ……！」
アイザックはとっさに飛びのき耳を澄ました
部屋から誰かが飛び出し廊下を駆けていく音が聞こえた
「アレが姫君かよ……勘が当たるな」
（あんな無責任で面倒なことは部下にまかせっきりで何を考えているか分からない隊長の命令であろうと逃がすなと命令を受けているからには逃がすわけにはいかない
しかしやはり面倒な客みたいだな……）
心の中で悪態をつきつつアイザックは足音を追った
相手は銃を持っている、いくら軍人としてアイザックが有能であろうとそれはＭＳ操縦技術についてだけだ、
ある程度の覚えがあるとはいえ素手で銃を持った相手を捕まえることなど相当な危険を伴うが、まるで何も心配してないようにアイザックは足音を追った
「そら……チェックメイトだ！大人しく捕まりな艦内で逃げられはしないぞ」
「うるさい！この拳銃が見えないの？！撃つわよ！」
アイザックは返事をしないで射線から身をかわしつつ取り押さえようとした
「っ！」
床が濡れていて足を滑らした
少女の持っている拳銃の銃口がアイザックを捕らえる
（チィッ……今日こそ死んだかな）
アイザックは覚悟を決めて目を閉じた
（………………？撃たない？）
数秒後、撃たれないのに不審を感じたアイザックが目を開けると
拳銃を構えたまま目を閉じて全身を震えさせている少女がいた
「撃たないのか……？」
言ってから自分を間抜けだと思った、この発言で少女が覚悟を決めて撃ったら自分は死ぬだろう……
「うるさい！動かないで、本当に撃つわよ！」
しかし少女は目も開けずただ拳銃を構えているだけだ
既に彼女の銃口は震えて撃ったとしてもアイザックではなく隣の床に穴を穿つだろう
そこで唐突にアイザックは囚われの姫君なる言葉を思い出した
（なるほど姫君か……）
すばやく起き上がり少女の腕のひねり上げ拳銃を奪う
「嫌！離しなさいっ、離して！」
「いいから大人しくしてくださいな、部屋に着いたら離してあげますよ」
暴れる少女を捕まえたまま賓客室に向かいながらアイザックは思った
（やれやれ……そういえば昔から俺こんな役回りばっかりだったよな……）
- 918 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/07(月) 02:08
- うわ、分けずに投稿してみたらできてしまった……
すいません、見づらい……
アイザック君オリキャラです
フレイ様監禁中の間の何か欲しいなと思って書きました
次、書けるかなぁ……
次駆ければ最後まで書けるのだけど……
- 919 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/07(月) 02:21
- >>918
乙フレ！
フレイ様同様、最後まで頑張るのだ！
- 920 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/07(月) 12:47
- >917
乙ふれ〜。
フレイ様の相手をする役目のやつが一人くらいいてもいいよな。
つーわけで、続編に期待しとります。
- 921 名前： 宇宙、重なる想い/作者 投稿日： 2003/07/07(月) 13:42
- 今回投下は第32話に相当します。
オリジナルＭＳもやっぱり出しちゃいます。
といって、フレイ様は多分乗らないと思うので。
- 922 名前： 宇宙、重なる想い/33 投稿日： 2003/07/07(月) 13:44
- 「トールを、トールを返して……！！」
螺子一つ床に落すだけで、その音が幾重にも木霊しそうな静寂の中、ミリィの嗚咽だけが途切れることなく続いていた。キラはもちろん、マードック達も恋人を失って泣きじゃくる少女をどう扱うべきかわからず、見つめることしか出来なかった。
「……」
座り込んで涙するミリアリアにフレイは概視感を覚えた。
その姿は、まるで父を失ってキラに心の底からの憤怒と絶望をぶつけた時の彼女そのものだった。
「……いこう、ミリアリア」
震える小さな背中をさすりながら肩を貸す。
医務室に連れて行き、鎮静剤を投与してもらおうと考えたのだ。
手を貸そうという整備員達の申し出を断り、一人でミリアリアを支える格好になる。
二人が通路に消えるまで、誰もその場を動こうとしなかった。
- 923 名前： 宇宙、重なる想い/34 投稿日： 2003/07/07(月) 13:46
- 夜のとばりが海面を覆いつくす中、ＡＡは静かに巨体をアラスカ基地へと進めていた。
航空灯すら点滅させず、厳重な灯火管制をしいている。
だが、一見平穏な外見とは裏腹に、内部ではお祭り騒ぎが続いていた。
機関士やオペレーター、当直といった艦の維持に欠かせない人々を除き、非番の兵士達は総出で宴会を楽しんでいた。
もちろんザフトに奪われたガンダム全機を撃破したことのお祝いである。
従来なら厳しく制限されている飲酒も僅かながら認められ、食堂や個室では久々の笑い声がつきなかった。
その中に、空気に馴染めない男がいた。
キラ・ヤマトである。
戦闘終了後、パイロットは戦闘経過や撃墜状況をまとめた戦況報告書を提出しなければならない。
だが、今のキラには出来なかった。整備員達から逃げるようにロッカールームに駆け込み、急いで制服に着替えたばかり。
キラはこれからどうしようかと思案した。
お祭り騒ぎにつきあうつもりは毛頭なかった。
親友を手にかける寸前まで戦い、そしてかけがえのない友人までも失ったのだ。
とても喜ぶ気分にはなれない。
ため息を一つ。
キラは誰もいない通路を自室へと歩いた。
廊下の空気までもが明らかに弛緩し、お祭りムードに溢れている。それが忌々しい。
（トールが、死んだっていうのに…！！）
唇をかみしめる。
先程、格納庫での情景が鮮明に思い起こされた。
ミリアリアになんども襟首をつかまれて揺さぶられ、頬を張られた。
半狂乱になったミリアリアに、キラは何も声をかけられなかった。
虚脱状態、虚ろな瞳で「トール…」と呟くミリアリアの姿は、
キラの心に深い傷となって焼け付いた。
- 924 名前： 宇宙、重なる想い/35 投稿日： 2003/07/07(月) 13:48
- （でも…でも…！！）
キラは拳を握り締めた。ＡＡのクルーにとって、そして地球連邦軍にとって、トールの戦死はイージス・バスター・デュエル撃破の代償としては充分すぎる代価だった。彼とて、僅かながら戦場に身をさらしてきた兵士である。「最小限の被害で最大の戦果を挙げる事」が戦場での至上命題とするなら、トールとスカイグラスパーの喪失が“最小限の犠牲”であることは理解できたが、理性と感情は違う。ましてトールはキラの数少ない話し相手であり、友人だった。
所詮、トールの戦死は、キラやミリアリア達にとっては大きな衝撃と悲しみを伴うものでも、連邦軍というモノから見れば「ガンダムを無事無力化できた。戦闘機が一機撃墜された？安いものじゃないか」なのである。
その想いは、兵士達とすれ違う度に「少尉殿のおかげでＡＡは守られました。感謝します！！」などど感激される度に深まった。
彼等が純粋にキラに感謝していることが分かるだけに痛かった。
逆に「少尉殿、イージス撃破おめでとうございます！！」とか「やりましたね、撃墜さん！！」とか
キラの傷に塩を塗り込むような発言の方が気が楽だった。
靄がかかったようにぼやけるほど疲れた頭脳で、別のことも考える。
もし、自分とトールの立場が…生還したのがトールで、戦死したのがキラだったらどうなるのかと…。
導かれた結論に、愕然とした。
ＡＡは大騒ぎになるだろう。今日とは別の意味で。
トールの戦死はＡＡにとって見過ごされるほどのことでしかないが、キラの…ストライクの場合はそうはいくまい。
ＡＡの「ガンダムをアラスカ基地まで送り届ける」という最終目的は崩れ、戦力的にもうザフトの襲撃を撃退できる力はない。
ＡＡは一瞬で全艦お通夜状態になるかもしれない。
- 925 名前： 宇宙、重なる想い/36 投稿日： 2003/07/07(月) 13:49
- （僕と…トールの違いは…なんなんだ…？）
簡単な答えだ。
キラはストライクに乗っている。トールはスカイグラスパーに乗っていた。
それだけだ。
地球軍の切り札ともいうべき試作ＭＳと、いくらでも補充がきく戦闘機。
ＡＡ防衛能力の要であるＭＳと、そのサポートに過ぎない戦闘機。
その差は明確だ。
では、なぜキラはストライクに乗り、トールは戦闘機だったのか？なぜ二人の立場は逆ではなかったのか？
キラは、自分でも認めたくない結論を出した。
「僕が…コーディネイターだからか…。
僕が、コーディネイターで、ＭＳをうまく操縦できるからか…。
僕がＭＳに乗っていたから…だから、僕は生き残って、トールは死んだのか…！」
彼の結論には相当な飛躍がある。
キラがコーディネイターであるが故、ＭＳの操縦がＡＡの中では一番優秀であることは事実だ。一方で、キラがコーディネイターであることとトールの戦死とは全く関係がない。トールの搭乗機が航空機だったからでもない。むしろ大気圏内では、機動力で大きく上回る航空機の方が非常に有利ともいえた。ＭＳは航空機ではなく、「戦車には真似の出来ない火力と機動力と制圧力を持っている」という点で陸戦でも猛威を振るっているのであり、航空機に対する相性は良く無い。航空機がＭＳを撃破した例は、ザフトの地球侵攻以来そこら中でゴロゴロしている。
その例が同時に出撃したフラガだ。被弾したとはいえ、バスターを撃破している。
- 926 名前： 宇宙、重なる想い/37 投稿日： 2003/07/07(月) 13:51
- トールが死んだ理由は大きく四つ。
天候が悪く、イージスを視認するために雲の下を低空飛行を強いられた。
戦闘機でありながら一撃離脱に徹せず、攻撃に固執した。
命中に固執するあまり、イージスに対し同ベクトルのまま不用意に接近してしまった。
イージスのパイロットがアスランだった。
つまり「戦争だから」の一言につきる。いつくかの不運と小さなミスが重なった結果にすぎない。
しかし、キラはどうしても「戦争だから」という結論に達することが出来なかった。
ある意味では、キラは「戦争」という現実を認めようとしなかったのかもしれない。
あくまでもヘリオポリス時代、平和だった生活の延長としてＡＡでの生活を解釈し、
「僕は戦争にまきこまれただけなんだ」と被害者意識を持つことで戦争への馴れを押し止めようとしたのかもしれない。
キラの無意識下での葛藤はともかく、キラは到底軍人とは言えない雰囲気を持ち続けていた。
まして、最全線で命のやり取りをするＭＳパイロットとしては異質だった。
フラガに言わせれば、「これほど出撃しているのに、なんで学生気分が抜けないんだ？」と言うわけだ。
戦争と距離をとり続けることの代償は、非常に辛いものだったが。
「僕は、なんで、コーディネイターなんだ。
なんで、僕だけが、こんなにつらい思いをしなけりゃならないんだ…！！」
キラは壁にもたれて嗚咽を漏らした。
暗い怒りが腹の底から湧き上げ胃を満たすが、それをどこにぶつけていいかわからない。
直接手を下したアスランか。
彼の所属であるザフトか。
トールを出撃させたマリュー達上層部か。
ＡＡを敵地に放り出した連邦軍か。
そして、トールを、自分自身を戦いに引きずり込んだフレイか
- 927 名前： 宇宙、重なる想い/38 投稿日： 2003/07/07(月) 13:53
- 「う、うぁぁぁ！！！」
キラは壁に拳を打ち込んだ。
流石のコーディネイターのストレートといえども、戦艦の壁は破壊できない。
傷一つ付かない。
傷つくのはキラの方だ。
痛みがキラの腕の神経から全身へとを走りぬけ、その痛みなぜかキラの怒りを増幅させて拳を振るわせた。
「僕が、戦おうとしたのは、みんなを、みんなを守ろうとしたからなのに……！！
なのに、僕は、フレイを……。僕は、僕はぁぁぁぁ！！」
キラは一瞬でもフレイを責めようとした自分を許せなかった。
自分で選んだ道なのに、その責任をフレイに負わせようとしたことが許せなかった。
「うっ、うっ、うぁぁあ”ぁぁぁ…！！！」
ついに床に膝をついて泣き出してしまう。
キラは温もりが欲しかった。
自分の傍にいて、自分の悩みも泣き言も嫌な顔一つせず受け入れ、自分を抱きしめてくれたあの温もりと感触が。
「うっ、うっ、ぐぅぅぅ」
真っ赤になった眼を何度もこする。
その温もりを手放したのは自分なのだから、自分で立ち上がらなければならない。
「わかっていたさ。わかっていたはずなんだ…。でも…！！」
- 928 名前： 宇宙、重なる想い/39 投稿日： 2003/07/07(月) 13:55
- キラは、フレイが自分に向ける想いが同情に過ぎないと思い込んでいた。
キラが欲していたのは、同情されることではなく、普通の男女関係…それこそ、病んだ時も悩める時も共に歩む…だったから、
フレイが自分に抱く気持ちが同情にすぎないと知った時（本当は違うのだが）はショックだった。
「同情されている」だけのフレイには傍にいて欲しくなかった。
距離をとることが、あの時唯一の道であり、正解だったとキラは思う。
だが。
フレイが傍にいないことが、今のキラには耐えられなかった。
厳しく指摘するなら、フレイで無くても、彼の悩みを聞いてくれる者なら誰も良いのかもしれない。
だが、そんな者が宇宙戦艦という閉鎖環境の中でどこにいるというのか。
彼を少しでも理解している者が、周囲全てがナチュラルという環境の中でどこにいるというのか。
唯一の理解者は自ら別れを告げた手前、物理的には近距離に存在したとしても精神的には地球とプラントぐらいの距離があった。
もう一人、他人とは思えない少女は物理的に遠く離れたオーブである。
キラは孤独だった。その事実を認識し、彼の精神は悲鳴をあげた。
（ダメだ、今日は一人は耐えられない。睡眠薬を貰わないと……）
自室に直行して休むつもりだったが、この精神状態では眠れない。
壁に体重を預けながらヨロヨロと立ち上がる。
キラは、医務室の方へと身体の向きを変えた。
- 929 名前： 宇宙、重なる想い/40 投稿日： 2003/07/07(月) 13:56
- フレイ・アルスターはミリアリア・ハウを支えながら歩いていた。
「ミリィ……」
眉をよせながらミリアリアを気遣う。
返事がない。
聞えてはいるが、ただそれだけで、意味のある言葉としては理解されていないのだろう。
一つ、小さく息を吐いて視線を元に戻した。
（…私も、こうだったのかなぁ）
父が彼女の眼前で死に、半狂乱になった時のことを思い出す。
あの時は、何もできなかった自分を呪うと同時に、コーディネイターへの怒りを全身で感じていた。
キラへは、たまたま怒りのはけ口を現れたということでぶつけたという面が大きい。
それは、はたしてキラがコーディネイターだったからか。
それとも「キラ」だったからか。
（わからない）
フレイは小さく首を振った。
彼女も、キラ同様考えを巡らせていた。
もし、父を殺したのがナチュラルだったら、キラを責めたのかと。
（絶対責めてたわ）。
フレイは自信をもって断言できた。
キラがコーディネイターだから許せなかったのか。キラがキラ故に許せなかったのか。
その答えはフレイの中で固まりつつあった。
- 930 名前： 宇宙、重なる想い/41 投稿日： 2003/07/07(月) 13:59
- そうこうしているうちに、二人は医務室に到着した。
ノックをするが返事がない。覗き込むが、軍医がいる気配はなかった。
「肝心な時にいないんだから。ミリィ、入って」
とりあえずミリアリアを椅子に座らせ、身近な棚を開けはじめた。
「安定剤、安定剤っと。ここは書類か。カルテなんか見てどうするのよ。
ここ？違う、ペーパーナイフか。ここかな？あ、あるけど…錠剤の名前わかんないなぁ。うーん」
薬は見付けたが、薬学の知識がないフレイにはさっぱりである。
何かわからない薬を友人に飲ませる趣味は彼女に無い。
「ミリィ、ごめんね。お医者さん探してくるわ。ちょっと待ってて」
フレイはミリアリアを残して通路に出た。
もしフレイに過失があるとすれば、ミリアリアを一人残したこと。ペーパーナイフを放り出していったこと。そして、奥のベッドに誰がいるかを確認しなかったことであろう。これは、彼女自身が人間的に未熟であり人間関係では不器用なことをフレイが自覚し始めていたことの裏返しだった。自分ひとりでミリアリアを慰める自信が無かったのである。また、ミリアリアの置かれた状況が過去の状況に重なりすぎ、いたたまれなくなったこともある。
医務室を出たフレイは、通りかかった兵士達に医師の行方を尋ねたが誰も知らなかった。
当然である。医者は、マリューらとコーディネイターの今後の処置について検討していたのだから。
「どうしよう。このままミリィを一人にするわけにはいかないわ。
もう、あの医者どこに行ったのよ！！」
焦りの色を隠せない。医者を探し続けるか、ミリアリアの元に戻るか天秤にかけ、フレイは結論を出した。
もう少し、探してみよう。決意を固め、別の通路に踏み出そうとした。
- 931 名前： 宇宙、重なる想い/42 投稿日： 2003/07/07(月) 14:00
- 兵士二人組が通りかかった。気分が高揚しているためであろう、かなり大声で陽気に話している。
聞く気は毛頭無かったフレイだが、嫌でも耳に入ってしまった。
「そういや、バスターのパイロットはどうしたんだ？捕虜にしたんだろ？」
「ああ、ヤツなら医務室らしいぜ。我等がヤマト少尉に撃墜された時、負傷したそうだ」
「なんだよ、営倉にはいってねぇのか。物騒だなぁ」
フレイは会話を最後まで聞かずに走り出した。
彼女は、結果的にミリアリアをコーディネイターと二人っきりにしてしまったのだ。
（私の馬鹿！なんでミリィの傍にいてあげなかったの！？
医者が何よ、薬が何よ！！
なんで逃げたのよ、私は！？）
ミリアリアを気遣ったつもりが、最悪の場所に連れてきてしまった。しかも、自分の弱さのために、彼女を一人きりに、密室にコーディネイターと二人きりにしてしまった。
脚がもつれ、何度も倒れそうになるが、前のめりになりつつも走り続ける。
医務室までの距離が実際の何倍にもの距離に伸び、時間は更に延びた気がした。
「ミリィ！！！」
赤い髪を振り乱し、出てきたばかりの医務室に駆け込んだ。
フレイの瞳が傍目にもわかるほど見開かれた。
フレイが見た光景は…
- 932 名前： 宇宙、重なる想い/43 投稿日： 2003/07/07(月) 14:02
- 「殺してやる！！」
凄まじい形相でディアッカを追いまわすミリアリアの姿だった。
フレイは息を呑んだ。ホラー映画は興味半分何度か見たことがあるが、それらに登場したゾンビや怪物達が裸足で逃げ出すほど目の前のミリアリアは怖かった。鬼気迫るものがあった。
右手には先程フレイが見つけたペーパーナイフが握られていた。
左手は軽く柄に添えられ、いつでも相手を刺し貫ける体勢をとっている。
いつも優しさを湛えていた瞳はつりあがり、眉間によった皺と相まって憎悪と怒りに満ち溢れていた。
それなのに、唇は新鮮な乙女を前にしたドラキュラかエルゼベエト・バートリ女王のごとく微笑むように僅かに笑みの形に開かれていた。
フレイは、唇のあまりに鮮やかで生々しい朱色に思わず目をそむけた。
「お、おいおい！姉ちゃん、目瞑ってないで、こいつをなんとかしてくれよ！！」
褐色の肌に金髪の、どちらかといえば少年という風貌が似合う青年兵士。
どこか軽薄というか女好きという感触をうけたフレイだが、今の懇願は情け無いほど彼の本心を表していた。
「俺は手錠で繋がれているんだ！かわすだけで精一杯なんだよ！」
その通りだ。
コーディネイターの運動神経は抜群だ。
彼…ディアッカ…の両手が自由だったならばミリアリアのナイフを軽やかに回避し、一撃の元倒せただろうに。
- 933 名前： 宇宙、重なる想い/44 投稿日： 2003/07/07(月) 14:05
- 「なんで、なんであんたみたいなコーディネイターが生きてて、
トールが死ななきゃならないのよ！！」
ミリアリアが大上段から振りかぶった。
ナイフは幸いにもディアッカの頬を軽くかすめただけだったが、手錠につながれていたことを忘れていたようだ。
「うわっ」バランスを崩し、スローモーションのように間延びした時間の中で床に仰向けに倒れ込んでしまう。
すかさずミリアリアが馬乗りになる。
もがくディアッカだが、両手を後ろに固定された状態でのマウントポジションは、さすがのコーディネイターにも分が悪すぎる。
「やめて、ミリィ！！」
ミリアリアが止めの一撃をさそうとナイフを構えた瞬間、ようやくフレイの呪縛が解けた。
ミリアリアに後ろから飛びつき、ディアッカの上から振り落とす。二人の少女はごろごろと床を転がった。
「なぜ！？邪魔しないでフレイ！！こいつはトールの敵なんだから！！こいつのせいで、トールが！！」
「ミリィ、落ち着いて！こいつも殺しても、何の解決にもならないんだから！」
「そうだっつうの。全く、ナチュラルは頭が……」
一旦ミリアリアが離れたことで、ディアッカに余裕が戻った。
高まった緊張と空気をほぐそうと、彼なりに冗談を言おうとしたのだが、それが災いした。
ミリアリアは抱きついたフレイに「ミリィって、コーディネイター？」と思わせる程の力で振りほどくと、
油断したディアッカに突進する。
「あっ」
フレイが、ディアッカの肩に刺さったナイフを認識するのには一呼吸必要だった。
ミリアリアが無造作にナイフを引き抜く。
抜いた傷口から一瞬鮮やかな筋肉が覗き、それはたちまち火山の噴火口の様に溢れだした血液に覆い隠された。
褐色の肌を行く筋も伝わって血だまりを作っていく。
もう軽口も冗談もあったものではない。
呻くディアッカの額に冷や汗と脂汗が滝のように流れているのをフレイは見た。
（コーディネイターも、痛いんだ……）
- 934 名前： 宇宙、重なる想い/45 投稿日： 2003/07/07(月) 14:07
- ミリアリアが再びナイフを構えた。血を見たことで、ナイフを刺したことで、フレイはミリアリアが動揺するかと思いきや、逆に腹が据わったようだ。興奮した様子はなく、冷徹にディアッカを見据えている。
「あ、あああああああ゛あ゛あぁぁぁ！！！」
気合と共に、再びナイフを振り下ろそうとするミリアリア。
ディアッカは全く反応出来ない。
その瞬間、フレイは自分でも驚くほど自然に身体を動かしていた。
腕を広げてミリアリアとディアッカの空間にすりこませる。
フレイの二の腕を、そこだけが熱い湯に漬かったような感触が走り抜けた。
皮膚だけでなく、腕の内部にもその熱さが達している。
（切られた…）
自覚すると同時に、猛烈な痛みと熱さが左腕に集中した。
薄い赤に白色を混入した、若干彩度の高い人工的な色の女性用兵士服がみるみる“ナチュラルな”濃い赤で染まっていく。
「ミリィ、お願い。ナイフを置いて」
「あんた……俺を、かばってくれるのか？
って、怪我してるじゃねぇか！！血出てるぞ！！」
ディアッカが慌てた声をあげた。美少女に反撃する暇もなく一方的に狙われ、しかも美少女が自分を庇って負傷するという状況は、ナチュラル相手とはいえ女好きな性格が許せなかったようだ。こんな手錠さえなければと、歯軋りする。
痛みの中で、フレイはその様子を少し好ましく思った。
「フレイ、どきなさいよ」
「いやよ」
ミリアリアの冷たい声がフレイを貫いたが、フレイは動じなかった。
- 935 名前： 宇宙、重なる想い/46 投稿日： 2003/07/07(月) 14:09
- 「どいて」「いや」
何度か押し問答を続けていると、ミリアリアが冷笑した。
「なによ。今更良い子ぶらないで。アンタ、コーディネイターが憎いんでしょ？
ならアンタも殺せばいいじゃない。一緒にヤル？」
ミリアリアの言葉は確かにフレイの一面を突いていた。
「なんでコーディネイターの味方をするの？相手はアンタのパパの仇なんでしょ？
仇を取るって誓ったんじゃないの？」
「わかってる。でも…！！」
赤い髪が揺れた。
「今は、ミリィを止めなきゃって思うの！ミリィ、こんなことはやめて！！」
「………」
フレイは頑として動こうとしなかった。
スフィンクスのごとく、鋭くミリアリアの目を見据えたまま血が滴る腕を広げている。
ミリアリアはしばらくフレイの表情を無表情に凝視していたが、何かに合点がいったようだ。
おかしくてたまらない、その言葉通り腹を抱えて笑い出した。
「わかったわよ、フレイ。あんたの魂胆。
我侭なアンタがなんで人間愛に目覚めたか不思議だったけど、納得したわ。
キラを好きになっちゃったんでしょ」
「！！！」
「図星かしら？」
「ち、違うわ！！」
必死に否定するが、真っ赤になった頬を見てどこが信用できる解答だろうか。
またミリアリアが笑った。
「アハハハ、あんたってホント単純ね。
散々コーディネイターが憎いとか殺すとか言っておきながら、
好きになった相手がコーディネイターならすぐに宗旨変更しちゃうんだから」
「別に許したわけじゃないわ」
（こうなったら開き直るしかないわ。時間を稼いで誰かが来るのを待つのよ）
フレイは当面の方針を決めた。
- 936 名前： 宇宙、重なる想い/47 投稿日： 2003/07/07(月) 14:11
- 「今もコーディネイターが憎いことに変わりは無いわ。でもね、目の前で死なれちゃ気分が悪いのよ。だからこいつを庇うの。文句ある？」
ミリアリアは鼻で笑った。
「アンタの口から、そんな優等生みたいな台詞が出てくるなんて信じられないわ。
いいわよ。本気でそいつを庇うのね？」
「アンタが殺す気ならね」
挑戦的なミリアリアに、自然とフレイも口調を合わせてしまった。
双方無口になり、部屋の緊迫感が一気に増した。
ディアッカはどうしていいかわからず、フレイの後ろ姿と殺気だったミリアリアに視線がオロオロと動いた。
「わかった。ならいいわ。そいつの前にアンタを殺してやる！！」
ミリアリアが叫ぶなり、ナイフを両手で構えた。
（駄目だ、刺される！！）
フレイは満足に動けない。
自分の腹にナイフが突き刺さる光景がありありと浮かび上がり、
フレイはその衝撃と痛みに備えて目を固く閉じた。
その時である。
「やめろ、ミリィ！！！」
青い制服を着た小柄な身体が医務室に入るなり、猫顔負けの敏捷性で宙を舞った。
フレイとディアッカの頭上を跳び越して着地、すらりとした脚がしなやかに伸びる。
何が起きたかわからない三人だが、ミリアリアの手からナイフが蹴飛ばされ、
床に突き刺さったことは確かだった。
「キラ！！」
「キラ！！？」
「お前！？」
一人のコーディネイターの名前に対し、三者三様の感情で塗られた声が響いた。
- 937 名前： 宇宙、重なる想い/48 投稿日： 2003/07/07(月) 14:13
- 「ミリィ、やめるんだ」
キラが落ち着いた口調でミリアリアを説得する。
キラも精神安定剤と睡眠薬を貰いにきたのだが、偶然修羅場に飛び込んでしまったのだ。
結果的に、それがフレイとディアッカの命を救うことにもなった。
「何よ！！トールを守れなかった癖に…
コーディネイターの癖に、えらそうなこと言わないでよ！！」
まるで、父を失った時のフレイそのままである。
時を超えて映し出す鏡か、配役を変えた録画でも見ているのではないかと二人は同時に思った。
「トールを守れなかったことは謝る。
でも、だからといってコイツを殺しても、何にもならないよ。ミリィが傷つくだけだ…」
ミリアリアは反論しなかったが、別にキラの説得に同意したわけではない。
反撃のチャンスを窺う為、キラの全身を隙間無く観察していたのだ。
「駄目だ！！」
先に動いたのはミリアリアだったが、動作を完了させたのはキラだった。
床に刺さったナイフへ飛んだミリアリアの鼻先でナイフが蹴飛ばされ、天井に刺さった。
それでも諦めなかった。ミリアリアは己の身体を武器として、キラに飛びついた。
コーディネイター相手に勝算の無い挑戦であったが、そこまで計算する余裕も理性も残っていなかった。
ひょいっ、と最小限の動きでミリアリアの突進をかわして後ろにまわり、両手を拘束してしまう。
ミリアリアは金切り声を出して暴れるが、キラは男性にしてコーディネイター。
力の差は歴然で、完全に拘束されてしまう。
「ミリィ。もう…やめて…」
フレイが立ち上がった。
左腕の傷口を無意識のうちに右手で抑えているが、血がまだ流れ出している。
一歩進むごとに、床したたり落ちた血がフレイが歩んできた軌跡の様に残された。
- 938 名前： 宇宙、重なる想い/49 投稿日： 2003/07/07(月) 14:15
- 「フレイ……」
動きを拘束されたことで、さすがにミリアリアの興奮も収まってきた。
加えて、フレイの腕から流れる赤い血がミリアリアの燻る怒りと憎しみを急速に洗い流していく。
キラはようやくフレイの負傷に気付いた。
青ざめた顔で具合を尋ねるが、軽く制止されて口をつぐんだ。
座り込んだミリアリアの視線にあわせるように、フレイも屈んだ。
おずおずと右手をさしのばし、ミリアリアの頬に当てる。
「ミリィ。
心の隙間を誰かを傷つけることで埋めても、もっと辛くなるだけよ…」
「……」
「私もパパを失ったから、貴女の気持ちはわかる。
けど、傷つけることじゃ絶対に癒されない。何も変わりはしないわ」
「フレイ…！！」
ミリアリアが顔をくしゃくしゃにゆがめた。それを優しく見つめるフレイ。
ミリアリアを取り押さえた格好のキラは、フレイの表情を正面から見つめることになった。
なんて綺麗なんだろうとキラは思った。
フレイは母の様でも、女の様でも、無垢な少女の様でもあり、そしていずれでもなかった。
彼女の胸に飛び込みたい衝動をキラは必死で押さえつけたが、自然腕の力が抜け、ミリアリアを離してしまう。
- 939 名前： 宇宙、重なる想い/50 投稿日： 2003/07/07(月) 14:17
- ミリアリアも拘束を解かれたにもかかわらず、キラと同様、フレイをじっと見つめている。
しばらくして、ミリアリアは頬を伝わるフレイの血液の温かさに気付いた。
混乱する状況が整理され、フレイを自分が傷つけたことを認識し…
「フレイ！！ごめんなさい！！」
ミリアリアは泣いた。
フレイに抱きしめられながら、彼女の肩に顎をのせ、優しく広がる赤い髪に愛撫されながら泣いた。
「私は、私はどうしたらいいの！？」
フレイは苦笑した。相談しようと思っていたのは自分の方だったのに。
「正直、私にもわからなわ。私だって、まだ気持ちの整理がついたわけじゃない」
ミリアリアの頬を両手で挟み、瞳を正面から覗き込んだ。
「でも、ミリィ。私達、今ここにいるんだから。
笑いたい時も、泣きたい時も、せめて一緒にようよ」
ミリアリアが赤ん坊の様に激しく泣きだした。
キラには、「どういうことだよ」というディアッカの呟きも耳に入らなかった。
ただ泣きじゃくるミリアリアと、母の様に優しくあやすフレイを呆然と見つめていた。
フレイの頬を一滴の涙が伝わった。
フレイも泣いていた。
- 940 名前： 宇宙、重なる想い/51 投稿日： 2003/07/07(月) 14:19
- 地球連合軍アラスカ本部は地下深くに建設された巨大要塞だった。
森林に隠されてはいるが、地上には網の目のような弾幕を張る対空砲台が無数に設置され、上空に睨みをきかしている。さらに衛星軌道までも射程圏内とする大型レーザーも数門設置され、宇宙からしつこく偵察しようとする偵察機や偵察衛星を撃墜してきた。
地上や海上に対しては、射程５０キロを超える大口径レールガンが睨みをきかせ、ザフトの攻撃あれば一隻残らず撃沈しようと牙を研いでいた。
その地下通路を、副官を引き連れた一人の軍人が大股で闊歩していた。
地球連合軍大佐、サザーランドである。身分は大佐だが、参謀本部に属することを示す腕章を装着し、階級以上の地位であることを無言のうちに周囲に放射していた。軍人の典型的な顔立ちだが、やや細面に神経質そうな皺がいかにも“参謀”という印象を相対する者に与えた。
かなりの早脚だ。
副官たちが小走りでついていかねばならないほどだ。
目的地に到着すると、部下の到着を待たずさっさと部屋の中に入ってしまう。
「大天使からの報告が入りました」
サザーランドの入室に気付いたオペレーターが報告する。ジェスチャーで続きを促した。
「本日一六○○、ザフト軍追撃部隊と交戦。
GAT-X303イージスを完全破壊。
GATX-102デュエルを撃破。
GAT-X103バスターを捕獲、回収しました」
「ほう、朗報ではないか」
サザーランドは堅苦しい顔つきをほころばせた。
- 941 名前： 宇宙、重なる想い/52 投稿日： 2003/07/07(月) 14:22
- 「105は無事か？」
「はっ。損害は戦闘機一機の喪失のみ。105に損害はありません」「上出来だ」
満足そうに頷き、彼は作戦テーブルに歩み寄った。
同僚の参謀達が敬礼したり挨拶をおくる。律儀に一つ一つ返答しながら、サザーランドは着席した。
「それにしても、コーディネイターがＸ１０５に乗っているとは」
参謀の一人が苦々しげに毒づいた。何人かが同調する。
「左様。コーディネイターを打ち破るために開発された機体に、コーディネイターが乗るとは。
恥さらしもいいところだ。ＡＡの責任は厳しく追及せねばならんな」
サザーランドはその批判には同調しなかった。
「責任を取るべき者は死んでいます。今のクルーは、生き残りの下級士官達が中心。
彼等を無闇やたらと罰すればいいものではないでしょう」
口調は丁寧だ。ここには彼より階級が上の者もいるからである。
「それに、彼等はコーディネイターの攻撃を度々撃退してきた価値ある兵士達だ。
貴重なＭＳ戦のデータを収集したという事実に加え、今回の戦闘で自らの不始末は整理しました。
特に目くじらをたてることでもないでしょう」
「しかしだ」
食い下がる参謀。階級はサザーランドより上である。
日本刀の様な鋭さを持つサザーランドに対し、なまくらな斧を思わせる太った体型だ。
「Ｘ１０５のパイロットがコーディネイターだという事実はどうする？
いずれは排除されるべき者が、我等の剣となるべきＭＳを操縦しているのだぞ？」
（この馬鹿め）とサザーランドは腹の中で毒づいた。貴様が最前線に赴いてコーディネイターと血を流すわけではあるまいに。貴様に乗らせるぐらいなら、コーディネイターを乗せた方が月が落ちて来るよりましだろう、と。
口に出してはこう言った。
「コーディネイターといえども、彼は我が軍の所属兵士であります。
現に、彼にとっては同胞であるコーディネイターに対し、果敢に挑み、多くの戦果をあげています。
彼が裏切るのではないかという閣下の懸念はごもっともでありますが、
忠誠心が実戦で証明されている以上、彼にＸ１０５を預けていてもなんら問題はないと思われます」
参謀達は一言もなく黙った。
これでストライクとキラに関する話題は終わった。
この一件だけを見ても、サザーランドが持つ権力の大きさがわかるだろう。
- 942 名前： 宇宙、重なる想い/53 投稿日： 2003/07/07(月) 14:25
- 「では……」
白髪の老人参謀が次の議題を切り出した。
近々開始されるという、アラスカ本部攻略作戦「オペレーション・スピットブレイク」に対する防衛作戦の最終確認である。サザーランドの脳はすぐさま目前の脅威に対して切り替わり、ＡＡは脳裏の「当分問題なしファイル」に分類してしまってしった。
彼にはやるべきことが山ほどあるのだ。
6時間後。サザーランドはアラスカ基地の最深部に近い通路を副官と共に歩いていた。
照明の中に厳重にロックされた分厚い扉が立ちはだかった。
ＩＤカードを通し、虹彩識別装置に瞳を確認させる。
サザーランド本人と確認され、扉が機械音と共に開かれた。
とたんに、彼等を騒がしい喧騒と熱気と異臭の波が押し寄せた。
副官は思わず耳をふさいだが、サザーランドは僅かに眉をしかめただけだった。
喧騒は様々な音が無作為に協調された結果だった。強引に変形させられる金属の悲鳴、恨みでもあるかのように叩きつけられるハンマー、溶接の火花、整備員達の罵声にＭＳの駆動音。それが複雑に入り乱れて不快なオーケストラを奏でていた。
部屋は広いなどと一言ではくくれないほど広大だった。
天井までは優に50ｍはあるだろう。
更に驚かされることに、反対側の壁が蒸気と熱気で霞んで見えない程なのだ。
これほどまでに広大な空間でありながら、息苦しさと威圧感は通路の比ではない。
原因は無造作に置かれた高さ20ｍはあろうかという金属と結晶繊維とプラスチックの前衛アートともいうべきオブジェが部屋一面にゴロゴロしているからである。この塊のために整備の音が不規則に反響し、鼓膜を不愉快に振動させているのだ。
- 943 名前： 宇宙、重なる想い/54 投稿日： 2003/07/07(月) 14:27
- サザーランドの入室に気付いたのだろう。
メガネをかけた責任者と思しき男が鋼鉄の塊をすり抜けるように歩み寄ってきた。
長身だが、機械工の宿命、狭いところに入り込むため背中をいつも丸めている。ぼうぼうにほつれた顎鬚が煩わしいが、メカニックに重要視されるのはみかけではなく、その者の能力なのだ。だから規律にはうるさいサザーランドだが、彼等に対しては黙認していた。
「よくぞいらっしゃいました」
メガネの男は不器用に敬礼をした。
つなぎにはシリコンやオイル、得体のしれない緑や赤の液体の染みがまだら模様をつくりあげている。
その異臭にさすがのサザーランドも顔をしかめたが、これこそがメカニックの勲章であり、誇りなのだ。
うるさく言うわけにはいかなかった。
「率直に言おう。例のＭＳの出来はどうなのだ？」
「案内しましょう。少々問題も残っていますが…」
長身メガネはくるりと廻れ右をして歩き出す。
サザーランドがパイプを脚にひっかけて転びそうになってから「足元に気をつけてくださいよ」と注意する始末。それも、サザーランドの身を案じてではなく、パイプに入ったコードや何かに支障が出ることで、作業に影響が出ることを心配する口調だった。
鋼鉄の迷宮をやっと抜け出し、サザーランド達は別室に案内された。
先程の工廠ほどは大きくないが、それでも高さも幅も40ｍはある規模実験室だった。
先導されるままに強化ガラス張りの制御室に先導される。
制御室は忙しく動き回る技術者達で溢れていた。
彼等の動きを邪魔しないよう注意しながら窓から実験室を見下ろす。
「いかがでしょうか、我々の切り札は」
長身メガネが意外な程白い歯をみせてニヤっと笑った。
- 944 名前： 宇宙、重なる想い/55 投稿日： 2003/07/07(月) 14:28
- サザーランドが見たものは、鉄の塊と呼ぶにふさわしい武骨なＭＳだった。
ストライクはもちろん、ザフトのＭＳともかけ離れた体型である。
強いていうならザウートの走行形態を、連合風に再解釈した、といった感じである。
「まるで戦車だ」
副官がぽつりとつぶやいた。
実際、人型ＭＳというより、戦車をそのまま巨大化させ、やや前後に切り詰めて砲塔に手足と頭をつけた、と言った方が正確である。キャタピラに相当する部分はホバーユニットであろう。
「素晴らしい」
たっぷり5分後、ＭＳを舐めるように観察していたサザーランドがぽつりと漏らした。
その一言で、長身メガネは報われた気がした。
自分で満足がいく作品を他人に褒められて悪い気がする人間はいないだろう。
「頼みがある。ＰＳ装甲を入れてくれないか？」
「了解しました。おい」
合図と同時に電源が入れられ、化石化したような灰色に過ぎない巨体に生命が宿る。
どよめきが小波のように走った。
ダークグレーとブルーグレーのロービジ迷彩が凄まじい威圧感を醸し出していた。
ストライクやジン達人型ＭＳが鍛えられた日本刀や美しいレイピアに相当するなら、
このＭＳは相手を鎧ごとたたき割る棍棒かクレイモアのような大剣だった。
もっとも、このＭＳの使命はＭＳを破壊することではないのだが。
- 945 名前： 宇宙、重なる想い/56 投稿日： 2003/07/07(月) 14:32
- 「ライヒ君、君の作品は芸術的だ。
このＭＳは必ずやコーディネイター共の心魂を震え上がらせるだろう」
「ありがとうござます、大佐」
ザフトからの亡命者にして、ナチュラルとのハーフであるライヒ技術大佐は会心の笑みを浮かべた。
差し出されたサザーランドの手をしっかりと握り返した。
「しかし、私の目には何も問題は無いように思われるが」
「ハードウェアは既に完成状態です。ですが、防御プログラムにまだ問題が。
ストライクのデータを参照してみたのですが、まだ不安が残るのです」
「それならば問題ない」
サザーランドは薄く笑った。
「君の悩みは直ぐに解決するだろう。それで、ライヒ君。実戦配備は可能かね？」
「地上軍への配備は問題ありません。砲台として運用する限り、なんら不安はありません
既に先行量産型50機がロールアウトし、パイロットも慣熟訓練中です」
「では決まりだな」
副官を呼びつけて命令を伝え、携帯コンピューターに入力させる。
窓際に近寄り、改めて感嘆の吐息を漏らした。
戦場へ解き放たれるのを待つ、太古の魔獣を思わせる巨体。
「頼むぞ、X017…いや、GAT-17B『フォートレス』よ。
コーディネイター共に、裁きの鉄槌を下すのだ……」
サザーランドの独白に呼応するように、『フォートレス』のバイザーアイが妖しく光った。
このＭＳ達がキラとフレイの運命を大きく揺るがすことになるとは、まだ誰も思わなかった。
- 946 名前： 宇宙、重なる想い/作者 投稿日： 2003/07/07(月) 14:36
- ついにアラスカ攻防戦です。
連合軍はダガーを繰り出して徹底抗戦の構え。
サイクロプス？なんでしょうか、それは（笑）
そしてＡＡには新たな任務が…。
にしても、キラがＡＡにいるといないではフレイ様も
随分違ってきますねぇ。
こんなフレイ様もあるかと思っていただけたら幸いです。
- 947 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/07(月) 14:41
- 乙ふれ〜
・・・最近自分的に本編が、フレイ様がいないの抜きにして・・・だったり
するので・・・な心を救うオアシスにさせていただきまつ。
- 948 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/07(月) 14:47
- リアルタイムで投下見てました。
・・・これが本編でも良かったんじゃないかな、という仕上がりでｗ
非常に面白いです、続編が楽しみです。
- 949 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/07(月) 18:39
- >946
乙！キラがいいなぁ。本編のキラに萎えーな自分としては、こっちのほうが好き。
- 950 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/07(月) 18:41
- 本編のキラも同じこと考えてくれてればいいんだがなぁ。
ミリィもヨカッタ。続き期待してまつ！
- 951 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/07(月) 18:51
- 早めに立てました。埋まり次第移行してください。
作家さんがんがってくれ。
フレイ様人生劇場SSスレpart2〜陽炎〜
http://jbbs.shitaraba.com/anime/bbs/read.cgi?BBS=154&KEY=1057571214
- 952 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/07(月) 19:20
- >>951
乙。
part２に行くとは……
- 953 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/07(月) 21:40
- 感慨深いな…
- 954 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/07(月) 22:37
- 今日がとても悲しくて
明日もしも泣いていても
そんな日々があったねと
笑える日がいつか来るわ
ちょっと前のMDを聞いて、フレイ様の事を考えて
涙しそうになった俺は・・・（つД`）ｳﾜｧｱﾝ
誰か幸せいっぱいなSSを投下してくれ頼む。
- 955 名前： 約束 二話 投稿日： 2003/07/08(火) 00:01
- 「…………………」
「…………………」
３０分経過
「……………………………………………」
「………………………………………………………く、何か喋りなさいよ！」
かすかな勝利感と大きな空しさを感じつつアイザックは７３分ぶりに口を開く
「……ふ、俺の勝ちだな。俺とは利く口もないんじゃなかったか？」
「…………わかったわよ、であんたは何なの？あの変な仮面の仲間なんでしょ？」
「……………………改めて定義されるとあんたから見ると俺はあんなのと同類なんだよな…
事情は知らないけどそう見られても仕方ないか………そうか……俺もあの変態と一緒なのか……」
つい涙声になる
（うぅ、ジェシカ俺はただ精一杯生きてきただけなのに変態の仲間入りをしていたみたいだ。お前に合わせる顔もないよ……あわせようがないけど）
「な……なんなのよ、そこで涙声はちょっと卑怯じゃない？」
「いいんだ……変態扱いされたことはないだろう？それじゃ俺の今の気分を推し量るのはジョージ・グレンにも無理な話だ」
「…………あ〜もう、結局あんたは何なの？！急に一時間以上黙った上にこちらは耐え切れずに喋れば勝ち誇り、あの仮面の仲間呼ばわりしたらいきなり泣き出すなんて……」
「そういわれてもなぁ……まず俺はあんたが何者だか知らないし、一応あんたに分かるように言えば隊長――仮面の奴な――の部下だ、
それ以上はあんたが何者か分からないと説明が難しいような……っていうか本当にあんたは何？
部屋入ったらいきなり拳銃構えてて逃げるわ、部屋に連れ戻したら『離して！話しかけないでよ！」って逆切れしてそれに従ったらそれはそれで怒るし……
挙句に変態扱いですよ？泣きますよ？凹みますよ？
女の子はほらもっと優しく可憐で初対面でも『実は貴方のことを一目見たときから――グボォ！？」
少女は対面のソファーに座るアイザックを器用にも上半身を一切動かさずその頬につま先をえぐり込んでいた。
- 956 名前： 約束 二話 投稿日： 2003/07/08(火) 00:01
- 「答える気ないの……？はぁ……馬鹿らしくなってきた
いいわよ、私に分かる範囲で答えてあげる
わたしはフレイ、連邦軍二等兵で最近までアークエンジェルって船に乗っていたわ
これでいいの？」
「ふむふむ、連邦の人だったのか。
なるほど確かにそうだな、ナチュナルの女の子の方が手が早いって言っていた親父の話は本当だった見た――――いや、それはもういいから」
少女―――フレイの再び上がったつま先を両手で真剣白羽取りをしながらとりあえずアイザックは話し始めた。
「俺はアイザック、アイザック・イリヤだ
クルーゼ隊の影の支配者だ
あの船―アークエンジェルだっけ？―を最近まで追い掛け回していた四人組の仲間といえばなんとなく分かってもらえるかな？」
「―ってことはあんた達が私のパパをっ！」
掴み掛かろうとしたフレイはアイザックの目を見て急に力が抜けた
（何、この目……まるで……）
「ああ、あの艦隊戦のときの話だろうな、
確かにアレは俺達が先頭にたってやったことだ
……だからどうした？お前達もニコルを…………いや、戦争だったんだ勘弁してくれないか？」
「なによ……わたしはコーディネーターを許さないわ！」
「コーディネーター、嫌いかい？」
「……………っっええ！！嫌いよ！大嫌い！コーディネーターなんてもう二度と信じないわよ！！」
「ふぅん……でも安心していいよ、俺コーディネーターじゃないから」
「――？」
「俺…………ナチュナルなんだ」
- 957 名前： 約束 二話 投稿日： 2003/07/08(火) 00:03
- 埋めついでに第二話です
さぁて、忠実な種ファンに怒られそうな展開になりそうですよ？
オリ設定が暴走して怒られないといいなぁ……
- 958 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/09(水) 20:21
- ｺﾞﾙｧ！
というのは嘘w
凄く和むよ……乙！>>957
- 959 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/09(水) 20:32
- フレイ様の大天使日記はもう投下されないんでしょうか。
大好きだったんだけどなぁー。
投下人さん、種見捨てた・・・か？乞う投下！！！
- 960 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/09(水) 20:36
- 仕事とかで忙しいかも知れないし、気長に待ちましょう。
- 961 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/09(水) 20:41
- >>959
あんまり催促するのはどうかと。
職人さんのペースでやってこそ(職人さんも納得できるような)いい作品ができると思うし。
暇なら自分も何か書いてみよー。ちょこちょこ書いてみると結構楽しかったりするもんだ。
- 962 名前： 959 投稿日： 2003/07/09(水) 20:54
- 上のほうでちょくちょく書いてるんだが。
催促スンマソ。でも楽しみにしてるんだよっていう意思表示っつーことで許してくれ。
- 963 名前： 火サスノリで行ってみようか ３９ 投稿日： 2003/07/09(水) 23:47
- 式典会場はオーブ、プラント両国の要人の他に、各国から招待された来賓もいて、一見華やかである。
しかし、ディアッカやイザークの表情は厳しかった。
「世界中が見てるんだ、もう少し明るい表情をしたらどうだ？」とアスランは言ったが、
ディアッカから「何が起こるか分からないのに、そんな余裕は無い！」という返事が返ってきた。
確かに、立ち込めた空気は何か、式典を歓迎しているだけではない重いものを含んでいた。
アスランも、これで永劫の平和を手に入れられると思ってはいない。
しかし、ほんの一時の平和であったとしても、そういう時間があった、と言う事実は、未来に大きな希望を残すのではないだろうか？
コーディネーターとナチュラルが生きつづける以上、そんな希望が無いのでは、どちらか…或いは両方とも、滅びる。
そんな哀しい歴史にだけはしたくない…
「アスラン？どうしました？」
ふと我に帰ると、ラクスが少し不思議そうな表情を覗かせていた。
「もうすぐ、式典が始まります。何処か、具合でも悪いのですか？」
「いや、少し、考え事をしていて…」
ラクスとアスランは、オーブ代表との共同会見会場に向かった。
そこでは各国代表のスピーチが行われ、プラントの復興と友好を印象づける舞台なのである。
フレイとキラ、サイは、アスランやラクスよりやや後ろの位置に座った。
ラクスは後ろを振り返って3人に視線を送ると、微笑を浮かべた。
プラントの隣に配置されたオーブの席にいるカガリは、その姿を確認して、少し心配そうな表情を見せた。
カガリの隣に座っているウズミは、瞑目して感慨に耽っているように見えたが、或いはこの先の事に思いを馳せているのかも知れない。
- 964 名前： 火サスノリで行ってみようか ４０ 投稿日： 2003/07/09(水) 23:47
- ラクスが立ち上がって演壇に向かうと、ざわめいていた会場は静けさに包まれた。
神々しさすら感じるその姿は、会場にいる人々にある種の感銘を与えるのに十分なものを持っていた。
「今日は、ナチュラルとコーディネーターにとって記念すべき日になる事と思います。そして、この日が、全ての人々にとって記憶される日になる事でしょう」
ラクスの透き通った声が響いて、その場にいた人々はそれに引き込まれるように聞き入っていた。
アスランは演壇のラクスを眩しそうに見ていたが、ふと、目の端に何かが動くのを捉えたような気がした。
観客の一人が、右手を上げて、嵌めていたブレスレットにもう左手で添えるような仕草を見せたのだ。
ブレスレットに開いた穴がラクスの方に向けられるのをアスランは見た。
（銃口！）
瞬間、アスランは跳んでいた。
アスランがラクスを押し倒すようにするのと、弾丸が二人の上を通過して背後の壁に跳ね返されるのは同時だった。
一瞬、何が起こったのか理解できずにいたカガリだが、すぐに立ち上がると、
「暴漢がいるぞ！警備兵を急行させろ、出入り口は封鎖しろ！」と叫んでいた。
騒然となる会場。中には逃げだそうとして駆け出す来賓もいる。
オーブの警備兵が数人、ラクスの周りに防壁を作るように展開し、イザークとディアッカも駆け寄ってきた。
「ラクス…大丈夫か？」
「私は大丈夫です。アスランの方こそ、お怪我は？」
「大丈夫。何ともない」
とりあえず二人に怪我がないことを確認すると、ディアッカは拳銃を抜こうとしたが、ラクスはその手を押さえた。
「いけません。私達が、武器を持っていては…今日は、いけないのです」
「しかし、まだ他にいるかも知れません」
ディアッカは抗弁しかけたが、ラクスの強い眼差しを見て沈黙した。
「取りあえずここを離れるんだ。アスラン、いいな？」
二人を立たせて演壇の裏手へ誘導しながら、ディアッカは油断無く目を走らせていた。
- 965 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/10(木) 00:21
- >963,>964
火サス続きｷﾀ━━━━（ﾟ∀ﾟ）━━━━!!!!!!
痔がなにやらえらいかっこよいですな。
火サスらしく修羅場ですな。楽しみです。
- 966 名前： 約束 三話 投稿日： 2003/07/10(木) 00:28
- 「しかし結構大変なんだぜ？このコーディネーターだらけのザフト軍でナチュの俺がパイロットとしてはエースでなおかつクルーゼ隊の副隊長の座に付くのは大変だったんだぜ？
もう聞くも涙語るも涙……」
フレイはまるで豊胸手術をした男を見るような目でアイザックを見ながら聞いた
「なんで……？なんでナチュナルのあんたがザフトに……？」
「なんで？そりゃ連邦が嫌いだからさ
…………俺は血のヴァレンタインの時に観光で家族とユニウスセブンにいたんだ
で俺は持ち前の運と勘の良さで生き残ったけど家族は死んじまった、で連邦が大嫌いになってザフト軍に志願した
ザフトは志願制だから、ある程度目をつぶって徴兵してくれるんだよ
そこであの隊長に拾われて今ここにいるわけさ、分かりやすいだろ？」
アイザックはごく当たり前のことを説明するように話してからフレイの方をちらりと様子を伺ってため息を付いた
「さて、じゃああんたのことを聞かせて貰おうか？
…………あぁ、そんな目で俺を見るな」
まるで何かに裏切られたような目で見られていた
「別にいいや、とりあえずあんたの世話はどうやら俺がするらしい
何か用があったら後でまた来るからそのとき話してくれ、
俺はそろそろミーティングの時間だ…………」
アイザックは心底面倒くさそうに同意を求めてフレイの方を振り返って言った
「あの変態自分は平気でサボるくせに他人の遅刻は許さないんだよなぁ…………間違ってるよな？」
フレイはいい加減に疲れたように
「そうね……デートに遅刻してくる男は最悪ね」
と同意した、アイザックは心底嬉しそうに
「よしその調子だ、それをゆめゆめ忘れるでないぞ…………じゃあ後でな」
と言いながら部屋を出て言った。
- 967 名前： 約束 三話 投稿日： 2003/07/10(木) 00:31
- うわ、一行目が大変を二回使ってる……忘れてください
しかも短い……しかも面白くない……次回頑張ります
>>958
ありがとうございます
……さすがに二日近くレス付かなかったからはずしたかと思いました
実際、シリアス調が多いここでははずし気味ではありましたが……こうなれば邪魔でも最後まで書きます
- 968 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/10(木) 21:51
- >>967
差し出がましいかも知れませんが、自分で出来が悪いみたいな事は言わない方が良いですよ。
折角頑張って作品書いているんですから、胸張って投下しましょう。
連載ものは完結しないと中々感想書き辛いってのもあるし、頑張って投下して下さい。
- 969 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/10(木) 22:42
- 火サス乙フレ〜
約束乙フレ〜
次が楽しみでつ。投下、期待しています。
- 970 名前： 火サスノリで行ってみようか ４１ 投稿日： 2003/07/10(木) 22:54
- 会場の騒ぎに巻き込まれて、キラはフレイの手を取って避難させようとしたが、フレイはその場から動こうとしなかった。
いや、動けなかった。
凍りついたように手足が麻痺して、言う事を聞かない。喉がカラカラに渇いて、声を出す事も出来ない。
「フレイ…!?」
キラはフレイの様子が尋常ではない事に気づいたが、今はそれに構っている場合ではない。
「ここは危険だ。すぐ離れるんだ」
サイと一緒に、半ば無理やり抱きかかえるようにして混乱する会場の下に降りようとしたが、アスランに制止された。
「そっちは却って危険だ。我々と一緒に来た方が良い…」
そして、3人はプラントの一団と行動を共にしていた。
その間、フレイは一言も口を利かなかった。
フレイは戦場に戻っていた。父親を失った戦場。多くの人の運命を狂わせた戦場。
また、あの時に戻ってしまう…！！
「イヤよ…そんなの……イヤ！」
「フレイ…！？」
サイはフレイが表情をこわばらせたままそう口走ったのを聞いたが、喧騒に遮られてそれ以上聞く事は出来なかった。
ラクスやアスラン達の一団の後ろに3人が従う形になったが、周りは人々が錯綜して混乱の極みを呈していた。
一方、カガリはウズミ達オーブの要人が避難したのを確認すると、ラクス達の方に駆け出した。
（何故、こんな事が起こったんだ？）
ブルーコスモスのテロ、という事態は考えていなかった訳ではない。充分に対策を立てていたはずだった。
しかし、現実に事件が起こってしまった。
思わず唇を噛みしめる。
「まさか…」
戦後、フレイのスパイ事件に際し極秘裏に調査した結果、オーブ政府内部にもブルーコスモスに通じている者がいた。
ウズミはその者達を公職から追放処分にしたのだが…
「内通者がいるのか！？」
それなら、厳重なはずの警備をかいくぐって武器を持ち込むことも、或いは可能かも知れない。
いや、それ以上に…カガリは思わず立ち止まった。
「まだ、いるのかも知れない…」
自分の不安が正しいのなら、この会場には複数のブルーコスモスがいるかも知れないのだ。
カガリは再び走り出した。
- 971 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/10(木) 23:14
- >966
乙〜。何かとっぽい（死語？）にーちゃんですな。
呆れつつも何だかんだで会話が成立したところが萌えでした。
こー言うキャラが子供組にも一人くらいいてもよかったよなぁ…。
- 972 名前： 約束 四話 投稿日： 2003/07/11(金) 22:20
- 隊長との二人っきりの簡易ミーティング……というよりただの今後の話し合いだが
仮面の手抜き主義のお陰で３０分も経たず話は終わろうとしていた
「―――と言う訳だ、ああ、イザークと模擬戦をしてやってくれないか？
ジン対デュエルでな」
（何故今更イザークとしかも……）
「……ジンでですか……」
「そうだ、あいつは優秀なのだがＭＳの性能の過信のしすぎと戦場での甘さが命取りになっている
ただのジンに模擬とはいえ負ければ気が付いてくれるはずだ
そうしなければ次は死ぬだけだ、キミもこれ以上戦友が死ぬのは嫌だろう？」
（ニコル……ディアッカ……）
ついこないだまで一緒に苦楽を友にした二人が目に浮かんだ
「…………分かりました、あとあの少女の事ですが……」
「さっき言っただろう？
とりあえず彼女の相手をしているだけでいい
またしばらく出張しなければ行けなくなったから頼んだよ」
「…………なんのために連れて来たのですか？
単なる連邦の一般兵のただの女の子じゃありませんか？
それをわざわざあんな――」
「では頼んだよ」
- 973 名前： 約束 四話 投稿日： 2003/07/11(金) 22:21
- （やれやれ結局はぐらかされたか
まぁ、あの変態は一度隠すと決めたら隠し通すから諦めざるをえないが……
しかし今回はまた突飛な……）
アイザックはとりあえず暇をしているであろうフレイのために自分の部屋から色々な趣味の品を取り出し持って行くことにした
（…………しまった！ドアが……開けられない！）
アイザックの両手は自分の部屋から持ってきた暇つぶし用の物で一杯で鍵を開けることは不可能に思われた
数秒考えてから中から開けてもらうことにした
「おーいフレイ〜、両手がふさがってるからドア開けてくれないか？」
部屋の中から何かを落としたような音がした後フレイの叫び声が聞こえた
「何言ってのよ！！この鍵をかけられた部屋をどうやって内側から開けるって言うのよ！」
「…………そうか、そういえばそうかもしれないな
番号は27143597だ、横のパネルに打ち込めば開くぞ」
部屋の中から何かが滑ったような音がした後、数秒置いてから小さな声で少女の声が聞こえた
「………………鍵の番号教えていいの？」
あ
「…………まぁ、なんとかなるだろ
ほらこの艦海の底だし逃げれないよ、きっと……………」
気まずい沈黙
アイザックが現実逃避して明日の予定について考えて、就寝まで予定が完成したころ
「…………とりあえず開けるわね」
「……そうしてくれ、なんだか手が痺れてきたし」
- 974 名前： 約束 四話 投稿日： 2003/07/11(金) 22:22
- ………………
３分ほど経過、なかなか開かない
…………
さらに３分経過
（もしや…………）
……
さらに５分経過、既に荷物は床に降ろして開くのを待って見る
（うむ……きっとアレだ、番号を忘れたんだな…………）
短い付き合いながらここでそれを指摘するのは彼女のプライドが著しく傷つくであろうことを予想し、
長丁場を覚悟して廊下の真ん中に胡坐をかいて備える
「あ、アイザックさんこんなところに座ってどうしたんですか？」
「む、ラインか
いや一人の少女の記憶力とプライドを賭けた戦いを静かに見守ってるんだ」
通りかかったのは同じクルーゼ隊でアイザックの後輩に当たる細面の少年だった
ラインは頭に疑問符を浮かべつつ
「…………そうですか、じゃあ何だか分かりませんけど頑張ってください
あ、記憶力を良くするにはブルーベリーがいいって聞いたことがありますよ」
「そうか……ブルーベリーか……」
「ええ、あとは魚がいいって話ですけど……あ、隊長に呼ばれてますから失礼します！」
「うむ、頑張るがいい」
（なるほど……いいことを聞いたな）
今まで沈黙を守っていたドアの向こうに声をかける
- 975 名前： 約束 四話 投稿日： 2003/07/11(金) 22:22
- 「おい！部屋の中にブルーベリーはないか？」
かなりの時間が経った後
「…………なによ……？ないけど」
いかにも色々試してイライラしてますって気配を放った声が聞こえてきた
「そうか……それは残念だ」
二人が色々な（しかも違う）意味で途方にくれかけたときアイザックの頭にひとつの事実が浮かんだ
「そうだ！確か部屋の中に熱帯魚がいたよな？！」
「な……何をそんなに大声で……確かにいるけど、それが？」
「そいつを捕まえて食べるんだ！そうすれば魚の栄養のお陰で記憶力が良くなるはずだぞ！！！」
ゴガァ！！
次の瞬間、物凄い轟音がドアの周辺でしドアがギクシャクしながら――いや、人力で開いた
そこにはまるで赤毛が自ら命を持ったように逆立っているフレイがいた
「こっちが番号を忘れてるって気が付いたならさっさと言いなさいよ！！！
なんで１５分も黙ってそこに座ってるのよ！！」
あまりの剣幕に気押されつつアイザックは
「で…でもやったじゃないか！ドアが開いたぞ、魚は食べ―――」
フレイの姿はアイザックの視界から一瞬に消えて次の瞬間にアイザックの頬につま先を埋めていた
「………ドアは隣のパネルを叩き壊したのよ、あんたも一度叩かないとダメかしらね？」
「う……既に手が……、いや足が出てるような……」
ドアの隣を見るとパネルから白い煙が出ている
いったいどのような力で叩けばあのようになるのだろうか…………
「まあ、とりあえずドアは開いた早速これを搬入するぞ
…………つま先を退けてくれ、動けない、動くと怖いのだが」
フレイはつま先を退けて手のひらで顔を覆いつつ力なく言った
「段々わたしのキャラが崩れていくわ……」
- 976 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/12(土) 09:21
- >970
おつふれ。
二人のナイトに守ってもらう姿を見ていると涙が･ﾟ･(つД`)･ﾟ･｡
- 977 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/12(土) 09:25
- >972-975
ﾜﾛﾀ。アイザックいいキャラしてんなーｗ
キャラは崩れてても健康的で良かですよフレイ様。
- 978 名前： 約束 五話 投稿日： 2003/07/13(日) 02:06
- 「―――そう思わないか？サファイヤは歌詞から浮いているよな？」
アイザックはフレイに向かって熱弁を向けていたが向けられた当のフレイはまるで聞かず
（あぁ、なんでこの男は人の態度から物を察することがないのだろう……）
と途方にくれていた
アイザックがフレイに熱弁している内容は某若者向け少女小説でフレイも読んだことがあったのだが
何故かこの男はそれを持っていて、フレイが読んだことをあるのを何故か敏感に感知し同士と見なして熱弁しているのである
基本的に女性のいない軍には軍以外の世界のないこの男には
この話題を話せるような相手がいなかったのだろうけど…………
（にしてもしつこい……しかも内容がアレな話ばかりだし）
「分かった分かった、あなたの言いたいことは分かったから……」
「そうだよな！やはりあの『タイが――」
「でちょっと聞いてもいい？」
「なんですか？フレイさん」
眩暈がしたが耐えて
「………………私は何でここに監禁されてるの？」
- 979 名前： 約束 五話 投稿日： 2003/07/13(日) 02:07
- 「う〜む……隊長に聞かないと分からないなぁ……
しかもあの変態は隠す気になったら絶対喋らないから多分わからない……」
「そう……」
フレイはそれ以上は聞く気にならなかった
この男は迂闊だがこれと決めたことは絶対に喋らないと確信していた
それに恐らく知らないのは本当だろう、あの仮面が秘密主義なのは短い付き合いながら強く感じていたことだ
部下であろうと迂闊なことは喋るまい
（わたしいつ帰れるのだろう……それ以前にもう帰れないのかな……
でもそれでもいいかもしれない、もうあのころには帰れないのだから）
ヘリオポリスでの平和な日々、偽りとはいえキラとの日々
パパ、トール、キラ……みな死んでしまった
わたしもいっそ……
「あ〜……まぁ、そんなに落ち込むなよ
隊長だって変態だけど決して人情がないわけじゃないから……多分なんとかなるぞ、うん」
落ち込んだのが見破られたのかしきりに励ましてくる
「ほら、俺だって家族もなくナチュナルだったのにここまで出世させてくれたしな
この部隊そう言う奴多いんだよ
理由があって正規軍にいづらい奴が隊長の放任主義を求めてこの部隊に来るわけなんだ、
まぁ……肝心の隊長は変なのなのだが……」
（そういえば……）
ふと疑問に思って聞いて見た
「あんた、ＭＳに乗れるの？ナチュナルなのに？」
「あ、ひどいなぁ
こう見えても俺はこの部隊の中では一番被弾しない機体に優しい奴ってメカニックさんに評判なんだぞ？」
（……ずっと後ろにいるだけなのね……）
- 980 名前： 約束 五話 投稿日： 2003/07/13(日) 02:07
- 「ふ〜ん、そうなの」
「気のせいか、自慢したのにかえって冷たい目で見られてるような気がするぞ……」
「気のせいよ、あ〜あ退屈ねぇ……」
「そうだよなぁ
……軍のじゃ文化祭で隣の学校と合同でダンス大会とかのイベントがあるわけじゃないし」
「その話題から離れなさいよ……分からない人が置いてきぼりじゃないの」
「う〜ん、ここで遊べる物なんて得にないしなぁ……
ん、そうだＭＳシミュレーターでもするか？なんとなくゲーセンぽいし
俺のＭＳの操縦の腕を見せてやろう……多分」
（それは軍事機密じゃないかな？……アイザック君）
フレイはちょっと思ったがこうなればなるようにしかならないだろうと覚悟を決めて
「それ以外やることなんてなさそうだしね……いいわやるわよ」
（それにここから逃げるときとかに役に立ちそうだしね……）
- 981 名前： 約束 五話 投稿日： 2003/07/13(日) 02:08
- そもそもこうあっさりと部屋から出されてＭＳ格納庫までつれてこられたこと自体驚きだが、それ以上にこの男がこの部隊の中でかなりの権力を持ってることに驚いた
普通部外者をいきなりこんな場所に連れてきて、訓練中の兵士を『あ、ちょっとイイ？」でどかし、
『なんですか？』と聞きに来たメカニックマンを『あ、ちょっと面白いこと思いついたんだよ』の一言で納得させ……
いや、単にこの部隊がおかしいのだろう……そう思わないとこれは……
「よし、では説明にはいる！傾注して聞くのだフレイ・アルスター二等兵」
「……ザフトに階級はないのはずでしょ……第一、苗字をいつ教えたかしら
それに傾注の使い方が……」
「でこれが――――（中略）―――――ってわけだ、分かったか？」
「へぇ……たいしたものねぇ、たったこれだけでこれだけ動けるの」
「うむ、ザフトのＭＳのＯＳの技術は世界一ィィィだ
……実際のところ連邦の技術がお粗末過ぎるらしいぞ？
同じ部隊のイザークって奴がいるんだが、例のガンダム強奪のときあまりのＯＳの性能の悪さに驚いたって言ってたからな」
（これならサイにでも動かせそうね……やはりアレはＯＳのせいだったのかも）
「まぁ、実際はこれでもかなり動かすのに苦労するんだけどな
ではとりあえずやってみるがいい、まずは座ってるところから立たせるんだ
『ジン大地に立つ！』」
危ない台詞は聞き流し
「……これをこうして……」
- 982 名前： 約束 五話 投稿日： 2003/07/13(日) 02:10
- １時間経過
「貴様！やるなまさかたった１時間で着艦を半オートモードとは言え成功させるとは」
「……だってオートモードでしょ？タイミングだけじゃない？」
「く……どれだけの新兵がそのタイミングでないていると思っているのだ！
貴様には分かるまい！気に入らないから次はターゲッティングの練習だ」
「……それさっきやったわよ」
「な…………よし、では移動はほぼオートにして俺の操るターゲットを撃墜するがいい、己の無力さを思い知しれ！」
「あれ？アイザックさんこんなところで何しているんですか？
またシミュレーターで遊んでいるのですか？
……ん〜、いつものことながらボロボロに負けてますね」
同じくシミュレーターでも使おうとしたのかラインが通りかかった
「ふ……わかったぞ、お前実はパイロットだったんだな？
じゃなければ俺がこの短時間で５回も撃墜されるはずがない！！」
「そんなわけないでしょ！……というかあんた下手すぎ！
本当にパイロット……？」
「ちょっとハンデをくれただけで調子に乗るとは……愚かな！」
「いや、だってコンピューターの擬似回避プログラムだとまったくわたしの攻撃当たらないし……」
ラインがアイザックの弁護に回った
「えーと、アイザックさんはシミュレーターだとずいぶんダメなんですよ
実際、僕も負けたことはありませんし……実践だと強いんですよ？」
本当にそうなの？いくらなんでも下手過ぎるのでは……
第一シミュレーターで弱くて、実践で強いなんてことがありえるのだろうか……
- 983 名前： 約束 五話 投稿日： 2003/07/13(日) 02:10
- 「……それは俺のフォローをしてるのか？
よし、ではそこで見ていろ次こそ本気で…………」
操縦管を握り、もう一回やろうとすると
「相変わらず下手だな、アイザック
ナチュナルにＭＳの操縦なんて無理なんだよ」
白い髪の顔に傷を負ったやたら態度のでかい男がいた
「……イザーク」
「なにかいいたそうだな？」
「……ナチュナルでもＭＳの操縦はできるさ、そこの対戦相手のお嬢さんもナチュナルだ」
「っ！なんでナチュナルの奴がここにいるんだ？！
ナチュナルは――」
「”ナチュナルはお前だけで十分”か？
いい加減にそういう差別やめてくれ……
…………こいつについては隊長に聞いてくれ俺だって良く知らないんだよ」
イザークと呼ばれた白髪の男はアイザックに興味を失ったようにその場から去ろうとしたが
「イザーク、そういえば聞いたか？隊長が俺とお前で模擬戦をして欲しいらしいぞ
その模擬戦で俺に負けたらナチュナルを差別するのをやめてくれ……この隊にはナチュナルが他にもいるんだ、だから約束だぞ？」
「お前が俺に勝つっていうのか？」
「ああ、俺はジンでお前はデュエルで構わない
そっちのほうが実戦に近いだろ？」
「…………そこまでいうならやろうか、だが」
「それ以上は勝ってから言ってくれ」
「……わかった、じゃあな」
- 984 名前： 約束 五話 投稿日： 2003/07/13(日) 02:11
- 「うむ、イザークさらばだ
……では続きをやるか、次こそ本気を出すぞ？」
こちらの返事を待たず、訓練用シミュレーターが動き出す
フレイはそれを操作して、相変わらず隙だらけで慣れないフレイでも捕らえることが可能な動きのアイザックの機体を狙いつつ
「……あんな約束していいの？あんたに勝てるはずないじゃない」
「なんでだ？あいつは確かにエースパイロットでこの隊でも有数の腕だけど……」
デュエル……奪われた４機のガンダムの内の1機で何度もアークエンジェルを危機に追い込んだ位は知っている
「だから……ほらわたし程度にすぐ撃墜される程度の腕でどうやって戦うと……」
「うむ、だからさっきラインが言っただろ、俺はシミュレーターは下手だが実戦は凄いと」
「意味不明だし、おのずと下手にもほどがあるでしょう……」
「ふ、知らないのだな？
俺には超能力があって敵の攻撃の気配を感知してサッと避けるのだ、かっこよくサッとな」
「ザフトはこんなのがエースになれるほど人材が不足しているのか、連邦が弱すぎるのか……」
「どうした？足元がお留守になっていますよ？アチョー」
「……はい、撃墜7回目ね……」
「Nooooooo!ふ……将来が楽しみだ、敬意を表して磨けば光る宝石の原石と形容しよう
」
「ザフトでパイロットになってどうするのよ……それは容姿に使って欲しい形容詞ね」
「……容姿を原石と形容すると今が垢抜けない人のなってしまうのだが、いいのか？」
「…………そうね」
「そうか……ついにボケ突っ込みを習得したか……将来が楽しみだな」
「いけない……突っ込んじゃいけない……突っ込んじゃ……」
- 985 名前： 火サスノリで行ってみようか ４２ 投稿日： 2003/07/13(日) 02:19
- 「ここならもう安全だろう。周りに不審者は？…確認するんだ！」
そんな怒声が響き、弾かれたように何人かの護衛が飛び出していった。
「全く…こんな事になるとは…怪我人がいなかったのがせめてもの救いってところか？」
「そうだな…ラクスに何かあったりしたら、我々としても黙ってはいられないからな。しかし、どう責任をとるつもりだ？オーブの連中は」
皮肉交じりにイザークは言ったが、皆が無事だった事に安堵しているようでもあった。
「まだ本国と連絡は取れないのか？今後どうするか…ラクス!?」
ラクスは追いついてきたキラ達の方に向かっていた。
「お怪我は無いですね？…良かった…」
心底ほっとした、という表情のラクス。狙われた本人にこんな事を言われると、反応に困ってしまう。
「もう…大丈夫よね？」
「うん…もう大丈夫さ」
キラはフレイの肩をさするようにしたが、まだ完全に震えが止まっていた訳では無かった。
それでも、フレイは少し落ち着いた気分を取り戻しつつあった。
フレイは、あの会場でラクスを狙撃した犯人を直接目撃したわけではない。
しかし、フレイは見ていた。
あそこには、過去の自分がいた。
偏見と、憎しみに満ちた感情。
あのおぞましい過去が頭をよぎる。そして、その過去がまた目の前で繰り返されているのだ。
アークエンジェルを裏切ったのも私なら、あの銃を撃ったのも、私…過去の私なんだ！
- 986 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/13(日) 11:16
- >978-984
おつふれ。
やばい、マジでアイザックのキャラ好きだｗ
このなんとも言えんテンポがたまらん。
- 987 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/13(日) 11:18
- >985
乙。
自業自得の感が強いとはいえ、
フレイ様に過去が覆い被さっていくようで
見ているのがつらいっす…。
- 988 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/13(日) 18:16
- 火サス、約束乙です。
＞火サス
ﾌﾚｲﾀｿが痛々しいですが、
これを乗り越えてがんがってほしいです。
＞約束
アイザック(・∀・)ｲｲ!!
ラインとの絡みが密かに好きです。
次回投下を楽しみにしてます。
- 989 名前： 約束 六話 投稿日： 2003/07/13(日) 23:54
- 「それはこの季節のオーブ近海には珍しく、風は強く今にも空から雨が降ってきそうな日で空には今にも落ちてきそうな暗い雲が立ちこめていた
時たま雷鳴が嘶き、ジンとデュエル――アイザックとイザークの機体を照らし出した
お互いは演習開始の合図を今か今かと待ち、お互いの敵意を隠すこともなくにらみ合っていた
ルールは戦い方は自由、ただし実弾の使用は厳禁、演習用武器を使用
お互いのＯＳに搭載されている演習用プログラムのひとつを使い
お互いの攻撃をシミュレートしてヒットした場所の使用を実際の破損と同様に制限、
撃墜と判定されるまで戦い続ける
実際の機体を使い残弾・残エネルギーもシミュレート、
ＰＳ装甲も特性に含み、実弾武器が命中したらそのときに消費されるはずのエネルギーを消費と計算しダメージを無効化する
無論、エネルギー切れも撃墜とみなす
演習とは言えお互いの意地を賭けた、いわば決闘に近い――」
- 990 名前： 約束 六話 投稿日： 2003/07/13(日) 23:55
- 「……聞かないとないといつまでも続けそうだから聞くわ、その意味不明なモノローグは何？」
二人はあのシミュレーターを終えた後、フレイの『あんな奴に負けないように作戦会議をするわよ！』の一言で
フレイの監禁（？）されてる部屋に戻り、ソファーに座ったときからアイザックが謎の語りを始めた、
５分ほど放置しそろそろ話が佳境に差しかかろうとしたそのときフレイは仕方なく何をしているか聞いた
「なんだよ、聞いてれば分かるとおりこれからがいい所なんだぞ？」
「それは分かっていたわよ……段々目がキラキラし始めていたからね」
アイザックはかなりフレイに向かって怯えた視線を向けて
「そ……そんな、分かっていて俺の邪魔をしたのだな？！
俺の７２の趣味の内のひとつ『読者へのフェイク』を……」
「やめなさい！話が危険領域に近づいているわよ！！」
「いいじゃん……ルールが不明確だと作戦の立て様もないだろうから説明を……」
「長すぎるわ……しかも別の方向に話が展開しかけていたじゃないの……」
「折角、話しながら燃える展開を思いついたのに……
退役後少女恋愛漫画家になろうと思っていたからそのときのネタストックに……」
- 991 名前： 約束 六話 投稿日： 2003/07/13(日) 23:55
- いつもの展開ながらフレイは頭を抱え
「ああ……もうどこから突っ込めばいいの……？
突っ込めば突っ込むだけだけ話がずれていくし……
大体のことは分かったから作戦会議をさっさとしましょ……」
話しているうちに割り切れたようだ
「うむ…………でなんで作戦会議なんだ？」
「ナチュナルが役立たずで可愛げがなくて不細工だっていってる奴なんかに
負けるわけ行かないでしょ！！」
「…………そんなこと
むッッ！」
アイザックははっと重大なことに気が付いた、ボケてるのか？！
「どうしたの？」
「ククク……なんでもないさお嬢さん
しかし俺の心配をしてくれるのは嬉しいが、負けはしないぞ？」
「あんたのどこからその自信は沸いて来るのかしら……？
卑下するつもりはないけどやっぱりナチュナル対コーディネーターじゃ色々不利でしょ？」
- 992 名前： 約束 六話 投稿日： 2003/07/13(日) 23:56
- 「無論だ、反応速度やパイロットとしての適正は勿論
機体損傷時などの場合のＯＳの係数変化などの改変なんかはやることすら無理だ
はっきり言って相当腕と経験か機体の差がないと絶対勝てるはずがない
地味にＧや衝撃に身体的に弱いナチュナルはその辺でも不利だったりするしなぁ……」
どこからこの自信は沸いてくるのか……既にフレイはジト目だ
「で……どうするのでしょうか、アイザックさん？大見得切ったからには何かあるのよねぇ……」
「その最後のえぐり込む様な『ねぇ』の発音がなんか怖いぞ……
大丈夫、俺には秘策がある」
「というと？」
「その一、さっきの会話を見れば明らかにイザークは噛ませ犬の台詞だった
展開からして勝てるだろう」
「…………」
フレイは何かに耐えている
「その二、勝負の日の俺の運勢は大吉らしい、特に勝負運が良好
イザークは無論、その反対だ、隊の出席簿から生年月日を割り出したから
実は間違っているって展開もない」
「……………………！…………！」
フレイは何かに耐えているが降伏の色が見え始めている
- 993 名前： 約束 六話 投稿日： 2003/07/13(日) 23:56
- 「その三、……よっと」
「何するのよ、わたしの手を握って」
「これが秘策だ…………」
そう言うとアイザックはフレイの手と自分の手を重ねた
「よし、俺と約束しろ
俺が勝負に勝ったら一日でいいからその髪形をやめてポニーテイルにしてくれないか？」
「はぁ？なんでそんな微妙にマニアックな……」
「いや、そういうものなんだ
一日髪型変えるくらいならよかろう」
「う〜ん、そうかもしれないけど…………わかったわよ」
アイザックの目が真剣でいやらしさ等の欠片も感じられない目をして
いや、哀しそうな目で……頼まれたのでつい引き受けてしまった
「よし、これで勝てるだろう、今日は寝るか…………」
「ダメ！
…………あぁ、もうわたしが相手してあげるから少しはましに操縦できるようになりなさいよ、
せめてわたしに短時間で当てられるようになるまで寝かせないわよ
ほら、とっとと行くわよ」
「ちぃ……スポンサーの頼みだから付き合うか」
- 994 名前： 約束 六話 投稿日： 2003/07/13(日) 23:59
- ちぃ……某所に誤爆を……（ちっとも某になってないけど）
アイザック君が勝手に動いて話が長くなることなること……
当初では6話で終わりの予定だったのに……
まだまだお付き合いをしてもらうことになるかもしれません
しかし書いている本人が一番楽しい作品ですなぁ……
- 995 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/14(月) 00:01
- >994
乙！リアルタイム投下で楽しく読ませてもらいますた。
誤爆は・・・どんまいどんまい！
- 996 名前： 火サスノリで行ってみようか ４３ 投稿日： 2003/07/14(月) 01:15
- 震えが止まった。
私は…今まで何をしていたんだろう。
アークエンジェルにいた時は、憎しみと絶望に溺れていた。
オーブでのキラとの生活…
私自身では、何一つ変わっていない。
パパは…今の私を許してくれるのだろうか。
キラは、サイは…
「…ィ…フレイ！」
フレイが我に帰ると、ラクス達とキラ達以外には、数人の護衛がいるだけだった。
喧騒は遠くになっていて、辺りは奇妙な静けさに包まれていた。
「フレイ…大丈夫？」
キラの大きな瞳がフレイの視界いっぱいに拡がった。
「うん、大丈夫…ありがとう、キラ」
「何か…おかしくないか？」
「え!?」
サイの言葉に、その場にいた者の全ての視線が集中した。
「何か…静か過ぎる…それに、たった一人であんな事をするだろうか？」
「あれは多分、ブルーコスモスだ。だとしたら…」
フレイはその単語を聞いて唇を噛みしめ、サイはちらとフレイに視線を送った。
「まだ、何かあると考えた方が…」
その時、カガリが護衛を連れ、息を切らせて走ってきた。
「キラ！みんな！無事か！」
「チッ…今更どの面下げて…」
プラントの中には舌打ちをしてそんな事を言う者もあったが、アスランはそれを目で制した。
「私達は、大丈夫です。しかし、これでは今後の交渉は延期せざるを得ません…」
「いえ、交渉は続けます」
ラクスの言葉には、カガリもアスランも驚いたようだった。
「この暴力に屈したら、私達は、またあの頃に戻ってしまいます。そんな事は、誰も望んではいない事です」
「…ありがとうございます。その言葉を頂けて、大変感謝しています…今日の混乱を招いた事は、心から…」
カガリが言葉を詰まらせながらそう言った時、ドッという激しい音と共に、逃げ遅れたらしい人々の一団が闖入してきた。
「ここじゃない！あちらに避難して…」
護衛が別の場所に誘導しようとしたが、パニック状態になっているらしい人々を制止するのに手間取っていた。
その中からスルスルと、滑るように、女の人影がフレイの目前に踊り出た。
- 997 名前： 火サスノリで行ってみようか ４４ 投稿日： 2003/07/14(月) 01:16
- あまりにも自然な動きだった為、一瞬、皆が警戒するのを忘れた。
フレイを除いて。
それは、かつてそうだった人間にしか分からない種類のもの。
歪んだ憎悪を含んだ眼差し…それが今のフレイには哀しいものに見えてしまう。
女は、右手で大きめのイヤリングを外した。
それが何なのか、フレイには判った。或いは、過去の自分が教えてくれたのかも知れない。
あれは…私！なら…！
「フレイ！」
キラが気づいた時には、フレイは女の右手に飛びついていた。
何が起こったのか分からないまま、キラもサイも、カガリ達も動けなかった。
「は、離せ！この…コーディネーターが！」
フレイをプラントの人間と勘違いしたのか、女はそんな言葉を口走り、凶暴な力でフレイを振り回した。
「駄目よ！…私…そんな事、もう、しちゃ駄目よ！」
必死でしがみ付きながら、フレイは叫んでいた。
「貴様…離せ！」
余程混乱したのか、女は左手で拳銃を抜いた。
一瞬、動きが止まった。
銃声が響いた。
- 998 名前： 火サス 投稿日： 2003/07/14(月) 01:22
- うーん、中々ラストにたどり着けない…頭の中では出来上がってるのにねぇ。
もう少しなんだけど…一ヶ月近く放置して言うセリフじゃないか。
正直、SSスレpart2には投下したくない。1000超えて投下しても良いですか？
>>994
乙です。しかし、仮面は何のためにアイザックを配下にしてるのかｗ
>書いている本人が一番楽しい
こういう気持ちじゃないと続かないですよね、実際。楽しんで書きましょう。
- 999 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/14(月) 01:33
- >>989-994
乙〜。
読んでる方もすっげ楽しいですよ。
アイザック最高。突っ込まずにはいられないフレイ様最高。
- 1000 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/14(月) 01:38
- >996-998
おつふれ。
オイオイオイオイフレイ様無事なのか!?
こんなところ出来るなんてあんさんも人が悪い…ｗ
part2じゃないと反応が遅れるんじゃないかなー。
一回で済めばいいかもれんけど。
もっと自信もっていいと思うよ。面白い。
毎回投下楽しみにしてる、自分。
- 1001 名前： 私の想いが名無しを守るわ 投稿日： 2003/07/14(月) 06:07
- >998
いつもおつです。自分もいつも楽しみにしてますよ。
次スレに書いて問題ないと思われ。
とうとう1000だ！
それぞれ移動しましょう。
,r'´/／￣二`ー-､ヽ_
／/ / ／￣ ＼ ＿_ ＼
､_f__レ‐'´ ' ＼ヽ
/／ i ヽ
Y , , ,ｲ‐r┐ | }
i/ﾚ! _ノ／／｀￣! | ヽ!
|,ｲ〈 /-＾'‐-／ ﾚ'!､ ト､
/! | ヽ! ､ ､__ イ二ヽ i
i .Y |` `''‐'´ fノﾉ ゞ! /!ｊ/
/! .| | ! ￣`'´ﾉイ ′
/ | i ﾄ､ r‐- ､ / |
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r─''´￣￣￣_⌒ヽ! // T | | .├‐┴‐ﾍ ヽif￣ヽ､
ｆ´＼ > `＾'＼i/ | | |ﾚﾞ--‐-〜┐ヽl! | i
| ＼ ／ ヽ ﾚ'./ ﾉ｀! `ー┴-! i__
レ-､ ヽ' i `ヽ_ﾉ `ー! ＼
i ＼ ＼i ,' 二‐､) _,､--､ // __ `ーヽ、
ヽ i i / ,-┐） _､-┘ i ￣ヽ￣ ＼_
レ‐ / i / i ∪`´ | __ `ヽ-､、
ヽ ./ 〉 ,r‐/ | i' ヽ､, ｀ヽ､
.∨ iヽ／ ヽ _／ i ! `ー-､,_ -──ｧ‐' !
フレイ様人生劇場SSスレpart2〜陽炎〜
http://jbbs.shitaraba.com/anime/bbs/read.cgi?BBS=154&KEY=1057571214
- 1002 名前： 目次0/2 投稿日： 2003/07/14(月) 11:46
- >614以降に投下されたもののみ。
目次制作者の一存で判別するのが憚られましたので、
作者及び題名が明記されていないものは一括表記しました。
作者の皆様、どうかご容赦下さい。
- 1003 名前： 目次1/2（短編＆完結済長編） 投稿日： 2003/07/14(月) 11:47
- ・無題 >640,>777,>779
・とある街角のバーで >624,>720-724
・冷たい砂に抱かれて >625,>627,>629-630
・630 >634-635,>637,>651
・文通シリーズ >672,>675,>678-679,>681,>684,>688
・FEネタで >770,>772,>774
・鬱ＥＮＤ >785-786
・ラジオ局にて >807-810
・オレンジの花 >816
・某所からいただいてきた >819
- 1004 名前： 目次2/2（連載中） 投稿日： 2003/07/14(月) 11:47
- ・フレイ様の大天使日記 >614-616,>655-657,>707-710
・ヘリオポリスの学園祭 >823,>831
・暗闇の後には・・・ >696-697,>761
・オーブに着いた日 >838-841,>846-848,>859,>862-863,>865
・火サスノリで行ってみようか
>638,>646,>666-667,>691,>701-702,>704,>715,>728-730
>741-743,>752-756,>765-767,>802-805,>827
>963-964,>970,>985,>996-997
・宇宙の風 >852-855
・宇宙の嵐 >871-883,
・宇宙、重なる想い >893-907,>922-945,
・約束 一話 >917
・約束 二話 >955-956
・約束 三話 >966
・約束 四話 >972-975
・約束 五話 >978-984
・約束 六話 >989-993
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